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功名が首

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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●首刈りの夜に
 煌々とした月明かりが、帰り道を照らす夜。辻で立ち止まった身なりの良い若い侍が、腰の刀に手を伸ばす。
「……何奴。気配が隠しきれておらぬぞ」
 侍の誰何に応じ、闇より姿を見せたのもまた侍だった。しかし、凶相を浮かべた侍から漂う尋常ではない血の臭いが、まっとうな侍ではないことを声高に物語っている。一体どれほど斬り殺せば、これほどまでに血の臭いが染み付くというのか。
「斯様なところを通るとは汝も不運よな。恨みはないが、その素っ首貰い受けよう」
「血に飢えた外道め、臭くてたまらぬ。よかろう、返り討ちにしてやるわ」
 若い侍が抜いた刃が月光を照り返し、煌めいた。対する凶相の侍は、不遜な表情を浮かべ、いまだ納刀したままだ。
 ――しばしの無音。焦れた若者が踏み込んで、逆袈裟に刃を走らせる。
 けれど、その刃が斬り飛ばしたのは、前髪わずか一本のみ。
 次の瞬間、剣筋を見切られて蒼くなる若者の首が宙を舞い、飛んでいった。
「ふふ、ふははは……! 温い、温すぎるわ。もっと手応えのある相手が欲しいものよ」
 凶相の男は呵々大笑し、むんずと掴み上げた首を手に、屋敷の中へと姿を消した……。


「とある小藩で、オブリビオンによる辻斬りが続く事態が発生しています。このまま治安が悪化していけば、オブリビオンによる下剋上に繋がりかねません」
 猟兵たちを迎え入れた枦山・涼香(烈華なる黒狐・f01881)は、挨拶もそこそこに事件の概要を切り出した。
「辻斬りを束ねる首魁は、元用心棒のオブリビオンです。この首魁を討伐していただきたいのですが、なぜ元かといいますと、どうも用心棒と言うには殺しすぎたようですね」
 あまりに遠慮なく殺しすぎたものだから解雇され、今はとある屋敷に引きこもっているのだという。
 引きこもっているだけなら、屋敷を強襲して討ち取ればよいのだが、この元用心棒、非業の死を遂げた武士のオブリビオンたちをまとめ上げ、辻斬りをさせることで藩の治安を乱し、ひいては争乱を巻き起こそうとしているから質が悪い。
「争乱が起きれば、容易く多くを斬れるとでも考えているのでしょうが、そうはさせません。つきましてはまず、藩の治安を回復するために、街に散った辻斬りたちを排除していただく必要があります」
 今から向かえば、現地は夜。非業の死を遂げたオブリビオンである辻斬りたちは、未だ尽きぬ出世への妄執を抱いているから、こちらの首に価値があると思えば向こうから積極的に襲ってくることだろう。手柄首が欲しい、というやつだ。
 そうなれば正々堂々対峙するも良し、罠へと誘い込み無情に討ち取るも良し。そうして辻斬りたちを返り討ちにしていけば、治安を取り戻すことができる。
「妄執に囚われた辻斬りたちは、あまり頭が回らないようですから誘い出すのも容易でしょうが、くれぐれも逆に首を取られませんよう、お気をつけくださいね」
 街に蠢く辻斬りたちを片付けることが出来たら、いよいよ元用心棒が潜む屋敷へと突入するときだ。とはいえ、この屋敷、忍者屋敷ばりに仕掛けがあるらしく、元用心棒のもとへたどり着くだけでも楽ではない。
 吊り天井に落とし穴、どんでん返しと何でもござれだ。屋敷の中にいるのは間違いないが、どこにいるかは定かでない元用心棒を、罠を潜り抜け、仕掛けを見抜きながら探さなければならないのである。
 何れにせよ、まずは街の治安を取り戻すことが先決。
「この夜のうちに、すべてを片付けてしまいましょう。どうか皆さま、協力をお願いいたします」
 そう言って、涼香は深々と頭を下げた。


Oh-No
 こんにちは、Oh-Noです。
 皆さまの活躍を格好良く描き出していきたいと思っています。
 よろしくお願いいたします。

●目的
 辻斬りたちの首魁である元用心棒のオブリビオンを討ち取る。

●シナリオの流れ
 1章:辻斬りたちの排除
 2章:忍者屋敷攻略
 3章:首魁の撃破

●街について
 こじんまりとした街並みで、夜の間は人通りがわずかです。そのわずかな人通りの中から狙いをつけて後を追い、屋敷を囲う板塀が続くような道の途中など人気のない場所で、辻斬りたちが仕掛けてくることが多いようです。

 それでは、よろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『おまえの首をくれ』

POW   :    正々堂々一対一で勝負

SPD   :    地の利がある場所に罠など仕掛ける

WIZ   :    アイテムやユーベルコードを上手く活用

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シエル・マリアージュ
提灯を手に腰にはこれみよがしに剣を下げて、人気のない場所を歩いて辻斬りを誘う。
敵を侮らず、迎え撃つ準備は万端に。
アラクネの紅玉を蜘蛛型にして自分の服に潜り込ませて後方警戒させ、その視覚映像をOracle Visionで視野に表示させ確認する。
自分の追跡や暗殺の経験から襲撃に適した場所は特に注意して、第六感や殺気で何か感じたら回避優先で動きカウンターを仕掛ける。
戦闘では提灯を捨てて必要なら暗視に切り替え、黒剣を短剣に分割して、死は闇より来たれりで敵の背後から仕掛ける。フェイントを絡めた二回攻撃で手早く仕留めにいく。
「私は侍じゃない、これが私の流儀」



シエル・マリアージュ(天に見初められし乙女・f01707)はひとり、人気のない道を歩く。腰に挿した立派な剣が、幼気な身体とは不釣合いで妙に人目を引いていた。
 護衛もなしに一人で夜道を歩くような姿には見えない。もし、心優しき人がすれ違ったならば、こんな夜に一人で歩かなければならないシエルのことを憐れんだだろう。
 けれど、一見不用心なように見えて、内実はまるで違った。
 背後の視界は、服に潜り込んだ蜘蛛型のドローンが撮像した映像を、コンタクトレンズに仕込まれた情報端末に転送することで確保済み。襲撃ポイントの警戒には、過去の経験が役に立つ。
 つまり、憐れまれるべきはシエルではなく、楽に狩れる貴人だと思い込んでしまった辻斬りの方だったのだ。
「お命、貰い受ける――!」
 裂帛の気合とともに襲いかかってきた辻斬りの斬撃は空を裂き、あまつさえ姿を見失う。灯りへと目を向ければ、それは投げ捨てられた提灯で、すでにそこには誰もいない。
「どこだ、どこへ消えたッ」
 慌てたように周囲を見渡して、辻斬りは最後に月へと目を向けた。月光が辻斬りの姿を照らし出し、その後ろにくっきりとした影を描き出す。
 ――影の中から浮かび上がるシエルの姿になど、ろくに気配すら探れない辻斬りが気づくわけもなかった。
 そして、二本の短剣が音もなく急所に突き立てられて、辻斬りは地面に倒れ伏す。
「これが、侍じゃない私の流儀」
 小さな声で言い捨てて、シエルはその場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

須藤・莉亜
「そうだねぇ、逆にこっちから辻斬り?してみようか。」

召喚した首なし馬に騎乗して逆にこっちから辻斬りたちを狙う。
馬の脚の速さを利用して、一気に近づき大鎌で首を刈って行こう。
首なし馬にも踏み潰しとかで攻撃してもらう。

「僕の首はそんなに安くないよ。あ、馬の方は元々ないから気にしないで?」



夜の街を、首のない馬で駆ける者がいる。首無し馬『コシュタ・バワー』に跨った、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)だ。
「そうだねぇ、逆にこっちから辻斬り、でいいのかな? それをしてみようか」
 藩を騒がせる辻斬りどもの話を聞いた莉亜は、襲われるのを待ってなどいられないと、自ら積極的に辻斬り捜索に乗り出したのだ。
 実際のところ、馬に乗って駆け回っても、辻斬りを発見するのは困難だった。よほど運が良ければ、辻斬りを仕掛けている場面に遭遇できるかも知れないが、普通はそうもいかない。
 とはいえ、目立つというただ一点において、十分であったと言えよう。今こうして、辻斬りの待ち伏せを受けたのだから。
「そのような立派な馬をお持ちとは、さぞかし名のある方とお見受けした。首を貰い受ける」
「僕の首はそんなに安くないよ。あ、馬の方は元々ないから気にしないで?」
 間合いを詰められ、刃を向けられてなお、莉亜は軽妙な口調で応える。
「問答無用!」
 辻斬りが放った斬撃を、大鎌で逸らして受ける。
 しかし、待ち伏せされた場所が悪く、莉亜が当初想定していた、馬の機動力を活かす構想は難しい。代わりにコシュタ・バワーの巨大な体格を寄せ、押しつぶしていく。
「くっ、この馬、尋常のものではないな!」
「そりゃあ首もないしね」
 辻斬りがひるんだところを大鎌で一閃、その首を刈り取った。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ハーバニー・キーテセラ
平穏を乱すのはぁ、あまりよろしくありませんねぇ

予めぇ、人が2、3人と並べない程度の細い路地へ目星を付けておきますぅ
そこに足首が引っかかるぐらいの高さへ細いロープを2、3か所張っておきますねぇ
準備出来たら、お侍さんに変装でもして夜回りですよぉ

釣れたら、その路地へご案内~
釣られた方が罠に引っかかればよし~、引っかからずともぉ、ニの脚を踏めばよし~
その時間と距離はぁ、そのまま私がヴォーパルの引き金を引くだけの時間になるだけですのでぇ
手狭な路地は避けるに難くぅ、距離を詰めるにもぉ、障害物があっては一気にとはいきませんよねぇ

兎を追いかけた先はぁ、違う世界への旅立ちですよぉ
……今回は死出の旅立ちですけどね



(「どうやら釣れたみたいですぅ。さっそくご案内いたしましょ~」)
 ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)は、侍姿に見えるよう、常とは違う衣装を纏っていた。
 この姿で夜回りをしていたところ、案の定、功を焦る辻斬りが食いついたところだ。
 袖で隠した口元に笑みを浮かべ、そのまま素知らぬ顔で歩み続ける。向かう先は、辻斬りにとっておあつらえ向きの狭い路地。
 ――きっちりと、毒餌は撒かれているけれど。

 辻斬りは、絶好の機会だと思ったはずだ。人気のない細い道に、獲物が自ら入り込んでいったのだから。
 こちらに気づいている様子も見えない、この機会を逃すまいと、辻斬りは刀を引き抜いて、一目散に駆け出した。
 彼の目に見えるのは唯一つ、先を歩く人影の白い首。功名首への妄執を抱いた彼にとって、それはハニートラップのようなものですらあったのかも知れない。
 ……ならば、毒餌に掛かるのは必然だったのだろう。
 気づいたときには、地面すれすれに張られた縄に足を取られていて。
「兎を追いかけた先はぁ、違う世界への旅立ちですよぉ」
 手をついて起き上がった辻斬りの視界に浮かび上がったのは、ニッコリと笑うハーバニーの顔と、自分に向けられたデリンジャーのちいさな、けれど昏く深い銃口だった。
 ――乾いた音が響く。
「……今回は死出の旅立ちですけどね」
 笑みを消して物静かにつぶやき、ハーバニーは立ち上がった。デリンジャーを懐にしまい込んで、路地を後にする。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡磨・シロミ
──月明かりがあるんだね。
最初から戦闘の気配が強いようだし、臨戦態勢で臨むよ。

【WIZ】
私はなぎなたが得意だけれど、その腕は生粋の武器使いに比べれば確実に劣る。
特に今回は辻斬りの排除が優先されるのだから、一対一の果し合いなんてするだけ無駄。
だから、ユーベルコードを活用して戦うよ。

侍の機敏さにもよるけど、相手の間合いに入ってしまえばまず首が飛ぶ。
その恐ろしさは、故郷なのもあってよく知ってる。
だから、周囲に何も無い所まで上手く誘い出せたら先手を打って一気に吹き飛ばす。
念のために『見切り』を最初に使い、『WIZ+51』『全力魔法』を用いて【集光術・明星散光波】を発動。
有無を言わさず全て吹き飛ばすよ。



死合うなど、無駄だ。
 上段に刀を構えた辻斬りを睨め上げて、鏡磨・シロミ(神出鬼没のガラテイア・f00224)は冷静に考える。目的は辻斬りの排除に過ぎない。なぎなたに多少の覚えがあるとはいえ、生粋の武器使いたちに張り合えるほどに、自分が熟達しているとは思えなかった。
 極みに至った侍が相手ならば、その間合いに踏み込んでしまったが最後、こちらの首が飛ぶだろう。その恐ろしさは、身にしみてよく知ってもいる。
 だから、シロミは身体の内から迸る魔力をいっそう高める。誘い出しはうまくいった。あとは眼前の辻斬りを打ち倒すだけ。
 最善の一手で、全てを終わらせよう。
(「──月明かりが、あるのなら」)
 一撃でそれを可能とする魔法がシロミにはある。
 幸い、この相手は達人とは言い難いようだった。振るう刃に冴えはなく、容易に見切ることができそうだ。……たとえ達人でなかったとしても、手加減をする気など微塵もないのだが。
「光よ集え」
 唱えた呪に応じて、清冽なる月光の冴えが手の内に凝集されていく。辻斬りは眩しさに目を細めながら、それでも一撃を繰り出してきた。
 しかし、いかんせん雑なその刃が届く前に。
「──そして、並み居る全てを灰燼と化せ」
 シロミが放った光が、辻斬りの身体を無情にも吹き飛ばす。
 ……やはり、死合うなど無駄だ。
「この街には、あとどれだけの辻斬りが残っているのかな?」
 遠くおぼろげな街の灯を見て、呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

リト・クルル
おれの首をくれだって?
そんなのお断りだ
むしろお前がおれ様に差し出してくれてもいいんだぜ?

【POW】を使って正々堂々と一対一の勝負をすんぜ
おれに勝負を挑んだこと後悔させてやる
なんかいい作戦はねーかなっと
そうだ。【恫喝】しながら戦うのはアリなのか?
もしアリなら相手を怯えさせるくらい怖いドS発言をさせてーな
え?おれみたいなガキにそんなことを言われても怖くないだろって?
はは。おれみたいなガキに責められて得る、未知の体験をさせてやるぜ



「首だ、首をよこせ。さすれば見逃してやろう」
 リト・クルル(羅刹のシーフ・f06517)は、襲ってきた辻斬りの言葉を鼻で笑う。
「は? 何いってんだテメー。そんなのお断りだ。ああ、そうだ。お前のほうこそ首をくれるってんなら、いろいろ考えてやってもいいぜ? その刀で自分の首を落として土下座してみろよ」
「そうか、ならば小僧とて容赦はせぬ」
「で、結局力に訴えるのかよ。いいぜ、その小僧ってのに力で負ける恥を味わいたいってのならな!」
「口の減らない小僧め!」
 辻斬りが振り下ろした刀をいなし、手にしたダガーで反撃する。一刀で仕留めんと鋭い斬撃を繰り出す辻斬りに、それを圧倒する手数でリトが勝負する構図となった。
「で、いつになったらオレの首にその刀が届くんだい?」
 辻斬りの間合いをあざ笑うように出入りし、刃を躱しては斬りつける。最後は、力みすぎて大ぶりになった斬撃の内に入り込んだリトが、心臓にダガーの切っ先を突き入れて終わりとなった。
「へ、結局こんなもんかよ。ああ、あんたの首なんざいらねえよ。露ほどにも価値がないってわかったからな」
 くたばった辻斬りに蔑みの一瞥をくれて、リトはその場を去っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルセリア・ニベルーチェ
手ごたえのある相手が欲しい?
よろしい、ならばルセリアさんに任せなさい!

『情報収集』『コミュ力』で辻斬りをおびき寄せれるような情報
『12本の黒き剣を操りし剣豪がこの街に来ている。』
を流し、黒剣を備えたまま夜の街を少しあるいた後に人気の無い場所で待機。

釣られた辻斬りさんが居れば、一騎打ちでも挑みましょうかね?
いざ尋常に、始めっ…!
自身の『残像』で敵を惑わせながら接近。
『第六感』『見切り』『戦闘知識』で敵を掌握し
『念動力』で手元以外の11本を操作して斬撃を行い
隙が出来れば逃さずユーベルコード『剣刃一閃』でトドメ。



抜き身の黒剣を手に、ルセリア・ニベルーチェ(ルセリアさんは自由民・f00532)は月が照らす道を足早に進む。
 つい先程は居酒屋で食事を取りながら、
「そういえば知ってる? いま12本もの黒い剣を操る剣豪が、この街に来てるんだってさ」
 などという噂話を仕込んできたところだ。釣られたお間抜けさんがいなかったなら、ハシゴするつもりでいたが、どうやらその必要はなさそうである。
「でさ、そこのお兄さん、ルセリアさんに何か用?」
 静まり返った路地で突如振り返ったルセリアが、やや離れてついてきた男に剣先を突きつけた。すると男は無言で刀を抜いて、答えとする。
「ま、そうなるよね。よしよし、じゃあ相手になってあげようじゃないの」
 ウンウンと納得したように首を振るセシリア。けれど男が一歩を踏み出した途端に、空気が変わった。
「――いざ尋常に、始めっ……!」
 周囲に11本もの黒剣を浮かせ、残る1本の黒剣を手にしたセシリアが残像を残しながら走る。
 対する男は一瞬の惑いを見せたが、すぐに腹をくくったか、残像ごとセシリアを斬らんと横一文字に刀を薙ぐ。
 だが第六感が告げるままに動き出したセシリアにその斬撃は届かず、返す刀もすでに見切られている。
 そして、次々に振り下ろされていく11本の黒剣と、それに続くフィナーレとしてルセリアの手ずから放たれた剣刃一閃が、辻斬りの最後を彩ったのである。
「あなたじゃあ、ルセリアさんの暇つぶし相手にもなれなかったね」
 もう少しで辻斬りによって乱された街の治安ももとに戻るだろう。
(「手応えのある相手を求めてる彼はどこかな。いまルセリアさんが行くから、待っててね!」)
 この長い夜は、まだ始まったばかりである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

千桜・エリシャ
ふふ、今宵は月が綺麗ですこと
あら、私以外にも首を欲しがる難儀で酔狂な方がいらっしゃるなんて…
強敵をご所望なら私がお相手して差し上げましょう

【殺気】を隠さずに夜の街を散歩
堂々とした態度で手柄にもってこいの人物のように振る舞い辻斬りを誘き寄せましょう
こちらを着けてくる気配があれば、わざと人気のない場所へ

ごきげんよう。妄執に囚われた哀れな辻斬りさん
お待ちしておりましたわ
私の首を差し出すことはできませんわ
だって、その前にあなたの御首を私がいただきますもの

言うや否や【先制攻撃】
敵の攻撃は【見切り】で避けたり、【怪力】で受け太刀
隙を見つけたら【2回攻撃】で畳み掛けましょう

さあ、御首を差し出してくださいませ



――ここにもまた、哀れな辻斬りがひとり。
「ごきげんよう、妄執に囚われた哀れな辻斬りさん。お待ちしておりましたわ」
 角を曲がった辻斬りは、追っていたその少女が待ち構えている姿をみて、わずかに後ずさった。抜き放った大太刀を手にした、千桜・エリシャ(春宵・f02565)が、人気のない道の中心で立ちふさがっているのだ。
「……いい覚悟だ。首を差し出すがいい」
「いいえ、私の首を差し出すことは出来ませんの。だって、それより早く、あなたの御首をいただくのですもの」
 言い終わらぬうちに、エリシャは鋭く一歩を踏み込んだ。月光を厭う墨染の刀身が、影を曳くように昏く閃く。
 辻斬りも抜いた刀で応戦するが、刃が交錯したのはわずか数合。
 辻斬りが姿勢を崩したところへ、振り下ろした直後の刃がここぞとばかりに跳ね上がる!
「さあ、御首を差し出してくださいませ」
 剣先が描く軌道が太い首へと吸い込まれていき――、さしたる抵抗もなく通り過ぎていく。
 そこに残るは、載せるべき頭部を失った哀れな骸が1つ。
「ふふ、今宵は月が綺麗ですこと」
 大太刀を納めたエリシャは、空を見上げて呟く。
 どうやら、辻斬りどもの元締めは、首を欲しがる難儀で酔狂な相手らしい。
 ……まるでエリシャ自身のように。
「強敵をご所望なら、私がお相手して差し上げましょう。お待ちになっていてくださいね」
 この月夜の下で今宵、邂逅するであろう相手のことを想い、エリシャは微笑んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『忍者屋敷を攻略せよ』

POW   :    力づくで無理やり突破する

SPD   :    巧みに罠を見抜き、避けて突破する

WIZ   :    知恵や魔法で、危険な場所を安全にしてから進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


こうして街に潜む辻斬りたちを狩り、静けさを取り戻した猟兵たちは、首魁が潜む街外れの屋敷へと集う。
 血を好む元用心棒が、この屋敷の何処かへと潜んでいるのだ。屋敷は、まさに忍者屋敷の如く仕掛けで満ちており、探索はけして容易くないだろう。
 けれど、首魁を倒さねば、この事件に終わりは訪れない。覚悟を決めた猟兵たちは屋敷へと踏み込んでいった。
 彼らを見守るのはただ、中天に輝く丸い月のみ――。
鏡磨・シロミ
──仕掛けやからくり。
危険な場所に… 敢えて突っ込む必要はない。

【SPD】
『SPD+39』を使用してから【錬成カミヤドリ】を発動し、屋敷内に複製した私の本体である鏡を飛ばし、視界を確保。
『見切り』『第六感』『情報収集』をそれぞれ使い、仕掛けや罠を回避、または解除して進む。
怪しいと思った箇所は率先して調べ、危険と判断したら避けて進むよ。


ハーバニー・キーテセラ
辻斬りさん、まるで穴倉に隠れ潜む兎みたいですねぇ

お屋敷に入ったらぁ、四方に警戒ですよぉ~
罠がたくさんあるとのことですしぃ、不自然な痕跡には要注意ですねぇ
壁や床とかぁ、その周辺に傷があったりぃ、もしくは妙に真新しかったりとぉ、何かしらあるでしょうしぃ、そういうのに気付けたらぁ、避けていきましょ~
亀の歩みでも着実にぃ、私ぃ、兎ですけどぉ

あとはぁ、扉のあるお部屋に入る時にはぁ、扉が閉まらないようにぃ、物を置いたりして逃げ道を常に残しておくことを意識しておきますねぇ
逃げ道を塞がれてぇ、ぺしゃんこはご勘弁ですから~

それとぉ、辻斬りの首魁が屋敷を出入りしているならぁ、比較的安全な道とかもあるかもですねぇ


シエル・マリアージュ
念の為トリニティ・エンハンスで防御を強化。
他の猟兵とは積極的に協力と情報共有。
【追跡】技術で床の減りなどから普段使われている罠がない通路や隠し通路を探れると良いですが、首魁が引きこもりなので期待薄でしょうか。
アラクネの紅玉を蜘蛛型で天井や壁を這わせて先行させて不自然な段差や隙間などがないか確認、自身の【視力】でも合わせて確認しながら慎重に進みます。
罠や仕掛けを発見したら、銃形態の聖銃剣ガーランドの非殺傷弾で衝撃を与えたり、攻撃して破壊します。
【情報収集】でOracle Visionの視野内に動きがあれば警告を表示させ【第六感】の感覚や【ダッシュ】の瞬発力などを活かして屋敷を探索して首魁を探す。



「辻斬りさん、まるで穴倉に隠れ潜むうさぎみたいですねぇ」
 寂れていても、屋敷の門構えは立派だ。今は閉じられた門を見上げて、ハーバニーが呆れたように言う。
「こんなところに引っ込んでいるなんて、自分に自信がない証拠。で、どうします?」
 任務中であるシエルは淡々と応じつつ、仲間の顔を見た。
「危険な場所に、あえて突っ込む必要はないよ。私に任せて……」
 シロミもまた戦闘の昂ぶりが続いている様子だ。いつもならたどたどしい言葉になってしまうところだが、流暢に喋っている。
 シロミは、自らのヤドリガミとしての本体である鏡を取り出した。それを手に乗せ錬成カミヤドリを発動させると、鏡の輪郭がぶれて17個もの複製が生まれる。そしてさっそく、鏡の複製を屋敷の塀の向こうへと送り込んだ。
「視界はこれで確保できるから。……うん、庭の方にはなにもないね」
「なら、私が先に行きます。こうしておけば、多少のことは平気ですし」
 シエルは手早く炎・水・風の3つの魔力で身体を鎧う。それからドローン、アラクネの紅玉を先行させた後、自らも塀を越える。
「みなさん頼もしいですねぇ」
 ほんわかと笑うハーバニーも、そこかしこへと向ける視線は鋭い。

 庭から眺める屋敷は、一見したところ、なんでもない普通の屋敷だ。
 だが、ハーバニーが落ちていた枝の先で、庭の植生が微妙に違う部分を突くと、ボッコリと穴が開く。奥底には尖った竹槍が鎮座しており、殺意はマシマシだ。
「こんな庭にも落とし穴がありますしぃ、亀の歩みでも着実にぃ、ですよぉ? 私ぃ、うさぎですけどぉ」
「……雨戸には毒針が仕込まれていましたが、破壊しました。進みましょう」
 振り向いたシエルの手には、黒い銃がある。その銃で罠を撃ち抜いたのだろう。濡れ縁に上がり、居間の奥を伺う。
 シロミも縁に上がって、屋内の各所へと自らの分身を飛ばした。ハーバニーはというと、雨戸の前にしゃがみ込み、何やら作業をしている様子。
「どうしたの?」
「ちょっと雨戸にぃ、楔を打ち込んでおこうと思いましてぇ。偵察はお願いしますぅ」
 ハーバニーは客間らしき部屋の天井を一瞥して言う。ここの天井が落ちてくることはなさそうだが、いざというときのために退路の確保は重要だ。
 その間に濡れ縁の先を調べていたシエルが、残念そうに首を振った。
「――床の減りなどに差がある場所は見当たりませんね。引きこもりのせいでしょうか」
 アラクネの紅玉が蜘蛛足を滑らせて、床を舐めるように探ったが、とくに異常はみつからない。
「多分、まだそんなに長く住んでいないんだと思うな……」
 同じく、行ける範囲を分身で探ったシロミも受けた印象を口にする。とにかく、生活感がないのだ。
「でもぉ、辻斬りの首魁が屋敷を出入りしているならぁ、比較的安全な道とかもあるかもですよぉ」
「それが見つからないのは、表にないから、か……」
「もう少し探ってみましょうか」
「それがいいと思いますぅ」

 不用意に進まず、じっくりと時間をかける方向で一致した3人は、それぞれに怪しいと思うところを探っていた。
 けれど、そこかしこに仕掛けられた細かな罠に阻害され、隠し通路の類はなかなか見つからない。その中で最初に結果を出したのは、ドローンに壁を這わせ、舐めるように探っていたシエルだった。
「……! この壁、うまく隠してますが1枚ではありません」
 壁を探っていたアラクネの紅玉を退かせて、シエルが銃弾を2発打ち込むと、1枚の壁に見えていた部位に切れ目が走る。
 シロミがそっと押し込むと、壁が回って、細い隠し廊下が姿を表した。
 差し込む月光に照らされた隠し廊下には、埃すらない。
「このどんでん返しの先、怪しくって、ドキドキしますねぇ」
 覗き込んだハーバニーが、くすりと笑う。
 ――間違いなくこの通路が、首魁がいる部屋に繋がっている。心は逸るけれど、こんな時こそいっそう慎重に。
 3人は視線を合わせて頷きあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラムダ・ツァオ
相手の侵入を拒むのではなく、相手を仕留めることを目的としているなら狙いはわかりやすいわね。
特に相手が血を好むなら、止めは自分で刺したいと思うのが人情だろうし、
様々な手順で来れるようになっているんじゃないかしら。
あと、隠し通路が見つかった直後に仕留めたいと思うだろうし、
警戒を強めるに越したことはないわね。
音や感触を確かめるのが一番わかりやすい方法かしら。
罠によっては解除するより発動させた隙に突破する方がいいものもあるわね。
足には自信があるから、多少の罠なら強引にもいけるわよ。
勿論、過信は禁物だけど。



(「侵入を拒むためではなく、相手を仕留めるために罠を仕掛けているなら、狙いはわかりやすいわね。……例えば、隠し通路を見つけた直後の今とか、ね」)
 この屋敷にいるという首領は血を好むと聞いている。ならば、自らの手で賊を斬ろうと考えるだろう。
 だからラムダ・ツァオ(影・f00001)は、警戒を強めて隠し通路に踏み込む。一歩、二歩、三歩――。
 そして通路の中ほどまで進んだとき。
 ……カツッ。
「……っ!」
 かすかな音が聞こえた。
 続けて、何か擦るような音が続く。
「上ね! って、吊り天井!」
 幸い、まだ落ちきるまでに時間はある。加えて、ラムダは足に自信があった。
 ――ならば通路の奥まで走り切る!
 通路はやや長いが、奥の引き戸は開いている。自分の足なら余裕と判断して、即座に駆け出す。
 天井は勢いを増して落ちてきているが、滑り込めそうだ。けれど、嫌な肌感覚は増す一方で。
(「……わざわざ、逃げ道を開けておく?」)
 自らの予感に命じられるまま、全力で加速する。何もなかったら、それはそれで構わない――。
「セイッ!」
 引き戸を通り過ぎるその瞬間、気合が耳を叩き、剣風が背中を撫でる。
 ラムダは足を止めず、部屋の奥に至ってから振り向いた。
 入り口には、刀を振り下ろした凶相の男が立っている。
「……よもや捉えきれぬとは思わなんだ」
「お生憎様、そんなこともあるかなって考えてたわよ。こうまであからさまとは思わなかったけど」
「ククク、しかし哀れよな。ここで斬られていれば、苦しまずに死ねたものを」
「そういうことは勝負に勝ってから言ってよね、引きこもってた首領さん」
「ここまでたどり着けもしない奴に興味はないわ」
 言いながら、凶相の男は右手で障子を引き開けて、広い中庭に降りる。
「屋敷を血で染めるのも面倒なのでな。ここで相手をしてやろう。信じるかどうかは勝手だが、ここなら余計な罠もない」
 凶相の男は大木を背にして、刀を中段に構えた。
「どうせなら、俺を満足させてくれよ?」

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

化野・那由他
中庭に出たのが運の尽きね。余程自信があるのでしょうけど、その慢心は命取りよ。

SPDで判定、『付喪神奇譚』を使用します。
召喚するのは名もなき刀の付喪神。今回は刀そのものとして使います。恐らくこれは達人の差し料であった太刀。その剣技体術と叡智の一端が刀から伝わってきます。

この刀も言っているわ――貴方は斬り過ぎたと。

刀はもし弾かれ手から離れても、術者の意のままに宙を飛んで敵を狙います。

【第六感】を活用して敵の動きを読み、敵の踏み込みを【誘惑】し、隙あらば【2回攻撃】。【気合い】を込めて刀を振るいます。判定基準は付喪神奇譚ですが、可能なら『仍て件の如し』も使用して回避を試みます。

※アドリブ歓迎です。


ラムダ・ツァオ
やはり待ち構えていたわね。
居合の達人相手に間合いに入るのは愚策だし、
千刃で刃を舞わせ、攻撃が僅かに届かない距離を保ちつつ戦うわ。
攻撃を見切るのには自信があるけど油断は禁物ね。
相手も動けないわけではないから。

千刃でつけられる傷は浅いかもしれないけど、
それでも積み重ねればこちらが有利になるわ。
後は根競べね。
敵の防御時だったり味方の攻撃時だったり、わざと刃を迫らせて注意をそらすだけでも有利に運べると思うから。
一撃必殺とはいかないけど、こうした堅実な搦め手も悪くはないわよ。
霊を召喚してくるようなら早めに片付けるわ。
相手はまさに一撃必殺の意気だし、注意を他に逸らしたくないから。



(「達人相手を相手にして、迂闊に間合いを詰めるのは愚策」)
 ラムダは右手で黒い短剣、左手で白い脇差をそれぞれ逆手に抜く。ゆらりと両腕を突き出し交差させれば、握られた黒白一対の刃が動いた軌道上に、それぞれの刃の影が産み落とされて、命を得たかのように動き出す。
 総計19振りにもなる刃の映し身は、主を守るべくラムダの周囲へと浮いた。
「面白い技を使うものだ。おひねりでも投げたいところだが、あいにく持ち合わせがなくてな」
「あなたの首を貰えれば、それで十分よ」
「お主が取れるというなら構わんが。……其処な女も何か見せてくれるのかね」
 ラムダの技に目を細めた凶相の男は、座敷の奥へと声を飛ばす。
「――見世物ではないのだけれど」
 男の誘いに乗って暗がりから月光の下へと姿を見せたのは、化野・那由他(書物のヤドリガミ・f01201)だ。
 何も持たずに現れた那由他は、空を撫でるように右手を振りながら呪を紡ぐ。
「年経た器物に叡智あり。古の御業、此処に示さん」
 すると一振りの年季がかった太刀が、何処かより呼び出されて形を成した。古き器物には神が宿るという。この古刀もまた、そうした一振り。
(「この太刀は、おそらく達人の差し料ね」)
 鞘を掴んだ那由他に、太刀が宿す叡智、経験が流れ込んでいく。そして、意志持つ刀が語りかけてくる言葉をも聞いた。
「この刀も言っているわ。――あなたは斬り過ぎたと」
「ククク。それはまた、随分とお行儀の良い刀だな。斬るが定めだろうに」
「それが感想? なるほど、だからオブリビオンなどに身をやつしているのね」
 男と会話を交わしながら、那由他はちらりとラムダに視線を投げかけた。
(「私が切り込むわ」)
(「援護は任せてね」)
 ラムダはこくり、と小さく頷く。
「さて、ならば儂もひとつ技を見せてやらねばなァ!」
 そう吠えた男が膨らませた剣気、それが合図となった。数多の命を斬り捨ててきた男が纏う剣気は、修羅そのもの。近づくほどに高まるその重圧を感じ取りながら、那由他は飛び込んだ。
(「自信を抱くのも不思議はないけれど、その慢心が命取りよ」)
 自信があるからこそ、わざわざ中庭などに出たのだろうが……、ならばその隙を突くまでだ。
 あえて、那由他から踏み込んだ間合い。凶相の男は誘いに乗って、刀を振り下ろす。
「――ハッ!」
 その鋭い斬撃を、那由他は古刀から借りた技量に、己の第六感を加味して躱した。しかし男の斬撃は、そこからもう一段伸びてくる……!
「刻め」
 けれど、ラムダが操る刃の嵐が横合いから那由他の前に割り込んだ。クルクルと回る白い刃、黒い刃が多方から凶相の男へと迫り、男の躰を切り刻まんとする。
「チィッ」
 男は横へと飛び退りつつ刀を振るい、飛び来る刃の幾らかを払った。けれど全てをはねのけられたわけではない。
(「一つ一つの傷は浅いかも知れないけど、それでも積み重ねれば、こちらに流れを引き寄せられるわ」)
 ラムダは堅実な絡め手で、相手を絞り上げるつもりだった。一撃必殺こそが相手の土俵だろうが、こちらがそこに乗ってやる必要もないのだ。
 男の斬撃から逃れきった那由他もまた、古刀を振るって攻撃に転じる。
「舐めるなッ」
 しかし男はすでに体勢を立て直しており、那由他が振るった古刀は一閃された剣先に跳ね飛ばされてしまった。今度こそ斬り捨ててくれるとばかりに、男が纏う修羅の気がより一層膨れ上がる。
 だが、意志持つ刀は使い手の手を離れようとも自在に動くものだ。男のがら空きになった背中を切りつけて、一撃を見舞った。そして、その間に再び間合いをとった那由他の手の内へと戻る。
「……認めてやろう。主らが相手なら儂の渇きも癒えようぞ」
「そんなこと言って、いざとなったとき命乞いなんかしたら幻滅よ?」
「ええ。あなたの物語の終幕に、無様な姿は残したくないでしょう?」
 一瞬の攻防を終えて再び睨み合った男と猟兵たちは、益体もない言葉を交わしつつ、仕掛ける機を探り合う。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シエル・マリアージュ
【目立たない】【先制攻撃】で用心棒に「死は闇より来たれり」で不意打ちを仕掛ける。
不意打ちが当てられても深追いはせず【2回攻撃】に見せかけた【フェイント】で距離を取って聖銃剣ガーランドの【クイックドロウ】で牽制する。
その後や不意打ちが失敗した場合は、【第六感】【見切り】で致命傷を避けつつ【カウンター】や【フェイント】でタイミングをずらした【2回攻撃】に【マヒ攻撃】などを織り交ぜ間合いを取りつつ攻める隙を窺う。
用心棒が「死者の誘い」を使ってきたら、「死は闇より来たれり」からの【2回攻撃】で死者の霊を優先して退治していく。
戦闘中は言葉少なく淡々と、言葉の代わりに刃に己の全てをのせて。



 慈悲の刃は影より現れて、罪人に贖罪を強いる。
 シエルは気配を悟らせぬまま元用心棒の影から飛び出し、断罪の剣を以て斬りかかった。
「……クッ、小癪な」
 男は刀を盾にして致命傷こそ防いだものの、斬られた肩口から血がにじませている。シエルはすかさず、地面を這うような軌道で剣を振るい、男の足首を狙った。
 だが、それはフェイント。男が足元に意識を向けたところで、斜め上に飛び跳ねて距離を取る。男もさるもので、沈んだ体勢から刀を逆袈裟に振り上げて反撃に出るが、シエルは追う男の眼前に聖銃より弾丸を放ち、牽制でその場に縫い止めて追撃を振り払う。
「お主に真っ当に斬り合う気がないのなら、こちらも相応に相手するまでよ」
 男は、懐より取り出した骨片を撒いた。骨片は昏い妖気を纏っており、地面に触れるなり急激に噴出した妖気が亡霊となって形を成す。
「これは儂が斬った奴らの成れの果てだが……、お主には相応しかろう」
 シエルは黙したまま、蒼眼でじっと亡霊を見つめていた。その瞳は何の感情も映してはいない。シエルはただ静かに、悲痛な叫び声を上げる顔のない亡霊を見つめ、そして不意に闇の中へ姿を消した。
「二度も喰らうものかよ」
 己が影を警戒する男をあざ笑うかのように、亡霊の影より姿を表したシエルが、亡霊の空虚な躰を切り裂いて安寧に返した。
「……次はあなた」
「斬ってくれるッ!」
 男は呼気も鋭く、大きく踏み込んで刃を一閃する。その目にも留まらぬ剣閃を、シエルは半ば勘に頼って躱し、顔の横を通り抜ける刃も恐れずに踏み込んだ。血にまみれて禍々しい紋様を浮かび上がらせた剣を、相手の斬撃の内側を縫うように奔らようとするが、これは速度が乗る前に出頭を抑え込まれる。
 ――狙い通りだ。本命は、左手で銃把を握った聖銃。銃口から吐き出された弾丸が、男の臓腑を貫く。
 さらに追撃するチャンスにも思えたが、それ以上は欲張らず、シエルは横に転がり込むようにして自ら身を離す。
「……チッ」
 残念そうに、男は舌打ちをした。
 男はいつの間にか、刀を逆手に持っていた。あれ以上、男の懐に留まっていたら、背中を貫かれたことだろう。
 確実に傷を負わせてはいるが、なお油断ならない相手だ。
 シエルは慎重に間合いを測り、再度仕掛ける隙を伺う……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

桑原・こがね
※アドリブ歓迎です。

忍者屋敷の罠を壊……くぐり抜け、桑原こがね只今参上!
まだ終わってないみたいね!よかった、間に合った!

遅れてきちゃったし、仕切り直す意味でも見得切っときましょうか。目立つと調子上がるし。
切っ先を向けて叫ぶのよ。あたしを見ろォ!

幾夜も続く辻斬り騒動
罪なき人々怯えさせ
首魁の罪は海より深い
これを倒すは天の理、地の裁き
素直に自首をせぬのなら
罪を重ねたその剣で
桑原こがねにかかってこい!

決まったわ。
後は斬るだけね!

剣は何本かあるし、一本ぐらい投げちゃってもいいわね。
敵に向かって突っ込みながら剣を投げる。
当たればそれでも良し、避けて体勢が崩れたところをバッサリよ!



 目に見えそうなほど空気が張り詰めた夜の静寂に、乾いた音が響く。
 猟兵たちと元用心棒が視線を向けた音の出処は、屋根の上だ。そこに、まあるい月を背中にして威風堂々と立つ、桑原・こがね(銀雷・f03679)の姿があった。どうやらわざと瓦を鳴らしたようである。
「幾夜も続く辻斬り騒動、罪なき人々怯えさせ、首魁の罪は海より深い」
 口上を滔々と口にしながら、逆光の中で影絵となったこがねは、すらりと刀を引き抜いた。
「これを正すは天の理、地の裁き。素直に腹を切らぬなら、罪を重ねたその剣で」
 持ち換えた刀が月光を映して、眩く煌めいた。そして、一瞬の溜めの後。
「桑原こがねにかかってこい!」
 こがねが大音声で吠える。一連の姿を見たものは、節々で太鼓が鳴る幻聴を聞いたともいう。
(「――決まった!」)
 こがねは心の中でガッツポーズを決めた。忍者屋敷の中を強引にくぐり抜けたために少々遅れてしまったが、その分はこれで十分に取り戻しただろう。
 なにせ、真打ちは最後に現れるものなのだから。
「……ク、ククク。主らは面白いな。実に面白い。それほどの大見得を切ったからには、落胆させてくれるなよ」
「もちろん、目にもの見せてあげるわ!」
 屋根の縁を蹴り、一直線に飛びかかってくるこがねを待ち受けて、男は刀を八相に構えた。
 こがねは手にした刀を振り上げるように見せて、――そのまま投げ放つ。
「なんとッ!」
 男は飛んできた刀を己の刀で受け流すが、その間にこがねは懐に潜り込んでいた。
「もらったああ!」
 そして、抜き放ったルーンソードで男の胴を薙ぐ。
 ――が、浅かったか、致命傷には至らない。

成功 🔵​🔵​🔴​

遠呂智・景明
「遅参した、許せ」
周囲の猟兵たちへの挨拶もそこそこに【ダッシュ】で敵の懐へ飛び込むと【殺気】を込めた一撃を放つ。

「お待ちかねの剣豪だ、泣いて喜べよ人斬り」
そのまま手を緩めることなく連撃を放つ。

敵の大技は【見切り】【フェイント】【残像】さらにUC【風林火陰山雷 林の如く】を用いて凌ぐ。
「容易く斬られてやると思うなよ!んで、見切ったぜその動き」

腰から抜いたもう片方の刀を抜くと【2回攻撃】で敵の怪我を狙い【傷口をえぐる】。

「さぁ、死ねよやぁ!!」

アドリブ歓迎



「どうしたどうした、儂はまだ立っているぞ。……お主らは強い。認めよう。だが、一人で逝くのもつまらんのでなァ! お主らの首、ひとつふたつは貰ってやろう」
 全身を血で朱に染めながら、男は呵々大笑していた。
 その眼前へ、また新たな猟兵が現れた。
「遅参した、許せ」
 屋敷を抜けて姿を表すやいなや、周囲の猟兵たちに小さく言い捨てて、男の間合いへと飛び込んでいった猟兵、遠呂智・景明(大蛇殺しのヤドリガミ・f00220)である。
 ひとっ飛びに男の間合いへと入り込んだ景明は挨拶代わりにと、低い体勢から斜め上に刀を振り上げた。
 僅かたりとも抑えない殺気を纏った一撃を、男はニンマリと笑って刀で受ける。
「お待ちかねの剣豪だ、泣いて喜べよ人斬り」
「随分と活きが良い。――楽しませてくれよ」
 口が動く間も、互いの刀は止まらない。
 互いの剣撃がぶつかり合って、火花が散る。直後に飛び退って間合いを離した男は、いつの間にか手にしていた刀を納刀していた。
「生意気な奴よ、斬り捨ててくれるわ!」
 次は居合が飛んでくる。いったい、どこを狙ってくるのか。それすら、景明の予測のうちにあった。
「容易く斬られてやると思うなよ! ――あとな、あんたの動きはすでに見切ってるぜ」
 景明にとっては、太刀筋など一度見れば十分だ。未だ見ていない技すら、その延長線上に予測して、躱してみせる。
 顎先をかすめゆく切っ先を尻目に、腰に挿したもう一刀を左手で抜き、そのまま胴を薙ぐ。
「さぁ、死ねよやぁ!!」
 元より握っていた刃は縦に振り下ろし、十字に斬った。
 男は見栄も何もなく、地面を転がって景明の前から逃げ、距離を取る。
「……チッ」
 男の状態は、もはや限界に達しようとしている。それでもなお、その瞳は闘志を宿していた。
 ――大勢は決したが、まだ安心はできそうにない。

成功 🔵​🔵​🔴​

伊能・為虎
(※満月のお陰かちょっとだけ理性の箍がゆるふわ状態での乱入。刀に憑く狗呪詛達とのエクストリームお散歩。アドリブ歓迎)

……わんちゃんが誘うから、辿っていたら
手練れの、たくさん切った刀の匂いだ
ああ大丈夫、僕はあのおじさんみたいに斬り合いだけ楽しむような無趣味じゃないから。そこは分かってる。うん。

ねぇおじさん、色々見れた?楽しめた?僕"たち"とも少し……
ふふ、獣みたいな剣だけれど、そこはご勘弁を。

WIZで判定
<怪力4><殺気1>を使い妖刀で斬りかかる
自身に相手の意識が集中している辺りで【疾駆する狗霊】の詠唱を挟み、
狗霊を操って認識外からの奇襲なども
でも最後はやっぱり刀で〆たいかも……(隠れ戦闘好き)



 屋敷の中庭も随分と血なまぐさくなったものだ。
 元より人を斬りすぎた男が発する陰の気が、猟兵たちとの攻防により増幅されて、周囲に異様な気配を振りまいている。なれば、呪詛の類が引き寄せられるのも無理からぬことだろう。
「……わんちゃんが誘うから辿っていたら、手練れの、たくさん斬った刀の匂いだ」
 躰を持たぬ、首だけの狗の霊に誘われて、この屋敷へと迷い込んだ伊能・為虎(天翼・f01479)が、鼻を鳴らして匂いを嗅いだ。
 宙に浮かんだ狗の首が、為虎の顔に寄り添って小さく吠える。
「ああ、大丈夫。僕はあのおじさんみたいに、斬り合いだけ楽しむような無趣味じゃないから。そこは分かってる。うん」
 狗が言いたいことを察して、為虎は半分自分に言い聞かせるように口にした。
「幼子のような姿だが、悪鬼羅刹の類と見える。――気づかぬ内にくたばった儂が、幻影でも見ているのかと思ったわ」
「おじさんが僕のこと、悪鬼羅刹とか呼ぶの? まあいいけどさ」
 訝しげな男の言葉には苦笑いで返す。
「ねぇおじさん、色々見れた? 楽しめた? 僕『たち』とも少し……、ね?」
 それから抜いた妖刀の切っ先を突きつけて、男を誘った。
「是非も無い。だが、手負いなれど侮るなよ」
「ふふ、獣みたいな剣だけれど、そこはご勘弁を」
 刀を構えて待ち構える男へと、地面を蹴った為虎が突っかかっていく。互いから発せられる殺気がぶつかり合い、いやが上にも緊迫感を増した。
「……ぬ、存外に重いか」
 斬撃を刀身で受けた男がつぶやく。為虎は刀を返し、さらに仕掛けた。
「そら、もうひとつ!」
「舐めるなよ」
 為虎が刀を振り切る前に、腹に蹴りを入れられて、無理やり距離を離された。地面に倒れ込んだ為虎に、今度は男が刀を振り上げて斬りかかってくる――。
「……荒魂等此処へ出で候え、祟り給え呪い給え! わんちゃん遊んでおいで!」
 跳ね起きながら為虎は早口で呪を唱えた。妖刀に潜む呪詛たる首だけの狗霊が、主の言葉に応じて牙を剥く。
「チィッ」
 背中から迫る妖気に反応した男は、襲いかかる狗霊の顎門に刃を噛ませて、その牙を防いだ。
「――もらった!」
 為虎はその間に態勢を立て直し、妖刀を真一文字に振るう。
 ――切り裂かれた男の背中から、赤い血が飛んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・ツァオ
搦め手でこのままじわじわと片付けるのも良いけれど、
少しは相手の土俵に乗ってあげてもいいかしら。

ということで、こちらも外套を脱ぎ捨て身軽になるわ。
向こうも居合の達人だし、飛び込むのは危険でしょうけど、
攻撃を見切る自分の目と足を信じるしかないわね。
紙一重で敵の一撃を掻い潜り、シーブズギャンビットで切り裂く。
少々危険な賭けだけれど、
相手の土俵で勝れば、少しは相手も意気消沈するでしょうし。

とはいえ、二度三度と仕掛けるのは流石に不安ね。
それ以降は距離を置きつつ、他の皆と合わせてヒットアンドアウェイで手堅く進めたいわね。



 男は刀を杖にして、どうにか立ち上がる。もはや逆転は起こりえない状況だった。このまま搦手でじりじりと追い込めば十分にも思えたが――、それで決着をつけるのは少々寂しく思えた。
「……首のひとつも取れんとは、儂もだいぶ焼きが回ったようだ」
「悔いが残りそうな顔をしてるわね。少しはあなたの土俵に乗ってあげるわよ」
 だから、ラムダはそんな言葉を口にしてしまったのかもしれない。それに、相手の土俵で上回れば、相手も潔く敗北を認めるだろう。少々危険な賭けだが、やる価値は十分にある。
「儂を憐れむか。……ふん、温い言葉を吐いたこと、後悔させてやろうぞ」
 そう言い捨てた男は、腰の鞘に刀を納刀した。――もちろん、降伏などではない。己の全てを託せる技、居合を放とうというのである。
 血まみれの男が発する捨て身の気迫を感じながら、ラムダは身にまとった黒い外套を脱いで、庭に投げ捨てた。
 身軽さを身上とするラムダにとっては、身につけるものは最低限なほうがいい。互いが最善を引き出せる状況となって、2人が機を探り合う。
 柄に手を掛けて構える男から、いかに熾烈な一撃が飛んでくるか。己の最期を覚悟した男が放つ一撃だ。すでに何度か男が放つ居合を見てはいるが……、それらを超える一撃を繰り出してくるように思える。
(「向こうは居合の達人。飛び込むのが危険なのもわかってる。……それでも私だって、自分の目と足に自信はあるもの。それを信じるしかないわね」)
 じり、じり、と微妙に間合いを詰め合う。
 どちらが先に仕掛けるか。先に意を決したのは、ラムダの方だった。
(「――一気に詰める!」)
 一歩、二歩。鋭く地面を蹴り出すたびに、どんどんラムダの身体が加速する。
 その目前で、男は鞘に刃を走らせた。真っ向から突っ込むラムダを斬り落とすべく、刃の先が鞘から抜けていく。
 ラムダは、その刃の角度を見た。筋肉の張りを見た。足先が踏み込む先を見た。そして、男の視線が見つめる先を感じた。
 ――もはや考えてなどいない。ただラムダの経験が、神速の刃が奔る軌道を教えてくれる。その下を掻い潜るように、ラムダは低く低く男に迫る。
 微修正される軌道に応じて体を捻り、僅かな先を撫ぜていく刃を感じた。
 ラムダの身体は、すでに男の懐にある。手に握る黒い刃を寝かせ、下から上に突き上げた。肋骨の隙間に滑り込んでいく刃が、違わず心の臓を貫く。
「……及ばなんだか」
 男は血を大量に吐き出し、ラムダにより掛かるようにして地に膝を付き、そして崩れ落ちた。
 その姿をラムダは静かに見下ろす。男は既に事切れていた。これだけ街を騒がせた首領の最期にしては、あっけないほど。はたして男の憑き物は落ちたのだろうか。
 長い間に形作られた男の凶相からは、なんともわからない。

 煌々と庭を照らしていた月は、いつの間にか雲間に隠れ、その光を弱めている。長かった狂騒の夜は、こうして終わりを告げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月28日


挿絵イラスト