#アリスラビリンス
タグの編集
現在は作者のみ編集可能です。
🔒公式タグは編集できません。
|
●
ここは麦畑の国。一年中、小麦や大麦と言ったさまざまな麦の実りがある、かかしの愉快な仲間達が住まう穏やかな国であった。
「んだば、また手狭にきってきただな」
「んだんだ、また森を開拓するだか?」
穏やかな西風に揺れる麦穂、それを眺めながらかかし達は遠くにある森を見る。彼等は森ばかりだったこの不思議な国を開拓し、麦畑の国へと変えたのだ。あるいは、それは人に営みの戯画化――カリカチュアとしては、とても正しいのかもしれない。
「お、なんかまた鳥が来たべ」
「ここに来たらダメだべさー」
かかし達は、空を飛ぶいくつかも鳥に睨みを利かせる。害獣や臆病者を脅かし、動きを止めて追い払うぐらいしか能のない力――だが、かかし達は害獣にとても強かった。
だから、今回も鳥を問題なく追い払える……そう思っていたのだ。
「チュン!」
しかし、愛らしく丸っこいツバメがその翼を広げかかし達に襲いかかり、両断した。
「な、なんだべ、こいつ!? オラ達で追い払えないべ!?」
「チュチュン!」
かかし達は知らない、そのツバメ達がツバメ型オウガ『つばくらさま』である事を。そして、つばくらさまの群れをけしかけた白蛇が、森の中でほくそ笑む。
『まったく、こんないい森を潰そうだなんて無粋な連中だ。所詮、脳なしのかかしどもか』
白蛇――堕落を囁く蛇は、長い舌を覗かせ吐き捨てた。
『ボクはここが気に入った、ここをボクのアサイラムにするんだ。ああ、今からアリスを堕落させるのが楽しみだ――さぁ、その邪魔になるあんな麦畑、荒らしに荒らしてしまいなよ』
『チュチュン!!』
自らが宿り木とするリンゴを食らったモノは、みんな自分の味方だ――堕落を囁く蛇は、森の中でつばくらさま達をけしかけた……。
●
「一応、少しは利いておるようじゃが……このままではかかし共は、全滅じゃ」
ガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)はため息混じりにそう語り始めた。
「アリスラビリンスにある不思議な国の一つ、麦畑の国がオウガに襲われる。どうか、これを助けてやってほしいのじゃ」
黒幕である白蛇、堕落を囁く蛇はこの麦畑の国にある不思議な森を中心に、アサイラムに作り変えるつもりだ。そうなれば、かかし達だけではなく被害はどこまでも拡大する――初動で止められる、絶好の機会なのだ。
「まずはかかし共と協力して、ツバメ型オウガを退治してくれ。少しは足止め出来るが、決定力に欠けておる。かかし共がやられるのは時間の問題じゃ」
つばくらさま達を駆逐すれば、堕落を囁く蛇も黙ってみていられなくなる。森から出てくるのを迎え撃って、倒してほしい。
「ああ、そうそう。かかし共も不思議の森を把握しておらんらしい。珍しい植物や鉱石、何か面白いものもあるかもしれん。かかし共に後々危険が及ばんよう、全てが終わったら森の探検でもしたらどうじゃ?」
恩人相手だ、そのぐらいの事はかかし達も快く受け入れてくるだろう。
「まぁ、まずはしっかりオブリビオン達を倒してくれ。おぬしらなら問題なく出来るじゃろう。よろしく頼むぞ」
波多野志郎
ん? かかし? あ、どうも波多野志郎です。
今回は平和な麦畑の国を襲う、オウガ達を相手に戦っていただきます。
第一章は、つばくらさまとの集団戦。
第二章は、堕落を囁く蛇とのボス戦。
第三章は、不思議な森を探検する日常パートとなります。
特に第三章は、不思議な国の事ですしいろいろと不思議なものが見つかるかもしれません。そこは皆様のプレイング次第となりますので、是非アイデアをどしどしお送りください。
それでは、麦畑の国を守るため、頑張ってくださいませ。
第1章 集団戦
『つばくらさま』
|
POW : するどいつばさ
【翼】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : スワローテイル
【尾羽】が命中した対象を切断する。
WIZ : きりっ
【きりりとした瞳】を向けた対象に、【翼】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
月隠・望月
ツバメ、まるい、ね。アリスラビリンスのツバメはこういう形、なのだろうか。あるいは、これらがオウガだからなのか……
かかしたちでは分が悪いみたい、だね。ここはわたしたち猟兵にまかせて
まず、かかしたちを守るために陰陽呪符で霊力の防御壁を張って、おく(【オーラ防御】)。強度の高いものではない、が、ないよりはましだろう
敵が空を飛んでいる状態では、刀での攻撃は届かない、ね。銃撃で敵を【挑発】して、敵の方からこちらを狙ってやってくるよう仕向けよう
敵がこちらに近づいて攻撃してきたら、【カウンター】で【剣刃一閃】を叩き込む
敵の攻撃の威力も馬鹿にならない、まともに喰らわないよう気をつけよう(【見切り】【第六感】)
ヴェル・フィオーネ
■心情
オウガって、こんな見た目の奴も居るのね……?
ぱっと見た感じなんかぬいぐるみみたいだけど、何が飛び出してくるかわかんないし全力で倒さなきゃ!
■戦闘
技能【属性攻撃】による青い魔力弾で牽制しつつ、相手が接近してきたところを狙ってシャイニング・オーバー・ドライブを放つわ!
一気に相手をけちらせるかな……?ま、やってみなくちゃわからないわよね!
フェアー・ウェルフェア
新たなアサイラムを作る……ね。
そうやって、またアリス達の命を弄ぼうとするのね。
……許しては、置けない。貴様達の思い通りにはさせない。させて、なるものか!!
向こうには飛行能力と素早さがあるけど、怯んではいられない。
奴らの技の有効射程はかなり短い、リーチの上ではこちらに利があるはず。
【覚悟】を決めて、武器を構える!
もし、かかし達の睨みが全く効かない訳じゃないのなら……一瞬だけでいい、奴らに隙を作って。合図はわたしがする。
かかし達の前に立って戦い、敵視をこちらに集める。
リーチを活かし、守りを意識して時間を稼ぎ、そして……
「今っ!」お願い、睨んで!
怯んだ隙を狙い、薙ぎ払うように『離断』を放つ!
中御門・千歳
シュデラ(f13408)と参加
こいつはまた随分と気の抜けた面のオウガだね……
とはいえ、平和な国を駄目にさせるわけにはいかないからね、いっちょ気張ろうかね
周囲を飛び交う鳥に集られたらね、顔面をガードしながら毒づこうか
ちぃ、面倒な奴らだよ……っと、すまないねぇ
『式神召喚・雷獣』を使用するよ
このすばしっこい相手には侘助じゃあ、ちと相性が悪いからね
雷蔵、あんたに決めたよ!
雷蔵の纏う黒雲から放つ雷でオウガを撃ち落とすよ
いまいち気合いの入らない相方には、活を入れなきゃいけないね
シュデラ、ぐだぐだ言ってないでしっかり気張りな!
ようやくエンジンがかかってきたのなら、にかっと笑いかけるよ
あぁ、それで良いんだよ
シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行
えっアレオウガなの?アレが?
そうなんだ。…うん、流石不思議の国?だね
でも可愛いなァ、オブリビオンじゃなきゃな…うん?
あはは、ごめんごめんそうだね婆さん
じゃ活入れてくれたし、とりあえず頑張ろうか
鳥が集るなら指輪の盾で防ごうか
婆さんの方にも展開するよ、大丈夫?
まァ俺に任せて後ろにでも居てよ
動かなくても倒せるんだろう?
一応パラディンなんだ、敵の攻撃くらい任せて
わァアレが式神か、格好いいね
じゃ俺も負けてられないから追撃しようかな
風の精霊弾をセットしたCenerentolaを複製して一斉射撃
一匹も漏らさず当てていくよ
ごめんね可愛い的君達
せめて優しい風に浚われて骸の海へ還りな
白斑・物九郎
●POW
助太刀に来てやりましたでよ、カカシ各々方
おたくらがただのカカシじゃねえってトコ、見せて下さいや
・カカシ達に視界を外側に向けた円陣を組ませ「より早くこちらへ殺到すると思しい敵」へ優先的に睨みを利かせるよう依頼
・自身はカカシ達の近場で矢面に立ち左腕に【フルドライブ】を集中(力溜め)
・敵攻撃射程は半径30cm、ならば「飛んでこちらに突っ込んで来る」のが機動の基本であると類推
・カカシの睨みで敵の機動力が減じでもする瞬間を【野生の勘】で察し、タメにタメた左腕でブン回す魔鍵を【怪力】コミで叩き付ける
・敵一体に対し一撃一殺を期す
・一撃一殺に最低何秒のタメが必要か数をこなしつつ体得、殲滅の効率化を期す
ロン・テスタメント
【心情】
ツバメ? 凄く可愛いから倒すの躊躇ってしまいます。
【戦闘】
「可愛い……」
UCで狼を呼び出します
狼『でも、あれはオブリビオンだ』
「うん、倒すしかないですね」
二人で【だまし討ち】でつばくらさまのUCや攻撃をされる前に鉄扇で殴り飛ばします
『UDCアース辺りは時期だから多いが、こっちでもそうなのだろうか?』
「分からないです!」
狼は数にうんざり、ロンはつぶらな瞳で飛んで来るのに怯みつつも頑張っている
『これも立派な修業』
「いつか、お母さんをぎゃふんと言わせる為の!」
父親には敵わないから、格闘の師である母親を越える為に奮闘中
「凍らせて!」
『玉砕!』
鉄扇の氷属性で攻撃します!
麦に被害が出ない程度に!
アストレア・ゼノ
◆SPD/アドリブ歓迎
あれがこの世界のオブリビオン、人喰いのオウガってやつか
どうにも緊張感の無い姿だが、見た目に騙されてやるつもりも無いな
なるべくなら麦畑に被害が出ないように立ち回るため
物理攻撃での戦法を選択
相棒である仔竜が変じた槍を手に、
【竜言語・群竜統率】を発動させ42本の槍を複製し
【見切り】や【ダッシュ】で敵に肉薄しながら【なぎ払い】
隙を狙っての【念動力】での【槍投げ】で
敵のオウガそれぞれを複製した槍4~5本で【串刺し】にしてやろう
●おそるべきひとぐい
地平の彼方まで続く麦畑――麦畑の国に、まるっこいツバメが飛んでいく。
「えっ、アレオウガなの? アレが? そうなんだ。…うん、流石不思議の国? だね」
どこか戸惑ったように、シュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)がこぼす。それに中御門・千歳(死際の死霊術士・f12285)も、しみじみと答えた。
「確かに、こいつはまた随分と気の抜けた面のオウガだね……」
「でも可愛いなァ、オブリビオンじゃなきゃな……うん?」
言葉の途中でシュデラが言葉を途切れさせたのは、どこか呆れたような千歳の視線を受けたからだ。
「平和な国を駄目にさせるわけにはいかないからね、いっちょ気張るよ?」
「あはは、ごめんごめん。そうだね、婆さん。じゃ、活入れてくれたし、とりあえず頑張ろうか」
ツバメ達が飛んでいく先を見れば、藁の家が集まる集落がある――どうやら、そこが麦畑の国の集落――らしい。らしい、というのはかかしの村など、そうそうお目にかかれるものではないからだ。
「オウガって、こんな見た目の奴も居るのね……?」
どこか感心したように、ヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)が言う。
「ツバメ、まるい、ね。アリスラビリンスのツバメはこういう形、なのだろうか。あるいは、これらがオウガだからなのか……」
月隠・望月(天賦の環・f04188)もそんな感想を抱くが、すぐに思考から目の前の現実に引き返してくる――目の前で起きようとしている惨劇を、知っているからだ。
「かかしたちでは分が悪いみたい、だね」
「うん。ぱっと見た感じなんかぬいぐるみみたいだけど、何が飛び出してくるかわかんないし全力で倒さなきゃ!」
見れば、既にかかし達がオウガの群れと交戦を始めようとしている。かかし達の力は、相手の動きを封じて追い返すぐらいしかない。どう考えても戦闘向きではなく、分が悪い。
「チュン!」
ツバメの一羽が、急降下を始める。その小さな翼による斬撃は、かかしを確実に両断する――その寸前だ。
「ふえ!?」
かかしが、間の抜けた声を上げた。飛び込んでくる人影――白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)の左腕が放った一撃が、ツバメを撃墜したのだ。ズサァ、と着地した物九郎は、目を白黒させた――気がする――かかしへ告げた。
「助太刀に来てやりましたでよ、カカシ各々方」
「お? 助けてくれただか? ありがたいべ」
純粋無垢なのだろう、かかし達は物九郎の言葉をすぐに信じた。むしろ、逆に不安になるぐらいの素直さだ。都合がいいので、今はソレで押し通すのが吉だ。
「新たなアサイラムを作る……ね。そうやって、またアリス達の命を弄ぼうとするのね。……許しては、置けない。貴様達の思い通りにはさせない。させて、なるものか!!」
フェアー・ウェルフェア(とまったとけいはうごかない・f20053)は、ツバメ――オウガつばくらさま達に、秒針槍の切っ先を突きつけた。
「チュン! チュン!」
「チュチュン!」
「チュン!」「チュン!」「チュン!」
つばくらさま達は、互いに鳴き合い空中で陣形を整えていく。そのやり取りを人の言葉に翻訳してみれば、こうだろうか?
――敵、援軍あり! 援軍あり!
――プランDへ移行! 鶴翼陣形を取れ!
――了解(ヤー)! 了解(ヤー)! 了解(ヤー)!
かかし達と応援で現われた猟兵達をつばくらさま達は半月型の陣形で、包囲していく。見た目は愛くるしかろうと、人の味を覚えた危険なオウガなのだ。
ここに、かかし達の集落の存亡を賭けた戦いの幕があがった。
●接敵(エンゲージ)
「可愛い……」
思わずそう呟いてしまったのは、ロン・テスタメント(幸福をもたらす龍・f16065)だ。そして、それをたしなめたのはオルタナティブ・ダブルで現われたもう一人の自分、狼だ。
『でも、あれはオブリビオンだ』
「うん、倒すしかないですね」
そこに迫ったつばくらさまに、狼が前に出る。ロンと狼が重なった――そう思った直後、ロンは滑るような歩法で横へ。狼に意識を集中させたつばくらさまを鉄扇で殴打、体勢を崩したところを即座に狼が叩き落とした。
「チュン!?」
「…………」
王龍を握りしめ、ロンはすぐに視線を上げる。自分の感情で誰かを危険に晒せない――猟兵の役目に対する自覚と父の教えが、ロンを次の行動へと移させた。
「あれがこの世界のオブリビオン、人喰いのオウガってやつか。どうにも緊張感の無い姿だが、見た目に騙されてやるつもりも無いな」
アストレア・ゼノ(眩き槍の騎士・f01276)は、右手を虚空へかざす。その手へグウェンが飛び、竜槍へと姿を変えた。その変化を目で見る事なく信頼を込めて握ったアストレアは、竜の言葉で告げた。
「<軍勢よ、我が意に従え>」
ヒュガガガガガガガガガガガガガガ! とアストレアの背後に複製された竜槍が並んでいく。そして、右手の本体を投擲するのと同時、念動力によって複製された槍も放たれた。その槍衾が、つばくらさま達の陣形を食い破っていく。
「円陣を組んでくだせぇ。んで、こっちに飛んでくるヤツから優先して、動きを止めてくれりゃあ、いいっすから」
「あー、それならできるべ。うん」
かかし達は頼りないが、物九郎の提案にきちんと了承してくれた。物九郎は、力強くうなずいた。
「おたくらがただのカカシじゃねえってトコ、見せて下さいや」
笑い、物九郎は走り出す。それに反応したつばくらさまが高速で滑空、その尾で物九郎に触れようとするが、ビクリ! と空中で体勢を崩した。
「さすが」
思わず称賛し、呪紋が励起された左腕の一撃で物九郎は動きの止められたつばくらさまを粉砕する! これなら動きが見破られやすい一撃も、確実安全に当てられた。
「ちぃ、面倒な奴らだよ……」
集落に到着した千歳は、周囲を飛び回るつばくらさまに顔をしかめる。そんな千歳を庇うようにシュデラはSchild von Cendrillonを輝かせ、硝子細工の様なシールドを展開して前に立った。
「大丈夫?」
「っと、すまないねぇ」
シュデラの言葉に、千歳は自然と謝った。それにシュデラは、朗らかに笑って言う。
「まァ俺に任せて後ろにでも居てよ。動かなくても倒せるんだろう? 一応パラディンなんだ、敵の攻撃くらい任せて」
一応、などと謙遜するものの、シールドの角度を計算してつばくらさまの斬撃を逸らす姿はまさにパラディンに相応しいものだった。千歳は苦笑しつつも、素直にシュデラに防御を任せる。
「このすばしっこい相手には侘助じゃあ、ちと相性が悪いからね――雷蔵、あんたに決めたよ!」
千歳の呼びかけにまず応えたのは、抜けるような青空にぽつりと現われた暗雲だった。ゴロ……と轟いた瞬間、雷雲から一条の電光が落ちる!
「チュン!?」
つばくらさま達が陣形を貫かれ、困惑の鳴き声をあげた。雷が落ちた場所、千歳の背後に現われたのは頭は猿、四肢は虎、尾は蛇の鵺・雷蔵だ。
「わァ。アレが式神か、格好いいね。じゃ俺も負けてられないから追撃しようかな」
シュデラが風の精霊弾をセットしたCenerentolaをGlasregen(グラスレイン)で大量の複製、硝子細工の銃弾がつばくらさま達へ撃ち込まれていった。
「向こうには飛行能力と素早さがあるけど、奴らの技の有効射程はかなり短い、リーチの上ではこちらに利があるはず」
猟兵側の猛攻に反撃してくるつばくらさま達に、フェアーは覚悟を決めて長短針剣を握る。迫る一羽を振り返りざまの斬撃で切り伏せ、秒針槍で次の一羽を刺し貫いた。
「強度の高いものではない、が、ないよりはましだろう」
「おお! ありがたいだ!」
望月の陰陽呪符による霊力の障壁に、かかし達が礼を言う。物珍しそうに触れたり、何か動物よけに使えないか考え込んでいるかかし達にツッコミを入れる隙もなく、一羽のつばくらさまが望月を襲った。
「――ッ!」
「チュン!」
互いに交差の瞬間、裂帛の気合いを放つ。無銘刀による望月の居合の一閃は、つばくらさまの片翼を切り飛ばし、地面へと落とした。
「えいえいえいえい!!」
そして、ヴェルが青い魔力弾でつばくらさま達を牽制する。頭数の差は、手数で補う――こうなると、つばくらさま達も集団で襲いかかってはいい的になってしまう。
「機動力が活かせてないね、向こうは」
ヴェルの感想の通りだ、攻撃が近接距離になっている分、つばくらさま達にとって飛べるという要素は有利だけに働かない。とはいえ、それも対策が出来れいるからこその感想だ。数が揃えば、十分な脅威だ。
だからこそ、互いに間合いをはかりながらの戦いとなる。猟兵達とつばくらさま達の戦いは、静かに激しさを増していった。
●翼、墮ちて
『UDCアース辺りは時期だから多いが、こっちでもそうなのだろうか?』
「分からないです!」
狼が数にうんざりしたように言うと、ロンも声を張り上げた。あのつぶらな瞳が心をかき乱す、それでもロンは気力を振り絞って奮闘した。
『これも立派な修業』
「いつか、お母さんをぎゃふんと言わせる為の!」
父親には敵わない――だから、格闘の師である母親を越えるためにロンは奮闘中なのだ。ロンと狼は互いの死角を補い合うように動きながら、ロンが叫んだ。
「凍らせて!」
その声に、狼が氷属性の一撃でつばくらさまを凍らせ。
『玉砕!』
ロンが鉄扇の一撃で、それを粉々に粉砕した。まさに同一人物ならではの、息の合ったコンビネーションだった。
「こうも可愛いと、気が削がれるよね……」
「シュデラ、ぐだぐだ言ってないでしっかり気張りな!」
どこか気乗りしない様子で言ったシュデラに、千歳の一喝が飛ぶ。その声に驚きことも怯えることもなく、シュデラは肩をすくめた。
「ごめんね可愛い的君達。せめて優しい風に浚われて骸の海へ還りな」
渾身のGlasregen(グラスレイン)、稲光に輝く硝子細工の銃弾が豪雨となって次々とつばくらさま達を撃ち落としていった。
「あぁ、それで良いんだよ」
ようやくエンジンがかかってきたかい、とにかっと笑いかけると千歳が叫ぶ。
「雷蔵! アンタも思う存分暴れておいで!」
鵺は、千歳の許可に嬉々としてつばくらさま達の元へ駆け込む――そして、ドン! と雷の雨を降らせた。
上から雷、下から硝子細工の銃弾――二種の雨に晒されたつばくらさま達へ、ヴェルはスペリオル・マグナの切っ先を向けた。
「ふっとべぇぇぇぇ!!!!」
シャイニング・オーバー・ドライブによる青い爆発が、つばくらさま達を飲み込む! 多くの仲間がやられ、つばくらさま達は散っていく。数の優位を、覆され始めた――その自覚が、彼等にもあるのだ。
そうなれば、個々で撹乱したほうがいい――その意図を読んで、アストレアが回り込んでいた。
「おっと、それはさせない」
ガガガガガガガガガガ! と数羽のつばくらさま達が複数の竜槍グウェンの複製に刺し貫かれていく。統合するたびに、グウェンはつばくらさまの動きを学習している――もはや、先読みされ逃げられる軌道ではなかった。
「威力は馬鹿にならないが――」
かかし達に迫るつばくらさまの前へ躍り出て、望月は剣刃一閃で切り落とす。こちらの斬撃の風に乗って避けようとするが、その動きを読んで逃げ道を封じればいいだけ――そうやってツバメを斬った剣豪もいるくらいだ。猟兵の望月ならば、決して不可能ではない。
「チュチュン!!」
もはや、数の優位はない――それでも一矢報いようとつばくらさま達がかかし達を守るフェアーへ迫った。
「今っ!」
事前に告げていた、事だった。
――……一瞬だけでいい、奴らに隙を作って。合図はわたしがする。
――危ないだよ?
そう心配してくれたかかしがいた。だからこそ、失敗する気はフェアーにはなく――
「チュン!」
「……さよなら」
フェアーが繰り出した離断(フェアウェル)の赤い軌跡を残す斬撃が、つばくらさま達を両断した。
「……チュン」
戦略的撤退を選んだ最後のつばくらさまが、飛び去ろうとする。この状況を、『友達』に伝えなくてはいけない――しかし、その動きは野生の勘に見破られていた。
「そうは問屋が卸さないっすよ」
物九郎の渾身が、飛び去ろうとしたつばくらさまを粉微塵へ粉砕した。
「やった! やっただ!」
「ありがとう、助かっただよ!」
かかし達が、やんややんやの大喝采を上げる。しかし、猟兵達の表情は晴れない。
「ううん、まだよ」
ヴェルの言葉に、フェアーが厳しい表情で遠くに見える森へ向けられた。
「まだ、黒幕がいるわ」
この麦畑の国をアサイラムに変えようとしているモノが、残っている。それは、ここからが本当の戦いであるという意味だ。
だからこそ、かかし達は沈黙した。黒幕、楽園を狙う白蛇がここを訪れる時が、すぐそこまで迫っていた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『堕落を囁く蛇』
|
POW : 乱痴気パーティー
戦闘中に食べた【者の数と、食べられた果実】の量と質に応じて【蛇の気分が良くなり】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD : 賢い君へのご褒美
【禁断の果実】を給仕している間、戦場にいる禁断の果実を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
WIZ : 心に這い寄る囁き
【堕落へ誘う蛇の甘言】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
イラスト:水葵林檎
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「バルディート・ラーガ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●堕落を囁くは――
『うーん……遅いなぁ』
堕落を囁く蛇は、舌を覗かせながら言った。言葉ほど、声色は切迫していない。むしろ、楽しげでさえあった。
『やっぱり、鳥じゃダメかな? かかしも思った以上にやるみたいだ……あるいは、強力な助っ人でも現われたかな?』
どちらにせよ、消耗はしたはず――というのが、堕落を囁く蛇の考えだ。つばくらさま達からすれば美味しいリンゴをくれた友達だが、堕落を囁く蛇からすれば所詮は替えのきく捨て駒だ。真の邪悪とは、無知をいいように操るものだ……まさに、この堕落を囁く蛇は邪悪の化身と言えた。
『じゃ、ボクが直接潰そうかな。ああ、面倒くさい』
面倒だ、そう言いながら、堕落を囁く蛇は地を這っていく。面倒だ、面倒だが殺すのは大好きだ……そんな二律背反も楽しみながら堕落を囁く蛇は集落を目指した……。
ヴェル・フィオーネ
■心情
あなたがあのオウガ達の親玉ね!
あなたの思い通りになんて、させないんだから!
あなたが出会うアリスは……この場に居る私達で最後よ!
■戦闘
アリスナイト・イマジネイションを使用して、無敵の鎧を纏うわ
技能【属性攻撃】による青い魔力弾を放ちつつ、スペリオル・マグナ(アリスランス)で攻撃していくわ!
もし、敵のユーベルコードで食べられちゃったりしても、大丈夫!
その時は内側から技能【ランスチャージ】を使った全力の攻撃でぶち破ってやるわ!
白斑・物九郎
●POW
面倒だ面倒だと、勿体ねえコト言ってますわな
手間暇惜しまず周到に仕込んで掛かるのが『狩り』の本懐ってなモンでしょうわ?
・布石
「茶斑の三毛」をけしかけつつ、俺めは蛇相手に【怪力】で魔鍵をブン回して立ち回りまさァ
【野生の勘】で回避を期しつつ、敵に対する位置取りは三毛よかやや遠間をキープ
・本命
蛇っつったら、食事の作法はきっと丸呑みですよな?
実は三毛には俺めの血を既に仕込んであるんスよ
蛇が三毛を喰ったらそこで【ブラッド・ガイスト】発動、あの武器の【封印を解く】
蛇の腹ン中から化け猫に変化した三毛を暴れさせてやりまさァ(だまし討ち)
どうですよ?
コレが獲物をハメる為なら手間暇惜しまねえ狩りの作法っスよ
中御門・千歳
シュデラ(f13408)と参加
こいつが事件の黒幕かい
随分と陰湿なようだね、さっさと畳んでやるかい
式神召喚・具足を召喚するよ
式神の侘助に突っ込ませて戦わせるよ
侘助!三枚に下ろしておやり!
侘助は痛みを感じないからねぇ
侘助を盾にして、シュデラに攻撃させるよ
シュデラ、今だよっ!
堕落への誘い、ねぇ
もっと欲望渦巻く若い奴におやり!
こちとら枯れ尽くしててね、今更堕落も何もないのさ!
式神はダメージを喰らうと消えちまうからねぇ
錆丸には防御を担当させるよ
私の周りにとぐろを巻かせてね、敵が来たら庇ってもらうよ
あんたの牙じゃ、錆丸の鋼の装甲は貫けないよ
シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行
アレが元凶?
林檎美味しくなさそう
婆さん…アレ三枚にしても不味そうじゃない?
ア、そうか例えか
錆丸君似てるね長いの的に
攻撃は侘助君?うん解った
後方から的確に蛇だけを狙い撃ちサポートするよ
敵の攻撃は指輪の盾で防御
え?婆さん冗談言わないでよ今でも大暴れして…は式神君達か
でもまだイケると思うけどなァ
あァ俺にも来る?うーん昔は物凄い自分を縛ってたから
俺的には今が好きな事ばっかりしてる堕落?状態だと思うんだ
だから此れ以上はあんまり望まないかな
其れより君を狩るのが楽しそうだしさ
OK、婆さん有難う
マスケット銃にAccoladeの魔法を付与
とびきりのレーザー光線で堕落の蛇を撃ち抜くよ
フェアー・ウェルフェア
……貴様らオウガは沢山の物を奪ってきた。アリスからも、わたしからも。
これ以上はやらせない、新たなアサイラムなど作らせない。
今此処で、貴様を討つ!
想像するのは軽く、強く、藤色に煌めく鎧。
疑念など感じない。この力は奴らを、オウガを屠る為だけにあるのだから……!
想像を創造へ、『アリスナイト・イマジネイション』!
鎧を纏い、攻撃に移る!
まずは【ランスチャージ】、鎧の防御力に頼りながら一気に距離を詰める。
けれど、狙うのは奴本体じゃない。狙うのは、禁断の果実が実る宿り木。
果実は奴の力を増す鍵でもある……このまま放置しては置けない。落とせば落とす程、力を削げるはず!
【部位破壊】を試み、枝ごと果実を斬り落とす!
月隠・望月
あの白蛇が此度の黒幕、か
蛇と林檎……どこかでそのような物語を聞いた覚えはある、が、よく思い出せない……林檎を食べたらいけない、という内容だった気はする
あの蛇のユーベルコードはどれも厄介。なので、敵が仕掛けてくる前に【先制攻撃】を行い、敵を消耗させるのがよい、と考える
敵の目を狙って暗器を【投擲】(【目潰し】【早業】)しつつ、【ダッシュ】で接敵。刀が届く範囲まで近づけたら【剣刃一閃】で敵を斬りつける
敵の攻撃は可能な限り【見切り】躱すか、武器で受け止めたい。可能なら【カウンター】を叩き込もう
かかしたちが狙われていたら、敵の注意をわたしに向けるために、刀を振って【衝撃波】を飛ばすなどして【挑発】する
アストレア・ゼノ
◆POW/アドリブ歓迎
黒幕が自らやって来たか
(白い鱗の者同士)気になるか?グウェン
だが生憎、友達になれるようなタイプじゃあ無さそうだ
【フォレスト・チャンピオン】のゴドリックを召喚し、
ありったけの【怪力】で共に槍を振り回して
「禁断の果実」を木ごと吹き飛ばす勢いで【なぎ払い】
その破壊力で蛇を追い詰めてやろう
森の勇者が皮肉な物だが、
あの蛇の好きにさせたら森だって腐り落ちるだろうからな
聡明なあいつなら、十分理解して力を貸してくれるさ
ゴドリックの豪快な槍捌きは圧巻だろうが、
蛇がそっちにばかり気を取られているようなら……
そら!私自身の【槍投げ】で蛇を【串刺し】だ
●偽りの楽園へ
かかし達の喝采が、不意に止んだ。中御門・千歳(死際の死霊術士・f12285)がかざした手に、気付いたからだ。
「こいつが事件の黒幕かい」
「アレが元凶?」
千歳の言葉に、訝しげに呟いたのはシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)だ。
ミシミシ、と目の前に一本の木が生えていく。それは瞬く間に見上げるほど大きくなるとリンゴを実らせ、ここが定位置と言わんばかりに白蛇が木に巻き付いた。
そんな二人のやり取りに、白蛇はシュルリと舌を覗かせて笑う。
『おやおや、ニンゲンによく似たかかしだね』
「あなたがあのオウガ達の親玉ね! あなたの思い通りになんて、させないんだから! あなたが出会うアリスは……この場に居る私達で最後よ!」
『――へぇ』
ヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)の言葉に、白蛇は目を細める。そこにあったのは、興味と歓喜だ。そして、それを混ぜ合わせているのは、おぞましい悪意であった。
「あの白蛇が此度の黒幕、か蛇と林檎……どこかでそのような物語を聞いた覚えはある、が、よく思い出せない……林檎を食べたらいけない、という内容だった気はする」
月隠・望月(天賦の環・f04188)は、そう一人呟き記憶を掘り起こす。それはとある世界では、もっとも有名なエピソードの一つだ。望月の出身地であるサムライエンパイアでは、馴染みは薄いが。
「……貴様らオウガは沢山の物を奪ってきた。アリスからも、わたしからも。これ以上はやらせない、新たなアサイラムなど作らせない。今此処で、貴様を討つ!」
フェアー・ウェルフェア(とまったとけいはうごかない・f20053)から向けられた強い視線に、白蛇はため息をこぼす。ひどくニンゲンに似た、わざとらしい仕草で。
『ああ、面倒だね。本当に面倒だ……そういうのは、ボクのキャラじゃないんだよ?』
そう否定しながらも、歓喜を隠しきれない。そういう怨嗟や恩讐を飲み込むのを、楽しみにしているという下卑た笑みがその表情にはあった。
「面倒だ面倒だと、勿体ねえコト言ってますわな」
ザッ、とすり足で地面をすって構え、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は金色の瞳を強く輝かせる。
「手間暇惜しまず周到に仕込んで掛かるのが『狩り』の本懐ってなモンでしょうわ?」
『ボクは、頭脳担当だからね――』
シュルリ、と白蛇は木からその身を伸ばす。しゅるり、と舌を見せて、口の端を持ち上げた。
『とはいえ、戦えない訳じゃないよ?』
白蛇、堕落を囁く蛇は己の名にふさわしく、堕落へ誘う蛇の甘言を吐いた。
『殺しにおいでよ? ボクを殺して、この麦畑の国を守るんだろう? そうやって、力に力で返すのは、実に野性的で自然の摂理として正しいよ』
憎悪と嫌悪のままに、殺しに来なよ――そう、堕落を囁く蛇は牙を剥いた。
●何をもって、堕落と呼ぶのか
予備動作のない、まさに不意打ちとも言うべき一撃。ゴォ! と唸りを上げて迫る白蛇へ、望月は数瞬早く動いていた。
「あの蛇のユーベルコードはどれも厄介」
だから仕掛けられる前に消耗させる――その決意をしていたからこそ、望月は反応できる。指先で引き抜いた棒手裏剣、暗器を投擲。白蛇は反射的に目を瞑り、その硬い瞼で間一髪暗器を弾けた。
しかし、攻撃の勢いは確実の削がれた。
「ぎゃう、ぎゃう!」
「気になるか? グウェン。だが生憎、友達になれるようなタイプじゃあ無さそうだ」
仔竜グウェンが反応するのに、アストレア・ゼノ(眩き槍の騎士・f01276)が答える。明確な殺意と敵意と持って迫る牙へ、アストレアはグウェンを槍に変えて振りかぶった。
「始めようか、ゴドリック」
アストレアの召喚に、武装ゴリラのゴドリックが豪快に槍を薙ぎ払った。その巨躯にふさわしい巨大な槍は、堕落へ誘う蛇の横顔を殴打する! その剛力に大きく白蛇がのけぞった、瞬間だ。
「上だ!」
フェアーの声に、仲間達は頭上から迫る尾に気づく。牙は囮だ、意識を集中させ本命の尾が頭上から迫った。
「疑念など感じない。この力は奴らを、オウガを屠る為だけにあるのだから……! 想像を創造へ、『アリスナイト・イマジネイション』!」
想像するのは軽く、強く、藤色に煌めく鎧――鎧を創造したフェアーが、秒針槍を腰溜めに構え突進。尾を秒針の切っ先で迎撃し、その軌道を逸した。
『チィ!!』
舌打ちした堕落へ誘う蛇は、即座にフェアーに頭突きを放つ。横合いからの体当たりに、フェアーは大きく飛ばされ地面に着地した。
『そんなに欲張らなくても、欲しければあげるのに――』
「――やはり、ソレが鍵か」
『…………』
堕落へ誘う蛇の言葉を遮り、フェアーは断言する。白蛇は否定も肯定もしない――だが、沈黙こそが答えだ。フェアーがランスチャージで狙ったのは、本体ではなく木に実ったリンゴだった。こちらの攻撃に意を介さなかった白蛇が、リンゴには即座に対応した……その反応で、十分だ。
『ああ、やだやだ。敏いアリスは面倒だ。やっぱり、アリスは無知で愚鈍で純粋で――無垢なのがいいなぁ、美味しいし』
ちろり、と舌を踊らせて恍惚の声を漏らす白蛇に、ヴェルは嫌悪の表情を向ける。
「あなたは、どこまで……!」
『遊んだ後は美味しくいただく。むしろ、行儀がいいと言ってほしいね』
アリスナイト・イマジネイションによって鎧をまとったヴェルが、青い魔力弾を放っていく。白い鱗でその魔力弾を受けながら、白蛇が尾を薙ぎ払った。ヴォ! と鈍い風切り音だけでも、その威力が伺える――それを飛び越え、物九郎が茶斑の三毛を繰り出した。
『何、それ? うっとおしいなぁ』
「そのためにッスからね!」
モザイク状の空間から取り出した巨大な鍵を、物九郎は怪力のままに振り回す。敢えてそれを体で受け止めた白蛇に、下駄を鳴らして物九郎は疾走していった。
「侘助! 三枚に下ろしておやり!」
千歳の召喚に応じたのは、髑髏顔の鎧武者・侘助と鋼で出来た大百足・錆丸だ。小首を傾げたのは、シュデラだ。
「婆さん……アレ、三枚にしても不味そうじゃない?」
「そりゃあ物の例えだよ、食えないってのはそうだけど」
「ア、そうか例えか」
そのやり取りの間にも、軋む音を立てて錆丸と白蛇が激突する。絡み合い、互いに牙を突き立て合う白と錆に、シュデラは感心したように呟いた。
「錆丸君似てるね長いの的に。攻撃は侘助君だよね? うん解った」
シュデラはCenerentolaを、素早く抜き引き金を引く。放たれた硝子細工の銃弾は、動く錆丸を避けて、正確に堕落へ誘う蛇を穿った。
その間に、足音を響かせながら侘助とゴドリックが迫る。まさに怪獣大決戦という、凄まじい光景が繰り広げられた。
●オウガを討つモノ――
堕落へ誘う蛇が、その尾を大きく薙ぎ払う。刈り取り寸前まで育った麦畑を、無残に破壊しようとした尾の一撃を、望月は無銘刀を振るった衝撃波で弾いた。
「させるとでも?」
『守るものが多くて大変だねぇ、窮屈じゃないのかい?』
嘲笑う堕落へ誘う蛇に、望月は答えない。答える必要もない――麦畑の国を、かかし達を守るためにここに来たのだ。ならば、命を守るだけで終わらせない。それが猟兵の戦い方というものだ。
「ウホウホ!」
『うるさいなぁ! もう!!』
槍を手に勇敢に巨大な白蛇と戦うゴドリックの姿に、アストレアは笑みをこぼす。
「あの蛇の好きにさせたら森だって腐り落ちるだろうから、聡明なあいつなら、十分理解して力を貸してくれる……そう思ったけどな」
森の勇者、そう呼ぶのにふさわしい戦い振りだった。武装ゴリラ自身も、どこか理解しているのかもしれない――コレは駄目だ、コレは違う、と。
森で生き、森で死ぬ自然の生き物。堕落へ誘う蛇は、それに当てはまらない。その在り方自体が、自然と反していると言ってもいい。
何故なら、堕落する者とは楽園という名の森から追われた者を指すからだ。コレは堕落させ、森から命を追放するモノだ。森の勇者であるのなら、決して許してはいけない悪なのだ。
『ああ、ああ、もう!! どうして、こうも目障りなんだろうね――!!』
堕落へ誘う蛇が大口を開き、茶斑の三毛を飲み込んだ。丸呑み、蛇にふさわしい食べ方だ。しかし、堕落へ誘う蛇は金色の目を見開き、戦いた。
『この、味は……!?』
血の味がする、その味に白蛇は物九郎を見た。物九郎のしてやったりという笑みに、白蛇が叫ぶ!
『や、め――!!』
「どうですよ? コレが獲物をハメる為なら手間暇惜しまねえ狩りの作法っスよ」
物九郎のブラッド・ガイストが発動、腹の中で封印を解かれて化け猫となった三毛が暴れる。のたうち苦しむ白蛇へ、ゴドリックがその槍を振り下ろす!
『ぐ、が、あああああああああああああああああああああああああ!!』
苦しみの声を上げながら、白蛇はのたうちゴドリックの一撃をかわす――しかし、そこへアストレアが続いた。
「そら!」
投擲された竜槍グウェンが、木ごと白蛇を貫く。そのアストレアの一投に、木がビキリと軋みを上げて亀裂が走った。
『ちょ、待った、待った! ボクの話を――』
「聞くとでも?」
誘う隙など、与えない――フェアーの秒針槍が枝ごとリンゴを切り落とした。地面に転がる禁断の果実に、白蛇が吐き捨てる。
『どうして、そういうもったいない事が出来るかなぁ!?』
「もったいない? 毒にしかならないものを処理しただけだ」
フェアーの冷え切った返答に続き、ヴェルが駆け込んだ。スペリオル・マグナの白銀の軌跡を一直線に描き、白蛇を刺し貫いた。
「今だよ!」
ヴェルの声に応え、そこに駆け込んだのは望月だ。疾走する勢いを活かし、無銘刀を横一閃に振り払った。
「終わりだ」
ずるり、と白蛇の巨体がずれる。望月の横薙ぎの一撃が、太い胴を木ごと切り捨てたのだ。白蛇の巨体が、地面に転がり――しかし、分かたれた白蛇の頭と尻尾が同時に動く!
『まぁ、だ、だあああああああああああああああああああああ!!』
尾をヴェルが振り返り際に青い魔力弾で、撃ち落とす。頭はそれをかいくぐり千歳へと――しかし、その牙はとぐろを巻いて壁となった錆丸に受け止められた。
「あんたの牙じゃ、錆丸の鋼の装甲は貫けないよ――シュデラ、今だよっ!」
「OK、婆さん有難う」
自身から抜いた羽根を代償にAschenputtelを硝子の羽根を飾るブラスター兵器に変化させ、シュデラは撃ち放った。渾身のレーザーが、白蛇の額を撃ち抜く!
『あ、あ……わ、かさ、とかどう? おばあ、さ、ん……?』
なおも誘惑し、生き永らえようとする堕落へ誘う蛇に、千歳は鼻で笑った。
「堕落への誘い、ねぇ。もっと欲望渦巻く若い奴におやり! こちとら枯れ尽くしててね、今更堕落も何もないのさ!」
「え? 婆さん冗談言わないでよ。今でも大暴れして……は式神君達か。でもまだイケると思うけどなァ」
シュデラの言葉を、千歳は無視する。千歳の意志に侘助の刃が外から、物九郎に応えて化け猫の三毛が内側から――ついに、堕落へ誘う蛇を終わらせた……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 日常
『不思議の森の探険隊』
|
POW : ずんずんと
SPD : そそくさと
WIZ : ゆっくりと
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●不思議の森の探険隊
ついに、オウガ達が倒れた。その事に、かかし達は大いに喜んだ。
「いや、助かっただよ。オレらだけじゃ、どうなってたか……」
はふ、とため息をこぼすとかかしはふと思い出したように言う。
「あの森から、連中は来たべ? もう大丈夫だと思いたいけど、何があるんだろ?」
かかしの言葉には、純粋な疑問がある。この麦畑の国は、いまだ七割以上が森のままなのだ――どれだけ不思議の森が広いかを物語る話だ。
「うーん、オレら、あんまり興味なかったんだけんども」
「森の中、何があるんだろな?」
森にまだ、危険が潜んでいるとは限らない。あるいは、まだ誰も目にした事のないお宝や絶景がそこにあるかもしれない――まさに、可能性の眠っている森だった。
「もし興味があんなら、探検でもしてみるといいだ。アンタ達なら、大歓迎だべ」
危機を助けられたからこそ、かかし達からの信頼は厚い。興味があるなら、不思議の森探検をしてみるのもよいだろう……。
ヴェル・フィオーネ
■探検
こうして私達は、不思議の森を探検するのであった……
なーんてねっ?ふふっ、オウガも居なくなって安心して探検できるのはいいわね!
でも、結構歩いたとは思うんだけどまだまだこの森は深そう……
ん、んん?
開けた所に出たと思ったら……宝石のお花が咲いている?
陽射しと流れている川の照り返しで、キラキラ輝いて綺麗……
でも、不思議でとても素敵な光景よね
●不思議な森の中へ
「こうして私達は、不思議の森を探検するのであった……なーんてねっ? ふふっ、オウガも居なくなって安心して探検できるのはいいわね!」
不思議な森を歩きながら、ヴェル・フィオーネ(ウィザード・オブ・アリスナイト・f19378)は笑みをこぼす。豊かに繁る木々、そこから漏れる木漏れ日は眩しく温かい。暑くもなく、涼しくもない穏やかな空気の中、ヴェルは柔らかな土の上を歩いていった。
生き物がいない、それを抜かせば理想的な環境の森と言えた。ただ、目を凝らせばその木々に繁る葉がきらめく宝石のようであったり、地に敷き詰められた落葉も羽毛のようだったり、やはり自然の森とは一線を画すものだったが。
「でも、結構歩いたとは思うんだけどまだまだこの森は深そう……ん、んん?」
ヴェルが、不意に視界に入った輝きにそちらの方へ向かう。木々をかき分け踏み入った先にあったのは、宝石の花園だった。
「わわ……!」
幻想的、と呼ぶしか無い光景だった。ダイヤモンドやサファイア、ルビー、エメラルドにアメシスト――その宝石の色を活かした万色の花園が、陽射しと流れている川の照り返しで輝いていた。
「キラキラ輝いて綺麗……」
ヴェルが吐息と共に、そうこぼす。こんな光景を目にする機会は、世界を渡り歩く猟兵でもそうはないだろう。
「でも、不思議でとても素敵な光景よね」
そう口元を綻ばせ、ヴェルは川沿いに歩き始める。川から吹く心地の良い風に揺れる宝石の花園を、ヴェルは心ゆくまで堪能した……。
大成功
🔵🔵🔵
フェアー・ウェルフェア
【SPD】
……ふぅ、終わったわね。
こちらこそ助かったわ、かかしの皆のお陰で上手く戦えたんだもの。ありがとうね!
それにしても、不思議の森……相当広いのね。
危険なのか、安全なのかも行ってみない事には分からない、か。
皆も良いと言ってくれてるのだし、探検してみようかしら?
日が暮れる前には戻って来たいし、そそくさと進んで行きましょう。
進んだ先に見つけたのは……一面の、花畑。
風に揺れる色とりどりの花々、鼻腔をくすぐる花の香り。
いい場所、見つけちゃった。
"あの子"と来られれば良かったのに……そんな考えが、頭をよぎる位に素敵な場所。
……少しだけ、花を摘んでから帰りましょう。
わたしの分と、あの子の分を。
●"あの子"の追憶と共に
フェアー・ウェルフェア(とまったとけいはうごかない・f20053)は、呼吸を整えながら呟いた。
「……ふぅ、終わったわね」
「いや、助かっただよ。あんがとな!」
かかしからの礼を受け、フェアーは小さく首を横に振った。お互い様、そう思ったからだ。
「こちらこそ助かったわ、かかしの皆のお陰で上手く戦えたんだもの。ありがとうね!」
フェアーの笑顔に、かかし達も笑顔で返す。ふと、フェアーは森を振り返って呟いた。
「それにしても、不思議の森……相当広いのね。危険なのか、安全なのかも行ってみない事には分からない、か。皆も良いと言ってくれてるのだし、探検してみようかしら?」
「ま、オデ達にはあんま意味がないもんばっかだけんども、あんたらには役に立つもんもあっかもな」
かかし達は麦畑さえ作れれば、それでいいのだ。自分の役目に無垢とも言えるかかし達に、フェアーはクスリと笑って言った。
「日が暮れる前には戻って来ってくるわ」
「お! いってらっしゃいな!」
かかし達に見送られ、フェアーは不思議な森に踏み入る。足早にそそくさと進んで行くと、まるで導かれるようにそこへ行き着いた。
「いい場所、見つけちゃった」
たどり着いたのは、一面の花畑だった。この不思議な森に多い、宝石や何かで代用された植物ではない。鈴蘭や菜の花に似た、自然の花々だ。風に揺れる色とりどりの花々、鼻腔をくすぐる花の香りにフェアーは、どこか寂しげに微笑んだ。
――"あの子"と来られれば良かったのに……。
そんな考えが、頭をよぎる位に素敵な場所だった。
「……少しだけ、花を摘んでから帰りましょう」
自分の分とあの子の分、ほんの少しだけフェアーは花をもらって帰るのだった……。
大成功
🔵🔵🔵
中御門・千歳
シュデラ(f13408)と参加
さぁて、せっかくだから探検してみようかね
ただまぁ、この年じゃあハイキングもしんどいからね、召喚した錆丸に乗って移動しようかね
何なら一緒に乗るかい?シュデラ
別に遠慮するもんじゃないよ、この子らにとっちゃあたしらなんて軽いもんさね
なかなかファンタジーな雰囲気だねぇ
不思議な光景を堪能するよ
何だか美味そうな果実が成っているねぇ、ちょいとつまみ食いしてみようか
一口食べてみようかと思ったけどね、果実と思い切り“視線”が合っちまったよ
さすがに食べる気が無くなっちまったねぇ……
シュデラ食べるかい?
あぁあ、人面に気付かずに食っちまったよ(ぎょっとしている果実の表情を眺め)……南無
シュデラ・テノーフォン
千歳婆さん【f12285】同行
かかし君達和むなァ…
じゃ探検行ってくるね
え。錆丸君に乗っていいの?わァ楽しそうだ
有難う、じゃお邪魔しますかな
俺重くない?大丈夫?良かった
面白いなァこの目線、後楽ちんだ
そうだハーキマー、君も散歩する?
婆さん達に姿見せてあげな
何か面白いの見つけたら教えてね
ン?婆さんどうしたの、果実?
美味しそうだねコノ世界の味ってどんなのかな
俺も一つ食べよう頂きます…うん
不思議な味だけど悪くないなァ…うん?
どうしたの婆さん湿気た顔して
ハーキマー何か見つけた?
わァ硝子みたいにキラキラしてるねソレ
(内容お任せします)
お土産に持って行けるかな
かかし君達に森のこと話してから帰ろうか
●お供達と一緒に
「さぁて、せっかくだから探検してみようかね」
中御門・千歳(死際の死霊術士・f12285)の言葉に、コクリとシュデラ・テノーフォン(天狼パラフォニア・f13408)がうなずく。
「じゃ、探検行ってくるね」
「お! あんたらなら大丈夫だと思うんけど、気ィつけてな!」
かかし達はみんなで手を振って、千歳とシュデラを見送ってくれた。それだけでも童話的な心温まる光景だった。
「かかし君達和むなァ……」
大きく手を振り返すシュデラに、コキコキと首を鳴らしながら千歳は当然のように錆丸を召喚した。
「この年じゃあハイキングもしんどいからね。何なら一緒に乗るかい? シュデラ」
「え。錆丸君に乗っていいの? わァ楽しそうだ。有難う、じゃお邪魔しますかな」
シュデラは錆丸の上に乗ると、ふと巨大ムカデに問いかける。
「俺重くない? 大丈夫?」
シュデラの問いに返ってくるのは、ユラユラという左右への小さな揺れだ。千歳が、そんな錆丸の心情を代弁した。
「別に遠慮するもんじゃないよ、この子らにとっちゃあたしらなんて軽いもんさね」
「良かった」
錆丸が、這って動き出す。ただ、サイズがサイズだ。普通に歩く彼等の視線よりも随分と高い。
「面白いなァこの目線、後楽ちんだ」
シュデラは、ふと思い出したように傍らに呼びかける。
「そうだハーキマー、君も散歩する? 婆さん達に姿見せてあげな」
「へえ」
ふと、錆丸の横に現われたハーキマー――シュデラと許可した者のみ見える透明有翼狼に、千歳が感嘆の声を上げる。見上げてくるハーキマーと視線を合わせ、シュデラが言った。
「何か面白いの見つけたら教えてね」
うなずきを返すハーキマーが、周囲に視線を走らせる。その視線の動きを追って、千歳もしみじみと言った。
「なかなかファンタジーな雰囲気だねぇ」
宝石箱をひっくり返したような万色の森に、千歳はふと自分の傍らに実っていた梨に似た果実に手を伸ばした。
「何だか美味そうな果実が成っているねぇ、ちょいとつまみ食いして……みよう、か……」
言葉の途中で、千歳は気づく。気付いてしまう。やぁ! と言いたげにいい笑顔の人面が、その果実についている事を。否が応でも視線と視線が合う、合ってしまった。
「さすがに食べる気が無くなっちまったねぇ……シュデラ食べるかい?」
「ン? 婆さんどうしたの、果実? 美味しそうだねコノ世界の味ってどんなのかな。俺も一つ食べよう。頂きます……うん」
シャリ、とシュデラがひとかじりすると口の中にただ甘い味が広がった。デザートや甘い料理に使うのにはいいだろう、食感はどこか焼き砂糖菓子に似てサクサク感があった。
「不思議な味だけど悪くないなァ……うん? どうしたの婆さん湿気た顔して」
「あ、いや……何でもないよ、うん」
果実についた顔は、ドッキリに失敗したお笑い芸人のようなギョっとした絶望顔をしていた。やはり、視線が合う。千歳はそっと、手を合わせた。
「……南無」
「ん? ハーキマー何か見つけた?」
そんな千歳に気づかず、シュデラはハーキマーが咥えて持ってきた物を見た。
「わァ硝子みたいにキラキラしてるねソレ」
おそらくは、花なのだろう。ただ、花弁の部分が透明で、複雑に絡み合っている。風を受けるとクルクルと回るらしく、ハーキマーが咥えて疾走すると風鈴のような澄んだ音をさせて回転した。気に入ったのだろうか、ハーキマーがシュデラに差し出した。
「お土産に持って行けるかな」
ふっと息を吹けば、ちりんと音を立てて花弁が回転する。透明な風車のような花を手に、シュデラは笑った。
この後、不思議な森を堪能した彼等は土産話をかかし達に話した。一晩宿を借りて、夜更けまで話題は弾むのであった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月隠・望月
これで一件落着、だね。よかった。
何が潜んでいるかわからない森、か。危険なものが眠っていないか調査した方がよさそう。
森に入り、変わった植物や鉱石を探そう。例えば、魔力や霊力を内包しているものとか、ね。物品でなくても、力を持った場所などがあったら確認しよう。
何か見つけたら、かかしたちに報告。
そういえば、ツバメ型のまるいオウガと戦っていたとき、かかしたちが霊力の障壁に興味を持っていた、ね。よければかかしたちに陰陽呪符を少しわけよう。ちょっとした御守りのようなものだ、が、好きに使って欲しい。
その代わりというわけではないが、森で見つけたものを少し譲ってもらいたい。呪術の媒体に使えないか、試したい、から
白斑・物九郎
●POW
折角ですしな
ちょい見に行くくらいなら付き合ってやってもいっスよ
・【野生の勘】で東西南北と「なんかありそうな方角」とをアタリ付けながら森の中を適当に進んでいく
・ドローン「茶斑の三毛」を適当に先行させてみたり、周辺上空を旋回させて鳥瞰させたりもして(撮影+情報収集)
▼道中、カカシ達に
にしてもおたくら、警戒心無さ過ぎっスよ
のっけから俺めの言うコトをまるっと信じましてからに
あの蛇、どうも悪知恵が働くヤツみたいじゃニャーですか
もしも俺めがあの蛇の差し金だったりしたらどうするんですよ?
……ま、イイですわ
今後この界隈に落っこちて来るアリスが出たりした日にゃ、その調子で呑気に優しくしてやるコトですわな
●不思議な森の謎
「これで一件落着、だね。よかった」
月隠・望月(天賦の環・f04188)は、一件落着した事を素直に喜んだ。そして、不思議な森を見て呟く。
「何が潜んでいるかわからない森、か。危険なものが眠っていないか調査した方がよさそう」
「折角ですしな。ちょい見に行くくらいなら付き合ってやってもいっスよ」
そう言って同行したのは、白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)だ。物九郎は野生の勘であたりをつけて方向を選ぶと、茶斑の三毛を呼び出した。その三毛猫型ドローンを取り囲み、かかし達は興味津々だった。
「行ってくるね」
「気ィつけるだよ!」
望月と物九郎は、共に不思議の森を進んでいく。先行する茶斑の三毛に上空から撮影させ、地形を把握しているとふと物九郎が表情を変えた。
「どうかした?」
「いや、これは何ですかねぇ」
そう言って物九郎が指さしたのは、明らかに不自然な物だった。その足で行ってみれば、何が不自然なのかすぐに見て取れた。
「こいつぁ、確か――」
「環状列石ね」
物九郎の言葉を継ぐように、望月が呟く。ストーンサークル、そう言った方が聞こえは良いだろう。感じた不自然さの正体に、物九郎が唸った。
「これ、人工物っすよね?」
そう、こここそが唯一と言っていいこの不思議な森で自然に出来た場所ではないのだ。望月も、そのストーンサークルに秘められた魔力に息を呑んだ。
これは間違いなく、正しい魔術や呪術の知識を持つ者が施したものだ。そして、おそらくは森の中心であり――この不思議な森の誕生に、何か関係がある……のかもしれない。やはり、判断を下すのには情報が少ないのだが。
「これ、かかし達に報告しよう」
「そうっすね」
これがあの堕落へ誘う蛇の目的だった可能性もある、二人はかかし達へストーンサークルの存在を伝えておく事にした。
「んだか、んなもん、知らねぇだな」
かかし達からすれば、まさに寝耳に水という風だった。彼等もここへの移住者、きっと前に住んでいた者の手による物なのだろう。
「そういえば、ツバメ型のまるいオウガと戦っていたとき、霊力の障壁に興味を持っていた、ね。ちょっとした御守りのようなものだ、が、好きに使って欲しい」
「お、いいんだか!? ありがたいべ!」
かかし達は渡された陰陽呪符に、はしゃいだようだった。これで害獣がでたら助かるだ、と喜ぶ彼等に望月はストーンサークルのところで拾った力の宿った石を見せて言った。
「その代わりというわけではないが、森で見つけたものを少し譲ってもらいたい。呪術の媒体に使えないか、試したい、から」
おそらく、何かの呪具や新たな呪術のきっかけになる。望月には、その強い予感があった。
「いいだよ、いいだよ! どんどん持ってってくんろ!」
はしゃぐかかし達の姿に、呆れたように物九郎が言う。
「にしてもおたくら、警戒心無さ過ぎっスよ。のっけから俺めの言うコトをまるっと信じましてからに。あの蛇、どうも悪知恵が働くヤツみたいじゃニャーですか。もしも俺めがあの蛇の差し金だったりしたらどうするんですよ?」
「え? そうだったんだべか?」
「…………」
からかいの苦言もあっさりと返され、物九郎は苦笑と共に肩をすくめた。無垢というのは、時として怖いものだ……そう思わずには、いられなかった
「……ま、イイですわ。今後この界隈に落っこちて来るアリスが出たりした日にゃ、その調子で呑気に優しくしてやるコトですわな」
「んだんだ、お客さんはいつでも歓迎だべ!」
かかし達は、笑顔で請け負う。ただ、物九郎はそれを安請け合いとは思えなかった……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロン・テスタメント
・ロイド(f01586)と一緒!
【WIZ】
「ふふ、探検って楽しみです!」
わくわくしながらロイドさんと探検!
「だって、私よりもお母さんの方が楽しみ過ぎて、こう……」
子供の様にはしゃぐ母親を思い浮かべる
「い、いいの……?」
父親に似た人という別人なのに、時折見せる優しさは同じだから一緒にいたい
「今日だけ、お父さん呼びですからね!」
不思議の森、て名前なんだから何か不思議なモノと出会いそうです!
「よし!食べれる物と食べれない物から!」
キノコは危険なので、木の実位なら酸っぱいとか苦い位で大丈夫なハズです
狼『(腹、壊すなよ)』
「……こ、壊しません! 多分……」
とりあえずみつけたのを食べてみる。
ロイド・テスタメント
・ロン(f01586)と一緒に
【WIZ】
「おや、探検にはいかなかったですか?」
ロンの表情から何か察して、不思議の森を一緒に探索する事へ
「なら、今はロンが探検先を決めて下さい」
義父と世話係が自身にしてくれていた優しさを思い出す
「構いません。甘えるのも子供の仕事です」
ロンに手を引かれて探検へ向かいましょう
「変な物だけは口に……」
木の実を食べている姿を見て思わず笑う
「美味しいですか? ロン。何かあれば薬と水はありますから」
丈夫が取り柄であっても、お腹壊したりしたら大変ですからね。
主に私の義父が……
●“親子”
「おや、探検にはいかなかったですか?」」
ロイド・テスタメント(全てを無に帰す暗殺者・f01586)の言葉に、ロン・テスタメント(幸福をもたらす龍・f16065)が振り返る。
「だって、私よりもお母さんの方が楽しみ過ぎて、こう……」
子供の様にはしゃぐ母親を思い浮かべるロンの表情に、ロイドが小さく微笑む。ロン自身も楽しみにしていたのだろう、その事を察してロイドから切り出した。
「なら、今はロンが探検先を決めて下さい」
それは、義父と世話係が自身にしてくれていた優しさの模倣だ。しかし、子供が大人になるという事はそういう事なのかもしれない。ロンはロイドの提案に、少し戸惑ったように言った。
「い、いいの……?」
「構いません。甘えるのも子供の仕事です」
ロイドも、そう当然の事のように受け入れてくれる。父親に似た人、別人だと言う事はわかっていた。だが、時折見せる優しさは同じだからこそ……一緒にいたい、ロンはそう思ってしまう。
「今日だけ、お父さん呼びですからね!」
そう言って、ロンはロイドの手を引いて不思議な森を歩き出す。色とりどりな森の中を、左右に視線を巡るロンを見て、ロイドは密かに微笑む。自分の幼い時も、こうだったのだろうか――などと。
「よし! 食べれる物と食べれない物から!」
キノコは危険だ、毒があるかもしれない。ロンの知識では、毒がどうこうなど判別がつく訳がない不思議な場所なのだ。
だから、一つなっているルビー色に輝く野いちごを食べてみた。
「……甘い」
「変な物だけは口に……」
ロイドの注意は、言葉の途中で途切れてしまう。口元を綻ばせ、甘さを堪能するロンの年相応の笑顔が微笑ましかったからだ。
(『腹、壊すなよ』)
「……こ、壊しません! 多分……」
自分の内側からからかってくる狼の声に、ロンは強く否定できない。果実はどれもこれも甘く、それでいて同じ甘さは一つとしてなかった。サクサクと、時にシットリと、口当たりも種類があって飽きが来ない。
なるほど、確かに不思議な森だ。その味覚を堪能するロンに、ロイドは笑って言った。
「美味しいですか? ロン。何かあれば薬と水はありますから。丈夫が取り柄であっても、お腹壊したりしたら大変ですからね」
主に私の義父が……という言葉は、ロイドは飲み込んだ。
「大丈夫です! お父さんも、どうです?」
「そうですね、ではこれを」
ロイドは、そういって青リンゴに似たサファイアのような果実を一口食べる。しゃくりとした食感から、じんわりと優しい甘さが口に広がっていく。
「これも美味しいですよ!」
そう言ってロンが別の果実を手渡してくるのに、ロイドは気付いた。どうやら自分が、美味しいという表情をしていたようだ、と。
「いただきます」
「はい!」
奇妙な関係の“親子”は、そう笑みと共に笑いあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アストレア・ゼノ
◆SPD/アドリブ歓迎
ジャムに出来るような果物でも見付けられたら
かかし達も喜ぶかと思ったんだが
見付けたのは宝石のような見た目の果物だ
ルビーの林檎にエメラルドの梨、アメジストの葡萄なんかが
ひとつの大きな樹の枝にじゃらじゃらとぶら下がっている
齧りついてみれば少しじゃりっとした食感ではあるが、
確かに果物の味がするから不思議な物だ
アックス&ウィザーズの食べ慣れた物に比べれば
砂糖漬けかってくらいに甘いが、
そういう所もこの世界らしさという物なんだろう、多分
脆過ぎて宝石としての価値は無いだろうが、
ジャムにして瓶に詰めれば
中々洒落た物が出来上がるかもしれないな
アテナ・アイリス
ひっとしたら、ここなら見つかるかもしれないわね。
森にはいって、薬草や薬の元となりそうな材料を探し回る。今まで見たことが無い材料が見つかるはずよ。
クレリックの知識と、【医術】、UC【アテナの手料理】、「シークレットレシピ」をつかって、材料となりそうなものを調べる。
あの人の病気を治すために、薬草粥か、薬が作れるといいんだけど。
「未調査の森であればひょっとしたら、見つかるかもしれないわね。」
「(木に登って)これは、使えるかしらね。」
「もっと、奥に行ってみましょう。」
「よし、これだけあればなんとかなるかな。」
アドリブ・連携好きです。
●食材の宝石箱
「未調査の森であればひょっとしたら、見つかるかもしれないわね」
アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)は、真剣な表情で森の中に視線を向けた。
――ひっとしたら、ここなら見つかるかもしれないわね。
アテナが探しているのは、薬草や薬の元となりそうな材料だ。
「ここでなら、今まで見たことが無い材料が見つかるはずよ」
アテナがそう意気込むのには、理由がある。
――あの人の病気を治すために、薬草粥か、薬が作れるといいんだけど。
アテナはそう考えながら、不思議な森を探索していく。目にも鮮やかな森は、様々な植物の宝庫だ。試しに木に登ってみると、アテナは手慣れた動きでピジョンブラッドのような柘榴に似た果実をもぎりとった。
「これは、使えるかしらね」
手触り自体、宝石と似ているが力を込めると砕けてしまいそうだ。歯が立つ、という事は硬度も強度も当然その程度という事なのだが。
「おお、それを私にも一つもらえるか?」
「あれ?」
木の下から声をかけられ、アテナはふと視線を落とす。そこにいたのは、既にいくつもの果実を集めていたアストレア・ゼノ(眩き槍の騎士・f01276)だ。
「ええ、構わないわ」
そういって、いくつかの果実を手にアテナは木から器用に降りていく。手渡されたピジョンブラッドの果実を手に、アストレアはふむとうなずいた。
「そっちのそれは?」
「ジャムに出来るような果物でも見付けられたら、かかし達も喜ぶかと思ったんだが――」
アストレアの手にあったのは、ルビーの林檎にエメラルドの梨、アメジストの葡萄などだ。アストレアは、これを見つけた時の事を思い出して語る。
「いや、これがひとつの大きな樹の枝にじゃらじゃらとぶら下がっていてな?」
「……節操ないわね」
アテナがそう思うのも、仕方がない。それこそ、まるで果物屋のような木だった。
「齧りついてみれば少しじゃりっとした食感ではあるが、確かに果物の味がするから不思議な物だ」
アストレアの声色には、いっそ感心した響きがある。さすがは不思議な国、こちらの常識を打ち砕きにきてくれる。
「アックス&ウィザーズの食べ慣れた物に比べれば砂糖漬けかってくらいに甘いが、そういう所もこの世界らしさという物なんだろう、多分」
アストレアは、果実を握る手に少し力を込めてみた。パキ、と軋む音がすぐにする。ここの果実は、どこか焼き菓子のような食感と感触が特徴らしい。
「脆過ぎて宝石としての価値は無いだろうが、ジャムにして瓶に詰めれば中々洒落た物が出来上がるかもしれないな」
「そうね。薬草の方もいくつか見つけたけど……」
アテナは、しまっていた薬草をアストレアに見せる。サファイアに似た緑で、苦味はない。これを使えば、子供にも優しい薬草粥が出来るだろう。
「興味深いな、ところも変われば食材も変わり、料理の形もまた変わるのだろう」
「ええ、本当に」
アストレアの感想に、アテナも同意した。そこまで語り終えると、ピジョンブラッドの果実を仕舞い、アストレアは切り出す。
「それで? どんな薬草を探している?」
「……え?」
「一つ分けてもらった分、私も手伝おう」
アストレアはそれ以上は言わない。このような森で薬草を探しているのだ、事情があるのだろう――そう気遣っただけの事だ。
だから、その気遣いにアテナは微笑んだ
「……ええ、お願いできる?」
「ああ、任せろ」
それからしばらくして、二人で集めた食材を前にアテナは言った。
「よし、これだけあればなんとかなるかな」
「かなり、集まったな」
アストレアの言う通り、一人で集めるよりも手早く効率的に集められただろう。シークレットレシピやクレリックの知識が通用していればいいのだけど、そう思いながらアテナはアストレアへ礼を言った。
「ありがとう、助かったわ」
「いや、お互い様だ」
アストレアからすれば、探している間にジャムの素材がまた増えたのだから手伝った甲斐があったというものだ。
――こうして、猟兵達は不思議な森の探索を終えた。アストレアのジャムはかかし達に好評になり、焼き立てのパンと共に楽しまれることになる。
そして、この事を記しておこう。かかし達は、猟兵達が調べてくれたこの森を完全に畑にする事なく、いくらか残す事に決めたという。それは恩人達への感謝の気持ちであり、農業とは自然と共にあるべきだという、彼等の心境の変化から来た決定だったと言う。
「だから、また来てくんろ!」
かかし達は、猟兵達を笑顔でそう見送った……。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵