#アルダワ魔法学園
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グリモアベースの一室にて、三日月形のヒーローマスク、ヘルムーン・ルナティック(いちるののぞみ・f14793)の装着者である望月いちるは語る。
マスクに覆われていない片目で、真剣その物と言った視線を猟兵達に向けて。
「あんこう鍋って、あるじゃないですか」
あんこう鍋。「西のふぐ鍋、東のあんこう鍋」なんて言われる鍋料理。
あんこうは骨以外は全て食べられる無駄のない食材であり、ふぐと並ぶ高級食材だ。
それをふんだんに使った鍋は実に贅沢だろう……が、それがどうしたのだろうか。
「いえ、食べてみたいなーって」
食べてみたい。
「えぇ、アルダワ魔法学園に大きなアンコウのオブリビオンが居るらしいんですよ」
あ、オブリビオンか。良かった、帰る所だった。
「オーケー、掴みがばっちり決まった所で本題だ」
そこでそれまで黙っていたヘルムーンが話を引き継ぐ。
「今回の目的は夏を前にして浮かれ気分な新入生どもを助ける事だ。
入学して3ヶ月、迷宮攻略にも大分『慣れ』ってもんが出てきてる頃だろうぜ。
『慣れ』が出てくると次に何が出てくるか知ってるか? そう、『油断』だ」
『影を這いずる捕食者』
それはが今回猟兵達が倒すべき敵、人を軽々と飲み込むほど巨大なアンコウの名だ。
名前の通りダンジョン内の影から影へと潜んで移動し、獲物の足元に這い寄り喰らう。
そして人間を軽々と飲み込む程の巨体でありながら、その動きは非常に素早い。
また、何よりの特徴は本来光を放つ提灯が逆に光や熱を吸い込む事にある。
そうして闇を、影を作り出す事で自身のテリトリーを広げ、獲物を狙うのだ。
新入生は元より経験を積んだ生徒でも手こずる相手だろう。
とは言え、油断さえしなければ事前に気付いて逃げを打つ位はできる筈だ。
「そいつが今、腹を空かせて獲物を求めて浅い階層に出て来てやがる」
なるほど、その獲物になるのが。
「はい、蜜ぷにです」
新入……蜜ぷに。
「甘くて美味しいです」
甘くて美味しい。
「デザートに良さそうですね」
なんて、真面目そうな表情で語るいちる。
「あー、ゴホン。別に冗談言ってる訳じゃねぇぜ?
人間が食って美味いんだ、アンコウが食ってもそりゃぁ美味いだろうよ。
そいつ等目当てに別の獲物もノコノコ出てくるとなりゃ猶更に、な」
迷宮の浅い階層で蜜ぷに相手。まぁ、確かにそれは油断もする。
そうして夢中になって甘い蜜を追い求めた結果……。
「気付けば自分が腹の中ってな。ちと痛い目を見る位ならまぁいい薬だろうが……。
コイツ相手じゃそうもいかねぇ、ほっときゃ結構な数が喰われるぜ」
そこで猟兵達の出番、という訳だ。
「コイツは光を吸い込むんで、コイツが居ると迷宮内は薄暗くなる。
んでもって水場でも有るのかこの迷宮内はどうやら湿気も多いらしい」
「その環境が繁殖に適しているらしく、キノコが大量に生えているエリアが有るんです。
蜜ぷにやアンコウの元に行くにはそのエリアを通る必要があります」
珍しくまともな事を言っている、と驚く猟兵。
「生えてるキノコも食用から毒キノコ、薬の材料になる物まで様々です。
探せば色々珍しいキノコもあるんじゃないでしょうか、松茸とか」
後はしめじとかしいたけとえのきとか、鍋に合いそうなのもと語るいちる。
やっぱり食い気だった。
「で、問題はそのエリアにゃ体に良くねぇ胞子が充満してやがるって事だ。
吸い込み過ぎれば毒やら麻痺やら、まぁ何かしら不調が出てくるだろ。
猟兵なら死にはしねぇだろうが、気を付けるこったな」
以上で依頼の説明は終わりらしく、グリモアを起動し転送の準備に入る。
「皆さんがこのアンコウを倒せば新入生達も守られて私達もお給料が貰えます。
そして滞納していた家賃も支払えて大家さんも満足と方々丸く収まるという寸法です」
「それじゃぁ頼むぜ、1人のグリモア猟兵が路頭に迷う前にな!」
あとお土産期待してますという言葉とくぅというお腹の音に、猟兵達は送り出される。
スマイリー
あんこう鍋、食べた事ありますか? ちなみに私はありません。
シリアス目な依頼が続きましたので今回は軽いノリのお話です。
どうも皆さま、新人マスターのスマイリーです。
今回の舞台はアルダワ魔法学園となります。
未制覇ワールドも減って来たと思ったら1つ増えましたね。
今回は特に特記事項はありません。依頼の内容もオープニングに記載した通りです。
1章はキノコ狩り、2章は蜜ぷに狩り、3章はアンコウ狩りとなります。
1章の行動については目安ですのであまり気にしなくても大丈夫です。
難易度もいつも通り蜜ぷに並の甘さとなっております。
それではご興味を持っていただけましたらどうぞどなたでもご笑味くださいませ。
第1章 冒険
『この先生きのこるには』
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POW : 胞子を無視して突き進めむ!
SPD : 胞子の影響を受ける前に素早く駆け抜ける!
WIZ : 解毒きのこを探して活用する!
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
転移した先、アルダワ魔法学園の地下迷宮。
そこはグリモア猟兵に聞いていた通り薄暗くじめじめとしている。
背後には迷宮の出口、正直少しばかり引き返したくなる環境ではあるが……。
まぁ、そうも言っていられない。観念して先へと進む。
すると開けたエリアに辿り着く。一面をキノコと胞子に覆われたエリアに。
なるほど、ざっと見ただけでも随分と雑多な種類のキノコが生えている。
なじみの深い食用のキノコもあれば、解り易い毒キノコもある。
それから、迷宮らしく見た事も無い珍妙なキノコも沢山だ。
依頼を達成するだけならさっさと抜けてしまえばいいのだが。
折角だからキノコ狩りをしていくのも一興だろうか。
長時間留まるならば、この充満した胞子に注意をする必要はあるが。
さて、どうしたものか。
コロナ・グレイティア
■心情
アンコウに蜜ぷにか……(じゅるり、と)
よし!みんなで狩って盛大に食べないとな!
その為にも、ここを突破しなきゃ!……あ、キノコ集めるのは他の人に任せよ
■突破方法
トリニティ・エンハンスの風の魔力で防御力を強化しつつ、風を体の周りに纏わせて胞子がなるべくこないようにして進むぞ!
■その他
アドリブ等は大歓迎だぞ!
荒・烏鵠
@WIZ
うけけ、雨上がりの森を思い出すねェ。土がぐずぐずンなってっから掘りやすいンよ。足跡も付きやすいケド。っとと、今は関係ねーやな。マ、こンくらいならナンとでもなるッてコト!
シナトの風に扇の火気をまとわせてオレを覆う。胞子を焼くフィルターをカラダの周りに張る感じね。空気自体は毒じゃないワケだし、胞子さえ焼いちまえば息はできンだろ。
しかし、キノコねェ……オレは何度かキノコ狩りとかしてッしくわしーけど……ココ、アルダワなンだよなァ。アースと毒性が同じとは思えん。
シイタケかと思って触ったら性質カエンタケでしたーなんてオチ、笑えんのよ。
つーワケで眺めるだけにしまっす!目で味わう、ソレでイイじゃない。
ナザール・ウフラムル
なーんでグリモア猟兵が路頭に迷いかけてるんですかねぇ!?
にしてもアンコウかー。美味いって聞くけど、食べたことないんだよな。フグは美味かった。唐揚げだったけど。鍋はどっちも食べたことない。
つか、鍋するんなら舞茸いるか?ついでだからむしって行こうな。
胞子への対処は、キノコエリアの外から【属性攻撃】(風)で風を吹き込んで、胞子を上の方に寄せちまおう。風のフィールドを纏って追加の胞子を吸い込まないようにもする。
……間違っても燃やさないでくれよな。多分ここら一帯吹っ飛ぶぞ。
ギヨーム・エペー
※アドリブ連携歓迎
(POWを選択)
アンコウなー。おれは唐揚げにするのが好きだな。あと、肝を味噌と一緒にすり潰したソースを大根にかけるとまたこれが美味い。きのこにかけてもいいだろう。…そのきのこが目につきやすくなってきたな、もうエリアに入ったか?…その前から胞子飛んでそうだこりゃ。ちょっと吸ったかもしれねえ。今更だがマントで口元を覆う。ダッシュしたりバイクで駆けちゃ胞子が浮かび飛び回りそうだ。長居はせず、キノコを見学しながら歩こう。でも面白そうなきのこがあったらちょっと観察したいところだな!変なのねえかなー
パフィン・ネクロニア
きのこに蜜ぷににアンコウか。食べてよし売ってもよし、実にわし向きな美味しいダンジョンじゃなー。
ほんじゃま、まずはキノコ狩りじゃな。
胞子対策にはマスクを装着しておけば短時間なら問題ないじゃろ。
とりあえずは鍋の具に使えそうなキノコをほどほどに確保して
あとは旨そうなマツタケや珍しいマツタケとか金になりそうなマツタケなんかを探していくぞぃ。いっぱい見つかるといいのぅー。
転送されアルダワ魔法学園の地下迷宮へと赴いた猟兵達。
話に聞いていた通り薄暗くジメジメとした迷宮内を歩き出す。
件のアンコウ『影を這いずる捕食者』とやらは光と熱を吸い込むらしい。
そのおかげで蒸し暑くないのがせめてもの救い、と言った所か。
それはまぁ良いのだが、それはそれとして――。
「なーんでグリモア猟兵が路頭に迷いかけてるんですかねぇ!?」
ナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)の叫びが木霊する。
それはここに来る直前にグリモア猟兵とその装着者の少女がしていた話。
新入生以前に、事件とか全く関係のない所で起きていた現実的なピンチ。
「? なんでって、家賃を滞納してるからだろ?」
「違う、いや違わないんすけどそうじゃねぇ!」
不思議そうに首を傾げるコロナ・グレイティア(ブレイズブレイヴ・f17954)に答えるナザール。
聞きたいのはそこではなくて、なぜそんな事態になっているのか、だ。
まぁ、その理由と言えば単純な話……。
「儲かってないんじゃろうなぁ……」
「ニンゲン食うにも住むにも金が要るかンなァ……」
なんて、しみじみと頷き合う2人。
世界を練り歩いては珍品の売買を行うパフィン・ネクロニア(ダンジョン商人・f08423)と、飲食店やアクセサリショップ等で商売経験のある荒・烏鵠(古い狐・f14500)だ。
「あ、そちらサンも商売経験者? 大変よネー」
「行商人をしとるよ。固定客が居ないと収入が安定しないからのぅー」
なー、ねー、と苦労話に盛り上がる2人。
仕事がなければ収入も無い、それでも払う物は払わなくてはいけない。
生きるというのはそれだけでお金が要るのだ、世知辛い世の中である。
安定した収入が得られる商売でない以上、明日は我が身だ。
まぁ、いざとなれば猟兵として仕事をすれば結構な報酬は得られるのだが。
「……まぁ、美味いモン持って帰ってやるか」
「だなー。旬の時期じゃないのが残念だけどな」
アンコウの旬は12月から2月の冬の時期、冷たい水温で身が締まるのだ。
そして産卵を控えて餌をたっぷりと食べるので味も良くなる。
「霜月あんこう絵に描いても舐めろ」と言われる程だ。
と、ギヨーム・エペー(ダンピールのマジックナイト・f20226)は語る。
「にしてもアンコウに蜜ぷにか……」
「それにキノコじゃな、食べてよし売ってもよしと来た。
実にわし向きな美味しいダンジョンじゃなー」
じゅるり、と涎を垂らすコロナと頭の中で金勘定をするパフィンの頬が緩む。
味にしろ儲けにしろ、美味しい想いに期待が膨らむという物だ。
「よし! みんなで狩って盛大に食べないとな!」
「ケケ、あのグリモア猟兵サンにも「いっぱい食わせて」やらないとナ」
化け狐的な意味じゃなくて、文字通りの意味で。
大分ひもじい生活をしているらしい、喜んでくれる事だろう。
皆で楽しく鍋を囲めれば妖狐としても腹一杯になれると言う物だ。
「アンコウなー。おれは唐揚げにするのが好きだな」
「良いっすね。アンコウは食べた事ないっすけど、フグの唐揚げは美味かった」
「随分と大きいアンコウらしいから色々と作れるじゃろ。
人間を飲み込む程の大きさとなると100人前は下らんじゃろうしの」
その横ではアンコウ談義に話を咲かせている。
どう料理するか、どれ位の儲けになるか等それぞれ頭に描く事は違うが。
取らぬ狸の皮算用ならぬ、取らぬアンコウの肝算用である。
「あと、肝を味噌と一緒にすり潰したソースを大根にかけるとまたこれが美味い。
きのこにかけてもいいだろう……そのきのこが目につきやすくなってきたな」
もうエリアに入ったか? とマントで口元を覆うギヨーム。
少し吸い込んでしまったが、身体に異常は無い。
「うけけ、雨上がりの森を思い出すねェ。
土がぐずぐずンなってっから掘りやすいンよ。足跡も付きやすいケド」
その光景を見て懐かしむ声を上げる烏鵠は湿った地面の感触を楽しんでいる。
履き易さ重視の運動靴だ、汚れても買いかえれば済む。
もっとも、一番古い記憶の中では靴など履いていなかったが。
「っとと、今は関係ねーやな。マ、こンくらいならナンとでもなるッてコト!」
「そっすね、そんじゃまずはこの鬱陶しい胞子をどかすとしますか」
「おう! あんこう鍋の為にも、まずはここを突破しなきゃな!」
烏鵠は相棒である狐精、シナトに目配せする。
ナザールの手に純白の姿の精霊が止まり、その姿をグローブへと変化させる。
コロナがルーンソードを構え、そこに魔力を込める。
その属性は全て『風』だ。すなわち――。
「「「吹っ飛べ」」」
3人の起こした風が折り重なって束となり。猟兵達を中心に吹き荒れる。
地下迷宮という閉鎖空間に淀んだ空気ごと、充満する胞子を吹き飛ばす!
「御見事、じゃの」
綺麗になった空気を吸い込み、感心したように呟くパフィン。
とは言え、胞子の元となるキノコ自体が無くなった訳ではない。
時間がたてばまた元に戻るし、この中を動いていればまた飛び散るだろう。
故に、次はその対策だ。
「それじゃ風を体の周りに覆わせてっと」
「その風に扇の火気を纏わせましててー……こうじゃ!」
「……間違っても周り燃やさないでくださいよ、多分ここら一帯吹っ飛ぶんで」
まずは各々の身体を風で覆い、その風に火気を纏わせる。
散った胞子を吸い込まないよう、胞子を焼くフィルターを張った形だ。
そして一行の周囲に広く風のフィールドを作る事で安全圏を作り出す。
これだけすれば対策は万全だろう、事故にさえ気を付ければ。
ともかく、これでこのエリアを進む準備はできた。
「ほんじゃま、まずはキノコ狩りじゃな」
「鍋するんなら舞茸いるか? ついでだからむしって行こうかな」
採取モードに入るパフィンとナザールが鍋用のキノコを探し出す。
何せ一面に多種多様なキノコが勝手気ままに生えているのだ。
目的のキノコにたどり着くのも用意では無い。
「キノコねェ……オレは何度かキノコ狩りとかしてッしくわしーけど……。
ココ、アルダワなンだよなァ。アースと毒性が同じとは思えん」
「見た目似てる奴で美味いのも有れば毒なのもあるからなー。
毒にしたってこの世界じゃ色んな意味でやべーのもありそうだし」
単純に毒性が強いとかじゃなくてこう、アレな方向なのとか。
烏鵠とギヨームが目を合わせて頷き合う。
そう、ここは烏鵠がキノコ狩りをした場所とは文字通りに世界が違うのだ。
同じような見た目だからと言って、それが同じ物である保証はない。
「シイタケかと思って触ったら性質カエンタケでしたーなんてオチ、笑えんのよ」
「……オレもキノコ集めるのは他の人に任せよ」
そんな烏鵠に同調するように頷くコロナ。
脳内で弟分の子鬼も同意しているがオメーは食いたくないだけだろ黙らっしゃい。
この世界のキノコ図鑑でもあれば別だが、手元には無い。
ならばリスクを避ける、と言うのも正しい選択肢だ。
それはそれとしてコロナのこの反応。
「コロナサン、もしかしてキノコお嫌いでいらっしゃる?」
「きき、嫌いじゃねーし! ちょっと好きくないだけだし!」
そんな問いに慌てた様に首を振るコロナ。微妙に否定しきれていない。
思えば先ほどもアンコウと蜜ぷにだけでキノコには触れていなかった。
そう思って聞いてみればこの反応である。解り易い事この上ない。
「ほ、ほんとだからな! キノコ位どうってことないからな!」
烏鵠の生暖かい視線に目を逸らしながら弁明するコロナ。可愛いなこの生き物。
そんな思考を感じ取ったのかその顔が真っ赤に染まる。
その赤さは燃える様な綺麗な赤髪にも負けない程だ。
勇気に燃える彼女は今、羞恥に燃えていた。もとい悶えていた。
「マ、あんま好き嫌いしてっと大きく……なるヒトも居るケド駄目だぜー?」
「オレは結構大きい方だしキノコ位食べれなくても良い……いや食べれるけど!」
語るに落ちかけるコロナにケケケと笑う烏鵠。
しかしこれ以上はやり過ぎか、と切り替える。
「つーワケで眺めるだけにしまっす! 目で味わう、ソレでイイじゃない」
「あぁ、面白そうなきのこがあったらちょっと観察したいところだな!」
むがー、と叫ぶコロナをひとしきり眺めた後、周囲のキノコへと視線を戻す。
ただでさえキノコと言うのは変わった色や形をしている物が多いのだ。
それがこの魔法世界の迷宮ともなれば猶更である。
長く生きている烏鵠でも見た事もない様な物もそこら中にある。
「変なのねえかなー」
キョロキョロと周囲を見渡しながら歩くギヨーム。
ダッシュしたりバイクに乗ったりすればさっさと抜けられはするだろう。
しかしそうすれば折角払ったた胞子がまた飛び散るし、観察もできない。
「っと、そっちはどうだ?」
その前方に採取チームの2人、ナザールとパフィンの姿が見えて来た。
一区切りが付いた所なのか、籠の中を見ながら休憩中らしい。
声を掛けられたことでギヨームに気付き、そちらに視線を寄越す。
「舞茸やら椎茸やらはそれなりに確保したっすよ」
「鍋の具に使えそうなのはこれ位で十分じゃなー」
ほれ、とキノコの入った籠を見せる2人。
なるほど、確かに大人数で鍋を囲んでも十分な量はありそうだ。
となれば、だ。
「後は旨そうな松茸や珍しい松茸とか金になりそうな松茸なんかを探していくぞぃ」
「いや結局全部松茸じゃないですかねそれ!?」
後は儲けの為の採取だ。今、パフィンの目には周囲が宝の山に見えている。
とは言え持ち帰れる量にも限度があるのだ、狙うは大物金目の物。
そう目を光らせるパフィンと呆れ気味ながらもそれに付き合うナザール。
それも面白そうだ、とギヨームもそこに加わる。
「しかし、さっき話してたけど食べて大丈夫なのかね、このキノコ」
近くに這えていた推定舞茸を手に取るギヨーム。
少なくとも触った時点でアウトな物では無い様だが。
「一応戻ったら確認はしますけど、大丈夫だと思うっすよ。勘っすけど」
「と言っても胞子が充満してる中に生えてた物じゃからの。
それはちゃんと落としとかないと不味いじゃろうな」
ナザールはこの世界の出身らしい、その彼が言うならば間違いは無いか。
そう納得し、ふーむと手にした推定舞茸をしげしげと眺める。
確かに見た限り知っている物と差異は無さそうだ。
「なら、見るからにやばいのだけ気を付けておくか」
あの赤と白の斑点の付いた赤い奴みたいな、と視界の隅のキノコを見ながら。
うん、あれは色んな意味でやばそうだ。詳しくは言及しないが。
ちなみにその頃もう1人の魔法学園生、コロナはと言うと。
「にしてもこの学園、まともな迷宮も有ったんだなぁ……」
「あー、オレサマは当たった事ないけど、可笑しなのも多いらしいかンな……」
触手とか筋肉とかじゃなくて、と以前潜った迷宮を思い出していた。
キワモノだけじゃない、アルダワ魔法学園地下迷宮。閑話休題。
そんなこんなで松茸を探していた3人。
しかし、松茸というのはそもそもが採るのが難しいキノコだ。
見つかっても、地表に出て開ききってしまったものは味も香りも落ちる。
その為、地表から僅かに顔を出した物を見つけ出す事になるのだが……。
「他のキノコが邪魔じゃの……」
そう、この一面のキノコが視界を遮るのだから更に難しい。
しかし、商人としてこのままタダで帰る訳にはいかない。そう執念を燃やす。
そこに普段のゆるさもぬるさも無い。草の根……否。
キノコの根を掻き分けて松茸を探す。
「絶対に見つけるからのぅ……!」
「何がそこまでさせるんすかね……。いや食べたいっすけど、松茸」
あの執念はちょっと怖い。
まぁ、確かにナザールの第六感は近くにありそうだと告げている。
ならばもう少し付き合って……。
「お?」
大きな傘のキノコの裏に、それを見つける。
「有ったっすよ、松茸!」
「本当か! でかしたぞぃ!!」
しゅばばっ! とナザールの元へ駆けよるパフィンにほら、と指し示す。
地表から3~4cm程顔を出し、傘も開いているが間違いない。
「等級は少し下がるが、確かに松茸じゃの!」
「おぉ、本当だ。見つかるもんなんだなぁ」
テンション最高潮、と言った様子のパフィン。
残る2人も彼女程ではないがやはり嬉しい。
見つけた者として、その松茸の採取はナザールに委ねられた。
風を操り周囲の土を払って、そっと根元から押し上げる様に抜き取る。
「採れたっすよ! それじゃ……」
「うむ、まずは1本目じゃの!」
「目的もたっせ……ってまだ探すんすか!?」
驚くナザールに何を当たり前な事を、と言いたげな視線を返すパフィン。
美味しそうな松茸は見つかったが珍しいのと金になりそうなのがまだなのだ。
それに、どの道1本では物足りない。むしろこれからである。
「さぁ、いっぱい見つかるといいのぅー」
「つぼみが閉じてる方がいいんだっけか、そういうのもあるといいなー」
と、再び松茸を探し始めるパフィン。
既に割と満足しているギヨームも等級の高い松茸を求めて追従する。
1本目ですら結構掛かったのに……、とぼやくナザール。
しかしえてして、こういう物は1つ見つかると続けて見つかる物で……。
「結構見つかったっすねぇ……」
「うむ、これだけあればそれなりの儲けになるのぅ!」
「変なキノコも見たかったけど、まぁ満足かな」
最終的に十数本の松茸を採取する事ができた。
中にはつぼみ松茸という最も高い評価の物もある。
さて、探しながら進んでいたが後どれ位でこのエリアを抜けるだろうか。
そう思っていた所に先行していたコロナと烏鵠の声がかかる。
「お、ようやく来たな。キノコは……うげ、結構採れたみたいだな……」
「ケケケ、良かったじゃねーの! それじゃ、そろそろ気を引き締めようナ」
ほれ、と烏鵠が示した先を見れば、キノコエリアの終わりが見えた。
それはつまり。そこから先は蜜ぷにが居るエリアが待っているという事で。
どこかに『影を這いずる捕食者』が潜むエリアという事だ。
ここから先の油断は命取りになりかねないと、猟兵達が身構える。
大成功
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第2章 集団戦
『蜜ぷに』
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POW : イザ、ボクラノラクエンヘ!
戦闘用の、自身と同じ強さの【勇者ぷに 】と【戦士ぷに】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD : ボクダッテヤレルプニ
【賢者ぷに 】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
WIZ : ミンナキテクレタプニ
レベル×1体の、【額 】に1と刻印された戦闘用【友情パワーぷに】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
キノコエリアを抜けてしばし歩く。
すると程なくして、それまで無かった動く影が見えた。
ゼリーの様な半透明の身体を持つオブリビオン、蜜ぷにだ。
のほほんとした表情でぽよんぽよんと動き回りぷるぷる揺れる蜜ぷに達。
甘い香りに可愛らしい表情は、ともすれば見る者を和ませる。
しかしそれでもオブリビオンである事に変わりはないのだ。故に。
猟兵達を見つけた途端、その本能からキッ、と鋭い目つきに変わる。
変わるのだが……。
「ぷにぃぃぃ――!」
正直、迫力が無い。むしろやっぱり可愛い。
しかしここで油断しては予知された新入生達と同じ結果になりかねない。
故に油断は禁物、と解っていてもどうにも緊張感が沸かない。
むしろこれは物凄く狡猾な罠なのでは……? と、そんな気さえしてくる。
まぁ、あくまで今回の標的は『影を這いずる捕食者』だ。
蜜ぷにについては実際の所倒す必要は無い。
美味しい蜜を手に入れようと思わなければ、だが。
そう、蜜ぷには倒すと蜜を遺すという性質を持つのだ。
『影を這いずる捕食者』への警戒を重視するならば無視しても良い。
しかし故に蜜が欲しい場合は彼らを倒さなくてはいけない。
蜜ぷには戦うとなった場合新入生ですら苦も無く倒せる相手だ。
それを踏まえて、さてどうするか。
コロナ・グレイティア
■心情
確かに、オレ達の本命はアンコ……『影を這いずる捕食者』だな、うん
だけど、あっちも威嚇してきてるし、蜜ぷに達を倒すことで出てくる蜜の匂いでアンコウが寄ってくるかもしれないよな!
だから、警戒するに越したことはないけどこいつらは倒しちまおう!(じゅるり)
■戦闘
紅蓮の刃雨でとにかく攻撃だ!
仲間を呼ぶなら呼んでいいぞ!全部たいらげてやる!
合体したらその分の蜜取れそうだよな!よし倒すぞぉ!
荒・烏鵠
@WIZ
オ、コレが噂の蜜ぷにか!実は会ったコトなかったのよナ、お噂はかねがね!
コンニチハ死ね……は口が悪いな!コンニチハ製菓材料!くらいにしとくか!
ウチにはエンゲル係数底上げヤローが二匹もいンだよ!残り一匹も普通以上には食うし!!オレ?オレは小食。
つーワケなんでオマエらには蜜になってもらう。ごめんなソーリー。
いけっウサギ!踏み潰せ!蜜はシナトと一緒に回収しよっと。
容れ物ー……は、マ、なンかうまくやるさ。
さーて、捕食者サンは来たかなー?シナトは風、空気がある場所はすべて見聞きできるかンなァ。スペワでもなけりゃ警戒は楽だぜ。
ギヨーム・エペー
※アドリブ連携歓迎
蜜ぷにってそういう……こういう…えっ正式名称?マジ?……マジ似合ってるね!
へー…蜜食べられるのか!じゃ一匹だけ慈悲なくレイピアで小突いていただいていこう。…。…あー、カワイイねー……ごめんなー美味しくいただくからなー
こりゃずっとぷにぷに眺めたいが……目的はアンコウだったな。
案外近くで蜜ぷにたちを眺めて和んでそうだが、そういう遊び心を持ち合わせているかは…期待できないだろう。獲物を求めて食う積極性が普通のアンコウと違うところだし…と、なると蜜ぷにを囮にするのが一番……おー、カワイイねー……お前囮役する?嫌かー。
…暗がりの部分でも探して目星をつけておくかな。
パフィン・ネクロニア
でたな蜜ぷに。倒す必要はないと言われても甘党のわしとしては見逃す理由もない。
リトルを召喚して騎乗し、一気に距離を詰めてから2回攻撃を駆使して効率よく斬っていくぞぃ。
食後のデザート用だけ取ればいいかと思ったが、余ったら売り物にすればいいだけじゃし、せっかくだからアンコウが出てくるまで狩れるだけ狩るぞぃ。さぁその蜜おいてけー!
今回の依頼にいて、改めておさらい確認しよう。
標的となるのは『影を這いずる捕食者』と呼ばれるアンコウ型オブリビオン。
人間を軽々と飲み込む巨体とそれに見合わぬ移動速度を持つ厄介な相手だ。
その速度の秘密は闇に潜み影から影に渡るという移動手段にある。
光と熱を吸収するという特性から大よその位置を特定する事は難しくない。
このアンコウの周囲は常に闇に覆われ気温も冷え込むからだ。
しかし、その闇の中で詳細な位置を特定するとなると難しい。
なぜなら、闇の中とはつまりそのアンコウの支配する領域なのだから。
そんなアンコウが、今猟兵達が居るエリアのどこかに潜んでいる。
もし今回猟兵達が討伐に失敗した場合にどうなるか。
夏を前に浮かれ迷宮攻略への慣れから油断した新入生達が餌食となる。
キノコと毒の胞子が充満したエリアを抜けて一息ついたタイミング。
そこで出てきた相手が左程強くも無い相手となれば油断しても無理は無い。
そしてその相手と言うのが……。
「この蜜ぷにという訳じゃな」
目の前でぷにぷに叫び言いながら威嚇してくる蜜ぷにを指し示すパフィン。
彼女はこのメンツの中で唯一過去に依頼で蜜ぷにと戦闘経験がある。
どちらかと言うと狩りとか蹂躙とか殲滅とかの方が正確な気もするが。
しかし、実際に戦った事は無くとも知名度は子の様に中々高い。
と言うのも、多くの迷宮に出現する上に特徴的な性質を持っている為だ。
「オ、コレが噂の蜜ぷにか! 実は会ったコトなかったのよナ。
お噂はかねがね! なんでもあまーい蜜が取れるとか!」
「オレも見るのは初めてだけどすげー美味いらしいな!」
「え、何? 有名人……有名オブリビオン? なん?」」
そう、何を隠そうこの蜜ぷに、ただぷにぷにして甘い香りがするだけではない。
倒すと甘くて美味しい蜜を落とすという性質を持つ事で有名なのだ
そんな美味しい蜜を落とすぷにぷに。故に、蜜ぷに。
「はー、蜜ぷにってそういう……こういう……えっ正式名称? マジ?
……マジ似合ってるね! へー……蜜食べられるのか……!」
しかもその蜜がただ美味しいだけはなく、栄養もたっぷりときた。
薬の材料に使えば味を良くする上に薬効まで引き上げる優れものである。
それ故に常に需要が有り、前述の通り左程強くも無い。
故に戦闘経験を積むのにも手ごろで、かつお小遣い稼ぎにもなる。
そう、色んな意味で実に美味しい相手なのだ。
「まぁ、今回はこ奴らを倒す必要は無いのじゃが……」
この蜜ぷに達はたまたまたここに居るだけで何か事件を起こす訳ではない。
今回はその美味しさが悪い方向に作用してしまっているだけなのだ。
新入生達の油断と危険なオブリビオンを招く、と言う形で。
「確かに、オレ達の本命はアンコ……『影を這いずる捕食者』だな、うん」
蜜ぷには新入生でも倒せるのだから放置しても危険は無い。
そもそも蜜ぷに大量に仲間を呼ぶので限が無いというのもある。
しかし、それはそれとして。
「倒す必要はないと言われても甘党のわしとしては見逃す理由もないの」
「あっちも威嚇してきてるし、蜜の匂いでアンコウが寄ってくるかもしれないよな!
だから、警戒するに越したことはないけどこいつらは倒しちまおう!」
「コンニチハ死ね……は口が悪いな! コンニチハ製菓材料! 位にしとくか!」
まぁ、こうなるよねって。
これが漫画とかなら目がお金のマークになっているであろうパフィン。
何か言っているが、じゅるりと垂れた涎が全てを物語っているコロナ。
家計簿の食費に掛かる額を思い出して目が笑っていない烏鵠。
「……あー、カワイイねー……ごめんなー美味しくいただくからなー」
「ぷ、ぷに……!?」
そしてそんな3人を他所に端っこの方で1匹の蜜ぷにと向かい合うギヨーム。
おいこいつらやべぇぞ的な声を上げて後ずさる蜜ぷに達。
びくびくぷるぷるとしている、カワイイ。
倒すのは可愛そうだけど、蜜は食べてみたい。
「うん、だから1匹だけいただこう……てい」
「ぷにぃー!」
すっと近付いてレイピアでぷすり、と小突くくらいの感覚で。
それだけで悲鳴を上げながら蜜ぷには崩れ落ち、跡にぷるんとした蜜が残る。
「あー、ちょっと罪悪感あるな。でも蜜は美味そう。
それじゃ一足先にいただきますっと。」
蜜を掬って端に寄り、ぽん、と手を合わせて蜜を一口ぱくり。
ぷるぷるしていて、それでいととろとろとした触感が舌に楽しい。
そしてやはり味である。濃厚でいながらしつこくない、フルーティな甘さ。
「うっま。はー、これは確かに有名にもなるなー」
ぱくぱくと食べ進める。クセになる甘さだ、鼻に抜ける香りも良い。
可愛くて愛でて楽しくて食べて美味しいとは蜜ぷに恐るべしである。
「こりゃずっとぷにぷに眺めたいが……目的はアンコウだったな」
幸福感にうっかり忘れそうになる。いかんいかん。おのれ狡猾な罠を。
案外そのアンコウも近くで蜜ぷにたちを眺めて和んでいないだろうか、何て。
「そういう遊び心を持ち合わせているかは……期待できないだろうなー。
獲物を求めて食う積極性が普通のアンコウと違うところだし……と、なると」
ふと、近くに気配を感じて視線をやれば、そこには1匹の蜜ぷに。
相変わらずぷるぷるしながらも気丈にこちらを威嚇している。健気である。
そう言えばそのアンコウ、蜜ぷにを餌にしてるんだったか。
最初はそんなの食べるのかと思ったがなるほど、今ならそれもよく解る
「蜜ぷにを囮にするのが一番……おー、カワイイねー……お前囮役する?
そっかー、嫌かー」
まぁ、そうだよなーと頷けば蜜ぷにも安心したように息を吐く。
時々ぷに!? とかぷにぃー!(ふるふる)とか反応が返ってくるのが楽しい。
「んー、でも囮役が嫌だとなると、ああなるぞ?」
「ぷにー?」
指さすギヨームとその先へと視線を移す蜜ぷに。仲いいな君ら。
それはともかく、その視線の先にはギヨーム以外の3人の猟兵の姿がある。
ギヨームと違い、嬉々として蜜ぷに達を倒している姿が。
ではここでその姿を実際に見てみよう。
まずケースその1、コロナ・グレイティアの場合である。
完全に食い気で動いている彼女だ、美味しい蜜を前にその意欲は高い。
倒せば倒しただけ美味しい思いができるというのだからさもありなん。
『穿って燃えろ!』
勇気(と食欲)に燃えるコロナはその炎を操る事で敵と戦う。
今回は敵の数が多いのでそれに合わせて手数を増やす作戦だ。
炎を変化させ、大量のダガーを作り出し放つ。その数実に――130。
「「「「「「ぷにぃぃぃぃっっ!!!」」」」」」
一度にそれだけの数の『紅蓮の刃雨』を降らせる。
いくら数が多いとはいえそれだけの猛攻を受けては蜜ぷに達も一溜りも無い。
――などという事は無い。
「うお、また増えて来たな!?」
先ほどギヨームが軽く倒したように、1匹倒すのにダガー1本あれば事足りる。
つまり、一度紅蓮の刃雨を降らせれば130の蜜ぷにを倒せるという事だ。
それでなぜ倒しきれないか、至極簡単な話だ。
『それに負けずとも劣らない勢いで蜜ぷにが増えているから』だ。
1匹1匹が弱い蜜ぷにがどうやって生き残るか、その答えの一つがこれだ。
1匹で足りないなら2匹、それで足りなければ3匹でも4匹でも。
それでも足りないというのならば、10匹でも100匹でも。
さながらミツバチの群れが、群れ為す事でスズメバチを倒すかの様に。
群れる事、それ自体が蜜ぷに達の武器なのだ。
そんな武器を見止め、コロナはにぃっと交戦的な笑みを浮かべる。
「いいぜ、仲間を呼ぶなら呼んでいいぞ!」
相手もただでやられはしない、それでこそ倒し甲斐の有る敵という物。
子の胸に沸き上がる歓喜の感情、それはドラゴニアンとしての闘争本能――。
「全部たいらげてやる!」
ではなく、食い気である。
増えれば増えただけいっぱい食べられるんだもん、それは嬉しいよね。
再びの炎のダガー×130が降り注ぎ、蜜ぷに達は気付く。
『これ焼石に水じゃね? 寧ろ焼ドラゴンに蜜ぷにじゃね?』と。
まぁ、どっちかと言うと焼けてるのは蜜ぷにだが。
元々甘い香りのする蜜ぷに、それが焼ける事で更に濃密な香りが漂う。
これなら確かに本命も釣られている事だろう。
さて、このまま押し寄せてもコロナの元に辿り着けるかは怪しい所。
数対数では、コロナに分がある。ならば。
「ん、なんだ? 蜜ぷにが集まって……!? 合体した……!?」
『個』の強さで対抗する――!
蜜ぷに達が10匹位ずつ集まり、それぞれ巨大な蜜ぷにへと変化する。
その巨大蜜ぷには削られながらも降り注ぐ炎の雨を弾いていく。
よし、これならば戦え――。
「合体したらその分の蜜取れそうだよな! よし倒すぞぉ!」
あ、ダメっぽい。一瞬で悟る巨大蜜ぷに達。
ぷにいいいいいい! と若干太い悲鳴が響き渡る……。
「……ああなるぞ?」
「……ぷ、ぷに」
場面戻って、ギヨームと1匹の蜜ぷに。
改めて投げかけられるそんな言葉に冷や汗が流れ……はしないが動揺する。
束になって押し寄せても合体しても結果は同じ、どうすれば……!?
とか考えている内にギヨームは別の方向に視線を移す。
「もしくはあれとか」
「……ぷに」
あれ、と確認するようにその視線を追う。
正直嫌な予感しかしないが。
という事でケース2、荒・烏鵠の場合だ。
彼自身は甘い物は嫌いじゃない、むしろ好きな部類ではある。
しかし彼の場合は食い気で動いている訳ではない。
訳ではないが、蜜ぷにを食材として見ている事に変わりはない。
と言うのもだ。
「ウチにはエンゲル係数底上げヤローが二匹もいンだよ!
残り一匹も普通以上には食うし!! オレ? オレは小食」
切実な台所事情による物である。懐的にも、食料的にも。
彼の弟分であるドラゴニアンと子鬼という、2匹の大飯食い。
その2匹のおかげで彼らの食卓は常に戦場である。惨状ともいう。
何せ気を抜けば料理が消えているのだ、食うか食われるかだ。
「つーワケなんでオマエらには蜜になってもらう。ごめんなソーリー。
いけっウサギ! 踏み潰せ! シナトクンはオレと一緒に蜜集めな」
言うが早いか、どこからともなく兎が顕れぷちんっと蜜ぷにを踏み潰す。
彼の遣う『十三術式』の内、今回呼び出したのは『砕キ兎』
デカくて疾い兎の妖怪だ。
「ハイシナトクン、風操って蜜回収よーし。
ウサギに倒させっと蜜が弾け飛ぶナ。マ、しゃーねーか」
飛び散った蜜をシナトが起こした風で巻き上げて集める。
それを確認し、烏鵠は砕き兎に蜜ぷにを倒しまわる様に指示を出す。
さて、兎と言うと可愛らしくか弱いイメージが有るが、実はそんな事は無い。
兎跳びなんて言葉も有る様に、兎と言うのはぴょんぴょんと跳ねて移動する。
そんな移動の仕方だからか、兎は脚力がとても強いのだ。
どれ位強いかと言えば、時速80Kmと言う速さで走れる程に。
ちなみに参考としてサラブレッド、競走馬で時速75Km前後である。
そう、普通の兎でさえ馬より早く走れるのだ。
ではこの兎の妖怪、砕き兎の場合は?
「ぷ、ぷに!? ぷにぃぃぃっっっ!!!??」
床に壁に天井に、正しく縦横無尽。
目にも止まらぬ速さで跳ね回り、その自慢の脚で蹴り踏み潰し砕き散らす。
混乱し逃げ惑う蜜ぷに達を、線でなぞる様に蹴散らしていく。
その度美味しい蜜を飛び散るが、風の流れがそれを1ヶ所に集めていく。
「よーしその調子だぜー。ンー、楽でいいネ……はぷ!?」
そんな光景を眺めていた烏鵠の顔にサボんなとばかりに蜜が叩きつけられる。
何事か、と思っているときゅぅきゅぅと抗議する様にシナトの鳴き声。
「てンめ、やりやがったなシナ、ウッワこの蜜めっちゃ美味ェ!」
喋ろうと口を開いたついでに舐めとった蜜の味に興奮する。
きゅ? と鳴くシナトにほれ、と指にとって蜜を差し出し舐めさせる。
いたく気に入ったらしく、しっぽをぶんぶんと振るシナト。
「これは期待以上だナ。オッケ、そンじゃ蜜集めンぜー。
容れ物ー……は、マ、九羽狐で適当に作ればいいじゃろ」
引き続き砕き兎に蜜ぷにを倒させながら、烏鵠も蜜回収に動き出す。
破砕音と蜜ぷにの悲鳴を聞きながら……。
「あれ」
「ぷに」
再び場面はギヨーム・エペーとはぐれ蜜ぷに。
並んで颶風となって襲い掛かる兎を眺めている。
あれは無理、殆ど見えないもん、風が吹いたら蜜ぷにが潰れてる感じだもん。
「……」
「……」
残る戦闘は後1箇所、恐る恐るそちらを見る。
正直、諦めの境地である。
という事で3ケース目、パフィン・ネクロニアの場合だ。
彼女の場合は解り易い。だって目がお金になっている。
見ればどうやら既にそれなりの量を確保済みらしい。
「さて、食後のデザート用だけ取ればいいかと思ったが……。
余ったら売り物にすればいいだけじゃしな」
うんうん、と頷くパフィン。
それまでは前回と同じように隙を見ながらの一撃離脱戦法を摂っていた。
そうすれば新手を呼び出されずに多々買え、じゃなくて戦える。
なのでいずれ殲滅も出来るが……今回はあまりのんびりもできない。
という事で、ここからは効率重視だ。
『盟約に従い来たれ以下略! リトル、出番じゃ!』
なんて若干適当な呪文でかつての空の王者、白ドードーのリトルを呼び出す。
3m近いその体躯にひょいと騎乗し、改めて蜜ぷに達に向き直る。
「せっかくだからアンコウが出てくるまで狩れるだけ狩るぞぃ
さぁ、その蜜おいてけー!」
ダン、と勢いよく踏み込むリトル。一気呵成に蜜ぷにの群れへと突撃し――。
一瞬の内に二撃の斬撃を放つ。傍から見れば殆ど同時に見えるその斬撃。
それは確かに2匹の蜜ぷにを斬り捨てている。
賢者ぷにと呼ばれる蜜ぷにに操られ多少なりとも強化された個体を、だ。
息の合った2人、もとい1人と1匹のコンビネーション。
パフィンが斬撃を放った直後に既にリトルが次の獲物へと駆けつけている。
そしてパフィンもまたその間に愛刀である曇天を構え直し、また二撃。
淀みないその連携は、蜜ぷに達の反撃を許さず次々と斬り伏せていく。
「ひぃふぅみぃよ、いぃむぅななや、ここのたり――。
蜜ぷにの蜜1匹あたりの値がこんなもんじゃから……うむ!」
淀みない斬撃を放ちながら、淀みのない思考で金勘定をしているが。
言い換えれば、それは常に彼女が思考をし続けているという事でもある。
パフィンは商人だ、そして商人というのは常に利益を出す事を考えている。
言ってみれば、常に回り続けるその思考が彼女の強みなのだ。
そしてそれは戦闘においても例外ではない。
常に思考し計算する事で、最も利益の出る行動を選んでいく。
損失《ヒガイ》を減らし、利益《センカ》を上げる行動を。
「需要が多く値崩れもせんし、大量に捌ける。その分1匹あたりは安いが……。
それでも斬れば斬っただけ懐が潤う。ほんに美味しい相手じゃの」
既に倒した分と残っている分、そこから得られる利益を計算し終わる。
悪くない、むしろ中々に良い稼ぎである。
「さて、それじゃもうひと稼ぎさせてもらうとするかのぅ!」
残る宝の山を切り崩すべく、パフィンは刀を構え直す。
「……」
「……」
無言でそんな光景を眺める1人と1匹。
そっとギヨームが蜜ぷにを見つめる。
「……お前、囮役する?」
「……ぷに」
そして再度の質問、葛藤の末頷く蜜ぷに。囮orDIE、酷い選択肢である。
さて、そんなこんなで蜜ぷにとの戦闘も大分進んだ。
後は今回の本命、『影を這いずる捕食者』がいつ現れるかだ。
猟兵達は戦いながらも、きっちりと本命への警戒も行っている。
コロナの狙いである誘き出し、これは彼女の狙いとは違う形で機能していた。
『影を這いずる捕食者』は匂いではなく熱や光を感知して獲物を探している。
そう、彼女の放った炎の雨が生み出す熱を感じ取っていたのだ。
そして烏鵠とシナトが風の流れ、ギヨームが暗がりで居場所に目星を付けた。
パフィンもまたいつ現れても対応できるように身構えている。
故に、その奇襲は成功しない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『影を這いずる捕食者』
|
POW : 食らった光を消化
全身を【一瞬淡い光】で覆い、自身が敵から受けた【提灯部分から吸収した光、熱量】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD : 影から現れる大口
【隙を食らいつく為、影に潜み野生の勘で】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ : その姿は闇そのもの
【提灯部分から光源や熱を吸収し、闇を作る】事で【地面にある影だけでなく空間にまで潜む影】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「フィーナ・ステラガーデン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
それは蜜ぷにとの戦闘中の事。
それぞれが蜜ぷにを倒し、蜜を集め……時に味わっていた時。
突如として闖入者が顕れる。今回の本命『影を這いずる捕食者』だ。
何もない……影しかない場所から現れたアンコウが大口を開けて戦場を横切る。
猟兵達や蜜ぷに達を喰らうべく行われた襲撃は、しかし失敗に終わる。
ここに居たのが浮かれ油断した新入生だったならば結果は違っただろう。
しかし彼等は事前にその存在を知り、戦いながらも警戒を怠らなかった猟兵だ。
そんな手が通用するほど甘くは無い。故に、その失敗は必然だ。
そしてその存在が露見した以上、ここからは喰らい合いとなる。
再び影の中へと潜った『影を這いずる捕食者』は、周囲の熱と光を吸収する。
それにより、それまでも薄暗かった迷宮内に完全なる暗闇が出来上がる。
相手も本気、という訳だ。
影から影へ映り渡る『影を這いずる捕食者』
この闇は完全に相手の領域であり、狩場だ。
先ほどは失敗に終わった奇襲、それが常にどこからでも行われる可能性がある。
これまでと同様に、そしてこれまで以上に油断は命取りとなるだろう。
さぁ、決戦の時間だ。
荒・烏鵠
ヒエ。真っ暗やん。やーコレはニンゲンさん困っちゃうナ!
ところでキツネって夜行性なンですよ。あとメッチャ耳がイイ。分厚い雪の下を走るネズミの足音が聞こえるくらいの地獄イヤー。
ぷらーす!この場には空気が満ちている。つまりシナトの知覚域。
ハイ、丸見えですね!悲しいねアンコウ=サン。
とはいえ真後ろや目の前頭上足下から出られても困るンでね。カモーン踊り龍!ア、癒やしじゃないのよ。明かり代わりになってチョーダイ。
バラバラで46の灯火だ、影のない安全圏作るにゃジューブンよ。
サ、飛び出してきな。風の刃でバッサリするぜ!シナトが!
鍋ってイイよな、簡単でサ。夏に鍋してもイイじゃない、ラクだもの。キツネ。
ギヨーム・エペー
※アドリブ連携歓迎
お!釣れたっぽいな。よしぷに丸行ってこい!
厄介そうなのは…提灯か。あれがあるから闇に隠れたり自己強化するっぽいな。狙ってみるぞー。
氷や水は反射する、となると燃やす…か?UCは【属性攻撃】を意識して火の魔術を強めに、そして攻撃力を高めて発動する。……あっ水に火の魔術重ねて熱湯ふっかけてみるか?ひるませるくらいならできそう。どう太陽、熱湯ビーム。お前精霊だろうビーム出せるって。かっこいいって。なあぷに三郎お前もそう思うよなあ!?ビームはカッコいい…って…あれ囮は?まだ時期じゃないって?……選ばれし勇者ぷに江!今がその時であるぞ!
骨は…蜜は拾ってやるから…なっ?
パフィン・ネクロニア
ぬ?どうやら本命が来たようじゃな。暗くて全然見えんけど。
暗闇の中で戦うには厄介な相手じゃがまあ対策は講じてある。
あのアンコウは提灯で光を吸収するそうじゃからな。
こんな事もあろうかと用意しておいたこの秘密兵器に光属性を付与して投げればなんなく居場所がわかるって寸法じゃよ。
まああまり強い光ではないからすぐ暗くなるじゃろうけど
ほんの一瞬でも居場所が解れば十分じゃ。
アンコウが動く前に剣刃一閃を叩きこんで3枚におろしてくれるわ。
コロナ・グレイティア
■心情
出やがったなアンコウ!!!
オレが食べ……ゲフンゲフン
新入生達の為にも退治してやる!
覚悟しろ!!
■戦闘
なんか体が光ったら明かりを吸収して強くなるみたいだな?
じゃあ、光って強くなった後の一瞬を狙ってより強い攻撃でぶちのめせばいいんだよな!
炎の技能【属性攻撃】でわざと攻撃していって、アンコウが光って炎を吸収したタイミングでドラゴニック・エンドをぶちかますぞ!!!
■その他
アドリブ等は大歓迎だ!
影の中からの奇襲を回避した猟兵達が闖入者の姿を捉える。
光と熱を吸い込む提灯と、闇その物の様な暗い口腔。
全身が見えた訳ではないが、推定4~5mはあろう巨大なアンコウ。
今回の標的である『影を這いずる捕食者』だ。
奇襲が失敗したと見るや周囲の光を吸い込み、その姿を闇に溶かしていく。
「出やがったなアンコウ!!! オレが食べ……ゲフンゲフン。
新入生達の為にも退治してやる! 覚悟しろ!」
そんな捕食者に対し啖呵を切るコロナ。
捕食者のその異様な姿は見る者に恐怖を与えるだろう。
それは猟兵達とて、コロナとて決して例外ではない。
人は古くから闇を恐れ、そして抗って来た。
『影を這いずる捕食者』は、オブリビオンは未来を喰らう闇。
ならば猟兵は、コロナは炎だ。その勇気で持って未来を照らす炎だ。
その心を勇気に燃やし、恐怖に抗いコロナは敵に対峙する。
そう、決して恐怖以上に食い気が勝っているというだけではない。
相も変わらず涎が垂れているが本当だ。
「あやつが本命じゃな。暗くて全然見えんけど」
そしてそんなコロナと並び闇の中へと消えた捕食者の姿を追うパフィン。
彼女もまた文明と言う、英知と言う光でもって闇に抗う存在だ。
彼女は世界を旅する行商人、その道行きに夜闇は付き物だろう。
決して明るいだけの道のりではなく、常に安全な宿が有る訳ではない。
それでもパフィンがここに在るのは、その夜闇を乗り越えて来たからだ。
ゆるくぬるくなるように、それができるのも経験という裏付けがあってこそ。
パフィンにとってこの闇も乗り越えて来た内の一つに過ぎない。
そしてその捕食者も、売り捌いてきた商品の一つとなるだろう。
金勘定にはシビアなパフィンが、高級品を前に黙っている訳が無いのだから。
「お! 釣れたっぽいな、よしぷに丸行ってこい!」
「ヒエ。真っ暗やん。やーコレはニンゲンさん困っちゃうナ!」
それに続くギヨームと烏鵠の2人……と、蜜ぷに1匹。
ダンピールと妖狐である彼らは、どちらかと言えば闇を住処にする者だ。
「まぁ、おれは太陽の下の方が良いけどなー。ぷに吉、お前は?
……え、この迷宮から出た事無い? そっかー」
夜の支配者たるヴァンパイアの血を引くダンピールであるギヨーム。
彼にとっても闇とは恐れる物では無く身近な物である。
ここの所は山と海での生活ですっかり日焼けしているが、それでもだ。
「ところでキツネって夜行性なンですよ。あとメッチャ耳がイイ。
分厚い雪の下を走るネズミの足音が聞こえるくらいの地獄イヤー」
ぷらーす!この場には空気が満ちている。つまりシナトの知覚域」
そして闇を狩場とするのはこの『影を這いずる捕食者』だけではない。
多くの夜行性の動物にとっても闇は味方であり、狐もその一種だ。
人に化けて久しいが、烏鵠の本質は狐である。その性質もまた同じく。
彼らにとっては暗闇の中も真昼と何ら変わりはない。
そして空気の有る空間においては絶対の知覚能力を持つシナトも居る。
まぁ、つまり。
「ハイ、丸見えですね! 悲しいねアンコウ=サン」
「隠れ身の術は失敗、残念だったな!」
そういう事だ。
夜目の効く2人にとってこの暗闇は障害ではない。暗闇自体は、だが。
『影を這いずる捕食者』の厄介な所は「闇を生み出す事」ではない。
「生み出した闇や影に潜む事」だ。そうなっては手の出し様も無くなる。
空気中を知覚域とするシナトも空気の無い影の中までは見通せない。
とはいえ影の中に潜んだままでは攻撃できないのは相手も同じ。
猟兵達を喰らおうとするならば影から出てくる必要がある。
問題はそれが真後ろや目の前頭上足下からでも可能という事だ。
「それは困るンでね、カモーン踊り龍! ア、癒やしじゃないのよ。
明かり代わりになってチョーダイ」
故にまずはその牙城を切り崩す。烏鵠が呼び出したのは東洋龍を模した炎だ。
その炎は傷を癒すものであり攻撃には使えないが、周囲を照らす事は出来る。
それが46も有ればだ。
「影のない安全圏作るにゃジューブンよ」
無影灯と呼ばれる、手術室等で使われる『影を作らない照明』
呼び出した炎の龍を操り四方八方から照らす事でそれを再現したのだ。
そうなれば当然、影に潜む捕食者は猟兵達の居る空間に弾き出される。
捕食者も照明の中から逃げ出そうとするが。
「そこかー!」
「逃がさぬ!」
それを逃す猟兵達ではなく、コロナとパフィンが追いすがる。
コロナが炎の刃で、パフィンが愛刀の曇天で交差する様に斬り付ける!
光や熱を吸収する捕食者も、炎をまともに浴びて無事な訳もない。
剣閃による傷も結構な深さだ。が、捕食者とてやられてばかりではない。
コロナは年齢を考えれば身長は低くないが、それでも凡そ1.5m。
パフィンはそれよりも小柄で1.4m程だ。
5m近い捕食者とは比べるまでも無い質量差がある。
捕食者の武器であるその大顎で喰らいつかれれば一溜りもないのは勿論だ。
そしてその質量差では、ただの身じろぎですら脅威となる。
頑強な身体を持つドラゴニアンのコロナならまだ耐えられるだろう。
しかし、パフィンにとっては一撃まともに貰うだけで致命的になりかねない
もがく様に身体を振るい、コロナとパフィンを撥ね飛ばそうとする捕食者。
「熱湯、ビィィイイイイム!」
――に、対しギヨームが水と火、2つの属性を掛け合わせた魔術を放つ!
たかが熱湯と侮るなかれ。それはビームと称せる程に高圧で放たれた熱湯だ。
高圧力下では水の沸点は100度を超える。水圧も熱量もかなりの物だ。
狙いは頭部の提灯、光や熱の吸収口であり強化の要となる部位。
いかに吸収口とは言え、そこに直接熱源をぶち当てられるというのはつまり。
口の中に、あっつあつのおでんを放り込まれる様な物である。
それは当然、怯みもするという物だ。
その隙に置き土産とばかりに追撃の炎と斬撃を放ちながら2人が後退する。
「ほら、出せたじゃんビーム。やりゃできんだって。
かっこよかっただろ? なぁぷに三郎、お前もそう思うよなあ!?」
振り返りギヨームに手を振り感謝の意を示すコロナとパフィン。
ギヨームも応える様に軽く手を上げ……、
たかと思えばお供(?)の精霊と蜜ぷにとコントを始める。
どうやらソレイユとぷに……何だお前、には不評らしい。ちくせう。
「いやー、解るぜ。ロマンだよナ、ビーム!」
「! だよな、かっこいいよなビーム!」
と思ったけど同意者が居た!
ハイタッチする野郎2人の後衛組にシナトを加え呆れムードのお供組。
一方、コロナとパフィンの女性2人の前衛組は今も捕食者と戦闘中だ。
男女と前後が逆じゃないかとか言ってはいけない
コロナとパフィンは竜騎士に剣豪という前衛職。
対して烏鵠とギヨームは陰陽師とマジックナイトという中~後衛職だ。
適材適所と言う物だ、猟兵ならそういう事もある。
「ビームかっけーのは解るけどマジメにやれよアンタら!
……かっけーよなビーム、私も出せっかなーあ、いけた!」
「お主も、の! ……ビームか、見世物にすれば金がとれるかのぅ」
先のビーム真似て操る炎を圧縮し、一気に放ったコロナのビーム。
それは捕食者に浅くは無い傷を与えていた。
本人はなー見た見た!? とヤローズにきらっきらした目を向けているが。
捕食者に捉えられぬ様、走り回りながらパフィンもまた剣劇を放つ。
この図体、タフさも相応だろう。倒し切るには相当ダメージを与えなくては。
それに対しこちらは極力被弾を避けなくてはいけない。
故に基本は隙を見ながらのヒットアンドアウェイとなる。
今の所は順調だが、ダメージが無くとも走り回れば体力を消耗する。
相手が倒れるのが先か、こちらの体力が尽きるの先か、持久戦だ。
そんな戦いが続いていれば、こんな局面が出てくる。
「ちっ、こんのっ!」
「ええい、厄介じゃの!」
捕食者からの反撃に備え距離を取ったコロナとパフィン。
そこにギヨームが魔術を放ち援護する、と言うのがそれまでの戦術だった。
しかし、そこで捕食者が反撃ではなく逃走を選ぶ。
ギヨームもそれを察知して逃げ道を塞ぐ様に魔術を放とうとする。
が、捕食者が動いた事で射線に前衛2人が入ってしまっていた。
その為追撃が遅れ、その隙に照明下から捕食者を取り逃してしまったのだ。
再び闇の中に捕食者の姿が消えた。
こうなってはそう易々とこの無影空間に誘き出す事は出来ないだろう。
コロナが慌てて炎を放ちその姿を照らし出そうとする。
が、突如その炎が掻き消える。喰われたのだ、捕食者に。
「お、おい! どーする!?」
「……選ばれし勇者ぷに江!今がその時であるぞ!
骨は……蜜は拾ってやるから……なっ?」
あたふたと仲間を見渡すコロナに、ギヨームが蜜なんたらに声をかける。
いやいやと首を……体を振る蜜ぷにをどうにか説得しようとするギヨーム。
「マ、慌てなさンなって。すーぐ見つけてやっからナ」
そこでからからと烏鵠が笑い声を上げる。
操る炎の龍を広域に散らし捕食者を探す様に周囲を照らしだす烏鵠。
しかし、その為に安全圏の照明下に隙間ができてしまっていた。
これでは相手の思う壺、現に捕食者はその隙間練って猟兵達に接近している。
隙間はそう広くは無く、捕食者の巨体が入る事はできないかに思われる、が。
この捕食者はその身を影に変ずる事ができる。故にその隙間で十分なのだ。
そして、影その物であり、影の中に身を潜めているという事はだ。
音など立てないし、影の中に空気などはない。
つまり、烏鵠にもシナトにもその接近を知覚する事はできないという事であり。
故に、そうなる事は必然だ。
「今だぜ」
「応」
そんな軽いやり取りと共に、パフィンが用意していた秘密兵器を投げ込む。
それは光属性を付与した即席の簡易閃光弾だ。
それにより、まんまと誘い込まれた捕食者が曝け出される。
「ほら、ナ?」
忘れてはいけない。彼の本質は狐であり、狐とは化かす者だ。
それは今も昔も変わりなく、良きも悪しきも関係なく。
確かに烏鵠に捕食者の接近は知覚できていなかった。
しかしこれだけ照明を広げて見つからなければ、逆に位置を絞れるのだ。
なぜと言って、捕食者は影の中にしか居ないのだから。
そして腹を空かせた捕食者が素直に逃げる筈もない。
それが猟兵達を憎むオブリビオンならば猶更だ。
必ず近くに潜み、隙を伺い猟兵達に喰らいつこうとするだろう。
故に、こうなる事は必然なのだ。
「……ん? なー、これ先に飛び掛かられてたらどうしたん?」
「……ケッケッケ! 細かいこたァ良いじゃねーの、結果オーライ!」
「考えてなかったのかよ! スゲー感心してたのに!」
「というかこれ、わしの手柄じゃよな?」
そんなやりとりをしながらも、追撃は怠らない。
ギヨームとコロナの徹底した火責めとパフィンの斬撃。
これで随分とダメージを稼げた。このまま一気に倒してしまいたい所、だが。
ただもがいていた捕食者が身を起こし、周囲を薙ぎ払う様にのたうち回る、
一方的に攻撃できるのもここまでだ。
再び取り逃さない様、包囲しながら距離を取る猟兵達。
持久戦となった場合この捕食者には厄介な能力が有る。
吸収した光や熱を消化し、自身に強化と回復を行うという能力が。
『影を這いずる捕食者』の真に厄介なのはこの能力なのだ。
生み出した闇に潜み、奇襲をかける『影を這いずる捕食者』
周囲を照らし、引きずり出して初めて戦闘に持ち込む事ができる。
しかし、戦闘に持ち込んでなお強敵なのがこの捕食者だ。
更に、その照明はこの捕食者にとって餌にもなるというのだから酷い話だ。
そして能力のその合図となるのが――。
「アンコウが光ったぞ!」
これの全身を覆う淡い光だ。周囲の熱と光を吸収しようとする捕食者。
さて、これまで猟兵達は炎の龍の照明下で、炎を放ち戦って来た。
つまりこの戦場には捕食者の餌となる光と熱がたっぷりとある。
では、それを一度に吸収しようとすればどうなるか。
「――そら、『召しやがれ』ってな!」
オーバーフロー
声にならぬ悲鳴を上げ苦しむ捕食者。熱量が許容量を超えたのだ。
確かにこの捕食者は光と熱を吸収する事は出来る。
しかし、炎に焼かれてダメージを受ける様に限度は有るのだ。
それを一気に吸い込めば、吸収しきれなかった炎熱がその身を焼く。
内側から焼かれ苦しみもがく『影を這いずる捕食者』
勝機はここだ。
「いくぜ!」
好機と見て、ドラゴンランスを構え駆け出すコロナ。
その勢いのままに、捕食者の提灯へとランスを付き刺し――。
紅蓮に燃え盛る、劫火のドラゴンを召還する!
「必殺!」
同時、パフィンは愛刀である曇天を鞘に納め、そして構える。
極限まで集中力を高めて腰に佩いた曇天の柄を握る。
抜刀術、居合の構えだ。
「ドラゴニック――」「剣刃――」
呼び出された紅蓮のドラゴンが、パフィンが弾丸の様に放たれる。
決着の時だ。
「エンド!」「一閃!」
劫火が捕食者を飲み込み、神速の剣劇が斬り裂いた。
「で」
だ。
動かなくなった捕食者を囲む猟兵達。
倒せたは良いが、一つ問題が有る。
「……いや、でけーな。解ってたけど」
そう、何せ5m近いサイズのアンコウだ。
解体してもこの人数で持ち運ぶのは骨が折れる。
とは言え文句を言っていても始まらない。
4人がかりで解体し、烏鵠が用意したクーラーボックスに入れて背負う。
「鍋ってイイよな、簡単でサ。夏に鍋してもイイじゃない、楽だもの。キツネ」
「解るー、涼しい室内で鍋ってのも贅沢でいいよな。ダンピ」
「あ、蜜ぷにの蜜食べてなかったな……んー! スゲー美味いなコレ!」
「くふふ、これなら良い稼ぎにななりそうじゃな!
しかしあのキノコエリアが消えるのは少し勿体ないのぅ……」
帰り道を、和気藹々と談笑をしながら。
後はグリモアベースへと帰還し、報告を済ませて打ち上げをするだけだ。
これで依頼は達成、新入生達が被害にあう事も無くなった。
捕食者よって生まれたキノコエリアも規模を縮小する筈だ。
今後、この迷宮は新入生達による蜜ぷにの良い狩場にでもなる事だろう。
そして1人のグリモア猟兵が路頭に彷徨う心配も……しばらくは無い。
さぁ、これにてこの事件も一件落着だ!
めでたしめでたし!
大成功
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