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大空の鋼竜

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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 郊外。町から離れた森の中には一つの建物が立っていた。
 屋敷だ。巨大なその存在は、経年によって見た目に相応しい優美さをもはや有していなかったが、しかしそれは寂れ、廃墟となっているという意味ではない。
 朽ちた屋根も、剥がれた壁も、腐り落ちた床も、何もかもが修繕、補修された跡があるのだ。
 隣接する巨大プールに至っては、割れたタイルはもはや一枚も無く、金属張りとなっている。
 質実剛健。見る者に機能重視の印象を与える屋敷には今、数多くのトラックが集合していた。
「――早く屋敷に運べ! 今は我々しか知らないが、もはやあの町にヒーローは存在しない! 誰が町を掌握してもおかしくない状態だ!」
 屋敷の前に立った白衣姿と作業着姿の女二人は、部下たちに指示を出し、急ぎの動きで荷物をトラックに積み込ませている。
 荷物の中は何らかの薬品や金属など様々で、大凡尋常のそれではなかった。
「ヒーローの消失……。その事に他の勢力も気付けば、今の我々と同じ行動に出る……」
 作業着が零した言葉に隣から、だけど、と言葉が続く。
「そのことを知っているのは私達だけ。もし即応できたとしても、兵器の開発と製造を実現できて、それを既に行っていた我々姉妹は現状圧倒的に有利……。そういうことよね、竜胆姉様」
 白衣姿の方が、作業着の方へそう呼びかける。
「ああ、蛟」
 竜胆と呼ばれた作業着姿が頷く。
「貴様が研究し、我が製造する。その不断の流れであの町を掌握する。これはその第一歩だ」
「ええ……。私と姉様の連携に不可能は無いわ」
 それに、と蛟が手に持っていた端末機器を顔横まで掲げ、小首を傾げる。
「私達には、心強い“味方”がいるものね……」
 その言葉に竜胆は肩を竦める。
「幾度も改良を重ね、しかし所詮は過去の物と、そう忘れ去られた世界大戦時の傑作か……」
「“オブリビオン”。そう言われる過去の存在であることは分かっているけれど……」
「何でも良い。我々の目的のためなら、古今問わず利用するだけだ」
 嗚呼、と竜胆が吐息を一つ。
「もはや私たちの天下は目前だ……!」
 出発したトラックを見送りながら、二人の姉妹が微笑んだ。


 猟兵たちの拠点、グリモアベースに一つの声が聞こえる。
「皆さん、事件ですわっ」
 ベースに響くのは、グリモア猟兵であるフォルティナ・シエロによるものだ。
「現場である世界は、ヒーローズアース。そこで、ある町のヒーロー全てがオブリビオンに闇討ちされてしまいましたの……!」
 驚愕の感情を露わにした自分に気付いたのか、はっとし、表情を硬くする。
「猟兵の皆さんにはこの惨劇を防いでもらいたい……、と、そう言いたいところですが、もはやそれは既に起こっており、叶いませんわ……」
 ですので、とフォルティナは言葉を続ける。
「皆様にはヒーロー不在の町での、治安活動を行ってほしいんですの」
 身振り手振りを交えながら、彼女は集まった猟兵たちに言葉を送る。
「といっても、皆様に向かってもらう現場は町ではなく、その郊外。森の中に立つ屋敷ですわ」
「その屋敷が、町を襲撃するための兵器を研究・製造している秘密研究所だということが予知で解ったからですの」
 でもまぁ、ヒーローいないから随分大っぴらに活動してましたわねー、と言葉を漏らしながら。
「どうやら屋敷は二人の姉妹ヴィランが運営しており、研究所である地上階に妹、蛟が、生産工場である地下に姉である竜胆が、それぞれプラントの運営をしているようですわ」
「地下への道は存在しないため、皆様にはまず地上階である研究所からの潜入、突破をしてもらいます」
 そこで、フォルティナが指を三つ立てた。
「対侵入者用のトラップや兵器がゴロゴロしてる研究所は現地当局では手に負えませんわ……。力づくで突破するか、静かに潜入するか、それとも魔法等を利用するか……。方法は皆様にお任せしますわ」
 眉を立てた表情で猟兵を見回す。
「研究所の次は地下の生産工場……。そうして敵の活動を阻止していけば、治安が回復。すなわち、それは一つのことを意味しますわ」
 それは何か。
「“ヒーロー代行”を疎ましく思うモノ、つまりは闇討ち事件の犯人の炙り出しですの」
 指を立てた手は降ろさず、全て開き、光を生み出す。
 オレンジ色の光はグリモアだ。
「事件の現場近くまではグリモア猟兵である私の能力で、テレポートし、皆さんを召喚しますわ」
 猟兵たち一人ひとりの顔を確認しながら、フォルティナは言葉を続ける。
「そこから先は危険が予想される場所ですの。何があってもおかしくありませんわ。情報収集が済んでも用心してくださいまし」
 全員の顔を見渡すと、フォルティナは眉を立て、口角を上げた。
「皆さんならできますの! 私はそう信じていますわ!」


シミレ
 シミレと申します。TW6から初めてマスターをします。
 今OPで15作目です。ヒーローズアースは初めてです。
 不慣れなところもあると思いますがよろしくお願いいたします。

 ●目的
 ・ヒーローを闇討ちした犯人(オブリビオン)の撃破。
 ・ヒーロー不在の町のために治安維持活動。今回の場合は兵器開発をしている研究所兼工場の無力化。

 ●説明
 一章は冒険で、秘密研究所として運営されている屋敷内部を進入(or突入orその他、方法は自由です)してもらいます。侵入者排除の兵器やトラップが盛り沢山です。
 二章も冒険で、兵器製造工場となっている屋敷の地下を探索してもらいます。基本的な雰囲気や流れは一章と同じですが、一章程兵器やトラップはありません。
 三章はボス戦で、“黒龍”と戦ってもらいます。イラストの通り、随伴ドローン機などといった感じの攻撃をして来ると思います。

 ●他
 皆さんの活発な相談や、自由なプレイングを待ってます!!(←毎回これ言ってますが、私からは相談見れないです。ですので、なおのこと好き勝手に相談してください。勿論相談しなくても構いません!)
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第1章 冒険 『秘密研究所を暴け』

POW   :    正面突貫! 漢解除

SPD   :    ステルス! 隠密行動

WIZ   :    魔法かなんかで如何にかする

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 屋敷へ荷物を降ろし終えたトラックが立ち去る。
 それを見届けた竜胆と蛟が、配下の構成員達に撤収指示を出し、誰も彼もが屋敷へと引き上げていけば、もはや周囲に人の気配は無くなった。
「――――」
 転移を済ませた猟兵達を除いて、だ。
 猟兵達は屋敷を包む森の中を始めとして、様々な場所に己を配置していた。
 作戦が、始まる。
ハロ・シエラ
研究所に、ヴィラン。
危険な取り合わせですね。
私はこっそり潜入と言うのは苦手です。
高度な罠を解除する事もできません。
正面切って突入しましょう。
誰かが派手に注意を引けば、潜入する方も楽でしょうしね。

まず【第六感】で罠などを察知しながら敷地を進みます。
窓か何か、中が伺える所に辿り着ければ危険が少なそうな所を選び、ユーベルコードで斬って侵入しましょう。
屋敷の中の罠もやはり【第六感】と【激痛耐性】で対処しながら進みます。
兵器や障害物は【先制攻撃】を仕掛けて撃破していきたい所です。
特に走ったりはせず、じっくり障害に対処しながら進むべきでしょうね。
全て壊した後の方が落ち着いて地下への道も探せそうです。



 ●
 屋敷を包む森の中、そこにハロはいた。
 ……行きましたね……。
 トラックが自分のすぐ横の道を通り過ぎていくのを確認した後、茂る木立の影から己は姿を表す。
「…………」
 視線の先、数十メートルという位置にあるのは目的の屋敷だ。
「研究所にヴィラン……」
 思う。危険な取り合わせだ、と。そして同時に、止めねばと、そういう思いも得る。
 まずは何はともあれ屋敷に接近しなければ。しかし、密かに潜入するというのも自分は苦手だ。高度な罠を解除することも出来ない。
 ならばどうするか。
「正面切っての突入しかありませんね」
 そう言って、駆けた。
 立ち上る土煙も僅かに、腐葉の大地を蹴って前に進んでいく。
 ストライドは大きく、跳ねるような動きだ。
「…………」
 途中。一、二度木の幹を蹴って上方へ跳躍。枝を掴み、前進の勢いそのままに身を前に弾け飛ばす。
 あそこ、多分トラップありましたね……。
 あのまま進んでいたら警報かはたまた地雷か、何某かに引っかかっていただろう。確信や根拠というものを言葉にするのは難しいが、恐らく“アタリ”だ。
 夜と血の世界で暮らしてきた己にとって、悪意ある存在には目鼻が効くということだろうか。
「っと……」
 慌てて頭を下げて、木の根に身を寄せる。
「――――」
 ドローンだ。偵察の一体が頭上を通り過ぎていくのを、息を呑んで耐え、過ごす。
 過ごした。
「もはや屋敷は目前ですね……」
 身を起こし、帽子の鍔に手を当てながら、転がるように茂みの中から飛び出す。
 すぐに屋敷の壁に張り付き、周囲を確認。
 ……誰にも見られてないようですね。
 ならば重畳と、そんな気持ちで行動を再開する。壁に張り付いた姿勢を基本とし、屋敷の外周を回っていくのだ。
 そうして探すのは一つ。
 ……窓!
 あった。
 そこに張り付いて屋敷の内部を確認すれば、偶然にも無人だ。
「ならば……!」
 己は右腕を高速で振るった
「――――」
 疾く、駆け抜けたような音が鳴り止む頃には、振り抜いた短剣が収められている。
「…………」
 窓に手をかけようとしたところ、触れずとも窓が開く。鍵の部分をユーベルコードで両断したのだ。
 両立てのすべり出し窓を潜り、屋敷の床に着地する。
「ふぅ……」
 一息をついた直後、音が聞こえた。
「――――」
 規則的な感覚の音は硬質で、無機質だ。己の左手側、そこにある曲がり角の向こうから、こちらへ近づいてくる。
 己はすぐさま壁に張り付き、細剣を構える。
 ……今!
「ッ……!」
 鋭く吐いた呼気と共に細剣を突き込めば、角を曲がってきた自立駆動のロボット兵器が中央を貫かれ、活動を停止する。
「!?」
 共に哨戒していたのか、隣にいたもう一機のロボットが奇襲に対し、急ぎの動きでこちらに小銃を向けてくる。
 だが、
「遅い……!」
 もう片方の手で握っていた短剣を投じることで、己は敵の動きを制した。
「……!」
 回路が焼き切れる音が廊下に響いたが、それもすぐに別の音で上書きされる。
「――!!」
 高く、鋭く、そして短い音が連続したものは何か。
「警報……。……信号を発信されましたか」
 ロボットの残骸から武器を引き抜きながら、構え直す。
「――ん……」
 そこで己は気づく。屋敷の中、風の動きが変わったのだ。
 吹き、ぶつかり、散って、また集合していく風の動きは、長髪に染み込むようだ。
 直後、銃弾が来た。
「……!」
 連射だ。
 己は突風のように飛来する弾丸の群れを剣で弾き、一瞬の隙をついて近くの部屋に飛び込んで回避する。
「来ましたね……」
 敵は多数と、そう言える数だ。
「でもまあ、誰かが派手に注意を引けば、潜入する方も楽でしょう」
 部屋に逃げ込んだこちらを追撃しようと、入室してきたロボットを細剣で貫く。奥にいたもう一体ごと、だ。
「――それに」
 蹴り飛ばして剣を引き抜き、後退。
「――全て壊した後の方が、落ち着いて地下への道も探せそうです」
 屋敷の部屋から部屋へ移りながら、己は敵と撃滅していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
研究所に潜入とかワクワクするよね!拙者も大好きだ!

トラックで資材搬入してるならそれを利用しない手はないですぞ!
潜入と言えば、そうだね【段ボール
】だね
こいつに隠れて集積物に紛れちまえば内部に運んでくれるって訳よ

内部に入ってからはステルスアクションの始まりだ!
まずは警備所の制圧ですぞ!【忍び足】で移動しながら敵がいたら時に段ボールでやり過ごし、時に【暗殺】し、罠があれば【罠使い】として解除でござる

警備所を制圧したら防衛兵器群へ【ハッキング】してアクセス!
中枢から警戒されない程度に精度や動作を鈍らせて撹乱でござる
お膳立てしてやったんだから後から来た猟兵は当然突破出来るでござるよねェ?

アドリブ連携歓迎




「――おい、その荷物はここだ」
 屋敷の中。そこの一室に、四方が数十メートル程の部屋があった。部屋の内部には四方をはじめ、金属棚が林立するように等間隔で備え付けられ、様々な箱やコンテナが詰められていた。
 兵器開発・生産用の資材倉庫だった。
 警備の男の言葉に従い、何人かの作業員が先程トラックで運ばれてきた荷物を運び入れる。
「っ……。随分重いな、コレ……」
 一つの段ボール箱を抱えた作業員がそう漏らす。
「この頃は開発が本格化してきて、素材である重金属も薬品もひっきり無しに搬入されるからな……」
 段ボール箱の反対側を持ったもう一人が答え、共に運んでいく。
 行き先は入り口から離れた位置にある棚。その下段だ。
「ふぅ……。これで最後か」
「ああ。次の現場に向かうぞ」
 段ボール箱を設置し終えた二人が退出していく。それを確認し終えた警備兵が、最後に部屋を一瞥して、部屋を出て鍵をかけようとした瞬間、
「――ハァイ」
「ガッ……!?」
 背後から、警備兵の首に何かが巻き付いた。
 腕……!?
 警備兵がそれを認識したのと、意識が落ちるのは同時だった。


「…………」
 意識を失った警備兵を部屋に捨て置き、エドゥアルトは行動を開始した。
 上手くいくもんでござるなあ……。
 潜入方法のことだ。トラックの荷台に乗り込み、ユーベルコードを発動。段ボール箱に身を隠し、他の集積物に紛れ込めば、後は向こうが内部に運び入れてくれる。
「さて……」
 ドアノブに手をかけ、部屋の外を窺う。誰もいない。
「んじゃ、一丁始めるでござるよ」
 廊下を忍び足で進みながら、向かうは警備の要となる部屋、警備所だ。
 修繕したとはいえ古い屋敷だ。足音を立てないように静かに進み、
「――――」
 ユーベルコードを発動した。
 敵が来たのだ。
 曲がり角に映った影の数は二。それはすぐに角を曲がり、こちらが進んでいた廊下へ姿を表す。
 段ボール箱のスリットから様子を伺い、会話を聞く。
「ん……? 段ボール?」
「さっき運び込まれた荷物だろう。まぁ、直に誰かが場所を移すだろう」
 その言葉を最後に、足音が遠ざかっていく。
 十分な時間を待ってから、己は進行を再開する。段ボールを被ったままの中腰姿勢でだ。
 さっきの連中があっちから来たってことは、その方向が警備所でござろうか……。
 予想に従って進んでいけば、果たして警備兵の数が増えてきた。
「トラップの数も増えて来たでござるなあ……」
 足元。一見しては解らないが周囲より色味が変わった床のタイルを剥がし、中のスイッチを操作。
 そうすれば、目の前の空間を走っていた侵入者探知用の光線が、その姿を消す。
 もはや障害無き廊下を進めば、警備所は曲がり角の向こう側だ。
 そこまで来て、己は近くの壁を叩いた。
「……む?」
 すると、警備所の前に控えていた警備兵がこちらに近づいてくるので、己は段ボールを被って待機。
「よいしょ」
 警備兵が十分近づいてくれば、己は立ち上がる。
「ぐぁっ……!」
 兵士の後頭部を持っていた拳銃のグリップで殴打し、
「はーい。ちょっと借りるでござるよー」
 右手を持って扉まで引きずる。
 そうして、兵士の手で指紋認証を突破すると、そこにあるのはこの屋敷の警備を制御するための数多のコンピューターと、
「ん? どうした、さっき交代したば――」
 頭部を殴打されたことによって言葉を発せられなくなった当直兵士だ。
「はい邪魔ー。邪魔でござるよー。……で、えーっと……。……あれ……? あ、こっちか。アァー、あったあった」
 椅子に座っていた当直を床に放り投げ、自分のポケットからUSBメモリを取り出し、目の前のコンピューターに接続させる。
「――――」
「よーし、いい子でござるよ……」
 次の瞬間には様々なポップアップやウィンドウが画面に表示されるが、直にそれは無くなる。
「――ビンゴ! へっへっへっ……。これでここの兵器達はこっちのものでござるよ」
 といっても、好き放題弄るわけではない。敵に警戒されない程度に精度や動作を鈍らせるだけだ。
 でもまぁ、と言葉を漏らす。
「――お膳立てしてやったんだから、後から来た猟兵は当然突破出来るでござるよねェ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュバルツ・ウルリヒ
……またしてもヒーローが、希望が奪われたか。…だがまだ間に合う、…これ以上ヒーローを、街を、…絶望には落とさない。……僕は光にはなれない…だがそれでも絶望を切ることは出来る、…ブラックソードとして絶望を切らせて貰うぞ。

まずは【地縛鎖】を使い屋敷構造などの【情報収集】だ。収集を終えたら…奴等があまり使わない、入り口、もしくは部屋の窓から侵入する。そしたら再び【地縛鎖】を使って工場への入り口と屋敷内に監視カメラやトラップ等の配置を調べよう。そして全てが終わったら【魔剣解放】を使い隠れながら高速移動で工場へ行く。

…どんな物を作り、量産しているか知らないが……この町には不要だ。……切らせて貰うぞ。




 シュバルツが転移先に選んだのは森の中。枝上だ。
 ……またしてもヒーローが、希望が奪われたか。
 高所から大地を見下ろす己は黒の装束を身にまとい、そのフードが包む顔は鋼の仮面で覆われている。
 仮面に走る赤の光は視覚素子だ。その視覚素子で見つめる先にあるのはヴィランが支配する屋敷だ。
「……だがまだ間に合う」
 言葉を漏らすと同時に、梢を掴む手に力が入る。
「……これ以上ヒーローを、街を、……絶望には落とさない」
 思う。
 己は光にはなれない存在だ、と。
 だが、
「――それでも絶望を切ることは出来る」
 言葉と同時。右腕を振り下ろした。すると、右腕に巻きついてた銀鎖が弾け飛ぶようにその身を伸長し、大地に突き刺さる。
 次の瞬間。
「――――」
 鎖を伝って、様々な情報が己の脳内を駆け巡った。
 大地の状態、風の息吹、木々の葉音、それら自然の中に点在するように配置された罠や自立兵器、そして全ての中央に鎮座する屋敷の構造も含めて、何もかもだ。
「…………」
 銀鎖を巻き取る。
 風が森を揺らした。
「……ブラックソードとして絶望を切らせて貰うぞ
 風が吹き終わる頃には、枝上にもはや姿は無い。


 屋敷の壁に張り付いたシュバルツは、隣のドアに手をかけると、滑り込むように内部へと侵入した。
「…………」
 周囲に人影や兵器の存在が無いことを確認すると、床に右手をつき、再度、銀鎖で情報を“吸い上げる”。
「随分厳重だな……」
 屋敷内部のトラップや防衛兵器、監視カメラのことだ。それらは屋敷を埋め尽くすような密度で配置されており、窒息、そんな言葉が脳内に浮かぶ。
 だが、
「地下へのルートは解った……」
 大小のエレベーターと階段が幾つかある。己は、その中から小規模で、使用される頻度が少ない階段へのルートを選択すると、
「剣よ……」
 言葉を紡ぎ、念じる。すると、己の身体を渦のようなものが包み込んだ。
 渦は暗黒の色をしており、流動的だ。
 魔剣に宿る負の力。渦の正体はそれだった。
 力が全身を包み込んだ後、一歩踏み出す。
「――――」
 その後の自分がいるのは、高速の世界だ。
 空気を突き破って進む視界の中、壁も、窓も、床も、何もかもが高速で後ろに流れて行き、己が今までいた位置を埋めるように風が流れ込む。
 暴風。その一語となった姿は、卓越した科学技術を有したヴィラン・蛟が開発した監視カメラでも捉えることは出来なかった。
「……?」
 突風で感覚素子を刺激された防衛兵器が、その源へ向けカメラやソナーといった探知機器を向けるが、しかしその時にはもはや姿は無く、素子の誤作動かと、持ち場に戻るだけだ。
「何だ……!?」
 唯一、階段前に配置されていた警備兵が、自身の前方から接近してくる漆黒の影に小銃を向けたが、
「――――」
 何かが放たれた音がしたのと同時、持っていた小銃が断たれる。
「なっ……!?」
 驚愕の声は、しかし続かない。影が放った蹴りで意識を昏倒させられたからだ。
「…………」
 階段へと続くドアに手をかけ、開ける。
 細い階段は最小限の照明で照らされており、薄暗い。
「……どんな物を作り、量産しているか知らないが……この町には不要だ」
 薄暗い空間を下りていけば、やがて光が見える。
 地下の工場へとつながるドア。その存在を照らす照明だ。
「……切らせて貰うぞ」
 ドアを開け、潜入していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
【WIZ】
ヴィランが営む秘密研究所に潜入します。
果たして、どんな兵器を開発しているかはわかりませんが、
放っておけば、大変な被害をもたらしそうです。
ここで研究所を叩きます。

まず初めにトラップや警報装置の配置をスマートグラスの各種センサーで
探査します【情報収集】。

警戒の薄い箇所を見つけたら、潜入します。
UC【胡蝶天翔】を使って、扉や壁を蝶に変換することでトラップを回避しつつ、
内部に進んでいきます。




 転移が済んでからの摩耶の行動は迅速だった。
「――――」
 森の中。その木立に潜むように身体を潜ませ、己は眼鏡を前方の屋敷へと向ける。
 すると、眼鏡のレンズ部分に様々な文字列やグラフが生じた。
 それらは文字通り目まぐるしく変化するが、狼狽えない
「周囲に敵影無し……屋敷までの距離は……」
 眼鏡の一部を操作するに合わせ、表示される情報は次々に変わっていく。
 赤外線による照射や、音波、電磁波を使ったソナー。熱源探知まで用いて情報収集を行えば、敵が設置した罠や防衛兵器、人員の配置など、様々なことが解る。
「ふぅ……。しかし、ヴィランが営む秘密研究所ね……」
 吐息を一つつきながら、思う。危険だ、と。
「果たして、どんな兵器を開発しているかは解らないけど、放っておけばどうなることやら……」
 ならば、自分がやるべきことは一つだ。
「ここで研究所を叩く」
 確かな口調で己の目的を確認すると、先程収集した情報を頼りに、警備の薄い地点へと向かっていく。
 茂みから茂みへ。上空を飛ぶ警備ドローンを警戒しながらタイミングを図り、
 前へ……!
 森の中から飛び出し、屋敷へと駆ける。一歩目から全力だ。
 土の大地を踏みしめ、身体を前へと運んでいく。そうしていけば、屋敷の外壁は目前だ。
 壁に近づき、右手を添える。
 あまり時間はないわね……。
 直にドローンがこちらを補足するだろう。それまでに済ませなければ、と詠唱を開始する。
「――“天に漂いし精霊よ。物に宿りて我に従え。姿さずけよ”」
 直後。触れていた手を中心に壁が変質した。
 黒く、小さい何かが集まって蠢いていたかと思えば、次の瞬間には、
「――――」
 “それ”が散った。
 羽ばたき、風に揺れるその姿の正体は黒蝶だ。
 一角が丸ごと変異した壁を潜り、己は屋敷の内部へと侵入する。
「ふぅ……」
 身体の全てが屋敷の中に入ったことを確認すると、ユーベルコードを解除。すると、自分の背後で空白を携えていた壁が、その姿を元通りに戻す。
 今、自分がいる場所は、上階へと続く階段の下。そのスペースだ。
「――それじゃ、行きましょうか」
 言葉を放つと同時、視界の横から黒蝶が飛んできた。
 壁となった階段の向こう側、そこにあった監視カメラが蝶へと姿を変え、こちらに飛んできたのだ。
 監視の目が無くなった場に己は悠然と姿を表し、
「――――」
 壁や扉といったものを蝶へと変異させていく。
「最短ルートで、ね」
 事前の情報収集で内部の構造も分かっているのだ。
 あらゆる障害を文字通り物ともせず、己は進んでいった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒金・菖蒲
秘密裏に事を進めて暗躍する。
いや、懐かしいな。
伊太利の「家族」達も、よくやっていたものだ。

――ただ。
一般の人々にも害を為そうとするのは頂けんな。
裏の道は裏のままに。
それがあるべき姿だろう?


先ずは、「目」を広げるところから始めよう。
闇奔を発動し、影の分身体を召喚。
迎撃装置の位置を探っていこう。
さあ、往け。

確認しつつ前進。
破壊できるものは、その範囲外から涯無で両断・無力化していこう。
こちらに害を為そうとするならば、見切りや第六感で察知し、捌悉で防いで無効化してみせようか。




 菖蒲は、森の中にある木にもたれながら屋敷を見ていた。
「秘密裏に事を進めて暗躍する……。いや、懐かしいな」
 ダークスーツを来た姿は腕を組んだまま、目を細める。
「伊太利の“家族”達も、よくやっていたものだ」
 古い記憶だとも、つい最近の記憶だとも、どちらにも確かな思いを得るのはヤドリガミという種族の特権だろうか。
 ただ、と一八〇センチメートル超えの長身を木から剥がす。
「一般の人々にも害を為そうとするのは頂けんな。――裏の道は裏のままに。それがあるべき姿だろう?」
 言って、己は右手を軽く上げた。
「――――」
 瞬間。木々の下にある己の影が盛り上がり、そこから黒く、揺らいだ姿が生じる。
「…………」
 己の影。正体はそれで、数は二体。両脇に控えるように立った漆黒の存在は、指示を待つかのように静かにその身を揺らがせている。
「――さあ、往け」
 己が右手を振るの同時、双影が駆けた。
 影は屋敷まで直進し、そこへ至るまでのルートの安全を確かにしていく。
 周囲を警邏する警備兵、上空を飛ぶ哨戒ドローン、屋敷の外壁に取り付けられた迎撃機銃。それら全ての位置を、己は影を中継して五感で捉える。
 その情報を頼りに、
「――――」
 己は一歩を踏み出した。
 それだけでこちらへ近づいてきた警備兵の視界から逃れ、森の中を進んで屋敷へと接近していく。数十メートル程離れた位置では、ドローンの群が木々の間から姿を表し、周囲を警戒しはじめた。
「…………」
 それに一瞥を向ければ、ドローンの至近の空間から不可視の斬撃が生じ、瞬時にドローンのボディを切断していく。
「――!?」
 急ぎ逃れようとドローンがもがくが、斬撃は一度ではなく、二度、三度と連続発生し、ただの金属片となったドローン達は音も無く地面に落下していった。
 己の視界の中、もはや森と屋敷の庭の境界線は目前だ。残る障害物は、
「距離四〇〇、というところか」
 言葉を発しながら、木の枝を潜るように身を屈めて庭に踏み入る。
「――うむ」
 顔を前方へ向けた時には既に全てが終わっていた。視界の中、存在していた全ての迎撃機銃がスクラップとなって宙を舞っているのだ。
「……ふぅ」
 全ての障害物をクリアしたことを確認すると、己は屋敷の壁までの距離を一気に詰め、ドアに取り付く。
「さてさて……」
 ドアの前に立つと、刀を鞘から抜き、屋敷の中へ入っていった。
 先程召喚した影が進んだルートをなぞるように歩き、
「……!」
 屋敷内部のカメラ、自立駆動のロボット兵器達を一刀のもとに切り伏せていく。
 途中、こちらの存在に気づき、攻撃を送ろうとするものもいたが、
「遅い」
 己はそれを見切って察知すると、先んじて斬撃を送り、こちらへの攻撃を許さない。
「……!」
 廊下の先で、連打するような斬撃の嵐が吹き荒れた。
 こちらに射撃を送ろうとしていた複数のロボット兵器が瓦解し、沈黙したのを見届けたところで、
「む……。これは……」
 気づいた。
 視界の中だが、しかしこの場ではないもの。感覚を共有した影の視界で、異変を見つけたのだ。
「この扉……。どうやら生産工場への道はこっちであってるようだな……」
 刀を構え直し、己は侵入を続けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
……ふむ……まずは屋敷か…トラップや兵器が多い、と言う話だったね……
…見つかるまではこっそり進むか……
【戯れ巡る祝い風】を使って有利な偶然…例えば偶然、兵器が他の何かに気を取られたり、トラップが作動しなかったり…を起こしやすくするよ…
…トラップの類は罠使いにより、仕掛けられていそうな場所を把握、解除や回避をしながら進む…
…兵器の類はハッキングでセンサを潰したりして見つからないように進んで…秘密研究所と言うからには地下への通路がどこかにあるはず…
…近道が出来るならよりありがたいからどこか端末を見つけてハッキング、情報収集をして地下への入り口を探すとするよ……




 メンカルは屋敷を包む森の中に潜みながら、思う。
 トラップや兵器が多い、という話だったね……。
 ヴィランが中枢としている拠点なのだ。相応の防備が備わっているということだろう。そして、自分はこれからここに潜入しなければならない。
 ならばどうするか。
「見つかるまではこっそり進むか……」
 小さな声でそう呟くと、身の丈ほどはある杖を振り上げる。
 先端に施された銀月の装飾が森の木の葉を指し、代わりというように森からは木漏れ日が月を照らした。
「…………」
 そこで己は一度息を吸うと、
「――遥かなる祝福よ」
 言葉を紡いだ。
 詠唱だ。
 言葉は流れを途切れさせず、森中の木の葉が擦れる音をはじめとして、周囲全体に告げるようだ。
 そして時には、
「――巡れ、廻れ、汝は瑞祥、汝は僥倖」
 周囲に言い聞かせるように、染み込ませるように言葉は続き、
「――魔女が望むは蛇の目祓う天の風」
 銀杖の振り下ろしによって、そのユーベルコードは発動された。
「――――」
 杖の頂点。月の装飾が指し示す先は森の木々を抜けた先、ヴィランが選挙する屋敷だ。
 次の瞬間、周囲に風が吹いた。
 弱い勢いで、しかし遥か彼方までその存在を続かせる風を何と呼ぶか。
「そよ風よ……」
 その言葉通りの存在が、振り下ろされた杖をスターターに己の周囲から屋敷へと向かっていった。
 それは木々の間を縫うように走り、屋敷の庭の上を跳ねるように行き、やがて屋敷の周囲全体を包み込むように至った。
 すると次の瞬間、
「――――」
 屋敷の外を哨戒していたドローンや、自立兵器、警備兵達がその動きを異質なものに変えたのだ。
「……!?」
 ドローンはその飛翔機の駆動や動力の供給が不確かとなり、空中を溺れるようにもがいた。
「――――」
 自立兵器は、普段では無視するような羽虫を兵器の管制システムが固執し、そのカメラのコントロールを固着させた。
「あ、あれ? 靴が……って装備が!?」
 ある警備兵は、装着していたブーツの不具合にしゃがみこんだ直後、装備していた武装が滑落し、大慌てで拾い集めている。
 そんな、全体が混乱と焦燥にまみれた現状の場を、
「…………」
 己は遮蔽物や、死角に隠れながら進んでいく。
 横目で見てみれば、ドローンも、自立兵器も、人間も、何もかもが小さな“不運”でてんてこ舞いだ。
 敵を襲う“不幸”は何もドローンや人間など、動き回る存在に対してだけではない。トラップとして庭に埋まっている地雷もそうだ。
 罠を使うこともある己からすれば、どこに設置するかは、手に取るように解り、それらを踏み抜かないよう、注意しながら足を運んでいく。
 まぁ……もし踏んでも“偶然”作動しないだろうけど……。
 だがもしそうじゃなかった場合が致命的だ。なので、慎重に隠れながらの進行だが、
 ……今!
 ときに中央を突っ切るような大胆な動きをしてみせる。
 皆こっちを見てないからね……。
 先程、隠れて進んでいる時に、腕に取り付けたハンドベルトコンピューター、“マルチヴァク”経由で周囲の兵器をハッキングし、そのセンサーを誤認させたのだ。
 それらを背後にしながら、己は屋敷にある一つのドアの前に立つと、
「……電子ロック?」
 杖を小さく振ってしばらくすると、すぐにドアが開いたので、中に入る。
 そうして入ってみたところ、屋敷の中も外ほどではないが、“そよ風”の効果が効いているようだ。
 廊下をいくらか進んでいくと、ぎこちない動きをしている警備ロボットがこちらに背を向けて歩いていた。
「――失礼」
 なので、“マルチヴァク”からケーブルを引き出し、目の前の兵器のソケットに接続。
 さっきの庭でハッキングしたときは無線だし、そこまで余裕なかったからね……。
 相手のプロテクトを一気に突破し、目当ての情報が“マルチヴァク”にダウンロードされる。
「ここが地下の、秘密工場へのルート」
 地下へと繋がる通路や扉、そして地下にある工場の構造図まで得ると、己は目の前の警備ロボットに停止コードを入力してから、ケーブルを引き抜き、
 これで無駄に歩かずに済む……。
 最短ルートで地下へ向かっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『地下兵器製造プラントを強襲せよ』

POW   :    手当たり次第に施設を破壊して暴れる

SPD   :    システムにハッキングして機械を無力化する

WIZ   :    造られた兵器の提供先を調べるなどの情報収集を行う

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達の活躍により、屋敷の地上階を担っていた研究所からは抵抗という抵抗を受けることもなく侵入、突破に成功。研究所が有していた兵器はその大部分が破壊され、有していた開発データも合わせて破壊されていた。
 そうして地上階を突破した猟兵達は、各々が階段やエレベーターといった様々なルートで地下の兵器生産工場へ突入していった。


 そこで猟兵達が見た景色は、二種類だった。
 まず目にするのは、広大な鋼と油の空間だ。四方が千メートルを越すほどで、天井も高く取られた空間は、窓がない一点を除けば地下を感じさせないほどだ。
 そこには重工な生産機械や貯蔵タンクに、長大なベルトコンベアがあり、そしてそれらに付随するように銃器や兵器が開発途中からマスターアップ寸前まで様々な状態でひしめき合っていた。
 そうして、そんな景色に叩き込まれるように入ってくる二つめの景色は、
「――猟兵だ! 殺せ!!」
 配置されていた防衛設備による、銃弾や光線の暴風雨だ。
 ヴィラン姉妹の片方、地下工場の運営を担っていた竜胆の掛け声と共に、破壊の力が猟兵達がいる場所を狙って工場内を駆け巡る。
 地上階のみならず庭も含めた研究所に配置されていた防衛戦力に比べれば、少数だが、工場という狭く密集した空間が、その密度を確かにする。
「総員! プラントに気にせず存分に弾をバラまけ! 私と蛟の開発した強化装甲は、この程度では傷つかない! 猟兵を殺すのだ!」
 激を飛ばすと、竜胆はライフルを片手で構えながら、近くにあったコンソールに取り付くと、高速でキーをタイピングする。
 自立兵器達の配置位置を変更しているのだ。
「また、猟兵をコンピューター端末に近づけるな!」
 ハッキングされ、無力化されてしまう恐れがあるのが一つ。
 そして何よりも、と。
「“黒龍”の情報を収集させるな……!」
 そうして、猟兵達による秘密工場の強襲は始まった。
黒木・摩那
【WIZ】
ヴィラン達があれだけ警戒しているということは、
コンピュータ端末によほど重要な情報があるということですね。
ならばこそ、端末には是非ともたどり着かないといけません。

防御は【第六感】と【念動力】で弾の軌道を反らします。

ヴィラン達をヨーヨー『コメット』で【なぎ払い】【武器落とし】、
落とした武器を【念動力】で回収して武装解除、
UC【サイキックブラスト】で拘束します。

端末は機械のLANケーブルを辿った先にあるはずです。
たどり着いたら、スマートグラスで【情報収集】【ハッキング】。
ヴィラン達の秘密兵器を探り出します。




 地下の秘密工場に到達し、機械のLANケーブルを辿っていた摩耶は、一つの確信を抱いていた。
 防御が厚い……。
 遮蔽物の影に隠れて向こう側を窺えば、そこにあるのは警備兵や防衛ロボットが集まり、一個となった防衛陣地だ。
 陣地の密度は高く、その中央にあるものはここからでは窺い知れないが、解る。
 端末ね……。
 工場内の生産を制御するため、各地に置かれたコンピュータ端末だ。それ単体にはそこまで有用な情報は無いだろうが、
「ネットワークの中枢までアクセスすれば……」
 先程、ヴィランが興味深いことを言っていたのだ。
「“黒龍”……」
 口ぶりから察するに開発した兵器か何かだろうか。ともあれ、この厳重な警備を合わせて考えると、その情報が重要なことは想像に難くない。
 つまり端末への到達は必須だ。そう結論付けると、己は物陰から通路へと一歩踏み出した。
「――!」
 間髪入れずに銃声が轟いた。音は複数で、音の数だけの弾丸が通路を埋め尽くす勢いで飛来してくる。
 それらは、こちらの頭から爪先まで余すところ無くを貫き、背後へと抜けていく。
 はずだった。
「なっ……!?」
 通路の奥から驚愕の声が聞こえてきた。が、こちらはそんな敵の様子を、視覚では窺い知れない。
 これはまた、随分撃ってきたわね……。
 眼前が、静止した銃弾で埋まっているからだ。
 大小様々な弾丸達が、まるで見えない壁に阻まれたかのように、空中でその身を僅かに揺らしている。
 サイキッカーである己が持つ念動力によって、飛来した銃弾全てを一瞬の内に掌握したのだ。
 そんな眼前の光景に、己は吐息を一つ。すると、眼前に浮かんでいた全ての銃弾が、一斉に真下へとその進行方向を変え、床に突き刺さっていく。
「う、撃て!」
 そんなこちらを圧倒しようと、相手が追加の射撃が送ってくるが、それも結果は同じだ。
 発射された弾丸は尽く停止し、あらぬ方向へと飛んでいき、傷つけることが叶わない。
「無駄な抵抗、ね」
 そう告げると、己は腕の一振りで、武装であるヨーヨー“コメット”を構える。
「やっ……!」
 まるで手の延長線のようにヨーヨーを自在に振るい、敵を、否、
「なっ……!? 銃が……!」
 敵が持つ武器をなぎ払い、叩き落としていく。
「回収させてもらうわよ」
 サイキックで集め終えると、両の掌を防衛陣地に向け、
「はぁ……!」
「ぐがっ……!!」
 掌から迸る高圧の電撃によって、ヴィランの配下達を感電させた。
「っ……。……これで静かになったわね」
 両腕に締め付けの痛みが淡く走る。サイキッカーとしての力を使った反動だ。
 しかし、それに対して己は眉をしかめるだけに留め、電撃によって意識を失った者達の間を通り抜けるように進めば、目当ての物がそこにある。
 床板からこちらの胸元までの高さの機械は、端末だ。
 それに対し、己はスマートグラス“ガリレオ”と端末をケーブルで繋げ、アクセス。
 ネットワークへの中枢に辿り付き、そこにあるデータの海の中から、一つのファイルを見つける。
 “Sj-68 Hēilóng”……。
 これだ。
 否、まだファイルを精査していないため、根拠は無いが、第六感とも言うべき感覚で確信を得る。
 その確信を頼りに、内部データへアタックをかければ、
「――――」
 グラスに描かれた使用状況のうち、プロセッサの稼働率が跳ね上がった。これはつまり、対象のプロテクトが硬く、突破に負荷がかかったということだ。
 つまりビンゴね……。
 己は自身のハッキング技術とを総動員して、プロテクトを突破。
 そうして、そこにあったデータは、
 『“黒龍”の調査結果・SPD』……?
 思う。どういうことだろうか、と。
 もし件の“黒龍”とやらが、自分たちで開発した兵器であるならば“調査”という言葉は不適だ。
 だが、その疑問はデータの序文に目を通したことによって解消した。
「“黒龍”はオブリビオンである……」
 出撃前に聞いた予知の内容と合わせると、“黒龍”がヒーロー闇討ち事件の犯人であることは間違いない。
 そして、データの記述はまだ続く。
「当機には、随伴機体としてドローン砲を有している……」
 どういうことかと思い、添付の画像データを見れば、黒や灰の色を基調とした戦闘機の側に、それを小型化したような機体が二機、映っていた。
「これらドローン砲は、主機の翼下にある副砲と合わせ、攻撃力、命中率、攻撃回数のいずれかを重視した攻撃が可能……」
 ファイルのタイトルと合わせると、どうやらこれは“黒龍”が有するユーベルコード、それもSPDについてのものだということが解る。
 POWとWIZは……。
 そう思い、追加のアクセスを試みようとしたそのとき、
「――!!」
 敵だ。この端末の防衛を突破されたことを察知したヴィランが、ここへ増援を送ってきたのだ。
「とりあえず向かってくるのを倒さないと……!」
 手に入れた情報を“ガリレオ”で他の猟兵にも情報を共有し終えると、
「――そこ!」
 己は敵を迎撃していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒金・菖蒲
ほう、物量戦かね?
いいだろう、お応えしようではないか。
数には数を以って、な。

情報収集は、それが得意な他の方々にお任せしておこう。
私は、塵一つ残さぬよう「掃除」を始めるとしよう。

我ら共に在り、軍影。
思う儘に火器を用いよ。
機関銃を撃ち尽くせ。
グレネードもロケットランチャーも遠慮するな。
曰く、頑丈らしいからな。
壊した所で、構わないがな。
ああ、コンピュータ端末は狙わぬようにな。

総勢280人、尽きぬ軍勢の銃撃爆撃の驟雨を以って、敵戦力を鏖殺していこう。
指揮をする私を狙うならば、抜刀し攻撃も敵も切り払おう。
遠からん者は涯無にて、近くば寄って一閃にて。
我が身へ迫るものは見切り回避し捌悉で消し去ろう。




 地下工場。そこでの戦闘は、火力の飛来によって始まったことを菖蒲は知覚した。
「いたぞ! 猟兵だ!」
 そんな叫びが聴こえるやいなや、次の瞬間には己が立っていた通路を埋め尽くす勢いで弾丸が迫ってきたのだ。
 しかし己はそんな豪雨に慌てず、
「ほう、物量戦か……」
 帽子を手で押さえて、通路から軽い動きで退避する。
 一瞬見えた数からして、十や二十といったところではないな……。
 それなりの数が武装し、こちらを狙っている。己は現状、遮蔽物に隠れているが、このままではここも直に包囲してくるだろう。
 ならば、
「――いいだろう、お応えしようではないか」
 そう言った直後。己は手に持っていたリボルバーを遮蔽物の影から突きつけ、
「――我ら共にあり」
 撃った。
 迫りくる弾丸の雨に対して、大口径とはいえ拳銃弾の一発はか細く、小さなものだったが、
「――!!」
 孤独ではなかった。
 己の発砲の直後、こちら側にあるベルトコンベアやタンクといった工場設備の影からいくつもの銃口が突き出され、その全てが火を吹いたのだ。
「――数には数を以って、な」
「増援!?」
 敵から、驚愕と疑問の叫びが微かに聞こえたが、それもすぐに空気を破るような大きな音の連続で掻き消された。
 向こう側から迫って来るのが豪雨ならば、対するこちら側からは驟雨だ。今まで気配も感じさせず、にわかに降り出した雨が応射として吹き荒れ、通路を埋め尽くす弾丸の密度を増やしていく。
 己はそんな現場で、撃ち尽くしたリボルバーから薬莢を振り落としながら、周囲を見る。
 視界の中、弾丸の雨を降らしていくのは己の“家族”だ。
「――よう」
 一人の“家族”は、タンクの影から短機関銃を横倒しに乱射し、
「――相変わらず度胸があるな」
 また別の“家族”は、勇敢にも遮蔽物から上半身をさらけ出し、二丁持ちした拳銃の引き金を絶え間なく引いていた。
 そんな“家族”の総数、二八〇。旧い者もいれば、新しい者もいるが、
「皆、変わってないな……」
 そう呟くと、装填を終えたリボルバーをしかしホルスターに仕舞い直し、代わりに掲げるのは、漆黒の刀身を持った刀だ。
 それを掲げ、言う。
「――総員、思う儘に火器を用いよ」
 隠れていた遮蔽物から身を出し、敵に向かって歩いていけば、敵が攻撃を集中して寄越すが、己は手に持った刀を幾度か振るうことでその全てを切り払い、その蓮閃は遠く離れた敵が持つ銃を容易く切り刻んだ。
「機関銃を撃ち尽くせ。グレネードもロケットランチャーも遠慮するな。曰く、頑丈らしいからな」
 まあ、壊した所で構わないがと、付け加えたところで、工場の上階、キャットウォークにいるロケットランチャーを構えた“家族”に、ああ、と顔を向ける。
「コンピュータ端末は狙わぬようにな」
 こちらの言葉に“家族”が頷き、砲口の向きを変え、敵の防衛陣地を構成する装甲の一角を弾け飛ばす。
「――!!」
 ロケット弾によって生じた黒煙の中に、己は一瞬の内に飛び込むと、その内部で刀を降る。
 神速の一閃が煙の中に煌めいたかと思えば、次の瞬間には煙が消し飛び、全ての武装を断たれた警備隊の姿が現れる。
「端末からの情報収集は、それが得意な他の方々にお任せしよう」
 もはや脅威ではなくなった者達からは視線を外し、残った敵に向き直る。
「――私は、塵一つ残さぬよう“掃除”を始めるとしよう」

成功 🔵​🔵​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「ここは私の出番のようですね」

【WIZ】ハッキング情報収集

「CODE:MASTER OF ENGINEER。不可能を可能にするのが技術者です」
UCを用い【メカニック】【ハッキング】技能を上昇させます。

「自らが端末に近づく必要などありませんよ」
飛行機能付きのサーチドローンを展開し、ドローンを経由し無線で端末に接続。
電脳ゴーグルにキーボードを表示しそれを用い【ハッキング】。

内部セキュリティはハッキングツールによる【鍵開け】&【破壊工作】で突破を試みましょう。
「さて、これでアクセス出来ますかね」

主に造られた兵器の【情報収集】を行い、余裕があれば自立兵器の無力化を狙います。




 クネウスは思う。ここは自分の出番だ、と。
 現場の状況は、猟兵が攻め込み、ヴィラン側が防衛するという流れだが、その敵が防衛する対象が肝だ。
 コンピュータ端末……。
 工場内部の各所にあるそれを防衛するために敵が陣地を敷き、猟兵の一部が内部のデータを奪取しようとしているのだ。
「つまり、銃撃と情報の戦闘が並行しているのですね……」
 そこまで呟くと、自身が隠れる遮蔽物の影で光が生まれる。
 薄暗く周囲を照らす緑色の光の正体は、己の右腕からだ。
「――“CODE:MASTER OF ENGINEER”」
 言葉と共に光はその光量を増し、己の身体を包み込む。
「――――」
 光に浸るようにしばらく目を瞑っていたのも一瞬だ。
「不可能を可能にするのが技術者です」
 決意の言葉を持って、己は行動を開始した。


 様々な設備がひしめき合う工場の中、一機のドローンが飛行していた。
「――――」
 ドローンはタンクやベルトコンベアといった工場設備の間を縫うように飛び、搭載したカメラや感覚素子で周囲をくまなく観察し、得た情報を順次送っていく。
 敵は粗方片付けられたようですね……。
 それらの情報を無線で受け取るのは工場から離れた位置にいるクネウスだ。
「自ら端末に近づく必要などありませんからね」
 そう呟き、カメラが捉える映像を見れば、工場のあちこちで倒され、しかし死んではいないヴィラン側の警備隊が複数確認できた。
「さて、コンピュータ端末は……」
 あった。倒れた警備隊を辿っていった先、工場の鉄床から生えるように設置されている物がある。
「あれですね……」
 己はドローンに接近を命じ、ある程度のところで停止。無線を飛ばし、端末にアクセスを送ると、返答があった。
「ERROR……」
 アクセスの拒絶。まあ、当たり前ですね……、というのが己の感想だ。
「それをどうにかしに来たんですからね」
 言って、己は顔にかけていた電脳ゴーグルにあるものを表示する。
 キーボードだ。
 仮想のそれを、しかし実際の指で捌いていけば、入力が果たされていく。
 研究や開発を得意とするヴィランが組んだプロテクトは、強力で生半可な攻勢では突破が出来ないが、
「――――」
 ユーベルコードで強化されたハッキング技能で己は次々に突破していく。
 そうした先に広がるのは、広大なデータの海だ。
「――見つけました」
 己はそこから目当てのデータファイルを見つけると、アタックを仕掛け、やはりそこにあった防壁も突破していけば、丸裸となったデータだけがそこに転がっている。
 『“黒龍”の調査結果・POW』……。
 己はデータの記述を読み進めていく。
「オブリビオン・“黒龍”はその名の通り、竜を模して開発された戦闘機である……」
 動画ファイルが添付されていたのでそれをチェックすれば、そこにあったのはにわかには信じられないことだった。
「足が……」
 映像の中、黒の戦闘機である“黒龍”がいる。その機体内部に収納していたのか、太く、重厚な鋼の四肢が機体下面からランディングギアのように出てきたのだ。
 動きはそれだけに止まらず、四肢が大地をしっかり噛み、機体を支えると、
『――!!』
 吠声とも言えるような叫びを一度上げた“黒龍”が、大地の上を高速で駆けていくのだ。
 データの記述文に目を戻し、読む。
「四肢を解放する事で格闘戦形態に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る……」
 寿命か、と小さく口の中で繰り返す。
 基本は戦闘機で、やはり負荷がかかると、そういうことだろうか。
「地対空で撃墜しても、もう一工夫ということですか……」
 次のデータを見ようとしたその時、
「――!!」
 銃声だ。空気を破る音はこちらに向けられており、弾丸が飛来する。
「このあたりが潮時ですか……」
 己はドローンに退避命令と同時にもう一つの命令を送る。
「…………」
 そうして、ドローンが銃弾の雨から逃れるように端末から離れた瞬間、
「……!?」
 銃声がした方で、驚愕の声が上がると同時、弾幕が薄くなる。
 自立兵器の無力化は成功したようですね……。
 せっかく突破したネットワークなのだ。そこからこの工場内にいる自立兵器の機能を停止させ、戦力を低下させてから、己はドローンを撤退させていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メンカル・プルモーサ
…ふむー…もう防御態勢が整ってるか…
…それじゃ…【不思議な追跡者】を召喚……端末を探索させる…
…見つけたらそっちに移動…と言いたいけど自律兵器が多いな…
【愚者の黄金】で壁を作って進行ルート以外を防いだり、自律兵器や兵士の攻撃から身を守りつつ…
…浸透破壊術式【ベルゼブブ】により監視カメラが写す黄金の壁や私の展開する魔法陣の画像からウィルスを感染…
…密かに今アクセスしてるID、つまり竜胆の命令優先順位の低下と防壁の強度の低下
…準備出来たら【消え去りし空色のマリー】を使って姿を消して自律兵器のセンサをハッキングで殺しつつ端末へ移動して…
…下準備と合わせて一気にシステム掌握して情報を引っこ抜くよ…




 メンカルは眉をしかめていた。
 ……ふむー……。
 己が今いる場所は研究所から階段で降り、地下の秘密工場と壁一枚挟んだ位置だ。
「…………」
 静かな動きで頭を壁から出せば、ドローンを始めとした自立兵器が工場内を哨戒しているのが見える。
 防御態勢が整ってる……。
 こちらの侵入がバレているのだ。
「ふむー……」
 小さくだが次は言葉に出し、唸る。が、
 まぁ、方法はあるけど……。
 多くのアイテムやユーベルコードを持つ自分だ。このような状況をどうにかするための方法はいくつかあり、
「――小さき者よ」
 今回選んだのはその一つだ。
 工場に繋がる扉がある壁から離れ、奥まったところまで行き、詠唱を開始する。
「――追え、暴け。汝は狩人、汝は猟犬」
 手に持つ杖“シルバームーン”をはじめとして、己の周囲に淡く、水色に発光した魔法陣が多重に生じる。
 それら魔法陣は己が言葉を紡ぐに合わせ、発光を持って返していく。
「――魔女が望むは獲物逃さぬ鋭き眼」
 そしてそう告げ終えると、己の足元にあるものが召喚される。
 それは小さく、しかし動きを持った存在だ。頭を細かく振って周囲を見たかと思うと、こちらを見上げて細い尻尾を振っている。
「――――」
 小さく鳴いた口から、小さな頭には不釣り合いな門歯が見えた。
 鼠だ。
「いい? 端末を見つけてきて」
「――――」
「そう。――行って」
 己が告げた言葉に鼠が一つ頷くと、扉の隙間を潜って工場へと進んでいった。


 結論から言うと端末はすぐに見つかった。
 あそこまで固まってるとすぐ解るわね……。
 工場内を紹介している者達とは別に、かなりの数の警備兵や自立兵器が集合して一角に防衛陣地を築いているのだ。
 パイプを登って高所から見下ろした鼠の視界から見れば、端末の姿形やそこまでのルートもよくわかった。
 問題は、
 自立兵器が多いな……。
 端末にまでの道中に幾体もの自立兵器がいるのだ。
 こういうときは……。
「――世に漂う魔素よ、変われ、転じよ」
 直後、工場内に壁が突き立った。
「――!?」
 黄金色で重厚。自身の進む先に突如出現したそんな壁に驚愕した自立兵器達が、急いで迂回をしようとするが、
「――汝は財貨、汝は宝物、魔女が望むは王が呪いし愚かなる黄金」
 追加の壁が次々に生じ、自立兵器や警備兵の進行ルートを尽く妨害していく。
「――壁の間だ!」
 僅かに見えたこちらの姿を狙って敵が銃撃を寄越すが、
「くっ! 通じないか……!」
 攻撃が、全て黄金の壁に弾かれていく。
 そんな現場を急ぎ確認しようと、周囲の監視カメラが首を振ってレンズに収めようとしたそのとき、
「――――」
 カメラが見た。黄金の壁や、そこで守られながら進む己の魔法陣を。否、正確には、
「そこに仕込まれたウィルスコード、だよ。――浸透破壊術式“ベルゼブブ”、発動」
 直後、自立兵器の全てが攻撃を止め、こちらから離れていく。
「お、おい! どこに行く!?」
「はい。命令の優先順位が変更されました。当機はこれより補給に向かいます」
「無駄だ! “書き換えられた”! それより壁を回って猟兵を――」
 殺すぞ、という言葉は続かなかった。
「いない……!?」
 壁を回り込んだ敵が、こちらの姿を見失ったからだ。


 メンカルはすでに防衛陣地を通り過ぎ、端末に取り付いていた。
 だが、
「――どこにいった!? 探し出せ!」
 すぐ近くにいるこちらに僅かばかりも意識を向けずに、警備兵達が忙しなく周囲を探している。
 何故か。
 まあ、見えてないからね……。
 音を立てないように、静かに端末にもたれかかる。
 “消え去りし空色のマリー”……。
 自身を透明化させる術式。自分が用いたのはそれだ。
 鼠が端末探している間に、詠唱も済ませておいたし……。
 発動直前まで準備を済ませておけば、あとは己固有の術式である“クロノス”を用いれば任意のタイミングで発動できる。
 問題は、このユーベルコードは姿が消せるが音は消せない。また、
 しんどい……。
 毎秒疲労するのだ。そう言った事情から、端末内部へのアタックは自作の精霊AIである“ヤタ”に任せている。
 すると、“ヤタ”が情報を見つけてきた。
 早いなと、一瞬思ったが、“ベルゼブブ”などを使って下準備もしたのだ。こんなものか、と端末に体重を預けるようにして、データの内容を読み込んでいく。
 『“黒龍”の調査結果・WIZ』……。
 他の猟兵から共有された情報だと、これで敵オブリビオンが用いるユーベルコードの全てが揃ったことになる。
 オブリビオン・“黒龍”はその名の通り、竜を模して開発された戦闘機である……。
 記述は続く。
 随伴機体としてのドローン砲、翼下の副砲。それ以外の武装として、主砲である竜砲を持つ……。
 それはどんなものか。
 機首を向けた対象に、機首下の主砲から発射される光線でダメージを与える……。
 付随していた画像を見れば、確かに機首の下、奥まった場所に緑色の光を蓄えた砲のようなものが見える。
 成程……。
 ともかくこれでオブリビオンが使うユーベルコード、三つ全ての正体が解った。
 メンカルはこの情報を自身のデバイスに保存し、他の猟兵達に共有すると、
「…………」
 端末から、静かに離れていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
なるほど、これはまた立派な施設ですね。
ですが流石に工場にまでトラップなどは仕掛けていないでしょう。
防衛兵器や、兵士がいるくらいでしょうか?
となれば、私のやる事は同じですね。
銃弾で傷付かない装甲であろうが、私の剣は防げません。
目に付く兵器、機械、片っ端から斬って行きます。
攻撃を回避する為、銃口の向きを【見切り】、【残像】が出来る様な動きでセンサーを惑わせましょう。
多少有害な薬品などがあったとしても【毒耐性】があるので気にしません。
タンクも斬り、可燃物があれば炎の【属性攻撃】で周囲の兵器諸共燃やします。
コンピューターなどは調べてもらわないといけませんが……残すべき物は【第六感】で選びましょう。




 敵を撃滅しながら地下へ進んでいったハロを出迎えたのは、銃弾の嵐だ。
「――――」
 それらがこちらに到達するより早く、己は自身の位置を変えている。
 遮蔽物から遮蔽物へ。跳ねるように身動きしながら、周囲を観察。
 成程……。これはまた、立派な施設ですね……。
 巨大な貯蔵タンクや、ベルトコンベア。天上から吊り下げられた大きなクレーンなどを見て、己はそう感想すると同時に、解ることがある。
「流石に工場にまでトラップなどは仕掛けていないようですね……」
 今現在も己に攻撃を寄越している連中をはじめ、周囲にいるのは防衛兵器や警備兵程度だ。
「となれば、私のやることは同じです……ね!」
 言葉と共に己は一歩踏み込み、手に持つ細剣、“リトルフォックス”を相手に突きこむ。
「馬鹿な!? 装甲が……!」
「銃弾で傷付かない装甲であろうが、私の剣は防げません!」
 装甲を正面から貫いた剣を引き抜き、その反動に逆らわず後方に飛び退っていく。
 着地。
「――!」
 その瞬間を狙って銃撃が降り注ぐが、残像が出るほどの高速移動で己はそれを回避。
「はあぁ……!」
 そのまま工場内を駆け回り、目につく兵器や機械、設備といったものを片っ端から斬って、行く。
「レイピアをまるでギロチンみたいに……!」
 粗方斬ったところで、こちらに向かって銃撃を放ってくる警備隊に向け、数歩で距離を詰めていく。
「き、来たぞ! 撃て! 奴の良いようにさせるな!」
 高速移動するこちらに対応するため、一角に集まった敵が寄越す射撃はもはや面として迫ってくる。
 敵がいる空間ごと穿つ。そんな雰囲気の攻撃に対して真正面から突っ込んでいく己は、僅かなステップでそれを回避。
「失礼します」
 先頭に立っていた敵を蹴り、その蹴り足を軸に敵が纏う強化装甲を踏み上がると、敵の肩を踏み台に、跳躍。
 敵集団を飛び越え、それらの背後にあった貯蔵タンクに細剣を渾身の力で突き込み、
「ああぁっ……!」
 断ち割るように、剣を振り払った。
 直後、
「――!」
 一斉という勢いで、亀裂が走ったタンクから液状の薬品が吹き出す。
「ぐぁ……! げ、げほっ……。う、撃つな……! 燃えるぞ……。撤退! 撤退しろ!」
 高圧故に霧状に吹き出したその薬品を吸い込んだ警備兵達が、咳き込みながら後退していく。
 薬品の直近にいる己も通常であればただではすまないが、
 毒には耐性がありますからね……。
 気にならない。それよりも、気になる情報が先程敵の口から聞こえたのだ。
「燃えるのですか。コレ。――それは結構」
 直後、工場の一角が火の海に包まれた。
「――!!」
 火はやがて勢いを増し、炎となって工場の中を舐めるように進んでいく。
 もはや警備兵は撤退し、周囲にあった防衛兵器も今や炎の中だ。
「コンピュータは調べてもらわなければ……」
 敵の情報。それを入手する手段なのだ。
 多分、アレですね……。
 火炎から離れていた己は、離れた位置にあったコンピュータ端末を第六感でアタリをつけると、
「――!」
 その周囲にあった鋼材などを切り倒し、火炎の進行を妨げた。
「ふぅ……」
 一段落、そういう感で息を吐いた己だが、すぐに行動を再開する。
 まだ工場は健在ですからね……。
 床を踏み、壁を蹴り、縦横に工場内を駆け回っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュバルツ・ウルリヒ
…手厚い歓迎だな。…ここまで喜んで歓迎されると、…楽しまなくてはな。…僕なりのやりかたで。

ハッキングや情報収集は他の奴に任せて僕は…撃ってくる設備や奴等の対象をする。
【血統覚醒】この状態なら…強化装甲や設備ともやりあえるだろう。…優先するのは、強化は等を装備した悪党共だ。真正面から【殺気】を出しながら近付き…【地縛鎖】を相手に巻き付けて地面や壁にぶつけたり、【フォースセイバー】で銃や装甲を叩き切る、…勿論殺しはしない、…だが二度と悪事をしないように【殺気】を出して警告しておく。
……もしまた同じような事をするなら…次はないぞ。…刑務所で罪を償ってこい。




 シュバルツは激風の中にいた。
 己が今いる場所は工場の上階。建物内の壁際にある通路を繋ぐためのキャットウォークだ。
 狭い通路の中、敵がこちらを潰そうと押し寄せてきている。
 前方からは、狭い通路を埋め尽くすように銃弾の雨が。
 後方からは、こちらの動きを阻もうと自立兵器の腕が。
 側方からは、別のキャットウォークから狙撃の一発が。
 上方からは、通路ごと崩壊させるための爆破の一撃が。
 下方からは、こちらを仕留めようとやはり銃弾の雨が。
 敵意と殺意に満ち溢れた全方向からの攻撃に対し、己の選択は一つだ。
「――楽しませてもらう」
 直後。仮面の奥で瞳の色を真紅に変えた己は、一瞬の内に全ての行動を連続した。
「――――」
 まず、今までいた通路から横に、つまり工場の空中に身を投げ出すことで前面からやってくる射撃の射角から逃れる。
 その時に、背後にいた自立兵器を何体か“地縛鎖”で巻き取り、
「あぁ……!」
 力任せに振り回した。
 鋼の重量物が己の周りを高速旋回し、側方からの狙撃と下方からの銃弾の尽くを弾き飛ばしていく。
「――――」
 だが、次の瞬間には風を切るような飛翔音が聞こえていた。
 音源は上方。
 そこにいる警備隊が空中にいるこちらに向けてロケットランチャーを放ってきたのだ。
 爆破の一撃だ。
 そんな一撃に対し、己は身体を捻りながら、鎖を握った手とは別の手でフォースセイバーを引き抜くと、
「――!」
 弾頭を断ち切った。
 通り過ぎた砲弾が、遅れて背後で爆発。
 すかさず己はその爆風に乗り、前方へ弾け飛ぶように飛んでいく。
 そこにあるのは、前面から射撃を寄越していた警備隊がいるキャットウォークだ。
「……!」
 轟音を立てながら着地。
 鎖に巻きつけていた自立兵器を開放すれば、銃弾を浴びたことで損壊していた装甲が音を立てて崩れた。
 その音を背後に置き去りしながら己は、
「…………」
 警備隊に向け、一歩を進めた。
「ひっ……!」
 包囲した状態から一瞬の内に抜け出し、無傷でいる存在。そんな存在に対して目の前の、否、目の前の警備隊のみならず、周囲全ての敵が固まったように動かない。
 そんな中、己は言う。
「……手厚い歓迎だな」
 フォースセイバーの赤光を手に携え、一歩ずつ進みながらだ。
「……ここまでの歓待、僕なりのやり方で楽しませてもらったが」
 どうだったろうかと、そう言葉を続けようとしたそのとき、
「……!!」
 こちらの殺気に当てられたのか、半狂乱となった敵がナイフを持って突撃してきた。
「…………」
 そんな敵の狂行に己は狼狽えず、左手の鎖を振って敵に巻き付けると、
「――!」
 近くの壁に叩きつけた。
 そのまま連続で二度、三度と叩きつけ、
 そういえば装甲を纏っているな……。
 相手の装備に気づいたので、追加で五、六度叩きつければ、
「――静かになったな」
 鎖の拘束を緩め、その辺りに転がしておき、床に落ちていたライフルにフォースセイバーを突き立てた。
 すると、それを見ていた警備兵達が慌てて銃を床に降ろし、跪き始めたので、告げる。
「……もしまた同じような事をするなら……」
 フォースセイバーの切っ先を一人ひとりに突きつけながら、
「――次は無いぞ」
 解るな、と聞けば何度も頷くので、己も頷きを一つ。
「……ならば、刑務所で罪を償ってこい。それがお前達のするべきことだ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
こちらヒゲーク、警備所から製造プラントに移動した
…なんか即バレしたんでござるが!

敵の銃撃は【地形の利用】って事で建材を積み上げて簡易バリケード作成して防御、
ついで相手の目を眩ませるために煙幕とチャフ、フレアをばら撒いておきますぞ!
通路が狭いなら広げればいいじゃない!【超大型爆弾】を何処からかスイと取り出し敵が怯んでいるうちにシュゥゥゥゥ!超!エキサイティン!
後は広がった通路を通って残敵を掃討して終わり!

ある程度片付いたら生きてる端末探してサッと【ハッキング】して兵器の概要でもいいから情報吸い出しでござるね
…UAV、攻撃機じゃない戦闘機タイプでござるか?
―――楽しそうじゃねぇの?

アドリブ連携歓迎




 エドゥアルトは疑問していた。
 潜入したはずなのになんか即バレでござるよ……?
 いま自分がいる場所は研究所から降りてすぐ、工場階に幾つかある入り口の一つだ。
 そこに着いた瞬間、敵が防衛準備を既に済ませていたのが見え、
「――!!」
 小銃、光線銃、備え付けの機銃他諸々が合わさった弾丸の雨が入り口を襲った。
「ぬおおおお!?」
 転がるような動きで退避した己は、その途中でコンテナを押しのけて急ぎのバリケードを作り、そこに飛び込む。
「あァー! あっぶねェ―……!! 死ぬかと思ったでござるよ……!」
 バリケードに背を付けるように隠れ、チェストリグに着いてたものを力任せに引き抜くと、
「もう、当たったら死ぬんでござるよ! ――おらっ!」
 バリケード越しに敵へ向かって投擲した。空中を飛んでいくそれら投擲物は三種類。
 そのどれもが円筒形の金属で表面にプリントされた文字を有していたが、
「――!」
 直後に破裂した。
 三重の破裂音は煙と銀箔、そして赤熱した光を周囲にぶち撒けていった。
「! スモークか……! 総員、サーマルスコープに――」
「駄目です! フレアが巻かれて何も見えない!」
「チャフも巻かれているようです!」
 煙の中から、敵の戸惑った叫びを聞きながら己は高速で状況を再確認する。
 結構な数いたでござるなあ……。
 バリケードに飛び込むまでの一瞬の間。見えた敵の数は十や二十といったところではなかった。
 それに、
「通路が狭いでござる……」
 大きな工場だが、それ故に機器や設備があちこちに設置され、移動を制限されてしまう。
 そんな場所に防衛陣地ドン! されたら溜まったもんじゃないでござるよ……。
 何より、己は陣地の奥、そこにあるコンピュータ端末に用があるのだ。
「つまりさっさと突破する必要があるってことでござる!」
 立ち上がるのと同時、両腕を頭の上に掲げた。
「そして、それにはコレが一番……!」


 煙が晴れた景色の中でヴィラン側の警備隊が見たものに、すぐには反応できなかった。
「!? 降伏か……!?」
 数十メートル離れた先で、猟兵が無手の両腕を上げて立っていたからだ。
「構うな! 撃ち殺せ……!」
 しかし、思考の硬直は一瞬だ。指示が伝達され、猟兵の抹殺を実行しようとしたが、やはりそこで動きは止まった。
「――――」
 いつの間にか、猟兵が掲げた手の中にあまりに巨大なサイズの爆弾が乗っていたからだ。
 さ、さっきまで何もなかったはず……!
 明らかな異常事態に警備隊の全員が攻撃を逡巡したことが決定的だった。
「――相手の陣地にシュウゥゥゥゥゥゥゥッッ!! 超! エキサイティン!」
 猟兵が、自分の数倍はあろうかという爆弾をオーバスローで投擲してきたのだ。
「――――」
 警備隊の皆が思わず目で追い、その着弾点が自分達が立っている場所だということが解ると、
「ウワァ――――!?」
 全員が蜘蛛の子を散らすように逃げた。
「――――」
 直後、周囲が爆炎に包まれた。


「うぇー……。煙っぽいでござるなぁ……」
 爆心地という形容が正しい現場を歩きながら、エドゥアルトは残敵を無力化していった。
「ハイ回収ー。武器触っちゃダメでござるよー。……ていうかまぁ、ロクに動けないでござ――ブブー、そこアウト―。触るなって言ったでござるよー」
 床に落ちている武器を警備隊の手に届かないところまで蹴り飛ばしながら、瞬間的に抜き取った拳銃で、武器を手に取ろうとした警備兵の手を撃ち抜く。
 そうしながら進んでいけば、やがて目当ての場所にたどり着いた。
「オォー、生きてた。頑丈でござるなー……」
 コンピュータ端末だ。その表面を確かめるように一度叩くと、己は腕に装着した戦闘支援ツールからケーブルを端末に差し込み、
「えーっと……これがこうで……、うん……。うんうん……。それでパスワードが……。――よし!」
 ACCESS COMPLETE.その二語がツールに表示されたのを確認すると、己は端末に保存されていたデータを探索していく。
 そこで見つけた。
 『Sj-68 Hēilóngの調査の結果』……。
 今まで他の猟兵が見つけたデータとは少し毛色が違うデータだ。
 読み進めていく。
 大戦時にヴィランによって開発された試作機がベースで、改良を重ねていった機体……。
 機体名の“68”という数字は西暦のことだろうか、どうだろうか。
「もしそうだとしたら拙者と歳近いでござるな……」
 そんな益体も無いことを口から零しながら、おおよそ基本的なことが記述されているファイルを読み進めていけば、その中で目を引くものがあった。
 機体特徴……?
 読む。声に出して。
「……二機のドローン砲と、機体名の通り、主砲を始めとした各部が“龍”を模しているのが最大の特徴であるが、それ以外の部分、“戦闘機としての特徴”としては、
 二発の主加速器による超音速飛行。独自動力機関を源とする非実弾兵装。前進翼による機動性に――」
 そこに書かれている言葉を、言う。
「無人機ゆえに許される強引な挙動、にござるか……」
 付属した画像を見れば、確かにコックピットのような部分が見当たらない。
「ふぅむ……」
 今まで集めた情報を集合すれば、解ることがある
「オブリビオンは無人機……つまりはUAVで、武装からして攻撃機じゃない戦闘機タイプ……」
 己は思わず口角を上げる。
「――楽しそうじゃねぇの?」
 必要なデータは手に入った。
 なので工場、引いては屋敷から撤退しようと、戦闘支援ツールと端末のコネクションを外した時、
「――――」
 音が聞こえた。
「この音は……」
 数多の戦場を経験した己は、よく知っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『黒龍』

POW   :    “黒雲翻墨既遮山”
【機体内部に格納していた鋼の四肢を解放する】事で【格闘戦形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    “灰雨跳珠亂入船”
【随伴ドローン機と翼下の副砲】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    “卷地光來忽吹散”
【機首】を向けた対象に、【機首下の主砲から発射される緑色の光線】でダメージを与える。命中率が高い。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 猟兵達は屋敷の地下にある工場で音を聞いた。
 低く、籠るような、しかし突き抜けて行く音。ヴィラン姉妹やその配下を拘束し、グリモア猟兵の転移で最寄りの警察署に転移させた後に音源へ向かっていけば、それはおのずと地上へと繋がるルートだった。
 地上へ歩みを進めて行くうちに音は次第に大きくなり、屋敷の扉を開けたそのとき、猟兵達の前方を何かが高速で通過して行った。
「――!!」
 直後。ドアや窓ガラスといった屋敷の表面構造物が弾け、砕け、散っていく。
 破砕が連続する中、猟兵達は地下で聞いた音の正体を知る。
 重厚な壁を持つ空間でも聞こえた音は、大質量の大気を高速で押しのけたことによって生まれた、莫大な衝撃波だ。
 青の空に残る水蒸気の白い帯を目で追おうとしても、
「――!?」
 追いつけない。代わりに得るのは音速を超えた風切りの音だけだ。
 前方、側方、背後、上空。
 あらゆる場所に高速で身を変位させていく物体を見切った猟兵は、それが黒と灰の色を有した機体だということを知る。
 全長三十メートル程。鋭角なフォルムは金属製の翼と、機首に顎のように開かれた砲を持っていた。
「――“黒龍”……!」
 誰かが叫んだそのとき、
「――――」
 翠光が一閃。
 直後に、屋敷の一部が消し飛ばされた。
「――!」
 崩壊と消失の結果を与えられた屋敷が、音を立てて崩れていく。
 直径十メートルは下らない光柱は、龍の顎から放たれた主砲だったのだ。
「……!」
 それを見た猟兵達は、急ぎ己の現場に向かう。
 戦闘が始まるのだ。
ハロ・シエラ
これはまた、とんでもないモノがやってきましたね。
戦闘機とは……龍の名の通りの凄まじさです。
だからと言って、手を出さない訳にも行きませんけれど。

まずは私もユーベルコードによって竜の力を使い、空を飛びましょう。
ダガーも大鎌に変化します。
だからと言って同じ土俵には乗れません。
相手は超音速、こちらは頑張ってもその5分の1程度の速度しかありません。
となると攻撃の為に機首をこちらに向けた時に【カウンター】で攻撃を仕掛ける事になるでしょう。
なるべくなら光線は回避したいですが、無理なら鎧と【オーラ防御】で耐えます。
後は電気の【属性攻撃】を乗せた鎌で【鎧無視攻撃】を。
超音速でバックされなければいいんですがね。




 これはまた、とんでもないモノがやって来ましたね……!
 瓦礫が降り注ぐ屋敷の中を疾走しながら、ハロは敵を見上げていた。
 空。敵がいる場所はそこだ。
「戦闘機とは……。龍の名の通りの凄まじさです」
 今、空を高速で飛翔している存在が巻き起こした破壊の結果の場にいるのが己だ。
 壁は砕かれ、天上は剥かれ、床はそれらの瓦礫で埋まっていく。
 高所からの攻撃は控えめに言って一方的で、少し誇張して言えば圧倒的。そんな感のある現場で、しかし己は笑う。
「だからといって、手を出さない訳にも行きませんけれど」
 直後。己は剣を構えた。
「封印を解きます……!」
 言葉と共に、自身を包む物が何もない空間から闇を伴って現れていく。
 それらは胸や腰、あとは肘や膝といった関節部を覆うようにすると、
「――――」
 身体に合致していった。
 胸部に押し当てられる硬板と、関節を包む曲面の正体がその時になって闇が晴れ、初めてその姿を露にする。
 鎧だ。
 胸甲が押し当てられ、そこにベルトが通り、身を引き絞るようにして締め上げていった。
 曲面は関節部を覆うが、しかし動きを阻害しないように細かなパーツで組み上がっていき、柔軟性との両立が取られていった。
 そうして出来上がるのは、身体の要所を押さえた軽装甲の鎧だ。
 防御よりも機動重視、そんな印象の装備は正しくその通りだった。
「――――」
 次の瞬間には、己の身体が宙に浮いていたからだ。否、浮いているのではない、風を掴み、身を逸らすことで行き先を選択する動作を何と言うか。
 飛翔だ。己が今行っているのは正しくそれだ。
 空へと飛び上がり、大気を突き破って、自身を運んでいく。時速にして二三五キロメートルといったところか。
 しかし、
 敵が速いですね……!
 地上にいた頃に比べるとマシになっているとはいえ、敵の動きは相対速度でこちらに差を強く感じさせる。
 事前に他の猟兵が集めた情報や、今見を震わせる音の高鳴りや衝撃波からして相手は音速超え、超音速飛行だ。
 だとするとこちらの速度は五分の一程ですね……!
 追いつけない。事実、何とか追いすがってみようとしても、
「……!」
 相手の加速に振り切られ、すぐに置いていかれる。
「ならば……!」
 己は身を翻し、敵から離れていく。向かう先は、こちらに向けて弧を描いて飛んで来る“黒龍”が通るルートだ。
 先回りし、待ち構えれば、
「――――」
 来た。“黒龍”の機首と己が正対する。その瞬間を逃さず、相手は喉奥に溜めた翠の光を発射した。
「――!!」
 光の線、と言うよりは光の柱と言った様相のそれが高速で迫ってくる。
「……!!」
 視界の中、翠の光はほぼ真円だ。それほど自分が正面にいるということだが、この状態では光柱の遠近感覚がもはや解らないが、
「そこ……!」
 己はすんでのところでそれを回避。頭を前方に向け、右肩から落ちるようにすれば軸転が決まり、ロールしながら光の熱量を至近で感じる。
「前進します……!」
 ロールが落ち着くのも待たず、己は進む。
 銃弾のように螺旋を描いて宙を進むその姿は、やがて一つの変化を持つ。
 銃弾が、その姿を広げたのだ。
「“サーペントベイン”……!」
 名を呼ばれた存在は以前までの短剣とは違い、その姿はいまや大鎌だ。
 身の回転に合わせ、雷光を迸らせた大鎌が唸りを上げていく。
「――!!」
 主砲を正面から回避した存在が接近していること感知した“黒龍”が、慌てた動きで衝突を避けようとするが、間に合わない。
「やぁああああ……!」
 雷光を纏った刃の一撃が、相対速度のエネルギーをそのままに“黒龍”の装甲を切り裂いていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒木・摩那
今度のオブリビオンは戦闘機ですか。

さて、困りました。
高速で飛行する物体相手では、攻撃する手段がありません。
まずは地面に降りてもらわないといけません。

UC【胡蝶天翔】を使って、壁を蝶に変換します。
これらの蝶をオブリビオンの正面に展開することで、
こちらの姿を隠して、攻撃を防ぐとともに、
ジェットエンジンに蝶を吸い込ませて、エンジン故障を狙います。

戦闘機とはいえ、精密機械ですから、
壁の破片が高速回転するエンジンに入れば、飛行は難しいでしょう。

地面に降りてきたら、ルーンソードで戦います【先制攻撃】【鎧無視攻撃】。




 摩那は思う。
 困ったわね……。
 今、己がいる場所は敵の攻撃で崩壊した屋敷の外、瓦礫に身を隠すようにして敵を見ている。
 空。そこにいる存在は超音速で飛翔し続け、こちらの視界にいることのほうが少ない。
 あれじゃ、攻撃する手段が無いわ……。
 そう思っていたら、轟音が巻き起こった。
「――!」
 オブリビオン、“黒龍”がこちらのすぐ側を通過していったのだ。
「くっ……!」
 露わになった屋敷の基部を手で掴み、吹き飛ばされそうになる衝撃波を耐える。
「まずは地面に降りてもらわないとね……」
 そう言って、己は手で掴んでいた基部に対し、詠唱を送る。
「――“天に漂いし精霊よ。物に宿りて我に従え。姿さずけよ”」
 すると、研究所に潜入した時同様、屋敷の一部が変質し、黒い蝶と姿を変える。
「――――」
 屋敷の一角、そう言えるだけの質量が全て黒蝶に姿を変えれば、辺りは陽光を遮り、夜のように暗くなる。
「……!」
 そんな、常ならばあり得ざる現象を感知した“黒龍”が身を翻す。
「――!」
 主砲だ。それによる撃破を狙い、大空に弧を描いて、来る。


 “黒龍”は思考した。敵の撃破は容易だ、と。
 回っていく自分の視界の中、敵の位置を発見したからだ。
 敵は晴天だというのに、自分が身を潜めていた屋敷を黒の蝶に変異させ、
「――――」
 こちらに飛ばしてきたのだ。
 最初は何かがあるのかと思ったが、各種センサーで見るに蝶は本物。生体だ。今もこちらが生み出す衝撃波に煽られ、飛翔を不確かにしている。
 弱く、儚い存在。それを差し向ける意味は何かと、己が思考を続けていけば、得る答えは一つ。
 陽動……。
 黒蝶でこちらの視界を封じ、一撃を放つつもりなのだろう。
 ならば、自分が取るべき選択は何か。
「――!!」
 咆哮と共に、己は喉奥に力を溜めた。主砲だ。
 猟兵に攻撃手段があるならば、既にこちらへ放ってきている。それが今まで無いということは、現状の己に対し敵は有効打を持っていないということだ。
 ならば、こちらに向かって壁のように迫ってくる矮小な陽動は気にせず、その奥にいる猟兵を砲で仕留めるのが最良だ。
 何より、自分がいる現場は音速を超える高速域だ。たとえ無人機である己でももはや挙動の変化は不可能だ。
 そう判断し、こちらへたどり着いた黒蝶の群れを、
「――――」
 無視と、そうしようと思ったが、気づいた。
 蝶がその姿を変えているのだ。
「……!?」
 一瞬のことだったので、もはや視覚素子では捕らえきれなかったそれらが、大気を吸い込むエアインテークに流れていけば、
「――!!」
 直後。己の内部から、掻き毟るような音が聞こえたかと思うと、主加速器から黒煙が挙がった。


 上手くいったわね……。 
 摩那は軽く掲げた手を頭に持っていき、髪を梳いた。
「土に埃に……」
 それらが降り注いで来たからだ。
 何故か。
 答えは至近にある。
「戦闘機とはいえ、精密機械だからね」
 “黒龍”だ。後部の主加速器から煙を挙げた敵が大地に墜落し、咆哮を挙げている。
「――!?」
 エアインテークから吸い込ませた蝶は、元々ユーベルコードで変質させた屋敷の壁をはじめとした瓦礫なのだ。
「でもそれも効果範囲から出たら元通り……。瓦礫がエンジンに入れば、飛行は難しいでしょう?」
「……!」
 問いかけの答えは突進だった。“黒龍”が機体下面から開放した四肢で大地を踏みしめ、駆けようとしたそのとき、
「はぁぁっ……!!」
 己はそれに対し、引き抜いたルーンソードを先制でぶち込んだ。
 鋼の巨体へ食らいつくように突き刺せば、火花が散り、
「――――」
 突き刺した刀身を、きらびやかに彩った。

成功 🔵​🔵​🔴​

シュバルツ・ウルリヒ
…成る程、確かにこのような物があれば町を支配する等と増長するのも…仕方ないか。……だが夢は叶わない、……斬る。

……とは言ったが相手は空を凄まじい速度で飛んでいる。…近寄って斬るのは無理だろう。…【真の姿】を解放してから【魔剣解放】、奴の後ろを【高速移動】で奴の後方を移動しよう、そして奴とドローンの攻撃をビルの隙間や車に隠れつつ【情報収集、地形利用】リロードする隙を見て【衝撃波】を奴のエンジンに放つ。そして奴が僕の剣の届く距離まで降りたりしたらすかさず【高速移動】で剣で切り刻む。

…成る程、確かにそのスピード、空を支配した様子は…龍だ。…だが龍は…邪悪は…滅びるのが話の決まりだ。




 ……成程。
 シュバルツは上空を見上げ、高速で飛翔している物体を視界の中に捉える。
 “黒龍”だ。
「確かにこのような物があれば、町を支配する等と増長するのも……仕方ないか」
 縦横に空を翔ける存在は止まる気配は無い。
「……だが夢は叶わない」
 右腕を一振りすることで、魔剣を引き抜く。
「……斬る」
 短く呟いた次の瞬間には、
「――――」
 己の姿が変化していた。
 黒のコートは各所に金の刺繍が走る濃紺の長衣に変わり、その上から裾襟に毛皮のついたローブが覆っている。
 そして、仮面に覆われていた顔はいまや露わになり、閉じていた目を開けば、
「…………」
 紅と蒼の眼がそこにあった。
 真の姿だ。
 漆黒の刀身を有する細剣を構え、言う。
「剣よ……僕に力を……貸せ」
 すると、己の姿が闇に包まれた。
 頭から爪先、身体の各所を包む闇は流動し、時折脈打つように震える。
 研究所に侵入する時にも用いた、魔剣に宿る負の力だ。
 真の姿に負の力を重ねたのだ。
 その状態で地面を蹴ればどうなるか。
「――!!」
 柱の用に土煙が立ち上がったかと思えば、次の瞬間には己の姿は前方へと姿を移している。
 大地を蹴ったのだ。
 走るというよりは、加速して身体が吹き飛んだ。己の感覚はそれだ。
「…………」
 背後に視線を送れば、地面に突き立った土柱がもう数百メートル程離れている。一歩の感覚がそれほどまでに凄まじいのだ。
 追加の柱を突き立てて、行く。
 目標はたった一つ。前方の“黒龍”だ。
「……!」
 すると、こ接近を背面にある視覚素子で捕らえた“黒龍”が、自分に随伴していたドローン砲をこちらに差し向け、
「――!」
 光線による攻撃を送ってきた。連射だ。
 大気を焼いて進む翠の閃光は、正確にこちらのいる位置へ向かってくる。
「甘いな……」
 しかし己はそれを見切り、もはや街へと移った戦場の中、ビルや車といった遮蔽物を利用し、
「――!!」
 凌ぐ。ビルの表面は削られ、車は抉られ、それが連続で生じるが、
「凌いだぞ……!」
 光線の照射が治まったのだ。高速で動くこちらを捉えようと、命中率重視の射撃があだとなり、次弾の装填に時間を有している。
「行くぞ……!」
 それを逃す己ではない。
 抉れた車を踏み台にし、削れたビルの表面を駆け上がっていき、屋上の縁を踏み切れば、
「――――」
 大空と、そう言える場所に己は至る。
 そんな場所で身を翻し、手に持っていた漆黒の細剣を振るう。
「そこだ……!」
 宙で振るった黒の細剣から衝撃波が生じ、前方を飛んでいた“黒龍”へ飛来していく。
 大気を切り進んでいく波が終着する箇所は一つ。機体後方、そこにある、
「主加速器だ……!」
「……!?」
 空で爆発が生じた。
 “黒龍”が、飛翔するための部位を衝撃波によって斬撃され、叫びを挙げながら高度を失していく。
 何とか高度を保とうと藻掻き、しかしそれが叶わぬ龍に対し、己はビル間を跳躍し、接近していく。
「……成程、確かにそのスピード、空を支配した様子は龍だ……」
 最後のビルを踏み切って跳躍すれば、もはや敵は眼前だ。
「だが龍は……、邪悪は……、滅びるのが話の決まりだ」
 そう言って、剣を振りかぶると、
「はぁあっ……!」
 “黒龍”の装甲を切り、しかしそれは一度で終わらず、
「ぁぁああ……っ!」
 斬撃を、幾重にも刻んでいった。
「――!!」
 街の上空に、龍の絶叫が響いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クネウス・ウィギンシティ
アドリブ&絡み歓迎
「アームドフォート展開完了、行けます」

【POW】空中から狙撃

「エンジニアとしての腕の見せ所ですね」
【メカニック】としての知識を活用し、敵の無力化を図ります。

「GEAR:CLOTHO。背面ブースター開放、ブースト!」
UCを用いて音速を超えた戦闘機と同じ速度域で【空中戦】を敢行(MAX1330m/s、音速340m/s)。

「その四肢は脅威ですが、同時に弱点でもあります」
先程(第2章)【情報収集】済み、【スナイパー】として【誘導弾】での狙撃。
変形機構に必要なネジや可動部、負荷が掛かる機体と四肢を繋ぎ止めている箇所への【破壊工作】を狙います。




「――アームドフォート展開完了、行けます」
 大気を破る轟音。屋敷が崩落する破砕音。空気が焼ける焦熱音。
 それ以外の様々な音が満ちた戦場で、声が聞こえた。
 声は続く。
「――GEAR:CLOTHO」
 直後。戦場の中で、何かが合致していく音が連続した。やがてその音の連なりは治まり、
「背面ブースター開放、――ブースト!」
 一つの叫びを合図に、上空へと飛び上がっていった。
 叫びの源は莫大な加速によって大気の壁を突き破り、青空に白の線をただ引いていく。
 反動によって散った屋敷の残骸物が地面に落下する頃には、もはやその姿は遥か高く、大空にいる。
 戦場へとたどり着いたのだ。


 昼の空、そこでの戦闘は音を捨て置いた現場だった。
「――――」
 “黒龍”は、自分の前から来る大気を龍の鼻先とも言うべき機首先端で切り捨て、前進していく。
 そんな“黒龍”の背後の空に、下方から飛翔してきた存在が身を運ぶ。
 クネウスだ。
 身を包む黒青のアームドフォート、その背面ブースターから光を散らしながら飛行している。
 行きます……!
 あらゆるものが高速で後ろへと流れていく視界の中、しかし一つだけ己の前方に留まっている。
 “黒龍”だ。それに食らいつくように、己はブースターの出力を最大にし、
「――!」
 一気に加速した。目の前にある大気からの抵抗が増大し、アームドフォートごと己の身体が揺れ、ときにホップしそうになるがそれを何とか押さえ、行く。
 秒速一キロメートル以上。己が今持っている速度はそれだ。
「――!」
 そんな速度で自身を変位させていけば、己への接近に気づいた“黒龍”が随伴のドローン砲で牽制の射撃を送ってくる。
「甘い……!」
 二機の砲からの光線を見切り、身を捻って回避。追撃の連射が来るがそれも上昇や下降を織り交ぜながら背後へと流して行けば、視界の前方にあった黒の龍との距離がやがて縮まり、
「――――」
 並んだ。そのとき、気づいた。
 目が……。
 合った。およそコックピットといった物が見受けられない機体だが、確かにそう感じた。
 次の瞬間、
「……!」
 “黒龍”が一瞬で身を翻し、こちらに機体の下面を向けた。
 龍の腹とも言うべきその場所にスリットが走り、その中から格納されていたパーツが突き出ていく。
 己はそのパーツを事前の情報収集で知っている。
「四肢ですね……!」
 格闘戦も可能。その情報の通り四肢の展開は素早く、
 「――!」
 また動作も同じだった。
 己の視界の中、もはや完全に外へと開放された鋼の四肢が、こちらを掴み、潰すために突き出してきた。
 風を突き破る勢いの前脚が、もはや目前に迫る。
「――――」
 しかし、攻撃も含めそれらの情報を事前に収集していた自分は、その攻撃を難なく回避し、
「その四肢は脅威ですが、同時に弱点でもあります……!」
 アームドフォートにマウントされた狙撃銃、そのスコープを覗き、狙うは鋼の四肢。その関節や、変形機構の可動部だ。
「――!!」
 衝撃力重視の弾丸で、打撃するような一撃を見舞うと、第二射、第三射と射撃を連続していく。
 連打だ。
 龍の脚が打たれ、歪み、震えを得て、軋みを挙げていき、それらがやがて最高潮に達すると、
「……!?」
 破断した。根本からだ。
「エンジニアとしての腕の見せ所……ですね」
「――――!」
 鉄片と駆動油が散乱する現場に、龍の絶叫が響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒金・菖蒲
やれ、龍というから東洋の龍か、将又西洋の竜を模したものかと思えば……。
巨大な戦闘機か。
まあ、戦争屋にはこの手の造形が慣れているか。

さて、地に堕ちた今、君は如何程の速度で動けるのかな?
獅子の様に力強く俊敏かね?
もしくは、地に上がった玳瑁の様に愚鈍かね?
孰れにせよ、その首落として鉄塊に戻してやらないとな。

――真名開放、我が名は『殺(アヤメ)』

真の姿を解放。
光飲み込む黒き神気を纏った刀に、肩口まで覆う黒布の篭手を右腕に。

何、慌てることなどない。
敵の攻撃は見切り、残像で躱し、捌悉で打ち払うまで。
こちらへ突っ込んで来たならば、一閃による鎧無視攻撃で両断するのみ。
その黒鉄の装甲、私の前には無意味と知れ。




 菖蒲は敵と対峙した。
「やれ、龍というから東洋の龍か、将又西洋の竜を模したものかと思えば……。戦闘機か」
 それも巨大な、と付け加える。
 目の前にいる存在、大地に着地した“黒龍”は全長三〇メートル。本体幅は五メートル程か。
「まあ、戦争屋にはこの手の造形が慣れているか」
「――!」
 悠然と歩みを進めるこちらに、向こうは警戒の唸りを挙げる。
「さて、地に堕ちた今、君は如何程の速度で動けるのかな?
 獅子の様に力強く俊敏かね? もしくは、地に上がった玳瑁の様に愚鈍かね?
 孰れにせよ――」
 手に持っていた漆黒の刀を構えると、
「その首落として鉄塊に戻してやらないとな。――真名開放。我が名は“殺”(アヤメ)」
 己の真の名を告げた。
 直後。自分に二つの変化が生じた。
 一つは、構えていた刀の刀身が闇で、周囲の光をも飲み込むほどの暗黒で包まれたこと。
 そしてもう一つは、己の右手から肩口までを覆う、黒布の小手が生じたこと。
 真の姿だ。
「――さぁ、果たし合おうか……!」


 “黒龍”は一瞬の決着を望んだ。
 敵は眼前、一体だ。
 体高は約一八〇センチメートル。彼我の全長には十五倍の差があり、質量差はそれ以上だ。
 そんな矮小な存在に対し、己は、
「――――」
 抜き打ち気味に主砲を放った。
「――!!」
 直径十メートルは下らない光柱が、己の鼻先から、猟兵が立っていた地点、そしてその奥までを光で埋め尽くしていく。
 大地を抉り、立ち上がる土煙すらも熱で溶かし、ただ莫大な光量が周囲に満ちる。
「…………」
 これで決着だと、己はそう判断した。
 不意打ち気味の一発、それも主砲だ。彼我の距離は数十メートル程度であり、つまりは一瞬の出来事だ。
 敵が逃れる隙は無かった。
 そのはずだった。
「!?」
 己は、それを視覚素子で見た。
 主砲の残光が消え、露わになったその場所、熱でガラス化した大地とは離れた位置に、敵が立っていたのだ。
 何故。と思う間もなく、
「――!!」
 己は第二射を放った。
 “卷地光來忽吹散”。開発者達が発射コードにした詩を電脳に走らせれば、まさしく詩を詠み上げたような結果が起こる。
 起きた。
 だが、
「――失せよ」
 地を巻く光が、両断された。
 ありえないはずだが、そうとしか言えないような光景を視認した次の瞬間、
「――――」
 光柱が消失した。
 無効化されたのだ。
「――!!」
 それを見て、己は哮声を挙げると、敵に向かって突進して行った。
 質量で打撃し、潰す。
 選択した攻撃方法はそれで、それが実行できる機構と機能を自分は有している。
 四肢だ。鋼で出来たそれは、地上戦や格闘戦の必要が生じたときを考え、かつての開発者達が実装してくれたものだ。
 己はその部位に力を送ると、大地を蹴った反動そのままに右前脚を振りかぶり、その爪で敵を払った。
「!?」
 だが、爪に返ってくるはず手応えも、激突した打撃音も、舞い散るはずの血潮も、何もかもが感知できなかった。
 代わりに感知できたのは、
「……!?」
 何かが爪の中を走った僅かな感覚と、一瞬の静寂と、風だった。
 直後。周囲に金属片や油が撒き散った。
 己の右前脚に合った鋼の爪から肩口までもが断たれ、その内部を露わにされたのだ。
「――その黒鉄の装甲、私の前には無意味と知れ」
 爪があった場所のすぐ横、そこに立っていた猟兵がそう告げた瞬間、
「……!?」
 己は斬撃の嵐に飲まれていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エドゥアルト・ルーデル
<<空戦で確かめる、果たして無人機は何処まで人に近づけたか…ね>>

相手が飛んでるならこっちも空を飛べばいいじゃない!【軍用機】の召喚でござるね
呼び出すのは勿論"猛禽"の名を抱いた機体ですぞ

人が【操縦】するコイツと、全てが機械のお前と、どちらがより強いのか答え合わせをしようじゃないか
適度にシザーズ等空戦機動、フレアを交えながら【随伴ドローン】を機銃で撃ち落としつつ本体と旋回戦を敢行ですぞ
本体に決める時はあえてスキを見せて罠にはめてやりますぞ
こちらのケツについた瞬間にクルビットにてその場宙返り、手持ちのAAMを全弾叩き込んでやる

機械といえど久々の空中戦だ、少し心が踊るでござるよ…

アドリブ連携歓迎




 晴天。“黒龍”はそこを航空していた。
 周囲にあるのは高空故の暴風や、眼下での屋敷の倒壊、そして、
「……!」
 己が生み出す音速の壁を突き破る音だ。
 鼻先で大気を削り捨て、前進した翼端で削った大気を掴み、身をよじることで方向を決め、後部の加速器で加速をぶち込む。
 大空に弧を描き、屋敷に向けて再度の砲撃を与えようかと、そう思っていたときだ。
「――!!」
 危険を報せるアラームが、人工的に作られた己の意識の中を鳴り響いた。
 そのアラームがどのような危険を報せるものか、それ確認する前に、
「……!!」
 己は回避運動を身に叩き込んだ。
 回転する視界の中、背後から突き抜けてきたものが見える。
 白く、細長い円筒形。
 ミサイルだ。
 ならば発射源は、と視覚素子を後方へ向けようとした時、来た。
『――聞こえてるか?』
 通信だ。
 自分の回線は秘匿されているはずだが、平然と声は続く。
『空戦で確かめる』
 それだけだった。
 視覚素子で捉えた灰色の敵機が、背後から高速でこちらにやって来た。


 相手が空飛んでるならこっちも空を飛べばいいじゃない! って思ったはいいでござるが……。
 エドゥアルトは前方、数十キロメートルは離れた先の結果を見た。
 こちらが放ったミサイルを敵が躱したのだが。
「躱し方えげつないでござるな……!」
 右翼側から軸転する挙動はあまりに高速で、その内部に人間がいないことは明白だった。
「無人機ズルいでござるな……。――まぁ、こっちも転移で一気に後ろ取った訳でござるけど……」
 “猛禽”。そう与えられた名の通り、ステルス性が高いこの機体で気づかれない距離から不意打ち気味の一発を、そう思っての行動だ。
「ま、そこまで上手く行くとは思ってなかったでござらんけどねー……」
 ともあれ戦闘は始まった。
 構図としては単純で、敵が逃げ、こちらが追う形だ。
 風防で制限された視界の中、前方に翠の色がある。敵の加速器が生み出す噴出口だ。
 そこに目掛けて、己は“猛禽”に加速を命じる。
「行くでござるよ……!」
 行った。
 すると、視界の中に変化が生まれた。
 翠の色が増えたのだ。
 数が一から三へ。増えた二つは、中央の翠光から分離するように生まれると、その大きさを大きくしていく。
 接近しているのだ。
「ドローン砲でござるな!」
 音速超過の現場では、相対速度による接近は一瞬で行われ、
「――!!」
 射撃が来る。
「ぬぉ……!」
 二連の翠光は、“猛禽”を挟み込むような軌線を描き、しかし、外れる。
 回避の挙動を取ったからだ。
 回転する視界の中、色が増えた。
 赤の色と黒の色。その二つが合わされば爆炎の華となる。
「……!!」
「よっしゃ……!」
 すれ違いざまにドローン砲の片方を、機関砲で撃ち落としたのだ。
 残る一機は、空中で旋回をぶち込んでこちらの背後につくと、再度の射撃を敢行するが、
「――フレア発射!」
 “猛禽”の側面から射出されたフレアに干渉し、散らされていく。
 後は、急制動をかけ、ドローン砲を自機の前に出させると、
「二機目!」
 撃墜していった。
 残るは“黒龍”本体。そう思い、そちらへ機体を傾けていけば、
「無人機でも考えは同じでござるか……!」
 相手もこちらの背後を取ろうと、旋回を選択していた。
 “猛禽”と“黒龍”。双方共に、前進を伴う旋回は螺旋を描き、やがて交差していく。
 失速と旋回を繰り返し、ときに相手の天上側へ、ときに相手の下腹側へ。お互いに相手の後ろを狙っていく。
 ローリングシザーズだ。
 白の帯が、僅かに上昇気味に空を東から西へ彩っていく。
 そして、彼我が交差する一瞬を狙って、
「――!!」
 敵が主砲と副砲を乱射してくる。
「ぉお……!」
 音速を超え、轟音しか聞こえない己の耳にも、飛沫くような音が確かに聞こえる。
「ぬっ……!」
 直径十メートルはある主砲の範囲から逃れようとしても、副砲がその外側をカバーする。
 結果、こちらの回避運動はあまりに大回りとなり、
「――!!」
 そこを無人機ゆえの急旋回で内側に回り込まれ、背後を突かれる。
「このままじゃマズイでござるな……!」
 そう判断した己は、シザースから抜け、アフターバーナーに点火。一気の加速で仕切り直しを図るが、
「……!」
「しつこいでござるね……!」
 龍が食らいついてくる。
 もはや彼我は直線で結ばれ、その直線をなぞるために、龍が喉奥に光を溜めた瞬間、
「――なんちゃって」
「……!?」
“猛禽”の頭を天上に向け、腹を眼前の大気にぶつけた。
 急制動。
 コブラだ。
 否、挙動はそれで収まらない。
 大気の壁にぶつかった腹が、押されるように向き、
「ぉお……!!」
 回った。
 高度を変化させないままの、後方宙返り。
 クルビットだ。
 それを追撃されてる最中で行えばどうなるか。
「後ろは貰ったでござるよ!」
 眼前に見える“黒龍”の後ろ姿に向け、
「――全弾発射!!」
 ウェポンベイ、ハードポイント。それらに収納、懸架されたミサイルの全てを打ち込んでいった。
「……!!」
 多重の爆発と龍の絶叫が空を揺らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
……機動力を奪ってくれたなら後は……
…厄介なのは随伴のドローン……【愚者の黄金】で作った壁や瓦礫に身を潜めたりで副砲から身を隠して時間稼ぎ……その間にドローン機へとハッキングを仕掛ける……
ドローン機に設定された敵味方の識別を反転。こちらを味方に、黒龍を敵と認識させて黒龍へ攻撃させる…
そしてドローンを足掛かりに黒龍へハッキング……高度や自己速度、方位などの数値を狂わせて足止めを行う……
…黒龍がハッキングの影響からの復帰動作を行う隙に接近、【起動:海神咆吼】により呼び出したワンダレイの主砲、荷電粒子砲を叩き込むよ…

……事前に情報を集めてなかったら大変だったかも知れない…




 エンジンを破壊され、四肢には砕きと切断の結果を与えられた“黒龍”は、大地で伏すようにしていたが、
「――!」
 攻撃の勢いは未だ衰えてはいなかった。
 怒涛。その一語を突き詰めたような攻撃の源は、翼下の副砲と、
「随伴のドローン砲……!」
 それらの攻撃から逃れるために、メンカルは屋敷の残骸から残骸へと身を移していく。
 他の猟兵が機動力を奪ってくれたけど……!
 残ったドローン砲が厄介だ。主機である“黒龍”に近づかせないための牽制と、こちらの逃げ場を潰すための掃討の二種の射撃を送ってくる。
「黄金よ……!」
 隠れていた屋敷の残骸が吹き飛ばされ、自身が露わになるが、すかさず“愚者の黄金”を発動。
「それも多重に……!」
「……!?」
 周囲を埋め尽くすほどに黄金の壁を一斉召喚すれば、ドローン砲は突然のことに対応できず、こちらを見失う。
 これでいくらか時間が稼げる……。
 壁のうちの一つに隠れながら、己は準備にかかる。
「……!」
 壁の外では、ドローン砲が突破しようと砲撃を与えてきている音が聞こえる。
 あまり時間はかけてられない……。
 腕に巻いた“マルチヴァク”の実行キーを押す。すると、“愚者の黄金”で召喚した壁の表面に魔術陣が生じ、
「――――」
 それを視覚素子で認識したドローン砲が、動きを止めたのを壁外の音で解る。
 地下の秘密工場のときと同じく、ハッキングによる侵入に成功したのだ。
「事前に情報収集していてよかった……」
 “黒龍”や付随するドローン砲の情報は入手しているのだ。アタックを仕掛けるべき箇所と、そうでない箇所。それらを瞬時に判断し、実行していけばどうなるか。
「システムの掌握……」
 その言葉通りの結果が生じた。
「――――」
 ドローン砲が壁から離れ、別の場所に向かっていく。
 そこは、
「敵はあっち……」
「……!?」
 敵と味方の区別を歪められた従機に、“黒龍”は驚愕と憤怒、そんな感情を感じさせる電子の叫びを挙げる。
「ドローン砲を足がかりに……」
 “マルチヴァク”を操作する己の手は未だ止まらない。
 次はドローン砲を起点に、“黒龍”へアクセスを仕掛けているのだ。
「むっ……。気づかれた」
 己に侵入してくる異物を排除しようと、“黒龍”が防衛機構を稼働させるが、
「こっちの方が早い……」
「……!?」
 直後。壁の外で大地を揺らすほどの音が聞こえた。
 高度や自己速度を狂わされた“黒龍”が、転倒したのだ。
「……!」
 大地を擦る音は破損した四肢からで、飛沫くような音が不整に続いているのは加速器だろうか。そんなことを考えながら、
「――どうやら正解」
 隠れていた壁から身を剥がした。
 視界の中、空は晴天で、大地は穿ちや斬撃で不規則だ。
 そんなシチュエーションの中、己は敵に向かって歩いていく。
 やがて、彼我の間が数十メートル程に縮まる。こちらからすればまだ遠いが、相手の巨体からすれば眼前と、そう言える距離だ。
「――――」
 己はそんな位置で“シルバームーン”を掲げると、
「――座標リンク完了」
 唱えた。
 直後、己の上空で空間が歪んだ。
 歪みは徐々に広がっていき、やがて真円の形を成すと、その奥から現れるものがある。
 硬質な素材で出来た、巨大な二連の板だ。
 それが歪みの空間からこちら側の空間へ突き出てくる。
 二枚の板はその方向を斜め下に向けており、“黒龍”を板と板の間に捉えている。
「――魔女が望むは世界繋げる猫の道」
 詠唱を続けていけば、呼応するように二枚の板の間で現象が生じる。
「――――」
 放電だ。それはやがて規模を大きくしていき、板の間を埋め尽くすほどの球体となる。
「……!」
 すると、いくらかのシステムを取り戻したのか、己に向いている莫大な雷光に気付いた“黒龍”が叫びを挙げる。
「もう遅いよ。――主砲、一斉射……!」
 頭上に掲げた“シルバームーン”を敵に向けて振り下ろすのと、ワンダレイの主砲から荷電粒子砲が叩き込まれるのは同時だった。
「――――」
 莫大な量の光が周囲全てを一瞬で埋め尽くし、それから僅かに遅れてやってきた音はもはや無音で、ただ打撃と言えるほどの圧を全方位に散らして、行く。
 行った。
「…………!!」
 怒涛という勢いで押し寄せる衝撃の波はやがて収まり、震源の状態を周囲に露わにする。
「…………」
 防御のために召喚した黄金の壁。半ば崩壊したそれから身を出し、己はその現場を見た。
「――――」
 そこに合ったのは、抉れ、吹き飛んだ大地だ。
 数十メートル規模のクレーターの中央には、何も残っていない。
「ふぅ……」
 己はそれを見て、空を仰ぐ。
「……事前に情報を集めてなかったら大変だったかも知れない……」
 もはや消え去った強敵を思った言葉が、風に散っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月25日


挿絵イラスト