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速いヤツほどカッコいい

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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 夜の帳が落ちた峠道をヘッドライトが切り裂いていく。
 スキール音を響かせてダウンヒルを疾走するのは、深紅のスポーツカーだ。迫りくるコーナーをドリフトで躱し、カウンターを当てる。クン、と完璧なタイミングで走行ラインに復帰したマシンがさらに速度を上げた。
 今日は調子が良い。ハンドルを握る男の唇が歪む。彼は躊躇いもなく、アクセルを強く踏み込んだ。
 公道を我が物顔で爆走するスポーツカー。……その終着点に何が待つのか、彼はまだ知らない。


「彼のことを一言で表現するなら『峠の走り屋』だね」
 グリモアベースの一角、集まった猟兵たちを前にして京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)が肩を竦めた。事件の舞台はヒーローズアースなのだが、伏籠の故郷、UDCアースにも似たような手合いがいたものである。

「自称・DD――デンジャラス・ドライバー。ヴィランとしては成りたて、名乗りたて。今のところ、速度超過をはじめとした交通法規の違反以外に目立った活動はナシ」
 そう語りながら伏籠が猟兵たちに示す写真には気の強そうな金髪の男が写っていた。年のころは20代といったところだろうか、スポーツカーのハンドルを握る彼――DDはその名の通り優れた運転技能が特長のヴィランである。
 自慢のテクニックで幾つもの峠道を疾走する彼の姿が頻繁に目撃されているが、グリモア猟兵の言葉通り、今のところ彼自身が大きな事件を引き起こす気配はない。
 そう、彼自身には、だ。神妙な面持ちで猟兵たちを見回して伏籠はひとつ頷いた。
「予知された事件はオブリビオンが彼の行動を利用することで引き起こされるんだ」

 話はこうだ。
 予知された事件の当日、DDはいつも通り深夜の峠道を自動車で走り始める。ダウンヒル、ヒルクライムと彼がアタックを繰り返すたびに、地元の走り屋(もちろん一般人だ)が彼の走りに惹かれるかのように峠に集まってきてしまう。
 そうやっていつの間にか生まれた集団をオブリビオンが強襲。DDを含めて多数の死傷者が発生する、というのである。

「オブリビオンがDDを『撒き餌』にする意図は今のところ不明。……知っての通り、ヴィランはヒーローに更生する可能性もある人材だ。一般人だけでなく、彼のことも救ってほしい」
 真摯な口調で依頼を告げる伏籠。つまり、今回の目的はふたつ。
 DDを打倒・保護すること。そして、出現するオブリビオンを撃破すること。
 この双方の達成が猟兵たちの目標となる。

「具体的な作戦に入ろう。まずはDDの戦意を砕いて彼の暴走行為を止める。方法はシンプル。彼に『峠のバトル』で勝つこと、だ」
 伏籠の掲げたグリモアが光を放ち、猟兵たちの眼前に三次元の画像――事件の舞台となる峠道のマップを投影した。
 件の峠はDDにとっても初挑戦のステージとなるらしい。投影されたコースには、ストレートにカーブ、勾配の変化といったおよそ『峠』にあり得る要素がふんだんに配されている。なかなかに高難度な道といっていいだろう。

「DDは『走り屋』がアイデンティティのヴィランだ。バトル……、つまり、公道でのレースに敗北すればこちらに対する抵抗も自然と弱くなる。この弱点を突くって寸法だね」
 ちなみに『地上を走るもの』であれば相手が自動車ではなくてもDDはライバルとして勝負を挑んでくるのだという。
 加えて、走り屋の理屈というべきか『ヨーイ・ドン』の勝負である必要もないらしい。峠で遭遇し、刹那の抜き合いを競い合う。それだけでもDD的にはバトルなのだとか。
 よって、猟兵たちとしても自分たちの好きな乗り物、好きなタイミングでアタックを仕掛けて構わないだろう。

「さっきも言った通り、長丁場になれば一般人が集まってきてしまう。……最初のダウンヒル。この一発で彼をぶっちぎってやってくれ」
 峠を下りきる前に勝利を重ねて、彼が白旗を上げればひとまず第一目標は達成だ。
 だが、DDの戦意が消えたことを察知すればすぐさま痺れを切らしたオブリビオンが襲撃してくるだろう。……猟兵たちをも『走り屋』と見做して。

「残念だけど、悠長にDDを車から降ろしている時間はないと思う。彼には愛車に乗ったまま逃げてもらおう」
 当然、オブリビオンがそれを座視するわけもない。敵は逃走するDDを追跡し始めるはずだ。彼を守るためには、猟兵たちも彼らをチェイスしながら戦闘しなければならない。
 オブリビオンの正体は今のところ不明だが、やはり何らかの高速移動手段を持っていると推測される。戦いが始まれば一般人が峠に集まってくる恐れはなくなる一方で、高速移動中の戦闘というまったく別の危険が猟兵たちを待ち構えていることだろう。

 そうして、ひとしきりの説明を終えた伏籠が転移の準備に取り掛かる。出現したヒーローズアースへと続くゲートを前に、彼は力強いエールと共に猟兵たちを送り出した。
「兎にも角にも、『速さ』が重要な事件になるよ。気を付けてくれ、イェーガー!」


灰色梟
 現実での危険運転はダメ絶対。交通法規を守って安全運転を心がけましょう。

 こんにちは、灰色梟です。
 今回の事件はスピード自慢のヴィランとの対決から始まります。危険な峠の下り道。お気に入りの乗り物(もしくは乗り物以外のなにやら)を見せつけてやってください。
 なお、深夜の現場は人通りもほとんどなく、バトル中に対向車等が現れることはありません。ヴィランとの対決に集中してもらって大丈夫です。
 2章以降のバトルシーンもカーチェイスと並行する形になると思われます。速く・強く・美しい(?)プレイングをお待ちしています。
 それでは、一緒に頑張りましょう!
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第1章 冒険 『その頭文字、すなわちJ』

POW   :    掟破りの飛び降り! クラッシュも構わず、横から飛び降りて先回りだ!

SPD   :    王道スピード勝負! きついカーブをコーナリングで差をつけ、抜いてやれ!

WIZ   :    狡い? だから何? ルートを予測し妨害トラップを仕掛けてスピンさせてやる!

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バーン・マーディ
……この依頼…絶対に粉砕せねばならん奴らの気配を感じる
何…悪の勘という奴だ

事前
DDと接触する峠の構造について徹底的に把握する

用意
大型バイク(バーン専用。実はちゃんと免許も取ってる

極めて忌々しいがあまりスピードは得意ではない
故に…ついて行くのがやっとだろう

だが…この場に相応しき者が居る

ユベコ発動
怪人召喚(以後怪人のプレになる
外見はキマイラフューチャーのあのスピード怪人の色違い(黒ベース:同一人物?

ふむ…良い速さの怪人ですね
我が身我が力は全盛とはいかぬまでも…負ける訳にはいきません


(車輪剣を受け取り…風となる

超高速機動戦術でDDとデッドヒート!
峠に暴風が吹き荒れながらもコーナーは車輪剣も利用!



 峠道の最高地点、ダウンヒルの開始ポイントに一台のスポーツカーが停車している。深紅の愛車の運転席に収まったDDは、アイドリングを続けながらも深く瞑目しハンドルを指で叩いていた。
 絶好の峠道を前にして彼が未だ走行を開始しないことに明確な理由はない。勿論、この場で彼が誰かと待ち合わせているということもない。それでも彼が僅かな時間をここで費やしているのは、ただただ、走り屋としての『直感』によるものだった。

「……来やがったな」
 そして、その直感は的中することになる。
 ガルン、と獰猛なエンジン音がDDのマシンの真横で響いた。ゆっくりと目を開けたDDが視線を向ければ、夜の闇に溶け込むかのように一台の大型バイクがいつの間にかスポーツカーに並び立っていた。
 バイクの乗り手、マントをたなびかせた黒鎧の男とDDの視線が交差する。言葉は不要。小さく頷いた二人は、合図もなく揃って前方に向き直った。
 ヘッドライトが頼りなく照らす深夜のアスファルト。停車状態のマシンがスロットルを絞られ、重苦しいエンジン音を鳴らす。
 ひとつ、ふたつ、みっつ!

「さぁ、追いついてみやがれ……っ!」
 三度目の咆哮と同時に深紅のマシンが飛び出した。先行するのはDD。猛烈に加速するスポーツカーを、僅かに遅れて発車した大型バイクの男が猛追する。
 峠の熱い夜が、今始まる。


「あの男、DDといったか。なるほど、その名は伊達ではないようだな」
 スポーツカーを追う黒鎧の男――バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が大型バイクを操りながらDDの技能に舌を巻く。
 バーンの跨るバイクは彼専用のチューンド・マシンだ。バーンの巨躯に重鎧を載せたとしても十分なスピードを出せるだけの馬力が秘められている。並大抵の自動車が相手であれば力負けすることはそうそうないはずだ。
 だが、そのパワーをもってしてもDDのマシンに追いつくことができない。正確にはストレートであれば距離を離されることはないのだが、カーブを通過するたびにじりじりと差を付けられつつあるのだ。

「ハッ、今日はいつにも増して冴えてるぜ……っ!」
「……やはり、立ち上がりで後れを取るか」
 急カーブをスポーツカーがドリフトで走り抜ける。最低限の減速で車体を滑らせ、最速でアクセルを踏むDD。その背を追い、限界近くまでバイクを傾けたバーンもコーナーに挑むが、しかし、彼のマシンの方が減速幅が僅かに大きい。
 結果、コーナーの出口で両者の距離が少しずつ開いていくこととなってしまう。今はまだバーンもなんとか食らいついているが、それも長くは持たないかもしれない。

「だが、敗れるわけにはいかん。……この事件、絶対に粉砕せねばならん奴らの気配を感じるのだ」
 悪の勘という奴だがな。と、バーンは自嘲気味に唇を歪める。カーブを抜けた彼の眼前にロングストレートが姿を現す。事前の情報収集により、この直線がどこまで続くかも把握済みだ。
 ならばこそ、とバーンはハンドルから片手を離し、それを力強く天に突き出した。

「大いなる風よ、全てに負けぬ速さを求めし英霊よ。終わらぬ求道を今こそ示せ。今こそその力を示す時だ!」
 常ならぬ大音声が峠に反響する。激しいエンジン音の中、辛うじてその声を耳にしたDDがルームミラーで背後を窺うのと同時に、掲げられていたバーンの片手が勢いよく前方に振り下ろされた。
 刹那、DDとバーンの間に爆発的な暴風が巻き起こる。公道の砂を巻き上げ、風と共に現れたひとつの影が瞬く間にDDのマシンに並び立った。

「ふむ……、良い速さの怪人ですね」
「……っ! もう一人いやがる!?」
 DDは一瞬、バーンのバイクが急加速したのかと錯覚した。それもそのはず、現れた影は『バイクを擬人化したかのような』怪人だったのだ。
 フルフェイスのマスク、肩口のタイヤ、胸部のヘッドライト。黒をベースとしたカラーリングではあるが、その姿は猟兵たちの記憶に残る『西風の怪人』と酷似していた。

「さて、我が身我が力は全盛とはいかぬまでも……、負ける訳にはいきません」
「上等だ、何人相手だろうとやってやるぜっ!」
 高速で疾走しつつも慇懃な口調を崩さない怪人。その声は届かずとも、新たなライバルにDDもヒートアップする。
 ストレートを並走する一台と一人。両者譲らず、次のコーナー目掛けて飛び込んでいく。意地の張り合いにも似た、限界での鬩ぎ合い。その均衡を崩したのは、二人の背後を猛スピードで追い上げるバーンのバイクだった。

「これを使え!」
「……ほぅ、これは」
 バーンの手から投げつけられた一本の剣。否、剣と呼ぶには歪なそれは、真っ直ぐに飛来して『西風の怪人』の手に収まった。懐かしむような声をあげる怪人は、直後、さらに一段階ギアを上げる。
 凝縮した風が弾けるような爆音。急加速した怪人がDDの前に一歩先んじた。

「馬鹿……っ! 突っ込むぞッ!」
「心配、ご無用!」
 もはや眼前に迫ったコーナーにブレーキングを掛けながらDDが叫ぶ。滑らかにドリフトへと移行する彼の車を横目に、怪人は手にした武器――車輪剣をアスファルトに向って振り下ろした。
 道路に食い込んだ車輪剣の刃が、ガリガリと破砕音を立てながら激しく回転する。その支点を楔に、怪人は遠心力を利用して半ば吹っ飛ぶかのように強引にコーナーをクリアしていったのだ。

「なっ……、マジかよ!? クレイジーだッ!」
「やはりこの場にはあの者こそが相応しいか」
 投げ出されるかのように道路に着地しつつも、すぐに何事もなかったかのように走行を再開する怪人に、DDとバーンが揃って感嘆の息を漏らす。特にDDは、眼前の怪人に更なる闘志を燃やし始めたようだ。
 ファースト・コンタクトが終わろうとも、彼らのスピードが緩む気配はまったくない。勝負はまだ、始まったばかりだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

フロッシュ・フェローチェス
スピード勝負か。勿論、乗るさ。
行くぞ――「アタシ自身」で!……これが一番速いんだ。

メカブーツ機動、加速式励起。まずは壁をダッシュで駆け下りてからDDに並ぶよ。
どうもこんばんわ。それじゃあやろうか?

普段は残像を使うための緩急は、カーブを曲がる技術に応用。
ホロデバイスゴーグルで情報収集しつつコースを見切ろう。
また何にも乗ってない事を活かし、より鋭角で小回りの利く軌道で行ってみるか。

ストレートではちょっと荒業――思いっ切り地を踏みつけ、衝撃波による前方ジャンプで急加速。
早業で切り替えて、その勢いも後の疾走に繋げるよ。

そしてUC。置き去りにするつもりで思いっ切り行くよ。
――それじゃあね?
※アドリブOK


七篠・コガネ
僕ね、脚の速さには自信あるんですよ!
あのウインドゼファーが一瞬だけ驚いたぐらいですから!一瞬だけですけど
故に僕は自分の脚で勝負です!
空を飛ぶにも走るにも駆け抜けるって楽しいですものね

頃合いを見計らってDDの前方に空から猛禽脚をかまして登場します
ん、調子OK 異常無し。準備運動っと…必要ないかッ
…スピード自慢のヒーローの席、空いてますよ?
僕が勝ったらその席貰っちゃいますからね

【ダッシュ】で走ります!もう何も言わず…走ります!
言っときますけどこれまだ全力じゃないです!
急カーブが見えたら【ジャンプ】でカーブを跳び越えちゃいますよ
僕、自分の脚 人と違うから好きじゃないけどこういう時は脚様さまですね



 DDは走り屋としては掛け値なしに優秀な男だ。前方を行く『西風』のシルエットを追いつつも、彼の瞳はとことんクレバーに周囲の情報を貪欲に採集し続けている。
 だからこそ、彼は次なる挑戦者の存在にいち早く気づくことができる。長めのストレートの中盤、ポツンと立った街灯の下。淡い光に照らされDDを待つ二つの人影を、彼は高速で流れゆく景色の中から正確に拾い出した。
 だが、しかし……。

「……マシンがない?」
 近づくにつれ、人影のディティールが明らかになる。片や額にゴーグルを掛けた緑髪の女、片や2mを軽く越すであろう大柄な男。DDの目に映る限り、彼女らの周囲には自動車やバイクに類するものは見当たらないのだ。
 疑問は尽きないが、かといって停車するわけにもいかない。速度を緩めず突き進むスポーツカーが彼らとすれ違う瞬間、DDは緑髪の女の口元が動くのを確かに認識した。

「どうも、こんばんわ」
「はぁっ?」
 ひらひらと手を振る女に問い返す暇もなく、スポーツカーは街灯の人影を置き去りにしてひた走る。今の邂逅はなんだったのか、DDは頭の片隅で考えを巡らせてみるが、やはり答えは出そうになかった。


「今のでこっちのことは認識したよね? なら、行くぞ――「アタシ自身」で! ……これが一番速いんだ」
「僕も、脚の速さには自信あるんですよ!」
 街灯の下でスポーツカーを見送った二人の猟兵。緑髪のフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が爪先でアスファルトを軽く叩く。彼女のメカブーツがカツンと硬質な音を立てると、隣の七篠・コガネ(コガネムシ・f01385)も楽しそうに機械の膝を折り曲げた。
 マシンが見当たらないのは、ある意味当然。この二人は己の足でDDに挑むことを選択したのである。

「なんてったって、あのウインドゼファーが一瞬だけ驚いたぐらいですから!」
「へえ、『あの』ウィンドゼファーが、ね。これはアタシも気を抜けないな」
 共通の強敵(ライバル)の話を咲かせつつ、二人はついと街灯横のガードレールから峠の下方を覗き込む。この辺りは九十九折りの道が続くエリアだ。眼下にはDDが向っていった道路がU字カーヴを経て再び戻ってきているのが見て取れる。
 くい、と視線を向かわせればスポーツカーはちょうどカーヴを曲がり終えたところのようだ。
 ……タイミングはばっちり。さぁ、第二戦を始めよう。

「さて、と。メカブーツ機動、加速式励起――」
「ん、調子OK。異常無し」
 フロッシュとコガネが揃って二、三度屈伸し、それぞれの『足』の状態を確かめる。結果は良好。互いに顔を見合わせ(都合、フロッシュの側が見上げるような形になるが)頷き一つ。二人は勢いよく大地を蹴った。

「準備運動っと……、必要ないかッ」
 アスファルトがへこむほどの踏み切りで道路の直上まで飛び出したのはコガネ。彼は空中で制動すると、まるでその脚を突き刺すが如くアスファルトに向って落下してみせた。
 ゴガン、と道路を破砕しつつ道路に降り立つウォーマシン。もうもうと立ち昇る土煙の中、コガネの巨大なシルエットがゆったりと夜闇に浮かび上がってくる。
「……スピード自慢のヒーローの席、僕が勝ったら貰っちゃいますからね」

「それ、ひょっとしてアタシにも言ってるの? ……勝負なら、勿論、乗るさ」
 一方のフロッシュは大きくジャンプすることはせず、するすると器用に坂(ほとんど壁だ)をダッシュで駆け降りてきた。落下に近い加速度をスキール音を響かせて殺した彼女は先立って降下したコガネの隣で急停止する。
 クイ、とゴーグルを装着した彼女を、接近しつつあるDDのマシンのヘッドライトが照らし出す。フロッシュは挑発的に口角を吊り上げ、迫りくるDDと隣の猟兵との双方に、まとめて宣言した。
「――それじゃあやろうか?」

「いいぜッ! やってやろうじゃねえかッ!」
 フロッシュの言葉が届いたわけではないが、しかし、その意図はDDにも正確に伝わった。踏み込まれたアクセルに呼応し、九十九折のストレートを深紅のマシンが疾走する。
 見る見る猟兵たちに近づいてくるスポーツカー。フロッシュとコガネはスターティング・ポジションで待ち構える。ビリビリと空気が震える中、フロッシュはクラウチングの姿勢を取り、またコガネは俗に言う逆関節の脚部を小さく折り畳んで力を蓄えている。

「ッ!」
 3つのシルエットが横並びになる刹那、猟兵たちの影が弾けた。
 3人の中で先頭に立ったのは、人並外れたダッシュ力を誇るコガネだ。爆発的な踏み込みで初速から猛加速した彼はアスファルトをテンポ良く蹴りつけながら風を切って前に出る。

(こういう時は脚様さまですね)
 言葉もなくひたすらにダッシュするコガネは胸中で小さく呟く。ヒトとは違う機械の脚のことは、決して『好き』と言えないけれど。それでも、飛ぶにも走るにも、駆けるというのはやっぱり楽しいのだ。

「クソッ! 追いつけねえ!」
「……アタシも負けられないな。置き去りにするつもりで思いっ切り行くよ!」
 コガネの背を追うフロッシュとDD。コガネのハイペースっぷりを目の当たりにし兎に角アクセルを踏み続けるDDに対して、フロッシュは早々に鬼札を切ることを選択する。
 一歩。強く、沈み込むようにアスファルトを踏みしめる。その瞬間、彼女は道路に張り付いたかのように減速し、DDの車体が先行する形になる。
 大地を踏みしめたメカブーツが鈍く唸る。脚部に思い切り力を込めたフロッシュは、次の瞬間、ブーツの放ったアスファルトが捲りあがるほどの衝撃波と共に前方へとその身を投げ出した。

「――廻砲『P・X』」
 口の中で転がした言葉と共に、フロッシュのユーベルコードが発動する。常識外の加速で捩じれる視界、砕けた瓦礫、風の流れ、街灯の明かり……、すべてがスロー・モーションに映るほどの過剰な総合速度の加速が彼女の身を包む。
 空中でバランスを調整しつつ、その緩慢な世界の中で、彼女はあんぐりと口を開けたDDの表情をしっかりと目に焼き付けた。

「――それじゃあね?」
 揶揄うように独り言ち、着地。先の加速を僅かにも無駄にせず、フロッシュは駆ける。
 あっという間にコガネに並んだ彼女は、彼と揃って次のカーヴへと突入する。フットワークと小回りと活かして鋭角の軌道を行くフロッシュと、まるで飛び越えるかのような豪快なライン取りでコーナーに対処するクガネ。両者はコース・アウトもなくカーヴをすり抜けていき……。

「嘘だろ、なんて夜だッ!」
 スポーツカーの車内で絶叫が響く。
 攻防は一瞬。その結果として、ストレートにはひとり、DDだけが残されるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

正しく某漫画を読んで育った私にとって、この愛車ナイン(RX-9)の出番じゃアないか。滾らずにいられようか! いや、無理!

方針:SPD

ナインは4ローターNAエンジンを積んだハイパワーなコーナリングマシン。それに加えて私の【運転】技術と【選択UC】による未来演算(第六感,見切り)、でコーナリングはバッチリ。初見のコースだろうと、綺麗にドリフトをキメながら、ヴィランの前に出てやるさ。
後ろから急にぶち抜かれて、しかも綺麗なドリフトで抜けていけば、【運転】技術の差を痛感して、向こうも戦意喪失すると思うけど。
それでもノってくるなら……それならそれで滾るというものだね!
「行くよナイン!」



「オーケイ、落ち着けよ、俺……」
 握り込んだハンドルの重みを感じながら、DDはどうにか自分に言い聞かせる。峠の下りはまだ中盤。前を行くライバルたちに逆襲するチャンスは、まだ十分にあるのだ。
 ならば、今危険なのは躍起になって自分のペースを乱してしまうこと。闘志は絶やさず、けれどもひとつひとつの動作を丁寧に、それを繰り返していかなくては。
 ふ、と大きく息を吐くDD。しかし、その彼を急き立てるかのようにルームミラーに光が映る。
 後方でヘッドライトを放つシルエット。空気抵抗を考慮したやや丸みを帯びた流麗なフォルムのそれは、間違いなく高速走行を主眼としたスポーツ・マシンだ。

「千客万来だなァ、オイ!」
 バイク、二足走行ときて、ついに現れた自動車。今度こそ負けるわけにはいかない。
 ルームミラーを睨むように一瞥、裂帛の咆哮と共にDDはアクセルを踏み込んだ。


 既視感、とは少し違う。けれども、その光景はずっと見てきたものだ。
 夜の峠道。疾走するクルマ。ライバルとのバトル。
 それらは『物語』であって、自分はただ見つめるだけだったけれど。今夜の『舞台』には自分も上がることができるのだ。

「これが滾らずにいられようか! いや、無理!」
 愛読するマンガのワンシーンを思い起こしながら、紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)が好戦的な笑みと共にアクセルを踏む。
 彼女の愛車、【RX-9】のロータリーエンジンが唸りを上げてDDに喰らいつく。自身の工房でチューンを重ねた漆黒のマシンは、智華の意のままにDDのスリップストリームに潜り込んだ。

「チッ、張り付かれたか!」
「公道バトルは追う側有利! 行くよ、ナイン!」
 DDのスポーツカーを風除けに、智華は虎視眈々とヴィランの隙を伺う。
 二台のモンスター・マシンの叩きつけるようなエンジン音が峠に響き渡った。回転数を上げたDDのターボ・エンジンが圧縮空気を燃やして更に速度を上げる。
 ズン、と瞬間的に急加速するスポーツカー。その速度に引っ張られるかのようにRX-9も加速する、が、その速度の変化はより滑らかだ。
 僅かな挙動の差。しかし、『走り屋』DDはその動きからマシンのアタリを付ける。

「ッ! NAか!」
「ご名答! さぁ、勝負だ!」
 ターボ・チャージャーを搭載しないNAエンジンの持ち味はそのレスポンスの良さだ。眼前に迫るカーヴこそ、仕掛けるにはうってつけのポイント。ハンドルを握る智華の手に力が籠る。
 縺れるようにカーヴに突入する二台。減速無しには曲がれない角度のコーナー。だが、ブレーキングの時間が延びるほど速度の上では不利になる。智華もDDもギリギリまでブレーキを我慢し……。

「……くっ!」
「ツゥ!」
 ほぼ同時、衝突を避けるギリギリのタイミングで二人はブレーキを踏みハンドルを切った。劈くようなスキール音が響き、二台のマシンは並行にその車体を滑らせていく。
 ――その刹那、智華の『虚構の神脳』はコンマ数秒先の未来を垣間見た。予測された光景を頼りに、彼女は迷いなく愛車の舵を切る。
 高速走行を維持してのドリフト。だが、それでも車体の速度は幾分か削れているのだ。ならば、コーナーの出口、勝負を決するのは、

「お願い、ナイン!」
「んだとぉ!?」
 立ち上がりの加速! タイヤがアスファルトを噛む独特の音と共に、RX-9がDDのスポーツカーの鼻先に躍り出た。コンパクトにしてパワフル、レスポンスに優れたNAロータリーの面目躍如である。
 攻守逆転、今度は智華がDDを引っ張る様に峠を激走する。歯噛みするDD。当然、簡単に抜けるような隙を見せる智華ではない。
 それでも、彼女はその背にヒリヒリとしプレッシャーを感じるのだった。

「まだノってくる、か。……それならそれで滾るというものだね!」
 どこか楽し気にフル・アクセル。知らず、智華の顔には小さな笑みが浮かんでいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオン・アーヴニル
【尾崎・ナオ(f14041)と同行】
【行動方針:SPD】

スピード狂との真っ向勝負?
フン!上等だ。実力の差というモノを思い知らせてやる。

車は尾崎主体で現地調達。
アイツがどんな悪趣味な奴を選ぼうが乗りこなしてみせるさ。
作戦は単純明快。
『技術(運転技能300)で叩き伏せる』
こういう時の為に(無理矢理)鍛えた自前の運転テクニック、
そして『覚悟』と『野生の感』でどんなコースだろうがぶっちぎってやる。

(恐らく)隣ではしゃいでいる尾崎を横目に、俺は自分の世界に浸りぽつりと呟く。
「この峠には鬼が出るというのを奴に教えてやる。そう、"俺"という名の悪鬼がな…!」
多分後で冷静になったら頭を抱える…かもしれんな。


尾崎・ナオ
セリオン(f00924)と参加。よっしゃ、助手席は任せろ!

車を購入。2章以降で戦闘ならオープンカーが良いな。でも峠攻めに風の抵抗は宜しくない。導き出される結論は「オープンカーにもなるスポーツカー」だ!黄と黒のピカ○ューカラーを所望する!下地が黒色ね。擦れた所が見えるのカッコイイじゃなーい?

峠攻めは助手席でナビゲート。地図はスマホに入れてあるよ、崖やカーブは任せろ!一応運転技能あるからタイミングは判るしね。アシストグリップ掴んでキャーキャー楽しんでおこう~。お揃いのサングラスもあるよ。夜対策もしてあるやつ!

技能は色々あるよ。地形の利用とか使えないかなー。
暗視・聞き耳・視力・運転・野生の感・第六感



 まるで蜂のようだ。
 そのマシンを目にしたとき、DDはまずそんな印象を持った。
 黒のベースカラーにイエロー・ラインが走るスポーツカー。天井部分だけ素材が違うのは、(今はもちろん閉じているが)可動式のオープンカーの特徴だ。
 その走りは、鋭く速い。カラーリングのイメージ通り、突き刺すようにこちらに攻めてくる。
 峠の下りも終盤戦。負け続けの状況に終止符を打つべく、DDは気合を入れ直す。

「このまま終わったんじゃ、カッコ悪くてしょうがねえもんなぁ!」


「ふふん、どうよ、このクルマ。電気鼠みたいでカッコイイでしょう?」
「色の趣味はともかく、スペック自体は悪くないな」
 さて、件のオープン・スポーツカーだが、まさかの現地調達、ピカピカの新車である。
 マシンを選んだのは助手席に収まった尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)だ。発注通りのカラーリングにご満悦な彼女は、夜間用サングラスを掛けてカラカラと楽し気にセリオン・アーヴニル(『夏の季節』のエトランジェ・f00924)の運転に身を委ねている。
 揃いのサングラスを掛けてハンドルを握るセリオンにとっても、スポーツカーというのはベターな選択肢だ。『走り屋』とバトルするだけの戦闘力はキチンとあるし、『この後のこと』を考えるのなら、オープンカーというのも悪くない。
 『馴らし』を兼ねてなんのかんのドライブを楽しむ二人。やがて、その視界に一台のスポーツカーが映った。……間違いない、今回のターゲット、DDのマシンだ。

「真っ向勝負だ。……飛ばすぞ!」
「よっしゃ、ナビは任せろ!」
 地図入りのスマートフォンを取り出してスタンバイするナオ。その姿を僅かに一瞥し、セリオンがアクセルを深く踏み込んだ。
 スペックギリギリの猛加速。猟兵たちの背中に向って強烈なGが掛かり、シートに身体が沈み込む。左右の窓に映る景色が線のように潰れ、目まぐるしく後方へと流れていった。

「ひゃー、はやいはやい!」
「はしゃぎすぎて舌を噛むなよ?」
 アシストグリップを掴みハイテンションに黄色い声をあげるナオに対して、セリオンは努めて冷静に前を見据えている。ぐんぐんと近づく車間距離。ヘッドライトに照らされたナンバープレートさえ鮮明に読み取れる。
 ……捉えた。獲物を狙う狩人の如き視線のセリオンが唇を湿らす。
 だが、DDも無抵抗で終わる男ではない。彼自身のマシンを巧みに操り、決して抜かれまいとセリオンのコースを塞いできた。真っ赤なテールランプの軌跡が猟兵たちの前で左右に線を描く。

「今日は負けが込んでるんだ。今度こそはやらせるかってんだよォ!」
「フン! 上等だ。実力の差というモノを思い知らせてやる。……尾崎!」
「わわ、もうすぐコーナー! そしたらすぐに逆カーヴだよぅ!」
 叫ぶようにナオがナビゲートした瞬間、DDのマシンがふっと正面の視界から右へと消える。その後を追い、セリオンも素早くハンドルを切った。
 後輪を滑らせる鋭いドリフト。車内を襲う瞬間的な横Gにナオは窓ガラスにべたりと張りつけられながらも目を輝かせている。
 猛スピードでコーナーを抜ける二台。すぐさまカウンターステアを当てて走行ラインを安定させる二人のドライバー。響くスキール音。休む間もなく次のコーナーが迫る。

「……く、こいつ、上手いッ!?」
 再度、ドリフトの態勢に入る二人のマシン。その一連の動作をこなしつつもDDは
歯噛みする。……引き離せない、と。
 セリオンの描く走行ラインはDDのそれを完全にトレースしていた。初めてのクルマ、初めての対戦相手に初めてのコース。だというのに、既に彼はレースを完全に掌握している。
 その運転技量は、恐らく、猟兵でも指折りの逸品。助手席でジェットコースター染みたスリルを味わうナオさえも置き去りにして、セリオンは自分の世界に浸り集中力を高めていく。
 今この瞬間、彼にあるのはクルマとコースだけだ。

「この峠には鬼が出るというのを教えてやる」
 呟き、セリオンは僅かに車体を外に振る。鋭い挙動。咄嗟にDDが進路を塞ごうとマシンを横にずらした。
 僅かに生まれるインの空隙。狙い通り。ハンドルを切り返し、セリオンはマシンを隙間に向って捻じ込んだ。
 続く連続カーヴ。接触寸前の間隔をまるで恐れず、スピードを維持したセリオンがDDを一気に引き離しに掛かる。

「ク、ソ……ッ!」
「そう、"俺"という名の悪鬼がな……!」
「ヒューッ、カッコいいー!」
 決め台詞を囃し立てるナオと共にセリオンはDDを置き去りに走り抜ける。その瀬戸際に、DDは猟兵たちの車内を認識した。……してしまった。

「ヒトを乗せてた……だと?」
 コンマ数秒を競うカーレースにおいて、マシンの重量は極めて重要だ。助手席に人がひとり増えれば、それだけでマシンの荷重移動は困難になる。
 ある意味、ハンデキャップのようなシチュエーション。それでも、彼は負けた。言い訳のしようがない完敗だ。

「参ったぜ、こいつァ……」
 すとん、と重い息を吐くDD。だが、彼の表情はどこか憑き物が落ちたかのようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ジャスティスクルセイダーズ』

POW   :    ジャスティス・クルセイド
【剣先】を向けた対象に、【天から飛来する十字型の光線】でダメージを与える。命中率が高い。
SPD   :    ジャスティス・グレートレイジ
【己の正義を妨害する者達への怒り】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    ジャスティス・オーバードライブ
自身に【強大なる聖なる光】をまとい、高速移動と【聖剣からの光線】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:弐壱百

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 DDの放っていた刺々しい気配は霧散した。毒気の抜けた表情でハンドルを握る彼の車両に先行した猟兵たちがクルマを寄せてくる。
 周囲に集まってくる走り屋(?)たちにDDが怪訝そうな顔をするが、彼の疑問を解決している暇はない。猟兵たちはDDのものとは全く別の、より剣呑な気配を既に捉えていた。

「裁きの時は来たれり。咎人よ、汝が罪を知るがいい!」
 低く、重苦しい声が唐突に響く。その宣告に応じ、峠道の闇から滲みだすように白装束の騎士たちが次々と姿を現した。群青のマントを翻し、彼らは輝く剣をDDに向ける。

「おいおい、なんだってんだよッ!」
 猟兵のひとりが「逃げろ!」と叫ぶ。その声が届くや否や、DDは一目散にマシンを走らせた。彼を追い、光を纏った騎士の群れが高速でアスファルトを疾走し始める。
 猟兵たちもDDを追う。が、しかし、騎士――否、オブリビオンたちの剣は猟兵たちにも向けられていた。怒りに満ちた輝きを放ちながら、オブリビオンが吼える。

「欲望のままに『速さ』を貪る悪漢どもめ! その命、天に返すときだ!」
紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

『速さ』を求める。それの何が悪いのか。悪い筈がない。そう、何故なら生物は皆、時間と闘っている。その為には、『速さ』は必要なんだ。

「だから――お前達に走る事を否定させはしない!」

【選択UC】をRX-9とDDのクルマを覆うように展開、DDと並走(運転)してDDを守り抜く(盾受け)。敵の攻撃を壁で受け、敵には電流、雷の形で【カウンター】。攻撃が効くか、よりもヴィランを守り抜き更生の機会を与える事に重みを置く。

そして、運転しながら窓を開けてDDに声をかける。
「アンタとはまたバトルしたいからね! 何はともあれ、私とナインが守り抜いてやるさ!」


セリオン・アーヴニル
【尾崎・ナオ(f14041)と同行】

先程のドライバーズ・ハイ(とでも言うのか?)のテンションそのままに、
フィールドを車で縦横無尽に走り回りながら戦闘を行おう。
尾崎共々獲物の準備を整えた段階で『オルタナティブ・ダブル』を使い、
ダブルを尾崎が車から放り出されない為の「固定役」に使用し思い切りアクセルを踏み込もう。
運転中は助手席側が上手く攻撃できるよう、敵との間合いを重視しながら車を走らせる。
ただ、なるべくDDから注意を逸らしたいからな。
悪いが多少運転が荒っぽくなるのは容赦しろよ…!
タイミング次第だが、機を見て運転しながら手元の拳銃の連射で支援攻撃も行う。
「オマケだ、喰らっておけ!」


尾崎・ナオ
セリオン(f00924)と継続参加。オッケー!戦闘だね、ナオちゃんの出番!オープンカー仕様にして登場。ドヤ顔に二丁拳銃。ナオちゃんの独壇場でしょう!

【指定UC】でナイフ49本を念動力操作。同時に二丁拳銃で【クイックドロウ138】で。超高速早打ちが見えるかにゃー?銃と弾薬はご心配なく☆同じ銃沢山持ってるからね、装備欄にあるよ!

片足に重点を掛けて身体を固定。セリオンさんのサポートも頼りつつ。一応セリオンさんには運転メインでやってほしいね~。DDに追いつける?並走できるなら護衛しながら戦いたいね。パニックで峠運転とか、どんな運転技能合っても怖いもんよぉ。

後方から来る敵にはナイフの雨を降らせてやんよ!



「これはマズい、かも」
 高速改造が施された愛車のフロントガラスに紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)の苦い顔が映る。
 彼女の視線の先にあるのは峠を疾走するDDのスポーツカー。だが、その挙動は先刻と比べて明らかに精彩を欠いている。
 無理もない。彼は今まさに、オブリビオンの苛烈な敵意にその身を晒しているのだ。運転を誤らずに逃走を続けていられるだけでも僥倖だろう。
 ……だが、それもいつまで保つか。ただでさえ危険な夜の峠道。彼が疲弊しきってしまえば、オブリビオンに追いつかれるだけではなく、『自滅』による任務失敗だって十分あり得る。
 無論、智華としても早急にDDの援護に回ろうとして愛車を走らせているのだが……。
「壁が厚い! なんとかアレを突破しないと……!」

「フン、鬼の前に立ち塞がるとは、命が惜しくないようだな」
「呑気に言ってる場合? パニックで峠運転とか明らかにマズイでしょ」
 同刻、別の車両では尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)が智華と同様にDDの状態を気に掛けて、セリオン・アーヴニル(『夏の季節』のエトランジェ・f00924)を急かしていた。
 セリオンらを含めた猟兵たちのマシンとDDとの間のルートは、オブリビオン・ジャスティスクルセイダーズの集団が壁を作って遮っている。彼らはDDに置き去りにされない程度の速度で走り続けつつも、その剣を常に猟兵たちへと向けているのだ。
 今もまた、幾人かの騎士が剣を持ち上げ、その切っ先を智華とセリオンの車へと突き付けた。

「おっとぉ!」
「甘いッ!」
 瞬きの間すらなく、虚空から光の剣撃が降り注ぐ。コンマ秒の判断でハンドルを切る二人の猟兵。ブレるように横滑りしたタイヤがアスファルトを擦り甲高い音を上げる。
 その間もオブリビオンたちは隊列を崩さずこちらを睨み続けている。……これを突破するのには、少しばかり強引な手段を取る必要がありそうだ。
 路傍の砂を巻き上げながらマシンの態勢を立て直す智華とセリオン。奇しくも二人の車両が横並びになった。チラリ、と窓ガラス越しに互いの視線が合う。瞳に乗った意思を互いに感じ、彼らは小さく頷いた。

「やるぞ、尾崎。蹴散らして前に出る!」
「オッケー! 戦闘だね、ナオちゃんの出番!」
 オープンカーの運転席でセリオンが手元のスイッチを操作すると、ガコン、と音を立てて天井が開き始めた。夏の熱気を帯びた風が吹き荒れる中、助手席をするりと抜け出したナオが天井から顔を出す。
 フフン、と口元を歪めて彼女はヒップホルスターから拳銃を抜き放った。両の手に構えた二丁の黒い拳銃がオブリビオンの『壁』に突き付けられる。

「さぁさ、超高速早撃ちが見えるかにゃー?」
 マズルフラッシュ。闇の中で連続して火花が迸る。タイヤ音と射撃音がけたたましく響くのに隠れて、ナオの背後からさらに黒い影が飛びだす。音もなく飛来するそれは、複製された黒いナイフ、その数実に49本。弾丸とナイフの群れがオブリビオンに向って殺到した。

「ヴェンジェンス! ナイン、全速でいくよ!」
 その凶弾を追うかのように智華も戦線に飛び込んだ。ユーベルコード・矛反転する見えぬ壁――すなわち、電脳魔術による不可視の防壁を纏ったRX-9が猛加速してオブリビオンに突進する。
 迫りくる車両にジャスティスクルセイダーズは剣を構えて備える、が、彼女の防壁が敵集団に接触する寸前、ナオの銃撃が騎士たちの歩調を乱す。

「悪漢が! その罪は死で以てのみ許される!」
「速さを求めることの何が悪いのさ! 今だって『守る』ためには速さが必要なんだ!」
 敵集団に潜り込んだ智華が吼える。猟兵にとって、否、一般人やあるいは動物にとっても、『時間』というものは重要な問題だ。どんな生物であれ、持ちうる時間が限られている以上、時間に追われ、ときに闘うことにもなる。
 今この瞬間だって、DDを救えるかどうかは時間との勝負。ならばこそ、闘う為には『速さ』が必要なのだ。

「だから――お前達に走る事を否定させはしない!」
「ガァっ!」
 より強く踏み込まれるアクセル。速度を上げたRX-9にオブリビオンがその騎士剣を振り下ろすが、その一撃は不可視の防壁に阻まれる。剣撃と力場とが衝突する硬質な音が響いた直後、防壁から放たれたカウンターの雷撃がオブリビオンを打ち据えた。
 雷の閃光が視界を焼き、騎士たちの連携がさらに乱れる。その背に向って、ナオのナイフと銃弾が雨霰と降り注ぐ。
 たたらを踏む騎士たちをすり抜け、智華がDDの車両に追いついた。彼女はすぐさまユーベルコードの防壁をDDを守るために展開し直す。その隙をカバーするかのように、今度はセリオンのマシンがオブリビオンの壁に突っ込んできた。

「荒っぽくなるのは容赦しろよ……!」
「アハハ、目が回るぅ~!」
 軽口を叩くナオだが、その手元は正確かつ超高速で引き金を引き続けている。リロードの間も惜しいといわんばかりに、彼女は装填済みの拳銃を次々と持ち替えて凶弾の嵐を作り出す。
 射撃音が響くたびに揺れ動く敵の『壁』。その間隙を縫うようにセリオンがクルマを巧みに操る。当然、車体は左右にぐわんぐわんと揺れまくるわけだが、そこは阿吽の呼吸。いつの間にか出現したセリオンの分身(オルタナティブ・ダブルだ)が、ナオが吹き飛ばされないようしっかりと固定していた。
 白煙を上げて走行するオープンカーは、周囲を銃弾で薙ぎ払いつつ、あっという間に敵の集団をパスして智華の後ろに追いついてみせた。

「オマケだ、喰らっておけ!」
「頭上注意~、なんちゃって」
 運転席の窓から腕を突き出したセリオンが、追いすがってきたオブリビオンに拳銃の連射を叩き込んだところで、ナオがトドメとばかりにナイフの群れにオーダーを下した。闇に紛れ、音もなく宙に浮いたナイフたちがオブリビオンたちを雨のように急襲する。
 金属がアスファルトに刺さる音が連続する。幾人かのオブリビオンがその刃に打ち伏せられ、DDを追う敵集団に更なる損耗を与えたようだ。これで多少は『時間』が稼げるだろう。


「マジでわけわからん! アンタら何者なんだ!」
 運転席の窓を開けてDDが悲鳴染みた問いを放つ。口調は荒いが、一時の危機が去ったからかその運転は正確そのものだ。猟兵たちも窓を開けて彼とコンタクトを取る。
 勿論、敵はまだ残っている。今はあくまで簡潔に、自身らが猟兵であることと、オブリビオンがDDを狙っていることを彼らは告げた。

「……わかった。今日は峠でも俺が負けたんだ。アンタらの言う通りにする」
 話を聞き終わったDDは、思いの外おとなしく、猟兵たちの軍門に下った。精神的にも幾分か落ち着いたらしいDDは、このまま事件が終結するまでオブリビオンから逃げるよう運転を続けてくれるだろう。
 話を終え、敵が追いつきつつある気配を感じた猟兵たちは、自身のクルマを駆って再び迎撃に移る。その離れ際、智華はDDを安心させるかのように窓から声を掛けた。

「アンタとはまたバトルしたいからね! 何はともあれ、私とナインが守り抜いてやるさ!」
 その言葉に、DDはハッとしたように目を丸くし、やがて頬を掻きながら前方に向き直った。ヴィランである自分を『守る』という彼らのことはどこかおかしく、しかし、それ以上に頼もしく感じるのだ。
 ジャスティスクルセイダーズは再び猟兵たちを射程に捉えつつある。敵の数はおおよそ半分になっただろうか。――戦いは後半戦へと続いていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

バーン・マーディ
そうか…貴様らだったのか
愚か者は死んでも治らないと言葉があるが

まさに貴様らを指す言葉だな(「デュランダル」を率いたヴィランが睨み据え

良いだろう
百度でも千度でも断罪にて切り捨ててやろう

愚かな「正義」に振り下ろされる断罪を何度でも教導してやる

来たれ…「リバースクルセイダーズ」よ
そして歓喜せよ
此処に滅ぼす正義がある
(現れるのは異世界で飫肥城を占拠していたような姿の騎士達。それは敵の騎士達と対照的

【戦闘知識】で敵の陣形を把握しながら
【オーラ防御・武器受け】で受け止
魔剣による【カウンター・怪力・二回攻撃・吸血・生命力吸収】で何度も切り刻み血を啜り命を喰

騎士団も容赦なく並走し襲

連携を駆使しながら大激突


七篠・コガネ
欲望のまま…ですって?
僕が望んだ訳じゃない。僕はのんびりスローペースで生きてたい

【ダッシュ】で敵の群れと併走
剣先を向けられないよう『Endless Right』で敵の剣に向けて遠方射撃です
僕の事知りもしない奴らに断罪される筋合い無いです!
文句があるなら僕を造った奴らに言って下さいね

十字型光線を放たれたら
一番近くにいる敵を掴んで【怪力】で上空へ放り投げます
盾になってもらいますね。宜しくお願いします
敵の攻撃の手が緩んだら前方へ躍り出て
DDさんを背にフルバースト・マキシマムⅡを【一斉発射】です!

ねえ、DDさん
それだけ速いなら困ってる人を助けに行くのも早いでしょう?
その速さ、ヒーロー向けだと思うなぁ…


フロッシュ・フェローチェス
オブリビオンの登場だな。
メカブーツの大本――レガリアシューズの機能を活かした自動走行を使ってこう。通常ダッシュも絡め緩急をつけていくよ。

敵の先頭をまずは取り自動走行しながら銃を連射。先制攻撃は避けられても良い、フェイントとして敵の攻撃を誘うんだ。
近付いて来た相手には短刀の早業で切り裂き、離れた相手には銃撃を続ける。
途中で生きた鎖・咆蛟炉で絡め取り、投げつけて敵を盾にする。
残像も移さない速度で接近し、だまし討ちもするよ。吹き飛ばし更に混乱を誘おう。

敵UCで巨大化……的がデカくてもやりようはある。
こっちのUCで頭や端を狙い蹴り飛ばし、バランス崩させつつ他の敵巻き込んで吹き飛ばす……!
※アドリブOK



 猟兵たちは二手に分かれた。
 先行するチームがDDに接触した今この状況で、後続の猟兵たちはDDを追うオブリビオンをさらに追いかける形となっている。つまり、この状態は……。

「挟撃だ」
 大型バイクに跨ったバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が唸る。彼の視線の先で蠢く白騎士の群れ。……どうやら、『悪の勘』は錆び付いてはいないらしい。
 フン、と気合一閃、バーンは大振りな魔剣を引き抜いて水平に構えた。禍々しい覇気と神気が刀身から迸る。彼はそのまま深く息を吐き、敵の出方をじっくりと窺う。
 が、そんな彼の『バイクの片手運転』はオブリビオンのお気に召さなかったらしい。バーンに最も近い、最後尾のオブリビオンがけたたましく喚声を上げた。

「危険な運転、危険な速度! なんと愚かな! 法を破りし者よ、死を以て償うがいい!」
「……愚か者は死んでも治らないという言葉があるが、まさに貴様らを指す言葉だな」
 口角泡を飛ばすオブリビオンの言い分に、バーンはただただ冷ややかに応えた。あらゆる『咎』を死罪と断じる狂気の思想。ジャスティスクルセイダーズの行動原理は歪んだ『正義』でしかない。

「いいだろう。百度でも千度でも切り捨ててやる」
 愚かな『正義』に断罪を。バーンの魔剣が天を衝かんとばかりに振り上げられた。黄金の柄から立ち昇るオーラが冥界の彼方、古き兵(ツワモノ)たちを呼び覚ます。

「歓喜せよ、此処に滅ぼす正義がある。来たれ――、リバースクルセイダーズよ!」
 黒い閃光。峠道が夜の闇とはまた別の漆黒に塗り替えられる。漆黒から姿を現したのは、敵方とは対照的な騎士たち。魔剣、魔槍で武装した霊体の騎士団がバーンに並んで整然と隊列を組む。
 召喚された騎士たちの頭目、バーンは振り上げていた魔剣の切っ先をゆっくりとオブリビオンたちに向けて倒す。敵味方の騎士が睨み合う戦場。数の不利ももはや些事。あとは一気呵成に圧し潰すのみ。

「突撃! 我に続け!」
 フルスロットルでバイクが嘶く。猟兵と霊体の騎士たちが渾然一体となって進軍を開始する。対するオブリビオンたちも衝突をに備え各々に武器を掲げて待ち構えている。
 先頭で魔剣を振りかぶるバーン。彼と騎士たちの突撃が第二の戦端を開いた。


 騎士たちが激突し激しい金属音が巻き起こった、まさにその瞬間、二つの影が戦場に躍り出る。騎士の壁を跳び越えた七篠・コガネ(コガネムシ・f01385)はその跳躍力をもって、一足にオブリビオンの側面へと踏み込んだ。

「欲望のまま……、ですって? 僕のことを知りもしないくせに!」
 勝手な言い分のオブリビオンたちに怒りを燃やすコガネ。アスファルトを砕く勢いで着地し敵集団と並走を始めた彼の右腕で、装着式のブラスター、Endless Rightがオブリビオンにその銃口を向けた。

「文句があるなら僕を造った奴らに言って下さいね!」
 そう言い放ち、コガネは心の中のトリガーを引く。ヒュン、と空気が焦げる音が鳴った。敵集団の側面に強烈な熱線が撃ち込まれ、周囲の騎士たちがその熱量に飲み込まれていく。
 コガネの攻撃が放たれるまで、敵の注意はDDとバーン……、つまり、前方後方の二面に集中していた。警戒の薄い側面からの強襲に、オブリビオンの隊列は大きく乱れる。

「その隙、逃しはしないよ」
 怒号飛び交うオブリビオンの群れに向って、もうひとつの影――フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)が潜り込む。
 ダッシュ、ジャンプ、蛇行と緩急織り交ぜ、フロッシュはするすると敵の只中をすり抜けていく。残像染みたその挙動で、彼女は手始めとばかりに敵の先頭(DDに最も近い騎士だ)まで追いついてみせた。

「まずはお前だ!」
「なっ!? ゴハッ!」
 DDを追う騎士のガラ空きの背中に、フロッシュの散弾銃が叩き込まれる。完璧な不意打ちにオブリビオンは頭からアスファルトにつんのめってその存在を霧散させた。
 消えゆく残滓を軽く飛んで躱し、硝煙を靡かせてステップを踏むフロッシュ。僅かな沈黙を挟み、彼女の周囲で騎士たちが咆哮する。リロードの間もなくオブリビオンが彼女を取り囲んだ。

「おのれ、よくも!」
「鬼さんこちら、だ。捕まえられるなら捕まえてみろ!」
 オブリビオンが振り下ろす大剣を潜り抜け、懐に入り込んだフロッシュの短刀が踊る。鎧の隙間を狙いすました幾重もの斬撃が騎士たちを切り刻んだ。
 敵のど真ん中で大立ち回りを演じるフロッシュ。オブリビオンたちは数の差で彼女を押し潰そうとしてくるが、猟兵の仲間たちがそれを許さない。
 後方からはDDと霊体の騎士たちがオブリビオンを追い立て、側面からはコガネのブラスターがプレッシャーを掛け続けている。連携を失くした騎士の群れは、フロッシュの持つ機動力のいい獲物だった。

「ええい! 正義を邪魔する愚か者どもめ! もはや是非もなし!」
「っ! 巨大化か!」
 大音声の怒声。戦力を擦り減らされ続けるオブリビオンたちの中で、ついにひとりの騎士が怒りと共にジャスティス・グレートレイジを発動させた。アスファルトを踏み砕き、周囲の騎士さえも巻き込んで巨大化するオブリビオン。
 咄嗟に距離を取るフロッシュに向かって巨大オブリビオンが剣先を突き付ける。十字の光撃、ジャスティス・クルセイドとの連携攻撃だ。敵を見上げるフロッシュに天上から激烈な光が降り注ぐ。

「させん!」
「そこの人、盾になってもらいますよ!」
「絡め、咆蛟炉!」
 だが、オブリビオンの必殺の一撃でさえ、猟兵たちの対応力が上回る。
 バイクを加速させたバーンが魔剣のオーラで防壁を張り、手近な騎士を掴んだコガネが光撃の射線上に騎士を放り投げ、先ほどまでの立ち回りの中で『生きた鎖』を敵に絡ませていたフロッシュが敵騎士を引き寄せて盾にする。
 三者の『盾』が降り注ぐ光を遮る。一人では耐えきれなかったかもしれない攻撃も、三人揃えばなんとやら。射線に引きずり込まれた騎士たちを焼き尽くしつつも勢いを失くした光線を掻い潜り、フロッシュとバーンは巨大オブリビオンの脚元へと跳んだ。

「デカくたって、やりようはある!」
「これで仕舞いにするぞ!」
 加速を乗せたフロッシュの鋭いキックがオブリビオンの脚部に突き刺さる。キックの反動で姿を掻き消す彼女の後ろから、魔剣を構えたバーンが続く。彼の剛力で振り抜かれた魔剣の一撃がオブリビオンの生命力を吸い取って強引にその姿勢を崩した。
 巨大騎士の膝が落ちる。大質量が接地する轟音を耳にしつつ、フロッシュが残像を残すほどの速度で蹴撃を重ねる。
 頭部、脚部、背後――。『バランスを崩す』ことを狙った連撃は、遅れて振りかぶられるバーンの剛撃と合わさり、ついには大地にオブリビオンの手を着かせる。

「よしっ、あとはまとめて!」
「頼んだぞ、コガネ!」
 倒れ伏す巨大オブリビオンと取り巻きの騎士たちを置き去りに、二人の猟兵が素早く離脱する。
 もうもうと立ち込める土煙。その向こう側で準備万端のコガネがその身体を輝かせていた。内臓コアマシンが猛り、背部の翼状ユニットに溢れんばかりのエネルギーを充填させる。
 一陣の風。晴れる視界。射線上に残るのは、敵集団のみ。コガネのコアマシンが臨界を迎える。
 弾けるプラズマ。正義漢のウォーマシンから、最後の一撃が放たれた。

「昔の人はこう言いました。"鷹は飢えても穂を摘まず"! フルバースト・マキシマムⅡ!」


 目を灼くようなエネルギー・ショットは、オブリビオンの集団を完全に消滅させた。
 バーン、コガネ、フロッシュの三人も先行する猟兵たちに追いつき、今はDDと並走していた。彼らは警戒は続けつつも軽快に歩を進めている。
 ちょっとしたインターバルに、ふと、コガネがDDに話しかけた。

「ねえ、DDさん、それだけ速いなら困ってる人を助けに行くのも早いでしょう?」
「……散々負けといて言うのもなんだが。まぁ? 俺が速いのは当然だろ?」
 峠の攻防を思い出してか一瞬目を伏せたDDだが、次の瞬間にはもう胸を張って言い切っていた。切り替えが早いのも彼の持ち味なのかもしれない。
 その様子を目にしたコガネは、首を傾げながら本心からの呟きを零す。

「その速さ、ヒーロー向けだと思うなぁ……」
「いや、いきなりヒーローとか言われても、だなぁ」
 彼の純真な口調に口ごもるDD。きっぱり否定しないあたり、DDとしてもまんざらではないのかもしれない。
 しかし、今ここで彼が答えを出すことは出来ないだろう。――この事件は、まだ終わっていないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『極楽鳥』

POW   :    いや悪いのはお前らだから
全身を【言葉を拒絶する暴風】で覆い、自身の【行いに対して向けられた批判】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    風が、俺の味方をしてくれている
【長い髪で風の流れを感じることで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    俺は許さん……そしてこいつも許すかな!?
【罪の意識】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【雷光を纏った極彩色の鳥】から、高命中力の【七色の雷撃】を飛ばす。

イラスト:水峰ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は庚・鞠緒です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あーあ、どうしてそうやって罪を重ねるのかねえ?」
 それは、人を小馬鹿にしたような酷薄な声だった。
 猟兵たちの進行方向、峠道の街灯の上にひょろ長い人影が立っていた。風に靡く挑発に、黒ずくめのスポーツウェア。ブルーのランニングシューズの爪先で街灯を叩き、やれやれと肩を竦めるその怪人の声は、不思議とよく響いて猟兵たちに届いた。

「犯罪者が消えれば世界が平和になる。こんな簡単なロジックがどうしてわからないのやら。……なァ、おい、犯罪者を庇うオタクらも同罪だって、わかってんの?」
 怪人のマスクから覗く剣呑な視線。それは、正義に狂った深紅の瞳。オブリビオン・極楽鳥――彼こそが今回の事件の黒幕。『走り屋』を一網打尽に殺戮せんと画策したオブリビオンに他ならない。
 あらゆる罪を許さない『行き過ぎた正義』が街灯を蹴って宙を舞い、猟兵たちに襲い掛かった。

「犯罪撲滅! 平和のために、死んじまいなァ!」
バーン・マーディ
…何というか…どういったらいいか解らん…こいつ…馬鹿なのか?(真顔

我も一つ貴様に簡単すぎるロジックを解いてもらいたい

殺人は犯罪か?

(答えを聞いて頷き)

では…貴様の行おうとしている事は?

まぁいい
下らん正義は悪によって粉砕されるという事を教えてやる

【オーラ防御】展開
【武器受け・カウンター・怪力・吸血・生命力吸収】で反撃しつつ引き付け

デュランダル怪人

「速さを極めたいという欲望」の素晴らしさを理解しないとは残念です

ならば…悪の風を楽しんでもらいましょう

【車輪剣による竜巻】を彼の風にぶつけつつ【超高速機動】で襲い掛かりましょう

力は確かに弱ったかもしれませんが…それでも…中々に充実できますね!!!



「さァ、電気椅子だ! そのままシートの上で藻掻いて散りな!」
 峠道を走り抜ける猟兵たちの頭上で、まるで見えない足場があるかのように極楽鳥が空中を縦横無尽に駆ける。手始めにDDに狙いを付けた彼は、月に向って高く飛びつつ、旋風を纏った右の脚でスポーツカーへと蹴りを放った。
 空を切った怪人の蹴りから撃ち出された疾風が、速度を増すとともに鳥の姿へと変ずる。出現した鳥はバチバチと七色の雷光を纏い、弾丸のようにDDのスポーツカーに突進してきた。
 DDの視界、フロントガラス一面に映った死の運び手。正面から彼に迫る電撃は、しかし、両者の間に割り込んだ黒い影に阻まれた。

 大型バイクをスポーツカーの前方に滑り込ませたバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は、漆黒のオーラを滾らせた右腕を以て、怯む素振りも見せずに『電撃ごと』幻影の鳥を握り潰した。断末魔のように辺り一帯に雷音が弾ける。
 痛痒も見せず、素早くバイクをコントロールしてDDを先行させる黒の騎士。リアタイヤを滑らせながら速度を上げるスポーツカーを見送り、改めて頭上の怪人を見上げた彼の表情は、呆れを押し殺したかのような、なんとも言えない真顔であった。
 召喚した鳥を潰され、不快げに目を細めて高度を下げた極楽鳥とバーンの視線が絡む。期せずして並走する形になったオブリビオンにじりじりとバイクを寄せながらバーンが問う。

「我も一つ貴様に簡単すぎるロジックを解いてもらいたい。……殺人は犯罪か?」
 左手でハンドルを保持し、右手で肩の大剣の柄を握る。バーンの気迫の籠った鋭い眼光が極楽鳥を射抜く。が、それでもオブリビオンは飄々とした態度を崩さずに答えを返してくる。

「トーゼン。ま、罪の軽重は関係ねーのよ。なにせ、オレはどんな罪だって許さないからなァ」
「……では、今まさに、貴様の行おうとしている事はなんだ?」
 感情を押し殺したかのように低い声で問うバーン。彼の真剣な表情に、何がおかしいのか、極楽鳥は口の端を吊り上げた(かのように感じられた)

「ナニってそりゃァ、ゴミ掃除よ! 犯罪者ってのはもう『ヒト』じゃねーのさ!」
 オブリビオンの甲高い哄笑が峠道に響く。独善的で行き過ぎた『正義』の判断基準。やはり、この男の思考は狂人のそれだ。
 愚にもつかない、と。黒の騎士は静かに小さく首を振る。

「度し難い、が、まぁいい。下らん正義は悪によって粉砕されるという事を教えてやる」
 瞳に決意の力を籠め、バーンが一気にバイクを動かした。咆哮を上げて一息にオブリビオンとの距離を詰める大型バイク。高速移動の慣性を乗せて、バーンの魔剣が横薙ぎに振り払われる。

「おおっと、危ないなァ! そら、お返しだ!」
「……ぬぅん!」
 鈍い音を立てて空気を切り裂く魔剣の一撃を、極楽鳥は跳ねるようにして回避した。跳び上がった勢いのまま、空中で回転した怪人のキックがバーンを襲う。オブリビオンの身体能力に遠心力を上乗せした恐るべき回し蹴りを、バーンは寸でのところで魔剣を引き戻し防御する。
 まるで鉛を叩きつけられたかのような重い衝撃。大型バイクがぐらりと傾き、騎士鎧の膝部とアスファルトが接触する。金属が削れる音と舞い散る火花。スリップ寸前のところでバーンは車体を立て直すが、当然、極楽鳥がその隙を見逃さない。

「『悪』って言うんなら、入念にぶっ潰してやるぜェ!」
 疾風と共に襲い来る影。極楽鳥はバーンに纏わりつくように跳びはねながら、四方から猛烈なキックを浴びせてくる。一撃一撃が疾く、そして重い。
 対して、バーンは硬質のオーラと魔剣のコントロールとでオブリビオンの猛攻を凌ぐ。殺しきれない衝撃が全身を蝕むが、今は耐える時。沈黙のまま守りを固めた彼が待つのは逆襲のための『風』だ。

「どォしたよ! オレを粉砕するんじゃなかったのかァ!」
「……その通りだ。覚悟を決めるといい! 来たれ、速さを求めし英霊よ!」
 極楽鳥の攻撃とバーンの防御がぶつかり合うたびに巻き起こっていた風。一撃ごとに漆黒のオーラと絡み合い、旋風と化してバイクの周囲に蓄えられたその力を今こそ利用するのだ。
 襲い来る蹴撃を魔剣で弾き返し、バイクを思い切りウィリーさせるバーン。跳ね上がった前輪からすり抜けるように、タイヤを肩に掛けた『デュランダル怪人』が姿を現す。
 出現した怪人『速さの極を求めし者』は滑らかにターンを決めてバイクの後輪に手を伸ばす。先刻と同様、像が二重になるかのようにして、後輪からすり抜けた車輪の剣が怪人の手に収まった。

「……では、悪の風を楽しんでもらいましょう」
 紳士然とした怪人の口調とは対照的に、車輪剣が齎した『風』は生易しいものではなかった。バイクに蓄えられた旋風のオーラを介して生まれたのは、嗤うように悲鳴を上げる竜巻だ。車輪剣の一振りと共に撃ち出された竜巻が、宙を駆ける極楽鳥を呑み込まんと襲い掛かる。

「ぐぉっ! テ、メェ!」
「いやはや、『速さを極めたいという欲望』の素晴らしさを理解しないとは残念です」
 一瞬だけでも爪先が竜巻に触れたのが運の尽き。極楽鳥が纏っていた旋風が竜巻に相殺され、彼は竜巻の中心に引きずり込まれる。オブリビオンが旋風のコントロールを取り戻すまで、僅かに一瞬。そのコンマ数秒の内に、デュランダル怪人は極楽鳥の目と鼻の先まで接近してみせた。
 瞠目する極楽鳥の鼻先で、まるで時間を置き去りにしたかのように、チッチッと指を振るデュランダル怪人。その手に握られた車輪剣が再び轟風を纏う。

「ふむ、力は確かに弱ったかもしれませんが、それでも……、中々に充実できますね!」
「ガァッ!」
 歌うような口調で振り下ろされた車輪剣が、空気の塊をハンマーのように極楽鳥に叩きつけた。バランスを崩し、アスファルトに叩き落された極楽鳥が、ゴロゴロと転がりながら竜巻から吐き出される。
 音もなくバーンのバイクに寄り添って並走するデュランダル怪人。二人の視線の先では極楽鳥がひときわ大きく地面にバウンドして宙に打ち上げられていた。

「や、りやがったなァ!」
 ぐるり、と空中で身を翻して態勢を立て直すオブリビオン。さきほどのダメージによるものか、仮面の一部が欠け、右腕が肋骨の辺りを庇っている。
 しかし、致命傷ではない。オブリビオンは怒りと警戒がない交ぜになった視線で猟兵たちを今なお睨んでいる。

「一度では足りんか。ならば、何度でも粉砕してやろう」
「ええ、ええ。次はもっと速くいきますよ?」
 大型バイクのアクセルを捻り、バーンとデュランダル怪人が速度を上げて飛び出す。すぐさま極楽鳥も彼らに負けじと空中の疾走を再開した。
 すでにDDのスポーツカーは遥か先に先行している。極楽鳥も彼に追いつくことを目指すよりは、目の前の猟兵たちの対処を優先する構えだ。
 猟兵とオブリビオンの追走劇は、両者の直接対決となりつつあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

七篠・コガネ
お前と会うのは何だか2度目な気がします
大人しく骸の海に沈んでればいいものを…

ライトニングフュリオス発動!【空中戦】です!
僕は地上を駆けるのは2番目に得意。一番得意なのは…空を駆ける事!
なるほど。批判に比例した戦闘力増強ですか
なれば僕は黙っていましょう
こっちはピキピキくればくる程自己強化がかかるんですから!

…正義に答えはないです
昔の僕は銀河帝国こそが正義だと信じてました
でも未来の正義は過去の正義を上回る!そう信じたい
極楽鳥の攻撃を【武器受け】で受けましょう
でもその刀で僕に触れていいんですか?感電しますよ!
そのまま【踏みつけ】て地面向かって蹴り落としてくれます

未来のヒーローを消させやしません



 面倒な連中だ。と、舌打ちひとつ、極楽鳥が夜の峠道を翔ぶ。
 本来DDを追いかけていたはずのオブリビオンだが、標的が先行して逃げてしまった現状、いつの間にか彼自身が猟兵たちに追われる立ち位置になってしまった。
 極楽鳥にとって、DDだけでなく、彼を庇う猟兵たちも始末するということは既に決定事項だ。道路に沿った高速移動を続けつつ、オブリビオンはちらりと背後を振り返る。
 極楽鳥の視界に映る猟兵たち。彼らはそれぞれ思い思いの装備でこちらを追跡してきているが……。

「バイクにクルマ、それから『足』と。ハハァン、なるほどねぇ?」
 極楽鳥の口元が弧を描いてにんまりと歪む。なんのことはない、如何に連中がプレッシャーを掛けてこようとも、こちらが絶対的に有利になる方法があるではないか。
 そうと決まれば話は速い。足元の空気を圧縮するかのように中空で急ブレーキ、圧し潰した空気を踏み台にして、極楽鳥は天高くへと飛び上がった。

「『走り屋』じゃあ空は飛べないだろ? ザァンネンだったなァ!」
 猟兵たちの頭上、十数メートル。極楽鳥が嘲る様に嗤う。
 追跡者を高みから見下ろすオブリビオン。その指先が七色の雷光を蓄え、猟兵たちを撃ち抜かんと待ち構えている。
 クルマやバイクでは届かない高所からの攻撃。その優位性はゆるぎない。
 だが、今まさに雷撃が発射されようという刹那、ひとりの猟兵が果敢にアスファルトを蹴った。

「『また』そうやって人を傷つけて! 大人しく骸の海に沈んでればいいものを……!」
 激昂を叫び、駆動音を鳴らしながら七篠・コガネ(コガネムシ・f01385)が駆ける。
 疾走状態からのショートジャンプ。着地と同時にブレーキング、運動エネルギーを逆関節の脚部に思い切り注ぎ込む。視線を天に、薄笑いの目標をロックオン。白い熱気が脚部から漏れる。
 極限まで溜め込んだパワーをバネに、コガネが道路から跳び上がった。
 アスファルトが砕ける鈍い音さえ置き去りにして、弾丸のように極楽鳥へと迫るコガネ。だが、襲い来る猟兵の姿を前にしても、オブリビオンは余裕の表情を崩さない。

「ハハ、いくら跳びはねようとなァ? そら、ちょいと距離を取ればもうオシマイだ!」
「……くぅ!」
 飛翔能力を活かし、極楽鳥がひらりと距離を離す。ただそれだけで、コガネの弾道はオブリビオンから逸れてしまった。向きを変えることもなく愚直に直進する猟兵の姿に、極楽鳥は嗜虐的な笑みを浮かべて雷撃を放つ。
 両手をクロスさせて急所を守るコガネに幾重もの雷撃が突き刺さる。苦悶の声を漏らしつつも腕の下から敵を睨むコガネ。だが、無情にも重力に引かれて跳躍の勢いは徐々に衰えていく。

「お前が今日の断罪一号だ! 膾にしてやるぜェ!」
 そして、ついにコガネの跳躍が頂点に達した瞬間。高空で手ぐすねを引いて待ち構えていた極楽鳥が、得物の刀剣をぬらりと抜き放った。
 素人剣法丸出しの動きで刀を振りかぶる極楽鳥。月光に薄く光る刀身。空中で静止状態にあるコガネにとって、更なる高所からの斬撃は致命の一撃になる。

 ――ハズだった。

「地上を駆けるのは、2番目に得意なんです」
「あァ?」
「一番得意なのは……、空を駆ける事!」
 極楽鳥の凶刃が振り下ろされた瞬間、コガネの姿が『ブレ』た。狙いすました、静止状態から急速発進。胸部を切り裂くはずだった一撃は、急上昇と共に捻じ込まれたコガネの両腕に阻まれる。
 金属がぶつかり合う甲高い音。それと同時に、コガネの全身からバチバチで電流が迸る。コガネの感情に呼応して内臓コアマシンから電気エネルギーが放出、背部のプラズマジェットを起動させたのだ。

「昔の人はこう言いました。"怒髪冠を衝く"!」
「ナ、ガガ、ガァッ!」
 電気エネルギーの影響はそれだけにとどまらない。クロスした腕部で受け止めた刀を通して、激烈な電撃が極楽鳥を打ち据える。
 不意の反撃に硬直する極楽鳥。その隙を縫い、コガネは極楽鳥の腕を掴みつつ(当然、電撃は続行だ!)プラズマジェットで身を翻して、オブリビオンの頭上へと己の位置を入れ替える。

「……正義に答えはないです」
「ナ、ニをッ」
 ぽつりとコガネから零れる言葉。かつての彼は、銀河帝国こそが正義であると信じていた。しかし、その『正義』が何を犠牲にし、如何なる結末を辿ったのか。猟兵となったコガネは、その答えを知っている。……ならば、今、自身が貫くべき『正義』とは?
 腕を掴み、ぶら下げるかのように捕らえたオブリビオン。その首元に極厚の機械脚が添えられる。不格好な腕菱木のような組み合い。足の裏が垂直に地面へと向くように調整し、コガネは決然と叫んだ。

「未来の正義は過去の正義を上回る! 未来のヒーローを消させやしません!」
「ッ、ゴッ!」
 腕を極めたまま、コガネの脚部が極楽鳥の頸部を思い切り踏み抜いた。狙い通り、真っ直ぐに。頭部を下にして高空からオブリビオンが超速で落下する。
 体勢を立て直す間もなく、極楽鳥が道路に落ちる。
 周囲の山々にこだまする激しい激突音。もうもうと上がる土煙。クレーター状に陥没するアスファルト。その全てがコガネの蹴り落としの凄まじい破壊力を物語っている。まさに、会心の一撃であった。
 ……が、しかし。

「ガッ、ァ……、ま、マダ、だ……ァ!」
 ぐらり、と。土煙の中で極楽鳥のシルエットが揺れた。足取りは怪しく、ダメージは間違いなく大きい。だが、それでも彼の『犯罪撲滅』の意思に陰りはない。
 クレーターから這い出し、峠道の先を睨むオブリビオン。すぐさま彼の耳に追跡者たる猟兵たちのマシンの音が届く。
 再び、舌打ちをひとつ。極楽鳥は空を蹴って走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロッシュ・フェローチェス
お前の行いが何だろうが、知った事じゃないね。
過去の影でしかないオブリビオンのそれに返す言葉は1つだけだ。
――潰れて消えろ。

先制攻撃で散弾一射。避ける先を見切り更に二射重ねる。
そのまま残像を複数重ねて突撃……したように見せかけ、フェイントとして生み出したもう一つの残像の後ろから短刀を投げる。
――そして悪いけど、本物のアタシは後ろ。残像も移さないダッシュで投げると同時に回り込んだんだ。

早業で蹴りを放つ。当たれば御の字、UCで逃げる可能性もあるね。
なら消える程のスピードでジャンプし追い抜き、砲撃形態の銃と纏わせた衝撃波で僅かにでも暴風をぶち抜く。
そして空中から突撃し――UCを叩き込む!
※アドリブOK


紅葉・智華
※アドリブ・連携歓迎

犯罪者の有無と平和って正直あんま関係ないと思う。法の裏を利用するヤツって結局犯罪者にならない訳だし……だからさ、人に実害を与えるお前の方が悪だと思うんだけど、どう?

(素の口調のまま)
――さて、屠らせてもらうよ。
真の姿解放、『硬度可変ナノマシンスキンアーマー』の硬度を最大、ナインは電脳空間に収納して、生身で【ダッシュ】して【選択UC】(グラップル)による近接戦闘で短期決戦。敵の攻撃は直感(第六感,見切り)と経験(戦闘知識)で捌く。
向こうも回避してくるだろうけど、【スナイパー】としての集中力は四肢の打撃でも有効。キツい一発(鎧無視攻撃)をくらわせる。

「――迷わず、逝け――!」



「悪いけど、逃がさないよ」
 極楽鳥は大地に落ちた。ならば、再び羽ばたく隙を与える道理もない。
 土煙が残るクレーターを駆け、射程圏内へと軽快に跳び込んだフロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)のショットガンが、今まさに上昇せんとする極楽鳥をその銃口に捉えた。

「チッ、邪魔しやがって!」
 乾いた発砲音と共に放たれた散弾がオブリビオンの上昇経路を潰す。発砲の直前、極楽鳥は舌打ちしつつも銃口を見切って素早く水平方向に舵を切る。
 が、そんな単純な回避行動はフロッシュも織り込み済み。彼女は流れるように撃銃のバレルをスライドさせ、極楽鳥の進行方向に再び銃撃を被せる。

「テメェ、しつこいんだよ!」
「もう飛ばせはしない。……『アタシたち』がね」
 負傷しつつも速度は健在か、二射目の散弾も急ブレーキで躱して悪態を吐く極楽鳥。その動きを冷ややかに観察しつつ、フロッシュは肘を折ってリコイルを受け流し、半歩身体をずらす。
 意図は明白。開いたスペースから一直線に飛び出す小柄な影。フロッシュの背後で加速をつけた紅葉・智華(紅眼の射手/自称・全サ連風紀委員・f07893)がオブリビオンに急襲を掛ける。

「そういうこと。思い切り行くよ!」
 距離を詰める智華はその身一つ。すでに愛車のナインは電脳空間に格納済みだ。身軽さと小回りを武器にした彼女の跳び膝蹴りが極楽鳥に向って放たれる。
 夜風を切り裂いて疾走する蹴撃。既に強引な回避運動を重ねている極楽鳥は、苛つきの表情を隠すこともなく手にした刀剣で智華を迎撃する。

「これならどう、カナ!」
「ハッ、うざってェ!」
 激突する智華の膝と刀の峰。ギチギチと互いの運動エネルギーが鬩ぎ合う。猟兵とオブリビオン、両者ともに致命のダメージはなし。しかし、智華の一撃は極楽鳥の飛翔を許さず、確かに彼を地上へと縫い付けていた。
 数瞬の後、僅かに崩れた均衡と共に極楽鳥が刀剣を振り払う。その勢いに合わせて足のバネで中空に跳ね上がる智華。軽やかに空中で一回転、音もなく極楽鳥の後方に着地した彼女は、赤枝流の構えを以てオブリビオンに相対する。
 その時には既に、リロードを終えたフロッシュも極楽鳥に銃口を向けていた。二人の猟兵に挟まれ狙いを付けられたこの状況、迂闊に飛ぼうとするのは危険か、と極楽鳥は忌々しげに眉根を寄せている。

「だいたいさ。犯罪者の有無と平和って正直あんま関係ないと思う」
「あァン?」
 じりじりと円を描くようにフロッシュと挟撃のポジションを作る智華。彼女の口をついた言葉に、極楽鳥は過剰気味に反応する。憎悪すら纏った深紅の瞳が赫赫と猟兵たちを射抜く。

「法の裏を利用するヤツって結局犯罪者にならない訳だし……。だからさ、人に実害を与えるお前の方が悪だと思うんだけど、どう?」
「……キヒッ」
 漏れたのは、喉をひくつかせるような声。直後、ごう、と突風が極楽鳥へと吹き込む。
 唸る颱風の中心で、極楽鳥が刀剣を肩に担ぐ。その視線は、真っ直ぐに智華に狙いを定めていた。

「何と言おうが、犯罪者は『悪』だ。ああ、そうだ。俺が正義で、『悪いのはお前らだから』なァ!」
 言葉を拒絶する轟風が極楽鳥を中心に吹き荒れる。元より説得でどうこうできる相手ではないと思っていたが、ここまで『荒れる』とは。智華だけでなく、フロッシュもこれには肩を竦める。

「……お前の行いが何だろうが、知った事じゃないね。オブリビオンは過去の影でしかないんだ」
「そうだね。もう聞く耳も持たないみたいだし、それなら……」
 暴風の先で、極楽鳥で武器を構える。正面は、変わらず智華。敵の背後でフロッシュが散弾銃のトリガーに指を掛けるのを視界の隅に捉え、智華は膝を曲げて大地に沈み込んだ。

「――屠らせてもらうよ」

 ダン、とアスファルトを蹴った智華が極楽鳥へと肉薄する。と、同時にフロッシュがショットガンを連続でトリガー。発射音と共に飛来した散弾の群れは、しかし、極楽鳥が背後に腕をかざしただけで暴風に呑み込まれて空を切る。

「ナノマシンスキンアーマー硬度変換、硬度最大!」
 散弾を防がれようとも、足が止まっているのは僥倖。一足飛びにショートレンジに飛び込んだ智華の四肢の表層が、陽炎の如く歪んでうねる。
 ショートジャブ、からのストレートのコンビネーション。間断なく放たれた拳打が極楽鳥の刀剣に激突する。刃を立てた業物での防御。だが、その刃は智華の皮膚を切り裂くことなく、その直前で『硬質な何か』に阻まれる。
 謎のオーパーツナノマシンによる表層防御。文字通り、打撃武器と化した四肢を駆使して智華は格闘のレンジに喰らいつく。
 十重二十重に絡み合う剣と拳。速度は互角か、どちらもクリーンヒットには至らない。
 ならば、とばかりに極楽鳥は周囲の旋風を刀剣へと集中させる。圧縮された空気を纏い、彼の刀剣は切れ味を捨てた分厚い鈍器と化す。

「おらァ!」
「っ! くぅ!」
 全身を打ち上げるような衝撃が智華を襲う。踏み止まるのは危険。咄嗟に後方へ跳び、衝撃を受け流す智華。
 極楽鳥はその軌跡を見据えて舌なめずりする、が。

「こっちを見な! 今度はアタシの番だ!」
「……やっぱりしつこいなァ、テメェ!」
 鋭い殺気と共にフロッシュが極楽鳥の背後に突撃する。メカブーツが唸り、理外の速度で踏み込む彼女。振り向いた極楽鳥の目に映ったのは、幾重にも残像を残して鬩りくるフロッシュの姿だ。

「コケ落としがァ!」
 分身ではなく、残像。極楽鳥はすぐさまフロッシュの動きの本質を掴む。
 如何に残像を残そうと、本体はひとつ。であれば、確実に存在する瞬間、『攻撃に移るヤツ』を狙えばいい。

「シッ!」
「見ィつけたァ!」
 突撃する残像の群れ、ではなく、フェイントのような挙動をしていた残像からナイフが放たれる。その刃は、虚像ではなく実物。ゆえに、投擲した『本体』が存在する。
 極楽鳥が旋風と共に踏み込む。ナイフの実体を刀剣で弾き飛ばし、返す刀で『ナイフを投げたフロッシュ』に刃を食い込ませ……。

「……あァ?」
 するり、と刀剣が虚像をすり抜けた。これは本体ではない!
 ならばどこに、と極楽鳥が前方を見渡す。他の残像も時間経過で姿を消してしまっているが、それでもフロッシュ本体は見当たらない。
 混乱。僅かな硬直。
 その意識の間隙を縫って猟兵たちが勝負を掛ける。

「ラプラス最大駆動――、行くよラプラス!」
 後方、低い位置。潜り込むように智華が大きく踏み込む。
 振り返る極楽鳥。逆袈裟に迎撃する刀剣。渦巻く風の流れ。……それら悉くを認識し、義眼・虚構の神脳が未来の可能性を智華に見せつける。

「チィ!」
「赤枝流拳術――」
 振り上げられた凶刃。智華はそれを、ただの半歩、歩法をずらすことですり抜ける。
 頬を撫ぜる旋風を感じつつ、彼女は両の掌をナノマシンで超硬化する。彼我の距離は、既にクロスレンジ。最後に強く大地を踏み締め、智華の掌撃が極楽鳥の腹部に突き刺さった。

「『唯倒』! ――迷わず、逝け!」
「ゴハッ!」
 まるでトラックが激突したかの衝撃。鈍い打撃音が峠に響く。身体を『くの字』に折り、極楽鳥がほぼ水平に吹き飛ばされる。
 ……それでもぎりぎりで踏み止まったのは、意地か、それともオブリビオンの生命力によるものか。アスファルトに接触した両脚が摩擦で白煙を噴き上げながらも、極楽鳥は衝撃を受け止めきる。左手を腹部に添え、右手を道路に着いてはいるが、その瞳はまだ智華を捉え続けているのだ。

「しつこいのは、どっちだろうな?」
「んなっ!?」
 その視界の中で、残心を構える智華の背後から緑の影が天へと躍り出した。
 姿を消していたフロッシュ。……とどのつまり、彼女は『残像すら残さず』に極楽鳥の背後、智華の陰に滑り込んでいたのだ。
 腹部に直撃したユーベルコード。回避行動ができるまで回復するのにはどうしても時間が掛かる。ついに足を止めた極楽鳥に向って、上空かフロッシュが襲い掛かる。

「ググ、寄るんじゃねェ!」
「……砲撃形態。撃ち抜くよ!」
 極楽鳥が腕をかざし、暴風の盾が彼の頭上に展開する。が、それも時間稼ぎにすらならない。トリガーを引かれた砲撃形態の愛銃・刻天炉が激しい爆音と共に暴風を纏めて吹き飛ばす。
 熱気を帯びた風を突き破り、更に加速したフロッシュの踵落としが極楽鳥の肩口を蹴り潰す。

「蹴り砕いて……!」
「ガッ!」
 轟音。腹部を抑え、前傾姿勢になっていた極楽鳥は肩部への衝撃により、敢え無くアスファルトとキスすることになる。うつ伏せに道路を砕き、地面にめり込んだオブリビオン。その背中を踏みつけ、着地したフロッシュはがっちりと敵の抵抗を封じている。
 ……そして。

「焼き……、尽くす!」
「ッッッ!」
 世界を、碧の閃光が灼いた。
 ストンピング染みた連続キック。追い打ちの蹴撃が突き刺さり、極楽鳥がアスファルトに沈むたびに碧色の炎と衝撃波が燃え上がる。
 情け容赦のない攻撃に極楽鳥は声すらない。荒れ狂う暴威をただただ背中に受け続け……。

「――潰れて消えろ!」
 フィニッシュの一撃。砕けた道路の中心で、ひときわ大きな炎が舞い上がる。輪になった熱波が夜の峠道を吹き抜ける。
 その波に交じってトン、と爆心地から軽く跳んで後ずさったフロッシュのメカブーツから蒸気が噴き出る。熱を帯びたそれの爪先で地面を叩く彼女の元に、智華が小走りに駆け寄ってきた。
 隣に並んだ戦友と小さく拳を打ち合わせる二人の猟兵。さしものオブリビオンも、この連携を受けて無傷とはいかないだろう。
 それでも油断は禁物、と二人は炎の残滓を注視しているが……。

「グ、ガガ……」
「……ここまでくると、しつこいというか、なんというか」
 崩れ切ったアスファルトの上で立ち上がろうと藻掻くシルエット。フロッシュたちの目にもダメージが甚大なのは見て取れる。
 それでも立ち上がるのであっても……、恐らく、次の接触で勝負は決まるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

セリオン・アーヴニル
【尾崎・ナオ(f14041)と同行】

運転技能の活用、乗車したままの戦闘。
第1章と第2章で培ったものの集大成といこう。
敵周囲を車で旋回しながら【絶禍光槍】を発動。
命中するのが一番だが、最大の目的は――
『頭上からの絨毯爆撃による行動阻害』
回避系UCに手数で対抗、上手く動きを鈍らせたなら…
尾崎が隙をついて良い一撃を喰らわせてくれるだろう。

ある程度ダメージを与えた後、尾崎と事前に決めていた俺達の最後の一手を喰らわせる。
「こいつで最後だ。――おい、フルスロットルで行くぞ」
何をするのか、と?
『最大速度で突っ込んで直前で離脱。ぶち当てた車を最後にUCか銃器で爆破しジ・エンド』
新車?保険?帰りの手段?知るか!


尾崎・ナオ
セリオン(f00924)と継続参加。

2人瞬時に「オープンカーの戦闘は不利」と判断。ナオちゃんがボンネットで戦闘、セリオンさんが運転に役割分担。

UC発動

「さあ!可愛いナオちゃんと踊りましょー!」
二丁拳銃の超高速早打ち【クイックドロウ185】と、
「法律とか法治国家って単語知ってるぅ?あ、そこまで知能無いか、ごめんね!」
【挑発10】で相手の視線をナオちゃんに向ける。

セリオンの絶禍光槍

直後、UCのまま突撃。【毒使い】で猛毒を塗った【早業】ナイフで首を斬りつける。視界を塞ぐように攻防したら。

車つっこみ

UC最後の力を振り絞って、セリオンさんを運転席から引っ張り出す!受け身を取って着地。

あーーーはははは!



「フィナーレだ。派手にいくぞ」
「アハハ! さあ! 可愛いナオちゃんと踊りましょー!」

 砕けたアスファルトもなんのその。熱気を裂いて雷霆の如くスポーツカーが走り抜ける。
 ハンドルを握るセリオン・アーヴニル(『夏の季節』のエトランジェ・f00924)の視線の先で、極楽鳥がゆっくりと立ち上がる。長髪を風に靡かせ、猟兵たちを睨むオブリビオン。満身創痍、得物の刀剣も半ばで折られた怪人だが、その瞳だけは怒りと苛立ちに爛々と輝いている。
 冷静さを欠いているのは好都合。と、同乗する尾崎・ナオ(ウザイは褒め言葉・f14041)の唇が三日月に吊り上がる。助手席から飛び出してボンネットの上で仁王立ちした彼女は、黒い拳銃をクルクルと弄びながら挑発的に極楽鳥を揶揄い出す。

「法律とか法治国家って単語知ってるぅ? あ、そこまで知能無いか、ごめんね!」
「……どいつもこいつも、うざってェんだよッ」
 ペッ、と血の塊を吐き捨てる極楽鳥。だらりと下がった彼の肩、その背後の空間に稲妻が奔る。バチバチと雷光を纏って召喚されるのは極彩色の鳥たちだ。
 数にして三。これが肩で息をする今の極楽鳥の限界か。オブリビオンがくいと顎を向けると、七色の電撃を伴って雷光鳥たちがスポーツカーに向って飛来した。

「来るぞ、振り落とされるなよ!」
「まっかせといて!」
 フロントガラスに映るナオの脚の隙間から電撃を視認。即座にセリオンは思い切りハンドルを切った。甲高いスキール音を響かせてドリフトするマシン。スライドした車体の脇をすり抜け、電撃がアスファルトを灼く。
 セリオンはそのまま極楽鳥の周囲を旋回するようにスポーツカーを走らせる。後輪を滑らせて回避運動を取るマシンを電撃が追ってくる。息つく間もなく迫る雷光の鳥を、ボンネットの上で激しい遠心力と戯れるナオの二丁拳銃が迎え撃った。

「ふふん、おそいおそーい! そんなんじゃナオちゃんからは逃げられないぞー!」
 下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。なら、上手い鉄砲を数撃てば?
 超高速で交互にトリガーを引かれるナオの二丁拳銃。発砲音がもはやひとつなぎに聞こえるほどのクイック・バースト。
 一射で片翼を撃ち抜きバランスを崩し、二射で反対の翼を貫き浮力を奪う。三射、頭部に中てて推力を殺せば、あとは弾丸の雨霰が雷光鳥を飲み干すばかりだ。
 ひの、ふの、みの。瞬く間に蜂の巣にされ、呼び出された雷光鳥が三匹揃って霧散する。
 雷鳴の残滓を響かせ消えゆく召喚鳥。僅かに雷光が残るその空間に向かって、セリオンが運転席の窓から腕を伸ばす。

「周辺魔力素を転換吸収……、集約……、形成!」
 雷撃の残滓も、あるいは峠に満ちる空気中の魔力も、すべて綯交ぜにして純粋魔力に変換。セリオンの掌中に溢れんばかりの魔力の光が握り込まれる。
 まずは敵の『足』を完全に止める。胎動する力の塊を、彼は思い切り天に放り出した。

「降り注げ――、絶禍光槍!」
「ぐご、ォ……!」
 極楽鳥の頭上で光が弾ける。瞬きの間もなく落ちてくる無数の光槍がオブリビオンの周囲に突き刺さる。的中したのは、3割ほど。しかし、雨のように連続する攻撃の下で、極楽鳥は身動きを封じられている。
 ――ここだ。フロントガラスを介して、瞬間、セリオンとナオの目が合う。セリオンがアクセルを踏み込むのと同時に、ナオがボンネットを蹴って極楽鳥へと跳んだ。

「ハァイ、そろそろオヤスミの時間だよぅ?」
「カハッ!」
 黒刃一閃。ナオの黒いナイフが闇に紛れて極楽鳥の首を切り裂く。オブリビオンから呼気の漏れる異音が鳴った。ナオはナイフにこびり付いた血をひゅんと振り払い、返しの一刀で極楽鳥の目を狙う。
 闇に溶け込んだ刃と鋭い風切り音。その音を頼りに、極楽鳥は上体を逸らす。

「ッ! クソがッ!」
「わぉ、まだ動けるんだ。……でもでもぉ、ちょっと遅かったかなぁ」
「んだと……、ギッ!?」
 目元を浅く斬りつけるに留まったナイフの斬撃。だが、ナオは気にした風もなくウィンクと共に後方へと跳ぶ。
 逃がすか! と、彼女の影を追おうとした極楽鳥。……その寸前、彼の視界が赤く染まった。痺れるような痛みと共に平衡感覚が消失し、世界がうねって歪む。
 足を止めて目元を抑える怪人。バックジャンプでスポーツカーのルーフに飛び乗ったナオは、その様子を見つめながら手元の『毒のナイフ』をくるりと回す。

「細工は流々。なーんちゃって」
「おい、こいつで最後だ。――フルスロットルで行くぞ」
 スポーツカーの速度がぐんと増す。ルーフの端を掴んで姿勢を低く保つナオ。ハンドルを握るセリオンが見据えるのは立ち尽くす極楽鳥。
 スピードメーターが跳ね上がり、猛回転するタイヤが甲高く嘶く。オーバーヒートも無視してフル稼働するエンジンの勢いに任せ、マシンは一直線にオブリビオンへと突っ込んでいき、そして……。

「ほい、っと」
「うぉっ」
 激突の寸前、セリオンの首根っこを掴んだナオがルーフから跳ぶ。二人は不格好ながらもクルマの側面上方に退避。ドライバーを失ったマシンはまったくの減速もなく、極楽鳥に突き刺さる。

「ゴァッ!」
 鈍く重い衝突音。極楽鳥の腹部にフロントグリルにめり込む。
 その衝突した二者を眼下に、脱出した二人の猟兵が各々の銃器を空中で構えた。狙いをつける時間も惜しいとばかりに、すぐさま揃ってのフルトリガー。雨音のような射撃音で黒い拳銃とリボルビング・ライフルがオブリビオンごとクルマを滅多撃ちにする。
 見る見る蜂の巣になる彼らの新車。あっという間に銃弾は機械系統やガソリン室さえも貫いた。……そうなれば、あとは。

「オ、レは、絶対に犯罪を――ぁ」
 引火、爆発。断末魔さえ掻き消す、腹に響くような轟音。空中の猟兵たちをも押しのけるような爆炎がクルマと極楽鳥を呑み込む。
 衝撃波に乗り、やや離れた位置に着地するセリオンとナオ。彼らのクルマは黒煙をもうもうと上げて豪快に炎を燃やし続けている。
 ……その炎の中に、オブリビオンの気配はもはや存在しない。極楽鳥は、ついに骸の海へと叩き返されたのだった。


「なんつーか、その、あー、世話になった。……サンキュな」
 一晩明けて。オブリビオンを退け、無事にDDを保護した猟兵たち。
 彼らが保護したヴィランの身柄はヒーローズアース当局に引き渡すことになる。先の言葉通り『峠の負け』があるため、DDは素直に猟兵たちの要請に従っている。
 ヒーローに転向することについても、彼自身は前向きに考えているようだ。が、その一方で……。

「今度会うときは、もっと速くなってるからな! ちゃーんと覚えとけよ!」
 猟兵たちへの対抗心もあるのか、彼の『速さの追求』はまだまだ終わらなそうだ。
 ぐっ、と自身の愛車を撫でるDD。そうして彼は、ふと、気まずそうに言葉を零した。

「……つっても、マシンには無理させないように、だな。うん」

 彼の視線の先にあったのは、ふたりの猟兵――、一夜にして新車をおシャカにし、ゼロがたっぷり並んだ見積書を手にして黄昏るセリオンと、彼の肩を叩きながら嫌味のない笑みを浮かべるナオの姿だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月11日


挿絵イラスト