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冬空、降るは雪の花

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●雪に花は咲き満ちて
 アックス&ウィザーズ、この世界にも冬は来る。風が連れてくる冷気は花を縮こまらせて、生き物たちの姿も森の奥へ消えてしまう。だが、誰もが避けがちなこの冬の訪れを歓迎する土地というのも存在しない訳ではない。
 その一つがここ、カプリコンの村だ。
 人間たちが周囲を囲む針葉樹の森を切り払って作り上げたこの村の中心には、深い青を湛える大きな湖がある。普段は村人たちの憩いの場所でもあり、夏には湖に住む魚や水を目当てに村を訪れる旅人も少なからずいた。村で自慢の湖もこの冬の寒さによって、今は分厚い氷で覆われている。しかし冬にも関わらず、村には活気があふれていた。
 なぜなら、村は今祭りの準備真っ最中。湖に張った分厚い氷の上では、村に古くから伝わる湖の神を祀る祭壇が村人たちの手で設置されていた。横で作業する村人たちを見守る、ドワーフのように立派な髭を蓄えた老人はこのカプリコンの村の村長だ。そこへ、村の少年が大きな箱を抱えて湖の上を滑るように近づいてくる。
「村長さま、今年もお祭りのお供えもの、皆から集めてきたよ!」
「おぉ、ご苦労様じゃよ、ヨザック。そうかそうか、ありがたいのう……村の者たちもこの寒さで大変じゃろうに」
「そりゃあ、村が一番盛り上がる『白花の祭り』だもの。いつもよりもいっぱい、村の外からのお客さんも来るんでしょう?」
「その通り、お客様のおかげで儂らは春までの糧を得ることが出来る。そして『白花の祭り』を通して、この湖の中から見守っていてくださる神様へ感謝と共に祈りを捧げるのじゃよ」
 皺を深めて少年、ヨザックの頭を撫でながら村長は凍った湖の上に立てられた祠に目を向ける。村長がヨザックと同じ歳の少年であった頃もこうして村の皆を手伝いながら、祭りを楽しみにしていたものだ。
「さあ、そろそろ祠も完成する頃合いじゃ。お前も他の子どもたちを呼んで、祠へお供えの花を並べる準備をしてくるといい」
「はーい!」
 元気よく返事をするヨザック。その抱える箱の中には、子どもたちの仕事である祠を飾る為の白い花が入っている。村の各家庭で今日の日の為に育てた花は、きっと見るものの心から冬の寒さを一時忘れさせてくれるだろう。村長はその光景を想像して、ふ、と微笑む。

 ヒュウ、ヒュオオォ、ビュオオオオオオ!!
 祭りを前に、どこか高揚した空気に満ちている湖上。その平穏を掻き消して吹き荒れる、老人のささやかな想像さえ引き裂くような極寒の風。氷の礫が村人たちの体に当たり、凍てつく風が熱と体力を奪っていく。
「ヨザック、ヨザック! どこじゃ、ヨザック!」
 村長がまだ近くにいる筈の少年を呼んでも、あの元気な声は聞こえてこない。前も見えない雪と強風の中、村人たちは寄り添い固まって湖の中心から村長を避難させる。

「村長さま?」
 自分の名前が呼ばれたような気がして、寒さに痛む耳に手をあててヨザックは声の聞こえた方を探る。白い風の吹きすさぶ中、歩いて、歩いて、そして、少年はそれを見た。

 花。冬の寒風吹きつけて、凍結した湖面を覆う花畑。ヨザックの手から、箱が滑り落ちる。落下の衝撃に開いた箱から零れ落ちた白い花は風でぶわりと巻き上げられ、舞うようにはらはらと降り注いでいく。
 まるで空から降る雪のように、敷き詰められた花々へと積もる白。それが少年の見た、最後の色。

「皆様、大変です。雪の嵐が発生しました」
 集まった猟兵たちへ向けて、三蔵・迅(遠き夕の灯・f04775)が静かに告げる。口調は平常通りだが、その声音は硬いものだ。
「アックス&ウィザーズの、小さな村です。冬に行われる雪祭り、彼らは『白花の祭り』と呼ぶそのお祭りの準備中に事件は起きます」
 迅が予知したのは、戯れる仔竜が作り出したブリザード。小さな竜の思考はとても単純で周囲に影響されやすい。今回も自分たちでは竜巻を起こして遊んでいるだけのつもりなのだろう。しかし遊びだとしても、人間にとっては危険なだけだ。
「ですが彼らが自然に祭りの会場へ集まったと考えるには無理があります。予知で見えたあの花……元凶となったのは、グラスアボラスでしょう」
 花を強化する息吹の竜。しかし本来は花畑を縄張りとする竜がなぜこの湖に現れたのか。おそらくは自分の縄張りを広げていった先にあったのがこの村であり、竜は縄張りの中に入った者を追い出そうとしているのではないかと、迅はその理由を語る。

「湖の上、加えて雪の竜巻の中で戦うにはそれなりの工夫が必要でしょう。仔竜は少なく見積もっても八体、更にその後ろに控えるグラスアボラスの討伐、どうぞくれぐれもお気を付けください」
 それと、と続ける迅。もしも無事に討伐が完了した折りには、村の祭りを見てきてはどうか、と彼は提案する。
「壊された祭壇の修復や、別の方法で祭りの盛り上げ役となることもできるでしょう。戦闘後の休養も兼ねて、皆様の好きなように過ごしてきてください」
 では、よろしくお願いいたします。冬の嵐を晴らす為、猟兵たちに未来を託して、迅は深く頭を下げた。


本居凪
 三本目はファンタジックにいきますね。どうも、本居凪と申します。今回はファンタジー世界で氷と花の竜を退治しよう!という内容になっております。完結までの間に新年になる可能性が高いので年明けをお祝いする気持ちで雪祭りもついてきます。
 以下、各章解説です。OPの少年については、皆さまが戦闘開始した時点で村の大人たちによって保護されていますのでご心配なく。

●第一章
 吹雪吹きつける湖の上で、多くの仔竜を倒そう!すべての仔竜討伐完了で雪の嵐は止むので、以降の章では対策を講じる必要はありません。

●第二章
 ボス、グラスアボラス討伐戦です。こちらは純粋な戦闘なので、どんな風に戦うかをプレイングでご指定ください。他の方と共闘する場合はIDもしくはお名前の記載をお忘れなく。

●第三章
 冬の雪祭りを楽しもう!祭壇を修復して飾りつけたり、村を訪問した旅芸人や行商人の露店を巡ったり、逆に自分が出し物を演じてお祭りを盛り上げたり、いろいろできます。デートなど、誰かとご一緒の場合は関係性、お名前の記載をお忘れなく。
 ステシも確認の為に覗かせていただきますが、誤解や解釈違いを防ぐ為にプレイングで触れていただく方が確実です。
 それでは、皆さまからのプレイングお待ちしています。また、楽しい年越し&年明けをお過ごしくださいませ。(なお年末年始はリプレイ執筆の時間確保が難しいことが予想される為、二章・三章以降のプレイングの送信は年内よりも年始がオススメです)
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第1章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クロウ・タツガミ
幼いとはいえ竜は竜、躾の時間だ

【POW】

近くにいる他の猟兵と協力して戦う予定だ
予め【地形の利用】が可能な場所を探し、氷の薄い場所では戦わないようにしよう


射程に入ったタイミングで【戦闘知識】を元に黒帝九相での【先制攻撃】を試みる。複数にあたれば御の字だ。こちらに向かってくる幼竜がいれば、レプリカを【投擲】後、ハルバートに変化させたサカホコを構えて迎え撃つ

ブレスは【防寒耐性】で耐え、爪での攻撃はシールドガントレットによる【怪力】を利用した【盾受け】で受け止めるつもりだ。

攻撃についてはハルバートで【2回攻撃】を繰り出し、一匹ずつの始末を目指すつもりだ。


天花・雪兎
大好きな雪のお祭りと聞いて、勝手に尻尾が揺れちゃう
仔竜の気持ちもわかるよ
何だかワクワクしてきちゃうんだよね?

なるべく早く決着をつけたい
『第六感』を駆使して、仔竜の場所を探してみる
…一番勢いの強い場所がそうなのかな?

雪の竜巻に混じる微かな違和感を感じたら
【フォックスファイア】を操作して、その場所を狙う
もし仔竜だったら、きっと怒って飛び出してくると思うんだ

足場、戦うのに適した戦場まで仔竜を誘き出す
1対1での戦闘が理想
仔竜が複数なら仲間と戦うよ

『フェイント』からの『傷口をえぐる』
仔竜の注意がぼくに向いたら、死角から【フォックスファイア】で攻撃
『傷口がえぐる』が成功した所を狙って、致命傷になればいいな


レイカ・ヴァンスタイン
雪のお祭りとか大好きなんですの♪

湖の上とか雪の中とか飛んでいる、雪光の妖精であるウチには当たり前ですの

「お祭りの邪魔をするんじゃなく、一緒に遊べば良かったのに」
小竜なら仲良くなれるかなぁって期待したけど

まずは煌星野分で先手を取りますの。吹雪いてる中に吹雪を被せる
きっとスグにはバレないはずですの。
「バレるまでがしょーぶの肝ですの」
武器たる人形を全部、吹雪にして周囲に展開されてるから無防備かつ
全員を狙うために相手の中央に突撃する必要があるから
バレるまでは頑張って避けて避けて挑発しますの
ただ、バレなくても『じゃれつく』のだけは絶対当たらないようにしないと・・・こんな時だけ大きい体が羨ましいなぁ



●真白に染まる湖上
 ごうごうと、冷たい風が吹きつける。雪混じりの嵐は落ち着く気配も無く、凍てついた湖へと足を踏み入れた者を凍えさせる。標識も何もないこの湖の上では、視界に広がるのは真っ白な景色だけで、自分が今どこを進んでいるかさえも分からない。
 雪の嵐の中を飛んでいる小さな妖精、レイカ・ヴァンスタイン(銀光精・f00419)、彼女がいつもは当たり前に飛んでいる雪の中であっても、流石にこの強風では上手く飛べないようだ。時折、横からの強風に吹かれ、ふらついてしまうものの、その透明な羽でなんとかバランスを取っている。
 
「ウチ、雪のお祭りとか大好きなんですの。 仔竜たちもお祭りの邪魔をするんじゃなく、一緒に遊べば良かったのに」
 仔竜なら仲良くなれるかなぁ、なんて。そう思った彼女の期待は、この吹雪の向こうにいる仔竜たちにはまだ届いていないようだ。だが、風の音に紛れて、ぎぃぎぃ聞こえてくるのはその仔竜たちの声だろう。声のするたびに、心なしか雪と風の勢いも強まっている気がした。
 そのすぐ近くで風の勢いと雪の冷たさに凍えそうな手を擦り合わせている天花・雪兎(雪の子供・f02304)も、レイカと同様に仔竜たちのことを思っていた。雪兎も雪遊びが大好きだから、彼らが雪にはしゃぐ気持ちも理解はできる。

(大好きな雪のお祭りと聞いて、勝手に尻尾が揺れちゃう仔竜の気持ちもわかるよ。何だかワクワクしてきちゃうんだよね?)

 だけど、お祭りを楽しみにする村の人びとの為にも、なるべく早く決着をつけたいと思う雪兎は、彼の第六感を頼りに仔竜たちがいるような気がする方向に進んでいた。
 湖の上、渦を巻くように風が吹いているのなら、一番風の勢いが強い場所がその発生源であると予想して進んでいく雪兎の目の前に、見えるのは大きな黒い影。
 すわ仔竜かと思いきや、それは黒い外套に降り積もる雪を前へ進むことで払い落しながら進むクロウ・タツガミ(昼行灯・f06194)だった。足元を確かめつつ進んでいる彼は、いつ仔竜が出てきたとしても対応できるように、クロウは愛用するハルバード、サカホコを構え直す。
 凍結した湖は大の大人が数十人と立っている分には問題はないようだった。だが、戦闘での激しい動きや攻撃ではどうだろうか。踏みしめても問題の無い場所を歩きながら、彼もまた仔竜を探す。

 ごうごうと、止む気配の無い雪風の中。彼らの周りを取り囲むように、その勢いはだんだんと強くなっていく。まるでその竜巻そのものが、意思を持っているかのように。
 それに気が付いたのは、クロウの戦場においての戦闘知識と雪兎の第六感、どちらが先だったのか。クロウの外套より飛び出してきた黒い有翼の蛇、マガホコが拷問具へと変わり、雪兎は【フォックスファイア】を竜巻へと向けて放つ。
 雪の竜巻に吸い込まれるように、拷問具と炎が白い景色へと消えていったのも一瞬の事。彼らの方へ飛び出してくる仔竜の群れは、突然の攻撃にひどく興奮した様子だった。
 ぎぃぎぃ、ぎゃあぎゃあと声を限りに叫んでは、見るからに未熟だと分かるブレスを吐いて彼らへ攻撃を向けた猟兵たちを威嚇する。

「滅べば皆、九相に至る。幼いとはいえ竜は竜、躾の時間だ」
 ハルバードを仔竜に向けて、クロウはまだ残る拷問具のレプリカを投擲する。彼の投げたレプリカはすべての仔竜には当たらなかったが、一部の仔竜の翼をかすめ、飛んでいる彼らの高度を下げることには成功した。

「ボクもいくよ、えい……っ!」
 すかさず雪兎が、その仔竜へと【フォックスファイア】を向ける。周囲をぐるぐると巡る炎に仔竜は反応し、吹き消そうとブレスを連発したり、炎自体を追いかけたりと、何体かの仔竜の意識はそちらへ引き付けられる。

「ギャウ、ギャアァ、ギャッ?!」
 だが、意識の外れた彼らを襲うのは、クロウのハルバードによる連続攻撃。雪の嵐の中、黒い外套が突き進んで、仔竜は一匹ずつ、凍った湖面に落ちていく。
 しかし仔竜を襲うのは、クロウの攻撃だけではない。仔竜たちが起こした吹き荒れる風の中で、雪以外に舞っているそれに、気づくものはまだ一人としていない。

「花吹雪は星の煌めき寄りて、禍の者を攻め立てん……!」
 それはレイカの作り出したもう一つの吹雪。彼女の武器である人形を、雪柳の花弁と変えた【煌星野分】が、仔竜たちの気付かぬ間にダメージを与えていく。雪のように積もり積もり、重なるダメージが彼らの体力を削っていき、動きが鈍ったところをクロウと雪兎によって何体かの仔竜が倒されていく。
 
「でも、バレるまでがしょーぶの肝ですの」
 吹雪の中に被せた吹雪。そうそうすぐにはバレない筈だが、問題は彼女の武器を全て吹雪としてしまったことだ。無防備な状態でいる彼女を見つけた仔竜の一匹が、その小さなじゃれつくように爪を振りかぶる。レイカは慌てて飛びのくが、まだ仔竜は彼女を狙っているようだ。
「きゃっ、ああ、あぶないですの!」
 何度避けてもじゃれついてくる仔竜には、レイカがよく飛んで跳ねるおもちゃか何かに見えているらしい。小さな彼女を狙ってふらふらと飛び、爪を振り上げる仔竜。その死角となった背後から、雪兎の炎が仔竜の背を焼く。そして驚きに染まった仔竜の鳴き声を聞いて駆け付けたクロウの攻撃が、その仔竜に止めを刺したのだった。

「だ、大丈夫?」
「ええ、平気ですの~。……こんな時ばっかりは、大きな体がうらやましいですの」
 心配する雪兎へと返しながら、ぽつり、呟いたレイカの言葉は仔竜たちの起こす竜巻の音に紛れて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ペイル・ビビッド
雪を降らせるドラゴンか…
ドラゴンさん、すみかを荒らすようなことになっちゃってごめん
でも、村の人たちを守るためにはやっつけなきゃいけないんだよね…

やるしかない、でっかーんとね

【トンネル掘り】で地面に穴を掘り
穴から敵の死角をねらってスパッタリングスターを打つよ
最初は威嚇で一発
そのあと少しずつ相手の体力を奪うため乱れ打ち
距離を迫られたら穴に潜って爪をかわす


美星・アイナ
ペイルちゃん(f01836)の応援要請受けて追いかけて

お待たせ、助っ人参上よ

雪は好きだけどこのままだとお祭りどころじゃない
手荒な真似はしたくないけど・・・驚かせたら御免ね

ペンダントに触れて焔と炎熱の舞を司る舞姫に人格シフト
『一寸流石に悪さが過ぎたわね、仔竜ちゃん・・・そんなに遊びたいなら私が御相手するわ』

氷上をスケーティングの要領で移動しながらダンスを織り交ぜて蹴撃
POW属性攻撃を警戒しヒットアンドアウェイで

並行して歌う様にユーベルコード詠唱開始
詠唱開始をトリガーに舞の速度を上げ詠唱完了と共に赤水晶の欠片を一斉放射
撃破後苦戦してる仲間がいたら即時応援に

焔と炎熱の織り成す舞
お気に召されたかしら?



●緋色に染める湖上
 仔竜たちが生み出す嵐は、まだ止まない。戦闘の音も掻き消すほどに重なる風の音に、小さなドワーフ、ペイル・ビビッド(淡色弾ける筆先の軌跡・f01836)のピンク色の髪も大きく吹き上げられる。
(ドラゴンさん、すみかを荒らすようなことになっちゃってごめん。でも、村の人たちを守るためにはやっつけなきゃいけないんだよね……)

 ペイルは穴を掘って塹壕の様にそこから敵の死角を狙おうと考えていたが、いかんせんここは湖の上に張った氷の上である。足の下は一面の冷水、穴を掘ったとしても、氷点下の湖へ飛び込む穴を作ることにしかならない。だが、飛行する相手から見つからないように隠れるくらいであれば、ペイルの小柄さがこの雪の嵐の中でも大いに役に立ってくれた。

「寒い、すっごい寒いよー……でもやるしかない、でっかーんと、ね!」
 でっかく、どっかーんと。彼女の口癖にもなっている言葉を繰り返し、ペイルはぐっと筆を握る。空を飛んでいたって、あたしなら。
「そうそう、ペイルちゃんならできるわ!」
 ぱちんとウインクひとつ、美星・アイナ(インフィニティアンロック・f01943)はペイルを鼓舞するように笑いかける。自分よりも低い位置にあるペイルの背中を押すように彼女は声をかけて、空を見る。
「私も準備はオッケーよ、やっちゃって、ペイルちゃん!」

 うん、と頷いて、ペイルも空を見上げる。そこには仔竜たちがまだぐるぐると、自分たちに気付かずに飛んでいる。時たまひゅるりと、小さな竜巻を生み出しては、それが楽しいのか口からブレスを吐いていた。
 雪の吹きすさぶ中。見失わないようまっすぐに上を見たペイルはだん、と滑らないよう凍った湖面を踏みしめて。ばさり、筆先を空飛ぶ小さな竜たちへ向けて。

「この一筆を流星に変えて……当たれーっ!」

 振り抜いた筆先から飛んでいく【スパッタリングスター】、その塗料の色は彼女の髪色にも似た、鮮やかなビビッドピンク。塗料はぐんぐんスピードを上げたと思えば、それは光弾へと変わって仔竜の群れの中でパンと弾ける。
 威嚇として飛ばされたそれに攻撃力はほぼ無かったが、代わりに命中力はバッチリだ。ぐるぐると回遊していた竜たちは突然目の前で弾けたピンク色の光弾に驚いた様子で、反射的にブレスを周囲へ向けて吐き出すものの、どこから、誰が攻撃したのかも分からない状態で吐き出されていく未熟なそれでは彼らの周囲を更に凍てつかせるくらいの結果にしかならない。

(手荒な真似はしたくないけど……驚かせたら御免ね)

 アイナは胸元のペンダントに触れる。それはスイッチ。「アイナ」と「彼女」を切り替え、戦いの幕開けを告げる合図。
「一寸流石に悪さが過ぎたわね、仔竜ちゃん……そんなに遊びたいなら、私が御相手するわ」
 くるりとその場で一回転、ペンダントに触れた手を翻し、高く宙へ伸ばして、深々とお辞儀をするように膝を曲げたその様は、まさに舞台の上の踊り子のよう。吹きつける氷の風の冷たさもものともしない、焔と炎熱の舞姫のその赤色は雪と風に覆われた白く暗い世界の中でとても存在感を放っている。それは空を飛ぶ者の目から見ても、同様に。
 白い湖上に落とされた赤色に、彼らはぐるぐると旋回しながら速度を上げて降下してくる。鋭い爪の一撃を与えてやろうと近づく彼らだが、それを狙ってまたペイルの【スパッタリングスター】が下から撃ち上がる。今度は命中させることよりも数を優先して、花火のような乱れ撃ち。光弾を避けても掻い潜っても目の前へ現れる光弾に、仔竜たちの体力は徐々に削られていく。
 それでもアイナに傷を負わせようと向かって行く仔竜を待っているのは、舞姫の一蹴。ダンスを踊っているかのように、アイナは一撃を与える度に俊敏な動きで仔竜の間合いを抜ける。

「地に落ちた血涙達、姿を変えて此処に集え……」
そして、戦場を舞うアイナが歌うように言葉を紡げば、焔の光が彼女を照らす。
「行き場のない哀しみと怒り、水晶の炎に変えてここに放たん!」
その足で、身体で、氷上を舞うごとに。増えていく炎は赤い水晶の欠片のようにきらきらと散らばって、アイナの舞に合わせるように、軽快に舞い。
「さあ、骸も遺さず焼き尽くせ!」

 そして彼女が詠唱を言い終えると同時に、展開された【集いし欠片/繋がる想い】が一斉に、仔竜へ向かって飛びかかる。彼女の手が軽く風を撫でれば、仔竜の放った氷属性のブレスと炎がかち合い冷気の塊を蒸発させ、その先にいる仔竜へ向かって突き進む。回避しようと動く仔竜を縫いとめるのは、ペイルの光弾による援護。
 戦場を乱れ飛ぶペイルの塗料の光弾と、アイナの炎。仔竜たちは一匹また一匹と、空から姿を消していき、雪と風の勢いもだんだんと弱くなっていた。
 
「アンタたちの氷よりも、私の炎の方が強いのよ。焔と炎熱の織り成す舞、お気に召されたかしら?」
 そう言って、笑うアイナの誘うような手の動きを見て。残った仔竜は顔見合わせて、ぎゃう、ぎゃう、と何事かを交わし合う。
「あら?」
「あれれ? ドラゴンさん、帰っていくよ……?」

 倒された仔竜たちの方もちらりと見るだけで、これ以上の戦意はもうないのか、まだ飛んでいる仔竜たちは銘々に空へと散らばってどこかへ飛んでいく。

 彼ら仔竜にとっては始めからずっと、この冷たく凍った湖の上で遊んでいただけのつもりなのだ。遊びの邪魔をするような、自分たちの爪もブレスも届かない相手と戦い続ける切羽詰まった理由なんてものはそもそも無い。
 ここで遊べないというなら、また別の遊び場所へ行けばいい。仔竜たちの幼い思考はそんな結論に至ったのだろう。もはやこの湖にも猟兵にも何の興味も無いという顔で、まだ戦える元気のありそうな仔竜たちは僅かに吹雪の残る空の向こうへ消えていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『息吹の竜『グラスアボラス』』

POW   :    フラワリングブレス
【吐き出された息吹 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【咲き乱れるフラワーカッター】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    ガーデン・オブ・ゲンティアナ
自身の装備武器を無数の【竜胆 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    フラワーフィールド
【吐き出された息吹 】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を花畑で埋め】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●吹く雪の向こうに見る花園
 ぎゃうぎゃうと、仔竜たちの声が段々に遠ざかる。声が遠くなっていくのと比例するように、湖に吹き荒れていた風の勢いも弱まっていき、猟兵たちの視界も晴れていった。あちこちに置かれた祭りの装飾には雪が降り積もり、石の台は暖を取る為に焚火を囲んでいたのだろう、湿って黒くなった燃え残りの薪だけが残っていた。
 そして突然の突風と冷たい雪が吹き付けたことで散々な有様となっている祭り会場には白い花が点々と、凍った湖面に降り積もった雪の中に埋もれるようにして散らばっていた。寒々しい光景は、冬の厳しさをそのまま形にしたような印象を見ている猟兵たちの心へ与える。

 しかし、猟兵たちはこの冬の情景に似つかわしくない気配もまた、感じていた。
それは柔らかな陽光、ふわりと広がる花の香、華やいだ春の気配。冬の風に乗って、白の世界にちらちら、紛れるように落ちていく青い花弁も、知識ある者が見ればわかるかもしれない。

──あれは、竜胆だ。
竜の胆と名付けられた花の青色を踏み散らし、今、のしりのしり、湖面に現れるもの。緑色の竜がその口から吐き出す息吹は氷上に花を咲かせるものの、根を張る土がある筈もない凍てついた氷の上、咲いた花はすぐにしおれて精彩を欠く。
 竜はそれに気付いている。だから息吹を吐きながら、竜は湖上を進んでいたのだ。湖を囲んでいる、広い土地。ここよりも花を咲かせるにふさわしい場所へ行く為に。
 グラスアボラスは、フンと鼻を鳴らし、邪魔をするものは何かと猟兵たちを見渡した。一歩踏み出した息吹の竜の足下で、風が揺らした白い花。グラスアボラスはごく自然な振舞いで、村人たちの祈りの込められたその花をぱくりと一口に飲みこんで、猟兵たちをひと睨み。温和で大人しく花を好むような息吹の竜本来の性質など、この姿から想像することはまるで出来なかった。

 凍てついた湖面に、花が咲く。だがそれは春の訪れなどではない。長い長い冬を村へと呼びこむ前触れだ。ここでこの息吹の竜を倒さなければ、祭りどころか村の危機。猟兵たちはグラスアボラスを倒す為、その巨大な身体に向かっていった。
レイカ・ヴァンスタイン
チビドラちゃん達も息吹の竜も仲良く出来ないのが残念なの
でも、それはそれ。

今度は皆のサポートに移るの
人形達で移動の邪魔や、意識を逸らす攻擊で援護射撃とか
「攻擊はほんぶんじゃないの、だから皆のサポートですの」

この子の攻擊は1つ1つが強そうだから回復は早くないと危ないの
ユーベルコードで治癒を急ぐ
「重傷になんてさせないの、みなさん無理せずこっちに着て下さいなの」
疲れなんて、へいき、へっちゃらなの

この子を追い払って、お祭り始めましょうなの


神宮寺・絵里香
この手の竜を相手取るのは2度目だ。前回の知識を元に確実に
討伐させてもらおう。旅団で見た顔もいることだしな。
そいつらの援護をしつつ的確に削っていくぞ。

前衛が少なかった場合は、叢雲を使った白兵戦をメインに。
後衛が少なかった場合は、UCを主軸とした魔法戦をメインに。

POWのフラワリングブレスに対しては、【戦闘知識】で【見切り】
回避をする。「それは前に見たぞ!」
SPDの攻撃については薙刀のリーチを生かして間合いに入らないよう
【戦闘知識】で攻撃のタイミングを【見切り】薙刀で【薙ぎ払い】
対処する。
WIZのフラワリングフィードについては【高速詠唱】した【範囲攻撃】の
UCで花ごと竜を焼き払い対処する



●凍土より芽吹く
 グラスアボラスは己の足元に広がる花畑を更に広げようと喉を震わせ、花を芽吹かせる春の息吹を腹から吐き出そうとする。

「おっと、それはさせないぞ」
 その目の前へまず躍り出るように走ったのは、神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)だった。彼女は叢雲と号せられた白蛇の意匠がついた薙刀を振るい、開きかけたグラスアボラスの口を狙って素早く薙ぎ払う。ひゅん、と口元を横切る薙刀の薄刃に竜は息吹を噛み潰し、攻撃を行い妨害した彼女の存在を確かめるように睨んでいる。
 その視線にも怖じることなく、絵里香はグラスアボラスが次にどうでるか、経験に基づいた戦闘知識から相手の動きを見切ろうとその鋭い眼光は竜の手足へ、叢雲はグラスアボラスの正面へぴたりと据えて動かさない。

(この手の竜を相手取るのは2度目だ。前回の知識を元に確実に討伐させてもらおう)

 絵里香は過去に見た事があるグラスアボラスの特徴を思い出し、それを目前の相手と重ねていく。何かを呑みこんで、吐き出すような喉の動き。膨らんだ喉から吐き出されるブレスは、地面では無く絵里香を狙ってか、顎をやや持ち上げて──。

「それも、前に見たぞ!」

 ひらり、薙刀を引いて身を躱す。強く吐き出されるブレスが当たった場所で咲き乱れたフラワーカッターは、絵里香へと傷をつけることはなかった。しかし諦めることなくもう一度と、首を引いた竜に絵里香はダッシュで近付き、攻撃を止めようと叢雲で薙ぎ払おうとする。

 竜は近づいてくる絵里香から逃げようとばさばさと翼を広げるが、ぐいとその背を抑える手あり、飛び立とうにも自慢の翼は広がりきらず、飛び立つことはできない。 苛立ちと共にグラスアボラスが背中ごと翼をブルブルと振るわせれば、かしゃかしゃと音を立てて剥がれていくのは、なんと竜の背に覆いかぶさるように掴まっていた人形だった。それはレイカが仲間のサポートの為にと操っていた、色とりどりの揃いの和装ロリータに身を包んだ小さな童子の人形たち、全部で七体。

「攻擊はほんぶんじゃないの、だから、皆のサポートですの」
 ふふん、と得意そうに指を一本立てるレイカ。ころころと戻ってきた人形の内の一体が、彼女のそばで同じポーズをしてみせる。

(チビドラちゃん達も息吹の竜も仲良く出来ないのが残念なの。でも、それはそれ。この子を追い払わなきゃ、お祭りも始められないの)

 強烈な雪風も吹き止んで自由に飛べるようになった今なら、先ほどよりもレイカの妖精としての本領も発揮できるというものだ。仲間を癒す燐光がふわふわと、彼女の周囲で光を放つ。更に人間大のサイズをした七色の彼女たちはレイカの小さな指に繋がった糸に操られて戦場を飛び、竜が自由に動くのを影から正面から邪魔をしていく。周囲を跳び回る人形たちに気を取られる竜の不意をつくように、前線で戦っている絵里香の薙刀が竜の隙を見つけては閃く。

「たぁああ!! てい、やっ!」

 近からず遠からず、薙刀の微妙な間合いを保って薙ぎ払う絵里香に花畑まで踏み荒らされ、竜は荒らされた場所を上書きするように【フラワーフィールド】のブレスを吐き出す。しかしその動きさえもまた読んでいたように、絵里香は指先を竜へ向けて、暴れる竜を一喝するかのような勢いで詠唱を連ねていく。

「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ! 神々の王の裁きよここに! 魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!」

 冬の空、湖の上に吹き荒れた風は雲さえも吹き飛ばしていた筈だ。しかし彼女の指差す先、雲一つない天を走り、竜へと落ちていく青白い稲妻は、竜にビリビリとした身体を貫く痛みを与える。
 だが、痺れたようにぱちぱちと瞬きを繰り返しながらも、グラスアボラスの動きには、まだまだ余裕がありそうだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ダリア・エーデルシュタイン
お花は綺麗だけど、それが死を蒔くのなら刈り取るのもやむなしだね。
ブレスの向きに気をつけつつ、距離をとって『カード・シャッフル』を使おう。
「キミが花を降らせるなら、私はこのカードでそれをことごとく刈り取ろう。いま降るべきは、花ではなく雪なのだから」

愛用の金属製トランプを操作して、空に飛ぶ花を切り裂く。
そのまま竜の本体も攻撃しよう。
まだまだ元気そうだけれど、少しずつでも削らないとね。

敵の攻撃は素早さを活かして回避したいところだけど、全てを避けるのは難しいだろうね。
一度良ければ追撃を避けられるブレスを避けることに集中しよう。


メルフローレ・カノン
おくれての推参ですいませんが、助太刀
すでに仔竜は退治されたようですので、
あとはグラスアボラスを退治すればいいのですね。

戦闘に際しては、主にメイスを使いますが、
状況次第で予備武器として剣も使いましょう。

息吹とそれに伴う竜胆の花で攻撃してくるのであれば
[見切り][武器受け]で防御し
[なぎ払い]で花を吹き飛ばします。
【無敵城塞】で防御もしましょう。
「ここは堪えてみせます!」

攻撃に際しては、手数が欲しい時は[2回攻撃]、
そうでなければ[力溜め]からの[鎧砕き]で
メイスで叩き潰すのを狙います。
あとは、頭を殴りかかる[気絶攻撃]が決まれば美しいかなと。
「全力で行きますよ!」



●花吹雪の中に舞う

 グラスアボラスはまだ、ピンピンとした様子で、ドンと湖面を踏み締める。すると花畑が、ダリア・エーデルシュタイン(反撃の怪盗エース・オブ・ハート・f12598)とメルフローレ・カノン(世界とみんなを守る……かもしれないお助けシスター・f03056)のすぐ近くまで迫り、広がっていく。視界に広がる一面の青色を見るとここが冬の湖上であることなど嘘のように思えてくるが、肌を撫でる冷たい風が彼女たちを現実へと引き戻す。
 グルル、と唸りながらグラスアボラスは花の上を移動して、己の邪魔をする猟兵たちへ近づいていく。その目は明確に猟兵たちを敵と捉えて、剣呑な気配に満ちていた。

「キミが花を降らせるなら、私はこのカードでそれをことごとく刈り取ろう。いま降るべきは、花ではなく雪なのだから」

 手品の様に取り出したトランプカードをシャッフルしながら、ダリアは竜の視線を受け止める。紙製のそれは、もう一度くるりと掌を裏返せば、金属製のものへと変わる、これぞ彼女の秘儀、【カード・シャッフル】。指から放ったカードはくるくると空中を舞い、グラスアボラスが巻き起こす【ガーデン・オブ・ゲンティアナ】の花びらを切り裂いていくのだった。

「お花は綺麗だけど、それが死を蒔くのなら刈り取るのもやむなしだね」
 竜の周囲を旋回し、翻弄するカードは花びらだけでなく、竜の身体にも傷をつけていく。一枚だけ手元に戻したハートのエースをかざして、ダリアは笑んでみせた。

「そう、仔竜も追い払って、残るはあのドラゴンだけ! 全力で行きますよ!」
 ブンブンと十字架状の長いメイスを振るって気合を入れるメルフローレ。上品で清楚なシスターのような見目に反して、その動きは意外とアグレッシブ。
 襲い来る竜胆の花びらは時にメイスの風圧で薙ぎ払い、時に見切り、かい潜りながら、グラスアボラスへと少しずつ近付いていく。

「グルルルゥ、ゴアァッ!」
 グラスアボラスは自分の目の前へ現れたメルフローレへと向けて思い切り、吸い込んだブレスを彼の苛立ちを表すような激しさで吐き出す。近距離で浴びせかけられたメルフローレの視界を埋め尽くすほどの花吹雪が、彼女を覆い隠していく。
 だが、風が花びらを吹き飛ばした後に現れた彼女の体には、フラワーカッターの与えた傷はひとつも見当たらない。ブレスを吐き出したその一瞬に、彼女は十字を花畑へ突き立てて【無敵城塞】を発動させ、竜の息吹を耐えきったのだ。

「全力で、ここは堪えてみせます!」

 二撃目を放とうとするグラスアボラスだが、ダリアのカードが目を、口を狙い、竜の動きを妨害していく。

「さあ、今のうちに!」
「ええ、御支援、感謝いたします!」

 カードに気を取られ、思うように動けない竜の頭蓋へ、メルフローレの力を溜めたメイスの重い一撃がガツンと命中!グラスアボラスは衝撃にくらくらとふらつくが、メルフローレの狙っていた気絶にまでは至らなかったようだが、体力はそれなりに削れた様だ。
 しかし花畑の上に腹這いになり、首をべたりと下げながらも、フーフーと睨み上げている竜のその目には、まだ戦う意思が残っていたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鴛海・真魚
まだ戦う意思はあるのね……。
戦うことは得意では無いけれど、あと少しみたい。

素敵な方、私の代わりに戦ってくれる?
サモニング・ガイストを召喚するの。古の戦士はとても鎧の騎士。
よろしくね。

私は彼の後ろから衝撃波と誘導弾で攻撃をするね。
ドラゴンの攻撃はオーラ防御で防御をするの。とても恐ろしいわ…。
でも、素敵な方がいるもの。きっと大丈夫よね。

素早く動けないからなるべく騎士の後ろに隠れているわ。
ドラゴンの隙を見て攻撃をすれば大丈夫、きっと大丈夫。
あと少し。もう少しで倒せると思うの。



●氷晶に花は映りて

「まだ、戦う意思はあるのね……」

 頭をもたげて睨むグラスアボラスを見て、鴛海・真魚(恋心・f02571)はそう呟いく。氷の結晶の中から現れ出たようなその蒼いクリスタルの髪は、湖へ差す陽射しを受けてきらきらと輝いて。繊細そうな、それこそ竜の爪の一撃でも当たれば砕けてしまいそうな印象を感じるクリスタリアンの少女。その見た目の通り、彼女はあまり戦うことが得意ではない。
 だからだろう、グラスアボラスも真魚のいる方へは他の猟兵と比べてさしたる注意も払ってはいなかった。せいぜい、竜胆の花を散らしてこれ以上接近させないように牽制する程度。
 だが、戦いには不慣れでも、彼女は決して一人ではなかった。

 瞬きひとつ。真魚の背後の空間がゆらりと揺らめいて、彼女の望む存在をこの世界へと召喚する。彼女の背後から現れたのは、古の戦士。真魚を守る、彼女だけの鎧の騎士が、その手に長い槍を携え花畑へと降り立った。

「素敵な方、私の代わりに戦ってくれる?」

 指で撫ぜるように、騎士をいざなう柔らかな声へ従って、【サモニング・ガイスト】で呼び出された鎧の騎士は、真魚を護るように彼女の前へと進み出る。騎士に槍を突き付けられた竜の威嚇の声が短く鋭く響いたが、されど、騎士には届かない。
 
 鎧の騎士が、グラスアボラスへと向かっていく。彼がその長い槍を突き出せば、グラスアボラスはよろめきながら後ずさり。もはや槍を防ぎきるほどの力も竜には残っていない。だが、竜は回避をする代わりに、鎧の騎士を後ろに控える真魚ごと吹き飛ばしてやろうと咲き乱れる花の息吹を口から吐き出した。

「ああ、そんな、とても、とても恐ろしいわ……」

 震える瞳は、想像する悲劇に瞬いて。
 けれど、彼女の召喚した騎士はとても頼りになる、素敵な素敵な鎧の騎士だ。彼は槍を閃かせてグラスアボラスの吐いた息吹を散らし、真魚が防御の為に展開したオーラが、命中しなかった息吹の残滓を冷たい冬の風へと散らしていく。

 素早い行動を苦手とする真魚に代わって、前へ出て戦う鎧の騎士。真魚はその背に守られながら鉱石の指を組み合わせて祈り、その歌声を戦場に響かせた。
 彼女の歌を媒介に、柔らかなさざ波から生まれ増幅された音の波は衝撃となって竜を襲う。それは時に、騎士の鎧に塞がれた視界の端から飛び出す誘導弾となって、反撃の隙を伺うグラスアボラスの身体に傷を増やしていった。
 
 ばらばらと、はらはらと。騎士の槍と竜の爪が打ち合う度に、足下の竜胆の花は無残に散らされていく。怒ったような声を上げながら、竜は鎧の騎士へ向かって竜胆の花びらを舞わせ、その装甲に傷をつけていく。だが、鎧の騎士は揺るぐ事なく真魚を守る壁となり、真魚は騎士の庇護の下、グラスアボラスの隙を見つけては攻撃を重ねていった。

(大丈夫、きっと大丈夫)

 グラスアボラスから隠れた鎧の騎士の後ろで、そうっと見上げる、騎士の横顔。
 あの竜ももう、あまり体力は残っていないはず。

(だから、あと少し。もう少しで倒せると思うの、だから、それまでは)

「──頑張ってね、私の、素敵な方」

 猟兵たちによる波状攻撃を受けて、グラスアボラスの体力も残りわずかと言ったところか。しかし、竜はその足を引きずりながらも決して逃げる様子は見せず、猟兵たちを倒そうと気力を振り絞って、足元を竜胆の青に染め上げる。

 そこにいるのは、己の縄張りを最後まで守ろうとする一匹の竜。
 止まり方を忘れてしまった、季節外れの、花の嵐。

成功 🔵​🔵​🔴​

真宮・響
【真宮家】で参加。

遅れての到着ですまないね。もう少しで倒せそうな様子だから最後の仕上げはアタシたちに任せな。もし、家族以外の猟兵がいたら力を併せるよ。

護りを奏、後方支援を瞬に任せ、【目立たない】と【忍び足】で敵の視線から逃れつつ、【槍投げ】を確実に当てる隙を伺う。子供達が作った隙を狙ってドラゴニックエンドで攻撃するよ。槍を投げて花畑から追い出すこともやってみようか。


真宮・奏
【真宮家】で参加。


加勢が遅れてすみませんっ。遅れた分、頑張ります。敵はまだまだ動けるようですが、早く楽にしてあげないとですね。家族以外の猟兵がいたら、共闘するようにします。

私は主に盾役を務めます。トリニティエンハンスで防御力を強化して、【オーラ防御】【武器受け】【盾受け】で身体を張って皆さんを【かばう】。状況によっては【拠点防御】も併用しますね。必要ならば、【衝撃波】【2回攻撃】で攻撃にも加わります。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

遅参申し訳ありません。彼の竜のトドメは僕達にお任せを。僕達家族以外に猟兵の方がいれば、共闘するようにしますね。

盾役の奏の負担が大きく、攻撃手の響母さんの槍を当てる隙を作る為に、【高速詠唱】で【祈り】を込め、【全力魔法】で氷晶の槍を撃ちます。【二回攻撃】で攻撃回数も増やしますね。ここで確実に仕留めます!!



●湖上に散る雪花

 竜胆の花を降らせる息吹の竜。彼も己の限界にうすうす気づいてはいるのだろう。だがグラスアボラスは、彼の命の最後の一滴まで、花を咲かせようと振り絞る。
 決着をつける為、加勢に現れた真宮・響(赫灼の炎・f00434)率いる【真宮家】の面々も三位一体のフォーメーションを取り、グラスアボラスと対峙する。

「遅れはしたけど……最後の仕上げは、アタシたちに任せな!」
「ええ、わたしも頑張ります!」

 響の声と共に真っ先に飛び出したのは【真宮家】の一人娘、真宮・奏(絢爛の星・f03210)だ。彼女はその手に持つ盾を手に、グラスアボラスの前へと出る。盾を構え、【トリニティ・エンハンス】で高めるのは防護の力。皆を護ろうとする彼女へ、炎と水と風の魔力が力を与えていく。

「それでは、後方支援はお任せを」

 その盾の後ろでは奏の義兄である神城・瞬(清光の月・f06558)が、祈りを込めた全力の魔法を発動する為、高速で詠唱を行っていた。周囲に漂う魔力が瞬の持つ杖の元へ集まれば、彼の周囲がひやりとした冷気で満ちて、魔力の塊はまるで氷の槍のような形へパキパキと音を立てて変化していく。

 グラスアボラスもただそれを見ているだけではない。まずは目の前に立ち塞がっている奏へと目を向けて、その盾を吹き飛ばそうと花畑の上で咆哮する。
 竜の咆哮に呼ばれたように竜胆の花びらは宙へと浮き上がり、ぐるぐると渦を巻きながら勢いよく奏へと向かっていく。それはまるで彼女一人を狙っているかのような、意思を持った動きだった。

「きゃあっ……!」

 盾を弾き飛ばされそうな衝撃に奏はぐっと耐えて、オーラの力を防御へ回して盾を手放さないよう固定する。正面から叩きつけるように吹き荒れる花びらの塊は盾によって衝撃とダメージをなんとか受け流せたものの、手にはまだ痺れが残っている。

 それでも、奏はこの猛攻を耐えきった。

「瞬兄さん、お母様、お願いします!」

 盾を持った手は下げず、しっかりグラスアボラスを見据えて、奏は叫ぶ。

「はい、ここで確実に仕留めましょう。逃がしませんよ!! 貫いて見せます!!」

 まずは、瞬の【氷晶の槍】がグラスアボラスへ向かって撃たれた。奏の稼いだ時間のおかげで威力を増した氷の槍は、グラスアボラスのブレスによって弾かれるが、すぐに詠唱を完成させた瞬は即座に二射目の氷の槍を作りだし、攻撃を重ねることでその意識を瞬へ向けさせた。
 そして、彼らが大本命、【真宮家】の母、響は二人の後ろから瞬へとブレスを吐き出そうとしたグラスアボラスへ向かって、渾身の力を込めて槍を投げる。意識を自分へ向けられないように忍び、気配を抑えていた響の投げた槍は瞬の氷の槍を砕こうとしていた竜にとっては完全に不意を突いた一撃となった。咄嗟に防御をしようとしても、降り注ぐ氷の槍がグラスアボラスの動きを牽制し、動けない。まっすぐに飛んできた槍はグラスアボラスの身体へと命中し、竜は痛みに声を上げた。

「これで終わりにするよ!」

 槍が命中したことを確認した響が指をぱちんと鳴らせば、【ドラゴニック・エンド】で槍へ続くように召喚されたドラゴンが、グラスアボラスへと向かっていく。
 ブレスで弾こうと息を吸い込むグラスアボラスだが、もはや彼にはその力さえ残っていない。これまで猟兵たちにつけられた傷のひとつひとつがグラスアボラスの力を削り、花畑さえも戦闘の激しさで荒れに荒れ、ボロボロになっていた。
 それでもなお、目にだけは戦う意思を残してグラスアボラスは前に立つ猟兵たちを睨む。赤いドラゴンがその胸へ飛び込んで最後の一撃を与える、その時までも。


 冷たい冬の湖の上を風が吹き抜ける。
 青い竜胆の花びらが風に舞い、遠く南へ、飛んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『勝者たちの宴』

POW   :    資材の運搬などの力仕事やとにかく目立つパフォーマンスで祭りを盛り上げます

SPD   :    祭りについて周辺の町に宣伝を行ったり、珍しい物品やサービスを提供します

WIZ   :    人手がいる仕事の助力や地域の名産などを押し出した企画を出展します

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●祝祭に花も咲く

 湖を襲った嵐は、猟兵たちによって無事に止んだ。壊されてしまった祭壇は修復するのに多少時間もかかるだろうが、祭りは無事に開催できそうだ。
 祭りの本質は、神への感謝と祈りを表すこと。彼ら村の人びとはこのアクシデントにもめげず、祭りを盛り上げようと頑張っているらしい。

 戦いも無事に終わった。猟兵たちも人々に紛れ、戦いの疲れを癒して、この『白花の祭り』を楽しんできてほしい。


《マスターより》
・ようやくのお祭りタイムです!露店などの詳細はしばしお待ちを。
・今回、少し相談時間を設けます。2月3日以降からリプレイ執筆を予定しているので、複数人で参加予定の方、これからお誘いする方も、じっくりご相談してください。おひとりでのご参加ももちろん歓迎です!
・途中から、最後だけ、という方でもぜひお祭りへお越しください。なにせ●が11個も必要なので、人数次第でもありますが早々に終わることは無いと思います!!
●番外~白花の祭りの歩き方~

 基本は自由に行動してください。こちらでは村の観光スポットというか、お祭りを楽しむならこんな場所がありますよ、という紹介をさせて頂きます。これ以外にも楽しむ方法はいろいろあると思いますので、こちらの情報は参考までに。

1).湖の上の祭壇へ花をお供えする
 凍った湖面の上に(急ぎ修復したので簡素なものではありますが)祭壇があります。そちらへ白い花を奉納し、豊穣や健康を祈りましょう。湖面は滑るので、祭壇へ向かう際は慌てないようお気をつけください。もしご要望あれば、祭壇を修復する様子もリプレイで描写いたします。

2).湖の周囲にある行商人の露店巡り
 湖を取り囲むように並んだ屋台では、行商人が売り物を広げています。よく売っているのは、白い花をモチーフとした装飾品や温めたワイン、スパイス入りのホットミルクなどです。

 出店希望者向け情報:客層は主として、祭壇へ向かう村人や観光客がメイン。村以外ではあまり見られないものや装飾品、温まる飲食物全般が人気商品です。

3).焚火に集う竪琴弾きと踊り子たち
 寒さに耐えきれなくなった時は湖のそばに設置された焚火のそばへとどうぞ。暖を取る人々を相手に、歌い踊る彼らのステージをご覧あれ。勿論、自分で演奏したり踊りを見せることも可能です。場所柄、子どもや老人もそれなりに多いので彼らも楽しめるようなものであるとより良いかもしれません。


 お祭りの情報は以上です。皆さまのプレイングを心よりお待ちしています。
天花・雪兎
同行者:胡蝶(f12549)

胡蝶と一緒に露店を巡るぞ
ぼくは寒いのは得意だけど、胡蝶は苦手みたいだ
寒そうな彼女にホットミルクを買ってあげよう
風邪を引かないよう、暖かくしてね
ぼくは熱い物が苦手だから、買った食べ物は冷ましてから食べるんだ
ちなみにぼくに好き嫌いはないけど、胡蝶は食べず嫌いが多いからなぁ…
野菜もちゃんと食べないとダメだよ?

胡蝶からホットミルクのお礼に買ってもらった白い花のリボン
うん、可愛いんだけど…ちょっと複雑な気分だ
女の子の格好は母上の趣味だからなぁ…
でも、満足そうに頷く胡蝶を見れば微妙な感想は言えない
素直にお礼だけ伝えておこう

その後も胡蝶の手を繋いで、一緒にお祭りを楽しむぞ!


鬼灯・胡蝶
同行者:雪兎(f02304)

幼馴染と一緒に露店を巡る、の…
雪兎から貰ったホットミルク…美味しい…
体がぽかぽかしてきたら…露店、巡り…

美味しいもの、いっぱい食べる…の…
嫌いな野菜とか、全部…雪兎に…お任せ…
駄目って言われても…嫌なものは…嫌
「胡蝶…甘いものと…好きなものしか食べない…」
都合が悪くなったら…そっぽ向き
何とか誤魔化す…

露店で…白い花を付けた、リボンを見つけたら…買うの
ホットミルクのお礼…雪兎にあげる…ね?
「…うん、よく…似合ってる」
今日も女の子の格好をしてる雪兎
彼の髪に飾れば、満足そうに頷き

露店を巡る時は雪兎と手を繋ぐ、の…
迷子…ならないように…ね?
胡蝶達…仲良しだから…問題ないし…


ダリア・エーデルシュタイン
3)に参加。
祭りが無事に開催されてよかった。
微力ながら、彼らを楽しませたいな。

あいにく、歌や踊りはさして得意じゃないけれど。
カードを使ったちょっとした見世物をしようか。
どこかのいつかの逸話のように、人間には頼みづらいのでカカシか棒の上にリンゴをおいて。
遠くから『Kiss of death』を応用して金属製のカードを投げてリンゴに刺してみせよう。
1つが成功したら、次は『カード・シャッフル』を応用して複数のリンゴを同時に遠方からカードでカットしようか。
綺麗に切れた林檎は、見学しているお客さんに振る舞うよ。



●白花、寿ぐ

 きゃあきゃあとお祭りにはしゃぐ子供たちの笑い声が冬の空に響いている。
 突然の雪嵐に退避していた商人たちもそれぞれの露店を立てて、お祭りの開始と同時に彼らの威勢の良い声が湖の周囲を歩く人々へと掛けられる。

「さあさあ、お祭りといえばこれ! 白花の祭りに欠かせない、白い花を象ったガラス細工のネックレスだよ!」
「おっ、お客さんお目がいいねえ、こいつはちょっと奥まった山の村で買いつけてきた綺麗な布さ! お祭り特価でお安くしとくよ、一枚どうだい!」
「ほらほら、そこ行くお兄さん! うちの美味しい美味しい焼きパンはどうだね! 焼いたパンに軽く炙った干し肉を挟んだ絶品のパンだよ!」

 それぞれに品物には自信があるのだろう、商人たちは冬の寒さも吹き飛ばしてしまいそうなくらいに大きな声で呼び込みを続けている。

 湖上での戦いを終えた雪兎と鬼灯・胡蝶(旅する玄蝶・f12549)も、そんな居並ぶ露店を物珍しそうにひとつひとつ見ながら巡っていた。
 仲の良さそうにぴったり手を繋いでいる小さな白と黒の子どもたちに、ぐつぐつ何かを煮込んでいる大きな鍋の横に立つ店主の女性が声を掛ける。

「そこの可愛いお嬢ちゃんたち、うちのホットミルクはどうだい? 冷えた身体もぽっかぽかになるよ」
「うぅ、ぼく、お嬢ちゃんじゃないんだけどなぁ……ほら、胡蝶、ホットミルク」
「あ、……あり、がと。雪兎から貰ったホットミルク……美味しい……」

 ふくふくと丸みを帯びた彼女からホットミルクの入ったカップを受け取って、雪兎は胡蝶へとカップを渡す。寒さが苦手な胡蝶はそのカップを大事そうに飲んで、逆に熱いものが苦手な雪兎はふうふう、冷ましながら飲んで、ぜんぶ飲み切るころには彼らの身体は、お腹からぽかぽかになっていた。
 それからまた二人は、屋台から屋台へと梯子して、焼いたお肉を挟んだサンドイッチや茹でたお芋と野菜のスープ、木苺をのせたパイといった美味しいものをたくさん、二人で美味しさと笑顔を分け合い味わったのだった。
 その途中、野菜の嫌いな胡蝶がこっそりスープのニンジンを雪兎のお皿へよけたり、それを雪兎に指摘された胡蝶がそっぽを向いて知らんぷりしたり。そんなこともありつつ、今度は食べ物以外のお店も見ようと、そうなった。

「もう、胡蝶はそろそろ食べず嫌いを直さないと、ダメだよ?」
「胡蝶……甘いものと…好きなものしか食べない……」

 ぷるぷる。胡蝶は首を振って雪兎の言葉を聞こえないふり。嫌なものは嫌なのだから、しょうがない。
 装飾品の露店を覗いてみると、女性の姿はやはり多い。どうやらここの女性たちは皆、白い花のついたアクセサリを探しているらしい。商人たちが商品を綺麗な織物の上に広げると、そこだけ小さな花畑のようになっていた。

「ほら、雪兎……これ、髪飾り、つけてみて……」

 胡蝶が雪兎へ、差し出したのは白い花のついたリボン。可憐に咲く小さな花の集まりは、付けた者にその可憐さを添えるような印象だ。彼女がそれを雪兎の髪へと結べば、そこにいるのはどこからどう見ても、愛らしい白狐の女の子。

「……うん、よく……似合ってる」
「あ、あははは……ありがとう、胡蝶」
 自分の仕事に満足そうな様子の胡蝶。自分の趣味とは違う可愛い格好を褒められて、雪兎も内心複雑ではあったものの、嬉しそうな様子の幼なじみにあまり微妙な感想は伝えられない。だけどありがとうと伝えた彼女がより嬉しそうな顔になったのは、悪くないな、と思った。

 そして二人はまた手を繋ぐ。
 なんたって、今日は楽しいお祭りだもの。仲良しふたり、手を繋いで最後まで。楽しいことはいつでもいっしょが、一番いい。


 所変わって焚火のそば。旅芸人たちの間に立って、村人たちへお得意のカード投げの技を披露しているダリアの姿があった。
 歌も踊りも得意ではないけれど、祭りを楽しみにしていた人々を少しでも楽しませられたらと考えた結果、彼女はこうして自らステージに立っているのだった。

「さあさ、皆さまご覧あれ。これより置かれたあのリンゴへ、見事このカードを当ててごらんにいれましょう」

 やや芝居がかった口調で、ダリアはトランプのカードへ口づけを落とす。地面へ打たれた木の杭の上、真っ赤な林檎とダリアを周囲は固唾を飲んで見守っていた。
 心配そうな彼らをよそに、ダリアの口元には笑みが浮かぶ。

 ヒュ、と風を切る音がして、次の瞬間にはトン、と林檎に刺さっているカード。
 
 わっ、とあがる歓声に子供も大人も関係なく。カードの突き立った林檎を手にするダリアへと拍手を送る人々の中には、あのヨザックの姿もあった。

「すっげー! ねえちゃん、今のどうやったの?!」
「ねえねえ、今のもう一回見たーい! ヒュッ、てして、トーンってやつ!」

 娯楽の少ない冬の村、退屈していた子供たちが口々にダリアへリクエストをする。

「ふふ、喜んでもらえて何よりだね。それじゃあ今度はさっきの応用といこうか」

 先ほどよりも多く、ずらりと並んだ林檎を前にして、余裕の笑みを崩さずにダリアはカードを広げて狙い定める。
 今度もまた、ひとつのミスもなく。再びあがる拍手と歓声、そして見事カードをすべての林檎へ命中させたダリアは、その綺麗にカットした林檎を人々へと振舞う。
 子供たちはみな彼女の技に興味深々で、きっとしばらくはこの焚火の傍を離れさせてはくれないだろう。だが決して、それは退屈な時間にはなるまい。

 しゃくしゃくかじる林檎の甘さに、口元ゆるんでまた笑顔が咲く。
 パチパチと燃える焚火は彼らを暖め、また、その笑顔を照らしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【真宮家】で参加。

どうやら祭りは予定通りに開催されるようだね。あれだけの災害に遭いながら祭りを開催する村人のバイタリティは大したものだ。しばらくこの村は大丈夫だろう。

アタシ達家族は白い花を祭壇に献納しにいこうか。奏、張り切るのはいいけど、転ばないように。アタシが祈るのはこれからの家族の健康だ。育ち盛りの奏や瞬のこれからの成長が健やかなものであるように、母として祈るよ。


真宮・奏
【真宮家】で参加。

お祭りが無事に開催できるようで、良かったです!!村人の皆さんの笑顔をみれば、頑張ったかいがあるものです。喜んで、祭りを楽しませて頂きますね。

私達家族は白い花を祭壇に献納しに行きますね。村の方達の真心が詰まった祭壇ですから、きっと願いが叶うに違いないです!!(転びそうになって瞬に支えられる)私が祈るのは、当然、これからの家族の健康です!!この祈り、聞き届けられますように。


神城・瞬
【真宮家】で参加。

いやいや、大変でしたね。無事に祭りが開催されるようでなによりです。大きなアクシデントにも負けない村人の皆さんの強さには敬意を表します。

僕達家族は村人の皆さんが集めて下さった白い花を献納しに行きます。・・・どこかの誰かがお約束通りに転びそうになってますが(転びそうになってる奏を支える)僕の願いは・・・傍にいる母さんと奏のこれからの道行きが実り多きものとなりますように、ですかね。



●祈りと花の咲き満ちて

 湖を囲む祭りの賑わいは村を吹き抜ける風に乗って湖上へも届く。
 村人たちの手で再び組み上げられた祭壇は、それこそ質素で、削られた木材を重ねて組んだものではあるが、村の婦人たちが持ち寄った色鮮やかに染められた布と子どもたちが集め直した白い花によって、綺麗に飾り付けられていた。

 村人たちは皆、一人ひとりお供え用の白い花を手に祭壇の前へと並んでいる。
 それは親と子であったり、夫と妻であったり、兄弟姉妹であったり。孫らしき小さな子の手を引いている老人、気のしれた友人同士、恋人たち。様々な関係性の人びとが、彼らの幸福を、日々の幸せを祈って、白い花を祭壇へと捧げている。

 そして湖上での戦いを終えた【真宮家】の面々も祭壇へと並ぶ人々の列の中にいた。笑い合う彼らを見て、あれだけの災害に遭いながら祭りを開催する村人のバイタリティは大したものだと、響は思う。
 そもそもが冬になれば湖が一面凍るほどの場所にある村なのだ。どんな事件が起きても自力で乗り越えられなければ冬を越せはしないということでもあるのだろう。
 その姿は瞬にとっては敬意を表するに足るものであった。

 彼らの前に立っていた女性が、抱えている小さな赤子の手に持たせた白い花を祭壇へと投げさせる。同様に投げられた白い花は祭壇の周りに小さな花畑を作っていた。
 祭りが無事再開されたことを喜んでいた奏も、湖へ入る前に手渡された花を手に一歩前へと進み出る。

「奏、張り切るのはいいけど、転ばないように」
「大丈夫ですよ、お母様。このくらいの氷でも、私……きゃっ」
「ああ、ほら。母さんの言う通りですよ、気をつけなさい、奏」

 響の注意もむなしく、お約束のようにつるりと足を滑らせる奏。だから言ったのにと、転ぶ寸前の彼女を支えたのは瞬だった。

「あ、ありがとう、瞬兄さん」
「どういたしまして。さ、立てますね」

 滑りそうになったからか、どきどきと鼓動はいつもよりも早くなっているような、不思議な感覚になりながらも、瞬の手を借りて立った奏。
 改めて、三人で祭壇の前へ並び、白い花を捧げ、それぞれの想いを祈る。

 響が祈るのは、これからの家族の健康。育ち盛りの奏や瞬のこれからの成長が健やかなものであるように、母として、彼女は祈る。
 奏が祈るのも、当然のように、これからの家族の健康だ。母と義兄、そして自分。この先もずっと健康でありますように。
 村人たちの真心のこもった祭壇なら、きっと願いは叶うと奏は信じている。だから、この祈りが聞き届けられますようにと、強く確かに祈って。
 瞬の願いもまた、彼の傍にいる母、響と妹、奏のこと。二人のこれからの道行きが実り多きものとなりますようにと、静かに目を伏せて、祈っている。

 共に過ごしてきた家族。例え、血のつながりは無くても。
 その絆は、これまでの日々は、思い合う心は、かけがえのない本物だから。

 きっと優しい神様も、彼女たち家族を見守っている。

 はらはら、ちらり、ちらりと、白い花。まるで優しく包みこむように、天上から降る白花が、祝福のように彼らへと降り注ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月10日


挿絵イラスト