エンパイアウォー③~潜みし燎原之火種
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グリモアベースへと入った猟兵たちを出迎えたのは、ポノ・エトランゼ(エルフのアーチャー・f00385)であった。
「まずは寛永三方ヶ原の戦い、お疲れ様! 勝利することができて本当に良かったわ」
戦いに赴いた猟兵たちが手に入れた『第六天魔軍将図』。八つの記された名の一つは、既に朱墨が引かれた。
「けれど、三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の『第六天魔軍将』たちが、サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきたわ」
島原に『魔空安土城』を築き上げ、何らかの陰謀を成就せんとするオブリビオン・フォーミュラ。織田信長。
徳川幕府軍は、この国難に立ち向かうため、諸藩からの援軍も合わせ幕府軍十万を招集した。
総力をあげて織田信長の元に向かおうと、動き出したようだ。
徳川の軍勢は織田信長を撃破するためには、是が非でも必要だ。
「もう進軍ルートは把握しているかしら?」
くわえて予知され示された苦難。
その脅威を取り除くべく、既に戦いへ向かった猟兵たちもいるだろう。
「今回皆さんに向かってもらいたいのは、山道の要衝である信州上田城周囲の山岳地帯よ」
信州上田城周辺は既に、魔軍将の一人である軍神・上杉謙信の軍勢により制圧されてしまった。
だが、小さな山城のため、オブリビオンの軍勢全てを収容することが出来ていないようだ。
そのため、城の周囲の山岳地帯に、複数の部隊のオブリビオンが集まっている状況となる。
そこへ分散した一つである徳川の軍勢が通れば、まさしく格好の的。
「だから皆さん――猟兵が先行して、山岳地帯にいる上杉謙信配下のオブリビオンの軍勢のうち、主力となる強力な部隊を撃破していこうと思うの」
敵は、鬼百足の部隊だ。
「木、崖といった地の利を得て素早く動くみたい。けれど、聴覚が鈍いようね」
火炎鎖を伴う敵が繰り出す炎は、気門すべてから噴出される。
身体能力は高く、跳躍もこなす。油断は禁物だろう。
「度重なる猟兵の襲撃で戦力を失えば、不利を悟った上杉軍は撤退するようだから、どうか頑張って!
よろしくお願いするわね」
そう言って、ポノは猟兵たちを送り出したのだった。
ねこあじ
中山道方面軍の壊滅を阻止するために、信州上田城の上杉軍の力を削ぎましょう。
集団戦です。
今回はよろしくお願いします、ねこあじです。
百足や気門を検索して皆、「ぴぎゃあぁぁぁ」となればいいと思います(巻き込み)。
『このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります』
山岳地帯で有利に活動したり、待ち伏せしようとしている敵を奇襲したりするための工夫があると良いかもしれません。
人数によりますが、採用不採用が出てくると思います。
ご了承ください。
ちなみにプレイングがきていたら、土日で書こうと思っています。
この場合、土曜夜か、日曜夜のプレイング締め切りとなります。
それでは、頑張っていきましょう!
第1章 集団戦
『鬼百足』
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POW : 懊悩の苦鳴
【激しい苦鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 蟲尾
【百足の尾】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 火炎鎖
【自身が繰り出した炎】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎が変化した溶岩色の鎖】で繋ぐ。
イラスト:オペラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リドル・ミー
戦争...、痛い.....、みんな、苦しんだねぇ...。この世界のこと、よく知らないけど....、痛いのはボクのトモダチがなくしてあげるんだねぇ...。
ユーベルコードで彼に変わってもらいたいんだねぇ...、ボクは、こういうの苦手だから....だねぇ....。
んじゃぁ、変わったらド派手に暴れるとするよ。こういうの、得意なんだ。
とりあえず敵をぶった斬る!
早く終わらせてほしいんだねぇ...。
【アドリブ歓迎】
柳生・友矩
戦いなんて大っ嫌いで、沢山の人が傷つく戦争なんて本当に大っ嫌いで...、でも世界の平和の為には必要なんだと理解していても...ここには俺の家族がいるんです。将軍様が治めている世界なんです。絶対、オブリビオンの好きにはさせません!
【行動】
敵に突っ込みます
攻撃は最大の防具です。
敵を見て「ぴぎゃぁあああ」と驚いてしまうかもしれませんが、それでも怯まず突き進みます!
UC【燕飛】で敵を斬ります!
「早業」と「覚悟」で少しでも敵を弱らせます。
母様とお菊さんは俺が守りますっっ!!!
【アドリブ歓迎です】
マクベス・メインクーン
百足か…足が速そうだな
動きを妨害すれば有利に戦えそうか?
敵の進路を【動物と離す】で【情報収集】して先回りする
通る場所に氷の精霊を使って罠を張り
通過しようとした時に足を凍結させるように【罠使い】で設置する
炎で溶かされっかもしんねぇけど
その前に【先制攻撃】で小刀2本持ち雷【属性攻撃】【2回攻撃】で
攻撃して【傷口をえぐる】で追撃、痺れさせて更に動きを鈍らせる
敵からの攻撃には【フェイント】で回避しつつ
炎には水の【オーラ防御】と【火炎耐性】で耐えるぜ
弱ってきたら一気に風の精霊を小刀に宿してUCで斬り裂く
月舘・夜彦
【華禱】
他の世界での戦争は何度か経験しておりますが
……この世界も避けられぬ運命なのですね
ですが、抗う術はある
倫太郎殿に敵の位置を特定して貰い、その情報より攻撃を仕掛けましょう
此方も聞き耳や視力にて周囲を警戒して敵を捕捉、移動は目立たず忍び足
倫太郎殿の攻撃に合せて先制攻撃
早業より抜刀術『陣風』、2回攻撃・なぎ払いにて一掃
高所へはジャンプで届くならば仕掛ける
不可能な所は倫太郎殿の攻撃より落下した敵へ追い討ち
飛行能力のある武器というのは便利なものですね……
構造が気になりますが奴等を片付けなくては
悲鳴は激痛耐性にてその場で耐え、カウンター
素早い動きは武器受けにて防御
炎の攻撃は残像・見切りより回避
篝・倫太郎
【華禱】
Lorelei を起動
集音や熱探知の機能を駆使して敵が潜む場所を特定
特定した場所は夜彦と情報共有し、迅速に背後へと回り込んで奇襲
拘束術使用
攻撃範囲内の全ての敵を鎖で先制攻撃
俺自身は拘束術の攻撃タイミングに合わせて
衝撃波をのせた華焔刀でなぎ払いの範囲攻撃
刃先を返して2回攻撃
高所に位置取ってる敵を地上に引き摺り降ろす
必要であれば空中戦も使用して攻撃
落ちた敵は夜彦に任せる
地上に居る、夜彦をはじめとする猟兵に
敵が跳躍攻撃を仕掛ける事を阻止するのが俺の役割ってな
敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御で防ぐ
夜彦や他の連中の死角に注意し
必要なら拘束術でフォロー
とっとと失せな!
ガーネット・グレイローズ
あれが鬼百足か……。鬼の体を持つ百足なのか。百足の足が生えた鬼なのか。
まあ、どうでもいいか……どうせ全て倒すだけだし。
戦場は範囲が広く、その上高低差が激しい。移動を繰り返すのは骨が折れるな。ならば……。
【闇夜の住人】を使用。味方のもとへ瞬間移動する能力を駆使して、吸血コウモリと共に戦闘中の仲間の近くに出現。
ユーベルコードの性質上、基本的に他の猟兵と一緒に行動する。
クロスグレイブの〈クイックドロウ〉、スラッシュストリングを〈念動力〉で操作して、尻尾に当たらないように距離を取りながら戦おう。
「軍神の名に恥じない戦いを見せてもらいたいな、上杉謙信よ」
クララ・リンドヴァル
ムカデも森で暮らしていると可愛く見えて来ますけど……
あそこまで大きいと可愛く無いですね。
俗説では後退知らずの縁起虫なのだとか。
『不変』のリンドヴァル、参ります……
巨大な蜘蛛を召喚。これに【騎乗】します。
遠距離攻撃も出来る山岳騎兵として遊撃を担います。
味方側面や後方をうろうろしながら【呪詛】を放って応戦します。味方の陣形を乱すような敵に対しては一気に距離を詰めて追い返して貰います。
ムカデ対蜘蛛。なんだか既に地獄のような光景ですが……仕方ないですね。エンパイアの為です。
勝敗分岐点が近そうな頃を見計らい、こっそり姿を消します。
敵の側面や背後に【目立たない】ように移動。迂回突撃を仕掛けます。
木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と
信州の山は徳川軍の通る峠道もわかりやすい
峠の進軍は湧水処が休憩場所になるから
その時を狙う敵、必ずいる
わたし達は敵の背、水源の川から攻める
【うさみみメイドさんΩ】
メイドさん達、まずは偵察
草むらや岩影に隠れて敵の位置と数を確認
気付かれ尾を放たれても、相手せず逃走優先
こちらの位置を悟られないよう
フェイント入れて逃げてね
情報はまつりんと共有
ん、うさみみメイドさん(本体)、行って
木の上からジャンプで木々を跳ねての空中戦
奇襲でメイドさんは各個撃破
大きな目を目潰し
わたしは幅広の大剣にした灯る陽光を武器に
地を這うように駆け
胴体を薙ぎ払い機動力奪う
火に負ける時は川に退避
木元・祭莉
アンちゃん(f16565)と!
えーと、ポノ情報によると。
山岳地帯に潜伏、動きは速く、飛ぶコトあり。
ふーん。おいらと同じだね!(にぱっ)
そう、ムカデ退治といえば、ニワトリ!
今回は合体させて額の数字は47。
クイーンメカたまこデラックス、発進ー!
あ、静かにねー。(ひそひそ)
さて、おいら本体は、高機動モードで陽動行くよー!
枝から枝へ空中移動、野生の勘で敵の居場所を見定め。
猛禽の如く上空から舞い降り、先制で殴りつけた後、再度ジャンプで樹上へ戻る。
アンちゃんと連携して、一撃離脱を繰り返す!
たまこはうさみん☆と連携、嘴啄み攻撃!
ロボに炎は効かないもんね!
うわ、痛そ……おいら、よーく知ってる!!(ぐっ)
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中山道の要衝である、信州上田城の周囲は山岳――毎年のことであれば蝉の声が響く地であるに関わらず、今はその声も無い。
土潤溽暑。
季節と相俟ったかのように、今、サムライエンパイアでは喊声が上がっていた。一人一人の声は「群」となり、鯨波となる――それはオブリビオン側にとっても同様であろう。
山間。
容赦なく降り注ぐ陽光を枝葉が遮るも、地に届いた陽気が土熱れていた。
潜伏する敵を見つけるべく、中山道とは違う位置から猟兵が歩を進める。
「えーと、ポノ情報によると。
山岳地帯に潜伏、動きは速く、跳ぶコトあり」
……うん? とココで首を傾げる、木元・祭莉(サムシングライクテンダネスハーフ・f16554)。
何かに気付いたのか、
「ふーん。おいらと同じだね!」
そう言って、にぱっと笑顔。
現在の探索の提案は双子の妹、木元・杏(ぷろでゅーさー・あん・f16565)によるものであった。
「信州の山は徳川軍の通る峠道もわかりやすい」
地図を広げ、小さな指先が伝う。
「峠の進軍は湧水処が休憩場所になるから、その時を狙う敵、必ずいる」
休憩所となる場所からすすっと移動する指先は、いままさに猟兵たちがいる場所であった。
歩みを進める九人。
「他の世界での戦争は何度か経験しておりますが……この世界も避けられぬ運命なのですね」
月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が言う。
「ですが、抗う術はある」
世も、人の道も、決して平坦なものではないと。
されど切り開く術は誰もが持っている。玲瓏たる夜彦の声は、闇先を通す灯のように。
今や征野と化した地。
始まったばかりの戦いは注視すれば微かに、荒れた風景が見出され、柳生・友矩(夢見る小さな剣豪・f09712)は痛ましそうに目を細めた。
言葉にしたのは、リドル・ミー(What's this?・f19440)だった。
「戦争……、痛い……、みんな、苦しんだねぇ……」
声は過去に馳せたものなのか、この地に浸透しゆくもの。
「この世界のこと、よく知らないけど……、痛いのはボクのトモダチがなくしてあげるんだねぇ……」
マクベス・メインクーン(ツッコミを宿命づけられた少年・f15930)は周囲を見回していた。
不穏な空気漂う地にて、動物を見つけるのには少々骨が折れる。
猪も、狸も、目に付く動物は本能的に遠ざかっているのだろう。隠れ潜むネズミたちが、伝播の役を負った。
「百足か……足が速そうだな。動きを妨害すれば有利に戦えそうか?」
敵の痕跡を見つけたマクベスの言葉に、頷く夜彦。
「敵の特徴からして、戦線の拡大は必然的ともいえましょう。然しながら散開が過ぎるのも宜しくないかと――」
戦場にて適度な散開、かつ戦線の維持は難しい所である。
「そこは私とマクベスがどうにかしていこう」
きっぱりと、感覚的に頼ることができると思わせる声で、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が言った。
何、力は使いようさ、と笑む。
「そうだな、この場所だからこそ、やれる手もあるからな」
頷くマクベス。
ガーネットとマクベスを見て、改めて決心したかのようにこくりと、クララ・リンドヴァル(本の魔女・f17817)は頷いた。
「私も……機動力を活かして頑張ります」
「おう、頼りにしてんぜ。――つーことで」
ニッと笑んだ篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)はバイザータイプゴーグル・Lorelei [ RKS ]を起動させた。
駆使する機能は、集音や熱探知。
特に山間が持つ熱は差が激しく、しばらく進んだ先、傾斜の激しい場に敵部隊を発見する。
位置取りとしては、背中をとった形となる猟兵たちの眼下に敵陣。
一部、斜めに育った木がある。
それらに巻き付くように、留まる敵もいた。
下にある場所を注視しているらしく――時に斥候が動いているのに気付き、猟兵たちは一時、身を潜めた。
小声で作戦会議だ。
「メイドさん達、まずは偵察」
と、杏がうさみみメイドさんΩでうさみみメイドさんを複製し、偵察へと向かわせる。
「あれが鬼百足か……」
「構造が気になりますね」
そう言ったのはガーネットと夜彦。
「鬼の体を持つ百足なのか。百足の足が生えた鬼なのか」
興味を示したかと思われるガーネットの瞳は、しかしながら直ぐにその色を消した。
「まあ、どうでもいいか……どうせ全て倒すだけだし」
頷く猟兵たちの士気は高く。
特に、友矩の藍瞳は瞬間的に、研ぎ澄ました刃の如き意を帯びた。
「えと。斥候の敵が、戻ってきて、全体で数は二十ほど」
情報を手に入れた杏が言えば、その敵数にちょっと遠い目になる猟兵たち。
部隊数としては最大だ。
作戦会議――というには数秒で終わった――仲間の初手の動向を聞いたリドルは、ぱちぱちと目を瞬かせて緩やかに頷く。
「……『不変』のリンドヴァル、参ります……」
やや緊張した面持ちのクララ。
女帝の招来にて、召喚した魔界の森の女王蜘蛛に騎乗する。
「ムカデも森で暮らしていると可愛く見えて来ますけど……あそこまで大きいと可愛く無いですね。
俗説では後退知らずの縁起虫なのだとか」
油に漬ければ塗り薬となり、生きたまま吊るしておけば熱さまし。百足は効用も高いとされているが――。
「クララちゃん、物知りだねー」
巨大蜘蛛に目を丸くした祭莉が、続いたクララの言葉へ感心した声を上げれば、
「い、いえ、まだまだです……」
と、若き魔女が小さな声で返す。
「おいらのたまことどっちがたくさん退治できるかな~」
ムカデ退治といえば、ニワトリだよね。と祭莉。
「クイーンメカたまこデラックス、発進ー」
と、守護神降臨で戦闘用ニワトリ型ロボを召喚する。既に合体しているそのトリデコには47と記されていて、クイーンメカたまこデラックスの強さを表していた。
とりあえずクイーンメカたまこデラックスは空気を読んで、ギ、と駆動音をなるべく最小にして座った。鳴きもしない。空気を読んだから。
「……撫でてみてもいいか?」
マクベスの言葉に、どうぞーと祭莉。
女王蜘蛛と女王鶏、そして鬼百足。三つ巴か――やや興味深げに視線を移す、ガーネットと夜彦、そして倫太郎であった。
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移動した倫太郎が高く、跳躍した。傾斜の激しい場所からなので、最早飛降りに近い。
「縛めをくれてやる」
空中にて。
ぐんと近付く敵陣へ、災いを縛る見えない鎖を放った倫太郎が同時に華焔刀を薙ぐ。眼下に向けた衝撃波が敵部隊を襲い、二度の衝撃波は大地を打ち、跳ね返った。
それが降下の勢いを削ぐ――倫太郎に続き、跳んだ友矩がその圧をいなすように身を捻った。
(「戦いなんて大っ嫌いで、沢山の人が傷つく戦争なんて本当に大っ嫌いで……」)
敵陣真っ只中への着地。
ざ! と草履が強く地に跡を残す。
(「でも世界の平和の為には必要なんだと理解していても、ここには俺の家族がいるんです。将軍様が治めている世界なんです――」)
家光の命じた声は、鮮明なものとなって再び友矩の耳をうつ。心をうつ。それは一打一打、刀を鍛えるが如く。
「絶対、オブリビオンの好きにはさせません!」
突然降って沸いた猟兵に怯んだ鬼百足たち――その一体へ一刀を繰り出す友矩。
『敵襲カ!』
『喰ロウテクレルワ!』
斬り上げた体節から連なる脚がグワッと開き、「ぴぎゃぁあああ」という顔に一瞬なった友矩であったが、気を何とか持ち直し前傾に回避。
時を同じくして別方向へ軽く跳躍した夜彦は、横へと成長した木を利用し着地と共に駆ける。
倫太郎の拘束術と衝撃波、それらに怯んだ敵陣へ急接近を仕掛けた。
【華禱】の二人の陽動と撹乱ともいえる攻撃。
「全て、斬り捨てるのみ」
鞘中から弾かれるように曇り無き刃があらわれ、走る。刹那。
その軌跡と敵の様子は無数の斬撃が在った証。
抜刀術『陣風』――次なる夜禱の一閃に、方向転換する敵胴から尾が強く振るわれた。
『ヒギャ、アアアアァァァッッ!!』
激しい苦鳴を放った鬼百足が猟兵たちの耳を灼けば、その声主を起点に逆袈裟から鋭角な線を描き夜彦がなぎ払う。
夜彦の対岸となる位置から、迫るは祭莉だ。
横へと突き出した木を一時的な足場にして飛び降りていき、空中から敵陣へと突っ込んだ。
狙う敵は一体。捉え、爛と光った銀の瞳は猛禽類のように鋭い。急降下とともに繰り出すはアンバーナックルが備わる一撃。
大きな敵の目へと入ったそれは、その敵を潰す決定打。
目を狙う、本体のうさみみメイドさんもまた敵の視界と一時的な機動力を奪っていく。
敵を踏みつけ、再度ジャンプして樹上の人となる祭莉。
散開しようと敵たちが動き始め、その頃には他の猟兵たちも駆け下りてきている――杏が灯る陽光を手に。
瞬時にして幅広の大剣へと変化したそれは閃光の如き軌跡を描き、敵をなぎ払う。光の残滓がしばし滞空し、戦場を彩った。
敵陣を割り、乱した猟兵たちは追撃の手を強める。
初動は上々であった。
「痛いのは嫌……だねぇ」
気付けばいた『彼』。言葉を交わしたことは一度もないが、その存在は確かに感じ取っていたリドル。
朧な曖昧さを漂わせていたリドルが言葉を発すれば、彼の雰囲気は明瞭たるものへと変化した。
作戦は、突撃しての撹乱。適宜撃破。
単純でありながら、敵一体をも逃さぬ意志があればこその作戦に、リドルは笑む。
「んじゃぁ、ド派手に暴れるとするよ」
傾斜を駆けていけば、二体の鬼百足が彼に気付く。
『シャアアアア!』
木々を伝い這い上がっていく者、地を駆け突進してくる者。
彼我の距離がぐっと狭まる。急激に変化する距離感に、突出した岩場を足場にリドルは腰を据えて踏ん張る。
その手が薙ぐは、真っ赤に染った太刀だ。
邀撃による斬撃に鬼百足の胴が分かたれ――そのまま突っ込んできた百足の下半身がリドルを打つ。太刀で弾き、硬い体節を貫くリドル。
敵の体液が飛散し、地に斑を描く――否、斑影が、落ちた。
数多の羽音と、キィキィとした鳴き声。
闇が駆け、吸血コウモリの群れと共に出現したガーネットが、念動力でスラッシュストリングを飛ばす。
一回転した鬼百足が尾を素早く繰り出すも、それを叩き潰すのはクロスグレイブだ。
更に三体。迫る敵を巨大な十字架模した砲塔が敵の動線を阻害する。
態勢を崩した鬼百足へとリドルは斬りかかった。
元々、危機感知力は高いのだろう。災厄が降りかかる前に、と動く姿勢は戦闘にも表れている。
敵の動きをよく見、だが、一度踏みこめばその一閃は迷いなく鋭い。
ギャッと声を上げて斬り払われた鬼百足は息絶え、炎を噴出し自らを灼いていった。その身をこれ以上、喰らわせないとでもいうように。
「なかなかやるじゃないか」
「――こういうの、得意なんだ」
ガーネットが声をかければ、道中曖昧な笑みを湛えていた青年は、一際違う笑みを浮かべ応じた。
上から仕掛ければ、戦線は転がり落ちるかの如く速さで下へと移動する。
広範の攻撃を仕掛けるのは、衝撃波を放つ倫太郎と夜彦。そして杏が、敵胴にて主に使う接地面を見出し、斬り払っていく。
下方へ向かった敵が左右に展開すれば、時に、猟兵たちは挟撃されたことだろう。
それらを阻むはマクベスとクララ、ガーネットとうさみみメイドさんであった。
戦場を胴とし、両翼を表現するかのような戦いを仕掛ける。
呪詛を放ち、敵に攻撃を仕掛けるクララ。常に戦場へと視線を渡らせ、鬼百足が数体で襲い向かう猟兵の援護と立ち回る。
『オノレエエエ!』
鬼の膂力を駆使し、その鬼手で大地を打った鬼百足が蟲尾を振り回す。
剛腕ともいえる四脚で半ば立つ蜘蛛が上方四脚を振り回し、敵尾を弾き返した。
「ムカデ対蜘蛛。なんだか既に地獄のような光景ですが……」
言い得て妙とはこのことか、なクララの呟き。
ムカデVSクモの戦いは、じっくりと眺めいたいところではあるが――ばしりばしりとした音が、地獄のゴングのようにも聞こえてくる。
――おし勝ったのは女王蜘蛛だ。引き倒した鬼百足に乗り上げ、上顎の鋭い牙を突き刺し毒を注入した。
「仕方ないですね。エンパイアの為です」
巨大な蜘蛛も大活躍である。
一方、クイーンメカたまこデラックス。
時に、百足を食べる鶏。彼女は鬼百足の天敵となれるであろうか。
ツンツンとした嘴啄み攻撃。一見可愛くも思える動作であるが、鬼百足から噴出する体液と炎がその威力を表していた。
「うわ、痛そ……」
若干青褪めた表情の祭莉。鬼百足の硬さは、既によーーーく知っている。あれを容易く傷つけているのだ。
(「おいら、よーく知ってる!!」)
たまこに突かれ慣れ……ていない祭莉は、その痛みを思い出し、振り払うべく鬼百足へ拳を放った。
ざざざざ! と木を伝い跳躍する鬼百足。その肢体は空中でくねり、数多の脚を開き着地の体勢を整える――だが。
透き通る氷故に、気付かなかった。
木々と傾斜を利用して精霊を使い、蜘蛛の巣のように氷を張り巡らせたマクベスの罠。
蜘蛛糸は強い。
出来うる限りに強化した氷糸はバウンドこそしないが――、
『ギエエ!!』
鬼百足の脚が触れた瞬間、凍結の魔法が強まりのたうち回ろうとする鬼百足が四体。もう一体が、仲間を足場に更なる跳躍を見せた。
数多にできた氷の蜘蛛の巣を駆け、跳ぶは女王蜘蛛。大きな腹部にやや背を預ける形となる騎乗は意外にも安定感がある。
遊撃に動いているのは祭莉とクララ、そしてガーネットだ。時に現れる三人を視界の端に。
新手を任せてマクベスは駆けた。
ゴルトリンクス、シルバーリンクスを手にすれば雷気が宿る。
上方から軽く跳躍したマクベスは着地の衝撃を敵に与えるとともに、跳ねあがった敵胴へ金色の刃を滑らせた。
体節めがけた斬撃は強い雷撃を放ち、追撃に銀色の刃を突き刺せば瞬間的に鬼百足の動きを停止させた。
『……ガ!!』
びくびくっと肢体が跳ねる様子は痺れに襲われているのだと分かる。
「オレをただの精霊使いだと思うんじゃねぇよ」
空気がバチリと音を立てた。弾け、周囲が帯電するかわりに、風の精霊が小刀に宿る。
その斬撃は、小刀というには厚みがあり鋭いものであった。
薙げば、易々と鬼百足の胴を斬り裂き、その余波はもう一体にも。
炎を噴出させ、氷の蜘蛛糸を排除しようとする鬼百足に、倫太郎が薙ぐ華焔刀が届いた。
切り払われた鬼百足が、空中へ。
「夜彦!」
転がり落ちた鬼百足――駆ける必要はない――瞬時に判断した夜彦。加速は敵がやってくれる。邀撃の一刀に鬼百足の胴が真っ二つに。
止まることなく振るわれる長柄は次の獲物を落としにかかる。
「とっとと失せな!」
そして、
「懸待表裏は一隅を守らず……ですよ……」
友矩がもう一体敵に斬りかかる――しかしながら、既に炎を使って罠を逃れた鬼百足が尾を振るう。
時に腰を据え、時に脚をばねのように、彼の姿勢に伴う働きを見せる境鳥正家。研鑚の道は確実に在る。
「母様とお菊さんは俺が守りますっっ!!!」
轟き渡る戦の鐘。それを払わんとするサムライエンパイアの者たち。
これに対して呼応しようとすれば、戦意は高々に掲げなければならない。
「軍神の名に恥じない戦いを見せてもらいたいな、上杉謙信よ」
ブレードワイヤーを自在に動かし言うガーネットが、鬼百足の一体を捕らえ、縛り上げた――力を込めれば、節目へと入りこんだワイヤーが敵をばらばらに斬り裂いた。
ばたばたと音を立て、体が落ち、体液が地に染み渡る。
キィキィとコウモリたちが何かをガーネットへと告げた。
見回せば、仲間の刃に掛かり崩れ落ちる鬼百足。
呪詛で弱まった敵は、女王蜘蛛と女王なメカ鶏、そしてうさみみメイドさんに攻撃されて撃破されていった。
――勝敗は決した。
敵を一掃したのち、マクベスが精霊の力を解除すれば、時折風と共に冷たさを感じていた空間は再び暑くなる。
中山道を行く徳川の軍勢は水場を必要とするだろう。
その安らぎの水場の一つが赤く染まることは、阻止された。
だが、敵部隊はまだ多く在る。
歩みの道程はまだ長く、苦難もまた様々と。
「早く終わらせてほしいんだねぇ……」
リドルの呟きは、この地に住まう生命すべてを代弁しているかのように。
サムライエンパイアに降りかかる災厄はまだ多い――けれど今は、この小さな勝鬨を、世界に送ろう。
大成功
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