3
エンパイアウォー③~紫電一閃

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦争
🔒
#エンパイアウォー


0





 三本ある羅刹角のうちの一本は、藤色に輝き、緻密な文様を浮かび上がらせて、グリモアベースとサムライエンパイアを繋ぐ。
 性のあいまいな声音で、その羅刹は集まった猟兵を手短に労った。
 寛永三方ヶ原の戦いに勝利し、『第六天魔軍将図』を手に入れることに成功したことだ。
「アンタらにこれから向かってもらうのは、中山道の要衝『信州上田城』」
 山岳に構えた城の周辺はすでに、魔軍将図に名を連ねる一人、軍神『上杉謙信』――その軍勢が制圧している。
 そうして、上杉軍は、中山道方面から展開される徳川軍を殲滅せんと準備を整えているのだ。
「手狭な城から溢れた部隊が、城周辺にいくつも形成されてるのが現状だ。ヤツらには、明確な目的がある。士気は高い。アンタらには、この連中を討伐してもらって、上杉軍の戦力を削ってもらいたい」
 しかし、そのすべてを殲滅する時間はない。
 中でも主力となる強力な部隊を撃破することになるだろう。
「この襲撃で――いまこの段階の襲撃で、戦力を失えば、上杉軍は不利を悟り撤退する」
 羅刹は話す。
 転送先は、山岳地帯。傾斜は緩やかだが、下草は生い茂り、生える木は多くない。
 敵は、人型オブリビオン。刀のヤドリガミ。模倣刀『偽村雨』が、少なくともで12体。
「視えた分は数えた。数え切れていなくて増えることはあっても、減ることはない」
 幸いにも、転送後すぐに気づかれることはない。策を練り、実行する時間なら、捻出できるだろう。
「刀を巧みに使い、寒気と怖気を巧みに操り、アンタらを凍えさすだろう――けど、」
 この行軍を止めるわけにはいかない。
 徳川の軍勢は歩み行かねばならない。
 これを守ることは、サムライエンパイアを守ることと同義。
 オブリビオンに覇権を渡すわけにはいかないのだ。
「徳川の軍勢は、ぜったいに必要だ――是が非でも守らないといけない」
 羅刹は、猟兵を見据える。
 藤色の猫目が、ぎらりと輝く。そして、折れた羅刹角を補完するように現れていた、紫のグリモアが一層煌めき始める。
「――今までも、こんな困難なんぞ、たやすく、力強く、捻り潰してきたんだろう」
 志崎・輝(紫怨の拳・f17340)は猟兵に、向けて強く一度頷いた。
「アンタらを信じてる」


藤野キワミ
 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
=============================

開戦!
藤野キワミです。とくになにをキワめたわけではありませんが。
油断なくいきましょう。なんとかします。
熱くてカッコいいプレイングをお待ちしています!
73




第1章 集団戦 『模倣刀『偽村雨』』

POW   :    雹刃突
【呼び起こした寒気】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    怨呪流血斬
自身に【過去の被害者の怨念】をまとい、高速移動と【止血し難くなる呪い】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    氷輪布陣
【氷柱】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を凍らせて】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。

イラスト:ボンプラム

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ガイ・レックウ
(POW】で判定
【オーラ防御】で防御を固め、【見切り】で相手の攻撃を避けながら【怪力】での【なぎ払い】と【2回攻撃】、アサルトウェポンによる斉射を叩き込んでいくぜ!!
相手が一か所に固まれば【範囲攻撃】のスキルを使い、ユーベルコード【紅蓮開放『ヴリトラ』】で焼き付くすぜ!


四葉・蛍輝
できるだけ、被害を出さずに、迅速に
難しいかもしれないけれどやれるだけやってみよう

【地形の利用】【情報収集】で、できるだけ敵を一纏めにできそうな場所を探してみよう
敵が多い可能性もあるから、できる限り一気に倒してしまいたいよね
複数対象の魔法は得意分野だ
うまく場所を見つけられればそこに敵を誘き寄せよう

「準備は整った……解錠(コール)、焔光(ブレイズ)」
焔の精霊を呼び出しUC【エレメンタル・ファンタジア】発動
焔の雨を降らせるよ
【全力魔法】【範囲攻撃】【属性攻撃:炎】を乗せて【高速詠唱】で休みなく魔法を唱えよう
動かせる隙は与えない、凍えさせるというのならそれ以上の熱をぶつけるよ


筒石・トオル
POW

敵は12体以上。一度に複数体と相対するのは厳しいが、仲間と共に1体ずつ確実に倒していけば安全だろう。
敵が寒気で来るならば、『トリニティ・エンハンス』〔炎の魔力〕で防御力を上げておこう。+【氷結耐性、オーラ防御、呪詛耐性】
仲間には防御を固めて有るからと壁役を申し出る。
敵からのヘイトを稼ぐように、熱線銃で攻撃を仕掛ける。【援護射撃、誘導弾、催眠術】
敵が攻撃回数を上げたなら、その分は【早業、2回攻撃】で対応。
実際に対応しきれなくても、落ち着いた表情で余裕が有るように見せる。
少なくとも気持ちで負けるつもりはない。


郁芽・瑞莉
模倣刀とはいえ徳川に綽名す妖刀と呼ばれた村雨。
気を引き締めて、徳川の軍勢を減らすことなく進める様に敵の主力、
倒させて貰いますよ!

地形を利用して姿勢を低く保ちながらダッシュ。
出来うる限り見つからない様にして。
早業の先制攻撃でなぎ払い、衝撃波を放って相手の防御を砕きます!
「先手必勝です、行きますよ秘幻!」
相手の反撃には見切りや第六感に従って残像や迷彩で紙一重で回避。
それでも避け切れない刀で受けて直撃を喰らわない様に留意。
「秘幻の名、とくと味わってくださいね!」

ドーピングで更に身体能力高めつつ、
力を溜めた一撃で砕いた防御の所を狙って串刺し。
傷口を抉りながら引き抜き、近づいてきた相手を倒していきます!


梅ヶ枝・喜介
おれァ剣士だ!凍えそうな身を温める超常なんざ持ち合わせがねェ!

だが寒気に負けるようじゃあ、一端の剣士なんて名乗れねぇナ!
木々を震わせ山に響き渡る気勢を上げる!
体の隅々まで気合を入れて寒気をブッ飛ばすゼ!

道理を蹴っ飛ばして己を貫く!
無茶苦茶だろうとこれがおれヨ!

どうだ!見たか刀のヤドリガミ!
テメェごときの腑抜けたマジナイじゃあ、おれは倒せん!
木刀を大上段へと構えて見得を切る!

無論!こんな啖呵はやせ我慢だ!
こうしている間にも手足は凍る!

だが挑発に乗り、確実におれへトドメを刺そうと近寄ってきた敵なら…

天へ掲げた木刀を振り下ろす!
一刀一足の間合いなら!おれァ誰にも負けるつもりはねェってんだよッッ!!


香神乃・饗
こんなに早く信長が復活なんて思いもしなかったっす
止めてやるっす!何がなんでもっす!

香神写しで武器を複製
地形を利用し草むらに身を隠し接近
自分が居るほうとは別の方向の草を剛糸で揺らしフェイントをかけ、他の方向から奇襲がある風を装うっす
軍が混乱している間に死角から接近し暗殺
剛糸で動きを止めたり、首を絞めたり
手元に残した2本の苦無で倒していくっす

幾ら加速しても避けられない数があれば打ち抜けるっす!
苦無の雨で退路を断ったり、フェイントをかけて死角に入るっす

一撃を喰らっても止まらない覚悟
俺はヤドリガミっす
血が止まらないくらいでは死なないっす!
無茶したって怒られるっす
けど、怒られるために死ねないんっす!


メルノ・ネッケル
模倣刀とはいえ、奴らの実力は本物。
……うちの、うちらの故郷を守る為なんや。油断は無しでお相手するで!
行くぞ、『偽村雨』!!

まずは挨拶がわりの【先制攻撃】!二丁拳銃を軽く撃ち込み気を引く。

反撃は単純な氷柱の射撃、だからこそ鋭く速い!【見切り】、回避を試みる!
結果がどうあれ、まだうちが動けてたら全弾命中は無い。外した氷柱の当たった地面が凍り始めるはずや。

その場を離れれば、力が増すと分かっとる奴らは凍った場所に集まる。そこが狙い目!

……知っとるか?氷は熱に弱いんや。
呪氷を融かすは妖狐の炎……ってな。『フォックスファイア』!
四十の狐火全て纏めて、凍った地面ごと燃やし尽くしたる!
さぁ、派手に燃えぇっ!!


政木・朱鞠
模倣刀『偽村雨』達がただ乱世を望む黒幕の言いなりになって世界を滅ぼす気でいるのなら絶対に許すわけには行かないよね…。
残念だけど、貴方達の悪巧みは私達が邪魔して文字通り骨折り損にさせて貰うよ。
未来を呪いで満たさせないために、戦をもたらした咎はしっかり償ってから骸の海に帰って貰うよ。

戦闘【SPD】
ミスをすれば呪付きの斬撃を貰うリスクは有るけど『忍法・狐龍変化身』を使用して真の姿の足部分を再現して、仮初めだけど回避に特化した強化状態で迎え撃つよ。
獲物は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】で防御を緩めて【傷口をえぐる】→【生命力吸収】で模倣刀『偽村雨』を絞め潰してダメージを狙うよ。

アドリブ連帯歓迎




 下草は生い茂る。転送直後の四葉・蛍輝(蛍火の鍵・f17592)は若葉色の双眸で、哨戒中のオブリビオンを見る。
 一掃するには難しくとも、それでもより多く戦力を削ぐことのできる地点を視る。
 地形を、敵の数を、十二体より数が増える可能性を否定できない現状で、出来うるかぎり早期決着をつけるに越したことはない。
 被害を出さないように迅速に――難しいことだ。それでも蛍輝らはやらなければならない。
「僕がみんなを守るよ――防御は任せて」
 筒石・トオル(多重人格者のマジックナイト・f04677)は《熱線銃》を構えて援護を買って出る。
「おう、頼んだぜ」
 ガイ・レックウ(相克の戦士・f01997)は、見据えていた偽村雨どもからトオルへ視線を投げ、片頬を釣り上げた。
「模倣刀とはいえ徳川に綽名す妖刀と呼ばれた村雨――ですか」
 ぽつりと呟くのは、郁芽・瑞莉(陽炎の戦巫女・f00305)だ。
 己の腰に佩いた《秘幻》の銘を冠した霊刀の柄をひと撫で。
「とはいえ、奴らの実力は本物……うちの、うちらの故郷を守る為なんや」
 そのために、これまでの恩を返すために、一片でも感謝を伝えるために――故郷を守りたい一心で、技を磨き、己を高め、心を育ててきた。
 愛する故郷の危機だ。看過はできない――メルノ・ネッケル(火器狐・f09332)は《R&B》と《アサルトリボルバー》を構えて、奔る。
(「倒させて貰いますよ!」)
 瑞莉もまた気を引き締めて、徳川の進軍の邪魔立てをする敵軍は一匹残さず滅する――できうる限りの低姿勢にて接敵、生い茂る下草が、メルノと瑞莉の疾駆を隠す。
 二人の疾る先へ。
「準備は整った……解錠(コール)、焔光(ブレイズ)」
 蛍輝の静かながら、芯の強い声音――その声に喚ばれ踊るは、焔の精霊。
「動く隙は与えない、俺たちを凍えさせるというのなら、それ以上の熱をぶつけるよ」
 宣言。一斉に振り返る偽村雨どもの挙動は、すでに後手に回っている。
 蛍輝の緑の目に揺らめく炎が映った。
 彼の聖性を帯びる魔力を食って限界まで力を高め、その影響範囲は蛍輝の制御可能とするギリギリのところまで広げる。
 少しでも集中が途切れれば容易く暴走してしまうだろう――【エレメンタル・ファンタジア】は強力であるがゆえに、その反動も油断ならない。
 それでも蛍輝は、そのユーベルコードを発動させる。
 時間をかけてじっくり攻め入るときではないのだ。
「俺は、こういう魔法は得意だ」
 焔の驟雨が偽村雨どもを焼いていく――その混乱に乗じて、瑞莉が集団の背後から姿を現す。
「先手必勝です、行きますよ秘幻!」
 愛刀の銘を呼ぶ。奔る銀閃――蛍輝の聖焔の雨をも断ち切って、偽村雨を薙ぎ払う!
 激烈に空を切り裂いた拍子に衝撃波が敵に牙を剥いた。不可視の斬撃。見えないという恐怖は、しかし偽村雨どもは特に気にした様子もなく、ひと振りの大太刀を手に、痩身に寒気を纏わせ、刀身を凍らせる――【雹刃突】の構え――ある者は、その身を焼かれながらも足を踏み鳴らす。
 瞬間、生えるのは怜悧に尖る氷柱――高速で放たれれば、容易く穿孔してしまうだろう。
 鋭い呼気とともに、強烈な刺突を斬り落とした瑞莉は、【血の誓約解放】の手順に則り、《秘幻》に己の血を与えるために、わずかに皮膚を裂く。

「行くぞ、偽村雨!!」

 妖にとっての敵は焔の雨を降らせる蛍輝と、鋭い剣技で翻弄した瑞莉だけでない。
 両の手に握られている拳銃から、弾丸が次々に吐き出される。
 挨拶代わりに撃ち込まれる弾丸――それに対抗するように撃ち出されたのは、先刻の氷柱だ。
 偽村雨を守るように展開、吐き出された氷柱は、メルノの弾丸と相討つ。
 粉微塵に砕けた氷の粒は、その場に落ちて、妖どもの力場を作りだした。
(「さぁ、集まってきぃ! したら、うちが――うちらがいっぺんに、焼き尽くしたる!」)
 果たして偽村雨どもは、下草をも凍りつかせる氷陣の上に集まりくる。
 メルノの頬が緩む。
「はは、案外素直やな! けどな、知っとるか?」
 赤い目が不敵に細まって、頬の笑みは一層深くなる。
「氷は熱に弱いんや――呪氷を融かすは妖狐の炎、ってな……【フォックスファイア】!」
 瞬時に現れる四十に及ぶ狐火を、一点に収斂すれば巨大な鬼火となって。
「さぁ、派手に燃えぇっ!」
 メルノの放った業火、それに輪をかけて聖性を纏う炎の雨が降り注ぐ――蛍輝だ。
 絶え間なく、超絶技巧で精霊を操る彼は、ふうっと息をつく。
「はやく、終わらせよう」
「その意見、賛成よ」
 神速は手に入れた――《秘幻》を刺突の構えに瑞莉が、一足のうちに間合いを詰める。
「秘幻の名、とくと味わってくださいね!」
 溜めに溜めた力をその一撃に乗せて、油断しきった背を刺し貫く。
「がッ!?」
 その傷を広げるように抉りながら引き抜き、彼女に這い寄るもう一体の偽村雨の一刀を、紙一重で躱す。力尽きた先の一体に背を向けて、《秘幻》を構え――瞬間、それの眉間に突き刺さるのは、《ブラスター》による正確無比な射撃。
 驚いた瑞莉は、そちらを振り返り見る。
 眼鏡の奥の黒瞳は、冷静に戦場を見つめ、華奢な少年が《熱線銃》を構えていた。
 相手は集団だ。
 確かに一網打尽にしてしまうのは、セオリーだ。しかしトオルのように、実直に確実に一体ずつでも息の根を止め、数を減らす者も必要だ。
 あらゆるリスクを考え、それをできうる限り潰す。
 トオルの一撃には【トリニティ・エンハンス】による炎の加護が付与されている。
 額を撃ち抜かれた偽村雨は、その場に崩れ落ちて動かなくなった。
「見事!」
 疾駆しながらガイが吠える。赤瞳は燃え盛る。トオルが斃した一体の後ろにまだ、偽村雨がいたのだ。
 オーラを纏い防御を固めたガイは、烈声を迸らせる。
「くらえっ!」
 妖刀を、ガイの怪力でもって振り、袈裟がけに一刀を奔らせる。手首を返して、勢いを殺さずに横薙ぎに一閃。そして、怯んだ偽村雨へ、ほとんどゼロ距離から《AW01-2カスタム》が火を噴く。
弾丸は驟雨となって偽村雨へと襲いかかった。いかな寒気を纏おうとも、その弾丸を防ぐことはできない。
 ガイは寒気を払うように、《妖刀ヴァジュラ》を今一度構え直した。纏う怨嗟はガイの命を喰らう紅蓮の炎の力を宿している。
「すべてを焼き尽くす!――【紅蓮解放『ヴリトラ』】!」
 刀身から竜の形を模した獄炎が噴き上がる。轟然とうねり、猛然と火を吐き、ガイを寒気で包んで凍らせんとしていた偽村雨を飲み込んでいった。
 一人では成し遂げられなかっただろう討伐戦だが、即席とはいえ仲間がいるという心強さはなにものにも代えがたい。
 トオルの放った熱線が生み出す隙をガイは余すところなく、有効に活用する。
 その身を蜂の巣にするがごとく、斉射を叩き込んでいく。
 ガイは獰猛に笑んで、さらなる炎撃を繰り出した。


 その炎熱を目の端に捉えた。
(「こんなに早く信長が復活するなんて思いもしなかったっす」)
 転瞬、香神乃・饗(東風・f00169)は唇を引き結ぶ。
(「止めてやるっす!」)
 なにがなんでもだ。
「香神に写した数多の苦無っす――受けきれるっすか」
 中空に展開されていく四十余本の苦無の切っ先のすべては、偽村雨を向いている。そして、饗のいる場所とは正反対の下草を揺らす。巧みに擲ち操る鋼糸が動く。
 偽村雨の注意がそちらに移った瞬間を逃がす饗ではない。鋼糸が一気に速度を上げて饗のもとへ戻ってくる、足元を掬われ締め上げられる偽村雨が四体――饗が疾る。背を向けている一体へ容赦ない斬撃が閃く。
「強制解放!」
 動けない偽村雨へ、政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)の足が回避に特化した真の姿へと変じる――そうして《荊野鎖》が禍々しい鎖を解き放つ。蔓薔薇のように棘が生える拷問具だ。それに絡め取られた偽村雨の着物は破れ、肌に棘が食いこみ鮮血を噴き出せども、それの締め付けは終わらない。
 喉を破るほどの絶叫――傷をえぐり続ける朱鞠は切れ長の赤い目を細める。
「貴方達の悪巧みは私達が邪魔して、文字通り骨折り損にさせて貰うよ」
 乱世を望む黒幕の傀儡――己の意志なく世界を滅ぼす、無用な暴力と支配を企てるというのなら、容赦も寛恕もできはしない。
 朱鞠は、鎖から偽村雨の生命力のすべてを吸い尽くし、斃す――転瞬。
「小癪な……!」
 饗の鋼糸を傷まみれになりながらすり抜けた、ソレとは別の偽村雨は、振り向きざまに【怨呪流血斬】を朱鞠に放つ!
 神速で奔る斬撃が、朱鞠の胸元を赤く深い一文字を引いた。
 一歩、跳び退ったが遅かった。朱鞠は憎々しげに舌を打つ。
「そのまま失血死しろ、女狐め!」
「貴様もだ!」
 苦無で一度は弾く。しかし、返す刀で振り下ろされた【流血斬】が饗の肩先を掠め、禍々しい怨嗟の濁流に襲われる。
 傷の大小に関わらず、止血しにくくなる呪いだ――そのまま血を失い、怨恨を抱き死ぬ。
「このリスクを考えなかったことなんてないよ――未来を、こんなふざけた呪いで満たさせないために」
 血は止めどなく流れるが、それに構っているひまはない。朱鞠は《荊野鎖》で、一刀を浴びせた偽村雨を捕えんと振り投げる!
「戦をもたらした咎はしっかり償ってから骸の海に帰って貰うよ」
 鎖の棘が敵を断罪する。
「くそ……」
「どこ見てるっすか」
 鋼糸が反撃に出た偽村雨の首に巻きつく。
 饗だ。
 この国は、饗が生を受けた国だ――この国で作り出され魂を宿し、生の喜びを、辛さを、楽しさを、悲しさを、別れの悲痛を、出会いの歓喜を――饗はこの国で学んだ。愛する国だ。蹂躙されてたまるか。
「血が止まらないくらいでは死なないっす!」
 それは饗がヤドリガミだから――それでもその身から抜けていく血潮は、命だ。
 すでに一撃食らった。肩を斬られた。また心配させるだろう――だが、もう遅い。
「無茶したって怒られるっす――けどどうせ怒られるんなら、もうめいっぱい戦ってやるっす! けど!」
 攻撃のために鋼糸が緩んだ隙に逃げをうつ偽村雨の退路を断つよう、複製苦無の驟雨が襲う。その刃のすべてに饗の意志が宿っている。
 二本の苦無を持ち疾風のごとく駆け、雨は饗だけを避けて、紫電の二連撃が奔る!

「怒られるためには、こんなとこで死ねないんっす」

 崩れ落ちた偽村雨を睥睨、その漆黒の眼光は油断なく次の敵を見据え。
上体は傾いで、否、一歩踏み込み草を踏む――まだ、倒れない。斃れるわけにはいかない。まだ敵は残っているのだ。
 刹那、饗の背後に炎熱が噴き上がる――慌てて前へ跳び受け身をとって反転する。
「守ると言ったから」
 トオルの構えた《ブラスター》が火を吹いていた。饗は言葉短くも礼を述べて、残りの敵を見る。
 トオルの目には、今まさに寒気を纏った刀を手に饗へ襲いかかろうとしていた一体を見ていた。
「貴様――先刻より、我らを……!」
「僕だけじゃあないでしょう?」
 けろりとして答える。くるりと凍刃を回して、こちらに向かってくる。その機動力を奪うように足を狙い撃つ――が、それは外れた。偽村雨は攻撃の精細も、一撃必殺の重さも犠牲にして、手数を増やしてトオルに差し迫る。
 その攻撃は、しかしトオルとて無防備に受けるつもりは皆無だ。
 刀身に向けてトリガーを引く。跳ね上がる剣閃、すかさず撃ち出される熱線の衝撃――それは、偽村雨に当たることなく、高速の接近を許した。
「おれンこと忘れてねぇだろな!?」
 梅ヶ枝・喜介(武者修行の旅烏・f18497)がトオルを背に庇うように《木刀》を正眼に構え、立つ。
「おれァ剣士だ! 生憎とテメェの寒気に対抗しうる超常なんざ持ち合わせがねェ!」
 喜介は気勢を上げる。木々を震わせ、下草を揺らめかせ、山に響き渡るほどの烈気を噴き上げる。
 繰り出される偽村雨の凍刃、その寒気は容赦なく喜介を凍えさせる。
「だがよ! こんな寒気に負けるようじゃあ、一端の剣士なんて名乗れねぇナ!」
 木刀が【雹刃突】を跳ね上げる。
「なに!?」
「どうだ! 見たか刀のヤドリガミ! テメェごときの腑抜たマジナイじゃあ、おれは倒せん!」
 喜介は木刀を大上段へと構え、その身に烈火のごとき力を漲らせる。
 むろん、偽村雨の寒気に対抗するために、気合を入れただけだ――喜介の手足は容赦なくじわじわと凍えていく。
「道理を蹴っ飛ばして己を貫く!」
「そんな根性論でどうこうできるなぞ、我らを舐め腐っているのか!」
「根性論上等! 無茶苦茶だろうとこれがおれヨ!」
「ならば、そのまま我が凍刃の前に斃れろ!」
 一足のうちに間合いを詰めてきたその妖へ、喜介は笑む。
(「一刀一足の間合いなら……!」)
 天に掲げた木刀を、渾身の力でもって振り下ろす!

「おれァ誰にも負けるつもりはねェってんだよッッ!!」

 烈火のごとき気炎を吐く。己の力が劣っていることは承知の上だ――しかし、それは、まだ試していない可能性が残されているということ。
 渾身の一撃を脳天に受け、そのまま頭はへこみ、地に倒れ伏した。
「おれにァ、コレしかねぇ! どっからでもかかってきやがれ!」
 喜介は大見得を切って、木刀を構え直した。


 集団の数は続々と減り続ける。
 当初聞き及んでいた偽村雨の数よりもやはり多かった。
 しかし、数を減らされた妖どもは、もはや猟兵たちの敵ではなかった。
「覚悟はできたか!」
 ガイの斬撃からの獄炎が、
「やっぱりおれを倒せなかったなァ!」
 喜介は烈気を発露させた斬撃を、
「容赦せえへんって!」
 メルノの放つ四十を数える狐火は辺りを猛火で包み込む。
「逃げ場はないっす」
 止まらない血を気にも留めない饗の苦無は、刻まれた梅花を閃かせ縦横無尽に奔り驟雨と化す。
「何度でも躱して、そのたびに斬ってあげます!」
 呪いを纏わせる斬撃を見切った瑞莉は、霊刀《秘幻》の切れ味を見せつけるがごとく偽村雨を斬り捨て、
「そろそろ、骸の海に帰る時間よ」
 朱鞠とて負けず、真の姿の脚だけを無理やり顕現させるユーベルコードでもって、かの斬撃を躱し、《荊野鎖》で生命力を奪い取る。
「ほんと、しぶとい……」
 トオルの火の加護を宿す《ブラスター》による正確無比な援護射撃は、みなを心底安堵させた。
 そうして、蛍輝の瞳に焔が揺らめく。
「もう、終わりにしよう」
 解き放たれた焔の精霊は、残った偽村雨に、地獄の雨となって降り注ぐ。

「――――っ!!」

 凍る地をも溶かして、模倣刀『偽村雨』は一体残らず、骸の海へとその身を投げた。


 模倣刀のヤドリガミで構成された部隊は壊滅させた――が、まだ脅威は去っていない。
 徳川の軍勢の歩みは止まらない。止めてはならない。
 往け。
 道は猟兵が開く。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月05日


挿絵イラスト