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魔法学園の危機を救え

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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「先生! こっちはダメです!」
「どっちの扉も壁になってます! 閉じ込められました!」
 学園の生徒たちが慌ただしく石造りの学び舎を駆け回る。学舎を出入りする為の蒸気を用いた便利な自動扉が突然全て壁となり、授業中だった生徒と教師が閉じ込められていた。
「落ち着け! 外からもすぐに救援がくるはずじゃ。魔法使いに大切なのは冷静さと判断力。危難であるからこそ心を鎮め、頭を冷たく動かすのじゃ!」
「はい、ノヴァ先生!」
 腰の曲がった老いた女性の教師が諭すと、生徒たちが多少の落ち着きを取り戻し返事をする。
(「これは災魔の襲撃か? 私が現役なら何とか出来たかもしれんが、今の私ではいざという時足手まといじゃな」)
 力を失い一線を退いて教師となった老婆は、生徒に気付かれぬよう不安を胸に押し込め冷静な態度を見せる。このまま何も起こらなければ、そう思った矢先に悲鳴が上がる。
「きゃーーーー!」
「何があった?!」
 廊下を見れば赤い壁が倒れ、生徒がその下敷きとなっていた。
「壁が急に倒れてきたぞ!」
「早く助けないと!」
 慌てて周囲の生徒たちが助けようとする。すると周囲のところどころの壁が赤色へと変貌していく。
「待て!」
 それを察し静止する老婆の声、だが既に駆け出した生徒は止まれない。生徒が通りかかった瞬間、廊下の壁が次々と倒れて押し倒していく。
「災魔じゃ! 壁に災魔が潜んでおるぞ! 壁から離れて魔法で迎撃するのじゃ!」
「うわーー!」
「助けてぇ!」
 老婆が指示するが、不意打ちを受けて浮足立った学生たちは統率を保てず散発的な攻撃しかできない。そして壁に化けている災魔が突然攻撃することでより一層の混乱を呼び起こした。
「窓だ! 窓から出れば!」
「待て! 不用意に動いてはいかん!」
 生徒が廊下の大きな窓を開けようとしたところで、待っていたとばかりに反対側の壁が倒れ込んで押し潰された。
「いかん、このままでは全滅してしまうぞ!」
 焦って老婆は生徒を助おうと魔法を放つ。だがその横の壁もまた赤くなり、老婆の上へとゆっくり倒れ始めた。

「アルダワ魔法学園が災魔の襲撃に遭っている。至急、学園に向かい災魔を撃退、並びに学生の救助作戦を行う」
 学び舎の風景を映すグリモアベースで、バルモア・グレンブレア(人間の戦場傭兵・f02136)が猟兵達に急ぎの任務だと説明に入る。
「突如としてアルダワ魔法学園の学び舎の一つに災魔の群れが現れる。3階建ての学舎には力を失って教師となったもの数名と、教えを受ける生徒が100名ほどいる。生徒の多くは実戦経験が少なく、このままでは多くの犠牲が出てしまうだろう。それを助けられるのは諸君等だけだ」
 予知した今から向かえば敵が現れたところで介入できる。
「引退している教師は戦えんが、生徒はしっかりと指揮を取れば戦力として扱う事ができる。上手く指示すれば戦闘が楽になる。それに生徒は戦いを学ぶ者だ、今回の実戦で鍛えてやってもいいだろう」
 生徒は人数が多く守るだけでは手がかかる。だが逆に戦力にできれば敵を倒すのも早くなるだろう。
「敵は壁の姿をしていて、学舎のあちこちの壁に合わせ色を変え擬態しているようだ。扉も塞がれ閉じ込められている。本来存在する壁に薄くなって張り付く形で潜んでいるようだ。冷静に観察すればどこに居るか見分ける事が可能だろう」
 被害を出さぬ為には、まずは何よりも生徒たちが冷静さを取り戻すことが大切だ。
「どうして災魔が現れたのはか分らんが、犠牲が出るのが判明した以上被害を抑える為に対処しなくてはならん。学生と学び舎を守る為、アルダワ魔法学園に向かってくれ」
 バルモアが説明を終え、校舎の中へと繋がる道を作り出した。


天木一
 こんにちは天木一です。今回はアルダワ魔法学園の学び舎が襲われる事件となります。現れる災魔を全て倒し、学園の平穏を取り戻しましょう!

 学舎は3階建てとなっています。普段は蒸気で動く階段や教室の扉は蒸気機関を壊され止まっています。2カ所ある外への扉は壁で覆われています。
 学生は魔法が使えるので、統率が取れれば戦闘で役立ちます。

 第一章、第二章で集団戦、第三章でボス戦となります。

 学園を生徒と共に防衛し、災魔の襲撃を打ち破ってください!
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第1章 集団戦 『すべての『シ』を望む壁』

POW   :    ヘビーパストクラッシャー
単純で重い【無数の過去を宿した身のボディープレス 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    時の終焉まで眠れ
【死のま星の紋章から放たれた魔力波 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【猛烈な睡魔に襲われる魔力波】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    すべてを虐殺するモノ
【獅子頭の巨大蟻 】の霊を召喚する。これは【牙】や【念動力で砂や岩を操るなど】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:にこなす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月守・咲凛
転移で現れると同時に周辺の壁にミサイルを撃ち込みましょう。ショック療法というやつです。まずはこちらの言葉を聞いてくれる状況を作らなければなのです。
「落ち着いた人から順番に射線から退避して下さい、オアデス。壁際とかはちょうきけん、私の横とかは割と安全ですよー」
自分の周囲の安全を確保した上で、なるべくそこに集まって貰いたいので、集まるか死ぬかを選んで貰えばたぶん集まってくれますよね?
動けなさそうな人は援護射撃とアジサイユニットで助けるようにしておきます。
周辺の人の安全が確保されたら動けなさそうな人をひとまとめにして
「もう大丈夫です、あとはお姉ちゃんたちに任せてください」
と、ニッコリと微笑みかけます


朝霞・蓮
相手は擬態に特化した災魔…つまり、待ち伏せを得意とする敵!
混乱すれば混乱するほど不意打ちを受けて連携は瓦解し、被害は広がるばかり…
しかし、裏を返すと冷静に対処すれば越えられない壁ではないということ!壁だけに。
相手の視点で考えて待ち伏せしているところを炙りだし、各個撃破で逆に狩る!
そのためにはまず、『コミュ力』『言いくるめ』で生徒を先導して陣形を組んで統率しないと。
班組に分かれて背中合わせに戦い、死角を失くす輪形陣をとって戦うよ。
輪形陣の中心には教師の人を司令塔に、連携の要になっていただきます。
隙を突かれて誰かが窮地に陥ったら『第六感』『投擲』『援護射撃』ですぐさま援護だ!

〇アドリブ共闘歓迎です



●魔法学園1階
「うわぁー!?」
「壁が動き出したぞ!」
 学舎に閉じ込められた1階の生徒達が、突如赤く変貌した壁の姿をした災魔に押し潰されようとしていた。突然の襲撃に生徒達は碌に反応できずにパニックに陥っていた。
「まずはショック療法です!」
 その場に転移して足を踏み入れた月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)は、即座に周囲の壁に向かって肩の兵装を展開して内臓された誘導ミサイルを発射する。ミサイルが生徒を巻き込まないように正確に赤い壁の災魔に直撃して爆発を起こし、衝撃で赤い壁を生徒達から引き剥がした。
「な、何?」
「壁が爆発したぞ!?」
 何事かと生徒達が周囲を見渡す。奇襲に対する学生達の恐怖が驚きに上書きされた。
「落ち着いた人から順番に射線から退避して下さい。壁際とかはちょうきけん、私の横とかは割と安全ですよー」
 その心の空隙に呼び掛けるように、咲凛はぴょんぴょん跳んで手を振り、こっちこっちと小さな体で場所をアピールする。
「なんだかよく分からんが皆であそこに集まろう!」
「ああっ! あの子強そうだしな!」
 思考が飛んでいる間に指示を受け、言われた通りにしようと学生達は咲凛の元に集まり出す。それを阻止するように赤い壁が押し潰さんとゴムのように体を捻って勢いを付け倒れてくる。
「撃ちます! 射線に入らないようにして下さい!」
 そこへ咲凛が大型のライフルユニットを向け、エネルギーを収束させた光弾を放つ。光弾は赤い壁を貫通し大きな穴を開け、赤い壁は小さく萎むようにして消え去った。
「すっげー!」
「なにあれ光魔法!?」
 その威力に学生達が驚きに目を丸くする。
「どこから敵が現れても私が倒しますから大丈夫です! 落ち着いてこちらに来て下さい!」
 幾つもの火器を準備し、咲凛はどの壁が敵になっても反応できるように油断なく周囲を見渡した。

 廊下の学生達が咲凛の元に集まると、しーんと辺りに静けさが戻る。壁は動いていない。だがまだ気配を感じる。赤い壁はただじっと獲物が我慢できずに動き出すのを待っているのだ。緊張に生徒の子供がごくりと唾を飲んだ。経験の浅い彼らが堪えていられる時間はそれほど長くはないだろう。
「相手は擬態に特化した災魔……つまり、待ち伏せを得意とする敵!」
 そのピリピリした空気を追い払うように、黒と銀の2体の小さな竜を従える朝霞・蓮(牧羊犬・f18369)が、生徒の意識がこちらに向くように敵の能力を語り出した。
「混乱すれば混乱するほど不意打ちを受けて連携は瓦解し、被害は広がるばかり……。しかし、裏を返すと冷静に対処すれば越えられない壁ではないということ! 壁だけに」
 そんな冗談交じりの軽口に生徒達の緊張が緩む。それを見て蓮も余裕の笑みを浮かべてみせ、教室のドアに近い壁に近づく。すると壁が赤くなり倒れ掛かってきた。
「ドアを通らなくては教室に出入りできない。そんな場所で待ち構えるのは誰にだって予想できることだ!」
 判っていたと鋭い眼光を向けた蓮が呪われた刀を抜き打つ。横に一閃する斬撃が赤い壁を両断してずり落とした。
「こっちのおにーさんも凄いぞ!」
「戦って勝てない相手じゃないんだ!」
 あっさりと隠れていた敵を屠った事で、自分達も戦えるのではないかと学生達の胸い勇気が戻って来る。
「不意を打たれなければこうやって倒す事ができる! 死角を失くすため背中を合わせ、輪形陣を組んで各個撃破するんだ!」
「はい!」
 そう蓮が生徒達に指示を出し円形に組ませる。そして年老いた女性の教師に視線を向けた。
「そこの先生には陣の真ん中で司令塔になっていただきます。よろしいですね?」
「ああ、構わんよ。そら! お前達! そこの助けに来てくださった方々の負担を減らせるように、自分の身を自分で守るんだよ!」
「「はい」」
 老婆の教師が頷いて指示慣れした態度で生徒達に喝を入れる。

「こっちの壁が災魔だぞ!」
「このー!」
 前衛が魔力の盾を作る守りの魔法を使うと、後衛の少年が一早く炎の魔法を放ち赤い壁を焼く。だが火力が足りずに少々黒く焦げた赤い壁が迫り来る。他の生徒達も遅れて魔法を唱えようとするが、壁の方が僅かに速かった。
「援護射撃をします! 詠唱を続けてください!」
 そこへ咲凛がまた光弾を撃ち込み、仰け反らせると生徒の魔法が間に合い炎が幾つも飛んで赤い壁を焼き尽くした。するとすぐに新たな赤い壁が現れて獅子頭の巨大蟻の霊を召喚し、それを見た生徒が一瞬怯む。
「大丈夫! 落ち着いて対処すれば倒せる敵だ!」
 そこへ蓮が銀の竜が変化した剣槍を持って突進し、霊ごと赤い壁を貫いて本物の壁に縫い付けた。
「よし、今だ!」
 蓮の声に合わせ生徒達が魔法を放ち赤い壁を穴だらけにして砕いた。
「やれる! ボク達でもやれるぞ!」
「そうよ、私達は災魔と戦う為に学んでいるんだから!」
 恐怖を闘争心で抑え込み、生徒達は気を張って戦う。廊下の敵を一掃しているところへ同じ1階の教室から悲鳴が上がった。
「先生! 扉を災魔に塞がれて出れません!」
 教室に残っていたまだ戦いに参加できない小さな生徒達からの声に、すぐに咲凛が円盤状の遠隔操作武装を飛ばす。
「私が助けます。壁に近づかないようにしてください!」
 回転する円盤の群れがビームチェーンソーを展開し、扉を切り裂きその向こうの赤い壁をバラバラに切断していく。すると中に入れるような隙間が空き、扉ごと赤い壁を切り倒した。
「もう大丈夫です、あとはお姉ちゃんたちに任せてください」
 お姉さんぶった咲凛はニッコリと微笑みかけて教室の中に足を踏み入れる。すると教室内の扉の横の壁がまた赤くなって動き出す。だが動く前にその赤い壁がずれ落ちた。
「奇襲するのが自分達だけだとは思わないことだ」
 蓮が本物の壁ごと教室の外から袈裟に斬り捨てていた。倒れた赤い壁に生徒達が魔法を使って止めを刺す。
「この調子でまずは一階を制圧しよう!」
「「おおおーー!」」
 蓮が戦意を煽ると学生達も恐怖を忘れ、臆することなく魔法を使い、未熟ながらも戦士らしい動きをし始めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加するのじゃ。
【歌唱】【鼓舞】【動物使い】使用 まずは生徒達を落ち着かせないといかんのう。
【細流の調べ】で水精霊を呼び出し、皆の恐慌状態を治療するのじゃ。 落ち着きが取り戻せたら指揮は教師殿にお任せしてよいじゃろう。
後は状況が落ち着くまではマニトゥを皆の護衛につけておくかの。
スピレイルが災魔をけん制しておるようじゃし、わしも【破魔】の力を乗せた矢で【援護射撃】じゃ。 風を纏わせた【誘導弾】なら誤射の心配もないじゃろう。


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

ライオンの頭をした蟻さんとはシュールですね
ライオンの部分を格好良く思えばいいのか、蟻さんのカサカサ動く足の部分を気持ち悪く思えばいいのか、わけがわかりません

学舎という狭い室内が戦場なので今回は銃火器の使用は控えるとしましょう
生徒さんたちに攻撃が当たってしまっては大変です
精霊の護身用ナイフを抜き放って【捨て身の一撃】を繰り出します
近接戦闘は人並み程度しかできませんが、捨て身の気合と勢いで実力をカバーしてみせます

……と、その前にまずは学生さんたちを保護しなきゃいけませんね
学生さんたちの機械を強化しつつ、無数の電撃の紐を放って壁に化けている災魔さんの動きを封じます


二條・心春
【獣人同盟】の皆さんと参加します。
学園の中からいきなり災魔が現れたってことですか?急いで生徒の皆さんを助けないと……!

生徒の皆さんはエウトティアさんが何とかしてくれるようなので、私は教師の方の安全を確保しましょう。近づく災魔を、槍に風を付与した「属性攻撃」と「衝撃波」で吹き飛ばしちゃいます。
その後は【召喚:炎魔】で呼んだウコバクさんと一緒に、スピレイルさんが封じた災魔を攻撃して回りましょう。ウコバクさん、建物や皆さんを巻き込まないように注意してくださいね。生徒の皆さんが近くにいるなら、攻撃に協力してもらえると良いですね。皆さん、あの燃えている壁を攻撃してください!



●魔法学園2階
「学園の中からいきなり災魔が現れたってことですか? 急いで生徒の皆さんを助けないと……!」
 【獣人同盟】の3人で一緒に世界を跳び、二條・心春(弱さを強さに・f11004)が先頭で転移して学舎の2階廊下へと出る。1階と同じような教室があり、その前の廊下には動き出す赤い壁の災魔と、それに襲われる生徒達、そしてそれを守ろうとする男性教師の姿があった。
「ひっ! 壁が襲って!? 早く逃げないと!」
「ダメだ! 後ろにも壁が!」
 廊下の前後を赤い壁が塞ぎ、階段への道を閉ざしている。行く手を遮られた生徒達は教室に戻ろうとするが、その扉もまた赤い壁に覆われ孤立無援となっていた。
「落ち着け! 魔法を使って対抗しろ! バラバラに動かず隊列を組め!」
 力の衰えた教師が弱い魔法で牽制しながら声を上げるが、恐怖が伝播し生徒達はまともに戦えていなかった。
「もうピンチになってます! すぐに助けましょう!」
 心春は量産型の直槍を構えて風を纏わせ、薙ぎ払って衝撃波を飛ばし近くの赤い壁を吹き飛ばして窓側に叩きつけた。するとその赤い壁が光り獅子頭の巨大蟻の霊を呼び出し、その牙で噛み千切らんと虫の脚を動かして迫る。

「ライオンの頭をした蟻さんとはシュールですね」
 その前にスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)が割り込む。
「ライオンの部分を格好良く思えばいいのか、蟻さんのカサカサ動く足の部分を気持ち悪く思えばいいのか、わけがわかりません」
 その虫らしい不気味な動きと猛々しいライオンの顔のアンバランスさにスピレイルは困惑しながらも、精霊の加護を宿したナイフを抜いて懐に飛び込み首に突き立てた。そしてナイフを振り抜き首を切り落とす。そして新たな召喚が行われる前に赤い壁に守りを考えずに突進してナイフを突き立て仕留めた。だがその近くの壁が広範囲に赤くなって災魔が増える。それに対してスピレイルは怯まずナイフを構える。
「また出た!?」
「帰りたいよー!」
 年若い生徒達が減らぬどころか増える敵に戦意を失っていく。
「……と、その前にまずは学生さんたちを保護しなきゃいけませんね」
 泣きそうな子供の学生を見たスピレイルは、雷の精霊を呼び出し無数の電撃の紐を放って赤い壁に巻きつけ、感電させて動きを封じ込めた。

「そうじゃのう、まずは生徒達を落ち着かせないといかんのう」
 生徒の様子を見たエウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)がパンッと手を叩いて注目を集まる。視線を受けたエウトティアが心落ち着けるように流水の如く沁み渡る歌声を響かせ、水精霊を呼び出して心乱す生徒達の穏やかに沈めた。
「ふむ、落ち着いてきたようじゃのう。そこの教師殿、生徒達を指揮して身を守ってほしいのじゃ」
「了解した! どこのどなたかは知らないが助太刀感謝する!」
 エウトティアが教師に言葉を掛けると、きびきびと返事をして教師はすぐに生徒達を纏めにかかる。そうしている間に電撃の紐を脱した近くの赤い壁が動き出す。
「マニトゥよ皆の護衛をするのじゃ」
 大きな狼のマニトゥに指示を出すと、すっと音も無くマニトゥは生徒達を守るように赤い壁との間に割り込んだ。対して赤い壁が獅子頭の巨大蟻を呼び出すと、その顔を爪で切り裂き、脚を噛み千切って消滅させてしまう。

「落ち着いて授業で教えた通りにすれば戦える! 今まで教えてきたのはこうして災魔と戦うためだ!」
「「はいっ先生!」」
 教師が生徒達を集めて指導し、近くの赤い壁に攻撃を行わせる。精霊銃を撃ったり、ロッドから魔法を放ったりと個々の威力は低くとも、学生達が一斉に放つことで赤い壁を傷つけていく。
「学生さんたちも戦えるようになったようですね、それなら機械を強化して戦闘力を高めましょう」
 スピレイルは雷の精霊によって生徒の持つ機械武器の性能を向上させていく。
「うぉっ! 精霊銃の威力が上がった!」
「支援効果だ! これで災魔を一気に倒せるぞ!」
 戸惑ったのも一瞬で、生徒達は火力の上がった武器を用い、赤い壁を粉々になるまで破壊した。
「ありがとうございます!」
 支援に気付いた学生がスピレイルに向けて頭を下げる。
「気にしないでください、それよりも今は戦いに集中しないと危ないですよ」
 そう返事をしながらスピレイルは学生を攻撃しようとしていた赤い壁をまた電撃の紐で締まり上げる。
「は、はい!」
 学生は恥ずかしげに顔を赤くして頷き、すぐに赤い壁へと仲間と共に攻撃を始めた。
「ウコバクさん、一緒にスピレイルさんが封じている災魔を倒していきましょう!」
 心春は炎の体を持つ悪魔型UDCを召喚し、その燃える体から放たれる灼熱の炎で赤い壁を燃やす。赤い壁は悶えるように身を捻り、伸びあがって距離を伸ばしながら倒れ込んで来る。そこへ心春は槍を横に一閃し壁を薙ぎ倒した。
「皆さん、この燃えている壁を攻撃してください!」
「やるぞ! 炎の魔法だ!」
 そう生徒に呼びかけると、教師が音頭を取って一斉に炎の魔法が飛び赤い壁を燃やし尽くした。だがすぐに新しい壁が生徒の前に迫ってきた。
「その調子じゃ、わしらが敵をけん制するゆえ、攻撃していくのじゃ」
 エウトティアが小弓を構えて風の精霊を宿した矢を放つ。矢は風に流れるように軌道を変え、生徒の間をすり抜けて狙い通りに赤い壁に突き刺さった。赤い壁は反撃しようと獅子頭の巨大蟻を呼び出す。だがそこへ横からマニトゥが飛び掛かり押し倒して牙を突き立てた。敵の攻撃が止まっている隙に生徒達が魔法で赤い壁を攻撃する。そんな生徒達が攻撃に集中しているところを狙おうと、赤い壁が近くの壁から現れた。

「どこにでも潜んでいるようですね」
 そこへスピレイルが飛び込み体当たりするような勢いでナイフを突き立てた。その衝撃で赤い壁は壁側へと傾く。
「こちらにも攻撃をお願いします」
 スピレイルがその場を飛び退くと、バランスを崩している敵に向けて生徒が射撃を浴びせ、穴だらけにした。
「連携が取れてきたようじゃな。これならすぐに敵を一掃できそうじゃ」
 エウトティアは自分達と生徒達との息が合い始めたのを確かめ、この程度の敵なら問題なく倒せそうだと考える。
「じゃが敵はこれだけではないじゃろうし、油断は禁物かの」
 警戒を緩めぬよう護衛のマニトゥに目を向けると、マニトゥはぴたっと生徒達から離れぬように位置取る。
「ウコバクさん、どんどん敵を燃やしちゃいましょう! あ、ですけど建物や皆さんを巻き込まないように注意してくださいね」
 そう声をかけながら心春は槍を振るって敵を近づかせない。そしてウコバクが炎をコントロールし、辺りに放たれた炎は敵だけを燃やしていく。
「これだけの援護を受けているんだ! こっちも気合を入れて災魔を倒すぞ!」
「「うおおおおー!」」
 教師の熱い言葉に乗って気勢を上げ、生徒達が魔法を唱えて赤い壁にぶち込んだ。
「では私がどんどんと敵の動きを封じていきますね」
 スピレイルが近くの敵から電撃の紐で縛り動きを封じていく。
「もし動いても私とエウトティアさんでフォローしますから、ガンガン攻撃しちゃってくださいね!」
「うむ、背中はわしらに任せておけばよい。とにかくこの階の敵を殲滅して安全にするのじゃ」
 心春が槍を振るって衝撃波を飛ばして現れる敵を薙ぎ倒し、エウトティアが矢を射って敵の出鼻を挫いて攻撃を防ぐ。そうして万全のフォローを受け、生徒達は2階に隠れる赤い壁を全て駆逐していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●POW



手近な生徒へ出し抜けに【ドリームイーター】、巨大鍵で【串刺し】に
周囲の状況から自身へと注意を惹く狙い
(武器は非物質化してるので怪我はさせない技)

生徒の精神性に由来したデザインの眷族を産み出す
マのカベの内から御せそうな奴を【野生の勘】で見出し、眷族に立ち向かわせ、勝たせる

「これはブッ刺したヤツからそいつのファミリアを生み出す、俺めの使う魔法の類なんですけどもよ?
実質『こいつが』アレを斃したワケですわな
つまり――おたくらでもアレに勝てる
まずは落ち着いて、壁から離れて部屋中央にまとまりなさいや
そんで我こそはってヤツはこっち来い
ファミリアを出させてやりますからよ」

(ドリームイーターおかわり)


黒木・摩那
オブリビオンがとうとう地上に出てきてしまったとは!
大変なことになりました。
襲われた生徒や先生たちも心配です。
一刻も早く救い出して、オブリビオンを迷宮へ押し返しましょう。

閉じた扉や部屋を覆う瓦礫は【胡蝶天翔】で蝶に変換して、除去します。

さて、壁に擬態している敵とは厄介です。
まずはスマートグラスの熱センサーで探査。
【第六感】も駆使して、
怪しそうな場所を測距センサーで壁と自分の距離を測定してみます。
いれば周囲の壁と段差があるはずです。

見つけたら、ヨーヨー『コメット』を壁に叩きつけます。
敵からの防御は【第六感】と【念動力】で対応します。



●魔法学園3階
「オブリビオンがとうとう地上に出てきてしまったとは!」
 急ぎ黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は学園に乗り込む準備を終える。
「大変なことになりました。襲われた生徒や先生たちも心配です。一刻も早く救い出して、オブリビオンを迷宮へ押し返しましょう」
 意気込んで転移し学園の3階へと着地した。
「くそっこっちにくるな!」
「魔法だ! 魔法を撃て! 撃てってば!」
 学園で襲われるとは思いもしなかった生徒達が混乱し、同士討ちしそうな勢いでろくに狙いも付けず魔法を撃ちまくっていた。その光景を目にして摩那はすぐさま動き出す。
「天に漂いし精霊よ。物に宿りて我に従え。姿さずけよ」
 摩那の周囲にある壊れた石壁や木片が黒い蝶の群れに変化し、敵に纏わりつくように飛ぶ。それを邪魔だと赤い壁から魔力波が放たれ散らされた。その注意が逸れている間に摩那は超電導ヨーヨーを彗星の如く投げて叩き込む。キュルルと煙を上げるほど高速回転するとワイヤーを伝って手元に戻ってきた。遅れて赤い壁にひびが入り、ピキピキッとひびが広がって砕け散った。
「おおっ!」
「スゴイ!」
 その攻撃に驚き生徒達の視線が向けられる。その絶望に沈んでいた目には希望の光が宿り始めていた。
「私達が来たからにはもう大丈夫です。さあ、立ち上がってください」
 摩那がそう言って落ち着かせ、周囲を警戒しながら生徒達が態勢を立て直す時間を稼ぐ。
「おお、こりゃ助かるの。おーい、さっさと武器を手に集まれい。授業と同じようにやりゃいい」
 お爺さんの教師が生徒達に呼びかけ、何とか敵に対する準備をさせようとする。だがそれを阻止するように壁がまた赤く変わる。
「そこですね!」
 すぐに摩那がヨーヨーを投げて赤い壁に撃ち込み、動き出す前に叩き潰す。

「お、ちょうどいいところに」
 3階の教室に足を踏み入れた白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)は、出し抜けに近くにいた生徒に巨大鍵を非物質化させて突き刺す。
「へ? ほあっ!?」
 突然の事に生徒は驚くが、痛みもなくただ鍵が胸から体内へと差し込まれていた。その鍵を捻ると、モザイク状の虎が生み出され、赤い壁に向かって飛び掛かり噛みついた。赤い壁は暴れて引き離そうとするが、モザイクの虎は爪で引き裂き押し倒す。
「これはブッ刺したヤツからそいつのファミリアを生み出す、俺めの使う魔法の類なんですけどもよ? 実質『こいつが』アレを斃したワケですわな」
 物九郎が手にした鍵を振ってモザイクの虎に視線を向ける。
「つまり――おたくらでもアレに勝てる。まずは落ち着いて、壁から離れて部屋中央にまとまりなさいや。そんで我こそはってヤツはこっち来い。ファミリアを出させてやりますからよ」
 そう説明してやると、すぐにやってほしいと生徒達が倒れた机や椅子をどけて教室の中央に集まった。
「それじゃあいきやすよ。なーに、痛みもなくちょいっと胸に鍵を差し込むだけだ」
 気軽に物九郎が生徒達に鍵を刺していき、さまざまな姿をしたモザイクの眷属を生み出していく。
「おおっ鷹だ!」
「俺はゴーレムだぞ!」
「え? オレはしょ、触手?」
 現れた眷属達は赤い壁に向けて攻勢を始め、鷹は飛び回って狙いを逸らし、ゴーレムは丈夫な体で攻撃を受け止め、忍び寄る触手は動きを縛る。
「いいねいいね、そいつらファミリアは思うがままに動きやがりますから、思う存分暴れさせなさいや」
 我ながらいい出来だと物九郎は頷き、まだまだ待っている生徒達にも鍵を向けた。

「これで生徒達の戦力も整ったようですね。では壁に擬態している厄介な敵を探査しましょう」
 摩那はスマートグラスを使い熱センサーで周囲を探る。だが動いている敵は熱を持っているようだが、擬態している敵は熱を発していないようで見つける事ができない。
「なら次は測距センサーで距離を測定してみましょうか」
 熱がダメならとすぐに機能を切り替え、壁と自分との距離を測定していく。すると特定の位置で数値に変化がでているのが解った。
「見つけました。壁に薄く張り付いているのなら段差が必ずできるものです」
 そこへ摩那がヨーヨーを飛ばし、石壁をぶち抜いた。するとひび割れた壁が赤く変化し、そのまま倒れて砕け散った。擬態を見破られた周囲に潜んでいた敵が擬態を解き、赤い壁へと変化して一斉に襲い掛かって来る。
「こりゃえらい出て来ましたな。でもこっちの準備も万端ですわ」
 物九郎が生徒から鍵を引き抜く。生徒達の周りにはモザイクの蛇や仔犬や形容しがたい物体など、多種多様な眷属が生まれていた。
「そんじゃまあ、脅かされたぶんたっぷりとやっちまいなさいや」
 物九郎がけしかけると、生徒達が一斉に眷属を動かし赤い壁に殺到させる。そこへ生徒から魔法が飛び蹂躙していく。
「ええ光景ですな。さて、そろそろ始末がつきそうやけども、全部倒したら何が出てきますかな」
 後ろからその戦いを眺め、物九郎は悪そうな顔でオブリビオンの次の手を待っていた。

 3階にある実習室と教員室と図書室の中を全て確認した。他の階の戦闘音も無くなり赤い壁の災魔は全て消えた。すると勝利できたと生徒達の気が緩み何とか生き延びれたと息をつく。だが猟兵は油断せずに警戒を解いてはいなかった。視界の端、生徒の足元にぴょんと白い何かが通り過ぎた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『グルメなしろやぎ』

POW   :    めぇめぇじゃんぷ
予め【めぇめぇ鳴きながらぴょんぴょん跳ぶ】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    おてがみはりけーん
【カバン】から【何通ものお手紙】を放ち、【視界を埋める事】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    めぇめぇタイム
【めぇめぇと、歌う様な鳴き声】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。

イラスト:Miyu

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●しろやぎメーメー
「メーメー」
 それは白くて、まるでぬいぐるみのようにもふもふした二足歩行の白いヤギの姿をした災魔の群れだった。
「メェエエー」
 ヤギ達はそれぞれ本を抱え、むっしゃむっしゃと食べ始める。
「あ! あれは大魔法全書! 図書館の本だ!」
 ヤギが食べているそれが何であったか気付いた所為とが指さして叫ぶ。
「あっちのは実用的な蒸気武器マニュアルだ!」
「こっちは精霊と仲良くする100の方法だわ!」
 あちこちで生徒が本を手にしたヤギを見つける。
「いかん! このままでは学園の貴重な蔵書が食べられてしまう!」
 教師が指示を出し、生徒が追いかけ始める。だが俊敏にヤギ達は本を手にぴょんぴょん逃げ回り、他の階にまで軽々と飛び降りて学園中に散っていく。
 このままでは学園の知識の源の一つである貴重な本が食い散らかされてしまう。そんな事になれば学園の教育レベル、延いては戦闘力が下がってしまうかもしれない。迂遠ながらも長期的には恐ろしい攻撃だ。それを阻止せんと猟兵達もヤギを追いかけ始めた。
エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加するのじゃ。

「動物使い」「鼓舞」使用
うむうむ、ヤギが紙を食べてしまうのは仕方ないのう。
そして、狼がヤギを食べてしまうのも仕方ない事じゃな。
と言うことで、【秘伝の篠笛】で狼を呼び出してヤギにけしかけるのじゃ。 コハル殿がヤギを麻痺させてくれようとしているようじゃし、狼でそちらへ追い立てようかの。

「属性攻撃」使用
ヤギをある程度誘導したら、次は【氷縛の鎖】でヤギ達を絡めとるのじゃ。 動きを阻害できれば、触手でぺちぺちしやすいじゃろ。
後はスピレイルが上手くやってくれるじゃろう。
ところでスピレイルや、わしはお肉だけでも一向に構わぬぞ?


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

まあ、ヤギさんが紙を食べてしまうのはしかたがないことですよね
それが生物としての本能なのでしょうし
とはいえ、そんなに大事な蔵書なら次からは紙媒体じゃなくって、DVDやUSBのような情報媒体にでも保存しておいたほうがいいと思いますよ

……まあ、私も貴重な蔵書の保存に協力するとしましょう
ゴーレムさんたち!
ヤギさんたちから蔵書を取り戻して、その後は蔵書たちを守ってください!
取り戻した蔵書もそうでない蔵書も全部です!

お姉様、心春さん
帰ったら一緒にマトンカレーでも食べましょう!
ナイフの【捨て身の一撃】でヤギさんたちを捌く(と言うのは冗談で普通に倒しますよ?)のでサポートしてください!


二條・心春
【獣人同盟】の皆さんと行きます。

確かに本の保管方法とか、学園内から災魔が出た時の対策とか、学園の方でも色々考えないといけないかもしれませんね。とりあえず、今は本を保護するのに集中しましょう!
逃げ足が速そうです……ではまず動きを封じましょう。クラーケンさん、出番ですよ!【召喚:大烏賊】でクラーケンさんを召喚して、ヤギさん達がめぇめぇする前に、触手でぺちぺち叩いて、麻痺させます。本の回収もお願いしますね。私も拳銃を撃って進路を塞いで援護しますよ。
麻痺したヤギさん達はスピレイルさんにとどめをお願いしましょう。(ナイフで倒されているヤギさん達を見ながら)……えと、普通のカレーじゃだめですか?



●ヤギ狩り
「あっちだ! あっちに行ったぞ!」
「うわっ跳んで逃げられた!」
 生徒達がヤギを追うが、俊敏なヤギはそれを躱してぴょんぴょんと3階の廊下を逃げ回る。
「まてまてー! 本をかえせー」
 もう少しで手が届くというところでヤギは軽々と天井近くまで跳躍して距離を離し、その跳躍力に生徒達は四苦八苦してまるで遊ばれているようだった。
「まあ、ヤギさんが紙を食べてしまうのはしかたがないことですよね」
 スピレイルの前をぴょんと跳ねて通ったヤギが本を食べる姿はなんとも牧歌的な雰囲気があった。
「それが生物としての本能なのでしょうし。とはいえ、そんなに大事な蔵書なら次からは紙媒体じゃなくって、DVDやUSBのような情報媒体にでも保存しておいたほうがいいと思いますよ」
 そういった媒体がこの世界に無いなら導入するのもいいかもしれないと思考が横道に逸れる。
「……まあ、私も貴重な蔵書の保存に協力するとしましょう。ゴーレムさんたち!」
 スピレイルが土の精霊を呼び出して、それが宿る大量のゴーレムを作り出した。
「ヤギさんたちから蔵書を取り戻して、その後は蔵書たちを守ってください! 取り戻した蔵書もそうでない蔵書も全部です!」
 そう指示するとズシンズシンとゴーレム達が動き出す。数体で図書館の守りを固めると、他のゴーレムがヤギを追う。それから逃げるようにぴょんぴょんとヤギが駆け出し、ゴーレムとヤギの追い駆けっこが始まった。

「確かに本の保管方法とか、学園内から災魔が出た時の対策とか、学園の方でも色々考えないといけないかもしれませんね。とりあえず、今は本を保護するのに集中しましょう!」
 今の状況を見れば学園が襲われることは完全に想定外だったことが解る。だがそういったことは学園に平和が戻ってからだと、心春は本を銜えて逃げるヤギを捕まえる方法を考える。
「逃げ足が速そうです……ではまず動きを封じましょう。クラーケンさん、出番ですよ!」
 敵を観察して動きを封じるのが有効だと思い、心春は床の中に潜むイカ型UDCを召喚する。イカは触手をうねうねと床から突き出し、ヤギの脚に絡みつかせて捕えた。
「メ!? メエエエェエ!!」
 ぴょんぴょんと跳んで逃げようとするが、触手はしっかりと張り付いて逃さない。そして触れられた部分から麻痺して力も入らなくなる。
「メエエエ!」
 仲間が捕まるのを見たヤギ達は慌てて距離を取り、どうしたものかと遠巻きに仲間を見る。
「本の回収もお願いしますね。私も援護しますから」
 そんなヤギ達に心春は拳銃を向け、弾を発射して威嚇し、イカの居る方へと追いやる。
「メェー!」
 足元に弾丸を撃ち込まれヤギが飛び退くと、着地地点に触手が湧きぐるぐると絡めとられた。
「メエエエ……」
 悲し気な声を発するが、暴れても戒めを解けない。すると救出を諦めたヤギ達はぴょんぴょん跳ねて逃げて行った。

「ヤギさんたちは戦う気がないから捕まえるのが大変そうですね」
 その騒動をスピレイルが眺めていると、ヤギを捕まえようと手を伸ばすゴーレム同士がぶつかって倒れる。その隙間をぴょんぴょんと器用にヤギが逃げて、手の届かない場所でむっしゃむっしゃと美味そうに本を千切って食べた。
「うむうむ、ヤギが紙を食べてしまうのは仕方ないのう」
 深く頷いてエウトティアがその様子に道理だと納得の態度を見せ、秘伝の篠笛を取り出した。
「そして、狼がヤギを食べてしまうのも仕方ない事じゃな」
 これもまた道理だと笛を吹き鳴らして笑みを浮かべると、周囲に狼が召喚され獲物のヤギを見て獰猛に喉を鳴らした。
「メェエエエ!!」
「メェメェ!」
 天敵が現れたと、戦闘力では勝るはずなのに、本能的なものを感じてヤギ達が慌てて逃げ出す。
「コハル殿のところへヤギを追い込むのじゃ」
 エウトティアが狼たちに大まかな指示を出し、羊飼いの如くヤギの群れをコントロールしようとする。
「はぐれたヤギはマニトゥに狩ってもらうとするかのう」
 生徒の護衛は必要そうではないと、巨大白狼のマニトゥを傍に寄り添わせる。するとマニトゥの姿が視界に入った瞬間、ヤギが飛ぶように階段へと逃げてしまった。
「ふむ、マニトゥの姿は少々刺激が強すぎるかの。あまり前に出過ぎぬようにな」
 エウトティアの命を受けたマニトゥがヤギよりも素早く駆け出し、階段を降りて見えぬ場所へ消えると、遠くからメエメエとヤギの弱々しい声だけが響いた。

「では私も加わるとしましょう。ゴーレムさん、ヤギさんを追い込んでください! 止めは私が刺します」
 スピレイルの指示を聞いたゴーレム達が壁としてヤギを逃がさぬように通せんぼする。そしてその隙間を抜けようとするヤギを狼が顔を出して追い返す。
「こっちは行き止まりじゃ、ほれほれ、向こうに行かんと狼に食われてしまうぞ」
 エウトティアが狼をけしかけると、ヤギが怯えたように逃げて廊下を走る。そこにはイカが潜み獲物を待ち構えていた。床から伸びる触手がヤギを次々と捕まえていく。
「メエエエェ……」
 ヤギが弱々しく鳴いて愛らしい視線を猟兵に向ける。その姿はなんとも哀れで助けてあげたいと思うものだった。
「うっ……これは精神攻撃でしょうか。かなり効果的です」
 動物好きとしてはついつい甘くなってしまい、少しばかりほだされた心春の攻撃の手が緩む。
「メエエー……」
 助かるかもしれないとヤギは一層弱々しく無害を装い鳴き声を上げた。
「お姉様、心春さん。帰ったら一緒にマトンカレーでも食べましょう!」
 だがそこへ近づいたスピレイルが手慣れた様子でナイフを操りヤギをさっくりと貫き、屠殺すると微笑んで仲間の方へと振り向いた。
「……えと、普通のカレーじゃだめですか?」
 その光景に我に返った心春が若干視線を外しながら尋ねる。
「わしはお肉だけでも一向に構わぬぞ?」
 対照的に平然としたエウトティアは美味しそうだという目でヤギを見て、一層他のヤギ達は怯えさせた。
「ではカレーの付け合わせでマトンを出しましょうか」
 そんな冗談なのか本気なのかわからぬ言葉を交わしながらスピレイルはナイフを閃かせ次のヤギを仕留めた。
「めえめえーーめえめええーー」
「めえええめえええーー」
 歌うようにヤギが鳴き、身体能力を強化させて壁を蹴り天井に近い空間を抜けてゴーレムの包囲を脱出しようとする。
「ほれ、今日の夕食が逃げるでない。大人しくしておるのじゃ」
 逃げようとするヤギにエウトティアは周辺から氷の鎖を飛ばし、絡め取ると同時に凍結させて動きを鈍らせ、床に転がしていく。そこへイカがぺちぺち触手で叩いて麻痺させ、ヤギ達を動けなくしていった。
「ではクラーケンさんで本を回収しますから、とどめの方はお任せしますね」
 2人が本気で食べる気なのではなかろうかと戦々恐々としながらも、心春は無心無心と余計なことは考えないようにイカにお願いしてヤギの持つ本を回収させる。
「メエエエ!!」
 奪い返される前に食べてしまおうとヤギが大きく口を開ける。だが猿轡をかまされるように氷の鎖が口を塞いだ。
「残念じゃがお主は食べる方ではなく、食べられる側なんじゃ」
 エウトティアがそのまま氷の鎖でぐるぐるに巻き付ける。そこへ歩いて近づくスピレイルが無造作にナイフを突き入れた。
「こんなものでしょうか」
 動けぬヤギに流れ作業のように止めを刺していたスピレイルが周囲を見れば、この階に残っていたヤギは全滅していた。
「本も少し傷ついてますが、まだ使えると思います」
 心春は回収した本を並べて、まだ修復が出来そうな食べられ方だと損傷具合を確認した。その間にスピレイルとエウトティアはヤギを邪魔にならぬよう隅に並べていた。
「これはマトン食べ放題ですね、カレーにすれば学園の皆さんにも振舞えそうです」
「うむ、大猟じゃな! わしにはそのまま焼いた肉を出してくれ、マニトゥは生がよいかの」
「え、えっと、食べるのは全部終わってからにしましょう。そうしましょう!」
 スピレイルとエウトティアが本気で食べそうな掛け合いをしていると、ヤギさんが捌かれるところを想像してしまった心春は話題を変え、スプラッターな場面を避けようと皆で下の階のヤギ退治に向かった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

白斑・物九郎
●POW



貴重な蔵書を優先的に狙ってんのか
それとも、単に紙を食べたくって手近な所を回ってんのか

俺めは見取図を広げて定点待機
サーチドローン・茶斑の三毛を周辺探査に走らせて(ダッシュ+追跡)、情報を送って来させて(情報収集)、まずはヤギ共の行動傾向を割ってやりまさァ

【野生の勘】もコミでヤギ共の次の行き先に察しが付けられたら罠猟の始まりですわ


――ユーベルコード【閉門】


解像度をめっちゃ薄くした「開いた門」の幻像を、目ぼしい部屋入口なり本棚前なりに予め設置

その「罠」にヤギが近付く瞬間を、仕掛けたポイントの近場に三毛を隠れ潜ませて(地形の利用)、監視(撮影)して――
ドンピシャのタイミングで「門を閉じる」!


月守・咲凛
SPDで戦闘、アドリブ共闘OKです。
「食べちゃだめです!食べちゃだめなのです!」
叫びながら追いかけます。ミサイルは流石に不味そうなのでガトリングとアジサイユニットでヤギさん達を撃破していきます。倒して本を拾ったら
「えっと……」
とキョロキョロ見回して、誰かその辺にいる人に
「はい!」
とにこやかに渡して、食べちゃダメですーー!と叫びながら次のヤギさんを追いかけます。
ヤギさんを見失ったり、次のヤギさんを探す時はレーダーで位置を確認してそちらへ飛んでいくのです。


黒木・摩那
知らないというのは恐ろしい……
貴重な魔法書を食べてしまうなんて!

すぐに食べるのを止めなさい!!

ヨーヨーでヤギが食べてる魔法書をはじきとばして、救出します【武器落とし】。

もっとも手元から本が無くなっただけで諦めるとも思えません。
彼らにとっては大好きなご飯を盗られたのも同じですから。

ヨーヨーで相手しますが【衝撃波】【なぎ払い】、
集まってきたらUC【風舞雷花】でまとめて攻撃。迷宮に追い返します



●罠
「メーメェェー」
 ヤギが紙を千切り魔法書を咀嚼していた。
「知らないというのは恐ろしい……貴重な魔法書を食べてしまうなんて!」
 貴重な書物をのほほんとした顔で食べるヤギに摩那は憤る。
「すぐに食べるのを止めなさい!!」
 そしてヨーヨーを飛ばして魔法書を口から弾き飛ばし、ヤギの手から救出する。
「メーー」
 落ちた本をもう一度ヤギが銜えようとするが、それよりも速くヨーヨーが巻き付き摩那の手元に戻って本を運んだ。
「メエエエエ!!」
 食べ物を奪われたヤギが怒ったように突進してくる。
「大好きなご飯を盗られたのですから怒るのはもっともです。ですが食べているこの本は元々この学園のもの。ならば本当に怒るべきは本を盗られたこちら側でしょう」
 ヨーヨーをヤギのお腹に叩き込んで吹き飛ばす。
「本泥棒には痛い目に遭ってもらいます」
 薙ぎ払うようにヨーヨーを振るって、巻き起こる衝撃波でヤギ達を吹き飛ばす。
「メエエエ!?」
「メェ、メエエエ!」
 敵わないとみるや、さっさとヤギ達は逃げ出していく。
「迷宮に帰るのは構いませんが、本は置いていきなさい」
 摩那は本を銜えて逃げるヤギを追いかけ出した。

「貴重な蔵書を優先的に狙ってんのか。それとも、単に紙を食べたくって手近な所を回ってんのか」
 どちらだろうかと物九郎は考えるが、今ある情報だけでは確かな答えは出ない。
「なんにしてもまずは詳細な情報が必要ですわな」
 物九郎は学舎の見取り図を広げて茶斑の三毛猫の姿をしたドローンを走らせ、ヤギの動向を探らせる。
「メーメェー」
 するとヤギ達は本だけでなく手当たり次第に紙をむっしゃむっしゃと美味しそうに食べているようだった。
「見つけやしたよ、見境なく紙を食べてるようですな」
 ヤギの行動原理を確認した物九郎は悪巧みを思いついたように笑い、罠を仕掛ける為に動き出す。
「ここがよさそうですな」
 勘を働かせここなら気付かれないだろうと、一階の本の置かれた教室の入り口に『開いた門』の幻像を解像度を薄くして設置する。
「さぁて、仕掛けは上々、罠猟の始まりですわ」
 後は罠に獲物が掛かるのを待つばかりと、三毛猫を隠れ潜ませ、自分の気配で気取られぬようにその場を離れた。

「食べちゃだめです! 食べちゃだめなのです!」
 そう叫びながら咲凛がヤギを追いかけ、円盤を飛ばして追尾させビームチェーンソーで切り裂こうとするとぴょんと方向を変えて跳んで逃げる。そこへ咲凛は腕の装甲を展開しガトリング砲をぶっぱなしてヤギを撃ち抜いて穴だらけにした。
「えっと……本は無事みたいですね!」
 倒れたヤギから本を取り戻し、キョロキョロと周囲を見渡す。すると同じようにヤギを追っていた生徒達を見つけた。
「はぁはぁ、くっそー全然捕まえられねえ!」
「はい!」
 肩で息をしている少年に、元気でにこやかな笑みを見せて咲凛は本を手渡した。
「あ、奪い返してくれたのか、ありが――」
「食べちゃダメですーー!」
 咲凛は返事も聞かずにぴょんと飛び跳ねるヤギを叫びながら追いかける。ヤギに夢中になり過ぎて壁にぶつかりそうになったりしながらも、確実に一体ずつ追い詰めて仕留めていった。

「獲物がやって来たようでさァ」
 物九郎の三毛猫が監視する教室の前に戦いから逃げてきたヤギが近づいていた。開かれた扉の前でヤギは中に本があるのを見つける。
「メェ~」
 ご機嫌に本を食べようとヤギが幻像の門を潜る。その瞬間、門が勢いよく閉じてヤギの体を切断した。
「メ? メェエエ!?」
 何が起きたのかも分からずにヤギが倒れる。
「上手くいきやしたね、この調子で次々狩ってやりまさァ!」
 三毛猫が罠に掛かった獲物を映し出し、その映像に物九郎はほくそ笑んで教室へ戻り、倒れたヤギを片付け銜えて本を回収するとまた離れて次の獲物を待つ事にする。するとちょうど上の階での戦いを逃れてきたヤギがやって来た。
「メーメーー」
 周囲を見渡し誰も居ないのを確認すると、安全な場所にこれたとヤギは安堵して教室に入ろうとする。それが断頭台に自ら首を乗せる事だとも知らず……。新たなヤギが身体を切断されて倒れる。それを先よりも物九郎は手早く片付けたまた罠を仕掛ける。
「こりゃ楽な仕事だ。のんびりとヤギが全滅するのを待つとしやすかねェ」
 敵が罠に掛かるのを待つだけの楽な仕事だと、効率は悪いが確実な仕事に物九郎は画像を見ながらのんびりと獲物を待つ。三毛猫がその気分に同調したのか、大きな欠伸をした。

「んと、ヤギさんは……」
 ヤギを見失った咲凛はレーダーで位置を調べ、教室の中に隠れている事を察知する。そこへ向かって重力を無視した咲凛はスラスターを吹かせて真っ直ぐに飛翔した。
「ここですね!」
 元気に教室へ咲凛が突撃し、むしゃむしゃと本を食べて食事中だったヤギがビクッと驚いて跳んで宙に浮く。
「本を食べちゃめーです!」
「メー!」
 教室に居たヤギ達が一斉に逃げ出し、その内の一体を狙い咲凛はガトリングの弾を連射して追い詰め、円盤のチェーンソーで体をバラバラに切り裂いた。
「追いかけっこです! 逃がしませんよ」
 そして咲凛はヤギが落とした本を手に取るとすぐさま逃げたヤギの追跡に向かう。
「本です!」
「あ、はい」
 急ブレーキしてにっこり笑顔で咲凛が通りがかりの女子生徒に本を渡し、また急加速してヤギを探す。
「めーめー」
 ヤギがむっしゃむっしゃと涎を垂らしながら本を食べている。その廊下に咲凛が飛び出て来た。
「見つけました! 食べちゃだめですー!」
 飛んで咲凛はヤギを追い詰めていくと、ヤギは本を撒き散らして囮にし、勢いよく壁を蹴るように跳ねて逃げ出した。
「ちゃんと片付けないとだめですよ!」
 ぷんぷんと怒ったように咲凛が本を集め、近くの生徒にはいどーぞと渡してヤギの追跡に戻る。その忙しない早業の如き動きに本を受け取った生徒は言葉もなく見送った。

「メェーー」
 人気の無い教室に入りヤギが本をむしゃむしゃと美味しそうに食べる。
「本は知恵の源泉、噛みしめるように読むのは構いませんが、本当に噛んで食べてしまうのは止めなさい!」
 そこへ踏み込んだ摩那が投げるヨーヨーを顔にぶつけて食べるのを止める。そして本を戻るヨーヨーに巻き付けて回収した。
「メエエエェ!」
 本を取られたヤギは返せとばかりに襲い掛かって来る。身体能力を上昇させ突進してくると、摩那は眼鏡で敵の位置を測り、飛び退いて体当たりを躱した。そして背中にヨーヨーをぶつけて壁に衝突させる。
「メエエエ!」
 それを見た他のヤギが危険だと教室から出ようと扉に向かって駆け出した。
「こいつで終わりでさァ」
 その扉がちょうどヤギが潜たところで突然扉が閉ざされ挟まれたヤギの体が両断される。
「すいやせんが、そろそろ1階には降りて来なくなったんで、罠の場所を変えさせてもらったんでさァ」
 ひょこっと三毛猫が姿を出し、それに続いて物九郎も現れた。
「メエエ!」
 仲間の後に続こうとしていたヤギが踵を返して戻ろうとする。するとその顔に摩那のヨーヨーが叩き込まれた。
「その本を置いていきなさい」
「メエエェーーーー」
 その衝撃にヤギの銜えていた本が落ち、本の背が外れ紙が散らばり地面にぶちまけられる。
「メェメエエ―!」
 それを勿体ないとヤギが食べようとするが、もう一度摩那がヨーヨーを叩き込み顔を潰すような衝撃を与えて阻止する。
「それは貴重な本です。紙を食べたいのなら何も書かれていないものを食べなさい!」
 ヨーヨーを使って摩那がヤギを吹き飛ばし追い払う。するとこの場の本を諦めたヤギが逃げ出した。
「見つけました! 人の本を食べるわるい子はゆるしません!」
 そこへ飛び込んだ咲凛がガトリングから無数の弾を撃ち込み、最後に残ったヤギを穴だらけにして倒した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『死の幻想』モリィ・グレイル・メメントス』

POW   :    切り裂いてあげる。『鋼糸一閃』
【鋼糸】が命中した対象を切断する。
SPD   :    搦め捕るわ。『鋼糸搦篭』
【鋼糸】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【の上に鋼糸で出来た数多の蜘蛛の巣を張り】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    ――塵も残さない。『鋼糸鏖殺』
【鋼糸による連撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。

イラスト:Nekoma

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はラヴ・フェイタリティです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●糸の罠
 ヤギの群れを全て倒し、猟兵達は本を回収して図書室に運ぼうとする。その時ふと足を止めると、廊下に光が走った気がした。じっとそれが何かと目を凝らすと、廊下に細い糸が張り巡らされているのに気付く。それは触れれば切れそうな鋭い刃の糸。無差別にそこを通ったものを切断して殺す危険なトラップだった。
「残念、罠に掛からなかったわね」
 その様子を見下ろすのは糸の上に立つ一人の少女。その目には獲物を見るような殺意だけが浮かび、指から伸びる糸が周囲の壁や机や椅子をまるで豆腐でも切るように切断した。
「あなた達が戦っている間に、ここはもう私の巣となったわ。これから全ての命を刈り取ってあげる」
 邪悪な笑みを浮かべ、強力な災魔『死の幻想』モリィ・グレイル・メメントスが動き出した。
黒木・摩那
動くと切られる糸の罠は厄介です。
まずは糸を何とかしないといけません。

UC【墨花破蕾】を使って、床や壁を蟻に変換します。
その蟻たちで『死の幻想』を攻撃します。
多少は蟻の死骸が鋼糸に残るでしょうから、それで糸の場所もわかるし、
蟻の数ならば、多少切られても大丈夫です。

糸の場所が分かったら、ヨーヨー『ミストラル』で攻撃します
【衝撃波】【なぎ払い】。
ヨーヨーの軌道を【念動力】で操作することで
鋼糸を避けると同時に切って、罠の巣を潰します。


白斑・物九郎
●POW



俺めのモザイクは、晴れませんでしたけども――

屋内戦で『壁』を敵に据える手際
蔵書を潰す遠大な仕込み

おたくらの作戦はなかなか素晴らしかったっスよ

デッドリーナイン、ナンバーナイン
ザ・レフトハンド――ワイルドドライブ!


・右腕がモザイク状の異形と化す真の姿を解禁
・迫る鋼糸が視認困難ならば【野生の勘】で設置場所や到来を看破、片端から武器の鍵で受けるか右腕の爪で裂く
・設置鋼糸を裂く際は、目に付き次第対処していると見せ掛け、モリィが「次に足場にすると思われる位置に繋がる物」を大振りな挙動に紛れ込ませて狙う(だまし討ち)
・モザイク状の空間を床・壁伝いに広げ、モリィが地形へ鋼糸を引っ掛ける手際のミスを狙う


月守・咲凛
SPDで戦闘、アドリブOK
「あぶない蜘蛛の巣なのです、しっかりお掃除しないと」
イーグルアイで視力を強化してみえるみえーるなのです。
アジサイユニットのビームチェーンソーで蜘蛛の巣を刈り取って、危なそうな人がいれば声をかけたりガトリングで対空防御したり、援護射撃でお手伝いです。
当たりそうな隙があったら、火線砲を連結させた貫通ビームの範囲攻撃で一気に撃ち抜きます。



●狩るもの
「動くと切られる糸の罠は厄介です。まずは糸を何とかしないといけません」
 敵の操る糸の切れ味を見た摩那はまずはそれを封じる方法を考える。
「そうですね、こういった手はどうでしょうか」
 摩那は周囲の床や壁を蟻の群れへと変換する。蟻の群れは敵に向かって侵攻していく。
「そんな虫けらで戦うつもり?」
 馬鹿にしたような声音で死の幻想が鋼糸を操り結界を張り巡らす。その糸に触れると蟻が切断されていく。体液を撒き散らしながら蟻が数を減らしていくが、その度に糸の切れ味が悪くなっていく。
「どういうこと? 蟻を切った程度で……」
 眉間にしわを寄せて死の幻想が糸を見る。すると糸が痛み蟻を切った箇所がでこぼこしていた。
「私の蟻は普通の蟻ではありません。蟻酸をその体内に宿しているのです。それを切ったなら酸を浴びたということです。そして蟻の死んだ場所が糸のある場所です」
 摩那は蟻の切断された場所に大宇宙のパワーを秘めたヨーヨーを投げる。高速回転するヨーヨーは真空波を放って薙ぎ払い、張り巡らされた糸を斬撃で切り飛ばしていった。
「よくも私の結界を! 生意気ね……塵も残さず切り刻んであげるわ」
 死の幻想は周囲に糸を幾重にも放ち、見境なく近くにあるものを切り刻んでいく。
「罠が破られれば力押しですか、底が見えましたね」
 落ち着いて摩那はヨーヨーを念動力で操り、真空波を放って糸を防ぐ。だが全てを防ぐことはできずに頬や手足に浅い切り傷を負っていく。
「本当に生意気! じわじわと切り裂かれて死ぬ恐怖に顔を歪ませてあげるわ!」
 邪悪に嗤った死の幻想は糸の速度を上げていく。その度に摩那の傷が増えていった。

「私一人と戦っているつもりですか? ですから底が浅いと言ったのです」
 摩那が飛び退くと、そこに広範囲の貫通ビームが閃き、避ける場所を与えぬ一撃が敵に撃ち込まれた。死の幻想は糸を自らに巻き付けてガードしたが、防ぎ切れずに壁まで吹き飛ばされる。
「当たりましたがガードされてしまったみたいです」
 光の元を見れば、咲凛が火線砲を連結させた大型ライフルを構えていた。
「今のうちに生徒の皆さんはこの階から逃げてください」
 戦いに巻き込まないように咲凛は生徒達に声をかけ、違う階へと避難させる。
「……よくも不意打ちなんてやってくれたわね、絶対に許さないわ!」
 怒りに声を震わせながら死の幻想が起き上がり、ふわりと浮くように糸の上に立つ。
「糸で罠を仕掛けようとしたのはそちらが先です」
 言い返しながら咲凛が腕に内臓されたガトリング砲を向けて弾丸を撃ち込む。だがひらりと死の幻想は糸の上を跳ねて回避する。
「私が狩る側、あなた達は狩られる側なのよ。身を以って知りなさい」
 死の幻想から糸が放たれると、咲凛もブースターを吹かして飛んで避ける。だが糸は蜘蛛の巣のように廊下に張り巡らされ、咲凛の体が少し動けば張り付きそうだった。
「もう逃げ場はないわよ?」
 酷薄な笑みで死の幻想は咲凛を追い詰めようとする。
「あぶない蜘蛛の巣なのです、しっかりお掃除しないと」
 ユーベルコードで視力を強化した咲凛は、円盤状のユニット群を飛ばし、回転して放たれるビームチェーンソーによって視認する糸を断ち切った。あっという間に蜘蛛の巣がバラバラに排除されていく。
「なんなのよ、それは!」
 迫る円盤ユニットを死の幻想は糸で切り飛ばす。そこへガトリングの弾をばら撒かれると、教室の中へ飛び込んで躱した。

「俺めのモザイクは、晴れませんでしたけども――」
 そこには待ち構えるように物九郎が立っていた。
「屋内戦で『壁』を敵に据える手際、蔵書を潰す遠大な仕込み。おたくらの作戦はなかなか素晴らしかったっスよ」
 パチパチと芝居じみた拍手をして物九郎が笑みを浮かべ、その存在感が急速に増大していく。
「デッドリーナイン、ナンバーナイン。ザ・レフトハンド――ワイルドドライブ!」
 その右腕がモザイク状の異形と化し真の姿が解放された。
「でもそれもこれも全てこれで仕舞いですな」
 踏み込んだ物九郎が右腕の刃物のように鋭い爪を振り抜く。引き裂くように放たれる攻撃を死の幻想は糸を張って防ぐ。だが糸が切れ、その肩から醜い爪痕を刻む。
「よくも私の体にこんな醜い傷をつけたわね!」
 反撃に見えぬほど細い糸が物九郎の首や胴を狙う。
「見えなくとも感じれば躱すのは難しくない!」
 勘を頼りに地面に倒れ込むように物九郎は糸を避け、右腕を振るって糸を切った。
「なら躱せないほどの糸で雁字搦めにしてあげる!」
 教室に糸を張り巡らせ、その上を移動して死の幻想は間合いを開ける。
「そんなもん、全て切り裂けば何の問題もないってことでさァ」
 物九郎は近くの糸を全て爪で切り裂きながら死の幻想へと迫る。
「ふんっ、単純馬鹿ね」
 軽やかに死の幻想が跳躍して足場の糸を移る。そこを狙い、足場となる糸を先に物九郎が引き裂いた。
「な!?」
 バランスを崩した死の幻想は慌てて新たな糸を天井に張って掴まりぶら下がる。
「引っ掛かりやしたね」
 ニヤリと笑った物九郎がその無防備な体に右腕を振り下ろした。
「このっ!」
 死の幻想は糸を束ねて爪を受け止める。だがぶら下がってる状態では勢いを殺せずにブランコのように体が振られ天井に叩きつけられた。
「かはっ……ぜったいに……絶対に許さない!」
 口の端から血を流しながら死の幻想の眼が憤怒に燃え、目に見えぬ速度で糸が放たれる。
「殺したいときに狙うのは、大体ここらへんでしょうな」
 物九郎が鍵で首を守ると、糸が鍵に引っ掛かり、首の皮が薄く切れたところで止まった。

「ふふふ……このままじわじわと首を落としてあげるわ」
 死の幻想が糸を引く指に力を入れ、物九郎の首から血がぽたりと垂れた
「戦いの最中にそんな余裕ぶっている暇はありませんよ」
 そこへ摩那が教室に飛び込み、ヨーヨーを放って真空波で糸を切り裂いた。
「またお前か!」
 鬱陶しそうに死の幻想は摩那に視線を向ける。
「ならばお前から死ね!」
 死の幻想が糸を撒きつけようと指を動かそうとする。だが痛みが走って繊細な糸の操作を誤り、ドアが切り飛ばされる。何事かと見てみればその指に蟻が乗って噛みついていた。
「いつの間に!?」
「部屋に入る前に蟻を先行させていました。この教室は既にこちらの領域です」
 摩那が天井を見上げると、蟻がポロポロと落下して死の幻想に付着し、噛みついて肉を千切る。
「痛ッ、近づくなぁ!」
 凄まじい勢いで糸が舞い、蟻を切り裂いてゆく。
「素早い動きもみえるみえーるなのです」
 そこへ咲凛がビームを放ち、糸を消し飛ばして敵の脚も撃ち抜いた。

「どうして私の邪魔をするのがこんなにいるのかしら!」
 糸を巻き付けて脚の傷を塞ぎ、死の幻想は糸で宙に浮きながら咲凛に向けて四方から糸を巻き付かせる。
「いまの私には糸の動きが手に取るようにわかります」
 飛翔して糸の隙間を突破した咲凛は、ガトリングで弾幕を張って糸を切り敵の動きを牽制する。
「こんなもので私の動きを止めたつもり?」
 死の幻想は糸で弾丸を切り裂き、逆に咲凛の動きを封じてやろうと糸で四肢を絡めとる。
「一対一なら圧倒的に強いんでしょうな。だが今は一対三ってなもんですからよ」
 物九郎が右腕を振るって糸を切断し、自由になった咲凛は敵に向けて大型ライフルから広範囲にビームを放った。
「蜘蛛の糸はぜんぶお掃除するのです!」
 ビームが糸を焼き切り、敵が盾として作り出した糸の壁を燃やす。
「くぅっ、このままでは不利ね」
 死の幻想は糸を張りながら教室から出ようとする。
「逃がさないっスよ」
 それを物九郎が追い爪で糸を切り裂きながら接近する。だが行く手を塞ぐように幾重にも糸が張られていく。
「攻め続けなくては準備をする時間を与える事になります」
 新しく巣を作る時間は与えないと摩那がヨーヨーを放ち、糸を纏めて薙ぎ払った。そこで物九郎が飛び掛かり右腕を一閃して、糸を服のように纏う死の幻想の胴に、糸を切り裂きながら新たな傷を残した。だが傷つきながらも外に糸を伸ばし、己が身体を引っ張るように死の幻想は廊下へと飛び出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

お姉様が雷の精霊を……?
私の専売特許だと思ってたのにいつの間に……
ま、まあ、お姉様は才能がありますから、それぐらいは楽勝ですよね(強がり)

それにしても、私たちはやはり姉妹ですね
鋼糸に電撃を伝わらせて攻撃する案は、私もちょうど考えていたところです
二人でタイミングを合わせて電撃を放ちましょう!
ついでに、生徒さんたちの機械も強化しておきますよ!

「なんの罪もない学校のひとたちを襲うあなたたちのことを、私は許せません! あなたたち過去の存在がいまを生きるひとたちに害を与えることなどあってはならないのです! 雷の精霊さん。平和で美しい世界を作り、守るために私に力を貸してください!」


エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加。

おやおや、一方的に狩れるつもりでおるのか?できるかどうか試してみるがよい。
おお、鋼糸をコハル殿が焼き切ってくれておるようじゃの。 わしもコハル殿の背中を守るように両手に持ったナイフで糸を振る払うくらいはやっておくかの。『野生の勘』  

さて、鋼糸はコハル殿に任せるとして、こちらは雷の精霊を呼び出して敵を取り囲み、全方位から雷撃を喰らわせてやるのじゃ。
鋼糸なら電導するじゃろうし、糸の操作を乱せるじゃろ。『属性攻撃』 

攻撃が来たら、強力に帯電させた精霊を殿に置いて鋼糸での攻撃に対策させた上で、コハル殿のブースターに同乗して回避するのじゃ。


二條・心春
【獣人同盟】の皆さんと行きます。

ここは学園、生徒の皆さんの学びの場です。あなたの巣にはさせませんよ!

生徒の皆さんや私達が切り裂かれてしまったら大変です。この鋼糸の巣は私が何とかします。
ユーベルコードで槍にブースターを付けて振り回して、炎属性を付与した、高速の「衝撃波」を放って、糸を短く、溶かして切ります。糸は彼女の手に繋がるようですから、リーチが短くなって有利になるはずです。(敵に攻撃する二人を見て)お二人とも、どうかお気を付けて。
鋼糸で攻撃されるようなら、ブースターで後退して避けます。危ない人は掴んで一緒に連れて行こうかな。スピレイルさんが機械を強化してくれたおかげで、機動力は十分ですね。



●狩られるもの
「まともにやり合うのは得策じゃないわね。ここには多くの人間が居るのだし、それを利用して巣を作ってやるわ……見てなさい」
 いい事を思いついたと嗤う死の幻想は肉の壁にでもしてやろうと、他の階に逃げた学園の生徒を捕まえるため糸を張りながら階段に向かう。
「ここは学園、生徒の皆さんの学びの場です。あなたの巣にはさせませんよ!」
 それを阻止せんと、階段側から現れた心春が槍に高出力のブースターを装着して振り回し、炎を纏う槍から勢いよく放たれる火炎の衝撃波が糸を両断し溶かしてしまう。
「次から次へと、どうして私の邪魔ばかりするのかしら。あなた達は大人しく私に狩られていればいいのよ」
 腹立たしいと死の幻想は心春に鋭い視線を向け、死角を通して糸を放ち槍を握る手首を切断しようとする。
「おやおや、一方的に狩れるつもりでおるのか? できるかどうか試してみるがよい 」
 挑発的な言葉を投げかけながら割り込んだエウトティアは、両手に持った2本の黒曜石のナイフを振るい糸を弾いた。
「ありがとうございます。糸は私が焼いて防ぎますので、お二人とも、どうかお気を付けて」
 攻撃を任せて心春は糸の相手に専念する。すぐに身を守るように張り巡らされる糸を槍で薙ぎ払い、燃やす事で短くして射程を狭くしていく。

「さて、鋼糸はコハル殿に任せるとして、こちらは雷の精霊を呼び出して敵を取り囲み、全方位から雷撃を喰らわせてやるのじゃ」
 エウトティアがスピレイルに作戦を提案して精霊に呼びかける。
「お姉様が雷の精霊を……? 私の専売特許だと思ってたのにいつの間に……ま、まあ、お姉様は才能がありますから、それぐらいは楽勝ですよね」
 顔を引きつらせながらスピレイルは強がり、習得度では負けていないはずと自分を慰める。
「それにしても、私たちはやはり姉妹ですね。鋼糸に電撃を伝わらせて攻撃する案は、私もちょうど考えていたところです。二人でタイミングを合わせて電撃を放ちましょう!」
「うむ、鋼糸なら電導するじゃろうし、糸の操作を乱せるじゃろ。では仕掛けるぞ!」
 話題を替えて沈みそうになるテンションを上げるスピレイルに、そんな葛藤など全く気付かぬエウトティアは頷き、息を合わせて雷の精霊を呼び出す。
 弓を構えたスピレイルは稲妻の矢を放ち、同時にエウトティアは雷の精霊を飛ばして敵を囲んで電撃を浴びせる。
「こんなものっ」
 すぐさま死の幻想は糸を動かし、精霊や矢を切り裂く。だが鋼の糸に電流が流れて伝わりビリッと手が痺れて糸のコントロールが外れて壁を切り裂いた。
「手の感覚が……」
 思うように指を操れずに死の幻想は糸の上を飛んで距離を取る。

「少しばかり時間を稼がなくては」
 死の幻想が手の感覚が戻るまで誰も近づかせないと、糸をとにかく張って障害物にする。そして階段付近に居る逃げ遅れている子供の生徒を見つけた。
「ちょうどいいものが居るわね」
 ニヤリと死の幻想が子供に糸を巻き付ける。こうして糸を繋げておけば電撃は使えまいとほくそ笑む。
「うわっ!?」
 驚く子供の体が持ち上げられていく。
「心春さん、お願いします」
「わかりました!」
 スピレイルが雷の精霊を心春の槍に宿す。するとブースターが限界を超えて出力し、急加速して飛ぶように突っ込み生徒を吊る糸を断ち切った。そして燃え移った炎が巻き付いた糸を溶かし、体の拘束を解く。
「わわっ!?」
「もう大丈夫です。階段から逃げてください」
 落下する生徒を受け止めた心春が、その背中を押して逃がす。
「逃がすものですか!」
 そこへ死の幻想の手から糸が伸びる。
「お主の相手はこやつらがしてくれるのじゃ」
 そこへエウトティアが雷の精霊を割り込ませ、糸が巻き付くと電流が流れ慌てて死の幻想は糸を離して電撃を避ける。その間に生徒は階段へ姿を消した。
「何度も同じ技は喰らわないわ」
 死の幻想は追いかけられないかと階段を見るが、立ち塞がるように心春が槍を構えていた。
「なんの罪もない学校のひとたちを襲うあなたたちのことを、私は許せません!」
 そんな弱者を狙う敵に怒りを覚えたスピレイルが弓を引く。
「あなたたち過去の存在がいまを生きるひとたちに害を与えることなどあってはならないのです! 雷の精霊さん。平和で美しい世界を作り、守るために私に力を貸してください!」
 矢に精霊が宿り放たれると、稲妻となって飛び糸で防ぐ間もなく敵の腹を貫いた。

「かはっ……こんな、私が追い詰められるなんてありえないわっ」
 口から血を吐いた死の幻想が憎々し気にスピレイルを睨み、腹の傷に糸を巻いて止血する。
「四肢をバラバラに刻んで、泣き叫ばせてから殺してあげる!」
 いつの間にか天井からぶら下げていた糸がスピレイルに絡みつく。
「気付かれぬように罠を張るのは狩りの基本じゃが、お主は少々殺気が強すぎるのう」
 そこへエウトティアは巨狼マニトゥを走らせ、糸を噛み切らせた。
「この犬っころめ!」
 死の幻想が指を弾くように動かすとマニトゥを輪切りにしようと糸が上下から迫る。
「誰の命も奪わせはしません!」
 心春が槍を振り下ろし、放つ炎の衝撃波で糸を焼き切った。そして槍を跳ね上げて敵を下から斬り裂こうとする。だがその槍に糸が巻き付き刃が届く前に抑えつけられた。
「止められるなら止めてみればいいわ」
 冷たく見下ろした死の幻想が手を払うと、心春に向けて糸が襲い掛かる。それを槍で払いながら心春が前に踏み込むと、地面に張られた糸が足に巻き付いた。
「かかったわね」
 糸が足を引っ張ろうとすると、マニトゥが爪で引き裂き糸を切断した。
「また犬っころね……いいわ、もう面倒臭いから、全部まとめて切り刻んであげる!」
 死の幻想の周囲に糸が巻き付き鞠のように球状になる。そしてその糸が一斉に広がって周囲を無数の刃が竜巻のように襲った。
「コハル殿、一旦下がるのじゃ」
「はい! しっかり掴まってください」
 エウトティアが心春の手を握ると、心春はブースターを噴射して敵から離れる。すると立っていた場所が床も壁も糸によってズダズダに切り裂かれた。

「その糸の渦を突破するのは難しいですが、突破できずとも糸が繋がっているならば問題ありません」
 スピレイルが糸に矢を撃ち込む。雷を帯びた矢から糸を通して電気が伝わり死の幻想へと届いた。
「きゃあっ!」
 攻撃に集中していた死の幻想が衝撃に驚き動きが止まる。
「この隙に決めてしまいましょう」
 心春がブースター全開で飛び込み、槍を振るって鞠のような糸を斬り裂き燃やす。
「糸が緩みました。お姉様、今です!」
「不意打ちができれば強力な技じゃが、わしらとは相性が悪かったの」
 スピレイルとエウトティアが雷の精霊を召喚し、稲妻の矢が糸の防御をすり抜けて敵の手を貫き、糸が緩んだところへ敵を囲む雷の精霊から全方位雷撃が叩き込まれた。
「ありえない……ここは私が支配するの、こんな結末はありえないわ!」
 動かぬ手で何とか糸を動かそうとし、死の幻想は己が死から逃れようとする。
「学園はここに通う人々のものです。あなたのものではありません!」
 ブースターで加速した心春の槍が体当たりする勢いで敵の胸を貫き、壁に縫い付けて命を絶った。


●腹が減っては
「今回はご助力ありがとうございます!」
「助けてくれてありがとうございました!!」
 教師と生徒が猟兵達に頭を下げて感謝の言葉を伝える。
「生徒の皆さんが無事でよかったです」
 ほっと無事な生徒達を見て心春が緊張を解いて微笑んだ。
「人的被害は少ないが、物の被害は多そうじゃのう」
 エウトティアが穴ぼこだけになった校舎や、散らばった本の紙を見渡して修復が大変そうだと心配する。
「大事な蔵書にも被害が出てしまってますからね、元通りにするのは大変でしょうが頑張ってください」
「はい! がんばります!」
 スピレイルが励ますと、生徒達は元気に大きく頷いた。
「あ、そういえばお姉様、心春さん。マトンカレー食べますか?」
 思い出したようにスピレイルが尋ねると、そういえば防衛に奔走していて何も食べていなかったと、思い出したように生徒達のお腹が鳴った。
 何をするにも食事からと、学園にカレーの香りが漂うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月26日


挿絵イラスト