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エンパイアウォー①~果てよ凶ツ身~

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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●穿てよ欲求
「――さて」
 グリモアベースに集った先兵たちに、くすんだ深緋の視線を向ける猟兵。
 羅刹である咲楽・祈織(狂い咲く春嵐・f17661)は、するりと滑るように言葉を落とした。

「文月の終、サムライエンパイアは寛永三方ヶ原にて行なわれた戦いに参加した諸侯はお疲れ様だったね。お蔭さまで『第六天魔軍将図』を手に入れられた、が……本題はここからだ。
 葉月も早々で悪いが――本格的な戦が始まった。兵の集う場所は、同じくサムライエンパイアがひとつ、関ケ原」

 しるされた八の名。
 八つとその首魁を討ち果たす為、関が原へと向かう兵たちが襲われるという予知。
 襲われる戦場を視たという彼は、戦場の概要を簡潔に、坦々と述べていく。

「今回行ってもらう戦場は、はじまりの数を振られた敵――戦国の世の関東で暗躍していた風魔忍軍の棟梁、『魔軍将』の一人である百面鬼『風魔小太郎』――彼奴が凶ツ星降らせる戦場だ」

 『風魔小太郎』の操る隕石は、星でも岩でも、焔でもない。
 それは配下であるオブリビオン、此度に限れば『マガツミ』という鬼。
 冷徹非道な悪鬼であるそれらは、血肉を貪り、人の絶望や断末魔を好んで喰らうという度し難い悪。
 奇声こそ発するが意思疎通の手段はなく、無力化手段は当然のように物理になるであろうとのこと。

「ホシは、ヒトの集う場所によく堕ちる。ひとまず予知で視えた宿場町近くへ送るから、そこから見えた弾を迎撃してくれ。各々方が得意な戦場で暴れてくれればそれがいいよ」

 主要な街道、逃げ場の少ない橋、人の多い宿場町、ごった返している関所。
 物資が集まる集積所から、それが配分される砦まで、あらゆる場所におちてゆく塊。
 弾道を描いて堕ちる星は衝突の瞬間に爆発し――それら、人の営みを壊し尽して去っていくのだ。
 また、こうして自爆し、破壊の限りを尽くした弾であるオブリビオンは、すぐに風魔小太郎の下へ再出現しては隕石と化す。
 全てが滅びるまで止まらない、災厄の凶。

「雅なかの世界には似合わない暴力沙汰に、解決するのもまた武力だが――その分一刻も早く解決して、御国に平和を取り戻してやりたい」

 ――俺は戦闘に加勢出来ないから。
 その分を宜しく頼む、と黒曜を晒し一礼した祈織は、手元の煙管へ手を掛けて。
 漂う菫色の煙に巻かれたころ、――猟兵たちは、かの倭国の地へと足をつけた。


軒星
 おはようございます、こんにちは、こんばんは。
 初めましての方は初めまして。マスターの軒星です。
 みたび執りました筆は、サムライエンパイアにて行われる戦争のシナリオです。
 プレイングの締日や採用傾向に関しましては個別のMSページにて補足致しますので、送信前にご一読いただけますと幸いです。
=============================
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================
●シナリオ概要
 戦闘は【集団戦】となります。
 3~10体程度のオブリビオンが、風魔忍法によって隕石の弾丸となって降り注いでくるので、その被害を抑えてください。
 迎撃が成功すると、隕石から本来のオブリビオン姿に戻りますので、これらを集団戦で撃破するという流れになります。
=============================
 以上ご留意の上ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。

 それでは、宵居のままに。
32




第1章 集団戦 『血肉に飢えた黒き殺戮者・禍鬼』

POW   :    伽日良の鐵
【サソリのようにうねる尻尾(毒属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    欲欲欲
【血肉を求める渇望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    鳴神一閃
【全身から生じる紫色に光る霆(麻痺属性)】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:ヤマモハンペン

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

蘭・七結
美しい街並み、愛しの和国
その情景が戦火に染まってゆく
それは、それだけは、見逃すことはできないわ
凶星も戦の炎も、払ってみせましょう
この美しい世界の彩を、あげたりなんてしないわ

まあ、なんとおぞましい姿だこと
ひとを屠る姿なんて、想像もしたくないものね
ねえ、戦ごとがお好きなのかしら
ナユはね、少しだけ気が昂っているの
戦は始まったばかりだもの
ナユと遊びましょう、お強いひと

うねる尾は見切り躱しましょう
掠めたとしても、ナユには毒耐性があるもの
捕らえてみせるわ。動かないでちょうだいね
〝七能の結目〟
ぎりぎりと締め上げて、生命を掠めあげて
もうひとつ、とっておきをあげましょう
毒には毒を。ナユの毒のお味は、いかがかしら



 紫煙に揺られる紅一華。
 靡かせながら、戦地につま先を降ろした。
 異国常夜の淑女がひとり、蘭・七結(戀一華・f00421)。

 白いレースのワンピースに、あかに染めた羽織の通り。
 彼女はこの和国を愛していた。
 だからこそ。
「――美しい街並み、愛しい情景。それが戦火に染まるのだけは」
 見過ごせないわ。
 柔らかな紫水晶が、幾分か鋭く瞬いた気がした。

 訪れたのは集積所近く。
 物資を運んでいた兵士は通りすがりに声をかけ、既に退避を終えさせたあと。
 降り注ぐ星は、美しい光でも燃え盛る岩塊でもなく。
 風切る音と共に臨戦態勢を整える“鬼”であった。
「まあ、なんとおぞましい姿。あなたたちがひとを屠る姿なんて、想像もしたくないわ」
 緋咲く一華の袖でふわりと口元を隠して笑む姿は美しいのに――敵対者である彼らには、どうしてもそうは見えなかった。
 影に閃く鬼の匂いを、敏感に察知したように。
 重さを乗せた風が、みっつの影が、その小柄な体躯めがけて軌道を描いてゆく。

「戦ごとがお好きなのかしら。それならナユと遊びましょう?」
 お強いひと。
 くすり、くすりと零れる声は、嘲りを含んでいるのか。はたまた気の昂ったせいであるのか、軽い。
 向かってくる黒塊など意にも介さず、平時のように鮮やかに舞う。
 袖の下に隠した爪さきが描くは、あかいあかい有刺鉄線。
 絡んだそれは鎖となり、鎖は結ばれ網となる。
 〝七能の結目〟――デア・チェイン。
 堕ちてくる凶星に回避の手段は、ない。

 あかい蜘蛛の巣に搦めとられたように足掻く蠍尾は、しかし抵抗しないはずもなく。
 どうにか捕らわれた合間から、その尾をうねらせ七結を狙う。
 音鳴るそれが彼女を捉えた。
 ――と、彼らは思ったかもしれないが。
 恋鬼はそれすら、お見通しだった。

「――毒には毒を。ナユの毒のお味は、いかがかしら」
 ゆるりと笑う戀一華。
 長い袖に隠されたその手には、一花あしらわれた紅い香水瓶。
 伝わる聲を持たない鬼は、悲鳴のような音を上げて尾の端から溶けてゆく。
 鬼の恋慕は盲目的で、すべてを蕩かす想いの猛毒。
 嗚呼、それを――無警戒に受けてしまった身。
 行きつく先など、分かっていようものであろうに。
「その生命のひと滴、ナユが貰ってあげる。だから、安心して――」
 置いて行ってちょうだい。
 あかい鎖ごと、黒い蠍が融けて消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

片桐・公明
「『二頭のゾウが争えば、傷つくのは草』と言うのは外国の各減だったかしら。全く、関係ない人間を巻き込むのは忍びないわね。……忍びは敵なんだけどなぁ。」

UCで隕石を迎撃。
「降ってくるのが岩石じゃなくって鬼なのは、却ってよかったかもね。このUCで岩砕きとかしたことないからね。」
2,3個まとめてUCで吹き飛ばせれば上出来

鬼の姿に戻ったら1体1体に時間を掛けない
妖刀を振るい人体の急所を的確に斬り裂く
鬼退治は手早く機械的に、迎撃の隙を与えずに

余裕があったら一般人の避難誘導も進める
「死にたくなかったら江戸へ走りなさい!!家光公が助けてくださるわ!!」



「二頭のゾウが争えば、傷つくのは草……と言うのは外国の格言だったかしら。全く、関係のない人間を巻き込むのは忍びないわね。」
 忍びは敵なんだけどなぁ。
 ぼやきを零しながら、人の詰まりかけた関所へと赴いたのは片桐・公明(Mathemの名を継ぐ者・f03969)。
 はあ、と溜息をついたけれど、その一息は起動スイッチ。
 瞳は、目的のために計算を繰り返す回路となる。
 まずは、戦いに巻き込むべきでない人々を助けねばなるまい。

 関所で逃げたそうな顔をしながらも人々を捌こうと躍起になる役人へ、人波掻き分け声をあげる。
「ここの人たちも、あなたたちも。死にたくなかったら江戸へ走りなさい!」
 鋭く飛んだ鶴の一声。
 しんと静まり返ったのも刹那、ざわりとどよめきが起こる。
「天下自在符持ちの言葉よ。きっと家光公が助けてくださるわ!」
 関所で止められるような人間は、あとできちんと申し出るように!
 言うべきことを言ったなら、慌てたように出口へ向かう人塊。
「ああ、もう!順番も守って行ってよね!おさない、かけない!」
 喋らない、は違うかな。
 そこで言うのを止めて、公明本人は着弾地点へと走った。

 天から堕ちる凶つ星が三つ。
 みとめた隕石は、話に聞いた通りの逸品。
 黒光りする尾を持つ鬼。
「降ってくるのが岩石じゃなくって鬼なのは、却ってよかったかもね。このUCで岩砕きとかしたことないから。」
 次に吐いた溜息は、少々安心したような声音混じりで。
 伏せた瞳を見開いて、ユーベルコードの照準を合わせる。
 音が鳴りそうなほどに凝視して力を籠める瞳が、眼鏡の奥で輝いて。
 シャッターを切るかのように――ぱちり、瞬けば。
 宙に浮く両手、内蔵された文字通りの“拳銃”が火を噴く。
 業火が星を搦めとる。まとわりついては、掴んだように離さない。
 その焔に巻かれた鬼は、まさしく隕石のようだった。

 炎をその身に浴びながら地に落ちた禍鬼たち。
 ぼろぼろの体を消火して、立ち上がって。
 その身から霆が奔る、ただそれだけの一瞬。
 ――首が跳ぶ。
 音さえ置いて行くその太刀筋が、正確に頭を刎ねてゆく。
 速く、疾く、機械的に。迎撃の隙など、あったものではなかった。
「……上出来かな」
 ばちばち、弾ける閃きとその音を思考の外に弾きだす間に。
 三匹の鬼は、塵へと還った。

成功 🔵​🔵​🔴​

白峰・慎矢
空から狙った場所を攻撃できるなんて、厄介な術だね……。ともかく、ここは俺達が食い止めるしかないみたいだ。

迎撃なら、遠距離を攻撃できる弓が良いよね。【錬成カミヤドリ】で弓を複製して、撃ち落としてしまおう。街道なら、通行人に天下自在符を見せて、皆に通行止めや避難をしてもらおうかな。戦争とは言え、彼らを巻き込むわけにはいかないよ。
後は鬼を倒すのか。体が大きくなるってことは、それだけ的も大きくなるんだよね?それならさっき複製した弓に「破魔」の力を付与して、「2回攻撃」してしまおう。悪いけど、今回血を流すのは君達の方だ。その穢れ、ここで全て祓ってあげるよ……!



 ――かつり。
 橋の上を靴底が叩く。
 ――さく、さく。
 混乱する広い街道の真中で、砂を踏む音がする。
「空からの攻撃、ね……狙った場所に隕石を落とせるなんて、厄介な術だ」
 ふぅ、と小さく息をつく白峰・慎矢(弓に宿った刀使い・f05296)は、先ほど小さな一仕事を終えたところだった。
 大通り近くの関所で役人に声をかけて、一帯の避難と通行止めを指示し。
 今こうして何の息遣いも聞こえぬ通りに、立っている。
「他の猟兵は他のところに行ったようだし」
 ここは俺が食い止めるしかないみたいだな。
 常は柔和な笑みを浮かべる口唇が、弓弦のように引き締められた。

 ひとつ、深呼吸を終えたなら、堕ちてくる凶星をしかと見上げる。
 みっつの黒影を視界に収めて、不意に左手を持ち上げた。
 これは合図。
 己の宿った器を展く、己からの号令。
 薙ぎ払うように腕を伸ばせば、十で参つ括っても余りある弓が顕現した。
 ふわり、それらが光を纏う。
 清浄な気を想わせる、その明りは破魔の力。
 さあ、凶星の鬼を――穿て。

 念動力で同時に引き絞られた弓が、みっつの影を同時に射留める。
 篠突雨の如き高らかな音を響かせて、鬼どもの落下速度を乗せた矢が飛んだ。
 墜落するように力なく地へ伏したふたつの影は、ぴくりとも動かなくなった。
 よし、と小さく安堵したのも束の間。
 あの激しい逆雨の中にも関わらず、当たりの甘かった一匹。
 影ひとつが隕石であることを放棄して、街道へと砂埃を舞わせて着地したようだった。
 警戒態勢を解かなかった慎矢だが、悪くなった視界に目を凝らす間に。
 ――どうしても、遅れをとってしまうことになる。

 砂雲が収まらんとするその刹那。
 丁子色の煙を引き裂いて、黒檀色の棍棒が胴体へと迫った。
 咄嗟に空狐を構えるも、肥大化した鬼の腕は構わず振り抜く。
 みしり、と身体が嫌な音を立てる。
 そのまま宙を舞う慎矢。
 だが舞った蒼天で体制を整え、こちらも負けじと地へその脚を突き立てる。
 靴裏と砂が擦れる音。追うように舞う砂埃。一拍置いて咳き込む聲。
 呼吸を整え、ゆらりと立つ鬼を見遣れば。
 ぼろぼろになったその身を引き摺り、こちらを喰らう意志だけを殺意として向けていた。
 ――は、
 漏れ出る空気だけで、笑う。
「悪いけど、此度血を流すのは君の方だ」
 弐度顕現されゆくは美しい弓。先ほどより剛い光を放つ、覚悟の白焔。
 図体ばかりでかい鬼は、的と言って差し支えなかったことだろう。
「その穢れ、此処で全て払ってあげるよ……!」
 切れた口端片方が、不敵に吊り上がった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

雨宮・いつき
…とうとうこの日がやってきましたか
今こそ務めを果たす時
この太平の世を再び戦乱に包もうなど、許すわけには参りません

砦の方へと降り注ぐ、あの星達を迎え撃ちましょう
落ちてくるその星を喚び出した巨腕にて、思いっきり殴りつけてあげます
霊力を【力溜め】、【全力魔法】にて喚んだ全力の一撃です
鬼へと変ずる暇すら与えず粉砕してしまいましょう

力及ばず鬼へと変じられたなら、起爆符を放ちその動きを制します
毒を持ったその先端を狙い撃ち、気を取らせている隙に尾の根に本命の符を叩き込み、吹き飛ばします
さあ大太郎様、もう一仕事です
きつい一撃をお見舞いしてあげてください!



 ――とうとう、この日が……やって、きましたか。
 グリモアベースで戦の狼煙が上がった時に、不意にそんなことを考えた。
 代々、物怪の類と火花散らしたと聞く。
 自分もそうなるのだと言われ聞かされ従って、齢拾弐で故郷を発った。
 今まで幾度も戦火をくぐって、結びへ導き、その役目を果たしてきた。
 けれどもやはり、こうして大きな戦事というのは、
「今こそ、務めを果たす時ですね」
 身が固くなるというもの。それでも目を背けぬのは――
「この太平の世を再び戦乱に包もうなど、許すわけには参りません」
 ――己の、意志ゆえに。

 多くの兵士の集まる砦に足を運んだのは、背に伸び代を感じさせる男児。
 雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)は、まず手始めに兵たちへと声をかける。
 手短に、ここに迫る脅威とそれを排除しに来た自分の存在を伝え、万が一の備えをしてもらうためだ。
 小さいからと侮るような大人もおらず、天下自在符を認めさせる必要もなく事は運んだ。

 さて、上空に視認した隕石――もとい、鬼の数は伍つほど。
 すうと息を目一杯に吸い込んだなら、現れ出でるは優しき妖の影。
「――参りませ、大太郎法師!」
 喚ばれた無垢なる巨人は、その巨腕へといつきの霊力を借りてゆく。
 掌へと淡い光を集めて、収束させ、握り込む。
 力漲るその体躯の中の一等を、一点に集中させ――時は、訪れた。
 砦の直上まで堕ちて来たそれを、爆発するよりも前に弾く。
 巨人渾身の一撃は、砦に被害の出ない場所へと叩き落とした鬼を挟んでしても、地が抉れるほど。
 砂煙の落ち着いた頃には、その殆どが潰えて終り、骸の海へと還るところであった。

 その中でも一つだけ、よろよろと起き上がる影がある。
 よくよく見ればそれは、同じくして叩きつけられた同族を緩衝材として生き永らえたようだった。
 しかし全身全霊全力で殴りつけられた衝撃は重く、未だ十全に動くどころの状態ではない。
 それでもかの鬼はいつきへの敵意を剥き出しにしており、揺れる尾はその憎悪を象徴しているようにも見えた。

 ならば、と追撃の一手を送る。
 装束へ納めていた符がひとつ、波を熾せし力の宿る護符。起爆符の束を展開していくいつき。
 花弁の如く舞い散る護符は、主が手を翻せば鬼へと向かって放たれた。
 禍鬼が尾を振るい、その符どもを刺さんとした時。
 華開く音が響いた。禍鬼の尾先が弾け飛ぶ。
 また音が爆ぜれば、蠍の尾だけが宙を舞う。
 ――終には。死に体の黒影へ、制裁の拳が振り降ろされた。

成功 🔵​🔵​🔴​

五条・巴
隕石は見ているだけで終われるのなら美しいのだけどね。
僕らの家も壊されたらひとたまりもないな。
ねえ、どこも、君が足を踏み入れていい場所じゃないよ。

一歩、皆より遠くに立つ。
互いの間合いの外から見た其れは
空に映るには不快な色
言葉が通じない、聞こえるのは耳障りな奇声
嗚呼、美しくないね

空から降るものはこうでなくちゃ
"明けの明星"
奇声は雷鳴でかき消して
霆は彗星で潰してしまおう
怒槌を落とし、この場を清める。
不愉快なものは目に入れたくないんだ。

空にもこの地にも帰してあげない。
君らは何処でも無い所で眠るがいいさ。



「見ているだけで終われるのなら、美しいのだけどね」
 人の良い笑みを引っ込めて。
「隕石なんて、僕らの家が壊されるのはご遠慮願いたいな」
 長い睫毛。雪のような白に覆われた、夜のように深いプルシアンブルー。
 冬空のような双眸が、とおくの空から堕ちる星を、恨めしそうに睨め付けた。
「――ねえ」
 どこも、君たちなんかが足を踏み入れていい場所なんか、ないんだよ。

 五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)は、己の帰る場所がある。
 そこには帰りを待つ友達が、家族が、いる。
 大切な、大切な場所。それは、この世界にある。
 だからなのかもしれない。
 凶星の如く降り注ぐ災禍を、他人事に思えないのも。
 土足で踏み入られることに、酷く嫌悪を覚えるのも。

 すらりと長い肢体が、ざり、と音を立てて砂を踏みしめる。
 逃げ惑う宿場町を、何だか遠い世界のことのようにひとり、眺む。
 見かねるように、瞼を下ろす。
 身近な悲鳴が興る。何処にも行けない泣声が響く。
 かなしい旋律の隙間には――耳障りな、鬼の奇声。星の堕ちる音。
「ああ。美しくないね」
 ぽつりと呟いた言葉は、風に攫われ融けてゆく。
 ゆっくりと、瞳を露わにする。
 蒼天に影を落とす黒点が、みっつ。

「空から降るものはこうでなくちゃ」
 教えてあげる。言外のそれを口端に貼り付け、すこぅしだけ。
 薄く笑む。
 月下に咲く華のような紫弓へ、くるりと回した矢を番え。
 瞳の中央、その鮮やかな夜色の虹彩ともども引き絞り。
 ばちり、と手元が音を立てた。空色の霹靂が鏃を覆った。
 ――指さきから解放する。晴天へ、明星が昇る。
「煌めく夢を、見せてあげよう」
 柔く優しく撫ぜる声は、もう凶星など視ていなかった。

 凶ツ星を打ち砕く為の矢は、夢見の彗星。
 風切る音をその身に収め、雷鳴は光を増す。
 鬼星の霆など霞むほどの、抜けるような青色が。
 ――ひとつ。その身に刺さる。
 隕石であることを止めた鬼が、足掻こうと動く。
 ――ふたつ。追うように蒼穹を駆ける雷が、参つの星へ散り穿つ。
 憎悪と欲求のまま肥大化した鬼が、腕を振るわんとする。
 ――みっつ。花が咲く。
 無数の彗星が、嗤う月矢がひらいて。参つ鬼の総てを包んで、焼く。

「何処にも、帰してなんてあげないよ」
 当然だ。
 だって、この弓矢が描く明日は。導く明日は、いつだって。
 やさしくあると、決まっている。
「だから、君らは何処でも無いそこで、眠るといい」

成功 🔵​🔵​🔴​

リル・ルリ
■櫻宵/f02768

エンパイアは、櫻宵の……大切な人の生まれ育った故郷
君の棲む、僕もだいすきな世界だから
好き勝手なんてさせないよ

櫻、気をつけて
君が斬るなら僕は歌おう
歌唱に込めるのは鼓舞
君が存分に舞えるように
歌で君を守るんだから

はぁ?櫻は綺麗だよ
斬るのがすきだけど、あいつみたいじゃないよ
変なこと言わないでよね!
僕を庇うならオーラ防御の水泡で君への攻撃を防ぐよ

油断しないで
鬼を縫い止める歌を
僕の櫻ばかり見ていないでよ!
誘惑込めて歌う、『魅惑の歌』
ほら、止まれ
止まったならば美しく散らされるといい
刀を振るう君はこんなにも綺麗なんだから

まだ
この世界の夏までしか見ていない
この先も見せてくれると約束しただろう


誘名・櫻宵
🌸リル/f10762

うふふ
ありがとう、リル
エンパイアはあたしの故郷
美しくて大切な世界よ
エンパイアの空が汚されるなんて
嫌ね
斬り殺しちゃいましょ

鬼が降るなんて変わったお天気ね!
血肉を貪り絶望や断末魔を好んで喰らう、なんて醜くてあたしのようではない?
リィったら
期待に応えられるように
綺麗に斬って殺すわね

リルの歌が力をくれる
刀に込める破魔、思い切りなぎ払い撃ち払い傷を抉るように2度斬りこんで
攻撃を見切り躱したなら咄嗟の一撃、拳でもなんでも(グラップル)撃ち込んで
踏み込み放つ「絶華」
リルには近づけさせない
あたしの人魚の歌を聴けるなんて幸せね

もちろん、約束は守るわ!
あなたと過ごす明日の為に

首を頂きましょう



 くぐった門扉は、関所の柵。
 天下自在符とその言葉で役人へ頼み込んで、通行止めにしてもらう。
 後ろから、泣き声が聞こえる。怒声が聞こえる。罵声も聞こえた。誰へのだろう。
 でも、聴こえない。
 やらなければならないことがあるから。

 サムライエンパイア。日出での国、地平線の彼方に夜明けを眺むことの出来る地。
 花屑纏う竜人の故郷。
 星屑纏う人魚にとっては、大切なひとの故郷。
 彼がいのちを育んだ土地。彼の生命という陽が昇った場所。
 人魚――リル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)だって、あの国が、世界が、だいすきだ。
 竜人――誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)だって、美しい空が、大切な世界が、すきだった。
 だからこそ戦地へ赴いた。ふたり、手を取り合って。
「櫻、僕の櫻。君の故郷を、だいすきな世界を。好き勝手になんて、させないよ」
「ええ、そう、そうよねリィ。私も嫌よ、そんなことされるの」
 あの空が汚されるだなんて。――嫌ね
 ゆるり、紅を引いた瞼を伏せて。櫻宵は、哀しそうに呟いた。
 その横顔を、つられて眉を下げたリルが見つめる。聲を、かけて、
「……さ、」
「だから」
 途切れる。昇る瞼。
 瞳がふたたび陽光ですぅと細められて、ぞくりとするほどうつくしい。
「斬り殺しちゃいましょ」
 その桜の珠には、獰猛な、光があった。

 雑じり音を閉じた耳で、互いの聲だけが聴こえる。
 しばらくすれば、聞こえるのは。
 上空からの、風切る音。美しくない星が、降り注ぐ音。
「鬼が降るなんて、変わったお天気ね!」
「もう、櫻ったら。冗談言ってないで、気をつけてよね」
「ええ、勿論。あなたに近づけさせたりしないわ」
「そういうことじゃ、ないんだけどなぁ」
 苦笑半分、言葉を交わして。
 だいじょうぶ、いつも通り。
 僕は、歌う/君は、斬る。あたしは斬って/リィが歌う。
 代わりっこないのだ。やることも。この心も。決意も。
 変わるとしたら、カタチだけ。
「――それにしても」
 はぁ、と剣呑な雰囲気と打って変わって、櫻宵が優雅な溜息をつく。
「血肉を貪り絶望や断末魔を好んで喰らう鬼、なんて。
 醜くてあたしのようではない?見てられないわ」
「……はぁ?」
 それを聴いたリルが、今度は眉を吊り上げた。
「櫻は綺麗だよ。――斬るのがすきだけど、あいつらみたいじゃない」
 変なこと言わないでよね!
 上がった声のトーンに、桜色が瞬く。薄花桜が、真っ直ぐ射抜いた。
「――リィったら」
 思わず笑みが零れる。彼からの、信頼の灯りに。
「それなら、期待に応えられるように。綺麗に斬って、殺すわね」 
 おしゃべりは、おしまい。幕は上がった。

 空から降る鬼星伍つ、人魚の歌が包む。
 謳うのは――魅惑。
 澄んだ声からは想像できない、あまい蜜のような檻を詠う。
 誘惑、蠱惑を混ぜ込んで。齎すのは、恍惚と陶酔。
 降る凶星は、奇声も上げない。聞き惚れて、沈黙する。
「――何を見ているの、どこを見ているの、何を聴いているの。
 そんな暇があるなら、僕をみて。僕の歌を聴いて。」
 はなして、あげないから。
 告げれば、ココロを鷲掴む。心ノ臓をにぎる。
 聴覚を通して、脳から、喉を焼く。身も心も蕩かせる。
 その任を、忘れたように。
 堕ちてきても、爆発なんて起こらない。
 代わりに巻きあがったのは、地に衝突した音と砂煙。
「ほぅら、止まれ。止まったならば、美しく散らされるといい」
 歌姫がわらう。
 淡墨櫻が嗤う。
「地に堕ちたなら、そのまま伏すといいわ」
 煙ごと。その場ごと。空気諸共引き裂く剣戟。
 ――愛するひとの聲がする。力をくれる、指に漲る。
 爪さきから刀に、伝わせて、込める。腕の力を、邪を砕く破魔の力を。
 一歩、踏み込む。
 薙ぎ払う。撃ち払う。不可視の斬撃で付いた傷を、抉る。
 霆纏って、毒纏って、こわいかおした鬼さんをみとめる。
「リィのところには、行かせない。届かせない」
 手を返す。弐撃目。手応え。伸ばしていた尾が斬れた。
 近づいたことで負うはずだった、ふたつの紫からの痛みは――ない。
「――油断しないで!」
 僕の櫻ばかり、見ていないでよ。
 ひとつまみの嫉妬と、たくさんの心配。綯交ぜのココロで、泡を編む。
 全て、総てが、吸われて溶けた。
 櫻宵が微笑む。リルが微笑う。
 一発、キツいボディブロー。
「潔く、散りなさいよね。……桜のように!」
 黒影がよろけたその隙間に放つ花――絶華。
「あたしの人魚の歌を聴いて逝けるなんて、幸せね」
「そうだよ。こんなに綺麗に刀を振るう君を見て逝けるのだから」

 続け、紡げ。この波が引く前に。ここでこれらを、片付け終える。
 どこにも行かせない。この世界の誰も傷つけさせない。爪痕なんて、遺させない。
 後始末なんて、しないのが一番なのだから。
「――行くよ!危ないことしないでよね!」
 まだ、この世界の夏までしか見ていない。
 忘れないで、僕との約束。この先も見せてくれると言った君。
「もちろん、約束は守るわ!守る為に、あなたと過ごす明日の為に」
 ――首を、頂きましょう。

 徒花が、次々咲いて、散っていった。
 そんな真夏の炎天下。季節外れの花見酒は、紅い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アパラ・ルッサタイン
やあやあ、これは盛況
これらが全て流れ星だったらうつくしかろうになあ

到着後、逃げ場の少ない橋へ向かおうか
降ってくる禍鬼どもは『ウィザードミサイル』で着弾前に撃ち堕とす
「吹き飛ばし」でより遠くにやってしまえば
皆が逃げる時間も稼げようか

鬼の姿に戻った彼らを認めたら引き続き火を繰り向かうよ
石くれである、あたしの血肉がお気に召すかはわからないが
それでも良けりゃお相手願おう
鬼さんこちら、とはこの国の唄だったかな

パリリと光る霆は存外うつくしいかもしれないね
けれど、あたしの動きを留めても、火の勢いは止められない
だから、ねえ
どうぞ綺麗に燃えておくれよ?



「やあやあ、これは盛況」
 からりと転がすような聲。薄笑みとも、哀愁とも取れぬおもてを浮かべる宝石人。
 アパラ・ルッサタイン(水灯り・f13386)は、細いヒールを木板につける。
 乾いた音を立てながら、人波の中をまるで無抵抗だと言わん顔で進んでゆく。
 ここは水面の上、の上。
 木造の橋。狭い狭いとおりみち。
 逃げる場所はここの先にしかない、から。
 人が殺到する。自分だけが助かりたいとか、そういうわけでもなく。
 ただただ、堕ちる凶星にわめく人々が。真白に塗りつぶされた頭で、足とくちだけを動かしている。

「――これらが全て流れ星だったら、うつくしかろうになあ」
 少しばかり張り上げた声は、ざわめきを掻き消して宙に浮かぶ。
 しん、と刹那の静寂を逃さず、アパラは針に糸を通すよう喉を撫ぜる。
「すまないね、少しだけ退いておくれ」
 橋の真中、彼女の周りだけがぽかりと空いて。
 手にしたランプをからころと振る。いしの転がる音がする。
 するとたちまち、溢れた朱灯が焔となり、焔はたちまち矢へと成る。
 百跳んで伍拾、それでも余りある数の灯し火が、蒼空の下星と生る。
 天へ向かって穿たれたそれは、参つほどの影を突き飛ばした。
「さあ、今のうちにお逃げ」
 応えてくれた人々へありがとう、と微笑みかけて。
 弧月描いたくちびるを皮切りに、蜘蛛の子を散らす様わっとさざめく波の逆。
 堕とした星を、迎えへゆく。

 少し先、人のはけた街道のひらけた場所。
 そこに、残骸は落ちていた。
 砂煙からあらわれる鬼の参匹は、パリリと光る霆を纏って。
 先ほどより、ほんの幾分かだけうつくしく思えた。
 けれど相手は鬼なのだ。どうしようもなく災禍で、どうしようもなく、邪な。
 だから。
「石くれの血肉で良けりゃ、お相手願おうか」
 言うが早いか、撃ち落としたときの焔矢を弐度、差し向ける。
 黒影を囲んで燃えるその炎は、みるみるうちに彼らの体を蝕んだ。
 朱いカーテンの向こうから、お構いなしに飛んでくる霆を避ける気は、ない。
「鬼さんこちら、とは此の国の唄だろう?丁度いい」
 ――あたしの動きを留めても、もう遅い。
 放った灯は、既に手元を離れた。
 あとはこれからの暮らしを奪わぬように気をつけるだけ。
 かんてらに入れた宝石は、いくらか紫光の痛みを和らげてくれる。
 それなら後は、時間の問題じゃないか。
「どうぞ綺麗に、燃えておくれよ?」

成功 🔵​🔵​🔴​

朧・ユェー
美しい場所を醜く染めるのは良くないですよねぇ

おやおや?鬼を隕石ですか
美しくない星ですねぇ
綺麗な流れ星や星の様な可愛い愛おしい妹なら喜んで受け止めるのですが
醜いモノはいりませんね

【漆黒ノ鏈】で絡めとり動きを止める

目には目を、鬼には鬼を
いらっしゃい醜い鬼さん、もっと黒く醜い本当の鬼を魅せてあげようねぇ

【屍鬼】で【暴食のグール】を巨大な鬼へと変化させ

動きを止めた鬼を次々に喰っていく

さぁ、お腹が空いたでしょう?
御飯は空から降ってくるから、沢山お喰べ



 穏やかな笑みを張り付けて、有無を言わせず人払いを済ませた集積所。
 兵が通る地へ、その民さえも巻き添えに降る星の爆撃とは――
「美しくない星ですねぇ」
 張り付けたままのおもてで、朧・ユェー(零月ノ鬼・f06712)は独り言ちた。
 うつくしいその貌が眺めるのは、“何もない”がある土地。
 穏やかなはずの平野の緑が、ざわざわと予感を示すようにうねっている。
 上空からは、大小合わせて伍つほどの紫黒影。
「綺麗な流れ星や、星のような可愛い妹なら受け止めもしますが」
 醜いモノは、要りませんね。
 音を立てて剥がれ落ちた上面が、言葉と共に地に堕ちた。

 ぱちり、と万年筆が小さな聲をあげる。
 本来の使用法と違う開け方でその身をひらいたなら、覗く顔は鋼鉄の鎖。
 ながぁいそれを何の気なしに振って、感触を確かめる。
 今日も上々。それなら、往こうか。
 蒼い空に不釣り合いな黒い点を、伸ばした鏈で弾く。勢いを殺す。
 絡めとって、“鬼”に成ることすら否定する。拘束したまま、地に堕とす。
 ――目には目を、鬼には鬼を。
 相対するのが禍鬼ならば、己とて鬼だ。
 それは比喩でも何でもなく、事実として、朧・ユェーというヒトは。
 鬼の貌を持っている。

 薄く芝の敷かれた絨毯へ、土埃を上げてのたうち回る鬼。
 まず壱匹。
 高所からの落下で受け身も取れないそれの状態は、当然傷だらけ、土だらけ。
 流れる鬼の血が紅いというのも何とも皮肉だ、血の色を聴く必要もなくなった。
 元より、雑音に耳を傾ける気などないのだけれど。
「さぁ、お腹が空いたでしょう?いい子だから、たぁんとお食べ」
 御飯は空から降ってくるから。
 腹表に宿った鬼の子へかたりかける。嫌な音を立てて、それは形を得ていく。
 腹が鳴る。腹が空く。腹が動く。くいたい。
「いらっしゃい、醜い鬼さん方。もっと黒くてもっと醜い、本当の鬼を魅せてあげる」
 くちびるが、二日月に裂けた。

 紅血に反応して動く屍鬼が、捕らわれたままの災禍を頭の端から喰らっている。
 骨の砕ける音がする。聲にもならないつまらぬ悲鳴ごと噛み砕いた。
 もう鏈も解いてやっているのに、逃げる気配もない。当然だ。逃げられないから。
 肉の裂ける音がする。漂う鉄の匂いは、もう何処からなのかもわからない。
 動かないなら興味もない。後は“この子”が喰えばいい。
 臓腑の潰れる音がした。
 蹂躙の合図は、終わらない。
 ――おなじことの、くりかえし。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エンジ・カラカ
知ってる知ってる
馴染みのない不思議な町並み、不思議な格好のヒト
うんうん、知ってる
そうだよなァ……賢い君。
相棒の拷問器具に話しかけて向かうのは関所。

ココはどーんなトコですかー。
敵は強いでーすか。
まァ……なんでもいーやいーや。
目立たないを使って気配を消してヒトの中に紛れ込む。

ソレを見つけたら先制攻撃。
大きく息を吸い込んで吐き出す。
人狼咆哮。賢い君が出るまでもない。
ココはコレがやる。

鬼?アァ……ヒトじゃなくて鬼だった。
鬼だろうがヒトだろうが何でもイイや。
素早さを生かして戦うだけサ。
一人一人はまどろっこしい。
全員まとめてやってやろう。

あーそーぼ。



「知ってる知ってる」
 鼻歌でも唄うように。
 己には馴染みのない不思議な街並みを。
「うんうん、知ってる」
 にこりと人形のような笑み貼り付けて。
 不思議な格好をしたヒトビトの合間を縫って歩く。
「そうだよなァ――賢い君」
 あかいソレに話しかけるコレ。
 相棒へにこにことかたりかける彼は、エンジ・カラカ(六月・f06959)。
 てくてく、ざりざり。向かう先に見えるのは、関所だ。

「やァやァドーモ、ハロゥ、ハロゥ。」
 間延びした口調で、パニックを起こした人の中無遠慮に入り込む。
 目立たないように人波に紛れていたけれど、声を掛ければそれも関係なく。
 ぎょっとした役人が何だお前、と目を瞠る。
 お構いなしに、口がうそぶく。何んも彼んも、知らん顔。
「ココはどーんなトコですかー。」
「どんなって、関所も知らないやつが来るな、今忙しい――」
「――敵は、強いでーすか。」
 にまぁ、と笑んだ彼。
 使い方も知らないけれど、貰ったならば使えるのだろう。
 手元には、お偉いさんから渡されたという紙切れがひらひら。
 みとめた役人は全て察して、エンジだけ通行を赦した。

「アーァ、変なヒトが降ってくる」
 ヒトじゃないんだっけ。
 目の上に手をやって、日陰を作りながら見上げる。
 空高くから降る肆つの凶星に、じとりと粘着質な視線を向ける。
 口を尖らす。拗ねた幼子のよう。
 堕ちてくる。近付けたらバクハツしてしまうのだっけ。
 近付いてくる。――じゃあ、先に仕掛けてしてしまおう。
 一息吸って。
 太陽を見上げて。
 今。
 咆哮が轟く。ちょいと離れたとはいえ、近くにあった関所にも聞こえただろう。
 聲が地面を揺する。空気が震える。星が、堕ちる。
 先ほどまでの胡乱な態度の片鱗もない、真剣な眼差しは――いつの間にか元通り。
 ホシが落ちたから。
 発破されることなく不発に終わった鬼の弾が、どさりどさりと周りに落ちる。
 けれどその鬼たちは未だ戦意を失わないまま、エンジのきんいろを鋭く見遣った。
 どうでもいい。
「鬼?オニだ。ヒトじゃなくて鬼だったか」
 何でもいい。この速度で戦えるなら。そのムダに肥大した体躯でついて来られるなら。
「ヒトリヒトリじゃまどろっこしいカ。じゃー全員まとめてやってやろう」
 かかっておいでと言わんばかり。にやりと笑んだ口端が、息を吸って待ち構える。
 ひらいたくちびるは、食まれた月のように。
 ――あーそーぼ。
 一方的な悪フザケ、出来心。
 御遊びの火蓋も、もうとっくに落とされていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘンリエッタ・モリアーティ
【探偵社】
行きましょう
作戦通りに行くなら私も容赦はしないわ
いい乗り物。さすがです、灯理。
――ふふ、よしてよArsene。「落ち着いて」たらぶっかませない。そうでしょ?

呼び出された鳥に乗って
強化パルスの起動を確認してから、隕石の軌道を確認します
一点集中。無数が一つに集まるときに飛び出すわ

何、この私の上を陣取ってるのよ――石ころ風情が
徹底的に絶滅よ、お前たち
【黄昏(アナイアレイシオン)】で超強化した一撃をお見舞いしましょう
星屑にしてあげる
“破片”が散るのは想定内だわ。地面に待ち構えてるアサシンたちが掃討してくれるでしょう
私?私ももちろん二丁拳銃で撃ち殺すわ
言ったでしょう?絶滅なのよ


ヴィクティム・ウィンターミュート
【探偵社】

そんじゃあ手筈通りに…殲滅は任せたぜ?夕立、匡
こっちはこっちで仕事をきっちりこなさすさ

──思ったよりでけえなこの鳥。手綱よろしくな、灯理
さーて、フェーズ1の主役はヘンリエッタだ…手助けはする、落ち着いてぶっかませ…ってのは余計な気遣いか?

巨鳥に騎乗
UCスタンバイ、拡張コード「祝福の踊り子」起動
強烈なヘイトで隕石の軌道をこちらに集める
隕石が迫る間に、同乗する2人に強化のパルスをありったけ
あとは頼むぜ、主役殿──

そしてフェーズ2
戦闘状態に移行した敵のヘイトを集めながら、夕立と匡に強化のパルス
一塊にして所定のポイントに誘導、あとは死神2人にお任せさ

──無意味で無駄なダンス、ご苦労さんっと


鎧坂・灯理
【探偵社】
さて、では行くか。
ホロ召喚陣を足の下に展開、電力を霊力に転換、注入……来い、竜喰らい
全長30mありますからね。適当に羽根を掴んで下さい、そうそう抜けません

さて、私は頭の上に位置取って……飛びますよ、いいですね
上空へ移動。風などの抵抗からは鳥が守ってくれるから大丈夫だ
Arsene殿が隕石を鳥の背に降るよう調節してくれる
私は念動力で爆発の余波が味方に飛ばぬよう障壁を作る
殴り砕け、怒れる銀の竜。竜喰いの巨鳥の背に乗って

ああ、何体か生きたまま落ちたのがいるな
巨鳥を下へ 念動力を使用しArsene殿を地上へ
我々は上から鳥を盾に狙撃 地上には処刑人が二人
知らぬ間に操られて滅びるといい


矢来・夕立
【探偵社】

第一段階は隕石の迎撃。
鎧坂さん、鳥は安全運転で…なくてもいいですね。
しかしサポートにデコイも兼業て。いよいよ“端役さん”とは呼べないな。
破砕の要は教授さん。思い切りどうぞ。コレも絶滅の下準備です。

第二段階。
誘導予定地点の周辺で待機しています。
暫くはオレと傭兵さんの二人だけですが、何も問題ありません。
『オレを気にせず』『やれることを全部』やってください。
弾幕はイイ隠れ蓑になります。
硝煙、土煙、混乱に恐慌。
それに紛れて《忍び足》。生き残りを《暗殺》
適宜【嗤躱身】で回避。傭兵さんに対するカウンターはナシ。

今作戦に於ける傭兵さんへのオーダーはひとつだけ。殲滅です。
では、宜しくお願いします。


鳴宮・匡
【探偵社】


隕石の迎撃は、上空に布陣した三人に任せ
第二段階の交戦開始までは所定のポイントで待機
……はいはい、そっちもしくじるなよヴィクティム
ま、心配はしてないけどさ

しかし、隕石を殴り抜けるとは人間業じゃねーな
あんな巨鳥を使役するのもだけど

殲滅、ね
そりゃなんとも俺向きのオーダーだ

――さて、それじゃあやろうか

【涯の腥嵐】――射程内に入った敵から順に処理していくよ
相手の動きを【見切り】、被弾を避けながら交戦
殺しきるつもりで撃つけど、多少撃ち漏らしても気にしない
間断なく撃ち続け、相手の判断力を奪い、混乱を招くことを重視
「暗殺」は俺より上等なやつがいるからな
これだけ派手にやれば「やりやすい」だろ?



●前略
「では、矢来君――号令をどうぞ。」
 息を吸う。一拍。狼煙が上がる。
 飛ぶ指示はひとつ。
 ――ブッ殺。
「以上です。」
「了解」
「了解しました。絶滅よ、絶滅」
「シンプルなオーダーだな。任せとけ、得意分野だ」
「ハッハ──Chill.」
 ――そんじゃあ、はりきっていこうか。

●Phase:Zero
 人の逃げ惑っていた街道の一画。特に凶星の降るであろう場所。
 人払いなんて言うのは、この世界のお偉いさんに任せた。面倒なだけだからだ。
「そんじゃ、手筈通りに。殲滅は任せたぜ?夕立、匡」
 作戦工程を別にするふたりへ声をかけたのは、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
 言葉少なに手をひらりと返したほうが、矢来・夕立(影・f14904)。
「……はいはい、そっちもしくじるなよヴィクティム。ま、心配はしてないけどさ」
 やれやれと軽口を返したほうが、鳴宮・匡(凪の海・f01612)。
 にっと笑みを返したヴィクティムは、行動を共にするほうのふたりへと向き直る。
「さて、では行くか」
「ええ、行きましょう」
 その足取りへ重なるように応えたのは、鎧坂・灯理(不退転・f14037)とヘンリエッタ・モリアーティ(犯罪王・f07026)。
 振り向いた夕立――この作戦の発端――が、三名へと口添える。
「鎧坂さん、鳥は安全運転で……なくてもいいですね。破砕の要は教授さん。思い切りどうぞ。コレも絶滅の下準備です」
「大丈夫よ、作戦通りに行くなら私も容赦はしないわ」
 変わらぬ表情のまま物騒な言葉をそれぞれ交わし、微笑んだ――優しい顔だとは言っていない――彼ら彼女らの背を見送った。
「……しかし、サポートにデコイも兼業て。いよいよ“端役さん”とは呼べないな」
 はあ、と自分の呼ぶ渾名がそろそろ相応しくないという旨を呟けば、傍らで微かな笑い声が聞こえた。
 幕は上がった。では出番まで、決まったポジショニングをこなしていようではないか。

●Phase:One
 まず行動を起こすのは灯理。
 足の直下へホログラムの召喚陣を展開し、電力変換を行い――所謂魔術を、ヒトの身でやってのける。
 ――展開設置完了、電霊転換、流入開始、正常起動。
 オールグリーンをみとめれば、竜喰らいの巨鳥を喚ぶ。
 それは全長30mにも及ぶ生物だった。頭部ですら、彼女の倍はあるだろう。
 使役するそれを地へ留まらせ、残りの二人を背に乗らせる。
 自身は頭へ足を向けた。
「いい乗り物。さすがです、灯理」
「……思ったよりでけえな、この鳥」
 反応は各々。称賛と驚嘆。手綱を任されれば、巨体がぶわりと宙に舞う。
 風?そんなものは想定内だ。彼女が失念するわけもない。
 妙翅鳥は得ていた指示通り、人間たちを圧から守っていた。

「さぁて」
 フェーズワン。主役:ヘンリエッタ。
 作戦概要、反芻。目的、確認。
「手助けはする。落ち着いてぶっかませ――ってのは、余計な気遣いか?」
「ふふ。よしてよ、Arsene。「落ち着いて」たらぶっかませない。そうでしょ?」
 不敵な笑みを零しあう。ここがまるで戦場ではなく、議会場かのような声色。
 落ち着きのある彼女を確認し、空中の作戦ポイントに着く間際――ヴィクティムは、ユーベルコードを発動させた。
 Extend Code『BlessDancer』――拡張コード『祝福の踊り子』。
 まずは、敵を破滅と共に踊り狂わせるための……ヘイト上昇プログラム。
 それから、少々ズレて味方強化と治癒のパルスを。
 空から降りゆく無数の星――ざっと参拾。それより多いかもしれない。
 全てが、〝冬寂〟へと向かう。
 けれどそれが当たることなど絶対にない。

 起動、確認。軌道、確認。一点、集中。
 眼鏡の奥底、銀鼠の瞳を閉じる。
 肌で感じる。
 数えるつもりもない量の星が、彼に釣られる。ひとつに集まる。収束する。
 その一瞬、刹那だけを狙って。
「――何、この私の上を陣取ってるのよ」
 石ころ風情が。
 吐き捨てるように呟いて、目を見開くはヘンリエッタ。
 世界の邪魔をするその凶星への激憤と憎悪だけをエネルギー源とし、数十倍もの力を得た彼女。
 その黄昏を冠する拳は、空をも打ち砕かんほどに。
「皆殺しじゃ、生ぬるい。絶滅よ。徹底的に絶滅よ、お前たち」
 振るわれる。対消滅が起こる。流星群の崩壊。『アナイアレイシオン』だ。
 ひとたびのそれで、隕石――形を保てなくなった鬼どもは、散り散りに墜落していく。
 当然頭上直下、すぐ目の前での出来事だ。
 回避は不可能?そんなはずなかろう。
「――殴り砕け、怒れる銀の竜」
 めこ、みしぃ、と嫌な音を立てて、形を取り戻した鬼どものいくつかが原型を亡くす。
 またいくつかは、犯罪王とアーセンに到達する前に弾かれる。
 そこにあったのは、不可視の障壁だ。
 青龍と呼ばれる銀の指輪を補助として、灯理の展開した念動力だ。
 逃れられるわけがなかった。
「とはいえ、嗚呼――何体か、生きたまま落ちたな」
「“破片”が出るのも想定内でしょう。後はアサシンたちの管轄よ」
「それもそうですね。焦らず追いましょうか」
「おっと、俺は先にお暇させて頂くぜ?」
 言外の指示を受け取ったカルラが、二つ返事とばかりに啼いた。

●Phase:Two
 高度を下げてくる巨鳥と、その背から紐無しバンジーを敢行するヴィクティム。
 ふたつの影と、それ以前に散り堕ちる鬼どもの星。
 第一段階完了の報と受け取った夕立と匡は、所定位置でのスタンバイを解く。
「改めて。今作戦に於ける傭兵さんへのオーダーはひとつだけ――殲滅です」
「オーケー。……殲滅、ね」
 そりゃなんとも俺向きのオーダーだ。
 顔色一つ変わらない、〝日常〟の一幕を終えれば。
 仕事続きのアーセンが、念動力の翼をもらって地面に降りてくる頃だ。
 こちらでも、起動確認。
 ヘイト、未だ上昇中。強化パルス、加算累積。
「――さて、それじゃあやろうか」
 死神が、腰をあげた。

「じゃ、『オレを気にせず』『やれること全部』やってください。無理な話じゃないでしょう?」
「はは、勿論。多少なら撃ち漏らしも気にしないことにする。派手にやった方が『やりやすい』だろ?」
 軽口ですら、無駄口でない。
 叩いた言葉のその通り、匡は弾幕を展開する。
 涯の腥嵐――カーム・カーニッジ。
 射程の中の全てが、彼の領域だ。
 右手:自動式挙銃。ヒット。ヒット。ヒット。
 左手:アサルトライフル。ヒット。ヒット。
 近づいてくる死に損ないに、ナイフをプレゼントしてやるのも忘れない。
 殺したかはどうでもいい。勿論被弾は極力避けるが。
 この一手が欲しいのは、お前たちの判断力だ。戦場に招き入れるのは、混乱だ。
 さあ、踊れ。生贄の、掌の上で。
「……しかし、隕石を殴り抜けるとは。つくづく人間業じゃねーな」
 あなたも大概ですよ、なんて声が聴こえたような気がした。

 弾幕というのは、イイ隠れ蓑だ。
 硝煙。土煙。混乱。恐慌。
 全ては、己の足跡を残さないことの役に立つ。
 全ては、己の音を、一挙手一投足を、悟らせないことの役に立つ。
 流れ弾は、すいと避ける。
 流れ拳に、棍棒は――腹が立つので、贈り物をしてから避けてやる。
 でかくなるのは好都合だ。影に紛れて殺しやすい。
 奇襲も暗殺も朝飯前だ。朝飯を食ったかは忘れたし、どうでもいい。
 これはダメ押しだ。自分はその一手だ。ならば、いくつ殺そうが関係ない。
 ここに戦果争いをするような人間は――多分、いない。
 さようなら。聲を掛ける前に、黒くて汚い花火が死んだ。

●草々
「──無意味で無駄なダンス、ご苦労さんっと」
 もうターゲットを取る必要もなくなったアーセンが、嗤う。
「呆気なかったな。弾以外に、遠慮もあった方がよかったか?」
 何の気なしに、悪気もなしに、あっけらかんと言い放った凪の海が、少しだけ嗤う。
「言ったでしょう?絶滅なのよ」
 可愛らしさの面影もない拳銃を手に、狙撃していた犯罪王が、嗤う。
「知らぬ間に操られて、滅びた気分はどうだ?」
 上空から降りて来た不退転の化身が、嗤う。
「残念でしたね」
 影は、表情を変えない。だって影であるから。
 笑わぬ翡翠の声音は知らない。嗤い声なのかもしれない。

 ――人間なれど、人間に非ざるものどもが、嗤った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ
…まずはホシをどうにかする
討つべき敵はその後だ

指鳴らし【杜の使い魔】召喚(騎乗
空中から迎撃
炎宿した玄夜叉で隕石を一刀両断(属性攻撃・部位破壊
極力隕石を小さく割る
地上の被害最小限に
八咫烏の羽で軌道変え人が少ない処へ落とす

…死の海から蘇っても尚、人を喰らうコトを求めるか
テメェらと俺の在り方は相容れねェ
悪が栄えた試し無し

迎撃成功後
宿敵睨む(存在感
一層剣の焔を燃え滾らす

脳裏に焼き付く
故郷の鬼の杜
村を襲撃した禍鬼と対峙
屍の山と噎せ返る血

八咫烏に乗ったまま敵の攻撃は空中回避(見切り
上空から一気に降下し敵を絶つ(2回攻撃

五の型、刃光(デスティニーブレイク)

唸れ、我が力
切り拓け、己が運命
勝利への活路をこの手に



 煙に巻かれて降り立った、故郷の世界。
 空の向こうを見上げて、ひとつ小さな舌打ちをした。
「……まずはホシをどうにかしねェと」
 討つべき敵は、その後だ――。

 パチンとひと度、指を鳴らせば顕れ出でるは濡羽色。
 シキガミ・八咫烏――杜の使い魔だ。
 ひらりと背に乗れば、その澄んだ声の三足烏は良く通る聲で啼いた。
 幾分か近くなった黒影を検めて、己が身丈ほどの黒剣を撫ぜれば、描かれた“く”の字――ケンのルーンがぶわりと光る。
 溢れた光は収束し、撫ぜた剣先から順に焔を灯してゆく。
 ――燃えない隕石など、ただのデブリと変わらない。
 そんなものは、小さく割って屑カゴへ捨てるに限るのだ。
 こんなものを、混乱する地上に落とすわけには、いかないのだ。
 燃え盛る玄夜叉は、クロウの心中を察して呼応しているようだった。

 次々と、星が降る。
 次々と、星を砕く。
 蒼穹を駆る。隕石を模した仇敵を叩き割る。新しく降る星へ向かう。
 細く砕いても、細かく砕いても、鬼へ戻る間もなく砕いても。
 また降る。星が降る。無数に降る。
 斬り損じる。隕石であることだけは止めたらしい。後で狩ることを誓って、一旦は八咫烏に羽で叩き落としてもらう。
 勿論、――人のいない方へ。

 粗方の星を片付け終えて、損じた鬼を堕とした地点へ飛ぶ。
 刹那相対した際まみえた禍鬼どもの視線は、何時何処で見ても相容れないものだった。
 死の海、骸の溟渤から蘇っても尚。
 人を喰らうコトを求める彼奴らを、認める気など毛頭なかった。
「――悪が栄えた試し無し。その強欲ごと、斬り伏せてやる」
 彩の違う双眸が、烈しく燃えた気がした。

 砕くことまで出来なかったとはいえ、何度も斬られ風切る音と共に墜落した禍鬼ども。
 流石に満身創痍ではあるが、これならば数をこなすのに不都合もないだろう。
 ――脳裏に焼き付いた景色、こびりついて離れない故郷。
 鬼の杜。村を襲い、惨劇の限りを尽くしていった、災禍。
 己が見たのは過ぎ去った痕。積まれた屍の山と、噎せ返るほどの血の匂い。
 思い返せば返すほど、嫌悪と憎悪が滾って已まぬ。
 血走る瞳で睨め付ければ、魔剣の業火は一層燃えた。
 急降下してゆく。
 膨らんで肥大しただけの躰から放たれる攻撃など、八咫烏が避けるだけで事足りた。
 確かな手応え。過去の遺物が、世界の異物が、両断されて塵に還る。
 それでもまだ、足りない。充ちない。すべて、討ち滅ぼすには。
「唸れ、我が力」
 ――伍ノ型。
「切り拓け、己が運命」
 ――刃光。
「勝利への活路を、この手に――!」
 ――デスティニー・ブレイク!
 振り降ろされた紅緋い刀身が、幾多もの過去を振り払って、殺す。
 ひとつ残らず、彼の世にも繋がらない骸の海へ、還す。
 全て、凡て、此処で終われと。途切れてしまえと。
 このまま永遠に、二度と視ることが無いように、祈りながら。
 ――殲滅せよ。今は亡き、故郷の想いを胸に。

 その常盤色萌ゆる地には、最後にひとつ。
 杜鬼だけがあったと、云う。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月06日


挿絵イラスト