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君の水着の最高を

#スペースシップワールド #【Q】 #お祭り2019 #夏休み

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●セルフ・水着・プロデュース
「うス、お前ら。全力で楽しんでるか? 夏をよ」
 そう言いながらグリモアベースに水着姿のまま現れるのは納・正純である。
「夏と来て水着と来たら、後は騒ぐしかないと思わないか? そこでこんな催しを見付けてな、もし良かったらどうだい」
 正純が手に持つチラシには、以下のようなことが書いてあった。皆にチラシが行き渡ったことを確認すると、正純は内容をかいつまんで説明し始める。
『貴方の水着良いところ探しフェスティバル開幕! 全員水着を着用の上、自分の水着姿が最も輝く瞬間を想定しながら参加してね! 超高性能なVR機器がそのシチュエーションを良い感じに再現して、厳正な審美眼を有した三名の審査員がすごく良い感じにあなたの水着姿の良いところを見付けます! ぜひぜひこの機会に水着になって、貴方の持つその魅力を全世界に振りまいてネ! 楽しい夏をさらに楽しく過ごしていこう!』
「……つまり、そういうことだな。どうやらこのフェスティバルでは、お前らが想定する、自分の水着姿が最も輝く瞬間……。それを見ることが叶うらしいぜ。まあ、当然ながらVRによるシチュエーションの再現ではあるから、自分以外の他人なんかを再現するのは難しいと思うがな」
 そういうことである。皆はただ単純に、自分の水着姿が最も輝くのはどんなシチュエーションであるか、を想像しながらフェスティバル会場に参加してくれれば良いだけだ。そうすれば、VR機器が君の考える最高のシチュエーションを仮想現実の海に落とし込み、そしてその映像から審査員たちは君の良さを見付けること間違いなしだろう。
 ナイトプールでばったり、真夏の太陽に照らされた砂浜でどっきり、というような王道はもちろんのこと。やろうと思えば暴漢から誰かを庇おうとして水着姿で颯爽と現れるシチュエーションや、水着姿でかっこよくカブトムシをGETする姿の再現なども可能だ。簡単な戦闘だってもしかしたら大丈夫かもしれない。
 ただし、公序良俗に反する、あるいは表現的にちょっとやりすぎと見なされるような状況の再現プログラムはVR機器にはインストールされていないらしいので、その旨よろしく。……と、正純はそこまで言って説明を終えた。
「よーし、大体分かったか? それじゃ、お前らの思う自分の水着姿の最高なシチュエーション……そいつを、余すところなく見せてくれよな。楽しみにしてるぜ。いってらっしゃい」

 そんな感じになった。貴方の水着良いところ探しフェスティバル、満を持して開催である!


ボンジュール太郎
 お疲れ様です、ボンジュール太郎です。無理なく書かせて頂きます。
 皆様のPC様の魅力を最大限引き出せることを目指し、全力で取り組ませて頂きますので、今回もよろしくお願いいたします。

 ●構成
 以下の構成でお送りします。
 1章は猟兵達の夏休み。以上です!
 貴方の考える最高の水着シチュエーションを、ぜひぜひリビドーと本能のままにプッシュしてやってください。VR機器が良い感じに再現し、そして審査員たちが貴方の水着の良い所を発見致しますこと間違いなしでございます。すごい。

 ●行動について
 自分の水着姿の最高のシチュエーションはこれなんじゃ~! ってヤツを想像しながらフェスティバル入りしてください。あとはVR機器が何とかします。すごい。あとは、自分の水着のアピールポイントなどあると良いかもしれませんね。そんな感じです。

 ●審査員について
 以下の三名でお送りします。番号の指定があればそのようにします。指定が無ければBかマダムになります。
 1番、渚のDJことB。情熱赴くままのコメントが得意です。
 2番、浪速のおばさんことマダム。教育面で口うるさいきらいはありますが、もしかしたら貴方の魅力の前では全肯定マダムになるかもしれません。
 3番、夏のテキ屋こと正純。納正純です。なんか良い感じのことを言います。
 

 ●アドリブについて
 アドリブや絡みを多く書くタイプであることを強く自覚しています。
 アドリブ増し増しを希望の方はプレイングの文頭に「●」を、アドリブ無しを希望の方は「×」を書いていただければその通りに致します。
 無記名の場合はアドリブ普通盛りくらいでお届けします。

 ●判定について
 楽しんでればいいですよ!

 ●プレイング再提出について
 私の執筆速度の問題で、皆様に再提出をお願いすることがままあるかと思います。
 時間の関係で流れてしまっても、そのままの内容で頂ければ幸いでございます。

 ※プレイング募集は公開と同時です。すぐに送ってOKです。
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第1章 日常 『猟兵達の夏休み』

POW   :    海で思いっきり遊ぶ

SPD   :    釣りや素潜りに勤しむ

WIZ   :    砂浜でセンスを発揮する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●夏のジャスティス
「イェエエエエエエエエエエエエエエエエエエイ!!!! ジャァアアアアアアアアアアスティス!! よくきたなテメーら!! ここは毎年お馴染み(になる予定の)(予定は未定である)『貴方の水着良いところ探しフェスティバル』会場だぜ! そして今! 最初の挑戦者が現れたぞーーッッ!!」
 会場のテンションは既に振り切れている。誰も彼もが真夏の狂騒に身を浸し、そして水着と陽射しに酔いしれている。熱と祭りとが支配する空間で、最初の猟兵がそこに姿を現した。
 VR機器の準備は既にできている。審査員の一人かつ司会進行のBのテンションも有頂天だ。観客たちは猟兵の最高なシチュエーションを見られると聞いて、すでに盛り上がって会場に集まっている。
 君の準備は良いか? というBの言葉を耳にして、最初の挑戦者であるその猟兵は静かに頷いた。
「OK、ベイビー。君の水着の魅力と、想定しているVRのシチュエーションを軽く教えてくれるかな?」
リダン・ムグルエギ
●SPD
この水着は、泳ぎを華麗に見せつつ、立ってもアピールできる作品よ

水泳時は上から見ると体毛色と合わさって水に溶け込んで見えるよう
下半身の布は水の色に近く、上半身は背中側の生地を少な目にしてるの
逆に立った時は顔側へ視線をひくよう赤を上半身に

この水着の最も輝く瞬間
それは「泳ぎ姿を見せてから、相手の真正面に立った瞬間」よ

ただ、この水着には懸念もあるの
アタシはこの水着を青い体毛のキマイラやクリスタニアン達の間で「流行らせたい」
そのためには……女性の目にこの水着が不快に映っちゃダメなのよ

さぁ、マダム
アナタはどんな評価を下してくれるかしら?

コードも催眠術も使わないわ
純粋にデザイン勝負よ、久しぶりにね



●作戦は、真っ向勝負で
「ええ、もちろん。――この水着は、泳ぎを華麗に見せつつ、立ってもアピールできる作品よ。つまり、私はこれから……この水着での泳ぎ姿と、その後の立ち姿を披露するわ」
「ほォ? ということは……。なるほどな。このデザインは、『そういうこと』かい? 泳いだ後の立ち姿ってのも、そのため?」
「ふふ、どうかしら。でも、そうね。きっとこれから良いものを見せてあげられると思うわ。『これがアタシの作戦だから』、ね。コードも催眠術も使わない。純粋にデザイン勝負よ、久しぶりにね」
 何かを察したように頷いた司会のBの質問に、リダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)が応えていく。そして帳は落ち、幕は上がる。
 熱狂に包まれていたステージの環境は瞬きする間に著しく変化していき、そして代わりに現れたのは……ナイトプールだ。水面は色とりどりの照明に照らされて輝き、そして色に包まれた水の中で、リダンは優雅に泳いでいた。
 会場の観客と審査員たちが見ているこの景色は、あくまでも仮想現実。だが、会場全域を上書きするように包むホログラム映像と、そのホログラム映像に隠れて動くドローンによる風と水の吹きかけは、観客たちにリダンの優美なまでに、そして大胆に泳ぐ姿を現実であるかのように五感で魅せていた。
「あらまァ! いけませんよこんな……露出の多い水着はッ! ハレンチですッ! ……ま、まあ? たしかに? あのリダンさんという選手の泳ぐ姿は奇麗で? じ、実に美しいですとも、ええ。ダークブルーの水面の上で、滑るように泳ぐ姿は、まるで……」
 審査員の一人であるマダムが、『まるで』の後に何を言いかけたのかは定かではない。だが、確かに彼女の言う通り。リダンの泳ぎ姿は――実に美しかった。
 プール際でのターンの度、リダンはドルフィンキックを決めて水の中を進んでいく。その瞬間の身体の無駄のないしなり、生物学的に完成された実に機能美的な美しさ。それを際立たせているのは、紛れもなく彼女の水着のデザインによるところも大きいだろう。
 そう、リダンの水着の工夫とはここにある。泳ぐ彼女を上から見ると、その水着は彼女自身の体毛色と合わさって水に溶け込んで見えるようだ。それは、下半身の布は水の色に近く、上半身は背中側の生地を少な目にしてあるが故。それはもしかしたら、野生動物の持つデザインの一つでもある、保護色のようであったかもしれない。
 『統一感』は作品の雰囲気を高め、そして魅力を際立たせる。機能美的、あるいは生物的な美しさを伴った見事な泳ぎは、この瞬間リダンを陸の山羊から水中の魚へと変じさせたのだ。
「……でも、でもやはりいけませんわ! 胸元だってあんなに空いて……! 露出が高い水着は、やはり教育に……ッ」
 『教育に悪い』。そう言いかけたマダムや観客へ、次の映像が映し出される。プール上部からのカメラ視点は切り替わり、次の映像は……。
 泳ぎ終え、プールサイドに濡れながら立つリダン。彼女の、真正面からの姿であった。
「――――っ」
 そこにあるのは、青の中に咲いた赤い一輪の花。宇宙の闇に輝いて浮かぶ星、あるいは月。マダムだけではない、その場にいる全員が息を呑んだ。
 リダンは、『水に濡れた髪を右手でかきあげ、緑色の目で貴方を見つめている』。全身を青に染めた彼女の要素の中で、胸元の水着だけが赤く咲いていた。この瞬間、恐らく全員が理解したのだ。『彼女の水着は、全てこの瞬間のためにあったのだ』ということを。
 顔側へ視線をひくよう、計算された上半身の赤。アクセントでもあり、文字通りこの水着の花でもある絶対無敵のポイント。この水着の最も輝く瞬間。それは『泳ぎ姿を見せてから、相手の真正面に立った瞬間』であったのだ。リダンは花を咲かせるために水を浴び、星を浮かべるために夜を待ったのである。
「いかがかしら、マダム? ふふ。その反応を見る限り、掴みはOKってところかしらね。……ただ、この水着には懸念もあるの。アタシはこの水着を青い体毛のキマイラやクリスタニアン達の間で『流行らせたい』。そのためには……女性の目に、この水着が不快に映っちゃダメなのよ。だから、貴方の意見が聞きたかった」
「っ、……!」
「――さぁ、マダム。アナタは、この作戦(デザイン)へ……どんな評価を下してくれるかしら?」
「……~~!! わ、分かりましたわよ! ……認めます、ええ、認めますとも! 最初から惹かれてましたわ! なんですかその水着は! アクセントが利いていて、視線誘導も完璧で、そっ、その上こんな魅せ方……! 見惚れて、認めるしかありませんわ! この水着は最高に……! 教育に『良い』ですッ! デザイン科の教科書に載せたいくらいのお手本ですねッ!」
 審査員のマダムがリダンの魅力に根負けし、そして一拍。VRの仮想現実から解放された会場は、もう一度観客たちの熱狂をあらわにして。
 マダムを始めとする審査員や観客たちはリダンへ惜しみない拍手を送り、そして口々に褒めたたえ、彼女の水着と、そして彼女自身のセンスを認めるに至った。
 この勝負(デザイン)、彼女の――大勝利である! 水着のシチュエーションバトルは、最高のスタートを切ったといえるだろう! 素晴らしかった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

バンシィ・ルフェイ

WIZ判定

・シチュエーション:月光浴
蒼き月光が冴えわたる人気のない湖畔、
蛍火の如き燐光を纏いながら水面に足先を付け宙を漂う魔女は
月の魔力をその身に蓄え糧と成す

・行動
水面の近くを舞うように踊る様に漂いながら
ごく単純なメロディを口ずさむ

・心情
真夏のビーチ、太陽が照り付ける海
皆が楽しむプールにレジャー
どれもこの年寄りには億劫でねぇ……

故郷の水辺に似た場所でくつろげるんなら
少しVRとやらを使ってみたいね

なにせもう無いものでね……
少しぐらいの間懐かしんでもバチは当たらないだろうさ

審査の方はこんな婆で良ければ好きにしておくれよ



●時に水辺は思いを映して
「……♪ ……~~♪」
 音が聞こえていた。いや、これは歌だろうか。旋律である。ごく単純な、そう、だからこそどこか懐かしいメロディライン。
 まるで、ティーンエイジャーが思いつくままに口の端に乗せる音の流れ。まるで、年経た女性が願いを込めて言の葉に紡ぐ思いの果て。
「~~~~♪ ……♪」
 彼女が奏でるメロディは高く、低く、長く、短く。時に続き、時に途切れて、湖畔の上で響き渡る。挽歌のように、弔歌のように。
 バンシィ・ルフェイ(告死・f00238)の面持ちを照らす照明は、空から差す月光が唯一つ。鈍色で、鋭く、青々として。けして手の届かない高きから、彼女を見下ろすように、月は確かにそこにあった。
「ああ……。やっぱり、こういう場所の方が落ち付くもんだ……。海辺に太陽、それに人混みも、この年寄りにはすこし億劫でねぇ……」
 彼女が望んだVR空間は、蒼き月光が冴えわたる人気のない湖畔。バンシィ自身がそこを望んだのには理由がある。
 真夏のビーチ、太陽が照り付ける海、皆が楽しむプールにレジャー。それらの夏そのものといった楽しみも、決して悪くはないのだろう。だが、彼女が最も望むシチュエーションはここだった。
 ただ、それだけのことである。
「オウ……コイツは……。参ったね、レディ? ……いつもなら連続でブチかませる俺のやかましいRhymeでさえ、この状況じゃ野暮ってもんだな。……美人サンは邪魔できねェ。言葉を選ばなきゃな」
 月光を浴びて湖畔の水面に映る影と遊び、水面の近くを舞うように踊る様に漂いながら、バンシィはメロディを口ずさむ。まるでそうあるのが自然だと言わんばかりに。
 蛍火の如き燐光を纏いながら水面に足先を付けて、宙を漂う黒魔女は、まるで絵画に切り取られた一枚の美術作品の様にあでやかで。煌々と輝く月の魔力をその身に蓄え、糧と成す告死の女の姿は、彼岸に佇む花のように不健康で。
 そして……とても、とても美しかった。まるで、この世のものではないくらいに。幽霊や幽鬼など目ではない。それでも何かに例うるならば……そう、『冥王の花嫁』くらいは言わなければ罰が当たるというものだった。
「……ここはまるで、妖精の隠れ里だ。そしてレディは……さしずめ、水際に引き寄せられて留まっている、柳の下の美人サンか。噂になるぜ、コイツは。今が江戸の夜ならこぞって人が並んだろうよ。何を犠牲にしたとても、貴方の顔を一目でも――ってな」
 流れない水は意思を押し留め、そして月はもう手に入らないものの影を地上に落とすという。バンシィが望んだこのシチュエーションと、それらの符合が何を意味するのかは定かではない。
 連想されるのは……そう、郷愁。もしくは、未練だろうか。だが、本当の所は彼女自身に聞いてみなければ分からない。疑問に思った司会兼審査員のBが口を開いたのもむべなるかなというものだろう。
「失礼、バンシィ殿? どうして、貴方はこの光景を選んだんだい?」
「……故郷の水辺に似た場所でくつろげるんなら、……そう思っただけさね。なにせ、もうワタシの故郷は無いものでね……。少しぐらいの間懐かしんでもバチは当たらないだろう、と思ってさ」
 クロスホルターの黒い水着に身を包んだ彼女の紡ぐ舞と歌は、しばしの間止まなかった。そして、バンシィがバレーボール大の紫水晶球……『告死蝶の宝珠』の上に降り立つその時まで、審査員たちと観客の群れは彼女の姿をただただ見つめていた。
 黒いマリアヴェールを風に遊ばせて、半透明の羽がバンシィの姿勢を空中に押し留めた。紫色の光が彼女を足元から照らし、アンクレットに包まれた細い足首が強調される。ピンク色の髪から覗く藍色の瞳と物憂げな表情は、まるで何かを見つめるようで。
「……それは、失礼した。レディに気軽に聞く質問じゃなかったな」
「いや、なに。審査の方はこんな婆で良ければ好きにしておくれよ。ワタシは……もう少し、ここでこうしているからさ」
「……バンシィ殿。アンタ、最高に良い女だよ。水着のセンスも、アンタ自身も。……ごゆっくり」
 真夏のビーチ、太陽が照り付ける海、皆が楽しむプールにレジャー。それらの夏そのものといった楽しみも、決して悪くはないのだろう。だが、彼女が最も望むシチュエーションはここだった。
 ただ、……たった、それだけのことで。そして、彼女はこの瞬間、恐らく最も美しくあった。――きっと、この世の何よりも。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リア・ファル

POW
3番

人々の…希望であれと願われたこの身
創造者達は「こだわりを持って」設計されたモノだけど
つまり、「自信があるか?」と問われれば、「Yes」なのだが

己が心が「堂々と出来るか?」といえばそれはまた別の話で
普段の制服より少々大胆で、背伸びしたビキニ

自分が輝くその瞬間は

その気恥ずかしさを抱えたまま
それでも夏のせいにして、一歩、浜辺に踏み出して落ち合う
その瞬間に違いなかった

海の家を一緒にやる約束をした彼の元へ

「やあ…お待たせ。正純さん」

気恥ずかしさに、つい、屈み込みながら、
見上げるようになってしまいつつ
はにかみながら、告げる

「どう…かな? ボクには少し大胆かも知れないけど…似合ってる、かな?」



●夏のせいにしておこう
「なあなあ、お前あそこもう行った?!」
「あぁ、あれ? いや、まだなんだよな……。評判良いらしいから気にはなってる。めっちゃ人並んでるし」
「お、マジ?! じゃあ今週末の放課後さ、誰か男連中誘ってまたこの海水浴場行こうぜ! っ、っていうか、あの人……そうじゃね?!」
「え? ……うわ、超美人……! あれが、噂の?!」
 次のVR空間で映されたのは、何の衒いもない夏真っ盛りの海の景色。
 青い海、青い空、白い入道雲に水着の男女。ヤドカリたちは波と戯れて、砂浜は寄せては返すさざ波の音を奏でていた。
 そこは海水浴場。真っ直ぐなシチュエーション。夏で水着と来たら、海である。海なのだ。それは人類が知識を得てから変わることのない不文律である。さて、そこにいる水着姿の男子学生たちは何事かを騒ぎ立てている様子。
「……『自信があるか?』と問われれば、疑う余地もなく『Yes』なんだけれど……」
 彼ら男子学生の視線の先には、ある一人の猟兵が砂浜に立っていた。立ち尽くしていた、の方が正しい表現であろうか。
 まるで行先は決まっているのに、風に恵まれず進めない帆船のように。もしくは、目的地は決まっているのに星海の真ん中で星図を無くし、進み方が分からなくなってしまった機動戦艦のように。
 彼女――リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は、多くの通行人からの視線を集めながら、しかしてそこに立つのみであった。
「だからといって、『堂々と出来るか?』といえば……」
 リアの胸中に浮かぶのは、多くの気恥ずかしさ。それから、少しの不安など、など、など。それくらいは誰でもわかる。彼女の悩ましげな表情と下がり眉から、通行人ですら全員それを察していた。
 【機動戦艦ティル・ナ・ノーグの、ヒューマンインターフェース(HI)型、中央制御ユニット】。それがリアの正体でもあり、あるいは一つの側面でもある。人々の……【希望であれ】と願われたその身。
 老人や子供にも親しみを持って接してもらえるよう(それから、ついでに製作者たちの個人的な趣味の発露の結果)、この身はこう作られた。自分の創造者達が『こだわりを持って』設計したモノだ。その身は今、普段の制服より少々大胆で背伸びした、格子柄の青い三角ビキニに包まれている。
 水色の少し大きめなパーカーがリアの水着姿をその上から覆うが、彼女自身の魅力は全く隠しきれていない。通行人たちの誰もが振り返っているのがその証拠だ。
「それはまた別の話……。なんだよね……はぁ」
 それでも、リアは自らの深い部分に浮かぶ気恥ずかしさなりを消し去ることはできていなかった。
 例え自らの創造主が、どれだけの手間とこだわりを持って自分をそうあれかしと『作った』としても。それは自分自身が、自分の今の格好をどう思えるかとは全く関係のない話な訳で。
 つまりは、結局。どれだけそう願われて作られていても、それだけを頼りに海を進むには限界があるってこと。レールが途切れても、エンジンがあれば進めるように。最後は自らが何かを願ってやみくもに進むしかないのだ。例え、先の見えない航海であっても。
「限定状況を入力、予測結果を反映……。……言い訳のパターンを4623通り検出……。最適化……! よし。……よし……!」
 だからリアは足を進める決心をした。創造主がどう、ではなく。自分の意思で進む先を決めて、そして帆を立てたのだ。
 気恥ずかしさは消えていない。けれど、それは全て白浜の波に溶かして落ち合ってしまおう。この状況で使える言い訳は一つしかない。一つきり。最強の、この季節にしかできない魔法の言葉。身の丈に合った、無敵にかわいらしいそのワード。
 ――『全部、夏のせいだ』。
 海の家を一緒にやる約束をした彼の元へ。仮想現実の、それでも真夏の海の家で。
「やあ……お待たせ。正純さん」
「おお……そう来たか…………他の審査員どっか行ったと思ったから変だとは思ってたぜ」
 気恥ずかしさに、つい、屈み込みながら。見上げるようになってしまいつつ、はにかみながら、それでも告げる。
「どう……かな? ボクには少し大胆かも知れないけど……似合ってる、かな?」
「いやその水着姿めっちゃおしゃれで最高だが(何を言うんだ、よく似合ってるとも)」
 逆ゥ~。それくらい可愛かったです。そのシチュエーション最高。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユエイン・リュンコイス

さて、やはり着てみれば他人の評価が気になるというもの。存分に見てもらおうじゃないか。

シチュエーションは、スタンダードに燦々と太陽が輝く海辺かな。
プカプカと浮き輪を掴んで浮かぶ機人をステージに、そこは腰掛けポーズでも決めてみようか。帽子を被ったり、ボールをついてみたり、海に潜って海老を捕まえてみたり、ね。
起伏があるとは言えない体つきだけど、そこはほら、スレンダーと言い換えれば。

その後は少し趣向を変えてみようか。機人の脚部スクリューを起動。モーターボートの如く海上を疾駆して、スタイリッシュに決めてみよう。

急停止から、その勢いを利用して高々と跳躍しての飛び込み…なんてのもカッコいいかもね?



●豪華絢爛、夏飛沫
「夏、水着、海。とてもとても興味があった……とは、なかなか言えないけれど」
 お次のVRシチュエーションも、真夏の王道と呼ぶに差し支えない内容であった。
 燦燦と太陽が照り付ける海辺。白い雲の殆どは水平線の上にしかなく、照り付ける眩しい陽射しを遮るものは何もない。
 まさに夏。まさに海。となれば次に何が足りないのかは、もう賢明な諸氏のことであるからして分かっているのだろう。勿体ぶらずに言おう。こんなシチュエーションで、可愛い水着の女子がいない方が間違ってる。そうだろ?
「さて、それでもやはり着てみれば他人の評価が気になるというもの。存分に見てもらおうじゃないか」
 かき氷屋さんののれんの奴。タコ焼きとたい焼き。赤いハイビスカス。『彼女』と『機人』のデフォルメイラスト。しろいおはな(種類が分からなかった)。海藻(多分そうだと思う)。
 黄色くて大きな、とても大量で豪華なペインティングが成されている巨大浮き輪を掴んで海に浮かぶその黒鉄。彼こそは黒鉄機人。ユエイン・リュンコイス(黒鉄機人を手繰るも人形・f04098)の最大の武器であり、道具であり、特徴であり、相棒であった。
「……そういえば、『君』も結構夏って感じだね? 普段は裸だもんね、そうやって服を着ていると愛嬌があるようにも見えて……すこし、面白いかも」
 ユエインの言うとおり、そんな『彼』も、あるいは夏の装いに着替えて夏の祭りを楽しんでいるようで。
 黒鉄機人が纏うのは水色のアロハシャツ。海の色に良くマッチするその服の中で、熱帯魚や鮫、タコにマンボウ、魚たちが所狭しと泳いでいた。オレンジ色のサングラスまでかけて、気分的にはすっかり夏の燃える男というところか。
 得意の右手の超高熱も、今日は封印。破壊はなし、昇華もNOだ。……だから、その分。今日はその両手に掴んだ浮き輪で、機人も海水浴を楽しんでいるのだろう――などと言うのは、少し誇張しすぎた考えだろうか。
「だからこう思うのかな? 負けてられないな、なんて。……ふふ、こんな気分になるのも夏のせいかな」
「それで良いんじゃねえか!? ユエインちゃんよゥ、中々最強無敵の良いシチュエーションじゃねーか! 一面に広がる透き通るような海! 真っ白で奇麗な砂浜! 雲の少ない青空に、そしてステージ(黒鉄機人)の上で佇む美人サンときた! クゥ~~参ったねコイツは……! 俺のHOTがLIMITしちまいそうだゼ……! ところで日に照らされた機人の上って滅茶苦茶熱くない? HOTがLIMITじゃない? 大丈夫?」
 HOTがLIMITするというのは、熱さが限界じゃないかという心配の言葉である。それ以外の意味はない。
「大丈夫だよ。幾らリアルに見えてても、VRだからね。熱さはそこまで感じない。気分的には……少し、アツいけどね」
「ユエイン的にもオールオッケーって訳だな、OK! それじゃ、心行くまでこのシチュエーションを楽しませてもらおうじゃないか!」
 もちろん司会のB的にもオールオッケーだ! 機人の上で改めてユエインが姿勢を正すと、やはりオフショルダー型の黒いクロスホルタービキニは、彼女の色白の肌に良く似合う。
 当然彼女が今浴びている真夏の日差しも、VR日差しなので日焼けの恐れは0なのだ! すごい! 心置きなくポージングができるぞ!
「起伏があるとは言えない体つきだけど……どうかな」
「いやいやいやいやいや!! 何をおっしゃる!! スレンダーだろ!! そこはスレンダーだろ!! むしろそれがイインダーだろ!! なあ!! 俺は既にその魅力にサレンダーだけども」
 Bがうるさい。プカプカと浮き輪を掴んで浮かぶ機人をステージにして、幾通りもの楽しみ方を見せてくれるユエイン。まずはオーソドックスかつ絶対必須かつ最強な腰掛けポーズから始まっている。う~~むサンダルにおさまった足首がとても奇麗ですね。
 彼女の銀髪に似合う帽子を被って水色のリボンを風に遊ばせて目元にチラつかせてみたりは序の口だ。紫色のボールをついたり画面外から現れるそれをレシーブしたり、海に向かってスマッシュしてみたりなどもしてくれている。サービスがすごい。
 あとは海に潜って海老を捕まえてみたり、などだ。余談だが、今回一番VR再現における予算が嵩んだのはこのシーンだったという。水中って難しいんだよ……。
「いいねいいね! 少し趣向を変えるぜ!」
「勿論、良いとも。――スタイリッシュに決めてみようか」
 一通り楽しんだ後、ユエインは静かに機人の脚部スクリューを起動する。モーターボートの如く海上を疾駆して、――そしてそのまま、急停止から勢いを利用した高々と跳躍しての飛び込みまで決めて見せたではないか。水しぶきの中で華麗にキメるユエインの水着姿が何とも眩しい。
 可愛くもあり、カッコ良くもある彼女の姿に、司会のBや観客たちがメロメロになったことは……ここではもはや語る必要がないことだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明智・珠稀

WIZ:審査員お任せ

■VR&行動
全面ガラス張り、海の見える美しきチャペルにて待ち受ける
新郎風タキシード姿明智、だが
「私とハッピーでサマーなウェディングをいたしましょう…!」
【早業】【早着替え】で水着姿へ
「さぁ、私の隅々までご覧ください…!」

■水着
黒のピッタリ系スパッツタイプの水着…だが
そのサイドには際どいスリット有
薔薇をモチーフとした優雅な装飾&黒革アクセントでハードで妖しい印象を

「こんな水着で結婚式を迎えられたら…そんな妄想が広がってしまいました…!伴侶となる方に、首輪の先の青薔薇を手渡し永遠の愛を誓いたい…!なんと素敵なシチュエーションでしょう、ふふ!」
うっとりド変態

※ネタ大歓迎です♡



●真夏のトランスフォーム
 そして世界はまたその形を変える。仮想現実での再現系イベントでは場面転換が容易なのだ。どれくらいかというと地の文一行で済むくらい。
 先ほどまで海を映し出していたホログラム映像が今回見せるのは、岬の高台にてそびえたつ、絶景を楽しめる全面ガラス張りのクリスタルチャペルだ。
 中からはガラス越しに青々とした海が良く見えて、雲一つない晴天が室内に柔らかな陽射しを届けては、白く輝くクリスタルクロスに反射させている。
「ご結婚おめでとう!」
「おめでとう、マダムさん!」
「末永くお幸せにね!」
「こ……?! これは、一体……ッ?! なぜ私はこんな格好を……?!」
 そしてチャペルの奥、誓いの場所で佇んでいるのは審査員の一人、マダムである。彼女はいつの間にやら白を基調としたウエディングドレスを着せられていて。本人もまだ、その状況に対応しきれていないように思えた。
 周りを見渡せば、白で染色されたマット仕上げのアンティークチャペルベンチに腰かけて、多くの人達がマダムのことを祝福してくれているようである。
 当然、マダムを除いた人達はVRによる演出なのだが。それでも、この仮想現実はマダムを困惑させるのには十分すぎる要素が揃っていた。その最たるものが――彼である。
「お待たせいたしました、審査員殿。ほら、私とハッピーでサマーなウェディングをいたしましょう……!」
「えッ……?! なッ、はッ……?! あ、貴方は……! え、は、はい……喜んで……。教育にも良い……」
 そう、何を隠そう彼の名前こそは明智・珠稀(和吸血鬼、妖刀添え・f00992)である。黙っていれば良い男、なのに口を開けば妄想狂言その他諸々吐き出す残念ド変態とは誰の言であったろうか。
 彼は困惑するマダムを正面から捉え、カメラ目線のままゆっくりとバージンロードを進みながら歩いてくる。新郎風タキシード姿が目に眩しい、珠稀の紳士然とした装いだ。
 ブラックフォーマルの代表格であるタキシードに身をキュッと包み、下ろしたままキチリとセットされた髪がなんとも爽やかで。白の手袋を付けた掌がマダムに伸びれば、マダムもそれに応じそうになる。既に彼女は珠稀のきりりとした魅力にメロメロだ。
 ……だが、その瞬間であった!
「え、え? ……~~ッ、キャーーーーーー!!」
 珠稀とマダムの手が触れ合おうかという瞬間、何と彼はその場で衣装替えを行って見せたのである! なんという早業、なんという早着替えであろうか! そして現れたのは……もちろん! 彼の水着姿である!
 さらに、彼の着替えに合わせてウェディング会場は昼から夜へと一気にその姿を変えていく! これもVR空間だからこそできる演出だ!
 これは正にたいへん……ではなく、変態と呼ぶにふさわしい所業! ここでいう変態とは個人の性質的な意味合いを表す言葉ではなく、トランスフォーム的な意味での言葉である。他意はない。ないんだい!
「答えてくれて何よりです、マダム。ですが、まだまだ……! さぁ、私の隅々までご覧ください……!」
 彼がタキシードの代わりに身に纏ってみせたのは、黒のピッタリ系スパッツタイプの水着。白のドレスをVRで着こんだマダムと良く映える、実に彼らしいともいえる水着。
 サイドには際どいスリットが。そして純白から漆黒へと変じた手袋に、彼の身体の至る所を締め付けるベルトとコルセット、チェーンにチョーカー。その手には蒼薔薇が握られて。身体中で『美』を表現する珠稀の肢体を、燦燦と照るような日の光ではなく、静かな月の光が照らしていた。
 薔薇をモチーフとした優雅な装飾に、黒革のアクセントが与えるハードで妖しい印象。相反するような二つの要素をその身に纏って美を共存させているのは、受け攻め変化な蠍座の男二しかできない芸当と言えるだろう。
「こんな水着で結婚式を迎えられたら……そんな妄想が広がってしまいました……! いつか伴侶となる方に、首輪の先の青薔薇を手渡し永遠の愛を誓いたい……! なんと素敵なシチュエーションでしょう、ふふ! そう考えていたら、このようなシチュエーションが生まれてしまったのでございます……。ああ、どうか罪深い私めを罰していただきたく……! さぁ、ご希望をお聞かせくださいご主人様、私は何にでもなりましょう! 貴方が望んでくれるのならば! ふふ……!」
「ヒッ ハッ アッアッ 教育に……教育に悪すぎる……。アッアッでも顔が無限に良い……。水着が……無限に……良い……。すきです……」
 月夜のチャペルでうっとりド変態な面を晒す珠稀相手では、マダムももはや骨抜きというところか。次の審査の時くらいには元に戻ってくれていると良いのだが。
 ともあれ! 素晴らしい水着、素晴らしいアピールであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・イルザ
●WIZ
楽しめればそれでいい
えぇ、本当にそれに同意ですね

私の水着は地球のアニメで見た、スク水というやつです
慎ましやかな体型だという自覚はありますので、こういったものを用意してみました
似合うでしょう?(とドヤ顔)

シチュエーションとなりますと……例えば、ひと泳ぎ楽しんだ後には砂のお城でも作ってみましょうかね?
天気もいいですし、ちゃんと水分補給もしながら……あ、DJさん一緒に作ります?

こう、水分補給する時の喉だとか、少しこぼれてつつーっと一筋流れる様とか
あとは、日焼けして赤くなった肌と水着に隠れてた部分の日焼け跡とかちらりと見える
そういうのっていいアピールポイントだと思うんですよ!



●そういうのも良いよね
「楽しめればそれでいい……ですか。えぇ、本当にそれに同意ですね」
「おう? よォ、お嬢ちゃんも来てたのかい! ……あの戦争の時以来、か! 嬢ちゃんとは何かと縁があるな! ようし、あのビーチまで競争だぜ!? 勝った方は負けた方に命令権ゲットな! それっスタート!」
「あ、自分の合図に合わせたスタートはずるいですよ! ……ええい、もう!」
 司会進行のDJことBと、柊・イルザ(妖狐の化身忍者・f12504)の二人組。この二人は何故だかよく分からないが、ともかく一緒に海で泳いでいた。
 最新のVR機器はそういった場面転換の導入すらブッ飛ばせるのである。イルザとBの二人は、新しく映し出された海を大変に満喫していると、まあそういうことなのである。
「ギャーウッソだろ?! あそこから逆転できるのかよ!?」
「ふふーん、 化身忍者を舐めないで下さいよ。余裕ですよ余裕。……では、そうですねえ。DJさん、一緒に砂のお城でも作ります? 一しきり泳ぐのも楽しんだわけですし」
「お前それ断る権利ない奴じゃンかよォー。上等だぜ、やろうじゃん! こうなりゃめっちゃ豪華なお城作るかんな! お堀とかどうする!? 天守閣は?!」
 そして今、Bが一方的に仕掛けた水泳勝負でBが一方的になぶり殺しにされたようである。残念ながら当然だ。イルザは化身忍者なのだから。忍者は泳ぎも速いのだ。
 そして二人は、僅かに人気も少ないビーチで砂のお城を作り始めた。何せここは水泳勝負の末にたどり着いた、にぎわう場所からはちょっと離れた良い感じスポットなのである。VRはそういう所の気遣いも出来るのだ。
 一心不乱に、そして冷静沈着に砂の城の外壁を形作っていく二人。会話が無くても楽しいのだが、会話があった方がもっと楽しいだろう。そこでBはイルザに一つ質問を飛ばすことにした。
「なァ、なァ。イルザの着てるそれ、アレだろ? 水の抵抗が少なそうなやつ……。ええと、なんていったっけな……。競泳水着! ……じゃなくて、ええと……」
「ああ、これですか? 私の水着は、地球のアニメで見たスクール水着……。いわゆる、『スク水』というやつですよ」
 そう、彼女が着ている水着は、なんと紛うこと無きスク水そのものであった。男子ならば嫌いな人物がいないとさえ噂される、SSWの一部では伝説化されたアイテムだ。
 『いるざ』と刻印されたネームプレートが可愛くもあざとい。あざとくもカワイイ。そういうとこやぞ。いつものリボンの色まで黒から赤に変えよってからに。
「あ~そうそう、スク水だ! いや、宇宙だと学校も船ごとにあったりなかったりだったからよ。イルザの格好が珍しくってな。……。ところで、そうしてその水着にしようと思ったんだ?」
「いえ、自分の身体が慎ましやかな体型だという自覚はありますので。そのため、こういったものを用意してみようかな、とね。ふふん、似合うでしょう?」
 イルザはBの水着に関する質問にも照れることなく、なんならドヤ顔で応えていく。スク水にドヤ顔のコンボが見事Bのみぞおちにダイレクトアタック。超! エキサイティンである。危うく致命傷だった。
「お、おお……! そ、そうだな、似合うと思うぜ! すごくな! ……し……、しかしここあっついな! ……VRなのは分かってるのに、気分だけでも暑いような気がしてくるぜ」
「そうですねえ、天気もいいですし。ちゃんと水分補給もしながら……あ。……Bさん、ほらほら。水分補給忘れちゃ危ないですよ」
「え? あ、ああ。そうだ……な……!」
 そう言いながら自らも水分補給を行おうとしたイルザの動作に、Bは何事かを感じずにはいられなかった。何年間かのDJとしての活動が、Bの直感を今冴え渡らせたのである。
 そして彼は気付いた。『イルザは水分補給する時の喉』を自分に見せてきていると。喉仏がゆっくりと上下するその動きを。または、経口補水液がイルザの口から少しこぼれてつつーっと、こう、一筋流れる様とかを。フェチかよ。
 あとは、ちらりと見える日焼けして赤くなった肌と、水着に隠れてた部分の日焼け跡とか……そういうのを……。イルザはわざと仕掛けているのだ。恐ろしい子……!
「どうですかね、こういうのっていいアピールポイントだと思うんですよ!」
「いや分かった! 分かったから! 分かった! お前もお前の水着もあざと可愛すぎるわ! 狙ってやるなそんなもん! 最高最高! ちくしょう!」
 そんな感じになった。すごくフェチだと思います。ぼくはすき。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール

ふむ、あぴーる……
槍も持ってきていますし、動き易さを宣伝するために、演武のひとつでもしてみましょうか
手足も胴体も服で隠せず、誤魔化しが効かないので、実力がストレートに評価されるでしょう

力強く聖槍を振るったり跳び跳ねたり見得を切ったり
暑い中で汗をかきながら全力で武技を披露する
終わったら観客の皆さんへ小さく手を振って退場



●そんな条例はない
「やいやいやいやい!」
「おうおうおうおう!」
「あァーーっとォ?! これはオリヴィア選手囲まれてしまったぞォーーッ!? 大丈夫なのかこれは!?」
「ふう……参りましたね。私はただ、演武をやろうとしていただけなんですが……」
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、既に暴漢と思しき何人かに囲まれている真っ最中であった。
 どこかの綺麗な海にある、特設ステージのその真ん中。オリヴィアと暴漢たちはそこに立ち、そして観客や審査員たちはそのステージの行く末を外から見守る形だ。
「うるせいやいうるせいやい! シスターの癖にそんな大胆な水着を着やがって! えちえちかコラァ! 胸が大きい!」
「そうだぜそうだぜ! これなんかの条例とかに引っ掛かってないか大丈夫か?! 魅力的が過ぎるでしょう法令とかによォ!」
 暴漢の言い草はそんな感じであった。IQ2って感じである。でもちょっと気持ちは分かる。
 白の三角ないしはブラジリアンビキニを着た清楚系メ眼鏡ポニーテールシスターとかもう……。大盛りじゃん。何がって? 何もかもがだよ……。
「え、え、いや、その……。こ、この水着を私が着ることと、私がシスターであることは関わりのないことでしょうっ?!」
「ほざくんじゃねえや~! そんな大胆な水着は彼氏さんの前だけで見せておくに留めやがれ~!」
「その通りだぜオラア~! うら若き乙女が柔肌を軽々に出すんじゃねェぜアァ~ンコラァ~!?」
 問答は無用のようであった。うむ。では、やることは一つだけ。オリヴィアは当然のように自身の相棒である破邪の聖槍をゆっくりと構えた。
 腰を下ろし、背骨は僅かに前へ倒して、胸は張りすぎずに呼吸を整える。身体の流れをコントロールし、そして――彼女は、やはりその槍を自身の腕の延長であるかのように操り始めた。
「すなはま!」
「びきに!」
「ふむ、あぴーる……。槍も持ってきていますし、動き易さを宣伝するために、演武のひとつでも……と思っていましたが、なるほど。そういうことですね? Bさん……と言いましたか。貴方も少々人が悪い」
「……ハハ、気付いたようだな、オリヴィア。『その通り』さ。一人での演武ってのも、絵面が少し寂しいだろ? それに、手応えはあった方が良いだろうしな。ンなわけで、アンタの動きに合わせて動くようなモブ敵どもを大量に用意しておいたってわけさ。演武に合わせてやられてくれる、見栄えの良いやつらってこったな」
 『手足も胴体も服で隠せず、誤魔化しが効かないので、実力がストレートに評価されるだろう』。オリヴィアはVR空間に乗り込む前、そのようなことを想像していた。
 それは確かにその通り。だが、やはり演武は誰かと共に行う方が見栄えも良くなるし、自分の形の機微にも気付きやすくなれるというものだ。動きを吟味し、決して早くは無いがゆっくりでもない速度で技を繰り出し続け、舞うかのごとくに技量を練る、『演武』。
 その鍛錬を行うにあたって、もしかしたら自分の動きに合わせた大量の相手を用意できるVRとは最適なのではないだろうか? ……話を戻そう。オリヴィアの実際の動きについて、だ。
「ふッ……! はッ、せいッ、イヤァァッ!」
 オリヴィアはその掌の中で力強く聖槍を滑らせながら振るい、跳び跳ね、見得を切ったりなど、様々な形で観客を楽しませながら自分の技に没頭していく。
 時に突き、払い、打ちのめし、斬り上げ、回し、柄で叩いて、刃で断つ。彼女の演武を見て、観客たちは槍ほど変幻自在な攻撃方法がある武器もそうあるものではないのだという事を思っただろう。
 そして、その変幻自在の技を体得するのに、オリヴィアがどれだけの時間を掛けたのか、とも。それほど彼女の槍捌きは繊細であった。彼女の動きに合わせるという暴漢たちの動きに全く不自然さがないのも、彼女の技量の高さを表している。
「みずべ!」
「なつだわ!」
 オリヴィアは暑い中で汗をかきながら全力で武技を披露する。それはそうだ。いくらこれがVRによる仮想現実であったとしても、運動しているという事実には変わりがない。順手で持った槍を片手で操って刺し、引き抜きながら空へと上げて両手で打ち下ろす。
 打ち下ろした勢いで槍を地面に差し、半身を預けながら空中に舞い上がって暴漢たちの上を取る。そのまま空中からの蹴りをお見舞いし、長くもった槍を空中で薙ぎ払いながら着地。長く持っていた柄を引き寄せながら回転させ、着地後の隙を狙おうとする暴漢たちの頭を打ち、怯んだところを柄を短く持ちなおしてから払う。
「……これで、最後です、ね……! ふう……」
「う~~む、お見事だ……! さすがオリヴィアだな、良い演武を見せてもらったよ……! 最高だった、ありがとう! すげえカッコよかったじゃねえか!」
 演武が終わり、観客の皆さんへ小さく手を振って退場していくオリヴィア。認めざるを得ないだろう。彼女の水着姿も、また、とてもとてもカッコよくて魅力的な、最高の水着だった、ということを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

塩崎・曲人

【街角】で参加

審査希望:3
可愛い女子の審査ができると思った?残念野郎でしたー!

オレ様をアピールするならやっぱ派手な演出が良いよぁ
ってことであれだ、サーフィンしよ
猟兵業で鍛えた身体能力をフル活用して、チューブライディングしながら登場
しかも腕を組んで、下半身のバランスだけで立つ!
「イェーイ、審査員サン見てるぅー?」
(口の端を吊り上げ悪そうな笑み)

水着はそう奇抜なデザインでもねぇが
その分オレ本体が目立つって寸法よ
柄も「紅葉頭」と良く言われる髪型に合わせて、あえてこれにしたし

仲間へ

ウカノ:
美人だよなー
既に赤ら顔じゃなかったら危なかった

メンカル:
これ計算でやってるからやべぇな
でもやっぱ似合ってるわ


御倉・ウカノ
●【街角】で参加
水着アピールねぇ。ビールグラビアの物まねをやってもいいんだが…せっかくだしちょっと趣向を凝らしてみようか。
『夕方、薄暗くなっていく中ビーチチェアに腰掛けながらカクテルグラスを揺らし物憂げな瞳で沈みゆく太陽を眺めている。しばらくのち、誰かの接近に気付くと優しく微笑んだ後グラスを置いて海に歩を進める。足元が少し浸かる程度まで来たところで振り向き太陽を背にしてパレオを少し摘み上げるポーズをとる』
…たまにゃこんなのも悪くはないよね。//仲間への感想 曲人:軽薄な見た目とサーフィンが実にマッチしてるね。…悪口じゃないよ? メンカル:儚い感じが実に似合ってるねぇ。あたしじゃこうはいかん。


メンカル・プルモーサ
● 【街角】で参加 審査員:3 うーん…アピールアピール…お嬢様っぽいとか良く言われたし…そうだなーこんな感じで……夜、星を見ながら海辺を歩いて行くか…灯りは適当に術式で灯りを作って周囲を旋回させる……そうやって星を眺めてるうちに急に風が吹いて来たので帽子を押さえる仕草を取る…といった感じで行こうかな……//塩崎:チャラ男にサーファーが加わり夏真っ盛りに見える…尋常じゃなく似合ってる…… 御倉:普段と違う雰囲気だけど意外と似合うね…ああいう大人っぽくて綺麗なのはちょっと憧れるな…


アシェラ・ヘリオース
● 【街角】で参加 審査希望:3
普段が堅苦しい軍服や鎧姿なので、ここぞと開放感に浸らせてもらおう。
指揮官業務は長かったので注目されるのは慣れているが、ここは演出も必要か。
『遊び疲れビーチの一角で座っていた俺(審査員)の視線の先、海から上がって皆が道を空ける中を悠々と砂浜を横切り、「もうバテたか、訓練が足りないようだな」と少しからかうような目で髪をかきあげ、見下ろすポーズを取る』
と言う所かな。昔に部下にやって妙に受けが良かったシチュエーションだ。何が良いのか未だに理解できんがな。



●真夏街角エキサイティング
「二人はもうどんな演出にするか決めたのか? 団長は既に決まったようだが」
「うーん……アピールアピール……。お嬢様っぽいとか良く言われたし……。そうだなーこんな感じで……」
「水着アピールねぇ。ビールグラビアの物まねをやってもいいんだが……。せっかくだしちょっと趣向を凝らしてみようか」
 海、海、海。無風の海である。魚たちは水面下で優雅に泳ぎ、海鳥たちはどこかに足場を見付けて一休み。海辺に面した砂浜に設置されている審査会場も、今は少しだけお休みモード。
 風も無く、凪いだ海原では波が起こるはずもなく。だが、たまにはそんな平和な海を眺めるのも良いかもな、と誰かが思っていたその矢先。そこには、【街角】の面々が集まっていた。どうやら各々自分の良しとするシチュエーションの模索に余念がないと見える。
 審査会場の先に広がるのは、VRで再現された真夏の海。その沖の方から、唐突に『魁』がやってきた。エキサイティングの先駆けが、突風と大きな波を引き連れて、我らがビーチへやってきたのである!
「ヒャッハー! 真夏の切り込み隊長MAGATO様、華麗にキメて波間に参上ォ!」
 シンプルな黒のタンクトップに、黒を基調として赤く染まったカエデ柄のサーフパンツ。同じく黒をメイン色に、オレンジのワンラインが鮮やかなサーフボード。
 真夏のビーチに、待つことを知らない秋柄の特攻隊長が殴り込みである! 勿論健康面では万全を期して準備運動を見えない所で済ませてきた『彼』は、巧みなパドルから流れるような重心移動でサーフボードに乗って見せると、そのまま勢いを殺さずにこちらへ向かってくるではないか! 勿論、彼を運んでいるのは危険なまでにビッグな大波だ!
「おいおい、アイツ……! 中々大した重心移動だな……。あのクソでかい波の勢いを全て余さず拾いきってやがる。名前は、確か……」
「可愛い女子の審査ができると思った? 残念、次の審査対象は野郎でしたー!」
 彼の名は塩崎・曲人(正義の在り処・f00257)。審査員の一人である正純も、彼のことは風の噂で聞いたことがある。なんでも不思議な道端の長だとか。誰もが行き違う、ただの街角のHEADということらしいが、成る程。この『波攻め』を見るに、頭を張るのも頷けるというものだ。
 曲人は自分の水着姿をアピールするならどうする? というVRでのシチュエーションを決めるための質問に対し、『やっぱ派手な演出が良いよぁ。ってことであれだ、サーフィンしよ』と即決。共に来た仲間たちの順番はとりあえずさておき、いの一番に最高の瞬間を楽しんでいる様子であった。
「オイオイ……待て待て、いくらVRだからって波が大きすぎやしねえか? このままじゃ、曲人の奴、波に飲み込まれ――ッ、『そういうこと』か。成る程、目立ちたがりだね」
「イェーイ、審査員サン見てるぅー? こっからが……オレのブッ込みだぜッ!」
 そして、恐らく審査員たちの中で正純だけが気付いた。曲人を運ぶ大波は、審査会場に近付くにつれてどんどんその大きさを増している。明らかに危険な領域だ。波の高さは曲人のツンツンヘッドよりも高くなり、少しでも曲人の速度が緩んでしまえば彼を呑み込もうとするだろう。
 だが、それでも彼は臆さない。怯まない。足元は水で、向こう見ず。見据える先は、ただただ自分の信じる道だけだ! 曲人は加速しすぎてしまったタイミングでカットバックを行い波の速さに合わせ、アップス&ダウンズで速さの微調整を重ねて波と同化していく!
 そして、遂にその時が来た。大きくなりすぎた波が、自重に耐えられず上からどんどんと崩れ始めたのである! ――だが、道はある。海に壁と屋根が出来ても、潜り抜けられるトンネルが、曲人の前には確かにある! そして、ここで引くような彼ではない!
「――きたぜッ! オラァッ!」
「マジかよ……! アイツ、キメやがった! どんな体幹してやがンだ……!」
 スタンドアップした状態でボードの上でバランスを取る曲人は、猟兵業で鍛えた身体能力をフル活用して、会場にドンドンと近付いてくる。大波のトンネルを潜り抜けながら、勢いを殺さず、まっすぐと。
 そう、彼はこの大一番でチューブライディングを決めているのだ! しかも腕を組んで、下半身のバランスだけで立つという荒業である! 口の端を吊り上げ悪そうな笑みは崩さず、後ろに重心を置いた下半身でボードと波を操って。
 そして会場の至近まで近づいた彼は、波間のトンネルから加速して脱出! そのまま曲人はボトムターンからフェイスを上がると、波のトップに躍り上がって水に身体を寄せ、上半身を捻ってボードを波に当て込んでターン! 水の飛沫をまき散らしながら加速し、彼は会場に滑るように降り立った!
 チューブライディングに並ぶ大技、バックサイドオフザリップである! 格好良くキメてみせた曲人に対し、会場から割らんばかりの拍手喝采が巻き起こっているのもむべなるかな、だ。
「さすがだな、団長。お見事なテクニックだったように思う。私はそこまで波乗りに詳しくは無いが、それくらいは分かる」
「お見事! 軽薄な見た目とサーフィンが実にマッチしてるね。……悪口じゃないよ?」
「チャラ男にサーファーが加わり夏真っ盛りに見える……尋常じゃなく似合ってる……」
「お仲間からの評判も上々のようだな、曲人? 最高に目立ってたし、格好良かったぜ。……水着のチョイスも、そのためかい?」
「へへ、その通り。水着はそう奇抜なデザインでもねぇが、その分オレ本体が目立つって寸法よ。柄も『紅葉頭』と良く言われる髪型に合わせて、あえてこれにしたし」
 アピールを終えて会場の皆に言葉を返す曲人は、全身に水を浴びていて。水も滴る何とやらとは、きっと彼の今のような状況を言うのだろう。
 先ほどのようなアクションを見せられて、アツくならない男などいない。正純からの評価は、勿論全評価満点であった。
「いやいや、本当に良く似合ってたよ。来年サーフィン人口が増えたら、曲人の影響かもしれねえな。――さて! お次は誰だい?」
「では、私が。普段が堅苦しい軍服や鎧姿なのでな、今回は開放感に浸らせてもらおう」
「お、良いね。OKだ、それじゃ始めようか。次のVR出してくれ!」
 そして切り替わっていく周りの景色たち。真夏の海であることには変わりないが、先ほどのサーフィン会場のような雰囲気よりも、ほんの少し引き締まっている空気だ。ただし、活気は先ほどと変わらないくらい。熱気はむしろ増えただろうか。
 まるで、何かの軍隊の演習の途中であるかのような。あるいは、隊の仲間と海へ遊びに来て、普段の訓練の結果を遊びでも示してやろうぜ! というノリでガンガンに遊びつつも、最低限の規律は守られている、といったような……。
「ほら、まだまだァ! へへっ、どうしたよ! アシェラ姐さん仕込みのブロック見せてみろやァ!」
「うるせーや! お前こそ空いてる場所に向かってスパイクしてくんじゃねー! 男なら真正面から作戦行動して見せろやこらァ!」
 ああ、いや。気のせいではない。次のVRのシチュエーションはどうやらそれだ。いずこか名のある軍隊が、今日だけお忍びでビーチに遊びに来たような形だろうか。
 むさ苦しい男たちが、引き締まった肉体を駆使してビーチバレーに勤しんでいる。あちらではビーチフラッグや遠泳大会なども開催されているようだ。彼らの肌は皆一様に白い部類であり、まるで今まで太陽の光にさらされることが少なかったようで。それでも、何かのために戦い続けて出来上がった筋肉による運動は実に見事なものであった。
「ほらほらどうした新入りィ! 30往復程度でもうバテっちまったのか?! あと20往復は走り込みやるからな、水飲んだか塩飴舐めたか!?」
「い……! いや、俺は……! っは、ァ……! 新入りじゃねェって、言ってンだろ……!」
 その中で一人、早々にバテてしまった様子の男がいた。正純である。何故審査員の一人である彼がVRで再現された仮想現実のはずの軍隊の中に配置され、あまつさえこの状況に巻き込まれているのかは定かではない。
 恐らく本人ですら、なぜ自分は砂浜でいきなり500mの走り込みを連続でやらされているのか疑問のはずだ。いくつか理由に見当は付いているが、理由が分かったからと言って正規の軍隊(さらに言えば、仮想現実である彼ら)の訓練を無視して逃げるということも中々できない。逃げても数で囲まれる、スタミナで負ける、ペナルティでまた走らされる、の三重苦であるからだ。正純はただ待つのみである。『その時』が来るのを、ただただ。
「……! はッ、はッ……! ちくしょう、VRだからって疲れまで再現しなくていいだろうが……!」
「ぶいあーる? 何を言ってんだよ新入り、さあ走れ走れー!」
 走って、走って、ただ走って、また走って。砂浜で走るのは平地で走るよりも相当キツイことは周知の事実であるかと思う。踏み込みに対して不動である一般的な道に対し、流動的な運動を取る砂は足腰の踏み込みによる推進力を得にくいからだ。
 そんな場所で500m、50往復を走るなど、それこそ歴戦の軍隊の一員でなければ到底不可能に近い話であって。正純が50往復に届かずにバテてしまい、休憩の許可を貰って砂浜の一角で休むのも無理のない話だった。
「…………ふゥ……。いや、すげェな。以前の戦争の時、報告書で読んではいたが……このスペックを持っていたのが、アイツの『頼れる部下』たちって訳か。なるほど、これは……自慢にもなるだろう練度だぜ」
「ああ、そうだろう? 今でも自慢の部下たちだよ。……その軽薄さは、いつになっても変わらないがな」
 『来た』。正純は不思議と頭の中に響いて聞こえてくる声に対してそのように感じた。この不可解とも取れるシチュエーションが用意された理由は、恐らく『彼女』の希望によるものなのだろう。アシェラ・ヘリオース(ダークフォースナイト・f13819)が思い描く、彼女自身の水着姿の最高な状況というものを再現するために。
 振り返らずとも分かる。アシェラは今、水着姿のままに自分が振り返るのを待っている。そしてきっと、今はどこにも見えない観客たちも、自分の身ている景色を通して彼女の水着を見ることになるのだろう。であれば、こちらも……審査員の一人として、お膳立てに協力するのはやぶさかではない。
「ああ、だが……俺にはまだこの訓練は早かったみたいだよ。『バテちまったぜ』、指揮官殿?」
「――ふふ。もうバテたか、訓練が足りないようだな」
 振り返った正純の目に映るのは、『遊び疲れビーチの一角で座っていた俺(審査員)の視線の先、海から上がって皆が道を空ける中を悠々と砂浜を横切り、厳しくも優しい言葉を口にしながら、少しからかうような目で髪をかきあげ、見下ろすポーズを取る』アシェラの姿。
 黒のハイヒールにクロスホルタービキニが、色白の肌に良く似合っている。右腕のブレスレットに左足のアンクレット、両耳で輝く金色のピアスと、彼女の自前である赤い瞳が、真夏の砂浜に負けず劣らず煌めいていた。
「……ああ、参ったよ。曲人に同じく、最高だったぜ? アシェラ。シチュエーションも含めてな」
「そうだろう? 指揮官業務は長かったので注目されるのは慣れているが、ここは演出も必要かと思ってな。昔に部下にやって妙に受けが良かったシチュエーションを再現してみた。何が良いのか未だに理解できんがな」
 少し傾き始めた太陽はとても眩しくて。それでも、観客たちの目からすれば――今見ているこの光景の中で、何が一番眩しいのかなど、言わずもがなであったことだろう。
「さて、お次はどなただい? 出来れば次はあまり走らないシチュエーションを希望したいね」
「それじゃ、あたしが。大丈夫、今回は走ったりしないからさ」
 そして場面はまた切り替わる。今度映し出された光景は、先ほどと同じくまたしても海辺だ。ただ、今回は先ほど見た二つよりも時間が進んでいるようで。
 三番目の彼女――御倉・ウカノ(酔いどれ剣豪狐・f01251)が提示したシチュエーションは、夕方の海。オレンジ色の太陽が、暗くなっていく海にゆっくりと抱かれていく瞬間。
 どこかノスタルジックで、抒情的で。百の言葉よりも、一の行動の方が意味を持つような、そんな時間。夕暮れ時のサンセットビーチで、またしても正純だけが取り残されていた。
「お次は、夕陽かい? ……なるほど、『魔法の時間』か。水着を奇麗に見せるなら、確かに最高のシチュエーションの一つだな。ウカノは良い趣味してるぜ」
 探し人はすぐに見つかった。黄昏時とはいえ、ここは水着のお披露目という目的のため、お誂え向きに用意されたVRのシチュエーション。だからこそ迷うことなく正純は真っ直ぐ砂浜を歩き、そして彼女を見付けることができた。
 ビーチに二つ置かれた、海側に面したビーチチェア。何も悩むことなく、正純は彼女――ウカノへと、声をかけていく。
「よう、悪いな。待たせちまったかい? 水着の似合う美人サンをよ」
 ウカノは、薄暗くなっていく夕暮れ時の中で、ビーチチェアに腰掛けながらカクテルグラスを揺らし、物憂げな瞳で沈みゆく太陽を眺めていた。
 その表情から彼女が何を思っていたのか察するのは余りにも難しい。ウカノと正純はこれが初対面であるし、互いに互いの人となりなどはほとんど知らない状況である故だ。
 だが、それでも。暗くなっていくビーチの中で物憂げに佇む女性を前にして、無作法に声を掛けるなどだれが出来ようか。待たせたことへの謝辞と、水着に対する賛辞を述べるのは、きっと通すべき筋のようなものだったろう。
「いや、こっちはこっちでゆっくりしてたよ。お気になさらず、さ。……たまにゃこんなのも悪くはないよね」
 正純の接近に気付いたウカノは、言葉を返しながら優しく微笑んで。グラスを置いて海に歩を進めていくではないか。そして彼女は――足元が少し浸かる程度まで来たところで振り向き、沈みゆく太陽を背にして、パレオを少し摘み上げるポーズを取って見せた。
 その瞬間である。殆ど沈んだ太陽が、世界に薄明の時間をもたらした。全てのものが美しく、そして美しいものはより美し積み得るという魔法の時間。『マジックアワー』の到来である。
「……いや、これは。ハハ、役得だね。ありがとうよ、ウカノ。……ああ、悪くないさ。決して悪くないとも」
 赤メインのタイサイドビキニと白いサンダル。花柄のパレオに身を包んだウカノの表情が、彼女の水着姿が、金色の時間の中光る太陽に照らされていく。
 既にいくらか嗜んでいたのだろうアルコールと、今にも沈んでしまいそうな夕焼け。その二つが彼女の顔を赤く染めて。その光景は――正に、魔法のように美しかった。
 もはや言葉はいらず、彼女のことを知っている人も知らない人も、勿論観客たちですらウカノの魅力に息を呑む。美人と夕暮れ、夏に水着。誰でもわかる、天下無敵の最強コンボだ。
「美人だよなー。既に赤ら顔じゃなかったら危なかった」
「普段と違う雰囲気だけど意外と似合うね……。ああいう大人っぽくて綺麗なのはちょっと憧れるな……」
「ああ、確かに。色味も良いし、夕焼け時に良く似合っている素晴らしい水着だと思う」
 普段は見せないのだろう彼女の一面を見、【街角】の面々も思い思いに声をかけていく。このような軽口を叩けるのも、ウカノと彼らの信頼関係があったればこその話だろう。
「おやおや、お言葉だね? 危なかったとか意外とかってどういうことか問いただしたくなるけど……でも、ま、今日の所は良いかな。気分いいしね」
「他の奴らに負けず劣らず、ウカノの水着姿が最高だったって事さ。きっとな? ――さて! それじゃあ最後だな? 準備良いかい?」
「……ん……できてる……いつでも、どうぞ……」
 ウカノの番も終了し、そして最後に回ってくるのはメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の手番だ。
 最初の方こそ僅かにシチュエーションについて思い悩んでいた彼女であったが、他の友人たちのお披露目が行われている間に、既に自らの思い描くシチュエーションを用意し終わった様子。
 観客たちも、VR機器が次に映す映像は何かと待ち望んでいる様子であった。【街角】の面々がこれまで三者三様の水着の魅力というものを見せてくれたおかげもあり、会場の期待値も高まっている、ということ。
 だが、それでもメンカルに緊張などの様子は見受けられなかった。彼女は自分の正解を既に見付けているからであろう。自信がある、といった風情のようにも見える。そんなメンカルの様子を見て、審査員である正純は安心そうに笑って彼女を送り出す。
「OKだ。それじゃ――楽しんでいこう。VR、スタート!」
 瞬間、黄金の太陽も魔法の時間も一瞬で移り変わっていく。そこに新しく生まれたのは――夜、だ。
 白い砂浜、青い海。海辺なのは他の三人となんら変わらない。だが、曲人が乗っていたサーフタイムとも、アシェラが用意した遊ぶ時間とも、ウカノの魅せた儚げな時間とも違う。
 青い空と白い雲は鳴りを潜め、代わりに夜空を支配するのは満点の星空と、金の三日月。幻想的でもあるほどに静かで、暗くて。でも、とても奇麗で美しいこの時間を、メンカルは独り占めしてみせている。
「おお、コイツはすげェ。超奇麗な星空じゃねェか。シチュエーションの勝利だな、コイツは。さて、細工は流々といった様子だが……あとはメンカルの水着がどんなもんか、だな」
 夜空に浮かんだ星々はどれもこれもが煌めいていて。それがハッキリと見えているのは、やはり今いる海辺に光源が少ないからであろう。都会では到底見られない、美しい光景だ。
 そして黒く染まった海辺と砂浜には、今ぼんやりと薄明かりが生まれ始めた。メンカルの術式による光源だ。ハッキリした光ではない、蛍の光のような柔らかで優しい光が、辺り一面をくるくると周りながら足元を照らしてくれている。この幻想的な空間にはこれくらいの明かりが丁度良いというものだ。
「……あ、これ以上ないほど浮かれてるグリモア猟兵の人だ」
「よ、メンカル。夜のお散歩とは良いシチュエーションじゃねェか。水着も良く似合ってるぜ」
 星と月、それから術式の光の下で姿を現したメンカルが着ている水着は、オフショルダー型の水着である。ヘキサグラムの星模様のパレオが彼女の足元を包み、腰元まであるかという程の滑らかなウェーブヘアと共にメンカルの雰囲気に良くマッチしている。
 レースアップのサンダルや、水色のリボンが洒落ている白いつば広の帽子などの小物も実に良く似合っていて、オリオン・ブルーのアクセサリは薄明かりの下でアクセントとしての光を十二分に放っていた。実に見事な水着選びのセンスと言わざるを得ないだろう。これには正純も脱帽であった。
「青と白を基調にした色選びが良いな、瞳の色や髪の色とを互いに惹きたてているように見える。眼鏡は変えなかったんだな?」
「……うん……。使い慣れてるし、これがないと星も眺められないから……。あっ」
 その瞬間、正純と話しながら星を眺めていたメンカルの帽子が風に煽られてしまう。夜に時折吹く海風は勢いが強く、強風と形容して差し支えないほどだ。
 彼女はなんとか帽子を押さえながら風に耐えるしぐさを取る。どうやらギリギリで飛ばされずに済んだようだ。その構図を見て、【街角】の面々にも思うところがあったらしい。
「これ計算でやってるからやべぇな……。でもやっぱ似合ってるわ」
「満天の星空か……。定番だからこそ、本人の持つ魅力がよく映し出されているな」
「儚い感じが実に似合ってるねぇ。あたしじゃこうはいかん」
 そう、あくまでこのシチュエーションはメンカルが用意したもので。であれば、この強風も彼女が予めセットしておいたものだと言えなくもないのだ。
 実にあざとい。帽子を押さえる水着姿の美少女など、誰しもが好きに決まっているではないか。
「ハハ、まあこの場は『貴方の水着姿が最も映えるシチュエーション』を見せて! ってコンセプトらしいからな。計算だろうと、これはメンカルの魅力の一部だろうぜ。……言うまでもなく、素晴らしかったよ。四人とも、ありがとうな。そちらも楽しんでくれたなら幸いだ」
 【街角】メンバー四人の思い描く光景。その全てが終了して、彼らは自らの水着の魅力を余すところなく伝えきったと言って良いだろう。
 そして、その魅力がどのように観客たちに伝わっているかについては……。会場の盛り上がり具合を見れば、わざわざ説明せずとも良いだろうという程だった。早い話が、最高だったということである。
 個性豊かな四つのシチュエーションをありがとう、楽しませてもらった。
 お疲れ様、皆!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マルコ・トリガー


フーン、VR?
よくわかんないけど、興味あるから参加してみようか

ボク、水着は初めてでね
器物の頃は水とは相性悪くてさ
水着はおろか海に行くなんてことも考えた事なかったよ
だから水着をよく知らなくてね
知り合いにアロハとサーフパンツにすればいいって聞いたから、色やデザインは店員さんにお任せしたんだ
やはりプロに任せて正解だったね

折角だから水鉄砲でシューティングゲームでもしてみたいものだね
【竜飛鳳舞】で縦横無尽に飛び回って撃つとかね

銃のヤドリガミの輝く瞬間はやっぱり獲物を狙い撃つ時、じゃないかな
本物の銃でも水鉄砲でもそれは変わりないよ
誰かボクと勝負するかい?
フフ、銃のヤドリガミはそう簡単に負けはしないよ?


メルノ・ネッケル

面白いマシンやな、それではレッツゴー!水着が輝く場面を想像するんやな?

……何故ジャージ&ビキニで機動性を確保したのか?何故二丁も水鉄砲を買ったのか?

そう、水鉄砲バトルの為……それも集団戦、バトルロイヤルの為やろ……!
金魚すくいのポイを頭に付けて的に、全部破れたら脱落や。
審査員は3番、正純さんに頼む。厳正審査でお願いな?

さあ、老若男女集まる浜辺の銃撃戦の始まり。
手加減はなしやで、本職の水射撃をお見舞や!

続いて一気に決める!『狐の嫁入り』水鉄砲バージョン……行くでG&P!
真夏の天気雨、持ってけ泥棒!!

決まったな、さて次の相手は……あー!!
一気に撃ちすぎてもう水あらへん!!逃げろーリロードー!!



●最新VRでのこんなシューティングゲーム誰だってやりたいと思う
「フーン、VR? よくわかんないけど、興味あるから参加してみようか。……ボク、水着は初めてでね」
「おや、そうなのかい? 少し意外なような気もするけどな……あ、そうか。兄ちゃんは確かヤドリガミだったな。そういうことかい?」
「そういうこと。器物の頃は水とは相性悪くてさ。水着はおろか海に行くなんてことも考えた事なかったよ。だから水着をよく知らなくてね」
「ほほォ。……でも、その割には……くく、楽しそうな顔してねえか? よっぽど良い水着と縁があったんだな、きっと。それ……。選んだのは自分かい? 良いセンスだな」
「いや、知り合いにアロハとサーフパンツにすればいいって聞いたから、色やデザインは店員さんにお任せしたんだ。やはりプロに任せて正解だったね。サイズもぴったりで動きやすいし……。デザインも……うん。別に……嫌いじゃ、ない」
「ハッハッハッハ! そいつは結構じゃないか! 良い知り合いと良い店員さんを知ってるんだな、それは多分お前の人徳が為せる技ってヤツさ。……さて、OKだ。VRの方、準備万端だぜ! バンバン撃って暴れて、お前の水着姿の良さッてのを見せつけてくれよ! ――本気で浮かれて来な!」
「……フーン? 司会の人も結構言うね。ま、夏だし? ボクもこういうの悪くないかなって思ってるし。……それじゃ、せっかくの暇つぶし。本気でやらせてもらおうかな。――準備良いよ」
「OK! 行って来いッ、――マルコ・トリガー(古い短銃のヤドリガミ・f04649)ッ! 大暴れの時間だぜ!」
 マルコが望み、Bが選出した今回のシチュエーション。それは、――VRシューティング! 未来の最新版VRにおいては、もはやゴーグルやコントローラーなどを付ける必要もなくゲームによく似た環境さえ容易に作れてしまうのだ! VRってすごい!
 今回選ばれたのは、シューティングの中でも特に面白いとされている作品を、司会のBが独自にプログラムを夏用に組み替えた特注品。その名も、「SEA RECALL」! 真夏の陽気に当てられ、夏ウイルスに感染した一般人たちを水鉄砲で撃って正気に戻そうというコンセプトのシチュエーションである! どんなコンセプトだよ。
「へェ? 折角だから水鉄砲でシューティングゲームでもしてみたいものだね……とか思ってたら。本当に出来るんだ、こういうの」
「ギギギ……! ミズギ……ホシイ……!」
「ナ……! ナツヲタノシメー!」
「スイカヲワレー! カキゴオリヲクエー!」
 移動は右スティックを動かして、予め移動するところを指定してから向きを決めてワープで移動だぞ! その方がVR酔いが抑えられるんだって。なんだかすごい色々考えられてるよね。……いやいやいやいや、違う! これは未来の最新版VRの話であった、どこかの世界の2019年台のVRゲームの話とかしてないんだ!
 マルコの目の前に現れるのは、大量の真夏の陽気に当てられ……面倒だな。『夏ゾンビ』と呼称することにしよう。彼らは文字通りうじゃうじゃと、マルコの立つビーチを覆いつくさんばかりの数で襲い掛かってくるではないか!
「コイツらが相手? ……フーン、数だけはやたらにいるみたいだね。とりあえず、退屈は……しなさそう、かなッ!」
 これが一般人ならば、普通は四方八方から襲い掛かってくるゾンビたちに戸惑い、囲まれて速GAMEOVERだろう。VRゲームはとにかく視覚から得られる情報の取捨選択が頼りになる。あ、ちなみに今回の設定は一発でも敵の夏攻撃を喰らったらアウトの超ハードモードです。
 だが、それはあくまで一般人が普通のVRゲームをやってたら、の話。これは違う。これは、凄腕の猟兵であるマルコが、未来の最新版VRをプレイしているって話だ!
 彼は全方位から飛び掛かってくる夏ゾンビたちの攻撃へ機敏に反応し、適した行動を毎回取っては見事に全て躱していくではないか! 上段の攻撃へはスライディングで、下段の攻撃へは軽いステップで! 彼の鋭敏な感覚は視覚以外も研ぎ澄まされ、そして未来のVRは僅かな音や匂いなどの『気配』ですら再現を可能にしている。ならば、この状況で――マルコが敵から攻撃を喰らうことは、あり得ないといって良かった!
「おおおお?! すげェなマルコ! なんだよ今の三角飛びからの空中宙返り放射撃ちとかいう超高等テクニック……! ああ、何だその回避!? 前転からの振り返りジャンピング撃ちとか使用方法に記載されてねえぞ!? すげェカッコいいじゃねえか!!」
「これは超高性能なVRなんでしょ? ボクは自分の思うように、いつも通りやってるだけだよ」
 彼の動きを滑らかにさせているのは、彼の確かな実力と、ユーベルコード【竜飛鳳舞】の影響が大きいのだろう。マルコの類まれな射撃の腕と、そしてユーベルコードによる超身軽な三次元立体機動。この二つがあれば、ステージの空中を縦横無尽に飛び回って全ての夏ゾンビの頭を的確に撃ち、ハイスコアレコードを更新するなど、彼にとっては造作もないことであった。
 空中を自在に跳ねれるとかすごいトラッキング技術だな……すごい……。何の話だこれ? 
「さて、どうかな? 銃のヤドリガミの輝く瞬間はやっぱり獲物を狙い撃つ時、じゃないかなと思うんだ。本物の銃でも水鉄砲でもそれは変わりないよ」
「ああ、マジでカッコ良かったぜ! マルコの空中での動きに青のアロハシャツがはためいてよ……! そんで手持ちの水鉄砲が一度動けば、それだけで敵が倒れていってんだ! マジでお見事な腕だったし、超~良かったよ! めっちゃスクショ撮っちまった! まさかステージの撃破数4桁突破するとか……いや、ホントすげえな!」
「フフ、そうでしょ? ……ねえ、まだ続けても良い? さっきのも良い準備運動だったけど、そろそろ体が温まってきたし。もしくは、――」
「仕方ねえなー、そしたらもっと難しいのを、今から用意して……あ、あれ? オーイ、マルコ? ……アレ?! マルコどこ行った?! オイスタッフ! 全員でマルコの反応探せー! もしかしたら……別のVR空間に紛れ込んじまったのかも……!」
 これでも「SEA RECALL」の最高難易度ステージだったのだが、マルコは軽々とクリアしてしまった。さらには、良い準備運動だったと言い放つ始末。これにはBも黙っていられない。
 今から新しいステージを即興で用意するかと思った矢先、……なんと、マルコは消えてしまった。彼はどこに飛ばされてしまったのだろうか? 続きはWEBで。

●時を大体同じくして
「面白いマシンやな、それではレッツゴー! 水着が輝く場面を想像するんやな? 任せとき! おりゃーっ開始!」
「展開早いなオイ!? まあ良いか、それじゃ初めていこうぜ野郎ども! 『フォックスサマーは!?』」
「「「「水着の合図!!」」」」
「サンキュー野郎ども! 良いノリだぜ! それじゃ、変則型水着バトルロイヤルVR、今スタートだ! 我らの主役は勿論コイツ! 『夏が来た!! 何時もの二丁拳銃は水鉄砲に持ち替え、水着姿で海へ繰り出そう!』でお馴染み! みんな大好きメルノ・ネッケル(水器狐・f09332)だーーッッ!! 頑張って来いよーーッッ!!」
「ひゃー、なんかちょっと照れるやーん! でも、こんなアツいエール貰ったら……! うん、狐火がグングン燃えてきた! よーし、やったるぞー!」
 マルコがVR世界から存在をロストしてしまったのと大体同じくらいの時間のことである。ここは『貴方の水着の良いところコンテスト』の第二会場だ。そう、第二会場があったのだ。混雑緩和のために用意しておいたとかそんな感じの奴である。
 第二会場で司会進行を勤めているのは正純であった。本来の司会進行役であるBも第一会場で忙しそうなのである。さておき、メルノが考案する、今回のVRシチュエーションとはなんなのか?
 その謎を解き明かすカギは、メルノがVRシチュエーションを希望する際の会話にあった……! 少し、時系列を戻してごらんいただこう……! すでに上記の会話でバレてるとか言わないでくださいね。ほわんほわんほわんめるのーーん(回想シーンに飛ぶ音)。
「……正純さん。……うちは何故ジャージ&ビキニで機動性を確保したのか? うちは何故二丁も水鉄砲を買ったのか? ……その理由……分かるやろ?」
「お前………………! もしや……。アレをやるのか……!? 危険だぞ……アレは……!」
「フ………………そんなこと、百も承知や……。それでもこの装備を集めたのは、そう、水鉄砲バトルの為……! それも集団戦、バトルロイヤルの為やろ……!」
「ぐっ……! がっ……! メルノ……! お前って奴は……! ホント粋狐(この言葉はニュアンスで各々理解してください)だよ……! 最高じゃねえか……。OK。そこまで覚悟が決まってるなら、俺からは何も言えねえな。脱落のルールは?」
「金魚すくいのポイを頭に付けて的に。全部破れたらその時点で即脱落や。審査員は正純さんに頼む。厳正審査でお願いな?」
「ハッ。当然、判定は厳しく取るからな? 参加者はこっちの方で見繕っておく。MC.メルノの名前、使わせてもらうぜ」
 ほわんほわんほわんめるのーーん(回想シーン終わりの音)。そういうことが良い感じについさっきあったのだ。
 快哉を叫べ! そういう訳で――コンテストの観客たちからも参加者を募った、変則型水着バトルロイヤルVR! 今、開催である!!
「さあ、老若男女集まる浜辺の銃撃戦の始まり。手加減はなしやで、本職の水射撃をお見舞や!」
「ヘッ、あのMC.メルノと一緒の部隊に立てるとは光栄だがよう! いくらアンタのファンとはいえ、俺らが手加減することは期待しないでもらおうか!」
「むしろ上等、その意気や! せっかくのアツい夏、もっと楽しんでいくでー! 出し惜しみは無しでいこうっ! 全力全開でかかって来いッ!」
 メルノ主導で立案、及び開催されたこのバトルロイヤルだが、参加人員はめっちゃくちゃに多かった。一般公募からの予約申し込みが、想定の遥か何倍も届いていたのである。
 彼女の名前が、活躍が、頑張りが。色んな世界で誰かを助け、多くの世界で人々を勇気付けてきた彼女の功績が、今回のバトルロイヤルをここまで盛り上がらせたのだ。
 祭りの参加者は多ければ多いほど良いとは良く言ったもの。バトルロイヤルの熱気は果てしなく高まり、そこかしこで撃ち合いが行われている。……だが、全員笑顔だ。撃つ方も撃たれる方も、勝つ方も負ける方も、みんな満足そうな笑顔を浮かべている。まるで、――いつでも楽しそうであらんとする、メルノから影響を受けたかのように。
「ぐわーやられたァ! ちくしょーっすごいぜアイツ!」
「ああっマジ?! やっぱ強いなあ、メルノさん……! 憧れる……!」
「1652番、3045番、アウトだ。VR接続をオフにするぜ。……ハハ。流石だな、メルノ。もう撃破数が3桁後半かよ」
 老若男女を問わず参加しているこのバトロワで、同じくメルノだって特定の誰かを狙ったりなんて野暮な真似はしていない。するはずがない。この戦場じゃ、目があったやつには水を喰らわせてやるのがマナーなもので。
 襲い掛かってくる水弾の群れはスウェーで躱し、それでも避けきれない水は海に映える『緑と紫』で撃ち落として相殺していく。
 濡れた赤いジャージをマント代わりに翻し、自前の金髪にも雫を滴らせて。それでも彼女は笑いながら、自分のポイだけは死守して前に進む。他の場所がどんなに『撃たれても』お構いなしだ。命(ハート)が一つさえ残っていれば、九尾の狐が死ぬことは無いのだから!
「続いて一気に決める! 『狐の嫁入り』水鉄砲バージョン……行くでG&P! 真夏の天気雨、持ってけ泥棒!!」
「えッ、おい……! チッ、マスクブロック……! ぐ、がぁぁっ!」
「広域範囲への物量攻撃……ッ! シールド……! ダメだ、受けきれないッ!」
 水しぶきと日を浴びて輝く黒ビキニが眩しい。メルノの放つユーベルコード【狐の嫁入り】で、彼女は大きくその場で跳躍。そしてそのまま周囲に存在する全ての参加者へ向けて、水鉄砲による雨を降らせてみせた。
 ――晴れた空に雨が降り、後で笑うは狐だけ。カンカン照りでも降り注ぐ『水弾の雨あられ』は、まさに天気雨と呼ぶにふさわしくて。メルノの近くにいた参加者たちは、全員今のでリタイヤだ。南無南無。
「25番、165番、788番、2693……ああ、もう面倒くせえ! とにかくメルノがいっぱい撃破だ、これで撃破数4桁……。――ア? なんだ? VR空間にねじれ……!? ッ、コイツは?!」
「決まったな、さて次の相手は……アレ?」
 だが、次の瞬間。VR空間に生まれたねじれから、新たな人物が現れようとしていた! 『挑戦者が現れました』『乱入者 登場』『Continuitied?』そんなシステムメッセージが仮想現実の空を一瞬だけ覆いつくし、世界の虚空から現れたのは……マルコだ! 
 どうやら、先ほどの時空間のねじれは第一会場から第二会場へとVRが混線して生まれたもののようである! しかし、そんなことはどうでも良い! 大事なのは、ここに『銃使いの猟兵二人が、水鉄砲を手に集まった』ということだ! ならば、やることは? ――決闘しかあるまい!
「――誰かボクと勝負するかい? ……アレ? なんか景色……っていうか、雰囲気変わったね。……まあ、いいや。君が僕の次の相手? フフ、銃のヤドリガミはそう簡単に負けはしないよ?」
「おっ、これはもしや……! 猟兵同士での水鉄砲バトル勃発!? わあー、燃える展開やん! ようし、いざ尋常に……! ……って、あー! 一気に撃ちすぎてもう水あらへん!! 一瞬タンマ!! 逃げろーリロードー!!」
 二人の個人的な戦いはそれぞれ一段落して、事態はその次の段階へ移っていく。つまりは、猟兵同士の戦いへと場面が進んだということ。
 彼と彼女の魅力については既に余すところなく伝えられたと思うが、次の幕では二人の強さについても触れられるだろう。きっと、多分。だけど、今回はここで一度おしまい。二人の戦いの結果がどうなったかは……水着の神様が知ってるさ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

才堂・紅葉
●POW3番

私の水着のアピールポイントはシンプルかつ大胆な所かな。激しく泳いでも大丈夫なスポーツタイプです。それだけだとつまらないので、出来る範囲では攻めていますが。
VRで要求するシチュエーションは、『少し沖にあるブイまでボーイフレンドと遠泳して戻ってきた所。並んで海から上がり、重くなった体を感じながら、彼の傍らで乱れた髪を無防備に結いなおす』
でお願いしますね。

俳優さんは審査員さんに引き受けてもらっても構いませんよ?



●言葉も含めてシチュエーション
「ええと、次の参加者は……。……お? 紅葉か、少し久しぶりだな。戦争の時以来か。っと、悪いな。話が脱線しちまう前に本題といこう。今回はどんなシチュエーションを想定してるんだい?」
「はい、お久しぶりです。そうですね、……とりあえず、『遠泳が出来るくらいの海』がある場所で。波はそんなに高くない方が良いですね」
 次の参加者は、才堂・紅葉(お嬢・f08859)その人だった。彼女とは僅かに正純も面識がある。と言っても、一度依頼を助けてもらったというだけなのだが。
 だが、それでも助けてもらったことは事実であるし、正純はこういうことを忘れる質ではなかった。それに、こういう機会で話せるのは純粋に嬉しいことでもある。猟兵には魅力的な人物が多くいる、ということだ。さて、受付受付。
「ほう? ってことは、泳ぐつもり……ああ、いや、忘れてくれ。詮索は先の楽しみを潰しちまうな。……ええと、次に。自分が思う水着のアピールポイントはどんなところだと思う?」
「あら、聞いてくれても良いですよ? なんて、ふふ。……私の水着のアピールポイントは、シンプルかつ大胆な所かな。激しく泳いでも大丈夫なスポーツタイプです。それだけだとつまらないので、出来る範囲では攻めていますが」
「ハハ、それは楽しみだ。それじゃ準備は良いかい? 開始するぜ」
「ええ、どうぞ。楽しみにしておいてくださいね」
 そして世界はその姿を変えていく。何度目かもわからないほどの現実の揺らぎを経て、映し出されたのは一面の海、一面の空。コンテスト会場も消えて、あるのは周りに広がる自然のみである。
 まるで、都市から離れた離島のようなシチュエーション。無駄はとことん省くという意志さえ感じるストイックな構成だ。やりたいことは一本に絞り、無駄を切り取る。そちらの方が、もしかしたら水着の魅力というものを突き刺すには効果的なのかもしれないな、と。正純はそんなことを考えていた。海の真ん中、離島から離れたブイの近くで泳ぎながら。
「……ッ! ははあ、成る程、そういうことね……!」
 いきなり自分が泳ぎ始めているのには僅かに驚いたが、その状況の原因にはすぐに思い至った。きっとこれが紅葉の考えるシチュエーションの一端なのだろう。
 息継ぎを合間に挟みながら泳ぎつつ辺りを見渡すと、自分の前に彼女がいるのが分かった。この分では、紅葉の方が先に離島に着きそうである。僅かな差ではあるのだが。
「ク……! 何で猟兵って生き物は『初手はとりま鍛錬』みたいな奴らが多いんだ……!」
 そして待つこと10分足らず。なんとか離島にたどり着いた正純の目の前に広がる光景は、まさに絶景と言って差し支えなかったように思う。
 僅かに日が落ち始めて赤く染まってきた空に、海鳥たちが隊列を組んで飛んでいく。海はどこまでも静かで、そして――目の前には、並んで海から上がってきた紅葉の姿もあった。
「少しだけ遅かったですね、審査員さん? ……ふふ」
「……これは失敬。女性を待たせてしまったらしいな、全く。修練が足りなくて申し訳ない」
 そう、紅葉が今回要求するシチュエーションは、『少し沖にあるブイまでボーイフレンドと遠泳して戻ってきた所。並んで海から上がり、重くなった体を感じながら、彼の傍らで乱れた髪を無防備に結いなおす』というものだ。
 赤を基調に黒の差し色が入ったビキニが、真夏の海で絞ったのであろう彼女姿に良く映えている。水着の魅力とは数多くあるが、その中でもこれはど真ん中勝負と言って良いだろう。
 水に濡れた紅葉の肌が夕陽に照らされていて。解けそうになった髪を結い直す彼女の動作は実に魅力的であった。きっと、これが嫌いな男性は少数派だろうな、と思えるほどに。
「ああ、ところで紅葉? 一つ聞いても良いだろうか? どうして俺はここで泳いでいたんだ? いや、役得ではあるんだが……。やるなら、カメラに追わせるとかで良かったろ?」
「それなら……。そうですね、俳優さんは審査員さんに引き受けてもらっても構わないと思っていたから……。でしょうか」
「……成る程。その言葉まで含めて、このシチュエーションも花丸だな。男ならきっと、誰でもときめく良い場面構成だったと思うぜ。実に……実に、お見事だった」
 多くの人が大分ずるいなと思うような言葉が最後に残り、そしてゆっくりと世界は現実へ戻っていく。夕暮れも、海も、離島も、ブイも消えて。
 しかし、紅葉の水着の魅力は消えずに残ったことだろう。それくらい彼女は魅力的だったし――これは辺りの景色が現実に戻ってきてから分かったことだったが――なんといっても、観客たちもみな、カメラ越しに紅葉の魅力に骨抜きにされてしまっていたのだから!

大成功 🔵​🔵​🔵​

イルザ・ヒイラギ

ヴィーちゃんことヴィクトリア(f02591)と2人で

私達の水着は競泳水着ですからね
本来ならプールで泳ぐ用ですから、そういうシチュエーションで行きたいですねー
VR機器さんお願いしまーす
2人で全力でもって競い合ったりして
疲れたら2人で冷たいものとか飲んだりして

同じデザインの水着なんですけども、2人並ぶと同い年なのにこの差よ……
とちょっと思っているけど、逆に幼馴染で大事な親友に周りの視線が集まるのが、誇らしくて羨ましい気がする

彼女は太陽だ、凍てついた大地を照らして温める
私を助けてくれた輝きだから、私はそこに寄り添う月でありたい

なんて事を思い、彼女に寄り添い一緒に居たい……それが、私の居場所です


ヴィクトリア・アルダーノヴァ

イルザ(f02584)と二人で参加だ。
輝くかどうかはよくわからんが、
競泳水着なのだから泳ぐべきであろう。
ということで、VRプールとかで二人で競争でもするか
疲れたら、イルザを労って二人で飲み物でも飲もう

我が輝いていると言うなら、隣にはイルザがいるべきだろう。

なにかイルザにも周りにも見つめられている気がするが、
何も恥じることはないので堂々とするぞ
…それにしても、イルザは可愛らしいな…
周りの者よ、気持ちはわかるが、あまり見すぎるのもいけない

ずっと傍にいて、考えもしていなかったが…
イルザもいつか、良い相手を見つけて幸せになる日も来るか…
そのときは応援しよう
そう思いつつも
今は独り占めさせてもらおうか



●宇宙に浮かぶ月と星
 イルザ・ヒイラギ(銀月の殉死者・f02584)と、ヴィクトリア・アルダーノヴァ(銀星の守護者・f02591)の二人が会場に現れると、それだけで観客たちからどよめきの声が起きる。
 何せ、二人とも相当な美少女である。その上、二人が着ている水着はお揃いの競泳水着というのだから当然かもしれない。二人の登場は会場をさらに盛り上げ、観客たちはみな猟兵は美男美女ばっかですげーや最高だな! というようなことを思ったとか思ってないとか。
「失礼、まだ受付はやっているだろうか?」
「二人で参加したいんですが、そういうのってアリなんですかねー?」
「お、いらっしゃい美人のお二人さん! 勿論OKだぜ、二人で同じシチュエーションを希望っつーことだよな? 可能だぜ、未来のVRは最強だからよ! そんじゃご希望聞こうか、どんな場所がお好みだい?」
 勿論可能であった。複数人数の脳内へ同じシチュエーションのイメージを送り込み楽しんでもらうことも出来れば、先ほどのグループのように複数のイメージを入れ代わり立ち代わり流すことも出来る。
 かくて未来のVRとはすごいものなのだ。何でもできるので夢が広がるのだ。細かいことは分からないがそういう感じである。確たるイメージがあれば、未来のVRはそれをいとも容易く叶えてくれるのだ。
「私達の水着は競泳水着ですからねー。本来ならちゃんとした場所で泳ぐ用ですから、そういうシチュエーションで行きたいですねー。二人で泳げる場所、みたいな。VR機器さん、良い感じにお願いしまーす」
「ああ、同感だ。輝くかどうかはよくわからんが、競泳水着なのだから泳ぐべきであろう。我が輝いている場所と言うなら、隣にはイルザがいるべきだろうしな。……VR機器、よろしく頼む」
 そして二人の中には、すでに『確たるイメージ』というものができあがっているようで。しかも、二人とも細かな言葉を交わさずともイメージの共通が出来ているらしい。
 きっともう既に互いの思考の方向性もある程度読み合える仲なのだろう。いや揃ってVR機器に頼む必要はないんだけどね。二人の付き合いの長さを感じながら、司会進行兼審査員の一人であるBが二人に向けてマイクを向ける。
「お、決まったみたいだな? それじゃお二人さん、一斉にマイクに向けて希望をどうぞ! せーの!」
「「VRプール」!」
 そして二人の思い描くイメージが、VRによって再現されて現実を塗りつぶしていく。僅かに同期に時間がかかり、仮想現実の幕が上がる。観客たちの目の前に映像として現れたのは――巨大過ぎないが小さくもない、適度な大きさのプール施設であった。
 家族向けの浅いプールや、レジャーとしての意味合いが強い温水プールや流れるプール。その他ウォータースライダーなどのアトラクションも設置されているが、二人がまず目指したのは競泳用のプール。どうやら、今しがたそこで二人で競争を行ってきたところらしい。
「……ふぅ。これで15引き分け、2勝3敗か。イルザに負け越してしまったな……」
「あはは、でもたったの一勝差だからね。ヴィーちゃんもとっても速いよ」
 どうやらVR映像の同期がほんの僅かに遅れている間、既に相当数競泳勝負を行っていたようである。結果だけを聞くと一勝分だけイルザが勝利しているらしかったが、二人の泳ぐ実力はほぼ互角ということか。
 恐らく泳ぎの実力は高いレベルで拮抗しているのではないだろうか。二人の表情からはそれなりの満足感と達成感が伺える。きっと、勝負として。そして、幼馴染との友誼を深める遊びとして、両方の意味で実のある時間だったのだろう。
「どうしようか、ヴィーちゃん? ヴィーちゃんが平気なら、また泳ぐ?」
「いや、イルザも少し疲れたろう? ここは一度休んでからにしよう。今我が飲み物を持ってくる。希望は?」
「あ、ありがとう。それじゃ、売ってる中からヴィーちゃんのお勧めでお願いしたいかな」
「分かった。少し待っていてくれ」
 二人のやり取りからは、多くの感情が伺えるように思えた。互いへの尊重。それから、敬意。それから、友愛。それから……感謝、だろうか。
「……二人とも、すごく良い幼馴染なんだな……。イイジャン……」
 少なくとも、彼女ら二人はとても良い付き合いなのだろう。それこそ、互いに背中を預けて戦えるくらいの。あるいは、片方が護り、片方が刈り取るというような戦い方ができるくらいには。
 もちろんこれはただのBの憶測でしかないのだが。そんなことを彼に予期させるくらいには、彼女たちの自然なやり取りは互いへの信頼と好意で満ちていた。
「すまない、待たせた。炭酸と非炭酸、どっちが良い?」
「ううん、全然。それじゃ、炭酸じゃない方が良いな」
「そう言うかなと思った。はい」
「ありがとう、ヴィーちゃん」
「どういたしまして。……何だか、他のものから見られている気がするな?」
「そりゃ……まあ……。ヴィーちゃん、スタイル良いからねー」
 ヴィクトリアの言う通り、彼女ら二人は相当に注目を集めていた。
「なあなあ、あそこの二人めっちゃ可愛くねーか?! 声かけてみたり、とか……! してみたくね!?」
「バカヤロウ!! あの二人が可愛いのは同意する!! でも俺たちがあそこに入っちゃいけねえんだよ!! 黙ってみてろお前は 決して あの二人の間に入ろうとかするな 分かったな」
「ええ……何がそこまでお前を必死にさせるんだよ……分かったけど……」
 ただ、彼女らが実際に声を掛けられるといったようなことはなく。あったとしても、ごくまれに遠くから視線を向けられる程度のもので。
 VRとはいえ、そこはやはりある程度現実に準拠したプール会場だからこそだろう。トラブルの種になりそうな動きなどは至ってなく、この場はどこまでも平和であった。
 ゆっくりと休む二人の間に、穏やかな時間が流れる。飲み物が入ったグラスを傾けながら、ヴィクトリアはイルザを、イルザはヴィクトリアを。お互いがお互いの横顔を、時折合間を縫って見つめていた。その視線がぶつかることは、まだない。
「ヴィーちゃん、そっちの炭酸の味どう?」
「ん……。まあ、普通……くらいか? ここがVR空間だからか、味がイマイチ分からん。すごくぼんやりした味だ。しゅわしゅわはする」
 ヴィクトリアは周りから見られていても動じていないようだった。むしろ自分が見られることよりも、イルザへの視線が気になるらしい。恐らく、自分に何も恥じることはないので堂々としているのだろう。単純な論理だが、それゆえ強固だ。
 彼女が考えるのは、イルザのこと。『……それにしても、イルザは可愛らしいな……。周りの者よ、気持ちはわかるが、あまり見すぎるのもいけない』など、など、など、など。口には出さないが、彼女は隣の幼馴染のことを考えるので忙しくしているらしい。
「あはは、私のと同じだ。VRの飲み物だからかな。ね、ね、あとで一口ちょうだい?」
「おいおい、炭酸の気分じゃなかったんじゃないのか? ……ああ、良いぞ。あとでな」
 イルザは周りから見られているのにそこまで気が付いていないようだった。むしろヴィクトリアに視線が集まっている、と勘違いさえしているようで。実際の所、視線を向けられる対象は二人とも大体半々というくらいなのだが。
 彼女が考えるのは、ヴィクトリアのこと。幼馴染で大事な親友に周りの視線が集まるのが、誇らしくて羨ましいと感じさえしているようだった。自分に向けられた視線に無頓着なのは、きっとそのせいもあるのだろう。……2人並んだ時に、自分の体に思うところが無いわけではなさそうだが。
「なあ、イルザ?」
「なに、ヴィーちゃん?」
 ヴィクトリアには思うところがあった。ずっと傍にいて、考えもしていなかったが、だからといって目を背け続ける訳にもいかない一つのこと。
 『イルザもいつか、良い相手を見つけて幸せになる日が来るのだろう』ということだ。……もし、そうなったらどうするか? その時は応援しよう。ヴィクトリアはそう感じていた。
 だが、そう思いつつも。今のヴィクトリアは、彼女を独り占めさせてもらうつもりであるらしかった。『その時』なんて、『その時』がやってきてから考えれば良いだけだ。
「こういうのも、……良いな」
「……うん。そうだね。こういうのも、楽しいね」
 イルザには思うところがあった。前から思っていたこと。手紙にしたためたこともある思いのこと。伝えたいが、伝えるのも難しい一つのこと。
 彼女に……。ヴィクトリアに寄り添い、一緒に居たい。……それが、そこが。私の居場所だ、ということ。彼女は太陽だ、凍てついた大地を照らして温める。私を助けてくれた輝きだから、私はそこに寄り添う月でありたい。
 私に光を、導きをくれた貴方だからこそ、私はそばにいたい。考えるだけならシンプルなはずなのに、いざ『その時』になると言葉にしにくいのだろうなと思う。でも、それで良いのかもしれない。伝える時が『その時』だ。そして、まだまだチャンスはたくさんある。だって、二人はこの先も一緒だから。
「尊いかよ……。水着の良さっていうかこれ……。二人の関係性の良さじゃねえか……。100000億万点です……最強か? いやもう……すいませんでした……。二人ともすごく良いと思います……ハイ……」
 尊さで爆死しているBはほおっておこう。時間を置けば元に戻る。
 さて、銀月の殉死者と銀星の守護者は、きっとこれからも付かず離れずなのかもしれない。だが、接近する機会はあるはずだ。
 宇宙を統御する力はたったの二つだけ。
 それは光と重力だ。互いを照らしあうか、互いに惹かれ合っていくか。
 宇宙には、その二つの力しかない。
 ならば、きっと。そのうち。焦ることなんて何もない。
 何かが動くのはゆっくりだ。
 大事なものほど、目には見えないところへ影響を及ぼし合っていて、そして……。いつかは互いに重力を放っていることを、きっと互いが知るようになる。
 だから、――そのうち。そのうち、だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

荒谷・つかさ


……そうね、正直に言うわ。
この水着、人様に披露することは全く考えてなかったのよね。

装飾の類は全く無し。
色こそ黒だけれど、単なるさらしと褌。
それだけ。
それだけなんだけど、だからこそ凄く動きやすいわ。
こんな風に、ね!
(空手の演舞風に体術パフォーマンス)

さて、そういう訳でこの水着の輝く瞬間だけど……
やっぱり「鍛錬中」の一言に尽きるでしょうね。
滝に打たれて精神を集中し、深い滝壺を素潜りで自在に泳ぎ回り
濡れた拳が空を打てば弾けるような音と共に飛沫が舞う。

どちらかと言えば「鍛え上げられた私」がメインっぽいけど、それはそれで「着用者を引き立てる」とも言えそうじゃないかしら?



●ビバ・ザ・鍛錬
「……そうね、正直に言うわ。この水着、人様に披露することは全く考えてなかったのよね」
「エ。マジすか? いや、じゃあそれここで見せても良いンすかね……? いや良いなら良いんだけども。いや良いなら良いのよ。良いならね。良いの? 良いのね?」
 荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)は水着を纏って現れていた。水着。水で泳ぐ、もしくは水辺に訪れる際に着用する衣服のことだ。
 その形態はさまざまな種類があり、特に女性用の水着などは男性用の水着の何倍もの種類が存在する。大きく分ければビキニタイプ、ワンピースタイプ、タンクスーツタイプ。その他にも当然まだまだある。
 バックスタイルやラッシュガード、そしてそこにパレオの長さや有無も要素として付け加えられてくる。ここでその全てを語ろうと思えば、時間がいくらあっても足りないほどだ。
「良いわ。装飾の類は全く無し。色こそ黒だけれど、単なるさらしと褌。それだけ。それだけなんだけど、だからこそ凄く動きやすいわよ」
「エエエエ 良いんすか 良いんなら良いんすけど 良いんすね? ……ま、まあ! さらしと褌だけって言葉で言うと、何か、その、アレっすけど! バンドゥビキニみたいなものだと思えばお洒落さんスもんね、うんうん。……よし! それじゃVRの方開始していくンで! スタンバイオネガイシャッス! アピールの瞬間とかについてはなんか希望あります?」
 彼女の強さにはさすがのBもタジタジだ。隠して生きてきたはずの三下根性が透けて見えてしまう。つかさの言葉は、何というか、あまりにも強いのだ。
 つかさの言動には、一本太い芯が通っている。きっと彼女は自分が良しと思えばその他に思うところなく、自分のやるべきことをやれる人なのだろう。まっすぐであることは、ともすれば道を誤る可能性も捨てきれない。……だが、時に、Bは彼女のような強さにあこがれた。彼のような弱い生き物には、つかさのような生き方が刺さるのだ。
 一人間として強い彼女に敬意を表し、今回のVRは気合を入れてかかるべきとBは静かに決意する。さあ、どんな海が来る? どんな大波でも荒波でも再現して見せよう。希望があれば嵐や雷だって、現実に負けない、いや、現実よりも迫力のある仮想現実を用意して見せる――!
「ふむ……。そういう訳でこの水着の輝く瞬間だけど……。やっぱり「鍛錬中」の一言に尽きるでしょうね。海とかはなし。遠泳もありだけど、今日は滝の気分だから」
「いや海じゃないんか~~い(いや海じゃないんか~~い)。OKス!」
 海じゃなかった。残念。さてさて、今回のVRシチュエーションは海とは打って変わって森の奥深く。人の気配などするはずもないその山奥で、つかさは静かに岩の上に佇み、滝に打たれていた。滝行というやつである。
「ふゥー……。はァー。…………シィッ!」
 滝に打たれて精神を集中し、そして呼吸を整えては深い滝壺を素潜りで自在に泳ぎ回り、もう一度岩に上がっては、濡れた拳を前に突き出していく。放たれた拳が空を打てば、弾けるような音と共に飛沫が山奥の静かな空気に舞った。
 それを見、遅まきながらBは気付いた。これめっちゃ『美』やん。と。鍛え抜かれたつかさの身体は無駄のないしなやかな肉体美を誇っている。いわゆる機能美、筋肉美に近い美の形だ。そして彼女が身に着けている水着は、つかさの動きを邪魔することなどない。この形は、ある意味ではとても彼女らしいのかもしれない。
 『彼女らしさ』を邪魔しない、そんな水着。それも、また最高だと言って差し支えないのだろう。
「さて、いかがかしらね。どちらかと言えば「鍛え上げられた私」がメインっぽいけど、それはそれで「着用者を引き立てる」とも言えそうじゃないかしら? ……こんな風に、ね!」
 精神統一を果たし、新たな悟りを開きかけたB! しかし、次の瞬間である! カメラ越しに彼の見ている光景へ、一気につかさの放った正拳突きが迫った!
「ヒィ…… カオノマエニパンチガ ス スゴイデス スゴクコワイッス」
 カメラ目線ならぬカメラパンチは、つかさなりのサービス精神によるものだろう。彼女はそのまま空手の演舞風に、次々と体術パフォーマンスを繰り広げてくれている。
 回し蹴り、空手チョップ、貫き手、足刀蹴り、刀を持っての居合い切り。その全ては文句のつけようもないほど実に素晴らしく、美しかった。これもまた美。つかさらしい、素晴らしいアピールであったと言えるだろう。
 一方、カメラ越しに見ていたBは至近距離で拳や足、刃の先端を突きつけられる気分を味わっていた。とても怖かったと言っていた。ドンマイ案件である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

(ラップタオルを着た状態で)
面白いことしてるって聞いたぞ!
ぶいあーる?がなんなのかはわからんが、楽しそうなので参加するのだ!

では、ここは今だけリゾートビーチのオシャレなカフェだ!

最初にバサッとラップタオルを観客席へ投げる!
じゃーん!今回、青い水着だと思っただろう?
だけど実はレモンイエロー!レモンの水着なのだ!
可愛くてとってもお気に入りでな、ちゃんとレモンっぽくて可愛いだろう?
イヤリングもオキニなのだぞ!あとサングラスで大人っぽさもプラス!

シャッと凍らせた地面の上を滑り、審査員の人たちの前に手早くグラスを並べ
また颯爽と滑りレモネードを注いでいく
まるで南国のカフェみたいだろう!

(審査員おまかせ)



●ビタミン豊富な爽やかイエロー
「おお! ヴァーリャちゃんじゃねぇか! よく来たな、アンタもこのコンテストに?」
「ああ、面白いことしてるって聞いたからな! ぶいあーる? ……がなんなのかはわからんが、楽しそうなので参加するのだ!」
次にエントリーするべく会場に現れたのは、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(ひんやりビタミンガール・f01757)の姿である。司会進行兼審査員のBのテンションも、これには否応なく上がらざるを得ないというものだ。
何を隠そう、Bはヴァーリャちゃんファンクラブ(非公式)の会員カードNo.1桁を誇る根っからのファンボーイ。ハンドスピナー事件の時からの1ファンというのだから、筋金入りだ。
「クゥーッ嬉しいねぇ! だが、色目は使わないぜ! 審査は当然超厳しく! それも酸っぱめにいくからな! 俺が審査員だからって甘く見ないで欲しいからよろしくな!」
「うむ! もちろんだぞ、B! 酸っぱめ審査も上等だ、甘々よりも身体に良さそうではないか!」
ラップタオルを着た状態で会場入りしたヴァーリャの水着の全容は、未だ誰も予測できていない。Bを筆頭に彼女の水着姿に期待の熱が高まる中で、いよいよVRの準備が整ったらしい!
「OK OK、そう言ってくれると思ってたぜ! ンじゃ始めようか、大きな声でマイクに希望をどうぞ!」
「もう良いのか!? よーし! では、ここは今だけリゾートビーチのオシャレなカフェだ!」
「ンなるほどッッッッッ そう来たかァッッッッッ〜〜」
VRが起動すれば、世界は瞬く間にその色を変えていく。審査員たちが元々立っていた白い砂浜の上には、ヴァーリャの髪の色のように綺麗なシアンの床材が現れて。
まるで水の上に立っているかのように清涼な床の上には、次々と純白の柱と梁が立っていくではないか。そしてそれらを覆うのは、大きくて丸い、まるであの酸っぱい果実を半分に切ったようなレモンイエローの屋根。
審査員たちを取り巻く環境があれよあれよと変わるうち、目の前にもテーブルが現れる。色味の良いマット仕立てのオークの上に乗るのは、ライムグリーンの線で縁を彩られた白いテーブルクロス。椅子に腰掛けて外を見れば、真夏の空に白い雲が泳いでいるのが見える。見事なまでに爽やかな、海沿いのカフェの出来上がりだ!
酸っぱめに審査をするBもこれには驚かざるを得ない。そしてさらに! ヴァーリャの作戦はまだ続くのだ!
「くっ……やるじゃねぇかヴァーリャちゃん……だがまd」
「そしてここでいくぞ、水着のお披露目だー! じゃーん!今回、青い水着だと思っただろう? だけど実はレモンイエロー! レモンの水着なのだ!」
「ダッヒッ(控えめな死)」
店を展開した上で最初にヴァーリャが取った行動は、バサッとラップタオルを観客席へ投げること! そこで一気にお披露目となった彼女の水着姿のメインカラーはなんと黄色であった!!
盲点にも程がある!! 番狂わせだこんなの!! 水色だと思うじゃん!! めっちゃ良いです……というBの思考は声にならず、ただ肺から漏れる息だけが、彼女の水着を称えていた。
「ふふーん、声も出ないようだな? 無理もないぞ! この水着、可愛くてとってもお気に入りでな、ちゃんとレモンっぽくて可愛いだろう?」
「……たしかに……! よもやレモンとは思わなかったぜ……! トップスは白と黄色で爽やかな魅力を、ボトムス部分はスカートの広がりを駆使した黄色と緑の染色が実に見事だ! オレンジをメインに据えたリボンやサンダルもオシャレだぜ……! 左腕のゴーグル風アクセも特筆すべきだろうな! ヴァーリャのいつもの服装の雰囲気を取り入れながらも、むしろ水着を強調する良いアクセント……! アイテムが多いから審査のしがいがあるぜ……!」
「おおっ、ありがとうありがとう! それにな、イヤリングもオキニなのだぞ! あとサングラスで大人っぽさもプラスしてみた! 今の俺は気遣いのできる大人なウェイトレスでもあるのだ、それー!」
Bがヴァーリャの水着審査を行う間に、彼女はすでに次の行動へ移っていた! ヴァーリャはまずシアンの床材に氷を敷き、シャッと凍らせた地面の上を滑って移動! 審査員の人たちの前に手早くグラスを並べ、また颯爽と滑ってはレモネードを注いでいくではないか!
「お待たせしました! どうだ? まるで南国のカフェみたいだろう!」
「とどめの一言まで強すぎる……最後までチョコたっぷりだよこんなん……ありがとう……レモネード美味しいよ……」
今回の水着で見せたヴァーリャの新たな魅力の前では、観客も審査員もノックアウトの嵐である! 彼女もまた、他の猟兵たちと同じく最強の水着の持ち主であったのだ……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
●3番

えっ、俺目立ちたく…あーっ!また勝手にエントリーされてるじゃねえか!
クッソ、こうなりゃやるしかねえ
このクーラーボックスに隠された機能を使う時が来たか

シチュエーションは
でっけえプール、映画館まで併設された金持ち御用達のリゾート船
俺はそこに潜入しに来た工作員

ボディチェックを受けても何も出ねえ
当然クーラーボックスからも

潜入成功
トイレでクーラーボックス開封
実はこれ、多重構造なんだ
仕掛けを起動すれば…ガチャガチャと展開
俺の仕事道具が山ほど出てくる

ただ遊びに来ただけじゃねえ
ちゃーんと仕事もこなせるようにしてるのさ
抜け目がないだろ?
ま、この自慢の腕があれば大体何でも出来る
グラサンもサマになってるだろ?



●フロム・サマー・ウィズ・ラヴ
「えっ、俺目立ちたくないんだけど」
「悪いなヴィクティム、お前の観戦席ねーんだわ。さ、諦めて参加してもらおうか。もしアレならあの、ほら。スターライダー一位のアイツをほら、いい感じにアレをアレしてくれ」
マジで? という顔をしながらラップトップを起動し、通信記録などなどを洗ってこのコンテストへ誰が自分をエントリーさせたのか調べているのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)だ。彼にかかれば誰がエントリーを行なったのかなど、祭りの席で瓶ラムネの蓋を開けるよりも簡単な話である。……え? 今結構分かんない子いるの? 結構難しい? マジかよ。
「あーっあの野郎・ギュネス!! ちくしょう!! また勝手にエントリーされてるじゃねえか!!」
「そうなんだわ……アレがアレだから致し方ないんだ……。このコンテスト途中で出場中止とか受け付けてないんでな……。このルールは今作った」
「今作ったってのは別に言わなくて良かっただろ!! なんで言った!!」
兎にも角にもそのようになったのだ。どっちみち出場中止などは観客たちも良しとしないだろう。例えて言うならば、今のヴィクティムはまな板の鯉である。『美味しく調理されることを願う他ない』という意味。
「クッソ、こうなりゃやるしかねえか……! このクーラーボックスに隠された機能を使う時が来たようだな、上等だぜ! やってくれ、正純!」
「準備整ったらしいな、OKだ。始めようか、端役殿。Let's?」
「Rock!」
ヴィクティムが新たに臨んだ世界。そのシチュエーションは、兎にも角にも大きなプールやカジノ、映画館などレジャー施設まで併設された、金持ち御用達のリゾート船である。
「そこの! この先のプールへはボディチェックが義務付けられている。悪いが調べさせてもらうぞ。そのクーラーボックスの中身もな」
「はいはい、お好きにどうぞ。大丈夫さ、何にも出やしない。アンタらを驚かせるようなモンは、なんにもな」
「……む……。本当に何もないらしいな、良し。通って良いぞ」
「お疲れサン。ビール飲むかい?」
「要らん。さっさと行け」
「仕事熱心なこった」
そんな悪趣味の極みのような船のど真ん中にあるプールサイドに、ガード達からのボディチェックをまんまとすりぬけた彼の姿があった。
どうやらこのシチュエーションにおけるヴィクティムは、この船に潜入しに来た工作員という立ち位置らしい。その狙いは、船に訪れているVIPたちの情報という辺りだろうか。
「あ、そこのお兄さん。ワインのお代わりを頂ける?」
「もちろん。美人さんに酌できるとは役得だね」
船という環境は、何かを隠すに適しすぎている。なにせ海という最強の自然要塞に囲まれた鉄の塊だ。外部からの物理的なアクセスはもちろん、ネット的にも完全にクローズドな閉じた世界。
……だが、だからこそ。内部に潜入したことには意味があるのだ。途轍もなく、大きな意味が。ダムですら小さな穴を放置すれば決壊するという。ならば、せいぜい大きな穴を開けてやろうじゃないか。
「何も出ねえ、何も見つからねぇ、痕跡なんざミリも残さねぇ。Arseneの犯行は影の如くだ。一流は、武器を多く持っておくものなのさ。そして、どんな武器も使いよう……潜入成功、だな?」
見張りの視線をかいくぐり、敵の目を欺いて。準備と用意で予め対策を組み、そして万事を思うがままに進めてみせる。それがヴィクティムという男。
「外部からの侵入に強いクローズネットのセキュリティは、だいたい脆弱なんだよな……ハ? ……おいおい、一発でメインコンソールパス? サブパスもなし? ルーティン生成もなし? 出来の悪いパズルだな……しょうがねぇ、暇つぶしにちょっとだけセキュリティ改良してやろ」
グラサンの奥で眼を光らせ、紛れ込んだトイレの個室でクーラーボックスを開いていく。飲み物が入った箱の中の隠れたつまみを回して、多重構造のオモチャ箱をひっくり返す。
準備が整い、仕掛けを走らせれば、ガチャガチャと展開するのは彼の仕事道具。それが山のように現れたなら、先の展開は読めるというもの。ヴィクティムの……『彼の世界』が始まった。
「お見事だな。口八丁手八丁で、見事にプールサイドの給仕に化けてみせた。……出来るのがハッキング一つだけならまだ良い。コイツの怖いとこはここだ。工夫を凝らして、手段を選ばずに楽に勝てる道を探してきやがるッてとこ。全く、ハハ。末恐ろしいよ」
「当然さ、ただ遊びに来ただけじゃねえンでな。シチュエーションは問わず、ちゃーんと仕事もこなせるようにしてるのさ……。抜け目がないだろ?」
その様子を映像で見ている正純からの反応に言葉で答えながらも、ヴィクティムの指はもう一つの言語を作り出していた。船の中心部へ入り込み、そしてアクセス権限を全て奪い取る。迷惑メールの入ったボックスから、この船のエンジン部に至るまで。全てはArseneの手に落ちた。本来の目的であった、外部へのパス作りなんてしなくて良くなった程の戦果である。
「ま、この自慢の腕があれば大体何でも出来るッてこった。グラサンもサマになってるだろ?」
『で? お前はどう思う?』と、彼の目はそう言っていて。
「……ハハ、野暮だね。嫌いじゃないけどよ。ああ、……最高にチルだったぜ、チューマ」
だから、正純もヴィクティムの流儀に則った。電脳のウィザードには、きっとこの言葉が最も褒め言葉に相応しいから。なんとも鮮やかな犯行である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン


ども!エイリアンツアーズでっす☆
まだエントリー間に合う?
仕事帰りにキャストオフ!ヨロシクオナシャース!!
(脱いだジャケット肩口に担いでスマイル)

あっBさん!超ヒサブリじゃないっすかぁ!!
審査はゼヒ1番さんで♪
あぁぁ正純さん
おれがちょくしできないサングラス尊い(全触手サムズアップ)

▼いいかんじのシチュ
演ってみたいな夏FES、カマすヘッドライナー!
お待たせ真夏のヘッズ!MC jailbreak in da house!!

担いだラジカセからお届けするアゲナンバー♪
胸元はオトナの事情で見せられないけど
マイク代わりのIceは敬愛するMCへのリスペクト。
水着のこのメンダコ!パンチ効いてて超かわいっしょ?



●真夏の太陽は君だ☀️☀️
「ふぃー……コンテストもぼちぼち終わりだなあ。結構人数も来てくれたしよ、盛り上がりは良かったし、フロアは縦ノリで……いや最高だったな……」
司会進行のBはすでに余韻に浸っていた。それもそのはずだ。このコンテストに参加してくれた猟兵の数は10人強。そして再現したシチュエーションも、当然彼らと同じだけある。
その全てに言葉を駆使して褒めていくのだから、司会進行も中々大変である。のど飴は毎日舐めているらしい。
……だが! コンテストはまだまだ終わらない! 挑戦者がいる限り、夏が終わらないのと同じようにだ!
「ども! エイリアンツアーズでっす☆ まだエントリー間に合う? 仕事帰りにキャストオフ! ヨロシクオナシャース!!」
「お? パウルじゃねぇかよ、久しぶりだなー!」
まるで仲のいい営業先に軽く顔を出したかのような気軽さと人懐っこさで現れるのは、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)! 彼はなんとエントリー終了時刻ギリッギリに登場し、そしてエントリーも無事に済ませてみせたのだ!
脱いだジャケットを肩口に担ぎ、スマイルを浮かべるパウルには受付の女性特攻のようなものがあったのかもしれない。知らんけど。
「あっBさん! 超ヒサブリじゃないっすかぁ!! 元気してます? 審査はゼヒ1番さんで♪ ってあぁぁ 正純さん おれがちょくしできない サングラス尊い」
「俺は今回審査員じゃねぇからそんか喋らねぇぞ。でもありがとうよ」
元気良く、そして愛想良く。パウルの身の振り方は、実に彼らしい魅力に溢れていた。触手たちのサムズアップもそれを示していると解釈しよう。
「もう準備出来てるぜー、パウルならきっとこういう雰囲気だろうと思ってな」
「お、マジですかBさん! したら確認すんのも野暮っすね、是非それで! どんなんになるか、いいかんじのを期待してますね♪」
「おうよ任せろ!! コイツで……どうだぁ!」
そして生み出された仮想現実は、誰もが羨むほどの大きなステージ! 渚に現れて潮風を感じられる、野外特設系のビッグなライブ会場だ!
「うぉぉぉ! これってまさに演ってみたいな夏FES、カマすヘッドライナー的な!?」
水着姿へと変化したパウルがマイクを取れば、電子の大気が揺らぐほど会場の空気が熱くなる。観客たちが、パウルのLyricを楽しみにしているのだ!
「さあさあさあさあ始まったぜおいこの野郎ども!!コイツが誰だか分かってんのか!? 悪魔の魚もかくやなオトコのrhyme、耳かっぽじって聴きやがれ!」
「サンキューBさん! よっしゃぁお待たせ真夏のヘッズ! MC jailbreak in da house!!」
ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!!!! これは仮想空間だ! これは現実ではない! だからどうした? そんなことをどうでもいいと言えるほどに、この瞬間は最高だった!
パウルとBが繰り広げる音の応酬、言葉の殴り合いは観客たちのハートに火をつけて、真夏の体感温度も熱帯夜気味だ!
「担いだラジカセからお届けするアゲナンバー♪ 胸元はオトナの事情で見せられないけど、マイク代わりのIceは敬愛するMCへのリスペクト。水着のこのメンダコ! パンチ効いてて超かわいっしょ?」
「ぐっ……!! 確かに……!! パウルの水着もなかなかキマってるじゃねぇかよ……、それは認めるぜ……! タコ🐙のプリントは正直最高にロックって感じだし、触手とアイスの色味もむっちゃいい……! バレーボールやラジカセも遊び心があってクールだ……!! 認めよう!! お前の水着もまた最高だということを!! だがな!! 俺は19人の水着を見てきたオトコだぞ!? ここで負けて……たまるかよォウォォォーーーーッッッッ!!!!」
先制点はパウルの放つ水着のいいところアピールに軍配! 25水着GOODポイント!
だが、返す刀でBも審美眼による水着よさよさポイントをゲットしていく! 6水着人形だ!
二人の戦いは三日三晩続き、そしてまた三日三晩続いて。お互いがお互いの水着を褒め合い、そして水着の良さを再確認するのが肝要であることを互いに悟った。
水着に貴賎なし。ありがとう、パウル。ありがとう、水着。ありがとう、コンテスト。ありがとう、みんな。ありがとう、この世界。ありがとう、夏。ありがとう、リクエストした君たち。いやほんとに何言ってるかわかんないけど。でも……世界はね……こんなにも明るいんだよ……。それはなぜかって? 君の水着が太陽だからさ。君の太陽を見せてくれてありがとう。太陽だよ。日光を浴びてビタミンD(DEADのD)を摂取していけ。素晴らしい水着コンテストをありがとう。ほんとに。ほんとに……ありがとう……🙏🙏🙏🙏
ーー以上、『真夏の太陽』 156P 3行目より抜粋。作者B。発行年2019年7月。すでに作者はエモにより没後である。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月26日


挿絵イラスト