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花火の国のアリス

#アリスラビリンス

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#アリスラビリンス


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 アリスラビリンスのとある不思議の国で。
「この娘を紹介させとくれ……『アリス』のメアリというんだ」
 ヤーリ・ハンナル(学食の母・f10606)が猟兵たちに紹介したのは、十代半ばほどの少女であった。ゴシック風のドレスを着た美しい娘だが、その顔色は悪い。
『アリス』というからには、メアリもまたオウガの餌として『アサイラム』から召喚された異世界人なのだろう。
「メアリもご多分に漏れず、自分の故郷である異世界の記憶を失ってる。だが、メアリは今いるこの世界に、幸運にも、故郷の世界につながる『自分の扉』があることを感知したのさ……しかし、こんな世界だからね。扉に近づくのは生やさしいこっちゃない」
 メアリとヤーリと猟兵たちは、自分たちを取り巻く風景を見回した。今彼らがいる不思議の国は、奇妙な植物が繁茂する世界なのだ。木々も花も、うねうねと蠢いたり、叫んだり歌ったり、歩くものさえいる。その奇妙な方向に進化した植物の間を、ふわふわと飛び回っているのは『共有する者達』と呼ばれる魔物だ。
『共有する者達』は、アリスの記憶を好物としている。今も、メアリの記憶を狙っているようで、何匹かがこちらの様子を窺っている。
 メアリがスッとある方向を指した。
「私の故郷につながる扉があるのは、あの森の奥のようなんです。それから、扉に近づくにつれて、記憶が甦ってくるような気配もあって……」
 震える細い声。
 指し示す森は、鬱蒼と奇妙な木々が生い茂っていて、全く見通しが効かない。どんな植物が生えているかも、どのくらいの『共有する者達』などの、危険な敵が潜んでいるかも。
「大変な任務になるとは思うが、あんたたち、あの森の奥にある『自分の扉』に、メアリを送り届けてやっておくれでないかい?」
 ヤーリが猟兵たちにそう言うと、メアリは慌てて口を挟んだ。
「と、扉がこの方向にあるという感覚も、甦りつつある元の世界の記憶も、本物かどうかはわかりません。記憶が本物だとしたら、元の世界もあまり良いところではなかったようですし……ですから皆さんに敢えて危険な森について来て頂くのは、申し訳ないような気もするのですけれど……」
 メアリの出身世界も、危険に満ちた場所なのだろうか?
「それでも、帰りたいとは思うんだろ?」
 ヤーリが優しく言うと、メアリは小さく頷いた。
「……あんたたち、メアリを扉まで送ってやってくれるかい?」
 ヤーリが、強い眼差しで猟兵たちを見つめた。


小鳥遊ちどり
 猟兵の皆様、お暑うございます。
 今回は薄幸の美少女アリスを、故郷につながる扉まで送ってあげるお仕事です。

●シナリオの目的
 メアリを『自分の扉』まで送り届ける。

●シナリオの構造
 1章:奇妙な森を探検しながらの集団戦
 2章:扉への進路に出現するオブリビオンとのボス戦
 3章:扉への障害物を取り除く冒険

●1章でやること
 メアリの『自分の扉』があるらしい奇妙な植物が生い茂る森の奥へと向かって下さい。
 道中メアリを狙って『共有する者達』が襲ってきますので、排除してください。
 戦闘章なので、おひとりにつき最低1体は『共有する者達』を倒してください。
 更に、おひとりにつき1回、奇妙な植物の罠に遭遇します。「こんな罠にかかりたいなっ!」というアイディアがありましたら、お書き添え下さい(植物の罠は物理攻撃ですので、ダメージは受けないこととします)

●メアリについて
 故郷の世界について記憶を取り戻しつつあります。扉に近づいていくと、更に記憶が甦るかもしれません。
 しかし、故郷もあまり幸福な世界ではないようで、何らかのトラウマを抱えている気配がします。 
 彼女が使えるユーベルコードは『生まれながらの光』(【聖なる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能)
 戦闘に協力してもらうこともできます。

 ではでは、謎多き薄幸の美少女との冒険、お楽しみください!
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第1章 集団戦 『共有する者達』

POW   :    遊ぼう!遊ぼう!
自身の【食べたアリスの悲しい記憶】を代償に、【食べたアリスの楽しい記憶にあるもの】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【その姿に見合ったもの】で戦う。
SPD   :    見て見て!そっくりでしょ?
合計でレベル㎥までの、実物を模した偽物を作る。造りは荒いが【食べたアリスの記憶にあるもの】を作った場合のみ極めて精巧になる。
WIZ   :    お茶会しよう!色んなお話し教えて!
【食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物】を給仕している間、戦場にいる食べたアリスの記憶の中にあるアリスの好物を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。

イラスト:榛戸ろもも

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティア・ツヴィス
●WIZ
元居た世界の記憶がない、かぁ。それは一大事!
メアリにとって、思い出す事もつらそうに見えるけど…魔物に食べられて空っぽになっちゃう方がもっと怖い。と、僕は思うな。

不思議の国の木や花って、歌ったり歩く事も出来るんだね。ふふ、探検し甲斐があるなぁ!
まぁ、初めて来るからこそ。慎重に進んでいくつもり、なんだけど
途中で邪魔してくる植物は、拷問具でちょきん。ばらばらにでもしちゃおう

色んな話を教えてほしい?それなら…
貧民街の子と大好きなパンの取り合いをした些細な話。そこから大騒ぎになっちゃったけど、それはまたいつか!
好物を一つ食べたら、『エレメンタル・ファンタジア』で炎を灯して敵をこんがり焼いちゃおう



 猟兵たちは、メアリを囲むようにして隊列を作り、奇妙な森を進み始めた。
「元居た世界の記憶がない、かぁ。それは一大事!」
 ティア・ツヴィス(カルーセル・f20916)が隣を見ると、そこには不安そうな表情のメアリがいる。
「思い出す事もつらそうに見えるけど……魔物に食べられて空っぽになっちゃう方がもっと怖い。と、僕は思うな」
 だから何とか『自分の扉』に辿り着き、その向こうへと帰してあげたいと思うのだ。甦りつつある記憶に恐怖を感じつつも、それでも扉を求めているのは、故郷の世界に残してきてしまった大事なものや、なすべきことがあるからではないのか。
 こくん、とメアリが頷いたが、その表情は硬い。
 ティアは、森を見回した。メアリの緊張をほぐすためにも早い内に親交を深めておきたい。
「それにしても、さすが不思議な国の植物だね」
 葉擦れの音が旋律を持ち、大木の隙間をのそのそと低木が動いている様子が見える。
「歌ったり歩く事も出来るんだね、ふふ、探検し甲斐があるなぁ……っとぉ」
 チョキン!
 高い枝から悪戯するように伸びてきた蔓を、ティアは機敏に拷問具で切断した。蔓は一瞬蛇のようにのたくったが、すぐに地面に落ちて動かなくなった。
 だが、メアリは怯えて立ちすくんでいる。ユーベルコードを持っているとはいえ、戦闘の経験は無さそうだ。
「大丈夫だよ、途中で邪魔してくる植物は、拷問具でちょきん。ばらばらにしてあげる!」
 背中をぽんぽんして励まし、前へと進ませる。
 メアリの手前、快活に振る舞っているティアであるが、慎重さは失ってはいない。
「ねぇ、せっかくだから、僕ら猟兵に何か聞きたいこととかない?」
 やはり、少しでも気を紛らせてあげた方がよさそうだ。
「では……貴女の故郷のお話を聞かせてください」
「僕の故郷かあ……じゃあ」
 貧民街の子と大好きなパンの取り合いをしたちょっとした事件を話してやる。
「それでどうなりましたの?」
 全く知らない世界の話に、メアリは興味を持ったようだが、
「そこから大騒ぎになっちゃったけど、それはまたいつか……メアリ、下がって!」
 ティアはメアリを後方の仲間へと預けると、好物をひとつ口に押し込んだ。
「来たね……」
 前方の枝の隙間から、ふわりと現れたのは1体の『共有する者達』。そのきょろんと可愛らしい目はアリスであるメアリだけを見つめている。
『遊ぼう! 遊ぼう!』
 共有する者達の口から出たのは、見た目に違わぬ可愛らしい声。だが、その呪文から現れたのは、黒々とした城のシルエットであった。たくさんの塔がにょきにょきと生えたその姿は、まるで魔物の住む城のよう。
「――!?」
 声にならぬ悲鳴を感じ、ティアが思わず振り返ると、仲間に守られているメアリが息を呑み、恐怖に目を見開いていた。まさか、この城もメアリの記憶から喰われたものなのだろうか……?
 だが、今はまだそれを追求すべき時ではない。
「大丈夫だよ、すぐにおっぱらってあげる……エレメンタル・ファンタジア!」
 ゴウッ。
 ティアがユーベルコードによって巻き起こした炎の竜巻が、共有する者達を焼き尽くし……禍々しい城も消えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

フロース・ウェスペルティリオ
共闘・アレンジ・アドリブ可

ウチは基本的に援護射撃をメインに立ち回ろうかなぁ。
隊列の後方か真ん中から、視界に入る敵を射っていくねぇ。
遠くの敵を近づけさせないよう牽制しつつ、近くの敵は他の猟兵さんに任せつつ、敵の隙を作れるようフォローしていくよ。
もちろん、メアリさんに近づこうとしている敵が最優先撃破対象だけどねぇ。

ん、今回は護衛のお仕事って事かなぁ。ふふ、よろしくねぇ。

……そっくり、なのかい?
いや、流石にウチは実物を見た事が無いからねぇ。そっくりかと言われても判断がつかないかなぁ。
その判断が出来るのは、当の記憶の持ち主たるメアリさんくらいじゃないかい?



「……そっくり、なのかい?」
 黒い城の幻影に怯えるメアリを背にかばいながらフロース・ウェスペルティリオ(蝙蝠花・f00244)は尋ねた。
「そっくり……だから、こんなに怖いのでしょうか?」
 震える声が聞き返してくる。
「いや、流石にウチは実物を見た事が無いからねぇ。そっくりかと言われても判断がつかないかなぁ」
 少なくともフロースが今まで訪れた戦場には、この風景はなかった。
「どうしてかはわからないのですが……怖いのです。やはり、わたくしの元いた世界の風景なのでしょうか?」
「その判断が出来るのは、当の記憶の持ち主たるメアリさんくらいじゃないかい?」
 残酷ではあるが、扉を潜るまでに、ある程度の記憶は思い出しておいた方がいいかもしれない。何の予備知識もなく帰還したすると、大変なショックを受けてしまうような場所なのではなかろうか……メアリの故郷は。
 かばっているうちに、仲間が城の幻影を消し去ってくれ、メアリはあからさまにホッと息を吐いた。
 再び歩き出しながら、
「ん、とにかく、今回の護衛のお仕事はしっかりやらせてもらうからねぇ。ふふ、よろしくねぇ」
 フロースが笑顔で言うと、ひきつってはいるものの、よろしくお願いします、とメアリも笑みを返してくれた。

 しかしまたすぐに。
「……んっ!?」
「きゃあっ!」
『共有する者逹』がメアリの至近に現れた。歩く植物に隠れるようにして接近してきていたのだ。
「アジな真似してくれるじゃないか!」
 ガツッ、と、ロングボウで丸っこい敵を殴ると、ぽーん、とボールのように飛んでいったが、またすぐに空中で体勢を立て直してしまった。そしてまたメアリの心を苛む技を発動してくる。
『見て見て! そっくりでしょ?』
 目の前で形作られていくのは……貧しい農村だろうか? 木と石で造られた粗末な家々と、いかにも実りの少なそうな畑や果樹園が見えてくる。暗く苔むした貧しい村だ。
 これはッ、とメアリが息をのむ気配がし、即座にフロースは弓を構えギリギリと引き絞る。
「これ以上、近寄らせないよ!」
 ヒュッ。
 幻影が完成する暇を与えず、フロースの矢が敵を貫いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナイト・スイート
★SPD
メアリさん、大丈夫ですか?
お腹空いていません?お菓子がありますよ、甘いものはお好きですか?あ、そこ足元お気を付けて!

抱いている不安を完全に払拭するのは難しいでしょうが……出来るだけ、元気になって欲しいですから!
少しでも気が紛れるよう、笑顔を絶やさず楽しそうにお喋りしながら進みます。

【野生の勘・聞き耳】で敵の気配を察知。
共有する者達が偽物を見せようとした場合は、素早くマントでメアリの視界を星空で覆った後、UCを発動します。
食べると力が湧いてくる魔訶不思議な美味しいお菓子を召し上がれ♪

その後行動力が低下した敵を【早業・先制攻撃】でメアリに気付かれないよう手早く剣で排除します。

★アドリブ歓迎



「メアリさん、大丈夫ですか?」
 フロースが『共有する者逹』を退治している間、ナイト・スイート(*∞*月夜のお茶会*∞*・f19480)は、優しくメアリを励ましていた。
「お腹空いていません? お菓子がありますよ、甘いものはお好きですか?」
「え……ええ、この世界に来てしまってからは、食べる機会もなくなっていましたけれど……」
「ならば、これをおひとつどうぞ」
 差し出したのは、見た目だけでも楽しくなりそうなカラフルなキャンディのボトルだった。
「まぁ……なんて可愛らしい」
 うっとりとキャンディに見とれるメアリは、つい足下がお留守になり、
「あ、そこ足元お気を付けて!」
 芋虫のように蠢く木の根に脚を取られそうになり、支えてやるナイトの力強い手は、まさに『ナイト』。

 甘いキャンディをひとつ口に入れ、少し元気が出た様子のメアリに、ナイトはホッとする。
「(抱いている不安を完全に払拭するのは難しいでしょうが……出来るだけ、元気になって欲しいですから!)」
 少しでも気が紛れるよう、笑顔を絶やさず楽しそうにお喋りしながら森を進んでいく――が。
「……止まって下さい」
 ナイトの【野生の勘・聞き耳】が、敵の接近を知らせた。
「後ろ!」
 一行が振り向くと、すぐそこに『共有する者逹』が1体迫っていて、
『見て見て! そっくりでしょ?』
 今度、彼らが見せられたのは。
 ティーパーティらしきセッティングがされた、テーブルの様子。ゴシック風の豪華絢爛な部屋で、菓子もキラキラと砂糖細工で飾りたてられているが、何故だろう、ちっともおいしそうに見えない。
 これも――メアリの記憶なのだろうか?
 だが、メアリの視界は、ナイトがマントの星空で覆い隠していた。
 その間にナイトは、
「楽しい楽しい、お茶会の時間ですよ」
 敵のいやらしい精神攻撃に対抗すべく、ユーベルコード【TeA*∞*PartY】を発動した。
 ナイトが出現させたのも、ティーパーティーの風景。だがこちらは、可愛らしいケーキにクッキー、切り立てのサンドウィッチに、焼きたてスコーン、そしてもちろんいれたてのお茶という、心のこもったセッティングだ。
「食べると力が湧いてくる魔訶不思議な美味しいお菓子を召し上がれ♪」
 ナイトのエスコートで、メアリは瞳を輝かせてテーブルに付き、猟兵仲間たちも彼女を囲んでお茶を楽しむ。
 その輪に入れない『共有する者逹』の行動スピードは、5分の1に落ちていて、まるで紐につながれた風船のようにゆるゆると動いているだけ。
 ナイトはちらりとメアリの様子を窺った。ちょうど仲間がお茶を給仕してくれていて、こちらにから視線は逸れている。
「彼女の目に入らぬうちに」
 スラリと剣を抜いたナイトは、目にも留まらぬ早業で、共有する者逹を一突きで倒したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

マレーク・グランシャール
俺も記憶を失っているが取り戻したいと思ったことはない
だがメアリ、お前は失った記憶が哀しみに満ちていようとも、それでも取り戻したい、帰りたいと言うのだな
ならば俺が手を貸してやる

森の罠は【泉照焔】の見切りで躱し、扉までの道は失せ物探しで発見する

途中に湧いてくるふわふわしたものはまとめて【竜牙氷纏】の吹雪で吹き飛ばす
アリスの記憶を食い、その記憶を武器として攻撃してくるのならば、悲しいことも楽しいことも全て氷の中に閉じ込めてしまおう
それでも立ち向かってくるのなら、足止めに氷の槍、トドメは愛槍と使い分けて敵を討つ

俺にも俺の扉がある
それは俺を守り、時に閉じ込める城門のヤドリガミである友の盾だ



 猟兵たちの気遣いで、メアリの『自分の扉』を目指す足取りは軽くなってきたようだが、まだその瞳には不安の揺らぎがある。
「俺も記憶を失っているが取り戻したいと思ったことはない」
 マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は、そんなメアリに静かに話しかけた。
「だがメアリ、お前は失った記憶が哀しみに満ちていようとも、それでも取り戻したい、帰りたいと言うのだな?」
「……ええ……はい」
 メアリはためらいがちに答える。
「とても大切なものを……私がやらねばならぬことを、残してきてしまった気がするのです」
 そうか、とマレークは頷いた。
「ならば俺が手を貸してやる……おっと、よけろ」
 力強く答えながら、マレークは素早くメアリを抱き寄せた。
 バサリ。
 今までメアリがいたところに、投網のような形をした巨大な木の葉が落ちてきた。
「あ……ありがとうございます」
 メアリはぶるり、と身を震わせた。木の葉とはいえ、これだけ巨大なものが落ちてきたら、ケガをしたかもしれない。
「この森の植物には悪意はないのかもしれんが……いたずらが過ぎるな」

 次に現れた『共有する者逹』が見せてきたのは、またしても黒い城であった。しかも、屹立する無数の塔から、下界にむけて大砲のような火器を発射している。
 マレークはメアリを背に庇いながら、ユーベルコード【竜牙氷纏】を発動した。
「其の侭でも強い人。貴方の力にもう一輪、雪の花の加護添えて……此の氷は貴方を傷つけず護り、此の風は貴方の背を押すために吹く」
 強烈な氷雪が、その光景と共有する者逹に吹き付けはじめた。吹雪でまとめて吹き飛ばしてしまおうというのだ。

 ――アリスの記憶を食い、その記憶を武器として攻撃してくるのならば、悲しいことも楽しいことも全て氷の中に閉じ込めてしまおう。

 だが、メアリは呻いた。
「ああ……このような吹雪にも憶えがあります……」
 城を覆い隠そうとする吹雪の光景が記憶を刺激したらしい。
「……そうか」
 苦しみを伴いつつも、記憶が蘇るのは悪いことではないだろう。だが、長く苦しめるのは本意ではない。
 マレークは愛槍・碧血竜槍を構え、吹雪の中に踏み込んだ。
 吹雪に巻かれてくるくる回っている共有する者逹に向けて、碧玉を嵌めた優美な長槍をひと突きし――仕留めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ポク・ョゥョゥ
ぽくだよー、ぱんだなのー
あがめよー
メアリたんよろしくなのー

扉に行くよー
メアリたんはついてきてーねー
いろんな植物があるねー、おもしろーぃ
んー。何だかいいにおーぃ
あの大きなお花からかなー
蜜あるかなー覗いちゃおーあわわ
ぱくりされかけたのーぱくー助けてくらしゃーぃ
はふー。危なかったのー
でも花の蜜美味しかったおー

共有たんかわぃー。あがめよー
遊ぶのー?いいおーいっぱい遊ぼー
あのねーぽくっきー食べるのー
おいしーして、いっぱい増えるよー
楽しい思い出?もー共有たんとも遊んでー
メアリたん守るのも一度にできちゃうよー
最後はいっぱいぽくの一斉ぱーんちで退治だー

メアリたん大丈夫だったー?よかったのー
ぽくっきーどうじょー


桐島院・師走
たった一人で見知らぬ土地に取り残されるとは、随分と心細かっただろう。皆さんと一緒にあなたを守るから、どうか安心してほしいな

背後から迫ってきた蔦の罠は、振り向きざまに鋏の脚で蹴り飛ばして切断する。更に、邪魔をしてくる敵相手には、手の装甲を展開して【ジャッジメント・クルセイド】で攻撃。

あなたが生きようとする意志はとても尊いものだ。そのお手伝いが少しでも出来るのなら、僕は嬉しいかな。

(アドリブ・共闘歓迎です)



 次々と甦ってくる記憶に翻弄されるメアリの前に、ひょこひょこと剽軽な動作で立ったのは、
「ぽくだよー、ぱんだなのー。あがめよー。メアリたんよろしくなのー」
 ポク・ョゥョゥ(よろしくなの〜・f12425)であった。
「まぁ、可愛らしいこと……よろしくね」
「扉に行くよー、メアリたんはついてきてーねー」
 その愛らしい姿と声に、メアリの口元が緩む……と、その隙を狙うかのように、背後からシュルッと伸びてきた蔓があった。しかしそれがメアリに触れる前に、
「とおっ!」
 ジャキリ!
 振り向きざまに鋏の脚で蹴り飛ばして切断した猟兵がいた――桐島院・師走(シザーレッグズ・f20989)だ。
「あ……ありがとうございます」
 メアリは迫っていた植物の罠と、師走の異形に驚いたようだったが、
「たった一人で見知らぬ土地に取り残されるとは、随分と心細かっただろう。皆さんと一緒にあなたを守るから、どうか安心してほしいな」
 彼の礼儀正しさにすぐに信頼感を覚えたようだ。
「どうかよろしくお願い致します」
 森の植物たちには相変わらず悪意は感じないが、それでも一向を奥へと行かせたくはないらしく、罠は増えて来ているような気がする。
 それでもポクは楽しそうだ。
「いろんな植物があるねー、おもしろーぃ。んー。何だかいいにおーぃ……あの大きなお花からかなー」
 てけてけ近づいていったのは、地面から直に咲いているかのような、大きな赤い花であった。百合のような形と香りであるが、赤地に緑の斑点が何処か毒々しい。
「蜜あるかなー。覗いちゃおー」
 ポクが花弁の中に頭を突っ込むと。
 ぱっくん。
「……あわわ」
 花びらが巾着のように素早く閉じて、ポクの頭が捕まえられてしまった。
「助けてくらしゃーぃ!」
 短い手足がじたばたしている。
「食虫植物か!」
 師走が慌てて駆け寄って、脚の鋏で素早く花弁を斬り裂いてやる。
 開放され、ころん、とポクは地面に尻餅をついた。
「はふー。危なかったのー」
「大丈夫でしたか!?」
 おろおろと尋ねるメアリにポクはニッコリし。
「花の蜜美味しかったおー」
 こりていないようだ。

 とんだハプニングはあったが、一向はその後も森の奥を目指して行軍を続けた。扉は確実に近づいているらしく、メアリの緊張感は高まっていく。
 ――突如。
『遊ぼう! 遊ぼう!』
 複数の『共有する者達』の声が響いたかと思いきや。
 一行を異世界の風景が取り巻いた。
 植物に隠れて忍び寄っていたのだろう、いつの間にか前方と後方、2体の共有する者達に挟まれていた。
 見えてきたのは、黒い城と貧しい農村。陰鬱な空と、見窄らしい農地。これらは今までも垣間見せられてきたメアリのものらしき記憶と同じだ。
 だが、今現れた光景の中では、城の塔から突き出した砲台は、農村へと向けられていた。しゅっと、ロケット花火のように輝く尾を引いて着弾する弾丸は、貧しい家家を破壊し、荒れた農地を抉る。
「……あぁぁ」
 メアリが呻いて頭を抱えた。何かを思い出しかけているのだろうか?
 その苦悶の表情を見て、師走は。
「ジャッジメント・クルセイド!」
 くるりと振り向くと、手の装甲を展開して、後方でふよふよと飛んでいる『共有する者達』に指先を向けた。シュッ、と天から光が落ちてきて、敵は撃ち落とされ、暗鬱な光景の半分が消える。
 ハッ、と顔を上げたメアリに、
「あなたが生きようとする意志はとても尊いものだ。そのお手伝いが少しでも出来るのなら、僕は嬉しいかな」
 師走は微笑みかける。
「じゃあー、前にいる共有たんとは、ぽくが遊ぶー」
 ポクがてけてけと駆けだした。
「共有たんかわぃー。あがめよー。遊ぶのー? いいおーいっぱい遊ぼー」
 と言って取り出したのは【おいしいぽくっきー】
「あのねーぽくっきー食べるのー。いただきまーしゅ!」
 ぽりぽりと食べ出したこれ、実はユーベルコード【ぽくがいっぱい】。食べれば食べるほどポクが分裂、増殖し、戦闘力が増加するという技だ。
 どんどんたべて、どんどんふやそう!
「おいしーして、いっぱい増えるよー!」
 増えたポクがメアリの視界を埋め尽くし、暗い記憶を覆い隠す。
「共有たんとも遊んでー、メアリたん守るのも一度にできちゃうよー!」
 メアリも、猟兵仲間たちもみるみる増殖するポクを唖然として見つめている。
「最後はいっぱいぽくの一斉ぱーんちで退治だー!」
 大量のポクに封じ込められたようになっていた共有する者達に、パンダの拳が一斉にぱーんち!
 共有する者達はふっとんでいき、暗鬱な風景もスッと消えた。

「メアリたん大丈夫だったー? よかったのー。ぽくっきーどうじょー」
 ポクはてけてけとメアリの元へと戻り、クッキーを差し出したが、メアリは前方を凝視したまま動かない。果実のような唇の色が褪せ、震えている。
 なんだろー? と振り向いてみると、前方の森の木々が切れ、広場になっているような空間が現れていた。
そして、ほぼ円形の広場の真ん中には重厚な扉が……扉だけが、忽然と屹立していた。ゴシック風の彫刻が施された、大仰な扉だ。
 しかし、扉には簡単に近づけそうにない。広場には奇妙な草が一面に生えており、しかも扉を守るように――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『魔導植物『エーリカ・クアッド』』

POW   :    鳴動スル大地
【植物の常識を超越した速度での突進】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に自らの根を張り巡らせることで】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    生存ヘノ渇望
全身を【青白い雷光を放つ高出力の魔力】で覆い、自身が敵から受けた【損傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
WIZ   :    永遠ノ薔薇
自身の装備武器を無数の【魔力を帯びた赤・白・青・黒の四色の薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。

イラスト:烏鷺山

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はイヴ・シュプリームです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●2章
「ヒッ……」
 扉の前に立ちはだかる怪物の姿に、メアリが立ちすくんだ。現れたのは、魔導植物『エーリカ・クアッド』だ。
 エーリカ・クワッドは、一行の姿に気付いたらしく、青く光る目を、ぎょろりとこちらに向けた。
 そして、全身を覆う火花を赤・白・青・黒の薔薇の花びらに変えて、
『ガアアアアッ!』
 咆吼の勢いで彼らの方にドッと噴出した。
「下がれ!」
 この手の攻撃はさほど遠くまでは届かないはずだ。
 猟兵たちはメアリを庇って森の中へと退避する。
 それでも追いかけてくる花びらは、ひとつひとつが魔力を帯び、色とりどりに美しく光って散る……まるで花火のように。
「あ……あ……あの光」
 猟兵たちに引きずられるようにして下がりながらも、メアリは花びらに視線を釘付けにして、うわごとのように呟いている。
「そっくり……あの花火のような光り方……そっくり……」

●2章補足
 メアリを守りながらボスを撃破して下さい。
 ボスを倒さないと扉には至れません。
 戦いが、更にメアリの記憶を刺激することもあるかもしれません。
 この章では、植物が戦いの邪魔をすることはありません。
フロース・ウェスペルティリオ
ポクさん(f12425)と参加。

「おや、メアリさんの邪魔をするというのかい?」
質問と共にこっそりと蔓を伸ばし、エーリカ・クアッドの動きを絡め取っておこうか。
質問を理解し答えられても、質問を理解せず応えられなくても、まぁ、いいかなぁ。
多少なりとも動きを止められれば、他の猟兵さんが仕掛ける隙も出来だろうし、メアリさんをかばうにしても悪くはないかな、と。
電撃も、多少なら耐性あるしねぇ。

植物には植物を、なんてねぇ。
ほうほう。薔薇も雷光も綺麗だねぇ……触るとちょっと痛そうだけど。
花火にそっくりな光り方……魔法とかなのかな?
ん、ポクさんはいつでも楽しそうだねぇ……


ポク・ョゥョゥ
わぁー。お花ワニたん?だー
フロースたん(f00244)と一緒に倒すよー

お花は綺麗なのにービリビリ痛そうだぉー
んおー。フロースたんの蔓だー
フロースたんのお花はかっこいぃねー
捕まえたかなー?

よーし、ぽくも頑張るぉー
ぱくを槍にしてー。捕まったワニたんちくちくするのー
突進はフロースたんの蔓で防げるかなー?
だめでもー、ゆる〜く形を変えて避けるおー
ぽくは柔らかめのぱんだなのー
あがめよー

メアリたん大丈夫かなー?
もし危なかったらー、ぱくをドラゴンに戻して守ってもらうよー
その隙にーぽくは近付くのー
いっくよー
めがとんぽくぱーんちー
どうだー、参ったかー

ぽく楽しそうかなー?
フロースたんと冒険できるのは嬉しいよー



 オブリビオンと自らの記憶に怯えるメアリを仲間に託し、まずエーリカ・クアッドへと近づいていったのは、フロース・ウェスペルティリオとポク・ョゥョゥだ。
「わぁー。お花ワニたん? だー」
 物珍しげに歓声を上げるのはポク。
「ん、ポクさんはいつでも楽しそうだねぇ……」
「ぽく楽しそうかなー? フロースたんと冒険できるのは嬉しいよー」
 同団員の可愛らしい笑顔を見下ろして、フロースも釣られて少しだけ微笑んで。
「じゃあ、いこうか」
「うんっ」

 異形の植物とも動物ともつかないオブリビオンと対峙し、まずはフロースが質問を投げかける。
「メアリさんの邪魔をするというのかい?」
 実はこの質問、ユーベルコード【Fledermaus blume -蝙蝠花-】の発動でもある。
「応えを。蝙蝠が導になるよ」
 質問と共に、エーリカ・クアッドに向けてこっそり蔓を伸ばす。広場中に生い茂っている奇妙な草に隠れるように、地を這い蔓はターゲットへと近づいていく。
『ギギ……アリスハ、カエサヌ』
 歯ぎしりのような不快な声が返答をした時には、黒い花の蕾のついた蔓は、エーリカ・クアッドの足元に、毒蛇のように忍び寄っていて。
『ギャッ』
 エーリカ・クアッドが気づいた時には、フロースの蔓はしっかりと後ろ脚の一本に絡みついていた。
「植物には植物を、なんてねぇ」
「んおー。フロースたんの蔓だー、フロースたんのお花はかっこいぃねー、捕まえたねー」
 感心して仲間の優雅な戦いっぷりを見ていたポクだったが、
「よーし、ぽくも頑張るぉー!」
 勇んでてけてけっとエーリカ・クアッドに近づいていくと、白竜のパクを槍へと変身させ、
「ワニたんちくちくするのー」
『ギャアッ!』
 ちくちくされたエーリカ・クアッドは、ポクめがけて突進してこようとしたが、
「おっと!」
 それはフロースが蔓を引いて阻止した。
 しかし。
 ――ドンッ!
 落雷のような音を伴い、エーリカ・クアッドは全身を青白い雷光で覆った。
 蔓を雷光で焼き切られてしまったフロースは、チッと小さく舌打ちしたが、
「ほうほう。薔薇も雷光も綺麗だねぇ……触るとちょっと痛そうだけど。花火にそっくりな光り方……魔法とかなのかな?」
 今の光を見て、メアリはどのような反応を、と振り返ると、顔を覆った両手の指の隙間からエーリカ・クアッドを凝視し、必死で悲鳴を堪えている。
 やはり、花火のような音と光が彼女の記憶に何らかの刺激を与えるようだ。
「ぱく、メアリたんを守って」
 ポクはパクをドラゴンに戻してメアリの護衛へ戻すと、自らは、敵が雷光に包まれて力を蓄えているうちに、とユーベルコードを急いで発動した。
『いっくよー、ひっさつ、めがとんぽくぱーんちー!」
 ビリビリと雷光を突き破るようにして、全身の力を拳にのせて突っ込んでいった。
 弾き飛ばそうと伸ばされた前脚は、タールの身体をゆる~く変形させて避ける。
「ぽくは柔らかめのぱんだなのー。あがめよー」
 キラキラッ、と雷光にも負けないまばゆさでお星さまが散り、小さな黒い拳が植物の化け物の鼻づらにめり込んだ。
「どうだー、参ったかー!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桐島院・師走
メアリさん、僕達がいるから大丈夫、信じて。
同じ目線になるよう屈んで、優しく声をかけておこう。

か弱い子を一方的にいたぶるなんて行為は絶対に許せない。
【ヴァリアブル・ウェポン】を使って、手持ちの武器と鋏の脚を合わせた連撃をくらわせる。
敵がメアリさんを狙うようなら、【かばう】と【オーラ防御】でメアリさんを守ろう。僕は「人」とは違う作りだから、多少痛いのも大丈夫。【見切り】で相手の隙をついて反撃するよ。

メアリさん、もう少しで帰れるから、それまで待っていてね。

(アドリブ・共闘歓迎です)



「あぁ……花火のような魔力の光が……街を……村を……」
 エーリカ・クアッドの雷光を目の当たりにして、メアリはうわごとのような呟きを漏らし続けていた。彼女の頭の中では、様々な記憶の断片が雷光の刺激によって急激に蘇り、舞い狂っているような状態なのだろう。
 それでも、
「メアリさん、僕達がいるから大丈夫、信じて」
 桐島院・師走が、同じ目線になるよう屈んで優しく声をかけると、メアリはハッと我に返り、
「は……はい、猟兵の皆さんがいてくださるので、心強いです」
 気丈に返答した。
 こんなか弱い子を一方的にいたぶるような真似をして……絶対に許せない。
 師走はこの世界そのものへの怒りを覚え、メアリを元の世界に帰してやるまでは、技能をフル活用して絶対守り切ると決意した。
 師走は、メアリの盾となる場所へと立ちはだかると、ユーベルコード【ヴァリアブル・ウェポン】を発動する。
 エーリカ・クアッドは、仲間の猟兵のパンチを喰らい、悲鳴を上げてその全身を覆う雷光を一瞬消した。
 だが、次の瞬間、
『ガアアアッ!』
 咆哮し、四色の薔薇の花びらをまき散らした。その花びらの一部は、魔力の光を纏ってこちらの方へも舞い飛んでくる。
 背後でメアリが身を固くする気配がした。
「メアリさん、もう少しで帰れるから、それまで待っていてね!」
 師走は極月・氷月の二本の槍を、そして二本の脚の鋏を振るい、舞い狂う薔薇の花びらを次々と切り刻みながら走り出す。
 花びらが師走の体を傷つける。だが、構うことはない。彼の体は痛みに強い。
 大量の花びらに紛れるようにして、エーリカ・クアッドの横手に回り込んだ師走は。
「――隙有り!」
 槍と鋏で、その異形の脇腹に、幾筋もの傷をつけた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティア・ツヴィス
●WIZ
わぁ、如何にも危なそうな怪物が出てきたねぇ。
扉に来るまで邪魔な植物達は結構いたけれど、それとは強さが段違いな予感がするかも!
色んな薔薇で着飾ってる見た目って、中々良いセンスしてると思うけど……メアリは怖いんだね。
それなら、さくっと終わらせてあげなくちゃ!

メアリに攻撃が届かない様、守りながら戦うよ
花弁を飛ばして戦うだなんて、『わたし』だったら喜ぶかも?なんて。

本当は燃やしちゃう方が早いかもしれないけど…森が大変な事になっちゃうから、今回は違う方法で
メアリを安全な場所に避難させてから、攻撃態勢へ
『エレメンタル・ファンタジア』を『全力魔法』に乗せて、氷の嵐を発生させた後魔導植物にぶつけるよ!


マレーク・グランシャール
メアリ、俺はお前を少しだけ羨ましいと思うぞ
俺は愛した人も懐かしき故郷も、何一つ思い出すことは出来ないのだ
だから猟兵として生きていくしかない
だけどせめてお前は帰してやりたい

メアリの前に立ち塞がって庇いながら、【竜牙氷纏】の吹雪で動きを鈍らせらる
それならば【黒華軍靴】のジャンプとダッシュで回避できよう

根を張り巡らせても凍気で地表を氷らせて地形の利を打ち消す
凍り付いた地面では滑って高速移動も難しかろう

さあ、反撃だ
無数に作られる氷の槍を敵めがけて槍投げ
さらに【魔槍雷帝】で串刺したら雷撃の閃光で目潰して麻痺させる
トドメに【碧血竜槍】を投げて頭部を破壊する

俺の槍が放つ光はメアリの記憶に触れるだろうか


ナイト・スイート
は、花は美しいですが……とても恐ろしい形相をなさっていますねっ!?
兎に角まずは敵の動きを止めないと!UC【DeA*∞RestrizionE】

時間を一時的に止め、敵の死角から金色の鎖を放ちます。捉えきれなくてもよいです。
鎖が辺りに纏わりつくことで動きや花を少しでも阻害できれば上々!

メアリを背中に庇いつつ、【早業】と【野生の勘】で花びらを頑張って可能な限り剣で落とします。
無理な部分は【オーラ防御】でなんとか防御を試みたいですね。
一番はメアリの安全確保です。その為なら多少のダメージは仕方がありません!

隙があれば【医療】を。物理的なダメージもですが、メアリの精神状態も心配です。

アドリブその他OK☆



「わぁ、如何にも危なそうな怪物が出てきたねぇ」
 ティア・ツヴィスは、異形の植物をまじまじと眺めた。
「扉に来るまで邪魔な植物達は結構いたけれど、それとは強さが段違いな予感がするかも!」
 確かに、ここまでも仲間が果敢に攻撃を続けているが、まだ倒すことはできていないし、受けるダメージもかなり大きい。
「花弁を飛ばして戦うだなんて、『わたし』だったら喜ぶかもしれないな。色んな薔薇で着飾ってるところは、中々良いセンスしてると思うけど……」
 背に庇っている怯える少女を見やる。
「メアリは怖いんだよね。それなら、さくっと終わらせてあげなくちゃ!」
 エーリカ・クアッドが咆哮し、薔薇の花びらが舞い散った。それができるだけメアリの目に入らないよう、そしてもちろん、攻撃が届かない位置へと、猟兵たちが立ちはだかる。
 舞い踊る薔薇の花びらに紛れるように駆け込んでいった猟兵の刃が、エーリカ・クアッドの脇腹を形作っている蔓や茎を何本も切り裂いた。だが、花びらの勢いは衰えない。

「は、花は美しいですが……とても恐ろしい形相をなさっていますねっ!?」
 ナイト・スイートが長い耳をぴくぴくさせながらも、果敢に前に出た。
「兎に角まずは敵の動きを止めないと! ここは私にやらせてください!」
 バサリとマントを広げて発動したユーベルコードは【DeA*∞RestrizionE】。
「まぁまぁ、そんなに慌てないで。偶にはのんびりすることも大事ですよ!」
 セリフの内容とはうらはらに、声には緊張が滲んでいるが――ユーベルコードは成功。その場の時間が一時、止まった。
「よし!」
 敵も、舞い散る花びらも、そして仲間たちもぴたりと動きを止めてしまっているが、その一瞬にナイトは磁力を発生することができる金色の鎖をエーリカ・クアッドに放った。
 ジャラリ、と幾本かの鎖がオブリビオンに絡みつき……時が戻った。
 仲間たちも、花びらも、敵も一斉に動き出した。
「今です!」
 
 わあ、なにがおきたの? と、ティアが声を上げた。彼女の意識としては一瞬の空白の後に、敵が鎖に縛られていたのだからそれは驚く。
 しかし、ナイトが作ってくれた勝機を逃すティアではない。
「本当は燃やしちゃう方が早いかもしれないけど……森が大変な事になっちゃうから、今回は違う方法で」
 ディアは、メアリを、ナイトに託して後方の大木の陰へと避難させた。そこまで追いかけてくる花びらは、ナイトが素早い剣さばきで次々と落とし、メアリには決して届かせない。
 メアリは仲間がしっかり守ってくれていることを確認し、ティアが発動したユーベルコードは【エレメンタル・ファンタジア】。彼女の魔力を全力で込めた氷の嵐が発生し、
「そら行け!」
 魔導植物へと襲いかかった。
『グワアァァァァ!』
 薔薇は寒さに強いとはいえ、氷の嵐ではたまらない。化け物は絶叫し、花びらの乱舞が止んだ。
 だが、最後の力を振り絞るかのように、エーリカ・クアッドは金色の鎖を力ずくで引きちぎると、霜の降りたような体にも関わらず凄まじい勢いで突進し始めた。もちろん彼らの――メアリのいる方へ。
 更にその突進に追随するかのように、エーリカ・クアッドのものらしき根が、森の広場全体へと、地表を波うたせながらを大ミミズの大群のように広がっていく。

「メアリ、俺はお前を少しだけ羨ましいと思うぞ」
 マレーク・グランシャールは、メアリを守る動線から外れぬように前に出ながら、彼女に呼びかけた。
「俺は愛した人も懐かしき故郷も、何一つ思い出すことは出来ないのだ。だから猟兵として生きていくしかない……だけどせめてお前は帰してやりたい!」
 思いをこめて発動されたユーベルコードは【竜牙氷纏】。さらなる凍気が地表を凍らせて、根の広がりを止めた。
「其の侭でも強い人。貴方の力にもう一輪、雪の花の加護添えて……此の氷は貴方を傷つけず護り、此の風は貴方の背を押すために吹く」
 畳みかける寒気により、本体の進みも鈍くなる。
「さあ、反撃だ」
 マレークが容赦なく投げ続ける無数に氷の槍は、動けなくなったターゲットをみるみる氷漬けにしてゆく。
「これも喰らえ」
 氷の槍に紛れるようにして投げられた魔槍雷帝の閃光が、爬虫類めいた目を眩ませる。
「……俺の槍が放つ光はメアリの記憶に触れるだろうか」
 守るべき存在の精神状態を気にかけつつも、攻撃の手を緩めることはできない。今こそ、敵に引導を渡すチャンスなのだ。
「やあッ!」
 マレークは、ぐん、と大きく一歩踏み出し力一杯碧血竜槍を投げた。黒華軍靴の力をも借りた気合いの籠もった一投だ。
 碧玉を嵌めた優美な長槍が、ワニのような頭部を貫いて――。

 ドオン、と、まるで花火のような爆発音がした。
 魔導植物の魔力を載せた色とりどりの薔薇の花びらが、まるで花火のように、ひらひらと、きらきらと、はらはらと、広がったかと思うと。

 エーリカ・クアッドは、あっけなく消えた。
 花火のように。

 強敵の消滅を確認した猟兵たちは、大木の陰にたたずむメアリを、一斉に振り向いた。
 彼女は、もう怯えてはいなかった。
 ただ、青ざめた顔で、決然と宣言した。
「全てを思い出しました……やはり私は、戻らねばなりません。故郷に」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 冒険 『火気厳禁!? 花火畑!』

POW   :    道具は不要! 力いっぱい引っこ抜きます

SPD   :    さくさくザックリ。刃物を使って刈り取ります

WIZ   :    キラリと光る。独自のアイディアで勝負です

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●3章
 強敵は廃した。
 だが、エーリカ・クアッドの魔力の名残なのか、メアリの『自分の扉』のある広場に生い茂る草は、花火草になってしまっていた。火を近づけると、美しい火花を散らしながら発火するのだ。
 さほど危険なものではないので、無理やり通ることもできなくはなさそうだが、やはりまだ花火への忌避が強いメアリのために、花火草を刈って扉までの道を作ってあげよう。
 作業の間に、メアリが思い出した故郷について話してくれることだろう……。

●3章補足
 広場の真ん中に扉があり、その周り一面に花火草が生えている状況です。
 草は一見オオアレチノギクに似ています。
 草の特性上火気厳禁ですが、その他は自由に花火草を刈り、メアリが安全に帰れる道を作ってあげてください(発火してもダメージを受けることはありません)
 花火草は、花火としては色々な種類がありますので、プレイングで自由に指定してください。お土産にもできるかもしれません。
 作業しながら、メアリの話を聞いてあげることもできます。

※必要成功数が少ないので、プレイング募集期間は、8/13 8:30~8/16 11:00頃までとさせて下さい。
(成功数が満たなかった場合等はその限りではありません)
訂正:すみません、この章日常でなく冒険でした! ですので普通に成功数が必要ですので、プレイング募集期間は上記よりもう少し長くとれるかと思います。慌てずにどうぞ~!!
マレーク・グランシャール
扉はすぐそこ、後は進むだけ
メアリが火花を怖れるのには訳があろう
何か思い出すものでもあったのかと聞いてみたい

火花を怖れるというのなら皆で花火草を刈り取り安全に通れる道を作るまで
俺も【竜骨鉄扇】の衝撃波+凪払いで刈り取れないか試してみる

怖い思いをたくさんさせたが、せめてこの世界で見る最後の花火が恐ろしいものではなく、美しく楽しいものであって欲しい
花火草を刈りながら【竜聲嫋嫋】を発動して歌おう
優しく穏やかな歌も、楽しく心躍る歌もたくさん
歌には人の心を高揚させる力、心の傷を癒す力があるから
歌いながら楽しく刈って、少しでも火花が怖くなくなるように

最後は蒼い稲妻を纏う【魔槍雷帝】を手に見送ろう



 扉はすぐそこ、後は進むだけ――なのに。
 メアリは広場の入り口で立ちすくんでいる。そこかしこで小さな火花を散らす『花火草』が、やはり怖いようだ。
「メアリ……怖い思いをたくさんさせてしまい、すまなかった。花火を怖れるのには訳があろう?」
 マレーク・グランシャールは少しだけ屈み込み、少女と目線を合わせた。
「何か思い出すものでもあったのか?」
 メアリはマレークの誠実な視線から少しだけ目を逸らした。けれど意を決したように再び目を上げて。
「私の故郷の国は、ダークセイヴァーにあるのです……その国を治めている領主は、横暴で、しかも強大な魔力を持っていて」
 その領主は、『共有する者たち』が見せたメアリの記憶の、黒い塔のある大きな城に住んでいるのだという。
「その領主の魔力が発揮される様が……花火に似ているのです」
「……なるほど」
 マレークは頷くと【竜骨鉄扇】を取り出した。
「そんな領主のいる国でも、帰るのだな」
「はい……帰ります」
 ならば、とマレークは花火草の一叢に向けて鉄扇を一振りした。ザアッ、と突風のような衝撃派に、花火草が薙ぎ払われる。
「安全に通れる道を作ってやる。
 せめてこの世界で見る最後の花火が恐ろしいものではなく、美しく楽しいものであって欲しい。少しでも、花火に似た魔力に対抗できる勇気を持って、故郷に帰ってもらうために。
 マレークはユーベルコード【竜聲嫋嫋】を発動し、そして歌った。
「癒やしを求める者よ、竜の歌を聞け。我が聲はそよぐ緑の風の如く野を撫で草花を慈しむものなり」
 彼は歌う。
 優しく穏やかな歌を。
 楽しく心躍る歌を。
 おとぎ話の草が弾け、異世界への扉が立つ広場に、朗朗と歌声が広がる。
 歌には人の心を高揚させる力、心の傷を癒す力がある――。
 唄い手は蒼い稲妻を纏う【魔槍雷帝】を、メアリの未来を指す羅針盤のように掲げ、寿ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロース・ウェスペルティリオ
【黒異の】の皆さんと参加

ウチはダガーで花火草を刈っていくよ
悟郎さんのお隣でザクザク刈っていくねぇ
刈った草は一ヶ所に集めて、束にして括っておこうか
ふふ、花火の花束というのも、なんだかとても華やかな感じになりそうだねぇ
せっかくなので、お土産にいくつか持ち帰って皆で花火を楽しもうかな?

ん。花火は下手に扱うと火傷したりと危ないけど、
ちゃんとすれば綺麗な光を楽しめる素敵な物だよ
メアリさんも必要以上に恐れずに、きちんと見極められると良いねぇ

おや、ポクさんがカニさんのように……
ふふ、がんばってねぇ
オクタさんの触手もタコさんみたいだし……
うん、ちょっとパエリアとか海鮮系のご飯が食べたいかも

アドリブ・アレンジ可


薬師神・悟郎
【黒異の】皆と参加

フロースの隣で忍刀を使い花火草を刈ろう
これらを幾つか刈って花束にするのは良いアイデアだと賛成する
美しい火花を散らし咲かせてくれる花束なら、皆への土産にすれば喜ばれそうじゃないか?

可能であれば花火草を持ち帰りたいと思う
そうと決めたらその手段を考えないとな
火気厳禁、取扱いには注意して
UCで何か作れないだろうかと思案する

ポクとオクタの能力、やり取りを見れば
器用な2人に作業をする手も思わず止まる
俺には出来ないし思いつかないやり方だと驚くだろう

火は取扱いさえ気を付ければ心強いものなんだが…
メアリの心の憂いが完全に取り除かれる日がいつか来ると良いな

アドリブ歓迎


オクタ・ゴート
【黒異の】の皆様とご一緒に

火をつければ引火の危険……そうなると、私の力の大半は使えない。
仕方がありません、地道に草を抜いてまいりましょう。幸い、使える「腕」は多いので。

怪力と八本の触手を用い根元から抜いていきましょう。隅々まで残さず……おや。
途中でポク様が潜んでいるのを見つけたら、すぽんと抜かせていただきますか。危険がないよう空中戦の知識を応用し、触手で受け止めます。
もし難しいなら捨て身で庇いましょう。

こういった、さも火を恐れぬ様子がメアリ様の心中を解せればよいのですが……。
あとは、可能ならば根ごと草を持ち帰りたいですね。栽培、できないものか。
※判定POW・アドリブ改変歓迎


ポク・ョゥョゥ
【黒異の】なのー
広場お掃除するのー?わかったのー

お花抜いてー集めるぉー
一本ずつ引っこ抜くよー
うんしょーえいしょー
およー。オクタたんの触手だー
お花に隠れてわくわくー
すぽんと引っこ抜かれたのーたのしー
ぽよんと受け止められるよーありがとー

フロースたんと悟郎たんは草刈りかなー
ぽくもやってみよーうーんとねー
お手々をハサミにするよー…あれー?
カニの手になったのー
かにぱんだー

メアリたんーもうすぐ綺麗になるよー
休憩がてらにお話ききたいなー
ぽくっきー一緒に食べよー
皆もたべよー

お花持って帰れるならー
ぽくの背中を植木鉢に変形させるのー
土ごと草を持っていけるかなー
ぽくはちょっと形を変えられるぱんだなんだー
あがめよー



フロース・ウェスペルティリオは【黒異の】の仲間の薬師神・悟郎(夜に囁く蝙蝠・f19225)と並んで、快調に花火草を刈っていた。悟郎の忍刀がいい仕事をしている。
「ねえ、悟郎さん」
 フロースが刈り取った花火草を集めながら、
「せっかく刈ったんだし、束にしてくくっておこうか。ふふ、花火の花束というのも、なんだかとても華やかな感じになりそうじゃないか?」
「それは良いアイディアだ」
 悟郎もすぐに賛同し、
「美しい火花を散らし咲かせてくれるなら、皆への土産に喜ばれそうじゃないか?」
「そうだね、お土産にいくつか持ち帰って花火を楽しもうかな?」
 土産にしようと思えば、更に作業の手もはかどるというものだ。
 となれば、どうやって持ち帰ろうか。と悟郎は思案し始める。確か花火等の火薬を運ぶ際は、耐火・防水の効果のあるシートなどで包むのではなかったか……と、ユーベルコード・幻術【壱】で作ってみる。
「これが俺の作品だ……うろ覚えだけどな」
「いやいや、ないよりはよっぽど安全だろうよ」
 フロースは悟郎が作りだした頑丈そうなシートに感心して触れた。
「ん。花火は下手に扱うと火傷したりと危ないけど、ちゃんとすれば綺麗な光を楽しめる素敵な物だよ。メアリさんも必要以上に恐れずに、きちんと見極められると良いねぇ」
「ああ。火は取扱いさえ気を付ければ心強いものなんだが……メアリの心の憂いが完全に取り除かれる日がいつか来ると良いな」
 と、ふたりは、まだ広場の入り口で逡巡しているメアリをそっと振り返った。

 一方、
「火をつければ引火の危機……そうなると、私の力の大半は使えない」
 始めはそう言って気を落としていたオクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)だが、
「仕方がありません、地道に草を抜いてまいりましょう。幸い、使える『腕』は多いので。」
 いざ作業を始めると、段々調子が出てきた。怪力と八本の触手を用い、根本までしっかり除草していく。隅々まで逃すことはない。几帳面な性格らしい。
 オクタが夢中で草抜きをしているオクタの近くではポク・ョゥョゥが、
「うんしょー、えんしょー」
 こちらも地道に一本ずつ花火草を抜いていた……が、ちょっと飽きてくると、
「およー、オクタくんの触手だー」
 いたずら心がわいてきて。
「お花に隠れてわくわくー」
 タールの身体を生かしてにょるんと花火草の陰に隠れてみる。
 次第にオクトの触手が近づいてきて……。
「わくわくー」
「おや」
 オクトはポクが潜んでいるのに気づいたようだが、そのまま花火草と同じようにすぽんとひっこぬいた。
「ひゃあ」
 勢い余ってポクは宙にすっとんだが、オクタが空中戦の技術を生かして、触手を延ばし華麗にぽよんと受け止める。
 ポクは嬉しくて宙で手足をばたばたさせた。
「たのしー。ぽよん、ありがとー!」
 オクタはポクをお手玉のようにぽんぽん浮かせてやりながら、ちらりとメアリの様子を窺う。
「こういった、さも火を恐れぬ様子がメアリ様の心中を解せればよいのですが……」
 
「オクタとポクは相変わらず器用だな」
 2人のやりとりを、フロースと悟郎は微笑ましげに、且つ感心して眺めていた。
「おや、ポクさんがカニさんのように……がんばってるねぇ」
 両手をハサミにしたポクが、カニぱんだー! とはしゃいでいる。
「俺には出来ないし、思いつかないやり方だ」
「オクタさんの触手はタコさんみたいだし……」
 ちょっとパエリア等の海鮮系が食べたくなってきてしまったフロースである。

 作業が一段落した頃には、ポクの背中は植木鉢のように変形し、そこに土ごと花火草が移植されていた。
「ぽくはちょっとだけ形を変えられるぱんだなのー、あがめよー」
 花火草を背負ってご満悦だ。
 持ち帰って栽培してみたいと申し出たのはオクトである。このワールド以外の世界が、土や気候、魔力の点で合うかどうかわからないが、試してみる価値はあるかもしれない。

【黒異】の4人は休憩を取ることにし、メアリもお茶に誘った。
「メアリたんー、もうすぐきれいになるよー、ぽくっきー一緒にたべよー」
 メアリも含め、お茶を飲み、ぽくっきーをぽくぽくと頂きながら、少し話をする。
 蘇った記憶について、メアリが話してくれた。
「私の故郷の領主様は、大きな魔力をもっていらっしゃるのですが、大変厳しい方なのです。盗みのような軽犯罪や、少々の年貢の遅れ程度の罪でも、村ごと破壊してしまうような威力の火器を使って民を罰されます」
 その火器が放たれる様が、花火によく似ているのだという。
「実際、領主様の放たれる火はとても美しいのです。危険だとわかっていても、見とれてしまうほどに……ですが、とても恐ろしい」
 メアリをはじめ、その国の民衆は領主を恐れ、領主の魔力を恐れ、それによって放たれる美しい火を恐れ……花火をも恐れてしまうようになったのだろう。
「今になって思うのですが……」
 メアリは暗い目で言った。
「領主様は自らの撃たれる火があまりに美しいので、それを見たいがために、民をやたらと罰されるのではないかと……」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桐島院・師走
僕は「切る」のが得意だから、早くメアリさんが帰れるように、脚の鋏でまとめて刈り取っていこう。

「花火草」というものは初めて見た。面白い性質の花だね。火気にさえ近づけなければ大丈夫そうだから、ついでに少し持って帰りたいな。
その時に、故郷に帰ってからメアリさんはどうするつもりなのかも聞いておきたい。

この花はオオアレチノギクに似ているね。オオアレチノギクの花言葉は「真実」だとどこかで聞いたことがあるよ。「真実」と向き合ったあなたの今後に幸多からんことを。


ティア・ツヴィス
●SPD
危ない敵も倒して、いよいよゴールの扉まで到着したね。
ここまで長かった様な、あっという間だった様な……不思議な感じがするなぁ。
最後のお仕事も、張り切って頑張るよ!

花火草は拷問具の鋏で、さっくり刈り取っていこう
ふふ。戦う時に使う事が多いんだけど、偶にはこんな時にも活用出来ちゃったりして
取ったものは、少しお土産にして持っていっちゃおう。ぱちぱち弾けるものと、線香花火…?に近いものがあれば良いんだけど

そういえば、メアリの住んでいる故郷の話…詳しく聞けていなかったなぁ
どうして花火が怖いのかについてもだけど、最初の敵が化けていたお城の影に対しても怖がってたでしょう?
良ければ、お話を聞かせてほしいな



 ショッキン、ショッキン……。
 桐島院・師走は踊るように軽やかに花火草を刈り取っていた。彼の脚のハサミは、広い場所の草刈りに大変適しているようだ。
「こんなおもしろい性質の草、初めて見たよ」
 ショッキン、ショッキン。
「火器にさえ近づかなければ大丈夫そうだから、少し持って帰りたいな」

「ゴールの扉はすぐそこだね……」
 ティア・ツヴィスは草刈りの途中で腰を伸ばしながら『自分の扉』を、しみじみと眺めた。
「ここまで長かった様な、あっという間だった様な……不思議な感じがするなぁ。最後のお仕事も、張り切って頑張るよ!」
 気合いを入れ直して草刈り作業に戻った。使う道具は拷問具の鋏である。
「武器だけど。ふふ。偶にはこんな時にも活用出来ちゃったりして」
 刈っていくうちに、花火草には少しずつ違いがあることもわかってきた。
「ぱちぱち弾けるものと、線香花火みたいなのがあったら、お土産に少し持って帰りたいな」
 草刈りしながら選り分けていく。

 扉への道が概ね仕上がったところで、師走とティア、ふたりもメアリを囲んだお茶の席に加わった。
 メアリはつらそうに、けれど躊躇うことなく全てを語ってくれた。
「私は、その恐ろしい領主の養女なのです」
 元々メアリは農村の地主の娘であったが、彼女の持つ癒しの力を見込まれて領主の養女にと乞われたそうだ。
「そんな恐ろしい領主が治める故郷に帰ってどうするつもりなの?」
 師走の問いにメアリは目を伏せて。
「私が養女になると決まった時……断りようもなかったのですが、実の父母や村の人たちに言われたことがありました」
 領主は妻子もなく孤独に暮らしてきたが、メアリという養女を迎えれば、孤独が癒されて蛮行が治まるかもしれない……。
「私もそうできればよいと思い、養女となりました。けれど、いざ同じお城に住むようになっても、領主様が恐ろしくて恐ろしくて……」
「そっかあ、記憶に出てきたあの怖いお城に、あなたも住んでいたんだね」
 いたましげにティアが言うと、メアリは頷いた。
 恐ろしさのあまり、領主には近づくこともできなかったという。
 もちろん城を自分の家と、領主を父と思えるはずもない。
「怯え暮らす村の人々のことを考えれば、勇気を出さねばと日々思っていたのですが、領主様のお心に近づく方法すら思い浮かばず……」
 どうやらそんな風に悶々としていたある日、アリスとして故郷の世界から召喚されてしまったようだ。
「でも」
 メアリは顔を上げ、
「猟兵の皆様とこの奇妙な世界の森を探検し、強敵を倒していただいたことで、私も勇気が出ました」
『自分の扉』をじっと見つめた。
「私が癒しの力を持っている限り、少々の失礼くらいでは領主様は罰したりしないでしょう。ですから、私のできるところから、お心に近づけるよう試してみたいのです」
 メアリは立ち上がり、両手を胸の前で組んで、祈った。
「私の記憶を蘇らせ、勇気を下さった猟兵の皆様に、癒しの光を贈ります――」
 メアリの全身から清らかな白い光が発され、猟兵たちに降り注いだ。
 神経をすり減らせる敵との戦いや、草刈りの疲れがスウッと和らいでいく。
 なるほど、メアリの癒しの力はなかなかのものらしい。領主がほしがるわけである。

「メアリさん」
 師走が花火草の花束をメアリに差し出した。
「この花はオオアレチノギクに似ているね。オオアレチノギクの花言葉は『真実』だとどこかで聞いたことがあるよ。『真実』と向き合ったあなたの今後に幸多からんことを」
「ありがとうございます」
 メアリは躊躇うことなく、花火草の花束を受け取った。

  猟兵たちが広場に切り開いた道を、メアリが歩いていく。
 メアリが扉の前に到達すると、ひとりでに扉が開いた。
 猟兵たちには扉の向こうには虹色の幕しか見えなかったが、メアリは一瞬息を飲んで立ちすくんだ。
 だが、すぐにまた脚を踏み出した。
 扉を越える寸前、メアリが振り向き、見送る猟兵たちに向けて、誇らしげな表情で花火草の花束を掲げた。
 メアリが扉を潜った瞬間――扉が消え、メアリも消えた。
 だが、猟兵たちには確信できた。いつかもし、別の世界で彼女と会えた時は、かよわいアリスはどこにもいないだろうということを――優しく、そして強かな女性に育ったメアリと共に戦えるだろうことを。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月19日


挿絵イラスト