●塗り潰す暗色
刻々と色彩を、かたちを移ろわせるもの。太陽よりも眩しく燃え上がるもの。稲光よろしく繰り返し弾けてみせるもの。
遮るもののなにもない空一面を使って、隣の、彼方の、名も知れないあなたへだって魅せる極彩。
はじまりは豊穣祈願だったろうか。古くよりミモ村に伝わる精霊花火は、まさしく魔法。
すてきを共に瞳、映して――花開いたなら星屑、或いは宝石めいた結晶と化し降り注ぐきらめきが七色の恵みを運ぶ。
歳月を重ねるほどに趣を増した、祭の夜には地にも目映い笑顔が咲く。
今年もまた、そんな時節がやってきた。
――筈だったのだ。
「随分と空が曇ってるね。なんだいありゃ……?」
「鳥でもなきゃ雨雲、か? いや、それにしちゃ速い……おい、どんどんデカくなってるぞ!」
開催予定日のつい数日前までは。
●ミモの魔法の夜
そうして突如として現れ村の空を覆った"天井"に、祭は無期限延期を余儀なくされて。
このまま雨水や日光が届かなくては作物も駄目になってしまうだろう。
「おいしいものが食べられなくなるのはかなしいですね……問題は山積みなのです。みなさん! お願いできませんか?」
天井を……ひとつの島とすら呼べそうな、空飛ぶ巨大オブリビオンを追い払ってきてほしいのだと。
人的被害だっていつ出てもおかしくはない――浮島にはドラゴンが棲み付いているらしい、そうニュイ・ミヴ(新約・f02077)は続ける。
「他にも、虹色の雲のような。ちいさなオブリビオンもいっしょにお引越ししてきたみたいなのです」
ふかふか、もこもこ。高くに浮かぶ島へ攻撃を通すには、まず彼らを捌けさせる必要がある。
いかにも気の抜ける風体だが、自力で解決せんと向かった村人が数分後には、何故だか熟睡して落ちてきたというのだから油断ならない。
あのレインボーカラーに、抗いがたい眠気を齎す秘密でもあるのか……がんばろうってこころが大切になりそうですね――ニュイはタール上半分を揺らして。
「がんばった後には、お祭りを覗いてくるのもたのしそうですよ! 魔法の花火、きっときれいです。旅人さん向けかんたん花火玉作り教室もあってね……村で育った野菜ケーキも……」
あっ、火の粉はシロップみたいに甘くておいしいとのこと!
「――では、足元にもお気をつけて」
あれも! これも! はしゃいだ声が薄れる頃にはすっかり変わった風景。
黒影に覆われ日も暮れたとて、凪いだ海の如く眼下に広がる緑はどこまでも和やかで――――眼下?
ごうと強い風が吹きつけてゆく。
橋渡しされたそこは上空なんとかメートル。見上げれば"天井"の底。
周囲には虹を溶かし込んだまあるい物体が、ふわふわ。ぴかぴか。降る雨の代わりのように、のんびり浮かんでいた。
zino
ご覧いただきありがとうございます。
zinoと申します。よろしくお願いいたします。
今回は、空を取り戻すためアックス&ウィザーズへとご案内いたします。
●流れ
第1章:集団戦(虹色雲の獏羊)
第2章:ボス戦(災厄の浮島)
第3章:日常(花火)
時間帯は夜。月や星の明かりが浮島に遮られ暗いものの、オブリビオンが発光していることもあり戦いに支障はない。
●第1章について
のどかな村の近くの平原。空中(落下中)スタート。
自前の翼やユーベルコード、アイテム、敵を利用する等、各々の方法で戦いながらより高くに浮くボスまで進んでください。
SPDユーベルコードを受け完全に眠ってしまう等、落下した場合は地上で村人が受け止めてくれます。
見る夢についてはもしご希望があれば是非。
●第3章について
祭にて、魔法の花火玉作りや花火鑑賞が行えます。
詳細はOPと第3章導入をご参照ください。食事、散策等、その他の行動もお心のまま。
ニュイ・ミヴ(新約・f02077)はお声掛けいただいた場合のみお邪魔します。
お手数となりますが……。
複数人でのご参加の場合、【お相手のIDと名前(普段の呼び方で結構です)】か【グループ名】をプレイングにご記入いただきたく。
個人でのご参加の場合、確実な単独描写をご希望でしたら【単独】とご記入ください。
●その他
各章とも導入公開後、プレイング受付開始。
補足、詳細スケジュール等はマスターページにてお知らせいたします。お手数となりますが、ご確認いただけますと幸いです。
セリフや心情、結果に関わること以外で大事にしたい/避けたいこだわり等、プレイングにて添えていただけましたら可能な範囲で執筆の参考とさせていただきます。
第1章 集団戦
『虹色雲の獏羊』
|
POW : 夢たっぷりでふわふわな毛
戦闘中に食べた【夢と生命力】の量と質に応じて【毛皮が光り輝き、攻撃速度が上昇することで】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 眠りに誘う七色の光
【相手を眠らせ、夢と生命力を吸収する光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : ふわふわ浮かぶ夢見る雲
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
イラスト:ロクイチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
魔法でないのなら、それはまるで絵具の洪水だ。
風にいくらかずつ流されて、右へ左へ。手足を伸ばせぱ触れられそうなほど近くにも「めえ」とくつろぐ姿がわんさか。
たとえ浮島が居なかったとしても、これでは祭どころではない。
もふ、もふんっ。
目まぐるしくはじまった落下の最中、うち一匹を誰かが踏んづけたときだったろうか。やわらかなわたあめみたいに解けた毛が風の中に漂って。
天へ続く階段のようにも並んだ数匹が、猟兵を見つめ身を震わせる。
空を駆ける……と呼ぶには些か鈍臭く、透明な地面を転がるように。タックルを繰り出してきたのは。
ラッカ・ラーク
【いつもの】カグヤ(f15297)とユーダチ(f14904)と
景気のいい悲鳴だなあ、ってココ空か!そりゃあびっくりするわ!
助かるぜユーダチ、オレもずっと飛んでるのは疲れんだ。
キラキラ綺麗な羊だなあ、ちょいと眩しいが悪かない。まあ倒すんだけど。オブリビオンじゃなけりゃなあ。
《空中戦》は任せろってな。《踏みつけ》て引っ掻いてオトしたり退けたり踏みやすいとこに追いやったり、【増やせば軍団!】も呼んで道を空けてくぜ。上を目指さねえとな。
式紙が飼い主に似るってンなら、アンタもそうなのか?『日向鳥』よう。
折角の虹色の空だってのに寝てなんかいらんねえよ!
夢見てるよりコッチのが綺麗だぜ。お祭りも楽しみだしな!
穂結・神楽耶
【いつもの】夕立さん(f14904)とラーク様(f15266)と
きゃあああああああ!?
えっちょっと、どうして落下スタートですかこれ!
ひとまず羊たちを足場にして……
…あ。怒らせましたかね、これ。
うう……式紙様方ありがとうございます…。
どうせ倒すのですし細かいことは気にしないことにします。
ラーク様にタクシーになって頂くのも限界がありますものね。
【神遊銀朱】を出します。一瞬ですが足場に使ってください。
進行の邪魔になりそうな羊は『なぎ払い』で片づけておきますね。
はいはい、それではいつも通りの臨機応変で。
『瓦緋羽』、惹きつけをお願い。
賢いというより悪知恵が働くの間違いでは?
助けられているのは本当ですが。
矢来・夕立
【いつもの】穂結さん/f15297 ラッカさん/f15266
あははっ
…ああ、…マジで空中ですね。
準備しといてよかった。
【紙技・禍喰鳥】。
とりあえずそこの、落っこちそうな女を捕まえてやって。
そしたら今日の仕事は足場です。
そりゃいきなり踏まれたら羊でも怒るでしょ。
どうせ倒しちゃうってのは同意します。
【禍喰鳥】の中に『幸守』『禍喰』『火曵』を紛れ込ませてあります。
式紙も飼い主に似るモンでして、賢いんですよね。
無害なふりして《だまし討ち》なんか大得意です。
『親戚』にも挨拶して来るとイイですよ。
さて。足場は用意しました。各自自由行動、いつもの通りに。
今風に言うと『強く当たってあとは流れで』です。
「――きゃあああああああ!? えっちょっと、」
なぜ。どうして落ちているのか?
耳に痛い風の音、以上に悲痛な叫びは穂結・神楽耶(思惟の刃・f15297)の唇から零れた。
あっという間に大気へ霧散するそれにラッカ・ラーク(ニューロダイバー・f15266)は景気のイイ悲鳴だなあ……なんて他人事。一体全体なんだっていうのだ。たかが宙に放り出されたくらいで――。
「……ってココ空か! そりゃあびっくりするわ!」
「あははっ」
スカイダンサーにとって陸と大差ない居心地がそうさせた。膝を抱き、ぐるんと体を丸めた軽やかな回転で頭を上へ、なにもない空間に手をついて駆けだした瞬間に獣の長毛がぶわりと逆巻いて、今が真昼だったならきっと青空に溶けていたことだろう。
その対面、得物だけ抱き真っ逆さまに風を感じる矢来・夕立(影・f14904)の耳を疑うほどあどけない笑いもまた風に紛れて。常ならばあら今のは、と目敏くツッコんでいそうな神楽耶はそれどころではなく虹色羊と戯れていた。
むぎゅぅっ。
ちょうど良く靴底が柔毛に埋もれワンクッション。
「はっ……! よし、ひとまず羊たちを足場にして……」
命拾いしたと胸を撫でおろす間もなく、横合いからの体当たりプレゼント。
怒らせましたかね、これ――察した頃にはたたらを踏んで空の旅再開だ。投げ出された女へ次々にまとわりつかんとしていた数匹を、割り入ったラッカが鷲掴み逆側へぽぽいと放り捨てる。
「いかにも自慢の毛皮ですっつう感じだもんなあ、キラキラカラフルで」
「……ああ、……マジで空中ですね。準備しといてよかった」
今は空に一点限りの朧月。
ぱら、などと音すらなく、夜闇に同化した夕立の羽織が端から解けたかと思えば、たちまち湧き出る禍喰鳥。只の紙ではないことは風と重力に逆らい飛び立つ姿が証明済。
"とりあえず"の仕事は落っこちそうな女の回収。主と五感を同じくした蝙蝠は思考までも共有したかの滞りなさで、下方に見える襟首を掴み上げた。
「うう……式紙様方ありがとうございます……ラーク様も」
「助かるぜユーダチ、オレもずっと飛んでるのは疲れんだ」
彼らの残る仕事は足場。ダンスにだって息継ぎの間は必要だ、趾で踏みしめひと呼吸、いいってことよと笑い飛ばしてラッカは指笛を鳴らす。遠目には星の屑か否か、微かにポリゴンを零しながら現れたこちらは蝙蝠ではなく電子の小鳥の群れ。
「つーわけで、ひとつ頼むわ」
嘴を槍みたくに突き立てて羽ばたけば、反撃のはじまり!
いつもの作戦、"強く当たってあとは流れで"。
ここは確かに上空ではあったのだが、即席式神ロードにてとんとん靴の履き心地を確かめてみせる夕立はすっかり順応していて。
「あーあ激怒ってますね。そりゃいきなり踏まれたら羊でも怒るでしょって話ですけど」
「ま、まあ。どうせ倒すのですし細かいことは気にしない、が得策ですよね」
獣のふわもこタックルを上体の傾きのみでひょいと避ける。纏う黒だけが散って集ってびっくり、眠たげな目を開いた獏羊が貼り付く式を跳ねて払い、次に見るものは大層鋭い切っ先だ。
自らの放つ虹色が映り込み、研ぎ澄まされたフチを際立たせて――。
まな板の上で調理するかの如く、刃を滑らせた神楽耶の調理はなるほど確かに大味。 破壊の権化。
たった一振りで巻き込まれた数匹がもふんとひとまとめ毛刈りされる。……ちょっとばかり物憂い顔で自身の飾り毛を撫でつけたラッカも、風に混ざる虹ごと丸裸の羊を蹴りつけ遥か下方へ叩き落した。
「オブリビオンじゃなけりゃあな、お祭りの魔法ってのにも仲間入りできたかもしんねーのによ」
虹色に満ちた空、綺麗だと躍る心にまやかしはない。夢など見なくたって。
すぐに次の獲物へと狙いを定めることができるのは、舞う蝙蝠に刀剣、小鳥が空の友として十二分の働きをしてくれているから。一歩目で黒、二歩目で朱銀、潤沢な足場と先立って獏羊の気を逸らす黄。
上へ、上へ。
たったか駆けゆくラッカに続く夕立と神楽耶。ひとりでに道が開けるとは楽で結構、「やはり持つべきものは友人に違いない」「今日の矢来節も冴えてますね」の短い応酬は虹色雲を引き裂きながら繰り広げられる。
そんな順調に過ぎる彼らを分断せんとでも試みたのか。
風に流されただけやもしれぬが……ざわり、と、進路に寄り集まり震える羊たちの身から零れる、虹の光が拡散されてみえた。
眠気がどうのこうの――、夕立が十まで思い返す必要もないほど、端からカードは切られている。
「夜は暗くて静かな方が好みなんです、オレ」
主が蹴りつけて高くへ進んでしまったなら、取り残され用済みになる蝙蝠階段。直後に舞い上がったのはそこに紛れた幾数の幸守、禍喰、火曵。=雑食。
足場から屠るための凶器へ、雲間を縫って柔肉へ突き立てば無害なフリしてお得意のだまし討ち! 誰に似たか、など。
「式紙も飼い主に似るモンでして、賢いんですよね」
「賢いというより悪知恵が働くの間違いでは?」
似ず愛想良く笑う風な羽音が耳元でするのに、助けられているのは本当ですが――微か口端に信用滲ませ、神楽耶の手元からもよく似た紙の、しかし小鳥が舞い落ちて。
瓦緋羽。曰く"親戚"、視界の端に映したラッカの懐には愛らしいひよこ……の式。
「式紙が飼い主に似るってンなら、アンタもそうなのか? 日向鳥よう」
「瓦緋羽、惹きつけをお願い。ふふ、さて……我々の場合はどのように似ているのだか」
勇敢な供をさらに二つと数え、如何なる障害をもものともしない、ともすれば迎え入れる、混じり気のない強かさで空へ昇る。
啄まれ、巻き取られ、刃に爪にもみくちゃにされて。彼らの通り道に選ばれたのなら、痛ましい声を上げるのは弾き落とされゆく獏羊たちの番。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
あーあー、飛べない飛べない急降下。
非常食の二匹には翼があるケド、コレは飛べない飛べない。
賢い君、賢い君、どうする?どうしよ?
アァ……そうだそうだ。
飛ばなくてもイイ、飛べなくてもイイ。
虹色のアイツらを足場にすればイイ
いざとなったら白と黒が何とかしてくれるサ。
相棒の拷問器具と仔竜二匹と空の旅。
アッチの虹色に真っ赤な糸を結んで
コッチの虹色にも真っ赤な糸を結んだら
飛べないヤツの足場になるカ?
とーってもスリリングな足場だけどなァ……。悪くはないだろ?
アァ……虹色はどうやら大人しくないようダ。
折角の足場が残念残念。
もう少し遊びたかったなァ……。
クレム・クラウベル
頬切る風、地面の感覚は遠く
……成る程。飛べない種族でもわざわざ駆け上がる手間が省けるか
急に放り出されるのは少々乱暴だが足場に困らないなら良いだろう
幸いにも相手も機敏ではない、手頃な毛玉を渡って立ち回る
見た目通りに雲のごとく群れたところへ祈りの火を
立ち回るに支障のない光量はあれど、明るくて損はない
暫く灯りにでもなってもらおうか
端から油断する気はなけれども、うっかりでも“寝落ち”は御免だ
気は確りと保ち眠気には抗う
……空が曇るばかりは気の滅入ることだろう
元が明るいなら尚の事
あのロクに日の射さぬ空もいずれ――など願うわけではないが
折角なら鮮やかに彩られる空を見たいのでな
邪魔なら雲は全て祓い落とそう
絢辻・幽子
SPDで
めぇ、なんて……
幽ちゃんは、けして寝ませんよ。寝ませんとも。
えぇ、これが、もふもふふかふかという
夢のような敵だとしても。屈しませんから。
……なんて、強い心をぎゅっと握り向かいましょう。
フラグ?知りませんねぇ。
敵を赤い鋼糸でぐるりとまいて
『ロープワーク』で足場を作りましょうか。
眠らせようとするならば、それを封じてしまえばよいのです
糸でぐるりと巻いて、お口をチャックして差し上げましょう
そうです。幽ちゃんったら頭いいわ。
光はきっと、お日さまのように
ぽかぽかなのでしょうねぇ……
あなたが敵でなかったらなお家へもって帰ってしまうのに。
(人を喰った様な女狐
ご自由に調理してください。)
おーとか。あーあー、とか。間延びした声を上げながらエンジ・カラカ(六月・f06959)は落ちてゆく。
足が上にあって、頭が下にあるのがなんだか不思議。けれども恐怖感なんてものは端からなくしてしまった様子。もぞりと抜け出た二匹の非常食、こと翼竜はとっくに上手に羽ばたいて見送る姿勢――薄情ったらない!
「賢い君、賢い君、どうする? どうしよ?」
どうしようねえ。相棒たる拷問具は逃げ出さず地の底までこのまま連れ添ってくれるらしいが、さて。
ぽむんっっ。
間もなく、トランポリンにて跳ね上げられるに似た感触が背に伝う。
獏羊だ。瞬き数度、跳ばされ見下げたところで不服そうに見つめてくるつぶらな瞳とかち合えば、「そうだ」。狼男はにまりと双眸を細めた。
「足場ならたァくさんあるじゃないカ」
「ああ――いいですねぇ、本物の地面もこうだったら素敵なのに」
うっ……とり。ほぼ同時に獏羊クッションの恩恵を受けたのか、尾を抱いた絢辻・幽子(幽々・f04449)が声を揃えて。
「はい。くるん、っとね」
「イイ子だなァ、大人しくしてると痛くないカモなァ」
捕食者からたのしい玩具として捉えられる悪寒に、哀れ羊が鳴く間も与えず。空を泳ぐようなほんのわずかな腕の所作で二者が取った対策は、糸。
闇にも翳らぬ赤糸はしずかのうちに張り巡らされる。
具合よく並んだ獏羊同士をくるくる結び付ければまぁ楽ちん、綱渡り会場の完成という寸法だ。
「……成程。芸の細かな者がいるらしい」
羊、羊と踏みきて難なく糸へ着地するクレム・クラウベル(paidir・f03413)の集中も大したものだ。
少々乱暴な転送ではあったが、この様子ならば足場に困ることもあるまい。ぷぎゅうと空気の抜けた音立ててしぼむ獏羊はなにも重みにだけ負けたのではなく、炎。
相も変わらず祈祷そこそこ呼び起こされた白き浄化が、ごうごうその身を食んでいた。
祭に先駆け空へ灯す光がひとつ。本来の、あるべき雲が滲んでは消えゆくような輝きは信仰のほどに左右されず。……空が曇るばかりでは気の滅入ることだろう、元が明るいなら尚の事。
(「あのロクに日の射さぬ空もいずれ――など願うわけではないが」)
「折角なら鮮やかに彩られる空を見たいのでな」
故郷にも似た、不躾に塗り重ねられた闇夜を切り開きてクレムは跳ぶ。
そうして猟兵が糸の道を使いこなす度、軋む音に混じって獏羊たちのめぇめぇ力無い悲鳴が耳を打つ。仕掛け人幽子は耳ないない状態の頭部をぺた……と両手で押さえ。
「めぇ、なんて……幽ちゃんはその手には乗りませんよ。えぇ、もふもふふかふかの夢のような存在だとしても決して屈しませんから」
数えたりもしません! ――震える唇尖らせふいと頭を振った先でも『めぇ』。
ましてや眠るだなんて……長い尾もまた雲のよう。なびかせ、たんと踏み込んだ糸の先でも『めぇ』。
ボリューム大な虹色毛皮に顔から突っ込んでしまっても、
…………。
「うっ」
即堕ち。夢の中ではなかよくもふれているのだろうか。微笑み浮かべ、ふらぁ……と傾いだ狐女の背を偶然通りがかったかのラフさで仔竜の尻尾が強めに叩く。引き戻す。
「アァ……ウチのが邪魔した? おいたはだめダ、食ってしまうヨ」
使いの彼らと共に糸を羊を駆けあがっていたエンジはなにやらきょとん顔。フードから覗く金にもふ願望を見抜かれたかの感覚、幽子は実にさりげなく口元を拭う仕草をしてみせた。大丈夫、血も涎も大丈夫。
「ふふふ、いえ……もう少しやわらかいと満点でしたし。寝てはないですけど。 助かりました」
といった主旨の言い逃れを口にして――。
くんっ!
うごうご暴れ、糸から抜け出さんとしている獏羊数匹の拘束をより強める。先ほど埋もれた、浴びた光のやすらぎはお日さまみたくぽかぽかだった。
あれは、危ない。獣の本能がそう語る。
「あなたが敵でなかったなら、お家へもって帰ってしまうのに。……残念ね」
「家か。安眠アイテムとしては優秀なのかもしれんが、随分と手がかかりそうだ」
現状ですら日々のくらしのことを思えば、尚更。手など塞がっているに等しく。
綿毛めいた虹を飛ばしながらとっとこ。絵面としては微笑ましい、元気のよい羊タックルに両腕を広げ歓迎とみせかけ銃底で殴りつけるクレム。
はかない。グーでいってしまっても問題ない強度と分かれば得物を仕舞う、そのわずかな合間にぴかりと羊毛が輝いたならばヒカリモノに飛びつく鳥同然、エンジの糸がさらっていった。
しかし獏羊たちのごはんは夢と生命力だ。
間近で覗きこめど、狼男には手のうちに入れた端から翳ってみえて。
「飽きたら肉にしてしまえば、みんなシアワセかもなァ……」
ぺいと放れば待ってましたと飛びつく竜が喰らう。毛は美しいが、肉も美味いと聞いた気がする。どうだったろうか?
ほらちゃんとうまそうだとかって、思考はこの非常時とてあちこち散漫に、ただ足だけは前へ進んでいる――遊び尽くすまで。
しあわせ、とは。はたして夢喰いのみせるまぼろしか。
偽りの雲を祓う度、同じく偽りの天は近付く。
虹に照らされながら、白の光がおおぞらへと導くまるで幻想的な光景。
しかし過去より地続きの今が夢の中などではないと、疑う程度の気の緩みすら持てぬこと。幸か不幸か。クレムはもうずっとながく細い線のうえを走っているようだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
須藤・莉亜
「空に飛ばされるとは思わなかったなぁ…。」
まあ、楽しいから良いんだけどね。
このままじゃ落ちちゃうし、地獄顕現【悪魔大王】のUCを使って、空中散歩と行こうか。
敵さんは強化された悪魔の見えざる手でぶん殴ったり、万物破壊の能力で敵さんの毛皮を破壊し転移で近づいて【吸血】。
敵さんの血を飲みながら、上を目指そう。
攻撃は【見切り】と【第六感】を駆使して回避、ヤバそうな時は迷わず転移で距離を取る感じで。
「なんだか、ラム肉食べたくなってきた。艦に帰ったら料理長に頼もうかな?」
渦雷・ユキテル
あらら、転送失敗です?
――じゃないみたい。ならこの状況も楽しめますね。
攻撃も兼ね、指定UCで羊さんを踏んづけて着地。基本その繰り返しです。
【ダンス】【踏みつけ】でテンポよく進んでいきましょ。
ぎゅむっと強く蹴って次へ次へ。なんだかゲームみたいで癖になっちゃう。
足元見る暇はなさそうですけど、
踏んでくたびに雷光が弾けてきっと綺麗ですよ。
うーん、敵さんもジャンプするみたいなんで
急にバランス崩れる可能性ありますね。
そんな素振りを見せるようなら電流を強めた【マヒ攻撃】で
大人しくなってもらいます。
か弱い乙女を振り落とそうなんて考えないでくださーい。
※絡み・アドリブ歓迎
狭筵・桜人
無理無理無理空とか飛べませんって!
アッなんか踏んだ……。
あーあーエレクトロレギオンで空中に足場を作ります。
とてもぐらぐらする。
一撃で消し飛ぶ足場とかスリリングで嫌です。
タックルで突き落とされる前に敵の羊?に乗り換えます。
踏み台にするなりよじ登るなり。
レギオンと羊?の足場を切り替えながら高いとこまで進みたいですね。
これ本当に羊ですか?
利用するだけして追い越した羊はレギオンの砲撃で撃ち落として行きますね。
ご苦労様でした。
あーあ、不便ですねえ。ただの人間に優しくない。
この世界ってヘリとかないんですか?
これじゃバランス崩したらまっ逆さま――
……移動中は下は見ないようにします。
下は。見ないようにします。
迸る稲光は虹雲の内より、うすぼんやりとガウス掛かって漏れた。
この極彩に溺れているうちだけ渦雷・ユキテル(さいわい・f16385)の異能がどこか薄らいだような、そんな、錯覚。
ばちり! 立つ音は今日だって刺激的。
「転送失敗ー、じゃないみたいですし、なんだか楽しくなってきましたね」
流行の最先端な形した靴底刻み付け、蹴りのけた獏羊が一匹、細かな電気を帯びながら焦げ付きて眼下へ落ちてゆく。
とどめとばかりその瀕死を踏む男もいた。ちょうどいい足置きがあったもので――、そうした顔で振り返りもせず。楽しい!? 仰天! と言いたげに声を上げるのは狭筵・桜人(不実の標・f15055)。
「失敗ですよねぇ!? 無理無理無理空とか飛べませんって!」
アッなんか踏んだ……ぎゅむっ。むぎゅぅ。つい、が付き纏う語調ながら次々調子良く踏み行く様から言葉通りの錯乱は窺えない。なにせ流れのUDCエージェント、足元なんてもとより真っ暗!
きわどいバランスで飛び跳ねる桜人に一層強い風が吹きつけていったかと思えば、それもまた、こんな状況を満喫する猟兵によるもの。
くすんだ紫が、そのまま夜の温度に浸食されたみたいに。
「空に飛ばされるとは思わなかったよねぇ。まあ、楽しいから良いんだけど」
ユーベルコード・悪魔大王への変化を終えて、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は背に生やした"移動手段"で悠々飛行。五枚、六枚と翼が完全に生えそろう頃には完全に風を捉え、ほぼ並走する形で進むユキテルとの間に、ねー、となんとなく和やかな空気すら漂いつつある。
ただの人間になんて仕打ちだ。まったく不便で優しくない。
「――っ来い!」
絞り出す桜人の一声で組み上がって、寄り集まり。聞き分けの良い小型機械は足場として組み上がった。持ってて良かったレギオン。またの名を、雑用係。
硬く確かな感触にやっと地へ足がついた心地だ。否、事実、ついてはいないのだが。そも一撃で消し飛ぶ足場など御免被る、ふわもこと突進してくる羊をひと跳びに経由して、桜人は宙へ体を投げ出した。
背で機械の砕ける音……。 次の羊にしがみつき、よじ登り。とんでもアクロバットを決めてゆく少年。最中、ユキテル側から鳴ったぱちぱち音は拍手だか雷撃だか。
「ひゅー、ぜんっぜん飛べてますよ!」
「はぁ、この世界ってヘリとかないんですか? これじゃバランス崩したらまっ逆さま――……」
ほんの僅か視線が下振れしただけでも、黒々とした海が口を開けるかのように大地は遠く。くらりと貧血を起こす前に桜人の外す視線は、上。
上を見るしかない。あぁあの羊よく見れば見飽きた都会のネオンに似ていて落ち着く気がしないでも、しないでも?
「でもさぁ、これってゲームみたいじゃない? ほら、なんとか叩き」
「あっ、わかります。あたし的にはリズムゲーかなぁ、踏んだときの感触が癖になっちゃう」
叩かれるもぐらでだってまだ逃げ隠れる場所があるわけだが、莉亜の拳と鎌はお構いなし。
羊たちが安穏と"空"だと捉えていた空間をこじ開けて、悪魔の見えざる手が虹を裂き、色を混ぜ。逃げを打つなら血飲みの刃が染め上げた。
放つ虹色光の一筋が外敵を捉えたか――漸く、と歓喜の声を上げる獏羊のその真隣に、転移をこなして牙見せる男の佇む様は、まさに悪魔。腹ごしらえも兼ねているものだから、毛皮が剥げたなら血肉もいただいてしまう寸法だ。
「なんだか、ラム肉食べたくなってきた。艦に帰ったら料理長に頼もうかな?」
「料理長ってすごいオシャレな響きですね、スペシャルフルコース! みたいな?」
おしゃべりとおそうじの同時進行、そのどちらも軽々こなしているようで抜け目ないのはユキテル。活きがよく動き出さんとするものを率先して踏みしめ、芽を摘み取るは染み付いたセンスによるか。
いつかどこかで聞いた覚えのあるような、ないような。淡く色付く唇が調子外れのハミングを重ねたならば、リズムゲーは音ゲーの様相。
彼若しくは彼女が羊を蹴る。雷が散る。『めぇ』の音。蹴る。雷。『めぇ』。繰り返されるうちに確かに愉快に――。
「なるわけないんだよなぁ。 これ本当に羊ですか? 味とかそういう」
「ん? たべる?」
「結構です。拾い食いはよくないと母に教わったので」
等と、適当くっちゃべり走り続ける桜人に合わせ、機械兵器はときに道となり、ときに崩され。そうして、使うだけ使い追い越した"足場"の片付けをも請け負った。
ご苦労様でした。
――虹爆ぜる砲撃は、すこし気の早い花火のよう。
もっとも齎すものは恵みでも甘さでもなく、鉄と油くさい終わりのみだけれど。
きっと綺麗。
その想像通り、雷撃纏うユキテルの一歩、一歩は暗闇に広がっては消える波紋のよう。
「か弱い乙女を振り落とそうなんて考えないでくださーい」
はいそこの方、なんてとんと跳び移ったならば、か弱いを辞書で引きたい電流が獏羊へ贈られる仕組みだ。もたつく獣には退避叶わず、可憐なお姫様の良い塩梅の階段となるまで。
「焼き羊だと酒が欲しくなってくるなぁ、ここの祭ってどんなの売ってるんだろ」
ひとくちだけ掠めて、ぺいっ。
空中キャッチした焦げ焦げは下方へ、両手に持ち直した鎌はめいっぱい上方へ。放り捨てる莉亜に次の瞬間、降ってくるのはぬるいシャワーとそれから虹毛。
貼り付くほど、力の作用で今は黒色に染まった髪を飾り付けるみたいで。やっぱりオシャレかもとユキテルの笑いがからころ。
甘い夢幻など寄り付く暇も、隙間もなく。空の戦いは続いてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
…唐突に落ちているな
確かに手っ取り早いが
一先ず師を掴み翼を広げ、減速
傘を確認してから離す
雲は雲らしく浮いていればいいものを
動き回られては師にも危険が及び面倒だ
【竜眼】で動きを止め、他猟兵や師の術に託す
流れてきたものを試しに捕らえ
ふむ…師父よ、羊毛の質は悪くないぞ
巻き添えの睡魔に自らの頬を叩き、鼓舞とし耐え抜くが
…成る程、こうなるわけか
空中で寝るとは大物であるな
すこやかに熟睡中の師を回収し
羊たちの動きを止め――られぬものは止むを得ず叩き飛ばす
飛び起きた師の暴走を見守り
空中で毛刈りなど聞いた事もないが
随分と派手な毛糸になりそうであるな
動かぬ一匹を土産にするかと思案して
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
……落ちているな
まさか空に放られるとは思わなんだ
掴まれ体勢を整えたならば傘さし空中浮遊
さて、先ずはこの雲を何とかするぞ
此処は一気に片付ける
宝石を展開――ジジ、時間稼ぎは任せる
従者に意識が向く内に魔力を充填
【妖精の戯れ】にて広範の羊を墜とす
この調子で次も…ジジ、何を戯れておる
全く羊毛なぞで燥ぐとは…む?
これは中々…
極上の枕の様な感触に
不意の睡魔にかくんと意識が傾く
堪えるも読書で睡眠不足の身に抗うのは難しく
その侭意識が途切れたならば
夢の世界でジジを七色に彩りつつ
次の新作を練っていると
――っは、ジジ?
羊共め、恐ろしい業を使いおって
一匹残らずその毛を刈り取り
七色の毛糸にしてくれる
●
「……唐突に落ちているな」
「……落ちているな」
はたしてこれはまやかしではないのだと、阿吽で現実を共有できる手っ取り早さ。
暗闇に、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)のなめらかな長髪が銀河をかたる。手を伸ばしたなら外野で誘う虹よりもずっとうつくしいと、星へ焦がれる幼子と相違なく――。
ただ、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)には今、確かに掴むことができて。
「話が早くはある」
「応とも。まさか空に放られるとは思わなんだが、先ずはこの雲を何とかするぞ」
細腕を掌中に収め、広げた白亜の竜翼が風を叩く。
如何なる高空に在ったとて、傍らの男が在るのなら焦る必要がないことは誰よりアルバが理解していた。ぐんと引く力に身を任せ、体勢を整えたのちにゆるり優雅に開く花傘で空中散歩と洒落込むまで。
白と白、まるで互いに翼持ちて空を遊ぶかのよう。
「ジジ。任せる」
「ああ。……雲は雲らしく浮いていればいいものを」
時間稼ぎを、そう、皆まで言わずともジャハルの次の手は迷いない。力持つ宝石の展開される微かな、しかし耳慣れた音に背を預け、蛇睨みは獏羊たちへ。
込められた呪詛。黒の底に、仄かに同族の七彩を見たろうか。
身を竦める、よりは魅入るような――ひととき、動きを止めたオブリビオンの毛皮を荒々しく撫でゆくのは吹き抜ける自然界の風のみならず。
充填した魔力を解き放ったアルバの術。グット・フェローズ。
「ふはは、見ろ、綿毛か何かのようで愉快よな。この調子で次も……」
ふと。 はてなで移ろうアルバの視線の先。
ぴゅーいと飛ばされゆく虹色がたちまち米粒と化す中、動かぬ……否、動けぬものが。ジャハルが鷲掴んだ一匹がわたわた宙を蹴っていた。
――ジジ、何を戯れておる。
その声以前に視線を感じたジャハルが出元を振り仰いだ。瞳に害意の色は鎮まり、代わって浮かぶを例えるならば――好奇。
「ふむ。師父よ、羊毛の質は悪くないぞ」
「お前はまた……全く羊毛なぞで燥ぐとは、……む」
もぎゅり。『めぇ』。物同然ずいと差し出された毛玉が、ポイしなさいと延べかけた手をすりぬけ、とってもアルバの頬にフィット。
実にやわらかい。ふかもふ。極上の枕……。そう、枕なのでは?
「これは中々……」
「だろう」
アルバが自ずから毛玉へ頬を寄せる図に、何故だか得意げなジャハルの眼差しは心持ち輝きが増す。
がしかし、獏羊にだってオブリビオンとしての矜持がある!
『めっ めえ~~~~!』
ぴかと闇夜に虹が弾けた。
空いた片腕でごくスムーズに目元を覆ったジャハルはさておき、日頃の睡眠不足が堪えたかもはや半分夢に浸っていたアルバへねむりの世界がぞわり這い寄って。
(「――どうだ、お前もうんと気に入るだろう」)
瞼の裏では弟子を七色に彩どっての新作練りに余念がなく。ないので……、べちんと己の頬を叩き、眠気払いを徹底していたジャハルは「成る程」との呟きを零すばかり。
「空中で寝るとは大物であるな。……ふ」
常からこのくらい素直に睡眠を取ってもらいたいものだ。
腕に再びアルバを支え、逆の手では掴んだままでいた獏羊をボウリング。さして力を要することもなくストライク、賑やかしい音が耳打つ頃にはハッとして飛び起きる宝石の男がいた。
「なっ」
「よく眠れたか」
「っ羊共め、恐ろしい業を使いおって……一匹残らずその毛を刈り取り、七色の毛糸にしてくれる」
一息に高められた魔力が煌めき湧く光伴い、アルバの周囲漂う宝石から撃ち出される。
暴走、の二文字が相応しい有様にジャハルの吐息も解けて。
「随分と派手な毛糸になりそうだ」
はじまる獏羊と師との追いかけっこ。
土産にするか。見送り、幾分ぬるむ竜眼の一瞥にすらぎゅんと縮こまった一匹を掴み上げたなら、観念したらしい鳴き声が漏れた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
柊・雄鷹
ハレちゃんと!(f00145)
いやー…夜空に七色の雲
遠目に見たらめっちゃ綺麗なんやけどなぁ
ワイは飛べるから良ぇけど、ハレちゃんどうするぅ?
お兄さんが補助したろか?お?お?
ここは【空中戦】一択やな
高い位置にいる敵から、下の方に落として行くでー
ハレちゃん、足場にするあらお好きにどーぞ!
お気に入りのダガーを【投擲】で攻撃
放ったダガーは【念動力】で回収、追撃してく
近寄って来た敵には、凍刃の鷹で『月下氷塵』やで
ぁでっ!?ちょ、ハレちゃん!ワイは踏んだらアカンやろ!!
えぇい頭を踏むな頭を!
うん?なんやハレちゃん、急に…人を盾みたいに
待って、こいつめっちゃピカピカしてき、た…
…ぐぅ
夏目・晴夜
ユタカさん(f00985)
いやはや、まさか空中に送られるとは予想外ですねえ
確かにこのハレルヤは神々しい存在ではありますが、
隣のオッサンみたいな翼もなしに飛ぶのは流石に無理です
そうですね、ユタカさん
今まで沢山ワガママ言ってごめんなさい……どうか補助してください
なんて言う訳ないでしょうが、馬鹿が
『喰う幸福』の高速移動は常時発動
近くの敵や人を足場に渡り行きながら敵を妖刀で【串刺し】にし、
斬撃や衝撃波で【なぎ払い】切り落としつつ進んでいきます
眠りを誘う光を放ってきそうな場合には、
ユタカさんのでかい図体や【敵を盾に】して回避を試みます
戦いの最中に寝る無様な姿を晒すのは御免です
はい、ユタカさんはさようなら
ばっさばさ。
ばさばさ。
「やー絶景やんなぁ! ハレちゃん、見てみ? めっさもこもこ! 虹! 雲!」
「いやはや、まさか空中に送られるとは。まったく絶景、絶景……」
諸々を押しのけるほど力強く、広げられた柊・雄鷹(sky jumper・f00985)の翼があたり一辺の風を混ぜる。
ので、ただでさえ"落ちている"というのに加速度アップ――真横をすり抜ける刹那、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)が抗議を込めその端を握りしめるのも無理はない。
ワイは飛べるから良ぇけど、どうするー? ……だったか。
「のわっ! なんややっぱお兄さんの補助が要るんか? お? お?」
「そうですね、ユタカさん。今まで沢山ワガママ言ってごめんなさい……どうか補助してください」
がくんと重みが増して、似たような高さまで引き摺り下ろされ瞬く鳥人と目が合えば声に科を作る人狼。紫にちらつくおねがいと呼ぶにはいささか凶暴な光は、辺りの闇より尚暗く――風に溶けて散ったときには、「なんて言う訳ないでしょうが、馬鹿が」。 ハレルヤに、翼など不要。
自らの意思で救いを手離したなら、あいた空白は刃を抜き放つ自由を得る。落ちゆくその先で虹色雲をこれでもか踏みつけて、跳ぶ。
隣人より、もっとずっと先へ。
翻る灰髪、装束、刀身。太陽が隠れども目に痛いほどまぶしく虹に照らされる晴夜の後姿。
「言うてくれるやん?」
惚け顔は一瞬、眇めた瞳は旅人めいた。そうこなくてはと喉鳴らし鷹が追う。いっとき伸ばしかけた手は、しかし、押し付けるためのものではない。懐から滑り落ちるように宙へ零れたダガーたちがぶつかり合えばかしゃんと音立てて、靴先で蹴り上げた一本が指へ馴染む。
――足場にするならお好きにどーぞ!
告げて夜へ放った刃はもちろんただのお飾りではない、のろい動きの獏羊をあっという間に毛刈りしてしまう優等生だ。
「ちょっとオッサン、毛が口に入るんですけど」
「ホンマ? どんな味か教えてや」
きっと寒さを感じる間もないのは、間髪入れず過ぎる"悪食"が虹煙を突き抜け丸裸の獣をまとめて串刺すから。横へ払えば吹っ飛んだ先でも同族同士で玉突き事故のできあがり。
秒以下、すべてのダガーが段々に並んだ刹那を駆け跳ぶ人狼の戦いぶりはもはや地上と変わらない。握る妖刀が帯びた怨念がそれを可能にしていた。
ッカカカカ!
耳に鮮やかな音で的を射たナイフは念ずれば再び空へ舞い立って、まるで一本一本が狩りをする、飛び交う猛禽の様相。
まぐれで間近へ飛び込めたならば獏羊の最期はもっと悲惨。凍刃の鷹が爪を光らせ、瞬く間に氷漬けにされ落ちてゆく。
「"オッサン"として見本見せたらなな」
「…………」
じとり。いざ年上面をされると反発したくなる晴夜は十六歳。薙ぎ、宙を滑るうちにひたと指這わせ両手に構え直した刀を次なる足場、獏羊に突き立てては引き抜き。鮮血が水滴状に散る中を、蹴り跳んで――着地した先は虹ではなく灰毛。
「ぁでっ!? ちょ、ハレちゃん! ワイは踏んだらアカンやろ!!」
「ほら、言うじゃないですか。先輩は後輩にツラを貸すものだと」
「胸やし! あれ……ツラやっけ?」
えぇい頭を踏むな頭を! ……クールだった戦いぶりはどこへやら、わたわた両腕を振り回す雄鷹へ嘲りめいた笑みを滲ませてみせる晴夜。
――まったく、これだから。
長躯の奥手に光強める虹雲を見つけ、とんと。突き飛ばすかの押し出しをされたものだから雄鷹に見て取ることができた表情はそこまで。あとは目と鼻の先でこんにちはした獏羊さんとのお見合いだ。
「ま。 待って、こいつめっちゃピカピカし、て……」
「はい、ユタカさんはさようなら」
ぐぅ。
眠りの底へひゅるるる音上げ鷹男が落ちるのが、獏羊たちにはちょうど狙い目とみえたようで。
素知らぬ顔でそこを刈り取る晴夜の狩りは結果、大いに捗ったというわけだ。ありがとう! お兄さん!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
わあ、落ちるっ
笑いながら両手足を広げて
そしたらもふもふ虹色にひっかかって止まれるはず
ふかふかだ
でも抱き着いたままじゃいられない
ごめんねっ
立ち上がって羊を足場に
もふんとジャンプして次の羊へ
空でおひるねもたのしそうだけど
おちちゃったら大変だもの
ミレナリオ・リフレクションを準備
ねむくないねむくない
だいじょうぶっ
言い聞かせるように気合いを入れて
空を蹴ってジャンプする羊がいたら
その背にしがみついて一緒に高いところへ
攻撃してきたら武器受け
ほんとうににじいろのくもみたいっ
飛びながら周りの羊を斧で斬って
いっぱい集まってたら蒸気を出してぐるんと範囲攻撃
わわっ、おちないように気をつけないと
ふふ、なんだかたのしいね
リオネル・エコーズ
足元がなくなって体の中がふわっと浮く感じ
落下からの戦闘開始
どっちも超ビビッたけど…うん、コレはちょっと癖になるかも
高いとこ飛ぶのもワクワクするけどまずは翼広げて態勢立て直し
確か、上目指さないとなんだよね
もふもふタックルは受け止めたいのを我慢
旋回で回避しながら上を目指そ
でも全部素通りは難しそうだし、ふわふわ虹色に通せんぼされたら初めましてとご挨拶
こういうふわふわ見るのは、マジで初めてだし
きらきらカラフルで可愛いね
ほら、見ての通り俺は飛べるから、君達を踏まないよ
ただちょっと指差すだけで、とジャッジメント・クルセイド
マジでごめんね
知らない祭
魔法の花火
見たいものがあるから
君らが見せる夢は、今はいいんだ
そうだとも。
今日という日は今日限り、楽しまなくてはもったいない!
戦場にあって尚、ぱっと弾ける驚きも笑いもからふる。
「わあ、落ちるっ」
「ビビッたぁ、中身ひっくり返るかと思ったし!」
うんと両手足広げ虹雲羊に抱きつくオズ・ケストナー(Ein Kinderspiel・f01136)の傍ら、のびのびやわらか羊絨毯にて、リオネル・エコーズ(燦歌・f04185)はもう幾らか高くから落ちてきた弾みでぽょよと跳ねる。
体の中がふわっと浮いて飛び出してしまいそうな――それにこんなはじまりだなんて!
ちょっと癖になるかも、と眼鏡の位置をちゃっきり整える青年の面持ちもやはりわくそわ好奇の勝るそれ。似たようなトーンで声上げた二人ははたと視線を交わして、それから若干はにかんだように笑んで。
「ふかふか、だあ」
「ね……今からでもうちのカーペットになってくんないかな、無理かな」
ぽふ。 撫でるリオネルのてのひらはしかし、訣別の挨拶だ。
彼はオラトリオ。その歌声で、翼で空翔けて、朝を連れてくる約束を、世界としている。
ついた手を軸に宙へ飛び降り、広げる群青は背丈同様に立派。風に流されることもなくすぐに猟兵として、倒すべきを倒す態勢を整えた。これほど密集してのんびりされては、きっと後続の障害となるから。
「改めて――はじめまして。きらきらカラフルで可愛いね」
周りでは有無を言わさぬ毛刈りが横行しているものだから、思わぬご挨拶に羊はたじっ。本当にはじめて見るふわふわだから微笑ましい、興味深いと感じるリオネルの気持ちもやっぱり本物で――もっと見ていたくもあるけれど。
手を貸そうか、視線を向けた先ではオズもまた獏羊に別れを告げたところ。
「止めてくれたの、ありがとう。でもごめんねっ」
ジャンプ!
もふんと沈み込みながら次の毛玉へ着地して、その感触にまた綻んでしまって。ぶんぶん頭を振る百面相、拳を固めたからには男の顔だ。
虹のもこもこを波打たせ、足場が輝きだしたなら。
「空でおひるねもたのしそうだけど……今日のわたしはお祭りまで、よふかししたいんだ」
ちょっと悪戯っぽく。否、大人っぽく? 指を傾けてみせる人形が呼び起こすミレナリオ・リフレクション。ちょうど鏡写しをしたかの如く、手元から零れだす虹の光は羊雲を呑みあぶない眠気を雲間へ押しとどめた。
ねむくないねむくない、だいじょうぶっ。プラスアルファのおまじないめいて頬を揉むオズのキリリは途端に十歳は若返るも。
「――はっ。もしかして、その力があればいつでももこもこ出来るんじゃ……?」
「えっ。いつでも、もこもこに……!?」
なにやら閃いたらしいリオネルも、その点では同い年くらいかもしれない。
空飛ぶ毛玉に飛びついてまたがるオズの図はもはやプロのロデオであったし、リオネルの穏やかな眼差しものんびり浮いていたいだけの毛玉勢の警戒心を薄めた。
「ほんとうににじいろのくもみたいっ。ふふ、なんだかたのしいね」
ぷぎゅぷぎゅ音を立てているのは斧。
オズが振るうHermesが、蒸気を吐きながらお集りの皆さま方を一網打尽に斬り伏せる音。おっきな煙突から吐き出された輪っかみたいに白煙がぷかり! その度にびっくりした乗り物獏羊が慌て暴れるものだから、もっと高くへ跳べるのだ。
落っこちそうなスリルも笑顔で乗り越えて。届かなくとも下へはあまり戻れないけれど、大丈夫。 ひとりではない。
……怯えた視線を感じたリオネルは頬を掻いた。
「ほら、見ての通り俺は飛べるから、君達を踏まないよ」
掴まったり、切ったり。そういうのも――ただちょっと指差すだけで。
ビシャーンからの、ジュッ! 裁きの熱線は塞がれた筈の天高くから。団子になっていた虹雲はまとめて大気に解け、巻き上げながら風切って青年も空を追う。眠気は遠く。
(「マジでごめんね。知らない祭、魔法の花火。見たいものがあるから」)
君らが見せる夢は、今はいいんだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
境・花世
セロ(f06061)と
翼竜の背に乗るだなんて、まるで憧れの冒険譚みたいだ
きっとわたしの役は勇者だね
きみはシーフでウィザードの――うん、セロ役がぴったりだ
それじゃあ、バックアップは任せたよ!
言うや否や空中高くジャンプ、
射程に捉えた虹の毛を掴む
燔祭を植えて花を咲かせては
次の羊へと身軽に跳び移って
はい次、っ、え、わ、まぶし、
きらめく反撃に思わず手を離せば
翼持たない身は真っ逆さま
だけどだいじょうぶ、きみがいる
受け止めて貰ったなら晴れやかに笑って
完璧なセロ役だ、そう、きみにしかできない
虹帯びる白のふんわり髪に羊の感触を思い出して
ひっそりと手をわきわきさせながら
さあ、モフ……戦いの続きをしにいこうか
セロ・アルコイリス
花世(f11024)と
落下の感覚と花世の言葉にわくわくするのは仕方ない
ええ、おれはおれのまま
おれは盗人で、魔法使いですから
勇者サマを冒険にお連れしましょう
さぁおいで──ラファガ
おれの愛し仔
虹色、ちょいと親近感ありますが
容赦はしねーですよ
花世が飛び降りたらおれも続いて
はい、任されましたとも
虹の毛並み足場をそっともふりつつ
花世の資格から来る敵へ銃撃し
サポートメインに立ち回る
勇者サマを常に視野に入れて
お互いが落ちそならすぐ【突風】で対策を
虹色に花が咲いてくのはすげー綺麗だって
素直に感嘆しながら
まともに教わってねー、見て盗んだ魔法ですから
振り落とされないようにしてくださいね
まだまだ行きますよ、勇者サマ
いまや逆さになった天と地。
夜空に底などあるものか。ずっと、果てない行路の続く予感に胸へ去来するものは、わくわく。
「きっとわたしの役は勇者だね。きみはシーフでウィザードの――うん、セロ役がぴったりだ」
「ええ、おれはおれのまま。勇者サマを冒険にお連れしましょう」
風受けて。境・花世(*葬・f11024)が見つめる先にはセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)。
盗人で、魔法使い。
欲しいを手に入れる、叶わぬを叶える。翼ならここに。さぁおいでと呼ばう声が終わらぬうちに、呼び名の主。愛し仔たる翼竜、ラファガが大空を突っ切って舞い降り、勇者ご一行を掬い上げた。
翼竜の背に乗るだなんて、まるで憧れの冒険譚!
風刃に巻き上げられた虹雲たちがくるんくるんと揺れて躍って。
「それじゃあ、バックアップは任せたよ!」
感謝を込めひとたびだけ指先に触れた、穏やかでいて格好良く、凛と頼もしい友の背を蹴り跳んだ女の薄紅が降る。宙へなびくはベールのように霞む色彩。
それが虹景色に重なる様が色の深みを増すようで、ああ、ここに月がないことだけが惜しい。
「はい、任されましたとも」
ほんの留守でも任されたような気安さで、応えるセロは骨董銃を引き抜いた。続いてラファガを飛び降りれば次に選んだ身の置き場は大きめの獏羊。
虹色。
「ちょいと親近感ありますが、容赦はしねーですよ」
……着地のためという名目でついた手のいちもふくらいは許される筈。
ふんわりやわらか。なんだかあたたか。只人なればあと一回、もう一回と夢中で触れかねないところ、勇者様へ寄り付かんとす輩を第一に見逃さぬのはなにせ"セロ"なので。
ぽわんっ。
弾丸に貫かれた獏羊が音を立てて弾ける。その出処を花世が確認するまでもないのは、誰が何をしてくれたのか分かっているから。
自然口元は綻んで、見据える脅威が如何なる化物だとして恐るるに足らぬと、――そう。
「お前には、こっち」
花をあげよう。
咲かせてあげよう。
貫手の如くにしなやかに、指を埋めた虹毛玉はちょうど、花をつけぬ茂みにも似て。故にだろうか、植えつけた種……媒介道具・燔祭がたちまち魅せた爛漫が一等映えてみえるのは。
セロが零すは素直な感嘆の吐息。
「すげー綺麗。そのいきもの、ますます人気が出そうですね」
「あは、本当? でもね、もう散っちゃうんだ」
ぱっと咲いてぱっと散る、まるで花火の儚さ以て、褪せる花弁は宿る獏羊のいのちをも連れ逝く。あざやかで、うつくしく、残酷な死。 与う花世は死神と称するにはひどくきよらなまま、身軽に飛び移りていくつもの花を増やすのだ。
「はい次、っ! え、わ、まぶし、」
獏羊による反撃はまちまちで、特段輝きの強いものが必死に抵抗してみせたものの。
空を滑り落つひとときの浮遊感だって大冒険のひとつと数え楽しめるのも、ひとえに。
「――こんなモンでいかがでしょうか」
「完璧なセロ役だ、そう、きみにしかできない」
晴れやかに笑いあえるきみがいるから。
まともに教わったためしのない、見て盗んだだけの魔法。だからとの忠言をもきっと、それでこそと瞳輝かす余裕があった。
「まだまだ行きますよ、勇者サマ」
華麗な空中キャッチを決めて間もなく、翼竜の起こす突風が、宝を抱くように二人の冒険者を包み込む。
すっかり寄りつけぬ状態となった獏羊が立ち往生するのを、ひとつずつ弾丸が落としてゆく。古めかしい、しかし精巧なつくりの銃はおしゃべり。ちいさく火花が弾けて。夜空と同じ色の煙が漂って。
それがセロの虹帯びるふんわり髪を過る様子が羊の手触りを思い起こさせるものだから、なんとなし見送っていた筈の花世の指はついわきわき。
「もちろん! さあ、モフ……戦いの続きをしにいこうか」
手はじめにあの空まで!
憧れは、理想は、夢に見ずとも生くてのひらのうちに叶う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎
あら、リィの好きそうなもふもふがたくさんいるわ
抱っこはダメよ!
空を飛ぶならあたしに任せて
これでも龍だもの
リィをしっかり抱え、枝垂れ桜の翼広げる
さぁ!いくわよ!
『麗華』でもっと麗しく軽やかに飛んでいくわよ
羊さん、踏み台にさせてもらうわよ!
片手に刀、片手にリル
リィの笑い声に微笑んで
けど油断はできないわ
翼から放つは生命力吸収こめた衝撃波
食べた生命力も頂くわ
攻撃は見切り躱し行く手を阻む敵は刀でなぎ払う
リルの歌が響いて羊がとまったら、容赦なく踏み台にさせてもらっちゃいましょ
こんなに高く飛んだのは初めてよ
うふふ、照れちゃうわ
あなたとならどこまでも!
ならリルは空飛ぶ人魚ね!
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎
わぁ、ふわふわの羊、だ!
空を飛ぶの?
僕は、空を泳げはするけどそう高くは飛べなくて
嗚呼!君が抱っこしてくれるなら安心だ
羽ばたく枝垂れ桜翼に舞い上がる桜吹雪、綺麗だと瞳細めながらしっかり掴まる
あはは!すごいね!
ちょっとかわいそうだけど羊を踏んだらきっと、もっと高くとべる
歌唱に込める、櫻宵への鼓舞
もっと高くへ飛んでよ、櫻
そう、羊が動かなけらばもっと飛びやすい
とろり誘惑込めて歌うのは『魅惑の歌』
地に落ちる前に舞い上がってくれ
タックルは僕がオーラ防御の水泡で防ぐよ
足でまといになんてなりたくない
空駆ける木龍はとても綺麗
天女、ていうんだっけ
君とならどんな高くまでも飛んでいける
●
誘名・櫻宵(屠櫻・f02768)とリル・ルリ(想愛アクアリウム・f10762)の二人は空を往けるから。
突如として投げ出されたことよりも、同じだけ視界一杯に現れた虹色の雲にぱちくり。
「あら、リィの好きそうなもふもふがたくさんいるわ」
「わぁ、ふわふわの羊、だ!」
ぎゅっとしてみたい――リルの尾鰭がはたはた空を打ちて彼らへ近付きたがるのを、櫻宵の腕が後ろから抱き留めた。眠たくなるからダメ、とやんわり囁いて。
「空を飛ぶならあたしに任せて。これでも龍だもの」
「嗚呼! 君が抱っこしてくれるなら安心だ」
ドラゴニアンである櫻宵と比べれば、空での泳ぎはそう自信がなかったから。星の見えぬ夜を背景に、枝垂れ桜の淡い花弁をほろり零して開かれた翼は雄大で、美麗で――。親しんだ桜吹雪が頬を掠めてゆく一瞬までもがいとおしい。
瞳細め、回された手に手を重ねるリル。
「櫻。おねがい」
「ええ。さぁ! いくわよ!」
大切な重みに桜花がさざめいたそのときには、準備は万端。ユーベルコードの力も受けて、艶やかに花化粧を纏うた木龍が空を蹴った。
天人の羽衣の如くにほのかに色付いた和服の袖が、裾が、帯がたゆたう。獏羊にとってそのひらひらはとても目で負いきれる範疇を超えていて。
むぎゅう。
いちかばちかの体当たりを決めたところで、この通り。うつくしくも存外武闘派なおみ足の餌食となるというわけだ。あとは帯びた香り立つ衝撃波に散らされるのみ。
「羊さん、踏み台にさせてもらうわね!」
「あはは! すごいね!」
『めぅ』としぼむ鳴き声はちょっとかわいそうではあるものの、てんてんと高く、もっと高くへとかろやか突き進む櫻宵の姿とその腕の中で感じる花嵐は、リルの心を華やがせるのに満点!
つられて微笑みが零れ――とはいえ油断は禁物。片手にリルを。もう片手に刀、屠桜を携えた櫻宵は体を傾け待ち受ける羊雲をすりぬける。すれ違い様、刃を通された一塊がふぁさり解けて落ちていった。
「もっと高くへ飛んでよ、櫻」
「ふふっ。特等席から見ていてね?」
ほんとうに、綺麗。
とはいえリルもただの観客に収まる気などない。こぽと無へ生み出した水の泡は雨粒ではなくオーラの一、駆け来た虹雲を包みこみ囚えてしまって。
こいしたう言葉の地続きで、唇が紡ぎだすは魅惑の調べ。舞と歌。完成された二人の舞台、せめて間近に味わえることだけが獏羊らの救いであったろうか――。
澄み渡る歌声にとろり意識を繋がれて。
しゃん、と、銀の飾りが音を立てたなら血桜の太刀に撫ぜられている。
文字通りの特等席。
櫻宵の枝角にひっかかった虹綿をリルが摘まむのは、もふもふしたいからじゃなくて、"僕の"だから。
見る間に地上は遠のき、羊獏が減るほど"天井"、次なる脅威が大きく映った。
こわくはない。海の底、未だ見ぬ大地、空の上――どこでだって二人なら。同じ指で、整った頬の輪郭をなぞればぱちりと色めく花霞が向く。衣が揺れる。 ……嗚呼まるで、
「天女、ていうんだっけ。君とならどんな高くまでも飛んでいける」
「うふふ、照れちゃうわ。あなたとならどこまでも!」
ならリルは空飛ぶ人魚ね!
手向け合うきもちには互いに飾ったひとつもなくて。
――世界中のどんな言葉でだって言い表せないくらい、うつくしいひとだと想っているけれど。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤと(f10892)】と
「迷子になるなよ」は俺のセリフだ
……頼むから落ちるなよ
幼子の読む絵本のような景色だな
よし、起きてるか試してやろう(リリヤの頬を引っ張る)
なんというか、よく伸びるな……
登っていく為の手段はリリヤに任せよう
念の為、落下対策に風の精霊を呼んでおこうか
呼び出した精霊は弓にしておく
進行を妨げる者がいれば風の矢で射るとしよう
剣を使う必要は……恐らく無いだろう
可愛らしい見た目だが、危険である事に変わりはない
容赦などはせずに倒しておこう
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
わ。わ。空です。おそらです。
ユーゴさま、ユーゴさま、迷子にならないでくださいましね。
わたくしはだいじょうぶですもの。
ユーゴさまよりも、軽いのですよ。
ふわふわの七色は、まるで夢の中のよう。
ゆめではありません……よ、ね? 起きています。起きているのです。
!?
(頬がのびる)(とてものびる)
もーっ、もーっ! 起きていると申しましたのに!
目指すのは、ここよりも高い場所。
鐘を鳴らして、蔦草を伸ばしましょう。
空から翠。翠から竜巻。
ぐるぐるとらせんを描いて絡めて、ふわふわを足がかりに上へ、上へ。
かわいらしいけれど、わるいもの。
ここにいては、いけないもの。
どうぞ、おやすみなさい。
ユーゴさま、ユーゴさま、迷子にならないでくださいましね。
おそらです――ばさりと好き勝手はためいては捲れ上がるローブを押さえ、リリヤ・ベル(祝福の鐘・f10892)の瞳はきもちキラキラ度を増す。
いまにも遠く高くへ吹き飛んでいってしまいそう。
「迷子になるなよ、は俺のセリフだ。……頼むから落ちるなよ」
「わたくしはだいじょうぶですもの。ユーゴさまよりも、軽いのですよ」
だからこそ逆に心配なのだ。ユーゴ・アッシュフィールド(灰の腕・f10891)の伏しがちな双眸は少女の分も二倍の働きをするみたく、周囲を冷静に見渡す。
猟兵を前にした獏羊とやらはあの調子だ。剣を抜くまでもないだろう。
……とはいえ。
傍らで両手を広げて風に遊ぶ幼子によく似合いの、虹雲に囲まれた此処は既に絵本か夢か。
「ゆめではありません……よ、ね? 起きています。起きているのです」
わくわくと幾ばくかの不安、混ざり合ったリリヤの指がちょいと装束の端を引いてくるのに、ユーゴは瞳の色を深め。わずかに屈み。
虹雲以上にやわそうな娘っこの頬をむにー。 引っ張った。
「――!?」
「よし、起きてるか試してやろう」
「もーっ、もーっ! 起きていると申しましたのに!」
むにむに、わたわた。よくのびる。ちいさな両手を目一杯ばたつかせて抗議する様など、本当に羽ばたくみたいで。頬から離した指は宥める風に、ちいさな娘へそうする風に、背へとんとんと添えた。
「行けるな」
なんでもないことのように、解しては伝えてくれる、おおきな安心感。
こどものままでいてあげる――――こどものままではいられない。
むくれたフリでリリヤの打ち鳴らす鐘の音は信頼へ応えるもの。
「ほら、ユーゴさま。わたくしにはこんなこともちょちょいなのですから」
ユーベルコード・真鍮の鐘。
二人を道案内してくれるのはしゅるしゅる伸びてゆく蔦草たち。翠で絡め取る獏羊はさながら人生ゲームのマス目のひとつらしく、大層だ、と称えるユーゴの声に一層、青々。
万一の落下対策としてユーゴが呼び出した風の精は矢の姿を取り、往く先を開いた。
虹雲を愛らしいと思う心こそあるが、容赦などはしない。
とんと射られて『めぇ』。寄り集まって壁を成したところで、嵐の如き速射で蹴散らされるときは一瞬。虹の光が空から地へふうわり落ちる様は、遠くから眺めたならどんなに絵になることか。
かわいらしいけれど……わるいもの。
「どうぞ、おやすみなさい」
ここにいては、いけないもの。
靴底で踏みしめたむぎゅりとした感触にも前だけ向き、できるだけの大股で駆けるリリヤ。いつも追っている気がする男の背が前にないことはなんだか、不思議。広めの隙間を飛び越えるためジャンプしたとき、横殴りの風に流されかけてハッとして。
「きゃっ」
けれども、大丈夫。
節くれだったユーゴの手が、こねこ相手みたいに黒フードの付け根を引っ張り上げるから。
見失わず、溢さずいてくれる――間近で見つめるしずかな碧に息を呑むも束の間。
「やはり、もうすこし食べた方がいいんじゃないか」
「――……っ」
レディですのよ!
娘の足が宙で暴れる前におろしてやったなら、旅の再開といこう。
障害の排除と足場の確保。
保険をも用意した二人の分担は徹底していて乱れなく。結果として、獏羊はすやすやと夢見るままに。
おとぎ話のひとつみたく、編み上げた螺旋階段のてっぺんまで、あともうすこし。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
わわっ……!?
慌てて翼をはためかせて、ヨハンへと――
伸ばした手は空を掴んだ
私が抱きかかえて進んだ方が、色んな意味でよくない……?
まぁ、ヨハンにもきっとプライドがあるんだろうな
君に構わずなんて無理だよ
行こう。同じペースで
ヨハンこそ、寝ちゃわないように気を付けてね
フォローは任せて!
彼がバランスを崩したらすぐ助けられるように、傍を飛行
足場になる獏羊には手を出さないけど
タックルしてくる個体は槍で一突き
邪魔しないでくれる?
自分の防御はすっかり手薄に
眠らされて、落ちた夢の世界では
ヨハンと私、弟のネクが三人で談笑していて
……それは幸せなひとときで
寝顔もきっと、ほんのり笑んでしまう
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
【WIZ】
いや、この場所への転移というのはどういうものかと……
……ああもう
一先ず彼女は自前の翼があるから大丈夫だろう
抱えるなんて言い出される前に、指輪から闇を出しもこもこした物体へ向ける
縛りあげてぶら下がり
落下は防止できましたけど……この調子で上まで行くのか
ため息ばかり零れそうだ
敵を踏み台にしながら上へ向かう
オルハさんは俺に構わず飛んで行ってください
眠らされないよう気を付けてくださいね
……って言った傍からなんで眠らされるんですか……!
確りと抱きかかえ、足場も確保し一息吐き
はぁ……幸せそうな顔をしてやがる。やれやれ
仕方ないので背負ってまた上を目指します
出来るだけ静かに
いや、この場所への転移というのはどういうものかと。
「わわっ……!?」
「……ああもう」
息吐くヨハン・グレイン(闇揺・f05367)のすぐ近く、視界の端では翼持つオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)が素早く体勢を整えている。ひとまず彼女がそうと在ればいい。
次に取られる行動と台詞は察していたから、眼差しは敢えて獏羊を睨めつけるまま闇の力を解放したのだ。
「っヨハン! だいじょ……」
「この通り、なんとでもなるので」
お気遣いなく。……虹風船で空の旅などとファンシーな体験、これっぽっちも興味はないが――オルハに抱きかかえられての旅よりよほど守られるものは大きい。撃ち出した影色で虹雲を縛り上げ、器用にもぶら下がったヨハンはやはり涼し気な顏をしていて。
「とはいえ長居もしたくない。さっさと引き摺り下ろしてやりましょう」
「う、うん」
(「私が抱きかかえて進んだ方が、色んな意味でよくない……?」)
抱き留める筈が空を掴んだだけの両手をにぎにぎしていたオルハであったが、他でもない彼のこと。そこに見え隠れするプライドを汲めば、寄り添って上を目指すことにした。
使い込まれ、しかし手入れの行き届いた三叉槍が閃いては行き先を広げる。
穂先で抉らずとも巻き立つ嵐にすらぽんぽん跳ね飛ばされてゆくオブリビオンは、本当にただ風に流れてきただけなのやもしれない。
「オルハさんは俺に構わず飛んで行ってください」
「君に構わずなんて無理だよ」
行こう。同じペースで。
――譲れぬ部分は大事に抱え。自前の翼で飛び回り、足場を気にせずに済むオルハは視野も広い。獏羊がもぞもぞ蠢いて体当たりの兆候を見せたなら、手にしたウェイカトリアイナでたんと一突き!
……頼もしい限り。
そうして沈みゆく虹雲をも足場のひとつに数え、すっかりバランスを心得たヨハンが傍らを跳ぶ。こうなってしまえば地上と大差ない。残る問題はひとつか。
「では、眠らされないよう気を付けてくださいね」
「ヨハンこそ、寝ちゃわないように気を付けてね。フォローは任せて!」
目の届くうちに居てくれた方が心配事が減るのは確かではあった。己よりも相手、と、互いに優先順位が明確であったから。
眼前、広がる暗夜。たとえここに虹の光が失せてしまっても、耳に届く羽音、曇らぬ声が道をしらせてくれるとヨハンは知っていたけれど。
――急に静かになるものだから今日一番に肝が冷える。
「って言った傍からなんで眠らされるんですか……!」
「むにゃ……」
元凶たるピカピカ羊は蹴り飛ばす!
次なる足場の確保よりも昏睡したキマイラ娘へ指を触れるが先決で、宙へ飛び出し、伸ばした両腕にしかと抱きかかえれば二人分の重みで世界は早回り。
咄嗟の判断で広げた闇、掻き集めた獏羊がいい具合のクッションと化して数メートル下方で恋人たちを受け止めた。
「は……、とんだ大冒険だ」
ぷぎゅいと賑やかしい音が立ったって起きやしないオルハ。寝顔は心地好さげな笑み湛え、ふわふわとした獣耳と翼とが風に撫でつけられほのかにジャムの香りがする。
しあわせを甘く煮詰めたような。愛するひとと、弟。そして自分――なごやかに笑いあう、願い、叶わぬひだまりのゆめ。
「はぁ……幸せそうな顔をしてやがる」
ヨハン何度目の溜め息だったか、それは多分に安堵の色を含んで。
叩き起こすこともなく、眠り姫をやれやれと背負うのは"仕方ないので"。
二人で進んでゆくことには変わりない。……踏み出した歩みは、できるだけ、静かに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蘭・七結
ナユは、この極彩の世界がすきよ
彩が枯れ果ててしまうのは、かなしいわ
嗚呼。おちてゆくのも、わるくない
重力とともに、奥底へと向かう感覚
なんだか、とてもたのしいわ
少しだけ堪能をしたのなら、天井を目指しましょう
おいでカイン、アベル
対となる双子の人形を喚び出しましょう
ナユに、力を貸してちょうだい
ぐるりぐるり、巻き付く糸たち
空中での戦いは、心が踊ってしまうわ
宙を舞い踊るように、ジャンプをかさね
なんて、やわいのかしら
月も星も隠れ、くろに塗りつぶされた天色
くらいだけの闇は、つまらないわ
ナユが、彩を添えて魅せましょう
うつくしい色を、ご覧あれ
〝極彩式・峻厳〟
暗澹を塗り替える、七色の彩
嗚呼。なんて、まばゆいのかしら
深海・揺瑚
ふわふわ、随分と気持ちよさそうね
いい夢を見させてくれるらしいけど
私、夢は見ない主義なの
空は自分たちのもの、なんて態度も気に食わないわ
少し離れたところからスカイステッパーで攻撃されない程度に様子見を
自慢のヒール、空だって飛ぶのは自由よ
他の猟兵と組んで効率よく捌きましょ
名乗りが必要ならばミミとだけ
しっかり戦況を見極めて、他の猟兵たちの討ち漏らしは属性攻撃で仕留めておきましょう
攻撃態勢に入ってるもこもこを見付けたら優先的にたたき落とすつもりで
ちかり。 青海の宝石がきらめいて。
闇夜にひとつの彩が増え、そうしてひとつをかき消した。
海の中よりもずっと派手にドレスの尾鰭が揺れる。巧みに空を翔け、"泳ぎ着いた"深海・揺瑚(深海ルビー・f14910)が見舞う蹴りに獏羊はひとたまりもない。
「ふわふわ、随分と気持ちよさそうね。いい夢を見させてくれるらしいけど――」
私、夢は見ない主義なの。
もう一匹。今が好機と飛び出してきたもこもこタックルを毛皮についた両手で軽々飛び越えて、跳ね飛ばされるでもなく宙で捻ったからだは直に靴先を叩き込む。
数拍遅れて煌びやかな装飾たちがしゃら、と、響かせる音で女を飾り立てた。
戦いぶりは水の申し子か踊り子のように。するりとすり抜け、しかし痛烈に過ぎる足技が尊大な口振りを実力者のそれと裏付ける。
そんな、虹が舞い落ちる暗闇。
蘭・七結(恋一華・f00421)は引く星の重みにしばし身を預けて漂い、耳を心を澄ませていた。
奥底へ。 おちてゆくのも、わるくない。
「……ねぇ。なんだか、とてもたのしいわ」
語り掛ける彼女の傍ら、喚ばわれたカインとアベル――双子の人形はしずかに供をする。このまま黙って地の底へ辿り着いてもきっと、瞳に湛えた綺羅星が曇ることはないのだろうけれど。
こころを、問われているような気がして。微かに笑めば、二体の手を引く白々とした七結の指。
「ナユは、この極彩の世界がすきだもの。力を貸してちょうだい」
お遊びはおわり。
はたして声を汲んだのか、人形たちより直後に空へ放たれた糸は主の身をくんと引きとめる。
巻き付ける先はもちろん虹雲。目先の揺瑚との戦いに必死でいた彼らは下方から伸び来た縛めに慌てふためくばかりで、暴れ、絡む糸を自ずと難しくしてゆく体たらくだ。
これに眉を上げ小気味よさげにしたのは揺瑚の方。指先で弾いた水泡をぶつけ相手取っていた個体へさよなら告げれば、そばへ降り立つまで数歩。
「大漁だこと。どう、泳ぎは愉しめた?」
「ええ。空はこんなにも、ひろいのね」
駆け抜けがてら伸ばした海色のマニキュア馴染む手が糸の先を引くと、絨毯……もとい獏羊の上へと招き上げられた七結はちいさくお辞儀をひとつ。
世界の果てまでを望むみたいにひとたび限り視線を巡らせて――あわく綻ぶ口元。
月も星も隠れ、くろに塗りつぶされた天色。
くらいだけの闇はつまらない。もっとすてきなものを瞼のうちに、描き出せるから。
「ナユが、彩を添えて魅せましょう。――うつくしい色を、ご覧あれ」
唱えるはセラフィム・ボアズ。
ブランコに興じる風に糸を手繰り、高みへと躍って舞って、少女の一動に添うて溢るる花弁は天上の芳しさ。虹を帯び咲き散る香も艶も到底、毒を孕むとは思い至らぬ麗しのまぼろし。
――否。或いは故にこそ、であろうか。
うつくしきものが持つ棘。ひとの言い伝えなぞ知りもしない獏羊らは、恍惚と飛び入るようにしてその血肉を花弁のひとひらずつへ似通わせていった。
暗澹を塗り替える、七色の彩。
(「嗚呼。なんて、まばゆいのかしら」)
「いいね。空や海は一色だって決まっているの、もったいないと思っていたのよ」
楽しみながらも、オーロラがかったどの色にも染まらずに。ゆっくりまたたく七結の脇を過ぎる群青の魚の見据える先は、花が織り成す海、その向こうの巨影。
纏わる虹を踏み越える足元で水が弾けた。
誰に乞われずとも銀河に散る屑星にも似て。
――泳ぎたいままを泳ぐ。大空も大海も、揺瑚にとっては自由そのものであるからこそ。
空は自分たちのもの、だなんて気に食わない態度。打ち砕いてやらねばなるまい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『災厄の浮島』
|
POW : 竜の巣穴
【「炎」「氷」「雷」属性のドラゴンの群れ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 空を照らす光
【触覚から放たれる閃光】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体当たり】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 雲隠れ
【口】から【雲状の吐息】を放ち、【視界を遮ること】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:彩
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「宇冠・由」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
やがて。
雲を突き抜けた瞬間のように、ひといきに視界は晴れた。
"天井"が。世界へ影を落としていた巨体が、地鳴りに似た音を轟かせながらその身を翻したのだ。
呑み込まれたならひとたまりもなさそうに大きな、真っ赤な口。
青空の瞳と、大地を思わせる橙の肌。頭に備えた流星は輝く緑。
月明りが照らすシルエットは、深海の魚――に、よく似ていただろうか。
背には豊かな緑に岩石の山が聳える。島のような、とは物の喩えではなく、実際に島だったとでも? しかしそこに暮らすものは人間ではなく、いまもああして頭を覗かせているドラゴンたち。
彼らが口々に声を上げる。翼を広げる。猟兵へと向かい来る。
どうやったって理解のできぬ言語ながら、きっとこんなところに違いない。
『ぼくらのバカンスを邪魔するなんて!』
『八つ裂きにしてしまおう!』
『だれの空だと思ってるんだ!』
――――。
頭を低くして鰭を、身を捩る浮島。空気をびりりと震わせて。
これは恐らく、突進の――そうした構えであると理解するのは言葉よりよほど簡単だ。
遠く地上では人々が"空"を見上げている。
見るものの心を震わせる魔法の一夜はもう、はじまっていた。
須藤・莉亜
「おお、これまたでっかい敵さんだ。」
…ふむ、空は広いし、出しても大丈夫かな。
世界喰らいのUCを発動。強化した腐蝕竜さんを召喚してでっかい敵さんを攻撃しよう。
腐蝕竜さんには、爪での引っ掻き、体当たり、尻尾でのなぎ払い、噛みつきなんかで攻撃してもらう。
僕は彼の上で近寄ってくるドラゴンと遊んでよう。
悪魔の見えざる手にLadyを持たせてぶっ放してもらいつつ、僕は大鎌で攻撃。チャンスがあれば、深紅で動きを止めて適当な所に噛み付いて【吸血】。
ドラゴンの攻撃は殺気を【第六感】で感じ取り、動きを【見切り】回避。【武器受け】で防ぐのも忘れずに。
「なんだろう、怪獣映画見てる気分。」
お酒とツマミがいるねぇ。
エンジ・カラカ
なーんか言ってる。何て言ってる?
白黒の仔竜に問いかけて、そうして賢い君に問いかけようカ。
なんでもいーやー、いーやー。
あーそーぼ。
アレはお前らの仲間?仲間かもしれないなァ……。
白も黒も全然似てないケド。
口から吐き出す物も全然違うケド。
楽しそうなヤツなのは間違いないなァ……。
賢い君ならわかるだろう。
そうだそうだ、今回はとびっきり綺麗な炎を見せよう。
指に絡めたアカイイト、いとおしいアカイイト。
浮かぶ島に着地してアカイイトを結ぶ結ぶ。
白黒の仲間なら賢いだろうガ、お前はそうじゃ無いンだろうネェ。
賢くないならいらない、いらない。
賢くないなら沢山遊べない。
ケド……じゃれつきかたが激しすぎる。
大人しくしろヨ?
深海・揺瑚
だれの空だと思ってるの?
あなたたちにあげるぐらいなら、全部私のものにするわ
とっととそこ、退いてちょうだい
空は十分楽しんだし、今度は下からいってみようかしら
これだけいればドラゴンも撃ち落とし甲斐があるわね
ひいふうみいよ、狙いを定めて
目立たず景色に溶け込む剣は屑ダイヤ
何体撃ち落とせるか、誰かと張り合ったりも楽しそう
ドラゴンからレアものドロップとかあればやる気も倍増しなんだけど
空へと上がる人がいれば、オニキスの剣を打ち出し足場に
仕方ないから手伝ってあげる。それなら見えるでしょ?
下からの攻撃に当たるなんてドジは踏まないでね
まず感じたのは、暴風。否、もはや拳骨の一発に近い。
ごおっっっっと吹きつける嵐は他でもなく浮島が生じさせたもの。そうして蜘蛛の子散らされると表現するにはいくらも機敏にそれを切り抜けたのが、今宵の魔法使いたちだ。
「おおー。これまたでっかい敵さんだ、食いでがありそうだねぇ」
「アァ……でざぁとにも困らないなァ」
ドリルよろしく回転の力を帯びて大気の壁を突き抜けた莉亜に、そこいらのデザートもといドラゴンの首を括り楔としたエンジ。首骨をへし折る傍ら狼男が着地した岩肌は大魚の、ちょうど背中のあたり。
危なげなくヒールの底でかつん、踏み鳴らし降り立った揺瑚も、"落としたて"のドラゴンヘッドを背に髪を払っていた。
「文句があるようだけれど。身の程って言葉はそっちの言語にもあるかしら」
だれの空だと思ってるの?
――女の周囲にふつふつと水泡が漂う。瞬時にかたちを変じさせたそれが模るものは、剣。真珠めいたなめらかさを持つ鋭利な刃。
百を数えるうちの一本を手に収めれば、差し向ける先では向きを変え、振り返る大魚が牙を見せた。怯むどころか来ればいいと、むしろ鈍間と言外に顎を上げて眇める赤の瞳が語るは言語の境をも越える、……傲慢で、強欲な、The world is mine。
「あなたたちにあげるぐらいなら、全部私のものにするわ」
とっととそこ、退いてちょうだい。
――当然ながら待ってやるほどやさしくだって、ない。
一斉に飛び立った珠玉の剣は浮島を削り、ドラゴンの肉体を啄みながら蹴散らしてゆく。
翼に穴が開けば空を上手には進めない。崩された体勢、なんとか持ち直さんと頭を上げたところでぬうと真上に"天井"が近付いたことに気付くのだ。
『ギ、』
「やあやあ、"彼"も仲間に入れてやってよ」
すでに酒の一杯でも引っ掛けているのか抑揚の薄いダンピールの姿なき声は、さらに高くから。 びちゃり。ドラゴンを濡らす水は雨粒ではなく唾液。
天井は――莉亜の遣わす巨大な腐蝕竜は――ぱっくり大口を開けて、並んだ牙で食事をはじめた。
お残しはなしと貫いてゆくぶっとい弾丸はライフル、それを手繰るオーラ、悪魔の見えざる手によるもの。数拍遅れの爆炎に紙切れの如く散りながら、零された断末魔のさけびはくぐもっていて。
「なーんか言ってる。何て言ってる?」
頭上よりぼとぼと落ちくる血に肉片を掻い潜って走るエンジは糸遊びの最中。
問いかけられた白黒の仔竜はばらばらの方向へ首を傾げるだけであるし、賢い君もまるで興味はない模様。かわって吐き出される赤き糸の殺意こそ満場一致の答え。
そう、"なんでもいい"のである。
「あーそーぼ」
チキッと風を引き裂いて、放出された糸はとびっきり綺麗な炎を見せてやるために欠かせない。
結わえ、絡む指の傷跡から滲み出たかの真紅は獲物に辿り着けばすぐさま燃え立って、業火、地獄の窯の中ですら体感できぬほど情熱的に――狂愛的に求むるままを焦がす。
はたして、その獄へ水纏い突き立ったつるぎはのたうつ竜らを癒すのか。
屑ダイヤのひそやかな煌めきに炎色を躍らせるのに、氷みたく溶けはしない。ひどく冴えるまま胴から首を解き放つ様はあるいは赦し? …………。
「ひいふうみいよ、っと。気分がいいから、今のは半分に数えてあげましょうか。エンジ」
「いいや? それじゃあコレがすーぐ腹一杯になってしまう」
とんでもない!
二人は"数"を競いあうように得物を振るっていた。遊戯に情けなど介在するものか。
フッと笑い飛ばす揺瑚がオニキスの暗黒を溶かし込んだ魔法剣を放つのと、高く跳躍したエンジが背に迫ったドラゴンの突進を躱し、宙返りで黒き足場へ降り立つは瞬きの間。
「ドジを踏んだらマイナスカウントね」
「ククッ」
お次は目を回す彼らへごうごう追い縋る赤糸と炎がトドメを演出、寸でで抜け出たものについては水の刃が杭撃ち標本作りに勤しむまで。
「あー、僕も数えてればよかったかな」
楽しそう、などと口にはするが腐蝕竜に乗って見下ろす莉亜のやり口も気儘の最たるもの。
腐り落ちし竜の爪、弾丸、血呑みの刃がひとつの敵をいくつにも細かにしてしまうものだから、アルコールが入っていなくたって数えるどころではない。
浮島と腐蝕竜。怪獣映画さながら両者が激突するたび、"足場"は大いに揺れた。
十……二十? 一桁ではなさそうだと適当に血をいただいて口元拭う手が戻り来た鎌を掴んで、即、放って。
「二十四くらい?」
弾みで島へ飛び降りた莉亜が砕けば。
「黒が食べたからノーカン」
エンジの黒鳶が舞い込んで抉り取り。
「十で一と数える程度がちょうどいいわよ、こんな稚魚」
海の女式ざっくり算数とともに、蜂の巣にする揺瑚。
ドラゴンからのお宝ドロップといえば、鱗だとか? 時折それらしき物体が降ってはくるのだ。ぬめっとしていて、魔女が煮詰めたような黒紫で、帯びたガスが俄かに空間を歪ませていることを除けば。
「ねぇちょっと、ペットのしつけがなってないんじゃない? それとも高く売れるのかしら、これ」
「うちの腐蝕竜さんがごめんごめん、記念にどうぞ」
ぽろぽろ。
ぼろり。
「アレよりコッチが仲間に近い? お前らもいつかおっきくなれるかもしれないネェ」
賢い方が、ずっと楽しい。たくさん遊べる。
呪いのかおりがするあやしい鱗はむしろエンジと連れの仔竜との関心を引いたらしく、召喚が解けるまでの間、しばし手遊びには事欠かなかったのだとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
んー……あと5分……
……え。あれっ。ここ、どこ?
確か私達、空中で獏羊の群れと……
徐々に状況を飲み込んだら
どのように連れてこられたのかは聞くまでもなくて
ご、ごめん!すごい負担かけちゃって
もうお荷物にはならないから!
……ありがとうね、ヨハン
ドラゴンか
そう簡単には倒れてくれないかな
ヨハン、合わせてくれる?
挑発し、岩場の傍へ誘導しつつ敵の攻撃を待つ
閃光は岩場の影に隠れて回避を試みよう
ドラゴンが行動を終えた直後は多少の隙が生じるはず
――今のうちに!
飛び立って一気に距離を詰め
【早業】で【2回攻撃】を仕掛ける
声を掛けなくても彼がタイミングを合わせてくれると信じて
さ、この調子でいこう!
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
……幸せそうなところを起こすのは忍びない気もしなくはない……が、
起こさずいる方が大問題だな
ほら、起きてください
あまり寝ぼけたままでいると戦闘に支障ありますよ
別に負担にはなってない……とは言いませんけど
まぁこれくらいいつでもどうぞ
荷物とは思ってませんからね
行きますよ
考えがあるのならそれに合わせよう
彼女について行くように、岩場へ
距離を詰める彼女の邪魔をするもののないよう
<呪詛>と<全力魔法>で『蠢闇黒』から喚ばった黒闇でサポートを
そのまま攻撃まで、合わせて行う
何度も共に向かっていますからね
これくらいは言葉などなくても出来る
はいはい、ついて行きますよ
大魚と呼ぶに相応しい橙の巨体が宙を打つその脇、身を屈めたヨハンが腕に抱く娘を庇いながら降下してゆく。
惜しげなく喚ばわった影は二人を包む竜巻めいて働き、ドラゴンどもの接触を阻んでいた。ひとまず足場の問題はなんとかなるか――。
幸せそうなところを起こすのは忍びないものの、このまま起こさずに……まして万一の際に本来身軽な彼女を巻き添えにしてしまうなど頷けた話ではない。
オルハさん、と、ひそめて耳元で落とす声はあたりの騒がしさを楽々飛び越えてオルハの意識を揺り起こして。
「んー……あと五分……」
「ほら、起きてください。あまり寝ぼけたままでいると戦闘に支障ありますよ」
せん、とう?
夢に甘えたとて取り落とすことなく抱いていた槍。そこに絡まりそよそよ風に揺れる虹雲は、先ほど倒した獏羊のわすれもので――ではここは? いつだって変わらず安心できる夜色の瞳の近さも、腕の中という現実も、把握までに数秒を要したけれど。
「ご、ごめん! すごい負担かけちゃって……もうお荷物にはならないから!」
わっと飛び降りる先は間近に迫った地面だ。でんぐり返るように前転するや否や駆けだす手にはしっかりと得物が握られて、地面スレスレ低空飛行にて石礫を飛ばしてゆくドラゴンのちょっかいを弾き返す。
……ほんのひとときとはいえ、休めたのなら。
別に、負担になっていないとは言いませんけど。ぴしゃりと言ってのけるヨハンが続ける「まぁこれくらいいつでもどうぞ」。そこらの荷物と同じ、などと思うものか。
「ここまで来たならやることはシンプルだ。行きますよ」
「うん。……ありがとうね、ヨハン」
たった小走りで駆けだすオルハが合わせてと乞うたなら、いつも通り、二人の戦いをすればいいだけ。
――――キィ、ィ!
とは、二メートルはあろうか。群がる飛竜の鋭い爪とオルハの爪こと槍の先が打ち合った音。
「私よりもうんと大きな体だけど、使いこなせないなら同じだよね」
滑らせて、受け流す。動きに無駄は一切なく、蹴り上げる力で跳ね上げれば彼我の距離を保つ。
人の言語を理解するのかは定かでないが、勝気に繰り出された声へ一層苛立ちを覗かせるオブリビオン。怒りによる視野狭窄は戦いにおいて致命的だ。……このように、
「道理ですね」
相手がひとりでない場合、特に。
『ッグァァァ!』
「助かるよ、ヨハン! 次は……」
そっち!
と指し示すまでもない。オルハが踏むステップ、視線の流れだけで意図を汲めるほどに戦場だって共にしてきた。蠢闇黒は一体のドラゴンを呑んで即満腹も知らずに、飛び立つ娘の両脇へ、噴水か何かのように呪詛を沸き立たせた。
その行く道に敷かれるは竜の血による赤絨毯。
オルハへ降りかかる数多の炎、爪、牙を阻んで押しとどめ、喰い千切り。待ち受ける一対の眼が赤と黒以外の色を捉えた頃には終わりは間近、それはウェイカトリアイナの星映す金なのだから。
「それじゃバイバイ、ノロマさん」
――。
肉を断つ音のみが二度。 此度、金属音は響かずに。
広げかけた翼ごと斬り伏せられたドラゴンが地を舐めたとき、上方より詰め、踊りかからんとしていた一体もまた影の刃に串刺されていた。
ずるりと滑り落ちて、仮初の大地へと溶けゆく脅威たち。
さすがだとも信じていたとも言い含めた温度ある眼差し、横顔に受けたヨハンの澄まし顔のかわりに黒き闇が躍り、オルハに寄り添うらしき動きをみせて。
「さ、この調子でいこう!」
「はいはい、ついて行きますよ」
こらと引っ張り戻すよりも、早速取り回された槍に合わせ、襲い来る次の波へ向かわせるが得策か。
いくらだって乗りこなせる――信頼が、なによりの矛で盾。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
柊・雄鷹
ハレちゃん(f00145)はもっとワイに優しさを持つべき
全生物の鉄の掟やで。ワイには!優しく!!
さて、気を取り直して領空権争いと行こかー
おっと、ハレちゃんは陸上戦か
そやな、大きな足場ができたし良かったな
ワイも的が大きくて助かるわー
けど華奢で繊細でオッシャレーなワイのダガー通るんやろか!
なぁハレちゃん、どう思う!?
翼を活かして【空中戦】
【怪力、鎧砕き】を駆使してダガーを【投擲】
【部位破壊】を狙って行くでー!
おーおー、ニッキーくんめっちゃ楽しんどるなぁ
どれ、そろそろワイも大きい奴行こか
敵の上に乗れたなら、『黄金鳥』のお出ましや!
可愛くて強くて頼もしい我が愛鳥
好っきなだけ暴れたって!
夏目・晴夜
残念、ユタカさん(f00985)生きてたんですか
ドラゴンの群れと戦うのも楽しそうですが、
そろそろ地に足つけて堅実にいきたいところです
私は浮島に上陸戦を試みましょう
そうですね、ユタカさんのその桜のダガーはセンス溢れまくりなので、
それならば向かうところ敵なしだと思いますよ
ユタカさんの投擲に合わせて浮島へ接近
突進や鰭ビンタ等はハレルヤ印の【第六感】での避けに徹します
うまく上陸できたら、空で沢山遊んで下さったお礼を返したく
ニッキーくんって本当に可愛いですねえ
デカくて頑丈で、念じさえすれば何処にでもすぐに現れてくれるんですから
その【怪力】をフル活用して、『愛の無知』で全力の【目潰し】をお贈りしましょうか
背を駆け巡る猟兵たちに気を取られているらしい浮島。
ぴかり、ぴかと触覚にくっついた星が揺れながら光るのが気に障るのは、自らの落とす影が濃く大きく見えてしまうから、か。
(「どうせ明るくするなら――、 」)
「なぁさっき踏まれたとこヒリヒリするんやけどー。もっとワイに優しさを持つべき、全生物の鉄の掟やで?」
ワイには! 優しく!!
……撤回。獏羊との激戦から生還した雄鷹が騒がしいので。
「残念、ユタカさん生きてたんですか」
とても羽虫か何かを見るかんじの眼差しを注ぐ晴夜。ぐんと真っ直ぐ、投げ槍の力強さで飛来していたドラゴンへは比べれば多少は友好的か立てる刀で迎え入れ、肉の数枚と真新しい血霧へ変えて。
ふんすと息巻く雄鷹は雄鷹で翼を活用、かえって速度を上げ潜り込むかたちで身を滑らせ、交錯した刹那に無防備な捕食者の腹を捻じ込む短剣により捌く。
「おかげさまでっ! ……っと、ハレちゃんは降りるんやんな」
「ええ」
ぱっ! 数多のダガーを舞わせた雄鷹、蹴って橙の大地へと駆け下る晴夜。それに纏わり降下旋回するドラゴンたち。
うまそうな人狼をひとくち齧らんと迫った獰猛な咢、頭が高いと厚い靴底が踏みゆけば、彼らの口に入るものは鋭利なダガーのみである。
とはいえ消化されてはたまらない。指引く仕草に倣い、硬い皮膚を突き破って飛び出した刃が傍らまで戻り来るのを上手にキャッチした鳥男は銀の横顔をゆびさきで撫ぜた。
「よしよし。本命のデカいのもこの調子で……けど華奢で繊細でオッシャレーなワイのダガー通るんやろか! なぁハレちゃん、どう思う!?」
「さぁ。応援してますね」
桜花の意匠のやつなんてセンス溢れまくりだし向かうところ敵なしだと思います。
――といった自画自賛に近い内容をつらつら吐きながら、ぱっくり割れたドラゴンが下方へと落ちてゆくのを適当に足蹴にして。
落下の勢いを殺した晴夜は浮島への軟着地を目前に歓迎の姿勢をみせる鰭を睨み、向かい風の中微かに息をつく。
それは合図。
次なる一手は既に、打たれていた。
「ニッキーくん」
――人間大の、鉄砲玉?
狼男の幾数倍の加速をつけて、なにもなかったはずの中空から撃ち出された"丸い物体"はしかし、もっと凶悪なものであった。
『ぅギュ!?』
ぱあん、と、抜けるような音を上げては進路上のドラゴンに鰭に大穴を贈り。
ときに光線で灼かれど止まらず、逞しい両手両腕を伸ばしてしがみつく先はなんと巨大オブリビオンの目元だ。そう、"彼"こそがニッキーくん。人形遣い・晴夜の頼れるからくり人形。
間髪入れず、ぎょろり焦りを滲ませた浮島のやわらかな目玉へとゴリゴリに筋肉の隆起した剛腕がぶち込まれてしまえば、のたうつ大魚は吊り上げられたそれの如く。
「ぶなっ。おーおー、ニッキーくんめっちゃ楽しんどるなぁ」
波打った尾の一撃を頭すれすれで屈み、どれ――ならばこちらもそろそろ。
翳す特製のゴールドダガー。年代物の風格感じる刃身に、彫られたルーン文字が煌いて。
追い来る、若しくは晴夜着地の瞬間に狙いを定め一気に降りかかるドラゴンらの合間をどれより滑らかに縫い、ゆるやかな螺旋で描ききるバレルロールの軌道。風に押され狼少年が飛び退く頃には、空高くへ回り込んだ雄鷹の手元からは一羽の、鳥……鳥と呼ぶには荘厳なる精霊、黄金鳥が解き放たれていた。
「――ぼさっとしとると火傷するで、ハーレちゃん?」
「ハ、」
お望み通り。
挑みかかるよう口の端だけ上げ、すぐさま妖刀に手をかけた晴夜の抜刀。衝撃波が黒々と星月を裂きて空へ迸るのと、羽ばたきで巻き起こす荒れ狂うこんじきの閃光が辺りを包みひっくり返すのは同時。
……その真ん中でサンドイッチされたドラゴンたち?
跡形など、残るはずもないだろう。
一拍ののち。視界は晴れて。
緑豊かであった山々を吹き飛ばされた浮島が、頭上の星を強く瞬かせながら大きく身震いをした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
矢来・夕立
【いつもの】
※方針
戦闘:浮島に上陸。地面(背中)を爆破
移動:ドラゴンを足場にする
オレ:殿でトドメ→爆弾作成
穂結さん:メイン火力→爆弾輸送
ラッカさん:囮役→起爆
秘密基地はイイですけど、あの島はな…
レンタル屋もファミレスもないでしょ。
《忍び足》で殿を務めます。
先行する二人が足場にしたドラゴンを適宜《暗殺》。
背後からの攻撃はさせません。
で、浮島か。
…。よし。上陸ののち、爆破でいきましょう。
UCで紙箱爆弾を作成しておきます。
穂結さんのUCで投下してもらって、ラッカさんのUCで起爆させる。
勿論オレも爆弾ばら撒きに行きますし、式紙で起爆も手伝います。
名付けて更地作戦。
たまにはいつもと違うのもイイでしょ。
ラッカ・ラーク
【いつもの】カグヤ(f15297)とユーダチ(f14904)と
※共通方針はユーダチのを参照な!
島ってか、コレ竜じゃね?デッケエなぁ。
ホントになー、オブリビオンじゃなけりゃ秘密基地にできそうなんだが。色々持ち込んでさあ。
それはそれとして。
《挑発》《おびき寄せ》《存在感》《空中戦》《見切り》、囮役をきっちり楽しむぜ。空の主っツラしてるドラゴン連中と《ダンス》といこうじゃん?
小鳥の多くには別のシゴト。ソッチの指示は懐の日向鳥任せ、製造元のやりたいコトはわかるだろ?
無害なフリして《だまし討ち》、ハデに起爆してやれよ。祭の開始にゃ少し早い花火だな!
帰りは今頃、足元がもふっと虹色になってんじゃねーかな。
穂結・神楽耶
【いつもの】夕立さん(f14904)・ラーク様(f15266)
※方針は夕立さんを参照ください
わあ。
オブリビオンでなかったら秘密基地にできそうですね?
ほら、あのあたりとかお昼寝に丁度良さそうじゃないですか?
ラーク様に惹きつけて頂いている間に浮島目指して跳んでいきましょう。
背中のことは追いかけてくる影に任せます。
雲は炎で『なぎ払い』、足場は複製太刀で弱らせながら。
さて、上陸したら爆破ですね!
作って頂いた爆弾を【神遊銀朱】であっちへこっちへ運びます。
たーまやー!
花火にしては風情がなくて申し訳ありませんが。
…あ。帰りはどうしましょう?
●
雲だ。
浮島の口から、スモッグのように濃い、悉くを霞ませる雲がもくもく吐き出されはじめる。
すぐにその姿は景色へ溶け込みはじめて――しかし。
「わあ。かくれんぼも嗜むなんて、オブリビオンでなかったら秘密基地にできそうですね? あのあたりとかお昼寝に丁度良さそう」
「ホントになー、秘密基地。色々持ち込んでさあ」
「秘密基地はイイですけど、あの島はな……レンタル屋もファミレスもないでしょ」
一筋の光。薙いで払うカミのくれないが雲間を炎色へ染め上げては消し飛ばし。
遠足中かのゆるさで突入してきた一行が、それを許さない。
「言えてる。まっ、とりあえずドラゴンステーキあたりから自給自足っとく?」
先駆け、ラッカは島の周囲を旋回して警戒する飛竜たちの真ん前へと飛び入った。
撃ち出されたボールの如くに、勢いよく蹴りつけた一体の頭を踏みつけ一拍。そこを喰らわんと向けられた牙ギリギリで跳ねれば、ガチン!! 痛そうな音は背中で聴くのみ、あっという間に共食いの図式。
予測の容易い直線には飛ばない。
いくつもの口がばぐんと開閉し空気を食むことで生まれる歪なアーチの隙間をジグザグに抜け、正面下方から突っ込んできた赤色竜のそれを、跳び箱の要領、たんと押し付けるねこの手で閉じさせた。
「オレのかち、っと」
牙同士が無理くりぶつかり合って砕けた鈍い音がする。
――ごおっ!!
ここまでが、ほんの数秒。咆哮とともに一点集中で獣へ注がれた無数の炎弾をみるに、お住まいのドラゴンらはそれなりの属性を有しているらしいが。
「わたくしの前で、愚策と言えましょう――裁きを」
それすら呑んだ炎が空を舐めた。
より正確には、炎を帯びた刀剣の群れ。読めるからこそ即座に翼を広げ、迫る熱風をも味方として距離を稼いだラッカと異なり飛竜らは串刺しバーベキューのはじまりである。
こんがり、カリカリ。
肉の焦げたにおい。出来立ての"足場"を踏むたび炭が散るのに、同色の髪を風に遊ばせ神楽耶が駆ける。いまは足元など見ない。想うならば、ずっと下で吉報を待ち侘びる民草の笑顔のみ。
浮島はもう目前だ。
「近所迷惑って追い出されるコースだこれ」
あるある、と。二者の派手な戦いぶりは常ながら攪乱にうってつけではある。それでは、やや後方に続く夕立は本当にただの遠足へ?
――オブリビオンにとっては残念だろう。狙い目じゃん、と首を回して振り返る間もなくさっくり、その首自体が胴を離れているのだから。
雷花が閃く。
ほどけさせた赤い糸は二度と絡まり合うことはない。
黒手袋も装束も、血の色を寄せ付けず。死の香りなんて程遠いままに、しかし概念そのものとして、気配を潜め殿を務めていたのだ。
この男へ背を預けることにすこしの不安も抱かぬから神楽耶、ラッカの戦いに迷いはなく、なるほどドラゴンらを=阻む大人とするならばこれは子どもらの作戦勝ち。さいこうの基地がつくれるねって話であったのだが。
「なに、ご近所自体消してしまえばこっちのもの。……では、手筈通りに」
集ったならば、巣立ち、破壊までもがお約束?
空いた片手に弄ぶ紙技・彩宝にて作り上げた紙箱――爆弾は、少年時代の終わりを意味していた。
更地作戦。
浮島の地を踏んだ刹那、神楽耶の結ノ太刀。その複製がいくつにも増して空へ舞い飛ぶ。
共に飛び交うはラッカの鳥型バーチャルペットコピー&日向鳥。
「ちょっとわくわくしてきました」
「それな。いっちょハデに頼んだぜ!」
刃先や背にちょこんと括りつけられた千代紙小箱は傍目にかわいい贈り物か悪戯かだとして、お察しの通り。ぐんぐん宙翔け、突き立った先にもたらすものは火花を弾けさせる大破壊。
たーまやー! の上機嫌な掛け声が神楽耶から上がるのに、手拍子を重ねるキマイラ男だがこれもことりちゃんを増やす合図に過ぎぬのだから酷な話。
爆炎とともに作り変えられてゆく地形に穴が増え、なんとか住処を守らんとすドラゴンらが頭から突っ込んでくる。
焦げ付いた尾と翼。脇目も振らずに刀の数本を叩き落すが、そこまで。
「――すみませんね。お届けが遅れまして」
うつくしくも無駄に過ぎぬ奮起を摘み取るものが、最後に落ち来てごつごつの鱗を足蹴にした夕立の手。
ひら、 零れたヒトガタの式神が傾ぐ竜の背へぴとり抱きつけば。
少年が飛び降りるのと、ひときわ大きな花火が上がるのはひと呼吸の間に。
浮島の光る触覚からまばゆい閃光が放たれて、随分とさみしくなってしまった自らの背を抉りながらも侵入者らへ迫るのも。
「お楽しみいただけたでしょうか? 花火にしては風情がなくて申し訳ありませんが」
「へっ、お代は結構!」
息をする程度の自然さで補い合う一瞬。
一斉に寄り集まり束ねられた太刀は、盾として方陣を組むみたく光を拡散させ。
第二波なら"遅すぎる"。
角度をつけて身を捻り、駆け上がったそこからの急降下――逃げ惑っていたドラゴンへ、ラッカがしとどに打ち込んだ踵の烈しさたるや、脳震盪を引き起こすには十分。
星や月を渡るのか? 見えぬ壁や床でもあるかのように。
ただ翼をもつだけの生物にはできぬ身のこなしで墜とされた飛竜が、かわりに焼け焦げた。
「はい、じゃあそろそろ本気でだらけたくなってきましたし撤収」
「勝ち逃げというやつですね、さすがです。 ……あ。帰りはどうしましょう?」
「あー、飛べねえって不便なんだなぁ」
ごごごごと地響きを立てる島の端まで走りながらもうから雑談。後を追って飛ぶ刀やら鳥が爆発して道を塞ぐから、追いかけっこも堂々の勝利といえよう。
地上は今頃、もふっと虹色になっていたりして?
一歩、 大きく蹴り出した先の宙。
結局こうなるのかと思いはすれど眺めおろす、空を取り戻しつつあるひとの世の広さ――為しえた我が手。
送り込まれたときよりも、いつかよりも、ヤドリガミの悲鳴にはどこかきらめくものが滲んで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
境・花世
セロ(f06061)と
空を盗むだなんてすごい大仕事!
だけど成功させない訳にはいかないね
なんたってきみが請け負うんだもの
笑む右目の花からふわり零れた侵葬は
風に乗って四方八方拡がって
群がる竜を近付けないバリアになる
さあ、存分に暴れておいでよ
雨を生み出すセロを守りつつ
浮島の様子をしかと観察
あ、落ちる竜に気を取られてる間に近付けるかも
うん、いけるいける、50%くらい
無謀と勇気は紙一重?
だけど後者にするんだ、わたしときみで!
死角になる鰭の影から回り込んで
敵が気付いて動かす前に根元を狙おう
多少怪我したって気にしない
大仕事にはリスクがつきものだからね、と
共に挑戦する盗人さんへにやりと笑って
セロ・アルコイリス
花世(f11024)と
ぅわ、でけぇ
乗りてーなぁ、乗れますかね、勇者サマ
盗人が空を奪い返すなら近付きてーです
? なんだ、竜が来ない、(侵葬に気付いて
へえ……! あんたの花、さすがですね!
さぁて、じゃあイイトコ魅せられるよーに頑張りてーですね
空を魚が泳ぐなら
雲の上に雨が降るのはどうでしょう【暴風雨】
そら竜墜ちて来ーい
竜弾が浮島穿てば儲けモン
近付けねーなら銃で
近接できるならダガー抜いて
竜の動きを奪うよに翼の付け根狙い、
浮島自体狙えそなら、……ヒレまで行くと落ちる?
いや、そうですね
これは勇気です!(に、と笑って駆け出して
敵の吐き出す雲に紛れて動力源たるヒレの根本を狙う
お互い危なけりゃ手を伸ばし楽しんで
あたりへ大小降り注ぐ岩石は浮島から欠け落ちたもの。
当たれば痛いでは済まないが、ひらり上手に潜り抜ける翼竜の背にあって、セロと花世は「ぅわ、でけぇ」「でもやわらかそうだ!」 ご覧の通り。
「乗りてーなぁ、乗れますかね、勇者サマ」
「そうだね。きみが望むならなんだって」
空を盗む、だなんてすごい大仕事も。セロが請け負ったならばやってやれないことはないのだと、莞爾として笑みを深めた花世の八重牡丹の瞳から花弁が零れた。
ちる、ちる。
裡の虚にかわってみちるのは世界の側。
風が四方八方へ運ぶ薄紅、はじめは島の植物とでも思ったか。警戒心抱かずに猟兵ばかりを囲み、睨み据えていたドラゴンらは、芯まで蝕まれてやっと知覚するのだ。
――敵は、どこへ?
追い立てるべき宛てをいつしか見失ってしまっていたこと。
「へえ……! あんたの花、さすがですね!」
「光栄です! なんちゃって。さあ、存分に暴れておいでよ」
半端にもたげた爪のまま花嵐と漂うドラゴンの真横を素通りできてしまい、存外に幼気なかおをするセロが彼ら以上に瞳を丸くする様にころりと一笑、花世は肩を叩いた。
ええ、と、既に踏み切っていた人形のからだは香る追い風受けながら吸い寄せられるように浮島のもとへ。はためく翼めいたマフラーの首元を握る口元は弧を描く。
「イイトコ魅せますとも」
次に伸べた手は――取り回した大振りの牙は着地の刹那、半月の軌跡を刻みドラゴンの翼の付け根を穿った。傷を広げるまま二歩三歩、かろやかなステップで駆け抜け"一段下"へ。
風が、大気が男に連れられ動くなら花弁もまた。
飛行手段を失い真っ逆さま落ちゆくオブリビオンと競い合うかの降下角度をつけ、頭を下へ向けたラファガとともに味わうスピードは絶品だ!
新手の接近を漸く察したか時折撃ち込まれる浮島ビームも、縦方向の移動には追いつけずに同族は燃やせど花の乙女を焼き落とすこと叶わず。
「あはっ、ははは! いい子いい子、彼に似てかっこいいや――それじゃわたしもいってきます」
橙まで数メートル。受け身をとって地を踏んだ花世が開いた杪春を振るひとたび目だけはご挨拶。応えるかの如く、立派に勇者らの運び手を全うした翼竜は、高くひと鳴きして旋回していった。
「おにーさん方、雨を見るのはいつぶりですか?」
空を魚が泳ぐなら、雲の上に雨が降ったって。血飛沫を払うセロがダガーで辿った空間のあとに澄んだ水玉がぽつぽつ残るや否や、丸から錐へ、ぐにんと形を変じながら空を滑りはじめる。
トルメンタなる魔法の矢。
事象へ俄かに反応の遅れた竜……特に火竜に風穴が開くまで秒と要さず、着弾を確かめることもなく水たまりを跳ね上げ迫っていた盗人の刃。またひとつ、こぼれる命。
犇めく敵中へ正面から飛び込むなんて、"無謀"と"勇気"は紙一重などとよく言ったもの。
突き刺さる流れ弾に慌て浮島が吐いた雲に翳みはじめたこの道を、まっすぐいったなら断崖絶壁に鰭がひらつくのみの筈。
――けれども。
「後者にするんだ、わたしときみで!」
「そうですね。 これは勇気です!」
――だからこそ?
男を阻まんと鞭状に地を滑っていた触角の前へ、嵐の恩恵を受け一時は姿をくらませていた花世が割り入って。いまにも春の日差しに綻びそうな繊細なつくりのくせ、ずっとしたたかな扇が差し込まれた瞬間の弾けるよな音に続き、幻惑の華風がひときわ派手に舞い立てば。
『!!』
息を呑んだのはだれだろう。
跳躍。 落下。 めいっぱいの勢いを乗せたダガーに、切り裂く花弁に、大事な鰭をちょんぎられた大魚だろうか?
っっがくん!!
傾く大地から大空へと投げ出されながら手を取って、引っ張り上げるどころか道連れの様相。目が合えば、チャレンジャー二人はどちらともなく吹き出した。
「大仕事っていうのはいつもこうだね」
「でも、悪かない……ってヤツでしょう?」
夜風が気持ちいい。なんて――酔狂に違いないけれど。
冒険者ってのは、ちょっとおかしなくらいでちょうどいいのかもしれない。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎
わぁ大きい!天井かと思ったら違った
こんなに大きな魚がいるなんて!びっくりした
空はみんなの空だよ
こんな大きいのでも斬れるの、櫻?
自信ありげな笑顔が君らしい
じゃあ、斬るところをみせてもらわなきゃ
歌唱にこめるのは鼓舞、櫻宵の背をおし存分に刀をふるえるように歌う『凱旋の歌』
背中の島が攻撃、なんて落ち着かない
僕の櫻に攻撃が届くその前に蕩かす誘惑を添えて歌うのは『星縛の歌』
僕の櫻は傷つけさせないんだからな!
僕を庇う櫻をオーラ防御の泡で守るからね
…足でまといは嫌なんだ
君の背中は僕が守るから安心してよ
だから
綺麗に斬って、無事に帰ってきておくれ
僕も櫻宵と
綺麗な魔法の空をみたいんだ
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎
リルを抱いて飛んだ先
着いた、と思ったら大きな魚だこと!
魚の背中に島があるなんて驚いたわ!
ええ
それでも斬れないなんてことはないわ
空はあなたのものでは無いもの!
さぁ、綺麗に斬らせて頂戴な
大きな魚を卸すのも、得意なのよ
駆けて飛んで放つのは衝撃波
広範囲になぎ払い、傷口を抉るように2回攻撃を
攻撃を見切り躱して咄嗟の一撃を殴り込み
活きがよければ生命力吸収の呪詛を太刀筋にのせて斬りこむわ!
リルの歌に背をおされる
どんな敵でも勇気が灯る
あたしの為に歌ってくれる
だけど星縛はあの子の命を奪うから
1秒でもはやく落とさなきゃ
懐に飛び込んで放つ『絶華』
リルと素敵な魔法の夜を過ごしたいのよ
そうやってどんどん削れはじめた浮島だけれど、まだまだおおきい!
先達の手により潰された片目や鰭の側へ回り込みながら、櫻宵とリルは接近を果たしていた。
「こんなに大きな魚がいるなんて! びっくりした」
「魚の背中に島があるなんて驚きよね! それでも、斬れないなんてことはないわ」
空は彼らのものではない。
できるの? もちろん。視線交わしあって、為すべきを見据えて。
半ば逃れ落ちてきて視界へ入るドラゴンらの前へと、すらり。月映し翳される屠桜の冴えと櫻宵の言葉の頼もしさ。浮かぶ笑顔のひとつまで、本当にらしくって。
「じゃあ、斬るところをみせてもらわなきゃ」
一拍だって逃さずに、ここで見ている。
彼の邪魔にだけはならぬよう、自ずから抱擁を抜け出たリルもまた共に戦う気なのだ。心強いと感じる気持ちは同じ。横顔で頷いた櫻宵は、いとしの人魚を背に守るためにも、果敢に飛び出した。
迎え撃たんとす青色ドラゴンの翼はごつごつと硬く冷たそうで、櫻宵のそれとは似つかない。
冬と春。
――いずれの殺風景にも、水底揺れる薄花桜の瞳へ満開に咲かせて魅せるが我が務めと。
「さぁ、綺麗に斬らせて頂戴な」
空間を斜めに裂いた刃から無色透明の真空波が放たれた。
遅れて、薄紅が降る。飛竜の口から吐かれた氷塊は鋭い針に似て迫っていたが、巻かれてしまえば一瞬。硝子を砕くほどのもろさできらきら砕けてしまう。
(「ひかりの、雨みたい」)
瞬きも忘れ見つめるリルの眼差しに応えるように、更にと踏み込んだ櫻宵が振るう二太刀目。上下に緩急つけて揺さぶりドラゴンの合間を抜く最中、凍てた欠片が肌を色付けたが、すこしも痛くはなかった。
「咲いて」
ザンッ! あとには獣くさい肉片が破裂する。
氷とはまた異なる、いのちの手応えは見知ったもの。染み付いたもの。
恐れず悔いずに揮える宛ては、もうなくさない。
長くしなる尾を揺らして、反転すべく浮島が身動ぎをする。距離を稼ごうとしているのだ。
口からは目くらましの濃い白霧が吐き出された。
櫻宵とリル、互いの姿も霞みながら紛れてしまう――けれども、歌声はなににも阻むことはできない。
「櫻、櫻。振り返らずにいって」
綺羅星の瞬き 泡沫の如く揺蕩いて――……アムレート・ソー、星縛の歌が鼓膜を震わせる。もしも目がつぶれてしまったって、見失わぬ北極星の如く向かう先を示し。
同時に、雲を利用して強襲を仕掛けるつもりであったドラゴンらの意識をも縫い付けてしまうのだから非力などとは程遠い。リルは一流の歌姫だ。
(「……足手まといは嫌なんだ。君の力になりたいよ」)
どうか無事に。ぎゅっと胸元で拳をつくる。
その胸満たす想いまでも――、 届いているわ。
「そこっ!!」
調べにひとつ音を加えるは剣戟。
雲間よりぬうと頭を出した大魚の口、剥き出しの牙へと叩きつけた太刀の奏でだった。数本を砕き、弾き合って宙返りをする櫻宵の身へ寄り付く飛竜は水泡が阻んだ。
リルの厚い支援が舞台を整える。
サビに差し掛かった歌曲は、僅かな間とて浮島の反応をも鈍らせて――刀の通り道が、拓けた。
「受け取りなさい。二人分よ」
急旋回して潜り込んだ懐に差し入れる刃先は、拳が埋もれるほど深く。重さも相当なものであるというのに、並外れた胆力腕力で押し進める櫻宵は骨をも断って。
腹側へ丸まっていた尾までブツ切りに処したあたりでのたうつ巨体に跳ね飛ばされる。
「きゃっ、……と、ふふ」
「僕だっ、て、君を支えるくらい望むところだよ」
その先で、数分ぶりだろうか?
水泡とともに抱き留めてくれるリルと出会えたものだから、苦みはどこへやら笑顔花咲くばかり。
痛くない? もちろん。
はじめ大魚と相対したときと同じように、頷きあえばまだまだ戦える。
待ち望む魔法の夜も、二人で過ごしたいから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リオネル・エコーズ
島だけど魚?で、しかもドラゴン住んでる…
…俺のいた所と全然違う
異世界ってほんと『違う』んだ
インパクトやばい土産話になる
とかつい思っちゃうけど、仕事の続き続き
飛んだまま、ドラゴンは出来るだけ避けてこう
うっかり目が合っちゃったら超祈る、めいっぱい祈る
鴉っぽい翼生えてるけど鶏肉じゃないからね
狙うの勘弁してね、肉だってそんなついてないよ多分
島=ドラゴンいない所&一箇所に狙い定めて極光の星
超デカい島だし、月みたいに雲に隠れられても当て辛くはなさそう
雲の上まで飛んだら雲の隙間からチラリしないかな
状況に合わせて飛びつつ空飛ぶ魚?にだけ流れ星を
魔法の夜に蓋されっぱなしは困るからさ
元いたとこに、還りなよ
狭筵・桜人
がんばれ足場。
いやまあ上陸出来そうなら乗り移ります。足場のご機嫌次第。
デカ過ぎるってそれだけでも迷惑ですねえ。
鰭に気をつけて頭を低くしていましょう。
さてさてお仕事。『怪異具現』。
取り出しましたるは分裂するUDC。
こいつを巨大生物?浮島?の口に突っ込ませますね。
ごはんですよー。デカイ口開けてる方が悪いんです。
中で暴れてお腹壊しますように。
私は拳銃の威嚇射撃で飛び回るドラゴンを惹き付けてー……
一箇所に固めておけば、つよーい猟兵が素敵な魔法で
派手にドカンとやってくれることでしょう。人任せ。
アテが外れたら殺られる前に地上に飛び降りまーす。
まあまあ私の仕事は済んだので。一足先に帰りますね!
クレム・クラウベル
随分分厚い蓋を掛けられたものだ
さて次ぐ足場は――取り巻きもどちみち倒さねばならないなら
浮島へ駆け上がってしまう方がいっそ楽、か
島への道のりにはドラゴンの背を借りるついで、飛び上がる勢いで蹴り落とし
あのくらいの的なら動きながらでも当たるだろう
雨粒一雫。穿て清浄なる銀
乗ってしまえば安定した足場
……には遠いな
振り落とされぬよう着地先見極め、時に竜の身体も壁や床代わりに
どこが急所とも知れないなら目につく所を試しと撃ち抜く
魚というよりまるで地面相手だ
視界塞ぐ様な雲の吐息には祈りの火を焚べ払い
空は確かに誰のものでもなかろうが
望み待ちわびる者が眼下には何人もいる
独占は感心しない。さぁ、明け渡してもらおうか
絢辻・幽子
あぁ、もふもふは儚い夢ねえ
さっきはおにいさんと羊で足場を作れたからいいけど
まぁ、何とかなるわよねぇ。
ドラゴンを利用しつつ繭絲でくるりと
『ロープワーク』で足場チャレンジ
足場が厳しければドラゴンを風船替わりにでもしてあげるし
私は安定した浮島に到達したいのよ、の心意気。
ほら、狐は地面の生き物だもの。地面が恋しいわ。
お空はみんなのモノなのにねぇ
独り占めしたいなら名前書いときなさいな。まったくもう。
鰭ビンタされそうなら『オーラ防御』しましょうか
あらあ、新鮮なお魚さんだこと
食べちゃいますよー、なぁんて。
触覚のキラキラはお星さまみたいねぇ、幽ちゃんそれほしいわぁ
咎力封じで少しでも威力を減らせればいいけど。
●
ウギュエェ……だとか声にならぬ嘆きはぐるんぐるんに縛り上げられた"足場"から。
極々細いのに、千切るには難い鋼糸。
それは女の細指から伸びていた。
「やっぱりもふもふしてないのねぇ。実は、なんてサプライズを期待してたのに」
結んで解いて、ジャンプで渡りゆく幽子。
自由の身!! と上がった竜の頭は直後、別な革靴がイイ音で下げさせる。それなり逞しい筈の首の骨がごきっと音立てたとて、一瞥に見下ろすクレムにとっては"手間が省けた"以外の感慨はなし。
「戦い慣れている様子はないな。大方、バカンスとやらで牙が鈍ったか」
「オブリビオンですら休み放題だってのに、人間様の世は世知辛いですよねえ」
あーやれやれと続けそうなアルバイター・桜人は多めに二度は踏んだ。小型機械で組み立てた自前の足場があるのに、わざわざ飛び移っては踏んだ。後からやっぱ生きてましたと追ってこられる煩わしさとか、面倒事は少ない方がいい。いつまでも遊んでやるほど暇ではないのだ。
夜空を渡る翼なき彼らの傍ら、吹きつける風は有翼種たるリオネルが立てるもの。
でもマジで、と切り出しながら頭の上と下に翳す手は遠目に浮島のサイズを測るため。
「魚? だし、なんかドラゴン住んでるし。インパクトやばいねアレ、めっちゃ土産話になる」
「ね。ちょーっと欠けてるけどまだ新鮮そうだもの、みんなで山分けしてもお腹いっぱいよきっと」
女狐はころころと別ベクトルでときめきを語った。
そのとき、 ぎょろり。
充血して随分と荒んだ大魚の瞳が動き、一行を端に捉える。
「!」
大繩跳びにでも挑戦しているのか、声を掛け合うまでもなく瞬時に跳ねて足場にしていたドラゴンから飛び退く猟兵たち。一秒の半分ほどの後を貫いていった大怪獣光線は故に、打ち棄てられた足場もどきを焼き払うことしか叶わずに。
痺れを切らしたらしい。
がぱりと口を広げた浮島はトビウオめいた動きで跳ね、突っ込んでくる。
「――うん、あちらさんも腹ペコみたいだ!」
横軸回転で距離を稼いだリオネルの風切羽は乱れず風に寝かせられる。心構えも同じ、準備はいつでもできていて。
空気を流し、叩きつけひとつ羽ばたけば滑るように空を下った。
「鴉っぽい翼生えてるけど鶏肉じゃないからね? 狙うの勘弁してね、肉だってそんなついてないよ多分」
「そうですとも、食べてごらんなさい。末代まで祟るわよ?」
ともすればちょっとおいしいかもしれない自覚のある二者は断固争う姿勢。抗議を口に宙舞う幽子をぱしっと掴む手首でリオネルが引き上げたとき、レギオンにて一息ついた桜人はにこり笑った。なるほど水臭いな、言って。
「私とあんたの仲じゃないですか。 ごはんですよ、たらふく召し上がれ」
ユーベルコード・怪異具現。
足場の機械を溶け朽ちさせながらどっと湧き出るはUDC。裂け、殖え、かたまってはほどけ濁りおどろおどろしく、揺れるそれを――本物のひととでも、見違えてしまったろうか。
ひとくちに呑んだ大魚の腹がぼこんと脈打つ。
ぼこぼこぼこ、ぼこ!!
"彼ら"が内で暴れる度、ただでさえ裂けた傷口から血が噴き出す。粘性のそれを振り掛けられた飛竜たちは翼の動きを鈍らせて、格好の通り道を提供してくれていた。
「……とのことだ。穿て」
その一瞬を逃さずに踏み跳んだクレムが詰める。
装填は万全。的の大きさも申し分ない。厳粛な祭祀服に不釣り合いな鋼の塊を翳し、贈る雨粒は月の映り込みで輝く銀の、弾丸。ひとつぶ――さりとて特上の御馳走。
やれ反撃をと光を集めはじめていた魚の触覚の付け根……つまりは額に溶け入った途端、冗談のように激しくのけ反らせるのは、どこかのだれかの願いの満ちるからこそか。
巨体の中でなにが起こっているのだろう?
地割れめいて響くのは、怪物が肉を、跳弾が骨を砕く音にも聴こえた。
「あら、まあ。お空を独り占めしたいなら名前でも書いときなさいなと思ったけど、もう書く頭もないかしら」
「どうやって飛んでんのかな、ほんと不思議みがいっぱい……」
リオネルによりピックアップされていた幽子が離されたのは大魚の直上。
「あれがほしいの」とこどもみたくに強請るので、触覚にくっついたぴかぴかキラキラお星様のすぐそば。黒のドレスがふんわり風を孕んで降下傘のように膨らみ、とっとっ。
「うんうん。近くでみるともっとステキだわぁ」
持ち帰りたいけれど、今夜は他にもたくさんの"綺麗"を目にできそうだから。よいこな幽ちゃんはがまんをするのです。
おそらく大魚サイドからは見えなかっただろうが、お散歩中も編み広げられていた赤の繭絲は星のかがやきをぐるりと包み隠してしまう。
そうと知らず光線を射出した――しようとした浮島は自爆、自らの顔面をもっと焦げ焦げの煤だらけにしてしまって。閉じられなくなった口元からもうもうと吐き出される白色は雲なのだか煙なのだか。
『! ……!!』
「痛い、よね。けど、つらい、いやなことをされて痛まないひとなんていないんだ」
僅かに目を伏せるも、迷わずリオネルは飛ぶ。高く。高くへ。
眩しく光っていた触覚は御覧の通りだけれど、世界には光が溢れているから。厚い雲を突き抜ければこの空でも変わらず、幾億のきらめきが迎えてくれることなら知っているとも。
――護るべきは。
「魔法の夜に蓋されっぱなしは困るからさ。元いたとこに、還りなよ」
メテオール・ライン。 あお深き魔鍵の導きのもと、極光の星が降る。
虹の彩帯びた尾を引き、仮初の大地を染め変える。
混乱に乗じ、ドラゴンロードにさよならして渡ったクレムに桜人が浮島の端から見上げる景色は、もはや祭の様相だった。
「これがイェガ得~ってやつですか? ピースで一枚撮っといてもバレなさそうだな」
「止めはしないが片した後でな」
うそうそ、これでも勤務態度花丸ですって!
言葉こそあやしいが、懐から引っ張りだした桜人のソレはスマホでなく拳銃であるのでセーフ。クレムが鳴らした銃声を皮切りに、駆け出す男らは虹めく白煙のうちへ。
そうして次の瞬間には、雲をも煙をも舐めて喰らう炎がそこへ加わった。
祈りを千切って焼べる風に、聖職者くずれの齎す祈りの火。地面に壁に、急所探し兼ね次々増やされる弾痕から立ち昇るよう沸き立つ炎は次第に視界を開いて。
空は確かに誰のものでもなかろうが、望み待ちわびる者が眼下には何人もいるのだ。
「独占は感心しない。さぁ、明け渡してもらおうか」
『ゥルル……!!』
『ギィアッ!』
怒れるドラゴンが声を上げ、地面スレスレを滑りながら雷撃を放つ!
けれどももう、丸見えなわけで。
「はいはーいお疲れ様です」
弾丸を見舞う桜人。数発に一度は地面のみを抉ろうと、命中はさして重要視していなかった、なにせ追い立て気を引きさえすれば、つよーい猟兵も素敵な魔法もこの場に揃っているもので。
「あぁ……、でした?」
こてんと首を傾げる眼前、星に削られたのだろう、高くから落ちてきた大岩を受けめいっぱい地にめり込むドラゴンがあったとか。
崩れた飛竜の巨体は盾とも化ける。
借りるぞ、の一声で駆使するクレムの装束こそ血濡れど頬は白いまま。
地対空では対処しきれぬ手合いはリオネルが祈りとともに抑え、モンスター版流れ星をいくつか。なみなみと湧く白き炎に触れたならかたちを保っていられず、ジュッと溶け消える様までもが本物のよう。
やがていっぱいに映るのは、淡く降り注ぎて穴を広げゆく虹星ばかり。
「心配ないよって、地上の励みになってるといいな」
「うふふ、お酒がないのだけが残念ね」
これもまた好い、好い。
糸遊びの傍ら舌鼓を打つ女狐は、ゆうるり尾を揺らしていた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
オズ・ケストナー
わーっ、おおきい
くじらよりおおきいねっ
びっくりしてたのしくなっちゃう
青い目はきらきらだけど
オブリビオンならたおさなきゃ
島に降りるね
そしたらたいあたりだってできないでしょう?
なんていってるかはわからないけど
太陽も雨も、とどかなくしちゃったのはきみたちだよ
どいてもらわないとみんながこまっちゃうんだからね
ガジェットショータイム
島がたくさんおほしさまを持ってるから
わたしもおそろい
星の形の刃はスイッチを引くとチェーンソーみたいに回りだす
当たったらいたいよっ
斬ればぽろぽろ虹色の星屑落として
さっきのひつじさんみたいと微笑む
相手の攻撃は武器受け
空をとぶのがたのしいのはわかるよ
でも、きみだけの空じゃないからねっ
蘭・七結
まあ、驚いてしまったわ
空のうえに浮島があるだなんて
遮りがあっては、光は届かないものね
この空はあなたの空であり、人々の空だもの
この世界には、溢れるような色彩が似合うわ
空を飛びまわるのは、どんな気持ちでしょう
ねえ、ナユは識りたいわ
あなたたちの力を、貸してちょうだいね
〝明けぬ黎明〟
催眠と忘却の能を持つ気化毒を振りまいて
ひとつのドラゴンの背を借りて、浮島へと向かいましょう
視界を遮る雲の霧は、黒鍵の刃にてなぎ払いを
暗空に舞うように、フェイントと2回攻撃を重ねて
この美しい世界の空をひとり占めだなんて、惜しいことをするのね
人びとの笑顔も、美しい景色も、愛おしいの
月明かりが降りしきる様子を、もう一度眺めたいわ
「すごい……お祭りに、おくれちゃったかとおもっちゃった!」
「空の上に浮島があって、浮島の上にも空があるのね? ……ふふ、不思議よ」
キラキラ流れ星のシャワーを潜り抜け、駆けつける影がここにも二つ。
道中、獏羊からドラゴンへぴょんぴょん梯子していたオズはちょうどいま浮島への着陸までをこなして、膝関節と担ぎ直した戦斧がぎしりと音を立てたところ。だけど転ばずにへっちゃらだ。
くじらよりも大きな生物との邂逅にだって大興奮!
「おおきいっ、なに食べてそだったのかな!」
ところどころが焦げた橙の足元は思いの他ふにっとしていて、ついジャンプしてしまったり……そうして青の瞳輝かせはしゃぐ人形の様子も、"つかまえた"飛竜の背に乗る七結にはイロドリのひとつのよう。
娘が通ったあとには密やかに風が薫る。
すれ違う悉くを振り向かせるほど、甘美で、狂おしく――抗えぬ深淵に誘うに似て。それは気化毒で、夢うつつの境界。大気に肌にと染み渡ったなら思考を蝕み、七結という存在は一刻、ドラゴンの"敵"ではなくなっていた。
「そう、そう。飛びまわるのは、こうも心地好いものだったの」
識る。浮き出た背骨のあか色を、つと指で辿り下す命令。
あまえた声で従い降下をはじめる竜を撫ぜ、向かう先漂う白き霧雲の名残を七結は、逆の手に収めた黒鍵のひと薙ぎで払い掻き消して。
遮りがあっては光は届かない。この空は彼らの空であり、人々の空だから。
――この世界には、溢れるような色彩が似合うわ。
ごおっ!! と、吹き抜ける風に髪をくしゃりかき混ぜられたみたい。そんな些事にすら笑うのは、全身全霊で"くらし"たのしむオズ故に。
「そう。たのしくたって、きみたちだけの空じゃないんだっ。よぉし――わたしも!」
ガジェットショータイム!
模倣するのは浮島の触覚や、降り注ぐ淡星とおそろいのおほしさまブレード。駆け出してスイッチを引けば、星屑散りばめながらドゥルンと回転を増すチェーンソーだ。
「太陽も雨も、とどかなくしちゃったのはきみたちだよ。どいてもらわないとみんながこまっちゃうんだからね」
飛び掛かり来るドラゴンを、振り抜いた先の大地を斬りつける度、虹の色深め星が落ちる。賑やかしさは先ほどの獏羊たちみたく、キラキラ。 キラ。
オズの手元までもがちいさな夜空めく。
くす、 俄かに笑みを深めたのは青年のみならず。
「ナユのすきな、夜」
降りしきる月明りも。人びとの笑顔も、美しい景色も、ただ愛おしい。
このうつくしき世界の空をひとり占めだなんて、かなしいほどに惜しいこと。
――――。
揮い手たる娘とともに、攻撃を重ね合わるかたちで鍵杖が空に線引き躍った。
罪をくらってしまうため。
首刈りの刃は残像のみ残して滑り、頭ふたつは先、後方の竜を刎ねる。狙いは己だと身構えていたのだろう、虚を突かれた様子で身を竦める手前側の一体の翼が震えて。
狩られる側が、足を止めるのは愚策と知りながら。
「魔法を、はじめましょう」
「わたしたちみんなでね」
知ったところで、牙を剥く暇など与えられぬまま。
どこか雲に似た蒸気と轟音を上げて迫るブレードの星光が、蒼褪めたドラゴンの頬を染め変え直後には、すぱん!
真っ二つにされた自らもまた夜闇の彩のひとつとなろうとは、如何にもしようがない。
大いに弱らされた浮島の触覚にくっついた星が、漸く、縛めを振り払って光を取り戻す。
波状に襲撃してくる猟兵らへの対処にまるで追いついていない。
彼の閃光によってチカッと大地が照らされるも、浮かびあがるは夥しい数倒れ伏した竜たちと痛ましい傷跡ばかり。
刻む無彩で色付く正円を描き、もうひとつ。
翳す度に彼方の月をも虹に塗り、またひとつ。
敵意など滲まぬ穏やかさで、同じく空を慈しむものへ語りかけるような。 さようならを告げる声は合わせてひとつ。
ふたつの刃が深々と穿たれたなら、波打って暴れる浮島の墜落はもう目前。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ジジ、彼奴等の言葉が分るか?
…阿呆、それは私にも分る
やれ、オブリビオンめ
図体のみでなく態度まででかいときた
――っは、灸を据える傍ら遊んでやろう
浮島の眷属共がジジの上陸を阻むならば
【愚者の灯火】を用いる事で牽制
ほれ、邪魔だ
焼肉にされたくなくば近寄るでない
また周囲に幾つか炎を残しておく事で
彼奴の吐息が視界を奪わぬよう、気流変化を試みる
ああ、任された――灸と呼ぶにはちと熱いやも知れんが
炎を幾重にも重ね、従者が掘った穴めがけ
我が最大の火力を浮島へ贈ろう
何、下手してもジジを巻き込む心算はないし
…我が従者であれば、難なく避難出来よう
空に近付き過ぎたものは墜ちるが定め
ゆめゆめ忘れぬ事だ
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
そうだな、言葉は解らぬが
怒っているという事は分かるぞ
師父、全方位は骨が折れる故、島だ
波乗るようにして竜達の背を蹴り
あえて支えられぬであろう小さな個体に飛び乗り
攻撃を避けながら島への上陸を
さすがに共に「ばかんす」とは参らぬか
<衝撃波>備えた【竜墜】を浮島の只中へ叩き込む
うむ、より怒っているな
師父よ、生憎得手が少ない故
面倒をかけるが灸を頼む
なに、夏は暑いもの故
この島に水場でもあれば良かったのだが
墜ちるまで竜墜を撃ち
穿った穴に師の炎を注いで貰おう
聞こえるか浮島、竜共
空は貴様らごときが独り占めできる程狭くはないぞ
墜落するなら師を連れ退避
邪魔者の消えた青の中へ
……こうでなければな
うむ。すごく怒っている。
見るからに数の減らされたドラゴンらに至っては特攻隊じみており、破れかぶれの突撃だ。口々に喚く音の意味するところは――。
「ジジ、彼奴等の言葉が分かるか?」
「そうだな、言葉は解らぬが。怒っているという事は分かるぞ」
「……阿呆、それは私にも分かる」
やはり、分からねど。
とまれ意思疎通が叶ったとて為すべきことは変わらない。
「まあいい。――っは、灸を据える傍ら遊んでやろう」
「さすがに共に"ばかんす"とは参らぬか」
空はだれのものか?
見据えるは図体同様態度まででかい大うつけ。溜め息零すよに笑って。翼の役目を担っていた傘を閉じたアルバのからだは、加速をつけて空を下ってゆく。
その、やや前方にて切り拓くか。
ジャハルの踏みつけが殺人的な勢いで竜の背をぶち抜くことも、また変わらぬことなのだ。選ばれた小さめの個体は男の重みに耐えきれず、かといって抗う口など背についておらず。波乗りボード程度の役割がもはや残された竜生? であった。
横合いからの炎弾をまず腕一本で振り薙ぐジャハルは、かすかな煙を上げつつも維持。次に来るのが捨て身の体当たりと分かっているから、足場にしていた竜の首をむんずと掴み上げ即席の盾、頭蓋骨同士かち合わせるのもわけはない。
酷い音。力技だ。
「……耳に痛いな」
「そうか。俺には特に痛みなどない」
安堵させるつもりだったのだろうか、従者の返しがズレがちなのもいつものこととして。
――目配せ、首肯ひとたび。
島の端に寄り集まった小粒の障害物どもを認めるや否や、アルバのもとから火の粉が舞った。
手のうちに包めるほどの微かだったのは一瞬で、寸秒、五指をひらき差し伸べたなら二人の姿など楽々覆える巨大火球と化して。
「焼肉にされたくなくば譲るがよい。と、言っても素直には聞かぬだろうよ」
故に焼き払う。
……この男に育てられたからだと、結果よく似た二人だと明快な思考回路を笑う者はこの場にはいなかった。
火球に紛れ、着弾の刹那広がる火の海を掠め、直下。 島へ叩き込まれるジャハルの拳。
黒き呪詛が飛沫めいて弾けては骨まで伝う衝撃のあとに降る。しとしと、毒の雨みたく。竜墜の一打は酷く深刻に大魚の身を揺さぶって、わずかにくっついていた岩々やら翼を失った竜らを振り落とさせた。
「ふむ。灸と呼ぶにはちと熱いやも知れんか」
「なに、夏は暑いもの故。この島に水場でもあれば良かったのだが」
な――、と、引き戻した拳撃の二打目。
地表が皮膚なのだとしたら、地中は肉か。この魚だか竜だか、島だか面妖な巨体にもどうやら生物のことわりは適用されているらしい。内は空洞などということなく、抉った分だけ赤黒い穴は開く。
薄ら漂いはじめた雲のヴェールが濃さを増さぬのはアルバの炎あってのこと。
松明に似てゆらぎ所在を知らせる色が、馴染んだ眼にはその熱によらず、しずかに見守るかのように見え。
(「ただ。 彼奴らには些か、勿体の無い躾ではある」)
"穴掘り"も五を数えたあたりから覚えはないが、骨の露出は早かったように思う。
ジャハルがばさりと広げる翼が合図代わり。飛び立つ男と入れ替わり、アルバの撃ち放つ炎こそが総仕上げ。
幾重にも重ねられたそれはさながら隕石か。
高く掲げた両手、ニッと笑み浮かべて――。
「空に近付き過ぎたものは墜ちるが定め。ゆめゆめ忘れぬ事だ」
――さいごの教えとともに、撃ち下ろせば大爆発。
大きく外側へ膨らむことで軌道から逸れたジャハルは、目と鼻の先の彩にほんのわずか眦を緩めて。そうして主のもとまで火の粉孕む風を引き連れ舞い戻れば、ついに墜ちはじめた島を見下ろした。
「聞こえるか浮島、竜共。空は貴様らごときが独り占めできる程狭くはないぞ」
声の平坦はそのまま、高らか宣言する勝利。
憤ったか輝く大魚の触覚に付き合ってやる縁もなく、連れだって空の中へと往く主従を、果てのなき星月が迎え入れる。
……こうでなければな。
次こそ、吐息には清々しさが満ちて。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
ユーゴさま、ユーゴさま!
おおきいです。すごい。ほんとうに島のよう。
みどりの階段の上で、おおきなさかなを眺めて目をぱちくり。
こんなにおおきいのに、いきものなのですね。
きっとそうなのです。
これをみたひとが、物語を書いたのですよ。
でも、浮島もドラゴンも、追い払わねばなりません。
――わ、わ、動きそう。
わたくしは引き続き鐘を鳴らして、ユーゴさまの足場をつくります。
浮島が向かってきても避けられるよう、風から翠の蔦を伸ばし。
走る先へと道を描くのです。
雲で塞がれたら迂回して、晴れた空まで向かいましょう。
ちょっとだけ浮島の背に乗ってみたかったのは、
ユーゴさまにはないしょなのです。
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と
ああ、本当に島のように大きいな。
……オブリビオンには、ここまで巨大な個体も居るのか。
ここ最近は幼い頃に童話で読んだような出来事のオンパレードだな。
オブリビオンが過去の存在だと考えると、案外あれらは事実だったのか?
引き続き、リリヤの作る足場を頼りに風の弓矢で応戦しよう。
あの触覚、あれは何か危険な匂いがする。
アレには特に注意を払いつつ戦おう。
空中だというのに戦いやすい。
良い足場作りだ、本当にリリヤは戦闘が上手くなったな。
戦う事が上手くなる、か。
童話のような体験にワクワクしている顔を見ると、間違ってはいないとは思うが、もう少し年相応の事をやらせてやるべきかもしれないな。
ちり。りん、りりり。
可憐に咲いたカンパニュラの鐘がなる。その音にいのちを与えられる風に、蔦草たちは元気よくにょっきり、空で伸び放題。だから足場の心配はないようなもの。
それに、ぷすぷす煙を上げて墜ちてゆく浮島を追いかけるみたいなびっくり事態にも難なく対応できてしまうのだ。
上りよりもっと角度のついたみどりの階段を駆け下る二人。
ときに小脇に抱えられかけたりもしつつ、がんばるリリヤの瞳には空に住まう大魚の図がまだまだ不思議で。ちらっちらと視線を向けてはぱちくり。
「ユーゴさま――おおきいです、ね。すごい。ほんとうに島のよう……でも、いきものなのですね」
「ああ、本当に。ここ最近は幼い頃に童話で読んだような出来事のオンパレードだな」
オブリビオンが過去の存在だと考えた場合、案外あれらは事実だったのか。
熟考しかけるユーゴと浮島を交互に見、リリヤはうんと力強く頷いた。きっとそうなのです、拳を握ったから手の内の鐘が不規則な音を立てて、娘の胸裡のどきどきを歌うよう。
「これをみたひとが、物語を書いたのですよ。だってきっと、世界はこんなにも広いって、みんなに知ってほしくなりますもの」
暗い部屋にひとり閉じこもることがどれだけもったいないか。
夢を与える、そんな。 ……けれども、今の彼らは絵本の登場人物として相応しくない。
リリヤの蔦草が、浮島の落下経路へ回り込むかたちで伸び進む。
いまこそ、その物語を守る側にいるのだから。
「ユーゴさま」
「仕掛けよう」
男のため編み上げられた一段ごとの間隔は広く、鍵盤の黒鍵にも似ていた。確かな足取りで跳び進む傍ら、シルフが弓へと姿を変えたなら宙を浮くまま矢を放つユーゴ。その反動で流される距離をも頭に入れた安定感のある戦いをこなす様は、歴戦の。
常は灰被りじみた印象を与う髪も、煙る瞳も。ほんのひととき、死線の風を浴びた瞬間だけは在りし日のように輝うのだ。
決して、だらんと垂れた大魚の触覚が光を放ったから……だけでなく。
「むむっ」
フードの下に隠した獣耳がぴんと立ち、リリヤがすぐさま鐘の音を響かせてユーゴの周囲に巻く風の一部を蔦草へと編んだ。
(「良い足場作りだ、本当にリリヤは戦闘が上手くなったな」)
不思議なことにそれが形を得るよりもはやく踏み切っていたらしいユーゴが着地を決め、次、また次と光線に灼かれる一拍前ごとを蹴りつけてゆく。 草が舞い散って、風へほどけて。
矢と編まれて。
光と同じ数だけ射返す穿風。
一度に、と、知覚できるスピードで狙い違わず突き立つ幾数の矢が、ついには相手方の射手たる星をも砕いた。
光の粒子が、散ってゆく。
矢傷もそうだ。全身をあらゆる攻撃で穴だらけにされた浮島は、剥き出しの骨の奥にボロボロな真紅の塊を覗かせている。核――それは、惑星も持つという中心部であると察するに容易。生物ならば心の臓。
「あれはさすがに外せと言われる方が難しい、か」
く、と喉奥限りの男の笑みは俄かに自嘲めく。
もう一段。
核を正中へ捉えることのできる位置へ、ふわりと生まれたみどりの階段へ跳んで。踏みしめ。
とどめを、の声に応え弓引くあとは。
キュイ――風鳴りの音だけ残して、飛び立った先で赤を散らすまで。
「わ、わ。おっきいの、落ちます!」
「……いいや。見ろ、綺麗なものだ」
示す先では、ぼんと弾けた中心部からも新たな炎が湧き立っていた。
それがやがて大魚を包み、他の炎と混ざり合い。全体を大きな火球と変えてゆくのだから、創世の物語でもはじまりそうな光景。
「わあ……」
実はちょっとだけあの背に乗ってみたかったけれど――とはないしょで――これもすごい!
思わず前のめりになるリリヤが落ちぬようそれとなくフードの端を掴むユーゴ。気付かれてはいないらしい、……それにしても。
(「戦う事が上手くなる、か」)
、間違ってはいないとは思うも、童話めいた体験にワクワクしている顔を見ると、もう少し。年相応の事をやらせてやるべきかもしれない。
娘ほど年の離れた子の扱いに、戦い以上に思案巡らす男をよそに。
"天井"は罅割れ、朽ちながらゆっくりと燃え溶けていった。
皆でつくりあげた、とびきりの魔法のように。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『夜空に花を咲かせましょう』
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POW : とにかく大きな花火を作る
SPD : 様々な色を使った花火を作る
WIZ : 仲間へのメッセージ花火を作る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
取り戻された日常。
月があって、星があって。他にはなにもない。
虹色の毛糸が降りはじめた頃から、ずっと見上げていたというミモの村人たちは、もうから首が痛いと笑って泣いて恩人の帰還を迎えた。
この地へ幸を、ありがとう。
一発目、祭のはじまりを飾り高々と打ち上げられた精霊花火には猟兵への想いも詰まっている。
花を象り躍る炎にはじまり、稲妻となって駆け巡り、ふっと消えたあとには水。
はらはら降り注ぐ雨はしかし、伸ばす手に届く頃にはザラメ糖ほどちいさな結晶と化していた。
「ああ、これ? 大地への捧げものなんだけど、手でつかめた分は誰だって食べていいんだ、これはどんな味かな……あまいっ!」
「それでね、このケーキも名物! 野菜苦手? いやいや一口食べてみて」
こうやって結晶を砕いてふりかけて、と実演しはじめる露店の主人もいれば。
「花火玉作りですか? もちろん、どうぞこちらへ」
オーブのようにほわりと漂うたくさんの精霊を連れた村人が案内する工房では、翼の生えた掌大の球体が並んでいた。"彼ら"が、精霊たちを高い空まで運んでくれるらしい。
UDCアースなどで見ることのできる花火と異なり、ここで大事になるのは精霊との意思疎通だ。
どの順に力を使えばいいか、どのように魅せ、どんな想いを込めたいか。文字を浮かべたい場合その配置。……ちなみに精霊も人間の食べ物や砂糖粒は好物らしく、交渉にもってこいかもしれない。
火の粉の味もおそらく彼らの好みに由来している、とは村人の推測だ。
時間があるのなら玉貼りに使う紙をこだわるのもいい。
「お守りとして、次の年まで花火玉を家に飾るのも人気らしいですよ。効果のほどは、さて……ぜひ精霊に尋ねてみてください」
そう言い微笑む村人の手で置かれた、古めかしい紋様などが描かれた紙束がどんっと作業台を揺らした。
家々の窓が七色に染め上げられてゆく。
咲き、散る、満開の魔法。
どんな夜をも過ごせそうなほど、ミモの空は高く、広くて。
オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と
もちろん、挑戦するに決まってるじゃない!
私達が作る花火はどんな味の結晶になるのか、興味あるでしょ?
意思疎通といってもテレパシーは難しいだろうし、
たくさん話し掛けてみようかな
今日しか見られない特別な花火を作りたいの
……彼のためなのは、君と私の秘密だよ
力を貸してくれる?
いちごジャムをお裾分け
ちらりと覗くも追い払われて
はいはい、わかったってば
一番魅せたいのは綺麗な藍色
夜空に溶け込むようでいて、一等星みたいに煌めくの
私の想いはここに込めたいんだ
縁は銀色!
右下に少しワンポイントで他の色も差そうかな
イヤーカフイメージでね
隣で見上げたお互いの花は、きっと何より眩しい
その欠片の味は――
ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と
精霊花火、か
素人でも作れるものなんですかね
作ってみますか?
甘い結晶なんて、いかにもオルハさんが好きそうですよね
精霊との意思疎通……、得意ではないんですよね。こういうのは
込める想いか
見せたい相手はただ一人
なのでその一人が喜ぶ色が出せればそれでいい
……覗かないでもらえます?
それぞれで作りましょう。手で追い払うようにして背を向けて
黄色が好きらしいので、その彩が出したいかな
あとは……若草色と、ピンクゴールド
……そのまんまオルハさんですね、これ
まぁいいか
報酬代わりに祭で買った飴粒をひとつ、精霊へと渡し
空に花咲くその時には
隣で共に見上げよう
鮮やかな光に包まれたなら、一時あれほど強烈だった眠気もどこへやら。
足を止めた"教室"の前。
連れがどんなものに心惹かれるかはお見通しのヨハンが、作ってみますか? と問うのと、もちろん、の声が返る様はすっかりいつもの日常だ。
――私たちが作る花火はどんな味の結晶になるのか、興味あるでしょ?
甘い結晶だなんて、いかにも彼女が好みそうとの予想通り。手のうちに収めた見本、こと既にいくつかの精霊が溶け合った球体と見つめあうヨハンは無言で。
(「しかし精霊との意思疎通……、か」)
キィ、キィ。寄りかかる椅子の背もたれを鳴らす。
術に通ずるものの使役こそ染み付いているが願う、祈る。友になるというのは如何だ。少なくとも得意ではない。
ちろりと視線を外した端では、なにやら精霊とおしゃべりに興じているらしきオルハの姿。
(「……さすがと言う他ない適応力だな」)
「うん? どうしたのヨハン、手が止まってるよ」
右手に馴染みのジャムの瓶、左手にちょこんと乗せた花火玉。周囲を漂っていた夜色をした精霊が、その手に止まったならともに問いかけてくるみたい。
すっかり意気投合しているらしく。
「いえ別に」
「ああ、おやつ用意してないなら分けてあげようか」
「間に合ってます。……、覗かないでもらえます?」
それぞれで作りましょう。 椅子を引いて間近まで寄れば、手を払いながら向けられた背のつっけんどんさがあったとて、オルハには嫌な気ひとつ浮かばぬのはヨハンだからこそ。
はいはいと声も明るいまま見下ろした間近の精霊。 その色。
――よく似ているだなんて、気付かれただろうか?
「……彼のためなのは、君と私の秘密だよ」
今日しか見られない特別な花火を作りたいの。力を貸してくれる?
ひそひそ声と。きゅぽん、と、小気味良い音で外れた蓋が結ぶ小指に代わるやくそく。
オルハの手元が夜ならばヨハンの手元は夕焼けで、陽だ。
黄色が好きだと聞いている。
「あとは……」
若草色と、ピンクゴールド。
ちょいと手繰り寄せるオーブ状の物体を並べて思うのは、そのまんま彼女だということ。数秒ほど指先が固まるが、押し合いへし合い玉皮に入り込む様子をみるに待ったをかけるも難しいし。なにより。
(「見せたいひとが喜ぶ色が出せれば、それでいい」)
なにが恥だとか、どうとか。
目を瞑っても、自分という存在の枠組みを捻じ曲げてもいい、唯一のひとだから。
「黄色多めで。そっちの方は出てください、はみ出すでしょうが」
はじめてかけた一声にぴょぴょと揺れる精霊たちはまるで喜んでいるかのよう。
買いたてのうすいアンバーの欠片に似た飴粒を落としてやれば、いまにも燃えんばかり、パッと輝いて。
空に花。
いちごジャムの香りがするのが、上からだか隣からだか分からない。
夜色――だが、夜空に混じり見えなくなってしまうことはなく。
弾けた直後に縁へ向かって、銀の煌めきが沸々湧き立つ風に二段目の光を散らす。魅せる仕掛け花火は他でもない、オルハの"一等星"。
はじめ黙り込んで見上げていたヨハンが何気なく指に触れた耳元の飾り……イヤーカフをもイメージしたのか、朝へ繋がる赤紫がかった彩は円の右下に。
"らしい"細やかな仕事ぶりに、思い至らぬはずもなく。
「……もっと映える色にすればよかったんじゃないですか」
「それを言うならヨハンのだって、意外な――でもないかな」
うん。 とっても、綺麗。
そっと開いた掌へ落ちてきた結晶は、混じり気のない果糖の味わい。
想いの通じ合うように。かすかに指の触れ合うように。重なりながらも隣り合って咲く花が、他のなにより眩しくて。
それでもほんの一瞬すら、瞳閉じるのも惜しいほどの現実(いま)を。願わくば、これからもずっと。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
渦雷・ユキテル
花火玉作りに行きまーす。
精霊花火なんてUDCアースじゃ出来ませんし、
あれこれ模索してみるのも好きなので。
ド派手じゃ無くたって構いません。高くまで上がるなら。
精密さが大切になる花火にしたいので
ぜひ技術力のある精霊さんにお願いしたいんです。
あなたとかー、あなたとか!
(ここで貢ぎ物)(露店で何か甘いもの買っておきましょ)
あ、人選もとい精霊選は雰囲気です。
だけど直感って計算と同じくらい大事でしょう?
星図を描いて広がる雷光、その後にはそれを留める氷粒。
最後は露みたいな結晶になったらもっと良い。
きょうの空を彩るのは花火だけど――
夜毎遍く照らす星々に、さいわいあれ。
ん、おいし。
※絡み・アドリブ歓迎です
須藤・莉亜
「祭とくれば、先ずはお酒だね。果実酒があるんだっけ。」
お酒とツマミを確保して、のんびり花火見物でもしとこう。
そういえば、花火玉も作れるんだっけか。試しに僕も作ってみようかな?
お酒好きな精霊を探して協力してもらおう。
「なんの力を込めれば良いのかな?僕のはほとんど闇よりなんだけど。」
天使召喚も出来るっちゃできるけど…。
ちなみに込めたい願いは、仲間の幸せ。あとは美味しいお酒との出会いかね。
絢辻・幽子
ぽとぽと落ちているもふもふを回収しつつ
露店販売の果実酒やら冷たくて甘いものを
あれもこれも堪能して
っふふ、枕とかクッションの中身にしたいわねぇ
あぁ、……いい夢みれそ
精霊さん、私と気の合う子っているかしら?
それはそれでちょっと癖がありそうだけど
甘いのなら私も好きだし、さっき露店で買ったの食べます?
えぇ、交渉です。交渉。
あ、もふもふはお好き?
お花は紫になればいいですねぇ
……でも、何を願おうかしら
幽ちゃん欲深いせいで色々あって迷うのよねぇ
あ。『しあわせに過ごせますように。』
なんて、全部叶いそうじゃない?幽ちゃん頭いい
私の願いが空に咲いて、雨となったら
どんな味がするかしらね?
ふふ、楽しみ
ド派手じゃなくたって、構わない。
――求・技術力のある精霊さん!
たのもうと扉を開けたユキテルを出迎えたのは、自信満々ドヤ顔(体感)のオーブ数体であり。
ずずいと差し出した貢物こと星屑入り練り飴にも、それはもう自ずから溺れるほどに群がってきたのであった。
「貼り付いてとれなくなったりして……」
「なんの力を込めれば良いのかな? 僕のはほとんど闇よりなんだけど」
まぁとりあえず飲みなよ、のノリだ。
熱い歓迎に一抹の不安が過るユキテルも、精霊たちのinした玉皮へなみなみと酒を注いでいる莉亜を見れば気が休まるというもの。
自由で、自由がいいのだ。 何事も。
その酒の余りをぐびりと呷った莉亜が、頬杖をつきながら精霊たちへ声を掛ける。
「今後とも美味しいお酒との出会いが舞い込むようによろしく」
それとそうだな、仲間の幸せ。……とはまるで"ついで"じみた口ぶりながら、こちらが本命。たちまち液体を吸収したらしい精霊が分裂したりひとつに固まったり、騒ぎはじめる姿が任せろといわんばかり。
この状態で食べてもうまそう――摘まみ上げたところで、後ろの扉が軋みながら開く音。
――あらあら。盛り上がってるわね。
声とともに戸口から、両腕いっぱい大量に虹色毛糸を抱えた幽子が顔を覗かせる。ともすれば酒の香に釣られていそうにふわふわした足取りは、手にした酒瓶からして納得の。
「これ、さっき戦った? えーっ、案外綺麗に残ってるものですねぇ」
「っふふ。ちゃあんと寝心地の良いものを選んできたのよ」
「へー、寝つきがよくなったりするのかな」
もふ……と毛玉へユキテルが触れるのに莉亜も興味を示す。そんな二人の近くに悠々と腰掛けて、ちょっと周りの様子を眺めてから、幽子もまた精霊を呼びつけんと手を開いてみせた。
ブツならとびきりのものがある、とは、実際に口にしたものの心の声。
「ほーら、精霊さんたち。甘いおやつが欲しくないかしら?」
ちいさくて、ころころ丸々としたラムネめいた塊。
ぼんやりと輪郭は淡く透けていて、まるでオーブに似た精霊たちの仲間のようだ。
「……共食いです?」
「あれかも、最後に残ったのが一番強い花火だーみたいに」
やあねえ本当においしいの、などとおすそ分けされた粒を半信半疑の面持ちで口へ含んだユキテルと莉亜であったが、たしかに。
味の方は心配いらないし、なにより精霊たちははしゃいだ様子で幽子の手元へ寄ってきていた。
そうして、こう。
「もふもふもお好きかもって思ったのよ。ほら、私と気の合う子っていうとね」
「ちょーっとダイエットが要るんじゃ? 険しい道ですよー、女の子の体重管理は……」
ぎうぎう。
お腹いっぱいに"交渉"を受け入れた精霊たちと、花火玉の中に詰まった獏羊の、毛。むしろはみ出している。
……鮮やかな紫の色味は何だろう? 虹色を取り込んだことでどこかグラデーションがかった物体をつんと横からユキテルの爪がつつけば、みょんと伸び縮みするのが面白い。
そんなユキテルの手元では愛らしくデコられた球体が出来上がっている。
年に一度の晴れ舞台、かわいく飾られてこそでしょうとの提案に意気投合した精霊らが進んで色をまだらへ映り変えたのだ。
ピンク、赤、それに黄色。明るい色ばかり詰めた端に、そっと咲く一輪の花の柄。
頼んだわけでもないのに――、乙女心の分かる子がいてよかった。
「うんと高くまでお願いしますね」
ふふっと笑いが零れれば、さやさや精霊も揺れる。
その横では莉亜の花火玉……、こちらも若干虹毛を巻き込んでいるのは作り手の性質故か、否か。いつしかふらりと抜けて、酒にツマミまで追加していた男は窓の方を指した。
「じゃ、早速やっちゃう?」
――と。
降る、降る。
どぎつい色彩のその実、弾けてみればライラックのやすらかな紫。
欲しいもの。食べたいもの。したいこと。幽子は"よくばり"だから、自らのしあわせを願うことですべて叶えることにした。 幽ちゃん頭いい、なんて微笑み湛えて。
糸雨の如くに掌へ辿り着く頃にはやわらかくて、むにりとした手触りの結晶がころん。心なし獏羊の感触に似ているそれは――。
「んー。金平糖と、それにお花の香りみたい」
「なんだかいい匂いすると思った」
安眠を約束するラベンダー?
ちょうど近くで手を伸ばした莉亜も間近に見つめて懐へ。いま、頭上高くで泡を飛ばしながらしゅわしゅわスパークして夜空へ溶け消えた花火もきっと、貢物の影響を強く受けている。
双方ともまろやかな桃の風味をした果実酒でほろよい好い心地。
酒瓶片手に手を挙げて、掴み。 あらたなる冒険のひとくちは。
「! まあ、お酒の味?」
「酒の雨なんて浪漫だなぁ。おっと、子どもにおいしく戴かれる前に集めなきゃ」
代わりに渡してあげるのは生肉味がいい?
いえいえ、さっき落ちてきたとってもひんやり桜味が……。
なにやら山分――手分けせんと遠ざかる二人を横目に笑って見送れば、次、大きく高く打ちあがった花はユキテルの番。
「…………」
ひととき声も忘れて。
もとから空に灯っていた星々といっしょになり、ときに繋ぎ合わせ、星座を作る雷光。
繊細に描かれた星図をしかと刻む風にいくつもの氷粒が留めて、ひと、ふた、秒ごとに花弁を数えながら六花を象ったならばそのお終いにみたび弾けた。
(「きょうの空を彩るのは花火だけど――」)
夜毎遍く照らす星々に、さいわいあれと。
降り注ぐ結晶は、朝一番に産声を上げた綺麗なままの露のよう。
「……ん、おいし」
あまいもの。
ほんの一握り分だけ包んだ欠片は、いつか。この手で届けたい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エンジ・カラカ
ミミ(f14910)
なんだっけなんだっけ
やりたいことがあるー?
ザラメ糖ってなーんだ。殺す?盗む?食べる?
まァ……イイや。
賑やか賑やか
みーんなして浮かれてふらふら面白いなァ……。
楽しいコトがたーくさんあるンだろうなァ……。
屋台?そんなモノは牢獄には無かった。
勝手に食べてイイ?
通りながらそっと盗むのは?
コレが育った場所だと普通なンだ。
ダメ?ダメ?
賢い君、賢い君、ダメ?
アァ……そうかそうだなァ……。仕方が無いなァ……。
じゃあ飲んで騒いで楽しもう。
麦酒はどーこだ。
コレは麦酒がのみたい。
飲みながらぶらぶらして野菜ケーキを見つけて
これこれ、土産にしよう。そうしよう
賢い君もそれがイイって言っている
深海・揺瑚
エンジ(f06959)と
ザラメ糖はこれよ、これ
落ちてきたザラメ糖をぺろりと味見
ちょっと甘すぎる気もするけど……まぁいいわ
小瓶に詰められるだけ詰め込んで
珍しいモノが手に入ればご機嫌に
牢獄?さっきから何かと物騒ね
伸びそうになるエンジの手をパシッとひと叩き
モノは買うものよ、対価を払いなさい
ま、時と場合にもよるけどね、今日はダメな日
そうそ、お祭りは飲んで楽しむものよ
果実酒が売りなら私はそっちがいいわ
あっち、賑やかだし酒もありそう
美味しかったら少し買っていこうかしらね
野菜ケーキって……美味しいの?
甘味よりも酒の肴を求めてカツコツさまよい歩く
●
長躯を猫背に屈めた男と、堂々胸を張って歩く女。
エンジと揺瑚、傍目に対照的な様子の二人も七色の光に等しく照らされている。
「ザラメ糖ってなーんだ。殺す? 盗む? 食べる?」
鼻先を右へ左へと向け、気怠げながらも落ち着かぬエンジからの問い。
だって、空がぴかりと瞬く度に、コツン!
頭にぶつかるちいさな粒がある。それをじぃと見遣る男が「?」を浮かべて足を止めるので、揺瑚は手に取った分を軽く投げては掴み、掴んでは投げと遊びながら。
「ザラメ糖はこれよ、これ。ちょっと甘すぎる気もするけど……まぁいいわ」
「たべもの」
ひと舐めだけ味見して。 そ。と、短く答え懐から取り出した硝子瓶へとざらり、流し込めば花火そのままを閉じ込めたかのような虹がそこへ収まった。
時にぱちりと弾けて跳ねる。そうそう手に入らぬ代物だ。
さらさら揺れる色へ満足げに眉を上げる揺瑚の横顔とを、ふうんと眺め見たエンジも袖に引っ掛かっていた分をひとつまみ。甘い? あまりよく分からずに、やはり、ふうんと繰り返して。
それでも人々のうかれた姿は分かる。
これは祭で、あれらは屋台なのだとか。そんなもの、"牢獄"には無かったけれど。
ふらふら、空を見上げるひとが多いから、ほんのちょっと手を伸ばすだけで容易く欲しいものが手に入ってしまいそう。
どうぞご自由にとばかり並べられた商品へ伸ばした手――それをぺしりと打つひとが真横にいることを除けば。
勝手に食べてはダメ? バレなきゃイイ? "育った場所"では普通のことだと首を傾ぐエンジへ物騒なこと、と揺瑚。
「モノは買うものよ、対価を払いなさい。ま、時と場合にもよるけどね」
「アァ……そうかそうだなァ……。仕方が無いなァ……」
今日はダメな日、そう念押されれば狼男はいつだって「大丈夫」とはやしたてる拷問具を懐へ。代わりに取り出したのは欠けた金貨で、空いた穴から双眼鏡をのぞくみたく続く露店の先を窺った。
じゃあ、飲んで騒いで楽しもう。
「麦酒はどーこだ。コレは麦酒がのみたい」
「あら、飲めるクチなの。あっち賑やかだし酒もありそうよ」
祭は飲んで楽しむものとの認識でいる揺瑚としても、これには乗り気。
商人の勘と狼男の鼻か。すぐに辿り着けた店のひとつで、エンジは麦酒。揺瑚は果実酒をそれぞれ練り歩きのお供としてゲット。
とぷん、と、うすら昏かった瓶のうちで液体が揺れる。
ほのかに柑橘系の香。女の日頃連れるにおいよりもずっと甘いそれに惹かれたか、時折、纏わりくる精霊にひとくちだけとつままれる度に味わいは深みを増した。
「盗まれてる。ダメじゃあない?」
「さぁ。身を削ってるみたいだし、物々交換と思えなくもないわね」
降る火の粉が溶け込んだ分もあるのだろう、はじめ透明だった酒は微かに光を帯びていて、内側からも瓶を照らす。
――宝箱のようだ。
そうなると一気に欲しくなる。
隣へ二度目に伸ばしかけた手はやっぱりぺしっと叩かれたけれども、しかし、横合いから呼び止める客引きの声に顔を上げたエンジの瞳には別のお宝も。
赤々とした実が煌めくケーキ!
その隣のまんまる青は、芋の仲間? 豊かな彩り野菜ケーキたち。味なんて二の次で覗く男に、空の瓶片手に女も歩を止め。、
「これこれ、土産にしよう。そうしよう。賢い君もそれがイイって言っている」
「野菜ケーキって……美味しいの?」
辛い酒にも甘い酒にも合うよ! おひとつと言わず腹一杯いかが、旅の方! ――赤と青、味見のひと切れが差し出されれば。
コレは食べてもいいやつ?
それは食べてもいいやつ。
口に含むと。……なるほど。
ご丁寧に隣に構えられた露店でもうひと瓶、酒を買ってゆく用が増えたから夜は長い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
オズ・ケストナー
クロバ(f10471)と
いっしょに遊べてうれしいからご機嫌
クロバは花火、すき?
大きいのもねえ、すごいんだよ
花火の音に顔あげ
稲妻と雨に驚く
わあ、わあっ
わたしもこんな花火、はじめてみたっ
すごいねっ
同意して笑い
手を伸ばせば積る結晶
ね、ね
たべていいんだってっ
掲げた結晶を次に上がった花火が照らす
あれ?
見たことある気がすると目の前に掲げたままクロバを見て
やっぱりっ
クロバの目とおんなじいろだ
ふふ、きれいだね
でもでも気になるからたべちゃう
ほんのり甘いやさしい味
クロバのはどんな味?
食べてるクロバが照らされて
花火を見逃したと気づく
もういっかいっ
空に向けて手を振りアンコール
声を掛けられた気がして振り返り
たのしいねっ
華折・黒羽
オズさん(f01136)と
ご機嫌な姿見れば
誘いの声に勇気振り絞って手を上げて良かったと
安堵の息ひとつ
花火は…小さな物しか見た事が無くて
言葉の途中大きな音が響けば
拾い過ぎた音に全身跳ねて空を見上げる
鮮やかに華やかに
夜空を彩る光景に目を見開いて釘付けに
賑やかな声を耳が捉えると
…すごい
ぽつり零す様
え、食べる…?
何の事かと彼を見れば目の前に結晶
お揃いと言われたその結晶を食べる様子眺めて
倣う様掌に掬い一口
広がる甘さに目を瞬いて
初めてばかりの出来事
耳も尾も忙しなくゆらゆら
味の感想を言う前に
また打ちあがる花火にはしゃぐ様子をじ、と眺め
─不思議な人ですね、オズさんって
呟く声
聞こえたかどうかは
わからないけれど
花火、すき?
彼の青年の問いかけは、いつもどこか突然で。
華折・黒羽(掬折・f10471)は熟考してしまうから、その間に、答えが知れてしまうこともある。
――今みたいに。
ぱあんと音立て空におおきな花が咲いた。
「大きいのもねえ、すごいんだよ」
まぶしく、振り返るオズのずっと向こうで。
ちいさなものしか見たことがないとは、伝わったらしい。キマイラの……猫の耳は臨場感たっぷりに雄大さを拾い上げて、びりびり。つい逆立った毛をなだめるために我が身を抱く黒羽も、瞳は空へ釘付けだ。
わあっと声を華やがせ駆け出したオズは次には、ほうと魅入った様子の連れの横顔に得意げ!
「……すごい」
「わたしもこんな花火、はじめてみたっ。すごいねっ」
にーっこり!
常より物静かな黒羽の唇から零れた感想のひとつも、わくわくで、たのしいをくれる花火とおなじ。取りこぼさずに笑ってみせて。
飛び出したのにもわけがある。目一杯、高い空へ向けて手を伸べたなら――。
「ね、ね」
「……はい?」
じゃーん、これなんでしょう? と言うかのようにオズが黒羽へ開いてみせる両手。
そこに収まっていたのは、きらきらとしたうすく透ける結晶たち。
その輝きが似ていたものだから、青年の一部だろうかと俄かに黒羽の視線が持ち上がる。ちょうど目が合ったところでふふふとオズの笑いが咲いた。
クロバの目とおんなじいろだ、きれい。 弾む風にそう告げて。
「わたし、花火をつかまえたよ! たべていいんだってっ」
「え、食べる……?」
危ない、のでは。
指が跳ねるも、きっとオズの七色好奇心の前には静止など間に合わなかったろう。当人のくちへぽいと放り込まれた煌めきは、歯を立てれば琥珀糖みたくジャリッとしていて?
しかし内はふるりとやわらかな、ほんのり甘いやさしい味。
「あの。大丈夫、ですか?」
「うん? っうん! ほら、クロバも!」
ゆるやかに降ってくる結晶たち。オズの声。誘われて、一歩目こそ重かったけれど、掬ってひとくち食んだならどうだろう。
あまい。それに、熱くない。
はじめてばかりの出来事にいつしか黒羽の耳と尾も忙しなくゆらめいて、澄みきった味わいもそう。「クロバのはどんな味?」と覗き来るオズの瞳にだって、よく、似ている。
そのことに――思い至って口を開くよりもまた、花火の方がすこしだけ早かった。
「あっ」
一刻夢中でもぐもぐしていた黒羽と花火、どっちも見ていたいものだから、オズの首は大変あわただしいことに。
はっとして空を振り仰ぐも後に残るは結晶のみ。
親指大の、薔薇細工に似た青赤の欠片。両手で大切に受け止めつつも、もういっかい! 空へ向けて振る手はげんきいっぱいのアンコール。
もっとよく見えるように跳ねたり人文字をつくったりもして――じ、と、それを見つめる黒羽の尾は人知れずひときわ揺れた。
活きの良い獲物を狙っているときの心地?
いいえ、もっと別な……。 何かとは、よく分からないけれど。
「――不思議な人ですね、オズさんって」
淡く吐息は感嘆めいたつぶやき。
声援に応え打ち上げられた花火。
まるで似ていない二人だけれど、この一瞬の彩りは、おそろいに染め上げられて。
……届いたかどうか分からぬ声でも、気持ちはきっと。
「たのしいねっ」
まっすぐに返る。
もう一歩分だけ寄ってみたなら、次こそは肩を並べて、同じ景色を見れるはず。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夏目・晴夜
ユタカさん(f00985)
これは凄い、露店が沢山あって楽しいです…!
見慣れないものが多いですが、どんな味がするんでしょう
あ、お土産いいですね
じゃあ、この店で一番高額のをあるだけ買って帰りましょうか。ユタカさんの財布で
気軽に買って食べ歩けるものも多くて、本当に極楽ですね
しかもこれ(火の粉)は買わなくたって食べられますし
美味いですよ、もう最高です
ユタカさんも食べてみるといいですよ
ほら、それとか掴みやすそうです
勿論やりますよ、花火。当然でしょう
でも派手な花火では物足りないです
究極にめちゃくちゃド派手でとにかく目立つやつをドカンと一発いっときましょう
火の粉は特別に分けてあげてもいいですよ、高いですけど
柊・雄鷹
ハレちゃん(f00145)と
なぁハレちゃん!露店もやってるでー!
こう言う露店って、絶対美味しいもんしか売ってないやん…ワイ知ってる
どうしよ、果物でも買ぅて帰ろか
ハレちゃんどれが良ぇ?冷やして旅団の皆で食べよ
アホ、2人で割り勘に決まっとるやろが!
ん?ハレちゃんいつの間に買って…あぁ、降ってきた奴な!
美味いん?めっちゃ美味いん?
よっしゃ、ほなワイもオススメを狙って…
んっ!?違う、これ羊の毛玉や!ぺっ!!
花火やて、ハレちゃんも折角やしやるやろ?
さすが分かっとるなぁ、派手なん一発上げたい!
例えば…ゴールドとか、パッションピンクとか!どや?
ハレちゃーんさっきゲットした火の粉、ちょっとワイにも分けたって
ひとたび戦場を後にすれば、翳りは雲隠れし年相応。
晴夜が尾をぐるんぐるんして歩くのも、それが割と高い頻度で当たって踏みつけより痛いのも、雄鷹はお兄さんなので捨て置いてやるのだ。
はじめ空の花へばかり気を引かれていた少年へ呼び掛けて、もっと視野を広げさせたのも自然体ながら雄鷹の一声。
「なぁハレちゃん! 露店もやってるでー!」
「っこれは凄い、沢山あって楽しいです……! 見慣れないものが多いですが、どんな味がするんでしょう」
こういう屋台は絶対美味しいものしか売ってない! ズバリ言ってのける青年の力強さがますます少年心を擽ってゆく。そういった部分では、まぁ、敵わぬと踏んでいるし。
ならば頼――、使うまで。
果物を旅団の皆への土産にしようかと品定めする雄鷹の視界へするりと指を差し入れ、これと選ぶのは一番高い値札のついたもの!
人間の頭大はあるメロンに似た球体と。手乗りサイズのお上品な、桃……?
「あるだけ買って帰りましょう。ユタカさんの財布で」
「アホ、二人で割り勘に決まっとるやろが! ああーっおっちゃん待ったヤメテ、味ん方もちょい見てから……」
葉っぱ製の皿に盛られていたカットフルーツですかさず味見!
こうしたところはしっかりちゃっかりしている雄鷹に任すのはやはり得策だったようで。だが舌の方は大して信頼していないのか、同じく味を確かめる晴夜の姿があったとか。
結果。
ハレルヤの舌は肥えていますので、ユタカさんがおいしいと感じるくらいがちょうどいいかもしれません――。
尊大な横顔に一口サイズの林檎を押し付けられるまではぺらぺら喋っていた晴夜も、"火の粉"をつかまえるときはそちらへ夢中。
「? なにしとんの、さっきから」
「食べ歩きですけど。ほら、これ。美味いですよ、もう最高に」
パッと開いてみせた晴夜の手のうちには大粒の結晶がゴロゴロ。一瞬とはいえ選び抜いて掴んでいるあたりブレずあった。
薄ら青がかった不透明の白色は燃え滓にも見えないし、かといって生き生きとしても見えない。
「……ホンマに美味いん? めっちゃ美味いん?」
が。
「ユタカさんも食べてみるといいですよ。ああ、それとか掴みやすそうです」
――そんな"ハンター"たる狼少年のアドバイスであるからこそ。
「よっしゃ!」
まるきり信じて掴む! 齧る! を秒でこなした雄鷹は、神掛かったタイミングで舞い込んだ虹色毛玉にかぶりつくこととなる――。
途端に叫んでぺっぺする鷹男が騒がしいながら、ハイハイお口直しにとおざなりに結晶一粒投げ遣る晴夜の機嫌は上向きのまま。
えらい酷い目にあった、と口元を拭う雄鷹。
「せやけど割ともふくて気持ちよかったな、アレ……」
「ほんと人生楽しそうでいいですよね、あなた」
その顰め面も十秒と持たず。
何故なら行き着いた先の看板にみる"花火玉作り教室"の文字列へ、冒険心がむくむく盛り立てられたから!
「ハレちゃんも折角やしやるやろ?」
「勿論やりますよ、花火。当然でしょう。でも派手な花火では物足りないです」
究極に・めちゃくちゃド派手で・とにかく目立つやつ。この目標には雄鷹も同調する他なく、さすがと笑えば二人は我先に工房の扉を引いた。
――ゴールドとか、パッションピンクは?
――なら真逆の色にしますよ、こちらは。
ところで。 いざ席へつき精霊が火の粉を好むと知り、ちょっとワイにも分けたっての両手合わせた懇願へ差し伸べられたものはカラの手であった。
「ぅん? なあにこの手」
「まずお支払いをどうぞ。さっき食べましたもんね、私の結晶」
「悪徳商法かっ!」
瑞々しい洋梨ひとつでここは互いに手打ち。 花火玉を作って。打ち上げて、また味わって――なにせ夜はまだ、ながいから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セロ・アルコイリス
花世(f11024)と
花火の下に駆け出して
──花世、花世!
空から降るあまい星屑欲しさに手を伸ばし
あ、ありがとで、
(モフられて)ひにゃっ?
羊じゃねーです? なんだろ……猫?(髪触り)
掴めたら観察して、口にポイ(何味だろ、楽しみ)
花世はなんの味しました?
……わた、あめ?
『下見』したならやっぱ花火作りてー
花世はやっぱ、花ですか? 牡丹なら火の精霊ですかね?
おれは、
ぱあっと青い鳥が羽ばたくみたいになんねーかな
花と並んだらハチドリみたいでしょうか
あんたは水の精霊? 蜜糖入れたら青くしてくれます? なんて訊きつつ
へへ、あんたならすぐ打ち上げるって言ってくれると思ってました!
ちゃんと咲くかな、わくわくです
境・花世
セロ(f06061)と
楽しげに駆けてくきみの髪が、
結晶で光るのにうずうず辛抱しきれず
取ってあげるねと手を伸ばす
羊? ううん、このモフ感はあれだ
想像通りの柔さに思わず唇開けば
煌く光が舌の上に落ちてくる
それは甘くて、やさしくて、ふわふわで、
綿菓子の味がするよとくすくす笑い
存分に堪能したら自分でもつくってみよう
この花みたいに大輪に咲いてね、なんて
精霊たちときゃいきゃい相談重ねれば
近年稀に見る傑作が生まれる予感
セロのも出来た? なら早速打ち上げよう
次の季節なんて待ったりしない、
今、隣にいるきみと魔法の夜を過ごすんだ
花と鳥とが鮮やかに夜空へ咲いたなら
降り注ぐ光はきっと――とびきり甘いに違いない
斯くして村を救いし冒険者たちは、祭へ招かれるのだった――。
招待の声を高らかに上げたのは、なにより大空照らす花火たち。
降り注ぐ光のシャワーはスターマイン。枝垂れた花の降るように、さらさら灯るその最中を、駆けだしたセロは両手を広げてくるりターン。
ぺちぺちっと軽い音立てて頬を手の甲を滑る星屑に、くしゃりと笑いが弾けて。
「――花世、花世! 見てくださいよ、同じものが見えてますか?」
「うん、うん。とってもキラキラで、ピカピカだ」
ただひとつ異なるとすれば花世の視界には、セロの存在もプラスひとつ。
満たされていて。幸せそうで。当人が、その感情の名を知らねども。
青年の手が空へ伸びる度に、やさしい風が寄り添い恵みを運んでくる。両手いっぱい受け止めたお宝をじっと見つめるセロの横顔は実に、本当に、もう――。
「いっぱいついてる。取ってあげるね」
うず、とする手は辛抱しきれず、花世の指は星集めよりもやわらかそうなその白髪へついに。
「あ、ありがとで、」
もふっ。
「――ひにゃっ?」
「ううーむ中々取れないぞ、困ったなぁ。ふわふわで……、困ったなぁ」
想像通りの柔さ! 思わす開いた唇からは心よりの微笑が零れてしまい、当初想像した羊とは別の親戚を連想しはじめる花世があまりに"たのしい"そうなので、つられて己の髪をいじるセロは不思議顔。
「なんにせよ、髪の一本でも勇者サマのお役に立てるなんて至極光栄。……ぁ、そういや花世、もう食べました?」
「ん」
ちょうどいま偶然にも舌先に舞い落ちてきたところ! 煌めく光は甘くてふわふわ、やさしくて。すぐに思い至って、綻んで。
「食べた。綿菓子の味がするよ」
「わた、あめ?」
セロの髪もおんなじ味がしそうと続けたならば、尚の事瞬きの回数は増えて。
同じだけ、花世の朗らかな笑い声も。
ころりと頬に転がす結晶がきっと美味いものであると、知れるのはそれを知るひとといるからこそ。
花火玉作りクエストにだって怯まず全力で乗り込んだ二人は向かうところ敵なし、だ。
「あんたは水の精霊? 蜜糖入れたら青くしてくれます?」
「この花みたいに大輪に咲いてね」
近年まれに見る傑作だって生み出せちゃいそうなほど!
作業台にペタリと伏せ視線的なものを合わせるセロと、己が右目に咲き誇る八重牡丹をこれと示す花世。
"プレゼント"もおいしくいただいて、やる気たっぷりの精霊たちはすぐに花火玉のうちへと潜り込んでいった。
それじゃあ、どうする?
……などとは尋ね合うまでもなくて。
「セロのも出来た? なら早速打ち上げよう」
「へへ、あんたならすぐ打ち上げるって言ってくれると思ってました!」
次の季節なんて待たずに、今。
隣にいるひとと魔法の夜を過ごすんだ。
狙い通りに、願い通りに。
高き空には紅牡丹。二層となった芯から縁へ、白へ赤へと輝いては燃ゆる炎の尾をはらはら散らせ渦巻く様が、繊細に重なり合った花弁によく似ていた。
その周りには小割物花火状態で、一斉に炸裂しぱあっと羽ばたき舞い飛ぶ青い鳥! ……の、姿を演出する水精たち。
花とハチドリ。
相反す特性を有しながらも、妨げ合うことなくひとつの芸術がそこにある。
「文句なしの大成功! じゃねーですかっ」
「ほんとうに空一杯に描いてくれるんだもの、これなら魔王もイチコロだね? なんて! ……さあ、」
わくわく、しながら見上げていたセロが拳を振り上げるのに倣った花世が、次にはその手をゆるやかに引いた。
行こう!
――とびきり甘い光のもとへ?
――次なるときめく冒険へ?
――そのどちらともへ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
【いつもの】
花火から飴が降ってきた…
というわけではないんですね。へぇ、精霊の。
本当に色々な味があって面白いですね。
……旅先の食文化を楽しむのも趣ですし。
どうです、一つ食べてみません? 害はないですよ、たぶん。
ああそっか、精霊花火ですものね。
誰でも作れるのは興味深いですね。
あ、夕立さん。その紙風船一個ください。
何にって…記念です記念。
花火玉がお守りになるんでしょう?
こういうものは効果よりも思い出です。
今から使うぶんは一緒に折りますから。
ほらほらラッカさんも…折れます? ねこさんの手ですけど。
誰かを楽しませる火、ですか。
…煙が目に染みるんですけど、どんな精霊引っかけたんですか?
矢来・夕立
【いつもの】
精霊花火。火薬のそれとは違った風情がありますね。
…で、穂結さんは色気より食い気ですか?
ラッカさんの方がよほど趣ってものを解…
あ、花火玉の紙。それ単品で売ってますか?買えます?この符の術式は式紙で代用可能でしょうか。いや買えるなら符は買いますよ。あるだけください。いい紙ですね。リリティカの細工紙にも負けてませんよ。どうも。
ふう。久々にやったな、紙オタク。
コレで風船を折ります。
で、精霊さんをこの火の粉で買収…、ンン。ご協力頂いて、中に入ってもらう。
はい。カンタンですが、花火「っぽいもの」。
打ち上げ花火もイイですけど、
手元で遊べるものがあると楽しいでしょ。
…お守りになんかなります?
ラッカ・ラーク
【いつもの】
地面に足つけて夜空を見上げるってのも、たまにはイイよな。なんか不思議なカンジだ。
データでも火薬でもない花火かあ、降ってくるのが甘いカケラなのもおもしれーじゃん。綺麗だし。精霊ってすげえんだなあ。
ま、アンタらの興味はソッチだろ?オレも混ぜてくれよな!
オレも記念にひとつ欲しいな、置くとこねーから小さいヤツ。折角だし?
なるぜ、お守り。旅の想いではそれだけでも力あるお守りだ。
精霊にあげる火の粉のカケラをおやつに、自分でも紙風船は折っ…折って…折ってみンだよやればできっかもしれねーじゃん!?
爪先でちまちまやるから、ちゃんと綺麗に光るかは精霊頼みかねえ。
ド派手なのだけが花火じゃねえもんな。
●
「地面に足つけて夜空を見上げるってのも、たまにはイイよな。なんか不思議なカンジだ」
「花火から飴が降ってきた……というわけではないんですね。へぇ、精霊の」
こちらはいつもの三人組。in工房。
開けっ放しにされた窓や扉からは空が、花火が見える。データでも火薬でもなくて、さらには食べられるときた!
火薬混じりの冒険を思わせる夜風にうんと伸びをするラッカの猫ひげもそよそよ、どこか上機嫌。神楽耶のご機嫌のほどは分かりやすく、そう。
「で、穂結さんは色気より食い気ですか? 両手っていうか袖まで活用してるのプロイーターですね」
降るやつ降るやつ余さず手を伸ばして口へ袖へと放り込んでいたわけだ。
曰く、……旅先の食文化を楽しむのも趣。 と。
夕立のなまぬるい夜の温度感した声にも、もご、と口の中のものを飲み込んでから被りを振る神楽耶。袖口をごそごそ、ぐーからぱーへずいと突き出す手。
「そう言わずどうです、一つ食べてみません? 害はないですよ、たぶん」
「いや三秒ルールどころじゃねえだろ……おっ、青に紫。水色もあんな。綺麗じゃん、精霊ってすげえんだなあ」
覗いたラッカはといえば味もだが見た目も楽しむ派。
なんの味かと夕立が問えば、神楽耶からはなんだかこう、甘い――です! とキリリ顔で返るのみ。
「ラッカさんの方がよほど趣ってものを解……、あ」
「あ?」
ひとつ作業台を横切った途端に言葉途絶えた夕立の視線の先を追った二人が、ああ……と腑に落ちるまでは早い。
紙オタク。
それ単品で売ってますか? 買えます? この符の術式は式紙で代用可能でしょうか。いや買えるなら符は買いますよ。あるだけください。いい紙ですね。リリティカの細工紙にも負けてませんよ。どうも。
――ノンプレスで村人へ詰め寄るほどに、物珍しい"紙"にお熱なものだから。
まぁた始まったよで肩を竦めたラッカは、その際のちょっとした手ブレでぺちん! さきほどから頑張って丸くせんと玉貼りしていた花火玉をねこハンドで凹ませてしまう。
あれあれ? どうしたの? と言わんばかり、精霊たちが案ずるように周りを飛ぶのがむしろ痛ましい。がっしがしと頭を掻く男。戻そうとして……ぽこん! 次は反対側が!
「……別に、丸くしなきゃだめって決められてねーだろ?」
「ふふ。そういったものも斬新で良いかもしれませんね」
肉球型にしては?
との神楽耶の提案は、逆にムズいわと一刀両断されたものの。
爪で刻んで"しまった"穴ながら、内へ外へと出入りする精霊らがちかちか光るのは、これはこれでプラネタリウムかランプの如くうつくしい。
「言えてると思いますよ。っぽいものでも、飛んで弾ければ同じだ」
どっさりと紙束を抱えた夕立は無表情ながら満ち足りた吐息で、二人から絶妙に椅子ひとつ分ずつ程度離れた席へ腰かける。
うち一枚、古地図じみて褪せた白に薄紅を抜き出して折りはじめるは紙風船。おてほんなど見ずともちゃちゃっと作れてしまうのは慣れだろう。
はてな、浮かべ見守る神楽耶にラッカ。折り上げた中の空間に"火の粉"を撒いて……? 惹かれた精霊がふよふよ飛び込んだなら、仕上げで耳を立ててやる夕立。
――うさぎ?
「まぁ、ラッカさんのねこさんもこれなら寂しくありませんね」
「仲良くしてやってどうぞ」
「るっせ! るっせ! 猫要素ねぇしオレの!」
でも、と神楽耶。夕立さん、その紙風船ひとつください。……まさか野山で兎を追い立てていそうなこの女がかわいいアニマルを欲するとは、一言「食えませんよ」との夕立の声につい吹き出すのはラッカで。
同じく摘まみ上げる紙風船をしげしげ眺める。 打ち上げ花火もいいけれど、手元で遊べるものがあると楽しい――作り手の言葉通りまったく、悔しいほど器用なつくり。
「あーほら、あれだろ? 飾っててもお守りになるっつってたやつ」
「そうです。ラッカさんよりわたくしより、夕立さんの方が趣がないのでは?」
……なんてのは言ってみたかっただけ。
こういうものは効果よりも思い出です、告げて神楽耶が両手に包む"花火っぽいもの"は適度に角ばっていて、なにより綺麗で。よりちいさくて。棚に飾るにぴったり。
「……お守りになんかなります?」
「なるぜ、お守り。旅の想いではそれだけでも力あるお守りだ」
先ほどの穴ぼこは打ち上げて一夜の思い出と昇華するとして、オレも記念にひとつとリベンジマッチを挑むラッカ。
夕立謹製紙風船を横に置いて、いざ折って……折ってみ……、
「ラッカさん」
「――やればできっかもしれねーじゃん!?」
やってもできぬことこそある、が。
だれかを楽しませる火。
ひとごろしにだって、はぐれ者にだって、モノにだってひとと同じソレを生み出すことができるなんて、不思議。
はればれ咲いて散るを見上げてばかりいたから、結晶か何かが瞳に零れたろうか。いやに染みて。擦る指が当たり前の如くに動かせる自らにゆっくりひとつ瞬いて、神楽耶は両脇を眺めた。
「……煙が目に染みるんですけど、どんな精霊引っかけたんですか?」
「式紙のときの話じゃねーけど、似たようなヤツばっかだったりしてな。オレらに」
「とすると此処も、今後万年は栄えるでしょうね」
――ウソどころじゃない。
重なるツッコミも、しかし満更でもない風味。揃いの紙風船、幽かでいて易々絶えそうにない光こそが笑うように揺れていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
狭筵・桜人
おっなんか落ちてる。
足場にしてた獏だか羊だかの落とし物ですか。
この虹色羊毛からは金の匂いがしますね。
拾い集めたこいつをUDCアースに持ち帰って一儲けしたいところですがー……
税関(グリモア)で弾かれる恐れがあるわけです。
と言うわけでニュイさんに袖の下……じゃなくて声をかけに行きます。
転送お疲れ様でした。
まあまあニュイさんもお疲れでしょうからゆっくり休んでくださいよ。
肩でも揉みましょうか。肩どこだ。
ブラックタールの食事事情はわかりませんが
飲み物とかやたらと奢りながら持ち帰りの交渉してますね。
こいつをですね……
UDCアースに持ち帰って……
業者に高値で売り付け……
花火の爆音で会話が…………
「筋肉痛に効くよ~だとか、十年は早いってんですよ。 あ、後で売りつけるには良かったか」
浮かんでは消える碌に覚えちゃいない上司やなんやの顔。喧噪には背を向けてひとりごと。
ちょいと早めに退散と洒落込もうとしていた桜人が、むぎゅり。
まだ雲の上にいるかの感覚とともに踏んづけたのは、落ちていた虹色の塊。
「ん……あのときの足場の落とし物ですかね」
踏み心地で判別できるほど、もはや生命体というよりも便利グッズか何かだと記憶が処理しているらしいが、その通り。金の匂いがする――瞬間の勘もまだまだ冴えていて。
拾い集めて、UDCアースで一儲け?
目下の問題は税関(グリモア)?
……ピピピと脳内で演算してはじき出した答えは、なら袖の下を使えばいいじゃない、だった。
「ニューイさん、こんばんは。良い夜ですね」
「はい、こんばんは! とってもおつかれさまでした!」
転送お疲れ様との桜人の言葉と人好きのする笑みはやわらかく、腹の底など知る由もないタールはうにょりと伸び縮みして挨拶を返した。
疲れ目にはやや騒がしいほど。
眉間を揉みつつも、タールの後方(?)へするりと回り込む桜人。
「まあまあニュイさんもお疲れでしょうからゆっくり休んでくださいよ。ほら肩でも揉み……肩どこだ」
「ああ――えっと、肩がご入用なんですね! ふんっ」
ぼこぉ!
と盛り上がる肩のあたり(?)に手を置くも異様に沈む。こいつはいけない。加えてぼこぼこ音立て波打つ様は仕事上見慣れたなにかにそっくりで、スッ……と手を下ろした桜人は押すようにしながら歩きはじめた。
「お風呂? それともごはん? みたいな選択肢って大事ですよねやっぱり。ごはんにしましょっか」
「わぁー、大賛成です。食べたいものは見つかりました?」
そして割と歩きにくいのですぐに離した。
奢りますよ。いえいえおごりますよ! のエンドレス応酬が繰り返される中、結果的にただモンスターとなかよく散歩するような平和な図式が完成する。
ふわ、ふわと、そんな桜人の懐から時たま覗く虹色に興味を示すニュイ・ミヴ(新約・f02077)。
「? きれいなもふもふですねぇ、生きものですか?」
「こいつですか。そうなんです、親とはぐれて迷子の」
迷子の!?
「かわいそうですし、すこしの間私の方で預かろうかと」
かわいそう!!??
――いけしゃあしゃあ繰り出す桜人の"それっぽい情に訴え作戦"も相当なものであったが、相手もいまいち聞こえないのか首(?)斜めの角度を維持するタールだ。誰も幸せになれない。
加えて花火の爆音ときた。
帰るつもりがいつしか村の中心部。両手も税関へ寄越す気でいた飲み物やらで塞がって、これではまるでお祭大好きパリピのよう。
……ただの毛玉ですよ。UDCアースに持ち帰って、業者に高値で売り捌きます。
終いにはズバリと口にした動機も。こういうときに限って、ひときわ大きな花火が掻き消してしまうので世は無常。
やっと鳴り止んだ頃には色々混ざったのか、大丈夫。きっとなかよくできます、と、ぐぐっと親指(?)を立てる黒いのがそこにいた。
そうだそちらのみなさんにもごはんを! さぁあちらのお店へ、……存外長引く気配に目さえ瞑れば、交渉――……成功?
大成功
🔵🔵🔵
リオネル・エコーズ
掌を上にしてのんびり
ニュイくん(f02077)見かけたらやっほーて挨拶しよ
精霊花火、凄いね
初めて見るから色々想像してたんだけどそれ以上
頭の中はプレゼントもらったちびっこ時代みたくワーキャーしてる…
だってメチャ綺麗な花火が咲いて
消えたと思ったら砂糖粒みたいな雨になって降ってきてて…これはアガる(真顔
頑張った甲斐あってか掌には結晶がそこそこ
この嬉しさは、夢がそのまま形になった的な
味確認しようと思うんだけどニュイくんもどう?
どんな味だろう
甘いといいけど酸っぱいのも楽しそう
あ、ケーキに砕いた結晶かけて食べたりするんだっけ
良かったら後でそっちも行ってみない?
祭だし、ケーキ夜ご飯にするくらいきっとOKな筈
やっほー、とはうごつくニュイを発見したリオネルのゆるやか挨拶。
……なんかおっきくなってない? は、その次の一声。
「やっほー! ですっ。おいしいものがたくさんで、目移りしちゃいますよね」
「育ち盛りってやつ? 精霊花火も凄くてさ、凄いね」
ちょっと語彙吹っ飛び済のリオネルの頭の中はなにより、想像のうえを行く景色を頭上に、プレゼントをもらったちびっこ時代よろしくワーキャーしていたもので。
だって、ハチャメチャに綺麗な花火! それが咲いて、消えても消えていなくて、砂糖粒みたいな雨になって降りてくる……そんな光景。
「――アガるっきゃない」
「おっしゃる通り。パァリィナイトです!」
くわっっと真顔になったリオネルに全面同意のタールもやたらに跳ねた。踊りなのかもしれない。
跳ねてから、ふと。かたく握りしめられた青年の拳から漏れる光に気付いたようで、そちらをつつく風にちょんと触覚を伸ばして。
「アガるあまりリオネルさんが精霊そのものに!?」
「そっか、道理で体が軽いと――いやいや、これ火の粉ね。食べられるって言ってたじゃん、ニュイくんもどう?」
味確認しようと思ってたんだ、そう開かれた掌にはここへ至るまでたくさん空へ手を伸べた頑張り分の収穫が。
おっきい手ですねぇと別の意味でもやんやするニュイはもちろん大喜び。
自分のからだではじっくり眺める前に取り込んでしまうから、リオネルの手の上の在り様をひとしきり楽しませてもらったあといただくことに。
「どんな味だろ。甘いのもいいけど酸っぱいのも楽しそう」
「ふむぅ……やさしくてほんわかで、でもちょっとパチパチして、とかです?」
あぁでもリオネルさん味じゃないのでした。
俺味? パチパチって何?
――くっと笑いと期待が降り積もるお味のほどは、如何に。
…………。
「パないおいしい」
「パなしい」
空仰ぎがちの似た角度でまっっっったりしてしまうオラトリオとブラックタール。
そのリオネルの翼と瞳とがハッと揺れて現へ引き戻されたのは、向こうの露店から気合が入ったケーキ売りのおっちゃんのコールが飛んできたから。
緑茶体験で培った、甘いものには苦いものとの真理と尊さ……たましいで理解る野菜ケーキとの良縁にいま、稲妻走る!
「この欠片さ、ケーキにかけて食べるとオススメだって。行ってみない?」
「ぜひお供させてくださいっ」
やはり飛びつくニュイ。
しかしいい時間だ。夜ごはんにケーキも数えてお腹いっぱい、なんて常ならば明日の未来を空へ祈るところだけれど。
そんな懸念だって置き去りにできてしまうほど、リオネルの足取りは弾むよう。
祭とはきっと、それ自体がとくべつな魔法なのだ。
「ふふふ。心配だったらね、増えた分ニュイが吸収してあげるのでご安心を!」
「えっ。なんか怖いしスプラッタくない?」
などと――美容にもいいよなんて不思議な売り込みをされつつお買い上げしたケーキたちは、結晶砕けばキラキラ光を増しはじめて尽くしの夢の夜をもっとずっと、味わわせてくれる。
大成功
🔵🔵🔵
クレム・クラウベル
立ち寄った露店で勧めの果実酒を片手、見晴らしの良い場所で空を見上げる
心地よい音を立てて次々咲いて散る、空の花
魔法仕掛けでもこの様なものが作れるものなのだな
綺麗なものだと素直な感想が口をつく
ぱらり、弾けた花火から時々零れ落ちてくる雨粒が変じた結晶
雨から飴へ、というところか
戯れに手の平で数粒を掬い舌へ転がせば
果実酒の華やかなそれとは異なる柔らかな甘さ
雨の代わりに飴が降るなど、童子が喜ぶ絵物語かなにかのようだ
あの薄暗い故郷にも花火の一つでも咲かせれば
誰かがそんな夢を見ることもあるのだろうか
……など、考えたから叶うものでもないが
ましてや祈ったりなど、
閉じた瞼の裏
魔法仕掛けの花は焼け付いて枯れない
●
ミモの周辺は開けた土地ではあったが、すこし歩けば小高い丘へも辿り着くことができた。
露店で勧められた白葡萄の果実酒片手、背を大岩へ預けたクレムはひとり空を見上げている。
村人たちは手の届く近くに、ともに見上げたいひとがいるのだろう。
絶好のスポットだとて、ここは不思議なほどしずか。
「……魔法仕掛けでもあの様なものが作れるものなのだな」
綺麗なものだ。
持たざるものの唇から零れた感想は酷く透明で、だれにも拾われぬまま、火の粉と同じ。地面へと溶け入ってまた精霊を、大地を潤す一滴となる。
ぱらり。
風に流されたのだろう。夜天よりはぐれた"恵み"はクレムのもとまでも等しくやってきて、しあわせの程を窺うよう。
呼んでなど、いないのだが。
お節介な彼らを払わんとしたのか、掴もうとしたのか。自分でも分からずとも、遠目には雨粒だったそれが、手のうちに収まればさてひややかな結晶だ。
「雨から飴へ、というところか」
呟きに微かな笑いが混じったならば、舌へ転がすも戯れのひとつ。
香り立つ果実酒とは異なる甘味はやわらかく、歯を立てる前から崩れて溶けて消えてしまう。ほとんどが氷に似て、幻に似て。
童子が好む絵物語かなにかのようだと思った。
(「もっとも、絵物語すら知らぬ者がいるような時代だ」)
希望が似合う明るい世界に触れるほど、過るは故郷の薄暗さ。祈りによって幾度と火を齎してきたが、空へ。あれほど鮮やかな彩のひとつでも咲かせられたならば?
だれかが幾度となく願ったであろう夢の果てへと馳せる想い。
触れかけて、 否。
思うだけでは。願うだけでは叶わない。ましてや祈りなど――己のどこか奥深く、尚も燃やし切れぬ"徒"を祓うべく酒瓶を傾けたクレム。
「……見かけによらず、後味が強いな」
洗い流したい糖の甘さ。
噛んで潰す葡萄の苦み。
未だ、上手には酔えもせず閉じた瞼の裏には、光。
魔法仕掛けの花は焼き付いて、そうそう枯れてくれそうにない。
大成功
🔵🔵🔵
蘭・七結
ひらけた空。こんなにも高くて広いのね
嗚呼、やはり。ナユはこの世界の天空がすきよ
落ちてゆくのも、空を舞いあがるのも
とてもステキで、愉しかったわ
ハナビ。なんとうつくしいのでしょう
アースや和国で眺むものとは、少し異なるのね
はらはら降りそそぐ結晶の雨をひと掬い
まあ、まあ。あまいわ。不思議な雨だこと
精霊の皆さんも、喜んでいらっしゃるかしら
ほわりと漂う精霊のひとりに声をかけて
聲は聞こえずとも、理解る気がするわ
この色の毛束は、先ほどの虹羊のものかしら
こうして眺むと繊細な色をしているのね
ひとつ、いただいて帰りましょうか
色を知らないあの子たちが、きっと悦ぶわ
常夜の住人ひとりひとりを想起しながら、七彩を手に取って
村外れをてん、てんと遊びながら揺蕩う歩み。闇に透ける衣の裾が辿り着く風に気儘にはためく様が、夜運ぶ、この世ならざるもののようだった。
しかしひらけた空の遠きを慈しむ瞳は、たしかにこころある者のそれで。
空に咲くものとよく似た牡丹を背に、振り仰ぐ七結は糸遊の如くゆらめき光る砂糖粒たちを両のてのひらへ迎え入れる。
「雨。……いいえ、雨ではないみたい」
ぱちり。
いくらか離れた先で同じように"恵み"を得た村人が、かがやきを口へ含む様へ首は傾いだ。食べられる。そう、と、素直に真似てみては瞬きをもう一度。
「まあ、まあ。あまいわ」
不思議な、雨?
現れては消える精霊たちはうまく結晶を受け止められないのだろう、七結のもとにもひとくちちょうだいと寄ってくる。
「皆さんもこれがお好き? ふふ。ではナユとわけっこをしましょう」
そっと指を開いてやれば、淡い輪郭をした赤色が手のうちへ。手触りはないというのにどこかあたたかな感覚が擽ったくて、おもしろい。あとには燐光が御礼じみて残った。
聲は聞こえずとも、理解る気がする。
「そうね。そう思うわ」
おいしい。たのしい。よろこばしい。
赤ごとつぎに舌へ乗せた一粒は、とろりと熟した林檎に似て一層甘く感じられて。
ときに七色をした毛束をも風が連れてくるけれど、こちらは食べられない模様。
さきほどの獏羊らのものだろうが、月明かりのもとで目にしたならば際立つ質。くるんと丸まった虹に指を埋めればほろほろ星屑を零すのだ。まるで手のうちに、ひとつ空があるみたい。
「この、色……あの子たちが悦ぶかしら」
色を知らぬ常夜の住人たちへの土産にはきっと好い。織れば艶やかな仕立てとも化けそうな、その彩を望んで選んだ。
七結へ、幾度目かの音と光が降る。
落ちてゆくにも舞いあがるにも、こうして見つめるにも愉しい、果てなき果て。
恋い慕う相手へそうするようにあえかなる微笑を湛え、ゆるり帰路を辿る娘へ、同じ想いで応える風に。
――嗚呼、やはり。
ナユはこの世界の天空がすきよ。
大成功
🔵🔵🔵
リリヤ・ベル
【ユーゴさま(f10891)】と
花火玉をつくります。つくるのです。
わたくしひとりでつくるのですよ。
手出し無用なのです。
精霊さま、精霊さま。
ちいさなおはなを、つくりたいのです。
たくさん。いろいろないろで、えと。ちっちゃい、いろいろ。
おはなばたけみたいに。
漂う精霊に身振り手振り。
砂糖粒を賄賂に渡しながら、こそこそと耳打ち
――ちいさな思い出を、たくさん。
どうか、しあわせであるように。
空に花が咲いたなら、おちてきた結晶は、ちいさなてのひらで受け止めて。
つかめるものは、ほんのすこし。
ちいさなちいさな、花の甘さ。
ユーゴさま、ユーゴさま。
はい、あーん。
あーん。
(ぷくぷくむくれる)
……ユーゴさまの照れ屋さん。
ユーゴ・アッシュフィールド
【リリヤ(f10892)】と
随分と変わった精霊の使い方だ。
面白いな、こういう発想はなかった。
ほう、手出し無用か。
それならお手並み拝見といこう。
見事な花火玉を頼むぞ。
俺は、そうだな……
やはりこの花火玉作りはできないようだ。
ここに居る精霊と挨拶しただけだと言うのに、自分の契約精霊達からの強い嫉妬を感じる。
リリヤの作業でも眺めておくか。
……あれはジェスチャーで伝えようとしているのか?
何かこう、バタバタしているな。
空に咲いたリリヤの花火を眺め、「お前らしいな」と。
他の奴の花火も眺め……(あーんしてきた手を優しく払う)
良い祭だなと感じ……(あーんしてきた手を優しく払う)
おい、流石に恥ずかしいぞ。
●
花火玉をつくります。つくるのです。
工房へ駆けつけた娘――リリヤは自らの顔くらいある大きな球体を抱え、連れの男へそう言った。
「わたくしひとりでつくるのですよ。手出し無用なのです」
「ほう、手出し無用か。それならお手並み拝見といこう」
見事な花火玉を頼むぞ。
大変力強いエール――ことリリヤにとっては――を浴びれば、両こぶしをうんと握る気合の入りよう!
作業台の椅子に腰掛けたなら地へ足が届かないのに。
ぶらぶらさせて、集中……あたりへ漂いはじめた精霊を呼び止め、ちゅうもく! と手を挙げるのだ。ちいさなおはなを、つくりたいのです。
「たくさん。いろいろないろで、えと。ちっちゃい、いろいろ。おはなばたけみたいに」
こう、と、頭上あちこちでぐーぱー繰り返す両手を数度。咲いた花の真似っこなのかもしれない。その度に疎らに引っ掛かっていた砂糖粒が零れこぼれて、ふより。
興味を示した精霊らが寄り付くのに、そう時間は掛からなかった。
「……精霊との対話、か」
なにやらこそっと耳打ちしている一連の様子を、後方から腕組み眺めるユーゴの図はさながら授業参観に訪れた父兄。
どうぞ、と椅子まで出されたときはなんともいえぬ心地であった。
座ったが。
予想通り、ユーゴにはこの場の精霊に協力を仰ぐことは難しかった。
連れている契約精霊たちがやれ風を立てたり、さざめいたりと強く"嫉妬"してくるもので。引っ張られ、しっかり合わせて膝に置くよう仕向けられた手では挨拶もできない。
しかし暇かと問われればそうでもなく。
「あなたは最後に、こうっ。こうして大きくこちらの方向へ飛び出すかんじでっ、」
バタついてジェスチャー……? を試みる、いちいち全身の表情豊かなリリヤがそこにいるので。
がたん!
ジャンプした拍子に娘の椅子が倒れる。
ハッとして振り返ったリリヤと黙するユーゴの視線が絡む。 絡んで……。
「まだじゅんびちゅうですよっ」
「いや、……悪い」
もっとバタバタが加速した。
――ちいさな思い出を、たくさん。
どうか、しあわせであるように。
ひそかに。込めた願いごと花開くように、やがて夜空を色とりどり彩るリリヤの立派な彩色千輪菊。……ところどころ、仲間たちからはぐれて弾けたり不発で飛び回る子がいるのはご愛嬌。
そんなところもひっくるめて。
「お前らしいな」
双眸細め見上げるユーゴの声はやさしいものの。背丈の差が凄まじいものだから、ちゃんと同じ景色を見ることができているのか、リリヤはちょっぴり不安。
ほんの少しだけれど、てのひらいっぱい大事に受け止めた結晶たちをひとつまみ。
「ユーゴさま、ユーゴさま」
くいくい引っ張って、めいっぱい手を伸ばして尚まだ口元に遠くとも「はい、あーん」。
「……おや、むこうの花火は雷だと」
その手をやさしく払うユーゴの手。
「あーん」
「改めて、随分と変わった精霊の使い方だ。面白い祭だな、こういう発想はなかった」
その手をやさしく払うユーゴの手。
…………。
沈黙と突き刺さるような眼差しを横顔に感じ、口をもにゃりと歪ませて見遣る斜め下。案の定ぷくぷくーーっとむくれる娘っ子と半端で止まった手がそこにはあるわけで。
「流石に恥ずかしい」
「……ユーゴさまの照れ屋さん」
三度払われてしまった手は最後のさいごで自分の顔のあたりまで戻ってくる。リリヤが手にしたものなのだから、リリヤが受け取るべきだ、との言葉までお手本な大人のそれで悔しくて。
自分でぱくりと食べたなら甘くてすこし酸っぱい苺。
「おいしいです。あとから欲しいと言っても、だめなのですからね」
「そうか、よかったな」
同じ道を、隣を歩くことで今後降りかかるさいわいのひとつまでも伝われ!
もしも払われたって折れるつもりのない想いだけ胸に、どんと体当たり気味に詰めてくるまだちいさな重み。一瞥しユーゴは、次は遠ざけずに空咲く花を見上げることにした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
毛糸玉には如何程あれば足るものかと
七色毛玉を一掴み
師父も精霊花火は初めてか?
精霊との交渉そのものは不得手乍ら
広げた外套で結晶集め
精霊よ、どうかこれで手を打たぬか
師が咲かせてくれるなら
俺の花火は次の夏まで彼の人の守となろう
ところで…精霊、斯様な爆発物が守りになるとは
どういった由来があるのだ
夜を仰ぐうち、いつの間にやら両手一杯の毛玉
咲く七色と、降る七色
それから――彼方へと架けられ消えてゆく虹の橋
人々が願いを寄せるための星のかたち
見惚れるうちに星の尾は去りゆきて
…師父も、たまには己の事を願って良いのだぞ
そう言うと思ったのでな、かわりに願っておいた
内容は――うむ、秘密だ
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ああ、精霊との対話で作る花火なぞ初めてだ
上手くやれば何より美しい毛糸玉が出来るのではないか?
毛玉を掴む従者を見…とりあえず私にも触らせよ
降り注ぐ結晶を手に、早速精霊達と交渉
コミュ力を用いて柔和に努める
然し譲れぬ事は確と告げる
天へ咲かせるは、星が如き可憐な花が良い
鮮やかな七彩で天を染めて
最後は流星の軌跡を描き、消えて往くよう
人々が各々の願いを星へ託せるよう
その件は私も気になっておる
共に精霊の言葉に耳を傾けてみよう
うーむ…そうは言うが
此の場に値する願いなぞ浮かばなんだ
…む、お前にしては用意が良い
して何を願ったのだ?
ええい教えよ、弟子の癖に生意気な
等と、戯れに
*従者以外には敬語
作業台の端にひとかたまり、もふっとした虹色毛玉は戦利品。
本当に此処まで持ち帰ってきたのか?
……自らの些細な戯れをも取り零さぬ在り方が、らしいというか。ああ、悪い気はしないとも。
「とりあえず私にも触らせよ」
「眠らん程度にな。 師父も精霊花火は初めてか?」
寝るわけがなかろうと驚くほど澄まし顔のアルバへ問うジャハルが、工房へ足を踏み入れてからというもの、波の如く寄っては引いてを繰り返す精霊たちに視線を巡らせる。
同意で返し、ちょちょいと手招くアルバはかといって案じる風ではない。妖精や亡霊とそう変わらぬと踏んで、対価――と呼ぶには随分平和な砂糖粒たちを小瓶からてのひらへ零した。
「さて、私は旅の術士アルバ・アルフライラ。親愛なる皆さま方。今宵のすばらしき祭に一花咲かせたく思い、お力添えいただけるでしょうか?」
「…………」
声のトーンからなにから切り替えた"交渉"。
それに口を挟むこともなく、御礼の品はこちらに……とばかり、ジャハルが広げた己の外套のうちには道中で受け止めたたくさんの宝石、否、火の粉たちがきらめいて。
「精霊よ、どうかこれで手を打たぬか」
ほよよ。 波が二人のそばまでやってくる。からだの周りをぐるっと回り、どうやら審議中らしい。毒など入っていないと証明するかのように、アルバが一口含んで笑んだあたりでその数はさらに増えた。
「星を。花ののちに空へ流したいと、そう考えているのです」
続いて具体的な内容説明へ。
すらすら語ってのけるアルバのコミュニケーション能力が発揮される傍ら、指先にとまった群青色のオーブをただ見遣るジャハル。
――師が咲かせてくれるのならば、己は次の夏まで彼の人の守となろう。
端から決めていたものだから、"彼ら"へ空での仕事を頼むことはない。一年か。閉じ込められるのはつらくはないのか、自由に出入りできるものか、尋ねたいことは諸々あったがなにより。
「精霊。 斯様な爆発物が守りになるとは、どういった由来があるのだ」
一番の疑問。
それはアルバにとっても気になるところ。共に耳を傾けてみるも。
精霊たちがなんだかちょっと、明滅しつつ跳ねた。
宙をぽんぽん弾んで――、卓上に落ちて――、やや横長に潰れつつしずかになった。
「……ふむ?」
「分からんのか。まだまだ修行が足りんな」
では、師父はどう読む。
…………。
僅かな間ののちアルバが口にした、精霊と心通わすこの大地の子のひとりとして寵愛を授かるからであろう、との推察は恐らくそう遠くないのだろうが。
「脅威が現れれば投げつけて倒せ、との意味ではないのだな」
「お前、それは……いや案外、」
物理方面もあり得るかもしれない。
精霊たちは相変わらずふより気儘に漂うばかり。一刻、眉間に皺を寄せた男二人のもやもやは続いて――。
――それも夜空に花開くまで。
演者の意向に気を使いながらも譲れぬ部分は確りと告げたアルバの花火は、花弁五枚、星に似て可憐に咲く数多の花々。
七彩で天を染め、流星の軌跡で尾を引きて流れ落ちる去り際までもが鮮やか。
うっすら残る光の筋たちが消える前に、さあ、願いを。
……見上げて指さすこどもたちの間を、星を追うように二人はすり抜けてゆく。ジャハルの腕にはいつしか毛玉がたっぷりだ。空も、手のうちも、彼方へ架けられ消えゆく橋もすべてが虹。
ひそやかに満足げな宝石のひとの横顔も。
「……師父も、たまには己の事を願って良いのだぞ」
「うーむ……そうは言うが、此の場に値する願いなぞ浮かばなんだ」
そう言うと思ったのでな、かわりに願っておいた。
なんでもないことみたく語るジャハルに、一瞬、狐につままれた風な顔をするアルバ。
「……む、お前にしては用意が良い。して何を願ったのだ?」
「内容は――うむ、秘密だ」
ええい教えよ、弟子の癖に生意気な。
挑みかかれば毛糸がふわふわ。 アルバの鼻先をくすぐるから。むすりと問い質してやるつもりだったのに、つい綻んでしまった。本当に、つい。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
誘名・櫻宵
🌸リル/f10762
アドリブ歓迎
魔法の花火なんて不思議
甘いのがでてくるならリィも食べたいでしょ?
わかるわ
リィは甘いのが好きだから
とびきり甘くておいしい花火玉を作りましょ
あたしからは夏の花型のチョコレートを
薔薇にレモンに紫陽花に……定番の桜
気に入って貰えるかしら?
リィの琥珀糖は爽やかなミントとソーダ味なのよ!
宝石みたいでしょ
絶望してた冬の人魚が咲かずの春の櫻に出会って、夏の空を二人踊る物語よ
笑顔も桜も満開に咲いて、はらり舞う
うふふ
花咲く愛はとびきり甘くて、美しいわね
たまには苦くなるかもしれないけど
あなたと重ねる時間全部が尊いの
あなたが笑う
ひやりとした体温に安堵する
しあわせの色彩は、きっとこんな
リル・ルリ
■櫻宵/f02768
アドリブ歓迎
精霊花火、だって
不思議、炎が雷になって水に……甘いのになるんだって
なんでわかったの
僕が甘いの食べたいって
でもその前に僕は君と精霊の花火玉を作りたい
夜空に咲かせる君と、僕の花
精霊さんよろしくね
櫻のちょこれぇとは甘くておいしいよ!
お花の形なんだ、なんて自慢
僕の琥珀糖もあげる
冬の宝石のような琥珀糖は櫻と一緒に作った
それと歌をこめられたらいい
きっと、綺麗だ
ふふ、素敵だね、櫻
独りぼっちの冬が春と出会い夏の空で一緒に踊る物語
弾ければ、桜吹雪にベタが舞う
相棒のペンギン……ヨルも一緒
どんな季節もずぅっと一緒に――込める願いは愛の色
人魚に人の体温は熱すぎるけど
寄り添う熱が心地いい
とめどなく打ち上げられる魔法の花火。
炎が雷へ、雷が水へ――不思議だねと語り合いながら、リルと櫻宵もまた工房へ。
「結晶、ね……甘いのがでてくるならリィも食べたいでしょ?」
「なんでわかったの。僕が甘いの食べたいって」
わかるわ、リィは甘いのが好きだから。
あなたのことでわからないことなんてないと櫻宵の声までもが甘やかで、リルはとろけたように笑った。でも、まずは。
とびきり甘くて、おいしい花火玉つくり!
精霊たちを呼び止めて、ごそごそ。リルが取り出す小箱は宝石箱? いえいえ、中に敷き詰められたのは琥珀糖! 冬の宝石めいた――青、紫、白。櫻宵とともに作った、宝物のひとつ。
透き通る小粒を摘まみ上げて「精霊さん、よろしくね」そうっと落としてやれば、闇が光を食む風に消えた琥珀糖と耳障りの良いシャリシャリ音。
「リィの琥珀糖は爽やかなミントとソーダ味なのよ! 宝石みたいでしょ」
隣では櫻宵が特製・花型チョコレートをお披露目だ。
「あたしからはこれ。気に入って貰えるといいんだけれど」
「櫻のちょこれぇとは甘くておいしいよ! 夏のお花の形なんだ。お花って、分かるかな?」
いつもみんなが咲かせてて、このあとも咲かせてもらいたいもの。
窓の外を示すリルは櫻宵の自慢を自分のそれの何倍も誇らし気に語って、精霊たちがふよふよ群がる様子にも嬉しそう。
薔薇にレモンに紫陽花に、定番の桜。
一口でいただかれてしまうのがもったいないくらい精巧なつくりのチョコレート。
ぽんっ! と、そのうちよく似た花が精霊のからだに咲いたときには顔を見合わせ歓声を上げてしまった。
「すごく好きって言ってくれてるみたい」
「かわいい子ね。あら……琥珀糖の子は、なんだかさっきよりもキラキラが強くなってない?」
華やぐおしゃべりは流れるように歌声へ。
きっと、綺麗になっておくれ。リルがこころを込めて紡げば、櫻宵は瞳伏せゆるり上体を揺らして音へ身を委ねて。
これより語るは絶望の淵にあった冬の人魚が、咲かずの春の櫻に出会い、夏の空を二人躍る物語。
これからも隣同士描き続けてゆくうちの、ほんのひとひら。
天高く弾ければ、冬のひかりが寄り集まってうつくしいベタになり泳いだ。
さかなの周りをあたたかく包みあげる春は桜吹雪。
出逢った刹那に三度の炸裂でまばゆく広がる世界、迷わぬように、ともに連れだって明日への空へ消えてゆく。……そんな。
たまには苦くなったって、どんな季節もずぅっと一緒に――込めた願いの花は絶えず、愛の色をして二人を照らしている。
仰ぎ見る手と手が触れて、繋がって。
甘い光のシャワーがやさしく降り注ぐのに、リルの相棒、式神ペンギンのヨルがくぁりと嬉しそうに鳴いた。
「ふふ。素敵だね、櫻。ヨル」
「花咲く愛はとびきり甘くて、美しいわね」
積もるは結晶のみならず。心模様にしたがって木龍の角に咲く薄紅はもう満開、はなびらを結晶と同じか以上に大事に拾い上げたリルは今日の日を大切に、カラになっていた箱へ寝かせた。
「食べないの?」
「えへへ、君といるだけでお腹いっぱいかも――なんて」
はにかみ笑顔の愛らしさに、もう、と櫻宵が寄りかかる重さをちょっと増やすから、食べるけど。帰ってもゆっくり、お茶しよう。リルも頭をこつんと合わせるかたちに傾ける。
寄り添う熱は"唯一"だから、人魚の身にだって心地好く。
片割れたる花はまた、ひやりとした体温に安堵する。
覚めぬ魔法の夜――どこまでも、あざやかに。
あなたが笑う。
しあわせの色彩は、きっとこんな。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵