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エンパイアウォー②~大波間の武闘

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 八月。奥羽諸藩を幾つかの現象が同時多発的に襲った。
 一つは、奥羽の各地にあった屍が肩から水晶を生やし、再び動き出したこと。
 一つは、それら“水晶屍人”とも言うべき存在が、大群で砦や町、城を攻撃したこと。
 そして最後の一つは、その攻撃が南、江戸へ向かいながらのものだということだった。


 波濤。
 奥羽から南下していく“水晶屍人”の集団の様子は、その一語だった。
 押し寄せ、陽光にきらめき、列となって、行く。
 数百から数千の数で形成されている大群の中、しかし動きの違う者が一人いた。
「ンー。邪魔だナ……」
 裾の短い騎乗服に身を包んだ少女は、遠くを見るために手を翳しながらそう言うと、
「――伸びロ、“如意棒”」
 直後。波の合間から、射出されるように少女が飛び出た。
 波の上空。その位置で振り回すのは赤く、長い棒、“如意棒”だ。
「孫・金華、参ル……!」
 叫びが空に響いた直後、波の前方に建っていた砦の正門に目がけて少女、金華が突っ込んだ。
「――!!」
 木と鉄で出来た門が砕け、散っていった。
「……!」
 空いた大穴に向かって、波が押し寄せて行く。
 打撃の反動で再度跳ね上がった金華が、それを見ながら叫ぶ。
「――進メ! 何もかもヲ押し潰シ、江戸へ!」

 ●
 猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、戦争ですわっ」
 ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界は、サムライエンパイア。そこの奥羽地方で、大量の“水晶屍人”が発生し、奥羽諸藩が危機に陥っていますの……!」
 苦々しく言葉を吐き出した自分に気付いたのか、はっとし、表情を硬くする。
「この“水晶屍人”は、“魔軍将”の一人である陰陽師“安倍晴明”が屍に術をかけて造り出した、肩から奇妙な水晶を生やした動く屍ですわ」
 ただ、と言葉を繋げる。
「この“水晶屍人”、戦闘能力自体は高くはありませんけれど、“水晶屍人”に噛まれた人間も新たな“水晶屍人”となる為、雪だるま式に数が増え続けていますの……」
 その数。
「数百……、否、もはや数千と、そう言える数ですわ」
 眉をしかめ、苦々しい様子で頭を振る。
「この“水晶屍人”の軍勢は、“安倍晴明”配下のオブリビオンが指揮しており、各地の砦や町、城を落としながら江戸に向かって南下していますわ。
 このまま“水晶屍人”の軍勢が江戸に迫れば、徳川幕府軍は全軍の2割以上の軍勢を江戸の防衛の為に残さなければなりませんの。
 そうなれば織田信長との決戦に十分な軍勢を差し向ける事ができなってしまいますわ……」
 ならばどうするか。
「敵指揮官の撃破……。皆様にはこれをお願いしますの。
 幸い“水晶屍人”には知性が無く、指揮官のオブリビオンさえ撃破できれば奥羽諸藩の武士達でも駆除は可能ですので、皆さんが独力で全滅させる必要はありませんわ」
 身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「敵指揮官は“異国の棒術士”孫・金華ですの。手に持つ棒は“如意棒”という伸縮自在の武器で、遠近、そして範囲攻撃も可能と、そんな存在ですわ」
 そして最後に、と言葉を付け加える。
「皆様には、数千の“水晶屍人”の軍勢を蹴散らしつつ、指揮官である孫・金華を探し出し、撃破して貰うことになりますの。
 幸い、猟兵は噛まれても“水晶屍人”にはなりませんが、攻撃自体は普通に受けますわ」
 これが意味することは何か。
「数千の大群をどうやって防ぐか、あるいはどう突破するか……。
 そして、そんな大群の中からどうやって孫・金華を探し出すか……。
 今回の依頼ではそれが重要になりますわね……」
 そう言い終えると、手を上げ、光を生み出す。
 オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、テレポートさせますわ」
 猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「ただそこから先は正しく戦場と、そう言える場所ですの。大事無きようお願いしますわ」
 全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「でもまあ、皆さんならできますわ! 私はそう信じていますわ!」


シミレ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで16作目です。サムライエンパイアは二回目です。
 不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・“水晶屍人”の大群を指揮し、江戸へ向かうオブリビオンの撃破。

 ●説明
 一章のみです。
 ボス戦で、孫・金華と戦ってもらいます。如意棒の伸縮、打撃、そして曲芸じみた戦い方で猟兵と戦います。
 しかし、孫・金華の周囲は“水晶屍人”の大群で囲まれており、何処にいるかも定かではありません。

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 ボス戦 『『異国の棒術士』孫・金華』

POW   :    如意分身法・天降驟雨
【上空から降り注ぐ無数の如意棒】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に如意棒が乱立し、その中を自在に動き回り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    如意加重法・爆砕地裂撃
単純で重い【振り下ろし時に重量を増やした如意棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    如意伸縮法・千里彗星突
【如意棒の伸縮】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突き】で攻撃する。

イラスト:オペラ

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

劉・涼鈴
ふふー、その服、得物、身のこなし、大陸の武術家だね?

戟を振るって大見得を切る!(存在感・パフォーマンス・挑発)
私も長物使いなんだ、手合わせしよーよ!

【怪力】で覇王方天戟をぶん回して屍人をまとめて【なぎ払う】!
ザコは――邪魔ぁ!!

降って来る如意棒を【野生の勘】で【見切って】【戟で受け】流す!
当ったんないよ!

如意棒が乱立してるのは竹林の中の戦いと思えばやり易いよね!
私も【ジャンプ】や【クライミング】で【地形の利用】だ!
鉄棒で大車輪するみたいにぐるぐるして勢いをつけて跳び回る!

殴る蹴る戟と棒で打ち合う!
負っけないぞー!
懐に潜り込んで【怪力】の【灰燼拳】でトドメだッ!
ぅおりゃー!




 涼鈴が転移に選んだ場所は、“水晶屍人”が作り出す大波の前方だった。
 おぉー……。
 転移が済んだ直後、身体が大気の圧を受ける。
 数千の“水晶屍人”が前進することで生まれる、熱気にも似たそれだ。
「ふふー、その服、獲物、身のこなし、大陸の武術家だね?」
 波の向こう、姿を見せないオブリビオンに向かって、声を送った後に、涼鈴は一つの動きをする。
「――――」
 熱気を切り裂くように、疾く、風切りの音を伴って振るわれるのは、戟だ。
「私も長物使いなんだ、手合わせしよーよ!」
 言って、涼鈴は駆けた。


 疾走は一歩目から全力だった。
 大地を蹴り、前へ進んでいく。立ち上る土煙は全て背後だ。
 そうしていけば、やがて敵の前線は間近となる。
「……!」
 接近する涼鈴の姿を認めた“水晶屍人”が、その身を喰らおうと獣のような声を挙げる。
「ザコは――」
 そんな敵の攻勢に対し、涼鈴は後ろに流していた戟を構えると、
「邪魔ぁ!!」
 大きく横薙ぎに振るった。
 直後。大波の先端が砕け散った。
「――!!」
 周囲に飛散していく飛沫は陽光にきらめき、その一つ一つが“水晶屍人”だ。
 しかし飛沫はそれだけにとどまらず、
「どけどけどけぇ――!」
 連続していく。
 涼鈴は戟を振るう手を止めず、払い、突き進んでいくのだ。
「……!」
 もはや波の最中にまで来た涼鈴を何とか押し止めようと、屍人が全方位から一斉に襲いかかるが、
「出てこぉーい!」
 戟の切っ先が全方位の腐肉をやすやすと切り裂き、骨を断ち、飛沫く。
 飛沫いた。
「おお……!」
 己の周囲に、常に円形の空白を創造していた涼鈴だったが、しかし気づく。
「影……?」
 天気は晴天。何も遮るもののないシチュエーションだが、自分の周囲に滲むような黒点がある。
 これは……。
 直後。それが来た。
 空からだ。
「――!!」
 高速で降り注いできた無数の紅棒に対し、涼鈴は戟を上段に構えると、
「当ったんないよ……!」
 手で高速に捌き、頭上で回していく。
「……!!」
 戟と紅棒が連続衝突する硬質な音と、戟の範囲外の紅棒が地面を抉り割り、突き立っていく音が戦場に響いていく。
「――そこ!」
 そんな激音の現場の中、涼鈴は突然、戟を横に振るった。
 そこにいたのは、
「チッ……!」
「やっと出てきたね……!」
 “如意棒”で戟を受けた金華だ。
 後方に飛び退ることで衝撃を受け流した金華は、身に宙返りを叩き込むと、大地に着地すると同時。
「――長物使イと言ったナ」
 “如意棒”が林立する間を駆け抜け、涼鈴に目掛けて突進してくる。
「この狭イ戦場でどれほド扱えるか――」
 見せてもらおウ、という言葉はしかし続かなかった。
「なッ……!?」
 涼鈴が“如意棒”を掴んだかと思うと、
「行っくよー!」
 それを軸に、そのまま大地を蹴って、大きく回り始めたからだ。
 大車輪。そのままの勢いで弾け飛ぶ。
「竹林みたいなもんだよね! ――よっと!」
 他の“如意棒”の、幹ともいえる場所に両足で踏み込むと、戟を構え、
「――勝負!」
 行った。
 弾丸のようにした身の最先端は戟の切っ先だ。
「やぁあああ!」
「あァアアア!」
 涼鈴が持つ戟、“覇王方天戟”と金華の“如意棒”が激突しあい、弾ける。
 互いにすぐに体勢を持ち直し、再度衝突。火花を散らし、打撃の音が重奏していく。
 伸長する“如意棒”の刺突を戟が反らし、戟の怒涛の斬撃を“如意棒”が受け止める。
 それらは屍人達が干渉できないほどの高速のやり取りであり、
「しまっタ……!?」
「貰った!」
 それゆえ趨勢は一瞬で決まった。
 “如意棒”を上へ弾き上げられた金華が急ぎ戻そうとするが、
「遅いよ!」
 数歩で距離を詰めた涼鈴が懐へ潜り込み、
「“灰燼拳”……! ぅおりゃー!」
 その右拳を金華の身体に突き込んだ。
「グぁああっ……!」
 周囲の大気、屍人すらをも激震させるほどの衝撃に、金華がその身を吹き飛ばせていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レジーナ・ドミナトリクス
武術家でしたらこそこそ逃げ回る手合いではなさそうですし、屍人を片付けつつ出てくるのを待ちましょうか。
あやかるわけではありませんが、『鳴くまで待とう』と詠まれたのは確か徳川の先代様でしたよね?

まずは屍人をフォースセイバーで斬り伏せて減らしていきます。
【襲刃瞰視】は攻撃を躱すのは勿論ですが、殺気を見分けることもできます。
指揮官と知性のない屍人とでは気配が違うはず。
他の方が見つけるより先に接近されれば察知できるでしょう。
燃費の都合で長くは使えませんが、長物相手にはフォースセイバーを鞭状形態にして応戦します。

(あら、なかなか可愛いじゃない。
 ゆっくり遊んであげたいけど、そんな状況じゃないのが残念ね)




 転移が済んだレジーナが選択した行動は単純だった。
「――行きます」
 そう言って、目の前の屍人の大群へ目掛けて歩みを進めていったのだ。
「……!」
 正面から歩いてくる敵に対し、屍人達が唸り声を上げ、突撃してくる。
 数千という数の敵勢に対し、しかしレジーナは表情一つ変えずに、ピンヒールを大地に突き刺して前進していく。
「――!」
 相対する前進はやがて間近となり、波のように押し寄せる屍人達の先頭にいた幾体が、その身体を掴もうと手を伸ばしたが、
「――――」
 その手は虚空を掴んだ、否、手が、腕が、虚空に“飛んでいた”。
「……!?」
 遅れて、風を切る音と、骨肉を断った音が響いた。
 そこにいたって、屍人達は自分たちの腕が切断されたことに気づき、そして自分たちの背後からの声を聞いた。
 レジーナだ。
「――鳴くまで待とう……」
 直後。レジーナの周囲で切断の音が多重に走り、
「……!」
 幾体もの屍人達が、その身体を分割された。
 レジーナの手に握るフォースセイバーを高速で振るった結果だ。
「そう言ったのは徳川の先々代様でしたかしら?」
 ともあれ、と言葉を繋げる。
「あやかるわけではありませんが、――待ちましょうか」
 自身の戦果である屍人の破片で出来た海を歩いているが、周囲にはいまだ屍人達が無数という数で控えている。
 そんな敵陣最中にいながらレジーナは歩みを止めず、
「――――」
 一歩を横にそれた。
「……!?」
 それだけで、襲い掛かってきた敵の攻撃を回避し、
「――ホトトギスが“鳴く”まで」
 カウンターの斬撃を周囲全てに走らせた。


 “襲刃瞰視”。囚人移送船という環境で培ったレジーナの感覚が、屍人達とは違う気配を察知したのと、
「――!!」
 それが来たのは同時だった。
「孫・金華、参ル……!」
 上空。太陽を背景にして飛び上がったオブリビオン、金華がその手に持った如意棒を上段に構え、
「“爆砕地裂撃”……!」
 一気に振り下ろした。
 しかし、
「!?」
「武術家でしたらこそこそ逃げ回る手合いではなさそうと、そう思っていましたが、どうやらその通りでしたわね」
 それは叶わなかった。
 レジーナが振り上げたフォースセイバー、それが姿を変え、金華の攻撃を絡め取っていたからだ。
「鞭カ……!?」
「ご名答!」
 言って、レジーナが腕を振るい、
「ぐォ……!」
 金華を振り回し、放り投げた。
 あら……?
 地面を転がっていく金華を視界の隅で認め、レジーナは思う。
 なかなか可愛い子じゃない……。
 いま視界の前方では、金華がその端正な顔を歪めながら、慌てて起き上がろうとしているところだ。
「――遅いです」
「ガッ……!?」
 しかしその背中目掛けて鞭を振り下ろし、打撃を続ける。
 ゆっくり遊んであげたいけど、そんな状況じゃないのが残念ね……。
 自分専用にカスタムしたフォースセイバーだが、この形態は燃費が悪い。
「短期決戦と、そういうことです……ね!」
「ぁガッ……!」
 鞭撃の連打から逃れようと、地面を転がる金華の身体に鞭を巻きつける。
「クッ……!」
 拘束から逃れようと藻掻き、
「伸びロ! “如意棒”……!」
 顔面に目掛けて放たれた一発を、
「危ないですわね」
 しかしレジーナは首を傾けるだけで回避。
 そのままの動きで身体を捻り、全身で腕をスイングすれば、
「うワァ……!?」
 延長線上に捕らえられている金華も等しく振り回される。
「――!!」
 周囲の屍人を巻き込む大旋回はやがて終点を迎える。
 そこはどこか。
「――せめて鳴き声を聞かせてもらいましょうか」
 刹那。轟音と共に金華が、地表に叩きつけられた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
孫って奴はずいぶんと好戦的な奴のようだ。なら、釣り出すのは簡単だ。

軍勢に銃を構えて銃弾に紫雷の【属性攻撃】を交えて【範囲攻撃】で撃ち込む。【二回攻撃】でもう一回ぐらいやっとくか。軍の動きを止めちまえば、自分から出て来てくれるだろ。大声で名乗りを上げて呼び出すのは趣味じゃないんでね。
戦場に引き出したら【挑発】を入れて、俺と戦うように仕向けるぜ。銃を使いながら本命は炎より生み出す魔剣。【フェイント】で銃から剣へと武器変更。UCを発動させ、【串刺し】と紫雷の【属性攻撃】、【衝撃波】で周りの雑魚共も巻き込むぜ。お前も地形を変える一撃、叩きつけても良いぜ?どっちにしろ雑魚共は派手に消し飛ぶだろうからよ?




 ふむ……。
 転移が完了したカイムは、顎に手を当てて考える。
 敵のことだ。
 グリモア猟兵が予知した光景では、いま己が立つ地点から後方、そこにある砦を突破していた。
「随分と派手だったな……」
 名乗りを上げ、砦の門へ突っ込んでいったのだ。
 これが意味することは何か。
「孫ってやつは、随分と好戦的なようだ」
 そう言って、視線は前方、砦へと進軍してくる“水晶屍人”の大群へ向けたまま、両腰から拳銃を引き抜いた。
 黒を基調として金のラインが走る二丁、“オルトロス”だ。
「――なら、釣り出すのは簡単だな」
 言った直後、“オルトロス”から銃弾を放った。連射だ。
「痺れな……!」
 紫電を纏った銀弾が前方の空間を突っ走り、敵の前線へと到達。その腐敗した身体を衝撃し、貫いていく。
 だが、弾丸の戦果はそれだけではなかった。
「……!?」
 屍人達が衝撃に揺れ、その直後。弾丸がその真価を発揮した。
「――!!」
 弾丸を中心に、莫大な雷電が周囲に撒き散らされたのだ。
 前線一帯を雷撃が降り注ぎ、駆け抜け、打撃していく。
「それ、もう一丁……!」
 そこに、装填が済んだ“オルトロス”の連射を叩き込めば、前線を走る雷の打撃が、途切れない。連打だ。
 結果、どうなるか。
「進軍の停止……だな」
 さあどうすると、雷電の渦に包まれた大波に向けて、銃を突きつける。
 そのときだった。
「――――」
 カイムの視界に、点が増えた。
 それは視界の中央にあり、徐々にその大きさを増していき、
「……!」
 その瞬間、カイムは身にサイドステップを叩き込んだ。
 直後。先程まで顔面があった位置に、紅棒が高速で突き込まれていた。
「来たか……!」
 その言葉を叫んだのと、
「ァァァアア……!」
 大波の中からカイムの懐へ、棒の収縮を用いて少女、金華が飛び込んでくるのは同時だった。
「死ネ……!」
 前線の雷撃地帯を突っ切って来たのだ。身体や衣服の各所から煙を上げながら、しかしそれを気にせず、金華が回し蹴りをカイムへ叩き込んだ。
「おっと……! 随分、お上品な蹴りじゃん!」
「抜かセ!」
 その蹴り足をカイムは“オルトロス”で受け止め、勢いを利用して後方へ飛び退り、
「――!」
 連射を叩き込んでいく。
 金華はそれらを“如意棒”で弾き、回避し、
「グっ……!」
 しかし雷撃は回避しきれない。
 だが、
「アァァア!」
 前進を止めない。
 電撃の影響で不規則に痙攣する身体を無理やり動かしていく。
「ちっ……!」
 カイムが追加の銃弾を叩き込もうとするが、
「甘イ! 伸びロ……!」
 “オルトロス”に目がけて“如意棒”が伸長し、その左手側の一丁を吹き飛ばした。
「!? 貴様……!」
 だが、金華は驚愕した顔を露わにする。
 何故か。
「そっちはフェイントだよ」
 左手に金華の意識を集中させ、そちらをわざと打たせたカイムは、右手での“本命”を既に済ませていたからだ。
「剣だト……!?」
「痺れさせてやるぜ? ――受け取りな!」
 “如意棒”が伸び切り、がら空きとなった金華の身体に向け、目にも止まらない速度で、魔剣“Marchocias”を突き込んだ。
「……!!」
 切っ先が金華の身体を貫通していく最中、周囲に空気を破るような音が一瞬したかと思うと、
「――――」
 音も、光も、尽くが消失した。
 二人を中心として発生した雷が大気を焼き、それによって生じる大音も重なる大音によって覆われ、もはや人の可聴域を超えた。
 光も同じだ。雷による激しい明滅は視界をただ白に染め上げ、形あるものを影にする。
 何もかもが多重に発生し、そんな中で、カイムは敵に叫んだ。
「――――」
 音が消失した空間、伝わるのは唇の動きだ。
 来いよ……!
「……!」
 それを読み取った金華はやはり叫び、
「――――」
 足元への莫大な打撃をもって応答とした。


「ゲホッ……! アイツ本当に打ちやがった……!」
 カイムは巻き起こった土煙の中で咳き込む。
 しかし、その殆どが電熱で焼失していた煙はすぐに晴れ、周囲を露わにする。
「ケホッ、……アァー、……爆心地みたいだな」
 呟いた感想の通り、莫大な電熱でガラス化した地表は金華の打撃で砕かれ、周囲より高度を幾分低くしていた。
「“水晶屍人”は……。まぁ無事なわけないか……」
 離れた位置にいた屍人たちも熱波や、飛来した破片でダメージを受けている。
 自軍の損失上等の一撃。その狙いは何か。
「打撃の反動での逃走か……、っ……」
 “Marchocias”の切っ先を眺め、脇腹を抑える。
「これ以上は無理だな……」
 敵のユーベルコードを間近で受けたのだ。
 こちらへ歩みを進めてくる屍人達に向けて牽制の射撃を放ちながら、帰路に着いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・ランフォード
サムライエンパイアでゾンビって酷い組み合わせですね…
兎に角、これ以上は進ませません…ね、錬
ああ、棒使い…相手に不足なしってな

どう見つけるか…向うから出てきてもらった方が早いだろ
【光線式斬撃兵装・童子切】ゾンビ共ごと「なぎ払っ」てやらぁ!
出てきたらそいつに向かって、出てこなけりゃそのままぶち込む!

出てきたらゾンビのいない木の上等で相対
0距離なら「グラップル」、離れれば手裏剣「投擲」と
間合いを「見切り」ながら対応しよう
振り下ろしがきたら「武器受け」と、見せかけて「フェイント」
残念、それは「残像」だ
【分身殺法・陽炎舞】さて、いくぜ曲芸師!
翻弄し隙をみて急所に「暗殺」じみた一撃を刺そう

アドリブ共闘歓迎


宮入・マイ
【芋煮艇】で協力っス!

マイちゃん初戦争っス~!
楽しみっス~!

今日はみんなで大暴れっス、マイちゃんも頑張るっス。
といっても最初は準備からっス、ルエリラちゃんを肩車してボスを探してもらうっス。
見つけたらみんなに伝えて…真多子ちゃんとせんせーちゃんについてくっス!
マイちゃんは雑魚担当っスからーボスの傍まで来たら水晶屍人を寄生虫に齧らせて…【細部破綻の物知り】っス。
水晶屍人の真似してマイちゃん屍人をいっぱい作るっス~寄生虫のオマケつきっス~!
『アーちゃん』をまき散らして足場の【破壊工作】をしながらどんどん増えるように命令っス!
もう収集つかないってぐらいめちゃくちゃにしちゃうっス!

きゃっきゃ。


ルエリラ・ルエラ
【芋煮艇】で出撃するよ。
今回は敵がいっぱいだね。撃てば当たるのは楽でいいよね。飽きるけれど。

というわけで、親玉を倒せばいいらしいのでまずは親玉を探しだそう。
マイに肩車をしてもらって、戦場を見渡せる位置に立ってもらったら【ドライ】を放って敵の親玉狙い開始。
視覚のどこかにいるのなら、私の矢が自動で親玉まで飛んで行ってくれるよ。そしたら親玉の位置が分かるから皆に知らせられるね。
その後は、成功したら、突入する皆と別れて見晴らしのいい場所で『援護射撃』に専念。
皆の死角から迫ってる水晶屍人の狙撃や、如意棒の破壊、【ドライ】での嫌がらせをするね。
鮫の流れなら私たちは負けないよ。


月・影勝
【芋煮艇】の皆と出撃じゃ! 見渡す限りの水晶の人波…不思議の国でも見られぬ壮観さじゃのう。
じゃが臆することは無し、儂らはその波に乗ろうでないか!
UCで鰐鮫殿の大群を呼び寄せ、高らかにこう告げるのじゃ
「あやつらがお主らの国に攻め入らんと画策しておるのを聞いてしもうた!間違いないぞっ!」
…まあ、嘘なんじゃけど。 血気盛んな鮫達じゃ。深く考えず我先にと水晶屍人に討ち入り、大混戦にしてくれるじゃろう。
大群を押し留め少しでも減らし、他の皆の作戦を支えるのが儂の役目
鮫軍団に続き、水晶屍人相手に怪力に物を言わせ、【櫂】を振るって暴れるとするかのう!
…大将の相手は皆に託した、武運を祈っておるぞ!


黒影・兵庫
【芋煮艇】で参加します!
何の罪もない人々を手駒にして弄ぶ...せんせー、俺はガチで切れました...ご助力お願いします!
(【教導姫の再動】発動)
せんせー!ボスを見つけたらドリルになられた明石さんを担いで、一直線にボスに向かって掘り進んでください!
俺はその後をついて行きます!
その後は【第六感】と【見切り】と【ダンス】でボスの攻撃を回避しつつ
【皇糸虫】と潤滑性の【蠢く水】を【念動力】と【ロープワーク】と【罠使い】で足に絡ませて転倒させます!
せんせーは足場になった如意棒を破壊してください!
ボスが転倒したら【衝撃波】で袋叩きにしてやりましょう!


明石・真多子
【芋煮艇】
うわ!すっごい数の敵だね~これは骨が折れそう…アタシ骨無いけど。
よ~しチマチマやっても仕方ないからここは正面突破で囲まれる前に進もう!

グルグル~っと腕を全部束ねてドリルのように回転させて…【軟体忍法螺旋触手の術】だ!
回転数を上げてるのに集中するとあんまり動けないけど、長身のせんせーちゃんに抱えてもらえば解決!
水晶屍人の群れを掘り進むよ!

ボスを見つけたらそのまませんせーちゃんの武器として協力しよう!
降ってくる如意棒の傘になって防いだり、地面に刺さった如意棒をへし折ったりして動きを制限できるはず!
せんせーちゃんのおかげで欠点のなくなったタコドリルは無敵だよ!
そのままボスも削り取っちゃえ!


エミリィ・ジゼル
【芋煮艇】で参加。雑魚散らしを担当。
まずは《増えるメイドの術》を使って45人のかじできないさんズを呼び出し、
更に《メイド流サメ騎乗術》を使い、合計46人(本人含む)のサメライダーズを結成。
そしてほら貝の号令と共に水晶屍人の大群に突撃し、シャークチェーンソーや聖剣めいどかりばーでぶった切ったり、サメで食らいついたり、インクシューターや重力子放射線射出なんちゃらを乱射したり、芋煮をぶっかけたりしたりします。

相手は速度が遅いらしいので、基本的には速度を生かした攪乱作戦を重視。
バッサバッサと水晶屍人どもをジェノサイドしていきましょう

「ヒャッハー!汚物は消毒だー!」


シュバルツ・ウルリヒ
【芋煮艇】で行動だ ...いきなり大規模と戦う事になるとはな、...だが過去に今を生きる者達の邪魔はさせん。

...此処で食い止める。 先ずは大群は他の奴らに任せる、...僕の仕事はその後、こいつらを指揮している奴だ、戦う奴等の援護をしつつ奴を倒す。
ボスの前に辿り着いたら【血統覚醒】を発動、【魔斧魔ックス】で水晶屍人やボスの出す如意棒を【吹き飛ばしたりなぎ払い】相手の動きを妨害する。

そして隙を見て【衝撃波】を放ち足を止め、全力の一撃を奴に振り下ろす【力溜め、鎧砕き】……だが奴は身動きが軽い、…避けられるかもしれないな…そんな時の為に【地縛鎖】を放ち、奴の動きを止める【咄嗟の一撃】




 蓮は思う。敵は強大だと。
「うわぁ……」
 転移が済んだ己の視界の先、“地表が動いていた”。
「アレ、全部ゾンビですか……。しかもサムライエンパイアで……」
 ひどい組み合わせだと、そう思いながら、思考を巡らせる。
 あの“地表”のことだ。
 事前の情報では、屍人達は数千という単位で集まっていると聞いた。
「まあ、それだけ集まったら、そりゃ、ああなりますよね……」
 それだけの存在がいま、前方にいるのだ。
「……信じたくないですね……」
「まったくですね……」
 いきなり自分の横から声が聞こえた。
「…………」
 恐る恐る顔を向けると、
「…………」
 鮫の着ぐるみを来たメイドがいた。
「…………」
 こちらが振り向くに合わせて、向こうも振り向いてきた。
 目が合う。
「…………」
 それに対し、己はゆっくり顔を前に向き直すと、
「……信じたくないですね……」
 やり直した。
 すると、
「――ほう」
 明らかに横から声が聞こえたと思ったら、
「……!」
 次の瞬間にはこちらの前に回り込み、高速で飛び跳ねてきた。
 着ぐるみなのに良く跳びますねー……。
 と、そう思いながら、遠くを見て視界のピントをずらすことで対処。
 すると、効果が無いことを悟ったのか、メイドが視界から外れていった。
 ……負けませんでしたよ!?
 勝った、という言葉ではなく、そんな感想が脳内に浮かぶが、なんですかねこれは。ともあれハッピーエンド。来たばっかりです。
 先程までより幾分落ち着いた気持ちで、口を開く。
「……兎に角、これ以上は進ませません……」
 そうしたら、視界から外れたメイドが分身して戻ってきて目の前で人間ピラミッドをし始めた。
「――ね、錬」
 なので私は人格を錬に明け渡しました。頑張って。ほら、れんも。
 がんばってー。
 じゃあ、そういうことで。


 眼鏡を取って険しい顔をした目の前の少女を見て、エミリィは思う。
 引き分けということにしておきましょう……。
 呼び出した自分の分身を解除しながら、ともあれ戦場だ。グリモア猟兵の転移が済み、目の前に敵の大群が見える。
 随分いますねえ、とそう思っていたら、
「――ウワァー、いっぱいいるっス〜!」
 背後から同感の声が聞こえた。
「敵がいっぱいだね……。でも、撃てば当たるのは楽でいいよね。――飽きるけれど」
「わかる〜。骨が折れそうだよね〜。――まあ、私って骨無いんだけど! タコだから!」
「マイちゃんもっス〜! カタツムリだからっス〜。マジっス」
「私はあるよ、骨」
「このほのぼのした会話は、宮入様にルエラ様、そして明石様ですね」
 振り向いた先にいたのは彼女達で、そんな彼女らに続くようにさらに見知った顔が増えていく。
「おぉ……。水晶の波が陽光にきらめいておる。不思議の国でも見られぬ壮観さじゃのう」
「……いきなり大規模戦とはな」
「あれが全部……、何の罪もない人々なんですか……」
「月様にウルリヒ様、黒影様ですね。そして……」
 再度、前方に向き直り、そこにいる少女の肩を叩く。
「――ランフォード様。これで全員が揃いました」
「…………俺も頭数か……」
「錬様の方ですね? 勿論ですとも。“芋煮艇”で出撃ですよ“芋煮艇”で。仲間外れはしませんとも!」
「ウワァー嬉シィー」
「喜んでいただけて何よりです。――では、作戦通りに」
 そう言って皆に手捌きで合図を送ろうとしたら、
「――待て」
 着ぐるみの袖部分を掴まれた。
「……? 何ですか?」
「作戦って、何だ」
 錬のその言葉を聞き、己はやれやれ、と肩を竦める。
「ランフォード様、作戦会議を聞いてなかったのですか……?」
「蓮ちゃんいなかったんじゃないっス〜?」
 流石は宮入様鋭い。
「――知りたいですか?」
「頭数に入れるんだったら教えろ……!」
 ランフォード様怒りっぽいですね……、と思いながら周囲を見たら、皆こちらに指先を下にして掌を見せていたので、これはすなわち私がアナウンサー。
「いいですか、時間も押してるので手短に説明します」
「ああ……、頼むぞ……」
「では説明します……。
 ――まず宮入様がルエラ様を肩車してる傍ら私が分身して鮫を呼びます。このとき月様も合わせて流言と飛語で鰐鮫をけし掛けますがこれはつまり虚偽ということで恐らく月様はこれが終わった後に生皮を剥がされて海水ジャブジャブの刑に処されるかと思いますがまぁこれも戦国の世の習わし。やはり鮫を使役するにはやりがいとおちんぎんを与えねば。いけませんね。――おぉっと! 忘れてました! ほら貝! ほら貝を吹きます! ぶおー! ぶおー! あっ、コレ、ほら貝の音です。覚えておいてくださいね。ともあれその頃にはルエラ様が敵の親玉を見つけているので続いてドリル明石様とせんせー様が立ち合いは最初強く掘り進んで、ウルリヒ様と兵庫様の少年二人を中心にしたちびっ子衝撃波餅つき大会が開催してる横でゾンビパニックで〆です。
 ――解りましたか? えっ、解るように話せ? ではもう一度……」
 と、もう一度肩車から話そうとしたときだ。
「おい、おい、エミリィ。いろいろ言いたいことあるけど、横。横見てみ、おぬしら」
 影勝が言葉を送ってきた。
「何ですか月様」
 なので、錬と二人で横を向く。
 皆がこちらを見ていた。
「ァアー……、エミリィちゃんエミリィちゃん。こっちじゃなくてあっち……アァー! イヤイヤイヤイヤ、そっちでもなくて……」
「左、左だよエミリィ」
「む。それはさっきで言うと、だな」
「じゃあ、今で言うとなんなんス?」
「後ろです! ……あっ、確かに指差した方が早いですね、せんせー!」
 皆の言葉に合わせて蓮と一緒に右に左に顔を向けていたら、兵庫が指を指していたのでそちらに顔を向ける。
 背後。
 “水晶屍人”の顔が間近にあった。
「……これ、ホラーゲームとかでよくあるシチュエーションですけど、リアルで経験したら心臓止まりそうになりますね……」
「呑気なこと言ってる場合か……!!」
 ランフォード様が叫んだ直後、周囲に光が満ちました。


 錬は光の最前線にいた。
 ぉお……!!
 現状を表すならば、火急、その一語だ。
 先ほど、これ以上は進ませないと、蓮がそう言って人格のキラーパスを寄越してきたが、言葉に関しては同感だと、そう思う。
 なにせ目の前に敵が来てるからな……!
 前方に突き出した“オーガスラッシャー”。その柄が触れそうなほどの距離に敵がいたのだ。
 数千という数は脅威だが、知能も無く、脚も遅い“水晶屍人”だけならまだいい。どうにかなる。他の皆もいれば余裕だ。
 しかし、その大群のどこかにオブリビオンがいれば話は別だ。
「奇襲されたら流石にマズイぜ……!?」
 だから先制した。
 “光線式斬撃兵装・童子切”。抜き打ち気味の一発として選んだユーベルコードは、刃渡り一キロ超えの光剣を生んだ
 眼前。空間の殆どが莫大な光量で埋め尽くされ、それと同時、光の熱で焼かれた大気が吹き荒れる。
 熱波。
 光柱のような刀身を軸に、大きな壁のように、熱と風の圧力が全方位を殴りつけていく。
 巻き上げられた土砂が遅れて降り注ぐが、
「――――」
 “童子切”の刀身に焼かれて、消える。
 焼失だ。
 しかし……。
 思い返す。先ほどのことだ。
 説明を求めたら奇言を聞かされるという人生で初の体験だったが、得るものもあった。
「全体の流れだ……」
 “オーガスラッシャー”の柄を握り締めながら、それを口にする。
「ルエリラとマイが索敵して、エミリィと影勝が突撃。そして、真多子と兵庫、シュバルツが撃破……」
 細かい部分は違うかも知れないが、おおよそはそんなところだろう。
 つまり、各々が役割を持ってこの場に存在しているのだ。
「そして、もはや俺もその一人だな……」
 蓮は、荒事担当の自分に人格を“渡した”のだ。
 ならば自分の役割は何か。
「――解りきったことだ!」
 突き込んだ“オーガスラッシャー”は敵陣中央だ。ここから振り抜くには、左右どちらかしかない。
 オブリビオンが未だ生き残っていたとしたら、確率は二分の一だ。
 どちらか。
 一瞬、逡巡したが。
「――生き残ってたら、その時に倒せばいいだけだ!」
 叫び、
「――!!」
 振り切った。


 戦場にいた全てのものは、それを知覚した。
「――――」
 一キロメートル超えの光が、確かに動いたことと、
「……!」
 遅れて響いた大気の鳴動を、耳と肌で感じたことをだ。
 直後。
「――!!」
 光の柱が、焦熱と爆風で地表をなぎ飛ばしていった。


 “童子切”の背後に控えていた景勝は、兵庫と共に自分の獲物を地面に突き刺し、シュバルツの鎖や、ルエリラのワイヤーフックに真多子の触腕、そしてマイの巨体など、残った面子の総力で暴風に耐え、
「――――」
 それを見た。
 天っ晴じゃな……!
 数千はいた大群の半分を消し飛ばした“童子切”による戦果をだ。
 光柱が失せたいま、己はその現場を視覚としてよく理解できた。
 すると、
「――!!」
 風が吹いた。
 突風だ。
 掻き飛ばされた大気の損失分を埋めるために、周囲から風が押し寄せて来たのだ。
 それら風の終着地点は先程まで屍人が数千といた一角だが、いまやそこにあるのは、
「抉られ、熱で表面が硝子化した大地じゃの……!」
 空白の地形だ。
 硝子を伝って奔流が流れ込み、中央で衝突。そのエネルギーは上へぶち撒けられ、
「……!」
 “童子切”が斬撃しなかった側、その境界線上にいた屍人達が煽られ、吹き飛ばされていった。
 現地はそのような様子だが、自分たちがいる場所には先ほどの暴風のような勢いは、無い。
「つまり今こそ勝機ということじゃ……!」
 そう言って、己は地面に突き刺した櫂を引き抜くと、
「――鰐鮫殿!」
 叫んだ。
「…………」
 すると、どこからともなく鰐鮫達が現れた。それもおびただしい数の、だ。
 自分を取り囲むようにして見上げてくる彼らに向けて、己は長髪を風になびかせながら、声を大にする。
「わしは聞いた……!」
 言う。
「あそこにいるあやつらが、お主らの国に攻め入らんと! そう画策しておるのをじゃ! 本当じゃ! 間違いない! この長い耳でわしは確かに聞いた……!」
 拳を振り乱しながら。
「まあ、今は乱世じゃからな! これも戦国の世の習わし……! 隙を見せたら殺られるんじゃ! 恐ろしいのう……!」
 そのときだった。
 吹き荒れる風をかき分け、音がこちらに聞こえてきた。
「――――」
「これは……」
 低く、篭もるような響きを持つ長音は何か。
「味方のほら貝じゃ……! ――皆のもの続けぇーー!!」
「……!」
 ほら貝の響きに押されるように、周囲を巡る奔流に乗るように、未だ数多く残る“水晶屍人”の群れへと、鰐鮫達が突進していった。
 己はそんな鰐鮫達の後ろ姿を見ながら、一つ頷く。
 ……まぁ、嘘なんじゃけど!
 ともあれ血気盛んな連中だ。こちらの目論見通り、深く考えず我先にと屍人の群れへと向かって行ってくれた。
 そんな流れに対して、己も長大な櫂を肩に背負うと
「では、わしも行ってくるとするかのう……! ――どれ失敬するぞ!」
 手近な鰐鮫の背に乗り、そして、
「よっ……、ほっ……」
 その背を足場にして、身を前へと運んでいった。
 すると、背後から声が聞こえてくる。
「しかし、すげーフいたなオイ……」
「生皮で済むのか疑問でござるな……」
「影勝……。向こうでも元気でね……」
「大丈夫……? 影勝君海水慣れしてる……?」
「塩水はヤバいっスよ! マイちゃんカタツムリだからよく知ってるっス! マジっス!」
「そうですねせんせー! 嘘は良くないです!」
「お、おぬしら、聞こえておるからな……!? ――まあ、後のことは後のわしが考えることよ……!
 っと……、もう到着か!」
 背後からの声に半目を向けた後、もはや至近となった屍人の群れに対し、己は櫂を振り上げると、
「――突撃じゃ……!」
 鰐鮫を踏み切って大跳躍。
 眼下にいた屍人の脳天目掛けて、
「ゃぁああ……!!」
 渾身の力で櫂を振り下ろした。
 大質量の木が腐肉を打ち据えた激音が響き、直後に、脆くなった頭蓋が砕ける硬音が辺りに響いた。
「はっはっはっ! それそれそれぇ! お主らの相手はわしじゃぞ! かかってこんか!」
 ときに鰐鮫から鰐鮫に飛び移り、ときに大地に降り立つ。
 そうして、己の身長よりも遥かに長い獲物を振って、回し、薙いで、打撃し、
「刺突……!」
 そんな一連の動きを連続させていけば、
「今はわしこそが暴風よなぁ……!」
 その言葉通りの現象が、屍人の間で起こる。
 轟音のような風切りの音が走り、腐肉を打ち据える音が響き、そして骨と水晶が砕け散る音が鳴る。
 これらが連続し、途切れない。
 高速の動作によって、もはや三音は一体となり、響く音は重奏だ。
「そして時折、鰐鮫が喰らう音、と! ――あ、そういえば……」
 屍人を吹き飛ばしながら、そのまま櫂を地面に突き刺し、その上に上り、何かを探すように周囲を見る。
 いた。前方だ。
「あやつ、いつのまにあんなところに……!」
 屍人達を挟んだ向こう側、そこからやってくる者達がいる。
 エミリィだ。分身している。


 少し前、エミリィは思っていた。
 まさかランフォード様が隣で童子切ぶっぱするとは……。
 いきなり視界が翠一色になったから、最初何事かと思ったが、
「まぁ私、時間止められるからどうとでもなるんですけどね」
 何もかもが停止した空間の中を、莫大な光量でシパシパする目を擦りながら安全な場所まで退避したら、時間停止を解除。
「――!!」
 すると、止まっていた時が動き出し、爆風が聞こえてくる。
 そうして光剣の放出が終わるのを待って、停止の解除を解除すれば、
「――――」
 再度の静寂の中、暴風や空中の土砂を足場に屍人達の背後側に渡る。
 渡った。
 そうして出来上がるのは何か。
「挟み撃ちの形ですね」
 未だ大気の損失を埋めるための突風が吹き荒れる最中、水晶の湖と、そう形容できる地形の対岸にいるのは、影勝達だ。
「――――」
 すると、そこに新たな影が生まれた。低い体高は無数だ。
 それを見た己は頷きを一つ。
「月様が鰐鮫を呼びましたか……。色々ありましたが作戦通りと、そう言うことですね。
 ――では私も」
 着ぐるみに包まれた両腕を振り上げ、
「いでよ、かじできないさんズ……!」
 叫んだ。
「――――」
 すると、己の背後から、同じポーズをした自分のコピーが現れる。複数だ。
 額に“1”と書かれた彼女達の総数は、本体である自分を含めて四六。
「昔に比べれば随分増えましたねえ。――まあこれだけじゃありませんが」
 次の瞬間には同じ数の鮫が出現していた。
「――――」
 体長約三メートル。青や灰色のそれらは本来海にいるべきはずの存在だが、
「……!」
 雄々しく哮声を挙げると、ヒレで支えていた身体を降ろし、大地に伏す。
 差し出すようにされた背に四六人全員が跨り、皆より一歩前に出ていた己が、懐より出したほら貝を口に当てる。
「――!」
 吹いた。
 それが戦場全体の合図だった。
「……!」
 向こう側で景勝が鰐鮫と前進してくるのが見える。
「では我々も行きますか。――ハイヨー!」
 掛け声を一つ挙げれば、
「――!」
 地をヒレで打ち飛ばした鮫達が、弾け飛ぶように身を前へ運んだ。
 行くのだ。


 先ほどまでより随分と落ち着いた大気の中。鮫に乗ったエミリィ達が行くのは、大地の上だ。
「……!」
 鮫達がヒレで地面を掻くようにして打撃すれば、身が跳ね上がり、やがて着地。大地の上を滑るように滑走し、また打って、上がる。
「ヒャッハー!」
 全身で風を感じながら、両手で構えるのはランチャー型のインクシューターだ。
「シュウゥ――――ッ!!」
 絶叫に押されるように、加圧されたインクが空間を突っ走っていく。
 数は四六。そのどれもが、色鮮やかで、不定で、高速だった。
 大口径のそれらは、やがて“水晶屍人”の群れに多段に弾着する。
「……!!」
 衝撃力と極彩色を周囲に撒き散らしていく。
「超エキサイティン……!!」
 衝撃で吹き飛び、視界をインクで妨げられ右往左往する屍人達を見た全員は、ランチャーを捨て、
「芋煮用意……!」
 煮えたぎった芋煮が入った鍋を頭上に掲げた。
「投擲……!」
 円盤状の鉄器が回転しながら宙を行き、敵の頭上に到達すると、
「……!」
 その内容物を空からぶち撒けた。
 里芋、肉、牛蒡。そして鉄鍋で構成されたクラスターが屍人達に振り注ぐ頃には、接敵は目前となっている。
「抜刀!」
 眼前の敵に向け、一部はチェーンソーを、一部は聖剣を、各々が武器を取る。
 激突。
「……!!」
 唸りを挙げたチェーンソーが屍人を抉り裂き、聖剣がその切れ味で骨ごと細切れにし、喰らいついた鮫が頭を振って千切り飛ばす。
 敵の多くを打ち倒した衝突だったが、しかしそれが果たされた後、自分達は深追いをせず、正面からぶち当たった勢いをそのままに反らし、離脱していく。
「敵は速度が遅いようですので、攪乱を重視です」
 そう言って自分達を、屍人の周りを巡る内回りと外回りの二隊に分け、インクシューターを構えると、
「騎馬民族最強伝説……!」
 身を捻ってトリガーを引き絞っていく。
 パルティアンショットだ。
「家事以外のことは大抵出来る私ですからね」
 そうして包囲網を完成し、射撃を続けていきながら、思う。
 そろそろですかね……。
 すると、
「――――」
 来た。
 包囲網の外。影勝達がいる場所からの斜め打ち下ろしの一閃だ。
 速度は高速で、色は青の光。
 それは何か。
「――ルエラ様の光矢です」


 ルエリラは周囲より少し盛り上がった丘の上、そこに立つマイの肩上からそれを見ていた。
「…………」
 己の放った光矢だ。
 すると、声が聞こえた。
「――これで、オブリビオンの居場所が解るんスよね?」
 肩車をしている関係上、自分の身体で抱くようにしているマイの頭からだ。その声に、そうだねと、自分は答えながら、
「今、放った矢、“追尾の矢”って言うんだけど、それは、私が視認している対象を追尾して攻撃するから。
 あの屍人達の群れの中にオブリビオンが混じってたら、そこへ向かうよ」
「おぉ〜。便利っスね〜。……ん? でも、さっき錬ちゃんがビームでズバァ! ってしてたっスけど、あれで消し飛んでたらどうなるんス?」
「あー……、まぁ、その時は適当なところに刺さって――」
 終わりじゃないかな、という言葉を続けようとしたそのとき、己は見た。
「――――」
 空間を突き抜け、鮫と鰐鮫が密集してる中へ吸い込まれるように入っていった“追尾の矢”が、
「弾かれたっス!」
 上空に跳ね上がったのだ。
 それを確認した己は、
「――マイ、皆のとこに行って、伝えてきて」
 言葉もそこそこに、自分はマイの肩から跳躍すると、
「……!」
 引き絞った弓から、“追尾の矢”を連射した。
「――!」
 数十本もの光矢が順次射出されていき、空間を川のように流れて、行く。
 行った。
 だが、
「――!!」
 その尽くがやはり弾かれ、砕きと散乱の結果を得ていく。
 だが、己はそれを気にしない。
 先ほど、錬が敵を吹き飛ばした。
 そして今、エミリィと影勝が屍人の相手を担い、包囲した。
 ならば己の役目は何か。
「敵の親玉を見つけることだよ……!」
 射撃は止まず、止める気もない。
 連射で出来た川は、水晶で出来た湖の上に辿り着くと、砕け、散るが、その光片を周囲に撒いていく。
「せっかく屍人達の中に隠れても、私の矢に反応したら意味無いね。――まぁ防がないとハリネズミになるんだけど。
 ――マイ! オブリビオンはあそこだよ!」
 湖の上、光片が飛沫いていく。


 包囲した敵陣に向けて駆けていく突撃隊。その先頭にいた真多子は、兵庫の声を聞いた。
「せんせー、俺はガチで切れました……。――ご助力お願いします!」
 前方を睨むようにした、怒気を孕んだ声だった。
 それが周囲に響いた直後、
「――――」
 現れる姿がある。召喚だ。
 その姿は、蜂の触覚と腰ほどの長髪、そして何より、
「おぉ〜マイちゃんよりデカいっス〜! きゃっきゃ」
 三メートルを越す長身が特徴的な、スーツ姿の女性だった。
「せんせー!」
 せんせーと、そう呼ばれた女性は、声を送ってきた兵庫を見ると、
「…………」
 目を細め、言葉を促す。
「オブリビオンを見つけました! ですので、せんせーには、ドリルになられる明石さんを担いで、一直線にそこへ向かって掘り進んで欲しいんです!
 俺はその後をついて行きます!」
 せんせーは兵庫の言葉を聞くと、頷き、その頭を一度、二度撫でると、
「じゃ、アタシも頑張るね!」
 列の先頭を走るこちらへ駆けてきた。数歩だ。
「おぉー、せんせーちゃん! んじゃ、作戦通りに……!」
「うん!」
 隣を走るせんせーと言葉もそこそこに、互いの顔を見て頷き合うと、己は跳躍。
 触腕を頭上で束ねて身体を前に倒せば、腕が前端となる。
「軟体忍法、“螺旋触手の術”……!」
 その状態で、束ねた腕を高速で回転させていけば、出来上がるのは己の触腕で出来たドリルだ。
 この術、回転数を上げてるのに集中するとあんまり動けないんだよねー……。
 つまりこのままではやがて地面に落下するのだが、
「――ヨイショ」
 そんなこちらをせんせーがキャッチ。
「でも、長身のせんせーちゃんだったら、私を扱えるからそんな問題も解決……!」
「行くね!」
 ドリルとなった己を全体の最先端として、せんせーが駆けていった。
「――来たか! おぬしら!」
「とりあえず一箇所に固めておきましたよ」
 すると、“水晶屍人”の大群の周囲にいた影勝とエミリィが、駆けるこちらに声を送ってきた。
「月様と私達で結構減らした気がしますが、依然として残っていますね」
「まぁ、こっちのことは気にせずわしらに任せい!」
 景勝が櫂で屍人を打撃しながら指し示した先、そこにあるのはルエリラが放つ“追尾の矢”が、オブリビオンの手によって砕かれ続ける光景だ。
「大将の相手は皆に託した! ――武運を祈っておるぞ!」
「行こう! せんせーちゃん! 皆!」
「うん!」
 せんせーがこちらの声に応え、
「――!!」
 ドリルとなった己を、突き込んでいった。
「ぉおおお……!!」
 前方へ加速しながら、正面に正しく突き込まれた螺旋の力は、そこにいた屍人達を尽く貫通し、そうでなくとも、周囲にいた屍人達は絡め取るように巻き込まれ、抉られ、
「――!」
 弾き飛ばされていった。
 後は単純だった。
「ぉぉおおおおおおっ……!!」
 前進。
 ただ、前に行くのだ。
 その一心を乱さず、掘削という己の役割を実行し続けていけば、
「――――」
 やがて、指先が空を削ったのを感じた。
 抜けたのだ。


 突撃隊の後方にいた兵庫は、先頭が開けたのを見た。
 やりました……!
 屍人の波を突破したのだ。
 あそこにオブリビオンがいる。そう思い、錬やシュバルツ、マイ達と共に前へ飛び出そうとした。
 そのときだった。
「――――」
 目を見開いたせんせーが、こちらに振り返っていた。
 オブリビオンが目の前にいるはずなのに、何故。
 そんな当然の疑問を、しかし己は抱かなかった。
「……!」
 その時には既に、全身を寒気のような感覚が走っていたからだ。
 跳ねている髪が震え、脳内に響く“せんせー”の声をそのまま周囲へ報せる。
「――上です……!」
 自分と、先頭にいるせんせーの重なった叫びに弾かれるように、皆がそれを見た。
「――!」
 上空。そこを無数の“如意棒”が埋め尽くしていた。


 オブリビオン、金華は驚愕していた。
 何故解っタ……!?
 猟兵の反応が早すぎたからだ。
 こちらが術を使った瞬間、否、使う前から気付いていた節がある。
 だが、
「もウ遅イ……!」
 こちらにたどり着いた瞬間を狙った、不意打ち気味の、それも真上という死角からの攻撃だ。
 察知できたとしても、“如意棒”の雨が降り注ぐ方が早い。
 術者である己の方へ避難したとしても、間に合うのはせいぜい先頭の二人だろう。
 しかし、
「せんせーちゃん……!」
「はい……!」
 件の二人は立ち止まり、一方が姿を巨大な傘に変え、それを巨体の方が頭上に掲げた。
 耐える気なのだ。
 それも全員を守って。
「愚かナ……! ならば全員で潰れロ……!」
 嘲り、口角を挙げた瞬間だった。
「――――」
 何かが、高速で通り過ぎた。
 ……風?
 遅れてそれを肌で感じ、
「……!!」
 次の瞬間には、空の端から端を、青の光が埋め尽くしていた。


「――ふぅ……」
 ルエリラは弓を構えたまま、前方の空を見た。
「――――」
 青光というペンキを空にぶちまければこうなるのかと、そんな風に思える光景が広がっていた。
「……!」
 そこで生じた音がこちらに届くのには、距離ゆえにいくらかのタイムラグがある。
 音は一種類。破砕だけだ。
 それを聞きながら、己は思う。
「驚いた……。やっとたどり着いたのに、皆上見て固まっちゃうんだから……」
 何事かと、そう思った。オブリビオンは目の前なのだ。
 だが、つられて自分も視線を上げたら、今にも降り注がんとする、無数の“如意棒”を見つけた。
 出撃前、事前情報で得ていた敵のユーベルコードだ。
 それを見た瞬間、己は何と言ったか
「――“見れて”良かった」
 直後。己は“追尾の矢”を放った。
「……!」
 敵が放った“如意棒”が無数だとしても、己はそれを視認している。
「だとすれば、こちらが放つ矢も無数だよ」
 無数と無数。それらが空でぶつかり合い、互いの破片を周囲に散らせていく。
 音と光だ。
 そんな二つの真下にいる皆に対し、己がもう一つの役割にシフトしたことを告げる。
「援護射撃、上手くいったよ、皆」


 ルエリラの“追尾の矢”で砕かれた“如意棒”が、突撃隊がいる場所へ豪雨のように降り注いだ。
 だが、
「大丈夫……! ルエリラちゃんが砕いてくれたから、全然へっちゃらだよ!」
 傘となった真多子がせんせーに掲げられ、その全てを防いでいく。
 やがて、雨は止む。
「――――」
 止んだ。
 その瞬間、
「――!!」
 傘下から、射出されるように影が飛び出した。
 数は三。
 その全てが武器を構え、疾走していた。
 オブリビオンの撃破を役割としたメンバー達だった。


 最初に戦場へ飛び込んだのは、兵庫だった。
 あれがオブリビオン……!
 前方にいる少女。それが今回の倒すべき敵だ。
 思い返す。この戦場に転移されたときのことをだ。
「何の罪もない人々が、犠牲にされているのを見ました……!」
「そレがドうした、小童!」
「――許せません!」
 だから己は行った。一歩目から全力だ。
 同時に、自分の獲物である誘導灯型の破砕警棒を取り出す。
 そのときだった。
「――――」
 敵が、“如意棒”を突き込んで来ていた。
 高速で、顔面狙いの一発は、視界の中でほぼ円として映っている。それほど正面からの一発だった。
 だが、
「解っています……!」
 先ほどの奇襲をも察知した自分達だ。あれに比べれば正面からの不意打ちなど比較にならないほど解りやすい。
 首を振るだけでその一発を回避し、敵との距離を詰めていく。
「小賢しイ……!」
 接近を拒絶するように、再度の刺突が来た。
「無駄です……!」
 なので、こちらも再びの回避を行う。が、
「――――」
 その攻撃には、先ほどまでとは違う点があった。
 それは何か。
 連撃ですね……!?
 初撃を避けても、すぐに次の刺突が、打撃が、なぎ払いが押し寄せてくるのだ。
「……!!」
 疾く、連続する敵の攻撃を凌いでいく。
 それは、猛攻と、そんな一語が相応しいほどの攻撃だった。
「――行けます!」
 そんな攻勢に対し、己は確かな自信を持って答えると、
「――!」
 打ち下ろされてきた打撃は警棒で受け止めた。すると、その反動で敵の腕が跳ね上がり、懐へ潜り込めるが、
「――でも蹴りが来ます!」
 正面から、カウンターとして突き込まれた蹴りに対し、自サイドステップを身に叩き込んで回避。
 そのまま地面をスキッドしながら背後へ回り込もうとすれば、
「――回し打ちですね!」
 敵が、こちらに対して背を見せるように身体を回した。“如意棒”がバックハンドで振り回されて、来る。
 横から高速で迫る攻撃だったが、それを後方宙返りで背中の下に通すと、
「――もう一周が来ます!」
 地面に伏せて退避。
 そして次に来るのは、
「――踏みつけです!」
 転がって回避し、警棒を持たない方の片手一本で身体を倒立のように起こすと、
「……!」
 手と頭を軸にしてその場で回旋。振り回る警棒と両足で敵を牽制していく。
「予知カ……!?」
「――虫の知らせです!」
 吐き捨てるようにして言葉を放ったオブリビオンに対し、そうとだけ答えた瞬間、
「――死ね……!!」
 上空から、オブリビオンに向けて斧が振り下ろされた。
 シュバルツだ。


 避けられたか……。
 シュバルツは斧を地面から引き抜くと、すんでのところで回避したオブリビオンを目で追った。
 いまやこちらと距離を取っており、もはや地表にはいない。
「自分の周りにも“雨”を振らせていたか……」
 “如意棒”だ。大小様々なそれが、周囲に乱立している。
 その目的が何かは、自分たちは事前の情報で知っている。
「戦闘のための足場だ……!」
 顔を振り上げ、“如意棒”から“如意棒”へと跳躍する金華を追おうとするが、
「ちっ……邪魔だな……」
 地面に乱立する無数の“如意棒”が、こちらの動きを阻害する。
「消えろ……!」
 だから己は吹き飛ばした。
 手に持った長柄の斧、“魔斧魔ックス”を振り、大旋回。
 ただでさえ多い“如意棒”は、地面に深く突き刺さっており、粘るように耐えてきたが、
「――失せろ!」
 吠えた直後。爆発的に増大した膂力で、刈り取るように“如意棒”を切断していった。
「――――」
 その時、己は自分の犬歯が伸び、鋭くなったことと、そして、
「くっ……」
 陽光が身を焼いていくのを実感した。
 ユーベルコード、“血統覚醒”でヴァンパイアへと、己の姿を変えたのだ。
 身体に明確な負荷がかかっているのを感じるが、
「――構わん」
 再度、“魔斧魔ックス”を構えた。
「過去に、今を生きる者達の邪魔はさせん……!」
 言って、己は、敵の足場の切り崩しを続行していった。
 膂力に任せた一撃でなぎ払い、粉砕された破片すらも吹き飛ばす。
 己の周囲が、開けていく。
「――何をしていル! 屍人ヨ! 奴を止め――」
 そうしていけば、危機感を抱いた敵が“水晶屍人”を使ってこちらを止めようとしてくるが、
「――何をしていル……!?」
 その声が驚愕に変わったのを己は聞いた。
 何をしているか。
 二度発せられた問は、やはり二つの意味を孕んでいた。
 ダブルミーニングだな……。
 一つは、影勝やエミリィが相手取ってるとはいえ、未だ周囲に数多くいる屍人達が、踏み込んだ自分達に未だ無反応だったこと。
 そしてもう一つは、金華が信じられないものを見る目で見ている先にあった。
「おぉ〜……! 面白いっスね〜……」
 マイが、平気で“水晶屍人”の顔を平手で軽く叩き、間近で覗き込んでいたのだ。


 マイはテンションがアガっていた。
 なにせ初戦争っス……!
 それも初戦場で、よく知る皆と一緒だ。楽しみだった。しかも現地に着いたらサプライズゲストとしての錬もいてもうテンションアゲアゲっス。
 その後も綺麗な翠色の光の柱を見たり、ルエリラを肩車して花火のように光る光片を見たり、皆で屍人の波を掻き分けたり、また特大な花火があったやっぱりまぁテンションアゲアゲアゲっス。
 あんなの初めて見たっスね〜……。
 綺麗で、面白かった。また見たいなと、そう思うが、今は自分にやるべきことがあることも理解してる。
「マイちゃんは雑魚担当っスね」
 ここでの雑魚とは、周囲を取り囲む“水晶屍人”達だ。
「来る途中でちょっと、こっちからも“齧らせてもらった”んスけど……」
 己の手を空にかざし、見る。
「どうやら上手くいったっぽいっスね〜」
 陽光に透ける手、それが変異していた。
「――貴様、何をしタ!?」
 オブリビオンが、叫びに似た問いを寄越してくる。
「言ったっス〜。ちょっと“齧らせてもらった”って。でもまあ、それでマイちゃんも解ったんスよ。――屍人の作り方」
 すると、こちらへ歩いて来る屍人が見えた。
「あれっ? まだいたッス? でもまぁ丁度いいっスね」
 歩いてくる屍人に自分は正対すると、
「よく見てるっスよ〜? まずこうやって……」
 変異した手を振って、
「――こうっス」
 屍人達の口に指を突っ込んだ。
 すると、
「……!」
 変異した手が一瞬震え、
「――――」
 次の瞬間には屍人の眼球の色が変わっていた。
 己と同じ、ピンク色だ。
「これで完成っス〜! きゃっきゃ!」
「…………」
 オブリビオンが何か言いたげに口を開閉するのを横目にしながら、己は屍人の肩にある水晶を叩く。
「しかしマグンショーっていうのも大したことなかったスね、あの、ア……ア……」
 腕を組み、首を傾げ、合わせて身体も傾けながら。
「――アベベ?」
「安倍晴明様ダ……!」
 それっス。金華ちゃん怒りっぽいっス。
 でもまあ、と。
「基本はこの方法っスけど、でもマイちゃん聞いたっす。噛ませて増やしたら雪ネズミ式に増えていくんス。楽ちんっス〜」
「雪だるマ式……! もしくハ、ねずミ算……!」
 それっス。金華ちゃん怒りっぽいっス。
 だけどまあ、と。
「来る途中からマイちゃん、隙あらば口に手ー突っ込んでたんスけど……」
 今頃どうなってるんスかね。


「エミリィ! エミリィ! 屍人が屍人を喰ろうておるぞ! 何じゃあれ!」
「ヒャッハー! 世紀末だー!」


 戦闘は佳境に入ったと、合流した真多子はそう思った。
 いまや“水晶屍人”のほぼ全てにマイの寄生虫が廻り、無力化され、
「おぉ……!」
 シュバルツが乱立する“如意棒”を切り倒していき、
「――きゃっきゃ」
 しゃがみこんだマイが土弄りをしていた。
「アタシ達も行こっか!」
「うん、せんせーちゃん!」
 己を装備したせんせーの声に答え、二人で残っている“如意棒”を削っていく。
 シュバルツが大きく、一斉に刈り取る動きならば、こちらは速く、連続で抉り取る動きだ。
 せんせーの長身による大きなストライドで助走し、柱のように突き立つ“如意棒”へ加速が乗った一撃を突き込むと、
「やっ……!」
 そのままドリルとなった腕を押し込み、破砕を確認すれば、
「――――」
 振り抜くのもそこそこに腕を引き抜き、次の柱へと向かっていく。
 真多子を拳に見立てたコンビネーションだ。
 単純な動きだが、それゆえ動作の隙を無くしていけば回転率を上げられる。
 そして正しく“柔軟”な自分だ。
「んん〜……!」
 それに合わせて、形態を最適化する。
 そうして自分達は回転率を上げていった。
「――!」
 拳が届く距離まで最短で踏み込み、最低限の力で柱を打撃。返ってくる反動を手応えとして、そのままバックステップ。
 次。
 間合いまで踏み込み、最速で打撃。反動で拳を戻し、バックステップ。
 次。
 一歩で踏み込み、打撃一発。反動で押され、ステップ。
 次。
 踏み込み、打撃。反動でステップ
 次。
 踏み込み、打撃。ステップ。
「これだね! せんせーちゃん!」
「うん!」
 己の周囲を、“如意棒”の破片が絶えず舞っていく。
「おのレ……!」
 すると、そんなこちらに対して、“如意棒”の上に立った金華が攻撃を突き込もうとするが、
「――おっと、させねえぜ!」
「ちッ……!」
 顔面狙いに投擲された苦無で、それは阻止された。
 錬だ。


 錬はオブリビオンと同じ場にいた。
 すなわち、
「いいな、ここ。ゾンビがいないから快適だ」
 “如意棒”の上だ。
 棒の表面を蹴って上がり、頂点。極小の足場だが、しかし危うげ無く立つと、
「……!」
 足場から足場へ飛び移っていった。
 先行している敵の元へ、駆けていくのだ。
「どケ!」
 追われる敵が、追うこちらを排除しようと、手に持った“如意棒”を伸ばし、打ち飛ばそうとするが、
「――あらよっと」
 見切って回避。その隙に一気に距離を詰めると、
「貰った……! ――おらっ!」
 敵の服を掴み、地表に向かって投げ飛ばした。
「……!」
 だが、敵は衝突する直前に“如意棒”を伸長し、地面を打撃。そうして、落下中に出来た僅かな余裕を利用し、
「おいおい、曲芸師かよ……!」
 乱立する“如意棒”の表面を次々に蹴って、上がり、こちらの上空を取った。
「くっ……!」
 慌てて武器で受けようとするが、
「そのちっぽケな暗器でカ! 潰れロ……!」
 “如意棒”が、こちらの脳天目掛け振り下ろされた。


 金華は思う。そのはずだった、と。
「――――」
 だが、振り下ろした打撃の先、“如意棒”の上に立っていた猟兵の姿が掻き消えたのを見て、金華は今まで見ていた敵の正体に気づく。
「――残像カ!」
「ご名答!」
「――!?」
 声に振り返った先、己はそれを見た。
「――“分身殺法・陽炎舞”」
 乱立する“如意棒”の上、その殆どに猟兵が立っていたのだ。
「どれが実で、どれが虚か……。お前に見切れるか?」
 直後。無数という数の暗器が飛来した。
「……!」
 どれもが一つ残らずこちらの身体を狙ったものだ。“如意棒”を振るい、それらを弾き飛ばそうとしても、
「小癪ナ……!」
 その多くは残像だ。
 だが、
「グぅ……!」
 その中には混在する“本物”が、身体を削っていく。
 そして、実と虚が混在するのは暗器だけではない。
「どうやら見切れなかったようだな……!」
「ぐぁアあッ……!」
 接近してきた猟兵の内の一体が、こちらの背後から暗器を突き刺してきた。
「くソ……!」
 衝撃でたたらを踏んでしまい、“如意棒”の上から落ちそうになるのを堪えようとする。が、
「――!?」
 突如、己の視界が下がった。
 下降していくのだ。
「――見切るのを俺だけに絞っちゃダメだぜ」
 そんな猟兵の声を聞きながら、己は地表に激突した。


 兵庫はそれを握っていた。
 長く、紐のように伸びたそれは、二種類の素材で出来ていた。
 どちらも虫の皆さんです……!
 紐状の寄生虫である“皇糸虫”を軸に、微生物の集合体である“蠢く水”で覆ったそれは、強靭で粘着質なロープだった。
「ガっ……! ハ……!」
 それが、地表に倒れ伏す金華の足首に巻き付いていた。
 だが、束縛はそれだけではない。
「…………」
 逆側の足には、シュバルツが持つ鎖、“地縛鎖”が巻きついていた。
「グっ……!」
 圧倒的不利な状況から急ぎ逃れようと、金華が両手を地面についた。
 そのときだった。
「――ふぃー! マイちゃん頑張ったっス〜! 準備オッケーっスよ〜!」
 今までずっと土弄りをしていたマイが立ち上がった。
 直後。
「ナっ……!?」
 金華の両手が地面に沈み込んでいた。
「やっと捕らえられましたね……!
「クっ! くソ……!」
 なんとか逃れようと敵は藻掻くが、
「――逃さん」
「ガっ……!」
 シュバルツが斧を振り下ろし、衝撃波を放ってその動きを止める。
 もはや完全に身動きが取れなくなった金華を、シュバルツと真多子を持ったせんせーで取り囲み、
「――――」
 己は、警棒を突きつけた。
「終わりだ……!」
 それだけだった。
 直後。
「――――!!」
 四人の全力の攻撃が、オブリビオンへと叩き込まれていった。


 皆から離れた位置にいたルエリラは、それを知った。
「終わったね……」
 こちらまで聞こえるほどの激震が走ったのだ。
 もはやオブリビオンは消失しただろうが、
「屍人達が残ってるからね……」
 大半はマイが作成した者達だろうが、油断は出来ない。
 皆が無事に退避できるよう、そう思って弓と共に視線を現地に向けたらそれを見た。
「――何アレ」


「エミリィ! エミリィ! 何か向こうから真多子達が超ダッシュしてくるんじゃけど!  しかも、あいつらの後ろからドロドロの地面が押し寄せてくるんじゃけど! 聞いとるかエミ、――ふぎゃー!? わ、鰐鮫殿! このタイミングで……!?」
「ヒャッハー! 地獄だー!」


 急ぎ、現場から離れながら、皆から問われたのでマイは答えた。
「えっ……? マイちゃん何もしてないっスよ。オブリビオンの邪魔するためにアーちゃん撒き散らしてどんどん増えるように命令しただけっス。合ってるっスよね?
 だって、もう収集つかない! ってぐらいめちゃくちゃにすればオブリビオンも困るっスよね?
 ――きゃっきゃ」
「じゃ、邪悪……!」
 錬ちゃんひどいっス。でもまぁ、
「ああなったの、地面ドガァって揺らした人達にも責任あると思うっス……」
「液状化現象ですね! せんせー!」
「兵庫殿はよく勉強してるでござるなあ」
「ありがとうございます! 頑張りました! けど、せんせーの教え方が良かったと思います!」
「おぉう、せんせーちゃん、せんせーちゃん。撫でたくなるの解るけど、後で、後で」
「というか、早くアイツら回収しろ……!!」
 最初から最後まで錬ちゃん怒りっぽいっスね……、と思いながら、頼まれたので地面に残っていたアーちゃん達を回収してから帰ったっス。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月05日


挿絵イラスト