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エンパイアウォー④~霊峰富士の樹海の海

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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「エンパイアウォーの話は聞いてるね? 江戸幕府からの協力要請だ」
 猟兵達を前に、九瀬・夏梅(白鷺は塵土の穢れを禁ぜず・f06453)はにっと笑った。
 サムライエンパイアのオブリビオン・フォーミュラ『織田信長』が、島原に『魔空安土城』を築き上げ、何らかの陰謀を成就させようとしている。
 それを阻止すべく、徳川幕府軍は、切り札である『首塚の一族』と共に、島原への行軍を開始したのだが、その道中には苦難が予知されていて。
「それを回避するのが、最初の役割、ってわけさ」
 夏梅が示した『苦難』は、富士山の噴火。
 行軍への直接の影響はないが、江戸幕府としては噴火による各地の被害を放っておくわけにもいかず、軍の一部を救援に回さざるをえなくなる。
 統治者であるがゆえの、戦力の減少。
 それを阻止するためには、富士山の噴火を止める必要があるわけで。
「普通の噴火だったら、どうやって止めるんだ、ってぇ話だが。
 今回の噴火は、儀式によって仕組まれた、ある意味人為的なものでね」
 ゆえに、富士の樹海で行われるその儀式を潰してしまえば、噴火は止められる。
「儀式は幾つも行われるが、私が予知したのはそのうちの1つ……海の中の儀式さ」
 説明しながら、夏梅は少し微妙な表情を見せ、首を傾げる。
 場所は確かに、富士山の裾に広がる樹海なのだが。
 その儀式場は、オブリビオン『三姫』乙姫が作り出した海の中にあるのだという。
 樹海の中の海。
 分かるような分からないような、不思議な言葉を猟兵達も反芻して。
 やっぱり首を傾げました。
「とりあえず、樹海の中に海を見つけて。
 その海の底で行われている儀式を止めとくれ」

「さあ、儀式を行いませう。『太陽神の儀式』を」
 ゆらりゆらりと、辺りを満たす水が揺れる中。
 青い髪の少女が、青い袖を長く揺らして手を掲げる。
「太陽神の仔を、ケツァルコアトルの子をこれへ」
 珊瑚が囲む大きな玉手箱に腰掛けて、動くことなく。
 代わりに、魚の形の白い影が、蛸の形の白い影が、海蛇の形の白い影が。
 青い少女の言葉に応えるように、泳ぎ回ると。
 小さな竜を連れて来る。
「深紅の血を聖杯に。
 注ぎませう。祈りませう」
 小竜は海蛇に縛られ、蛸に纏わりつかれ、魚に突かれ齧られて。
 鮮やかな紅い血をぼたぼたと流して逝く。
 すぐに杯にを満たした血は、どんどんと溢れ出て。
「霊峰富士から溢れ出る溶岩のやうに。
 注ぎませう。祈りませう」
 海の底の竜宮城で。
 樹海の底の儀式場で。
 捧げられた小竜の血が、眠れる霊峰を目覚めさせていく。


佐和
 こんにちは。サワです。
 富士山5合目には行ったことがあります。車で。

 このシナリオは「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 目的は、魔軍将の一人である侵略渡来人『コルテス』が企む、太陽神ケツァルコアトルの力を使った富士山噴火の阻止です。
 そのために、富士の樹海から『太陽神の儀式』が行われている儀式場の1つを見つけ出して、そこで儀式を行っているオブリビオン『三姫』乙姫を倒します。

 『三姫』乙姫の周囲は海となっており、儀式場は海の底にあることが予知で分かっていますが、その海が樹海のどこにあるのかは不明です。
 すぐ見つかると思いますが。
 また、『三姫』乙姫発見後は、海中での戦闘となります。

 それでは、樹海の中の海を、どうぞ。
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第1章 ボス戦 『『三姫』乙姫』

POW   :    【戦場変更(水中)】溺死のラビリンス
戦場全体に、【干渉し、戦場を水中に変更、複雑な海流】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    【戦場変更(水中)】水底の玉手箱
【戦場を水中に変更した後、玉手箱】から【水中でも広がっていく時間に影響を及ぼす煙】を放ち、【周囲の時間を停止させる事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    【戦場変更(水中)】シズメ、シズメ
【戦場を水中に変更した後、海で死亡した人々】の霊を召喚する。これは【接触した対象を急速に腐敗させる能力】や【海底に沈んだ様々な物を駆使する事】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:那賀ネギ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リア・ファル
共闘・アドリブ歓迎
POW

最新鋭の宇宙船、機動戦艦(のAI)の矜持に掛けて、
……ボクは、沈まない!

霊峰樹海の淵に、海水の組成反応があるのかな。
「…海中もイルダーナなら大丈夫! 気密性バッチリだから!」

念を入れてUC【天空を舞う星】を使用し歪曲力場を展開

迷路には、「ハローワールド」を起動、
『情報収集』『追跡』『早業』で海流の流れを解析、
高速演算マッピングしつつイルダーナで駆け抜ける!

乙姫には、歪曲力場を纏ったイルダーナで突撃!
「宇宙の海も、幻想の海も、……そして海洋の海も!
トライオーシャン・ナビゲーターであるボクには、庭みたいなものさ!」

さあ、骸の海への水先案内、務めさせてもらうよ!



「霊峰樹海の淵に、海水の組成反応があるのかな?」
 富士の裾野に林立する樹々の間を、制宙高速戦闘機『イルダーナ』で駆け抜けながら、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は呟く。
 様々な観測機から収集されたデータを解析し、視覚以上に周囲を探れば。
「……あった」
 零れた声には、半ば驚きが混じっていた。
 あっさりと感知した場所へ、イルダーナの機首を向け、進んで程なく。
 目の前に唐突に現れた、海。
 それは、もちろん樹海の中に存在するゆえに、本当の海のように広くはなく、小さな湖程度の見た目だけれども。
 データは間違いなく、それが海である、と示している。
 樹海の中の、海。
 不可思議な光景に、リアはこの先が儀式場であると確信して。
「海中もイルダーナなら大丈夫! 気密性バッチリだから!」
 イルダーナをに乗ったまま、海の中へ飛び込んでいく。
 それでも念には念を入れ。
「重力および空間制御開始。
 ……フィールド展開!」
 イルダーナの周囲に歪曲力場を展開すると、宙を飛ぶように海を駆けていった。
 思っていた以上にクリアな視界と、観測データを元に、深く深く潜っていく。
 目指すは海の底。
 オブリビオン『三姫』乙姫の居る竜宮城。
 けれども、真っ直ぐ進んでいるはずだったイルダーナは中々底に辿り着けず。
 見えない壁が何枚も立ちはだかっているかのよう。
 それに気付いたリアは、ヘッドセット『ハローワールド』で電子の海を展開した。
「やっぱり、海流の迷路!」
 集めた情報で謎が解ければ、後は簡単。
 不可視の迷路を高速演算マッピングで読み解いて、最短経路を突っ走る。
「宇宙の海も、幻想の海も……そして、海洋の海も!
 トライオーシャン・ナビゲーターであるボクには、庭みたいなものさ!」
 そして迷路を駆け抜けた勢いそのままに、リアはイルダーナで突っ込んだ。
「ああ……客は招いておらぬがのう」
 戦闘機の体当たりに、顔を顰めた乙姫がさっと手を振るう。
 応えるように、周囲を漂っていた白い魚が、一斉にリアへと向かってきた。
 お返しとばかりに突っ込んで来る魚の群れ。
 次々と歪曲力場にぶつかる白い影に、だがリアは目を反らさず真っ直ぐ前を見る。
 最新鋭の宇宙船、そのAIとして。
 機動戦艦の矜持に掛けて。
(「……ボクは、沈まない!」)
 前へ前へと進んで行き。
 力強く、乙姫へとぶつかっていく。
「さあ、骸の海への水先案内、務めさせてもらうよ!」

成功 🔵​🔵​🔴​

野良・わんこ
「海の中だろうとわんこには通用しませんよ!」
誇りは無敵を使用。無敵になる。イメージはマリオのスター。
そう無敵である。今のわんこには敵などいない。
たとえ水圧や海流、迷路だろうとだ。
「水中戦は沖縄で経験済みですよ!」
無敵で迷路の海流を無視できるなら無視してまっすぐ乙姫に向かう。
無理であれば運と「第六感」任せで適当にすすむ。
乙姫までたどり着いたらパンチ一発リバーブロー。
怯んだ隙にレーザーブレード一閃。
「ふふん、スキュラとの激戦を乗り越えてきたわんこを相手にするには少々役不足でしたね!」
「さて、タツノオトシゴならぬケツアルコアトルはどこですかねーっと」



 樹海の中にぽつんと現れた湖、なんて地形はとても分かりやすく、そこを見つけることにさしたる苦労は要らなかった。
 むしろ苦労するのは、その先。
 湖……いや、海の底へ向かわなければならない、というところである。
 水中であるがゆえに、呼吸を確保する手段が必要で。
 海底であるがゆえに、水圧に対抗する手段も必要となる。
 だが。
 その全てを力技でぶち破っていく猟兵が、居た。
「海の中だろうとわんこには通用しませんよ!」
 その人、野良・わんこ(灼滅者・f01856)である。
 複雑な海流がまるで硬い壁のように行く手を阻む不可視の迷路を、そんなものないと言わんばかりに無視して真っ直ぐ突き進み。
 お腹を出したいつもの軽装は確かに泳ぎやすそうだったけれども。
 潜水服どころか酸素ボンベすら何の装備もないまま。
 呼吸も水圧も、欠片も問題にならないとばかりに潜り行く。
 まさしく『無敵』の状態。
「水中戦は沖縄で経験済みですよ!」
 過去の戦闘経験からくる自信がわんこの誇りを支え。
 その誇りこそが、わんこを無敵にする空間を作り出していた。
 今なら、そこいらをキノコや亀が歩いていても、体当たりでぽこぽこと弾き返せそうな程です。よく分かりませんが。
 そのまま海の底まで一直線で辿り着いたわんこは、戦闘機の体当たりで体勢を崩していた乙姫へと肉薄する。
 ぐっと突き出した拳は乙姫の右脇腹をとらえ。
「……っ」
 苦し気に息を飲んだところへ、わんこは続けてレーザーブレードを振り抜いた。
 煌めく軌跡の向こうで、乙姫の周囲を舞っていた白い蛸の影がかき消える。
 そして乙姫自身も、右の長い袖を真ん中からバッサリと斬り落とされていた。
「ふふん。スキュラとの激戦を乗り越えてきたわんこを相手にするには、少々役者不足でしたね!」
 手ごたえを感じてにやりと笑うわんこ。
 白い蛸は消えてしまったし、今回はにょろにょろをお土産にすることはできそうにないかとちょっと残念に思ったりもしつつ。
 でもすぐに、その視線がきょろきょろと乙姫の周囲を彷徨って。
「さて、タツノオトシゴならぬケツアルコアトルはどこですかねーっと」
 見回した先に、白い蛇に絡みつかれた小さな竜の姿を見つけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ゼット・ドラグ
「樹海という名の海なら分かるが、まさか本当に海があるとはな。はっはっは」
義肢だから水中は苦手なのだがな・・・フィルムスーツでシールされてるから平気だとは思うが。
樹に登って上から見渡すように海を探す。見つけたら即飛び込む。
子竜のためにもあまり時間はかけたくないが迷路とは中々厄介。
だが、俺の【リヴァイヴモード】も相当厄介なUCである事を相手に理解してもらおう。
あえて息をせず、溺死を繰り返す事で自身の攻撃力を強化し続け、子竜が縛られている海蛇を探す。
戦闘になったら、【怪力】で腕を振り回し、相手の意図しない海流を作って動きを制限しつつ、銛に変形した【竜を殺す百の刃】で攻撃する。



 樹海とは、大海のように見えるほど広大な森林のことである。
 ……はずなのだが。
「樹海という名の海なら分かるが、まさか本当に海があるとはな。はっはっは」
 登った樹の上から海を見下ろして、ゼット・ドラグ(竜殺し・f03370)は笑っていた。
 湖といった程度の大きさだけれども、感じる潮の香りは紛れもなく海で。
 目の当たりにしても尚、信じられないような光景。
 だけれども。
 ゼットは深く考えることなく、即座に海へと飛び込んだ。
(「義肢だから水中は苦手なのだがな……
 フィルムスーツでシールされてるから平気だとは思うが」)
 サイボーグとして機械化された身体故の懸念も多少はあるけれども、生贄とされてしまう小さな竜のことを思えば、躊躇ってなどいられないから。
(「早く助けてやらねば」)
 どんどんと海の底へと潜っていくゼット。
 しかし、その行く手を海流が阻む。
 右へ左へ、上へ下へ、あからさまに不自然な潮の流れは、迷路のように入り組んで、海底への道を閉ざしていた。
(「迷路とは中々厄介」)
 じっくりとその流れを読み、ゼットは海流の迷路を進んで行く。
(「だが、俺のリヴァイヴモードも相当厄介だぜ」)
 サイボーグと言えども、ゼットは水中での呼吸はできない。
 ゆえに、迷路に時間を取られるうち、ゼットの意識は遠のき、溺死する。
 が、すぐにドラゴンの呪いでゼットは蘇生した。
 しかも、死亡前よりも戦闘力を増した状態で。
(「……俺は、未来永劫戦い続けなければならない」)
 迷路を進み、溺死し、蘇生してまた進み、再び溺死し、蘇生する。
 何回も、何十回も、繰り返される生と死。
 これが百万回になったとしても、ゼットが死ねることはない。
 だから、むしろそのサイクルの頻度を増やすべく、ゼットは息をしないまま、海の底へと迷路を抜けていく。
(「あそこか」)
 小竜ケツァルコアトルは、茶色の髪の少女が指差した先に、既に見つけていた。
 ゼットは怪力をもって腕を振り回すと、迷路のものとは違う海流を作り出す。
「何ぞ……」
 片袖の欠けた乙姫が、顔の前に腕を上げ、驚いた顔で見上げてくるそこへ。
 竜を殺す百の刃を銛に変形させ、鋭い切っ先を突き出した。
 とっさに避けた乙姫だが、銛はその青い髪を引っ掛け、髪飾りを弾き飛ばし。
 ふわり、と結ばれていた長く青い髪が広がっていく。
 それを横目に見ながら、ゼットはそのまま泳ぎ行き。
 次に狙うは、小竜を縛り捕らえる白い海蛇。
 煌めく銛の切っ先は、海蛇を貫き消して。
 解放された小さな竜が、翼を広げ、海上へと戻ろうとするように浮き上がっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳴宮・匡
◆レイラ(f00284)と


海流の流れを【見切り】迷宮の構造把握に努める
水中は音も伝播しやすい
【聞き耳】を立てそれも頼りにするよ

正しい道を見出したらレイラに伝えて
手を引いて先導する
被弾したらまずいんだろ、逸れないようにしないとな

道中【水鏡の雫】で自己強化
思考演算強化の恩恵は反応速度へ多く振り
海中の物体や霊の接近をいち早く感知できるよう努める
接近するものは全て、こちらへ届く前に殲滅
レイラには指一本触れさせない

敵の眼前へ達したら、レイラを守りながら
彼女の術が首魁へ届くよう【援護射撃】

――ああ、勿論通さないさ
レイラのことは、俺が守るから

使役されるものたちが、迷いなくゆけるように
……終わらせてやってくれ


レイラ・エインズワース
鳴宮サン(f01612)と

水中で、ナンテ初めてカモ
デモ私たちはケルベロスだカラ
そう簡単には負けないヨ

先導を鳴宮サンにお願いシテ、その後について進んでいくヨ
手を、ってモウ
仕方ないケドサ!

接敵しタラ、領主の夢を使用
数には数で勝負ダヨ
盾で武装した兵を前衛に、その後ろから隙をついて切り込んで
乙姫への道を切り開いていくヨ
錆びると思っタ?
こっちだって幻影なんだヨ、変わるモノじゃないんだカラ
……安らかな眠りカラ目覚めてこんなコトじゃつらいだろうカラ
ココでちゃんと止めるヨ
徐々に包囲を狭めて、乙姫を逃がさないように攻撃するネ

自分は制御に集中
だって、優秀な目がついてるからネ
一人たりとも通したりなんてしないデショ?



 樹海の海に飛び込んだレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は、周囲に広がる水の煌めきに、ふと、思う。
(「水中で、ナンテ初めてカモ」)
 楽しく遊ぶためではなく、戦うために、泳ぐ。
 それは確かに初めての経験だけれども。
(「デモ私たちはそう簡単には負けないヨ」)
 赤い瞳を真っ直ぐに向けた先に見えるのは、海の底。
 オブリビオン『三姫』乙姫がいる儀式場であり。
 そこへと先導する鳴宮・匡(凪の海・f01612)の背中だった。
 目指す海底は、差し込む陽の光と、思った以上に澄んだ海水とのおかげで、とても綺麗に見えているけれども。
 真っ直ぐに進ませないと、複雑な海流が迷路を作り上げている。
 僅かな潮の差を見切り、また、音を聞き分けて、匡は海の迷宮を読み解いていった。
(「……ん。見えた」)
 確信を得た匡は、後ろを振り返ると、レイラの手を取る。
「こっちだ」
「って、鳴宮サン? 手……」
 レイラの戸惑いは声だけではなく、握った繊手からも伝わってきた。
 唐突な行動に驚いたというのもあるけれど。
 戦いへ向けて手を握るのは、初めてではないから。
 ……あの時は、生きて帰ろうと、約束を交わした。
 掌から伝わる温もりにその約束を思い出し、少し不安気にレイラは匡を見やる。
 けれども。
「逸れないようにしないとな」
 肩越しに微笑む匡は、いつもの穏やかな雰囲気を纏っていて。
 合理的な行動なのだと説明するように告げる声も平穏そのものだったから。
 レイラはどこかほっとして、微笑みを浮かべると頷いた。
「被弾したらまずいんだろ?」
「……モウ」
 どこかからかうような笑顔に、少し頬を膨らませて怒って見せるけれども。
 レイラはその気軽なやりとりの中から、匡の心配を感じ取る。
(「仕方ないケドサ!」)
 あの時、約束は果たせたけれど、匡の目の前で大きな負傷をした。
 ヤドリガミであるレイラは、本体のランタンさえ無事ならば死ぬことはない。
 だからと少し無茶をして、身体中を緋色に染めてしまった。
 きっと匡もそれを覚えているだろうから。
 大丈夫だよと伝えるように、レイラは掌を握り返す。
 伝わる温もり。生きている証明。
 それを匡はしっかりと感じながら。
(「レイラには指一本触れさせない」)
 いつも通りの笑顔の下で、固く誓っていた。
 そして、水鏡の雫で自己強化した匡は、レイラの手を引きながら素早く的確に迷路を進み、抜けていき。
 乙姫へと近づいていくと、その周囲にいた白い魚がこちらへと向かってきた。
 煙や霞でできたかのようなぼんやりした魚達は、さほど攻撃力があるようには見えなかったけれども。
 レイラの手を放した匡は、即座に銃を構え、片っ端から撃ち落としていく。
 接近させる間も与えない、完全なる殲滅。
 誓いを体現するかのように、匡は乙姫との距離を詰めた。
 そしてそれは、匡が守るレイラも、乙姫に近づけたということで。
「数には数で勝負ダヨ」
 ここからなら届くと、レイラは強欲なる領主の夢を紡ぐ。
 現れたのは、華美な武装に身を包んだ領主と、それを守る近衛兵団。
 盾で武装した兵を前衛にして、乙姫への道を切り開いていく。
 その気配に気づいてか、解けた長い青髪を揺らして乙姫がレイラを振り返った。
「海の中で鉄の武装など……」
「錆びると思っタ?
 こっちだって幻影なんだヨ、変わるモノじゃないんだカラ」
 嘲笑いかけた言葉を遮れば、それを証明するように、近衛兵団は乙姫に迫る。
 盾で守りを固めながらも、後ろから隙をついて槍が剣が飛び出して。
 錆びも何も影響がないと示しながら進んでいく。
「……っ、小賢しい」
 ならば海以外で止めようと、乙姫は手を振るい、周囲に霊を召喚した。
 それは海で命を落とした者達。
「行け」
 短い声と共に振り下ろした腕の指示に従い、霊の群れがレイラへと襲いかかった。
 だがしかし。
「届かないヨ」
 霊は、レイラの元へ到達するより前に、次々と撃ち抜かれて姿を消す。
 物欲しそうにレイラを見つめながら撃ち消され。
 伸ばした手の先すらも届かずに撃ち砕かれる。
「だって、優秀な目がついてるからネ」
 にっこり笑って示すのは、迷路を通る間も見続けた、頼もしい背中。
「1人たりとも通したりなんてしないデショ?」
(「……ああ、勿論通さないさ」)
 信頼の言葉に無言で応えながら、匡は銃を撃ち続けた。
 だからこそ、レイラは近衛兵団や領主の制御にだけ集中して。
 乙姫の周囲に霊を集めるように。
 乙姫の逃げ道を塞ぐように。
 兵士による包囲網を作り上げていく。
「安らかな眠りカラ目覚めてこんなコトじゃ辛いだろうカラ、ココでちゃんと止めるヨ」
 レイラのその意志に応じるように、兵士の剣が嘆くような霊を切り裂き、槍が呻くような霊を貫いて。
(「……終わらせてやってくれ」)
 匡も兵士達を援護しながら、ふっと一瞬、祈るように目を伏せる。
 使役される者達が、迷いなくゆけるようにと。
 そして再び開いた焦茶色の瞳は。
 召喚した霊を失い、兵士達に囲まれ圧されていく乙姫を、睨み据えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宮落・ライア
樹海の海ね。まぁ見つけるのは簡単だろうね。
それが湖ではなく海であるなら耳で潮騒を、鼻で磯の香りを
追えばいい。水の気配は野生の勘に引っかかるから。

見つけたらその岸辺?で大剣を構え、力を溜める。
そして森羅万象断で海を薙ぎ払い『海』を割る。
(人質の居場所は分かっていません)
相手の姿が見えるまで繰り返す。

海は揺り篭か?お前の身を護る鎧か?
それを脅かしに来たぞ?

海を割り【自己証明】で自己強化し割った空間に突っ込みダッシュで駆ける。
そして放たれた煙の動きを見切り避けて接近、切り捨てる。



 樹海の中に潮騒が響いている。
 樹海の中に磯の香りが漂っている。
「まぁ、見つけるのは簡単だよね」
 野生の勘で水の気配を追ってきた宮落・ライア(ノゾム者・f05053)は、見つけた海を見下ろし、呟く。
 戦闘機が、やたら元気な茶髪の少女が、黒光るサイボーグが、男女2人組が、次々と飛び込んでいくのを見送りながら。
 ライアは海には入らず、その場で大剣を構えた。
 波紋が消え、静かに凪いだ海面を見据え。
「さあ、断ち切るよ」
 誰にともなく呟くと、大剣を振り抜く。
 海底まで届いた森羅万象断は、真っ二つに海を割り、薙ぎ払われた海水の中から儀式場の一部が姿を見せたけれども。
 そこにオブリビオン『三姫』乙姫の姿はなく。
 だからライアは間髪入れずに次撃を繰り出し、別の海底を剥き出しにする。
 海底のどこにいるのか分からないなら。
 すべて切り開いて見てみればいいと言うように。
 海の断面から飛び出してきた小さな竜すら気にせずに。
「海は揺り篭か? お前の身を護る鎧か?」
 2度、3度と大剣を振るい。
「それを脅かしに来たぞ?」
 ついに乙姫へと辿り着く。
 長く青い髪を振り乱し、和装を思わせる服を破れさせた乙姫は、海の壁を両脇に置いてライアを睨み上げる。
 その視線に呼応するように、乙姫が腰掛けていた玉手箱から白い煙が噴き出した。
 煙は時間に影響を及ぼし、海の壁の時間を止め。
 さらにライアを捉えんと、空へと駆け上がっていく。
 しかし逆にライアは海の底へと降り立って。
 自己強化をかけながら乙姫へと肉薄した。
 空へ伸びていた煙を躱し、水のなくなった海底を地上と同じように駆け抜けて。
 驚愕に目を見開く乙姫へと接近する。
「ああ……祈りませう……」
 左右の壁の中から仲間の猟兵達が見つめる前で。
 乙姫は絶望の呟きを零して。
 ライアが振り抜いた大剣に、断ち切られて姿を消した。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日
宿敵 『『三姫』乙姫』 を撃破!


挿絵イラスト