エンパイアウォー②~将を射る矢
幕を開けたエンパイアウォー。
『織田信長』の企てを阻む為の戦い。
時相もあり、グリモアベースに集った猟兵たちはその戦いに向けた説明がある事を予期していただろう。
そしてその予期は、
「今回は江戸幕府からの直々の要請だよ」
妖狐の少女の言葉で確信に変わる。
「……まあ、それが無くともとわは皆に頼むだろうけどさ」
徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)は花弁のように薄い笑みを湛え、集った面々に向けて状況を語り出す。
「――つまり幕府軍十万の内少なくとも一万が、そして件の『首塚の一族』が島原に、『魔空安土城』に辿り着かない事には始まらないという事だね」
オブリビオンフォーミュラである信長の居城、魔空安土城。その城を不破不落たらしめる強固な防護に唯一対抗できる首塚の一族と、その一族が持つユーベルコードの存在。
「敵方もそれは心得ている。始まらせないための手を打って来る。それを阻止し、幕府軍を可能な限り島原に送り届けるのが現在の目標となるわけだ」
とわによって語られた、エンパイアウォーの概観。
ここまでは多かれ少なかれ承知の事だろうと説明をそこそこに、少女は今回の本題を切り出す。
「今回キミたちに向かってもらうのはエンパイアの東北部、奥羽の地。ここの諸藩が今危機に陥っている」
彼女が言うには肩から奇妙な水晶を生やした動く屍、『水晶屍人』が奥羽地方で大量に発生しているのだそうだ。
「『魔軍将』の一人、『安倍晴明』の仕業のようでね……ああ、まったく同じ陰陽師として腹立たしく、それに複雑な気分だよ。だって出鱈目だろう、この数はさあ?」
発生した屍人の数は数百とも、数千とも。
陰陽師であるとともに死霊術士としての素養を持つばかりに、とわはその数字に笑みを引き攣らせてしまう。
「幸いなことに戦闘力までは出鱈目じゃあない。知性もない。……ではないない尽くしなのかというと、そうでもない。厄介極まる特性が一つある」
伝染、とでも言うのだろうか。水晶屍人に噛まれた人間は新たな水晶屍人となり、爆発的にその数を増やしかねないというのだ。
「猟兵にはその力は及ばないようだが、奥羽各地の砦や町、城で数が増えてしまえばとんとん拍子に数万だ。それが着実に江戸に向かって南下してきている」
幕府がエンパイアウォーだけでなく、それに勝利した後のことまでを考えるならば、どうしても江戸を守るために兵を動かさなければならない。それはつまり、島原へ向かう兵を減らさなければならないという事でもあった。
「これがわざわざ島原とは逆方向へキミたちを送る理由さ。水晶屍人による驚異の排除し、後顧の憂いを払おうじゃあないか」
妖狐はその毛並たっぷりの尾を一振りし、口角を上げる。
「では次。その手段だ。この屍人の軍勢にはそれを指揮する者が居る。屍人の軍勢の中に飛び込み、これを突破、そして指揮官を見つけ出して討つんだ」
知能の無い屍人たちを効率よく増やすために人口密集地へと、そしてそれらを経由して江戸へ進軍させている存在。それさえ排除し統率を乱す事が出来れば、奥羽の武士たちでもどうにか駆除が叶うのだという。
「指揮官、名を『大宝寺・桃』。嘗て信長から屋形号を与えられ、東北で一勢力を築いた女大名だね。ここに宛がわれるのも納得という話だ。軍を指揮するための武略も申し分ない」
屋形号を持ったとはいえ、女性でありながら戦国の世でのし上がった存在。兵を用いた戦の駆け引きには秀でたものがあった。
しかしながら……いや、それ故にだろうか、生前の彼女が課していた兵役は過酷の一言。誰が呼んだか、悪屋形。その最期は領民らによる謀反だったという。
「屍人たちをいちいち相手にしても埒が明かないからね、攻撃もしてくるだろうが、対応はそこそこにした方が良いだろう。重要なのは『如何に水晶屍人の攻撃を防いで余力を残すか』、『如何に大軍を強行突破するのか』、『如何に大軍の中から指揮官を見つけるのか』だ。将を射んとすればまず軍を越えよというわけさ。無策で飛び込めば苦労するだろう。一つで構わない、何か自分に合った策を考えてくれたまえ」
――勿論真に大事なのは大宝寺・桃の討伐なのだから、くふふ、按配が難しいところだけれどね。
難題を課している自覚はあるのだろう。
「話は以上だよ。では皆、健闘を祈る」
それでもとわは薄い笑みを絶やさず、或いはこれから討伐に向かうオブリビオンのように悪狐と呼ばれるようになるかもしれない可能性を飲み込んで、説明を切り上げる。
浮かぶグリモアから光が溢れれば水面に溶けるように、少女と猟兵たちを奥羽の地へ送る転移が始まるのだった。
芹沢
いよいよ始まってしまいました、エンパイアウォー。
戦いの行く末に、そして猟兵の皆さんの活躍にわくわくどきどきとさせて頂きたいです。
●特記事項
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
●各章について
第一章:『悪屋形『大宝寺・桃』』との戦闘(ボス戦)
のみで進行します。
無数の『水晶屍人』の中、どのように『悪屋形『大宝寺・桃』』に辿り着くか。この方法がプレイングにある場合プレイングボーナスが付く場合があります。
※方法の記載がなくとも判定への悪影響は一切ありません。
●その他
公開され次第プレイング募集中となり、8月3日22時頃までに送って頂けるとスケジュールの都合上大変ありがたいです。
また、同じくスケジュールの都合で採用人数は5名前後になる見通しです。
募集期間内であれば先着順ではありませんが、送って頂いたプレイングを流してしまう可能性があります。何卒ご了承いただければ幸いです。
以上、芹沢でした。
皆様のらしさ溢れるプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『悪屋形『大宝寺・桃』』
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POW : 羽黒の山の烏天狗
全身を【無数の烏羽】で覆い、自身の【戦意の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : 孤将の暴威
【薙刀を振り回して衝撃波】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 桃姫繁盛、土民陣労
戦闘力のない【農民や商人の霊】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【召喚した霊を吸収すること】によって武器や防具がパワーアップする。
イラスト:utgw
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠大宝寺・朱毘」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ヴィクティム・ウィンターミュート
オーケー、オーダーは理解した
いつも通りに、勝ってくるよ
まずは【罠使い】で投石トラップ設置
次に【地形の利用】で高所を取る。木でも建物でも何でもいい。罠は自分が陣取ってる場所から離しておく。
UCを起動してステルス状態に
【目立たない】【忍び足】【迷彩】でバレないように、軍勢を観察
水晶屍人は肩から水晶を生やしてる
ならそうじゃない奴が指揮官だ
この高所なら、よく見える
位置を捕捉したら近くまで来るのを待ち、まずは投石トラップを起動
石が飛来し、当然そこに注意が向く
その隙に木から【ジャンプ】
上空から、急所に向けて【だまし討ち】【暗殺】をかます
ミスディレクションってやつさ
悪いがここで負けられない
騙されて、死ね
セツナ・アマギリ
しかし……(見渡して)すげー数だな。
さすがにウンザリするねーこれは。
水晶屍人は知能がないって?
それじゃあこれは避けられないだろーな。
(ルナ=アインを地面に突き立てて、UCを発動。ルナ=アインの精霊によって増幅された氷の波動が地面を奔り、屍人たちを足元から一気に氷漬けにする)
指揮官はこんな目立つ攻撃、まともに喰らわねーだろ。
ってことは、避けるよナ?
ほーら、見つけた。
指揮官との戦闘はアシストに回るぜ。
スコーピオン・ギフトでワイヤーアクションと嫌がらせかなー。
接近戦は他の猟兵に任せて、遠方からチマチマ攻撃してやるさ。
避けるのも任せてくれ。身軽さだけが取り柄だからな。
(連携・アドリブ歓迎)
片瀬・栞
有効な手だろうけど、兵も民も見境なしよね、それ。
気に食わない。だから思いっきり邪魔してやろう
【POW】共闘アレンジ歓迎
>行動
とはいえ多くの中から一人を探す手段が無いのよね
…ふむ。意趣返しで陽動の仕返しでもしようかしら
UC【レンの蜘蛛の脚】で地面や木々や岩盤を叩き
「知恵があれば避けれる落とし穴」や
「知恵があれば避けて通れるバリケード」を作り主要地への行軍を阻害する
穴やバリを使って【拠点防御】。
銃やグレネードで【なぎ払い】【範囲攻撃】で屍人を始末する
先兵が詰まり進軍がままならないなら本命が頭を出してくるかもしれない
上手くハマったらサブマシンガンで応戦しよう
空を飛ぶようならフラッシュバンで叩き落とす
照り付ける陽光。茹だるような暑さ。
蝉の声は遠く、聴覚に訴える夏の気配が緩やかなのはせめてもの救いか。
……いや、遠いのではない。
「しかし……すげー数だな」
数多の、夥しい程の足音に掻き消されているのだ。
「さすがにウンザリするねーこれは」
セツナ・アマギリ(銀の魔器・f09837)は気怠そうに、断崖の縁から水晶煌めく谷間を観察していた。
行軍する水晶屍人の様相は多種多様。士農工商分け隔てなく、この世界の様々な装いが生気の無い面と共に闊歩している。
「……有効な手だろうけど、兵も民も見境なしよね、これ」
共通点といえば一様に肌と衣服、鎧を突き破って露わにされた、受けた陽を乱反射させている水晶。
片瀬・栞(アラクニド・f17024)が目を細め、持って生まれたつり目をさらに目立たせているのはしかし、その眩さ故ではない。
「気に食わない」
何処に居るかは未だわからないが、この中に確実にいる指揮官、悪屋形『大宝寺・桃』へ向けての……或いは更にその先、骸の海より出でた陰陽師や第六天魔王へ向けての思い故。
「思いっきり邪魔してやろう」
「ああ。数に物言わせるだけの安っぽいプランにゃ勿体ないが、盛大に台無し/ホースにしちまおう」
観察は十分と視線を切った栞に、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)が口端を釣り上げて同調する。
崖の縁から数歩離れ、彼が視線を落としていたのはホロモニタ。周辺の気候、取り分け風向きや風速を子細に表示した論理ディスプレイ。
「ん。じゃあ手筈通りに」
セツナは密やかに屍人らの動向を見下ろし続け、
「任せて」
栞は集団の先頭を目指して崖沿いを走り
「おう」
ヴィクティムはノイズに掻き消えるようにその姿を消す――。
水晶屍人らを待ち構えていたのは抉れ返った岩土の柵と穿ち開けられた穴。
「狙う必要もないわね、こんなの!」
そして降り注ぐ弾丸。
大味に作られた障害物で動きを鈍らせる屍人たちへ向け、栞は短機関銃の引鉄を引く。
彼女の背には柄まで金属製の大型スレッジハンマー。その一撃は容易く地形を変えるヘヴィメタル。屍人らの進軍を滞らせた柵と穴の創造主。
鉛玉に砕け、崩れ。水晶と屍が折り重なって障害はさらに肥大していく。知恵さえあれば後退を選べただろうがしかし、彼らにはそれが無い。
鉛玉が降り注いでいるというのに、
「ほらほら! どんどん行くわよ!」
榴弾さえ飛び込んで来るというのに、それを見もせず弾丸の炸裂に飲まれている程だった。
「始まったか」
盛大な爆発音。時間通りに炸裂した荒々しいアラーム。
スイッチを切る者の居ないそれは鳴り止む事無く、存在を誇示するように徐々にその音を大きく――先頭から中央へと接近してくる。
滞る行軍。滞りなく進む作戦。
それが意味するのは、水晶屍人に応じる手が無いという事。
セツナは腕を回し、ゆったりと短剣を握り、
「本当にないんだな、知能。ならこれも」
その淡く光る刀身を断崖に突き立てる。
「――避けられないだろーな」
零れ出たのは――否、決壊するように溢れ出したのは氷結の魔力。凍結の波動。月の名を冠する魔女に仕えた、氷精霊の力。冷気は地を這い、生まれた氷河流が断崖を、屍人たちへ向かって駆け下りていく。
陽射しを存分に浴びた岩土を凍らせる冷気、熱の失せた屍肉を氷漬けにすることなど造作もない。足元から浸食するように飲み込み、谷間に氷の彫像を次々と作り上げていく。
「ほーら、次の一発も来たぜ」
凍える眼下を冷やかに見下ろすセツナ。彼の耳に一つの風切り音が……風切り音と呼ぶには些か暴力的な、まるで空を圧し潰すような音が届いた。
遅々として進まなくなった屍人の歩み。
前方では爆発。足元からは氷結。
……そして後方から、風を断って降り来る極大の弾岩。着地すれば勢いのままに、屍人を擂り潰して進むだろう。
そのどれもがこの世界の者にはおいそれとは成し得ないもの。
そのどれもが力と知恵なくして逃れ得ないもの。
「次から次へと……」
故に飛び出した者には……烏羽に覆われた黒影には禍々しき水晶はなく、行動と容貌を以ってそれがこの屍人たちの指揮官だと知らしめる。
猟兵たちの攻撃、その全てから一手で逃れる為に真上へと飛翔する大宝寺・桃。
「――そう躱すしかねぇよなァ?」
彼女に降り注いだのは虚空からの声と、不可視の一撃。
「その程度、読んでいないとでも?」
「ヒュウ、やる」
ノイズの中からヴィクティムが姿を現す。崖上からの跳躍、そして落下。体重の全てを乗せたナイフで桃の喉元を狙った一撃はしかし、彼女の手にする薙刀に防がれてしまう。
左右を崖に囲まれた空間での前後上下からの攻撃。それらを往なされたにも関わらず、
「だがこれは読めたか?」
少年に焦りはない。
涼しい顔でサイバーグラスを降ろせば、
「陽動の仕返し、ここに成ったり! ってね!」
「っ!?」
谷間を光が飲み込んだ。
それは栞の放った閃光弾の炸裂。セツナが谷底を凍らせる過程で氷漬けにした断崖、その壁面を出鱈目に跳ね、狭間の空間ごと眩ませたのだ。
前後上下に加え側面からの詰め。全方位を利用した陽動。谷を埋める程に積み重ねたミスディレクションの山。
凌ぎ切ったと思いこんだ所への閃光は桃のバランス感覚を揺らがせ、未だ失われていない、ヴィクティムの身体に乗ったままの落下エネルギーによって彼女は谷底に叩き伏せられる。
「猪口才なことを……!」
割れ砕ける氷原。巻き上がる白靄。桃は薙刀の一振りでそれを払い、立ち上がる脚でまた氷を砕く
瞳に宿る戦意に揺らぎはない。この応酬で敵の陣容は知れた。上を取られているならそれを奪うまでと、彼女の身体を再び包む黒。
「おっと。居場所は分かったんだ、もう簡単に飛ばせねーよ」
軽やかな跳躍。壁面と壁面を蹴って縫い、セツナがワイヤーを張り巡らせながら谷底へと降りていく。
「そういうことよ。やっと会えたのだから、ここからが……本番!」
栞の放つ弾丸がワイヤーの隙間を縫って降り注ぎ、桃の飛翔を更に妨げる。
「――これで同じ土俵に立ったつもりですか」
再びの薙刀。その一振り。
「粗略甚だしい」
しかしその速さが、靄を払った一振りとは一線を画す。巻き起こるは嵐。純粋な力の発露。その圧だけで弾を止め、地に平伏させてみせる。
唾棄と共に薙刀を構え、氷原を蹴る悪屋形。
「来いよ。いつも通りに、勝ってやる」
尚もヴィクティムは不敵な笑みを絶やさない。
彼は確りと見ていた。認識していた。
桃が吐き捨てた、透いた氷に映える赤を。超然とした力を見せつけながらも、その身体には確かに傷を負っているということを――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リステル・クローズエデン
潜むなら、出てきたもらおう、ほとどぎす……
聞かなかったことにしてください。
ユーベルコードを防具改造で発動。
空中浮遊と空中戦で上空から水晶屍人の群れに
サプライズボムを属性攻撃+破魔+マヒ攻撃+範囲攻撃で投下していきます。
つまりは、爆撃です。
あとは、魔装の腕輪で誘導弾+破魔+マヒ攻撃+範囲攻撃も追加で。
さて、一方的に攻撃されて兵力が削られ続ける場合。相手は?
うまく乗ってくれればいいのですがね。
直接戦闘ならば
視力と見切り、第六感で回避。
オーラ防御+武器受けで防御。
無銘の刀にて鎧無視攻撃+鎧砕き+2回攻撃+フェイント+残像で攻撃
「お前を斬る……」
追撃。武器落とし+衝撃波
「そっちです。あとは任せますよ」
非在・究子
お、囮に、ゾンビの、大群とは、な。
あ、安倍晴明、か。か、かなり、陰険なやつ、みたいだ、な。
……ぐ、ぐひひっ。そ、そう言うヤツの、策略程、邪魔してやりたく、なる。
ぼ、ボスの探し方、だけど、な。
ま、まずは、ゆ、UCで飛行能力を、得て、空から、何度か、仕掛ける。
あ、相手の大半は、烏合の衆だから、まともな、
反撃も、出来きない、だろうけど、
ぼ、ボスが、指揮している辺りは、統制が、取れてるはず、だから、すぐに、応じてくるんじゃ、ないか?
そうやって、見つけたら、魔砲攻撃を、連射しながら、空から、仕掛ける、ぞ。
ひ、ヒット&ウェイで、確実に、相手の耐久力を、削っていく、ぞ。
リア・ファル
SPD
アドリブ・共闘歓迎
悪屋形『大宝寺・桃』、相手にとって不足無し!
機動戦艦ティル・ナ・ノーグの戦法でお相手致そうか!
「やるよ、イルダーナ!」
UC【召喚詠唱・流星戦隊】を使用して、
魚鱗陣を形成、水晶屍人の群れを中央突破……と思わせて。
囲んできたら、全機テイクオフ! 上空からの攻撃に切り替える
「ボクの三次元立体航空攻撃、見せてあげるね!」
大宝寺・桃に肉薄できたら、
複製機体も含めて、円の動きで牽制攻撃し、ターゲットを中央に固定して、
チャンスは本体のイルダーナが突撃!
多元干渉デバイス『ヌァザ』の次元干渉斬撃で勝負!
(技能:戦闘知識、鎧無視攻撃、操縦、空中浮遊、なぎ払い、空中戦)
谷間を駆け抜ける突風と轟音。
それは暴威を振るうオブリビオンの、
「……。用が出来たので、これにて」
彼方背後から。
連携と力の鍔迫り合いを経て、悪屋形『大宝寺・桃』は未だその動きと戦意に衰えを見せてはいない。少なくない手傷を負いはしたが、それは相対した猟兵たちも同じこと。個としてのスペックを考えれば余力の多さは桃に軍配が上がる。
故に、風と音の根本へ向かって駆けていくその姿に三人は追い縋ること適わない。
……されど悪屋形の行く手に待つのもまた、三人。
軍中の孤に、猟兵は群で挑む。
――遡ること数分。
「潜むなら、出てきてもらおう、ほととぎす」
天変地異の如く姿を変えた岩土。積み重なった水晶片と屍。奥からは呻き声と、
「も、もう出てきてる、みたいだけど、な」
更に遠く、奥の奥から交戦音。
「…………聞かなかったことにしてください」
惨状と言える程の眼前の光景ではなく、非在・究子(非実在少女Q・f14901)に突き付けられた現実にリステル・クローズエデン(なんか青いの・f06520)は顔を覆う。
「まぁまぁ。それならそれで話が早いってことで! 屍人をちょちょいとしつつ向かいましょう!」
そんな二人の間から、穏やかな笑みと共にリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が一歩踏み出した。
「そうですね。……出てるなら、出会いに行こう、ほととぎす……ということで」
「だ、だな。ゾンビの、た、大軍で、囮作戦、とか、陰険なこと、考えてたみたいだ、し」
空気を変えるにはそれだけで十分なこと。
リラックスしたやり取りをそのままに、三人は三様に気を引き締める。
「そ、そっくりそのまま、返して……ぐ、ぐひひっ、削れるだけ、リソース、削って、て、てんてこ舞いに、させて、やろ」
究子の言葉に三人は頷き合い、
「外装変換」
「やるよ、イルダーナ!」
「……ら……らじっ…………『ラジカル・エクステンション!』」
高らかに声を上げる――。
谷間に生まれる突風と轟音。
間断なく炸裂する衝撃と熱を前に水晶屍人の身体が吹き飛んでいく。それらの余波でさえ彼らを叩き伏せ、焼き焦がす、十二分を優に超過する火力。
「一方的に攻撃されて兵力が削られる状況、相手も気が気ではないでしょう」
それはリステルの爆撃。
数多の刃/翼を持つ鎧に身を包み空を駆ける彼女は、谷間へと時限式爆弾を投下していく。
毒性物質を内包するその爆弾が爆ぜれば、付近の屍人を微塵に吹き飛ばすに留まらず、周囲の屍人を毒で蝕み地に這い蹲らせる。
「な、なんて、ヌルゲー。烏合の衆、にも、ひっ、ふひっ、程がある」
それは究子の……否、魔砲少女ラジカルQ子の砲撃。
煌びやかに飾られた装いで手にするのは魔力射撃を可能とする砲。その威力、ダブルスーパーレア。期間限定という大義名分に任せてバランス調整を潜り抜けたハイスペックの兆児。飛行能力さえ標準装備の少女はただ圧倒的な火力を見舞うだけでなく、魔力を屍人の水晶で乱反射させてばら撒き、コンボを繋げる始末。
「油断は禁物! 本命は敵の指揮官なんだから!」
それはリアの、彼女――機動戦艦中枢制御ユニット――を中心とした三次元立体航空攻撃。
二輪に跨り谷間を駆ける少女に付き従うのは翼の群れ、制宙高速戦闘機『イルダーナ』たち。接敵と共に急上昇し、一糸乱れぬ編隊で急降下する様は流星群。トップアタックからの機銃掃射で進路を啓蒙していく。
怒涛。圧倒。万夫不当。
力と知恵を持たない屍人は、上空からの攻撃に対する対抗策とてない。
腕を欠き、脚を欠き。欠いた身体で岩土を掻いて。それでも尚前進しようとする彼らを今は捨て置き、彼女たちは騒がしく、目まぐるしく、戦況を変化させる。
「また随分と、好き放題に」
――であれば、それに対応しようとする者に出会うのは必然。
「現れましたか」
地を這うように、猛烈な速度で翔ける黒影を捉えるや否や、リステルはオーラの苦無を創出し、放つ。
後を追うのは数多の光条。究子が迸らせる魔力砲撃。
「数は如何様にも増やせますが、手間を増やされるのは容認できませんね」
桃は薙刀を逆袈裟に振るい、迫るオーラと魔力を容易く裂いてみせる。
「ひゅほっ。ち、チート、かよっ」
言葉とは裏腹に究子の表情から滲み出るのは喜悦。無茶苦茶を実現させるボスキャラの登場は垂涎のシチュエーション。敵のモーションを検証するように、様々な角度から幾条もの砲撃を降らせていく。
――雨上がりに煙る土と砂。束の間の静寂。
程なくして猟兵たちの耳に届く、呻き声。
「小賢しいとは是この事」
しかしそれは桃のものではない。
煙が薄まり、晴れると、そこには夥しい数の亡霊の姿があった。
それは彼女が治めた地の、嘗ての領民。浮かぶ苦悶は生前に課せられた……今も尚魂を縛り続ける兵役の為か。
誰が呼んだか悪屋形。領民の粉骨と砕身を礎に上り詰めた戦国大名。彼女は亡霊をその身に取り込み、力を搾り取り、それを糧として繁い盛えていく。
「マジ、か」
最早上昇に烏羽の力を借りるまでもない。履いた下駄でさえ超常の力を宿し、ただ脚力のみで空を翔け、究子に肉薄して見せた。
閃く薙刀が、
「悪屋形『大宝寺・桃』、相手にとって不足無し!」
刹那速く飛び込んだイルダーナの推進機関を掠める。
翼に掴まり難を逃れた究子を、さらに桃から引き離し、残る編隊が作り上げるのは円形包囲陣。統率の取れた射撃は友軍機の動きを阻害することなく、滞空する桃のを縛りつける。
「――お前を斬る」
振り降ろされるはリステルの白刃。銘無き刀。されどその斬れ味に勝る銘無し。受け止めるべく振り上げられた薙刀の、数多の霊力を啜った刃にさえ、
「ちィッ!」
半ばまで食い込む。
「突撃するよ! イルダーナ!」
好機を捉え、戦闘機の一機が谷底すれすれから高度を上げていく。機首に立ち、共に空を翔けるリアが手にするのは、
《Apply ID:No.0 …Approval. Multiple Interference Device『Nuadha』, set up.》
次元を裂く魔剣。
二つの刃に挟まれ対処を迫られる桃の肩口を、
「ひひっ。迷ってる、迷ってる。てんてこ、舞い」
究子の放つ魔力光が貫く。有り余るスペックは力任せの砲撃だけでなく精密狙撃さえ行って見せた。
「余所見をするな。僕は『お前を』斬ると言ったんだ」
ぐらつく桃の身体。鋭き薙刀。その刃に差し込まれた刀をリステルは素早く引き抜き、握りを返して桃の左腕を斬りつける。
「あとは任せますよ」
「オーライ! リア・ファル、突貫するよーッ!」
込められる力を半減させられた薙刀では、生み出せる衝撃波は最早四半減。イルダーナの、リアの勢いを削ぐこと適わず、
「ぐ……ッ、ぁ……!」
脇腹を深々と裂かれ、烏羽を赤黒く濡らしながら谷底へと墜ちていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
東雲・紫乃々
朱毘(f02172)と一緒に行動。
【心情】
なんか相方がどーしても倒さなきゃいけない相手がいるみたいだしー、かったるいけどここでひとつ恩を売っておけばレッスンさぼるのも許してくれるかしれないしー。
【探索】
相手の場所は見つけてくれるだろうから『灰被り姫は振り向かない』を使用して水晶屍人の頭上を抜けて無視していくスタイルで。あけびんも背負っていきます。
「うわ、ちょ、おもくね?」
【戦闘】
屍人には感情は無いかもだけどあの朱毘ママなら感情を揺さぶれるかも。
心を鬼に身体を鬼に、自領のために戦った女の、母の闘いをテーマに即興で歌詞を紡ぐ。
「振るえ、足掻け、最後の一瞬まで。戦火に焦がれた鬼もまた、ただ幼子の為」
大宝寺・朱毘
紫乃々(f04886)と共闘。
・因縁
生前の桃が討たれる間際、人為的に起こした神隠しによって別世界に飛ばした実娘(赤子)が朱毘。
「あんたはピンと来ないだろーけど、あたしは色々『見える』んでな。あんたに引導を渡せるのは、あたしだ」
・探索
【影の追跡者の召喚】を使って戦場を探索し、桃を見つけ出す。
見つかったら紫乃々に運んでもらう。
「筋トレしたんだよ!」
・戦闘
近接の間合いまで踏み込んで【ザ・ライブ】を発動、周囲の地面をライブ会場に変換。ギターで殴りかかってチャンバラを挑む。
剣技の覚えはないが【衝撃波】を駆使して渡り合い、【見切り】からの【カウンター】で仕留めに行く。
「……生かしてくれたことは感謝してる」
敗走。
刃傷をぎりりと晒で絞め、乱れた呼吸で只管に後退する。
逃げるという一点にのみ力を掻き集めて飛翔した結果、猟兵たちの姿は遥か遠く。誰も追い縋る事の出来ない速さだった。
……それはこの者から未だ戦意が失せていない証。
再起の為の敗走。水晶屍人の一匹でも持ち帰れば、与えられた役目を果たす事は叶う。
さりとて力も長くは続かない。はらり、黒を落とし。ぽたり、赤を落とし。遂にはその身を地に落とす。
ふと蘇る、濁った記憶。再び始まるなど夢にも思っていなかった、
――嗚呼、嘗てもこのようなことが、あったような。
終わりの日。
少女は谷間で片膝を突き、黙考していた。
――ホントはあたしが引導を渡してやりてーんだがな。
頭の中に木霊する、過日の言葉。
気分は不思議とすっきりしている。遂にその日が来たのだと確信がある。
しかし、何故だろう。ぽっかりと埋まらないものを感じる。すっきりとし過ぎていないかと訝しむ。
本番直前になってアガってしまう性分の、その親戚だろうか。そんな風に考えても、考えても考えても、答えは出ない。
……少女にとってこの日は『来た』のだろうか。それとも、『来てしまった』のだろうか。
その答えも、今は出ない。
「――びん。ねーちょっとぉ、あけびーん」
谷間にぼんやりとした、マイペースそうな声が響いていた。
「……えっ、あっ。何」
数秒のタイムラグを挟み、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)が東雲・紫乃々(裏腹あまのじゃく・f04886)の呼び掛けに応える。
「何じゃないんですけどぉ??? 手掛かり見っかったんでしょ?」
「あー、うん」
頬を膨らませる紫乃々の視線の先、屈んだ朱琵の足元、そこには岩土に染み込んだ血の滴があった。それは広い間隔ながらも点々と続き、血を流した者の進行方向を指し示していた。
「じゃあちゃちゃっと行こーよ。どーーーしても倒さなきゃいけない相手ってんだしー」
ほらほら、と紫乃々が背中を向ければ、朱琵がそこにおぶさって、
「うわ、ちょ、おもくね?」
「筋トレしたんだよ!」
黒と紫、二色の髪をふらりと揺らした。
紫乃々が空を翔ける。
「よっ、ほっ」
否、駆ける。
履いたブーツは今は硝子の靴。駆ける宙は硝子の階段。前へ前へ、上へ上へと跳ね進む灰被りの姫。
「(これで誰か追っかけるのはちょーっとモヤるんですけどねー)」
――ま、しょーがない。
眼下の屍人たちの一切を無視し、少女は背中の朱琵の為に……相方の為に痕跡を辿る。
「そろそろ追いついてもよくない? てか、あれじゃね?」
ちょっとした恩も売れるだろうか。そんな事を頭の片隅で考えていた矢先、見つけるのは一つの背中。水晶無き肩の持ち主。
一際高く、大きく跳んで、その頭上を越える。
「追いつかれるのも、この記憶と同じですか」
降り立った猟兵を睨めつけ、悪屋形『大宝寺・桃』は薙刀を構える。
その身体も、得物も、到底万全とは言えない状態。
なればこそ、再び鬼にならねばならない。民を働かせねばならない。
「退いてもらいます」
為すべき事の為に、彼女はずっとそうしてきた。
桃は霊魂を呼び、吸い、己が力としてその身に纏う。
「…………あんたはピンと来ないだろーけど」
広がる殺気。しかしそれに臆することなく、朱琵は歩を進める。
「あたしは色々『見える』んでな。あんたに引導を渡せるのは……」
距離と一緒に、ぽっかりと空いた何かを埋めるように。
「あたしだ」
埋めるべきものを、探すように。
……それでも見つからないのなら、
「たった今からこの場所はッ!」
今は振り切ろう。
「あたしが支配するステージになるッ!!」
為すべきことの為に、壇上へ上がろう。
眩い光が数多現れる。岩土は滑らかな床に姿を変え、甘く華やかな装飾が周囲を飾る。
ここは猟兵の為のライブ会場。エレキギターを振りかぶり、朱琵が悪屋形に挑みかかる。
「さーて」
檀上のアイドルに惹かれてか、指揮官の命によってか、集い来る水晶屍人たち。
「紫乃々の相方にお触りは厳禁な」
挑発的な笑みを浮かべ、紫乃々はその前に立ち塞がるのだった。
「ああァァァーーッ!」
ギターと薙刀が打ち鳴らされること早数十度。壇上からは金属音が鳴り止まない。
「……ッ! このッ、程度……!」
力と勢いに任せて振るわれる朱琵のギター。そこに技はないが、しかし疲弊した桃の薙刀と十二分に渡り合っていた。
見つめる紫乃々の目には、二人の姿はどのように映っただろうか。
倒れ伏した屍人の群れを悠々と跨ぎ、観客席の最前列に来て、立ち尽くす。
「なんかもードラムオンリーみたいになってるし」
音の少なさが寂しくなって、彼女は口ずさむ。
それは即興の詞。眼前の光景から――相方にとってどうしても倒さなければならない相手の姿から浮かび上がった、一人の女の詞。
――振るえ、足掻け、最後の一瞬まで。
壇上にスピーカーが現れ、紫乃々の歌声を増幅する。
――戦火に焦がれた鬼もまた、
メロディアスな旋律が響き渡り、
――ただ幼子の為。
桃の薙刀を鈍らせる。
「――…………」
濁った記憶の果ての果て、悪屋形ではなく一人の女としての……母としての終わりの終わりを思い出させる。
「そ、こ、だァッ!」
或いはそれは、一瞬の走馬灯。刹那駆け巡った記憶の欠片。
朱琵はその寸毫を見逃さず、気迫/想いと共にギターを振り降ろす。
「…………生かしてくれたことは……感謝してる」
桃の心臓/ハートに、叩き込む。
心に空いた何かが埋まった気がした。
きっと、埋めるべきものを見つけさせてくれたのは、相方の歌声。
オブリビオンとしてではなく、己が母親としての大宝寺・桃に、朱琵は別れを告げる。
崩れ落ちる桃の身体が娘の身体に触れて露と消えていく。
最期の瞬間に女を包んだのは、遠く懐かしき、愛しい匂い――。
大成功
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最終結果:成功
完成日:2019年08月06日
宿敵
『悪屋形『大宝寺・桃』』
を撃破!
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