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エンパイアウォー③~猫じゃらし

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 ――言ったニャ?

「「言ったニャ、言ったニャ」」

 ――聞いたニャ?

「「聞いたニャ、聞いたニャ」」

 上杉様はおっしゃったニャ。
 これより来る者たちと、遊んでいいと。

 猫じゃらしのように、噛んでよいと。
 衣桁に掛けた着物のように、引き裂いてよいと。

 そして、上杉様は約束してくださったニャ。
 うまく遊べたら、山のようなマタタビをくださると。

 わくわくニャ。楽しみニャ。

 はやく来い来い。おもちゃ――徳川の者――たち!


「ここに来たって事は、大きな戦が始まったって説明は必要ないだろう?」

 さっさと本題に行こう、と。
 せっかちにも説明を始めるのは、羅刹のグリモア猟兵――蛍火・りょう(ゆらぎきえゆく・f18049)だった。

「簡単に言っちゃえば、敵の親玉を倒すのに幕府軍の力が必要だから、彼らの道中の障害はぼくらが払おうって話だ」

 集結する徳川幕府軍は、本隊が東海道を、中山道方面軍が中山道を通り、畿内への玄関口である関ヶ原へと向かう予定だ。
 この作戦で担当するのは、中山道方面軍の防衛。
 そこには、魔軍将の一人である軍神『上杉謙信』の軍勢が待ち構えている。

「敵はやる気満々だからな。このまま中山道方面軍が進行すると、2万の軍勢が全滅する事になる」

 そうなる前に猟兵たちが先行し、中山道の要衝である『信州上田城』に配された、『上杉謙信』の軍勢を可能な限り削り取って来てもらいたい。

「信州上田城は小さな山城だからな。軍を収容しきれなくて、周囲の山岳地帯に複数の部隊を展開させている。キミたちに殴り倒して来て欲しいのは、この山岳地帯にいる主力部隊の1つ……猫又たちだ」

 『猫又』……猫の、妖。

「……冗談で言ったんじゃないぞ。本当に猫又の部隊がいるんだ」

 ちょっと考え無しな行動をする事もある、愛嬌のある妖ではあるのだが、しかしこれが、なかなかどうして手強かったりする。

 猫ならではの俊敏さで、山岳地帯でも身軽に動き回り、物音や素早く動くものに敏感に反応してくるため、襲撃するのは容易ではないだろう。

「逆に言えば、敏感に反応し過ぎる……とも言えるか。上手く利用できれば、奇襲できるかもしれないな」

 戦場となる山岳地帯は、高低差もあり木々も多い。
 非常に見通しの悪い地形だが、それは敵も同じ事。
 敵の特性や地形を上手く利用する事ができれば、有利に事を運ぶ事ができるだろう。

「キミたちの襲撃で大きく戦力を失えば、上杉軍は不利を悟って撤退するはずだ。きっちりぶっ飛ばして来てくれ」


音切
 昨日書き上げたエンパイアのオープニングが提出出来なくなり、
 膝を抱えている音切です。よろしくお願いいたします。

 このシナリオは、倒すべき敵を既に補足している状況から始まります。
 この時点で、敵からはまだ補足されていませんが、
 敵も警戒状態にあるため、襲撃は簡単ではありません。ご注意ください。

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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
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第1章 集団戦 『猫又』

POW   :    バリバリ引っ掻くニャ
【両手の鋭い爪による引っ掻き攻撃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    猫の本領発揮なのニャ
【両手を地に付ける】事で【四足の型・高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    これが猫又の妖術なのニャ
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:風鈴

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

山北・樅
軍神っていうのを殺してみたかったけど、今回はやれないんだ。
猫又もまだ知らないやつだし、これはこれでいいか。

敏感に反応する相手らしいし、誘い出せないかな。
足音を完全に殺さない程度の忍び足で敵陣に少しずつ近付いて、奴らが出て来たら音を絶って木陰に潜む。
こっちに気付いていない奴を一匹ずつ、【刺天】で暗殺していきたい。
同じやり方をする味方と連携できるなら、多方向から仕掛けて確実にやる。

「…動くな、刺せない」
相手の速さに対応できないなら【刺天】の加速を出来る限りやる。
軍神を殺す前に、配下にやられたくない。

アドリブ・連携歓迎


フィロメーラ・アステール
「猫は……紐に弱い!」
なんか遊びたそうにしてるしなあ?
特製のおもちゃで遊んでやるか!

【煌天つまびく無窮の星琴】を発動だ!
【アート】の技法を活用し、長~い猫じゃらし的な紐を編む!
【念動力】で動かすことで【演技】力も【パフォーマンス】力も、通常の猫じゃらしとは段違い!

【聞き耳】と【第六感】を働かせて敵の気配を察知!
【迷彩】魔法と【忍び足】により身を隠しながら、猫を釣るぞ!
連中は物陰でチラチラする物によく飛びつく!
視界の悪さが有効に働く作戦!

釣れたら【グラップル】だ! 猫じゃらしが巻きつく!
【破魔】の力を流し込み攻撃!

視界の悪さを利用して各個撃破……。
いやなんかバレた後も普通に釣れそうな気もするな!



 赤い衣を揺らしながらが、猫又たちが山岳地帯をゆく。
 周囲を興味津々に見回して、ゆらりゆらりと尾を揺らしながら歩く様は、散歩を楽しんでいるただの猫のようでいて。
 しかしこれは、中々に隙がない。

(軍神っていうのを殺してみたかったけど……)

 木陰に身を隠し、息を殺して。
 山北・樅(自由隠密・f20414)は、猫又たちの様子を伺う。

 あの猫又たちを含めて、この山岳地帯に展開しているオブリビオンは『魔軍将』の1人、軍神『上杉謙信』の軍勢なのだと言う。

 この身に、暗殺の技術を叩き込まれた者としてはやはり、彼らの『頭脳』となる将軍を早々に討ち取りたい気持ちはあるが、今はまだ、その時ではないらしい。

 だが今、この視界に居る者たち――猫又たちもまた、排除するべき敵であることには変わりはなく。
 そして敵であるならば、樅の価値観では2通りに分類される。

 すなわち、『殺した事のある敵』か『ない敵か』の、どちらか。

 猫又は、後者。
 なら、これはこれでいいかと、己を納得させて。
 樅はその手に、濡れた刃を握る。

 狙いは、1体ずつの確実な暗殺。
 だが、何も考えていないようでいて、一応周囲を警戒しているらしい猫又は、一塊の集団で移動している。
 
 物音や素早く動くものに敏感に反応してくるという話だが、ならばここは……。

「特製のおもちゃで遊んでやるか!」

 突然、真横から……しかも、顔のすぐ横から聞こえてきた声に、樅が声を上げずに済んだのは、彼女が元より口数が多い方ではない事と、暗殺者として感情を制する術を身に着けていたからだろう。

 星灯りのように煌めく金色の髪を揺らして、ふわふわと樅の顔の横を飛んでいたのは、フィロメーラ・アステール(SSR妖精:流れ星フィロ・f07828)。

 敵の部隊を倒してきて欲しいと、そう言われはしたものの。
 いざ、その敵を補足してみれば、それは遊びたそうにしている猫たちの群れ。

 妖と言っても、猫は猫。毛づくろいで顔を洗ってみたり、耳の後ろを掻いている様など、丸きり猫そのもので。
 猫と言えば、そう……。

「猫は……紐に弱い!」

 まるで琴をつま弾く様に、フィロメーラが小さな手を動かせば。編み込まれるのは、光の糸。
 魔力によって錬成されたそれを、繊細な手つきで長く。より長く。
 織り成し、編み込み、伸ばしていけば、そこに出来上がったのは。

「猫じゃらし……?」

 樅の目から見ても、誰の目から見ても。
 それは、まごう事なき猫じゃらし。

 光の糸で編まれたそれは、キラキラと輝いて。
 先端は風に揺れる程に細やかな糸がふかふかで、茎の部分は綿密に編み込まれ、すらりと伸びている。

 ただ、その茎が何だか長すぎるような……?

 そのようなもので、何をするのかと。首を傾げる樅に、任せてと言わんばかりに笑みを返して。
 フィロメーラは編み上げた猫じゃらしへと、意識を集中させる。

 あの猫又たちの全てを、一度に相手取る事はできないから。
 木々の生い茂るこの戦場で、一部の猫又だけに見えるように。
 猫又たちの気配、位置を探って。
 ここぞというポイントへ、猫じゃらしを投げれば。
 ここからは、根気と集中力の勝負。

 不可視の力で猫じゃらしを動かして。
 木陰からちらりと覗かせれば、数匹の猫又がニャニャ?と反応を見せる。

 更に猫じゃらしをちらちらと動かせば、猫又たちは両手を地につけうずうずと――よし、捕らえた。

 行くよ、と。樅へと視線を送って、フィロメーラが猫じゃらしを引っ張れば。
 マグロ……ならぬ、猫又一本釣り。
 狩猟本能を全開にした、猫又たちが一気に速度を上げて追いかけてくる。

 その数、3体。

 フィロメーラからの合図に、短刀を持ち直した樅が構える。

 チャンスは一瞬。
 完全に猫じゃらしへと気を取られている猫又たちが、目の前を通り過ぎる、その時――。

 最も後方に位置した猫又めがけて、樅が跳ぶ。

 助走距離のない、体のバネだけを使った跳躍。
 だがその一瞬、樅の振るう刃は猫又たちの知覚を凌駕して。
 他の2体が気付く暇もなく、その命を刈り取る。

「捕ったニャー!」
「あぁ、ずるいニャ!」

 仲間がやられてしまった事に気付かないまま、残る猫又が猫じゃらしへと爪を立てれば。
 猫じゃらしは、はらりと解けて。

「楽しいニャー」

 じゃれる程に、その糸が体に巻き付いて居る事に、猫又は気付かない。

 光の糸は、くるくるくるりとその体を結わえて。
 今だと、フィロメーラが破魔の力を流せば。

 猫又の体が、ぽひゅんと消える。
 残るは、あと1体。

「罠ニャ!?」

 残された猫又が、慌てて鬼火を灯すけれど。
 もう、遅い。

 猫又の背に、宵闇の影のごとく樅が迫る。

「…動くな、刺せない」

 言葉よりも先に、その刃は猫又を貫いていた。

 この軍勢を率いる者……軍神を殺す前に、配下にやられたくないのだと、樅が零せば。
 じゃあこの方法で、もう2~3匹釣ってこよう!と、フィロメーラが元気よく手を上げる。

 彼女たちの猫又釣りは、もうしばし続くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

五条・巴
猫、好きだよ。可愛いよね。
走り回る姿も、のんびりしてる姿も、自由気ままなところも可愛い。
けれど、おいたが過ぎるようならちゃんと叱らなければ。
残念ながら君たちに叱られた後はないけれどね。

さあ、遊ぼうか。
時には木々に紛れ、時には高地から重力に従って落ちるように移動して。少し土地の開けた所まで行こう。
着いてきてる?楽しいね。

実は僕も猫を連れているんだ。
猫又を挟み込むように呼んだのは春風の名を持つ相棒。
"宵の明星"
どうかな、かわいい僕の猫。君らの倍以上大きい、ライオン。

大きな背に飛び乗って、じゃれる子達に銃弾を浴びせよう。

そろそろ遊びの時間は終わりのようだよ。
マタタビはお預けだ。



 共に戦場に来た仲間たちが、様々な手で猫又たちの注意を引く。

 美しい猫じゃらしや炎にうずうずしてみたり、大きな音に驚いてみたり。
 どの仕草も猫そのものの妖に、思わず、口元の笑みを深めて。
 五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)はくすりと笑う。

 猫は好きだ。
 本能全開に全力でじゃれついて来たかと思えば、気が乗らなければそっぽを向く気まぐれな所も。
 警戒心を忘れているのではと言うくらい、のんびりと寝転んでいたりする無邪気さも。その毛並みの柔らかな手触りも。

 けれど、この猫たちは……。

「さあ、遊ぼうか」

 あちこちで上がる戦火の中、巴もまた、その姿を猫又たちの前へと晒して。手招くように、呼びかける。

「おもちゃニャ!」

 目を輝かせた猫又が、ぴょんと飛びついてくるけれど、さらり身をかわして。
 ――さぁ、追いかけっこを始めよう。

 木々の隙間。ちらりと巴の姿が見えたかと思えば、また消える。
 あっちに見えたかと思えば、いつの間にかこちらに。

「そこニャー!」

 今度こそ捕らえたと。振るった猫又の爪は、またしても空を切って。
 巴の姿は重力に従って、既に斜面の下方へと。

 さぁこっちだ。おいで、おいでと仕草で誘えば。
 猫又たちも、いよいよ本気で。四足で駆けて、後を追う。

 巴の後を付いてきているのは、2体の猫又。
 本来これは『戦い』である筈なのに。
 その目をキラキラと輝かせ、自分を追いかけてくるその姿は、猫そのものの一途さで。

 少しだけ、戦いである事を忘れて。
 つい、楽しいと思ってしまう。

 けれど、彼女たちのあの爪は。
 人の肉を裂き、血を流す。

 巴の目の前には、木々が開けた広場のような地形が見えている。
 遊びの時間はそろそろおしまい。
 おいたが過ぎる、加減を知らない猫たちは、ちゃんと叱ってあげないと。

「追い付いたニャ!」
「観念するニャー」

 自分たちが追い詰めたのだと思い込んでいる猫又たちに、まずは相棒の紹介を。
 その名にふさわしくゆったりと、しかし堂々した歩みで巴の後ろから進み出るのは、黄金のライオン。

「どうかな、かわいい僕の猫」

 3mをゆうに越えるその巨躯に跨って、美しい鬣を撫でてみせれば。
 猫又たちが、でっかいニャ!ズルいニャ!と、毛を逆立てて騒ぎたてる。

 自分よりも遥かに鋭い爪と牙を持つものに、じゃれつかれるというのがどういう事か。
 これで少しは理解してくれただろうか。

 けれど、巴は銃を構えて。

「マタタビはお預けだ」

 獅子の咆哮と、銃声が響く。

 いかに無邪気な猫と言えども。人の命を摘む存在に、叱られた後は無いのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

逢坂・理彦
猫又の部隊かーそっか猫又かー…なんだかあの子達ってどこか憎めなかったりもするんだけど…彼女らもオブリビオンだからねぇ。

地理的に高いところから攻撃をできると有利
まずはUC【狐火・椿】をゆらゆらと遊ばせる様にただよわせそれに気を引かれ遊び始めたらそのまま椿の火をつけようか。
そのまま一気に攻め込み墨染桜で【早業・なぎ払い】で斬り込み。わざと気をひくような動きをして【だまし討ち】をしつつ。
攻撃は【第六感】などで【見切り】あわよくば【カウンター】を狙う。

アドリブ連携歓迎。


篝・倫太郎
猫又、なぁ……

Lorelei を起動させて集音と熱探知
居場所をある程度特定したら忍び足で接近
戦闘知識で出来るだけこちらが地形的優位に立てる位置取りを意識

念のため移動前に小石を幾つか拾っとく
移動時の音で気付かれそうな場合は小石を逆方向に遠投して
そちらに注意を向ける

複数の的が射程に入ったら、拘束術使用
鎖の攻撃と同時にダッシュで接近し
華焔刀で先制攻撃からのなぎ払い
刃先を返して2回攻撃の範囲攻撃
攻撃は全て衝撃波ものせてく

敵の攻撃は見切りと残像で回避
回避が間に合わない場合はオーラ防御で防いで
カウンターからの咄嗟の一撃

普通の猫だったら、遊んでやるけども
お前らの遊び相手になる趣味はねぇからよ
とっとと還んな?


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
にゃ!にゃんとなく猫気配に誘われて。ふんふん妖かにゃあ。
ここは27代目様の力を借りて【子猫の魔法使い】に変身し魔法の箒(マタタビ製)を召喚(ごろごろ)
そっちが数ならこっちは大きさで勝負にゃ!魔法の箒に乗って空を飛び、特大の肉球を模した魔法弾を空から落とすのにゃ。
尤もこの魔法弾は意識を飛ばす気絶魔法の方向に特化してるんだけどにゃあ。
あ、飛翔能力半減するけど相乗りは歓迎するにゃよ?。僕自身空中戦が得意という訳でもないから操作をお任せしても良いにゃね。
にゃはは操縦代行者がいないなら酔っ払い飛行で爆撃にゃあ。
(髭感知で攻撃や動きを見切り、オーラ防御と武器受けで捌くにゃあ。)



 装着したゴーグルを起動させれば、目の前に広がるサムライエンパイアの光景を、塗り替えるように。
 篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)の目には、この世界には存在しない筈の電脳世界が広がる。

 山頂の方向を見上げれば、実際に見えている光景に上書きするように、点々と表示されているのは生き物の熱。
 孤立している点もあるが、明らかに集団で固まっているこれが恐らく猫又たちのものだろう。

 高低差のある地形で下方から攻めるというのは、視界も悪く明らかに不利だ。

 念のため、小石をその手に。
 気付かれないよう足音を忍ばせて、猫又たちの上手へと向かえば。

 同じように高所に陣取っていた仲間――逢坂・理彦(守護者たる狐・f01492)とかち合った。

 理彦が人差し指を口元に当てれば、倫太郎がこくりと頷く。

 敵は集団。それも、徳川軍に備え警戒状態にあるという。
 不用意に仕掛ければ、瞬く間に取り囲まれてしまうと、双方が理解していた。
 とは言え……。

 身を隠した木陰から、様子を伺えば。
 猫又たちは、毛づくろいで顔を洗ってみたり、耳の後ろを掻いてみたり。

(猫又の部隊かーそっか猫又かー……)

「あ、トンボニャ!」

(トンボかー……)

 見た目がヒトっぽい事以外は、正直ただの猫のようにしか見えない猫又たちは、どこか憎めなくて。
 既に戦いは始まっているというのに、どうにも戦意が削がれてしまう。

 だが、彼女たちもまたオブリビオンである事に違いなく。
 このままいけば中山道方面軍2万の人命を奪うのだと、はっきり予知されている。

 小さく息を吐き、己が心から『甘さ』を締め出して。
 共に様子を見ていた猟兵に視線で合図し、その手に灯した狐火を放てば。

 ゆらり、ゆらりと。
 小さな炎は、誘うように猫又たちの所へ。

「これ、なんニャ?」

 首を傾げた猫又の1体が、その手で触れれば。
 狐火は、花開く椿のごとくふわり優雅に燃え広がって。
 猫又の体が燃え上がる。

「敵襲ニャ!!」

 猫又たちが色めき立つ隙に、倫太郎が小石を投げる。
 がさりと、草むらを揺らせば。そこニャ!と気を取られた猫又が飛びつく。

 そこへ倫太郎が飛ぶ。
 高低差をものともせずに、中空へ身を躍らせて。
 放つのは、不可視の鎖。

 重力を乗せた振り下ろしの一刀が、1体目の猫又を屠るのと、周囲の猫又たちが鎖に囚われるのは、同時。

「動けないニャー」

(猫又、なぁ……)

 鎖に囚われて、手足をじたじたと動かしている様は、ただの猫であったなら、愛嬌のある光景とみる事ができただろう。
 だが、彼女たちはオブリビオン。その爪は、人を引き裂く凶器でしかない。

 身を捻り、素早く持ち直した華焔刀を、今度は横に凪いで。
 過去より染み出した厄災を、鎖諸共に断ち切った。


「ふんふん妖かにゃあ」

 広い山岳地帯の中に漂う、猫の気配に誘われて。
 戦場に迷い込んで(?)来た、レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)は、瞬時に理解した。

 その牙は、甘噛みを知らず人の血を流し。その爪は、加減を知らず人を傷付ける。
 猫は猫でもこの猫たちは、お仕置きが必要な猫であると。

「ここは、27代目様の力を借りるにゃ!」

 空の青色が透けて見える、透き通った羽を持つフェアリーが、その姿を変えていく。
 全身が、髪と同じ色のもふもふとした毛皮で覆われて。すらりとした尻尾が揺れる。その姿は――子猫そのもの。

 さぁ行くにゃ!と、尻尾ふりふり意気揚々。
 召喚した箒にぴょんと飛び乗れば、浮かび上がった箒は子猫と化したレフティを乗せたまま、ぐんぐん高度を上げていく。

 眼下に見えるのは、既に始まっている戦いの光景。
 赤い衣を翻して、戦場を駆けまわる猫又はまだまだ数も多く残っている。

「そっちが数ならこっちは大きさで勝負にゃ!」

 レフティが子猫の姿で、片手を上げれば。
 目には見えぬ魔力が、その手へと集まってくる。

 この身は既に、子猫の魔法使い。
 その魔法を以って集積した魔力は、星さえも堕とすほどに巨大に膨らんで。
 戦場を覆いつくす程に、巨大なそれは――。

「なんだあの肉球……」

 戦場に影が落ち、突如暗くなった視界に倫太郎が上を見上げれば。
 そこにあったのは、肉球だった。

 ……いや、自分でも何を言っているのかよく分からないのだが。
 とにかく、見上げた空には肉球があった。

「肉球かー……そっかー」

 理彦も事態に気付き、空を見上げるが。
 理解を超えた光景に、おじさんちょっと付いていけないと、弱音が零れる。

 いや。そもそも戦場に突如として巨大肉球が現れるという光景は、年齢関係なく誰もの理解を越えてしまっていて。
 揃って動きを止めてしまう、21歳と36歳。

 ちなみに猫又たちは、でっかいニャー!と、戦いを忘れて何故か楽しそうだ。

「魔法弾をくらうにゃー!」

 巨大肉球の向こう側で、誰かの声がした気がする。

 その声に応じるように、巨大な肉球が……ぷにぷにが、迫ってくる。
 猫又の技にこんなものは無かった筈だし、これはたぶん味方の攻撃……だと、思うのだが。

 このままいくと、俺達巻き添えでは?

 心の声がシンクロして、視線を交わし合う21歳と36歳。
 本来、猫又の攻撃に対して使うはずであった見切りの技を全開に、攻撃範囲外まで身を投げる。

 ぷにぃっ。

 冗談みたいな音と共に、巨大な肉球が戦場に落ちて。
 肉球の消えた後に残ったのは、数体の目を回した猫又たち。

「うまくいったにゃ」

 元よりこの魔法弾は、意識を飛ばす気絶魔法を織り込んだもの。
 多くの猫又たちを巻き込む事が出来れば、戦況を優位に運べるはずだ。
 ただ次は、仲間の巻き込み事故にはもう少し注意して放つとしよう。

 うんうん、と。
 己が魔法の戦果に満足気なレフティに、猫又たちが放った反撃の鬼火が迫る。
 だが……。

「おっと、手が滑ったにゃ」

 小さな猫の体は、箒の操縦にはちょっと不向きで。
 レフティを乗せた箒は、あっちにふらふら、こっちによろよろの蛇行を繰り返し。鬼火の攻撃をすり抜けていく。

「ふらふらしてて当たらないニャ!」

 予測できない箒の軌道に、猫又達が歯噛みする。
 「にゃはは」とか笑い声も聞こえてくるし、くやしいニャー!と地団太を踏む。

 その猫又たちに、理彦の薙刀が迫る。
 不意打ちのようで、少し申し訳ない気もするけれど。これは戦。

 猫又たちの注意が空の仲間へと向いている今が、絶好の好機と。
 強く踏み込み、薙刀を振るえば。柄に描かれた桜が、まるで風に舞うかのよう。

「そうだったニャ。こっちにもおもちゃが居たニャ」

 辛うじてその刃を逃れた猫又に、理彦がおいでおいでと誘えば。
 応じた猫又が、爪をむき出しに飛び掛かる。

 その、横合いから迫る、もう1振の薙刀。

「普通の猫だったら、遊んでやるけども」

 この猫たちの遊びは、血の臭いが鼻を衝く。

「とっとと還んな?」

 振るわれる軌跡は、揺らめく炎がごとく。
 倫太郎の刃が、しかと猫又を捕らえた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐世保・初春
【WIZ主体】

木々の密集する暗がりを暗視を使って通り猫又部隊の背後を取る。
背後を取ったら木に登り上から猫又に破魔と範囲攻撃を叩き込む。
「人に仇成すは妖の誉れぞ。じゃが世に仇成すは妖の誇りにあらずなり、止まるか滅ぶか選ぶがよい」

近づく猫又は破魔と範囲攻撃で払い、攻撃は残像でかわしつつ、狐火で掃くように猫又を山奥に追いやっていく。

ある程度猫又が固まったら狐火で周囲を炎で包み殲滅していく
「塵も残さぬよう丁寧に妾の狐火で掃き清めて焼き払ってくれようぞ」
「焔に呑まれ、煙となりて冥府と帰るがよい」

「悲しきかな、妖の本質は人の影たるに、人無くしては我らもまた己で居られなくなるであろうに」


秋穂・紗織
迎撃による決死の覚悟と必勝を定めた人達
ならば、その道を切り拓き、明日へと繋げ、帰れるようにするのが私の勤め
……ええ、何処か、世界に取り零されているような
私はそんなに必死と切実になれないのを感じながら

それでもと


猫の妖しによる部隊とは、これはまた珍しいものです
もっとも、猫由来の敏感さは偵察や奇襲には有利過ぎるもの
ここは音への敏感さを逆手に取りましょう
用意するのは爆竹
他のひとの動きに合わせ、高所から爆竹を低所へと投げ
その爆発音に反応した所へ、背後から襲撃を仕掛けるように

出来る隙は一瞬を見逃さず
先制攻撃+早業で鎌鼬を飛ばし、迅く、速くと斬り裂きます

「それでも、守りたいと思うのも、本当の私なんですよ」



 猫の妖による部隊……と、聞いてはいたものの。

 木の上から、猫又たちの様子を伺っていた佐世保・初春(妖狐の陰陽師・f02603)は、その年齢に似つかわしくない深い溜息をつく。

 確かに、人に仇成す事は妖の誉れだと。
 妖狐たる初春は、そう思う。

 だが、あの猫又たちは、いずれこの世界そのものを壊してしまうのだ。

 嘆かわしい。
 過去の海より来るものと言えど、妖は妖。
 その誇りは。魂は。一体どこに行ってしまったのだと。
 何度目かの溜息を吐いて、初春はその手に霊符を構えた。

 その初春が潜む木の根元には、同じく猫又の隙を伺う者が、もう1人。

 しかしこちらは、秋穂・紗織(木花吐息・f18825)は、きょとりと目を丸くしていた。

 相手は猫又の部隊だと、そう聞いてはいたものの。

 散歩でも楽しんでいるかのように、無邪気な表情で。高低差のある地形を物をもせず、身軽に移動するその姿は、猫そのもの。

 何と言えばいいのか。
 全く統率の取れていない。部隊らしさは欠片も見えない、何とも珍しい部隊だと。
 どうにも気が抜けてしまうけれど、ふるりとかぶりを振る。

 どれほど愛嬌のある姿に見えても、その存在を許す事はできないのだ。

 決死の覚悟と必勝を定め、踏み出す程に、死に近づくと分かっているその道を進む人々。
 あの妖たちが踏みにじるのは、その覚悟と心――それは紗織にとって、夜空に輝く星のように。見えていても掴めない。触れられない、遠いもの。
 けれど、その眩さと尊さは、踏みにじられていいものではないと。心は確かに感じているから。
 刃を、その手に。紗織は機を伺う。

 のんきに散歩しているように見えても、ぴくぴくと敏感に動く耳は、しっかりと周囲を伺っているのだろう。
 猫由来の敏感さと、あの身軽さは、この山岳地帯を偵察するには確かにうってつけだ。

 だがどんな長所も、見方を変えれば短所となるのだ。

 火を付けて放り投げた『それ』は、猫又たちの頭上を越えて、草むらへと消えた。
 それだけで、数匹の猫又がニャ?と気付いて、目で追いかけていたのは流石と言えようか。
 だが、本番はこれから。

「ニ゛ャー!うるさいニャー!!」

 突如して、激しい発砲音が戦場へと響き渡る。
 慌てて木陰に隠れる猫又が居れば、毛を逆立て、音の方へ威嚇する猫又もいる。そして、耳を抑えて蹲るものも。

 今じゃ!と、初春が樹上から身を躍らせた。

「燃やし尽くせ!狐火・大火々!」

 魔を滅する力を込めた巨大な炎が、蹲る猫又たちを襲う。
 地面へと叩きつけるように放ったその反動で、燃え広がる炎に猫又たちが慌てふためく。
 その只中へふわりと降り立った初春は、しかと猫又たちを見据えて声を上げた。

「世に仇成すは妖の誇りにあらずなり、止まるか滅ぶか選ぶがよい」
「ニャんかむずかしいこと言ってるから、こいつ敵ニャ!」

 敵襲ニャ!と、色めき立つ猫又たち。
 ……初春の言い回しが大人び過ぎていたのか、それとも猫又たちの知性が残念過ぎるのかについては、言及しないでおこう。

 手を地につけて、四足の姿をとり、猫又たちが初春へと迫る。
 その早すぎる攻撃を、放つ炎を盾として、何とかかわして。
 すれ違い様に、問う。

「うぬら、妖の誇りはないのかえ」

 妖の本質は、人の影だと。初春はそう思う。
 人が驚き、人が恐れ、人を惹引き付ける。そういったものを『妖』と、人が呼ぶならば。
 その人の世を滅ぼした後に、何が残るというのだ。

「よく喋るおもちゃニャ!」

 だが初春の言葉は、猫又たちには届かない。
 その手に鬼火を灯して、初春の狐火を飲み込まんと解き放つ。

「塵も残さぬよう丁寧に妾の狐火で掃き清めて焼き払ってくれようぞ」

 初春の心に呼応して、狐火が膨れ上がる。
 それは、すべてを焼き尽くす破壊の力。
 鬼火さえも例外なく喰らいつくして。猫又たちへと襲い掛かる。

「人無くしては我らもまた己で居られなくなるであろうに……」

 同じ、妖で。
 けれど、過去と今とで、何を違えてしまったのだろう。

「焔に呑まれ、煙となりて冥府と帰るがよい」

 激しい炎を辛うじて耐えている猫又へ、紗織が白刃を振るう。

 明日の世の為、誰かの為に、自らは死の闇の中へと進む人々。

 ならばその道は、死の宵闇は、私が切り拓こう。
 明日の世を、その人たちが生きて迎えられるように。
 命を賭けて守らんとした、誰かと共に在れるように。

 それが、私の自身が決めた。私がここに立つ、意味だから。

 そうでしょう?と、己が心に問いかけて。
 振るう刃は、風を纏う。
 それは、迷いなき冴えた刃となって。狐炎を巻き込み、燃え上がる。

 風の吹き抜けた、その後に。猫又たちの姿は、何処にも無かった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月05日


挿絵イラスト