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ねこねことらっぷ

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●にゃんにゃーん!
 アルダワ魔法学園に幾つも存在する学園迷宮。
 迷宮には今日も学生たちが挑み、探索や冒険を進めている。

 或るフロア内、崩れかけた石の建物が広がる周囲に緑の木々が生えている遺跡風の場所にて。学生たちは妙な雰囲気を感じていた。見渡す限り自分たち以外には誰も居ないはずなのに誰かに見られているような――そして、くすくすと笑う声。
「誰か居るのか?」
 敵かもしれないとおそるおそる声をかけてみたそのとき、それは起こった。
「ふふ、僕が居るよ。パンセちゃんでーす! えいっ!」
 少女のものらしき声が響き渡った瞬間、周囲にふわふわとしたガスのような魔力が満ちる。抵抗する間もなくそれに包まれた学生たちは思わず咳き込んだ。そして、顔をあげると――。
「にゃ、にゃんだこれは!?」
「痛くにゃい……けど変だにゃ!」
 見れば全員に猫耳と尻尾がはえている。
 それに言葉もおかしい。どうしても「にゃ」が付いてしまうのだ。学生たちが戸惑っていると、不意に何者かが姿をあらわした。文様が彫られた岩場の上に立っている少女。彼女が先程に名乗り、猫化の魔力を放った主だろう。
「君たちにはね、にゃんこの呪いがかかったんだよ。にゃはははは!」
 楽しげに笑った少女、冥想のパンセは手にしていた魔導書をぱたんと閉じた。
「にゃんだと! 戻せにゃ、こらー!」
「あはは、そんなに可愛いのに戻すわけないよ」
 尻尾を逆立てて抗議する学生に対し、パンセは周囲に舞う光る魂と戯れながら悪戯っぽく口元を緩めた。そして、くるりと踵を返す。
「どうしても解きたかったら僕が持ってるこの魔導書を破ればいいよ。ま、この奥に続く隠し扉を見つけて薔薇園にまで来れたらだけどね!」
 そういって少女は足元を蹴り、瞬く間に何処かに消えていった。

●パンセちゃんのトラップ地獄
 それから取り残された学生たちは必死に隠し扉を探した。
 しかし成果は出ず、学園に戻ってきた今も猫化したままだという。
「実害はないのじゃが、のう……。好んでにゃーにゃー言っている訳でもないゆえ早く解いてやりたいものじゃ」
 鴛海・エチカ(ユークリッド・f02721)は溜息をついた。
 そうして、とある迷宮内で起きた事件について語ってゆく。
 元凶は冥想のパンセという少女。
「あやつはチカもよーく知っておる。悪戯やトラップ好きで我儘で自分勝手などうしようもない奴なのじゃ。はぁ……」
 まさか蘇ってくるとはな、と呟いたエチカはそれ以上は多く語らなかった。集った猟兵たちに事態の収束を願った少女は、迷宮について話し始める。

 おそらくパンセは遺跡風のフロアで訪れる者を待ち構えている。
 そして否応なしに猫化魔法をかけた後、更なる迷宮の奥に隠れてしまう。
「すまぬが猫化魔法を防ぐ方法は分からぬ。しかしパンセが言った通り、元凶である魔導書とやらを破壊すれば解けるようじゃ」
 猫化は強力であり、どんな種族であっても猫耳と尻尾が生える。
 種族によっては二本目の尾が生まれるかもしれないが呪いはお構いなしだ。それに加え、喋り言葉も強制的に猫っぽくなってしまう。
「なにぬねのがうまく喋れず困っていると学生たちは言っておった。難儀じゃのう」
 その状態で探索をしなければならないのだが、幸いにも一フロア目の遺跡には敵などはいない。猫の呪い状態に慣れつつその奥のフロア――パンセ曰く、薔薇園とやらに続く扉を探せばいい。
「しかし気を付けてほしいのじゃ。遺跡フロアにはマタタビの木が生えておる。猫にマタタビとはよく言ったもので、人によっては酔ってしまうやもしれぬ」
 対応策は色々あるだろうがそれも人それぞれ。
 何とか頑張って欲しいと告げ、エチカはテレポートの準備を始める。
「パンセを見つけたら容赦なく倒して来て欲しいのじゃ。いいか、頼んだぞ!」
 何故か力強く、それでいて申し訳なさそうにエチカは願う。
 そして、迷宮に続く転送陣がひらかれた。


犬塚ひなこ
 今回の世界は『アルダワ魔法学園』
 猫化の呪いを受けつつフロアを探索し、オブリビオンを見つけ出して倒すことが目的となります。

●第一章
 冒険『吾輩は猫である、汝も猫である』
 舞台は遺跡風の岩の建物が並ぶ森風のフロア。
 パンセが現れて全員に猫化の魔法をかけてしまいます。ダメージはありませんが、どんな人でも猫耳と尻尾が生えます。強制イベントです。

 特に指定がなければ、台詞に自動的に「にゃ」が付きますのでご了承ください。
 頑張れば「にゃ」と言わないことも可能ですが鋼の意志が必要です。
 探索自体は厳しく判定しないので、一行程度のプレイングがあれば誰かが見つけることが出来ます。その分だけ猫の呪いをご堪能ください。
 また、ある程度の方針を示して後はお任せという形でも大丈夫です。その際はこちらで自由に描写します。

●第二章
 冒険『薔薇小道の誘い』
 一フロア目を抜けた先にある薔薇園のフロア。
 此方には薔薇に擬態したモンスターがいるので倒しながら進んでください。猫化の魔法の元になっている魔導書も小道の何処かに隠されているようです。つまり魔導書をどうにかするまでは皆さんはずっと猫化しています。

●第三章
 ボス戦『冥想のパンセ』
 薔薇園の奥に潜むオブリビオンとの戦いとなります。
 二章でうまく魔導書を処分できていると、通常状態で戦うことが出来ます。
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第1章 冒険 『吾輩は猫である、汝も猫である』

POW   :    ニャんであろうと気合で踏破してみせるニャ!

SPD   :    ニャんと! 危ニャいのニャら素早くゴールに行くニャ!

WIZ   :    とりあえず、マタタビをキめてから考えるニャ……

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●にゃんだふるトラップ
 猟兵たちは今、アルダワの迷宮内に降り立っていた。
 周囲には緑が生い茂っているが生き物の気配はない。また、石壁に何らかの文様が刻まれた遺跡めいた建物が幾つも建っている。
 石の建造物は簡易なつくりで、なかには崩れ落ちたものもある。
 
 君たちが周囲を注意深く見回していると不意に建造物の上から影が差した。
「新しい犠牲者発見! えーいっ」
 声が聞こえた途端、猟兵たちの周囲にふわふわした魔力の煙が巻き起こった。
 フロア全体に広がった魔力は避けられるようなものではない。煙が収まったころ、猟兵たちには皆等しく、猫耳と尻尾が生えていた。
 色や柄は人それぞれであり、尻尾の形や毛の長さも様々。
 そして、気付けば「にゃ」と語尾や言葉につけずにはいられなくなっていた。
 その様子を眺めた少女――冥想のパンセは楽しげに笑う。
「あははは! 今日もパンセちゃんのトラップは絶好調。ねー?」
 少女は傍らに控えさせている浮遊する魂に話しかけながら、手にしていた魔導書をぱたりと閉じた。おそらくあの本が纏っている不思議な力がこの猫の呪いの元凶だ。
 そしてパンセは踵を返し、振り返りながら猟兵たちに告げる。
「元に戻りたかったら迷宮の奥においでよ! 隠し扉を見つけられたら、だけどね?」
 くすくすと笑った少女はそのまま地を蹴り、草むらの中に飛び込んだ。
 すぐに追ってみても、もうパンセの姿は影も形もなかった。
 おそらく、言われた通りに奥に続く扉とやらを探さねばならないのだろう。君たちはそれぞれに覚悟や思いを強め、探索に乗り出すことになる。
 不可思議な猫の呪い――ねこねことらっぷと共に。
 
ソナタ・アーティライエ
呪い?
いいえ、わたしにはご褒美です
少し前にも同じように猫化しましたけれど、あれはとても素晴らしい体験でした
それをまた体験できるなんて……パンセさんにはお礼を言いたいくらいです

猫耳や尻尾の触り心地はとても素敵
口調も可愛いくて良いと思うのですけれど
わたしのUCは歌と演奏が主なので、ちょっと困ってしまいそうです
敵のいないこのフロアで、練習がてら頼りになる友を呼んでみますね

リラへと姿を変えたアマデウスで奏でるのは【幻獣交響曲第126番『神鎗』】
ラヴェルならマタタビの酔いを醒ましつつ、わたしを背に乗せて次のフロアへ連れて行ってくれるでしょう

アドリブ・連携歓迎です



●呪い? いいえ、ご褒美です
 猫化の魔法が周囲に広がり、猟兵たちがみんな猫獣人めいた姿になってゆく。
 呪いの影響で生えた尻尾をゆらゆらと揺らしたソナタ・アーティライエ(未完成オルゴール・f00340)は頭の上の猫耳も一緒にぱたんと動かしてみる。
 そのままその場でくるりと一回転。
 毛並みはソナタの髪の色と同じ真っ白なもの。
「またこれを体験できるにゃんて……パンセさんにはお礼を言いたいくらいですにゃ」
 ソナタには少し前にも同じような経験があった。以前に猫化したときの素晴らしい体験を思い返し、ソナタはこの騒動の主の名を口にする。
 勿論、口調もちゃんと猫の呪いの効果そのままに「にゃ」がついていた。
 ソナタはそっと腕を頭上に伸ばして猫耳に触れてみる。
「可愛いですにゃ」
 それに毛並みの手触りも良い。
 上機嫌に双眸を緩めるソナタの尻尾は嬉しげにぴんと立っていた。
 口調も愛らしくて良いと思っていたが、ソナタはふと思い立つ。自分の力――演奏はともかく、歌にまで猫語が適用されるとなると困ってしまう。
 それにこの状態を望んでいないアルダワ魔法学園の生徒たちのことを思えば、早く呪いを解かなければならない。
 そのためには先ずこのフロアを突破するのみ。
 ソナタは銀竜のアマデウスを呼び、練習がてらの演奏を始める。途中で何処かから漂ってきたマタタビの匂いを感じてくらりとしたが、ソナタはぐっと耐えた。
「……来てにゃ、ラヴェル」
 リラへと姿を変えたアマデウスで奏でるのは幻獣交響曲第126番『神鎗』。
 辺りに響く音色と共に浄化の光が現れる。
 すると真珠色の角を持つユニコーンが顕現し、ソナタの傍に凛と立った。
「行きましょうにゃ、ラヴェル」
 ソナタはその背に乗り、ユニコーンの鬣を撫でる。
 目指すは次のフロア。
 マタタビの匂いはまだ色濃いが動かなければ始まらない。ソナタは穏やかに響く蹄の音を聴きながら、遺跡めいた景色が続くフロアをゆっくりと進んでゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

セルマ・エンフィールド
【SPD】

上手く避けられればと思いましたが、甘かったようですにゃ。
……まぁ、実害はありませんし、問題はありませんにゃ。致死性のものでなかっただけよしとしましょうにゃ。

マタタビの木を見たことはにゃいんですよにゃ。それらしい木はひとまず避けていくとしましょうにゃ。

っと……尻尾が生えてバランスが変わったのでしょうかにゃ、歩きづらいですにゃ……本格的な戦闘の前ににゃれておく必要がありそうですにゃ。

歩くことに夢中になるあまり、気づけばマタタビの木の近くに。

にゃ、なんだかいい匂いがこの木から……って駄目ですにゃ、どう考えてもこれがマタタビですにゃ。

ちょっとだけマタタビの匂いに後ろ髪を引かれつつ進みます。



●後ろ髪ひかれにゃんこ
 銀色を思わせる薄灰の尻尾が揺れる。
 魔力の煙が晴れた頃、セルマ・エンフィールド(絶対零度の射手・f06556)は口元に手をあてて軽く咳き込んだ。
 けほ、と最後にちいさな咳払いをした後、セルマはゆっくりと息を吐く。
「上手く避けられればと思いましたが、甘かったようですにゃ」
 その言葉と同時に頭に生えた猫耳がぴくっと動いた。
 セルマに生えた呪いの猫耳と尻尾の色は髪の色に似ていた。確かめるように自身の尻尾を触ってみるとさらさらとした感触が手に伝わってくる。
 耳も自身の意思にそって動く。
 不思議だと感じながらもセルマは首を横に振った。
「……まぁ、実害はありませんし、問題はありませんにゃ。致死性のものでなかっただけよしとしましょうにゃ」
 おそらく致死系ではないからこそこれほど簡単に振り撒けるのだろう。
 喩えるならばパーティージョーク系の魔法。そんなものにゃのかと考えつつ、セルマは先を目指して歩き始めた。
 自分は今、感覚が猫のようになっている。
 そうなると敵が居ないこのフロアで気をつけるべきは――マタタビ。
「これがマタタビの匂いにゃ……?」
 何故かそわそわするような香りを感じてセルマは辺りを見回す。
 匂いは感じるがどの木がマタタビなのかはわからない。周囲に生い茂った草木は様々であるが、それらしい木を避けなければ大変なことになりそうだ。
「にゃ、っと……」
 そんな中、不意にセルマの体勢が僅かに崩れる。
 尻尾が生えてバランスが変わったのだろうか。もう一度地面を踏み締めて足場を確かめたセルマはぴんと尻尾を立てる。
「歩きづらいですにゃ……本格的な戦闘の前ににゃれておく必要がありそうですにゃ」
 一歩、二歩、もう一歩。
 歩いているうちに気付けばセルマはマタタビの木に近付いてしまっていた。
「にゃ、なんだかいい匂いがこの木から……って駄目ですにゃ、どう考えてもこれがマタタビですにゃ」
 擦り寄りたいような気分になったが、セルマはぶんぶんと首を振る。
 一歩踏み出してから振り返り、もう一歩進んでからちらりと木を見つめるセルにゃ。しかし鋼の意志で振り切ったセルマは思い切って駆け出した。
 そのときにはもう、半猫の身体を十分に使いこなしていたセルマであった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユヴェン・ポシェット
耳と尻尾については、個人的に興味があるが…俺だと似合わないかもしれないな。
口調に関しては、恥ずかしいからこのままという訳にはいかないが。

表には出さないが、内心自分に猫耳&尻尾が生える現象を楽しんでいます。
ドラゴンランスのミヌレも一緒にいますが、やっぱり耳と尻尾生えるのかどうか…ドラゴン姿と槍の姿では効果の違いがあるのか…アドリブ歓迎です。



●オパールにゃんこと槍猫竜
「……にゃ」
 にゃんということだろう。
 そう言いかけたユヴェン・ポシェット(Boulder・f01669)は言葉を止める。
 フロアに広がった魔力の煙めいた効果が収まった後――ユヴェンの頭には猫の耳が、そして背には尻尾が生えていた。
 それだけではない、共に此処に訪れていたドラゴンランスのミヌレにも竜の身体には不釣り合いな猫耳と二本目の尾が現れているではないか。
「にゃ!」
 竜であるはずのミヌレもまた、猫の鳴き声を発している。
「ミヌレは似合っているが、俺は似合わないにゃ」
 槍竜を思わず撫でながらユヴェンは自分の揺れる尾を振り返って見てみる。茶トラ柄の尻尾はぱたんぱたんと揺れ続けている。
 少し其方に意識を向けると、僅かに自分の意志で動かせるようだ。
「これはすごいにゃ」
 口調はさておき、これはなかなかに――。
 楽しい。
 裏腹に浮かんだ思いは言葉にせず、ユヴェンは暫し尻尾を動かすことに注力していた。ミヌレも彼に合わせて竜尾と猫尻尾をぱたぱたしている。
 不思議な光景だがミヌレの様子は実に可愛らしかった。
 だが、この呪いをいつまでもこのままにしておくわけにはいかない。自分たちだけなら兎も角、この場にいる猟兵や学園にいる生徒たちが被害を受けているのだ。
「やってみるに……やるぞ、ミヌレ」
 にゃ、と言いかけたユヴェンは相棒竜を槍形態へと変化させる。
 するとミヌレは通常通りの槍になり、ユヴェンはほっとした思いを抱いた。其処からすぐにミヌレを元に戻した彼は猫竜の頭をもう一度撫でる。
「行くにゃ」
 せっかく一度はちゃんと直した口調が猫っぽく戻ってしまったのはご愛嬌。
 そうして、彼らは共に迷宮の先を目指して往く。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

セツナ・クラルス
…ふむ

ひょっこりと生えた猫耳に触れ
はたはた揺れる尻尾を確認
これはどうしたものかにゃ…
…にゃ?

……ふむ、なるほど

おいで、ゼロ
共に歩もうにゃ
別人格、ゼロを呼び出す

現れた別人格の姿をしげしげと眺め
…ふふ、ふふふふ…!
素晴らしい、素晴らしいよ…!
やはり猫なゼロもかわいいにゃあ、痛!?痛いにゃ!?
ちゃ、ちゃんと任務は果たすから…!
ゼロから猫パンチを受けつつ探索開始

何となくだが
猫化した影響か第六感が冴え渡ってる気がするにゃ
ゼロ、ゼロ!
こっちが近道だにゃ!
意気揚々と通路を進み
着いたところはマタタビの群生地

…おや?
ふんふんと鼻を鳴らし
くぁ、と欠伸をひとつ
少しだけここで休んでいこう
大丈夫にゃよ、少しだけだから…



●ねことねこ
 ひょっこりと生えた猫耳、はたはた揺れる尻尾。
「……ふむ。これはどうしたものかにゃ……にゃ?」
 セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は普段の自分にはないものに触れ、その感覚を確かめていた。そんな中で不意に口調がおかしいことにも気付く。
 なるほど、と納得したセツナは愛し仔を呼ぶ。
「おいで、ゼロ。共に歩もうにゃ」
「…………」
 現れた別人格、ゼロは無言だ。
 その姿をしげしげと眺めたセツナは不意に笑い出す。
「……ふふ、ふふふふ……! 素晴らしい、素晴らしいよ……!」
 自分と同じ黒い猫耳と尻尾を宿しているゼロを見たセツナはご満悦。だが、ゼロの方はそうでもないようだ。
「セツナ、お前にゃあ!」
「やはり猫なゼロもかわいいにゃあ、痛!? 痛いにゃ!?」
「こういうときに嬉々として呼ぶんじゃねえにゃ!」
 容赦のない拳がセツナに飛んでくる。悪態を吐くゼロの怒りも尤もだ。
 ばしばしと猫パンチめいた攻撃が繰り出される中、セツナは蹲って耐える。しかしその口元はあまりにも可愛らしいゼロを見たことで緩んだままだ。
「ちゃ、ちゃんと任務は果たすから……!」
「いいからとっとと終わらせるにゃ!」
 ゼロが尻尾を逆立てて怒る様もまた愛らしく思え、セツナは立ち上がる。
 何となくではあるが猫化した影響か第六感が冴え渡っている気もする。探索を始めたセツナは或る方向を指差し、ゼロを呼ぶ。
「ゼロ、ゼロ! こっちが近道だにゃ!」
「嫌な予感がするにゃ……」
 意気揚々と通路を進むセツナの後にゼロが渋々ついていく。
 そして――着いたところはマタタビの群生地。
「……おや?」
「にゃんだよ、これ」
 ふんふんと鼻を鳴らしたセツナに対し、ゼロは予感が当たったと後退りする。
 だが、そのときにはもう何もかもが遅かった。
 くぁ、と欠伸をひとつしたセツナはその場に腰を下ろして草の上に寝転がった。にゃにしてるんだとゼロが問う前にセツナは其処で目を瞑る。
「少しだけここで休んでいこう。大丈夫にゃよ、少しだけだから……」
「待てにゃ、絶対に少しだけににゃんかにゃらないだろ!!」
 必死にセツナを揺り起こそうとするゼロの訴えも空しく虚空に消えた。
 むしろゼロも彼に引っ張られて眠気を覚えてしまったらしく――暫し、黒猫たちの不服なお昼寝の時間が流れてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリス・シー
フェリスちゃんは本当はにゃんこよりもうさぎの方が好きなのにゃん♪

しっぽふりふり 招き猫 
楽しいことから 悪意の一線超えそうないたづらまで 招き猫

ちょっと変わったことあっても実害ないのでフェリスは楽しんでます。

またたびの実を拾ってその辺とか人に向かってとかに撒いて遊んでみるにゃん♪

細かいことはお任せ



●悪戯タイム
 真っ赤なリボンがふわりと揺れる。
 妖精の翅を羽ばたかせて飛ぶフェリス・シー(ちっちゃなプレインズウォーカー・f00058)の姿はいつもと違う。
 それは、リボンの隣にちいさな猫耳があること。
 そしてフリルつきのスカートの裾から細長い尻尾が見え隠れしていること。
 にゃんにゃん、と鼻歌をうたいながら飛ぶフェリスも例にもれずしっかりと猫化の呪いを受けている。だが、本人は特に気にしていない様子。
「フェリスちゃんは本当はにゃんこよりもうさぎの方が好きなのにゃん♪」
 そんなことを言葉に乗せつつ、フェリスは探索してゆく。
 しっぽふりふり。その姿はまるで招き猫。
 幸運を呼ぶといわれる猫だが、フェリスの場合はちょっと違う。
「にゃー、蝶々さんにゃん♪」
 先ず招いたのはふわりと飛ぶ蝶々。舞い踊るように蝶と戯れたフェリスは楽しい気分で遺跡フロアを巡った。
 そしてもうひとつ、彼女が招くのは悪戯な時間。
「またたびの実、みつけたにゃん♪」
 楽しげに木の実に近寄ったフェリスはあることを考えついた。
 どうやら自分にはまたたびがそれほど効かないことが分かったフェリスは木陰に身を隠す。そして――近くにいた猟兵に狙いを定めて実を投げ放った。
『にゃーっ!?』
 知らない誰かの戸惑う声が響き、フェリスはくすくすと笑う。
 その後、投げられた相手がどうなったか。それは悪戯な妖精少女だけが知る、ちっちゃな出来事の記憶。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

「わわわー、本当ににゃんこににゃっちゃったにゃ!」

しばらくの間、事件のことを忘れてにゃんこ化を堪能しちゃうよ!
尻尾ってこんな感じにゃんだねってお尻を振って尻尾をふりふり♪
顔を洗ったりごろごろ転がったりしてにゃんこの真似をしてみるね!

にゃんこのフリを堪能したら依頼のことを思い出して迷宮の探索に乗り出すよ!
まずはあの怪しい木を調査にゃー(と、マタタビの木に突撃します)

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●またたびとお昼寝
「わわわー、本当ににゃんこににゃっちゃったにゃ!」
 蜂蜜色の耳と尻尾。
 そして猫のような語尾。ティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は魔法の煙を浴びて変わってしまった自分に驚く。
 翅をぱたぱたさせると猫尻尾もぱたんと揺れた。
 不思議な感覚だったが、すぐにティエルはこの状況に慣れてしまう。
「すごいにゃ! 毛並みがふわふわだにゃー!」
 両手を伸ばして頭の上にある耳に触れてみると、とても良い手触りだった。
 ティエルはすっかり事件のことも忘れてしまった様子で猫妖精になった感覚を無邪気に楽しみはじめる。
 先ずは木の枝に止まって尻尾をふりふり。
「尻尾ってこんな感じにゃんだね。おもしろーい!」
 高い所に登って地面を見下ろすのは、何だかいつもよりも楽しい気がする。きっと普通の猫もこんな気持ちなのかもしれない。
 そしてティエルは心地よさそうな草を見つけて其方へと降り立った。
 ふかふかの草に座ってやってみようと思いついたのは猫がいつもしている仕草。
 くしくしと顔を洗ったり、ごろごろ転がったり、にゃんこの真似っこをするティエルはとても心地よさそうだ。
「気持ちいいにゃー……はっ!」
 そのままお昼寝をしてしまいそうになったところでティエルは思い出す。こうして猫の気持ちでいるのも楽しいけれど、猟兵として此処にきた理由は別にある。
「迷宮の探索をしにゃいと!」
 自分は良くても学園の生徒たちは人間に戻れるか否かの不安と戦っているのだ。
 よーし、と小さな手を握り締めて気合を入れたティエルは探索を開始する。
「まずはあの怪しい木を調査にゃー」
 びしりと行く先を示したティエルは白い花が咲く木へと突撃した。
 だが、それがマタタビの木だったとは露知らず。ふわふわするような酩酊感がティエルを襲い、そのうえ誰か(おそらく悪戯好きな他の猟兵)が何処かから悪戯で投げた実が直撃する。
「にゃーっ!?」
 思わず叫んだティエルは、ぽすん、とやわらかな草の上にに落下した。
 そして――少女は今、完全に酔っていた。独特のマタタビ酔いにくらくらしながら、丸まったティエルは暫しぐるぐると目を回す。
「にゃあ……」
 その姿はまるで猫がお昼寝をしているような、傍から見ると平和な光景だった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

吉備・狐珀
にゃっ?!本当に耳と尻尾がはえてますにゃ…。
ん…語尾もです…にゃ…。
と…とりあえず隠し扉を探します…にゃ。

…この迷宮、緑が茂っていて寝たら気持ちが良さそうにゃ…。
にゃっ?!じゃにゃくて、扉さがさにゃいと…。
やっぱり、気持ち良さそう…。
それに、何かいい匂いが頭がちょっとふわふわするにゃ…。
…まさかマタタビ…?
うぅ、だ、だめにゃ。しっかりしにゃいと!
あ、でも…。うにゃぁ…。

(こんな姿知り合いに見せられないですにゃ…)

※アドリブ等歓迎です



●誘惑と猫心地
 呪いの煙が立ち込め、視界が曇る。
 はっとした吉備・狐珀(ヤドリガミの人形遣い・f17210)が思わず身構え、いつの間にか閉じていた目を開いた時、既に事は起こっていた。
「にゃっ?!」
 話には聞いていても実際にそうなると驚いてしまう。狐珀の頭の上に現れたのはぴこぴこ動く猫耳。そして、背には長毛種を思わせるふわふわの黒い猫尻尾。
「本当に耳と尻尾がはえてますにゃ……」
 恐る恐る両手で頭に触れた狐珀は柔らかい毛並みを確かめながら尻尾をそろりと揺らしてみた。見た目だけではなく、普通に喋っているつもりなのに言葉もおかしい。
「ん……語尾もです……にゃ……」
 例の呪いを受けた学生たちもきっとこんな気持ちだったのだろう。
 自分の意思とは関係なく半分動物にされてしまった彼らを思い、狐珀は一歩を踏みした。本当は恥ずかしいような妙な気持ちが裡に巡っていたが、このまま立ち止まってはいられない。
「と……とりあえず隠し扉を探します……にゃ」
 最後の、にゃ、は消え入りそうな声で紡ぎ、狐珀は周囲を見渡してみた。
 進む先には崩れ落ちた石の遺跡。
 其処にはどうやら何もありそうにない。次に狐珀が眺めたのは緑が生い茂る場所。
「……この迷宮、緑が茂っていて寝たら気持ちが良さそうにゃ……」
 そっと其方に歩を進める狐珀は、またしてもはっとした。気付けば自分が緑の上に寝転がりたいと思っていることに気付き、尻尾をぶんぶんと振る。
「にゃっ?! じゃにゃくて、扉さがさにゃいと……」
 何とか理性を取り戻そうとするが、狐珀の中に宿った猫の野生がそうさせてはくれないらしい。ちら、と緑を見遣った狐珀は誘惑に負けそうなる。
「やっぱり、気持ち良さそう……」
 ちょっとだけなら、と腰を下ろした狐珀は目を閉じてみた。
 何だかいい匂いがして頭が少しだけふわふわしてしまう。
「にゃ……。まさかマタタビ……?」
 心地好い微睡みのような感覚をおぼえた狐珀はもしかしてと思い至った。しかし半分は猫になってしまっている狐珀にはもう抗うことはできない。
「うぅ、だ、だめにゃ。しっかりしにゃいと! あ、でも……うにゃぁ……」
 ころんと寝転がった狐珀は瞼を閉じたまま、酩酊感に浸る。
 ちょっとだけ。あとちょっとだけなら。
 こんな姿は知り合いには見せられない。もし見られてしまったらどうしよう、と頭の隅で考えながら狐珀は暫しの休憩に入った。
 ごろごろ。まるで喉を鳴らしているかのように、心地よさげに――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシル・エアハート
びっくりした。
さっきの煙は本当に避けれなかったにゃ。


…………………………………………………にゃ?


違和感を感じて頭の上の猫耳や尻尾を触ってみる。
自分と同じ色をした猫耳と尻尾が…。
生えていて一瞬驚くけどすぐ冷静になる。
人生でこんにゃ事は初めてだにゃ。
でもにゃげいてたらあのオブリビオンの思うツボ。
語尾が猫になっても気にしにゃい。
早く魔導書を探さないと…。


それにしてもこの尻尾。
女の子なら鈴付きのリボンを付けても可愛いけど…。
さすがに男の俺が付けてたらまずいよね。

代わりにどこから取り出したのか鈴付きのチョーカーを首に付け、笑顔で猫ポーズをとってみる。
…ま、こういうのも悪くないよね。




*アドリブOK



●にゃんこ散歩
 思わず身構えたのは一瞬。
 そして、周囲に魔力を孕んだ煙が満ちたのもたった一瞬のこと。
 セシル・エアハート(深海に輝く青の鉱石・f03236)は周囲を取り巻く煙が晴れていく様を見つめ、ゆっくりと息を吐いた。
「びっくりした。さっきの煙は本当に避けれなかったにゃ」
 痛みは全く感じない。動きを封じられるような類の力ではなくてよかった。しかし、もしあれが攻撃性を持つものであったらどうなっていただろう。
 其処まで考えた時、セシルの中に疑問が浮かぶ。
「…………………………………………………にゃ?」
 確かに今、自分は無意識に「にゃ」と言った。違和を覚えたのは口調だけではない。頭上と背にも何か妙な感覚があった。
 そっと片手を頭に、もう片手を背に回したセシルは一瞬だけ固まる。
 そうしてゆっくりと、確かめるように振り向いてみた。其処には自分の髪と同じ色をしたふさふさの毛並みがある。
 ぱた、と揺れる尻尾。そして今触ってる耳もきっと同じ色だ。
 違和の所在を確かめたセシルは手を離す。驚きはしたが今のセシルは冷静だ。
「人生でこんにゃ事は初めてだにゃ」
 本来あるはずのないもの。自分には縁遠いはずの耳と尻尾が此処にある。
 呪いの煙が齎した悪戯の結果を真面目に受け止めたセシルは、現在の状況を認めることにした。
「でもにゃげいてたらあのオブリビオンの思うツボにゃ」
 語尾が猫のようになっていても気にしにゃいのが得策だ。そう考えたセシルはぱたぱたと尻尾を左右に振りながら探索を開始する。
「早く魔導書を探さにゃいいと……でも、それにしてもこの尻尾」
 何故か自分の感情に合わせて動く尻尾に手を伸ばしたセシルは手首に尾の先をくるくると巻いてみた。他の猫相手にこんなことをしたら引っ掛かれでもするだろうが、今この尻尾は自分のものだ。
 意外と悪くはないと感じつつ、セシルは尾を指先で撫でた。
「女の子にゃら鈴付きのリボンを付けても可愛いけど……さすがに男の俺が付けてたらまずいよにゃ」
 そういってセシルは代わりに鈴付きのチョーカーを首に付けてみる。
 そして周りに誰もいないことを確認したあと、両手を胸の前で構えた。笑顔で決めるのは愛らしい猫のポーズ。
「にゃん。……ま、こういうのも悪くにゃいよね」
 こんなときくらいは、と気を取り直したセシルは再び探索を進める。
 猫の気持ちは何だか気楽だ。このままのらりくらりと猫のように往くのも良いだろうと思い、セシルは気儘な迷宮散歩に向かった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クラウン・メリー
【檸檬】
にゃにゃ!にゃにゃにゃ?(あれっ!にゃしか言えない?)
にゃんと!日本語喋れなかったら通じないにゃ!
あ、にゃ行が言えないんだっけ?それなら通じるにゃ!
あはは、クールも“にゃ”になってる!

(ここから『にゃ』音声)
猫の耳もしっぽも生えちゃった!(ふりふり)
あはは、クールとても似合ってるよ?
なんか音が良く聴こえるようになった気がするねっ!(ぴこぴこ)
うん、楽しい!まさか猫さんの耳としっぽが
生えると思わなかったから!
早く戻さないと本物の猫さんになっちゃうかな?

さぁ、早く探しに行かないとだね!

わわ、なんかとってもいい匂い!
この木から?ごろごろ。
……はっ!クール助けてっここから動けない!

アドリブ歓迎


クールナイフ・ギルクルス
【檸檬】
全て敬語
アドリブ歓迎

落ち着いてくださいにゃ
ちゃんと言葉ははにゃせますにゃ
にゃ……
今までの仕事で
今回が一番苦労しそうですにゃ

抗っても言葉がかわり頭痛がする
恥ずい……
耳が生えたことでフードが邪魔で
取ると現れるのは黒い猫耳
外套から覗く尾も黒で
めっちゃ恥ずい
痛む頭を片手で押さえ

それは誉め言葉じゃにゃいですにゃ
はあ、あにゃたは楽しそうでにゃによりにゃ
それは勘弁にゃー……

遺跡を足場に
たまには太い枝も利用して
高いところから扉を探す

クラウンの声に何事かと近づくと
ふらりと木に吸い寄せられて
自分の喉が鳴ったことで我に返る

これはマタタビの木ですにゃ

外套の裾で鼻と口を覆い
クラウンの手を引いて木から離れましょ



●マタタビと白と黒の猫
 迷宮に広がる煙。それは猫と化す呪い。
 否応なしに周囲を包み込む魔力は避けることの叶わぬ強制的なものだった。
「にゃにゃ! にゃにゃにゃ?」
 両腕で纏わり付く煙を振り払ったクラウン・メリー(愉快なピエロ・f03642)はじたばたと暴れ、混乱した様子の声をあげた。
 猫化するのならば自分は「にゃ」しか言えなくなるのではないか。
 不安と焦りから成るクラウンの言葉に首を横に振りつつ、クールナイフ・ギルクルス(手癖の悪い盗賊・f02662)はその肩を軽く叩いた。
「落ち着いてくださいにゃ。ちゃんと言葉ははにゃせますにゃ」
「にゃんと! 喋れなかったら通じないにゃ! あ、喋れたにゃ!」
 冷静なクールナイフからの指摘に二度目の驚きを見せたクラウンがはっとする。
 思い込みとは恐ろしいもので、クールナイフが教えてくれなかったらクラウンはずっとにゃーにゃーと鳴き続けていたかもしれない。
 まったくにゃ、と溜息をついたクールナイフだが、彼もまた猫化したひとり。
「にゃ……今までの仕事で今回が一番苦労しそうですにゃ」
「あはは、クールも『にゃ』になってる!」
 落ち着きといつもの調子を取り戻したクラウンは可愛らしい口調のクールナイフを見て楽しげに笑った。
 クラウンはまっしろ。対するクールナイフはまっくろ。
 互いに対照的な色合いの猫耳や尻尾が生えており、ふたりは猫の呪いの強さを改めて知った。しかし、普段はないものがあると思うと何だか不思議だ。
「にゃんてことだにゃ……」
 抗っても言葉が猫語に代わり、頭痛がした。
 恥ずい、と呟いたクールナイフは頭を押さえると同時に被っていたフードを肩口に落とす。それまで猫耳の形に膨らんでいたところから尻尾と同じ色の黒い耳が現れ、それが不意にへたりと下がる。
「めっちゃ恥ずい、にゃ」
 もう一度同じ思いを言葉にしたクールナイフは俯いた。
 しかし、白と黒の色が対照的であるのと同じように猫化に対する反応もまた違う。
「猫の耳もしっぽも生えちゃったにゃ!」
 尻尾を振ってくるくるとその場で回ってみせたクラウンは恥ずかしさなど微塵も感じていないようだ。俯くクールナイフを覗き込んだ彼は屈託なく笑む。
「あはは、クールとても似合ってるにゃよ?」
「それは誉め言葉じゃにゃいですにゃ」
 やめにゃさい、と返すクールナイフには笑顔を向けたまま、クラウンは両耳をぴこぴこと軽く動かしてみた。
「にゃんか音が良く聴こえるようににゃった気がするにゃっ!」
「はあ、あにゃたは楽しそうでにゃによりにゃ」
「うん、楽しいにゃ! まさか猫さんの耳としっぽが生えると思わにゃかったから!」
 深い溜息混じりのクールナイフの声に明るく答えたクラウンはそのままぴょこんと飛んだ。尻尾が自然にバランスを取ってくれているのか、普段よりも軽快にジャンプできた気もする。そして、クラウンはふと浮かんだ思いを声にしてみた。
「早く戻さにゃいと本物の猫さんににゃっちゃうかにゃ?」
「それは勘弁にゃー……」
「さぁ、早く探しに行かにゃいとだにゃ!」
 本気で落ち込みそうなクールナイフを手招いたクラウンは隠し扉を探しに行こうといざなった。そうしてふたりは迷宮遺跡の冒険に繰り出す。
 クールナイフは地を蹴り、太い樹の枝へと跳躍した。
 高所から猫のように周囲を見渡す彼の傍らに翼で飛んだクラウンも着地する。翼猫のようだと感じたのはさておき、クールナイフは双眸を鋭く細めた。
 しかしそのとき、クラウンが或る方角を指差す。
「わわ、にゃんかとってもいい匂い! あの木からにゃ?」
 ふらりと吸い寄せられるように枝から降りていってしまったクラウンに続き、クールナイフも不思議な香りのする木へと向かう。
 ごろごろ。
 何故かその白い花が咲く木の近くでは喉が鳴ってしまう。クラウンだけではなく自分にまでも同じ現象が起きていることでクールナイフは我に返る。
「……にゃっ! クール助けてにゃっ、ここから動けにゃい!」
「これはマタタビの木ですにゃ」
 クールナイフは外套の裾で鼻と口を覆い、助けを求めるクラウンの手を引いた。
「にゃああ……!」
 猫の習性故なのかクラウンの声は名残惜しそうだったが、クールナイフは心を鬼にして先に進んでいった。本当は彼もまたマタタビに惹かれていたのだが、きっとあのまま彼処にいるともっと恥ずかしいことが起こっただろう。
 気が付いて良かったとしみじみ感じながらクールナイフはクラウンを見遣る。すると彼の瞳が妙に活き活きしているように見えた。
「クール! にゃーにゃー、くるくるくーる!」
「あにゃた、酔ってません?」
「そんにゃことないにゃ! にゃはは!」
 妙にハイテンションで上機嫌なクラウンの様子に嫌な予感を覚えてしまう。というよりも確信だ。絶対にクラウンはマタタビ酔いをしている。
 しかしクールナイフは心に決める。普段以上に危なっかしいのならば、酔いが醒めるそのときまで彼の手を離さずにいよう、と。
 そして、白と黒の猫たちは迷宮探索を再開してゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リュヌ・ミミティック
・心情
……ぼ、僕、猫さんに、なっちゃ、う、の、かー

・行動
「ん、おー……猫憑き季月、一緒、一緒、うれし、にゃ~」
猫憑き季月と一緒で嬉しいなー
あ、ダフィットも、猫さんになっちゃう?
「ん、えへへ、色んな猫さん、可愛いね、たのし、ねー!」
またたびは、やっぱり堪能してから行きたいよね
これが、酔うってことなのかな、たのし、ねー
ひとまず、壁や物に手をやって、違和感がないか調べながら行くね
幾ら隠されてても、違和感は、きっとわかる、はず
ついでに、ぬいぐるみさんたちにもたすけてもらおう
人数(?)が多ければ見つかるよ

・捕捉
必ず、喋る際は、「ん。」か「ん、」が最初につき、変な所で区切って喋るのが癖
絡み・アドリブ大歓迎



●ねこねこ大発見
 ふわふわとした煙が晴れた。
 これが猫化の呪いだと思ったときにはもう、リュヌ・ミミティック(妖狐の竜騎士・f02038)にはいつもとは違う耳と、もう一本の尻尾が生えていた。
「ん……ぼ、僕、猫さんに、にゃっちゃ、った、の、かー」
 ぴこぴこ。ぱたぱた。
 九尾の狐ならぬ二尾の狐猫になったリュヌは新しい尻尾を見るために振り返る。
 重なるように生えた猫耳は灰色。
「ん、おー……猫憑き季月、一緒、一緒、うれし、にゃ~」
 呪いだというのに慌てたり嫌がったりする様子はなく、抱いた猫憑き季月と同じ色の耳と尻尾に喜ぶリュヌ。
 見れば隣にいたドラゴンランスのダフィットも猫化していた。灰色猫のリュヌと猫憑き季月に対し、ダフィットは純白の毛並みの耳と尾を持っている。
「ん、えへへ、色んにゃ猫さん、可愛いにゃ、たのし、ねー!」
 その姿になっても白き気高さを保ったままの竜に笑いかけ、リュヌは辺りをきょろきょろと見渡し始めた。
 何処からか芳しい香りが辿ってきている気がしたのだ。
「ん、またたび、かにゃ?」
 いくにゃ、と猫語めいた言葉を紡いだリュヌは歩き出す。
 せっかく危険がないと分かっているのだからめいっぱい探検しなければ損かもしれない。そうなるとやっぱりまたたびは堪能しておきたい少年心だ。
 香りを頼りに進んでいくと白い花が見えた。
 何だかふにゃふにゃするような感覚をおぼえたリュヌは紫色の蔓が巻き付く木にすりすりと体を寄せた。
 気分がふわっとしているようで、何だか不思議。
「ん。これが、酔うってことにゃのかにゃ、たのし、にゃー」
 目を細めて笑んだリュヌはどうやらまたたびを楽しんでいる。もしかすれば将来、酒豪になれるポテンシャルを秘めているのかもしれない。
 そして堪能し終わったリュヌは遺跡めいた建物の方へと歩き出した。
 目指すのは奥のフロア。
 リュヌは子狐の縫い包みたちを召喚し、違和感を探しにゆく。手分けをすればきっと何かが見つかると思った矢先、リュヌが触れていた壁が急に凹んだ。
「ん……にゃ?」
 すると其処に扉が現れる。
 きっとこれが次のフロアに続く隠し扉だ。
「ん。やったー、にゃー」
 確信したリュヌは猫憑き季月の腕を取り、暫しくるくるとその場で回っていた。
 尻尾がゆらゆら、猫耳がぴこぴこ。
 暫しの猫時間が巡ってゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

花園・スピカ
※話し方は基本敬語であれば『にゃ』の追加OKです


げほっごほっ……って、にゃんですかこれはー!!?(煙の後生えた猫耳猫尻尾に驚愕)
い、いや、猫ちゃんも確かに可愛いとは思いますが、わんちゃんの方が個人的には好み…って、てんちゃーん!!?(何故かてんちゃんまで猫着ぐるみ着用状態に)

と、とりあえず扉を…って、にゃんだかとっても良い香りが…ふにゃにゃん……(運悪く近くにあったマタタビに引っ掛かるがてんちゃんにぺしぺしされてなんとか正気に戻る)


…うぅ、まっすぐ歩けにゃい…(※酔って千鳥足)
仕方にゃい、壁を伝って歩きつつ扉を探すことにしまし…にゃーっ!!?
(たまたま手をついた所にあった扉が開いてビターン!)



●幸か不幸か
 迷宮内にもくもくと広がる煙が視界を掻き消していった。
「げほっごほっ……」
 咽てしまうほどの大量の煙に包まれ、花園・スピカ(あの星を探しに・f01957)は反射的に強く瞑った目を開けてみる。
 見れば煙はすぐに晴れており、周囲の景色もちゃんと見えるようになっていた。
 ほっと安心したのも束の間。
「って、にゃんですかこれはー!!?」
 スピカは頭に生えた猫耳に気付き、思わず両手で頭を押さえる。
 しかし、それと同時に生えていた尻尾が勝手に逆立ったことで更に驚いてしまう。この耳と尻尾、何故かスピカの感情に応じて動いているようだ。
 これが猫科の呪いだと分かってはいても実際になってしまうと慌ててしまう。
「い、いや、猫ちゃんも確かに可愛いとは思いますが、わんちゃんの方が個人的には好みにゃ……って、てんちゃーん!!?」
 何故か柴犬のぬいぐるみのてんちゃんまで猫耳が生えた形になってしまっており、犬派のスピカは落胆と驚愕が入り混じった声をあげた。
 これは良くない。実に良くないことが起こっている。
 スピカは一刻も早くこの状況をどうにかしようと考え、てんちゃんを強く抱きしめながら歩き出した。
「と、とりあえず扉を……って、にゃんだかとっても良い香りが……」
 隠されているという扉を探しに向かう最中、スピカはふらふらと横道に逸れる。
 えも言われぬ香りは今まで感じたことのない感覚を呼び覚ますかのよう。
「ふにゃにゃん……」
 運悪くも香りの元はマタタビだった。
 へたりこんですりすりしようと動いた時、てんちゃんがぺしぺしとスピカに触る。はっとしたスピカは立ち上がり、ふらつく足取りで先を進む。
「……うぅ、まっすぐ歩けにゃい……」
 酔っているような千鳥足でも何とか壁に手を付き、スピカは歩いていった。
「仕方にゃい、こうやって扉を探すことにしまし……にゃーっ!!?」
 ――ぴたーん! がらがらっ!
 物騒な音が響いた原因はスピカが転倒したこと。そして続けて聞こえたのはたまたま手をついた所に扉を開ける隠しスイッチがあり、次のフロアへの道がひらいた音だ。今のスピカに知る由はないが、これで二箇所目の扉が見つかった。
「にゃあ……」
 だが、目を回したスピカは暫し其処に倒れていた。
 災い転じて福となす。まさにその言葉を体現してしまったスピカであった。
 そうして彼女が他の仲間にこの扉の存在を知らせるのは、もう少し後のお話。

大成功 🔵​🔵​🔵​

忍足・鈴女
WIZ
はあ…またかいな…

しかし、前回とは違う点がある分やる気も出るもんやなあ…

①猫化のキーアイテムがある
つまりそれをゲットできれば思うがままに
猫化することが可能!

②ボスが猫やなくて少女(←ここ重要)
前回は後味悪かったからなあ…
しかし今回は意思疎通が可能
しばいて魔導書を量産させることも…

ふふふふふ…
まあ、まずは追いつかなあかんなあ…

とりあえず頭を巡らす為に一服キメてから

【楽器演奏】による音を迷宮内に響かせて
反響音を【聞き耳】で聞き取る事で
壁の薄い所を探る

ある程度の目星が付いたら
目を凝らして辺りを見回して(【視力】【情報収集】)
目星を付けたらUCで破壊するで
穴空いてたら後続も簡単に見つけられるやろ



●呪いの魔導書
「はあ……またかいにゃ……」
 忍足・鈴女(最終猫型暗殺兵器・f03727)は猫化呪いの煙が晴れた周囲を見渡し、深い溜息をついた。
 以前にも同じような経験をしたことがあり、既視感を覚えたからだ。
 今、鈴女の頭には元から宿る猫又の耳以外にもうひとつ、呪いによる猫耳が重なるように生えている。傍から見れば大きな耳のように見えるだろう。
 更にもう一本、新たな尻尾があることで少し不思議な見た目になっている。
「しかし、前回とは違う点がある分やる気も出るもんやにゃあ……」
 呪いによる口調変化など気にすることなく、鈴女は現在の状況を整理していく。
 第一に、猫化のキーアイテムがあること。
「つまりそれをゲットできれば思うがままに猫化することが可能!」
 そして第二に、敵が少女であること。
 ここは実に重要である。前回は後味が悪かったから、と以前のことを思い出す鈴女は歩き出した。
「今回は意思疎通が可能にゃ。しばいて魔導書を量産させることも……」
 其処まで考えた鈴女だが、冷静に感じていることもある。
 キーアイテムである本を破らなければならないということは分かっている。学生たちの呪いを解くためには手に入れたら破壊の一択だろう。
 それにあの本はあの少女が作ったとは限らない。書の破壊は確実。されど彼女が同じ魔導書をまた作り出せるかと問われればまったくの未知数である。
 だが、考えるだけならば浪漫がある。
「ふふふふふ……是非はさておき、まあ、まずは追いつかにゃあかんにゃあ」
 鈴女はとりあえず頭を巡らせる為に一服した。
 そして、彼女は三味線を響かせはじめる。それは演奏によって音を迷宮内に響かせ、反響音を聞き取る狙い。これで壁の薄い所を探るのだ。
 そうすることで鈴女はある程度の目星を付けていく。
「ここやろか」
 目を凝らして辺りを見回した鈴女は遺跡の壁を見遣った。
 刹那、解き放たれた三味線の弦が壁を穿つ。崩れ落ちた壁の向こうには違うフロアの景色が広がっていた。
「よし、と。こにゃいな穴空いてたら後続も簡単に見つけられるやろ」
 小さく頷いた鈴女は歩き出す。
 その背には、いつもより一本多い尻尾がゆらりと揺れていた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

城野・いばら
あらあら、みゃあ
本当にお耳と尻尾ができたの
ふしぎね
アリスの世界もふしぎがいっぱいなのね?

まっしろいお耳と尻尾
頑張ったらアリス達みたいな体にはなれたけれど
このふわふわな毛はできなかったの
だから、みゃあ。うれしい

この大きなお耳があれば、遠くのアリスともお話しできる?
このながーい尻尾は…何をすればいいかしら?
またたびはお日様みたいに心地良い?

気になるものは触れてしまうの
でもいけない。私、困っているアリスを助けにきたのだった!
この奥に進めばいいのね?
もっとふしぎに出会えそうな予感

アリスのふわふわもとっても素敵ね
困っているアリスがいればお手伝い
通せんぼしているお岩は怪力で動かすわ

まっていてねふしぎさん!


ルナ・ステラ
実害はない悪戯かもしれませんが、学生さんたちが困っているなら何とかしないとですね!


—けほっけほっ...
わたしも猫になってます?!

と、とりあえず扉を探さないとですね!
マタタビの木に気をつけながら、箒に跨って上から扉や怪しい場所がないか探してみましょうか。

(扉らしきもの見つけました!)
早速開けて...マタタビがいっぱい出てきました?!
ふにゃあ〜なんだか変な感じに...
フラフラします...

〈少し時間が経って酔いがさめたら〉
今度からは、怪しい場所を探索する場合【属性攻撃】(風)+【オーラ防御】で、風のバリアをはってからにしましょう...(マタタビ等の対策)

同じ手には引っ掛かりませんよ!



●白い花と真白な猫たち
 みゃあ。
 愛らしい声を紡ぎ、城野・いばら(茨姫・f20406)は自分の姿を確かめる。
「あらあら、本当にお耳と尻尾ができたのにゃ」
 ふしぎにゃ、と落とした言葉も猫そのもの。
 いばらは自分の頭と背に生えたまっしろでふわふわな猫の耳としっぽに触れながらもう一度、みゃあ、と口にした。
「アリスの世界もふしぎがいっぱいにゃのね?」
 呪いという名の魔法で一時的にできたものだが、いばらには嬉しかった。
 頑張ったらアリス達みたいな体にはなれた。けれど、こんなふわふわな毛は自分にはできなかったから。
「みゃあ。うれしい」
 この大きなお耳があれば、遠くのアリスともお話できるかもしれない。
 このながーい尻尾では何をすればいいだろう。ご機嫌なときにぴんと立ててもいいし、ゆらゆらと揺らしてみても楽しいかもしれない。それにきっと、猫が大好きなまたたびを見つけたらお日様みたいに心地良い気分になれるかも。
 いろんな想像を巡らせたいばらは歩き出す。
 ふしぎな文様の石壁。足下に咲くちいさなお花。
 気になるものに触れて、立ち止まって眺めて、時には香りを感じてみる。道中で見つけたまたたびの花は白くて可憐で、目の前のものが楽しげにくるくる回っているような感覚をおぼえた。
 でも、どんなことも嬉しかった。
 そうして暫しの楽しい時間が流れてゆく。しかし、いばらは不意にはっとする。
「いけにゃい。私、困っているアリスを助けにきたのだった!」
 元の目的を思い出したいばらはきょろきょろと辺りを見回した。
 すると何だか気になる場所があった。いばらが其方に近付いていくと、既にひらいた扉が見えてきた。
 どうやら此処に訪れた他の猟兵が仕掛けを解除したあとだったらしい。
「この奥に進めばいいのにゃ? もっとふしぎに出会えそうにゃ予感」
 いばらは浮き立つような気持ちを感じながら踏み出そうとする。だが、ふと誰かの――アリスの気配を感じていばらは振り返った。
 そして、いばらが出会ったのは――。

 それよりも少し前、呪いの煙が迷宮フロア内に広がっていた頃。
「けほっけほっ……」
 おもいきり魔力の影響を受けてしまったルナ・ステラ(星と月の魔女っ子・f05304)は咳き込んでいた。
 口元を押さえて呼吸を鎮め、ルナは煙が晴れるのを待つ。
 そして視界がクリアになったとき、ルナは驚愕した。
「わたしも猫ににゃってます?!」
 普通の人間だったはずのルナには現在、髪の色と同じ白い猫の耳と尻尾が生えている。困ったように下を向いた耳に、しゅんと下がる尻尾。どうやらルナの感情に応じて耳と尻尾は動くようだ。
 しかしそれ以外の変化はなく、ルナはちゃんと動けることを確かめる。
「たしかに実害はにゃい悪戯かもしれませんが、学生さんたちが困っているにゃら何とかしにゃいとですにゃ!」
 口調は自然に猫のような語尾になってしまっていた。
 そんにゃ、と肩を落としたルナだったがすぐに顔を上げて気合を入れる。
「と、とりあえず扉を探さにゃいとですにゃ!」
 箒を取り出したルナはそれに跨り、遺跡風のフロアを巡ってみることにした。
 猫化しているということは気をつけるべきはマタタビ。
 木には出来る限り近付かぬようにしながら、ルナは扉や怪しい場所がないかを探していった。そして、或る場所で気になる扉を発見する。
「扉でしょうかにゃ?」
 箒から降りたルナは遺跡壁の扉に手を伸ばし、そっと開いてゆく。
 すると――。
「ふにゃあ~にゃんだか変にゃ感じに……」
 いっぱいに広がる不思議な香りにくらりとしたルナはふらふらと進んでしまう。
 その違和感の正体はマタタビ。なんと扉を開けた先は白い花が咲くマタタビだらけの場所だったのだ。
「にゃあ……うまく歩けにゃい~」
 その場にへたりこんでしまったルナは目を閉じる。
 そして彼女は気持ちよさそうに草の上でころころと転がった後、すやすやと眠ってしまった。それから暫く――。
 
「アリス、ねえアリス。起きて」
 みゃあ、と愛らしい声が聞こえた気がしてルナはゆっくりと目をひらいた。
 其処には眠っている自分を心配している様子の少女――いばらがいた。アリス、と呼ばれているのは彼女が別の迷宮世界の出身ゆえだろう。
 いばらはルナに手を伸ばし、だいじょうぶ? と問うように猫耳に触れた。
「アリスのふわふわもとっても素敵にゃ。まっしろ、おそろい」
 ふわりと微笑むいばら。
 どうやら彼女は周囲のマタタビからの影響をそれほど受けてはいないようだ。ルナは其処でしっかりと意識を取り戻し、触れる手の心地よさに目を細めた。
「すみませんにゃ。マタタビが……にゃっ」
 そして起き上がったルナははっとして自分の周囲に風のバリアを張った。せっかく起こしてくれたいばらの横でまた寝てしまってはいけない、と考えたからだ。
「危にゃかったです。同じ手には引っ掛かりませんにゃ!」
「良かった。ねえ、扉を見つけたの。一緒にどうかしら、アリス」
 すっかりもとに戻ったルナに安心したいばらは先程見つけた場所の方向を示す。有り難いことだと頷いたルナは、いばらに自分の名を告げてから同道を願った。
「あちらですにゃ?」
「ええ。まっていてにゃ、ふしぎさん!」
 そうしてふたりは次の迷宮フロアに続く道を進んでゆく。
 この先に待つもっと不思議なこと、薔薇園で何が起こるかを想像しながら――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ノトス・オルガノン
◆SPD
※アドリブ、絡み、お任せ歓迎

尻尾と耳、か
何だか不思議な感じだ…
まあ、誰が見てる訳でも…いや、それでも少し恥ずかしいな…
さっさとこの場を攻略しよう

UC:κυνηγετικό σκυλί
ニフタに乗ってさっさと移動しよう
しかし、猫化魔法のせいかな、何だか眠気が…


ジナイーダ・クロハネ
※アドリブ・連携歓迎

方針:POW

え、ニャんニャのこれは(困惑)

説明は聞いてたけど、ここまで酷いとは。とはいえ、このままじゃまずい。奥に進まニャいと……。
流石にニャーニャー言うのは恥ずかしいから、口数少なくしニャがら探すけど……おかしい、身体が疼く。
(※ふらふらとマタタビに吸い寄せられる)

――はっ!?

いいや、違う。ニャんとか気を保て、アタシ。
この状況に対する叛逆をせずして、何がクロハネだ……!



●バッドステータス:恥ずかしい
 身体に痛みや異常はない。
 呪いの煙が晴れた後、視界もクリアになっている。
 だが――。
「にゃんだか不思議な感じだ……」
 ノトス・オルガノン(白百合の鎮魂歌・f03612)は振り返り、自分の後ろを見ていた。正しくは後ろではなく背の方に生えた漆黒の尻尾だ。
「尻尾と耳、か」
 ノトスは同じく頭に生えている猫の耳に触れ、状況を改めて確認した。
 例に漏れずノトスも猫化の悪戯呪いに掛かっている。口調も僅かに猫らしいものになっているが、ただそれだけだ。
「まあ、誰が見てる訳でも……いや、それでも少し恥ずかしいにゃ……」
 眉を僅かに下げたノトスは辺りを見渡す。
 敵や生き物の気配はない。探すべき隠し扉を探すことに集中できるだろう。
 さっさとこの場を攻略して、厄介な呪いを解く。それが最優先だとしてノトスは己の力を紡ぎ始めた。
「おいで、ニフタ」
 ――κυνηγετικό σκυλί
 夜闇に溶け込む暗黒色の犬、ニフタを召喚したノトスはその背に乗る。
 強大な魔力も感じず、隠し扉というのも大掛かりな仕掛けなどがあるわけではなさそうだ。周囲の空気からそう判断したノトスはニフタに先に進むよう願う。
 探索をしていればそれらしきものも見つかるだろう。
「しかし、にゃんだか眠気が……」
 猫魔法のせいだろうか。目を擦ったノトスは瞼が重くなっていくことに気付いた。
 うつらうつらと船を漕いでしまうのはゆっくりと歩を進めるニフタの背の上がお昼寝に最適だと感じた為。彼の後ろで揺れる尻尾も心なしか心地よさそうだ。
 そして、いつしかノトスは眠りに落ちる。
 音も立てず静かに眠る姿はまるで、黒猫の休息のように見えた。

 同じ頃、少し離れたところでも猫の呪いを受けていた者がいた。
「え、ニャんニャのこれは」
 困惑しているのはジナイーダ・クロハネ(叛逆のワタリガラス・f18962)だ。
 烏のような漆黒の耳と尻尾が現れたことによってジナイーダは改めて、この呪いの不可思議さと理不尽さを知った。
 話には聞いていたが、実際になってしまうのはまた違う。
「ここまで酷いとは……ニャーにゃんて言いたくニャいのに」
 言っているつもりはないというのに勝手に言葉が出てしまう。このままではまずいと感じたジナイーダは、先ずは探索を始めてしまおうと気を取り直した。
「奥に進まニャいと……」
 また不本意な言葉が零れ落ちてしまったことでジナイーダは口元を押さえる。
 呪いとはいえど流石にニャーニャーと鳴き続けるのは恥ずかしい。周囲に誰もいないのが救いだが自分で聞くのもまた奇妙な気分だ。
 この先は不用意に喋らぬようにしようと決め、ジナイーダは先に進む。
 しかし、足取りまでもが自分の思うようにいかない。
(……おかしい、身体が疼く)
 まさか何かの影響があるだろうか。何があっても良いように心の準備をしていたジナイーダだが、辿り着いた先ですべてを悟る。
「――はっ!?」
 其処には木に白い花が咲く光景が広がっていた。周囲にはえも言われぬ香りが漂っており、それが心を惑わせているようだ。
 あの近くで思いきり遊びたい。ごろごろして眠ってしまいたい。
 そんな思いが過ぎったが、ジナイーダは首を横に振る。
「いいや、違う。ニャんとか気を保て、アタシ。この状況に対する叛逆をせずして、何がクロハネだ……! ニャ……ニャー!!」
 だが、本能には抗えなかった。
 鳴いた黒猫はマタタビに擦り寄り、思う存分に香りと心地を堪能してゆく。
 
 それから暫く経った時のこと。
「ニャっ!?」
「……にゃ?」
 ジナイーダは我に返り、ノトスは眠りから覚めた。
 気付けばジナイーダは木の近くで横になっており、ノトスもニフタに運ばれてこの近くまで訪れていたようだった。マタタビ酔もすっかい醒めたジナイーダは半覚醒状態のノトスに問う。
「お前も隠し扉を探しに来たニャか?」
「そうだにゃ」
 頷いたノトスとジナイーダはその瞬間、はたとした。
 近くには誰もいないと思っていたから恥ずかしさも軽減できていたというのに、偶然にも猟兵と出会ってしまった。抗えぬ猫語の呪いが口をついて出てしまったことで、ふたりの間に妙に気まずい、もとい恥ずかしい空気が漂う。
 そうしてなんやかんやでふたりは探索を再開し、他の猟兵が見つけた扉のもとまでたどり着くことになる。その間にどんなやりとりがあり、どのような道中が繰り広げられたのかは、彼らだけが知ることだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

己に生えた髪と同じ色の長毛種の尾と耳を気にしながらも猫耳の生えた宵を眺めつつ進む
以前も有ったが本当に猫耳が生えた宵は愛にゃしいな…
…これは矢張り保存しておかねばにゃらんとすまぁとふぉんにて撮影を
笑顔を向けてくれる宵についぞ表情が緩むも、その様子を撮られれば照れくさそうに瞳を眇めつつ先に進むぞと誤魔化すような声を投げてみよう

じゃれながら進むも途中力が抜ければメイスを握り敵襲に備えんとする…が
敵襲でにゃく…木天蓼、か…?
くらと酔った様に思考が漂えばついぞ猫が匂いをつける様
鼻先を相手の頭にすりすりと擦り付け懐いてしまうかもしれん
酩酊は罪にゃがこれは木天蓼故…まあきっと良いにょだろう…


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

己に短毛種の猫耳と猫尻尾が生えるのは三度目でしょうかにゃ
猫耳の生えたニャッフィーロ君は実に可愛らしい……
スマートフォンを向けて撮影してくるニャッフィーロ君に笑みを向けつつ
ポーズをとるサービスでもしましょうかにゃ
そしてお返しとばかりにニャッフィーロ君もスマホで写真におさめつつ進みましょう

……と、マタタビの酔うような匂いがあたりに漂えばぷるぷる首を振って
ニャッフィーロ君、大丈夫です、か、にゃ……
じゃれるようにくっついてくる相手にどうかしましたにゃと振り返ろうとするも、鼻先を擦りつけられれば
……いい匂いがしますにゃ
マタタビの匂いかきみの匂い、どっちでしょうかにゃ



●にゃうとニャッフィーロ
 己に猫耳と尻尾が生えるのは三度目だったか。
 逢坂・宵(天廻アストロラーベ・f02925)は冷静に自分の姿を確かめた後、隣にいるザッフィーロ・アドラツィオーネ(赦しの指輪・f06826)の姿を見つめる。
 宵は短毛種。
 ザッフィーロは長毛種。
 しなやかな長い尻尾と、毛量の多いもふもふ尻尾。
 黒と藍。其々の髪の色と同じ色をした猫耳と尾は長短が対照的だ。
「実に可愛らしいにゃ……ニャッフィーロ君といったところでしょうか」
「以前も有ったが本当に猫耳が生えた宵は愛にゃしいにゃ……」
 しかし、思っていることはよく似ている。
 ザッフィーロは自分の頭と背についているものに違和感を覚えながらも、スマートフォンを取り出してみた。
「これは矢張り保存しておかねばにゃらん」
 勿論、撮影するのは可愛らしい宵の姿。
「では、これはどうですにゃ?」
 ザッフィーロに笑みを向けた宵は猫っぽいポーズを取ってみせる。サービス精神満点の宵のベストショットを撮るべく、ザッフィーロは撮影に力を入れた。
 笑顔を向けてくる猫宵を見るとついつい表情も緩んでしまう。
 そして宵もお返しとばかりにニャッフィーロも写真におさめていった。
 宵の撮影に応じたザッフィーロだったが、やはり少しは照れくさい。瞳を眇めつつ撮影を切り上げた彼は、先に進むぞ、と誤魔化すような声を投げた。
 次のフロアに進むには隠し扉を見つける必要があるという。
 この辺りには敵はいないと聞いていたが、万が一を思ったザッフィーロはメイスを握った。周りでゆらゆらと揺れる草木にも、先を歩く宵の揺れる尻尾にじゃれるのも今はおあずけだ。
 遺跡めいた石造りの建物の傍を通り過ぎ、木々が生い茂る道をゆく。聞いていた通りに何の気配もなく危険そうなものは特に見当たらず、気配も感じられない。
 だが――。
 不意に目の前が眩むような感覚をおぼえ、宵は眉をひそめる。
 しかしそのときには既にそれは二人を襲っていた。世界がくるくると回っていながらも心地よさを感じる。
 場所が場所であれば敵の精神攻撃かと疑ったが、見える範囲には白い花が咲いているだけ。されど其れが原因であることはすぐに分かった。
「敵襲でにゃく……木天蓼、か……?」
「ニャッフィーロ君、大丈夫です、か、にゃ……」
 ザッフィーロが後退りする中、宵はぷるぷると首を横に振った。すると彼は宵に寄り添ってくる。
「どうかしました、にゃ……?」
 そのままザッフィーロは鼻先を宵の頭にすりすりと擦り付けた。
 まるで猫が懐いているかのように、そして自分のものだと主張する匂いをつけるように、ザッフィーロは宵から離れない。
 宵は振り返ろうとしていたが背から感じる香りに思わず動きを止めた。
 じゃれるようにくっついてくるザッフィーロと同じように宵もまたマタタビに酔ってしまっているようだ。
 このままでは埒が明かない。
 彼らは近くのやわらかな草の上に腰を下ろして休憩を取ることにした。
「……いい匂いがしますにゃ」
 感じる香りはマタタビの匂いか、それともきみの匂いか。
 宵はもっと擦り寄ろうとして腕を回してくるザッフィーロに身を任せて目を閉じた。頭では分かっているのだが、身体が勝手に宵にじゃれついてしまう状況はどうなのか、ザッフィーロは考える。
「酩酊は罪にゃがこれは木天蓼故……まあきっと良いにょだろう……」
 しかし思考は上手く巡らない。
 これも呪いが導いたものだが誰も傷つかぬ優しい状況だ。
 だから後少しなら許されるのだとして、ザッフィーロは思う儘に宵に甘えた。宵もまた、可愛いニャッフィーロと共に過ごせる時間を愛おしく感じる。
 そうして暫し、心地好いひとときが流れてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鷹沢・和音
鮫島さんf13873と
アドリブ歓迎

にゃ、にゃんだこれぇぇぇ
鴛海の話をろくに聞いてにゃかったバチがあたったのかにゃ
…え
今、俺にゃって言ったにゃ?

皆の耳に猫耳が生えてて恐る恐る自分の頭に手をやれば
……
どうしよ、俺、これからどう生きていけばいいのかわからにゃい…
出家するしか…

人生に絶望してたら鮫島さんに声かけられた
猫魔法の説明で絶望するけど
よーするにアイツぶっ飛ばせば元に戻るんだにゃ?
…はっまたにゃって言った
なるべく出ないように気をつける、にゃ

影の追跡者を使いながら一緒に探す
またたびはなんだか頭がぽーっとしてくらくらする
酒飲んだことにゃいけど、酔ったらこんな感z
鮫島さん?!
仕方がにゃいから支えていく


鮫島・冴香
※鷹沢・和音さん(f13101)との出会い希望

「……ね、猫耳……!」
違和感の正体は真っ白な猫耳&猫尻尾
恥ずかしさに頬を染めつつ
(早く扉を探して元に…!)

【第六感】を頼りに扉を探そうとすると
目の前に焦る和音さん
(猫耳姿が…似合う)
ほっこりする冴香 ※可愛いもの好き

事情を知らぬ和音さんに、このフロアを説明する冴香
「良かったら、一緒に探しましょう、にゃ」
真面目な顔で猫語
顔を真っ赤にする冴香

ずんずん進むが、マタタビトラップに容易にかかり
「な、なんだか身体が思うように動かにゃい…!」
つい和音さんに寄り掛かったり

「マタタビに負けないにゃよ」
ヤケになりつつ『サイコキネシス』を使いつつ探索を

※アドリブ大歓迎!



●茶虎猫と白猫
「にゃ、にゃんだこれぇぇぇ」
 驚きの色が混じった声が響き、周囲の草木がざわざわと揺れた。
 その声の主は鷹沢・和音(ブルースカイブルー・f13101)だ。訪れた矢先に謎の魔力煙を受けてしまった彼は今、自らの身体に起こった異変に戸惑っていた。
 頭には茶虎色の猫耳。背にも同じ色をした長くてしなやかな尻尾が生えている。
「話をろくに聞いてにゃかったバチがあたったのかにゃ」
 どうしようかと肩を落としたとき、和音は更なる違和感を覚えた。
「……え。今、俺にゃって言ったにゃ?」
 にゃー。
 猫の鳴き声のような口調と語尾が意識していないうちに出てしまっている。
 改めて、極めて冷静に頭上の違和を確かめるために和音は手を伸ばした。普段の自分にはない、ふわふわの手触りの毛並み。
 不安を示すように下がり、ゆらゆらと揺れている尻尾。
「……」
 手触りがすごく良い。そんなことを思ってしまったりもしたが、和音はふるふると首を振った。
「どうしよ、俺、これからどう生きていけばいいのかわからにゃい……」
 出家するしかないだろうか。
 それとも野良猫のように路地裏で過ごすだとか、誰かに飼われる人生もとい猫生を過ごす羽目になるかもしれない。
 想像が飛躍してしまいそうなそのとき、和音は誰かの気配を感じて振り向いた。
 
 和音による驚愕の声が響くよりも少し前のこと。
 話を聞いて迷宮に訪れていた鮫島・冴香(Sexy Sniper・f13873)もまた、猫化の呪いを受けてしまっていた。
 冴香は煙が晴れるまで何が起きても大丈夫なように身構えていた。
 そうして視界を塞いでいた魔力が晴れたとき、冴香は何も起こらなかったことに軽く首を傾げた。だが、妙な違和感を覚えている。その正体は、もちろん――。
「……ね、猫耳……!」
 焦茶色の髪の上、ちょこんと生えた真っ白な猫耳。そして、揺れる猫尻尾。
 思わず両手で耳に触った冴香は柔らかな感触を確かめてしまう。それから振り向いて自分の背側を見れば、長毛種めいたふさふさの尻尾が確認できた。
「にゃんてことにゃの……」
 恥ずかしさに頬を染めた冴香は自分の言葉までもが変化していることに気付く。
 これがあの煙の魔力なのだと改めて知った冴香は咳払いをしてから、何とか気を取り直そうとする。しかし恥ずかしいものは恥ずかしい。
(早く扉を探して元に……!)
 出来る限り喋らぬようにすれば少しはマシになるかもしれないと考えた冴香は歩き出す。そんなとき、冴香は前方に見知った人物を見つけた。
 
 それが白猫と茶虎猫が出会った瞬間だった。
「和音さん?」
「にゃ、鮫島さん!?」
 人生に絶望したかのように落ち込み、焦る彼に冴香が声をかける。すると和音は天からの助けが来たかのように表情を輝かせた。
 にゃんでこんなことになっているのかという彼の疑問に冴香は答える。
「それは猫の呪いにゃ。このフロアに来たときにゃ少女が発動した煙が原因で……」
 妙に猫耳姿が似合う和音の姿にほっこりするのも束の間。どうしても、にゃ、と言ってしまうことに冴香の頬が赤くなっていた。
 彼女からの説明を聞いた和音は更に絶望する。だが、解決策がないわけではないことに少しの希望を感じた。
「よーするにアイツぶっ飛ばせば元に戻るんだにゃ?」
「そうにゃ。良かったら、一緒に探しましょう、にゃ」
「もちろんにゃ!」
 和音が確認すると、冴香から誘いの言葉が投げかけられる。頷いた和音だったが、すぐにはっとして口元を押さえた。
「……はっ、またにゃって言った。なるべく出ないように気をつける、にゃ」
「そうにゃね……」
 恥ずかしいのはお互い様だが、だからといって感情は消せるものではない。
 きっとこの騒動の元凶になっている少女はこういった状況を何処かから見て楽しんでいるのだろう。許すまじ、と拳を握った和音は影の追跡者を呼び寄せ、冴香と共に遺跡フロアの奥へと進んでいく。
 そうして暫く、探索を続けていたふたりの身体に更なる異変が起こる。
「な、なんだか身体が思うように動かにゃい……!」
 冴香の足取りが怪しくなり、ふらふらとし始めた。それがマタタビの効果だと知ったのは、和音が酩酊感めいた感覚をおぼえてしまった後。
 頭がぽーっとしてくらくらするのは、多分お酒を飲んだ時に似ているのだろう。
 冴香は自分では立っていられなくなり、つい和音に寄り掛かる。
「にゃあ……」
「鮫島さん?!」
 慌てて彼女を支えた和音もふらついているが、ふたりで支え合うことで何とか歩けている。冴香も意識は保っているらしく、尻尾をぴんと立てながら力を使う。
「マタタビに負けないにゃよ」
 半ば自棄になりつつも原因である白い花を見つめ、サイコキネシスでどどーんと木自体を退かす冴香。
 その力はかなり豪快だったが、猫たちを惑わす香りは何とか遠退いた。
「鮫島さん、いくにゃあ……」
「あそこにゃ、扉が――」
 そうしてふたりは何とか歩き出してゆく。
 見つめる先には誰かが見つけて開いたらしき扉があった。あそこまで何とか辿り着くのが彼らの目的であり、この状況から逃れる第一歩だ。
 果たしてふたりは無事にゴールに辿り付けるか。それとも一時ダウンして仲良しお昼寝タイムに入ってしまうのか。
 緊迫のにゃんこ模様は如何に――!
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

ヴァーリャちゃんをみて思わず頭をわしわしと撫でる
うりうりうりうり
(かわいい)
にゃ?と自分の耳も触る
ヒナタは飼っている黒猫の名だ
…にゃるほど
試しに口にしてみるなにぬねの
あ、マジでにゃがつくんだにゃ
言っても特に恥ずかしさはない
(飼い猫と戯れる時にゃーにゃーしたりするので)

ヴァーリャちゃんの様子に危険を感じ
にゃ、ヴァーリャちゃ――
良い香りがする…いやいやダメでしょこれは
羽織を脱いで頭から被る
俺はなにも見てない見てない匂いもしない
近くまで行ったらヴァーリャちゃんの手を引いてダッシュで退避

にゃー、折角だし
猫語にならずに喋れたら勝ちゲームとかしにゃいか?
提案をしつつ探索へ


ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

にゃー!ほんとに猫だ!
髪の色と同じ耳と尻尾を触って確認
うりうり撫でられて嬉しい
尻尾が揺れて耳がぴこぴこ

いつもより身軽ににゃった気がするにゃ!
にゃ?にゃんか話し方まで猫に…
綾華かわいいぞ!ふふ、ヒナタみたいにゃ耳してるにゃ?

猫を楽しみつつ遺跡内を探索
む?見たことにゃい木があるぞ
非常に惹かれる…木に縋りたくなる…
ふにゃふにゃになって、木に抱きついて頬ずり
うにゃ〜、なんだかふわふわするにゃあ〜…!
ふにゃってるので、なす術なく綾華に手を引かれ

あ、危にゃかった…綾華がいなければやばかった…
酔うってあんにゃ感覚なんだにゃ…
む?面白そうだにゃ!
その勝負、受けて立とう!
と仲良く進んでいく



●しろとくろのねこ
「にゃー! ほんとに猫だ!」
 淡く積もった雪、もしくは薄く張った氷を思わせる毛並みの耳がぴこぴこ動く。
 ゆらりと揺れる猫の尻尾を振り、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)はその場でくるくると回ってみた。
 浮世・綾華(千日紅・f01194)は本物の猫耳と尾が生えてはしゃぐヴァーリャへと手を伸ばし、思わず頭をわしわしと撫でる。
 うりうりうりうり。
 かわいい、という思いは言葉にしなくても充分に伝わる。
 目を細めたヴァーリャも実に嬉しそうで、尻尾がぴんと縦に伸びていた。そしてヴァーリャは自ら綾華の手に擦り寄ったあと、猫化した感想を口にする。
「いつもより身軽ににゃった気がするにゃ!」
「にゃ?」
「にゃ? にゃんか話し方まで猫に……綾華もかわいいぞ!」
 気付けば語尾や口調が猫めいたものになっている。首を傾げた綾華の言葉も可愛らしく思え、ヴァーリャは微笑む。
 綾華も自分にも生えた猫耳に触れてみた。
「……にゃるほど」
「ふふ、ヒナタみたいにゃ耳してるにゃ?」
 綾華の飼い猫を思わせる色の猫耳がかすかに揺れている。普段から猫と戯れているおかげか、にゃーにゃー喋ってしまうことに特に恥ずかしさはなかった。
 むしろこれほど可愛いもの――つまりヴァーリャが見られるなら僥倖だ。
「可愛いけれど、いつまでもこのままもいけないにゃ」
「にゃ! いくにゃ綾華!」
 迷宮内をぐるりと見渡したふたりは探索に乗り出す。
 危険な生物や魔物がいないとなればじっくりと猫探検を楽しむことができる。意気揚々と進むヴァーリャに続き、綾華も歩を進めた。
 生い茂る緑。
 石の遺跡に刻まれた文様。
 元は此処も何らかの意味があって存在していたようだが、今は殆どが崩れ落ちている。きっと次のフロアに続く隠し扉だけが機能しているのだろう。
 そんな中、不意にヴァーリャが立ち止まる。
「む?」
「にゃ、ヴァーリャちゃ――」
 どうかしたのかと綾華が問う前にヴァーリャは進んでいった。
「見たことにゃい木があるぞ」
 其処からは非常に惹かれる香りがして、何故だか木に縋りたくなる。先ほど綾華にしたようにすりすりと頬擦りしたくなるような感覚が満ちてゆく。
 綾華もまた、抗えぬ芳香にふらりと木に近付きそうになってしまう。
「良い香りがする……」
「うにゃ~、なんだかふわふわするにゃあ~……!」
 ヴァーリャは既に木に抱きついている。ふにゃふにゃしている彼女の様子は明らかに猫にとって危険なものだと分かった。
「いやいやダメでしょこれは」
 ぶんぶんと首を振った綾華は理性で本能を押し込め、羽織を脱いで頭から被る。
 俺はなにも見てない見てない匂いもしない。
 自己暗示めいた言葉を紡いで自分を律し、綾華は急いでヴァーリャの手を取った。とても心地よさそうに、本当の猫であったらごろごろと喉を鳴らしていたであろう彼女の手を離さぬよう、強く握る。
 そして綾華はマタタビの木から離れた場所でヴァーリャの頬に触れた。
「ヴァーリャちゃん、しっかりにゃ」
「綾華ぁ……ふにゃ~……はっ!? あ、危にゃかった……」
 其処でやっと我に返ったヴァーリャはぷるぷると身体を震わせる。
 綾華がいなければやばかったと感じた彼女は今までの心地を思い返した。きっと酔うとはあんな感覚なのだろう。楽しかった猫化呪いの恐ろしさの一端を知った気がして、ヴァーリャは息をはいた。
 
 閑話休題。
 気を取り直したふたりは探索の続きに向かうことにした。
 しかしまたマタタビに気を取られてしまっては元の木阿弥だ。何か互いに意識を向けていられる方法はないかと考え、綾華は提案を投げかける。
「にゃー、折角だし猫語にならずに喋れたら勝ちゲームとかしにゃいか?」
 それは呪いに少しでも抗うための遊戯。
 綾華からの提案にぱっと表情を輝かせたヴァーリャは賛成の意志を示す。
「む? 面白そうだにゃ!」
 無意識に出てしまう言葉も可愛いが、このゲームもまた楽しそうだ。それに状況を何処かから見ているかもしれない災魔の少女に対抗もできる。
 意気込んだヴァーリャは深呼吸してから言葉を紡ぐ。
「その勝負、受けて立とう!」
「それじゃあ此処からスタートしよう」
 お互いに一言目は気をつけることができたが、次からはどうなるか分からない。
 ヴァーリャは満面の笑みを、そして綾華は少し挑戦的な笑みを浮かべて、視線を交差させる。
「綾華、綾華! あっちににゃにかあるぞ!」
「ヴァーリャちゃん、一回目だにゃ」
「むっ! 綾華もにゃのだ」
 だが、次の第一声でついてしまう猫言葉。可笑しそうに指摘した綾華もまた猫めいていて、ふたりは顔を見合わせてくすくすと笑った。
 先ほどから繋いだ手は離さないまま。
 そうして暫し、仲良く楽しい探索が進められてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルジャンテ・レラ
【Magia】
冒険どころか、待ち構えているのは罠ですけれどね……。

魔法は防げないとの事。
無駄な労力は使わない方がよいでしょう。
抵抗せず呪いを受け入れます。
鋼の意思はありません。

……なるほど。確かに織愛さんにその耳、尻尾はお似合いですね。生まれ持ったものにすら見えますし、語尾も可愛らしいと思います。
オルハさんはあまり変わり映えしないようですが、女性陣には相性がよいのかもしれませんね。
ヨハンさん。以前読んだ物語の主人公によく似ていて驚きました。

機械人形の私には酔いなど無縁。
が、皆さんのため対策は必要でしょう。
ヨハンさん、あの木です。燃やしてください。

探索は手分けしましょうか。
では、茂みの中は私が。


オルハ・オランシュ
【Magia】

森に遺跡っぽい建物……
いかにも冒険!って感じで楽しいね!

あの人がパンセ?
みんな気を付け……わっ!!

慌てて耳を触ればわたわたと
どうしよう
私のフェネック耳が猫耳になっちゃった!
小さくて違和感あるよ……はっ
3人も猫化してる
織愛、圧倒的に似合いすぎじゃない!?ああ、可愛いっ
オッドアイの猫っているよね、アルジャンテ意外と違和感ないや
ヨ、ヨハン……ツンツンした黒猫だなんて……ずるいよ、大好き!
と恋人に抱きついて

とにかく扉を探さなきゃ
石壁に同化するようにひっそり紛れてないかな?
壁をくまなく調べてみるよ

マタタビの木にはきっとすぐには気付けないけど、
酔ったらどうなるんだろう
(無策、酔い詳細お任せ)


三咲・織愛
【Magia】
遺跡の探索なんて楽しそうですよね
でも生徒さん達も困っているようですし
魔導書を破ってしまわないと……きゃっ!?

……わあぁ!皆さんとっても可愛いです!

オルハさんの猫耳かわいいっ!尻尾も猫尻尾になっていますよー!
ひゃああアルジャンテくんもヨハンくんも、とっても似合ってます!
はっ。皆さんに気付かれないように、すまほでパシャパシャ撮ってしまいましょう!
……賢者な彼も連れてきちゃえばよかったですねぇ

そうですね、扉を探しませんと
怪しい模様の書かれた床を見付けたら殴ってみますね

あっ、ヨハンくん、
マタタビの木がありますよ
燃やしちゃってくださ……ふにゃ
(酔うとにこにこしながら破壊の限りを尽くします)


ヨハン・グレイン
【Magia】

遺跡めいた建造物には興味が湧かないでもないですが……
猫化の魔法とは。使う意義が解りませんね

……こうなるのだろうな、とは思っていたので
取り立てて騒ぐつもりもないですけど

アルジャンテさんも織愛さんも血統書付きの猫のようだな
お二人とも似合うものですね
いつもより小さな耳は新鮮だな。と、オルハさんを見つつ
自身の頭に触れてみるが
……鏡を見るのだけはやめておこう
いや、ずるいの意味がわからないんですが
抱き着いてくる猫の恋人は抱きしめ返し
鋼の意思で語尾は避ける……が、この時だけは意思が弱まるかもしれない

マタタビの木は見付け次第燃やします
酔った人達はなんとかしてやりましょう

扉は適当に見付けられたらと



●猫と扉と未知の路
 一緒に迷宮内に踏み入った仲間は四人。
 転送陣から降り立つ少女から、わあ、と歓声めいた声があがる。
「森に遺跡っぽい建物……いかにも冒険! って感じで楽しいね!」
 オルハ・オランシュ(アトリア・f00497)は振り返り、共に迷宮に訪れた仲間たちに声をかけた。すると三咲・織愛(綾綴・f01585)も微笑み、周囲を見渡す。
「はい、遺跡の探索なんて楽しそうですよね」
 生い茂る緑に石に刻まれた文様。
 探検という浪漫がこのフロアに詰まっている気がする。だが、女性陣に対して男性陣はきわめて冷静だった。
「興味が湧かないでもないですが……」
「冒険どころか、待ち構えているのは罠ですけれどね……」
 ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)とアルジャンテ・レラ(風耀・f00799)は此処に来る前に聞いていた騒動について思い返している。
 遺跡めいた建造物は純粋に風情があるが、此処に現れた災魔は厄介なことをしでかそうとしている。はっとした織愛もそのことを思い出した。
「生徒さん達も困っているようですし、魔導書を破ってしまわないと……」
 そして、そのとき――。
「新しい犠牲者発見!」
 仲間のうちの誰でもない声が響き、えーいっ、という掛け声が聞こえた。咄嗟に身構えたオルハは皆に呼び掛ける。
「あの人がパンセ? みんな気を付け……わっ!!」
 だが、そのときには全てが遅かった。
「きゃっ!?」
 織愛も広がった煙に思わず目を瞑る。その間にパンセは言いたいことを告げてから身を翻し、何処かへ去ってしまった。

 やがてもくもくした魔力の煙は徐々に晴れ、視界がクリアになった。
「……」
「……こうなるのだろうとは思っていました」
 アルジャンテは黙って自分の姿を確かめ、ヨハンは軽く肩を落とす。
 掛けられたのは聞いていた通りの猫化の魔法。
 使う意義が解りませんね、と呟いたヨハンに頷いたアルジャンテは仲間たちの様子をひとりずつ眺めていった。
 灰、茶虎、白に黒。其々に違う色合いの猫耳と尻尾が生えている。
 黒猫はヨハン。織愛は白猫。茶虎猫はオルハで、灰猫はアルジャンテだ。
 来た時と変わらず冷静な男性陣とは裏腹にオルハたちは其々の感情を抱いていた。違和感を覚えて慌てて耳に触れたオルハはわたわたしている。
「どうしよう、私のフェネック耳が猫耳ににゃっちゃった!」
 いつもよりも小さくて違和しかないうえ尻尾もまた不思議な感じだ。それに口調も猫のような語尾が付いてしまっている。
 織愛は慌てるよりも先にきらきらと瞳を輝かせ、嬉しそうに仲間を見つめていた。
「……わあぁ! 皆さんとっても可愛いですにゃ!」
 その声にはたとしたオルハは自分だけではなく皆にも異変が起きているのだと改めて気付く。
「織愛、圧倒的に似合いすぎじゃにゃい!? ああ、可愛いっ」
 先ほど焦燥も何処へやら、オルハは尻尾をぴんと立てる。
「オルハさんの猫耳かわいいっ! 尻尾も猫尻尾ににゃっていますよー!」
 普段の耳とは違うオルハの様相を織愛は褒め称える。まっすぐに伸びるオルハの尻尾に対して、織愛の尻尾は長くてふんわりとした毛並み。
 つまりは長毛種だ。
 似た毛並みを持っているのはアルジャンテも同じで、気品が感じられる。
 アルジャンテも織愛も血統書付きの猫のようで、ヨハンは素直な感想を告げた。
「お二人とも似合うものです」
「オッドアイの猫っているよね、アルジャンテ意外と違和感にゃいや」
 うんうん、とヨハンの声に頷いたオルハは既に上機嫌。
「ひゃああアルジャンテくんもヨハンくんも、とっても似合ってますにゃ!」
 織愛もとても楽しげで、スマートフォンを取り出して撮影会をはじめている。褒められたことに軽く首を傾げたアルジャンテだったが、そういうものなのだろうかと思って軽く頭を下げて礼をする。
「……にゃるほど。確かに織愛さんにその耳、尻尾はお似合いですにゃ。生まれ持ったものにすら見えますし、オルハさんの語尾も可愛らしいと思いますにゃ」
 アルジャンテは特に自分の語尾は気にせず、状況を受け入れていた。
 猫が猫を褒める。
 猫好きが見れば天国のような光景の中、織愛は口元を幸せそうに緩める。
 ヨハンはオルハを見遣り、いつもより小さな耳は新鮮だと感じていた。同時に自身の頭に触れてみるがヨハンだったが、すぐにその手を離す。
「……鏡を見るのだけはやめておこう」
 ふい、とそっぽを向いて現実から少しだけ目を逸らしたヨハン。
 彼が何だか以前に読んだ物語の主人公によく似ていると感じ、アルジャンテはそっと双眸を細めた。
 そして、ヨハンの様子にときめきを覚えているのはオルハだ。
「ヨ、ヨハン……ツンツンした黒猫だなんて……ずるいよ、大好き!」
「いや、ずるいの意味がわからにゃいんですが」
 勢いのままに抱きついてきた恋人に言葉を返しながらも、猫ヨハンは猫オルハを抱きしめ返す。それまで鋼の意志で猫口調を避けていた彼だが、このときだけは僅かに口調が緩んでしまっていた。
 その光景は微笑ましく、織愛はパシャパシャとシャッターを切り続ける。
「……賢者な彼も連れてきちゃえばよかったですにゃあ」
 ほのぼのと口にした言葉もまた愛らしく、暫し和みの猫時間が流れていった。
 
 そうして、猫化を堪能しつつ変化にも慣れた一行は探索をはじめる。
「探索は手分けをしたほうが良いですにゃ」
 アルジャンテの提案により、仲間たちは離れすぎないよう心掛けながら何処かにあるという隠し扉を探しに向かう。
「とにかく扉を探さにゃきゃ」
「そうですにゃ、扉を探しませんと始まりませんにゃ」
 オルハと織愛は意気込み、近くに建っていた石壁の建物の周囲を探すことにした。ヨハンは猫口調が実に似合う彼女たちの背を見送り、軽く尾を振る。
「内部を見てきます」
「では、茂みの中は私が」
 ヨハンが建物内に向かったことで、アルジャンテは緑が生い茂る所へ歩を進めた。
 がさがさと木々をかき分ける音が辺りに響く。アルジャンテは長い毛足の尻尾に葉っぱがついていることに気付き、手で払った。
 尻尾があるだけでこうも感覚が違うのかと感じている最中、少し離れたところから少女たちの話し声が聞こえた。
「石壁に同化するようにひっそり紛れてないかにゃ?」
「この文様、殴ってみますにゃ?」
 オルハと織愛が協力しているのだろう。なかなか順調そうだとアルジャンテが感じていると、不意に彼女たちの声がおかしくなった。
「にゃああ……にゃに、これ」
「ふにゃ……にゃんだか力が……」
 力の抜けた鳴き声と共にふたりがその場にへたり込むような音が聞こえた。
 異変を感じたのはヨハンも同じであったらしく、建物内から駆けてくる足音が響く。アルジャンテも織愛とオルハがいる場所へ向かい、事態の元凶を見据えた。
「やはりありましたにゃ」
 先に到着したアルジャンテが発見したのはマタタビの木。
 猫化した以上、それとは切っても切れない縁があるのだろう。ふわふわとした表情を浮かべた少女たちはマタタビの香りにあてられてすっかり酔ってしまっている。
 アルジャンテは機械の身ゆえ酔いはすぐには回らない。あの木を排除すべきだと判断した直後、現場にヨハンが訪れた。
「何があったんですか」
「ヨハンさん、あの木です。燃やしてください」
「燃やしちゃってくださ……ふにゃ」
 木を示すアルジャンテに続き、織愛もにこにこと笑いながらその場に寝転がる。
 オルハに至っては既に気持ちよさそうにすやすやと寝息を立てていた。ちいさな溜息をついたヨハンは即座に木を燃やし、アルジャンテと共に少女たちを保護する。
 そうして暫く。
「ヨハン……可愛い……にゃ……」
 恋人に抱きかかえられたオルハはむにゃむにゃと寝言を口にしていた。しかし猫化している以上、致し方ない状況だっただろう。
「仕方ありませんね」
「完全に酔い潰れていますにゃ」
 ヨハンは彼女が目を覚ますまでこうしていることを決め、アルジャンテもそっと見守ることにした。だが、そのとき。
 おとなしく座っていた織愛が急に立ち上がり、拳を強く握り締めた。
「にゃ、さっきの文様を殴るのを忘れてましたにゃあ」
「織愛さん、何を?」
 ふらふらとした足取りで進む織愛にアルジャンテが問う。しかしそれに答える前に織愛はおもいっきり遺跡壁を殴り抜いた。しかも笑顔で。
 どごん。
 そんな重い音が響いたかと思うと、続いて壁が動きはじめた。ごごご、とまるで冒険譚に出てくる擬音そのままの音が鳴りながら、隠し扉らしきものが現れていく。
「はっ……織愛、すごいにゃ!」
「えへへ、褒められましたにゃ」
 その音で目を覚ましたオルハは無邪気にはしゃぐ。妙に酔ったままの織愛は笑顔を絶やさず、得意げに胸を張った。
 そんな中で男性陣は顔を見合わせている。
「……ベタな仕掛けでしたにゃ」
「……行きましょうか」
 どうやら深くは考えなくて良いという見解で一致したようだ。
 そうして猫一行は先に進む。
 ほんの少しの不安の中に、これから何が起こるかの幽かな期待を抱いて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マレーク・グランシャール
メイ(f12275)と
アドリブ歓迎
※何事も動じず無表情
※武人の矜持で「にゃ」は付かないが‥‥

メイ、まず落ち着け
こういう時に慌てると敵の思うつぼだぞ
耳と尻尾が生えるだけなら猫になろうが構わん
そもそも俺は竜人
普段しまっているが頭に角、尻には尾が生えているのだ
今さらモフモフしたものが生えたところで‥‥

しかし俺を可愛いとは一体どういう感性だ
触りたいなら触っていいぞ
俺はお前の方が可愛いと思うが
茶色の柔らかそうな毛並みはコーヒーシュガーの色だな
瞳は甘く漬け込んだ緑のドレンチェリーのよう‥‥

危ないにゃ!(咄嗟に庇う)

今のは気のせい、空耳だ
さあ、気を取り直して隠し扉を探そう
【泉照焔】よ、導いてくれ(見切り)


逢坂・明
マレーク(f09171)と

にゃ、にゃによこんな迷宮トラップ!
長毛種のねこみみとねこしっぽが生えてるんだけど!!
んもう、あのパンセとやら許さないにゃ!
絶対追いかけてとっちめてやるわよ、マレーク!

……とはいえ、あなた愛想のないクールキャラだと思っていたけど
ねこみみしっぽが生えると案外可愛らしさがあるじゃないの
…………、……ちょっとだけ、触っても、いいかしら
な、何も変な意味じゃないわよ
かわいいものが大好きだから気になるだけ!
……そんな風に褒めないで
照れるじゃにゃいの……

……今、にゃって言ったわ。確かに聞いたわ
ふふ、そういうことにしてあげてもいいわよ
隠し扉ね、あたしは「視力」で探していきましょう



●空耳にゃんこ
 迷宮に満ちた魔力が視界を塞ぐ。
 その煙が晴れてから少し後のこと。逢坂・明(絢爛エイヴィヒカイト・f12275)は強い憤りを覚えていた。
「にゃ、にゃによこんな迷宮トラップ!」
 尾が逆立ち、耳が低く伏せられる。今の彼女には薄茶の長毛種めいた猫耳と尻尾が生えており、それらが感情に反応してぴこぴこと動いているようだ。
「メイ、まず落ち着け」
 猫めいた口調になっている明に対し、マレーク・グランシャール(黒曜飢竜・f09171)は何も動じていなかった。
 彼の頭と背にも耳と尻尾が生えているのだが、言葉は普段のまま。
 これも武人の矜持。慌てることも表情を崩すこともなく、マレークは尻尾を逆立てる明を宥めていった。
「こういう時に慌てると敵の思うつぼだぞ」
「そうだけど……んもう、あのパンセとやら許さないにゃ! 絶対追いかけてとっちめてやるわよ、マレーク!」
 彼の言葉によって多少は憤りも収まったが、明の闘志は燃えている。
 悪戯で勝手に人の容姿を変えるなど言語道断。それも呪いが迷宮を出ても続くなど厄介すぎるではないか。
 明はマレークをいざない、先へ進んでいく。
 彼女についていくマレークは自らに生えた耳に触れてみる。
「俺は耳と尻尾が生えるだけなら猫になろうが構わんが、何とかせねばな」
 そもそも彼は竜人であり角と尾には慣れていた。今さらモフモフしたものが生えたところで何の問題もない。
 だが、呪いを受けて困っている者もいる。学園で不安な日々を過ごしている学生たちもそうであり、目の前の明もそのひとりだ。
 隠し扉を探していく最中、明はふと振り返ってマレークを見上げた。
「……とはいえ、あにゃた愛想のないクールキャラだと思っていたけど、案外可愛らしさがあるじゃにゃいの」
「俺を可愛いとは一体どういう感性だ」
 じっと見つめる明からの視線を受けたマレークは軽く首を傾げた。すると明はおずおずと遠慮がちに問う。
「…………、……ちょっとだけ、触っても、いいかしら」
「触りたいなら触っていいぞ」
 あっさりと頷いたマレークは何も動じていない。それが余計に恥ずかしく感じてしまったのか、明は慌ててぶんぶんと首を振った。
「にゃ、何も変な意味じゃにゃいわよ。かわいいものが大好きだから気ににゃるだけ!」
「そうか。俺はお前の方が可愛いと思うが」
 言い訳めいた言葉を紡ぐ彼女の手が届くよう屈んだマレークは、好きに触ると良いと示した。明は言い出した手前、手を伸ばさずにはいられずマレークの猫耳をふわふわと触った。
 黒の毛並みは触り心地が良い。
 明が手触りを確かめる中、マレークは間近にある少女の毛並みを眺める。
「茶色の柔らかそうな毛並みはコーヒーシュガーの色だな。瞳は甘く漬け込んだ緑のドレンチェリーのよう……」
「……そんな風に褒めないで。照れるじゃにゃいの……」
 彼の口から紡がれる言の葉に更に照れてしまい、明は顔を真赤にしてそっぽを向く。それがまるで気まぐれな猫のように見えて更に可愛い。
 だが、次の瞬間。
 近くの半壊した遺跡の石壁が音を立てて崩れ、その破片が此方に飛んできた。
「危ないにゃ!」
 咄嗟にマレークが明を庇い、その背に破片を受ける。
 破片はちいさなものだったが、もし彼が動いていなければ明の頭に直撃していたはずだ。驚いた明は瞳をぱちぱちと瞬いている。
 ありがとう、と告げた明だったが呆気に取られていた理由は別にあった。
「……今、にゃって言ったわ。確かに聞いたわ」
「今のは気のせい、空耳だ」
 鋼の意志で猫言葉になることを堪えていたマレークだが、咄嗟の瞬間に緩んでしまったらしい。明を護る為に意識がすべて向けられていたからだろう。
 次は逆にマレークが視線を逸し、今の出来事を誤魔化すように明から離れる。
「さあ、気を取り直して隠し扉を探そう」
「ふふ、そういうことにしてあげてもいいにゃよ」
 彼の背では猫尻尾がぱたんぱたんと激しく揺れていた。尾は口ほどに物を言うのだと感じながら、明はちいさく笑む。
 少々トラブルはあったものの、ふたりは探索を続行していく。
「泉照焔よ、導いてくれ」
「隠し扉ね、あたしもこの目で見つけてみせるわ」
 マレークが消えない炎が燃える水晶を掲げる中、明はしっかりと目を凝らす。
 そうして彼らは進む。
 協力しあうふたりが次の迷宮フロアに続く扉を見つけるまで、後少し――。
 
●隠し扉の向こう側
 壁に隠された扉、スイッチで反応する扉、文様を壊すことで開く扉。
 そして、力技で壁に開けられた通路。
 遺跡フロアには複数の隠し扉があり、其々が次の迷宮に繋がっていた。
 自ら見つけた者、人伝に教えて貰った者、偶然にも先人が開いた扉を発見した者。様々なルートを辿りながら、猟兵たちは扉を潜った。
 
 扉の先には色濃い緑と花の彩が見える。
 其処からは奇妙な気配が漂っており、猟兵たちは其々に気を引き締めた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『薔薇小道の誘い』

POW   :    薔薇の生垣に風穴を空け、ゴールを目指す

SPD   :    通った道に印を付けつつ、ひたすら道をつぶしていく

WIZ   :    植えてある花の色やモニュメント等の法則を探し、道を選んで進む

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●薔薇の小径
 猫化の魔法を受け、にゃんだか大変なことになった猟兵たち。
 まだ違和感を拭い去れない者もいれば、すっかり猫状態に慣れてしまっている者もいる。しかし、皆が隠し扉を見つけて次のフロアに辿り着くことができた。
 
 そうして目の前に広がったのは薔薇が咲く園の光景。
 赤に白、黄色に薄紅。
 様々な色の薔薇が咲く景色は美しかった。
 フロアは広く、天井まで届く高い薔薇の生け垣が張り巡らされている。どうやら天然の迷路のようになっているらしい。
 薔薇の迷路の入り口は幾つもあるようだ。
 どれも人がふたりほど並んで歩けるほどの通路のようだが、どの道がどんな場所に続くかは予測できない。
 されど進まねば何もわからない。探索を続けようとした猟兵たちが其々に踏み出そうとしたとき、何処からか声が響いてきた。
 
「ようこそ、僕の――パンセちゃんの薔薇園へ!」
 聞こえるのは声だけ。その主はこの猫騒動の元凶、災魔の少女だ。
 何処かから猟兵を見ているらしい彼女は楽しげな口調で告げてゆく。
「これから君たちには宝探しをしてもらうよ。宝っていっても、報酬はその猫の呪いが解けることだけどね」
 曰く、薔薇の迷路のどこかに魔導書が隠されているという。
 それを誰かが見つけて書を破れば宝探しは終了。
 しかし、相手は曲がりなりにもオブリビオン。ただ迷路を進んで探索するだけでは終わらせてくれないだろう。
「そうそう、青い薔薇には気を付けて!」
 含みのある声が響いたことで猟兵たちは確信する。
 きっと青い薔薇は花ではなく擬態した魔物なのだろう。道中に青い花が見えた時は戦闘を覚悟しなければならないはずだ。
 そうしてパンセは説明を終え、くすくすと笑う。
「あとはそうだなあ。生け垣を壊すのはありだけど、飛んで飛び越えたりは出来ないからね。ゲームはルールがあってこそ楽しいんだから!」
 ――それじゃ、また後でね。
 そんな言葉を最後に少女の声は聞こえなくなった。
 
 未だ猫化の呪いが解けていない中、君たちは進むしかない。
 青い薔薇は敵。ならば白い薔薇や赤い薔薇などの他の色にも意味があるのか。
 果たして、猫と迷路と薔薇の園で何が待ち受けているのだろうか。それは恐れず前に進んだ者だけが知ることのできる未来だ。
 
花園・スピカ
※基本敬語なら『にゃ』の追加OK

し、柴犬のチャームポイントの巻き尾の横から猫尻尾…そんにゃ…(尻尾2本のてんちゃんに愕然)
と、とにかく早く元に戻さにゃいと!

パンセは「青に気をつけろ」と言いましたが…私達を遠ざける為にわざと危険だと教えた可能性もあるかもしれませんにゃ
という訳で青薔薇の多い所を危険を承知で探してみますにゃ
敵に遭遇したら【第六感・見切り・オーラ防御】で被弾やダメージ抑えつつUCで攻撃…って、女神さみゃまでーー!!?(猫耳猫尻尾の女神様降臨!)

他の色の法則性も【学習力・情報収集・第六感】を駆使してメモし捜索の手がかりに

魔導書は見つけ次第破壊ですにゃ…(猫派からの視線を痛いほど感じつつ



●猫は懲り懲り
 薔薇園の迷宮に辿り着いてから暫く。
 スピカは未だ慣れぬこの感覚に戸惑っていた。自分の猫化もそうだが、スピカにとって一番受け入れられないのは柴犬のぬいぐるみ、てんちゃんのことだ。
「し、柴犬のチャームポイントの巻き尾の横から猫尻尾……」
 とてもおかしなことになっているのは、もしかしたら夢かもしれない。
 一度、目を閉じてみる。しかし瞼を開いても状況は同じ。しかしスピカはもう一度、次は眼鏡を軽く掛け直してみる。されど結果は変わらない。
「そんにゃ……」
 愕然とした状態でありながらもスピカははっとして顔を上げる。
 嘆いていても変わらぬのならば行動して変えれば良いのだ。
「と、とにかく早く元に戻さにゃいと!」
 気合を入れて踏み出したスピカは薔薇の生け垣の間を進む。
 右に赤い花、左に青い花がそれぞれ視界に入ったことで、スピカは先ほど聞こえた声のことを思い出した。
「パンセは『青に気をつけろ』と言いましたが……」
 あれほど簡単にそんなことを伝えていいのかという思いが過る。自分たちが苦しむ様を見たいのならば黙っていれば良いことだ。
 彼女の真意はわからないが、もしかすれば――。
「私達を遠ざける為にわざと危険だと教えた可能性もあるかもしれませんにゃ」
 そう考えたスピカは歩き出す。
 向かうのは青い花が咲く方角。危険は承知。敢えての作戦だ。
 そして、青薔薇に近付いた瞬間。
「やっぱりきましたにゃ!」
 薔薇の花の中央に口のようなものが見えたかと思うと、葉が蔓のように伸びてきた。此方を絡め取る気だと気付いたスピカは咄嗟に避け、しっかりと身構える。
「星と正義の女神よ、罪深く穢れし哀れな者達に魂の審判を……!!」
 発動させたのはユーベルコード、星乙女の裁き。
 本来なら輝く剣と善悪を量る天秤を携えた白翼の女神が召喚される、のだが――降臨したのは猫耳と猫尻尾をはやした女神様。
「……って、女神さみゃまでーー!!?」
 てんちゃんの時以上に驚いたかもしれないが、スピカは気を取り直す。
 次の瞬間。猫女神による断罪の輝剣が葉を裂き、青の花を根本から斬り伏せた。どうやら花に耐久力はないらしく一瞬で決着が付く。
 しかし、敵には再生能力があるらしく青薔薇が更に咲き始めた。この場に留まっていてはいけないと察したスピカは花を越えて駆け出す。
 だが、まさか女神様まで猫化の餌食になっているとは予想外だ。
「散々ですにゃ……。魔導書は見つけ次第破壊ですにゃ」
 ちいさな溜息をついたスピカは改めて決意する。
 この猫と薔薇の騒乱を必ずや解決してみせるのだと、強く、強く――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ソナタ・アーティライエ
青い薔薇は敵……
青薔薇の装飾を好んで着けている身としては、少し悲しく感じてしまいます

この状態が名残惜しくはありますけれど、魔導書を放置はできません
気を引き締めなおして、ラヴェルに乗ったまま薔薇園へ

危ない場面ではラヴェルに頼る事になりますけれど
この薔薇園そのものへ向けて【幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』】の歌声を捧げ
この美しさが損なわれない事を祈り願いながら進みたいと思います

分岐付近の薔薇の咲き方に美しくないなどの景観的な違和感があれば
何らかの意図をもってそうされているのではないか、と感じる程度
もしかしたら魔導書は無数と言って良い薔薇の花のいずれかに姿を変え隠されているのかも

アドリブ・連携歓迎


リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー薔薇、きれ、い、き、れいー!

・行動
狐の縫い包みたちとは別れて今度はダフィットと猫憑き季月と、あとは近くにいる猟兵さんたちに声をかけつつ進もうかな
【聞き耳】をすれば、話し声も聴こえると思うし
皆で情報共有すれば少しは魔導書も見つけやすいかなって
敵が出たら、狐乃火焔やダフィット、猫憑き季月で攻撃だー!
「ん、おー燃、えちゃ、えー!」
敵を盾にしてかばったり、誘き寄せてダフィットで突き刺したり、戦うよ!

・捕捉
最初にん。ん、がつき、変な所で区切って喋るのが癖
絡み◎



●書の頁
 赤い薔薇と青い薔薇。
 迷路の園を進んだ先、左右の分かれ道には其々の色を宿す花が咲いていた。
「ん、おー薔薇、きれ、い、き、れいー!」
 リュヌは美しく可憐に咲く花を交互に眺め、双眸を細める。
 しかし、その傍ら――リュヌと偶然に同じ道を進むことになったソナタは青薔薇を哀しげな瞳で見つめていた。
「青い薔薇は敵……」
 自らが身につける薔薇装飾にそっと触れたソナタは青薔薇に目を向ける。
「ん、だいじょ、ぶ、にゃ?」
「すみませんにゃ。青薔薇が好きにゃので、少し悲しく感じてしまって……」
 ソナタの様子に気付いたリュヌは心配そうに首を傾げた。しかしソナタは気を取り直し、騎乗しているユニコーンに先に進むよう願う。
 この状態が名残惜しくはあるが、魔導書を放置してはおけない。
 行きましょう、と告げたソナタに続き、リュヌもしっかりと頷いた。リュヌの傍らには白竜のダフィット。そして猫憑き季月も一緒だ。
「ん。こっち、進む、にゃー?」
「はい、危険な方に何かがありそうですにゃ」
 リュヌが青薔薇の方角を示すと、ソナタは気を引き締めた。
 そしてふたりは意を決し、敵だと告げられていた青い薔薇の道へ進んでいく。
 刹那、薔薇の葉が周囲に舞った。
「ん、きた、にゃ」
 それは此方を敵と見做した青薔薇からの攻撃なのだろう。刃の如く鋭くなった葉を見据え、ソナタは花唇をひらいた。
「静謐の帳を下ろしましょう……」
 ――幻想小夜曲第140番『夢絃の琴』
 すると慰撫するように、全てをなだめる優しい歌声が響き渡った。飛び交う葉刃を躱すことはラヴェルに任せ、ソナタは歌い続ける。
 同時にリュヌも攻勢に出た。普通の花を燃やすのはいけないことだが、相手は行く手を阻む魔物の花。
「ん、おー燃、えちゃ、えー!」
 びし、と花を指差したリュヌが解き放つのは狐乃火焔。
 狐の形をした炎が葉刃に飛びかかり、此方に飛来する前に燃やしてしまう。更にリュヌはダフィットを槍へと変じさせ、本体である青薔薇を狙いにいく。
 ソナタが捧げ続ける歌声によって攻撃は相殺されている。
 だからその間に、と考えたリュヌは一気に槍を突き放った。真正面からの一撃が花の中心を貫く。だが、完全に斃し切るには僅かに足りない。
 ふたたび葉の刃が解き放たれたが、ソナタが更に歌声による牽制を行った。
 ――どうか、この美しさが損なわれぬように。
 祈り、願いながら響かせる声は花の園に静謐を宿してゆく。
 そして、次の瞬間。
「ん、おーやっちゃ、えー!」
 リュヌの声が響いた瞬間、その合図を受けて動いた猫憑き季月が爪を振り上げた。
 それは一瞬のこと。
 引き裂かれた薔薇の花弁が散り、地面に落ちる。
 それによって青花の魔物は動かなくなった。ふたりで協力して倒せたことに安堵を抱き、リュヌとソナタはちいさな笑みを交わす。
 そんなとき、リュヌは妙な違和感を覚えてその場に屈み込んだ。
 倒した薔薇が何かに変化したように見えたのだ。
「ん。これ、にゃに、かなー?」
 そっと拾い上げたそれは何かの魔導文字が書かれた書の一頁だった。はっとしたソナタは思い至る。
「もしかしてですにゃ……」
 先程まで考えていた予測が当っていたのかもしれない。
 そう話したソナタは語る。魔導書は無数と言って良い薔薇の花のいずれかに姿を変え、隠されているのだ。
「つまり、これを破れば――」
 リュヌから書のページを受け取ったソナタは思い切ってそれを破いてみる。
 びり、と紙を破いた瞬間、其処に宿っていた魔力が空中に散っていく様が見えた。
「ん。すごい、すごー、い。……あれ?」
「にゃあ、リュヌ様の耳が戻っていますにゃ」
 リュヌはふと、自分の耳と尻尾が普段の狐のものになっていることに気付いた。ソナタの方は依然として猫耳が生えたまま。だが、これで分かったことがある。
「青薔薇を倒して現れた魔導書のページを破れば、きっと――」
「ん、ねこ、から戻、れるー!」
 ソナタの推理にリュヌが両手をあげ、解決方法を見つけたことを喜ぶ。
 おそらくページ一枚ごとにひとり分の呪いが解けるのだろう。それならば此処で立ち止まってはいられない。まずはソナタの呪いの分を。そして次は仲間や、学園で待つ生徒の呪いを解くために進まなくてはならない。
「ん。いこー!」
「はい、進みましょう。ラヴェル、お願いしますにゃ」
 元気よく進んでいくリュヌに頷いたソナタはユニコーンと共に歩き出した。
 そして、更なる探索が続いてゆく。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

吉備・狐珀
誘惑に負けてしまいましたにゃ…。ここは気を引き締めにゃいとっ。
でも…このままではUCもまともに唱えられませんにゃ…。
月代、力を貸してくれますかにゃ?

仔竜に手伝ってもらいながら薔薇の迷路を探索しますにゃ。
青は敵の様ですが他の色も何か意味があるかもしれないのでよく観察しますにゃ。
青の薔薇を見つけたら月代に風の【属性攻撃】をしてもらい【衝撃波】で【吹き飛ばし】ますにゃ。
…にゃ?耳と尻尾が気になりますにゃ?
月代と遊んであげたいところですけどにゃ…。
依頼中ですし、このまま呪いがかかったままでは帰れにゃいので魔導書を一緒に探して下さいにゃ!



●青薔薇の罠
 心地好い微睡みから覚めた後、辿り着いたのは薔薇の園。
 十分過ぎるほどのお昼寝時間を過ごしてしまった狐珀はふるふると首を振った。
「誘惑に負けてしまいましたにゃ……」
 前のフロアで感じたふわふわとした心地は実に良かった。しかしあれはマタタビの効能。身を委ねてはいけなかったのだと狐珀は自分を律する。
「ここは気を引き締めにゃいとっ」
 掌をきゅっと握り締めた狐珀は薔薇園の先に進んでいった。
 敵の声曰く青い花が危険だという。見つけたら対処をしなければならないと考えた狐珀だが、ふと気付く。
「でも……このままではユーベルコードもまともに唱えられませんにゃ……」
 少し考え込んだ狐珀は手助けを頼むことにした。
「月代、力を貸してくれますかにゃ?」
 その名を呼ぶと月白色の仔竜が狐珀の傍に擦り寄った。そして狐珀は仔竜と共に薔薇の迷路を探索していく。
「敵は青……そうにゃると赤や黄色は――?」
 何か法則があるのかも知れないと感じた狐珀は注意深く観察した。
 そうして分かったのは赤い薔薇が咲いている通路の向こうは行き止まりであることが多いということ。その他の色は未だ突き止められていないが、きっと何らかの意味合いが含まれているのだろう。
「……にゃ? 耳と尻尾が気になりますにゃ?」
 そんな中で月代が狐珀にじゃれついてきた。遊んであげたいところだが、今は真剣な探索中。ごめんにゃ、と告げた狐珀は月代を撫でるだけに留める。
「呪いがかかったままでは帰れにゃいので魔導書を一緒に探して下さいにゃ!」
 そして赤い花の通路から引き返す最中、狐珀は青薔薇を見つける。
 それは先ほどこの道を通るときに敢えて避けた道だ。次は其方に向かってみようと決めた狐珀は仔竜に力を振るって欲しいと願った。
「月代、お願いしますにゃ」
 すると仔竜が身構え、風の力を纏った衝撃波が青薔薇に向けて解き放たれる。
 此方に変形させた蔓を伸ばそうとしていた花の魔物。されど、月代の衝撃波によって枝葉が折れ、花が吹き飛ばされた。
 これで先に向かえる。そう感じた瞬間、飛ばされたはずの花が再生しはじめた。
「にゃ、大変ですにゃ」
 おそらく花は元から再生能力が高い。そのうえユーベルコードではない攻撃では威力が足りず、うまくトドメをさせないようだ。
 仔竜を呼んだ狐珀は再生しきる前に通り抜けようと決め、駆け出した。
 だが、狐珀は未だ知らない。
 危険だと云われた青い薔薇にこそ、秘密が宿っているということに――。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

フェリス・シー
バラ園? じゃあじゃあ 相変異したバッタ放って掃除しちゃうにゃん♪

みんなバラ園を襲撃にゃん♪
青いバラがなんだか怪物らしいけどみんなでよってたかって容赦なく狩り尽くすにゃん♪
みんなでバッターキックにゃん♪
蝗害パワーを見せつけるにゃん♪


約束の刻でバッタの大軍召喚しバラを食いつぶすことで魔導書の探索をしやすくしようと考えてます
でもやることは結構容赦ない



●砂漠を呼ぶ蝗
 赤に黄色、白に青。
 様々な薔薇が咲く光景を眺め、フェリスは翅を羽ばたかせる。
「迷宮の中にバラ園? 綺麗だにゃん♪」
 暫し周囲を飛び回ったフェリスは危険だと言われた青薔薇にはまだ近付かぬようにしながら花の景色を確かめてゆく。
 しかし此処はオブリビオンが潜む危険な迷宮。
 花が咲き乱れているというのならば、フェリスがやることはひとつ。
「じゃあじゃあ、相変異したバッタ放って掃除しちゃうにゃん♪」
 この妖精、無邪気に恐ろしいことを言う。
 しかしその声も仕草も愛らしく、自然には自然で対抗しようとする姿勢だ。
「みんなバラ園を襲撃にゃん♪」
 発動、約束の刻――アワー・オヴ・プロミス。
 フェリスが力を紡ぐと、小型の蝗が何匹も現れる。そしてそれらは近くにあった青い薔薇に向かっていった。
「みんなでよってたかって容赦なく狩り尽くすにゃん♪」
 青薔薇が花の刃を飛ばしてきたが、フェリスは動じない。号令をかけると同時に蝗が花の魔物に襲いかかっていった。
「みんなでバッターキックにゃん♪ 蝗害パワーを見せつけるにゃん♪」
 フェリスが狙っているのは生け垣の迷路を食い潰すこと。
 すべての通路は難しくとも青薔薇が邪魔をしている部分は通りやすくなるはずだ。フェリスは暴虐とも呼べるほどの攻撃で花を散らしていった。
「これで魔導書の探索もしやすくなるにゃん♪」
 そして――暫し後、フェリスが通ったすべての生け垣には特大の穴が空いており、無慈悲で容赦のない痕が残されていたという。
 余談ではあるが、フェリスが斃した青薔薇の痕には一枚の紙が落ちていた。
 それは呪いの魔導書の一部。
 そのページを自ら破れば一人分の呪いが解けるという仕掛けだったのだが、蝗と共に薔薇園をゆく少女がそのことに気付くのは、もう少し後のこと――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

忍足・鈴女
せやなあ…ルールがあってこそゲームは楽しい…
獲物があってこそハントは楽しい…(ふふふふふ

ほうほう…今度は迷路
左手の法則なんての使えば楽チンなんやろけど…
まあそれやと青い薔薇とやらに総当たりやしなあ

ルールの抜け道を探すのもまた楽しいもんなんやで(ニヤリ

UCを発動し、迷路を真上から確認
魔導書の位置と出口から
最短ルートを確認

まあ白が正解ルートで赤が行き止まりとかかなあ…
それも確認すればわかる事やろ

魔導書…(ぱらぱら
とりあえず内容を覚えて複製すれば…(熟読

ああ…名残惜しい…
さようなら猫耳尻尾…

と本をバラバラに

とりあえず迷ってどうしようもない猟兵さんには
猫霊の道案内付けたるかなあ…



●迷路遊戯
 ――ゲームはルールがあってこそ楽しいんだから!
 オブリビオンの少女が告げていった言葉を思い返し、鈴女はくすくすと笑む。
「せやにゃあ……ルールがあってこそゲームは楽しい……」
 即ち、獲物があってこそハントは楽しい。
 笑みを深めた鈴女は目の前にある花の迷路に目を向けた。
 鈴女が出た入り口には白い花と赤い花が咲いており、道が左右に分かれている。
「ほうほう……今度は迷路」
 こういった場合、左手の法則を使えば踏破できる可能性が高い。だが、青い薔薇が敵だと言われている以上、連戦になってしまう懸念もあった。
「楽な方法を取ると青い薔薇とやらに総当たりになってまうにゃあ」
 それでは本末転倒。
 それにゲームはルールの抜け道を探すのもまた楽しいものだと鈴女は思っていた。ニヤリと口端を緩めた鈴女は一歩を踏み出す。
 それと同時に発動したのは猫霊の追跡者――キャット・ストーキング。
「上から迷路を見るのでござる!」
 猫霊に願った鈴女は迷路を真上から確認させる。
 通り抜けるわけではないのでこれならばルール内。暫し猫霊の視界を確かめた鈴女は状況を判断していく。
「ふむ、魔導書がそのまま置いてあるわけやないんにゃなあ」
 どうやらわかりやすい場所に設置されているわけではないのだろう。目的の書を探すため実際に探す必要がある。
 そして鈴女はある程度の道筋を理解してゆく。
「予想通りにゃ。白が正解ルートで赤が行き止まり……と」
 其処から最短ルートを導き出そうとしたが、天井を覆うほど木々が生い茂った奥の方まではうまく見えない。
 しかし、それだから分かることもある。
「きっとあの奥にパンセが隠れてるんやろ。ふふふふふ……」
 そして鈴女は白薔薇が咲く道を選びながら奥を目指していった。その際、どうしても避けられない青薔薇のゾーンがあったのだが――。
「ん? にゃんや破壊されてるにゃ」
 道筋を確認した後に誰か他の猟兵が通ったのか、生け垣には穴が空いていた。
 それだけではなく青薔薇がバラバラに散らされている。そして、その残骸の中には一枚の紙が落ちていた。
「にゃ、これは……魔導書の一部?」
 漂う魔力からそう判断した鈴女は一頁分の記述を眺めてみる。
 だが、すぐに肩を落とした。此処には呪書の核となる内容は記されていない。おそらく魔導書は使い捨て。ページに記された呪いの文言を破れば一人分の呪いが解けるという仕組みになっているのだろう。
 そして、書はゲーム性を高めるために一頁ずつにされて青薔薇に隠されていた。
「にゃるほどなあ、危ないと事前に告げとけば避けるもんは避けていく。倒した人物だけが呪いを解ける……」
 納得した鈴女は事実を確かめるために書の頁を破ることを決めた。
「ああ……名残惜しい……。さようなら猫耳尻尾……」
 次の瞬間、びりびりと紙が破られる。
 それによって鈴女の姿は元通りになり、猫口調も収まっていった。仕組みが分かれば後は奥に進んでみるだけ。
 鈴女は身体が自由になったような感覚をおぼえつつ、猫霊と共に歩き出す。
 もし迷っている猟兵が入れば道案内を付けてやってもいいかもしれない。
 そんなことを考えながら、鈴女は花迷宮の奥へと向かった。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

セルマ・エンフィールド
【SPD】

……にゃにがしたいのか分からにゃいオブリビオンですが、まぁいいでしょうにゃ。やることは変わりませんにゃ。

さて、青がおそらく魔物、他には赤に白に黄色に……もしかしたら意味があるのかもしれませんが、面倒ですにゃ。

青い花はもちろん他の色の花も【氷の狙撃手】で撃ち抜きながら進みますにゃ。
凍った花が通った未知の目印。早いところ先に進んでパンセを倒すとしましょうにゃ。

1章でちょっとマタタビを嗅いでしまったためか普段より行動が雑な上、魔導書を探すのを完全に忘れつつ先に進みます。



●凍る花
「……にゃにがしたいのか分からにゃいオブリビオンですにゃ」
 告げたいことだけを話していった少女を思い、セルマは軽く肩を落とす。
 パンセはこれがゲームであるという旨を語っていた。其処から推測するに今の状況は彼女にとって遊戯の範疇なのだろう。
 実に楽しげに笑っていた声を思えば、そう考えていた方が納得できる。
「まぁいいでしょうにゃ。やることは変わりませんにゃ」
 何れはあの少女と戦うことになる。気を引き締めたセルマは呪いをいつまでもこのままには出来ないと改めて思った。
 セルマは冷静に思考を巡らせ、進む先に見える薔薇の花々を見つめる。
「さて、青がおそらく魔物、他には赤に白に黄色に……もしかしたら意味があるのかもしれませんが……」
 たとえば簡単に考えるならば赤は行き止まりで白は通行可能。
 黄色は何処かに続く目印。そのように予想が出来た。
「面倒ですにゃ」
 だが、セルマは考えるのを止めた。それより良い方法を思いついたのだ。
 目の前には赤い花がある。無言で銃を構えたセルマはスコープ越しに花を捉えた。
 そして――。
 鋭い銃声が響いた刹那、薔薇が凍り付く。
 青い薔薇であろうがなかろうが構わない。凍った花が通った道の目印になる。
「さて、次は青い薔薇ですにゃ」
 そのまま奥に進んだセルマは葉を蠢かせる青薔薇に狙いを定めた。倒すのではなく動き止めるために凍らせるだけ。
 そうすれば体力の消耗も最小限に抑えられるはずだ。
「良い調子ですにゃ」
 思惑通り、青薔薇は攻撃を行うことなく凍りついた。
 彼女自身は気付いていないが、前のフロアで嗅いだマタタビの効果がまだ少しばかり残っている。それゆえに雑に、もとい大胆に動くことが出来ている。
「早いところ先に進んでパンセを倒すとしましょうにゃ」
 セルマの狙いは今、厄介な状況を作り出したオブリビオンに向けられていた。
 しかし彼女は気付けていない。
 本来の目的は魔導書を探すこと。だが、半分マタタビ酔いが残っている今はすっかり頭から抜け落ちてしまっている。
 それでもセルマは淡々と、しかし的確に花を凍らせていった。
 結果的にそれがあとに続く猟兵の道標と目印になっていくのだが、彼女がそのことを知るのはもう暫し後になる。
 猫の呪いとさよならする為にも――打倒、冥想のパンセ。
 密かに意気込むセルマは真っ直ぐに迷宮の迷路を進んでいった。彼女が去っていった後に残るのは光を反射して煌めく氷の花。
 その耀きは花の色と相俟って、とても美しい彩を宿していた。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

セツナ・クラルス
…おーい
ま、いっか

アイツが昼寝から目覚める様子がないから、オレ(セツナの別人格「ゼロ」)が動くにゃ
…うるさいのがこのまま寝ててくれたら任務に集中できるってもんだにゃ
つーか、暫く起きなくていいにゃ
ゼロゼロうっせぇんだよ
ぶつぶつにゃあにゃあ言いながら探索開始

フツーの迷路だったらフツーに楽しみたいけど
オブリビオンの作ったモンだし
注意して進まないとにゃ
蜂の姿の観測者を作り出し
先行させて行先を確認させつつ攻略を図る
探索中に青の薔薇を見つけたら
距離を取りつつ近づき攻撃
毒攻撃で除草剤を作ることも考えたが
薔薇園の薔薇全てに影響するのも嫌だしにゃあ…
属性魔法で塩水を作り、
ピンポイントで振りまいて枯らせよう



●ゼロのおつかい ~花迷路探索編~
「……おーい」
 ゼロは眠りこけたセツナに呼び掛ける。しかし彼が答えることはなく、寧ろすやすやと惰眠を貪っている様子。
「ま、いっか」
 昼寝から目覚める様子がないセツナのことはさておき、ゼロは進む。
 そのまま訪れた花園の迷路はどうやら面倒な仕掛けのようだ。人を迷わせる生け垣の迷路に、襲ってくるという青薔薇。
 だが、ゼロにとってはそれよりも猫の呪いの方が厄介に思えていた。
「……うるさいのがこのまま寝ててくれたら任務に集中できるってもんだにゃ」
 このフロアで呪いの元となった魔導書を破れば今の状況からも脱却出来る。そのためには一人で動くほうが楽だとして、ゼロは迷路に踏み込む。
「つーか、暫く起きなくていいにゃ」
 ゼロゼロうっせぇんだよ、と呟くゼロは深い溜息をついた。
 ぶつぶつにゃあにゃあ。可愛らしくも思える愚痴を聞くものも今はいない。もしセツナが起きていたならば色んな意味で邪魔になっていたかもしれない。
 ゼロは白い薔薇の曲がり角を行き、周囲を見渡す。
「フツーの迷路だったらフツーに楽しみたいけど、オブリビオンの関わるモンだしにゃ」
 注意して進むゼロは観測者を呼び出した。
 蜂の姿で現れたそれは彼よりも先に飛び、迷路の向こう側を探りに行く。すると曲がった先に青い薔薇が生えていることが分かった。
「避けられにゃーか」
 身構えたゼロはどう対応するか考えを巡らせる。
 毒攻撃で除草剤の効果を齎すことも考えたが、それでは青だけではなく白や赤の薔薇まで害を被ってしまうかもしれない。
「綺麗に咲いてるだけの薔薇全てを枯らすのも嫌だしにゃあ……」
 それならば、とゼロが使用を考えたのは塩水。
 ピンポイントで振りまいて青薔薇のみを枯らすことを決めたのだが――。
「うわっ、にゃっ!」
 近付く前に青薔薇から蔓が伸び、ゼロを捉えようと迫ってきていた。これでは広範囲に撒くことしか出来ず、本意ではない結果になるだろう。
 ゼロは腕に絡みついてきた蔓から逃れながら、小さく舌打ちをする。
「こんにゃときに何でいにゃいんだよ……!」
 アイツめ、と悪態を吐いた対象はもちろんセツナだ。無意識ながらも彼を求めるゼロだったが、今はひとり。頼れるのは自分しかいない。
 ナイフを取り出したゼロは蔓を斬り裂き、一気に青薔薇へと肉薄した。
 そして、一瞬後。
「にゃんとか、倒したにゃ……」
 花弁を散らした薔薇が力なく崩れ落ちていく様を見下ろし、ゼロは息を吐く。
 同時に花弁が一枚の紙に変化した。これは、と拾い上げたそれはどうやら隠されているという魔導書の一部のようだ。
 ぴんときたゼロはそれを一気に破り捨てた。すると途端に猫化の呪いが解ける。
「……一時はどうなることかと思ったぜ」
 彼らはふたつでひとつ。おそらくこれでセツナの呪いも解除されただろう。
 そうしてゼロは肩を竦め、もう一度深い溜息をついた。
 

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

「お昼寝したから元気いっぱいだにゃ!がんばるにゃー!」

ゴール目指して薔薇の迷宮をにゃんにゃんにゃんと進んでいくよ!
飛び越えちゃダメということで飛び越えにゃいように注意しにゃがら飛んでいくにゃ!

壁に手をつけながら飛び回って一度通った道には薔薇の葉っぱを使ってマーキングしていくね♪
青い薔薇は危険だっていうから、他の道が行き止まりじゃない限りはそっちには近づかないようにするね!
でも、ボクの髪と同じオレンジ色の薔薇があったら綺麗だーって近づいてみるよ☆何がでるかにゃー♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●リスタート!
 ふわふわ、ぴょんぴょん。
 楽しげに翅を広げて薔薇の園を翔けるのはティエルだ。先ほどよりも更に元気な様子の彼女の背では、可愛らしい猫の尻尾が揺れている。
「お昼寝したから元気いっぱいだにゃ! がんばるにゃー!」
 えいえいおー、と気合を入れたティエルはすっかり猫化を気に入っている様子。
 ティエルに至ってはこのままでも何ら問題ない。
 何故ならいつもより少しだけ耳がよく聞こえる気がするからだ。それにジャンプの力も僅かながら向上している。
 そのうえ今回の舞台は美しい薔薇が咲く綺麗な迷路。
 楽しくなってしまうのは致し方ない。きっと探しものである、呪いを解く為の魔導書はゴールにあると予想したティエルは出口を目指す。
「にゃん、にゃんにゃん!」
 ゴールを探して薔薇の迷宮を飛び回る少女は先ほどの言葉通り、元気満タン。
 しかしただ無闇に進んでいるわけではなく、壁に手を付けながらちゃんと目印を置いていっている。それからうっかり垣根を飛び越えないよう気を付けてもいた。
 赤い薔薇の向こうは行き止まり。
 白い薔薇の先は何処かに繋がっている道。
 分かる範囲で葉っぱの印をつけていくティエルは順調に奥に近付いていった。
 だが、決して青薔薇には近寄らぬようにしている。その先に何があるのかは気になったが、花迷路の中には多くの青い花が見えた。
 ひとつずつ相手をするのも危険だと考え、ティエルは迂回する。
 しかしそこでふと気になることがあった。
「あれ、黄色やオレンジの薔薇ってどういう意味にゃんだろ?」
 白や赤、青の意味は分かる。
 通れるか通れないか、敵か。そう判断できるのだが、黄色系の花には何の法則も見つけられていない。たまに白と一緒に咲いていることがあるというだけ。
「でも、ボクの髪と同じオレンジ色で綺麗だにゃー♪」
 ティエルは自分と似た色を宿す花をとても気に入っていた。折角ならそっちに進もうと決めたティエルは気分良くどんどん進んでいく。
 そうして探検すること暫く。やがてティエルはひらけた場所に辿り着いた。
「あれ?」
「にゃ?」
 其処に居たのはひとりの少女。オブリビオンのパンセだ。
 お互いに視線を交わしあい、一瞬の沈黙が流れる。おそらく黄色系の花はパンセがいる最奥を示す目印だったのだろう。
 するとパンセはくすくすと笑ってティエルを指差す。
「よく僕を見つけたね。でも、残念! まだ君は呪いを解いてないから――」
「ええっ、解けてにゃいと駄目だった?」
 驚くティエルにパンセは続ける。勿論ダメ、と。
「ふふっ、入り口まで戻るの刑だよ!」
「にゃっ! にゃあーーーー!?」
 パンセがそう告げた瞬間、ティエルは不思議な力で最初の場所まで飛ばされてしまった。それによって怪我や痛みはなかったが物凄い勢いだった。
 暫し目を回していたティエルは起き上がり、ふるふると首を振る。
「よーし、呪いを解かにゃいと!」
 次はその方法を探すだけだと意気込んだティエルはふたたび飛び立った。
 それにティエルはひとつ、まだ誰も知らないことを知っている。それは最後の難関であるオブリビオンまで辿り着く道筋の法則。
 誰かに出会ったらこのことを知らせようと決め、ティエルは翅を羽ばたかせた。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クールナイフ・ギルクルス
【檸檬】
全て敬語
アドリブ歓迎

しっかり歩けてますねと一安心

忠告の言葉にええと頷き
さて、どう攻略しましょうか
張り切るクラウンの様子を見
あっという間に小さなクラウンがたくさん出てきてちょっとびっくり
ご丁寧に皆今の姿そのままで……
これはこれで可愛らしいですね
指摘されて肩を見ればミニクラが
あなたはサボりですか?なんて小さく笑う

頭の中でマップを作ることを忘れずに彼等が戻るまでは勘を頼りに先へ
青薔薇はダガーで手早く処理
気になるのでしたら試してみては?
触れるなら周りに注意し動けるように

あ……
やはりそこは似るんですね
笑いを噛み殺しながら動物の声を聴く要領で会話を試す

数はしっかり数えたので
ミニクラの回収は忘れずに


クラウン・メリー
【檸檬】

クール、手繋いでくれてありがとう!酔いさめたよっ!

……わぁ、とっても綺麗な薔薇園だね!薔薇の良い香りがする!
確か、青い薔薇には気を付けないとだよね?

よぉーし!ここは俺に任せてっ!
出番だよー!【メニーメニークラウン】
うわぁ、ちょっぴり多いね?皆にも猫耳としっぽ付いてる!
さぁ、皆!散らばって何処に何があるか見つけたら教えて!
……わわ、クールの肩の上に俺がっ!

じゃあ、俺達も探しに行こっか!
青い薔薇は黒剣で斬ったり、猫パンチ!
他の薔薇にはどんな仕掛けがあるのか触ってみよっかな?

あ、彼処に俺がいる!どうだった?
何々…?

ク、クール、だめだ。
このクラウン、にゃーにゃーしか言ってくれない!

アドリブ歓迎



●花迷宮に散るひとひら
 白い薔薇が咲く迷路で花が静かに揺れる。
 一歩ずつ、確かめるように進むクラウンは調子が戻ってきていると感じて、隣を歩くクールナイフを軽く見上げた。
「クール、手繋いでくれてありがとう! 酔いさめたにゃっ!」
「しっかり歩けてますにゃ」
 マタタビに当てられて暫く、酔いはすっかり抜けていた。まだ猫化の呪いは解けていないが、元気なクラウンの様子にクールナイフは安堵を覚える。
 そうしてクラウンは周囲に目を向け、花咲く小路を瞳に映した。
「それにしても……とっても綺麗な薔薇園だにゃ! 薔薇の良い香りがする!」
 酔いが覚めたことで視界や感覚もクリアになったのだろう。
 可憐な白薔薇をそっと指先で撫でたクラウンは楽しそうに笑む。このまま猫として薔薇園の散歩をしたいところだが、此処には危険も潜んでいる。
「確か、青い薔薇には気を付けにゃいとだよね?」
「にゃ。さて、どう攻略しましょうか」
 ええ、と答えたかったというのに猫っぽく答えてしまったことはさておき、クールナイフは少し考え込む。
 闇雲に進んでも連戦を強いられ、疲弊するだけ。
 クールナイフは薔薇の色が何かを示しているのかもしれないと予想する。そんな中でクラウンが得意げに片手を上げた。
「よぉーし! ここは俺に任せてにゃっ!」
「ええ、任せますにゃ」
 何やら策があるらしきクラウンの様子を眺めると元気の良い掛け声が響いた。
「出番だにゃー!」
 ユーベルコード――メニーメニークラウン!
 彼の声と共にちいさな人影がたくさん現れ、クールナイフの前にずらりと並んだ。
 にゃーにゃー。にゃあー。
 そんな声で鳴きながらうろちょろしはじめたのはクラウンの分身だ。
「……ミニサイズの、クラウン?」
「うわぁ、ちょっぴり多いにゃ? それに皆にも猫耳としっぽ付いてる!」
「ご丁寧に皆今の姿そのままで……これはこれで可愛らしいですにゃ」
 本来なら普段通りのクラウンの姿をした小人が出てくるのだろうが、今日は呪いのせいもあって特別仕様。
 クールナイフが可愛さに圧倒される中、クラウンは指笛を鳴らす。
 ぴゅいー。
 にゃー!
 ばらばらに散らばっていたミニクラウンがその音に反応した。そしてクラウンは彼らに号令をかける。
「さぁ、皆! 散らばって何処に何があるか見つけたら教えて!」
「「「にゃー!」」」
 主のお願いに答えた小人はそのままそこかしこへ駆けていく。
 これで後は報告を待つだけ。その間に自分たちも探索を続ければたくさんの情報が集まって一石二鳥だ。
「……にゃにゃ、クールの肩の上に俺がっ!」
 更に先に進もうとしたそのとき、クラウンがクールナイフを指差す。指摘されて肩を見ればミニクラウンがぎゅっと抱きついていた。
「あなたはサボりですか?」
 ちいさく笑ったクールナイフはミニクラウンを撫でる。嬉しそうにその手に擦り寄った小人はそのまま彼の肩に居座ることにしたようだ。
「にゃあ、俺達も探しに行こっか!」
「進まにゃければ始まりませんからにゃ」
 そして、ふたりは奥に進む。
 行く手を阻む青薔薇はクラウンが威勢よく剣で斬り裂き、クールナイフはダガーでミニクラウンを守りながら通った道のマップを頭の中に作り上げていく。
 分担しあう彼らの探索は実に上手く行っており、僅かに法則性も見えてきた。
 白が正解。赤が行き止まり。
「黄色い薔薇は白と一緒に咲いていることが多いですにゃ」
「触ってみても罠だったりはしないみたいだにゃ!」
 まだ不明なこともあるが彼らは互いに支え合い、次々と青薔薇を倒していく。そして、或る曲がり角に差し掛かったとき、事件は起こった。
 なにか鋭利なものが飛ぶ音。そして響く鳴き声。
 ――にゃあ!
 そんな声が聞こえたと思った瞬間、クールナイフの肩にいた小人が素早くジャンプする。刹那、隠れていた青薔薇から放たれた葉刃がミニクラウンを貫いた。
 ミニクラウンが自分を庇ったのだと悟り、クールナイフは呼び掛ける。
「クラウン!」
「大丈夫、すぐ倒すから!」
 同時にクラウンが黒剣を振り上げ、曲がり角の影に潜む青薔薇を切り裂いた。
 深い傷を負ったらしきミニクラウンはそのまま消滅していく。クールナイフはクラウン本人が薔薇を倒したことを確かめ、幽かに呟いた。
「……また護られてしまいましたね」
 にゃ、と哀しげに口にしたクールナイフは少しだけ目を伏せる。
「クール、大丈夫だったにゃ? ……危ないところを助けられてよかった」
 ミニクラウンは役目を全うしたのだと告げたクラウンはそっと微笑んだ。その笑みを見たクールナイフも静かに口端を緩め、消えていったミニクラウンがいた場所に向けてありがとうと告げる。
 そんな中、倒した青薔薇の花弁から紙のようなものが舞い落ちた。
 すると探索に出ていた別のミニクラウンがそれを拾い、ふたりの元に持ってくる。どうやら小人は青薔薇を倒すと何かに変化することに気付いて今まで倒した花から色々と集めてきたらしい。
「あ、俺がにゃにか言いたそう! どうだった? 何々……?」
「にゃー! にゃー!」
 屈んで謎の紙を受け取り、小人の声に耳を傾けるクラウン。その様子を眺めたクールナイフは問いかけてみる。
「にゃんて言っているんですか?」
「ク、クール、だめだ。このクラウン、にゃーにゃーしか言ってくれない!」
「あ……」
 どうやら本人にも分かっていなかったらしい。やはりそこは似るんですね、と口元を押さえたクールナイフは笑いを噛み殺す。
 そして、クールナイフは小人が持ってきた紙を受け取った。
 これは先ほど消滅した一体のおかげで手に入れられたようなもの。或ることに気付いたクールナイフは徐ろに紙を破ってみる。
「にゃあ、クール! 呪いが!」
 すると彼に掛かっていた猫化が見る間に解けていった。クラウンが驚く中、クールナイフはもう一枚の紙を手渡す。
「仕組みが分かりました。これを破ってみてください」
「わぁっ、俺の呪いも解けてく!」
 クラウンが示された通りにすると、小人を含めた猫化が解除されていった。
 つまり、これが探していた魔導書だったのだ。ばらばらにされた頁は青い花に隠されていたということ。
「やったね、ミニクラウンがたくさん集めてくれたから皆の分もあるよ!」
「ええ。呪いが掛かっている人達にも渡しに行きましょう」
 ふたりは軽くハイタッチを交わした後、花迷路の探索を続ける。
 未だ散らばっているミニクラウンの回収も兼ねて。自分たちが此処で成すべきことを最後まで行う為に――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・カイト
【兄妹】

黒い耳、黒い尻尾
猫化は受け入れている
「だって、別に困らにゃいしにゃー」
とはいえ、兄さまが望むのなら魔導書探しを手伝う
「オレとしては、にゃあにゃあと可愛らしく鳴く兄さまを、もっと堪能したいところにゃのですけど」

さて、この薔薇迷路どうやって進もうか
薔薇の色に意味が?青は敵、赤は…白は…黄色に…薄紅……うん、わかりました兄さま!
「めんどうだから、生垣全部ぶっ壊しましょう!だにゃ」
え、だめ?そんにゃー

それじゃ、真面目に考えてみるか
一つの色に絞って、赤いところだけ壊して進んでいく……とか
法則性があるのかないのか気になるかも

遠くに青い薔薇を確認したら、薙刀を振るって衝撃波で先制攻撃


杜鬼・クロウ
【兄妹】
アドリブ◎
黒い猫耳に銀ピアス、黒い尻尾
語尾は口を手で押え唇や舌噛む。言わずに耐久
薔薇の蔓が尻尾に絡んだら鳥肌で力抜け

この迷宮はマズイと俺の第六感が告げている
早く魔導書探、ッ
困れ!お前だけ平然としてンのムカつく
に…ゃメろ断固拒否
俺の沽券に関わる、クソ…迂闊に喋れ、にっぐ

ざけンに、~~痛!
今の状況と万が一のコトも考えろ
ちったァ警戒しろに…ァ(首根っこ掴み恫喝?

夜雀使用
上空から偵察中も青薔薇に注意し進む(情報収集
盛大に迷う(猫の第六感
青の近くに宝あり?
遭遇後UC使用
ドス黒い焔宿し灼き払う(属性攻撃・2回攻撃・呪詛

木を隠すなら森の中
薔薇の並びや色の意味を読み解けば自ずと見つかるか?(難しく考え



●猫の兄妹と青い薔薇
 黒い耳に揺れる黒い尻尾。
 花迷宮を往くのは鴉めいた濡羽色の毛並みを持つ二匹の兄妹猫。
 しなやかな尻尾を上機嫌に揺らす猫は杜鬼・カイト(アイビーの蔦・f12063)。そして、耳に銀のピアスが光っているのは猫の杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)。
 にゃんてことはない。
 このふたりもまた、迷宮に入って猫化の呪いを受けた者たちだ。
「だから、この迷宮はマズイと俺の第六感が告げ、……――」
 にゃ、と口にしそうになったクロウは口を手で押さえて唇を噛む。彼の中の矜持が呪いの口調を言葉にすることを拒んでいるようだ。
「早く魔導書探、ッ……て、ちょっとは困れ!」
 お前だけ平然としてンのがムカつく、と悪態を吐いたクロウはカイトを睨む。
「だって、別に困らにゃいしにゃー」
 頭の上で両腕を組んだカイトはすっかり猫状態を受け入れていた。あまつさえ、にゃん、と顔の横で手を握って猫ポーズを決めてみる始末。それが妙に似合って可愛いのだから兄としては複雑な気分だ。
「に……ゃメろ」
「オレとしては、にゃあにゃあと可愛らしく鳴く兄さまを、もっと堪能したいところにゃのですけど」
「俺の沽券に関わる、クソ……迂闊に喋れ、にっぐ」
 とはいえ、兄が望むのなら魔導書探しを手伝うのも吝かではない。それにこれほど苦しそうなクロウをこのままにしておくのも気分が良くなかった。
 カイトは行く先に見えた分かれ道に目を向け、軽く首を傾げる。
「さて、この薔薇迷路どうやって進もうかにゃー」
 右には白い花。左には赤い花。
 何か法則性があるのかも知れないが、現時点ではまだ分からない。とりあえず進むぞ、という旨を視線だけで示したクロウは赤の道を選んだ。
 警戒して進むも特に仕掛けなどは見当たらない。だが、暫く進んだ所で行き止まりに辿り着いてしまった。
 仕方がないので戻ることにしたふたりは元の場所に到着する。
 次は白い薔薇の道。
 すると今度は更なる岐路に出た。次も右に白薔薇、左に赤薔薇がある。
「もう一回、こっちに……、ッ」
 にゃ、と再び言いそうになったクロウは舌を噛む。どうあっても言いたくない様子であり、カイトはそんな兄を見守った。
「多分、兄さまの考えているとおりですにゃー」
 赤い薔薇の咲く道を進む中、カイトはクロウが予想しているであろうことを読む。
 頷いたクロウもまた、或る仮説を立てていた。
「行き止まり、と」
 やはり薔薇の色には意味があった。
 青は言わずもがな敵。赤や薄紅は行き止まり。白は更なる道に続く正解ルート。
 黄色や他の色はわからないが、それだけ判明すればやりやすいもの。ひとまずは白い花の咲く小路を進めば何とかなるだろう。
 だが、カイトの脳裏には別の意見が過ぎっていた。
「うん、わかりました兄さま!」
「……」
 何だ、と問う視線がクロウから向けられる。そして兄に向けて明るく笑んだカイトは思いきって提案した。
「めんどうだから、生垣全部ぶっ壊しましょう! だにゃ」
「ざけンに、~~痛!」
 にゃーと続けそうになったクロウは唇を噛みつつ首を横に振る。
「え、だめ? そんにゃー」
「今の状況と万が一のコトも考えろ。ちったァ警戒しろに……ァ」
 カイトの首根っこを掴んだクロウは溜息をついた。そうなればもう真面目に考えるしかなく、カイトは軽く頬を膨らませる。
 そして、クロウは夜雀――蝙蝠に変化する式神を解き放った。
 自分たちで確かめた通り、やはり赤はハズレのルートだ。白い花の道を進めば何らかの違う道に出るらしいが式神では更に奥は探ることが出来なかった。
 何故なら、花迷路の奥は天井まで木々で覆われていたからだ。
「兄さま、やっぱり一つの色……白に絞って、進んでいきましょうにゃ。次は青い薔薇も壊していくけど、……いいですかにゃ?」
「あァ、行くか」
 カイトの提案に頷き、クロウは歩き出す。
 その頃にはにゃーと言いたくがない為に最低限の返事で答える兄の様子にも慣れてきており、カイトはその視線ですべてを理解できるようになっていた。
 そして、幾つ目かの角を曲がったとき。
「兄さま!」
 カイトからの呼びかけに、分かってる、とクロウの眼差しが返ってくる。
 彼らの視線の先にあったのは青薔薇だ。
 しゅるしゅると蔓を伸ばしてきているそれは、此方を襲おうとしていた。とっさに薙刀を構えたカイトは刃から衝撃波を放ち、続いたクロウも漆黒の焔を宿して標的へと迫る。
 その途中、薔薇の蔓がクロウの尻尾に絡みついた。
 ぞわりとした感覚が巡り、途端にクロウの身体から力が抜ける。
「……ッ」
「オレの兄さまに何を――」
 鋭いカイトの眼差しが敵を射抜き、更なる刃の衝撃が重ねられた。次の瞬間にはクロウも体勢を立て直し、蔓を払いながら青薔薇を灼き払った。
「に……ゃんとか、勝てたな」
 ぶんぶんと猫尻尾を不機嫌そうに振るクロウは肩を竦める。カイトも安堵を抱いて敵の残骸を見下ろした。そのとき、青の花弁が何かに変化したことに気付いたクロウはそれに手を伸ばす。
 其処でぴんときた。よく言うのは木を隠すなら森の中、ということ。
 ならば、宝を隠すなら厄介な敵の中に隠すかもしれない。そう思いついたクロウは拾い上げた紙が書の一頁だと判断した。
 びり、と瞬く間に紙が破かれる。すると――。
「やっと解けたか。……クソ」
 呪いの元であった書のページを破いたクロウの猫耳と尻尾が消えていった。
 おそらくこれが正攻法。青薔薇を避けるのではなく、倒していくのが呪いを解く方法なのだろう。だからおそらくパンセは青薔薇を敢えて敵だと認識させたのだ。
 呪いが解けていく様を見つめていたカイトは肩を落とす。
「可愛かったのににゃー、兄さま」
「良いから次の青薔薇見つけンぞ」
 名残惜しそうにするカイトを、しっしっ、と猫にするような形であしらったクロウは歩き出す。自分たちの解呪を行ったら次は他の猟兵や、学園で待っている学生の分を確保しなければならない。
 まだ行うべきことは多くあるとして、兄妹は花迷宮の奥を目指した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

薔薇の迷宮とは、洒落たことをしますにゃ
ニャッフィーロ君と尾を絡め合わせて進みましょう
青い薔薇は擬態した魔物ですか
ニャッフィーロ君と協力しつつ
赤い薔薇や白い薔薇についても注意深く観察しながら、花の色、モニュメント等に法則性を見出せないか「第六感」を働かせつつ
路の先の曲がり角などにも「視力」を使って見通しながら思考し進んでいきましょう
僕はこういうにょは得意にゃんです

でも、どんにゃに難しい迷宮探索でも きみと一緒にゃらば必ず乗り越えられそうにゃ気がするんですよね
ふふ、きみと出掛けている時点ですべてデートだと僕は思っていますが
迷宮を抜けてもデートは続きますよ、きっとね


ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と

先程は大変な目に会った…
此処には木天蓼は生えて居らんようにゃが…迷路か
逸れはせんにゃろうが…念の為宵の腰に尾を軽く絡め進んで行こう
青薔薇は敵で動くにょだろうか?にゃらば白と赤の薔薇等も動き抜け道等現れたりせんか『聞き耳・視力・第六感』を使い辺りを見回しながら宵と違和感のある場所を話し合いながら攻略できれば幸いにゃ
時折思考を整理する様考え込む宵を見れば愛し気に瞳を眇めつつ様子を伺おう
ああ、宵は本当に頼りになるにゃ

途中青薔薇を発見した場合は宵に伝え警戒を
ああ、お前とにゃらどんな難問も超えて行けるにょだろう
…まあ、少しでぇと、というもにょの様で抜けるのは名残しいのだが、にゃ



●薔薇と猫のひととき
 入口は白と赤、薄紅の花が絡み合った薔薇のアーチ。
 ふわりと香る花の香りを確かめながら宵とザッフィーロは薔薇迷宮へ踏み出す。
「先程は大変な目に会った……」
 ザッフィーロは前のフロアで起きた木天蓼騒動のことを思い返しつつ、周囲の様子を探った。どうやら此処にあるのは薔薇だけ。もう木天蓼と遭遇することはないだろうと判断し、少しの安堵を覚えた。
 しかし、此処は敵が張り巡らせた罠の園。
「青薔薇以外に敵はおらんようにゃが……迷路か」
「ニャッフィーロ君、此方に」
 宵は気を抜けないとしてザッフィーロに寄り添い、猫の尾を絡め合わせた。見通しは悪くないので逸れることはないだろうが、こうしていれば互いを守りあえる。
「それにしても薔薇の迷宮とは、洒落たことをしますにゃ」
 この迷宮フロアは元からこうだったのだろうか。それともあのオブリビオンの少女、パンセが自分の良いように作り上げたのか。
 詳細は想像するしかないが、此処は実に見事な薔薇の迷路だ。
 ふたりは注意深く、何か仕掛けがないかを確かめつつ道を進んでいった。そして白い薔薇の曲がり角を抜けた先で、宵が立ち止まる。
「見てくださいにゃ」
「青い薔薇か。動くにょだろうか?」
 警戒を強めたザッフィーロはメイスを構えた。暫し近寄らずに動きを見ていたが、蠢きはするも其処から移動することないようだ。
 しかし道は一本。
 あの青薔薇をどうにかしなくては進めないらしい。
「怯ませた隙に駆け抜けるにゃ」
「それが良さそうですにゃ」
 ザッフィーロは自分が一撃を入れると告げ、青薔薇の元へ駆け出した。そして振り上げたメイスを全力で以て叩きつける。
 それによって青薔薇の花弁が何枚か散り、動きが止まった。
 倒すには至っていないが通り抜けるには十分な隙。宵が駆けていった後にザッフィーロも即座に続き、ふたりは新たな通路に出た。
「何とかにゃりましたね。ニャッフィーロ君のお陰です」
 宵が猫のように目を細めて笑う姿は妙に愛らしい。ザッフィーロは首を横に振り、成すべきことをしただけだと返す。
 そして彼らはふたたび尻尾を絡め、次の岐路へ歩いてゆく。
 左の道は白い薔薇と黄色いバラ。右の道には赤い薔薇。
 どちらに進もうかとザッフィーロが問いかけると、宵は赤い花の通路を示す。
「こちらは行き止まりにゃ気がします」
「そうか。宵にょ言葉を信じよう」
 それは宵の第六感。ゆえに白と黄色の花が咲く道に行こうと告げた彼の言葉をザッフィーロは信じた。
 その予感は当たっており、白い花は常に正解の道を示している。
 どうやら赤や薄紅はハズレ。白は当たり。黄色に関してはまだ判断がつかないが、何らかの意味と法則を持っていることが分かった。
 それらもすべて、宵が導き出したこと。思考を整理するよう考え込む宵を見つめたザッフィーロは愛し気に瞳を眇め、称賛の言葉を贈る。
「ああ、宵は本当に頼りになるにゃ」
「僕はこういうにょは得意にゃんです」
 褒めるザッフィーロに笑みを向けた宵は少しばかり得意げだった。
 そして宵は、でも、と続ける。
「どんにゃに難しい迷宮探索でもきみと一緒にゃらば必ず乗り越えられそうにゃ気がするんですよね」
 再び双眸を緩めた宵はザッフィーロにそっと寄り添う。
「ああ、お前とにゃらどんな難問も超えて行けるにょだろう」
 特に今は普段と違う猫の様相になって共に様々な困難を乗り越えようとしている。どれほど変わろうとも、変わらないものも此処にある。そう感じたザッフィーロはふと、呪いを解いたときのことを思った。
「……まあ、少しでぇと、というもにょの様で抜けるのは名残しいのだが、にゃ」
「ふふ、きみと出掛けている時点ですべてデートだと僕は思っていますが」
 すると宵は淡く笑んで見せる。
 名残惜しくとも残念に思う必要はない。
「迷宮を抜けてもデートは続きますよ、きっとね」
「……ああ」
 ふたりの笑みが重なり、快い気持ちが裡に巡った。
 そして彼らは花迷路を奥に向かっていく。この先に何が待っていようとも、揺るがぬ思いを抱いて――。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

うーん…
俺の【第六感】を頼りに進むしかないにゃ
でもまあ、きっと見つかるぞ!
別に元に戻らなくても…と思ったのは内緒にゃのだ

な、色とりどりで素敵にゃのに…
青色、好きなのに避けにゃきゃにゃらないなんて
にゃんて嫌なやつ!
そういえばそうだにゃ?

む?ピンク?
確かにあんまり身につけたことなかったにゃ
…今度ピンクも身につけてみようかにゃ

わっ、これが青薔薇か!
慌てて他に燃え移る前に、吹雪の【属性攻撃】で消火
むむむ…
四つん這いになって、空いた穴に潜り込んで魔道書がないかゴソゴソしてみるぞ

撫でられる度に嬉しくなって自然とすりすり
ほんとか?
美味しいご飯を毎日用意して貰えるにゃら、住みたいにゃあ…


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

んー、楽しみながら魔導書探しつつ
青い薔薇があったらぶんにゃぐろ

薔薇、フツーに綺麗だよにゃ
青以外でも、にゃんか起こったりするんかネ

ヴァーリャちゃんにはねえ
…ピンク、似合うと思う(可愛い人、の花言葉の意味を想って)
水色にピンクも可愛いと思うんだよにゃ
ほんと?じゃ、なんか一緒にに選びにいこーよ

あっ、青薔薇――
これ燃やしていい?と飛ばす鬼火
ヴァーリャちゃん、消火頼んだっ
さんきゅ
燃えた先、進めそうだにゃー
どう?魔導書、ありそ?

猫姿の彼女は何度見ても可愛いので
定期的にわしゃろうとする
嬉しそうのが余計に可愛い
ヴァーリャちゃんがうちの猫ににゃったら
毎日全力で可愛がるのに



●ねこといっしょに
 緑の生け垣に色とりどりの薔薇。
 白に赤、薄紅。咲く花々の彩に目を細め、綾華は猫の尻尾を揺らす。左右にゆらりと動く尾にじゃれつきそうになりつつも、ヴァーリャは彼の隣に並ぶ。
「うーん……勘を頼りに進むしかないにゃ」
「んー、薔薇、フツーに綺麗だよにゃ」
 ヴァーリャがきょろきょろと花園を見渡し、綾華も今しがた通り抜けたばかりの花の様子を確かめる。
「青以外でも、にゃんか起こったりするんかネ」
 青薔薇は気をつけろと言われたが、他の薔薇の意味は不明。
 もしかすれば赤い薔薇にも罠があるやもしれないと想像したが、何の気配も感じられなかったゆえに何事もなく通過できている。
 しかし、続く道の先でヴァーリャは不意に立ち止まった。
「むっ、行き止まりにゃのだ!」
「通れそうな所もなさそうかにゃ」
 進みはじめていきなりの袋小路。幸先があまり良くないと感じたヴァーリャだが、ぷるぷると首を振った。
 そして、ちらりと綾華を見上げて頭上の耳に目を向けた。
「でもまあ、きっと見つかるぞ!」
 これほど可愛い綾華が見られるのだから、別に元に戻らなくても――そう思ったのは内緒にして、ヴァーリャはもと来た道を戻る。
 そうして次に進んだのは白い薔薇の路。次の路は行き止まりではなく、暫く進むと更なる岐路が見えた。
 そして、次も赤と白の選択を迫られることになる。
「もう一度、赤い薔薇の道に行ってみるにゃ?」
「そうしよっか」
 確かめたいことがあると話したヴァーリャに綾華は頷いた。丁度、綾華自身も気になることがあったので同意を示したようだ。
 そして其処から進むこと暫く、道の先はまた行き止まりだった。しかも最奥にはピンク色の愛らしい花が咲いている。
 やっぱり、と呟いた綾華は悟った。きっと青以外の花は道の先がどうなっているかを示しているのだ。赤はハズレ。そしてピンクも似たような意味を持っている。
 其処まで判断した後、綾華は花と通路をヴァーリャを見遣った。
「これ以上進めにゃいか……」
「ヴァーリャちゃんにはねえ……ピンク、似合うと思う」
「む? ピンク?」
 綾華が咲く花を示していることに気付いたヴァーリャは尻尾と首を軽く傾げる。
 ――可愛い人。
 その色の薔薇が宿す言葉の意味を想った綾華は薄く笑んだ。その微笑みを瞳に映したヴァーリャも笑顔を見せる。その姿はまさに花言葉の意味そのもの。
「水色にピンクも可愛いと思うんだよにゃ」
「確かにあんまり身につけたことなかったにゃ。今度ピンクもつけてみようかにゃ」
 綾華からの言葉を嬉しく思ったヴァーリャは、両手でそっと自分の頬に触れる。
「ほんと? じゃ、なんか一緒にに選びにいこーよ」
「そうしたいにゃ!」
 更なる笑みが交わされ、ふたりの視線が心地よく交差した。
 そして綾華たちは白い花の道を進むために引き返す。だが、其処を抜けた先にこれまでとは違う色の花が見えた。その色は深い青。
「あっ、青薔薇――」
「わっ、あれが青薔薇か!」
 同時に反応したふたりは身構え、花を見据える。
 すると向こうも此方を認識したらしく葉や花が蠢きはじめた。
 あれは明らかな敵。害意を持っている花を見たヴァーリャはこの迷宮を牛耳っているパンセのことを思い返す。
「色とりどりで素敵にゃのに……青、好きなのに……。避けるか倒さなければならにゃいなんて、にゃんて嫌なやつ!」
「好きな色で悪いけど、これ燃やしていいにゃ?」
 ヴァーリャを見遣った綾華は緋色の鬼火を周囲に生み出してゆく。
 こくりと首肯したヴァーリャが了承したと感じた綾華は一気に焔を解き放った。
「ヴァーリャちゃん、消火頼んだっ」
「任せるのにゃ!」
 綾華が鬼火を飛ばしながら告げた言葉に答え、ヴァーリャは吹雪を巻き起こす。青薔薇は葉を舞い飛ばしてきたが焔がそれを包み込みながら燃やした。更に生け垣に宿る花を鬼火が覆い、根源を絶つ。
 更に其処からがヴァーリャの出番。
 周囲に燃え広がりそうになった焔を吹雪が消し止めることで、被害は悪しき青薔薇だけに留められた。
 そして、生け垣にぽっかりと大きな穴があく。
「さんきゅ、ヴァーリャちゃん」
「綾華もすごいのだ。む? むむむ……」
 彼からの礼に快く答えたヴァーリャは、ふと穴の奥に何かがあることに気付いた。
 四つん這いになってごそごそと其処を探るヴァーリャ。その背で尻尾がふわふわと揺れている。綾華は其処の調査を彼女に任せる気持ちで見守っていたが、思うところもあってぽそりと口をひらいた。
「……ほかの奴の前でそういう格好するのダメな」
 しかし、自分の前だから彼女も躊躇しないのかもしれない。綾華はそう思うことにして穴から戻ってきたヴァーリャに問う。
「どう? 魔導書、あった?」
「魔導書ではにゃいがこんにゃのがあったのだ!」
 そう言ってヴァーリャが取り出したのは何かの本の一頁らしき紙。其処には魔力が満ちており、呪いの文言が書かれている。
 それにぴんときた綾華は紙を受け取って破いてみた。
 すると――。
「にゃ、綾華の猫耳がなくなっていくにゃ! わわっ、尻尾も!」
 ヴァーリャが驚いた通り、綾華の猫化呪いが消えていった。おそらくこの紙があの魔導書。つまり呪いを解く方法はこの花迷路のそこかしこに隠されているのだ。
「そういうことネ」
「にゃー……綾華、可愛かったのににゃ」
 納得した様子の綾華の姿は元通り。名残惜しそうなヴァーリャの呪いは未だ解けていないが、今と同じように青薔薇を倒せば解呪の頁が入手できるだろう。
 方法が見つかったことは嬉しいが、少しだけしょんぼりと猫尻尾をぺしょりと下げるヴァーリャ。そんな彼女も可愛らしく思えて綾華はよしよしとその頭を撫でる。
「勿体ない気もケド、な?」
「にゃあ……」
 撫でられたことで頬を染めたヴァーリャは思わずすりすりと綾華にくっついた。そして綾華はわしゃわしゃと耳を擽る。
「ヴァーリャちゃんがうちの猫になったら、毎日全力で可愛がるのに」
「ほんとか? 美味しいご飯を毎日用意して貰えるにゃら、住みたいにゃあ」
 この姿ももう少ししたらお別れ。
 それでもそんな未来があったとしても悪くない。微笑みながら言葉を交わす二人の間には和やかな空気が満ちていた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルナ・ステラ
わざわざ青い薔薇が危険と教えてくれるのですね...

色々な色がありますが、何か意味があるのでしょうか?
いずれにせよ気をつけていかないとですね!

う~ん...
青い薔薇が多いところがあるのですが、何かあるのでしょうか?
罠かもしれませんが、【属性攻撃】の炎の魔法で対処しながらいってみましょうか。植物の魔物なら多分炎に弱いですよね?

―あれ?あまりきいてないのも!?
ふにゃあ!?尻尾掴まないでください!!

は、離して!
【高速詠唱】でUCを発動します!

<うまく魔物の対処ができれば>
そういえば薔薇って色毎に花言葉がありましたよね?
青は「奇跡」とか「夢かなう」とかでしたっけ?
何か見つけられる(起きる)でしょうか?


ノトス・オルガノン
◆SPD
※アドリブ、絡み歓迎
さて、ここからが本番だな
こんな時でなければ存分に薔薇を楽しみたくなるような景観だが
忠告通り、青の薔薇には気を付けておこうか

引き続きニフタに乗っての移動(UC:κυνηγετικό σκυλί)
青以外の花の意味合いも確認しつつ、スピード重視
魔導書を見つけることを優先
目印は……ニフタにマーキングをお願いしようか……
恐らく物理的な印よりは確実だろう

途中魔物等に接触した仲間を見つけたら積極的に補佐を



●青い薔薇の言葉
 踏み入った花の迷路には幾重もの分かれ道があった。
 真っ赤な薔薇。ピンクの薔薇。純白の薔薇に太陽のような黄の薔薇。そして、その中でも気をつけろと言われたのは青い薔薇。
「わざわざ青い薔薇が危険と教えてくれるにゃんて……」
 ルナは先ほど聞いたパンセの声を思い、そのことを不思議に思う。それは同じ道に偶然に辿り着き、隣を歩くノトスも同じ。
 されどあの言葉に嘘はないだろうとして、ふたりは協力しあうことにしていた。
 ちなみに彼らも例に漏れずまだ猫の呪いがかかったままだ。
 そして一行は最初の岐路に差し掛かる。
「さて、ここからが本番だにゃ」
「色々な色がありますが、にゃか意味があるのでしょうか?」
 分かれ道は左右。夜闇色の犬、ニフタの背に乗ったノトスは右に咲く白い花と黄色い花を見た後、左の赤い花だけが咲く通路を見つめる。
 ルナも左右の花を見比べながら首を傾げた。
 現時点で判断材料はない。それゆえに進むしか方法がないだろう。
「いずれにせよ気をつけていかにゃいいとですにゃ!」
 そうしてふたりが決めたのは右の道に進むという選択。
「罠に気を付けて、ニフタ」
 もしかすれば危険があるかもしれないと告げ、ノトスは慎重に進む。何かあればニフタに避けるように願っていたが、特に何も起こらなかった。
 ルナは安堵し、先行してくれたノトスに礼を告げる。
「何もありませんでしたにゃ。良かった……」
 見れば進まなかった赤い薔薇の方にも悪い気配はなく、どちらを進んでも良かったような雰囲気がした。
 そうなると花の色は何らかの目印か意味を含む証なのかもしれない。
 そのように考えたノトスは暫し考え込む。
「こんにゃ時でなければ存分に薔薇を楽しみたくなるようにゃ景観だが……」
 其処から暫し先に進んだ頃、ノトスはニフタが何かを気にしている様子に気付いた。ルナもはっとして顔を上げる。
 その視線の先には青い薔薇が多く咲く一角があった。
「青い薔薇が多いところがあるのですにゃ、何かあるのでしょうか?」
「忠告通り、青の薔薇には気を付けておこうにゃ」
 ふたりとも、そしてニフタも耳をぴんと立てて警戒を強める。
 少し距離があるというのにはっきりと分かることは、あの青い薔薇からは明らかな敵意や害意のようなものが感じられるということ。
「罠かもしれませんが避けては通れにゃさそうですね」
 身構えたルナに頷き、ノトスも青薔薇の群をしっかりと見据えた。
 そして、次の瞬間。
「いきます!」
 ルナが炎の魔法を放ち、青薔薇を穿った。一瞬、赤々と迸る炎が植物を巻き込んで燃え上がる。だが――。
「にゃあ? あまりきいてないのも!?」
 炎の中で植物が蠢いていた。それだけではなく魔力で伸ばした蔓を此方に伸ばして攻撃を行おうとしている。
「……違うにゃ。再生能力があるんだよ、きっと」
 ノトスは冷静に、慌てる少女に首を振って告げた。おそらく敵は焼かれながらもすごい速さで新たな蔓を成長させている。ニフタが地を蹴り、主がその蔓に巻かれないよう立ち回ってゆく。
 そんな中で一瞬出遅れたルナは蔓に絡みつかれてしまった。
「ふにゃあ!? 尻尾掴まにゃいでください!!」
 しゅるしゅると巻き付いてきた青薔薇の蔓はルナの猫尻尾を強く締め付ける。それによって力が抜けそうになったが、ルナは何とか抵抗した。
「は、離して!」
「ニフタ、あれに食らいついて」
 もがくルナを助けるためにノトスは黒犬に願う。牙を剥いたニフタが一本の蔓を引きちぎったと同時にルナもユーベルコードを発動した。
 ――シューティングスター。
 途端に光を纏う流れ星が現れ、青薔薇の本体を貫く。
 更に身を翻したニフタが跳躍し、ノトスが百合の杖を振るった。魔力が入り乱れて鋭い閃光が辺りを包む。
 それによって薔薇が次々と穿たれていき、やがて戦場に静けさが満ちた。
 群生していた青薔薇はすべて散り、害意も消える。
「どうにゃることかと思いました……」
 尻尾をぷるぷると振ったルナは自分たちが倒した敵を見下ろした。どうやら再生する前に倒せたらしく、それらが動く気配はない。
「さて、次は……」
 どちらに行こうかとノトスが紡ごうとしたとき、青薔薇から何かが現れた。花弁が変じていくのは四角い紙。
 これは、とルナがその一枚を拾い上げ、ノトスもその紙を手にする。
「魔導書のページですにゃ?」
「そうみたいだね。……にゃるほど、そういうことか」
 ルナが不思議そうな顔をする中、何かに気付いたノトスは「破ってみよう」と告げた。それではっとしたルナはノトスと一緒に紙を破いてみた。
 するとふたりの身に満ちていた猫の呪いが見る間に解けていくではないか。
 猫耳と尻尾は消え、言葉を縛っていた謎の力もなくなっていった。おそらくこれが花迷路に隠されているという魔導書だ。
 だからパンセはわざと青薔薇に言及して妙な含みを持たせたのだ。
 わあ、と目を丸くしたルナは地面を見下ろす。
「やりましたね、こんなにたくさん落ちてます。きっと皆さんの分もありますね」
「拾って集めておこうか」
 きっと一枚で解呪できるのはひとりだけ。
 しかし何ページもあるのだから学園の生徒や、書を見つけられていない仲間にも渡すことができるはず。そう判断したルナとノトスはそっと頷きあった。
「そういえば薔薇って色毎に花言葉がありましたよね?」
「花言葉?」
「はい、青は『奇跡』とか『夢かなう』だそうです」
 ルナは微笑み、青い薔薇を思う。
 もし花に宿った言葉が本当なら何かの奇跡が起こるかもしれない。そんなことを思いながら、少女たちは暫し書頁の回収にまわった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヨハン・グレイン
【Magia】

こんなところの割に手入れはされているように見えますね
魔導書を隠すのに適しているとは到底思えませんが

二手に分かれるのなら好都合だな
女性陣がいないのなら薔薇を燃やしても文句を言う者はいまい
アルジャンテさん、さくさく行きましょう

女子二人と別れて暫くしてから、すぐに炎を喚ぶ
ああ、確か青い薔薇に気を付けろなどと言っていましたね
まぁ進む道の先を悉く燃やしてしまうのが一番ですよ
魔導書も燃やせたら願ったり叶ったりですし

止められるようなら、まぁ強行はしません
……それにしてもアルジャンテさん
よくこの状況をすんなりと受け入れましたよね
(鋼の意思で語尾を回避している)

……なにやら向こうから破壊音が


三咲・織愛
【Magia】
わあぁ!綺麗な薔薇園ですね!
こんにゃところでお宝探しなんて、俄然やる気が湧いてきちゃいますにゃー!(わざとにゃーにゃー言う)

魔導書を見付ければよいのですよね
二手に分かれた方が効率がいいと思います!
オルハさん、女の子同士で一緒にいきましょーっ♪

青い薔薇は気を付けないとですね
宝探しというからには宝箱にあるのかしら?
わぁ!見てくださいオルハさん、綺麗な桃色の薔薇ですよっ!

はっ!あぶない!
竜槍で鋭い刺突、そのまま息呑む間に連撃を
あ、生け垣も壊しちゃいました……でも壊してもいいって言ってましたよね

がんがん壊して進みましょう!

あっ、アルジャンテくん達です
ふたりともー、魔導書はありましたかー?


オルハ・オランシュ
【Magia】
この薔薇って本物なんだよね?
薔薇園にお宝が眠ってるなんて素敵だにゃー!
うんうん!行こ、織愛!
ヨハンとアルジャンテも頑張ってね

宝箱かぁ
ここの薔薇もある意味お宝みたいなものだし、
薔薇そのもの……イバラに守られてたらロマンチックじゃない?
わ、ほんとだ!綺麗な桃色……って、ひゃあっ!?
ありがとね、織愛
トラップになってるなんて油断できないね
これじゃ迂闊に触れないや

織愛ってけっこうパワー至上主義だよね?
まぁ確かに壊していいってことだったし、
壊して進めばなんとかなるかも!

ここからは合流して探すことにしようか
ヨハンとアルジャンテはどうだった?
こっちは順調に壊せてるよ!
このままどんどん探索しよう


アルジャンテ・レラ
【Magia】

適しているとは思えない場所だからこそ、案外上手く隠せるのかもしれません。
ヨハンさん、宜しくお願い致します。

女性陣の前で薔薇を燃やさなかったのは、貴方なりのお気遣いだったのですね。
青い薔薇は魔物との事。発見次第すぐ燃やしていただければと。
遠くとも視認さえ出来れば私の矢でも対処可能です。
魔導書は破る必要がありましたね。
価値のある書ではなさそうですし、燃やしても構いません。

回避不能の呪いですから、抗うなど無駄な労力だとは思いませんか?
ああ、すみません……ヨハンさんは抗っていますよね。鋼の意思で……。
……耳はなかなかにお似合いですよ。

あの音。きっと織愛さんですね。
様子を見に行きましょう。



●白と赤の路へ
 整えられた生垣に咲き誇る色とりどりの花。
 花路の迷宮に宿る薔薇は美しく、凛とした佇まいで其処に在る。
 遺跡フロアで起こったマタタビ騒動も収まり、すっかり酔いも覚めた後。ヨハンたちは薔薇の園の入り口を潜り、迷宮の様子を確かめていた。
「こんなところの割に手入れはされているように見えますね」
「にゃあぁ! 綺麗な薔薇園ですにゃ!」
「すごいにゃ、この薔薇って本物にゃんだよね?」
 依然として平然とした口調を保つヨハンに対して、織愛とオルハはもう猫そのもの。まるで、生まれたときからこの口調です、というような顔をしている。
「薔薇園にお宝が眠ってるにゃんて素敵だにゃー!」
「こんにゃところでお宝探しなんて、俄然やる気が湧いてきちゃいますにゃー!」
 にゃーにゃーと楽しげに騒ぐふたりを微笑ましく思いつつ、アルジャンテも辺りの様子を探っていく。
 見たところ、気を付けろと言われた青薔薇はまだ近くにない。
 少し先に進んだ所に二手に分かれる路があるようだ。
 ヨハンもアルジャンテと同じことに気付いており、口元に手をあてつつ考える。
「魔導書を隠すのに適しているとは到底思えませんが……」
「適しているとは思えない場所だからこそ、案外上手く隠せるのかもしれませんにゃ」
 アルジャンテの意見にヨハンも頷く。
 すると織愛が、はい、と片手をあげて提案した。
「こういうときは二手に分かれた方が効率がいいと思いますにゃ!」
 宝を探すならきっとそれがいい。
 織愛の意見に反対するものはおらず良い案だということで採用された。そうして肝心のチーム分けはというと――。
「オルハさん、女の子同士で一緒にいきましょーっ♪」
「うんうん! 行こ、織愛!」
 織愛の一言によりあっさりと決まった。
 丁度そちら側にいたという理由で、女性陣は赤い薔薇が咲く右の通路へ。男性陣は白い薔薇が咲いている正面の道を進むこととなった。
「ヨハンさん、宜しくお願い致しますにゃ」
「では行きましょう」
「ヨハンとアルジャンテも頑張ってにゃー!」
 ふりふりと尻尾と手を振って進むオルハたちを見送り、男性陣も進む。
 青い薔薇に気を付けて。
 その言葉が何を意味するのか。それはまだ謎に包まれている。
 
●花迷路探索 ~彼女たちの場合~
 赤い薔薇の横を通り過ぎ、オルハと織愛は花の迷路に踏み出した。
 もしかすれば罠があると思いきや花を突いてみても何も起こることはなかった。辺りに満ちる空気は穏やかで、何だか庭園を散歩しているようだ。
 でも、と気を引き締めた織愛は隣のオルハに語りかける。
「青い薔薇は気を付けにゃいとですね」
「うん、気を付けてって言われたから絶対に危ないにゃ!」
 オルハもこくこくと頷いて耳を高く立てた。まだ危険は近付いていなさそうだが周辺の音をしっかり聞いておくに越したことはない。
 織愛も倣って警戒を緩めぬまま、パンセがいっていた宝の隠し場所を思う。
「宝探しというからには宝箱にあるのかしら?」
「宝箱かぁ」
 目的の宝は今回、呪いを解くためのアイテムだ。しかし冒険の舞台めいた花の迷路を進んでいると様々な想像が巡る。
 オルハは何故だか楽しくなり、足取りが軽くなったのを感じる。
「ここの薔薇もある意味お宝みたいなものだしにゃ、薔薇そのもの……イバラに守られてたらロマンチックじゃにゃい?」
「本当ですにゃ。でしたら薔薇の近くに宝箱が……わぁ!」
 双眸を細めて夢想する織愛は、不意に目を輝かせた。どうしたのにゃ、とオルハが織愛を見遣ると更に嬉しげな声をあげる。
「見てくださいオルハさん、綺麗な桃色の薔薇ですよっ!」
「わ、ほんとだ! 綺麗な色!」
 先ほど見てきた真紅の薔薇とは違う、淡い彩を宿す花に少女たちは目を奪われた。もっと近くで見ようとオルハが駆け出し、織愛も其処に続く。
 だが――。
 桃色の薔薇に隠れていたが、其処には矢の罠が潜んでいた。
「はっ! あぶない!」
「……って、にゃあっ!?」
 オルハに迫った矢に気付き、織愛は竜槍でそれを鋭く穿った。そのまま刃を切り替えした織愛は矢が飛んできた元を察知して駆け、発射装置に連撃を叩き込んだ。
 それは一瞬の出来事。もし彼女がいなければ致命的な一撃を受けて怪我を負ってしまっていたかもしれない。
 オルハはほっと胸を撫で下ろし、危機を救ってくれたことに礼を告げた。
「ありがとにゃ、織愛」
「いいえ、何もなくてよかったですにゃ」
 しかしふたりが辿り着いたところは行き止まりだったようだ。オルハは尻尾をゆらりと揺らし、どうしようかと考える。
「トラップになってるなんて油断できないね。これじゃ迂闊に触れないや」
 すると織愛が、あ、と小さな声を発した。
「生け垣も壊しちゃいました……でも壊してもいいって言ってましたにゃ」
 其処で織愛は思い至る。
 壊しても構わないということは、即ち――。
「わかりましたにゃ。ここからはがんがん壊して進みましょう!」
「ふふ、織愛ってけっこうパワー至上主義だよね?」
 ぐっと槍を握って宣言する織愛は生き生きとしていた。前のフロアでもそうだったように力技で進むのが性に合っているのかもしれない。
 オルハはくすりと笑み、一理あると感じて同意を示す。
「まぁ確かに壊していいってことだったし、壊して進めばにゃんとかなるかも!」
「いきましょうにゃ!」
「にゃー!」
 そして、ふたりは其々に武器を構えた。
 
●花迷路探索 ~彼らの場合~
 一方、白と黄色の花が咲く通路の前で佇むヨハンとアルジャンテ。
 通路越しに暫しわいわいと話す女性陣の声が聞こえていたが、いつしかそれも遠くなっていく。そして、完全に気配が去ったあとでヨハンは炎を喚んだ。
 その瞬間、目の前にあった薔薇の花が燃やされる。
「アルジャンテさん、さくさく行きましょう」
 ヨハンにとって二手に分かれるのは好都合だった。
 何故なら彼女たちがいなければ、何が仕掛けられているか分からない薔薇を燃やしても文句を言う者がいないからだ。
 なるほど、と燃え滓になった花を見下ろしたアルジャンテは納得する。
「女性陣の前で薔薇を燃やさなかったのは、貴方なりのお気遣いだったのですにゃ」
 アルジャンテはヨハンの花への対処を咎めることはしない。
 だが、探索に必要だと分かってもオルハたちは多少なりとも悲しむだろう。あれほど花が綺麗だとはしゃいてでいたことがその証だ。
「ええ、悲しむ顔は見たくありませんから」
「それで良いですにゃ。特に青い薔薇は魔物との事、発見次第すぐ燃やしていただければと思いますにゃあ」
 ヨハンが静かに首肯すると、アルジャンテは片目を軽く眇める。
 限りなく効率的に。しかし感情を捨て去ったわけではない。その行動は実にヨハンらしいと思い、アルジャンテは先に進む。
 そして歩くこと暫く、白薔薇の先に続く路は妙に長かった。
 ふたりとも警戒を怠らなかったが、そんな中でふと思ったことがある。ヨハンはアルジャンテの頭に生えた耳を改めて見つめた。
「……それにしてもアルジャンテさん」
「にゃ?」
 どうかしましたかと視線を寄越す彼は猫化に馴染んでいた。ヨハンは鋼の意志でかなり意識しているというのにアルジャンテは特に抗ってはいない。
「よくこの状況をすんなりと受け入れましたよね」
「回避不能の呪いですからにゃ、抗うなど無駄な労力だとは思いませんか?」
「いえ……」
「ああ、すみません……ヨハンさんは抗っていますよね」
 ヨハンが答え辛そうに僅かに俯くと、アルジャンテは首を振った。本音を言うと先ほどのフロアで一瞬聞こえたヨハンの猫言葉を聞きたかったのだが無理強いはできない。その代わり、アルジャンテは精一杯の褒め言葉を送った。
「……耳はなかなかにお似合いですよ」
「…………」
 ヨハンは無言だったが、どうも、と告げるように軽く会釈した。
 しかし、そのとき。ふたりはすぐに妙な気配を感じて身構える。強く漂っているのは進む先から放たれる敵意だ。
「青薔薇ですにゃ」
「燃やしましょうか」
 ヨハンが炎を展開し、アルジャンテも弓を構えて弦を引き絞った。そして炎が宙に舞った刹那、矢が解き放たれる。
 対する青薔薇も魔力の蔓を伸ばしてきたがヨハンの炎がそれを焼いて阻止した。アルジャンテの矢は真っ直ぐに飛び、青薔薇の中枢を貫く。
 それによって一瞬で敵意は散り、蠢いていた青い薔薇も動かなくなった。
 すると其処から何かがひらりと舞い落ちる。花弁かと思ったそれは、瞬く間に光を放って四角い紙に変化した。
「何ですにゃ?」
「これは――魔導書のページでしょうか」
 アルジャンテが首を傾げる中、ヨハンは紙を拾い上げた。そしてそれが何だか理解したヨハンは徐ろにページを破り捨てた。
 同時にヨハンに宿っていた呪いの力が解け、猫耳と尻尾が綺麗に消え去る。
「なるほど」
「そういうことだったのですにゃ」
 ヨハンはやっと解放されたと感じながら納得する。アルジャンテもこれが例の解呪の宝なのだと悟った。つまり、宝が隠されている場所は青薔薇のなか。
 宝はバラバラに隠されてそこかしこにある。青い花を避けた者には与えられず、戦いを挑んだものだけが手に入るという仕組みだ。
 今はまだヨハンしか呪いが解けていないが、違う青薔薇を探せば人数分のページが手に入ることだろう。
 これで解決の糸口を掴んだと分かった彼らは頷きあう。
 そして、次の瞬間――。

●破壊の先に巡る縁
 どかん。
 ばきっ、どごーん。
 何処かから激しい破壊音が聞こえてきた。解呪の方法を探り当てたアルジャンテとヨハンは顔を見合わせ、音が響いている方に耳を澄ます。
「……なにやら向こうから破壊音が」
 不可解な音ではあるがふたりはもうそれが何であるか分かっていた。
「あの音。きっと織愛さんですね。様子を見に行きましょう」
 彼女が破壊魔であることはもう前のフロアで知っている。慌てることなく冷静に判断した彼らは音を探って近付いていき――。
 ずしゃーん。
 ひときわ大きな音が響いたと思ったとき、彼女たちは現れた。
「あっ、アルジャンテくん達ですにゃー!」
「本当だ。あれっ、ヨハン? ヨハンが猫じゃないにゃ……!」
 織愛とオルハは葉っぱまみれになりながら男性陣に手を振った。オルハの方は呪いが解けていつもどおりに戻ったヨハンの姿に多少ショックを受けているようだが、それが示すこともちゃんと分かっている。
「ふたりともー、魔導書をみつけたんですにゃー?」
 にこにことして問いかける織愛に頷き、アルジャンテたちは経緯を話してゆく。
「……ということです」
「そっか、わかったよ! でも勿体ないにゃ。ヨハンの可愛い姿を目に焼き付けておきたかったにゃ」
「同意しますにゃ」
「大丈夫ですにゃ、さっきのフロアでいっぱい写真を取りましたから!」
「まったく、あなた達は……」
 まだ猫のままである三人に取り囲まれるヨハンは一歩後退った。
 困った様子のヨハンを見て楽しそうにくすくすと笑い合う少女ち、そしてそれを見守るアルジャンテ。けれど、きっとこれも彼らの普段通りのやりとりのひとつ。
 そうしてもう暫し、花迷宮の探索は続いてゆく。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシル・エアハート
確かに綺麗な所だにゃ。
でも…油断は出来にゃい。
早く魔導書を見つけて元に戻さにゃいと。

薔薇の花の色を見分けながら慎重に進んでいくよ。
青、ということは…?
気付いた時には蔦に囚われて。
なるほど。そういうことだったんだにゃ。
でもごめんにゃ。…かなり熱いけど覚悟してにゃ。
UC『緋色の焔』で燃やしていく。

…さて、魔導書はどこかにゃ?
【暗視】【第六感】を使って見えない箇所や影になっている箇所を隅々まで確認しながら【失せ物探し】をしていく。
見つけたら問答無用でUC『緋色の焔』で灰になるまで燃やす。
これで元に戻れる…!


*アドリブOK



●解呪の刻
 花の香が幽かに漂う中、鮮やかな彩が揺れる。
 何も知らずに此処に辿り着いたならば、穏やかで平和な庭園だと勘違いしてしまうほどに其処は美しい場所だった。
「確かに綺麗な所だにゃ」
 セシルは猫耳をぴんと立て、目に映る景色に素直な感想を零す。
 だが、この場所は迷宮の内部。
 それもオブリビオンが巣食っているとあらば決して穏やかなどではない。
「でも……油断は出来にゃい」
 一見は美しい場所も、薔薇が棘を隠しているのと同じように危険が潜んでいる。先ほどフロアに響いたパンセの声を思い、セシルは固い決意を抱いた。
「早く魔導書を見つけて元に戻さにゃいと」
 そうしなければこの頭に生える耳も、背で勝手に揺れる尻尾も、そして妙な猫めいた口調も元に戻ることはない。
 セシルが進むのは白や黄色の薔薇が咲いている花の小路。
 近付くだけで発動する罠はないか。何か妙な気配はないか。慎重に歩いてきたが見てきた花々に仕掛けは施されていないようだ。
 しかし未だ何が起こるか謎だ。薔薇の花の色を見分けながら進んだ矢先、セシルは曲がり角に辿り着いた。
 一歩を踏み出し、右を見遣る。その視界に入った色は――。
「青、ということは……?」
 はたとした時にはもうセシルは薔薇から伸びた蔓に囚われていた。棘がその身に刺さり、小さな痛みを伝えてくる。
 されどセシルは慌てず、青い薔薇に気を付けろと言われたことに納得した。
「なるほど。そういうことだったんだにゃ」
 痛みは鋭いが堪えきれぬほどではない。セシルは次の攻撃に捉えられる前に、と己の力を紡いでいった。
「でもごめんにゃ。……かなり熱いけど覚悟してにゃ」
 ――灰になるまで、燃やし尽くせ。
 青の薔薇に告げた刹那、炎を宿す深紅に染まった剣が幾つも彼の周囲に現れた。敵はセシルを絡め尽くそうと動くが、刃が緑の葉や蔓を燃やして斬り裂く。
 瞬く間に青薔薇は焼き尽くされて焦げた花弁が地面に落ちた。
 枯れ果てた蔓を振り払って拘束を解いたセシルは煤を払い、辺りを見渡す。
「……さて、魔導書はどこかにゃ?」
 すると青薔薇の花弁が淡い光を放ち、何か違うものに変化していった。
 それは魔導書の一頁と思わしきもの。
 紙を拾い上げたセシルははっとして、これが隠された解呪の宝なのだと気付く。
 そうと分かれば後は問答無用。
「これで元に戻れる……!」
 緋色の焔がページを灰になるまで燃やした刹那、セシルに生えていた耳と尻尾が消えた。いつしか言葉遣いもすっかり元通りになり、安堵の気持ちが巡った。
 呪いが解けても、前のフロアで付けた鈴付きのチョーカーはまだ首にある。
「もう暫くこのままでも良いかな」
 この先に待つであろう少女と対峙して猟兵としての役目を果たすまでは――。
 ちいさく笑んだセシルは首元に触れ、歩き出した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ユヴェン・ポシェット
(にゃーと鳴くミヌレを愛おしそうに見つめ)このままという訳にはいかないしな…魔導書探しながら進むか

薔薇は色によって花言葉が違うというが…関係あるのだろうか。
とはいえ、その花言葉も全く分からないから地道に探すしかないな。

UC「hajuherne」使用。
トラツリアブさん達に魔導書探しを手伝って貰う。
色取り取りの薔薇を直接見せて(色の説明をしても人間と見え方が異なるので)花の色によって捜索組を分ける。青の薔薇には近づかない様に、少しでも動いたり見え方が違う花には近づかない様に注意する。

青い薔薇に対しては、見つけ次第積極的に近づき、自分や仲間が危険であれば、布の盾で仲間を守り槍で応戦

アドリブ歓迎です。



●最後のねこおさめ
 にゃー。
 ミヌレがふわふわの尻尾を立ててユヴェンに擦り寄ってくる。
 にゃーにゃー。
 何かを伝えたいのか、それとも甘えたいだけなのか。呪いとはいえ猫のように鳴くミヌレはいつもとは違った可愛さがある。
 にゃあ、ともう一度鳴いたミヌレを愛おしそうに見つめたユヴェンは、はっとした。もう一度言うがミヌレは可愛い。正直、このままでも一向に構わない気もしてしまったのだが呪いは呪いでしかない。
「このままという訳にはいかにゃいしにゃ……」
 ユヴェンは気を取り直して薔薇の園へ意識を向けた。
 迷路になっている通路は入り組んでおり、魔導書を探しながら注意深く進むほかない。ユヴェンは周囲を見渡し、安全そうな花迷路の一角で力を紡ぐ。
 ――召喚、スウィーティーズ。
「頼めるか? トラツリアブにゃん達」
 頼もしい仲間を呼んだユヴェンは彼女たちに探索の手伝いを願う。
 ひとまずは近くに見えた白い薔薇。そして次に赤い薔薇。最後に黄色の薔薇を示して、其々に調査してくるよう指示していく。
 だが、この近くには見えない青い薔薇が厄介だ。
「少しでも動いたり見え方が違う花には近づかない様ににゃ」
 注意を告げたユヴェンはトラツリアブさんたちが飛んでいく様を見送った。そして自分もまだ進んでいない道を調査しようと決め、歩き出す。
 そういえば、とユヴェンは思い立った。
 薔薇は色によって花言葉が違うという。もしかすればそういったものと関係があるのだろうか。だが、すぐにユヴェンは首を横に振った。
「とはいえ、知らぬ花言葉も多いからにゃ。地道に探すしかないにゃあ」
「にゃ!」
 それに花言葉の意味は多岐に渡る。その線はないだろうと踏んだユヴェンの言葉にミヌレが同意するように鳴いた。
 花の小路をゆくユヴェンとミヌレは警戒を強める。
 そのとき、進む方向から一匹のトラツリアブが飛んできた。どうやら青い薔薇に遭遇したらしく逃げてきたようだ。
「ミヌレ、行くぞ」
 ユヴェンはミヌレを呼び、即座に竜槍に変じさせた。
 少し離れた生垣に咲く青い花を視認した彼は地を蹴る。その際にトラツリアブが案内するかのように先導した。だが、次の瞬間。
 青い薔薇が蠢き、魔力の蔓を伸ばしてきた。その狙いがトラツリアブだと察したユヴェンは咄嗟に布盾を構えて割り入り、敵からの攻撃を防ぐ。
「案内ありがとにゃ。下がっていてくれ」
 そして身構え直したユヴェンは一気に竜槍を突き放つ。
 青薔薇の中心を貫いた一閃は花弁を散らし、蠢いていた敵の息の根を止めた。そのとき、ひらりと落ちた花弁が光る。
 瞬時に紙片に変化したそれはどうやら魔導書の一頁のようだ。
「これは……?」
 破れば呪いが解ける。そう聞いていたことを思い出したユヴェンは頁をふたつに裂いてみた。すると猫化していた己の身体が普段通りに戻っていくではないか。
「にゃー!」
 すごい、というように槍から竜に戻ったミヌレが鳴く。
 きっともう一体、青薔薇を倒して紙片を手に入れればミヌレの呪いも解くことができるのだろう。しかしユヴェンは考え込む。
「……」
 ユヴェンは猫竜姿をしっかりと目に焼き付けて覚えておくためミヌレに触れる。
 にゃーにゃー。
 可愛らしい声が響く中、暫しの撫で撫でタイムが始まった。
 

●花迷路と解呪の方法
 そうして猟兵たちは其々に道筋の法則を知り、解呪の術を見つけた。
 
 先ず明らかになったのは呪いを解く方法。
 魔導書は一頁ずつ隠されており、青薔薇の花弁の中にあった。
 青い薔薇に気をつけて。
 パンセがそう告げたのは危険があると読んだ猟兵が敢えて青薔薇を避けてゆくことを狙ったがゆえだった。しかし今、多くの頁を集めた猟兵の手によってすべての者が呪いを解ける手筈が整っている。
 
 そして迷路の仕組み。
 赤い薔薇や薄紅の薔薇が咲く道は行き止まり。
 白薔薇の道は次に続いていく正解の道だという印。そして、黄色の花はパンセが待つ最奥に続くルートを示す鍵だった。
 呪いを解き、情報を交換しあった猟兵たちは進む。
 この騒動の元凶となった少女、冥想のパンセの元へ向かうために――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『冥想のパンセ』

POW   :    断章の花
【開いた魔導書から散る花の幻影】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    観想の星
【敵意を込めた視線】を向けた対象に、【流星の如く突撃する魂】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    鏡鳴の魂
対象の攻撃を軽減する【魂の鏡を展開。魂は対象と同じ姿】に変身しつつ、【相手と同じユーベルコード】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:えな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鴛海・エチカです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●冥闇の人形少女
 入り組んだ薔薇の迷路を抜けた一番奥。
 猫の呪いを解き、敵の居場所を突き止めた猟兵はひらけた場所に辿り着く。
 生垣で囲われた四角く広い空間。周囲には赤や黄色、ピンクや白の様々な色を宿す薔薇が咲き誇っている。
 そして――その中心には、冥想のパンセが立っていた。
「残念、みんな猫の呪いを解いちゃったんだね。見てて面白かったのにな」
 パンセは無邪気に笑っている。
 その手には猫化の魔法をかけたときとは別の魔導書があり、パンセの周囲にはふわふわと浮かぶ魂めいた浮遊体がいた。
「でも仕方ないか。そろそろ僕の力を見せてあげるときだね!」
 ふふ、と怪しく笑んだパンセは浮遊している光を傍に呼び、魔力を紡いだ。
 目映い光が周囲を包み込んだかと思うと幾つもの鏡が宙に浮かぶ。そして、この場に訪れた猟兵たちを鏡が映し出していく。
「君たちの魂の姿、写し取らせて貰ったよ。――さあ、遊ぼう!」
 その言葉と共に鏡が歪み、其処から影が現れた。

「驚いた? 君たちそっくりでしょ?」
 パンセが示した通り、出現したのは猟兵たちを写し取った影。そっくりではあるが鏡に映した姿なので左右が真逆だ。
 一人に一体ずつ存在しているそれらはおそらく姿を写した本人を狙ってくる。
「その鏡の影はね、君たちが使った力と同じものを使うんだよ。それだけじゃなくてパンセちゃんも一緒に攻撃しちゃうから、覚悟してね」
 少女は楽しげに双眸を細める。
 偽の自分と戦わなければならないうえに、同時にパンセも気まぐれに攻撃を仕掛けて来るということだろう。
 先ずは自分の影を退け、そしてパンセを倒すことが此度の最大の目的だ。
 厄介な闘いになるが事件を解決するには戦うしかない。
 そして、猟兵たちを見渡したミレナリィドールの少女はくすくすと笑う。
「本当はね、僕を棄てた人間は大嫌い……。でも人間で遊ぶのは大好き! だから楽しく遊ぼうよ。どっちかが壊れるまで、ずっとずっと……!」
 
セルマ・エンフィールド
最近は学園内まで災魔が来ることも多いですし……遊びにつきあっている暇はないんですよ。

【絶対氷域】を展開、無差別の冷気が鏡写しも含めれば2人分。パンセに近寄られることはないでしょう。
魂が突撃してきても私にたどり着く前に凍り力尽きるとは思いますが……残っても距離を取れていれば正確な狙いの技でもクイックドロウしたデリンジャーで撃ち落とすくらいの猶予はあります。

鏡写しに同じ技を使われても私は冷気には強い体質(氷結耐性)ですし問題はありません。
鏡写しが体質まで真似られてなければそれでよし、体質も真似ているようであればフィンブルヴェトでの実弾で鏡写しを仕留め、続いて冷気の中からパンセも銃で狙います。



●写し鏡の偽物
 冥想のパンセの言葉と共に戦場に展開されていく鏡。
 其処に映った逆しまの自分が目の前に現れる中、セルマは青の双眸を敵に向けた。
「……遊びにつきあっている暇はないんですよ」
 オブリビオンの少女はこれを遊びだと語っていた。
 ただでさえ近頃は学園内まで災魔が来ることも多いのだ。ただの遊戯ならば手を煩わせないで欲しいと呟き、セルマは愛用の銃に手を掛けた。
 それと同時にセルマの写し身が動く。
「……」
 自分と同じ、否、ただ左右が反転しただけの偽物は無言のまま構えた。
 銃口を差し向けあっている二人のセルマ。その姿はまるで、其処にまだ鏡が存在しているかのように対称的だ。
 そして次の瞬間、セルマはユーベルコードを発動させる。
「……この領域では全てが凍り、停止する」
 セルマが全てを凍てつかせる絶対零度の冷気を纏った瞬間、写し身も同じユーベルコードを使った。
 広がる絶対氷域。そして無差別に襲いかかる冷気。
「わっ!?」
 それによって驚いたパンセが後方に下がった。同様に仰け反った写し身のセルマはかなりの打撃を受けている。セルマ本人はというとその身に宿る氷結耐性のおかげで冷気から受けたダメージは僅かだった。
 しかし、二人分の冷気が戦場に広がったことで他の猟兵たちも衝撃を受けてしまったようだ。誰もそれによって倒れることはなかったが、この力は危険だ。
 セルマはそう察してスカートの中からデリンジャーを取り出して構えた。
 すると写し身も同様に銃を撃ち込もうと狙ってくる。
「早撃ち勝負でもする気ですか?」
 セルマは敵を見据え、銃爪に指をかけた。先程の反応で分かったように鏡の影は特性や身体能力までも写し取ったわけではないようだ。
 それならば後は簡単。セルマ自身の力を存分に発揮するだけ。
 次の瞬間、セルマは銃弾を撃ち放った。
 敵も銃爪を引いたが本物と比べると遅い。鋭い弾丸が写し身を貫く中、セルマは敵の弾丸を見切って避けていた。
 身を翻したセルマは敵が再び動く前に地を蹴り、写し身の腕を見据える。
「撃ち落とします」
 いつまでも真似されては堪ったものではない。宣言したセルマは即座にフィンブルヴェトに持ち替え、写し身が握るデリンジャーに狙いを定めた。
 刹那に響く発砲音は二発。
 一発目で手を穿つことによって敵の銃を地に落とし、二発目で相手の胸を貫く。
 それは反応することはおろか瞬きすら出来ぬほどの時間。撃たれた影はその場に崩れ落ち、跡形もなく消滅していった。
 幻影がいなくなったならば次の標的はあの少女だ。
 戦場に立ち籠める冷気の中、セルマはパンセへと銃口を向けた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

「ようし、呪いが解けたからもう1回チャレンジにゃー!」
呪いの解除方法を聞き、無事解除して再びパンセのところにやってきたよ!でも、まだちょっと語尾が残ってるみたい!

わわっ、今度はボクのそっくりさん!?とパンセの周りを飛び回りながら影と「空中戦」を繰り広げるよ!
目まぐるしく飛び回ることでパンセにもどっちが本物か分からなくしちゃうにゃ☆

それで、隙を見て【妖精姫のいたずら】でパンセの服の中に逃げ込んじゃうよ!
影も同じように服の中に追いかけてきたら、捕まらないぞーと二人でもぞもぞと服の中を追いかけっこするよ!

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です



●こちょこちょ妖精
「ようし、呪いが解けたからもう一回チャレンジにゃー!」
 元気な声を響かせ、再び辿り着いた薔薇園の奥。
 冥想のパンセとティエルがこの場所で相見えたのはこれで二回目。ティエルの猫化は解けていたがまだ口調は少しだけ先程のままだった。可愛い、と呟いたパンセはくすくすと笑う。
「ああ、さっきの蝶々さんだね」
 自分を蝶だと思っていたらしきパンセの言葉も気になったが、それよりも更に気にかかるのが彼女の前方。不敵に笑ったパンセの前には反転した風鳴りのレイピアを持つ、鏡写しのティエルが控えていた。
「わわっ、今度はボクのそっくりさん!?」
 驚いたティエルは警戒しつつも影に刺突剣を差し向ける。
 するとパンセは影をティエルに嗾け、自分は数歩後ろに下がった。
「あっ! 待てー!」
「…………」
 パンセに近付こうと飛んだティエルだが、鏡の影が行く手に立ち塞がった。影は何も語ることはなかったが、いつものティエルと同じ明るい笑みを浮かべている。
 しかしティエルは怯まない。
 少しでも距離を詰めようと狙い、高く飛び上がる。
 それを追ってきた写し身のティエルも翅を羽撃かせた。そして急降下したティエルは影を躱し、パンセの元へ迫る。
 されど影も其処に追い縋ってきた。相手がレイピアを突き放ったことに気付いたティエルは身体を反らし、咄嗟に一閃を避ける。
「わっ、ボクと戦うってこんな感じなんだね!」
 素早く鋭く、そして捉え難い。
 これが自分の戦法ではあるが、それを客観的に見るのは不思議だった。そのまま空中でくるりと回ったティエルは敢えて写し身に反撃を行わない。
 何故なら、最初から狙っているのは影ではなくパンセだからだ。
「こっちにこないでよ!」
 二体の妖精が目まぐるしく飛び回り、近付いてくる様に気付いたパンセは身構える。そしてティエルは一瞬の隙を突き、彼女の服の隙間に入り込んだ。
「ようし、服の中からこちょこちょしちゃうぞー☆」
 同時に写し身も其処に続き、ふたりのティエルは内部から擽り攻撃を行う。
「あはは、ははっ! や、ちょっ、やめて!」
「捕まらないぞー」
 思わず身悶えるパンセは手でフェアリーたちを追い払おうとしたが簡単には逃れられない。妖精たちは暫くもぞもぞと服の中を追いかけっこしていたが、痺れを切らしたパンセが叫んだ。
「うう……もういいよ! どっちも潰れちゃえ!」
 その瞬間、魔力の花が散る。
 吹き飛ばすような強い風がどちらのティエルにも襲いかかり、瞬く間に写し身が戦う力を失って消えた。
 ティエル自身も手痛い衝撃を受けており、ふらふらと宙に舞って逃げる。だが、体勢を立て直した少女は花びらと葉っぱを模したナックルガードを構えた。
「まだまだこれからだよ!」
 鏡写しの偽物はこれでいなくなった。ならば後はとことん攻め込んでいくだけだとして、ティエルは拳をおおきく振りあげた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

マレーク・グランシャール
メイ(f12275)と

猫化した自分をこういう形で見るとはな
メイはともかく俺はダメだろう

不愉快で邪魔な鏡写しを先に倒す
その間パンセを抑えるのはメイに頼む

【流星蒼槍】を発動、偽の俺に向かい【碧血竜槍】を槍投げ
俺の真似である以上、必ず俺より一歩出遅れる
敵の初撃は【泉照焔】で見切って回避
先に双頭竜の猛攻で討ち取る

次に偽のメイだ
メイがUCを温存すれば偽もUCは使えまい

パンセ戦になれば花の幻影の範囲攻撃が始まるが、メイのUCが相殺してくれる
メイの合図で【黒華軍靴】のダッシュで急接近
【碧血竜槍】を投げて魔導書を破壊
【魔槍雷帝】でパンセを貫き電撃とUCで追撃

なんだメイ、猫から戻ったのか
写真撮っておけば良かった


逢坂・明
マレーク(f09171)と

ちょっ、あたしも許されないわよ
でも同意ね
猫耳クールイケメンは一人いればそれでいいのよ

「時間稼ぎ」「存在感」でパンセの抑えに回るわ
鏡のあたしたちは頼んだわよ、マレーク

あたしもミレナリィドール
あなたの気持ちはよくわかるわ
でも、あたしはあたしを捨てた人を嫌いにならない
また新しい縁を紡げばいい
過去のことに縛られるなんて、時間の浪費よ

攻撃が来るなら「オーラ防御」で受けていくわ
マレークが鏡写しを撃破して、パンセ戦
マレークのUCに反応してPOWを繰り出すパンセに対し
【ミレナリオ・リフレクション】で無効化を狙うわ

今よ、マレーク!

なぁに、あなたこそ
……また猫になる機会があったら考えるわ



●貫く槍と人形の意思
 冥想の少女によって展開される鏡。
 そして、其処に映る影が実体化してゆく。まだ呪いを解いていないマレークと明は猫耳状態のままの姿で現れたそれを瞳に映した。
「猫化した自分をこういう形で見るとはにゃ。メイはともかく俺はダメだろう」
「ちょっ、あたしも許されにゃいいわよ」
「そうか? 二人も要らないと思うが」
 マレークの言葉に明は首を振る。彼は軽く首を傾げてみせた後、自分たちと同じように隣同士で並ぶ鏡の偽物に注意を向けた。
「でも同意にゃ。猫耳クールイケメンは一人いればそれでいいのよ」
 明はそっと頷き、身構える。
 既に自分たちの偽物は力を紡ごうとしていた。
「任せたぞ、メイ」
「鏡のあたしたちは頼んだわよ、マレーク」
 戦いという真剣な場面だからか、ふたりの口調は自然に元に戻っていた。
 マレークは写し身へ、そして明はパンセへと意識を向けて、其々に頷きあう。
 次の瞬間、ふたりのマレークが流星蒼槍を発動させた。
 蒼い稲妻を纏った碧眼の双頭竜が現れたかと思うと激しくぶつかる。明の偽物はそれを相殺しようと試みたようだが、失敗に終わっていたようだ。
 自分の偽者が出鼻を挫かれた様子は複雑だが、明はオブリビオンの少女から放たれる攻撃に集中した。
「あはは、自分たちで争ってるところ悪いけどこっちからも行くよ!」
 楽しげに笑うパンセは花の幻影をマレークに向けて放つ。
 だが、明がそうはさせない。
 写し身を相手取る彼を守る形で間に割り入った明は魔力をその身で受け止めた。
 痛みに耐える声が聞こえ、彼女が体を張ってくれていることが分かる。そのことをしかと理解しているからこそ、マレークは目の前の相手を倒すことに全力をかけると決めていた。
「邪魔だ」
 鏡写しの影へ冷たく言い放ったマレークは碧血竜槍を一気に投げ放つ。
 一瞬だけ遅れて偽者が同じ行動を取った。しかし、真似である以上は今のように一歩出遅れるはず。泉照焔が示す方に下がったマレークは一撃を躱す。
 敵の方は槍の一撃をまともに受け、態勢を崩していた。
 其処が狙い目だと感じたマレークはひといきに勝負を付けにかかる。途中、鏡写しの明が偽者を庇いに出てきたが躊躇はしない。
「……消えろ。不愉快だ」
 落とされた言葉と同時に再び双頭竜が現れ、猛攻を仕掛けていく。
 偽の明は本物が内包するユーベルコードの力を用い、一度は竜の攻撃を弾いた。されどマレークが新たな一撃を放つ。
 それによって写し身との勝敗は決した。
 竜が吼え、蒼い稲妻が戦場に疾走る。その瞬間、貫かれた写し身たちは鏡が崩れ落ちるかのように倒れていった。
 両者を討ち取ったことを確かめたマレークは急いで明の様子を確かめる。
 視線を向けた先では激しく立ち回る明とパンセが対峙していた。魔力を放ち、それを防ぐ。攻防を繰り返す中で少女たちは言葉を交わしていた。
「あたしもミレナリィドール。あなたの気持ちはよくわかるわ」
「ふぅん、それで?」
「でも、あたしはあたしを捨てた人を嫌いにならない」
「それ……君の場合は、って話でしょ」
「だってまた新しい縁を紡げばいい。過去のことに縛られるなんて、時間の浪費よ」
「……そんなの、今を生きてる君だから言えることだよ!」
 明の言葉にパンセは反発する。
 同じドールであっても境遇も立場もまったく違う。そして、自分たちはオブリビオンと猟兵という決して相容れぬ存在。それゆえに言葉でわかりあうことは出来ないのだと感じ、明は唇を噛み締めた。
 パンセは敵意を込めた視線を向け、魔力を一気に解放する。
 対する明は花の幻影を捉えながら反射の力を紡いだ。
 刹那、花弁が散る。
 それと同時に明は後方からパンセへと迫る存在――マレークの名を呼んだ。
「今よ、マレーク!」
 呼びかけに応じるようにして彼は碧血竜槍を投げつけた。はっとしたパンセは魔導書を強く抱き締め、身を翻す。
 だが、其処に追撃として魔槍雷帝が突き放たれた。
 鋭い痛みを覚えたらしきパンセから短い悲鳴が上がる。狙っていた魔導書は破壊できなかったが、その主の身にダメージは与えられた。
 明とマレークは目配せを交わしつつ頷きあう。
 確実に相手の身体を貫いてはいたが敵の力はまだ半分も削りきれていない。それでも最後まで戦うと決め、ふたりは更なる決意を抱いた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ソナタ・アーティライエ
(かつての彼女は人を楽しませることが好きな、心優しい少女だったのでは……)
オブリビオンとなって歪んでしまってはいましたけれど
可愛らしい猫変化や美しい薔薇園で訪れる人を歓待してくれたのは
本来の彼女の名残りではないかと、そんな風に感じたのです
だからこそ、今の彼女のあり様はとても痛ましいです

申し訳ありません……わたしは貴女の望みに応えてあげられません
わたしが選ぶのは戦いではなく、祈りを込めて歌う事

怒りや憎しみに飲まれたオブリビオンとしてではなく
人の笑顔が好きな優しい心根を取り戻し
平穏に包まれて眠りにつけますようにと一心に願い
魂の姿を写したという影と共に【天臨聖歌『天の階』】を歌いましょう



●紡ぐ歌声
 オブリビオンは過去から蘇った存在。
 骸の海より来たりしものは、消費されて消えていった骸のようなもの。
 ソナタは薔薇園の中心に佇む少女を見つめ、彼女の過去に想像を巡らせる。
(かつての彼女は人を楽しませることが好きな、心優しい少女だったのでは――)
 オブリビオンとなって歪んでしまってはいるが、可愛らしい猫変化や美しい薔薇園で訪れる人を歓待してくれていたように思えた。
 それゆえに今を楽しむ姿勢は本来の彼女の名残り。もしかすればそうではないかとソナタは感じていた。
 だからこそ、現状の彼女のあり様はとても痛ましい。
 どちらかが壊れるまで遊ぼう。
 冥想のパンセはそう告げていた。しかし、ソナタはそれに対して首を横に振った。
「申し訳ありません……わたしは貴女の望みに応えてあげられません」
 目の前にはパンセが出現させた影が立っている。
 ソナタの姿を反転させたその姿はまさに鏡写し。ソナタには遊ぶつもりも、ましてや壊すつもりもない。だが、鏡写しの自分は倒しておかなければならない。
 自分の姿をしたものが此処にいる猟兵を攻撃してしまうことだけは避けたかった。
 ソナタが両手を重ねると、写し身もまた同じように掌を重ねる。
 自分であるからこそ次に相手が何をするのかが分かる。それでも、と決意を固めたソナタは花唇をひらいた。
「わたしが選ぶのは戦いではなく、祈りを込めて歌うこと……」
 ――天臨聖歌『天の階』
 天から溢れた吐息のように、神域の歌声が響き始める。
 ほぼ同時に影のソナタが口をひらき、同じ歌を紡いでいった。響き合う歌声は戦場に満ち、穢れや邪念を祓ってゆく。
 されどパンセは双眸を鋭く細め、不敵に笑ってみせた。
「そんな歌、効かないよ!」
 そしてパンセは魔導書から散る花の幻影を放ち、ソナタたちを攻撃していく。
 散った花が痛みを与えてきたがソナタは耐えた。
 写し身の後ろに控えるパンセを見つめ、更に歌い続ける。その首で青貴石の薔薇飾りが揺れた。歌声と共振して花弁を震わせた薔薇は華やかに彩りを響かせていく。
 そして、歌声はやがてソナタの写し身の動きを止める。
 お願いします、と視線で告げたソナタ。するとその意思を受け取ったらしき他の猟兵が動いた。
 重なる歌声は美しいが、写し身が歌い続けることで猟兵の動きを止めてしまう可能性もあった。それゆえにソナタは仲間に対処を願ったのだ。
 偽の自分が猟兵の刃によって倒されていく中、ソナタは歌と祈りを捧げる。
 パンセは次なる攻撃を行うために身構えている。ソナタと少女の視線が重なり、其々の思いが交錯した。
 しかし、戦いは未だ決せず――此処から更に巡っていく。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

花園・スピカ
犬の呪いならまだよかったのに…って、そんなこと言ったらまたやられかねませんね(ぼそっ

【見切り・第六感・学習力】で相手の攻撃をよく見て避け、避けきれない分は【オーラ防御】
相手が鏡展開後UC発動
相殺できればパンセを攻撃、できなければ自分の鏡と共に相手の鏡を集中攻撃し優先的に潰す
UCと合わせ【破魔】の【属性攻撃・衝撃波】で【二回攻撃】


過剰な愛情故に自由を奪われた私と、愛情を受けられず棄てられた貴女
立場は真逆ですが共に人の愛情に巻き込まれた人形の私達…どこか共感めいたものを感じてしまうのは何故でしょう…?
人が嫌いと仰られましたが…呪いをかけるだけで人を殺さない貴女は本当は寂しいだけではないのですか…?



●ふたりの人形
「犬の呪いならまだよかったのに……」
 戦場となった薔薇園にて、スピカは呟いた。
 しかしやっと猫化が解けた現状、もしこの声がパンセに聞こえていたら更なる呪いをかけられてしまうかもしれない。
「って、そんなこと言ったらまたやられかねませんね」
 ふるふると左右に首を振ったスピカは身構え、目の前の敵を見据えた。
 既に鏡は展開され、写し身の自分が其処に立っている。
 スピカは反転した自分の姿を見つめたまま金の魔鍵を強く握った。すると写し身も同じ動作で攻撃を行おうとしてくる。
 破魔の力を紡いだスピカは其処に属性を乗せ、一気に得物を振るった。
 それと同時に偽物も本物のスピカに向かって攻撃を放つ。しかしそれだけではなく、後方に控えていたパンセも花の嵐を巻き起こした。
「――!」
 スピカは咄嗟に身を翻し、迫り来る花の魔力へと片手を掲げた。
 その瞬間、パンセの力はスピカのユーベルコードによって相殺される。直撃していたらそれなりのダメージを受けていたであろう。スピカは安堵を覚え、眼鏡をそっと掛け直す。
 だが、次は写し鏡のスピカが動いた。
 相手はパンセの味方。それゆえに写し身は他の猟兵が放ったユーベルコードをミレナリオ・リフレクションの力で打ち消していく。
 スピカはまず自分の影をどうにかすることが先決だと感じ、更なる攻撃を放つ為に敵との距離を詰めた。
「これで、どうですか……!」
 魔鍵に込めた破魔の衝撃で一撃、そして更にもう一撃。
 スピカの連続攻撃によって偽物が倒れ、跡形もなく消えていく。
 相手がそれほど強くなかったことは幸いだったが、自分の姿をしたものが倒れていくのも複雑な気分だ。
 しかし、気を取り直したスピカはパンセを見つめる。
 過剰な愛情故に自由を奪われたスピカ。
 愛情を受けられず棄てられたパンセ。
 立場は真逆。だが、共に人の愛情に巻き込まれた人形であることは同じ。
「どこか共感めいたものを感じてしまうのは何故でしょう……?」
「勝手に共感されても困るんだよね」
 するとスピカの言葉を聞いたパンセがそっぽを向く。
「人が嫌いと仰られましたが……呪いをかけるだけで人を殺さない貴女は本当は寂しいだけではないのですか……?」
「もし寂しいって答えたら君はどうするの?」
 スピカの問いかけにパンセはからかうように問い返した。
 その言葉には冷たさが宿っている。どうせ、猟兵とオブリビオンは殺し合う運命だ。彼女がそんな風に言っているように思え、スピカは掌を強く握り締めた。
 そして、激しい戦いが続いてゆく。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

セツナ・クラルス
うむ、猫の呪い、暫く解かなくてもよかったのになあ
敵の挑発めいた発言にしみじみ同意して

と、こういうことばかり言っていると
あの子に叱られてしまうからね
精々励むとしようか

自身のコピーということは考えも似ているのかな
自分の背面に観測者を設置
死角からの不意打ちは私の得意だからね
隙は作りたくないのだよ
強めの攻撃は致命傷を受けぬように見切るようにしよう
避けきれない攻撃は破魔の力を宿した城壁を展開
一時しのぎにしかならないが
それでも少しは時間稼ぎができるはず
交戦中、常に敵の動きを観察し
属性魔法で作った炎をお見舞いしよう
破魔の力を宿したこの炎は敵を追尾しつつ見逃すまではずつと追いかけてくるという、健気な子なんだよ



●魂の写し身
「うむ、猫の呪い、暫く解かなくてもよかったのになあ」
 敵の挑発めいた発言にしみじみとしたセツナは今、眼前の存在を見つめていた。
 現れたのは鏡に写った自分。
 左右が反転した見た目のセツナの偽物は救い主めいた笑みを浮かべている。同じようで違う鏡の影に向け、セツナは肩を竦めてみせた。
「と、こういうことばかり言っているとあの子に叱られてしまうからね」
 精々励むとしようか。
 そんな言葉と共にセツナは身構える。
 自身のコピーということは考えも似ているのだろうか。
 そう考えたセツナは自分の背面に観測者を設置し、様子をうかがう。死角からの不意打ちは得手としているうえ、少しでも隙を作らぬことが狙い。
 すると相手は自らの傍にもうひとりのセツナ――否、ゼロを呼び出した。
「あの子までコピーするなんてね」
 同じユーベルコードを扱う鏡の存在にセツナは僅かに動揺する。
 だが、其処で気付いた。
 姿を真似ていても、それは全く違うものだ。何故なら写し身がつくったゼロは何も語らず、ただ其処に在るだけ。
「形だけを模しても、私達は倒せないよ」
 そして惑わされることもない。
 偽のゼロはナイフを手にしてセツナに襲いかかってきたが、それは簡単に見切ることが出来た。次々と刃が振るわれるが、セツナは破魔の力を宿した城壁めいた盾を展開することで痛みを受けぬように立ち回っていく。
 偽の自分もゼロも、何も喋らず淡々と攻撃を仕掛けてくる。それは何だか不気味で妙に恐ろしくも思えた。
 もし、セツナ自身がゼロを道具のように扱ったらこうなるのだろう。
 ありもしない姿を見たことでセツナは目を伏せ、首を横に振った。そして、顔を上げたセツナは炎の魔力を紡いだ。
「そんな姿はあまり見たくはないからね。早々に退場してもらおう」
 炎が解き放たれ、偽物のゼロや写し身のセツナを巻き込んで迸る。敵はそれを避けようと身を翻したが、炎は追尾していく。
 やがて焔は標的に追いつき、容赦のない痛みを齎していった。
 それによって鏡の影たちは倒れ、跡形もなく崩れ落ちていく。その姿を見送ったセツナは息を吐き、偽物を作った張本人であるパンセを見つめた。
 彼女はきっと倒すことで救うしかない、と。静かな決意を固めながら――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

吉備・狐珀
ヤドリガミとして棄てられた怒りや悲しみはわからなくもありませんが…。
好きだったからこその反動に見えなくなくもないですが…。

UC【協心戮力】使用。
私の冷気を兄の起こした炎で水蒸気に変え、再度私が冷やし霧を発生させる。
霧に【毒】の効果の【属性攻撃】を。
同じ技を使ってくるなら【毒耐性】の【オーラ】で防ぎます。
制御の難しい技ですが、私には兄がいる。人を憎む貴方が写した影の私には協力してくれる存在はいるんでしょうか?
毒の霧に紛れて人形の炎をパンセに【全力】で【一斉発射】します。

遊び足りないなら満足するまで猫の姿になってもお付き合いしますが壊れるまでというならお断りです。



●共に在るもの
 ヤドリガミとして棄てられた怒りと悲しみ。
 それを思えばオブリビオンの少女が抱く思いもわからなくはない。だが、狐珀は彼女の言葉の端からある感情を感じ取っていた。
「好きだったからこその反動に見えなくなくもないですが……」
 されどその本心は本人のみぞ知ること。
 狐珀は目の前に現れた鏡写しの影に視線を向ける。
 鏡として反転した姿をしている相手は狐珀と同じ。そして、狐珀が兄と呼ぶ絡繰人形まで模している。
 しかし狐珀は慌てることなく自らの力を紡ぐ。
「二つの力は一つの力に 我のもとに集いて 敵を貫く剣となれ」
 ――協心戮力。
 狐珀は冷気を生み出し、兄の起こした炎でそれを水蒸気に変える。更に再び冷気を宿すことで霧へと変化させ、其処に毒の属性を与えた。
 すると写し身も同様の動きを行って毒霧を辺りに広げていく。
「其処まで同じことを……」
 狐珀はユーベルコードの使用方法まで真似る影に厄介さを感じた。だが、心や思いまでもが写されたわけではない。
 狐珀自身の毒霧は敵に深いダメージを与えているが、反して相手の魔力は次第に暴走しはじめた。その冷気は霧散し、炎は無為に燃え上がる。
「人を憎む貴方が写した影の私には、制御できないはずです」
 狐珀の言葉通り、暴走した力は鏡写しの影を焼き始めた。
 瞬く間に写し身は崩れ落ちて消え去る。まだ僅かに敵が放った毒の気配は漂っていたが、狐珀に宿る耐性の力がそれを無力化していた。
 その間に自らの毒の霧に紛れた狐珀はパンセとの距離を詰めた。
「――!」
「遊び足りないなら満足するまで猫の姿になってもお付き合いします。ですが……」
 狐珀の気配に気付いたパンセは咄嗟に後ろに下がる。
 しかし、追い縋った狐珀は人形の炎を操り、全力で解き放った。
「……っ、ふふ、その言葉は嬉しいけど容赦ないね」
 パンセは体勢を崩しかけたが、何とか立て直しつつ不敵に笑う。そして狐珀は先ほどの言葉の続きを紡ぎ、凛と告げた。
「壊れるまでというならお断りです」
 狐珀には協力してくれる存在――兄や仲間がいる。
 しかしパンセはひとりきり。
 それゆえに自分たちを壊すことは出来ない。そのような意思を示しながら、狐珀は次の一手を放つための隙を窺った。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ザッフィーロ・アドラツィオーネ
宵f02925と
戻った宵に安堵する様な…どこか残念な心持になりながらも
敵を捉れば戦闘態勢に

前衛は俺が担う故、宵は背を頼むと声を投げつつも
宵の影を見れば一瞬動きが鈍ってしまう
違う物だとは識れどもいざ目にすると惑う物だな
だが…もう惑わぬと【蝗達の晩餐】を宵の影に向けよう
俺のポラリス…導は一人だけ故に

宵に俺の影が襲い掛かるならば間に入りメイスにて『武器受』後『なぎ払』う様『カウンター』を
影と言えど触れさせる訳にはいかんのでな
その後はパンセに【蝗達の晩餐】を宵の攻撃に併せ放とうと思う

全て終わった後は宵の声を思い出し
宵はどう思って居るのだろうかと視線を向けよう
…本当に物とは難儀な物だ。…俺も同じだが、な


逢坂・宵
ザッフィーロ君(f06826)と

なんて顔をしているんですか、きみ
……まぁ機会があればまた猫になることもあるでしょう

ええ、きみの背中はお任せください
けれど自分たちによく似た鏡写しの姿を見れば心安らかではいられなくて
まずはパンセに対し「衝撃波」で「吹き飛ばし」て
「精神攻撃」「気絶攻撃」で時間稼ぎを

僕は二人もいりません
それに、僕のシリウスは一人だけです
鏡写しの自分たちに対して「高速詠唱」して「属性攻撃」「鎧無視攻撃」をのせた【天撃アストロフィジックス】で攻撃しましょう

次はパンセ、貴方です
僕も人間に物として扱われましたが
人は元来そういうものです
そう思われる貴方こそ、ひとを愛していることの裏返しでは?



●影と光
 既に呪いは解け、耳も尻尾も消えている。
 ザッフィーロはいつも通りの宵の姿に安堵しつつも、何処か残念な心持でいた。
「なんて顔をしているんですか、きみ」
「いや……」
 その様子に気付いた宵が声をかけるとザッフィーロは軽く俯く。自分でも上手く言えぬ思いを抱いているのだろう。
「……まぁ機会があればまた猫になることもあるでしょう。……と」
 宵は慰めの言葉を紡ぐ。しかしその意識はすぐに目の前の存在に向けられた。
 展開された鏡から現れたのは写し身の自分たち。
 敵を捉えたザッフィーロは戦闘態勢を取り、宵も杖を構えて身構えた。
「前衛は俺が担う故、宵は背を頼む」
「ええ、きみの背中はお任せください」
 互いに声を掛け合ったふたりだが、いざ偽物を目にするとわずかな動揺や戸惑いの心が生まれる。これが自分の偽物だけならば構わない。だが、相手の写し身も一緒となると話はまた別になってくる。
「あはは、戸惑ってるね!」
 すると彼らの様子を察したパンセがおかしそうに笑った。
 宵は少女を見遣り、衝撃波を解き放とうと狙う。だが、その射線を遮るようにしてザッフィーロの偽物が立ち塞がった。
 そこで彼は悟る。影の存在はパンセの味方。それゆえに偽物たちを倒さねばパンセへの攻撃は通らないだろう。
 ザッフィーロもメイスを構え、先ずは鏡写しの自分を倒すことを狙う。
 されど、鏡の宵を見るとどうしても動きが鈍る。
「違う物だとは識れどもいざ目にすると惑う物だな」
「……ええ、ですが僕は二人もいりません」
 ザッフィーロの声を聞き、宵は頷いた。偽物だと分かっているのならば躊躇はしない。してはいけない。そう決めた心はふたりとも同じだ。
「だが……もう惑わぬ」
 ザッフィーロは強く言い切り、蝗達の晩餐を発動させる。それら宵の影に向けるザッフィーロと同じくして、宵も天撃アストロフィジックスの力を解き放った。
 対する写し身たちも同じ力を使ってくる。
 蝗と星の矢が飛び交い、戦場に物凄い勢いで力が巡る。
 されど常に傍にいるからこそわかる。あんなものは本物ではない、と――。
「僕のシリウスは一人だけです」
「俺のポラリス……導は一人だけ故に」
 ふたりの言葉が重なり、其々の力が写し身を穿ってゆく。
 だが、耐えたザッフィーロの影が宵に襲いかかった。その動きを察知したザッフィーロはメイスを振るいあげ、影の一撃を受け止めてから薙ぎ払う。
「影と言えど触れさせる訳にはいかんのでな」
 そして、メイスが影を大きく穿った。
 それと同時に宵が流星の矢を再び紡ぎ、影の自分へと撃ち放つ。それによってふたりの写し身は消し去られ、その場に崩れ落ちていった。
 偽の自分たちを葬った宵とザッフィーロは互いに視線を交わし、頷きあう。
 先ほど言葉にしたように、互いこそが唯一無二。
 光はすぐ傍らにあるのだとして彼らはオブリビオンを見据えた。
「次はパンセ、貴方です」
「なーんだ、もう終わっちゃったの? 面白い戦いだと思ったのにな」
 宵が静かに告げると少女は残念そうに肩を落とす。
 戯言を、と言い放ったザッフィーロはパンセへと蝗達を放つ準備を整えた。
 そんな中で宵は少女に言葉を向ける。
「僕も人間に物として扱われましたが、人は元来そういうものです」
「ふぅん、じゃあ人間って愚かだね」
 宵の紡ぐ言葉にパンセがくすくすと笑う様をザッフィーロは見守る。そして、宵は天撃の力を差し向けながら、問いかけた。
「そう思われる貴方こそ、ひとを愛していることの裏返しでは?」
「さあ? どう思ってくれてもいいよ」
 勝手にどうぞ、と告げてはぐらかしたパンセに向け、宵とザッフィーロは其々のユーベルコードを解放した。
 此処から戦いは更に激しく巡っていく。
 そのような予感を覚えながら、ふたりは最後まで共に戦う意志を抱いた。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リュヌ・ミミティック
・心情
ん、おー…、僕?と、ダフィット、と猫憑き季月、も、い、る?
ん、ん!ちょっと、わくわ、く、する、ねー?

・行動
「ん。パンセさん、の言う、こ、とも、分か、るけど…でも、悪さ、だめ、だ、ねー」
ん、おー…猫憑き季月で敵をぶんなぐって【誘き寄せ】て、パンセと「僕」を少しでも離せないかな
ひとまず、狐乃火焔で敵は全員、まきこんじゃうけどね!
ダフィットで同じ場所を攻撃して【傷口を抉る】ね
そうすれば、少しは早く倒せると思うんだ
【敵を盾にして】自らを庇ったり、他の人も庇ったりするよ
【激痛耐性】もあるし、少しぐらいは無視して攻撃続けられると思うんだっ


・捕捉
絡み ◎
ん、ん。が最初に付き、変な所で区切って喋るのが癖



●反対の自分
 目の前に現れたのは鏡写しの自分。
 リュヌはまだ其処に鏡面があるような錯覚に陥り、不思議な感覚をおぼえる。
「ん、おー……、僕? と、ダフィット、と猫憑き季月、も、い、る?」
 こてりと首を傾げるリュヌの前にいるのは敵が作り出した偽物。左右が反転しているだけで自分と寸分違わぬ姿の相手もまた、リュヌと同じ表情を浮かべていた。
「ん、ん! ちょっと、わくわ、く、する、ねー?」
「…………」
 しかし相手は一言も喋らない。
「ん、おしゃべり、でき、ない、の?」
 問いかけつつリュヌは身構え、戦いへの思いを強めた。
 次の瞬間、戦場に花の魔力が舞う。
 それがパンセの放ったものだと気付いたリュヌは其方に視線を向けた。花が齎す鈍い痛みを感じたがリュヌは怯まず、猫憑き季月と共に構える。
「ん。パンセさん、の言う、こ、とも、分か、るけど……でも、悪さ、だめ、だ、ねー」
 首を横に振ったリュヌは自分の偽者に狙いを定めた。
 だが、同時に鏡写しのリュヌも猫憑き季月で打って出ようとしている。
「ん、おー……」
 来る、と感じたリュヌはユーベルコードを発動出せた。
 一拍遅れて偽物も同じ力を解き放つ。巻き起こるちいさな狐炎。リュヌと写し身からほぼ同時に解放された炎は飛び跳ね、戦場を赤く染めていく。
 更に二体の猫憑き季月が爪を振るい、互いに攻撃しあった。
 妙な光景だと思えたが、不思議と相手の動きは手にとるように分かる。何故なら自分の真似をしているだけだからだ。
 確かに敵は同じ力を使う。しかし、すべてが同じだとは言えない。
 猫憑き季月もダフィットも姿かたちは一緒でも、其処には明確な意思や絆がない。だから負けるはずがないと感じたリュヌは、ダフィットを槍に変化させて一気に勝負をつけにかかる。
「ん。あぶ、ない……!」
 すると後方のパンセからまた花が解き放たれた。
 リュヌは敵が持つ猫憑き季月で竜槍で穿ち、突き上げる。そしてそれを盾にすることで花の魔力を防ぎ、ひといきに攻勢に出た。
「ん、おー……も、一回……たっぷ、りと、遊ん、で、おい、で!」
 再び紡ぐのは狐乃火焔。
 写し身の自分がユーベルコードを発動させる前に決着を。
 そう願って放たれた焔は疾く、激しく燃え上がりながら偽物たちに襲いかかる。そして炎が収まった刹那、偽物の影は跡形もなく消えた。
「ん、……ばい、ばい」
 リュヌは写し身に手を振り、炎を収める。
 残るはパンセのみ。
 だが、相手は未だ存分に戦う力を残している。少年は猫憑き季月を強く抱き、オブリビオンへの攻撃を開始してゆく。
 この先も決して気は抜けない。そう思いながら――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クールナイフ・ギルクルス
【檸檬】
すべて敬語

敵ならば容赦なく
助かりますと小さく返し
魔法で爆破の威力を増すよう操作

影はどこまで同じなのでしょうね
地を蹴り自分へ一気に肉薄しダガーを振る
防御も反撃も想定済み
いなすが人形を気にしているぶん少々不利か

ならばとクラウンの影に目標を変え一気にダガーを突き立てる
彼の影は傷つけられない
自分がそれを許さず身を盾にしてでも止める
それが分かるこの状況なら躊躇なく全力でいける

影の血を利用し血のダガーで二刀流
敵から目を離すなと言われていたでしょう
なんて指摘ながら地に落とし

人形の注意をこちらに向けるため
次はあなたが壊れる番ですと挑発
人形に向け次々と血の刃を降らせ攻撃
あわよくば彼が近寄るための隙を作る


クラウン・メリー
【檸檬】

楽しく遊ぶのは大歓迎!
だからって困らせることしちゃダメだよ!
ごめんね、出来れば……ううん
──せめて、君が壊れるまで一緒に遊んであげる!

パンセに向かって偽物の薔薇を投げつけ爆発させる【時間稼ぎ】
クールも動きやすくなるかな?

わ、俺の影だ!君の芸より俺の方が凄いよ!
よーし!ジャグリング対決だ!どう?惚れ惚れしちゃうでしょ?
ふふん、ボールばっかり見てて大丈夫?
周りも少し見た方が良いかもね?クールが作ってくれた隙に
【早業】で影を火の輪で拘束だ!

クールの影にもちょっかいを
攻撃は出来ないけど鳩を飛ばして
爆発すれば【時間稼ぎ】位は出来るはず!

【忍び足】でパンセに近づき【鎧も砕く】黒剣で【二回攻撃】だ!



●鏡に映るこころ
 咲く花は美しく、色とりどりで鮮やかだ。
 薔薇園の中心で笑う少女は楽しげで、其処だけ切り取って見るならばとても平和な光景に思えた。だが、此処は既に戦場。
「楽しく遊ぶのは大歓迎! でも……」
 クラウンは冥想のパンセを見つめ、一歩後ろに下がった。
 目の前にはクラウンとクールナイフと同じ姿をした写し身が立っている。
「だからって困らせることしちゃダメだよ!」
「ふふ、困ってるところを見るのが楽しいんだよ」
 身構えたクラウンがパンセに言葉の続きを告げると不敵な笑みが返ってきた。対するクールナイフは双眸を鋭く細め、そうですか、と答える。
「何にせよ、敵ならば容赦なく――」
 助かります、と小さく返したクールナイフは魔力を紡いだ。
 すると鏡写しの偽物も動きはじめる。クラウンとクールナイフの影はパンセを守る形で立ち塞がっており、それらを倒さなければ攻撃は通らないだろう。
「まず自分と戦って遊んでね!」
 パンセがくすくすと笑う中、クラウンも身構えた。
「ごめんね、出来れば……ううん。せめて、君が壊れるまで一緒に遊んであげる!」
 何かを言いかけたクラウンは首を振り、パンセと自分たちの影を見据える。そして彼が偽物の薔薇を投げつけていく中、クールナイフの魔力が其処に宿る爆発の力を増幅させた。
 そして、クラウンは迫ってきた偽物から距離をひらくために身を翻す。薔薇の爆風が敵の視界を一瞬だけ塞ぐ最中、クールナイフも地を蹴る。
 影はどこまで同じなのか。それを確かめるために自分の影へと一気に肉薄したクールナイフはダガーを振り下ろした。
 すると影も同じ見た目のダガーで刃を受け止める。されど防御されるのも、そして其処から反撃が来ることも想定済み。
 刃が斬り上げられる瞬間を見切ったクールナイフは上体を反らす。
 次の瞬間、注意を促すクラウンの声が響き渡った。
「クール! 向こうからも来るよ!」
「花、ですか」
 その声に反応したクールナイフはパンセが全周囲に広がる花の魔力を紡いでいることに気が付く。其処へ偽者がもう一度、刃を振るった。何とか斬撃をいなしたクールナイフだが、同時に飛んできた花に穿たれてしまう。
 それに対抗しようとクラウンが鳩を解き放つ。込めた魔法によって舞う幻影の鳩はパンセの花を啄み、威力を相殺していく。
「クール、大丈夫だっ……わあっ!?」
 平気だったかと呼びかけようとしたそのとき、クラウンの言葉が遮られた。
 その理由は偽のクラウンが黒剣を構え、斬り掛かってきたからだ。刃が振るわれた瞬間に跳躍したことで避けられたが油断は出来ない。
 体勢を立て直したクラウンは自分の影と真っ向から対峙する。
「俺の影もなかなかやるね! だけど君の芸より俺の方が凄いよ!」
 怯まず口許を緩めてみせたクラウンはボールやナイフを取り出していく。ジャグリング対決だと告げたクラウンがくるくるとそれらを投げると、偽物のクラウンも同じことをはじめた。
「どう? 惚れ惚れしちゃうでしょ?」
 ふふん、と胸を張ったクラウンは悪戯っぽく問いかける。その間に隙をみてナイフを投げ放てば、向こうからもナイフが投げ返された。
 クラウンは投擲されたナイフを華麗に蹴り上げ、自分が操るジャグリングの一本に加える。すると偽の影までもが同じ動きを開始した。まるでふたりでパフォーマンスショーを行っているかのような光景だ。
 それを目にしたクールナイフは或ることを悟る。
 あの写し身はある程度、本物に即した行動を取るようだ。
(ならば――)
 それまで自分の影と相対していたクールナイフが大きく地面を蹴った。振り上げたダガーで狙う標的は偽のクラウン。
 しかし、その間にクールナイフの影が割り入ってきた。
 予想通りだ。
 たとえ偽物であっても、クールナイフはクラウンの身に危険が及ぶならばこうして必ず庇いに動く。何故なら、自分自身が大切な友を傷つけられることを許さず、この身を盾にしてでも止めに行くからだ。
 そうと分かる状況ゆえにクールナイフは偽クラウンを攻撃することを選んだ。結果的に斃す相手が自分の影になると知ったからこそ躊躇なく全力でいける。
 突き放ったダガーは偽のクールナイフを貫き、血を散らせた。
 その血を用いてもう一本の刃を生成したクールナイフは両手にダガーを構えた。先ずは右手で一閃。そして、続けて左手の血刃でトドメの一撃。
「敵から目を離すなと言われていたでしょう」
 そう指摘しながら自らの偽者を地に伏せさせ、消滅させる。
 それは時間にして一瞬のこと。
 クラウンは相手が其処に気を取られていると察し、影に呼びかけた。
「そっちばっかり見てて大丈夫? 周りも少し見た方が良いかもね?」
 そう告げた刹那、火の輪が放り投げられた。
 見る間にクラウンの影は拘束され、炎がその身を包む。焔は一瞬で激しく燃え上がり、写し身は崩れ落ちていく。
 そして彼らは自らの手で其々に自身の影を屠った。
 やったね、と語りかけるクラウンの声にクールナイフが頷く。気を引き締め直したふたりは改めてパンセに目を向けた。
「次はあなたが壊れる番です」
「さあね、君たちの方かもしれないよ?」
 クールナイフは少女人形の注意を自分に向けるべく挑発の言葉を紡ぐ。対するパンセは笑みを絶やさぬままクールナイフを見据え返した。
 此処からまた、激しい戦いが巡る。
 そんな予感を抱いたクラウンたちは強く身構え直した。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヨハン・グレイン
【Magia】

……実にくだらない魔法だったと思いますけどね……
見た目が変わるくらいで特に実害があった訳でもありませんでしたけど

――まぁ、いい。さっさと終わらせましょう

憂さ晴らしをするにはちょうどいいな
己の姿であれば他の者の姿より余程躊躇いなくやれる

黒炎はより昏い黒炎で飲み込んでやろう
ただ燃やすだけでは芸がないだろう
渦巻かせ、竜巻めいた炎で目を眩ませ
その隙に収束させた炎の刃で首を落とす

何も残らぬよう、燃やし尽くしてやろう
三人が動きやすいよう、足止めを担おうか
蛇のように炎を操り、パンセの回避先を誘導
狙った場所に追い込めたらその地に呪詛で縛り付ける

後は任せましたよ


三咲・織愛
【Magia】
私は猫化の魔法楽しかったですよーっ!
たまーにならまた掛かってみたいですねっ♪

とはいえ生徒さん達は迷惑だったんですから、
ちゃんとおしおきしないとですね!

ぐっと拳を握って気合を入れます
自身の影と戦うなんて……とてもやりづらそうですね
攻撃も読まれてしまいそう
でも、私と影と、違いがあるとするのなら……

やはり根性ではないでしょうか!(ぐっ)
拳と拳を真正面から合わせます!
影なんかにやられる私では……ないんですよぉーーー!!!

想いの力をパワーに変えてみせます!

さあパンセさん、観念なさい!
竜槍を取り出し、構え、オルハさんと合わせて攻撃を仕掛けましょう


オルハ・オランシュ
【Magia】
見てて面白かった、にはちょっと同意しちゃう……
遊んであげてもいいけど、痛い目見ても知らないよ

――!
なるほどね。無策で出てきたわけじゃないんだ
いつか偽者のヨハンと戦った時よりはよっぽどやりやすい
躊躇わず槍を構える

速さを武器にするのはきっと影も同じ
純粋な撃ち合いに見せ掛けて、
けれど狙いは影が攻撃に動いた後に生じる隙
【カウンター】で穿って勝負に出るよ
パンセの攻撃は【見切り】狙い

全員が影を撃破するまではパンセの抑えに回るね

ヨハンの黒炎、織愛の拳、アルジャンテの弓、私の槍
力をひとつにしたいな
【鎧砕き】でパンセの守りを脆くしながら好機を待つ
声を掛け合って、一斉攻撃を仕掛けよう


アルジャンテ・レラ
【Magia】

原理は理解できませんが。
鏡から写し取れば、同じ姿になるのは当然の事でしょう。
自分一人では勝算がないとでも思っているのですか?
……私は人の価値を知っているつもりです。
知ろうともしなかった貴女は憐れですね。

パンセの攻撃は矢で妨害を。
敢えて先手を影に譲り先ず様子を窺います。
正確な軌道で放たれる火矢を躱し、小細工なく攻められる事を確認。
私は四本の矢を番え威力を増します。
四を一に束ねられると、先程思い付いたので。

狙うは鏡、魔導書。彼女の得物の破損を試みます。
援護射撃はお任せください。
足止めを担うヨハンさんと似た立ち位置になるので、攻撃順は極力早目に。
織愛さんとオルハさんに繋ぎましょう。



●四つの力
 猫の呪いに惑いの花迷路。
 薔薇園の真ん中で少女人形が語ったのは自分勝手な遊戯への思い。
 その言葉を聞き、オルハは頷く。
「うん、見てて面白かったのは間違いないね」
 ちょっと同意しちゃう、と口にしたオルハの声に頷いた織愛は明るく笑んだ。
「私は猫化の魔法楽しかったですよーっ! たまーにならまた掛かってみたいですねっ♪」
「……実にくだらない魔法だったと思いますけどね……」
 するとヨハンが軽く溜息をつく。
 見た目が変わるくらいで特に実害があった訳でもなかったが、ヨハンにとって耐え難い時間であったことは事実だ。
「――まぁ、いい。さっさと終わらせましょう」
 もう忘れようと気を取り直したヨハンは顔をあげ、自分たちの正面を見遣る。
 其処には展開された鏡から出現した写し身が立っている。
 君たちにそっくりでしょ、とパンセが告げた言葉にアルジャンテは頭を振った。
「原理は理解できませんが、鏡から写し取れば同じ姿になるのは当然の事でしょう。そういった手を使うということは、自分一人では勝算がないとでも思っているのですか?」
 淡々と、それでいて挑発するような言葉を向けたアルジャンテは身構える。そのとき既に偽物の自分たちが動き始めていたからだ。
「ふふ、ほらほら! はやく遊ぼうよ!」
 パンセはからかうように笑う。
「遊んであげてもいいけど、痛い目見ても知らないよ」
「楽しかったことは変わりませんが……とはいえ生徒さん達は迷惑だったんですから、ちゃんとおしおきしないとですね!」
 対するオルハは少女人形に凛と告げ、織愛も戦う気概を抱く。
 多勢に対して敵も無策で出てきたわけではない。現にこうして自分への攻撃を通さぬよう鏡写しの兵を出現させていることに、オルハは感心した。
 けれど、いつか偽者のヨハンと戦った時よりはよっぽどやりやすい。
 オルハが槍を構える中でヨハンも魔導書を手にして敵を見つめた。感じていることは同じだと、言葉にしなくても伝わっている。
 仲間たちが身構える中でアルジャンテもしかと弓を握った。
「……私は人の価値を知っているつもりです。嫌いだと言って知ろうともしなかった貴女は憐れですね」
「それじゃあ教えてよ、その価値ってやつを!」
 彼が告げた言葉に対して眉をひそめたパンセは声を荒らげる。
 そして――少女が手にする魔導書がひらかれた刹那、花の幻影が渦巻きながら全周囲に向かって舞いはじめた。
 
 花の嵐が薔薇の園に散り、視界が目映い彩に包まれる。
 抗えぬ鈍い痛みを堪えながら猟兵たちは己と同じ姿をしたものを瞳に映した。
 それらは確かに似ている。だが、決して自分そのものなどではない存在だ。
「憂さ晴らしをするにはちょうどいいな」
 ヨハンは呟き、その掌の上に黒炎を生み出してゆく。
 己の姿であれば他の者の姿より躊躇いなくやれる。自分を殺すことなど容易いのだと示したヨハンに対し、偽物もまた黒い炎を紡ぎ出した。
 だが、そんなものはより昏い黒炎で飲み込んでやるのみ。
 されどただ燃やすだけでは芸がない。ヨハンは敢えて敵が炎を放つまで待ち、寸前までそれを引き付けた。
 そして、影の炎を自らの黒炎で覆う。
 それによって力を増した焔を渦巻かせ、竜巻めいた炎へと変えたヨハンは相手の目を眩ませた。一瞬、写し身の動きが止まる。
「消えろ」
 吐き捨てるように囁いたヨハンは操る炎を刃へと変え、ひといきに振り下ろした。
 偽のヨハンの首が落ち、転がる――そう思った瞬間、その影はまるで鏡が割れるかのように崩れ落ちていった。
 
 矢を番え、切っ先を影に差し向ける。
 アルジャンテが今しがたそうしたように、彼の写し身も同じ動作で以て弓を構えていた。だが、アルジャンテは先手を取らない。
「さて、どう出てくるのでしょう」
 敢えて影に攻撃の機を譲った彼は、様子を窺うことに重きを置いていた。
「…………」
 無言の偽物はアルジャンテとは反対の腕で弓を引き絞り、一気に数多の炎の矢を放つ。それはまさに自分を鏡写しに見ているような光景だった。
 正確に、そして鋭く迫ってくる矢を見据えたアルジャンテは地面を蹴る。するとそれまで彼が立っていた所に矢が奔り、炎の軌跡を描いていった。
 火矢を躱したアルジャンテは小細工なく攻められることを確かめ、反撃へと入る。
 だが、その最中に後方のパンセが更に花の嵐を巻き起こす。
 攻撃を察したアルジャンテは仲間にそれが迫らぬよう火矢を打ち放った。矢は花弁を貫き、燃やしていくことで威力を相殺していく。
 すべての花を散らせたわけではないが、アルジャンテの行動は近くの仲間たちへの被害を減らした。されど、その間にも彼の写し身が此方を狙っていた。
「なかなか骨が折れますね。ですが、そろそろ偽物には退場してもらいましょうか」
 アルジャンテは四本の矢を番え、弦を引き絞った。
 四を一に束ねられる。
 そう思い付いたのは、此処に集う皆の姿を見ていたからだ。
 そして、重ねられた矢は一直線に戦場を翔け――アルジャンテの影を穿つ。貫かれた写し身に罅が入ったかと思うと、その姿は瞬く間に消失した。

 同様に自分の偽物を相手取る織愛は、ぐっと拳を握って気合を入れていた。
「自身の影と戦うなんて……」
 攻撃も読まれてしまいそうだと感じたが、躊躇などしていられない。拳を振るってくる自分の影を見つめた織愛はその軌道を読む。
 避けて、打ち込む。
 そうして振るい返した拳も躱されてしまったが、織愛は更なる一撃を打ち込む隙を狙う。此方が相手の攻撃を予想できるように、どうやら向こうも自分の攻撃を予測できるようだ。
 だが、織愛はよくよく考えてみる。
「そうです、私と影と、違いがあるとするのなら……」
 きっと相手は自分と全く同じではない。ではそれは何処なのか。
 やはり、そう――。
「根性ではないでしょうか!」
 結論付けた織愛は拳を振り上げた。
 自分と自分。拳と拳。両者が譲らないのならば真正面から、根性と気力と気合い、それから本物の真なるパワーで真っ向勝負を挑むのみ。
 偽の織愛はふたたび拳を突き放とうと狙っている。其処に真っ直ぐな眼差しを向けた織愛はこれまでよりも強く掌を握り締めた。
 そして――。
「影なんかにやられる私では……ないんですよぉーーー!!!」
 拳がぶつかりあう。
 轟、という重い音が響いた瞬間、織愛は偽の自分に打ち克った。崩れ落ちる写し身はにこりと笑いながら、その場で消滅していった。
 
 速さを武器にするのは、きっと影も同じ。
 ふたつのウェイカトリアイナが交差して衝突し、鋭く甲高い音が響き渡った。
 オルハは痺れるような重い手応えを感じながら地面を蹴り、数歩後ろに下がる。これが自分が普段揮う槍の重さなのだろう。
 素早く確実に穿つ一閃を振るいあうオルハと偽物。
 暫し純粋な撃ち合いが続いていた。だが、オルハとてこのまま無為に体力を消耗し続ける戦い方はしない。それゆえに隙を窺い続ける。
「…………」
 対する写し身は無言のまま、オルハを見つめていた。
 自分の影が向かってくる先が自身で良かったと感じる。何故なら、自分の姿をしたものが皆を傷つけるだなんてことは、偽物の仕業だと分かっていても許し難い。
 それにあの写し身は自分を完璧にコピーしているわけではない。
 其処にオルハ自身が抱く強く揺るがぬ意志は見えない。
 だから、勝てる。
 直感したオルハは勝負をつけにかかった。敢えて影に打ち込ませ、攻撃を受け止める。しかしその狙いは攻撃に動いた後に生じる隙を捉えること。
「――見えた!」
 そこだよ、とウェイカトリアイナを振るいあげたオルハは風を纏う。
 それは決して偽物には見切れぬ素早く鋭い一撃だ。一瞬後、穿たれた影は膝を付き、鏡の破片めいた残滓を残しながら消えていった。
 
 彼女たちが自分の姿をしたものを其々に倒したのは、ほぼ同時。
 皆が様子を確かめた頃にはもう鏡写しの偽物は跡形もなく消え去っていた。
「みんな無事に倒せたんだね」
「造作もないですね」
「偽物だけあって随分と呆気なかったように思えます」
 オルハの声にヨハンとアルジャンテが答え、織愛も流石だと微笑む。そうして頷きを交わした四人は其々の得物を構え直し、パンセがいる方へ視線を向ける。
「あーあ、意外にはやく倒されちゃった」
 残念そうに肩を竦めたパンセに対し、織愛はびしりと指先を突きつけた。
「私達はいくらでも、想いの力をパワーに変えて勝ち抜いてみせます! さあパンセさん、観念なさい!」
 織愛による真っ直ぐな宣言が落とされ、仲間達も気を引き締めた。
 此処から巡りゆくのは終わらせる為の戦い。
 危険な遊戯を。そして、世界を破滅に導くオブリビオンを葬る為の――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

忍足・鈴女
む…ウチと同じ姿…ということはつまり…つまり…
きっと想いは同じ!

同じ姿をした自分と目を合わせ
【視線(視力)】で会話する(みょんみょん【催眠術】

(今ウチはアンタの脳内に直接語りかけてるんや
ウチらの目的は同じ…この魔導書は良いモノや…
コレを量産できれば…悩める猫耳猫尻尾を生やしたい
少年少女淑女おっさ…おっさんはええわ…
が救われるんや…やからやるべきことは…
アイツから生産法を吐かせる事!)
という事で協力させる

飛針による【一斉掃射】による【マヒ攻撃】で
相手を麻痺させて糸で拘束
目隠しして
UCによる尋問を開始

さあ…猫耳の生える魔術書について
吐け!吐くんや!
UC(鞭の刺激)で元に戻れんようになっても
知らんえ



●破れし猫耳の夢
「む……ウチと同じ姿……」
 目の前に現れ、身構えた鏡の偽物を見つめた鈴女は瞳を瞬く。
 左右が逆さまになっただけのまったく同じ姿。それは明らかに偽物だが、鈴女の裡には或る考えが浮かんでいた。
「ということはつまり……つまり――」
 きっと想いは同じ!
 そう感じた鈴女は同じ姿をした自分と目を合わせた。
 重なる視線。そして、繋げられる意識。
(今ウチはアンタの脳内に直接語りかけてるんや……)
「……」
 催眠術を用いて偽の自分にコンタクトを取る鈴女。対する写し身は意識を其方に持っていかれているらしく、無言のまま聞いていた。
(ウチらの目的は同じ……あの猫の呪いの魔導書は良いモノや……)
「……」
 その呼びかけに写し身も静かに頷いている。
(コレを量産できれば……悩める猫耳猫尻尾を生やしたい少年少女淑女おっさ……いや、おっさんはええわ……。とにかく皆が救われるんや……)
 無慈悲にもおっさんを除外しつつ、鈴女は希望を語っていく。
 もしパンセがそれを聞くことが出来ていたならば「おっさん猫耳も悪くないよ!」とでも答えていたかもしれないが、それはさておき。
(やからやるべきことは……アイツから生産法を吐かせる事!)
「……!」
 その瞬間、催眠術が完了した。
 ふたりの鈴女はパンセに向き直り、攻撃を仕掛けようと動く。だが、パンセは写し身が乗っ取られたことに気付いて魔力を紡いだ。
「あれ? その鏡の子、僕の味方じゃなくなってるよね? ……まあいいか、どっちも花塗れになっちゃえ!」
 解き放たれた断章の花が鈴女たちを襲う。
 鈴女本人は耐えたが、ただの鏡の写し身である偽物の鈴女は穿たれて倒れた。コピーゆえにそれほどの耐久力はなかったらしい。
(まぁええわ。少し残念やけど……)
 鈴女は飛来を放ち返し、パンセの動きを麻痺で止める。
 そして、真の目的を問い糾しにかかった。
「さあ……猫耳の生える魔術書について吐け! 吐くんや!」
 作り方を知っているなら教えろ、という旨の命令を下した鈴女だが、パンセは予想外のことを口にした。
「え? あの本、使い捨てだしもうないよ? 迷宮で拾ったものだし……」
「……なんやって?」
 どうやらその言葉に嘘はないらしい。
「今、僕が持ってる魂の魔導書も昔の主から貰ったものだし仕組みは知らないよ。そもそも僕、魔力はいっぱい宿ってるけど魔法自体には詳しくないもん!」
 そして鈴女の一瞬の隙をついて麻痺から抜けたパンセは逃げ出した。
「そんな……せやったら、ウチの今までの努力は……」
「あはは、何してたか知らないけど無駄でしたー!」
 嘲笑うようなパンセの声が響く。そして、拳を握った鈴女は顔を上げる。
 魔導書の夢が絶たれたならば行うことはひとつだけ。
 あのオブリビオンを倒して骸の海に還すのみ。猟兵としてそう心に決めた鈴女は、次なる攻撃を放つために身構えた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルナ・ステラ
猫の呪いが解けてよかったにゃ...です!

棄てられた...
それで悲しかったり寂しかったりで...
(救ってあげることはできないのでしょうか?)

壊れるまでではなく普通に一緒に楽しみませんか?

同じ力を使われるなら、癒しの力も同じなのかな?
それならば、UCを使って鏡のわたしとセッションしましょうか。
音色を聞いてパンセさんの心の傷が少しでも癒えたらいいな...
(心の傷が癒えて、壊れるまでのいたずらをもうやめようと思わせる。それがある意味で倒すということにならないでしょうか?傷つけずに倒す。そんな「奇跡」が起きてくれれば...)

もし、それが叶わないなら、やむを得ませんが、獣奏器の【衝撃波】で攻撃しましょう。



●歌う想い
「猫の呪いが解けてよかったにゃ……です!」
 ひとまずは猫ではなくなったことにほっと一息。思わず先ほどまでの癖で、にゃ、と口にしてしまったことはさておき、ルナは強く身構えた。
 安堵する暇もなく、目の前には鏡から写されたルナの偽物が立ち塞がる。
 明らかな敵意を向けてくる自分の写し身を見つめながら、ルナはパンセが語っていた言葉を思い出した。
「棄てられた……それで悲しかったり寂しかったりで――」
 だからきっと、歪んだ形であってもパンセは人と遊びたがったのだろう。
 そう考えたルナの胸に或る思いが浮かぶ。
(救ってあげることはできないのでしょうか?)
 それは言葉には出来なかった。何故ならパンセは人間に救われたいとは思っていないだろうからだ。人間は嫌い。でも、遊ぶのは好き。相反しているかのような思いを昇華するために、ルナは何をすべきか考えた。
「壊れるまでではなく普通に一緒に楽しみませんか? たとえば……」
 パンセに問いかけたルナはやさしい音色を奏ではじめる。
 するとルナの前に立っていた写し身の偽物も同じ音楽を演奏しはじめた。こうすれば鏡の自分とセッションが出来る。
 そう考えたルナの狙い通り、重なりあった音楽は美しく響く。
 その音色は周囲の猟兵を癒やしていく。
 反して、偽物が奏でる音はパンセに癒やしを与えた。
 これで彼女が心の傷が癒えて、壊れるまでのいたずらをやめてくれないだろうか。そうすることが、ある意味で倒すという結果になってくれないだろうか。
 傷つけずに倒す。そんな奇跡が起きてくれれば――。
 そのように願って已まないルナだったが、本当は知っている。
「やっぱり、だめですよね……」
 オブリビオンは過去の骸。たとえどんな形で顕現していても、いつかは世界を破滅に導くという存在だ。それゆえに通常以外の方法、つまり、猟兵の手によってトドメを刺す以外の方法で救うことはできない。
「パンセさん……」
 ルナは少女の名前を呼び、祈りを捧げるように両手を重ねた。
 彼女はいずれは倒さなければいけない相手。
 それでも、今だけはあの子の為に歌を紡いであげたかった。
 ――星に願いを、月に祈りを。
 ルナが響かせる音はやさしく穏やかに、戦いが巡る花迷宮に響き渡っていく。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

セシル・エアハート
やっと追いついたよそこのいたずら娘さん。
罰として骸の海に強制送還しないと。
あ、でも猫の姿はとても楽しかったけどね?

え、…俺?
…でもコピーだからって手は抜かないよ。
UC『舞い散る薔薇の花嵐』で【先制攻撃】【2回攻撃】【フェイント】でパンセとコピーを混乱させる。
もちろん、【第六感】で相手の攻撃を【見切り】で回避する事も忘れずに。


うわぁ…フロアが薔薇だらけ。
パンセのUCを受けて少し痛いけど…。
これで写しも完全に消えた。
今度こそ本当に罰として骸の海へさよならしてもらうよ。


*アドリブ・連携OK



●薔薇の嵐と花乱舞
「やっと追いついたと思ったら……」
 薔薇園の中心で、セシルはオブリビオンの少女を見つめる。
 くすくすと笑っている少女は鏡を展開してセシルの写し身を作った。今まさにそれが嗾けられようとしている中、セシルは少し困ったように口をひらいた。
「そこのいたずら娘さんは厄介なことばかりするね」
 猫の呪いに危険な薔薇の路。
 そして今は鏡写しの偽物を作るという所業。ひとつずつはちいさな出来事だとも思えるが、このアルダワ迷宮の先行きを思えば放っておけるものではない。
「罰として骸の海に強制送還しないと」
「残念でした、そう簡単にはいかないよーだ!」
 セシルの言葉にパンセは、べー、と舌を出して反発した。そのときふとセシルは先ほどまでのことを思い出し、付け加える。
「あ、でも猫の姿はとても楽しかったけどね?」
「でしょ? 楽しかったなら僕も楽しい!」
 するとパンセはころころと表情を変えて喜んでいた。トラップを用いて誰かと遊ぶことが本当に好きなのだろう。其処に嘘や偽りは見えない。
 しかし、セシルはそれ以上パンセと言葉を交わすことは出来なかった。
 何故なら眼の前に佇んでいた写し身の影が敵意を向けてきたからだ。
「……俺のコピーか」
 改めて見ると少々気味が悪く、妙な心地がした。
 されどセシルは怯まずに銀のバングルを掲げる。其処に込めるのは花に宿す力。
「ただ写しただけの偽物だからって手は抜かないよ」
 ――美しく、咲き誇れ。
 ユーベルコードを発動させたセシルは写し身の自分に魔力を差し向けた。先制を取ったセシルから一拍遅れ、偽物も同じ力を放ってきた。
 舞い散る薔薇は激しい風と踊るように迸る。
 されど相手の放った薔薇が其処に入り混じり、嵐は更に激しさを増す。渦巻く花の嵐は周囲に数多の花弁を散らし、戦場を薔薇の彩で染めあげていった。
 だが、其処に更なる花が交じっていく。
 それがパンセが猟兵全体に向けて放った花の魔力だと知り、セシルは身構えた。鋭く貫くような衝撃が身を穿っていったが、セシルは何とか耐える。
 そして目を開けると、周囲は花だらけになっていた。
「うわぁ……フロアが薔薇だらけ」
 しかし目の前にはその衝撃によって崩れ落ち、膝をついた写し身が見える。
 消滅していく偽物を見送った後にセシルはパンセに目を向けた。邪魔者は排除できたので、やっと彼女と対峙できる。
「これで写しも完全に消えたね」
 セシルはもう一度、全力の花の嵐を起こそうと決めた。
 此処からが本当の勝負なのだとして、その瞳に少女の姿を映しながら――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ユヴェン・ポシェット
俺自身?なるほど、そうきたか。しかし俺たちが「使う」ではなく「使った」力と同じものをつかうのであれば此処でまだ使ってはいない力は向こうは使えないということか…?
そうであれば、長引く程面倒になるな。

パンセからの攻撃は一先ず受ける方向で。パンセの相手は後回し。
鏡の影に極力手の内を見せずに
戦いたいと考えています。
自分と同じ位しぶといなら厄介なので、先に布盾で巻きつけ動きを封じてから、ドラゴニック・エンドで攻撃。自分の姿だからこそ容赦はしません。


>パンセ
棄て……そうか。

俺は、アンタが満足できるまで「遊び」に付き合おう。だが、
アンタの「遊び」が心から傷つける事を望んでいるのなら終わらせる。さあ、いくぞ。



●遊びと戦い
「――俺自身?」
 ユヴェンが見つめるのは展開された魂の鏡から現れた自分の写し身。
 左右が判定している自分の姿――それが実体を持っているように見えるのだから不思議だ。思わず疑問符が浮かんだが、ユヴェンはすぐに納得する。
「なるほど、そうきたか」
 ユヴェンが竜槍を構えると写し身もまた同じように槍を構えた。
 ミヌレまでも模されているとなると妙な気持ちが浮かぶが、其処で慌てるようなユヴェンではない。問題は相手がどの程度の力を使うのかということ。
「打ち込んでくるといい」
「……」
 ユヴェンは敢えて敵に先手を譲ることを決めつつ身構えた。すると写し身は無言のままで地を蹴り、一気に竜槍を突き放つ。其処に現れたのは竜の一閃。つまりは普段ユヴェンが扱う力そのままだ。
「厄介だな。だが……」
 其処でユヴェンは理解する。
 写し身は自分が扱う力を読み取っているが、その威力までも同じではない。それゆえに此方が上手く立ち回れば勝てない相手ではないだろう。
 その間もパンセは猟兵たちを嘲笑うかのように戦場を駆け、思うままに攻撃を放って遊んでいる。少女の力は強い。こんな偽物相手に手間取っていてはパンセの相手が出来ず、結果的に猟兵全体が多大なダメージを受けてしまうだろう。
 それに、とユヴェンは己の偽物を見据えた。
「いつまでもミヌレを真似されても困るからな。片を付けるか」
 視線が向けられた先は写し身が手にする竜槍。一言で表すならば不愉快だ。何故なら敵が持つそれは、形こそよく似ていてもミヌレ自身に少しも似ていないからだ。
「……ミヌレ!」
 そしてユヴェンは相棒竜の名を呼び、一気に勝負を付けに掛かった。
 偽の存在になど押し負けはしない。ただ全力を振るって討ち滅ぼすだけだと決めたユヴェンの一閃は鋭く突き穿たれ――そして、写し身はその場に伏す。
 崩れ落ちた偽物が消えたことを確かめた後、ユヴェンはパンセに目を向けた。
 ――棄てられた。
 彼女は確かにそう云っていた。事情が分からずとも其処に悲しみが宿っていることくらいはユヴェンにも分かる。だからこそユヴェンは語りかけてゆく。
「俺は、アンタが満足できるまで『遊び』に付き合おう。だが、アンタの『遊び』が心から傷つける事を望んでいるのなら終わらせる」
「ふふっ、遊んでくれるなら嬉しいな。僕も全力でやるよ!」
「さあ、いくぞ」
 両者の視線が交錯した次の瞬間、激しい花の嵐が戦場に舞った。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ノトス・オルガノン
◆WIZ
※アドリブ、絡み歓迎
人に捨てられそれを憎む、か
……気持ちは分からなくもない
だが、無関係の者まで巻き込むのはいただけない
猫魔法ぐらいなら可愛いものだと思ったがな
お遊びは、この位にしておけ

◆戦闘
UC:White Lilyを使用
自分の姿を映しとるのか
なかなかやり辛いが、果たしてどこまで映しとるのやら
技能【全力魔法】【属性攻撃】【範囲攻撃】を使用し、風魔法で花弁の勢いを増す
敵の攻撃は【オーラ防御】【空中浮遊】で防御、回避

隙がつけそうであれば、花弁を目くらましにし、【空中浮遊】で風に乗ってパンセに奇襲を試みる



●舞う白百合
 人に捨てられ、それを憎む。
 断片的に聞いた少女人形――冥想のパンセの境遇を思い、ノトスは眸を伏せた。
「……気持ちは分からなくもない」
 ノトスとてヤドリガミだ。
 それゆえに物として存在することの意味を知っている。
 パンセがどうして、何故にそう語るのかは分からない。もしかすると、主である者に先立たれたことを棄てられたと認識しているのかもしれない。
 それとも、本当に不用品として廃棄されたのか。
 きっとそのことを問うても彼女は答えてくれない。ノトス自身も込み入った事情を深く問いただすつもりもなかった。
「だが、無関係の者まで巻き込むのはいただけない」
 目の前に佇む影――今のノトスと同じ姿をした、鏡写しの偽物を見つめる。
 それは左右が反転しているが確かに見た目はノトスそのものだ。
「自分の姿を映しとるのか」
 思わずそう口にしたノトスはなかなかにやり辛そうだと感じた。それに果たして敵がどこまで自分を映しているのかは判断がつかない。
 そしてノトスは魔力を紡ぐ。
「――うるわしき、白の花。咲き誇れ」
 静かな言葉が落とされたと思うと、周囲に白百合の花が舞った。
 それより一瞬遅れて影のノトスも同じ力を紡ぐ。刹那、向かい合わせに立つノトスたちの間で白百合が衝突して花弁が辺りに散った。
「……なるほど」
「…………」
 ノトスはちいさく呟き、無言のまま対面する写し身の力を確かめる。
 白百合の花は殆ど相殺されたが、僅かに此方の花が残っていた。其処に風の魔力を乗せたノトスは写し身へと花の連撃を打ち込んだ。
 対する偽物は穿たれ、僅かに後ろに下る。だが、そのとき――。
「自分ばかり見てるとこうなるよ!」
 パンセの声が響き、黄色い花の魔力がノトスの周囲に迸った。鈍い痛みが襲ったが、ノトスはそれを表情には出さずに堪える。
 そして、次は全力を込めて魔力を放出した。風によってノトスの前髪がなびき、額があらわになる。其処に浮かびあがったのはフルール・ド・リスの文様。
 同様に、鏡写しのノトスも更なる力を振るった。
 相手にもまた文様が浮かんでいるが、それは鏡ゆえに左右が逆になっていた。
「消えるといい」
 ノトスは偽の自分を一瞥した後、ひといきに白百合の花弁を解き放つ。
 そして、花に包まれるようにして写し身は消滅していった。
「わ、やられちゃった。君って意外に強いね」
 その光景を見ていたパンセはくすくすと笑っていた。ノトスは表情を変えぬまま首を横に振る。きっとこのまま彼女を野放しにしていれば、いつかは生死に関わる事件が起こってしまうだろう。
「猫魔法ぐらいなら可愛いものだと思ったがな」
 そう告げたノトスは更なる魔力を紡ぎ、オブリビオンの少女を見据えた。
 この先に巡っていくであろう、終わりの時を思いながら――。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴァーリャ・スネシュコヴァ
綾華(f01194)と

綾華!
偽の俺たちは俺は引き受けるから
綾華はパンセの方へ!
大丈夫!偽物にやられる俺じゃないからな
にぱっと綾華に向かって笑って、それから剣を握りしめ
偽物2人と向かい合う

パンセに向かう綾華を追う偽物たちの前に立ちふさがり
地面を凍らせ行く手を阻む
ここから先は俺が相手だ!

綾華の鬼火と息を合わせてスノードームで攻撃しつつ
綾華の薙刀や鬼火攻撃は【ジャンプ】でよけ
偽の俺の攻撃は【氷結耐性】で受ける

2人の攻撃を避けて受けながら後退して
綾華に当たらない距離まで遠ざかることができたなら
『霜の翁の怒り』で偽物を一気に凍らせてやる!

偽物を無事倒せたなら
剣を投げてパンセを牽制し、隙を作る
今だ、綾華!


浮世・綾華
ヴァーリャちゃん(f01757)と

ヴァーリャちゃんの言葉には薄く笑って頷く
そうだな、それじゃあパンセちゃん?
ヴァーリャちゃんの可愛い姿がみれた礼に
ちょっとだけ遊んでやるよ

信じてるケドな
それと心配しないのは別の話だ
二人を相手にする彼女の手助けとなるように
影の俺と彼女、それからパンセに
範囲・属性攻撃を使い無数の鬼火を放つ

後は素早く駆け鍵刀を構えパンセに向かい
ピアスをゆらり誘惑し引き付け
攻撃をフェイントでかわしつつカウンター狙い

嘗ては悲しい想いをした人形なのかもしれない
それなら、だからこそ

鬼火があたった箇所があれば
そこを狙って傷口を抉る

壊れるまでずっと?いーぜ
でもごめんな。壊れるのはお前の方だ



●炎と氷と信頼と
 気が付けば視界は明るい色の花に包まれていた。
「――綾華!」
 ヴァーリャの声が響き、はっとした綾華は顔を上げた。
 鈍い痛みが身体に走ったことで一瞬だけ意識が飛んでいた気がする。周囲には花の嵐が舞っていた。二人は今しがた、オブリビオンの少女が放った花嵐を受けたばかりだった。だが、何とか耐えた彼らは体勢を立て直す。
「……平気」
 少し痛かったケドという言葉は飲み込みつつ、呼びかけに答えた綾華は頷いた。良かった、と少しの安堵を見せたヴァーリャは素早く地面を蹴り、目の前の標的――自分たちの偽物に向かっていく。
「偽の俺たちは俺が引き受けるから、綾華はパンセの方へ!」
「ヴァーリャちゃん」
 綾華から名を呼ぶ声が聞こえたが、ヴァーリャは振り向きながらにぱっと笑った。
「大丈夫! 偽物にやられる俺じゃないからな」
 剣を握り締めたヴァーリャは鏡から生み出された偽物たちへと駆ける。
 無論、その言葉を聞いていた偽物は綾華に意識を向けた。それらが綾華に向かおうとする前に立ち塞がったヴァーリャはひといきに地面を凍らせた。
「ここから先は俺が相手だ!」
 敵の行く手を阻むと決めたヴァーリャの眸には強い意志が宿っている。
 その姿を見た綾華は、そうだな、と口にして頷いた。
 彼女がか弱い少女などではないことはよく知っていたからだ。そして、綾華は偽物たちの横を擦り抜けて冥想のパンセの元へ向かった。
「それじゃあパンセちゃん? ヴァーリャちゃんの可愛い姿がみれた礼にちょっとだけ遊んでやるよ」
 すると相手は首を傾げて問う。
「あれ、あの可愛い子の傍に居なくてもいいのかな?」
「信じてるからな」
「なるほど、お熱いねえ!」
「でも、それと心配しないのは別の話だ」
 からかうように笑うパンセに対して綾華は首を横に振った。憂いや懸念などの思いがないわけではないが、それ以上に信頼の方が強い。ただそれだけだ、と。
 そして、綾華は黒鍵刀を掲げた。
 同時に刃が無数の鬼火となって周囲に迸り、緋色の景色が広がってゆく。
「わ! 危ないなぁ、もう!」
 対するパンセは鬼火を躱して身を翻す。されど綾華の狙いは彼女だけではなかった。ヴァーリャと対峙している写し身たちにも炎を解き放っていたのだ。
「流石は綾華なのだ!」
 ヴァーリャは氷の精霊属性が宿った剣、スノードームを振るいながら笑む。
 鏡に写された偽の自分たちも鬼火や氷の魔法を放ってきていたが、どれが本物の綾華の炎なのかはすぐに理解できた。自分を守るように浮遊する鬼火。それが綾華による援護であり、守護でもあると分かっている。
 鬼火が敵を穿った次の瞬間、ヴァーリャは剣を振り上げた。
 光を反射して煌めいたの刀身の中にはちらちらと雪が舞っている。
「これでどうだ!」
 全力で刃を振り下ろした先は写し身のヴァーリャ。自身で偽物を倒したかったこともあるが、偽の自分による氷撃が綾華を穿つことを避けたかったからだ。
「……!」
 そして、刃に貫かれた写し身は声を上げることなくその場に崩れ落ちた。
 ヴァーリャは己の姿をしたものが倒れ消える様を見遣り、ふるふると首を振る。次は綾華の偽物を倒さなければならなかった。だが、ヴァーリャは気を引き締めた。
 その間に綾華は素早く駆け、構えた鍵刀をパンセに向けて振り上げる。
「甘いね、そんな攻撃当たらな……」
「さて、どうかな」
 パンセは一閃を避けようとしたが綾華は不敵に双眸を細めた。狙い通り、相手の視線は柘榴石ノ鍵に向けられている。其処に宿る誘惑の力が効いたのだろう。
 しかし、それも一瞬。
 はたとしたパンセは後方に下がろうとしたが時既に遅し。
 そのときにはもう綾華による鋭い斬撃が彼女の身を穿っていた。短い悲鳴が上がってパンセが体勢を崩す。しかしパンセは薄く笑っていた。
「ねえ、あっちを見てご覧よ。写し鏡の君があの子に何をしてるかをね!」
「……ヴァーリャちゃん?」
 その言葉が示す意味を理解した綾華は振り向く。
 其処には偽綾華の鍵刀によって斬り刻まれ、血を流すヴァーリャの姿があった。
 写し身は彼の動きや力を模す存在。それゆえに綾華がパンセを斬ったのと同じように、偽物もヴァーリャに刃を向けていた。
「俺は平気、だから……。綾華、そっちは頼んだぞ……!」
 斬られた右腕を押さえたヴァーリャは痛みに耐えながら声をあげる。そして思いきり地面を蹴り上げ、敵を引き付けながらパンセと綾華から距離を取っていく。
 綾華は其方に駆け出したい衝動を抑え、パンセを静かに睨み付けた。
「ふふ、本当にあの子のところに行かなくていいの?」
「愚問だって分かって聞いてるんだよな、あんた」
 彼の目は語っていた。ヴァーリャの傍に行かない理由は先ほど告げたばかりだと。
 そして綾華は黒鍵刀の切先をパンセに向け直す。
 其処から解き放たれたのは鬼火。舞う火はまるで綾華の心を映し出しているかのように激しく燃えた。
 その炎は依然として戦場の敵すべてに向けられている。
 遠くから飛来した炎が偽者を焼いていく中、ヴァーリャは強く地を踏み締めた。
「うむ、俺も……頑張らないとな」
 その炎に力を貰えたように感じたヴァーリャは偽綾華を見据えた。先ほど受けた刃の痛みも、偽物が放つ火もすべて本物の彼には到底届いていない。
 あれはただのまやかし。だから、倒せる。
 そう感じたヴァーリャが力を解放すると瞬時に霜が降った。其処から生物が凍結するほどの冷気が生まれ、鏡の影は凍りつく。
 そして偽者の彼は跡形もなく崩れて消えていった。
「や、やったのだ……」
 息を切らせたヴァーリャは痛みを堪えつつパンセたちの方に目を向ける。
 其処では未だ綾華が敵を相手取り、果敢に立ち回っていた。
 一人で実質二人分の相手をしたことでかなり疲弊している。だが、其処で立ち止まってしまうようなヴァーリャではない。
「今行くからな、綾華!」
 これまでの痛みも苦しさもすべて忘れてしまったかのように少女は駆けた。
 大切な人の傍に向かい、共に戦う為に――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・カイト
【兄妹】
パンセに同意
そうだよね、呪い解いちゃったのほんと残念!
可愛い兄さまをもっと見ていたかったのににゃー
……はいはい、もう解けてますってば

ここからは真面目にいく
とはいえ、なんでオレの相手をオレがするの?
写しの影と戦えるのなら、兄さまのがよかったんだけど…。
ニセモノはさっさと退場してもらおう
衝撃波で吹っ飛ばし、と同時に距離を詰めてさらに斬りつけ追撃

影を退けた後に【赤い糸は結ばれて】を発動
パンセくん、遊ぼうっていってたもんね。
指切りげんまん。さあ、壊れるまで遊ぼうか
もうやめる、なんていわないで。オレとの約束やぶったら怖いからね?
ねえ、兄さまも一緒に、楽しく遊びましょう
…寂しがり屋ってオレのこと?


杜鬼・クロウ
【兄妹】
アドリブ◎
本体は神器の黄金の鏡
自分の影見て見下し笑む

あんなクソみてェな呪いかけやがって(苛々
俺達相手に鏡を使うたァ…死に急ぐか
贋作に敗けるとでも?(挑発・威厳
これ以上厄介者増やされて堪るかっての(弟見て

【魔除けの菫】を影とパンセへ使用

力比べといこうや
ンな生温い誹りじゃ俺は止められねェよ!(恫喝

汗滴る
薔薇をぐしゃり
伏した体を無理に起こし玄夜叉を空中の鏡へ投げる(カウンター・部位破壊
鏡の欠片を踏み鳴らす

構ってほしくて
テメェで遊んでほしさに我儘言ってるようにしか見えねェんだよ、ガキが
…ホントは人間が好きなンだろ
身近に寂しがり屋がいるモンで分かるンだよ

剣に炎宿し敵へ突き刺し囁く
最後は本を燃やす



●偽りの鏡と兄妹の約束
 残念。
 そんな言葉を耳にしたカイトは全面的に冥想のパンセに同意を示した。
「そうだよね、呪い解いちゃったのほんと残念!」
「あァ? あんなクソみてェな呪いかけやがって」
 対するクロウは苛立ちを隠さぬまま、猫化の元凶であるオブリビオンを睨み付ける。するとカイトが両手を顔の前で構え、にゃーん、とポーズを取ってみせた。
「可愛い兄さまをもっと見ていたかったのににゃー」
「…………」
 しかし今のクロウに冗談は通じない。睨み付ける視線が自分に向いたと察したカイトは猫の構えを止めた。
「……はいはい、もう解けてますってば」
 そういって顔を引き締めたカイトは正面に目を向ける。
 其処にはパンセが扱う鏡の魔力によって作り出された、写し身の自分の姿があった。クロウも其方に意識を向け、自分の影を見遣る。
 其処に浮かんだ笑みに含まれているのは軽蔑めいた感情のようだ。
「俺達相手に鏡を使うたァ……死に急ぐか」
「そうだよ。オレ達のことを甘く見てもらっちゃ困るよね」
 兄が落とした言葉に続けて、カイトも薄く笑む。
 赤と青――夕赤と青浅葱の双眸が其々に偽物の影を映していた。それは鏡のように、否、鏡そのもののようだ。
 対峙する両者は互いに瞳を向けあっている。
 鏡合わせみたいだ、とちいさく零したカイトは肩を竦めた。
「とはいえなんでオレの相手をオレがするの? 兄さまのがよかったんだけど……」
 写しの影と戦えるのならカイトにとってはそれが僥倖。
 だが、クロウは首を横に振る。此処は大人しく自分で自分を穿つのが筋だとカイトを諌めた兄は身構えた。すると相手も同じ構えを取り、攻撃の機を窺う。
「贋作に敗けるとでも? これ以上厄介者増やされて堪るかっての」
 敵を挑発しつつカイトを見たクロウは菫青石のピアスに触れた。すると其処から重力が発生し、戦場を包み込む。
「おっと、変なことはさせないよ!」
 されどそれはパンセが放った魔力によって打ち消されてしまった。軽く舌打ちをしそうになったクロウだが、パンセの妨害も予測済みだ。
 同様にカイトも片手を突き出し、掌に魔力を紡いでゆく。
「兄さまにちょっかい出される前に、ニセモノはさっさと退場してもらおうか」
 もし影の性質が同じならば相手も兄を求めてしまうはず。そのことに気付いたカイトは己の力で自分を吹っ飛ばすことを決めた。
 その瞬間、解放された衝撃波が奔る。相手も同じ手を使ってカイトを穿とうとしたが、瞬時に距離を詰めたカイトは薙刀を振り下ろした。
 多少の傷みは構わない。それよりも許せないのは勝手に兄に刃を向けられること。
 そんなカイトからの視線を感じつつもクロウも打って出る。
「力比べといこうや」
「……」
 偽物にそう告げてみるも相手は何も語らない。代わりに重力が解き放たれたが、クロウの放つそれよりも威力はかなり落ちている。クロウの身体は地に押し付けられてしまっているが、無理をすれば振り払える程度だ。
「ンな生温い力じゃ俺は止められねェよ!」
 やはり擬物だと吐き捨てたクロウは地に落ちていた薔薇を掌でぐしゃりと潰し、伏した体を無理に起こしていく。そして、渾身の力を揮って玄夜叉を投げ放った。
 黒魔剣の刃は敵に命中し、影は崩れ落ちる。
 重力から解放されたクロウは立ち上がり、鏡影の残滓を踏み鳴らしながらパンセの方へと向かっていった。
 その姿を見ていたカイトは流石は兄さまだと賞賛を送る。
 そして自分も早々に邪魔者を消してしまおうと考え、写し身を見つめた。
「パンセくん、遊ぼうっていってたもんね。オレも、はやく兄さまと一緒にあの子と遊んでやりたいから――もう、ここでさよならだね」
 冷たい別れの言葉を告げた刹那、カイトは衝撃波を撃ち放つ。
 それによってカイトの影は真正面から穿たれ、反撃を行う暇もなくその場に伏した。何ともあっけない終わりに肩透かしを喰らったような気もしたが、カイトは振り向きもせずにクロウの後を追う。
 すると二人の存在に気付いたパンセがくすくすと笑った。
「写し身をあれだけはやく倒せるなんてすごいね」
「遊びに来たよ、パンセくん。……指切りげんまん」
「うん?」
 カイトが左手を掲げると、その小指の指輪から放たれる白詰草の花が周囲に舞う。パンセは気付かなかったようだがそれはカイトが放った禁令の術だった。
「さあ、壊れるまで遊ぼうか。もうやめる、なんていわないで。オレとの約束やぶったら怖いからね?」
「あはは、望むところだよ!」
 その様子に複雑な思いを感じたクロウは溜息を吐き、思いを言葉にする。
「構ってほしくて、テメェで遊んでほしさに我儘言ってるようにしか見えねェんだよ、ガキが」
「でも、兄さまも一緒に、楽しく遊んでくれるって」
 クロウは玄夜叉を構え、カイトも兄の傍にそっと控えた。対するパンセは魔導書をひらいて彼らを迎え撃つ態勢を取る。
「そんなのどうだっていいよ。ふふ、それじゃあ最期まで遊ぼう!」
 そして、兄妹と少女人形の視線が交差した。
 先程のやりとりだけを切り取るなら、パンセとカイトの間に不思議な友情が生まれているかのようにも思えただろう。
 だが、暫しその光景を見守っていたクロウは知っている。
 此処から始まるのは、血で血を洗うような容赦の欠片もない戦いなのだと――。
 
 
●世界の敵
 猟兵其々に作られた偽物、写し身の影は次々に撃破されて消えていく。
 同時に冥想のパンセはじわじわと追い詰められていた。されどパンセは笑みを絶やさず、楽しげに笑っている。
「すごい、すごいね君たち! まだ誰も壊れてないなんて!」
 巡る戦いの中で自らも傷ついているというのにパンセは猟兵たちを称賛した。
 その姿は明るいが、何故だか寂しそうな気がする。妙に哀れだと思えてしまっても相手はオブリビオンだ。
 倒すしか道はないのだと此処にいる誰もが知っている。
 そして狐珀とセツナは頷きあい、彼女を屠る為の力を紡いでいった。
「二つの力は一つの力に」
「おいで、私の愛し仔」
 協心戮力。そして、共存共栄。
 狐珀は兄と共に力を紡ぎ、セツナはゼロを呼んで並び立つ。其処から彼女と彼らの攻撃が重なり、敵を鋭く穿った。
 共に戦う者がいることに対し、パンセは羨望の交じった眼差しを向ける。
「君たちは良いな。仲間が居て……でも、僕はひとりぼっちだ」
 少女は全方位に向けて花の嵐を巻き起こした。
 その様子に気付いたスピカはミレナリオ・リフレクションの力を放って、嵐を相殺しにかかった。
「そんなに寂しいのなら、望む形で遊んであげます……!」
「またこちょこちょして遊ぶ? ボクはいつでもいけるよ!」
 花の奔流をスピカが防ぐ中でティエルがふわりと飛んでパンセに近付く。
 そうしてあっという間に相手の服の中に潜り込んだティエルは、擽り攻撃で動きを妨害していった。
「わああっ、もう擽り攻撃はやだ……!」
 其処で鈴女も攻撃の機を掴んだ。よくも無駄足を、と口にした鈴女は徐々に弱っていくオブリビオンに宣言する。
「ええか、うちの命令には絶対服従や」
 女王めいた物言いで鈴女が伝えたのは自分に従えということ。
 思わずパンセが怯んだ隙を突いたマレークと明が、そして宵とザッフィーロも攻勢に出た。彼らだけではなく、ヴァーリャたちもパンセへの攻撃に回っていく。
 先ほど受けた傷の痛みを堪えたヴァーリャは綾華の傍に立つ。其処から手にした剣を投げれば、刃は敵への牽制となった。
「今だ、綾華!」
 頷きを返した綾華はパンセに狙いを定める。
 もしかすれば彼女は嘗て悲しい想いをした人形なのかもしれない。
 ――それなら、だからこそ。
「壊れるまでずっと、か。いーぜ。でもごめんな。壊れるのはお前の方だ」
 静かに告げた綾華が舞わせていくのは白菊の花。弔いの花として広げられていく彩は戦場を美しく彩っていく。
 更に其処に続いたのはノトスとセシルの二人だ。
「お遊びは、この位にしておけ」
「今度こそ本当に罰として骸の海へさよならしてもらうよ」
 白菊に合わせて百合と薔薇の花弁が戦場を覆う。静かに敵を見つめるノトスは白百合を操り、終わりを見据えたセシルは薔薇を導く。
 片や麗しき白花。
 片や様々な彩りの薔薇。
 重なった花の欠片は標的を穿ちながらも絢爛な雰囲気を戦場に宿していった。
「すごく綺麗……」
 パンセは大きなダメージを受けているというのに何度も瞼を瞬かせている。
 クラウンはその姿に不思議な感覚をおぼえた。しかし彼女が危険な力を揮うならば逃しておけないとも感じている。
 その思いはクールナイフも同じであり、クラウンに目配せが送られた。
 敵の死角を選んでクラウンが忍び足で近付く中、クールナイフはパンセに向けて血の刃雨を振らせていった。
「生憎、綺麗なものではありませんが……」
「これが俺たちが渡せるプレゼントだよ!」
 そう、終焉という名の贈り物。
 クールナイフの攻撃と同時に物陰から飛び出したクラウンは黒剣を切り上げる。斬撃がパンセを襲う最中、刃を切り返したクラウンは更にもう一閃を振り下ろす。
 そして、セルマが銃弾を撃ち込んだ。
 冷気を纏う銃撃は的確にパンセの腕を貫き、その腕の中にあった魔導書を取り落とさせる。今です、と告げるセルマの視線を受け取ったのはリュヌだ。
「ん、おー……あの、本も燃、やす!」
 狐乃火焔を魔導書に向けて放ったリュヌに続き、ユヴェンは竜槍を振り上げる。
 あの厄介なものを確実に貫くために距離を詰めた彼は、リュヌの炎に巻かれていく書へと切っ先を向けた。
 次の瞬間、パンセの悲鳴が上がった。
「やめて! 僕の主がくれた本なんだから……!」
 焼かれた魔導書には風穴があいた。それによって彼女の魔法を封じられたことを確かめ、リュヌはぐっと掌を握る。
 そんな中で悲痛な表情を浮かべるルナは胸を抑えた。
「……わたしは決めました」
 最後までパンセへと贈る音色を響かせ続けようと決意したルナは、獣奏器で以て衝撃波を放ち、思いきって自分の偽者を倒した。
 そして、其処から巡る音色は猟兵を癒やす力となり、援護として巡る。
 曲に載せた祈りと願いは今のパンセには届かないかもしれない。しかしそれでも良いのだとして、ルナは思いの丈を演奏に込めていった。
「どうか――」
 同じくしてソナタもまた、パンセへの歌を紡いでいった。
 あの少女が怒りや憎しみに飲まれたオブリビオンとしてではなく、人の笑顔が好きな優しい心根を取り戻せるように。
 そして平穏に包まれて眠りにつけますように。
 一心に願うソナタは歌を響かせてゆく。
「何? 身体が、動かない……」
 それによってパンセの動きが止まり、カイトとクロウは最大の好機を得た。
 だが、クロウは敢えて一言だけパンセに声をかける。
「……ホントは人間が好きなンだろ。身近に寂しがり屋がいるモンで分かるンだよ」
「寂しがり屋ってオレのこと?」
「さあな」
 後半の呟きを聞いたカイトが問いかけるが、クロウははぐらかす。そして剣に炎を宿した彼はカイトに援護を願い、敵の身を突き刺した。
「……っ、く、あ――」
 その瞬間、少女人形から呻き声があがる。
 そのことからヨハンたちは戦いの終わりが迫っていることを察した。
 しかしパンセは最後の力を振り絞って立ち上がる。おそらく魔導書を拾ってから何処かへ逃げようとしているのだろう。
 だが、そうはさせない。
「何も残らぬよう、燃やし尽くしてやろう」
 他の三人が動きやすいよう、足止めを担ったヨハンは蛇のように炎を操った。その狙いはパンセの回避先を減らして誘導すること。
 ヨハンは敵が狙った場所に移動したと察し、其処に呪詛の魔力を宿した。
「後は任せましたよ」
「ええ、援護射撃はお任せください」
 ヨハンが足止めを行った瞬間を聡く感じ取り、アルジャンテは矢を解き放った。
 彼が狙うのはパンセ本人ではなく鏡の魔導書。また偽物を作り出され、盾にでもされたら厄介だからだ。
 そして、幾重も放たれた炎矢の一本がパンセの魔導書を貫いた。
「!?」
 驚いたパンセは思わず書を取り落とす。其処に生まれた好機を感じ取り、竜槍を取り出した織愛は強く身構え、オルハも共に並び立った。
 此処から仕掛けるのは皆との連携攻撃。
 ヨハンの黒炎、アルジャンテの弓、織愛の竜槍、そしてオルハの三叉槍。
 ――今こそ、力をひとつに。
「いくよ、織愛!」
「はい、オルハさん」
 呼びかけられた声に答え、少女たちは槍を大きく掲げた。ヨハンとアルジャンテはパンセへ炎と矢を放ち続けることで足止めを続け、仲間にすべてを託した。
「これが……」
「ええ、これこそが……」
 彼らの静かな声が落とされた、次の瞬間。
「「私達の力……!!」」
 続くべき言葉を継いだオルハと織愛は少女人形へと全力の一閃を解き放った。
 
 貫かれた魔導書。崩れ落ちる少女。
 戦いは、其処で終わった。
 紛れもないこの事実は此処にいる誰もが感じ取っており、薔薇迷宮の園に不思議な静寂が満ちる。
「ん、おー。……さよ、な、ら、パンセ」
 その静けさを破ったのはリュヌだった。
 手を振った彼は彼女が消える前にお別れを告げたいと思ったのだ。するとパンセはくすりと笑み、懐からよろよろと紙片を取り出してゆっくりと破った。
 おそらくそれは最初に掛けられた呪いを宿す紙だ。
「これで……僕が掛けた呪いはぜんぶ、解けたよ。此処だけじゃなくて、迷宮の外の人も今頃きっと、元に戻ってるはず……」
 弱々しく告げたパンセの言葉にはたとしたマレークは隣を見下ろす。
「なんだメイ、猫から戻ったのか」
「なぁに、あなたこそ」
「写真でも撮っておけば良かった」
「……また猫になる機会があったら考えるわ」
 そんな遣り取りを交わしつつ、明は敵である少女が最期にやるべきことをやってくれたのだと感じて、ほっとした思いを抱いた。
 しかし今、冥想のパンセの身体は徐々に薄れていっている。
 骸の海に還るのだろう。
 そう悟ったクールナイフが瞳を伏せると、クラウンも倣って目を瞑った。
 セツナとセシルはこれが在るべき形なのだとして何も語らず、狐珀とノトスも終わりの刻を瞳に映していた。
 スピカや鈴女、セルマもその姿を静かに見守ることを決める。
 すると崩れかかった身体を軋ませたパンセがもう一度、口をひらいた。
「ふふっ……僕、負けちゃった。でも……君たちとは、また遊びたいな……」
 幽かな笑みを浮かべた少女は力なく笑う。
 どんな気持ちで彼女がその言葉を告げたのか、ティエルにもソナタにも、ましてやルナにだって分からない。
 そして冥想のパンセは最期に、囁くような一言を残しながら消滅していった。
『――またね』
 その言葉通り、いずれまた何処かで会うこともあるのかもしれない。
 ユヴェンはそのように感じ取り、綾華とヴァーリャも其々の思いを巡らせていく。
 何故なら彼女も骸の海から染み出す失われた過去の化身のひとつ。終焉の楔を打ち込むまで、冥想の少女は様々な形で蘇るのだろう。
 だが、それと同時に何度もこのようなことを繰り返すのかもしれない。
「……本当に物とは難儀な物だ。……俺も同じだが、な」
 ザッフィーロは呟き、宵の横顔を見遣る。彼が今どう思っているかなどは聞けず、宵自身も何かを語ることはない。ただ、静寂だけが其処に在った。

 そうして猟兵たちは迷宮を後にしていく。
 色濃く記憶に残るひとときを思い、哀しき少女人形にそっと思いを馳せて――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月03日


挿絵イラスト