#アリスラビリンス
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●スナークはほんとにおそろしい
その森に決して近づいてはならない。
それは、この世界に生きるアリスならば、誰でも知っていること。
街を歩いているだけで、今日も誰かが噂話をひそひそしている。
「――またスナークが出たらしい」
「いや、あれはブージャムだね。ああ、おそろしい。おそろしくてたまらない」
アリスたちだけではない。
人の言葉を喋る木々や花々、妖精たちに愉快な仲間たちも――オウガたちでさえも。
その森に住むかいぶつを、スナークを畏れている。
「スナークは俺の家の2倍も3倍も大きな存在だったんだ、そいつが俺の友人を丸呑みにして――」
「いやいや、私が聞いた話だと何千何万のスナークが……」
みんなの話はバラバラだけど。
共通しているのはおそろしいそのかいぶつスナークは、私たちには到底敵わない存在だということ。
だから、そのスナークがいる不思議の森には決して近づいてはならない。
なのに……。
「ああ、ああ、どうしてかしら。どうして、どうして――」
どうして、不思議の森に足を踏み入れてしまったのだろう。
ここには、あんなにもおそろしい、訳のわからないスナークがいるというのに。
あのオウガたちから逃げるためとはいえ、こんな場所に迷い込んでしまうなんて。
「スナークに会ってしまったらどうしましょう……」
きっと、目が合えば自分は蛇に睨まれた蛙のように恐怖から身動き一つ取れなくなってしまうに違いない。
そんな私を大口を開けたスナークはきっと一呑みにしてしまうのだ。
なんてこと、考えただけでおそろしい。
「どうしましょう、どうしましょう、このままじゃ私……死んでしまうわ」
●スナークはほんとにおそろしい?
人肉を喰らうオウガなる怪物が支配する無数の「不思議の国」が繋がって生まれた世界、それが複合世界アリスラビリンスである。
そこでは”アサイラム”と称される場所から召喚された異世界人たちがオウガから逃げながらそれぞれの世界への帰還を目指しているのだという。
「その世界のひとつ……不思議の森の世界、とでも言おうかしら。そこで召喚された人たち――アリスが襲われる事件が起きてるの」
グリモアベースに集まった猟兵たちにそう告げるのはシエル・アインストール(ばーちゃるあーてぃすとシエル・f03731)。
複合世界のひとつ”不思議の森の世界”。
まんまな名前のその世界はおおよそ8割が緑色……即ち、森に覆われた世界である。
「なんかTHE・自然!て感じね。ついでにその辺の木とか、花とか、あと動物とかも人の言葉を喋ったりするらしいわよ。まぁとりあえずそんな世界で事件発生、てことだから説明していくわね」
襲われているアリスの名は、メリルというアリス適合者……他の世界で言うところの人間にあたる種族の少女だ。
彼女は、人肉を喰らうオウガたちから逃げるうちに決して立ち入ってはならない森へ足を踏み入れてしまった。
「それが不思議の森……ってまんまかーい! いえ、いいわ。わかりやすいほうがいいもの。良いわよね?」
わかりやすい方がいいもんね、うんうん。
「で、その森にはね。スナークって怪物がいるらしくてね。メリルはこのスナークをすごく怖がってるわ」
スナーク、というのは不思議の森の世界に住む者なら誰でも知っているこの森に住む怪物の名前だ。
「スナークはおそろしい、特にブージャムは決して出逢ってはいけない……まぁいろいろあるみたいだけど」
共通しているのは、みんながスナークを恐れているということ。
そこまで話したところで……。
「ところで、みんなはこんな言葉を知ってるかしら? 幽霊の正体見たり枯れ尾花!」
簡単に言えば、みんな怖がっていたものもその実体を知ってみればてんで大したことのないものだった、という例え話である。
「まぁ、そういうことなの。みんなが怖がってるスナークの正体は案外大したことのないものでね」
不思議の森の木々たちは、その森に立ち入った侵入者の心を読むことが出来るのだという。
心を読んだ彼らは実際に侵入者が思い浮かべた存在――スナークに姿を変えて、侵入者たちを襲うのだ。
「その世界の住人はみんな知ってる噂話だもの、誰も木々が化けてるだなんて思いもしないわ」
仮に、真実を知ってしまったとしたらそれこそその森を狩り場にしているオウガたちに襲われて、食べられてしまうだろう。
ああ、それこそブージャムだ。
決して出逢ってはならない存在だ。
不思議の森のスナークが恐ろしいものだと噂を流した張本人である彼らにとって、真実を知られることはもっとも恐ろしいこと。
「だから、こうしましょう。スナークなんて怖くない。スナークなんて非力でちっぽけだってね!」
心の中でそう唱えれば、目の前のスナークはそのまま、非力でちっぽけな存在へと変わるだろう。
「森のなかにいるメリルにも教えて、勇気づけてあげて欲しいの」
そうすれば、きっと不思議の森に惑わされることもなく、彼女は無事に森を脱出することも出来るだろう。
「もちろん、そうなればオウガたちも黙ってはいないだろうけど、そこは猟兵の腕の見せ所ね!」
そこからは、君たちの戦いだ。
そんなわけだから、よろしくねとシエルは猟兵たちを送り出したのだった。
あかわデラックス
祝え、新世界の誕生を!
というわけでアリス・イン・ラビリーンス、と新依頼です。
皆さまには「不思議の森の世界」と呼ばれる複合世界のひとつへと足を運んでいただきます。
こちら、おおよそ世界の8割が緑色の森に囲まれた世界でございます。
依頼は第一章は冒険。
第二章は集団戦。
大三章はボス戦となっております。
ひとつ、大事なルールがございますので必ず目を通していただくように……。
●NPC●
メリルという名前のアリス適合者の少女です。十代前半くらい。
普段は不思議の森の近くの村で暮らしていましたがオウガたちに襲われ、
逃げ惑ううちに不思議の森へと足を踏み入れてしまいました。
スナークのことを非常に畏れています。
●特殊ルール●
「不思議の森」にはスナークと呼ばれる世にも恐ろしいかいぶつが住んでおります、ええ、住んでいますとも。
彼ら?は非常に強大な力を持ちますが、誰もその正体を知らないと言われています。
もしもあなたが何の対策も考えず、ただそうしたこの世界の噂話だけを頼りにスナークを探したり、あるいは遭遇してしまえばきっとあなたは何も出来ず、ただただ逃げ出すしかないでしょう。
そうなればアリスを助け出すどころの話ではありません。
ですから必ず【プレイングの冒頭にスナークへの対処方法を記載】してください。
どういう方法が望ましいかは、OPを読んでいただければ。
では、皆さまのご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『生きている森』
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POW : とにかく最短ルートを目指し、強行軍で突き進む
SPD : マッピングを行い、地形を把握しながら進む
WIZ : 喋る花の話す雑多な情報を整理し、正しい順路を導き出す
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●スナークとは、おそろしいかいぶつである
不思議の森には、決して足を踏み入れてはならない。
森のなかにはスナークがいる。
出逢ってはならないおそろしいかいぶつがいる。
でも、本当にスナークはおそろしいかいぶつなのだろうか……?
幻武・極
スナークは巨人。
この森を荒らすオウガを叩きのめす力を持った大きな巨人。
だけど、その心は森を大切に思う優しい巨人。
森に危害を加えなければ、何もしない心優しき巨人。
これがボクのイメージするスナークさ。
だから、ボク達は恐れる必要はない。
ボク達は森を荒らしに来たわけではないのだから、ボク達はアリスをここから助け出したいだけだからさ。
これでどうかな?ブージャム。
さて、とにかくこの森に入ったアリスを見つけださないといけないんだけど、知らないかな?
と森に訪ねてみるよ。
メリルを見つけたら、彼女にボクのイメージするスナークを教えるよ。
●スナークとは、心優しき巨人である
「おそろしいなんて、とんでもない」
スナークとは――巨人のことだ。
この、不思議の森を愛し、森とともに生きる心優しき巨人たち。
彼らはみな、森を荒らすオウガを叩きのめすほどの強大な力を持っているが、同時にこの森に危害を加えない者たちには何もしない。
それが、スナークの正体だ。
ああ、ならばおそれる必要なんてないだろう。
「何故なら、ボクたちは森を荒らしに来たのではないのだからね」
霧がかった不思議の森を、おそれることなく進んでいくのは幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)だ。
その霧が特に色濃く立ち込め始めたころ……。
ズウウウン、ズウウウン、と大地を、木々を震わせる足音とともにその巨人――スナークは姿を現した。
「やあスナーク、はじめまして」
その巨体を見上げながら、極はにこりと頬を緩ませた。
少し尋ねたいことがあるんだ、と自身に話しかける極の視線に合わせるように膝をついて彼女の話にスナークは耳を傾ける。
「この森に、メリルっていう女の子のアリスが迷い込んじゃったみたいでね? 彼女もボクと同じように、この森に危害をくわえるつもりはないんだけどオウガたちに追われてるみたいなんだ。だから、もし彼女がどこに居るか知っていたら教えてくれないかな?」
「…………」
すっ、と極の問いかけに答えるようにスナークが森の奥、ひとつの方向を指さした。
「そっちのほうにメリルがいるんだね」
こくり、と頷くスナーク。
彼が、おそろしいかいぶつではなく、心優しい巨人であるならば。
きっとその情報も間違いではないのだろう。
「ありがとう、それじゃあメリルを助けに行かないといけないしね。ボクはさっそく君が教えてくれた方へ向かってみることにするよ」
ばいばい、と先を急ぐ極を、手をふりながら見送るスナーク。
その姿は森のなかに立ち込めていた霧が薄くなっていくとともに段々と薄れてゆき、やがてそこには誰も居なくなった。
「(これでどうかな? ブージャム)」
残念だったね。
スナークがおそろしいなんて、とんでもない。
彼らはボクが出逢った巨人のように心優しい存在なのさ。
「メリルに会ったら、教えてあげなきゃね」
そんなことをつぶやきながら、極はメリルを探して森の中を進んでいくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
〇スナークへの対処方法
聞いた話では相手の心を読み、思い浮かべたモノに化けるらしい
――可愛くて害のないモノ…とげがあるけど動くのが遅いハリネズミみたいなのをイメージすればいいか
WIZ
転送され次第周りを観察
【携帯食料】を食みUC対象を事前にメリルに設定
しゃべる花達から貰う情報を【学習力】で分析しながらメリルを探す
【失せ物探し】で隠れている情報も合わせて検討
「多分こっちだろう」
情報と細胞から感じるテンションで探す方向を決めて進む
メリルを見つけたら、不安を払拭するように優しく声をかける
「良く頑張った。不安だったんじゃない?じゃ、とりあえずこの森からぬけよっか」
●スナークとは、のろまなハリネズミである
「あら。アリスだわ」
「いいえ、アリスみたいだけど、アリスじゃなさそうだわ。不思議ね! 不思議なお客さんだわ!」
転送された不思議の森。
そこに自生している人語を介する花たちと会話していたのは仁科・恭介(観察する人・f14065)。
「似たようなものですよ。実は、この森に迷い込んだメリルというアリスを探しているのですが」
「そんなことよりお話しましょう!」
「そうよそうよ、こんな機会は滅多にないもの、いろんな話が聞きたいわ!」
「ははは……」
猟兵という存在が珍しいのか、あるいは単純に話し好きなのかきゃーきゃーと騒ぎながら会話を続ける花たちと戯れつつも、恭介は持ち前の礼儀作法や学習力で、少しずつ情報を入手していく。
「そういえば……さっき、あなたみたいな変わったアリスが森の奥へ走っていくのを見かけたわね」
「ああ、その子もメリルって子を探してたって聞こえてきたわ」
「へぇ……その子はどちらへ行ったのか、わかりますか?」
「あっちよ、あっち! あっちの方よ!」
喋る花たちが器用に頭を揺らして、ひとつの方角を指し示した。
メリルを探す変わったアリス、とはおそらくは自分と同じ猟兵の仲間のことだろう。
「ありがとうございます。では、先を急ぎますので……」
喋る花たちに軽くお辞儀をしたあと、先を急ごうとする恭介に――。
「待って」
「そうよ、待って。あなたも、他のアリスたちも本当に物好きだわ!」
「この森に、スナークがいるのを知らないのかしら? 知らないなら教えてあげる! スナークは――」
「”とげがあるけど動くのが遅いハリネズミ”……可愛くて、害のないケモノ、です」
恭介が遮るように述べたスナークの正体に喋る花たちが「えっ」「ええっ!?」と一様に困惑したような様子を見せる。
「ち、違うわ、スナークは……」
「いいえ、違いませんよ。スナークとは、そういうもの」
ハッキリと、そう断言するように言い切った恭介の前に、彼の見解が正しかったと言わんばかりにのそのそと重い足取りで、愛らしいハリネズミのような生き物――スナークが姿を現した。
それを見て、ほら言ったとおりでしょう?と言う恭介に、喋る花たちは言い返すことが出来ずに押し黙ってしまう。
「さて……あっちの方、だったな」
懐から取り出した携帯食料に口をつけつつ、情報を得た方角へと視線を戻す。
共鳴(ハウリング・レスポンス)。
フードファイターたる彼にとって、食事とは単なる栄養補給ではない。
食事することによって恭介は自身がそれ、と定めた相手の感情の高ぶりに応じて全身の細胞を活性化させることも出来るのである。
進むべき方向を見定めた恭介はまっすぐそちらへ向かって走っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
スバル・ペンドリーノ
(スナークなんて怖くない。スナークなんて非力でちっぽけだ)
出会ったらそう念じる、ね。
「ああ、貴方たちもそうするのよ。それと、メリルって子に会ったら助言してあげて」
送り出すのは影から沸き出た使い魔たち。手分けして探してもらうわね。
まあ、森の中で高く飛んでも仕方ないけど……目の数は、大いに越したことないものね。
怖いものは血に飢えた吸血鬼。赤い爪と瞳、銀の髪――欲望に呑まれた私。
ちっぽけなのは――見上げた星(ステラ)に憧れる影。何もできない、か弱い女の子。
抱き締めて――認めて。目を開けば、もうスナークなんてどこにもいない。
切り裂くのも忍びないもの。弱さを受け入れて、一緒に進んであげる。
※アドリブ歓迎
●スナークとは、影(あなた)を映す鏡である
スナークなんて怖くない。
スナークなんて非力でちっぽけだ。
そう、心の中で復唱しながら不思議の森を歩くのはスバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)。
「やっぱり、こういうときは目の数が大いに越したことはないものね」
そう言って、スバルはとん、と扉を叩くように自身の影を踏んで踵を鳴らす。
すると、その音に呼応するようにゆっくりと影絵のような黒塗りの蝙蝠たちがスバルの影のなかから姿を現した。
彼らは頼りになるスバルの使い魔――舞い踊る群れ。
戦う力こそ持ち合わせてはいないが、ことこういった人探しなどの支援に関してはこれほど頼りになる者たちも居ないだろう。
「メリルって子を探して欲しいの。ああそれと、もしスナークに会ったら……私と同じように、心のなかで念じてね?」
そうすれば、きっとだいじょうぶ。
怖いのは、本当におそろしいものはスナークではなくて――。
スバルの脳裏に浮かぶのは、血に飢えた吸血鬼。
欲望に呑まれ、その血のさだめのままに人を襲う吸血鬼(じぶん)の姿。
そんな存在に森のなかで出逢ってしまったら、そう思うと少しだけ、身体が震えるけれど。
「だいじょうぶよ、スナークは非力でちっぽけだもの」
ちっぽけな、見上げた星(ステラ)に憧れるだけの、何も出来ないか弱い女の子。
ああ、それがスナークだ。
自分が、受け入れなくてはならない影だ。
「それじゃあみんな、任せたわね?」
ふわりとタクトを振るうようなスバルの号令に合わせて、蝙蝠たちが森のなかへ散り散りになって飛んでいく。
やがて、最後の一匹がスバルの視界から完全に居なくなってしまった頃、それは静かに姿を現した。
「……」
いつから、そこに居たのだろうか。
銀色の髪をしたその――スバルと瓜二つの姿をした少女は、木々に隠れるように顔だけを出してこちらをじっ、と見つめていた。
何も出来ず、ただそっと物陰からまばゆいものに憧れるだけの存在。
非力で、ちっぽけなスナークがそこには居た。
「怖がらないで」
そっ、と自身の生み出した影に歩み寄るとそのままスバルはスナークをぎゅっと抱きしめた。
「あなたは私、弱くて、ちっぽけなスバル」
切り裂いて、否定する。
そんな選択肢もあったでしょうけれど――。
認めて、弱さを受け入れないと、きっとステラはいつまでもただ、何も出来ないままだから。
”がんばって”。
そんな声が、スナークから聞こえたような気がして静かに瞼を開いたスバルの前には、もう誰も居なかった。
スバルのもとに、森のなかへ放った蝙蝠たちからメリルを見つけたという報告が入ったのは、そのすぐ後のこと。
大成功
🔵🔵🔵
○お詫びと訂正○
上記リプレイ『スナークとは、影(あなた)を映す鏡である』におきまして、下記の内容に誤りがございました。
参加して下さったお客様に謹んでお詫び申し上げますと共に、ここを訂正いたします。
【誤】
認めて、弱さを受け入れないと、きっとステラはいつまでもただ、何も出来ないままだから。
【正】
認めて、弱さを受け入れないと、きっとスバルはいつまでもただ、何も出来ないままだから。
水元・芙実
す、スナーク?
そんな非科学的なものいるわけがないじゃない!
怖くない怖くないんだから!
だいたい見る人によって形が変わるとか…ちょっと変でしょ!
…見る人によって形が決まる?
それって量子力学よね?
観測した時点でその状態が確定するなんてそのものじゃない
スナークって「有るのに無い、無いのに有る」状態?
じゃあ話は簡単よ!
「スナークは今私の目の前には無い」わ!
無いものを恐ろしく思う必要は無いわ。恐ろしいという気持ちこそが恐ろしいの
知らないことは怖いから、半端に知ることも怖いから
さあメリルを探しましょう。多分怖いもの見たさでこの森に引きずり込まれたんだろうしね
だってそうでしょう?
知らないものは知りたくなるもの
●スナークとは、量子力学的存在である
「す、スナークなんてそんな非科学的なものいるわけないじゃない! 怖くない、怖くないんだから!」
まるでうわ言のようにぶつぶつと怖くない、怖くない……と言葉を繰り返していたのは水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)だ。
いつの間にか周囲を覆っていた霧のせいで、共にこの不思議の森をおとずれた猟兵たちと散り散りになってどれだけの時間が経っただろうか。
まぁ、全員が全員一緒になって行動するよりも、ひとりずつ散らばってメリルを探したほうが効率も良いだろうし、それは良い。
問題は――。
「そう、スナークよ! だいたい見る人によって姿が変わるとか……ちょっと変でしょ! あ、ちょっと待って? 見る人によって、形が決まる……? そうよ、それって――」
量子力学よね?とひらめいた芙実が思わずぽん、と手を打った。
誰かが観測した時点で、その状態が確定する。
スナークとはきっと”有るのに無い、無いのに有る”という実在と非実在が重ね合わせになったような存在。
まるでどこかの世界の有名な実験のように観測者が自身の存在を確立するそのときを、今か今かと待ちわびている――観測者が居なければ成り立たないあやふやなモノ。
それが、スナークだ。
「残念だったわね! あなたがそういう存在だっていうのなら、話は簡単よ! ”スナークは今私の目の前にはない”わ!」
不思議の森に立ち入った者を襲うおそろしいかいぶつスナークは、今自分の目の前にはそもそも存在しない。
「スナークなんて居ない。私の目の前にはない」
もう一度、断言する。
その存在を否定するように、しっかりと。
私は、あなたを観測しない。
だって、あなたはそこに居ないのだから、もうおそれる必要もない。
その言葉通りに、ついぞ芙実のまえにスナークが姿を現すことはなかった。
「無いものを恐ろしく思う必要は無いわ。恐ろしいという気持ちこそが恐ろしいの」
知らないことは怖いから、半端に知ることも怖いから。
きっと、この不思議の森に迷い込んでしまったメリルもそうなのだろう。
「好奇心は猫をも殺す、とはよく言ったものだけど……」
さあ、手遅れになるまえにメリルを探しましょう、といつの間にか霧が晴れていた森のなかを芙実は駆けていく。
彼女がメリルを保護した仲間たちのもとへ追いつくのは、その少しあとのこと。
そうして、無事に不思議の森に迷い込んだアリスを見つけ出した猟兵たちは、彼女とともにこの森を抜けようと――。
大成功
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第2章 集団戦
『グリードキャタピラー』
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POW : キャタピラーファング
【無数の歯の生えた大口で噛みつくこと】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 脱皮突進
【無数の足を蠢かせての突進】による素早い一撃を放つ。また、【脱皮する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ : 汚らわしき蹂躙
全身を【表皮から溢れる粘液】で覆い、自身が敵から受けた【敵意や嫌悪の感情】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
イラスト:猫背
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ブージャム
「なに、これ……ひどい……ひどいわ!」
猟兵たちに保護され、彼らとともに森を抜けようとしたメリルの目に飛び込んできたのは、見るも無残な姿に変わった森の木々や喋る花たちだ。
まるで”巨大な害虫に喰い荒らされたように”木々も、花々もぽっかりとあいた穴だらけになっている。
「キャハハハ! それは、あなたたちのせいよ!」
「自分たちに与えられた役割を果たせないおバカな連中!」
「スナークは、おそろしいかいぶつなのに! ちゃんと役目を果たせないなんて、いらないじゃん!」
「だから喰った! 喰ってやった! ぎゃは、ぎゃはは、タスケテ~~~! なんて、悲鳴を上げて、おかしいの!」
いつの間にか、メリルや猟兵たちを取り囲んでいた醜悪なオウガたちが笑い声をあげる。
「バカな連中! 愚かな連中! オレたちの言う通りに、してればよかったのに!」
「お前たちも、逃げ帰ってアリスを助け出そうなんてしなければ、殺されずに済んだのに!」
どうやら彼らは、スナークの真実を知った猟兵たちをメリルもろとも喰い殺すつもりらしい。
戦いは、避けられそうにない……!
水元・芙実
言いたいことはそれだけ?
ならわたしはあなた達に甘い甘い水飴をあげるわ、それもたくさん。お腹がいっぱいになるくらいまで。
幻炎合成法で空気をニトログリセリンに変えるわ。
そんなに食べること大好きなら、あげましょう。その大きな口の中に投げ込んで上げるわ。
バカ、か。
じゃあもし私達がスナークに食べられていたら、バカじゃなかったの?
まああなた達の回答なんて分かってるけど。
あなた達はバカとしか言えないバカなのよ、結局の所。
…だからこんな挑発にも簡単に乗るのよ。(フォックスファイアを口の中に投げ込み爆破する)
蝶になれずに身体と口だけが大きい芋虫こそが、バカで愚かでどうしよもないのよ。
これでも怒ってるんだからね!
スバル・ペンドリーノ
あらあら……これがオウガ?
せっかくの可愛らしい世界なのに、随分といかめしい面構えの子が出てきたわね。
この爪で引き裂いて……と言いたいところだけど、粘液で服が汚れちゃうかしら。やめておきましょう。
せっかく召喚したのだし――皆、吸い尽くしてあげて。
……嫌悪感?
いいえ、別に? 私、虫とか平気なタイプだから。
服が汚れたら洗うのが大変だけど、それくらいね。敵意もそんなにないのだけど……まあ、相容れない立場なわけだし、諦めて頂戴ね。
ああ、ただ、一つだけ。――ねえ、虫さん。覚えておいて。
噛み付きっていうのは、もっと愛を込めて、上品にやるものよ。
もちろん、貴方たちにはやってあげないけどね?
※アレンジなど歓迎
●オウガたちの誤算
「あらあら……これがオウガ?」
これはまたずいぶんといかめしい面構えで、童話のような可愛らしい世界観にはおおよそ似つかわしくない登場人物が増えたものだとスバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)は思う。
「ぎゃは、ぎゃはは! 怖いだろう? 恐ろしいだろう? でもダメー、逃さない! アリスも、森の植物も、お前ら猟兵もみんな俺たちの食い物だから、ぎゃはははは! おっかしー!」
涎が飛ぶのも構わずに耳障りな甲高い笑い声をあげるオウガ――グリードキャタピラー。
「……言いたいことはそれだけ?」
そんな、笑い声をあげるオウガたちをきっ、と睨みつけながらそう言うのは水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)だ。
「キャハハハ! 睨みつけちゃって、あなた何様のつもり?」
「森の主であるボクたちに喧嘩でも売るつもり? それとも、食べて下さいってお願いするつもり? バカじゃない!?」
「ばーーーか! そんなの聞くわけないじゃない、ぎゃはははは!」
ずり、ずるり。
まるで馬鹿にして、あざ笑うように、恐れを抱かせるように、グリードキャタピラーたちが芙実を取り囲もうと集まっていく。
「ええ、そうね。あなたたちには甘い甘い水飴をあげる。それもたくさん。お腹がいっぱいになるまで」
だが、そんな彼らに動じることなく芙実はそう言葉を告げ――。
次の瞬間、再び彼女を笑おうとしたグリードキャタピラーの一体の口が突然爆発して弾け飛んだ。
「ああああああああああ!? 痛い、痛いいいいいいいいい!?」
「……ニトログリセリンって知ってる? ほんの僅かな振動でも爆発する有機化合物――爆薬よ」
「お、お前、お前! あああああああっ!?」
口腔内を爆発で灼かれたグリードキャタピラーがその緑の巨体を怒りに震わせながら襲いかかるも、続けざまに芙実から放られた狐火が身体のいたるところで爆発を起こし、そのまま無残に消滅していく。
「バカバカバカバカさっきからうるさいのよ、あなたたち」
その手に空気から生成したニトログリセリンの炎を宿しながら、芙実がグリードキャタピラーたちをもう一度睨む。
彼らの足元には、無残に喰い散らかされ、蹂躙された森の草花たち。
「(自分たちに従わなくなったら、はいさよなうならってこと? そんなの――)」
芙実の心の中に、手に宿した炎とは別の、怒りの炎が静かに灯っていく。
「蝶になれずに身体と口だけが大きい芋虫こそが、バカで愚かでどうしよもないのよ。これでも怒ってるんだからね!」
本格的な開戦の狼煙をあげるように、グリードキャタピラーたちの大口のなかに次々と爆薬を投げ込み、爆発させていく。
「ひ、ひいいいいいっ! なんなんだお前ら、なんでボクたちを怖がらない!? もっと怖がれよ、嫌悪しろよ!」
「んー……嫌悪感? いいえ、別に? 私、虫とか平気なタイプだから」
自身のもとへ爆発から逃げるように這いずりながらやってきたグリードキャタピラーを前に、スバルはあっけらかんとした口調で答える。
確かに粘液を纏ったその芋虫のような身体に触れて、万一にも服が汚れたらそのあとの洗濯は大変だと思うけれど、でも言ってしまえばその程度のことだ。
ついでに言えば特別敵意もそこまでスバル自身は持ち合わせてはいなかったのだが……まぁそこは、猟兵とオブリビオン。
互いに相容れぬ存在であれば、目の前のオウガたちにもまた、諦めてもらう他はない。
「皆、吸い尽くしてあげて」
影のなかから這い出た影絵の蝙蝠たちが主の号令とともに、グリードキャタピラーへ襲いかかっていく。
「くそっ! くそっ! 離れろよこいつら! 痛い、痛いいいい!」
自身の周囲を飛び交いながら張り付いては生命力を吸収していく蝙蝠たちを必死に振り払うように身体をよじらせるグリードキャタピラー。
その身体はみるみるうちに生気を失い、やがてミイラのように枯れ果てていく。
そんな、ミイラと化したグリードキャタピラーにスバルはゆっくりと歩み寄り。
「ああ、ただ、一つだけ――ねえ、虫さん。覚えておいて。噛み付きっていうのは、もっと愛を込めて、上品にやるものよ」
あんなふうに欲望のままに、喰い散らかすように噛み付いてまわるなんて、はしたない。
「もちろん、貴方たちにはやってあげないけどね?」
既に生気を吸い尽くされて言葉を返すことすらままならないグリードキャタピラーににこり、とスバルはそう微笑んだのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
幻武・極
へえ、スナークが恐ろしい怪物じゃないからいらないねえ。
本当にそんなこと言っちゃっていいのかな?
ボクは言ったはずだよ。
スナークは森を荒らすオウガを叩きのめすほどの強大な力を持っているが、この森に危害を加えない者たちには何もしない巨人とね。
あーあ、キミ達はスナークの怒りを買ってしまったようだね。
ボクは知らないからね。
キミ達が悪いんだからね。
スナークを馬鹿にして森をこんな滅茶苦茶にしたキミ達が悪いんだよ。
バトルキャラクターズを39体すべてを合体させてスナークにするよ。
スナークは衝撃波をまとった範囲攻撃で薙ぎ払い、オウガの生命力を吸収し花開く植物の属性攻撃をするよ。
●怒り、轟き
「なんなんだアイツら! あんなところにいたら、火だるまかミイラになっちゃうじゃないか!」
「あれが猟兵! 俺たちの敵! ヤバいやつら!」
恐れを知らぬ猟兵たちの姿に怯え、蜘蛛の子を散らすようにその巨体を揺らしながら森のなかを這い回って逃げるグリードキャタピラーたち。
「そんなにボクたちが恐ろしい? なら、もう一度スナークに頼んでみたらいいんじゃない?」
その行く手を阻むように、ゲーム機片手に立ちふさがったのは幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)。
そんなに自分たちが恐ろしいならば、君たちがこの森に住んでいるという噂を流したスナークの手を借りればいいじゃないかと、極は言う。
「スナークなんていない! おそろしいかいぶつになれないあんなもの、もう要らない!」
「そうだそうだ、元はといえば森の連中がちゃんと俺たちの言う通りにしていればアリスも楽に喰えたのに!」
自分たちのことしか完全に頭にないその様子に。
「へぇ、スナークが恐ろしい怪物じゃないからもういらないねぇ」
本当にそんなこと言っちゃっていいのかな、と極は不敵に笑う。
「なんだ、何がおかしい!」
「笑うな! 笑うのは私たちの役目、お前たち餌は悲鳴だけ上げていればそれでいいの!」
「……ボクは言ったはずだよ?」
”スナークは森を荒らすオウガを叩きのめすほどの強大な力を持っているが、この森に危害を加えない者たちには何もしない巨人”だと。
そう、それは極がイメージしたスナークの姿。
ああ、今にして思えば森に住む木々が、そのイメージを形にして実際に姿を現したのは、心の何処かでオウガたちに立ち向かいたいと思っていたからかもしれない。
森のなかで出逢った巨人は、あくまで外見がそうであっただけで、中身は無力な存在だったかもしれないが。
「キミたちは、スナークの怒りを買ってしまった」
ズウウウン、ズウウウン。
ああ、聞こえるだろう、聞こえるだろうとも。
大地を震わす轟きが。
森を荒らす無法者を決して許さない、巨人の怒りに満ちた足音が。
「そ、そんな! 何故だ!」
「スナークは、アイツラは俺たちが喰ってやったのに! お、お前、お前、何をした!?」
驚き戸惑うグリードキャタピラーたちの前に姿を現したのは、かつて極がイメージし、この森で出逢った巨人スナーク。
「さあて、ボクは知らないよ? 悪いのはキミたちだからね」
スナークを馬鹿にして、森をこんなふうに滅茶苦茶にしたキミたちが悪い、と極は呆れた顔で呟いた。
「よし、じゃあ怪物退治といこうスナーク。手を貸してくれるね?」
極のその言葉に、額に39という文字が刻まれた”バトルキャラクターズが合体して生まれた”巨人スナークはこくりと頷くと、そのままグリードキャタピラーたちへ向かって動き出す。
「あああああああ!? やめろ、俺たちに逆らうなスナーク!?」
雄叫びを上げながら巨腕を振るえば、生まれた衝撃波がグリードキャタピラーたちをいともたやすく薙ぎ払っていく。
かつてこの世界に住む者たちに恐怖をもたらすために流した噂から生まれたはずのスナークに、その噂を流したオウガたちが葬られていくとは何たる皮肉。
その凄まじき力にグリードキャタピラーたちはもはや逃げ惑うしかなかった。
大成功
🔵🔵🔵
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
【携帯食料】を食み、UC対象を芋虫に定める
こちら側を一気に食おうとする感情
それに反応するように全身の筋肉が活性化
「ここの生態系は本当に面白い。オウガが生まれうと世界ができるという感じなのだろうか」
【学習力】で検討しながら、目の前の芋虫と対峙する
POW
芋虫の見た目から強烈な噛みつきがあると判断
インファイトに持ち込みたい
【失せ物探し】で喰い散らかされた木の残骸を確認し、戦闘しながら【目立たない】ように拾い上げ【投擲】する
流石に反応するだろう
その対処に合わせて【ダッシュ】で近づき斬る
そして【残像】を残し離れる
メリルが逃げられるルートができればよい
数が多いがこれで数は減らせるか
マリアンネ・アーベントロート
うわぁ、メルヘンチックな世界なのに全然雰囲気にそぐわない感じだねぇ。
それとも、残酷な世界なのに外面だけ童話的、の方が正しいのかな。
まあ、どっちにしても私たちのやることは一つだけどねっ。
さあ、出番だよ。行っちゃえ、五円玉!
こう言うのもなんだけど、あんまり頭はよくなさそうな敵だからね。
私と私の『催眠・飛翔の円環』で複数体をまとめて催眠術にかけて同士討ちをさせちゃおうか。粘液で体を覆ったところで、催眠術は防げないもんね。
……バカな連中に騙されて味方同士で食い合うの、どんな気持ち?
なんて、催眠術にかかってたら同士討ちしてることにすら気が付かないか。
(アドリブ歓迎です)
●食欲のままに
「くそっ、くそっ、調子に乗って、餌のくせに!」
地響きとともに迫る巨人を避けるように森のなかを這いずるグリードキャタピラーたち。
「餌のくせに生意気な奴ら! アリスのように泣きながら逃げ惑えいいのに! そうしたら、食べてやるのに!」
「そうだ、そうだ、アリス! アリスを先に喰ってしまおう!」
彼らの目にとまったのは、猟兵たちの戦いをじっと身を潜めて見守るメリル。
「見つけた! アリス! お前を喰って、奴らを絶望の淵におとしてやる! ぎゃは、ぎゃはは!」
「い、いや……来ないで! 私なんて食べたらお腹を壊してしまうわ!?」
自分が狙われていると気付いて逃げ出そうとするメリルのもとへ、一目散にグリードキャタピラーたちが迫っていく。
「ぎゃは、ぎゃははは! 頭からパクリと――」
喰ってやる。
何重にも連なった鋭い牙がびっしりと生えた大口を開けて、恐怖からか腰を抜かしてしまったメリルへ齧りつこうとしたまさにそのとき。
「悪いが、それは看過できない」
メリルと、グリードキャタピラーの合間へ割って入る影がひとつ。
サムライブレイドを構えた仁科・恭介(観察する人・f14065)は素早くメリルの前に立つと、そのままグリードキャタピラーの大口目掛けて刀を振るい、一刀のもとに斬り伏せる。
「ボクたちの食事の邪魔をするなあ! アリスをよこせよお!」
「よこせと言われて、差し出すやつがいると思うか?」
「うるさい! もう、お前と、お前のもってるそれでもいいから喰わせろぉ!」
携帯食料を口にしながら答える恭介に今度は狙いをさだめたのか、グリードキャタピラーたちが一斉に動き出す。
カチカチと歯ぎしりのような音を出しながら飛びかかり、齧りつこうとする彼らの噛みつきを躱しながら、ときに拾い上げた木の残骸を使って相手の気を引きながら懐に潜り込み、斬る。
そしてそのまま相手の反撃を残像を残すほどのスピードで躱すと、恭介はふたたび距離を取った。
「(なるべくこのまま気を引ければ、メリルが逃げ出すスキを作り出せるか)」
とはいえ、流石にそう何度も同じ手が通じる相手でもないだろう。
共鳴の力で対象とさだめたグリードキャタピラーたちの感情の昂ぶりから動きは読みやすいが何分数が多い。
「なら、私の出番だね!」
少し遅れて森のなかへやってきた少女――マリアンネ・アーベントロート(ゼーブスタスの催眠術師・f00623)の声に恭介が振り向いた。
「あれがオウガ? メルヘンチックな世界なのに全然雰囲気にそぐわない感じだねぇ」
「ああ、ここの生態系は本当に面白い」
表向きはメルヘンチックな童話のような世界だというのに、その実中身は人喰いの怪物が支配する残酷な世界。
とはいえ、世界がどうあれ猟兵がやることはひとつだ。
「メリルさんをここから逃しつつ、あのあんまり頭よくなさそうな芋虫をなんとかすればいいんだよね」
迫るグリードキャタピラーの猛攻を掻い潜り、反撃と言わんばかりに斬り捨てながら恭介が頷く。
「さあ、出番だよ。行っちゃえ、五円玉!」
マリアンネのその声に合わせて飛翔する五円玉が次々と生み出され、それらはキラキラと黄金の軌跡を残しながらグリードキャタピラーたちの周囲をぐるぐると回り始めていく。
「な、なんだこれは!?」
「わからない! わからない! わからないなら――」
ぜんぶ、ぜんぶ、喰ってしまえ!
がぶり、と自身の周囲を迂回する五円玉にグリードキャタピラーが齧りつこうと……。
「ぎゃああああああ!? 痛い、痛い、お前、何してる、お前!」
「美味しい! このキラキラしたの、美味しい、もっと、もっと喰ってやる!」
催眠・飛翔の円環。
マリアンネの放った五円玉は、ただ彼らの周囲を漂うだけにあらず。
彼らグリードキャタピラーがその輝きに魅せられたそのときにはもう、時既におそしである。
たとえ生命吸収能力をもった粘液でその表皮を覆っていたとしても、精神攻撃である催眠術を防ぐことは出来ないのだ。
「……バカな連中に騙されて味方同士で食い合うの、どんな気持ち?」
同士討ちをしていることにすら気づかず、食い合うグリードキャタピラーたちを一瞥すると、マリアンネは今のうちだよ、とメリルを恭介とともに安全な場所へと逃していく。
共食いに夢中になったグリードキャタピラーたちは、最後の最後までその場を離れる彼らに気付くことはなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『チェシャ猫』
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POW : キャット・マッドネス
【殺戮形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : チェシャ・スクラッチ
【素早く飛び掛かり、鋭い爪での掻き毟り攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : ストレンジ・スマイル
【ニヤニヤ笑い】を向けた対象に、【精神を蝕む笑い声】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●BAD END?
もうすぐ、不思議の森を抜けられる。
共食いに夢中になったグリードキャタピラーたちを捲いたメリルと猟兵たち。
森の出口はもう目と鼻の先。
ようやく、安全な場所へ――――。
「ざぁぁぁぁんねんでしたぁぁぁぁッ!」
ばぁ、と彼らを驚かすように突然姿を現したのは大きな頭をした猫人間のようなオウガ――チェシャ猫。
「アリスの物語はここでおしまい! にっしししし、物語はバッドエーーーンド!」
アリスの少女メリルは、異世界から現れた猟兵たちの手助けによって、怪物スナークや巨大な芋虫グリードキャタピラーの棲む不思議の森を無事に抜け出せは、しなかった。
「彼らはみぃんな、突然現れたこの森の真の主である私の手にかかって、食べられてしまうのでしたぁッ!」
さぁ、物語のクライマックスをはじめよう。
たんと悲鳴を響かせておくれ、アァァァリィスゥゥウッ!
仁科・恭介
※アドリブ、連携歓迎
POW
【携帯食料】を食みUC対象を猫へ
「やはりこの生態系は面白い。いつでも採って食えるところをワザと逃がすところとか」
細胞を通して流れてくる猫の嫌な感情
「面白い。それに反応してやろうか」
猫の殺戮衝動に呼応するように【吸血】本能を解放
瞳を真紅に変え、虹彩筋を活性化し動体視力を上げる
戦いながら猫の癖を【学習力】で覚える
速度に反応するのに気づき、メリルに被害がいかない様に【ダッシュ】で動きながら猫を攻撃
たまに【残像】や【目立たない】ように拾った枝を【投擲】するなど、休みを入れつつ猫のスタミナを奪うような動きをする
「私の役目はこの猫からニヤニヤ顔を奪い取ること。さて粘りますか」
スバル・ペンドリーノ
チェシャ猫、ね。私、結構好きなのよ。「アリス」の世界のトリックスター。
大事な人たちの、大事なお話だから。
そんなこと、貴方に言っても分からないでしょうけれど。
醜悪ね……とても、醜悪。虫さんよりも、よほど醜い。
強化するのは攻撃力。真正面から、この爪で微塵に刻んであげる。避けないのなら、正面からの削り合いね。
この身は、星の悪魔と吸血鬼の血を引く正当なる闇の血統。猫が食べようなんて――身の程を知りなさい。
…………?
ああ、なに。今の下品な笑み、何か意味があったの?
ごめんなさい。私、精神攻撃とかそういうの、効かないの(呪詛耐性)
※アレンジ、絡み等歓迎
※カッコの付け方は、決めるには決めるが多少厨二病気味
●醜悪な森の主
「なるほど、森の真の主と来ましたか」
携帯していた干し肉を齧りながら、仁科・恭介は目の前の怪物を見やる。
そこにいたのは、この森の真の主を名乗る奇妙な猫人間の姿をしたオウガ、チェシャ猫だ。
自分たちの行く手を阻むように木から木へと瞬時に移動し、その度ばぁ、と驚かすように顔を出してにしししと奇妙な笑みを浮かべるその姿はアリスの物語に登場するトリックスター、チェシャ猫を彷彿とさせる。
唯一違うところがあるとすれば、その下卑た笑みと食欲にまみれた醜悪な姿か。
そんなオウガを目にして怯えるような表情を浮かべ直ぐさま一歩後ろへと下がったメリルとは対照的に恭介の様子はむしろ楽しんでいるようにも見えた。
「ここの生態系は本当に面白い。いつでも採って食えるところを、ワザと逃がすところとか」
「お前……私の話を聞いていなかったのか?」
森のなかに迷い込んだアリスと猟兵たちのお話はトリックスターであるチェシャ猫の登場によって、どんでん返しをむかえてここでおしまい。
生きて森を出る者は誰一人としておらず、彼らはみんな、みぃんな、チェシャ猫の腹の中で死ぬまで元気に暮らすのでした。
「誰がわざわざ逃がすものか! お前たちは全員、私に喰われる運命なんだから! にしししし!」
「……陳腐な物語だ。わざわざ読むまでもない」
その言葉に、カチンと来たのか。
ならば、お前から喰ってやると激昂しながら飛びかかるチェシャ猫の攻撃を既のところで躱しながら、恭介はその身に共鳴によって得たチェシャ猫の自分への嫌悪感をひしひしと感じていた。
「面白い」
自身を喰い殺したい、という相手の感情の昂ぶりに呼応するように恭介の瞳が真紅を帯びる。
「(……動きは素早いが、激昂しているせいか単調、いや無差別か?)」
迫りくるチェシャ猫の猛攻をときに切り払い、フェイントを混ぜて受け流しながら恭介が少しずつ相手の攻撃の癖を掴んでいく。
「試してみるか」
へし折れた木々の破片を手に取ると、恭介はそれをわざとあらぬ方向へと全力で放り投げた。
すると、おかしなことに自身を狙った攻撃でもないというのにチェシャ猫はその、投げられた破片をまるで敵であるかのように認識し、瞬時に破壊したではないか。
破片を投げた本人であり、倒すべき敵であるはずの恭介を無視して、だ。
「……やはり、速度に反応しますか」
チェシャ猫は、素早く動くものを無差別に攻撃している。
「そういうこと。ねぇメリル、動いてはダメ。私たちがいいと言うまで、ずっとそこに隠れていて」
こくり、と頷いたメリルをチェシャ猫から引き離すように、安全な場所を隠れさせたスバル・ペンドリーノ(星見る影の六連星・f00127)が恭介のもとへと駆け寄ってきた。
「これでひとまずは安心ですね……と、どうしました?」
荒れ狂う竜巻の如く、ただ目に留まる速いものだけを破壊し続ける理性の欠片もないチェシャ猫を見て、心底呆れたような、落胆したような顔のスバルへ恭介が問いかけた。
「チェシャ猫、ね。私、結構好きなのよ」
「なるほど、がっかりしましたか」
「ええ、とても」
きっぱりと、そう言い切るスバル。
だって、大事な人たちの大事なお話に出てくるキャラクターが、こんなだなんて。
ありえないじゃない。
「醜悪ね……とても、醜悪。虫さんよりも、よほど醜い」
万一、自分たちが動きを止めてメリルに注意が言ってしまえば危険だと森のなかを恭介とともに駆けながらスバルが言う。
そんなスバルを視界に捉えたチェシャ猫が直ぐ様彼女のもとへ飛びかかり、今しがた破壊した木片の如く彼女の身体へその鋭い爪を立てようと――。
「そう、私と爪で勝負なんて……いい度胸よ!」
チェシャ猫の凶刃が振り下ろされようとしたその刹那、紅蓮を纏ったスバルの爪が逆にチェシャ猫の身体を力任せに引き裂いた。
「この身は、星の悪魔と吸血鬼の血を引く正当なる闇の血統。猫が食べようなんて――」
身の程を知りなさい。
「き、貴様……!」
その身を纏うオーラだけでなく、チェシャ猫の返り血も浴びて赤く、赤く染め上げながら一歩、前へ出る。
「正面から来るのなら、覚悟を決めなさい。貴方が食べようとしているのが、一体誰なのか」
分からないなら、教えてあげる。
この爪でその下品な笑みが貴方から崩れ落ちるまで徹底的に切り刻んであげる。
「こ、この……!」
恭介のフェイントを織り交ぜた動きに翻弄され、果てはスバルの爪にその身を裂かれて体力もスタミナも減ってきたのか、ぜぇぜぇと息を荒げながらチェシャ猫は狼狽えながらただ二人を睨みつけることしか出来なかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
幻武・極
へぇ、キミも食い荒らすんだね。
だってさ、スナーク。
このネコも退治して、平和な森を取り戻そうか。
さて、キミのユーベルコードで飛び掛かるとしたら、スナークじゃなくて、ボクが狙われるよね。
スナーク相手じゃ、飛び掛かるのは無理だからね。
そして、飛び掛かられたボクを助けようとすれば、その大きさじゃボクまで巻き沿いにしちゃうからね。
ボクはオーラ防御で守りを固めておくよ。
スナークはレベル39のままにしておくよ。
チェシャ猫に飛びかかられたら、1レベルのバトルキャラクターになぎはらいをさせるよ。
因みにこの間レベルが上がって1レベル分余裕ができたんだよ。
●Level40
理性を犠牲に殺戮形態へとその身を変貌させ、猟兵たちを襲ったはいいもののその、素早く動くものを無差別に攻撃し続けるという性質を見破られて翻弄されたうえに、真正面からも打ち破られたチェシャ猫。
このまま行けばおそらくは思うままに弄ばれ続けると戦法を変えることにした彼は、今度は自身の数倍はあろうかという巨人との戦いを余儀なくされていた。
「キミも、この森を食い荒らすんだね」
「この森は、私のもの! どうしようと私の勝手だし、お前たちはそこに迷い込んだ哀れな餌だ!」
木から木へ飛び移りながら、自身へ襲いかかるチェシャ猫の爪をオーラで防御しながら巨人の傍らに立つは幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)。
「だってさ、スナーク。このネコも退治して、平和な森を取り戻そうか」
極の言葉に頷くように、バトルキャラクターズ39体が合体して生まれた巨人スナークが咆哮する。
そのまま、チェシャ猫へ向けてその大地を震わせるほどの豪腕を叩きつけていく。
巨人の動きは緩慢であれど、既にスタミナを相当消費したチェシャ猫にとっては充分に驚異であり、その拳が振るわれるたびにチェシャ猫の顔から余裕の色が失われていく。
「スナークは、私の創作物だったのに!」
「そう、キミがブージャムだったわけだ。でも残念だったね、スナークは、森を思う優しい巨人。キミみたいな森を荒らす無法者は決して許さない。もちろん、ボクもね」
「だったら、先に貴様を喰い殺してやる!」
スナーク相手では飛び掛かっても効果が薄い、なにより埒があかないと判断したチェシャ猫がその鋭い爪で掻き毟るように極の身体を切り裂き、その身を纏っていたオーラの防御を引き剥がしていく。
やがて完全に防御が剥がれ、無防備な姿をさらけ出した極へ――。
「残念だったね」
チェシャ猫の爪は、しかし届くことはなかった。
何故なら、チェシャ猫の爪はオーラではなく、数字の40が刻まれた人間大のスナークによって防がれてしまったから。
そのまま、爪をなぎ払いチェシャ猫を蹴り飛ばすスナーク。
「ゲームを続けていたら、レベルが上がるだろう? ボクもね、この間レベルが上がって……1レベル分、余裕ができたんだよ」
手元の携帯ゲーム機の液晶画面をほら、と見せつける極。
そこには、レベル40になったゲームのキャラクターが表示されていた。
「さぁスナーク”たち”、悪いネコをボクと一緒にやっつけよう!」
平和な森を取り戻すために、アリスを助けるゲームをクリアするために。
40レベル分の仲間を従えた極はニヤリ、と笑みを浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ペコー・フラワリー
……はい、ペコーの出番です。
道に迷って間に合わなかっただけです。ここで紅茶を楽しんでいたわけではありません。
状況を把握するために周囲を確認する。
アリスを追うオウガはチェシャ猫ですか。そうですか。
ティーセットを片付けて時間を操るウサギ時計をいじる。
時を操りペコーは一時的に加速しました。
相手の飛び掛かりを素早くジャンプで逃げる。ジャンプ後は相手を踏みつけて再びジャンプする。
これでたくさんぴょんぴょん出来ます。
ぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょんぴょん……
ペコーは楽しめました。
あなたはどうでしたか?
渡月・遊姫
■遊姫の人格で戦闘開始
あれがオウガ......味方もたくさんいるし、とりあえずウチがやってみる。ジョーカー、力を貸して。
手にした「殺戮刃物」でチェシャ猫に接近戦を挑みます。九死殺戮刃で攻撃。味方は攻撃しません!
オウガの精神攻撃を受けたなら、ショックでジョーカーと人格交代。久しぶりやな、チェシャ猫。たぶんウチの知ってる奴とは別個体やと思うけど。
悪いけど今のウチは「猟兵」やからな。殺させてもらうで。前からオウガの肉の味はどんなもんか気になっとったんや!
戦闘用のトランプを大量に投げつけてチェシャ猫を攻撃や。流れ弾が味方に当たってもウチは気にせえへん。その時は後で遊姫が謝るやろ。
※連携、アドリブ歓迎
●兎と道化師
「あなた……こんなところで何してはるんです?」
その光景を目にして最初に少女の口から飛び出したのは、困惑の一言であった。
が、それもまあ無理もないことだろう。
だって、考えてみても欲しい。
アリスの少女メリルを狙うオウガを追って、この不思議の森を訪れたはずなのにその道中でカラフルなきのこに腰掛けて、優雅にひとりティータイムを満喫していた少女に出逢ってしまったのだ。
そりゃあもう、ピエロの仮面の下の顔ははてなマークだらけになるし、ただでさえ人見知りが激しいのだからもう渡月・遊姫(食人鬼に憑かれた少女・f19443)の混乱はすさまじいものだったに違いない。
「ペコーは紅茶を楽しんでいます、見ての通りです」
違う、そうじゃない。
そうじゃないぞ、ペコー・フラワリー(遅刻常習犯・f19807)。
彼女が困惑しているのはそこではなく、どうして今まさに戦闘中なこの森のなかで、優雅に紅茶を嗜んでいるのか、そこなんだ。
「ああ、そういうことですか。はい、道に迷って間に合わなかったので、いえ、決してここで紅茶を楽しんでいたわけではありません。ペコーは道が分からなかったので、こうして分かる人が来るまで待っていただけです」
つまり、あなたが来るのを待っていました。
ところで、一杯いかがですか?とどこか和風な雰囲気のティーカップを差し出そうとするペコーに遊姫は少しおどおどしつつ、ぶんぶんと首を横にふった。
そんな彼女に、そうですか、と一言残念そうに漏らすとペコーはそそくさと慣れた動作でティーセットを仕舞い込んでいく。
「準備完了、それでは――」
行きましょう、とオウガのもとへ向かおうとした二人の目の前に。
「ぎゃああああああああッ!?」
都合よく、その猫人間のような奇妙なオウガ――チェシャ猫が悲鳴を上げながら飛び込んできた。
「え、ええと……」
「状況把握、どうやらオウガのほうからやってきてくれたようですね」
二人は知るよしもなかったが……この森をおとずれた猟兵のひとりが呼び出した巨人の豪腕によって吹き飛ばされたチェシャ猫が都合よく二人の目の前へ転がり込んできたのである。
「痛て……この私を思い切りふっとばしやがって、許さな……んん~?」
よろよろと頭を抑えながら立ち上がったチェシャ猫の視界には二人の猟兵。
「アリスを狙うオウガはチェシャ猫でしたか。どうやら、やられかけみたい、ですが」
「うるさいッ! 丁度いい、さっきの連中の腹いせにお前たちから喰ってやる!」
誰かにやられて来たんですね、と分析するペコーに当たり散らすようにそう言うと、チェシャ猫がその爪をしゃきん、と立てて二人を睨みつける。
「これがオウガ……!」
目の前に現れたチェシャ猫を前にごくり、と息をのむ遊姫。
そんな彼女の頭の中に『大丈夫? かわろか?』ともうひとりの自分からの声が響く。
「(ううん。とりあえず、ウチがやってみる。ジョーカー、力を貸して)」
「にしししし! そんなへっぴり腰で、私と戦うつもりかぁ? その仮面を引っ剥がして、絶望に満ちた顔をさらけ出してやるぞ!」
にしししし、という嫌味なチェシャ猫の笑い声に精神を蝕まれながら、遊姫が殺戮刃物を手に駆ける。
そのまま相手の懐へ潜り込み、9回にも及ぶ殺戮刃物による斬撃を放つもチェシャ猫の笑いによって精神を蝕まれたせいか思うように体が動かずに一撃ごとに刃が鈍っていき、次々とチェシャ猫の爪によって攻撃が弾かれていく。
「くっ、この……あっ!?」
遊姫が9度目の刃を振るうと同時に、完全に見切ったチェシャ猫が殺戮刃物を爪で弾き飛ばす。
「貰ったぞ! にしししし!」
にたぁ、と悪辣な笑みを浮かべたチェシャ猫を見てこれは不味い、とすぐさまペコーが時を加速させるウサギ時計の力で二人の間に割って入ろうとした、そのときだった。
チェシャ猫と、そしてペコー。
二人はほぼ同時に、同じ方向から、殺意を込めたなにかが自分へ向けて放たれたのを感じ取った。
そして――。
「うぎゃあ!?」
武器を失った遊姫に襲いかかろうとしたチェシャ猫の腕に、突然何かが突き刺さり、その痛みからかチェシャ猫が悲鳴をあげながら飛び退く。
「と、トランプ……貴様ッ!?」
腕に突き刺さった縁が刃物と化した殺人トランプのカードを抜き取り、投げ捨てながらチェシャ猫が怒りに満ちた声を上げる。
「本当、突然何なのですか、ペコーは説明を求めます」
同じくカードを投げつけられ、辛くもかわしたペコーが、目の前にいるピエロの仮面の奥で赤い瞳を輝かせる遊姫へと問うた。
「ああ、堪忍なあ……ただの流れ弾やから。でもアンタ、よう躱したなあ……まるで時間を加速させたみたいに、凄いわあ」
「流れ弾ですか……ペコーもまさか助けに入ろうとして攻撃されるとは思いませんでした」
「ウチ、流れ弾とかぜんぜん気にせえへんたちやから。まぁ何やったらあとでウチに代わって遊姫が謝るさかい」
まるで、自分ではない誰かが代わりに謝るというその様子にペコーがきょとんと首をかしげた。
「ああ、ウチのことはジョーカーって呼んでな」
ジョーカー。
トランプのカードの一種であり、切り札とも例えられるそれは遊姫が本気を出すときに現れるもうひとつの人格。
「お、お前たち……私を無視して!」
「おっと、そうやった。久しぶりやなチェシャ猫」
「な、何!?」
久しぶり、という遊姫……もといジョーカーの言葉に心当たりがないチェシャ猫が驚いたような顔になる。
「ああ、やっぱウチの知ってるチェシャ猫とは違うんやな。でもまぁ悪いけど今のウチは猟兵やからな。殺させてもらうで! 前からオウガの肉の味はどんなもんか気になっとったんや!」
「では、ペコーもいい加減出番が欲しいのでそれに相乗りさせて貰いましょう」
「ほざけ! 二人まとめて喰い殺してやるわッ!」
激昂して二人目掛けて飛びかかるチェシャ猫を迎撃するように放たれたジョーカーの殺人トランプが次々とチェシャ猫の身体を切り刻んでいく。
更に、身体を切り刻まれて勢いを失ったチェシャ猫のもとへジャンプしたペコーがそのまま勢いよくその頭を踏んづけていった。
「わ、私を踏み台にッ!?」
「はい、これでたくさんぴょんぴょん出来ます」
チェシャ猫を足蹴にして再び飛び跳ねたペコーが更にそのまま何度も何度もチェシャ猫の頭をこれでもかと踏みつけていく。
ぴょんぴょんぴょんぴょん。
ぴょんぴょんぴょんぴょん、もいっちょぴょんぴょん。
ウサギ時計の力で加速したペコーがジャンプの度にどんどん更に加速を増して、身動きの取れないチェシャ猫を容赦なく踏んで、踏んで、また踏んで。
「たくさんぴょんぴょんして、ペコーは楽しめました。あなたはどうでしたか?」
最後は華麗に三回転とひとひねりをくわえながら着地を決めて、頭の上にひよこをピヨピヨ鳴かせながら目を回すチェシャ猫へ向けてペコーが言う。
多分だけど、チェシャ猫は楽しむ余裕はなかったと思う。
「……えっぐいわあ、あの子」
そのあまりの容赦のない踏みつけっぷりに思わずカードを投げることを忘れていたジョーカーは、そんなことを呟いたのだった。
大成功
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水元・芙実
あなた、アーモンドのタルトは好きかしら
一旦聞いてみたかったの
それよりももっと好きなことが有るんでしょうしね
あなたには指定席に付いてもらうわ
幻炎合成法でまず相手を閉じ込める鉄の檻を作るわね
動きが読めるなら誘い込みやすいわ
閉じ込めたなら二つの狐火を更に作るわ。一つは檻の中、もう一つは檻を箱にするためのもの
鉄の箱の中に猫を閉じ込めれば、やることはもう一つ
箱の中の空気を青酸ガスに変化させるわね
後はこれを食べ終わるのを待つだけ、それとも食べ残してしまうかしら?
どちらにしても静かになってから開けるとしましょう、念の為鉄の槍も用意して
あなたもスナークと一緒なのよ、最初からこの世界にはいなかったわ
さよなら
●シュレディンガーのチェシャ猫
「くそ……奴ら、この私をコケにしやがって……!」
猟兵たちから逃れるように森のなかに姿を隠しながら、苦虫を噛みしめるようにチェシャ猫は呟いた。
「捲いたか。しかし、この私がまるでアリスのように逃げ惑うハメになるなんて」
オウガであり、この不思議の森の主たる己は捕食者だ。
絶対的な存在のはずだ。
だというのに、猟兵を前に逃亡……否、後ろに向かって全力で戦略的前進をさせられるなんて、夢にも思わなかった。
「絶対に許さんぞ虫けらどもが……この森に存在するオウガを集めて、取り囲んでじわじわとなぶり殺しにしてくれる!」
ここまで屈辱を与えた愚か者たちに、鉄槌をくだす。
「にしししし! さぁ、集うがいいこの森のオウガたちよ! 私とともに、あの愚か者どもをなぶり殺しにするのだ!」
森の全域に響くような大きな笑い声とともに、チェシャ猫が森に潜む仲間たちへ号令を下す。
その声に、森のなかに潜んでいたオウガたちが続々と集結するはず、だったが。
「……何故だ! 何故、誰も姿を見せない! この私の声が聞こえないのか!?」
「聞こえてるわよ、きんきんきんきんと、耳に響く声でうるさいわね」
狼狽しながら、何度も仲間を呼ぼうとするチェシャ猫の背後から聞こえてきた声はオウガのものでなく。
「あなたが待ってる奴らなら、私と、私の仲間たちが全部やっつけてきたから」
今ごろは、仲間たちが安全な森の外へメリルを送り届けてる頃よ、とそうチェシャ猫へと告げたのは水元・芙実(スーパーケミカリスト・ヨーコ・f18176)だ。
「なん、だと……」
「だから、残ってるのはあなたひとりだけ。ところで」
ところで、と言葉を続ける芙実の口からどんな言葉が飛び出すのかとチェシャ猫が身構える。
「あなた、アーモンドのタルトは好きかしら」
疲れた、とまるで戦いに来たのではなく話をしに来たかのように森のきのこに腰をおろしながら芙実が言う。
その手には、何処かで調達してきたのか手乗りサイズのアーモンドタルトがひとつ。
「あ、アーモンドタルト……な、何だいきなり、どういうつもりだ!?」
「別に? 一旦聞いてみたかっただけ、まぁあなただと多分それよりももっと好きなことがあるんでしょうね」
「に、にし、にしししし……そうだ! 私はそんなものよりも、人肉のほうが好きだ!」
お前を、喰ってやる。
そう、芙実に襲いかかろうとしたチェシャ猫の身体が――。
ガシャン。
突然何の前触れもなく出現した鉄の檻に閉じ込められた。
「な、何!? お、おい、出せ! ここから私を出せ!」
ガシャガシャ、と檻の柵を揺らしながら吠えるチェシャ猫。
「そこはあなたの指定席よ。出すわけないじゃない」
「待て、待っ……なんだ、息が、息が出来な――」
チェシャ猫の台詞を遮るように、芙実の手に新たに生み出されたふたつの狐火がゆらゆらとその姿をそれぞれの姿へ変えていく。
ひとつは、檻を密閉するための鉄の箱。
ひとつは、檻のなかに残った空気を青酸ガスへ変化させる。
鉄の箱のなかから、耳をつんざくような悲鳴と檻を掻きむしるような音が響く。
そんな音を聞きながら、芙実はあむ、とアーモンドタルトへ齧りついた。
キャラメルのほろ苦いコクに、クラッシュアーモンドの香り、それにクリームの甘みやサクサクのパイ生地が合わさって。
「ん、美味しい」
疲れた身体に、甘いお菓子はたまらない。
やがて、タルトを食べ終えて静かになった鉄の箱の中身を確認したとき、そこにチェシャ猫の姿はなく、完全に消え失せてしまっていた。
「あなたもスナークと一緒なのよ。最初から、この世界にはいなかったわ」
さよなら、と一言だけ告げて芙実は不思議の森を後にしたのだった。
大成功
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