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エンパイアウォー③~妖刃叫嵐

#サムライエンパイア #戦争 #エンパイアウォー

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 刀、槌、弓、槍、糸、斧、鉾、針、剣、銃。
 武具の数々が剣山の如く突き立っている。
 まるで、山岳の只中に現れた合戦跡のように、しかし、血や人の跡の一つも無く、持ち主の影一つも無く、悠然と備わっていた。
 それは、待ちわびる。意志としてではなく、現象としてその時を待つ。
 再びその武を振るう時が来るのを。
 今か今かと待ちわびていた。


 中山道が要衝、信州上田城は既にオブリビオンの手に落ち、その周辺にオブリビオンのグ勢が集まっている。
 この山城は規模が小さく、収まりきらないオブリビオンが城外にまで集結していた。
「その一つの部隊を奇襲してもらう」
 長雨が告げた。
 武器が意志を持ったかのように飛び回り、その機能を発揮する現象としてのオブリビオン。元来、武具の集合体としてのオブリビオンだが、更に複数個所で発生した怪異が集まり、更に大規模なものとなっている。
 刀剣から暗器、銃器に至るまでのあらゆる武器種。無数の集合体だが、どうやら、全てが全く同じ格とは言えない様だ。
「恐らく、現象の発端となった武器がある」
 いわば、怪異現象の引鉄、曰く付きの武具ともいえるだろうか。
 幾つもの現象が引き寄せられた集合体ではあるが、複数の現象それぞれの中心となる武具が幾つか存在している。それを破壊できれば、無力化とまではいかずとも弱体化が図れるだろう。
「見抜く策や感があれば、だけどね」
 片っ端から壊して回る方が早いかもしれない、と嘯きながらも油断は禁物と続ける。
「奇襲とは言ったけど、あっちもそれはお手の物だろう」
 なにせ暗器も並び立っている。奇襲の為に作られたような武器だ。先手を取るには、先手を取られぬように動くのが堅い。
「まあ」と長雨は、最後に告げる。
「雨霰のごとく刃が降りかかってくるはずだ。存分に立ち回ってくれ」


おノ木 旧鳥子
 


 おノ木 旧鳥子です。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「エンパイアウォー」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。

 奇襲について。
 山岳地帯の中で、感知される前に現象地帯を見つけ、攻撃してください。

 戦闘について。
 集団戦です。
 様々な武器が大量に備わっています。振るわれる武器を殲滅してください。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『兵器百般』

POW   :    騒霊カミヤドリ
【纏っている妖気の色が血のような赤】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ひとりでに動く武器
【念動力で浮遊すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【自身が持つ武器としての機能】で攻撃する。
WIZ   :    武器の知恵
技能名「【武器攻撃】【武器受け】【戦闘知識】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。

イラスト:童夢

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

政木・朱鞠
WIZで行動
主を持たず混乱と血を求める悪い武器さん達には、一旦オヤスミナサイして骸の海へお帰り頂くんだよ…。
まずは、敵の陣を見つける事と相手のヒエラルキーの分析だね。
目視で調べたいので感覚共有した『忍法・繰り飯綱』を先行させるように放って、【追跡】や【情報収集】で『兵器百般』達の動向の観察して大将首ポジションの把握しないとね。

戦闘
早めに大将首の武器を狙いたい所だけど、暗器や射撃武器は厄介なので優先的に処理して行きたいね。
『兵器百般』に鎖で束ねて折るイメージで武器は拷問具『荊野鎖』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】でダメージを与えたいね。

アドリブ連帯歓迎



 子狐が、とと岩を蹴って豊かな尾を揺らす。木の影に隠れながら、その丸い瞳は森の中に広がった武器の群れを映し出していた。
 地面に横たわる槍、木の幹に突き立った苦無、鎖鎌が枝の間に鎖を渡し、抜身の刀が無造作に地面に突き立っている。
 その正体を知らなければ、戦場跡で打ち捨てられた武器か、戦場漁りで集めた鉄具を保管しているのか、と思うのだろう。
 じっと、身を潜めていた子狐はゆっくりと、場所を変えようと身を動かす。
 すべての武器に妖気が宿っているように思える。どれが上位体なのかもはっきりとしない。
 異変が無いかと武器へと視線を向けたままに体を静かに動かす。場所を変え、観察しようとした子狐が、武器から目を離し進む方角へと向けた顔に、その眼前に、針の切っ先が止まって見えた。
「……っ」
 驚愕に体が跳ねるまま、飛びずさると子狐の体を外した針は地面に突き立つ。だが、息をつく暇など無い。身を沈めていたと思っていた武器の群れが一斉にその身を起こしたのだ。
 人が握るのであればあり得ない、自らの身を切り刻むだろう無茶な振るい方にて齎された剣閃をその小さな体を生かして潜りぬけた先。上から円刃が降り、前へ飛び出した狐の胴を縫い付けんと迫る針と苦無の群れを木の幹を蹴り上げては避け、木を渡り飛んだところへ、待ち構えていた槍の切っ先が鋭く放たれた。
 己の中へと、冷たい鉄が沈み込んでいく。細い骨を容易くへし折りながら内臓を引き裂き、心臓を潰しながら、しかし、血が足らぬと刃がねじられる。
 鮮烈なる痛み。
 鮮血に染まる視界から、木の間を駆けた赤い瞳が、寸前まで見ていたと子狐の視界と変わらぬ光景を映しとる。
 放った分霊が砕け消えていく。その小さな体を貫いていた槍へと身を躍らせた妖狐が、手に握る鎖を振るい抜いていた。
「お返しするわね」
 今の痛みは、存外に堪えるものだ。子狐の分霊、感覚を共有するそれが殺された事で、彼女、朱鞠はその武器に一度殺されたようなものだった。
 無数の棘を生やした、薔薇弦の如き鎖が宙に突き出したまま無防備な槍へと絡み付く。引き絞られる鎖が、使い込まれていたのだろう無数の傷へと食い込んでいく。
「さてと」
 振るわれた鎖鎌の分銅を屈み避けると、荊野鎖を鎖鎌の鎖へと這わせながら、放たれた矢もからめとり、まとめて折り砕く。
 針が飛び、苦無が空を裂く。
 四方八方から、彼女の体をうがち抜こうと無数の飛び道具が襲い来るのを紙一重に躱しながら、その腕は一つの苦無を掴みとっていた。
「貴方に用があるのよ」
 それは子狐の視界の中で見た苦無だ。一斉に襲い掛かってきた針と苦無の群れの中に紛れていた一本。その他と比べて妖気が薄いとまで感じたそれだが、力が弱いにしてはその動きは洗練されすぎている。
 中心体でなかったとしても、脅威だ。
 その苦無に刻まれていたのは、もはや呪いなのだろう。
「……っ」
 掴みとった瞬間、朱鞠の手に痺れが奔り、その感覚に眉をしかめる間に、苦無を握った朱鞠の手が己の首へと向かい。
「危ないわね」
 荊野鎖を巻き付けた手のひらがその刃を食い止めていた。
 棘が食い込み、血を流す。だが、そんな痛みも、内腑を裂かれるものに比べれば大したものではない。
 握った鎖が、自死の苦無を砕き折る。
 瞬間に、刀剣をまとめていたような妖気が薄れる。僅かに、だが、それぞれの動きが乱れている。
 あとは、ただそれを薙ぎ払うだけだ。朱鞠の鎖が武具の数々を絡めとっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐倉・理仁
刃物がブンブン飛んでるとかおっかねーな!
妖刀ってやつかね?
なら、俺霊感みてーなもんで探し当てられっか?『第六感』


まぁまぁ、まずは身を守っていこう。【災厄の日】
呼び出す死霊は連中のような『刀や槍、矢などで命を落とした者達』……霊達の最期を再現し、敵の攻撃をひきつけ死の因果を猟兵から遠ざける。


だけじゃ終われねーなぁ『高速詠唱、2回攻撃』UCを再発動、武具を破壊する者達を呼び出して攻撃にスイッチだ。
凄腕か豪腕か幸運か、そいつは知らんが……さあ、「火」花を散らせ、奴らをへし折ってやれ。


アドリブ絡み歓迎!



 剣刃が踊る。
 一緒に出発したはずの猟兵がいなくなっている事に理仁が気付いた瞬間の出来事だった。
「うぉ、っと……ぃ」
 感じた寒気のままに、身を転じてみると先ほどまで自分がいた場所に突き立つ斧の刃。転んでいた石を粉々に砕きながら地面を割っているそれにそのままであれば、脳天を割られていたという事実を知らされ言葉を濁らせる。
「おっかねーなあ」などと悠長に構えている暇もない。なにせ、彼に寒気めいた第六感をびしびしと刺激させるのは、落ちた斧だけではない。
 森の奥。木の葉で見えにくい向こう側から、今まさに鉄の煌めきが高速で迫ってきているのだ。
「……っ、死にに来いっ!」
 とっさに手を伸ばした魔本、多少粗雑な文言と共に、高速構築した魔術を発動する。
 召喚。呼び出すものは、死だ。
 それは、過去に属するものであり、自然に存在するもの。だが、それを現在へと属性をすり替えれば、どうなるのか。
 それは条理を歪め、摂理を害するもの。まさしく魔の術。
 呼び出した死霊が行うのは、過去を現在でもって再現する。
 つまり。
「危ない、危ない」
 貧相な装備の兵が立ち上がり、構えもままならないままに飛び込んできた槍に貫かれる。
 抱えた自分よりも幼い子を守ろうとした少女の背を、短刀が貫いて地面へと転がる。
 憎しみに燃えた瞳を見開いて刀を握る男が、眉間に穿たれた鉄の棒に昏倒し首を折られる。
 鎖に繋がれた男がただ憂いた目で見つめる刃に、首を落とされる。
 無数の死が、繰り広げられる。
 その一つ一つは、理仁が結び付けられていた死そのものだ。槍に沈み、短刀に穿たれ、棒に絶え、刀に処される。
 身に受けていたはずの死を、全て死霊へと肩代わりさせた理仁は、慣れ親しんだ光景に黒い瞳を震わせることなどなく。
「だけじゃ終われねえーなぁ」
 更に、彼は発現する要素を入れ替える。
 その武器に殺された死霊から、その武器を殺す死霊へと。
「さあ、火花を散らせ」
 そして災いが散らされる。理仁にとってのではなく、武器たちにとっての災い。
 現れるのは名も知らぬ者たち。姿は老若男女様々に、だがしかし、確実に共通することがある。
 彼らはみな、生前、それらの武器に打ち勝った者たちだ。
「奴らをへし折ってやれ」
 そして、今、その過去が現在へと再現される。かつて命を奪われたものが抗えなかったように、死霊は過去のものでしかなく変わりようがない。
 因果を逆転する。
 過去、破壊されたのだから、現在において武器が抗う事などは出来ない。
 武芸者の鋭い一撃が、荒くれ者の岩の如き剛腕が、仇討者の暗い薙ぎ打ちが、無数の死霊たちが無数の武器を破壊しつくしていく。
 意識を全てその維持へと注ぎ込んだ理仁は蝕まれるような頭痛に、億劫そうに本を閉じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
鷲生/f05845と

これだけ武器があるってのは壮観だなァ
良い感じのも幾つかありそうじゃないか?
流石に使いたいとは思わないけどよ

『呪詛』の感知は私の専売特許だ
『第六感』と合わせりゃ結構な精度になるだろ
中心になるのが分かったら、【毒牙の腕輪】で白蛇を放っておこう
毒に意味はないだろうが、牙だけだって戦うにゃ充分だ
本格的な攻勢に出るのは白蛇と鷲生に任せつつ
私自身は海竜を斧槍に変えて後方に構えよう
『見切り』と『薙ぎ払い』で叩き落してやる!
はは、仔竜たちじゃあるまいし
ま、気合いは入れて行くよ!

……しかし何度見ても凄いよな、鷲生のそれ
視界に入ったら全部攻撃範囲だろ?
つくづく敵に回したくないなァ……ってな


鷲生・嵯泉
ニルズヘッグ(f01811)同道
壮観と云えば壮観かもしれんが
アレ等を使う位なら素手の方がまだマシだろう

では細かい探知は其方に任せるとして
仕掛けられる攻撃の察知は私が請け負おう
第六感と戦闘知識にて
音や反射、位置の重なり方等から攻撃に来る物を判別し
破群猟域にて迎え撃つ
中心と成る物が幾つ在ろうが構いはせん
此の視界に映ると在らば、総て叩き壊してくれる
攻撃は見切りにて最小限で躱す
……多少後ろに逸れたとて、まあ大丈夫だろう
索敵が終わった所で遊んでいる暇なんぞ無いぞ

そうか…?
ああ……単独で行動するには全方位を抑える必要が有るからな
……生者で在るなら敵にはなるまい、此の先もな



「どうだ?」
「どう、と言われてもな」
 灰の髪の男が問いかけた言葉に、琥珀の髪の男が答える。
 ニルズヘッグ、灰の髪の男は背中を合わせた男が返した言葉に、腕に巻いた白蛇を地へと放ち、愉快気に肩を揺らす。
「壮観だなァ、ってよ、思わないか?」
「壮観、と言えば壮観かもしれんが」
 嵯泉は、この状況に反して呑気に言葉を重ねるこの場の相棒に感じるはずの緊張の欠片も感じえず、鼻で笑う。
「アレ等を使う位なら素手の方がまだマシだろう?」
 彼らの周囲を囲むのは、無数の刀剣。それに加え、恐らく遠距離からの狙撃。
 浮かんだ無数の剣刃の返す光。そのくすんだ光に、瞳を照らされながらニルズヘッグはその口角を上げてその答えに、笑いで答えた。
「ああ、なるほど」
 と零したのは、嵯泉への声ではなく、只の独り言だ。
 蠢くその武器軍から感じる呪詛は、まるでもってなっていない。人を害するという、己の意義に基づいた、道に外れぬ常道の呪い。
「そうだな、流石に使いたいとは思わないけどよ」
 己が握るのに似合うのは、一貫した何かの隙間に異質が除くような歪だ。嵯泉は知ってか知らずか、ニルズヘッグは彼の言葉を心地よく飲み込んでいた。
 ニルズヘッグの伸ばした腕に流水が巻き付くように踊る青い鱗の竜が、麗しくそのひれを靡かせ、溶けるように一つの槍へと形を変え、彼の腕に掴みとられる。
「さて、端から叩き壊してくれる」
 ぐるりと嵯泉が視線を回し、呟いた。刃が空を駆る。
 さて、空気を裂き切る刃は、どれほど早く進むのか。果たして、嵯泉がそれを視界に収める前にその距離を走り切れるのか。
 幾本の武具が駆ける。
「見えている」
 風切り音へと視線を合わせた嵯泉が腕を振るう。しなる影は、容赦なく飛んだ武器の悉くを打ち砕いていた。
 一秒にて、幾つ鉄の割れる音が響いたのか。飛んだ武器に、浮かんでいた武器。彼の視界に入っていた無数の武器が、一つの音として重なり合った響きの一要素と化して砕け散る。
「はは」
 無残に、即座に彼らを中心に展開していた武器が、破片へと変わり朽ちていく光景にニルズヘッグが思わず、乾いた笑いを零す。
「何度見ても凄いよな、鷲生のそれ」
 視界に入れば、凡そ2km強が攻撃範囲だ。
「そうか?」
 と嵯泉が、さして感慨も無く疑問を提示する。
「所詮、全方位を見定めることは出来ない。つまり」
 と、草陰から、細い針が音も無く飛び出した。恐らくは暗器の一種。一突きにて人の急所を突く事に特化した隠し武器か。
 振り向いていた嵯泉の頸椎へと的確にその切っ先が飛来し、槍の刃先にその半ばを断ち切られ、上空へとその両端を跳ねさせていた。ニルズヘッグが、機敏にも感じ取った呪詛に嵯泉と暗器の間に割り込んでは、それを斬り捨ててたのだ。
 更に嵯泉の背を突き刺すように槍を突き出せば、その刃に衝撃が走って、握っていたゆでにしびれが奔る。
 見えている。わけではない。
 ニルズヘッグに、完全に視覚から放たれた弾丸を何もなく察知することなど出来ない。
「単独では全方位を抑える必要があるからな、ふむ、多少後ろに逸れたとて、大丈夫なようだ」
「お前を囮に、確認か」
 恐らく、態と敵に背を向け、奇襲を促した。信用しているのか、していないのか分からぬ、そんな言動にニルズヘッグは嘆息する。
 ニルズヘッグは呪詛に敏い。だからこそ、反応できた攻撃だ。だが、きっと合格なのだろう。
「さて、遊んでいる暇は無いぞ」
「……ああ」
 ニルズヘッグは、その台詞に、ついついと勘ぐってしまう。さて、彼の隻眼に見えているのか。
 放っていた白蛇が、この周辺の武器たちの中心へと喰らい付いた、その場面が。
 否、彼は信じていた。そして、悟ったのだ。ニルズヘッグが「どうだ?」と問いかけた言葉に含まれていた勝利の確信に。
「ま、気合は入れて行くよ」
 ニルズヘッグは呪詛に敏い。ならば武器が周囲を囲った瞬間に、その中心に存在する武器を特定することなど容易い。
 呪いに満ちたこの場ならば、その流れを感じることなど、落ちる石の先を読む程に簡単なことだ。
 喰らい付いた白蛇の牙が、鋼糸を食い破る。しみついた呪いは、幾度と人に括られたものか。断ち切られた呪いに、周囲の武器の動きに齟齬が生じ始める。
 だが、それらの攻撃がやむわけではない。
「ああ、鷲生はつくづく敵に回したくないなァ……」
「は……なに、生者で在るなら敵にはなるまい」
 直前までの連携などなく、武器の群れが、鋼が、刃が、鉛が、殺到する。
 その全てを打ち払った無数の火花が彼らを中心に激しく明滅する。
 瞬く光に、灰と琥珀が、銀と金に光を返す。
 死者ですらなく、ただ、振るわれた過去を振るう妖へと、現在としてある者の力が振るわれていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

無銘・サカガミ
妖気を纏っているならば、見つけるのは容易い。俺の【呪詛】で感じれば、現象地帯がどこかはすぐ分かるだろう。

「複呪混成」…制御しうる限りの呪いを発現させ、敵中に突っ込み奇襲。

荒れ狂う暴風雨のような武器の波を、過敏となった感覚と限界突破した身体能力で悉くかわす。

いかに意志を持とうと所詮は武器。避けた後無防備になった武器を取り、思念を上塗りするほどの呪いをかけ己が武器としよう。尤も、呪いが強すぎてすぐ自壊するだろうがな。

現象の中心ともなれば、相応の思念が集まるはず。同じく【呪詛】で探知し、見つかり次第その武器を破壊しに向かう。

…ダメだな。こいつらでは、俺の呪いを喰いきれない。



 乱風が如く、妖刃が舞う。
 その先に、サカガミは立っている。
 ああ、死ぬだろう。彼は幼く、しかしどこか老いさらばえたような瞳の奥で悟る。
 彼は足を踏み入れただけだ。ただ、彼らの領域に踏み込んだ。
 嵐と叫び切りかかる刃の数々に、その双眸の中で、微笑む自らを幻視していた。己の瞳など見つめる事は出来ない。ならば、己の瞳に映った笑む自分は幻でしかありえない。
 死ぬだろう。この刃の嵐に全身を切り刻まれて。
「ああ……、ダメだな」
 だが、そんな想像は、幻に笑む自らによって打ち砕かれる。
 彼の顔面を突き穿たんと飛び込んだ直剣が、緩やかに眼前へと迫る。ほんの一瞬、秒の中ですら幾つにも切り刻まれる刹那。彼の視覚がそれを捉えていた。
 重ねられた呪いが反発しあい、共鳴し合い、膨大な情報を脳へと叩き込んでくる。頭の血液が沸騰するような痛みに意識が吹き飛ぶその前に、全身の筋肉が悲鳴を上げて意識が覚醒する。
「……づ、ッ!」
 四肢は動くのか。この痛みは腕が千切れたのか、足を捥ぎ取ったのか。そんな強烈な痛覚の只中で直剣を屈んで躱したサカガミは、その頭上を過ぎていく直剣の柄を掴みとった。
 肉体の破壊を伴い、限界を超える速度で掴まれた剣が悲鳴を響かせる。
「ダメ、だ」
 無造作に振るい、サカガミの心臓へと吸い込まれる槍を叩き落し、背後から足の健を刈る曲刀を砕いて、脳天に降りた刀を打ち払った所で直剣が錆に包まれて崩れていく。
「ダメだ」
 目を抉らんと迫る短刀を掴み、奔る矢を裂く。駆ける針を払う。崩れる。
「ダメだ」
 両刃の刀を掴めば、半ばから折れ、双剣と振るえば、二度振るえば忽ち屑に返る。
「ダメだ」
 首を絞めた鋼糸は首の皮に触れた途端に砕け、掴んだ槍の穂先は使い物にならず。
「ダメだ」
 投じられた手裏剣を投げ返せばぶつかった火縄銃ごと消滅し。
「そうか」
 嵐を文字通り切り裂いて、岩へと突き立った目を引くような美しい刃波の太刀へと引き抜いて肩に担ぐ。
 すぐそばに、刃が彼の顔を映す。だが、映るのは悲鳴だった。
 磨かれたような鏡面が映すのは、歪み切った人の輪郭すらも映さぬ呪いに苛まれる刃そのものだ。
 全身に走る異常駆動の痛覚も、感覚の鋭敏化に脳を焼くほどだ。指を動かせば腕の全ての骨が砕ける様な痛みが走る。
 だから何だというのか。
「お前も、ダメだな」
 放たれた斧の一撃を砕き割り、苦無の奇襲を斬り飛ばし、鎖の蛇を断ち、刃を分かち、鉄を砕き。
 そうして遂に、握っていた太刀が砕けた。
 呪いに満ちる彼に触れたものは、呪いに侵される。周辺の怪異現象の大本になったその太刀ですら、彼に満ちる呪いに敗したのだ。
 手の中で、ざらざらと砂の如き錆に消える刀にただただ、嘆息する。
 腕一つの呪いさえ、抑えてこの喉に一突きすれば終わるやも知れないというのに、と。
「こいつらでは、俺の呪いを喰いきれない」
 全身を包む痛みも、まだ絶頂ではない。呪いが本当に牙を剥くまでに、サカガミの纏うそれが剣の嵐を食い散らしていく。



 嵐を叫ぶ。
 さらなる戦を告げるように、震えながら刃は散っていく。
 それらは何を望むのか。否、現象は何も望まない。
 戦がそこにある。それだけだ。
 争いの奥にある争いへと、猟兵達は道を踏み荒らしていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト