エンパイアウォー③~褌を締めて戦に臨め
●信州上田城
江戸から信州を抜けて関ケ原へと通じる中山道。現在、そこを徳川軍の別働隊2万人が進軍していた。本隊8万と関ケ原で合流する手はずになっている。
だが、中山道の要衝である『信州上田城』は、魔軍将の一人である軍神『上杉謙信』の軍勢により制圧されてしまっていた。進軍する徳川軍と、難攻不落の上田城で待ち受ける上杉軍。このままでは徳川軍の壊滅は必至である。
「というわけで、あっしらも、この戦で武勲を立てて信長様から褒美をいただくでやんす!」
「ついでに倒した武士から金目の物ももらうっす!」
「戦場近くの村を襲って火事場泥棒もいいでげすな!」
――上田城の近くの山岳地帯に潜みながら、ほっかむりをした怪しげな盗人集団のオブリビオンたちが悪だくみをしていた。
「「「そのためにも、武士たちが力を発揮できないよう、ふんどしをいただくっすよ!!!」」」
●グリモアベース
「皆様、すでにお聞き及びかとは思いますが、サムライエンパイアで織田信長の企みが明らかになりました。現在、徳川家光様率いる徳川軍が、織田信長の本拠地『魔空安土城』に向かって進軍しております」
集まった猟兵達に状況の説明をするのは、グリモア猟兵にして執事のヘルメスだ。
執事はいつものように感情の読めないポーカーフェイスで猟兵達に語りかける。
「徳川軍は、東海道を進む本隊8万と、中山道を進む別働隊2万に兵を分けて、『魔空安土城』のある島原を目指しておりますが、すでにいくつもの苦難が予知によって判明しています」
今回、ヘルメスが予知したのは、中山道を進む徳川軍の前に立ちはだかる、織田軍の魔軍将、軍神『上杉謙信』の軍勢に関するものだ。
「上杉謙信はすでに信濃上田城を占拠し、オブリビオンによる要塞として徳川軍を待ち構えております。このまま正面から激突した場合、一般人の侍からなる徳川軍は壊滅してしまうでしょう」
いかに武士とはいえ、猟兵ならぬ身でオブリビオンの軍勢に勝つのは難しい。ましてや敵は、かの軍神『上杉謙信』なのである。
「そこで皆様には、上田城の周囲の山岳地帯に身を潜めるオブリビオンを討伐して、敵軍の戦力を削っていただきたいのです」
上杉の軍勢を収容するには上田城では小さすぎる。そのため上田城の周囲の山岳地帯に城に収容しきれなかったオブリビオンの部隊が潜んでいるのだという。
このオブリビオン勢力を各個撃破していくことが上田城攻略に繋がるのだ。
「私が予知しましたオブリビオン部隊は、手ぬぐいを頭にかぶって風呂敷を背中に担いだ盗人たちです。彼らの潜んでいる場所は判明いたしましたので、奇襲をかけて殲滅してきていただけますか」
涼しい顔で、場にそぐわない敵の名前を出すヘルメス。だが、ヘルメスの言葉は猟兵たちの聞き間違いではなかった。
「ええ、皆様が怪訝に思われるのもごもっともです。どうやら、この盗人集団は上杉軍の戦に便乗し、火事場泥棒をしようと企んでいるようなのです」
いつの世も戦場には略奪が付き物ということだろうか。それを未然に防ぐのも、猟兵の大事な役割であろう。
「あ、なお、敵は武士が戦で力を発揮できないようにと、ふんどし……猟兵の皆様の場合は下着ですかね。それを盗んできますので、ご注意くださいませ。大事な戦にふんどしの紐を締めてかかれなければ一大事です。徳川軍が戦に全力で挑めるようにするためにも、なんとしてもこの盗人たちを撃破してきてくださいませ」
そう言うと、ヘルメスは山岳地帯へと猟兵たちを転送するのだった。
高天原御雷
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
オープニングを御覧いただきまして、どうもありがとうございます。高天原御雷です。
今回は「エンパイアウォー」の③信州上田城の戦い(上杉謙信)となります。期日までに戦力を0にできれば、徳川軍への被害をなくすことができます。なお、余剰成功分は上杉謙信との決戦時の戦力を減らすことに繋がりますので、ぜひご参加下さい。
本シナリオは一章のみの構成(集団戦)になっています。
敵は山岳地帯に潜む『名もなき盗人集団』です。
敵が潜んでいる場所は予知によって目星が付いていますが、山岳地帯での行動に有効と判断できることや、奇襲に関する工夫があると、判定が有利になります。
なお、盗人たちはUCの追加効果として下着を盗んできます。盗まれたくない方は【盗みNG】の記載をお願いします。NGの記載がない場合は命に換えても盗んできますので、ご注意いただければと思います。
それでは、皆様のプレイング、楽しみにしております。
第1章 集団戦
『名もなき盗人集団』
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POW : これでもくらいな!
【盗んだ縄や紐状のものまたはパンツなど】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD : これにて失礼!
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ : ここはおいらに任せておくんな!
【なけなしの頭髪】が命中した対象を爆破し、更に互いを【今にも千切れそうな髪の毛】で繋ぐ。
イラスト:まっくろくろな
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
信州上田城。急峻な山岳と千曲川の急流という天然の要害に守られた堅牢な城塞であるその城は、いま、上杉謙信が率いるオブリビオンの軍勢に占領され、その拠点となっていた。
山岳地帯にある城のため収容兵数が少ないという欠点を持つものの、その城は遠くから眺めても分かるほどに禍々しい気を放っている。
だが、今回の猟兵たちの任務は上田城ではない。
上田城に収容しきれず山岳地帯に展開されているオブリビオンの部隊を各個撃破し、来たるべき上田城攻めを有利にすること。それが今回の任務であった。
猟兵たちが倒すべきオブリビオンの部隊。それは――。
栗花落・澪
可哀想な敵(早々に失礼)
【空中戦、空中浮遊】で木の上に潜む
なるべく傾斜地帯の高所を位置取れば
低い位置に潜む敵を見渡しやすいかなって
敵が周囲を警戒してるなら
【高速詠唱】から放つ風の遠距離魔法で
逆方向の草木を揺らす事で警戒をそちらに向けさせることで隙を作り
足音を立てず飛行で急接近
万一気づかれた時のために【オーラ防御】しながらも
【催眠歌唱】を奏でながら【指定UCの範囲攻撃】発動
【破魔の祈り】は光だからね
周囲の動植物にはあまり害が無いのが強み
空に逃げるなら飛んで追いかける
下着盗むなんて許せないんだよ
相手が女性だったらどうするのへんt…
わあぁ僕のぱんつ返してぇ!(ぴいぃ!/うさちゃんマークの男下着)
禍沼・黒絵
SPD判定の行動
アドリブや他猟兵との共闘歓迎
一人称:クロエ
●心情
下着を盗んでいくとは、女の敵なの。
そんな悪党は根絶やしにするよ。
●行動
山岳地帯に近づいたら、視力で敵を見つけ、目立たない・迷彩を駆使して
敵に悟られない様に近付き、音を立てない様に気を付けながら
先制攻撃で奇襲を仕掛けるね。
ライオンライドを使用して戦うの。
クロエは範囲攻撃で複数の敵を纏めて攻撃し
弱っている敵には2回攻撃で確実に止めを刺すね。
敵の攻撃は見切りで避けるよう努め
避けきれない時は盾受けで防御。
敵が空中を蹴ってジャンプしたら
クロエも空中戦を駆使して、空中で応戦するね。
「下着を盗む変態さんには、天誅なの」
ミケ・ナーハ
豊満な胸の谷間と、太ももがまぶしい
露出度の高い、くノ一装束姿です♪
キュッとした形の良いお尻がちらっと見え隠れ♪
「大事な戦いなので、とっておきを履いてきました♪」
私の下着を独り占めしたくなるよう
【誘惑】して敵の連携を乱します♪
挑発的にお尻を振ったりも♪
『超忍者覚醒』し、敵の動きを【見切り】ます。
山で足場が悪いですが【念動力】で
空中に浮いたりします。
豊満な胸の谷間から出した、手裏剣で戦います。
【毒使い】なので、動きが鈍り意識を失う
毒が塗ってある毒の【属性攻撃】です。
「きゃぁっ!?」
下着を盗まれたら、恥ずかしさで真っ赤になりつつ
【盗み攻撃】で取り返します♪
私の下着は、ほとんど紐のようなTバックです♪
●盗人退治の美少女たち(一部除く)
上田城からほど近い山岳地帯の森の中。グリモア猟兵の予知によって明らかになったオブリビオン部隊の拠点はこの先にある。
その場所に、いま三人の猟兵たちが集まっていた。
「下着を盗んでいくとは、女の敵なの」
姫カットにした黒いロングヘアを風になびかせながら呟いたのは、ゴスロリドレスを着て黒いクマのぬいぐるみを持った10歳の少女、禍沼・黒絵(災禍の輩・f19241)である。物憂げな表情から発せられた感情の籠もっていない声だけに、かえって聞くものに恐怖を与える言葉であった。
「ええ、忍装束を着ているのに下着を盗むなどという狼藉、忍の風上にもおけません」
黒絵の声に答えるのは、くノ一装束を身にまとった美女、ミケ・ナーハ(にゃんにゃんシーフ・f08989)である。くノ一装束からはミケの健康的な太ももが大胆に露出しており、形の良いお尻までもがちらりと見え隠れしていた。開いた胸元からは、その谷間がたわわな存在を主張している。だが、衣装から覗く猫耳と尻尾が不機嫌そうに動いていることから、彼女がかなりご立腹であることが伺えた。
「ほんっと、下着を盗むなんて許せないんだよ」
天使と見紛うばかりの美しい純白の羽根を背中に生やしたオラトリオの栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が、可哀想な存在に向けるような冷ややかな声で二人に同意する。一見すると美少女な澪だが、れっきとした男性だ。男性として、今回の敵の行為には許しがたいものがあった。
そう。三人が言っているように、今回の敵オブリビオンの集団は、織田と徳川の戦に紛れて悪事を働こうとしている盗人集団。それも男女構わず下着を盗んでくるという変態たちなのだ。
「許せない悪党は根絶やしにするよ」
「ええ、心を盗むシーフとしては、心無い盗人たちは許すわけにはいきません」
「うん、絶対にやっつけようね!」
女の敵を前にして一致団結する美少女三人(誤植)。その瞳には絶対零度の冷たさを宿していた。
「一応、自己紹介しておきますね。私は、くノ一のミケ・ナーハです。くノ一として、邪な盗人忍者たちに天誅を下しに来ました」
「クロエはクロエなの。同じく下着を盗む変態さんには天誅なの」
「僕は栗花落澪。同じく、悪い人たちは許さないよ。あ、性別は男だから間違えないでね」
三人が自己紹介したところで、ミケが首を傾げる。
「あら、澪さん、先日のビーチでのゲリラライブでは、旅一座の音楽担当と言って女性用の水着を……」
「わーっ、あれは人違い、人違いだからーっ!」
ミケの言葉を、澪は真っ赤になった顔で必至に否定する。
「あら、お二人はお知り合いなのかしら?」
その騒がしい様子を、クマのぬいぐるみ『クローム』を抱えながら無表情に見つめるクロエだった。
●盗人の拠点
「あれが敵の拠点みたいなの」
三人は鬱蒼とした森の茂みに身を隠して、オブリビオンの拠点の様子を探っていた。
「情報通り、ここに盗人たちが集まっているようですね」
「けど、あくまで野営用だから、特に防衛設備とかはないみたいだね」
ざっとみたところ、山岳地帯の森の中の広場に盗人たちが野営拠点を築いているようだ。粗雑なボロ布をテントのように張って雨露をしのげる程度にしたもの。防衛能力は皆無といっていいだろう。
それもそのはず。この盗人たちは戦が始まったら近隣の村々を襲って略奪をおこなおうとしているのだ。よもや猟兵による奇襲があるなどとは思っていない彼らが、拠点の防備に力を入れているはずもなかった。
「クロエたちを甘く見たこと、後悔させてあげるの」
「ええ、忍たるもの、こんな堂々と野営をするなど言語道断です」
「それじゃ、作戦通りに」
三人は頷き合うと、それぞれの持ち場へと散っていたのだった。
●奇襲
盗人の拠点では、盗人たちが手に持った『獲物』を眺めながら、にやついた笑みを浮かべて会話をしていた。
「いやー、昨日の徳川軍の斥候部隊の侍ども、大したことなかったっすねー」
「あっしらが、ふんどしを奪ったら、あっさりに逃げていったでやんすな」
「これであの侍どもは、今回の戦では下半身に力が入らず、役立たずでげすね」
そう、盗人たちは、男物のふんどしを片手に勝利を祝っていたのである。なにこの酷い絵。
だが、いまこのときも、三人の猟兵たちは奇襲の準備に余念がなかった。
「うわぁ、なにこの会話。最悪……」
盗人たちの頭上。木の枝の上に身を潜めるのは、自身の翼で音もなく木々の間を飛び回れる澪である。
澪は眼下で繰り広げられる酷い会話に、思わず飛び出したい衝動に駆られるが――。
「っと、あとの二人の準備が整うまで我慢我慢……」
逸る気持ちをぐっと堪える。
「相手に気付かれないように気をつけて近づくね」
黒絵は、なるべく周囲の景色に溶け込んで目立たないように盗人たちに近づいていく。
鬱蒼と茂った森の中は、足元に枯れ枝が落ちていたり、ぬかるんで滑りやすくなっていたり、服が茂みの枝に絡まってしまいそうになったりと、相手に気付かれずに忍び寄るのは難しい地形である。
ましてや、特注のゴスロリドレスを着た黒絵である。その動きにくさは相当なもののはずだ。
だが、その難しい行為を黒絵は涼しい顔でこなしていた。茂みの中を歩く際も、枝を踏む音や葉擦れの音一つ立てずに進んでいく。黒絵のその黒いゴスロリドレスが薄暗い森での迷彩として役立ったということもあるのだろう。
「このあたりで大丈夫かしら」
黒絵は盗人たちの近くの茂みまで全く気付かれることなく到着することに成功したのだった。
さて、くノ一装束を着て、一番忍ぶのが上手そうなミケであったが……実はあまり忍ぶのは得意ではなかった。
「臨兵闘者皆陣列在前!」
忍ぶよりも忍術で戦うことを好むミケは、九字を切って印を結ぶと【超忍者覚醒(スーパーニンジャカクセイ)】を発動し、ゲームやアニメなどでおなじみの『不思議な術で戦う忍者』に覚醒した。
彼女が胸の谷間から手裏剣を取り出して構えると、猟兵たちの戦闘準備は整った。
●「くノ一」対「盗人」
唐突に、盗人たちの近くの茂みがガサガサと音を立てて揺れる。
「なんでやんすかっ」
「敵襲っすか!?」
盗人たちが慌ててそちらに警戒を向けるが……。
「ふふん、ひっかかったね。それは僕の風の魔法だよっ」
「今ですっ、本当の忍の力、見せてあげます!」
澪の魔法に気を取られて盗人たちが向いたのとは反対方向からミケが姿を表す。彼女は忍術による念の力で空中に浮かびながら、両手に持った手裏剣を盗人たちに向かって投擲した。
鋭い風切り音を上げながら飛来する手裏剣。
「おっと、そんなのには当たらないでげすよっ!」
その手裏剣を盗人たちは回避する。腐ってもオブリビオン。その素早さは人外の域に達していた。
だが、ミケは余裕の表情を崩さない。
「ええ、それは想定の範囲内です」
空を切って飛び去った手裏剣がミケの念動力――いや、忍術による念によって、空中でその軌跡を変える。
大きく弧を描いて戻ってきた手裏剣が盗人の一人の背後から襲いかかり、その背中に突き立った。
「な、なんでげすって!?」
「だ、大丈夫っすか、盗人C!」
突如、背中に走った激痛に盗人Cが顔を歪めるが、手裏剣の効果はそれだけではなかった。
「その手裏剣には、動きが鈍って意識を失う毒を塗ってあります。もうあなたは動けませんよ。残念でしたね、せっかくの大事な戦いなので、とっておきを履いてきたんですけど♪」
意識の朦朧とする盗人Cの前でミケは挑発的にお尻を振る。短いくノ一装束の裾がふわりと舞い上がるが、際どいところで見えそうで見えない。――いや、これもミケがギリギリを見切ることで可能にしている、くノ一の誘惑忍術なのだ。
「くっ、そこまで言われたら、この生命に換えても下履きを盗んでやるでげす!」
「や、やめるでやんす、盗人C! その状態でその技を使ったら、おめえさんの身体は……」
「止めないでくれでげす、盗人A、盗人B。あっしたちは、下履きを盗むために一生を費やした仲間でげす。骸の海に還っても、また再び相見えようっす!」
「「盗人Cーー!!」」
なんだか良くわからないやり取りをしたかと思うと、盗人Cの身体に目に見えないオーラが漲る。
「ま、まさか、それは究極忍術、邪身滅殺法!? ま、まさか使い手がいたなんて……!」
盗人Cを見て驚愕の表情を浮かべるミケに、目にも止まらぬ神速で盗人Cが接近し――ミケと交錯する。
ミケと盗人Cの一瞬の攻防を理解できたものは、本人たち以外にはこの場にはいなかった。
二人がすれ違う一瞬。ミケの下着を盗もうとする盗人Cの手と、それを見切って防ごうとするミケの手が何十合と打ち合わされ、激しい攻防を繰り広げたのだ。
そして、ミケの背後に駆け抜けた盗人Cが高々と戦利品を掲げる。
――それは、眩しく輝くミケの下着。ほとんど紐のようなTバッグであった。
「きゃあっ!?」
下半身に頼りなさを感じ、自分が攻防に負けたことにようやく気付いたミケが、恥ずかしさから頬を赤らめて可愛らしい悲鳴を上げる。
「か、返して下さいっ!」
履いてない状態の忍び装束を両手で必死に抑えながら、ミケは盗みの術で盗人Cから下着を取り返すが……。
「無駄でやんすよ、嬢ちゃん……。この勝負、盗人Cの勝ち逃げでやんす」
盗人Aの言葉と同時。下着を高々と掲げた格好のまま真っ白になっていた盗人Cの姿が骸の海に還っていく。
「盗人C、お前の男気、たしかに見届けたっす!」
なお、盗人たちが感涙にむせび泣いている間に、ミケは茂みの中で下着を履き直したのだった。
●空中での戦い
「って、なんだか感動的な雰囲気を演出してるとこ悪いけど、女性の下着を盗むような悪人はゆるさないよっ!」
上空から聞こえてくる声に、盗人Aと盗人Bが上を見上げる。
「なんでやんすかっ!?」
「羽根の生えた美少女っすっ!」
「だーれーがー、美少女だーっ! 僕は男だよっ!」
盗人たちが見上げた先に飛んでいたのは、純白の翼を広げて広場の上空に滞空している澪だった。
「ほんとは奇襲で倒す予定だったけど、ミケさんをあのままにはしておけないからね。僕が相手だよ!」
全身に護りのオーラを展開しながら、澪はその天上を震わせる美声で歌を奏でる。それは森の静寂に静かに響き渡り、自然と調和する柔らかい歌声。
「そんな歌なんかで、何をするつもりっすか?」
「う、うーん、なんだか眠くなってきたでやんす……」
「って、盗人Aー! こんな時に寝るんじゃないっすーっ!」
瞼が重くなって、立ちながら船を漕ぎ出した盗人Aを見て、澪が蠱惑的な笑みを浮かべる。
「ふふ、この歌を聞くと眠くなってくるんだ。あんまり手荒なことはしたくないから、おとなしく眠ってくれると嬉しいな」
「えーと、念の為に聞くっすが……あっしらが寝たらどうするつもりっすか……?」
「んー? それはもちろん、もう二度と下着を盗もうなんて思えないような目に遭ってもらって……それから……」
「そ、それから……?」
「もちろん、骸の海に還ってもらうよ♪」
にっこりと笑った澪。その顔を見てしまった盗人Bは、眠りかけている盗人Aのことを心の底から羨ましく思った。澪の目は全く笑っておらず、盗人たちを見下ろす瞳は生ゴミでも見るかのような眼差しだったのだから。
「こ、こうなったら、せめて道連れに下着だけでも奪ってやるっす!」
「そうはいかないよっ! 全ての者に光りあれっ!」
澪は【Fiat lux(フィーアト・ルクス)】を放つ。それは澪の全身から放たれる魔を浄化する光。周囲を無差別に攻撃する能力であるが、あくまで浄化の光であるため、味方や森の動植物には危害を加えなくて済むという利点がある。
「わちちちちっす!」
澪に向かってこようとしていた盗人Bは、澪の放った光を受けて、頭の残り少ない髪の毛を浄化されながら上空にジャンプして逃れる。
「うわっ、なに、あのジャンプ!」
澪が驚くのも無理はなかった。
身軽な盗人Bは、空中を蹴ることによって、まるで足場があるかのようにどんどん上空へと逃げていく。数十回以上もの跳躍が可能な盗人Bなら、このまま逃走を図ることもありえる状況だ。
「待って! 逃さないよっ!」
空中ジャンプする盗人を逃すまいと、澪が全力の飛行で後を追う。森の広場の上空で追いかけっこをする澪と盗人B。
「あっしを捕まえられるものなら捕まえてみるっすね!」
「ええいっ、すばしっこいなあ、もう!」
澪が追いつきそうになると、盗人Bは空中を蹴り、方向を換えて回避する。翼による飛翔をしている澪にとって、風の流れを無視して飛ぶ相手を捕まえるのは至難の業だった。
「けど、これを繰り返していれば、いつかはジャンプできなくなるはずっ」
「そうっすね、そろそろ、あっしも勝負をかける時が来たようっす!」
ジャンプ回数の限界が来た盗人Bが、澪に向かって覚悟の決まった眼差しを向け、まっすぐに跳躍してくる。
「これが最後の勝負だね」
その意図を悟った澪も盗人Bに向かって飛翔する。
上昇する澪。空中を蹴った勢いと重力の力で地上に向かって勢いよく落下する盗人B。
二人がすれ違い、澪が空中で静止する。盗人Bが勢いよく地上に着地する。
戦いが始まる前と同じように、盗人Bが空中の澪を見上げる構図。
「……どうやら、勝負ありっすね」
だが、初めとは大きく違う部分があった。
それは、盗人Bの手に握られた、可愛らしいうさちゃんマークの書かれた男性用下着。
「わあぁ僕のぱんつ返してぇ!」
戦場に、澪の悲鳴が響き渡るのだった――。
●美少女と野獣
「ライオンさん、お願いなの」
「な、なんっすか、このでっかい獅子はっ……う、うわああっす!」
澪の下着を盗むことに成功して勝利の余韻に浸っていた盗人Bに襲いかかったのは、黒絵をその背に乗せた巨大なライオンであった。
獅子はその鋭い牙と爪で盗人Bに噛みつき、斬り裂くと、骸の海へと還す。
「はい、アナタ。下着は取り返したの」
「あ、ありがとう。黒絵さん」
黒絵に差し出された下着を受け取って、澪は感謝の言葉を口にする。
「それにしても、ズボンを履いたままで脱がすなんて、不思議ね」
澪のズボンはそのままに下着だけ奪い去った謎テクニックに、黒絵は首をこてんと横にして疑問の言葉を口にする。
「とりあえず、残った一人はクロエが倒しておくから、早く履いてくるといいの」
「う、うん、なるべく早く戻るから、ちょっとお願いっ」
ライオンに乗ったまま、黒絵は残る盗人、盗人Aに向き直った。
澪の歌で催眠状態になっていた盗人Aは、いつの間にか回復していたようだ。仲間をやられた怒りからか、黒絵に憎しみの籠もった眼差しを向けてくる。
「よくも盗人Bまでやってくれたでやんすね! あいつには春画を貸したままだったのに、一緒に骸の海に消えてしまったじゃないでやんすか!」
「春画……?」
言葉の意味が分からず、首をひねる黒絵である。
「春画の仇討ちでやんす! 子供といえども容赦しないでやんすよっ!」
10歳のゴスロリ少女に襲いかかろうとしている、怪しい格好をしたハゲオヤジという、大変危険な絵がそこに展開されていた。
だが、春画の仇討ちに燃える盗人Aにとっては、相手が10歳の少女だろうと関係がなかった。
「幼女ものの春画の代わりに、おまえさんの下履きをいただくでやんすっ」
いや、もっと危険な状況だった!
「クロエのはあげないよ。おとなしく天誅を受けて」
迫りくる盗人Aの動きを見切り、ライオンに指示して避けていく黒絵。盗人Aの腕が黒絵のスカートに届きそうになると、ライオンが素早くバックステップし、その腕を躱す。
「くっ、獅子に乗られてると、手が届きにくいでやんすね! ならば、空中からでやんす!」
盗人Aが空中を蹴って、上空から黒絵に迫る。
ライオンに跨ったまま、黒絵はそれを真正面から睨み据える。
「こちらも空中戦で応戦するよ」
黒絵の指示で、ライオンが森の木に向かってジャンプする。そして、その木の幹を蹴って盗人Aに向かって空を駆ける。
「な、なんでやんすっ!?」
ライオンの突進を、なんとか空中ジャンプによって回避する盗人Aだが、そこで安心はできなかった。
突進を躱されたライオンが、その先にあった木の幹を足場に再び跳躍してきたのだ。
「くっ、でやんすっ!」
盗人Aが空中を蹴って飛ぶのと同じように、黒絵が跨るライオンも、木の幹を蹴って空中戦を仕掛けているのだ。木々の密集している森の中という条件下においては、両者は全く同じ条件での戦いといえた。
――いや。ライオンが何度でも跳躍できるのに対して、盗人の跳躍回数には限度がある。それが勝負を決する鍵となった。
「そろそろ飛べなくなってきた頃かしら?」
黒絵の指摘通り、盗人Aはもはや空中を蹴ることができない。そこに迫る獅子の牙。
「ここまででやんすか――ならばせめて!」
空中でライオンが盗人Aを斬り裂き、骸の海に還す。
「これでお仕舞いね……あら?」
戦いが終わりライオンを消した黒絵の頭上から、ひらひらと布が舞い落ちてきて。
――それが自分の下着だと気付いた黒絵は、真っ赤になって茂みに飛び込んだのだった。
大成功
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大総・統
フハハハ!我が名は世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大総統!!
軍神、恐るるに足らず!
混沌の神である私の前には塵芥も同義!!
ふむ…敵は火事場泥棒という奴か!よかろう!!
ココは、神として私が奴らの気持ちを慮って、火の出る臨場感を与えようではないか!!
大総統は、火事場泥棒を企む名もなき盗人集団に忖度して、何を思ったのか【冥王鏖殺黒琉天破】にて、敵の潜む山に火を放ち奇襲します。ついでに、なけなしの頭髪も燃やす勢いです。
因みに、「神」なので衣は纏っても下着など履いてません。
フハハハ!お前たちの祈る髪(神)は死んだ!!
山火事になるといけないので、UC解除して延焼分も消火してアフターケアしておきます。
●神降臨
「フハハハ! ハァッハッハッハッハ!! ……ゲホゲホ」
「な、何奴だべさ!?」
木々に囲まれた盗人たちの拠点に、突如響き渡る高笑い。なお、無駄に声がかっこいい。
「我が名は世界征服を企む秘密結社オリュンポスが大総統!!」
その声の主は、秘密結社オリュンポスの大総統を名乗る神、大総・統(秘密結社オリュンポス大総統・f16446)である。なお、彼の名前の読み方は「おおふさ・おさむ」だ。ややこしいので注意しよう。
さて、重度の中二病である彼がこの場に来た理由であるが……。
「軍神、恐るるに足らず! 混沌の神である私の前には塵芥も同義!!」
どうやら、軍神『上杉謙信』と戦えると思って、グリモア猟兵の説明も聞かずにやって来てしまったらしい。
統さん、今回は謙信の部下の盗人集団の殲滅任務でしてね。
「ふむ……。敵は火事場泥棒というやつか! よかろう!! ココは、神として私が奴らの気持ちを慮って、火の出る臨場感を与えようではないか!!」
あ、いや、火事場泥棒は火事場泥棒なんですが、そういう臨場感は別に……。
「我が放つ冥府の裁きは今放たれた!! 私の獄炎はただの飛び道具ではないぞ?」
「うわあああっ、おらたちのアジトが火の海だべーっ!」
話も聞かずに、盗人たちの拠点に【冥王鏖殺黒琉天破】で冥府の炎を放つ統。冥府の炎は統の意志に従って、盗人たち(主にその残り少ない頭髪)を燃やし尽くしていく。
「うわああっ、おらのなけなしの毛根がーっ!」
「フハハハ! お前たちの祈る髪――神は死んだ!」
盗人の髪を情け容赦なく毛根まで死滅させた統は、ドヤ顔で言い放った。
「お、おらたちの最後の希望である髪の仇、取らせてもらうずらっ!」
激高した盗人は、なけなしの頭髪を統に放って爆破しようとするが……。
「……なん……だべさ……!? おらの髪が……一本もねえ……だと……」
すでに頭髪を一本も残らず燃やし尽くされてしまっていた盗人には抵抗する手段がなかった。
「くっ、なら、せめて下着だけでも……」
「ククク、私は神だぞ? 下着などという不要なものは纏っておらん」
「な、なんだべさーっ!?」
こうして、絶望に崩折れた盗人は、冥府の炎に包まれて骸の海に還ったのだった。
なお、山火事になるといけないので、冥府の炎はきちんと統によって消されました。
成功
🔵🔵🔴
アマニータ・ビロサ
ふむふむ、ここは敢えて下着を盗ませましょう。子実体だから恥ずかしくありません。
といっても菌糸で編み上げた下着ですが。子実体(萌擬人化済)達にこの下着を身に付けさせて盗賊集団の前に躍り出ましょう。
罠使い、毒使い、防御無視攻撃により、盗ませた下着から菌糸が盗賊に苗床寄生しその身を蝕むでしょう。さらに、呪殺弾な胞子をばら蒔きマヒ攻撃を追加しましょうか。
私は純白☆天使(ピュアホワイトエンジェル)、すべてを白く染め上げる者。
けっして、そう、けっして、殺戮☆天使(デストロイヤーエンジェル)などではないのです、いいね?
喰べられることこそ子実体キノ娘の本懐
『いーとみぃ♪』
盗み攻撃と生命力吸収で契りましょ♡
●呪いの胞子
「い、いったいなにが起こってるっぺ!?」
猟兵による奇襲に騒然とする盗人集団。まさか自分たちの拠点が襲われるなどと思っていなかっただけに、その混乱は想像以上のものであった。
そこに、さらなる混沌の元凶が出現する。
純白のウェディングドレスを着た少女、アマニータ・ビロサ(殺戮☆天使・f21109)が盗人たちの前に現れたのだ。
だが彼女(?)は、見た目通りの存在ではなかった。本体は出身世界の山であり、彼女はその子実体なのである。
しかし盗人たちに、少女の正体を見抜くことなど出来るはずもない。
「お嬢ちゃん、迷子だっぺか?」
盗人の一人が、アマニータに声をかける。そして、目にも留まらぬ速さで彼女の下着を抜き取った。
「って、なんだっぺ、これ?!」
盗人が驚愕の声を上げるのも無理はなかった。
盗人が持つ、少女から奪った下着は――なんか、粘ついていた。
「これ、まるで納豆だっぺさ」
これも盗人が知るよしもないことだが、この下着は、アマニータの本体が子実体に履かせた、菌糸で編み上げた下着なのだった。さらには、菌糸に触れた者を苗床として寄生するという罠付きである。
「う、うわあああっだっぺ」
菌糸による下着に侵食されていき、全身が苗床となった盗人が恐怖のあまり奇声を上げてのたうち回る。
だが、アマニータによる罠はこれで終わりではなかった。相手を呪い殺す効果のある胞子をばら撒き、対象を麻痺させながら、じわじわと呪いで体力を奪い取って、苗床にしていくのだ。
寄生された盗人は、すでに全身が麻痺し、声すら出せなくなって倒れている。
呪いによって命が尽きるまで、こうして苗床にされるのだろう。
「いーとみぃ♪」
子実体の可愛らしい声だけがその場に響くのだった。
なお、この周囲一帯は、飛散した胞子によって汚染され、人の近寄れない『魔の森』と呼ばれることになるのであるが、それはまた別の話である。
苦戦
🔵🔴🔴
オル・クブナス
本軍との大一番に向けて余計な存在は出来るだけ除いておきたいところ。
この黒い身体を活かして暗い物陰より援護射撃をさせていただきましょう。
盗みに関しては…私は全く問題ありません。私の種族はブラックタール。下着は擬態能力によって創り出してしまえばいいのです。
つまり下着は身体の一部。下着を盗んだと思い込み油断したところでユーベルコードで蛇に変化させ捕縛してやりましょう。
チトセ・シロガネ
山岳地帯を【地形の利用・戦闘知識】を使って優位な位置取りを心がけつつ、【ダッシュ・ジャンプ】で駆け抜け……
アウチ!頭髪ボム!ボクに攻撃を仕掛けるとはなかなかネ。
……ワット?下半身に違和感を感じるネ。
うーん、なるほどなるほど、アンダースタンドネ。
ユー、その手のヒモ、ボクの下着を手にしてしまったんだネ。
オッケーオッケー、お互いをつないでいるなら好都合ヨ。
今からユーを【ダッシュ・早業】で接近して
【怪力】込みの【グラップル】で掴むヨ。
そしてこれ(【破邪光芒】込みのフォースセイバー)でその頭髪をじっくりスキンヘッドにするヨ。
もちろん【鎧無視攻撃】もサービスするネ。自らの行いを悔いるといいヨ。
●光と影
信州上田城の山林の中を一筋の光が駆け抜けていた。巨木が立ち並び、木々の下には深い茂みが生えているその森を、4つの光の刃が邪魔なものを切り捨てながら疾駆する。進行の邪魔になる太い枝は切り飛ばされ、下草は刈り取られ、森の中に一直線の道ができていく。
「事前情報によれば、盗人集団の拠点はこの先のはずネ」
煌めく光刃を振るうのは、特殊な駆体を手に入れたバーチャルキャラクターのチトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)である。先程から振るわれているのは彼女の四肢に装備されたフォトンをエネルギー源とする光の剣であった。
そして、森を一気に駆け抜けた彼女が大きく跳躍し、盗人たちの拠点となっている広場に着地する。
「ヘイ! ユーたち、年貢の収め時ヨ!」
チトセの登場とほぼ同時。
盗人たちの拠点を囲む鬱蒼と茂った森の中、木々が陽光を遮ってできた深い影に溶け込んでいたかのように、真っ黒い人影が音もなくその姿を現した。
人影はシルクハットを被った紳士風の格好をしているが、その服の中身は漆黒の色。顔には目や鼻、口すらも存在しない。サムライエンパイアの住人たちがその姿を見たら、口を揃えて彼のことをこう呼ぶことだろう。――妖怪のっぺらぼう、と。
だが、もちろん、その人物は妖怪などではなく、れっきとした猟兵である。
彼は『殴られ屋』を名乗るブラックタールのオル・クブナス(殴られ屋・f00691)であった。ブラックタール特有の漆黒の肌と柔軟な身体を活かして、物陰に潜んで機会を伺っていたのである。
「本軍との大一番に向けて余計な存在は出来るだけ除いておきたいところ。この黒い身体を活かして暗い物陰より援護射撃をさせていただきましょう」
オルはスーツの内側から回転式拳銃を取り出すと、敵陣に飛び込んだ仲間を援護すべく撃鉄を起こした。
「突然、何者ずら?」
チトセの近くのボロ布製天幕から、盗人たちが姿を現しチトセに対して誰何の声を上げる。
「ここが拙者たちの聖地である下着の祭壇と知っての狼藉でござるか!」
「オウ……ちょっとそんな事実は知りたくなかったネ……」
盗人たちに衝撃的な事実を聞かされたチトセがげんなりとした表情を浮かべると。
「私も、できれば聞きたくなかった情報でございます」
森の中に潜んでいたオルも思わず拳銃を取り落しそうになる。
だが、盗人たちはその目に殺気を漲らせてチトセを睨みつけてきた。
「拙者たちの聖地である祭壇の場所を知られたからには、生かして帰すわけにはいかないでござるな! 者共、一斉にかかって、このおなごの下着も祭壇に供えるでござる!」
「ノー! ユーたちが勝手にバラしたのだと思うのだけどネ」
チトセの真っ当な文句に聞く耳を持たず、盗人たちの集団がチトセに襲いかかってくる。
「フーム、仕方ないネ。ボクもちょっと本気を出すことにするヨ」
チトセの駆体に備わっているフォトンセンスが敵の動きを直感的に予測させる。光子頭脳がその情報を整理。全身を巡るフォトンサーキットがチトセの身体を動かすと、エッジオブハートで形成された四肢の光刃が周囲の空間を一閃する。
チトセの一連の動きだけで、一気に四人の盗人が身体を切り裂かれて骸の海に還る。
「だが、まだ甘いずら!」
素早さには自信のある盗人たち。チトセの一撃を躱した一群が彼女の背後から襲いかかる。さすがのチトセも、この波状攻撃には対処できない。
――その瞬間、響き渡る六発の銃声。チトセに襲いかかる盗人たちが急所を撃ち抜かれて地に倒れ伏し、骸の海に消えていった。
「お嬢様、お怪我はございませんか?」
「ノン、助かったヨ」
盗人たちを撃ち抜いた拳銃に弾を再装填したオルが、チトセの背中を守るように立つ。
「残った盗人は、残り二人でございますね」
「イエス、なら、一人一殺ネ」
「承知いたしました」
チトセとオルは、それぞれ盗人に相対する。
●光の戦い
「おのれ、よくも同志たちをやってくれたでござるな! 」
「ユーも同じ目に遭わせてあげるヨ」
チトセが光り輝く刃を敵に向けた瞬間。
「ここは拙者に任せるでござるっ」
盗人がなけなしの頭髪を抜いて放つ。その行為には、さすがのチトセも相手が血迷ったとしか思えなかったが――フォトンセンスによる第六感が警告を発すると同時に回避行動に移った。
直後、チトセの直近で髪の毛が爆発し、その肌を焦がす。
「アウチ! 頭髪ボム!? ボクに攻撃を仕掛けるとはなかなかネ。けど、二度は通じないヨ」
「ククク、拙者の攻撃がそれだけだとでも思ったでござるか?」
「……ワット? 駆体の自己診断プログラムからのアラート? 下半身に違和感を感じるネ?」
チトセの反応を見た盗人が、にやりと笑みを浮かべる。その手にはチトセの下着が握られていた。
さらに、盗人の腕から伸びた髪の毛(今にも切れそう)が、盗人とチトセを繋いでいた。
「貴様の下着はいただいた! これも我らが祭壇に供えさせてもらうぞ!」
「……アンダースタンドネ。ユー、ボクの下着を手にしてしまったんだネ。オッケーオッケー。お互いを繋いでるなら好都合ヨ」
チトセの口から冷徹な響きを伴う声が漏れる。
彼女の体内に秘められた動力源フォトンハートが臨界を超えたエネルギーを放出し、フォトンサーキットを通してフォースセイバーであるヒメヅルストレートへと流れ込む。それは、緑色の刃の限界を超え虹色の輝きを放っている。
「お、お主、一体何をするつもりでござるか……」
「こうしてあげるヨ! 己が魂に宿る星光よ、一筋の希望となりて、悪意を断ち切れ! 【破邪光芒(アークスラッシャー)】!!」
盗人に向かって一気にダッシュして距離を詰めるチトセ。盗人はそこから逃れようとするが、お互いが髪の毛で繋がっていることを、はたと思い出した。
「しまった! 拙者のなけなしの髪の毛……それを引きちぎって逃げるなど、拙者にはできないでござる!」
「その髪の毛、一本残らず切り取ってスキンヘッドにしてあげるヨ!」
盗人の頭をアイアンクローで固定したチトセは、そのまま盗人の頭部に残された僅かな髪の毛たちを一本一本『処理』していく。
「ぬあああっ、拙者の髪一郎がっ! ああっ、髪二郎に三郎までっ! せ、拙者に残された数少ない子どもたちを斬り裂いていくとは、お主は鬼か!?」
「ユーは自らの行いを悔いるといいヨ!」
こうして、髪の毛を一本残らず切り取られた盗人は、絶望のあまり骸の海に還っていったのだった。
●影の戦い
「どうやら、あちらは勝負がついたようでございますね。私たちの方も決着をつけるといたしましょう」
オルは優雅な仕草で回転式拳銃を構え、盗人に向ける。
「おのれ、仲間たちの仇は取らせてもらうずら!」
拳銃という飛び道具を持っているオルに対して、盗人は素手である。一見するとオルの方が有利に見える戦いであったが――。
オルが拳銃を発射すると同時に盗人が空中飛び上がって銃弾を回避した。オブリビオンだけに、運動能力は常識を超えたものを持っているようだ。
「ですが、空中ならば避けることはできません」
再び響く銃声。
だが、盗人は空中を足場のように蹴ることで再度ジャンプし、その銃弾をも回避する。
発砲、回避。発砲、回避。発砲、回避。発砲、回避。
繰り返すこと4度。ついにオルの回転式拳銃が弾切れを起こした。
「いただくずらっ!」
オルに銃弾を装填させる余裕を与えず、一気に距離を詰める盗人。
そして、オルの漆黒の下着を盗み取ってしまった。
「私から下着を奪うとは、その腕、称賛いたしましょう」
「くくく、どうやら勝負はおらの勝ちずらね」
盗人は黒い下着を手に勝ち誇った笑みを浮かべる。
だが、オルは平然とした態度を崩さない。
「ええ、ソレが本当に下着なら、ですがね」
「どういう意味ずら?」
オルの言葉に首を傾げる盗人。
「こういう意味ですよ。絡みつき、そして力を奪いなさい、【混沌の毒蛇(ケイオス・ハイドラ)】!」
盗人が手にしていた漆黒の下着が形を変えていき、無数に分裂する巨大な毒蛇となる。
「な、なんずらか、こいつはっ!?」
毒蛇に噛まれながら、必死にもがく盗人だが、一度喰らいついた毒蛇を引き剥がすことはできない。毒蛇にどんどん生命力を吸収されていく。
「あなたが下着だと思っていたものは、私の身体の一部を変化させ擬態させたもの。そして、私は身体の一部を毒蛇に変えて攻撃することができるのですよ」
「で、では、わざと下着を盗ませたずらかっ!?」
「ええ、全ては私の想定通りというわけです」
オルが指を鳴らすと、毒蛇は盗人の生命力を吸い付くし、骸の海に還すのだった。
「どうやら、ブラックタールという種族は、この世界ではあまり知られていないようですね」
オルの呟きが風に消えていった。
●エピローグ
猟兵たちの活躍により、信州上田城の盗人集団は壊滅した。
これで、侍たちがふんどしを盗まれたり、戦の最中に火事場泥棒をされるといった被害は出なくなることだろう。
信州上田城を制圧している軍神・上杉謙信との戦いも間近に迫っている。
城の上空に立ち込める不吉な暗雲を見上げる猟兵たちの胸に去来するものは如何に――。
各々の決意を胸に秘め、今は一度グリモアベースへと凱旋する猟兵たちであった。
なお、せっかくのシリアス感が台無しになるので、各自、エピローグのシーンでは下着を盗まれたことは忘れておくようにしましょう。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴