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誰ソ彼ビルとスーサイド

#UDCアース

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#UDCアース


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●suicide……[可算名詞]自殺者
 どこまでが現実で、どこからが夢なのか、よくわからない。
 僕は彼女と一緒に、楽しく喫茶店でお茶を飲んでいた筈だった。
 ふんわりと覚えているのはそれぐらいで、今自分が何をしているのか、よく解らない。

 冷たい風が吹いている。夕焼けが綺麗だ。

 繋いだ手が温かい、その感覚は確かにある。僕は右を見た。彼女はいつもと同じ、けれどどこかぼうっとした表情で、笑い返してくれる。
 ――どこに向かっていたんだっけ。
 僕は、よく解らなくなったけど、彼女が笑って手を引いてくれるからそれでいいかな、と思った。
 向かう先には、壊れた柵がある。

 冷たい風が吹いている。夕焼けが綺麗だ。

 僕は彼女と手を繋いだまま、柵を避けて踏み出した。
 真下には、ねじれた人が沢山いて、地面は夕焼け空よりも赤くて。
 骨が突き出た手が、誘うように空を向いていた。

 冷たい風が吹いている。――ああ、こんなにも真っ赤だ。
 僕たちは当たり前のように踏み出して、重力に抱かれてつぶれた。

●死は汝の親しき隣人である
「……とまあ。おれが見たのは、そういう話。またも気分のいい話じゃなくて悪いけど、仕事の依頼をさせてくれ」
 壥・灰色(ゴーストノート・f00067)は、手元の資料を掻い摘まんで読み上げながら、近くのテーブルにバサリと紙束を落とした。
「場所はUDCアースの日本だ。適当な商業施設をターゲットにして、施設内にいた人間を丸ごと集団催眠にかけ、丸ごと拉致してビルから落とし、『死体』を大量に作る。それに魔法の布をかけて、スリー、ツー、ワン、で、忠実によく働く信徒の出来上がり」
 反吐が出る、と無表情ながらに吐き捨てる。彼にしては大きい不快の表現だった。
「放っておけば少なくない犠牲がこれからも継続的に出るだろう。皆には、これ以上犠牲が出る前にこの建物……そうだな、『誰ソ彼ビル』とでもしようか……ここを制圧してほしい」
 灰色は集まってきた猟兵らに紙の資料を配る。
 拠点内には、そうして死体から作られた『黄昏の信徒』らと、端肉を喰らう『牙で喰らうもの』が存在するとのことであった。
 信徒は鈍器による打撃、精神を削る奇声を上げながらの高速移動、死体からの自身らの複製を使って攻撃してくる。
 牙で喰らうものは、肉を喰らうことで戦闘力を上昇する能力と、相手に食らいつき体力を奪う能力、受けたユーベルコードを喰らうことで一度だけ複製して扱う能力を持っているようだ。詳細は配付資料を見てくれ、と灰色は続ける。
「転送地点は誰ソ彼ビルの正面入口。今回の最大の目標は、ビルに突入して雑魚を蹴散らし、地下四階に巣喰う『牙で喰らうもの』を殲滅することだ。それを最低目標として戦闘を展開してほしい」
 地下四階に至るまでは当然、信徒が大量にいる。
 ホールのような広い場所に引きつけて戦っていくか、閉所戦闘の準備をして蹴散らしながら進むかは得意な方を選択して欲しい、と続ける灰色。
 そこまで来て、彼はやや声のトーンを落とし、続けた。
 陰鬱な調子の通り、彼の言葉は重苦しい。
「……心苦しいが、現場へ転送した時点で、既に今回拉致された人々は殆どが殺されたあとだ。助けられるとしたら――最後に墜とされた高校生のカップル、一組きり。それも、もし助けに行くなら大量の死体がある地面を横切らなきゃならない。つまり、突如足下から、信徒になった死体に襲われる危険性もある。危険はあるけど――どうするかは、皆の判断に任せる」
 灰色は長広舌をぶると、ルービックキューブ状のグリモアを回転させ、六面を揃える。
 各面の色が揃ったグリモアから、光が発された。光は空間を切り取り“門”を成す。
「仕事が終わったあとは……そうだな、近くにショッピングモールや飲食店がある。少し息を抜いてからゆっくり帰ってきたらいい。……幸運を祈るよ。どうか無事で」
 灰色は集まった猟兵らに、深く頭を下げた。



 祝・セカンドシナリオ。内容が全然めでたくないのは措いておきます。
 こんばんは、スーサイドという響きが一時期とても好きで、意味を知らずに使っていたことがある煙です。
 それ技名にしたらアカンやつや。

 今回の依頼は基本的に純戦闘依頼となります。描写はビル内での敵との戦闘がメインとなります。ビル内には狭い所も広いところもあるので、皆様お好きな戦闘スタイルで戦ってみてください。
 灰色も語っていますが、最後のカップルだけは皆様の行動次第で助けることが可能です。脇目も振らず助けに行けば、地面に激突する前に受け止めることは可能と思われます。

 今回も、皆様の入魂のプレイング、お待ちしております!
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第1章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●誰ソ彼ビル、正面入口
 “門”を抜け、降り立った猟兵達を迎えたのは、寂れたビルだった。
 町外れにある、異質な空間。日常から隔離されたかのように周囲をフェンスが覆っている。
 七階建てほどの小ぶりなビルの屋上、猟兵らからも見える位置に、少年と少女が立つのが見えた。

 猟兵達は、己の信念に基づいて行動を開始する。
 そこに、何一つ間違いなどない。彼ら一人一人が選んだ道が、彼らの正道なのだから。
赫・絲
たまたまそこに居合わせただけで、
奪われて、ちゃんと眠ることもできずに信徒にされて。
そんな『終わり』なんてサイテーすぎるよ。
もうほとんど手遅れでも、まだ間に合うんでしょ?
行かない理由はないね。

最後の生存者の落下予測地点に向かう
例え元が何だとしても、阻む信徒は容赦しない
糸で裂き、その裂傷に纏わせた雷を最大出力で放出しながら道を拓く

私一人で救えるなんて思わない
でもきっと同じ所へ向かう人はいるから、そのための道を作る

落下予測地点に到着し、最後の生存者が無事なら付近の仲間を呼ぶ
その場にいる信徒は、これまで通り葬倒する

おやすみ、おやすみ。
痛くしてごめんね。
せめて一息で奪うから。


ユキ・パンザマスト
赤い夕陽が視界を灼いた。落下する二つのシルエット。
ああ、逢魔ヶ時だ。禍時。
昼と夜、人と妖。此岸と彼岸との境界だ。
此岸と彼岸。落ちていくあんたらは、まだどちらでも選べますね。

先制攻撃、実体ホロの白椿が場に咲き乱れる。
野生の勘で間合いを測り、落下者達は範囲外に。
転がる大量の死体だけを衝撃波でなぎ払い、手荒に吹っ飛ばせ! 
既に誰かしらが助けに駆けだしてるのならば、衝撃波は加速の追い風にもなるだろう。

間違っても足は止めずに、倒れずに! 
そのままどうぞ走って!
ヤワじゃないと信用しています。
だって皆、猟兵だ。

見届ける暇はない。ユキもビル内へと戦いに駆ける。
彼らを受け止め、此岸に留めてやってくださいな。


襲祢・八咫
やれ、年の瀬だというのに面倒の多いこと。

ちりぃんと鈴の音ひとつ。
朱鳥居の召喚門。
陽光を纏う三本脚の大烏。

烏や烏、疾く往け。
陽光は清め。黄泉帰りになる前に、死した者共を灼き祓って道を作れ。

おれも、人の子らを受け止めに駆けるとしよう。

亡者の群れは永久の眠りへ、黄泉戸喫を終えたなら戻って来られても困るのでな。
帯から抜いた扇子に神通力を通して鉄扇へ、鋭く重いそれを振り払うように使徒共を打ち払って真っ直ぐに墜落地点へ向かう。纏うは、陽光と破魔と祈りの力。人の子を護るのはおれの存在意義故、な。
落ち切る前に、間に大烏を緩衝材として挟んででも受け止めてみせよう。此処で死ぬには、若すぎるだろう。なあ。


浅沼・灯人
手を伸ばされたのなら少しでも
手を伸ばせるってんなら、いくらでも
救えるもんは救ってやらぁ

・最後の一組救出が目的
場所なんて気にしねぇ
邪魔する奴等はぶっ倒して、突っ切るだけだ
【灼焼】……俺が吐き出す竜の炎は、地獄の熱よりも高い
死体も、信徒も、残さず燃やす
攻撃は鉄塊剣で受け、フルスイングで壁に吹き飛ばす

邪魔物を薙いで、走り抜けて
一組へ腕を精一杯伸ばして
伸びる影を踏みつけて、武器投げ捨てて叫ぶ
こっちだ、と
夕陽に背を向け、己の影を見ろと

……間に合いそうにないなら
延焼箇所を調節すれば道くらいなら作ってやれる
俺が辿り着けなくとも、誰かがあいつらに手を伸ばすと信じている
行け!こっちのことは気にするな、走れ!


黒白・鈴凛
ワタシ達次第で助けられるカ
嗚呼、それなら助けるしか無いアルナ
信徒を弔い、元凶を討ち、救えるものを救う
出来る全てを成し遂げる
それが完全勝利と言うものネ
志を共にしてくれる者と協力し成して見せるアル

とは言え、ワタシの速さじゃ間に合うかも分からないアル
此処は適材適所、ワタシの力で道を切り開くアルヨ

怪力で底上げされた崩拳
その衝撃で信徒達を地形ごとぶっ飛ばしてやるアル!

アドリブ歓迎
お触りしなければどんな交流も歓迎アルヨ



●外/PM04:19:02
 ユキ・パンザマスト(禍ツ時・f02035)は、現場に降り立つなり、赤い赤い夕日に目を細めた。
 ビルの名前に沿うような、誰ソ彼時が近づく夕方。夕闇が降りる前の僅かな時間。
 ――ああ、逢魔ヶ時だ。禍時。昼と夜、人と妖。此岸と彼岸との境界だ。
「此岸と彼岸。落ちていくあんたらは、まだどちらでも選べますね」
 自ら墜ちて死ぬのなら、それは勝手にしたらいい。
 けれど望んでの死でないのなら、真正面から手を延べて、理不尽祓って阻もうじゃないか。そうするためにここに来たのだ。


●外/PM04:19:23
「――もうあそこに立ってる!」
 赫・絲(赤い糸・f00433)が半ば叫ぶように言う。

 猟兵達らは大きく二つに分かれた。まず、墜ちる少年少女らを自分の出来ることをして助けようとした者。そして、その存在を信じるが故に、少年少女には意識を割かずビルの入口に突撃した者。

 絲は前者であった。いち早く駆け出そうとして、彼女は思わず足を止める。
「……行かせないってワケ」
 それは、想定外のことだった。横切る最中に起き上がる可能性がある、と説明された死体の群れが、歪にねじくれた四肢をそのままに、身体を軋ませ立ち上がる。立ち上がった彼らの身体を白い布が覆い、うつろな目を、血に塗れた顔を、白面が覆った。
 猟兵らを阻む、肉の壁。黄昏の信徒らが、猟兵らの行く手を阻むように次々と立ち塞がる。
「関係ねぇよ」
 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)が絲の横に進み出る。鋭い目をした青年であったが、その人を寄せ付けない眼光とは裏腹、彼が選んだのは「墜ちる二人を助ける」道である。
「こいつらは、終わっちまった。でもあの二人はまだ生きてんだろ。それなら、邪魔する奴等はぶっ倒して、突っ切るだけだ」
「真是! ワタシ達次第で助けられる、嗚呼、それなら助けるしか無いアルナ」
 黒白・鈴凛(白黒娘々・f01262)が息巻く。彼女もまた、少年と少女を助ける道を選んだ一人だ。敵を倒すのみが猟兵の心得に非ず。死した者を弔い、元凶を討ち、そして救える者を救う。出来る全てを成し遂げる。
 そうしてこその完全勝利だと彼女は信じていた。故に、こうして並び立つ者がいたことに、嬉しげに笑う。
「おうさ。駆けるぞ、ここで死ぬには若すぎる。二人共だ」
 襲祢・八咫(導烏・f09103)が、揺れる鈴の音を伴って静かに言った。彼の傍らに浮かび上がるように現れた朱鳥居から、三本脚の八咫烏がぬうと顔を出す。八咫は視線をビルの上に這わせた。ゆらゆらと屋上で揺れる影法師、最早一刻の猶予もない。
 彼はその嫋やかな指先に手挟んだ扇を顔の前に掲げ、ば、と音を立てて開いた。
 それを引き金にしたかのように、信徒らはずるりと、手に黒い鉄塊を擡げ、この世ならざる声で吼える。

 臆せずまず一番槍に突っ込んだのは鈴凛である。
 踏んだ地面が弾け飛ぶような疾歩。敵一体の正面に、突如発生したかのように現れるなり、握り固めた拳を「骨で支え」、運動エネルギーを余さずその尖端に乗せる。

 形意・五行拳。
 基礎にして真なる奥能。

 ――それは、拳で行う「体当たり」に近い。全ての運動量は拳に集束され、爆発的な破壊力を生む。
「哈ッ!!!」
 殆ど炸裂音に近い。彼女が震脚を踏んだ周辺の地形から、轟音と共に土くれが吹き上がる。まるで地雷でも埋まっていたかのように。
 彼女が放ったのはただ一発の崩拳――『熊猫の崩拳』。
 しかしてその威力推して知るべし、半歩崩拳、遍く天下を打つ。直撃した信徒は五体四散し、周囲にいた信徒達もただでは済まず、震脚の勢いで転げまろび、吹き飛ぶ者も少なくない。
 
「その隙、貰った――燃えろォ!!」
 灯人がそれに続いた。彼が吐き出す竜の炎は、地獄の炎すらも凌駕する灼熱の轟炎。転げた信徒も、体勢を崩すに留まった者も、まとめて範囲攻撃で焼く。
 ――手を伸ばされたなら、少しでも。それが喩え二人きりでも。
 ――手を伸ばせるなら、いくらでも。この俺の手が届く限り。
 救えるもんは、救ってやらぁ。
 討ち漏らしたものがすぐに高速で、何事をかを喚きながら突撃してくる。振り下ろされるモーニングスター。灯人は流れるように鉄塊剣を突き出した。鎖部分を絡めるように長剣の先で巧みに受け、鎖を絡めとる。
 そのまま躰を回して遠心力を乗せた刀身を振るい、モーニングスターを振るった個体を振り飛ばすと同時に、手近な一体を遥か壁まで弾き飛ばした。場外ホームラン級の一発、信徒の身体はまるで戯画のようにべしゃりと壁にめり込み、磔になる。
 
 鈴凛が崩拳を連発し、灯人が息を整え轟炎を吐き散らす。その隙間を縫い、絲が駆ける。

 ――たまたまそこに居合わせただけで、その先の道を決定づけられて、死ぬしかなくなった人たちがいた。そんな終わりを認められなかったからこそ、絲はこうして奔るのだ。何もかも、宿命という糸に縛られて生きてきた彼女だからこそ、その理不尽を許せない。
 彼女は両手を指揮するように振り、は、と短く息を吸った。
「おやすみ、おやすみ。……痛くして、ごめんね」
 絲の放射状の前方、襲い来る黄昏の信徒ら、複数が一時に動きを止める。赫・絲の放つ糸は、彼女と誰かを縛る糸。絡めて敵の動きを止め、そこに魔術を伝わせるのが彼女の得手である。
 祈るように呟く謝罪の言葉は、かつて生きていた人間だったものへの敬意からか。けれど決然とした菫色の眼が、手を止めることはないと語っていた。
「せめて一息で奪うから」
 斬。
 紫電を纏った絲の糸が、絡めた信徒らを細切れにする!

 八咫は大鴉を伴い、疾風のように駆ける。
「やれ、面倒の多いこと――」
 しかしそれも、障害がない間に限る。先行して攻撃を行った絲、鈴凛、灯人の攻撃で排除できた分のスペースにねじ込むように滑り込むと、広げた扇で横から襲う一体の首を薙いだ。ごろり、と首が転げる。
「亡者の群れは永久の眠りへ、黄泉戸喫を終えたなら戻って来られても困るのでな」
 彼の手に手挟んだ扇は、いつの間にやらぎらりとした輝き纏う、鉄扇へと姿を変えていた。八咫の扱う神通力の成せる業である。喚んだ鳥もろとも、彼が纏うのは陽の光、日輪たる破魔の力。周囲から幾体も襲いかかるが、それをまるで舞うように避け、振るう鉄扇が敵の悉くを祓う。
「疾く、翔けろ」
 命に従い、脇に侍る大鴉が陽光を纏って飛んだ。破邪の光を宿して飛ぶ双翼が、その進路にいる複数体の信徒を薙ぎ払う。

 ユキはそれらの状況を俯瞰しながら、まだ手が足りない、ということを直感する。このままでは間に合わない。
 例えば、彼ら四名の中でもっとも前進したがっているのは灯人だったが、敵を炎に撒いても、それでも尚、数秒は動き、襲いかかってくる。それを打ち払うために剣を振るう必要があり、先に進むことが出来ていない。しかし、それでも構わないとばかり剣を振っている。また、吐き出す炎の延焼範囲を調整し、道を作ることまでして見せている。
 それに合わせるように鈴凛が駆け巡る。こちらは対照的に、自分が今できることを確実にする、という援護徹底の動きであった。最初に見せた崩拳の冴え、そして手を地面につきながらの側転から、擦れ違い様の蹴撃二発。人体の要たる頸骨と脊髄を粉砕する技の冴え。焔に巻かれて動きの鈍くなった信徒の動きを確実に止めていく。
 絲は進路を確保するべく、灯人が作った焔の道を塞ぐように駆けてくる信徒を糸で巻き取り、左右の劫火の中に叩き込んで切り裂き、焔にくべて道を作り。なおも殺到しようとする信徒らを、八咫が操る大鴉がその鉤爪と双翼で引き裂いていく。
 こうしている間にも、死体はまた一体一体と立ち上がり……それだけではない、誰ソ彼ビルの二階と一階の窓から、まるで腐肉から蛆虫がまろび出るように、白い布で身体を覆った生ける死体共が沸いて出る。
 ユキは、先に突っ込んだ四名の意思が一つになりつつあるのを感じた。
 助けに行こうとしているのは、自分たちだけではない。ならばその後進の道を作る、と。
 ならばと、彼女は駆け出した。灯人が作った焔の道を駆け抜け、その先へ。
 狙いは一つ。死体が立ち上がる前に、せめて散らす。衝撃波で薙ぎ払えば、多少の欠損が生じるものもあろうし、なおかつ再集結するまでの多少の時間を稼ぐことが出来るだろう。焔の道を抜け、跳ぶ。振り上げた腕を、雷のように振り下ろすと、実体ホログラムが顕現した。
 それは椿。一本の白椿であった。
「逢魔ヶ時だ、禍時だ! さぁさぁ、ほうら、けものが来ますよ!」
 轟!!
 吹き荒れる衝撃波が、焔の道の先にスクラムを組むよう集まっていた信徒もろともに、未だ立ち上がらぬ死体を吹き散らす!
「――足を止めずに、さあさ、どうぞそのまま駆け抜けて! ――助けるんでしょう!」
 異形のキマイラは歌うように言う。彼女が咲かせた実体ホロの白椿が、敵を薙ぎ倒す。灯人が前線を押し上げ再び焔で道を作り、鈴凛と八咫が浮いた敵を狩り、絲が立ち上がりかける死体の足を斬って頭数を減らす。
 ――大丈夫。信じてますよ。
 ユキは祈りにも似た思いで内心、呟く。彼女はビルの中に向かった猟兵らに加勢すべく、咲かせた実体ホロをその場に残したまま駆ける。――刹那、殆ど予感にも似た思いに衝き動かされたように。ユキは、西日を切り取るビルの上に視線を這わせた。

●外/PM04:20:54
 見上げる空。
 ゆらりと一度大きく揺れて。
 赤い夕陽が視界を灼いた。落下する二つのシルエット。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

西行・胡桃
●心情
……『誰ソ彼ビル』……詩的。私もいつか予兆を見たらあんな感じでさらっとかっこよく名付けたりしないと……
もとい、ホント気分の悪くなる案件ね
勿論、そんな陰謀叩き潰してやるわ

●行動
助けられる人が一人でもいるなら、全力で
他に目もくれず、一直線に走ります

Get set!
Go!

ノロマな敵さんは私の残像でも追ってなさいっての
かっこよく抱き留めれたらいいけど、最悪クッションになれるように
私一人で届かないなら、次の人がちょっとでも楽になるように倒れる時まで道を切り開きます
黄昏の信徒さんたちを倒すときには、内心で祈っておきます……
ごめんね、助けられなくて


リインルイン・ミュール
カップルさん達が落ちるという場所まで、脇目も振らずにダッシュダッシュ
他にそういう方は居ますかネ? それなら一緒に行きましょう
攻撃されても、誰か一人でも辿り着ければ良いのデス

流石に足首掴まれるようなら剣で斬ってでも振り解くしかないですが
基本的に攻撃は無視して走りマス
ただ走るより速く進めそうな場所はバウンドボディを使いまショウ
自分の身体の一部をくっつけて剣をぶん投げて、剣の方に高速で縮む
これなら縮む間は滞空シマスし、脚を掴まれる事も減りそうデス

辿り着けたら受け止める準備
衝撃軽減の為、余裕があるなら身体伸ばして空中で掴まえたいですが
駄目なら普通に受け止め、なるべく衝撃から庇えるようには気を付けマス


皐月・灯
急げば間に合うかもしれねー、か。
それだけ聞けば十分だ。

オレはまず、2人が落ちてくる場所へ向かう。
ただ、助けようとしてんのはオレだけじゃねー筈だ。
なら、2人を受け止める救い手役は任せるぜ。
その代わり、ソイツは――

「――オレが守ってやる。受け止めることだけ考えろ」

行く手に敵がいるなら、間髪入れずに【先制攻撃】だ。
足元から立ち上がってこようと、躊躇いなく拳と術式を叩き込むぜ。

ああ、オレは躊躇わねー。
敵が元は人間で、被害者だってことも分かってる。
……だからこそ、躊躇うことは許されねーだろ。

まだ生きてるヤツがいるんだ。
そいつらを救うために、躊躇ってなんかいられねーんだ。

「じゃあな。――恨んでいいぜ」


舞塚・バサラ
・SPD
いやあ、酷い話に御座るな
無情で理不尽、それでいて効率がいい
某好みに御座るよ
実に…叩き潰しがいのある依頼に御座るなぁ!
(高校生カップルの救出に向かう。降魔化身法で身体を強化。その身体能力で全力疾走、落下する前に【早業】や【フック付きワイヤー】を駆使して受け止める)(降魔化身法のデメリットは流血、毒は歯を食いしばって無視し、束縛はその内で出せる全速力で移動する)
(成功したら、その場を全力で離脱。救出した対象を安全な所へ送り出す)
(失敗したら、信徒との戦闘に切り替え。真っ向から戦わず、【逃げ足】でいつでも距離を取れるようにしつつ、【だまし討ち】【早業】【暗殺】を駆使しての一撃一殺を狙う)



●外/PM04:20:40
 助けるために残ったもの達は、最早言葉すら交わさなかった。
 元より、少年少女、たった二つの命を救うために、目の前の群と戦う事を選んだ猟兵達である。
「アザレア・プロトコル・オン!」
 皐月・灯(灯牙煌々・f00069)だ。幻釈顕理「アザレア・プロトコル」による自己強化。彼の髪が逆立ち、瞳と拳に「灯」が点る。これを救いの階とする、そう謳わんがばかりだ。
「――オレが、お前らを届かせる! 行け!」
「OK、Get set! ――Go!」
 怒号にも似た灯の言葉に背中を叩かれたように、ほぼ同時に三人の猟兵が飛び出した。
 絲が、灯人が、八咫が、鈴凛が――そしてユキが作った前線、道を、突っ込むように駆けていく。
 飛び出した三人の猟兵は初めから、まず少年少女を助けることしか考えていなかった。故に行動は速く、迷いがない。
 
 灯に応じるように号令を重ねたのは西行・胡桃(残像行使・f01389)。屋上から墜ちる二つのシルエットまで、吸い込まれるように駆けていく。
 軽口を叩く余裕も今はない。今は、救うべきを救う為に奔るばかりだ。
「こんな陰謀、私たちが絶対に叩き潰してやるわ……!」
 進路を阻むように、複数の信徒がモーニングスターを振りかざして立ち塞がる。
「邪魔! これでも追っかけてなさい!」
 姿勢を低く保った胡桃は、高速のステップワークで残像を生み出し敵を幻惑。襲いかかってくる敵を残像により回避する。
 回避しきれないものは竜槍「ハク」を薙ぎ払い、刹那現出する竜の顎による食い千切り――『ドラゴニック・エンド』による一撃で貫き、前へ、前へ。
 薙ぎ倒しながらも、彼女の胸中に満ちるのは祈りだ。
(――ごめんね、助けられなくて)
 けれども今、生きている者がこの先にいるのなら、矜持に懸けて脚を止めるわけには行かない。

「いやあ、酷い話に御座るな。無情で理不尽、効率の塊のような殺戮原理。某好みに御座るよ。いやはや――」
 ぎいっ、と歯を剥き出しにして鮫のように笑うのは舞塚・バサラ(多面巨影・f00034)。その身体に『降魔化身法』によりあやかしを下ろし、その身体能力を強化。
「実に、叩き潰しがいのある依頼に御座るなぁ!」
 代償として彼の身体を蝕んだのは毒だったが、それを歯を食いしばって無視し走り抜ける。しかして敵は立ち塞がる、その一人一人をクナイの形に編んだ影で切り払い、はたまたその速力を乗せての蹴りによって薙ぎ倒しながら進む。

「安心しました、一人の道行きではなかったようデ。誰か一人でも辿り着ければ、それで良いのデスから」
 ブラックタールたるリインルイン・ミュール(紡黒のケモノ・f03536)は高速で移動しつつ、併走する胡桃とバサラを伺う。そう、こうした作戦を展開する際、重要なのは数だ。試行回数は成功率に直結する。口にしたとおり、誰か一人でも辿り着いたなら、それで勝ちなのだ。リインルインはそれをよく理解した上で、全速力での移動を行う。
 敵が複数密集して襲いかかってくるのを見るなり、彼女は黒い剣を投げ放った。剣は彼女の手――に相当する部分――を柄に帯びたまま飛び、遠い地面に突き立つ。刺さった剣をアンカーとして、リインルインは己の身体を剣に向けて「巻き上げた」。びゅるり、と鞭のように撓り、彼女の躰は剣の方へ飛んで再構成される。
 バウンドボディの応用による高速移動。ブラックタールだからこそ出来る荒技、そして敵のすり抜け方だ。

 まさに三者三様の斬り抜け方で、襲いかかる信徒らを突破するが、最後の最後に限界が訪れる。
 隙間のない、信徒らの壁。まともに進めば塞がれ、足を止めること必定。最早一秒も無駄に出来ない。切り結ぶヒマすら惜しい。ああ、ビルの上で遂に、二人の身体が傾いで――
 三者の顔に張り詰めたものが浮かんだその瞬間、背後から流星が駆け抜ける。

「言っただろ、届かせるって。――ユニコーン・ドライブ! ブチ抜けぇえええええっ!!!」

 放たれるは、『猛ル一角』。アザレア・プロトコルの第一番にして、無双の尖角。
 後ろから突き抜けた灯が、信徒らの最後の壁を突破する。ただ一点、ずらり居並ぶ信徒らのたった一角を突破するだけのもの。しかし、それは――彼の拳が宿した流星の如き輝きは、三人に、確かに希望の光として映った。
「某が刻を稼ぐ、着地をお頼み申す!」
 バサラが言うなり、灯が作った道を駆け抜ける。既に少年少女は落ち始めた。
 最早、いかなる韋駄天といえど走ったのでは落下を止めることは不可能だ。
 バサラはフックつきワイヤーを射出し、その一端をビルの壁に撃ち込んだ。フックつきワイヤーは数百キログラムの荷重にも耐える特別製である。位置関係上巻き取ることは出来ないが、引っかかった少年少女の落下を、ほんの一瞬だけ留めることは可能である。
 バサラが行動に出たその一瞬、胡桃とリインルインは己の役割をそれぞれ解したように構えた。
「飛ばすよ!」
「了解デス!」
 胡桃が竜槍を構えた上に、リインルインが乗る。リインルインが先程見せたあの動きを、今度は二人でやろうというのだ。
「いっ、けぇええええ!!」
 胡桃は、自らの肩を支点とし、カタパルトめいてリインルインの身体を投げ飛ばす。胡桃の膂力は凄まじく、飛んだリインルインは容易く信徒らの壁を越えた。
 リインルインは空中で自らの形状を制御し、即座に、自分の持つ銀剣『真銀の尾』を投げ飛ばし、少年少女が墜ちるそのコースへ割り込む――

 肉が地面に落ちる、重い音がした。

●外/PM04:20:56
「――誰か一人でも辿り着ければ、とは言いましタが」
 リインルインは、地面に出来た窪みの中で呻くように言った。不定形の彼女の身体に埋もれるように、少年少女が二人、倒れている。
「一人では足りなかったかもデスね。ああ……身体が痛い」
「ブツブツ言ってねーで立て、二人を運び出すところまでやって完了だぜ」
 辛辣な言葉を横から浴びせたのは灯だ。落下から数秒して追いついた彼は、その場に集いつつあった信徒を排除して回っていた。
 ぶっきらぼうな物言いをするが、目を閉じた少年少女の胸が僅かに上下しているのを確認して、灯は安堵の息をつく。
「……でも、ま、お疲れさん。よくやったんじゃねーの」
「然り。よく某の意を酌んで下すった、忝い!」
 ザッ、と土煙を上げながらバサラもまた、リインルインと二人の少年少女を守るように立つ。
「脚だけならばおそらく某がもっとも速かろう、彼らを預かる故、お二人は奴ばらめと戦うのに専念を」
「……人使いが荒いと言われたことはありませんかネ?」
 リインルインは冗談交じりの不平を零しながら、今一度人型を取り戻し、立ち上がる。少年少女をバサラに預け、剣を一振り。
 今一度押し寄せる信徒らの壁の向こうで、奮戦する胡桃が自分に剥けて親指を立てて見せるのを見て、リインルインもまたそれに応じた。
「いいでショウ。もう一踏ん張り、お付き合いしマス」

 また一つ、二つ、誰かの命を救えた。居並ぶ無数の信徒さえ、心を折るには能わない。
 猟兵達は戦闘を再開する。己が技の粋を尽くして。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

レイラ・エインズワース
鳴宮・匡サンと共闘

過去は戻らないから綺麗ナノニ
どうしテ、過ぎたモノが今を生きるモノを奪っていくのカナ
もう夢から覚めるトキダヨ

ほんとは数で押したいケド、ホールで乱戦はいただけないしネ
見敵必殺ってやつカナ、鳴宮サン
呼び出すのは狂気の魔術師、私のマスター
見せるのは初めてダッケ?
纏ったローブで闇や影に紛れて侵攻
廊下一面に広がる雷撃の「衝撃波」ヤ、部屋丸ごと「呪詛」を籠めたカンテラの炎で逃がさぬように
腕は信用してるカラ、銃弾には目を向けズ進んでいくネ
数が多い場合は、魔術師に頼んで死霊で足止め
鳴宮サンに合図するヨ
私は葬送の灯、せめて迷わぬように送るからサ!

絡み・アドリブ・台詞追加も歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


鳴宮・匡
レイラ・エインズワース(f00284)と共闘


甦った過去だろうが、死体だろうがなんでもいいぜ
生きているなら、殺せる相手だ

さ、レイラ
蹴散らそうぜ、残らずだ

通路内を駆け抜けつつ目についたやつから殺すかな
「忍び足」で「目立たない」ように心掛けて出会い頭を抑える
開けた場所を通る場合は射撃で気付かせてから
狭い場所へ誘い込んで迎撃
なるべく多人数を相手にせず確実に始末しようか

え、マスター?
初めても何も存在自体が初耳かな!

レイラの攻撃が広い範囲を焼くときは
巻き込まれないように下がりつつ狙撃で援護
レイラの死角にいるやつを受け持つよ
俺の眼を簡単に掻い潜れると思ってもらっちゃ困るな

【アドリブ/他絡みなど大歓迎】



●「誰ソ彼ビル」内部/B1F
 既に誰ソ彼ビル外での戦闘が耳に届かぬほどに、先を行く猟兵らは高速で進撃していく。先頭を往くのは鳴宮・匡(凪の海・f01612)、そしてレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)の二名だ。
「蘇った過去だろうが、死体だろうが、立って歩いてるんならそいつは生きてるって事だろう」
 二人の間でもポイントマンとなるのは匡だ。ハンドガン――FMG-738のマガジンをリリース、それが地面に落ちる前に彼はマグポーチから抜き出したマガジンをグリップへ叩き込んだ。タクティカルリロード。通路を、音を殺して歩き、角を曲がる。
 ダブルタップ。敵が匡を認識するよりも一瞬速く、二発の銃弾が仮面を砕く。また一体、また一体と頽れていく信徒。
「生きているなら、殺せる相手だ。銃弾は嘘を言わないからな」
 会敵した敵グループ、先頭の三名を雷光めいたラピッドファイアで沈めると、匡は嘯いた。戦場傭兵である彼は、その銃とナイフ、そして己の身体があるならば、いかなる敵をも怖れはしない。
「過去は戻らないから綺麗ナノニ――どうしテ、過ぎたモノが今を生きるモノを奪っていくのカナ。もう夢から覚めるトキダヨ」
 その傍らで、レイラはカンテラを揺らして嘆くように言う。過去――信徒らが、今も聖者を殺し続ける事を嘆いての言だろう。
「過去には過去が相応しイ――『潰えた夢を数えヨウ。届かなかった手、再会の願い。どこまでも無垢だった魔術師の見た夢。過去の幻だとしても、今再び夢は舞い戻る』」
 空間が軋み、レイラのユーベルコードが発動する。突如としてその場に現れるのは、ローブを纏ったこの世ならざる影である。揺らめく像は明確な形を取ったり、ノイズが走るように揺らいだりと安定することはない。おそらくは魔術師であろうということしか解らない不詳の影に、流石の匡も横合いでぎょっとした顔をする。
「……あれ、見せるのは初めてダッケ? 私のマスター」
「初めても何も存在自体が初耳かな!」
「じゃあ紹介するネ。マスター、お願い」
 宙に浮く幽玄たる影が、五指を合わせてこの世の言葉ではない言葉で謳う。それが詠唱だと、匡が悟ったときには術式は完了していた。

 過去には過去。
 亡者には亡者。

『マスター』が呼び出した亡者の群が、殺到しようとする信徒らと激突し、拮抗する。
 レイラが一人であったなら、その場でしばらくの力比べと相成ったろうが、生憎彼女は一人ではない。
「物騒な知り合いが増えちまったなあ……」
 ぼやくようにいうと、匡はスリングで支えていたRF-738C――アサルトライフルを持ち上げ、ダットサイトを覗き込んだ。両目を開き、視界を確保したまま照準。亡霊の群に当たらぬよう射線をコントロールして点射、信徒らの膝関節を破壊し、踏ん張りを効かなくさせる。五体も撃てば拮抗は容易に崩れた。
 ここぞとばかりに、レイラが右腕を振り下ろす。亡者らの呻く声が、ごおう、おおう、おう、おう、と高まり、信徒らを押し返す。
 亡者の群の押しに負け、その先の開けた部屋に信徒らが放り出される。
 追うように走りつつ、レイラは再び『マスター』に命を下す。――或いはそれは、かつて自らを扱ったものに対する「願い」だったのかも知れないが。
「鳴宮サン、広く撃つヨ。討ち漏らしをよろしくネ」
「俺の眼を甘く見て貰っちゃ困るぜ。任せておけよ」
 レイラは匡の返事に満足げに笑うと、『マスター』と共に一足先に部屋に飛び込んだ。レイラが前に嫋やかな手を差し向けると同時、『マスター』が四方八方に雷の衝撃波を放つ。空気が爆ぜ割れ、室内で聞こえるはずのない雷鳴が響き渡る。
 雷の魔法が四方八方を薙ぐ。それを見ながら、匡は部屋の入口に陣取り、戦場を見渡す。少なからず、雷の影響を逃れ、レイラに向けて突撃しようとする敵もいる。そうした敵を殺すのが、匡の役目だ。
 ――それは射程三六一メートルの殺界、ゼロ・ミリオン。
 トリガーに触れた指先は、敵の命に触れている。雷鳴を潜るように、銃弾が敵を駆逐し始めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シノギ・リンダリンダリンダ
死霊を扱うのを生業にしていますが……しかし、それを意図して作り出すというのは、個人的に好きになれませんね。なれません。
俗に言う『胸糞悪い』というやつですかね。
これは、腕が鳴りますね。

とりあえず特に考えなく突入し、信徒たちを何人か引き連れながら壁で行き止りになる通路を探しましょう。
行き止りに着いたら、壁を背にして向かい合います。
狭い所に大勢の敵。大変結構です。
動いても結構ですよ、どうせ、当たりますので。
スクラップを装着した両手で【力いっぱい殴るだけ】です。
敵がどれだけいようと、殴っていればいつかは死にます。



●「誰ソ彼ビル」内部/B2F・廊下
 この任務には数多くの猟兵が当たっている。地下一階のホールを匡とレイラが制圧したため、以後のメンバーは先頭を逐一切り替えつつ、より奥までを効率的に制圧していく狙いで烈火の如く侵攻した。
 地下二階へもっとも最初に駆け抜けたのは、シノギ・リンダリンダリンダ(ロイヤルドレッドノート船長・f03214)である。
 彼女とて死霊術士、死霊を扱うのは生業のようなもの。同じ穴の狢が何を笑うと言われればそれまでの話。しかし、死霊を扱いその力を借りることと、意図して死霊を生み出すのとではゼロと一ほどに異なるとシノギは考える。
「個人的に好きになれませんね、なれません。――俗に言う、『胸糞悪い』というやつですかね」
 彼女は一つの弾丸のようになって駆けた。途中に何体かの信徒がいても、べえ、と舌を出してその横を通過。挑発されたのを理解したように、彼女の後ろを一体、また一体と信徒が付き纏い、やがて二十を超えようかという長蛇の列を作り出す。
 シノギは時折後ろを伺いながら、立ち塞がる信徒を殴り飛ばし、無軌道に駆け抜けて、やがて袋小路に突き当たる。
 彼女が足を止めると、信徒らもまた足を止めた。ぐるり、とシノギが振り向く。それを見て、信徒らはケタケタと笑った。後ろには壁、前には二十からなる信徒ら。この女の運命など決まったようなもの。ずちゃり、とモーニングスターを構える信徒達。笑いは止まない――止まなかった。
 その瞬間まで。
 ごきん、と音がした。あらぬ方向に首をねじ曲げながら、先頭の一体が窓ガラスを突き破って下に墜ちた。続いてもう一体、ごきん。顔が半分モルタルの壁にめり込んで、そのまま動かなくなった。シノギはぐるんぐるん、と腕を回し、たった今二発のパンチを放った両手を持ち上げる。拳を覆うスクラップ。ぶん殴るためのただのガラクタ。
「――ああ、動いても結構ですよ、どうせ、当たりますので」
 生きてようが、死んでから立ち上がってようが、死ぬまで殴ればいつか死ぬ。
 シノギが袋小路を戦いの舞台に選んだのは、単純に挟撃を避ける為に他なからなかった。――彼女は脳筋、そこまで考えていたかどうかは定かではないが――
「かかってきなさい。死ぬまで殴って殺してあげます」
 ただ一つ確かなのは、最早信徒に笑う余裕など欠片もないということだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
死体なら棺桶に入ってろ

破天で面制圧攻撃
高速詠唱と全力魔法で見える敵性個体へ無差別に叩き付ける
数を捌ききれないなら適当なオブジェクトを怪力で投げ付けて時間を稼ぎ、真理で強化して更に弾幕を厚く

味方に当てない程度には撃つ方向を考える


到着直後に誰も向かっていないなら先に被害者救助に手を割く
ある程度近づいたらスカイステッパーで空中疾走して死体を飛び越え、落ちてきた被害者は回廊に放り込む
催眠を受けての飛び降り最中に抵抗はないだろうと期待


リュシカ・シュテーイン
いけませんねぇ
お店からは離れた場所とはいえぇ、こういった事態は見逃すわけにはいきませんねぇ
……石の魔女では気の利いた供養は出来ませんがぁ、お客様となり得た皆さまの弔い戦程度ならぁ、引き受けましょうかぁ

私は閉所での戦いは得意ではありませんのでぇ、ホールを任せていただきましょうかぁ
お店が近いので予め用意できていた、大量の爆破の法石を使いぃ、【先制攻撃】で先手を取られる前にぃ【投擲】で手で投げてぶつけて爆破していきましょうかぁ
その際に【見切り】で囲まれないように動きますよぉ

私もエルフですのでぇ、それなりに運動神経はいいんですよぉ?
だからぁ……捕まえられるなどとは思いにならない方が、いいですよ。


キアン・ウロパラクト
動物だろうと化物だろうと、人間だろうともよ。
死んだ時点で死体であり肉、扱いは生きてる奴が決めるのさ。
生憎と人間の肉は食ったことが無いんだが、こんだけあるとアタシでも食いきれないかもね。

獲物のでかいグルメツールを振り回して、信徒とやらをどんどん焼いてくよ。
野性の感やら第六感やらはあるし、死角から何か迫ってくるってんなら回避していくさ。
後は火力を上げて目立っておけば、奴らの注意は引けそうか。走り抜ける猟兵がいるってなら道ぐらいは作ってやるよ。

んで残った死体を燃やしに燃やして黒焦げにしたら、信徒にならないとかは無いかね?行けそうならあちこち燃やして回るか。



●「誰ソ彼ビル」内部/B3F・ホール
 三階のホールに至るまでの道は、先に駆け抜けた猟兵が根刮ぎ敵を引き寄せるなり、倒すなりしたのか、ガラガラに空いていた。全く会敵することなく、スムーズに進むことが出来る。二階のホールは通らなくても、三階に降りられる構造であったことが幸いした。避けられる戦ならば避けて、頭を叩くのが一番いいだろう。
(やったのは――あのピンク髪の女か)
 我先にと駆け抜けていった小柄な影を思い出しながら、アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)は一団の先頭を行く。
 地下二階のホールの入口に立てば、彼の姿を認めた多数の信徒らが耳障りな叫びを上げながら群がってきた。
「まあ、そうだな。このまま一番下まで行けるとは思ってなかった」
 彼は肩を竦めて、右手を左頬まで引いた。ヴン……というハム音。彼の周囲に、一瞬にして百発に至る、黒い魔力塊が発生する。それは死の原理を編み込まれた術式、存在の根源を直に砕く魔弾。
 名を、『破天』。
「死体なら棺桶に入ってろ」
 アルトリウスが祓うように右手を振るうなり、魔弾の群は直進した。百発からなる魔弾は殺到する信徒らを一瞬で撃ち抜き、急所を断てばそのまま塵芥に戻し、四肢いずれかに当たればそこを死で蝕み、動きを止める。
 アルトリウスの『破天』が敵を薙いだその直後、それを補佐するように後ろから飛び出すのは、リュシカ・シュテーイン(StoneWitch・f00717)とキアン・ウロパラクト(フーディアン・f01189)である。
「石の魔女では気の利いた供養は出来ませんがぁ、お客様となり得た皆様の弔い戦低度ならぁ、お引き受け致しましょうかぁ」
 間延びした口調で言うのはリュシカ。ともすればそのマジック・ワンドめいたジャイアントスリングと相俟って、魔術師然とした装いに見えるが、彼女の本質はそれだけではない。手ずから鉱物に魔術を刻み、魔力を宿した「法石」として、複数世界を股にかけ売り歩く商売人にして、時として針の穴をも通す精密さでそれらの法石を放つ魔弾の射手。それがリュシカ・シュテーインである。
 今日はスリングを使うことなく、彼女は近接戦を選んだ。あらかじめ大量に用意した『爆破の法石』を、腰の雑嚢から摘まみ出し、駆けながら次々と信徒らへ叩きつけて爆破していく。おっとりのんびりとした言葉の調子とは異なり、彼女の動きは速く、鋭い。
 一方、巨大なテーブルナイフ――グルメツールを振り回し、浮き足だった信徒らを切り裂き、薙ぎ払い、燃やしていくのはキアン。彼女は完全なインファイターだ。踏み込み、薙ぎ払い、灼き尽くす。攻撃は至ってシンプルだったが、それ故に、それを上回る勢いがなければ止めることは困難だ。そして、彼女を上回る威力を信徒らは持たない。
「動物だろうと化物だろうと、人間だろうともよ。死んだ時点で死体であり肉、扱いは生きてる奴が決めるのさ。――生憎と人間の肉は食ったことが無いんだが、こんだけあるとアタシでも食いきれないかもね」
 軽妙な語り口でキアンが言うのを聴いて、リュシカはげんなりとした風に耳を下げ、眉を寄せた。
「ぞっとしませんねぇ、本当に人を食った話なんてぇ」
「はっは、ジョークだよ。――さあ、燃やすぜ!」
 キアンは巨大なナイフを巧みに操り、接近してくる信者達を薙ぎ払う。ナイフの軌跡には燐光の如き、弾ける炎がついて回る。――付ける太刀傷は浅くても深くても構わない。命中した時点で信者は、彼女の炎に囚われている。
 ――ユーベルコード、『ライクウェルダン』。攻撃が命中した者は、中までこんがり火を通されて焼き上がる。
 ぎちち、ぎぎいいい、ぎいいいいいいいいいい!
 焼かれ、苦悶の声を上げてよたつく信徒らの影から、またぞろ沸いて出る信徒。グルメツールを振り切ったキアンの後ろに進み出た信徒が、モーニングスターで、彼女の頭を横薙ぎに狙う。
 しかしキアンは、背中に眼がついているかのように身体を折り、そのまま前に転げるように回避した。彼女の第六感が危険を察知したのだ。モーニングスターを振り切って無防備になった信徒の顔面に、真っ赤に燃えて迫る爆破の法石。破裂音と同時に、首から上が消えてなくなる。
「油断大敵、ですよぉ」
「油断なんかしちゃいないさ。でもま、礼を言っておこうかね」
 にっと笑ってウインクをするキアンに、リュシカも微かな笑みを唇に湛えて答える。
「歓談中悪いが、第二射だ。伏せろ」
 ガールズトークと言うには些か剣呑なキアンとリュシカのやりとりの後ろから、ぶっきらぼうな声が割り込む。アルトリウスである。キアンとリュシカが伏せるのを確認してから今一度放たれるのは『破天』の第二射。掃射と言うに相応しい弾幕が、再び集結しつつあった信徒らを蹴散らす。破天はとにかく、手数が多い。「一人一人の力は弱いが群れることで脅威となる」信徒らに対して、最良の相性と言ってよかった。
 伏せたキアンとリュシカは、破天の弾幕が行きすぎた瞬間に目配せを交わし、同時に左右別方向に跳ぶ。アルトリウスが薙ぎ払い、討ち漏らしをキアンとリュシカが狩る。即興としては出来すぎたコンビネーションが、地下三階ホールを席巻する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ベルゼドラ・アインシュタイン
血腥い匂いにはもう慣れた
赤い海に動揺するほどしおらしくもない
だが表向きには、血に怯え死体に慄く只の女の仮面を張り付けて向かう

こんな中に一般人の生存者がいるなんて望みが薄いな
俺は助ける気は無ェからよ、他の奴らに任せときゃ良いや

この薄気味悪い信徒とやらのゾンビ集団をぶっ潰せばいいんだろう?
群がる敵に対しては【ベルゼブブの鉄槌】で一気に焼き払おうか
潰しきれなかった奴らはダガーでぶった切って突き進む
単体で相手する奴らは【怪力】で【2回攻撃】しながら【傷口をえぐる】

モーニングスターの攻撃は何とか、ダガーで受け流せればいいがどうだろう

「救いがねぇな可哀そうに。残念ながら俺も、此処から掬ってやる理由も無ぇ」



●「誰ソ彼ビル」内部/B4F・廊下
 ああ、血腥い。
 死の臭いがする。

 女は震えながら歩く。
 まるで、偶然にも迷い込んだかのようだ。寄せた眉根に、滲む汗。血と硝煙と、燐と硫黄と、腐臭……地獄そのもののような空気が漂う回廊を、当て所なく歩く。
 ぎぎ、きち、きちち、ぎぎぎい、
 獲物に群がるハイエナのように、彼女の行く手に黄昏の信徒が姿を現す。血に塗れた鎖つき鉄球をゆらゆら揺らしながら、彼らは生者を求めて歩み寄る。無表情な仮面の内側から、軋るような笑い声が響いた。

 ころしてやるぞ。
 ころしてやるぞ。
 おまえもなかまにいれてやる。

 気がつけば、背後からも複数体の信徒が女を取り囲んでいた。じりじりと、恐怖を煽るように包囲網が狭まる。
 喜悦と怨嗟が綯い交ぜになった、信徒らの声が耳を犯す。女は後ろを一瞥、前を一瞥。逃げ場などどこにもない。
 世を儚むように彼女は俯き――

「かったりぃな。殺せるときはサッサと殺れよ。そんなだからテメエらは――」

 刃の如き声。
 女は――ベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)は、鋭い目を上げ、手を払うように振るった。

「ここでおっ死ぬんだよ!!」

 最初から、この血腥いビルの空気など怖れてはいなかった。
 こんなものには慣れっこだ。もっと酷い地獄を幾度も潜り抜けてきた。
 ベルゼドラが打ち払った手を合図にしたかのように、蠅の王が召喚される。今まさに、『ベルゼブブの鉄槌』が下される。
 後ろと前、集った敵目掛け、劫火の炎弾が火を噴いた。蠅の王が撒き散らす火球が、信徒らに炸裂してその身体を吹き飛ばす。
 ベルゼドラは蠅の王が猛撃したその軌跡をなぞるように前進した。上着の内側に付けていたダガーの鞘を払い、先頭の信徒が爆散して踏鞴を踏んだ信徒の首を掻っ捌く。擦れ違い様に数名をそして薙ぎ、ダガーから血を振り払った。彼女の後ろで、もう一度蠅の王が火を吐く。頽れる信徒らが、焼き祓われる。

「救いがねぇな可哀そうに。残念ながら俺にも、此処から掬ってやる理由は無ぇ」

 吐き捨てるように言うと、彼女はダガーを納めた。歩き出す。
 あとに残るのは、黒焦げの、かつて信徒だった成れの果てのみ……。

成功 🔵​🔵​🔴​


●「誰ソ彼ビル」内部/B4F・ホール
 ぐちゃりぐちゃりと、何かを咀嚼する音がする。
 ぎいぎいきいきいと泣き叫ぶ声が聞こえる。
 それは哀願に似ていた。望まぬ死を与えられ、二度目の死を今迎える黄昏の信徒の、この世全てを嘆く声だ。
 ――大量に作られた死体のうち、幾許かがここに運び込まれ、「それ」の餌になっていたとするのなら。
 今回の分は――外で猟兵らが奮戦の末打ち倒し、薙ぎ倒した死体らの分は――どこで補填されるのか。
 その答えがそこにある。

 地下四階ホール。
 食い散らかされた黄昏の信徒の手足がそこら中に転がっている。
『牙で喰らうもの』は、がりり、と信徒の仮面を噛み、喰えないと解ると横合いに吐き捨て、ずしゃりと一歩踏み出した。
 その牙が向かう先は、その場にいる生きた肉――
 即ち、猟兵達である。

『牙で喰らうもの』は吼える。
 猟兵達は、それぞれの思いを胸に決然と武器を構えた。


第2章 ボス戦 『牙で喰らうもの』

POW   :    飽き止まぬ無限の暴食
戦闘中に食べた【生物の肉】の量と質に応じて【全身に更なる口が発生し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    貪欲なる顎の新生
自身の身体部位ひとつを【ほぼ巨大な口だけ】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ   :    喰らい呑む悪食
対象のユーベルコードを防御すると、それを【咀嚼して】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

キアン・ウロパラクト
なんだい、随分と大食らいなナリしてるじゃないか。
大食いで勝負ってのも悪くは無いが、もうちょいキレイに食べなきゃカウント入らないぜ?

まずはその口をどうにかするとこから始めようかね。
魔法陣に手突っ込んでっと。さて、どんな道具が出てくるか。
デカイ刃物が出てくるようなら、
テーブルナイフと二刀流で骨ごとぶつ切りにでもするんだがね。

刃物でなくともあの口を塞ぐような円筒状か、
いっそつっかえ棒にできるような棒状なら使えそうかね。
隙ができたら蹴りと尻尾で吹き飛ばしてやるよ!



●暴食vs暴食
「なんだい、随分と大食らいなナリしてるじゃないか」
 胸を反らし、『牙で喰らうもの』を見ながら、キアン・ウロパラクト(フーディアン・f01189)は唇に笑みを引っかけ、巨大なテーブルナイフをぶん、と振るった。信徒らの穢れた血で汚れた血が、コンクリートにびちちと跳ねる。
 キアンの眼に入るのは、食い散らかした、という言葉が似つかわしい周囲の光景だ。おそらくは今まで蹴散らしてきた信徒らのものだろう――手足が転がり、ともすれば頭だけの死体も、もうよく解らなくなってしまった肉塊だけの死体も転がっている。
 ――食とは、いのちを喰らうことだ。きり、と歯を噛みしめたキアンの笑みは、笑みというには攻撃的すぎた。
「大食いで勝負ってのも悪くは無いが、もうちょいキレイに食べなきゃカウント入らないぜ?」
 挑発的に笑い、キアンは巨大なテーブルナイフを『牙で喰らうもの』――否、『暴食』に差し向けた。

『暴食』の動きは異様に速い。その巨体にも関わらず、まるで四足歩行の猛獣の如く、空を切り裂いて迫り来る圧倒的質量。
「ッハ……速えな、おい!」
 キアンは笑い、テーブルナイフを構えながら魔法陣の中に手を突っ込んだ。それは彼女なりの『下拵え』。この激烈たる『暴食』を、美味しく頂くための下準備。
 ずるり、と引き出されるのは、四角錐を無数にあしらったハンマー。キアンはそれを見て笑う。
「こいつは解りやすくていい」
 それは見るものが見れば一瞬でわかる。――『肉叩き』(ミートハンマー)だ。
 振り下ろされる爪――否、牙か――を、テーブルナイフで受け流しつつ、キアンは身体に遠心力を乗せる。
 身体を一度翻し、筋力で巨大なミートハンマーを加速したキアンの身体は、最早小型の竜巻のようなものだ。
「いっぺん、テーブルマナーってのを覚え直してきやがれ!」
「ギッ……!?!!」
 たった一瞬、されど一瞬だ。キアンが振り回したミートハンマーの威力は、『暴食』の横面を叩き潰し、壁まで寄せた。壁に激突した『暴食』を目掛け、彼女はテーブルナイフを再び差し向ける。
「あぁーあ、デカイ刃物が出てくるようなら、こいつと二刀流で骨ごとぶつ切りにでもしてやったんだがね」
 巨大なテーブルナイフでガツガツ、と地面を削り、彼女は構え直した。

「アンタにゃ、それすら生温い」

成功 🔵​🔵​🔴​

コーディリア・アレキサンダ
【スバル・ペンドリーノと一緒に行動】

思ったよりもゲテモノを飼っていたんだね
飼われていた……のかな。どちらにせよ
陽を見れるとは思わないことだ


近接戦はボクには不利だからね
ボクに封印してある死霊――もとい、悪魔「破壊の黒鳥」に力を借りよう
彼の能力で適当に呪詛を放って間合いを取りながら、機を見て最大火力をぶつける
『壊し、破るもの』による一斉射撃
……スバルなら、何かしら合わせてくれるさ

「キミがどれぐらい悪食か知らないけれど、これら全てを一瞬では食べきれないだろう?」

敵の処理能力を越えた攻撃で押しきる――そう、飽和攻撃というやつだ
加えて食べれば呪詛のおまけ付き。塵も積もれば、というだろう?


スバル・ペンドリーノ
【コーディリア・アレキサンダと一緒に行動】

また、見るからに禍々しい邪神を呼び出したものね……制御できるとでも思っているのかしら。
本当、哀れね。

最初はまた、爪にオーラを纏ってリアの前に出るけど……見るからに、迂闊に近付くと拙そうね。
影の中から蝙蝠を呼び出して、邪神の目の前を飛ばせて牽制しつつ、慎重に間合いを取って観察しながら戦うわ。

「……魔術を、食べた? あぁ、そういうこと。なら――」
「一斉にかかりなさい、可愛い子どもたち。貪食だかなんだか知らないけど、一度にこれだけ、食べ切れるかしら?」

「私とリアの二人分。――幾ら邪神でも、これだけの呪詛を飲み込めば……お腹くらい、壊すわよ」

※アレンジ歓迎



●暴食もいつかは飽く
「思ったよりもゲテモノを飼っていたんだね。飼われていた……のかな? どちらにせよ――陽を見れるとは思わないことだ」
 コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)はローブの裾を払い、その五指に黒い魔力を宿す。それは「破壊の黒鳥」の権能を借り受けた一矢。呪詛により全てを墜とす、彼女の最大火力である。
 年頃の少女には見られない強い語調ながら、彼女の力量は本物であった。右手に集中した黒い魔力は、歴戦の猟兵のものと全く相違ない。
 五指を揃え、機関銃の如く敵――『暴食』へ添えるコーディリアの横で、スバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)は小さく息を吐いた。
「また、見るからに禍々しい邪神を呼び出したものね……制御できるとでも思っているのかしら。本当、哀れね」
 彼女からしてみれば、浅ましい企てだったに違いない。正当なる闇の血統を継ぐ夜の血族(ナイトウォーカー)からするならば、こんな無辜の民を無差別に殺め、その死骸から甘露を啜ろうなどという企てなど。そして、その果てに息づくのがこんな、醜悪な怪物であるなどと。
「己に寄せられた全ての信仰ごと、己を恥じなさい。このスバル・ペンドリーノが断罪してあげるわ」
 古びたタクトを振るい、スバルが歌うなり、半分潰れた顔をそのままに『暴食』は駆けた。その巨体が一歩動くたび、この地下が揺らぐようだ。
 遠距離攻撃をメインとするコーディリアの性質に気づいてでもいたのか、『暴食』は真っ先にコーディリアを喰らうコースで駆け抜ける。しかして先に接敵したのはスバルであった。彼女はコーディリアと比較して、近接戦闘向けの能力傾向である。コーディリアとの接触を阻むため、爪にオーラを纏い、『暴食』が繰り出した爪と自身の爪を軋り合わせ、侵攻を阻むが――
「――魔術を、食べている?!」
「GGGGGGGGGGGGGRRRRRRRRRRRRRRRRRAAAAAAAAAAA!!!」
 ばり、ばり、と音を立てスバルが受けた右腕から、魔力を啜って『暴食』は楽しげに嘶いた。
 地面が揺れる、とそれ以外に形容しようもない声を上げ、『暴食』は吼えながらスバルの「爪」を噛み砕く。事前の説明によるならば、『暴食』は自らに向けられたユーベルコードを己の爪牙と成し、攻撃するという。
 腕を振るい、その暴食から逃れ、後退するスバル。今のがそれか、と、下唇を噛むスバルの横に、後退してきたコーディリアが砂塵を散らす。
「リア! 怪我は?!」
「問題なくてよ。……それよりも」
 スバルの表情は、その生来の器量の大きさか、決してその優雅さが散るようには動かない。
 この世のどこにもそんな少女はいないというのなら、彼女自身に聞けばよい。きっと彼女はこう云うのだ。
 “そんなことは些末よ。それよりも――”
「アレを狩りなさい、リア! この名の下に、それを許すわ!」
「――イエス、マスター」
 空気が震える音がいくつもいくつも響いた。コーディリアが詠唱した「破壊の黒鳥」たる魔術が成立した。
 それは呪い。命中するまで、永遠に敵に向けて羽ばたき続ける弾丸である。 
 中空にぎちりと音を立てて結実した、ああ、いくつもの魔術が! 『暴食』目掛け、悪夢のように結実する!
「キミがどれぐらい悪食か知らないけれど、これら全てを一瞬では食べきれないだろう?」
 コーディリアの命により、すぐさま無数に殺到する弾丸。それに加え――
 コーディリアが得意げに云った内容を、『暴食』は飲み下そうとしたが――彼の下腹は既にでっぷりと溜まり、太り。これ以上は飲み込めまいと軋んでいた。
「私とリアの二人分。――幾ら邪神でも、これだけの呪詛を飲み込めば……お腹くらい、壊すわよ。貪食だかなんだか知らないけど、一度にこれだけ、食べ切れるかしら?」

 ごあ、があ、と唸る『暴食』をあざ笑うはスバルである。暴食も、続けばいつかは食い飽きる。
 飽きぬ無限はないのだと、コーディリアの庇護の腕を受けながら、彼女は嗤うのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
止まってろ

始動はひっそりと目立たぬように
動き始めを静止で拘束
足元から密かに縛って味方の攻勢の起点とする

以後は味方への被害軽減重視で、目標の攻撃の起こりを主に狙い静止で縛る

自身の存在が露見するまではひっそりと行動
見付からねばその方針で継続
気取られたら隠形を捨てて正面から戦闘
至近で立ち回り、攻撃を預言で回避しつつ防御不能と見えるタイミングで静止を仕掛け、怒りと焦りを誘う

静止を「借用」されたら預言で回避専念
至近での戦闘はこの際に自身を狙わせる目的も兼ねる


皐月・灯
「そんなに食いたきゃ食わせてやるよ!」

ヤツから最も近く、鮮度のいい「生物」ってのはオレ達だろ。
なら、オレはオレ自身を餌に、ヤツの牙を叩き折ってやる。


向こうが食らいついてくるその瞬間を【見切り】、
閉じる寸前のタイミングに合わせて【カウンター】を叩き込む。
ぎりぎりを狙う【捨て身の一撃】だが、決まればかなり痛手だろ。

発動するのは《断切ル迅翼》。
オレの拳に触れた瞬間、コイツが一気に炸裂するぜ。
ご大層に並べた牙、まとめて断ち切ってやる!

「ブチ砕く、焼き尽くす、雷撃を叩っ込む…」
「料理の仕方は色々あるが、節操のねー大食いにはこのへんが妥当だろ!」



●静止、そして流星
 ――ごおおおおおおう、おう、おう、おう、
 それが吼える声を、いかなる言葉でも、留められたものはない。

 アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)にとって、それは我慢のならないことであった。喧しい、もう聞くのにも辟易したというのに、まだ嘶くか。
「止まってろ」
 アルトリウスは、まさに機を奪ったからこそ口にした。スバルらが攻撃を加えた隙に矢継ぎ早に、敵を足止めする魔術を用いたのだ。それは原理を縛る「静止」の魔術である。概念を支配するアルトリウスの魔術は、敵の動きの根幹を停止する。
 びき、と、まさに動きが凍結したかのように、『暴食』は動きを止める。
 それは繊細な魔術であった。まず、「動き始め」を狙う。物体は、動き始めるときにもっとも大きなエネルギーを使う。そしてそのエネルギーが作用点の一定を超えるまで、物体は一切動かない。
 その基礎的な物理事象を踏まえた上で、動き出そうとするその物体を、理力の鎖で縛り付け。「動きだそう」という意思とこの世界の間に、原理の楔を叩き込んで斬り離す――
 それが、アルトリウスが使う『静止』の魔術である。術中に嵌まったものは、一切の行動を許されない。
 彼は完璧であった。
 ――しかし――いや、同じ猟兵である中で、彼より巧くやったものは他にいるまい。彼は位階にして、最強に限りなく近い猟兵である。
 ああ、それでも、完全ではなかったのだ。
 ギリギリ、ギリギリ、と軋むような音が響き、アルトリウスは目を瞠った。

   エントロピー
(――存在量が大きい。抑えきれない)
 
 みし、みし、みしり、と音を立てて軋む空気。或いはそれはアルトリウスが刻んだ術式の軋みだったのか。
『暴食』が喰らった命の量が、存在密度となって跳ね返る。
 けものは、べきべきと金属がへし折れる音を立てて、呪縛を抜け出し――

「ッせーんだよ。吼えんな」

 ばぎゃん、とその顔面に拳がめり込んだ。
 牙が幾つもへし折れて、ごおん、がこん、と床に跳ねる。
「食いてーか、食いてーんだろうな。そうやって腹一杯になりてーんだ。わかってる。あァ――そんなに食いたきゃ食わせてやるよ!」
 がああう、と吼えて食いつこうとする『暴虐』よりも速く、少年は――皐月・灯(灯牙煌々・f00069)は前進した。
 不意を打って攻撃したかに見える。しかし、事実は異なる。アルトリウスが動きを封じたその瞬間をもっとも効果的に活かしたのは、誰より前に立ってカウンターを叩き込んでやる、という腹積もりでいた灯であった。
 拳が唸った。幻釈顕理「アザレア・プロトコル」。理想を見つめ続けた少年が、最後に抱いた幻想の楔。
 存在量が削ぎ落とされていく。
 目の前に突き出された醜悪な『暴食』の顔面に、灯は瀑布の如く拳を連打する。拳は、「切断」の概念を帯びる。ずらり並んだ乱杭歯が、灯の拳一発で草刈りをするように裁ち落とされ、地面に転がる。その拳が、一発、二発、――ああ、数えるのも億劫なほど。
 存在量が削ぎ落とされていく。
「ブチ砕く、焼き尽くす、雷撃を叩っ込む……料理の仕方は色々あるが、節操のねー大食いにはこのへんが妥当だろ。――根刮ぎその牙、へし折ってやる!!」
 胸がすくほどぶん殴り、灯は右の拳をバックスイングする。その右拳が、今までにない輝きを帯びる。
「アザレア・プロトコル・ナンバーフォー…… フレスヴェルグ・ドライブ!!」
 アルトリウスはクッ、と喉を鳴らした。その拳の、何と眩い事か。――そして、『暴食』の何と浅ましいことか。
 ――あいつの中身は本当に、噛み砕いて食うことしかなかったのだな。
 思わずといった風に笑いながら、アルトリウスは今一度手を鞭のように振るう。今ならば、今度こそ、楔となれよう。
 
「もう一度言う。『止まってろ』」
 
 ――二度目はない。此度は見誤ることもない。
 びき、と引き攣るように静止したその黒い巨体の顔面を、今度こそ、一切の減衰なしに、灯の拳が殴り飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水衛・巽
人生の黄昏には早いひとばかり集めて、
なにが楽しいのかワタシには理解できないね。
オブリビオンとは未来永劫、
歩み寄れそうもないよ。

先手必勝、七星七縛符で拘束を試みる。
技を返された所で、ワタシが惹き付けられればそれでよし。
着物は目立つし、適役だと思わない?
ワタシが倒れたとしても他の猟兵がお前を仕留めてくれる。
何も問題ない。

縛を解かれたとしても繰り返し拘束を狙い、陽動。
命注ぎ出す覚悟なしにオブリビオンの前になんて立たないわ。
それともワタシが新たな自殺志願者とでも思った?

ざーんねん、
私は自分のユーベルコードで
自動的に自殺する趣味はないんだ。
あるとしたら、他の仲間に
自分の背中を託す信頼だけだよ。



●鎖を捧ぐ
 がああん! と音がして、コンクリート張りの壁がヒビ割れる。
 壁に叩きつけられた『暴食』は、ゆらり、と復位し、歯のなくなった口を苛立ったように数度開け閉めする。じゃり、と音を立てて乱杭歯が生え揃った。醜悪に口端を釣り上げる怪物を前に、水衛・巽(鬼祓・f01428)は手の中で、霊符をまるで扇のように広げた。
「人生の黄昏には早いひとばかり集めて、なにが楽しいのかワタシには理解できないね。オブリビオンとは未来永劫、歩み寄れそうもないよ」
 この、集団自殺を誘発し、地獄のような惨状を作り出し続けた元凶。それが目の前にいる怪物だというのであれば、到底わかり合うことは出来ないだろう。巽は陰陽師の末裔である。民のため、魔を祓い生きてきた血脈のものが、この所業を嫌悪するのは当然と言える。
「先を越されたけど、縛るのはちょっと得意なの」
 彼は広げた札をそのまま、空中に「並べ」た。だがその静止も一瞬。人差し指と中指を揃え、巽は印を切る。
 頭をぶるぶると、確かめるように振る『暴食』目掛け、まるで誘導弾のように七枚の符が跳ねた。
「――お前はその顎を開けない」
 立て続けに着弾する護符。がああう、ごああう、と息も荒く『暴食』は唸るが、そのうなり声さえ、早晩封じられた。『暴食』――「牙で喰らうもの」の存在意義を封じるように、不可視の呪い――『七星七縛符』が、その顎が開くことを妨げる。
「――!!」
 殆ど音にならぬような唸り、うめきを零し、『暴食』は身体を波打たせて巽へと走った。
「だよね。ワタシがやったと思えば、こっちに来るでしょ」
 彼の狙いは、初めからそれであった。相手の機能を封じた上で、着物をはためかせ横へ駆ける。即ち陽動である。自身による戦闘が全てではない。命を張って、敵の機能を削ぎ落とし、味方を活かす働きである。
 一度目の突撃を紙一重で避け、即座に暴食目掛け向き直りながら、巽は再び札を数枚抜き出す。命中した札が既に剥がれつつあるのが見えたためだ。
「お前には解らないだろうね。ワタシがこうしてお前の前に立つ意味が。自殺志願者にでも見えた? ――ざーんねん」
 打撃せずとも、斬撃せずとも。
 血を流す方法を持たずに巨悪と相対しようとも。
 仲間に信を託す戦い方というものがある。
「そんな趣味は持ち合わせてない。――あるのは仲間に向ける信頼だけだよ」
 巽は蠱惑的に笑い、共に戦場を駆ける仲間の一人にちらと視線を送る。

成功 🔵​🔵​🔴​

浅沼・灯人
所詮どこにでもある話だ
胸糞悪ぃ信仰と、神紛いによる捕食と浪費
この世界じゃよく聞く話だ

だがよ、だがな
知った以上、救った以上、屠った以上、放ってなんておけねぇ
人殺しにも正義の味方にもなれるなら、神殺しにだってなってやらぁ
てめぇが食って血肉にした奴等を、葬れないままなんざごめんなんだよ

たんまり口が増えるなら、こっちとしては都合がいい
二度と飯食えねぇようにしてやるよ
敵の攻撃は鉄塊剣で受け、弾き
牽制はアサルトウェポンによる射撃で行う
近付け、食らいつきに来い
大口開いたら灼焼を、俺の炎を噴き込んでやる
臓腑の奥まで焼け爛れろ
腹の底の食い粕まで残さねぇよ



●ただ、炎の如く
 どこにでもある話だ。
 胸糞悪ぃ信仰と、神紛いによる捕食と浪費。
 正しいカミサマなんて、どこにもいやあしないのに。
 いつだって救いを欲しがって、人間は紛い物を祭り上げる。
 この世界じゃよく聞く話さ。
 
 ――だがよ。
 だがな。
 俺は知った。こんなことが実際に起こると体験した。
 俺は助けた。死ぬはずだった二人のガキを。
 俺は屠った、救えなかった、かつて人間だった何かを。
 もう放っちゃおけねぇ。よく聞く話じゃない、この話は今俺の目の前で起きている。

 浅沼・灯人(ささくれ・f00902)は、巽からの視線を受けて浅く顎を引いた。微かな頷き。
 彼は確かめるように、右手にある鉄塊剣を握り直す。

 人殺しにも正義の味方にもなれるなら、神殺しにだってなってやらぁ。
 てめぇが食って血肉にした奴等を、弔えないままにするなんざ――御免なんだよ!

 巽目掛け突撃しようとした『暴食』へ向けて、灯人は左手のアサルト・カービンのトリガーを引いた。
 マズルフラッシュが瞬き、無数の弾丸が降り注ぐ。秒間一五発、初速九九〇メートル秒の暴力が、『暴食』の脚を一瞬止める。牽制。カービンを投げ捨て、前進する。
 灯人は削いだ勢いの間隙に縫い込むように敵の間近に近接、振りかぶった鉄塊剣を、勢いのままに振り下ろす。
 唸りを上げて振るわれる鉄塊剣を、肉にずぶりとめり込ませながら受け止めた『暴食』の顎が、開きかけているのを灯人は見た。
 しかし彼に焦燥感はなかった。鉄塊剣を、敵の骨とギシギシと軋り合わせながら押し込む。

 ――いいぜ。望むところだ。
 灼き尽くしてやる。

 張り詰めた拮抗は殆ど一瞬、時間にして二秒と僅か。
 ばぎん、と音を立てて、巽が施した呪縛が解け、『暴食』の顎が開いた瞬間、灯人もまたその口を開け、慟哭するように吼えた。その機は、巽の呪縛があってこそ訪れた。繋がれた好機を、灯人は決して逃さない。

 ――臓腑の奥まで焼け爛れろ。腹の底の食い粕まで残さねぇ!!!
「があああぁあぁぁあああああぁあぁああああああああああっ!!!」

 まさに龍が如き咆哮と共に吐き出される、地獄の炎。
 灯人が放つその炎は、名を『灼焼』という。彼が望んだものを焼く、超高温の、――邪悪を焼き祓う炎である。
『暴食』は引き攣れた叫び声を上げた。気道と声帯がまとめて焼き焦がされて、粉々に割れた声を上げながらもんどり打って転がり、暴れ狂う。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベルゼドラ・アインシュタイン
醜いな、あぁ、醜い奴だ
その汚ぇ口閉じてはくれないか?見苦しいったらありゃしない

他の猟兵の攻撃を援護するように
【殺気】を込めて【恐怖を与える】
【ベルゼブブの鉄槌】を敵の口目掛けて攻撃し続ける

接近することが有れば
【2回攻撃2】しつつ【傷口をえぐる】
腕や厄介な部分は容赦なく斬り刻んでやろうじゃねぇの

【共闘等可】
他者には清純派を装う女として振る舞うが
見えない所、聞いてない所での独り言や行動は粗暴


セリオス・アリス
ああ、吐き気がしそうだ
眉を寄せ舌打ちをする
デカいし速いってのがめんどくせえ
「歌に応えろ、力を貸せ――」
靴にも魔力を込めついでに『属性魔法』で小さな旋を起こして追い風に
全力で『ダッシュ』したら『先制攻撃』で『鎧砕き』の一撃を叩き込む
できるだけ素早く離れて
あの様子で知性があるかは知らないが、叩き斬るが手段だと思い込んだらこっちのものだ

小さな攻撃で『挑発』しながら誘い込み
壁際で踏ん張り剣を構える
多少血を流すことになっても構わない
お前のその勢い、利用させて貰うぞ
大口開けたその上顎に『カウンター』で剣をブッ刺してやる
そのまま炎の『属性攻撃』
内側から焼け焦げろ…!

★アドリブ歓迎



●大罪の罰、劫火の楔
(醜いな、あぁ、醜い奴だ。その汚ぇ口閉じてはくれないか? 見苦しいったらありゃしない)
 ベルゼドラ・アインシュタイン(錆びた夜に・f00604)は気丈に立ち向かう手弱女を演じながら、小声で嘯いた。彼女の声を聞いたものはない。
 ベルゼドラはその細い指を上げて『暴食』を指し示す。灯人が飛び退き、彼女の攻撃範囲から逃れた瞬間、召喚されるは蠅の王――ユーベルコード、『ベルゼブブの鉄槌』。
 召喚された蠅の王は不気味な羽音を鳴らしながら滞空し、ぐう、と前肢を広げた。蠅の王の周りに無数の劫火球が結実し、地下の空間を赤々と照らす。『暴食』が悶え苦しむ真ッ最中に、無数の炎の弾丸を撃ち込む。ベルゼブブが司る大罪は「暴食」。奇妙な符合に、ベルゼドラは皮肉に笑う。
『暴食』は攻撃を回避するように横に転がって、ぐるん、と一転して地面に前足を打ち付け、跳ね上がるようにして立ち上がった。劫火球を回避しつつ、ベルゼドラ目掛け駆けてくる。
(上等だ。腕も脚もズタズタにしてやる)
 す、と上体を下げ、ダガーを逆手に抜き放ったベルゼドラの前、『暴食』は飛びかかるかに見せかけて静止。ぐう、と息を吸った。ぼこり、と腹まで膨れ上がる不気味な吸気に、ベルゼドラは何が起こるかを察し、飛び退こうとする。――しかし一拍遅い。
 ――ごおう!!!
 火焔を喰らって気道を焼き焦がしていた『暴食』は、灯人の火焔さえもその一部を喰っていたのだ。
 炎の壁と表現して何ら不足のない、ファイア・ブレス。ベルゼドラの回避が間に合わないかに見えたその瞬間、横合いから矢の如く飛んだ影があった。
「危ねえっ!!」
 セリオス・アリス(ダンピールのシンフォニア・f09573)である。
 彼の持つ俊足が、間一髪のところでベルゼドラを窮地から救う。腰を横抱きに掻っ攫い、紙一重で灼熱の息から逃れる。
「大丈夫か?!」
「……ええ、ありがとう」
 ベルゼドラは余所行きの声で礼をいい、僅かに身を捩った。
「ならいい。――くそ、デカいし速いってのがめんどくせえな。おまけに炎まで噴くのかよ」
「あれは――別の猟兵が使ったユーベルコードの模倣の筈よ。連打はないわ」
「……そうかい。なら、スピードとパワーにだけ気を付ければどうにかなるって事だな」
 望むところだ、とセリオスは純白の剣を抜いた。次いで、靴に魔力を籠める。魔導蒸気機械内蔵型ブーツ「エールスーリエ」が、セリオスの魔力を吸って甲高い始動音を立てた。
「突っ込む。援護を頼む」
「任せて頂戴」
 ベルゼドラは今一度、『ベルゼブブの鉄槌』を使用。
 召喚した蠅の王による牽制射撃を繰り出す。弾幕の如く連射される火焔球の間を縫い、セリオスは風の如く駆けた。
「歌に応えろ。力を貸せ――」
 詠唱を口の中で転がしながら、彼は駆け抜ける。足下で風の魔術を爆ぜさせ、その反動で加速。ジグザグに、軌道を読ませぬコースで駆け、『暴食』に接近する。
 振り下ろされる『暴食』の右腕。純白の剣で受け止め、そのまま横に流し、空いた胴を横薙ぎに剣で切る。浅い。しかし、腹に出来た敵の口から、牙がいくつ欠け、裂傷が刻まれる。
 一打で浅ければ、繰り返せばいい。
 ベルゼドラの射撃タイミングになれば接近戦をやめ、素早くステップして後退、ベルゼドラが弾幕を注いだ直後、再び近接して切り裂く。ヒット・アンド・アウェイの戦法を見せる。『暴食』は苛立ちを露わに、副腕の一本を地面に叩きつける。セリオスはそれを見て、せせら笑った。壁を背に、立つ。
「こいよ、化物。肉が食いたいんだろう。ここにあるぜ」
 挑発に、ぬらぬらと濡れた牙を剥き出しに、『暴食』はいとも簡単に応じた。ベルゼドラの火球を無視し、身を翻してセリオス目掛けて突っ込む。
 セリオスは内心冷や汗を掻きながらも、それをおくびにも出さずタイミングを計った。ユーベルコード『望みを叶える呪い歌』による身体加速。敵が大口を開けて飛びかかってきたその瞬間を狙い――後の先を取る。
 突き出された剣が、『暴食』の上顎を突き抜け、頭の後ろへ抜けた。しかしそれだけでは死なない。生体としての作りが真っ当ではない。
『暴食』は、この程度構わぬとばかり、突き出された剣ごと、セリオスの腕に食らいついた。牙がめり込み、血が噴き出す。そのままにすれば早晩噛み千切られるだろう。その窮地に、セリオスは口元に皮肉な笑みを引っかける。額に浮かんだ脂汗を意識させない、それは余裕の表情だった。
「さっき炎を喰ったんだってな? ――おかわりをどうぞ。内側から……焼け焦げろッ!!!」
 その瞬間、純白の剣が炎を帯びる。燃え上がる剣。筆舌に尽くしがたい苦鳴。セリオスは剣をそのまま横に薙いだ。
 焼け焦げて汚濁した血液が飛沫き、千切れかけた頭部を手で庇うようにして『暴食』は踏鞴を踏む。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

赫・絲
瞬いた瞳は緋に染まる
一息に斬った手首から溢れた血が躍るように手元で糸を成せば、露わになった真の姿の一端に嗤う

そんなに腹ペコ?大喰らいサン
喰らいたいなら、お出で、お出で
ほんの少しもやらないケドね

【先制攻撃】を活用
血で出来た糸と鋼糸を織り交ぜ、
敵の視界を惑わすように半数を放つ

敵との距離を取る手を選び、【見切り】で敵の攻撃は出来る限り避け、捌き、いなして距離を保ちつつ、
隙を見て狙うは大喰らいの口

残り半数の一筋でも、その口を捉えられればいい
縫うように、縛り付けるように操る糸が捉えたなら、
【属性攻撃】で雷に変化させた血の糸も交え、【全力魔法】で威力を増大させた雷を鋼糸を通じて叩きこむ

さあ、お味はいかが?


ミーユイ・ロッソカステル
【wiz判定】
「趣味の悪い、命の軽んじて弄ぶような行為。
……そのあげくの果てが、こんな醜悪なけだものの餌を集めるためだけのもの、ね。
……はぁ。
…………お前、生きている価値があって?」



先行する味方が交戦しているけれど、どうやらアレは敵の攻撃を喰らうようね
……ならば、攻撃じゃなければ喰らえない、という事
そうでしょう?

口ずさむのは、【魔物 第2番】のユーベルコード
対峙する敵の醜悪さを
魔を討つ勇者の鼓舞を高らかに歌い上げる

聞く者を奮い立たせ、より力を与える歌を――

味方の攻撃の「質」そのものを上げてあげるわ
直接ぶつかるだけが、戦いではなくてよ?



●終幕『魔物 第2番 - 暴食と緋色の糸』
 これでもう終わり。
 全く以て、趣味も後味も悪い話。
 ごばり、ごばり、と血に似た汚液を撒き散らし垂れ流しながら。バケモノのくせに一丁前に手で患部を覆って。
 腕を駄々っ子のように振り回し、死を拒絶するように藻掻く。

「趣味の悪い、命の軽んじて弄ぶような行為。……そのあげくの果てが、こんな醜悪なけだものの餌を集めるためだけのもの、ね」
 はあ、と大きな溜息。ミーユイ・ロッソカステル(微睡みのプリエステス・f00401)は、その艶めいた唇を侮蔑を籠めてツンと尖らせ、吐き捨てるように言う。
「…………お前、生きている価値があって?」
「ないね」
 応える冷徹な声は真横から。赫・絲(赤い糸・f00433)である。菫色の瞳が、一度瞬くと炎よりなお猛き緋色に染まる。
「あるわけないよ。――皆、生きていたかったのに。それを、全部なかったことにしたのがこいつなんだから」
 猟兵達の攻撃を一身に受け、それでもなおその身を修復し、歯を軋らせて絲とミーユイの方向へ、『暴食』が向き直る。
「GGGGGGGRRRRRRRRRRRRR……!!」
 その両腕が赤く燃え上がる。セリオスの攻撃を飲んだために生じたものだろう。しかし、ミーユイはそれを鼻で笑う。
「猿真似ばかり得意なのね。ならお前、その喉で詠えるものかしら」
 歌姫は胸に指先を添え、すう、と息を吸う。奏でられるは『魔物 第2番』。
 それは悪しきを滅ぼす勇者の歌。討滅の軍歌。
 聞くものを奮い立たせるいくさ歌が、朗々と彼女の口から紡ぎ出される。

 邪悪な 邪悪な 世界の染み
 骸の海より這い上る
 三千世界に滲み出す
 星の黒点 我らが怨敵
 
 紡がれる歌は、敵の醜悪さを訴える。絲は、ミーユイの歌を聴きながら、真正面にいる敵の顔を直視した。
 その歌をやめろ。そう言うかのように。歌を掻き消そうとするかのように吼える。
「AAAAAAAAAAAAAARRRRRRRRRRRRRGGGGGGGGGGGG!!!!」
 ミーユイは歌を止めない。止めるわけがない。
 この歌は鼓舞の軍歌。聞く絲の身体に、普段にない力が湧き上がる。
 絲は、前に一歩踏み出した。
 
 いざ 滅ぼさん
 鋼鉄の剣 白銀の弾丸 我らが技の粋を持て

 また一歩。もう一歩。
「よだれダラダラ垂らしちゃってさ。そんなに腹ペコ? 大喰らいサン」
 絲は自分の左手に巨大な鋏を宛がい、一息に切り裂いた。
 迸る血が、空中で細く細く収斂され、伸縮自在の血糸を成す。
「喰らいたいなら、お出で、お出で――ほんの少しもやらないケドね」
「GGGGGGGGGGGGGGGRRRRRRRRRRRRRRRRRRAAAAA!!」
 その身体を波打たせ、地面を踏みならしながら巨体が迫る。
 糸は巨大な鋏を地面に突き立て、両手をフリーにした。左手に血糸、右手に鋼糸。敵の視界を惑わすように、半数を放つ。
『暴食』はそれを意にも介さぬように前進。その腕を振り下ろした。絲は左手を地面に預け、地を這うように回避。掬い上げるように放たれる次撃を、左手で地面を突き放す勢いも使いながら横に転がって避ける。
 転がり様にまた数本の糸を放つ。血糸も鋼糸も、それ自体には重みが殆どない。重さのない攻撃など、『暴食』は意に介さない。
 第六感めいたものがあるのではないか、というほどに絲の動きは冴える。それは彼女の攻撃を見切る能力の高さと、ミーユイの支援が合わさって実現される神業めいた回避。繰り出される顎を紙一重で避け、振り下ろされた腕の横を撫でるようにして受け流し、身体を撓らせてバック転をしながら敵の顎を蹴り上げる。
 業を煮やしたかのように、『暴食』は今もなお歌うミーユイの方へその顎を向けた。
『暴食』は、絲とは全く対照的な、重さと、暴力そのもののような音を立ててミーユイへ駆ける。

 いざ 滅ぼさん
 我こそ猟兵

 しかしミーユイは歌うのを止めなかった。
『暴食』のあぎとが彼女の身体を捉える、まさにその瞬間――凍り付いたかのように、『暴食』の動きが止まる。
 身悶えしようとしても、ぎち、ぎち、と軋むような音が出るだけで、そこから一歩も進むことは叶わない。
「つかまえた」
 絲は両手をクロスしたまま膝をついていた。彼女の十指から放たれた糸が、『暴食』の全身を雁字搦めにしている。一指につき一本ではない。放たれた糸はその十倍。絡め取られたものは、二度と逃げることは叶わない。
 赫・絲が放つ糸は、あらゆるものを繋ぎ止める。
 それを見越していたかのように、ミーユイは高らかに最後の一節を歌い上げた。

 ――いざ 行かん!

「悪縁を断て。『縁断・雷縫』」
 絲は刃鳴るような声で言い、両腕を一閃!
 血糸と鋼糸がスパークし、フィナーレを決めた歌姫を彩るように輝く。絲が放つ糸に、彼女の魔術による雷が伝ったのだ。
 絶叫。肉の焦げる臭い。絲は表情一つ変えぬまま、血糸と鋼糸を巻き上げる。その速度と、自身の瞬発力を乗せ、全速で『暴食』の横を駆け抜け――
 再び、その腕を全力で振るった。運動エネルギーが張り詰めた糸に伝わり――糸が、肉を裂き、骨を断つ。
 最後は声を上げる間もない。二十八個の肉塊に分断され、『暴食』だったものは地面にバラバラと落ち、二度と動かなくなった。

「最後に照明程度にはなったかしらね」
 ミーユイはふあ、とあくびをしながら言う。独りごちるような声を背中に受けながら、絲は放った糸を巻き上げ、血振りをするように手を払った。
「――お粗末様」

 それが、『暴食』の最後の食事の顛末であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『エンジョイ・タイム』

POW   :    ラーメン、カツ丼、がっつりご飯でごっつぁんです! 娯楽も全力、勝負も楽しもうぜ!

SPD   :    ファッション、雑貨、お土産選びは忙しい! 娯楽はほどほど、テクニックで魅せるぜ

WIZ   :    書籍、パーツにソフトウェア。ちょっとマニアなお店にゴー。 娯楽はのんびり、エンジョイプレイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●休息
『暴食』を倒すと、今まで動いていた信徒らが、糸の切れたように倒れ、ただの肉塊に戻っていく――否、それどころか、風化してザラザラと塵と化していく。
 人として尊厳ある死を奪われ、そして亡骸までも風化して消える。
 この所業をどうして許せようか。

 猟兵らは、この惨劇の仕掛け人に対する怒りを新たにする。
 あの化物――『暴食』が、こんな手の込んだことをする知能を有していたようには思えない。
 必ずや、尻尾を掴んで応報してやる。
 誰かが上げた声に、同意の声が連なった。

 ビルを出て、少し歩くとそこは繁華街。
 灰色が言った、ショッピングモールや飲食店がある。
 心の中で燃える怒りのあまり、そんな気になれないという猟兵もいたが――
 時々は息を抜かなければ、休まらないのもまた事実。

 猟兵らは、身体の埃を払ってから、雑踏に紛れていく。
水衛・巽
まあ、正直やりきれないけど
何をどうやっても人間は生き返らないし、
犠牲になった人達が喜ぶわけでもない。
だったら生きているワタシ達は今ある命を精一杯謳歌しなきゃ。

そういうわけで壥くん、
一仕事終えたしおにーさんと一緒においしいもの食べにいこう!
何食べたい、焼き肉? それともイタリアン? 私はなんでもいいよ。
寒い季節だし牡蠣のアヒージョとかもいいよねえ。
大丈夫大丈夫、私財布はあったかい方だから!

……え、なに、馴れ馴れしい奴はきらい?
同じグリモア猟兵じゃないか、
袖触れ合うもナントヤラって言うんだし親睦深めようよー。
まあ無理にとは言わないけど、
おいしいものは人生を豊かにしてくれるし、ね?

※アドリブ大歓迎



●せめて笑える今日と明日を
 ビルに背を向けて暫く。三々五々と街へ溶けていく周りの面々の表情を見やりながら、水衛・巽(鬼祓・f01428)は眼を細めた。
 気丈に笑顔を作るものも、そうせずとも自然と笑うものも、いまだ、真剣な顔を崩せぬままの者もいる。
 たくさん――たくさんの人があのビルで、弔うことも出来ないまま亡くなった。
 まあ、正直な話をすればやりきれない。けれど、何をどうやっても人間は生き返らないし、犠牲になった人達が喜ぶわけでもない。
 涙を流せば、供養になるのか。喪に服して悼めば、塵埃と散った彼らが救われるのか。
 否だろう、と巽は思う。
(だったら生きているワタシ達は今ある命を精一杯謳歌しなきゃ――)
 思考の矢先、歩いて行くその先の商店街の路地から、息を弾ませて駆け出る灰髪の少年――壥・灰色(ゴーストノート・f00067)が駆け出る。きっと仕事の終わりを知って、グリモアベースから駆け参じたのだろう。
 巽は一番にひらりと手を振り、足取り軽く彼の方へ歩み寄った。距離を詰められ目を瞬く灰色に構わず、親しげに並べ立てる。
「そういうわけで壥くん、一仕事終えたしおにーさんとおいしいもの食べにいこう!」
「……どういうわけ?」
 もっともな疑問であった。

 掴みから入っただけだよ、と巽は笑って、二言三言の説明を足す。自分が考えたこと。だから今、笑っているべきだと思うこと。
「それは、確かに」
 灰色は言葉に共感するように頷いて、猟兵の一団を見回した。既に散った後のためか、数人程度しかいなかったが会釈をする。
「……皆、無事かい?」
「誰も倒れてないわ。だいじょーぶ。だから壥くんもそんな張り詰めなくていいのよ。もう終わったんだから」
 おどけた風に言ってみせる巽の言葉に、灰色は細い息を吐く。
「……ああ。ありがとう」
「で、どうする? 何食べたい、焼き肉? それともイタリアン? 私はなんでもいいよ。寒い季節だし牡蠣のアヒージョとかもいいよねえ。大丈夫大丈夫、私財布はあったかい方だから!」
 まあまあまあ、肩の力抜こうぜ、といわんばかりに、巽は長い指をした手で灰色の肩を叩く。
「何食べたい、焼き肉? それともイタリアン? 私はなんでもいいよ。寒い季節だし牡蠣のアヒージョとかもいいよねえ。大丈夫大丈夫、私財布はあったかい方だから!」
 マシンガントークの裏側に隠れた、真摯な思い。一人称が僅かに固くなってそれを示す。
 同じグリモア猟兵であるが故、待つときの歯痒さは彼も、よく知っていた。灰色を労うように背中を押す。
「それとも馴れ馴れしい奴はきらい? 袖振り合うもナントヤラって言うしさあ、おにーさんの隣を埋めると思ってちょっと付き合ってくれないかなぁ?」
「――いや」
 巽の声に、灰色は実に慣れない、というように口元を震わせ、不器用な笑みを形作ってみせる。
「ご相伴に与るよ、水衛。……それと」
「何かな?」

「良かったら、カイって呼んでくれないか。仲のいいやつは、大体おれをそう呼ぶんだ」

 言葉に、巽は親しげに笑った。
 彼の返事は――

大成功 🔵​🔵​🔵​

スバル・ペンドリーノ
【巡るかもめ亭】
アレンジ歓迎

乗り気じゃない、宿の主人のコーディリア(f00037)の腕を引き
「もー、そんなこと言わないで、行きましょ。息抜き、大事よ」
呼称はリア、あだ名

「ま、マスター弄りはやめてってば!」赤面
※戦闘で気が昂って吸血鬼ぶることをからかわれるけど、そんな中学生

此方も同じ宿のレイラ、匡さんと出くわし
「あ! 丁度良かった、2人も言ってあげてよ。リアってばね……」

「私ファミレスがいいわ、ファミレス。パスタとか食べたい」
(肉はちょっと入らなそうだし……)と口には出さず

以下は綺麗につながりそうなら程度
ミーユイが似合わない焼肉屋に入っていくのを見かけたら、思わず二度見
(……み、見間違いかしら)


レイラ・エインズワース
【巡るかもめ亭】

鳴宮・匡サン(f01612)と一緒に外ヘ
「ア~ァ、ヤな相手だったァ」と伸びを一つ
何か食べる、ような気分でもないが、おなかが空いたのもまた事実
「せっかくダシ、よってこっか」
気晴らしくらいにはなるかもしれない

町を行けばスバルサンとコーディリアサンと遭遇
「アハハ、私もマスター呼んでたカラ、一緒かもしれないネ?」
なんて、話を聞いてそれに乗ってみタリ

「いいジャン、ファミレス」
わいわい食べていれば嫌な気分も多少マシにはなるだろうし
みんなともっと話してみたかったしネ
「鳴宮サンは何食べたい?」

たまにカタカナの混ざる明るいランタン
食事はできて、甘いものが好物
アドリブ・絡みは歓迎
好きに動かしてネ


鳴宮・匡
【巡るかもめ亭】

レイラ(f00284)と帰路につく
嫌な相手、の言葉には首を傾げつつ
「ちゃんと戦えてたじゃん?」
ああ、まあでも数も多かったし疲れたろ
なんか食べていくか?

街中で見かけたスバルと店長(コーディリア)と合流
三人の微笑ましい会話には口を出さない
……最近ちょっと失言を怒られてばっかだしな
まとまったあたりで折角だし一緒になんか食べに行くか、と提案

「オーケー、ファミレスな」
最寄りの店をスマホで検索して道中案内
「俺? 別になんでもいいけど……」
まあ、肉はやめとくか、一応


店内ではドリンクバー持ってきたりあれこれ世話を焼きます
百人殺した後でも普通に飯が食えるタイプです(空気は読みます)
アレンジ歓迎


コーディリア・アレキサンダ
【巡るかもめ亭】

「それじゃあ、問題の排除も完了したしボクは帰――――」

グリモア猟兵のところへ戻ろうとしかけたところで腕を引かれて、
半ば引きずられながらみんなと合流


……こういうの苦手なんだけれど、仕方ない

「もう……。仕方ないから付き合ってあげるよ“マスター”?」

その代わりなんだかいつもより昂って面白くなっていたスバルは弄ろう
暫くはマスター呼びして弄れそうだ


行くのが嫌なわけじゃないんだ
ただ、こういう雰囲気でどうすればいいのかわからなくて……
「ふぁみれす……? それでいいよ。早く行こう」


呼称は名前のほうを呼び捨て
美味しいものを食べると口には出さず子供のように目を輝かせて黙々食べます
アレンジは歓迎で!



●夕焼けかもめ亭
「それじゃあ、問題の排除も完了したしボクは帰――――」
「もー、そんなこと言わないで、行きましょ。息抜き、大事よ。それにもう行っちゃったじゃない、あの人」
 巽と共に笑いながら遠ざかっていく背の高いグリモア猟兵を見送りつつ言うのはスバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)。逃げ出そうとするコーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)を捕まえる。
「そうやって面倒くさがってばかりいないで、時々は休みましょ? リア。折角こんなに沢山食事処があるんだし、食事でもどうかしら」
「……面倒くさがってるわけじゃないよ。ボクがこういうの苦手なの、知ってるだろ」
 目にかかった銀の前髪を横に流すように払いながら言うコーディリア。
 スバルは形のいい顎に指を当てて混ぜ返す。
「それなら尚更よ、きちんと出来るように特訓しないとね」
 八方塞がれた形である。くいくいと袖を引かれ、コーディリアは口をチルダのように結んだ。
 行くのが厭ってわけじゃない。ただ、ほんの少し、そういう温かくて騒がしい場所でどうしていいのかわからないだけ。開いた本と静謐を共とする少女は、スバルに手を引かれるまま歩く。
 は、と小さな溜息をつく。袖を摘まむスバルの手を、振り払おうと思わないのだから、どうあれ結果は一つだろう。
「もう……。仕方ないから付き合ってあげるよ“マスター”?」
「その弄り方止めてってば!」
 からかうように呼んでやると、正当なる闇の血統(自称)を引くもの、照れる。赤面するスバルに今度はコーディリアが攻勢に出た。
 さっきテンション上がってたからなあ、とコーディリアは思い起こす。袖引く力が強くなったスバルの項に薄く笑って視線を投げた。
「袖が伸びそうなんだけど?」
「うるさいっ」
 耳までほんのり赤い。
 暫くこの調子でからかうことが出来そうだと、コーディリアは内心で忍び笑いするのであった。

 夕暮れに長短二つの影法師が揺れる。
「ア~ァ、ヤな相手だったァ」
 斜陽に照らされながらと伸びを一つ打つのは、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)。
 彼女の傍らを歩調を揃え歩く鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、レイラの言葉に不思議そうに首を傾げた。
「そんなに? ちゃんと戦えてたじゃん?」
 戦術的に相性が悪かったとは思えない、とでも言いたげな匡の言葉に、レイラは半眼になる。
「そういうトコだヨ鳴宮サン。ランタンより情緒がないってナカナカだと思ウ」
「? ――ああ、そういう事」
 レイラは死者に手向ける葬送の灯、魔導具たるランタンのヤドリガミである。亡くなってしまった人々に捧ぐ感傷と彼我戦力比分析をごっちゃにされればそりゃ半眼にもなる。
 一拍遅れて気付いたように、軽く頭を掻いて言葉を継ぐ匡。
「悪い悪い。……数も多かったしな。そう思ってたなら尚更疲れたろ。なんか食べていくか?」
「んー」
 胸の奥に澱のように溜まった思いを、なにかに吐き出したい。食事をするような気分でもなかったけれど、これだけ戦えば嫌でも身体は栄養を求める。傍らには共に戦った友人。そして、
「詫びに、奢るからさ」
 片目を瞑って続ける青年。少し不器用だけれど、それが励まそうとしての言葉だということくらいはすぐに伝わってくる。
「そうダネ」
 レイラは赤い瞳を笑みで縁取り、鳴宮に応えた。
「せっかくダシ、よってこっか」
 詰まった胸の内も、独りで息をするよりは、きっと少しは透くはずだ。
「ああ。じゃあ、何食べに行こうか。持ち合わせは結構あるし、なんでも――」
 言いかけながら角を曲がる匡が、不意に足を止めた。

「お」
「ア」
「あら」
「おや」

 四者四様の声。
 角を曲がった先にいたのはスバルとコーディリアである。
 挨拶を、とレイラが手を上げる前に、殆ど食ってかかるような勢いでスバルが駆け寄る。心なしかダブついた服の袖を直しつつ、コーディリアがそれに続いた。
「丁度良かった、二人とも。なんとか言ってあげてよ。リアってば私のことすごくからかうの! やめてって言ってるのに!」
「つれないな、“マスター”」
「だからやめてって何回も言ってるのに!」
「アハハ、偶然。私もマスター呼んでたカラ、一緒かもしれないネ? スバルサン、スバルマスターなノ?」
「味方がいない!」
 顔を覆って、夕日の所為かやけに赤い頬を隠すスバル。それを見て追撃するコーディリア、楽しげに口を挟むレイラ。
 きゃいきゃいとかしましく会話を交わす三人のやりとりが落ち着くまで待つ匡。近頃失言続きの男は口を閉じることを覚えていた。石ころのように……。
「匡さん」
 そう、それは敵を狙撃するときのように……。
「匡さん!」
「鳴宮サーン」
「匡」
「……は。ああいやごめん。何?」
 心を戦場に飛ばして待っていた匡に、正当なる闇の血統(自称)を引くものから直々のご下命。
「私ファミレスがいいわ、ファミレス。パスタとか食べたい」
「いいジャン、ファミレス」
「ふぁみれす……? それでいいよ。早く行こう」
 レイラとコーディリアもそれに続いて頷く。
「あ、飯の話ね。オーケー……近くのファミレスな」
「鳴宮サンは何か食べたいものないの?」
「もともとレイラが食べたいものを食べに行くつもりだったしな。別に、何でもいいよ」
 気付いたら仲良く談笑してるんだから女子の会話は山の天気並に早く転がる。スマートフォンを取りだし、すいすいと検索。優秀なナビぶりを発揮しつつ、んじゃ、こっちな、と先導して歩き出す。
「私はパンケーキとカ、パフェとかがイイなー」
「私はそうね……サラダとか、トマトのパスタとかかしら」
「ボクはなんでもいいけど。行ってから決めようかな」
 案内に素直についてくる女子三人、やはりかしましいままである。匡は執事役に徹することに決め、彼女らの歩幅に合わせて歩調を調整するのであった。

 道中、不意に漂う肉の焼ける臭いに、スバルは思わず口を押さえる。
(……やっぱりちょっと肉は入らなそうね)
 決して口に出そうとはしなかったが、散々先程まで不浄の肉が焼ける臭いを嗅いでいたのだ。ましてや年頃の少女である。無理もないことだ。匡やコーディリアはむしゃむしゃ食べそうだったが、彼らと比較するのは色々と基準がおかしいのでやめにする。
 肉の焼ける臭いの出本に目を向ける。焼肉専門店という看板が誇らしげに輝き――
 開店直後のその店に、すいー と見覚えのある後ろ姿が吸い込まれていくのが見えた。
「?!」
 スバルは思わず足を止めた。目頭を押さえ、揉んでから視線を戻す。
 そうした頃には既に、店の入口には誰もいない。
「どうしたノ? スバルサン」
 足を止めたスバルに問いかけるのはレイラ。前を見れば、既に匡とコーディリアは少し先を歩いている。
「……ううん、何でもない。……違うわよね、多分」
「?」
 たぶん。
 きっと。

 ――程なく到着したファミレスで、目を輝かせながらハンバーグプレートを食べるコーディリアの前で、微笑ましい顔をしていいんだか肉の臭いから遠ざかるために顔を背ければいいんだかわからなくなるスバルがいたのは、また、別の話。
「スバル、茶でも飲むか……?」
「……ジャスミンティーを頂戴」
「……鳴宮サン、私も」
 おっ、こいつも結構効いてるな。
 匡は可及的速やかに、ドリンクバーへ向かうのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キアン・ウロパラクト
さて、仕事したからにゃ腹が空くもんさ!
この世界の食い物には詳しくないんだが、キマイラフューチャーとは似たようなもんかね?
向こうみたく大食いで賑わうぐらいじゃなかろうが、
似たような店を探すか飲食店をぐるっと梯子してみるかね。

やっぱ食うなら肉だろ肉!
アタシにとっちゃここも戦場、自慢のナイフ捌きを見せてやるさ。
まぁ確かに合間の野菜や甘いもんも捨て難いんだがな?
こう、本能が求めて来るんだよ。食欲出るのはコッチだな。
もし他に大食いする奴がいるなら付き合っても良さそうだね。


ミーユイ・ロッソカステル
……まぁ、あんな事があった後とはいえ、お腹は空くものね。
食事でもしていきましょう

遠出の際には、そこそこいい食事を取るのが密かな楽しみなのだった


ダークセイヴァー出身の貴族令嬢が足を踏み入れたのは……

焼肉屋でした。


……ホルモン、ここからここまで……あとカルビと……レバーと、豚レバー。レバーは大盛で

手慣れた様子で注文をしていく。店員に「そのドレスで大丈夫か?」と心配されるかもしれないが、特に意に介した様子はなく
届いた肉を網の上で焼いて、程よい焼き加減のものから、口に運ぶ。

顔を綻ばせながら、黙々と肉を頬張る令嬢の姿が、そこにはあった――。


モブや他の参加者に見られたら、少し気恥ずかしそうな反応はします



●牛丸表通り三号店
「さて、仕事したからにゃ腹が空くもんさ! 何か食いでのありそうな店はっと」
 キマイラフューチャーからやってきたキアン・ウロパラクト(フーディアン・f01189)は大食らい。彼女は、猟兵の類別としてはフードファイターに分類される。
 戦闘時も巨大なミートハンマーやテーブルナイフを召喚し戦っていた彼女は、今度は本当の意味で喰らうべき相手を探していた。食べるとはフードファイターにとって戦い、食べ物とは即ち好敵手である。
 UDCアースにはさして詳しくないキアンだったが、他の猟兵と別れる前にオススメはある程度聞いていた。その中でも彼女の興味を引いたのはやはり――
「肉だ! やっぱ食うなら肉だろ肉!」
 そんなわけでキアンはまず手近にあったステーキ店、「とつぜん! ステーキ」に入店。当然のように五〇〇グラムのサーロインステーキを注文。出てきた肉を慣れた手つきで切り刻み、喰らう、喰らう、喰らう。
 一度ナイフを引くたび肉がすぱりすぱりと切り取られ、彼女の口の中に消えていく。周りの客が思わず瞠目し、注目を集めるほどのナイフさばきだ。
「ごちそうさん!」
 そして食べるのが早い。切るのと食べるのがシームレスに結合した食事風景。それは最早神業の領域である。
 口元をナプキンで一拭い、彼女はサッと席を立ち、会計を済ませ、店を出た。
 そしてそのまま道路を渡り、正面にあった「しゃぶしゃぶ熱野菜」に入店した。ノータイム飲食店梯子。
「へえー、湯で肉をねえ……けどちょっと薄切りなのが物足りないね、厚切りのないのかい?」
 当店ではちょっと……などと店員とやりとりをしながらUDCアースの食文化を堪能するキアンであった。

 所変わって、ここはスバルが何かを幻視したチェーン焼肉店「牛丸」である。
 幻視したっていうか、それは間違いなくヤツだったのだが。
 
「はぁ」
 ミーユイ・ロッソカステル(微睡みのプリエステス・f00401)は、案内された席でようやく人心地ついたように小さく息をつく。
 惨劇を目の当たりにした後とは言え、生きている限り空腹は訪れる。彼女が選んだのは――焼肉であった。
 遠出した際にはいい食事を楽しむ、彼女の密やかな楽しみ。孤独のグルメである。
 なにせ、彼女が生まれたダークセイヴァーでは痩せた大地に枯れた陽光、乏しい水が相俟って、作物も元気がない。自然、食生活も慎ましいものにならざるを得ない。故、こうしたときに贅沢をするのは彼女の大事なリフレッシュ法の一つなのだ。
「お客様、ご注文をお伺いします」
 かけられた声にミーユイが顔を上げると、店員の男がボードを片手に、緊張したような笑顔を浮かべていた。
 無理もあるまい。高価そうなドレス、美しい面差し、まるで本から出てきたような容貌のミーユイが、まさかの一人焼肉である。
 気にした風もなく、ミーユイは開いたメニューを指で指し示す。
「ホルモン、ここからここまで」
「ホァ」
 頓狂な声が出た。
「……なに?」
「すすすすすすみませんハイ何でもないです! マルチョウとシマチョウとミノ、ギアラとやみつきホルモンとセンマイとハツとハチノスですね!! ご注文は以上でよろしいでしょうか!」
「カルビとレバーと豚レバーも頂戴」
「ヒァイ」
「レバーは大盛りで」
 店員は追い打ちを喰らって完全に笑顔をカチカチに固めつつ、注文を復唱することとなった。
「あの、ちなみにお客様、お召し物に跳ねないよう紙ナプキンなどもございますが」
「戴くわ」
 紙ナプキン程度で守り切れるのか、という疑いはあるが、ミーユイは気にした様子もない。
 或いは(高価そうな)ドレスが汚れる程度構わないと思っているのか――それとも、汚さず食べる自信があるのか――いずれにせよ、ただ事ではないのだけは確かだった。

 肉は程なくして到着し、じゅうじゅうと音を立てて七輪の網の上で焼きつつ、もくもくとミーユイは肉を頬張る。
 カルビは表面にやや肉汁が浮き出したら裏返し、サッと炙ってから食べる。口の中に濃厚な肉汁と肉の旨みが広がり、いくらでも食べられてしまいそうだ。ホルモンは中央に置くと脂が出すぎ、炎が上がる原因になる。網の比較的端の方でゆっくりと火を通す。
 積み上がる空の皿。どよめくカウンターの内側の店員達。そして、
「驚いたね、こんな風に内臓とかを焼く店もあるのか」
 ミーユイは自分の目の前で上がった声に思わず顔を上げた。そこには彼女より一回り背の高い、気風の良さそうなキマイラ――キアンが立っている。
「もう一つ驚きなのはアンタみたいなお嬢様でも、こういうの食うんだなって事だけど。同じ仕事をこなしたよしみでさ、相席いいかい?」
「……いいけど、あまり見るのはやめて頂戴。……生まれは関係ないわ、いいでしょう、私は美味しいものを食べるのが好きなの」
 猟兵に遭遇するのは想定外だったらしく、口元をナプキンで拭い、ミーユイはやや気恥ずかしげに唇を尖らせた。
「そいつはアタシも同じだよ、仲間だね! 肉はいいよ、なんていうか、こう、本能が求めてくるんだよな。野菜や甘いもんもいいけど、アタシはやっぱりこっちだ」
 おうい、と店員を呼びつけるキアン。応じて先程の店員がやって来る。
「は、はい、ご注文お伺いします」
「こっからここまで、全部頼むよ!」
 ミーユイが注文した範囲の二倍近い範囲を示され、今度こそ店員は復唱も出来ずに固まるのであった。

「アタシはキアン・ウロパラクト。よろしくな」
「……ミーユイよ。ミーユイ・ロッソカステル」
 固まった店員をよそに、自己紹介を交わし合う二人。
 肉食系女子会、始まる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
★アドリブ歓迎

剣を鞘に納めて深く息を吐く
あんな事件の後でも腹は減る
アイツほどじゃないがたっぷりと腹に詰め込んで体力を回復しときたいとこだが
しかし…この格好で行くのか
血で汚れた服を見る
特に腕がひでえな
…まずは服を買いにいくか

服屋につき入り口近くで思案
汚れた服のまま物色して文句いわれんのも面倒だな
店員に任せるか
合いそうな服を適当に見繕ってくれ
いい放ち持ってこられた服を特に見ずに購入、着替え
まあなんでも着れるだろ
ありがとな
選んでくれた奴にお礼を言って店を出る

さぁてとー何食うかだが
…肉の気分じゃないな
何か甘いもん
別に血を飲む必要はねえが本能的にか赤を求め
イチゴのパフェか、ショートケーキでも食うとするか


浅沼・灯人
戦いも終わった。あとは帰るだけだ。

……って言いたいが、買い足さなきゃいけねぇもんがあったんだ。
寄り道してから帰るとすっか。

行くところは服屋。……別に洒落たもんが欲しいとかじゃない。
普通の戦闘も勿論だが、竜の力を使いすぎるとあちこちすぐにぼろくなる。
安くて着回しのいいもんを追加しておかなきゃ面倒が増える。

おっ、靴下まとめ買い安いじゃんこの店。靴下はすぐ破れるからなぁ。
柄のないやつ纏めて買っとくか。
……しかも期間限定で対象のTシャツ2点で半額だと。
なるほどな、クリアランスセール中か、ありがてぇ。
こってないデザインのものを選んで2点買い足そう。

買い物終わったら、そうだな。
帰る前に景色でも見ていくか。



●こちらファッションセンター
 戦いは終わり。白銀の剣を納めれば、張り詰めていた心も、身体も、ゆっくりと緩む。
「……落ち着かねえな」
 セリオス・アリス(ダンピールのシンフォニア・f09573)は血に汚れた服と腕を、仲間の猟兵から貰った包帯で何とか隠しながら歩いて行く。
(そういえば、腹が減ったな。あんな事件の後でも腹は減る、か)
 それは生の実感でもある。少しばかり危ない橋を渡ったせいか、尚更鮮烈にそれを感じた。食事でもしに行こう、という気分になる。
 しかし、である。
(……この格好でか?)
 セリオスはショーウインドウに映った自分の姿を見やった。腕周りはボロボロ、服は血だらけ。傷こそ最早治癒しているが、流石にこのまま飲食店に入るのは憚られる。いかに猟兵の能力により、どのような格好でいても人に気にされないのだとしてもである。
「まずは服を買いにいくか」
 幸い、ショッピングセンターである。
 歩けばその手の店はすぐに見つかった。
 入店し、しばし思考。流石に血に汚れた服装である、下手に商品を手に取って汚しても難儀だ。店員に文句を言われる自分を想像して、セリオスはすぐに店員を探し始める。
「ちょっといいか?」
「はい?」
「何でもいい、合いそうな服を適当に見繕ってくれ」
「かしこまりました。お好みの色などございますか? あとはどういったシーンでお召しになるですとか」
 付き合いの良さそうな若い男性店員を捕まえ、頼むと、店員は二つ返事で快諾した。
「今着る。汚れが目立たないのがいい」
 店員はあちこちを回ってパンツ、ジャケット、ダウンなどを揃えてくれる。
「一式、こちらの様な形でいかがでしょう? カジュアルにまとめてみましたが」
 カジュアル。町中を歩く男性が着ているようなもの、という感じの衣服のセットである。特に一つ一つを改めることもなく、セリオスは無造作に受け取り、礼を言った。
「これでいい。ありがとな」
 素っ気ない言葉ではあったが、確かな礼である。セリオスは会計を済ませ、試着室を借りて着替えを済ませる。
「さぁてと――何食うかだが……肉って気分じゃないな」
 さっきまで散々戦って、あの化物の身体を焼いていたのだ。流石に肉を食うという気分にはなれない。
「甘いもんにするか」
 すっかりUDCアース風の装いとなって店を出るセリオスの眼を、斜陽が焼く。
 頭に浮かんだのはいちごパフェとショートケーキ。血の赤からの着想だったが、今の気分は甘いもの。
「適当に喫茶店でも探すかね」
 背後で閉まる自動ドアを後目に、セリオスは飄々と歩いて行くのであった。

 期せずして、浅沼・灯人(ささくれ・f00902)はその後ろを追う格好となった。
 特に息抜きをしたりするつもりもあまりなかったのだが、買い足さないとならないものがある。
 それは何か。服である。
 別に洒落たものが欲しい、というわけではない。猟兵なんてやっていると、服は攻撃を食らいどんどんボロボロになり、火を吐くたびにその熱で化学繊維は劣化し、すぐに着られなくなる。面倒だ。
 求めるのは安くて着回しのいいもの。ただそれだけであった。
 どこか見覚えのある青年と擦れ違いに、店に入る。
「おっ、靴下まとめ買い安いじゃんこの店。靴下はすぐ破れるからなぁ。柄のないやつ纏めて買っとくか」
 誰か猟兵が他にいたら「所帯じみている」とでも評したかも知れない。しかし灯人は大真面目である。手に持ったカゴに次から次へと無地の靴下を叩き込む。
 その隣のコーナーにチラシが派手に掲示してあるのを見逃さず目を走らせると、灯人は素早くそのコーナーの中身を改める。瞠目した。
「……しかも期間限定で対象のTシャツ二点で半額だと……?!」
 シャツ。汗も、流れ出る血も、いつも最初に吸ってくれるシャツ。
 こうした安売りのシャツに灯人の着回しは支えられているのだ。所帯じみてるとか言ってはいけない。
 凝っていないデザインのものを選んでこれもまたカゴに突っ込む。
「しかしなんだ、大盤振る舞いだな。何かあるのか……?」
 灯人は周りを見回し――そして鋭い目をカッ、と見開いた。視線の先には、柱から柱へ横断幕のように渡された広告。
『クリアランスセール中』の文字。
「……なるほどな。ありがてぇ」
 今日はもしかしたらツイているかも知れない。ひどい仕事だった分のご褒美がクリアランスセールだったとしたら、少し割に合っていない気もするが。
「……よし、そういうことならもうちょっと見てみるか。どうせならパンツも補充しておこう」
 チノパン半額! の文字を目敏く見つけ、灯人は店内を早足で行くのであった。

 ――買い物も一段落し、結構な大きさになった袋を下げ、店員に見送られながら店を出る段になって、灯人はふと思い立ってエレベータへ向けて歩いた。
 パネルを操作し、向かうのは最上階、レストランフロア。
 特に飯が食いたいわけじゃない。けど、なんとなく見ておきたい風景がある。

 たどり着いた最上階。灯人はエレベーターを抜け、大きい窓に歩み寄った。
 夕暮れに染まる街が、一望できる。誰ソ彼ビルからも似たような景色が見えただろうか。あそこはもう少し低かったかな、と思案しながら、眩しい西日で手を透かすように翳す。
 ――柄にもない感傷だったが、なんとなく。
 今は、景色を見つめていたかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●とむらい

 電話をかける。
 別の猟兵から、もうこっちに来ている、ということは聞いていたから。
赫・絲
かいちゃん、お買い物付き合って!

一部と言えど力を解いて多量の血を支払ったワケで
しんどくないと言えば嘘だけど、内に隠して灰色を呼ぶ
忙しそうなら、その時は一人で

服とか甘いモノとか、普段なら見たいものは山程あるけど、
真っ直ぐ向かうのは花屋
色とりどりの花を腕一杯持てるだけ買い占めて、
向かうのは辺りで一番高いところ

綺麗に咲いた花には可哀想だけど
風に舞いやすいように、花弁を一つ一つ取っては空に投げる

みんな塵になって舞ってしまった
骸すら残らなかった
だから空に投げるのは弔いのため
せめて、塵の逝く先に届け、と

おやすみ、おやすみ
骸はなくとも、この手で千斬ったことは忘れない
さよなら。どうぞ今度こそ、穏やかな夢を



「かいちゃん、お買い物付き合って!」
『わかった。どこに行けばいい?』

 電話してすぐに壥・灰色を呼んだのは、赫・絲(赤い糸・f00433)である。それに応じる灰色の返答もまた淀みがない。
 絲が待ち合わせに指定したのはショッピングモールの大きな時計の下。呼びつけられて十数分で、灰色は姿を現した。小さく手を振って迎える絲。
「やほーかいちゃん。呼んじゃってゴメンね」
「構わないけど。何を買いに行くの」
「うーんと、ねえ」
 服とか甘いモノだとか、普段なら見たいものは山程あるけど――
 そう前置きして、絲が欲したものは、別のものだった。

「花がね、欲しいんだ」

 流石に、両手一杯の生の花束は重い。
 絲の求めに応じるままに花屋に向かうと、彼女は全く迷いもせず、色とりどりの花を前にしてこう言ったのだ。
「ここからここまで、全部まとめて花束にしてください」

 結果生まれた大量の花束。灰色も、両手に花束を抱えている。店から出た彼女は、言葉少なに灰色を先導する。
 彼女が向かったのは、あたりで一番高い展望台だった。
 展望台の頂点、オープンスペースに出て、彼女は伸びをしながら手すりまで歩く。
 
 冷たい風が吹いている。夕日が、もう沈む。
 
「こっち来て、かいちゃん」
 灰色を呼ばわりながら、彼女は綺麗な花弁を一枚一枚取り、手の中に溜めていく。
「……」
 歩み寄る灰色。絲は手を止めずに言葉を継いだ。
「綺麗に咲いた花にはかわいそうだけどね。でも、これが慰めになればいいなって」
 みんな塵になって舞ってしまった。骸すら残らなかった。
 葬ることすら出来ずに消えた、幾多数多の人々のために。
「手伝ってくれる?」
 灰色は頷いた。少しだけ、眼を細めて。

 千切った花弁を、二人は空に投げ上げた。展望台に吹く風に攫われ、花弁は巻き上げられるようにして空へ飛ぶ。
 これはとむらい。せめて、塵の逝く先に届け。
 そしていつしか届いた花弁が、どうかあなたの慰めになればいい。

 冷たい風が吹いている。――もう、おそろしい夕焼けはないよ。

 おやすみ、おやすみ。
 骸はなくとも、この手で千斬ったことは忘れない。
 さよなら。どうぞ今度こそ、穏やかな夢を。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月09日


挿絵イラスト