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深緑に染まる心臓

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●緑の病
 どうして。嘆きの声と共に農夫が膝を付いた。
 縋り付くように伸ばした指で、ベッドの上に横たわる息子の腕を撫でる。指先から伝わる感触は儚く、冷たい。張りがあり、滑らかだった少年の肌には、緑色の斑点が浮かんでいた。
 この辺りに古くから伝わる、奇妙な病。こうなってしまっては、冬は越せまい。

「……おい、気持ちは分かるが、やめておけよ」
「止めないでくれ、このままあいつが弱っていくのを見ているだけなんて、俺にはできない」
 病床の彼の兄が、そう言って旅支度を始める。
 奇妙な病にはもう一つ言い伝えがくっついている。曰く、ここの森に生る果実。それを与えれば、病は治る。
「わかってるだろ、あの森は踏み込んではいけないんだ! 近くを化け物がうろついてるのを見たって奴も居る! 帰ってこなかった奴だって――!」
 積み重ねられる言葉は、果たして彼の足を止められるのか。
 季節を感じさせない葉擦れの音が、嘲笑うように民家に響いた。

●森の心臓
「その深き森には神が居られる……らしいよ」
 まあ、突然そんな事言われても困るだろうけど。そう言って、オブシダン・ソード(黒耀石の剣・f00250)は目深に被ったフードの下で笑みを浮かべた。
 今回の現場となる世界は、アックス&ウィザーズ。森に隣接した平原に位置する、小さな村だ。人口は少ないながらも、土地条件はそう悪くない。地を耕し、獣を狩り、平和に暮らしていたようなのだが。
 問題となるのは隣接する、その森だ。
 季節としては冬真っ只中にも関わらず、その森林は往時と変わらぬ緑の恵みを湛えている。悠々と茂った草に、果実、それを求める虫、さらにそれを求める鳥、動物たち。この世の春、そして恵まれた夏を思わせるその光景に、しかし人間は踏み込むことを許されないのだと、村人達は語る。
「人が踏み込むと、神様は怒りなさると、そう言うんだ。具体的にはちょっと、まだ聞き出せていないんだけどね」
 そう言って、オブシダンは気まずそうに微笑んだ。
 何にせよ、悪いことが起きるならば近づかなければ良いと、村人達もそうして生きてきたようだが。今年はどうも、この土地特有の病が猛威を振るっているらしい。
「この病に効く果実が、森の中にあるんだ。それで村の人達は、森に踏み込むかどうかで揉めているみたいだよ。
 ――でもね、そもそもこの森、変でしょう? それでちょっと調べてみたんだけど、どうもオブリビオンが潜んでるみたいなんだよね」
 そこで、猟兵達の出番というわけだ。
「さすがに村の人達に任せる、というわけにはいかない。話は通しておいたから、代わりに君達で果実を持ち帰って……あわよくば、オブリビオンを引っ張り出して倒してほしいんだ」
 とりあえず、目下の探索においてはオブリビオンと出くわす、または発見する可能性は極めて低い。目的の果実を見つけ出すことが先決となるだろう。
「ま、その後は出たとこ勝負だね。そういうの、得意じゃないかな?」
 ものすごく無責任なことを言ってのけて、オブシダンはテレポートの準備に入った。
「それじゃ、よろしく頼むよ。君達ならば大丈夫だと、信じてる」


つじ
 どうも、つじです。
 舞台はアックス&ウィザーズ、森林探索から始まる冒険になります。2,3章は戦闘がメインになる予定です。森林での遭遇戦になるか、村に戻っての迎撃戦になるか、その辺りは皆さんのプレイング次第で決めていきたいと思います。

 目的の果実は林檎と桃を足して2で割ったような、柔らかいハートのような見た目をしていることが分かっています。病は厄介なものですが、猟兵達には罹りません。

 以上です。みなさんのご参加お待ちしています!
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第1章 冒険 『薬の素材を手に入れろ』

POW   :    崖の上にある薬草を取りに行く

SPD   :    足場の不安定な木を木登りをして木の実を手に入れる

WIZ   :    森の動物と仲良くなって素材のある場所に案内してもらう

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゼグブレイド・ウェイバー
動物と仲良くなれる能力があればよかったのですが…そんな能力は僕にはないので崖の上にある薬草を取りに行きたいと思います
「大丈夫、いつも体を鍛えてるし、訓練だと思えば…!」
と自分に言い聞かせながらも崖を登っていきます。
華奢な体つきですが力はあるので途中落ちそうになりながらも薬草のある場所を目指して登っていこうと思います。


アオイ・フジミヤ
WIZ
海で育った私は森の初心者。だから森のプロ達(動物)に聞くのがいいよね。

綺麗な森。オブシダンさんの言ってた通り、神様もいるのかもなぁ。
あったかいね~(肩のマリモに話しかけながら歩き(
マリモは聞いているのかいないのか、ふよふよ泳いでいる。

林檎や苺、チョコを持っていこう。
食事を分けてもらうんだし、お礼の意を込めて。
差し入れを動物たちに渡し話しかけてみる。
この森がもし人を嫌うなら、勝手に踏み込んでしまって申し訳ないけれど。
ハートの果実を必要な人がいるの。教えてくれるかな。

果実なら鳥達が好きかも。鳥の行く先を追って、歩いてみるのもいいな。

静かに歩もう。驚かさないように。


アイン・ローレンス
【WIZ】楽器演奏

森にオブリビオンが?
何を考えているか分かりませんが、放っておく訳にはいきませんね。
その前に果実を村の人たちに届けてあげなくては。

森のことは森に住む子たちに聞くのが一番ですね。
私もビーストマスターですから心を通わせることが出来るはず…
「友の証」でぽんず(たぬき)とみりん(きつね)を呼び手伝って貰います。
私の笛の音に合わせて踊って下さい。
楽しげな雰囲気で動物たちに集まってきて貰いましょう。
暫く一緒に踊って仲良くなったら本題へ、目的の果実まで案内をお願いします。

道中敵の情報も少し得られれば良いのですが…
ぽんずとみりんと協力して足跡や木に傷跡がないかなどもしっかり観察しておきましょう


マティス・ジュブワ
森はエルフの独壇場、ではあるのだが……この森は確かに異常だな
まずは慎重に、調べてみるか
病の原因がこの森にある、っつー可能性も充分考えられるからな

まずは森の周辺を回って観察
森の中と外で温度が違うなんつー事があったら魔術やオブリビオンの気配が濃厚だろう
植生が周りのものと違いがないか等を観察して比較する
何かの力の痕跡でも見つかりゃ敵の居場所もわかるだろうからな

んで、動物達を観察して薬となる果実のありかを調べる

直接話せればいいが、そういう技能はねぇからなぁ
なんか木の実とかやって慣れてもらうのがいいのかね?

ともあれ、動物観察とマッピング
そこから植生の傾向を読み解いて果実を探してみるとしよう


セツナ・クラルス
村人に果実の実る場所を確認し森へ向かう
成る程、ここは活力に満ちている
神の怒りに触れぬよう励まないとね
ゼロ、観光気分でふらふらしてはいけないよ
いや、今回気を付けるべきは私か
可能なら長期滞在してここ固有の植物や動物を観察…
…大丈夫、任務のことは忘れていないよ

祈りを捧げ
害意のないことを示す
力を抜き、精神を研ぎ澄ませ、
森に住む生き物たちの囁きに耳を傾ける
祈りを捧げている間は無防備になる為
念のためゼロに周囲の警戒を依頼

首尾よく進められないなら
第六感に頼るのも検討しよう
ふふ、闇雲に出たとこ勝負という訳ではないよ
先ほどの祈りで普段よりも感覚が冴えている気がするんだ
こういう時の勘は馬鹿にならないからね


アメリア・イアハッター
子供が病気で苦しんでるっていうのは、ちょっと…ダメだな
絶対、お薬とってきてあげるからね
他にも多くの人が苦しんでるんだよね
君達を大切に思う人達が君達を支えてくれるから、私達が帰ってくるまで、頑張ってね

・方針
木の実を手に入れる

・行動
【スカイステッパー】使用
【ジャンプ】して木々を渡り歩き、果実を探す
足場の悪い木の場合は、空を蹴って果実を取りに行く

虫や鳥、動物も果実を求めてるって話だから、その子達が集まっている所を重点的に調べれば見つかりやすくなるかな
鳥や動物を驚かせないように、なるべく【目立たない】様に空を駆けよう

「人が踏み込むと神様は怒りなさる、かぁ
帽子は許してくれたりしないかな」

絡みアドリブ歓迎


ヘカテー・ティシポネ
林檎と桃の様なハート型の果実らしいわ…ね。
単純に、考えて木に生りそうなものだけど。
…というか、食べられるかしら?…じゅるり。

◆SPD
とりあえず、森林は危険だというし、目立たないように注意しながら、実のなっている木を探していこうかしら。そうなると、色々な種類が欲しいわね。

発見したら【死霊武器操作】にて、召喚した黒塗りの鉄鎖鞭とロープワークを駆使し、綱や梯子として、安全を確保しながら、木の実を手に入れるようにする。

「1つ…ぐらい…いいかし…ら?」


ルナ・ステラ
病気、苦しいですよね...
早く助けてあげないと!

ちょっと、不気味な森ですね...
でも、生き物もたくさんいるみたいですね

【動物と話す】
森の動物さんたちと話して仲良くなって素材のある場所に案内してもらいます。もし、話すだけじゃ不十分なら【楽器演奏】で森の動物さんたちを楽しませてもっと仲良くなります。

あと、動物さんたちから「人が踏み込むと、神様は怒りなさる―」という噂についても何か知ってないか聞きだせるといいですね。


ニコラ・メイリアス
ここに暮らす人たちが笑顔でいられるように
今、私にできることを精一杯やってみます…です。

できることなら出発前に神様、のことを少しでも聞けたらと思うのですが
言いたくないようなら無理強いはいけませんね。
兎にも角にも出発しましょう。
きっとよくしてみせますから…少しだけ待っていてください!

【WIZ】
とは言ったものの入ったことのない森をどう探せばよいのやら…!
役立たずとはまさしく今の私のことでしょうか…
うう、私より森を熟知していて嗅覚も鋭いであろう
動物さんに手で件の果物の形を作ったりして聞いてみましょう。
聞いたらあとはひたすらついていくのみ!です。

『それにしても…私でも採りやすい場所にあるといいなぁ…』


バジル・サラザール
こういう言い伝えのある森って、暴れまわったり、資源をむやみに採ったりしなければ大丈夫のはず。
オブリビオンはともかく。

やっぱり初めて入る森、現地の動物たちに案内してもらいましょう。
動物たちを喜ばられるような技術はあまりないけど、病気の村人のために果実を少し分けて欲しい旨をしっかりと伝えたら協力してもらえるかしら。ついでにオブリビオンについての情報収集とかも出来たら理想的ね。
もし動物たちから何かお願いされたらできる限り応えましょう。

うまく分けてもらえたら、お礼を言って、出来るだけ早く村に届けたいわね。
戦闘になってもできれば森や村は巻き込みたくないわね。


鴛海・エチカ
【SPD】
神の怒りとは物騒な話じゃのう
しかし狭量な神など此方から願い下げじゃ
それだけで怒りを買うというのならば踏み入った後は何をしても然程変わらぬ

それゆえにチカは樹の上に登ってみるぞ
高所から見渡せば件の果実も見つかるじゃろう
序でに豊かな森も眺められて一石二鳥だのう

登った樹に実があれば僥倖じゃがそうもいかぬ
それらしき樹や果実の影があれば近くにいる誰かに方向を示そう
ふふん、登れはしてもチカは降りるのが少しばかり怖いのじゃ
すぐにチカも実の方に行くゆえ……ふ、ふゃああ……こわい……

果実を探すことに注力はするが、やはり神の怒りとやらも気になる
来るなら来るが良いぞ。このチカが何であろうと受けて見せよう!


ジェイクス・ライアー
神は随分と人間がお嫌いなようだな。
まあいい。私は私の仕事をするだけだ。

【SPD】
さて、第一の目標の果実だが、見た目が分かっていると言うことならどのような場所から取れるのか、おおよその検討はついているのかな?
木本性の植物からなるのか、草本性の植物からなるのかでは探す場所が変わってくるだろう。果実の情報の出所から情報収集をしたのち探索を開始するのが望ましい。
が、判明しない場合は身軽さを活かし木を登り探そう。おおよその果実は木本性だというからな。


小日向・いすゞ
あっし、こう見えて動物と仲良くなるのが得意なんスよ
この杖っぽい笛を吹くと、動物と意思疎通が出来るンスよー
と、言う訳で動物さん達助けて欲しいっス

ぴーひょろろ的な
意思疎通が出来たからって言う事を聞いてくれるとは限らないっス
美味しいオヤツ持ってきたっスよ、と誘惑をして話を聴いてもらうっスよ
林檎と桃を食べてもらって、同じ様な味の果実を知らないか聞くっス

うーん、そうっスかー
ついでに最近あやしー奴が居ないか聴いておくっスよ

最悪、果実が取りづらい場所にあるなら管狐を呼ぶっスよ
沢山あるなら少しくらい食べて良いっスから、頑張るっスー

管狐にゃ、今晩はおいなりさんを供えるっスから頼んだっスよ


クリス・ホワイト
【WIZ】村に伝わる奇病……その症例に当たってしまったんだね。村人たちもさぞ気を揉んでいることだろう。僕に出来ることなら、ぜひ手伝わせてもらうよ。僕も猟兵のひとりだからね。

とはいえ、なにせ土地勘がない。
闇雲に探すよりは、この森にいる動物たちと仲良くなってみるのが良いかな。
そうだなあ、僕としては猫がいるとうれしいね。僕はただの猫ではないけど、きっと通ずるものがあるはずさ。
あとは、近くにも猟兵がいるなら協力し合うのがいいだろうね。こればっかりは縁にお任せするよ。



●森へ
 この土地特有の奇病。肌に緑の斑点が浮かんでいる事を除けば、その患者の少年はさほど重篤には見えない。咳込むでもなく、苦しむでもなく。ただ呼吸の音は細く、浅い。放っておけば、このまま眠りと覚醒の境界が薄くなり、徐々に弱っていくのだという。
「絶対、お薬とってきてあげるからね」
 起きているのか眠っているのか曖昧な少年に、傍らからアメリア・イアハッター(想空流・f01896)はそう声をかけた。ヤドリガミである彼女にとっても、この光景は受け入れ難いもののようで、苦し気に眉根が寄せられている。
「森の言い伝えについて、詳しく教えていただけませんか?」
 特に、神様について。ニコラ・メイリアス(人間の精霊術士・f05568)もまた患者の元に寄り、村人からの情報収集を試みていた。
 引き出せた情報は、グリモア猟兵の話していたものと大差無い。だが、村人たちの抱く森への畏敬は、肌で感じ取ることができた。
 曰く、神様が居るからこの森は常に栄えている。
 森に出入りする動物達、そして森の隆盛の影響を受けた肥沃な土地は、この村の生活を豊かにする一助となっているようだ。ただし、少しでも森に踏み込んで狩りを行えば、森の恵みを掠め取れば、神は怒りを示すとも。
 一様に曇った表情を浮かべる彼等の様子に、ニコラは決意を新たにする。皆を笑顔で居られるようにするためにも、精一杯のことをしよう。
「出発しましょう」
 思いを込めたニコラの言葉に、アメリアが頷く。
「きっとよくしてみせますから……少しだけ待っていてください!」
「君達を大切に思う人達が君達を支えてくれるから、私達が帰ってくるまで、頑張ってね」
 最後まで、少年からの返事はなかった。けれど、手のひらの上の指が微かに動いた気がして、アメリアはもう一度それを強く握った。

「でも……他所者が森に入るのを、よく許したわ、ね」
「薄々疑ってるんだろ、『この病気は森から来ているんじゃないか』ってな」
 首を傾げるヘカテー・ティシポネ(ダンピールの死霊術士・f06411)に、鬱蒼とした木々を見上げたままマティス・ジュブワ(マッドエレメンタラー・f05853)が応えた。
 この辺りだけの特殊な病、そしてこの辺りで特殊なものはこの森以外にあり得ない。両者を結び付けるのは自然な流れだろう。ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)もまた、それに頷く。
「土地特有の病に、特効薬も同じ場所にあるのだからな。話としては出来すぎだ」
「俺もそれを疑ってるんだが……こりゃ異常だな」
 呆れたように、マティスはそう結論付ける。この三人が居るのは森の外縁部、『境目』辺りだ。マッピングがてらの調査ではあったが……森に住まう種族であるエルフの目からしても、それは明らか。
「と、言うと?」
「植生はまぁ、別段変わってないけどよ、ここから明らかに空気が違う。結界とかあるんじゃねーかな」
 匂いが、風が、温度が、ある一点を境に変わっている。
「森全体に何かが手を加えてるな。魔法か、まぁオブリビオンって線が濃厚だろう」
「じゃあ、あそこに生ってる果物とか、食べたら……?」
「食いたいなら止めねぇけど、オススメはしねーな」
 少し残念そうに眉根を寄せたヘカテーは、むむ、と少しだけ考え込む様子を見せる。その間にジェイクスも得られた情報をまとめて……。
「目的のハート型のものは、木本性か? 草本性か?」
「まぁ、木に生ってるって話だったかな」
 信憑性はわからないが、とマティスが付け加えた。
「ならば、目下の探索はそちらに絞った方が良いな。樹上か……」
 プランを練り始めるジェイクスに代わり、ヘカテーが口を開く。
「その、ハート型の果実、は……採ったら食べる、のよね?」
「ああ、患者には食べさせることになるだろうな」
「……腹減ってんの?」
 じゅるり、とよだれの音が聞こえた気がする。
 とにかく、ここでの調査からある程度の情報共有を図り……あとは、それぞれの猟兵達に任せる形になるだろうか。
「しかし、これはグリモア猟兵の見落としかねぇ」
「……何がだ?」
 ジェイクスの問いに、マティスが『境界線』へと目を向ける。手抜きは良くないぞ相棒、と心中で咎めて。
「この森は、徐々に広がってる」

●動物とのふれあい
 森に踏み込まないよう努めていた村人達では、果実の行方を知る由もなかった。少なくとも外から見える外縁部にはないのだろう。各々に森の中に踏み込んだ猟兵達だが……。
「気合を入れて出てきましたが、入ったことのない森をどう探せばよいのやら……!」
 早速、ニコラがそう考え込んでいた。とりあえず奥には進んでいる、だがその後は?
「綺麗な森。オブシダンさんの言ってた通り、神様もいるのかもなぁ」
「成る程、ここは活力に満ちているね……ゼロ、観光気分でふらふらしてはいけないよ」
 アオイ・フジミヤ(オラトリオのシャーマン・f04633)は、傍らをふよふよと漂うマリモに、セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は自らの内に住む別人格、『ゼロ』に声を掛ける。一見散歩を楽しんでいるだけに見えるこの二人もまた、この先について頭を悩ませていた。
「ここはあったかいね~」
「いや、今回気を付けるべきは私か。可能なら長期滞在してここ固有の植物や動物を観察……」
 頭を……悩ませていた……?
「うう、このままでは完全に役立たずです……」
 とにかく、頭を捻っていたニコラが出した答えは。
「あ、私より森を熟知していて嗅覚も鋭いであろう、動物さん達の手を借りるというのは」
「ああ、悪くないんじゃねぇの。直接話せれば、だが」
 マティスが頷く。日頃からこの森を闊歩している動物達に協力してもらえれば、確かに話はスムーズだ。早速、森の中を歩いていた鹿に出くわしたが。
「……話せますかね」
「いや、俺は無理」
 人に慣れているというか、恐れる様子が無いのは、場所によるものだろうか。それはともかく有効打を即座には出せない状況。
「それでは、私がやろう」
 そう言って動物の前に進み出たセツナは、この森に居るという神に祈りを捧げた。そうすることで敵意、そして害意の無い事を示す。
 ニコラが息を呑み、マティスが感心する前で、彼は薄く微笑んだ。
 そして神秘に身を委ね、力を抜き、精神を研ぎ澄ませ、森に住む生き物たちの囁きに耳を傾ける――。
「あ、林檎食べたいですか? 苺もありますよー」
「……」
「……えーっと、ですね」
 動物側は匂いに釣られたように、アオイの方へと歩み寄っていた。マティスとニコラが気まずげに視線を交わす。
 やれやれ、といった調子で、セツナは微笑んだまま溜息を吐いた。
「……まぁ、そういうこともあるって」
「ゼロ」
 内なる人格は、「今は何も言わないで欲しい」というセツナの意思を察して、黙った。

「私は海育ちだから、森には詳しくないの。代わりに、教えてもらえる?」
 獣の背を撫でながら、アオイが語り掛ける。
「この森がもし人を嫌うなら、勝手に踏み込んでしまってごめんなさい。でも、ハートの果実を必要な人がいるの」
 優し気なその声音は、伝わっているのか、いないのか。
「俺の持ってきた木の実もやろう、食うか?」
「こーんな形の果物なんですけど、見たことありませんか?」
 マティスも木の実を分け与え、ニコラは手でハートの形を作ってどうにかこちらの意図を伝えようとする。
 四苦八苦している内に、辺りにはもう何匹かの動物達と、そして、鳥が近寄ってきていた。
「鳥……果実なら、あなた達が詳しいかな?」
 アオイはそちらにも果物を分けて、様子を見る。気持ちは、意思は、伝わっただろうか。しばらく彼女の手の上に止まっていた鳥達は、互いを見合わせるようにした後、順番に飛び立っていった。
「わかってくれたのかな?」
「分かりませんが、ついていってみましょう!」
 道案内するように見えた、それが理由だ。元々当てはないのだから、どちらにせよ損はしない。ニコラはアオイにそう頷いて、鳥達を見失わないよう足を急がせた。
 でも、鳥。鳥かあ、と彼女は思索を巡らせる。
「……私でも採りやすい場所にあるといいなぁ……」

「上手くいったようだね、それでは私達も追おうか」
「……」
「どうしたんだい、ゼロ? 悪いけど今は――」
「違う」
 いつもとは違う声音に、セツナが足を止める。祈りを捧げて冴えた感覚は、五感を超えて彼に語り掛けたのだろう。第六感、それを感じ取ったゼロに任せて視線を、後方へ、飛ばす。
「……何か、居たね?」
「ああ、見られてた」
 遥か後方の木の上、枝葉の合間に、気配の残り香があった。
 風が巻き起こす葉擦れの音に混ざって、カタカタと、何かが揺れるような音が聞こえた気がした。
「……ゼロ、さっきの感じがまたしたら、すぐに教えて欲しい」
 警戒を強めながら、セツナは森の奥へと踏み込んでいった。

●楽し気な音色を
「村に伝わる奇病……か。村人たちもさぞ気を揉んでいることだろう」
 艶のあるステッキを手にしたケットシー、クリス・ホワイト(妖精の運び手・f01880)もまた、森の中を進む。同道しているのは下半身の蛇と化したバジル・サラザール(猛毒系女史・f01544)だ。
「こういう言い伝えのある森って、暴れまわったり、資源をむやみに採ったりしなければ大丈夫なものよね?」
「ふむ、その辺りがセオリーだが……」
「オブリビオンは別、か。まぁ、そうよね」
 やんわりと否定するクリスに、機先を制してバジルが頷き返す。二人が当てにしているのもまた、別の猟兵達と同じく、動物達である。
「森のことは森に住む子たちに聞くのが一番ですね」
 そこでアイン・ローレンス(気の向くままに・f01107)が取り出したのは、笛だ。
「ああ、いいっスね、実はあっしもこう見えて、動物と仲良くなるのが得意なんスよ」
 それを見て、小日向・いすゞ(妖狐の陰陽師・f09058)も手を打つ。くるくると回した白狐の杖は、よーく見ると楽器……笛になっていた。
「きっと、病気の子達は苦しんでいると思うんです。早く助けてあげましょう……」
 ルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)もまた楽器を取り出す。やれるのなら、ここで協力するに越したことはないだろう。こうして動物達を呼び寄せるため、即席の演奏会が幕を開けた。
「では一つ、踊り手も紹介しましょう、ぽんずとみりんです」
 これぞ『友の証』。アインの言葉に応え、ぽっちゃりしたたぬきとすらりと細いきつねが姿を現し、笛の音に合わせてよたよたと踊りだす。
「……ははあ」
 愛嬌のある顔をしたきつねを相手に目を細め、得心が行ったというようにいすゞが頷く。取り出したるは、先日陰干しが終わった管である。
「ほれ管狐、あの子らと一緒に踊るっスよ」
 召喚された管狐は「そんな理由で?」みたいな抗議の目を主に向けるが、そちらの口は既に笛で塞がってしまっていた。ぴーひょろろろろ。
 若干の苦笑を交えつつも、ルナもそれに合わせる。ビーストマスター達による楽し気な音色に誘われ、近くに居た動物達が一匹、また一匹と顔を出し始めた。
「さすがね、ちゃんと集まってきてるわ、動物達」
「よかった、仲良く、なれそう……」
 バジルの言葉にルナが頷く。アインもまた、この演奏に手応えを感じていた。普通ならば言葉の通じぬ彼等と、意思の疎通ができるのが彼女等の強み。仲良くなりたい、楽しませたいという願いはちゃんと通じているようだ。あとは……。
(「本来の目的の方ですね……」)
 ひとまず、手の空いているバジルが代表としてこちらの願いを口にする。
「――ということで、病気になっている村の人のために、果実を少し分けて欲しいのよ」
 率直なそれに対し、動物達は特に反応する様子はない。
「……ねぇ、これちゃんと伝わってるのかしら?」
「一応、あっしらも通訳みたいなことはしてるっスよ」
「ならば、それだけではダメだということかな?」
 二人の会話に、クリスが状況を分析する。というか、然程考える必要はない。ここの動物達にしてみれば人間は森の仲間でもなければ良き隣人でもない。平たく言うなら「病で困っていようが、そんなもの知ったことではない」のだ。
「しょうがないっスね、ほーら美味しいオヤツもあるっスよ、あっしらのお願い、聞いてほしいっスー」
「うん、何匹か猫も来ているな? 私は純粋な猫ではないが、通じあえる部分もあるだろう、話してみるよ」
「え、あっしも狐を狙った方がいいっスか?」
 そこでいすゞは積極的な懐柔策に走り、クリスはより話の通じそうな相手を探すことにした。そして交渉する事しばし。
「そうそう、そんな感じの味の果物、知らないっスかね?」
 とりあえず、良い感じに話を持っていくことには成功した。林檎と桃に形が近いんだったら、味も似ているのでは? ということでいすゞの提供した果物に絡めて問うと、何匹か反応を見せはじめた。
「うーん、そっスかー」
「そこまで、案内をお願いできないでしょうか」
 演奏で会話の補助をしていたアインの問いに、クリスが答える。
「それは、この子達が引き受けてくれそうだ」
「ついでにオブリビオンについても心当たりを聞けないかな?」
「できれば、人の侵入に怒る、神様についても……」
 バジルとルナは追加の情報収集を試みるが、成果は芳しくない。
「心当たりがない感じっスねー。動物からも隠れているか、普段から居るから異物と認識されてないか……」
 とにかく、心当たりがあるという謎の果実まで、案内の確保には成功した。
「それでは、いこうか」
 クリスの声に応えて猫が一匹前に出る。彼等もまた、動物達のあとをついて、奥地へと進み始めた。

●樹上へ
 そうした探索法により、また別の形で解決に挑んだ者達にも恩恵が与えられる。
 よいしょ、よいしょと高所へ上っていく者がここに一人。ミレナリィドールの鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)だ。
「ふふん、チカに、かかれば……この程度……!」
 うおお、とかいうキャラが崩れそうな気合と共に、彼女は目についた範囲で一番の巨木を登り切った。過去にへし折れたらしいその木の上は、台地のようになっている。
 ここからならば森が一望できる、果実を探すには丁度良いだろう。
「良い眺めじゃのう。この光景を分け与えぬとは、神とやらも狭量なものよ」
 ふう、と一息ついて。捜索ついでに彼女は眼下の光景に目を細める。人が踏み入れば、神は怒ると、確かそういう話。
「それ、帽子は許してくれたりしないかなぁ」
 その声は、一歩だけ下方から。最後に空中で一つステップを踏んで、アメリアがエチカの傍らに着地した。スカイステッパー、空中を蹴って飛べる彼女ならば、木々を飛び渡ることも、巨木の上に至ることも難しくない。
「帽子……?」
 訝し気にエチカが見上げたそこには、赤い帽子があった。ヤドリガミ、とすぐに思い至る。
「……お主だけ許されても仕方ないじゃろ」
「あ、それもそうねー」
 そう笑って、アメリアは彼女の隣に並んだ。
「木の実、見つかった?」
「いや、まだじゃが。お主、何か当てはあるのか?」
「うん、皆がね、動物達に声を掛けてくれたらしくて」
 下では恐らく、一方向に首を向ける動物たちの姿が見れただろう。そして、ここでは。
「――なるほど、のう」
 ばさばさと羽音を立てて、数羽の鳥が二人の傍らを過ぎていく。
 それを追った視線の先には、こちらと同じく途中でへし折れた形跡があるが、より高い巨木があった。そして目凝らせば、その頂上近くの枝に、いくつもの薄赤い果実がぶら下がっているのが見える。
「あったわ! 早速行きましょう!」
 駆け出そうとするアメリアの横で、エチカが固まった。今更ではある。今更ではあるが、これ――高くない?
「さ、先に行くが良いぞ赤い帽子の君。ちょっと休んだら、チカもすぐに追いつくゆえ!」
「ふーん……?」
「な、なんじゃ? ほんとにすぐ追い付けるからの?」
「一緒に飛んで行った方が早いんじゃないかしら。ほら、行きましょ?」
「えっ」
 エチカの誤魔化しを見抜いたのかは定かでないが、アメリアは子供と変わらぬ体躯の彼女を捕まえて、もう一度空中へと歩み出す。再度のスカイステッパー、透明な階段を19段、楽し気に、踊るように。
 ――ふゃああ、というエチカの独特な悲鳴が、空高くにこだました。

 それぞれの経路で目指す位置を定め、彼等はその朽ちかけた巨木に至る。そこではいち早く、ゼグブレイド・ウェイバー(見習い騎士・f03572)がクライミングに挑んでいた。
「動物と仲良くなれる能力があればよかったのですが……」
 人間誰しも向き不向きがある。特に、動物と仲良くするなどとても万人にできる事ではない。ならばこそ、こうして自分の才を発揮できる場所を見つけるのもまた重要である。
「大丈夫、いつも体を鍛えてるし、訓練だと思えば……!」
 華奢な体は木の途中でふらふらと、落ちそうになってしまうことも何度かあるが。
「目的のものはこの上のようじゃ、頑張るんじゃぞー」
「チカちゃん、舌噛まないように気を付けてね」
 枝から枝に飛び移っていたアメリアが、エチカを背負ったままスカイステッパーで通過していく。
「まだ先は長いようだな、よし、私が手を貸そう」
 鍛えた肉体と身軽な動きを駆使したジェイクス、そしてユーベルコード【死霊武器操作】によって複製した鉄鎖鞭を梯子代わりに、安定して登ってきたヘカテーがそれぞれゼグブレイドの身体を支える。
「一番乗りとは……いかない、けど……」
 共に行こう、とヘカテーが誘う。ここまでの案内は人任せになってしまったが、ここから先が力の発揮どころである。
「下は見るなよ、一息に、突破してしまおう」
 元気付けるような言葉と共に、一行から先行したジェイクスは、上るのに最適なコースを選び、進みだした。

「登頂、です……」
 深くため息を吐くゼグブレイドの横で、ジェイクスも疲労を和らげるように腕を振る。
「こんな場所にしか生っていないとは……神は随分と人間がお嫌いなようだな」
 何にせよ、そこには、端から突き出た枝部分に、目的の果実がいくつも実っていた。
「1つ……ぐらい……いいかし……ら?」
 腹ペコの気配を隠そうともしなくなったヘカテーの言葉に苦笑しつつ、エチカもそれを見上げる。
「どれ、食われてしまう前に、持ち帰る分をいくつか確保しておくべきじゃろ」
「うん、そうしましょう」
 とん、と。アメリアの黒いブーツが足音を鳴らした。軽い跳躍。

●取得
 風の音と葉擦れの音に、カタカタと何かが揺れる音が溶ける。注意しないと端を捕まえる事すらできないその音は、いくつもいくつも、順に折り重なるようにその場を流れていた。
 そしていくつもの視線は、それを捉えた。

 アメリアの五指が、ハート型の果実を摘み取る。
 目的のものは手に入れた。少なくともこれで、少年と……村に居る緑化の病の患者を救う事はできるだろう。
「やったわね」
 得られた成果に、彼女は声を弾ませた。

 けれど、『神』はそれを許さない。

「……うん?」
 細かな地鳴りが彼女等を震わせる。微かだったそれは、徐々に大きくなっていき――。
「なんじゃあ!?」
 軋みを上げていたのは大地と、朽ちかけの巨木。
 そして彼女等は気付く。足元の巨木が、『立ち上がった』という事に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『荒ぶる山神』

POW   :    握り潰す
【人ひとり覆い隠すほどの掌】が命中した対象に対し、高威力高命中の【握り潰し】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    踏み潰す
単純で重い【地団駄】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
WIZ   :    叩き潰す
【大きく振りかぶった拳】から【地震】を放ち、【その振動】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●心臓の主
 軋みを上げて、地鳴りを上げて、巨木がゆっくりと立ち上がった。
 そして、猟兵達はもう一つ、思い至る。「探索中に、同じような巨木を見かけなかったか」?
 果たして、同じような轟音は、別の二箇所でも起きていた。
 現れた木の巨人は、三つ。例の果実の生っていた木が、他に比べて一回り大きいだろうか。
 重量と膂力は言うまでもないだろうが、ある程度動きが鈍いのは見て分かる。猟兵達ならば、戦いようはあるだろう。

 ――立ち上がった巨人達は、果実を取り戻そうとでもするように、動き出す。彼等は一様に、首を落とされた人間のような形をしていた。
マティス・ジュブワ
おぉおぉ、でかいでかい
木製のゴーレムみたいなもんかねぇ
あんなのが守備用に配置されてるとは、森の恵みを意地でも手に入れさせないつもりか
狙いはこの森を広げて病を広げ、世界を覆い尽くすってとこかね?
させねーよ、ばーか

でかぶつ相手だしここはババンと行ってみるか
相手の踏み潰す攻撃に合わせて水の竜巻を起こす
破壊された土砂を巻き込んで、あの巨体を削ってやろうって寸法だ
魔法の制御に失敗したりすると自滅だからな、慎重に立ち回るとしよう
すまんが、前衛は任せたぜ

他の連中も同じように戦っているハズだ、とっとと片づけて援護へ行くとしよう
コイツを配置したオブリビオンが出てくる前に、な


クリス・ホワイト
【WIZ】これは驚いた。巨木が動き出すとはね!
……ふむ、なるほど。果実を取り戻そうというなら、彼らがこの森を守る者なのかもしれないね。僕たちは彼らの怒りに触れた、というわけだ。

しかしね、時には怒りに触れても進まねばならない時がある。
それが僕たちのエゴでもね。さあ、共闘と行こうじゃないか。
僕も援護するよ。さて、ところで君――花は好きかい?


セツナ・クラルス
ふむ、先程の視線はあなたでしたか
目はないのに視線を感じるとは
これも神の御業なのだろうか

不躾な訪問については丁寧に謝罪を
すぐに立ち去りますので見逃して…はくれないようですね

逃げ回るしか能のない私には
足場を崩されるのは大きな痛手だ
空を駆ける手段もないし
いやはや、お手上げだ
…ふふ、なんて
無抵抗でいるのもつまらない
手持ちのカードでやれるだけやろう

ゼロと死角を補い合い戦う
意志疎通すら必要ない我々のコンビネーションを披露するとしようか
人形での反射攻撃はあわよくば程度に止め
敵の弱点や行動の癖を見つけることを最優先事項とする
我々が身を以て得た情報は仲間に報告・情報共有

反撃は攻撃の得意な仲間に任す


ニコ・ベルクシュタイン
遅参、申し訳無く。此れより戦列に加わらせて貰おう。
…成程、神の怒りとは、こういう。
正体がオブリビオンとあっては捨て置けぬ、疾く退治せねばな。

共に戦う猟兵と互いに有利になるような立ち位置を心掛けたり
声を掛けて注意喚起をするなど、連携を意識

「2回攻撃」が有効ならば積極的に併用して
【時計の針は無慈悲に刻む】を発動する
最も消耗している個体、若しくは手近な個体を標的と定め
双剣の切っ先を向けて良く狙い、連撃を叩き込む
出来れば各個撃破を狙いたい所だな

逆に【叩き潰す】の反撃で動きを封じられることには
細心の注意を払い、攻撃したは良いが手痛い反撃を喰らう事は
避けたい所、最悪味方に助けを求める事も厭わず行こう


ニコラ・メイリアス
わ、わ…わ⁉お、大きいです……!
まだまだ戦闘は得意な方ではないのですが…
今できることを頑張るって決めたから、落ち着いてやってみます、です!

【SPD】
村へ向かわせないことと攻撃に捕まらないよう気をつけつつ
弱点や攻略法を探りましょう。

…動きは緩慢、攻撃と攻撃の間に隙がないわけでもなさそうです。

【スカイステッパー】で【振動】をかわせるようなら
相手の攻撃直後の隙を突くために【振動】が来る直前
誰か私よりも攻撃の得意な方を抱えて跳べないか
協力をお願いしてみましょう。

一人では村に戻る自信がなくなってしまうような相手なのかもしれません。
でも、みなさんと協力できるならそんな不安、ひとかけらだってありません!


バジル・サラザール
神様か化け物か……どちらにせよこれを返すわけにはいかないわね。
逃げられそうな気はしないし、戦いましょう。

近接は他の人にお願い、私は極力敵の攻撃の射程外から「ウィザード・ミサイル」を撃ち込んでいくわ。周りに極力被害が及ばないよう、できるだけ外さないようにしたいわね。
後ろに下がってる分、相手の動きをよく見て、それをみんなに伝えていくわ。
敵の攻撃は「野生の勘」も利用しつつ、回避や防御をしていくわ。

早くこの場を切り抜けてすぐにでも果実を届けたいわね。


小日向・いすゞ
果実が生っている木が動き出したって事は、おぶりびおんを神として、恐れ、有難がっているンスかね。
―そしてソレを食べた人も居るって事っスか?

いーえ
推測してる場合じゃないっスね
周りに人がいるならばサポートを

サポート型の方が多ければ
得意じゃないッスケド、前に出て戦うっス

デカいから単純に攻撃に当たりたく無いっスね、こいつぅ!

攻撃時は、狐火で牽制を
炎で視界を被って
管狐を纏わせた杖でぶん殴るっス
最後はパワーっスよ

サポート時は、死ぬ気で!庇うっス!
庇うと言うよりもうタックル
あんなの当たったらひき肉っスよ!
デカいので敵自身を盾に出来ないっスかね…

癒式符で癒し、管狐で強化して

頑張って下さいねセンセ!
鼓舞効果は無い


アイン・ローレンス
【WIZ】2回攻撃、属性攻撃、全力魔法

木の巨人とは気持ち的にとてもやりにくいですね…
ですが所詮オブリビオン。
動物や村人たちの平和を脅かす存在を決して許しはしません!

森の中での戦闘、自然を傷付けないように巨人の上部を狙います。
「エレメンタル・ファンタジア:炎の突風」下から上へ燃え上がれ。
振動ということは、空中にいれば避けられるでしょうか。
敵が振りかぶったら木に「生命の鞭」を巻き付け振り子の要領で空中へ。
もう一発「炎の突風」をお見舞いです!

万が一森に火が移ってしまったら水の精霊の力を借りて、燃え広がる前に鎮火を。


鴛海・エチカ
ふふん、驚きはしたが漸く分かった
森の樹自体が動けば神の怒りとも錯覚するじゃろう

先程はアメリアに手を貸して貰ったが、戦いとあらば
今こそ空飛ぶ箒ガジェット、チェシュカの翠箒の出番!
こやつ、使い過ぎると臍を曲げるのか上手く飛ばぬのじゃ……と、さておき

翠箒に跨って飛びながら応戦じゃ
いざとなれば箒から飛び降りて枝上を駆け抜けようぞ
敵の握り潰す攻撃は警戒し何を以てしても避ける

基本は『エレクトロレギオン』を放ち、枝葉を削ぐよう突撃させ
『定言命法』で「動くな」や「来るな」と宣言し高威力の衝撃狙い
地震攻撃を見た後は『ミレナリオ・リフレクション』で相殺じゃ

共に往こうぞ、皆
お主達が共に居れば斯様な敵など一捻りじゃ!


アメリア・イアハッター
【右足狙い】で連携

わぁーおっきい!
果実を獲ったから怒ってるのかな
でもごめんね
あの子達の為にも、返す訳にはいかないんだ!

・方針
右足集中攻撃
あの巨体なら足一つ失えば殆ど動けない筈
自身は囮として回避集中

・行動
きっと敵は果実を獲った私を狙う筈
【スカイステッパー】で空を舞いあえて囮に
あの巨体なら動きは遅い筈
焦らず攻撃の動作を見極め、余裕を持って避けられるよう大きく回避行動をとる
時折木や敵の体に着地しスカイステッパーの回数を回復

ジェイクスくんが右足に対し行動したら同じ場所に【マジック・ミサイル・ダンス】使用
敵の攻撃がこちらに向かなくなる度に、敵意がこちらを向く様に同じ場所に同じ攻撃を繰り返す

アドリブ歓迎


ゼグブレイド・ウェイバー
【右足狙い】で連携
大きな木の魔物…!僕一人じゃとても倒せない…でも仲間と一緒なら!
僕は僕なりにできることをする!
・方針
右足への攻撃
なるべく身を潜めて右足が燃えた時にそこを狙って凍らせる
熱した後に凍らせ冷ますことによる温度差で脆くすることを狙います
・行動
アメリアさんが敵の注意を引いてる間は身を潜めてお二人の攻撃で燃えた右足を狙って
アイシクル・ランスを放ち右足を凍らせます。
右足を凍らせた後は剣で右足を集中的に狙って攻撃していきます。
敵がこちらに対して攻撃してきた場合はその攻撃をよく見て木に登って回避する、又は走って距離をとろうと思います

アドリブ歓迎です!他の猟兵さん達と協力していきます


ジェイクス・ライアー
【右足狙い】連携

成る程、マティスが森が広がっていると指摘したがその正体はこれか。
…オブシダンめ。引っ張り出すも何も、すでに敵の射程範囲内ではないか。

・方針
概ねアメリアに同じ
敵に気づかれないようにしながら補助役に回る

・行動
アメリアが囮になっている間に、敵頭上の枝に【指輪に仕込んだワイヤー】をくくりつけ降下。
【スキットルに入れた蒸留酒】を敵の右足付け根に振りかけ、アメリアのミサイルによる爆発の威力を増大させる。
2人の攻撃が命中した後は、ダメージを受け脆くなった場所への攻撃に加勢する。
近くの木へと飛び移り、【傘型散弾銃】による追い討ち攻撃。

アドリブ歓迎
その場にいる全ての猟兵との連携を歓迎する



●動く森
「わぁーおっきい! 果実を獲ったから怒ってるのかな?」
 足元の揺れが一段落し、『立ち上がり』によって一階層分高い位置に移ったアメリアが歓声を上げる。もぎ取った果実は、一旦大事に仕舞っておくことにする。これを狙われているとして、渡すわけにはいかないのだから。
「成る程、マティスが森が広がっていると指摘したが、その正体はこれか」
 ジェイクスもまた体勢を立て直し、足元、そして周辺の状態を探る。動く、大樹。こんなものが居るのなら、森は広がるというか、動くと称しても良いレベルだろう。
「ふふん、驚きはしたが漸く分かった。森の樹自体が動けば神の怒りとも錯覚するじゃろう」
 合点がいった、というようにエチカもそれに頷いた。猟兵達でさえ驚くというのに、あの村の人達が見ればどうなったか、想像には難くない。しかし……。
「……オブシダンめ。引っ張り出すも何も、既に敵の射程範囲内ではないか」
 ここに案内したグリモア猟兵のセリフを思い出しつつ、ジェイクスがぼやく。ここまで予知できていたならさすがに事前に言っていたと思うが、文句を言いたくなるのは当然だろう。
「この大きさ、僕一人じゃとても倒せない……」
 敵と自らの力量を比較し、ゼグブレイドはそう判断する。けれど。
「……でも、仲間と一緒なら!」
 そう、一人ではないのだから。自分には自分のできることを。決意を新たに彼は武器を手に取った。
「来るぞ、散った方が良さそうだ」
 ばきばきと音を立てて、樹木の巨人の腕に当たる部分が、指を伸ばし、猟兵達の居る『樹上』に迫る。
 ジェイクスの声に従って、彼等は樹上からそれぞれの方向へと飛んだ。
「チカちゃん、大丈夫!?」
「ここまでの飛行については礼を言うぞアメリアよ! なーに、戦闘とあらばチカも遅れは取らん!」
 取り出したるは、とっておき。空飛ぶ箒ガジェット、チェシュカの翠箒だ。颯爽とそれに跨り、エチカが軽やかに空を舞う。
 いざ、戦闘開始だ。

 エチカ達から少し離れた位置でも、樹木の巨人が二体、立ち上がっていた。先の一体に比べ、一回り小型ではあるものの、巨大である事には変わりない。
「おぉおぉ、でかいでかい」
「これは驚いた。巨木が動き出すとはね!」
 反応はやはりこちらも同じ、マティスとクリスが声を上げたそこに、ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が合流した。
「遅参、申し訳無く。此れより戦列に加わらせて貰おう」
「ああ、助かる。人手が欲しかったとこだ」
「……しかし、成る程、神の怒りとは、こういう」
 時計の長針と短針、それぞれを模した剣を手に、ニコが敵の姿を見上げる。二方向から、確実に、その二体はこちらに迫ってきていた。
「木製のゴーレムみたいなもんかねぇ」
「果実を取り戻そうというなら、彼らがこの森を守る者なのかもしれないね。僕たちは彼らの怒りに触れた、というわけだ」
 それでもなお分析に走ってしまうのは、そういう性質なのだろう。マティスとクリスに続いて、セツナもまた思考を巡らせる。彼の場合は先程感じた『視線』という材料もある。
「ふむ、先程の視線はあなたでしたか……頭もないのに視線を感じるとは、これも神の御業ということかな?」
 今はどうか、と問い掛ければ、彼の内のもう一人の人格が「今も視線を感じる」と答える。
「……なるほど、見逃してはくれないようですね」
「神、っスか。果実が生っている木が動き出したって事は、おぶりびおんを神として、恐れ、有難がっているンスかね」
 一方で、いすゞの思考は村人達の方へと向かう。救うべき対象、であるはずの彼等だが。
「――そしてソレを食べた人も居るって事っスか?」
 ぞっとしない話ではある。言い伝えが過去のものであるとしても、病の治療にこれから食べさせようとしているものが、オブリビオン由来であれば……嫌な想像をしてしまうのも仕方のないことだろう。
「……推測してる場合じゃないっスね」
 とはいえ、その辺りの心配は後回し。
「神様か化け物か……どちらにせよこれを返すわけにはいかないわね」
 バジルがそう言って、得物を構え直す。このまま帰還した場合、これが追ってくることは簡単に予想できる。
「逃げられそうな気はしないし、戦いましょう」
 こうなった以上、ここで倒すしかない。

●果実を追って
 頭上に一度手を伸ばした樹木の巨人は、そこから逃れた者に次の狙いを定める。当然最初に狙われるのは、果実を手にしたアメリアである。
「ごめんね、あの子達の為にも、返す訳にはいかないんだ!」
 ゆっくりと、だが確実に迫る五指から、スカイステッパーで空中を蹴って逃れる。一歩一歩空を踊り、それでもやはり、限られたステップの数ではいずれ捕まる、もしくは落ちることになる。
「そうはさせんがのう、それ、かかるのじゃー!」
 アメリアに向かって伸びた腕に追随し、エチカがエレクトロレギオン……機械人形の群れを召喚する。バラバラと空中から現れ、敵の巨躯に着地したそれらは、グンタイアリさながらに爪を突き立てていく。
 痛みを感じる機能がこの敵にあるのか定かでないが、取り付くそれらの存在を嫌って、樹木の巨人はそれを振り払うように身を捩った。
 その間に、最後の一歩を飛んだアメリアはエチカのガジェットに捕まる形で合流する。
「ありがとうチカちゃん!」
「あんなもん捕まったら終わりじゃからのう、気を付けるんじゃぞ」
 敵の側面に回り込むように旋回した箒から、敵の動きを窺う。現状としては飽くまで、この二人が担うのは囮だ。
 再度、空中の二人に攻撃が向かったのを契機に、息を潜めていたジェイクスとゼグブレイドが動く。
「降下する」
「分かりました!」
 指輪に仕込まれていたワイヤーを枝の一つに引っかけ、ジェイクスが壁面にも似た敵の胴体を降下していく。とはいえ、当然一時退避のみでは終わらない。
「随分とでかい図体をしているようだが……」
 これはどうだ、ジェイクスは降下しながらもスキットルの蓋を外し、中の蒸留酒を敵の脚部へと振りまいた。
「アメリア!」
「りょーかい! 任せてジェイクス君!」
 合図と同時にアメリアの指が空を撫でる。その動きに従って、100近い魔法弾が顕現。バラバラの軌道を描いてミサイルが空間を彩る。
 伸ばされた腕を迂回するように飛んだそれは、それぞれの軌道で敵の右足へと殺到。そして食らいついたそこで、ジェイクスの撒いたアルコールを巻き込んで盛大に爆発した。
 轟音が森を揺らし、巻きあがる炎と煙が辺りを染める。大きく抉れた片足の付け根に、猟兵達はさらに追撃をかける。
「氷銀の槍達よ…! 僕の力となって敵を殲滅してください!」
 ゼグブレイドの呼びかけに応じた氷柱の群れが、指し示されたそこ、削り取られた敵の脚部に降り注ぐ。温度差で脆くなったそこをさらに深く刻み、そして固めて自由を奪う。
「此れより紡ぐは、我が令ずる絶対的命法――」
 そして空中からは、エチカの手による流星が。
「その足で進むのは難しかろう、そのまま動くでない!」
 定言命法、星霊杖から飛んだ煌めきと共に、彼女の言葉が敵にさらなる縛りを科した。

●二体の敵
 振り上げられた拳が、地面に叩き付けられる。巨大な槌と化した樹木の腕は地響きと共に大地を揺るがし、足元の猟兵達の姿勢を崩した。
「わ……わっ!?」
「全く、やる事が大味だな……!」
 たたらを踏んだニコラに伸びたもう一体の指を、ニコがその剣で斬り飛ばし、二人はそのまま間合いを取る。
「ふむ、逃げ回るしか能のない私には、足場を崩されるのは大きな痛手だ。これはお手上げかな」
 同様に距離を取ったセツナはそう言って肩を竦める。が、しかし。
「心にもない事を言うものではないよ。――時には神の怒りに触れても進まねばならない時がある。そうだろう?」
「いやあ、それは少し恐れ多いがね」
 ステッキの先を敵へと向けるクリスに、応えるようにセツナが『もう一人』をそこへ喚び出す。
「これが僕達のエゴだとしても、だ。さあ共闘と行こうじゃないか」
「かなわないな……では、共に歩もうか、ゼロ」
 元より、彼に退く気はさらさらない。共存共栄、別人格と並び立って、セツナは前へと踏み出した。
「何とか攪乱してみせよう、後は任せて良いかな?」
「て、手伝います! まだまだ戦闘は得意な方ではないのですが……」
「ああ、援護してもらえるなら心強い」
 それでも、今出来ることを。決意を固めたニコラの申し出に、ニコが敵を見据えながら頷いた。
「分断して相手取るとなると、前衛が足りてないな」
「え、まさかあっしに言ってんスか?」
 一方、傍らに立ったマティスの見立てに、いすゞが頬を引き攣らせる。
「いや? 誰か前に出てくれると助かるんだがなーって話だ」
「あー……全く、狐使いが荒いんスからセンセ方は!」
 白狐の杖を手にため息を吐くいすゞの隣で、アインもまた攻撃にかかる。
「木の巨人とは、気持ち的にとてもやりにくいですが……」
 仲間と共に自然を愛する彼女にしてみれば、この動く森とも言えるこの巨人は微妙な立ち位置の相手だろう。しかし、猟兵としての使命が、彼女の迷いを振り切らせる。
「動物や村人たちの平和を脅かす存在を決して許しはしません!」
 エレメンタル・ファンタジアにより、織り為されるのは炎の突風。燃え上がる赤い風は下から上へ、巨人の上半身を中心に吹き荒ぶ。
 だが枝を焦がし、葉を焼失させながらも、巨体はその動きを止めなかった。
「さ、行きたまえ、僕も援護するよ!」
「まじっスか……」
 クリスの声援に応えて、いすゞが呼び出した管狐を杖に纏わせ、前に出る。
 初手は握りつぶそうと迫る腕。こんこーん、と靴底を鳴らして跳んだいすゞは、掌を超えて腕の上を駆け抜ける。
 食らったらミンチ。そんな言葉が頭に浮かぶが、ともかく。
「大丈夫、いすゞちゃん一人にやらせはしませんよ」
 その間に、伸縮自在のアインの鞭が樹木の巨人の胴を打ち据え、さらにいすゞの放った狐火が反対側で眩く燃え上がる。二人の牽制によって注意が逸れたそこに。
「良い連携だったよ」
 クリスが巨人との距離を詰めていた。くるくると、優雅に回していたステッキが、消える。
「ところで君――花は好きかい?」
 過ぎ去りし花燭。消失したかに見えたロッドは無数の、バイカウツギの花びらへと姿を変えた。雪のように真っ白な花弁が広がりながら舞い上がり、巨人を切り刻んでいった。
 それらを吹き払うように、そして足元をうろつくクリスといすゞを追い払うように、巨人は足を振り上げ、地団駄を踏む。衝撃に捲れ上がる土と岩が、その足元で広がった。
「よし、それを待っていた」
 それに対し、マティスが精霊たちに呼びかける。エレメンタル・ファンタジア。生じたのは水の竜巻だ。
 敵の足元から生まれたそれは、土砂を巻き込んでうねり、破砕の蛇となって樹木の巨人を襲う。ただでさえ焦げていた樹皮を大きく削り取られ、その巨体が傾いだ。
「……はっ」
「頑丈ですね……」
 これでもダメか、とマティスとアインが呻く。
 敵はなおも、動きを止めない。

 そして、もう一方。こちらでは別人格と連携するセツナと、ニコラが相手の攪乱にかかっていた。
「まあ、手持ちのカードでやれるだけやろうか」
「せめて、弱点や攻略法を見つけられれば……」
 例え戦う力に乏しくとも、一人ではないのだから、何事も無駄にはならないはず。
「そうだね、攪乱と共に、私達が得た情報は最大限そちらに渡す。有効に使ってほしい」
「心得た」
 そんなセツナの言葉にニコが応じる。そしてバジルもまた、同様に。
「こんなの、さっさと切り抜けてしまいましょう?」
 目的は、その先。果実を届ける事なのだから。踊る指先が炎の矢を紡ぎ出す。ウィザードミサイル。
 連続して放たれるそれを皮切りに、前に出た者達がそれぞれに散開する。
「さあ、意志疎通すら必要ない我々のコンビネーションをお見せしよう」
「でかいこと言ってまたドジ踏むなよ?」
 セツナの歩みに寸分違わず合わせて、ゼロが進む。時には鏡合わせに、時には同じ方向に動く二人は相手の狙いを逸らすのに十分な目くらましになるだろう。そしてニコラは、スカイステッパーを駆使して木々の間を跳んでいく。
 振り下ろされた腕を左右に散って躱し、掴み取ろうとする腕は、空中のニコラが誘って隙に変える。
 その間に、ニコの双剣とバジルの炎の矢が敵の足元を中心に削っていった。
「どうかしら、相手の動きは?」
「……動きは緩慢、攻撃と攻撃の間に隙がないわけでもなさそうです」
 バジルの問いに、傍らに着地したニコラが答える。一動作が大きく、紙一重の回避は難しいものの、振り切った後には大きな隙が生じるのが分かる。
「こちらの誘いにも乗りやすいようだな、まるで――プログラムされている、ような?」
 セツナも私見を交えて傾向を伝える。多少の違和感を覚えるものの、地団駄を踏むように動かされた足から身を躱すことに、ひとまずは専念する。
「どちらにせよ一撃食らったら終わりかねない。これは見たままだがね」
 セツナとゼロの両側からの仕掛けに、敵が戸惑ったように身じろぐ。それを決定的な隙と判断してニコが踏み込んだ、そこで。
 大きく振り上げられた腕を見て、不運な見立て違いにニコが内心歯噛みする。その一撃を回避すること自体は容易いだろう、だがそれが巻き起こす地震により、体勢を崩してしまえばその後は未知数。最悪次の一撃を避けられない可能性がある。
「……ッ」
「えぇーいっ!」
 一瞬の覚悟を満たす合間に、跳び来たニコラが彼にタックルをかました。
 いや、無理やり抱えるようにして、跳び上がったというのが正しいか。スカイステッパーを駆使し、階段を駆け上るように急速上昇したニコラは、勢いそのままニコを空中へと放り投げた。
 一瞬遅れて地面に叩き付けられる拳。地響きと衝撃が大地を走るが、空中へと逃れた彼等には関係のない話。
「――感謝する」
 時計の針が円を描くように、二刀を手にしたニコが回る。刃は彼の着地地点、振り下ろされた敵の腕を深く深く切り裂いて、それを中程で両断した。
「……!!!」
 片腕を失い、樹木の巨人が大きくバランスを崩す。これを好機と、追撃をかけるべきタイミング。だが――。
「あぶなーーーーいっス!!」
「なっ!?」
 後方からのいすゞの体当たりでニコが倒れる。何が何だか分からない、といった混乱は一時の事。次の瞬間、いすゞを追って振るわれたもう一体の拳が、二人の頭上を通過してニコの相手取っていた巨人を直撃した。
 重量物同士のぶつかる低音が響き渡り、片腕を失っていた個体は、衝撃に負けて倒れ込む。
「……なんと」
「いやー、うまくいったっスね。二、三回死ぬかと思ったっスけど」
 『敵を盾に』、まぁ無茶な戦法ではあるが通ったものは通ったのだ。
「チャンス、畳みかけるわよ!」
「……ああ、助かった。ではとどめと行こう」
 バジルの呼びかけに応えて、ニコが長剣の切っ先で敵を指し示す。
「最後はパワーっスよ、パワー!」
「過去は過去に。未来は俺達のものだ!」
 管狐の占術によって強化された杖と、ニコの『時計の針は無慈悲に刻む』――正確無比な双剣の乱舞がひっくり返った巨人を襲う。
 体の中心を凹まされ、さらには胴体をズタズタに裂かれ、ついにその巨人は力尽きた。

 そして残る一体が、もう一度腕を振り上げる。地面に打ち付けた拳が地震を引き起こし、猟兵たち全員の動きを止める、はずだったが。
「そう何度も、同じ手は通じませんよ」
 頭上の枝に結び付けた鞭をロープ代わりに、振り子の要領で跳んだアインは、当然その振動には捕まらない。同じく野生の勘でそれを躱したバジルが、多数の炎の矢を展開するのに合わせて。
「悪いわね、ここで止まっているわけにはいかないの」
「森への影響は最低限に留めます、どうか、これで――」
 局所的な灼熱の突風が、再度吹き荒れる。撃ち込まれた炎の矢も、風に煽られさらに大きく燃え上がる。分厚い表面から中身まで、広範囲を炭化させながら、巨体は膝を付くようにして動きを止めた。
 魔術の炎が通り過ぎ、幸い延焼が起きなかったことに、まずアインは安堵する。
 これで倒れた巨人の数は二体。少し離れた場所で響く音からして、残り一体と別のメンバーが交戦中なのが分かる。
 猟兵達は、速やかにそちらの援護に入るべく、走り出した。
「さあ行くよ、ゼロ。もう一体だ」
「ああ」
 そう、敵は後一体居るのだから。セツナの声に、ゼロは抱いた違和感について考えるのを保留した。

 ――ここに居る二体を倒したのに、感じる視線には、些かの変化も見られない。

●ひとまずの決着
 今更言うまでもないが、樹木の巨人の巨大さ、そしてその質量は脅威である。だがそれゆえに、片足を奪ってしまえば姿勢を保つことすら難しくなるだろう。
 猟兵達の連携によって右足の自由を完全に奪われたその個体は、しかし。
「どうなってるの? そんなにこの果実が……?」
「まーだ動きおるかー」
 エチカの言葉に縛られたのにも関わらず、ダメージを受けながらその巨体は動くのをやめない。また伸ばされた腕を、空中でステップを踏んだアメリアが躱す。
 歩けなくとも、這いずれば進める。腕の長さがある分、進行スピードはそれでもかなりのものだった。
「止めて見せます!」
「全く、しぶといな……!」
 ゼグブレイドの斬撃に、ジェイクスの傘を兼用した散弾銃が敵の表皮を削り取るが、そう。決め手に欠けているというのが現状だ。
 這いずる敵は、なおもその巨体で更地を作りながら前へと進む。
「こうも時間がかかるとじゃな、その……」
「え、何かあるの?」
 敵の腕から逃れつつ、エチカの箒の上に着地したアメリアが問うたそこで、ぷすん、と音を立ててガジェットが機能を停止した。
「えええ!?」
「ふゃあああやっぱり臍曲げおったあああああ」
 まだまだ制御に難があるのか、エチカとアメリアはガジェットと共に森の中へと落下していった。
 鬱蒼とした森はクッション材が豊富だ。ばきばきと枝葉を巻き込みながら、二人は茂みの中に落ちる。
「ごめん……立て直せなかったよ……」
「お主が謝る事ではない……のじゃ……」
「まーたやってるんスか、お盛んっスねーえちかセンセ」
 微妙に既視感を覚えながら、後ろからやってきたいすゞが二人に癒式符をぺたぺたと貼っていく。疾う疾う、如律令。
「いすゞか……お主が来とるということは……」
「ええ、ええ。あっちは片付けて皆で援護に来たっスよ」
「無事で何よりだ、アメリア」
「え、えーっと、ちゃんと戦ってたからね、私も?」
 気遣うようなニコの言葉に、微妙に気まずげにアメリアが返す。
「おぉ、片足奪ったのか、やるな」
「あと一歩ってところみたいね」
 マティスとバジルも合流、敵を追い詰めるように、布陣していく。
「……これ以上森が傷つくのは見ていられません。手を貸します」
「歓迎だ、この人数なら確実に押し切れるだろう」
 敵を見下ろせる樹上で、アインの申し出には、散弾銃を構えていたジェイクスが応える。
「よーし、では共に往こうぞ、皆! お主達が共に居れば斯様な敵など一捻りじゃ!」
「はい。一人では村に戻る自信がなくなってしまうような相手なのかもしれません。
 でも、みなさんと協力できるならそんな不安、ひとかけらだってありません!」
 再起動させた翠箒と共に浮上したエチカに、ニコラが続く。そして、エチカの箒から飛び立ったアメリアが空中でマジック・ミサイル・ダンスを発動。
「今度こそ、最後! 皆一緒に踊ろうよ!」
 立てた人差し指を上から下へ。振り下ろす動きに合わせて、アメリアの爆発する魔法ミサイル群が順次発射されていく。
 着弾による衝撃の中、クリスの展開する花弁の嵐と、アインの放つ炎の竜巻が行き過ぎて――。
「もう、眠ってください」
 猟兵達による怒涛の連続攻撃の末、ゼグブレイドの剣が、胸部に真っ直ぐ突き立てられたのを最後に、その樹木の巨人は完全に動きを止めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『ヒューレイオン』

POW   :    ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ   :    サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミレイユ・ダーエです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●神はそこに
 ずん、と響く振動と共に、巨体がその場に倒れ伏す。
 訪れた静寂、だがそこに混ざるものを感じ取って、ゼロは振り返った。
 ――頭もないのに視線を感じるとは。セツナは先程そう言っていた。結論から言えばその違和感は正しい。つまり。
「……そうか。あれ、で良いのかな、ゼロ?」
「ああ、もう隠れる気はないらしい」
 振り返ったそこ、木々の枝の上に、小さな半透明の精霊らしきもの達が何体も座っていた。思い思いの姿勢で猟兵達を見ていた彼等は、一斉にカタカタと首を震わせる。
「――ああ」
 なるほど、と合点がいったように、陰陽道に通じたいすゞが頷く。たった今、討伐に成功したこの樹木の巨人を一瞥して。
「こいつじゃあ、ないんスね」
「ま、そんなこったろうと思ったぜ」
 所詮これは人形に過ぎないと、そう判断していたマティスもそれに首肯する。
 きっと、この山のような樹木の巨人も、元から存在はしたのだろう。それを見た者が森の怒りだの神の所業だのと言い伝えた可能性もある。
 だが、既にこの巨人は頭部を失っていた。
「居るんだろ、こいつを配した奴が」
 そう、それは、あの半透明の精霊を使ってずっとこちらを監視している者。
 それは、この場所に居た『主』の首を落とし、その遺骸をも使役する、今代の森の『神』。
 ――この森を統べるオブリビオン。

 ざあ、と音を立てて、半透明の精霊達が消えていく。

 そして、不思議な足音が響いた。
 蹄が土を踏んで、草が揺れる、奇妙なリズム。見れば、一歩一歩、踏み出す足の下で、植物が急速に成長している。一部分だけが生い茂る不可思議な足跡は、それもまた神の所業を思わせる。
 倒れた樹木の巨人の上にそれが立てば、急速に伸びる緑が、朽ち行く巨木をあっという間に呑み込んでいく。

 そうして現れた、蒼く輝く四つ足の獣は、猟兵達……この森への侵入者にして、森の恵みの簒奪者達を睥睨した。
マティス・ジュブワ
さてはて、相棒はこの事態をどこまで予見していたのやら……
送り込まれた猟兵の数を見ると、かなりの難敵と予想していたんだろうな
そんじゃ、悪いけどこの森もここで終わりとさせてもらうぜ
森には森の流儀がある、春には春の冬には冬の表情ってのがな
無限に恵みを与えてくれるならともかく、手を出せないハリボテの恵みなぞ存在価値がない
ただの過去の幻影、ってヤツさ

そんな訳で、前衛の皆さんには頑張って貰おうか
相棒の居ない今の俺はただの精霊術士
やれる事ってーと、敵の動きを阻害して逃さない事、攻撃を当たりやすくする、っつーその程度さ
さぁ、ダンスはそこまでだ、釘付けになりな!

帰ったら、オブシダンに良い土産話が出来るといいな


ニコ・ベルクシュタイン
…オブリビオンだとは判っていても、神々しい見た目をしているものだ。
確かに此れは、神と称されるに相応しいのかも知れないな。
…だが、申し訳無いが、人を救うどころか生きるのを妨げる神は――不要にて。

共に戦う猟兵が居る場合は、互いに不意や死角を突いたり
上手く連携が取れるように、声を掛けたり立ち位置に気を配る

使用するUCは【時計の針は無慈悲に刻む】、時刻みの双剣の
切っ先を向けて良く狙いを定め、容赦無い連撃を叩き込もう
元々が連続攻撃だが、若しも「2回攻撃」に技能が活かせるなら
おかわりもあるぞとばかりにもう一度斬りかかろう

【サモン・グリーントループ】で反撃されたら
なるべく合体される前に各個撃破をしたい所だ


クリス・ホワイト
【WIZ】
妖精に植物人間……ああ、これは厄介だね。
オブリビオンと戦うには要らないオーディエンスだろう。
もし狙われている人がいるなら、僕は援護に向かわせてもらうよ。
オブリビオンそのものの撃破はもちろんだけれど、露払いも時には必要だろう?
僕たちは協力することが出来る。だから今は、僕に背中を任せてほしいな。

攻撃は今回も【過ぎ去りし花燭】を使わせてもらうよ。
僕はこの花の魔法が一番得意でね。いうなれば【花属性】といったところかな。
【全力】で使えば有象無象くらいは吹き飛ばせるだろうさ。

※連携、アドリブ歓迎


バジル・サラザール
神様直々にお出迎えってわけね。
盗人扱いは心外だけど、素直に返すわけにもいかないわね。

前衛は他の人にお願い、主に「ウィザード・ミサイル」で攻撃するわ。
後衛から相手の動きをよく見て、それをみんなに伝えましょう。
周りの森に極力被害が及ばないよう、できるだけ外さないようにしたいわね。
植物人間が現れたら優先的に攻撃、敵の頭数を減らしましょう。
敵の攻撃は「野生の勘」も利用しつつ、回避や防御をしていくわ。

思ったより足止めくらっちゃったけど、早く倒して急いで戻りましょう。


セツナ・クラルス
彼らの頭部を潰すだけでは飽きたらず
傀儡化したのですか
あなたは

…生命をなんだと思ってるんだ

若干感情的になったものの
交戦時は平常心であることを心がける
やることはいつもと変わらない
攻撃をかわし、受け流し、時には堪え忍び
致命的な一撃を受けぬようにしながら時期を待つ

先程の巨人たちを平らげた
あなたの能力は恐ろしい
ところでご自身の力がどれ程のものか
自覚しておりますか
…一度体験されてみませんか

交戦中に拝借した能力を敵に放つ
あなたの無慈悲もそのままトレースできているといいのだが

あなたの罪を私は赦そう
しかし相応の罰を受けなくては
目には目を
命には命を
そういうものではないのかな


ルナ・ステラ
皆さんの連携すごいです!
大地の揺れを避けるのに狼狽えて、空中に逃げるのが精一杯で、手が出せなかったわたしとは大違いです。
でも、今度こそは皆さんの力になれるように!

森を統べるオブリビオン...綺麗で神々しいオブリビオンですね。言葉で説得...できそうではないですよね。申し訳ないですが、病気の子供の為です!覚悟を決めます!

魔法などで援護したり攻撃したりします。
召喚されたものがいればそちらを優先的に攻撃します。余裕があれば、森の『神』の方にも攻撃を試みます。
もし、傷ついてる人がいたら【楽器演奏】癒しの獣奏器の音色で癒します。

(アドリブ等歓迎です。)


アメリア・イアハッター
神様の、正体見たり、オブリビオン!
ってやつね!
え、違う?

・方針
木の巨人もしつこかったし、まだまだ私もとい果実を狙ってくる筈
なので今回も囮になる
ただし使役系の技を持っていそうなので単独で逃げ切ることは不可能と判断し、積極的に仲間の手を借り頼っていく

・行動
【ポジティブシンキング】を使用し味方を鼓舞
「ここまでの連携を見て、確信してるわ。私達は、強い!」
「ということで私は果実を守るため、逃げます! 皆助けて!」

【スカイステッパー】を使って木々や足場になりそうなモノの上を駆け回り、注意を引く
敵の使役物が追ってくれば【Air Heart】を使用してなぎ倒しながら逃走
なるべく味方の近くで逃げ回る

アドリブ歓迎


アイン・ローレンス
【WIZ】全力魔法、属性攻撃、範囲攻撃、2回攻撃

なんて神秘的な光景でしょうか…思わず魅入ってしまいました。
こんなに美しい存在がオブリビオンだなんて勿体ないですね。
問答無用で倒しますけどね?皆さんと一緒なら神様だってへっちゃらです!

「エレメンタル・ファンタジア:炎の竜巻」
どれだけ植物人間が出てこようと私と精霊の力で全て焼き払って差し上げましょう。
敵と敵の間を縫うようにいくつか発生させ、纏めて巻き込むようにします。
あら、合体できるのがそちらだけとは思わないで下さいね?
敵が合体したら竜巻を合体させて巨大化。
植物人間を一掃したらボスめがけて「氷の落雷」を発動。
凍えて痺れてて下さい。


ジェイクス・ライアー
…神と崇められるに足る、美しい生き物だな。殺すのが惜しいほどに。
だからと言って躊躇するわけではないがね。

【POW】
この相手ならば私の武器でも戦いようがありそうだな。
獣といえば【銃】。巨人には手を焼いたが、次こそは仕留めてみせよう。
ただし、すでに敵に見つかっている以上照準を合わせることが難しいかもしれない。その場合は角の攻撃を食らってでも近付き【指輪に仕込まれたワイヤー】で敵を捕縛。(致命傷となる場所は【戦闘知識】で避けるように善処)
隙があればそのまま【爪先の仕込刃】で蹴り上げ攻撃。拘束が外れてしまいそうな場合は押さえつけるのに集中。
なるべく【奥の手(戦場の亡霊)】は使わずに済ませたいな。


小日向・いすゞ
この森自体がアンタの狩場で、アンタ自身で、アンタの『恩恵』って訳っスね
アンタが本当に神だと言うのならば、あっしは本来アンタを祓うべき立場じゃないンスけどね
過去から滲んだ歪みならば除災するだけっスよ

今度こそ後方支援に回らせて頂くっスよ
こんなに盾を召喚してくれるだなんて助かるっスねー
オラッ、アンタらあっしの盾っスよ

管狐を呼び出して自らを高め、癒式符で皆を癒やすっス
余裕があるなら狐火で燃やすっスけどー
あんまり前には出たくないっスよ
ホントっスからね

全ての事象は陰陽五行の均衡っス
相生で在る内なら見逃せようも、木剋土を過ぎて相剋と成れば
その木乗土、正させて頂くっス!


ゼグブレイド・ウェイバー
なんなんですかあれ…まさかあれが神、とでもいうんですか…?
あれと戦うなんて…すごく怖い、けど…やらなきゃやられる!
覚悟は決めました!皆さんと一緒に頑張らせてもらいます!
・方針
ボスに対しては遠くからアイシクル・ランスを放つ
サモン・グリーントループをつかってきたらそれを優先的に攻撃し撃破する
・行動
相手の攻撃になるべく当たらないように距離をとりつつアイシクル・ランスを放ちます
近づいてきた場合は剣での応戦
サモン・グリーントループを使用した場合、合体する前にアイシクル・ランスで仕留めて行きたいと思っています。
距離を離せなかった場合片手でアイシクル・ランスを使いながら剣で斬りかかります
アドリブ歓迎です!


鴛海・エチカ
うむ、これがこの森の真の支配者か
見目は神聖であるというのに禍々しくも感じられるのう
やはりこやつが災魔であるからじゃろう

箒から地上に降りた方が戦いやすそうじゃ
よいしょ、っと
さあて、星海の魔女の力をとくと視るがよいぞ!
初撃から『二律背反』で角を狙って一気に攻め込むのじゃ
避けようが何をしようが魔法陣さえ描ければ此方のものよ

我は陣上にて力を溜めつつ後方でしかと敵の動向を視ておく
仲間に危機が迫ればユフィンの星霊杖を向けて
『ミレナリオ・リフレクション』にて相殺するのじゃ

厄を齎す神など要らぬ
我らの全力を込めた一閃、受けてみるが良いぞ!

ふふ、仲間とは良いものじゃのう
この果実も勝利の証。良い思い出になりそうじゃ


ニコラ・メイリアス
さっきの木のお化けほど大きくないのに…
威圧感?で圧倒されてしまいそうです。

この仔の方が手数も早さもありそうですが
今回もできうる限りの事はさせていただきます、ね!

今回は『躱す』より【エレメンタル・ファンタジア】で
『足止め』や『応戦』を。
雷の竜巻、触るとびりっとしちゃいますよ!

合体なんて格好いい気もしますが…強くなっちゃうのは困ります!
まずはあの仔のまわりにいる
植物な方たちを優先して相手取りましょう。

この仔は私たちの敵かもしれないですが
森を好きな気持ちはこの仔にもきっとある…と思うんです。
だから村に帰ったら村の人に、元気になったあの子に
この森を大切にしてくださいって伝えられたら嬉しいな。



●蹄の音
 踏みしめられた樹木の巨人が乾いた音を立てる刹那に、緑が芽吹き、花が咲く。蒼い輝きを纏った獣は、光と同じ色の眼で、猟兵達を見下ろしていた。
「なんなんですかあれ……まさかあれが神、とでもいうんですか……?」
 緑を、そして命を司るかのようなその様に、ゼグブレイドが眉根を寄せる。
「綺麗で神々しい、ですね」
「うむ、しかし神聖であるというのに、禍々しくも感じられるのう」
「言葉で説得は……」
「まぁ無理じゃろうなぁ」
 エチカの言葉に、やっぱり、とルナが肩を落とした。
 敵の瞳に浮かぶ色には、森の恵みを奪った者への怒りだけではなく、猟兵そのものへの強い敵意も見て取れる。これもまた、相手がオブリビオンであるからか。
「なるほど! 神様の、正体見たり、オブリビオン! ってやつね!」
 何が成程なのか、声高らかに言い放ったところでアメリアと敵の目が合った。
「……ねえ、何かこっち見てない? もしかして、また?」
 まぁ、当然、最初に狙われるのは彼女だろう。
「最初に実を取ってしまったのが運の尽き、というやつだろう。諦めてくれ」
 渋面を作るアメリアの前に、ニコが苦笑を浮かべながら立つ。先程巨人相手に猛威を振るった双剣も、未だ切れ味を保ったままだ。
「大丈夫、手は貸すさ。……主に前衛の皆さんが、な?」
 笑いながら言うマティスに応じ、アメリアもまた気を取り直すようにして、一同に向き直った。
「ここまでの連携を見て、確信してるわ。私達は、強い!」
 赤い帽子のつばを上げ、不敵に笑う。味方を鼓舞するそれもまた、彼女の身に付けた技能の一つ。
「ということで私は果実を守るため、逃げます! 皆助けて!」
 そうして清々しいほどの逃走宣言を決めて、彼女は空中に跳び上がった。
「良いっスね! あっしも今度こそ後方支援に回らせて頂くっスよ!」
 呼びっぱなしの管狐を杖に纏わりつかせたいすゞと入れ替わりに、セツナが前に出る。
「非力ながら、私も囮として働こう」
「俺等も何か攻撃手段持った方がよくねぇ?」
 内なる別人格の声を聞き流しつつ、踏み出した彼とニコの頭上を、オブリビオンが跳び越える。
 スカイステッパーを駆使して空を踊るアメリアは、その数歩先へと逃れることに成功したが――。
 ずん、とオブリビオンの蹄が地を揺らす。
 溢れる命、巻き起こる風。急速に成長し、伸びる蔓の束が、人の形を取っていく。それでも飽き足らぬように渦巻く風は、生まれては散る緑の葉を乗せて、森の空気を彩った。

●緑の嵐
 身を低くした獣の召喚に応じ、次々と植物人間が生じていく。生じる範囲は風と共に広がり、やがて生まれた一体が、頭上のアメリアの足を捕まえた。
「ちょっと、もう!?」
「ほら、まだ慌てないで」
 あっという間に追いつかれた、と悲鳴を上げる彼女に声をかけ、クリスがその傍らに着地する。
 特に何をするでもない、ただステッキの影で走っていたルーンソードの刃は、その植物人間を既に両断していた。
「妖精の次は植物人間……これは厄介だね」
「神様はお付きの人も多いみたい。羨ましいわね」
「とはいえ、オブリビオンと戦うには要らないオーディエンスだろう」
「それもそうね。とりあえず、ご退場願いましょう」
 クリスに続き、蛇の尾で地面を撫でながらバジルが言う。緩やかに広げた両手に生まれた炎の矢束が、扇状に飛び立ち、敵の群れに食らいついた。
「露払いは任せて。行くと良い」
「盗人扱いは気に食わないでしょうけどね」
「あ、ありがとう!」
 振り向かないままに言う二人に礼を言って、アメリアが駆け出す。飛び乗った岩からさらに空を足場に、木の枝の上へ。そしてそこから一定の高さを保つように、透明な足場を踏みしめ、跳ぶ。
 あえて味方の周りに留まるように跳ぶ彼女を、獣は身を低くして狙う。足元から溢れる輝きが一層強くなったその瞬間、一息で伸びた蔓の束を足場に、オブリビオンは大きく跳んだ。すんでの所で避けたアメリアを掠めて、蹄がもう一度大地を踏む。
「あれと戦うなんて……」
 力強く、神秘的。その様に気圧された様子のゼグブレイドに、アインが声をかけた。
「……思わず魅入ってしまいますね。あんなに美しい存在がオブリビオンだなんて、勿体ない」
「勿体ない……ですか」
 ある種独特の感想を、ゼグブレイドがなぞる。それに対しても、アインは笑みを浮かべて見せた。
「ええ、でも、問答無用で倒しますけどね? 皆さんと一緒なら神様だってへっちゃらです!」
「そうですよ、あの巨人とも、皆さんは見事に戦ってみせたじゃないですか!」
 樹上に一時退避していたルナも、そうして言葉を重ねる。
「病気の子供の為です! 今度こそは、私も皆さんの力になってみせます!」
 自分より年若い少女の決意を感じ、ゼグブレイドは一度、深く息を吐いた。
「……覚悟は決めました! 皆さんと一緒に頑張らせてもらいます!」
 剣を握り、敵を見据える。オブリビオンはなおも、アメリアを追って走り出していた。
「星の命題よ、因果と為って廻れ」
「氷銀の槍達よ…! 僕の力となって敵を殲滅してください!」
 オブリビオンの角に向けて放たれたエチカの流星に、ゼグブレイドの放った氷柱の群れが追随する。自在に伸びる力を持つ敵の角はそれらの大半を薙ぎ払うようにして無効化してしまうが……。
「ふむ、とりあえずはこれで良い」
 その後、エチカの足下を中心に六芒星の強化陣が描かれる。その上に立っている限り、彼女の魔力は強化される。戦闘を有利に進めることが出来るだろう。
 それを妨害するように、身をかがめたオブリビオンはまた植物人間達を展開し始める。恐らくは盾としての意味合いもあるだろう、そこで。
「どれだけ出てこようと、私と精霊の力で全て焼き払って差し上げましょう」
 アインがそれに対抗する。局所的に吹き荒れる炎の嵐が植物人間を焼き、開いた道をニコとセツナが進む。
「背中は任せた」
「分かったよ。だがあまり頼り切らないようにね」
 取り囲むように動く生き残りの植物人間を人形で牽制するセツナの後ろで、ニコはオブリビオンへと斬りかかった。時刻む双剣は、しかし捩じれた角を削るに留まる。
 頭を振って、ニコを突き飛ばすようにしてオブリビオンが前進。向けられたセツナの人形を撥ね飛ばして、蹄の一撃をセツナに打ち込んだ。
「ッ、これは……!?」
 次の瞬間、敵の角が歪な軌道を描いて伸びる。最短ではないが、確実に、伸びた角は、蹄を食らって後退したセツナの身体を貫いた。
「大丈夫っスか!?」
 後ろに倒れ込むようにして逃れた彼に、いすゞの癒式符が飛ぶ。
 そして、さらに追撃をかけようとしていたオブリビオンを囲むように、雷の竜巻が現れた。
「触るとびりっとしちゃいますよ! 少し止まっててください!」
 足止め替わりにそれを放ったニコラが大声を上げる。僅かでも、時間を稼ぐために。
「なるほど……素晴らしい」
 一方で、重い一撃を受けたセツナは感嘆するような溜息を吐いていた。口の端に浮かぶ笑みと共に、頭の中に『神』が描かれていく。

 果実の追跡も、さすがに目の前に害意ある者が現れれば優先度に変化があるらしい。敵が追ってこない状況を見て取ったアメリアは、ここぞとばかりに宇宙バイク、エアハートに跨る。黒い流線形のそれは、当然徒歩より小回りが利かず、空を飛ぶこともできないが。
「いっくわよー!」
 卓越した騎乗、運転技術を駆使すれば、森の中でも大層危険な武器と化す。
 植物人間の群れを薙ぎ倒すコースを選択し、急発進。ツバメのごとく、エアハートは真っ直ぐに走り出した。それを察知したいすゞはとりあえず傍らの植物人間を掴んで。
「こんなところでバイク乗り回すなんて危ないっスよねー。オラッ、アンタらあっしの盾になるっスよ!!」
 投げた。ぽいぽい放られる植物人間が、次々とバイクに撥ね飛ばされていく。悪夢のような攻撃により、いくつかの小集団に分かれた植物人間達を、今度は範囲攻撃が襲った。
「僕はこの花の魔法が一番得意でね。全力で行かせてもらうよ?」
「今回も、できるだけ外さないように……」
「お星さんたちわたしに力を! 悪しきものに降り注げ! シューティングスター☆」
 三者三様、クリスとバジル、そしてルナのユーベルコードが放たれる。クリスの花属性とでもいうべきか、舞い踊るバイカウツギの花びらが、バジルの基本に忠実な炎の矢束が、そしてルナの詠唱に応じた流れ星が、それぞれの集団をまとめて壊滅状態に追いやっていた。
 大幅には以下を失った形のオブリビオンに向けて、いすゞが高らかに宣言する。まずは咳ばらいを一つ。
「全ての事象は陰陽五行の均衡っス、わかるっスか?」
 木剋土を過ぎて相剋と成るならば、正すべきなのだ。
「要するに、あんたはやりすぎっス! その木乗土、正させて頂くっスよ!」
 で、具体的には。
「こちらのセンセ方が!!」
 突っ込んできたオブリビオンの角を、ゼグブレイドが剣を使って受ける。
「それ、僕も入ってます?」
「もちろんっスよ」
 良かった、と頷いてアイシクルランスを発動。無数の氷柱を降らせて敵を一時下がらせる。
 再度、いやさらに召喚された植物人間らを交え、戦いはなおも続いた。

●蒼く輝く者
 そうした戦いの中、敵の動きを観察し、機を見ていたエチカが動いた。戦況が拮抗すれば、敵の視線は自ずとアメリアに向く。狙うは、そのタイミング。
「どんなに輝かしかろうと、誰に神と呼ばれようと、お主は所詮、厄を齎すだけの災魔に過ぎん! その証拠に――」
 くるりと回した星の杖。その先端で、大地を叩く。
「この程度、チカにもできる!」
 不可視の波紋が、オブリビオンの巻き起こすそれとは対称の風を生み出す。ミレナリオ・リフレクション。絡まり、人型を形作りつつあった植物の動きが止まり、力無く倒れていく。生み出されるはずだった植物人間は、正確に、全て無効化された。
「さっすがエチカセンセ! むてき! さいきょー!」
「そうじゃろうそうじゃろう!」
 いすゞの声援を受けてエチカが胸を張る。ちなみにいすゞの鼓舞効果は一言で言って、並だ。
「素晴らしい戦果だ、詰めが甘いのは目を瞑ろう」
 きゃっきゃしてる彼女等を他所に、踏み込んだニコがその切っ先を隙だらけの敵に向ける。
「申し訳無いが、人を救うどころか生きるのを妨げる神は――不要にて」
 双剣が正確に、無慈悲に、時を刻む。鋭い連続攻撃に嘶きながら、オブリビオンが横に倒れ込むように体勢を崩した。
「まだまだ――!」
 もう一度、さらなる連撃に繋げようと後を追ったニコは、しかし逆に渾身の体当たりを受けることになる。踏み込み過ぎたか、そう考える暇すらなく、倒れ込んだ彼の上から蹄が振り下ろされた。
 交差させた両腕でそれを受け止め、反撃を。機を窺うニコに、続けて地面から溢れ出した緑が絡みつく。
「何だと……!?」
 急速に成長する蔓が体を縛り、食い込んでいく。だがその蔓が首を絞めつける、その前に。
「そこまでにしてもらおう」
 オブリビオンの横面に、靴底が打ち込まれた。とはいえ、セツナのそれに大した威力はない。獣はそれに動じた様子はないが。
「その通り、あなたに比べて私は非力だ。あなたの能力は恐ろしい。
 ――ところで、ご自身の力がどれ程のものか、一度体験されてみませんか?」
 芝居がかった台詞と共に、セツナの脳内に描いた仮の隣人、『神』が、その力を開放する。
 蹄による一撃を加えたならば、即座に。
「あなたの無慈悲さも、そのままトレースできているといいのだが」
 セツナの足元に埋まっていた木の根が頭をもたげ、尖ったその先端で敵の身体を貫いた。

 セツナの放った一撃に、ニコの連撃、浅くはない傷を負って、その獣は血を流しながら下がる。
 それを庇うように群れを成した植物人間達は、それぞれに手を結び、合体を始めた。顔の位置の葉に刻まれた数字が、急速に上がっていく――。
「合体なんて格好いい気もしますが……強くなっちゃうのは困ります!」
「あら、合体できるのがそちらだけとは思わないで下さいね?」
 そこに待ったをかけたのは、ニコラとアインの一手。炎を伴う風が、巨人を目指す植物人間の周りで円を描く。
「なるほど、こんな感じですね!」
「お前等がどんだけ寄り合ったところで、さっきの巨人程じゃねえだろうに」
 ニコラに続いてマティスと、精霊術に通じた者達が、続けて同じ手を打つ。
 眩く赤い光と共に、巻き起こったのは複数人の手による炎の大竜巻。樹木の巨人でさえ仕留めたそれに、急造の植物人間が耐えられるはずもない。30に近い数字を誇るその植物人間は、舞い上がる炎の柱に呑まれて、燃え尽きた。
「さあ、そちらも覚悟してください!」
 続けてアインの氷の落雷が、そしてジェイクスの散弾銃が、この森の主へと向けられる。横に跳ぶことでそれを回避したオブリビオンは、それでもなお抵抗するべく前脚を上げた。
 蹄の一撃を、あえて、ジェイクスがその身で受ける。続く伸びる角の一撃を躱す事は彼であっても難しいのだが、それも彼の打算の裡。
 突き立てられるその角を、急所から外すことだけ考えて。
「……捕まえた、な」
「無茶しすぎっスよ! ――夜の守、日の守に、守幸へ賜へ癒式符。疾う疾う、如律令!」
 いすゞの手により飛ばされた符が、ジェイクスの傷を急速に塞いでいく。貫かれたままの彼が、少しでも長く立っていられるように。
 ふわりと、ジェイクスの指輪から伸びたワイヤーが、敵の周りで木漏れ日を映し、光る。
「ダンスはそこまでってなとこだが……もうちょっとスマートな手は取れなかったのか?」
「なに、これが一番確実だろう」
 指輪をタップし、ワイヤーを締めるのと同時に、マティスが風の精霊に呼び掛ける。極細のワイヤーの上に、風で編まれた不可視の縛鎖が重なり、二重の拘束を形作った。
「そんじゃ、悪いけどこの森もここで終わりとさせてもらうぜ」
「神殺しと言えば剣か? だが……獣狩りには銃だと、相場が決まっている」
 血混じりの言葉を吐いて、ジェイクスは銃口をオブリビオンの頭に向ける。一時的に、とはいえ全身を固められた獣に、為す術はない。
「――美しい生き物だな。殺すのが惜しいほどに」
 そして、引き金が引かれた。

●深緑の終わり
 重い音を立てて、オブリビオンが倒れる。ジェイクスもまた、膝を付くことになるのだが。
「だ、大丈夫、ジェイクス君?」
「アメリア……良い攪乱だった、おかげで――」
「死にそうな顔で言わないで!?」
「じっとしていてくださいね……」
 ルナの奏でる癒しの音色が一同を等しく癒やし、ニコやセツナ、前衛に立って負傷した者達には、いすゞの癒しの符がぺたぺたと貼られていく。
「これあっしも疲れるんスけど、サービスっスよセンセ方」
 血は流れたものの、どことなく平和なその光景に、エチカが微笑んだ。
「ふふ、仲間とは良いものじゃのう」
「そういえばアメリアさん、果実の方は……?」
「大丈夫よ、ほら!」
 ゼグブレイドの問いに答え、アメリアが仕舞っていたそれを取り出す。桃と林檎の間くらいの見た目の、ハート型の果実。
「改めて見ると、なかなか珍しい見た目をしているね」
「この果実も勝利の証と言えよう。良い思い出になりそうじゃ」
 クリスとエチカは、皆で勝ち取ったそれを感慨深そうに眺めた。

 ざあ、と葉擦れの音が響く。吹いた風は、冬の気配を色濃く含んでいた。
「この緑の光景とも、一旦お別れか」
 風に緑の髪を揺らし、マティスが呟く。隆盛を誇るこの森の恵みも、守護がなければ失われていくだろう。だが、それで構わないと、元は森の民として生きてきた彼は断ずる。
 人の手出しを許さないこの恵みは、所詮はハリボテ、仮初のものに過ぎなかったのだと。
「森には森の流儀がある、春には春の冬には冬の表情ってのがな」
 巡る季節と共に在れば良い。冬が終われば、きっと……。
「ま、良い報告はできそうだな」
 満足気に頷く彼の前方で、バジルが声を上げる。
「思ったより足止めくらっちゃったわね、そろそろ戻りましょう」
「そうね、早くこの果実を届けてあげないと!」
 頷いたアメリアとニコラは、共に病床にある少年の姿を思い浮かべる。
 皆の協力もあって、約束は果たすことが出来た。きっと、彼等も元気になるだろう。

 動物達、ハートの果実、樹木の巨人、そして、きっと彼も森を愛していたであろう、獣の姿。今日見たものを反芻して、ニコラは胸の奥でそれを決める。たとえ、この深緑の光景が終わっても――。
 村に帰ったら村の人に、元気になったあの子に、伝えよう。

 ――この森を大切にしてください。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月09日


挿絵イラスト