ボーン・ワールド
#アリスラビリンス
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●はいいろの世界
ゴツゴツした岩山。岩肌がむき出しになった平原。
見渡す限り、一面の岩のはいいろ。
唯一の違う色は、岩肌を流れる赤い水。
そんな荒寥とした景色が、その小さな世界の全てだった。
今は、まだ。
新たに繋がった魔法のウサギ穴から、真っ白な『愉快な仲間』たちが、カタカタと体を鳴らしながら現れる。
『なぁんもないなぁ、ここ』
『こういうの何て言うんだっけ?』
『殺風景?』
『面白みがないねえ。我輩達で、面白おかしく作り変えちゃおうぜ』
『『『さんせーい!』』』
全身真っ白――骨だけの愉快な仲間たちは、カタカタ骨を鳴らしてはいいろの世界を歩き出した。
●新しい世界へ
「アリスラビリンス、もう行ったことあるかしら?」
レネシャ・メサルティム(黒翼・f14243)はグリモアベースに集まった猟兵達に、そう話を切り出した。
何故かレネシャの手には、骨が握られている。
犬の玩具で良く見るやつだ。
「あそこは幾つもの『不思議の国』が繋がっている複合世界って言う事なんだけど。不思議の国って、現在進行形で増えてるのか、たまに新しい所が見つかるのよね」
そろそろおわかりだろう。
「そ。また新しい『不思議の国』が見つかったわ。転移して貰うのは、ウサギ穴を通って来た『愉快な仲間』が着いたばかりの、手付かずの状態の世界になるわ」
愉快な仲間達は、おもちゃの街やお菓子の森を造る能力がある。
「任せておいても不思議の国は出来上がるんだけど……任せておくだけだと、防衛力がほとんどない国になっちゃうのよ」
守りがカッスカスの不思議の国。
オウガに見つかれば、蹂躙されるのは間違いない。
「バレエ衣装を着たおっちゃん、と言うオウガが来るのが予知出来たし」
このままだと完成した途端、国がおっちゃんに蹴り壊される。
「という訳で、愉快な仲間たちと一緒にオウガの侵攻にも耐えられる国を作って、ついでにオウガも撃退してきて」
まだ何もない不思議の国にも、いずれアリスが迷い込む事もあるだろう。
その日の為にも、楽しく丈夫な国を作る必要がある。
「で、肝心の世界だけど。一面に岩が広がる灰色の世界」
ん?
「岩山に岩の平原しかないわ。川も流れているけど、何故か水が赤いのよねー」
んん?
「それでね、愉快な仲間たちは――これよ」
これ、とレネシャがずいっと猟兵達に差し出したのは――骨。
「そ。肉なし。動く骨。人形動物型、色々いるわ」
荒涼とした世界に、骨の擬似生物。
オウガは目をつけた不思議の国を無惨に歪め、『美しい地獄』を作ると言うが。
なんか既に地獄と言うかあの世っぽさないですかね?
「大丈夫よ。予知で見た感じ、友好的で陽気で面白い事好きでちょっと無鉄砲なところもありそうだけど基本的には素直な骨達だから。安心して?」
何を安心しろと言うのだろう。
「まあ、このまま地獄っぽくなるか天国になるかは、皆次第よ。骨達も愉快な仲間。言えば色々を造れるから」
どんな植物を植えるのか。
どんな地形を作るのか。
どんな建物を建てるのか。
猟兵達の提案で、世界は作られていく。
「オウガの侵攻が確実にある事。それに耐えられるようにする事。そこさえ押さえておいて貰えれば好きにやってきて貰って良いから。よろしくね」
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
アリスラビリンスで、新たな不思議の国が見つかりました。
自由に開拓&オウガ撃退するだけのお仕事です。
不思議の国は、岩山に岩の平原だけの世界。
あとは何故か赤い水が流れてる川。
転移直後にあるのは、そのくらいです。
あと色んな骨がいます。骨。
1章、2章は日常です。
2章までかけて、不思議の国を作っていく事になります。
最低限これは作って、ってのは1章でありますが、他は自由!
今はちょーっとあの世っぽいけど、何でも来い。骨が作るさ!
3章でボス戦です。オウガ戦です。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 日常
『最初の灯』
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POW : 石や菓子を削り出す
SPD : 不思議な素材を組み合わせる
WIZ : 光る花や葉を生み出す
👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●暗いよ
岩。岩肌。岩。岩盤。岩。岩山。
その間に時折混じる、赤い川。
転移した猟兵達の前に広がるのは、そんな光景だった。
『おや? 誰か来たようだ』
『来た来た』
『アリス?』
『ではないようだね?』
何だなんだと、周りにいた骨の愉快な仲間が数体、近寄ってくる。
カタカタ、ガシャガシャとその周りからも骨が動く物音が聞こえてくるが、どうにも薄暗い為、遠くまでは姿が見えない。
ほとんど何もない世界だが――決定的に足りないものがありそうだ。
この世界には、光が足りない。
==========================================
1章では最低限、この世界に光を、灯りを作ってください。
とは言え、灯りしか作れないというわけではありません。
灯り以外も好きなように骨達にあれこれ提案し、作って頂いてOKです。
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フィーナ・ステラガーデン
(魔法的メガネ装備)
真っ暗で赤い川流れてて近寄ってくるのは骨ばっかり!
この世界って夢とか絵本みたいな世界じゃなかったかしら?
ちょっとした悪夢よここ!
あんたら敵じゃないの?私は騙されないわよ!(疑いつつ骨を杖でつんつん)
うーん。灯りねえ。私思うのよ!
やっぱり村とか町とかそういうのを作るならシンボルが必要よ!
それ自体が灯りになれば言うことないわね!
一石二鳥というやつよ!覚えておきなさい!
そうねえ。出来るだけ高くて大きい岩山を見つけるわ!
形はある程度爆破魔法、細かい所は高密度レーザーな魔法で削って
高い位置に巨大な中身が空洞の岩の頭蓋骨を作るわ!
中身は魔法で火を灯すわ!
(アレンジアドリブ歓迎)
アメリア・イアハッター
世界に光を作る
壮大でロマンチックで、そして何より楽しそうだね
私にも是非、その国造りを手伝わせて欲しいな!
折角作るのであれば、その国の象徴となるようなおっきな光を作りたいな
いずれ訪れるアリスが遠くからでもその光を見つけられて、安心してこの国へ向かうことができる希望の光を
そしてオウガ襲撃時には、その光を目指してやってくることで誘導し、その近辺に予め罠を張ることで防衛を容易にするような、誘蛾灯のような光を
となれば作るのは、灯台だね!
この国の一番高いところに、とっても高い灯台を作っちゃおう!
材料は骨…だとアリスがびっくりするかしら
まぁいっか!
ボーンタワーでいきましょう!
最後はUCで光を付けて完成だ!
來米良亭・ぱん太
「え~、骨の皆様にここで一席、骨にまつわるお噺を」
リンゴ箱、座布団持参で即席高座をつくる。
「この寂しい世界を明るくするには、笑いが必要でござんす!」
という謎の主張で『野ざらし』を演ります。
骨の皆さんも一緒に噺の中の「サイサイ節」を歌い踊ってくれると、楽しいのではないかと。その摩擦で骨の燐が発火して人魂になったりすると、一応光を作ったことになりませんかね……?
落語の効果で、骨から美女が生まれたりしたらなおよし。
※毎度すみません。今回も落語が使いたいだけです。一応江戸落語の『野ざらし』を思い浮かべています。アドリブ・連携大歓迎、好きに遊んでやってください。
ギヨーム・エペー
ごめんなーアリスじゃなくてダンピなんだ。おれも混ぜてくれよー面白いもん作ろうぜ!
しかし暗いなー明かり作ろうぜ明かり。明るいとなー、相手の顔が遠くからも見えていつでもにらめっこできる。
仮照明をUCの応用で作る。まず火の魔術で小さい火の玉を作って、防御増し増しの氷の魔力でそいつを覆うと…氷ランプー。これでな、近くでにらめっこしても勝敗がわかりやすくなる。
ここで取れる資源で光源造りか…こんだけ岩山だらけなんだから一個くらい鉱山だったりしねえかなー。よし掘るか!骨くんちゃん等もどーよ宝探ししよーぜ!光る石か燃える石とかあるかもしれねえし、ないなら石材が入るし土地も広がるぞ!
真守・有栖
なーるほど?くらいわね?ぶらっくだわ!
ぶらっくよりもしるばー。まっくらよりもきらきらのぴっかぴか。
とーなーれーばー?えぇ、銀狼にて光狼たる私の出番ね!出番だわっ
お任せあれ!きらっきらのぴっかぴかでわっふわふなわーるどにしてあげるわ!
――月喰
刃に込めるは“煌”の一意
延びた斬光できらっとすぱっと大岩を斬り飛ばすわっ
どう?きらきらでぴっかぴかだとこんなこともできるのよ!
と、ゆーわけで。貴方たちももっときらきらぴかぴかするべきだわ。するべきよ!
住処も大事。けれども身だしなみもとっっっても大事よ?
きらきらを身に着けるも良し。ぴかぴかで照らすも良し。何でも良しよ!
きらぴかのぼーんで、まずはわおーん!よっ
ジャハル・アルムリフ
この世界の住人と言えば
福々しい見目ばかりと思っていたが
つい不憫な眼差しを向けてしまう
…骨…
…お前達、肉はどうした
うむ、灯り無しでは家も作れぬ
そうだな、先ずは
そこらの岩を丸く割り
【うつろわぬ焔】で溶岩の如く燃え上がらせ
即席の太陽としてみるのは如何だろう
地獄らしさは増したようにも思えるが
それに、彼等が暗いところで転び骨折でもしては危険だ
…
お前達の肋骨を少しずつ分けてくれ
文字通りの骨組みで行灯を作り手渡しておこう
うむ、これで彼等も安全に作業へ加われよう
そして炎があれば石を鉄板代わりに調理も出来るだろう
お前達――骨一号、二号、三号
オウガ達に対抗したければ
しっかり喰って肉をつけるのだぞ、良いな
杏・叶羽
残念ながら、私はアリスではありません。天使です
骨さん達のお手伝いを、しに来ました
此処はどうやら、天国とは程遠いようです
光は生まれながら秘めています――このように
ですが、私がいなくとも永続する光となると……
光るお花で飾るのは、いかがでしょうか
骨さんの趣味に合うと良いのですけれども
灰色の世界も、悪くはないのです
私が居た世界も、真っ白な世界でした
ただ……灯はせっかくなら愛らしい方が良いと、そう思っただけですよ
光の花を、溢れんばかりに生み出す
柔らかな光の数々
(其れは生みの親と似て、どこか儚げで)
(脆く崩れ落ちそうな、美しい花だった)
アリスを導く光
けれども
私はアリスを、何処へ導けばいいのでしょうか
●骨との邂逅
『アリス?』
『ではないようだね?』
カタカタカコン、と。
骨の首が、硬い音を鳴らす。
「ごめんなー? アリスじゃなくて、ダンピールなんだ」
首を傾げる骨達に、ギヨーム・エペー(日に焼けたダンピール・f20226)が、にかっと笑顔で告げる。
「残念ながら、私達はアリスではありません。私は、天使です」
杏・叶羽(白花の冠・f20006)は、何処か申し訳なさそうに伏し目がちに告げながら、その背中の白翼を広げた。
『そっか、アリスじゃないのか』
『でもオッケーオッケー。いらっしゃい』
『まだなーんもないけどな』
猟兵達がアリスでないと判っても、骨達の態度は特に変わらなかった。カタカタと骨と歯を打ち鳴らしてどうやら笑っているようだ。
『おーい、皆もこっち来いよ!』
『お客だぞー』
『なに? 客だって?』
笑う骨の声に誘われて、暗がりの中から骨達がぞろぞろと姿を表す。
「いやいや。何かが、おかしくない?」
フィーナ・ステラガーデン(月をも焦がす・f03500)がかけている眼鏡には、闇夜を見通す力がある。
それ故に、はっきりと見えてしまっていたのだ。
暗闇の向こうで、赤い川をかき分けて来る骨達の姿が。
血の川を横断するスケルトンの大行進、にしか見えない光景が。
「右も左も骨ばかり! この世界って、夢とか絵本みたいな世界じゃなかったかしら? ちょっとした悪夢よここ!」
『絵本? 絵本ってなんだ?』
『我輩達は骨であるからなぁ』
フィーナのツッコミにも、骨達は頭をカリカリとかいて笑っているばかり。
「この世界の住人と言えば、福々しい見目ばかりと思っていたが……」
そんな骨達の姿に、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)は不憫な視線を向けずにはいられなかった。
「骨……お前達、肉はどうした」
『あっはっは、それたまに聞かれるである』
『我輩達、肉など最初から無いのだ!』
「……何故そう、明るい……」
「あんたら敵じゃないの? 私は騙されないわよ!」
ますます不憫そうな目にジャハルの横から、フィーナが疑いを強めて杖で骨の腹をつんつんと突いてみた。
『いやん』
突かれた骨は、もじもじと他の骨の後ろに隠れた。
「……」
この予想外の反応に、思わずフィーナも押し黙る。
どうしようこれ。
「ところで骨の皆様。この国を作ってる真っ最中なんですよね?」
そんな微妙な空気を物ともせず、來米良亭・ぱん太(魔術落語家・f07970)が骨達に話しかけた。
『そうである』
「この暗い中で、良く作業が出来ますなぁ?」
頷く骨にぱん太が返すと――骨達は驚いたようだった。
骨故に表情の変化という物は無いが、発する空気が何か驚いているっぽい。
『暗、い?』
『そんなに?』
「くらいわね? ぶらっくだわ!」
真守・有栖(月喰の巫女・f15177)がきっぱりと告げると、猟兵達の周りにいる骨達のあごが、カコーンっと落ちた。
『なんてこった!』
『暗い国だったのか、ここ!』
「暗さに気づいてなかったんですかい!?」
骨達の驚きのポイントに、思わずツッコむぱん太。
『このままじゃ、アリスが来たら困るんじゃないか?』
「なら、世界に光を作ればいいのよ」
頭を抱える骨に、アメリア・イアハッター(想空流・f01896)が声を掛ける。
「私達は、あなた達の国造りを手伝う為に来たの。是非、手伝わせて欲しいな!」
アメリアの一言で、落ちていた骨達のあごがカコンっと元に戻った。
『いいのか?』
「ええ。骨さん達のお手伝いを、しに来ました」
「混ぜてくれよー。面白いもん作ろうぜ!」
首を傾げる骨達に、叶羽とギヨームが告げる。
『そう言う事なら!』
『一緒に作ろうか!』
それを聞いた骨達は、猟兵達に骨ばった白い手を差し出してきた。
「お任せあれ! きらっきらのぴっかぴかでわっふわふなわーるどにしてあげるわ!」
有栖が一際強く手を握って握手をすると、骨の腕が肘からぱきっと取れた。
●黄金の太陽
「お前たち、寝床はどうしているのだ?」
『疲れたその辺で寝っ転がってる』
ジャハルの問いに返した骨達の答えは、所謂雑魚寝だった。
「なんと……まあ、灯り無しでは家も作れぬな」
ますます不憫さを感じながら、ジャハルの手は影なる剣を取る。
「ふっ」
短い呼気と共に黒い刃が閃き、ジャハルの眼前にあった岩が割られる。
「っ!」
更に黒刃が閃き、大きな岩のの1つが丸く削り取られる。
「還れ」
自ら削った岩の前に立ち、ジャハルが短く告げる。
その喉奥、師の魔法で描かれた陣から――熱が生まれる。
『火を吹くのか』
『まるでドラゴンだなぁ』
骨達の見ている前で、竜の息吹たる黄金の焔はジャハルの口から放たれ、丸く削られた岩を燃やして、燃やして、燃やして。
ぼこんっ、と。岩の中にあった空気が燃えて、岩の表面が波立った。
「こんなものだろう」
黄金の焔を纏い溶岩の様に赤熱した岩。その周囲のみ成らず遠くまで光が届く様は、さながら小さな太陽。
「炎があれば、石を熱して料理を作る事も出来るだろう」
『岩どころか吾輩達も熱される』
『あ、骨焦げた』
「…………」
骨達の想像以上の軟弱さに、ジャハルが内心で頭を抱える。
とは言え、小さな太陽と呼べる程の熱量を持つものを剥き出しで置いておくのは、骨達が炎になれるとしても少々危ないだろう。
「これを何処に置くか――考えねばならぬか」
「それなら、私が作ろうとしていたものが丁度良いんじゃない?」
腕を組み悩み顔になったジャハルに、フィーナがそう声をかけた。
●破壊と創造は表裏一体
「消し飛べえええええええええ!!」
フィーナの声と共に、魔力が迸る。杖を向けた岩山の周囲が魔力で紅く染まり、圧縮から解放された魔力が焔へと変わる。
ちゅどーんっ!
そして爆発した。
この不思議な国全体が揺れたのではないかと思える程の、圧倒的な火力の大爆発。
「私思うのよ! やっぱり村とか町とか作るならシンボルが必要よ!」
岩山を覆い隠す爆煙と粉塵を背に、フィーナが告げる。
それとこの破壊活動と、何の関係があるのだろう。
「それ自体が灯りになれば言うことないわね! 一石二鳥というやつよ! 覚えておきなさい!」
『いっせきにちょう?』
「1つの石で鳥を2羽落とす――倍以上の効果を得るという事だ」
首を傾げる骨達に、ジャハルがフォロー。
そうこうしている内に立ち込める煙が収まって、破壊された岩山が見えて来た。
鋭く隆起していた先端が砕け散り、ところどころ欠けている。外からは見えないが、フィーナの爆破魔法の威力は岩山の内部にも届いていて、空洞が出来ていた。
「焔よ。その変幻自在な姿を一閃の光に変え――以下略!」
詠唱を思いっきり短縮し、フィーナが杖から高密度な熱線を岩山に放った。
熱線は岩山を削って、その形を整えていく。
フィーナが詠唱を短縮したのも、削れればいいので火力調節のためだ。決して、良く噛む所を省略したわけではない。多分。
『お? おお?』
『こ、これは――』
フィーナが作ろうとしているもの。その全体像が見えて来ると、骨達がにわかに色めき立ち始めた。
岩山は、今や巨大な骸骨岩になろうとしていたからだ。
「空洞にした中に火を灯そうと思ってたけど――さっきの太陽を入れたら、丁度いいんじゃないかしら?」
「成程。其れは良い」
フィーナの提案にジャハルは1つ頷き、作った太陽を取りに戻る。
黄金の焔は任意で操れる。焔のない持てる場所を作れば、運ぶことは難しくない。
こうして。
黄金の小太陽を内に秘めた巨大髑髏岩――そんなシンボルが、1つ誕生した。
「これで、骨達も作業がし易くなるだろう」
――地獄らしさは少々増したようにも思えるが。
その言葉は飲み込んで、ジャハルは巨大髑髏岩を見上げて頷いた。
●導の光
(「折角作るのであれば、その国の象徴となるようなおっきな光を作りたいな」)
象徴と言う言葉だけを取れば、シンボルと近しい意味になる。
そう言う意味で言えば、今しがた出来上がった巨大髑髏岩もそうなる。
だが、アメリアが考えていたものは少し、似て非なる
いずれ訪れるアリスのための光。
遠くからでも見える光。
それを見たアリスが安心してこの国へ向かうことができる希望の光。
ウサギの穴が新たに繋がらないとは限らない以上、いつか来るアリスはこの国の何処に現れてもおかしくはない。
それでも見える様にするには――高さが必要だ。
「灯台。うん、作るのは灯台だね!」
アメリアが考えたのは、標の光。導きの光。
この国で一番高い、灯火。
「ねえ、骨くん達。骨をたくさんって、造れる?」
『我輩達の体みたいな骨であるか?』
「そうそう」
『勿論造れるよ!』
にょきっ。
アメリアの問いに頷いた骨達の足元から、骨が生えてくる。
「じゃあ、それをたくさん出して組み合わせて、どんどん高く積み上げて欲しいの。骨の塔。ボーンタワーを――」
言いかけたアメリアが、一瞬、声を失う。
言っている間にも、大量の骨が絡み合い積み重なって、ずももももっと骨の塊が空へと伸びていたのだ。
『高さはこんな感じで?』
「あ、うん。充分よ」
骨達からの確認に、アメリアが半ば目を丸くして頷く。
アメリアが少なからず驚いていたのは、骨達の手際と――ボーンタワーの見た目。
骨が積み上がった塔、というのは、その。
地獄感がマシマシではなかろうか。
(「これはアリスがびっくりするかしら……まぁいっか!」)
胸中で生まれた逡巡をあっさりと横に置いて、アメリアは風の魔力を纏ってふわりと浮かび上がる。
「星よ照らせ!」
アメリアはその手に嵌めた『Vanguard』で、ボーンタワーをコツンと叩いた。
未知を拓く旅人の腕。その内に秘めた祭壇は、灯台を模した火の神を祀るもの。
灯台から灯台へ。
光り輝く炎が、導の光を灯した。
『おお! 遠くまで明るい』
『あっちの方までいった仲間が見えるぞ』
アメリアの眼下で、骨達がその光にはしゃいでいた。
●標の光花
「明るくなりましたが……まだ、天国には程遠いですね」
それどころか地獄に寄ってないでしょうか、と叶羽はボーンタワーの灯台を見上げながら内心で首を傾げる。
まあ当然と言えば当然だろう。
明るくなっても、周囲は殺風景な岩のままなのだから。
「あの……骨、さん」
その景色を見回した叶羽は、近くにいる骨の肩骨をそっと指で叩く。
「骨以外に、お花は出せませんか?」
『花? 出せますとも』
『どんな花が良いかな』
叶羽の問いに、骨達はカタカタと首を鳴らして頷く。
「光るお花――と言うのは、いかがでしょう?」
骨達に提案しながら、叶羽は自身の身体から淡い光を放つ。
「光は生まれながら秘めています――このように。ですがこの光を、この世界に残す事は私には……それに、まだこの世界は、足元が少し暗いのです」
叶羽がオパールの双眸を落とす。
灯台からの光に照らされた影は、岩の影と混ざってすぐに消えていた。
「こちら側と、あちら側とに造れれば、道が見えると思うのです」
叶羽の指が立っている場所の左右を指差す。
世界は明るくなったけれど、灯台を目指す道すがらの足元までは、完全に照らせているとは言い難い。
「灰色の世界も、悪くはないのです。私が居た世界も、真っ白な世界でした。それでも……せっかくなら灯りは愛らしい方が良いと、そう思うのですよ」
『ふむふむ、成程』
頷いた骨達が、訴える叶羽の顔をじぃと見やる。
「あ、あの……?」
その視線に、骨さんの趣味に合わなかったでしょうか、と叶羽が不安を覚えた頃。
ぽんっ。
そんな軽い音を立てて、骨の掌の中に白い輝きが――叶羽の頭に咲くホワイトレースフラワーにも似た光る白花が造られた。
どこか儚げで、花弁は薄く脆く崩れ落ちそうだけれども、柔らかな光を放っている。
『こんな感じで良いかな?』
「は、はい……っ!」
叶羽が目を丸くしながらも頷くと、周囲からぽんっ、ぽんっと聞いたばかりの軽い音が立て続けに聞こえてきた。
光る白花が、岩肌に造られていく。
叶羽の好きな暁に窓から差し込む光に似た、柔らかな光が辺りに溢れ出して、残された岩場を道と照らし出した。
●光を閉じ込めて
「おー、だいぶ明るくなってきたな―」
太陽を内に秘めた巨大髑髏。
光り輝く骨の灯台。
無骨な岩肌の一部を覆う光る花。
「でもなー、まだ暗いな―」
『暗いか? こんなに明るいのに』
ギヨームの言葉に、骨が首を傾げる。
「暗いなー。家の中でも使える明かり、作ろうぜ」
首を傾げたままの骨に、ギヨームはにっと笑顔を向ける。
確かに彼の言う通り、今のままでは大きな光だけだ。
骨達も何れは家を造るだろう。何れと言わず、作れと言えば今すぐ造れるだろうが。
「太陽とともにまわる」
――un tournesol。
ギヨームの指先と掌で、違う属性の魔力が渦巻き始める。
「まず火の玉を作って、と」
ボッと、ギヨームの指先に小さな炎が灯る。
「これを防御増し増しの氷の魔力で覆えば……っと」
炎を灯したのとは反対の手で、ギヨームは氷の魔力を練っていく。
「ほい、氷ランプー」
ほどなく、氷の内側に炎が揺らめく小さなランプが出来上がった。
『おお。成程。これなら持ち運びも出来るな』
骨も感心した様子である。
日焼けしたアグレッシブそうな外見とは裏腹に、ギヨームは精密な魔力操作も割とこなせるのであった。
「これでな、いつでもにらめっこが出来る。近くでにらめっこしても、勝敗がわかりやすくなる」
『にらめっこ?』
『ってなんだ?』
ギヨームの説明に、しかし骨達は揃って首を傾げる。
どうやら、にらめっこを知らないらしい。
「あー、にらめっこってのはなー。こう、変な顔をして、相手を笑わせた方が勝ちっていう勝負なんだぜー。例えば、こんな顔!」
『ぶふっ、ははははっ!』
『そ、その顔は笑う……っ!』
ギヨームが見せた渾身の変顔に、骨達もカタカタと笑い転げる。具体的にどんな変顔なのか、お届けできないのが残念であるが。
『でも吾輩たちには出来ないな、それ』
『骨だしな!』
表情の限られる骨に、にらめっこはちょっと難しそうだった。
●きらきらサイサイ
「だーいぶ、きらきらになったわね!」
明るくなった世界を見回し、有栖が骨達を釣れて岩肌を歩いていた。
「でも、ぶらっくよりもしるばー。まっくらよりもきらきらのぴっかぴか」
とーなーれーばー?
「銀狼にて光狼たる私の出番ね! 出番だわっ」
有栖のその自信に、何をしてくれるのかと骨達も興味津々である。
「ところで、何か斬るのに丁度いい感じの岩とか生えてないかしら?」
『造れるですぞ』
骨がそう言うと、骨がにょきっと大きな角みたいに盛り上がった。
「うん、いいわこれ」
有栖はその前に達、使い慣れた柄に手を伸ばす。
「――月喰」
キィンッ!
居合の要領で鞘走った月喰の刃に有栖が込めるは“煌”の一意。
きらっと伸びた斬光が、有栖の前の岩をすぱっと斬り裂いた。
『『おぉぉぉ~!』』
カチャカチャカチャ。
音が通常と違うけど、骨達の拍手です。
「どう? きらきらでぴっかぴかだとこんなこともできるのよ!」
骨達に振り向いた有栖は、それは『どやっ』てる顔だった。
「あなたの刀が特殊だと思うんですがね……?」
その様子を傍から眺めていたがぱん太は内心で首を傾げつつ、ぽそりと入れたツッコミは聞こえているのかいないのか。
「と、ゆーわけで」
『うんうん』
『うんうん』
ドヤ顔な有栖と、身を乗り出す骨達。
「貴方たちも、もっときらきらぴかぴかするべきだわ。するべきよ!」
続く有栖の言葉は、すごくふわっとしたものだった。
『きらきら……?』
『ぴかぴか……?』
骨達も、カクンと首を傾げる。
「住処も大事。けれども身だしなみもとっっっても大事よ?」
「あ、ふわっとしつつ意外と普通のアドバイスですね」
続く有栖の言葉に、ぱん太が頷く。
「ぴかぴかで照らすのも良いけれど、きらきらを身に着けるも良いものよ。きらきらぴかぴかなれるなら、何でも良しよ!」
『きらきらを身につけるか……』
『こんな感じかな?』
有栖の言葉に、骨達は目の前ににょきっと光る骨を生やした。
そして、それを手に見様見真似で岩に振り下ろし――。
ぽきゃっ。
光る骨は、あっさりと折れた。
『『ど、どうすればー!?』』
「骨の皆様。落ち着いてくださいな。あっしに案がございます」
頭を抱える骨達に、ぱん太が扇を片手に口を開く。
「キラキラするの、大いに結構でござんす。けれど、きらきらするなら心の中から。この寂しい世界を明るくするには、笑いも必要でござんす!」
いつの間にかリンゴ箱の上に敷いた座布団の上に正座して、ぱん太は謎の主張を声高に告げる。
「という訳で骨の皆様に、ここで一席、骨にまつわるお噺を――」
『お? なんだなんだ』
『何が始まるんだ?』
ぱん太に倣って、岩の上に正座する骨達。
始まった噺は、骨――しゃれこうべに纏わるものである。
とある男が釣りの際に見つけたしゃれこうべを手向けて供養したところ、その晩、骨の霊が男の元にお礼に現れた。それが大層な美人。
その話を聞いた別の男は『幽霊でも構わない』と自分も釣りに赴き――。
「その男、エサもつけずに釣り糸を垂らしつつ、ついには女の霊の来訪を妄想してひとり語りをおっ始めちまいます。そう、こんな感じに――」
ぱん太は閉じた扇で掌を叩く音でリズムを取りながら、歌い出した。
元は、サイサイ節、と呼ばれる民謡の替え歌とされている。
「――サーイサイ」
『『サーイサイ!』』
ぱん太の歌に、骨達の声が重なる。
『なんか釣られるなこれ』
『我輩も動いてしまう!』
「いやいや、骨の皆様。骨だからって、釣られてどーするんですかい」
釣られて踊り出した骨達にぱん太が即興でツッコめば、どっと笑いが起きる。
その直後だった。
ボッ。
『ん? おおお!?』
『お、おま、燃えてるぞ!』
骨の1体が、青い燐火に包まれたのは。
摩擦やらなんやかんやで、踊っている内に燃えてきてしまったらしい。
「まるで人魂ですなぁ……これも灯りになるんですかねえ」
「あなた達、今とってもきらきらよ!」
リンゴ箱の上で首を傾げるぱん太の視線の先、骨達の後ろでは有栖が得意げにサムズアップしていた。
●小休止
「お前達――骨一号、二号、三号。オウガ達に対抗したければ、しっかり喰って肉をつけるのだぞ、良いな」
黄金の小太陽を内に秘めた巨大髑髏岩の前で、ジャハルが骨達に肉を食えと言い聞かせている。
「いずれこの国にもオウガが来るわ。オウガを誘導する為に、灯台を増やしておいて、その周りには罠を造ると良いと思うの」
骨達に造らせた骨の塊に、灯台に使ったのと同じ光り輝く炎を残しながら、アメリアはオウガに対する策を授ける。
『今度は宝探ししようぜ、骨くんちゃん達」
一方ギヨームは世界を囲む様にそびえる岩山を見回し、骨達に明るく告げていた。
『『宝探し?』』
「そ。こんだけ岩山だらけなんだから、一個くらい鉱山だったりしねえかなーって。掘る道具造っといてくれよ。光る石とか燃える石とか、出るかもじゃん?」
期待に満ちたギヨームの顔を、骨達がじっと見ていた。
猟兵達のアイディアのおかげで、地獄めいた薄暗い世界は、まだ地獄めいてはいるけれども随分と明るい世界になった。
『明るくなったー!』
『色々アイディアも貰ったぞー!』
『創作意欲湧いてきたー!』
触発された骨達が、元気いっぱいに動き出す。
そして、しばしの時が経ち――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 日常
『不思議なアトラクション』
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POW : 体力の続く限り遊ぶ
SPD : スタイリッシュな楽しみ方を編み出す
WIZ : 「愉快な仲間」達や「アリス」、他の猟兵との交流を楽しむ
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ボーン・ニューワールド
殺風景だった世界は、そこにはなかった。
一面に光る花が広がる風景を、骨の灯台目指して進めば。
大量の髑髏が並んでいた。
黄金の小太陽を内に抱く巨大髑髏岩。それを中心として、幾らか小さいが小屋くらいのサイズの髑髏がずらーっと並んでいるのだ。
『おや、皆さん』
その中から――骨が出てきた。
って、まじで家かこれ。家なのか、髑髏。
『あの巨大髑髏岩が、この国のシンボルですからなぁ。シンボルに倣って家を造るべきだと満場一致でした』
――シンボルが必要よ!
言ってましたね。
家の中を覗くと、小さな氷に似た透明な器の中に、光る花が輝くランプが吊り下げられている。
氷ランプと光る花が、屋内照明になっているようだ。
カシャーン! カシャーン!
何処からか、骨がこすれるような音が聞こえてくる。
そちらを見てみると、増えていたボーンタワーの間に、骨のブランコが出来ていた。
『乗りすぎると骨が擦れて発火しちゃうので、あれはまだまだ改良の余地あり』
乗ってると炎上するブランコって、なにそれ怖い。
『あとは――あれがそろそろ戻ってくる筈!』
ガラガラガラガラ――。
骨がそう言った直後、何かが転がるような音が聞こえてきた。
車輪、だろうか。
『岩山のどれかが鉱山かも知れない。ということで我輩達、造ったのです。掘った後の為に――骨トロッコを!』
ガラガラガラガラ――。
音を立てて滑って来たのは、岩の台車の上に乗った骨の箱。
確かにトロッコである。
ところで、肉はどうなった肉は。
『え? ほら、見てくださいよ』
骨はそう言うけれど、相変わらず骨のままで――。
『言われた通りに肉を造って食べたので、骨が太く丈夫になっております!!!』
嗚呼。彼らは、肉体を得られないのだろうか。
まあこのノリだと、うっかりゾンビになりかねない気もするが――。
『でもぉ~骨じゃなくなったのも~いるんですよ~』
ひゅーどろどろ、と現れたのは女性の幽霊っぽい愉快な仲間。
『噺に倣って、川に入って釣られてみたら~幽霊に昇進です~』
昇進……?
さて、オウガの襲撃は近づいている。
何だか地獄っぽさが増しつつ、アトラクション感が出てきたこの不思議な国。
更に発展させつつ、オウガの襲撃に備えるとしよう。
==========================================
1章の結果を踏まえ、色々と発展しております2章。
そんな2章で造らなければ行けないものは、特にありません。
フラグメントは不思議なアトラクションですが、
選択肢はただの例です。気にせず、他の事に専念してもOKです。
骨ブランコと、骨トロッコはアトラクション扱いです。
新たなアトラクションを増やす提案をしてもOKです。
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アメリア・イアハッター
かなり色んなことできるのね、この子達
んー、それならもっと大きなものも作れたりするかなぁ…
防衛として、国の周りに堀を掘って赤い川を引き込めないかな
国がどのくらいの大きさかはわからないけど…
これならオウガが来た時に進行を遅れさせることができるし、飛び越えられるオウガだとしても、空中で動くことができない敵であればいい的だし
さ、トンネル堀りが得意な子もいるでしょう
掘って掘って掘りまくれー!
…で! 穴を掘れることがわかったらこっちが本命!
地獄といえば、地獄めぐり
そう、つまり温泉よね!
下へ下へと穴を掘って、真っ赤な温泉とか出てこないかな
たとえ失敗しても、落とし穴として使えばOK!
地獄で極楽、楽しんでみよ!
ギヨーム・エペー
※POW
トロッコか!すっげえ絶対楽しいやつだ!!良く作ったなー!
戦力増強したいから兵器作ろうぜ、投石機。石ころとか岩を投げ飛ばせて、おれとかきみ等が乗ると空飛べる。…危険だからやめようね!
場所を問わず即席でできるのが利点だ。固定するなら石加工して耐久強化とか、か?投石器も作りたいが、縄がいるんだよなあ。骨で応用できたりしない?
後はちょっと川が気になる。生物がいたとしてもやっぱ骨なのかなー、出汁は取れそう。石の裏やすき間を見たり、あとは川底か。深さも気になるから靴を脱いで水に入る。そして潜る。水流とか勢いがある場所が解れば近くに水車建てて加工場にできるなあ。泳いでもみるか。流れうまく掴めっかな
フィーナ・ステラガーデン
うーん。次はそうねえ。この赤い川を使わないのはもったいないわねえ。
住民は骨ばっかりだし、カルシウムが大事だと思うのよ!
というわけで釣堀が必要ね!
ここに海産物を放流するのよ!海産物なら何でもいいわ!
釣りをするならやっぱり種類が多いほうが楽しいと思うのよ!
マグロでもカブトガニでもタカアシガニでもマンボウでも
アノマロカリスでもハルキゲニアでもプレシオサウルスでも何でもいいわ!
どんどん流し込みましょ!
大きさが足りないなら爆破して大きな湖にしてもいいわね!
海水じゃないと駄目?塩入れなさいよ塩!
ええ?オウガの襲撃?
そんなものよりも今はアトラクションを作るのが楽しいのよ!!
(アレンジ、アドリブ大歓迎)
●川の流れは絶えずして
「んー、かなり色んなことできるのね、この子達」
薄暗い灰色の世界からガラリと変わった骨の国を見回し、アメリア・イアハッターが感心したように呟く。
「それならもっと大きなものも作れたりするかなぁ……」
アメリアが視線を向けていたものは、流れる赤い水。
そしてもう1人。
「うーん。次はそうねえ」
フィーナ・ステラガーデンも、同じ赤い流れを見下ろしていた。
「この赤い川を使わないのは勿体ないわねえ」
今はただ単に何処からか湧き出して流れているだけの赤。
とは言え、どう使えば――と思案するフィーナの前で、ザバァッと水音が上がった。
水音と同時に、赤の中から褐色の影が姿を現す。
どうしても赤い川が気になると、飛び込んでいたギヨーム・エペーである。
「いやー、水の中まで真っ赤。ほとんど、なーんも見えね―」
朗らかに笑って言いながら、ギヨームはぺたぺたと裸足で歩く。
「でもってこの川、なーんも無いみたいだ。かなり深く潜って水底の石をどけてみても、骨の魚もいなかったよ」
ギヨームの報告は、2つの意味を持っていた。
川は豊富な水量を持っている事。
そして川には骨の魚すらいない事。
それらの事実から、アメリアとフィーナが思考し、導き出した答えは――。
「お堀に出来ないかしら」
「釣り堀が必要ね!」
微妙に似て非なるものを互いに口走ったのを聞き取って、アメリアとフィーナが思わず視線を交わす。
「私はね。この赤い川をこの国の外周に引き込んで、お堀を造ったら良いと思うの」
アメリアの視点はオウガからの防衛を強く意識していた。
「私はね。骨にはカルシウムが大事だと思うのよ! 海産物が必要なのよ!」
一方フィーナの視点は、骨達の身体を意識してのものだ。
「お堀はオウガが来た時に進行を遅れさせることができればいいのよね。だから、お魚がいても別に良いと思うよ」
国の外周に近いところにお堀を造れれば、アメリアの狙いは達する。
「私も海産物をたくさん入れられるなら場所は何処でもいいわ! 釣りをするならやっぱり種類が多い方が楽しいと思うのよ!」
フィーナが思い付いた釣り堀も、問題は中身であって場所は二の次だ。
「飛び越えられても、空中で動くことができない敵であればいい的になるし」
「それなら湖みたいな大きさにしてもいいわね!」
アメリアとフィーナが視線を交わしたまま、頷きあう。
こうして、お堀兼釣り堀の建設が決まった。
●この世界に潤いを
ちゅどーんっ!
爆発音が響き、空気を揺らす。
フィーナの魔法がすり鉢状に穿った岩の大地に、赤い水が流れ込んでいく。
「ま、このくらいあれば充分ね!」
これは、いわば生け簀だ。
お堀が完全に完成してから釣り堀にすよりも、同時進行で進めた方が確実に早い。
「どんどん海産物を造って頂戴!」
『例えばどんな……?』
フィーナの創造指示に、骨達がカコンと首を傾げる。
「何でも良いのよ。マグロでもカブトガニでもタカアシガニでもマンボウでも……あ、形がわからないかしら? こういうのよ!」
首を傾げたままの骨達に、フィーナは杖でカリカリ地面に魚を描いて説明を始めた。
一方、お堀の方は静かに掘り進められていた。
「掘るわよー! 掘って掘って掘りまくれー!」
アメリアの提案で『骨の身体から生じた燐火で岩を溶かしお堀を造る』という常識外れな造り方もまた、彼らの持つ不思議の国の創造の力に他ならない。
国を構成するものを造る――それは何もモノを増やす事のみを意味するのではない。
「皆、トンネル堀も得意そうね。これならかーなり深い穴も掘れるわね」
その様子を見ていたアメリアは、満足そうに頷いた。
実はアメリアには、お堀の他にも本命がもう1つあった。
「地獄と言えば、地獄めぐり――つまり温泉よね!」
『オンセン?』
『オンセンってなんだ?』
「温泉はね。一言で言えば、地中から湧き出てくるお湯のことよ。ちょっと熱いけど触れるくらいの温度が理想ね。お風呂にすると気持ちいいの」
こちらも首を傾げる骨達に、アメリアは足元――岩の地面を指差し答える。
目指すは地獄で極楽。
「下へ下へ、掘ってもらえる? 温泉がでなくても、落とし穴として使えばOK!」
『OK! 皆、掘るぞー』
『オー!』
アメリアの指示に骨を鳴らして応えた骨達の足元で、穴が開いた。
「トロッコなんて、良く造ったなー」
ガラガラと骨トロッコに揺られながら、ギヨームが骨達に笑いかける。
『鉱山に行くならあった方が良いと思って造ったぞう』
「あ、俺が言ったからかー。でもトロッコすっげえ楽しいし、便利!」
『イエーイ!』
骨トロッコの中で、ギヨームと骨が笑い合う。
とは言え、ただ骨トロッコに乗っているだけではなかった。
フィーナの魔法で砕けた岩の塊と、自分たちで砕いた岩の塊を運んでいたのだ。
そんなものを運んで、どうするのか?
「戦力増強したいから投石機を作ろうぜ。トロッコ作れたなら、大丈夫!」
運んできた岩の前に並んだ骨達に、ギヨームが親指立てて告げる。
『とうせきき?』
『なんだそれ?』
首を傾げる骨達パートスリー。
「こう石ころとか岩を投げ飛ばせる機械。おれとかきみ等が乗ると空飛べる」
ギヨームも、地面に図を書きながら骨達に投石機を説明する。
『飛べるのか! いいな』
『飛びたいぞ!』
骨達の何もない眼窩の奥で何かがキラリと輝いた――気がした。
「……うん。危険だからやめようね!」
あまりに素直な骨達に、ギヨームが飛ばないように釘を差す。
「あと投石機には縄がいるんだよなあ……こう、縒ってあって丈夫な太い紐みたいなもんなんだけど。造れるない?」
『んー……こんなん出ました?』
ギヨームの前に、真っ白な縄が差し出された。
ぱちゃん。
この不思議の国を囲う形で流れる赤い水の中で、魚が跳ねる水音が鳴る。
「折角造った海産物だもの。どんどん流し込みましょ!」
フィーナの指示の元、お堀はどんどん釣り堀になっていた。
「釣り堀になったのか。どうなったか、ちょっと気になるな―」
うずうずと目を輝かせたギヨームはいそいそと上着と靴を脱いで、ザブンっとお堀兼釣り堀に飛び込む。
「ぶはぁっ!?」
飛び込んで――数秒後、慌てて出てきた。
「な、なんだ、あれ。魚に混じってでっかい海老みたいなのとか、何か足いっぱいあるのとか、首の長い小さな竜みたいなのまでいたんだけど!?」
「でっかい海老みたいなのはアノマロカリスっぽいもので、足いっぱいはハルキゲニアっぽいもので、首の長い竜みたいなのはプレシオサウルスっぽいものよ!」
水中で見た謎の生物に目を白黒させるギヨームに、フィーナが満足気に返す。
骨達に何造らせてんですか。
「……そう言うのって、真水で大丈夫なんだっけ?」
「骨達が造った塩を混ぜたらいけたわ」
ギヨームの口をついて出ていた疑問に、フィーナがしれっと返す。
「それでいいんだ!?」
ズドォンッ!
思わずツッコんだギヨームの背後で、轟音が鳴り響いた。
そちらをみやった2人に、赤く温かい霧が降り注ぐ。
見れば地中から赤い水が吹き上がっていて、そこからは仄かに赤い湯気も立ち昇っているではないか。
「掘ってみるものね。立派な温泉じゃない」
その根本では、アメリアと骨がハイタッチしていた。
釣り堀兼お堀、投石機っぽいもの、温泉が完成した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
來米良亭・ぱん太
「うひょ~、こりゃスケールの大きなお化け屋敷ですな~!」
花が咲き、光が満ちた中の、髑髏や骨の造形物。そこには骨のお仲間たちや、幽霊さんが住んでいる……これはもう黄泉の国の風景ではないですか!
「しかもご丁寧にも、乗り物型のお化け屋敷ですか、楽しみですねえ」
美人の幽霊さんを引き連れて、わくわくとアトラクションを楽しみます。
更に、カシャーン! ガラガラー! に乗りながら『お菊の皿』を演じます。
ぱ「おい、どうして18枚まで数えたんだ?」
幽「明日はお休み、その分まで」
みたいな感じで、幽霊さんにお菊さん役をやってもらえると嬉しいです。
※アドリブ連携ネタ大歓迎
●足はあるけど幽霊さん
ガラガラガラッ!
「うひょ~!」
硬く乾いた石の音と、來米良亭・ぱん太の楽しげな声が、風に乗って流れていく。
「やあ、骨の皆様。精が出ますな!」
『おお、噺の人じゃないですかい』
骨トロッコの中からぱん太が手を振れば、骨の線路の脇にいた骨達が手を振り返す。
腕から青い炎を上げる彼らの姿は、すぐに小さくなっていく。
咲き誇る光る花も。
頂点に光を抱く骨の塔も。
ずらりと並んだ髑髏の家も。
さながら黄泉の国の様な光景が次々と見えてきては、ぱん太の視界を流れていた。
「こりゃスケールの大きなお化け屋敷ですな~!」
大きな眼窩を煙突の代わりに、黄金の炎が漏れ出す巨大髑髏の周りを回る骨トロッコの中で、ぱん太の背中のコウモリ翼が楽しげにパタパタと揺れている。
『お楽しみになられましたか~』
「勿論。ご丁寧にも乗り物付きのお化け屋敷……否、お化け世界ですな。と来れば、楽しくない筈がありゃぁしませんとも」
何処かおどろおどろしい雰囲気を背負ったお出迎えの美人の幽霊さん(但し足はある)に、ぱん太がゆるい笑みを返す。
「お化け屋敷ってぇのは、苦手な方は苦手なもんですがね。乗り物に乗っていれば、いやでもでも自動で進んで行くので――ん?」
そこまで言いかけたぱん太が、言葉を止めて首を捻る。
そして、ポツリと呟いた。
「お化け役の方がトロッコに乗って回るのも、良いんじゃないでしょうかね」
思い付いたなら、善は急げだ。
「幽霊さん、あっしと一緒にトロッコに乗って落語に付き合っちゃ貰えませんかい?」
まずは試してみようと、ぱん太は幽霊さんに声をかけた。
そして――。
ぱん太と幽霊による幽霊に纏わる落語が、骨トロッコの中で始まった。
『1~い、2ま~い』
骨トロッコの中で皿を数える仕草を始めたのは、勿論美人の幽霊さん。
『3ま~い! 4まーい』
数えるその手から、何故か皿がフリスビーの様に飛んでいっていたけれど。
『5ま~い! 6まぁーい』
さてこの噺。幽霊が数えた皿が9枚になると死んでしまうという事になっている。
だと言うのに。
『9まーい――10まーい!』
幽霊さんはあっさりと、9枚以上を数え始めた。
『11まーい。12まーい、13まーい――」
お皿のカウントが増えるごとに、お皿も宙を舞う。
「18枚! これでおしまい、と」
「おい、どうして18枚まで数えたんだ?」
「だってもう、お皿配り終えたんだもの」
観客役に回ったぱん太のツッコみに、もうお皿がないと手を広げてアピールする幽霊さんであった。
丈夫な割れ難いお皿が造られた。
大成功
🔵🔵🔵
杏・叶羽
骨の国が誕生しました
骨さん達も大喜び
めでたしめでたし、となるよう尽力しましょう
……けれどその前に、一休みさせていただきます
集中しすぎて、少し疲れてしまったのです
ブランコで遊んでみたいです
童心に帰る気持ち
でも、炎上は怖いので、ゆっくりゆっくりと
揺り篭に微睡むような
どこか懐かしい気持ちにさせられます
激しいアトラクションでなくて、よかった
刺激の強いものは苦手なので
骨で作れるアトラクション、他には何があるでしょうか
シーソー、とか
上がったり下がったり、するのです
たったのそれだけなのに、幼い頃は夢中になったものです
……一緒に遊んでくれる相手が、いたから
骨さんは、遊び相手になってはくれませんか?
●揺られて微睡んで
「骨の国……本当に、とても明るく賑やかになられてますね」
――キィ、キィ。
訥々と呟く杏・叶羽の声に、何か軋む様な音が重なる。
――キィ、キィ。
叶羽が腰掛け小さく揺られているのは、骨の灯台に掛けられた骨のブランコだった。
――キィ、キィ。
少し前までは、揺らすともっとカタカタと硬い音がしていたけれど。
ブランコを吊るしていた骨が、別の創造の過程で造られた縄と交換されている。
それでもブランコごと炎上はちょっと怖いので、叶羽はゆっくりと、小さな揺れ幅で揺られていた。
「童心に帰る……と言うのでしょうか」
こうしてゆっくりと揺り籠のように揺られていると、叶羽の胸の内には、何処かどこか懐かしい気持ちが湧いていた。
あの、真白き箱庭で思い思いに過ごしていた頃の様な――。
帰りたい、のだろうか?
キィ、キィ――ふわり。
「骨さん達も大喜び。めでたしめでたし、となるよう尽力しましょう」
微睡みに浮かびかけた懐かしさを振り払う様に、叶羽が軽く翼を広げて降り立つ。
今はここで、やるべきことがある。
「骨さん達もこの世界を気に入っておられるようですし。大喜び。めでたしめでたし、となるよう尽力しましょう」
少し疲れていたけれど、休憩はもう充分。
「骨で作れるアトラクション……」
ガラガラガラ――。
思案する叶羽の耳に、骨トロッコの車輪が回る音が遠く聞こえてくる。
ガシャンッ。
かと思えば、何かが割れる音も聞こえてきた。
音の聞こえた方を見やれば、骨トロッコが何故か白いお皿のようなものを飛ばしながら滑走しているではないか。
「……。……激しいアトラクションばかりでなくて、良かったです」
刺激の強いものが苦手な叶羽には、ブランコの様な遊具くらいが丁度良い。感じたそれが、叶羽に答えを閃かせた。
「遊具……シーソー、とか?」
叶羽は早速、骨達にその説明を始めた。
「こう、板があって、両側に人が乗って。上がったり下がったり、するのです」
捕まる持ち手のある長い板。板を乗せて支点となる柱は、灯台にした骨の塔のミニチュア版みたいなものだ。
骨達の手で、あっという間にシーソーが1つ、完成する。
「ええ、これです。……幼い頃は夢中になったものです」
上がったり下がったり、たったそれだけの事に、どうして夢中になれたのか。
(「……一緒に遊んでくれる相手が、いたから。だから、今日は私から――」)
「骨さん、一緒に遊んで貰えますか?」
『勿論。我輩達も、どう使うのか知りたいですしな』
叶羽が誘いに差し出した手を、骨の白い手が取った。
なお、骨だけでは流石に軽すぎて、猟兵の誰が乗っても骨の2、3人とでないと丁度良くならなかったのは仕方のない事である。
骨のシーソーが造られた。
大成功
🔵🔵🔵
真守・有栖
この世界もだーいぶきらきらでぴっかぴかになってきたわね!
おおかみのがいこつたちと一緒にわふわふがしゃがしゃ。
巡回るーとの確認と、危険を知らせる遠吠えの訓練よ!わおーん!
……うむ!なかなかの吠えっぷりよ!
つーぎーはー……壁ね!壁よ!!壁だわ!!!
せっかくのきらぴかを壊されては大変よ!一大事で大惨事だわっ
がいこつと一緒におにくをわぐわぐ!
太く丈夫な骨を合わせ、りっっっぱな防壁を造るわ!
――月食
がっしゃぁぁああん!
……太くて丈夫なだけではおぶりびおんの攻撃にも耐えられないわね。
わぐぐ……何か……っ……そうよ、わふわふだわ!もふもふよっ
もふもふで衝撃を受け止め、丈夫な骨でがっしり耐える。これだわ……!
●結成、がいこつおおかみ隊
わふわふがしゃがしゃ。
銀の尾を揺らし駆ける真守・有栖の後を、白く小さな四足の骨――おおかみのがいこつが着いていく。
「いい? このるーとを、しっかり覚えておくのよ!」
がいこつ狼を引き連れ有栖が何をしているのかと言うと、巡回である。
これは、この国に侵入したオウガをいち早く見つけるためのかこくな訓練だ。
「そして、敵を見つけたら危険を知らせる必要があるわ!」
有栖は足を止めないまま、すぅっと息を吸い込む。
「危険を知らせる時は、遠吠えよ! わおーん!」
――アォォォーン!
「……うむ! なかなかの吠えっぷりよ!」
後ろから響いたがいこつ狼達の遠吠えに、有栖は満足げに頷いて。
「……って言うか、今の私よりも上手くなかった? ねえ、どうやって吠えたらそんなに響くの?」
閑話休題。
巡回するだけでは、充分とは言えない。
「この世界もだーいぶきらきらでぴっかぴかになってきたわね!」
有栖の前には、ぴしっとおすわりしたがいこつ狼が並んでいる。
「せっかくのきらぴかを壊されては大変よ! 一大事で大惨事だわっ」
こくこくと頷く、がいこつ狼達。
「つーまーりー! 壁ね! 壁よ!! 壁だわ!!! だからおにく食べるわよ!」
ん???
有栖の指示で、がいこつ狼達が自分たちの前に置かれた骨付き肉を食べ始めた。
有栖自身も、負けじと骨付き肉をわぐわぐと食べ始めている。
『あ、やっぱり食べるんだ』
『美味しそうに食べますなぁ』
おにくを持ってきて!
そう言われてお肉を造って焼いてきた骨達が、不思議そうに見守る中、骨付き肉が次々と太くて丈夫な骨に変わっていく。
「けふ。――よし! 骨を組み合わせて壁にするわよ!」
たっぷりおにく食べた有栖は口元を拭うと、自分とがいこつ狼達が食べて残った骨をかき集め、それを壁と積み上げていく。
――ガララッ。
「ああっ!? 崩れた!?」
案外、難しかった。
「出来たわ! りっっっっぱな防壁が!」
それでも苦労を重ね、やっと壁に骨が積み上がった。
だが――。
「――月喰」
がっしゃぁぁああん!
有栖が軽く一閃した光刃で、骨の壁は砕け散る。強度に、難あり。
「わぐぐ……太くて丈夫なだけでは、おぶりびおんの攻撃にも耐えられないわね」
何かないか――と思案する有栖の目に入ったのは、まだ膨らんだままの自分の尾。
「そうよ、もふもふよっ。もふもふで衝撃を受け止め、丈夫な骨でがっしり耐える。これだわ……!」
それはつまり、剛柔併せ持つ。
過程はさておいて、至った結論は中々に理に適っていると言えよう。
『なるほど』
『つまり』
『こういう壁ですかな』
ずもももっ。
「……わふ?」
骨達があっさりと創造してみせた、銀色のもふもふと骨が折り重なった壁に有栖の目が点になる。
灯台になったボーンタワーが造れたのだから、ねえ。
もふもふ骨壁、が造られた。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『バレエのおっちゃん』
|
POW : 漢の美麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 漢の華麗なバレエキック
敵を【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】で攻撃する。その強さは、自分や仲間が取得した🔴の総数に比例する。
WIZ : 漢の綺麗なバレエキック
【バレエのダンスを踊りながら繰り出すキック】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【をキックの衝撃派によって破壊し】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:正成
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠竹城・落葉」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●迫るオウガ
『アン、ドゥ、トロワ』
とん、とん、くるん。
呟く言葉で拍子を取って、くるくると回る白い影。
白いバレエ衣装をひらりと翻すその姿は、頭がとても光り輝いていた。
と言うかまあ、端的に言って、剥げていた。
『アン、ドゥ、トロワ』
この声も、中々に野太いそれである。
どこからどう見ても、バレエ衣装を来たおっちゃんだった。
こう見えて、冷酷非道なオウガである。
冷酷非道である。
『どこかに、俺が踊って滅ぼすに相応しい不思議の国は無いものか――むむ!?』
おっちゃんの目が、サングラスの奥でキラリと輝く。
見たこともない、眩い輝きを見つけたのだ。
『ふははははは! 見つけた、見つけたぞ! 他のオウガの気配は感じない! あれは間違いなく、新たに出来たばかりの不思議の国に違いないっ!』
おっちゃんの分厚い胸板の中が、格好の標的を見つけた喜びに打ち震える。
『とぉう!』
衝動のままに駆け抜けたおっちゃんの足が、鋭く硬い岩を蹴り砕く。
『ふんっ』
砕けた岩山の上に爪先でストンと降り立つと、おっちゃんは優雅に一例した。
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3章、いよいよ、バレエのおっちゃんを迎え撃つ時です。
1,2章で造った色々をおさらいしておきましょう。
黄金の小太陽を内に抱く巨大髑髏岩(シンボル)
骨タワー(灯台)
氷ランプ
光る花
骨トロッコ
骨ブランコ
釣り堀兼お堀(結構深い。お魚たくさん)
投石機っぽいもの
露天風呂
丈夫な割れ難いお皿
骨シーソー
もふもふ骨壁
お、多いですね……。
特に指示が無くても骨達が適当に使ってくれます。
効果的な指示がプレイングにあれば、
上手く使えて、戦闘で有利になります。
なお骨達の不思議創造パワーは、3章でも健在です。
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來米良亭・ぱん太
「せっかく作りあげたこーんな楽しい世界を壊そうなんて、許しませんよ! 鍛え上げられたバレリーナの脚は決して細くはありませんが、それにしたって脚太すぎでしょ!?」
ユーベルコード使用、ダジャレは、
「整骨院へせい子通院!」
ブリザードが吹きすさぶ中、地面が凍ったら、きっとおっちゃんは転びますよね? トゥシューズですもんね?
「アヒルの頭がとっても気になるんですが!」
骨の皆さんにここまでに作った物を投げたりして、狙い撃ちしてほしいです。命中音は、骨だけに、ボーン、ボーン。とか。
※毎度すみません。ダジャレはもちろん変更可です。ネタアドリブ連携大歓迎
フィーナ・ステラガーデン
ん!来たようね!
・・・いや何で優雅に踊りながら進んでるのあれ!(二度見)
胸板を震わせるなあああ!!
まあいいわ!戦闘よ!
同じ猟兵や骨と協力して戦いたいわ!
最初は火球を飛ばしていつもどおり距離を取って牽制しつつ
設備に誘導していきたいわね!
設備をフルに使っていくわ!
なんかサングラスをつけてるみたいだし
どこかのタイミングで合図と同時に骨達の創造パワーで光源を骨か何かで覆って
一斉に暗闇を作り出せば私達以上に見えなくなるんじゃないかしら!
後は相手をトロッコの上までうまい具合誘導出来れば
トロッコごと釣堀まで爆風で吹き飛ばして魚の餌にしてやりたいわね!
(アレンジアドリブ連携大歓迎!)
アメリア・イアハッター
衣装を着て、高く飛んで、足技が得意で……
なるほど、ライバルね……!
負けないんだから!
こっちだって踊りながらのキックで対抗してやる
見た所とってもパワーがありそうだから、こっちはスピードで勝負
それだけだと不利でしょうから、後は私ならではのダンス
空中ダンスからのキックで挑んでみよう!
投石機っぽいものに自分自身をセットし、時を待つ
相手が跳躍したところを狙って、発射!
発射と同時にUCを発動し、空中で蹴りを叩き込もう
可能なら、敵を地面や堀に叩き落す方向で
後は周囲の骨タワーに登り、常に上から攻撃を仕掛ける
当たらずとも、頭上に意識を向けられれば狙いどーり
その隙を見逃す、皆じゃないってね!
仲間を信じて陽動だ!
ギヨーム・エペー
おお!?壁ができてるし他にも増えてる!!そして…個性的な、おっさんがいる…脚力やばいね!
勇敢な骨なる兵士どもー、防衛戦だ。どんどん石飛ばせー!当たらなくても足場を悪くすればいい。小さいのからでっかいのまでどんどん投げ飛ばそう。
そしておれも飛ばしてくれ。その方が早く敵のもとにたどり着けるし奇襲も仕掛けられるからな!
今後の開拓は、きみ等結構応用が利くから思いついたことは発言してどんどん実践していくといいと思う!じゃ、またなー!!
さて奇襲なら熱湯ビームだろう!怯ませてチャンス作るぜー!へいおっさん!白湯でも飲んでかない!?なんてな!
着地はー…太陽、水噴射してホバリングして衝撃抑えるぞ!
真守・有栖
遠吠え。……どうやら来たようね
んんん?やっっっぱり私より上手よね?
おっさんね。おっさんだわ。おっさんじゃないの!?
ふぅん?岩もを砕くとはなかなかの強脚で美脚ね!褒めてあげるわ!
けーれーどーもー?
この骨壁は果たして蹴り壊せるかしら???
この煽狼たる私にかかればちょろいのろい、よ!
おっさんの注意を壁に向けて、蹴り壊そうとしてがっちりぼーんともふっとわおーんに阻まれた所を――
光刃、一閃。ずばっと成敗!
一気に圧して参るわ!
おっさんを退治したら盛大に宴よぱーてぃーよお祭りだわ!
あとらくしょんも釣り堀も温泉もおにくもおさかなも堪能せねば。するわ!
おおかみたちと勝利の咆哮よ!せぇーの、わぉぉおおおん!!!
杏・叶羽
まあ。これがオウガ……
(初めて見るオウガに感心)(きっと誤解もしている)
バレエ、でしょうか
踊りが上手なのですね
暫く鑑賞……はさせてくれそうにありませんね
せっかく作り上げた骨の国です
壊してしまっては勿体ないですし、可哀想ですもの
オウガさんに恨みはありませんが……ご退場願います
骨壁に隠れつつ、隙を見て槍で攻撃しましょう
後は、生まれながらの光で他の猟兵さんの支援もいっぱいに
私が疲れるのは、別に構わないのです
慣れていますから
……あ
ちょっと意地悪ですけれど
お皿で彼の頭に一撃、食らわせられないでしょうか
なんだか当てやすそうでしたので、つい
良いリアクションです
そんなに力は入れなかったつもりなのですけれどね
●おっちゃん、襲来
――アォォォーン!
「……どうやら来たようね」
響き渡るがいこつ狼の遠吠えに、真守・有栖が目を細める。
(「んんん? やっっっぱり私より上手よね?」)
何故と内心で首を傾げた有栖を先頭に、猟兵達は遠吠えが響いた方に駆けていく。
そして――彼らは出遭った。
『アン! ドゥ! トロワ!』
野太い掛け声を上げながら、岩山を蹴り壊している白い姿に。
「おっさんだわ。おっさんじゃないの!?」
白いバレエ衣装のおっちゃんに。
「……いやいやいや。何で優雅に踊りながら、岩蹴っ飛ばしてるのあれ!」
『それはな。俺がバレエダンサーだからだ! とう!』
フィーナ・ステラガーデンのツッコミに律儀に答えると、おっちゃんは無駄に高く跳躍し空中くるくる回りながら着地し、回転したまま岩肌を滑り降りてくる。
「まあ。これがオウガ……踊りが上手なのですね」
杏・叶羽が感心したように目を丸くして、ほぅと息を漏らしていた。
「いやぁ、あれ、オウガの中でもキワモノの部類だと思いますがねぇ」
誤解してそうな叶羽に、來米良亭・ぱん太がそっとツッコミを入れる。
「個性的なおっさんなのは、間違いねーな」
やべえ、と喉元まで出かかった言葉をギヨーム・エペーは飲み込んでいた。
「衣装を着て、高く跳んで、足技が得意で……」
一方、アメリア・イアハッターは違う意味で感心していた。
「なるほど、ライバルね……!」
おっちゃんの見せた足技と踊りの技量が、アメリアの中のなにかに火を付ける。
『ふっ。妙な連中がいるようだが……やはりここはまだ他のオウガのいない国! 此処を俺が壊せるかと思うと、この胸が震えるぞ!』
「胸板を震わせるなあああ!!」
胸筋をピクつかせつつ、(多分)優雅な片足立ちでポーズを決めたおっちゃんにフィーナの全力のツッコミが入る。
「暫く鑑賞……はさせてくれそうにありませんね」
その後ろで、叶羽が残念そうに呟いていた。
●おっちゃん、頑張る
バレエのおっちゃんと、猟兵達との間には赤い水が流れるお堀がある。
『天然の岩の要塞の次は水か。だが、この程度。飛び越えられないと思ったか!』
気合の籠もった声を上げたおっちゃんが、ぶっとい足にぐっと力を入れ――ミシッと足跡が残るほどに強く地を蹴って、跳び上がった。
「勇敢な骨なる兵士どもー、防衛戦だ。どんどん石飛ばせー!」
『『放てー!』』
ギヨームの指示に、骨達の声が答える。
直後、数台の投石機から岩が立て続けに放たれた。
『おふっ!?』
跳び上がるや否や空中でくるくる回っていたおっちゃんの背中に、岩、直撃。
『くっ、投石機だと!? 何故そんな物がある!!』
「んー……ノリと勢い?」
『攻城兵器はノリで造るもんじゃないだろうが!』
投石機の現場監督だったギヨームの答えに、おっちゃん地団太。その間にも、次の岩が装填されて――放たれる。
『だが、所詮は岩! 跳んでくると判っているなら――ふんぬっ!』
おっちゃんは両手を腰の前で組んだポーズのまま、片足を振り上げた。
膝をピンと伸ばした綺麗なフォームで蹴り上げた足の先で――岩が砕けた。
空中で、岩が、砕けたのである。
おっちゃんの蹴りではなった衝撃波によって。
『これぞ漢のバレエキック!』
バレエ要素がフォームくらいしか無い力技である。
「当たらなくても良いから、どんどん飛ばせー! 足場を悪く出来るぞ!」
ギヨームの指示で放たれ続ける岩を、おっちゃんは次々と空中で蹴り砕いていく。
「幽霊さん!」
『はいよ~』
ぱん太の指示でお皿が飛ばされるが、それもおっちゃんに蹴り落とされた。
『無駄だ! 全て蹴散らしてくれる!』
「なら、これはどうかしら? 今日の天気は、ところにより火の海よ!」
勝ち誇るおっちゃんに、フィーナが杖の先から火球を放つ。分裂した火球が、炎の雨となっておっちゃんに降り注ぐ。
『なんの! グラン・フェッテ!』
しかしおっちゃん。炎降り注ぐ空へ向かって、跳び上がった。そのまま空中で、やっぱりぐるんぐるんと回り始める。回りつつ足を蹴りだし、おっちゃんに届きそうな火球を相殺しながら。
「……何であれ、空中で何度も回転出来てんの?」
「グラン……もしかして腰の鳥、アヒルじゃなくて白鳥なんですかね?」
常識を置き去りにしたおっちゃんの動きに、フィーナとぱん太が半眼になる。
「いや、うん。あの脚力やばいね!」
「鍛え上げられたバレリーナの脚は決して細くはありませんが、それにしたって脚太すぎでしょ!?」
ギヨームのコメントにぱん太が頷き、閉じた扇でびしっとおっちゃんを指す。
「アシカの足か!」
いや。ぱん太のは、さっむい駄洒落につなげるフリだった。
…………。
さっむい駄洒落と見せかけて、これはぱん太のユーベルコード。
ヒュゴォォゥ!
地獄の様な不思議の国に、ブリザードが吹き荒び、岩を凍らせる。
『とうぉぁぁぁ滑るぅぅぅ!?』
効果は覿面だった。
回転していたが故に、おっちゃんは気づいても止まれなかったのだろう。氷の上にバレエシューズの爪先から入って、盛大に滑って。
禿頭が岩肌を削る勢いで顔から地面に突っ込んだ。
『くっ! 着地を狙われるとはな。危うく衣装が破けるところ…………』
だが平然と立ち上がった顔を上げたおっちゃんは、自分を見下ろし――。
何故か膝をついて項垂れた。
『お気に入りのバレエ衣装が……焦げてしまったぁぁぁぁぁぁ!!!』
地面を拳で叩くほど悔しがるところなんだ、そこ。
『この恨み……この国を破壊して晴らしてくれよう!』
数秒で復活したおっちゃんは、復讐心に燃えていた。
「うわあ、清々しい程の八つ当たりですな」
「さぞ、大事な衣装なのですね」
ぱん太が思わずツッコミ、叶羽は骨壁の陰からまた感心している。
「ですが、こーんな楽しい世界を壊そうなんて、許しませんよ!」
「ええ。せっかく作り上げた骨の国です。壊してしまっては勿体ないですし、可哀想ですもの。恨みはありませんが……ご退場願います」
ぱん太が、叶羽が。おっちゃんを見据えて言い放つ。
「岩もを砕くとはなかなかの強脚で美脚ね! 褒めてあげるわ! だけど、この骨壁は果たして蹴り壊せるかしら???」
有栖も骨壁の陰から出て、びしっとおっちゃんを指差し告げる。
『そんなもの――敢えて壊す必要はない!』
だが、おっちゃんは挑発に乗らず、骨壁を安々と飛び越える高さまで跳躍した。
その跳躍を見た瞬間。
「今よ、私を飛ばして!」
投石機の中からそれを見ていたアメリアが、周りの骨達にそう告げた。
ガッコン、と投石機が作動し、アメリアが空へ発射される。
「風の如く!」
投石機の勢いに更に風を纏ったアメリアは、あっという間におっちゃんを追い越し、その先へと飛び出していた。
「せいっ!」
『ぬおっ!?』
赤い髪をなびかせ振り向いたアメリアの蹴りを、おっちゃんは咄嗟に出した膝でギリギリ受け止める。
『この高さで着いて来るか!』
「さあ、空中戦といきましょう!」
蹴りと蹴りのぶつかりあった衝撃で両者の間合いが離れ、しかしすぐにアメリアが間合いを詰めた。
「お気に入りの衣装を大事にしたいのは判るわ」
帽子に仕込んだ機器から流れる音楽。その音色とテンポに乗って、アメリアは呟く声を置き去りに文字通りに宙を舞う。
『くっ! 速い!』
おっちゃんの足が空を切り、黒を貴重とした靴がおっちゃんを叩く。
風を操り風に乗るアメリアの速さに、単純に脚力で跳んでいるだけのおっちゃんがついていける筈もない。
「でも八つ当たりで、この国を壊させはしないんだから!」
『くっ!』
滞空時間の限界に来たおっちゃんが、アメリアに押し切られ地上へと落ちていく。
『空中からは難しいか』
アメリアが骨灯台の上に着地するのを見て、着地したおっちゃんが呻く。
「そうよ。もう地上から行くしか道はない。けーれーどー? この骨壁も、蹴り壊せないんじゃないかしら???」
挑発を重ねて精一杯煽る有栖の挑発に、おっちゃんが動いた。
『舐めるなぁ! こんな壁、一撃で――!』
ミシッ、モッファァ…………ッ。
おっちゃんの膝は、骨壁を砕けなかった。
『な、何ぃ!? 意外に丈夫だとぉ!?』
「えい」
『おふっ!』
足が止められ驚くおっちゃんを、叶羽が骨壁の隙間から突き出した白銀の槍の先がチクチクと突き刺さる。
「今よ――月喰」
『ぐっはぁ!?』
思わず壁から離れたおっちゃんを、有栖が振るった刃から伸びた光刃が斬り裂いた。
『くっ……見た目以上とは。だが、それならば――こうだっ!』
斬られた胸を押さえつつ、おっちゃんはその場で周り始めた。
くるくる、くるくる。回りながら、おっちゃんが足を蹴り上げる。
ズガガガガッ!
蹴りの衝撃が地を這い、骨壁の根本の地面に突き刺さった。
次の瞬間。
直下の地盤が砕けた事で骨壁がぐらりと傾いた。
『ふはははは! 壁は壊せなかったが、その下の地面ならば蹴り砕ける!』
砕かれて荒れた地面の上で器用にくるくる回りながら、おっちゃんは次々と蹴りから衝撃波を放ち、骨壁を根本の地面を破壊することで倒していく。
「行かせな――くぅっ!」
おっちゃんを阻もうとした有栖が、衝撃波で蹴り飛ばされる。
「どうしましょう……このままでは、骨さん達のお家の方に」
まだ無事な骨壁の陰で生まれながらの光を放ち仲間の傷を癒やしながら、叶羽が表情を曇らせる。
おっちゃんはくるくる回りつつ蹴りまくりながら、次第に頭蓋骨型の家が並ぶ方へと侵攻していた。
●おっちゃん、がんばった
「今よ!」
おっちゃんが頭蓋骨ハウスに近づいた――その瞬間。
フィーナが声を張り上げる。
「シンボルの目と口を閉じて!」
その合図で、フィーナから事前に聞いていた骨達が動いた。ある猟兵が造った黄金の太陽――それを内包していた巨大髑髏岩に、骨達の創造力が加えられる。
人間が目と口を閉じるように、新たに創造された岩がそこを塞ぐ。
そうなれば、当然――黄金の太陽の光が遮られ、辺りに闇が戻る。
「成程。そう言うことなら!」
フィーナの意図を察したアメリアが頷くと、頭蓋骨ハウスに一番近い2つの骨の灯台から光が消えた。
『ぬぅっ!? み、見えん!』
そして大きな光源が消えた事で、おっちゃんの周囲一帯は、猟兵達が最初に訪れた時に近い暗闇に戻っていた。
グラサンかけたおっちゃんには、大層暗いだろう。
『ダメだ、たまらん!』
あまりの暗さに耐えかねて、おっちゃんがグラサンを外して――投げ捨てる。
『よし! 見える! 見えるぞ! 暗闇で動きを封じようとしたのだろうが、この程度なら、裸眼になれば何も問題はない!』
クワッと目を見開き、高笑いするおっちゃんは気づいていなかった。
頭上から迫る、ギヨームに。
それは、ほんの少し前。
「よし。おれも飛ばしてくれ」
『危険ではないのですかな?』
おっちゃんの動きを見て投石機に収まったギヨームに、骨達が首を傾げていた。
「あー………」
そう言えば、危険だからやめようって言ったっけ。
「例外はあるんだ。今は緊急事態だから例外。この方が早く敵に追いつけるし奇襲も仕掛けられるからな!」
『成程! ではどうぞ!』
あっさり納得した骨が、投石機を作動させ、ギヨームを空に発射した。
そして――巨大髑髏岩が閉じて、今に至る。
光があれば、影が出来て頭上からの奇襲は気づかれたかも知れない。だが、おっちゃんに気づかれる事無く、逆にギヨームはその姿をはっきり捉えていた。
あんな剥げている頭、他にいないもの。
「へいおっさん! 白湯でも飲んでかない!?」
――太陽熱に浸される。
胸中で唱えながら、おっちゃんに聞こえる様にギョームが声を上げる。
トゥルヌソルの切っ先から放たれた、摂氏100度を超える高圧力の熱湯がおっちゃんの頭上から降り注いだ。(危ないからオブリビオン以外の人にかけてはいけません)
『熱ぅぅぁぁぁっ!? 目が、目がぁぁぁぁぁ!』
どうやら熱湯は、おっちゃんの目に入ったらしい。
見えるぞ!とか、ドヤってたからな。
「こうですか?」
『そうそう。そう構えて、手首のひねりを効かせてね~』
丈夫なお皿を構えた叶羽と、幽霊さんである。
そして2人の手から、お皿が放たれ――熱湯で真っ赤になったおっちゃんの後頭部に当たって、ガシャンと音を立てた。
『痛っ!? なんだ、人の後頭部に何を投げた!?』
「なんだか当てやすそうでしたので、つい。良いリアクションです」
背中を向けたまま、おっちゃんが上げる抗議の声に叶羽がしれっと返す。
『つい、でものを投げるなぁぁぁ!』
更に抗議の声を上げるおっちゃんの姿が、ジュワッという音と共にもうもうと立ち込めた湯気に包まれた。
『けほっ! 何だこれは』
落下の勢いを軽減するためにギヨームが地面に放った熱湯の副産物だ。
「整骨院に、整子通院!」
それを見たぱん太が、声を張り上げた。
場に相応しく骨でかけているが、また寒い駄洒落である。
つまり吹き荒ぶブリザード。凍るおっちゃんのまつ毛と足元。
つるっ。
『しまっ――』
ごちん。
痛そうな音を立てて、氷に足を滑らせたおっちゃんが転げ落ちたのは、フィーナが骨達にそっと運ばせていた骨トロッコの中。
「圧して参るわ!」
刃に込めるは圧の念。
おっちゃんが落ちた骨トロッコを有栖が刃無き光刃で薙いで、ぐんっと押し出す。
「釣り堀まで、行ってこおぉぉぉい! フィーナスペシャルーー!!」
ちゅどんっ。
進み出した骨トロッコにフィーナが杖を向けると、小さな爆発がトロッコに更なる勢いを与えた。
ちゅどんっ。ちゅどどどどんっ!
爆発は、一度で止まらない。
フィーナがレール上に配しておいた煌く細かな魔力の欠片が、連鎖爆発を起こし骨トロッコをぐんぐん加速していく。
『おぉぉぉぉぉっ!? 何がどうなっている!? 俺は何に乗せられたんだ!?』
成す術なくトロッコに乗せられ運ばれるおっちゃん。
「あんな激しい勢いで……頭……大丈夫でしょうか。そんなに力は入れなかったつもりなのですけれど」
「大丈夫ですよ。どうせ見えちゃいませんでしょうし」
遠くなっていく骨トロッコを、叶羽とぱん太が見送っている。
「これで――ラスト!」
ズドンッ!
フィーナの声とともに、一際大きな爆発が起きて、トロッコが浮かび上がる。
「釣り堀に、ごあんなーい!」
トロッコから投げ出されたおっちゃん――その上空にはアメリアがいた。風を纏った足で、おっちゃんを赤い釣り堀へと蹴り落とす。
『ぬぅっぉぉぅっ!?』
どぼーんっ!
派手な水音と赤い水柱を上げて、おっちゃんが釣り堀にツッコんでいった。
――数分後。
『ぶはぁっ!?』
息も絶え絶えな様子のおっちゃんが、赤い水の中から這い出てきた。
『ぺっ! な……何なんだ、ここは! あの一部異様に凶悪な魚介類は何事だ!?』
口から魚を吐き出しながら、おっちゃんが悪態をつく。
おっちゃんの身体のあちこちに残っている歯型やら、締め付けられた様な痕が、水中でのおっちゃんの苦労と――もうろくに力が残ってないのを物語っていた。
「ずばっと成敗!」
光刃、一閃。
有栖が鞘から抜いた月喰から放たれた光に斬り裂かれ、おっちゃんは声もなく倒れ――そのまま消えていった。
●国の名は
「勝利の宴よ! ぱーてぃーよ! お祭りだわ!」
再び明るくなった骨の国に、そんな有栖の一言が響く。
「私達のお役目は……ひとまず終わったのでは?」
骨達が湧き上がる中、叶羽が首を傾げていた。
「だってまだあとらくしょんも釣り堀も温泉もおにくもおさかなも堪能してないのよ。せねば。するわ!」
「そういえば、折角掘ったのに、温泉にまだゆっくり入れてなかったのよね」
有栖がきっぱりと告げれば、アメリアもそれに頷く。
こうして、別れの前の宴が始まった。
『我輩達、この後は何を造れば良いでしょうなぁ?』
「今後? きみ等、結構応用が利くから思いついたことは発言して、お互いに考えて、どんどん実践していくといいと思う!」
骨達に問われたギヨームが、笑って返す。
宴が終われば帰る身というのもあるが、もう骨達に任せて心配ないと確信があった。
「強いて言うなら、楽器があると楽しいんじゃないですかねえ。ボーン、ボーンと鳴る太鼓とか。骨だけに」
『成程、骨だけに!』
ぱん太のアイディアに、カタカタと骨達が手を打ち鳴らす。
「それで結局、この国ってなんて呼べばいいのかしら?」
骨の国じゃ安直よね、と問いかけるフィーナに、骨達があるものを一斉に指差す。
それは、最初に造ったあの巨大髑髏岩。
だが、先の戦いの中で目と口を塞いだ事で中の焔が燃え移ったのか、今や髑髏岩自体が黄金に染まり、内も外も黄金に煌めいている。
『煌めく骨の国――でどうでしょう?』
こうして、新たな不思議の国はオウガの襲来を乗り越え、名を得たのだった。
大成功
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