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死者に手向けを、生者に希望を

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●絶望に燃える村
 夜の闇を切り裂いて、轟々と燃え盛る炎の赤が世界を塗り潰している。
 村中の家という家から火の手が上がり、人々は逃げ惑い、泣き叫び、あるいは炎に巻かれてもがき苦しみながら命を落とした。
 その中で、一人の女が打ちひしがれた様子で佇んでいる。
「なぜですか。なぜ、このような……」
 震えた声を絞り出すように、彼女はつぶやいた。
「私たちはこれまで、ただの一度も逆らわなかったではありませんか。どれだけ重税を課せられようとも黙って支払ってきた。生贄を要求されても、素直に従った。それなのに、なぜ今になって……」
「だからこそだよ」
 その声に答えたのは、まさしく闇そのものであるかのような漆黒の鎧に身を包んだ騎士であった。
 着込んだ甲冑は頭部まで完全に覆い隠しており、その表情をうかがい知ることはできない。しかし、その声色は若いというよりも幼いという形容の方がふさわしいような、そんな印象を与えた。
「君たちは従順だった。従順すぎるほどに従順だった。でもね、違うんだ。僕が求めていたのはそうじゃない。僕はね、君たちにもっと反抗してほしかったんだよ」
「……なんですって?」
「負けるとわかっていながら反逆してほしかった。無駄と理解しながら抵抗してほしかった。どうしようもない敗北を突き付けられてなお、それでもまだ負けていないと歯を食いしばってほしかった。そうやって必死になっている君たちをこそ、僕は無慈悲に蹂躙したかったんだよ」
 あまりにも無邪気に、騎士は言った。
 驚愕と絶望を顔に張り付けた女を一瞥し、さもつまらなそうに騎士は続ける。
「それなのにさ、何をしても君たちは黙って従うばかり。つまんないよね。いい加減、もう飽きちゃった」
 騎士はゆっくりと、見せつけるようにその手に持った剣を振り上げる。
 歪んだ刀身に映った女の頬を、涙が伝う。
「だからこの村はもうおしまい」
 刃は振り下ろされ、後には物言わぬ骸だけが残された。

●グリモアベースにて
「じ、事件を、予知した」
 バレン・オース(守護騎士・f02851)は、どもりながらも自らの予知の内容を語り始めた。
「場所はダークセイヴァーの世界の、人口200人にも満たない小さな村だ。そこで、ヴァンパイアの使途である異端の騎士による虐殺が起こる。……皆殺しだ。大人も、子供も、老人も赤子も区別なく、ただの一人の例外もない。君達には先んじてその村へ向かい、やってくる異端の騎士を撃退し、村を救ってほしい」
 異端の騎士の数は1体。平均的な成人男性に比べるとやや小柄で、力よりは速さと技術で戦うタイプだ。片手剣と盾を巧みに操り、攻防共に隙が少ない。また、炎を操る力を持っているようで、距離を取ったとて油断はできないだろう。
 集まった猟兵達の間に緊張が走る。
「敵がいつ、どこからやってくるのか。残念ながらその具体的な時間と場所までは、予知できなかった。ただし、その村には定期的に異端の騎士が訪れては、貢物や……生贄ショーを、要求しているらしい。だから、村人達は騎士がいつどこから来るのかを知っている。うまく聞き出すことができれば、迎撃が有利になるだろう」
 生贄ショーとは何かと、一人の猟兵が問う。
「村の中から一人、生贄となる人間を投票で選び出し、それを村人達自らの手で、殺させるのだ。異端の騎士本人は手を出さず、その様子をただ見ているだけらしい」
 自分達の仲間を、家族を、自分達の手で殺めることを強要する。これほどおぞましい行為があろうかと、バレンは怒りに拳を震わせる。
「この村の住民達は、オブリビオンに対して全面降伏状態だ。これまでの過酷な仕打ちで、完全に心を折られてしまっている。下手に逆らって皆殺しにされるよりはマシだと、すべてを諦めてしまっているのだ」
 それ故に、異端の騎士について尋ねたとしても、簡単には情報を開示しないだろう。村人達から情報を得るためには、まず彼らからの信頼を得る必要がある。
 例えば、猟兵としての強さを見せ、オブリビオンを打ち倒せることを示す。
 例えば、正面から彼らと真摯に向き合って会話し、信頼を勝ち取る。
 そのための方法は、各々で有効だと思われるやり方を考えてほしい。
「異端の騎士が村にやってくるときは、必ず10体程度の篝火を持つ亡者の群れを引き連れてやってくる。こいつらは鋤や鍬といった農具程度の武器しか持たず、個々の強さは大したことはない。だが、完全にとどめを刺すまでは決して、攻撃をやめることはないだろう」
 亡者たちは騎士の命令に忠実に従い、たとえ手足を切り飛ばされようとも、ただひたすらに戦い続けるのだ。
「彼らは、元は村の住民だった。生贄として殺された後に異端の騎士によって蘇らされ、下僕として利用されているのだ。君達の手で、もう休ませてあげてほしい」
 死んだ後ですら自由になれず、オブリビオンに酷使され続ける。そんなことでは、あまりにも哀れであろう。
「ダークセイヴァーの世界では人類はすでに敗れ、オブリビオンに支配されている。そこに住む人々はこの村の住民に限らず、多かれ少なかれ諦めてしまっている。だが、だからこそ、俺たちは示さなければならない。人間は、まだ終わってはいないのだと。希望は、ここにあるのだと」
 バレンは決意の炎を瞳に宿し、猟兵たち一人一人をしっかりと見据える。
「頼んだぞ、皆。必ずや異端の騎士を打ち倒し、村人達の希望を取り戻してやってほしい」


毒島百機
 はじめまして。毒島百機と申します。

 第六猟兵、ついに始まりましたね。楽しんで行きましょう。
 皆様におきましては、取り敢えずかるーく村を一つ、救っていただきたいと思います。

 それでは、よろしくお願い致します。
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第1章 冒険 『支配された村』

POW   :    強さを見せて村人を信頼させる

SPD   :    村周辺の探索を行う、村人達と密かに接触する

WIZ   :    会話や行動で信頼を得る、村人たちから情報を引き出す

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リリウム・コルネリウス
墓地や記念碑と言った死者を弔うものの場所を質問
質問があれば巡礼者と述べ、酷い哀しみの色が見えたと神からの啓示と説明
「過去として破棄される”現在”でも、その痛みは確かに受けた傷ですから……」
負傷者には『生まれながらの光』で治癒し、本題に入る前に墓石・記念碑に祈りを、花を手向ける
啓示で受けた、と騎士について触れ……自分達が生贄として騎士を楽しませることが出来ればあなた達には害がないのではないか?と提案
「私たちを使用して、騎士を楽しませるのはどうです……きっと丁度いい捨て駒ですよ、私達」
従順を騎士が喜ばないなら、こんな非従順(猟兵介入)も楽しむのではないかと



太陽が天高く昇り、陽の光の恩寵を最も多く受ける。リリウム・コルネリウス(矛盾だらけの理想主義者・f03816)が村を訪れたのは、そんな時分だ。
 しかし、村の中の空気はまるで深い穴倉の底のようで、外を歩く村人達の表情は一様に暗く沈んでいた。
 ふと、一人の村人がリリウムの存在に気付いた。驚いたような、珍しいものを見たような表情を浮かべたその男に、リリウムは優しく微笑みかけた。
「お尋ねしたいのですが、この村の墓地や碑のような、死者を弔う施設の場所をお教えいただけませんでしょうか?」
「……だれだね、あんたは。この村じゃあ見ない顔だ」
 突然話しかけられた男は、警戒心も露わに逆に問いかけた。
「旅の巡礼者でございます。深い哀しみの色が見えるとの神の啓示を受け、この村へやってまいりました」
「深い哀しみね……今の世の中、そんなものそこら中にころがってるだろうに」
 こっちだと、ぶっきらぼうに言うと男は歩き出す。ついていった先でリリウムが見たものは、村はずれの小さな広間にポツンと置かれた石柱であった。あまりにも寂しげなそれを、男は村人の合同の墓だと言った。
「ありがとうございます」
 感謝の言葉を述べて、おそらく過酷な労働で切り傷だらけになっている男の手をそっと取ると、彼女の持つ生まれながらの光を放った。聖なる光がみるみるうちに傷を癒してゆく様を、男は言葉を詰まらせ、驚愕の様子で見ていた。
 癒しを終えると、リリウムは墓石の前に跪いて花を手向け、静かに両手を合わせた。
「実は、受けた啓示はもう一つありまして……騎士に捧げる生贄のことでございます」
 十分に祈りを捧げた後にそう切り出すと、未だ呆然としていた男ははっとなって表情を歪めた。
「……なんのことだ」
「私を生贄になさいませ。私を使用して騎士を楽しませることができれば、あなた達には害が及ばないのでは? きっと丁度いい捨て駒ですよ、私達」
 しばしの沈黙ののち、男はゆっくりと首を振った。
「見ず知らずのあんたを生贄にするなんてことはできない。それはこの村の問題だ。あんたは祈りを捧げてくれた。それだけで十分だ」
 踵を返して歩き出し間際に男はつぶやく。
「……俺達にはもう、祈る資格すらないからな」

成功 🔵​🔵​🔴​

枡野・時恒
【POW】
遍歴の戦士として村を訪問
「おい、何なんだこの村は。お前たちは何に怯えている」
外国から修行にやって来たので、この辺りの事を何も知らないとアピール。
食事中の話し相手に付き合え、と村の男たちとコンタクト。
うまく騎士の話を聞き出せたら、俺に任せろと申し出る
「どうせ信用できないっていうんだろう。林はあるか? 面白いものを見せてやる」
林に到着したら、刀を抜いてユーベルコードを発動。剣刃一閃で
そこら辺の樹木を手当たり次第たたっ斬る。
うまいことビビらせるのに成功したらこちらのものだ。
「俺は時恒。その騎士とやらの首が欲しい。ああ、別に金はいらんぞ。とりあえず、飯と寝床があればいい」


アザゼル・メッザノッテ
僕は旅の魔術師風を装って敵の情報を探っていこう。
村から村に渡り歩いている風にして、この村も何か問題を抱えていそうだ、という切り口から村人に話しかけるよ。
「以前の村もヴァンパイアに貢いでいたが、この村はそういうのはないかい?」
「…じつは、以前の村でも同じことがあって、今回もまた圧政に苦しんでるんじゃないかな、って」
そして以前の村ではヴァンパイアの配下を相手に戦ったことをさり気に言う。
信用してくれない場合はリザレクト・オブリビオンにて骸骨兵士を召喚。以前倒したやつを支配下に置いたことを話すよ。



「おい、なんだこの村は。お前たちは何におびえている」
 沈んだ空気を切り裂くように、場違いなほどに闊達な声が村に響いた。
 声の主は枡野・時恒(羅刹の剣豪・f02964)だ。時恒は修行にやってきた旅の者を装って村の男衆に接触し、飯の肴にこの辺りの事情を教えてくれと、半ば強引に彼らから話を聞きだしていた。
 村の周辺になにがあるかや、次の村がどこにあるかといった地理の話。何をして生計を立てているのかや、作物でも何でも、特産のようなものはないのかといった生活の話。とにかく打ち解けるためにと様々な話を振ってみた時恒だが、しかし男達の表情が晴れることはなかった。
「何におびえているって……そんなもの、決まっているだろう」
「あんたも旅をしてきたなら知ってんだろ? 今のご時世、どの村も似たり寄ったりさ」
 彼らはあえてなにがとは語らない。それは彼らが、そのことについて口に出すことすら憚られるほどの恐怖を抱いているという、その証拠だろう。
「以前の村では、ヴァンパイアに貢物をしていたが」
 旅の魔術師を装い、食事に同席していたアザゼル・メッザノッテ(ヤドリガミの死霊術士・f01286)が徐に口を開いた。
 びくりと肩を震わせ、男達は軋む様にアザゼルに視線を向ける。
「この村は、そういうのはないのかい?」
 口調こそ訪ねている風だが、その実はほとんど尋問に近い。こちらはすべてを知っているぞ。とっとと話してしまえ。彼女の瞳は言葉よりも雄弁にそう語っていた。
 男達が彼女の漆黒の瞳に縛り付けられたまま、幾ばくかの沈黙が流れた。
「そんなことは――」
「じつは、以前の村でも同じことがあってね」
 男たちの反論を封じるように、被せるようにアザゼルは言った。
「今回もまた、圧政に苦しんでるんじゃないかな、って」
「……なんなんだ、あんたらは。だったらどうだってんだ。そんなことを聞いて何になる。あの恐ろしい騎士様を相手に、いったい何ができるってんだよ」
 再びの沈黙の後、男たちの中で最も年配であろう一人が、静かに言った。
「助けてやれる」
 断言した。まるでその言葉を待っていたと言わんばかりに、間髪を入れずに時恒が強く言い切った。
「ヴァンパイアの配下は無慈悲で、残虐で、おそろしくて、何より強い。でも、やりようはある」
 そう言って、アザゼルは不敵に笑みさえ浮かべて見せた。
「俺に、俺達に任せろ……と、口で言ったところでどうせ信用できないっていうんだろう。林はあるか? 面白いものを見せてやる」

 男衆に案内されて村はずれの林に到着した時恒は、さっそくとばかりに刀を抜き放った。
「な、なにをする気だ?」
「ま、ま。取り敢えず見てなって」
 やにわにざわめきだつ男達をアザゼルがなだめる中、時恒は精神を研ぎ澄ませる。瞳を閉じ、深く、深く息を吸い、そして吐く。そして次の瞬間、カッと目を見開くと同時に必殺の太刀を放った。
 剣刃一閃。白刃がきらめくたびに、一本、また一本と周辺の樹木が叩き切られてゆく。
 嵐の如き乱れ太刀が瞬きのたびに林の木々を斬り開いていく様を見せつけられて、一人の男がごくりと生唾を飲み込んだ。
「ちなみに、こんなこともできるよ」
 ここぞとばかりに畳みかけるように、アザゼルがリザレクト・オブリビオンによって死霊騎士を召喚する。その姿は、村人たちがよく知る異形の騎士の姿に酷似していた。
「これはね、以前に倒したやつを、僕が支配下に置いて使役しているものさ」
 それは口から出まかせのはったりであったが、度重なる衝撃の最中にある男たちにとっては、まさしく真実であるように見えた。
「あ、あんたたちは、いったい……?」
 男が、震える声で言った。
「俺は時恒。こっちはアザゼルだ。その騎士とやらの首が欲しい。ああ、別に金はいらんぞ。とりあえず、飯と寝床があればいい」
 あまりにもあっけらかんと、時恒は言い放った。
 たっぷりの沈黙の後、年配の男が口を開く。
「……村長に、連絡だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カペラ・ウィザーノット
ショーはショーでも大違い。こんなの絶対に認められないわ。
恐怖に凍らされた村人たちの心を、また開かせるには本当のショーを教えてあげなきゃね?
もちろん、ハッピーエンドばかりじゃないけれど、希望を追いかける最高のショーをね。

WIZを使い、村人たちからの情報収集に努めます。
冷え切った心を溶かすため、必要とあらばその歌声で人々に訴えかけるわ。
「忘れてしまったの?皆の顔を」「忘れてしまったの、あの素敵な日々を」
「ただ、黙していては何も変わらない、何も進まない」
「希望をつかみましょう、そしてあの日の明日へ還りましょう」

きっと、私たち一人ひとりの力だけじゃダメ
皆の協力が必要不可欠なのよ。



村のはずれから、木々の豪快に倒れゆく音が響いた。すわ何事かと、きょろきょろと周囲を見回す村人たちを横目に、カペラ・ウィザーノット(バンドビート・f07108)は決意を込めて呟く。
「みんな、それぞれ頑張っているのね。この村を救うために」
『生贄ショーを、要求しているらしい』
 グリモア猟兵の告げるその言葉に、誰よりも反応したのがカペラであった。
 彼女は覚えている。幼き頃に観た、輝かしいまでのあのショーを。夢と希望にあふれた、誰も彼もが笑顔になるような、そんな最高の舞台を。そしてなによりも、どれだけ時を経てもなお色あせることのない、舞台の上で歌い踊る憧れの女性の、その屈託のない笑顔を。
 カペラはそんな光輝く世界を夢見て、ここまでやってきたのだ。だからこそ、許せない。人々に恐怖を与え、絶望の淵に叩き落し、ただ支配するための道具としてのショーなど、決して認めることなどできなかった。
「本当のショーを教えてあげなきゃね。希望を追いかける、最高のショーを」
 カペラは懸命に村人達から情報収集を試みるも、彼らの口は一様に重かった。長年にわたる恐怖による支配は、人々の心を殺すには十分過ぎたのだ。
 これでは埒が明かない。そう思ったカペラは、決意を固めて村の中央広場に一人立った。
 何をしているのかと、幾人かの村人たちが気にした様子でカペラを見やる中、彼女はその歌声を風に乗せた。たとえ言葉は届かずとも、歌ならば届くはず。そう信じて、カペラは高らかに歌い上げた。

 忘れてしまったの? みんなの顔を。あの素敵な日々を。
 黙していても何も変わらない。進まない。
 希望をつかみましょう。そして――あの日の明日へ還りましょう。

 村人達には、それが何かわからなかった。長い支配の歳月は、彼らから歌うという行為を奪い去ってしまっていたのだ。よくわからない女が、何事かを大声で叫んでいる。村人たちにすれば、ただそれだけであった。それだけであったはずが――ある時、ぽたりと。晴天の空から一滴の雨が落ちた。
 いや、雨ではない。それは、村人の中の一人の女性が流した、一滴の涙であった。
「あれ、私……なんで」
 彼女はなぜ自分が泣いているのかわからなかった。わからなかったが、しかし、このままではいけないと。かわらなければいけないと、その気持ちだけがふつふつと湧き上がってきて、それは涙となって零れ落ちたのだ。
 ふと周囲を見渡すと、彼女だけではない。カペラの歌を聞いた者が一人、また一人と、瞳に涙をたたえ、あるいは、耐えきれずに崩れ落ち、嗚咽を漏らしている。
 カペラの歌声は、凍り付いた村人たちの心を少しづつ、しかし確実にとかしつつあった。
 彼らはもはや、ただすべてを諦めた死人ではないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


ある者は、猟兵達の見せる人知を超えた力に希望を見出した。
 ある者は、天上の風の如き歌声に心を取り戻した。
 またある者は、死者のために祈ることすらできなくなってしまった我が身に、思うところがあっただろう。
 ただ支配され、すべてを諦め、緩やかに死んでゆくだけだった村人たちは、今ここに確かに蘇ったのだった。
「村長よ、この人達なら……もしかして、なんとかしてくれるんじゃねーかな」
 村人の中でも年配の男が、事のあらましを村長と呼ばれた禿頭の老人に伝えた。
「そうよ、村長。きっとこれが最後のチャンスなんだわ。これまで、あんなことを繰り返してきた私達が、それでも元に戻れるのだとすれば……きっと、今が……!」
 目元の腫れも隠さぬままに、心の慟哭のままに女性が訴えた。
 その場に集まったほかの村人達も、ある者は何度もうなずきながら、あるいはただじっと瞳をそらさずに、村長を見つめていた。
 その場に集った猟兵達は、伝えるべきことはすべて伝えたと、これ以上何も言うことはないという表情で、静かに彼らを見守っている。
「……そうじゃな。気まぐれに神が与えたもうた最後のチャンス。それが、今なのかもしれん」
 絞り出すかのように、重く、重く、村長は口を開いた。
「わしらは、あんたらに賭ける。すべてを話そう」

 村長から聞いた話によると、異端の騎士がやってくるのは、決まって月が最も満ちる夜であるとのことだった。村の南の小高い丘を越えた先に、騎士の住む館がある。普段は決して開かぬその館の門が、その夜にだけ開くのだという。そうして月が最も高く上がった時、騎士は煌々と輝く満月を背に、変わり果てた姿となったかつての同胞達を引き連れてやってくるのだ。
 そして、猟兵達が訪れたこの日の夜こそが、月の最も満ちる夜。満月の日であった。
 騎士の館から村までは、ろくに舗装もされていない、ただ踏み固められただけの道が一本あるのみだという。道は林の中を抜けているため、左右の木々にうまく身を隠せば、不意を打って先制攻撃を仕掛けることもできるかもしれない。
 時はわかった。厄災が来る方向も判明した。倒すべき敵は、とうに胸に刻んである。
 あとは、動くだけだ。
クリミネル・ルプス
『(匂うなぁ…)』
嫌悪でも好むでもない記憶に遺る匂いを嗅いで思考する。
(方針)
満月でできる影に身を潜ませユーベルコード【嗅ぎ分けるモノ】を発動させつつ敵の一団の状況を監視。
【篝火の影】による周辺警戒が有ると予想し、他の猟兵が先制攻撃するorされたらコチラに注意を引きつけ援護。
乱戦となったら個別に集中攻撃して数を減らしていく。樹々や敵である亡者を盾にする様に動いていく。
【新たなる亡者】で亡者が戦線復帰出来ない様に戦闘不能の亡者は早めに粉々にする。
(想いや独り言)
「…亡骸は亡骸やしな…」
死者への祈りも村人達の後悔も『自分も亡者に成りかけた』経験も等しく砕けば地に還る。
今は目の前の敵に意識を向ける。


キリス・バルドス
ヤツは恐らく自分の力を過信している。手下が壊滅するまでは手出ししては来ないだろう。
騎士とやりあうのは他に任せて、私は亡者の相手をさせてもらうよ。

「やあ騎士様。こんな夜に大勢で散歩とは、中々良い趣味してるじゃあないか」
まず、私が先にヤツの気を惹こう。
いつもの道に変なのがいたら流石に立ち止まるはず。
「何者だ」とか恰好つけて言ってきたら私が《咎力封じ》で何体か足止めする。

「灰は灰へ、塵は塵へ。在るべきものを在るべきところに還しに来た者さ」
共に打って出る者は撃ち漏らしの相手を頼みたい。

動きさえ止めてくれれば、私のギロチンで最期を迎えさせてやろう。
「──休みなさい。それが死者の務めというものさ」


リリウム・コルネリウス
「(月が最も高く……0時、でしょうか)」
予想しつつもそれが裏切られた時の為、少し早めの時間に動き屋敷への最短距離を確認。

使用するユーベルコードはジャッジメント・クルセイド。
「私には、誰かを裁く権限などありませんが……私は、私の望む世界が欲しいのです」
変わり果てた同胞達、とは……騎士が操っているのであれば、下手に時間を割くと消耗するだけ、と想定。
あくまで騎士への攻撃をメインに行い、木の陰などに隠れ被弾しづらくしこちらの攻撃の予想をしづらくする。
遠距離攻撃を重点的に行う。


緋翠・華乃音
……隠密行動なら得意分野だ。敵が通る道が分かっているのなら、木々や起伏に身を隠して後は時を待つだけだな。

潜伏場所から「暗視」「視力」の技能を使用し敵の接近を待つ。敵が攻撃範囲に入ったのなら「スナイパー」そして「先制攻撃」を狙う。

敵に接近されたのなら狙撃銃による攻撃は止め、ナイフ、鋼糸、拳銃と多彩な武器を使い分けて応戦。可能な限り敵の攻撃を「見切り」つつ「二回攻撃」を駆使して殲滅にかかる。



空に浮かぶ満月の輝きが、夜の闇を照らし出している。
 村人達から異端の騎士がやってくる時間と方向を聞き出すことに成功した猟兵達は、騎士が通るという小道の両側に茂る林の中に隠れひそみ、彼の者たちの到来を今か今かと待ち構えていた。
 林の間を抜ける細々とした小道には、当然街灯のような明かりの類は一切設置されていない。しかし、眩いばかりの月明かりによって、戦闘行動をとる上での問題はないだろう。
 潜伏しつつ、リリウム・コルネリウス(矛盾だらけの理想主義者・f03816)はちらと空を見やり、月の位置を確認する。
(月が最も高く……0時、でしょうか。つまり、そろそろ頃合いでしょうね)
 念のためにと予想されるよりも早めの時間に行動を開始し、屋敷の位置と最短距離を確認して万が一のための備えをしていたリリウムだが、どうやらその不安が現実となることはなさそうであった。
 隠密行動ならば得意分野だ。そう豪語した緋翠・華乃音(ambiguous・f03169)は魔を遠ざける加護の込められた夜色の外套を身にまとい、木々に身を隠しながらその時をじっと待つ。そうして、月の位置が最高点に達しようというまさにその時、夜の闇を誰よりも遠くまで見通す彼の瞳が、わずかに揺らめく赤い光を捉えた。
 篝火だ。それはまさしく、異端の騎士が引き連れてくるという亡者たちの持つ篝火の明かりに他ならなかった。
 明かりの数は10。つまりは、10体の篝火を持つ亡者の群れだ。
(来たか)
 華乃音は周囲に潜む仲間に合図を送り、敵がやってきたことを知らせる。
 猟兵達は緊張した面持ちでその示された方向を見やり、武器を構え、能力の行使の準備を行う。
 一歩、また一歩と篝火が近づいてくる。その歩みは速くもなく、遅くもなく、まるで周囲を警戒している様子もないふうに、平然としていた。
 亡者10体を先頭とし、異端の騎士はその最後尾を悠然と歩いている。それは、これから自分たちが攻撃されることなどまるで予想もしていないであろう足取りであった。
 そしてついに、敵集団のすべてを、華乃音はその攻撃範囲内に捕らえた。
(まずは先制攻撃!)
 構える狙撃銃が火を噴く。放たれた弾丸は一直線に突き進み、狙い違わずに先頭の亡者に直撃した。
 ぐらり、と大きく揺らめき、倒れ伏す。想像もしなかったであろう突然の襲撃に、亡者の集団はやにわにざわめきだった。
(接近される前に、少しでも多くの敵戦力を削ぐ)
 流れるように次弾を装填し、立て続けに第二射。そして第三射を放とうと三度狙いを定めたその瞬間、ぞくり、と彼の背筋を冷たいなにかが走った。
 反射的にその感覚が示す方向を見ると、その先にいたのは異端の騎士だ。騎士は二度の狙撃を受けて、襲撃者の方向を見事割り出していた。そして、
(……笑った?)
 なぜか華乃音は、異端の騎士が楽し気に笑ったかのように感じた。直接見たわけではない。夜の闇の中、全身甲冑のバイザーの奥に隠された騎士の表情を読み取ることなど、如何に彼の瞳でも不可能だ。だがしかし、奴は笑ったのだと、なぜかある種の確信じみた感覚が彼にはあった。
 わずかな隙をつき、騎士は猟兵達が潜んでいる方向を指し示すかのように、手を差し向けた。それはすなわち、亡者たちへの攻撃指令だった。
 騎士の指示に従い、亡者達が猟兵達の元へと迫ろうというその瞬間、いっそ能天気なほどの声が響いた。
「やあ騎士様。こんな夜に大勢で散歩とは、中々良い趣味してるじゃあないか」
 林の中から聞こえてきた声に、再度騎士の動きが止まる。そうした後に、騎士は声の方向へゆっくりの振り向いた。
 その先に現れたのは、キリス・バルドス(自律人形遣い・f06985)だ。自らの存在を誇示するように、相手の気を引くためにあえて尊大にすら思える態度で、彼女は悠々と歩み出た。
「君は……誰かな。君みたいな女性は、あの村にはいなかったはずだけど?」
 乗ってきた。キリスは心の中で不敵に笑った。
「私が誰かって、そんなの決まってるよねぇ」
 今度は、はっきりと表情に出してにやりと笑い、それと同時に咎力封じの能力を発動した。
 彼女が放った手枷や猿轡、拘束ロープといった拘束具が勢いよく周囲の亡者達へと迫った。亡者たちの篝火が作る影は満月が作る林の木々の影に遮られ、その察知能力を十全に発揮することはできず、数体の亡者たちがなすすべもなく拘束され、その力を封じられることとなった。
「灰は灰へ、塵は塵へ。在るべきものを在るべきところに還しに来た者さ」
「面白いことを言うねぇ。……何をしている亡者共! とっととかかれ!」
 異端の騎士の一括により、動ける亡者たちは一斉にキリスの元へと飛び掛かるが、それを許さない者がいた。
 クリミネル・ルプス(人狼のバーバリアン・f02572)だ。彼女は篝火の影を警戒し、影響を受けないように見事にそれを掻い潜り、キリスへと飛び掛かる亡者に強烈なカウンターを食らわせた。
 倒れ伏した亡者だが、彼女の攻撃はそこでは止まらない。新たなる亡者の力によって亡者達が戦線復帰することのないように、執拗なまでに攻撃を加え、完全に粉砕する。
「……亡骸は、亡骸やしな」
 亡者たちは、元は村の住民だった。そのことに対して思うことがないわけではない。しかし、今は戦闘中だ。戦いの最中に、感傷は不要だ。
 死者への祈りも、村人達の後悔も、そして自らの過去も、ひとしく砕けば地に還る。
 今はただ、敵を倒すことだけを考えればよい。
 新たな闖入者に、亡者たちはその攻撃の矛先をクリミネルに替える。しかし、彼女はその身に宿す嗅ぎ分けるモノの力によってその攻撃を的確に読み、時に回避し、時に亡者通しを相打たせるように位置取り、盾とすることで常に有利な状況を作り続けた。
「匂うで……アンタらの動きはバレバレや!」
 キリスが敵の動きを止め、クリミネルが亡者を次々に撃破していく中、リリウムはチャンスをうかがっていた。
 亡者達を操っているのが騎士である以上、そこに下手に時間を割くのは消耗が大きくなるだけ。そう考えた彼女は騎士へ攻撃をするため、木々の影に隠れながらタイミングを見計らっていた。
 しかし、その時はいつまで経っても来なかった。
 異端の騎士は、何を思ってか自身が戦闘に参加することもなく、常に戦場から距離を置いていた。そのため、うまく攻撃が通る位置になかなかやってこないのだ。
 しかしそんな時、亡者達の数が減りつつある中で、騎士に動きがあった。
(今です!)
 リリウムはこのチャンスを逃すまいと、騎士を指さしてジャッジメント・クルセイドを放った。
 天より来たる聖なる光が目標違わず降り注ごうというその瞬間、それに気づいた騎士は予想外の行動に出た。騎士は近くに侍る亡者を無造作につかむと、そのまま中に放り投げたのだ。
 リリウムの放った光は騎士の代わりに亡者に焼き尽くし、浄化せしめた。しかし、それによって騎士は以前無傷のままであった。
「いきなり大将である僕に攻撃するなんて、物事には順序ってものがあるだろう?」
 しかたがないなぁと、騎士はリリウムを見て溜息をついた。
「なら、これで問題ないだろう?」
 声の主は、華乃音だった。
 騎士が視線を向けると、狙撃を終えて合流してきた彼が、ちょうど最後の亡者を鋼糸によってばらばらにして無力化したところだった。
「今ので最後だ。残りは君だけだ」
 静かに断言するその言葉に、騎士は周囲を見渡した。
 亡者達はクリミネルにより粉砕され、キリスのギロチンにより切断され、最初に華乃音の狙撃によって倒された者も含め、すべてが殲滅された後だった。その様子を見て、騎士は、
「……あはっ」
 そう、今度ははっきりと、実に楽しそうに笑ったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


異端の騎士は笑っていた。
 突然現れた敵対者である猟兵達に自らの手勢である亡者達のすべてを屠られてなお、楽しくてたまらないとでもいうように。うれしくてたまらないとでもいうように。あふれ出る感情のままに、笑っていた。
「君たちが誰で、どこから来たのかなんてことは知らない。でも、そんなことはどうだっていいんだ。君たちはあの村を救うために遠路はるばるやってきて、今こうして僕を倒さんとしてここに立っている。重要なのはそこなんだ」
 騎士は、ゆっくりとした動作で剣を抜いてゆく。
「ありがたいねぇ。やっときたかって感じだよ。あの村の連中はさぁ、どうにも手ごたえがなくてね。僕はもっとこう、反抗してくる相手を叩き潰してやるのが好みなんだけど、あいつらってば僕の言うことなんでも聞いちゃうんだよ。ひどくない? 自分の子供をその手で殺せって言っても反抗してこないの。普通、そんなことある?」
 まるで悪いのは村人達だとでもいうように、甚だ心外だといったふうに騎士は言った。
 その言いようはまるで子供の言い訳のようで、いっそ無邪気な印象すら与えた。しかしだからこそ、ただの悪よりもおぞましい何かを、猟兵達に感じさせた。
「あんまりつまんないからさ、あの村はもう今夜で終わらせるつもりだったんだけど、そこへ君たちの登場だ。きっとこれは、普段から良い子にしている僕への、神様とかそのへんからのプレゼントなんじゃないかなぁ」
 だから、と。弾んだ声で騎士は続ける。
「お礼に君たちは、とびっきり素敵な殺し方をしてあげるよ」
 騎士はついには剣を抜き放ち、すでに動かなくなった亡者の亡骸に突き立てた。
 どくん、と。剣が邪悪に脈動した。倒れ伏す亡者の体内にわずかばかりに残った血液を、騎士の邪剣が吸い上げているのだ。そして次の瞬間、剣が開花した。
 まるでつぼみが花開くかのように歪に捻じれた騎士の剣の刀身が幾重にも裂き開く。そしてその裂け目から、真っ赤に燃える炎を吹き出し始めた。これこそが異端の騎士のもつ能力の一つ。他者に流させた血を代償に武器の封印を解き放つ力、ブラッドサッカーであった。
「女はみんなひんむいて、村の男衆に犯させてやろう。男は両の手足をもいで、その様を見せつけてやろう。そして最後はみんなまとめて潰してこねて、ハンバーグにして村人たちに食わせてやるんだ! 想像するだけで楽しいねぇ!」
 騎士が剣を振るうと、歓喜に呼応するように炎が躍る。
「それじゃあ、はじめようか」
 月光と炎が辺りを照らす中、最終決戦の幕が開いた。
クリミネル・ルプス
【心情と戦闘前のやり取り】
「抵抗を潰す愉悦に浸りたいんやろけど……。騎士サンは料理せんの?挽肉ってな結構手間がかかるんやで?スジ肉とか堅いトコ…ウチらは『堅い』で!!」

【戦闘方針】
単騎で此方と渡り合える実力と能力があると判断し基本的にはヒットアンドアウェイで殺傷能力の高い剣の攻撃に注意。
[嗅ぎ分けるモノ]で躱しつつ、チクチク攻めていく。
[ブラックキャバリエ]が出て来たら、的が大きい軍馬を狙い体力を削る。
[フォーリングローゼス]を検知したら、全体攻撃で剣技での迎撃が遅れる可能性に賭け接近して攻撃。

【戦闘後】
「……潰されると痛いやろ?まぁ喰う気も起きんけどな!」
感情を乗せない声で甲冑ごと潰す。



「抵抗を潰す愉悦に浸りたいんやろけど……」
 クリミネル・ルプス(人狼のバーバリアン・f02572)は己の闘志を込めるように、拳を強く握りこむ。
「騎士サンは料理せんの? 挽肉ってな、結構手間がかかるんやで? スジ肉とか堅いトコあってなぁ……ウチらは『堅い』で!!」
「いいじゃないか。潰しても潰した気がしないような柔らかすぎる相手よりも、ずっとずっといい! 来い、眷属!」
 歓喜の声とともに、異端の騎士はその剣を天に向けて突き上げた。次の瞬間、目の前の空間がぐにゃりと歪み、その中からおぞましい嘶きとともに巨大な漆黒の軍馬が現れた。
 騎士は颯爽と軍馬に騎乗すると、クリミネルに向けて猛然と突進を開始した。
「よぉく叩けば、固い肉だって柔らかくなるよねぇ!」
 軍馬を巧みに操り、前足を大きく振り上げて彼女を踏み潰さんとする騎士。その巨体による重量を考えると、攻撃が当たればただでは済まないであろうことは明白だ。
 叩きつけられる両足を、クリミネルは紙一重で回避する。彼女の超常の嗅覚があらゆる匂いをかぎ分け、軍馬の動きを、騎士の繰る手綱を、未来予知ともいえる精度で予想することに成功していた。
 さらに回避とともに、手に持つ斧をカウンターで軍馬にたたきつけ、そのまま勢いを利用して距離を取る。
「やるじゃないか。そうじゃなきゃ面白くない!」
 騎馬の重量に任せての突進。あたかも死そのものが迫るようなその恐るべき攻撃を前にしても、クリミネルは冷静であった。相手の力量を正確に把握し、匂いを嗅ぎ分けて行動を予測し、攻撃を回避。そして一撃入れれば即離れる。決して欲張らず、ヒットアンドアウェイを徹底したその戦術は、大きなダメージを与えるまでは至らぬものの、しかし確実に傷を蓄積させてゆく。
「ちょこまかとよくかわす!」
「わかりやすいねん、騎士サン。弱い者いじめばかりで、まともに戦ったことないんやないの?」

成功 🔵​🔵​🔴​

夜桜・雪風
暴力と恐怖による支配なんて戦場ではありふれた光景ですね。
あら、ごめんなさい。
あなたみたいな乱暴ものは見慣れてて、
はしゃいじゃって可愛いなと思わず笑ってしまいました。

慌てなくて大丈夫ですよ。
これからあなたに【恐怖を与える】時間ですので楽しんで行ってくださいね。

動きが速く、防御も上手いなら【範囲攻撃】で攻めましょう。
【高速詠唱】でユーベルコードを放ちますね。
【全力魔法】の【2回攻撃】で敵へ【鎧砕き】と【鎧無視攻撃】をします。

反撃してくるのなら【オーラ防御】で身を守りましょう。

久しぶりに暴力で支配された戦場を思い出しました。
やっぱり戦場は奪い合いしないと楽しくないですよね?
命の奪い合い、素敵です。



「暴力と恐怖による支配なんて戦場ではありふれた光景ですね」
 微笑みすらたたえた表情で、夜桜・雪風(まったりデイズ・f00936)静かに言った。同時に、自身のユーベルコードを高速展開。雪風の手に持つ武器が見る見るうちに大量の鈴蘭の花びらに姿を変え、異端の騎士を取り囲んだ。
「余裕そうな顔しちゃってさぁ、むかつくよねぇ!」
 乱れ舞う花びらに切り刻まれながら、しかし騎士もやられるばかりではない。
 裂帛の気合とともに剣を振るうと、花咲く剣の刃が血に染まった薔薇の如き剣鱗となり、嵐の如く舞い吹雪く。奇しくもそれは、雪風の鈴蘭の嵐と同系統の技であった。両者が激しくぶつかり合い、拮抗の様相を見せた。
「あら、ごめんなさい。あなたみたいな乱暴ものは見慣れてて、はしゃいじゃって可愛いなと思わず笑ってしまいました」
 嘲笑うかのように、煽るように笑みを深める雪風。余裕に満ちたその様子に、騎士はより一層愉悦の形相を増してゆく。
「調子に乗ってるねぇ。いいよ、そういうやつをぶっ潰してやるとどういう顔になるのか、僕はそれが見てみたい!」
 騎士は襲い来る鈴蘭の花びらを己の血薔薇で相殺し、しきれないものは巧みに盾を操って防ぎながら猛然と前進する。そうしてついに嵐を抜け出し、雪風の目前に迫らんとしたその瞬間、
「慌てなくて大丈夫ですよ」
 雪風はまるで鋭く輝く三日月の如く口角を吊り上げ、怪しく嗤った。
「これからあなたに【恐怖を与える】時間ですので、楽しんで行ってくださいね」
 次の瞬間、雪風の持つもう一本の武器が開花した。
「二発目⁉」
 第二の鈴蘭の嵐は先ほどのような周囲を取り巻くものではなく、弾丸の如き花弁が騎士を穿たんと一直線に殺到する。騎士は驚きつつもうまく盾を使いこれを防がんとするが、意表を突いた急襲のそのすべてを防ぎきることはできない。結果、少なくない数の被弾を受け、彼を大きく後退させることとなった。
「あぁ、素晴らしいですね。久しぶりに暴力で支配された戦場を思い出しました。やっぱり戦場は奪い合いしないと楽しくないですよね? 命の奪い合い、素敵です」
 雪風は過去の戦場の日々を思い出し、恍惚とした表情でそう言った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

緋翠・華乃音
そうだな、これは神様からの贈り物かも知れない。
……天罰という名の、プレゼントか。

この間合いなら狙撃は厳しいだろうな。
そう易々と距離を開けてくれそうでもないが……まあ、それならそれで幾らでもやりようは有る。

基本的な攻撃方法はパワーよりもスピードとテクニックを生かしたヒットアンドアウェイ。木々に身を隠しつつ敵の隙を突き、鎧が薄いであろう関節部分や首、頭部を狙う。
武器は二挺拳銃とナイフ、ダガー、そして鋼糸。
漆黒の軍馬が召喚されたら騎士に注意を向けつつも軍馬を攻撃。
薔薇の花弁の攻撃に合わせてユーベルコードを発動し、回避と反撃が出来ないか試みる。



「そうだな、これは神様からの贈り物かも知れない」
 林の木々の影に身を隠しつつ、緋翠・華乃音(ambiguous・f03169)は異端の騎士に対して静かに銃口を向けた。
 彼我の距離を考えれば流石にこの場から狙撃というわけにもいかず、再度距離を取ることは軍馬を用いた騎士の機動力を考えれば難しいだろう。だが、それならそれでいくらでもやりようはある。
 遠距離からの狙撃に、近距離での白兵戦。どちらにも十全に対応できるだけの装備を、華乃音は準備してきている。
「……天罰という名の、プレゼントか」
 十分に狙いを定め、引き金を引く。狙うは装甲が薄いであろう、騎士の鎧の関節部だ。
 漆黒の拳銃より音もなく放たれた弾丸は、狙い違わずターゲットに吸い込まれた。
 続いての第二射は、しかしこれは騎士の持つ盾に弾かれて、そのまま虚空へと消えていった。
「また君かぁ。隠れてチマチマとやるのが好きだねぇ!」
 安い挑発の言葉は、華乃音の心を揺り動かすことはない。彼はただひたすらに冷静に、自分にできる最善を尽くすのみだ。
 決して一所にとどまらず、次々に木々に身を隠しながら銃撃を続ける華乃音。対して騎士は剣を振り上げると再度漆黒の軍馬を召喚。騎馬の機動力で一気に間を詰める算段であろう。
 流れるような動作で騎乗した騎士が、猛然と迫る。華乃音は接敵を許すまいと二挺の拳銃で弾幕を張るが、騎士は巧みに盾と手綱を操り、弾丸を弾き、あるいは躱し、距離を詰める。
「そぉら、届いたぁ!」
 馬上より振り下ろされる剣撃が華乃音を襲う。がしかし、その一撃が彼を捉えることはなかった。ユーベルコードを発動させた華乃音は瞬きの間に騎士の背後に移動し、逆に銃弾を浴びせかけたのだ。
「消え……なにぃ!?」
 突然消えた対象と背後からの衝撃に、騎士は大きく距離を取る。振り返った先に華乃音の存在を確認し、忌々し気に舌打ちをした。
「随分と多芸だねぇ。次は何を見せてくれるんだい?」
「さてな。己の手札を自ら見せてやるほど、俺は優しくも愚かでもない」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルジェロ・ブルート
想像力溢れた騎士さんだコト。
…ひひ。いーよォ、やってみろよ!

拷問具は【Sangue】を手に取って。
あっちのユーベルコードは、面倒くせぇしいっそ封じにかかる…つもりだったんだけどよ。
【悪食双子の遊戯会】
こいつらが遊ばせろとねだるからさぁ。
ま、ガキ同士丁度いいんじゃねぇの。
無邪気で残酷な双子のダンピール。死ぬまで遊んでやってくれ。

俺に目移りなんてのは厳禁だ。でねーと拗ねたそいつらが即殺りにくるぜ?
こっちも【逃げ足】【ダッシュ】で当たんねぇよう気を付けっからさ。
いい兄ちゃんだろ?ひひ。



「想像力溢れた騎士さんだコト」
 舌なめずりでもするように、アルジェロ・ブルート( ・f10217)はたっぷりの嘲りを込める。
「……ひひ。いーよォ、やってみろよ!」
 憎きヴァンパイアを苦しめて、苦しめて、苦しめ尽して殺す。そのための拷問具【Sangue】を振るうと、虚空より新たな影が二つ現れる。
 子供だ。召喚されたのはどことなくアルジェロと似た面影を持つダンピールの男の子と、その鏡写しのような女の子だった。
「こいつらが遊ばせろとねだるからさぁ。ま、ガキ同士丁度いいんじゃねぇの。無邪気で残酷な双子のダンピール。死ぬまで遊んでやってくれ」
 アルジェロがひらりと手を振ると、それを合図に双子がはじき出されたかのように走り出した。
「まったく君たちは、次から次へと芸が多いねぇ!」
 異端の騎士は剣と盾を以てそれを迎え撃つ。見事な連携で攻める双子だが、騎士巧みにこれをいなした。飛び掛かる双子の片翼を剣にて打ち払い、その隙に死角から迫ろうとするもう一方を盾を振るって迎え撃つ。
「これはこれで面白い、け、ど!」
 騎士は一瞬の隙をついて手に持った剣を高らかに掲げる。剣は即座に血薔薇へと姿を変え、舞い散る花びらがその周囲を激しく渦巻いた。
 乱れ舞う血花に激しく打ち据えられ、さしもの双子も距離を取ることを余儀なくされる。騎士と双子の輪舞は、彼の一撃で一幕の終了を告げることとなった。
「僕は君とも遊びたいなぁ。いいんだよ、三人でかかってきても?」
「俺に目移りなんてのは厳禁だ。でねーと拗ねたそいつらが即殺りにくるぜ?」

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
本当に下種やろうだな
アンタ
お陰で何の遠慮もなくぶっ潰せるってもんだ
狩らせてもらうぜ

手段
命と未来を守るという想いを込め
Wウィンドを奏で歌い
皆を鼓舞しつつ聖なる調べで敵の力を削ぐ
;コミュ&パフォ&演奏&歌唱&手をつなぐ&勇気&優しさ&破魔

将を射んとするなら、だな
的がデカい黒馬へ地獄の炎を放つ

敵攻撃は剣で受け流し
その勢いのまま体を回転させ逆側から
紅蓮の炎を纏う焔摩天を喰らわせるぜ
:武器受け&属性攻撃&破魔&薙ぎ払い&鎧砕き

流した血は地獄の炎と化し敵に利用させない
花弁は炎の渦を纏い触れた側から灰に変える

今を生きる人達が未来を創る
未来は人の命の重みだ
命を玩具にするてめぇはやっぱ過去の残滓だぜ
還んな


クリミネル・ルプス
「騎士ちゅうモンはさすがに堅牢やな……」
攻防にバランス良く、機動力も高い騎士を穿つには火力が足りないと実感する。
幸か不幸か、夜空に浮かぶ月を凝視すると、己の中の『ケダモノ』が鼓動し、肉体の各所が獣化。
「………か(狩)ったる……」
気怠げな声とは裏腹にその身はまさに獲物に飛びかかる狼のように騎士へと肉薄する。
攻撃を躱し密着し(躱せないなら喰らっても離れず)【灰燼拳】を【鎧砕き】が付与された所に叩き込む。

「…確かに良ぉ叩いたら柔らこぉなったわ!!」
騎士の吐いた言葉に対する実証を文字通り『叩き付けた』



「騎士ちゅうモンはさすがに堅牢やな……」
 ヒットアンドアウェイで着実に騎士にダメージを与えていくクリミネルだが、しかし決定打となるような一撃には至ってはいなかった。敵の動きを注視し回避に重きを置いた状態では、どうしても攻撃が軽くならざるを得ないのだ。
「だが、こんな下種野郎はここで倒さなきゃならねぇ。みんなの命と未来を守るために!」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は己の相棒でもあるギター、ワイルドウィンドをかき鳴らすと、高らかに歌い始めた。いっそ場違いなまでの力強い旋律と歌声が周囲に鳴り響き、猟兵達の魂を鼓舞する。
「なんや、ええ音だすやん。これはウチも負けてられんなぁ」
 ウタの奏でる音楽から力を得て、クリミネルは夜空を見上げる。視線の先には、中天に浮かぶ煌々と輝く満月があった。
 決意を込めて月を凝視すると、彼女の中の人狼の血――『ケダモノ』が鼓動し、四肢には鋼の如き獣毛が生え、爪は肥大化し、みるみるうちに肉体が獣化していった。
 人狼である彼女はその習性として、満月をみると狂暴化してしまうという特性を持っている。しかし今、彼女の心の中には、人狼という己のサガを利用してでも目の前の悪逆非道たる異端の騎士を倒さねばならないという鉄血の意思が満ちていた。
「……狩ったる」
 クリミネルはまさしく獲物に襲い掛かる狼そのものといった勢いで駆け出すと、一息の間に騎士との距離を詰める。
「冗談。狩るのは僕。君たちは狩られる側でしょ?」
 騎士は剣を以て彼女を迎え撃つ。カウンターで放たれた斬撃をクリミネルは紙一重で掻い潜り、騎士の懐へ肉薄せんとする。が、しかし、
「姿が変わって動きは速くなったけど、その分雑だねぇ!」
 剣を回避されることをも先読みしていたかのように、騎士は盾を叩きつける。クリミネルはその一撃をぎりぎり防御することに成功したものの、大きく体勢を崩してしまう。
「そぉら、終わりだ!」
 間髪を入れずに繰り出される剣撃がクリミネルを襲う。しかし、その剣が彼女を捉えることはなかった。
「悪いが――」
 ウタだ。クリミネルに続くように駆けていた彼が騎士と彼女の間に入り込み、迫りくる斬撃を受け流すことに成功していた。
「終わるのはお前の方だぜ」
 ウタは攻撃を受け流した勢いをそのまま利用して体を回転させると、紅蓮の炎を纏った焔摩天を叩きつけた。彼の体から噴き出す地獄の炎は一瞬にして騎士を捉え、すべてを焼き尽くさんとその勢いを増していく。
「命を玩具にするてめぇはやっぱ過去の残滓だぜ。とっとと過去に還んな」
 今を生きる人達が未来を創る。未来とはすなわち、人の命の重みそのものだ。
 だからこそウタは、人の命を、未来を弄ぶ者を決して許しはしない。
「こんな、炎ごときで……!」
「ほんならこっちもついでに喰らいや!」
 ウタが作った時間で体勢を立て直すことに成功したクリミネルが、この機を逃すまいとすかさず追撃を仕掛ける。肉薄した位置から超高速の灰燼拳を叩きつられ、騎士はたまらずたたらを踏んで後ずさった。
「確かに、良ぉ叩いたら柔らこぉなったわ!」
「……調子に乗っちゃってさぁ。どうせ死ぬのに、よく頑張るもんだねぇ?」
 変わらぬ軽口を叩いてはいるものの、身に纏う鎧はそこかしこが砕け、騎士自身も肩で大きく息をしており、かなりのダメージを与えられたことは間違いないであろう。
 戦闘の終わりは近い。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルジェロ・ブルート
「俺が遊んでやってもいいんだけどさ。今あいつらから玩具を取り上げたら俺が怒られちまう」
へらりと笑って高みの見物。

輪舞を終えた【悪食双子】。
砕けた鎧に大喜び、再び駆ける。
その鎧の先の肉を貫きましょ、と。
大喰らいの悪食双子、まるで乱雑に玩具を扱うように、引いて千切って叩きつけるの。
ねぇあの盾じゃまだわ、ご飯が遠い。
それじゃあ先にあの盾を。持つその腕から貰っていこう!
お兄ちゃんの【Sangue】をかっぱらって、いっぱい玩具で遊びましょ。


アレクシア・アークライト
 あいつは戦いそのものを楽しんでいるように見える。
 私達を倒すことだけじゃなく、自分が倒されることすらも楽しんでいるように見える。
 あと少しで私達は勝てると思う。だけど、あいつが満足して死んでいくなんて認めない。

「はーい、猟兵の皆さん、連絡でーす」
「ここはおしまい。そいつはほっといて帰ってこいだって。全く人使いが荒いわよね」
「何? 貴方との戦いはおしまい。私達は帰るから、後は自分が作った亡者でいくらでも好きなだけ一人遊びをしていてちょうだい」

 落胆、絶望したところを一撃で屠ってやる。(念動力、グラップル、捨て身の一撃、全力の一撃)

「貴方みたいなヤツをほっとくわけないでしょ」



「俺が遊んでやってもいいんだけどさ。今あいつらから玩具を取り上げたら俺が怒られちまう」
 口の端を吊り上げ、軽薄そうな嘲笑を表情に浮かべるアルジェロ。
 彼の双子を召喚するユーベルコード、悪食双子の遊戯会は使用中の自身の行動を制限する上、彼自身がダメージを受けると能力が解除されてしまうデメリットがある。しかし、それを知らない騎士を相手に、わざわざ丁寧に説明してやるいわれなどない。
 アルジェロはあくまでも余裕たっぷりに、にやにやと笑いながら双子を繰るのみだ。
「そら、お前たちもまだまだ足りねぇだろ? もっともっと、あのお兄ちゃんに遊んでもらってきな」
 自らの持つ拷問具【Sangue】を双子に向けて投げ渡す。双子はそれを受け取ると、けたけたと楽し気な笑い声を上げながら、再び騎士への元へと駆け出した。
「むかつく笑い声上げちゃってさぁ……捻り潰して、二度と笑えないようにしてあげるよ!」
 飛び掛かる双子に対して、騎士は剣を以て迎え撃つ。一発、二発と続けざまに振り下ろされる拷問具と剣が激しくぶつかり合い、甲高い金属音を打ち鳴らした。
 完璧なまでの連携で迫る双子の連撃は、騎士にわずかな休む間を与えることもない。それまでに蓄積したダメージも相まってか、騎士の動きは目に見えて精彩さを欠いていった。

(なんだろう。あいつは戦いそのものを楽しんでいるように見える。私達を倒すことだけじゃなく……自分が倒されることすらも楽しんでいる。そんなふうに見える)
 騎士と双子が再び激しい攻防を繰り広げる中、アレクシア・アークライト(UDCエージェント・f11308)の中に小さな違和感が浮かんでいた。
(あと少しで私達は勝てると思う。だけど……)
 はたして、これでよいのだろうか。
 長きにわたって村の住民達を虐げ、苦しめ、悪の限りを尽くしてきた異端の騎士。我が子を、親を、妻や夫を、自らの手で殺めることを強要され続けた住民達の無念が一体どれほどのものか。アレクシアにはわからない。
 騎士は待っていたと言った。自分たちのような反逆する人間を待ち望んでいたのだと。一つの夢がかない、彼は今、おそらくこの状況を最高に楽しんでいる。たとえここで敗北し、その仮初の命が再び過去の海に還ることになろうとも、ある種の満足感を抱いたまま、死んでいくのではないだろうか。
(そんなことは――絶対に認めない)
 一つの決意とともに、アレクシアは拳を強く握りしめた。

「しつこいガキどもが……!」
 まとわりついて離れない双子の攻撃に焦れた騎士が、大振りに盾を振るう。それは双子を吹き飛ばし、一旦仕切りなおすための一撃だった。しかし度重なるダメージから精彩を欠いたためか、あるいはその行動を狙って待っていたのか、盾による一撃は双子の弟にがっしと受け止められることとなった。
 にたりと弟が笑うと、受けた盾をそのまま奪い取らんと強く引く。
「こいつ、僕の盾を!」
 子供の見た目からは想像もできない強い力ではあったが、いくら手負いとはいえ、そう簡単に奪い取られる騎士ではない。しかし、奪われまいと力を込めたその一瞬の隙を、双子の妹は見逃さなかった。
 拷問具を振り上げ、今まさに叩きつけんとしたその瞬間、
「はーい、猟兵の皆さん、連絡でーす」
 まるでその場にそぐわない、あっけらかんとした声でアレクシアは言った。
「え?」
「は?」
 騎士とアルジェロの声が重なる。双子も揃ってお互いの顔を見やり、首をかしげている。
 突然すぎる一声に虚を突かれ、アレクシア以外の誰もがその行動を止めることとなった。
「ここはおしまい。そいつはほっといて帰ってこいだって。全く人使いが荒いわよね」
 ゆっくりとした足取りで歩み寄りながら、アレクシアはため息交じりにそう言った。
「てことで、帰るわよみんな。ほら、双子ちゃんもお兄さんのところへ戻りなさい」
 双子の頭をわしゃわしゃと撫でまわし、まるで戦場にそぐわぬ優しげな声でそう告げるアレクシア。誰もがあっけにとられているそんな中、
「ふ……ふぅ、ざけ、る、なぁああぁあぁあああ!」
 異端の騎士が、咆哮を上げた。
「き、君なぁ! 何言ってんだよ! わかってんのか? 今の、この状況が! わかってんのかぁ!」
「何? 貴方との戦いはおしまい。私達は帰るから、後は自分が作った亡者でいくらでも好きなだけ一人遊びをしていてちょうだい」
 激しい剣幕で烈火の如く怒りを迸らせる異端の騎士を相手に、アレクシアは飄々とした態度を崩さない。まるで目の前を羽虫が飛び回っていてうるさいなぁとでも言わんばかりに、しっしっと手で払った。
 騎士は怒り心頭といった様子でアレクシアに詰め寄ると、彼女の胸倉を掴み上げた。
「ふざけるなって言ってるんだ! 君達は村を守りに来たんだろう。僕を倒しに来たんだろう? なんで帰るんだよ。僕はまだ倒れちゃいないぞ! このまま帰るっていうなら、僕はこのまま村の連中を皆殺しにするぞ。一人も残さない。それが終わったら隣の村も……その隣の村も、隣の、村も! 全部全部叩き潰して、捻り潰して、虐殺して回ってやるぞ! ガキを殺してはらわた引きずり出して、それで作ったロープで親の首を絞め殺して絞首台にさらしてやる! 兄弟は互いに足の先から共食いだ! いいのかよ君らはそれで! ぁあ? いいのかって聞いてるんだ!」
「いいわけないでしょ」
 ドン、という衝撃音。それは、アレクシアの全力の一撃が騎士の胸を穿ち貫いた音であった。如何に強固な騎士の鎧といえど、猟兵達の度重なる攻撃により歪み、ひび割れ、彼女の念動力が極限まで込められた拳の一撃を防ぐだけの耐久力は残っていなかったのだ。
 ずるりと拳を引き抜くと、騎士の胸部にぽっかりの空いた穴から、ドス黒い液体が止めどなく流れ出す。
「貴方みたいなヤツを、ほっとくわけないでしょ」
 凍てつく氷のような表情で、吐き捨てるようにアレクシアが言った。すべては騎士の思い通りに事を運ばせまいとする、彼女の演技であった。
「……君、最高に性格悪いよ」
 騎士は絞り出したかのようなかすれた声でつぶやく。そしてそのままどうと倒れ伏すと、二度と立ち上がることはなかった。
 騎士が完全に沈黙したことを確認すると、改めてアレクシアが言う。
「それじゃあ、今度こそ帰るわよ。みんな」
 あっけにとられつつも彼女に言葉にうなずき返し、猟兵達は帰路に就く。
 もう、あの村を悲劇が襲うことはないだろう。住民たちの心に残された傷の深さは計り知れない。だがしかし、時の流れがわずかずつにでも、その傷を癒していくことだろう。
 山の稜線の向こう側からは、昇りくる朝日の光がのぞいている。その輝きはまるで、これからの村の未来を祝福するかのようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト