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精霊達の輪舞曲

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●前奏
 アルダワ魔法学園の学園迷宮に潜む災魔、通称オブリビオン。奴らは迷宮に封印されてはいるものの、大人しく封印されている訳ではない。常に迷宮から抜け出そうと、或いは迷宮を変化させて自分だけのテリトリーを作っている。
 フロアの一角、誰も使用してないその場所を根城とした災魔は配下を増やして侵攻の準備を着々と進めている。人の寄り付かない、元より人のいないこの場所は誰にも知られず災魔にとって都合のいい場所の筈だった。そう、それを見ていた小さな彼らさえいなければ。

●序曲
「つーわけで、ほらよ。資料」
 集まった猟兵達の前に投げ捨てられた紙の束。投げ捨てたのはグリモア猟兵である木詞・真央(壊レタ契・f10513)だ。
 猟兵達は資料を受け取って説明を求めると、彼は面倒くさそうにしながら自分の資料を捲り口を開いた。
「場所はアルダワ魔法学園の迷宮。今回お前らにやってもらうのは災魔退治だ」
 そうして今回の事件と予知の内容を話し始める。
 迷宮のフロアに一匹の災魔が住み着いている。野放しにしておくと何かしでかす危険があるため今のうちに討伐して欲しい。今なら逃げられること無く接敵することが可能だろう。
 淡々と説明をしながらそのためにやって貰いたい事があると言う。
「お前達には扉に封印をかけている精霊達を楽しませてもらいたい」
 首を傾げる猟兵達を無視して真央は話を続ける。
 精霊達は災魔へと通じる道の扉を封印して通れなくしているようだ。その封印は精霊達にしか解くことが出来ず、又この道を除いて災魔へと辿り着く道も発見されていない。加えて予知にない道を見つけたとしても、その時は何が起こるか分からないためオススメできない。
 幸い精霊達は敵対的ではなく、むしろ友好的と言える。彼らと仲良くすることができれば扉の封印を解いてもらうことが出来るだろう。
 精霊達は無邪気で楽しいことが大好きだ。何せ彼らは現在お茶会の真っ最中。実際にお茶を口にしているのかは定かではないが、様々な精霊が集まり楽しんでいるのは確かだ。
 ただ頼み込むだけではきっと彼らは納得してくれないが、楽しませてくれればそのお礼として封印を解いてくれる。
「何度も言うが、精霊達を楽しませろ。それが予知で見た扉を開く鍵だ」
 尤も、楽しませるのは何も卓越した技能だけが全てじゃない、と続けた。
 精霊達は純粋だ。卓越した技能だけでなく、楽しませようとする心が伴っていれば、例え未熟であろうとも満足してくれるであろうと。
 精霊達にも個性があり、好き嫌いがあり、千差万別十人十色。体を張った芸を好む者、技術力を利用した芸を好む者、はたまた自分達の知り得ない未知に心惹かれる者。
 様々な世界から集った猟兵ならばこの程度は余裕だろう、そう言って説明を締め括った。
「じゃ、後はよろしく頼むよ猟兵諸君」


天路
 初めまして、天路と言います。
 第六猟兵でMSとなり初めてのシナリオとなります。
 至らぬ点も多々あると思いますが皆様と一緒に楽しんでいけるよう頑張ります。

『シナリオについて』
 シナリオの難易度はノーマルとなっています。
 余程のことが無い限りは失敗のない難易度となっていますので安心してご参加ください。
 執筆速度には波があるのでご了承を。

 第一章では精霊達と遊んでいただきます。
 精霊達を倒しても先へは進めないのでお気を付けください。

 プレイングはキャラ口調、台詞は「」等で書いていただけると参考にしやすく助かります。
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第1章 冒険 『暇を持て余す精霊達と遊ぼう』

POW   :    身体を使って挑戦。<楽器演奏>や<歌唱>など、場を和ませて楽しんでもらおうか。

SPD   :    技術を使って挑戦。<料理>や<パフォーマンス>など、技術を使ってご機嫌を取ってみようか。

WIZ   :    知恵を使って挑戦。<世界知識>や<優しさ>など、感性や知恵で満足させてみようか。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イベリア・オディビエント
精霊さん達に楽しんで貰えるといいのかぁ。
お披露目するのはちょっと恥ずかしいけど、私の獣奏器で【楽器演奏】をさせてもらうね。
いつもは一緒に戦ってもらう動物達に向けて演奏してたけれど、今日は精霊さん達に向けて奏でるよ。
クラリネットだからそんなに派手な音は出ないけれど、楽しんでもらえたらいいな。



精霊さん達に楽しで貰えるかなぁ。イベリア・オディビエント(引っ込み思案な処刑人・f02463)は精霊達のお茶会を前に不安そうにしていた。
 そんなイベリアの様子に気づいた妖精のような姿の精霊達が何匹か集まってくる。精霊達はそんな彼女の姿を珍しそうに眺めたり、手にしているクラリネットに興味を示していた。
 イベリアはまだ残っている不安や照れを振り払うように、グッとクラリネットを持つ手に力を込めて。
「お披露目するのはちょっと恥ずかしいけど、精霊さん達、わたしの演奏を聞いて」
 普段は共に戦う動物達にしか聞かせることのないクラリネットの獣奏器による楽器演奏。動物達と意思疎通をする為に奏でていたその旋律を、今は精霊達を楽しませるために。
 ちゃんと楽しんで貰えるかな、派手な音は出ないけれど大丈夫かな。だが、そんなイベリアの不安は杞憂に終わったことを知らされる。
「~~♪」
「……!」
 先程集まっていた精霊達は皆、イベリアの演奏にしっかりと耳を傾けていた。それだけでなく、演奏に釣られて新たに精霊達が集まり、演奏に合わせて空を舞い始める者や声はなくとも歌を歌う者も現れた。
 そこはまるで精霊達の合奏団。クラリネットの旋律を主体に精霊達が思い思いの音を演奏に乗せていく。
 一頻り演奏をし終えると、イベリアは精霊達に向かってペコリとお辞儀をした。
「精霊さん達、楽しんでもらえたかな?」
 彼女がそう聞くと、精霊達は顔を見合わせた後、彼女へ向かって笑顔を浮かべた。
「よかった。わたしも、楽しかった。ありがとう、精霊さん達」
 そう言った彼女もまた、精霊達へと笑顔を浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエラ・アルバスティ
「精霊さんと仲良くしに来たよ!」

勢い良く飛び出して行ったはいいけど私は駆けだし猟兵!
出来る事は限られてる……と思ったら大間違いなのだ!!

「ずん……ずずずん♪」

口で臨場感あるリズムを口ずさみながら手品師みたいな雰囲気の踊りをする
歌と踊りが最高潮になってきたところでユーベルコード発動!

「じゃじゃーん!! レッツ【ガジェットショータイム】 !!」

何が出るんだろう、分からない! 分からなかったら使い方を精霊さんと考えよう!
精霊さんたちが喜びそうな物ならプレゼントしちゃおう!



「精霊さんと仲良くしに来たよ!」
 そう言って勢いよく飛び出してきたのは駆け出し猟兵のシエラ・アルバスティ(自由に生きる疾風の白き人狼・f10505)だ。
「ずん……ずずずん♪」
 駆け出しの自分に出来ることは限られている……何ていうことはなく。自分のやれることをしっかり理解していた彼女は、口で臨場感あるリズムを口ずさみ、手品師がするような雰囲気の踊りをする。
 そんな彼女の様子に次第に精霊達は集まってきて、独特な雰囲気を醸し出すシエラに注目していた。
「さあさあ精霊さん達お立ち会い。これから飛び出るは可愛いガジェットちゃん。どんな姿かは出てからのお楽しみ。と、いうことで!! じゃじゃーん!! レッツ、ガジェットショータイム!!」
 集まる精霊、最高潮に達する歌と踊り、テンションが上ってきたところで満を持して発動ガジェットショータイム。発動すると同時に周囲は水蒸気に包まれた。
 本人にも何が出るかは分からない、ましてや戦闘時でないこの場ではどういった姿になるのか。それは誰にも予想がつかない。
 皆の視線が集まる中、水蒸気の中から現れたのはテーブルと箱。それは手品の定番のようなアイテムだった。
 使い方を考えているシエラをよそに、何匹かの悪戯好きな精霊が箱の中へと飛び込んでしまった。慌てて彼女は箱を開けて精霊達を出そうとするのだったが。
「あれ? あれれ!? 精霊さん達どこいったの!?」
 箱の中には飛び込んだはずの精霊の姿がなかった。それを見ていた他の精霊達の間にもどよめきのようなものが走る。
 どこに行ったのと箱やテーブルを確認していたシエラは気づいた。テーブルに微かに亀裂が入っていることに。それでこのガジェットがどういったものか合点がいき。
「でれれれれれ……」
 口でドラムロールを口ずさみながら箱を元の位置に戻す。ドラムロールに合わせて自然とテーブルから水蒸気の演出がされて。
「でん!!」
 再び箱をどけるとそこには先程までいなくなっていた精霊が姿を表しているではないか。その演出に見ていた精霊達も「オオー」と思わず歓声のようなものを上げる。
 思っていた形とは少し違ったかもしれないが、精霊達が楽しんでくれたのでよかった!とシエラは一安心した。

成功 🔵​🔵​🔴​

羽久依・集葉
うおお……拙者忍者でござるので、どうにもこうにも芸は苦手でござる……
が、そんな弱音を吐いてる場合ではないでござるね!
見事1番自信のある【SPD】で精霊たちを楽しませてみせようぞ!でござるよ!!

とりあえず林檎をいくつか持ち込むでござる。
そして『早業』と【錬成カミヤドリ】をもってして、立体的な動物達を掘り創るでござるよ!
ウサギやねこ、馬なんかを目の前で作ってみせれば満足してくれるでござるかね?


風魔・昴
よし!私は私の世界の料理を作って精霊さん達に楽しんでもらうよ
どんなのが好きかわからないから、和洋中で代表的なものを一品ずつ大皿で作っておくわね?
そうすると気に入った料理を精霊さんがお腹いっぱい食べる事が出来ると思うから。
そうだ、サラダ類も何種類か作るね?
精霊さん達が気に入ってくれると嬉しいな



やってきた猟兵達が楽しいことをしてくれる。そう精霊達の間で伝わったのか、傭兵達の元へと精霊達が集まってきた。
「うおお……!? 拙者忍者でござるので、どうにもこうにも芸は苦手でござる……!」
 ワラワラと集まってくる精霊達に羽久依・集葉(トンチキシノビガール・f03950)は思わず後退る。むしろ忍者は芸に秀でているのではないかと思わなくもない。
「ねぇ、忍者さん。よかったら私達と一緒に食事をしない?」
 その様子を見かねて助け舟を出してきた風魔・昴(父の心と星の力を受け継いで・f06477)。
 集葉はかたじけないでござると言いながら喜んで申し出を受け入れ、精霊達と一緒に料理が盛り付けられたテーブルへとついた。
「私は私の世界の料理を精霊さん達に食べて貰おうと思って、和洋中で代表的な物を用意したよ」
 昴が用意したのは和食に天ぷら、洋食にハンバーグ、中華に八宝菜の和洋中3種である。取り分けやすいように大皿に盛り付けられ、小皿と箸が配られちょっとしたピクニック状態だ。
 妖精のような姿をした精霊達は料理が珍しいのか、大皿の周りに集まり不思議そうに眺めている。
 そんな事はお構いなしに集葉はいただきますと手を合わせ、近くにあった天ぷらに手を付ける。サクサクとした衣、プリッとした海老の食感が堪らないでござる~なんて言いながら昴の料理に舌鼓を打っていた。
 精霊達は集葉の見よう見真似で手を合わせ、それから同じ様に天ぷらを取り始めた。最初は食べるということに疑問を持っていたようだが、一口食べると目を輝かせて次から次へと口へ運んでいった。
「ん~天ぷらも美味しいでござるが、このハンバーグも絶品でござる。食欲をそそるソースの香り、噛み締める度に溢れ出てくる肉汁、これはもうご飯がすすむでござるな! おかわりでござる!」
 既に当初の目的を忘れている集葉。精霊達を楽しませる為に用意した料理をパクパクと食べていく。対抗心を燃やしているのか定かではないが、精霊達も負けじと料理を食べ進めていく。
 だが、その顔は一様に笑顔だ。初めて見る料理に不安そうにしていた精霊達は皆、顔をほころばせている。
 食事を楽しんでもらえているようで、昴も釣られて顔をほころばせた。
「いやー満腹でござる。ごちそうさまでござる!」
「はい、お粗末さまでした」
「しかし拙者何かを忘れているような……はて?」
「羽久依さんも何か精霊さん達を楽しませる物を用意していたのでは?」
 昴の指摘にハッとする集葉。彼女の言う通り、自分は精霊達を楽しませる為にここに来たのだ。決してピクニックに来たのではない。自分より忍者っぽい名前を持つ彼女に負けたままではいられないと謎の対抗心を燃やして集葉は立ち上がった。
「そうでござる、拙者は忍者でござるので! 食後のデザートとして自慢の早業をご覧に入れるでござるよ!」
 集葉は取り出した林檎を片手に、もう片方の手にはクナイを握る。目を閉じて意識を集中させ、目を見開くと同時に十八本の複製されたクナイを以って林檎を彫刻していく。
 犬、猫、兎と小動物に始まり馬や虎、果には象から翼を羽ばたかせる白鳥まで表現しきって見せた。
「流石忍者さん。見事な早業ね」
「ふっふっふ、それほどでもないでござる! これには精霊たちも満足してくれたでござるか?」
 昴の賛辞に上機嫌になった集葉は精霊たちに向き直る。精霊たちの驚く顔が目に浮かぶ、そう思っていた彼女だが。
 精霊達は林檎を先程の食事の続きと思ったのか、モグモグと彫刻された林檎を食べるのに夢中になっていた。羽先まで見事に掘られていた白鳥の翼もお構いなし。思い思いの場所を千切っては食べていた。
「精霊さん達、喜んで食べていますね」
「ま、まあ、喜んでもらえたなよかったでござる、ので!」
 食後のデザートは文字通りデザートとして、無邪気な精霊達に消化されるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ネオン・エルバイト
この場に留まっている彼らに、別の世界のお話をしてみようと思います。とはいえ、世界の概要だけで食いつくと思うのは楽観的でしょうね。
なので、エンターテイメント性を持ちつつも話に興味を持ってもらえるように紙芝居を持ち込んでみる事にします。
内容ですが、『桃太郎』とか『解放軍のコロニー解放』とか『ワイバーンを狩った冒険者達』とか……そういった各世界の昔話や民話、英雄譚を紙芝居にしてあります。
精霊たちが扉の封印を解いても良いと思えるように、紙芝居を一つ終えるごとに「このように、悪いやつらを倒すのが僕たち猟兵なんですよ」と、猟兵の強さもアピールしますね。


葉月・零
うーん、俺ができそうなことってなんだろ……
あ、折角ならあの話をしてみようか。

精霊たちへ攻撃するため
ではなく、興味を引いてもらうためにロッドを花弁にして

興味を持ってくれる子がいたら話しかけてみる

この花弁、綺麗でしょ

どこかの国に春になると咲く花があってね……

その花が咲くと、たくさんの人が集まって思い思いに花を楽しむんだよ

まぁ、中にはその木の下にはー、なんて無粋なこと言う人もいるけどね。

ん?もちろん、俺もその花が好きだよ。ほんの短い間だけ咲いて人を楽しませることができるのってすごいよね

他にもいろんな種類の花が有るから知る限りの話が出来れば。

楽しんでもらえるかな?



「うーん、俺が出来そうなことってなんだろ……」
 葉月・零(オラトリオの死霊術士・f01192)は他の猟兵が行った催しを見て改めて頭を捻る。人に見せれるような一芸も小道具も持ち合わせてはいないが、何か興味を引けるものはないか、と。
 そんな葉月に一人の青年が声をかけた。
「そこの方、もしよろしければ私と紙芝居をしませんか?」
 声をかけてきたのはネオン・エルバイト(クリスタリアンの人形遣い・f03023)で、その手にはいくつかの紙芝居が用意されていた。
 それは零も知っている童話に始まり、自ら作成したであろう英雄譚や冒険譚。自分の知らない物語に興味を惹かれてか、零はネオンの申し出を受け入れていた。
 気づけば二人の周りには穏やかな雰囲気に引き付けられたのか、はたまた紙芝居に興味があったのか、妖精のような精霊や光球状の精霊達が集まっていた。
「あまりお客さんをお待たせするのも申し訳ないですし、そろそろ始めましょうか。台詞部分をお願いしてもよろしいですか?」
「分かりました、やってみましょう」
 そうして落ち着き払った二人の青年による紙芝居が始まった。
 最初に選んだのは桃太郎。UDCアースの日本出身であれば知らない人の方が少ない、それくらいに有名な童話だ。
 だがここにいるのは精霊。何も知らない精霊は二人の語る物語にぐんぐんと引き込まれていった。
「……こうして桃太郎は鬼を退治して、平和を取り戻しました。めでたしめでたし」
 ネオンがそう締めくくると、精霊達はワイワイと語り始めた。桃太郎に感情移入していた精霊が多いのか、無邪気な性質故にシンプルな勧善懲悪が好きなのか、盛り上がっている精霊の数が多い。
 自分達猟兵もこの桃太郎と同じ悪者を倒しているんですよ、とアピールしようと思っていたネオンだが、物語の余韻が冷めやらぬ様子を見てもう少し待ちましょうかと隣の雫に苦笑いを零す。
「この紙芝居は全て自作ですか? 見たことのない物語が混じっていますが」
 雫が指したのは英雄譚や冒険譚の物語。読書好きの彼としては自分の知らない物語は気になって仕方がなかった。
「ええ、そうですよ。これらはそれぞれの世界での童話や民話のようなものです。世界の概要だけを伝えても面白くないと思い、少々エンターテイメント性を加えてみました」
「なるほど、確かにその通りでしたね」
 精霊達の盛り上がり様を見れば、ネオンの思惑が正しかったことが分かる。
 それなら、と。取り出したロッドの先端に綺麗な花弁を咲かせた。
 民話で思い出したとある国の花の話。
 その花はほんの短い間だけしか咲くことがない。だからか、その花が咲くと人々は花の下へと集まって楽しい一時を楽しむのだとか。そう、今こうして過ごしているように。短い間だけど、人々を楽しませることが出来るその花が好きだから、良ければ皆にもそんな花があることを知って欲しくて。
 その花だけではない、世界にはもっと色んな種類の花がありますよ、と。
「ネオンさんの紙芝居の後では少々インパクトに欠けてしまいますね」
「いいえ、そんな事はありませんでしたよ。そうですよね、精霊さん方」
 そこにはいつの間にか零の語りに耳を傾けていた精霊達の姿が。桃太郎の話を聞かされた時のような盛り上がりはなかったが、精霊達の様子は決してつまらなそうなものではなく。綺麗な花が一面に咲く、その様子に思いを馳せている。そんな様子が見て取れた。
 零の語りは確かに精霊達に届き、その心を楽しませていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『精霊をアイした術士の亡霊』

POW   :    『鈴生る月光の姿』で踊れや踊れ
【精霊の光球 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    『躍るエンブ』を我の前に示せ
【吹き荒れる精霊の焔嵐 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    『アナタのシセン』は我と共にある
【『精霊』が視線を 】を向けた対象に、【風鼬乱舞の塊(ウィンド・エッジ)】でダメージを与える。命中率が高い。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


精霊達は舞う。扉を潜る猟兵達に応援して。
 精霊達は歌う。扉を潜る猟兵達に祝福して。
 精霊達は願う。扉を潜る猟兵達に希望して。
 彼らなら救ってくれる。
 彼女らなら解き放ってくれる。
 迷宮に囚われた悲しい彼の魂を。
ネラ・イッルジオーネ
魂の浄化でしょうか。一つや二つ多く出てきても、全て対処させて頂きます。

敵の攻撃は『オーラ防御』である程度は軽減しながら、私のユーベルコード『ラ・ルーチェ・ディラ・フィーネ』を『高速詠唱』で唱えて使用します。

大規模に無数に出てくるので、外れたものは他の敵にも被害が及ぶか、それともその部屋を無残に壊し尽くすかは、私は見なかった事にします。

敵が近づいてきた時は『属性攻撃』を付与した杖で殴ります。


ネオン・エルバイト
なるほど、精霊が守る先にいたのは縁のある方でしたか。
とはいえオブリビオンであり過去のもの、ここは去っていただきましょう。

僕は、敢えて敵の攻撃を防御しつつ受けます。ダメージの少ない受け方をするためにも、命中はさせますがフェイントで当てさせる場所をある程度こちらで操作しておきましょう。
無事敵の攻撃をしのいだら、他の方との戦闘で僕から注意をそらした時か……タイミングよく他の方と平行して戦わなければ攻撃のあとの隙をまたフェイントでつくるかしてユーベルコードで作った宝石を砕いて攻撃をお返ししますね。



「魂の浄化、でしょうか」
 ネラ・イッルジオーネ(サンツィオーネ・ディ・アニマ・f06949)はポツリと呟いた。
 精霊に封印されていた扉を抜けた先、辿り着いたのは地下に不釣合いな自然豊かな広場。
 外にいるかのような錯覚を取り払ったのは、この場に不自然な存在である青年の姿。学生服に身を包んだ姿は一見アルダワ魔法学園の生徒のようだが、この区画に生徒が紛れ込んだという情報はない。
 足りない情報から現状を把握したネラは、眼前にいるのが迷宮に出る亡霊の一種であろうと判断した。
 故に浄化。力で伏せることによってこの地から解放しよう。
「―――!」
 ネラが杖を構えて戦闘態勢を取ると、亡霊もここに侵入してきたものが敵対者であると気づいたのだろう。声にならない悲鳴のような声を上げ、周囲に自身と同じ姿をした複数の亡霊を喚び出した。
 ネラの近くに喚び出された亡霊の一体が掴みかかってくるが、既に戦闘態勢を取っていた彼女はその長杖で軽々といなし、魔力を込めた長杖を無防備な亡霊の身に振り下ろして光属性の一撃を叩き込んだ。
 淡々と、冷静に、乱れの一つもない綺麗な所作で。
「なるほど、精霊が守る先にいたのは縁のある方でしたか」
 そこに追いついてきたネオン。先程まで精霊と対話していた彼は亡霊を見て、一瞬惜しむ様子を見せる。
 だがそれも一瞬の事。猟兵としてこの場にいる以上、オブリビオンの存在は看過できない。ここからは去ってもらう、と、ネオンもまた亡霊と対峙して戦闘態勢を取る。
 宙においた手は鍵盤を叩き、亡霊に捧ぐレクイエムを奏で始めた。
 無論実際に演奏しているわけでもなければ、亡霊に取って邪魔をする存在が増えただけに過ぎない。
 ――目の見えない、アナタのために、私が見てアゲル。
 亡霊に取り付く契約精霊の少女が二人に視線を向けたその時だった。突如二人の間を一陣の風が過ぎ去る。視認し辛い空気の塊、続けざまに鎌鼬の如く襲いかかる攻撃に対して、咄嗟にオーラ防御で守りを固めたネラが前に出て攻撃を防いだ。
「お怪我はありませんか?」
「ありがとうございます」
 攻撃を逸らそうと考えていたネオンは、守られたことに感謝しつつ手元に視線を落とす。まだ足りない。そう判断したネオンは僕が出ます、そう言ってネラの影から飛び出した。
 複数の亡霊が放つ刃の中を巧みに掻い潜るのは彼の持つ人形。空気を取り込んだ人形は人に似た声で哭きながらに疾駆し、精霊とネオンの間を舞う。
 視界を妨害されたことで正確な攻撃は飛んでこなくなったものの、あくまでその場凌ぎ。致命傷は避けても小さな傷がネオンを着実に蝕んでいった。
 だが、それでいい。それこそが狙いだった。
 ネオンが何か構えている、ネオンが何か仕掛けてくる、気づけば亡霊の意識も精霊の視線もネオンを中心に捉えており、それこそが彼の狙いだ。
 直接的なフェイントから精神的なフェイント、何か来ると、そう思わせる行動を取ることで仲間を動きやすくするという目論見は見事に成功した。
「神々の魂。古の時より蘇り。我の杖に光となり集う」
 空間に響き渡る旋律。音の主は双魂のミレナリィドール、ネラ・イッルジオーネ。
 術式は高速詠唱にて最適化されている。紡がれる一句一句が魔力を有しており、詠唱が進み魔術が完成に近づくに連れて亡霊の周囲に彼女の魔力が満ちていく。
 慌てて詠唱を止めに入りウィンド・エッジを放つ亡霊だが、その動向をしっかりと見ていたネオンが今度は完璧に攻撃を人形で受け止める。
「天を舞う無数の剣。神光を纏い堕落せし魂を貫く」
 降臨するは終焉に導く光。輝く無数の剣が複数の亡霊を取り囲んだ。
 最早冷たい双眸から逃れる術はない。
 加えてもう一つ。ネオンの用意した手はこれだけではない。
「沢山の風鼬、ありがとうございます。くれるというのであればありがたく。しかるべき時に、お返ししましょう」
 ネオンの手元にキラリと光る宝石。既に亡霊の風鼬は彼の手中にあった。
 わざわざ危険を冒して前に出たのもこのため。最初から最後まで完璧に彼の目論見通りに導かれていた。
「ええ、今がその時です」
 言葉通り、受け取ったものをお返ししましょう。
 既に宝石は砕かれた。
 浄化の時は来た。
「――ラ・ルーチェ・ディラ・フィーネ」
「儚い鏡珠――」
 今ここに二人のユーベルコードは発動した。
 無数の風鼬乱舞の塊が、無数の神光を纏う剣が、為す術のない亡霊へと降り注いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

真宮・響
精霊を愛した男の亡霊か。精霊を扱う奏(f03210)と瞬(f06558)に取っては思う所あるだろうね。いつまでも彷徨っていてはいけないよ。

複数を攻撃する攻撃に長けている敵だから、奏でもカバーしきれないところもあるだろうね。せめて【目立たない】と【忍び足】で嵐と視線の攻撃からは逃れようか。隙を突いて【槍投げ】で遠距離から【先制攻撃】。上手くあたったらドラゴニックエンドを使うよ。


真宮・奏
精霊術士の方ですか。精霊を扱う私としては、何故この迷宮に囚われていたか知りたいところですが・・・もう苦しまなくていいのですよ。せめて、貴方を眠りにつかさせて差し上げますね。

複数攻撃が得手な相手ゆえ、カバーしきれないかもしれませんが、トリニティエンハンスで防御力を上げたうえ、【盾受け】【オーラ防御】を使用した上で【かばう】出来るだけ被害を少なくしますね。状況によっては【拠点防御】も併用します。


神城・瞬
・・・この彷徨う亡霊は私も成りうる可能性でしょうか。精霊を愛す気持ちは良く分ります。貴方が精霊を悲しい理由で使うのを、止めさせて頂きます。同じ精霊術士として。

ご生前は力ある術士だったのでしょうか。その攻撃は余りにも強力。その力に敬意を表し、【全力魔法】で【高速詠唱】で氷晶の矢を撃ちます。その攻撃の勢いを削ぐように【2回攻撃】で立て続けに氷の矢を降り注がせます。


風魔・昴
仲間との共闘・アドリブOK

この人が精霊達の主だった人なのね……
話はできるのかしら?
何故ここで捕らわれているのか、何をしたかったのか……
「貴方がやり残したこと、私達が果たすから任せてもらえないかな?」
できたら攻撃はしたくない。
仲間と共闘なら【七星七縛符】で攻撃を封じ込めて攻撃支援に
「攻撃を封じるわ。今のうちに……」
攻撃してきたならばエレメンタルロッドの精霊を使って応戦
「風の精霊、我が友よ。邪に捕らわれたものを浄化に導け!」


貴方がやり残したこと、私達が必ず達成するわね?
だから安心してね?



「――ーッ!」
 立ち込める土煙から姿を現す亡霊。
 無数の風鼬と剣によって作られた傷は軽いものではなく、亡霊に確かなダメージとして現れていた。少なくとも亡霊にこの敵は危険だと認識させるほどには。
 そしてそんな亡霊とは裏腹に、殆ど傷のない精霊は心配そうに亡霊の周りをくるくると回っていた。衣服や肌に多少の汚れはあれど、傷という傷はない。まるで誰かに守られていたかのように。
「貴方が精霊を愛す気持ちはその行動を見ても良く分かります。貴方が精霊を悲しい理由で使うのを、止めさせて頂きます――同じ精霊術士として」
 精霊の足元の土だけが抉れずに残っている。全方位した剣が届いていないということはそういうことなのだろうと。亡霊となっても精霊を愛する気持ちは残っている、そう受け止めた神城・瞬(清光の月・f06558)は沈痛な面持ちで亡霊を見詰めながらも、六花の杖を構える。
 氷の結晶のように透き通る、冷たく美しいその杖を。
「精霊を扱う私としては、何故この迷宮に囚われていたか知りたいところですが……もう苦しまなくていいのですよ。せめて、貴方を眠りにつかさせて差し上げますね」
 そして瞬に並ぶようにして精霊の力を込めたエレメンタル・シールドを構える真宮・奏(絢爛の星・f03210)。
 精霊術士として、精霊を扱う身として、精霊を愛している亡霊に思うところが無いわけではない。
 だからこそ、二人は亡霊に挑む。
 これ以上、悲しい呪縛に囚われないようにと。
「「貴方を救います!」」


 亡霊の腕が、足が、胴が、頭が、凍てつきヒビ割れては散っていく。
 複製された亡霊の数は今や最初の半分にも満たない。
 そうなったのも全ては瞬の放つ氷の矢によるものだ。
 生前は力ある術士だったのだろう。ならばこそ、その力に敬意を表して、全力の魔法で応えよう。それこそが手向けになると信じて。
 そんな思いから放たれたのは高速詠唱によって形成された氷の矢。周囲に冷気を振り撒きながら形成された何十もの魔法。それが一斉に亡霊に注がれたとなればただでは済まない。
 結果として、複製された亡霊の数を一気に減らすことに成功した。
 そして、その結果に導いたのは瞬だけではなく奏の働きもあったのだ。
 瞬が全力で魔法を放てるようにと、奏は瞬の盾としてその身を守っていた。
トリニティエンハンスによる魔力強化とオーラ防御で自らの防御力を高め、時には盾で受け止めて、時にはその身を盾にして、複製された亡霊の放つ風鼬にオーラ防御を削られながらも懸命に瞬を庇っていたのだ。
「大丈夫ですか、奏。あまり無理はしないでください」
「このために日々特訓してるんだよ。私に任せて。守ってみせるから」
 そう言い放つ奏に向けられる亡霊の杖。先端には今までいなかった光球の精霊。事前情報がなくとも、その態勢から放たれる攻撃の大まかな軌道はすぐに読むことが出来た。
 消耗した今の防御力では足りない。そう判断した奏は装備していた剣や杖を周囲に突き立てて、この場を簡易的な拠点と指定して拠点防御を発動させた。
 瞬に後ろから出ないように促して、構える盾により一層魔力を込める。
 大事な家族の為にも破られるわけにはいかない。
 ――『鈴生る月光の姿』で踊れや踊れ
 それは精霊達の舞踏会。
 四方八方、地面も、天井も、壁も、お構いなしに乱れ暴れ踊り舞う精霊達。
 無邪気に踊り飛び交うような精霊の突撃を奏はヴェール状に展開した防壁で耐え凌ぐ。
 このタイミングだと、確信を持って。

 ――ドスッ

 死角から放たれる一撃。
 赤熱に身を染めるドラゴンランスが亡霊の胸を穿っていた。
 ふらつく体を寄り添う精霊に抱きとめられ、精霊はドラゴンランスが飛んできた方角に視線を向け、それに合わせて複製された亡霊達も顔を向ける。
 そこには先の一撃で巻き上げられていた土埃を利用して、確実に隙きを突くために目立たず身を隠していた真宮・響(赫灼の炎・f00434)と先程精霊達に料理を振る舞って楽しい一時を過ごしていた昴の姿があった。
「よく頑張ったね、奏。さすがアタシの娘だ」
 グッと親指を立てる響に対して、守りきれた安堵からかその場にへたり込んだ奏は笑顔で返した。
 親子のやり取りを横目に見ながら、昴はゆっくりと亡霊へ歩み寄る。
(この人が精霊達の主だった人なのね……話はできるのかしら? 何故ここで囚われているのか、何をしたかったのか……)
 できれば戦闘を避けたい昴は亡霊との対話を試みる。
「初めまして、私は風間・昴。先程精霊さん達のお茶会にお邪魔させてもらいました」
 その言葉に先程まで激昂していた亡霊が反応した。その瞳は隠れているが、真っ直ぐに昴を見詰めているように見える。
 寄り添う精霊も主の反応を待っているのか、昴に視線を向けているが攻撃をする様子はない。
 真宮親子もその様子を見守っていた。亡霊達の動きには最大限の警戒をし、いつでも動けるようにしながら。
「精霊さん達はとても元気よ。私の用意した料理も美味しそうに食べてくれて、とても嬉しかったの」
 亡霊は動かない。昴の話を聞いているのか、ただ精霊という単語に反応しただけなのか。
 それでも昴は続ける。あんなに無邪気な精霊達の主が悪い人間ではなかったと信じて。
「貴方がやり残したこと、私達が果たすから任せてもらえないかな? 私は精霊さんや、貴方が傷つく姿を見たくないの」
 昴の願いに亡霊は静かに俯いた。
 肯定し頷いたかのように見えた、その時だ。
「―――!」
 再び亡霊の言葉にならない悲痛な叫びが空間に響く。
 雄叫びと共に胸を穿っていたドラゴンランスを抜きさり、そのまま近くにいた昴へと投げ放たれた。咄嗟の出来事に反応できなかった昴の身を素早く抱きかかえてドラゴンランスを躱したのは、響だ。
 精霊を扱う娘達には思う所があるだろう。そう思って昴の動向を見守っていたが、どうやら事は良い方向へとは転ばなかった。
「全く、いつまでも彷徨っていてはいけないよ。瞬!」
「……はい!」
 名前を呼ばれた瞬は再び全力の魔法を解き放つ。ここで敵の攻勢を完全に断つ。
「さて、これを見切れますか?」
 降り注ぐ何十にも及ぶ氷の矢。その威力は最早語るまでもない。
 残っていた亡霊の複製は一層されて、本体の亡霊と精霊だけがその場に残った。
 トドメを刺そうとドラゴンランスを拾った響が駆ける。
「攻撃を封じるわ。今のうちに……」
「ありがとよ!」
 もう言葉では止められない。
 それなら、これ以上苦しまないように。
 昴は自らの寿命を代償に、亡霊に放った護符に力を込めて、その動きを封じ込めた。
「これで終いだ! 喰らいな、ドラゴニック・エンドッ!」
 響の放ったドラゴンランスはその姿を変える。
 赤熱の鱗を身に纏い、獰猛な竜の姿となり亡霊へと襲いかかった。
 竜の顎が亡霊の体を噛み砕こうとするその瞬間。昴に向けて何事か呟かれ、亡霊の顔に笑みが浮かべられていた。
「……ぁ」
 そして昴の声が届くより先に、竜の顎が亡霊の体を噛み砕いた。
 赤熱の竜は炎となり、亡霊と寄り添う精霊を跡形もなく燃やし尽くす。後には灰すら残っておらず、響の一撃がどれほど強力だったのかが伺い知れる。
 そう、この部屋の亡霊は倒されたのだ。


 残るフロアボスが待つ奥の部屋へと猟兵は駆け出す。
 最後に残った昴は亡霊がいた場所を見詰める。
 あの時亡霊は自分に何を言ったのか、何故笑ったのか。
 疑問は残ったままだが、自分のやるべきことは決まっている。
「貴方がやり残したこと、私達が必ず達成するわね?」
 だから、安心してね。
 精霊をアイした亡霊さん。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『錬金術ドラゴン』

POW   :    無敵の黄金
全身を【黄金に輝く石像】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ドラゴンブレス
【炎・氷・雷・毒などのブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    アルケミックスラッシュ
【爪による斬撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に錬金術の魔法陣を刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「グルルルルァァァァ!!」
 迷宮内に響く咆哮。
 それは侵入者への苛立ち。
 操って配下としていた学生を倒された苛立ち。
 ドラゴンである自分がこんな迷宮に封じられているという苛立ち。

 全ての誤算は精霊達。
 精霊達があの亡霊となった学生を気に入っていたから。
 学生が死んでも精霊をアイしていたから。
 そして埒外の存在である猟兵に見つかったから。

 苛立つドラゴンは侵入者である猟兵を許さないだろう。
 今こそ決着をつける時だ。
真宮・響
亡霊となっても精霊を愛し、愛されていた奴。そいつの純粋な心さえ利用する・・その輝く姿さえ、その意地汚い心では錆びついてるようにしかみえないね。

石像になって防御を固めるまえになるべく痛手を与えておきたいね。奏(f0
3210)に護りを、瞬(f06558)に支援を頼み、【忍び足】と【目立たない】でブレスと爪の範囲から逃れながら懐に飛び込んで、【先制攻撃】と【2回攻撃】で竜牙を叩き込むよ。もし魔法陣に乗るようなら【槍投げ】で無理やり陣の範囲からずらして、【串刺し】で迷宮の壁に縫い留めるよ。


真宮・奏
この堅そうで金ぴかな竜は姿こそ立派ですがその内面は貧しい心で身勝手極まりませんね・・・お亡くなりになっても精霊を愛していた方の御心を汚した罪は重いです!!この迷宮が貴方の死地ですよ。

竜だけあって攻撃は強力ですので、瞬兄さん(f06558)が安心して攻撃できるように、トリニティエンハンスで防御力を高めた上で【盾受け】【オーラ防御】で防御を固めた上で【かばう】いざという時は【拠点防御】も併用しますよ。


神城・瞬
こいつが、精霊術士を迷宮にとらえたばかりか、精霊を愛し、精霊達も大好きだった偉大なる先達を手駒として扱った矮小で身勝手な存在・・・先達の無念を晴らすために、ここで討ち取ってみせる!!

こいつは絶対に許せない。全力でいく。【高速詠唱】で【全力魔法】で容赦なく氷晶の矢を降り注がせる。【2回攻撃】で絶え間なくその身体を穿つ。精霊を道具として扱った報い、存分にその身で味わえ!!



「グルルル……」
 石畳が敷き詰められた広い空間。
 壁には光球の精霊がいて空間全体を明るく照らしている。
 その中心で低く獣のような声を響かせる黄金の竜は、錬金術における最高位の黄金。そんな身でありながらも、ここに居るのは一匹の痩せばらえた獣だ。
 輝かしい黄金も、尊き竜の身も、この場にいる猟兵には何の意味も持たない。
「アンタの意地汚い心にその姿は似合わないね。アタシが相応しい姿に変えてやるよ!」
 響の言葉に呼応するかのようにブレイズフレイムはその身を燃やす。
 赤く、赤く、その怒りを贄とするかのように。
「ええ、こんな矮小な存在にその姿はあまりにフザケている。絶対に許さないッ……」
 対照的に底冷えするかのような絶対零度の魔力を滾らせる瞬。
 彼の足元から広がるように霜が降り立っていく。
「身勝手極まりない貴方の罪、その身を以て思い知りなさい!」
「グルルルァァァァ!!」
 奏の叫びに、竜の咆哮。
 戦いの火蓋が切られた。


「さて、これを見切れますか?」
 虚空に掲げた手の上に、パキパキと空気を凍らせ、魔力を張り巡らせ、無数の氷の矢を装填する。
 高速詠唱によって紡がれた全力の魔法。
 これが得意な魔法という理由だけではない。
 偉大なる先達に少しでも報いたくて、同じ精霊術士の技であの竜を仕留めてみせる。
 だから。そう、だからこそ。

 ――見切らせるつもりもない

 竜が行動を起こすその前に。
 雪崩の如く降り注ぐ氷雨は黄金のその体表を穿つのだった。
 自分の攻撃が通ることを確認した瞬は、矢を放つ手を止めずにすぐさま第二射の準備に入る。お前が受けるべき報いはまだこんなものでは済まされない。そんな意思を込めて。
「ガアアアッ!」
 だが、相手が如何に矮小な醜い心を持っていようと竜であることには変わりない。
 瞬の放った一撃は確かに黄金の鱗を穿っていたが、あくまでそこまで。
 それは、文字通り逆鱗に触れていた。
 黄金の竜はその大きな体躯で、地形が壊れるのもお構いなしに暴れ始めた。
 振り下ろす腕が地面を割る。羽ばたく翼が猟兵達の体を吹き飛ばす。振り回される尾が刃となり壁を切り裂く。
 人間の分際でよくもやってくれたと暴れまわる。
「くっ……!」
 守りを担っていた奏は、想定以上に強力な竜の攻撃に、いざという時の為の拠点防御を早々に切らされていた。
 しかしそのお陰で、自らの装備を刺して拠点指定した一角は、堅牢な要塞として竜の飛ばしてくる岩や風圧を見事凌ぎきっている。
「合図をしたら奴の懐に飛び込む。瞬は援護を、奏はこのまま護りを任せるよ」
 響の言葉に二人が頷き、間もなくして竜の動きが大人しくなった。
 我に返ったのか、ただ暴れ疲れたのか、それとも次の攻撃の兆候か。
 どちらにせよそれは響達にとって好機だった。
「瞬! 奏!」
「はい!」
「任せて!」
 掛け声と共に響が駆け出す。
 そんな響を援護するように瞬は竜の顔目掛けて氷の矢を放つと、竜は怒りを顕にして瞬へと突撃してきた。

 ――アルケミックスラッシュ

 大きく振りかぶった腕、その先端にある爪が怪しく光る。
 それはある種の魔法。攻撃を外すことで効果を発揮する初見殺しだ。
 攻撃を躱したその時、お前達を切り刻んでやろう。
 だが、外れたのは竜のそんな思惑だった。
「貴方のような姿だけの者に、私は負けません!」
 それは精霊術士の御心を汚された怒り。逃げずに正面から打ち破ってみせる。
 その強い思いを胸に、奏は竜の放った鋭い一撃を盾で受け止めたのだ。
 既に拠点防御は使ってしまい、奏の身を守るのはエレメンタルシールドとオーラ防御、そしてトリニティエンハンスで底上げした自分自身。
 心許ない手札に、しかし奏は何十倍もある竜の腕との鍔迫り合いを一歩も引かない。
 渾身の力で押し潰してやる。痺れを切らした竜が力を込めようとしたその時だ。
「ハァァアアッ!!」
 気合一閃。
 巧みな身のこなしと二人の援護により竜の意識から完全に姿を隠していた響が、一瞬の隙をついて竜の片腕を切り裂いた。
「まだだ!! この一撃は竜の牙の如く!!」
 態勢を整えた響が立て続けに攻撃を仕掛ける。
 手にしたブレイズフレイムの輝きは今や最高潮へと達していた。
 今こそ、その紫眼に赤き輝きを灯し、正しき怒りを胸に必殺の一撃を叩き込む。
「喰らいな!!」
 ザシュッ、と肉を切断する音が戦場に響いた。
 続けて竜の痛みに苦しむ叫び。
 痛みに耐えかね、身を翻して距離を取ろうとした竜に奏と瞬が立ち塞がった。
「逃しません。この迷宮が貴方の死地ですよ」
 奏は高めた防御力を武器に、風の妖精のような素早い身のこなしで黄金の体を駆け上がり、そのまま思い切り顔を殴りつけた。
「彼の受けた苦しみがその程度だと思うな。藻掻き苦しみ、無間に落ちろ」
 氷晶一矢。響の作った傷口目掛けて、束ねた巨大な一本の氷の矢が突き刺さる。
 体表しか穿けなかった先程とは違い、内側に直接射し込まれた氷矢は瞬く間に竜から熱を奪っていく。

 一連の行動によって黄金の竜から確実に体力を奪い取ることに成功した。
 故に、引けなくなった竜の攻撃はここから始まるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネオン・エルバイト
現状の敵は……皆さんの攻撃により、攻撃的な状態になっているようですね。でしたら、僕はそれを利用する方向に動きましょうか。
流石にここまで巨大な相手の攻撃をうけきるのは難しいので、攻撃を誘いはしますが今回はオペラツィオン・マカブルで即座且つ直に相手にお返ししましょう。
戦場の構造を観察した後、他の方に被害が向かないように敢えて戦場内の都合がいい位置まで移動することで存在感を発揮、敵に僕の存在を気付かせます。
人形を使って攻撃する素振りをすることで敵の先手攻撃を誘いつつ、相手の死角に人形を潜り込ませます。
上手い事僕を攻撃してくれたら、脱力状態で受けきる事でそのまま攻撃をご本人にお返ししましょう。



「ガアアゥゥ……!」
「ふむ、随分と荒れている様子で。でしたら――」
 それを利用させてもらいましょう。
 そう呟いたネオンは哭き人形を構える。敵の観察をしながらも、既に戦闘準備を整えていたのか、ネオンの操る哭き人形は怨嗟の叫びにもにた音を漏らしていた。
 その音が竜の耳に届いたのか、竜の瞳がギロリとネオンへ向けられる。
「どうぞ仕掛けてください。僕は一人、何も臆する事はありませんよ」
 ネオンがいるのは他の猟兵と距離を置いた場所。
 他の猟兵が戦闘を繰り広げている間も冷静に戦場の様子を見ていた彼は、次の一手へ繋ぐための行動に出ていたのだ。
 侵入した猟兵を殲滅することしか考えなくなった竜はそんな事は露知らず。次なる標的としてネオンのいる場所目掛けて残っている前足を力任せに振り下ろした。
「残念、こちらです」
 砕かれた地面には誰もおらず、ネオンは竜を正面から見上げていた。
 その余裕のある態度が癪に障ったのか、彼の手にする人形が嘲笑っているように見えたのか、ペースを崩された竜は完全に標的をネオンへと定めていた。

――ドラゴンブレス

 いつでも攻撃を仕掛けられるように人形を操るネオンに乗せられて、竜は怒りのままに灼熱のブレスを放つ。
 それは自身が竜であることの証明。生身の人間には到底耐えることのできない絶対的な力。飲まれれば灰すら残さない。
 人間風情が調子に乗るからだ。漸く一人始末出来た事で少し平静を取り戻した竜は景気よく咆哮を上げる。
 だが、遠目に見ていた猟兵の一人が気付いた。アレだけのドラゴンブレスを放ったのにこちらは全く熱くないぞ、と。
「随分とご機嫌ですね。何か良いことでもありましたか?」
 皆が皆、声のした場所に目を向けると、そこには先程までと全く様子の変わらないネオンが立っていた。いや、どちらかと言えば気怠そうに見受けられはするが、負傷によるものには見えなかった。
 攻撃をした側の竜も戸惑いを隠せないでいた。
「内心は割とヒヤヒヤしていたんですけどね。それでは答えをお教えしましょう」
 人形を操る指の一本をクイッ、と動かした時だった。

――オペラツィオン・マカブル

 刹那、竜の半身を巨大な爆炎が包み込んだ。
 それは先程見せたドラゴンブレス。それをネオンが操る哭き人形が放っていた。大量の空気を取り込み、哭き声と共に灼熱の息吹を吹きかける。
 火に弱い黄金の体も相まって、竜の体力は既に半分以上も失われていた。
 対峙する竜が弱っているのを確認しながらネオンはある一角に視線を送る。
「この物語もそろそろクライマックス。後はよろしくおねがいしますね」
 戦いの終わりは近い。
 ネオンはそう確信して、次の猟兵へとパスを繋いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​



 錬金術ドラゴンは痛みに藻掻き苦しむ。
 こんな筈ではなかった。
 黄金の身体を持つ自分が何故こんなに思いを。
 怒りは憎悪に、憎悪は力に。
「許サナイ」

 精霊達は無邪気でいい子だった。
 あの亡霊を助けてあげたかった。
 何の罪もない、優しい彼ら。
 その苦しみが分かってしまったから。
「許さない」
風魔・昴
●仲間との共闘・アドリブOK

お前がこの迷宮の主……
「悪いけど……私はお前を許さない……」
あの学生の亡霊を苦しめた代償……とってもらうわ
そのお前の存在すら消し飛ばしてあげる……
淡々と話すけれど、心の静かな怒りを反映するかのように体の部分的な場所にそれが出ている

数秒の間、目を閉じ黙祷して目を開く
焦茶の瞳は赤銅色になり体を覆う様に星のようなオーラが煌く
†Bellatrix†の【属性攻撃】で強風を起こし【エレメンタル・ファンタジア】で鋭い氷を呼び強風にのせて攻撃
更に【属性攻撃】で風属性の雷をドラゴンの脳天へ落とす

「自由を奪われ尊い魂を汚された者の苦しみを味わいなさい!」
「さぁ、骸の海に帰るがいい!」


羽久依・集葉
拙者の技には巨躯を貫く程の力はないでこざる……しかし!
力は使いようによって幾千幾万にもその意義を変えるのでござるよ!

【羽久依流拷問術】でその凶悪な吐息を出す口を塞いでやるでござる!
質問は……死した者を利用するようで少し嫌でござるがこれも任務!『かの精霊術士の名を見事想起してみせよ!』でこざる

〈スナイパー〉の如く〈早業〉をもって〈暗殺〉をするかのように発動しても、部位を狙う攻撃でござるから外す可能性もあるでござろう
それでも〈2回攻撃〉をしてでも必ず当てて見せようでこざる!

〈目立たない〉ように立ち回るでござるが、無差別攻撃は壊された〈地形の利用〉をして〈ダッシュ〉で避けるでござる!拙者忍者なので!



「……」
 傷つきながらも立ち上がる黄金の竜を前に、昴は静かに怒りを燃やす。
 (これが元凶。あの人達はこのドラゴンのせいで……)
 どうして、何のために、そういった言葉は出てこなかった。目の前にいるのは敵。ここで自分が倒さなければいけない敵でしかない。
 その様子を隣で見ていた集葉は思わず息を呑む。
「むむ、舞台も大詰め……これは拙者もマジになる必要があるでござるな!」
 自分とて暴虐無人な振る舞いは見過ごせない。あれ、傍若武神? と首を捻っているが、彼女も彼女で目の前の竜が許せないのには変わりなかった。
「ともかく、拙者が奴の動きを封じてみせるでござるので! トドメは任せたでござるよ昴どの!」
「……はい!」
 集葉に感謝して、昴は静かに黙祷を捧げて精神を集中し始めた。
 その祈りは誰が為か。
 静かに捧げる祈りとは裏腹に、昴の怒りが現れるように体にも変化が起こっていた。
「グルルァッ!」
 当然、その隙を見逃すはずもなく。
 先の攻撃でブレスを反射されたのが堪えたのか、直接的な手段で妨害をしようと飛び込んできた。
 飛び込んでくる筈だった。
 隙を見逃さないのは敵だけでなく。おどけた様子の彼女の姿はどこへやら。一人の忍として、集葉の目にも留まらぬ早業により竜の片目が潰されていた。
 視界の半分が奪われたことで思わず突撃するのをやめて地に足をつけてしまうと、直ぐ様に集葉が動いた。
 忍者さながらの足の速さと身軽さで、黄金の体表を物ともせずに駆け上がっていく。
 当然振り落とそうと暴れまわる竜だが、集葉は既に投げはなって狙撃に使ったクナイを手にし、まるでコマのように回転しながらその背を刻みながら滑り降りていった。
「うっ、目が回ったでござる……!」
 少し涙目になって口元を押さえる集葉。一連のカッコいい忍者ムーブは何だったのか。
 足元の集葉を踏み潰そうと地団駄を踏むも、持ち前の足の速さを駆使して荒れた大地も難なくすり抜けて。
 再び竜の眼前へと姿を表した。
「いよいよ拙者の忍法の出番でござる。その邪魔な口だけでなく、全身雁字搦めにしてやるでござるよ!」
 集葉の言葉に呼応して大量の蜘蛛の糸が竜の体に絡みつく。
「さあ、絞め殺されたくなかったら真実を話すでこざる! あの者……『かの精霊術士の名を見事想起してみせよ!』でこざる。よもや知らぬとは言わせぬでござるよ!」
 尤も、もしも竜が精霊をアイした術士の亡霊の名前を知っていたならば、集葉の術は失敗に終わる。そうすれば一気に形勢を逆転されることもあるだろう。
 そんな単純な問いかけだからこそ、この術は効果を発揮する。
 竜は手駒の名前等知らない、興味もない。ただ自分の為に働く駒の一つであり、言ってしまえば使い捨ての道具。
 精霊術士? 誰だそれは。いるのは使える亡霊か使えない亡霊か。それだけだ。
 竜として正しい、だからこその間違いだった。

――羽久依流拷問術

 見事効果を発揮した集葉の拷問術は竜の体を縛り上げる。
 それは相手の体躯と力量差を考えれば数秒程しか持たないだろう。
 それで十分だ。
「自由を奪われ尊い魂を汚された者の苦しみを味わいなさい!」
 数々の傷を負い、ついにはその身を拘束され身動きすら取れなくなった竜に、ついに幕引きの時が訪れた。

●終曲
 黙祷を終えた昴が目を開く。
 焦茶の瞳は静かに燃ゆる赤銅色に。その体を包むのは煌めく星の輝き。
 眼前で果敢に竜へと挑み、その猛攻を躱している集葉に感謝しながら銀杖を手にする。
「あの尊き御身に、せめてもの安らぎを」
 昴は呼びかける。杖に宿る精霊に。
 昴は願う。三日月のネックレスに。
「――」
 次第に彼女の周囲に強風が巻き起こり始める。
 杖を通して溢れ出る彼女の魔力が様々な属性を引き起こす。
 空気中の水分を凝縮した氷塊。
 大地を切り裂く鋭い風。
 大気を震わす豪雷。
 今こそ代償を払う時だ。
「さぁ、骸の海に帰るがいい!」

 ――エレメンタル・ファンタジア

 †Bellatrix†を振りかざした昴が巻き起こした幻想は正しくテンペスト。
 その氷塊は黄金を穿ち、鋭い風は黄金の翼を切り裂き、豪雷は竜を失墜させた。
 氷塊は止め処無く黄金の熱を奪う。
 鋭い風は吹き止まずに黄金を切り刻む。
 轟く雷は悲鳴さえ掻き消して黄金を蹂躙する。
「グルル……」
 力なく倒れた竜は翼を広げることも、起き上がる事もできない。
 あるのは憎悪と後悔だけ。
 次第に瞼を開くことすらも億劫になり、それでも竜は最後まで周りの人間を恨んだ。

 嵐が過ぎ去った時、そこには物言わぬ黄金が地に伏していた。


 それぞれの想いを胸に猟兵は帰路につく。
 そんな帰路の途中、最初に訪れた精霊達のお茶会に遭遇した。
 歌を歌い、お茶を楽しみ、物語を紡いでいた。
 猟兵に気付いた一人の精霊が手を振ると、周りの精霊達も手を振り出した。
 精霊達は無邪気に純粋に。
 今日もどこかで楽しい事を探している。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月06日


挿絵イラスト