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蒼竜の咆哮、幼き泣き声

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ――ギュワッ!
 何かの鳴き声と共に町の上空に巨大な影が通り過ぎる。それは空をゆっくりと旋回し、ギロリと鋭い目で町を見下ろしていた。

「おかーさん! 雨がふってきたよ!
 子供の声が響き、雨が降り出したことに気付いた人々が慌てて洗濯物を取り入れる。
「雨か……おいっ、空に何かいるぞ!」
「何? あれは……ドラゴンだ!」
 見上げた灰色の空を気ままに飛んでいるのは、蒼い鱗持つ巨大なドラゴンだった。

『ギュアォオオオ!』
 ドラゴンが咆えると、雨足が強まり足首が浸かるほどの水が溜まり、町が水浸しになる。
「ひぃっ! 襲って来るぞ逃げろ!」
「ほら、早く逃げるのよ!」
 母親が子供の手を引き、恐慌した人々が逃げ惑うと、そこに狙いをつけたようにドラゴンが急降下し、大きな口を開けて噛みついた。上半身を食い千切られ、残った下半身が血を噴き出して倒れる。
「……おかーさん?」
 呆然とした子供が手を見ると、繋いだままの母親の手首が残っていた。
「きゃああああ!!!?」
「人喰いドラゴンだ!!!」
 その悲惨な死に方を見た人々が悲鳴を上げて全力で逃げる。だが水浸しの足場は悪く、空を飛ぶドラゴンからは逃れられない。
『ギュアアア!』
 続けてドラゴンが何体も食べ応えのある大人を狙って喰い散らかすと、翼を広げて悠々と上昇して旋回し、そのまま南の方へと去って行った。

「あっちは凍らずの湖の方だ……最近あそこにあった村と連絡が途絶えたのはアレが住み着いたからか……」
 びしょ濡れの体を起こし男性が竜の去った方へ視線を向ける。そして呆然と町へ視線を戻すと、あちこちの家が崩れ、水に混じった血が足元に漂っている凄惨な光景が映った。
「うわあぁああん!」
 母親を食われた子供の泣き声が響く。だが突然の事態に放心している人々は、それを慰める余裕もなく、ただ途方に暮れていた。

 気付けば雨は止んでいる。だが人々の慟哭が止むことはなかった。


「ダークセイヴァーにある町がドラゴンに襲われた」
 グリモアベースに集まった猟兵に、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)がすぐに事件の説明に入った。
「目的は人間を食べることのようだ。このままだと定期的にドラゴンが食事をしに町へやってくるのが予知された。放置すればやがて全ての人間が食べ尽くされてしまうだろう」
 町から逃げてもドラゴンは周辺の人の住む町や村を襲い続ける。徒歩程度の移動手段しか持たない人々が逃れることは出来ない。
「そこで諸君にはもう一度町が襲われる前に、ドラゴンの巣へ赴き討伐してもらいたい」
 上空から襲い掛かる敵だ。防衛では多くの被害が出てしまうだろう。こちらから仕掛けるのが最も被害を減らすことが出来る作戦となる。

「ドラゴンは町の南にある大きな湖を拠点としているようだ。湖の近くの村は既に全滅し、モンスターが住み着いている。ドラゴンとの戦いを邪魔されないよう、まずはその村のモンスターを倒してもらうことになる」
 ドラゴンとの戦いの最中に突発的に乱入されては、こちらが不利な状況になってしまう。強敵との戦いの前に手を打っておく必要がある。
「村のモンスターを掃討すれば、湖に住まうドラゴンとの戦いとなる。確実に仕留め、これ以上被害が出るのを防いでほしい」
 もし逃がしでもすれば傷を癒す為にさらなる人々が食べられる事となる。そんな悲劇は決して許容できないと猟兵達も頷いた。

「それと、これは戦いが終わった後の話だが……襲われた町では親を失った子供達が悲しみに暮れている。もしよければその子供達を元気づけてやってほしい。こんなことまで頼むのは心苦しいが、町の人々は復興の為に余裕がない。頼めるのは諸君等だけだ」
 目に悲しい色を宿し、悲劇に見舞われた子供達の事もよろしく頼むとバルモアが頭を下げ、ダークセイヴァーへの道を開いた。


天木一
 こんにちは天木一です。餌場として目を付けられた町を守る為、こちらから巣を襲撃しドラゴンを討伐しましょう!

 湖の近くにある廃村で、まずは植物型オブリビオンの群れとの戦いとなります。
 村のドラゴンに襲われた死体や僅かに生き乗った者を殺して苗床にし、繁殖して数を増やしています。

 第一章で集団戦、第二章でボス戦、第三章で子供達を元気づけることになります。
 第三章でお誘いがあればバルモアも協力します。

 それではこれ以上悲しむ子供が出ないよう、ドラゴン退治をお願いします。
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第1章 集団戦 『『死花』ネクロ・ロマンス』

POW   :    パイル・ソーン
【既に苗床となったヒトの手による鷲掴み】が命中した対象に対し、高威力高命中の【背から突き出す血を啜る棘を備えた茨の杭】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    フラバタミィ・ニードル
【体を振い止血阻害毒を含んだ大量の茨棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    バイオ・ビュート
レベル×5本の【木属性及び毒】属性の【血を啜る棘と止血阻害毒を備えた細い茨の鞭】を放つ。

イラスト:綴螳罫蝉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

白斑・物九郎
●ニコリネ(f02123)と



やっぱ花屋的に許し難い花でしたかよ
そんじゃキリキリ根こそぎ剪定してくとしましょっかや

敵側は「手で鷲掴みに来る」のが始点っスね
【野生の勘】で迫り来るヤツを察知しながら、魔鍵をその腕へリーチを活かしてブチ込んでやりまさァ(串刺し・精神攻撃)

【ドリームイーター】、発動
ニコリネのねーさんに先んじてまず敵を一体だけでも獲る(先制攻撃)
敵から削いだエナジーで「個体が弱い代わりに頭数多め」ってな塩梅で眷族を作成
作成した眷族は敵の迎撃にあらかた回しといて、一部は「ニコのコードの力の代償で一発殴る用の味方」として配置しときまさ

俺めも【怪力】込でブン回す魔鍵で攻撃回数9を振るいますでよ


ニコリネ・ユーリカ
猟団長(f04631)と武者修行の鉄板、ドラゴン退治へ!

死者を苗床に……なんて悪い子たち
生花売りとして、死花を何とかしないとね

これ以上死を辱めさせない為にも勇気を胸に対峙するわ
棘群には【'Ελα!】で攻撃回数を増やして対抗し
私自身は炎の属性魔法で死花を焼っつけちゃいましょ
囲まれないよう地形を把握しておかないと
猟団長も九回攻撃! 流石の無双……味方で良かった!

棘の扱いは慣れてるけど、毒は……!
フラフラする、けど、沢山の命が奪われて、なお玩ばれている今……ドラゴンを倒すまで倒れちゃいけないわよねぇ

最後は猟団長の眷族をお借りして、一発! シャッター棒で叩かせて貰いましょ
んンー、スッキリ! ありがと!



●死花咲く村
 人の気配を感じない村が見える。木造の家は蔓が這って朽ち、道も雑草が生え茂って消えようとしていた。そんな中に人影が見える。地面に倒れた男性のように見える。だがそれは明らかに人ではない――。
 腹から蔓が生え、毒々しい濁った血のような真っ赤で巨大な花を咲かせていた。
 それは人の死体を苗床にして花を咲かせる凶悪なモンスターだった。そんな存在が廃村のあちこちで花を咲かせている。それを見た猟兵は悟る、その花の数だけ多くの人々が犠牲になったのだと……。

「死者を苗床に……なんて悪い子たち。生花売りとして、死花を何とかしないとね」
 その様子を見たニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は顔をしかめ、もう花による被害は出させないと意気込む。

「やっぱ花屋的に許し難い花でしたかよ」
 その隣では白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が巨大な魔鍵を手にして、不機嫌そうに鼻を鳴らす。
「そんじゃキリキリ根こそぎ剪定してくとしましょっかや」
 そう言って物九郎が一歩踏み出すと、地面に生え茂った雑草に隠れるように埋もれていた死体の腕が突然伸びあがる。

「ここはもうおたくらの領域ってことっスね」
 勘を働かせ反射的に物九郎が魔鍵を突き出し、その腕にカウンターで刺すようにブチ込んだ。
「けどまあ、そんくらいは想定内ってもんですわな」
 物九郎がニヤリと笑うと、鍵が敵からドリームエナジーを奪い、その力を使って周囲に数多くのモザイク状の人型の眷属を生み出す。
「いい塩梅で作れやしたね、そら、敵さんの迎撃に向かっておくんなさいや」
 数が多いため個の力は弱いが、壁には十分と大部分を敵の迎撃に向け、残ったものをニコの近くに配置する。

 周辺の死体が蔓に動かされ、糸で操られる人形の如くふらふらと迫る。それを妨害しようとした眷属に茨の杭を突き刺して倒しながら群れがじわじわと近づいてくる。
「これ以上死を辱めさせないわ」
 その姿に憐れみを覚えながら、ニコリネは勇気を胸に宿してユーベルコードを発動する。すると己と信を置く物九郎の戦闘能力を飛躍的に高める。だがそれと同時に味方へ攻撃を加えたくなる衝動に駆られた。

「植物には炎がよく効くわよね、死花を焼っつけちゃいましょ」
 高められた魔力を練ったニコリネは炎の魔法を放ち、八つの炎が紅蓮の渦となって敵を覆い蔓が燃え上がる。痛みを感じているように蔓が暴れ、その延焼に巻き込まれ囚われた死体も燃えてゆく。
「猟団長の眷族をお借りしますね!」
 そしてニコリネはシャッター棒をフルスイングしてモザイクの眷属を吹き飛ばし、その身に起こる凶暴な副作用を抑え込んだ。
「んンー、スッキリ! ありがと!」
 にっこりと良い笑顔を浮かべたニコリネがまた次の敵へと向かう。

 敵もまたやられるばかりではない。死花の群れが大量の針のような茨棘を飛ばし、ニコリネに襲い掛かる。それを炎で焼き払うが、一部がすり抜けて腕に突き刺さった。傷口から血が勢いよく流れ出して止まらない。それは茨棘に含まれる止血阻害毒の効果だった。
「棘の扱いは慣れてるけど、毒は……!」
 すぐに茨棘を抜き、ニコリネは血ごと毒分を絞り出す。すると出血が収まり始める。
「フラフラする……けど、沢山の命が奪われて、なお玩ばれている今……ドラゴンを倒すまで倒れちゃいけないわよねぇ」
 こんなところで倒れてる暇はないと、ニコリネはまだまだ衰えぬ闘志で以って炎を放つ。だが敵もまた茨棘を飛ばして攻撃してくる。

「ニコリネのねーさんの力を借りて、俺めも一暴れしてやりまさァ」
 そこへ割り込んだ物九郎が、巨大な魔鍵を軽々とブン回す。茨棘を弾いて接近すると、蔓が足に絡まって来る。それを差し込んだ魔鍵に絡ませ、思い切り引っ張って敵の体を強引に引き寄せた。
「人の体を養分に咲く花なんざ悪趣味ですわな、ここで散らしてやりますでよ」
 物九郎は魔鍵を敵の体を覆う蔓に叩き込んで引き千切り、花を無防備にさせると突き入れ、真っ赤な花びらを散らした。死体が解放され崩れ落ちる。そのまま周囲の花にも次々と攻撃し、8回の攻撃で真っ赤な花びらが地面に散らばった。
「これは強力っスね。少々制限がありやすが……」
 物九郎は魔鍵を眷属に叩き込み、代償に起きる仲間への殺意を消した。

「猟団長も九回攻撃! 流石の無双……味方で良かった!」
 暴れ回る物九郎の頼りがいのある姿にニコリネが安心して微笑み、自分ももっと頑張ろうと炎を放射して敵を焼き払っていく。熱気が周囲の温度を上げ、植物に引火した炎が燃え盛る。
「ドラゴン退治の前にいい準備運動になります。これも武者修行の一環ですわね」
 攻撃の合間に眷属に炎を撃ち込み、燃え上がったモザイクの眷属は力尽きて消え去った。それと同時にニコリネに起こった衝動も消える。

 仲間を燃やされた敵は猟兵を警戒し、突き刺さるような茨を伸ばして繁殖させ、近づかせないように辺りを埋め尽くしていく。
「そんなもんで防げると思ってんのか」
 だが物九郎が無造作に魔鍵を薙ぎ払い、敵が伸ばす蔓を刈り取り、花に向かって踏み込むと茨棘が迎撃に放たれる。
「一度やられた攻撃を何度も食らいはしないわよ!」
 対抗してニコリネが炎をぶつけ、茨棘が爆炎で吹き飛んだ。物九郎は止まらず進み魔鍵を振り上げた。
「この調子で全ての死花を剪定してやりまさァ」
 物九郎の魔鍵がまた一つ魔性の花を散らした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宇冠・龍
由(f01211)と参加

この花たちは、襲った方々に寄生して咲いているのですか……?
人食いの竜もそうですが、痛ましい光景です
弱肉強食が世の常とはいえ、死してなお望まぬまま活用されるのは死者にとっても非常に苦痛
死霊術士として、せめて安らかに眠りにつけるようにします

【竜逢比干】で夫の霊を召喚
夫の吐く絶対零度の氷結の息吹と、私の持つ形見たる氷結の槍を地面に刺し一帯を凍らせることで、死者とそこに咲く死花を凍らせ安らかな眠りに誘います

凝結毒ではなく止血阻害毒とは、植物に含まれるあの毒は非常に厄介ですね
向かい来る茨たちは、風と氷を含ませた一閃で薙ぎ払い凍らせましょう


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

まずは黙祷を捧げましょう
(死が溢れて当たり前な世界とはいえ、死者を蔑ろにする理由にはなりませんから)

さて、お母様がお父様と一緒に周囲を凍らせる間、私は囮となって敵の注意を引きつけます

私は全身燃えるブレイズキャリバー
その存在感で死花たちをおびき寄せ、一か所に集めることでより凍らせやすくさせます
空中戦は得意分野です。植物なら強い光に惹かれるはず、攻撃の届かない高い頭上で舞い踊り、攻撃を一身に引き受けかばいましょう

茨にあたっても炎の身体からは血は出ませんし、身体の修復も可能ですので

(このような弔い方で申し訳ございませんが、どうか安らかに)
凍り付ていく廃村を上空から見ます



●凍える花
 村に咲く深紅の大花は、領域を広げ外にまで侵食している。恐らく湖の近くの村で休もうとした旅人や行商人をも巻き込んで被害を広げたのだろう。
「この花たちは、襲った方々に寄生して咲いているのですか……?」
 宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)が辺りに咲いた毒々しいまでに赤い花を見て、その数の多さに声を震わせる。
「人食いの竜もそうですが、痛ましい光景です」
 花の数だけ犠牲が出たのだと思うと、悲しみに心が痛む。
「弱肉強食が世の常とはいえ、死してなお望まぬまま活用されるのは死者にとっても非常に苦痛。死霊術士として、せめて安らかに眠りにつけるようにしてあげなくては……」
 龍が祈るように竜の姿をした夫の霊を召喚する。龍を見下ろす夫の霊がその心を察したように頷き、敵へと殺気を込めた鋭い視線を向けた。

 その隣では村の人々の為に宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)が黙祷を捧げていた。
(「死が溢れて当たり前な世界とはいえ、死者を蔑ろにする理由にはなりませんから」)
 そして祈りを終え、父の霊と母へと視線を向けて準備ができたと頷く。
「はい、お母様。死体を弄ぶオブリビオンを倒して、操られている身体も安らかに眠らせてあげましょう」
 由の炎で出来た全身が火を強めて燃え上がり、目立つように周囲の草木を燃やし尽くしてゆく。離れた場所からでもその輝きはすぐに目に入った。
 その様子に自らも燃やされるのではと、危機感を覚えた死体を操る死花の群れが囲むように近づいてくる。


「由が引き付けてくれたようです。私達も始めましょう」
 龍が夫に呼びかけると、竜が咆哮して大きな顎を敵に向ける。そこから吐き出されるのは絶対零度の氷結の息吹。一瞬にして植物が凍結し、死体もまた表面が凍って動きが鈍くなる。続けて龍が形見の青白い槍を地面に突き立てる。すると地面が凍結して周囲に拡がり死者の足を凍り漬けにした。
「安らかな眠りへと誘いましょう」
 そのまま身動きが取れず、氷の棺に入ったように死花と死体が一纏めに氷結する。

 そんな仲間の死体の陰から伸びた細い茨の鞭が龍に向かって襲い掛かる。
「お母様には届かせません」
 そこへ飛んで割って入った由が攻撃を受け止め、己が炎の身体から火が散る。
「残念ですが、私の身体から血は出ません」
 茨を炎の剣を振るって焼き払い、由は空に舞い上がり、太陽の如く燃えて敵の注意を引き付ける。

 その空で舞う炎に惹かれるように、死花たちが一斉に茨の鞭を放つ。
「やはり植物は強い光に惹かれるようです。このままお母様とお父様が戦い易いようにおびき寄せましょう」
 由は空まで伸びて追いかけてくる茨の鞭を避け、当たりそうなものは炎の剣で薙ぎ払って焼失させた。しかし次々と茨の鞭は新たに伸びて、捌き切れずに由の身体に当たって炎を揺らす。
「毒の効果がなければ大した攻撃ではありません」
 平然と地上を見下ろした由は両親が動くのを目の端に捉えた。

「凝結毒ではなく止血阻害毒とは、植物に含まれるあの毒は非常に厄介ですね」
 例え毒の効果がなくとも、これ以上娘に攻撃はさせないと龍が槍を構える。同意した夫の竜が氷のブレスを吐き出し、それに合わせて風を纏う槍を連続で突き出す。すると突風が起こりブレスが風に流れて勢いを増し、広範囲の敵を呑み込んで凍らせてゆく。
「ならば攻撃を受ける前に一気に終わらせましょう」
 竜が吐き出す全ての熱を奪うブレスで敵を凍らせると、近づいた龍が槍を振るってその氷像を砕いた。

 そうして周囲を氷の世界に変えながら敵を排除していると、凍った地面が割れて蔓が飛び出す。凍っていない地中を通して敵が攻撃してきたのだ。
「植物ですから地中を通るのは得意なようですね」
 その絡みつこうとする蔓を龍は槍で払う。だが針のような茨棘が射出された。それを竜がブレスで凍らせて吹き飛ばし、尻尾を薙いで茨を吹き飛ばした。
「ありがとうございます、あなた」
 礼を言いつつも龍は、すぐに地中から次々と湧く蔓を槍で斬り捨てる。
「しかしこれでは埒が明きませんね」
 攻撃を防ぎ続けながら龍は敵の位置を探る。

「お母様、私に任せてください」
 そこへ急降下した由が炎の剣を地面に突き刺す。氷が解け熱が地中を伝わり蔓が通った穴が空気孔となって引火し、盛大に燃えて少し離れた地中から死体が飛び出してきた。その全身が燃え、炎に巻かれた花が焼け落ちると共に崩れ落ちた。


 竜が周辺を全て凍らせ、龍は動く敵が居ないのを確認して上空を飛んで地上を偵察していた由に手を振る。
「これでこの辺りの敵は一掃できたようですね。次の場所に向かいましょう」
 竜に乗った龍が次の場所へと飛び立つ。それに続きながら由は凍った廃村を見下ろした。
(「このような弔い方で申し訳ございませんが、どうか安らかに」)
 凍れる世界に閉ざされて沈黙した死者に祈りを捧げた由は、上空をくるりと旋回して飛び去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
判定:【WIZ】
人喰いモンスターってヤツか……うん、確かに怖ぇし、普通の人じゃ手が付けられねえよな。
子供達も親がいなくなって心細いって気持ちもわかる。
……だから、怖ぇけど出来る限りのことはやってみるか。

《二十五番目の錫の兵隊》を呼び出し、協力して掃討に当たる。
おれはともかく《兵隊》は霊体だから毒とか効かねえし、無茶しない程度に突っ込ませて攪乱。
《兵隊》の応戦を〈援護射撃〉で支援しながら、本命の攻撃も混ぜてダメージを重ねていく感じになるかな。蔓やら棘やらを斬り飛ばして、上手いこと攻撃を阻害できるといいけど。
もし近くに他の仲間がいるなら、そっちにも適宜〈援護射撃〉を飛ばして助けるようにする。


久留宮・沙月
※アドリブ連携歓迎

何とも……痛ましい予知ですね
今回ばかりは戦いを楽しむためではなく、
純粋に猟兵の職務として敵性の排除に臨みましょう

敵の数は多いですが、一体一体の練度はさほど高くないはず
囲まれないよう、地形を利用したり、他の猟兵さんと連携したりする事を意識して動き、
一体ずつ確実に斬っていきましょう
相手の動きを読む事には自信があります
正面の敵に集中できるのならば、後れをとることなどないはずです

……一瞬でも早く終わらせてあげましょう
それが、苗床にされてしまった人々へのせめてもの手向けになると信じて



●咲き誇る深紅の花
「何とも……痛ましい予知ですね」
 久留宮・沙月(技識の戦神・f17250)は既に出てしまった被害を想い悲し気に目を伏せる。
「今回ばかりは戦いを楽しむためではなく、純粋に猟兵の職務として敵性の排除に臨みましょう」
 これ以上の悲しみは必要ないと、悲劇を終わらせる為に戦いの場に足を踏み入れる。

「人喰いモンスターってヤツか……うん、確かに怖ぇし、普通の人じゃ手が付けられねえよな」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は死体に寄生するその存在を目にし、腕に鳥肌が立つのを感じる。
「子供達も親がいなくなって心細いって気持ちもわかる。……だから、怖ぇけど出来る限りのことはやってみるか」
 怖れる気持ちを抑え込み、嵐は片脚が義足の武装した兵士の霊を呼び出し、前衛に配置して敵の元へ進ませる。
「頼んだ、霊体なら毒とかは効かねえからな」
 そして自分は後ろからお手製のスリングショットを手に小石を拾い集める。


 猟兵に気付いた茨に覆われた死体が、よろよろと兵士の霊の元へと近づいてきた。
「おいでなすったな、それじゃあ始めるとするか」
 その言葉に従い兵士の霊が銃を構えて発砲する。弾が死体に穴を開けて仰け反るが、巻き付いた蔓が倒れる事を許さない。それを見た嵐は嫌悪を顔に浮かべた。
「死体を無理矢理操ってるのか、子供にゃ見せられねえモンスターだな」
 反撃に身体から生えた棘の鞭が触手のように勝手に動いて振るわれる。それが兵士の霊を傷つけるが、血は流れないで棘が深く体を穿った穴だけが残った。ダメージに構わず兵士は突っ込み、突進する勢いで銃剣を死体に突き立てた。そのまま押し倒し、何度も剣を突き刺して苗床である死体を破壊する。
 それをやめさせようと、花は兵士の身体を蔓で縛ろう巻き付けた。

「敵の数は多いですが、一体一体の練度はさほど高くないはず」
 ならば囲まれないように一体ずつ相手取ればいいと、沙月は右腰に刺した刀を左手で抜き放つ。そして一番突出している仲間を襲っている敵を狙って斬り掛かった。邪魔な蔓を斬り払い、間合いに入ると死体が動き出して手で掴もうとする。
「やはり操られる死体の動きは緩慢ですね。傷つけてしまいますが、後で必ず弔います」
 その手を沙月は斬り落とし、花に繋がる蔓を斬り飛ばす。そして落下してきた巨大な花を一刀両断して斬り捨てた。

「この調子で一体ずつ確実に斬っていきましょう」
 次に近い敵に視線を向け、叩きつけられる茨の鞭を飛び退いて避けた。
「前哨戦であろうと油断はしません」
 その茨を斬り裂き、沙月は前へと進む。だがその足に地面を伝う蔓が巻き付こうとして動き、沙月は咄嗟に跳び下がった。すると茨が結界のように花を覆い、近づかせまいと道を阻む。
「これでは時間が掛かってしまいますね」
 どうやって花まで接近しようかと沙月が回り込みながら様子を窺う。

「当てるのが難しそうだが……援護する」
 嵐がその茨の結界の隙間に狙い定め、スリングショットから石を放った。風を切って飛ぶ石が真っ直ぐに茨の間を通り、無防備な花にぶつかった。
「命中だ!」
 守りをすり抜けた攻撃に花が驚き、その攻撃を行った嵐に敵意を向けて茨鞭を叩き込もうとする。

「注意が逸れました、今なら……!」
 一足で飛ぶように間合いを詰めた沙月は刀を横に薙いで茨の結界を切断し、隙間からするりと中に入って花へと刃を斬り上げる。逆袈裟に花が断たれ、萎れながら地面に落ちた。囲っていた茨もまた干からびて崩れ、視界が開けるとすぐ傍に新たな敵が迫っているのに気付いた。
「数は多いですが、一対一の状況ならば負ける気はしません」
 沙月はすぐに他の敵が近寄る前に決着をつけようと、こちらから敵に向かって駆け出す。
 それを迎撃しようと蔓が足を捕まえようとするのを跳んで躱し、間合いに飛び込む。すると死体が腐った腕で捕まえようと手を伸ばす。だが刀を振るいその腕ごと胸を横に断ち切る。すると上半身が崩れ落ち、口から伸びていた花も一緒に地面に叩きつけられた。
「血塗られた花はここで全て散らします」
 その花に逆手に持った刀を突き立て止めを刺す。

 嵐が指示を出して兵士が次に近い敵に接近すると、死花は蔓を義足に絡ませて動きを封じようとする。
「霊体相手だと勝手が違うよな。だがこっちは遠慮なくやらせてもらう」
 兵士が電撃を放つと、蔓を伝って花に衝撃を与える。すると痺れたように花がふらつき動きが緩慢になった。
「そっちの死体も麻痺なんてしないんだろうけど、本体のお前は別だよな」
 そこへ嵐がスリングショットで石を飛ばし、花に直撃させて花びらを散らした。ひらひらと落ちた赤い花びらの上に仰向けに死体が倒れ込む。その顔は疲れ切ったような悲壮な形相で、酷い死に顔だった。

「……一瞬でも早く終わらせてあげましょう」
 その憐れな姿を見た沙月は、一気に駆け寄り刀を一閃。剣閃が走ると、花が半分に両断され、ずれ落ちて散りながら地面に撒かれた。


 倒しても倒してもまた新たな死体が真っ赤な花と共に現れる。敵の攻撃を兵士が受け止め、蔓を銃剣で切り裂く。
「しかしいくらでも湧いて出て来るな、それだけ犠牲になったってことなんだろうけど」
 嵐はスリングショットで石を飛ばして敵を牽制し、そこへ兵士が突っ込んで花に銃剣を叩きつけて地面に落とし、踏みつけて切っ先を突き入れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
死して尚…ですか
身につまされる話ですね
尤も、私には反省も後悔もありませんが…
とまれ、須らく殺しましょう
「そう」なってしまった彼らを救う術を私は持たないのです

◆行動
『暗キ獣』を使用
さあ、我が軍勢にて蹂躙致しましょう
啜る血すら枯れ果てた我が軍勢を相手にどれだけ戦えるか愉しみです

同じ軍勢に同じ様な死者の群れ
ですが、彼我には決定的な違いがあります
「そちら側に私が居ない」

私自身も【二回攻撃】する【範囲攻撃】で【マヒ攻撃】と【精神攻撃】を行い敵に【恐怖を与える】

負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復

殺し尽くした後は、彼らの魂の健やかなる事を願い【祈り】を捧げます
せめて安らかに。人として眠れ


ジェイ・バグショット
久しぶりに来たが、この世界は相変わらずだな。
何処も彼処も悲嘆の色に染まってる。どうしようもない世界だ。

なんの感慨もなく現実を見る。

輪に棘がぐるっと刺さっている『荊棘の王』を使用。自動で敵を追尾し強襲。
植物相手なので斬撃として使用
【早業】により速度Up

気配を消しての【騙し討ち】
黒剣『絶叫のザラド』による【先制攻撃】
攻撃と防御どちらにも使う
ブラッドガイスト使用後は殺戮捕食形態=カースブレイド
剣の切っ先から裂け、牙の覗く異形の捕食剣へ
剣が絶叫し衝撃波を生み出す。
ギィイイ"ェエ"!だのギィイ"ヤァ"ア"!

植物相手じゃ得意の刻印は使えねぇからな。
物理で行くか。

『テフルネプ』を操り複数の縄状の影で敵を捕縛



●変わらぬ薄暗い世界
「久しぶりに来たが、この世界は相変わらずだな」
 ジェイ・バグショット(幕引き・f01070)が周囲の惨状を見渡す。
「何処も彼処も悲嘆の色に染まってる。どうしようもない世界だ」
 救いなど何処にも無いと、無慈悲な世界を感慨もなく。ただ現実として受け入れる。

「ならこっちもいつも通りにやるだけだ」
 鉄輪にぐるっと棘が刺さっている拷問器具『荊棘の王』を放り投げる。それは自動追尾で敵を追いかけ、花を狙って飛翔する。
 それを防ごうと蔓が巻き付き動きを止めようとする。だが荊棘の王は回転して蔓を切り裂き、そのまま真っ直ぐ花へと向かう。花は死体の後ろに隠れ、死体が手で荊棘の王を掴む。

「背中ががら空きだ」
 敵が荊棘の王に注意を向けている間に、背後に回ったジェイが長剣を花に突き刺した。そこで己が血を代償に剣を殺戮捕食形態=カースブレイドへと変形させる。剣の切っ先から裂け、牙の覗く異形の捕食剣となり花を噛み千切った。はらはらと花びらの破片が舞い落ち、死体が力無く崩れ落ちた。
 すると解放された荊棘の王が次の敵目掛けて飛んで行く。
「まだまだ居やがる。喰い放題だな」
 ジェイが剣に向けて呼びかけると、獰猛に牙を剥いて獲物への衝動に手が引っ張られる。
「そう慌てずともすぐに喰わせてやる」
 剣の柄を強く握り、ジェイは周囲の花々がこちらに向かってきているのを察していた。


「死して尚……ですか、身につまされる話ですね」
 見慣れた動く死体を前に、霧島・絶奈(暗き獣・f20096)は己が所業を振り返る。
「尤も、私には反省も後悔もありませんが……とまれ、須らく殺しましょう。『そう』なってしまった彼らを救う術を私は持たないのです」
 死体を戻す方法等ありはしないと、既に割り切っている絶奈は、己が軍勢を呼び出す。それは死した獣と人の群れ。敵の死体よりも悍ましく怖ろしい不死の軍勢だった。

「さあ、我が軍勢にて蹂躙致しましょう。啜る血すら枯れ果てた我が軍勢を相手にどれだけ戦えるか愉しみです」
 一斉に軍勢が動き出し、花を駆逐せんと屍獣が飛び掛かり屍兵が槍を振るう。
 対して花もそれを迎撃せんと茨棘が撃ち出され、屍獣に突き刺さる。だが倒れても次の獣が飛び越えて襲い掛かり、花を守ろうとする茨の檻を引き裂く。そこへ屍兵が一気に押し切ろうと槍を構えて進軍する。それを押し戻そうと周囲の花が協力し合って、無数の茨の鞭を放って軍勢を押し留める。
「同じ軍勢に同じ様な死者の群れ、ですが、彼我には決定的な違いがあります」

 ――そちら側に私が居ない。

 飛び込んだ絶奈が剣を横に振るうと、周囲の茨の鞭が断ち切られ、敵の守りに穴が空く。そこへ一気に屍兵が槍を突き入れて敵の守りが戻らぬように道を作り、その中へ屍獣が飛び込んで一気に花々を蹂躙していく。死体を食い千切り、蔓を引き千切って落下した花を踏みにじる。


 仲間がどれだけ倒されようとも、その身がどれだけ傷つこうとも、もはや血も流れぬ死体が足を引き摺るように歩いてくる。その頭上の深紅の花がじっとこちらを見ているように大輪の花を向けていた。そこへ荊棘の王が飛来すると、花は棘の鞭うを叩きつけて近づかせぬように弾く。
「植物相手じゃ得意の刻印は使えねぇからな。物理で潰してやる」
 影に潜むUDCを操り、複数の縄状の影にして地を這うように放ち敵に絡みつかせる。
 死花はそれを取り除こうと茨の鞭で切り払う。だが拘束から逃れようとしたところに、さらなる凶暴な力が襲い掛かった。

 ――ギィイイ"ェエ"!

 耳が痛くなるような絶叫と共に、捕食剣から衝撃波が放たれ、周囲の死体を吹き飛ばし、それに寄生する花も一緒に地面を転がる。敵が体勢を整える前に荊棘の王が襲撃し、花をズダズダに切り裂いた。
「そら、好きなだけ喰い散らかせ」
 ジェイが捕食剣を近づけると、その大きな口が花に牙を突き立て、獰猛に喰い荒らす。口の端から零れる花びらが、萎れて地面に落下した。

 衝撃波によって横たわっていた死体がゆっくりと起き上がり始める。
「死体を使わねば生存も出来ない脆弱な存在に、これ以上時間を取られるつもりはありません」
 これで決めると絶奈は軍勢を一気に押し込ませ、手当たり次第に花を攻撃させる。死花も反撃するが、辺りの花は数を減らし数の拮抗は崩れていた。
 ならばと死花はこの軍勢の将である絶奈に狙いを絞る。蔓や茨鞭が一斉に絶奈に集中して襲い掛かる。
「私を攻撃しようと考えたのは正しい判断ですが、決断が遅すぎましたね」
 屍兵が絶奈を守り、手薄になった敵に獣達が飛び掛かる。花が噛み千切られ、赤い花は無残に散らされる。

「残ったのを全て喰ってやれ」
 ジェイも獣の群れに混じって捕食剣を振るい、花が噛まれたように抉られた。一振りするごとに敵の蔓や茨がごっそり削り取られ、花が捕食されていく。
 周りの赤い花が駆除されると、操られていた死体が倒れようやく安息を得られた。


「前菜にもならなかったな」
 剣を元に戻し、ジェイは残った死体をこの世界ではいつもの事だと、ただ見慣れたものとして捉え、次の敵に意識を向け歩き出す。
「せめて安らかに。人として眠れ」
 絶奈が死者に祈りを捧げ、魂が安らかに眠れることを願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。彼らを悼むのも、生き残った子供達を憐れむのも。
全てが終わるまで胸の奥にしまっておく。
…今はただ。眼前の敵を倒すだけよ。

第六感が捉えた目立たない魂の存在感を残像として見切り、
怨霊達の精神攻撃を呪詛耐性と気合いで受け流し、
左眼の“代行者の羈束”に魔力を溜め【断末魔の瞳】を発動

全身を覆う生命力を吸収する呪詛のオーラで防御と、
闇属性攻撃の反撃を同時に行い敵の動きを止め、
殺気や危険を感じたらその場から離脱する

死体と薔薇を繋ぐ茨を大鎌で怪力任せになぎ払い、
薔薇を銃撃して仕留める2回攻撃を行うわ

…埋葬は全てが終わってから、ね。

…いまだ魂が鎮まらないならば、一緒に来て。
貴方達に復讐の機会を与えてあげる。


セゲル・スヴェアボルグ
失われたものはどうしようもないが、せめてこれ以上に被害は食い止めんとな。ここに生きた人間がいないことだけが幸いだな。
それに、あれらも元は人だが、このまま置いておくわけにもいかん。
まぁ、極力体そのものは傷つけずに行きたいところではあるが。
ともかく、槍投げで距離を取れば、リスクは軽減できそうだな。
狙うのは植物体だが、人の方を狙う必要があれば致し方あるまい。
可能であれば引きはがして、植物だけを潰したいところだ。
力で無理やり引きはがせんもんか。
やるだけやってみるか。
自身への多少のリスクであれば恐れるに足らん。


明星・豹麻
あんな惨状をこれ以上広げない為にも、なんとしてもドラゴンを討伐しよう!
外見が亡くなった人であったとしても、躊躇わない…。
当人にとっては利用されて周りを傷つける方が辛い事だろう。
解放する為にも、オブリビオンは確実に倒す!


湖の村では敵の攻撃の届かないほどの遠距離から換装式多目的銃「トリックスター」を使って【スナイパー】の技能で狙撃する。
敵の攻撃の予備動作を見て妨害したり脚部を狙い移動能力を奪うなど、基本的に他の仲間を援護するように立ち回り、倒せる敵を見掛けたら確実に倒しておく。
花の形であるなら花弁の中央の子房辺りが狙い目か…。

この後のドラゴン戦に全力で挑む為にもここは消耗を最小限にして乗り切ろう。



●散る花
 周辺の掃討を終えた猟兵達は村の中央付近へと近づく。

「……ん。彼らを悼むのも、生き残った子供達を憐れむのも。全てが終わるまで胸の奥にしまっておく」
 さまざまな想いが胸中を巡るが、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は今はそれを胸の内に収め、目の前の戦い意識を向ける。
「……今はただ。眼前の敵を倒すだけよ」
 己が全身を左眼の聖痕が吸収した死霊や怨霊の魂で覆い尽くし、第六感が捉える目立たぬ魂の存在感を残像として見切り、呪うような怨霊達の干渉を呪詛耐性と気合いで受け流す。そして左眼の『代行者の羈束』に魔力を溜めユーベルコードを発動し、精神洞調率に比例しただけ戦闘力を高める。

「……では始める」
 リーヴァルディは蔓を踏みつけ、近づく者を傷つける茨を黒い大鎌で断ち切る。すると花が反応してリーヴァルディの方に向いた。
「こちらを向いたなら好都合……その血色の花を散らす」
 大鎌とは反対の手に二連装マスケット銃を持ち、2発の弾丸を花に撃ち込んだ。弾が花を穿つと内部で無数の棘が飛び出し、花を穴だらけにして散らした。

「……埋葬は全てが終わってから、ね」
 死体が倒れ動かなくなるのを確認しながら、リーヴァルディが己の血を弾丸に変化させて装填していると殺気を感じて飛び退く。すると茨の鞭が叩きつけられ地面が土埃を撒き散らす。
「……危険な気配がするわ」
 脚を止めずにリーヴァルディがその場を離れると、足元の蔓が巻き付こうと追いかけ、上からは叩きつけるように茨が襲い掛かる。周囲を見れば赤い花が咲き乱れていた。建物や草木に隠れて獲物を待っていたのだ。


「失われたものはどうしようもないが、せめてこれ以上に被害は食い止めんとな。ここに生きた人間がいないことだけが幸いだな」
 セゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)はもはや人が生活できるような場所ではないと、見渡した村から咽るような死臭を感じていた。
「それに、あれらも元は人だが、このまま置いておくわけにもいかん」
 死臭を辿れば、真っ赤な花の下には動く死体があった。その顔にかつては眼があった窪んだ真っ黒な空洞が、まるで目があるようにこちらへと向けられた。

「まぁ、極力体そのものは傷つけずに行きたいところではあるが。ともかく、槍投げで距離を取れば、リスクは軽減できそうだな」
 近づかれる前に仕留めてしまえばいいと、助走をつけたセゲルは突撃槍を投擲した。遠距離からの槍投げに気付かず、しなって飛んだ槍は花に直撃し、貫通して地面に突き刺さった。歩いていた死体は数歩進むと力を失い倒れた。
「上手く行ったな。これなら近づく前に数を減らせるだろう」
 セゲルはすぐに新しい槍を構えて投げる。だが今度は敵も準備をして棘の鞭を当てて軌道を変える。だが鋭い勢いの槍は大きく逸れずに花の横の茨を貫きながら地面に深く刺さった。
「避けられたか、だが槍はいくらでもある。近づく前に何体倒せるかな」
 次々と槍を投げ、防ぎ切れずに被弾した花が大砲にでも当たったように吹き飛んで散っていく。ならばと花は死体を盾にするように後ろに隠れて近づいてきた。


「こんな惨状をこれ以上広げない為にも、なんとしてもドラゴンを討伐しよう!」
 その為にもまずはこの村に巣食うモンスターを討伐しなくてはと、明星・豹麻(慈愛の流浪剣士・f02965)は気合を入れて敵に視線を向ける。
「外見が亡くなった人であったとしても、躊躇わない……。当人にとっては利用されて周りを傷つける方が辛い事だろう」
 動く死体が仲間に襲い掛かっている。既に人は息絶え身体だけが利用されている。そんな非道を許さないと豹麻は片膝を地面について、換装式多目的銃『トリックスター』を遠距離モードにして構える。
「解放する為にも、オブリビオンは確実に倒す!」
 こちらの射程に入った敵に向け、スコープを覗き込み狙撃タイミングを計る。

 ――今だ

 銃口から放たれた弾丸は死体や茨の隙間を潜り抜け、動く赤い花の中央に命中した。花は穴を開け、枯れ萎むと茨も自立できなくなり、地面に落ちた。

 豹麻の存在に気付いた敵が、茨と死体で身を守りながら向かって来る。
「気付かれたみたいだけど、まだこっちの射程だよ」
 敵の射程に入る前に、もう一度豹麻は狙撃を行う。放たれた弾丸は蔓を貫き死体の足を撃ち抜いた。衝撃に死体が倒れ敵の動きが止まる。そこにすぐに次の弾丸を撃ち出し、花の中央を撃ち抜いた。

 次の敵を狙おうとした豹麻が地面を転がるように身を投げる。するとさっきまでいた場所に茨棘が突き刺さった。首を回して見て見ると、回り込んだ他の花がこちらに接近していた。
「敵の射程に近づかれたみたいだね」
 起き上がってすぐに離れる方向へ駆け出すが、すぐに新しい茨棘が背中目掛けて飛んでくる。


「……死の冒涜を終わらせる」
 そこへ突っ込んだリーヴァルディは飛び交う茨棘を纏う怨霊の呪詛で防ぎ、踏み込んで大鎌を横薙ぎに振るう。一振りで茨を切り裂き、さらに前に踏み出すと、死体が襲い掛かってくる。それに対して刃を返した大鎌をもう一度振るい、死体の胴体を両断し、邪魔な障害物を排除すると丸見えになった花に銃口を突き付けた。
「……その花は人の命を吸い上げて咲かせたもの。そんなものが咲いていたら、死者の魂も引きずられてしまう」
 リーヴァルディが引き金を引き、放たれた弾丸が花を撃ち砕く。すると操られていた死者の身体が倒れ込んだ。

「……いまだ魂が鎮まらないならば、一緒に来て。貴方達に復讐の機会を与えてあげる」
 死体の少し上に向かってリーヴァルディが呼びかけ次の敵に向かうと、その後を追いかけるように一陣の風が吹いた。

「この後のドラゴン戦に全力で挑む為にも、ここは消耗を最小限にして乗り切ろう」
 余計なダメージを負う訳にはいかないと、豹麻は距離を離しながら銃を撃って、一方的に攻撃を加えて仲間を援護する。

 銃弾を防ぐ壁にするように死花が死体を前に進ませ、その後ろでさらに茨で己が身を守りながら攻撃してくる。
「人を盾にしたか、死んでいるとはいえ傷つけるのは好かん」
 ならばお望みどおりに接近戦をしてやろうと、セゲルは槍を錨斧に持ち替えた。そして叩きつけられる何本もの茨の鞭を一振りで弾き飛ばす。

「近づけば勝てると思ったのか? 残念だが近づいてもこっちが強い」
 錨斧を振り下ろして邪魔な蔓を纏めて断ち切る。そして道を開けて花に向かって近づく。すると一斉に茨棘が放たれた。
「小細工だな」
 セゲルは錨斧を盾にして受け止め、鎧を抜けて手足に刺さったものも気にせず前に進む。それを止めようと死体が動き掴み掛かる。それをセゲルは片手で押え込み、花に繋がら茨を傷つくのも構わず片手で握り潰すように引き千切った。すると死体が力を失い崩れ落ちる。
「こうすればもう人の身体を使えまい。さて、叩き潰してやるか」
 セゲルは棘が刺さって血の出る手で錨斧を振り上げ、真っ赤な花に叩き込んだ。そのまま地面い叩きつけ、花はぐちゃぐちゃに潰れて地面に埋まった。
 暴れ回るセゲルを抑え込もうと、残った花が一斉に体に茨を巻き付ける。

「チクチクするが、そんなものじゃ俺は倒せんぞ!」
 逆にその茨を両腕で抱き寄せて纏め、思い切り引っ張って花を引き寄せた。
「これが最後……!」
 離れた位置から豹麻が次々と銃弾を放ち、動けぬ花の子房を貫き花びらを吹き飛ばす。
「……怨念となった人々の苦しみを、その身で味わえ」
 そして最後の花にリーヴァルディが大鎌を振るい、花をバラバラに斬り落とした。


「まだまだみんな余力があるみたいだね。このままドラゴン戦に向かおう!」
 十分戦えるだけの気力は残っていると豹麻が、この勢いに乗ってドラゴンとの戦いに挑もうと意気込む。
「次は人食いドラゴンか、悪食な知能のないドラゴンなぞトカゲと変わらん」
 セゲルは錨斧を担いで、強敵であろうと変わらぬ余裕の態度を崩さない。
「……行くわ」
 この場を去る魂に冥福を祈っていたリーヴァルディが顔を上げ、湖の方へと視線を向けた。

 これからが本当の戦いだと、強大なドラゴンが待つ場所へ猟兵達は花びらで赤く染まった道を歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『蒼竜の異端神ウォルエリス』

POW   :    我こそが水なり
対象の攻撃を軽減する【超圧縮した水で出来た身体】に変身しつつ、【渦巻く大海流のドラゴンブレス】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    「水の巨大竜巻」で攻撃しつつ、その中を泳ぐ
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
WIZ   :    天覆い地砕く波濤
単純で重い【召喚した津波】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はガルディエ・ワールレイドです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●蒼竜の咆哮
 澄んだ水が広々と視界一面に広がっている。
 そこは村から少し歩いた場所にある凍らずの湖。冬になっても凍結せずに使える、人々の恵みとなる場所だった。今までは――。

 ――ギュワッ!

 遠くで甲高い鳴き声が響いたかと思うと、湖から蒼いドラゴンが姿を現す。身体を振るわせると湖が波打つ。
 そしてぴくっと尻尾を動かすと、何かに気付いたようにきょろきょろと頭を動かして周囲を探る。その視線が湖に近づいている猟兵達を捉えた。

 ――ギュアォオオオオオオ!!

 己がテリトリーを荒らされ怒りに満ちた咆哮が放たれた。空気が揺れて大波が起きて周囲を濡らす。
 空からは雨が降り出し、水を操るドラゴンの魔力が辺りに満ちていた。

 水の災害そのものの如きドラゴンに、猟兵達は怯まずに挑む。これ以上悲しい思いをする子供を増やさない為にも、ここで倒さなくてはならない。

 威圧するドラゴンを前に、武器を持つ手に力を込めた。
白斑・物九郎
●ニコリネ(f02123)と



アシがあるなら水上戦だって怖かねえ

ニコの操船に同乗
船体にしっかり掴まって(怪力)、一緒にドラゴンへ接近しますでよ
回避に関わる操舵にゃ俺めも【野生の勘】を研ぎ澄まして口出しして協力しまさ

津波が寄せて来たら、船上から【アイシクルドライブ(属性攻撃・氷)】で津波自体に対抗、船が敵攻撃範囲から離脱する隙をこじ開ける!

ドラゴンへ船で接近出来たら、ニコに送り出される形で、船体プラス凍らせた水面なんかも足場にして更に肉薄(地形の利用+ダッシュ)
湖に左手を突っ込んで、凍らずの湖の水で氷槍を造作
こいつをドラゴンの水っポいボディをブチ抜く得物とする

――ブチ抜いてやりまさァ(串刺し)!


ニコリネ・ユーリカ
猟団長(f04631)といよいよ竜退治!
冒険を愛し、平和を希う者として、格好よく殺っつけちゃいましょ

水の竜巻や津波に巻き込まれたら大変!
風浪やうねりに強い漁船を召喚して、水上戦での足場を確保しましょ
なるべく早く地形を把握して、巧みな操舵で波に乗るの
第六感を研ぎ澄まして、敵の攻撃を間際で回避!
水上ドリフト、キメてみたかったの!(ギンッ)

水中を注意深く観察して敵影を捉えたら、同乗する猟団長を近接距離まで届けるの
最も有効になる攻撃の機を作って――託します!
子供達の涙を拭い、人々を救う一手を、蒼竜の心臓に突き立てて!

凍らずの湖が凍って……凄い。綺麗。
蒼竜の咆哮が止んだなら、無愛想な猟団長に労いの微笑を



●水上の戦い
 近づけばドラゴンの巨大さがよく分かる。尻尾も合わせた全長は20mを超えるだろう。

 ――ギュアォォオオオ!

 咆哮する口は人を一口で食い千切るほど大きい。
 湖が揺れ、大波が起きて陸に居る猟兵の足首まで水が浸す。

「猟団長といよいよ竜退治! 冒険を愛し、平和を希う者として、格好よく殺っつけちゃいましょ」
 ニコリネは風浪やうねりに強い漁船を召喚して、波に浮かべそこに乗り込んで船を操る。
「アシがあるなら水上戦だって怖かねえ」
 続いて地を蹴った物九郎が船に飛び乗り、落ちないようにしっかりと波除部分を掴むと、船は引き戻る波に乗ってドラゴンに近づく。


『ギュアアアアアォ!』
 ドラゴンが尻尾を地面に叩きつけると、漁船よりも大きな津波が起こって迫りくる。

「そのまま真っ直ぐ進みなせえ、俺めが道をこじ開けてやりまさァ!」
 それに動じずに大きな声で物九郎が指示を出す。
「信じてますよ猟団長!」
 その言葉に覚悟を決めたニコリネは、舵をそのままに波に向かって突っ込む。
「ここは任せてもらいまさ」
 不敵に笑みを浮かべた物九郎は、甲板の一番前に出て左腕を波に向かって伸ばす。
「ザ・レフトハンド――【属性攻撃・氷】ON」
 物九郎は左腕から冷気を纏うエネルギーを放ち、波にぶつかると一瞬にして氷結させて動きを止めた。

「波に乗って近づいちゃいましょ」
 ニコリネは船を突っ込ませて凍った波の上を滑り、加速して波を突破すると水面に戻ってドラゴンに近づく。
『ギュアォォオ!!』
 するとドラゴンは水の竜巻を起こして船を沈めようとする。
「水上ドリフト、キメてみたかったの!」
 ニコリネは船尾を振って鋭角に曲がり、竜巻をギリギリで躱す。チラリと見ればドラゴンとの距離はすぐそこまで迫っていた。
「子供達の涙を拭い、人々を救う一手を、蒼竜の心臓に突き立てて!」
 そうして近接距離へとニコリネは船を近づけ、物九郎を送り出す段取りを整えた。

「そんじゃあ、ちょっくら行ってくるとしやすかね」
 駆け出した物九郎は船を蹴って跳躍し、海に浮かぶ先ほど凍らせた氷の破片に着地し、氷を次々と跳びながら湖に左手を突っ込み、氷の槍を造り出す。
「――ブチ抜いてやりまさァ!」
 敵に向かって飛び込んだ物九郎が槍を突き出し、穂先が硬く分厚い鱗を割って胸を深く貫いた。強く押し込むが強靭な筋肉に阻まれ槍の勢いが止まる。
『ギュアッ!』
 ドラゴンが甲高い声を上げ、体を振って物九郎を振り落とす。
「猟団長!」
 そこへ船を走らせたニコリネが物九郎の身体を甲板で受け止めた。

「心臓には届かなかったみたいですな」
 心臓を穿つ感覚がなかったと残念そうに物九郎がドラゴンへと視線を向ける。するとドラゴンもまたこちらに視線を向け、次の攻撃へと移ろうとしていた。
「それならもう一度チャンスを作りましょ」
 ここからは自分の出番だとニコリネは船を敵に向けて走らせる。
『ギュォオオオ!』
 そこへ向けてドラゴンが波を叩き込む。
「まともにぶつかったら船が壊れるわね、それならサーファーのように波に乗っちゃいましょ!」
 巧みな操縦でニコリネは波の上を走ってドラゴンへともう一度近づいた。そしてまた飛びつこうと物九郎が槍を構える。

「後は猟団長に託します!」
 ニコリネは船をドラゴンの元に進め、物九郎を送り出す。すると接近を嫌がったドラゴンが翼を広げ空に舞い上がろうとする。
「水上戦の次は空中戦かい? だが空には逃がさねえ!」
 船の上を船尾から船首まで全力で走って助走をつけ、大きく跳んだ物九郎は、敵の頭上を取り、その広がる右翼に槍を突き立てた。
「そっちが水ならこっちは氷、ドラゴンの氷漬けにしてやりまさァ」
 穿った場所から翼が凍りつき、浮き上がりかけのドラゴンの身体がバランスを崩し宙から落下した。

『ギュアッ!!』
 驚いたようにドラゴンが鳴き、無様に横倒しになって湖に墜落した。すると大波が起こり、全てを呑み込むように水が迫る。
「こりゃ逃げ場がないっスね」
 墜落する前に翼を蹴って飛び降りた物九郎が、ドラゴンを中心に起こった巨大な波を見下ろす。
「猟団長! こっちへ!」
 波に煽られながらニコリネの操舵する漁船が、物九郎の落下地点付近まで何とか近づいていた。
「ちょっとばかし届かねぇ位置ですな。ならこっちでなんとかしますでよ」
 物九郎は周囲の飛び散る水滴を集め、凍らせ槍を伸ばして船に引っかけ、思い切り引っ張る力で自らの身体を飛ばし、船の上に着地した。

『ギュアッ! ギュオオオオオ!!』
 その姿を見たドラゴンが怒りの咆哮を放ち、波を追うように潜って水中を泳いで向かって来る。
「振り落とされないよにしっかり掴まっててね!」
「了解でさ」
 ドラゴンから逃げるようにニコリネは船を大波に乗せて加速させる。水中のドラゴンの影が近づき、顎が船尾を捉えようとすると、それを避ける為船を左右に振る。大きく船が揺れ、まるで遊園地のアトラクションのように船が前に傾く。あっという間に船が進んで木々にぶつかり、引っ掛かって止まった。やがて波が引くとそこは陸地だった。

「逃げ切った……?」
 ニコリネが振り向けば、ドラゴンは水の引いた陸地で速度を遅くし、こちらを憎々し気に睨んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
まさに意思を持った災害ですね
ですがそれは、生き物である以上必ず殺せると言う事です
そして、これは生存闘争です
互いに自らが属する領域を護るべく戦うだけ
そこに言葉は必要ないでしょう?
さあ…異端の神竜よ
私と踊り、骸の海へと帰するが良い

◆行動
『暗キ獣』を使用

敢えて散開させる事で、敵範囲攻撃の利点相殺を図ります
その上で、多方面から物量による包囲陣で削り殺します
一つ二つの小集団を潰した所で、我が軍勢には掻痒すら与えられませんよ

私自身は【目立たない】事を利用し軍勢に紛れて接敵
【二回攻撃】する【範囲攻撃】で【マヒ攻撃】と【精神攻撃】を行い敵に【恐怖を与える】

負傷は【オーラ防御】で軽減し【生命力吸収】で回復


鏡島・嵐
判定:【WIZ】
……やっぱり、竜種ってのはいつ見ても、どんな形でも強ぇし怖ぇよな。
身体は震えっぱなしだし、出来るなら逃げてえって思う。
でも……おれには退けない理由があるから。だから踏みとどまって戦う。負けてなんかやるもんか……!

津波や水の吐息は《幻想虚構・星霊顕現》で対抗。水の流れの制御を乗っ取るなり方向を変えるなり、あとは地面を隆起させて土の壁を作って流れをせき止めたり。なるべく他の味方の邪魔にならねえよう、細心の注意を払ってコントロールする。
片手間でできるようなら、距離を保って〈援護射撃〉で他の仲間の手助けをしたり、有効そうな属性を使って〈属性攻撃〉を撃ったりして遠距離戦に徹する。



●水の災厄
「……やっぱり、竜種ってのはいつ見ても、どんな形でも強ぇし怖ぇよな。身体は震えっぱなしだし、出来るなら逃げてえって思う」
 間近で見るドラゴンの大きさと肌で感じられる圧倒的な魔力に、嵐の身体が恐怖に震える。
「でも……おれには退けない理由があるから。だから踏みとどまって戦う。負けてなんかやるもんか……!」
 背を向けて今にも逃げたくなる気持ちを堪え、嵐はドラゴンに立ち向かう。

『ギュゥアォオオオ!』
 矮小な存在を退けるように、ドラゴンは全てを押し流す津波を放つ。
「Linking to the Material, generate archetype code:X...!」
 その前から逃げずに嵐はユーベルコードを発動する。属性と自然現象を合成して目の前の津波に干渉し、その制御を乗っ取った。そして流れを変え、地面も隆起させて波が進む道を逸らして、猟兵達に当たらないコースを作り出した。

「人間だって弱ぇばっかりじゃねぇ、自然の猛威にだって工夫して抗えるんだ!」
 細心の注意を払って嵐は津波をコントロールして被害を出さない。

『ギュ?』
 津波が勝手に逸れた事にドラゴンが首を傾げ、それならばと新たな津波を起こそうとする。


「まさに意思を持った災害ですね。ですがそれは、生き物である以上必ず殺せると言う事です」
 敵が新たな攻撃を行う前に絶奈が屍獣の群と屍者の軍勢を小分けに配置し、敵を囲み込む。
「そして、これは生存闘争です。互いに自らが属する領域を護るべく戦うだけ、そこに言葉は必要ないでしょう?」
 敵に神の力を感じた絶奈はこれからの激闘を思って高揚し、手を掲げ己が軍勢の指揮を執る。
「さあ……異端の神竜よ。私と踊り、骸の海へと帰するが良い」
 手を一気に振り下ろすと、一斉に軍勢が動き出した。まず駆けて先行した屍獣がドラゴンの巨体に食らい付く。鱗が剥げ体に幾つもの小さな傷が刻まれた。

『ギュォオオオオ!』
 ドラゴンが地面で体を擦るように屍獣を引き剥がす。そして津波を起こして屍獣を押し流す。その波は屍者の軍勢にも届いた。
 だが接近していた部隊が倒されても、すぐに新たな屍者が穴を埋め、ドラゴンを倒さんと槍を構えて前に出る。
「一つ二つの小集団を潰した所で、我が軍勢には掻痒すら与えられませんよ」
 攻撃を受けて倒れても、恐怖も痛みもなく、屍の軍勢は怯む事無く次々とドラゴンに挑む。その軍勢に紛れて絶奈は悟られぬように敵に接近する。そして間合いに入ると大きく剣を振り抜き、ドラゴンの尾の鱗を肉ごと斬り裂いた。ぱっくりと開いた傷口から血が溢れ出す。

『ギュゥオオオオオオウ!!』
 長い尻尾を横薙ぎにして軍勢を吹き飛ばし、剣を盾にした絶奈の身体も高々と飛ばされる。
「流石の威力ですね。神を名乗るだけのことはあります」
 空中で回転した絶奈が地面に着地する。だがそこに間髪入れずに津波が押し寄せていた。


「ほんと竜種ってやつは無茶苦茶だよな……。だけど、こっちもやられてばっかりじゃねぇってところをみせてやるよ」
 嵐は土の大きな壁を作って津波を防ぎ、絶奈への攻撃を防ぐ。だが長くは持たずに土がひび割れ、水が噴き出して決壊する。しかしその間に絶奈は駆けて退避していた。

『ギュォッギュアオオッ!』
 ドラゴンの視線が先ほどから邪魔をしている嵐に向けられ、魔力が体内で高まっていく。
「うわ……目が合っちまったよ……」
 嵐は眼を離せぬまま敵を見ていると、その口が大きく開いて水属性の魔力が渦巻くのを感じた。
「これは相当やべぇやつだ……!」
 土の壁を生み出しながら嵐が逃げ出すとドラゴンの顎から圧縮した水のブレスが放たれる。ウォーターカッターのような勢いの水が地面を切り裂きながらこちらに向かって来る。

『ギュォオオッ!』
 ブレスによって土の壁が一枚破られると、そこには新たな土の壁が作り出されている。次々と土壁が切り裂かれ、やがて逃げる嵐にまで水が届く。その攻撃を受けて嵐は薙ぎ倒された。だが威力は減衰し、切り裂く力は残っていなかった。
「あ、危ねぇ……!」
 もし土壁が無かったらとぞっとしながらも、嵐は起き上がってすぐに動き出す。そこへまた水のブレスが飛んできて、先ほどまでいた大地を両断した。

「強くとも知性は失われているようですね、ならば負ける理由はありません」
 嵐が狙われている間に、絶奈は軍勢と共に背後より急襲する。屍兵が尾に槍を突き刺し、屍獣が飛びついて爪で背中を引き裂く。

「ギュァアッ!」
 ドラゴンは腕を振るって屍獣を鋭い爪で真っ二つにし、尻尾を叩きつけて屍兵を蹴散らす。だがその隙に絶奈が懐に入って身を低くしていた。
「知性の無い暴力など怖れるものではありません」
 足に力を溜めて飛び上がりった絶奈は下から剣を斬り上げ、ドラゴンの左腕を肘から斬り飛ばした。
「真に怖ろしいのは奸智術数に長けた力です。貴方の其れはただの暴威に過ぎません」
 着地した絶奈をドラゴンが睨みつけ、尻尾を叩きつける。それを絶奈は横に飛び転がって避けるが、そこへ水のブレスを叩き込まれる。だがその前に地面が隆起して、絶奈の立っている位置が上昇し、ブレスは足元の地面を貫いた。

「間一髪ってやつだな、注意を逸らして戦い易くしてえところだ」
 大地を操って絶奈を助けた嵐は、スリングショットを構えて癇癪玉を飛ばす。それがドラゴンの目元に当たって爆発し、驚くような破裂音を発した。
『ギュッ!?』
 ドラゴンが目を見開き、爆発した小さな弾の破片を見る。
「こうして協力して戦う相手に上手く反応できないのが貴方の限界です」
 その隙に跳躍した絶奈は剣を横に振り、腹を斬りつけ赤く染めた。

『ギュアアアアアォオオオ!!!』
 ドラゴンが全身を巨大な水球で包み、それが破裂すると大津波となって周囲全てを呑み込む。絶奈は流される屍獣の背を蹴って跳躍するが、逃れきれずに水中へと落ち、体の力を抜いて流されるままに身を任せ被害を小さくする。
「何とか流れを……難しいか?」
 意識を集中して嵐は波をコントロールするが、水量が多過ぎて全てを操れず、波を被って押し流された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

宇冠・龍
由(f01211)と連携

凍らずの湖とそこに住まう主ですが……
氷は利き辛いと見たほうがいいかもしれませんね

(由の身体が修復可能と言えど体力の限度があります。ましてや相手は“水”、無理はさせたくありません)

【魚質竜文】にて不可視の霊を召喚
その身に雷を付与させウォルエリスへ突進
魚霊なら水中も泳げるのは自明の理。水に変化した体内を縦横無尽に泳ぎながら放電攻撃を行います
その超圧縮で霊が耐えくれなくなるかもしれませんが、その時は残りの電力が開放されるだけ
電気で麻痺させ呪詛と合わせて動きを鈍らせます

「さて、水に身体を変えたままでは私の攻撃は防げませんよ?」
挑発に乗って変身解除してくれるといいのですが


宇冠・由
お母様(f00173)と連携

(嫌ですわっ、私との相性最悪ではありません!? ふふっ、なんて)
水で火が消えるなら、水もまた火で蒸発できる
つまりは純粋な力比べということ

【七草仏ノ座】で燃え盛る30Mの大鬼に変身
この姿では、時間経過と共にその火力が増していきます。長引けば長引くほど私達側が有利です
そして全身がブレイズキャリバーの地獄の炎、欠損しても肉体修復が可能
粘り強さと耐久力なら自信がありましてよ

ドラゴンブレスが味方にいかないようにかばいながら、炎の身体で押さえつけ、体内水分を全て奪い干乾びさせます

水の身体のままでは流石に分が悪いですが、お母様に策がある様子
(全てはお母様と村の子供達のために!)



●水と炎の対決
『ギュアオオオ!!』
 ドラゴンは己の身体を超圧縮された水へと変え、その巨大な口から渦巻く大海流のブレスを放つ。広範囲に広がるブレスが湖を巨大化させる勢いで大地を水浸しにした。

(「嫌ですわっ、私との相性最悪ではありません!? ふふっ、なんて」)
 マスクから僅かに忍び笑いを漏らした由は、その身から発する炎をさらに猛らせる。どんどんと炎が何倍にも大きくなり、やがて30mにまで膨れ上がり、鬼の姿となって敵と対峙した。ドラゴンを見下ろすほどのサイズ。その炎の巨体を一歩前進させると、足元の水が蒸発して干上がり地面が覗いた。
「水で火が消えるなら、水もまた火で蒸発できる。つまりは純粋な力比べということ」
 大きな一歩で一気に間合いを縮めた由は、炎の拳をドラゴンに叩き込む。するとドラゴンの水の身体がジュッと蒸発して体積を減らす。だが拳も水に触れた影響で炎が飛び散り小さくなっていた。

『ギュアアアア!!』
 この敵は拙いとドラゴンは一際大きく咆哮し、大海流のブレスを放つ。放射される水が由を包みその体を削るが、構わずにブレスを突破し、また拳を叩き込んでドラゴンの水を蒸発させる。

「凍らずの湖とそこに住まう主ですが……氷は利き辛いと見たほうがいいかもしれませんね」
 水を操るドラゴンならば、それに類する氷も効果が薄いだろうと龍が判断する。
(「由の身体が修復可能と言えど体力の限度があります。ましてや相手は“水”、無理はさせたくありません」)
 これ以上大切な娘に無理をさせない為に、龍は浮遊する不可視の十匹の魚の霊を呼び出した。
「魚霊ならば水中も泳げるのは自明の理。さあ、行きなさい」
 雷を帯びた魚は宙を泳ぎ、敵に向かって突進を始めた。ブレスの巻き起こす水流の中を泳いで進み、敵の水の身体に入り込むと、放電しながら縦横無尽に体内を動き回る。

『ギュオォゥオオオ!』
 体内を異物に掻き回されたドラゴンが苦悶の声で咆えると、身体を構築する水が一層圧縮され、そのエネルギーに押し潰されて魚霊が消滅した。すると魚の宿していた雷が一気に放出され、ドラゴンの体内を巡って動きを鈍らせた。

「お母様の援護の隙に体内水分を全て奪い干乾びさせます」
 そこへ由が抱きついて押さえ込むように、己の炎の身体を消耗させながら敵の身体の水を削る消耗戦に入る。
『ギュアアアオオオッ!』
 ドラゴンが暴れ、組み付く由に尻尾を巻き付けて振り解いた。そして距離を取りブレスを浴びせる。
「粘り強さと耐久力なら自信がありましてよ」
 だが由も腕が伸びたような巨大な炎の剣で射程を伸ばし、ドラゴンを斬りつけた。ドラゴンを形成する水が減り、同時に由の身体もドラゴンと同じ目線にまで目減りしていた。

「さて、水に身体を変えたままでは私の攻撃は防げませんよ?」
 龍は挑発しながら新たな魚霊を召喚して、ぐるりと周りを泳がせ、また宙を泳いで敵の体内を目指す。
『ギュアアアア!』
 ドラゴンはその気配を嫌がって水の身体から肉を持つ元の姿に戻り、超高圧のブレスで辺りを薙ぎ払って魚霊の群れを吹き飛ばした。

「自ら変身解除してくれたようですね」
 ブレスの射線から逃れた龍は、新たな魚霊を迂回させて敵に向かわせる。それもブレスで薙ぎ払おうとするが、その前に割り込んだ由が炎の身体でブレスを受け止めた。
「お母様の策が上手くいったようです」
 このまま押し切ろうと由はドラゴンを殴りつける。重い一撃を受けてドラゴンの巨体が後ろに下がる。だがドラゴンも負けじと津波を放ち、由の身体に水を浴びせ、どんどん炎のサイズを小さくしていく。それは由の回復速度を勝り体が半分以下まで小さくなった。
『ギュアオォォォッ!』
 サイズが逆転し、今度はドラゴンが見下ろすように由を睨み、水のブレスを放とうと顎を開いた。

「また無理をさせてしまっていますね。ですがこれ以上可愛い娘を傷つけさせません」
 龍の操る魚霊がドラゴンの口の中に飛び込む。ビリビリと電気を放ち口を麻痺させると、放とうとしていた水が圧縮を解かれ、口の端から漏れ出した。
『ギュゥゥ!』
 痺れる口が思い通りに動かず、あわあわとドラゴンの口が開いたまま震える。
(「全てはお母様と村の子供達のために!」)
 その隙に懐に入った由が下から拳を突き上げ、ドラゴンの顎に渾身の一撃を叩き込んだ。口が閉ざされ牙が何本も砕ける。

『ギュゥアアアア……』
 口から目から血が流れ、ドラゴンがよろめいて倒れる。だが尻尾を振るって反撃し、由の巨体を吹き飛ばした。そして巨大な水球を纏って身を守りながら津波を起こそうとする。だがその集まった水量は随分と減少していた。
「これだけ由の攻撃を受けてもまだ動けますか、ですが能力は低下しているようです」
 龍がその水球の中に魚霊を突っ込ませ、水の中を泳いだ魚がドラゴンに接近し放電した。感電したドラゴンは水球を維持できなくなり、その場で水が溢れ、方向性を持たない波が全周囲に放たれる。

「大丈夫ですか由」
「はい、お母様。この程度なんてことありません」
 心配そうな龍の言葉に、元の大きさに戻った由がまだまだ元気だと頷いた。2人は一先ず波に呑み込まれないようにその場を離れた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

久留宮・沙月
※アドリブ連携歓迎

これが村を襲った竜……ですか
身体を水へと変じる性質、広範囲への遠距離攻撃……
どう見ても近接物理型の私では相性最悪ですね
ですが、私も刀で生きてきた身
臆することなく正面から相対してみせましょう

とはいえ、戦場は湖
身を隠す場も無く、足場も不安定……となれば、被弾は覚悟の上で距離を詰めるのが最良でしょうか
他の猟兵さんの攻撃に合わせるように接近を試みます
ブレスを吐かれても前進は止めず、最も被害が少なくなる所を見切り、そこを突っ切ります

近づければこちらのもの
私の鬼斬凶月に斬れぬものはありません
例えそれが水の身体であっても例外は無く、この刀にて死を送りましょう


セゲル・スヴェアボルグ
何も嵐や波を起こせるのは奴だけじゃない。
向こうが水の竜巻で来るならば、こちらはそれを並で押し返してやろう。
まぁ、流石に規模を大きくせなばならんだろうし、槍を複数本使うとしよう。
範囲も加味すると投擲した方がよさそうか。
まぁ、味方側に来る並は盾で凌げばいいんだがな。
大波で突っ込んでくる本体を竜巻ごといなせれば僥倖。
それに、俺のハンマーは錨なんでな。ちょっとやそっとでは動かせんぞ?
そうでなかったとしても、ある程度の勢いは殺せるので、
盾受けすることも可能だろう。
動きさえ止めれれば、あとは力任せに思いっきり殴ってやればいい。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。異端の神、水の竜。
お前がどんな存在で、どんな目的があったとしても。
罪の無い人々に害を為すならば容赦はしない。
…報いを受け、骸の海へ還るが良い。

空中戦を行う“血の翼”を広げ残像を残して飛翔して、
第六感や暗視を頼りに敵の水属性攻撃を見切り回避
吸血鬼化した自身の生命力を吸収して【血の獄鳥】を発動

…貴方達の怨嗟、憎悪、呪詛。
その全てを、ここで解放する…!

【断末魔の瞳】が取り込んだ怨念の殺気や精神攻撃を、
呪詛耐性や気合いで耐えつつ魂達の呪詛を上乗せして、
魔法陣を纏わせ力を溜めた黒炎鳥を敵に突撃。
その後、黒炎鳥を自爆させて傷口を抉る2回攻撃を行うわ。

…この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに…。



●蒼竜の泣き声
「これが村を襲った竜……ですか」
 沙月が巨大で水を自由自在に操り、災害を撒き散らすドラゴンに視線を向ける。
「身体を水へと変じる性質、広範囲への遠距離攻撃……どう見ても近接物理型の私では相性最悪ですね」
 己の能力と敵の能力を比べ、相性が悪い事を誰よりも自分がよく解かっていた。
「ですが、私も刀で生きてきた身。臆することなく正面から相対してみせましょう」
 不利だから、それが引く理由にはならない。どのような相手であろうとこの刃で切り伏せてみせると、沙月は敵の正面に立つ。
「とはいえ、戦場は湖。身を隠す場も無く、足場も不安定……となれば、被弾は覚悟の上で距離を詰めるのが最良でしょうか」
 辺りには遮るようなものは何もなく、足場もずいぶんと濡れて柔らかくなって足が沈むようだ。身軽な動きも期待できないならば、真っ直ぐに向かうしかないと覚悟を決めて駆け出す。

『ギュォオオオアア!』
 そんな沙月に向けてドラゴンが顎を開いた。放たれる水のブレスは鉄砲水のような勢いでぶつかる。吹き飛ばされそうになりながらも、息を止め身を低くして耐え、亀のような速度でも前へと足を踏み出す。
『ギュアオッ!』
 しかしそれを見たドラゴンはさらに水流の勢いを上げて吹き飛ばそうと力を込める。


「何も嵐や波を起こせるのは奴だけじゃない。向こうが水の竜巻で来るならば、こちらはそれを波で押し返してやろう」
 セゲルは堂々と敵に姿を見せて槍を構える。
「まぁ、流石に規模を大きくせなばならんだろうし、槍を複数本使うとしよう。範囲も加味すると投擲した方がよさそうか」
 対処法を考えながら、まずは小手調べと、槍を投げてみるとドラゴンの尻尾に浅く突き立った。
「鱗が硬いといっても、槍を防ぐほどではないな」
 続けて数本槍を投げていると、ブレスを吐いていたドラゴンが途中でそれを止め、振り向くと怒りに燃えた眼光でセゲルを睨みつける。

『ギュゥオオオ!!』
 ドラゴンの元から水が渦巻く竜巻が起こり、全てを吹き飛ばさんと怒涛の勢いで迫りくる。
「これで邪魔者は吹き飛ばそうって腹か、なら堂々と凌いでやればいいな」
 どっしりと腰を落としたセゲルが大盾を構える。
「それに、俺のハンマーは錨なんでな。ちょっとやそっとでは動かせんぞ?」
 盾とは反対の手に持った錨斧を柔らかい地面に突き刺し、竜巻を受け止める。浮きそうになる体を錨斧の重さで押え込み、セゲルは冷たい暴風の中を耐え凌いだ。


「ここまで近づけばこちらのものです」
 その間に懐に入った沙月は刀を抜き打つ。
『ギュォ!!』
 ドラゴンは水の身体となってそれに耐えようとする。
「私の鬼斬凶月に斬れぬものはありません。例えそれが水の身体であっても例外は無く、この刀にて死を送りましょう」
 己が剣を信じて沙月は刀を横に一閃させる。刃はドラゴンの水の身体を斬り裂き、まるで生身の肉を裂いたように傷口が元に戻らない。そこから血のように水が噴き出し、どんどん身体を構成している水が流れ出ていく。
『ギュアアアアオオオ!』
 水の身体がただの刀に傷つけられたことに驚き、ドラゴンは元の姿に戻って尻尾を振り抜き沙月を薙ぎ払おうとする。

「水の身体さえも斬り裂く私の刀が、尻尾を斬れぬとお思いですか?」
 その尻尾に対して沙月は大上段に構えた刀を振り下ろす。真っ直ぐに尻尾に入った刃は、尻尾を根元に近い場所から断ち切った。勢いよく放り出された尻尾が地面の上でびちびちとのたうつ。
「触れたもの全てを斬る。それが鬼斬凶月です……」
 沙月は刀を返し、下から斬り上げてドラゴンの腹も斬りつけた。


『ギュアアア! ギュアアアオオォォ!』
 尻尾を失ったドラゴンが叫び、よろめきながらも怒りに燃える眼を猟兵に向けた。

「……ん。異端の神、水の竜。お前がどんな存在で、どんな目的があったとしても。罪の無い人々に害を為すならば容赦はしない」
 リーヴァルディは大鎌を構えて言い放つ。
「……報いを受け、骸の海へ還るが良い」
 血の翼を広げて飛翔すると、残像を残して空を飛び回る。

『ギュアォオ!』
 ドラゴンが水のブレスを放つが、尻尾を失いバランスを崩したそれは残像に当たるばかりでリーヴァルディを捉える事ができない。その間にブレスを掻い潜り、リーヴァルディは敵の頭上を取る。

「……貴方達の怨嗟、憎悪、呪詛。その全てを、ここで解放する……!」

 吸血鬼すると自身の生命力を吸収して、黒炎の獄鳥と血の魔法陣を召喚する。そして断末魔の瞳が取り込んだ怨念の殺気や精神攻撃を、呪詛耐性や気合いで耐えつつ、魂達の呪詛を上乗せした魔法陣を、黒炎鳥に纏わせて突撃させる。
 燃え上がる黒炎鳥が真っ直ぐに飛ぶと、迎撃しようとドラゴンがブレスをぶつける。だがそれをひらりと躱し、ドラゴンの右顔に衝突した。

『ギュアァァァッ』
 顔が焼け鱗が黒焦げになって剥がれ、肉が爛れる。ドラゴンは傷つきながらも黒炎鳥を噛み千切ろうと大きく口を開けて隙間の空いた牙を突き立てた。
「……まだ終わりではない」
 そこでリーヴァルディは黒炎鳥の魔法陣を起動し自爆させた。口の中で起こった衝撃にドラゴンの右目が吹き飛び、舌もズダズダに裂け、牙も殆どが折れた。

『ギュアアアアアアアアア』
 ドラゴンが耳が痛くなるような悲鳴を上げてのたうち回る。それに巻き込まれぬようにリーヴァルディは翼を動かして距離を取った。ドラゴンはそれを追おうとするが、前に傾き倒れかける。


「尻尾を失って上手く動けんようだな。動きが止まったならこっちの番だ」
 近づいたセゲルは泥に塗れた錨斧を振り回し、力任せにドラゴンに叩き込む。ぐちゃりと肉の潰れる感触と共に、ドラゴンの腹がへこみ内臓を潰した。ドラゴンの口から血が溢れ落ち、水に混じって周囲を赤く染めていく。
『ギュアォアアア!』
 ドラゴンが大波を生み出し、猟兵達を呑み込まんと一気に押し寄せる。
「奴の波と俺の波、どちらが上から競ってやろうじゃないか」
 前に出たセゲルが何本もの槍を地面に突き立てる。すると槍の刺さった地面から水が湧き出し、大波となって敵の放った波とぶつかり合う。大きく空に向けて膨れ上がったかと思うと、波は引き戻り周囲に拡散して穏やかに地面を濡らし、湖を作り出した。

「波は互角といったところか、次はガチンコ勝負といくか。その頭をかち割ってやるから大人しくしていろ」
 波を目晦ましに空を飛んで頭の上に乗ったセゲルが錨斧を振り下ろし、ドラゴンの頭を叩き割った。骨が砕けめり込んだ傷口から血が噴き出す。その衝撃で残っていた左目も潰れていた。
『ギュアアアアア!!』
 視界を失って悲鳴を上げてドラゴンが暴れ、錨斧が抜けてセゲルの身体が放り投げだされる。

「……好機、ここで決める」
 リーヴァルディがドラゴンの懐に飛び込み、胸目掛けて大鎌を横に一閃する。そして肉を大きく裂くと、刃を返した大鎌が同じ場所を往復して斬りつける。肉が深くまで達し、体に見合う一抱えもありそうな大きな心臓が剥き出しとなった。
「……この一撃を手向けとする。眠りなさい、安らかに……」
 左手に持ったマスケット銃を突きつけ、引き金を引いた。弾丸が心臓を破壊し、大量の血が噴き出す。

『……ギュォォォオオオ!!』
 ドラゴンがぐらりと前に倒れ、顔が地面についたところで、翼を手のように使って体を支える。消えようとしている命を使うようにドラゴンは魔力を溜めて周囲全てを吹き飛ばす水の竜巻を生み出そうとした。
「巨大なだけあって丈夫ですね、ですが首を落とされては生きてはいけないでしょう」
 首の下から沙月が弧を描くように白刃を煌かせ、見事にドラゴンの太い首を刎ねた。ドラゴンの首が地面に埋まり、宿った魔力を四散して息絶えた。


 空を見上げると雨が止み、溢れていた湖の水も少しずつ水位を下げ始めた。
「ドラゴン討伐成功だな。それじゃあ町に凱旋といくか」
 もう町を襲う存在が居ない事を伝えて安心させてやらなくてはと、セゲルが証拠になりそうな折れた牙や鱗を拾った。
「これで痛ましい予知は回避できましたね。後は既に親を失ってしまった子供達を元気づけてあげればよいのですが……」
 どうすれば元気にしてあげられるだろうかと考えながら沙月は町に向かう。
「……ん、生き残った子供達に何かできるかな……」
 まずは話をしてみようかとリーヴァルディも続き、猟兵達は復興中の町へと歩き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『弱った子供達にできること』

POW   :    面白いことで楽しくさせる

SPD   :    食べ物で飢えを取り除く

WIZ   :    優しさで安心させる

イラスト:nor

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●泣き疲れた子供達
「ううぅ……おかーさん……ぐすっ」
 目を赤くした子供が泣き疲れたのか、木陰で座り込んで蹲っている。そんな子供が何人も町には居た。
 だがそれを気にする大人は居ない。皆が己の事で手一杯なのだ。本当ならば気にかけるべき親は死に、片親が残っていてもやはり子供に構っている余裕はなかった。

 町は潰れた家を建て直したり、水浸しになった道や畑を整備したりと大忙しで大人たちが働いている。だがそれはまるで逃避のようにも感じられた。
 また襲って来るかもしれないドラゴンと、それに対する無力な自分達。抗えぬ運命のような災厄と向き合うのを諦めた顔だった。

 どれだけ町の外観が元通りになっても、人々の心が暗いままでは復興とは言えない。そして人々の心を明るくするには、子供達の元気な姿が一番の薬となる。
 人々を勇気づけ、子供達に元気を取り戻そうと、ドラゴンを討伐した猟兵達が町へと足を踏み入れた。
宇冠・龍
由(f01211)と参加

(この世界は苦難に溢れています。この先も別の脅威が襲ってこないとも限りません)
本当なら悲しんでいる子たちを一人一人抱きしめて、泣き止むまで頭を撫でてあげたいですが、それは“親”の役目。第3者が抱き留めるよりもきっとその方が嬉しいでしょうから
私達親子は町の復興を助力して、大人たちが子供に目を向けるだけの余裕を持たせます

何はともあれ復興にも数が必要ですね
【談天雕竜】で百の霊を召喚、家の修復は由に任せて、私は畑整備をします
「ここは私がやりますので、どうか、子供たちを見てあげてください」
それこそ百人力
植物の知識も多少なりともありますので、子供達の分も賄えるよう巨大な畑を作ります


宇冠・由
お母様(f00173)と参加

畑はお母様が耕すそうなので食糧問題はひとまず解決として
では私は、住宅家屋の復旧を行いましょう
【智天使の抱擁】の光で、壊れた建物を元通りにしながらぐるっと町を一回り
ちょっと反則かもしれませんが、背に腹は代えられませんもの
もし下敷きになっている方がいましたら、その方にも光を当てて怪我の治療を

復旧作業をしながら、先の戦いで拝借しました「凍らずの湖」から取れた水をお配りしながら、人々に声かけ
「今が最悪なら、後は良くなるだけです。皆で最高にしていきましょう」
きっとこの言葉も気休めです
ですが、一時でも気が休まれれば次に繋がります。次に繋がればまたその次に
切欠になれればいいんです



●未来に願う
 猟兵が足を踏み入れた町は、ドラゴンの襲撃によって川が氾濫したように足元が濡れ、石を積み上げた家屋がいくつも崩れ、皆が暗い顔でそれを復旧しようと働いていた。

「本当なら悲しんでいる子たちを一人一人抱きしめて、泣き止むまで頭を撫でてあげたいですが、それは“親”の役目。第3者が抱き留めるよりもきっとその方が嬉しいでしょうから……」
 大人が子供に目を向けるだけの余裕を持たせる為には何をすべきか考え、龍はまず困窮する状況を脱す為に町を復興させる必要があると判断した。
「私達親子は町の復興を手伝いましょう。私は畑の整備をしますね」
 そう娘の由に伝えた龍は、水浸しになった畑から懸命に余計な水を掻き出し、土を盛り直している人々に呼び掛ける。
「大変な被害に遭ったようですね。私に町の復興を手伝わせてください」
「手伝いって……申し出はありがたいが、ここは力仕事だぜ?」
 泥塗れの大柄な男がクワで土を掘って水の抜け道を作りながら振り向いて、龍の力仕事には向いてなさそうな姿を見て怪訝な顔になった。
「お任せください。私が手伝っただけでは大して助力になりませんが、私の召喚した霊は百人力です」
 龍は広い畑の前で百の霊を召喚する。
「おお!?」
「何だこれ!? 突然現れたぞ!」
 畑仕事をしていた男達の手が止まり、驚愕して目を丸くした。

「ここは私達がやりますので、どうか、子供たちを見てあげてください」
 霊たちが指示に従って動き出し、次々と土から水を抜く通路を作り出して行く。疲れを知らずぬかるみも気にせぬ霊たちは、休むことなく動き続けて畑の復旧を行う。
「こりゃすげえ」
「これならすぐに畑が使えるようになりそうだっ」
 その様子を唖然として見ていた男達の顔に安堵が浮かぶ。
「それじゃあ悪いが、ちょっくら俺は家の方に顔出しに行って来るよ」
「オレも!」
 畑の目途が立つと家の事が気になり出した男達は、龍に向かって頭を下げて帰っていく。
 その後姿を龍は優しい目をして見送った。


「畑はお母様が耕すそうなので食糧問題はひとまず解決として」
 お母様に任せておけば間違いはないと、母を信頼する由は自分が何をすべきかと町中を見渡す。すると石造りの家が崩れて壊れ、それをまた手作業で地道に積み重ねて修復しようとしていた。
「では私は、住宅家屋の復旧を行いましょう」
 人々が作業している中でも、一番大変そうな家屋の修復を手伝うのが良さそうだと、由が作業中の男達に声をかける。

「この建物を元通りにすればよろしいのですか?」
「ああ、そうだよ。お嬢ちゃん、ここはいつ建物が崩れてもおかしくないから、近づかな――いぃ!?」
 由に返答した男が驚きに声のトーンを上げる。
「全てのものに癒しを……」
 由が暖かな光を放ち壊れた建物を包み込む。するとまるで傷が癒えるように、建物も修復されてしまった。
「これでよろしいですか?」
「あ、ああ……え? これは夢か?」
 頬を抓る男性を残し、由は次の壊れた建物へと向かう。

「ちょっと反則かもしれませんが、背に腹は代えられませんもの」
 方法はなんであれ、今は困っている人々を救うのが最優先だと由は次々と家を修復してゆく。
「いたたっ」
「落ちてきた屋根にぶつかったんだろ? 大丈夫かい?」
「ああ、ちょっと腰が痛むだけだ」
 次の場所に向かおとしていた由の耳にそんな会話が聞こえ、そちらに視線を向けた。
「怪我をなさったんですか?」
「ちょっとばかしな、屋根が落ちたのに当たっちまって、腰をいわしちまったよ」
 由の問いに腰を抑えて動けぬ壮年の男性が頷いた。そこへ由が光を照らす。
「お? おおっ痛みがなくなった!?」
「もう大丈夫のようですね」
 男性が恐る恐る体を動かしても、鋭い痛みがしなくなった事に驚く。
「あんたが治してくれたんかね? ありがとう!」
 元気に立ち上がった男性が由に深々と頭を下げ、すぐに復旧作業を手伝わなくてはと男達は駆け出していった。


「ここの畑はこれで良さそうですね」
 龍が霊の作業を止め、畑の復旧具合を確認した。
「少し拡張して、食料に余裕を持たせてあげたいところです」
「おおおおっもう畑がなおっとる!」
 そこへ先ほど家に帰った男達が何人か戻ってきた。
「もう駄目かと思とったが、なんとかなるかもしれん」
 絶望に染まっていた顔に希望の光が宿り、自分達もと作業に戻る。

(「この世界は苦難に溢れています。この先も別の脅威が襲ってこないとも限りません」)
 だからこそそんな苦難を乗り越えて生きていく希望を持ってほしいと龍は願う。

「今が最悪なら、後は良くなるだけです。皆で最高にしていきましょう」
 そこへ由が合流し、気休めの言葉を掛け、凍らずの湖から汲んできた水を配る。

(「きっとこの言葉も気休めです。ですが、一時でも気が休まれれば次に繋がります。次に繋がればまたその次に、切っ掛けになれればいいんです」)
 自分達が全てを救うことはできない。だから人々が自ずと前に進もうとする切っ掛けになればと、母と同じように人々の未来を願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●ニコリネ(f02123)と



ガキを宥めるとかガラじゃないんスよ
俺めは作業の手伝いでもしてますわ
さっさとカタが付きゃ、大人も子供を見てやれもしましょうしよ

ァ?
ニコリネのねーさんもこっち手伝うんスか?
ウワッはたらくくるまの正しい使い方来ましたわコレ


・【獣撃身・黒】で巨大な猫に変化、ニコと共に村を練り歩く

・農耕馬用の犂を牽引して整地したり、運ぶ資材は背中に乗っけさせたり(怪力)
・どかしたい瓦礫のリクエストあらば、猫の手貸しますネコパンチ(なぎ払い)

・でかい猫に興味を持った子供が湧いて出たなら、まあ特別に触らせてやらなくもない
・乗っけて歩いてやらないでもないし、尻尾を即席の滑り台にしてやらないでもない


ニコリネ・ユーリカ
猟団長(f04631)と

大人だって手が空けば子供に向き合いたい筈
街の復興で手一杯なら、私達がお手伝いしましょ
猟団長がネコの手なら、私は鋼鉄の手をお貸しします

【特種用途車輌出動!】で油圧ショベルを召喚して
瓦礫の撤去や水の排出等、作業に合わせて適宜アタッチメントを交換
ヘルメットの下は手拭いを喧嘩被りに、気合十分、安全第一に操縦するわよー!

猟団長ったら子供に優しいのね。ううん、本当は誰にでも
さぁ皆、怖がらないで(おいでおいで)
大きな猫ちゃんの背中から厄災の取り払われた街を見ましょ?
どうかこの街で逞しく生きていってね

一画の土をお借りして、置き土産に花の種を
人々の心が癒えた時に、素敵な花が咲きますように



●猫の背中から眺める風景
「ガキを宥めるとかガラじゃないんスよ」
 じめじめした空気は苦手だと物九郎は、町中に漂う葬式のような陰鬱な雰囲気に嫌な顔をみせる。
「俺めは作業の手伝いでもしてますわ。さっさとカタが付きゃ、大人も子供を見てやれもしましょうしよ」
 この空気を少しでも変える為に一働きしようと、物九郎は水と瓦礫によってグチャグチャになった道を整備しようと考える。

「大人だって手が空けば子供に向き合いたい筈。街の復興で手一杯なら、私達がお手伝いしましょ。猟団長がネコの手なら、私は鋼鉄の手をお貸しします」
 その意見にニコリネも賛成し、自分も手伝おうと油圧ショベルを召喚して乗り込んだ。
「ァ? ニコリネのねーさんもこっち手伝うんスか? ウワッはたらくくるまの正しい使い方来ましたわコレ」
 物九郎が振り向くと、世界観に似合わぬ大きな掘削機を目の前にして驚きの声を上げた。

「そんじゃあこっちは猫の手を貸すことにしやすか」
 物九郎はでっかい化け猫に変化し、ニコリネと共に道の舗装を始める。
「まずァこのグチャグチャの道をなんとかしやしょうか」
 物九郎は農耕馬用の大きな犂を牽引して地面を平らにしていく。
「猫?」
「でけぇ猫だなあ……」
 その様子を呆然とした様子で人々が眺め、遠くでは子供が目を輝かせていた。

「安全第一に操縦するわよー!」
 ヘルメットの下に手拭いを喧嘩被りにし、まずは恰好から入って気合十分のニコリネは油圧ショベルを運転する。
「なんだありゃ、馬車か?」
「馬がおらんぞ?」
 そんなこの世界では物珍しい機械を見に人々が集まって来る。
「瓦礫を撤去します。危ないですから離れていてくださいねー!」
 近づかないようにニコリネが声をかけ、油圧ショベルのアームを動かし、バケットでごっそりと瓦礫を掻き出す。
「すげえぞこりゃ、ぶったまげた」
「こんな馬車があったら作業が捗るな!」
 その圧倒的作業量に、とんでもなくすごい馬車だと人々が称賛の声を上げた。
「こうやって大きな瓦礫は撤去しましょ。排水が必要な場所があったら掘るので教えてくださいねー!」
 機械音に紛れぬよう大きな声とジェスチャーで指示を出し、人々に指差された方向の瓦礫の撤去や、水の溜まった土地の端を掘って排水する場所を作っていく。

「よっと、壊れた柵はどこだって?」
「町の外れだよ、ったく、ドラゴンの尻尾が当たって一発でわやだって……うわっ」
 男達が重そうな木材を担いでいると、ぬぅっと音もなく現れた大きな猫に驚く。

「そいつを運ぶんでしたらよ、俺めの背中に乗っければあっというまでさ」
 猫の物九郎がそう言って身を低くして背を見せる。
「乗っける? あ、ああ……これを乗せればいいのか?」
「猫が喋っとるぞ……」
 驚きながらも、言われるがままに男達は物九郎の背に乗せた。
「確か町の外れでしたかよ。サッサと運んで修理しちまいましょっかや」
 するとバランスを取って立ち上がり、器用に揺らしもせずに木材を運び出した。
「おおっすごい!」
「って、俺らも追わないと!」
 慌てて男達のその後に続き柵の修理に取り掛かった。


 道を塞ぐ瓦礫を退け終え、油圧ショベルが停車しエンジンが止まる。
「さて、この辺りの道の整地は大体終わったわね」
 水の所為で湿度が高く、油圧ショベルのむっとする操縦席から降りたニコリネがヘルメットを脱いで汗を手拭いで拭って、置き土産にしようと持ってきた花の種を出来た空き地に植える。
「人々の心が癒えた時に、素敵な花が咲きますように……」
 そう願いニコリネが立ち上がると、その後ろを子供達が駆けていった。
「あっちにおっきな猫がいたよ!」
「えー? うっそだー!」
「ほんとだって! 身に行こうよ!」
 ドラゴンに怯えていた子供達がはしゃいで去っていく。
「猫といえば猟団長のことでしょうね、見に行ってみましょ」
 ニコリネが子供を追うと、巨大な猫が子供を順番に乗せて歩き回ているのを見つけた。

「うわーい!」
 子供が猫の背中から尻尾へと緩やかに滑り落ち、即席の滑り台で楽しそうに遊ぶ。
「次はボク!」
「僕だよ!」
 次は自分だと順番を待っていた子供が一歩も引かずに言い合う。
「喧嘩はやめなさいや、一緒に乗せてやりますでよ」
 子供の喧嘩を止め、猫の姿の物九郎はいっぺんに2人の子供を乗せてやる。
「たかーい!」
「わっ、わーーー!」
 落ちないように気を使いながら、物九郎は子供達を背に歩いて楽しませてやる。

「猟団長ったら子供に優しいのね。ううん、本当は誰にでも」
 そんなほのぼのした様子を眺めていたニコリネは、自然と微笑んで胸に温かな気持ちが宿る。
「おっきい猫っ! 人を食べたりしないかな……」
「わかんないよ、でも口もおっきいね」
 先ほど駆けていた子供が、大きな猫を前に尻込みして立ち止まっていた。

「さぁ皆、怖がらないで」
 おいでおいでとニコリネがそんな子供達を誘う。
「私も一緒に乗ってあげるから大丈夫。大きな猫ちゃんの背中から厄災の取り払われた街を見ましょ?」
 ニコリネが2人の背を押して物九郎の元までやってくる。
「ねーさんも一緒に乗るんスか?」
 物九郎がマジっスかという顔をすると、にっこり笑ったニコリネはもちろんと頷いた。子供達が恐る恐る乗り、物九郎が動き出すとすぐに歓声に変わる。
「どうかこの街で逞しく生きていってね」
 そんな子供達の頭をニコリネが撫で、共に猫の上から眺める風景を楽しんだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
つくづく思うけど、この世界は弱ぇ奴には厳しいよな。
未来のため、子供を大事にするっていう当たり前のことすら守ることが出来ねえって、なんだかやるせねえよ。

そうだなぁ……子供達と一緒に、街を復興する手伝いをしてみっか。
力仕事は無理だから、軽いゴミやら瓦礫を集めてどかしたり、復興作業をしてる大人達の食事を用意したりっていう小さなことを、皆で協力して手伝うようにする。勿論、ケガとかしねえように細心の注意は払っておく。
子供も大人も力を合わせて生きていくんだってことを大切にしてもらえれば、万一次に同じようなことが起こったとしても、きっと皆元気に前を向いて生きていけるんだって、おれは信じてえな。



●理不尽な世界を笑顔で
「つくづく思うけど、この世界は弱ぇ奴には厳しいよな」
 簡単に人が死に、命の価値が低くなってしまった世界に嵐が顔をしかめる。
「未来のため、子供を大事にするっていう当たり前のことすら守ることが出来ねえって、なんだかやるせねえよ」
 嵐はそんな当たり前すら許さない世界に悪態をつく。

「っても怒ってても仕方ねえ、今できることをしないとな。そうだなぁ……子供達と一緒に、街を復興する手伝いをしてみっか」
 子供もじっとしているより、何か体を動かした方が気が紛れるだろうと考え、嵐は大きな声で子供達に呼びかける。
「おーい! 今から町の掃除をするから、お手伝いしてくれないかー!」
 そう呼びかけると、すぐに近くの子供達が集まってきた。
「そーじ!」
「やるよーお手伝いする!」
 元気のある子供がやる気十分で手を挙げた。
「よし! じゃあゴミとか瓦礫とか、持てるやつを拾っていこう。大きいのはおれを呼べよ! それじゃあケガをしないように開始!」
 嵐が号令をかけて子供達と共に町の復興作業の手伝いを始める。

「石ひろった!」
「オレは木!」
「こっちの方がおっきいもんね!」
 子供達が拾ったものを見せ合いっこし、無邪気な笑みを浮かべる。
「拾ったものはこっちに集めるからなー!」
 そんな子供達に嵐が声をかけ、邪魔にならない場所へとゴミを集める。
「少しは暗い顔が晴れたみたいだな。やっぱり子供は笑顔じゃねえと」
 嵐は子供の笑顔を見て、自分の頬が緩むのを感じる。そして楽しい空気に釣られ周囲の大人達も険しい顔が嵐と同じように緩んでいった。
「それにこうやって子供の笑顔が見れないと、町が明るくならねえよな」
 町を覆っていた暗い空気が少し和らいだと、嵐は子供達の持つ健やかな笑顔の大切さを感じる。


 暫くすると結構なゴミが集まり、始める前に比べれば周辺が随分とすっきりしていた。
「よし! こんなもんだな。みんな良くやった!」
 嵐が褒めると子供達は嬉しそうに、そして自慢げに自分達も町の役に立ったことを喜ぶ。
「子供も大人も力を合わせて生きていくんだってことを大切にしてもらえれば、万一次に同じようなことが起こったとしても、きっと皆元気に前を向いて生きていけるんだって、おれは信じてえな」
 子供達もまたこの町に不可欠な住人なのだ。嵐は元気を分けてくれるそのエネルギーの塊のような子供の力こそ、これからの町の行く末を決める大事なものだと、町の人々に笑顔という形で伝えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セゲル・スヴェアボルグ
凱旋と豪語はしたが……
ドラゴンに襲われた町に俺のような竜人が行くのは
些か気が引けるというか

鱗や牙のついでに幾つか拾った形見らしきものや報告は
他の奴らに任せて俺は崩れた家の修理にでも向かうか
特に両親を亡くした子供の家を中心にな
バルモアあたりが手伝ってくれるのなら助かるが
子供の相手もあるだろうし強制はしない

無論、がきんちょどもが寄ってきたのなら相手をしてやるつもりだ
竜人をまじまじと見れる機会なんてあまり無いだろうしな
好きに触らせてやってもいい

笑わせてやるのがいいのは勿論だが
無理に笑って我慢してるやつなんて腐るほどいる
泣きたい時は泣けばいい
感情をぶつける先がないのであれば
その受け皿に俺がなってやろう



●泣きたいときには
「凱旋と豪語はしたが……」
 意気揚々とやっては来たものの、セゲルは町に入る前に足を止めて己が姿を見下ろして躊躇う。
「ドラゴンに襲われた町に俺のような竜人が行くのは些か気が引けるというか……」
 自分の姿を見て人々がドラゴンを思い出さないかと心配になる。

「ドラゴン討伐の報告は他の奴らに任せて俺は家の修理にでも向かうか……」
 セゲルが少し家のレンガが崩れ穴の空いた家を見つけた。その家の前では危険な家に入る訳にもいかず、子供達ばかりが暗い顔で座り込んでいる。その内の一番の年長者の男の子が、家を修理しようとして悪戦苦闘していた。
「どうした、両親はいないのか?」
 セゲルがそう尋ねると、年長の少年が首を縦に振ってすぐにまたレンガを積み始める。
「そうか、両親ともいないのか。この家はお前等のだな? それなら俺達が修理してやる」
「我々はちょうど手が空いていたのだ。よければ手伝おう」
 胸を叩いて任せておけとセゲルが少年の横に立ち、バルモアも安心させるように微笑んでみせた。

「いいの?」
「もちろんだ。こっちから言い出したんだからな」
「もう使えないレンガも多そうだな。他から融通できないか聞いてこよう」
 セゲルが崩れたレンガを手に積み直し始め、足りないものはバルモアが他所から運んでくる。
「おじさん。僕にもやり方おしえて」
「いいぞ、まずは見て覚えろ。質問があったら答えてやる」
 そんな様子を見ていた少年が頼むと、セゲルはこっちだとよく見えるように場所を移し、ゆっくりとスピードを落として作業を見せてやる。
「こういう仕事は丁寧さが大事だ。早くやるより、丁寧にやるのが正解だ。家に隙間があったら嫌だろう?」
「冬寒くなっちゃうね」
 セゲルが教えると、真剣な顔で少年は頷き一挙一動を見逃すまいと目を凝らした。
「やってみるか?」
「やる!」
 セゲルがレンガを渡すと、少年が慎重にその小さな手で重ねていく。

「あっちに居るのは家族か?」
「うん、妹達だよ。これからは僕がみんなを支えてやるんだ」
 セゲルの視線の先で気力を失っている子供達を、気丈に少年は妹達に優しい視線を向ける。
「そうか、がきんちょかと思っていたが、心根は立派な大人だな」
 その頭をセゲルはくしゃくしゃに撫でてやる。少年は照れながら、最後の隙間にレンガを詰め込んだ。


「こんなもんでどうだろうな」
「うむ……問題はないだろう」
 セゲルとバルモアが穴がきっちり埋まったのを確認する。
「みんな! この人たちが手伝ってくれたから家が直ったよ! もう入っても大丈夫だ!」
 少年が年下の妹達に声をかけると、作業が気になり遠巻きに見ていた少女達が、嬉しそうな顔を浮かべ近づいてきた。

「あ、ありがとう。おじさん」
 礼を言いながら少女達はセゲルの見た目が気になるのか、チラチラと視線を向けて来る。
「俺の姿が気になるのか? がきんちょどもは好奇心が旺盛だな」
 ほれっとセゲルが屈んで目を合わせてやると、一番小さな少女が顔をつついた。一人がやり始めると皆も続き、それに巻き込まれてバルモアも髭を引っ張られていた。
「よかった、みんな元気に……ううぅ、ああ……」
 そんな妹達の様子を見て気が抜けたのか、少年が泣き出してしまう。
「長男だから気張ってたんだな。いいぞ、泣きたい時は泣けばいい」
 そうセゲルが優しく告げると、少年はすがるように泣きつき、それに連鎖するように少女達も泣き出した。
「子供が素直に感情を出すのは当たり前のことだ。そんな当たり前ができるようにしたのは諸君らだ」
 バルモアがそんな当たり前を人知れず守った猟兵を称える。
「つってもこれじゃあ身動きがとれんな」
 いつの間にか少女達もセゲルに抱きつき、やがて泣き疲れて眠ってしまう。そんな子供を支えながらセゲルが困っているのを、バルモアは好々爺のように笑って眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霧島・絶奈
◆心情
幼き者
それは庇護され手を引かれて道を歩み、やがては自らが庇護し手を引き道を示す者
喪われてしまったその循環を取り戻さねばなりません
でなければ、此処はいずれ死に沈む…

◆行動
停滞の楔でなく、先へ進む礎として死者を弔います
死体が無くとも遺品を埋める等して、簡易な墓碑だけでも誂えたいところです
バルモア・グレンブレア殿、申し訳ありませんがお手伝い頂けますか?

埋葬が済めば、墓所にてなけなしの【優しさ】を込めて【祈り】を捧げます

寂しくなったら此処で泣くのも良いでしょう
ですが、此処に眠る人達に今日あった良い出来事を…
生き残った貴方方が紡ぐ希望の未来を語ってあげて下さい
それが子を護る事が出来た親への供養です



●未来を紡ぐ
「幼き者。それは庇護され手を引かれて道を歩み、やがては自らが庇護し手を引き道を示す者」
 絶奈はそんなか弱き小さな存在が放り出されてしまった現状を嘆く。
「喪われてしまったその循環を取り戻さねばなりません。でなければ、此処はいずれ死に沈む……」
 子供こそ未来へと続く営みの結晶。それを無下に扱えば町が滅びゆく道しか先にはないと絶奈は説く。

「死者を弔いましょう。そうすることで迷い立ち止まった者が前に進む契機となります」
 停滞の楔でなく、先へ進む礎として死者を弔おうと絶奈は墓場へ向かうことにする。
「バルモア・グレンブレア殿、申し訳ありませんがお手伝い頂けますか?」
「うむ、確かにこの状況では碌に墓も用意できていまい。弔いは大事なことだ、手伝わせてもらおう」
 絶奈の言葉にバルモアは深く頷いて同意し、共に町外れの墓場へと行くことにする。

「これは……酷いものだな」
 バルモアが顔をしかめる。見ればまだ何体もの死体が埋葬もされずに、覆いを被されただけで野ざらしになっていた。そしてその横では子供が親の死体の傍でじっと項垂れていた。
 生きている者を優先して、町の復興へ人手が割かれているのだ。埋葬が終わるまでここには来ないようにきつく言われているが、母恋しさに少女はこっそりと忍び込んだのだ。

「急いで埋葬しましょう。このままでは死者を冒涜しているようなものです」
 現状仕方がないとはいえ、これでは死者の魂まで囚われ迷ってしまうだろうと、絶奈は急ぎ埋葬の準備を整えようとする。
「穴を掘ればよいのだろう。軍では必須のスキルだ」
 バルモアが早速シャベルで水を含んで重くなった土を掘り始める。
「今から貴方のお母さんのお墓を作ります。少し離れていてください」
 座り込んでいた無表情な少女に向けて絶奈が優しく声をかけ、自分も同じように穴を掘っていった。


「ふむ、こんなものか」
 埋葬を終えて手を止めたバルモアが流れる汗を拭った。
「一緒に祈りを捧げましょう。安らかな眠りにつけるように……」
「おかーさん……」
 絶奈が少女を呼んで共に祈りを捧げ、その愛しむような穏やかな心で迷える魂を天に導く。
「うぅ……ぐず、おかぁーさん………」
「寂しくなったら此処で泣くのも良いでしょう。ですが、此処に眠る人達に今日あった良い出来事を……」
 感情が爆発したように泣き崩れる少女に、絶奈がそっと語りかける。
「生き残った貴方が紡ぐ希望の未来を語ってあげて下さい。それが子を護る事が出来た親への供養です」
「うん、わたしおかーさんにいっぱいお話しするっ。だからおかーさん、ずっと見ててね」
 泣き顔であっても生気を漲らせた少女が顔を上げ、墓に向かって話かけた。

「よい顔になったな」
 その様子を見て安心したバルモアも黙祷を捧げる。
「これで未来への道が繋がりました……」
 絶奈は空を見上げ、ここで眠る人々の魂に子供達の未来を見守ってほしいと願った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。大切な人を失った子供達の心に、
初対面の私の言葉が届くなんて最初から期待していない。

…それでも声を掛けたのは貴方達に託す物があるからよ。
私の声が届かなくても、彼らの声ならば届くはず…。

“子供達に遺志を託して欲しい”と祈りを捧げ【血の煉獄】を発動
先の戦いで【断末魔の瞳】に取り込んだ魂を精霊化して召喚、
一日だけ自身の子供の傍にいてもらい慰めてもらうわ。

…彼らの怨嗟や呪詛は既に晴れている。
まだこの地に留まっているのは、
残された子供達を心配しているからに他ならない。

…今は悲しみに沈んでも良い。
いつかきっと立ち上がる日が来る。

その時に親から託された言葉が、意志が。
立ち上がる支えになってくれれば…。



●託された想い
「ひっく、ひっく……」
「おかあさん……うぅ……」
 泣き疲れた子供の兄弟が目を赤くして蹲っている。
「……ん。少し話があるのだけど」
 そんな子供に近づいてリーヴァルディが声をかけた。だが子供は一瞬反応すると、すぐにまた視線を逸らし、じっと何処か何もない場所を見つめる。そこは母親がドラゴンの襲撃で死んでしまった場所だった。

「……ん。大切な人を失った子供達の心に、初対面の私の言葉が届くなんて最初から期待していない」
 リーヴァルディは親を失った悲しみに打ちひしがれる子供にそれでも声をかけ続ける。このままでは子供達は壊れてしまうかもしれない。それを助けるべくユーベルコードを使用する。
「……それでも声を掛けたのは貴方達に託す物があるからよ。私の声が届かなくても、彼らの声ならば届くはず……」
 “子供達に遺志を託して欲しい”と祈りを捧げ、リーヴァルディはこの場で子供達を心配そうに見守っている魂を精霊化して召喚した。それはまだ若そうな女性の姿をしていた。

「おかあさん!」
「ほんとだ! お母さんだ!」
 その姿を見た子供達が飛びつき、安堵の表情を見せて甘える。母親は子供達を強く抱きしめ、泣きそうな笑顔でリーヴァルディへと視線を向けた。

「一日だけ……一緒に居られる時間はそれだけよ」
 そう告げてリーヴァルディは子供達を任せる。母親の精霊は深々と感謝するように頷き、子供達と向き合った。
「おかあさん……」
 母親の存在を確かめるように子供はくっついて離れず、それを仕方がないと優しく抱きしめ返す。仲睦まじい親子の再会。

「……彼らにはドラゴンに対する怨嗟も呪詛もない。まだこの地に留まっているのは、残された子供達を心配しているからに他ならない……」
 人の想いとは負の面だけではないのだと、リーヴァルディはその優しい仮初の光景を眺めた。

「おかあさん。ずっといられるんだよね?」
 子供が問いかけるが、母親は首を横に振る。そしてこの時間が有限であることを告げた。それを聞きまた子供が涙目になる。それを優しく母親があやし、これが最後だからとたっぷりの愛情を注ぎ込む。

「……今は悲しみに沈んでも良い。いつかきっと立ち上がる日が来る」
 一日だけの幸せな幻。別れの準備に与えられた奇跡の時間。
「その時に親から託された言葉が、意志が。立ち上がる支えになってくれれば……」
 そう祈るようにリーヴァルディは目を伏せ、子供達の未来に母親の想いが受け継がれる事をただ願う。


 復興が進み、町並みが元に戻っても、傷ついた人々の心は元には戻らない。それでも人々は明日に向かって生きていく、大切な人を失っても……。
 猟兵はそんな人々の心の弱さを支え、蹲って止まってしまわないように優しく背中を押した。ほんの少しの手助け。だがその少しの助力が人の一生を変えることもある。
 この町の人々は悲劇を乗り越えるだろう。親の想いを子が受け継ぎ、未来へと踏み出したのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年08月03日


挿絵イラスト