エンパイアウォー①~武力なき戦いを護れ
●武力なき戦い
「そらそらそらそら! 休んでる暇なんてないよぉ!」
ここは上野、山中の宿。
女将から丁稚に至るまで、慌ただしい雰囲気に包まれていた。
理由はいわんや、徳川の進軍が始まったのだ。
なにせ上野を通るだけで2万の軍勢。毎晩毎夜とはいくまいが、稀にぐらいはしっかりとした屋根の下で眠りたい。そんな思いを汲み取り、道中の宿全てを徳川が抑えていた。
ここもそんな宿の一つ。周囲を竹林に囲まれながらも宿のでかさは見上げるほど。
大量の客を受け入れるには宿場町一の宿であった。そのためか、従業員は皆、己も戦争に向かうかのごとく気合いが入っている。
「女将ぃ! 蔵のもん全部片したよ!」
「あいよ! それじゃ寝具一式来る前に塵も残さず掃除しな!」
「屋根があるだけでも違うだなんて言わせないようにね!」
「女将ぃ! 保存食は作り始めていいのかい!」
「あいよ! あればあるだけ良いんだ、蓄えなんて気にせず作んな!」
「他んとこのも応援に呼んである。同じ宿場町同士、仲良くするんだよ!」
「女将ぃ! 見て見てー、竹で槍作った!」
「あいよ! それでお侍様と一緒に……って、遊んでんじゃないよ!」
騒がしくも力強く。侍たちに英気を養ってほしいと、その一心で働く彼ら。
少しも落ち度はない様に。普段よりもずっと気を使って。
よもや、それらが無駄なことになろうとは露程も思わず。
隕石が彼らを蹂躙するまで、侍たちを迎える準備を進めていた。
●隕石の脅威
「というわけで、皆には隕石を迎撃して貰いたいんだ」
竹林に囲まれた宿を映したタブレットを掲げる、テイル・スネークス。
頭と尻尾、4つの目で真剣に猟兵達を見つめていた。
「そう、戦争でね。風魔小太郎ってのがいるんだけど、こいつの忍法がずるいんだよ」
「配下のオブリビオンを隕石の弾丸に変えてに変えてシュート! さらにババーン!」
突然の跳躍からの華麗な着地。そして体を広げる。
どうやら隕石が着弾したら爆発するといいたいらしい。
「って感じでね? しかも自爆した奴はすぐ風魔のとこに出てきてまた隕石になんの!」
「ずっるいよねぇ……」
何もしなければ無限に自爆特攻が繰り返されるというわけだ。
その強力さに、テイルなどは想像するだけでげんなりしている。
「あ、でもね。着弾の前に迎撃すればオブリビオンに戻るんだ」
「そのオブリビオンを倒さないと結局被害は出るけど……」
「どのみち、宿の人には迎撃すら無理なわけだし?」
もちろん、猟兵達が出張るしかない。
隕石の落下地点は宿場町全体でおよそ10。
中でも件の宿にはその半分ほどが迫る。
「多分、迎撃にもこの宿の上が一番適してるかな」
「宿の周りだけじゃなくて、宿場町は竹がいたるところに生えててね」
「竹より高い建物は、この宿だけなんだよ」
空から飛来する隕石の迎撃には視界が良好な方が良いだろう。
もちろん、別の場所からの迎撃でも不利と言うことはない。
山を宿場町からさらに登ってもいいし、何なら空を飛んでもいい。
「ま、迎撃後のオブリビオンをメインに狩ってもいいしね」
「なんにせよ、このままじゃ宿の人の準備は無駄になるし、侍たちも宿で休めなきゃ疲れ果てて進軍どころじゃなくなっちゃう。君たちだけが頼りさ」
グッとサムズアップを決めるテイル。
猟兵達の反応を見て、笑顔で召喚の準備を終わらせた。
「っていうことで、いってらっしゃい、猟兵(イェーガー)!」
黒い蛇
お世話になります。黒い蛇と申します。
戦争と言うことで、猟兵の皆様には隕石を迎撃して頂きます。
迎撃のみでも、その後のオブリビオン退治のみでも歓迎いたします。
舞台は山の中にある宿場町。その中でも一番大きい宿となります。
竹がたくさん生えてたりしますが、ふんわりと状況を捉えて頂ければ十分です。
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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それでは、プレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『異国のカンフーにゃんこ』
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POW : にゃんこ流一本釣りにゃ
レベル×1tまでの対象の【衣服(棒の先に引っ掛けることで)】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : これがにゃんの超速戦闘術にゃ
自身の【装備する鈴】が輝く間、【鈴の音が一切聞こえない無駄のない体術で】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : にゃんにとってはこの世の万物が武器となるのにゃ
自身からレベルm半径内の無機物を【使い捨ての自身の装備武器】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
イラスト:ひろしお
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鈴木・志乃
喧嘩売ってんのかてめぇ
あたしの目の前で
人の苦労をぶち壊すとは
行こうかユミト
全員骸の海に返してやろう
UC精霊のユミトで着弾前に体当たり攻撃
そのまま敵を蹂躙してやれ
とにかくかき乱すんだ
乱れた所を確実に狙いにいく!!
敵攻撃を【第六感】で【見切り】
光の鎖で【早業武器受け】からの【カウンターなぎ払い】
【オーラ防御】常時発動
すまねぇな住民の皆さん
破壊しても良いって器物あったら事前に許可はもらっておく
【念動力】で砂利なんかと一緒に巻き上げて
敵にぶつけてさらに戦線を混乱させるぞ
その目に刺さるだろうなぁ、石と風が!
隕石はついに目視ができる距離まで迫っていた。
情報は宿場町全体にいきわたり、先ほどまでとはまた違った喧噪に包まれている。
しかしそこに混乱はない。何故なら、目視より先に隕石が迫っていることを知らされていたからだ。そして、町を護る者たちがいることも。
「女将ぃ! 本当に隕石が!!」
「ああ、最初猟兵さんのお話を聞いた時にゃ冗談かと思ったもんだけどねぇ」
「よぉし、みんな避難だ! 猟兵さん、後は任せたよ!」
任せて下さいと、町の外へと向かう住民に手を振るのは一人の女。オラトリオの聖者である鈴木・志乃(ブラック・f12101)であった。
志乃は住民たちの姿が見えなくなると空へ目を向ける。
住民に向けていた目から一転。その目には怒りが込められていた。
「……喧嘩売ってんのかてめぇ」
思わず荒い口調で隕石へと呟く。人の苦労を何とも思わずぶち壊す輩。それも、よりにもよって己の目の前で見せつけられることになろうとは。
忍法をかけた風魔小太郎はこの場にはいない。それでも言わずにはいられなかった。
そんな主の想いを汲み取ってか、隣にいた天馬精霊ユミトも力強く鳴いて志乃へと頭を寄せる。頼もしさと愛おしさを感じる仕草に、志乃は淡金色の鬣を撫でると、ひと呼吸。
「行こうかユミト」
「全員骸の海に返してやろう」
心は熱く、頭は冷静に。
住民たちの苦労を壊させはしない。
「駆けろ、希望の流れ星」
志乃が祈りを捧げると、ユミトが音速を優に超える速度で空を駆ける。
只人ではその姿を捉えることも難しく、淡金色が尾を引くさまは正に流れ星。
華麗で力強い輝きは、隕石をも打ち砕くという希望を住民たちに見せつけた。
「にゃにゃー!?」
打ち砕かれた隕石――異国のカンフーにゃんこが数体、地上へと落ちていく。
突然の迎撃による隕石化解除。さらにはユミトが追撃を行い、落ち着かせる暇など与えない。そんな混乱した状況に陥りつつも、にゃんこたちは何とか着地を試みる。
しかし、そうは問屋が卸さない。着地をする直前、一陣の風がにゃんこたちへと襲い掛かる。ただの風とは思うなかれ、砂利や割れた瀬戸物が混じった凶悪な風である。鋭利に割れた瀬戸物はにゃんこたちを切り刻む。
「すまねぇな、住民の皆さん」
「瀬戸物、ありがたく使わせて貰うよ!」
志乃は事前に、瀬戸物を破壊する許可を得ていた。割れた瀬戸物は元々壊れかけていたもので、お侍様たちが泊まるまでには直せないからと、宿の女将が快く渡してくれたものであった。さらには、邪魔にならないようにと避難までしてくれている。
それは、律儀な志乃への信用と感謝の証しであった。
隕石が降るという大珍事。それでも猟兵ならなんとかしてくれると信じているのだ。
だからこそ、それを裏切るわけにはいかない。
「にゃにゃにゃ! にゃん達をにゃめるなー!!」
そしてそれは、にゃんこたちも同様。
自爆特攻などという役割を与えられてもなお、風魔小太郎を裏切ることはない。
装備していた鈴が輝き、超速戦闘術を可能とするユーベルコードを発動させる。
このまま志乃を倒し、風魔小太郎の元へと戻り隕石となれば寿命など関係ない。
志乃のみを狙い、圧倒的な手数で殺到してくる。しかし――。
「そっちこそ、あたしを舐めんな!」
光の鎖が志乃の周囲を舞い踊る。
淡く光るその鎖ににゃんこの攻撃は阻まれ、一撃たりとも志乃へは届いていない。
所詮は混乱した中での苦し紛れ。志乃の実力をもってすれば防ぐことなど容易い。
そして、無理に動いたにゃんこたちはさらに傷が深まる。既に満身創痍の身。己の攻撃を受け止めた鎖が動き出すことに気付くも、反応することはできず……。
一匹残らず、光の鎖に薙ぎ払われた。
大成功
🔵🔵🔵
コトト・スターチス
辻ヒーラーとして、宿のみなさんはぜったいにまもりますっ!
敵はだいすきなねこ(?)ですが、オブリビオンならようしゃはしませんっ!
『ねこへんしん』して、隕石状態の敵の迎撃を中心に動きますにゃー!
(猫耳尻尾と天使の翼が生える)
近づいてくる隕石、特に宿に直撃しそうなものを【見切り】、優先してメイスでがつんと叩いて【吹き飛ばし】ますにゃーっ!
もとに戻った敵が衝撃の余波で気絶して、少しでも侵攻までの時間稼ぎをしたいですにゃ
「宿の皆さんのお・も・て・な・し精神を無駄にはさせませんにゃー!」
余裕があれば地上の敵を狙ったり、怪我した方を回復させたりしますにゃーっ
花凪・陽
アドリブ連携歓迎
忍法ってそんな自由なんだ……
って感心してる場合じゃないね
お宿の人達を守るためにも頑張らないと
現場に着いたら宿の上で待機するね
そして隕石が飛来したなら【属性攻撃】を乗せた【ウィザード・ミサイル】で迎撃していくよ!
他の皆の【援護射撃】をする事も意識しつつ、見えるものからしっかり撃ち落としたいな
隕石がオブリビオンに戻ったなら変わらず宿の上から【ウィザード・ミサイル】を撃っていこうかな
敵の身のこなしは軽そうだけど、【だまし討ち】で上手く武器を攻撃していけば隙をつけないかなぁ
相手が武器に変えられそうな無機物も狙えたら撃っていくよ
サムライエンパイアの皆が頑張ってるんだもの
私も頑張る!
藤野・いろは
世話になった世界、危機に動かぬわけにはいきませんね
平坦な場所での迎撃ではありません
ならばこそ"地形の利用"をして逆手に取るまで
屋根を走り回り1つで多くの隕石を見つけ、太刀を振るい止まることなく次の斬撃へ
相手からはまるで2度同時に斬撃が放たれるこれぞ"2回攻撃"というもの
"破魔"を帯びた"鎧無視攻撃"は例え隕石であろうと大きな傷を与えましょう
"パフォーマンス"の如く派手に立ち回り、時には"なぎ払い"
それは総て、オブリビオンに"恐怖を与える"だけでなく、住人に"勇気"を与えるため、猟兵という名の希望をここに示しましょう
襲撃後のオブリビオンには"先の先"、既にあなたの攻撃は"見切り"は終わっている
●隕石を打ち返せ
隕石の迫る宿の上。二人の猟兵が空を見上げていた。
猫耳のヘッドセットを付けたコトト・スターチス(バーチャルネット辻ヒーラー・f04869)と、自前の狐耳を揺らす花凪・陽(春告け狐・f11916)である。
「本当に隕石が飛来してくるなんて……」
「それも、あの隕石ってぼくのだいすきなねこみたいです。オブリビオンですけど」
見上げる先には複数の隕石。元々がねこだったなどとは思えぬほど武骨で、ごつごつとしたそれは空を裂きながら宿へと迫っていた。もはや衝突も時間の問題だろう。
「忍法ってそんな自由なんだ……って感心してる場合じゃないね」
「お宿の人達を守るためにも頑張らないと」
「はい! ぼくも辻ヒーラーとして、宿のみなさんはぜったいにまもりますっ!」
お互いにガッツポーズをとる二人。気合いは十分。やる気を分け合い迎撃へと向かう。
初めに動き出したのはコトトであった。助走をつけると、屋根の上から飛び出す。
そのまま自由落下していくコトト。一見すればただの飛び降り。
されど、コトトには笑みが浮かんでいた。
「へんしんっ!」
コトトの背中が光り輝く。否、正確には背中に刻まれた聖痕が輝いているのだ。
光は収束し純白の翼へと変わる。そして、いつの間にか猫耳尻尾が生えていた。
この神聖で可愛い姿こそ『ねこへんしん』によるもの。すなわち――。
「聖天使猫モードですにゃー!」
翼をはためかせ、コトトは隕石へと向かって急上昇。宿に向かい一直線へと迫る隕石を瞬時に見切ったのだ。手にしたメイスを力強く握り、振り被る。
その姿は何とも愛らしく、隕石を迎え撃つには不釣り合いにも見える。
しかし聖天使猫モードを可愛いだけと侮るなかれ、秘めた力は隕石をも砕きうる。
「宿の皆さんのお・も・て・な・し精神を無駄にはさせませんにゃー!」
がつんと重厚な音が響き渡る。コトトのメイスは見事に隕石へと激突。隕石はにゃんこへと姿を変えて、人気のない方へと飛んで行く。
「しばらく気絶しててくださいにゃ!」
「おお、すごい一撃だね。吹き飛ばして気絶するのも良さそう」
目を回しながら飛んでいくにゃんこを見て感心する陽。彼女の頭上では、複数の隕石が一斉にやってきていた。元に戻ったにゃんこと並列に処理するのは難しい数。故にこそ、コトトのように気絶させ、吹き飛ばすのは有効に感じた。
「よし、じゃあ私も迎撃していくよ!」
しかし、コトトのメイスでは手数が足りない。
ならばと、陽は百を超える炎の矢を放つ。炎属性を強化した矢は煌々と燃え盛り、流星のように隕石へと殺到。視界に収まる全てをカバーし、的確に隕石へと命中していく。
炎の矢に晒された隕石は堪らず、元のにゃんこへと戻っていく。そのまま落下していくにゃんこたち。しかし陽はそれを許さず、矢が爆ぜる衝撃で少しでも落下を遅らせる。
「コトトさん、元に戻ったオブリビオンもお願い!」
「おまかせですにゃー!」
別の隕石を吹き飛ばしていたコトトが元に戻ったにゃんこたちへと向かっていく。当然にゃんこも迎撃しようとするが、それも炎の矢に阻まれる。抵抗虚しく、にゃんこたちは次々と吹き飛ばされていった。
「これで宿に当たる隕石は防げたかな。あとは……」
「吹き飛ばしたオブリビオンを倒すだけですにゃ!」
「だね!」
視界にあるすべての隕石を片付けた二人。
ハイタッチを交わし、次なる目標へ向け動き出した。
●VS異国のカンフーにゃんこ
宿場町の一角、屋根の上を駆ける藤野・いろは(天舞万紅・f01372)の姿があった。
視線の先には今にも落ちそうな隕石。他の猟兵達の手から逃れるように飛来したもの。
しかし、いろはは慌てることなく跳躍。果敢に隕石へと向かっていく。
一拍を置いて交差するいろはと隕石。するとどうだ、次の瞬間には隕石がにゃんこへと変じたではないか。元に戻ったにゃんこも、驚いたような顔でいろはを見る。あのようなか細い刀で隕石を止めたのかと。
「やはり、忍法で変じている以上、破魔の力は有効なようですね」
そう、いろはは単に刀で切ったのではない。
隕石の脆い部分を瞬時に見切り、破魔を帯びた一撃を放ったのだ。
それも、交差する一瞬の間に二度もである。
いろはの言葉でその事実に思い至ったにゃんこはいろはへの警戒を強める。
対するいろはは刀を正面に受けの構え。もう空に隕石がないのは確認していた。
「にゃにゃにゃ! これでもくらうにゃ!!」
先に動いたのはにゃんこ。手に持つ棍を低く構え、一足でいろはへと迫る。
初撃で刀を持つ手を弾き、二撃目でいろはの袖に棍を引っ掛けた。
「む……!」
袖を巻き込み棍棒を跳ね上げる。いろはの体が軽々持ち上がり、その勢いで遥か上空に飛ばされる。にゃんこはすかさず追撃。己も跳躍し、落ちてくるいろはへと棍を振る。
「なるほど、大した瞬発力。ですが――無駄です」
焦ることなく棍の一撃を受け流すいろは。そのまま空中で幾度かの攻防を繰り返すも、既にいろはには一撃も当たることはなく、竹に囲まれた地上へと降り立った。
「先ほどの一撃で既にあなたの攻撃の"見切り"は終わっている」
初撃はあえて受けたのだと気づくにゃんこ。悔し気にいろはを見つめるが、その背後にあり得ぬものを見つけてしまう。
「にゃにゃにゃ! お、お前たち、なぜそこで寝てるのにゃ!?」
「これは……なるほど」
それはコトトと陽が迎撃したにゃんこたちであった。重なり合うように目を回していたにゃんこたちは、仲間の大声で目を覚ますも、その足取りは若干ふらついていた。だからだろう、上空から迫る影への対応が遅れたのは。
「がつんとお見舞いですにゃー!」
「にゃにゃにゃ!?」
隕石の如く飛来し、一匹のにゃんこを骸の海へ還したのはコトトであった。周囲にいるにゃんこが立ち直るのを見るとすぐさまその場を離脱し、いろはの元へ。するとメイスが光り、いろはの手を光が包み込む。先ほど攻撃を受けた際、傷を負っていたのだ。
「今日も一日一ヒールっ! もう痛くないですかにゃー?」
「ええ、お陰で万全です。……さて、来ますよ」
手を軽く振り調子を確かめる。そうして笑みをコトトに向けて完治をアピールすると、刀を強く握る。にゃんこたちは既に陣形を組み、猟兵達に殺気を向けていた。
「お前ちょっとにゃんたちとキャラ被ってるんだにゃ!」
「ふぇ!? そ、それは僕の台詞ですにゃー!」
俊敏な足取りで狙うはコトト。多方面からの棍による飽和攻撃を仕掛ける。
これにはさしものコトトも傷を負う覚悟で相対する。しかしこの場の猟兵はコトトだけではない。そして、この場にいなくとも、共に戦う猟兵がいる。
刀が背後の棍を弾く。炎の矢が左右から迫るにゃんこを貫く。
いろはと、宿の上に陣取る陽の援護であった。
竹林に視界を遮られてなお、陽の炎の矢は高精度を誇る。
「この矢は……ならば、上へ!」
「りょーかいですにゃー!」
いろはが陽の存在に気付き、援護の受けやすい上空へと誘導を試みる。その役目を引き受けるは当然、コトト。メイスに力を籠め、正面から迫る棍を掻い潜り、にゃんこをへと迫る。そのまま上に向かって腕を振り上げ、上空へと吹き飛ばす。
それを見たいろはが瞬時に跳躍。竹を蹴りどんどんと上へ登っていく。天辺まで行けば竹をしならせ、反動を合わせて大跳躍。打ち上げられたにゃんこの真上をとった。
「こにゃくそ! にゃんだって受けに回れば!」
炎の矢を警戒し防御の構えを取るにゃんこ。宿の方向は確認済み。このまま地上に着くまで持ちこたえれば、数の多いこちらの有利だ。
しかし、そんな算段をあざ笑うかのように、宿とは反対方向から炎の矢が迫る。
想定外の奇襲。にゃんこの武器は炎の矢によって砕かれてしまう。
ならばと首の鈴に手を伸ばすが、それすらも炎の矢が貫く。
「魔法の矢だもん。真っすぐに進むとは限らないよね」
「武器になりそうな鈴も壊したし、隙は十分かな?」
宿の上で、陽が愛らしい悪戯な笑みを浮かべる。
先程の一撃で位置が露呈していたからこその、矢を曲げる事によるだまし討ち。
武器を狙う精度を保ったままの制御は決して容易くはない。だが、サムライエンパイアの皆が頑張っているのだ。陽もそれに当てられ、普段以上の力を出していた。
対してその実力を半減させたにゃんこは、混乱した中でなお拳を構える。既に間合いの寸前まで近づいていたいろはは感心したように納刀。その眼差しをにゃんこへ向ける。
「武器を失ってなお、徒手空拳で挑みますか。その心意気やよし」
「ですが……あなたの一撃、太刀に映せぬ前に終わらせます」
決着は一瞬であった。いろはの『先の先』がにゃんこを両断。
にゃんこは最期の声を残すことすらできずに消えていく。
一瞬だけ目を閉じるいろは。竹の先端を足場に再び跳躍を行う。
するとまるでタイミングを計ったかのように、次々とにゃんこが空中へ打ち上げられていくではないか。
こうなっては、にゃんこの抵抗も虚しいばかり。
陽と連携し、いろはが同様の手でにゃんこを両断していく。そして――。
「この子で最後ですにゃー!」
最後のにゃんこと共にコトトが上空へと飛び上がる。
一際大きく打ち上げられたにゃんこは、炎の矢に武器を壊される。
そうして出来た隙を逃さぬと、上下を猟兵に挟まれ――骸の海へと還っていった。
●希望
「女将ぃ! 猟兵さんら、本当に全部の隕石を打ち返したぞ!」
「ああ、あたしも見てたさ。猟兵さんってのは凄まじいもんだねぇ」
宿場町からさらに山を登ると大きな岩がある。かつて噴火によって飛来したその岩は、近辺の信仰を集めていた。宿場町の住民は皆ここに避難し、様子を窺っていたのだ。
上空で隕石や化け猫相手に大立ち回りする猟兵達の姿はここからよく見えた。
空を駆ける淡金色の流れ星、愛らしく飛ぶ純白の翼。
赤く燃え無数に広がる炎の矢、ひらりと舞う黄枯茶色の髪。
その全てが頼もしく、彼らの目には希望に映った。
敵は隕石を降らすほどの恐ろしい相手。だが、彼女たちが、猟兵がいるならばと。
「さて! 猟兵さんらに見惚れてる場合じゃないよ!」
「こんだけ頑張ってもらったんだ!」
「宿の用意が間に合わなかったじゃすまないからね!」
女将が手を叩き激励すると、周囲の人々が笑顔で宿場町へと降りていく。
猟兵の戦いはひとたび終わり。彼らの戦いが再び始まる。
その勝敗は言う必要もないだろう。
猟兵達の見せた希望は、彼らの心に届いたのだから。
大成功
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