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エンパイアウォー④~蛸脚衆を突き止めろ!

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 富士の樹海。
 そこは木漏れ日すらもろくに通さない鬱蒼とした空が頭上に続き、切れ間を見せなかった。
 薄暗く視界も取れないまま、ぬかるんだ足場をいくつもの足音が重なる。
 そこに何かサイかゾウか、人よりも遥かに大きな動物を引きずる音も混じっていた。
 ぐったりとしながらも、ようやっと首をもたげて引きずられていくその大きな動物は幼い声でか細く鳴いて、これから己がどうなるかを予見しているようだ。

「ふぁふぁふぁ!もうすぐじゃ、もうすぐじゃ。戦は数よ。この隠密作戦が成功すれば徳川めらの兵を減らせよう。そうともなればわしらの勝利は約束されるという寸法よ!ふぁふぁふぁ!」
 甲冑に八本の刀を携える赤面の武者。
 彼は仮面で表情こそ見えないがくぐもった満足そうな声で呟くと、目の前で引きずられる動物に蹴りを入れて歩かせた。
「我ら赤面の蛸脚衆が崇めるは太陽神。あのコルテスとかいう渡来人が連れて来たこの太陽神の児の生き血をを祭壇に捧げれば術は完成よ。ふぁふぁふぁ!見せてやろうぞ徳川の若造よ!蛸脚衆が秘術、富士大噴火を!」

 戦争が始まったとこともあり、いつになく慌ただしい喧騒が響くグリモアベース。
 そこに蛸のキマイラ、グリモア猟兵の明石・真多子が6本の腕を大きく振って自分の予知を手伝ってくれる猟兵達を集める。
「こっちこっち~!みんな忙しいのに来てくれてありがとう!実はカクカクしかじかでそーいうことなの!タコの名前を使ってるのに悪さするなんて酷い奴らだよね!」
 顔をタコのように真っ赤にしてぷりぷりと怒りながら、彼女は先ほどの予知した情景を伝えた。
「でもでも、予知で見れたのは樹海の中ってことだから細かい場所はさっぱりわからないんだよね~。あの竜の児を引きずった跡とか、人海戦術で探すとか、儀式の物資や伝令を運ぶ配下をつけるとか、方法は何でもいいけどアイツ見つけないことには止めようがないんだ~。」
 真多子がごめんね~と頭を掻いて、自分の不備を謝る。
 集まったキミ達は仕方がないと、富士の樹海、広大な森の中から探す方法を思案することになった。
「とりあえず富士の樹海の入り口に飛ばすから、どうにかしてあの武者を探して、思いっきりやっつけちゃってね!祭壇までに追い付ければ儀式は進まないはずだよ!それじゃぁよろしく~!」
 作戦内容をキミ達が確認すると、グリモアの淡い光に包まれ目の前の景色が切り替わる。


ペプシ派
 始まりましたね戦争!
 あまり歴史に詳しくはないので雰囲気で戦争したいと思います。
 上様の大奥を護るためにも頑張っていきましょう!

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオです。
 そのため樹海に隠れて儀式を行っているオブリビオン(ボス敵)を発見して撃破までを一章だけで行うシナリオとなります。
 なので探索も戦闘も満遍なくプレイングに詰めていただければ有利になるかもしれません。
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第1章 ボス戦 『乱世の名将』

POW   :    八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

大豪傑・麗刃
わたしは皆から変態と呼ばれている男。たしかに普段は多少おちゃらけているかもなのだ。
だが一応サムライキングダムの出身。今回ばかりはネタ抜きのシリアスで行くのだ。

まずは敵を探さなければか。これはもうしらみ潰しにやらなければなるまい。
明らかに樹海とは異なる空気。敵の邪気、贄にされる者の恐怖。そういったものを追っていけばいける、たぶん。

そして敵を発見したら?

はあああああああ
(スーパー変態人発動!)

右手に刀と斧!左手に脇差(と呼ぶには大きすぎる剣)2本!むこうは八刀流らしいがこっちは武器4×2回攻撃で互角なのだ。
相手はカウンターで来るらしいので、ならこっちはカウンターを見切ってさらにカウンターで返す!



 グリモアベース内、いつもとは違う慌ただしい喧騒に包まれる場所に、黒髪の青年が神妙な面持ちで入ってくる。
「(わたしは皆から変態と呼ばれている男。たしかに普段は多少おちゃらけているかもなのだ。しかし、故郷の危機と聞きつければ話が違う。今回ばかりは真面目に行かせてもらうのだ。)」
 着流しにジャージ、あまり一般的なサムライのイメージとは掛け離れる出で立ちだが、その青年、大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)はれっきとした先祖代々武人の血を引く男である。
 今もその胸に決意を秘めて、戦場へと足を踏み入れんとここへ馳せ参じたのだ。
「(だけどなぜなのだ?真剣シリアス100%の表情なのに目の前のグリモア猟兵がケラケラ笑っているのだ。わたしの真顔はそんなに可笑しいのだろうか。)」
 普段とのギャップが大きすぎるのだろう。別に彼女に悪意があったわけではないが、堪え切れなかったようだ。
 釈然としないまま、麗刃の視界がグリモアの淡い光に包まれ景色が変わっていく。

 眼を開けると、目の前が見慣れた景色へと移り変わった。
 空を舞うトンビの声、周囲を見渡しても見上げるようなビルはなく、遠くに茶屋の藁ぶき屋根が見える程度。
 ここは生まれ故郷のサムライエンパイアで間違いないだろう。
「さてまずは敵を探さなければ、か。これはもうしらみ潰しにやらなければなるまい。何かしらの痕跡とかそういったものを追っていけばいけると思うのだ、たぶん。」
 富士の樹海の入り口、そこで漠然と立ち止まる麗刃。
 見下ろせば確かに足元に何かを引きずった跡がある。他の世界のようにインフラが整っていないこの世界の田舎道では、探そうと思えばいくらでも痕跡があるのだ。
「それに週刊少年ステップの主人公も大体それでなんとかなってるのだ。」
 懐から取り出した雑誌をパラパラと捲ると、そこにはご都合主義なお約束が記されている。
 愛読書を再びしまうと、彼は樹海へと歩を進めた。

 麗刃は明確に意識はしていなかったが、常日頃から陽の気が溢れる仲間たちに囲まれているせいか、なんとなく逆の陰の気の位置が把握できていた。
 この一等強い陰の気。グリモア猟兵の言っていた児龍、あの子の悲しい気持ちに違いないだろう。
「人も、人じゃないのも。みんな笑顔で笑っているのが一番なのだ。待っているのだ!たとえ待っていなくても押し掛けるのだ!」

 程なくして、遠くで心臓を鷲掴まれるような苦しい悲鳴が上がり麗刃の耳に届く。
 その途端、敵の確認や奇襲などを考える間もなく、真っ先に身体が動き、悲痛な声の元へと駆け寄った。
 そこには全身から血を流し、弱弱しく今にも倒れそうな児龍。
 そして、ゆっくりとこちらを振り返る黒塗りの隠密鎧。そこにはまるで暗闇に浮かび上がるように兜の影から赤面がこちらを見据えていた。
 赤面武者が足蹴にする児龍は、動かなくなる度に痛めつけて歩かせたのだろう。児龍を足蹴にして、それを嗤うくぐもった声が赤面から漏れた。
「ふぁふぁふぁ、徳川の若造が早速よこしたか。存外に早かったのう。この愚図がもう少し速ければのう。」
 対峙しているのは弱いものを虐げ嘲笑う不届き者。一番許してはいけない存在だ。
 目の前の光景を眼にした途端、麗刃の頭がカッと熱くなる。
 麗刃の中に眠る、普段は面におくびにも出さない怒りの感情が、静かに、そして力強く頭へと込み上げる。
 彼から溢れる怒りは収まるところを知らず、ついには怒髪天を衝く。
「はあああああああ、わたしは怒ったのだーーー!!!!!」
 日本人然とした黒髪は燃え盛る炎のように逆立ち、彼の怒りを体現する。
 彼の正義に燃える心が金色に指す太陽のような光の色へと塗り替えた。
 麗刃は今、天道を歩み、正義を背負うモノノフである。そして赤面の武者を射抜く彼の瞳が、悪鬼羅刹の畜生に天誅下さんと語っていた。

「ふぁふぁふぁ!なんとも奇抜な刺客よのう。わしも戦場で名を上げようと八刀流を編み出し奇抜な輩と哂われたものだが。…さて、お前ら手を出す出ないぞ、こやつはわしが斬る。」
 物資を運ぶ雑兵達に手を挙げて制すると、赤面武者が麗刃の前へと躍り出た。
 仮面により感情が見えないが、一騎打ちに値する相手が現れたからか老兵の動きは心なしか湧き立っているように見える。
 赤面武者は歩きながら器用に背中に背負った4本の刀と脇に差した2本の本の刀を抜いては放り投げて周囲に突き立てる。そして残った2本の刀へ腕を交差するように居合いの構えを取って真っ直ぐに目の前を見据えた。
「さぁ、来いよやぁ若造!!」
 静かな怒りを宿す麗刃も負けじと得物を次々取り出す。
 右手に斧、そして逆手に刀を束ねて握り、左手には本人が勝手に脇差と呼ぶ明らかに西洋風の両刃の剣を同様に束ねて握った
 敵は居合い、カウンターの構えで待ち受けている以上、こちらから間合いへ飛び込む必要があるだろう。
 しかし、麗刃の覚悟はとうに決まっている。彼は迷わず地を蹴って真正面から両手の剣を振りかざした。

 麗刃が間合いへと入った瞬間、すぐさま赤面武者の手が動く。二本の刀を音も無く引き抜くと、気が付けば既に振りぬかれて赤面武者の手を離れていた。刀を擲って麗刃の初撃を弱める作戦だったのだ。
 振り下ろされる麗刃の剣が金属の初撃音と共に反動で揺れると、赤面武者は息つく暇もなく突き立てていた刀を拾い、再び放って麗刃の太刀筋を完全に殺す。
「ふぁふぁふぁ!奇抜なだけで戦は生き残れんわ。その首もらったぞ!」
 さらに二本を拾い上げて、麗刃の首筋へと対の刃が迫る。

「今の私はただの奇人ではない。スーパー変態人なのだー!!」
 太刀筋が届かぬとみるや、すぐさま左手に持った刀を地に挿し、脚を天へと上げる。そして首の位置がくるりと上昇し、赤面武者の刀は虚しく空を切った。
 麗刃の反撃の反撃はまだここからである。そのまま突き立てた長剣を軸に、ポールダンスのように回転しながら斧を振りかぶる。
 重心が切先に載った斧が、遠心力によりその威力の増加させていく。
 咄嗟に刀を交差させて赤面武者が身を護るが、麗刃の斧が容赦なく叩き折って赤面武者の胸に深々と突き刺さった。
「がふ、ふぁふぁふぁ!み、見事だ。こと切れる前に名を聴こう武人よ。」
 肺にまで達していたのだろう、血を吐きながらもくぐもった声で麗刃へと問いかける。
「わたしは大豪傑麗刃。大豪傑家の次期当主にして誇り高き鬼神軍の団長なのだ!」
 名を聴きぼそぼそと復唱すると、赤面武者は甲冑を緩めて首を晒し麗刃へと首を差し出した。

「もう大丈夫なのだ。」
 後方に首の無い鎧を残し、龍の児へと麗刃が駆け寄る。
 彼の怒りは静まり、いつもの黒髪へと戻っていた。
 龍の児へとかけた言葉は、己を鎮める意味も含まれていたのかもしれない。
 そのまま、怯えていた龍の児が落ち着きを取り戻すまで麗刃はずっと背中を撫でて続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミスツ・シューパリツェ
※アドリブ・連携OK

【POW】

ケッ、竜とはいえガキを使うなんざ捨てておけねえな

移動がしやすいよう下半身を歩行用の2足に絞り、残りを千切ってUCで戦闘員に変化
引きずった跡や、足跡、進行用に倒した木等を捜索させ、発見次第連絡を取り後を追っていく
『隠密作戦なら、ぬかるんだ所を普通に歩くな。ま、図体でかいの連れて、他の道使えねえのは仕方ねえけど』

戦闘では名将を戦闘員らで囲み、銃触手で【一斉射撃】させる
通れば良し、カウンターで捌くならそれでいい
配下の1人を足場にしてジャンプ、名将の真上から【怪力】込めた拳を叩きこむ
『流石に横へのカウンター中に、上までは対応できねえだろ?俺も喰らうが、【捨て身の一撃】だ』



 目を開けると、そこはまるでテレビで見た和風時代劇の世界。
 古風だがどこか懐かしい情景は、もしかすれば映画村の一角にいるのではと錯覚してしまうかもしれない。
「へぇ、ここがサムライエンパイアって世界かい。本当にサムライも住んでるんだろうなぁ。」
 キョロキョロと観光客のように周囲を見渡し、ミスツ・シューパリツェ(バイオモンスターのバーバリアン・f17654)が呟いた。
 彼、もとい彼女は過去に暴力組織の幹部だったこともあり、古めかしい日本の景観も、組長の屋敷に足を上げる機会も多くなじみ深いものであった。
 ただし、現在は屈強で強面の頃とは似ても似つかないメスのバイオモンスターの身体に何故か身をやつしているため、ヤクザ然としてもどうにも様にならないのではあるが。

 物見雄山をしに来たわけではないと、眉間にシワを寄せると(実際の『眼』は猫耳のような部位なので眉間は無いのだが)目の前に広がる樹海の暗闇へと視線を移す。
「ケッ、それにしても…竜とはいえガキを使うなんざ捨てておけねえな。」
 元組員のミスツにとって、カタギの、それも善悪の区別もつかない子供を利用するという御法度は、何を置いても許せるものではなかった。
 裏の道に生きる者といっても一線超えてはいけないケジメがある。
 それすら守れない外道には、直々にヤクザ流の仁義というものを教えてやる必要があるだろう。
 勿論、ヤクザの教育は安くはない。これからオブリビオンはヤクザの本当の恐ろしさを身を以って知ることになるだろう。
 特に指が鳴るわけではないが、少女のようにか細い拳を鳴らすような仕草で解すと、っしゃ!と気合を一声上げて樹海へと踏み入れた。

 中へ入ると、木々が好き勝手に根を這わせ、触手の脚では数歩も歩かず干渉して都合が悪い。
 平坦な道なら二足よりもよほど安定しているのだが仕方がない。
 邪魔な触手をぶちぶちとためらいも無く自ら引き千切ると、その辺へ乱雑に放っていく。
 ある程度スッキリとさせると、残った触手を二つに束ねて人間の脚のように擬態させる。
「おし、こんなもんかな。」
 パンと人間でいうなら太ももの辺りを叩くと、数度屈伸して具合の最終確認をする。見た目だけではなく機能面も人間とそう変わりは無いようだ。
「さぁて、手前らカチコミ行くぞ!30秒で支度しな!」
 ミスツが誰ともなく声を掛ける。勿論、周囲には誰もいるはずもなく、ミスツの声は虚しく樹海の中を木霊した。
 しかし声を発した次の瞬間、先ほどミスツが放り捨てた触手達が不気味に蠢き、ぶくぶくと膨れ上がる。次第に二足二腕一頭へと形を変え、遂には簡素な見た目ではあれど完全な人型へと変貌した。
 ミスツの宣言通り、30秒足らずで無数の戦闘員を作り出した。皆、何故か手にドスや拳銃等の装備ばかりで偏りがあるのは、ミスツの前の身体の影響だろうか。
 ミスツとしてはこの方が昔の仲間達の面影を感じられるため、好みなので問題はないようではある。

「まずは探し出すぞ!手前ら草の根分けてでも捜索しな!」
 幹部として活躍していた手腕を遺憾なく発揮し、オブリビオンの追跡は進んでいく。
 組織力は数、そして数は力である。
「隠密作戦てことなら、なるべくぬかるんでいたりとかの人気の無さそうな所を歩くだろうな。やましいことがある奴の心理なんざ大体そういうもんだ。手前ら分かったか、湿地か沼ぁ重点的に探せ!」
 人海戦術で力押ししていくと、程なくして沼地の近くで大型動物のような足跡と、複数の人の足跡が並んでいるのを見つかり、瞬く間に距離を縮めた。

 前方の暗がりで聞いたことのない動物の悲鳴と複数人の足音が重なる。
 音を立てない様に様子を伺うと、漆黒に塗りつぶした隠密鎧の後ろ姿と、儀式に使う物資を運ぶ雑兵が幾人か。そして予知で見たあの児龍だ。
 児龍は全身から血を流しており、今にも倒れそうにフラフラと力無く歩いている。児龍が立ち止まる度に、あの鎧武者が刀で小突いて歩かせているのだろう。
「(このクサレ外道が…!!)」
 その仁義の成っていない外道以下の行為に、ミスツですらも吐き気を催す嫌悪感を抱く。

 暗闇に混じるような隠密鎧に身を包み、宙に浮かぶ鬼火のような赤面を付けた武者が、これまでと同じように児龍が立ち止まったのに合わせて機械的に刀を突き立て歩かせる。
 心臓を鷲掴まれるような苦しい悲鳴が上がるが、赤面武者には関係ない。彼の任務は儀式にて児龍の生き血を捧げること。どうせ死ぬ命なのだ、情けをかける必要などない。
 しかし、今回はいつもと様子が違った。児龍の悲鳴に合わせて乾いた破裂音のようなものが続けざまに何度も上がる。
 赤面武者がゆっくりと振り返れば、物資を運ぶ雑兵達が皆倒れ伏していたではないか。
「カチコミだぁー!!手前ら雑魚は全部掃除したな!!」
 目の前に突然飛び出してきたのは人外の生き物たち。手には短い火縄銃のようなものや小太刀のようなものを構えている。
「ふぁふぁふぁ!騒がしいのう。徳川の若造が物の怪どもを寄こしたか。しかし、なんとも奇妙な刺客よのう。わしも戦場で名を上げようと八刀流を編み出し奇抜な輩と哂われたものだが。」
 既に数の上では劣勢。それにも関わらず、赤面武者は一切の気後れ無く冷静に言葉を返す。
 ここでおめおめと尻尾を巻いて逃げるつもりも、負けるつもりもないと言いたげな佇まいだ。

「いい覚悟しんてんじゃねぇか。だがよぅ、手前がクサレ外道には変わりねぇんだ。俺達が仁義を叩き込んでやるぜ!やっちまいな!!」
 仁王立ちでメンチを切っていたミスツが手を挙げると、赤面武者を囲んでいた部下達が拳銃を一斉に乱射する。
 破裂音に驚く児龍の声すら掻き消し隙間なく拳銃の引き金が引かれていく。
 しかし、的となった赤面武者はまるで踊るように、携えていた8本の刀で器用に銃弾を弾いていく。もはや人外じみた妙技ともいえよう。
「ふぁふぁふぁ!貴様らの玩具でわしの首を討とうなど50年は早いわ!超えて来た場数が違うわい。」
 その場を動くことなく完璧に捌き続ける赤面武者。こちらの弾切れを狙っているのだろう。
「チッ!化け物ジジイが!だけどよぉ!」
 攻撃が通らなくとも、部下たちが赤面武者を足止めしているならば好都合。
 ミスツが二本の脚をバネのように使って赤面武者の頭上へと跳躍する。
「ふぁふぁふぁ!真上だろうが間合いの内よ!浅はかなり、その首もろうたわ!」
「刀ってのは防御するための武器じゃねぇんだぜ。銃弾なんて弾けば、すぐに刃こぼれどころか刀身にまで影響が出るんだ!」
 ミスツの大柄な体重と落下速度を乗せた捨て身の一撃が赤面武者へと襲い掛かる。
 対する赤面武者も刀を振り上げ、ミスツの首筋を狙うが、その刀はミスツの左腕を貫通させたところであっけなくへし折られてしまった。
「なんと!?」
 そのまま勢いを殺さずミスツが落下すると、右手に持っていたドスを赤面の上から真っ直ぐに突き立て、赤い仮面を真っ二つに割った。念を押してグッと力を込めドスを捻じると、赤面武者は糸の切れた人形のように脚を折って後方へ倒れる。
「昔、組に飾ってあった刀で、宴会の余興として試して良かったぜ。まぁあの後すげー怒られたがな。」
 ドスを引き抜き血を払うと、ミスツは児龍の手当の指示を部下たちへ飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カネリ・カルティエ
太陽神とはどんなお姿をしているのでしょう。ふふっ、楽しみですね。

■探索
【UDC召喚】にて嗅覚の鋭い獣系のUDCを召喚し敵を追いましょうか。
自身も補助的に導き鳥のお守りの【追跡】【失せ物探し】使用。

※ランダム召喚なので召喚失敗した場合はその他でも。お任せします。

■戦闘【SPD】
戦闘に入ったら、獣をそのまま敵にけしかけましょうか。

(太陽神の子を見て)
「おやおや、引きずられてお可哀想に。貴方がたも引きずられてみますか?」
刃物付きの地縛鎖を操り敵を【串刺し】そのまま引きずってしまいましょう。

自衛に地縛鎖の【オーラ防御】。
八岐連撃に対しては【地形の利用】で樹海の木を上手く利用して避けられれば良いですが。



 グリモアベースで説明を受けている奇妙なブラックタール。
 怪しげなローブに怪しげな紙の面を付けた彼、カネリ・カルティエ(ブラックタールの探索者・f10978)は、それまでやる気がるのかイマイチ分からない態度を示していた。
 しかし、『太陽神の儀式』という単語聞いた瞬間にガバっと顔を上げて急に眼を光らせる。
「太陽神とはどんなお姿をしているのでしょう。ふふっ、楽しみですね。」
 彼は生粋の探索者であり、遺跡や神話、考古学などに眼が無いのだ。
 感情を読み取れない表情をしてはいるが、その声色は高まり歓喜の様子が伺えた。

 グリモアの光が消えると、そこは一見のどかな麓の風景。
 冒険日和というよりは、登山日和といったところだろうか。日陰者なカネリは眩しそうに手で庇を作り、周囲を見渡していた。
「富士の樹海…思っていたよりも広そうですね。時間がありませんし、道案内を雇うとしましょう。」
 そう呟くと、カネリの手にしていたワイヤーで吊ったランタンが、日中の陽の下にも関わらず爛々と輝き辺りを包み込んだ。
 カラカラと風も無いのにランタンが揺れると、何者かがカネリの目の前に現れたのを気配で感じ取る。

 光が再びランタンへと納まると、そこへ現れたのは羽毛のある巨大な蛇。
 まずカネリが一番に目を引いたのはその巨躯だ。全長は目測百尺程度はあるだろうか、カネリの周りを長い胴がぐるりと囲む。
 そして、蛇のような丸い身体の上半には鳥のような羽毛が隙間なく生えており、長い胴の何節かに分けて所々大きな翼を持っていた。
 また、蛇とも鳥ともいえないその頭は、鼻息荒く興奮気味に生暖かい空気をカネリに吹きかける。
 その様子はまるで、忙しいのに急に呼び出されて腹を立てているようだった。
 鎧や兜こそ無いが、よもやこのUDCはケツァルコアトルではないだろうか。
 これは何の偶然だろうか、しかし、もしかすればこの流派あの児龍の親かもしれない。なぜならば、カネリが手にしていた導き鳥のお守りが、この巨大な蛇を指し示していたのだから。
「ふふっ、まさかいきなり太陽神に遭えるとは思いませんでしたよ。もしかしたら太陽神とは別個体なのかもしれませんが、検証材料が少ないのが悔やまれますね。」

 児を探す親ならば、興奮して落ち着かないのも合点がいく。
 カネリは自前の手帳をパラパラと捲ると、今までに調べたいくつかの古代の言葉で語りかけてみる。
「~~~~。~~、~~~~。」
 ダメで元々だが、今はこの親龍だけが頼りなのだ。すると、何個目かの言葉に反応を示す。
 完璧ではないにしろ、なんとか親龍へ児龍がこの先へいることを伝えると、親龍が首を降ろしてこちらを見つめた。
「これは…乗れ、ということでしょうか。」
 下手に刺激すればこちらが危ない。しかし、探索者たるもの恐れを克服してこそだ。おずおずと羽毛を掴みよじ登ると、親龍は抵抗することなく首をもたげて動き出した。
 目指すは樹海、児龍の待つ場所へ。

 およそ百尺はある巨躯は流石であった。カネリよりも太い木々であろうとお構いなく薙ぎ倒し、樹海にミミズの這い後のような災害を残していく。
 時折樹海の奥より聞こえる児龍の悲痛な叫び声が聞こえてくるせいでもあるのだろう。親龍はグングンと児龍の元へと接近した。
 このペースならば間違いなく儀式までに間に合うだろう。

 程なくして、前方の暗がりで聞いたことのない動物の悲鳴と複数人の足音が重なる。
 親龍の頭の上から見下ろし様子を伺うと、漆黒に塗りつぶした隠密鎧の後ろ姿と、儀式に使う物資を運ぶ雑兵が幾人か。そして予知で見たあの児龍だ。
 児龍は全身から血を流しており、今にも倒れそうにフラフラと力無く歩いている。
 児龍が立ち止まる度に、あの鎧武者が刀で小突いて歩かせているのだろう。
 その光景が親龍の眼に入った瞬間、我を失ったように暴れ出した。
「おっとと、まぁ無理もないですね。」
 暴れ出した親龍の頭からカネリが飛び降りると、慣れた手つきでフック付きワイヤーを高木の横枝へ括って安全に降りる。探索者たるもの、遺跡などでロープ類の扱いは嫌でも身に付くのだ。
 そして眼下では、あの巨躯が縦横無尽に尾で叩き、払い、荷物を運ぶ雑兵達を蹴散らしていた。

 急な怪物の襲撃に泡を喰って散り散りになる雑兵たちの中、赤面武者は冷静に支持を出して児龍を先へと運ばせていた。
 遣われた兵達は、自分の命が気が気でないといった表情で児龍を引きずり、児龍から流れる血などお構いなしに少しでもここから遠のきたいようだった。
「おやおや、こんなにも傷だらけで引きずられてお可哀想に。貴方がたも同じように引きずられてみますか?同じ痛みを知れば二度とこんなことをする気にもならないでしょう。」
 つつ、と児龍の上からワイヤーで降りて来るカネリ。その手には先端には刃物がついた鎖が怪しく蠢き、まるで命を持つかのように眼下の獲物を値踏みしていた。
 カネリが鞭のように鎖を打つと、地に着いた鎖は児龍を牽く雑兵達の胸をチェーンのように貫通させて繋ぎ、見た目からは想像できない力で彼らを動かなくなるまで引きずり回した。

「さて、残るはあなただけですね。」
 未だワイヤーから降りず、慎重に赤面武者の様子を伺うカネリ。
 相手は武者。主装備は予想するまでも無く携えた多数の刀だろう。だからこそ、決してこちらから間合いへ飛び込むつもりも、飛び込ませるつもりもない。
 探索者とは、恐れを知らない愚か者だが、恐れを理解できないバカではない。リスクを見極め時には冷静な判断を求められるのだ。
「ふぁふぁふぁ!たまげたのう。徳川の若造が虎の子どこら親を寄こしたか。しかし、なんとも奇妙な戦場よのう。わしも戦場で名を上げようと八刀流を編み出し奇抜な輩と哂われたものだが、これほどの大事はなかったわ。」
 あまりの展開に、もはや笑うしかないのだろう。それでも尚、闘志が消えていないのは歴戦の貫禄が伺える。

 お互い間合いを詰めず睨み合いが続くかと思われたが、赤面武者が沈黙を破り動き出した。
 脇差しを一刀抜き、そのまま居合いの要領で一気に振りぬく。カネリが何事かと注視した瞬間にあることに気が付いた。
 赤面武者の手にあるはずの刀が無い。それと同時に風切り音がカネリの耳に届く。
「まさか!」
 空振りしたのではない、赤面武者は刀を擲っていたのだ。
 不意の一撃に驚き、思わず腕を前にかざして肉壁を図るが、刀はカネリの上方へと逸れてワイヤーを切断した。
「ふぁふぁふぁ!討たれた鴨は煮られる運命よ!地に着く前に狩ってくれるわ!」
 カネリの身体が重力へ引っ張られるのを確認した赤面武者は、摺り足のような独特の歩行術でこちらへ迫りくる。
「~~~!~~、~~~~~!!」
 咄嗟にカネリが言葉にならない声を発する。万事休すかと思われたその時、赤面武者の足元へ蛇のように動く鎖が巻き付き動きを止めた。
 何とか、カネリが地面に受け身を取って転がり、地に足を着けて立ち上がると目の前にはすでに赤面武者の姿は無かった。
 否、正確には赤面武者の両脚首のみが残されていた。

 視線を上へ向けるとそこには口元を赤く滴らせる親龍の姿。
 先ほど、カネリは古代の言葉で親龍へと呼び掛けていたのだ。
「因果応報ってやつですかね。児を利用するなら親に殺されても文句は無いでしょう。」
 その後、召喚した時のようにカネリがランタンに光を灯すと、親子ともども元の棲み家へと還してあげた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミアミア・メメア
これは捕まるのが悪い!竜のくせに弱いー柔いーイライラするー
仮にも同族、咆哮を響かせて樹海を駆け巡れば反応もあるだろう。寝ぼけたまま死ぬ気か?咆哮を返す程度の気合は出せ
八刀流、と自分で宣伝している…構えはいかにもこちら待ち。私が付き合う武士にでも見えるのか?それじゃ名乗りを上げてやろう。私はミアだ。イライラして、お前達が嫌いで、弱い竜も気に入らない。なのでこれは八つ当たり。近付いてなんてやらない
幸い弾は無限にある。降り注ぐ樹木にでも自慢の剣術を披露すればいい。尾で足で雑魚を樹木を投げつけて、動けなくなったら噛み砕いて終わりだね
なんだ竜の子、お前まだ居たの。もう帰っていいよ。私の子分にでもなる?



 何か面白いことは無いかとグリモアベースをフラフラ散策するドラゴニアンの少女がいた。
 両手には誰かに餌付けでもされたのか、犬用の骨ガムを持ちガジガジと噛みついている。彼女に流れる龍の血が、まだ若く未発達な歯を鍛えようと疼くのだろう。
 しばらくはそうやって人混みの中をうろついては餌付けされてを繰り返していたが、一つの依頼の言葉に彼女、ミアミア・メメア(静かな竜の荒ぶ夢・f19238)が耳ざとく反応した。
 内容は『児龍を生贄に』儀式を行い徳川軍を苦しめようとしている、というもの。
 この話はミアミアにとって聞き捨てならないことだった。
 なぜならば、彼女は見た目こそ人に近いが、中身は龍の方が濃い。つまり他人ごとではなく同胞が関わっているということである。
「なに!竜のくせに捕まったのか!なんてトロイやつなんだ!うー、竜のくせに弱いー!柔いー!そんなのイライラするー!私がお手本見せてやる!」
 ぷんすかと頭から湯気を立てて、ミアミアが憤る。怒りの矛先が無いミアミアは、そのまま癇癪交じりに犬ガムをガジガジムシャムシャと一気に食べきった。
 彼女は別に正義感や倫理観で行動しているわけではないし、猟兵として真面目に働こうなどとも考えてはいない。今回の件も彼女の親分気質が出たからだ。
 ミアミアは自分の本能のまま、感情に任せて動いている。なぜなら彼女は、夢の中に生きる自由人のような性格なのだから。

 グリモア猟兵の話をどこまで聞いていたのかは定かではないが、ふとミアミアが目を開けるとそこには鬱蒼とした樹海が広がる。
「なんだここ。どこだー?」
 すんすんと鼻を広げて臭いを嗅げば、微かに同胞の残滓が漂う。
 しかし記憶の片隅にある密林とは少し様子が違うようだが、はてと周りを見渡せばそこがサムライエンパイアの世界だとようやく気が付いた。
「そうだった!あの弱っちい奴!あいつどこだ!?」
 ここは同胞の住む世界ではない。ならば先ほど感じた残滓は件の児龍の物だろう。
 確実にこの先、樹海に連れていかれたのは間違いがないようだ。
 そう確信、むしろ野性的直感しミアミアは迷いなく樹海の中へと飛び込んだ。
「うがー!この中の…どこだー!見えないー!」
 しかし、樹海の中は外ほど臭いが整理されていない。木々の呼吸、動物たちの息遣い、湿地や朝露の蒸気が混ざり合い、余程の鼻自慢でもない限り臭いでの追跡は難しいだろう。
 ましてや、幼いミアミアにはぬかるみに残る微細な脚跡の違いを見分ける術も、隠密部隊が進行するルートを予測する心理術も持ち合わせてはいない。
 あるのは己が身一つ。ならばミアミアに出来ることも一つだ。
「うがぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!」
 ミアミアは突如頭上を見上げ、狼の遠吠えのように咆哮する。
 古来より、遠方にいる同胞とのコミュニケーションはこれと決まっている。ましてや、仮にも向こうは子供とはいえ本物の龍なのだ。これが一番伝わりやすいだろう。

 しかし、最初にあげた咆哮では何も反応が得られなかった。
「うー、あの弱っちい奴!寝ぼけたまま死ぬ気か?竜なら叫び還せ!気合いを見せろ!こうやるんだ!」
 そうやって、走っては吼え、登っては吼え、反応があるまで数回繰り返すと、そう遠くないところで弱弱しいが児龍の咆哮が返ってくる。しかし、続けざまに痛みで苦しむような悲鳴が上がった。
 口では弱い奴だと児龍をバカにしているが、悲鳴がミアミアの耳に入ると今まで感じたことのない嫌なザワツキが心にノイズを掻き立てる。それはまるで悪夢でも見ているような気分だった。
 ミアミア自身、それが何という感情なのか形容出来ないが、ともかく居ても立っても居られなくなった彼女は、普段見せることのない落ち着かない様子で声の下へと駆け出した。

 前方の暗がりで複数人の足音が重なる。
 目を細め暗がりを良く見渡すと、漆黒に塗りつぶした隠密鎧の後ろ姿と、儀式に使う物資を運ぶ雑兵が幾人か。そして予知で見たあの児龍だ。
 児龍は全身から血を流しており、今にも倒れそうにフラフラと力無く歩いている。児龍が立ち止まる度に、あの鎧武者が刀で小突いて歩かせているのだろう。
「うがぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!」
 ミアミアはそのまま最後尾にいた雑兵達を吹き飛ばすと、さらに尻尾で幾人か張り倒し隠密鎧の武者の後方へと躍り出た。
 突然の敵襲に鎧武者がゆっくりと振り返ると、宙に浮かぶ鬼火のような赤面が来訪者を睨み付ける。
「ふぁふぁふぁ!なんじゃ、野山のガキ大将が紛れ込んだのかのう。こんなガキを寄こすとは徳川の若造も余程人材に乏しいと見えるわ。」
 赤面武者は顎髭でも撫でるように、赤面の縁を触りミアミアを値踏みする。
「とくがわとか知らん!合ったことない!それに私はガキじゃない!私はミアだ!今メチャクチャイライラしてて、お前が大っ嫌いで、そこの弱っちい竜も気に入らないミアだ!」
 上手くまとまらないノイズ混じりの自分の感情。それをミアミアなりに、精一杯堂々と言い放つ。その言葉に裏や遊びも無く酷く真っ直ぐ故に、赤面武者も言葉通りに受け取った。
「ふぁふぁふぁ!あい悪かった。ならばわしも名乗らねばのう。名は捨てたが蛸脚衆が一人、戦場で名を上げようと八刀流を編み出し奇抜な輩と哂われものの爺よ。」
 赤面で隠れて表情が読み取れないが、くぐもった声は孫にでもあったかのように朗らかであった。しかし、だからこそ赤面の奥で光る狩人の眼光が不気味で、ミアミアの本能が信用ならないやつだと警告していた。

 野生の動物がするように、ミアミアが睨み返しお互いの間合いの外で唸りを挙げて威嚇していると、赤面武者が堰を切る。
「して、この龍が気になるか。ならばこうすれば、どうかのう。ふぁふぁふぁ!」
 朗らかな声色のまま脇差しを一刀逆手に引き抜くと、そのまま背後にいる児龍へ突き刺し執拗にえぐる。
 先ほどミアミアが聴いたあの悲痛な鳴き声が再び目の前でけたたましく鳴り響く。
「うがぁぁぁぁぁ~~~~~~~~!!!」
 どうしようもなく心がざわつくミアミアは、癇癪を起し尻尾で近くにあった倒木を持ち上げると、赤面武者へと投げつけた。
 しかし、いともたやすく倒木は断ち切られる。ならばと足元に埋まっていた丸石を蹴り上げ鞠のように放るが、石であろうと真っ二つ。
 八刀流は伊達ではないらしく、目前から近付く物は何であろうと叩き斬るつもりのようだ。
 それでもミアミアは何度も掴み、手当たり次第に投げつける。

 だがしかし、赤面武者が構えてから結局一度も有効打は決まらなかった。
 激しく走り、投げつけていたミアミアの方が息が上がって来たくらいである。
「ハァッハァッ、うがー!ハァッ私は竜だから諦めない!ハァッハァッ、だからそこの弱っちい奴!お前も竜なら諦めるな!」
 このまま続ければ体力の消耗差でミアミアが危険だったかもしれない。しかし、彼女の激励によって、一人攫われ不安に怯えていた児龍も奮い立った。
 ミアミアの体力配分を考えない連続攻撃の対処で集中していた赤面武者の後方から、児龍が飛びつき、片腕を咥えて動きを妨害する。
「こやつ!?まだこんな気概が残っておったとは!!」
 慌てた赤面武者が刀で児龍の胴を刺して怯ませようとするが、一向に離す気配はない。
 児龍に気を取られている隙にミアミアが一気に距離を詰めた。野生では、油断はすなわち死と同等である。
 尻尾を巧みに使い一瞬で跳躍してくると、自慢の脚で首周りの鎧を力任せに強引に剥ぎ取る。そして、剥き出しの喉笛を深々と噛み砕いた。

「なんだお前。まだ居たの。」
 念入りに息の根を止め、真っ赤に滴る口元を腕で拭うと、児龍に向かって言葉を投げる。
 もう弱っちい奴とは呼ばない。この児龍は勇気と強さをミアミアに示したからだ。
「うわくすぐったい!なんだよもう帰っていいよ。…どうしてもっていうなら私の子分にでもなる?特別だからな。」
 同胞に遭えた喜びからか、ミアミアを執拗に舐めて懐く児龍。
 そんな児龍に、ギザギザの歯を見せて笑いながら彼女は語り掛けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月08日


挿絵イラスト