エンパイアウォー③~森の遊撃戦・信州上田城を奪還せよ~
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「皆、大変なことになったぞ」
真剣な面持ちで猟兵たちへと語り掛けるのは、筋骨隆々の偉丈夫、テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)だ。
テオによれば、先の寛永三方ヶ原の戦いにより手に入れた第六天魔軍将図に記された名前の一つ――上杉謙信配下の軍勢により信州上田城が落城してしまったのとことだ。
信州上田城は中山道の要衝……放っておけば、中山道方面軍の壊滅に繋がってしまうだろう。
「幸い……と言って良いのかわからんが、信州上田城は小さな城。オブリビオンの軍勢全てを収容することは出来てはいない」
収容しきれないオブリビオンの軍勢は城の周囲の山岳地帯に比較的少数の部隊に分かれ、待機している――つまりは、奇襲が可能だ。
「敵は十から二十程度の少人数でそれぞれ待機している。この部隊の一つを皆に撃破してもらいたい」
猟兵たちにより多くの部隊が撃破されたのであれば、聡明な上杉謙信であれば不利を悟り撤退を選択するだろう。
つまりはこの猟兵たちによる遊撃戦が上手く行けば、攻城戦をせずとも信州上田城の奪還が期待されるのだ。
「戦場は山岳地帯の森の中……いかにこの土地を味方につけ、地の利を生かし、敵を奇襲するかが重要となろう」
敵軍も我々が信州上田城の奪還に向かうことは想定済。
待ち受けているであろう敵軍に向かい、無策に突撃を行なえば、手酷いしっぺ返しを食らう可能性もあるだろう。
「皆に言い忘れていたが、今回担当してもらう部隊は上杉謙信配下の牙獣隊……つまりは、熊だ」
その愛らしい瞳に油断することなかれ。
熊の嗅覚は犬の7倍。
走力は時速50km。
犬以上の知性を持ち、一般兵であれば容易に弾き飛ばすだけの膂力を備える。
兵として相対したのであれば、決して楽な相手では無いのだ。
「気を引きしめてくれ……皆、この戦争……絶対勝とう!」
戦場へ向かう猟兵たちを、巨漢のグリモア猟兵は檄を飛ばしながら送り出した。
きみはる
●ご挨拶
お世話になります、きみはるです。
ついに来ました、サムライエンパイアでの戦争。
皆で勝利を掴みましょう。
●依頼について
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
山岳地帯の森の中、というシチュエーションを活用頂き、遊撃戦、奇襲らしいプレイングを優遇させて頂きます。
また、その場のノリで変わるかもしれませんが、今のところ熊はリアルテイストイメージで行くと思います。
第1章 集団戦
『もりのくまさん』
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POW : もぐもぐたいむ
戦闘中に食べた【鮭 】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : たべちゃうぞ!
【ある日、森から 】【現れた熊が】【かわいい顔に似合わぬ鋭い爪の斬擊】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ : みんなあつまれー!
【くま 】の霊を召喚する。これは【くまぱんち】や【くまかみつき】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:笹にゃ うらら
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ハルピュイア・フォスター
アドリブや絡みはOK
武器の零刀(未完)をナイフに変貌
ある日~森の中~わたしは~考え中♪
匂いで居場所がバレるのは…嫌…くまさんの嗅覚を潰そう
【毒使い10】を使用してとうがらし入り毒煙玉を作成後【投擲10】で投げ、くまさんの視覚と嗅覚を攻撃
わたしは【毒耐性10】で頑張る…少し鼻がムズムズするけど…。(風向き注意)
基本【迷彩10】【目立たない10】【忍び足10】を森の中の【地形の利用10】を使いながら接近し【暗殺108】
また【Lest memory】でも攻撃、外れた場合はくまさんのユーベルコードを借用して、わたしも【くま】の霊を召喚する
反撃時は【武器受け10】と【残像10】で回避
くまさん、さようなら
月藤・紫衣
熊って…飼いならせましたっけ…?
ああ、いえ、オブリビオンなら常識で考えてはいけませんね
さて…ご褒美の熊鍋はなさそうですが、頑張りましょう
真向勝負、してみますか
【ダッシュ】の勢いと【怪力】を合わせておもいっきり首を狙って【なぎ払い】を仕掛けます
手負いの熊になんてしませんよ、厄介ですから一刀の元に切り伏せましょう
手身近の敵に攻撃しつつ【歌唱】による【高速詠唱】で【狂華乱舞】を発動し首を狙って【2回攻撃】
うっかり切り落とし損ねても、これできっちり切り落とせますし
爪や牙、突進なんて攻撃は【見切り】から【カウンター】で処理を
…ところで、この熊ってほんとに熊鍋にできないんですよね
もったいない…
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「ある日~森の中~わたしは~考え中♪」
ハルピュイア・フォスター(天獄の凶鳥・f01741)はいつも通りの無表情で、でもどこか機嫌良さげに創作の鼻歌を口ずさむ。
彼女が向かうのは戦場――しかしながら、普段見たことが無い熊が見られると思うと、少し心が躍ってしまうのだ。
「さて……ご褒美の熊鍋はなさそうですが、頑張りましょう」
隣に立つ月藤・紫衣(悠々自適な花旅人・f03940)はハルピュイアとは違った意味で熊が気になっていた。
エンパイアに慣れている彼にとって、熊とは御馳走。
飼いならせるものでは無いとは思うが、そこはオブリビオン――あまり常識で考えても仕方が無いのだろう。
……だからこそ、きっと熊鍋にすることは出来ないのだろうが。
二人は事前情報により知らされていた敵陣が敷かれている場所に近づき、口を噤む。
ここからは、気を引き締めねばならないからだ。
二人が向かったのは、陣地の風上側でも風下側でも無い地点――相手は犬以上に鼻の利く熊、通常であれば風下から近づくのがセオリーだ。
しかしハルピュイアには、鼻が効くという事前情報から秘策があった。
(匂いで居場所がバレるのは……嫌……)
彼女が取り出したのは、赤黒い球場の物体――それは、とうがらしがたっぷりと練り込まれた特製毒煙玉だ。
煙玉に火をつけ、全力で投擲するハルピュイア。
放たれた玉は綺麗な曲線を描き、敵陣のど真ん中へと着弾した。
吐き出され続ける赤い煙……突如現れた刺激物に、陣地は一気に阿鼻叫喚の坩堝へと陥った。
「さてと、私は真向勝負、してみますか」
煙の被害が少ない熊のうち数体が、こちらに気付き突撃を開始している。
少なからず被害があるのか、口と鼻からはだらだらと粘液を垂れ流している熊。
その赤く充血した目は大きく見開かれ、この苦痛の犯人を殺戮せんと殺意に満ちていた。
その殺意に満ち溢れた熊と真っ向勝負せんと、紫衣は真正面から走り寄る。
熊以上のスピードで向かう紫衣――敵が逃げるばかりと思い込んでいた熊は、出鼻を挫かれスピードを落とし、その凶悪な爪で薙ぎ払うべく仁王立ちする。
しかしその動きは下策。
せっかくの勢いを殺された熊に対し……走り寄る勢いのまま紫衣は抜刀し、その首を大きく薙いだ。
森の中に、風を切る音が響く。
ごとり、という音を立てながら落ちる頭部――続いて聞こえるのは、熊の巨体が沈んだ大地を揺らす音。
手負いの獣は手強い、立ち合いの隙をついた紫衣は一気呵成に止めを刺したのだ。
続いて接敵した新手の獣。
既に倒された仲間の仇を討つべく紫衣に飛び掛かり、その鋭い牙をむく。
その凶悪な牙が彼の艶やかな肌を引き裂こうとしたその瞬間――するりとすり抜けた紫衣は、まるで恋人が肌を寄せるかのように熊の懐へと滑り込む。
「……狂い咲く華は舞い踊る」
そっと首元へと手を伸ばした彼放つのは『狂華乱舞』
彼の放つ言霊に乗り、宙を舞う色とりどりの花びらが……踊るように宙を滑る。
獣の首筋を花びらが撫でたかと思えば、辺りに突如雨が降り――紅の花々が咲いた。
(くまさん、遊びたい……でも、駄目……)
しっかりと顔に保護具をつけたハルピュイアは、未だ吐き出され続ける煙の中にいた。
本来であれば保護具があっても守り切れないであろう毒劇物を含んだ煙の中……しかしながら普段の訓練により毒物に対する耐性を持つ彼女にとって、花粉症にも満たない刺激だ。
辺りでは唸り声をあげながら、熊が手足をばたつかせ藻掻いている。
中々視覚的にも刺激の強い光景だが、彼女の目には動物が戯れているくらいに映っていた。
堂々と敵のど真ん中を歩くハルピュイア。
しかし獣たちは視覚と嗅覚を潰されている……残った聴覚も、気配を殺した彼女を捉えることは出来ない。
(くまさん、さようなら)
黙祷をささげ、ハルピュイアが放つのは、『Lest memory』
彼女から放たれた月虹の輝きが瞬けば、その光は宙を舞い幻想的な空気を醸し出す。
その暖かな光は、獣たちの苦痛を終わらせる――その命の終焉を持って。
戦いの後、二人は黙祷を捧げる――それはオブリビオンであろうとも、動物の姿をしているからこその感傷であろうか。
「ところで、この熊ってほんとに熊鍋にできないんですよね」
「駄目……毒を吸っているから食べられない」
「もったいない……」
感傷であろうか?
大成功
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ヴィオラ・ヴァレンタイン
●心情 山岳部での戦闘は慣れたものよ。
●行動 ギリースーツを現地の森林にアレンジして着込み技能、迷彩、暗視、目立たない、地形の利用、撮影1、聞き耳1、情報収集を駆使し他猟兵と連携する。攻撃方法はスナイパーライフルでの射撃。目的は敵小隊の各個撃破を試みる。基本的に技能を使った偵察がメインで、味方猟兵の支援行動をとる。
●UCで別人格チェロを顕現させて同技能で偵察させるが戦闘には参加させない。
「情報収集は任せてください。敵の位置を丸裸にして差し上げます」
●共闘、アドリブOK、攻撃せず完全偵察要員でもOK。
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(山岳部での戦闘は慣れたものよ)
ヴィオラ・ヴァレンタイン(戦場猟兵・f20807)は過去の戦場に想いを馳せながら、山を歩く。
その全身はギリースーツと呼ばれる擬態の為の服装に身を包み、僅かに露出する肌すらも色に塗りつぶされていた。
武器である重火器を含め、その装備の重さは常人の想像を凌ぐ。
しかしながら鍛え抜かれ、そして手慣れた彼女の足は、不安定な足場を物ともせずここまで軽やかに歩を進めてきたのだ。
敵陣が偵察可能なよう標高の高い位置を移動し、トランシーバーを通じて味方の猟兵へと敵陣の情報を伝えていたヴィオラ。
既に敵陣では戦闘が始まっている。
味方の奇襲により戦場は煙に包まれた――このままではバックアップの仕事を続けられないと判断した彼女は、『オルタナティブ・ダブル』を発動する。
音も無く彼女の目の前に現れたのは、己の別人各である女性――チェロだ。
「チェロ、頼みます」
「情報収集は任せてください。敵の位置を丸裸にして差し上げます」
ヴィオラと違い軽装のチェロは、まるで駆け下りるように素早く、しかし静かに山を下っていった。
素早く、次々とチェロからもたらされる敵陣の情報。
本来であれば……その情報があっても尚直接見ているわけではない戦場になど、攻撃は出来ない。
しかし相手はもう一人の自分。
チェロの情報からまるで自身が直接見ているかのように戦場を把握したヴィオラは、その手に構えるスナイパーライフル『M40A3』の引き金を引いた。
山間に木霊する銃声。
煙から今まさに逃げ出そうとしていた獣が脳天を貫かれ、大地を揺らす。
二つ、三つと続く乾いた音。
その音はまるで死神の訪れを告げるベルのように、鳴る度に確実に敵がまた一人減ったことを意味していた。
死を告げる機械仕掛けの笛は、正確に戦場を狙い続ける。
大成功
🔵🔵🔵
アッシュ・ボーンファイア
奇襲先手は取れても、地の利は向こう
問題ない。獣狩りは本業、戦争だろうといつも通りだ
・POW行動
【目立たない】ように移動して背後等の死角を取り、斧を構える
山岳森林で、炎と鉄塊剣は不利だ
呼吸を整え、突撃して【捨て身の一撃】のグラウンドクラッシャー
回避、あるいは生きているなら追撃の【二回攻撃】
反撃や別個体からの攻撃は、山岳では避けにくいと【覚悟】の上、【早業】の【カウンター】をする
肉骨が硬くとも【鎧砕き】の要領でやれるだろう
逃げようとも【追跡】して、同様に狩るのみ
「一匹も逃さん。尽く狩るのみ」
・終了後
これで一部隊か
一休みしたら、次の戦場に行かねばな
アドリブ協力改変歓迎
天春御・優桃
熊ってのは山森で縦横無尽に狩りをするってもんだ。良い所に構えたじゃねえか。
木登りが得意っつっても、突進するよりは遅せえよなあ?
【存在感】を隠し木々の枝を【空中戦】の容量で【ジャンプ】し渡りながら、敵影を探す。
【第六感】【地形の利用】で風に逆らうようにルートを取って、先に見つけたらUC釛嵐で、空間ごと匂いを断絶。【ダッシュ】で一気に奇襲をかけるぜ。
奇襲に成功すれば混乱の収まった頃合いに、失敗すればすぐに、【誘惑】と隠していた【存在感】で注意を引いて、他の猟兵が奇襲を仕掛けやすいよう誘導してみようか?
一身に受ければ、軽い傷程度じゃあ足りないだろうが、時間はかからねえだろう。
ザッフィーロ・アドラツィオーネ
熊…だと…?
人より厄介そうだな
…気付かれぬ様に行動出来れば良いのだが…
『地形の利用』の知識を使い音が立たずそして目立たぬ様な場所を選び『忍び足』で木々の影を縫いながら進んで行こう
進行の際は『聞き耳』を使い周囲に怪しい物音がせんか探りつつ行動を
道中『第六感』や『聞き耳』が違和感を伝えて来たならば目を凝らし『視力』を頼りに敵を捉え
【蝗達の晩餐】にて『先制攻撃』を
その後は『怪力』を乗せたメイスを振るい止めを刺して行こうか
敵に見つかる前に一体づつ仕留めて行きたいが…見つかった場合は【蝗達の晩餐】を一番近い敵に放ち
攻撃を受けた場合は『盾・武器受』後『カウンター』にて反撃をしつつ進んで行こうと思う
フィオレッタ・アネリ
クマさんって飼いならせるんだ?
いいなー、わたしも仲良くなりたーい…なんて言ってる場合じゃないよね!
クマさんたちとあんまり正面から戦いたくないし、契約している風の精霊さんにわたしの立てる音を小さくするように、植物の精霊さんに周りの草木を茂らせて姿を隠してくれるようにお願いして、ニオイで気付かれないように、風向きの下の方から身を潜めながら、群れにこっそり近づいていきます
群れに充分近づいたら、全力魔法で威力をすっごく強めて、範囲魔法で群れ全体を包むように広げた《花霞》でクマさんたちをまとめて昏睡させちゃう!
ごめんね…せめて甘い花の馨りのなかで、ゆっくりおやすみなさい
※アドリブ・連携歓迎です!
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「熊……だと?人より厄介そうだな……気付かれぬ様に行動出来れば良いのだが。
ザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)は、これから向かう戦場の不安をこぼしながら歩を進める。
「問題ない。獣狩りは私の本業……戦争だろうといつも通りだ」
アッシュ・ボーンファイア(怪物狩り・f15659)は、そんなザッフィーロの不安を打ち消すように、励ましの言葉をかける。
二人は気配を殺し、細心の注意を払いながら戦場へと向かっていた。
「熊ってのは山森で縦横無尽に狩りをするってもんだ。良い所に構えたじゃねえか」
対し、天春御・優桃(天地霞む・f16718)は木々の上を飛び交うように移動する。
熊の機動力を警戒し、敵に発見される前に敵の位置を視認する為だ。
「クマさんって飼いならせるんだ?いいなー、わたしも仲良くなりたーい……なんて言ってる場合じゃないよね!」
やや気の抜けたような話し方をしているのは、最後尾を歩くフィオレッタ・アネリ(春の雛鳥・f18638)
彼女はぼんやりと歩いているように見えて、周囲の精霊たちに働きかけていたのだ。
風の精霊たちには音を小さくしてもらうよう、また匂いを遮断してもらえるように。
植物の精霊たちには自分たちの姿を隠すよう、また足元を歩きやすくしてもらえるように。
一行は事前に聞いていた敵陣へと、最大限の警戒を行ないながら、最大限気配を殺しながら向かっていた。
「何かいるぞ……」
戦闘を歩いていたアッシュが、後続へと歩を止めるように手をあげる。
前方からごそごそと草木の揺れる音がする。
現れたのは数体の熊……他方向から向かった仲間の猟兵と何かあったのか、どの熊も何やら荒ぶりながらも顔を洗い、鮭を貪り食っていた。
「嗅覚が鋭いっつっても、頭はお留守だよなぁ!」
優桃が頭上より熊たちへと奇襲をかける。
「荒べっ!」
彼が、いの一番に放ったのは『釛嵐』
烈風が砂塵を巻き上げ、空気を遮断する結界を生み出す――匂いにより増援が現れないようにという配慮と共に、逃がさない為の結界だ。
敵のど真ん中へと下り立った桃優は敵の注意を引きつけるように雄叫びを上げた。
彼に群がるように牙をむく熊たち。
その牙の、その爪の一撃一撃が常人であれば命を奪うことが出来るほどの威力を持つ。
その全ての攻撃をギリギリで避け、時にはその身を斬り裂かれながらも優桃は四肢を振るう。
己が注意を引くことが、仲間の追撃をより強力なものとするからだ。
四肢を振るう度に生まれる烈風が矢となり、また風が纏う黒鉄の塵芥が剣となり、熊たちを斬り裂いていく。
「貪り喰らえ……」
続いてザッフィーロが放ったのは『蝗達の晩餐』
蝗の大群と化した影が熊たちへと集ってゆく。
完全に注意を引かれていた熊たちは一切避けることが出来ず、影の波に飲み込まれていった。
それはまるで食べ物に集る蟻のように隙間なく覆いかぶさり、容赦無く牙を立てる。
たまらないとばかりにのたうつ熊たち――しかし影の蝗を殺すことは出来ない。
「お前達も他の命を食い生きているのだろう?……きっと、それと、同じ事だ」
信州上田城を襲ったであろう熊たち――強者が勝ち、弱者を喰らうことは自然の摂理なのだ。
藻掻く熊へと、ザッフィーロはゆっくりと歩み寄る。
その姿は聖職者然とした堂々たるもの……ただし与えるのは、許しでは無く苦痛の終わりだ。
目を開けることが出来ずとも、他の五感により存在を感じたのであろう……ザッフィーロが歩みよった熊が突如立ちあがり、剛腕を振るう。
喰らえば吹き飛ばされることが予想される重い一撃、しかし彼は己がメイスを両手で構えると正面から受け止めて見せた。
その怪力でもって、受け止めた腕を弾き飛ばすザッフィーロ――その勢いのまま……がら空きの脳天へと、その手の鉄塊を全力で叩きこむ。
鈍い音を響かせた後、熊はゆっくりとその身を大地に伏した。
「一匹も逃さん……尽く狩るのみ」
不利を悟ったのか、熊のうち一体が逃げ出そうと踵を返す。
しかしその先には、両手に斧を構えたアッシュが仁王立ちしていた。
「ふっ、ふっ、ふぅ……すぅっ」
一体であれば倒せると判断したのであろう、熊は雄叫びをあげるとそのままアッシュへと突撃を行なう。
それに対しアッシュは焦ることなく呼吸を整える――獣狩りはいつも一瞬で決まると理解しているが故に。
「いくぞっ!」
アッシュと相対した熊は、その鋭い爪を彼の脳天目掛け振り抜く。
しかし彼は引くこと無く、捨て身のまま突撃した。
それは一瞬の交差――凶悪な爪がアッシュの側頭部を引き裂く。
しかしアッシュは止まらない。
その手に握りしめる鈍重な鉄塊を突撃の勢いのまま振り下ろす。
まさに肉を切らせて骨を断つ――その身を切らせてなお振り下ろした斧が、熊の右手を切り落とした。
身体全体で斧を振るうように体を回転させるアッシュ――続いて振り上げられた斧が正確に頭部を吹き飛ばした。
「……さて、次だ」
呼吸を整えたアッシュは額の血を拭うと次なる敵へと向かっていった。
追い込まれた熊は、一際大きな雄叫びをあげる。
何故か戦闘の音に気付かない仲間を呼び寄せる為だ。
しかしその声は、決して届かない……桃優の結界に加え、さらにはフィオレッタの働きかけにより、風の精霊が音を遮断しているが故に。
「ごめんね……」
正面からの戦闘を避けていたフィオレッタ――優しい彼女は、どうしても動物の外観をしたこのオブリビオンと戦うことに心を痛めていた。
しかし相手はオブリビオン……このエンパイアを危機から救う為にも、決して逃がすわけにはいかない。
戦場を俯瞰しながら、舞い散る血しぶきに心を痛めながら……フィオレッタは詠唱を続けていた。
中途半端な横やりは、戦いを泥沼化させるだけだ。
だから、一発で決められるよう……彼女は全力で放つ。
「ごめんね……せめて甘い花の馨りのなかで」
彼女が放ったのは『花霞』
あえかに匂う花馨が、戦闘で荒ぶる熊たちを抗えぬ眠りの底へと引きずり込む。
生き残っていた数体が、その眠りに抗うようにのたうつ。
しかしそれも時間の問題……一体、また一体と熊たちはその身を大地に投げていった。
「ゆっくりおやすみなさい……」
フィオレッタはそっと目を閉じる。
義務として仲間が止めを刺す光景から目を逸らすように。
熊たちの魂に祈りを捧げるように。
大成功
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