エンパイアウォー②~死して尚も戦場へ
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無数の人影が、大地を歩く。
それは人の形を成していれども、その全身から一切の生気が感じられず。
なにより肩から生えた奇妙な水晶が、彼らが異形の存在であることを示していた。
『……』
唯一、この中で生気を保った女性が、手にした棒をある方向へと指し示せば、異形の群れは一斉にそちらへと進む方向を変え。
その進路上にあった村が、悲鳴の渦に飲み込まれた。
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「みんな、大至急サムライエンパイアへ向かって欲しいんだ」
息を切らせ、集った猟兵達へとエスペラ・アルベール(元気爆発笑顔の少女・f00095)は声をかける。
事の始まりはつい先日起きた寛永三方ヶ原の戦い。
その戦いに勝利した猟兵達が手に入れた『第六天魔軍将図』、そこに記された8つの名前は記憶に新しいだろう。
その『第六天魔軍将』達―――三方ヶ原で討ち取った武田信玄以外の者が―――サムライエンパイアを征服せんと、一大攻勢をかけてきたのだ。
徳川幕府軍は、この国難に立ち向かう為、諸藩からの援軍もあわせ幕府軍10万を招集。
幕府の総力をあげて織田信長の元に向かい、撃破すべく動き出している。
「魔軍を率いる織田信長を倒すには、幕府軍の力が必要不可欠。けれどこのままだと幕府軍は第六天魔軍将達によって、為す術もなく壊滅させられてしまう……」
幕府軍を壊滅の危機から守ること、それが猟兵達に与えられた役目である。
今回向かってもらいたいのは奥羽地方、ここでは魔軍将の一人、安倍晴明によって生み出された水晶屍人の軍勢が迫っている。
この屍人は噛み付いた人間をも新たな屍人に変える力を持っており、このまま放置しては、最終的にどれほどの数となるか途方も知れない。
反面、知性は無きに等しいようなので、彼らの指揮をしているオブリビオンさえ倒してしまえば、奥羽諸藩の武士達によって十分に撃退が可能となる。
幸いなことに、猟兵には屍人となる力が働かないようなので、最低限のリスクで指揮官を狙うことができるだろう。
「もちろん、屍人にならないとは言っても噛みつかれれば傷を負うし、動きも鈍る。指揮官と同時に相手をすることになったら、かなり厄介だと思うから気をつけてっ」
肝心の指揮官だが、伸縮自在、重量自在、数すら自在な如意棒を巧みに操る女性、孫・金華。
何千という屍人よりも、彼女一人の方が比べ物にならぬほど厄介な相手であることは言うまでもないだろう。
「たとえ屍人がいなくとも十分強敵足り得る相手、みんな、どうか無事で!」
自分の見た未来を実現させないために。
願いを込めて、エスペラは猟兵達を送り出す。
芳乃桜花
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このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
始まりましたエンパイア・ウォー! 夏の暑さに負けず頑張って行きましょうっ! 芳乃桜花ですっ!
今回のシナリオはボス戦となりますが、その周囲には何百何千という水晶屍人達が存在しております。
ユーベルコードを使えるわけでもなく、一体一体は猟兵に及ばないもののボスを覆い隠し、近寄らせない壁程度にはなりえます。
彼らへの対処もできれば、戦闘を有利に進められるでしょう。
それでは、皆様のプレイングお待ちしておりますっ!
第1章 ボス戦
『『異国の棒術士』孫・金華』
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POW : 如意分身法・天降驟雨
【上空から降り注ぐ無数の如意棒】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に如意棒が乱立し、その中を自在に動き回り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD : 如意加重法・爆砕地裂撃
単純で重い【振り下ろし時に重量を増やした如意棒】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ : 如意伸縮法・千里彗星突
【如意棒の伸縮】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【突き】で攻撃する。
イラスト:オペラ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠幻武・極」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
シル・ウィンディア
屍を…
人を、なんだと思ってるのっ!
人の命を弄ぶなんて、許せないっ!!
初手からいきなり
エレメンタル・ファランクスで纏めて薙ぎ払いますっ!
ごめんね、こんなことでしか解放できなくて…
道を作ったら、空中戦・ダッシュ・スライディングを駆使して
最速で孫・金華へ向かいますっ!
周りからの攻撃は、最小限の動きで見切って回避
万が一の被弾時は、致命的な部分だけをオーラ防御で防いで
接敵することを優先
接敵後は、二刀流の光刃剣で舞うように斬りつけます
斬るときも、空中・地上を利用して動き回って
撹乱する様に攻撃仕掛けて行くね
攻撃中も隙あらば
全力魔法・高速詠唱でエレメンタル・ファランクス!
さぁ、人の痛み、思い知ってっ!!
フィン・スターニス
被害者が増えるほど、敵戦力が増えるのですか。
厄介な相手ですね。
この戦法を考えた方は、性根が酷くネジ曲がっているのでしょう。
ともあれ、被害をこれ以上出さない為にも、
ここで指揮官を何とかしないとです。
指揮官の撃破は、他の方に任せ、
屍人の数を減らし、道を作る事を優先します。
視界内に屍人を納め、
二重災禍・存在否定を発動させます。
一度では変化は少ないでしょうし、
二度、三度と繰り返し発動。
その中でも情報は収集し、
指揮官がいると思われる方向を、
屍人の動きと第六感から推測。
確信できれば、その方向の敵を集中して倒し、
指揮官撃破に向かう方の道を切り開きましょう。
竹城・落葉
【POWで判定】
我が故郷でも、この時が来たか。職場が壊滅した日のことが脳裏によぎるな。この世界に平穏をもたらすためにも、敵を打ち倒すぞ!しかし、ゾンビ作品よろしく無関係な村の者を襲撃するとは許しがたい。その悲劇、すぐさま食い止めてやろう!
我は『極術一閃』を発動、大量にいるであろう水晶屍人を見据え、「切れろ」と言うことで敵を素早く大量に切断していくぞ。そうすれば、じきに敵の指揮官も見えてくるはずだ。その指揮官に対しても「切れろ」と言って切断してやるぞ。
もし余裕があれば、襲撃された村の人々のケアもしたいところだ。しかし、時間的余裕はあるだろうか……。
*アドリブ&共闘、歓迎です
鈴木・志乃
嫌いなんだよね、あたし
屍人を操るワザ
首洗って待ってろ
UC発動
【祈り、破魔、呪詛耐性】を籠めた
【歌唱の衝撃波】で全員纏めて
思い切り【なぎ払う】よ!
(マイク片手に)
空中に飛んだりはしない
敵の壁で逆に相手から自分が見えないように進んで行こうか
攻撃の気配を【第六感】で【見切り】
敵の死体を【早業念動力】で操り壁にしながら進んで行こう
場合によってはそのまま嵐と化しボスにぶつけちゃえ
自身の周囲には光の鎖を纏わせさらに上から【オーラ防御】
如意棒が来たら鎖を念動力で動かし絡めとり【武器受け】
そのまま【カウンター】に移るよ
燈夜・偽葉
森深くの博物館の仲間がいれば協力します!
水晶屍人とは面妖ですね
でも奥の如意棒使いと合わせて斬り捨てるのみですよ
「剣よ、天を斬って」で攻撃します
敵の動きを見切り、確実に当てるようにします
金華に近づく前の屍人も、近づいた後に邪魔してくる屍人も、金華がばらまく如意棒も、これで斬り倒します
半径45m、確保完了ですよ
さぁ、死合いましょうね
金華の動きは視力、見切り、第六感で感知し、回避
あるいは武器受け
仲間に来る攻撃も庇いましょう
甲斐・ツカサ
増えたり重くなったり長くなったり、そのニョイボーって武器、面白いね!
でもそれを沢山立てて上に乗っちゃえば、屍人は関係ないよね!
風を纏ったジャンプで如意棒の上に
そこから、空気の足場やワイヤーを駆使して空中戦!
おねーさんはノブナガに召喚されたトライ人なんだよね?
召喚される前はどこにいたのかな?
もしかしたら行った事のない世界から呼ばれたのかもしれないと思うと、戦闘中でも興味深そうに話しかけちゃうね!
でも、話すだけじゃないよ!
ワイヤー引っ掛けた如意棒を倒したりして屍人を巻き込んだり邪魔したりしながら、おねーさんのスキを作るのがオレの役目さ!
重い一撃は、なるべく周囲の如意棒を巻き込むように受けてやる!
リリスフィア・スターライト
ついに始まった戦争、今回も負けるわけにはいかないよね。
森深くの博物館の仲間と協力して戦うよ。
孫・金華だけでなく屍人もいるようだし、
そっちの対処も含めて天体破局による
大洪水で纏めて洗い流してあげるね。
孫・金華は倒せなくても孤立させられたらかな。
発動する時は仲間を巻き込まないタイミングで
魔力を溜めて最大火力でだね。
敵側の特に孫・金華の如意棒による攻撃には警戒して
狙われても防御して最低限反撃できる程度には
ダメージを抑えるようにしたいかな。
「まずは兵隊を何とかしないとだね」
「あるべき場所に還してあげるよ!」
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屍の集団はその数を増やしながら、ひたすらに行軍を続けている。
生命無き躯達に疲れはなく、指揮を取るオブリビオン、金華もまた常人のそれとはかけ離れた身体能力を持つ者。
休む事を必要としない軍は驚異的な速度で進み続け、ふと、金華は前方に不可解な気配を感じ取った。
『……来たか』
屍人の壁でこちらからでは視界が通らず、詳細な状況が掴めないが、この状況で現れる者は限られる。
奥羽の武士が出てくるには早すぎる、幕府の軍は尚更だ。と、なれば。残る可能性はただ一つ―――。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ……我が手に集いて、全てを撃ち抜きし光となれっ!!」
シル・ウィンディア(光刃の精霊術士・f03964)のかざした両手から放たれたのは、この世を司る四の属性を内包した魔力砲撃。
それは宙で無数の帯と分かれ、彼女の眼前に立ち塞がっていた屍人達を残らず薙ぎ払った。
すぐさま二刀の光刃を携え、こじ開けた道を走り抜けるその表情は曇り顔。
(ごめんね、こんなことでしか解放できなくて……)
その理由は、自らが吹き飛ばした屍人達への思い。
死者を、人の命をなんとも思わっていないかのような所業に怒りを抱き、そして力づくでしか彼らを眠らせることが出来ない自分への苛立ちも混ざり込み。
そんな憂いを振り切るように駆ければ、金華の姿が視界に入る。
彼女の周囲は既に新たな屍人によって守りを固められていたが、シルは駆ける速度を落とそうとしない。
真っ直ぐ突っ込んでくる少女へと屍人達が牙を剥き―――。
「第二、及び第三の封印を解除」
その眼前の空間が揺らいだかと思えば、次の瞬間に現れた圧縮魔力によってその身を消失させられていく。
自身の攻撃の効果を見て、フィン・スターニス(七彩龍の巫女・f00208)は立て続けに二度、三度と魔力を解き放ち、歪めた空間を通じてシルを狙う屍人を排除する。
(この屍人達も、同じく被害者……)
屍人による被害者が増える毎に、敵の戦力も増えていく。
戦力が増えれば被害はまた増え……と、雪だるま式に膨れ上がっていくのだ。
(この戦法を考えた方は、性根が酷くネジ曲がっているのでしょう)
言い得ぬ心境に小さく歯を噛み締めると、その感情を吐き出すように魔力を放つ速度を増加させ。
それは狙いを違わず金華の前に立ち塞がる屍人を消失させていき、フィンが開いた道をシルが一足で駆け抜け、姿を表した相手へと有無を言わさず斬りかかる。
「見つけた……人の命を弄ぶなんて、許せないっ!!」
『小賢しい!』
持ち前の機動性を活かし、時には空を駆けながら舞うように繰り出される斬撃を、金華は手にした如意棒を振るい受けきって見せた。
シルの技量が劣っているわけではない、されどその長さを自在に変化させる如意棒は、思いもよらぬタイミングでの反撃や防御を可能とし、相手の攻め手を的確に防いでみせる。
攻め手を倦ねれば必然と反撃のチャンスは増える。片方の光刃が弾かれた刹那、金華は如意棒をシルへと向けて勢いよく突き出した。
『疾っ!』
「くぅ!?」
伸縮の勢いをも加えた突きの乱打を辛うじて防ぎながらも、シルの体勢は大きく崩れてしまう。
続くであろう追撃を防がんと身構えるが、金華の向く先は彼女よりも遥か後方。
「しまっ……フィンさん!」
「……っ!」
金華の狙いは、次々と湧き出る屍人を後方から対処し続けていたフィン。
彼女のいる場所まで届くほどに伸ばされ振り下ろされる如意棒には、本来の質量を無視した加重が為されている。
迫る攻撃を凌ぎきるには、不意を付かれたこの状態では時間が足りない。
―――ならばこそ。
「させません!」
共に立つ仲間が、その足りない部分を補い支えてくれる。
「助かりました、偽葉さん」
自らの前に飛び出し、如意棒を受け流して見せた燈夜・偽葉(黄昏は偽らない・f01006)へと感謝の意を伝え。
地面へと流された一撃が周囲の大地を割り砕く中、偽葉はフィンへ笑顔を返しながら黄昏色の刃を金華へ向ける。
「水晶屍人とは面妖な相手ですが、貴方と合わせて斬り捨てるのみです!」
『……次から次へと』
如意棒を戻しつつ偽葉とフィン、体勢を立て直したシルへと順番に視線を巡らせると、金華は小さく息を吐いて手にした武器を空高く放り投げた。
全員の視線が上空へと向かい、同時に金華が飛び退ったことに気づいたシルが声を上げる。
「みんな、避けて!」
「くっ!?」
「わっと!」
直後、上空から三人目掛けて無数の長さもまちまちな如意棒が降り注ぐ。
各々自らの武器で迎撃し直撃を防ぎはするが、どうしても屍人への手数は減ってしまう。
気づけば一人敵陣深くにいたシルを、無数の屍人が取り囲み襲いかかろうとしていた。
偽葉とフィンがフォローに回ろうとするが、地面に突き刺さった無数の如意棒がその行く手を阻み。
「掴んで!」
突如シル目掛けて上方から放たれたフック付きのワイヤーを、迷う間も無く手をのばして掴み取れば、即座に引き上げられて屍人の囲いの中からの脱出に成功する。
「ツカサさん、ありがとう」
「なんのなんの! それにしてもこのニョイボーって武器、増えたり重くなったり長くなったり、面白いね!」
ワイヤーの主、甲斐・ツカサ(宵空翔ける冒険家・f04788)は蒼く透き通る風を纏い、一際長く伸びて地面に突き刺さっていた如意棒の先端に乗ったまま愉しげな笑みを浮かべる。
そんな状況でない事は理解しつつも、見たことのない物、つまり自分が行ったことのない世界があるのかもと一度思ってしまえば、彼の冒険心は止められない。
金華がどこから来たのか、そこには一体どんな世界が広がっているのか、今すぐにでも問いただしたいところだが、そのためには彼女の周囲の屍人が邪魔である。
「それじゃ、まずは兵隊を何とかしないとだね」
そんなツカサの様子を見て、屍人の群れへと手を向けたのはリリスフィア・スターライト(プリズムジョーカー・f02074)。
その身に宿る魔力は既に限界まで高められている、狙いを定め、最大威力の魔法を解き放つ。
スペースシップワールド、キマイラフューチャーと続けてきた世界の命運を賭けた戦い、今回も負けるわけにはいかないという思いを込めて。
「天体破局……あるべき場所に還してあげるよ!」
あらゆる事象を引き起こすユーベルコード、今回リリスフィアが召喚したのは、全てを押し流す大洪水。
金華は咄嗟に如意棒を突き立て水流に耐えるが、知性を持たぬ屍人に防ぐ術はなく、残らず押し流されていってしまう。
妨害する者がいなくなったと見るや、ツカサはワイヤーと身に纏う風を駆使して一気に距離を詰め。
「ねーねー、おねーさんはノブナガに召喚されたトライ人なんだよね? 召喚される前はどこにいたのかな?」
『……っ!』
興味深そうに問いかけてくるツカサへ不快な表情を浮かべ、叩き落とそうと如意棒を振るうが、自在に空を駆ける彼を捉えることは困難だ。
しかし、金華が小さく舌を打って周囲の突き立つ如意棒の先端へと飛び移ると、如意棒の先端はピタリとツカサの行く先に狙いを定め続ける。
この無数の如意棒は元々金華の作り出したフィールド、ユーベルコードの力も合わさればその戦闘力は猟兵達をも上回る。
「うわ、マズイかもっ!?」
「お任せください!」
危機を感じ取ったツカサに応えたのは、後衛の護衛から外れて前線まで駆けてきた偽葉。
刀を構えて瞳を閉じ、一瞬の精神統一の後にその刃を振るう。
「―――薙ぎ払え!」
『!?』
偽葉の放った一閃は本来の理を超え、本来刃の届かぬ位置の相手すらをも空間ごと切断する。
咄嗟に危険を感じ取ってその場を離れた金華自身こそ無事だが、彼女の突き立てた如意棒は残らず斬り倒され。
「半径45m、確保完了ですよ。さぁ、死合いましょうね」
一見あどけなく、それでいて獰猛さを秘めた笑顔で刃を向ける偽葉へ、金華は表情を歪めつつ数歩後ずさる。
新たな屍人達は直ぐ側まで集まって来ている、もう一度その中に紛れてしまえば、再び自身のフィールドを作り出すことは可能なはず―――。
そんな考えを遮ったのは、戦場に響き渡る歌声。
咄嗟に振り返れば、そこには直ぐ側まで来ていながら、次々と崩れ落ちていく屍人の姿。
「嫌いなんだよね、あたし。屍人を操るワザ」
その中から歩み出てきたのは鈴木・志乃(ブラック・f12101)、彼女はマイクを片手に鋭い視線を金華へ向けて、声を上げる。
「首洗って待ってろ」
その言葉は金華への物か、それともその背後にいる安倍晴明へと向けた物なのか。
歌声に乗せられるように放たれた衝撃波が金華を襲い、よろめいた隙を突いてシルと偽葉が斬りかかるが、いくつもの傷跡を残すも致命傷は凌がれ、金華は大きく跳躍してその場を逃れる。
上空で志乃へと如意棒を向ければ、足の付かない状態ながらも勢いを失わない鋭い突きと共にそれが伸び―――。
『伸び、ない……!?』
自らの武器の間合いが大きくズレ、彼女の攻撃は念動力によって動かされた複数の屍人の死体―――元より死んでいる者にその表現が正しいかは兎も角―――をぶつけられて完全に勢いを殺された。
それでも着地と同時に如意棒を振るうも、苦し紛れの一撃はあっさりと志乃が纏う光の鎖に絡み取られ。
「もう、貴方に誰も傷つけさせない」
『私に、何を……!』
怒りの眼差しごと二度目の衝撃波に吹き飛ばされれば、この歌声こそが自らの力を縛る物だと思考が至る。
しかし最早手遅れだ、自らのユベールコードを封じられた今、このまま戦いを続けることは得策ではない、なんとか屍人に紛れて力が戻るまで時間を稼ぐ他ない。
「―――切れろ」
その思考ごと、未だ残り集まろうとしていた屍人達が切断される。
倒れ伏す屍人の背後から、竹城・落葉(一般的な剣客……の筈だった・f00809)が歩み出た。強い視線を金華へ向けると刀を握るその力を強く込め。
(我が故郷でも、この時が来たか)
脳裏に浮かぶのは、オブリビオンによって壊滅した自身の職場。
予知されていた村はこの背後、そちらはまだ無事なはずだが、既に襲撃を受けた村は恐らくその全てが屍人として変えられてしまっているだろう。
全ての惨劇を防げるほど、自分が特別な力を持っているとは思っていない。
それでもこの刃が届く範囲では、二度と悲劇を繰り返さないため、世界に平和をもたらそうではないか。
強い決意の下進む落葉へ複数の屍人が襲いかかるが、彼女はそちらに少し視線を向けただけで、小さく口を開く。
「切れろ」
先程と同じ言葉を紡げば、それだけで視線の先にいた屍人の身体が切断される。
言の葉を現実の攻撃と化すユーベルコード、その力が向けられれば、力を封じられた金華に防ぐ術はない。
ならばそれより速くこちらから仕掛ける他になし、即座に突き出された如意棒は、しかして両者の間に現れた圧縮魔力によってその大半が消失した。
「リリスフィアさん、ツカサさん―――」
「任せて!」
「こっちもOK!」
フィンとリリスフィア、それまで後衛から機を伺っていた二人が力を解き放ち、如意棒を破壊しその身も水没させて動きを封じる。
いつの間にか周囲張り巡らされたワイヤーはツカサによる物だ、支援よりの動きを選択していた三人による包囲網から逃れることは、例え万全であろうとも困難であっただろう。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ―――」
「斬り捨てます!」
「全ての生命と意志を―――」
シル、偽葉、志乃。この三人は各々の持てる力を金華へ向けて、確実にここで決着を付ける算段だ。
落葉もそれに合わせて口を開き。
「無関係な村をも襲撃する非道、我らが全て食い止めようぞ―――切れろ」
『っ、ぁ……!』
猟兵達の一斉攻撃を受け。
悲鳴すらも掻き消され、一人のオブリビオンが消滅した。
大成功
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