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熱帯リゾートと宇宙の海のペンギン部隊(+X)!

#スペースシップワールド #戦後

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#戦後


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「水着コンテストのために水着を新調した猟兵も多いようだ、ここ最近は随分とこちらも華やかだし涼しげで良いものよな」
 グリモアベースであってもやはり、水着姿が目立つ。その光景に仙堂・十来はふっと楽しそうに目を細めた。
「そしてちょうど、水着コンテストが行われているスペースシップワールドで銀河帝国の残党が潜伏している場所がちょうど判明した。ワープドライブが搭載された宇宙船にて現地近くまで移動させてもらい、残党たるオブリビオンの討伐を依頼したい」
 一度真剣な表情に戻って一礼してから、十来はパンフレットを開く。船の名前が掲載された表紙をめくれば、次のページには輝く浜辺、そして鮮やかなサンゴと熱帯魚の泳ぐ海中写真が写っていた。
「ワープドライブを搭載し、今回協力してくれる船にはリゾート施設がある。熱帯地方の海をイメージしたもので、美しい砂浜や瀟洒なヴィラもあり、さらにクルージングやダイビングなどに力を入れているらしい。ワープ移動にはやや時間がかかるしせっかく水着の用意もあるだろうし、その間は英気を養うべく南国リゾートを堪能してほしい」
 パンフレットを手渡してから、次にスマートフォンを取り出して十来は説明を続ける。

「銀河帝国の残党が潜んでいる恒星系まで到達したら小型の護衛艦に移乗して、現地である放棄済みの宇宙ステーションまで移動してもらう。オート航行が可能で猟兵のみでも使用できるタイプで、もし護衛艦が敵の攻撃に巻き込まれ破損しても、戦闘後に連絡を取って迎えに来てもらえるように手配させてもらった」
 そう説明してから、とはいえ、と十来は付け加える。
「おそらくは、あえて護衛船を狙ってくることはないだろうが。オブリビオンにしても猟兵との戦闘で他に気を取られる余地はほぼないだろうし、まず現れるのはペンギンだ」
 ……ん?
「改造を受けたサイコフォースペンギンのみで構成された、帝国軍特殊部隊の1つだ。その1小隊が銀河帝国攻略戦の後も、かつて使われていた宇宙ステーションを拠点としている。水を泳ぐように無重力の宇宙空間では高機動かつ連携を取った戦闘を可能とするが、地上での機動性は極めて低い」
 そこは結局ペンギンの限界、らしい。多分。
「ゆえに近くの惑星ではなく、既に重力制御装置が動いていない宇宙ステーションを拠点としているのだろう。他にも何か、彼らがこの拠点近くに『切り札』を持っている可能性もあるだろう」
 それは、ペンギン特殊部隊を指揮している存在なのか。
 それとも、ペンギン達の側が利用しているという強大な存在なのか――。

「ともあれ無重力の宇宙空間での戦闘は珍しいパターンだ、どうか気をつけてもらいたい」
 そう再び猟兵達に頭を下げてから、ふっと十来は微笑んだ。
「ああ、そうだ。水着や普段着の外見を保ったまま宇宙空間で活動のできる補助装置も用意していただいたゆえ、宇宙服の用意を心配せずとも大丈夫だ。それでは武運を祈る!」


炉端侠庵
 あっついですね!
 こんにちは。炉端侠庵です。

 というわけで水着の流れだと思ったので。
 リゾート施設つきの船でバカンスからの、宇宙空間バトルです。
 ペンギン部隊との戦闘後も、何らかのオブリビオンとの戦闘(ボス戦)が想定されています。というかあります!

 全体的に見た目水着で参加しておくと楽しくなる気がします。
 コンテスト参加者も、参加しなかったけどせっかくだし海で遊ぶ!という方も歓迎です。
 それではご参加お待ちしております!
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第1章 日常 『ドリーム・リゾート』

POW   :    イルカと一緒にクルージング

SPD   :    宝石のような魚たちと泳ぐ

WIZ   :    パラソルの下やヴィラでくつろぐ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

黒木・摩那
【SPD】
水着はこの夏に新調した赤と黒のビキニ。
新しい水着は心が躍りますね。

南国リゾートというと、青い空と白い砂浜。
そして、海の中の色々なお魚でしょう。

せっかくなので、水中メガネを借りて、海中探索します。

いろいろな魚を見つけながら、思うのは、
あの魚は食べられるのかな、おいしいのかな、だったりしますけど。
ゆっくり過ごせたらよいですね。


村崎・ゆかり
【白百合の苑】

紫と黒の競泳水着姿。三つ編みは解いている。胸は平坦。

んー、常夏って感じね。さすがリゾート艦。いつでも南国気分が味わえるわけか。
この後お勤めが待ってるけど、それに響かない程度に楽しみましょ。
みんなコンテストに出るだけあって、気合い入ってるわね。

うん、それじゃ海に入ろ。潜ったら珊瑚とか用意してあるかな?
あ、熱帯魚の群だ。青くきらめいて綺麗。

これ、本物の海と区別出来ないレベルで再現してあるのね。
この世界で居住可能な惑星は一つも残ってないのに、よくここまで仕上げたものだわ。

――んー、一杯泳いだ。ちょっと一足先に上がるね。
みんなが戻ってくるまでに、飲み物を準備しよう。それくらいはしなきゃ。


ニコル・ピアース
【白百合の苑】f04288・f06230・f10751・f01658

うん、それじゃ浜辺でのリゾート開始ですね。
じゃあ水着コンテストで着た水着を着用ですね。
目一杯楽しみましょう。
こうやって作った場所だと自然災害とかなくていいですね。
危険な生き物とかもいないですし。

さて、リゾートいえば、
ビーチチェア、パラソル、そして、トロピカルジュース。
そのままだらだらしながら過ごすと聞いたのですよ、ここに来る前に。
まあエンパイアにはそんなものなかったから私も初めてなんですけどね。

というわけで、飽きたのですよ、何もしないことに。
やっぱり海は泳ぐのが一番、ゆかりさん、一緒に泳ぎましょうか。
うん、やっぱりこれですね。


ユーノ・エスメラルダ
【白百合の苑】f04288・f06009・f06230・f01658

はわ〜…すっごく大きくて、青いです…(海が珍しいのでポカ~ンと見ている)

遊ぶことそのものに馴染みがないので一緒に来た仲間の遊ぶ様子を見て真似をしていきます
運動はあまり得意ではないので激しい動きは転んだり

泳ぐのは苦手なので、泳ぐところは真似せず波打ち際で波を珍しそうに見たり、泳げるのをすごいって思ったり

この世には、こんなに綺麗で安全な場所もあるのですね
ユーノは今日、みんなとここに来られて良かったです
海に誘ってくれて、ありがとう!

こんな日常を守るために、私達はがんばっているのですよね。こんな日々がこれからも続きますように


クリスティアーネ・アステローペ
【白百合の苑】W
水着コンの格好で

海を創る、なんて驚きね
この世界の船の規模にはまだ時々驚かされるわ
それに思った通り。人の手による海だからか痛みは軽いわねえ
これならいつもよりは楽しめそう

ここは人が創った世界
人の力の結晶
私は好きよ?こういう場所も

…けどやっぱり日差しがきついわね
私は日陰に行きましょう

>ニコル
あら、いいわね。一口頂いても?(綺麗な色のジュースを見て)
一泳ぎ?行ってらっしゃい(軽く手を振って)

>ユーノ
あら、大丈夫?疲れたのなら少し休んでいきなさいな
時間はまだ十分にあるわよ?
(転ぶのを見れば声をかけ)

>瑞穂
…あら、いいの?こっちで
気にせず遊んで来ればいいのに
(落っこちた狐は拾って膝に乗せ)


ミュー・グラナティス
『情報収集を開始…船内部で休息を取る猟兵の行動を観察…』
帝国の残党が出没する宙域に到達するまでの時間、船内にて帝国を打倒した猟兵達の行動を観察。

機械兵士の自身にはリゾート施設は不要だが、スペースノイドや猟兵などの生命体には効率のいい休息を取るためにはこのような施設が必要であることを学習する。

その後船内の設備で自身の身体の整備と、弾薬の補充、敵の帝国残党の情報を更新して任務開始まで休眠に入る。
『上質な設備と物資…生命体と機械兵士も求めるものは同じか』


秋津洲・瑞穂
【白百合の苑】
WIZ(水着コンの水着)

面白い景色ね。綺麗に整っているわ。
なにより磯の臭いがしないのがいいね。香料かなこれ。

眺めていても仕方がないけれど、さてどうしよう。
ゆかりとユーノは泳ぐのかな。習練をする気分でもないなー。
傘を立ててる人がいる……ニコルは何をする気かしら。

皆の様子を見回して、クリスティアーネに付いて行こう。

「海の遊びも知らないし、それになんだか、海には見えなくて」

とても綺麗だけど、雑多な命に溢れてる気配はしない。
海を描いた映画を観ている感じ。……少し寂しい気もする。

ちんまい仔ぎつねに変身して、クリスティアーネの膝に
登ろうとする――まぁ、落ちるよね(ぽて

「きゅー」(丸まって就寝



 さんさんと降り注ぐ太陽。高い気温を和らげてくれる爽やかな涼風。
 白い砂浜に打ち寄せる波、南国の理想を体現したようなこの熱帯リゾートが実は宇宙船の中に存在し、映像技術や空調といった技術の総結集だという事実は、スペースシップワールドという世界の魅力や面白さの1つだ。

「新しい水着は心が躍りますね」
 波打ち際に向かって歩を進めつつ、黒木・摩那は楽しそうに目を細めた。シンプルなシンメトリーの水着は、けれどビキニの上下で赤と黒が互い違いになるように左右に塗り分けて、セクシーさと瑞々しさを引き立てる。胸元で素肌を魅せるハートマークは艶っぽすぎない絶妙なバランス、その色と相まってトランプの国、ハートの女王を彷彿とさせる。
 青空と白い砂浜のコントラストを堪能してから、レンタルした水中メガネをつけて摩那は海中へと身を沈める。ひやりと全身を包む心地いい水に、広がるのは海藻とサンゴの海底を背景に自由に泳ぐ色とりどりの魚達。違う種類を見つけるたびに、摩那の瞳が水中メガネの奥で楽しそうに輝いた。
(あれは食べられるのでしょうか、とても鮮やかな色ですけど……あら、また違う種類ですね、大きめで……美味しいかしら……)
 食欲特化の感想だがそれもまた楽しみの一つ。実際に熱帯魚の中でも、美味なるものは結構あるのだとか。
 ゆるりと散歩するように、黒髪をたゆらせて摩那は飽かず海中散策を楽しむのだった。

「はわ~……すっごく大きくて、青いです……」
 夏の空、そして海にもよく似た色の瞳をまんまるに見開いて、ユーノ・エスメラルダは穏やかに波寄せる海原を魅入られたように眺めた。長い間ただ一つの部屋のみを世界として生きてきたユーノには、この人造の海もまた新たな風景にして新たな一歩。
 もちろんこれも初めてあつらえた、清楚な白に青で縁取ったフリルたっぷりの水着と共に。
「海を創る、なんて驚きね」
 軽く広鍔の麦わら帽子を押さえつつ、クリスティアーネ・アステローペがユーノの背を見守りながら、その向こうの海や海辺の風景にもくるりと視線を巡らせた。
「んーっ……本当、常夏って感じね。さすがリゾート艦、いつでも南国気分が味わえるってわけか」
 村崎・ゆかりも照りつける陽光照明にぐっと身を伸ばしてから、きょろきょろとあちこちを見渡してみる。細身に似合うシンプルで泳ぎやすそうな紫と黒の競泳水着に、普段は一つに編んだ髪はさらりと解いて。
「この世界の船の規模にはまだ時々驚かされるわ。それに……」
 するりと指先がこめかみを撫でる。吸血種の血を引くクリスティアーネは、自然の流水に対して多少頭痛を感じる傾向があるのだが。
「思った通り、人の手による海だからか痛みは軽いわねえ」
 自然を『模した』ものであるためか、その頭痛は普段よりごく軽い。
「こうやって作った場所だと自然災害とかなくていいですね、危険な生き物とかもいないですし」
「ええ、面白い景色ね、綺麗に整ってるわ」
 ニコル・ピアースと秋津洲・瑞穂が口々に頷き合う。ぱたり、ふわりと動く金色の髪と色合いの同じ耳と尻尾が映える、スポーティな薄黄の縁の白いビキニ姿で瑞穂はふぅっと深く息を吸い込んだ。海を思わせはするものの、自然に存在するよりは生々しくない爽やかな風が鼻へと抜ける。
「みんなコンテストに出るだけあって気合入ってるわね、水着」
 波打ち際近くに【白百合の苑】の5人が揃ったところで、ゆかりがメンバーを見渡して頷く。それぞれの個性を引き立てる自慢の水着が揃う一角は、砂浜でも一際華やいでいる。
「何より磯の臭いがしないのがいいね。香料かなこれ」
 瑞穂の言葉に同じ風、同じ香りを吸い込んだクリスティアーネが頷いた。海を再現し、そしてさらに快適な場所へとアレンジを加えたその技術に、努力に、自然の在り方を受け継いでいた記憶。それはとても、クリスティアーネには好ましく思える。
「ここは人が創った世界、人の力の結晶ね。私は好きよ? こういう場所も」
「ね! この後お勤めがあmってるけど、それに響かない程度に楽しみましょ」
 けど、と見上げる先には本物を思わせる眩しさ、そして温度で照りつける陽光照明。
「やっぱり日差しがきついわね、私は日陰に行きましょう」
 ふんわりとピンクとベージュの半ばに近い優しい色合いのパレオを舞わせ、砂浜の奥へと歩みゆく。一度それを見送った瑞穂は「傘を立ててる人がいる……」と不思議そうに首を傾げた。
 そう、レンタルや備え付けのパラソルが並ぶ一角。何をする気かしら、とさらに瑞穂が首を傾げる視線の先には、既にニコルが準備万端でスタンバイしている。
「さて、リゾートといえばビーチチェア、パラソル、そしてトロピカルジュース」
 イエス、レンタル・アンド・海の家ドリンク。
「そのままだらだらしながら過ごすと聞いたのですよ。ここに来る前に。まあエンパイアにはそんなものなかったから私も初めてなんですけどね」
 大胆な切り込みが引き立てる抜群のスタイル、青地に金のサムライエンパイア風の文様。羅刹紋も引き立つ艶やかな水着でチェアに寝そべったニコルはちゅー、とストローでトロピカルジュースを吸い上げた。
「あら、いいわね。一口頂いても?」
「どうぞどうぞ。案外すっきり柑橘系ですね」
 ニコルからジュースを手渡されたクリスティアーネも一口。
「うん、それじゃ海に入ろ」
「入る、ですか……きゃっ!?」
 たたたっ、と砂浜を駆けるゆかりに、見よう見まねで続こうとしたユーノがふらっと砂に足を取られてよろけた。あ、と気付いたゆかりが手を貸して、波が足を洗うほどまで共に歩を進める。泳ぐのは苦手なユーノはそこでゆかりを見送って、すいすいと深い方まで泳いでいく様子にすごいですねぇ、と目を輝かせた。
「んー、修練をする気分でもないなー……」
 そうしてそれぞれの過ごし方を探す一同を見渡して、瑞穂は結局クリスティアーネの後を追いかけることにした。
「……あら、いいの? こっちで。気にせず遊んで来ればいいのに」
「海の遊びも知らないし、それになんだか、海には見えなくて」
 とても綺麗だけど、と見つめる波の向こうには、他の世界で自然の海が持っているような複雑な生態系は流石になく、雑多な命が溢れる気配はしていない。
 海を描いた映画を観ている感じ、と思った。少し、その風景は寂しいとも思う。
 ぴょん、と仔ぎつねに変身した瑞穂は、ててっとクリスティアーネの膝に登ろうとビーチチェアの脚にしがみつき……ぽて。
 ふふ、と笑ってクリスティアーネは仔ぎつね瑞穂を膝に乗せ、ふわふわとその毛並みを撫でる。
「きゅー……」
 心地よさそうに身を丸めた瑞穂は、やがてパラソル越しの日向ぼっこをしつつ穏やかな眠りに落ちていく。
「というわけで」
 と思ったらジュースを置いて、隣で勢いよく立ち上がるニコル。
「飽きたのですよ、何もしないことに」
 確かにこの過ごし方は割と向き不向きがある。
 元気活発タイプにはあんまし向かないやつだ。
「やっぱり海は泳ぐのが一番。ゆかりさーん、一緒に泳ぎましょうかー」
 呼びかけながら砂浜を掛けていくニコルは、波を眺めているユーノが顔を上げたところににっこり笑って、お互い手を振り合ってからゆかりのところまですいっと泳いでいく。
「あ、ちょうどいいところに。ニコル、ほら、ここ潜ったらすごく綺麗なんだ」
「おお、ゆかりさんが見つけておいてくれたとはグッドタイミング」
 ふぅっと息を整え、吸い込んで同時に水面の向こうへ頭を沈める。泡が落ち着いたその先には鮮やかに美しいサンゴ礁、その間をすいすいと泳いでいく熱帯魚の群れ。
(青くきらめいてて綺麗……)
 水中に言葉はなくも、ゆかりの胸は広がる光景の美しさに浮き立つ。ぷはぁ、と顔を上げ、今度は競うように泳ぐ。ゆかりもニコルも泳ぎは好みとするところだ。
「うん、やっぱり海はこれですね」
「んー、一杯泳いだ」
 満足げに顔の水を拭うと、ちょっと一足先に上がるね、とニコルに声をかけてゆかりは海の家へと向かう。みんなが戻ってくるまでに、ドリンクを用意しておこうと。それくらいはしなきゃ、と騒ぐ世話好きの血に従って。
 そしてユーノは今度は砂浜を見渡して、足元に気をつけつつも駆け出そうとしてみた。
 ――すこーん。
「あら、大丈夫?」
 ビーチチェアからそっと瑞穂を抱えて立ち上がり、クリスティアーネは砂に足を半ば埋めつつも立ち上がったユーノへと歩み寄る。
「疲れたのなら少し休んでいきなさいな、時間はまだ十分にあるわよ?」
「あ、はいっ、それじゃお邪魔します」
 ちょうどクリスティアーネの使っていたビーチチェアは広い。また瑞穂を膝の上に乗せたクリスティアーネの隣に、ちょこんとユーノも腰を下ろす。
 さらにたっぷり泳いで満足したニコルが戻ってきた辺りで、ジュースを買い込んだゆかりが合流して一旦みんなで小休止。
「この世界で居住可能な惑星は一つも残ってないのに、よくここまで仕上げたものだわ」
 これだけの高い水準で、科学技術を用いて再現した光景にゆかりが再び見とれれば、ぱぁっとユーノが笑顔になる。
「この世には、こんなに綺麗で安全な場所もあるのですね。ユーノは今日、みんなとここに来られて良かったです」
 こんな日常を守るために、私達はがんばっているのですよね、と頷いて。こんな日々がこれからも続きますように、と願って。
「海に誘ってくれて、ありがとう!」
 幸せに染まった言葉に、つられて頬を綻ばせ、白百合の苑の仲間達は次々に頷いた。

 さて、そんなリゾート風景が、猟兵達の間でもこの船の住民の間でも繰り広げられている最中。
「情報収集を開始……船内部で休息を取る猟兵の行動を観察……」
 ミュー・グラナティス、元銀河帝国側の制圧射撃用量産機シリーズとして戦闘に投入されたうちの12番機。明らかにウォーマシンな見た目も、リゾートで楽しむ中にもやっぱりウォーマシンが混じっているので砂浜をうろうろしてもそこまで目立たない。
 ちなみに銀河帝国と猟兵の戦いの間に部隊との通信は途絶えてしまい、今はあてどなく彷徨うマシンとなっているミュー・グラナティスである。
 そんなわけで移動を繰り返しつつ、銀河帝国を倒した猟兵達の行動を観察してゆくミュー・グラナティス。ちょっと頭部センサーのスペックは控えめなので、あまり隠れて観察するのも大変なのだ。
 ――機械兵士であるミュー・グラナティス自身に、リゾート施設は不要である。彼はそう認識している。
 しかしスペースノイドであったり猟兵達だったり、いわゆる『生命体』にとっては。
『効率のいい休息のために、リゾート施設の必要性を理解……記録し、必要があればさらなる考察を深める……』
 ひとしきり観察し、判断を下すとミュー・グラナティスはリゾート施設から離脱し、ウォーマシンメンテナンス用の船内設備へと向かう。砂浜に晒された身体を整備し、弾薬も補充。さらに情報端末から帝国残党の情報を引き出して自身の持っていたデータにアップデートをかける。
 万全に準備を整えて、あとは目的の宙域に到達し、任務開始まで休眠すべくモードを切り替えた。
 基盤を流れる思考が薄れゆく中、ふとミュー・グラナティスは考える。
『上質な設備と物資……生命体と機械兵士も求めるものは同じか』
 そして意識は一時の漆黒――あるいは休息へと落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『アイスバーグレンジャー』

POW   :    フォーメーション『霜』
【冷凍ビーム】が命中した対象を爆破し、更に互いを【氷の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    フォーメーション『霰』
【隊長ペンギンの特攻体当たり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【隊員ペンギン達の連続体当たり】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    フォーメーション『雹』
【隊員全員のパワーを合わせて巨大氷山】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑7
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 リゾート設備の海へと別れを告げ、猟兵としての戦いに赴くべく乗り込んだ護衛艦。
 オートモード運転に任せ宙域を進んでいくと、そこはペンギンだった。

 ペンギンだった。

「敵勢力を視認! 戦闘用陣形『ブリザード』へと展開せよ!」
「「「ラジャー!!」」」
 しかもなんかやたらイイ動きで連携取ってくるペンギンだ!
 おまけに常夏リゾートからやってきた宇宙空間(すごく寒い)。
 どう見ても氷属性アイシクルって感じのペンギン(すごく冷たい)。
 なお幸い水着姿だろうときっちり宇宙環境から防護してくれる補助装置があるので、すごく寒い方からはちゃんと防御されるので安心してほしい。
 流石に常夏リゾートとは結構ギャップがあるけれど。

「さぁ往くぞ! ペンギンが翔べないならば宇宙(ソラ)を泳げば良いのだから!」
「「「イエッサー!!」」」
 だがしかしペンギン部隊のテンションに負けるわけにはいかない!
 なぜなら戻るべき母艦は!
 そして代えがたき、失いがたき人々の日常は!
 猟兵達の背にかかっているのだから!

 バトルミッション――スタート!
黒木・摩那
出たわね、宇宙ペンギン。
まとめて退治してあげます。

ヨーヨー『コメット』を使います。
ヨーヨーのワイヤーをペンギンに絡ませて、引っ張ったり、
こちらから飛び込むことで【敵を盾にする】します。

防御は【第六感】とスマートグラスのセンサーで警戒、
【念動力】でビームの軌道を反らして回避します。

混戦で密集してきたら、UC【風舞雷花】を使って、ペンギンを一網打尽にします。



「出たわね、宇宙ペンギン」
 きゅ、とカーボンワイヤーが僅かな音を立てた。黒木・摩那の手の中から超合金によって作られた戦闘用ヨーヨーが放られたかと思えば、凄まじい高速機動でペンギンの1羽へと絡みつく。
「クウェエエ!?」
「隊員んんん!!」
 咄嗟に助けに入ろうとしたペンギン隊員は、摩那が咄嗟に捕まえていた隊員の陰に自ら飛び込んだことで仲間とぶつかり合ってそのまま2羽揃って悲鳴を上げる羽目になった。
「くっ、こうなったらフォーメーション『雹』! 全員、総力を集めよ!!」
「「「ラジャー!!」」」
 一回り大きな体をした隊長ペンギンが、びしっと翼の先を摩那へと向ける。その頭上へと作り出された巨大氷山が――猟兵達へと雪崩れるように襲いかかる!
 けれどその軌跡は、とうに計算済みだ。赤縁の眼鏡は高性能スマートグラス、氷の山が氷塊へと形を崩しつつ降り注ぐその隙間を見つけると、念動によってまさに雹と言わんばかりの塊を逸らす斥力を作り出す。
 いくらかは防ぎきれず勢いを減じながらも斥力を掻い潜り、鋭い欠片と冷気を降り注がせはするが――それよりもパワーを集めるその過程で、自然と集結したペンギン達の陣形が何よりの好機。
 はらり、とヨーヨー『コメット』、流星の名を持つそれが、七色帯びて姿を変えていく。
「励起。昇圧、帯電を確認」
 美しい花弁には触れれば火傷、ならぬ感電間違いなしの高電圧が僅かにチリと音を立てて宿る。スマートグラスの向こうですっと細められる瞳。
「敵味方識別良し……散開!」
 宇宙空間に吹雪くかのように広がる七色、ユーベルコード『風舞雷花』――的確に味方の猟兵は避け、逆にペンギン達へと触れればバチリと弾ける電撃と上がる悲鳴。それでも果敢に突っ込んでくるペンギン達に、摩那もまたヨーヨーへと戻した『コメット』を掴むと再び戦場を駆けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミュー・グラナティス
【POW】

『戦闘開始…迎撃行動に移行』
真面目に解放軍と戦っているのかふざけているのか判断に困る残党だが手を抜く理由にはならない、これより砲撃を開始する。

あそらくは射程はこちらの方が長い、が機動力はペンギンの方が遥かに上だろう。
両腕の砲塔にまずは命中重視の誘導ミサイルを装填、ペンギンが射程内に入り次第発射。この時点で数を減らさねば接近された際に、迎撃が追い付かなくなるので過剰なまでに発射。
誘導ミサイルが当てにくい距離まで接近されたら砲塔をビーム砲に換装、こちらも命中重視のビームを撃ちながら残ったペンギンを撃ち落としていく。
『ミューは元より砲撃特化、近づかれる前に全て落とす』



『戦闘開始……迎撃行動に移行』
 ミュー・グラナティスは小さく音声を発し、両腕の砲塔へと装填を開始した。
 この帝国軍の残党たるペンギン部隊が、真面目に解放軍と戦っているのか、それともふざけているのか、ミュー・グラナティスには判断の難しい事項であった。――むしろそれは、ふざけるという事に縁遠い彼自身の精神性もあってのことかもしれない。
 既に彼のCPUは戦術の組み立てをスタートし、弾道計算をも進めている。おそらく己の方が射程は長く、けれど機動力はペンギン部隊の方が上だと推測される。ゆえに最初に選ぶのは、長射程かつ命中を重視した誘導ミサイル。射程に入る前に照準を調整し――その最大射程へと先頭のペンギンが踏み込んだ、瞬間。
『敵個体捕捉……攻撃を開始』
 どっ、とミュー・グラナティスの躯体が揺れる。四脚型の安定性は反動を分散しすぐさま照準のブレを修正。強烈なミサイルを喰らったペンギン隊員は断末魔と共に吹き飛んでいく。
「キュエエエエ!?」
「せ、戦友ー!!」
「怯むな!密集陣形を取り突撃、射程圏内まで何としても距離を詰めろ!」
「「「イエッサー!」」」
 がしっと密集陣形を作るペンギン部隊に、ミュー・グラナティスは冷静に装填と発射を繰り返す。もはや人の、いやペンギンの盾とばかりの果敢なる突撃に、着実に命中させて脱落者を増やすも――ミサイル有効圏内を、突破。
 ウィン、とモーターが駆動し、即座に砲塔換装を開始する。ミサイルではなくビーム砲へと武装を変更、しかしペンギン達の冷凍ビームもそろそろ彼を射程へと捉える!
 キン、と金属ボディに氷の弾ける音。さらに隊員とミュー・グラナティスの躯体を繋ごうとする氷の鎖を、ビームが薙ぐように焼き払った。さらに撃つ。撃ち込む。連射する。絡みつく氷を灼きながら何度も。相手の射程に入ろうとも、接敵されるまでは分はまだこちらに!
『ミューは元より砲撃特化、近づかれる前に全て落とす』
 漆黒に恒星浮かぶ宇宙を背景に、氷と光のビームが無数の輝きとなって交錯する――!

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
【白百合の苑】

水着のままで迎撃に出陣。宇宙に平和を取り戻す。

ユーノが用意してくれたインカムを装着して、敵の討滅優先度を受け取り対処する。

飛鉢法で作り出した鉄鉢に乗り「空中戦」で空間戦闘を行う。
巫覡載霊の舞を使い、執金剛神降臨で強力な前衛を用意。
執金剛神を前に出して槍でペンギンを「なぎ払い」、「串刺し」にしたりするわ。ペンギンストライクってね。
執金剛神は自分の盾としても利用。
執金剛神を避けてあたしを直に狙ってくる場合は、不動明王火界咒で迎撃する。
支援が必要な仲間がいれば、七星七縛符で援護ね。

悪いけど、チームワークで負ける気はこれっぽっちもないのよ。
あたしからみんなへの愛を甘く見ないでほしいわね。


ユーノ・エスメラルダ
【白百合の苑】f04288・f06009・f06230・f01658

残党のペンギンさん、現れましたね!

電脳ゴーグルをつけて、【電脳の妖精】を発動して電脳空間を展開
事前に、市販のインカムを【マインドダイヴ・ツール】による補助と【ハッキング】で通信プロトコルなどを変更して電脳ゴーグルと無線ネットワークの専用回線でリンクして連絡をとれるようにしたものを仲間に配っておきます

ユーノは戦場の情報を集めてペンギンたちの統率の弱点や、技の予備動作を探して
皆さんに伝えるサポートと【鼓舞】をします!
戦闘の案は詳しい味方に任せ、ユーノは必要な情報とタイミングの連絡や連携に徹します


ニコル・ピアース
【白百合の苑】f04288・f06230・f10751・f01658

おー、来ましたね、たくさん。
夏のペンギンと言ったらかき氷。
ん?なんでだかよくわからないですけど。
というわけで凄いことになりそうですね、冷たさが。

さて、敵も来たことですし、みんなと連携してさっさと倒しちゃいましょう。
敵が近くに迫ってきたらグラウンドクラッシャーで纏めて攻撃。
相手が全滅するまでその繰り返しです。
正面からひたすら殴り倒してきます。
ん?連携?うん。

なんか、リーダーみたいのいないですかね。
そういうの倒しちゃえば弱体化しそうな気が。
ユーノさんがそういうの得意だし教えてもらいましょうか。


クリスティアーネ・アステローペ
【白百合の苑】

随分とまあ、可愛らしい部隊ねえ
お相手、してあげましょうか

ユーノからもらった物を身に着けて
情報を貰いながら瑞穂と連携して動くわね
ユーノに向かう相手に応じられる距離で、彼女への攻撃にも注意しながらになるかしら

冷凍ビームはフランツィスカで受けて鎖ごと振り回してしまいましょうか。軽いわよ、あなた達
自在に飛び回る…泳ぎ回る相手には向かってくるのに合わせて
《高速詠唱》から扇状に拡散するように《一斉発射》した【ウィザード・ミサイル】やそれによる《衝撃波》で対応するわ
瑞穂が暴れやすいようにフォローもするわね
氷山に対しては一点を穿つように収束、巨大な炎の槍にして叩きつけて。派手に砕いてあげましょう


秋津洲・瑞穂
【白百合の苑】(水着コンの水着)

宇宙装備、剣士だから加速と小回りを重視でと頼んでおいたら、
大きなエンジンみたいのがごっついわ……いいけど。

ともあれ、わたしのお仕事は一つ。太刀を構えて[ダッシュ20]っ!
擦れ違いざまの[鎧無視攻撃30・2回攻撃30]で斬りまくるっ。

クリスティアーネと連携して、太刀が届かないペンギンは任せよう。
わたしは正面攻撃。敵集団に飛び込んで内側から粉砕してやるわ。
フォックスファイアの狐火たちも引き連れて二人分の盾にするわね。
氷山が来たら、狐火総突撃で迎撃。

ユーノから指示があればそこに、なければ相手の多いところにGO。
ユーノに向かう敵がいれば優先で蹴散らすよ。

全・速・前・進!



 リゾート施設の海辺では華やかな水着姿で和気あいあいと楽しんできた【白百合の苑】メンバー。
 今度はその絆を戦いへと発揮する時が来た。
「加速と小回りを重視でと頼んでおいたら、大きなエンジンみたいのがごっついわ……」
 秋津洲・瑞穂は背中の宇宙空間用の補助装置が気になるようで、軽く振り向きつつふさりと尻尾を揺らした。実はこの装置、挙動性を向上させるとむしろ高火力ジェットと慣性コントロール装置とかその他もろもろが搭載される結果、装置自体はデカくなりがちなのだ。無重力空間用だから、装着者の動きに重さが与える影響は少ない。
 とはいえ14歳の女の子としては普通の身長、くらいの瑞穂が装着していると、主に見た目の存在感が凄まじい。
 服装が水着だから尚更である。
 そう!
 リゾートでも水着で楽しんできたからには!
 せっかく水着のまま戦える機会だしみんな水着で来てるのだ!
「残党のペンギンさん、現れましたね!」
 ユーノ・エスメラルダが電脳ゴーグル越しの視界にペンギン部隊を確認、インカムを通じて連絡を送る。5人全員が装着しているこのインカム自体は普通の市販品だが、ユーノのハッキング技術が発揮された結果、思考による音声や文字データ等の入力と専用回線での通信が可能なハイ・テクノロジーの結晶へと進化させてある。
 戦いの場所は宇宙、けれど普段と同じように言葉を交わし、近くにちゃんと姿がある。
 それが一番の心強さでなくて、何になるだろう。
「おー、来ましたね、たくさん」
 だからこそ、きっと。
「夏のペンギンと言ったらかき氷。ん? なんでだかはよくわからないですけど」
 ニコル・ピアースは普段と同じ調子で楽しげに笑って、楽しげに無骨な大斧を構えるのだろう。
「というわけで凄いことになりそうですね、冷たさが」
 元から彼女にとっては戦いと日常の間にさしたる差異はないのかもしれないけれど、多分、きっと!
「随分とまあ、可愛らしい部隊ねえ」
 クリスティアーネ・アステローペがくるりと斧槍を回し、構える。
「全・速・前・進!」
 その琥珀の瞳と視線を交わし、瑞穂が細身にあつらえた太刀を抜き放ちながらダッシュをかけた。反対からはニコルが斧を肩に載せてクリスティアーネの背を抜かしていく。
「ノウマク サマンタ ブッダナーム バーヤベ スヴァーハー……風天よ! 天吹き渡る其の風の効験を、ひととき我に貸し与え給え!」
 村崎・ゆかりが真言と詠唱に合わせ、ふわりと水着に被せるように戦巫女の装束を纏う。風天の加護たる空を駆ける鉄鉢は、それがさらに遥か高く、宇宙であっても確かに思うままに飛んでくれる。
「さあ、宇宙に平和を取り戻そうじゃない! 疾っ!」
 前衛には召喚願った力強き執金剛神、そしてさらにゆかり達全員、戦場全体をしっかりと視界に収める後方に、電脳空間が展開される。ユーベルコード『電脳の妖精』――ユーノの実体は既に電脳空間へ、逆にこの実宇宙には半透明の映像を投影。把握・分析へとその処理能力を特化させ、その立ち位置と同じくまさに『要』を担う。
「お相手、してあげましょうか」
 そのユーノを守れる位置取りを維持し、向かってくるペンギン部隊へと目を細める。既に最前線の瑞穂とニコルは、敵の一団とぶつかり合おうと――したその瞬間。
 地面ならば砕け散ろうという勢いで、ニコルの大斧が叩きつけられる。さらにすれ違いざまにペンギン隊員の1羽を斬り捨て、瑞穂が敵陣の中央へと躍り出た。
「よし、っと。ペンギンストライクってね」
 そのわずか後方の執金剛神、そしてそのやや後ろに位置するゆかりが同じ動きで薙刀を突き串刺すようにしたかと思えば、自然な流れで次はペンギン部隊を薙ぎ怯ませる。そのガードを抜けようとする1羽には、すっとゆかりの手から飛ぶ白一色――見た目は白紙のトランプにして、強力な呪を込めてある符。
 ペンギン達が次々に放つ冷凍ビームを、ひょいとニコラが一足で避けた。再び衝撃。悲鳴じみた鳴き声。
 そしてその鎖はフランツィスカ――クリスティアーネの持つ斧槍がしかと絡め取っていた。
「軽いわよ、あなた達」
 ぴゃあああ、くえええ、と響く悲鳴は、その鎖ごと振り回されるペンギン達の声。ただそれを自在に掻い潜り、持ち前の機動力と陣形で迫る相手を迎え撃つのは炎。それもその源は1つではない。
 高速の詠唱が呼ぶ炎の矢、ウィザード・ミサイル。そしてひらり大量に瑞穂の周囲から盾となるように展開される狐火、フォックスファイア。
 連携を取り合い、有利に展開される戦場は――けれどとにかく、ペンギン部隊の数が多い。
「なんかリーダーみたいなのいないですかね。そういうの倒しちゃえば弱体化しそうな……」
 何度目か忘れるくらいのグラウンドクラッシャーをぶっ放したニコルが、思わず呟いたその時である。

「総員、サイコパワー結集!」
「「「イエッサー!」」」
「フォーメーション『雹』、巨大氷山構築完了――発射ァ!!」
「「「てー!!」」」
 頭上方向に当たる空間に見る間に構築される巨大な、ユーノまで間違いなく射程に収めるだけの氷山が現れる。――落ちる。無重力空間ですらそう感じられる勢いで。
「まずは迎撃をお願いします、炎を!」
 素早くユーノが声をかけた。反応したのはクリスティアーネと瑞穂、炎のユーベルコードを持つ2人だ。
 発せる限りの炎の矢を、素早く詠唱で束ねた巨大なる炎の槍。
 いくつかを合体させ氷山を迎え撃てるほどの大きさにしつつ、仲間達へと降り注ぐ欠片があれば相殺できるように展開させた狐火。
 そしてさらにユーノの声は矢継ぎ早に続く。決して命令ではなく、戦場を俯瞰できるからこその伝達、そして鼓舞。
「今指示を出していたのがおそらく隊長級です、レーザーポインタでできる限り追尾します! 狙えそうならお願いします!」
「あ、そういうの得意です」
 ひょいっと軽い足取りで氷山と炎が渦巻く頭上にもお構いなく、ニコルが斧を構えて前に出る。幾分大きな身体を持つものの群れとなれば埋もれそうな、けれど確かに指令を飛ばしていたペンギンを、見失わぬようレーザーポインタが小さく照らす。
「陣形整え、敵の進出を阻止しつつ次弾準備……ガァッ!?」
「隊長ぉ!?」
 その照らし出された指揮系統の中心に、的確に叩き込まれるニコルの斧。
 さらに狐火のコントロールを保ちつつも大きく回り込んでいた瑞穂が、その太刀を逆から思い切り叩きつけて袈裟に斬る。さらにそのまま刃を返し、斬り上げる。
「くっ……アイスバーグレンジャーよ、永遠なれ……!!」
「「「隊長おおおおおお!!」」」
 くちばしから一筋の血を流しつつ倒れた隊長ペンギンが、そのまま致命的な損傷を負った装備と共に爆発――指揮を出す存在がいない軍は、もはや烏合に成り果てる。
「悪いけど、チームワークで負ける気はこれっぽっちもないのよ。あたしからみんなへの愛を甘く見ないでほしいわね!」
(多分ツンデレゆえに割と貴重な)ゆかりの渾身の愛情表現と共に、この宙域へと潜んでいたペンギン部隊は最期を迎えたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『彷徨する災厄』メルビレイ』

POW   :    星覆う巨躯
【満たされる事のない飢餓感】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【宇宙船や星をも飲み込む超弩級の巨体】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    星砕く巨躯
【満たされる事のない飢餓感の暴走】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【防御ごと粉砕する超弩級のヒレ】で攻撃する。
WIZ   :    星呑む巨躯
【超弩級の存在への戦慄】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【星をも飲み込む巨大な口】から、高命中力の【宇宙船をも捉える巨大な舌】を飛ばす。
👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は黒玻璃・ミコです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 サイコペンギン部隊『アイスバーグレンジャー』を撃破!
 勝った!
 完!

 と思った瞬間に、である。
 ペンギン部隊の本拠地、というだけだと思っていた宇宙ステーションが突如として弾け飛んだ。
 クライマックスによくある本拠地爆発――否。そういうやつではない。
 なぜなら『それ』は、喰らっていたのである。己が現れたその場にある、宇宙ステーションの残骸を。

 メルビレイ、『彷徨する災厄』――スペースシップワールドに流れる噂の一つ。
 それは宇宙船を喰らい、その巨体が育てば天体すらも喰らい、いわば『生けるブラックホール』へと成り果てる。
 おそらくはペンギン部隊の『切り札』として宇宙ステーションに秘匿されていたのだろうこの個体は、決してその噂の中では『大きい方』ではない。
 それでも。
 それでも自分達が乗ってきた船を一口で呑み込むことなど容易だと、その肉体を、その巨大で貪欲な口を見れば、わかる。

 ならば退けない。
 退けるはずがない。
 さあ、この宙域での――最終決戦だ!!
黒木・摩那
あのペンギン達、とんでもないものを隠していたわね。
まさに生ける伝説じゃないですか。
放っておけば、自分たちの船も食べられるのは必至。
何としてでも、止めないといけません。

かといって、あれだけの大きさにもなると、
簡単にはいきません。

まずは相手の目と耳を奪うことを試みます。

UC【偃月招雷】でルーンソードを帯電します【属性攻撃】。
宙を漂う岩の影を渡りながら、クジラに近づけたところで突撃。
目と耳を狙います【先制攻撃】【鎧無視攻撃】。

斬っては逃げる、一撃離脱で行きます。



 星々を背景に、ゆったりと尾びれを動かし近づいてくる巨大なる鯨――幻想的とすら言える光景は、けれど明らかな驚異として猟兵達に迫っていた。
 巨体ゆえにその動きは緩慢に見えて、しかし空を泳ぐ速度は思った以上に凄まじい。
「あのペンギン達、とんでもないものを隠していたわね……まさに生ける伝説じゃないですか」
 スマートグラスが弾き出す計測結果と共にそれを見つめ、黒木・摩那は軽く眉を寄せた。
 メルビレイが猟兵達に、そしてその向こうの船へと向ける圧。それは敵意とすら言い難い。
 ――食欲だ。
 喰らっても喰らっても満たされることのない、飢餓だ。
 当然放っておけば、乗ってきた船が喰われるだろう。この宙域にある存在全てと一緒に。
 けれどこの災厄を止めるのが必然としても、容易にはいきそうにない。あまりにもそれは、巨大すぎる存在だ。
 ――ならば。
「まずは相手の『感覚』を奪いますか」
 細身の剣にすっと手をかざす。ちり、と摩那の手をサイキックエナジーの雷が伝う。
「ウロボロス起動……励起。昇圧、収束を確認……」
 その手から刀身へと宿りゆく電流。その僅かな輝きが揺らめくたびに、刻まれたルーンが万華鏡の如く移ろい見え方を変える。ユーベルコード『偃月招雷』――帯電完了、と呟くと、摩那はそのまま顔を上げ、補助装置によって作られた重力場を蹴って岩陰へと身を潜めた。
 広い宇宙から見れば塵の如き、惑星や衛星の欠片、あるいはもしかしたらかつて人工物だったかもしれないもの。けれど今はその存在が、巨大なる巨躯から摩那の身を守る盾となる。
 動きを読み、その視線や注意が他を向いたと思えば再び移動してまた別の岩陰へ。宙を泳ぎ近づくメルビレイへと、摩那もまた接近――もはや一度に全体を見ることすら出来なくなるほどの近くから、さらに一気に距離を詰める。狙うは感覚器官――『目』、そして『耳』。
 まずはその左眼球へと一撃を叩き込み、すかさずそのまま距離を取る。その摩那がちょうどいた場所を、巨大な口ががぶりと呑み込み、さらに離脱へと加速をかけた摩那へと10メートルといったほどまで迫ってその歯列を閉じた。覚悟していた反応ではあったが、それでも息を呑むほどの重圧。
「っ!」
 スマートグラスの数値変化とふと走った悪寒。それに逆らわず摩那は急速旋回を試みると、すぐさま側の岩陰へと身を隠す。その岩を薄赤い巨大な何かがあっという間に攫っていく。
 舌だ。宇宙船すらも絡め取り、口に運ばんというあまりにも大きく、貪欲な舌。
 岩ではなく自分が絡め取られればひとたまりもなかっただろう――緊張の高まりに、摩那は剣を握る手に力を込め直す。帯電の輝きがその心情へと沿うように、僅かに揺れる。
 けれど狙いは変わらない。その目を奪う。その耳を奪う。その感覚を、奪う。
 再び加速をつけると、今度は左耳に当たる部分へと狙い定めて摩那は巨大鯨の懐へ飛び込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
【白百合の苑】

この世界の都市伝説として聞いたことはあったけど、まさか実物にお目にかかるとはね。これ以上星を飲み込まれても面倒。今のうちに討滅しなきゃ。

引き続き「空中戦」の飛鉢法で移動。巨大な相手は十分な速度と小回りで翻弄よ。出来れば上を取りたい。
瑞穂が中から攻め立ててくれるから、あたし達は外からフォローしなきゃね。
巨体相手だから、複数枚のカードを使って、「全力魔法」「範囲攻撃」「破魔」の七星七縛符。悪食は封じさせてもらうわ。
敵が動けなくなるまで、徹底的に七星七縛符を撒き続ける。

抵抗不能になったら、火の「属性攻撃」「全力魔法」の不動明王火界咒で焼き払うわ。

都市伝説は伝説の中だけで十分。おやすみ。


ユーノ・エスメラルダ
【白百合の苑】f04288・f06009・f06230・f01658

引き続き、電脳ゴーグルをつけて皆さんに伝えるサポートをします!
ユーノは必要な情報とタイミングの連絡や連携に徹します

な、中にですか…!?宇宙だと音波探査もできないし…
【エレクトロ・ドールベア・レギオン】!
宇宙機動装備のくまさん特殊部隊出撃です!
電磁波の受信アンテナ担当1、電磁波発生装置担当1、シールド装備3の5体をワンセットにした特殊部隊をレベル分配備することで、複数の方向から計測してクジラさんの内部構造はわかるはずです
大まかな位置は伝えられますが、どうかご無事で…!【祈り】

可能なら【電脳の妖精】も維持
●アレンジok


秋津洲・瑞穂
【白百合の苑】

ありゃー。大きいわねー。
でもね。わたしたち相手に大きさは武器にならないよ。
兵法大黒落とし、ご覧に入れましょう。

神獣刀を薙ぎ槍に持ち替えて戦仕立て。
少しでも口を開いたら(口じゃなくても)体内に飛び込むわ。

クリスティアーネと一緒なら足を止めずに突進できる。
狐火の乱打も併用し、何もかも吹き飛ばして内部を前進。
ユーノからの誘導もあるので、何かしら急所にはたどり着けるでしょう。
運びは上々よ、クリスティアーネ。

心臓部には鎧無視攻撃30・なぎ払い20の【巫覡載霊の舞】。
貫通力付き広角度の衝撃波を飛ばして、三枚におろしてあげましょう。
「あれを吹き飛ばしたら始末が付くかしらね――じゃ、やろっか」


ニコル・ピアース
【白百合の苑】f04288・f06230・f10751・f01658

うん、凄いですね、大きいですねえ。
これは倒したら肉がたっぷり取れそうですね。
さっくりと倒して焼肉にでもしましょうか。

さて、内部潜入組を援護するため、
ゆかりさんとともに外から攻撃を仕掛けましょう。
うん、もしかして不要なんじゃとか言わない。

とりあえずなんか弱そうというか柔らかそうな場所を探して、
たぶん目とかそういう感じになるはずですけど、
グラウンドクラッシャーを叩き込みます。
周囲諸共破壊することを目的に。
あとは同じ場所にグラウンドクラッシャーを放ち続けて、
内部深くまで破壊していけばダメージになるはず。


クリスティアーネ・アステローペ
【白百合の苑】

あらあら、これは船も大きくなるでしょうねえ
まあ――どうにかしてみましょうか?
あの骸は残れば随分な資源になるでしょうし

まずは【咎を穿て、赫き杭】で巨体に無数の杭を突き立ててやりましょう
のたうって大口でも開けてくれれば瑞穂と一緒に飛び込みましょうか

内部では【赫き杭】に【権能覚醒「嵐と雷」】による速度とそこから得られる長槍戦斧の威力も用いて
《串刺し》や《薙ぎ払い》による《鎧無視攻撃》で障害の排除と、ついでに内部からの破壊もしながら進みましょう
ユーノの誘導も明瞭に聞こえるわね。瑞穂、速度は問題ないかしら?

「心臓の位置なんていうのは他の獣と大差ないわねえ。ええ、潰してしまいましょう」



「この世界の都市伝説として聞いたことはあったけど、まさか実物にお目にかかるとはね……」
 油断なく飛鉢に膝を立てた姿勢で、村崎・ゆかりが視線の先の凄まじい巨体に目を細めた。まだ視界の中に全身が収まるが、ゆらりと振るう尾びれが、時折ちらつく凶悪な口内が驚くべき勢いで大きくなる――近づいてきているのだ。その巨躯からは信じられぬスピードで。
「うん、凄いですね、大きいですねえ」
 流石にニコル・ピアースも普段より、幾分は緊張したような……様子、で……、
「これは倒したら肉がたっぷり取れそうですね」
 あ、うんなんでもない。
 ニコルさんすっごくいつも通りだった。
「ありゃー、大きいわねー」
「あらあら、これに対するなら船も大きくなるでしょうねえ」
 秋津洲・瑞穂とクリスティアーネ・アステローペもさほど焦りを感じさせない口ぶりで頷き合う。
「おそらくこのスピードだと接触まで……46秒、ユーベルコード発動までは23秒以内かと思います!」
 電脳化を保ったままの状態で、ユーノ・エスメラルダがインカム越しに全員へと告げる。4人が打ち合わせもなく振り向いた。5人の視線がすっと交わる。
「まあ――どうにかしてみましょうか? あの骸は残れば随分な資源になるでしょうし」
「ですね、さっくりと倒して焼肉にでもしましょうか」
 クリスティアーネとニコルが頷き合い、それぞれひょいっと長大な斧槍と巨大な斧を構えた。
 食う気だ。都市伝説焼いて食う気だ。
 いや確かに基本的に食料も船内自給自足が基本、逆に言えば農耕や牧畜、養殖によるものばかりだと考えれば、このメルビレイ、宇宙に残された最後のジビエの1つと言えなくもない。
 ……かもしれない。
「とにかくこれ以上星を飲み込まれても面倒。今のうちに討滅しなきゃ」
「うん、わたしたち相手に大きさは武器にならないよ」
 ゆかりがすらりと無地のトランプ、彼女の『符』を広げる。細身ながらもその身長を越える薙ぎ槍を手に、瑞穂がとうに慣れた様子で加速かけ、前に出る。
 最前線にクリスティアーネと瑞穂、それを援護すべく左右からゆかりとニコル、そして再後衛には既に戦場となるであろう一帯を電脳空間から把握するユーノの『中心』、そして空間に映像として投影された彼女の姿がある。
「な、中にですか……!?」
 思考を通じて伝えられた作戦概要に、思いっきり投影映像が、そしてもちろん電脳空間のユーノ本人が目を丸くする。
 なお伝えられた作戦概要は瑞穂から「ちょっと中から破ってくる」クリスティアーネから「一緒に行って来るわね」である。そりゃそうだ。
「宇宙だと音波探査もできないし……え、『エレクトロ・ドールベア・レギオン』!」
 それでもきっちり対応しに行くユーノ。5体で1ユニットの子グマのぬいぐるみ兵が、電磁波発生装置と受信アンテナをそれぞれ1体、防護用シールドを3体が担当する28小隊を作り上げる。さっとメルビレイの進撃ルートを避けつつ散開した子グマ小隊達は、ユーノの知覚可能範囲の中でそれぞれ距離を取って位置すると災厄の名を冠す巨体に電磁波発生装置とアンテナを向けた。前方に位置した小隊はメルビレイが通り過ぎれば、その尾の側へと回り込む。28方向からの電磁波による測定結果が、ユーノへと届き統合されるように。
「クジラさんの内部構造、上半身から把握……大まかな位置は伝えられますが、どうかご無事で……!」
「「了解!」」
 視線交わしたクリスティアーネと瑞穂がその巨大な『口』に向かって一気に距離を詰める。
 そう、何もかもを呑み込もうとする、飢餓に満ちた口、その中へと。
「『咎を穿て、赫き杭』!」
 血を、呪詛を、そして祈りによって構築された杭。無数のそれが虚空より生えたかと思えば、串刺すかのように腹の側からその巨体に埋め込まれていく。ぬめるような身をのたうたせ、その口が、大きく開いた瞬間。
「兵法大黒落とし、ご覧に入れましょう」
 すらりと2つの影が、躊躇することなく巨大鯨が臓腑へと躍りこんだ。

 その時には、飛鉢に乗り込んだゆかりは完全にメルビレイの『上』を取っていた。
 中に入った2人は結構な強引さで突き進んでいるらしく、巨体ののたうつ様子は激しさを増している。
「心臓部を目指すんですね、まずはそのまま口の中を食道に入ってそのまま奥へ、心臓の上まで来たら声をかけます!」
「あっちょっとこの舌が邪魔ね! クリスティアーネ、舌の根本ぶち抜きましょ!」
「わかったわよ、せーのっ」
 おまけに体内で発生する音こそ聞こえないが、ユーノの仲介で思念は相互に伝わるので、まぁ何が起きているかはだいたい丸聞こえである。
「瑞穂とクリスティアーネが中から攻め立ててくれるから、あたし達は外からフォローしなきゃね」
「うん、もしかして不要なんじゃなとか言わない」
「いやうん要る要る! 必要!」
 ニコルの声に思わずツッコミを入れる。下を見ればニコルが、一度は傷つけられていた目の部分へと大斧を叩き込むところだった。
 地上であれば周囲の地形ごと破壊しようという一撃である。
 宇宙を泳ぐメルビレイの皮膚や骨格が大地よりも硬いかはともかくとして、少なくとも無事であるはずはない。――そして。
 有効ならばそれを受けた相手が、反撃を試みぬはずもない。けれどその前に、ゆかりがまず7枚の符を撒くかのように投げつけた。
「悪食は封じさせてもらうわ」
 七星七縛符――それは敵のユーベルコードを封じることで、動きを捕らえ一気に力を削ぐ強力なる符。けれど強力なるがゆえに、その力は秒の単位で着実に使い手の寿命を削る。
 だからといって退く気はない。追加の7枚、最初の戒めが破られたとしても逃れられぬように。さらに7枚、動きを極限まで制限するかのように。
「うん、ありがたいです。これで……」
 一度メルビレイの反撃をかわして距離を取っていたニコルが、動きが鈍った隙を逃すことなく再び同じ場所に飛び込んだ。
「連打、できますね」
 楽しそうに笑みを浮かべると、再びグラウンドクラッシャー。さらに返す刀ならぬ大斧でもう一撃。もはや掘り進むというのが相応しいような連撃に、瞬時でも暴れようとすれば即座にゆかりが追加の符を放つ。
「瑞穂、速度は問題ないかしら?」
「もちろん。運びは上々よ、クリスティアーネ」
 既に食道へと入り込んでいるのか、そう体内での会話が聞こえたその時。
「クリスティアーネさん、瑞穂さん、今です、その下、食道を破ってください! そこが、心臓です!」
 ユーノの声が、全員の耳へと届いた。

 斬り裂いた傷に狐火をしこたま叩き込んで、さらに杭を撃ち込み薙ぎ槍で傷を広げて抜け出したその先――確かに鼓動を打つ存在は、遥かに既知の生物としての規格を超えるサイズではあろうとも。
「心臓の位置なんていうのは他の獣と大差ないわねえ」
「あれを吹き飛ばしたら始末が付くかしらね」 そう、おそらくは変わりない。この場所が、まさにメルビレイの『生命線』だということは。
「――じゃ、やろっか」
「ええ、潰してしまいましょう」
 その寿命を削ると引き換えに神霊体の姿を得た瑞穂が全力の衝撃波を載せて薙ぎ槍を振るう。クリスティアーネが無数の杭を、己の立つ場所を、即ち『メルビレイの肉体』を地として生み出し、心臓を幾多の場所から貫く。
 合わせて外からはニコルの斧が、ゆかりの炎を纏った符が――『彷徨する災厄』の生命力を、ついに削りきった。
「都市伝説は伝説の中だけで十分。おやすみ」
 ゆかりがそっと小さく祈るように、呟く。
 クリスティアーネと瑞穂がそのまま胸元を内側から破って脱出してくる頃には――メルビレイは完全に動きを止めた。

 ――さて、スペースシップワールドでは、もちろん宇宙船の外で取れる資源には価値がある。
 猟兵達の送迎を担当した宇宙船のリゾート施設やレストランは、しばらく『彷徨する災厄』の伝説ステーキとか伝説バーベキューとか、そんな感じの料理とその素晴らしい武勇伝によって非常に賑わったのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月10日


挿絵イラスト