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悲哀と憎悪の輪廻の果てに

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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「サムライエンパイアにあるとある神社があるオブリビオンに支配されてしまいました」
 グリモアベースの片隅でプルミエール・ラヴィンス(はじまりは・f04513)がそっと告げた。
「嘗てそこにはお稲荷様が祀られておりました。周囲の村の人々の信仰は篤かったと聞いています。それを守る様に妖狐が存在していた様です」
 だが、あるオブリビオンによって祀られていた稲荷像は破壊され、またその護衛であった妖狐も破れたという。
「今、この神社はオブリビオンの住処となってしまっています。そして、周囲の稲荷への信心深い人達の村を襲い、略奪し奪っている様です」
 そのオブリビオンによって殺された妖狐も又、オブリビオンへとなってしまったという。
 そして、この神社を支配したオブリビオンの駒として村の人々からの略奪に手を貸しているという。
「皆様、どうかこの神社をオブリビアンの支配から解放し、この神社を祀っていた人々の平和を取り戻してください。どうかよろしくお願いいたします」
 プルミエールの一礼に背を押され、猟兵達はその場を後にした。


 猟兵達が神社に辿り着いたその時、不意にふつふつと周囲に悲哀と憎しみを感じさせる鬼火が無数に現れ始めた。
 何事か、と猟兵達が警戒態勢を取った時、彼らの目の前に現れたのは、無数の首の無い狐の群れ。
「コォォォォ、コォォォォ」
 大量の狐達が叩き付けてくるのは、慚愧と憎悪の念。
 ――守れなかった、守れなかった。
 ――奪われた、奪われた。
 その念達に巻き込まれればこの近くにいる村人達は更なる悲哀と憎悪の念に取り込まれ、被害は増すばかりだろう。
 ならば、それを止めるのは猟兵達の役目だ。
 さあ、武器を手に取り戦うが良い。
 無数の狐の群れ達を倒し、この妖狐達にこれ程までに酷い仕打ちをしたオブリビオンを倒すために。


長野聖夜
 ――略奪されし者の憎悪は輪廻し、更なる悲劇と憎悪の連鎖を紡いでいく。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけでサムライエンパイアで神を祀っていた神社を支配したオブリビオンを倒し、神社を祀る人々を救ってあげてください。

 ――それでは、良き戦いを。
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第1章 集団戦 『憎しみに濡れた妖狐』

POW   :    神通力
見えない【波動】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    鬼火
【尻尾から放たれる怨嗟の炎】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    心眼
【常に相手の思考を読んでいるかのように】対象の攻撃を予想し、回避する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

宇冠・龍
由(f01211)と共に戦います

「……奪われ守られなかった、その想い、痛いほどに分かります。しかし、だからといって関係のない他者を襲う理由になどならないのですよ」
首のない妖狐を見て、夫が目前で他の宿敵に喰われた過去と重ね合わせる

見えない波動と思考を読まれるのが厄介ですね
「談天雕竜」で私と同じ強さを持つ百体の悪霊とその武器を召喚。武器は剣と盾
私は反撃防止と思考を読まれないよう距離を置きつつ、亡霊たちに指示

常に4対1で対峙し、攻撃を回避されづらく、かつ数の利で圧倒しましょう


念のために数体、神通力と鬼火対策で亡霊を私の身近に配置
攻撃を迎撃してもらうようにして貰います


宇冠・由
お母様(f00173)と共に戦いますわ

お母様は亡霊の数で圧倒する様子
ですがお母様が傷ついては亡霊たちが消えてしまいます
お母様への攻撃は、私がかばってその炎のオーラで防御いたします

私はブレイズキャリバー、炎の身体を持つので相手の炎にも耐性はありますし、波動で攻撃されてもすぐに元通りですもの


防御の合間に「熾天使の群れ」で反撃とまいりましょう
よけても自動追尾する不死鳥の群れが妖狐を襲いますの

「こちらの心が見えているのなら……この無念さと、決意が揺るがないこともご存知でしょう?」
かつて大事な家族を守れなかったこと、そして二度と失うまいと誓ったこと、そのためにつけた力をとくとご覧あれ


ウド・トラウゴッツ
哀れですね、見るに堪えません。

敵に【挑発】を仕掛け、攻撃がこちらへ向くよう仕向けます。
【無敵要塞】を使用し、仲間への攻撃を可能な限り間に入って庇います。
更に、そのまま【カウンター攻撃】といきましょうか。
私は奪う者。貴方達にとっては、憎むべき存在なのでしょうね。

※アドリブ歓迎


睦川・優桜
貴方が守りたかったものを、貴方自身の手にかけさせはしないために!ここで止めて見せます!」

【WIZ】で勝負!

たとえ攻撃を予想されようとも、相手の対応能力を上回るまでです!
半径17メートル以内の『憎しみに濡れた妖狐』全てを桜の花びらで【なぎ払い】ます!

「これが羅刹流飽和攻撃です!」


真宮・響
アタシも奏(f03210)と瞬(f03210)という護るべき大切な子供達がいる。

守護してきた大切なものが破壊され、蹂躙され、自分も討たれた無念さ・・・良く分るよ。いつまでも彷徨っていてはいけないよ。その気持ち、すべて受け止めるよ。せめて、眠りな。

その攻撃の狙いから逸れる為に【目立たない】と【忍び足】で気配を消して忍び寄り、敵の懐に飛び込んで、【先制攻撃】で竜牙を叩き込むよ。敵が攻撃を回避した隙を狙って【2回攻撃】で攻撃するよ。


真宮・奏
神社を護っていた神様なのですね。私も人々を護る盾となるべく邁進してますので、その妖狐さんの無念の気持ちは良く分りますよ。

でも守護神様が人を襲ってはいけないです。もう、苦しまなくていいですよ。私達が眠らせてあげます。

攻撃手の響母さん(f00434)と後方支援役の瞬兄さん(f06558)が攻撃を邪魔されないように、トリテニティ・エンハンスで防御力を高めてから、【オーラ防御】と【盾受け】で【かばう】波動と炎は何とか防いでみせます!!攻撃が必要なら【属性攻撃】で攻撃します。


神城・瞬
僕の故郷も襲撃され、滅ぼされました。生き残りは僕1人。そこで出会ったのが、響母さん(f00434)と奏(f03210)でした。

彼の稲荷神の無念さと怒り。良く分るこそ、すべて受け止め、解放しましょう。

前衛を母と奏に任せ、僕は後方で火力支援。【高速詠唱】で氷晶の矢を【全力魔法】で撃ちます。母の攻撃に追撃するように【2回攻撃】出来たら僥倖ですね。


霧城・ちさ
・狐さんはかわいそうですわね
でも村の方々を襲うのは止めないといけませんわっ
守るべき村の方々を襲っている事実もわからなくなってるかもしれませんがお話してみるのも試してみますの

・私は狐の群れに囲まれないように他の猟兵の方々と協力して戦っていきますわね。攻撃に専念する方が襲われそうでしたらフォローしていきますの。敵は1体1体無力化していくほうが数での不利がなくなりそうですわね
『生まれながらの光』で回復もしながら戦い抜きますわっ


白幡・修理亮
民を守るべきお狐様が、悪の手に堕ちて走狗にされるとは…
無念極まりないことでしたろうな。

それがしの故郷にも八幡様が鎮座しておってな、
稲荷様では無いがよくよく参拝したものじゃ。
我らの暮らしを見守って下さる神様を、
こうも貶めるオブリビオンのやり方は許せぬ!

この場に集う稲荷様の無念を、我が身に集めて…
いざ、遷身同化の法!!
ううう…やっぱりちょっと不気味じゃが…

体の動きを速くして、その鬼火を全て叩き落してくれましょうぞ!




「コォォォォォ、コォォォォ」
「お母様・・・・・・」
 目の前に現れた9人の猟兵達から発せられる怨嗟の念を真正面から受け止めながら、宇冠・由がそっと気遣う様に宇冠・龍を見る。
 龍の黒い竜玉が鈍く輝くと同時に周囲に108の亡霊と亡霊達が使う武器を召喚しながら、そっと息を一つついた。
「……奪われ守られなかった、その想い、痛いほどに分かります。しかし、だからといって関係のない他者を襲う理由になどならないのですよ」
 龍の呟きに憂いげな眼差しを向けながら由は小さく頭を振った。
(今母様はきっと思い浮かべているのでしょうね・・・・・・)
 龍の目の前で宿敵に殺された父の事を。
 龍の召喚した108の亡霊達が妖狐の群れに向けて行進していくのを見ながら、ウド・トラウゴッツはまるで城塞の様にその場に佇み、亡者達によって手当たり次第に殺戮されていく妖狐達を見ながら、軽く頭を振った。
「あなた様達の相手は私です。守りたくとも守り切れず、人々を襲おうとする無様なあなた方を私達は決して見逃しません」
「コォォォォ・・・・・・!」
(哀れですね、見るに堪えません)
 罵詈雑言を叩き付け、炎の盾で龍を守る由達から狐達の群れの一部を引きつけながら、ウドはそう思う。
 自分の心は読めているのであろう、狐達の群れの一部がウドへ向けて突進し、尻尾から放たれる怨嗟の炎を撃ち出してくるのに涼しい顔のままに燭台に灯された黒炎を解き放ち、狐達を迎撃する。
「ウド様、私達のことはどうかお気になさらずに。他の皆様の援護をお願いいたしますわ」
 由が告げながら龍の周囲に自らの地獄の炎の結界を展開する。
 展開された炎達が、目に見えぬ筈の波動とぶつかり散っていく様を目の端で捉えながら、龍が黒い竜玉を煌めかせた。
 炎の結界によって守られた亡者の群れ達がお返しとばかりに首無き狐達へと手荷物武器で手当たり次第に襲いかかり、蹂躙する。
「お母様には指一本触れさせませんわ」
「分かりました。それでは、そちらはお任せいたします」
 まだ、戦い慣れていない者もいる様ですし。
 胸の内に浮かんだ言葉を心に秘め、ウドは白幡・修理亮の方を見る。
「それにしても、民を守るべきお狐様が、悪の手に堕ちて走狗にされるとは…・・・
無念極まりないことでしたろうな」
「そうですわね。狐さんはかわいそうですわね」
 修理亮の呟きに応じたのは、霧城・ちさ。
「でも村の方々を襲おうとするのは止めないといけませんわ」
「うむ、そ、その通りでしょうな」
 その哀惜の念も、そして狐達を何とかしたいという思いも事実でもあろう。
 ただ狐達の群れを前にどういう訳か少し修理亮の腰が引けている様にも見える。
「私が守りますから。ご安心ください」
「了解じゃ。頼りにさせて貰うでござるよ」
 告げながら再び狐の攻撃を自分へと集中させるウドに修理亮がこくこくと頷きかけている。
(ただ、守るべき村の方々の事が分からなくなっているだけかもしれませんから……襲うべきは村の人達では無いことを伝えることが出来ればよろしいのですが)
 ちさが思いながら、修理亮へと視線を向けると修理亮が印を胸の前で結んでいた。
「いざ、遷身同化の法!!」
(ううう……やっぱりちょっと不気味じゃが……)
 ぶるり、と背を一つ震わせ内心の不安を押し殺しながら、修理亮が悪鬼と狂気、そして天魔外道を宿し人外の速度を得て戦場に突進、その場を搔き乱す。
 襲い掛かる首の無い妖狐達の尻尾から放たれる鬼火を叩き落しながら次々にサムライブレイドで斬り捨てた。
「どうして、村の方々を襲うのですか? わたくし達が皆様をこの様な姿にした者を倒せば、あなた方は村の方々を襲わなくなるのですか?」
 流血しながらも3つの力をその身に宿し心の何処かで怯えながらも暴れ回る修理亮が仕留め切れなかった狐達をピンクのピコピコハンマーで叩きのめしながら、ちさが問いかけているが。
「コォォォォォ・・・・・・コォォォォォ・・・・・・!」
 叩き付けられるのは怨嗟の声。
 けれども、問われたことに対して何か感じることでもあったのだろうか。
 僅かに何かを期待する様な、そんな気配があった。
(どうやら、ちさ様の言葉に反応している様ですね。恐らく、私達に伝えたいことがあるのでしょう)
 それが具体的には何なのかは分からないが。
 どちらにせよ、今はこの妖狐達を倒さねば近辺の村人達に被害が出るのは避けられない事態なのだと龍は思う。
 龍の亡者の群れと真正面からぶつかり合い、召喚主である龍を由が炎の盾で守り、更に別の群れをウドが挑発して引きつけ、修理亮とちさが確実にその別の群れを倒していく。
 その連携は見事で確実に狐達の群れは数を減らしていっていた。
「コォォォォ! コォォォォ!」
 そんな中、妖狐の内の一匹が悲哀を感じさせる叫びを上げる。
 それは他の首の無い妖狐達に浸透していき、程なくして群れの動きを変えていく。
(私達の心を読み取りましたか・・・・・・。ならば、この哀れみの心も・・・・・・)
 龍が思いながら、4体の亡者達を1体へと集中させながら、自分の中に渦巻くその思いと戦い方を見抜かれた事に気がついて微かに眉を顰めた。
「ですが・・・・・・こちらの心が見えているのなら……この無念さと、決意が揺るがないこともご存知でしょう?」
 此方の心を読み、死角から尻尾の炎を飛ばしてきた妖狐に向けて由が返しながら、群れとして後衛にいた妖狐達と交代した妖狐達に向けて、自動追尾する自らの炎できた不死鳥の大群を全身に力を漲らせて解き放つ。
 無数の炎の鳥達が宿すは、意思。
 かつて大事な家族を守れなかったこと、そして二度と失うまいと誓った時の由の想い。
 全弾を命中させることは叶わなかったが、何体かの妖狐達が不死鳥に取り込まれその動きを止めた、その時。 
「貴方が守りたかったものを、貴方自身の手にかけさせはしないために!ここで止めて見せます!」
 睦川・優桜が叫びと共に、自らの薙刀と、十手を半径17メートルの円を描く桜の花弁へと変化させる。
 ひらひらと舞い落ちてくる無数の桜の花弁は、まるで季節外れの桜吹雪の様で。
『舞い散れ!』
 桜の花弁たちが優桜の命に従い天空から驟雨の如く降り注いでいる。
「お願いです、倒れて下さい・・・・・・!」
 優桜の願いが通じたのかどうかは不分明だが、桜の花弁に覆われ、浄化されていく妖狐達は確かに存在していた。
 更に・・・・・・。
「優桜様、此方へお願いします」
 ウドの指示に従い、優桜がウドの背後に回る。
 狐の炎を受けきったウドが、突進してくる妖狐の尻尾をトンファーで叩き潰した。
(私は奪う者。貴方達にとっては、憎むべき存在なのでしょうね)
 最も、その奪うこと自体がウドにとってはある意味で愉悦なのだけれども。
「それがしの故郷にも八幡様が鎮座しておってな、稲荷様では無いがよくよく参拝したものじゃが・・・・・・これ程までの数とは・・・・・・!」
 限界まで速度を上げ、喀血しながら誰にともなく告げる修理亮の傷を、ちさが【生まれながらの光】で高速治療させながらふと、思う。
「もしかしたら・・・・・・この妖狐達を倒したオブリビオンを倒すことが出来たら、この妖狐達の無念は晴れ、この神社にまた稲荷様が戻ってくるのかも知れませんわね」
「ふむ・・・・・・それならば、尚の事ここで倒れるわけには行かぬか。少々怖いでござるが・・・・・・」
 未だ大群を残す妖狐達の姿を見て内心で震えながらも修理亮が告げた時。
 新たなる猟兵達が、姿を現した。


(アタシも奏と瞬という護るべき大切な子供達がいる)
 戦場が猟兵達の連携により優位に立っているのを見て取りながら、真宮・響は共に今、戦場に立った真宮・奏、神城・瞬と目配せを躱し合う。
 そこには、多分な慈愛の思いが込められていた。
(守護してきた大切なものが破壊され、蹂躙され、自分も討たれた無念さ・・・・・・良く分るよ)
 でも、いや、だからこそ。
(いつまでも彷徨っていてはいけないよ。その気持ち、すべて受け止めるよ。せめて、眠りな)
「行くよ、奏、瞬」
「ええ、母さん」
 奏が響に頷き返しながら、炎、水、風の三大魔力による術式を発動。炎の壁が奏の前に現れ、水のカーテンがその身を覆い、見えない衝撃波を周囲に展開された風の刃が自動で叩き落としている。
「援護しますよ、母さん、奏」
 瞬が呟きながら高速詠唱で全部で80本の氷の矢を召喚し、上空へと手を振り上げる。
 そこには自身の最大魔力を籠めていた。
「この攻撃、見切れますか?」
 呟きと共に妖狐の群れに降り注ぐ80本の氷の矢。
 突然現れた援軍に妖狐達が動揺からか吠えている。
「コォォォォ、コォォォォ・・・・・・!」
 その隙を見逃さぬ、響では無い。
 気配を殺して音も立てずに疾走して懐に潜り込み、氷の矢が突き刺さり動きを止めていた妖狐の一体をブレイズフレイムで斬り上げて斬り捨て、更にブレイズスルー穂先が至近にいたもう一体の妖狐を屠っていた。
 妖狐達がその動きを読み取りその機先を制する様に響の前に立ちはだかり目に見えぬ衝撃波で切り裂こうとするが、その時には奏がその前に立ち、水のカーテンでその衝撃波を防ぎきっている。
「母さんの邪魔はさせませんよ」
 呟き、その攻撃の全てを受け切る奏に向かって妖狐達が襲いかかるが、その時には瞬が氷晶の矢を拡散し、確実に敵を射貫いている。
「コォォォォォ・・・・・・」
 無念の呻きをあげながら消えてゆく妖狐達を見ながら、そっと奏が祈りを一つ。
(神社を護っていた神様なのですね。私も人々を護る盾となるべく邁進してますので、その妖狐さんの無念の気持ちは良く分りますよ)
「でも守護神様が人を襲ってはいけないです。もう、苦しまなくていいですよ。私達が眠らせてあげます」
 奏の呟きに頷きかけながら、響がブレイズフレイムを振るって敵を焼き尽くし、その隙を見逃さず瞬の氷晶の矢が確実に妖狐達を射貫いている。
 3人の新たな猟兵の出現は、最初から戦い続けていた龍達を奮い立たせた。
『悪鬼百鬼と数えれば、七転八倒列を成す』
 龍が再び詠唱し、108の亡者の群れの内、護衛を任せていた数体の亡者達も戦闘に介入させ、更に妖狐達の被害を拡大させていけば。
「これが羅刹流飽和攻撃です!」
 優桜が桜の花弁を召喚し、次々に妖狐達を撃破していく。
 そこに修理亮と、由の炎の不死鳥達が一斉に群がり妖狐達を攻撃した所で、妖狐達の炎が一斉に猟兵達を襲ってくるが。
「此処から先は、通させませんよ」
「私達の連携、甘く見ないでくださいませ」
「必ず、守りますわ」
 ウドと奏と由、3人の壁が妖狐達の攻撃を受けきり。
「回復はわたくしにお任せ下さいね」
 そうして傷ついた仲間達を、ちさの【生まれながらの光】が燦然と照らし、その傷を癒やしていく。
 かくてそうすること暫し。
 遂に妖狐達は全滅するのであった。


「コォォォォ・・・・・・コォォォォ・・・・・・」
 最期の妖狐が唸り声を上げる。
 その声は、先程ちさが感じた僅かな違和感。
「・・・・・・もしかして思い出したんですの? あなた方がこの神社を守り村の人々を守っていたことを?」
「コォォォォ・・・・・・」
 ――清めたまえ、救い給え。
 先程までの呪詛とは一転、何処か託すようにも聞こえたその鳴き声。
「これは・・・・・・もしかして、あなた様達をこの様な姿にしたオブリビオンが奥にいて、それを倒せればこの神社は清められると言うことではございませんの?」
 ちさの問いかけに、最期の妖狐はコォォォォ・・・・・・と呻きながら消滅していく。
 どうやら、ちさの声掛けは、この神社を解放できる可能性を教えて貰うために
功を奏したらしかった。
「そういうことでしたら・・・・・・行かないわけには行きませんね」
(彼の稲荷神の無念さと怒り。良く分るこそ、すべて受け止め、解放する為にも)
 自らの出自に思いを馳せながら瞬が誰にともなく呟くと響と奏が同意する様に頷きかける。
 そして、猟兵達は神社の本殿へと入っていく。
 この先に待つであろう『敵』との決着を付けるために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『美形な山賊頭領』

POW   :    行けっ!
【従わせた部下の山賊達】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    死ねっ!
【両手の鉄爪】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    皆殺しだっ!
【我を忘れる程の怒りに満ちた状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


――本殿。
「ちっ・・・・・・役立たずどもめ」
「へへっ、全くですなぁ、兄貴」
 徳利からガブガブと酒を飲み干しながら、金髪の男が舌打ちを一つするのに、周囲にいた取り巻きであろう山賊達が同意とばかりに頷きあっている。
 彼らは察知していた。
 この本殿へと迫ってくる足音を。
「まあ、いいさ。所詮、雑魚に過ぎなかったあの妖狐共をどうにかこうにか皆殺しに出来た程度の奴らだ。俺達の力があれば何とでもなるだろう」
「へへっ・・・・・・そうっすね」
 仮に此処で体力を消耗したとしても、やって来るであろう目障りな侵入者達を叩きのめせば、また幾らでも近隣の村を襲い放題。
 そうやってまた力を高めれば良い。
 ただ、それだけのことだと彼は思う。
「さて・・・・・・折角の客人だ。精々楽しませて貰うとしようか」
 グビリ、と酒を飲み干した山賊頭の言葉に同意する様に山賊達が雄叫びを上げ、万全の態勢で猟兵達との『宴』の支度を調える。
 ――さあ、猟兵達よ。
 自らの欲望の為に、神社を荒らし妖狐達を殺めたこの山賊頭と山賊達との戦いの時は来た。
 彼らを倒せば、この神社は解放される。
 そして・・・・・・あの妖狐達の無念も晴らすことが出来る。
 いざ・・・・・・戦いという名の『宴』の始まりだ。
霧城・ちさ
・今回の件を企んだ山賊さん達にはきつくお仕置きをしないといけませんわね
部下と武器に頼っても私たちを止める事はできませんわっ
山賊さん達はもう悪さをできないように捕まえますわね
私も数で対抗して戦いますわね。うさぎさん達を猟兵の皆様と山賊の戦う場所に呼び出して戦うみなさまの死角になる場所をフォローしますの
戦いとはいえ皆様が怪我しないように動くのが一番ですわね


宇冠・龍
由(f01211)と共に戦います

悲哀と憎悪の連鎖を断ち切らなくてはなりませんね
妖狐と手合わせしたから分かります。その無念、この神社は妖狐達のもの
であれば――私達でなく、自分達の手で取り戻したい。その想いを叶えるため、少しだけ助力をしましょうか

「談天雕竜」で、私と同じ強さを持つ百に及ぶ「この地に散った妖狐の霊」とその装備(鬼火)を召喚
その積もった無念と呪詛は、召喚した妖狐達に更なる力を与えるでしょう

「さぁ、お狐さんたち。一緒に悪者退治と参りましょう」
人を呪わば穴二つ。巡り巡って山賊に還った憎悪の輪廻
妖狐達はきっと山賊の逃走や敗走は許さないでしょうね


宇冠・由
お母様(f00173)と共に戦いますわ

お母様は霊を召喚している間、他の攻撃ができず傷を負うと霊も還ってしまいます
ですので私が「七草御形」でお母様を絶対守護する炎のマントと仮面に変形し、お母様がそれを纏うことでその弱点を克服しますわ

私はブレイズキャリバー、たとえ炎が失われてもすぐさま修復可能ですし、その炎を伸ばして周囲の敵も攻撃可能ですの

可能であれば、妖狐達の炎に私の炎を掛け合わせ、更なる巨大な炎としましょう
「さあ皆々様、山賊退治の宴を始めましょう」
妖狐の霊と揃って反撃開始と致しますわ

戦いが終わったなら、お賽銭をして、稲荷像の修復に力をお貸ししましょう


白幡・修理亮
何たる外道…許せぬ!
じゃが、それがしの腕と度胸ではかないそうも無い…

やむを得ぬ、この身体を「洩矢」に貸す!
遷身同化の法、着装!

もはや自分の意思は奥底に沈んでしまうが、
加減の要らぬ外道ども相手にはむしろ的確よ!
真正面から突っ込み、奴等かそれがしか…
どちらかが倒れるまで!

とにかく敵の数を減らさねば。
着装は、配下の山賊の前で行うぞ。


真宮・響
典型的な欲望に塗れた俗物だね・・・まあ、思い切って容赦なくぶちのめせるものだ。その所業の報い、受けて貰うよ!!(真の姿解放。黒髪金眼になり赤いオーラを纏う)

山賊をけしかける攻撃の迎撃は瞬(f06558)に任せて、【目立たない】【忍び足】で頭領に気配を消して近づき、隙を突いて【先制攻撃】で竜牙を叩き込むよ。いざとならば頭領の目の前を飛び回って囮になるよ。護りが手薄になるので、フォローは奏(f03210)に任せようか。


真宮・奏
典型的な身勝手すぎる悪人ですね・・・つらい思いをした妖狐の皆さんの無念、はらしてみせますよ!!(真の姿解放。黒髪金眼になり蒼いオーラを纏う)

「さあ、私を討てるものなら討ってみるです!!卑怯者!!」大口上を述べて、トリニティエンハンスで防御を固めて敵を挑発し、私に攻撃を引き付けます。【オーラ防御】【盾受け】で【かばう】敵の刃はすべて防いでみせますよ!!


神城・瞬
・・・・僕の生まれ故郷もこうやって滅ぼされたのかな。神域を土足で踏み入り、穢したばかりか、神聖なるものを殺した不届き者。絶対許さない・・・(決意の目で真の姿解放。両目が赤くなり、銀髪に。白銀のオーラを纏う」

頭領がけしかけてくる手下が邪魔ですから、その対応をする。【高速詠唱】で【全力魔法】で氷晶の矢を撃つ。【二回攻撃】で数を減らしていきたいですね。響母さん(f00434)と奏(f03210)の邪魔はさせませんよ!!




 ペロリ、と舌舐めずりをして配下達をけしかける山賊頭の様子を見ながら、茶色の髪を黒く、紫の瞳を金に染めると同時に、炎を思わせる深紅のオーラを纏った真宮・響が、息を一つ。
「典型的な欲望に塗れた俗物だね・・・・・・まあ、思い切って容赦なくぶちのめせるものだ。その所業の報い、受けて貰うよ!!」
「そうですね、お母様。身勝手な悪人達・・・・・・辛い思いをした妖狐の皆さんの無念、晴らしてみせます!!」
 真宮・奏もまたそれに頷き、母である響と同じ髪と瞳へと変貌していく。
 異なる覇、その身に纏うオーラ。
 それはまるで、蒼穹を思わせる、蒼き波動。
 緋と蒼二つの波動が混ざり合い、強大な覇気となって山賊達の足を僅かに射竦める。
 その様子を見ながら決意の眼差しを宿した、真宮・瞬は双眸を緋色に染め、その髪を踊る様な銀へと変貌させ、更に白銀のオーラをその身に纏う。
(・・・・・・僕の生まれ故郷もこうやって滅ぼされたのかな)
 ふと、響と奏の母子に6歳の頃、救われた時の事が脳裏を過ぎる。
 あの時の自分は何の力も持たない子供だった。
 けれども・・・・・・今は。 
「神域を土足で踏み入り、穢したばかりか、神聖なるものを殺した不届き者。絶対許さない・・・・・・」
 今は、自分にも力があるのだ。
 術を高速詠唱し、両手で方円を描き出す瞬。
『さて、これを見切れますか?』
 問いかけと共に、方円を天へと一個の巨大な球体を天井に向けて撃ち出す瞬。
 それは上空で破裂し、全部で85本の氷晶の矢となり、山賊達に向かって降り注ぐ。
 大量にけしかけられた山賊達にその矢が次々に突き刺さり、中にはその一撃で動きを止める者達もいる。
 だが、それでも尚、全てを迎撃し切れていない。
 いや・・・・・・だからこそ、好機。
(悲哀と憎悪の連鎖を断ち切らなくてはなりませんね)
 瞬の上空からの奇襲を見て取りながら、宇冠・龍はそう思う。
 龍の基に集うは、ポツ、ポツと光る無数の鬼火。
 それはまるで、自分の持つ黒い竜玉にかの者達の怨念が集まってくるかの様で。
「あの妖狐と手合わせしたから分かります。その無念、この神社は妖狐達のもの」
 ――で、あれば。
(私達でなく、自分達の手で取り戻したい、そう思うでしょう)
 ならば、その想いを叶えるため、少しだけ助力をしても問題はあるまい。
「さぁ、お狐さんたち。一緒に悪者退治と参りましょう」
 歌う様に告げた龍の言葉に応じる様に、神社全体が不思議な反響音を立てる。
 その反響音に伴い、100に及ぶ妖狐の霊達が、その尻尾に鬼火を生やして姿を現した。
(その積もった無念と呪詛は、召喚した妖狐達に更なる力を与えるでしょう)
「・・・・・・人を呪わば穴二つ」
 謡う様に告げながら、龍が召喚した妖狐達を一斉に指示を出すと、その指示に従い100に及ぶ妖狐の霊達が一斉に山賊達へと襲いかかった。
「ぎゃ・・・・・・ぎゃぁ?!」
「何だよ・・・・・・何だよこいつら?!」
 かつて自分達が倒し、支配した筈の妖狐達の群れに襲われ悲鳴を上げる山賊達。
「ちっ・・・・・・死霊術士か! 怯むんじゃねぇぞ、テメェラ!」
 舌打ちをしながら酒瓶を盾にして山賊達の壁を突き破り襲ってくる妖狐達の攻撃を凌ぎながら号令をかける山賊頭。
 頭からの号令に動揺していた山賊達がおお! と一斉に声を張り上げ龍へと襲いかかるが、その時。
「お母様をやらせはしませんわ」
 宇冠・由が陽炎の様に龍の正面に現れる。
 そして・・・・・・。
『いまこそ合体のお時間です』
 自身の肉体である地獄の炎を纏った者を絶対守護する仮面と炎のマントへと変化させ、その身を龍へと羽織らせる。
(もう、お父様の時の二の舞は繰り返させませんわ・・・・・・)
 確固たる決意と共に変化した由の炎のマントが山賊達からの攻撃を灼熱の炎を思わせる結界で撃ち落とす様に龍への攻撃を防いでいく。
 とはいえ、龍と瞬の攻撃であっさりと全滅する程、山賊達も柔では無い。
 そこに姿を現したのは、白幡・修理亮・・・・・・の筈だ。
 筈、というのは何のことは無い。そこにいた修理亮・・・・・・の筈の人物はなんだかやばそうな全身甲冑に身を包み、またそこからも何となく『やべー』と言いたくなる様な怪しげな波動を放っていたからだ。
(何たる外道…許せぬ!)
 修理亮は先程の妖狐達と戦い、そしていざ本殿へ向かって群れ場いけしゃあしゃあと下卑た笑い声を上げながら話していた山賊達への怒りを胸に秘めていた。
 だが、自分の腕と度胸で叶う気がしないと修理亮は思ったのだ。
 ――だから。
「やむを得ぬ、この身体を「洩矢」に貸す! 遷身同化の法、着装!」
「そうか、儂の好きにやらせて貰っていいんだな?」
 修理亮の言葉にやたら男前な渋い声音で語りかけてくるそれに思わず全泣きしながら、修理亮がコクリと頷いた。
「アッハイ、好きにやっちゃって下さい…ぐすん」
 そこまででプツリと修理亮の意識は途切れるが同時に凄まじいまでの怪力でぞろぞろと動く山賊達を次々にねじ伏せ始めた。
(今回の件を企んだ山賊さん達にはきつくお仕置きをしないといけませんわね)
 修理亮のかき乱さんばかりの勢いを見ながら、霧城・ちさがそう思い、両手に魔力を籠めている。
「たとえ、部下と武器に頼っても、私達を止める事はできませんわっ」
 ――これ以上、もう悪さを出来ぬ様にする為にも。
 ちさが決意と共に両の手から二匹のうさぎさんを瞬と龍の援護により打ち崩されたその隙を見逃さず、山賊頭に向かって突進していった響と奏の後方に召喚。
『私のうさぎさん、一緒に戦って欲しいですの。みなさまをお守りしますわっ』
 ちさの呼びかけに応じて呼び出されたのは、白うさぎさんと黒うさぎさん。
 白うさぎさんの方は優しさと愛くるしさを感じさせる姿でクリ、と軽く小首を傾げながら頭に向かう響と奏を守るべく前進し、黒うさぎは野性味溢れる格好良さを感じさせる獰猛な笑みを口元に浮かべて、由の死角を狙って龍へと襲いかかる山賊達に飛びかかり、逆にその山賊を打ち倒している。
「さあ皆々様、山賊退治の宴を始めましょう」
 由のマントが風に靡き、それが炎の渦を生み出してちさの黒うさぎさんに打ち倒された山賊を焼き尽くしていた。
「皆様の死角はお任せ下さいですのっ」
 ちさが2頭のうさぎを器用に操りながらそう告げている所に山賊が襲いかかろうとする。
 だが、その山賊の動きは機先を制する様に修理亮の自動反射によって逆に叩き潰されていた。
「お前の速度で儂を追い抜けると思ったのか?」
「・・・・・・あの時の修理亮様ではありませんわねっ」
 やたら渋い声で格好を付けて次にまた動いていた山賊に手当たり次第に突撃を繰り返す修理亮(ではなく洩矢)に思わずちさが溜息を一つ。
 最早そこに修理亮の意志はある様に思えない。
「とはいえ、皆様が怪我しないように動くのが一番ですわねっ」
 山賊達が大体片付きつつあるのを見ながら、ちさがもう一度白ウサギを操る。
 それは・・・・響に向かって放たれていた疾風の如き速さで放たれた両手の鉄爪を、しっかと受け止めていた。


「ちっ・・・・・・こうもあっさりと接近を許すとはな、馬鹿者共が・・・・・・!」
 瞬の上空から放たれた80本の氷晶の矢、龍の呼び出したおよそ100程の妖狐達の炎、そして修理亮(と言う名の洩矢)の攻撃により、手当たり次第に殺戮された配下に舌打ちを一つする頭の前に、先手を切ってぶつかったのは響。
『この一撃は竜の牙の如く!! 喰らいな!!』
 灼熱を思わせる緋色の光を帯びたブレイズフレイムの刃が頭の胸を一閃する。
 一閃され、引き裂かれた胸元から染み込んだ炎が体の内側から頭の体を焼き、内側から臓腑が焼かれる痛みに苦痛の表情を浮かべながら、その瞳をギラリと輝かせる頭。
 殺意を帯びたその瞳で射貫く様に睨付けながら屈み込み、そのまま電光石火の速さで両手の鉄爪を解き放つ。
「母様はやらせません!」
 奏がその前に割って入り蒼穹の波動を全面に展開、その攻撃を受け止める。
「さあ、私を討てるものなら討ってみるです!! 卑怯者!!」
 風の結界を周囲に纏わせ、炎の渦で自らの身を包み、更に蒼穹を思わせる水の波動を前面に展開し、自らの防御力を高めた奏の挑発。
 頭がそれに低く唸る様な声を上げながら、グイッと背を低く屈める。
「その言葉・・・・・・後悔するんじゃねぇぞ、小娘!」
 逆鱗と言っても差し支えない怒りの声を上げた頭が続けざまに85本の矢を一つの塊にして撃ち出した瞬の方に向かって突進。
 先程までとは明らかに異なる圧倒的な膂力を帯びた頭の電光石火の攻撃は、奏がとっさに響の前に立つのが精一杯な程であり、またその一撃で水の障壁に大きな罅が入っていた。
 そのまま全速力で駆け抜けてくる頭の前に白うさぎが立ちはだかりその爪による攻撃を受け止めるが、白うさぎがあまりの威力にボロボロに切り裂かれた。
「速度で儂に勝てると思うなよ、お主!」
 ちさの展開した白うさぎを正面から内破った頭の側面から修理亮(洩矢)が突進し、その超攻撃力を叩き付け、頭を壁の方へと吹き飛ばす。
「今ですわね。妖狐の霊達よ・・・・・・今ひとたび私達に力を・・・・・・」
 歌う様に、魅了する様に。
 何処か艶やかさを感じさせる声音で龍が呼びかけ、100に近い妖狐達がその尻尾の鬼火と共に、一斉に頭へと群がっていく。
 今までの恨み・辛みを晴らさんとばかりに襲いかかってくるかの妖狐達の攻撃に頭が胸から肩にかけてをやかれのたうち回っていた。
「今なら・・・・・・可能ですわね」
 山賊達からの攻撃を炎のマントのままに受け止めていた由がそう一つ頷き、炎のマントの一部を火炎へと変形させて投射する。
 それは、妖狐達の怨嗟の籠められた炎と掛け合わさり、更なる巨大な炎となって頭を飲み込み、のたうち回っていた頭の身についた炎を全身へと拡大していく。
「ガ・・・・・・ガァァァァァァァ!」
 炎に焼かれのたうち回りながらも立ち上がる頭。
 だが、その時には響が既に頭に肉薄し、緋色と蒼白い二つの炎を纏ったブレイズブルーで壁に縫い付ける様に胸を貫き、その壁に縫い止めようとしている。
「あんたは沢山の命を弄んできたんだ。今こそ報いの時だよ」
「ふざ・・・・・・ふざけるなぁ・・・・・・!」
 がっ、と響のブレイズブルーを掴み取り、力任せに自分から引き抜きながらパチン、と指を鳴らす頭。
 すると何処からともなく・・・・・・恐らく、伏兵として隠れていたのだろう・・・・・・山賊達が天井から飛び降りて4方向から三日月刀を振り下ろしている。
 ――だが・・・・・・。
「母様は、必ず守ります!」
「守りは任せて頂きますわよっ」
 奏が空中へと飛び出し自らの身を持って4人の山賊の攻撃を受け止め、更にちさの放った黒うさぎが1体の山賊の攻撃を受け止めている。
 残る2人の山賊の攻撃は・・・・・・。
「響母さんと、奏の邪魔はさせませんよ!」
「儂の前でその様な動きをするなど、なんて迂闊な!」
 瞬の解き放った氷晶の矢に1人は心臓を撃ち抜かれて墜落して地面に叩き付けられて死亡し、最後の1人はその横合いにぬっ、と姿を現した修理亮(と言うか洩矢)に霊的寸断刀『建御名方』で頭部から袈裟にかけて残虐に斬り伏せられていた。
「一気にケリをつけますよ」
 動揺を隠せぬ様子の頭に向けて、瞬が詠唱をしながら作り出した方円から生まれた85本の氷晶の矢を一本の巨大な矢へと変化させて頭の身を射貫く。
「そこですわね・・・・・・うさぎさん、うさぎさんお願いしますわっ」
 ちさがそこで素早く指を動かし再び生み出した白うさぎと黒うさぎに左右から魔法のピコピコハンマーを持って襲いかかり、ボコボコと頭を叩きのめす。
「ガッ、ゴッ、ハッ・・・・・・!」
 ピコピコハンマーによる猛打によって肋骨が何本かやられる音を聞き、頭が血反吐を吐きながら苦しげな呻きを上げた。
「アンタの悪行も此処までだ」
 響が告げながら深紅の炎を纏ったブレイズフレイムで逆袈裟にその身を切り裂けば。
「身勝手な悪人は・・・・・・こうです・・・・・・!」
 奏が蒼穹の波動を纏ったアクア・セイバーで袈裟にその身を切り裂いている。
 既に傷だらけの頭の身をX字型に切り裂きながら、持ち前の怪力で宙に放り投げる奏。
 反射的な速度で放り出された頭を修理亮(洩矢)が反応して上空に飛び上がり、その身を霊的寸断刀『建御名方』で貫き天井に縫い止めた。
「由」
「はい、お母様」
 龍が黒い竜玉に再度、妖狐達の怨念を集めてそれを解き放ち、由がそれに合わせる様にマント形態から一頭の炎の竜となって妖狐達を率いて襲いかかる。
 100頭程の妖狐達と、それを率いた炎の竜が天井に縫い止められていた頭を食らわんと襲いかかった。
「ぐぁぁぁぁぁ・・・・・・! 何故・・・・・・何故・・・・・・!」
 炎に焼き滅ぼされながら、叫び声を上げる山賊頭に龍が冷ややかに一瞥する。
「巡り巡って山賊に還った憎悪の輪廻。その輪廻の輪による『死』があなたに巡ってきた・・・・・・ただ、それだけのことですわ」
「ぐ・・・・・・グォォォォォォ・・・・・・!」
 龍の言葉に無念の声を上げながら。
 頭のその身は焼き尽くされ・・・・・・そして、灰となって消えていった。


「終わりましたわね」
「そうですわね、由」
 灰燼と帰した山賊頭を見ながら、炎の竜の姿から人間形態に戻った由が呟くと、龍が小さくそれに頷く。
「・・・・・・むっ? もう終わったのであろうか?」
 それまでずっと洩矢に体を乗っ取られぱなしだった修理亮が我を取り戻しキョロキョロと周囲を見回す。
 何だか体中がとても痛い。
 洩矢に利用される間に、肉体を酷使された結果だろう。
「・・・・・・撃退すれば良かったと思っていたのですが・・・・・・そうはいきませんでしたわねっ」
「まあ、アイツ等を仮に逃がしたとしても、改心することはなさそうだったけれどね」
 ちさの呟きに響が返すと、ちさがそうですわね・・・・・・と小さく溜息を一つ。
「そうですね・・・・・・妖狐達もきっと山賊の逃走や敗走は許さなかったでしょう」
 龍が礼を述べる様に妖狐達の怨念達を手を振ると、妖狐達が鳴き声を上げた。
「コォーン、コォーン」
 それはまるで、恨みを晴らしてくれてありがとう、と礼を言っている様にも思い、その声を背にしながら由が賽銭箱にそっとお賽銭を入れる。
(どうか、稲荷神様がお戻りになります様に)
 祈りを捧げながら本殿を見回すと、崩れていた稲荷の像を見つけそれの修復を行おうとした丁度その時。
「コォーン、コォーン」
 龍に呼び出されていた妖狐の霊達が鳴き声を上げ、一斉にその稲荷像へと群がっていく。
「なっ・・・・・・なんですのっ・・・・・・?」
「これは・・・・・・もしかして・・・・・・」
 ちさが驚いた様な声を上げ、奏が息を飲む。
「もしかして・・・・・・甦るのですか・・・・・・?」
 瞬もまた、まさか、と言う思いを胸に抱き目を瞬く間にも集まった妖狐の霊達が雑に結集し、像が淡く光り輝き始めた。
 そしてその光が収まった時・・・・・・稲荷像が姿を現す。
 同時に、ザワザワとした声が本殿の外から聞こえてきた。
「この声は・・・・・・?」
「一体、何であろうかな・・・・・・?」
 響と修理亮の疑問は最もであり、猟兵達は本殿の出口へと歩いて行く。

 ――木漏れ日が染み込んでくる、その出口へ。
 そして、その先で見たものは・・・・・・。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『神社の境内で』

POW   :    子供たちと遊ぶ、童心に返る

SPD   :    昼寝をする、ボーっと過ごす

WIZ   :    景色を眺める、写真を撮ったりスケッチする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


・・・・・・山賊頭と山賊達を討伐した猟兵達が木漏れ日の入ってきた本殿の入り口から外に出たとき、そこにいたのは沢山の人々だった。
「あっ・・・・・・もしかしてこの神社を救って下さった猟兵の皆さんですか?」
 その中の一人の問いかけにそうだ、と猟兵達が答えると人々は歓喜の声と共に万歳三唱を行う。
 突然の歓声に驚きを隠せぬ猟兵達が事情を問うと、彼等はどうやらこの辺りの村に住み、そしてこの神社に祀られていた稲荷神を信仰する人々であると知れた。
 どうやら先程、稲荷像が復活した時に人々の脳裏に啓示の様な何かが過ぎり、再びこの神社を建て直し稲荷神を祀り直すべくやってきたらしい。
 彼等と共にこの神社の境内で穏やかに過ごすことが出来れば、稲荷神はその人々の幸福を求めてもう一度その力を取り戻すのだという。

 ――これにて、戦いは完結した。
 猟兵達よ、今は一時の安らぎを人々と過ごすが良い。
 それが・・・・・・この神社と稲荷神の力を取り戻すための最善の方法なのだから。
霧城・ちさ
いい景色に戻りそうですわね。これからは2度とこのような事件が起こらないように今のこの様子を記憶に残るよう眺めますわね
せっかく神社を建て直しますしお手伝いしたり今の神社の状態を写真に残しておきますわね。他の猟兵さんも写真を撮るのであれば手分けしますの
このお写真は村人さんにも渡してあげますわね
おなかがすいたりした方にはご飯やお菓子を用意しますの
お食事でみなさまが笑顔を見せてくれれば嬉しいですわね
お祭りとかもこの場所でやれるようになるといいかもしれませんわっ


真宮・響
これはこれは・・・苦労したかいがあるもんだ。これも妖狐が残した最後の祈りかな。物騒な奴らは消えた。後はつつがなくお稲荷様が鎮座できるように場を整えるだけだ。

とのことで、年甲斐もなく大暴れして疲れたから、ちょっと境内で昼寝させて貰うよ。ああ、いい気持ちだ。久し振りにゆっくり休むのはいいね。これは神様に感謝、だね。


宇冠・龍
由(f01211)と共に参ります

由が遊んでいるのを遠目から眺めています
木陰で涼みながら、手にもつ黒い宝形をひと撫で
(妖狐達は憎しみから解放されたのでしょうか、無事、供養できているといいですね……)
死霊術士として、ひとつの過去を解放できた。それは何より喜ばしいこと

(――私も、自らの過去を、いつか解放できるのでしょうか)

私の傍らには、いつの間にか夫の霊が気付かず立っていました
(夫が目前で亡くなった過去、お腹にいた子を失った過去、全ての因縁たる宿敵――【悪食】と、また相見れたとき、私は奴を――)

――それはまた別のお話ですね、今はただただ、娘の楽しむ姿を夫と共に眺めましょうか


真宮・奏
妖狐さんの最後のお願い、叶えることが出来るようで凄く嬉しいです。罰当たりな乱入者は退治しました。後はつつしんで、新しい稲荷神をお迎えするだけですね。

私は子供達と遊びますよ。体力には自信あるので鬼ごっこ、かくれんぼ、石蹴り、とことん付き合いますよ。私は旅暮らしだったので、同世代の子と遊ぶ事がなかったので新鮮ですね。子供に戻ってやり直している気分です。穏やかな時間を、未来を担う子供達と共に。


宇冠・由
お母様(f00173)と共に参ります

子供達と遊びますわ
「狐さんたちに力を貰いましたの」
最後の一撃、炎の竜になったとき、どうやら力の一端を少しくださったようで、新しい形態を得ることができました

全長10Mの鬼の姿(約三階建ての建物相当)――さすがに暴れはしませんが、試運転を兼ねて、子供たちを肩に乗せたり手で運んだり、色々と試してみます
お母様と、いつの間にかいるお父様の霊に手を振ってみますわ

(この力、今後の戦いで、誰かを守るための戦いで、きっと役に立ちます)
狐さん達に感謝を祈りながら、この世界が、そして他の世界もきっと平和になるよう願います


神城・瞬
彼の妖狐が託した願い。届いてよかったですね。これからの神社の復興は村の皆さんの頑張りですが、僕達に出来る最後のお手伝いをしましょう。

罰当たりな不届き者はもういません。新生する神社で、木洩れ日が差し込む境内の風景を、眩しそうに見つめます。気持ちよさそうに昼寝する響母さん(f00434)、子供達と遊ぶ奏(f03210)をみながら、こういう幸せを見れるなら、何でもできる、と思います。



●今は家族団欒を
(これはこれは・・・・・・苦労したかいがあるもんだ)
 神社に集まってきた村人達の姿を見た真宮・響はふと思う。
「これも妖狐が残した最後の祈りかな」
 しみじみと呟く瞬にそうですね、と真宮・奏が微笑んでいる。
「妖狐さんの最後のお願い、叶えることが出来るようで凄く嬉しいです」
 奏の言葉に、そうですね、と神城・瞬もまた首を縦に振っていた。
「彼の妖狐が託した願い。届いてよかったですね」
 そんな瞬の呟きに村人達が微笑んでくる。
「猟兵の皆さんがあいつらを倒してくれたから、御稲荷様を祀り直せる様になったんです。感謝しても仕切れません」
「そう言われると、頑張った甲斐があったってもんだね」
「ふふ・・・・・・そうですね。罰当たりな乱入者は退治しました。後はつつしんで、新しい稲荷神をお迎えするだけですね」
 響の呟きに奏が頷き、村人達の一人が任せておけ、と言わんばかりに腕捲りを一つ。
「稲荷神様の啓示によりますと、皆さんにはつつがなく稲荷神様を迎えられる様に穏やかに神社の境内で過ごして欲しいって事なんだそうです」
「それが、稲荷神様の奪われた力を取り戻すのに一番良いと言うことらしくて」
 口々に告げる村人達に響がああ、聞いているよ、と首肯を一つ。
「もう物騒な奴らは消えた。後はつつがなくお稲荷様が鎮座できるように場を整えるだけだ」
「神社の復興自体は、これからの村の皆さんの頑張り次第だと思いますが、そういうことでしたら僕達に出来る最後のお手伝いをしましょう」
 瞬が丁寧に一礼をするのにすみません、どうかゆっくりと過ごして下さい、と村人達の一人が告げ、穏やかな風が奏達の周りを駆けていった。

●其々の癒し方
「行きますよ~、せ~の!」
 ――カラン!
 奏の缶を蹴る音が辺り一帯に軽やかに響く。
 鬼になった子供がその缶を拾いに行ったところで皆が一斉にわっ、と散らばった。
 奏も子供達の輪に混ざって隠れ場所をキョロキョロと探し始めた。
「ははっ・・・・・・やっているね、奏は」
 そんな風景を境内でゴロリと横になって万全の昼寝の態勢を整えた響が薄めを開けて見ていたが、程なくして優しい風が眠りの精を連れてやってきたのか、響を風が撫でていった。
(ああ、いい気持ちだ)
 悪戯好きな風が連れてきた睡魔の妖精に、響が勝てるはずも無い。
 ましてや今は、戦いも終わり束の間の平和の一時でもあるのだ。
(久し振りにゆっくり休むのはいいね。これは神様に感謝、だね)
 そんな事を思っている内に眠りの精の抱擁を受け入れスヤスヤと安らかな寝息を立てて響は眠理に落ちていく。
 奏が童心に戻って子供達と戯れ、響が眠りの精に接吻をされて眠りに落ちていく最中、瞬は村人達の手によって新生され始めた神社の様子を、そして木洩れ日が差し込む境内の風景を、眩しそうに見つめていた。
(罰当たりな不届き者はもういません)
 もうこの辺りの村は大丈夫。
 そう瞬が確信できるだけの光が、静謐だが賑やかなこの場所には満ち満ちている。
 それは、神社を再興する村人達の張りのある声だったり。
 或いは、奏と戯れる・・・・・・今度は石蹴りをやっている様だ・・・・・・子供達のざわめきだったりする。
 ふと、瞬は神社の境内で寝入る響と子供達と戯れている奏を見て、そっと手で自らの胸を押さえた。
 暖かな想いに満ち満ちつつある、その胸の中を。
(きっと僕は)
 響母さんや奏がこんな風に幸せな笑顔を浮かべて暖かい一時を過ごすことが出来るのを見ることが出来るのであれば。
(これからも、何でもできる、と思います)
 それが、家族というもの。
 互いに慈しみあい、無条件に愛し合えるそんな存在。
 そしてそれに支えられている自分自身。
 この中の何かが欠けても、きっと今の様な幸せは得られない。
 そう、確かに思うのだった。

●新たな力と鬼ごっこ
「鬼さん、此方♪ 手の鳴る方へ♪」
「うふふ・・・・・・お待ちになって」
 子供達がからかう様に呼びかけて手拍子をすると、それを目隠しをした全長10mの鬼の姿となった宇冠・由が追ってきていた。
(ふふ・・・・・・由、楽しそうですわね)
 木陰で涼みながら、そんな由の様子を、宇冠・龍が穏やかに目を細めて眺めている。
 人間形態に戻って程なくして全長10Mの鬼の姿になった由を見た時には流石に少しだけ目を丸くしたし、子供達もびっくりしていたものだが、その姿で優しく微笑み、子供達を肩車したり隠れんぼなんかをしている内にすっかり打ち解けてしまい、今ではまるで以前からあった風景であるかの様に馴染んでしまい、子供達と目隠し鬼ごっこなんぞをやっている。
(でも・・・・・・由の鬼の姿を見て直ぐに打ち解けたのも当然かも知れませんわね)
 木陰で涼みながら手に持つ黒い宝玉を一撫でした龍はふと思う。
 これも由が話していたことではあるのだが・・・・・・。
「狐さんたちに力を貰いましたの」
 最後の時、由はあの妖狐達の霊を率いる一頭の炎の竜となって山賊頭に突進しとどめを刺した。
 あの時、確かに妖狐達は由に力を貸したのだろう。
 そして・・・・・・この神社をあの山賊頭達から解放してくれた由達への感謝と共に、この鬼になる姿を託してくれたのだという。
 つまり、あの鬼の姿自体が、この神社の守り神、と言うことだ。
 子供達が直ぐに馴染むのもおかしな話では無い。
 ――あの山賊達がこの神社を奪うその時までは、この神社の境内は、間違いなく子供達にとって、敬う場所であり、同時に一番遊ぶのに適した場所だったに違いないのだから。
「捕まえましたわよ~」
「じゃあ、次は僕が鬼だ~、がお~!」
 由がとうとう子供達の一人を捕まえた。
 捕まった子供はペロリと舌を出していたけれど、直ぐに鬼にしていた目隠しを受け取り今度はその子が目隠しをしている。
「鬼さんこちら、手の鳴る方へ♪ ですわ~」
「わ~、待て待て! ね~ちゃんの方が余程鬼じゃんか~!」
 子供達とからかい合いながら、由は鬼としてゆっくりと逃げながら、あの妖狐達の群れへと感謝の祈りを捧げる。
(この力、今後の戦いで、誰かを守るための戦いで、きっと役に立ててみせます。願わくばこの世界が、いいえ、他の世界もきっと平和になります様に)
 ――と、そんな祈りを一つ捧げていた時。
 ふと、木陰で涼みながら此方を見ている龍の方を由が見つけ、思わず逃げていた筈の鬼が立ち止まった。
(あれは・・・・・・)
 由が龍の側に見た者は・・・・・・。

●それはきっと祈りの様なもので
(妖狐達は憎しみから解放されたのでしょうか、無事、供養できているといいですね……)
 娘に新たな力を与えてくれた妖狐達の事を思い、手にもつ黒い宝形をひと撫ですると、少し疲れが出てきたのか、軽い微睡みを龍は覚えた。
 もう、平和になったのだから、と龍は軽く目を瞑りその心地よい微睡みに身を委ねる。
 それは、死霊術士として、ひとつの過去を解放できたという何より喜ばしい思いを噛み締め、胸にその感慨を浸るには丁度良かった。
(――私も、自らの過去を、いつか解放できるのでしょうか)
 微かな微睡みの中でふと、そんなことを思った時。
 フワリ、と風が龍の三つ編みを優しく撫でていく。
 それは何処か暖かく・・・・・・懐かしく感じさせるモノ。
 転寝からそっと瞼を開き、龍が風にくすぐられた三つ編みを軽く掻いた時。
 龍の傍らに、何時の間にか透けた一人の男性の霊が立っていた。
(あなた・・・・・・)
 全く気づいていなかったけれど。これも、稲荷神様の細やかなプレゼント、なのだろうか?
 それとも・・・・・・?
 穏やかな表情で立つ夫の姿を見て、龍は改めてそれを思う。
 ――それは、夫が目前で亡くなった過去であり。
 ――それは、お腹にいた子を失った過去の事でもある。
 もし、その全ての因縁である【悪食】と、また相見れたとき、私は奴を――。
 そこまで考えたところでふわりと微笑み、龍は静かに首を横に振る。
 ――それはまた別のお話ですね。
 悪食が現れた時にそのことは考えれば良い。
 今はただただ、由が子供達と楽しむ姿を夫と共に眺めていよう。
 それは・・・・・・確かに自分達の手で勝ち取った幸福なのだから。

●この景色を永遠に
(いい景色に戻りそうですわね)
 仲間達が思い思いに過ごしている様を見ながら、霧城・ちさはそう思う。
 時折聞こえてくるのは子供達の笑い声。
 そして、この神社を建て直そうと汗を拭い明るい表情を浮かべている大人達。
 皆が皆、そうやって一生懸命に時を生きている。
 そんな皆のために、今、ちさが出来ることは。
(これからは2度とこのような事件が起こらないように今のこの様子を記憶に残るよう眺めることですわねっ)
 そう思いながら、ちさがゆっくりとした足取りで神社の中をゆっくりと歩いている。
 気になるところがあれば撮影し、また一所懸命な村人や子供達と遊ぶ由や奏の様な猟兵仲間達の事も撮影していた。
 ふと、神社の前で撮影を止めて、足を止める。
「もしよろしければ、わたくしも神社の建て直しのお手伝いを致しましょうかっ?」
 ちさがそう村人達に呼びかければ村人達はこう返した。
「いえいえ、皆さんのお陰でこの神社を取り戻すことが出来たんです。どうか、皆さんはお休みになって下さい。後は私達の役割ですから」
 と、村人達が言っているところに少しだけ神社の一部が騒がしくなった。
 気になったので其方に行ってみると修理中に転んだか何かしたらしい、怪我をしたらしい村人の一人を食事などを持ってきていた女性達が心配そうに見ていた。
「わたくしに診せて下さいませっ。これでもわたくし、医術は少し心得がありますのよっ」
 告げてちさがその村人に寄って怪我の具合を見れば、なるほど致命傷では無いが、どうやら足を骨折してしまって胃らしいことが見て取れた。
 心配そうに青年を見る女性にお任せ下さいませっ、と微笑むとちさがそっと祈りの言葉を口にする。
 どうじに聖なる光が村人の足に吸い込まれるようにして消えていき、苦痛の表情を浮かべていた青年がなんともなくなった、と言った驚いた表情になった。
「ふふ・・・・・・治って良かったですわっ」
「あっ・・・・・・ありがとうございます・・・・・・!」
 一礼する青年と女性に微笑んで一礼を返し、その風景をちさが撮影する。
 そうやって撮影した写真をその場でプリントし、村人達にも配ると村人達は嬉しそうだった。
「あっ、そうでしたわっ。わたくし、この様な物を用意しておりましたのっ」
 そう言ってちさが取り出したのは、お弁当やお菓子。
「もし、お腹が空いていらっしゃる方がおりましたらどうぞですわっ」
 そう言って取り出した食事やお菓子に村人達や子供達が釣られてやって来る。
 そんな子供達と一緒に遊んでいた由や奏、神社が修復されている様を見ていた瞬も、響を連れてやって来る。
「これは美味しそうね」
「お昼寝だけじゃ無くて、こんな食事も付いてくるなんて至れり尽くせりだね」
 子供達と一緒にお菓子や食事をつつきだす由や奏を見ながら、響も食事として用意されていたおにぎりを手に取り口に含む。
 村人とずっと一緒に戦ってきた猟兵仲間達の穏やかな笑い声がちさの耳に入り、その胸に暖かいものが灯る。
 そうして皆と一緒に楽しそうにしている様子を、夫の霊と共に少し離れたところで穏やかに見守る龍。
「いつか、お祭りとかもこの場所でやれるようになるといいかもしれませんわっ」
「ええ、そうですね」
 ちさの呟きに瞬が頷き、もう一度神社を見る。
 ――きっと。
 そんな時が来るのはそんなに遠くない日だろう。
 だから、今は噛み締め、そして撮影等で記憶に留めよう。
 自分達の手で報われた妖狐達の思いと・・・・・・それによって生じた村人達の細やかな幸福を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月04日


挿絵イラスト