エンパイアウォー②~ shatter me
甘く、華やかな香りが風に運ばれてくる。梅の花を思わせる、強い香気。
総覆輪(そうふくりん)の筋兜を被った武将が大きく息を吸い込み、進軍を指示する。
「春の花のような香りよな。こちらだ。もうすぐ追いつくぞ、皆も気を引き締めよ」
奥羽、庄内地方。最上の旗を掲げた軍勢がオブリビオンの集団に攻撃を仕掛けようとしていた。
「皆さま、お集まりくださりありがとうございます。時間はあまりないので早速説明にうつらせていただきます。」
スペースノイドのシャーマンであるデナーリスが、作戦の概要を説明する。取り乱した感じはなく、いつものように淡々としている。
デナーリスは手に持っている端末の画面を空中に表示する。東北の山々と、間にある街道、そして予想される進軍ルートが映る。
「現在、『水晶屍人』の軍団が庄内地方を南下しています。水晶屍人の戦闘力は高くないのですが、噛まれた人間を水晶屍人にしてしまう能力があります」
『水晶屍人』とは『魔軍将』の一人である陰陽師『安倍晴明』が屍に術をかけて造り出した、肩から奇妙な水晶を生やした動く屍。いわゆるゾンビである。
「水晶屍人は知能がありません。なのでこれを指揮しているオブリビオンが集団のどこかにいるはずです。それを見つけ出し、撃破してほしいのです」
水晶屍人の軍勢が江戸に近づければ徳川幕府軍から兵を割いて防衛に当たらせなければならない。決戦に用いられる兵が不足する可能性がでてくるのだ。
「徳川を援護するべく、鶴ヶ岡城から侍の軍団が出撃し、南下する敵を追っています。しかし、彼らは水晶屍人を倒せてもボス格のオブリビオンは討ち取れません。猟兵が討ち取る必要があるのです」
端末の画像が切り替わる。手に酒が注がれた杯を持った着物姿の女性が映る。
「指揮を執るのは『常春の酒仙・香散見』のようです。小柄で水晶屍人より背が低いので軍勢の中から見つけ出さないといけません。酒を非常に好む鬼で、細い腕から想像もできぬパワーを持っています」
デナーリスは手にした端末を閉じ、深々と頭を下げる。
「来るべき未来を守り、世界に生きる人々に取り戻せるかは皆さま次第です。どうかよろしくお願いいたします。」
そう言って送り出すのだった。
神田愛里
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
いらっしゃいませ。初めましての方もそうでない方もこんにちは、神田愛里と申します。
今回はエンパイアウォーにおいて行軍するオブリビオンの軍団を撃破していくシナリオになります。
無数の『水晶屍人』の中から指揮を執る『常春の酒仙・香散見』を素早く見つけられれば戦いを有利に進められるでしょう。
また、大量の水晶屍人を倒していくのも有効です。
その他詳細はオープニングにて確認をお願い致します。
それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
第1章 ボス戦
『常春の酒仙・香散見』
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POW : 八鹽折之酒
【盃から溢れる酒気の高い酒 】が命中した対象を燃やす。放たれた【竜胆色の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD : 花蜜酒
【春の花香る酒を呷る 】事で【白髪の修羅】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 春の杯
【赤漆の盃 】から【終わり無く沸く酒】を放ち、【立ち込める酒気】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:葛飾ぱち
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠心禰・白雨」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
高柳・源三郎
連携・アドリブ希望
「お前さん、酒が好きなんじゃな......。オブリビオンで無ければ酒を酌み交す事も出来ただろうに」
酒好きを攻撃をするのは気が引けるので水晶屍人の集団に向かって言って飛んでからUC有名な置物で無敵の置物に姿を変えてゴロゴロと転がって相手を轢いたり、上から潰していきます。
それを何回か繰り返しているとやっぱり目を回すので「いつも酒飲んで目を回しとるから大丈夫じゃと思ったがここまで辛いとは」と、この作戦を甘く見ていたことに後悔をします。
三上・チモシー
アドリブ連携歓迎
うわぁ、ほんとにゾンビだ!
すごーい、いっぱいいるー
とりあえず、自分は周囲の水晶屍人をたくさん倒すことを優先して行動するよ
少しでも大将を探す猟兵の手助けができれば
敵軍の中に飛び込み、【熱湯注意】を使用して周囲の敵を全て攻撃、敵の数を減らし続ける
……熱湯効いてるのかなぁこれ
なんか感覚とか無さそう
もし敵大将を見つけたなら、すぐに大声を出す、若しくは空に向けて熱湯を放ち場所を知らせる
すでに敵大将と戦っている猟兵がいたなら、周囲の敵を減らしてサポートを
エウトティア・ナトゥア
死人の軍勢か、人を襲い屍人に変えていくとは何とも趣味の悪い事じゃ。
兎に角、彼奴らが人里に害を及ぼす前に止めないといかんのう。
まずは、首魁を探すとするか。
『動物使い+野生の勘+騎乗+破魔+祈り』
(【巨狼マニトゥ】に騎乗して【秘伝の篠笛】を吹き鳴らす狼の群れを呼び出しす)
よし、狼達よマニトゥを先頭に隊伍を組んで突撃態勢をとれ!
そのまま突撃を行い【破魔】の【祈り】を乗せた【浄化の風】で屍人の軍勢を切り裂き道を作るのじゃ。
根拠は無いがあちらに『香散見』が居るとわしの【野生の勘】が囁いておる。
勘に従い屍人を浄化しつつ敵群の中を駆け回り『常春の酒仙・香散見』を探すのじゃ。
※連携・アドリブ歓迎
濁った水晶の群れが草原を進んでいる。この先の道は崖に囲まれて細くなり、攻撃を仕掛けるにはうってつけの地形となっている。
「うわぁ、ほんとにゾンビだ!すごーい、いっぱいいるー」
三上・チモシーは崖の先でしゃがみ込み、初めて見る水晶屍人に驚きの声をあげていた。
「わしがざっと数えただけで五百はおるのう。町に入られたらさらに数を増やすじゃろう」
高柳・源三郎が敵の数を述べる。潜入を得手とする彼は先だって見てきたのだ。だが見下ろした位置からでも香散見の姿は見えなかった。
「人を襲い屍人に変えていくとは何とも趣味の悪い事じゃ。彼奴らが人里に害を及ぼす前に止めないといかんのう。」
エウトティア・ナトゥアは懸念を口にする。水晶屍人は人を襲い、噛んだ者を同じように水晶屍人と変えるからだ。
「かちゃくちゃね……そんなこと、させたくない」
チモシーの不快感を載せた声に、源三郎とエウトティアはうなづいた。
「狼達よマニトゥを先頭に隊伍を組んで突撃態勢をとれ!突撃じゃ!」
木管の音色が草原を駆け抜ける。エウトティアの秘伝の篠笛の音に続き、巨狼マニトゥに跨った彼女がほぼ垂直の崖を駆け降りると、狼たちもそれに続く。
(なに…!敵なの?)
指揮者の狼狽を反映したのか、それまで粛々と進んでいた水晶屍人の足並みが乱れる。
「そーれ、熱湯ざばー!」
チモシーが手にする鉄瓶の注ぎ口から熱湯が水晶屍人の上にまき散らされる。水晶屍人には知性がない。避けようともせず熱湯を浴びる。
雑草の間を湯気が埋め尽くす。にもかかわらずゆっくりと前に進み続けていた。
(……熱湯効いてるのかなぁこれ)
動きが止まらないのをみて彼女はちょっと不安になる。熱いとも感じそうにないから。
すると、濁った水晶の体にヒビが入り、歩き続けていた水晶屍人のうちの一体がボロリと自壊するように割れて動かなくなった。
続いている他の個体も同様だ。水晶は熱伝導率が高い。急速に熱が伝わったので割れたりもろくなったりしているのだ。
すると。どこからか酒気が漂い、熱湯を撒いていたチモシーがやっているのと同様に頭上に酒が撒かれ、竜胆色の炎が彼女に降ってくる。
「熱っ!もう、熱いって!」
とはいえ南部鉄瓶のヤドリガミだ。熱には強いと見え、雑に撒かれた程度の炎ではなんともならない。
辺りに強い香気が満ちる。梅の花を思わせる華やかさをかいだ源三郎。
「お前さん、酒が好きなんじゃな……。オブリビオンで無ければ酒を酌み交す事も出来ただろうに」
彼も酒が大好きだ。同好の相手が倒すべき敵であるのを残念がる。
源三郎はそう言って崖からダイブすると、自らをたぬきの置物へと変化させる。
勢いのまま、水晶屍人の群れに突っこんでいく。地面に当たると、無敵のたぬきは縦回転しながらバウンドし、水晶屍人を潰していく。
ごろんごろんと転がりながら水晶屍人を砕いていく。チモシーの熱湯により脆くなった水晶は、かき氷のようなシャリシャリ音と共にいとも簡単に割れていった。
蹴散らすのじゃ!と威勢の良い声が響き、それに従った狼たちが水晶を噛み砕いている。ただの屍人となったそれはすぐに動きを止める。
そしてエウトティアは探していた。水晶のゾンビに指示を与える指揮官役の者を。
(わしの勘だとこの辺だと思う…なんの根拠もないが)
数は減ったとはいえ、水晶の後ろに隠れているのだろう、はっきりとわからない。
見回していると、突然に竜胆色の炎が降ってくる。
「遍く精霊よ、風に宿り力を示せ!」
エウトティアは浄化の風を起こし、炎を風で散らし飛ばす。後に残るは酒の匂い。
「そうじゃ…酒の匂いのする…方じゃ」
チモシーが振り返ると横たわった狸の置物…声から源三郎だとわかるが…が喋っていた。
どうしたの?と彼女がしゃがんで心配する。
「目を回した……普段から酒で目を回しとるから大丈夫じゃと思ったが…甘くみておった」
「酒の酔いで目を回すのと身体を回した時に目を回すのは原因が全然違うんだよ」
チモシーは置物の源三郎を大きな木に立て掛けて酒の匂いが届く方に目を向ける。
ちらっと見える黒髪。
あっちに何かいた!チモシーの声と指がさす方にエウトティアが破魔の祈りを載せて風を起こす。
風が水晶を飛ばした向こうには、盃を持った着物姿の女性。
常春の酒仙・香散見の居場所は確かに暴かれた。
大成功
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鈴木・志乃
私嫌いなんだよね
死人を操る技
……還れよ
【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた
【歌唱の衝撃波】で全員纏めて
思い切り【なぎ払う】よ!
(マイク片手に)
第六感と見切りで敵武将を探す
後は酒だ、酒の匂い!
エンカウントと同時にUC発動
そのままなぎ払うよ
敵攻撃は第六感で見切り
光の鎖で早業武器受けからのカウンター
必要に応じて敵死体を念動力で巻き上げ
攻撃と防御に転用する
オーラ防御常時発動
♪
夢の中で空を歩く
真下に広がる命数えて
今日を明日をひたすら生きてる
その顔に微笑み浮かばせたい
♪
酒引っかけられそうになったら
敵陣の方へ思い切り念動力でぶん投げる
ソフィア・エーデルシュタイン
お酒好きの娘さんだそうですし、良いお酒を用意してまいりましょう
お酒の存在を仄めかしながらの戦闘で、誘われてくれると良いのですが
もっと効果的に誘う手段をお持ちの方がいれば、役立てて頂けるよう、預けますわ
わたくしが確実に出来ることは敵を散らすこと
煌矢にて水晶屍人を穿ち貫いていきましょう
小さな娘だとしても、壁の数を減らせばきっと見つけられますわ
だからこそ、一体でも多く、仲間達の視界を広げるように
蹴散らして、参りましょう
娘さんの姿が見えれば攻撃をそちらに集中させますわ
また屍人の群れに紛れてしまわないよう、足止めも兼ねて
防御は、水晶髑髏に引き受けてもらいますわ
私の可愛いきょうだいは、打たれ強い子ですの
「江戸に着くまで力を温存させておきたかったけど。そうもいかないみたいね」
隠れ続けるのは不可能と常春の酒仙・香散見が姿を現す。進軍する敵を排除せねば預かり物の水晶屍人が尽きてしまうのは明白だからだ。
香散見の横を藤色の風が通り過ぎ、一体の水晶屍人が形を無くして頽れる。
ソフィア・エーデルシュタインが放つ青玉髄の楔だ。矢のように見えるがシャフトのないそれは、香散見が隠れるあてとなる水晶屍人を破壊していく。
まずは屍人を減らせないようにするのが先決か。香散見は判断し、赤い漆の盃に酒を満たす。
梅の花の香りが辺りを満たしていく……
だが、その香りはさらなる相手を呼び寄せた。
「私嫌いなんだよね。死人を操る技」
酒の香りで香散見を見つけた鈴木・志乃が一気に近づく。その手にはマイクが握られていた。
全ての生命と意志を守ろう。
生きとし生ける者を守る歌が、より声を響かせようと改造されたマイクを通して草原を駆けていく。
「一体これは…?!だ、だが、お前たちは…これで動けまい!」
なおも盃から酒を湧きだたせ、酒気を立ち込めさせていく。
酒気により相手の動きを封じるユーベルコードをもって棒立ちにし、水晶屍人に喰わせる。その積もりだったが。
冷気を携えた楔が弧を描き、着物のそこかしこを貫かれて香散見は慌てて飛びのく。
志乃の歌がユーベルコードを封じたのだ。辺りを漂うのは匂いだけ。
「~~~!」
声にならない不満の声をあげ、自慢のパワーで叩き潰そうと香散見の蹴りがソフィアへ向かう。
しかしながら、水晶で出来た骨格標本が間に入ると身代わりになる。
彼女が愛するきょうだいと呼ぶ水晶髑髏は、香散見の突きや蹴りによく耐えてくれた。
埒が明かない。なら、技を封じた奴から倒すか。
考えを変えた香散見は反転すると、赤い盃を縦に持ち、志乃に飛び掛かって振り下ろす。
とっさに光の鎖を横にして受けた。が、力の差はかなりあり、押し込まれていく。
背を仰け反らせて不利な体勢になった志乃をそのまま地面に埋めんばかりに力がかけられていく。
脂汗が頬を伝う。志乃は脇目に見た水晶屍人を念動力で動かしてぶつけると、なんとか逃れた。
もう一つ、彼女は動かなくなっている屍人を巻き上げて飛ばす。香散見も屍人を持ち上げて投げつけると、二つが空中でぶつかって弾け、水晶の欠片を飛び散らした。
「しまった…」
香散見の姿が消えている。水晶の破片で視界が遮られた隙にまた隠れたのだ。有利な状況を作って反撃しようとしているのだろう。
「あら。わたくしは心配してませんわよ」
ソフィアは気楽そうに微笑みながら志乃を落ち着かせ、自分は陶器の瓶を取りだした。
封を開けると、花とは違う、麦の芳香。香散見が持っているのとは違うタイプの上等な酒だ。
「ずっとお酒の香りがしてるから呑みたくなってきちゃいました。どうせなかなか見つからないでしょうし、わたくしは一杯いただいて待たせていただきますね」
ちょうどよい大きさの石に腰かけてお猪口に酒を注ぐ。もちろんこれは作戦だ。酒好きなら興味を示すはず。
ぴくっ。
フラフラ動いてる水晶屍人の側に黒い頭がちょっとだけ動いていたのを見ないふりで青玉髄の楔を迂回させて飛ばす。
突き刺さった楔にまたも慌てて常春の酒仙は飛びのいた。
もう隠れられず、ユーベルコードも無力化されている。逃げられはしない。
夢の中で空を歩く
真下に広がる命数えて
今日を明日をひたすら生きてる
その顔に微笑み浮かばせたい
志乃の歌唱が破魔の衝撃波となり、なぎ払われる。庄内の草叢を切り払い、濁った水晶もろとも纏めて香散見を貫く。
そして、歌声が酒気をかき消していく。
未来を掴む祈りを込めて。
成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月05日
宿敵
『常春の酒仙・香散見』
を撃破!
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