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Beat down the "Flag"!

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 三人の冒険者たちが、山の傍で野宿を始めていた。旅の途中、明日には次の村に着く頃合いだ。
 顔ぶれは、若い青年と顔立ちの柔らかい少年に、少し年嵩の男性だ。彼らは、不寝番の準備も整え終え、交代で休む前の団欒を愉しんでいた。
「もう少しか……」
 一人の冒険者が、小さな焚火を見つめて語りだした。
「ああ、食料もつきそうだし補給が出来る……どうかしたのか?」
「黙ってはいたが、次の村は俺の故郷なんだ」
 と橙色の炎が、彼の表情を照らし出す。苦々し気な声に反して、その表情は朗らかなものだった。
「そうなのか? 知らなかったな、両親は?」
「喧嘩別れして、冒険者になってそれっきりさ……謝る決心がついたんだ、父も母も、良い歳だ」
 ぱちりと、火に炙られた小枝が弾けて、夜闇に音を響かせる。
「育ててくれた礼を、言いに行くさ」
「それが良い。いい土産話もあるんだ、きっと喜んでくれる」
「はは、結婚の事か……こっ恥ずかしいもんだな」
 男は、赤くなった頬を炎の灯りに隠して、肩を揺らす。
「嫁さんを貰うのは良い事だぞ」
「それは煙草禁止されてもか?」
「孫の顔見るまで死ねないしな、まあこんな生業ながら生き汚くなってやるさ」
 年嵩の男性は、そう言って思わず煙草を摘まむ仕草をした手を振った。禁煙を初めて二週間、吸ってはいないが、ポケットには捨てられない葉巻が眠ったままだ。
「ああ、師匠にも恩を返さなくちゃいけないんだ。この旅が終わって引退しても長生きしてくれよ」
「は、何辛気臭い事言ってやがる」
 そう笑い飛ばした男性は、堪えられないというように笑うと、柔らかく目を細めた。
「……まあ、お前ら二人は自慢の弟子だ。うまくやれよ」
「ああ、というかお前さっきから静かだな、眠いか?」
 と青年が、一言も発していないもう一人の少年へと声をかける。
「ん、さっき枝を集めてる時に気になる事があってな……いや、きっとオレの気のせいだ」
「森に踏み入ったものを殺す悪魔の話か?」
「や、やめろよ、そういうの!」
「ははは」
 と茶化した青年に少年が憤慨して、男がそれを軽くなだめた。
「そうか、まあ旅の間は気が張るもんだ、村に着いたらゆっくりすりゃいい。この時期は祭りがあるんだろ?」
「ああ、周りの村も巻き込んで開催して、中々に大きな祭りでな。出店も多い。あとメインイベントというか、まあ、大事な人に花冠を送るんだ。」
「っ……!」
 と青年が言った瞬間に、少年が顔を上げた。どうやら、その祭りに興味があるみたいだ。
「ん? なんだ送りたい相手がいるのか?」
「え、あ……、いや、だが祭りなんだろう? 良ければ、わた、いや、オレと一緒に回らないか」
「そうだな、ついでに師匠に花冠を買ってやろう」
「おいおい、そういう相談はこっそりとやれ」
 師匠の突っ込みに、夜の風に三人の笑い声が染みていく。
「あー……」と師匠は少しわざとらしく咳払いをすると、少年に目配せをして、立ち上がる。
「俺は少し、小用に行ってくる」
「え、あ、はい師匠」
「もうかよ、歳だなあ」
「ウルセエ、まあでもすぐに戻る」
 そう言って彼は、焚き火から離れていく。
 夜は深く。
 暗黒の中で、人ならざるもの達が焚き火の灯りを見つけていた。


「ああ、こういうのを何というんだったかな。ほら、少年が言った、森で気になった事がある、とかそういうセリフとかの事をさ」
 長雨は、少し思考してから、まあいいか、とそれを切り捨てた。
 オブリビオンの集団が、夜闇の中を進んでいる。その道中に彼らの野宿が存在しているという状況だ。
「お察しの通りだが、このままでは彼らの命はない。どころか、近隣の村にまで脅威が及ぶだろう」
 見捨ててはおけない。と彼は期待に目を輝かせて猟兵達に言う。
「敵は、闇に潜む首なしの騎士。その数は多いけども、恐れることは無い」
 ただ、と長雨は一つ指を立てる。
「この三人にも気を付けてほしい。いや、背後討ちとかではなく、聞いての通り、どうにも不穏な言葉ばかり口にする彼らだ。巻き添えを食って、いつの間にか……なんて事もありえそうだからさ」
 それこそ、ひょんな事で命を失いかねない様子だ。
 さて、と長雨は言葉を続ける。
「それじゃあ、皆で彼らの、……ああ、そうだった、こう言うんだったね」
 と手を打つ彼は、どこか自慢げにこう告げた。
「死亡フラグをへし折りに行こう」


おノ木 旧鳥子
 おノ木 旧鳥子です。
 死亡フラグをへし折るRPなどを入れると楽しいかもしれません。
 第一幕は個別描写、第二幕、三幕はある程度まとめた描写を行います。
 第二幕、第三幕の初めに幕間(幕の説明描写)を挟みます。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『宵闇の騎士団』

POW   :    闇討ち
【自身以外に意識】を向けた対象に、【死角からの不意打ち】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    追討ち
【周囲に潜ませていた多数の伏兵】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    返討ち
いま戦っている対象に有効な【武器を持った多数の援軍】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「こいつら、一体どこから湧いて出てきやがった……っ」
「だ、ダメだよ! こんな数……に、逃げよう!」
 剣を抜いた青年の腕を少年が抱きしめるようにして、逃走を促している。
 互いが、互いの足を引っ張っている様な状態に陥っている事にすら混乱の最中、気付けないでいる二人に、鎧騎士の一体が一切の容赦なく肉薄する。
 その腕に握る大剣は、二人の胴体を破り割いて余りある。
「……っ、だ、だめ!」
 少年の小さな体が、全身の力を振り絞って青年の体を弾き飛ばした。思わぬ力に、尻餅を着く青年の頭上で、少年はそれでも安心したように柔らかな笑みを浮かべていた。
 それは、青年が剣の軌道から逸れたからか。軌道の上にいるのが自分だけだからか。
「お、ま……っ」
「あのね、わたしっ……」
 少年の言葉を剣圧が捩じ斬って、青年との繋がりを断ち切る、その瞬間。
ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
――これが噂の『死亡フラグ』!!べ、勉強になります、が、死んじゃダメーーーッッ!!!
は!私も、”それっぽい”ことを言わないように、気をつけなきゃ……こういう時は……【トリガーピース】を使って――【ルビー】に変わって、もらわなきゃ……うう……。
『――あらあらぁ、穏やかじゃございませんわね。
まぁよろしいわ、このお三方を死なせなければいいのでしょう?
では、【謎を喰らう触手の群れ】で喰らってさしあげますわ。
――考える暇などなく、骨までしゃぶりつくされておしまい。
そういえば、勝ち確BGMが欲しいですわね。ほら、死亡フラグに対抗できそうな――
まぁ、この騎士どもの絶叫で奏でていただきましょうか!』



「――あらあらぁ、穏やかじゃございませんわね」
 声が割り込んだ。

「こ、これが死亡フラグ……っ」
 数秒前、転移直後からヘンリエッタの眼前で行われるやり取りに、彼女は純粋な感動すら覚えていた。
 軽く投げた投げ輪が全て、杭に引っかかったようないっそ清々しいほどの死亡フラグだった。
 だが。
「が」
 彼女はトリガーピースに指を触れて、意識を彼女へと委ねる。
「死んじゃ、ダメーーッ!!」
 叫んだ声は、しかし、もう体からは発散されず、代わりに愉悦に昂る声と共に、夥しい触手が召喚されて、騎士と青年たちの間隙を埋めつくす。
「まぁよろしいわ、このお三方を死なせなければいいのでしょう?」
 ヘンリエッタは、身を退けた首なしの騎士達に嫣然と微笑んだ。蠢く無数の触手を掻き分けるようにして、四足の獣が群れとなり首なしの騎士達へと飛び掛かっていく。
「考える暇などなく、骨までしゃぶりつくされておしまいなさい」
  突然の乱入者に、隊列を乱す騎士達は小回りの効く狗に対し、双剣を携えた騎士が前へ出て、爪牙と切り結ぶ鋭い音が甲高く響き始めた。
 その音に嘲るように言い放った彼女は、腰を軽く揺らして、思い出したように顎を上げた。
「勝ち確BGMが欲しいですわね、……まぁ」
 と彼女は騎士を見つめる。
「この騎士どもの絶叫で奏でていただきましょうか」
 彼女は楽団の指揮を執るように、腕を振り上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ペッシ・モルティ
言霊の力に引き寄せられやすい者たちを守るなら、こちらも迂闊な言動には気をつけなければなりませんね…。とはいえ、手をこまねいていては同じことです。

夜の帳は闇の精霊の領分、私は【攫うモノ】の助力によって、いち早く敵の接近を察知し、さらにユーベルコード【闇精使役:縋りつく手】でその動きを封じて他の猟兵の方々を支援します。

戦闘において余裕に溢れた言動は、悪い引き金を引いてしまうかもしれません。ここは敢えて対価の重いユーベルコードを使い、接戦を演出しましょう。

「あまり長くはもちません、皆さん、後は頼みますよ!」



ヘンリエッタの登場に、二人は呆気にとられながらも、事態の好転を確かに感じ取っていた。
「……、た、助けが来た……のか?」
「うん、……うん、そうだよ! わ、オレ達これでもう大丈夫だ!」
「ああ、もう何も心配いらない」
 少年は、尻餅を着いたままの青年の胸にしな垂れかかるように、力を抜いた。
「おい、油断するなよ」
「ご、ごめん……」
 金属の胸当てに頭をぶつけそうになった少年の肩を、青年は咄嗟に握っていた剣を手放して受け止める。
 出来の悪い弟に叱るような口調の青年の背後、首なし騎士が今まさに剣を振り下ろす。
「あぶな、っい!」
 と、影の腕がその騎士の動きを、青年の脳天に落ちる寸前で留めていた。
「……っ」
 月光に落ちた自らの影を操り、敵を捕縛する、その代償に命を削られる不気味な感覚に表情を苦くしながら、ペッシは内心呆れを覚える。
 余裕のある態度は、悪い引鉄を引きかねない、と考えていた矢先、誰でもない彼ら自身がそれを引いたのだ。
 手をこまねいている余裕は無い。
「あまり長くはもちません……っ」
 寿命を削るという対価を支払う選択肢を取ったおかげで、接戦を演じ切れているだろうか。
 というか、少しでも気が緩めば、本当に脳天から股間までを剣が貫きそうな状況で実際に逼迫している。
 そして、連れている闇精霊が楽し気な雰囲気を醸し出している。相も変わらず、たちが悪い。
 状況に眉間の皺が深くなるのを、心の片隅で良しとしながらも、ペッシは力尽くで捕縛を解こうとする騎士を抑え続ける。
 だが、その周囲に複数の敵が、煙を纏うように闇から出現した。
「援軍……っ皆さん、後は頼みますよ!」
フラグのバランスを鑑みながらも、ペッシは仲間へと余裕のない声を張り上げ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペンチ・プライヤ
死亡フラグは折らないとなあっ!!

steam generatorで周囲に蒸気を漂わせる

超高輝度プロジェクター(ハンドガンタイプ)を用いたグラフィティスプラッシュで攻撃。
インスタントステージで灯体ドローンを複製、いろいろな位置から周囲を様々な色で明るく照らし出す。ダメージのある光とダメージのない光の乱舞

錬成カミヤドリでペンチを複製し、自分の周囲に展開
そして意図的に相手から意識を外す
様々な位置から照らしている為、様々な方向に発生する影を見て死角からの不意打ちに対応
ペンチを操り相手の腕の動きを鈍らせる。
その間にsteam statueで相手との間に蒸気の彫像(壁)を作りだし、武器受けを行う



答える声が跳ね上がる。
「応よ! 死亡フラグは折らないとなあっ!!」
 声と同時に、蒸気も噴き上がる。もうもうと周囲に薄く立ち込めた蒸気の中でペンチは、ハンドガンのような何かを構えた。
 藍色の瞳をにやりと笑ませると引鉄を引いた。
 とたん、光が乱舞する。蒸気の水滴に光が乱反射を繰り返し、拡散を蓄積し煌々と闇払う白闇となって、夜の草原を覆い隠す。
「い、今だ。逃げよう!」
「あ、ああ! ……ぅあっ!」
 その中で、少年と青年が駆けだそうとして、青年が頓狂な声を出し、再び足を滑らせた。
 彼は違和感を覚えた足を確認して、その原因を知った。
「靴紐が……っ」
 旅に最適な丈夫な革靴を縛る革紐が、途中で切れてもう片方の靴紐と絡まってしまっているのだ。
「……っ、行け!」
「ダメだ!」
「いいから、靴を脱いですぐに追いつくッ!」
 だが、少年はその声を無視して、青年へと駆け寄って腰のナイフを手に取った。
 という所まで見たペンチは、完全な死角になっていた横合いからの刺突を、咄嗟に手元に引き寄せたペンチを盾にして被害を逸らした。
「……」
 こめかみを軽く抉った槍に跳んだ血が、ペンチの藍色の髪を僅かに染める。
 光の乱舞に自らを強化していなかったら躱し切れなかったかもしれない。
「そうかい、こうなったか!」
敵の影すら白く飛んだ結果に、蒸気を噴きすぎたかと少し反省しながらも、しかしそれでもペンチはどこか嬉し気な表情を見せていた。
 演技の中に本当の隙が生まれていたのかもしれない。
 作り出した壁は完璧なものではなかったのかもしれない。
 動きに流麗さをもっと求めるべきかもしれない。
 それらは、決して欠点ではない。むしろ、彼は自らに磨き上げる原石を見出して、高揚せずにはいられなかった。
「……っは」
 自らの技術に見つけた改良点に芸術家肌が疼いて仕方が無かったのだ。ペンチは装備した工具達、弟妹達をじゃらりと鳴らし、自慢の兄貴への一歩をまた踏み出した。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

凱蘭・ヴァヴァ
死亡フラグなぁ…よぉ解らんけど、用心の為にこれ持っていこか(中に何か金属が入ったお守りを胸ポケットに入れる)

陰からこそこそしはる敵はんかぁ。得意やないなぁ
でも。ここで勝たな冒険者達もお陀仏やさかい
このいたいけな美少女が健気に体張って守ったるよ
おっきい夢持っとるんやろ、なら死んだらあきまへん
うちな、おっきい夢持っとる人が大好きなんよ

さて、うちの夢も叶えさせておくれやす
騎士はん、あんたを倒すゆう夢や

このユーベルコードは、特訓では結局いっこも成功せえへんかった…
敵はんの懐に潜り込まなあかんさかい、失敗したらえらいことなる技や

けど、今これを使わんとこいつには勝てんどすっ
喰らいやッ、はんなり激痛拳――!



「何してんだ!」
「捨ててなんていけない!」
 と、ナイフを振り下ろし、絡まった靴紐を斬り解き、青年が逃げるチャンスを作った少年。
その少年の背後に、やはり、首なし騎士が出現して、またしても、剣を振り下ろす。
「喰らいやッ、はんなり激痛拳……っ!」
事すらも出来ず、振り上げたままの姿勢で横合いから突っ込んできた拳に鎧を粉々に砕かれて、吹き飛んでいった。
 白む蒸気は、殴打の衝撃に発散して、夜闇が僅かに戻ってきた。鎧を吹き飛ばした少女は、自らの拳を眺めて、何やら感動した面持ちを湛えていた。
「い、今しかない思うたんや……訓練やといっこも成功せんかってんけど」
 感動に打ち震えるヴァヴァは、はっと二人の視線を感じて、一つ咳払いをした。
「おっきい夢持っとるんやろ、なら死んだらあきまへん」
 ヴァヴァの言葉に青年は強く頷いた。
「ああ、そうだった……俺は、いや、俺達は叶えたい夢があるんだ、どちらも死んでなんていられない! そうだろ?」
「あ、ああっ! 夢が……、ゆめ、か」と小さく悲し気な表情を浮かべた少年に青年は気付かずに、靴を脱ぎ捨てて立ち上がり、ヴァヴァに背を向ける。
「無事か、弟子共っ」と男の声に二人は駆けだした。
 その背に向かって、打ち放たれた数本の矢をヴァヴァは打ち払って、軌道を逸らしていた。矢に触れた腕や足に斬傷が刻まれるが、ヴァヴァはその程度では退くことは無い。
「さて、うちの夢も叶えさせておくれやす」
 鎧を砕かれながらも、立ち上がる首なし騎士にヴァヴァは、構えを取る。
 先ほどは蒸気に隠れて、不意打ち気味なアタリだった。
 影でこそこそしているのを見るのも、影でこそこそするのも性には合わない。
 だから、だからこそ。
「今度は、あんたさんの懐に潜り込んで、一発きちんと入れさせてもらうさかいに」
 彼女は『はんなり』と悠然な笑みを浮かべて、瞳に攻撃的な光をぎらつかせた。
「よろしゅう、たのみます」
 彼女は大きく大地を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔴​

草剪・ひかり
【POW判定】
少々出遅れたけど、真打は最後に登場するんだよ!

敵は見上げるような巨体に、頑丈な鎧、巨大な剣
対峙する私は、色気過剰な体つきと、何より寒風に素肌を晒す無防備さ

傍から見れば私がここにいること自体が不自然に思えるかも?
剣の一振りで真っ二つにされちゃう……

なんて心配は無用だよ!

敵の剣筋を見極めて、グラップルで密着戦に持ち込むよ
大剣を振り回す腕を取って「腕固め」で締め上げたと思えば
その巨体を抱え上げ、豊かすぎる肢体を浴びせるような「パワースラム」で地面に叩きつけたら

最後は近場の大木を足場にした華麗な「ムーンサルトプレス」でフィニッシュ!

私を沈めたければ、もっと凄い奴を出してくれなきゃね!



「ここは、あの冒険者たちに任せて、お前たちは離脱するんだっ」
「でも、師匠は!?」
 青年は、男に背中を弾くように押し出されてよろめきながら、振り返る。
 少年の腕を掴みながらも、武器を取った男が共に逃げの道を選ぼうとしない事に、不満と焦燥を声に滲ませている。
「なに、護ってくれた礼を言わなくっちゃいけねえし、それに」
「それに……?」
 と、青年が疑問を口にするや否や、大剣が男の首を刈る軌道で闇夜を裂いた。鉄のぶつかる悲鳴が広い草原に鋭く響く。
 剣を寝かせて、どうにか軌道を逸らす事を成功させた男は、少し距離を取りながら振り返る余裕もなく、声だけを青年に向けた。
「コイツの相手をしなくちゃいけねえみたいだ」
「それなら、俺も……っ」
「は、何言ってやがる」と青年の言葉を男は一笑に伏した。
「コイツ如きに、お前の師匠がやられると思ってんのか?」
「……っ」
 その声色に青年は、迷いを見せ、しかし最後には、男に背を向けた。
「……いこう」
「ああ、絶対追いついて来いよ……!」
 迷いを振り切るように駆けだした青年を一瞥した男は、握っていた剣を手放した。
 手放したのではなく、もはや持つ事すら困難であったのだ。鎧騎士と背にも匹敵する大剣の一撃は、それを正面から受け止めた男の腕を強く痺れさせていた。
 数十秒もすれば、再び剣を握れるようにはなるだろう。だが、その数十秒は戦場においては、ありえないものだった。

 だが、男は後悔もなく笑みすら零し鎧騎士を見上げる。容赦なく鎧騎士は、その脳天へと大剣を振り下ろした。
 そうしてスローモーションのように研ぎ澄まされた視界で男が見たのは、揺れる豊満な乳房だった。
いや、シングレットとベルトを身にまとった、裸体にも近い女性の姿だった。猛然たる勢いで、鎧騎士の横合いから飛び込んできた女性は、重厚な鎧騎士へとドロップキックをかましていたのだ。
 インパクトの瞬間、女性の肌を衝撃が揺らす。と同時に、鎧が撓んで波を打つ。
 男が、無防備にも見える女性の姿恰好に呆気にとられた瞬間、鎧騎士が吹き飛んだ。
 鎧騎士をさながら打楽器の如く轟音を撒き散らした女性、ひかりは高々に。
「少し出遅れたけど、真打は最後に登場するんだよ!」
 と叫んだひかりへと、吹き飛ばされた鎧騎士が襲い掛かる。振るわれた剣を素早く躱すと懐へと潜り込む、瞬間、しかしひかりの視界の端に槍が迫る。
「っ!」
 咄嗟に身を退いたひかりに、続けざまに槍の刺突が放たれる。気付けばもう一体、ひかりの傍に鎧騎士が現れていたのだ。
 一対一ならば、敵の勢いと体重を利用して、地面に叩きつけて大技を叩き込むつもりだったが、魅せ技に固執する余裕は無い。
 ひかりは、再び槍の刺突を行う騎士に肉薄し、股の関節と腹の装甲をつかみ取ると、勢いのまま地面へと叩きつける。
「……っ」
 そして彼女は、剣を持った騎士の攻撃を掻い潜り、その腕を掴んだ。
 だが、投げる事はしない、むしろ彼女は自らの体をその腕の上に押し上げていた。腕を足場に、頭のない首に立ち上がる。
 魅せ技に固執する余裕はない。だが、なくとも、彼女は魅せ技に固執するのだ。
 月光のスポットライトの下。鎧騎士を足場にしたひかりの体が宙を舞う。
「絶対女王のムーンサルトプレスだ!」と彼女の耳には、実況音声が弾けていた。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

メリー・アールイー
フラグの乱立にも程があるだろうに……

【WIZ】
赤い炎の属性糸を通したしつけ針で『彩縫狩縫』の篝縫いを放つよ
魔法の針なら鎧通しだってお手の物
敵同士をくっつけたり、地面に縫い付けたりしてやるさ

攻撃には巨大化させたしつけ針を剣のように振るって応戦するよ
鎧の中心にある目ん玉をブスリ狙って刺してやる

護るべき3人が危険な目に合いそうなら、Reを操って助けるよ
それでも間に合わなきゃあたしが盾になる
あたしの体は仮初の肉体だからね、本体が無事なら平気だよ
本体の胡桃ボタンの在処は、内緒だ
あんた達は体も命も一個なんだ……大切な人がいるなら、自分の事も大事にしな



「いやいや……」
 とメリーは、目の前で起きた茶番じみた出来事に、頭を抱えそうになった。
「フラグの乱立にも程があるだろうにっ……と」
 ききい、と擦れる快音を響かせた糸が、玉になる。
 つぎはぎの体で巨大なしつけ針を、振るいながら彼女は糸を鎧騎士に縫い付けていく。手と足を縫い付けられた鎧騎士がバランスを保てずに転がってくるのを、慌てて避けた彼女は、青年と少年が逃げていった先を、ふと、見やった。
「残った方が生き残る展開は、もう一方が危ないわけだがねえ……」
 と呟いた言葉が、少し離れた場所にいた男にも届いたのか、はっとした表情を浮かべて立ち上がった。
 剣を拾う事すら忘れて、彼は駆けだしていく。が、その背を矢が追い、飛び出した小さな体を貫いて、その矢を受け止めていた。
「たく」
 自らにそっくりな人形を操り男を助けたメリーは、気付いてもいない男に向けて嘆息した。言いたい事は、ひとまず後にしようと決めた彼女は、じゃきんという音に振り返った。
「そういうのもありかい」と呟いた先には、巨大な糸切狭を手に持った騎士が立っている。
「……糸には鋏、ってのもまあ、分かるけどもね」
 しつけ針と尾を引く糸を回し構える。巨大化した糸切狭の刃が迫りくるのを、メリーは屈む事で難なく回避していた。
 頭上間近に、鋭い鋏が閉じる音が響く。それは、人の骨も胴体ごと軽々と切り離せるだろう鋭利さを持っている。刃を開くことが適えば、だが。
 当然、鋏の刃は二枚の刃の内側にしかついていない。その二枚の刃が閉じられた状態で縫い付けられていては、もはや、先端の僅かな部分しか斬れない鈍器と化す。
 開かない刃に一瞬戸惑った鎧騎士へと、メリーは針を刺突する。狙い打った針は、鎧に浮かんだ眼球へと深々と突き刺さった。
「――っ!!」
 穿たれた鎧は、もがくように蠢いた後、ゆっくりと倒れていった。
 気付けば、周囲の鎧も次々に倒されている。
 三人の冒険者たちを追った個体も、全てその前に妨害、撃破されている。
 猟兵達は、この首なし騎士の脅威から周辺の村を救ったのだった。
 
 などと、完結するわけもなく今度は森の近く、そう、三人の冒険者が逃げた方角から、轟音と少年の悲鳴がけたたましく爆ぜて、猟兵達に次なる厄介を知らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「な、なんなんだよ、コイツ!」
「……あ、あっ」
 青年が惑迷した声を発しながら、少年の手を引いて逃げている。
 少年はそれに引きずられるように駆けて行きながら、何かに気付いたように後ろを振り返った。
「あ、悪魔だ!」
「はあ!? 何言ってんだこんな時に」
「違う、あいつだよ、森に踏み入ったものを殺す悪魔っ!」
「な……っ」
 青年は、数分前焚火を囲んで話していた事を思い出した。
 だが、あれはただの冗談話だ。いや、どこかでそんな事を聞いて冗談にしたのかもしれない。と意味のない考察で恐怖を抑えながら、青年はどうでもいい! と叫ぶ。
「今は逃げるぞ!」
「わた、……オレが森に入って焚き木を取ったからっ」
「そんなもん、お前のせいなわけがあるか!」
「お前ら!」
 と、走る前方に彼らの師匠の男が合流した。
「師匠!」
「無事だったんだな、お前ら」
「俺たちのセリフ……ってそんな場合じゃ……っ!」
 青年の背後に影が躍る。
 うねる角が月明かりの中で青白く発光している。大きく跳び上がったその獣が、地面を爆発させたような衝撃と共に蹄を地面に打ち落とす。
 森に踏み入ったものを殺す、悪魔。
 体から木の芽のような部位を生やしたその獣が、更に蹄を三人の冒険者へと打ち付けんとした瞬間。
 青年が少年を、男が青年を、それぞれ突き飛ばして、直後、舞った土埃に全てを覆い隠していた。
神羅・アマミ
【Aチーム】
他人のフラグをヘシ折るなら、自分がそこにフラグを被せてやりゃええと思うんじゃ。
「妾は後で追いつく!其方らは先に行くのじゃ!」「ヘッ…生きて帰れたら、主のカミさんの面、是非拝みたいもんじゃな!」とかにゃー。

てなわけで奴が生み出す雑魚は仲間にお任せしつつ、五体全部使って本体の前足を掴み押し止めていきたい。
コード『緞帳』により、蹄や角の攻撃が加わる度に妾の肉体は強化されていく!
妾が力尽きるか仲間がその間にトドメを刺せるか、そこは我慢比べじゃのー。

あとフラグと言っても、妾はアレじゃよ、大爆発に巻き込まれても「いやー死ぬかと思った」と後でひょっこり顔を出す規格外だから大丈夫(根拠のない自信


ニア・スクニロトマ
【Aチーム】
原始怪獣ジュギラスの着ぐるみで登場!
フラグとかクリシェとか、そんなもので世の中回っちゃいないんだ。
このファンタジーのど真ん中に、怪獣が現れるとは誰も思ってなかっただろう?

ってことで、冒険者たちが踏まれてしまう前に受け止めてやろう!世界観の違うヤツあいてに、どれだけボスっぽく振る舞えるか見ものだね!
それから、ユーベルコードの力で、水を浴びてミニジュギラスを大量に生み出すよ。あんまり強くはないけど、葉っぱ人間の相手くらいはできるはず!


メタ・フレン
【Aチーム】

わたしもアマミさん(f00889)同様、自分にフラグを立てることで他人のフラグをへし折ろうと思います。
冒険者達に「ここはわたし達Aチームに任せて、あなた達は先に行って!わたし達も必ず後で追いつきます!」とでも言ってフラグを立ててから、3人を逃がします。

その後【エレクトロレギオン】で機械兵器110体を召喚し、内10体を葉っぱ人間達に差し向けてニア団長(f06973)のミニジュギラスと一緒に駆逐します。

そして【暗号作成】で合体ソースコードを作り、残り100体を合体させて巨大ロボに。
これまた【暗号作成】で【操縦】プログラムを作って巨大ロボを【操縦】し、ボスとフラグを全力でへし折りますよ!


オックスマン・ポジクラーシャ
【Aチーム】

遅れてすまない。状況は理解した。俺の立ち位置は破壊者で行く。
救出対象は旗を持っているのか?旗など持っていては目立つからな。
よくわからんがフラグとやらも破壊して見せよう。

ところで急に血の滴るステーキを食べたくなった。
吸血衝動だろうか?
オブリビオンを破壊したら帰って食事にしよう。

なるほど、獣ながら植物人間を操るとはな。
数を頼みに攻めて来るか。だが俺は破壊者だ…その攻撃も破壊する!
俺という破壊者に出会った事が獣の不幸だ!

フッ…寄ってたかって俺を殴ろうがこの鎧は破壊できん!
貴様らの攻撃力は破壊された!
そしてこの拳でその目論見、破壊してやろう!合体などさせるものか!



 もうもうと立ち上がる土煙。
 一寸先すら覆い隠すその中で頭を抱え、男は蹄に潰され終わるはずだった自らの生涯を、息子の結婚祝いを振り返った辺りで、ふと気づく。
「あ? 生き、てる?」
「大丈夫かいっ、あんた?」
「あ、ああ、もしかしてアンタが助……」
 と、言いかけた言葉が途中で固まって止まる。目を点にした男性は、目の前のそれを見つめる。
「ああ、そうさ。あたいが助けにきてやったんだよ」
 彼女は告げる。その名を。
「原始怪獣ジュギラスがね!」
 怪獣が仁王立ちしていた。腰に手を当て、1mほどの怪獣が蹄の前に、仁王立ちだ。
 否、怪獣というよりは、ぬいぐるみと言った方が良いようなサイズ感ではあったが、それでもその造形は怪獣であった。
 怪獣の着ぐるみに身を包んだニアは、わなわなと口を震わせる男の言葉を待ち。
「モ、モンスター……っ」
「失礼だね! 命の恩人に向かって!」
「止めておるの、妾じゃがの……ッ」
 心外な言葉に突っ込んだ瞬間に、別の所から突っ込みが被せられた。
 ニアは、腰に手を当てて仁王立ちをしている。尚且つ、蹄に背を向け男を、体格的にほんの僅か、見下ろしている。
 当然、そんな態勢では、モンスターの蹄を押し留める事など出来る筈もなく。
 ニアの背後で、両手、両足を張り詰め、蹄の一撃を受け止めたアマミが踏ん張っていたのだ。
「なんだい、割り込んできたんじゃないか」
「はっ、当然じゃろう」
 蹄の圧力が僅かに緩む瞬間に、掴んだ蹄を捻るように逸らすと、隙間を縫うように伸びた角がアマミ目掛け殺到する。
「なにせ、妾は盾キャラじゃからの!」
 角に裂かれ、打ち抜かれながらも銀の髪を舞わせ、アマミは呵々大笑する。
「妾は後で追いつく!」
「ここはわたし達に任せて、先に行って!」
 アマミの言葉に続いた声が、男と突き飛ばされていた二人に発せられる。
 大量の機械兵器を増産する青い髪の幼い少女に、しかし男は震える手足で立ち上がりながら、首を振った。
「そんな、お嬢さん方に任せて逃げる訳には……大丈夫だ、俺だって、此処まで冒険者をやってきたんだ。死なないさ」
 覚悟を決めた顔で、返す男に青髪の少女、メタは笑顔の端で僅かに歯噛みした。
 自らのフラグ立てに余念が無い。
 どうするか、と思った所へ、メタは男の背後に見知った顔を見た。
「……見た所、旗は持っていないのだな」
「は、はた……?」
「いや、まあいい」
 細めた赤い目で男を眺め見た白髪の男性は、納得のいかないという表情のまま、前へと歩み出る。
「あ、おい、あんた」
「大人しく、下がっていろ」
 彼は、オックスマンは、距離を取った獣へと歩み出ながら、その身に鎧を纏う。
「わたし達も必ず後で追いつきます」
 威勢が削がれた様子の男に、メタは好機とばかりに言葉を投げた。
「あ、ああ……」と気が抜けた返事をする男は、ふと思う。
「……吸血衝動だろうか。血の滴るステーキを食べたくなった」帰ったら食事にしよう、と言うオックスマンにメタが男に背を向け、追いついていく。「なんならパインサラダも作る?」
「合うのか?」
「パインはね、お肉を柔らかくするんだよ」
 オックスマンの疑問に、着ぐるみのニアが答える光景は、威嚇を見せる巨体の獣に相対するものとは思えなかった。
「あんたら、一体」
 と掛けた声にメタは振り返る。
「わたし達は、Aチーム、です」
 それは、停滞を良しとしない、特攻チームの名前だ。
 青年と少年は、男の後ろで支え合うように立ち上がっている。
「ヘッ、生きて帰れたら、其奴のカミさんの面、是非拝みたいもんじゃな!」
 アマミが投げた声に、男は頷いた。
 ちぐはぐな光景に混乱しつつも、この夜にどこか絶えずあった不安が霧散したような清々しさがある。
「ああ、約束だぞ!」
 男は、二人の弟子を連れて、森から離れていく。

 草木が捻じれ、湧き立ち、人の形を成す。
「獣が、傀儡を使うか」
「有象無象共は任せるとしようかの」
 オックスマンは、植物人間が召喚されゆく光景に息を吐く。アマミが彼に並び立ち、その周囲に目もくれず言い切る。
「それじゃあ、頼むよ」とニアが、メタへと視線を送る。彼女が頷いた、瞬間、ニアの頭上に雨の様な水滴が降り注いでいた。
 木々の葉に付いた夜露。星の如く煌めくそれらを予め放っていた機械兵器で揺らし落としたのだ。
 着ぐるみに水は、とも思うかもしれないが、決して嫌がらせではない。
 水滴を浴びたニアの背中から、ぽんと、毛玉が弾き出される。落ちる水滴の一粒一粒が柔らかな毛玉となって飛び出していき、その姿は、今のニアを更に縮めたような姿を取った。
 その数は、百近い。その数が現れた数体の植物人間へと突進していく。ミニマム怪獣大戦争である。
メタのニアの物よりも多い小型機械兵器もそこへと加わり。
 また更に、オックスマンが纏った鎧ごと、その集団へと踏み込んだ。
 植物人間の振るう蔦の腕が、ニアの怪獣とメタの兵器を薙ぎ払っていくが、しかし、その攻撃は、オックスマンの鎧とぶつかって、その動きを止める。
 その隙に、術者の指示によって、小型の軍団は敵を攻撃していく。
 金属と植物のぶつかり合う音が響き、衝撃が鎧の中のオックスマンに届くが、それ如きで揺らぐオックスマンではない。
 何者にも破壊されない鎧は、相手の矛を、そして全てを破壊する拳は、相手の盾を。
「破壊してやろう! その全てを!」
「さて、こちらは根競べといこうかのう?」
 猛る声に、笑みを零しつつ。
 アマミは、再び振り落とされた蹄を掴み抑えて、獣を押し留めていた。
 植物人間を召喚した後、この獣は逃げた三人を追おうとしたのだ。
「妾が力尽きるか、仲間が止めを差すか。どちらが先かのう?」
 アマミの笑みに、言葉も発さぬ獣が吠える。込められた力が増幅する。
 その反応に、よかろう、と、声が返ったような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ジュディ・スカリー
さて、頑張ろう。

なんか、盛り上がってるし邪魔するのも悪いな。
遠くから援護するぐらいにしておこう。
幸い、向こうで注意を引いてくれてるし、ゆっくり狙いをつけるぐらいの時間は取れそうだね。

狙いは目……と言いたいところだけど、頭は動きが大きいし狙わない方が無難かな。
胴体の真ん中を狙っていこう。
落ち着いて、いつもどおり弓を引いてタイミングを待つ。動きがとまったら矢を放つ。シンプルだけどこれでいこう。



「なんか、盛り上がってるな……」
 赤毛の女が、ひっそりと言葉を零した。
 彼女の見る先では、巨大な獣と力比べをする羅刹の少女と、草木の人形を駆逐していくその仲間の姿があった。
 邪魔するのも気が引ける、と彼女、ジュディは複合弓をゆっくりと構えた。
 その距離はおおよそ二百米。
 あの獣の注意は、あの少女が引いてくれている。周囲の人形たちも、現れる傍から数を減らしている。
「いつも通り」
 落ち着いて、ジュディは矢を弓に番えた。
 息を吐き、吸う。細く、細く。一本の線のように息を繋げて、己の中へと世界を収束させていく。
 狙うは、胴体。
 眼球の一つでも潰せるのなら、都合はいいが、少女との競り合いで頭部はブレが大きい。
 番えた矢が、張り詰めた弦の反発に僅かに揺れるのを抑え込みながら、ジュディはその瞬間を待つ。
 息を詰めた、その瞬間。
 少女に蹄を突き落とした獣が、その全身に力を巡らせる一瞬。
 ジュディは指を離す。
 音を抜き去る勢いで、空を駆けた一矢は紛れもなく、獣の胴体のど真ん中へと向かう軌道を抜け。
「……っ」
 吹き飛んだ植物人間の体がその軌道上に上り、その矢を受けて元の植物に散っていく。
 失敗した。
 ジュディは、細めた目でそれを認知した瞬間には、もう次の矢を弦へと引き掛けていた。次ぐ矢をいつ手に取ったかも覚えていない。
 意識すら、しないままにジュディは番えた弓を引き絞る。
 無意識のままに体が動く。いや、私は、この動きを意識している。認識している。
 胸の高鳴りも聞こえないままに、指が滑るように矢が放たれた。瞬間、僅かに森の香りが頬を掠める。
 線が結ばれる。
 振り下ろした蹄の反動でその体が停まった瞬間に、その矢は予想していたかのように、その胴体と弓の間に線を結ぶ。
 その矢が突き立つ先に視線を遣らず、しかし突き立つ矢の感覚は脳裏と現実が符合する。
 次はどこを狙うか。矢羽に触れる指先に彼女は、狩人の勘を研ぎ澄ませていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニア・スクニロトマ
この世界で恐れられているだけあって、かなりの強敵だね!
だけど、ジュギラスの力はこんなものじゃない!
アマミちゃんが止めてくれている間に、とどめを刺してやる!

「ホラー気取りはもう終わり! ここからはジャンルを変えていくよ!」
ユーベルコードで巨大化(211cm)したジュギラスを召喚!
怪獣バトルになったら、もうサスペンスどころじゃないからね。
正面からぶつかって、自慢のツノをへし折ってやる!
それから首根っこを掴んで投げ飛ばし、周りの木々ごとなぎ倒す!
ちょっと自然破壊しちゃってるけど、オブリビオンよりはマシだよね!



 増加した自らの分身と、メタの機械兵器、そしてオックスマンの特攻によって出現する端から撃滅されていく植物人間を見て、ニアは着ぐるみの中でにやりと笑む。
 始めこそ、合体して手こずらされた植物人間達も、十分に立ち消え気味だ。
「さ」
 と、ニアは首を巡らせて、蹄をアマミへと突き落とす轟音を辿ってその巨体を見つめる。
「随分と苦戦してるじゃないか!」
「は、抜かしおるわ、妾が押されているとで、もっ!?」
 返った返事は、瞬間的に増した力に押し切られて、途切れて弾けた。
「あんた、よくもあたいの仲間を!」
「ん、いや妾」
 砂ぼこりの中へと姿を隠した仲間を偲び猛るニアは、もうもうと上る砂塵から聞こえる声など無視したまま、力を開放する。
 直後現れるのは、周囲と解像度の違うようにも見える巨大化した彼女、ニアの着るジュギラスの怪獣だ。それは、ぬいぐるみと呼ぶべきかと迷うほどのサイズ感である彼女本体と比べると、圧倒的なスケールを持って彼女の動きとリンクした。
 と言っても2m程のそれではあるのだが。
 だが、そんな事はお構いなしに、ニアは獣の眼前へと立ちふさがる。

「……なんだ、あれ」
 と、ジュディは、次なる矢を手に、現れた怪獣に零す。
 どうにも、おかしな一同だ、と俯瞰的な立場から冷静に観察しながら、再び彼女は狙いを定め、弦を引く。

 伸びた角を掴み、根元へと辿ると、ニアは相手の巨体を捻りあげ、僅かに地面から浮かせるように持ち上げる。
「そ、いらぁ!」
 嘩声豪投、その体へと、断続的に続く射撃の矢が突き刺さり、体の制御が乱れた瞬間、獣の体が一気に横転した。
 否、横転したのではなく、捻りを交えて投げ飛ばされたのだ。
「は、さすがの強敵だね!」
 でも、とニアはジャイナントスイングさながら投げ飛ばした獣が樹木を押し倒しながら、転がっていくのを見ながら自信満々に告げる。
「あたい達の方が上だ」
 不破の鎧を纏う拳が、無数の機械兵器が、そして、それらの間隙を縫う矢弾が。
 そしてニアの召喚した怪獣の一撃が。
「これで終わりだよ!」
 生木の木っ端を周辺へと舞わせながら、獣を撃破した。
 ずずん、と巨体が体を地面に沈め込める。
 さて、と、起き上がる影が、砂ぼこりの中に一つ。
「……自然破壊じゃの」
「なに、オブリビオンよりマシさね!」
 砂ぼこりの中から、姿を現し、咽るアマミの言葉に、ニアは腰に手を当て憮然と言い放つ。
 さて、被害の程は、どちらがマシだったのか。砕けた森の風景に思いを馳せる。だが。
 少なくとも、冒険者の三人の命は救われた。
 それが、今この場における何よりの成果だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『勝者たちの宴』

POW   :    資材の運搬などの力仕事やとにかく目立つパフォーマンスで祭りを盛り上げます

SPD   :    祭りについて周辺の町に宣伝を行ったり、珍しい物品やサービスを提供します

WIZ   :    人手がいる仕事の助力や地域の名産などを押し出した企画を出展します

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 祭りが始まる。
 花を贈り、送られ、そうして華々しく、恋が散り叶う、祭りが始まる。
ニア・スクニロトマ
お祭りっていうのはいいねえ。あたいはね、賑やかなのは好きだよ!
ってことで、ジュギラスの着ぐるみを着て、派手に火を噴いて盛り上げよう! あ、今度は周りを壊さないようにするから安心してね。
それに、ふふん、なんだかめでたい話もあるみたいじゃないか。
両親と久々の再会なんて、いいじゃないか。元気な顔を見せてやりなよ。

……あ、でも……無事で帰るとさ、会いたかった人たちはもう……なんてことが……
ううん、なんでもないよ! 両親もきっと喜んでくれるさ!
でも一応、墓に添える花は用意しておくよ……



 空は、どうしてあんなにも青々と澄み渡っているのだろう。
 青年は、込み上げる想いを押し込めながら空を仰いだ。
 久々に村へ帰ってきた。
 家の並びが変わっている。
 人々の顔ぶれも、流行りの歌も、花冠の人気職人も。移り変わっている。
 それは予想していた。
 だが、それだけは変わっていないと思っていた。
 ただ、それだけは変わっていないと信じていたかった。
「……っ」
 震える。息が詰まる。
 胸が焼けるように熱いのに、無理矢理に抑え込もうとして、しかし零れ落ちる。漏れ出していく。
 その表情に、少し離れて様子を見ていたニアは、近づいて肩を叩く。
「もうこれ以上我慢、しなくていいんだよ」
「っ……!」
 その声色に、抑えきれなくなった。堰を切ったように、引き攣っていく肺が感情を吐き出していく。

 歩く村の通りには屋台が立ち並んでいる。
 飲食の屋台、遊戯の屋台、見世物の屋台、様々な屋台が並んでいるが、中でも目を引くのは。
「花冠の屋台なんてあるんだね」
 と少年は、隣を歩く青年を見上げる。
「ん、ああ……」
 だが、聞かれた青年は、緊張を隠し切れないようで、言葉が酷く曖昧だ。
 彼にとっては数年越しの再会。しかも、結婚の報告まであるのだ。それを目前にして、緊張しないのは肝が据わりすぎているだろう。
 母親は陽気な性格だ。許してくれるだろうが、父親はどうか。木こりである父は、厳格な性格をしている。
 家を出たきっかけも、父に反発したことが発端だ。
 集中しきらない青年は、半ば無意識に少年の言葉に返答していく。
「そうだな。贈り物用に、以外でも今日限りのアクセサリーとかにも買うみたいだ」
「へえ、確かに可愛い、もん、な」
「分かるのか、俺にはさっぱり……。人気な職人とか、流行りの編み方とか毎年あるみたいなんだよな」
「うん、確かに色々あるな」
 と連れ立ち歩く二人の脚は、彼の実家へと向かっている。
 一度表通りを抜けていこうか、としたその時だ。
 青年の脚がふと止まる。
「……」
「……? どうしたの?」
「……」
 少年が、青年の視線を追うと、そこには、花に埋もれる様に屋台の中で花冠を編む、一人の壮年の男性がいた。
 慣れた様子で、複雑な編み目を作り出している男性は、立ち止まった青年に作業を止め、その立ち止まった人影を見上げ、動きを凍らせた。
 そうして、青年は確信と共に空を見上げた。

「ぶ、は、っはは!」
「誰だてめえは! 人の顔見て笑い出しやがって、この放蕩息子!」
「だれ、って分かってんじゃ――」
 腹を押さえて、涙を流す青年の顔面に作りかけの花冠が投げつけられる。
 筋肉質な男性が、生花の籠に囲まれた中でこまごまと、可愛らしい花の冠を編み込んでいる。それが肉親であったなら、何を思うのか。何があったのか、そんな事をする父ではなかったのなら。 
 ひとまず青年は、笑いの感情が爆発したらしかった。
「賑やかだねえ」
 ニアは、献花用で持っていた花を、隣の花冠屋に祝いの物に繕いなおしてもらいながら、笑いを零した。
 変わらず、ジュギラスの着ぐるみに身を包んだ彼女だが、周囲からはあまり気に留められていない。
 見れば、奇抜な格好をした大道芸人も多い。大して珍しくもないのかもしれない。
「お代置いとくね」
「はいよ、お隣さんに渡しとけばいいんだね」
「そ、頼んだよ」
 ニアは賑わう喧騒の中へと身を投じていく。
 そういえば、とニアは少しだけ後ろ髪を引かれ、もう一度青年たちに意識を向けた。父親は会えたようだが、母親は。
「そんな、母さん……」
「……すまん」
 悲壮感を声に纏わせ、明るく喧嘩していた筈の二人が項垂れている。
 もしや、とニアが振り返る直前「ミス花冠クイーンコンテストに」と呟く青年の声に、もう一切心配する事をやめた。
 向かうは、この先にある広場。そこでいわゆるイベントを行うらしい。盛り上げるのなら、そこへ向かうのが吉だ。
「怪獣の魅力をお披露目してやるさ……!」
 見事な火吹き芸で、ステージを彩る怪獣の着ぐるみが出現するまで、あと数分。
「お祭りっていうのはいいねえ」と、跳ねるような声で、人ごみの中を小さな怪獣が闊歩していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クック・ルウ
召喚した老鴉のおじじ殿と一緒に祭りを楽しませてもらうな

そこの屋台の方
なんかトゥンク……ってなる感じの花はないか
そうそう、恋するあの子に華を添えてやりたくてな
後押しだから、一輪だけで充分だよ

なあ、おじじ殿
気になる噂を聞いたのだ
(ひそひそ小声で囁いて)

……という訳らしい
そこで「少年」の髪に花を一輪、飾ってあげられないか
もちろんあの子は「青年」からの花冠を待っているのだろうけれど
せっかくの祭りだ、おめかしの手助けなどしてあげたいじゃないか

ね、ね、いいだろ
おじじ殿なら賢いから
きっと上手くやれる

お、行ってくれるかおじじ殿
それでは旗を折った者達へ
祝福の花に【勇気】を込めて贈ろう



 ふんふん、と鼻をひくつかせながら、クックは喧騒の中を歩いている。
「――」
「なんだ、おじじ……分かってるよ」
 クックは、肩の乗った羽先が草臥れたような鴉に憮然と頷いて、目線を奪われていた串焼きの屋台から目を逸らした。
 先の戦闘に参加した者や、予知を見た者に聞いた話から予測する『少年』に関する事を話し合って、それに見合った屋台を巡っている。
「――」
「それは、そうだけども」
「――」
「そう、そろそろ」
 とクックは、肩の老鴉が羽ばたいた先の屋台に近づいていき、尋ねる。
「そこの主人」
「ん?」
「なんか……トゥンク、と来る感じの花はないか」
「おお、そうだね、姉ちゃんなら……」
「あ、いや……そう、恋する子に華を添えてやりたくてな」
 と、大袈裟な花冠を取り出した店の主人に、クックはそれを下ろすように言い、一輪の花を所望する。
「へえ、そりゃまた」
 と感心する店主がそれでも頬を緩めながら選んだ花は、紫がかった小さな花弁が螺旋状に開く小振りな一輪だった。
「積もる想いが花弁の数になる、なんて花だ」
 別の場所じゃ、あんたなんて数多の恋の一つでしかない、なんて振り文句にもなってるがな。と冗談めかす主人に、クックはふむ、と黒墨の唇を僅かに突いて思案する。
「それじゃあ」
 と、勧め通りに買い取った花を、おじじと呼ぶ老鴉に咥えさせると彼女は賑やかな屋台に視線を運んで言う。
「頼んだよ、おじじ」
 鮮やかで明るい紫の花弁は『少年』の髪には似合わないかもしれない。
 ただ、その花は、きっと違った味を際立ててくれるだろうと、クックは羽ばたいた老鴉の黒に紛れるその色に、勇気を送った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オックスマン・ポジクラーシャ
祭りか…俺は破壊する事しかできないが、俺の戦いの結果が
今この時に結びついたのであれば、俺のしたことにも意味があるのだろう。
遅れてすまない。状況は理解した。
しかしそれでも俺の立ち位置は破壊者で行く。

突然民家から現れて風を放ってすまない。
だがまずは落ち着いて聞いてほしい。
君たちは、この風を受けた時
言葉では言い表せない、フラグ、のようなものを感じ取ってくれたのではないかと思う。
殺伐とした姿の俺を見て日常というもののすばらしさを感じてほしい。
そう思って俺はこの祭りに現れたのだ。

それでは、注文を聞こうか。
俺は破壊する事しかできないが
俺にもできる余興を見つけてくれれば全力でサービスしよう。



 声が聞こえる。
 喧騒が聞こえる。
 人がざわめく音だ。
 この長閑で騒がしい世界を謳歌する声だ。
「……だが、私は破壊者なのだ」
 故に破壊する。
 飛び出した鎧は、暴風を振るい人々の恐怖に満ちた視線の中へと姿を現した。
「ああ、落ち着いて欲しい」
 と、彼は、オックスマンは語る。
 暴徒か、モンスターか。と剣を構えた祭りを楽しんでいたのだろう冒険者たちと、怯える村人達に語り掛ける。
 柄に手を添えたまま恐怖の冷たさに動けないでいる冒険者たちを含めた、『観客達』を見渡し、漆黒の剣を地面へと突く。
「君たちは、この風を受けた時、言葉では言い表せない、フラグ、のようなものを感じ取ってくれたのではないかと思う」
 徐々に、恐怖の鎖は解けていく。
 オックスマンの視界の中で、民衆たちの顔つきが変化していく。それを彼はどう認識していくのだろう。
「殺伐とした姿の俺を見て日常というもののすばらしさを感じてほしい」
 そう、破壊しか出来ないが。何かできることがあるのならば、注文を受けよう。と彼は述べる。
 危険が無いのだ、と知り、人々の顔つきは緩んでいく。
 返される言葉は無い。人々の喧騒は、静かに熱を取り戻していく。
 繋ぎ、育み、作り上げるのが、この時であるならば。
 破壊はただ、拒絶されるだけだ。
「ありがとう」
 だからだろうか。
 不意にかけられたその言葉が、異様に重く聞こえたのは。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロジロ・ワイズクリー
所謂お約束と言うものは嫌いではないのが、フラグを折って積み重ねその結果に人の笑顔があるなら悪くはない。
勿論、折らない方がいいフラグは見守る気持ちで。

人手が足りていないようなので手伝いに来た。
頑丈な方ではないが、いくらかの助けになるだろうか。
手先はそれなりに器用ではあるので屋台に並べる物が追いつかないようなら、売り手から作成の方まで幅広く動こう。

帰れる故郷があり、そこに帰る事が出来たのならば重畳。
祭りも、この村の様子も全てが眩しいな。



 フラグと言うものがあるのなら、折るべきフラグと折らなくてもいいフラグは明確に二分した方が良い。
 ロジロは祭りの各所で繰り広げられる思いの交差を見守りながら、そんな事を思っていた。
「すまんね、これをそっちに出してくれんかね」
 と老女が差し出す花冠を彼は並べていく。
 見事なものだ。とロジロは出来上がる花冠を見る。
 複雑に、しかし、その全てが意味を持って編み込まれている。
 茎も、花も、その全てが縁となって花の冠としてそこにまとまっているのだ。
「なんだい、そんな風に言われると恥ずかしいね」
「ああ、聞こえていましたか」
 とロジロは、静かに頬を掻いた。思わずと零れた感嘆の声に老女がはにかんでいた。
「でも、やっぱり、誰かに飾られてこそさ」
 と老女の視線の先に、男女がいた。何かを探すように視線を巡らせ、そして、その視線がロジロの先ほど店先に出したばかりの花冠に留まった。
 笑みを浮かべる男性に、女性が少し照れたように口を尖らせる。まるで、花冠に負けてしまいそうだと言わんばかりの表情に、しかし男性は半ば強引にロジロの前へと女性を連れてこようとしている。
「ああ、眩しいな」
 ロジロは、その二人に見えぬ確かな縁を見て、静かに微笑んだ。


 青年は、民衆の視線を浴びながら炎を噴く見覚えのある着ぐるみを見つめていた。
 森で、強大な存在に対して一切の怯みなく、呵々と笑って見せたその姿は実に凛々しさを感じる物だった。
 その感情は憧れ、とも、妬み、とも違う。
 奇妙な感動だった。
「カッコイイなあ」
「え、かっこいい……?」とその隣の少年が、首を傾げていた。
「え、かっこいいだろ、ってそれどうしたんだ?」
 青年が、振り返った少年を見つめて、ふと問いかけた。
 その視線の先には、紫の花弁。少年の髪に小さく収まる花に青年が言う。
「まるで女の子みたいだな」
「み、みたいってなんだよ……! なんか、黒い鳥が差していったんだよ」
「え、ちょ」
 からかうような口調に憮然と返した少年はその花をつかみ取ろうとして、しかし青年の手にそれは阻まれた。
 いいじゃん、と青年は少年の手を掴み言う。
「似合ってるんだし」
 そして、その手を離して、何かを企んだような笑みと共に、後ろ手に隠した手を少年の頭へと移す。
 少年の頭には、柔らかな感触が掛けられる。
「師匠用と、お前用と買ってたんだ」
 と、紫の花弁に映える様な花冠がその頭に乗せられていた。
「いつもありがとな」
 そういう青年に、少年はただ息を呑んで、不意に笑いだしていた。

「ありがとう」
 と言う言葉には、自らの命を助けてくれて以上の感情が込められていた。
 暴風を放った男性に、青年が師匠と呼ぶ男は只一人、近づいてきた。
「きっと、俺達だけじゃ、助からなかった。俺達だけじゃ、この光景は無くなっていた」
 と男は言う。
 目の前の鎧の男は、破壊しか出来ない、と言っている。
 だが、と男は思う。
 あの時、あの場所で、目の前の男性は自分が感じていた伝えようもない予感を、一片たりとも残さず破壊しつくしてくれた。
 破壊しか出来ない。
 その言葉に、男は首を振るう。
 彼は破壊し、そして命を、そしてこの光景を作ったのだ。
「頼みがあるんだ」
 と男は、目の前の鎧の男性へと注文をつけた。
「ぜひとも、祭りを楽しんでいってくれ」
 サービスはいらない。
 まずは、上手い飯があるんだ。と手を差し伸べていた。

 青年は故郷へ帰り、少年はまた笑い、男は命を謳歌する。
 それは、この喧騒の中の一部分でしかなく、それでも欠かす事の出来ない一音だ。
 そんな一音が、一欠けらが、集まって輝いていくその光景を、誰もがただ日常の中へと溶かしていく。
 ゆっくりと、明日も訪れる幸福の兆しが、その場の人々を明るく照らしていた。



 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月03日


挿絵イラスト