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エンパイアウォー③~貪炎

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●貪炎
 闇夜に浮かびあがるそれは、焔だった。
 傾斜のある山中をずるりずるりと這いずる音はひとつだけでなく、人の背筋をぞわりと逆立てる。

 ああ、ああ、腹が減った。
 このままいつまでも待てるものか。
 いつになれば、いつならばあの肉を味わえる。

 煌々と燃え盛る炎を纏い、鬼の群れは蟲の脚を轟かせて草花を薙ぎ倒す。

 軍神は言っていた――その空腹を満たせるのはもうすぐだと。

●襲炎
「戦争が、始まりました」
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)は、いつもの無表情だった。けれど雪の華咲く黒曜の角を見て、何かを察した猟兵達は彼女に説明を促す。
「オブリビオンである織田信長が率いる、『第六天魔軍将』という軍勢がサムライエンパイアを征服しようとしています。彼らをほろぼすために、徳川幕府軍が10万の兵を招集しました。たから達猟兵は、幕府軍を守りながら進撃しなくてはいけません」
 集結する徳川幕府軍は、本隊が東海道を、中山道方面軍が中山道を通り、畿内への玄関口である関ヶ原へと向かう。しかし、中山道の要衝である『信州上田城』周辺は、既に魔軍将の一人である軍神『上杉謙信』の軍勢により制圧されたのだ。
「上杉軍は、中山道方面軍をほろぼそうとしています。これを阻止する為に、『信州上田城』の上杉軍の力を削いでもらいたいのです」

「上田城は小さいですから、城の周囲の山岳地帯に複数の部隊のオブリビオンが集まっています。皆さんはそこへ先行、山岳地帯に居る強力な部隊を強襲し、ほろぼしてください」
 続けて少女は、この場に集う猟兵達が相手をする部隊の説明を口にする。
「たからが視た敵の名は『鬼百足』。羅刹だった者達が死後、妖怪へと化けてしまったオブリビオンです。ムカデのような下半身で山の中を器用に這いずりまわり、炎を操ります。人間を食べてしまうらしく、特に女性の羅刹が狙われるようです。聴覚が鈍いという特徴もありますね」
 戦場は夜の山中。これらの特徴を意識すれば、不意打ちや奇襲などの役に立つかもしれない。猟兵の襲撃で戦力を失えば、不利を悟った上杉軍は撤退する。

 雪の結晶きらめくグリモアが浮かびあがり、転移の準備は整った。
 ふと、たからは小さく言葉を洩らす。
「たからは、サムライエンパイアの出身ですが、長く住んでいた訳ではありません」
 けれど、と少女はわずかに声を震わせた。
「たからのふるさとであることは、間違いありません」

 ――どうか、あの世界をすくって下さい。

 猟兵達を見る雪と色硝子の少女は、ヒーローを願う幼子のようだった。


遅咲
 こんにちは、遅咲です。
 オープニングをご覧頂きありがとうございます。

●注意事項
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

●成功条件
 鬼百足の殲滅。

 10日までの完結を目指す為、プレイングをお預かり次第なるべく早く執筆予定です。
 そのため少人数受付となります。
 皆さんのプレイング楽しみにしています、よろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『鬼百足』

POW   :    懊悩の苦鳴
【激しい苦鳴】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    蟲尾
【百足の尾】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    火炎鎖
【自身が繰り出した炎】が命中した対象を爆破し、更に互いを【炎が変化した溶岩色の鎖】で繋ぐ。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グラナト・ラガルティハ
嗅覚が鈍いのなら匂いについては気にしなくていいが他の感覚が鋭敏だったら厄介だからな慎重に行かねばならんか…。

炎の攻撃に備えて【火炎耐性】を。
【高速詠唱】でUC【柘榴焔】を発動(39個やの焔)【破魔】を付与し【属性攻撃】炎で威力を上げ26の焔をぶつける。
残りは周囲に待機し距離を詰められた場合に使用。

炎の神鞭で【破魔】【属性攻撃】炎を使用し攻撃し【恐怖を与える】のち神銃に【属性攻撃】炎と【破魔】を乗せ至近距離で発砲。

妖怪なら破魔は効くと思うのだが。

敵攻撃は【戦闘知識】で対応。

アドリブ連携歓迎。


ヴェル・ラルフ
僕も、サムライエンパイアが好きだ。
出身でも何でもないけど、…大事な友達の、故郷だから。


SPD
音に鈍い…その特性を利用したい。夜闇に乗じて、[目立た]ずに樹上に潜伏、敵の位置を探る。

敵の位置を捕捉したら、そのまま頭上から【日輪葬送】
敵のUCによる反撃への対応として、敵には「僕が樹から飛び降りてくる」錯視を引き起こす。実際は樹上から攻撃するよ。

一撃で仕留められなかった場合、または気づかれた場合、素直に早業勝負
[オーラ防御]はするけど、多少の反撃は[激痛耐性]で耐えて【明けの鈴】【暮れの鈴】の二対のナイフで応戦


──こんな雑魚に係ってる暇はないんだ。親友の、故郷のためだからね。

★アドリブ・連携歓迎



 闇を這う鬼百足の群れは、纏った炎で草花咲く地面を照らす。ヒトであった頃の名残りなのか、どれもこれも上半身を覆う着物は女物だった。
 彼女達の聴覚は鈍く、己が炎だけがこの夜闇で頼れる存在なのかもしれない。獲物を待ち伏せている彼女達よりもはやく群れを捉えたのは、獲物となる筈だったふたつの焔。
 鬼百足の眼前、樹上から飛び降りてくるのは漆黒の炎渦。黄昏の瞳に惹かれるように、鬼女は百足の尾を一斉に振りかざす。けれど肉を穿つどころか、漆黒に触れた感触すら感じられない。それもその筈――彼は飛び降りてなどいないのだから。
「不思議そうだね」
 茜色の髪を揺らして、樹上に潜んだままのヴェル・ラルフはくすりと笑んだ。少年のユーベルコード『日輪葬送』の黒炎は、あたかもそこに“在る”かのように錯視を引き起こす。
「手早く済ませようか」
 無数の鮮緑の光芒が、ヴェルの頭上からひかりを放つ。どこか儚くも神々しいそれが木々の隙間から異形へと降り注げば、次々に百足の胴を刺し貫く。
 単眼の般若に似た顔からはわからないが、噴き出る血飛沫と身体をくねらせ悶える姿からダメージが窺える。
 ゆうやけこやけの少年は、この世界がすきだった。出身でもなんでもないけれど――大事な友達の、故郷だから。
 群れが光芒による串刺しで動きを止めたと同時、ボウ、と柘榴色に艶めく焔が何処からともなく浮かびあがった。てらてらと照る焔の数は二十を超え、鬼女達の身体を一斉に燃やす。木々に紛れていた壮年の男が姿を現し、静かに呟く。
「妖怪なら、これは尚更効くだろう」
 グラナト・ラガルティハは鋭い金の双眸で射抜くように鬼百足を見据えた。破魔の力を宿した神の焔は災禍を祓う為に、力強く赤々と燃え盛る。火炎と戦を司る一柱の神は、呻く敵から怒りの感情を読み取った。
「その程度か――生温い火だな」
 鬼女が火炎の鎖を放とうとも、蠍の尾の如き焔を宿した鞭が、怒りの感情ごと鎖を軽くいなす。いかなる神話生物すら殺す神銃から飛ぶ燃える弾丸が、鬼女の眉間を撃ち抜いた。
 豊穣や愛を司り、常に持て囃される兄弟達と違い、戦の時だけ己を担ぎ上げる人間達に良い印象を持っていない。
 けれどグラナトは、好印象を持っていないからといって、ひとつの世界が災禍によって滅ぶことを見過ごす神ではなかった。
 他の感覚が鋭敏だった場合を想定し、慎重かつ素早い攻勢に出た二人の火焔の威力は山火事のように鬼の群れを燃やし尽くす。
「──こんな雑魚に係ってる暇はないんだ。親友の、故郷のためだからね」
 夜明けと日暮れの名を持つ二刀を手に、黄昏の少年が残りの一体めがけて闇に降る。火蠍の神は少年を援護するように、再び銃の引き金をひいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

萬・バンジ
※アドリブ連携オール歓迎

ボク、炎嫌いなんですわ。
炎使う敵はもーっと嫌い。
やから邪魔して、鼻明かしてやりましょね。

鬼百足に気取られんようタイミング《見切》って木の上に潜伏。
ユーベルコード『天上天下』発動。
喚ぶは雲、降らすは「麻痺」属性の「雨」。
鈍い聴覚は雨音で更に鈍く。人の匂いも流れて視界だって狭まる、炎なんて言わずもがな。
麻痺がどれだけ効くかは知らんけど、足止めに使えりゃ十分ですわ。

ボクは雨降らすのに忙しいんで、追撃は精霊の「サガラ」に頼みます。
雨に紛れて水の《全力魔法》。行っといで。


三条・姿見
SPD/※アドリブ、連携可

徳川幕府軍は作戦の要だ。
敵を排除し、彼らを必ず守り抜く

状況開始後【迷彩】【忍び足】にて気配を殺し、
暗闇に目が慣れるまで周辺状況の【情報収集】を行っておく。
…だが、何もせず隠れてばかりも性に合わない。
【地形の利用】で一帯に鋼糸を張って罠とする(罠使い)
月の明かりも届かない深い場所などが有効だろう

【面頬】を確かめ(火炎耐性)、会敵次第戦闘に入る。
尾による攻撃は厄介だが…懐に入れば、あるいは。
【撃剣】を放ち牽制。【残像】で尾の一撃を避け抜刀、追撃する。
投擲の際は表皮を狙う。楔代わりに打ち、脱皮を妨げたい

複数の敵は纏めて罠へと誘い込む。
【カレイドスコープ】を止めの一手としよう



 仲間の異変に気がついた鬼百足達が、めらめらと妖を焼くあかりの方角へ進行しようとした時。
 己が炎以外は月明かりすら届かぬ深い闇の中、長い蟲の胴に連なる脚がナニカに触れる。ぴん、と張りつめられた鋼糸は鋭利な刃と同じであり、黒々とした無数の脚を絡め取っては千切っていく。
 突如動きを封じられた鬼女達の真上、ざわめく木々の音に紛れたささやきは萬・バンジの独り言。
「ボク、炎嫌いなんですわ。炎使う敵はもーっと嫌い」
 ――やから邪魔して、鼻明かしてやりましょね。
 黒い雲が暗夜の山を覆い、ふいにぽつりと鬼女の角に落ちる雫一粒。途端、ざぁざぁ大きな音と共に一帯に大雨が降り注いだ。
 何気ない仕草で杖を振るバンジの喚んだ『雨』は、敵の感覚異常を引き起こす。百足の脚や鬼の腕が痙攣を始めたかと思えば、全身を麻痺させた妖の群れは次々にその場で崩れ落ちていく。
 鈍い聴覚は雨音で更に鈍く、人の匂いは流れ、視界も狭まる――炎なんて言わずもがな。
 鬼女の存在を唯一明確にしていた火はあっという間に消え失せる。バンジが何処に隠れているかも把握しきれぬというのに、それでもがむしゃらに炎鎖を樹上へ放とうとした一匹の腕に、ずぶりと刺さる黒塗りの手裏剣。
「させるか」
 草木に埋もれた三条・姿見はカチリと面頬を確かめ直し、再び手裏剣を放つと同時に夜を疾駆。此方へ接近する青年の姿に反応し、百足は辛うじて動かせる尾を振り上げる。
 ずぁん、と草葉が踊る。しかし僅かに遠いその場に男の姿はなく、般若の単眼に黒い双眸が間近に映る。抜刀したしろがねのひかりが一瞬煌いて、うつくしい斬撃と共に血飛沫が舞う。
 一匹を仕留めると、流れるように次の一匹の胴めがけて手裏剣を投擲。楔代わりに突き刺さった刃によって、脱皮による麻痺からの回復は望めないだろう。
「おおきに、お兄さん」
 度の無いレンズ越し、へらりと笑みを溢してバンジは姿見に向かってひらひらと手をあげた。自身の降らす雨の効果を満足げに眺めながら
「思った以上に効いとるみたいやなぁ……んじゃ、ボクはもっと降らさなあかんから――サガラ、行っといで」
 青い翼を羽ばたかせ、小鳥を模した精霊は相棒の指示に従い妖の群れへと急降下。雨に紛れた水の飛礫は、まるで無数の弾丸のよう。鬼女達の全身を蜂の巣にして、そのいのちを速やかに終わらせる。
 追撃の手は止まらない。本体が鏡たる青年が、我が身に宿した術を練る。
 ずらり、宙に浮かんだ漆黒の手裏剣の群れ。号令をかけるように本物を鬼女達へ投げた瞬間、複製の刃達も一斉に標的へ突き刺さる。
「徳川幕府軍は作戦の要だ――彼らを、必ず守り抜く」
「うんうん、敵に情けは無用やさかい。どんどん行こか」
 寡黙ながら誠実な言葉を紡ぐヤドリガミに、みどりの瞳をゆるくして、エルフがへらりと応じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クロト・ラトキエ
すくってと、請われるなら。
えぇ、えぇ。そのオーダー、承りました。

異形へと変じても半身に羅刹の名残を残す様は、
幽世での眠りを覚まされ引き摺り出された証のようで。
…この戦を糸引くオブリビオンの在り様を示すようで。
いっそ哀れではあるけれど。
その飢餓の懊悩は、生者を踏み躙る免罪符にはなり得ませんから。
僕はいつも通り、還すだけ。

見切りが叶えばいいですが…
難しいならば。
トリニティ・エンハンス使用、水の魔力で防御力強化。
苦鳴の中を一気に突っ切り肉薄。
極細の鋼糸を巻いて引き、喉を潰すを狙い。
或いは手脚を絡げて自由を奪うなど、一瞬でも隙を作り。
味方の接敵と一撃へと繋げたく。

大丈夫。
だって彼らは、ヒーローですから


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
聴覚が鈍い、か
ならば『地形の利用』の知識と経験を元に成るべく音を立てぬ様木々の影を縫い移動
『暗視』と『視力』…瞳には自信があるからな
明るく見える場所かつ『聞き耳』にて炎が爆ぜる音を頼りに瞳を凝らし敵の位置を探ろう
物音が近くなれば『聞き耳』を立て状況の把握と警戒は怠らぬ様にしつつ木の影に

一体のみ且つ至近に居る場合は目立たぬ様闇に紛れ【穢れの影】で拘束後背後からソードブレイカーを振るい『暗殺』を
複数体の場合は一番近い敵に【穢れの影】後『怪力』を乗せたメイスで『なぎ払い』つつ敵を倒て行けたら幸いだ
又攻撃を受けた場合は『武器・盾受け』で防御後『カウンター』を
…上手く気付かれぬ様殲滅出来れば良いが、な



 揺れていた焔の群れが、またひとつ消えて逝く。己が炎を頼りに仲間達の行方を知ろうと動いた鬼百足達のすぐ傍、彼女達を全て還す手筈を整えた男が二人。
 ずるりずるりと這う集団の後方、一匹が忽然と姿を消しても気付く者はいない。闇に紛れた黒い影がぬらりと鬼女を絡めとると、素早く黒剣を振るったのはザッフィーロ・アドラツィオーネ。
 足元から湧きでる影の正体は、彼の身に数百年溜め込まれた人々の罪と穢れ。木々に身を隠した男が敵を見据えれば、何を指示するまでもなく穢れは音を殺して妖を捕らえる。
「(瞳には自信があるからな)」
 この暗闇であろうと、銀の眸にははっきりと異形の群れが映っている。赤々と燃える炎など、見間違える筈もない。
 鬼百足の数が減っているのは、穢れの影が鬼女を捕らえていくだけが理由ではない。群れの異変に気付いて足を止めた一匹が、首を引っ掻きながら闇に消える。暗夜にうっすら光る細い鋼糸は鬼の頸をぎゅるり絞め、水滴を纏う蜘蛛の糸の如くうつくしい。クロト・ラトキエは、敵が呻き声をあげるよりも先に喉を潰し、いのちを削ぐ。
 彼の脳裏にグリモア猟兵が最後に伝えた言葉が過ぎる――『すくって』と、請われたならば。
「(えぇ、えぇ。そのオーダー、承りました)」
 妖と化しても半身に羅刹の名残を残す姿は、幽世での眠りを覚まされ引き摺り出された証のようで――この戦を糸引く、オブリビオンの在り様を示すようで。
 いっそ哀れではあるけれど、その飢餓の懊悩は、生者を踏み躙る免罪符にはなり得ない。男はただ、いつものように還すだけ。
 いよいよ数がまばらになれば、流石の鬼百足達もその異変を全員が認識する。ぎょろりと単眼の群れが周囲を見渡すのを確かめ、クロトは再び水の魔力を鋼糸に注ぎ込む。
 ふわり、夜風を纏うように姿を現した黒衣の男めがけて鬼女達が一斉に咆哮。苦しみを嘆くような鳴き声の中を突っ切って、いくつもの蟲の脚を纏めて絡めとっていくのは、影を操るもう一人の男に終焉を託すため。
「大丈夫」
 くすり、駆けるクロトはやわいかんばせに笑みを乗せる。

 ――だって彼らは、ヒーローですから。

 その場で転げて身動き取れぬ異形に迫る穢れの腕。人の業が羅刹だった者を捕らえれば、もがく鬼の手が炎鎖を飛ばす。しかしそれよりもはやく、ザッフィーロの手にしたメイスがしゃなりと鎖を伸ばした。
「多少力技かもしれないが、」
 鋼糸と穢れの影で動きを封じられた彼女達に、それ以上の抵抗など不可能で。ぶぁん、と尋常ならざる腕力で振り回されたそれは、蟲の胴を一気に薙ぎ払った。


 完全に焔を消滅させたのをしっかりと確かめた猟兵達は、いざ次の戦場へと向かう。
 これ以上、戦国の世に生きる人々の平穏を魔王などに奪わせない。

 ――ヒーローとは、そういうものだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月09日


挿絵イラスト