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遠雷へと捧げる供物

#UDCアース #黄昏秘密倶楽部

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#UDCアース
#黄昏秘密倶楽部


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 ……鉛のように重苦しく垂れ込めた曇り空の下。

 近畿地方某県に所在する『雷殿寺(らいでんじ)』は年越しの参拝客で溢れていた。
 決して大きいとは言えないこの寺に多くの人々が訪れている理由はふたつ。
 一つは、この寺の規模とは似つかわしくないほど立派にそびえ立つ、五重塔。
 もう一つは、この寺に祀られている『雷神』にまつわる伝説である。
 この地域は気候的に雷が多く、特にこの寺は数百年前に一度落雷で全焼している。
 その時、五重塔に雷が落ちると共に稲妻を纏う龍が現れたという伝説があるのだ。
 以来、雷殿寺は雷神を祀り、やがて天神信仰と結び付けられて学問の神ともされた。
 そういうわけで、特にこの時期は受験を控えた学生たちが訪れているのだった。

 しかし、今年の雷殿寺には、何か異様な雰囲気が漂っていた。
 境内のあちこちに立つ不気味なフードの者どもを見て、参拝客たちは眉をひそめる。
 あまりにもこの神聖な場所に似つかわしくない、異様な存在。
 その一人が、おもむろに大声を張り上げた。

「……ああ、貴方がたは運がいい! 我らの救済で、遠雷への供物となれるのだから!」

 何を言っているんだ、と訝しむ時間すら、人々には与えられなかった。
 そう叫んだフードの男が手に隠し持った何かを押したその瞬間。
 境内に仕掛けられた爆薬が一斉に爆発し、学生達が、親子連れが、一瞬で吹き飛んだ。
 爆風で即死する者。炎にまかれ泣き叫ぶ者。崩れた瓦礫に押し潰されて呻く者。
 まさに阿鼻叫喚の地獄。それを目の当たりにして、フードの者どもは歓喜を叫ぶ。

「雷を纏いて穹(そら)駆ける龍『グローレール』! この捧げ物を受け取り給え!」

 境内に満ち満ちた死と破壊。そのエネルギーが渦を巻き、五重塔へ収束していく。
 そして、あたかも落雷の映像を逆回しにするように、紫電となって天へと放たれた。
 紫電は雷雲を呼び、稲光を走らせ……その轟きの中心に浮かぶ、稲妻を纏う龍。

 ――雷穹龍グローレール。

 これよりこの地一円は、龍の姿をした雷の暴威によって滅ぼされる。

 ☆ ☆ ☆

「皆の者、龍退治である」

 豪奢な椅子に腰掛けて、褐色肌の女ドラゴニアンは開口一番そう告げた。
「む。アルダワ一の美女たる余を知らぬか。ディートリッヒ家当主、このツェリスカを」
 尊大な口調のグリモア猟兵、ツェリスカ・ディートリッヒ(熔熱界の主・f06873)。
 彼女の自信は一体どこから来るのかを猟兵たちが考える間もなく、
「悪いが、余の美貌を讃える時間も惜しい。此度の予知は急を要するものでな」
 そう言ってツェリスカは表情を引き締めた。

「さて、龍退治と聞いて、汝らが思い描いたのは何処の世界の出来事なるか。
  アックス&ウィザーズか、それとも我が故郷アルダワ世界の地下迷宮か。
 あいにく此度の龍が降り立つのはそのどちらの世界でもない。UDCアースだ」
 ――UDCアース。
 龍とは縁がなさそうな世界だが、その世界に存在するオブリビオンならば、つまり。
 邪神――そう、誰かが呟いた。
「ふむ、邪神か。その表現は当たらずしも遠からず、といったところではあるな。
 此度予知されたのは『雷穹龍グローレール』と呼称される、雷を司るUDCである。
 古来より東アジア圏で崇拝されてきた雷の化身。自然の猛威に正も邪も無かろうよ」
 非公式なカテゴリだが、UDC組織の中には『神格級UDC』と呼ぶ者もいるとのことだ。

「その雷穹龍グローレールを召喚するのが、以前から組織が警戒していたカルト組織。
 名を『黄昏秘密倶楽部』……『苦痛と精神の死こそが救い』と嘯く狂信者の群れよ。
 奴らには、なるほど無秩序な破壊をもたらす雷穹龍は救済に持ってこいであろうな」
 ツェリスカはそう吐き捨てて、その整った眉を歪めた。
「だが、忌々しいことに万全な儀式によって召喚されたグローレールは我々の手に余る。
 完全体の雷穹龍は災厄そのもの。撃破は困難を極め、多くの犠牲者が出るだろう。
 ゆえに汝らの役目は儀式を阻止し、不完全な状態の雷穹龍を討伐することだ」
 彼女は豊かな胸を支えるように腕を組み、頷いた。ここからが本題なのだろう。

「黄昏秘密倶楽部が儀式を行おうとしているのは、近畿地方のとある歴史ある寺だ。
 かつて五重塔への落雷で寺が全焼した折に、龍が現れたという伝説があるらしい。
 そこから雷殿寺と呼ばれているらしいが……現れたのは恐らく例のUDCであろう」
 恐らく、土地そのものが雷穹龍を呼ぶための霊地の働きをするのだと思われる。
 教団はその地で生贄を捧げることで、再び召喚を行おうとしているらしい。

「その儀式だが、雷殿寺の境内に爆薬を仕掛け、参拝客ごと爆破するつもりのようだ。
 何とも大味な方法だが、生贄だけでなく当時の災害を再現する意味もあるのだろう」
 かつて龍が現れた時と同じような状況を作り、多くの人命を捧げることで龍を呼ぶ。
 黄昏秘密倶楽部にとっては爆破と龍による破滅、二段構えの救済というわけだ。
「この時期だ、客は多い。だが避難させようにも教団が儀式を強行する危険がある。
 そこで汝らは信者達に悟られることなく、爆薬を探し出して全て解除してほしい。
 爆破の危険が無くなってからであれば、UDC組織が避難に協力してくれるはずだ」
 儀式を阻止した場合は、教団側のUDCとの戦闘が予想される。
 そして恐らく、雷穹龍グローレールもまた不完全な形で召喚されるはずだ。
 しかし、完全な姿でさえなければこちらのものだとツェリスカは不敵に微笑んだ。

「さて、予はこのグリモアベースに残って転移能力の維持に全力を注ぐ。
 ゆえに現地での作戦には関われぬが、なに、さして問題はあるまい。
 汝らはこの余が見込んだ者達である。必ず成し遂げると信じているぞ」

 そう言ってツェリスカは金の瞳を細め、猟兵達を送り出すのであった。


滝戸ジョウイチ
 猟兵の皆さん、初めまして。
 このたびマスターを務めさせていただく滝戸ジョウイチと申します。
 どうぞよろしくお願いします。

 さて、今回の物語は暗雲立ち込めるUDCアースが舞台。
 カルト教団の陰謀を阻止し、神格級UDCを撃破するのが目的です。
 戦闘だけでなく、爆発物を解除するための探索も重要となるでしょう。

●グリモア猟兵について
 ツェリスカは転移能力を維持するためグリモアベースを離れられません。
 つまり、基本的に本編には登場できないものと考えてください。
(作戦完了時にプレイングでお誘いがあった場合はその限りではありません)

●探索について
 ユーベルコードを使用しない場合は「POW」「SPD」「WIZ」のいずれかをプレイングに書いていただければ、それを元に判定いたします。
 なお十分な情報を持たない状態で「POW」を選択した場合「当てずっぽうで爆発物を探す」という判定になる可能性がありますので、ご注意を。

●一般人の避難について
 第一章時点では、教団側に感づかれるのを防ぐために参拝客の避難は行えません。
 なお爆薬さえ解除されればUDC組織のエージェントが適切な誘導を行ってくれます。
 一般人は彼らに任せて猟兵の皆さんは戦闘に専念しても大丈夫でしょう。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『教団の計画を阻止しろ』

POW   :    設置された爆発物を取り除く

SPD   :    教団に潜入して計画書を入手

WIZ   :    教団関係者に接触

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


雷殿寺は、ツェリスカの説明通り多くの参拝客で溢れていた。

境内の一番南側に位置する山門の両脇には仁王像が睨みを効かせている。
山門をくぐった左側には事務所と受付があり、お土産も売っているようだ。
右側には駐車場があり、遠方からの客のものと思しき車が留まっている。

そこから真っ直ぐ北側に進むと本堂だ。コートを着た学生たちがお参りしている。
本堂の更に北側には宝物庫。もっとも収蔵物の一般公開はされていないようだ。
左、つまり西側には鐘楼がある。大晦日にはここで除夜の鐘を鳴らすのだろう。
そして本堂の東側には、この雷殿寺の一番の目玉、立派にそびえる五重塔があった。

一見ありふれた年の瀬の境内に見えるが、注意してみると異様な雰囲気がある。
明らかに参拝客でも観光客でもない者たち……カルト教団の信者が紛れ込んでいる。
既に爆発物は仕掛けられていると見ていいだろう。

教団員が拠点にしている場所を探すことも、直接接触することも出来る。
爆発物の除去は、事前に設置場所を探ってあれば『より効果的』に進むだろう。
もちろん、勘を頼りにいきなり探し始めてもいい。

さあ、どうする?
セルマ・エンフィールド
【SPD】
他の人が動きやすくなるよう、まずは情報収集です

何も考えずに爆弾を仕掛ければ規模が足りない、あるいは規模が強すぎて自分たちも巻きこまれる危険があります。故に『黄昏秘密倶楽部』のアジトには仕掛ける箇所を計算し記入した図面が存在しているでしょう。それを『忍び足』で教団に忍び込み捜索します

大規模な計画ですし末端に詳細は知られていないかもしれません。捜索するなら教団奥深くですね。あとは『第六感』頼りになりますが

最も気を付けるべきは私が教団員に発見され、計画の阻止に動いていることが発覚すること。計画の全てを持ち帰れたらベストですが、一部だけでも発見できれば深追いせず脱出することも考えましょう



猟兵達が雷殿寺の探索と行っているのと同時刻。
 セルマ・エンフィールド(氷の狙撃手・f06556)はあえて他の猟兵とは別行動を取っていた。
 彼女が足を踏み入れたのは『黄昏秘密倶楽部』の拠点、そのひとつである。

(他の人が動きやすくなるよう、まずは情報収集です)

 一見乏しい表情の裏に決意を秘めて、セルマは潜入を開始した。
 内部は殺風景かつ雑然としていて、宗教施設にありがちな潔癖さはまるで見受けられない。
 教団の拠点というよりは、まさに秘密結社のアジトといった雰囲気だ。
 慎重に周囲を警戒しながら、セルマは忍び足で通路を進んでいく。
 部屋の中からは時折ぼそぼそと話し声が聞こえるが、幸い気付かれてはいないようだ。

(教団側が、何も考えずに爆発物を仕掛けているとは考えられません。
 事前に計算して仕掛ける箇所を決めていたなら、それを記した図面があるはずです)
 
 それさえ手に入れられれば、儀式の阻止は格段に容易となる。
 もっとも計画の全貌を明らかにできるほどの情報が、このアジトにあればの話だが……。
 そんなことを考えながら進んでいたセルマの足が、ある部屋の前でふと止まった。
 特に大した理由があったわけではない。少なくとも理性による判断ではない。
 言うなればそれは犯罪都市の過酷な環境で培った、セルマの第六感だった。

「……これは、もしかして……!」

 直感の導くままに踏み込んだ会議室と思しき部屋。
 テーブルの上に乱雑に積まれていた書類の一枚を手に取り、セルマの心臓が早まる。
 間違いない、雷殿寺の見取り図だ。何やら書き込んだ形跡もある……が。

「……肝心な所が塗り潰されていますね。詳細は末端の団員にも秘匿されているのかも」

 具体的な配置まで分かれば完璧だったが、そう上手くはいかなかったか。
 それでも、書き込みの跡や塗り潰しの位置などからおおよその見当はつけられそうだ。

「本堂と山門は間違い無さそう……逆に五重塔と宝物庫には書き込みがないですね……」

 もっと詳しく検討しようとしていた矢先、セルマの感覚が近付いてくる何者かを捉えた。
 一般の教団員だけではない。恐らくはUDC、つまりオブリビオンも従えている。

「儀式阻止の動きを露見させるわけにはいきません。ここは深追いせずに脱出しましょう」

セルマは素早く決断し、アジトを抜け出して仲間達に報告を入れるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーイ・コスモナッツ
【POW】と見せかけて【WIZ】

潜入したりは得意ではないので、
足と気合で探します

とはいえ、ただ闇雲に探すのでは、
効率がわるいですから、
爆発したら被害の大きくなりそうな一画、
教団員と思しき者の密度が高い一画、
それらにアタリをつけて探します
第六感や視力が役立つでしょうか

そんな動きを見咎めて、
教団員の方から接触してきてくれたらラッキーです
「じつは落としてしまったお財布を探しておりまして」
などと言って反応を窺いましょう

……内心、ここで締めあげてしまえば早いんじゃないか、と思ったのは内緒です



同時刻、雷殿寺の境内。

「潜入したりは得意ではないので、足と気合で探します!」

 ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は胸の中で気合を入れた。
 純白のロングマフラーを真冬の風でたなびかせながら、彼女は境内の捜索を始める。
 もっとも、何の指針も無く手当たり次第に探そうなどとは考えていない。

「まずは爆発したら被害が大きくなって、多くの人を巻き込めそうな一画から……」

 この儀式の目的が犠牲者を生贄として捧げることなら、より人が集まる場所ほど狙われる危険が高いことになる。そう考えたユーイが最終的に目星を付けた先は、

「やっぱり本堂、ですよね」

 五重塔が有名とは言っても、来訪者たちの最大の目的はお参りだ。今も学生達の一団が賽銭を投げ込み、柏手を打って願い事をしている。あそこを狙わないとは考えにくい。
 ユーイは参拝客に紛れて本堂に近付いた。周りの人々はそれを気にする様子はない。猟兵は世界の加護により住人に違和感を与えない能力を持っているため、12歳の彼女は一般人からは中学受験を控えた学生あたりに見えているのだろう。
 これなら怪しまれずに済むかも……そう思いしばらく屈み込んで探し込んでいると。

「ねえ、そこの貴女。そんなところで一体何をしているの?」

 妙に抑揚の無い声を聞いて振り返ったユーイの視線の先に、フードの女が立っていた。
 フードで影になっているだけでなく、生気のない表情なので年齢がよく分からない。

「ねえ、何をしていたの? 子供の悪戯は感心しないわよ?」
「……いやー、じつは落としてしまったお財布を探しておりまして」

 あらかじめ用意しておいた言い訳を口にするユーイ。
 教団員が訝しんで声を掛けてくるのもあらかじめ作戦には織り込み済み。向こうから接触してくるのであれば、その僥倖に上手く乗らせてもらうだけだ。

(……ここで締めあげてしまえば早いんじゃないかな)

 もちろんそれも一つの「接触」には違いないが、ひとまず内心に留めておいて。
 何気なく相手の反応を伺うと、向こうはひとまず警戒心を緩めたようだった。

「それは運が悪かったわね。でもお嬢ちゃん、貴女はそれ以上の幸福を手にするわ」
「幸福、ですか?」
「ええ、貴女だけじゃなく、今日この場に集った全ての人が救われるのよ」

 何処かうっとりした様子で語る教団員の言葉に、ユーイの愛想笑いが引きつる。
 だが同時に彼女の観察眼は、教団員が話しながらも一点を見つめているのに気付いた。

「…………えいっ」

 試しに視線の先へと体をずらしてみると、見るからに焦りを浮かべる教団員。
 所詮は下っ端なのか、あれでは視線の先に何かあると言っているようなものだ。

(あはは……目は口ほどに物を言い、なんて)

とにかくこれで、一箇所は特定に成功だ。
 ユーイは安堵しながら、どうやってこの不毛な会話を切り上げようか考え始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルフトフェール・ルミナ
雷の龍の伝承があるお寺かあ。
伝承にカルト教団が便乗してるのか、それとも伝承自体UDCと関わってるのか……よくわかんないけど、善男善女を爆破して蘇るとか、それ神じゃないから。泰平のために滅ぼされるやつだよ。今からその実演始まるからね。

【POWで!】さて……人の集まる場所は幾つかある。受付付近、本堂、五重塔……。
ここらへんに爆発物がありそうだよね。
ところで、カルト教団の信者は、参拝の人にすらバレてるレベルで目立っているのだよね?
彼らが、爆破に巻き込まれる場所にたむろしてるとは思えない。実際巻き込まれてたらお笑い芸人みたいじゃん。
だから、人の集まる場所、かつ信者があまり近寄らない場所を探してみたい。



「雷の龍の伝承があるお寺かあ」

 ルフトフェール・ルミナ(空を駆ける風・f08308)はマイペースな口調で呟いた。

「……よくわかんないけど、善男善女を爆破して蘇るとか、それ神じゃないから。泰平のために滅ぼされるやつだよ。今からその実演始まるからね」

 とぼけた口調でひとりごちながら、彼は爆発物を探しに境内を歩き始めた。
 探すべきは人の集まりそうな場所。受付付近か、本堂か、五重塔か。
 それとは別に、ルフトフェールにはひとつ考えがあった。

 のんびりと境内をぶらついているように見せながら、怪しまれないよう慎重に参拝客の様子を確認する。すると、確かに様子がおかしい人間が混ざっているのが確認できた。
 わざわざ寺に来ているのに参拝も観光もせず、生気のない様子で立っている人間達。
 あれが黄昏秘密倶楽部の教徒なのだろう、とルフトフェールは見当をつけた。

(だとすると……彼らが、爆破に巻き込まれる場所にたむろしてるとは思えない。
 実際、自分で仕掛けた爆発に自分が巻き込まれてたらお笑い芸人みたいじゃん)

 信者が寄り付かない場所で、なおかつ一般客が多くいるような場所。
 そういうところを重点的に探せば、爆発物の在り処が見つかるのではないか。
 早速ルフトフェールは、その作戦に沿って探すために境内を歩き出した。
 だが……。

「おかしいなあ……」

 信者がいなくて客が多い場所が、なかなか見つからない。
 というより、人が密集しているような場所には大抵教団員も紛れ込んでいる。
 これでは、教団側にも少なからず犠牲者が出てしまいそうだが……。
 そこで、ふとルフトフェールはグリモアベースでのやり取りを思い出した。

「彼らの教えは『苦痛と精神の死こそが救い』。もしかして、どっちでもいいのかな?」

 生き残れば良し。爆発に巻き込まれても、それはそれで救済であるから良し。
 冷静に考えれば滅茶苦茶な話である。
 ルフトフェールに落ち度はない。単に、相手が異常者の集まりだったというだけだ。

「しかし困ったな。次はどうしようか……あれ?」

 作戦が白紙に戻り、最初の候補のひとつである本堂に足を向けたルフトフェール。
 そこで白いマフラーの少女が、教団員にしつこく話しかけられているのを見かけた。
 騎士のような格好を見るに彼女も猟団なのだろう。ルフトフェールが近づいてきたのに気付き、教団員を愛想笑いであしらいながらアイコンタクトで何か訴えかけている。
 視線だけの応酬。だが、ルフトフェールが真意を読み取るには十分だった。

「……そこか!」

 少女が教団員の注意を逸らした隙に本堂の床下に飛び込むと、確かに何かがある。
 恐らくはこれが教団員が仕掛けた爆発物だろうと確信し、慎重に解除に取り掛かった。
 作戦こそ空振りに終わったが、あらかじめ本堂に目星を付けていたのが幸いした形だ。
 解除は無事に成功した。一歩前進だ。ルフトフェールは汗を拭い立ち上がった。
 
「……それはそうと、助けたほうがいいのかなぁ、あの子」

 今も信者の長話を聞かされている少女を見やって少し考えたが、やっぱり彼女も猟兵だし大丈夫だろうと思い直して、ルフトフェールは再び爆発物の捜索へと戻っていった

苦戦 🔵​🔴​🔴​

エステシア・プライド
雷電の化身たる東洋の龍の容を持つ神性の権限か

黄金竜の女王たる余としては興味が沸くが、しかし無辜の民を贄とする邪教の企みを見過ごす訳にもいくまいよ

御大層な儀式、拠り所とする神性諸共に葬り去ってくれるわ

余は儀式の要である爆弾を探し出し、除くとしようか

ツェリスカの予知を聞く限り邪教の儀式において五重塔は最後まで聳え立ち、神性を呼ぶ力を収束させる役割を果たしていたな

更に言えば起爆装置を押した邪教の連中もまた爆発には巻き込まれていなかった

即ち邪宗の教徒は、この狭い境内の中で、五重塔にも自分たちにも影響の及ばぬ場所を計算して爆弾を仕掛けたと、余は読み解く

この条件に合う場所を入念に調べるとしよう



「雷電の化身たる龍の容を持つ神性か。黄金竜の女王たる余としては興味は湧くが……」

 エステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)はそう呟いて周囲を睥睨した。
 その背には、女王という自称に恥じない気品ある黄金色の翼が輝く。

「しかし、無辜の民を贄とする邪教の企みを見過ごす訳にもいくまいよ」

 尊大な言動ながらも、その態度に見合う気位の高さをもって、彼女は行動を開始する。
 目的は、爆発物の解除。だが、その前にエステシアには確認したいことがあった。
 歩みの向かう先は境内の北東……この雷殿寺の象徴である、五重塔。
 天空に向かってそびえる威容を見上げてから周囲に視線を走らせ、彼女は一人頷く。

「――やはり、な」

 この五重塔だけは、取り巻く雰囲気が他の場所とは何処か異なるように思える。
 黄昏秘密倶楽部の教団員と思しき人間達が周囲をうろついているのは同じだが、しかし丹念にその動きを追えば、彼らがこの五重塔を中心に展開しているのが見て取れた。

「グリモアベースで聞いたツェリスカの予知。あれによれば、五重塔は爆破の後も最後
 までそびえ立ち、儀式によって集めた力を収束させる役割を果たしていたな……。
 つまり、奴らは爆破によって五重塔を壊すわけにはいかぬ、ということだ」

 それがエステシアの推測。そして、恐らくそれは当たっているという直感もある。
 あとはもう一押し、何か裏付けがあればいいのだが……。
 その時、彼女の元にひとつの連絡が届いた。
 UDC組織からの報告。別行動で教団のアジトに潜入していた猟兵が、今回の儀式の断片的な情報を持ち帰ったという。その地図では五重塔が空白になっている、とも。

「……でかしたぞ。本来ならば、余が直々に褒美を取らすところよ」

 間違いなく、教団は五重塔を避けるような形で爆発物を配置している。
だが、同時に五重塔はこの寺最大の目玉であり、訪れる参拝客も大勢いる。
 教団からすれば、儀式の生贄として利用しないとは思えない。

「本堂から塔へと向かう砂利道の途中。それでいて塔へは被害が及ばない場所……」

 ふむ、とエステシアは小首を傾げた。
 頭の中で爆風が広がる半径を計算して出した予測地点に、一台の車が留まっている。
 何の変哲もない軽トラックだ。荷台は空っぽ。駐車場から離れた位置にあるが、近くに梯子や枝切りバサミなどが置いてあり、庭の剪定などに使われるものなのだろう。
 エステシアは堂々とそのトラックへと近付き、屈み込んで車の下を覗いた。
 果たして、車体の裏側には明らかな異物が取り付けられているのが見て取れた。
 この爆発物を解除すれば、五重塔へ向かう人々が爆風に呑まれることはないだろう。

「余の勝ちだな。御大層な儀式、拠り所とする神性諸共に葬り去ってくれるわ」

 雷穹龍の信者などに遅れを取るような黄金竜の女王ではない。
 エステシアは立ち上がり、優雅に、そして不敵に微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アララギ・イチイ
路肩爆弾対策の無線電波妨害装置欲しいわねぇ…地道に探しましょうかぁ(無いもの強請り

POW
五重塔の近辺に爆弾は設置されてないわねぇ(五重塔に被害が出る為
人通りの多い場所に設置しつつも、不審物に対する警戒感も強いでしょうから人の目に付く所には置いてないでしょうねぇ、その辺りを注意して捜索よぉ((野生の勘)(第六感)で補正

人手も足りないから召喚で呼び出した見えないワンちゃん達で捜索のお手伝いよぉ
人に迷惑をかけない(ぶつからない)、不審物を見かけたら直ぐに知らせる事、と指示を出して捜索させるわぁ
教団関係者の匂いで捜索もワンちゃん達なら可能かしら、一つ見つかれば爆薬の匂いを嗅覚を頼りに捜索出来るかもぉ



猟兵達が爆発物を発見したという情報が、続々と飛び込んでくる。
 そんな中。和装の少女、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)はというと。

「路肩爆弾対策の無線電波妨害装置が欲しいわねぇ……」

 小柄で華奢な印象を与えるその肩を落とし、そんなことをボヤいていた。
 路肩爆弾、つまり即席爆発装置は、実は起爆に使う電波さえ分かっていれば妨害電波によってジャミングが掛けられる。遠隔起爆を行うことは予知によって分かっていたため、確かに電波対策の作戦を立てれば直接探すことなく対処できたかもしれない。

「でも、少なくとも今は無い物ねだりよねぇ。地道に探しましょうかぁ」

 無いなら仕方ないと割り切り、アララギはきょろきょろと周囲を見回す。
 そして人の少ない開けた場所を見つけると、そこで屈み込んで小声で何事か呟き始めた。
 猟兵が一般人に違和感を与えない能力を持っていなければ、思わず遠巻きにしてしまいそうな光景だが……もし、実際に彼女が何をやっているのかに気付いた者がいたとしたら、その者も全く別の理由で、決してそこに近付こうとはしないだろう。

 ――召喚・群狼戦術。

 アララギの周囲は、既に彼女が召喚した『不可視の狼』の群によって十重二十重に取り囲まれており、彼らはみな一様に頭を垂れて主人の命令を待っているのだった。
 ユーベルコードによって頭数を増やし、人数と時間の不足を補うという作戦だ。狼たちはイヌ科動物の特性と知恵を併せ持ち、ある程度の行動なら事前の命令で制御できる。

「いい、ワンちゃん達。お客さんにぶつかったり迷惑かけたりしないでねぇ。
 何か見つけたら知らせること……そうそう、悪い人でも勝手に食べちゃだめよぉ」

 脳天気な口調で物騒なことを話しながら、アララギは群狼に命令を言い含めていく。
 一通り説明し終えて、いざ行動させようとしたその時、彼女の脳裏に閃くものがあった。

「そうだわぁ、爆薬の匂いがあればワンちゃん達に覚えさせられるかもぉ」

 既に猟兵側は複数の爆発物を発見し、回収に成功しているという。その匂いを事前に覚えさせて同じものを探させれば、より効果的な捜索が可能であるはずだ。
 ちょうど金色の翼を持ったドラゴニアンの少女が五重塔の方角から戻ってくるのを見つけ、事情を話して回収した爆薬の匂いを嗅がせてもらう。加えて他の猟兵が既に捜索した場所、アジトに潜入した猟兵からの情報、それに五重塔に関する考察も共有する。

「思った通り、あの塔は壊しちゃいけないのねぇ。これだけ分かれば万全だわぁ」

 改めて、アララギは狼たちに行動開始の指令を下した。
 数多の狼達が、他の猟兵達の探していない区域へと散り散りに走り去っていった。
 猟兵達が集めた情報と、それを元にした考察の集大成。成果はすぐに上がり始める。
 まずは山門。仁王像の前で足を止めた人々を吹き飛ばすように、両脇に爆薬が仕掛けられているのを狼たちが発見した。解除作業までは任せられないので、自分の足で向かう。
 続いて土産物売り場。恐るべきことにカウンターの内側から事務所ごと吹き飛ばすように仕掛けてあった。どうやらバイトの売り子として教団員が事前に潜入していたらしい。

「……最後は駐車場ねぇ。さっき車に仕掛けてあったって聞いたし、怪しいわぁ」

 客の数に比例して車もまた多いが、狼にサポートさせながら猟兵総出で手分けして解除していけば、起爆の時刻が近付いているといっても十分対処できるはずだ。
 アララギは他の猟兵達にも連絡を取って合流し、共に駐車場へと向かっていった。

 
――そして、遂にタイムリミットが訪れる。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


……雷殿寺には、何か異様な雰囲気が漂っていた。
 境内のあちこちに立つ不気味なフードの者どもを見て、参拝客たちは眉をひそめる。
 あまりにもこの神聖な場所に似つかわしくない、異様な存在。
 その一人が、おもむろに大声を張り上げた。

「……ああ、貴方がたは運がいい! 我らの救済で、遠雷への供物となれるのだから!」

 天を指すように片手を振り上げ、握られたスマートフォンを操作する。
 後は発信された電波に反応して起爆装置が一斉に作動し、参拝客達を一斉に吹き飛ばすことになっている。一切合切区別なく、苦痛と死によって『救済』してさしあげるのだ。
 そしてそのエネルギーをもって雷穹龍を召喚し、より多くの人々を『救う』のだ!
黄昏秘密倶楽部の信者たちはみな一様に天を仰ぎ、口々に歓喜の声を上げた。
 
「雷を纏いて穹(そら)駆ける龍『グローレール』! この捧げ物を受け取り給え!」

 ……その呼びかけに応えたものは、静寂だけだった。
 信者たちの間に動揺と困惑が広がる。失敗? どうして?
 その疑問が晴れる間もなく、UDC組織のエージェント達が一斉に境内へと突入した。
 一糸乱れぬ統率をもって、呆気にとられる参拝客を避難させていく。
 作戦の第一段階は成功だ。
 猟兵達は避難誘導を組織に任せ、周囲に被害が出ない場所に移動する。
 程なくして、その周囲をフードの者達が音もなく取り囲んだ。

「おのれ、貴様らの仕業か! 我々の救いを阻んだ罪、その命で償え!」

 口々にそう言うやいなや、信者達は一斉に何かを飲み込み、苦悶の声を上げ始めた。
 猟兵達はそれが毒薬だと察する。自分達に死と苦痛を与え、邪神の生贄にしたのだ。
 影を纏って姿を変えた信者達、いや、UDC『黄昏の使徒』の群れが猟兵に迫る――!
ユーイ・コスモナッツ
みずからを生贄に捧げるなんて……
理解しがたい教えですが、
その覚悟には、応えねばなりませんね
しかし、あくまで正々堂々と!

こちらが取り囲まれた状況なので、
まずは包囲網を崩したいところ

そこで

反重力シールドに乗って、
ユーベルコードを起動
加速をつけた状態で敵の一角に突撃
スピードに乗ったまま剣で切り抜けます

そのスピードのまま、
信徒の射程外まで駆け抜けたら、
体勢を整えて再度突撃!
この流れを繰り返します

パターンを見切られないよう、
得意の騎乗技能を活かして、
突っ込む角度やタイミングに変化をつけたいですね


セルマ・エンフィールド
死は救い? 独善ですね。

爆破阻止後、猟兵たちがいるところに元信者は来るでしょう。
でしたら私は遠距離武器が主体ですし、事前に戦場を見渡せる位置にある建物の屋根に上り、戦闘が始まればマスケットを使い1人ずつ『スナイパー』技能で『暗殺』していきます。
他の猟兵には負担をかけますしそちらには【ペレグリーネ】を配置して機銃での『援護射撃』を。

もし敵の堕ちる星の一撃で私が上っている建物が狙われ、倒壊しそうであれば離脱して通常の戦闘へ。長距離のマスケット、中距離のスローイングナイフ『投擲』、短距離のデリンジャー『クイックドロウ』『零距離射撃』を適宜織り交ぜて戦います。



山門をくぐって石段を駆け下りた先、真っ直ぐに続く幅の広い山道。
 普段は参拝客が行き交うこの道に、今や人ならざる異形と化した者達が蠢く。
 UDC『黄昏の信徒』……苦痛を受けて死に至った人間が邪神の眷属となった存在。

「……お嬢ちゃん……あのまま死んでいれば、貴女も救われたのにねぇ……!」

 信徒の一体の声に、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)は聞き覚えがあった。
 姿はもはや似ても似つかないが、探索の途中でユーイに話し掛けてきた女信者だ。
 どうやら邪神の眷属と成り果てても、辛うじて人間の頃の自我は残っているらしい。

「自らを生贄に捧げるなんて……」

 だが、既にユーイは確信していた。彼女は、人間としては既に死んでいる、と。
 加えて、毒薬を飲んだ時の苦悶の声。計り知れない苦痛の中で絶命したのは察しがつく。
 そんな壮絶な最期を躊躇いなく選ぶ……良くも悪くも、誰にでも出来ることではない。
 
「……理解しがたい教えですが、その覚悟には、応えねばなりませんね」

 だからこそ、ユーイは騎士の誇りをもって立ち向かう。
 あくまで正々堂々と、真っ向から邪悪を打ち破るために。

「……死ねェェェェェェェ!!」

 信徒達が一斉におぞましい叫び声を上げた。否、それは歌だ。
 邪神の恩寵を受けた不快な歌声が、精神を引き裂く悲鳴のように放たれる。
 一種の衝撃波として殺到する攻撃を、巨大な盾で受け止めながらユーイは叫んだ。

「ブースト・オン!『流星の運動方程式(フルアクセルシューティングスター)』!」
 
 構えたのはただのシールドではない。反重力で浮遊する、宇宙騎士たる彼女の愛馬だ。 足裏を磁力で固定してスノーボードのような体勢を取った直後、瞬時に浮上。
 そのまま一直線に急加速しながら敵陣を突破し、同時に白銀のクレストソードが煌めく。
 その挙動に対応しきれないまま、信徒の一体がすれ違いざまの斬撃で両断された。

 「このまま波状攻撃で、敵の包囲網を崩します!」

 得意の騎乗技能を駆使して空中で急旋回し、加速をつけて再度の突撃を敢行する。
 不運な信徒の一体がシールドの激突で仮面ごと粉砕され、更に一体が剣の一撃で斃れた。 だが翻弄される一方だった信徒も、死に物狂いで反撃を試みる。

「ボードから引きずり下ろせ! 歌で動きを鈍らせて仕留めるのだ!」

 信徒達は見た目とは不釣り合いな高速移動で散開し、迎撃陣形を組んだ。
 多少の犠牲が出ようとも、数の暴力をもってユーイを仕留め切ろうというつもりか。
 反撃を覚悟しながら再突撃を試みるユーイ。しかしその傍に別の何かが飛来した。
 
ドローンだ。ユーイは知らないが、その名を『ペレグリーネ』という。
 ユーイを援護するように飛ぶペネグリーネからの機銃掃射で、敵の足並みは乱れていく。
 そして、信徒たちが乱入者に気を取られた、その刹那。

 ――遠方よりの弾丸。
 信徒の一体が頭部に穴を穿たれて絶命した。
 続けてもう一発。別の信徒が仮面のど真ん中を貫かれて崩れ落ちる。

「狙撃だ!」

 信徒が叫んだ。敵中に動揺が広がっていく、その混乱の最中。
 ユーイは見た。石段を昇った先の先、山門の屋根の上で銃を構える少女の姿を。

 ▼ ▼ ▼

「死は救い? 独善ですね」

 銃を構えたまま、セルマ・エンフィールド(氷の狙撃手・f06556)は胸中で断じた。
 彼らのやり方に理解を示すつもりはない。戦場では撃つか撃たれるか、それだけだから。 そう、どんな時だって――スコープの向こうにいるのは獲物だけ、だ。

「敵の配置は概ね予想通り。この位置なら『暗殺』で数を減らすのには十分ですね」

 セルマは先の爆弾解除作戦には直接参加していない。
 ひとり別行動を取って教団のアジトに潜入し、儀式の情報を入手していたからだ。
 だからこそ、信徒達の包囲からは逃れることが出来たし……UDC組織に情報を渡した後で雷殿寺に急行し、戦闘が始まる直前にこの山門の上を押さえることが出来た。
 そしてこの状況はセルマが最も得意とする狙撃戦だ。優位はこちらにある。
 愛用のマスケット『フィンブルヴェト』が火を噴き、敵は一体一体と数を減らしていく。

「……もっとも、いつまでも好き勝手はさせてくれないでしょうが」

 セルマの位置に感づいたのか、数体の信徒が山門目掛けて石段を駆け上がってきた。
 冷静に引き金を引き、先頭の一体を射殺。だが残りの動きが予想以上に早い。
 邪神の歌声には動きを加速させる力もあるのか。迎撃しきる前に到達されかねない。
 これ以上の狙撃戦は困難だと瞬時に決断し、セルマは山門から身を躍らせた。
 多少の被弾は止むを得ない。デリンジャーを抜きながら、空中で衝撃と痛みに備える。
しかし……。
 
「――間に合った!」

 敵の悲鳴がセルマの精神を抉るより一瞬早く、天翔ける盾が彼女を連れ去った。
 マフラーを騎士旗(バナレット)のようにはためかせ、ユーイはセルマに笑顔を向ける。
 二人は視線を交わし、そして頷き合った。
 
「それじゃ、いきますよっ!」
「……ええ!」

 今はそれ以上の言葉は必要なかった。ただ、呼吸を合わせるだけで良かった。
 ユーイは反重力シールドを加速させ、セルマはその上でデリンジャーを構える。
 弾丸を放つ流星となって、二人は敵の渦中へと舞い戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アララギ・イチイ
これ(信者達?)って食べられるのかしらぁ?

基本装備は機関砲×2よぉ
羅刹紋の効果で空を飛ぶわぁ、近接攻撃しか攻撃手段無さそだしぃ(なお、悲鳴に類する音は大好きな子、一度聞いてみたい
ただ(ダッシュ)と(フェイント)で加速減速しつつ、(残像)と(迷彩)で撹乱の行動はしておくわぁ

上空から機関砲×2による斉射(2回攻撃)で味方を(援護射撃)、威力向上の為に強化砲撃(攻撃回数重視)も使用よぉ

黄昏の導き、って技を使用するみたいだからぁ
(毒使い)の応用で製作したペイント弾を擲弾銃で撃ち出して偽者と本物を別々にマーキングしてみようかしらぁ(味方にも伝えておく
違いは相手の動き&(第六感・野生の勘)で判断よぉ



猟兵達の反撃によって、徐々に数の優位覆されていく黄昏の信徒達。
アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)はその様子を眺め、口を尖らせた。

「向こうは搦め手使う余裕も無さそうねぇ。ざーんねん」

敵が怪しげな術を使ってきた時のために、毒使いの技能で生成した特殊弾を射出できる榴弾砲も用意してきたのだが、この様子だとどうやら試す機会は無さそうだ。
猟兵達のパワーと速度を重視した攻撃の前に、隙を生む行動など自殺行為なのだろう。

「でも金切り声のコーラスは良い感じねぇ。おかげでやる気出てきたわぁ」

並の人間なら発狂しかねない狂気の悲鳴に耳を傾けながら、アララギは小さく跳んだ。
そのまま体を宙に浮かべ、虚空で静止する。羅刹紋に込められた飛行の力だ。

「おのれ、妙な術を!」
「貴女達に言われるのは心外ねぇ……あら?」

高度を取れば近接攻撃は当たらないと思った矢先、振り抜かれた鉄球が髪を掠めた。
もっとも、ダッシュとフェイントの合わせ技で、こちらの回避行動の方が早かったが。
冷静に下界を見下ろし、瞬時に状況を把握。味方を踏み台にして跳躍してきたのか。
予想外の行動ではあったが、アララギは焦りを見せることなく微笑んだ。

「なかなかやるじゃなぁい。それじゃ、ご褒美あげなきゃねぇ?」

再びの跳躍攻撃に合わせて、悠然と腕をそちらへと向ける。
モーニングスターを振り上げた信徒を迎えたのは、着物の袖口から突如出現した砲口。
普段は別空間に格納されている浮遊砲台の矛先が、鼻先へと無慈悲に突きつけられて。

「加速・増幅リング固定、発射速度強化……さ、花火の時間よぉ!」

射術・強化砲撃。
高速回転する多砲身から吐き出された無数の弾丸が、敵を削り取るように蹂躙する。
鉄球ごと蜂の巣にされて落下する信徒に目もくれず、アララギは地上を見下ろした。
既にその威容を現した浮遊式機関砲は二基。それぞれの砲門が冷たく目標を狙う。
そして間髪入れずに放たれる一斉射撃。二回攻撃の技能とユーベルコードの併用で極限まで高められた発射レートにより、銃弾が打ちつける豪雨めいて地上を薙ぎ払う。
無秩序な攻撃と見せながら、味方が行動しやすくなるよう援護するのも忘れない。
一斉射を受けた信徒がボロ布のように千切れ飛ぶのを見ながら、アララギはふと思う。
(――これって、食べられるのかしらぁ?)

後でワンちゃんに確かめてもらおうか、などと考えながら、彼女は掃討を続けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エステシア・プライド
戯け者どもめが

そも殉教の覚悟あるならば、最初から自らの生命をもって、奉じる神への献身と信仰を証明すれば良いのだ

わざわざ救済などという大層なお題目を掲げおってからに

貴様達の奉じる竜が召喚ばれる前に、
余の太祖たる三頭黄金竜の偉大なる姿と強壮なる力の顕現を地獄への餞とくれてやる

余の武装たる竜創神器の「全力魔法」と「高速詠唱」によるユーベルコードを、召喚魔法の極致たる絶技を、闇の狂徒どもに魅せつけてくれる

臥して仰げ、宇宙統べる金色の竜王を



戦況は、既に大きく猟兵側へと傾こうとしていた。
火力と機動力に勝る猟兵達の連携攻撃によって、信徒は死体を操る能力すらろくに発揮できないままに、一体また一体と崩れ落ちていく。

「哀れで野蛮な猟兵達……貴女達さえいなければ、今頃大勢が救済されたものを!」

その激戦の最中、一体の信徒が唸るような怨嗟の声を上げた。
周囲の信徒が同調し始めたのを見るに、信者を率いて儀式を企てた教団の幹部か。
恐らくは爆破の宣言を行ったあのフードの男に違いない。

「戯け者どもめが」

だがそんな恨み節を、エステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)は切って捨てた。
流麗なる金色の髪を指先で梳きながら、彼女は妥協なき言葉を紡ぐ。

「そも殉教の覚悟あるならば、最初から自らの生命をもって証明すれば良いのだ。
 わざわざ『救済』などというご大層なお題目を掲げおってからに」
 
尊大な口調にて自らの行いを否定され、教団幹部は全身をわなわなと震わせ始めた。
モーニングスターの柄をへし折らんばかりに握り締め、全身に殺気を漲らせ。
そして震える指でエステシアを指さし、もはや獣の呻きのような声を発した。
 
「ぐ、愚弄したな、我らの救いを、教えを、神を……こ、殺す、貴様だけは必ず!
 生きたまま引き裂いて我が神に捧げてくれる! 皆、最後の務めを果たすのです!」
 
まだ戦う力を残していた周囲の信徒達が、呼応するように集結する。
もはや誰一人として、怒りに我を忘れず冷静さを有しているものはいない。
しかし一斉に突進してくる信徒を睥睨し、エステシアはあくまで優雅な態度を崩さない。
 
「魅せつけるしかあるまい。我が太祖の偉大なる姿、召喚魔法の極致たる絶技を!」

エステシアの魔力が全身に纏った竜創神器の名を持つ武装を通じて荒れ狂い、天空に凝縮して火球と化した。圧倒的な魔炎は幾度となく膨張と炸裂を繰り返し――。

「見ろ! 何か形になっていくぞ!」

信徒の一体が叫んだ言葉通りに炎は形作る。翼を、胴を、尾を、そして三つ首を。
そして、内側から放射状に溢れるような輝きと共に、それは顕現した。

「臥して仰ぐがいい! 三頭黄金竜顕現(キングドラゴン・アドベント)!」

エステシアの太祖たる金色の竜が、三つの頭で同時に咆哮した。
霊体とはいえ、竜である。ここに集った黄昏の信徒達は皆、竜を神と崇める者たちだ。
眼前に出現した黄金竜への畏怖のあまり、戦意喪失した者すら現れている。

「刮目せよ! この強壮なる力こそ、貴様らにくれてやる地獄への餞である!」
 
三首の竜が吐き出す稲妻状の光線で、信徒達は紙切れのように吹き飛ばされていく。
黄昏秘密倶楽部の信徒達との戦いは、遂にその趨勢を決しようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『雷穹龍グローレール』

POW   :    雷霆光輪
【超高熱のプラズマリング】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    撃ち砕く紫電
レベル×5本の【雷】属性の【破壊光線】を放つ。
WIZ   :    ドラゴニック・サンダーボルト
【口から吐き出す電撃のブレス】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・皇士朗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「わ、我らの計画が……人々にもたらされるべき救済が……」

幹部と思しき黄昏の信徒が、茫然自失の様相で膝を突く。
周囲には、物言わぬ過去の残骸と化した信徒の群れが転がっている。
無関係な市民を爆殺することで神格の召喚を果たすという儀式は、ここに完全に潰えた。
苦痛と死を救済だと嘯き大量殺戮を目論んだ邪悪なる計画を、猟兵達は阻止したのだ。

しかし、同時に猟兵達は、不穏な気配をも感じ始めていた。
目の前にいる黄昏の信徒ではない。もっと大きな何かが、この場に収束していく。
猟兵としての直感が、新たなるオブリビオンの存在を察知したのだ。

――刹那。

天空より放たれた一筋の雷光が、僅かに生き残っていた黄昏の信徒へと直撃した。
意志を持つように蠢く稲妻の軌跡が、実体をもって食らいつくように信徒を襲う。
信徒が苦悶の叫びを上げる。オブリビオンが苦しむなど、ただの落雷ではあるまい。

「く、喰われる……こんなものが救済であるはずが……雷穹龍よ、お助けを!!」

断末魔の叫びを残して、信徒達は一体分の骸すら残さず分解された。
信徒達を『喰った』稲妻は、落雷を逆回しにするように天空へと舞い戻っていく。
そして猟兵達は見る。暗雲の狭間に、紫電を纏う猛々しき龍の姿を。

――雷穹龍グローレール。

既に召喚自体は成功していて、生贄が足らなかったため実体化できずにいたというのか。
しかし儀式の不完全さゆえに、雷電の化身たる神格とは程遠い姿であるのが見て取れる。
それでも神格級の名は伊達ではない。大気を引き裂くような轟音を立てて雷霆が走る。

雷穹龍は既に猟兵達を敵と見定めたようだ。これが最後の戦いになるだろう。

――さあ、立ち向かえ!
アララギ・イチイ
大物が来たわぁ
さぁ、貴方の味はどんな味なのかしらぁ

飛行しての(空中戦)よぉ
(武器改造)で魔力炉+砲機関部+火線砲を合体、合体後の代物を使用するわぁ(名称は重魔力砲
魔力炉を(力溜め)させつつ(高速詠唱・早業)で魔力チャージを促進、(鎧砕き・鎧無視攻撃)を付与した連続(2回攻撃)砲撃よぉ

(ダッシュ)で加減速、(フェイント・残像・迷彩)で撹乱する様に移動するけど、回避できない場面もあるからシールドビットで(盾受け)の用意だわぁ

味方が攻撃を当て始めたら、撃墜された(実際は盾受け)したフリを地上に降下、主砲のチャージ開始、今回は発砲しない方針、次回があればそこで最大出力でぶっ放すわぁ(次回があれば、だが



空は、渦を巻くように引き寄せられる雷雲によって黒く閉ざされようとしていた。
だがその暗雲の中にあって、雷光を放ち煌々と輝くグローレールの姿は際立っている。
不完全な状態でありながらも、この威容。万全ならばまさしく雷霆の化身に違いない。

「大物が来たわぁ。さぁ、貴方の味はどんな味なのかしらぁ」

しかしアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は能天気な態度を貫いていた。
彼女の本質は凶暴にして戦闘狂。敵が神格級だからといって怯むわけがない。
雷穹龍すら、彼女にとっては食らうべき「大物」に過ぎないのだ。

天に稲光が輝き、グローレールが轟くような咆哮を上げた。
同時にアララギは大地を蹴って跳躍した。更に羅刹紋へ魔力を送り、体を宙に浮かべる。
黄昏の信徒戦で使用した浮遊式機関砲は、既に異空間へと格納済みだ。入れ替わりに出現させた大型シールドビットで稲妻を凌ぎ、中口径収束火線砲で牽制射撃を放ちながら、フェイントを織り交ぜつつグローレール目掛けて空中を駆け上がっていく。
そして、それだけではない。続けて出現させた砲機関部こそ、彼女の切り札の要だ。

「合体っ! 重魔力砲の威力をご覧なさいなぁ!」

機関部を中心に、大型シールドビットが魔力炉として、集束火線砲が砲身として連結し、ひとつの巨大な魔力砲を形成する。三基分の武装が合体したことによって可能となる高速魔力チャージ、そして高貫通力の集束砲撃こそがこの形態の持ち味だ。

「さぁ、楽しませてもらうわねぇ!」

シールドビット内の炉心がフル稼働で供給した魔力を、瞬時に圧縮・加速して砲撃。
重魔力砲は長時間チャージすることによって最大威力を発揮するが、今は速射性を優先して最小限のチャージで途切れなく砲撃を繰り返していく。
 
砲撃を続けざまに叩き込まれ、グローレールは苛立ちを露わにするように吠えた。
それに呼応するように、周囲の大気が高圧放電によってプラズマ化していく。
雷霆光輪――リング状に放射された高熱のプラズマが、周囲の空間を瞬時に灼き払った。
為す術なく灼熱の嵐を浴びて、アララギは悲鳴を上げながら墜落していった。
グローレールは勝ち誇ったように雄叫びを上げ、追撃すべく自らも降下していく。

(……なぁんてねぇ)

墜落しながら……正確には、あらかじめ展開しておいた小型のシールドビットでプラズマを防ぎつつ被弾したように振る舞いながら、アララギはちらりと下界に目をやった。
地上の猟兵達が次々と雷穹龍へ攻撃を開始したのを確認し、彼女はひとまず墜落されたふりを続けながら、密かに重魔力砲のチャージを行いつつ地上へ降下していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エステシア・プライド
儀式を阻止された不完全な権限であれ、
流石は龍の名を冠する神格といった処か

たいした威容であるな
黄金竜の女王たる余が相手をするに相応しき獲物であると認めよう

過去が遥かなる忘却の刻の彼方より蘇るならば、
龍を屠る神話の偉業、それを成す者が現世に再誕するも必定である

雷奔る穹より、その巨体、地に墜落してくれようぞ

<高速詠唱>と<全力魔法>による余の魔導の絶技、
如何に龍の外皮が強靭といえど<鎧無視攻撃>を防げる道理はなし

天を征く貴様には、大地の鉄槌を豪雨としてくれてやる

大質量の巨石を流星嵐の如くに連続で叩き込まれ、果たして何時まで天空を我が物顔で飛翔していられるものかな


セルマ・エンフィールド
勝ち誇りながら死んでいかれても癪でしたが、悔いながら死んでいくのもはた迷惑な限りですね。

まずは彼の龍を地に引きずり落としましょう。【氷の狙撃手】、スナイパー技能で撃ち落とします。

とは言ったものの翼もなしにどう飛んでいるのやら……第六感や他の猟兵の見識で仕組みと核になる部位が分かればそこを狙うのですが、そうでなければ高高度を飛べなくなるまで弱らせるか、遠距離戦ではこちらに分があると思わせるまで撃ちあいですね。

飛来する撃ち砕く紫電は他の猟兵と連携することで対処できるならそうして、そうでないなら見切りで避けることで対処を。



(勝ち誇りながら死なれても癪でしたが、悔いながらというのもはた迷惑な限りですね)

セルマ・エンフィールド(氷の狙撃手・f06556)は、雷光と消えた信徒のことを思う。
身勝手な理想を掲げて命を踏み躙ろうとしたツケを払ったと言えば、それまでだが。
いずれにせよ彼らを悼んでやる義理はない。今は眼前の脅威に対処するだけだ。

「まずは、彼の龍を地に引きずり落としましょう」

愛用のマスケット銃を構え、姿勢を低くしたままスコープを覗いて上空へ狙いをつける。
敵は丁度、先に攻撃を加えていたドラゴニアンの少女を追って降下してくるところだ。
高空から落雷で一方的に攻撃されてはたまらない。この機に乗じて撃ち落とさなければ。

神経を研ぎ澄まし、彼女は努めて冷静に引き金を引いた。
ユーベルコード、氷の狙撃手(アイシクル・スナイパー)。
狙い過たずグローレールに直撃した弾丸が、銃創の周囲を瞬時に凍結させていく。
続けて二発。三発。
グローレールが呻く。確実に有効打にはなっているようだ。

(とはいえ、全身を氷結させられるわけも無し。弱点が分かればそこを狙うのですが)

セルマは内心で呟いた。
翼もなしにどう飛んでいるのかが分からない以上、その急所を狙おうにも推測のしようがない。核を撃ち抜いて叩き落とすわけにはいかなさそうだ。
となると、残された手は敵が高高度を飛べなくなるまで弱らせるか……。

「あるいは、遠距離戦ではこちらに分があると思わせるまで撃ち合うか、ですね」

誰かに向けて投げかけた言葉ではなかったが、予想外にも返事は帰ってきた。

「なるほどな。ならばその策、余も一枚噛ませてもらうとしよう」

黄金の翼を持つドラゴニアンの女性が優雅にそう告げて、セルマの隣に足を進めた。

 ▼ ▼ ▼

エステシア・プライド(黄金竜の女王・f02772)は、上空の龍を感慨深く見つめた。

「流石は龍の名を冠する神格といったところか。大した威容であるな」

竜王の末裔を自称する彼女が相手をするに相応しき獲物ならば、そうでなくては。
奇妙な充足感を胸に、エステシアは高らかに宣言した。

「過去が忘却の彼方より蘇るならば、龍を屠りし神話が現世に再誕するも必定である!
 神代の偉業を成す者として、余が直々にその巨体、雷奔る穹より墜してくれようぞ!」

威風堂々たるその言葉は、確かな実力への自信あってのもの。
それを裏付けるように、膨大な魔力による全力魔法が高速詠唱をもって紡がれていく。
エレメンタル・ファンタジア。属性によって自然現象を巻き起こすユーベルコード。
自由度と応用性においては随一であるがゆえ、使い手の技量が問われる魔法でもある。
エステシアはそれを難なく制御し、敵を地に落とすに相応しい現象へと作り変えていく。

「属性は『岩石』、現象は『豪雨』! 大地の鉄槌を流星嵐の如くくれてやる!」

放たれた魔力は雷穹龍よりも更に高空へと駆け上り、巨石の雨と化して降り注ぐ。
まさか自分よりも高みからの攻撃を受けるとは思ってもいなかったのだろう。
全身におびただしい数の衝撃を受け、グローレールは怒りに震えて咆哮する。
その直後にその口内へ雷電が収束し、雷撃のブレスとなって放出された。
直撃すればいかに黄金竜の女王といえども大ダメージは免れまい。

「まったく。私のことも忘れないでもらいたいですね」

無論、直撃すればだ。頭部に着弾したエルマの氷結が視界を塞ぎ、雷撃は逸れていく。
更に体制を崩したグローレールの背後から岩石の豪雨が迫り、その体を打ち据える。
二人の猟兵は、高空の敵を見事地上から挟み撃ちにしていった。

そして、遂に。
もはや轟音と形容する他ない叫びを上げて、雷穹龍は地上目掛けて身を翻した。
絶え間ない攻撃と度重なるダメージが、雷電の化身に高空という優位を捨てさせたのだ。
飛来するグローレールが放つ紫電を紙一重で見切りながら、二人は確信する。
ここからが、猟兵による更なる追撃の時だと。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーイ・コスモナッツ
降下している最中は、
グローレールの視界も狭まっているはず
今なら死角を突けるかもしれない

仲間達が作ってくれたこのチャンス、
逃すわけにはいきません

彼女達がみせてくれた、
火力のある砲撃、強力な魔法、正確な射撃……
どれも私にはないものだけど、
唯一私が取り柄といえる部分――機動力なら!

反重力シールドに乗ったまま、
大きく円を描くようにして回り込む
急上昇から垂直降下、
頭上の死角を狙います

最高速度×全体重×全力をこめた、
突撃槍の一撃!

それにしても、
不完全な状態で、この大きさ、この破壊力……
完全体で召喚されていたらと思うと、ぞっとしますね



規格外の巨砲。氷結の魔弾。そして岩石の暴雨。
三者三様のユーベルコードが雷穹龍を穿つ。そして追い立てる。天から、地へと。
かの龍の胸中に去来するのは焦りか、それとも怒りか。いずれにせよ――

「仲間達が作ってくれたこのチャンス、逃すわけにはいきません!」

反重力シールドがユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)を乗せ流星となって飛ぶ。
《フルアクセルシューティングスター》の名に相応しい最大加速。
その速度ゆえに、降下するグローレールとすれ違ったのは体感にして僅か一瞬。
だがそれだけで確信する。敵は見えていない。こちらを捕捉し切れていないと。

「やっぱり降下している最中は、視界が狭まってる! 今なら!」

スピードを落とさないままに急旋回。遠心力で吹き飛びそうな体を決意で支える。
ブーメランさながらに大きく弧を描いて、反重力シールドが雷穹龍の反対側へ回り込む。
地上へ向かうグローレールと、結果的に高空へと躍り出るユーイ。相対距離は開く一方。
だが、ここからだ。今ならば狙える。仲間達が隙を作ってくれた、今ならば。

(――彼女達がみせてくれた、火力のある砲撃、強力な魔法、正確な射撃……)

宙空で進路を反転。同時に思いを巡らす。そのどれもが、自分には無いものだと。
ユーイは砲撃手でも、魔術使いでも、スナイパーでもない。
自分は騎士だ。彼女達の真似は出来ない。彼女達のようにはなれない。それでも。

「それでも、唯一私の取り柄といえる部分――機動力なら!」

そう、だからこそ。先祖からの誇りと戦技を受け継いだ、自分だからこそ。
宇宙の騎士ユーイ・コスモナッツだからこそ、出来ることがある。やれることがある。
ユーイは遥か高空から、地上へ向けて更なる加速を掛けた。
同時にヴァルキリーランスを構える。もはや急降下する彼女自身がひとつの突撃槍。
大気を貫き、一直線に。狙うは敵の頭上の死角、その一点。

「ユーイ・コスモナッツ、突貫します! グローレール、覚悟!」

本能で察したのか雷穹龍は背後へ紫電を乱射するが、目くら滅法で直撃するはずもない。
狙い過たずランスが深々と突き刺さり、更にその体を地表目掛けて加速させていく。
最高速度×全体重×全力、それこそが流星の運動方程式だ。

轟音が響く。土煙が舞い上がる。
遂に雷穹龍グローレールは、その巨体を大地へと激突させたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アララギ・イチイ
空から降りてきたのねぇ
花火を空に打ち上げたかったのに残念だわぁ

地上でUCの主砲~発射準備よぉ
重魔力砲の魔力炉+砲機関部を限界駆動させて、発生した魔力は全て主砲~に注ぎ込むわぁ
正面の射線上に砲身の機能で仮想砲身、及びUCの射術~で加速・増幅リングの追加展開よぉ
チャージが完了したら、(スナイパー)で敵を狙いつつ、動きが止まる瞬間などを(見切り)、口から発射よぉ(発射後、余剰魔力の放出で髪が真っ赤に染まり火の粉の様な物が排出されます
避けられたら照射したまま(なぎ払う)ってみようかしらぁ?(危険性が無ければ

発射後は追撃の用意ぃ
強制冷却中の重魔力砲を投棄(後に回収)して、速射砲×2で追撃を仕掛けるわぁ



空中での砲撃後、墜落のふりをして地上へ降下したアララギ・イチイは、連結形態の重魔力砲を構え直しつつ空を見上げた。視線の先には、挟撃を受け降下を始めた雷穹龍の姿。
更に、ボードに乗った少女が背後へと旋回している。奇襲を掛けるつもりのようだ。

「この様子なら、支度する余裕は十分ありそうねぇ」

既に先制攻撃を叩き込み、更に敵の注意を惹いて味方の好機を作ることには成功した。
だが、まだ攻撃のチャンスは残っている。ならば、やらない道理はない。
世界を救うために――加えて、折角の強敵との戦いを最大限に愉しむために。

「魔力炉ア~ンド機関部、限界稼働……生成した魔力は全部チャージに回して、っと」

再砲撃のための魔力充填は、既に墜落を装っている間から開始されている。
加えて臨界ぎりぎりのフル駆動。少しでも早く、少しでも多く、少しでも強く。
同時に視線は上空へ。敵の更に上、急ターンして降下を開始する少女が見える。

「あのコースだと……まっすぐ敵ごと突っ込んだとして、このへんかしらぁ」

呑気な口調でも思考は迅速。雷穹龍の落下予想地点を瞬時に計算し、射線を修正する。
同時に重魔力砲の砲身部分に内蔵された機能が起動、空間上に仮想砲身を展開。
更に射術・強化砲撃を発動。仮想砲身の先に加速・収束リングが配置されていく。
当初から巨大であった重魔力砲が、もはや猟兵ひとりの武器とは思えぬ威容へと変わる。

「充填よし、射線よし。後はタイミング……こればっかりは目測でやるしかないわねぇ」

砲身の軸線上にグローレールはいない。正確には、まだいない。
当然だ。これから来るのだから。宇宙騎士の槍で突かれ、飛び込んでくるのだから。
あとは、彼女を巻き込まずに最大のダメージを与える、その瞬間を逃さないだけ。
高揚を感じながらも努めて冷静に。一瞬が永遠に感じる極限の中、ただその時を待つ。
そして。

「――綺麗な花火をご覧に入れるわぁ、雷穹龍さぁん!」

グローレールの巨体が隕石さながらに大地へ激突した。
僅か一瞬、だが確実にその動きが止まる。それも予想通り、アララギの射線軸上に。
迷うことなく放たれた魔力の奔流は仮想砲身とその先のリングで更に加速、強化され。
僅かに遅れて雷穹龍の放ったプラズマリングを易々と貫き、そのまま本体へ直撃した。
グローレールはプラズマを撒き散らしながら、莫大な魔力を浴びて苦悶の叫びを上げる。
 
「うーん、残念だわぁ。花火は空に打ち上げたかったのに、降りてきちゃうんだもの」

そう口に出した言葉とは裏腹に、アララギの表情は不思議と晴れやかだった。
あの苦痛に満ちた叫びが聞けたのなら、十分元は取れたというものだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

田抜・ユウナ
高いとこで龍の墜落を見ながら、
「絶景かな絶景かな……っと!」
雷撃を飛んでかわし、クルリと回って着地。
「もう一息、ね。がんばって」
と背を向ける。
…手を貸さないのかって? もうやってるわよ。

すでに仕込みは終わってる。
墜落の衝撃で【レプリカクラフト】で作った罠が発動。
地面や近くの樹木、建物に仕掛けていた無数のワイヤーロープが飛び出し、雷龍を縛り付ける。
さながら、小人の国で拘束されたガリバーのごとし。


ユーイ・コスモナッツ
さすがにタフですね
相当な深手を負っているはずなのに、
雷の勢いはあまり衰えていないみたい

油断したら負ける
怯んだら押し返される
最後の一瞬まで、力を尽くしますっ

流星の運動方程式で、もう一度空へ
ここから急降下してもう一撃……なんて、
同じ手が通用するとは思えない
勢いまかせに突っ込んだら、
今度こそ撃墜されてしまうでしょう

だから、それを逆手にとります

同じ角度で突っ込んで、
グローレールの反撃を誘います
ぎりぎりまで引きつけて回避、
それと同時に突撃槍を投げつけます

騎乗と空中戦、それと勇気を頼りにして

投げた槍が命中してもしなくても、
すぐに剣を抜いて、
続く攻防に備えます



ユーイ・コスモナッツはランスを引き抜くと同時に、反重力シールドで舞い上がった。
その直後、膨大な魔力の奔流が雷穹龍を飲み込む。
地上で待ち構えていたアララギの砲撃。それも空中戦の時とは違う、最大出力の。
攻防一体の反重力シールドで衝撃の余波を凌ぎながら、ユーイは爆煙の中に目を凝らす。
 
「……流石にタフですね」

思わず声が漏れる。既に並のオブリビオンなら絶命して然るべきダメージのはずだ。
しかし雷穹龍は、傷つきながらも決して戦意を衰えさせていない。
全身から迸る雷霆の轟きが未だ健在である事実が、それを雄弁に物語っている。

(油断したら負ける、怯んだら押し返される! 最後の一瞬まで、力を尽くしますっ!)
 
慢心も怯懦も、抱いた時点で即座に命取りとなる。心が負ければ、すなわち負けだ。
シールドに乗って再加速。ユーイは一気に天空へと駆け上がっていく。
雷穹龍が唸り声を上げ、その軌跡を目で追う。その瞳に宿るのは、怒りの稲妻。
雷霆を天から地へと落としめた者を、次こそ仕留めるとばかりに紫電が勢いを増す。

「ブースト・オン!『流星の運動方程式(フルアクセルシューティングスター)』!」

天空で身を翻し、先の突撃をなぞるように急降下を開始する。
ヴァルキリーランスによる最大加速での一撃。今度こそ致命的だ、当たりさえすれば。
だがグローレールは嘲笑うように吠えた。漲る雷電が、無数の稲妻となって放たれる。
それはまるで、馬鹿正直な突撃など二度は通用しないと証明するように。

「――そう、同じ手が通用するとは思えない。だから、それを逆手に取ります!」

ユーイも、当然敵が対応してくるだろうことは予想していた。
だからこその陽動。敵の攻撃を誘い、不意を討って更なる一撃を加えるための。

だが……思った以上に敵の反撃が激しい。向かい来る紫電を掻い潜るのが精一杯だ。
それどころか、ユーイの目が捉えたのは、雷穹龍が再び飛び立とうとしている姿。
冷や汗が流れる。今飛ばれたら全てが水の泡だ。阻止しないと、でもどうやって――

しかし、何かが弾けるような音と共に、ユーイはそれが杞憂だったことを悟る。
グローレールの巨体が、無数のワイヤーで絡め取られていく。トラップだ。
でも誰が? ユーイも仲間もそんな余裕はなかった。
ならば可能性はひとつしかない――グリモアベースから新たに到着していた、援軍だ。
勝機が見えた。勇気を頼りにして、ユーイは渾身の力でランスを敵目掛けて投擲した。

 ▼ ▼ ▼

戦場となっている山道から石段を上がった先、雷殿寺の山門の上。
黄昏の信徒戦ではセルマが狙撃地点に選んだ屋根に、今は一人の少女が腰掛けていた。
黒髪に燃えるような赤い瞳。そして尖った耳。エルフ。異世界からの来訪者。
田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)は、悠々と下界を見下ろしていた。

「絶景かな絶景かな……っと!」

雷穹龍が紫電を撒き散らしたのを目視し、流れ弾を宙返りで難なく回避。
軽やかな身のこなし。空中でひねりを入れて、再び屋根の上へ華麗に着地する。
危ない危ないと一息つき、また腰を下ろしてから、ユウナは改めて戦場を見やった。

(仕込みは万全。砲撃で起動のタイミングがずれた時はちょっと焦ったけどね)

ユウナがグリモアベースからこの世界に転送された時、既に雷穹龍は実体化していた。
だが彼女が選んだのは、既に敵と交戦している猟兵達に直接加勢することではなかった。
むしろ敵の目がそちらに向いている時だからこそ、出来ることがある。
刃を握るだけが戦いではない……田抜・ユウナはそれを誰よりも理解しているから。

ユウナは苛烈な攻撃の応酬、その合間を縫うようにしてトラップを仕掛けていった。
レプリカクラフトの仕掛け罠。地形の利用によって最大効果を上げるような配置だ。
仕事を終えた時点で逃げ足を活かし離脱、今はこうしてその瞬間を待っている。
ユウナはもう一度、空を見上げた。その目に、稲妻の嵐へ立ち向かう少女の姿が映る。
 
「もう一息、ね。がんばって」

それだけ言って、立ち上がる。同時に、立て続けに何かが弾ける音がした。
トラップの起動音。グローレールがその巨体を動かしたことで、一斉に発動したのだ。
喩えるならガリバー旅行記の挿絵のように、無数のワイヤーが雷穹龍を縫い止めていく。
既にかなりのダメージを受けたグローレールに、引きちぎって飛び立つ余力はあるまい。

迎撃が弱まった隙を突き、少女騎士が投擲したランスが雷穹龍の右目に突き刺さった。
苦痛に叫ぶ敵に相対して抜剣する少女の姿を見届け、ユウナは背を向けて歩き出した。
そのまま振り返ることなく、片手を上げてひらひらと振る。
そう、もう一息。がんばって。心の中で声援を送り、彼女は戦場を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
うーん、大問題だわぁ
決め技?を使っちゃたから、次はどんな攻撃手段を使えばいいのかしらぁ?(緊張感無し

とりあえず速射砲×2に徹甲弾(鎧砕き・鎧無視攻撃)装填して左右の砲で交互撃ち(2回攻撃)よぉ
少しは離れた場所で味方を(援護射撃)するわぁ

敵の動きが鈍ったら、つい先日完成したこんな攻撃(決め技)を仕掛けるわ
テストもしてないからどんな威力になるのかしらぁ
無窮・刀塚を使用、増やす対象の装備は刀類コレクション、作り出された本数は4000本かしらぁ?
(串刺し・傷口えぐり・マヒ攻撃・生命力吸収)など様々効果を付与して(追跡・誘導弾)で敵に全てぶつけるわぁ
凄い敵みたいだし、コレクションの代物に箔が付きそうねぇ



雷穹龍グローレールは、神格級とまで称された雷霆の化身。
完全な形で召喚されてさえいれば、あるいは相当な苦戦を強いられたに違いない。
だが猟兵達は、儀式を阻止し、信徒達を退け、遂に雷を地に追い落とした。
――決着の時が、近付いている。

「うーん、大問題だわぁ。次はどんな攻撃手段を使えばいいのかしらぁ?」

そんな状況とは無縁のいつも通り気楽な口調で、アララギは一人呟いた。
何しろ、最大出力の重魔力砲に持てる力を全て注ぎ込んだ直後だ。
今も振り乱した赤い髪から、余剰な熱を放熱するように魔力の残滓を舞い散らせている。
オーバーヒート寸前の重魔力砲は一旦分離させ、代わりに速射砲を空中に配置。
仲間を支援するべく射撃を加えながら、グローレールの巨体を見据える。

(誰がいつの間に仕掛けた罠か知らないけど、おかげで大技でもいけそうねぇ)

今や雷穹龍は、四方八方から伸びるワイヤーに絡め取られて身動きを封じられている。
思い通りに力を発揮できない苛立ちからか、轟くような唸り声を上げて身悶えている。
その右目には、ユーイ・コスモナッツの投擲したランスが深々と突き刺さっていた。

「絶好のチャンスではあるんだけどぉ……あらぁ?」

視線の先で膨れ上がる熱量。グローレールの周囲の大気が高電圧で電離し始めている。
雷霆光輪。超高熱のプラズマリング。この状態でも、まだ放つ余力があるのか。
いや、雷穹龍にとっても賭けに違いない。全身のワイヤーを焼き切れるかどうかが。
再び空へと舞い上がることさえ出来れば――その一念が傷ついた体を動かしているのだ。
 
「つい先日完成したばかりで、テストもしてないんだけど……やるしかないわねぇ!」

アララギは決断する。仕掛けるなら、今。飛び立つ前に仕留めるしかない。
速射砲を異空間に格納。そしてこの一連の戦いで初めて、彼女は刀を抜いた。
それも一本ではない。二刀流とか三刀流とか、そんな次元の数ではない。
その数、二百本。異空間に保管しておいたコレクションを全て開放する。
そして……ユーベルコード。最後の切り札。その二百本の刀剣を、更に複製する!

「っ……少数ならまだしも、大量に複製すると頭が痛いわぁ……!」

脳が軋む。大技を立て続けに放った体が悲鳴を上げる。だが、躊躇う理由はない。
いっそ龍を討てばコレクションに箔が付く良い機会だと、前向きな考えがよぎる。
アララギは片手を振り上げた。数千本に及ぶ刃が一斉に舞い上がり、雷穹龍を包囲する。
不可視の狼に浮遊砲台。遠隔操作は十八番だ。その経験の全てを、この一撃に。

「これで幕引きよぉ! 無窮・刀塚(ムキュウ・カタナヅカ)!」

空を切り、掲げた手を振り下ろす。その瞬間、滞空していた刀剣が一斉に降り注いだ。
その一つ一つにありったけの魔力を注ぎ込まれた刃が、続けざまに雷穹龍へ殺到する。
あるいはグローレールが万全な状態であれば、迎撃することも可能だったかもしれない。
だが度重なる傷を負い、地に縛り付けられ、片目を失った今、もはや為す術はなかった。
全身に突き立つ刃、刃、刃。誰もが確信する。これで、決着だと。

雷穹龍が吼えた。その全身に一瞬、雷電が膨れ上がり……だが、それまでだった。
轟きの残響を残し、雷穹龍グローレールは、実体を失い稲妻と共に大気へ散っていった。


 ▼ ▼ ▼


戦いは終わった。雷穹龍の脅威は去り、黄昏秘密倶楽部にも大きな打撃となっただろう。
参拝客については、UDC組織から連絡が入った。保護した人々は、みんな無事だと。
ただ、UDCに関する秘密を守るため、彼らには記憶消去銃が向けられることになる。
恐らく人々は猟兵達のことを忘れてしまうだろう。それは寂しいことだろうか?

いや、そうではないと、雷殿寺の境内を歩きながら猟兵達は思う。
この寺にはこれからも、大勢の人々がそれぞれの思いと共に訪れるだろう。
確かに猟兵達は、この世界の人々がこれから生きていく未来を守ったのだ。

折角だからお参りしてから帰ろうかと話しながら歩く猟兵達の目に、五重塔が映る。
遠雷は、既に遥か彼方。
これからもこの塔は、訪れる人々を見守っていくだろう。


                         【遠雷へと捧げる供物】終
  

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月13日


挿絵イラスト