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訳して・髪長姫の祭典

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索 #ID_真峰

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「さて、アックス&ウィザーズの伝説探しに興味のある者はいるか?」
 水心子・真峰(ヤドリガミの剣豪・f05970)がグリモアベースに集う猟兵に声を掛ける。
「群竜大陸の手掛かり、勇者一行の痕跡の一つが見つかった。勇者の意志が残る可能性のある伝説。今回はそれを見つけて来てもらいたい」

 かの世界のオブリビオン・フォーミュラと目される帝竜ヴァルギリオス。その根城だと云われながら所在の掴めない群竜大陸。かつてその地に渡ったとされる勇者一行の伝説を紐解くことで、将来大陸についての何らかの予知が得られるかもしれないのだ。
「勇者一行といってもその数は数千人に及ぶ。現役時代の帝竜ヴァルギリオスとの決戦に挑み、この戦いで命を落とした冒険者達、沈みゆく群竜大陸と運命を共にした者達を全て"勇者"として称えている。真偽は別として、その伝説の数は多いぞ」

「今回私が予知した者も、その地出身の勇者らしい。名前は……しゃる……zel……?」
 横文字が苦手な太刀のヤドリガミ、頑張る。
 しばらく奮闘した後一つ息を吐くと、意を決したかのように手を叩き、唱える。
「"髪長姫"だ」
 訳した。

●現地も髪長姫で通じます
「その者は長い髪を以って剣を操った女性勇者として伝わっているらしい。今回転送する村は丁度その者に因んだ祭りの最中だ。まずは祭りを存分に楽しみつつ、髪長姫の伝説が強く残る地の情報を探って来てくれ」
 さらりと凄い事を言った気がするが、そんな者も居るのだろうと真峰は説明を進める。

「祭りの内容はキャッ鯖という魚を使った料理の祭典だ」
 一番の特徴はその魚卵。臭みは無く、色彩豊かで真珠のように艶めく大粒なその卵は、もちっとした歯応えにほんのりと甘い風味。祭りの時期は特別に氷で作った椀やグラスの中に、これまた甘い飲み物と共に注ぎ、その鮮やかな見た目を楽しむ。散蓮華や、卵ごと吸い込める特製の太いストローを使って食すとのことだ。
 またその身も美味であり、獲れたてを薬味と共に頂く刺身や焼き魚、煮物に揚げ物。お土産用に干し魚やオイルに漬けた瓶詰も売られているという。更には調理場も用意されているので、卵や身を使た料理を自分で作ってみるのも楽しいだろう。自分で獲るのもまた一興だ。

「祭りの中で得られた情報を基に、以降は髪長姫の伝説の地へと向かう。ただし気を付けろ、そこは悪党幻獣の闊歩するアックス&ウィザーズの世界。一筋縄では辿り着けないだろう。戦闘も覚悟しておいてくれ」

 ある程度の猟兵が集まったのを見遣り、真峰は首に巻いた紐飾りを解くと空中へ投げつける。放り出された赤い紐は意思持つように伸びながら太い縄状になり、再び先を結ぶ。そして作られた円の中には異世界の光景が広がっていた。すっかり服飾品に紛れていたが、これこそ彼女がグリモア猟兵として持つエネルギー体・グリモアだ。

「それでは、楽しみながら、しっかり任務を果たして来てくれ」


小風
 小風(こかぜ)です。
 九作目はアックス&ウィザーズにて勇者の伝説探しです。
 よろしくお願いします。

 また、プレイング期間を設けています。送信の際はMSページも御確認下さい。
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第1章 日常 『キャッ鯖の卵』

POW   :    キャッ鯖を獲るぞ!

SPD   :    キャッ鯖卵を使ったレシピを考えるぞ!

WIZ   :    キャッ鯖卵ドリンクを楽しむぞ!

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

パティ・チャン
ロングヘアーで、剣士?
まさか妖精族、ということはないでしょうが、親近感は感じますね

ここは、キャッ鯖を獲りに行きましょう!
と、いっても釣りや投網では、私が逆に水の中へ引きずり込まれるの、決定ですから、ここはサイコキネシスで、遠隔操作で捕まえます。
(地形の利用併用)

魚卵が目的、とあってはあまりストレスを与えぬように用心しつつ捕まえます。

「勇者、というからには、私のような体躯の小さな妖精族、では無いとは思いますが……」
私のいる国(アックス&ウィザーズ世界)では、その伝説は聴いた事がなかったもので、興味津々でお話しを聴いてみます。


シャルロット・クリスティア
WIZ

きゃっ、さば……?
なんか、UDCアースで似たようなものを見た記憶がありましたが、あれはデンプンの塊だったような……。
これは……卵?なんですよね??
……凄くもちもちしてます。美味しいですけども、はい。

……しかし、これと勇者の伝説とどういう関係があるんでしょうね?
長い髪を用いて剣を振るった……と言う内容自体もよくわかりませんが、これときゃっさばとの関連性がいまいち見えてこないんですが……。

……ドリンク飲みながら、人のよさそうな相手探して聞き込みでもしてみましょうかね。


水心子・静柄
真峰…
まぁいいわ、真峰の予知に従って問題を解決してあげるわ。

さてキャッ鯖?魚卵の特徴はキャビアぽいわね。同じように処理して瓶詰にすれば日持ちしてお土産にいいかもしれないわね(誰の)ただ売っているものを買うのは味気ないから自分で獲ってお土産用に加工して持ち帰るわ。

とりあえず大量に捕獲する為にグラウンドクラッシャーの衝撃で脳震盪を起こさせてみる。大量にいる所にジャンプしてミンチにならないように気をつけてグラウンドクラッシャーを打ち込むわ。あとは魚卵が潰れていないことを祈るだけね。


黒鵺・瑞樹
【SPD】

魚卵と甘味の融合…?
現物見た事にないから、魚卵と言えばどうしてもいくらとかたらことかそういうのになるんだけども。

まぁとりあえず料理を楽しむ方針で。
調理は今回はパスして皆の料理をつまめればいいなぁ。
土産用に干し魚や瓶詰があるって言うなら、あとの調査に邪魔ならない程度に購入しておいて…帰ってから楽しむことにしよう。

祭りに交じりながら髪長姫だっけ?その伝承について聞いてみよう。
女性であり勇者だったとか。どんな武勇があったのか非常に興味深いね。


アベル・スカイウインド
髪の毛を使って剣を操るだと?フッ、とんでもない勇者がいたのだな。

キャッ鯖とやらは捨てるところがない優秀な食材なんだな。とはいえ魚卵のドリンクか……以前カエルの卵のドリンクを飲んだ事があるがあれに近いものか?
まあ俺は魚は焼いて食うのが一番美味いと思っている。串に刺して塩焼きにすれば十分だ。フッ、串片手に聞き込みと行こうじゃないか。

勇者の伝説に詳しそうな者を探すとしよう。こういうのは大抵老人が詳しいと相場が決まっている。見つけたら【コミュ力】を発揮して情報を聞き出そう。


平良・荒野
…きゃっさばどりんく…

皆さんが美味しいというのですからきっと美味しいんですよね。



魚卵…

いえ…

獲りに行きます。祭りのために。

地元の方はどうやってきゃっさばを獲るんでしょうか。
指導を仰ぎつつ、岸辺などに身を隠して魚の警戒心を刺激しないように。
影からサイコキネシスで、魚影を狙い撃ちます。
魚は生きが良いほうが美味しいでしょうし、加減して「気絶攻撃」を狙えるか試してみます。

魚を取る合間に、住民の方とお話も出来れば良いですね。
皆さんはどうやって食べるのがお好きなんですか?
僕は刺身が… ああ、うん。そうですね、僕も挑戦してみます。
きゃっさばどりんく…
勇者さんもきゃっさばどりんく、お好きだったんでしょうか…



●その名も『キャッ鯖』!
「きゃっ、さば……? なんか、UDCアースで似たようなものを見た記憶がありましたが、あれはデンプンの塊だったような……」
 大通りの幟に踊る文字を見てそう独り言ちるのはシャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)。
 UDCアースのそれは生産時に色を付けたものだが、こちらのそれは取り出した時からこの色だというのだから驚きだ。やはり珍しいのか解体ショーも行われており、取り出した魚卵は食塩水でほぐされ、よく見えるよう水槽に移され展示されている。透明なゼリーの中心に鮮やかな色彩を湛えるコロリとした球は、まるでオモチャのようだ。
「これは……卵? なんですよね??」
 ドリンク店から木製コースターに乗せられた氷の器を受け取り、不思議そうに顔を傾け淡い桃色の飲料に沈むキャッ鯖卵を観察するシャルロット。渡した店員も微笑ましそうにその様子を見守る。

「……凄くもちもちしてます。美味しいですけども、はい。……しかし、これと勇者の伝説とどういう関係があるんでしょうね?」
『鯖が剣、卵の色で髪長姫様を現しているんだよ』
『まっ! 飲んで食って騒げれば、それでイイってことよ!』
 答えてくれたのは氷の器をかき回しながら、紅茶色と抹茶色のドリンクを楽しむ二人だ。初老と中年の男。老若男女に親しまれている飲み物らしい。シャルロットも見様見真似でストローで円を描いた後に吸い込む。冷たく甘いフレーバーと引き締まった卵の感触が楽しい逸品だ。

「長い髪要素が行方不明なんですが……」
『よく知ってるね、お嬢さん。伝説をもとに村おこしがてら始まった祭りだからね。名物料理は何品か発案されてるんだよ。確かもっと前は野菜の皮と煮込んで色付けたカラフルパスタをどこも出していたね』
『キャッ鯖を捕り始めたのも昔じゃないんだよな。入り江も無かったし。まぁ勇者様様! おかげでこうして復興できたってわけよ!』
 以前何か起ったのか……? 向こうの店のは小粒なタイプだ、パスタ屋もあるよと教えられ、シャルロットは二人に一礼。コースターと器を店に返すと歩き出した。村の人は気さくだし、まだお腹に余裕はある。食べ歩き調査の続行だ!

●キャッ鯖調理(陸)
「魚卵と甘味の融合……?」
「キャッ鯖とやらは捨てるところがない優秀な食材なんだな。とはいえ魚卵のドリンクか……」
 調理体験の出来る一角を覗き込み、感想を漏らすのは黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)とアベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)の両名。
 魚卵を飲み物に入れて食すとは、文化の異なる者から見ると奇妙極まりない光景だ。
 しかしこちらのブースもなかなか人気なようで、裏にある港から活け締めされたキャッ鯖が運ばれて来ると即調理が始まる。職人による鮮やかな手捌きで美しい刺身になる過程が見られたり、指導員の下で焼いたり揚げたりの工程を経て自分で料理や土産が作れたり、キャッ鯖卵ドリンクに様々トッピングを施せたりと賑わっている。

 魚は焼いて食うのが一番美味いと、アベルは丁度この時間は塩焼きを作っていたコーナーに参加する。内臓を取り出し火で炙ると染み出した油が滴り食欲をそそる香りを立て始める。
「それにしても髪の毛を使って剣を操るだと? フッ、とんでもない勇者がいたのだな」
『三本目の腕が欲しかったんじゃないのかねぇ。髪長姫に尻尾はなかったようだからの』
 一緒に焼き上がりを待っていた老人に話し掛ければ、焼き上がりに期待しピンと立てていた尻尾がピクリと揺れる。
 まぁとんでもないのは確かだねぇと笑い飛ばされ、それぞれの焼き魚が良い頃合いを迎える。あくまで伝説上の戦い方ゆえ、同じことを試みる者は現代には居ないとのことだ。
 パリパリになった皮に歯を立てて、アベルと老人は焼立てキャッ鯖を贅沢に味わった。

 干し魚や瓶詰を帰還後に味わうお楽しみとして土産屋で購入し、コーナーではその作り方を眺める瑞樹。魚卵といえばイクラやタラコを想像するところだが、甘未として発展したキャッ鯖はやはり珍しいらい。猟兵以外にもおっかなびっくり眺める観光客のような人達が見受けられた。
「女性であり勇者だったとか、興味深い伝承ですね」
 次の調理の準備がひと段落ついた様子の村人に話しかければ、その女性は快く答えてくれた。
『おてんば娘が活躍する冒険物語として絵本にもなっているからね。特に女の子からの人気が強い勇者かしら。憧れて髪の毛を伸ばして髪飾りをいっぱいつける子や、恋物語も伝わっているのよ』
 そう言われてよく見ると、会場を駆けまわる子供達の中に、幅広に編んだ髪の毛に様々な色のリボンや花を模した飾りを付けている装いが見られる。あれが、髪長姫か。
『あぁもちろん、男の子だって真似するわよ。銀髪の髪長姫さん、髪飾りのお店はご覧になったかしら?』
 おや、と自分の髪の毛を引っ張りながら、瑞樹と女性は笑い合った。

●キャッ鯖漁(海)
「ロングヘアーで、剣士? まさか妖精族、ということはないでしょうが、親近感は感じますね」
 沖に出る船の中、飛ばされないよう物陰で風をよけながら話すのはパティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)。
「皆さんが美味しいというのですからきっと美味しいんですよね。……魚卵……いえ……獲りに行きます。祭りのために」
 魚の卵に違和感を覚えつつも、法衣をなびかせ漁に参加する平良・荒野(羅刹の修験者・f09467)。今回体験するのは一本釣り漁法とのことだ。
「真峰……」
 開幕早々、名前読めないをやらかした身内にガッカリしているのは水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)。はためく袖や髪を押さえつつ気持ちを切り替え、漁のポイントに着くのを待つ。
 しばらく進むと本日の漁場に到着したようで、船員が鈴の付いた釣り竿と丈夫な釣り糸を皆に配る。釣り針には毛のような疑似餌が付けられており、これに食いついてくる一際元気なキャッ鯖を釣り上げるとのことだ。船員及び漁師が慣れた手つきで匂いの強い魚の身や、料理に使われなかった内臓を放り撒くと、キャッ鯖漁の開始である。

「髪長姫。私のいる国では、その伝説は聴いた事がなかったもので興味深いです」
 パティが固定した竿に小さな手を添えてキャッ鯖が掛かるのを待つ間、船員に話しかける。ガイドも兼ねているらしい彼が目線を合わせて屈み、丁寧に説明を始めた。
『この村から出た勇者ということで、特に好まれて伝えられた伝説だからね。幼少期の話もまとめて残されているんだよ。今は行けなくなってしまったけれど、花畑で遊ぶのが好きな普通の少女だったとね』
 行けなくなった花畑? とパティが訊き返そうとしたところで、掴んでいた釣り竿の鈴が鳴る。針にキャッ鯖が食いつき引っ張っているのだ。
 すぐさま話していた船員と共に糸を手繰り寄せるが、なかなか重たい。
 お任せと言わんばかりにパティが披露する技はサイコキネシス。今回その力はタピオカチャレンジではなくキャッ鯖漁に使う。
 一本分増えた腕で素早く糸を引っ張り続けると、魚が海面を叩く大きなしぶきが立ち始めた。魚卵の為ストレスを与えぬようにと、同じくサイコキネシスの腕で狙い定めた魚影をがっしりと掴むと船に引き上げた。
「やった! 釣れた…………これ、鯖ですか?」
『みんな驚くんだよね~』
 釣り上げたキャッ鯖は他の地で見かける一般的な鯖よりも明らかに大きい。優に鮭くらいはあるだろうか。そういえば卵は大粒だと言っていたなと今更ながら思い出し、パティは次の釣り針を落とす。

「きゃっさばどりんく……勇者さんもきゃっさばどりんく、お好きだったんでしょうか……」
『勇者様のいた頃にはこの村も漁はしてなかったからなぁ。地殻変動で海が村まで入って来るようになってから、漁業が始まったんだよ』
 大きな地震の後に村の一部が隆起し、沈降した所が先ほど出た入り江の港だとの説明を受け、荒野は村の方向を振り返る。確かに港の向こう側は険しく切り立った崖が連なっていた。ここからでも遠く霞んでいるが、ひときわ高い崖の頂上が見える。地形を一変させるほどのそれは、随分村の景色を変えてしまったのだろう。勇者が出た村だという伝説はもしかしたら、当時の人々の心の支えになっていたのかもしれない。
 そうこうしている内に、荒野の釣り竿も涼やかな音を鳴らし始めた。
 素早く引き上げて行くうちに暴れる大きな魚影が見えてきたので、生きの良いうちにとサイコキネシスを放ち加減した気絶攻撃を繰り出した。大きく跳ねた後に動かなくなったキャッ鯖を見えない腕で釣り上げ甲板に乗せる荒野。
「……大きいですね。僕は刺身が……ああ、うん。きゃっさばどりんくでも」
『俺も刺身の方が好きだな。こいつは港に着く前にさばいてみんなで食っちまおうぜ』
 釣った奴の特権さ、と笑う漁師の顔を見て、つられて口角を上げる荒野であった。

 漁は好調なようで、猟兵を乗せた船からも、別の参加者達を乗せ可船からも鈴の音が鳴り響く。
 ただ売っているものを買うのは味気ないと自分で獲りに来た静柄もなかなかに満足気だ。しかし、鯖にしては妙に大きいその魚体。引き上げるのには一苦労しているのが見て取れる。しばし考える静柄。
「……魚卵が潰れなければいいわよね」
 何を思ったか釣り竿を離れると、船底につけられた水槽の鉄製蓋をガコンと外す静柄。船上の者達が不思議そうに見守る中、その蓋を手近な海面へ沈めると……。
「はっ!!」
 頑丈な鞘を持つ脇差を振り下ろし、炸裂させるはグラウンドクラッシャー! 衝撃波で脳震盪を起こし気絶させるのは岩に潜む川魚の取り方だが、埒外の力を持つ猟兵、やって出来ないことはない! ビリビリと船の上まで響く大音量を放つ鉄蓋がキャッ鯖の泳ぐ海中へと勢い良く沈んで行き……。
『し……死んでる……いや、本当に気絶しているだと……?』
 急に軽くなった釣り糸を手繰り寄せ、驚きの声を上げる船員達。ついでに浮かんできたキャッ鯖も網で掬って獲ることも忘れない。異様な光景だが、大漁である。
『あぁ……蓋…………』
 寂しそうに海面を見つめる船長の為に、サイコキネシス使い二人が海底をさらったこともここに記しておく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『天に一つの青』

POW   :    崖を登り、花を入手する。

SPD   :    青を使った新しい作品を考える。

WIZ   :    落下防止、魔物避けなど採集中の危険を遠ざける。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『しかしあんたら凄いねぇ。時たま聞く凄腕冒険者達ってのはあんたらのことかい?』
 漁に出た面々が帰りの船でキャッ鯖をご馳走になりつつ輪になって座る。
『もしもうちょい暇があるなら酒場にも顔出しちゃくれないか? 定期的に依頼してるんだがどうも難しいらしくてね。――ほら、あの髪長姫の石碑がある花畑のことさ』
 えっ!? と身を乗り出す猟兵達。ひとまず他の仲間もいるからと港まで待ってもらい、祭りに参加していた者達も集めて依頼主から話を聞く。

『髪長姫や子供達の遊び場でもあった花畑が、昔のデカイ地震の所為で崖の上まで隆起しちまってさ、名産だった染め物の原料もすっかり採れなくなっちまったんだよ』
 ここは以前は染め物の村だった、もうそれを記しているのは髪長姫の伝説の中だけだがね、と漁師兼染め物職人の依頼主は少し寂しそうに語る。
『依頼内容は染料になる青い花を出来るだけ沢山採って来てくれって内容さ。受けてくれるなら明日、現地まで船を出そう』

●翌朝、崖の下にて
 髪長姫の伝説に迫りたい猟兵に断る理由はなかった。集まった顔触れを見て職人は微笑むと、件の花咲く崖の下まで案内する。
『さぁ着いた。ここだ』
 えっ?
 猟兵の目の前に広がるのは確かにゴツゴツとした岩ばかりが目立つ崖だったが、視線を上にずらすともう信じられない。天を衝くかの如く上空へ伸びる断崖絶壁はまるで塔のようで、その頂上は青く霞んでいて捉えられない。きっと青い花が咲き誇っているから見えないだけだ。そうだと言って!!

 曰く、崖下の花は採ってしまったので少ない。上に行くほど花の数は増すだろう。
 青い花は掴んでも抜け難く、崖登りの際は確かな取っ手になるだろう。
 所々に生えている蔓草は抜け易いが丈夫なのでロープ代わりに出来る。
 昼間崖下は魔物の狩場になっているので、落下には十分気をつけること。
 命綱? 何だそれは、とのことだ。

 猟兵は切り立った崖の頂上を目指して登りつつ、花の採取に専念しても良いし、自分や職人が作る新しい青い花の作品を考えても良い。また仲間の命を守る為に安全対策に尽力するのも良いだろう。

 青い花を集めつつ崖を登り、髪長姫の石碑まで辿り着け。
 ちょっとハードな腹ごなしの開始である!
水心子・静柄
隆起してしまったのなら沈降させれば良い!って言って崖を崩しても青い花がちゃんと根付くとは限らないわよね。ここは大人しく頂上まで登って採取に専念するわ。採取した花は上から落としても大丈夫かしらね?それなら入れ物とか帰りの事を気にしなくて済むんだけれど。

さて肝心の頂上に行くには…錬成カミヤドリで錬成したものを操りながら足場にして登っていくわ。崖が崩れ難いのなら錬成したものを突き刺して足場にすれば操る手間が省けるんだけど、実際に見てみないとわからないわね。

それにしてもキャビアじゃなくタピオカだったのね………


黒鵺・瑞樹
うわっ…(見上げ)…高ぇな…。

花の採取をしながら頂上を目指す。
UC空翔でジャンプを繰り返し、時折休めそうな(花をつかめそうな)場所で休みながら登る。
場所は【視力】で確認してな。
そういうわけで花を入れるのは蓋がしっかりと閉じれる鞄か籠か。
大きさもあまり大きくない動きを阻害しないサイズにしとこう。
数が必要なら回数こなせばいいだけだし。

無いようにはするが、落下の際も空翔で一気に落ちないようにする。


パティ・チャン
【POW】
「漁師さんの話を伺ったら、行くしかなさそうですね!」
 
「崖を登り、花を入手するには…」
 ユーベルコード「サイコキネシス」で、風に負けぬ場所を崖面に作りつつ、自分を支えつつ、技能【ジャンプ】と背中の羽根の飛翔力も頼りに、登りましょう!

なお、世界知識・情報収集・学習力を動員し、より安全な登坂ルートを確保するモノとします。

 最悪墜落しても、小さい体躯故何処かには降りられるでしょうが……問題があるとしたら。

「青い花の採取量がサイコキネシスの手(人間サイズ)の分しか期待できないのと、復路が使う腕が増えるので、はたして無事に地上に降りれるか?」
(降りたとしても、体力切れで当分の間使い物にならない




「漁師さんの話を伺ったら、行くしかなさそうですね!」
 どんなに地の形が変わろうと伝統を途切れさせまいとする兼業染物職人の矜持を受け、パティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)は天高く待ち受ける断崖絶壁に挑む。
 旅の導き手とも伝えられるフェアリー。パティもまた知識と観察によって岩肌の傾斜や取手足掛かりになりそうなデコボコを確認すると、猟兵達の先に立ちルートを提示する。
「まずそこのでっぱりに足を乗せて、ゆっくり体重移動させながらここに手をかけて!」
 翅による飛翔やジャンプを繰り返し自らも岩肌に体を預け、その小さな体が風に流されないよう気を付けながら先を進む。
 この辺りは依頼を受けた冒険者も比較的登り易かったのか、取っ手に出来そうな青い花が少ない。ともすれば上下左右に延々と続く岩肌のどこに手足を掛ければ良いのか、瞬時に判断が出来ない。決して岩登りの達人でない猟兵達をパティの案内が支え、登るにつれてコツを掴んだ仲間達の動きもスムーズになっていった。

「あの辺りには進めないですからね……」
 順調なその様子から目を離さないようにしながら、パティはサイコキネシスによる花の採取を始める。見えない腕だけがスルスルとルートを大きく外れて伸びてゆき、その向こうに咲いていた小さな青い花を掴む。流石は取っ手になるだろうと言われただけあって引き抜けず、サイキックエナジーで根の上から刈り取って回収した。
 非常に便利な腕であるが、パティのその体躯ゆえに採取量は少なく、回収した花は不可視の手で持ち続けなければいけない。飛べるとはいえ危険な場所、その両手足は空けておきたいのだ。
 どうしたものかと思案していると、すぐ下の仲間から目線が飛んでくる。
 花とパティを見た後に、自らの背中を示すように僅かに首を動かして。
「……! ありがとう!」
 仲間の背中に見えない腕を回し、その背負う籠に花を一束落とした。


 上を進む仲間から花を受け取り、黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)は改めて上を見上げる。
「結構頑張ってるんだけれど…………高ぇな……」
 足元の岩に爪先で乗り、腕を伸ばし指は握り込まずくぼみに掛けるようにする。なかなか安定した場所が無い岩場で、体力を消耗させない為の基本の姿勢だ。
 ユーベルコード空翔(ソラガケ)。足場を気にせず空中を蹴って進むことが出来る技だ。
 時には仲間の進むルートから大きく外れた場所まで行き、登り辛い場所に生える青い花を採取する。また周囲を見渡し、進める範囲に花や乗れそうな足場が無くなればルートに戻り岩登りをする。空翔もジャンプ回数には上限がある。まずは無理のない範囲で動きたいところである。
「おっ! 少し遠いけれど、大きな亀裂の入った場所があるな。少しは休めるかな」
 それは今登っているルート上だ。跳ぶ技のない仲間達も順調に登れば辿り着くだろう。そして自分も。
「…………」
 しばし考える瑞樹。
「……まぁ、落ちても一気に落ちないようにすればいいか。空翔で」
 冒険することにした。伸ばしていた腕を曲げ体を引き寄せるようにすると、岩肌を駆け上るようにして跳び出した。

 今回は横に跳んでも意味がない。完全な垂直跳びばかりでは高さが出ない。岩に手を掛け足で岩肌と空中を交互に蹴るようにして、瑞樹は空を翔ける。
 時折勢いよく引っ張った岩がボロリと崩れて剥がれた。体勢を立て直しながら、下の仲間に当たらないようそれを遠くに放り投げながら捨てる。亀裂と空翔、どちらも残りあとわずか。最後のジャンプを踏むと同時に亀裂に手をかけ、勢いよくその体を滑らせる。
「よっ……と! ギリギリセーフ! 中は意外と広いみたいだな。ひとまず、ここに来れば休めるよ」
 登壁中の仲間達へ手を振って場所を示し、瑞樹は籠を背負い直す。


「隆起してしまったのなら沈降させれば良い! ――ってわけにもいかないみたいね」
 地形をも変えてみようかと言いながら、水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)は大人しく崖を登る。問題の青い花が崖を崩したところで、根付くとは思えなかったからだ。
 布をたっぷり使ったその服はいかにも崖登りに適さないようだったが、その無理を通すのが錬成カミヤドリだ。刃を抜かずとも武器になるほど強化された鞘を纏い、複製された脇差が一斉に岩肌へ穿たれる。少しずつ高くなりながらジグザグに突き刺さったそれは安定した階段のような足場となり、静柄を崖の上へと運ぶ。青い花は頂上まで登ってから採取する。束にしたものを上から落とせば、帰りの手荷物も減るだろう。

「それにしてもキャビアじゃなくタピオカだったのね……」
 振り返るは先日の祭りで獲ったキャッ鯖卵だ。高級食材かと思ったら菓子食材によく似ていたのだ。わざわざ煮る必要のない瓶詰もなかなかの出来だったようだが。
 足場となった一振り一振りの複製脇差の刺さり具合を確認しながら、静柄はひとまず仲間の見つけた大きな亀裂の上を目指す。ぐらつくものは一段飛ばして進んで行く。
 その不安定な脇差の側にはどれも、青い花が咲いているのを目に留めながら……。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

城田・紗希
なるほど、崖に擬態したキャッツ鯖を登って、藍だか紅花だかを採ってくればいいんだね!(変なノイズが混じった
それとも、髪姫がキャッツ鯖を崖上に集めたんだっけ?
…登ればわかるよね!(長時間は考えない
……崖に登れば、ナントカ姫の名前もわかるかなぁ(横文字版が気になる

まずは鉤縄代わりにフックワイヤー!(装備の定位置を確認
とはいえロープで手繰り寄せできるかわかんないから、基本は体力勝負だね!(キリッ
あと、降りる時用に大きい風呂敷!(パラシュート代わりないしムササビのマネするためにポケットにねじ込み
あと…なんか色々、鞄に入れてた気がする!(隠しすぎて覚えてない
まぁ、どうにかなるよね、キリッ!(なんか声に出た


アベル・スカイウインド
ほう、空を目指せというわけか。フッ、面白い。

UC【竜翔】を使えば頂上まではあっという間だろう。まあ飛行できる者には敵わんかもしれんが、【ジャンプ】力には自信がある。頂上に至るまでの速さを競いたい者がいれば受けて立つぞ?
しかし、冒険者として依頼を請け負ったのだから青い花の回収も忘れてはいかんな。【竜翔】の使用回数を切らしたら休憩がてら花を回収して、再使用可能になったらまた翔けるとしよう。

しかし、地震で大地が隆起するところまでは理解できるがここまでとは……。フッ、世界は広いな。


平良・荒野
結構この村の皆さん、無茶振りをされますね…
いえ、猟兵たるもの、これくらいのことへっちゃらですが。
山は庭のようなもの。頑張ります。…崖はあまり、ですが…。

出来るだけたくさん、との事なので、背負子を借りて、かごを背負って登ります。
登る際には、まずは登っていけそうな凹凸や花の咲いている道筋を確かめておきます。
実際登り始めると、周りも見えなさそうですし。
蔓草を低い位置で集めておいて、いざ出発。

両手はしっかりと花を掴みつつ。
凹凸に蔓草を引っ掛け、支えにしながら。
サイコキネシスで、取っ手にならない辺りの花を切って、回収
今迄で一番、このUCを有効活用できている、気がします。
食べた分だけは、頑張れたかな。


シャルロット・クリスティア
…………(絶句)。
……いやいやいや、地殻変動と言ったって限度があるでしょうコレ。
何をどうすれば地震でこんな事になるんですか。

……文句を言っていても始まりませんか。
そう言うお仕事なら登っていくしかありませんね……。
手持ちのトラッピングツールをフル活用していきましょう。
ロープに等間隔に楔を結び、登りながら崖に打ち込みつつ、別のロープで身体をくくって打ちこんだ側に引っ掛け命綱としつつ。
ロープワーク技能を駆使して慎重に登って行きましょう。足場になりそうな地形はしっかり利用していきたいですね。

落ちかけたらアンカーショットでどうにか復帰できないですかね。

体力には自信がありますが……気が遠くなりますね……。




「……いやいやいや、地殻変動と言ったって限度があるでしょうコレ」
 きっと何万回かに一度の超地震だったのだろう。何千年もかけて作られるはずの立派な岩肌に楔を打ち込みつつ、シャルロット・クリスティア(彷徨える弾の行方・f00330)が呟く。
 こちらはロープワークを駆使して命綱を確保しつつ登っている。ロープも楔も予め十分用意して来たとはいえ、随分な高さになったはずである。
 ひとまず区切りの良い目標地点は出来た、もう少しだ。もう何度目かの楔を打とうと、青い花の咲く少し下の岩壁に向かってハンマーを振り下ろす。途端。

 ガラッ!!

 今まで乗っていた岩が音を立ててごっそりと崩れて来た。
「!!? らーく!!」
 下を行く仲間の猟兵に落石の起きたことを伝えながら、自身も一緒に滑り落ちてゆくシャルロット。そしてひとつ前に打ち込んでいた楔を越えたあたりで、ロープがピンと張り、その体をその場へ留めた。体に巻かれたロープが食い込み足元が宙ぶらりんになったが、再び足場になりそうな岩に足を引っ掛けると慎重に立ち上がった。

 その後辿り着いた大きな亀裂の上の休憩地点にて、どうやら青い花の周囲は岩が崩れ易くなっているようだと予想された。岩の隙間を貫いて咲く花だ。その為だろう。
「でも確か、上に行くほど花の数は増えるって言われましたよね……」
 そして見上げる断崖絶壁は、随分頂上が近しくなった分、登り始めよりも青い花がよく見られるようになっていた。登り方とルートを、これまでとは変えなくてはいけない。
「体力には自信がありますが……気が遠くなりますね……」
 同意するように、仲間のため息が一斉に重なった。


「ほう、空を目指せというわけか。フッ、面白い」
 先の案内、もとい岩場の安全を確認しに跳び回ることになったのはアベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)。
 猫の妖精たるケットシーの身のこなしと自慢のジャンプ力で青い花の咲く岩場を蹴りつけ、すぐに崩れるものでないことを確認していった。彼の体重で崩れるような岩場には、そもそも進めないのである。

 猟兵本隊は青い花の少ないなるべく安定した岩場にルートを確保することに努める者、とべる者や遠距離技を持つ者が周囲から花の採取に専念と、より一層明確な役割分担が行われた。
 上に行くほど本当に岩は崩れ易かったようで、落石の跡だろう幅の広い足場が増えて、踏ん張りが効き登り易くはなっていった。

「フッ、ここまでは大丈夫なようだな。では俺も竜狩りとはいかないが、しばし"刈り"に回らせてもらおう。冒険者として依頼を請け負ったのだからな」
 ユーベルコード竜翔(スカイルーラー)。
 竜狩りを生業とするアベルが、竜と同じく空を翔ける為に習得した技だ。
 空色の衣装をまとった銀色の毛並みが天翔ける竜のような残像を残し、本ルートを離れ遠く咲く青い花の群生地帯へ向かう。
 竜の力を宿す愛槍ランスオブアベルを素早く振ると、青い花の根から上が一斉に切り離され宙に浮く。
 それが風に流されぬうちにアベルが素早く回収して行き――。
「フッ、ただいま。さぁ、空を目指す続きとゆこう」
 青い花束を片手に、気高き竜騎士がより格好良く現れた。


「なるほど、崖に擬態したキャッツ鯖を登って、藍だか紅花だかを採ってくればいいんだね!」
 恐ろしくノイズ混じりの情報を片手に崖登りに加わったのは城田・紗希(人間の探索者・f01927)。
 今も髪姫がキャッツ鯖を崖上に集めたんだっけ、と首を傾げ呟いている。……真偽不明の勇者伝説というのは、もしかしたらこんな風に伝わっていった結果なのかもしれない。
「……登ればわかるよね!」
 自前のフックワイヤーで体を固定すると両手を広げ、発動するは攻撃ユーベルコード!
 いや、今さっき登るって言ったよね!?

 改めて、発動するはユーベルコード不可視の攻撃(ミヅライコウゲキ)。
 紗希当人も最早どこに仕舞ったのかも忘れてしまった投擲暗器達が、埒外の力の召喚に応えて体のあちこちから飛び出す。
 此度の標的は勿論紅花……ではなく、染色材料になる青い花だ。
 超速度で穿たれた愛用の投擲武器がカミソリのように鋭く青い花を散らし、岩から唯一の彩を奪ってゆく。
 そしてその散らした花をどうやって回収するのかというと……。
「ムササビ用の風呂敷じゃダメかな?」
 ポケットに入っているだけじゃダメです!
 そうこうしているうちに折角採取出来る青い花達が風に流され――るかと思ったら。
「お?」
 どこからともなく空中に表れた青い手が、器用に宙を舞う青い花をつまんで回収してゆくと、どんどん背負子の籠の中に入れていった。
「おー! ありがとー!」
 ワイヤーに身を任せのけぞりながら、しっかりお礼を言う紗希であった。


「村の皆さんの無茶振りに比べれば……これくらいへっちゃらです」
 サイコキネシスにより仲間の分の青い花も回収しながら、平良・荒野(羅刹の修験者・f09467)が答える。
 最初は髪で戦う髪長姫、最新では危険地帯の離岸に置き去りにする漁師兼染め物職人。どうやら狂人には事欠かない土地のようであった。

 因みにここまで花の回収を続けてきた見えないはずのサイコキネシスの手も、岩よりも崩れ難いと好んで掴んで登ってきた両手も、そして同様にそんな花を触り続けてきた仲間の武器も手も、みんな青い花の汁で真っ青に染まっている。わざわざ手を奇麗にする余裕も無く、服や道具や顔の汗まで拭い触っていたので、見えるところは全部真っ青である。ちょっと汚れたかな~が重ねに重なって、もはや誰も違和感すら覚えない、奇妙な光景の出来上がりである。

 崖の下で集めてから使い続けている縄代わりの蔓草も、当然真っ青である。荒野は引っ掛けるのに良さそうな岩の出っ張りを見つけると腰から回した縄を掛け腕を伸ばし、視界を十分広く保ったところで再びサイコキネシスによる青い花の採取を開始する。このユーベルコードも今迄で一番有効活用出来ているようで、こっそりと満足気だ。

 そうして続けてきた崖登りと花の採取だったが、それもついに終わりが訪れる。
 頂上が見えたのだ。
 先導、案内役を務めた仲間達がまず登りきると、次いで一人を引き上げる。
 より登り易いようにと下から更なる足場やロープ、ワイヤー、が補助で飛んでくる。
 花の入った荷物がこぼれないようにと慎重に手伝われ、全員が頂上へ辿り着いた。

 そして視界に広がるのは――標高が高く気温が低いからだろうか。
 一面に広がる色とりどりの花の海。季節遅れの春だった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『木の精霊・まんどらめぇめ』

POW   :    マンドラ・ミサイル
レベル×5本の【木】属性の【ふわもこな毛の塊】を放つ。
SPD   :    めぇめぶらすと
【ふわもこな体】から【ざっくりと編みこんだ毛】を放ち、【巻きつけること(痛くはない)】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    必殺!疑似餌封じ
【美味しそうな食べ物】【愛らしいお人形】【魅力的な書物】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。

イラスト:藤乃 はくまい

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 頂上に広がるは、見渡す限りの花畑。
 白い花が多い中、鮮やかな黄色や赤紫に青、色形鮮やかで派手なものが多い。
 そしてどれも葉は小さいが花は大きい。いわゆる高山植物によく似ている。
 高地の短く暖かな季節を謳歌するように咲き誇っていた。

 青い花の採取の末その身を真っ青に染めた猟兵は、髪長姫の石碑を探す。
 樹木も低木で見晴らしのいい景色の中、ぽつりと佇む小山。洞窟の入り口のようだ。

 その前に咲くのは綿毛のような花弁を持つ薄桃色の花――ではない、羊の群れだ。
 そしてただの羊でもない。もこもこと体を揺り動かしその毛で花を模し咲かせている。
 オブリビオン『木の精霊・まんどらめぇめ』である。

 なぜ人もいないこの地に巣くっているのかは分からない。
 しかしあのままでは洞窟に近付くことが出来ない。
 猟兵は武器を手に取る。

●まんじゅうこわい
 この地の『木の精霊・まんどらめぇめ』は編み物好き。
 攻撃の際には主に毛で作り出した物体を疑似餌として飛ばしてくる。

 しかしその際、自分が欲しいものを「注文」すると、この地の『めぇめ』は頑張る。
 すごく頑張る。
 初めての手編みのマフラーを高級カシミアの既製品にするくらいには、とても頑張る。
 「注文」の品を作っている間は攻撃の手が止まるので、有効打を与えられるだろう。
 また完成と攻撃を待った後、同様に「注文」すると再び頑張る。品物の大きさにもよるが、それを2〜3品ほど作ると『めぇめ』の毛が無くなり注文品を残して戦闘放棄、退散する。寒いんだろう、きっと。

 肉orもふもふ。
 猟兵はどの戦法をっても良い。
 オブリビオンを退け、洞窟までの道を切り開け!
黒鵺・瑞樹
まんどらめぇめ、前に遭遇した時は普通に撃退したんだが、そういう方法もあるのか。

……。
…………。
(他の人に聞こえないよう小声で)も、もこもこの編みぐるみとかできるのかな?
小さくても成猫ぐらい。でも欲を言うと、もう二回りぐらい大きくてふわふわでもこもこのやつ。
別に生き物飼えないからって理由じゃないんだけど、でもふわもこはとても良い物だし。
同じデザインでも色違いとかで二つ欲しい。サバトラ柄と茶トラがらの(一個洗濯してる間もふわもこできるし)
だめかな?そういう注文は受け付けられないか?

駄目だったらおとなしく戦闘。
毛を刈っても自分で紡げないからできれば品で貰いたいなぁって。


城田・紗希
キャッツ鯖ないじゃない、水心子さんへのお土産ないじゃない!(逆ギレの八つ当たり)
いいよもう、手当り次第に刈り取って、猫のぬいぐるみ作るから!(怒りのせいかちょっと大声)

絶望の福音で回避しつつ、誰にもお土産作ってない羊を仕留めるよ!
(自分へのお土産は想定してない、けど疑似餌というかお土産の作成は邪魔しない)
水心子さんには、キャッツ鯖の代わりに羊をお土産にするよ!
飛んでくる食べ物が偽物だから、ウィザードミサイルは保留する!
(ちゃんとした食べ物だったらウィザードミサイルで誘発させるつもりだった)

羊が片付いたら、水心子さんへのお土産を一纏めにして…っと
(グリモア猟兵と同姓の存在がすっぽ抜けてる)



●猫ぐるみ派
「まんどらめぇめ、前に遭遇した時は普通に撃退したんだが、そういう方法もあるのか」
 もこもこの毛で編んだ花を伸ばす様子を眺めながら、邂逅に驚くのは黒鵺・瑞樹(辰星月影写す・f17491)。
 崖が危険過ぎる故、依頼を請け負った者も程々で引き返して来た未踏の地である。加えて本来の精霊としての温和な性格を残すこその不殺戦法、といったところだろうか。
「……」
 じっと見つめる瑞樹の視線に気付いた一匹が、オブリビオンの本能のままに彼を『敵』と認め、その身からふわもこな毛の塊を作り出す。
「…………」
 周囲をこっそり窺った瑞樹が少し屈み、めぇめの顔の高さに合わせ小声で話しかける。
「も、もこもこの編みぐるみとかできるのかな?」
『――!! めぇめ!』
 注文だった。途端、嬉しそうな返事と共に殺意を引っ込めるめぇめ。趣味が本能を凌駕した瞬間である。めぇめは作っていた毛の塊の一つをふわっと伸ばした後に瑞樹を見つめ返す。このくらい?、と問うように。
「小さくても成猫ぐらい。でも欲を言うと、もう二回りぐらい大きくてふわふわでもこもこのやつ」
『めぇめ!』
 了解、と言わんばかりに返事をすると、今度は周囲に浮かぶ毛の塊で毛糸を紡ぎ出し、ふんわり感触を損ねないようにゆったりと編み出した。中に詰める綿だって、弾力抜群のしっかり自前毛だ。

『――めぇめ!』
 編み上がりました。まんどらめぇめ特製・大きなふわもこ猫ぐるみ。それを空高く掲げますと――。
『めっ!!』
 ミサイルの如く放たれました!! そうでした、これめぇめの攻撃技でした!
 対抗する瑞樹のユーベルコードは剣刃一閃。
 いざ、迫り来るふわもこ猫ぐるみを一刀両断。
「するわけないよ!」
 直撃を避ける為に一歩横に踏み込み、伸ばした両手で猫ぐるみを抱き止めるとそのまま巻き込むように回転。被ダメージを最小限にしつつ、地面や崖に落ちるのを阻止した。
 一仕事終えて満足気なめぇめが、再び毛の塊をぽこぽこと浮かべ始めたのを見遣り。
「同じデザインでも色違いとかで二つ欲しい。サバトラ柄と茶トラがらの」
 追加オーダー入りました!
 再び趣味及び職人魂が本能を凌駕し、猫ぐるみの作成に取り掛かるめぇめ。
 それを待っている間に出来立ての猫ぐるみのふわもこ具合を存分に堪能する瑞樹。
 そんな幸せな攻防を数度繰り返した後、変化が起きたのはめぇめだ。
「……意外とスマート体系だったんだ」
『めぇ!』
 そこには三体のふわもこ猫ぐるみを作り終え、すらりとした胴体を露わにしたまんどらめぇめの姿が。
 作った猫ぐるみを全てしっかり抱き止めた瑞樹に一礼――否、思いっきりくしゃみをしながら頭を下げると、そのまま一層軽やかになった足取りで、小山の向こうへ走り去って行った。

●キャッ鯖派
「キャッツ鯖ないじゃない、水心子さんへのお土産ないじゃない!」
 現れた羊に向かって逆切れをぶつけるのは城田・紗希(人間の探索者・f01927)。因みにここで呼ばれている水心子とは案内役のグリモア猟兵の方である。
「いいよもう、手当り次第に刈り取って、猫のぬいぐるみ作るから!」
 自分の羊を見繕うと、八つ当たり全開で刃を向ける紗希。
 毛刈りは重労働、黙って差し出す羊はおらぬと、まんどらめぇめもその毛をもこもこ揺らしながら臨戦態勢をとる。取れ立てぴちぴちのお土産を賭けた戦いが今始まる!

『めぇめっ!』
 先攻はまんどらめぇめ。指編みのようなざっくりマフラーを体から素早く伸ばすと、投網のように広げて紗希へ放った。
「キャッ鯖の代わりは私じゃなくて――」
 その攻撃は予想済みだと言わんばかりに、絶望の福音を発動し回避する紗希。
 そして回避にとどまらない。羊毛投網の下から抜け出るとそのままめぇめに向かって突進。ざっくり編みの根元に、身の丈ほどもあるウィザードロッドを叩きつけた。
『め゛ぇ!?』
 ざっくり編みとめぇめは繋がっている。重たい杖で突然下方向へ力を加えられためぇめは堪らずころりと転がる。が、それは紗希に無防備な腹部を晒すことになった。
「――あなただよ!」
 この光景さえ見えていたとばかりに、赤く光る刃を持つ紅時雨を突き立てる紗希。
 薄桃の毛に覆われた腹が紅色に染め上げられ、そして一体のめぇめが無抵抗になった。
「よしそれじゃあ、水心子さんへのお土産を一纏めにして……っと」
 片付けた羊ごと戦場の端へ退き、土産の算段を始める紗希。
 なお、猟兵は帰り道も情け容赦なく崖であるので量と運び方には気を付けろとは、村で待機中の方の水心子からの言葉である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アベル・スカイウインド
フッ、ドラゴンでも住み着いているかと思えば羊とはな。拍子抜けはしたがやることに変わりはない。排除させてもらうぞ。

俺が興味があるのは竜だけだ。疑似餌として何を飛ばしてきてもドラゴン以外には目もくれんぞ。そんな小さな竜ではだめだ!もっと大きいやつでないとな!……とこんな風に【挑発】して煽ってやればせっせと編み物に勤しむだろうか。その間に【力を溜め】させてもらうとしよう。UC【竜撃】を使うには少々準備が必要だからな。
さて、俺たちはかなり高いところまでやってきた訳だが……。フッ、俺はもっと高いところまで跳べるぞ!作品が出来上がったところで悪いが諸共【竜撃】で仕留めさせてもらう!



●ドラゴン派
「フッ、ドラゴンでも住み着いているかと思えば羊とはな」
 帽子の位置を軽く直して整えるはアベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)。
 ケットシーゆえ睨み合うまんどらめぇめと視線が近く、呼吸や体の動き一つ一つがつぶさに読み取れる。
「拍子抜けはしたがやることに変わりはない。排除させてもらうぞ」
 竜狩りの槍が鋭く光り、両者花弁を散らしながら地を蹴る。

『めぇめ!』
 羊が紡ぐは幅の狭いマフラーのような帯。素早さ重視でアベルを捉えんと放たれる。
 対する猫はその瞳を一層丸く広げてその動きを読むと、己に巻き付く直前にしなやかに跳躍。虚空を掴む帯を哂う。
「俺が興味があるのは竜だけだ。疑似餌として何を飛ばしてきてもドラゴン以外には目もくれんぞ」
 その言葉に反応してしまうのが、この地のめぇめのサガだろう。ならばとマフラーを一層太く筒状に作り上げると同時に、厳つい西洋竜の顔を編み上げてゆく。
「そんな小さな竜ではだめだ! もっと大きいやつでないとな!」
 不覚にも注文に取り掛かることになっためぇめを一層挑発し、アベルは槍を向けたままユーベルコード・竜撃(ドラゴンダイブ)の構えをとる。
 長い溜めを要する技だが、その時間すら知らずめぇめが作り出している。

『――めぇ!!』
 すっかり体の毛を使い果たして造り上げるは、めぇめ渾身の特大ドラゴンめいぐるみ。しかしそこに注文者のアベルの姿は無い。彼はもう――その竜の頭よりも高い空に居る。
「フッ、なかなかの出来だが、俺はもっと高いところまで跳べるぞ! 悪いが諸共仕留めさせてもらう! ――天を仰げ!」
 雲より高いこの地に竜狩りの猫が放つは、落雷を思わせる豪快な一撃。竜にトドメを刺す為の渾身の一撃だ。
 空が落ちて来たような轟と共に特大ドラゴンの頭が裂け、その下に居るめぇめもろとも槍が貫く。
 偽物の竜と羊には過ぎたる技だ。
 貫かれた地面の跡だけ残し、他は地に返っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

平良・荒野
めえめ… めえー……

殺めずに問題を解決できるのなら、そちらの手段をとりたいところです、が…
あいにく僕は物品に対する欲求が然程なく…

注文としては邪道かもしれません。が、
村の方々へのお土産に、さまーせーたーなどお願いできますでしょうか
染め方で工夫できるような、誰にでも合うような質素なものを。
質実剛健といいますし。

…毛の量がまだふかふかしているようでしたら、うーん。
次は薄手の羽織物を。朝夕は少し寒かったりもしますし。

まだ毛がふかふかしているようでしたら、次は。
羊のあみぐるみなど、作れますか?
敵は敵として、遺恨を残さず別れられるなら。
あなた方の毛で作られた衣類なのです、と村の方にご紹介したいのです。


パティ・チャン
【WIZ】
う~可愛いです~
(目にハートが出る勢い)
でも、オブリビオンである以上、キッチリと倒さなくちゃ
(とほほ)

こういうモコモコな相手には、「火」が有効、と見ました!
【魔弾の射手】発動
【2回攻撃、なぎ払い、属性攻撃、鎧砕き、衝撃波】
のせで、狙います。
なお、敵ユーベルコード対策は上の技能に加え【カウンター】で反撃しつつ、【世界知識、情報収集】で逃げ場を探し、退却しつつ遠距離攻撃

※仲間との連携、アドリブは歓迎



●さまーせーたー派
「めえめ……」
『めぇめ!』
「めえー……」
『めぇー』
 図らずも律儀なまんどらめぇめと会話(?)を繰り広げているのは平良・荒野(羅刹の修験者・f09467)。
 殺傷せずとも解決出来るならと、無い物欲から精一杯ひねり出す過程での一幕だ。
「注文としては邪道かもしれませんが、村の方々へのお土産に、さまーせーたーなどお願いできますでしょうか。染め方で工夫できるような、誰にでも合うような質素なものを」
 めぇめ! と了解の応えを返し、木の精霊が作るは麻を混ぜた綿の毛糸。サラリとした冷感素材の特製毛糸だ。宙に浮かせたふわもこ毛からくるくると縒り合わせ、サックリと通気性の良いサマーセーターを編み上げると――。
『めっ!!』
 やっぱりミサイルを思わせる剛速球で投げて来た! これもオブリビオンのサガ!
 対する荒野が操るは羅刹旋風。錫杖を飛んでくるセーターに沿わせるように振り回し、別方向からの力を加えて勢いを殺すと掬い上げるように回転。服を傷めずに回収完了だ。

「毛は……まだふかふかしていますか。でしたら、うーん」
 またしばし考え込む荒野。
 一方のめぇめはというと――それを見つめたまま在るか無しかの尻尾をフリフリ。行儀よく彼の注文を待っていた。どうやら最初の鳴き合いで何かが通じ合ったらしい。
 その後も薄手の羽織物を数着、毛の残り具合を見ながら追加注文してゆき、最後に頼んだのはめぇめの姿を映したあみぐるみだ。
「敵は敵として、遺恨を残さず別れられるなら。あなた方の毛で作られた衣類なのです、と村の方にご紹介したいのです」
『めぇめ!』
 なら特別可愛く作るよ! と言ったかどうかは分からないが、お馴染みになった植物性の毛糸で作られたるは、ヒンヤリしつつもふんわりころりとした姿のめぇめ羊の分身。
 最後の注文も無事作りきり、あみぐるみとは似てないスリム体系になっためぇめ。
 一つ身震いをすると、緩い下り坂になっている小山の向こうへと走り去って行った。

●ジンギスカン派
「う~可愛いです~」
 めぇめめぇめと跳ねる、ふわもこ羊に心奪われているのはパティ・チャン(月下の妖精騎士・f12424)。
 今も現存し、もとは温厚な精霊とされるまんどらめぇめ。その癒され可愛さはアックス&ウィザーズ屈指といっても過言ではないだろう。
「でも、オブリビオンである以上、キッチリと倒さなくちゃ」
 屍の海より蘇った存在ということは、世界を破滅へ導くものだということ。高揚した様子から一転、ガックリと肩を落とすとパティは自らの魔力を巡らせる。モコモコ相手の有効手段だって、残念ながらしっかり心得ているのだ。

「Freikugel!!」
 気合一発、先制攻撃。放つはユーベルコード魔弾の射手。火炎の力と持ち得る技能を余すところなく乗せた容赦のない技が、木属性の精霊であるめぇめを豪快に燃やしてゆく。
『め゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛え゛!!!』
 響く仲間のただならぬ悲鳴に、周囲のめぇめ達が一斉に攻撃を放つ。美味しそうな食べ物、愛らしいお人形、魅力的な書物……どれもパティの大きさに合わせたプチサイズだ。
「その心遣い……でも受け取れないんです!」
 反撃の為に上空へ浮かべて置いた炎が第二波として降り注ぎ、疑似餌と周囲のめぇめ達を炎の海へ沈めてゆく。パチリと爆ぜる音と香ばしい煙が周囲を包む。まな板の上の鯉ならぬ鉄板の上の羊。慈悲はない、オブリビオンと猟兵が相対すればこうなる運命なのだ。

 しばしの後、パティが指揮者のように腕を振るうと、カゲロウだけを残し、それが夢だったかのように炎の海が消える。
 ひんやりとした風が暖かい空気をさらい、そこにあるのは彩豊かな花畑だけであった。


●名こそ流れて
 めぇめが塞いでいた小山の入り口からしばし降って、登って、潜ってを繰り返すと、明るくひらけた場所に出た。
 外に出たのではない。洞窟の天井が裂けて、そこから太陽の光が射しているのだ。
 大きな隆起の際に崩れたのだろう、秘密基地の中は子供達が遊ぶには鋭利すぎる岩が突き出し、不規則な陰影を落として壁を彩っている。

 その中に、それはあった。
 白い石を削って作られた滑らかな表面の塔であった。
 ーーそれは勇者の剣だ。
 抜け落ちるが丈夫ないくつもの蔓草が掛かるように垂れていた。
 ーーそれは髪長姫の後ろ姿のようで。
 花畑の種がこぼれ落ちてきたのか、この日照が合っているのか。地にも蔓にも小さな珠のような花が様々な色をたたえ咲いている。
 ーーかつての染物の村と、冒険の最中も姫を彩り続けた髪飾りだ。

 ただの崩れた洞窟ではない。
 猟兵も知っている。
 誰も辿り着けない空の彼方へ行っても、営みが一変した故郷の中であっても、それは人々によって語り継がれているのだから。
 髪長姫の伝説は、今なお聞こえる。

 依頼の終着点。帰りの事を思うとやや気が重いが、ひっそりと時を経た石碑を前に、猟兵は腰を下ろす。
 姫と人々の生きた時物語に想いを馳せながら、しばしの休憩だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年08月01日


挿絵イラスト