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ダンジョン・オブ・ホラー

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 ここは、世界最先端の蒸気技術と古の魔法文明の英知が集められる特務機関、アルダワ魔法学園。現在コカトリス組の教室では、帰りのホームルームが開かれていた。教壇に立ち、クラスメイトに向かって連絡事項を伝えるのは、委員長を務めるアッシュブロンドの少女。
「……というワケで、明日の探索ミッションの件なんですが、今回は猟兵の皆さんが協力してくださいます。それと……事前に夏の新歓コンパがありますね。作戦前に猟兵の方々と新入生を交えて『納涼肝試し大会』が開催されます。夜の22時から、17番ゲート行きの通路を使って行うそうですよ」
 学生たちはイベントが大好きだ。しかも異世界の勇者『猟兵』が一緒となると、否応なしにテンションが上がるというものだ。教室の中が、俄かにざわつき始める。
「ちなみにオバケ役を引き受けてくれた人は、先生からマジックアイテムを貰えるそうですよ。やってみたい人は、先生の所に申し込みに行ってくださいね。……じゃ、今日はこれまで」
 委員長の話が終わると、コカトリス組の生徒たちはそれぞれの目的の為に教室を去っていく。早く図書館へ行ってお気に入りの席を確保しなければと、いそいそと帰り支度を整える委員長の元に、仲良しの生徒がやってきて声を掛けた。
「肝試しだって、なんか楽しそうだね~。いいんちょも一緒に行かない?」
「わ、私は実習のレポートを終わらせないといけないから……遠慮しておくわ! それに、そういうのでワーキャー言うほど、子供じゃないですしっ!?」
 そう言って鞄を掴み取ると、そそくさと退出していく委員長。彼女はかなりのビビリであった。

 ここは猟兵達の拠点、グリモアベース。その一角にある噴水広場にやって来た猟兵達を、漆黒のゴシックスーツを身に纏った女が出迎えた。グリモア猟兵のガーネット・グレイローズである。
「やあ、よく来てくれた。それでは今回の作戦について説明しよう」
 ガーネットは手の中で輝くキューブ状のグリモアを操作し、その内部から予知で得た情報を抽出する。
「今回君たちに向かってもらうのは、アルダワ魔法学園だ。先方から新入生を対象としたダンジョン探索ミッションの補助を頼まれたのだが……その前に新歓コンパというか、レクリエーションとして肝試し大会が開かれるらしい。夏だしな」
 肝試し。UDCアースなどでも、夏の風物詩として行われるアレである。廃病院や墓地といったシチュエーションを設定し、来場者にその中を探索させて怖がらせるのが一般的だ。
「何せ、あの世界は地下に巨大迷宮を封印しているからな。夏だし、そのロケーションを活かしてお化け屋敷をやろうと誰かが言い出したのだろう。せっかくの機会だ、君たちも現地の魔法学園生と交流してくるといい」
 ダンジョンの入り口に繋がっている通路を迷路に改造し、そこを訪れた猟兵や学生たちを仮装や様々な演出を駆使して怖がらせるのだ。
「スタッフとして参加して、お客を怖がらせる方に回るか。客として、恋人や友達と存分に楽しむか。やり方は君たちに任せるよ。もちろん、ユーベルコードの使用もアリだ。全員がダンジョンの入り口にたどり着いたら、そこからは通常の探索ミッションとなる。ダンジョンを攻略し、徘徊している災魔を学生らと共に討伐してくれ。出現する災魔のレベルからして、猟兵にとってはそう難しくない任務だとは思うが……学生たちの身に危険が降りかからないよう、しっかりとサポートしてやってくれ。頼んだぞ」
 そう言ってガーネットはグリモアの力を増幅させると、世界転移の準備を始めるのだった。


弥句
 こんにちは、弥句です。今回はアルダワ魔法学園でのシナリオとなります。よろしくお願いします。(有るのか分かりませんが)アルダワも夏休みシーズンということで、いつものダンジョン探索の前に納涼肝試し大会が開催されることになりました。猟兵と新入生たちもこの催しに招待されており、客として肝試しを楽しむか、オバケ役としてスタッフ参加するか、どちらかを選ぶことが出来ます。
 第1章は日常パートで、学園の安全な区画を使って納涼肝試し大会が開かれます。墓場や廃墟、はたまた病院……趣向を凝らしたお化け屋敷を作り、思い思いの仮装で学生たちを怖がらせましょう! 2章以降でいつものダンジョン探索→内部に出現した災魔退治という流れになります。

●今回の新入生
 ビリー(ドラゴニアンの竜騎士×マジックナイト)
 屈強な体格の男子。いわゆる不良のレッテルを張られている。腰パンにドレッドヘア、見た目はいかついが、オバケが大の苦手。

 クラリス(人間の精霊術士×シンフォニア)
 まじめで責任感が強い、委員長タイプ。規則と服装にうるさく、いつもビリーを追い回している。ビリーに劣らずかなりのビビリ。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『ダンジョンで肝試し』

POW   :    グロテスクな着ぐるみで怖がらせる/客として参加する

SPD   :    不気味な特殊メイクで怖がらせる/客として参加する

WIZ   :    おどろおどろしい演出で怖がらせる/客として参加する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




「……おい、お前先行けよ。委員長だろ」
「こ、こういう時は男の子が先導するものでしょう!?」
 ここは迷宮に通じる17番ゲートに通じる道の途中。時刻は午後22時、肝試しの会場にはアルダワの新入生と、彼らをサポートするために招かれた猟兵が集結していた。既に通路の向こう側、薄暗いお化け屋敷の入り口からはおどろおどろしいBGMが流れ、訪れる客を待ち構えている。
 先ほどから言い争っているこの二人は、人間のクラリスと人派ドラゴニアンのビリー。年齢はともに15歳、共にコカトリス組で学んでいる新入生だ。
「つうかお前レポートがあるんだろ? やらなくていいのかよ」
「あ、アンタが騒ぎを起こさないか監視するために、速攻で終わらせて来たのよ!」
 体格のいいビリーは、いわゆる不良のレッテルを貼られている少年。しかし、目が泳いでるようにも見える。クラリスは、ホームルームで説明を行っていたアッシュブロンドの少女。先ほどから、やたらビリーを前へ押し出そうとしている。
(番長が肝試しに来なかったって知られたら、ナメられるからな……)
(ビリーが何かやらかさないか気になって来たけど……やっぱり怖いなぁ)
 こうして委員長とヤンキーの凸凹コンビは、ひんやり冷たい空気が流れてくるお化け屋敷の中へとおっかなびっくり足を踏み入れていった。
冬原・イロハ
納涼肝試し大会。レクリエーションですか
なるほど~
ダンジョン探索の士気をあげていくには大事ですね

【SPD】お化け役で参加
悩みますが、コワ猫とかどうでしょう

毛をボサボサにして、血糊を斑模様に特殊メイク(?)します
ぽふぽふしていくだけなので、楽ちんな気もしますね
服は赤が目立つように、白で
手が凄く赤くなったような気がしますが、まあいいや……

生首をくわえて、いざ参戦!
――あ、生首はお人形さんですのでご心配なく

よし、脅かしますよ!
お前の首をヨコセェェって思いっきり言ってやりますよ!
じゃんぷ!
「   」
――ふぉ……!
しまったです、くわえたまんまだから言えないですね!?
にゃんという失敗

アドリブ・連携歓迎


三蔵・迅
●WIZ:オバケ役
水路がある通路を柳並木にして潜みます
涼しくて暗い場所だと雰囲気があっていいですよね

UC【一寸以上の好奇心】を使って学生の様子をこっそり伺う

●驚かし方
念動力で何もない場所から風鈴を吊り下げて鳴らしたり
ぬるぬると足下を影絵の小人が駆け抜けたり

驚いている彼らの後ろから声を掛けてみるのもいいですね
なびく柳の枝の合間から手を出して
おいてけ…おいてけぇ…なんて、ね。

小人を呼んだのは暗い場所で転んで怪我をしないように
という理由も一応ありますが
やっぱりこういう反応は間近で見るのが一番楽しいでしょう?

・肝試しにわくわくするヤドリガミ
・雨は嫌いだが暗く冷たい場所は落ち着く
・アドリブ、絡み歓迎です





 肝試し大会が始まる数時間前のこと。会場となる17番ゲート通路では、本番に向けて着々と準備が進められつつあった。裏方の学生達によってお化け屋敷内部の設営作業が行われており、オバケ役は衣装合わせや特殊メイクに余念が無い。彼らは各々グロテスクで不気味な姿になりながらも、無邪気に談笑している。
「納涼肝試し大会。レクリエーションですか、なるほど~。ダンジョン探索の士気をあげていくには大事ですね」
「私も、こういうイベントはわくわくしますね。学生さん達には、思いっきり怖がって涼しくなってもらいましょう」
 一番に会場へやって来た猟兵は、ケットシーの冬原・イロハ(ケットシーのマジックナイト・f10327)。そしてヤドリガミの青年、三蔵・迅(晴乞・f04775)の二名だ。共にオバケ役を志望する二人は、只今打ち合わせの真っ最中。どんなオバケを演じようかと、アイデアを出し合っている。
「私ケットシーなんですけど、ちゃんと怖いオバケになれるでしょうか?」
 客観的に見ても可愛らしい容姿のイロハ。怪物を演じるのには無理があるのではないかと不安になったのだ。すると、少し考え込んだ迅がアドバイスを出す。
「私が生まれたサムライエンパイアには、化け猫の妖怪がいます。今回はそれでいってみませんか? シチュエーションはこういう……」
「ふむふむ」
 迅の提案の元、次々と恐怖を演出する相談が進められていき、やがて開場の時間を迎えたのだった。

 お化け屋敷に入場した学生達を最初に待っていたのは、荒れ果てた和室だった。無残に破れた障子には、夥しい返り血が飛び散っている。
「殺人事件が起こったサムライ屋敷かよ……気味が悪いぜ」
「ちょ、狭いんだから突っ立ってないで先行ってよ!」
 不気味な琵琶の音色が流れる薄暗い通路を、ビリーとクラリスの凸凹コンビが並んでやって来た。二人はああだこうだと言い合いながら、ある部屋の前を通り過ぎようとする。

 ニャアァァァ――……

 不意に、低い猫の鳴き声が聞こえてきた。血染めの障子で閉ざされた部屋の奥からだ。二人が思わず部屋の前で足を止めた瞬間、障子が勢いよく左右に開かれた。
「!?」
 薄汚れた煎餅布団の上に、白装束をまとったケットシーが佇んでいた。イロハだ。彼女がゆっくりと振り返ると、その手には頭の取れた日本人形を抱きかかえているではないか。赤く染まった口に咥えているのは、人形の頭。
「ひいいいい!」
「おわああっ!」
 悲鳴を上げて竦み上がるクラリスとビリーに、イロハがじりじりとにじり寄る。体毛をハード系のワックスでクシャクシャにセットし、全身に斑模様の血糊を散らしている。美術部員の全面協力の元、見事な化け猫の完成だ。
(……よし、脅かしますよ!)
 イロハの決め台詞は『お前の首をよこせ!』だ。タイミングを見計らってピョンと跳びはね、声を発するイロハ。
「――ふぉ……!」
 しかしイロハはここで初歩的な問題に気付いてしまった。人形の頭を咥えたままでは喋れないではないか……と。しかし、気づいたときにはもう遅かった。既に二人はイロハがジャンプした時点で一目散に走り去ってしまっていたのである。
「にゃ、にゃんという失敗……」
 がっくしと項垂れるイロハ。決めゼリフは豪快な空振りだ。だが、二人が逃げた先には新たな妖怪が待ち構えていた。

 武家屋敷を抜け出してクラリスとビリーが逃げた先は、水が流れる小さな水路が通る道だった。闇の中から、チョロチョロという水音が静かに、そして不気味に聞こえてくる。
「なんだかまた気味の悪い所に来たわね……」
「おい……何か出る前に、サッサと通り過ぎようぜ」
 ほの暗い柳の並木道を、足早に通り過ぎようとする二人組。そこに、

 おいてけ……おいてけぇ……

 囁くような声だったが、それは何故かはっきりと二人の耳に届いた。途端に生ぬるい風が通路を吹き抜け、どこからともなく風鈴の音が聞こえてくる。
「ちょっ、変な声出さないでよ!?」
「はぁ? 俺じゃねーし! お前こそ怖くて耳がおかしくなってんじゃねーの!?」
 狼狽える二人を、さらなる異変が襲う。柳の並木の間から、何者かが腕を伸ばしておいで、おいでと手招きしているではないか。
「おいおいおい! なんかあっちから手招きしてんぞ!」
「あああダメダメダメ! ああいうのホント駄目だから!」

 あははは、きゃはははっ……!

 今度は真っ黒な子供の形をした小さな影の集団が突然現れ、無邪気な笑い声を上げながら二人の足元を駆け抜けていく。
「イヤーーーっ!」
「な、なんだこいつらぁ!?」
 影絵の小人たちは二人の周辺を走り回ると、やがて通路の向こう側へと去っていった。これは、迅が【一寸以上の好奇心】で生み出した眷属だ。迅は、二人が狼狽える様子を柳の陰から観察しながらほくそ笑んでいた。
(効果は抜群みたいだね。よかった)
 自身と感覚を共有できる小人を呼び出したのは、暗い場所で転んで怪我をしないようにという配慮もあった。だが、
「やっぱりこういう反応って、間近で見るのが一番楽しいでしょう?」
 肝試しとなると、結構黒い一面を見せる迅であった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)
【WIZ】
(クスクス笑いながら)肝試しなんて初めてよね。
身命を賭して猟兵をやっている身としては、とても新鮮だわ。
怪我させない程度に恐怖を味わわせれば良いのでしょう?
(物騒に目を光らせ刀を抜く。趣旨がわかっていない様子)
さあ、いきましょうアイビス。

白装束を着て学生を待つわ。
アイビスの迷宮は組み変わるから、あちら側から見ると遠くに白い女が見え隠れするわね。怖がってくれると面白いけれど。
最終的に私の元へ辿り着くから、呪詛や殺気の乗った刀で追い回して脅かしてみましょうか。

白装束の雪女……?
お望みなら吹雪で包んであげましょう。

※ギャグ・アドリブ歓迎


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)

肝試し、というものは初めて行いますね
紅雪が脅かしたいようなので脅かす側に回りましょうか

そういえば初めての依頼はアルダワの図書館だった気がしますね…
少し再現してみましょうか(と言ってUCを使用)
迷路の入り口はお客様の正面にできるように

紅雪と遭遇する前に本を動かしたり、迷路内部を動かしてみましょう
うまく驚いたりしてくれるとよいのですが
あとは紅雪に任せてみましょうか

……任せるとはいいました
しかし脅かすだけならまだしも、トラウマを植えそうなことはやめましょうか、紅雪

(新入生がきた場合にのみ)
とはいえ戦いの場であれば、致命的になりえます。そこだけはご注意を

アドリブ歓迎





 薄暗い地下迷宮の通路に、二人の美しき少女の姿があった。羅刹の剣士、蓮・紅雪(新雪・f04969)とミレナリィドールのアイビス・ライブラリアン(新米司書人形・f06280)である。黒髪に和装と、白髪に洋装。対照的な二人の猟兵は、肝試しに招かれた魔法学園生たちの来訪を今や遅しと待ち構えていた。
「肝試し、というものは初めて行いますね。紅雪が脅かしたいようなので、脅かす側に回りましょうか」
 自分の力が紅雪の役に立つのならと、アイビスはオバケ役をやりたがる紅雪に協力を申し出たのだ。
「ふふ……肝試しなんて、初めてよね。身命を賭して猟兵をやっている身としては、とても新鮮だわ。怪我させない程度に恐怖を味わわせれば良いのでしょう?」
 くすくすと笑いながら、期待に胸を膨らませる紅雪。学生たちをどんな風に怖がらせてやろうかと、ほくそ笑みながら妖刀を抜き放つ。……どこからか尺八の音色が聞こえたような気がするが、気にしないでおこう。
「……まぁ、やり方は大体紅雪に任せますよ。では私は、そろそろ迷宮の準備にかかりましょうか。迷宮と言えば、初めて参加した依頼はアルダワの図書館だった気がしますね……あれを少し再現してみましょうか」
 そう言って、アイビスはユーベルコードによる迷宮の生成作業に取り掛かる。アイビスの橙色の瞳が光を放ち、体内の魔導機構が唸りを上げて起動することで【知識の迷宮】が発動。広大なアルダワの地下空間に、ユーベルコードで生み出された無数の本棚が出現する。大きさや形状のバラバラなそれらの本棚がパズルのように複雑に組み合わさり、やがて一定の法則性を以て連なることで迷路の形へと構築されていく。本棚に収められた本はすべて本物で、実際に手に取って読むことも勿論可能だ。最後に迷宮の入り口を入場者の正面に来るように配置して、準備完了。
「素晴らしい迷宮ができたわね。――さあ、いきましょうアイビス1」
 完成した『知識の迷宮』の出来栄えに満足げに頷きながら、紅雪は迷宮の奥へと足を踏み入れていく。
「あとはちょっとした仕掛けを用意しておきましょうか。うまく驚いたりしてくれるとよいのですが……」

「おっ! オレ達一番乗りじゃね!?」
「ひょーっ! 広いぜー!」
 程なくして、バタバタと大きな足音を立てながら騒々しい一団がやって来た。階段を駆け降りて姿を現したのは、総勢六人の少年達。いかにも活動的な、男子学生グループである。
「何だコリャ。図書館? 変なの」
「ッシャじゃあ俺先頭いきまーっす!!」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎながら、図書館の迷宮へと足を踏み入れた少年達。本棚をよじ登ってアスレチックごっこに興じたり、鬼ごっこを繰り広げたりと、迷宮の中でやりたい放題である。
「おい、そろそろ先に進もう……お?」
 男子たちが鬼ごっこに興じている間に、迷宮の内部は様変わりしていた。具体的に言うと、彼らが今まで進んできた道が高い本棚に閉ざされ、消失している。退路を断たれたのだ。アイビスのユーベルコードによって造られた迷宮は、彼女の意のままに形を変えていくのである。
「オイオイ、道が無くなっちゃったぜ?」
「先に進めってことじゃね。行こうぜ」
 列をなして、ぞろぞろと通路を突き進んでいく一行。彼らは程なくして、T字路の突き当りにぶち当たる。

 すぅ――……

 そのとき、彼らの眼前を白装束の少女が音もなく横切っていった。もちろんそれは、変装した紅雪である。姿を見せたのは一瞬だったが、逆にそれが見た者に対し強い印象を与えるのだ。
「えっ、誰今の」
「さぁ? オバケじゃねーの? 追いかけてみようぜ」
 好奇心の赴くまま、紅雪を追いかけようとする一同。だが、それはアイビスと紅雪の仕組んだ罠だった。紅雪の後姿を追いかけていくと、左右から本棚が次々とスライドして重なり合い、分厚い壁となった。
「おお!?」
「ちょっ、ナニ!?」
 突然進路を閉ざされ、困惑する少年たち。その背後から、ゾッとするような冷たい空気が流れてきた。はっと振り向いた彼らの視線の先には、先ほどの白装束の少女が佇んでいる。紅雪だ。
「ゆ、雪女っ……!?」
 メンバーの誰かがそう言った。いつか昔話で聞いた、悲劇のヒロインだ。ただ昔話との違いを挙げるとするならば――彼女の手には、黒耀石で造られた妖刀が握られている。紅雪の意思に応じるように、妖刀に帯びた呪詛が吹雪となって迷宮を吹き荒れる。
「――お望みなら、吹雪で包んであげましょう」
 紅雪が刀の切っ先を少年達へと向ける。魂までも凍てつかせる程の冷たい殺気が、少年たちの頬を掠めていく。
「オ、オタスケエエエエエ!!」
 猟兵が放つ本物の殺気に当てられ、すっかり気力を削がれた少年たちは、出口を求めてバタバタともがき続ける。見かねたアイビスが姿を現し、迷宮のトラップを解除した。
「……任せるとはいいました。しかし脅かすだけならまだしも、トラウマを植えそうなことはやめましょうか、紅雪」
「やり過ぎたかしらね……ごめんなさい、力を制御しきれなくて」
 最初の反省点を踏まえ、それから紅雪は多少力をセーブして雪女を巧みに演じていった。アイビスもまた、紅雪がより魅力的に見える登場方法を演出することで、見事に裏方としての役目を果たしていったのである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ファラン・ウルフブラッド
ふむ、お化け屋敷か。では俺もダークセイヴァー流の脅かし方で一役買おうではないか。

【行動:WIZ】西洋風の古びた墓場でキャスト役で参加します。
明かりは間接照明としてランタンがある程度の薄暗がり。
客が入って来ると、入り口を塞ぐように血塗れのノコギリ鉈を引き摺り、返り血を浴びた狂気の眼光(ICのような)をした狩人装束を纏った男が現れます。(ファランですが)

「・・・なんだ、まだ狩り残しが居たか。 まぁいい、潰して、腑分けして、その後に、殺してやる」
それだけ言って墓場に来る客を執拗に追い回します。(簡単に出られないように誘導しながら)

使用技能:存在感・殺気・恐怖を与える・ダッシュ


ノイン・フィーバー
心情:なにやらユーベルコードの中(表現あってるのかこれ)から、仄暗~の彼女が出番だと訴えかけてくるので。……本物参戦していいんでショウか。

行動:おどろおどろしい井戸のセットを用意して、ユーベルコード発動。顔の画面から這い出た彼女を井戸の中に入れて、あとはお任せして一般客として参加します。

お化け役の皆さんの動きを楽しみながら進む。

所で、暗闇に浮かぶTV画面(しかもゆらゆら動く)ってホラーじゃない?

井戸:
本領発揮。
井戸の底から呻き声のような何かが聞こえたり近づくと寒気を感じたり。
そして、井戸から伸びる白い手、黒髪、ぎょろりと黒髪の隙間から覗く眼。

彼女は来る。きっと来る。仄暗い井戸の底から。


シリン・カービン
【かんさつにっき】

普段から一人で森の中にいることが多く、
闇を見通す目を持っていたりすると、
「…まあ、仕方ありません」
キャーキャーと皆の様には楽しめませんが、
その分楽しませる方に回りましょう。(ふ)

【スプライト・ハイド】+残像+忍び足+フェイント使用。
学生達の視界の隅でちらちら動く人影を演出。
海莉が脅かした子達を着ぐるみ組の方へ誘導します。
ほら男の子、しっかりしなさい。

みんな恐怖と喜びの精霊が出たり引っ込んだり。
精霊たちもかくれんぼしてるみたいに楽しそう。

…うちの子たちも似たような状況?
試しに姿を消してから耳元で囁きを。
「(名前)……」

小太刀のネタには風の精霊が首元に冷風を。

アドリブ・連携可。


木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

ハイ、スタッフ希望でっす!
……なんかコワそうだもん(ぽそ)。

えっとね、おいらたちの故郷(侍帝国)だと、肝試しといえば!
そう、コンニャクー♪(ぱぱらぱー)
これをね、ぴとっとほっぺにくっつけると、誰でもびくっとするんだー♪

のっぺり赤い蒟蒻の着ぐるみを着込んでー。
委員長とでっかいのが来たら、脅かしてやろっと♪(わくわく)
見て見て、アンちゃ……(びくうっ)

わーい、委員長たち、驚いてた驚いてたー♪

あれ、ココどこ?
なんか……静かだなあ。
……誰か、いないのかなー?(だんだん小走り)

こ、恐くない、恐くないもん!
こわ……
(脅かし役に遭遇、咄嗟にわんこ変身)

きゅ~んきゅ~ん!
(全力逃亡!)


南雲・海莉
【かんさつにっき】

メイクが必要な人は言ってね
(舞台演劇用のメイク道具で【変装】施し)

学園で有名な怪談で脅かしたいかしら
【演技】使用

縁だけの鏡台を用意
暗い通路の隅に設置
自分は黒い布で隠れ

学園生が近づいたら
鏡面の後ろからくすくす笑い
「貴方も知りたいことがあるのかしら
明日の試験の答え?
それとも隣の友達の気持ち?
なら」

鏡を灯りに照らし出されたら
鏡の奥から黒い肌に黒い制服の『影女』の姿で現れ
無表情に向こう側から腕を掴もうと
「対価に貴方の影をちょうだい?」

そのまま着ぐるみ組の方に誘導
『シリンさん、お願いね』
(声に出さず笑顔で)

……そう言えばそこそこ時間が経ったかしら?
皆、どんな調子?(ひょこ、と顔を出し)


木元・杏
【かんさつにっき】
わたしは驚かす役
かえる着ぐるみに包帯巻いて……ん、上手く巻けない(所々だらーん)
出刃包丁(レプリカ)持って
少し血糊つけて(びちゃ)(びちゃ)
どう?まつりん(振り向く血みどろかえる(笑顔))

かえるは少しメルヘンだけど
ん、海莉の怪談に乗っかる感じで驚かす(ぐ)

(てくてくと学生達に寄っていく

あ。
皆逃げてく

…………お化けって、少し寂しい
……あれ?(気づけば一人)

皆の姿を探してきょろきょろ、うろうろ
暗い……(半泣き

あ、誰かいる(ぱたぱた走り寄り
!!
(驚かされてびくうっ!)
□☆×○……!!!!(包丁ぶんぶん)

こ、小太刀、小太刀(姿を見つけて駆け寄り、ぎゅう)(但し血みどろかえる姿)


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

蒟蒻な祭莉んに思わず笑いつつ
杏の包帯巻き巻き手伝う

私もお化け役担当
白兎の着ぐるみに
血みどろメイクは海莉にお願いするね
小道具のナタを手に取って
これで怖いお化けになった……かな?(ナタなだけに

これって一人で待ってなきゃダメなやつ?(汗
そうだ、UCでオジサン(鎧武者の霊、お調子者でウサミミ着用)も召喚しよう
これも演出よ演出、別に一人で待ってるのが怖いとか、そんなんじゃないからねっ!
(※肝試しや怪談話は怖いけど、本物の霊は平気なシャーマン)

準備万端、張り切って怖がらせるも
立ってるだけのオジサンにいいとこ持ってかれてる様な?
むむ、なんか悔しい!

血みどろカエルのぎゅうにびっくり
ひぃー!?





 【かんさつにっき】の面々は、車座になってメイクアップの最中。彼らの輪の中には、数々のメイク道具と衣装が置かれている。
「えっとね、おいらたちの故郷(侍帝国)だと、肝試しといえば! そう、コンニャクー♪」
 ぱぱらぱー、と明るい調子で祭莉が引っ張り出したのは、のっぺり赤いコンニャクの着ぐるみ。シリン・カービン(緑の狩り人・f04146)がそっと表面を触ってみると、ひんやりと冷たい。
「これをね、ぴとっとほっぺにくっつけると、誰でもびくっとするんだー♪」
「祭莉。この……こんにゃくとは何ですか?」
 ひんやり、ぐにゃぐにゃした謎の物体を手に取って、戸惑うシリン。そんなシリンに、杏がコンニャクについて説明する。
「こんにゃくはね、サムライエンパイアの食べ物だよ。こんにゃく芋の、根っこの部分から作るの」
「芋が、あんな形になるのですか……」
 手間暇をかけたサムライエンパイアの食文化について、新たな知識を得たシリン。そんなシリンは、普段から一人で森に分け入って狩りを行うハンターである。暗闇や孤独にも慣れているため、純粋に肝試しを楽しめないのではないかと思っていたのだ。
「…まあ、仕方ありません」
 その分、皆を楽しませるほうへ回ろうと考えていたのだが、奇しくも友人たちも皆オバケを演じることになっていたのだ。
「……ん、包帯上手く巻けない」
 かえるの着ぐるみ姿の杏が、上から包帯を巻こうとしている。所々だらんと包帯が垂れ下がっているのを見かねて、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)が助けに入る。
「ちょっと貸して。私が巻いてあげるわ」
 てきぱきと包帯を巻く小太刀は、白ウサギの着ぐるみ姿。これだけ見るとファンシーなマスコットに見えるが、
「はい、あとは血糊の付いた包丁を持って!」
 小太刀が杏に手渡したのは、血糊(っぽい塗料)がたっぷり付いた出刃包丁(のレプリカ)。小太刀も杏とお揃いでナタを持ち、二人で決めポーズをとる。パッと見は完全にアリスラビリンスからの刺客です。
「はいはい、メイクが必要な人は言ってね」
 南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)が用意してきたのは、舞台演劇に用いられる本格的なメイク道具だ。杏と小太刀の二人に、海莉は手際よくホラーメイクを施していく。
「どう?まつりん」
 にっこり笑顔で祭莉の方へ向き直る杏。なんということでしょう、祭莉に満面の笑みを浮かべるのは血みどろのかえるさん。
「……う、うん。アンちゃんは、準備バッチリ?」
 カワイイ笑顔と真っ赤な血のギャップにショックを受け、コメントに詰まる祭莉であった。
「これで怖いお化けになった……かな? ナタなだけに」
 鏡でメイクの出来栄えをチェックし、満足げにほほ笑む小太刀。おまけに小声でダジャレを挟むほどに上機嫌だ。
「……今のは洒落ですか、小太刀」
 小太刀の首元を、シリンの風の精霊がピューと吹き抜けていく。
「ひゃっ!? ……もう、シリンったら!」
 心なしか、いい具合に体感温度も下がったようである(?)。
 
「ファランさん。それにしても、すごい筋肉ですね!」
「日々鍛えているからな」
 演劇部が用意した衣装を試着しているのは、見事な銀髪の青年。名はファラン・ウルフブラッド(深淵を歩く剣王・f03735)、ダークセイヴァーに古くから存在していた王国の、元統治者である。逞しい体格のファランに合うものはないかと、演劇部員の少年は懸命に衣装を見繕っていた。
「ふむ。このコートはいいな」
 ファランは、一着の暗緑色のロングコートに目を止める。
「これに少し手を加えてみるか。狩人装束のようにしてくれないか?」
 ファランは、かつてダークセイヴァーに実在した殺人鬼の逸話を思い出した。貧しい狩人だったが、邪教徒に唆されて異端の神に魂を売り渡したのだ。
「狩人ですか……わかりました。すぐに仕上げて来ます!」
 そう言うと男子演劇部員は、ロングコートを持って衣裳部屋の方へと去っていった。
「お化け屋敷か。フフ……俺もダークセイヴァー流の脅かし方で一役買おうではないか」
 ファランは、吸血鬼や悪辣な邪教徒が跳梁跋扈するダークセイヴァーの出身。言うなればゴシックホラーの本場である。衣装が仕上がるまでの間、どんな風に怖がらせてやろうかと考えを巡らせるファランであった。

 その通路の片隅には、忘れ去られたような古ぼけた井戸がぽつんと設けられていた。手が込んでいるが、本物ではないセットだ。
「少しの間ですけど、我慢してくださいネ」
 井戸の中を覗き込み、中の人物に話しかけているのはヒーローマスクのノイン・フィーバー(テレビ顔のメカ野郎・f03434)。井戸の中に入っているのは、長い黒髪で顔を覆い隠した白装束の女。ノインのユーベルコードにより、彼のTV型マスクの中から召喚した謎の生命体だ。いや、そもそも生きているのか何なのかもわからない怪しい存在なのである。
「…………」
 中で行儀よく体育座りをしていた『彼女』は、上から声をかけるノインにコクリ、と無言で頷く。どうやら意思疎通は可能らしい。ノインは、マスクの中から『彼女』が出番を求めているのを感じ取り、オバケ役としての起用を決意したのだ。。肝試しにこれほどうってつけの人材もいるまい。
「(オバケというか、オバケそのものの気がしますが……まぁいいでショウ)さて、ワタシはそろそろ退散して、一般客として出直しますかネ」
 井戸の中に『彼女』を残し、ノインは会場の外へと引き上げていった。あとは『彼女』が、うまく仕事をしてくれるはずだ。多分。



 アルダワ魔法学園のある校舎に伝わる、呪いの鏡の伝説。今夜、その伝説が蘇る――。
 真夜中0時、鏡の前に立つと現れる『影の女』。彼女に質問をすると、何でも答えてくれる。試験の解答、そして意中の異性の気持ち……。だが、質問に答えた対価として、影女はあなたの影を奪ってしまう……。
「おや、お客が来たわね……」
 近づいてくる人の気配を察知し、『鏡』の裏に潜んでいる海莉は呼吸を整える。その鏡は縁だけの鏡台で、暗い通路の隅に設置されている。影女を演じる海莉は、黒い布で覆われた裏側に隠れているのだ。
 鏡の前にやってきたのは、男女混合のグループだ。あからさまに怪しい鏡台を発見し、警戒し始める一同。
「おい、なんか意味ありげに鏡があるぜ」
「……絶対に何かあるわね」
 ――今だ。海莉は持ち前の演技力をフル活用し、怪談『影女』を演じ始めた。
「くすくすくす……。貴方も知りたいことがあるのかしら。明日の試験の答え? それとも隣の友達の気持ち? なら……」
 次の瞬間、通路のロウソクに青白い火が灯った。時限式の魔術で点火する仕掛けだ。すると鏡の奥から、真黒な制服を纏った『影女』がずるり、と姿を現す!
「対価に貴方の影をちょうだい?」
「うおおおっ!?」
 血の気の失せた青白い肌の影女が、鏡の向こうから身を乗り出して最前列にいた少年の腕を掴もうとする。反射的に彼は鏡の前から飛びのき、素早く後退する。
「き、気持ち悪ィなあ! おい、サッサと次行くぞ!」
「ちょ! ちょっと待ってよ!」
 足早に次のエリアを目指す学生たち。その先には、【かんさつにっき】の仲間が待っている。
「(シリンさん、お願いね)」
 声には出さず、海莉は暗がりに潜んでいるシリンとアイコンタクト。ここからは、シリンの仕事だ。
「いたずら妖精いたずら妖精、その手を繋げ……」
 シリンは光と影の精霊に働きかけ、その姿を透明なものに近づけていく。これが【スプライト・ハイド】の能力だ。そのままヒタヒタと学生グループを追跡する。学生たちの視界の隅で、チラチラと人影が動くのに気が付くと、彼らは悲鳴を上げて駆け始めた。
「ヤダ、なんか追っかけてくるー!?」
「早く逃げないと影に捕まるぞーっ!」
 キャアキャアと叫びながら、学生たちは着ぐるみグループが待つ方向へと誘導されていく。
「ほら男の子、しっかりしなさい」
 学生たちを追いかけながら、シリンは彼らから恐怖と喜びの精霊がせわしなく出たり引っ込んだりしているのを感じていた。

「はーあ、走り疲れたぜ」
「ちょっと休憩な……」
 シリンに追い立てられた学生は、古ぼけた小さな井戸があるエリアにやってきた。
「見ろよ……井戸があるぜ」
「水でも飲むか? いや……何かイヤな予感がするな」
 そして、その予感は現実のものとなる。
「ァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ」
 突然、井戸の中からうめき声ともノイズともとれる奇怪な音が漏れてきた。
「!?」
 井戸の縁に、ガッと白い指が引っ掛けられた。ずるり、という音がするような不気味な動きで、その中から長い髪の女がゆっくりと這い出てきた。ぎょろり、と髪の隙間から覗いた目が、学生たちを睨み付ける。
「ぬわーーーっ!」
「怖えーっ! 幽霊怖えーっ!」
 井戸から現れた女にに恐れをなした客は、一目散に逃げ始める。そんな彼らに、さらなる追い打ちがかけられた。ぺちっ、と彼らの顔に引っ付くのは、天井から吊り下げられた例の生こんにゃく。単なるコンニャクなのだが、不意に顔面にプルンとくる冷たい衝撃は予想外の効果を発揮。さらに赤いコンニャクの着ぐるみを着た祭莉が現れ、所狭しと駆け回った。
「キャアアーッ!」
「何じゃコリャーーッ!!」
 コカトリス組のビリーとクラリスもこんにゃくの洗礼を受け、特にクラリスなどは50㎝も飛び上がるほどの驚きぶりだった。
「わーい、委員長たち、驚いてた驚いてたー♪」
 自分の仕込んだトラップが効果を発揮し、すっかり上機嫌な祭莉。小躍りしながら歩くうちに、気が付けば見覚えのないエリアに迷い込んでいた。
 そこは、無数の墓石が設置された墓地。辺りには客の姿も見えず、しんと静まり返っている。
「あれ、ココどこ? なんか……静かだなあ。……誰か、いないのかなー?」
 段々不安になってきた祭莉は、小走りになる。早く皆のいる所に戻らなきゃ! 戻る…………どっちに?
「こ、恐くない、恐くないもん! こわ……」
 半泣きになりかけた祭莉の前に、ついに『ソレ』が現れた。
「・・・…なんだ、まだ狩り残しが居たか。まぁいい、潰して、腑分けして、その後に、……殺してやる」
 墓石の陰からぬっと現れたのは、狩人の装束に身を包んだ大男。ファラン・ウルフブラッドのお出ましだ。彼は血塗れのノコギリ鉈を引きずり、歯を剥きだしにして凶悪な笑みを浮かべながら、狂気の眼光で小さな人狼の子を睨み付ける。
「…………」
 あまりにも突然の出来事に、硬直する祭莉。祭莉のハートはもう限界だった。咄嗟に狼の姿に変身し、尻尾を巻いて恐ろしい狩人ファランから逃げ出した!
「きゅ~んきゅ~ん!」
 ファランは祭莉が簡単に墓場から逃げられないように、執拗に追い回すのだった。

 ファンシーなかえるさんが物陰から飛び出て、包丁をシュッシュッと振るう。それだけで、お客たちはキャーキャー悲鳴を上げて逃げ出すのだ。そのリアクションは楽しいものだったが、杏は次第に寂しさを感じ始めたのだった。
「…………お化けって、少し寂しい。……あれ、ここはどこ?」
 脅かす人を探してうろついていたのだが、気が付けば知らないエリアに来てしまったようだ。急に、心細さに襲われる杏。
「暗い……みんな、どこ?」
 皆のところへ、帰らなきゃ。今にも泣き出しそうな杏は、元来た道を急いで引き返すことにした。

「しまった……これって一人で待ってなきゃダメなやつ?」
 おもちゃとヌイグルミで埋め尽くされた部屋の中で、小太刀は待機していた。仕事は扉を開けてきたお客をおもむろに立ち上がって鉈で脅すだけなのだが、肝心の客が来ないうちは孤独なものだ。
「そうだ、オジサンも召喚しようっと。……これも演出よ演出、別に一人で待ってるのが怖いとか、そんなんじゃないからねっ!」
 小太刀はユーベルコード【サモニング・ガイスト】を発動させ、鎧武者の霊を呼び出した。小太刀がいつも『オジサン』と呼んでいる、戦いのパートナーである。オジサンは可愛らしいウサミミを頭に装着していた。
「オジサンも、仕事手伝ってよ!」
 腕組みして現れたオジサンはうんうん、と無言で頷く。オジサンと小太刀は、時折扉を開けて入ってきたお客を凶器をぶん回して脅かす作業をひとしきり繰り返した。
「なんだかオジサンの迫力にいいとこ持ってかれてるような……?」
 無理もない、オジサンは仮装ではなく本物の霊なのだ。本物はやはり格が違う。その場に立っているだけで、圧倒的な迫力を醸し出すのだ。
「むむ、なんか悔しい!」
 その時、部屋の扉がバン! と勢いよく開かれた。部屋に入って来たのは、血みどろのカエルの着ぐるみを纏った杏だった。
「こ、小太刀、小太刀」
 ひっく、ひっくとしゃくりあげて泣いている杏が、小太刀に小走りに近寄ると、強くぎゅうっと抱き着いた。これをオジサンビジョンで見てみると、血みどろのかえるさんが包丁を持って血みどろのうさぎさんに抱き着いているのである。ホラー以外の何物でもない。
「ひぃー!? あ、杏!? なんで泣いてるの?」
「う~。小太刀、寂しかったぁ」
 小太刀の着ぐるみを涙で濡らし、杏はえんえん泣き続けるのだった。
「フム……お取込み中でしたかネ」
 ノインはそんな二人の様子を扉の陰から眺めていたのだが、やがてそっと扉を閉めて部屋を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『恐怖に打ち勝て!』

POW   :    恐怖の対象も気合いがあればなんとかなる!

SPD   :    ダッシュで走り抜ければ見なくてすむよね。

WIZ   :    目を瞑れば怖くない!頭良い!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。




 全ての参加者がダンジョンの入り口に到着したことで、肝試し大会は終了となった。ここからは、猟兵と魔法学生たちによる共同作戦、ダンジョン攻略ミッションの開始だ。
「さぁ、どんな罠や敵が待ってるんだろうな?」
「腕が鳴るぜ!」
 肝試し大会を楽しんだ学生達は、武器を手に次々と迷宮へと足を踏み入れていく。猟兵たちもまた、彼らを支援すべく後に続く。
「……?」
 だが、一部の猟兵達は最初の門を潜った時点で奇妙な違和感を感じていた。やがて、その違和感が『最悪の形』となって現れることを、彼らはまだ知らない。

<解説>

 第二章の冒険パートは、心理トラップをくぐり抜けるダンジョンとなっております。このトラップは、門を潜った者の記憶を魔術センサーが感知し、『その対象が最も恐れている存在』をリアルな映像として映し出すものです。恐怖に打ち勝つための方法を考えて、プレイングに書いてください。「怖れる物など何もない!」という勇敢な方も、潜在的に怖れているものや苦手な物が何かあるはずです。判定のために、何らかのリアクションをお願いします。もちろん、強引に突破するという方法もありです。
三蔵・迅
…ああ、そういうことですか、嫌な罠もあったものです
進む先に見えたものに苦い顔で笑って
目を瞑って進めるならそれが一番いいのですが
流石にそれで進めるほど甘くはなさそうですね

古来より火は魔除けと言いますし
幻覚など見えないほどの炎で照らして進むとしましょうか
そこには何も、ありませんよ

恐れるもの、止まない雨の音
恐れるもの、遠く聞こえるすすり泣く声
恐れるもの、…消え往くあの方、私の手は、届かない

例え幻だと分かっていても身が竦む
私の前から失われるあなたなど、悪夢だけで十分なのに


・【ブレイズフレイム】で視界を塞ぐ
・もし歩行危ない人がいれば支えます
・驚かすのは好きな癖に、臆病者のヤドリガミ

※アドリブ絡み歓迎です





 その迷宮は、足を踏み入れた者の『心の闇』を映し出す。心を持つものであるならば、人間も人外も、等しく。

 仄暗い石の通路を往くのは、ヤドリガミの青年、迅。地獄化したその青い瞳に、何を映し出すのか――。
「……ああ、そういうことですか、嫌な罠もあったものです」
 腰まで届く暗褐色の髪を揺らしながら歩を進めていた迅は、目の前に投影された忌まわしい映像に苦笑する。
 記憶。ヤドリガミである迅が、まだ人の姿を得る前の遠い日の記憶だ。いつの間にか、迅は故郷の町を歩いていた。
 雨音。止まない雨が曇天から降り注ぎ、町を濡らす。水たまりを避けながら、迅は道の先を目指した。
 幻影の雨の中を進む迅は、ある民家の前にやって来た。そこで、新たな幻が彼を襲う。 声。建物の奥から聞こえるのは、誰かがすすり泣く声だ。もちろんこれはトラップが生み出した幻聴に過ぎない。だが、耳にこびりつくそれはひどくリアルな感覚――。
「耳を塞ぎ、目を瞑って進めるならそれが一番いいのですが、流石にそれで進めるほど甘くはなさそうですね」
 そして、影。目の前に映し出されたある人物は、迅にとって縁の深い存在だった。すぐ傍にいるのに、手は届かない。消えゆく命を前に、私はただ見ているだけだった。
「そこには何も、ありませんよ。ええ――何もありません」
 眼鏡の奥で、迅の灰青の瞳が淡く輝く。意を決して、ブレイズフレイムの力を解く。
「炎よ、闇を祓い給え」
 古来より、火は魔除けとして焚かれることが多い。迅が地獄の瞳に念を込めることで発生したサイキックの炎が、幻覚の映像の中に流れ込む。すると、まるでライターで火を点けた写真が燃えていくように、迅の瞳に映し出された風景がみるみる焼け落ちていった。
「例え幻だと分かっていても身が竦む……。私の前から失われるあなたなど、悪夢だけで十分なのに」

成功 🔵​🔵​🔴​

ノイン・フィーバー
「なるほど。皆さんを怖がらせた事が、回りまわって私にも来ましたカ?」

最も恐れている存在:笑わない客

試しに軽くトランプマジックを披露してみるが、リアクションが皆無
ブーイングすらない
まったくの無反応の無味乾燥な視線だけがこちらを見ている

「ええ確かに、ワタシにとっては非常に恐れるモノですね。冷や汗どころではありませン」

ただし。

「今回、ワタシ、マジシャンではなく、猟兵としての参加ですので、あので、ですね?」

じゃきっとアームドフォートを構える

「嫌な客への火力による反撃が、赦されているのです」

フルバーストマキシマムの大火力で無表情な観客を吹き飛ばす
その画面には「Yeah!!」と表示されてたようで


冬原・イロハ
(過去。半年ちょい前に記憶を失っている)

とりあえず学生さん達の後に続きますー
一人の学生さんが視界から消えました。おや?
よく見ると影が差している感じですかね?
誰も気づいていない様で、あわわ、と思った瞬間に、また一人、二人

違和感…?
立ち止まって辺りを確認
誰か他の仲間の方はいらっしゃるでしょうか?
私、一人は好きですが、独りは苦手です。頑張ってついていきます

私に記憶があったならば、こんな、足元すら見えなくなる不安は感じないのでしょうが…
立ち止まって後ろを振り向いても、まだ「私」が歩いてきた道はないのです
だから前を見て駆けます

暫く走れば影も消えて学生さんの背中は再び見えてくるでしょうか?

アドリブ連携歓迎





 舞台に立つパフォーマーが最も気にすること。それは言うまでも無く、観客の反応だ。ノインは今、千人以上を収容する大きなホールに立っていた。先ほどまで、薄暗い迷宮を進んでいたというのに。
「なるほど。皆さんを怖がらせた事が、回りまわって私にも来ましたカ?」
 舞台袖で待機していると、軽快な音楽が流れてきた。ノインの出番だ。たとえこれが迷宮の魔力が生み出した幻影だとしても、ノインはこの舞台から去ろうとはしない。彼が、生粋のエンターテイナーであるがゆえに。
「サアサア、皆様お立ち会い!」
 会場を埋め尽くした観客の前で、ノインは得意とするトランプマジックを次々と披露していった。しかし、今日の客は反応がとても悪い。いや、悪いどころの話ではない。まったくの無反応である。
「…………」
 静まりかえった観客席。ブーイングひとつ聞こえてこない。老若男女の無味乾燥な視線が、ノインを冷ややかに見つめている。軽快な音楽が白々しく流れるステージ上で、ノインは立ちつくす。持ち時間はまだまだあるというのに。
「ええ確かに、ワタシにとっては非常に恐れるモノですね。冷や汗どころではありませン」
 こんな失態を犯してしまえば、普通の演者ならば暫くステージに立てなくなるだろう。しかし、この光景が幻であると認識できるだけの冷静さが、まだノインには残っていた。
「ですが……今回、ワタシ、マジシャンではなく、猟兵としての参加ですので。それで、ですね?」
 取り出したのは、娯楽の場に不釣り合いな鉄塊。冷たく光るアームドフォートの砲身だ。
「今のワタシには、嫌な客への火力による反撃が赦されているのです。このようにネ!」
 その銃口を、無表情な観客達へと向ける。慣れた手つきで全武装を起動させ、リミッターを解除。重火器の咆哮が劇場の沈黙を引き裂き、閃光と砲弾の奔流がノインの視界を覆い尽くした。

 久しぶりに生まれ故郷の世界、アルダワ魔法学園に戻ってきたイロハ。彼女は今、魔法学園の仲間とともにダンジョンの攻略に挑んでいる。制服姿の学生グループの背を追い、迷宮の奥を目指す。
「どうだい、ちょっとは魔法の方は上達したのかよ?」
「お前の方こそ、例のガジェットの試作品はどうなったんだよ? 今日は持ってきてないのか?」
 軽口を叩きながら、イロハの前方を征く若者たち。イロハはその中の男子学生の後姿を何気なく追いかけていた。すると突然、彼の姿が足元の影に呑みこまれて消失する。
「あっ……!」
 息を呑んで立ち止まるイロハ。しかし、他の学生は消えた若者にまるで気づく素振りを見せない。
「あわわ……消えてしまいました。教えてあげなきゃ……!」
 思い切って、彼らに声を掛けようとする。しかし、今度は並んで歩いていた二人がいっぺんに消失。学生のグループは一人、また一人と足元から伸びあがった黒い影に呑まれて消えていった。
 不気味な沈黙が、迷宮を支配する。先ほどから感じている違和感の正体は何なのか? イロハは思案する。
 イロハには、ここ半年以前の記憶がない。その原因は、イロハ本人にもわからない。猟兵の力に目覚めたことに、何か関係があるのだろうか。ぽつりと取り残された通路の真ん中で、イロハは立ち尽くしていた。
 一人でいることは好きだ。しかし、独りは苦手だ。
「誰か……いませんか?」
 胸に去来するのは孤独感。そして、抜け落ちた記憶に関する不安。イロハは悟った。この迷宮は、心の中の不安を映し出す鏡。
「私に記憶があったならば、こんな、足元すら見えなくなる不安は感じないのでしょうが……」
 立ち止まって後ろを振り向いてみても、まだ「私」が歩いてきた道はない。だから、今は前を見て駆けるのみだ。迷いを振り切り、イロハは一心不乱に闇の中を走った。すると、突然轟音と共に真っ赤な爆炎が目の前に広がった。
「キャッ」
 咄嗟に魔法の障壁を展開させ、爆風から身を守る。土煙が晴れてイロハがゆっくりと瞼を開けると、そこに立っていたのはタキシード姿の男。男は奇妙なテレビ型の覆面で頭部をすっぽりと覆っている。ノイン・フィーバーだ。
「やあ、これは失礼。驚かせてしまいましたネ。ちょっと派手にやってみようと思いまして」
「今のは、あなたが……?」
 仲間の猟兵と合流し、ほっと胸をなでおろすイロハ。どうやらトラップのエリアを通過できたらしい。背後から靴音を響かせ、魔法学生たちがやって来た。
「さ、次のステージへ行きまショウ」
 優雅な仕草で、イロハを案内するノイン。その頭部のモニターには、「Yeah!!」というメッセージが表示されていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蓮・紅雪
同行者:アイビス(f06280)

さあ、気を引き締めましょう(自分に言い聞かせる)
……?何だか嫌な感じがしなかった?気のせいかしら。
アイビス、慎重に行きましょう(彼女を庇う様に少し先に行く)

(十五歳になるまで自分を閉じ込めていた『銀の魔女』が現れる)
お、お前は……何故……!?
(真っ青になって固まる。完全に思考停止、しかしアイビスの機転で何とか復活)
ごめんなさい……もう、大丈夫よ(と言いつつ結構無理をしている)

だめね。もっと強くならないと。
さあ、次へ行きましょう。

※アドリブ歓迎
※銀の魔女は優しい大人の魔女、一人称は私、丁寧に話します。好きに使って頂いて問題ないです


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)
ついにダンジョンですね
気を引き締めていきましょう

先導ありがとうございます、紅雪
(ふと門の前で立ち止まり)
……何か…怪しいですね
ハッキングしてみましょうか
私が通る分くらいにはもつでしょう

(先に行った紅雪を見つけ、目の前の何かにUCを当てる)
何をしているのですか、紅雪
ただの映像に負けてはいけません
何より私がいるのです

もう心配する必要はありませんよ
(優しく抱きしめる)
落ち着いたら、いきましょう
私が着いていますから

アドリブ歓迎





 紅雪とアイビスの二人は、長い階段を降りて学園エリアの地下空間にやって来た。ここからは未踏のエリア。彼女らの行く先には深遠なるダンジョンが広がっており、本物の怪異が待ち受けている。
「ついにダンジョンですね。気を引き締めていきましょう、紅雪」
「そうね、アイビス。……大丈夫、私があなたを守るわ」
 真っ白な大理石で作られた、見事なゲートの前に並び立つ二人。その下を通り抜ける瞬間、紅雪は奇妙な違和感を覚えた。何者かに、心の中を覗かれるような感覚――。
「……? 何だか嫌な感じがしなかった? 気のせいかしら」
 その違和感を拭い去るように、紅雪は迷宮のゲートを潜り、内部へと足を踏み入れた。
「先導ありがとうございます、紅雪」
 危険な場所に赴くときは、いつも紅雪がアイビスの前を先導する。今回も、いつもと同様だ。
「……何か……怪しいですね」
 そしてアイビスもまた、大理石の門に不審な気配を感じ取った。電脳ゴーグルを取り出し、自身の周囲に素早く電脳空間を形成する。
「…………」
 壁に飾られた小さな松明の炎が揺らめき、アイビスの貌を照らす。ゲートの上部には、悪魔のような生物の彫刻が飾られている。アイビスはその彫刻を電脳ゴーグルでスキャンして罠が仕掛けられていないか調べてみたが、電子的な細工や蒸気トラップの類は施されていないようだ。
「トラップの可能性があるとするなら、魔術系トラップでしょうか……紅雪、気を付けて」
「……ありがとうアイビス、慎重に行きましょう」
 紅雪は、アイビスを庇うように彼女の少し先を征く。アイビスは自身の周囲に電脳空間を展開したまま、紅雪の後ろを静かに追従する。彼女に何かがあったとき、すぐに対応できるように。
 迷宮を進んでいた二人の前に、異変は程なくして訪れた。眩い光が突如紅雪の眼前に広がり、虚空から一人の女が出現したのだ。ローブを纏った美しい女――紅雪は、彼女の事をよく知っている。その姿を目にした途端、紅雪の過去の記憶が紐解かれた。
「お、お前は……何故……!?」
『紅雪――』
 彼女の名を呼ぶのは、『銀の魔女』。紅雪が十五歳を迎えるまで、彼女を幽閉していた人物である。――籠の鳥。当時の紅雪を言い表すのならば、自由を奪われた彼女はまさに籠の中の存在だった。
『――大丈夫。あなたはずっと、私の元に居ればいい……』
 呪いを受けた母から生まれた紅雪は、母と同様<忌む者>と呼ばれて育った。親族からも拒絶され、やがて『銀の魔女』の元に預けられたのだ。
『さあ、帰りましょう』
 たおやかな手を紅雪に差し出す『銀の魔女』。紅雪は、何もできず立ち尽くしている。顔面蒼白のまま身体を硬直させ、愛刀に手を伸ばそうともしない。
「あ……ぁ」
 紅雪の脳裏にフラッシュバックしたのは、幼少期の記憶。物心ついたときには、紅雪は既に一人だった。大きな屋敷の地下牢に幽閉され、与えられるのは食事と僅かな本だけ。その地下牢で、紅雪は長い時間を一人で過ごした。『銀の魔女』以外とは誰とも関わらなかったため、感情の表現方法をほとんど知らなかったが、彼女から与えられる本を読んでいる間だけは不思議と心が安らいだ。子供が読む夢物語に始まり、世界の動植物を描いた図鑑や、名著とされる小説。神と魂について説いた宗教書。あるいは物理法則を記した学術書。年を追うごとに複雑な内容を理解できるようにもなった。それらによって幅広い知識を得ることが出来たが、人との関わり方は分からなかった。ある日、『彼女』によって外に連れ出されるまでは。
「――何をしているのですか、紅雪」
 刹那、アイビスの掌から迸った紫電が『銀の魔女』の身体を貫く。迷宮のトラップが生み出した幻影の魔女は、アイビスのサイキックブラストを受けて霧散するように消滅していった。紅雪の眼前に転がっていたのは、破壊された悪魔の彫像だった。
「ただの映像に負けてはいけません。何より私がいるのです」
 アイビスは立ちつくす紅雪に歩み寄ると、そっと彼女を抱きしめて囁いた。
「……もう心配する必要はありませんよ」
「ごめんなさい……もう、大丈夫よ」
 不安を拭い去るように口では強がったが、動揺は隠しきれない。そんな紅雪の手を、優しく包んで握るアイビス。オレンジ色の瞳が、紅雪を静かに見つめた。
「落ち着いたら、いきましょう。私が付いていますから」
 紅雪がアイビスと出会ってから二年、二人で様々な場所を旅した。紅雪はアイビスと出会ったことで、少しずつ感情を表現する方法や社会との関わり方を覚えた。アイビスの前でなら、自分の弱さも曝け出せる。
「……だめね。もっと強くならないと。さあ、次へ行きましょう」
 やがて身体の震えは治まり、紅雪は再びアイビスとともに迷宮の奥へと歩き出した。二人の冒険は、きっとこれからも長く続くだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ファラン・ウルフブラッド
目に映るのは豪奢な装飾の施された王座、周りを見渡せば下卑た笑みを浮かべる貴族や殺気立った家臣達。
そして、蔑んだ目をした前王とその妾や腹違いの兄弟達が居た。

「なるほど、あの時(クーデター)か。王族として、貴族として、その務めと立場を忘れた腐った豚共が……」

己を見る全ての目と口から発せられる悪意・敵意・侮蔑、それが見えないプレッシャーとして心を焼いてくる。

当時の己はそれに耐え切れなかった。…だが、今は違う。
背負ったバルムンクを抜き放ち、一薙ぎ(UC)で視界内の『敵』を微塵にする。

「是非もなし、貴様等はあの時から変わらず我の敵よ。我が怒りの前には、恐怖心などあっという間に燃え尽きたわ」





 不気味に静まり返ったダンジョンの通路に、靴音が規則的に響き渡る。音の主は逞しい長身を漆黒の甲冑で覆った青年、ファラン・ウルフブラッドだ。アルダワ地下ダンジョンの内部に日光は届かず、光源は魔術の炎が灯った松明のみ。冷たい石の壁に、男の影が映し出される。
「……むっ」
 ファランが石の回転扉に力を込めて潜り抜けると、そこには異様な光景が広がっていた。それはファランにとって馴染み深く、また実に懐かしいものだった。そこは堅牢な石の壁に囲まれた、天井の高い大広間。床には上質の絨毯が敷かれ、壁には数々の調度品や武具が飾られている。
「これは、まさか……」
 そして、部屋の最奥で一際存在感を放っているものがあった。王国の最高権力者のみが座ることを許される、豪奢な玉座だ。ファランは今、その椅子から己を取り巻く人間を見渡している。彼の名代として地方を治める貴族達が武装した兵士を率いて下卑た笑みを浮かべ、ファランの手足となって働く家臣は殺気に満ちた眼でファランを見ている。彼の親族である先代の王とその妾、腹違いの兄弟たちもまた、兵士に守られながらファランに冷ややかな視線を投げかけていた。
 かつてダークセイヴァーが吸血鬼に侵略される前に存在した、古の王国。ファランは今、自身が国王だった頃の記憶を追体験している。
「なるほど、あの時か。王族として、貴族として、その務めと立場を忘れた腐った豚共が……!」
 忘れるはずもない、これは、あのクーデターの一部始終だ。王位を継承した若者は、国をより良くするための理想に燃えていた。腐敗した貴族を一掃すべく、大胆な改革に乗り出した。――だが、王国の腐敗はファランが想定した以上に進行していた。
 地方では悪徳商人が領主と癒着して幅を利かせ、暴利を貪り放題。都では既得権益に群がる貴族と王族が暗闘に明け暮れ、宮廷は毒蛇の巣と揶揄された。ファランが掲げた理念は、受け入れられなかった。代わりにファランが得た物は、敵意と悪意と侮蔑だった。
 ファランは人々から投げつけられる罵声と刺々しい視線を黙殺し、神剣バルムンクを抜き放つ。
「――是非もなし。貴様等はあの時から変わらず我の敵よ」
 ファランは、目の前の光景が魔術によって作られたトラップであると即座に理解した。そして、この後の展開も織り込み済みだ。当時の彼はプレッシャーに耐えられず、封印の魔術に屈した。だが、今は違う。
「我が怒りの前には、恐怖心などあっという間に燃え尽きたわ。……消え失せよ、俗物!!」
 裂帛の気合いと共に、ファランは長剣を一閃。生み出された無数の真空刃が群衆を薙ぎ払い、瞬く間に漆黒の塵へと変えていった。
「…………」
 それを見届けるとファランは剣を鞘に収め、霧の晴れた道を再び歩き出す。戦いの中で編み出したユーベルコードは、オブリビオンを駆逐するための力。そして、今も胸に灯り続ける怒りの炎は、再び理想を追い求めるための力。その二つの力が、今のファランを突き動かしているのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

木元・杏
【かんさつにっき】
……ん、ん?
門をくぐれば違和感

ぐるっと周りを見渡して

シリンは平気?
ん、わたしに見えてるのは、おかあさんとおとうさん
わたしの頭には、ウサミミがのってる(くい、とウサミミをつまんで)
おとうさんがこれをわたしにのせると、おかあさんがぷいって怒って、おとうさんが慌てる
ケンカ?
……家族がケンカするの、一番嫌で怖い
だから【うさみみメイドさんΩ】
ん、元凶のおとうさん、しばいて?

その隙にすたすつ駆け抜け……
まつりん?
たまこにビビってるまつりんも回収

真琴は小太刀に任せたらいい?
ん、皆で手を繋いで勇気と気合い分けあって

……海莉
(そっと手を繋いで)
海莉も、ひとりじゃなくていい
大丈夫、一緒に行こ?


木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

はー、逃げ切ったー。なんか怖かったー(まだぷるぷるしてる)。
肝試しって、恐いね。なんでわざわざ恐いことするんだろ? 変なのー!

っと、次の扉は……
ん? 白い羽根?
……いや、ココにはいないよ? いないよね?

あ、あれ。
なんでいるの?
たまこは、おうちでお留守番でしょ?
おいら、お仕事だから。
だから、通してくれないと。ね?

ね……(回り込まれてしまった!)
むぅ。通してくれないと、おいらにも考えがあるよ!
うぅ……い、出でよ、メカたまこ!
たまこがこっち来ないように……わー!

たまこコワイたまこ……!(ぐしぐし泣きながらダッシュ!)

なんで意地悪するんだろー?
おいらのコト、好きなのかなあ?


南雲・海莉
【かんさつにっき】
(一瞬、青褪めてから、首を振り)
……皆は、大丈夫?

怯える生徒達の互いの【手を握ら】せ【鼓舞】
この温もりは幻じゃない
一人で乗り越える必要なんて無いの

祭莉くんと杏さん、
真琴くんと小太刀さんの手をつなぐ様子に頷いて
シリンさんも大丈夫?

私は大丈夫
見るのは二度目だから
(自身の恐怖は『探し人の死』
見えるのは『黒髪の青年の様々な死に様、そして虚無を映す彼の金色の瞳』
【勇気】【覚悟】を持って【庇う】ように前に)
全て、私の勝手な想像

(手をつなぐ感触にはっとしたように)
そうね、私も一人じゃない
(杏さんにありがと、と笑み
そして反対の手でシリンさんの手をそっとつないで)

だから真っ直ぐに進むわ


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

真琴も来た!
…いや別に、一緒で嬉しいって訳じゃないけどさ?(超嬉しい姉バカ

…あれ、真琴?

蘇るは弟が行方不明になったあの日の事

朝も夜も毎日毎日顔を合わせて
鬱陶しいぐらいだったのに
すぐ泣くし、すぐ怒るし、昨日だって喧嘩して
でもお姉ちゃんでしょって言われてさ
別に好きで先に生まれた訳じゃないのにね
それでも
いつも一緒に居た筈なのに
外は土砂降りの雨なのに
たった一人で何処に行ったのよ?
勝手に居なくならないでよね?

世界中を捜し回って
それでも見つからなくて
それでも無事を祈って…

手の中のグリモアを握りしめ
雨音の先の未来の中に弟を探す
見つけたらぎゅっと抱き締めて
大丈夫、お姉ちゃんが付いてるからね!


シリン・カービン
【かんさつにっき】

門をくぐる瞬間、私に精霊が囁く。
恐怖の精霊が。

凍りつくように絶望に目を見開いた老人。
視線の先には血塗れで倒れる娘。

私は、どうすることも出来ず、
それを見ていた。

「…師匠」
真っ青な顔に汗を滲ませながら、思わず口をつく。
出てくることは予想していましたが、
好んで触れたくは無い記憶。
ああ、恐怖の精霊が私の中で笑っている。
私は、こんなにも、弱い。

冷たく強張った私の手に、繋がれる手。
「…海莉」
その温もりに意識が立ち直ります。

猟の師匠のかつての言葉。
『正しく恐れろ』
恐怖もまた己の一部。
正しく認識すればそれは力ともなる。

師匠の幻影を指鉄砲で狙い撃ち。
師匠、もう大丈夫。
今の私は一人では無いから。


琶咲・真琴
【かんさつにっき】

少し出遅れましたが
皆と合流です(門潜って違和感

ねぇ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃん
今何か変な感じがしなかっ…た……(悪寒感じて恐る恐る振り返り

無言で全力疾走
ただ、ひたすら逃げる(逃げ足&ダッシュ

ぎゃぁぁぁぁ!
まだ来てるぅぅ!

お母さん、黙って家出てゴメンなさーいっ!!
書置きしておけば、大丈夫って思ったんだよぉぉ!?

お母さんの事は大好き
だけど、怒ったお母さんは怖いぃぃ!
無言の笑顔で迫ってくるから余計に(昔は悪戯してよく怒られてる


……そういえば
姉ちゃんは親父たちの代わりにオレを探してたんだっけ?
母さんもすごかったとか

……今はここに居るから
どこにも行かないよ
姉ちゃん


アドリブ・絡み大歓迎





 その迷宮は、訪れた者の心の中を暴き出す。無意識の恐れ、不安、幼少期のトラウマ――様々な感情が具現化されて形を成し、人々の前に立ちふさがる。【かんさつにっき】の一同は、揃って迷宮のゲートを通り抜ける。ゲートの上部に備え付けられている魔術センサーが彼らの記憶を読み取り、それぞれの『過去の恐怖』に基づく映像を生み出すのだ。
「……!」
 シリンがゲートをくぐる瞬間、恐怖の感情を司る精霊が彼女に何事か囁きかけた。
「……ん、ん?」
 直感的に違和感を覚えたのは、シリンだけではない。杏もまた、自身の心の中を読み取られるような奇妙な感覚に陥る。
「杏、大丈夫ですか」
 シリンは、傍らを歩く杏に呼びかける。杏は立ち止まり、ぐるっと周囲を見渡す。どうも様子がおかしい。海莉も青ざめた顔で、首を振っている。
「……みんなは、大丈夫? 何が見えているの?」
「ん、わたしに見えてるのは――おかあさんとおとうさん」
 杏の目に映し出されたのは、自宅の居間でのひととき。家族一緒だ。ちょいちょい、と手招きして杏の父が彼女を呼ぶ。
「なあに、おとうさん」
 すると彼は、杏の頭に白い何かを乗せた。
「ウサミミ……?」
 くい、と不思議そうにウサミミをつまむ娘を見て、うんうんと満足げに微笑む。さらに、その姿を携帯のカメラに収めようとする杏パパ。
「あれ……おかあさん、怒っちゃった?」
 その様子を見ていた杏の母が、口をへの字にして不機嫌そうに父に詰め寄る。慌てた様子で、何事かフォローし始める父。
「わたしのことで、ケンカしてるのかなぁ? 二人が仲悪いところを見るの、こわい」
 おとうさんとおかあさんはいつも、笑顔でいるのがいい。二人がケンカをしているところは、怖くなるから見たくない。子供ならば、当然の気持ちだ。
「だからね、うさみみメイドさん。元凶のおとうさんを、しばいて?」
 杏の呼び声に応じ、キュートなうさみみメイドのお人形がポンッ! と出現。『どうしてそうなる!?』と狼狽えた様子の杏パパ。召喚された50体近いうさみみメイドは、キックやチョップで次々と攻撃を加えるのだった。


 物心つく前から、海莉の周囲は死に満ちていた。家族と友人を立て続けにUDC事件で亡くして以来、天涯孤独となった海莉は旅先で出会った少年と共に暮らすようになった。後に義兄と慕うようになる彼は、彼女の先達である猟兵だった。
 彼に連れられて訪れたアルダワ学園に預けられた後も、海莉は猟兵として研鑽を重ね続けた。いつの日か、兄と再会するために。彼に恩返しをするために。しかし――。
 猟兵の仕事は、常に死と隣り合わせだ。彼はまだ達者でいるのだろうか。もしかしたら、危険な目に遭って――。そんな不安が、海莉に様々な『死のビジョン』を見せてくる。黒髪の青年が、銃に胸を撃ち抜かれる姿。魔物の爪牙にかかって倒れる姿。邪悪な呪いに体を蝕まれる姿。命消えゆく彼の金色の瞳には、何も映ることはない。ただ、虚無のみがあった。
「兄さん……!」
 喉から絞り出した悲痛な叫び声が、真っ暗な迷宮に響き渡った。


 生ぬるい風が肌を撫で、恐怖の精霊がシリンを嘲笑うように彼女の周囲を飛び回る。シリンが見ている映像もまた、残酷で無情な光景だった。
 シリンの額から冷や汗が噴き出し、頬を伝い落ちていく。昼なお暗い森の奥。張りつめた空気の中、老人が絶望の表情で目を見開く。その視線の先に、少女が血まみれで倒れている。既に呼吸をしていない。シリンは何もできず、その様子をただ見ていた。
「――師匠」
 青ざめた顔に汗を滲ませ、か細い声で師の名を呼ぶ。この悪夢が出てくることは、予想していた。だが、あまり触れたくはない記憶だ。猟兵として鍛練を積み、自分は少しは強くなったつもりだった。だがこの記憶を見せられると、無力だった自分を思い出される。――強くなった、本当に? 疑念が頭をよぎる。
 ああ、恐怖の精霊が私の中で笑っている。私は、こんなにも、弱い。


「あっ、真琴も来た! ……いや別に、一緒で嬉しいって訳じゃないけどさ?」
 小太刀は遅れてやって来た弟の真琴と合流し、再会を喜び合っていた。普段は態度に出さないが、小太刀は姉バカである。歳の離れた弟が、可愛くない筈はない。しかし二人で門を潜った瞬間、真琴と小太刀は奇妙な感覚に陥った。小太刀の視界には、故郷の世界UDCアースの見慣れた風景が広がっている。気がつけば真琴の姿は傍らになく、姉弟は再び離ればなれになってしまっていた。
「真琴!? どこに……」
 小太刀が見ているのは、弟が突然家からいなくなった夜の出来事だ。あのときは、家中が大騒ぎになった。
「朝も夜も毎日毎日顔を合わせて、鬱陶しいぐらいだったのに。すぐ泣くし、すぐ怒るし、昨日だって喧嘩して、でもお姉ちゃんでしょって言われてさ」
 小太刀は土砂降りの雨の中を駆けだした。世界中を捜し回って、それでも見つからなくて、それでも無事を祈って………放ってなんておけるわけないじゃない。だって私は、あなたのお姉ちゃんなんだから。好きで先に生まれたわけじゃないけどさ。


「ねぇ、お祖父ちゃんとお祖母ちゃん。今何か変な感じがしなかっ……た……」
 背後から悪寒を感じた真琴は、恐る恐る後ろを振り返る。そこに立っていたのは――。真琴がよく見知った顔だった。
「!!!!」
 彼女の姿を認識した真琴は、その瞬間から持てる力を全て使って全力疾走していた。ここで見つかったのは、実にマズイ。
「ぎゃぁぁぁぁ! まだ来てるぅぅ!」
 柔らかな笑顔を崩すことなく、それでいて真琴を今にも捉えんばかりのスピードで追跡するのは、彼の母であった。悪戯小僧だった真琴は、よく怒られたものだ。その時の満面の笑顔が、真琴の強烈なトラウマとなっている。
「お母さん、黙って家出てゴメンなさーいっ!! 書置きしておけば、大丈夫って思ったんだよぉぉ!?」
 お母さんのことは、勿論大好きだ。だけど、怒っているお母さんは本当に怖いのだ。無言の笑顔で迫ってくる分、余計に怖い。
「……そういえば、姉ちゃんは親父たちの代わりにオレを探してたんだっけ……」
 それから真琴は、夢中で闇の中を走り続けていた。すると彼の前方に光の壁が出現し、その中から長い銀髪の少女が現れた。
「姉ちゃん……?」
「もう。たった一人で何処に行ったのよ? 勝手に居なくならないでよね?」
 ようやく真琴の姿を見つけた小太刀は、弟の手をぎゅっと握る。もう、勝手に何処にも行かないように。グリモアの力を使い、世界中を飛び回って真琴を探し続けた。あの日の激しい雨音が耳から離れず、眠れない夜もあった。だけど、最愛の弟は今、確かにこの手の中にいる。精一杯彼を抱きしめ、ずっと言いたかった言葉を口にする。
「大丈夫、お姉ちゃんが付いてるからね!」
「……今はここに居るから。どこにも行かないよ、姉ちゃん」


「はー、逃げ切ったー。なんか怖かったー」
 墓場で巨大なノコギリ鉈を持った狩人に追われていた祭莉は、やっとの思いで逃れることができた。まだ、全身がプルプル震えている。肝試しって、なんでわざわざ怖い思いをしようとするのだろう。そんな事を考えながら、次の部屋への扉を開ける祭莉。その視界に飛び込んできたのは、白い羽毛の塊だった。
「……いや、ココにはいないよ? いないよね?」
 絶対ここにはいない筈だ。なのに、何故翼を広げて祭莉を威嚇しているのか?
「コッ、コッコッコッコッ……」
「あ、あれ。なんでいるの? たまこは、おうちでお留守番でしょ? おいら、お仕事だから。だから、通してくれないと。ね?」
 まつりんは逃げ出した!(ダカダカダカッ)しかし回り込まれてしまった!
「ね……」
 木元家のヒエラルキーの頂点に立つのが、この白いニワトリ、たまこである。たまこが産み落とす卵は大変美味で、栄養価も高い。しかしたまこは凶暴ゆえ、回収には細心の注意を要するのだ。
「むぅ。通してくれないと、おいらにも考えがあるよ! うぅ……い、出でよ、メカたまこ!」
 メカたまこを呼び出し、囮にさせて逃げようとする祭莉。しかし、たまこのほうが圧倒的に早い!
「コッ、コッ……コケーーッ!」
 バサバサッ! と羽を羽ばたかせ、高々に鳴いて祭莉に飛びかかるたまこ。嘴と大きな爪が、祭莉を狙っている。
「たまこコワイたまこ……! なんで意地悪するんだろー? おいらのコト、好きなのかなあ?」
 涙目になりながら、幻のたまこから逃げ惑う祭莉。無我夢中で走っていると、不意に祭莉の右手を誰かが強く掴んだ。
「まつりん、こっち」
 はっと祭莉が振り向くと、そこには見知った少女がいた。
「アンちゃん……」
 杏だけではない。【かんさつにっき】の仲間が、祭莉の目の前に揃っていた。


「――そう、全て、私の勝手な想像」
 すべて、私の不安が生み出した幻なんだ。彼はきっと、今もどこかで戦っている。
「……海莉」
 杏の小さな右手が、海莉の左手をそっと握る。それだけで、張りつめた心がほぐれていくようだった。そう、この手の温もりは幻なんかじゃない。真実だ。
「海莉も、ひとりじゃなくていい……大丈夫、一緒に行こ? ほら、まつりんも」
「うん。おいらも……たまこはコワいけど、アンちゃんと一緒なら平気!」
 涙目の祭莉だが、杏と合流できたことで多少落ち着いたようだ。そう、独りじゃない。今は、大切な仲間がいる。皆と一緒なら、何処にでも行ける。そう思うと、海莉の胸に勇気が湧いてきた。ありがとう、と杏に感謝を述べ、青白い顔で沈黙していたシリンに声を掛ける。
「シリンさんも大丈夫?」
 杏と繋いだ左手と反対の右手で、シリンの手にそっと触れ、彼女の右手を優しく握る。驚いたように目を見開き、シリンは海莉を見つめた。
「……海莉」
 冷たく強張っていた手に、海莉が触れた。その瞬間に、シリンははっきりと自我を取り戻した。
「……すいません、海莉。自分を見失っていました」
 猟の師匠がかつて言っていた言葉が、今になって思い出される。『正しく恐れろ』その意味が、今になって理解できた。恐怖もまた、自分の己の一部なのだ。感情にさえも、精霊は宿る。正しく認識すれば、それは己の力になるのだと。
「……私はもう大丈夫です、師匠。今の私は一人ではないから」
 海莉と繋いだ左手と、反対の右手で銃を形造る。その指先で師の幻影に狙いを定めると、シリンは恐怖の精霊を弾丸として撃ち出す。指先から放たれた漆黒の弾丸に撃ち抜かれ、彼は煙のように消えていった。
「みんな、心配させてゴメンね。真琴、見つかったわ!」
「うう、やっぱりまだ子ども扱い……」
 小太刀と真琴の姉弟も、無事合流できたようだ。真琴は小太刀を放さないように、しっかりと手を握っている。
「そうね、私も一人じゃない……だから真っ直ぐに進むわ」
 一人じゃない、とシリンの言葉を繰り返し、海莉は再び迷宮の奥へと歩を進める。六人の猟兵はそれぞれの想いを胸に、恐怖を乗り越えたのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『死霊兵』

POW   :    剣の一撃
【血に濡れた近接武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    弓の一射
【血に汚れた遠距離武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    連続攻撃
【弓の一射】が命中した対象に対し、高威力高命中の【剣の一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。

イラスト:のりしろこ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵と魔法学生は迷宮に仕掛けられた罠を潜り抜け、更に深部を目指す。やがて時間の感覚も麻痺し始めた頃、前方から無数の足音が近づいてきた。人間の足音ではない。そして、迷宮の淀んだ空気に混じって滲み出る負のオーラ。死の気配と言い換えてもいい。退魔を生業とする者ならば、それが亡者の発するものだと容易に特定できたであろう。
 現れたのは、死の軍団だった。とうに朽ち果て、全身の骨が剥き出しになった異形の兵士たち。血錆びた長剣と弓で武装し、体には粗末なぼろ布を纏っている。如何にも、過去からやって来た亡霊といった出で立ちだ。
「うわあ、災魔だっ!」
 誰かが悲鳴を上げた。戦闘経験の乏しい新入生達に、動揺が広がる。
「俺達の出番だな……!」
 学生達を見守っていた猟兵はそれぞれの武器を構え、死霊兵士の前に進み出る。己の心に潜む恐怖心を克服した今、亡者など取るに足らない相手だろう。学生達をサポートし、彼らの勝利に花を添えるのだ。
蓮・紅雪
同行者アイビス(f06280)

アイビスのUCを駆け抜け、全力で衝撃波を放ち死霊たちを薙ぎ倒すわ。
(アイビスに注意され)ごめんなさい、サポートだったわね。
(UCでアイビスまで転移)これくらいのオブリビオンなら薄紅の指輪で操れるわね(死霊の攻撃が学生に当たりそうになったら金縛りに合わせるなど。狼にもサポートさせつつ)良かった、自信がついて来たようね。

(調子に乗った学生の魔法攻撃がミスでアイビスに当たりそうになり激昂)お前!オブリビオンとの戦闘でふざけるなど、死にたいの!?
(刀を抜いて学生に詰め寄ろうとするが、アイビスにたしなめられ)
命は大切にしなさい(その後最後までフォローに徹する)

※アドリブ歓迎


アイビス・ライブラリアン
同行者:紅雪(f04969)
動揺した新入生たちがいるようですね
あくまでも彼らのサポートですので、ほどほどにしましょうか

まずUCを使って迷宮を作り出し、生徒と死霊兵士を分断します
すぐには戦わせずに、まず生徒たちの冷静さを取り戻させます
落ち着いたと判断したら、迷路を動かし、生徒たちが攻撃を与えられるように
危ないと思ったところは属性攻撃でカバーしましょう

……ところで紅雪(といって紅雪と敵を分断)
彼らのサポートが役目なのに、主役になろうとしてどうするのです
貴女も落ち着きなさい

アドリブ歓迎


冬原・イロハ
「わわわ、これが災魔ですか……!」
動揺する学生さんに混じって、私も動揺してしまします
わあ、これがホラー! がいこつ!
……ですが、頑張りましょう!
頼りになる皆さんがいるのです。私も猟兵として頑張りたい

『SPD活用』
立ち回りは主に援護
学生さんや、猟兵さんの隙を補うように、戦斧を手に動き回ります!
敵の弓の一射へは、ヴィントホーゼを使い攻撃を阻みます
衝撃波で叩き落とすなり、戦斧で叩き落とすなり

戦闘時間が進んで、ころころ転がり出したホネに足をとられないように~
たまにヴィントホーゼの余波とかで、片付けるように足場確保しますね
学生さんもいますし、危ないです

お掃除お掃除、きれいきれい、ぽいぽいっと





「あわわ、こっちに骸骨が迫ってくるぜ!」
「えらいこっちゃあ……!」
 経年劣化した武具に身を固めた死霊兵の一団が、暗い通路にひしめいている。その様子を目にした新入生たちは、慣れない実戦へのプレッシャーから混乱状態に陥っている。低レベルの災魔とはいえ、このままではまずい。
「わわわ、これが災魔ですか……!」
 動揺する学生たちに混じり、あたふたと慌てた様子を見せているのは、真っ白な毛並みのケットシー・イロハ。そんなイロハの元へ、カチャカチャと骨の揺れる音を立てながら骸骨剣士が迫る。
「わあ、これがホラー! がいこつ! ……ですが、頑張りましょう! 頼りになる皆さんがいるのです。私も猟兵として頑張りたい」
 そう、ここには頼れる仲間の猟兵が揃っているのだ。そして、今ではイロハも猟兵の一員。ならば、今こそその力を発揮する時だ。イロハは愛用の武器を構え、心を奮い立たせて敵を迎え撃つ。
「動揺した新入生たちがいるようですね。私達猟兵はあくまでも彼らのサポートですので、ほどほどにしましょうか」
 学生たちの列を掻きわけて現れたのは、紅雪とアイビスのコンビだ。このまま戦えば敵味方が入り乱れる乱戦となるため、猟兵としてはサポートがしにくい。そこで、まずは敵を分断するのが狙いだ。
「まず、私が迷宮を作ります。あなた達はその後に紅雪に続いて突撃を」
 アイビスが【知識の迷宮】を発動させ、無数の本棚でできた迷宮を作りだす。地面から出現した本棚はひとりでに動いて脱出困難な迷路を構築し、死霊兵の進軍を妨げる。出口は一つしかないため、当然敵の進軍ルートは絞られる。こちらは、迷路を抜けて出口から出てくる敵を迎え撃てばよいのだ。
「おお! 本棚で道が作られていくぜ」
「なるほど、ああやって敵の進行ルートを定めてやればいいってわけか」
 奇跡の力・ユーベルコードがもたらした現象に、沸き立つ学生たち。これにより、学生たちは態勢を整える余裕を得た。それぞれのジョブ能力に応じた役割を分担し、戦闘準備を整える。攻守に優れたマジックナイトや竜騎士は武器を構えて前線に。精霊術士やシンフォニアは味方の能力を強化する魔法を発動させ、サポートを始める。
「雪華、紅雨……あなたたちの魔力を貸してちょうだい」
 紅雪は母の形見である『薄紅の指輪』に念を込めた。すると、紅雪の周囲に発生した霧の中からそれぞれ見事な銀と紅の毛を持つ二頭の狼が現れた。雪華と紅雨は、かつて紅雪の母親が可愛がっていた魔狼。母亡き後は、紅雪の守護霊として指輪に宿ったのだ。ざわめく学生たちを尻目に、紅雪は魔狼とともに颯爽と進撃を開始する。
 黒紅の刀を抜き、敵陣へと斬りかかる紅雪。彼女に目掛けて、死霊兵がきりきりと弓を引き絞り、一斉に矢を放つ。紅雨と雪華はそれぞれ素早く左右に散開。低い姿勢から一足飛びに距離を詰め、弓兵に激しい体当たりを食らわせる。弓兵の背後から、歩兵が長剣を閃かせて紅雪に斬りかかった。
「道を開けろ……!」
 紅雪は愛刀を振るい、衝撃波を叩きつけて敵群をなぎ払う。彼女に続き、魔法学生たちが一気に突撃を開始。電撃を帯びたルーンソードが、炎の精霊弾が死霊兵の腐食した体を切り裂き、吹き飛ばす。
「わわ、皆さん突撃していきました! 私も参加しないと……」
 戦況を見守っていたイロハも、後に続かんと慌てて戦斧を引っ張り出す。よく手入れされたバルディッシュは、ピカピカに輝いている。今日この日が、この斧の初陣だ。
「お覚悟!」
 気合の声と共に、イロハは秘技『ヴィントホーゼ』を発動。イロハの周囲に渦巻く強風が発生し、通常の何倍もの高速移動が可能となる。イロハは放たれた矢のように駆け出し、戦斧を閃かせて骸骨剣士に打ちかかった。魔法学生達の間を縫って、一陣の疾風が駆け抜ける。
「やあ!」
 横薙ぎに斧を振るい、円盾を弾き飛ばす。長剣が上段から振り下ろされるが、イロハは素早く側面に回り込む。その遠心力を活かして膝を薙ぎ払うと、骨の身体はダルマ落としのように崩れていった。半ば崩壊した体に、学生が放ったガジェット銃の弾丸が次々と撃ち込まれる。
「効きませんよ!」
 イロハに向けて、弓兵から次々に矢が射掛けられる。しかし、ヴィントホーゼによる気流を纏ったイロハは意に介さない。落ち着き払って弾道から体をずらし、斧を振るって片っ端から叩き落していく。そんなイロハの傍らを、紅雪が魔狼を引き連れて駆け抜けていった。羅刹の少女は狼達と連携を取り、一体ずつ敵を確実に屠っていく。
「……ところで紅雪、彼らのサポートが役目なのに、主役になろうとしてどうするのです。貴女も落ち着きなさい」
 本棚のバリケードを生成して、紅雪と敵を分断するアイビス。彼女が敵を片付けるのは結構だが、それでは学生たちの戦果にならないだろう。紅雪は狼とともに、アイビスの元へ瞬時に後退してきた。
「ごめんなさい、今回の仕事はサポートだったわね……。狼たちには生徒をサポートさせましょう」
 紅雪は指輪の力で魔狼を操り、骸骨兵士にけしかける。飛びかかって組み付き、動きを封じたり、ジグザグに走って矢の無駄射ちを誘う。その隙に、学生たちが一斉に攻撃を叩き込んでいった。
「フハハハ! 我が雷に撃たれて滅ぶがいい! 名付けて『雷神の鉄槌(ミョルニル)』!」
 若干厨二病入った精霊術士の少年が、雷属性の魔法を広範囲にぶちこむ。威力は申し分ないが、コントロールがいまいちのようだ。その落雷が、あわやアイビスに当たりそうになった。咄嗟に本棚を出現させてやり過ごすアイビス。
「命中率に難がありますね」
 冷静に分析するアイビスと対照的に、紅雪は激しく憤っている。刀を抜くと、紅雪は精霊術士に激しく詰め寄った。
「お前! オブリビオンとの戦闘でふざけるなど、死にたいの!?」
「サ、サーセン……」
 素に戻り、すっかり委縮している学生。だがアイビスが紅雪を嗜めたことで、その場は丸く収まったようだ。
「……命は大切にしなさい」
「紅雪も、興奮しすぎないように」
 その後は二人で前線をサポートし、学生たちのフォローに徹していたようだ。
「わ、そこらじゅうホネがいっぱい……皆が足をとられては大変ですね」
 学生と猟兵連合は的確に死霊軍団を蹴散らしていたが、辺りには斃した敵兵の骨が散乱するようになった。イロハはヴィントホーゼの余波で地面を掃くように走り、散乱する骨を端に寄せて片付ける。ユーベルコードは攻撃以外にも、こういう形で役に立てることがあるのだ。
「お掃除お掃除、きれいきれい、ぽいぽいっと」
 戦場の掃除人イロハ。肩書はかっこいい響きだが、イロハ本人はとても楽しげに働いていたのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

木元・祭莉
【かんさつにっき】でー!

あ。
今度は、ほねっこがいっぱいだ!(ウキウキ)
うん、おいらは羽根が生えてなきゃ大丈夫っ♪
コケッていわないし!

委員長、番長、アレはお化けじゃないからね?
れっきとした災魔だから。恐くないよー♪
ね、アンちゃ……災魔だよ? ね?

あ。(ほね)
リンデンも……行く?

よっしゃー!
(ほねっこ追っかけてダッシュ)
てや。
(半身から籠拳で剣の腹を打って軌道を逸らし)
ほい。
(体勢を崩したところにスライディングで足払い)
うしゃ。
(倒れたトコに飛び乗って灰燼拳いっぱつ)
ほらね、物理で壊れるでしょー!

ほらほら。見て見てー♪
(バラバラ骨々になった一体を見せにくるご機嫌わんこ)
恐くないよね? ねっ♪


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

絵に描いたようなほねほねさんの群れだね
ほーら祭莉ん、リンデン、ほねほねだよー♪
拾った骨を災魔の群にポーンと投げてみたり
いやいやこれはね
新入生達に敵の動きを実際に見て貰う為でね
別に遊んでる訳じゃないんだよ?(誤魔化し半分

雨音の先で戦況を確認しながら
新入生達を援護するね

怖い?大丈夫
1人じゃ無理でも
仲間と協力すれば出来る事はいっぱいある
例えば、ビリーとクラリスは何が得意で何が苦手かな?
性格は全然違っても
違うからこそ補い合える事も多いから
先ずは仲間の事を知らなきゃね
という事で、2人で共闘行ってこーい!

背中を押して、後はサポートに徹するね
ふふ、良いコンビになるんじゃないかな
なるといいな


琶咲・真琴
【かんさつにっき】
皆を怖い思いにさせちゃいけないのです

ボクもお母さんが出てきて
ビックリしました
姉さんも抱きしめてきましたし

ビリーさん、クラリスさん
亡者さん達も
辛い思いをたくさんしたと思います
だから、もう辛くならないように
休ませてあげましょう


高速詠唱で人形乱舞を使用
お祖父ちゃんお祖母ちゃん達を誘導弾代わりに存在感を出して
亡者をおびき寄せ

本体のお祖父ちゃん達はボクと一緒

お祖母ちゃん達の光線の一斉射撃で亡者の腕を砕きます(スナイパー・フェイント・部位破壊

ボクもグラップル・怪力・カウンター・オーラ防御なので皆のフォローなどをします

頼もしいですか?
怖いより
可哀想って感じているからかな

アドリブ・絡み大歓迎


木元・杏
【かんさつにっき】
灯る陽光はペンライト状にしてランプ代わりに

学園の生徒の皆も恐怖心克服した?
ん、もう何が出てきても怖くない
(海莉とシリンに笑いかけ
(死霊兵に向き直り
(海莉の手を繋いだまま硬直

こっ……
(灯る陽光をブーメラン状に死霊兵に投げつけ
ん?何かばらばら私達の足元に転がっ……

(骨)
こ、わくないっ!ねっ、まつり……まつりんーー!!??

真琴頼もしい、……まつりん楽しそう(何となく対抗心
ん、わたしも勇気だして頑張る

戦い方、学生に言葉で伝えるの難しい
だから実技で伝える

【鎌鼬】で死霊兵を引き付け弓の一射を誘う
弓を引く瞬間を狙って
うさみみメイドさん、行って

盾で防御する余裕を与えず
胸元にメイドさんの一撃を


シリン・カービン
【かんさつにっき】

久々に己の恐怖と向き合いました。
でも、もう今は落ち着いています。
次は、彼らに乗り越えてもらう番。
(クラリス・ビリーに目をやり)
ですよね、と海莉、杏に笑みを。

今回私は皆の後ろで支援に徹します。
「…ん」
肌が褐色に、額に第三の目が開き真の姿に。
精霊猟銃を構え【ホークアイ・スナイプ】を発動。
死霊兵が放つ【弓の一射】を次々撃ち落とします。

弓を封じれば学生でも対処はしやすいでしょう。
戦場全体に目を配り、必要なところに援護射撃を送ります。

仲間に迫る矢も撃ち落とし、
「遊びが過ぎますよ」とチクリと一言。
まあ心配無いでしょうが、とは声に出さずに。

この手の温かさは、忘れません。

アドリブ・連携可。


南雲・海莉
【かんさつにっき】
あれ、死霊兵ね(世界知識)

杏さんの手をぎゅっと握り返してから刀を手に
(殴れば解決する現実に、却ってホッ)

UCで防御力UP

(後方待機の相棒が尻尾ぶんぶん
行く、と促されれば一声鳴いて)

って!?
リンデン、Heel(傍から離れない)!
(ほねっこダッシュの相棒と並走、
【動物使い】でルートを制御、
近づく敵を刀で【薙ぎ払い】
攻撃は剣で【受け】、リンデンや皆を【庇う】)
この食いしん坊ったら!

(リンデンの一鳴きに察し【第六感+見切り】
【カウンター】で背後の腕を砕き)

(「お遊び」に)
ごめん、でも守り切る!

(学生達に)迷宮生態学を思い出して
骨型の足止めに真っ先に砕くべき場所は?
(正解:尾てい骨)


ノイン・フィーバー
心情:おお、リアルな亡者ですネ。まぁ本物ですしネ。
では、本物には本物ヲ。ホラーにはホラーヲ。バケモノにはバケモノをぶつけんだよ! と先人も言っておりますので。といっても、彼女はキュートなレディですが

行動:基本的には自分の銃器を利用した援護射撃を行います。学園の方々も、多少は経験をつませなければなりまセン。
適度に少数を送り込んであげまショウ。

もし杏サンを含む一団がいたら、挨拶代わりに援護射撃を。気持ちよく戦えるように、気付かれぬようにお助けです。

手数が足りないかなと思った辺りで、本命のユーベルコード発動。
モニターから飛び出した彼女が自由にどったんばったん大暴れします。(演出はお任せ)





 共に手を取り合い、恐怖のトラップを乗り越えてきた【かんさつにっき】のメンバー達。魔法学生らと共に迷宮の奥深くに到達した彼らの目の前に、災魔の群れが姿を現した。既に先発の猟兵がバックアップに入り、学生と災魔の戦闘が繰り広げられている。現れた災魔は、蠢く白骨死体。カタカタと不気味な移動音を立てながら、迷宮の奥から押し寄せてくる。
「あ。今度は、ほねっこがいっぱいだ!」
 武装した異形の兵士団を前にしても、祭莉はたじろぐことなく構えている。むしろ、心なしか喜んでいるようにも見える。
「あれ、死霊兵ね」
「絵に描いたようなほねほねさんの群れだね」
 装備している武器や身に着けている衣服の種類から、災魔が活動していたおおよその時代を推測する海莉。死霊兵についての情報は、かつて書物で読んだことがある。冷静に特徴を分析し、小太刀に伝える。
「祭莉は、あの骨は怖くはないのですか」
「うん、おいらは羽根が生えてなきゃ大丈夫っ♪ コケッていわないし!」
 シリンの問いかけに、祭莉はにぱっと笑顔で応える。どうやら、木元家のたまこに比べれば、骸骨は何ともないらしい。
「おっ、やってるやってる。……なんでぇ、ありゃ。骨格標本が歩いてるぞ」
「バカッ、死霊兵よ! アンデッドの資料で見たでしょ」
 後ろからやって来たのは、コカトリス組の魔法学生。委員長のクラリスと、番長のビリーの凸凹コンビだ。
「委員長、番長、アレはお化けじゃないからね? れっきとした災魔だから。恐くないよー♪」
 祭莉は、すっかりいつもの調子を取り戻したようだ。そんな祭莉の双子の妹・杏は『灯る陽光』をペンライト状にさせ、ランプ代わりに用いて暗闇の先を照らし出す。
「学園の生徒の皆も、恐怖心克服した? ……ん、もう何が出てきても怖くない」
 もう大丈夫、と杏は傍らのシリンと海莉に笑いかける。海莉は杏の手をそっと握り返すと、刀に手をかけて呼吸を整えた。幻影とは違い、殴れば解決するシンプルな問題に、ある意味安堵する。精神統一の後【トリニティ・エンハンス】を発動させる海莉。魔力で生み出した水のバリアが彼女の身体を覆い、防御能力を向上させる。
 杏は押し寄せる死霊兵に向き直り、剥き出しの頭蓋骨をじっと見据えた。遠くからはよく見えなかったが、彼らの空っぽの眼窩の奥では謎の虫がワサワサと蠢いているではないか。
「――……」
 海莉の手を繋いだまま、ビデオの一時停止のように身体を硬直させる杏。
「こっ……!」
 衝動的に、『灯る陽光』をブーメランのように投擲する杏。何の変哲もない骨の身体は、クシャッという音と共に崩壊して辺りに破片を撒き散らす。小太刀がその中から骨を拾い上げ、リンデンと祭莉の興味を引くように見せつける。
「ほーら祭莉ん、リンデン、ほねほねだよー♪」
 十分興味を引きつけてから、災魔の群れに目掛けてほねっこを投げ込む小太刀。
「あ。リンデンも……行く?」
 リンデンは、海莉の大事な相棒である有翼の大型犬。リンデンはふよふよと翼で空中を漂っていたのだが、どうやらほねっこに興味津々のようだ。尻尾をぶんぶん振っていたリンデンは、祭莉の誘いに呼応するように、オン! と低く鳴く。
「よっしゃー!」
「こ、わくないっ! ねっ、まつり……まつりんーー!!??」
 杏の動揺をよそに、喜々として隊列から飛び出す祭莉。これが、人狼の血の為せる業なのか。その祭莉につられるように、リンデンが一鳴きして彼の後に続く。
「って!? リンデン、Heel(傍から離れない)!」
 ほねっこにまっしぐらの相棒から離れないように、併走する海莉。訓練した通りにリンデンの動きを制御し、突出しすぎないように気をつける。
「……何やってんだぁ?」
「いやいやこれはね、新入生達に敵の動きを実際に見て貰う為でね……別に遊んでる訳じゃないんだよ?」
 骨を巡ってはしゃぎ回る一人と一匹を目にして、ビリーが思わずツッコミを入れる。誤魔化し半分でフォローする小太刀だが、どう見ても遊びに来た飼い犬だ。
「まつりん達、行っちゃいましたね。ボクらも行かないと」
 既に戦闘は始まっている。真琴は前線で戦うメンバーをサポートするべく、操り人形の『familia pupa』を複製する。
「皆を怖い思いにさせちゃいけないのです。ボクもお母さんが出てきて、ビックリしました。姉さんも抱きしめてきましたし」
 真琴の母や小太刀が叱るのも、彼を心配する家族の愛あってのこと。ならば、怖れる必要などあるだろうか。
「サイキックエナジー、放出。転写…………現像完了。ステータス、オールグリーン。これがボクの切り札だよ! 神羅写成・人形乱舞っ!!」
 真琴が『お祖父ちゃん・お祖母ちゃん』と呼ぶ二体一組の人形達は、ユーベルコードによりさらにその数を増やした。真琴はそれらを高速詠唱して操り、複製体をサポートに回す。
「……久々に己の恐怖と向き合いました。でも、もう今は落ち着いています」
 シリンは魔法学園の未来を担う人材――クラリスとビリーを見やり、「ですよね?」と杏と海莉に笑いかける。
「次は、彼らに乗り越えてもらう番」
 シリンが胸の奥にしまい込んでいた、忌まわしい記憶。それは迷宮の力により具現化して彼女の前に蘇ったが、仲間と共に克服することができた。ならば、もはや怖るべき物はこの迷宮に無く。シリンは躊躇うことなく己の真の姿と力を解き放つ。
「……ん」
 透き通るように白かったシリンの肌が、徐々に褐色に変わっていく。そして額には、全てを見通すという第三の眼が現れた。愛用の精霊猟銃を構え、【ホークアイ・スナイプ】を発動。第三の眼が輝きを放ち、長距離からの超精密射撃を可能とせしめる。
「針の穴だって、通してみせる……!」
 弓兵が射掛けてくる無数の矢を、シリンの精霊弾が悉く撃ち落としていく。
「すごい射撃の精度……!」
 精霊力を封じたピストルを握り、その様子を見守るクラリス。そしてビリーの視線の先では、祭莉とリンデンがじゃれ合う兄弟犬のように走り回り、死霊兵をスピードで翻弄している。海莉もそのスピードに負けていない。リンデンに的確な指示を与えて動きを制御しながら、自身も刀で敵の攻撃を受け止め、反撃の太刀を繰り出す。
「もう、食いしん坊ったら!」
 その時、リンデンが低い声で一鳴きした。海莉に危機を告げるときの鳴き方だ。海莉の第六感が、背後からの殺意を鋭敏に感じ取る。
「!」
 海莉は素早く反転すると同時に刀を切り払い、突き出されてくる敵の剣を腕ごと斬り飛ばした。

「てやっ」
 祭莉は繰り出されるロングソードの斬撃を、籠拳で剣の腹を打って軌道を反らす。
「ほいっ」
 バランスを崩した所に、身を屈めて足払いをかけ、転倒させる。
「うしゃっ」
 倒れ込んだ骨の兵士に、灰燼拳の一撃を叩き込む。文字通り全てを灰燼に帰す轟拳を受け、白骨の身体は敢え無く砕け散る。この間、僅か3秒に満たない早業である。
「ほらね、物理で壊れるでしょー!」
 ぶんぶん、と手を振って活躍をアピールする祭莉。
「あのチビスケ、なんつうスピードだ」
 ビリーが思わず舌を巻くスピードで死霊兵を撃破した祭莉は、破壊した骨の一部を持って仲間たちの元へ引き返してきた。
「ほらほら。見て見てー♪ 番長、これいる?」
「いらんわ!」
 興奮気味にゲットした骨を、ビリーに見せる祭莉。だが、あっさり拒絶されてしまう。
「恐くないよね? ねっ♪」
「だ、誰がそんな骨なんかに!」
 クラリスは、祭莉に骨を見せられ嫌そうに顔を背ける。そこに、敵兵から放たれた矢が飛来してきた。
「あ、危ないっ!」
 クラリスが警告を発した瞬間、シリンの精霊弾が炸裂。神業の射撃を以て矢を撃墜し、難を逃れた。
「祭莉、遊びが過ぎますよ」
「……きゃふん」
 シリンからチクリと注意され、しょぼんと耳を垂らす祭莉であった。
(まぁ、今の実力なら心配は無いでしょうが……)
「お祖父ちゃん達はボクと一緒に。お祖母ちゃん達は光線を!」
 真琴の人形たちは彼の意のままに戦場を飛び回り、光線を発射して死霊兵の手足を狙撃していく。脆い関節部分を破壊することで、武器の使用を制限させるのだ。
「真琴、頼もしい。まつりん、楽しそう……」
 双子の兄の活躍に、ちょっとした対抗心が芽生える杏。
「頼もしいですか? 怖いより、可哀想って感じているからかな」
「……ん、わたしも勇気だして頑張る」
 こくんと頷き、杏はうさ印の護身刀を手に素早く駆け出した。操り人形のうさみみメイドさんも一緒だ。
 距離を詰めてくる杏に反応し、死霊兵が矢をつがえてきりきりと弓を引く。
「うさみみメイドさん、いって」
 敵が弓を構えたのを見計らい、杏はうさみみメイドさんを放って飛びつかせる。うさみみメイドさんは刀を抜き、弓の引き手を狙って鋭い一太刀を浴びせる。右手を破壊され、死霊兵は素早く剣と盾に持ち替えようとするが、杏はその隙を与えない。
「逃げないで?」
 瞬時に懐に飛び込むと、杏は秘剣『鎌鼬』の神速の一撃を放つ。肋骨をバラバラに寸断され、死霊兵は崩れ落ちていった。

「――おお、リアルな亡者ですネ。ていうかまぁ本物ですしネ」
 遅れて到着したノインは、初めて遭遇するアンデッドの軍団に驚嘆していた。バックパックに装備したアームドフォートを起動させ、戦闘に加わる。主な目的は、砲撃による前衛の支援だ。
「サア、見せてもらいましょうかネ。魔法学生の実力とやらヲ」
 アームドフォートの砲門が猛々しく火を噴き、剣を装備した死霊兵がバラバラに吹き飛ぶ。壁役が手薄になったタイミングを見計らい、接近戦の得意な学生達が次々に切り込んでいく。真琴のfamilia pupaや杏のうさみみメイドさん、海莉のリンデンも戦列に加わった。
「折角ですから、彼女にも手伝ってもらいまショウか。本物には本物ヲ。ホラーにはホラーヲ。バケモノにはバケモノをぶつけんだよ! と先人も言っておりますので」
 化け物同士をぶつけ合った結果、悪魔の化学反応を起こした逸話があるらしいが、ここでは割愛。キャノン砲をリロードする合間に、ノインは隠し技のユーベルコードを発動。すると、ノインの頭部モニターからズズ……と長い黒髪の不気味な女が這い出てきた。【仄暗い井戸の底から】現れた悪霊と、骸骨兵の戦いが始まる。
 女はシャカシャカシャカッ! と四つん這いで地面を高速移動。その昆虫じみた挙動に、学生たちから悲鳴が上がる。
「…………」
 彼女は床に落ちていた円盾を拾い上げると、それをまじまじと見つめている。数瞬の沈黙。そして、おもむろに盾を腕に装備すると、
「愛シデルノハ、オ前ダケッテ、言ッダノニイイイイ!! コノ裏切リ者ォォォォ!!」
 ヒステリックな声を発しながら、いきなり死霊兵を上段から殴りつけた。気合の入った、強烈なシールドバッシュだ。さらに彼女は二度、三度と敵を盾で殴りつけ、仕上げに喧嘩キックで後方に蹴り飛ばす。以外に格闘戦も得意らしい。というか本当に霊なのか。
「オイ、俺たちもいくぜ。いつまでも見学していられネエ」
「……うまく出来るかしら」
 猟兵が奮戦する姿を目の当たりにして、ビリーとクラリスが前に進み出る。
「怖い?大丈夫、1人じゃ無理でも、仲間と協力すれば出来る事はいっぱいあるわよ!」
 不安な様子のクラリスに、小太刀がアドバイスする。
「別に、怖くはねぇけどよ。どういう風に戦えばいいのかなって」
「先輩、アドバイスをください!」
 クラリスに先輩と呼ばれて、一瞬ピクッと反応する小太刀。悪くない響きらしい。暫し考え込み、小太刀は言葉を紡ぎ出す。
「そうね……例えば、ビリーとクラリスは何が得意で何が苦手かな? 性格は全然違っても、違うからこそ補い合える事も多いから。先ずは仲間の事を知らなきゃね!」
 小太刀のアドバイスに、二人はそれぞれ自身の能力について分析する。
「俺は深く考えるこたぁ苦手だ。得意なのは、剣を振ることかな。魔法はまだちょっとしか使えねえけど」
「私は、ずっとこの氷の精霊銃を使ってるわ。あと、ビリーよりは周りを見て判断が出来るかな……」
 小太刀は二人の話を聞いて微笑み、頷く。この二人ならば、良いコンビになるかもしれない。
「わかった? 後は二人でそれぞれの力を活かして、短所を補い合って戦うのよ。さあ、敵はまだまだ残ってるわよ。大丈夫、私もサポートしてあげる!」
「ビリーさん、クラリスさん。亡者さん達も、辛い思いをたくさんしたと思います。だから、もう辛くならないように休ませてあげましょう」
 真琴は薙刀で敵兵の剣を打ち払い、二人の壁となって語りかける。何年も暗い迷宮の中を彷徨っている彼らを、真琴は可哀想だと感じたのだろう。彼らにも、人としての生を送っていた時期があったのだろうと。
「っしゃ、じゃあ行くか……。頼むぜ、委員長!」
「お手並み拝見ね、番長さん」
 二人の魔法学生は、それぞれの武器を構えて敵陣へと突入していく。小太刀は、【雨音の先】で敵の動きを予測し、彼らに伝えることでアドバイスを出した。クラリスが氷の弾丸を放って敵を凍らせて足止め。ビリーは炎を宿したルーンソードによる豪快な剣技でとどめを刺す。
「さあ、ここで迷宮生態学の問題よ。骨型の敵と戦う時、足止めに真っ先に砕く場所は?」
 次々と敵を屠り勢いづくビリーに海莉が近づき、問いかける。
「ビリー!」
「知ってるぜ! 狙いはここ……尾てい骨だっ!」
 クラリスの援護射撃を受け、ビリーが火のルーンソードを一閃させる。腰部の重点箇所をピンポイントで破壊され、敵が大きくバランスを崩す。そこに愛刀『紋朱』を閃かせて海莉が斬り込み、とどめの一撃を放った。頸を断たれ、死霊兵は足元から崩れ落ちる。
「正解! よく出来ました。でも、まだ気を抜かないでね」
「へへ……」

 破壊し尽くされた死霊兵の残骸が灰に変わり、やがて骸の海へと還っていく。そして、迷宮には再び沈黙が訪れた。猟兵と魔法学生の連携により、迷宮に出現した死霊兵のすべてを掃討することができた。
「またねーっ♪」
 夜が明け、猟兵たちは元の世界へと戻っていく。猟兵を見送りに校門に集まった学生達へ、ぶんぶんと手を振る祭莉。学生たちはまだ未熟だが、少しずつ経験を積むことでこれから成長していくだろう。そして彼らは、いつか猟兵となって共に戦ってくれるかもしれないのだ。
「さぁ、行くわよリンデン。……またしばらく、此処とはお別れね」
 去り際にそびえ立つ魔法学園の校舎を振り返り、海莉が呟く。リンデンが、海莉の傍を浮遊しながら元気よく鳴いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月15日


挿絵イラスト