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みかんを守れ！！

作者：宮下あおい

　冬真っただ中のある日。空は厚い雲に覆われ、今にも雪が降りそうだ。
　みかんの収穫も終わり、各農家で貯蔵され、出荷を待っている頃だ。
　そこへ鈴の音が近づく。
　徐々に近づくそれは、黄泉の国から魑魅魍魎を導く標だ。
　現れる魑魅魍魎は、町を襲い、人を襲う。
　浮遊しながら移動する風鈴は、あるミカン畑を荒らした。

●概要
　高瀬・幾哉（ヤドリガミの陰陽師・f05681）はグリモアベースに集まってきた猟兵たちに向かって呼びかける。
「皆、聞いてくれるかな。サムライエンパイアで事件が発生したようだよ」
　それを聞いた猟兵たちが徐々に集まり始める。
　サムライエンパイアでオブリビリオンの襲撃事件が発生した。まずは集団で押し寄せるオブリビリオンを倒すことからだ。
「大量の妖怪がミカン畑を襲おうとしている。妖怪は鈴の音に導かれて現れるから、鈴の音が手掛かりになるかな。そのあとにボスが待ち構えているから、その撃破もお願いしよう」
　幾哉が該当する地域の地図を広げ、戦闘となる場所を指さした。
「このみかんの畑を抜けられると町がある。そうなると大変なことになるから何としてでも防がなきゃならない。けど、これで傷んでしまったみかんはどうするんだろう……？」
　今の時期は貯蔵されているはずだ。戦闘に巻き込み、傷がついてしまったら売り物にはならないだろう。
　しかし今は迫りくる脅威を退けることが先だ。
　集団で押し寄せる妖怪を倒し、その妖怪をまとめるボスを倒すこと。ミカンについてはその後になる。
　幾哉は猟兵たちから質問が出ないことを確認すると、猟兵たちを送り届ける準備を始めた。

第1章 集団戦 『彼岸の兜風鈴』

POW   :    風鈴の音が響き渡る 予め【風鈴の音を響かせ続ける 】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。 SPD   :    風鈴の音が共鳴する 【共鳴振動となる甲高い風鈴の音 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。 WIZ   :    風鈴の音が死者を呼ぶ 【黄泉の国 】の霊を召喚する。これは【悲鳴】や【武器】で攻撃する能力を持つ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

「この先に、通すわけにはいかねぇのです！」
　ミルフィ・リンドブラッド（ちみっこい力持ち・f07740）は、ミカン畑と兜風鈴の攻撃との間に寸でのところで割って入った。
　あちこちから聞こえる風鈴の音。響かせ続けることで、その時間に応じて戦闘力が増えていく。
　複数体がミルフィに突撃をかけてくる。
「来るなら来い、です！」
　愛用の巨大ハンマー、天竜砕きを手にミルフィは立ちはだかる。
　金属がぶつかるような甲高い音。
　ミルフィは真っ向から攻撃を受け止めると、天竜砕きを思いっきり振り抜き兜風鈴を弾き返した。
　木の葉が揺れる。葉が落ち、衝撃に耐えきれなかった細い枝が地面へと落ちた。直接の被害ではないため、こればかりは猟兵といえど防ぎようがない。
　風鈴の音が響く。黒き風鈴は束になり、その音を共鳴させようとした。
「１匹残らず、ぶっ殺してやるぞ、です！　――血よ我に迫る敵を貫け」
　血滴る悪夢の槍――ブラッディランスナイトメア。
　自身や敵の血液によって形成された大量の槍を放ち、己の能力が及ぶ範囲全ての対象を攻撃する。
　槍が兜風鈴の頭上に降った。

成功 🔵​🔵​🔴​

攻撃の衝撃が畑の外にある木々を揺らす。兜風鈴は黒い集団となって、まだまだ続いている。
　ミルフィの後に続いたのは、一橋・さくら（には夢がある・f00999）だ。
「悪いけどここは通行止めだから、行かせないよ」
　サイキックブラスト。
　両掌から高圧電流を放ち、感電により対象の動きを一時的に封じるものだ。
　兜風鈴の攻撃は音絡み。避けようとしても、どうしても限界がある。音を鳴らしているものを倒していくか、鳴らそうとする前に阻止するか。
　続けざまに、さくらが薙刀を構え踏み込む。
「音を鳴らしてるのを、優先的に攻撃していくね！」
　他の猟兵たちに知らせるように、さくらが声をあげた。
　天之久比奢母智神。水の神の名を持つ巴薙刀。常に冷気を発しているかの如く、涼やかさを湛えている。
　サイキックブラストで足止めした兜風鈴を手始めに、次々と薙ぎ払っていく。
　素通りされないように兜風鈴の目のあたりを狙った。
　近接戦闘は細かな傷を負うこともあるが、気になるようなものではない。
「さあ、全員みかんの礎となるのだ！」

成功 🔵​🔵​🔴​

さくらが近接戦闘で兜風鈴を撃破している後方。
　ネレム・クロックワーク（夢時計・f00966）のユーベルコードが炸裂する。高速詠唱を駆使し、通常よりも早く発動したそれは、風鈴の音を阻害した。
「耀う、星の幻想夜」
　星の鍵――シューティングスター。
　星に祈りを捧げ、鍵を開けば数十本に及ぶ煌めく流星が兜風鈴の上に降り注いだ。
　戦いの衝撃波ばかりは防ぎようがない。貯蔵庫では、振動で箱に詰められたみかんがひっくり返り、転がっている。
　傷がついてしまったものもあるが、この後どれだけ被害を減らせるか。
　猟兵たちの攻撃を偶然すりぬけた兜風鈴の１体が、みかん畑に近寄る。
　しかしそれを見逃すはずもなく、ネレムは魔法弾を放った。
　みかん畑に近寄った兜風鈴が、跡形もなく吹き飛ぶ。
「みんなが大好きなみかんも、町も、人も、必ず守ってみせる、わ」
　今は少しでも数を減らすべく、全力を尽くすのみだ。
　再び流星が戦場の空に煌めいた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネレムからは離れた場所に陣取っていたのは、アスティリア・モノノフィシー（清光素色の狙撃手・f00280）だ。
　Silver Reckless Princess――通称SRPと呼んでいる拳銃を構え、正確な射撃技術で兜風鈴たちを狙っていく。
「無作為な妖怪さんの音よりも私の正確な射撃の方が、確実に魂に届くでしょう？」
　少しずつ前へ出て押し返したり、場所を変えて引きつけ、他の猟兵たちの邪魔にならないところで、できるだけみかん畑に衝撃が及ばない場所を選ぶ。
　多数の風鈴の音が共鳴を始める。甲高い風鈴の音が響くそれよりも前に――。
「赤き弾丸をお見舞いします！」
　Huge Blood Red Moon――ヒュージ・ブラッド・レッド・ムーン。
　武器に炎の魔力を込めることにより、炎魔法の弾丸で広範囲の敵を攻撃するユーベルコード。
　正確に放たれる弾丸は、兜風鈴を次々と倒してく。
　止まらぬ風鈴の音が、射撃音に掻き消されていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　――剣刃一閃。
　大豪傑・麗刃（変態武人・f01156）は、サムライブレイドとバスターソードを使い、片っ端から兜風鈴を斬り捨てる。
「寒い季節に風鈴なんかいらないのだ！　このわたしがやっつけてやるのだ！」
「星の海に生きる鎧装騎兵の戦いをお見せしましょう！」
　騎兵走法――ラン・アンド・ガン。
　グロリア・グルッグ（電脳ハッカー・f00603）が空中を蹴る。兜風鈴の頭上から攻撃し、麗刃を援護する形で、アームドフォートを放つ。
「食べ物を粗末にするのはいけませんねぇ。しかも蜜柑。みかんは船乗りにとって大事な物なのですよ」
　みかんの木の枝が折れ、地面へ落ちる。衝撃による風は強く、葉が揺れる。
　みかんも既に食べれないものは、収穫せずに木になったままだったが、戦いの衝撃でそのみかんも地面へ転がった。
　真夏の怪談のごとく、風鈴の音は黄泉の国の死者を呼ぶ。
「冬場は肝だめしの季節じゃないのだ！　全部斬るだけなのだ！」
　霊すらも斬るのみ。麗刃が刀を振るい続ける。
　他の猟兵たちも奮戦し、衝撃による多少の損害はあるだろうが、特別大きな怪我もない様子。残るはこのまま押しきるのみ。
　グロリアは様々な技能を使いこなし、正確に、確実に兜風鈴を倒していく。
「兜風鈴も残り少しです！　麗刃さん、行きますよ！」
「もちろんだ！　肝だめしは終わりにして、ボスを倒しにいくのだ！」
　事前の説明では確かこの後、ボスが待っているはず。
　残り僅かになって、手間取っている場合ではない。
　刀を構え、麗刃が踏み込む。駆けた勢いで、砂埃が舞い上がった。黒い風鈴の真ん中を白刃が煌めく。
　轟音。
　鉄が重なる耳障りな音が重なる。
　グロリアが空高く駆けあがる。兜風鈴の頭上から、アームドフォートが麗刃を援護するように周囲の兜風鈴を牽制し、あるいは撃破していく。
　風鈴の音が止み、周囲の黒い集団が消えた
　次に待ち受けるのは、兜風鈴たちをまとめていたボスである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『仮面の武僧』

POW   :    末世読経 予め【読経を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。 SPD   :    狛犬噛み 自身の身体部位ひとつを【狛犬】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。 WIZ   :    金剛力士の招来 戦闘用の、自身と同じ強さの【金剛力士（阿形）】と【金剛力士（吽形）】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。 👑17 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　みかん畑の周辺を埋め尽くしていた兜風鈴が消えた。
　風で砂埃が舞い、枯葉がからからと音を立てる。その先にいたのは錫杖を持った仮面の僧。鉄球は鎖で繋がれ、まるで鬼のような雰囲気だ。
「ボスのお出ましですね。早速で悪いのですが、ちょっと威力偵察させてもらいますね？」
　お経が聞こえる中、グロリアは地面へ着地すると、即座に足場を固め、レールガンの射撃態勢に入った。
　僧がグロリアを標的にしたのか、鉄球を投げてくる。　
　間に入ってくる影。
　割って入ったのは、バスターソードを手にした麗刃だ。
「読経が聞こえるのだ。男は読経！　仮面をかぶってるけど、男でいいのだ！」
　仮面や体格からでは、男女の判別は難しいが、麗刃は男と決めつけたようだ。バスターソードで鉄球の軌道を逸らし、麗刃は飛びのく。逸れた
　グロリアは使える己の技能を最大限に活かし、可能な限りの先手を狙う。
「先手必勝こそ騎兵の真髄。星船の主砲レールガン、行きます！　これが私の必殺技！　星屑となりなさい！」
　最大出力のレールガン。その砲弾は僧を直撃し、装甲さえも貫く。余波の電撃に触れれば、麻痺を引き起こす。
　直撃した砲弾に吹き飛ばされた僧は、周囲の民家へ突っ込んだ。
　そのまま麗刃が続く。
「こんな時のための必殺技なのだ！　秘技！　く、くれ……くれ……みかづき！！」
　三日月――クレッセント。
　麗刃が全力で剣を振ることで、視認できる範囲の敵を三日月型の衝撃波で攻撃するユーベルコード。
　衝撃波は少し背の高い草花を綺麗に切り揃え、コンクリートの塊も真っ二つに割った。
　冷たい北風が猟兵たちを襲う。細かなすり傷や切り傷、服は汚れたり裾が破れている部分もある。
　そこへさくらがステップを踏みながら、歌い始める。
「さぁみんな、いっくよー！　みかんー風呂にー、はいりーたーいー」
　キラキラ☆猟兵賛歌――アキラメマセン・カツマデハ。
　アイドルソングを聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する支援系のユーベルコード。しかしその歌の歌詞が適当な感じがあるのは否めない。
　僧は時間稼ぎのつもりか、錫杖を振り金剛力士を招来した。阿形と吽形、僧と同じ強さだが、僧自身は攻撃できず傷を受けると解除される。
　さくらが踏み込み、大きく飛んだ。エクスカリバールのようなものを振り上げる。
　金剛力士の阿形の頭上を狙う。しかし阿形も金剛杵でそれを受け止めた。
　甲高い金属音。
　さくらはそのまま地面へと叩きつけられる。
　そのまま振り下ろされようとする金剛杵。
「……っ！」
「さくらさん！　――大丈夫？」
　咄嗟に割って入ったグロリアがさくらを抱えて地面を転がった。
　一方麗刃は吽形の隙をつき、僧自身へ攻撃できないかと試みる。三日月を放とうとするが、何度か邪魔された。
　引いては前へ出るを繰り返すが、あと１歩が届かない。
「れーじんせんぱー、援護です！　さあ、さっきの風鈴おばけみたいにお前もみかんの礎となるのだー！」
　さくらのエクスカリバールのようなものでの殴打攻撃。大怪我にまでは至らなかったようだ。
「仲間の援護があれば、心強いのだ！」
「本体を攻撃すれば、金剛力士は消えるはず。麗刃さん、さくらさん、頑張りましょう」
　麗刃は大きく頷き、グロリアは再びレールガンを構えた。
　猟兵３人による連携、手応えはあったがまだ戦いは始まったばかり――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　鬼神軍の３人が金剛力士の気を引くなか、アスティリアがユーベルコードを発動させる。
　みかんの木に被害が最小限となるように、自分と敵の位置に注意を払う。
「みかん畑をこれ以上荒らす気ですか？　」
　アスティリアは己の銃を構えた。
　僧と距離を取りつつ、阿形と吽形に気づかれない位置へ陣取る。
「――赤き弾丸をお見舞いします！」
　Huge Blood Red Moon――ヒュージ・ブラッド・レッド・ムーン。
　炎の魔力を込めることにより、離れている敵を炎魔法の弾丸で攻撃する。
　僧を炎が取り巻く。そのダメージからか、錫杖を大きく一振りした。側の街路樹を直撃し、真っ二つに折れた。
　金剛力士たちがその轟音に顔を向けた。同時にその姿が風に溶けるように消える。
　僧は炎を振り払うように顔を振り、アスティリアへと踏み込んでくる。片方の手には錫杖、もう片方の手を狛犬の頭部に変形させた。
　噛みつかれれば、生命力を奪われ、僧にとっては治癒となってしまう。
　明らかに狙われているが、囮になるつもりか、アスティリアは動かないままで――。

成功 🔵​🔵​🔴​

　麗刃が僧へと踏み込もうとしたその時、他の猟兵によって金剛力士２体の姿が消えた。
　狛犬噛みを避けようとしない彼女を見て、３人は咄嗟に駆け出す。
「――上から叩きます。空を駆けてこその騎兵、その本領を発揮するとしましょう！」
　グロリアが駆ける。
　己の持てる技を最大限に使い、計算した高速起動戦。真面目なグロリアらしいものだ。
「わたしは二刀流でいくのだ！」
　麗刃がサムライブレイドとバスタードソードを手に突っ込む。
　先に一撃を食らわせたのはさくらだ。僧の真横からエクスカリバールのようなもので殴打を繰り返す。
「君がッ、泣くまで殴るのをやめないッ！」
　殴打撲殺乱舞撃――バーリング・バッシュ。
　エクスカリバールのようなものを使った攻撃が命中した対象に対し、高威力高命中の執拗に硬いところで殴る連続攻撃を放つ。しかし連続攻撃だからなのか、初撃を外すと次も当たらない。
　さくらの攻撃を受け止めていた錫杖にヒビが入る。押し返そうとしているのか、僧から地の底から響くような叫び声が響く。
　さくらが飛びのくと、即座に高く飛んだグロリアが僧の頭上からアームドフォートを放つ。
　直撃。轟音。
　ここまで来たなら、みかん畑に直接的な被害は及ばない。衝撃波や振動はやはり伝わるだろうが、みかんへの被害は最小限に抑えられるはずだ。
　粉塵が収まる前に、麗刃が踏み込む。
「邪魔な金剛力士が消えたのだ！　一気に倒してしまうのだ！」
　白刃。綺麗な線を描き、剣先が交差する。
　囮になっていた猟兵がその場を飛びのき、後方へ下がった。
　僧は片膝をついた。

●
　幾度かの攻撃と防御、回避を繰り返し、あと最後のひと押し。
　切り傷やすり傷、髪もそれぞれ汚れ、服も裾が破れたり避けたり、穴が開いている箇所もある。
　しかし今は大怪我でもない限り、そんなことを気にしていられない。
「星の海に生きる鎧装騎兵の戦いをお見せしましょう！」
　騎兵走法――ラン・アンド・ガン。
　天と地を自在に駆け回る高速機動戦闘。グロリアは技能を最大限に使い、僧の頭上から攻撃を仕掛ける。アームドフォートを使い、徹甲弾を放つ。
　土煙。
　その合間を縫うように、さくらがエクスカリバールのようなものを振り回す。
「みかんを笑うものはみかんに泣くのだ……！」
　僧の視界を塞ぐように、さくらはできるだけ僧の顔を狙う。
　僧はヒビが入ったままの錫杖を振ろうとする。あれはおそらく金剛力士を呼び出すための動作。
　勝利は目前。反撃されるその前に決着をつけてしまうべく、麗刃が二刀流で踏み込む。
「速攻でカタをつけるのだ！」
　剣刃一閃。
　近接斬撃武器が命中した対象を切断するユーベルコード。
　鬼神軍３人の見事な連携は僅か数呼吸の間。
　再び綺麗な白刃が宙に描かれ、僧の身体が空中を舞う。
　それが仮面の武僧の最後となった。
　貯蔵庫のみかんも箱が転がり、床や地面へ転がったものがあるが、それも戦闘の衝撃や振動によるもの。みかんの木も細い枝は折れてしまったものもあるが、大きな損害は出ていない。
　この戦いは猟兵たちの勝利で終わった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 日常 『ふぞろいのミカンたち』

POW   :    もったいないから、ぜーんぶ食べちゃおう。 SPD   :    加工して飲料や染料にしようか。 WIZ   :    皮もいろいろと使い道があるんだぞ。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　戦いは終わった。
　集まった猟兵たちで、みかん畑の掃除をし、ダメになってしまったみかんを集める。
　落ちてしまった枝を拾い、畑の周辺の修復や片付けも行った。
　傷がついてしまったみかんも多数あるが全部ではない。
　被害は最小限。
「――ありがとうございました。このみかんはみなさんで召し上がってください。必要なものがあればご用意しますから」
　みかん農家の主人は、この戦いに参加した猟兵たちに会釈した。


　主人の言葉に、皆それぞれ、必要なものを用意し始める。
　富井・亮平（イェーガーレッド・f12712）は、ガジェットを召喚し装着する。
「ゆくぞッ！　ガァジェット！　ショオォォォォウ・タイムゥッ！！！」
　ガジェットショータイム。
　対象に有効な変な形のガジェットが召喚されるユーベルコード。形状は毎回変わるが、使い方を理解できれば強い。
　今回は名づけて、ミカンクラッシャー。
　ガジェットはミカンとネーブルを足して、イヨカンで割ったような形状のミカン絞り装置。
「これでミカンジュースへと転生させるのだ！！」
　亮平はミカンを次々に粉砕し、ジュースへと変えていく。
　用意した紙コップに綺麗な橙色の液体が注がれ、周囲にミカンのさわやかな香りが広がった。
　幾人かの猟兵たちが集まってくる。
「さあ、みんな搾りたてをどうぞッ！」
　亮平のジュースを楽しむ者、自分の準備をする者。みかんパーティーはまだ始まったばかりである。

成功 🔵​🔵​🔴​

　鬼神軍の３人は亮平が作ったジュースを用意されたテーブルへ運ぶ。
　テーブル以外でも皆思い思いの場所でみかんを楽しんでいる。木の下でレジャーシートを敷いて食べたり、簡易キッチンでお菓子やジュースを作ったり、　寒さ対策にといくつかストーブを中心に集まったりとそれぞれだ。簡易キッチンではお菓子の甘い香りも漂っている。
「サムライエンパイアのみかんってどんな味なんでしょうか」
　グロリアはテーブルの中央に置かれたみかんに手を伸ばす。
　傷がついてしまったとはいえ竹かごにいくつも積まれたみかんは、太陽に当たると鮮やかな黄色に輝いている。
　遠くに見える山や綺麗な空気は都会とは違い、冬の澄んだ空気が一層景色を綺麗に見せていた。
「――おお、美味いのだ！　搾りたてのみかんジュースは格別なのだ！」
　麗刃はみかん自体はもちろん、他の猟兵たちが作ったジュースやスイーツも食べている。
「れーじんせんぱー！　はい、あーん」
　さくらがみかんを綺麗に剥いて、その実を隣の麗刃の口元へ差しだす。
　白い筋も取ってあり、綺麗に剥かれている。
「麗ちゃん、照れちゃうのだ」
　そう言いつつも、麗刃はさくらが差し出したみかんをぱくりと食べる。
　そんな様子を見守りながら、グロリアも丁寧にみかんの皮を剥いた。グロリアは普段宇宙船の生活。映像ではない、自然の景色や風はとても新鮮だ。
「普段が船の上の生活なので、時にはこういう自然の景色も素敵ですね」
「ほら、ぐろりあせんぱーも！」
　さくらはグロリアの口元へもみかんを運ぶ。それをグロリアもぱくりと食べた。
　甘く爽やかな香りを口内で感じながら、ゆっくりと味わう。
「これでおこたがあれば最強なのだ！」
「あちらで準備してるらしいですよ」
　麗刃の言葉にグロリアが別の方向を指さす。
　そちらへ視線を向ければ、他の猟兵たちがこたつの準備をしている。
　季節は冬の真っただ中、強風が吹いているわけではないが、時折肌に感じる空気はやはり冷たい。
　さくらが楽しそうに呟く。
「みかんといえば、こたつ！　みかんを楽しむものはみかんで笑うのだー」
「そういえば、みかんの皮を風呂に入れればあったまれるとか歌ってた人がいるらしいのだ」
「何かで見た気がしますね。私も入ってみたいものです」
　それを聞いていたのか、農家の主人が３人へと歩み寄る。
「みかん風呂ですか。ここから少し行ったところにみかん風呂を期間限定でしている銭湯があるんですけど、行かれるなら地図を書きますよ」
「それはいいことを聞いた！　ひと通り食べた後行ってみるのだ」
「リフレッシュできそうですね。後で行ってみましょう」
「うんうん、他のみんなも誘ってあったまりにいこー！」
　麗刃、グロリア、さくらは互いの顔を見合わせ頷く。
　あちこちの世界を巡る猟兵には、銭湯など縁のない者も多い。皆に声をかけて大勢で行くのも楽しいだろう。
　しかしその前に、食べるものを食べてからだ。
　ジュースにお菓子、みかんを味付けに使った料理、食べてないものはまだまだある。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

　アスティリアはみかんの寒天作りを始めていた。
　鍋を用意し、水、粉寒天、砂糖、牛乳を加え火にかける。
「搾りたてのみかんジュースも美味しいですね。わたしはみかん寒天を作りましょう」
　後の手順は火を止めた後は、みかんの実を綺麗に剥き牛乳の寒天液に浮かべる。みかんジュースも寒天液に混ぜ、寒天が固まれば出来上がりだ。
　出荷ができないものは、こうした加工で新たな付加価値が生まれたら、新たな販路も見えてくるだろう。
　興味深げに寒天作りを見学する猟兵たちや農家の夫婦に寒天作りを教えたり、途中で少しつまみ食いをしたりと楽しそうな会話が続く。
「うーん、このみかんとても美味しいです」
「あ！　お鍋、大丈夫ですか！？」
　寒天作りを見学していたひとりの猟兵が気づく。
　猟兵が指さした先にあるのは、火にかけていた鍋だ。
「ああああ！　大変！」
　慌ててアスティリアは火を止めた。沸きすぎて噴いた鍋をガス台から下ろす。
「良かった、焦げるところまでは行ってませんね」
　アスティリアはそっと胸を撫で下ろした。
　後はみかんの実とジュースを混ぜ、寒天が固まれば完成である。
　皆の楽しそうな笑い声を聞きながら、アスティリアは寒天作りを進めるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

　ミーヤ・ロロルド（人狼のガジェッティア・f13185）は、簡易キッチンでみかんジャムを作っている。
　みかんの実だけを使い、砂糖を入れて煮詰める。瓶に詰めて、冷ましている間にパンケーキを作る。
　ジャムを作る途中、甘い匂いにつられてミーヤは少しだけスプーンに取り、味見する。
「んー、良い出来だにゃ」
　瓶に詰め終えた後、パンケーキに取り掛かるが、美味しそうな匂いが周囲に充満すれば自然と他の猟兵も集まってきた。
　焼きたてのパンケーキに、出来立てのみかんジャムをのせる。
「チョコやナッツ、生クリームもあるので良ければ皆さん使ってください」
「いいにゃぁ、ますます美味しそうだにゃ」
　この戦いに参加していた猟兵のひとりが、用意していた材料を提供してくれた。
　皆が持ち寄った材料でそれぞれトッピングしたり、デコレーションして楽しむ。もちろん、みかんジャムだけで食べるのも忘れない。
「作り方知りたい人は後で教えるにゃ。みんな声かけてくれにゃ」
　ミーヤの言葉に、農家の夫婦もパンケーキを口に運びながら大きく頷いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2019年02月12日