●UDCアース とある迷路の中にて
最初は最近の技術は進歩したんだなぁと暢気に考えていた。
深夜の住宅街を模したという期間限定の屋内ホラー迷路アミューズメント。
史上最大規模の広さと、本物と見紛う建築物など力を入れた美術で話題になっていて、それじゃあ俺も遊びに行ってみようかと軽い気持ちで出掛けてみた。
長い行列に並んでようやく中に入ったら、そこに広がっていたのは噂通り本物と見紛うばかりの深夜の住宅街だった。
――いや、違う。そんな生易しいものでは無く、確かにそこは深夜の住宅街だったのである。
最初は天井に投影されたプラネタリウムかと思った星空は、やけに星が多く月が大きい本物の夜空。
微かに建物の中から聞こえてくる話し声などの物音はスピーカーによる再現ではなく、実際に誰か人の気配を潜めて話す声。
そういえばあれだけ自分より前に並んでいた人影は見当たらず最初はてっきり人が入るタイミングの間隔を空けて静かな恐怖を楽しむためかと思っていたが、それにしたってこれだけ歩いていて人影も見当たらないのはおかしい。
嫌な予感に暴れる鼓動と歩き続けて疲れた足を休めるために足を止めて改めて周りを見回すと、一つ先にある十字路の影に何か白い物が覗いているのが見えた。
目を細めてよく見ると、それは人の手だった。
ますます強くなる嫌な予感から目を背けて、これだけ広い迷路でクリアする前に具合が悪くなって倒れてしまったのかもしれないと慌ててそちらへ駆け寄る。
「体寄越せ」
頭上から若い女性の声、にしてはやけに悍ましさが滲む声が響く。
「体寄越せ――、
体寄越せ体寄越せ体寄越せ体寄越せ体寄越せ体寄越せ体寄越せ……!!」
慌てて駆け寄った白い手の先には身体など無く、そこにあったのは血だまりだけであった。
浅く繰り返す呼吸に構う余裕もなく頭上を見上げるとそこにいたのは――。
見たものの恐ろしさに闇をつんざく悲鳴を上げて、俺は我武者羅に夜の街を駆け逃げた。
●グリモアベースにて
「日本の夏って蒸し暑いよね。
それを紛らわせるためにホラー系のアミューズメントが流行るのよく分かる気がするよ」
ジェラルド・マドック(しがない演奏家・f01674)は自身のタブレットでホラー系アミューズメントの宣伝を検索して、納得したように呟く。
「まあ、今回それがオブリビオンを引き寄せる餌になってしまったみたいなんだけど。
あ、あった、これだな多分」
集まってもらった猟兵に向けてタブレットを見せながらジェラルドは説明を続ける。
「史上最大規模のホラー系迷路アミューズメント、……夜の住宅街に潜む無念の死を迎えた人々の霊から逃げるという内容みたいだね。
イギリス人としては幽霊はそこまで怖いものでは無いけど、日本の怨霊って悪魔的な怖さがあるからそこまで得意じゃないんだよなあ。
……というのはさておき、このアミューズメントを楽しむ人々の恐怖など激しい感情を餌にしてオブリビオンが誘き出されたみたいだよ。
ここに入ったらしき人の視点で予知で見たんだけど、オブリビオンの姿は見られなかったんだよね。ぼんやり何処か建物の中に逃げ込んで隠れてる気はするんだけど。
だから皆には実際にここに行ってアミューズメントを楽しみがてらこの予知の人物を探して情報を聞き出してもらいたいんだ」
ジェラルドは猟兵達を見回してちょっと心配そうに言葉を続ける。
「こういうホラー系ダメな猟兵さんもいるかな。オブリビオンを引き寄せるという意味では好都合なんだけど……。
まあ、最終的にオブリビオンを倒せればこの事件は解決するわけだから、怖がるのはあまり無理しない程度に頑張ってね」
梅法師
今回この依頼を目に留めてくださった皆様ありがとうございます!
まだ試行錯誤の身ではありますが、楽しんでいただけるように頑張って執筆したいと思います。
●画像について
オブリビオンの正体についてネタバレしてますがPL情報でお願いします。
●アドリブ・絡みについて
リプレイを書く作業が不慣れなので断言はできないのですが、恐らくアドリブを入れる傾向があると思います。
そのため、アドリブ不可の場合はプレイング冒頭に「×」(記号のみで大丈夫です)を記入していただけると嬉しいです。なるべくアドリブを入れないように気を付けます。
また、他の方のプレイングとこちらの方で勝手に組み合わせてリプレイ執筆させていただく場合もございます。特別「他の人と一緒のリプレイがいい」とか「単独希望」などご希望があれば同じく冒頭に記入していただけると嬉しいです。
●判定方法について
基本、実際にダイスを振ることで判定を行っております。そのため、プレイングに何か良くない点がある訳ではなくとも判定が悪くなってしまうこともございます。
場合によって、プレイングボーナスやプレイングを組み合わせることで判定を良いものに変えるなども行うようにはしますが、もし判定が良くなくとも「あぁ…ダイスの女神が悪ふざけしたんだな」と思っていただければありがたいです。
●執筆速度・再送について
こまめに覗いて早めの執筆を心掛けますが、背後事情により土日祝日は執筆作業が出来ない可能性がございます。
なるべく無いようにしたいとは思うのですが、再送をお願いすることもあるかもしれません。その際は大変申し訳ありませんがご協力いただけるとありがたいです。
●プレイング募集期間について
基本的に各章冒頭に導入を上げさせていただき、それが反映されると同時に募集開始とさせていただきます。
〆切についてはMSページの自己紹介の文章内またTwitterアカウントでも随時記入・更新を行っておりますので、お手数をお掛けして申し訳ありませんがプレイング送信前にそちらをご確認いただけると嬉しいです。
プレイング募集期間外に送っていただいたプレイングに関しましてはなるべく判定を行いたいとは思っておりますが確約は出来ないのでご了承ください。
なるべくご期待に沿えられるように努力しますので、どうぞ見捨てずに温かい目で見てやってください。
改めてどうぞよろしくお願いします!
第1章 日常
『ドキドキ☆ホラータウン』
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POW : 思いっきり叫ぶ、気合で恐怖に耐える
SPD : 全力で逃げだす、相手が偽物か見抜く
WIZ : 怖くて相方にしがみつく、理性で表情を崩さない
イラスト:貝卓
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
涼を求めたのか、口コミを見て気になったのか、それを楽しみたいと並ぶ行列はかなりの長さだった。
それに比例して待ち時間も長くなるわけだが、その間にもなるべく情報を得ようと猟兵達はこのアミューズメントのチラシを眺める。
――とある夜、閑静な住宅街で殺人事件が起きる。
翌朝、その犯人である殺人鬼は警察によって捕まるが、それまでに無差別に殺された犠牲者は多く、それまで平和な日常を紡いでいた住宅街は無念の死を迎えた被害者の怨霊によって、いつまでも夜が続く呪われた街になってしまった。
このアミューズメントの参加者は、襲ってくる怨霊を避けながら出口を目指す。
そういった内容であるらしい。
まあ言ってしまえばよくありそうな設定ではあるのだが、実際はオブリビオンに狙われる中で出口の無いどこまでも夜の住宅街を彷徨い歩くものと化しているのであれば、そう暢気なことは言っていられない。
そうこう考えているうちにいつの間にか自身が迷路に入る順番が回ってきていたらしい。
入口の先に続く深い闇に猟兵は足を踏み出した。
※この章ではアミューズメントを満喫しつつ、予知の視点であった人物が隠れている建物を探していただきたいと思います。
ユーベルコードや技能に関わらず、何らかの探す手段を書いていただければ採用したいと考えておりますのでどうぞよろしくお願いいたします。
ソラスティベル・グラスラン
ふ、ふふっ、迷路なら故郷アルダワで慣れていますとも!
ええご心配なく!わたしは全然大丈夫でひゅ!
無辜の民を守る為、『勇者』とは誰より前に立つ者!【勇者理論】(防御力重視)
【勇気・気合・鼓舞・怪力・盾受け・オーラ防御・見切り】でかるーく身構え、いざ突撃ッ!!
……一人になると、臆病な心がまる裸
キュンキュン(恐怖が)きます!
懐中電灯で夜道を照らしつつ予知の人を捜しに……
物音に体が跳ね、ひ、と声が引き攣る
だ、大丈夫です、おばけなんていませんよー
いるのはオブリビオンなのですから……あ、あれ?つまり本物なのでは?
……ま、迷子さんどこですかー!
はやく出てきてくださいっ、わたしも出られないではないですかー!?
暗闇へ続く入口の前でソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は大きく深呼吸をし、自身を鼓舞するように拳を握る。
「ふ、ふふっ、迷路なら故郷アルダワで慣れていますとも!」
その言葉は勇ましいが、若干震える言葉と拳に周りの者は内心「(ああ、めっちゃ怖がってるんだな……)」と思う。
「え、中の迷路は広くてクリアするまでに長時間かかるかもしれない、ですって?
ええご心配なく!わたしは全然大丈夫でひゅ!」
入口の係の者が迷路に入る前の最終確認として注意事項を説明してくれるが、ソラスティベルは力強く言い切る。若干噛んでいたが。
「どんな迷路やお化けが相手でしょうと、私を支える絶対の真実にて信念があれば負ける気はしません!
勇気で攻め! 気合で守り! 根性で進む! 一部の隙も無い、完璧な作戦ではないですか!
……え、震えてるですって? これは武者震いです!」
まだ若干恐怖は残っているものの、強大な敵に立ち進む勇者の如く力強く暗闇の中へ踏み入るのだった。
ユーベルコード「勇者理論」を発動したソラスティベルは、懐中電灯を握り進んでいく。
どうやら入ると外の光や物音を遮断するようにうねうねと続く曲がり道の後、迷路空間へ入り込む作りとなっているらしい。
進んだり曲がったりするうちにどんどん遠ざかっていく外界の光や音に少し寂しさを感じながらも、少しでも情報を見落とすまいと注意深く周囲を窺う。
そして曲がり道が終わって問題の迷路空間に入るとソラスティベルは思わず「何ですか、これ……」と小さく驚愕の声を上げた。
そこに広がっていたのは予知で聞いた通りの『夜の住宅街そのもの』だった。
空へ懐中電灯を向けても、実際の空に光を当てたように闇へ光が吸い込まれ、静かな夜の外気が空間を満たす。
そっと近くの住宅の塀に触れれば、それはハリボテなどではなく実際にコンクリートで出来て、少し肌寒い夜の空気に冷やされたものであることが分かった。
お化け屋敷の中とは明らかに思えない空間に息をのみ、その音がやけに響いたことで改めて己が一人であることを実感する。
「うう、心がキュンキュンします……。
激しい動悸、血の気が引くような軽い眩暈、これはもしかして恋……?」
一緒に来る仲間や、そうでなくとも他の一般客がいればツッコミが入るだろうことを言っても、その場に広がるのは静かな闇のみ。
若干涙目になりつつも懐中電灯で周囲を照らしつつ住宅街を進むのであった。
「た、確かにわたしの前にもたくさん人は並んでいたのに、その人達らしき気配もしませんね……。
前の人が入ってから数分間隔を空けてから次の人が入るようなシステムみたいでしたが、それでもこんなに人の気配がしないというのはありえるんでしょうか」
十分ほど歩いてみて自身以外の気配がしないという現状に疑問を感じて小首を傾げる。
実際経験を積んだ猟兵である彼女が住宅街を走る道をいくら進んでも今のところ人の気配を感じないのは普通に考えると不思議なことだった。
道を挟む住宅を外から覗いても、深夜の住宅街という設定もあってか電気の付いていない家しか見かけない。
何とも言えない不気味さに対する不安を紛らわせるため小さく「はぁ……」と息を吐くと、がさり、と何かが樹木を撫でる音を立てた。
咄嗟に身構えつつ懐中電灯をそちらに向けて周囲を窺うものの生きるものの気配はなく、少し遅れて夜風がソラスティベルの頬を撫でた。
「な、なんだ、風でしたか……。
まあ、そうですよね。だ、大丈夫です、おばけなんていませんしー。
いるのはオブリビオンなのですから……、あ、あれ?つまり本物なのでは?」
勇気を奮い立たせて自身に言い聞かせるように声を上げるも、自身の言葉に若干の不安を覚える。
そして、この屋内空間に夜風が走る……?
明らかに奇妙な空間に入り込んでしまっていると自覚したソラスティベルは、若干の間を置いて現状を噛みしめた。
「……ま、迷子さんどこですかー!
はやく出てきてくださいっ、わたしも出られないではないですかー!?」
月と星が見下ろす夜空に、焦りを滲ませた彼女の声が響いたのだった。
「……今のは……?」
我武者羅に走り続けて何とか飛び込んだ家の中の一室で、自身を守るように体育座りしていた男が外から聞こえた声にふと顔を上げる。
何を言っていたか内容まで聞き取れなかったが、助けを求めるような必死さが滲んだ声音だったように思う。
もしかすると俺が見たあの化け物に襲われている人がいるのかもしれない。
そう思うと助けに行きたいと思う反面、自分が助けに行って何か力になれることがあるのか、そして言葉を話すことが出来るらしいあの化け物が俺を連れ出そうとしている誘引餌なのではないかという不安が思考を占める。
「そうだ、俺が聞いた声は何か、体寄越せって言ってたよな……。
さっきの声はそういう感じじゃなかったような気もする。
……じゃあもしかして他の人が……?」
しかし、もしかするとあの時はそうでなかっただけで普通に言葉を話せるのかもしれない。
良心と恐怖に板挟みにされながらも男は周囲の物音により注意を向けるようになったのだった。
成功
🔵🔵🔴
デイヴィー・ファイアダンプ
ここでは本物の幽霊が出るらしい、そんな噂話をされる程度なら別に問題ないだろう
しかし、だからこそ怪異は取り除かれなければならないだろう
これはアミューズメントであり、あくまでお遊びとして楽しむべきものなのだからね
……幽霊が怖いかと聞かれれば、怖いんじゃないかな
特に怨霊なんてのは人が残した未練そのものだろう?
理由のない化け物に比べればそれはとてもとても恐ろしいものさ
それにしても迷路とは言ってもそれなりに順路はあるようだね
ほら、素直に楽しめば逃げるように出口へ向かえるじゃないか
しかしそうなると、まるで迷路から抜け出せさないように驚かされた場所があった気がするな
戻って確かめてみるとしようか
外の空間の光と空気を切り離すために設けられたくねくね道を過ぎて、住宅街の迷路空間に入り込む。
本来屋内アミューズメントにあるはずのない真夜中の住宅街をデイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)は眺める。
「(『ここでは本物の幽霊が出るらしい』、そんな噂話をされる程度なら別に問題ないだろう。
しかし、だからこそ怪異は取り除かれなければならないだろうな。
これはアミューズメントであり、あくまでお遊びとして楽しむべきものなのだからね)」
デイヴィーは、冷たい色を放つ灯火を封じ込めた魂の檻を片手に、その灯火と街灯を頼りに周囲の様子を窺いつつ住宅街の空間を真っ直ぐに進んでいく。
彼は迷路に入る前に思い付いた考えを元に、謎の空間に惑わされずにいっそのこと自身がもしこの迷路を作ろうと考えた際にどのような動線にするかという考えだけで足を進めていた。
UDCが入り込んだことによって異様な空間と化したこの迷路も、元は普通の人が考えた普通の迷路。
そうであるならば、本来設計時に作られた出口の位置を割り出すことが出来るのではないか、また予知の視点となった男が進んだ順路を辿ることが出来るのではないか、そう考えてのことだった。
それに下手に異様な空気に飲まれて混乱した状態で迷路の中を歩いて一度道に迷ったら、元の分かる場所まで戻るのに時間がかかりそうだと思ったのもある。
――住宅街の空間に入ってすぐの幅が広い道を真っ直ぐに歩く。
自身より前に並んでいたはずの人の姿は見えず、暗闇と静寂に満ちた夜の道が住宅の敷地に通っている。
――そこそこ大きな家の横を通り過ぎ、アパートの前を通る。
迷路空間に入ったばかりの時は中を暗闇が支配している家がほとんどであったが、迷路を進むにつれて明かりを灯した家も目立つようになってくる。
――しばらく進んだ後に自然に目に付く橋を渡って、十字路に辿り着く。
自身が来た以外の三本の道は、どれもほとんど変わらない道幅で、道の両脇を挟むように立っている街灯も変わらない間隔のように見えた。
そして相変わらずどの道にも人を含めた生き物の気配など感じられない。
さて、どの道を選ぶか……と悩みながらそれぞれの道の先を見渡すと、右手に続く道の先に何か白い小さな物が落ちていた。
人気の無い道に、デイヴィー以外の存在を映すことのないカーブミラー、デイヴィーが持つ灯火よりくすんだ光を放つ街灯、薄暗い中からぼんやりと浮かび上がる白いガードレール。
不気味な雰囲気はあるものの住宅街の中に普通にある物の中で、唯一白い小さな物――人の手だけが異様さを醸し出す。
依頼をこなしてきた経験上、血だまりの中に手だけがポツリと落ちているのを見て悲鳴は上げたりしないものの、しかし嫌悪感は拭えず顔を顰める。
「これが予知で聞いた人の手か。
……ということはここから予知の視点となった男は逃げ出したんだな」
逃げ出したスタート地点は割り出せたものの、その後に男は我武者羅に逃げたと考えるとどちらの方向に向かったか予測するのは難しい。
しかし怪物から身を隠すのに、それ程長い距離を身を隠す場所が少ない道を駆け抜けるという事は考えづらいだろう。
「となれば、予知の男はここから然程遠くない所にいると考えていいだろうな。
……にしてもこの手の主は無念だったろうな」
突然異様な空間に閉じ込められ、惑いながらなんとかここまで来ることはできたものの、オブリビオンに身体を喰われ手のみが道にポツリと捨ておかれる。
「(……幽霊が怖いかと聞かれれば、怖いんじゃないかな。
特に怨霊なんてのは人が残した未練そのものだろう?
理由のない化け物に比べればそれはとてもとても恐ろしいものさ)」
この手の主の仇であるオブリビオンを倒すことが少しでも供養になればいい。
そう考えながら、デイヴィーはそのオブリビオンの手掛かりを持つ男の位置を割り出そうと周囲の建物を見回すのだった。
成功
🔵🔵🔴
彼岸花・司狼
呉羽(f05274)と参加
・・・ふむ、確かにお化け、と言うものが居るのなら怖いだろうが。
邪教、邪神、魑魅魍魎のオブリビオンと比べると、どうしても質が落ちるな。
リアルに人間の形を捨ててる危険物を同一線上で語るのもどうか、と思うが。
UC:無明と終焉で【目立たないように】呉羽に対する反応を【暗視】で別の位置から確認して偽物か判定する。
予知の人物の探索については人狼なので【聞き耳】をたてて何か聞こえないか確認。
予知の人物は建物の中にいる、で有れば【追跡】技能で住宅入り口や、路地への入り口など順路以外に侵入した形跡がないかを探る。
やっぱり、殺し以外はまだ苦手だ。
聞き出すのは、別の誰かにお願いするとしよう
病院坂・呉羽
司狼(f02815)と参加
【POW】
うん?・・・うん、きゃー・・・?
いや、司狼、コレは明らかに配役ミスだと思う。
サムライエンパイアのリアル魑魅魍魎のほうがヤバかった。
撒き餌としてそれなりに叫びつつ、人捜しの方に終始する。
元より調査は不得手、あくまで見つかれば良いな、ぐらいのノリで適当に探す。
やっぱり、ただ斬る方が断然、楽
・・・そもそも司狼のほうがお化けっぽいような気がする。
「……ふむ、確かにお化け、というものがいるのなら怖いだろうが。
邪教、邪神、魑魅魍魎のオブリビオンと比べると、どうしても質が落ちるな。
リアルに人間の形を捨てている危険物を同一線上で語るのもどうか、と思うが」
片手にこのアミューズメントのチラシを持ち街灯の明かりに照らして、脅かす役であろう血糊を纏った怨霊らしき姿の人の写真を見ながら彼岸花・司狼(無音と残響・f02815)は軽く首を傾げる。
「うん、俺がこれに怯える役は向かないな。
やっぱり、殺し以外はまだ苦手だ。
その役は呉羽にお願いするとしよう」
さり気なく仕事を割り振られた病院坂・呉羽(剣殺夜叉・f05274)は、周囲の住宅街の様子を見まわしていた目を司狼に向けて「……うん?」と非難めいた声を上げる。
「いや、ちょっと待って。
私もそういう怯える役とか向いてないと思うんだけど」
「……祈りも慟哭も届かない、ただ安らかに息絶えろ」
「あ、ちょっと! 本当に待って、こら姿を隠さないの……!」
ユーベルコード「無明と終焉」の詠唱する司狼に慌てて呉羽は声を掛けたが、それに構うことなく司狼は夜の闇に姿を溶け込ませたのだった。
こうなっては道を進むしかないと呉羽は住宅街を進んでいく。
姿は見えないが、司狼が自分一人を置いて勝手に離れるような人柄ではないと信用はしていた。
そうであるならば、司狼の言葉通りに脅かす役の人や仕掛けを見つけて適当に怖がりつつ様子を窺うのが良いだろう。
しかし返事も聞かずに仕事を押し付けたことに関しては後で文句を言わなきゃと、不満そうに口を尖らせる。
――その時だった。
真っ直ぐ進んだ先の曲がり角の影に、街灯の明かりを受けて揺らめく影を覗かせて何者かが待ち構えているのを呉羽の視線が捉える。
怯える振りという仕事に備えて深呼吸をしつつ、その影のところまで近付いていく。
「(……うん、きゃーって声を上げればいいのよね……?
いや、どう考えてもわざとらしい悲鳴しか上げられない予感しかしない。
司狼、コレは明らかに配役ミスだと思うんだけど。
さっきのチラシの写真を見て『サムライエンパイアのリアル魑魅魍魎の方がヤバかった』という感想しか浮かばない私に振るような役じゃない)」
内心いろいろ思いつつも、一般人にも接近していることが分かるように気配や足音を隠すことなく進む。
しかしある程度近寄っても、その影の主は揺らめく以外の動きを見せない。
「(え、ここまで近付いても反応しないのって脅かす役として大丈夫なの?)」と思いつつも、なるべくそれらしい悲鳴を上げようと意を決して曲がり角の影を覗き込む。
そこにいた、いや、あったのは赤く汚れて喉を食い千切られた恐らく怨霊役の男の亡骸だった。
流石に驚いて後ろに飛びのいた瞬間、頭上の電柱の上から悍ましい男の笑い声が響く。
慌ててそちらに視線を向けると、月の光を背に受けて影になった何かが佇んでいた。
「あれは、怨霊役の何か……?」
「違う、あれは本物のオブリビオンだ」
すぐ後ろから司狼の声が聞こえたかと思うと、轟刀を構えた司狼がすぐ横を駆け抜けて『何か』が留まっている電柱に重い一撃を叩き込む。
派手な音を立てて倒れる電柱が倒れる中、慌てて『何か』は空に飛び上がる。
それは跳躍ではなく飛行することで何処か遠くへ飛んでいく。
「ちっ、影になっていてよく見えないまま攻撃を仕掛けてしまったが、あいつは空を飛べるやつだったのか」
悔しそうに『何か』の後ろ姿を見つめる司狼に対して、驚愕に顔を歪めた呉羽は数秒言葉が出なかった後に大きな声で叫ぶ。
「いや、これアミューズメントの電柱……! 倒していいの?!」
その言葉に対して首を傾げた後に「前に入った依頼でUDC組織の者がいろいろ片付けてくれたから大丈夫かと思ったが、まずかったか?」と司狼は言葉を返す。
「私だって、下手に調査するより、やっぱりただ斬る方が断然楽とは思うけど……!
……そもそも下手なオブリビオンより司狼の方がお化けっぽいような気がしてきた」
「それにしても、先程の電柱の音にも呉羽の大声にも特に周囲に反応は無いようだな」
司狼は人狼という生まれを活かして聞き耳を立てるものの、出て来て様子を窺ったり怯えて逃げ出したりするような物音は聞こえない。
「つまり現時点でこの周辺に予知の人物はいないということになるのね」
「そういうことになるな。
……ん?」
呉羽の言葉に返事をしつつ、司狼は男の亡骸に近寄ってしゃがみ込む。
「この血だまりを踏んで向こうに逃げていった人がいるらしい」
呉羽も司狼自身もこの血だまりに足を踏み入れていないし、仮に踏んでいたとしても現時点で血は既に乾ききっている。
となれば、血だまりから延びる赤い靴跡は誰か別の人のものだろう。
オブリビオンは空を飛べるらしいことが分かっているし、わざわざ地を走って移動するとも考えづらい。
「もしかして予知の人物が?」
少し明るくなった呉羽の声に司狼は頷く。
「とにかくこの靴跡と血の匂いを追ってみよう。
この後も適宜大声を上げて撒き餌役頼んだ」
その言葉に呉羽は再び「……うん?」と非難めいた声を上げたのだった。
そこから十数分ほど追跡した後、血の匂いがとある住宅まで続いていることを司狼と呉羽は突き止める。
「問題はこの中にいる人が予知の人物かというところね」
先程呉羽が上げた悲鳴(らしきもの)に、中にいる何者かが怯えたように影から住宅の周りを窺っているのは分かっていた。
「もしそうでなくとも一般人であれば保護する対象だしな」
取り敢えず中にいる人物に声を掛けなくては始まらないだろうと決めたところで、二人の間に沈黙が流れる。
「どうしたんだ、呉羽。
ここは呉羽の仕事だろう」
「いや、私は既に悲鳴上げ過ぎて喉疲れたし。
司狼に任せる」
「俺は、殺し以外はまだ苦手だ」
「私だって、ただ斬るだけの仕事が向いてる」
「「……」」
二人の間に静かに火花が散ったその瞬間だった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
火奈本・火花
「CGや特殊メイクなどの技術も進んで、ホラーと本物の区別もつかない位ですからね。……UDCに慣れている分、こういうのは得意ではありますが」
■行動
アミューズメントも楽しむ事で、予知された人物の思考パターンを辿れればと思います
サイバーコンタクトをフル稼働しての『情報収集』で男性の足取りを『追跡』し、建物などの『地形の利用』の感覚で、逃げ込みやすそうな建物を探りましょう
建物に当たりを付けた後は
対象の人物も必死で隠れて居そうですし、同じように恐怖に遭遇した女性を『演技』して『おびき寄せ』る手に出ましょう
自分の位置を教えるような悲鳴や、助けて欲しいとアピールしながら建物を走り回る事で探索するつもりです
「もしかして私と同じ猟兵の方でしょうか」
予知された人物がいるだろうと目星をつけた住宅の前で何やら静かに争っている様子の二人の姿を見て、火奈本・火花(エージェント・f00795)は声を掛ける。
「少し様子を窺わせてもらったのですが、もしよければ中にいる人を確認するのを私にやらせていただいてもいいでしょうか?」
時遡って数十分前。
火花は迷路に入り、突如姿を現した夜の住宅街に感嘆していた。
「CGや特殊メイクなどの技術も進んで、ホラーと本物の区別もつかないくらいですからね。
……UDCに慣れている分、こういうのは得意ではありますが。
でもやはり、こうして実際に噂の『夜の住宅街』を見てみると感心しますね。
迷路空間から出られなくなるという異変はUDCによるものらしいですが、この住宅街を現実もかくやというレベルで模したのは元々美術の方がすごいのか、それともこれもUDCが居付いたことによる何らかの変化なのでしょうか」
恐る恐るブロック塀や生垣に触れながら、本物に触れているような触覚に首を傾げる。
「やはり本物……?
周りの情報収集も含めて少し本気を出させてもらいましょうか。
サイバーコンタクトでの情報解析を開始。……システムを掌握する」
ユーベルコード「電脳の魔術師」を発動し、改めて周囲を見回した火花は、今度は感嘆ではなく、UDCサイバーコンタクトによって得た情報に驚愕し眉を顰める。
――ブロック塀、それどころか住宅に至っても実際に建築に使われている本物の素材が使われている。
――生垣の植物も本物、生きている植物によって出来ている。
――そして頭上に広がる夜空、アミューズメントを楽しむとしては邪道だが、いざとなればハッキングをして明るくしたところを探索する手も考えていた。しかし、やけに大きい月や多い星に違和感は覚えるものの、この夜空は本物であるとサイバーコンタクトは伝えてくる。
「細かく一つ一つ視覚情報を得るのも興味深いですが、どうせなら開けた場所から一気に周囲の情報も得たいところですね。
……ん、この建物の上とかちょうどいいでしょうか」
ふと近くに月を隠すようにそびえるマンションに視線を向け、屋上まで上って周囲の視覚情報を得ることを思い立つ。
そして数分後、エレベーターや階段を駆使して住宅街を見下ろせる高さのマンションの屋上に立った火花は、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるしかないのだった。
「……本当に今の状態ではこの住宅街から出ることは出来ないのですね」
そこから見えた景色は、地平線までずっと住宅街が続く異様な空間だった。
もしここが屋外の普通の住宅街であるなら、ある程度距離が離れれば駅周辺などの都会もしくは山など田舎に切り替わる境界があるだろう。
しかし実際に見えるのは屋内迷路の出口どころか、どこまでも続く住宅街。
そっと伊達眼鏡に触れて自身を落ち着かせた火花は、マンションを下りながら目に強い意志を滲ませる。
「確かにここは異様な空間ですが、そうであればこそUDCを倒してここをただの迷路に戻すまでです。
そのためにも早く予知の人物を探さないと……!」
マンションの上からの偵察により自分以外の猟兵の姿も確認できた。それにUDCの餌食となったであろう一般人の姿、住宅の中に隠れて息をひそめて周囲を窺う一般人の反応も。
取り敢えず猟兵達の動きと彼らの周囲の状況を見た結果から、予知内容で告げられた白い手が落ちている場所、そこから逃げやすいルートを割り出していく。
そして割り出されたルートの中から二人組の猟兵が何やら追跡しているらしいルートと重なるものを参照して、その向かう先にある一般人が隠れているらしい住宅の候補を絞っていった。
「という訳なんです」
自身の追跡方法を猟兵に伝えて住宅の二階部分に視線を向ける。
「取り敢えず姿を隠しつつ周りの情報を探りやすい二階に姿を隠しているようですね。
すぐ逃げ出せるかという不安はありますが、まあ妥当な判断だと思います」
月の光を受けて反射する伊達眼鏡越しに、未だ体育座りで震えているらしい人の反応を火花のサイバーコンタクトは捉えていた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『ひきこもりは知っている』
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POW : 壁越しに話しかける、強行突破で室内に侵入する等
SPD : こっそり侵入し情報を探す、周辺の人物に聞き込みを行う等
WIZ : 興味を惹くようなものを用意する、手紙やメールを利用する等
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達の調査によって予知の視点となった男が閉じこもっている場所――迷路空間となっている夜の住宅街の中にある、とある一軒家を突き止めることが出来た。
どうやら彼はこの二階建ての家の二階から周囲の様子を時折窺いつつ、外から悲鳴や声が聞こえるのに動けないでいる自分を守るように体育座りをしているらしい。
猟兵達からしてみれば怪物や無残な死体を見た後に一般人がそう簡単に家の外に出られるとは思ってはいないが、男にしてみれば己の保身のために安全な場所に閉じ篭って聞こえてくる悲鳴を聞こえないふりをしている自分に嫌気が差していた。
自身の情けなさに目に薄ら涙の膜を張りつつ、それでも己の身体をきつく抱きしめるように回した腕を離すことが出来ない。
――ああ、俺はただホラーを楽しみに来ただけだったのに。
――どうしてこんなことに巻き込まれてしまったんだろう。
そう心の中で呟いた瞬間、涙の膜は崩れて男の腕を濡らしたのだった。
※敢えて周囲に聞こえるように上げた声以外は男には届いていないため、自身の気配を消してアプローチすることも可能です。
フラグメントの行動指針に沿った内容に限らず、男からオブリビオンの様子を聞き出してください。
星乃・爐璃
絡み・アドリブ歓迎
マルティプル・セルフで人形遣いとシーフを召喚
あえてがやがやと人の気配を漂わす
爐璃「怖いんだけどっ、ここ!どうしたらいい??」
人形遣い「これくらいなんてことないわよ、ちょっと肉のついた声が聞こえるだけ」
シーフ「こういうダンジョンの先にお宝があったりさーしねぇかなー」
怯える爐璃を励ます二人の図
それは引きこもる人影をも励ますように
【祈り・優しさ・礼儀作法・勇気】を使って会話
シーフ「なんかあったら俺たちが戦うって、心配しんなよ」
人形遣い「そうよ、私のことも頼りにしてちょうだいね」
爐璃「あ、ここの家いい隠れ家にならないかなぁ…」
人形遣い「それよりも、ここの元凶を探さないとでしょっ!」
ソラスティベル・グラスラン
ふぅ、ひぃ……こ、ここが迷子さんがいるお家ですね?
もう真っ暗空間を歩き回らずによいのですね?
ならば【勇気】の勝利ですッ!
ええと、迷子さんは2階にですか……
まずはここから声をかけてみましょっか
【勇気】を出して踏み出す一歩が友好の懸け橋!【優しさ・コミュ力】
こんにちは!『勇者』ですっ!そちらに行ってもよろしいですかー!
許可が出ても出なくても、まずは笑顔でご挨拶!
竜の翼で飛んで窓からよっこいしょ
【手をつなぎ】、【勇気】よ伝われと言わんばかりに【鼓舞】
わたしが暖かい血の通った人間だと知らせ、安心させますっ
もう大丈夫ですよ……貴方を救う『勇者』が此処にいますっ
訊かせて貰えますか?何があったのかを…
デイヴィー・ファイアダンプ
日常は脆くも崩れ去り、この夜という非日常に囚われている
だとすれば今の彼は何を信じられるだろうか
逃げ惑いながら同じ境遇を演じることも出来る
しかし逃げ惑うものに共感こそすれど、助けを求めることはないだろう
優しく声をかけることも出来る
しかしただ語られた助けを促すような声では信じるに信じきれないだろう
必要なのは彼を助け出せる、その事実を見せつけることかもしれないね
だからその事実を作り上げる下準備をしようか
打ち合わせは回り次第だけど離れた所で他の猟兵が彼と接触する際に死霊を放たせてもらうよ
後は容赦なくそれを打ち払ってくれ
君達が怪異を打ち払える、その事実はきっと彼の目に希望を取り戻すことが出来るだろうから
病院坂・呉羽
どうしよう、説明が凄くめんどくさい・・・?
助けに来た…は護衛に専念するわけじゃないし
かといって話だけ聞かせろ、というのも流石に忍びない。
ドストレートにどんな化け物(オブリビオン)を見たか聞き出し。
さっき…アレだけ派手に電柱ぶっ壊したならちょっとは一般人じゃない説得力でる、と良いなと思いつつ。
まぁ情報はあればあるだけ良い。
この辺りで空を飛んだり、なんか煩い感じの化け物、
どんな姿をしていたか、何を言っていたか、覚えてる限り教えて欲しい。
その情報代わり、とは言わないけれど日常には絶対に帰らせてあげる。
其処だけは違えないから…そういうのも私たちの仕事だし。
彼岸花・司狼
うむ、アレだ。
電柱は…実物じゃなく迷宮の構成部品だから大丈夫だと思ったんだ。
すまん、UDC職員。
説得なら俺達が非日常の存在である事を見せた方が早いだろう。
ある程度、他の猟兵が接触した後を見計らい窓から声を掛ける。
UC:餓狼と狩人で呼び出した狼の背に乗って飛び、男がいる家の二階周囲で待機、外からの襲撃に一応警戒しておく。
もし敵が近づいてきたら遠吠えで異常発生を伝える方向
中の会話も【聞き耳】を立てて得た情報を整理する。
さて…UDCで飛び立つ奴。
俺達が聞いたのは男の声、白い手の場所では女性の声
どちらも悍ましい声で、笑い声を上げたり体寄越せ、と鳴く
…聞いた事だけはある、か?
さてどれほど潜んでるやら、と
火奈本・火花
「恐怖が決壊してパニックを起こす場合もありますが……最初からホラーである、という認識だったのが幸いだったのでしょうか」
■行動(POW)
発見後の予定を続行します
同じように恐怖に遭遇した女性を『演技』して『おびき寄せ』る手に出ましょう
予めドローンを飛ばし、男性の様子はチェックしながら動きます
自分の位置を教えるような悲鳴や、怯えたまま助けて欲しいとアピールしながら住宅に侵入するつもりです 。強い感情が出そうな時は自分以上にその感情を出している人を見ると落ち着くと言いますし、これで冷静になって貰えれば良いのですが
男性に会えれば『演技』を継続したまま、UDCの様子や町に変わった点が無かったか聞きましょう
「ふぅ、ひぃ……こ、ここが迷子さんがいるお家ですね?
もう真っ暗空間を歩き回らずによいのですね?
ならば勇気の勝利ですッ!」
「怖かった、本当に怖かった……。
いや、今も普通に怖いけど……!」
ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)と星乃・爐璃(旅人・f00738)が周囲の様子を窺いつつ、とある一軒家の前に辿り着いたことで六人の猟兵がこの場に集まる。
二人の様子を見て火奈本・火花(エージェント・f00795)は微笑むと「本当にここの空間は広いですしね。お疲れ様でした」と声を掛ける。
「猟兵の身であってもこの空間にいると気が滅入るのに、何も知らない一般人であれば尚更きついことでしょう。
恐怖が決壊してパニックを起こす場合もありますが……最初からホラーである、という認識だったのが幸いだったのでしょうか」
今回情報を聞き出す男がいるであろう二階へ、火花は心配を滲ませた目を細めて視線を向ける。
「取り敢えずサイバーコンタクトでは情報収集に限りもありますし、男性の様子を随時確認できるように別の手を打っておきましょう。
情報収集はエージェントの基本……ですが、少しでも効率良く、確実に遂行しなければなりませんね」
その言葉と共にユーベルコード「追跡用ドローンの操縦」が発動され、住宅街にいても怪しまれない鼠型の追跡用ドローンが家の敷地内に入っていく。
その鼠は小さな隙間から屋内へ入り込むと二階の男のもとへ駆けていった。
「ふむ、男性の方にも特に動きは無いようですね。こちらに気付いた様子もありません」
「となれば男に気付かれること無く動き出すことも可能ということか」
火花の言葉に彼岸花・司狼(無音と残響・f02815)は次の手をどう打つか考えを巡らせる。
「どうしよう、姿を見せて説得するにしたって説明が凄くめんどくさい……?
助けに来た……は護衛に専念するわけじゃないし、かといって話だけ聞かせろ、というのも流石に忍びないよね」
病院坂・呉羽(剣殺夜叉・f05274)は「うーん」と頬を掻く。
それに続いて他の猟兵達も考える中、デイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)は軽く片手をあげて「僕に少し考えがある」と声を上げる。
「日常は脆くも崩れ去り、この夜という非日常に囚われている。だとすれば今の彼は何を信じられるだろうか。
逃げ惑いながら同じ境遇を演じることも出来る。しかし逃げ惑うものに共感こそすれど、助けを求めることはないだろう。
優しく声をかけることも出来る。しかしただ語られた助けを促すような声では信じるに信じきれないだろう。
必要なのは彼を助け出せる、その事実を見せつけることかもしれないね。だからその事実を作り上げる下準備をしようか。
……だとすれば」
その後に続くデイヴィーの提案に、猟兵達は顔を見合わせて頷くのだった。
「きゃああぁああぁっ」
夜闇を切り裂く女性の声が住宅街に響く。
男が姿を隠す家から少し離れたところから悲鳴は、慌ただしく逃げ惑う悲鳴と共に家へと近づいてくる。
「どうしてっ、あれは本物の死体だった……!?
なんで、ここはただのお化け屋敷じゃないのっ?」
その悲鳴に男はハッと顔を上げると慌てて隠れるようにしながらも窓から声が聞こえた方の様子を窺う。
そこにはどこかの制服を着た若い女性が逃げてくる姿があった。
その女性はふと何かに気付いたように男がいる家へ縋るような視線を向けると敷地内へ入ってくる。
恐怖に震えるように玄関のドアノブをガチャガチャと鳴らしながら「ここ、この家の中に姿を隠せば……!」と女性は震える声を上げるが、そのドアは男がこの家に入る時に念のために鍵をかけていた。
「どうして……もしかして作り物の家だから全て扉が開かない作りになっているとか……?」
絶望したような声が聞こえた瞬間、今まで抱えていた男の罪悪感が爆発する。
「(このまま玄関のドアを開けに行かずに隠れていれば、あの女の人はきっと誤解したまま他の家にも隠れることなく住宅街を逃げ惑うことになる……。
……そんなことになればきっとあの怪物に食われてしまう!)」
意思を固めるようにぎゅっと目を閉じると、男は部屋を飛び出し玄関まで駆け下りる。
「(女の人の姿はとても怪物には見えない。
……それなら!)」
解錠し扉を勢いよく開けて扉の前で呆然としていた女性の腕を掴むと、男は「外は怪物がいて危険です、早く中に入って……!」と声を上げる。
女性は驚いたように男を見るが、その言葉に慌てて頷くと家の中に素早く入り込んだ。
再び玄関の鍵を施錠し女性を連れて元いた二階の部屋まで戻ると、女性はぽつりぽつりと己が見た現状を語りだす。
それは怪物の姿を見ていない以外は男が見たものと似た内容で、自分ですらパニックになって逃げ出したというのに、女性となれば感じる恐怖も一入だろうと男は静かに相槌を打ちながら女性の話に耳を傾ける。
すると女性は安心したのか、語る声が少しずつ震えて目には薄らと涙が浮かんでいるようであった。
「す、すみません。助けていただいたのに急に泣いちゃったりしたら迷惑ですよね……」
弱弱しくも男を気遣う女性に、男は首を横に振る。
「いや、実は俺も一人でここに逃げ込んだ時に不安すぎて泣いちゃったんで、その気持ちよく分かります。
……君を助ける、なんて格好良いことは言えないし出来ないけど、取り敢えずここで情報交換しつつ周囲の様子を窺ってこれからどうすべきか対策を考えませんか」
その言葉に女性――火花は涙を拭って微笑んで頷いた。
その時、再び家の少し離れた場所、火花が来た方向と別の方から数名の少し賑やかな話し声が響く。
「怖いんだけどっ、ここ!
どうしたらいい??」
ひどく怯えた様子の青年の声を宥め励ますように、妙齢の女性と少年の声が言葉を返す。
「これくらいなんてことないわよ、ちょっと肉のついた声が聞こえるだけ」
「こういうダンジョンの先にお宝があったりさーしねぇかなー」
その様子に火花と男は窓から外を覗く。
そこには青年が両隣にいる女性と少年の腕をがっしりと掴んで怯えているのを、両隣の二人が慣れたように己を掴んでいる手をぽんぽんと叩いて安心させつつ周囲を窺いながら歩く姿があった。
「俺が見た怪物の姿とは全然違う……、ただの他の客かな。
それにしては両脇の二人がやけに落ち着いてるけど。
……肉のついた声?」
冷静に様子を窺えるようになって己が見た怪物ではないと知って男は明らかにほっと息を吐くが聞こえてきた言葉に少し疑問を滲ませた様子に、慌てて火花は同意する。
「そうみたいですね、見たところ怪物ではないみたいです。
それなら外を歩いていたら危ないのでは……!」
しかし、火花と男の懸念を払うように明るい二人の声が優しく青年を励ます。
「なんかあったら俺達が戦うって、心配すんなよ」
「そうよ、私のことも頼りにしてちょうだいね」
少年が青年を元気づけるように背中をバシバシ叩き、女性も優しさを滲ませた目を青年に向ける。
青年――爐璃は「痛っ、ちょっと叩くの強すぎない!?」と声を上げつつも、己のユーベルコード「マルティプル・セルフ」で呼び出した二人別人格の想いを受けて小さく「……ありがとう」と言った。
それと同時に両隣の人の腕を掴む力を少し緩めて、不安に揺れていた瞳を先程より幾分かしっかりと周囲へ向ける。
――その視線がふと男と合った気がして、男は少し驚きで震えつつ、その視線の中に確かに宿る勇気にふと引き付けられる。
しかし爐璃はどうやら男に目を向けたのではなく「あ、ここの家って良い隠れ家にならないかなぁ……」と少し弱々しく呟いた。
それに対して人形遣いの人格が「それよりも、ここの元凶を探さないとでしょっ!」と呆れた声を上げてぺしりと爐璃の頭を叩く。
「元凶を探す……?
もしかしてここがこんな風になっていることに関して何か知っていたりするのか?」
男の脳内にその疑問が浮かぶと同時に、家の前の通りから「あ、もしかしてもしかしなくても同業者さんでしょうか!」と明るい少女の声が聞こえる。
そちらへ目を向けると朝焼けを思い出させるようなオレンジ色の髪の少女が手を大きく振って爐璃達に声を掛けていた。
「あら、どうやらそのようね」
人形遣いが微笑んで頷くと、少女――ソラスティベルは「うわー、良かったです! もしそうじゃなかったらどうしようって声掛けた後に思っちゃいました」とはにかむ。
「わたしもここが変な空間になってる元凶を倒しに情報を探してたんです。
もし良ければ情報交換とかしませんか!」
ソラスティベルの言葉に、シーフは「おう、いいぜ!」と頷きかけるが顔を曇らせる。
「そういきたいところだけど、僕達は情報が無くて困っていたところでね。
提供できるような情報は無いんだ」
シーフの言葉を引継ぐように、爐璃は申し訳なさそうにソラスティベルに言った。
それに対してソラスティベルも残念そうにしつつも頷く。
「ありゃ、そうだったんですね。
まあ、わたしもここまで来る間に見つけた遺体の位置とかくらいしか情報無かったんです。
誰か情報持ってる人がいればいいんですけど……」
「さっき話の途中で途切れましたが、あなたは何やら『怪物』とか言っていましたよね。
もしかすると彼らが探しているのはそういった情報なのではないでしょうか」
火花は男に向かってどう動くか注視しつつ冷静に言葉をかける。
男は首を傾げながらもそれに頷いた。
「同業者……この異常さを解決する集団があるのか?
もしあの怪物がカギになっているなら話したいけど、本当にそんなトンデモ存在がいて俺達を助けてくれるのか……?
見たところあの四人は特にすごそうな人には見えないけど」
確かに筋骨隆々という訳でもない、どころか少女を含めた女性が半数を占めた猟兵達の姿に、UDC組織や猟兵の存在を知らない男はもっとよく見ようとする。
「うーん、困りました……あれ?」
ソラスティベルはふと一軒家に目を向けると驚いた声を上げる。
それにつられて爐璃達もそちらへ視線を向けると、先程まで隠れていた男がこちらの様子を窺っているのが見えた。
「もしかしてここに迷い込んでしまった一般人でしょうか、それなら大変です!
こんにちは! 『勇者』ですっ! そちらに行ってもよろしいですかー!」
大きな声で呼びかけると男は驚いたように身を引いたが、代わりに火花が窓から姿を覗かせて頷く。
それに笑顔で頷き返したソラスティベルは背中にある竜の翼を広げて二階まで向かう。
それを見た火花は窓を開けて彼女を部屋の中に迎え入れた。
ソラスティベルは笑顔で「お邪魔します!」と声を掛けた後に、よっこいしょと窓からその身を滑り込ませる。
男が先程驚いた拍子に尻もちをついた姿勢のままの状態であることに気付くとソラスティベルは慌てて膝をついて男の手を取る。
「わわわ、もしかしてとても驚かせちゃいました? ごめんなさい!
でもわたし……そして今外にいる三人組も貴方を助けに来たんです!
……もう大丈夫ですよ、貴方を救う『勇者』が此処にいますっ」
男は一瞬怯えたように身を震わせたものの、少女の手が温かい血の通った生きている者の手であると分かると体を強張らせていた力を抜いた。
「ゆ、勇者……?」
男の呟きに力強く頷くとソラスティベルは口を開く。
「訊かせてもらえますか? 何があったのかを……」
爐璃達を家の中に招き入れた後、改めて四人の姿を見て男は怪訝そうに言う。
「情報を話すのは構わないけど……その、言い方は悪いと分かってはいるが本当にこの以上を解決できるのか?」
近くでまじまじと見た上で、いやむしろ見たからこそ普通の人のようにしか見えない姿に男は疑問を深めた。
「ほら、だってこう……勇者とかってなんかもっと力がありそうなイメージがあったというか」
その言葉に、「まあ確かにそういった見た目の奴はいないよな」とすっぱり言い切ったシーフの口を慌てて爐璃が抑える。
「た、確かにそう見えるかもしれないですけど本当にそうなんだよ、怪しい者では決してないから!」
取り繕う爐璃の言葉に男が片眉を上げるのを横目に、人形遣いは「あら、どうやら私達の力を証明するナイスタイミングみたいね」と声を上げる。
その言葉に男を含めた全員が人形遣いの視線の先に目を遣ると、死霊の群れがこちらへ向かってくるのが見えた。
火花がさり気なくすぐ身を庇えるように男の隣に近づいたのを確認した猟兵達はそれぞれの得物を構える。
「これが貴方が見た怪物とやらですか?」
念の為にソラスティベルは男に尋ねたが、男が言葉を失いつつ首を横に振るのを見て残念そうに「そうでしたか」と呟く。
「まあそれならそれでコイツを倒した後にその元凶候補を倒せばいいだけだよな!」
シーフが明るい声を上げながらも明確に向けてくる殺意に気付いた死霊達は、雄叫びのように大きな声を上げる。
その声を聞いた男は頭を抱えながら「なんだ、これっ……、なんか酷く心の内を蝕んでくるような……」と掠れる声を上げる。
ソラスティベルは「(あれ、一応効果を弱めて召喚してくれると言っていた気がするんですが……。確かにわたし達には軽い効果しか無いみたいですし、効果弱めたものの一般人にはまだ影響が大きかったというところでしょうか)」と考えて、それなら尚更さっさと倒さなければと死霊に向かって飛び出す。
窓から飛び出し、「サンダラー」と彼女が呼ぶ巨大斧を空中で振り回す。その巨大な刃は死霊を斬り裂き、また振り回すことで生まれた風が死霊を薙ぎ払う。
しかしそれを潜り抜けた死霊が窓から入り込もうとする。
それを見て「ひっ」と細い悲鳴を上げた男と死霊の間に爐璃が割り込み、シーフと人形遣いへ指示を出した。
それに従って人形遣いが不思議な生物の骨格標本――男は知る由もないがそれは人魚の骨格だった――で死霊を薙ぎ払い、それで消滅は免れたものの体勢を崩した死霊をシーフがジャンビーヤに似た短剣で始末していく。
……しかし死霊の群れはあまりに多く猟兵達は押されていく。
「ちょっと、いくらなんでも多すぎないか!?」
爐璃が顔を顰めつつ悲鳴交じりの声を上げたその時だった。
「勇者がピンチな時に助ける美味しい役の出番?」
不意に響いた女性の声に、猟兵と男は目をそちらに向ける。
そこには部屋と廊下を繋ぐ扉から入ってくるサムライブレイドを片手に持った冥途キャットの姿があった。
「俺もそれに便乗させてもらうとしよう」
女性に呼応するように少年の声が窓の方から聞こえる。
そちらには鋼の狼の背に乗った、数多の刀を持った着物姿の少年と、小さな声で「すまない、出し過ぎた」と呟く幻想的な光の揺らめきを纏う青年の姿があった。
冥途キャットこと呉羽は「やっぱり斬り捨てるのは楽で良い」と楽しそうに言いながら、正確ながらも鋭い太刀捌きで死霊を斬り捨てていく。
狼の背から降りた少年――司狼も、狼に死霊を襲わせた上で数多の刀の中から双刀を抜き放ち残りの死霊を始末していった。
時少し遡って一軒家の前にて。
「やはり多少は疑われるか。まあ危険を感じた直後だから仕方ないな」
デイヴィーは開け放った窓から聞こえてくる猟兵と男の会話にため息を吐く。
「となれば、僕の出番だな。
囁くは苦しみ。潰えし祈りを怨嗟の声にて唱えよう」
ユーベルコード「クグルクトゥクの嘆き」の詠唱と共に夜空に器物を掲げるとそこから数多の死霊が姿を現す。
その死霊達はデイヴィーが言葉を発さずともその意図を理解したように家の方へ向かっていった。
それを隣で見ていた司狼は少し押し黙った後、「……いや、死霊の数多くないか」と呟く。
その言葉と共に始まった二階での戦闘音に激戦を悟った司狼は「やっぱり多くないか?」と声を上げると、ユーベルコード「餓狼と狩人」を発動し、一匹以外を周囲の警戒に当て、残った一匹の背に跨った。
「司狼、助太刀に行くの?」
その様子を見た呉羽は自身の刀に手をかけてうずうずしながら司狼に問う。
その問いに頷きで返した司狼は「呉羽も行くだろう。乗っていくか」と問い返した。
それに呉羽は首を横に振る。
「その狼を呼び出したということは司狼は窓から向かうんでしょ?
私は玄関から向かって部屋の扉の方から挟み撃ちする」
と言うと同時に呉羽は玄関を開けて――先程爐璃達が入った時に鍵を開けていってもらえるように事前の打ち合わせで頼んでいた――迷うことなく階段を駆け上がっていく。
それを見た司狼はデイヴィーへ向き直ると「じゃあ乗っていくか?」と声を掛けた。
「……大丈夫だ、これで死霊はもういない」
司狼と共に現れた青年――デイヴィーは周囲の気配を探って皆に呼びかけた。
爐璃、人形遣い、シーフ、ソラスティベル、デイヴィー、呉羽、司狼の七人の『勇者』達に囲まれた男は、彼らを見回し恐る恐るといったように声を上げる。
「えっと、君達全員『勇者』……?」
その言葉に七人は顔を見合わせて各々の反応を示す。
しかしそのどれも否定するものが無いと分かると男は「そうか……」と呟いた。
「さっきは疑う様な事を言って悪かった。もし俺の情報が役立つんだったら使ってほしい」
男は、特に先程疑問をぶつけてしまった爐璃達とソラスティベルに向かって言う。
それに対して「そんな気にしないでください! 勇者が冒険最初に遭遇しがちなよくあることですので!」とソラスティベルは返し、爐璃達もそれに同意するように頷く。
それに続くように呉羽が口を開いて男を促す。
「どんな姿をしていたか、何を言っていたか、覚えてる限り教えてほしい。
その情報の代わり、とは言わないけれど日常には絶対に帰らせてあげる。
其処だけは違えないから……そういうのも私達の仕事だし。
それにさっきの戦闘を見て分かっただろうけど私達はすごく力があるの、そこの司狼はさっき一人で電柱倒してたし」
「うむ、アレだ。
電柱は……実物じゃなく迷宮の構成部品だから大丈夫だと思ったんだ」
突然の呉羽の言葉に司狼は困ったように頬を掻くと弁解するように言った後に、小さく「すまん、UDC職員」と呟く。
それに対して「え、もしかしてさっきの轟音ってその電柱を倒した音だったのか?」と声を上げた後、どこかほっとした様子で「ありがとう」と言い、男は自身が見た惨劇の様子を語り出した。
男曰く――
自分は口コミに惹かれてただ遊びに来ただけの一般人であること。
最初は最新技術を駆使したただのお化け屋敷だと思ったが、いくら歩いても出口は見当たらず、極めつけは血だまりの中にポツリと落ちていた本物の白い手が見えたことでここは異様な場所だと気付いたこと。
そしてその手に駆け寄った瞬間に頭上から聞こえた「体寄越せ」と繰り返す女性の声。
あの時はパニックになっていて気付かなかったが、今思うとあの手は細く綺麗で女性の手のように見えた。
思わずその声の方へ顔を上げると、そこにいたのは住宅街にいるには大きい鳥で、恐らくペリカンくらいはあっただろうか。
その鳥の顔右半分は目を閉じた人間の女性の顔に変形していて、嘴は赤く染まっていた。
その鳥と目があった瞬間、鳥は俺を嗤うかのように嘴を開く。
「楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ」
女性の声が鳥の嘴から聞こえた瞬間、右顔の女性の目がぎょろりと開いて俺を見る。
気が付けば俺の周りに三十は下らないほどの鳥が囲んでいる。更に遠くからこちらに近づいてくる羽音も聞こえている。
「怖い思いはしなくていいんだよ、好きな物を好きなだけ食べられて、どんなことをしても邪魔されない、楽園においでよ、そこで私と一緒に歌おう、楽園に行く為に私に力を貸して、身体を頂戴体頂戴体頂戴体頂戴寄越せ体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ」
途中からまるで自分がその場にいるように何かに取り憑かれたように鬼気迫って語る男の様子に、火花は他の猟兵と顔を見合わせた後に首を横に振る。
――つまりこの男は狂気状態に陥り、もう情報を聞き出すのは難しいと。
音も無く静かに短針型記憶消去銃を抜くと未だに「体寄越せ」と繰り返し言う男の首に銃口を向け引き金を引いた。
「さて……UDCで飛び立つ奴。
俺達が聞いたのは男の声、白い手の場所では女性の声」
意識を失って倒れ伏した男を楽な姿勢に寝かせてやりながら司狼は己が見たものも含めて情報を纏める。
「私達が男の声を聞いた傍には、お化け役の男の死体があった」
呉羽も司狼の推測を支持するように言葉を挟む。
それに頷いて司狼は言葉を続けた。
「どちらも悍ましい声で、笑い声を上げたり体寄越せ、と鳴く。
……そういったUDCを聞いたことだけはある、か?」
火花は自身のUDCエージェントの経験による知識から、ハッとして「楽園の鳥……っ」と声を上げる。
それに頷いて小さく「さてどれほど潜んでるやら」と司狼が呟いた次の瞬間、
――狼の遠吠えと多くの羽音がこちらを囲むように近付いてくるのが聞こえた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
第3章 集団戦
『楽園の鳥』
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POW : 楽園においでよ、一緒に歌おう♪
自身の身体部位ひとつを【食べた人間】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
SPD : 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ
【夢と希望に満ちた『楽園の歌』を歌う】事で【高速で空を飛ぶ戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 楽園にいこう、体寄越せ寄越せ寄越せ寄越せ
【おぞましい叫び声】【楽園を賛美する演説】【食べた対象の知性を真似た声でのお願い】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
イラスト:まつもとけーた
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
住宅街に多くの羽音が響く。
それらは四方八方そして空から猟兵達がいる一軒家に向かって飛んできていた。
今まで人の肉を漁っていたのか彼らの嘴は赤く、各々身体の様々な箇所が貪った人間の頭部に変形している。
しかし、今は他にいる一般人に構うことなく、ただ己の平穏を邪魔してくる排除すべき猟兵だけを狙ってこちらへ向かっていた。
近くの電柱や家の屋根に留まる鳥、夜空を羽ばたく鳥、その全てが獲物を狙う鋭さを含んだ目で猟兵達を見つめる。
「楽園は良いところだよ」
月を背にして一羽の鳥が猟兵達に語り掛けてきた。
それに呼応するように周りの鳥も無邪気な、それでいて不気味さを感じさせる笑い声を上げる。
「楽園に行けば争うこともなく怪我をしなくたっていいんだよ」
「楽園に行けばずっと笑って生活できるんだ」
「ねえおいでよ、もう寂しい思いをしなくたっていいの」
その言葉は甘く優しい内容だが、誘う言葉が発せられた瞬間、各々の鳥の身体についた人間の目がぎょろりと一斉に猟兵達に向かい、早く噛みつきたくて仕方ないと言わんばかりに歯をかちかちと鳴らした。
※猟兵達は窓から男がいる家やその周囲の家の屋根、もしくは道などに出て楽園の鳥と戦闘することになります。
楽園の鳥は基本的に猟兵しか襲いませんし、家の中で眠っている男以外はこの周辺に一般人はいません。
灰神楽・綾
※最初から居た・後から合流した等の扱いお任せ
争う事も怪我をする事もない楽園、かぁ
んー、俺は別にいいかな
そんな心底つまんなさそうな楽園
まずは防戦し様子を観察
スピードと反応速度を増した敵の動きをよく見て目を慣れさせる
[武器受け]で防ぎつつ間に合わない時は
左腕を差し出して受け止め[激痛耐性]で耐える
この痛みだよ、これを味わえるこんな世界こそが
俺にとっての楽園さ
流れる血をEmperorに付着させ
【ヴァーミリオン・トリガー】発動
さぁ、今度は俺の番だよ
飛ばれると面倒だからまずは羽根を斬る
次はその元気な嘴
そして心臓部分を突いて黙らせる
(全て[部位破壊]狙い)
…出来れば人間の顔には傷付けずに倒したいとこだね
「♪ 楽園はすてきだよ、苦しくも悲しくもないよ
争いに惑って傷付かなくてもいいんだ」
家の中から出て来て臨戦態勢の猟兵に意識を向けていた楽園の鳥達が、甘い言葉を高らかな歌声に乗せて猟兵達に誘惑を試みる。
そしてその誘いの甘美さを引き立てるように楽しそうに空を舞い猟兵達を取り囲んだ。
そうしているうちにますます気分が高揚してきたとでもいうように彼らは風に乗って飛ぶスピードを速めていく。
「争う事も怪我をする事もない楽園、かぁ。
……んー、俺は別にいいかな、そんな心底つまんなさそうな楽園」
不意に夜の住宅街に響いた声に鳥達は戸惑うように周囲を見渡しつつ、その言葉に応えるように歌を続ける。
「♫ 痛い思いをすることもない、ずっとずっと
怒りや悲しみと無縁の場所、ずっとずっと」
その歌に堪えきれないというように、くつくつと笑い声を上げて灰神楽・綾(廃戦場の揚羽・f02235)は首を横に振る。
「違うんだよ、俺が求めるのは」
心底呆れたとでもいうように肩をすくめてみせた綾に、楽園の鳥は激高して強く羽ばたいたかと思うと先程の飛んでいた勢いそのままに綾へ襲い掛かった。
「♬ どうして分からないの、楽園はとても素晴らしい場所なのに
どうしても分からないなら、我らの糧になるがいい
喰らえばお前の考えも分かるだろう」
次々と雨のように降ってくる鳥を冷静に見切り、綾は後ろに跳んで距離を取ってそれらを躱す。
しかしそれでも躱し切れなかった鳥達をハルバード「Emperor」で薙いで弾き飛ばした。
「っはは、説得に応じなければ俺を糧にする、か。
いいね、下手な誘い台詞をずっと聞いているよりそっちの方が俺も楽しいよ」
Emperorを避けた鳥が間合いの内から襲い掛かるのを見切り、コートから素早く小型ナイフ「Jack」を引き抜き左手で殴るように突き刺す。
その瞬間避け切れなかった嘴が腕を掠めるが、綾はその程度の痛みなど苦でもないというように笑みを深めた。
「この痛みだよ、これを味わえるこんな世界こそが俺にとっての楽園さ。
さぁ、もっと楽しもうよ。置いていかれないようにちゃんとついてきてね」
先程の鳥のように歌うように陶然と囁けば、綾の独擅場が始まる。
先程の鳥に突き刺したままのJackはそのままに、Emperorを己の血が伝う左手でそっと撫でてユーベルコード「ヴァーミリオン・トリガー」を発動した。
「せっかくお前達の楽園を布教してもらったからさ、今度は俺の楽園を布教する番だよ」
まるでバトンのように軽々とEmperorを振り回すと大きく跳躍して、こちらに突進してきていた鳥をすれ違いざまに斬り捨てる。
その刃は右翼の付け根を大きく斬り裂き、同時に返す刃で左翼も同様に斬りつけた。
今まで防戦一方だった綾の突然の反撃に反応する間もなく両翼を失った鳥は、痛みに人の声で悲鳴を上げながら地に落ちて悶え苦しむ。
「飛ばれると面倒だから羽を落としたけど、嘴も随分と元気だね。
ちょっと静かにしてもらっていいかい?」
ふわりと着地した綾は、その言葉と共にEmperorを振落として嘴を砕き、「うーん、お前の好みには合わなかったかな、ごめんね」と笑うと心臓を続けて突き刺し鳥を沈黙させた。
「まあ、お前を勧誘できなくても楽園の鳥はこんなにいるんだし、中には俺の楽園に病みつきになるやつもいるよね」
流石に人間の顔の部分を傷付けるのは寝覚めが悪いなぁと呟きつつ、慌て惑う鳥達の中から次の獲物を狙い定めて綾は再びEmperorを構え直した。
大成功
🔵🔵🔵
星乃・爐璃
爐璃・ラドゥとソラさん(f05892)と同行
ラドゥ
「さぁ殺ってやる!まとめてきやがれっ!!」
【殺気】と大声を出し真っ先に窓から飛び出て【おびき寄せ】
ある程度群がってきたら姿を消し後続に【だまし討】を仕掛けさせる
後は「上着と靴」を脱いで「シーブス・ギャンビット」を加速させて【盗み攻撃】で爐璃の助けに入る
爐璃
ドラゴンランスを手に【先制攻撃、属性攻撃、なぎ払い、2回攻撃、串刺し】を駆使して片っ端から凍らせていくよ
自分を守りつつ確実に数を減らす手伝いを
「楽園もどこかにあるかもしれないけれど、僕たちは旅人さ、今日出会ったすべてが楽しくて、嬉しくて、楽園に値する。そしてまた旅をするのさ」
ソラスティベル・グラスラン
爐璃(f00738)さんと同行!
なんて数ですか…!迷子さん、わたしたちの後ろに!
爐璃さん、ラドゥさん!後ろはわたしに任せて、思いっきり暴れてくださーい!
此処に誓うは不退転の意思…これがわたしの、【勇者理論】!!(防御重視)
【盾受け】で防御を固め、迷子さんを護衛し【かばう】
【オーラ防御】は共に迷子さんを覆うように
我が【勇気】に賭けて、ここを通しはしませんよ…!
迷子さん、今だけで構いません
わたしたちを信じてください、必ず貴方を陽の下に送り届けますッ!【鼓舞】
【範囲攻撃】の大斧で災魔の群れを斬り払う
が、災魔の体に現れる人間の顔と目が合い…
【気合】一喝、己を奮い立たせ
くっ……すみません、せめて一撃で!
奇襲に慌てふためいた鳥達は、それならばと他の猟兵達へ目を向ける。
そして真っ先に目に付いたのは星乃・爐璃(旅人・f00738)がユーベルコード「マルティプル・セルフ」で呼び出していたシーフの別人格、ラドゥの姿であった。
彼は不敵に笑ったその瞬間に鋭い殺気を発し、真っ先に窓から外へ躍り出て挑発する。
「おーい、そんな高いところをバサバサ飛んでたって、いつまで経っても俺達を楽園には連れていけないぞっ!
さぁ殺ってやる! まとめてきやがれっ!!」
ラドゥの姿を見とめた鳥達は愉しそうに笑い声のような鳴き声を上げると、ラドゥを取り囲むように旋回し『楽園の歌』を高らかに歌う。
「♩ さぁ楽しいことをしよう、面白いことをしよう
楽園に行けばずっと自分が好きなことをしていられる」
「♬ やりたくないことはしなくていい
やりたいことだけすればいい
ずっとずっと楽しくて嬉しくて仕方ない」
はしゃぐように拍を早めて歌うにつれて鳥達の舞うスピードも速くなり、また近くにいた他の鳥達も団子のように続々とラドゥの周りを取り囲んでいく。
そして彼らの身体に付いている人面が、獣が獲物に狙いを澄ませるかのように瞳孔を開き、囲んでいた鳥が息を合わせたように一斉にラドゥに襲い掛かった。
周囲で応戦していた猟兵はラドゥの安否を気に掛けるものの、あれだけ大量の鳥に襲われては無事ではいられないだろうと内心思ったその瞬間、鳥達の悲鳴が大きく夜闇をつんざく。
何事かと目を凝らすと、そこにいたのは互いに同士討ちをしたように体に嘴による傷跡を受けた大量の鳥達と、躊躇いなく上着と靴を脱ぎ払って瞬時に宙に舞い上がったラドゥの姿だった。
ユーベルコード「シーブズ・ギャンビット」の効果を乗せたラドゥは、そのまま宙で「盗殺の刃」を逆手に握ると身を捻り、まるでハヤブサのように急降下する。
「高速移動がお前達だけの十八番と思うなよっ!」
負傷して動けない鳥や混乱して動けない鳥にそのままの勢いで突っ込んだラドゥは鳥達を斬り裂き、鮮やかな血と羽を舞い上がらせた。
しかしラドゥ一人に対して鳥達の数は多く、いくら早く斬りつけていくといっても次第に再び囲まれていく。
「なんて数ですか……!」
ラドゥのだまし討ちによって数を減らした鳥達ではあるが、未だに圧倒的な数である現状にソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)はぎゅっと拳を握る。
「けれど物語に出てくる勇者はどれだけ強大な敵にも大量の敵軍にも勇敢に立ち向かっていました……。
それならっ、――此処に誓うは不退転の意思……これがわたしの、勇者理論っ!!」
勇気によって強い意志を孕んだ鋭い声に、鳥達の意識が引き付けられる。
――大斧「サンダラー」を構えた腕はもう恐怖に震えない。
「我が勇気に懸けて、ここを通しはしませんよ……!」
窓際に立ち塞がる己の後ろでまだ意識を無くしたまま倒れている男に、ソラスティベルは覚悟を決めたからこそ浮かべられた優しい笑みを向けた。
「迷子さん、聞こえていなくたって構いません。
それでもわたしたちを信じてください、必ず貴方を陽の下に送り届けますッ!」
鳥達は苛立たしそうに高い声を上げると、忌まわしい猟兵を噛み殺したくて仕方ないとでもいうように人面が歯をカチカチと打ち鳴らす。
その人面を纏う鳥達はそれに応えるかのように再び鳴き声を上げるとソラスティベルへ襲い掛かった。
――まるで矢が一斉に放たれたかの如く、彼女に鳥達が降り注ぐ。
しかしソラスティベルは冷静に敵の動きを見切ると、大きくサンダラーを振り払い災魔の群れを薙ぎ払った。
その攻撃を逃れた鳥もいたものの、ソラスティベルに噛みつく前にオーラの壁に阻まれ彼女を傷付けるどころか家の中に入り込むことも出来ない。
「爐璃さん、ラドゥさん! 後ろはわたしに任せて、思いっきり暴れてくださーい!」
こちらの守りに関しては何も心配することは無い、――それを伝えるように力強く二人に呼びかけた。
家の屋根の上でその声を耳に捉えた爐璃は「流石ソラさん、心強いね」と微笑んだ後に、幾分かソラスティベルの方に鳥が分散したとはいえ未だに多くの鳥に囲まれているラドゥの様子を見て「それじゃあ僕はあっちを助けるかな」と小さく呟く。
それと同時にドラゴン「ブライニクル」をランス状に変えてラドゥの方へ舞い降りる。
「♪ どうしてお前たちは楽園の素晴らしさを理解しない?
どうして楽園を求めない?」
「♫ 我らの誘いに乗ればすぐにその楽園へ行けるのに
安穏の地を求めて迷うことも無いのに」
囲みの外側にいた鳥達は瞬時に爐璃へも狙いを定めると、苛立たしさを滲ませた歌声を奏でながら突進していく。
「簡単なことだよ。
……まぁ、自己紹介をしていなかったからあなたたちが知る由もないといえばそうなんだけど」
無駄な動きを含まずに爐璃はブライニクルをただ真っ直ぐに突き出す。
その冷気を纏う刃は飛び込んできた鳥の脳天を的確に捉えて、刃のダメージによるショックと脳の内側から凍らせられる冷気によって鳥の息の根を止めた。
「楽園もどこかにあるかもしれないけれど、僕たちは旅人さ。
今日出会ったすべてが楽しくて、嬉しくて、楽園に値する。
そしてまた旅をするのさ」
先程のラドゥのだまし討ちもあって瞬時に追撃の手を緩めた鳥を、ブライニクルでどんどん薙ぎ払い、返す刃で別の鳥を突いて、深い一撃を刻み付けるよりも浅い傷でもなるべく多くの鳥に与えていく。
本来なら致命傷に至らない傷ではあったが、吹き込まれる冷気によって鳥達は見る見る間に凍って数を減らしていった。
「おい、助太刀は嬉しいけど俺の分まで取り過ぎだってのっ!」
ラドゥの文句に爐璃は「同じ体に宿る人格同士のよしみだし許してよ」と苦笑する。
それに口を尖らせると、爐璃との間に立ち阻む鳥を斬り捨ててラドゥは瞬時に爐璃に接近し背中合わせに立った。
「――よしみだなんだって言うなら共闘しようぜっ!」
にっと笑顔を見せたラドゥは、凍りきる前に最後の足掻きで爐璃を嘴で突こうとした鳥を一瞬のうちに斬り捨てる。
断末魔の不意打ちに一瞬驚いた爐璃であったが、ラドゥの申し入れに笑顔で頷き返して鳥達に向き直った。
爐璃とラドゥの共闘もあって鳥の数はどんどん減っていくが、だからこそ劣勢を巻き返そうと人の生命力を狙って、鳥達はソラスティベルとその後ろで守られる男への猛攻を行う。
「でもこっちだって、迷子さんをちゃんと守るって決めたんですよっ……っ!!」
勢いに押されつつも鳥達を斧で払い、攻撃が一瞬途絶えた一瞬の隙をついてソラスティベルは大きくサンダラーを振り上げる。
――ここでこの斧で薙ぎ払えば一息吐ける。何とかここを守り抜く目途がつきそうなのだ。
それでも、ふと鳥の頭頂部にある人面と目が合った。
その人面はまだ幼い子供のもので、本来であれば勇者の加護の対象になるだろう存在。
子供の顔が月の光を受けて輝く刃の煌めきに怯えるように歪めるのが見えてしまった。
「(くっ……すみません、せめて一撃で!)」
風を切って凄まじい勢いで振り下ろされた斧により、一般人の男を守る戦いは幕を下ろした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
彼岸花・司狼
楽園、まぁ今より上を目指すのは元々人の業のようなものだ。
だが押しつけられるならただの檻だ、そんなもん。
【目立たない】ように攻撃するまではひっそりと行動
UC:原初の言葉・制限を使い【破魔・鼓舞】で相手の声を塗りつぶす様に遠吠えし、合わせて【催眠術・呪詛】を乗せてもう一度咆吼し【恐怖を与える】。
落ちたり、動きの鈍った相手から呼び出して騎乗している鋼の狼達と刀で淡々と狩っていく。
いくら速いと言ったところで、音速を超えるわけでも無し。
声が届かぬほどでもあるまいよ。
実際にこの世に楽園があるとするのなら、
聞く限りそれは淀みと停滞しかない地獄っていう方が正しいと思うがな。
病院坂・呉羽
主義主張はともかく、斬れば良いならそれでいい。
わかりやすくてとてもいい。
剣の理・覇断であげた技能で【先制攻撃】、
【残像】を残す速度で加速して剣の理・斬跋による斬撃をばらまいて【なぎ払い、吹き飛ばす】ついでに頑丈そうな部分は直接攻撃して【鎧砕き】の一撃を叩込む。
基本とどめよりとにかく羽を狙って機動力を奪うことを主眼に置く。
そもそも楽園は一種の終局、到達点。
至ったのならそこが終わり。
ソレより上はない満ち足りすぎた場所…
何をしなくてもいい場所なんて、
何をする必要も無い場所なんて、
今生きてる必要すら見失いそう。
まぁ、オブリビオンの楽園ならその方がお似合いかもしれないけど
楽園を賛美する歌を歌いあげながら空を飛び回る楽園の鳥の姿を少し離れた家の屋根から彼岸花・司狼(無音と残響・f02815)と病院坂・呉羽(剣殺夜叉・f05274)は見上げていた。
「楽園か、まぁ今より上を目指すのは元々人の業のようなものだな」
司狼の言葉に、呉羽は鳥から視線を離すことなく頷く。
「そもそも楽園は一種の終局、到達点。
至ったのならそこが終わり。
ソレより上はない満ち足りすぎた場所……。
何をしなくてもいい場所なんて、何をする必要も無い場所なんて、今生きてる必要すら見失いそう。
……まぁ、オブリビオンの楽園ならその方がお似合いかもしれないけど」
「中にはその『安穏』に安堵する者もいるだろうが、押し付けられるならただの檻だ、そんなもん」
小さく「俺達はそれに囚われるような獣ではないということだな」と呟いた司狼に、呉羽は視線を向けて「それじゃ後はお互い奇襲の成功を祈る」と言葉を残して楽園の鳥が集まっている一軒家の方へ矢のように飛び出し、屋根伝いに駆けて行った。
「主義主張はともかく、斬れば良いならそれでいい。
わかりやすくてとてもいい」
彼女は身を隠すことも無く屋根の上を駆けて先程まで他の猟兵達といた家のもとへ駆けていく。
それに気付いた一羽の鳥が警戒の声を上げて周囲に知らせようとするが――。
「――我は破軍、覇を以て全ての厄災を討ち祓う刃なり。故に立ち塞がる者一切よ、この刃のもと眠るがいい」
駆けてる最中でも全く乱れていない呼吸で静かに詠唱し、ユーベルコード「剣の理・覇断」を発動する。
その瞬間、残像を残す程に加速した呉羽はサムライブレイドを静かに抜き放ち、声を上げようと息を吸い込んだ鳥にその身ごと突っ込む。
突然の加速に慌てた鳥は瞬時に飛び上がって避けようとするが、それは間に合うことなく嘴の中に刃を刺し込まれて斬り捨てられる。
その突然の襲撃に気付いた鳥達が呉羽の周囲を旋回し「どうしてそんなことをする。楽園に行けなくなってもいいの?」「あれほど素晴らしい楽園に行けないなんて残念なこと」と鳴き声を浴びせる。
しかし、元より呉羽はその鳥達の言う楽園に魅力などこれっぽっちも感じていない。
静かに互いの動きを探る中で、呉羽はこのままでは埒が明かないと静かに刀を構え直した。
「――我は天を穿ち、地を砕く刃なり。故に其の悉くを、終へと至らせん」
ユーベルコード「剣の理・斬跋」の詠唱を終えると共に、比較的鳥が多く集まっているところを狙い、まるで猫のように身軽に跳躍する。
先に発動していた「剣の理・覇断」の効果も相まって瞬時に鳥達に肉薄すると、羽を叩き切るようにまとめて薙ぎ払った。
刃とそれが振るわれたことによって生まれた風により、翼を落とされた鳥達はどうすることも出来ずにただ地に堕ちていく。
それを見た一羽の鳥が鋭い嘴で突いて呉羽の血肉を得ようとするが、その嘴が呉羽の皮膚に触れる前に鎧すら砕く程の凄まじい一撃で砕かれた。
次々と楽園の鳥を引き付けて撃破していく呉羽の姿に、司狼はまた別の手段で奇襲を行う。
静かに屋根から飛び降り、先に召喚したまま道で待たせていた鋼の狼の背に乗り更に後ろに四十二匹の鋼の狼を従えて、夜闇に紛れ地上を駆けて件の家へ向かう。
そして鳥達に気付かれないように狼達で家の周囲を囲み、息を吸った後に静かに「言葉とは力である」と呟いた。
その瞬間発動したユーベルコード「原初の言葉・制限」により増幅した破魔の遠吠えで、それまで鳥達が歌っていた楽園賛美の歌を掻き消した。
そこで初めて司狼に気付いた鳥達は歌いながら飛んでいた時そのままの速度、いやそれよりも加速して司狼や狼達に襲い掛かる。
しかしずっと鳥達の様子を闇に潜んで見ていた司狼達にとってそれは既に見慣れた速さであった。
冷静に鳥の動きを見切った司狼は動揺すること無く「いくら速いと言ったところで、音速を超える訳でも無し。声が届かぬほどでもあるまいよ」と狼達を鼓舞すると、狼はそれに応えるように今度は催眠の呪詛を乗せた咆哮を鳥達に向かって浴びせる。
その呪詛は鳥達を深い眠りに引きずり込み、鋭い声音は本能的な恐怖を与える。
途端に鳥達の動きが鈍り、中には地に堕ちるものもあり、狼の背から降りた司狼はそれを逃すことなく戦刀で次々と斬り捨てていく。
その主に続くように狼達も落ちた鳥を咬み殺し、時には身軽な獣の身体を活かして跳躍して動きの鈍った鳥を捕らえていった。
屋根の上と地上、それぞれで行われる戦闘に見る見るうちに鳥達の姿は数を減らしていく。
それに焦った鳥達は目に見えて焦り始めた。
「どうして、どうしてお前たちはそれほどまでに楽園に行きたいと思わない?」
喰らった者の知性のせいか悲痛な思いを滲ませた鳥の声に司狼は小さく笑って答える。
「実際にこの世に『楽園』があるとするのなら、話を聞く限りそれは淀みと停滞しかない地獄っていう方が正しい代物だと思うから、だな」
問いを発したその鳥に司狼の答えが耳に入ったその瞬間、他の空飛ぶ鳥を足場にして高く跳躍した呉羽が一太刀の下にその鳥の首を刎ねた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
デイヴィー・ファイアダンプ
一つは単なる僕の技量不足。
一つは無念が強過ぎたこと。
先程に僕が死霊を扱いきれなかった理由があるとすればその二つだね。
まぁ、過ぎたことを嘆いても仕方ない。
そもそもここで嘆くべきは僕ではないのだからね。
というわけでで真の姿の解放を。
触媒としての姿に成り果て、この場に満ちる理不尽に対する嘆きや無念を、そんな彼らの思いを僕という器物を通して確かな形にしようか。
奪われたというのなら奴らも奪われるべきだろう?
そしてそれで君達の気が少しでも晴れるなら手を貸してあげるよ。
事が終わったら、ちゃんとした場所で供養をするためにも彼らを連れて帰ろうか。
この夜と共に縛られたままでは、それもまた理不尽というものだからね。
「(一つは単なる僕の技量不足。
一つは無念が強すぎたこと。
先程に僕が死霊を扱いきれなかった理由があるとすればその二つだね)」
先程の思いがけず大量に表れた死霊について原因を考察しながらデイヴィー・ファイアダンプ(灯火の惑い・f04833)は街灯のすぐ傍に佇んでいた。
本来であれば街灯のすぐ傍にいるなど敢えて居場所を敵に知らせていると言わんばかりの行動ではあったが、彼の持つ器物から伝ってその身に纏った淡く揺れる灯りは、異常な夜闇に揺れてどこか冷たい空気を纏った街灯に不思議なほど同調している。
思考に伴って揺れる灯火に一瞬思考が釣られそうになるが、「まぁ、過ぎたことを嘆いても仕方ない」と考えを改める。
そう、だって――
「そもそもここで嘆くべきは僕ではないのだからね」
真の姿を解放し、その身を大きな器物と化したデイヴィーは想いを集める触媒になり果てる。
「この場に満ちる理不尽に対する嘆きや無念を、そんな彼らの思いを僕という器物を通して確かな形にしようか。
――我らが安らぎをここに、救いの手を差し伸べよう」
静かな詠唱と共にユーベルコード「キプロスの抱擁」が発動される。
真の姿を解放したことで漏れ出る光が強くなり、それに鳥達が気付く。
あの器物の姿で一体何が出来るというのか。
明らかに油断した様子の鳥がデイヴィーの身体をつついて壊してやろうと近付いたその時であった。
突然鳥達の身体に淡い光を纏う死霊の腕が絡みつき動きを阻害する。
悲鳴じみた悍ましい叫び声を上げようとした者は嘴を骨が覗く手で掴まれ、デイヴィーのもとへ突っ込もうとした鳥は鈍い音と共に死霊に翼をもがれる。
息苦しさや痛みに耐えながら鳥達がその腕が伸びてくる先を見れば、そこにあったのはかつて己が食んだ人面があった。
「奪われたというのなら奴らも奪われるべきだろう?
そしてそれで君達の気が少しでも晴れるなら手を貸してあげるよ」
夜闇に浮かんだ青い灯と青年の声に呼応するように鳥達を苦しめる死霊の腕は更に力を強める。
本来対象を捕縛しユーベルコードを封じる効果だけであるはずの腕が次々と鳥の身体を折り蝕んでいく……、それはこの空間に潜む犠牲者の魂と怨み憎しみの強さを物語っていた。
腕に囚われた鳥は腕に押し込められるまま翼を折られ地に堕ち、最早全身のどこにも力を入れることもかなわず夜空の月をただ見つめる。
その視界が青白く発光した柔らかい人の手に覆われる。
生前は憎しみで物を壊すなど考えられない程にか弱く線の細い手は、今は加減など知らぬと己の関節が鈍い音を立てるほどに、己が人面を宿す鳥の頭を握りつぶしたのだった。
「君は、予知の……」
先程鳥の頭を握りつぶしもう思い残すことは無いと、その腕ごと己を燃やし尽くそうとしている魂の灯をデイヴィーは見下ろす。
どこかで見た気がしたその手に考えを巡らせれば、それは予知の中で男が発見し、己も住宅街の中で見つけた血だまりの中の手であった。
「そうか、独身最後に友人と遊びに来たらこの怪異に巻き込まれてしまったのだな」
触媒体質により感じ取った魂の想いと、死霊の指に嵌められている今もきらきらと輝きを放つ指輪に、デイヴィーは顛末を悟る。
「……そのまま燃え尽きてしまっていいのか?」
静かに語りかけるデイヴィーの言葉に、動揺するように魂が揺れる。
それを見てデイヴィーは自身の中に宿る灯火にどこか優しさを滲ませた。
「良ければ、ちゃんとした場所で供養をするためにも君達を連れて帰ろう。
この夜と共に縛られたままでは、それもまた理不尽というものだからね」
大成功
🔵🔵🔵
火奈本・火花
「1体1体の脅威度は高くないが、こうも群れると厄介だな」
それに奴らが真似出来るという事は、それだけの犠牲者が居ると言う事でもある、か
■戦闘
性質を利用したい
奴らの言葉に誑かされた『演技』で『おびき寄せ』る
笑顔と楽園を肯定する言葉で『誘惑』し、より多くの奴らを惹き付ける
近付いたら噛まれる直前に【一撃】を叩き込む。『2回攻撃』でより多くを狙うが、一撃が届かないなら9mm拳銃による『クイックドロウ』での対UDC用『呪殺弾』で追撃だな
■戦闘後
男性を『怪力』で背負って脱出したい
あの時、ちゃんと扉を開けて助けてくれたのだから
カバーストーリー「怖すぎたアトラクション」と
それを補強出来る内容のお礼の手紙を男性へ
虚偽・うつろぎ
アドリブ連携等ご自由にどぞー
うつろぎ降臨…!
そして自爆
通りすがりにうつろぎ降臨
そして登場即自爆
自爆するために存在し
自爆するために現れる
ホラーよりも恐ろしい、ヤバい奴を見せてやるさー
登場後、速攻で自爆しますよ?
技能:捨て身の一撃を用いてのジバクモードによる自爆
対象は範囲内の敵のみ
攻撃範囲の広さがあるので
離れていても速攻で自爆するよ
作戦は自爆一択
庭の樹木に身を隠しながら火奈本・火花(エージェント・f00795)は空を舞う楽園の鳥達に注意深く視線を送っていた。
「一体一体の脅威度は高くないが、こうも群れると厄介だな」
他の猟兵達の働きによって大分姿を消した鳥達はこれ以上の消耗はまずいと統率の取れた動きで虎視眈々とこの場にいる者の血肉を食らうことで自己治療の機会を狙っていた。
「それに奴らが人面を纏い人の言葉を真似できるということは、それだけの犠牲者が居るということでもある、か。
……それほどの犠牲者を出すことが出来て、今はこのように統率の取れた動きを見せているということは、リーダーのような存在がいるのか?」
己の仮説を証明できそうな様子はないかと探れば、ふと天高く大きな月を背に羽ばたく楽園の鳥を見つけた。
その個体は他の鳥と比べて大きく、その身に宿す人面は他の鳥をまとめ上げるに相応しい知性を持っていそうな雰囲気を纏っている。
「(あの鳥がその役目を担っているのか……?
もしそうなら一つ策がある。
奴らは先程から猟兵達に楽園の素晴らしさを否定されて焦り憤っていた。
そこを突けば……!)」
「あなた達の言う楽園って本当なの……?」
恐る恐る樹木の影からその身を現し迷ったように揺れる声で尋ねた火花の姿に、猟兵達を含めた周りに動揺が走る。
「私は訳あって心臓に血を糧とする呪いを受けているの。
今までずっとそれに怯えて生きてきた、でもあなた達の言う楽園に行けばもう恐怖に苛まれず生きていけるのね……?」
それはなんて素敵なことだろうと恍惚とした笑みを浮かべた火花に鳥達は楽しそうに同意の言葉を口々に紡ぐ。
冷静に鳥達の動きを見極めタイミングを見計らいながら、火花は月に祈るように両手を広げて目を閉じた。
「――どうか、どうか私を楽園に連れて行って」
火花の『懇願』の瞬間、住宅街が静寂に包まれたかと思うと、すぐに鳥達の歓喜の鳴き声と大量の羽ばたく音が響き渡る。
そっと目を開けばそこには大量の嘴を大きく開いた楽園の鳥達が自身に迫る姿。
ぐんぐん接近しもう逃げることは出来ない。――それは火花ではなく鳥達の話であったが。
それまで祈りをささげる乙女のような空気を纏っていた火花が、がらりと凶暴な獣の様な気配に変わり「使いたくない技ではあるが、止むを得ない場合もあると言う事だ」と小さく呟く。
瞬時に発動したユーベルコード「ヤドリギの一撃(ヤドリギノイチゲキ)」により、心臓付近から伸びるヤドリギの根が大きく成長し火花の拳を覆う。
その拳によって目にもとまらぬ速さで大威力の殴打が最も接近していた鳥に放たれる。
その鳥が衝撃によってくらくらと地に堕ちて骸の海に還る前に、もう片方の腕で続けて別の鳥に拳を叩き込んだ。
慌てて鳥達が逃げようと思っても、既に拳を避けられる程の余裕は無く、仮に拳を避けられたところで後ろから迫る別の鳥によって退路は無い。
次々と降り注ぐ鳥の雨に、余裕をなくしているのは火花も同様であった。
ここに残る鳥を全て始末しようと誘惑を仕掛け、それが綺麗に決まったのは良いものの、二本の腕で対処できる数は高が知れている。
押されつつも冷静さを失ってはいけないと一歩引こうとしたその瞬間であった。
「捨て身の簒奪者にして自爆の蒐集者。つまり自爆馬鹿ここに参上さ!」
名状しがた……いや名状しやすき黒いうねうねとしたフォントで虚偽・うつろぎ(名状しやすきもの・f01139)が火花と鳥達の間に割り込む。
「さあお嬢さん、今はとにかく逃げるんだ、さあほらほら」
フォント以外の手を模した部分で急き立てるようにそれでいて優しく安全な距離まで押しやると、高らかにユーベルコード「ウツロギ(ジバクモード)」を詠唱する。
「自爆するために存在し、自爆するために現れる。
ホラーよりも恐ろしい、ヤバいやつを見せてやるさー。
では皆さんご注意ください、ゴッドうつろぎアタック……神風となり……HPは1になる……!」
――ドガアァアァァアァンッ!!!
派手な爆発音とともにうつろぎは自爆した。
突然の出来事に一瞬呆気に取られた火花であったが、自身に降りかかってきていた大量の鳥達の姿は無くただ残るはリーダーらしき大型の楽園の鳥一羽のみであることを確認すると、瞬時に懐から自動式9mm拳銃を取り出すと、その鳥が逃げ出す前に照準を合わせて事前に装填していた呪殺弾でその心臓を撃ち抜く。
その射撃音が響いたのを最後に夜の住宅街は静寂に包まれたのであった。
何かに優しく揺さぶられるような心地よい揺れに微睡んでいた意識が急に浮上した。
「あれ、俺……? お化け屋敷に来て、それで……」
ふと気づけばアミューズメント施設の救護スペースに俺は寝ていたようだ。
俺が目覚めたのに気付いたスタッフの人が心配そうに「大丈夫ですか」と声を掛けてくるのに頷いたものの、よく状況が分かっていない様子の俺にそのスタッフが簡単に説明をしてくれる。
それによると、どうやら今回のホラー迷路は途轍もないクオリティのものを作ってしまったらしく、中の仕掛けに恐怖の余り意識を失って倒れてしまった人が多数いたらしい。
いやなんてもの作ってんだよ、そんなたかがお化け屋敷の仕掛けでそうなる訳ないだろとツッコみたいところだったが、現に俺もそれで気絶していたところを助けられて、女の人に背負われてここまで運び込まれたというのだから下手なことは言えない。
確かにぼんやりと凄まじい恐怖を味わったような気もするが、どんなものを見たのかよく覚えておらず、今の俺は入場料を溝に捨ててしまったような残念な気持ちしか残っていなかった。
そういえばその背負ってきてくれた女の人は何処なのか、とスタッフに尋ねたものの、その女性はこの後急いで向かわなければいけない用事があるのでと名乗ることも無く此処を去ったらしい。
しかし、「去り際に少し何か思いついた様子で紙に何か書き残していきましたよ」という言葉と共にスタッフから几帳面に畳まれた紙を渡される。
それを読めば、何やら俺が記憶を無くしている空白の期間に、女の人がとても怖がっていたところを俺が助けてくれたからこういった形でもお礼を返すことが出来て良かった、と何とも俺らしくない行動をしていたらしい旨が書かれている。
いやいや人違いだろ、俺はこういうホラー系はめっちゃ怖がるし(しかし怖いもの見たさでつい惹かれてしまう難儀な性分である)、怖い時に人を助けようと思うほど素晴らしい人格の持ち主じゃないぞ、と思ったものの何故かその手紙を捨ておくことが出来ずにそっと鞄の中にしまい込んだ。
どうした俺、本当にらしくないぞ。
「そういえばなんか焦げ臭くないですか?」
ふと気になった鼻につく臭いについてスタッフに聞くと、「実は迷路の中で爆発したかのように焦げて倒れてる方が発見されまして」という言葉と共に向けられた視線の先にあった、布団から覗くぴくぴくと痙攣する黒く細い腕というホラーな様子に、俺はまた目を回して倒れたのだった。
大成功
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