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エフエフガイからシツレイします

#UDCアース #出版部収録リプレイ

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#UDCアース
#出版部収録リプレイ


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「猟兵の皆さま、よくいらしてくだされた。オブリビオン事件である」

 猟兵達の拠点「グリモアベース」
 そこに集まった猟兵たちに、クリーク・クリークフリークス(ブラックウォーメイジ・f02568)は口を開いた。
「場所はUDCアース。邪神や怪生物が日常の裏にうごめく世界である」

 現代日本のような世界の裏側で、名状しがたき邪神や怪物、それに連なる眷属たちが蠢動する世界。
 そこで不可解な連続失踪事件が感知された。
 被害者の共通点を洗い出すと、あるスマートフォン向けゲームの、いわゆる『ガチャ』で特定の演出を引いたユーザーである疑いが濃厚であるという。

「失踪者が出るまで予知できなかったのも、詳しい予知をする暇もなく皆様を送り出すことになるのも残基の至りである。しかし僅かな遅れが新たな被害者を生み出してしまう。これは確実である」

 まずスマートフォン向けのゲームを調査して、裏で糸を引く何者かの足取りを掴んでほしい。方法はそれぞれの猟兵の裁量。各々の得意な方法で操作してほしい。
 ただし。
「もし実際に自分でガチャを回して情報を得ようとするなら、多少の補助はUDCから取り付けてあるが、それ以上の課金は自腹になるである。そこだけはご容赦願いたいである」
 心苦しそうにクリークは付け加えた。

「繰り返しになるであるが、予知が足りずわずかな手がかりだけで皆様を送り出してしまうことになるである。
 さらに拙草は転移の維持のために、現地での行動は尊公たちにすべて頼ってしまうことになる。
 しかし、この事件の裏には大きな闇がある。予知ではないが、そんな予感がするである。
 ――どうか世界を救って欲しいである」
 そう言ってクリークは深々と頭を下げた。


斑鴉
 いつもお世話になっております。斑鴉です。
 今回もUDCアース事件です。
 OPの補足をすると、スマホゲームは『Hate and Go』というタイトルのRPGです。
 オリジナリティあふれる架空のゲームで、実在するアレコレとは一切関係ありません。一切関係ありません。二回言いました。

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『スマホゲーム行方不明事件を追え』

POW   :    マネーパワーでガチャを回しまくり、当たりを引いて囮となる

SPD   :    失踪した人の最後の足取りや、周辺の異常に関して調査を行う

WIZ   :    ゲーム会社の活動内容やゲーム自体について情報を調べる

イラスト:V-7

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

若草・悠理
ついに私の出番が来たようね…… 天才が来たからにはもう安心!この悠理ちゃんに任せなさい!!

イメージするのは常に最強のアタシ。天才に不可能はないのよ、別のメインソシャゲで爆死した事実は忘れたわ。
キャラの絵を書き大成功の後で深夜0時に海辺で画面本体を回し、躍りながらお守りを持ってタップ。職質がなんだこちとら職業悠理ちゃんよ!
後は回す!ただ回す!別ゲーの水着イベントが控えてるだとか、1周年が間近だとか!理屈じゃないのよガチャは!

何度だって繰り返すわ、この天才に不可能の二文字はない!
私の実力をとくと見ておき爆死したああああああ!!



「ついに私の出番が来たようね……」
 若草・悠理(超絶天才独尊残念系女子・f16009)の不敵な笑顔がスマートフォンの黒いモニタに映り込む。
「天才が来たからにはもう安心! この悠理ちゃんに任せなさい!!」

 悠理の行動は迅速だった。
 むさぼるようにUDCが用意した資料やネット上のwiki、攻略サイトを読み込んで、失踪事件に絡んでいるキャラの目星をつける。そのキャラのイラストレーターや声優も少なからず判断基準に含まれたものの、猟兵としての使命と判断力を曇らせたりはしない。
 イメージするのは常に至高の自分。軽々と最高レアリティのキャラを引き寄せ、SNSで謙遜と共に報告する自分自身。別のゲームですでに何度も大爆死したことなど記憶の彼方に吹っ飛んでいる。

 世間ではあまり知られていないが、いわゆる『ガチャ』でほぼ確実に目当てのキャラを引くための方法がある。
 描けば出る。触媒と呼ばれるキャラに関係した物品を用意すれば出る。他のガチャで試し回しをして成功したら回す。精神を統一し、ガチャダンスを踊りながら回す。そして出るまで課金する。

 運命の波の振幅が最大となる深夜0時。目立たないよう海辺に行ってスマホを掲げて踊り狂う悠理の姿を、二人の警察官が遠巻きに眺めている。通報を受けて駆けつけたが、警察官としての使命と生物としての根源的な恐怖がせめぎあい、職務質問に踏み切れないでいる。しかし悩みに悩んだ末に、ついに若い警官が意を決して近付こうとした時、無線で上司から見逃すよう連絡が入った。UDCの工作がぎりぎりで間に合ったのだ。

 そして、運命力が最大になったタイミングで悠理はスマホをタップする。
 いくつかの演出の後に、虹色が眩しいそれまでと違う演出が入る。……しかし来たのは目当てとは違うキャラだ。
「何度だって繰り返すわ、この天才に不可能の二文字はない!」
 ユーベルコード:見慣れた天井(ミナレタテンジョウ)
 重課金モードに変身し、回転力を強化する。捧げるものは自身のガチャ運。
 UDCから支給されていたガチャ代は一瞬で溶けた。
 まず頭をよぎったのは、本命のゲームの夏の水着イベントが来ることだったり、別のゲームで一周年記念イベントが近いことだった。しかし。
「理屈じゃないのよガチャは!」
 ひたすら課金し、スマホ画面をタップする。
「私の実力をとくと見ておき……あああああああ!?」
 と叫ぶ余裕があったのはまだ最初のうちだけだ。次第に無言無表情になり、ハイライトの消えた瞳に演出画面が反射する。無心となった脳裏に今月の食費や光熱費、家賃などの金額が浮かんでは消えていく。
 彼女のユーベルコードは「見慣れた天井」。しかしこのゲームのガチャに天井はない。
 そしてギリギリのギリギリまでつぎ込んだ最後の10連。
 その結果を見て、悠理は叫んだ。
「爆死したああああああ!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
欲しいものは逃がさない!宇宙海賊船長よ!!
わたしが来たからにはもう安心ね!!!

お医者様や雀が来なかったことなど覚えがないわね…


こういうのはタイミング、時間を置いて回して
もっとも良いタイムテーブルを見つけるの

高レアが当たったテーブルで全賭けよ!

さぁ、高レアが単発で!
魔法のカード(クレジットカード)は持ったかしら?

あっ、今年の水着は皇女様でお願いします!


あああああああああああああああ!?
なんで!当たらないの!!
アベル!もうハッキング!ハッキング!使うわよ!
いやああああああああ爆死したあああああああ!!!



「欲しいものは逃がさない! 宇宙海賊船長よ!!」
 UDCが用意した拠点、あるマンションの一室で
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が拳を突き上げる。
「わたしが来たからにはもう安心ね!!!」
 そう言って張る薄い胸の奥に、最近のイベントに登場したマスクの医者キャラや、正月のイベントの属性過多女将キャラを引けなかった過去を押し込みながら。
 今は退こう。退けば、またいつか次のピックアップがやってくるから。そう誓った苦い過去は、今は置いておく。

 ヘスティアもガチャを回して調査する茨の道をあえて選んだ。
 ヘスティアは電脳魔術士。オカルトなどに頼らない。信じるものはデータだけ。
 まずは腰を据えて、時間を置きながら散発的にガチャを回して時間ごとの傾向をデータ化する。タイムテーブルの調査だ。
 かつてあるスマホゲーの解説マンガで「魔力が高揚する時間帯」と紹介されてオカルト扱いされる技法であるが、実は確固とした理屈に基づく手法だ。
 8bitや16bitの家庭用ゲーム機で、状況再現という求める乱数を確実に引く方法がある。乱数が格納されたメモリ番地を、時間というパラメータを操作することで確実に指定する技だ。
 乱数、つまりガチャの結果を時間によってコントロールする。原理は同じだ。重要なのはタイミング。むろん今のゲームシステムは16bit機の頃とは違う。しかしプレーヤーも本気の猟兵だ。決して無謀な話ではない。

 そして導き出された「魔力が高揚する時間帯」は午前2:30。
 ここまでの調査でUDCから支給されたガチャ代は消えている。
 しかしヘスティアの瞳に躊躇いの色はない。
 手にするは魔法の(クレジット)カード。MP(限度額と預金口座)の貯蓄も充分だ。

 仮眠をとってシャワーと夜食を済ませ、準備は万端。
 そしてそのタイミングがやってきた。
「今年の水着はケモ北国の皇女様でお願いします!」
 メインでプレイしているスマホゲームでなにかの願掛けをしながら、ヘスティアはスマホ画面をタップする。
 10連ガチャで、虹演出は驚異の3つ。……しかし、すべて目当てのキャラではなかった。
 その興奮と落胆が、父から受け継いだ無鉄砲と負けず嫌いに火をつける。
 まだ魔力が高まる時間帯は続いている。素早さには自信がある。時間が切れる前にひたすらガチャを回していく。
 しかし、出ない。
「あああああああああああああああ!?」
 ヘスティアの絶叫が深夜のマンションに響き渡った。
「なんで! 当たらないの!! アベル! もうハッキング! ハッキング! 使うわよ!」
 ついにキレて愛用のAI端末に命じてサーバーにハッキングを仕掛ける。これが普通のゲームアプリなら目当てのキャラを引きずり出せたかもしれない。翌月のセールスランキングを滅茶苦茶にして投資家を青ざめさせたかもしれない。
 しかし相手は邪神の息がかかった運営だ。スマホ越しの即席ハッキングなど簡単に弾く。

 そして、魔力が高揚する時間は過ぎ去った。
 それでもヘスティアはガチャを引き続け、やがて日が昇り……

「いやああああああああ爆死したあああああああ!!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【POW】

い、一応、まだ行ったことのない地方や世界に行った時用に保存してた宝石や貴金属とかをちょっと売って資金は確保したけど…そんなに怖いもの…なのかな…?

……花とか、刀の子とかいたら、いいんだけどなぁ…

あ、くっそ!!!!期間限定!?ふざけんな!!!ピックアップしてねぇ!!!

……しゃーねぇ!!なんかまとめサイトでオススメされてる恒常狙うか!

……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!違う!あんたじゃない!!来てくれて嬉しいけどあんたじゃない!!!
…あれ?魔法のカードは…?
コンビニィィィィィィィ!!!!
全力で走るのぉぉぉぉぉぉぉ!!!



 地獄への道は、善意で舗装されている。
 そのUDC職員はそんな言葉を思い出していた。
 眼の前にいる猟兵はアトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)。記憶から失われたものを探して数々の世界を旅する少年だ。
 願わくば、この純粋な少年が道を踏み外すことがありませんように。
 そう願いながら、UDC職員は支給のガチャ代と、アトシュから渡された宝石や貴金属を組織のツテで換金した額を振り込んだクレジットカードをアトシュに渡した。

「……そんなに怖いもの……なのかな……?」
 アトシュはUDCが用意した拠点の一室で、スマートフォン向けのゲームやいわゆる「ガチャ」というものがどういったものか調べていた。今朝は同じ調査に当たっているはずの猟兵の奇声が断続的に聞こえたし、カードを用意してくれたUDC職員の思いつめたような表情も気になる。
「……花とか、刀の子とかいたら、いいんだけどなぁ……」
 そこはUDCアースの誇る一大産業。様々なモチーフを擬人化した華麗美形のキャラたちが活躍するゲームにあふれている。
 調べていくうちに、だいたいのことは飲み込めた。
 さぁ、攻略するべきゲームにとりかかろう。
 どのキャラを狙うべきか、などの情報はすでに共有されている。
 あとのはそのキャラがピックアップされているガチャを……
「あ、くっそ!!!! 期間限定!?ふざけんな!!! ピックアップしてねぇ!!!」
 つい本性が漏れて、荒い言葉が口からでてくる。
「……しゃーねぇ!! なんかまとめサイトでオススメされてる恒常狙うか!」
 賭け事の世界において、ビギナーズラックという言葉はどんな分野にもある。最初の10連で早速の虹演出がきた。しかし……
「……あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!! 違う! あんたじゃない!! 来てくれて嬉しいけどあんたじゃない!!!」
 すり抜け現象。同レアの、しかし狙っていたのと別のキャラが来る。
 だが、これは運気の波が来ている。あるいは自分には特殊な才能か幸運がある。
 そう確信してアトシュは次々とガチャを回していく。
 惜しいと思うケースはいくつもあった。しかし目当ての子はでない。
「……あれ? 課金できない。魔法のカードは……?」
 そしてふと気がつくと、用意した資金はすべて底をついていた。
 もう少しなのに、もう少しなのに! もどかしさにうずく脳裏に、誰かがなにかささやいた。そんな気がした。
 "手元の現金をコンビニに持っていけば、課金用のカードが買えるよ"
「コンビニィィィィィィィ!!!!」
 弾かれたようにアトシュは立ち上がる。
「全力で走るのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 その声を遠くで聞いて、魔法のカードを用意したUDC職員はそっと目を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブリッツ・エレクトロダンス
ガチャ、ガチャなあ。
生憎、ガチャじゃなくても…『狙おうとすると』逆にドロップが渋くなる―――物欲センサーの存在を実感してる俺としてはあまり手を出したくない奴だが。

とりあえず支給されたガチャ予算の範囲だけで回すか…それ以上は欲張らねえ。
で、ガチャを回す前に…出来るだけ効果のありそうなガチャの"オカルト"を抑えておくか…(情報収集中…)

…ひだ…左乳首教…!?
いやいやいやいやガチャの"オカルト"もここまで来るとやりすぎだろ…
だが予算的な都合で「出るまで回し続ける」のは無理だ。

…やるしかねえ、左乳首教。



「ガチャ、ガチャなあ」
 UDCが彼の調査のために用意した個室で。
 ブリッツ・エレクトロダンス(DJ.Blitz・f01017)は苦い声を漏らしていた。
 脳裏によぎるのは「物欲センサー」という言葉。なににおいても、狙ったものに限って出ないという現象だ。
 もちろん、いわゆるマーフィーの法則というもので、欲しいと強く念じるからこそ外れた時の失望感が大きく、そのせいで本質的に平等である確率以上に出現率が下がったと感じてしまう錯覚である。
 だが一万回も試行するのでないかぎり、確率は偏るもの。これもまた真である。

「とりあえず支給されたガチャ予算の範囲だけで回すか…それ以上は欲張らねえ」
 固く決意したブリッツは、ガチャを回す前に下準備にとジンクス的な手法をネットで広く調査する。
 そう時間はかからずに、有象無象の情報が山程でてくる。古いものや追従実験のないものは省いていき、逆に誰でも知っているようなメジャーすぎるものも候補から捨て、絞り込むうちに見つけ出したのが……
「……ひだ……左乳首教……!?」
 一番最初は誰がどんな理由で試してみようと思ったのか甚だ興味は尽きないが、要するに、ガチャでスマホ画面をタップする時に指ではなく左の乳首を使うと狙ったキャラが引けるというジンクスだ。
「いやいやいやいやガチャの"オカルト"もここまで来るとやりすぎだろ……」
 思わずかすれた声がでる。
 しかし予算の問題で「出るまで回す」ことはできない。
 黙考の末に彼は苦渋の決断を下す。
「……やるしかねえか、左乳首教」

 ガチャ直前の画面まで操作して、羽織った上着をずらして上半身を露出する。
(俺、なにやってんだ?)
 一瞬だけ我に返るが、ここまできてあとには引けない。
 教義に従い、左の乳首で画面をタップする。
 少数回の試行では確率は偏るもの。しかし本質的に確率は平等。
 宝くじでごく少数の高額当選者がたしかに存在する一方で、その何万倍もの多くの庶民が涙を飲んでいる。
 目当ての子は出ないまま、支給された資金は尽きた。
 しかしこんな真似までして、ここで終わるわけにはいかない。追い課金あるのみ――
 ここで、今度こそ本当に、ブリッツは我に返った。
 彼がそれに気づいたのは、ネコ科であるクロヒョウのキマイラだったからかもしれないし、決められた額以上の課金は絶対しないと固く決めていたせいかもしれない。
 ガチャのBGMに紛れて、人間の可聴域から外れた音がスマホから流れている。これに込められたメッセージがサブリミナル的にユーザーを煽り立て、さらなる爆死に追い立てているのだろう。
 他の猟兵たちが爆死の道を突っ走ったのは、この音に無意識に誘導されたか、そもそも根っからのガチャ廃だったせいか。
 解析には専門の機械が必要だ。ブリッツは上着を直すと、状態を維持したままUDCに分析を依頼した。

 そして半日とかからずに結果は出た。
 不可聴域の音に込められたメッセージは「もっと回せ。お前は運命に愛されている」と、困ったらあるコンビニに来い、という内容だった。
 そこは奇しくもつい先程、同じ事件を調査している猟兵が走っていったコンビニだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『深夜のコンビニ調査』

POW   :    じっくり時間をかけての張り込み調査

SPD   :    客として店内潜入。内部確認や他の客の調査

WIZ   :    品揃えや客層等、店に関する情報収集

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


サブリミナル音声で誘導されている、小さなコンビニ。
大手フランチャイズではなく、個人経営の店だ。
きっとここに事件の鍵がある。
猟兵たちは調査を開始した。
ブリッツ・エレクトロダンス
わざわざサブリミナルまで仕込んで…運命に愛されてたら苦労しねえよ。
それにしたってなんで個人経営のコンビニを指定して…まあいい、実際に行かねえと何も分からねえし行くか。

一番怪しいのはやっぱりPOSAカードコーナー、だよなあ。
スマホゲーの課金といえばスマホプラットフォーム用のPOSAカードが主流だし…
(俺がメインで買うのはインターネット上でよく使われてるウェッブなカネのPOSAカードだが)

それと客層も一応確認しておくぜ。
イベントを全力疾走してる重課金兵とかいそうな…気がするぜ…!



「わざわざサブリミナルまで仕込んで……運命に愛されてたら苦労しねえよ」
 苦い口調でつぶやくのは、ブリッツ・エレクトロダンス(DJ.Blitz・f01017)
 26年の人生で、さまざまなことを経験してきたのだろう。
 もちろん辛いことや苦しいことも多かったはずだ。しかし、それらを正しく乗り越えてきた。その自負あっての言葉だろう。
「それにしたってなんで個人経営のコンビニを指定して……まあいい」
 実際に足を運ばないと始まらない。そう判断してブリッツは特定されたコンビニに向かった。

『Bald Maker』
 それがその薄汚れたコンビニの名前だった。
 普通のコンビニと比べて明らかに照明が薄い店内に躊躇するも、意を決して入る。
「一番怪しいのはやっぱりPOSAカードコーナー、だよなあ」
 まずチェックするのは、ネットやスマホ決済などに使用する電子マネーを購入するカードのコーナーだ。ちなみにブリッツが愛用するのは携帯電話通話サービス会社の子会社が運営する、20年の歴史もつブランドのものだ。
 目当てのコーナーはすぐに見つかった。普通のコンビニなら雑誌やコピー機などを置いてあるスペースをすべて撤去してPOSAカードだけを並べているのだから見落としようがない。ただATMだけは残っている。その異様な光景にブリッツは金色の瞳を丸くする。さらに異様なのは、それだけのスペースを取って並べてあるカードが半分以上売り切れていることだ。

 客層もチェックする予定だったが、帽子とサングラスを目深にかぶったレジ打ち以外に人気はなかった。
 カードを選ぶ振りをしてしばらく待ってみるが、来店する者はいない。
 タイミングが悪かったか……と一度捜査を切り上げようとした時に、頭をかきむしりながら泡でも吹きそうな勢いで男が一人駆け込んでくる。
 男はブリッツをはねのけるのように課金カードを何枚も掴むと、金額も確認せずにレジに持っていく。

 やはり、ここにはなにかある。
 そう確信して、ブリッツは静かに店を抜け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
……は!!
イヤイヤイヤ、これ調査だよな!?
ここでしっかりしねぇと取り返しがつかねぇよ!!

えーと、確か個人経営なんだっけか?
…課金なら大手行けや…
何故わざわざここを指定すんだよ、よくよく考えればおかしすぎだろ…

客としてコソコソしてますか…
カード買いに来た人の様子とかをお菓子のコーナーで買い物するフリして見てよっと

あれ?そういえばUDCアースでオレくらいの年齢って、ほどうとかいうやつに引っかかる危険が…て、ヤバ!?逃げるか!



「……は!! イヤイヤイヤ、これ調査だよな!?」
 アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)が我に返ったのは、財布の中身をすべて費やした課金カードを握りしめて拠点に戻る途中のことだった。
「ここでしっかりしねぇと取り返しがつかねぇよ!!」
 本当に適当に掴んでレジに持っていったせいで、中には彼の環境では使用できない課金カードも混ざっていたりする。アトシュは大きく天を仰いだ。
 スマホで自分が狂乱していた時に得られた情報にアクセスする。彼が走っていったコンビニこそ、サブリミナル音声で誘導している場所だった。

「えーと、確か個人経営なんだっけか?」
 一度拠点に戻って情報を整理することにする。
「課金なら大手行けや……何故わざわざここを指定すんだよ。よくよく考えればおかしすぎだろ……」
 そう、おかしいのだ。
 ネットで簡単に分かる範囲で調べると、本当に綺麗さっぱりそのコンビニに関する情報がでてこない。名前を検索してもヒットするものはないし、地図アプリでも空き地扱いになっている。
 UDCに細かい調査を依頼して、アトシュは再びそのコンビニに戻ることにした。

 先程ほど半狂乱で課金カードを買い漁った人物が正気に戻った顔で再び入店することに若干の不安を覚えたが、帽子とサングラスを目深につけた店員はまったく反応しなかった。
 お菓子コーナーで買い物をする振りをしつつ店内を観察していると、ふいにある事に気づく。
 菓子は指が汚れないものしかないし、酒や清涼飲料水は豊富だが弁当を置いていない。髭剃りや下着などの日用品もない。モバイルバッテリー類は多いが乾電池はない。そういった視点から改めて品揃えを確認すると、違和感の正体がわかる。
 まるでスマホゲームのお供になるようなものしか売っていないのだ。

 ひとまず、ここを出よう。
 静かにドアに向かおうとすると、ガラス壁の向こうに警官がいる。
(あれ? そういえばUDCアースでオレくらいの年齢って、ほどうとかいうやつに引っかかる危険が……)
 冷や汗が額を伝う。UDCに手を回してもらえばすぐに開放されるだろうが、猟兵がこのコンビニに目をつけていることを「敵」に気付かれるのは好ましくない。
(ヤバ!? 逃げるか!)
 と覚悟を決めるが、警官はまるでアトシュが見えていないように素通りしていく。もう少し言えば、まるでこんなところにコンビニなどないような足取りで去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
ここが敵(運営)のアジトなのかしら?
やっぱり、今時天井がない運営なんて敵ね!
あっ、次のイベ三英傑実装お願いします(手のひらドリル)


いけそうなら姿を消してスタッフルームとか確認したいとこだけど…
無理そうなら諦めて普通にお客として潜入ね

…このATM最近流行のパスワード盗み見るカメラとかないわよね?



海賊として奪われたなら奪い返すが流儀よ
地図アプリで空き地なら本当に空き地にしてもいいわよね…うふふふ



「ここがあの敵(運営)のアジトなのかしら?」
 電柱の陰からコンビニの暗い照明を見つめるのは、先程大爆死させられた
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)だ。
「やっぱり、今時天井がない運営なんて敵ね!」
 その思いを口に出してから、ふと付け加える。
「あっ、次のイベ三英傑実装お願いします」

 三英傑とは日本では一般に天下統一に大きな役割を果たした織田、豊臣、徳川の三人の君主のことを指す。折しもヘスティアがプレイしているゲームではもうすぐに時代劇にまつわるイベントが開催予定だ。
 彼女の言葉が示す通り、ゲーム運営とユーザーは一方通行の関係ではない。お互いに譲れない線を意識しながら双方で切磋琢磨していくのが本来の姿。課金の対価として運営が用意するものはただの電子データではなく「満足」である。
 だからこそ、この歪んだ搾取を正さねばならない。

 同時にUDCからも詳しい調査の報告が入る。
 スマホゲーム行方不明に、猟兵の調査によって謎のコンビニという新しいキーワードが加わったため新しい事件のつながりが見えてきた。
 行方不明者の大半が、姿を消す前にこの謎のコンビニ近辺で目撃されている。中には高速鉄道や夜行バスで遠くから来た者も少なくないそうだ。

 ユーベルコード:オプティカル・カモフラージュ(オプティカル・カモフラージュ)
 光学迷彩によって透明になったヘスティアは、他の客が自動ドアを開けるタイミングに紛れて店内に入る。うまくいけば、気づかれずにスタッフルームなどに侵入できるかもしれない。しかし。
「……いらっしゃいませ」
 帽子とサングラスを深くかぶった店員が低くつぶやく。
 サングラス越しではあるが、確かに一瞬、目が合った。
 開き直って迷彩を解除しようとも考えたが、疲労は我慢してもうしばらく維持しておく。
 店員にはバレているかもしれないが、一般人はまずこの透明化を見破れない。
 コーナーに残されているATMに、パスワードを盗撮するカメラでもついているのではないか。そう疑って、客がATMを使用するのに合わせ不審な通信がないか電脳魔術士としての感覚を研ぎ澄ます。
 しかし、すぐに違うと分かった。
 パスワードなど盗撮せずとも、客は自主的に何度でも限度額まで預金をおろして課金につぎこむのだから。わざわざ盗撮する必要などないのだ。

(地図アプリで空き地なら、本当に空き地にしてもいいわよね……)
 先程の課金で大爆死した、つまり運営に奪われた金額を思い返す。海賊として、奪われたのなら奪い返すのが流儀。まだ事件の詳細はわかっていないが、このコンビニが深く関わっているのは間違いない。
 ならば現金ではなく、このコンビニを破壊し尽くすことで「満足」を返してもらおう。
(うふふふ……)
 ヘスティアが光学迷彩を解除しようとした時、新しい客がコンビニに走り込んでくる。
 半狂乱で掴みかからん勢いで店員に向かって怒鳴りつけた。
「おい、アレを売ってくれ! 知ってるんだからな!」
「さて、なんのことでしょう」
 露骨にとぼける店員の胸ぐらを男が掴む。
「知ってるんだからな! Hateのゲームのキャラが教えてくれた! ここで売ってくれるんだろう、あの魔法のカードを!」
 顔を赤くして男は続ける。
「どんなゲームのどんなガチャででも一発で確実に欲しいキャラを引ける特別な課金カードが、このコンビニにあるんだろう!?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

若草・悠理
よっし天才到着!
ここは真面目に調査しましょう、あくまで依頼は依頼。猟兵活動も大事なのよ。

店に入ったら店員、客、品揃えと余すところなくチラ見するわ!
何もない場所に誘導なんてするはずないものね、さっすが悠理ちゃん冴えてるぜぃ。

あそこにあるのは!コンビニコラボした唐揚げとクリアファイル!
クリアファイルは即確保、ついでにお茶も買って……すみませーん唐揚げ1つお願いしまーす。



「よっし天才到着!」
 若草・悠理(超絶天才独尊残念系女子・f16009)がそのコンビニに潜入していたのは、店員に男が詰め寄る少し前のことになる。
「ここは真面目に調査しましょう、あくまで依頼は依頼。猟兵活動も大事なのよ」
 海岸での爆死のことはもう忘れた。大事なのは引けなかったSSRより、次のピックアップキャラである。

 普通の客を装って、ざっと店内を見回す。
 あんな手の混んだ誘導をしてきたのだ、ここが普通のコンビニのはずがない。そしてすぐ違和感に気づく。
(さっすが悠理ちゃん冴えてるぜぃ)
 感じた違和感はやはり、おおむね他の皆と同じものだった。並んでいる商品はスマホゲームのお供になりそうなものばかりで、コンビニにありがちな日用品は一切置いていない。店員は帽子とサングラスをふかく掛けた男が一人。検品やフライヤー調理などもせず、レジに張り付いたまま動かない。
 そして客は少ない。たまに入ってきた客は課金カードを掴んでレジに持っていき、すぐに去っていく。

 そんな異様な空間の中にあっても、悠理は自分のペースを乱さない。これが「自称」だけではなく他人からも時々ある意味本当に「天才」と密かに思われるゆえんかもしれない。
 スマホゲームのお供一色に染まる店内から目ざとく、本来なら他の大手コンビニとコラボのはずのクリアファイルやゲームをイメージした特性フレーバーの唐揚げを見つけ出す。他店ではコラボ当日の昼前には完売していたクリアファイルをすぐ確保。もちろん転売用に複数購入するようなはしたない真似を天才がするはずもない。ついでにペットボトルのお茶も取って、レジに向かおうとして……

 顔を真っ赤にした男の客が、レジの店員に詰め寄ったのはその時だった。
「なぁ、あるんだろう!? 噂の通りここの店の課金カードで課金しないと出ない『ダ・ヴィーン』ちゃんを引いて、スキルマしたら特別ボイスで教えてくれたんだ! ここのコンビニには、どんなゲームのどんなガチャでも一発で目当てのキャラを引ける課金カードを売ってるんだろう!?」
「ええ、もちろんございます」
 店員がうなずく。
「ですが、お金では販売しておりません。別の代償をいただきます。ご存知ですよね?」
「知っているとも! 髪だろう!?」
「髪では足りません」
「わかってるよ! 毛根なんだろう!?」
 男性客が叫び、自身の長い頭髪を掴んで、痛そうな音を出しながら。
 思い切り引き抜いた。
「これでいいか!?」
「まだ足りませんね」
「だったら……!」
 無理やり引き抜いた毛根の跡から血が垂れる頭部に残った髪を男が掴んだその時。

 ユーベルコード:いつもの光景(ハイシュツリツロクワリ)
 多くのユーザーが嫌というほど見慣れたガチャ低レア排出演出と共に、悠理が客のすぐ目の前に出現した。
 絶望感と諦観、そして実家のような安心感の演出を現実で目の当たりにして、半狂乱になっていた男が呆然と手を頭髪から離す。本来なら味方の前にしかテレポートできないユーベルコードだ。だから客の男は猟兵の味方なのだろう。もしもう少しだけ悠理の行動が遅かったら、闇に落ちていたかもしれないが。

「すみませーん唐揚げ1つお願いしまーす」
 時が止まったレジ前で、クリアファイルとお茶を置いていつもと変わらない明るい声をかける悠理。こういった行動を計算も打算も抜きでできるのが、自称とは多少意味合いが違うかもしれないが、間違いなく天才の証なのだろう。

「……もういいか」
 店員は深いため息とともに声を漏らした。
「こんなに速く猟兵に嗅ぎつけられるとは思いませんでした。もっと多くの人間が道を踏み外して闇に落ちるのを見たかったのに。このガチャ廃どもが」
 そして深く被っていた帽子とサングラスを外すと、現れたのは無機質な宝石のような輝き。オブリビオンとしての本性を表した店員が見えない口を開く。
「いいでしょう。ここを知る猟兵たちを皆殺しにして、新しい場所に地下のサーバーを移して、また新しいゲームで誰もが引きたくなるようなガチャを新しく作りましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『髪の毛ナイ神父』

POW   :    夜にささやく者
【頭部超空冷モード】に変形し、自身の【育毛可能性】を代償に、自身の【絶望に導くトーク力】を強化する。
SPD   :    嘲る邪神
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【毛のない頭部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    輝くトラペゾハゲロン
自身からレベルm半径内の無機物を【輝くトラペゾハゲロン】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:天和

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ボーリャ・コータスです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオン――髪の毛ナイ神父がレジの下から取り出した赤い宝石、偏方二十四面体。別名輝くトラペゾハゲロンを高くかざすと、コンビニだった室内の風景が一変。ただの広い朽ちた空き家に戻った。
 髪の毛ナイ神父は無機質な視線を猟兵たちに向けてくる。もしオブリビオンに敗北……取り逃がすようなことがあれば、また同じ陰謀で不幸な人を増やしていくだろう。そうなる前に、ここで決着を――
若草・悠理
結局世の中うまい話はないのよね、つまり信じられるものは!この悠理ちゃんのみ!信徒になれ!

片手剣をぐるりと回し、突撃突撃!
アタシが精神攻撃に耐性なんかあるわけないわ!てか必要ないし!だって天才だし効かないし余裕だし!効かないけど全力で止めるわ、いや効かないんだけどね???

つまりは先手必勝、やられる前にやる!直線よりも早い弧を描いて近づき、無駄に3次元軌道で回転切り!
この一撃に全てをかけるわ!わかる?結果として何百連しようとも気分は常に人生をかけた単発ガチャなのよ!わかれ!



「結局世の中うまい話はないのよね、つまり信じられるものは! この悠理ちゃんのみ!」
 オブリビオンが偽装を解除した廃屋の中。
 若草・悠理(超絶天才独尊残念系女子・f16009)は、あくまでもペースを乱さずそう宣言する。事態を飲み込めないなりになんとなく分かるのだろう。間一髪で悠理に救われた男が、奇跡の顕現を見るような目で彼女を見上げ……
「信徒になれ!」
 続く一言で、なんか微妙な表情になってゆっくりと建物から出ていった。もちろん男は事件の成否に関わらず速やかにUDCに保護されて、治療と記憶洗浄を受けることになる。しかし彼はこれから時折、謎の女性の自信に満ちた笑みが不思議な感情と共に脳裏にフラッシュバックすることになるかもしれない。

 視界の端で男を見送りながら、悠理は愛用のルーンソードを時限の鞘から引き放つ。
 先手必勝。
 だってこいつ、明らかに精神攻撃とかしてくるやつだ。天才の眼は一目で見切る。
(アタシが精神攻撃に耐性なんかあるわけないわ! てか必要ないし!)
 心の中で一筋の汗が垂れる。
(だって天才だし効かないし余裕だし! 効かないけど全力で止めるわ、いや効かないんだけどね???)
 もちろん分かっているからこその判断だ。

 そしてオブリビオン――髪の毛ナイ神父も様々な人間の心を弄び、狂わせてきた達人である。猟兵だろうと目の前の18歳の小娘の思うことなど簡単に見抜く。どんな生い立ちをしてきたか。どんな無理を重ね、心にひずみを重ねてきたか。だから、どういう言葉をかければ心の芯を崩すことができるのか。
「どうです、取引しませんか。ガチャが思い通りになる課金カードと引き換えに……」
 神父の頭部が涼しげに光る。
 ユーベルコード:夜にささやく者
 さまざまな人間を誘惑し、堕落させ、破滅に導いてきた甘い言葉の毒だ。
 しかし。
「この一撃に全てをかけるわ!」
 音速の言葉より速く悠理が動く。
 ユーベルコード:見慣れた天井(ミナレタテンジョウ)
 課金を縛る心のリミッターを外し、回転力を上げる。むろん上げるのはガチャの回転力ではない。遠心力を最大限に利用した直線よりも早い弧を描いての3次元軌道回転切り。
「わかる? 結果として何百連しようとも、気分は常に人生をかけた単発ガチャなのよ!」
 独楽のように回転しながら無数の斬撃が放たれる。しかし彼女の『ガチャ』という認識が、ユーベルコードの代償であるガチャ運の低下を引きずり寄せて決定的な一撃がでない。
 ――これなら、普通に殴り殺すか。
 トラペゾハゲロンを握ったオブリビオンの存在しない眼が光る。
 しかし、神父が致命的な右ストレートを打つより速く。
 課金し続けていればいつかは引ける。悠理の剣から3つの剣閃が奇跡のように同時に放たれ、深々とカソックの下の胴体をえぐりぬいた。
「わかれ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘスティア・イクテュス
いい事を聞いたわ
ふーん、地下のサーバーね。
直接ハッキングすれば使った分全部戻ってくるわよね?

いいわ、取り戻した後に更地にしてあげるわ

インドの神の宝具のように…!



ティターニアを全開にして移動しながら
ミスティルテインで射撃

というか求めるのが毛根ってなによ
このハゲ!お父様みたいにハゲ!脱毛剤と育毛剤入れ替えるわよ!


止めは真上から真下に向かっての砲撃!
返してきてもお互いの砲撃で競り合うだけだしその間動きは止まるわよね!
大地にそのまま押しつぶれ……


地下のサーバー大丈夫よねぇ?ねぇ?
いやああああああああああああああああ!!!???



 ガチャなんか、回さなければよかった。
 どんなキャラでも引けるカード欲しさに、あの店員にそそのかされるまま、様々なものを差し出した。特に毛根とか。毛根とか。あと毛根とか。
 その結果、この不思議な空間に閉じ込められた。光もなければ音もない空間。まるで宇宙を漂っているようだ。
 もう何日も、なんの刺激も受けていない。遠からず発狂するだろう。
 だが発狂する前に死ぬ。この少しずつ少しずつ生命力を奪われていく感じが、そろそろ生命の最も深いところに届く。そんな確信があった。
 もうすぐ。もうすぐだ。


「ふーん、地下のサーバーね。いい事を聞いたわ」
 ガチャの闇に溶けていった金額を思い返しながら。
 ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はそうつぶやいた。
「直接ハッキングすれば使った分全部戻ってくるわよね?」

 手傷を負って後退するオブリビオンを見ながら、武装を起動する。
 背中には妖精の羽をかたどった白いジェットパック。名をティターニア。母から受け継いだ歴史ある機体だ。もちろん整備に手抜かりなどあるはずもない。そしてティターニアから伸びる有線を可変式ビームライフル『ミスティルテイン』に接続。動力を同期する。
「いいわ、取り戻した後に更地にしてあげるわ。インドの神の宝具のように……!」
 世界に不要な邪悪なものは輪廻も許さず消滅させる。滅びた後に骸の海から這い上がってきた邪悪を、完全に世界から消し去る。その決意を薄い胸に強く思って。

 ユーベルコード:ミスティルテイン(長距離砲撃モード)(ミスティルテイン・ブラストモード)
 まず手始めに邪魔くさい屋根をビームで全部ふっ飛ばす。
 仲間の猟兵が敵から離れたタイミングでティターニアで飛び上がり、バーニアで縦横無尽に天地無尽に立体機動を行いながら、針穴を射抜くような精密さでミスティルテインによるビーム射撃を打ち込んでいく。
「というか求めるのが毛根ってなによ」
 髪の毛ナイ神父の視線がヘスティアを捉える。だが遅い。
「このハゲ! お父様みたいにハゲ! 脱毛剤と育毛剤入れ替えるわよ!」
「はげてねぇし!」
 ユーベルコード:嘲る邪神
 オブリビオンは放たれた光線を輝く頭部で乱反射してダメージを無効化しようとする。
 しかしこのユーベルコードは発動に完全な脱力状態を必要とする。先程体を深くえぐられたダメージがそれを許さない。
 何発もの光条がカソックを貫いていく。
「止めよ!」
 ヘスティアは持って生まれた自前の翼のようにティターニアを駆って上空を舞い、オブリビオンの真上からミスティルテインを乱射する。
「はげてねぇし!」
 髪の毛ナイ神父も脱力状態を取り戻して何発かは打ち返すものの、あまりに劣勢。
「大地にそのまま押しつぶれろ……!」
 そして、ヘスティアが放ったその一撃が深々と地を穿ち、ひび割れが広がって、ガラスが割れるようにオブリビオンごと廃屋の床が崩落していった。
 あることを思い出し、その様子を見るヘスティアの顔から血が引いていく。
「地下のサーバー大丈夫よねぇ? ねぇ?」
 応える者は誰もいない。
「いやああああああああああああああああ!!!???」


 神父にそそのかされ、持てるものをすべて差し出し、幽閉されてサーバーの動力のために少しずつ生命力を奪われていた失踪者たち。
 最初の一人が生命力を奪いつくされる直前に落ちてきた瓦礫でサーバーが潰され、なんとか死を免れた。もし速やかに相応の設備を持つ施設で治療を受ければ、最終的に一命を取り留めることも不可能ではないかもしれない。

 しかしまだオブリビオンは生存している。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
地下のサーバーはいいとして…
テメェ、オレのガチャ代返せやぁぁぁぁぁぁ!!!

【暴走術式・天災】を発動させて、最大火力でぶん殴る!!!

この一撃は爆死の分!
お次は爆死した失踪者さん達の分!
(ここはアドリブOKです)
そして…最後にオレのガチャ代の分!!!

ガチャは悪い文明。はっきりわかるんだな!(白目)


ブリッツ・エレクトロダンス
【SPD】おい待て。俺を一緒くたにガチャ廃人認定すんじゃねえ。
俺はそこまで廃課金してねえからな?
いやまあ、別の意味で廃課金してるといえばしてるが…
(ハードウェアや周辺機器に金をかける事でプレイをさらに快適にする方面での課金者である。
 大手メーカーの「電動工具用バッテリー」にユニバーサルな端子のアダプターを取り付けて大容量のモバイルバッテリーとして使ったりとか)

ちなみに俺の実弾(ガチャよさん)はもうゼロだ。これ以上実弾(よさん)を追加する気はねえぞ。
代わりに別の実弾(じつだん)をくれてやる…!
(素早く自動拳銃を抜き、発砲する。)



「地下のサーバーはいいとして……」
 崩落した床の縁に立って、土煙に遮られる地下を見つめる男がいる。
 アトシュ・スカーレット(銀目の放浪者・f00811)だ。
 彼もコンビニの現場を伺っていたため、狂乱した客と店員の会話はすべて直接耳にしていた。
 そして、自分が確率を悪意を持って操作された、優良誤認表示や有利誤認表示まみれの悪辣なガチャに爆死させられたのはそこからすぐに理解できた。
「テメェ、オレのガチャ代返せやぁぁぁぁぁぁ!!!」
 怒りとも慟哭ともとれる叫びが廃屋だった場所に響いた。

 アトシュの反対側の縁から、同じく見えない地下を見下ろす猟兵がいる。
「おい待て。俺を一緒くたにガチャ廃人認定すんじゃねえ」
 ブリッツ・エレクトロダンス(DJ.Blitz・f01017)だ。
「俺はそこまで廃課金してねえからな?」
 あの場に居合わせた猟兵の誰かがとっさにマイクを起動しており、オブリビオン店員の言葉はリアルタイムで猟兵たちに共有されていた。
「いやまあ、別の意味で廃課金してるといえばしてるが……」
 EDM、つまり電子音によるダンスミュージックを作るDJとしてハードウェア方面への造詣が深く、平均的なスマートフォンを40分で12回充電できる電動工具用のバッテリー導入など、環境を整えて快適にプレイすることに熱意を注ぐタイプだ。
 それだけに調査によるガチャの傷は他のガチャ廃に比べるとまだ浅い。しかし笑って済ましてやれる範囲はとうに超えている。

 土埃のぼんやりとして視界の向こうで人型のなにかが十字を切るような冒涜的な動作をすると、粉塵爆発のように周囲に舞う埃が一斉に燃え上がって消失する。
 急にクリアになった視界に現れたのはオブリビオン、輝く頭部の髪の毛ナイ神父だ。すでに仲間が深手を負わせているが、戦意は健在。そのあたりの瓦礫を拾い上げ、輝くトラペゾハゲロンに錬成する。

「もっと、もっと毛根をすり減らしてガチャを回せばみんな幸せになれるというのに!」
 髪の毛ナイ神父が掲げるトラペゾハゲロンから、見下ろす猟兵たちに向かって幾線もの光条が走る。効果は定かではないが、食らってやる義理もない。というか喰らいたくない。特に頭部には。
「この一撃は爆死の分!」
 怪盗がレーザー警報機をすり抜けるように放たれるビームを高速機動でかいくぐりながら、アトシュが跳んだ。そして毛根ではなく寿命をすり減らしながら体に宿す天災の付与術をあえて暴走させて、拳に込めて神父の頭部に叩き込む。
 ユーベルコード:暴走術式・天災(エルガー・カタストローフェ)
「お次は爆死した仲間や失踪者さん達の分!」
 そして追撃がさらに深く神父の頭部に突き刺さる。

 もちろんブリッツも観戦だけで済ます気はない。
「ちなみに俺の実弾はもうゼロだ。これ以上実弾を追加する気はねえぞ」
 実弾。つまり使える現金のことだ。
「代わりに別の実弾をくれてやる……!」
 あえてユーベルコードは使わない。愛用のピエトロ社製オートマチックピストル、ピューマ8045F。それが代わりに牙を放った。

「そして……最後にオレのガチャ代の分!!!」
 アトシュの最後の一撃。そしてブリッツの銃弾がトラペゾハゲロンを握った拳でカウンターを放とうともがく神父を同時に貫く。
「世界に、心に闇がある限り、そして薄毛がある限り、私は必ず帰還するだろう!」
 その叫びを残して、髪の毛ナイ神父は溶けるように消滅した。
 深い傷を残しながらも、事件はこうして解決を迎えた。

 すぐにUDCの事後処理班が急行し、衰弱している行方不明者を一人ずつ救助していく。その数およそ……途中で数えるのが面倒になり、めっちゃ多いなでFAとする。
「ガチャは悪い文明。はっきりわかるんだな!」
 自身を含め、様々な方角に刺さる言葉がついアトシュの口から漏れる。
 酒、タバコ、ギャンブル、性売買、薬物など。一面において悪い文明と言われることもある諸々も、何度も時の権力者たちに禁止されようとして、まだ根絶された例はない。そしてまた今日もガチャユーザーの悲鳴と歓声が木霊する。ガチャの深い闇……オブリビオンとは違う危険性に、人類はどう付き合っていくのか。それはまた別の話である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月11日


挿絵イラスト