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エンパイアウォー②~捧げよ我に、美しき死を

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●藍羽姫は笑う
 きらりきらりと輝きながら、その群れは歩みゆく。野を埋め、山を埋め、谷を埋めて。
 その眼差しに光はなく。その肌に輝きはなく。
 けれどそれらは身に纏う、陽光に煌めく水晶を。
 悍ましく輝く水晶を……。
「美しくはありませんね、所詮は屍」
 その光景を見下ろしながら、妖艶なる美女は侮蔑したように細い肩をすくめる。
 ……他ならぬ己自身が操っているのにもかかわらず。死者の尊厳を蹂躙し、その誇りを弄んでいるのは自分であるにもかかわらず。
「ですが、これも、右府様……第六天魔王様と徳川とが激しく干戈を交える、その美しい決戦への序曲と考えれば、まあ許容できるでしょう。胸が高鳴ります、死力を尽くして強者たちが滅ぼしあう姿を想うと。……それに」
 美女はきゅっと艶めいた唇の端を上げ、愉悦に満ちた微笑みを漏らす。残虐にして倒錯的な笑みを。
「……それに、おそらく猟兵の皆さんが来るのでしょう。楽しみです。彼らと美しく戦うことができるのならば。――わたくしの居場所を察知できるほどの美しい手練れに限りますけれどね」

●ユメカは泣く  
「……酷いよ」
 ユメカ・ドリーミィ(夢幻と無限のシャボン玉・f18509)は蹲ったまま、しばし立ち上がれないでいた。彼女の能力でもあるシャボン玉が力なく漂い、そして儚く割れてゆく。
 だが、ユメカはそれでも言葉を続ける。未熟なりと言えども彼女もまた猟兵、その決意と覚悟を持つものであるのだから。
「……ごめんね。あたしの見た予知は、安らかに眠っていた死んだ人たちを無理やり蘇らせて兵隊にして、操っている奴がいるってこと。そして、その人たちに襲われた人たちも同じ姿になっちゃうってことなの。このまま放置していたら、それだけでもたいへんだし、それに」
 ぐいと涙を拭き、ユメカの口調に熱がこもる。彼女を打ちのめしかけた哀しみを、邪悪なるものへの怒りが凌駕する。
「それに、このままだと、将軍様は織田信長との決戦前に、この死んだ人たちの軍団に対応するためにお侍さんたちを派遣しないといけなくなるわ。そしたら決戦の時にお侍さんたちが足りなくなっちゃうの」
 然り、第六天魔王の進行が始まった今、将軍家光の手勢を大量に割くことはなるべく避けなければならない。決戦の場に極力多数の侍が到着することが、魔空安土城を破るユーベルコードの成就に必要なのだから。
 ゆえに、猟兵たちは戦わねばならぬ。しかし、目標とすべきは屍人の兵団そのものではない。
「さっきも言った、死んだ人たちを操ってる奴。そのオブリビオンをやっつけちゃえば、後は普通のお侍さんたちでも大丈夫なはずだから。……でも、死んだ人たちがいっぱいいて、その中に紛れているから、見つけるのが大変かもしれない。死んだ人たちも攻撃してくるし。けど、きっとみんなならできるよ!」

 猟兵たちは数え切れないほどの屍の群れの中に潜む統率者たるオブリビオンを倒さねばならない。
 無論、さほどの脅威ではないとはいえ、屍たちも攻撃をしてくる。ダメージの蓄積は避けねばならないだろう。
 いかにして効率的に屍たちを退け、突破し、素早く統率者を発見するかが重要となる。
 無策で大群の中に突っ込むだけでは成果は得られないだろう。
 さあ、戦の時だ。
 猟兵たちよ、出陣せよ。


天樹
 こんにちは、天樹です。
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 屍人たちの大群の中に潜むオブリビオンを見つけ出し、これを討伐していただくことになります。
 オブリビオンの位置を素早く探知し、見破るためにはどうすべきか。単純に突っ込むだけではなく、ひと工夫が必要となるかもしれません。
 もちろん、オブリビオン自身も侮れない敵です。
 みなさんのご参加をお待ちしています。
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第1章 ボス戦 『藍羽姫』

POW   :    鬼女の性
全身を【鬼の闘気】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    刃舞いの鈴
【鈴の音】を向けた対象に、【刃と変じた布】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    風鳴りの鈴
【鈴の音】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【風の刃】で攻撃する。

イラスト:寛斎タケル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠須辿・臨です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

霜月・柊
「なんで隠れちゃうかな〜。正々堂々やりたいのにぃー。」
不機嫌そうに、面倒くさいと言わんばかりに呟く。
まぁ見つければ良いか、と気分を変えて【戦闘知識】でどの辺に居るのが最適かを考えて、屍人を【なぎ払い】、【視力】と【第六感】で見つけて【追跡】する。出来れば屍人の中に紛れて【暗殺】【先制攻撃】したいかな。


鈴木・志乃
(すうっ)
ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!
(空飛んでマイク片手にUC発動
事前に味方いなさそうな所に移動しておく)
(【祈り、破魔、呪詛耐性】籠めた【歌唱の衝撃波】でもろとも全部【なぎ払う】)

(大暴れしながら目立つ人を探しますか【第六感】)
(地面から布飛ばすなんて距離あるから攻撃は見切りやすいと思うよ?
【第六感】で【見切り】【早業念動力】で巻き上げた敵死体で受けようか
そのまま死体の嵐で敵を潰そう
物理攻撃は光の鎖で【武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動)



「なんで隠れちゃうかな〜。正々堂々やりたいのにぃー」

 霜月・柊(Inane Withdraw・f09791)は、屍人たちを斬り散らしながら、ふうっと不機嫌そうに吐息を漏らす。
 視界のすべてを埋め尽すばかりの屍人の群れ、その中の何処かから、こちらを見つめる何者かの視線を、柊はしっかりと感じ取っていた。
 眠そうに見える柊の瞳の奥に、しかし確かに宿る強い光。それは、強者を求める輝き。
 ――奇しくも、藍羽姫と同じく、強き敵との邂逅を求めてやまぬ剣豪の、それは猛り昂ぶりだった。
 しかし、屍人たちの大軍勢の中にあって、剣を交えんと欲する敵の姿をしかと見極めることは、柊であっても至難の業。
「んー。って言っても、まあこっちを「視てる」わけだよね。それはさっきからの視線で感じてるし。僕たちのことが気になってはいるんだよね。それでいながら、僕たちからは見えづらい場所。……ってことはぁ……」
 剣を舞わせて屍たちを斬り立てつつ、戦場を一瞥した柊は、視線を特定の方向に向ける。
 燃え上がる太陽が今しも焼け落ちんとする方向に。

「強い陽射し、さらにそれを、無数の屍人たちの水晶が乱反射して、すごい煌めきだよ。見づらいったらないね。そして、だからこそ……オビリビオン、君はそっちにいるはずだよ!」

「そっか、ありがとう、だいたいの方向が分かったなら十分」
 怜悧に戦場を分析した柊の言葉に、鈴木・志乃(生命と意志の守護者達・f12101)はこくりと頷き、ふわりと鮮やかな白羽を広げた。
「少し、離れていて」
 志乃は柊にそう言い残すと虚空へ舞い上がる。
 風に踊り、気流に溶けるように天高く――そして、すっと息を深く吸った、次の瞬間。

「……あああああああああああああああああああ!!!!!」

 凄まじい絶叫――いや、シャウトが世界を覆って響き渡った。
 それこそが志乃の力、魂の奥底から迸る情熱をオーディエンスに叩きつける、歌と言う名のパッションの嵐!
 さらに単なる物理的な衝撃のみにあらず、その歌声の中には、清澄にして清らかなる祈りと、邪悪なるものを退ける破魔の力さえもが宿る。
 その歌声の木霊するところ、大地は割れて覆り、岩盤は砕け散って轟音の中に塵と化す。ましてや、屍人ごときに何が出来ようか。
 大津波の中の儚い木の葉のように、死人たちは空中に舞い上がって大地に叩きつけられ、またある者はひしゃげて赤い肉汁となり果てる。
 いかに大軍であろうと、こうなればその数の優位など意味を持たぬ。
「……無差別範囲攻撃……あまり美しくはありませんよ、猟兵!」
 忌々しげに舌打ちする藍羽姫の姿が、倒れ、砕かれ、微塵と化す死人たちの合間に浮かび上がる。
 無論、これほどまでに目立つ行動を取る志乃に対し、藍羽姫が無為に手をこまねいていたわけではない。
 いや、むしろ、その羽ばたく純白の翼を血に染めようと、すでに藍羽姫は行動を起こしていたのだ。
 本来ならば志乃はその魔手に掛かっていてもおかしくはない、しかし――
「悪いね、そっちの攻撃とは相性が良かったみたいだ」
 志乃は笑う。
 そう、志乃の攻撃は歌。凄まじい音の嵐。故に。
 ――それは鈴の音で相手を把握する藍羽姫の攻撃を妨げる! すなわち一種の攻勢防御に他ならない!
「そっちの勝手な美意識に合わなくてもなんとも思わないよ。でもね……!」
 魔女を見据える志乃の瞳が爛々と光る。それは怒り。死を弄ぶ相手への憤り。
「多分、お前には、こういう死に方が似合うと思う!」
 両手をかざした志乃の周囲、空気が渦を巻き景色が歪む。世界が震えるほどのサイコキネシスが唸りを上げる!
 次の刹那、志乃の誘導のままに、空中高く巻き上げられた無数の死人たちが、一斉に藍羽姫めがけて降り注いだ。自らが醜いと嘲り笑うその死体に埋もれて死ね――それこそが志乃の怒りの奔流に他ならぬ!
「くっ、この程度のことで!」
 藍羽姫は美しい顔を歪めながら、布を舞わせて辛うじて死人の群れを撃ち落とし、斬り裂いて回避せんとしていく。
 
 ……しかし。
 小さな煌めきが、生えていた。
 どこから?
 ――藍羽姫の胸元からである。
 あたかも自らが操る死者たちの生やす水晶さながらのように。
 しかし、姫が生やしていたのは水晶ではない。
 刃。冷たく鋭く無情なる刃。
 ――雪のように冷たく、月を斬るほどに鋭利な……それは柊の、刃。
「……いつの……間に……!」
 血走った眼で姫は背後の柊を睨みつける。
 陽の光を覆い隠すほどに舞い上がった瓦礫。砂塵。土塊。そして、――屍の山。
 それは、柊が身を潜め、姿をくらましながら目標に接近するのに十分すぎるほどの役割を果たしていた。
「――暗く、昏く、沌く。黒き、黎き、犂き冬よ、その慟哭を、その力を貸し与え給え……!」
 刃を突き立てたまま、柊は低く詠唱する。言葉に乗って、斬月六華が深く深く、魔女を抉る……!
「ぐ、ああああああっ!」
 狂乱の舞を見せるかのように藍羽姫の羽衣が荒れて羽ばたき、血煙が霧の如く周囲を包む。
 紅く霞んだ荒野の中を、鈴の音が遠く響いて消えていく。
 それは藍羽姫の撤退する音色だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

煌天宮・サリエス
美しいものが見たい。そう、なら見せてあげよう。
しかし、対価は黄金の炎による焼却だがな。

煌天宮の加護【羊馬】を発動。
体や武器を纏う炎は黄金の羊の再現。そして、宙に浮く炎の矢は射手が放つ矢の再現という訳だ。
空を飛び、地上にいる水晶屍人を炎の矢で撃ち抜きつつ、首領がどこにいるのか探します。

発見したら『呪いの武器袋』から黒のビー玉を1つ取り出し斧槍に変化させつつ突撃します。
攻撃は首領には斧槍での攻撃し、近くにいる水晶屍人は炎の矢で牽制します。
防御は『時天使の秘盾』と体に纏う黄金の炎で威力を減衰させたものを受ける。

対集団戦、個による多の制圧が私の一番の得意分野ということを見せましょう。

アドリブ・連携歓迎


アリス・フェアリィハート
アドリブや連携も歓迎です

安らかに眠ってらしてた
方々を無理矢理甦らせて…
こんな事に利用するなんて…!

『利用された方々の為にも…』

屍人さんに
囲まれない様に戦闘

戦いつつ
【動物使い】で
自身のバディペットの
『リリィへイア』と
『キティハート』を
密かに偵察に向かわせ
【情報収集】、
【動物と話す】でペットからの
情報から
藍羽姫さんの位置を特定

攻撃手段は
自身の剣
『ヴォーパルソード』に
【破魔】を込めて
【属性攻撃】や【なぎ払い】
【鎧無視攻撃】等の剣戟と
剣からの【衝撃波】【誘導弾】
等の遠距離攻撃等で攻撃
纏めて攻撃時はUC使用
(味方やペットを巻き込まない様に)

敵の攻撃は
【第六感】【見切り】【残像】
【オーラ防御】で
防御・回避



 天空を駆け抜ける黄金の焔がある。大地に咲き誇る可憐なる乙女がある。
 煌天宮・サリエス(光と闇の狭間で揺蕩う天使・f00836)とアリス・フェアリィハート(不思議の国の天使姫アリス・f01939)は、共に水晶屍人の大軍に対し、一歩も引かぬ気構えを見せていた。
 煌めく炎が流星のように空を踊って大地を舐め尽し、可憐なる剣は歌うような閃きと共に翻って群がる敵を斬り伏せる。
 鮮やかにして艶やかに、華麗にして優美に。
 サリエスとアリスの戦いは、広大な戦場の中でもひときわ目を引くほどに美しく輝いていた。

 が、尽きせぬほどの死人の群れをいちいち相手取っていたのでは埒が明かないのもまた事実だった。
「対集団戦、個による多の制圧が私の一番の得意分野ですが……」
 燃え上がる炎の矢で死人を纏めて撃ち抜きながら、サリエスは求めるべき相手を探す。
 そう、単にこの死人軍団を殲滅せよというのであれば、それはサリエスにとってさほどの難事ではない。
 しかし、サリエスの敵はあくまでこの屍たちの統率者、オブリビオンである。大軍勢の中に潜み隠れるその相手を見出すことに、サリエスは手間取っていた。
 だがそのとき。

「リリィ、キティ、よくやってくれました!」
 下方から聞こえた弾んだ声に、サリエスは顔を向ける。
 ぶんぶんと愛らしく手を振るアリスの姿がそこにあった。
「上手くいきましたか。派手に暴れた甲斐があったというもの」
 サリエスは美しい顔をほころばせて微笑む。
 
 そう、サリエスとアリスは、過度ともいえるほど派手に戦いを繰り広げていた。
 自分たち以外のものに敵が目を配らぬように。……戦場に潜み駆け巡るアリスのファミリアたちが情報を収集しやすいように。
 二人は自分たち自身を囮として使っていたのだ。
「リリィとキティが見つけ出してくれました、藍羽姫さんの居場所を!」
「ならばあとは――突撃あるのみです!」
 弦を放たれた矢のように、二人は戦場を無人の荒野と化して突き進む。
 サリエスは斧槍を風のように舞わせながら、アリスは魔獣殺しの剣ヴォーパルソードを躍らせながら。

「……見えていましたよ、猟兵。美しい戦いでした。わたくしが相手をするのにふさわしい」
 くすくすと冷酷な笑みを漏らしながら、その猛進を迎え討たんとする艶麗な影。それこそがこの屍軍の将、藍羽姫に他ならない。
「しかし、わたくしに「見えた」時点で、あなたたちは最早、我が掌中。受けなさい――『風鳴りの音』」
 涼やかに軽やかに、鈴の音が響く。その音はあまりにも美しく、――しかし。次の瞬間、猟兵たちに襲い掛かった苛烈な攻撃は、二人の想像を上回っていた。
「!」
 咄嗟にかざした時天使の秘盾をもってしても、サリエスが大きく後方へ弾き飛ばされたほどの威力。
 それは可憐なアリスの小さな体を真二つに斬り裂いた――かに、見えた。
 だが、それは残像。僅かに虚空に飛んだのは美しいブロンドの僅かな先端。
 アリスは小さな体を、それゆえに細かく刻んだ挙動を持って藍羽姫に肉薄する。青いスカートが翻り、大きなリボンが疾風に靡く。
「安らかに眠ってらした方々を無理矢理甦らせて……こんな事に利用するなんて……!」
 アリスの可憐な瞳が怒りに燃える。邪なるものを赦さない純真な蒼い瞳が蒼焔のように!
「利用された方々の為にも……フラワリーズ・フェイトストーム!!」
 朗々と響いた詠唱と共に、アリスの周囲に巻き起こる嵐。それは美しく芳しく、そして恐るべき威力を伴う華の嵐! 吹き荒れる鈴蘭の花弁は時空すら歪ませる!

 ――だが。
「言ったでしょう、「見えている」ものなら、わたくしの鈴の音の餌食」
 藍羽姫の手にした鈴が再び響を立てる。その技の対象は「視認しているものすべて」。ゆえに、鈴蘭の花弁もまた、鈴の音によって斬り裂かれていく。
「美しい技ですが、わたくしの前には無力でしたね、猟兵」
 藍羽姫は哄笑しつつ勝ち誇る。……いや、勝ち誇ろうとした。
 しかし、その笑いが途中で止まる。
 アリスがにこやかに微笑んでいる姿を見て。
「気の早いオブリビオンさんです。私たちの攻撃は、まだ終わっていませんよ?」
「なっ……?」

「私たち」――アリスはそう告げた。
 然り。
 アリスが巻き起こした花弁の嵐に、その時。
 燦然と輝き煌めく黄金の炎がまとわりつき、着火したのだ!
 燃え上がった花弁は今、炎の嵐となって轟然と天を突き巻き上がる。
 それこそは――サリエスの放った黄金の炎。『煌天宮の加護』による業火に他ならない!
「煌々と輝く天に座す白羊と人馬の宮より力を開放する……!」
 サリエスの詠唱が高らかに響き渡る。気高く美しい天宮の威を宣するかのように。
「こ、このようなもので……!」
 藍羽姫は狼狽しながらも、なお鈴の音を振るおうとする。
 しかし。
 巻き起こり燃え上がった炎の嵐は、その超高熱によって大気を歪ませ、音の波をかき乱していたのだ。
 もはや、それは、魔力を込めた美しい音ではない。ただの乾いた虚しい音響でしかない……!
「美しいものが見たいのだろう。なら見せてあげよう。……しかし、その対価は、黄金の炎による焼却だがな……!」
 炎の中に包まれた藍羽姫に向かって静かに投げつけられたのは、サリエスの冷たく断罪する言葉だった。 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
【ソロ希望・SPD】
美しくないわ。所詮はゾンビね。
水晶で飾るどころか、水晶の引き立て役だわ

そして何より……愛を感じないのよ

夜魔の翼で【空中戦】
炎の【属性攻撃】で屍人どもを焼き払うわ

途中、藍羽姫が死角から攻撃してくるはず。
【オーラ防御・激痛耐性】で耐え
悲愴の剣の【呪詛】を込めた【衝撃波】で動きを鈍らせ
包帯の【ロープワーク・早業】で
自分もろとも捕縛し『愛の想起・妖狐蒼炎連弾』

小町の230発の狐火で
私も火達磨になるけど【火炎耐性】で平気

小町:ルルさんは貴女と違って
死霊の為に自らを囮にする人です

死霊術は不変不朽の美。その真髄は永遠の愛。
胸や足への愛撫と濃厚なキスで【生命力吸収】
貴女にも愛を教えてあげる



 炎の中に包まれながらも、藍羽姫は辛うじてその身を翻し、再び屍兵の中に身を隠した。
 姫は白い歯をぎゅっと噛みしめ、美しい顔を怒りと屈辱に歪める。
 だが、その怒りは、猟兵たちに対してのものだけではない。むしろ……部下、いや持ち駒である屍兵に対してのものだった。
「なんということでしょう、このような……醜い屍たちにこの身を救わせることになるとは……!」

「そうね、醜いわ。所詮はゾンビ」

 頭上から降ってきた声に、姫は虚空を振り仰ぐ。
 それは、漆黒の翼を広げて天に舞う、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)の玲瓏の美声だった。
「猟兵……。ふふ、我が天敵たる猟兵と気が合うとは珍しいことです。この屍たちに対して憐みや悲しみを抱くのがあなたたちだと思っていましたが」
 揶揄するような藍羽姫の言葉に、ドゥルールは冷たい微笑を浮かべる。
「屍は人でしょう。……人じゃないわ、私が救いたいのは……そして、愛するのは」
「ほう。ならば、わたくしたちの側に来たらいかかです?」
 誘うように白い繊手を伸ばす姫の姿を、ドゥルールは慈しむようなまなざしで見る。

「それも困るわ。だって、そうしたらあなたたちを永遠に愛する者がいなくなる。私はあなたたちを久遠に愛おしむために――この身の内に永劫に抱きしめるために――戦うのよ!」
「……猟兵とは生命の埒外とは聞いていましたが、あなたはどうやら、理性の埒外にあるようですね!」

 漆黒の翼が陽光を遮って暗雲のように天に広がる。世界の終末を告げる黙示録の訪れのように。
 刹那、二人の美姫が同時に動いた。
 ドゥルールの手にした短剣は甲高く狂おしい悲鳴を上げながら風を裂いて、大地もろとも斬り刻まんと衝撃を放つ。
 藍羽姫の手にした鈴は軽やかに涼やかに調べを奏で、ドゥルールの放った衝撃を相殺しつつ、無数の衣を刃と化して迎撃する。
 ドゥルールの元へと届いた刃を、しかし吸血姫は身に纏ったオーラで巧みに逸らしつつ天空に乱れ舞う。幾筋かの手傷を負いながら、けれど彼女の口許に、愉悦の笑みが浮かんだ。
「本当に気が合うようね、私たち。でも、布は――こうやって使った方が美しいと、思うわ!」
 一瞬の死角を突き、ドゥルールが放った無数の包帯。それは暗黒の空間に差し込む天への梯子のように、あるいは純白の驟雨のように藍羽姫に降り注ぐ!
 ただの攻撃ならば藍羽姫も回避し、あるいは撃ち退けることができただろう。だが、ドゥルールは……その身そのものを矢玉と化して、姫の元に、流星の如く猛進していたのだ。その身の背後に包帯の雨を隠して。
 ドゥルールに視覚を隠された藍羽姫は、包帯への対応が一瞬遅れる。そこへ降り注いだ包帯が、ドゥルールもろともに姫をきつく堅く縛り上げていた。
「自分ごと!? 一体何を……」
 驚愕する藍羽姫は、自らの言葉が終わらないうちに、ドゥルールの意図を察することとなる。
 自分とドゥルールの頭上に、青白く燃え上がる妖狐が浮かぶのを見て。
「……精励なる蒼炎の妖狐よ!」
 ドゥルールの呼びかけに応じ、妖狐は放った――数百の火炎弾を!
 包帯に縛り上げられた二人の妖姫は、見る間に燃え盛る炎に包まれる。
「……ルルさんは貴女と違って、死霊の為に自らを囮にする人です」
 妖狐の小さなつぶやきが、藍羽姫に届いたかどうか。
「あああああっ!」
 悲鳴を上げてのけぞる藍羽姫を、しっかりとドゥルールは抱き締める。
 火炎に耐性を持つドゥルール自身は燃えてはいない、けれどその瞳の奥にだけは、情熱と狂熱の炎が、周囲に猛り狂う炎をも上回る勢いで燃え盛る!

「私が理性の埒外ですって? 嬉しいわ。愛は理性の外にあるものよ。そして私の死霊術は不変不朽の美……その真髄は永遠の愛!」

 妖艶なる微笑を浮かべ、ドゥルールは藍羽姫に唇を近づけていく。
 命を奪い、愛を与える唇を。
「貴女にも愛を教えてあげる……!」
 炎の中で、ドゥルールの激しく深い口づけはすべてを燃やし尽くす。
 怨念も憎悪も運命も。
 ただ紅蓮の愛の中に消えてゆく……。

成功 🔵​🔵​🔴​

レナータ・バルダーヌ
屍人さんたちの人数が思ったより多いですね……。
わたしの炎で火葬して差し上げようかと思いましたけど、急いで統率者さんを見つけた方がよさそうです。

両翼の痕から炎の翼を形成し、飛行して空中から探します。
この方法なら屍人さんはほぼ無視できると思います。

……あの方でしょうか?
性別は違いますけど、あの吸血鬼の領主様に少しだけ雰囲気が似ているかもしれません。
ですが、まだまだ先は長いでしょうから私情は無しです。
余計な傷は負わないようにしましょう。

統率者さんを発見次第【B.H.エアライド】で音速飛行に移り、風の刃を【衝撃波】で相殺しながら突撃してそのまま体当たりを敢行します。


羽月・姫香
ふぅん…なかなかえげつないことやるんやなぁ
ま、それぐらい外道やったらウチも遠慮なくやれるからえぇんやけど?

潜入やったらウチの…忍の十八番やっ! 真っ正面から戦うのは向いとらんしねっ☆
【忍法・無月】で【目立たない】ように【忍び足】で敵軍に浸透して、親玉がどこにおるんか【情報収集】やっ!
もしバレてしまったら…【咄嗟の一撃】で口封じせなあかんなっ!

首尾よく親玉を見つけられたら…隠れたまま、これもウチの得意技【暗殺】を仕掛けるっ!
ウチは【毒使い】やから、<南洋手裏剣>に毒塗ってぇ…【投擲】っ!

その鈴の術も、見えてへん相手にはうまく決まらへんやろ?
さぁ…泣きっ面、見せてもらうでっ!

(※アドリブ等歓迎)


猫屋敷・ミオ
怪しい箇所を探す?戦況から推理してみる?敵の居場所を察知しようとしますが…
「う~ん、考えてもわからないであります!」
と言う事でUCで無敵の戦闘鎧に身を包み、自身を止められる者が居ればそれがオブリビオンと考え屍を蹴散らしつつ突撃します。

見つける事が出来れば一度、実は無敵でもなかった戦闘鎧を解除。
【都合よく尖ったもの】を上空に【槍投げ】の様に投擲して他の猟兵に居場所を知らせます。

「我慢比べに付き合ってもらうでありますよ!」
その後は敵UC『鬼女の性』による増強をさせない様、耐える事に特化させた戦闘鎧を纏い直し、他の猟兵が到着するまで時間を稼ぎます。
敵が立ち去りそうならしがみ付いたりして足止めします。



「考えてもわからないことは考えないに限るのであります!」
 猫屋敷・ミオ(世界を股に掛ける旅商人・f20078)はきっぱりと断言し、屍人の大軍の中からオブリビオンを発見することを放棄した。
 ある意味大雑把だが、逆に言えば最も合理的であり論理的である。意味のないことに労力を割くよりも、己の為しうること、為すべきことに全力を注ぐべきという判断は正しいと言えるだろう。
 なぜなら、今この場には、ミオ一人だけではない。仲間がいるのだから。
「ということで、自分はそこらじゅうを暴れまわってくるのであります! その自分を止めることが出来るものがいたら、それがオブリビオンなのであります! かんぺきなりろんであります!」
「た、確かに、方向性としてはだいたい合ってる気がするんやけど、さすがに大まかすぎへんやろか……。それに、本命に会う前に疲れてしまわへん?」
 ミオの自信たっぷりな言葉に、羽月・姫香(災禍呼ぶ忍・f18571)が端正な顔を僅かに引きつらせる。
 これまでの猟兵たちとの戦いで、屍兵たちの数は大幅に減らされてはいたとはいえ、まだ決して侮ることのできない数量を維持していたのだから。
「まだまだ先は長いでしょうから、余計な傷は負わない方がいいですものね。んー、というか、あのオブリビオンはこの大軍をどうやって操って……」
 レナータ・バルダーヌ(復讐の輪廻・f13031)がトントンと頬を指で叩きながら考え込む。
 やがて彼女は顔を上げ、口を開く。
 それを聞き、二人は頷いた。

 大海を真二つに割ったモーセのように。
 屍兵たちの軍勢が切り裂かれていく。
 無敵鎧を身に纏ったミオが爆走しながら、屍たちを、当たるを幸い叩きのめしているのである。
「うおおおおおおおお! 行くでありますよ!!」
 撃ち砕き、なぎ払い、吹き飛ばす。その猛威は暴風の如く波濤の如く。
 その光景を遠方から確認した藍羽姫は鋭い舌打ちを飛ばした。
 屍たちは単に姫の身を隠すためのカモフラージュではない。もとより、徳川の旗本御家人たちの手勢を割かしめ、第六天魔王の戦いを優位に進めるための手勢でもある。いくらでも増殖させることができるとはいえ、これまでの戦いで大きく数を減らした屍たちを、ここでさらに減らすのは避けたかった。決戦の時は間近い。徳川軍と同様に、魔王軍もまた時間との戦いを強いられているのは変わらないのだ。
「あの美しくない鎧を止めなさい、屍たち。倒せとは言いません、お前たち自身の肉を引き裂いて鎧の関節に詰め込み、皮を引きちぎって鎧の隙間を埋めれば動きは止まるでしょう」
 冷酷に言い捨てると、藍羽姫は手に持つ鈴を凛と鳴らした。

 ――然り。
 姫は、鈴の音で屍たちを操っていたのだ。
 音。
 ゆえに、その軍勢の反応にはおのずから差が現れる。
 音が届きやすい場所、届きにくい場所。
 その差が即ち、軍勢の動きの差という結果につながり。
 ――上空から俯瞰しているものの目には、動きの起点が明確に観測できたのだ。
 そう、高空を舞うレナータ。そして、彼女と共にあり、その姿を消している姫香には。
 ミオが相手の動きを誘い、姫香が姿を消し、レナータと共に上空からそれを読み取る。
 これが三人の策だった。

「見つけました。では、――先手を頂きましょう」
 レナータは抱き上げていた姫香を手放すと、そのまま紅蓮の炎の矢と化して突進した。大気が焦げ付いてイオン化するほどの加速は、風の音さえも遠くに置き去りにし、まっしぐらに藍羽姫めがけて突き進む。
 姫香の手を離したことで透明化の効力は失われ、藍羽姫に目視されることになる、だが、問題はない、この超加速ならば。
 それこそが凄絶なるレナータの秘法、称して曰く、ブレイズハイパーソニック・エアライド!
 驚愕した藍羽姫の相貌を、レナータはほんの一瞬、見て取った。刹那にも及ばない時の間隙。
(……あの方でしょうか?)
 レナータの脳裏に、僅かによぎる面影がある。だが、すぐに彼女はそれを振り払う。雰囲気は似たものがあるが、違う。あの吸血鬼とは。――彼女の心の奥底に巣食い、記憶の暗渠にわだかまって、未だに魂を食い荒らし続けているあの吸血鬼とは。
(私情は――なしです!)
 次の瞬間、レナータの、自らの身さえ捨てた一撃が、まともに藍羽姫に叩きつけられた。
 大地を穿ち崩しきるような爆発的な衝撃が、妖姫の華奢な体を覆い尽くす。
 衣で辛うじて防いだとはいえ、それは姫の身を大きく傷つけるのに十分だった。
 だがそれでも、鬼気迫る表情で妖姫は立ち上がる。ふらつきながら、傷つきながらも、確固として。
「猟兵……この程度でまだわたくしは……倒せませんよ……!」
「そうですか。……でも、往生際が悪いのは、「美しく」はないのではありませんか?」
 レナータの冷然とした言葉に、藍羽姫は美麗な顔を怒りに歪めて襲い掛からんとする。

 ……しかし。
 その脚が途中で止まった。
 いや、止められた。
 藍羽姫は、自らの視界が暗転するのを信じがたい思いで認識する。
 そしてそれが、外部からの攻撃――毒によるものであることも。
 己の身を僅かにかすめていた刃があったことに、藍羽姫は気づかなかった。
 さもあろう、その刃は、レナータの突撃とまったく同じタイミングで投げ放たれたものであったのだから。
 意識を完全にレナータに向けさせられた妖姫には、その影で投擲された刃をかわすことなど叶うはずもなかった。
 ――これを、忍びの用語で、「陰月(かげり)」と言う。
 それは雲間に隠れた月の姿がさだかには見えないように、あるものに隠れて真なる攻撃への意識を逸らす術技。
 理屈はシンプルである、だが、それゆえに、完全なる技巧で行うのは至難。ましてや、レナータの超加速と完全に同期して行うなどとは並大抵のことではない。
それはまさに、熟練した忍びならではの術。……災禍を呼ぶ忍、姫香ならではの術だった。
「毒……などと……!」
 よろめきながら、藍羽姫は血走った眼で姿を現した姫香を睨みつけた。
 が、姫香は優雅な唇を笑みの形に変える。
「死人を穢し、操るのは良くて、毒には文句をつけるん? ま、あんたぐらいの外道やから、ウチも遠慮なくやれたんやけどね」
 桜色の可憐な装束が、滅びをもたらさんと妖姫に迫る。
「さあ、……泣きっ面、見せてもらうでっ!」
「……な、め、る、なぁっ!」
 ついに優雅な装いさえも脱ぎ捨て、藍羽姫は最期の力を振り絞る。己の負傷に比例した戦闘力を発揮する能力、それは瀕死の今だからこそ最大の効果を生むはずであった。

 ……がっきと背後から藍羽姫を押さえつけたミオが現れさえしなければ。
「――さあ、我慢比べに付き合ってもらうでありますよ!」
 屍たちの群れを突破し、たどり着いた無敵鎧は、今や耐久力に特化し、死に物狂いに暴れようとする妖姫を万力のように締め上げて離さない。
 あがく藍羽姫に、ミオは毅然と言い放つ。
「自分は商人であります。商売の世界にはこんな言葉があるそうであります、商売に必要なものは、機敏さと、信用と、忍耐だと。……自分たちと言う商店は、そのすべてを品揃えしておりました。――ゆえに。自分たちの勝ちであります!」
 そう。
 スピード。仲間たちへの信頼。そして忍耐。
 そのすべてが揃った時、猟兵たちは、この難敵を打ち破る。
 ミオの押さえつけた藍羽姫に、姫香とレナータの振るった止めの一撃が突き刺さったのは、次の瞬間だった。

 かくして、この戦場を猟兵たちは勝利で飾った。
 だが、まだ戦は続く。
 第六天魔王の昏い影は、なおもこの世界を深く濃く覆っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月07日


挿絵イラスト