エンパイアウォー⑤~目覚めを報せる鳥
●地獄の沙汰も何とやら
グリモアベースの片隅で、淡い空色の髪を持つ青年が、猟兵達が訪れるのを待っていた。
青年――ルイは、猟兵達が訪れたのを視界に捉えると、軽く手を振った後に口を開く。
「おー、来たか。サムライエンパイアが今、戦争中なのは知っているな?」
サムライエンパイアを征服せんと、『第六天魔軍将』達が一大攻勢をかけてきたのは知っての通りだろう。
その国難に立ち向かうべく、徳川幕府は諸藩からの援軍も併せ幕府軍を十万招集。総力を挙げて織田信長を撃破すべく、動き出したところだ。
そして同時に、全国の商人から兵糧などの補給物資を購入しようとした……のだが。
兵糧をはじめとした補給物資の価格が青天井に高騰し、満足な量をそろえることが出来ないのだという。
――兵糧攻め、と誰かが呟いた。それにルイは頷く。
「そ。全く厭らしいやり方をするヤツも居るもんだ」
それは魔将軍の一人。大悪災『日野富子』の買い占めによるものだった。
腹が減っては戦は出来ぬ。このまま買占めが続いてしまっては、予定される規模の幕府軍を動員することが出来ない。
この買占めに対抗し、充分な補給物資を揃えるには。神君家康公が有事の為にと遺した『徳川埋蔵金』を使うしかない。
財に対抗するには、財なのだ。
……さて。ルイの手にはいつの間にか、『徳川埋蔵金の地図』が広げられていた。
「察しがついた奴もいるだろう。埋蔵金を手に入れてこい」
ルイはどストレートに伝える。
「だが、単に地図に示された場所に行くだけじゃ、埋蔵金は手に入らねぇぞ。神君家康公は盗掘を防ぐ為に、『謎』をかけて封じたからな」
つまり。謎を解かない限り、埋蔵金に手は届かないのだ。
「ま。謎については実際に見て、解いてもらった方が良いだろ。それに、金は眠るよりも、世に回るほうが本望だろうし……ッつーワケで、行ってこいよ」
そう言って。ルイは猟兵達を送り出すのだった。
●提示される謎
転移された先は、とある山奥に所在していた洞窟だった。普段は氷室として利用されているらしい。
この洞窟に、どうやら魔術的に隔離された隠し空間があるようだ。
薄闇の先へと進み、最奥の壁面を照らし出せば、何か文面が刻まれている事に気が付く。
其処には、以下の様な文面と記号の羅列が在った。
『目覚めを報せる鳥は、いろはうたの籠の中』
□□□□□□□□
一□□□□□□□
□三□□□□□□
□□□□□二□□
□□□□□□□□
■□■□■□■□
■□■□■■■□
『眠りから覚まさせたくば、呼べ』
最後の一文は、正解が解ったならば声に出せという事だろう。
それを解き明かすべく、思考遊戯が始まった。
雪月キリカ
はじめまして、もしくはまたお会いしました。雪月です。
謎かけシナリオ、サムライエンパイア版になります。
※このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
プレイングには、『謎かけの答え』
『その答えに至るまでの推理、行動』等を記載してくださいませ。
余裕がありましたら、『埋蔵金を発見した時どのような反応をするか』について、記載していただいても大丈夫です。
尚、今回のシナリオは正解者一人を大成功として採用する予定です。
同時に複数の正解者がいらっしゃった場合は、リプレイを書きやすい方を採用する形になります。
けれども、プレイングの相性が良いなと思った場合は、複数採用になるかもしれません。
第1章 冒険
『神君家康公の謎かけ』
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POW : 総当たりなど、力任せの方法で謎の答えを出して、埋蔵金を手に入れます。
SPD : 素早く謎の答えを導き出し、埋蔵金を手に入れます。
WIZ : 明晰な頭脳や、知性の閃きで、謎の答えを導き出して、埋蔵金を手に入れます。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
鬼灯原・孤檻
戦争の最中、徳川埋蔵金探しとは…しかし兵站もまた戦争。
誤れば多くの犠牲を生む、一刻を争う戦いであることは重々承知だ。
武力のみに頼らぬとは、此度の敵は一筋縄ではいかないのだな。
薄闇の洞窟の中、壁面を前に気を引き締めよう。
「…宝を隠す場所としては、まさに、といったものだな。
鳥………いろは歌の籠、か。
この記号は歌の文字数と合っていそうだが……い、ろ、は、に、ほ、へ、と……」
いろは歌を口ずさみながら、ひとつずつ記号をなぞる。
縦にあてはめ、数字に当たる字を覚える。
「…き……た…ひ、…ひたき… ヒタキ、か?」
瑠璃色の羽と、歌声が頭をよぎる。
見上げた空中には何かが映るだろうか。
<アドリブ歓迎>
●式
茅で包まれた氷塊が積まれる薄闇の中を、孤檻(刀振るう神・f18243)は一人、進んでいた。
「戦争の最中、徳川埋蔵金探しとは……しかし兵站もまた戦争」
一刻を争う戦いであるという事は、孤檻も重々承知している。
判断を誤れば、多くの犠牲を生んでしまう。『その時』になってから、『あの時』と思い返すのでは遅いのだ。
戦争、即ち武力という式になりがちではある。しかし、それ等を揃えるのには財力が必要であるという事を、敵は理解している。
「武力のみに頼らぬとは、此度の敵は一筋縄ではいかないのだな」
薄闇の中、孤檻は独り言ちて。
もしかすると。神君家康公は、物資の価格が高騰した時の事を考え『徳川埋蔵金』を残したのかもしれない。
――いつか徳川の財力を上回る財力を持つモノが現れた時、翻弄されぬ様にと。
その様な事を考えていたら、最奥の壁面の前に辿り着いていた。
孤檻は気を引き締め、壁面の問いに向かい合う。
●解
一見すれば、其処は唯の行き止まり。壁面の問いも、過去に悪戯で書かれたものだろうと判断されたならば、埋蔵金が隠されているなどと誰が思うだろうか。
「……宝を隠す場所としては、まさに、といったものだな。鳥……いろは歌の籠、か。この記号は歌の文字数と合っていそうだが……い、ろ、は、に、ほ、へ、と……」
いろは歌を口ずさみながら、ひとつずつ記号をなぞる孤檻は、静かに思惟する。
記号と歌を横に当てはめるとキリが悪い。となれば、縦だ。そして、漢数字に当たる文字を記憶する。
「……き……た……ひ、……ひたき……」
――鶲。
孤檻の脳裏を過ったのは、瑠璃色の羽を持つ小さな鳥と、その歌声。
「ヒタキ、か?」
それを呟いたその瞬間だった。壁面が青く輝き、それは数多の瑠璃鶲となって洞窟の出口へと飛び去って行った。術式は解かれたのだ。
壁があった筈の向こうを覗き込めば。其処には堆く積まれる千両箱の山があった。
何気なく見上げた中空からは、青い羽根がひらりと舞い落ちてきて。
孤檻はその羽根を、掌で受け止めた。
大成功
🔵🔵🔵