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エンパイアウォー②~鉄の導く破璃屍

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 奥羽地方のある街道。町に向けて、肩から歪で奇怪な水晶を付けた集団がぞろぞろと歩んでいる。
 ……この集団は普通の人間ではない。織田信長の配下たる、安倍晴明。彼が人々を死に追いやるために産みだした、水晶屍人という動く屍だ。

「あはっ、アハハハハハ!!!いいねえ、いいよ!この量はさすがに笑っちまうねえ!!」

 集団の中に紛れて動く、紫を主とした狩衣を纏った羅刹の女。彼女が扇で行く先を示すだけで、無限に湧き出るのではないかと思うほどの屍達が、互いに干渉せず進んでいく。

「他の陰陽師の業に乗っているのは気にくわないけど……あっはははは!!すごいね、どんどん大地を屍が呑みこんでいく!この面白さなら、多少の事は気にならないねえ!アハハハハ!!」

 豪快に笑う女の名は、鉄・芽衣。ある村をその御業で護っていた陰陽師……だったもの。
 彼女は今や過去の怪物となり、織田配下の一人として"今"を呑み込もうとしていた。

●グリモアベース
「皆さん、サムライエンパイアにて第六天魔王こと織田信長が姿を現した、という報はもうご存知でしょうか?…………大丈夫そうですね」

 猟兵達に声をかけ、彼らの反応を伺ったのはネオン・エルバイトである。彼は猟兵達に向けて、自身がここに居る理由を説明する。

「今現在では猟兵も織田信長に手出しができませんが、突破の鍵となる方と随伴する10万の兵がすでに島原の魔空安土城に向けて出発しています。ですが、その行軍に対する困難も予知されているのです。今回は、その予知された困難の一つを取り除くために、皆さんに協力していただきたいのです」

 今回猟兵達が向かうのは奥羽地方。ここでは織田信長の出現に合わせるように、数多くの『水晶屍人』なる存在が発生している。
 水晶屍人は指揮を行うオブリビオンにより、江戸に向けて移動している。このまま江戸につくのであれば、行軍の兵力を江戸の防衛に回さざるを得ない。
 しかし、早期に猟兵達で退治すれば、その衝突を避けることが可能なのだ。

「僕が見つけた水晶屍人の軍勢と、その指揮を行うオブリビオンは見晴らしの良い街道をなぞるように進んでいます。とはいえ、列というよりは塊のように固まっての移動ですので、道からは大きくはみ出ています。……この一団がこのまま街道を通り、近くの町に到着してしまえば、水晶屍人が人を殺して仲間を増やしてしまいます。そうなる前に、水晶屍人達のブレイン……指揮官のオブリビオンを倒すことが今回の目的です」

 水晶屍人はとにかく数が多いため、猟兵達でも相手にしようとすれば骨が折れる。ネオンの予知した水晶屍人も、数百は下らない。
 その一方で、水晶屍人には知性が無い。指揮官を失えば何もできず呆然と立ち尽くすことが予見されるため、猟兵達が指揮官を倒してしまえば現地の武士たちで対応できる。

「僕の見た指揮官は……紫色の狩衣を着た、銀髪の羅刹でした。見目と言動的に、陰陽師のようです。彼女は水晶屍人の軍勢の中で紛れるようにいましたので……早期に見つけるか、見つけるまでに水晶屍人の攻撃を防ぐか、あるいは効率よく蹴散らす、といった工夫があると良いかもしれませんね」

 手帳の中身を再度確認し、他に伝えられる内容が無いかを見る。そうして、ネオンは猟兵に真っ直ぐに向き合った。

「以上で、必要事項は全部のようですね。改めて……サムライエンパイアの地を守るため、猟兵の皆さんの力を貸してください。よろしくおねがいします」


碧依
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 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

 というわけで……戦争だーーーー!!
 こんにちは、碧依と申します。今回の戦争もよろしくお願いします。

 今回の内容はザコの群れの中にいるボスを倒すボス戦です。ザコをうまいこといなしつつ、ボスに強烈な攻撃を叩き込んでやってください。
 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『豪快姉御』鉄・芽依』

POW   :    【禁呪】鉄流呪術・金水符【水斬】
【指先から放たれた金属片が混入した高圧の水】が命中した対象を切断する。
SPD   :    【禁呪】鉄流呪術・火土符【爆陣】
自身からレベルm半径内の無機物を【自分で任意で起爆が可能な爆発物】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
WIZ   :    【禁呪】鉄流呪術・木詛符【凩舞】
対象の攻撃を軽減する【瘴気の風を纏った、邪な闇を滅する陰陽師】に変身しつつ、【レベルm半径内任意の敵の生命力を枯らす舞】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:ひゃく

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は渡辺・紅牙です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

鈴木・志乃
嫌いなんだよね、あたし
屍人を操るワザ

首洗って待ってろ

UC発動

【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた
【歌唱の衝撃波】で全員纏めて
思い切り【なぎ払う】よ!
(マイク片手に)

空中に飛んだりはしない
敵の壁で逆に相手から自分が見えないように進んで行こうか

攻撃の気配を【第六感】で【見切り】
敵の死体を【早業念動力】で操り壁にしながら進んで行こう
場合によってはそのまま嵐と化しボスにぶつけちゃえ

自身の周囲には光の鎖を纏わせさらに上から【オーラ防御】
物理攻撃が来たら鎖を念動力で動かし絡めとり【武器受け】
そのまま【カウンター】に移るよ


六代目・松座衛門
「行軍の邪魔はさせない! 演目「黒雨」!」
人形「暁闇」に全武装を取り付け、UC『演目「黒雨」』発動。
空中に張り巡らされた糸を足場にして、上空から『鉄・芽依』を探そう。

「指揮官はどこだ!? 吹き飛べ!」
上空からUCで強化した大型銃「玲瓏」、連弩「狂惑」で水晶屍人の集団へ射撃し、指揮官をあぶり出そう!【援護射撃】【吹き飛ばし】

「貴様が指揮官か! 覚悟!」
『鉄・芽依』の木詛符【凩舞】に対して、人形と共に素早く術の範囲に侵入。多節棍「双爪丸」で4本腕となった人形を操作し、怒涛の連続攻撃を喰らわせてやる!【破魔】【傷口をえぐる】

アドリブ、連携歓迎。



 歪な死。
 そのようにしか形容できぬ屍の群れが、肩の水晶を煌めかせながら進んでゆく。

「嫌いなんだよね、あたし。屍人を操るワザ。……首洗って、待ってろ」

 夕陽めいた瞳を鋭くし、鈴木・志乃は自身の力を発動させながらマイクを握った。

「全ての生命と意志を、守って、みせる!!」

 マイクに注がれる、全力の歌唱!志乃の生きとし生ける者を護る歌が衝撃となって、水晶屍人どもを薙ぎ払い、群れに切り込むための穴を穿つ!
 そして、彼女は歌を止めることなく真っ直ぐ穿った穴に飛び込む。歌で己を示すことで指揮官を誘いつつ、しかし同時に己だけが捕捉されてしまわぬように、倒した水晶屍人を壁としながら突き進んでいく!

「自分も負けてられないな。よし、行くぞ!行軍の邪魔は、させない!」

 志乃が突入した直後、六代目・松座衛門は戦闘用人形『暁闇』を強襲形態に変じさせる。

「演目『黒雨』!先ずは、空だ!」

 松座衛門のユーベルコードが発動し、暁闇を繰るための操作糸が宙に張り巡らされてゆく!さらに、四足歩行型に変化した暁闇の背につかまることで、松座衛門自身も暁闇とともに空へと飛翔した!

「指揮官はどこだ!?ぐっ、空からだと、光の反射でチカチカするな……減らしていくぞ!吹き飛べ!」

 松座衛門の操作により、暁闇の装備が起動!弓と高性能の銃よる激しい射撃で、水晶屍人を吹き飛ばしていく!
 志乃の群れの中を穿つ線。松座衛門と暁闇による、点が為す面。彼らはそれぞれに、あってはならない存在を無へと塗り返してゆく!
 やがて、彼らの行動が一人の女を炙り出す。
 密から疎になった群れの一部に、明らかにこれまでの方法では薙ぎ払われず、吹き飛ばされぬ羅刹が一人。
 屍の行軍、その指揮官としてこの地に現れた鉄・芽依が姿を現したのだ!

「アッハハハハハ!なかなかに派手にやってくれたねえ!折角あたしを見つけてくれたんだ、舞の一つでも、見せてやろうじゃないか!」

 黒地に桜吹雪の散りばめられた扇と共に、彼女は緩やかに大きく動く。そして、緩やかで的確な舞とは裏腹に、彼女の周囲に瘴気の風が吹き荒れる!

「貴様が指揮官か!覚悟!」

 その中に、松座衛門は暁闇と共に飛び込んでゆく!彼は敵を見据え、狙うべき場所を見定める。そうして、多節棍を副腕として四つ腕となった暁闇を、鋭く殴りかからせた!

「ハッハッハッハ!!いいじゃないか、真っ直ぐなことは評価できるよ!だけど、あたしも屍どもみたいに脳無しだと思われちゃあ、困るねえ?!」

 瘴気の風を暁闇の腕が突っ切る!狩衣の奥、芽依の肉体に鉤爪は確かに食い込んだのだが……そこをさらに抉る前に、松座衛門は自身の身体が急激に重くなるのを感じる。
 可能な限り連続攻撃をしようと堪えるが、芽衣の舞、その生命力を枯らす呪いの矛先が明らかに松座衛門に向かっているのだ!

「続けてもいいだろうけど、あたしの呪術で命が枯れきるのと、どっちが早いかねぇ?」
「――それ以上は、させない!!」

 だがそこに、水晶屍人が嵐に吹き飛ばされる木端めいて飛んでくる!志乃が駆け付け、自身が盾としていた屍とともに到着したのだ!

「おおっと!けど、この程度じゃあたしにゃ届かないよ!」

 掠める屍によって瘴気の風が削れはするが、芽依には届かない――だが、元々志乃はそれを本来の攻撃にするつもりではない!

「私の歌は、終わってない!  ―――!!」

 削れた瘴気の風の先、芽衣の身に志乃の歌がたしかに届く!志乃の歌、その本領は敵を薙ぐための衝撃波ではない……理不尽を起こし、世界を改変する力であるユーベルコード!敵の理不尽の力を封じるための歌である!

「なっ……!!?」

 攻撃を軽減するための瘴気も、舞の生命を枯らす力も、封じられる!咄嗟に、それを解除せんと羅刹としての体躯を活かした拳を繰り出すが、志乃もその対策はしてあった!

「呪術を封じられたら物理しかない。うん、わかってたよ!」

 身を守るために用いていた光の鎖が、志乃に飛ばされた拳を絡めとる!そして、鎖を強く引きながら、芽衣を空へと放り投げた!

「いまだよ!」
「恩に着る!暁闇、今度こそ!」

 志乃の声に応じ、松座衛門が繰糸を繰る!
 暁闇が、高速で宙を舞う。そして、先ほど与えた傷、そこに向けて寸分の狂いも無く四つ腕が拳と鉤爪を叩き込む!!
 敵の身体に穴を穿つかのように、暁闇に与えた飛翔の力の勢いも込めて大きく鋭い攻撃を幾度も刻み込んでいく!

「ぐっ、あぁあああ??!!」

 光の鎖により空中に留められていた芽衣だったが、やがて己の血と暁闇の力のために拘束を外れ、水晶屍人の群れの中へと吹き飛ばされる!
 血の跡を追おうとした志乃と松座衛門だったが、周辺の水晶屍人がそれを許すまいと詰めて来ているのに気付いた。

「……このまま逃げきる気みたいだね」
「自分と君をもう寄せ付ける気は無いってことだな……だが、他の猟兵達の補佐はできる!こいつらを、少しでも多く!!」
「うん!薙ぎ払って、きちんと終わらせてあげないとね!」

 少女はマイクを、青年は繰糸を持ち直す。
 彼等は背中を預け合い、わずかでも敵の戦力を削らんと迫りくる屍どもを屠っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

天方・菫子
故郷で好き勝手やられるのは、やっぱりいい気がしないね
しかも、死んだ人を勝手に動かすとか許せない
花散里、綺麗な陰陽師だ、喰らいがいがあるよ

【花散里】の切っ先を水晶屍人に向けてUC使用
【衝撃波】で一気に薙ぎ払うつもり
薙ぎ払ったら軍勢に飛び込み、また【衝撃波】を食らわせる
それを繰り返しながら瘴気の風を【第六感】で探す

「見つけた、そこっ!」
陰陽師を見つけたら大きな声で場所を知らせるよ

【オーラ防御】で舞を無効化しながら
敵に一気に肉薄、【2回攻撃】も織り交ぜ再度UCを放つ
「これ以上先には進ませない!」
「花散里、遠慮せず、たんとお食べ」

アドリブ、絡み歓迎です


春乃・菊生
アドリブ・共闘等々、歓迎する。

[WIZ]
奴めは確か、禁呪使いの外法師じゃったか。
どうやら、人の心だけでなく術者としての矜持すら失うたようじゃのう。

屍人らを祓うついでじゃ。
諸共に常世へと送り返してくれよう。


秘術ノ弐。
舞い、歌い、術をなす。(【ダンス】【歌唱】)


定命の頸木より解き放たれた武者らに破邪の力を与え、敵集団を足止め。
(【破魔】【呪詛耐性】【範囲攻撃】【なぎ払い】【串刺し】【鎧砕き】【援護射撃】)
外法師めがこれを破らんと前に出てくるなら返り討ちにしてくれよう。
(【スナイパー】【カウンター】)



「だいたいあっち側に飛んだみたい!今行けば……!!」

 先の猟兵達の戦いの半ばで到着した天方・菫子が前に出ようとして、そして僅かに躊躇する。
 やはりどうあっても、敵が多い。一人で切りこむこともできるだろうが、そうして疲弊したのちに攻撃を与えたところでうまくいくかどうかという思考が彼女の頭をかすめた。

「ふむ、確かに聞きしに勝る物量じゃな。しかし、斬りこみと足止めを分担すれば、先の吹き飛んだ外法師も見つけ易かろう」

 菫子の横に、歩み並んだのは春乃・菊生である。彼女は菫子に笑みを向けて問うた。

「のう、貴様。ここは我と手を組まぬか?」
「……うん!お願いします!」
「うむ。では、すぐに始めよう」

 菊生はしゃんと背を伸ばし、伴奏もない中で歌い、それに合わせて舞い始める。
 朗朗とした声が、戦場のどこかの別の歌となじむように広がる。屍の群れというおぞましい物のそばだと事も感じぬほど、しっかりとその足は地を踏む。
 歌が一節すすむごとに、舞が一歩進むごとに、菊生の肌には紋が広がる。角が伸び瞳に妖しい光が灯るも、彼女の内は変わらない。

「さあ、武士よ。出陣のときじゃ」

 気づけば菊生と菫子の周囲に、鎧武者の霊が軍団を為していた。

「こやつらで足止めを行う。より深く行くのは、貴様に任せたからの?」
「うん!行くよ、花散里!!」

 菫子は前に歩み、愛刀であり妖刀、花散里の切っ先を水晶屍人に向ける。そして、呪術が為す衝撃波を水晶屍人に叩き込んだ!
 薙ぎ払われていく屍の群れ!そうして作った道筋に、菫子とともに鎧武者の霊たちもなだれ込んでいく!

「こんな風に、故郷でいいようにされたら私だっていい気はしないんだから!」

 衝撃波が屍を丸呑みするかのように放たれる!しかし、菫子は花散里に呑まれてはいない。喰らわれていく水晶屍人の中でも、己の第六感を働かせようと周囲をうかがっていた。

(さっき、敵の指令官が使っていた瘴気の風。あれを探す!攻撃を弱めるためのものなら、猟兵の不意打ちを避けるために復活させるはずだよね!)

 後ろや横から菫子を襲う可能性のあった屍は、鎧武者の霊たちが抑えている。
 敵の落下場所にあたりがつき、サポートがある。だからこそ、菫子が想定していた以上に早く、その時がやってきた。

「――見つけた、そこっ!!」

 感じ取った瘴気の方向に切先を向ける!放たれる衝撃波!吹き飛ぶ屍の中、立ち続ける女の姿を見つける!
 菫子はオーラの防御を纏いながら、ためらうことなくその女に花散里の切っ先を向けた!

「おや、もう次が来ちまったのかい?」
「これ以上先には、進ませない!」

 妖刀の切先から放たれた衝撃波が、瘴気の風を相殺し散らしてゆく!もっと近くへと踏みこみながら、手首の僅かな動きだけで菫子は再び切先を敵に向けた!

「花散里、綺麗な陰陽師だ。遠慮せず、たんとお食べ」

 立て続けに放たれた衝撃の波が、芽依の身を裂く!
 だが、芽依は倒れず、それどころか楽しそうな笑顔で瞳を燃え上がらせた!

「やってくれるねえ!褒美に、この場で壊してあげるよ!」

 踏みこんでいた菫子の腕をつかんで舞う芽依!だが、その菫子を掴む手に不意に矢が突き刺さる!
 傷みと衝撃に芽依が手を離すと同時、菊生の声が彼女たちのもとに届いた!

「よくやった!あやつの術の範囲から逃れるためにも、こちらへ戻ってくるのじゃ!」
「うん!そうさせてもらうね!」

 解放された菫子は、するりと鎧武者の霊の隙間を通る!
 一方、獲物を逃がすまいと追いすがった芽依はその霊たちに行く手を阻まれる!

「しゃらくさいね!」

 菊生が与えた破魔の性質と呪詛の耐性が、鎧武者を守っている。それにしびれを切らしたのか、芽衣は舞の動作に投げをくわえて鎧武者を投げとばしはじめた!

「はは、良い力技じゃ!我もそういうのは嫌いではない、が――おぬし、このようなことに手を貸すとは、既に人の心だけでなく術者としての矜持すら失うたようじゃのう?」
「うるさいね!お前のいる場所はそっちだね?!今、縊り殺しに行ってあげるよ!」

 怒りに任せ、狂う様に舞いながら霊を屠る者が近づいてくる。
 だというのに、菊生は飄々とした笑みを絶やさない。そして、その笑みを引き返させた菫子に向ける。

「あと少しで、こちらに姿を見せそうじゃな……どれ、協力者よ、次の一撃に協力してはくれぬかの?」
「もちろん!」

 菊生が菫子とやりとりした直後、怒りからか暴風のように荒れ狂う瘴気を纏う芽依が姿を現す。だが、芽衣が菊生に手傷を負わせる事は叶わなかった。
 芽衣が見た物は、妖刀の切っ先を自身に前に向ける菫子と、巨大な弓を引き絞る菊生の姿だった。

「花散里!存分に花食いちぎれ!」

 菫子が、再び呪術の衝撃波を放つ!荒れていた瘴気のすべてを吹き飛ばすには至らなかったが、それでも瘴気の風に隙間が生まれ……菊生が限界まで引き絞った弓から放たれた矢が突き刺さる!

「屍人らと諸共に、常世へと送り返してくれよう!」
「あ゛っ?!がぁあぁぁっ??!!!」

 芽依が矢によって串刺しにされた直後、指令官を守れという命が下されたのか、水晶屍人の動きが活性化する。
 急に押し寄せてきた波のような屍の群れの勢いに、敵の姿を菫子と菊生は見失う。

「逃げられたっ!どうしよう?!」
「先の猟兵もこのように閉じ込められておったからのう、想定内じゃ。あとの事は、次の連中に任せるということでどうじゃろうか?」

 そう言って菊生が示す先では何者か――芽依の警戒対象にまだなっていない、新手の猟兵の銃撃音が聞こえていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

モリオン・ヴァレー
紅牙(f06086)と
まさか付いてきて欲しいと頼まれるとはね

これはまた大軍勢ね。さて、あなたの師匠が居る筈だけれど判るかしら?

紅牙が場所に目途を立てたら、あたしはその場所までの道を拓くわ

【ニュートラライズ・バレット】発動
<情報収集>右眼帯を外し霊力による視界を確保
<スナイパー><破魔>右手の朱殷の銃から放つ銀の弾を屍の群れへ
呪術で造ったモノならば、この銀弾でどんどん滅殺出来るわ

あの人が紅牙の……
<援護射撃><属性攻撃>相手が創った爆発物らしきモノへ、左手のパイロ・バスターからの火炎弾
紅牙が近付く前に先に起爆、障害物を取り除くわ


紅牙……今は思いっきり泣きなさい。そしてあの人の分まで、頑張るのよ


渡辺・紅牙
モリオン(f05537)と
頭では判ってはいても心の準備が、ね

<第六感>蝶の簪がかつての主を、師匠を呼んでいる気がする
あっちだ。頼むモリオン

【鉄流呪術・詛符【瘴気】】展開
<ドーピング><オーラ防御><呪詛>
呪甲も展開
爆炎より身を護り正面から

お久しぶりです師匠
2年ぶりですかね
出来れば『再会』はしたくなかった

『蘇った過去は「厄災」だ
相手が誰だろうと倒せ
それがあたしだったとしてもだ』
あなたの言葉です

私は、あなたを滅する!

<フェイント><グラップル><2回攻撃>
身の軽さを活かした、嘆きに呑まれつつの乱舞を

何故最後、微笑んだのですか?
何故あんな、優しい顔……

残された黒き扇
手に取り込み上げるは嗚咽と悔恨



「これはまた、大軍勢ね。さて、紅牙?あなたの師匠が居る筈だけれど、判るかしら?」
「……あっちだ。頼む、モリオン」

 先に到着した猟兵達の戦闘の音が続く中、戦闘音そのものに惑わされずにまっすぐと向かうべき場所を見つけたのは、渡辺・紅牙とモリオン・ヴァレーであった。
 紅牙が指したのはひときわ騒がしい、まるで軍勢と軍勢のぶつかり合いのような音の場所の方向。

「わかったわ、あたしが道を拓く。途中で移動していると感じた時も伝えてちょうだい」
(……蝶の簪がかつての主を、師匠を呼んでいる気がする……だけど……)
「……紅牙?」
「ああ、すまない。頭では判っていても、心の準備が、ね。行こう」

 紅牙が前を向いたことで、モリオンは自身の眼帯を外す。見えぬ右目を霊力で補って視界を確保し、先へ進もうとする屍の群れにユーベルコードを発動した。

「……道中であれば捉える事は容易そうね。行くわ」

 モリオンの愛銃のひとつが銀の弾丸を放ち、一撃で水晶屍人を沈黙させる。霊力や魔力を崩壊させる性質の銃弾の前に、呪術により作り上げられた水晶屍人達は無力と言っていい。
 銀の弾丸を躊躇せず放ち、邪魔になる屍だけを的確に打ち抜いて進む。屍の布地に、モリオンと紅牙二人分の道筋の糸を通していく。
 そうしていくうちに先に立っていたモリオンが、銀の髪とそこに留まる蝶の簪を見つける。
 今は、彼女の後ろを来る紅牙に留まるはずの黒と青の色彩の蝶。それが何を意味するかは、すぐに分かった。

「あの人が、紅牙の……」

 屍があげるはずのないの声、これまでの戦いで傷ついていた芽衣は微かなそれに気づいたのか、即座に呪術を発動させる!
 だが、それは他の誰でもない生前の弟子によって看破された!

「モリオン!周囲のものを爆破する術が発動している!恐らく対象となっているのは水晶屍人の水晶だ!」
「なら、大きく拓くわ。その先は、あなたが」
「……ああ、頼む!」

 モリオンは銀の銃弾を撃ち出していたのとは別の銃を構え、連射!撃ち出される火炎弾の大本は先ほどまでと同じく銀の弾!故に、その炎は水晶を誘爆させながら屍の群れを消し去っていく!
 起爆とそれを消そうとして燃え上がる炎の中を、紅牙は呪力を消費する光の衣と、禁呪による瘴気を纏って突破!
 結果、真正面からかつての師に対峙することとなった!

「! アンタは……!!」
「お久しぶりです、師匠。2年ぶり……ですかね?出来れば『再会』は、したくなかった」
「はっ……はははははっ!あたしが死んでからのほんの少しで、変わったねえ?紅牙!」

 敵意が乗ってはいるが、紅牙の前に居る存在は間違いなく紅牙の師だ。
 彼女自身をふくめた故郷の死が紅牙を今の紅牙にしたことを敢えて無視し、笑い飛ばすところまで含めて、過去、そのものだった。

「禁呪か。使っている以上はやる気だろうけど……本当にあんたが、あたしを倒せるのかい?」
「蘇った過去は「厄災」だ。相手が誰だろうと倒せ。……それがたとえあなただったとしても……というのが、あなたの言葉……私を為す、教えです」

 互いに、構える。 

「そうかい……やってみるといい!」

 紅牙は突進めいた姿勢からの、前進!
 芽依は簪を抜き、投擲!簪が紅牙の眉間に突き刺ささるはずの頃合いで起爆し、爆発を引き起こす!
 が、紅牙は簪が突き刺さる前に姿勢をより低くし、そして大きくそれる!爆発の圏外まで逸れたが、爆発を意識していたのではない。最初から、フェイントで芽衣の攻撃を流して組みつく気だったのだ!
 大きな軌道の変化だが、速度を活かし、芽衣の懐に潜りこむ!そして、紅牙は迷いを打ち消すように宣言した!

「私は、あなたを滅する!」

 自身の呪術により強化された紅牙は、嘆きの想いが呪縛となりながらも瘴気と闘気を乗せた打撃を放つ!

「ぐ、うっ?!」

 重い打撃に合わせて離脱しようとする芽依の腕を、紅牙はしっかりと掴みその場に留める!
 羅刹を抑える掴みの力の反面、活かすのは身軽さ!拳の次は蹴り、蹴りの後に手刀……これまでの猟兵達の戦いを勝利へと昇華するための、そしてこの因縁を終わらせるための打撃の乱舞を見舞う!

「これで、終わりです!」

 掴み、引き寄せ、そして己の腕で貫く。いくら災厄としてよみがえったとはえ、もはや耐えることは出来ぬであろう、最後の一撃!……それを放った紅牙は、目を見開く。
 芽衣は、何も言わなかった。断末魔も上げず、紅牙に向けて――優しい笑みを、浮かべていた。

「……何故」

 世界との繋がりを失い、芽衣は砂の絵が波にさらわれるように消えていく。紅牙が掴んでいたはずの腕も、貫いたはずの感触も消え、なのに最後の微笑みだけが消えない。

「何故、そんな……」

 座り込み地を見ると、黒い扇が落ちていた。黒地に舞う桜のそれを拾い上げたが最後、紅牙はこみ上げる嗚咽を抑えきれなくなる。

「う、ぁ……あ、ああっ……!!」

 指令官を失った屍達は動きを止めていた。各所で戦っていた猟兵達もそれに気づいたのか、周囲の音が徐々に消えていっていた。
 モリオンも周囲の屍が寄らぬように援護に徹していたが、それを止めて紅牙に歩み寄った。

「紅牙」

 ただの別れを惜しむ涙なら、そっとしておいたかもしれない。が、似たような境遇にあるモリオンには、そこに少なからぬ悔恨……紅牙が自身に向ける刃があることに気づいていた。
 だからこそ、やさしく彼の背を撫でながら、少しだけ励ましをおくる。

「……今は思いっきり泣きなさい。そしてあの人の分まで、頑張るのよ」

 不自然なほどの静寂の中、上がる嗚咽と、落ちる涙。しかし、ここで終わりではない。今である彼らの道は、まだ先がある。

 一つの過去が潰えてなお、歪な死を終わらせる猟兵達の戦いは続いて行く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日
宿敵 『『豪快姉御』鉄・芽依』 を撃破!


挿絵イラスト