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廻る絆~あなたと歩む道

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●まだ見ぬあなたと
 新入生も新しい生活に慣れ、しばらく日々が巡った後。
 アルダワ魔法学園では新入生歓迎会の延長として、とある行事が執り行われようとしていた。
 それは――『相棒探し』。学園においてはコエシステンツァと称されている。
 日常を共にしてくれるペット、戦闘での相方など、学生たちの冒険や生活を彩る、ちいさな相棒を見つけに行く。
 それが何年前に始まった風習かは正確には記録に残ってはいない。ただ、学生たちの間で連綿と引き継がれてきた優しい伝統のひとつではあるらしい。
 これから歩む季節に寄り添ってくれるあなたがいてくれたなら。
 きっともっと楽しい毎日になりそうな気がしているんだ。

●歩む明日を
「相棒探しだって、すごい! そういうの憧れたりしない? 私は大好き!」
 学園の生徒から噂を聞いたらしいメーリ・フルメヴァーラ(人間のガジェッティア・f01264)が詳らかにするのは、新入生歓迎会の一環として行われるコエシステンツァ。共存する相棒を見出すための行事だ。
「これからの学園生活を過ごすにあたって、一緒に過ごす相棒を探すんだって。基本的にはガジェットやドラゴンランスが多いけど、精霊と契約出来る本がある書庫も開放されるらしいよ」
 まずは学園の旧校舎、保管室へと向かうことにしよう。その一室は迷宮から発掘されたドラゴンランスやガジェットが多数保存されている。
 ドラゴンと一口に言っても種類は様々、何らかの属性を備えるものも多い。一般的なものは炎を吐くものだが、鱗が黒曜のもの、大きな翼を持つもの、鏃のような尾を持つもの。性格性質も雄々しいものもいれば憶病なものもいる。
 ガジェットはアルダワ魔法学園特有だろう。自律意志を持つ個体も多い。メーリもミニ戦車型のガジェットを所有している。人型のもの、動物型のもの、様々だ。メンテナンスさえ怠らなければ、長く友として在ってくれるに違いない。
 保管室の隣には書庫がある。魔法学園の名に違わぬ魔術書が多数保管されている。その一冊一冊に精霊が宿っているのだ。古きものから新しきものまで、その所以も姿かたちも能力も異なろう。契約を交わせば存分に力を貸してくれるはずだ。
 メーリは要するにね、と人差し指を振りながら言う。
「まずはどんな子に会いたいかを考えて、目当ての部屋に行けばいいと思うの。それからレクレーションの一環として迷宮を探索するんだって! 相棒と協力して迷宮を踏破して、それからとある階層の敵を力を合わせて倒すところまでが一連の流れみたいだよ」
 敵と言っても、その階層はごく浅く、それほど強い相手ではない。それこそ新入生でも力を尽くせば打倒出来る程度のレベルだ。
 要するに相棒と出会い、協力し合いながら迷宮を進み、一緒に敵と相対する。
 そうすることで生まれたばかりの絆も、確かなものとして培われるだろう。
「同じように相棒探しするって話がアックス&ウィザーズであるみたいだよ。気になる人はそっちも確認してみてね」
 ただ相棒というくらいなのだから、相手はひとりに絞ったほうがいい気がする、とはメーリの談だ。勿論複数体の精霊と契約しているなんて場合はこの限りではない。
「ね、素敵な出会いがあったらすごいよね、楽しみだね! どんな子と出会ったか教えてもらえる機会があるといいなあ」
 ともあれ行ってらっしゃい、そうメーリは猟兵たちを送り出す。
 信頼を紡いで織り成せば、きっとそこには赤い糸が結ばれるはずだ。


中川沙智
 中川です。
 ドラゴンもガジェットも精霊も浪漫ですよね。好きです。

●このシナリオについて
 今作は吾妻くるるマスター様とのリンクシナリオとなります。共通テーマは設けておりますが、時間や参加の制限はございませんので、どちらへもお気軽にご参加ください。
 ただし進行はそれぞれ独立してますので、シナリオを跨いでの連携等は受け付けかねます。ご了承頂きますようお願いいたします。

●プレイング受付期間について
 各章、プレイング受付期間を設けます。第1章はオープニング公開時点から、第2章以降は導入文を掲載した後の受付開始となります。
 詳しい受付開始時刻等はマスターページの説明最上部及び中川のツイッター(@nakagawa_TW)にてお知らせします。お手数ですが適宜そちらをご参照くださいますようお願いいたします。受付期間外に頂いたプレイングはお返しする可能性がありますのでご了承ください。

●シナリオ構成について
 第1章:ドラゴン・ガジェット・精霊の相棒探し(日常)
 第2章:相棒と一緒に迷宮探索(冒険)
 第3章:相棒と一緒に実戦(集団戦)
 以上の流れになっています。
 なお、第1章については原則新しい相棒との「初めまして」を描きますが、第2章以降については当シナリオ以外で縁を繋いでいる既存の相棒さんとの行動を書いて頂いて構いません。
 新しい相棒として出逢えるのはオープニングの通りドラゴン・ガジェット・精霊です。常識の範囲内であればどんな特徴を持つものかは自由に設定頂いて構いません。ただしあまりに常軌を逸しているもの、公序良俗に反するものはプレイングをお返しします。ご了承ください。

●同行者について
 ご一緒する参加者様がいる場合、必ず「プレイング冒頭」に【相手のお名前】と【相手のID】を明記してくださいますようお願いします。

 では、皆様のご参加を心からお待ちしております。
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第1章 日常 『新入生歓迎会!』

POW   :    頼りがいのある先輩をアピール。派手で力強いパフォーマンスで新入生達を楽しませます!

SPD   :    趣向を凝らしたイベントを行います。一緒に楽しめば仲良くなれるのも早いかも。

WIZ   :    新入生達にインタビューをしてみましょう! 逆に新入生から質問されたら答えてあげてくださいね!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ヘンリエッタ・モリアーティ
右腕があるなら左腕も用意しておくべきだろう、と私は思うのだけど
――何事もバランスが求められるべきじゃないか、うん?
いやはや、教授(マダム)と呼ばれていたが生徒となるのは久しぶりだ
この大迷宮で手に入れられるドラゴンは――モラン、君と仲良くできるといいね
槍も私がメインで振るうわけではないが、他の「私」にも相応しいものをあつらえてやりたいのだよ
色も形も任せてしまうが、我こそがと相応しい竜が私のそばに来ればいい
まぁ、たいていは――怖がってしまうかもしれないがね
新しい竜の名前?そうだなぁ。レスト・レイドなんてどうだろう
ああ、こら、レイド。モランとやりあうんじゃないよ



●はじめまして、わたしのあなた
 ヘンリエッタ・モリアーティ(犯罪王・f07026)は既に右腕を有している。
 勿論文字通りの意味ではない。相棒たるドラゴンが存在している、という意味だ。
 黒い鱗に金の瞳を持つ飛竜、名はモラン。それは今は飛翔せずに、ヘンリエッタの足元で這うようについてきている。視線を落として、モランに語り掛けるようにして問いを投げかけた。
「右腕があるなら左腕も用意しておくべきだろう、と私は思うのだけど。――何事もバランスが求められるべきじゃないか、うん?」
 キュイ、と鳴き声が返ってきたのは相槌なのだろう。つい小さな笑みが零れた。
 アルダワ魔法学園の廊下を歩きながらヘンリエッタは不可思議な感慨に浸る。数ある人格の中には教授と、マダムと呼ばれたものもいた。しかし生徒になるのは久々のこと。
 保管室の前に到着し、ゆっくりと扉を開ける。魔法石が淡く光って照明の役割を果たしている。
 話に聞いたドラゴンランスは――視線を巡らせばすぐに見つかる。ヘンリエッタは大股で歩み寄った。モランも遅れてついてくる。
 さて、どんなドラゴンと出逢えるだろうか。
「モラン、君と仲良くできるといいね」
 今度はキュー、と返る。種族は、成り立ちは違えど意志疎通は出来る。ドラゴンの主体となる槍も、実際自分がメインで振るうわけではない。ただ、他の『私』に相応しいものを誂えるのはきっと良いことだ。
 ドラゴンランスがずらりと並ぶ様を見遣る。こちらからどういうドラゴンを、と指名するつもりはなかった。我こそがと名乗りを上げるような存在があればいいと願っていたから。
「まぁ、たいていは――怖がってしまうかもしれないがね。実際のところどうかな?」
 ヘンリエッタが細い指先で指し示したのは、白銀の槍。
 するりと変化し顕現したるは白銀の鱗を備えるドラゴンだ。大きさはモランと同じくらい。些か距離を測っているようにも見えるが、職務に忠実たれという、真摯さを戴くその一頭。
 己が家名を、黒い飛竜を鑑みて、ヘンリエッタは邂逅果たした左腕に名を授ける。
「そうだなぁ。レスト・レイドなんてどうだろう」
 名を得れば縁は結ばれる。レイドと呼ばれたそれは、さっそくモランを牽制しようと尾を跳ねさせた。
「ああ、こら、レイド。モランとやりあうんじゃないよ」
 吐息が零れたってそこに苦さはなく、ただ微笑ましさを帯びるのみ。
 どうやら退屈とは程遠い日々になりそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉月・零
本がたくさんあるだけでもテンション結構上がるんだけど、それぞれに精霊が宿ってるってのは、ちょっとワクワクしちゃうね。

新しく力を貸してくれる友人に出会えたら……とは思うけど、まぁ出会えなくても、この沢山の本に囲まれただけでも良しとしよう……うん。

思うままに探索をしてみて、ふと気になった書物に手を伸ばす

これは……物語が綴られてるのかな?

閉じて、また開いて。中身変わってない?

キミはもしかして、物語に宿る精霊なのかな?

俺もいろんなところの物語に触れてみたいなって思ってるんだけど、一緒に行ってみない?

出会えた子は
夜空のような毛並みに、きらめく星のような瞳の猫の姿
まるで、おやすみの前に出会う素敵な物語の様





 無類の本好きである葉月・零(Rien・f01192)としては、こうして書庫で本に囲まれているというだけで心が躍るというものだ。普段から数多の本に触れてはいるが、ここまで精霊を宿す蔵書が豊富な本棚はそうそうあるまい。
「ちょっとワクワクしちゃうね」
 我知らず零れた囁きは、心弾む温度をそのまま滲ませる。精霊とて多岐に渡る存在であるからして、ある程度は種類別に分けられているようではある。が、整理も追い付いていないのだろう。背表紙の色も装丁も色とりどりだ。
 そういったものを眺めるだけでも、正直楽しい。
「新しく力を貸してくれる友人に出会えたら……とは思うけど、まぁ出会えなくても、この沢山の本に囲まれただけでも良しとしよう……うん」
 たくさんの本が、精霊が在るということは、その内実も千差万別ということだ。そして文章の癖が合わなくて読み進めるのが難しい本があるように、どうしても気質の合わない精霊も存在しているだろうと、零は正確に理解していたのだ。
 書架の間を歩く。書名は精霊名を冠しているものも多い。探検気分で歩を進め、そのうち気になった一冊に手を伸ばした。頁を捲る。
「これは……物語が綴られてるのかな?」
 文字を追い、後で腰を落ち着けてから読もうかと一度本を閉じる。深呼吸を挟んだ。物語に思いを馳せ、反芻する。
 僅かな間を挟み、それでも続きが気になり再び開けば、零は瞠目することとなる。
「中身変わってない?」
 驚愕の声音。
 先程流し読みしただけとはいえ見紛うはずもない。異なる粗筋を辿る物語、それに問いかけめいた言葉が自然と漏れた。
「キミはもしかして、物語に宿る精霊なのかな?」
 にゃあ、そんな風に聞こえた気がした。
 頁に描かれた魔法陣が光を放つ。箒星に似た光の曲線が本かから放出し、眼前に淡い光となって顕現した。
 夜空のような深い藍色の毛並み、そこに瞬く星のようなきらめき宿す瞳。
 猫だった。行儀よく前足を揃えて、零へと眼差しを向けてくる。
 その佇まいはおやすみの前に出会う素敵な物語に、よく似ていた。
「俺もいろんなところの物語に触れてみたいなって思ってるんだけど、一緒に行ってみない?」
 誘いはするりと唇からまろび出た。これからを一緒に歩いて行って欲しいという、願いを籠めて。
 もう一度にゃあと猫が鳴いた。
 それは諾意だと、言わずとも知れていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
※お任せ

……相棒、か
頑張って精霊に呼び掛けてみるよ
同じ志を持つ相方がいてくれたら、本当に嬉しいな

UC発動

私はシノ
私の夢は、36の世界にあまねく全ての生命を幸福にすること
過去から蘇りしものたち(オブリビオン)に安らかな眠りを呼び戻し
今を生きるものたちに希望を与え続けること

途方もない【祈り】だ
全ての命は千差万別だ
無茶苦茶と言われても仕方ない

それでも私は世界を照らし続けたい
そう出来る存在でありたい
人々が自身の輝きを思い起こせるような
そういう生き方をしたい

こんな大馬鹿野郎と同じ想いを持ってる精霊はいるかな?


ちなみに
私はかなり永い時を生きる
恐らく永遠と紛う時をね
さて、誰か来てくれる?





 鈴木・志乃(ライトニング・f12101)の橙色の双眸が手にした本に向けられる。ぱらり、ぱらりと頁を捲るたび、古書特有の埃っぽい匂いが鼻腔を擽る。
「……相棒、か」
 描かれた魔法陣を指先で辿る。ブックスタンドに開いたまま立てかけて、胸の前で手を組んだ。
 息を吸い、吐く。頑張って精霊に呼び掛けてみよう。
 数多の猟兵がいて、数多の生き物がいて、さまざまな世界で生きている。自分はそんな波間を縫ってひとところに留まらず渡っていく。そんな最中に同じ志を持つ相方がいてくれたなら――そう思えば、自然と口許が綻んだ。
 志乃が手向けるのは祈り。
 清々しい黎明の光や、初夏の涼やかさ。そんなものに似た祈念。生命へ向けた真摯なそれは、確かな光を纏ってそこにある。
「私はシノ。私の夢は、36の世界にあまねく全ての生命を幸福にすること」
 声は明瞭で真直ぐだ。それは誓いにも、冀いにも等しい。
 志乃は続ける。
「過去から蘇りしものたち、オブリビオンに安らかな眠りを呼び戻し、今を生きるものたちに希望を与え続けること」
 壮大な夢だ。果てがなく、終わりが見えない。命というものは千差万別であり、種族という意味に限らず、それぞれ違う意思と価値観を持つ。希望の形も異なろう。幸福とは何たるやの定義も考えだせばきりがない。
 至らぬこともあろう、歯が立たぬこともあろう。
 しかし志乃は顔を上げる。
 目を背けずひた走る。自分はそういう『命』だと、そう思うから。
「それでも私は世界を照らし続けたい。そう出来る存在でありたい。人々が自身の輝きを思い起こせるような、そういう生き方をしたい」
 それは決意表明でもあったのかもしれない。
 視線を頁に落としたまま、少し自嘲気味に口の端を上げた。
「こんな大馬鹿野郎と同じ想いを持ってる精霊はいるかな?」
 光が迸る。一転に集中した後瞬いた。突風が吹き一瞬目を眇めるも、光の欠片が収縮し構築されていく様を間近で見ていた。
 そう、それはまさに『光』だった。
 明日を夢見るもの、未来を指し示すもの。光の属性を持つそれは小型でありながら、気高いペガサスを思わせる。淡金色の鬣が美しい。
 その姿を確かに見止めて、少しだけ躊躇いを噛んで言う。
「ちなみに、私はかなり永い時を生きる。恐らく永遠と紛う時をね」
 あらかじめ告げたのは、礼儀のようなものだった。覚悟を問うようなその声音。
 それでも尚、望んでくれるというのなら。
「……来てくれる?」
 どうして聞くの、当たり前でしょう。そんな風情で光のペガサスが歩み寄った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・オルビス
独り過ごす時間を辛いと感じた事はなくて
ただ大切な人達がいなくなってしまった時に
僕と彼らでは時間の流れが違う事を
少しだけ、寂しく思ったのです

保管室に整然と並ぶ無数のガジェット
心躍るのは技師の端くれ故か
し、しかしこの中から
たったひとつを選ぶのは至難の業では…
唸りながらも一体一体を真剣に吟味
軈て目に留まったのは
機械仕掛の金屬の身体に
強化水晶の棘を纏った針鼠
起動スイッチを入れれば
円らな瞳とぱちり目が合う
僕の旅の相棒になってくれますか?

宜しくお願いします、針鼠さん
挨拶に対しそっぽ向いた針鼠に首を傾げ
…あ、名前ですか?
そうですね…自分の名前は
粒子記号から付けられたそうですから
『ラムダ』はいかがでしょうか





 保管室の扉を開けたら、仄かに光る魔法石の照明が出迎えてくれた。促されるように足を踏み入れ、ミュー・オルビス(貝の火・f03315)は周囲を見渡す。
 思い出すのはグリモア猟兵から聞いたコエシステンツァの説明。相棒探しという言葉に思いを巡らせる。
 傍らに誰かがいるという生活はどんなものなのだろう。
「……不思議な感じがします」
 ミューは小さく零す。独り過ごす時間を辛いと感じたことはない。
 ただ自分はミレナリィドール。普通の人間と同じように年を取ることはない。大切な人たちがいなくなってしまった時を想像したら、僅かに背が震えたのだ。
 ほんの少し、寂しいと思ったのだ。
 保管室の棚には様々なガジェットが整然と並べられている。そのねじ巻きを見るたびに、真鍮色のきらめきを見るたびに、心躍るのは技師の端くれだからだろうか。
 逆に言うと、目移りしてしまって仕方ない。
「し、しかしこの中から、たったひとつを選ぶのは至難の業では……」
 ミューの声音に焦りのようなものが滲んだのは、特別たる唯一に絞り込めるかと些か不安になったから。どれも良いし、きっと素敵な友になってくれるだろうと思うから。うんうん唸りながらひとつ、またひとつと手に取っては吟味を重ねていく。
 そうして一通り見定めたミューの傍らにいたのは針鼠型のガジェット。
 機械仕掛けの金属の身体は丸く、不思議とぽてっとしているようにも見える。背に負う棘は強化水晶だ。魔法石の照明の光を弾いてきらめいた。長い旅路の中でも輝いてくれそうな気がした。
 起動スイッチを入れれば、針鼠が身動ぎした。
 つぶらな瞳をぱちぱちと。視線がかち合う。互いの眼に互いが映る。存在証明のように。
「僕の旅の相棒になってくれますか?」
 その時、小さなガジェットに浮かんだのは、確かな歓びであったように思う。
 棚の端っこからミューの手によじ登ろうとする。一緒に行こうとその挙動こそが示しているような気がして、ミューの硝子の瞳にも喜色が浮かぶ。
「宜しくお願いします、針鼠さん」
 歓迎のつもりで告げた言葉に、しかし針鼠はぴたりと動きを止めた。ちょっとむくれているようだ。ぷいっとそっぽを向いた様子に首を捻り、それから閃きが降ってくる。
「……あ、名前ですか?」
 針鼠と十把一絡げに括ったのが不満なのだろう。そう察したから、今一度首を傾げた。
 自分の名前は粒子記号から付けられたと聞いた。
 ならば。
「そうですね……『ラムダ』はいかがでしょうか」
 針先が瞳が、輝いた。
 よろしくね――そう言葉にするように、ラムダはそっとミューに身を寄せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリエ・ルーミエンス
……先日のキマイラフューチャーでの戦争
無事ドン・フリーダムを撃退することができ、
愛する主サマが生きたあの世界の秩序は守られました
でも、私は全ての幹部に対抗することはできなかった

……こんなんじゃ駄目です
もっと強くならなきゃ、再びあの世界が危機に晒されたときに守ることができません
ってことで、このアルダワとやらで相棒を探してみることにしました!

どの子にしましょうかねー
んー、私は元AIでしたから、やっぱりガジェットに親近感が湧いちゃいますかね
この鴉の形をしたガジェットとか良いですね
なかなかお洒落なデザインです

どうです? 悪いようにはしませんよ
私と一緒にいろんな場所の空を見に行きませんか?

※アドリブ歓迎





 エリエ・ルーミエンス(誰かのためのヒロイン・f17991)は保管庫を行く。歩くたびにミルクティー色の髪が波打つ。足音と心音に乗せて。
 そんな折、薄桃の瞳が神妙に眇められる。
 相棒を探そうと思い立ってはみたものの、脳裏に描かれるのは先の戦いのこと。キマイラフューチャーでの戦争のことだ。
 猟兵たちの尽力により勝利を飾ることが出来た。エリエにとっては故郷でもあり、愛する主サマが生きた世界だった。キマイラフューチャーの秩序と平和は確かに守られたのだ。
 しかし。
 唇の端を噛む。苦い思いが胸裏を過るのは、すべての幹部に対抗することは出来なかったからだ。圧倒することはおろか、相対出来なかった幹部もいる。主サマに誇れる戦果とは言い難かった。
「……こんなんじゃ駄目です」
 小さな呟きに籠められたのは決意。
 強くならなきゃ。
 もっと強くならなきゃいけない。キマイラフューチャーとてまたいつオブリビオンフォーミュラが出現しないとも限らない。オブリビオンが完全に駆逐されたわけでもないのだから、何らかの危険は常に付きまとうだろう。
 再びあの世界が危機に陥った時、守れる自分でありたかった。
「ってことで、このアルダワとやらで相棒を探してみることにしました! どの子にしましょうかねー」
 視線を流したのはガジェットが並んでいる棚だ。エリエとしてはやはり、元AIということもあってガジェットに惹かれるところがある。親近感が胸の奥を擽った。
 ガジェットとひとくちに言っても様々な種類がある。植物や動物を模ったもの、想像上の存在を形にしたもの、掌サイズから小型犬くらいの大きさまで。
 ふと目に留まったのは、艶消しした金属で出来た鴉の形のそれだった。
 瞳に埋め込まれたのは黒瑪瑙だろうか。闇に溶け入るような、けれど確かに存在感をあらわにする一羽。スマートなシルエットが美しい。
 視線を向ければエリエを認識したようで、不思議そうに首を傾げてくる。
 その仕草が何故かひどく可愛らしく見えたから、エリエは微笑みを綻ばせた。挑むように問う。
「どうです? 悪いようにはしませんよ。私と一緒にいろんな場所の空を見に行きませんか?」
 いろんな世界を巡ろう。いとしい世界を見よう。
 独りではないのなら、きっと楽しい旅路となろう。
 応えるように鴉が翼を翻す。エリエの腕に止まろうとする。
 データにはない鮮やかなこれからを、探しに行こう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
いそいそ向かう先は
迷わず書庫

素敵な相棒との出会い――すなわち、
あらゆる書物に心酔する己にとって
胸弾む一冊と出会えるという事

棚に並ぶは数多の宝
ひとつひとつに『精霊』の魂が宿っている所為か
或いは書を慈しむ己の眼差し故か
何れも燦然と輝いて見える

嬉しさに駆け出したい熱
逢瀬をゆったり楽しみたい慾
相反する胸裡を抱えて渡り歩く書架

背表紙、装丁、飾り文字
何れにも綴り手、作り手の想いが籠められている、温かさ

頁を捲るごとに甘やかに匂い立つのは
洋墨の香りだけではなく
精霊の吐息だろうか

ふくふく笑み浮かべ
いつの間にか没頭していた書物
いつの間にか肩に乗っていた翼持つ影色の仔猫が
にゃあ、と鳴く

私の、相棒
はじめまして、あなた





 淀みなく響く足音は、書庫の前で止まる。扉に手をかけてゆっくりと開いた。
 窓は換気口以外には用意されておらず、その分魔法石の灯りが柔らかに室内を照らしている。床に都槻・綾(夜宵の森・f01786)の影が伸びる。
 周囲を見渡し、感嘆のため息を零した。古書特有の黴っぽい、そのく心穏やかにさせる匂い。冷えた空気。その中にあって、綾はそっと胸に手を置いた。心弾む鼓動が伝わってくる。
 此度の素敵な相棒との出会い。すなわちそれは、あらゆる書物に耽溺する自分にとって、きっと心揺さぶられるような一冊との邂逅に恵まれるだろうという予感であった。
 書棚に並ぶ背表紙を追うだけで、綾の眦は和らいでいく。
 どれもが希少で代えがたい宝であろう。一冊ごとに『精霊』の魂を戴いているためか、あるいは己が書を慈しむ観点を持っているためか。どちらでもあり、どちらでもあろう。どうにせよどれもが飛び切り眩い煌きを宿している。そう思った。
「ああ、これは興味深い」
 背を押すような高揚に促され、されど出逢いをゆっくりと味わいたい熱もあり、どちらともに揺り揺られる有様だ。擽ったい。けれどそれがいい。
 時折本を手に取って指先で辿ってみる。装丁を眺めるだけで愉しめるのだから罪深い。箔押しを感触で味わう。カリグラフィーに滲むインクが美しい。それは綴り手ないし作り手の心尽くしの歓待であり、愛着である。故に精霊のぬくもりが、直に伝わってくるような心地になるのだろう。それは綾自身がヤドリガミであるから、長い年月を経て慈しまれた経験があるからこその感慨やもしれぬ。
 頁を操るたびに甘く薫るのは、紙の匂いか。洋墨の香りか。栞代わりの花弁か。将又、息衝く精霊の吐息だろうか。
 綾はあえかに笑む。ある一冊に惹かれた。それは感覚的なものであり、閃きと言ってもいい。
 君の世界を教えておくれ。どこで生まれ、どうやって生きて、どんな明日を見ているのか。
 紐解く物語の隅に己が足跡が染みる。精霊の息吹に浸る。
 だから、少しばかり遅れた。
 記された魔法陣が淡く光ったこと。そして、肩に乗っていた柔い温度と重さの存在に、気付くことが。
 翼持つ影色の仔猫が、微睡み心地でにゃあと鳴く。
「はじめまして、あなた」
 この出逢いに名前はいらない。
 言及することすら無粋だ。胸裏は既に、繋がっている気がした。
 綾は相棒への挨拶に代えて、喉元を優しく撫でてやった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天方・菫子
どきどきしながら保管室へ
たくさんのドラゴンランスにさらにどきどきしちゃう
…これ、青く光って見える
うん、これがいいな…ってうわあ!

ランスから姿を変えたドラゴンさんは手乗りサイズ
青い色で水をこぽりと吐く水属性さん
ちょっと人見知りさんなのかな
女の子? だったら仲良くなれるよね
おいで、怖くないよ お友達になろう?
あたしは菫子 あなたは? 名前ないのかな?
じゃあ「浅葱」ってつけてあげる

あたしもアルダワは初めてなんだ
おいで、浅葱
一緒に世界を見に行こう
きっとあたしたち二人なら怖くないよ

浅葱を肩に乗せて
あたしの髪にじゃれる浅葱に微笑んで
うん、仲良しさんができましたっ





「うわあ……!」
 天方・菫子(咲かせや咲かせ・f17838)は蒼穹の双眸を大きく見開いた。
 保管室に入った時、募らせたどきどきが弾けたみたいだ。目の前にずらりとドラゴンランスが並ぶ様子は正しく壮観。胸の鼓動は冷めやらぬまま、視線を右往左往させては興味深げに見入ってしまう。はたと顔を上げて次に移る。その繰り返し。
 そんな中、ふと一本のドラゴンランスに注意が向いた。
 仄かに青く光って見える。その青の透明さは期せずして菫子の瞳の色に似ていた。誘われるようにそっと指先を伸ばす。
 うん、これがいいな。
 そう口中で呟いた瞬間だった。
「……ってうわあ!」
 先程と同じような叫びを上げてしまった。
 光が一際強く迸る。それからさざめく漣のようにゆっくりと引いて、収縮していく。
 気が付けばドラゴンランスは小さなドラゴンに形を変えていた。これまた小さな翼で飛んで、目の高さで浮遊している。手乗りサイズだ。
 淡く蒼い鱗が鉱石のようで綺麗だ。こぽり、そう吐き出された息は泡のような水。水属性だと自然と知れよう。
 大きさも相まって愛くるしいその容貌。けれど様子を窺うような視線を向けてくるあたり、存外人見知りなのかもしれない。
「女の子?」
 菫子が問えばキュイ、と声が返る。肯定らしい。だったら仲良くなれるよねと菫子は微笑みを綻ばせる。
「おいで、怖くないよ。お友達になろう?」
 柔らかな声音と優しい眼差し。ドラゴンが反応するのを根気よく待ってやれば、何だかダンボール箱に入った仔猫みたいな顔をしてくる。
 だから菫子はつい笑って、そういえばと首を傾げた。
「あたしは菫子。あなたは? 名前ないのかな?」
 キュイ、と続いた鳴き声は少し寂し気。まだ名前はないのだと直感したから、思考を巡らせた後に菫子は言う。
「じゃあ『浅葱』ってつけてあげる」
 薄青のそれを告げたなら、ドラゴン――浅葱は嬉しそうに瞳を輝かせた。
 その姿に何とも言えぬあたたかさがこみあげてきて、菫子はそっと指先を向ける。
「おいで、浅葱。一緒に世界を見に行こう」
 あたしもアルダワは初めてなんだ、そう言葉にしたのを耳にした浅葱は、少し怯えの色を緩めたようだ。
「きっとあたしたち二人なら怖くないよ」
 促すような、背を推すような語り口だった。
 意を決したらしき浅葱が翼をはためかせた。菫子の指先から辿って肩に辿り着く。定位置と決めたのか、菫花咲く黒髪にじゃれながら遊んでいる。
 その様子がどうにも可愛らしく見えてしまって、嬉しくて、菫子は目を細める。
「うん、仲良しさんができましたっ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

氷雫森・レイン
相棒って響きは私には奇妙だけど精霊には前から興味があったの
精霊術士でも人間でも無い身で出来るのなら契約を望むわ
保管室ではなく書庫行きね

飛行能力はあっても速度が無いから切り込むどころか回避する機動力すら足りずにいつも誰かに守られるのが悩みで
私を背に載せて疾く空を翔けてくれる鳥型の子…そして私の魔法の手助けも出来る子だといいわね
魔石とかを身に宿す子だと向いているかも
私は人の導き手になるべき種族、つまり元来は使役とまでいかずとも精霊と同じような立ち位置だから関係の結び方には悩むけれど
孤軍奮闘する様な時でも私の想いに応えてくれる様な子と出会えますように

名前はラルよ
ミストラルのラル





 相棒、という響きは奇妙なものだ。
 そんな風に氷雫森・レイン(雨垂れ雫の氷王冠・f10073)は思う。何かにつけて愛でられる経験はあれど、何かに愛着を持つということがあまりなかったからかもしれない。
 けれど精霊には興味があった。精霊術士でもない。人間でもない。そんな身でも許されるなら契約出来たらいい。
 そんな真直ぐな願いを携えて、レインは書庫の扉を開く。
 整然と並べられている蔵書は不思議と存在感が強い。こうして誰かとの出会いを待っていたのかもしれない。
 薄く透ける翅を翻し、レインは本の森を泳いでいく。
 その時、カンテラを持った人影が声をかけてきた。
「精霊をお探しですか」
 話しかけてきたのは学園職員。書庫内の管理をしているという。フェアリーの手で本を出し入れするのは大変だろうと手伝いを申し出てくれた。
 助力を受けることでよい出逢いが見込めるのならいいだろう。肩を借りて本棚を巡りゆく。
「精霊と一口に言っても、様々な種類がございます。どんな精霊がよろしいんですか。ご相談も承りますよ」
「うーん……そうね」
 綺麗な指先を口元に添え、レインは思案顔。
 一応考えている希望はある。それは実際の戦闘中に覚えた危惧が元になっているから、具体的に口にするのは容易い。
「飛行能力はあっても速度が無いから、切り込むどころか回避する機動力すら足りずに、いつも誰かに守られるのが悩みで」
 それはフェアリーの長所でも短所でもある一面かもしれない。どうしても遠距離での攻防に徹しがちなところはあろう。
 ただレインはそれを良しとしていないのだと、その真直ぐな眼差しが示している。青紫の双眸はひたむきに前を見据えている。
「私を背に載せて疾く空を翔けてくれる鳥型の子……そして私の魔法の手助けも出来る子だといいわね」
 元々フェアリーは人の導き手になるべき種族だ。使役されるわけではないにしろ、精霊と同じような、誰かを助ける立ち位置になりがちだ。故に関係の結び方には迷う。
 しかし孤軍奮闘せざるを得ない時もあるだろう。誰かに頼り切りになるのではなく、守る側の立場になりたい。
 そんなレインの意を汲んで、職員は浅く首肯する。
「成程、そういったことであれば……このあたりに、良い書物がございますよ」
 角を曲がる。突き当りに到着すれば、二歩分左にずれた。その棚から職員が取り出したのは一冊の本だ。表紙には羽根を意匠する箔押しが施されている。
 レインが頁を捲れば魔法陣が発動する。旋風が巻き起こる。光が迸り一気に集約する。
 そこにいたのは淡い青緑の羽根持つ鳥であった。ちょうどレインを背に乗せてちょうどいいサイズ。額に魔石が嵌め込まれていて、照明の光に照らされきらめきを弾いた。
 ああ。
 この子と一緒に戦うのだ。
 意識することなく、自然と感慨が胸に満ちる。
「名前はラルよ。ミストラルのラル」
 自然の摂理のようにそう告げる。レインの呟きを受け止めて、ラルは翼を広げて見せた。新しい風の色そのもののようであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
ふはは、懐かしいな。
入学した当初に蛇竜と出会ったのも、丁度こんな感じだった。
さァ、相棒を探しに行こう。蛇竜だって、友人がいた方が良かろう?

あいつの友人かつ、私の相棒。
となれば一択、ドラゴンランスよな。
槍の姿から選ぶのも良いが、私としては竜の姿で交流してから選びたい。
……どんな形状の槍でも振るう自信はあるが、動物に好かれるのは下手だからな。
手を差し伸べて、近寄ってきた奴の中から……そうさな。
お前、人懐っこそうだな?
姿形からするに、海竜か。青くて鰭があって、優美で良い。
折角寄って来てくれたんだ、お前と一緒に行ってみよう。
ま、お前が私を気に入ってくれたなら、これからよろしくな。





「ふはは、懐かしいな」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は保管庫を見渡して、懐古に満ちた吐息を零す。金の双眸が自然と柔らかく細められる。
 入学した当初も、こんな形で出逢いを果たしたのだと思い出す。傍らの黒い蛇竜に視線を流し、口の端を上げる。
「さァ、相棒を探しに行こう。蛇竜だって、友人がいた方が良かろう?」
 蛇竜が短く鳴いた。その通りだ、と言わんばかりに。
 だからニルズヘッグは顔を上げる。室内をゆっくりと眺めた。それらしき一角を見つけて迷いなく歩を進める。
 蛇竜の友、ドラゴニアンたるニルズヘッグの相棒。
 となればドラゴンランス以外に選択肢はない。
「ちょっと顔を見せてくれないか」
 数多のドラゴンランスが備えられている棚に声をかけた。槍の姿から選ぶのもいいが、龍の姿で交流をしてから選びたかった。声に応えて、槍らが仄かな光を纏う。そして光の粒となり、それぞれが大小さまざまなドラゴンのかたちとなった。
 ニルズヘッグは小さく笑う。どんな形状の槍でも振るうだけの自負はある。その能力を存分に発揮してやることが出来るだろう。
 ただ――動物に好かれるのが下手だと、内心自覚があったので。きちんと相対して、目を合わせて決めたかったのだ。
 掌サイズのもの、小動物の大きさのもの、人と変わらぬ図体を持つもの。まさに十人十色の個性を持つドラゴンたちの貌を、ひとつひとつ確認していく。
 ニルズヘッグは中腰になって目線の高さを落とし、手を差し伸べてみる。指先で招くような仕草。すると何匹かの龍が近寄ってきた。
「……そうさな」
 一匹ずつ、いや、ひとりずつ。その面差しを眺め、性格を見極めるように見つめて。
 そうして視線を留めたのは、青くて鰭があるしなやかなドラゴンだった。興味がありますって顔に書いてあるような龍は、ニルズヘッグの顔を覗き込んでいる。
 なのでつい噴き出してしまって、鼻の下を擦った。
「お前、人懐っこそうだな? 姿形からするに、海竜か」
 帯びる気配は水の属性。優美な姿かたちでありながら、人と寄り添いたいと願っているその性根が気に入った。
 決断は早い。よし、そう短く口中で呟く。
「折角寄って来てくれたんだ、お前と一緒に行ってみよう」
 青い龍は尾がぴこんと反応したようだ。さらに進み出て、小さくお辞儀をしてみせる。律義だ。
 その様子がどうにもくすぐったかったからニルズヘッグは破顔する。
「ま、お前も私を気に入ってくれたなら、これからよろしくな」
 頭を撫でてやろう。そうすれば新しい相棒も嬉しそうにする。
 蛇竜がこっちにも紹介しろよと言いたげなことに気付くまで、あと三秒。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トトリ・トートリド
…相棒
友達や、仲間、たくさん…できたけど
…本の中の、精霊…少し、気になる(そわ)
…いた、いたた、きいろさんたち、待って
きいろさんたちも、大事、だから(小鳥に鬣啄まれつつ)

魔術書の書庫は、…見るだけで、すごい
これだけの…本、生徒のうちに、読みきれる…?
近づくと、魔力の気配、ふわり香って
本当だ、そこに、いるんだね

…風と森のにおいがする
気になった本をひらいたら
白く輝く精霊は、大きな梟のおじいさん
…敬わないと、いけないひとだ
少し下から、まっすぐ目を合わせて
…トトリと、一緒に…きませんか
あなたの…智慧で、トトリを助けて、ほしい

腕に留まって、応えてくれたら
…しろ、さん
そう呼んでも、いいですかって
聞いてみる





「……相棒」
 その響きは不思議と胸に染み入るようだ。
 友達は出来た。仲間も出来た。どれも自信を持って大切だと言える得難い縁ばかりだ。
 けれどそれとは違う関係性の予感に、何故か鼓動が弾むよう。
 トトリ・トートリド(みどりのまもり・f13948)は書庫をひょっこり覗き込む。右見て、左見て、書架に向かって歩を進める。
「……本の中の、精霊……少し、気になる。……いた、いたた、きいろさんたち、待って」
 琥珀の瞳が興味の色を湛えている。そわりと前のめりになった時それが気に入らなかったのか、黄色い小鳥たちに盛大につつかれた。
 鬣を啄まれて引っ張られて、「きいろさんたちも、大事、だから」とフォローをすることになったのは余談だ。
 さて。
 頭を擦りつつ、書庫の中をそぞろ歩き。
 たくさんの本がぎっしりと並んでいる。精霊召喚のための書物だけでなく、それ以外の蔵書も数多い。視線を巡らせれば閲覧用の部屋も別にあるようだった。学園だから勉強にも使うのかもしれない。
「……見るだけで、すごい。これだけの……本、生徒のうちに、読みきれる……?」
 トトリは呆然と呟いた。本当に一日何冊読めばいいのか見当もつかないような量だったから。
 それでいてあらかじめ知らされた区域に足を踏み入れると、こころにあたたかいものが宿る。魔力の気配が色濃く漂って、香って、手招いているようだった。
 応えるように爪先を伸ばす。
「本当だ、そこに、いるんだね」
 引き寄せられるようだった。一冊を手にした。瑞々しい風と森の匂いがする。やわらかに胸裏を撫でるようなそれに促されるまま、ページを開いた。
 魔法陣が淡い白色を帯びて閃光を放つ。一陣の旋風。思わず目を眇めるも、逸らそうとは思わなかった。
 それが収縮した後に弾けて、顕現したのは大きな梟だ。
 ふくよかで、聡明な知性を持つと知れるその存在感。それでいて偉そうではなく、ただ静かな威厳を備えている。
「……敬わないと、いけないひとだ」
 確信が先に駆けてくる。だから少し目線より高い位置にいる梟へ、恭しく、しかししっかりと視線を合わせる。
 声は震えていなかった。
 明瞭だった。
「……トトリと、一緒に……きませんか。あなたの……智慧で、トトリを助けて、ほしい」
 まるで年配の教授に教えを乞う生徒のように願いを手向ける。
 気配が僅かに、和らいだ。
 大きな翼を翻した音が響く。梟が辿り着いたのはトトリの腕。それは共に在ろうとする意思の表れだ。
 それを正確に汲みとって、トトリは柔らかな吐息を零す。
 願わくば。
「……しろ、さん。そう呼んでも、いいですか」
 敬愛を籠めて。
 その問いへの返事は、梟から向けられる優しい眼差しだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

海月・びいどろ
書庫とは、たくさんの知識の宝庫
大変、気になる、けど…
惹かれた本に、ゆびさきを伸ばすよ

海のような深い紺碧に
ぼうっと浮かび上がる金色の文字
背表紙などは細やかな装幀
所々が擦り切れていて
どんなお話が綴られているのかな

とても、きれいだけれど…
鍵が掛かっていて、開かないみたい

静かに取り出した、あおいろの杖で
こつん、とお伺いしてみよう
……もしもし、海色の本に住むキミ
ボクとお話、してくれない、かな

笑い声が聞こえる気がする
泣き声のような、気もして
それは、歌みたいにも思えたの

ご縁に、お任せしてみようか
どんな子が現れたとしても
キミだからこその、この出会い

――はじめまして、ボクはびいどろ
キミの名前は、なんていうの?





 書庫の蔵書の充実ぶりに目を瞠っていた猟兵は少なくない。海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)もそのひとりだ。
 知恵の蒐集、知識の宝庫。そのひとつひとつが背景を、物語を持つと知っているから、びいどろの注意はついそちらに向いてしまいがち。
「大変、気になる、けど……」
 後ろ髪を引かれながらも、そっと伸ばされた指先は、ある一冊の本に向かっていく。
 びいどろが心寄せたのは、海のしじまを思わす深い紺碧の装丁の本だった。淡く浮かび上がるのは金色の装飾文字、背表紙には繊細な文様が施されていて目に楽しい。指先で貝殻の意匠を辿る。所々が擦り切れているが、大切に慈しまれてきたことがわかる手触りだった。
 とてもきれいだ、どんなお話が綴られているのかな。
 そう思い馳せた時、僅かに眉根を寄せた。鍵がかかっている。開かないようだ。
「じゃあ……」
 物音なしに取り出したのは玻璃のあおいろ。響くのは潮騒と海嘯。杖を傾げて、こつんと表紙にあててお伺いを立てる。
「……もしもし、海色の本に住むキミ。ボクとお話、してくれない、かな」
 それは遠慮がちなノックにも似た囁きだった。
 ハロー、海のうらがわ。そちらの様子は如何ですか?
 そんな調子で耳を澄ませば、笑い声が聞こえた気がする。
 なのにどこか哀しい色も孕んでいて、泣き声のようにも聞こえて。
 それでいながら漣に似た旋律を帯びて、歌のようにも思えたのだ。
 鍵がかちりと外れる音がした。指先を滑らせれば表紙が丁重に開かれる。どんな子が現れたとしても、それは縁だ。キミだからこその、この出会いを、大切にしたいと願っていた。
 描かれていた魔法陣は珊瑚を重ねたような彩をしていた。雫が落ちて、王冠を作って、波打つ。そこから泡が弾けて広がって、目の前に淡い光がちらついた。虹みたいだった。
 そこにいたいきものは、なんのいきものだっただろうか。
 くじらのような、いるかのような。藍白の尾びれを靡かせるそれは、海のものだということはわかる。しかし仄かに纏う水の魔力が、それが生き物ではなく正しく精霊だと証明する。大きさは中型犬くらいだろうか。つぶらな瞳をしていた。抱き着いたらどんな温度がするんだろう。
 歌が聞こえる。
 寄せては返す波の狭間にきらめく子守唄。
「――はじめまして、ボクはびいどろ。キミの名前は、なんていうの?」
 それは名前を教え合って互いを認識し合う儀式のようなもの。
 だからどんな名乗りを受けようと、びいどろは柔らかく微笑みを燈すだけだっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メル・ルビス
【グータラ団】で参加なの

今日は相棒を見つけるんだよね
えへへ
どんな子がいるかとっても楽しみなの♪

僕たちは何をしようか……って、え?
玉乗りにするの?
僕は小さいからいいけど、レンちゃんも?
(器用にころころと自身より大きな玉に乗ってみせて)
にゃにゃ!しいるくん、触っちゃダメーっ!

あは、あはは
ちょっと派手な自己紹介だったけど、
これで僕たちのこと知ってもらえたかなあ?

それで相棒だよね
僕は……あの子が気になるの
まるでライオンのような毛並みをした、
ふわふわもさもさの光属性っぽいドラゴンさん
僕と同じくらいの大きさだけど、
なんかあの子がいればもっと頑張れそうなの
……あの、よければ僕と一緒に旅に出ない?


神屋・しいる
【グータラ団】で参加
【SPD】
今日は相棒を見つけれるって聞いたんやけど、……相棒、バディか!なんかかっこいいやん?
えーっと、まずは自己紹介ということで曲芸で玉乗りや。
メルとレンが玉乗りで俺が調教師役?うん?うん、ほな頑張るわ!【パフォーマンス】を活かす話術で盛り上げたるで!経験者だからこその盛り上げ方ってのもあるんや。
ふぃーと休んでると目があった、精霊時は虎縞の猫のような外見の小さな虎、毛が逆立っていかにも雷属性な見た目でツンツンしているかーわいこやで。よし気に入った!錫杖形態になれるとこも俺にぴったりやん。これからよろしくと手を差し出すんや。


神無月・レン
【グータラ団】の二人と一緒に参加します

ここで新たな相棒に会えると聞いて、みんなできたけど……私の相棒とは……?あ、自己紹介?
いえーい、ぴーすぴーすー(何か曲芸するべき?と思いぴょーんと大きな球に逆立ちで乗っかりピースして見せ……スカートだけど、スパッツ履いてるのでセーフ!)って、あ、わわわ!(ってーん!とバランス崩して)
き、気を取り直して……ん、この本、気になる
(精霊と契約できる本を取り、呼び出されるのは風の精霊。肩に乗るくらいの妖精?悪戯っ子で風を吹いてからかってくる)
……うん、その悪戯っ子気に入った。これから私と一緒に駆け回ろう





 保管庫と書庫のちょうど中間、ふたつの部屋を繋げる形で連絡通路が設けられている。
 それはほどほどに広く、両方の部屋を見渡すことが出来る。だからメル・ルビス(いつでもキミの傍に・f03622)と神屋・しいる(琥珀玉の弧都・f03575)、神無月・レン(残念系微妙女・f04615)はここでとあることを講じようと画策した。三人はグータラを冠する旅団の仲間だ。
 しいるはからりと破顔する。
「今日は相棒を見つけれるって聞いたんやけど、……相棒、バディか! なんかかっこいいやん?」
 ここならドラゴンランスにもガジェットにも、精霊の書物にも見てもらうことが叶うだろう。
 メルももふもふの尻尾を振って瞳を輝かせた。
「えへへ。どんな子がいるかとっても楽しみなの♪」
「……私の相棒とは……? あ、自己紹介?」
 まだ相棒の見当がついていないのか首を傾げていたレンが、そうそう、そうしようと思ったんだとばかりに手を打った。
 ――曲芸をしよう。
 それならばある意味自分たちのことを理解してもらえるだろうし、相性のいい相棒も見つけやすいのではないだろうか。要するに自己紹介だ。
 そんな考えは三者三様ながら共通していた。というか軽く打ち合わせをしていた。
 先陣を切ったのはレンだ。どこからともなく取り出した曲芸用の大きなボール。それを見て目を剥いたのはメルだった。
「って、え? 玉乗りにするの? 僕は小さいからいいけど、レンちゃんも?」
「いえーい、ぴーすぴーすー」
 しかし憂慮を吹き飛ばす勢いで、レンはひらりボールに飛び乗った。軽やかに鮮やかに、ついには逆立ちしてみせる。スカートだけれどスパッツを完備しているため問題ない。
 メルも負けてはいられない。いち、に、さん。ボールに飛び乗ったならば絶妙なバランスを保って右へ左へ。
「さあさあお立合い! グータラ団の技をご覧あれ、やで!」
 まるで観客の視線を集めるように、調教師役のしいるがはっぱをかける。実のところ内心焦ってはいたものの、華麗に視線を惹きつける術は心得ている。
 ただ何せ現状相棒候補は槍と機械と本なので反応はわからないが、何となく周囲の気配も盛り上がっているように思えた。
 勢いのまましいるがメルの背中を叩こうとして、
「にゃにゃ! しいるくん、触っちゃダメーっ!」
「って、あ、わわわ!」
 横のレンまで巻き込んで、盛大に慌てる羽目になったのは余談となろう。
 一通り披露を終えたら、三人揃って優雅にお辞儀。
「あは、あはは。ちょっと派手な自己紹介だったけど、これで僕たちのこと知ってもらえたかなあ?」
「だとええなあ。臆せず来てもらいたいところや」
「き、気を取り直して……ん、この本、気になる」
 レンが手に取ったのは最も近くで曲芸を見ていた一冊。
 直感に従って表紙を捲れば、ふわり風が吹き抜けた。気付けばレンの肩には、妖精によく似た佇まいの精霊がいた。見目からして風の属性を備えていそうだ。
「私と一緒に来る?」
 軽く問う。返事代わりに鼻先にひゅっと悪戯な風を突き付けてきた精霊に、レンはくすぐったそうに笑みを零す。
「……うん、この悪戯っ子気に入った。これから私と一緒に駆け回ろう」
 意気投合。その様子にほにゃり笑みを綻ばせたメルが、ある一本のドラゴンランスに視線を向けた。
「僕は……あの子が気になるの」
 手を触れれば光の波濤が広がっていく。きらめいて弾けて、気が付いたら眼前にドラゴンがいた。ライオンに似た毛並みはふわふわもさもさしていて、眩い輝きを放っている。こちらはきっと光属性。大きさはメルと同じくらいか。
 胸の奥がきゅっと鳴る。
 きっと、あの子がいればもっと頑張れそうなの。
「……あの、よければ僕と一緒に旅に出ない?」
 アルダワ魔法学園から始まった旅は、これからも続くから。
 意を汲んだのだろう、光のドラゴンはメルに鬣をこすりつけてきた。
 さて残るはしいるだ、細く息を吐いた先、一冊の本に目が留まる。
 何気なく紐解いて魔法陣の頁に辿り着けば、迸ったのは雷鳴。収縮して一際強く轟いたら、そこには小さな虎めいた精霊がいた。
 正確に言えば虎縞の猫みたいな大きさだ。毛が逆立っているそれは稲光に似て尖っている。成程、これは雷属性だ。
「かーわいこやん。よし気に入った!」
 ひょいと掬い上げて顔を見合わせる。するとテレパシーのように意識が飛んできた。
「え? 何、形状が変えられる? 錫杖形態になれるんか、俺にぴったりやん」
 これでも寺の跡取り息子だ。それに寄り添うような存在たるその子に手を差し出してみる。
 これからよろしくの、その証。
 返事が猫の手みたいなそれでぺしっと返されたら、しいるが瞬く。それを見たレンとメルは、弾けるように笑い合った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御剣・誉
相棒かー
オレにはエリンギ(͡仔竜)がいるけど
そうだな、エリンギの相棒ガジェットを探しにいこうか
カルビJrもいるけど他にもいたらもっと楽しいもんな!

エリンギと一緒にガジェットを見に行く
なぁ、オマエはどんな相棒が欲しいんだ?
やっぱり動物型がいいのかなー
あ、何これ面白い!
斬新なフォルム!!
へー、こんな風に動くのかー
エリンギちょっと来いよ!
(しょーもないガジェットを見つけては大興奮

ん?どうした、いいヤツ見つかったかー
え?動かない?
すぐに直してやるよ
ちょっと待ってな
…どうだ?まだダメか
もう一度……これでどうだ!
よしった
ほら、この螺子を巻けば動くから
そうか、気に入ったなら一緒にいこうぜ!
(ガジェットお任せ





「相棒かー。オレにはエリンギがいるけど。そうだな、エリンギの相棒ガジェットを探しにいこうか」
 御剣・誉(焼肉王子・f11407)が独り言ちた声に、通りすがりの学芸員がえっという顔をしていた。誉は気付いていない。
 説明しよう。エリンギというのは別にキノコではなく、薄紅色の仔竜のことだ。深緑のベレー帽を被ったエリンギが返事代わりにキュっと鳴いた。
「カルビJrもいるけど他にもいたらもっと楽しいもんな!」
 さっきの学芸員がは? という顔をしていた。勿論誉は気付いていない。
 説明しよう。カルビJrというのは別に焼肉ではなく、ブタの貯金箱型のガジェットのことだ。Jrというからにはカルビ本体もいるのかもしれないが現状定かではない。
 ちなみにここまで素の発言である。
「なぁ、オマエはどんな相棒が欲しいんだ? やっぱり動物型がいいのかなー」
 エリンギが誉の後ろにちょこちょこついていく。保管室の扉を開け、ガジェットが保管されているらしき一角に足を向けた。
 すらり整列したガジェットはその意匠も様々で、真鍮色だったり白銀だったりと素材の違いも楽しそうだ。
 そのどれにも爛々とした青の眼差しを向け、誉が声を弾ませる。
「あ、何これ面白い! 斬新なフォルム!!」
 鳥形のガジェットの背についたゼンマイを回転させてやると、足が動くだけでなく音を立てて飛び始めた。蒸気が作用しているらしく、誉は「へー、こんな風に動くのかー」と興味津々だ。
 最初のうちはよかった。けれどどう見ても相棒を探しているのではなく単純に遊んでいるような様相になってきて、その都度、
「エリンギちょっと来いよ!」
 などと大興奮で呼びつけるものだから、やれやれとばかりにエリンギが背を向ける。困ったご主人である。
 エリンギが歩を進めた先、ふとその脚が止まる。
 正面のケースに鎮座しているそれも当然ガジェットだ。その大きさはちょうどエリンギと同じくらいのサイズ感。
 一見絡繰り仕掛けのうさぎのように見える。しかし不思議なことに、片耳しかない。生えていないほうの根元には魔法石のようなものが嵌め込まれているから、精霊魔法のような何かが施されているのかもしれない。
「ん? どうした、いいヤツ見つかったかー」
 ようやく顔を出した誉がエリンギの視線の先に気付き、うさぎのガジェットの存在に気付く。
 キュ、と短くエリンギが鳴いたなら、その意図を誉も察したようで。
「え? 動かない? っていうか欠けてる? すぐに直してやるよ」
 真摯な面持ちでうさぎに向き合う。その真直ぐな姿勢、物腰に、黙ってれば王子様なのに……なんて副音声はエリンギの中だけで再生される。
「ちょっと待ってな。……どうだ? まだダメか」
 細かいところをつぶさに注視しところどころ触ってみているが、これはなかなか複雑な仕組みかもしれない。これでもガジェットに目を輝かせるくらいには興味関心もあるわけで、取り扱いにはそれなりの自負もあった。
 だから根気よく作業を続ける。ふと上手く嵌ったような感触があって、一思いに回転させる。
「もう一度……これでどうだ!」
 気合を入れた掛け声と共に螺子を巻けば、沈黙していたうさぎのガジェットが動き始める。
 途端に片耳に眩い光が揺らめいて、誉を認識したとばかりに現出した耳が器用にお辞儀する。本体も一緒にお辞儀する。
「へー……これ、光の帯? もしかして……ああ、光と炎と氷とで、三種類の片耳が出せるってことか。凝ってるなー」
 もしかしたら喜怒哀楽の喜哀楽くらいは表現出来るのかもしれない。怒は何だろう。現状わからないが、知りたいような知りたくないような。
 ともあれ存外感情表現が豊かな相棒と言えるのかもしれない。
 エリンギにちらり視線を向けると、興味深げにぴこぴこと尾を動かしている。ならば誉に否はない。
「そうか、気に入ったなら一緒にいこうぜ!」
 ここで問題があるのだが、本人はそれに気付いていない。
 ――果たしてどんな名前が付けられるやら。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『迷宮の迷い子』

POW   :    パワフルに。地図を埋める勢いで探す

SPD   :    スピーディに。あたりをつけて一直線

WIZ   :    ロジカルに。推理を積み重ねて見つけ出す

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●迷い込むならあなたと共に
 相棒と邂逅した猟兵や学生は、連れ立って迷宮探索へ向かうことになる。もしかしたら既に同道している相棒と訪れた猟兵もいたかもしれない。
 学園側から指定された階層は比較的浅く、危険度はあまりない。少なくとも最初に踏み入ることになる階層には、オブリビオンの姿もないという。
 ただし道筋は入り組んでいる。何も考えずに進もうとしたらあっという間に迷子になるだろう。
 場所によっては灯りが絞られていたり、簡単なトラップが仕掛けられていたりもするらしい。ただし深刻な被害を被るようなものではない。万一があっても学園の上級生が見回りを行っているため、救助やフォローは速やかに行われる手筈となっていた。
 当面の目標は下の階層に続く階段を発見することだ。
 相棒と一緒に、協力して迷宮を踏破しよう。
 そうしたら相棒との絆も培われるかもしれない。初めての冒険を、思う存分満喫しよう。
鈴木・志乃
※お任せ

はあ
……かわいい
頭撫でていいですか?
はあ……かわいい

迷宮を探索すると言っても
君はどんなことが出来るのかな
私は想いを物理的な力に変換したり
感情に働きかけたり出来るかな

好きなもの?
面白いことや楽しいことが大好きで
パフォーマンスも少し嗜んでるよ
君は何が好きなのかな

精霊ってほとんど会ったこと無いけど
何か食べたりするのかなあ

【失せ物探し第六感情報収集】で正しい道に至るヒントを探し続ける
構造パターンは似てくるはず【学習力】
暗い道でも私達には関係ないね
どっちも光の権化だし
【第六感】で【見切り】トラップを感知
小石とか拾っておいて投げてみる

ずっと君呼ばわりだと困るよね
『ユミト』
どうかな
希望って意味だよ



「はあ」
 深い深いため息。
 しかしそこに籠められているのは悲哀ではない。歓喜めいた、ときめきの吐息だ。
 鈴木・志乃は陶然と頬を緩めて言う。
「……かわいい」
 その発言の先は、先程邂逅を果たした光のペガサスだ。
 今は翼を使わず、蹄を鳴らして志乃の傍らをついて歩いている。上機嫌そうなところを見るに、随分懐いているようだ。
「頭撫でていいですか?」
 志乃が問いかけたら、ペガサスは翼を畳んで鬣を摺るように身を寄せてきた。
 手を乗せてみる。鬣は本当に光を紡いだ柔らかいもので出来ているみたいだ。滑らかで、心地良い。なにより嬉しそうなペガサスの瞳が優しい。
「はあ……かわいい」
 このまま一緒に寛いでいたいところだがそうもいかない。
 気を取り直して入り組んだ道を見遣る。今一度質問を向けた。
「迷宮を探索すると言っても、君はどんなことが出来るのかな」
 言語こそ使えないが、契約を交わしたからだろうか。意思疎通そのものはテレパシーのように可能であった。
 曰く、光を強めれば照明いらずになる。落とし穴のような場所があれば先行調査が出来る。
 それ以外でも志乃が思いつき指示を出してやれば為せることもあるだろう。「私は想いを物理的な力に変換したり、感情に働きかけたり出来るかな」と志乃が言えば、ペガサスは興味深げだ。
 探索しながら好きなものの話もした。
 面白いことや楽しいことに心弾ませ、パフォーマンスも少々嗜んでいると告げる。ペガサスはまだ世界を知らないからいろいろ教えて欲しいと言う。穏やかな空気が満ちる。
 何か食べたりするのという質問には、ペガサスは首を傾げてみせた。自分でもよくわからないらしい。迷宮を出たら学園で調べてみようか。
「あ」
 不意に閃きが降ってくる。踵に力を籠めて、一歩引く。手前の曲がり角に入れば、ペガサスも追従してくる。正しい道を選ぶために細かい情報も控えて進んでいたし、構造パターンさえ見抜けばこの階層はそう手古摺らずにすみそうだ。
 何より視界不良には苛まれない。ふたりとも光の化身のようなものだ。
 志乃が第六感で罠を察したら、ペガサスが小石を蹴飛ばして見せた。すっと石が沈んだ。成程、このまま進めば足を取られていたわけだ。飛び越えるか迂回するか、さて。
 そこまで来て、志乃はある事実に思い至る。
「……ずっと君呼ばわりだと困るよね」
 ペガサスの顔を覗き込む。
 贈り物をしよう。
 君と私を繋ぐ、はじめての贈り物を。
「『ユミト』、どうかな」
 ――希望って意味だよ。
 志乃の言葉に、ペガサス、もといユミトは翼をはためかせる。ふわり、あたたかい光が溢れた気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
良いかね。私と共にあろうと思うのであれば――
頭が使えないのなら難しい。ロジカルにいこう
それにしても、君のお腹はもちもちだなレイド。
幼竜だからなのかい?うん、さわりごこちがいいな
ああ、すまないモラン。集中力が切れていた
さて、それでは迷宮探索だ
……モラン、君が先輩というものを見せてやれ
うん、威張り倒してるな?良いけども
階段を発見する必要があるのなら、モランのように風の通り道を一緒に探してみてはどうかな
そうだな、彼のように地を這いつくばるのがいいかもしれないし
空で飛んでも、風を受けれるかもしれない
素直でいい子だ。レイド。
私は動かない。君たちが探しておくれ
……じゃれ合うんじゃなくて、ちゃんと探すのだよ





「良いかね。私と共にあろうと思うのであれば――」
 ヘンリエッタ・モリアーティのその口吻は、さながらシニカルな教授のようだ。
 曰く、頭が使えないのなら難しい。ロジカルにいこう。ずる賢いくらいがちょうどいい。
 ――ちなみにそんな真面目なことを言いながら、ヘンリエッタが何をしているかというと。新しく左腕になったレイドたる白銀のドラゴンを抱きかかえていた。もっと正確に言うと、お腹を指の腹で触っていた。
 レイドが慣れぬ感覚にむずがゆそうな照れ臭いような神妙な顔をしているのだが、ヘンリエッタはあんまり気にしていない。
「それにしても、君のお腹はもちもちだなレイド。幼竜だからなのかい? うん、さわりごこちがいいな」
 さようですか。そんな面持ちのレイドを一瞥し、モランがヘンリエッタのつま先を踏んだ。ようやくそこでヘンリエッタも目を瞬く。
「ああ、すまないモラン。集中力が切れていた」
 レイドをモランの隣に下ろして、視線を前方に向ける。
 さて、それでは迷宮探索だ。
 足音はいつもより少しだけ多い。仲良く連れ立っている二匹の竜に銀の双眸を細め、それから閃きが降ってきたからヘンリエッタは気紛れに告げた。
「……モラン、君が先輩というものを見せてやれ」
 モランが首を縦に振る。先輩の姿を見たまえとばかりにレイドに向けてぺちりと尾を鳴らしてから前に出た。ちょっぴり誇らしげなその様子。
「うん、威張り倒してるな? 良いけども」
 ヘンリエッタとレイドの視線の先、黒い飛竜が翼を翻して先行する。
 真直ぐに視線を向け、地に這うように身を屈める。モランはしばらく静止していたが、不意に視線を左方に向けたのを見て、レイドは何やら思いついたことがあるようだ。白銀の翼を広げようとするドラゴンを見て満足そうにヘンリエッタも頷いた。
「そう。階段を発見する必要があるのなら、モランのように風の通り道を一緒に探してみてはどうかな」
 例えばそう――ヘンリエッタが言わずとも、レイドは宙へと飛ぶ。翼を広げ、風の方向を手繰ろうとしている。
 索敵にも情報収集にも、風向きを察する力はどんな局面であっても大切なことだ。
 それをきちんと理解し、ひたむきにこなそうとする白銀竜に、女の唇の端は自然と持ち上げられる。
「素直でいい子だ。レイド」
 私は動かない。君たちが探しておくれ。
 その意向を言わずとも汲み取った二匹の竜は情報共有をしようとしたのだろう、顔を突き合わせて何やら相談している模様。
「……じゃれ合うんじゃなくて、ちゃんと探すのだよ」
 言葉の割に、あまり咎めるような声音にならなかったのは、ここだけの話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天方・菫子
先程相棒になったドラゴン、浅葱と一緒に探索
…とは言え、あたし、迷宮ははじめて
下へ行く階段、こっちかな…あ、行き止まり
なんとなく歩いてもそう簡単にはいかないみたい

え?浅葱はこういうときの【情報収集】とか得意?
床の埃とか確認すると人の通り道がわかるの?
ぱたぱた先を飛んで道案内してくれる浅葱
心強いなあ…可愛いなあ…

小さな落とし穴は【第六感】であたしだけ注意
ジャンプで跳び越して浅葱に案内され、無事階段発見
あたし、もう少し色々頑張ろう…

アドリブ歓迎です





 迷宮の小路を歩くだけでも、ひとりじゃないとこんなにも楽しい。
 天方・菫子の足取りは軽い。その隣を翼を翻して水のドラゴン――浅葱が往く。存在がとても頼もしい。少なくとも心細い思いをすることがない。先が見えぬ迷宮も、さほど塞ぎ込まずにいられるのは相棒のおかげでもあるかもしれない。
「……とは言え、あたし、迷宮ははじめて」
 不安のような、戸惑いのような声が床に落ちる。
 下に行く階段を探さなければならない。先程から地道に探索は進めているが、行き止まりだったり大きな穴が開いていたり、なかなか思うようにはいかないのが悩ましい。
 何となく進むだけでは簡単に踏破は簡単にはいかないみたい。菫子の視線がそう落ちかけた時、浅葱がじっと見上げてきた。
「え? 浅葱はこういうときの情報収集とか得意?」
 青い瞳がぱちりと瞬いたなら、浅葱がこくりと頷いてきた。翼を広げたら泡が弾ける。先へと飛んで、周囲を見渡し、振り返ってからこっちだよと示してくれる。
 その姿を視界に入れたら、つい眦が緩んでしまう。可愛いだけじゃなくてこうして力になってくれる存在が、目の前にいる。
「心強いなあ……可愛いなあ……」
 くすぐったい何かを零すように微笑んだ。そうすれば足取りはやっぱり軽いのだ。
 足音はリズムよく刻まれる。小さな落とし穴も菫子が注意を払い浅葱が警戒してくれたため、問題なく飛び越えることが出来た。
 そうすればあっという間に下り階段を発見出来た。ひとりと一匹が目を合わせて、笑った。
「やったー! 浅葱のおかげだねっ」
 菫子が賞賛を送れば浅葱も嬉しそうに蒼い尾を振る。波みたいな滴を飛ばしている。
 そこまで来てハッ、とある事実に気が付いた。
 ――相棒はとっても頼りになるけれど、このままではあまり役に立ってない自分がちょっと情けない。
「あたし、もう少し色々頑張ろう……」
 菫子が密かに脳内で決意を固めたら、浅葱がこてんと首を傾げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

都槻・綾
本から出たばかりで世界が珍しいのか
好奇心に満ちた様子で
ぱたぱた
ふわふわ
飛び回る仔猫が可愛らしい

いとけないですねぇ
迷子になってしまいそうです

ふくふく笑いつつ
人形の縫へと同意を求めるよう声掛ければ
じとりとねめつけられて、小さく咳払い

いえ…今まさに迷子でしたね

先程からずっと同じ場所をぐるぐる回っているのだから
猫の羽搏きを追ううち
罠にかかってしまったらしい

然れど
焦りは湧いてこないのは
頼もしき相棒達が共に居るから

片膝ついて地をよく観察
猫が鳴いて報せる路の継ぎ目、綻びを見つけたら
馨遙で封印を解く
途端にまやかしは解け、現の景色へと元通り

拓けた視界に階を見つけて微笑み
黒仔猫の頭を労いに撫でよう
勿論、縫の頭もね





 翼持つ影色の仔猫は、爛漫に瞳を輝かせている。
 曲がり角の先に長い通路が伸びていれば興味深げに遠くを見渡し、隠し扉を見つければ翼と尻尾を跳ねさせたのちに硬直させた。
 本から出たばかりだから、目にするすべてが珍しいのだろうか。仔猫は未知との出逢いへの好奇心に溢れている。
 ぱたぱた、ふわふわ。飛び回る際の些細な仕草にその心裡が透けて見えるよう。
 世界を無垢な眼差しで見つめるその素直さが好ましい。可愛らしいと、都槻・綾の眦が自然と緩められた。
「いとけないですねぇ。迷子になってしまいそうです」
 ふくふくと微笑みを深めつつ、傍らの少女人形・縫へそうでしょうとばかりに目を遣れば、睨め付けるような視線が返る。綾は誤魔化すように咳払いをした。
 まあ、一緒ならば迷子になるのも吝かではない。なんて思いは今は内緒。
 それに実際のところ。
「いえ……今まさに迷子でしたね」
 歩を留める。流石にむやみに足を進めるだけでは徒労というものだ。
 先程からずっと同じ区域をぐるぐる回っているような気がする。否、事実目の前にある柱に細い亀裂が入っている。それは見たことのある光景だった。吐息が低く沈殿する。どうやら仔猫の羽搏きに導かれるように、罠に迷い込んでしまったらしい。
 勿論仔猫を咎めるつもりはなかった。焦りも滲んでこなかった。仔猫と人形、親愛にして頼りになる相棒たちが傍にいるから。
「……一度落ち着きましょうか」
 片膝をつく。通路へ視線を落とし、目を凝らして注視する。ひらり舞い降りた陰色仔猫がにゃあと鳴く。報せに従い見極めれば、路の継ぎ目が浮かび上がる。綻びだ。
 細い指先を翻す。封印を解かれた馨が迷路を染め上げる。花の薫香が浄化を導けば、綻びが徐々に広がっていく。
 ぺらり捲るように手を返す。
 さすればまやかしはご退場。現の路だけが細く伸びている。
 その先が陰っている。恐らく下り階段だろう。
 教えてくれてありがとう――そう伝えるように仔猫の頭を手を撫でる様は柔らかい。
 当然人形の緑の黒髪も労わり、それから綾は青磁色の双眸を細めてみせた。
 次の階層は、すぐそこにある。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メル・ルビス
【グータラ団】で参加なの

さっそく最初の冒険だね
よろしくね、ティア
ん?誰のことか分からないって顔してるの
君のことだよ、僕の相棒さん♪

んーと、下の階層を目指すってことだけど……どうしようか?
どの作戦も悩んじゃうね

あはは
その作戦いいかも
それで行ってみよう!

僕は【気合】【野生の勘】を使って、
風の通り道を探してみるの
下に行くってことは風の通り道も下のはず
ティアも分かる?

トラップに引っかかったお友達がいたら、
みんなと【手をつなぐ】で救出するの!
えへへ
こういう時は人数が多くていいよね

見て見て
あそこに出口が見えるのっ!
結構楽しかったね
……ティア、あそこまでどちらが先にたどり着けるか競争しない?


神屋・しいる
【グータラ団】で参加
迷宮はだいぶ広いんかな?初めてやからみんなで行動してみようと思うで。
もちろん新しい相棒たちもな。
鍛えた【視力】で警戒しながら進んでこか。
迷うといけないからペイントで壁(?)に印つけながら行こか。
足元は二人に任せたで。
罠とか仕掛けがあったら【怪力】でどうにかなりそうやったら俺の出番や。あー、あれや。なんての?「ふぁいとー、いっぱーぁーつ!」的な雰囲気で。
こういうとこってそんな罠ありそうやん、落とし穴とか。
なかよぉなった精霊(名前は茉莉花)の電撃で解ける仕掛けもあったらお願いなぁ。
俺らが【手をつないだ】ら百人力やで。


神無月・レン
【グータラ団】で参加 せっかく出会った風の精霊『ウィンディア』の力、借りながら探索してみますかね? 迷宮ですし、罠があるかもだから、斥候として探知、してっと。とりあえず感を働かせながら先に進まないとだな。 道があるなら、何かの足後とか痕跡があるはずだし、見逃さない様に慎重にね?それに、必ず匂いもあるだろうし もし、罠や高いところがあるなら、【クライミング】や【ジャンプ】を駆使していくよ。 てか、危ない罠とかないよね?『ウィンディア』、先に行ってみてきて……えー、ご褒美に甘い物ですか?考えておきますから。





「さっそく最初の冒険だね。よろしくね、ティア」
 メル・ルビスが新しい相棒を名前で呼べば、光のドラゴンは首を傾げた。それどころか周囲を見渡しているようだ。まるでそんな名前の誰かがいるのだろうか、と言わんばかりに。
 だからメルはきょとんとした後破顔する。光竜の貌を覗き込みながら言った。
「ん? 何で誰のことか分からないって顔してるの。君のことだよ、僕の相棒さん♪」
 言い聞かせるような柔らかい声音。そこでようやく、ティアは嬉しそうな鳴き声をひとつ。翼を広げる。
 迷宮は存外広い。通路が入り組んで、長く、段差がある。隠し扉をくぐってしまえば元いた位置もあやふやだ。
 T字路に差し掛かったところで、神屋・しいるが鍛えた視力で周囲を見渡す。角の柱にチョークで痕をつけた。今までの道程でもそうしてきたから、少なくとも堂々巡りにはならないだろう。
「これ離れ離れになったら合流出来ひんな。初めてやからみんなで行動してみようや」
 もちろん新しい相棒たちもな――視線を雷虎の茉莉花に留めてそう嘯けば、ぴりりと静電気めいた稲光が迸った。了解の意だろう。神無月・レンもウィンディアと名付けた風の精霊へ視線を走らせる。ウィンディアは諾意を示すように透き通る翅を震わせた。異論はないようだ。
 右見て、左見る。T字路のちょうど真ん中でメルが首を捻った。どんな作戦を取るか、選択肢が多い分悩ましい。
「んーと、下の階層を目指すってことだけど……どうしようか?」
 応えたのはレンだ。道の向こうを見据えて言う。
「迷宮ですし罠があるかもだから、斥候として探知してみましょうか。先に行ってみてきて……えー、ご褒美に甘い物ですか? 考えておきますから」
 新しい相棒のおねだりにレンがはいはいわかりましたとばかりに手を翻す。ウィンディアは仄かに微笑みを綻ばせた。
 ウィンディアは危険な罠があってはいけないから、先行して偵察に行ってくれたようだ。
「とりあえず勘を働かせながら先に進まないとだな」
「あはは。確かに勘を生かすのは大事だね。その作戦いいかも、それで行ってみよう!」
 しいるも賛成、と両掌を向けてくるのを確認して、レンとメルが視線を落とした。通路を注意深く観察する。
 足元に着目して進む術を見出そうとしているのだ。「足元は二人に任せたで」とのしいるの言に従い、実際に着実に案を織り成さなければならない。
 レンが着目したのは何かの足跡や痕跡があるかもしれないという点。
 ただこの階層にはオブリビオンはいないというし、他の猟兵や学生たちも通路は闊歩している。迷い方も人それぞれだから、自然にオブリビオンが通過した痕跡などは散逸してしまっているに違いない。
「慎重に見ても限界があるか。なら、匂いで辿れないかな――甘い匂い?」
 そうやって視線を巡らして瞬間だった。眼差しが注がれたのは路の隅の隅のほうだ。暗くて見えにくかったが、膝を折って床を調べれば、一定の間隔で黒い木の実が落ちている――否、落とされていることに気付いたのだ。
ベリー系だろうか。軽く踏み潰されていて、そこから甘酢っぽい匂いがする。恐らく先行する学生の先輩が、見目でも匂いでも分かりやすいようにと目印を残していってくれたのだろう。ラッキーにも辿り着くことが出来たものだけが知るヒント、あるいは新入生に向けた先輩たちの気遣いだったのかもしれない。
「僕が見てみた風の通り道ともおんなじ感じだし、あってるんじゃないかな」
 下に行くってことは風の通り道も下のはず、との推論だ。したがって空気の流れを読んでみたら、おそらく黒い実が定間隔で置かれている意図に一致する。
 すなわち、黒い実を追っていけば次の階層への階段を下りることも出来るだろうという予測が立った。
 これを手繰る、価値はある。
 メルとレンとしいるが顔を突き合わせて頷いた。
 情報を組み立てれば、往く道が決まる。
「ティアも分かる? この道を進むよ」
 ティアの瞳がきらりと光りを宿す。異論もないらしい。そんな時、ティアが顔を弾くように上げた。高い位置でひらり、先に行っているウィンディアが戻ってきていたからだ。
「あー、逆の路は行き止まりなのね、ありがとう。じゃあやっぱ木の実が落ちてたのを辿るしかないね」
 安全は確保しつつ、進むしかない。黒い木の実が見やすいようにティアが照明を担当してくれた。明るい。
 再び足を運んでいく。
 一見何の問題もないように見えた、のだが。
 よく目を凝らすと一部分、1mくらいの間だけ、木の実が落ちていない。その後は何気ないような顔をして続いている。
 この道の先も情報収集をしてもらうほうがいいか、そう判断したレンはウィンディアに声をかける。ウィンディアは宙に浮かんだ状態で、通路を俯瞰するように見るために様子を眺めていた。
 だから、それはただの不幸な事故だ。
「てか、危ない罠とかないよね? ウィンディア……わあっつ!?」
 足元を見ず一歩踏み出したその瞬間。
 黒い木の実がなかった部分、路の途中が唐突に開いた。
 血の気が引いた。落ちる。落ちてしまう、つまりこれ落とし罠だ。
「大変!」
 メルが落とし穴に駆け寄ると、落とし穴の縁に手が引っかかっている。レンがかろうじて腕一本で落ちないよう支えているようだ。だが、ずっと自分の身体を片腕だけで支えられるはずもない。
「そうやったら俺の出番や」
 しいるは怪力たれと念ずる勢いで力を籠めたなら、そのまま膝をついてレンの手を引く。
「あー、あれや。なんての? 気合入れて手を引っ張って、崖の上で健康ドリンク摂取する的な雰囲気で」
「わかった!」
 何やら察したらしいメルが、空いているほうのしいるの手を引く。二人で一人を引っ張り上げる。精霊と光竜はレンの背を押す。雷虎はしいるの足を支える。
 手を繋げば、明日も繋がる。みんながいるって百人力だ。
 しばしの攻防の末、どうにか落とし穴への落下は免れ、レイは無事に元いた位置に戻ることが出来た。
「ありがとう。助かったよ」
「こんなん簡単やんな? な、たいしたことないんやって」
 だから憂いなく先へ行こうという気持ちだ。
 落とし穴に冷静に相対すれば、兵なら意識して飛び越えることが出来る程度の幅だった。だからさくっと攻略する。
 金属門は茉莉花の雷で錠前を壊し、更に前へ。
 残りの路を木の実を辿って歩き続けたなら、目当ての下り階段が視界に入った。
「見て見て。あそこに階段が見えるのっ! 結構楽しかったね」
 今までの苦労も吹き飛ぶようだ。メルが疲れも物ともせず笑顔を綻ばせた。レイにもしいるにも安堵の色が浮かんだ。
 ほんの少しだけ声を小さくしたのは、とっておきの秘密を分かち合うように。
「……ティア、あそこまでどちらが先にたどり着けるか競争しない?」
 行こう。
 軽やかに行こう、次の階層も一緒なら大丈夫。
 そんなことを証明する勢いで、踵を鳴らして駆けて行ったのだ――みんなで。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
迷宮踏破だとよ、蛇竜、海竜。
遊んでないで協力してくれよ……いやまァ、仲良くなったなら良いけどな。

さて、では。
まずはこの辺の地図を埋めるのが定石だな。
蛇竜、海竜をフォローしてやってくれ。
なに、そんなに難しいことは言わないよ。分かれ道の先を、少し伺ってきてくれれば良い。
罠やら行き止まりやらがあるようなら教えてくれ。

取り敢えず、帰れるようにしておきさえすれば、正解の道筋はそのうち見つかる。
大丈夫だよ、この手の迷宮は、学園にいた頃には結構経験してるんだ。
……ま、私よりも蛇竜の方がアテになるかも知れないがな、ふはは!





 迷宮に踏み入る。
 階段を降り、まずは最初の階層に辿り着く。周囲を見渡し、ニルズヘッグ・ニヴルヘイムは相棒たちを流し見た。
「迷宮踏破だとよ、蛇竜、海竜。遊んでないで協力してくれよ……いやまァ、仲良くなったなら良いけどな」
 視線の先では蛇竜が海竜を先輩として引っ張るような雰囲気で、じゃれ合いに似たやり取りをしている。その面差しは前を向いていないのだから、ニルズヘッグがため息を吐くのも致し方ない。
「さて、では」
 どのようにして進むとしようか。指先で顎を擦り、冷静な思考回路を稼働させる。
 アルダワの迷宮はニルズヘッグにとっては馴染み深いものだ。故に、そのために必要な方策は、序盤に限ってもいくつか想定できる。
「まずはこの辺の地図を埋めるのが定石だな。蛇竜、海竜をフォローしてやってくれ」
 端的な指示を出す。ニルズヘッグのやり方に慣れている蛇竜が迷いなく首肯する一方で、海竜がやや首を傾げたようだった。
 それでもどうすればその意向に添えるだろう、そんな風情だったから、ニルズヘッグは努めて穏やかに声を紡ぐ。
「なに、そんなに難しいことは言わないよ。分かれ道の先を、少し伺ってきてくれれば良い」
 前方へ指を差し向ければ、二枝に分かれている道が見える。一見するとたいした差異も見受けられず、ここからではトラップの存在も判別出来ない。そもそも行き止まりかもしれないし、そうではないかもしれない。
「時間を費やした末に無駄足だったというのは痛いからな。何かあるようだったら教えてくれ」
 青い鰭を翻し、海竜は意を決したようだ。蛇竜も一緒に行くから大丈夫と言っているようにも思えた。
 その二匹がしっかり友好的な関係を築いているように見えたなら、ニルズヘッグだって嬉しくないわけがない。
 ニルズヘッグは一度踵を返し後方を見遣った。帰り道はきちんと把握している。万一致命的な事態に陥ったとしても、帰還出来るだけの手掛かりは残していたし、何も問題はない。
 そして退路を確保してさえおけば、世界への道筋はそのうち見つかるだろう。
「大丈夫だよ、この手の迷宮は、学園にいた頃には結構経験してるんだ」
 そしてここにいるということは、それらをクリアして来たことの明確な証左でもある。
 海竜の抱く不安を払しょくするように告げられた声には、確かな自負が滲んでいる。何も問題ないと、態度でも言葉でも示すように。
「……ま、私よりも蛇竜の方がアテになるかも知れないがな、ふはは!」
 豪放な笑い声が迷宮に響く。
 蛇竜がまったくだ、という顔をしていたのは余談となろう。」

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・誉
まぁ、よーするに迷宮をお散歩しろってことか(ふむふむ)
おーい、エリンギ!行くぞー!
ん?あぁ、そのウサギも一緒に行くのな、ハイハイ
…遅い
…遅いな(ノロノロなウサギを見て溜息
ちょっと待ってろ(ウサギの首に紐をつけ
ほい、これ持ってな(エリンギに紐を持たせ
一緒に歩くの、こっちのが楽だろ

ところで、ここなんかトラップあんの?
(迷子になっているのに気づいてない
あれ?行き止まりだ
…なんか怪しいよな
オマエもそう思うだろ?
このウサギが解決してくんないかなー
まぁ、難しいか
とりあえず、エリンギも一緒に押してみるか?

…なぁ、エリンギ
大事な話があるんだ
……
コイツ(ウサギ)の名前、何にする?
オマエが決めたい?
ああ、いいぜー





「まぁ、よーするに迷宮をお散歩しろってことか」
 とはいえ御剣・誉には別に文句を言うつもりもなかったので、ふむふむ、と首を捻っては気合を入れ直す。
 やや後方についてくる気配に、振り返ってから声をかけようとした。
「おーい、エリンギ! 行くぞー! ……って、ん?」
 仔竜が慣れた様子で追従するも、その更に後ろに先程出逢ったガジェットウサギがついてきている。
 ああ、そうだった。
 誉は青い瞳を瞬いて、遅れて理解が及んだとばかりに頷いた。
「あぁ、そのウサギも一緒に行くのな、ハイハイ」
 じゃあ行くぞと今一度前を向き直し、迷宮の通路に足音を響かせる。
 しかし。
「……、……」
 ちらり。
 嫌な予感がして再び後ろを流し見る。エリンギは問題ない。一緒に歩くのが自然になっているから、どのくらいのペースで進めばいいかをきちんと把握している。
 問題なのは、ウサギのほうだ。
 ウサギとカメの逸話に疑いを持ちたくなるレベルで。
「……遅い」
 それでも最初は足を止めた。先程起動させたばかりだから、うまく動作がかみ合っていないだけかもしれない。そう思ったからだ。
 だが角を曲がり、周囲を警戒しつつ、それでも滞りなく先へ進もうとした頃合いに。
「……遅いな」
 再認識と相成った。そう、ウサギのくせにトロトロノロノロ歩くのだ。油でも差さねばならないのか。自然とため息が漏れたのも許されたいところだ。
 幾許かの思索を挟んで、誉が取り出したのは迷宮探索用の便利用具の中の、紐。
「ちょっと待ってろ」
 まずウサギの首に紐を結わえる。
「ほい、これ持ってな」
 次にエリンギにその紐の逆側、先っぽのほうを持たせる。
 要するに首輪のようなもの。もし遅れてもエリンギが気付きさえすれば対応も出来るだろうし、それに。
「一緒に歩くの、こっちのが楽だろ」
 気遣われたと気付けばウサギの瞳が輝いた。気がする。
 ともあれと誉は迷宮の先を見渡した。まだ先は長そうだ。――というか、大分長い。
「ところで、ここなんかトラップあんの?」
 二匹に何気なく声をかける。それぞれあるようなないような、という曖昧な表情をしていた。
 誉は思わず腕組みをして唸ってしまった。迷子になっているのだが、誉本人は気付いていない。
「あれ? 行き止まりだ。……なんか怪しいよな。オマエもそう思うだろ?」
 いつもの癖でエリンギに問う。ついでにウサギにも視線を投げた。
 このウサギが解決してくんないかなーなんてぼやきは、別に解決を望んでいるわけではないと如実に語っていただろう。
 だから別に焦ってはいない。行き止まりの壁に掌をあてる。
「まぁ、難しいか。とりあえず、エリンギも一緒に押してみるか?」
 返事の代わりにエリンギも壁に寄り掛かる。せえので押すと手応えがあった。壁が傾く。回転扉だ。
 どうやら先へと向かえそうな目途がついたからか。ふと閃きめいたものが誉に降ってくる。
「……なぁ、エリンギ。大事な話があるんだ」
 少々神妙な顔。幾らか沈黙を落とした末に、口を開く。
「コイツ」
 と、親指でウサギを指し示す。
「の名前、何にする?」
 いつまでもコイツでは少々不便だ。
 するとエリンギは何やら思いついたようで、誉に申し出てきた。
「オマエが決めたい? ああ、いいぜー」
 その会話をウサギ本人は、果たしてきちんと理解していたかどうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・オルビス
ラムダと探索

【WIZ】
踏破を目指して頑張りましょうね
いつの間にか帽子の上へと移動した
針鼠にそう声を掛けても反応はなく
代わりに聴こえてきたのは規則正しい寝息

…ええと、マイペースですね…?

気儘な相棒に戸惑いながらも
ひとまず進める所まで進もうと決意
学習力を活かして道筋を記憶しながら
罠が仕掛けられていそうな場所は
解除ボタンを探りつつ慎重に進みます

軈て暗がりの道へと至れば
転寝していた針鼠がむくりと起き上がり
僕の手許へ飛び移ると同時に
水晶に光を点し闇を掃う様に瞠目
君の背中は発光するのですね…!
何処か得意気な表情に小さく笑い
その目映さときたらまるで
夜空に皓々と輝く一番星のようで
頼りにしていますと笑みを深めた





 ひとりが、ひとりと一匹になっただけで、随分と心強いものだ。
「踏破を目指して頑張りましょうね」
 ラムダと名付けた水晶の針鼠は、ミュー・オルビスの帽子に当たり前のように収まっている。いつの間にか移動していたようだ。
 さほど小さくもない呼びかけだ。聞こえぬはずがない。なのに返事がない。
 ミューも思わず首を傾げてしまう。しばし黙って様子を窺おうとしたところで、規則正しい健やかな寝息が耳に届いた。長閑だ。それはもう、驚くほどに。
「……ええと、マイペースですね……?」
 言葉を選んだとすればそう言う。あまりにも気儘である。
 仄かに戸惑いを硝子の双眸に過らせながら、ミューはそれでも顔を上げる。ひとまず進めるところまで進めるのが肝要だ。決意は固く、眼差しは揺るぎない。
 靴音はひとり分、けれど抱えた重さは少しだけ増している。道筋を脳裏に描き記憶に落とし込みながら、慎重に歩を進めていった。
 この階層の難易度が低いというのはどうやら事実らしく、罠も結構分かりやすかったように思う。
 棘が地面から突き出ているような通路も、その手前の壁を探ったら隠しボタンがあった。押したら床が平らになったから通過出来た。堂々巡りの一角も印をつけ冷静に判断すれば目の錯覚を利用していたものと知れたし、何かしらのヒントが散りばめられているような階層なのかもしれない。
 ただそれもミューが根気よく丁寧に迷宮と向き合ったが故だ。この分だと下り階段も見つけられる気がする。その予感がミューの心を軽くした。
 頭の上の気配が身動ぎすらしないことに眉を下げつつ、やがて辿り着いたのは光差さぬ道。
 魔法石の照明がなく、地下迷宮のため窓があるわけもないから、闇の入り口に出迎えられているような感覚になる。臆したわけではないが自然とつま先が止まってしまう。
 そんな折だ。ふと頭が軽くなった。
 いつの間に起き上ったのだろうか。針鼠は器用にミューの手の甲に乗る。
 そして一筋、煌く閃光が走った。
 光を宿したのは針鼠の背の水晶だとすぐに知れる。澄んで、なのに鮮烈なその光。思わず瞠目した。目を奪われた。
「君の背中は発光するのですね……!」
 驚きを隠せないミューへ、針鼠は顔だけで振り返り「当然でしょう」と言わんばかりの得意げな貌をした。
 その姿に目を細めてしまう。
 だって眩しかったから。夜空に燦然と輝く一番星に似て、宵闇にあって尚存在を知らしめる。
 ――それでいて、ひどくあたたかい。そんな気がした。
 頼りにしています、そんな言葉は口許を綻ばせる微笑みと共に囁かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

海月・びいどろ
ハロー、うみいろ
ほんとうの名前は、キミのたいせつなもの
それなら、ボクの語る名を今の名に

大海なる本の世界に泳ぐ自由さを
縛るわけには、いかないもの
漣のように歌う、藍白のキミと
次は大迷宮の旅路へと行こう

ボクはね、海月のともだちなら
電子の波間より、喚び出すことが出来るよ
たくさんの、兵隊たちが並んだら
いっしょに、情報収集してみるね
うみいろも、お手伝い、してくれる?

水の魔法を使うのに、今までは
データの中の、想像の海をイメージしていたけれど
精霊の手を、…ヒレを借りられるのなら
この冷たさにも、力が満ちるよう

透明な水の迷彩を、みんなに纏わせて
罠のあるところとか、目立たないように
ゆらゆら、游いでいこう、ね





「ハロー、うみいろ」
 海月・びいどろの声は澄み渡る。
 その傍らには、藍白の尾びれを靡かせる水の精霊がいた。くじらのような、いるかのような。
「ほんとうの名前は、キミのたいせつなもの。それなら、ボクの語る名を今の名に」
 精霊――うみいろはそれが己を示す単語だと把握したようだ。つぶらな瞳がぱちりと瞬かれる。それから尾びれを翻した。水滴が舞った。歓びが溢れていると、はた目から見てもわかった。
 先刻書物の泉から飛び出してきたキミ。
 ただ、もしかしたなら本の世界のほうが住み心地はよかったのでは、なんて思わなくもない。物語を慈しむびいどろだからこそ、思いを馳せたのかもしれない。
 本の中はどんな世界も描かれる。どんな彩を織りなすことも出来て、とても広い。自由に泳いでいたであろううみいろを縛りたくはなかった。
 だからほんとうの名前は今は脇に避けておく。
 今はただの『うみいろ』として、共に在ってくれたらいい。
 漣のように歌う、藍白のキミと。
 ――次は大迷宮の旅路へと行こう。
 そんないざないは海色ゆらめく眼差しに乗せられて、確かにうみいろに届けられた。
 焦る必要はないからのんびりと、ゆったりと。探索する道すがら、唇に上らせるのは自己紹介めいた言葉たち。
「ボクはね、海月のともだちなら、電子の波間より、喚び出すことが出来るよ」
 バーチャル存在であるびいどろならではのそれは、戦闘や危機的状況に遭遇するまではひとまずお預け。うみいろが興味深げに話を聞いているのがわかったから、びいどろは唇に人差し指を添えて頬を綻ばせた。
「たくさんの、兵隊たちが並んだら、いっしょに、情報収集してみるね」
 うみいろも、お手伝い、してくれる?
 そんな問いかけにも瞳を瞬かせて、水飛沫をきらめかせるから、感情が手に取るようにわかる。
 その水はあまりに瑞々しい。今までのびいどろにとって知識でしかなかったうみのすがたが、今目の前にある。
 これまでは水の魔法を操る際にもあくまでデータ上の、想像の海を思い描いていた。
 けれど今は違う。精霊の手を、基、ひれを借りられるのなら。
 この冷たさにも力が満ちる。ゆっくりと、満ちていく。
 だから足取りは軽い。障害物もあったけれど、それもうみいろと辿る物語の一篇に過ぎないのかもしれない。
 透明な水の迷彩をみんなに纏わせよう。目立たぬよう、波の間を揺蕩うように進んで行こう。罠も越えて、迷宮の果てへ。
「ゆらゆら、游いでいこう、ね」
 肯定に代えて、うみいろがびいどろの側で滴をこぼした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トトリ・トートリド
新しい、仲間…しろさん、と
鬣の中の、きいろさんたちと

…わ、ほんとだ…広い
似てる道、ばっかりで…迷いそう
しろさん、ずっと…本の中で、退屈してた?
首傾げて辺りを見渡す様子に、ちょっと、ほっこり

影が深くなれば、体の発光を強めてくれて
すごいね、便利
…、いたた、いたい、ごめん
きいろさんたちも、可愛くて、すごいから
小鳥たちをなだめながら、探索を継続
先が見えない、道の先…じっと見つめるから
どうしたの、って尋ねたら
身震いは、行き止まり…だったみたい
…しろさん、すごい

分かれ道、チョークで印つけながら進んで
ようやく辿り着いた、地下への道
この先は多分、危ないけど
一緒に、戦ってくれますか
静かな眼差しに、頷いて
…いこう





 迷宮へ降り立って、ふと左右を見渡せば、入り組んだ道が奥の奥まで続いていくことがすぐにわかった。
「……わ、ほんとだ……広い。似てる道、ばっかりで……迷いそう」
 呆然と呟きながらも、ゆっくりと歩を進めるトトリ・トートリドの鬣には、黄色い鳥こときいろさんたち。
 それと腕に、先程出逢った白梟ことしろさん。しろさんは狭い道などトトリの邪魔になりそうな時は、わざと離れて後ろをついてきてくれる。
 適切な距離感はしろさんの聡明さを示すようで、それを察したトトリの纏う空気が柔らかくなる。
 それなりに進んで行けば余裕も生まれてくる。だからふと、トトリは問いを投げかけた。
「しろさん、ずっと……本の中で、退屈してた?」
 白梟はやや沈黙を落として、首を横に振る。
 曰く、本は何度目を通しても学ぶべきことは多かったから。克己のための時間と思えば、それもまた糧だと。
 それでも外界が物珍しいのは間違いないとも素直に伝えられた。事実首を傾げながら周囲を見渡す様は些か幼さも滲ませて、トトリまでその感情が波及したみたいに和やかになる。
 照明が少なくなり視界が陰った通路であっても、しろさんが纏う月虹の白い光が、ゆるやかな風と共に淡く周囲を満たしてくれる。
「すごいね、便利」
 感嘆の息と共に零れたそれは本心ではあった。
 が。
 途端にきいろさんたちにぴーちくぱーちく突かれた。ひとつひとつはそうでもないが、数が重なればそれなりに痛い。
「……、いたた、いたい、ごめん。きいろさんたちも、可愛くて、すごいから」
 フォローでもあり、それもやっぱり本心でもあった。懸命に宥めたらきいろさんたちは見逃してくれた。それを微笑ましくしろさんが眺めていたことをトトリは知らない。
 開けた場所に出たら、更に先へ。罠もあったし、トラブルもないではなかったが、頼もしい相棒たちと一緒に乗り越えていく。
 これぞと思われる通路、しかしその先が暗く何も見通せないところに出くわせば。
「どうしたの?」
 トトリが琥珀の瞳を瞬けば、しろさんはふるりと羽を震わせる。そういえば先程同じようなことがあったような気が。
 閃きが降ってきたなら、理解はすぐにやってくる。
「あ、さっきと、同じだ」
 ペイントローラーの柄の先を差し向ければ、こつん。手応えがあった。行き止まり。そういうことだ。
「……しろさん、すごい」
 それでも白梟は威張ることはない。それがますますトトリの感慨を深めていくようだ。
 分岐ではチョークで印をつけて進んだから堂々巡りにはならなかったし、適宜休憩も入れたから体力も損なわれていない。
 つまり満点とも言える探索を終え、いよいよ辿り着いたのは地下への階段。
 トトリは僅かに息を呑み、意識してゆっくり吐き出した。
「この先は多分、危ないけど。一緒に、戦ってくれますか」
 その声は真摯に。
 しろさんも、きいろさんたちも、真直ぐな眼差しを手向けてくれたから。
「……いこう」
 迷宮は気持ちまでも迷い込ませるものかもしれなくても。
 せめて前だけは見据えて、逸らさずに行こう。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『ユキウサギウミウシ』

POW   :    あそんで
【ミニぷにぷに】【ミニもちもち】【ミニつるつる】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
SPD   :    ともだち
自身の身長の2倍の【めっちゃ移動が早いシロイルカ】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    ぶんしん
レベル×1体の、【背中】に1と刻印された戦闘用【自分の分身】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。

イラスト:橡こりす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●共に駆けて、そして
 下り階段を降りきって、次の階層に辿り着く。
 そこは先の階層とは空気が違う。少し張り詰めていて、不穏だ。オブリビオンがいるのだろうと、猟兵ならば誰もが肌で感じただろう。しかし押し迫るような威圧感は感じない。さほど強い敵ではない、という予知の説明とは一致しているようだ。
 猟兵と相棒らの気配を察知したのか、迷宮の奥からわらわらと敵がやってきた。
 ユキウサギウミウシだ。アルダワの迷宮探索をしたことがある者なら、戦ったことがある猟兵もいるだろう。
 友好的にも見える態度とユーモラスな姿は、どうにも戦いにくいという猟兵もいるかもしれない。だが曲がりなりにもオブリビオンだ。容赦も遠慮もする必要はない。
 まずは相棒と力を合わせて戦い抜こう。
 そうするもので得られるものは――きっとどんな財宝よりも価値があるに違いないから。
都槻・綾
ユキウサギウミウシを興味津々につついては
じゃれつこうとする黒仔猫にも
愛らしい姿の敵影にも
ついつい和む

けれど
いずれ災いを齎すものだから
未だ誰も傷つけぬうちに海へと還そう

片膝ついて屈めば
肩へと舞い戻る黒仔猫
見上げてくるウミウシ達へと
帛紗を乗せた手のひらを
そっと差し出す

遊び疲れたでしょう?
――ゆっくりおやすみなさい

高速詠唱で紡ぐ、眠りへ誘う馨遙
破魔の祈りを籠め
淀みなく編み上げる詠いと香り
慈雨の如く柔らかに包むと良い

大気に消え逝く彼らを見送る黒仔猫の眼差しにも
きらきら
星みたいな煌きが燈って

そう、
星夜を思わせるあなたの名前――惺、は如何です?
心に星と書いて、惺――セイ、

にゃあ、の甘い鳴き声に微笑み返そう



●繋がる絆と歩む道
 迷宮で見え隠れする影は、ひとつやふたつではない。
 気配が行き交っている。遠く剣戟の音が聞こえる。時折黄色い耳のような何かが覗く。そのくせ逃げ足だけはやたらと速い。
 そのうちの一体が、今、都槻・綾とその傍らの黒仔猫、少女人形の目の前にいる。
 ユキウサギウミウシは特段猟兵たちを威圧しない。これという敵意を向けてこないタイプのオブリビオンだ。故に、黒い仔猫は興味のいろをその瞳に湛え、足先でちょいちょいとつついている。明らかにじゃれつこうとする様子の黒仔猫に、ユキウサギウミウシ満更でもないようだ。その姿につい心和んでしまい、眦が緩められる。
「……けれど、」
 綾は長い睫毛を伏せる。わかっている。どんなに温厚なオブリビオンであっても、必ず、世界を滅亡に導く存在である。であればまだ誰も傷つけないうちに、骸の海へ還すべきだ。
 片膝をついて身を屈める。そんな綾の姿を見止めた黒仔猫は、しなやかな身のこなしで戻ってくる。翼がはためく小さな風。
 見上げてくるユキウサギウミウシにそっと差し出す掌。
 その上には帛紗。ふくよかな香りが含まれたそれは、ただ馨しい。
「遊び疲れたでしょう? ――ゆっくりおやすみなさい」
 それは夢路へのいざない。
 すべらかで迅速な詠唱、馨遙に籠められしは破魔の祈念。その口吻に惑いはなく、細やかな砂がさらさらと流れ落ちるような詠いと香り。
 柔らかなそれは慈雨の如く、ユキウサギウミウシを包んでいく。
 甘く、あまく、香りの滴が溶けていく。それが気化すると同時、オブリビオンの体躯は消えて逝く。儚くなる、という言葉がまさに正しかろう。
 その様子をただ見送る黒仔猫の眼が煌めいた。それははじまりの星のよう。瞬いて、明日への期待に満ちている。
 生まれたばかりの新しい星夜。
 不意に綾の胸裏にも輝きが燈った。僅かに吐息を噛んで、それからとっておきの宝物を差し出すような声音で言う。
 そう、そんなあなたの名前は――。
「惺、は如何です?」
 心に星と書いて、惺。さとく静かで、澄みきった心。
 名は体を表すという。なれば、名付けというのはその存在を確かめ、表出し、かたちを作るための作法なのだろう。
「――セイ、」
 呼ぶ。
 あなたと私という星座を繋ぐみちしるべを、辿る。
 さすれば影色の仔猫は尻尾をくすぐったそうに揺らしただろう。
 にゃあ。
 そんなささやかで甘い鳴き声に、綾は諾意を得て、淡い微笑みを湛えて返した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
――うん?なんだこれ。ちゃんとオブリビオンなのだな
可愛らしい外見だとは思うが、オブリビオンであるというのなら斃さねばね
さて、では――モランに倣って槍になってごらん。
美しい槍だね。君らしいよ、レイド。
手にもしっかりと馴染むな。お利口だ。
では――【対人論証】で相手をしようか。
え?この期においても動かないのかって?そりゃそうさ、私が動くより「蜘蛛」のほうがずっと早いよ。
二匹 ――いや、二本の槍を握らせて。攻撃回数特化で行こう。
討ち漏らしがあるのなら、それは君たちがそのあぎとで食い殺しておしまい。
なぁに、臆することはないよ。
「覚えてしまえば」慣れたものさ。
ようこそ、悪徳側へ。





「――うん? なんだこれ。ちゃんとオブリビオンなのだな」
 ヘンリエッタ・モリアーティが眉根を寄せたのも無理はない。目の前のオブリビオン、すなわちユキウサギウミウシは、ぬいぐるみと見紛うばかりの愛らしい見た目をしていたものだから。
 しかしヘンリエッタは正確に理解している。どんな外見であろうと、オブリビオンである以上斃さなければならぬ。躯の海へ、還さねばならぬ。
 女は既に槍を手にしている。右腕。黒い鱗に金の瞳を持つ飛竜。それが、今は黒く豪奢な槍に変貌を遂げている。艶やかで、繊細ながら優美な紋様と意匠がきらめく槍。
 それを示すように軽く振るい、ヘンリエッタはこともなげに言う。
「さて、では――モランに倣って槍になってごらん」
 声をかけたのは白銀の竜。指示を受けたレイドはぱちりと目を瞬いたが、聡いのだろう、すぐさま意図するところを理解する。
 閃く光。そののちに左腕が顕現する。
 姿を現したのは流麗たる白銀の槍。清冽でありながら刺々しい鋭さを持つ槍だ。魔法石の照明の灯りを浴びて涼しげな彩を弾く。
 それを見てヘンリエッタは満足げに笑みを零した。
「美しい槍だね。君らしいよ、レイド」
 軽く振るってみたならば手にもしっかりと馴染んでいる。吸い付くような感覚、というのはこういうことを言うのだろう。お利口だ。そう告げれば、不思議と手の中の重みが反応したようだ。
 改めて敵と相対する。数は多い。が、さして問題でもあるまい。
 傲然と嘯こう。
「では――【対人論証】で相手をしようか」
 蠢きだすは、蜘蛛の脚をした機械式UDCだ。絡め捕るように対の槍を掴もうとする蜘蛛の脚に、不意に戸惑った反応を見せたのは白銀のほう。
「え? この期においても動かないのかって?」
 しっかり者だから、まだヘンリエッタのやり方に慣れぬうちは懸念が先に立つのかもしれない。
 だがその憂慮を払い飛ばそう。女は当たり前の事実を差し出すように言う。
「そりゃそうさ、私が動くより『蜘蛛』のほうがずっと早いよ」
 二匹、否、日本の槍を蜘蛛が確かに握りしめる。余った腕をヘンリエッタは鷹揚に組み、思考回路が作戦を弾き出す。攻撃回数特化で行こう。
 そう、数は多い。が、やはりさして問題ではないのだ。
 たとえ討ち漏らしがあったとしても。
「それは君たちがそのあぎとで食い殺しておしまい」
 それは宣告でもあり予告でもあり、事実の提示でもある。
 銀の瞳を細めて、どこか陶然とした響きを伴った声は震える。笑みのかたちに、震える。
「なぁに、臆することはないよ」
 視線は捉える。どれだけの数がいようとも逃しはしない。
 言い聞かせるように女は続けた。
「『覚えてしまえば』慣れたものさ」
 犯罪王の悪辣をとくとご覧に入れよう。黒と銀の穂先が、蜘蛛の糸に絡められたかの如き眼前の敵に据えられる。
 そうしてヘンリエッタは唇の端を上げて、宣った。
「ようこそ、悪徳側へ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
これまた随分と可愛らしい……ま、小手調べには丁度か。
さて、蛇竜。ここは海竜に譲ってくれるよな?
自分以外を使われるのは微妙って顔をしているな。
……そういう催しだぞ、これ。後でケーキを買ってやるから許してくれよ。

では行くぞ、海竜!
形も重さも蛇竜の槍とは別物だが、充分手には馴染む。
これなら支障はないな。【なぎ払い】で殲滅するぞ!
【ドラゴニック・エンド】――お前の呼ぶ竜の姿、見せてくれるな?

え、何だ、蛇竜。お前も戦いたいって?
流石に両手に槍はなァ……。
よし。お前も炎は吐けるだろ。あれで一緒に戦ってくれ。
……いや、まァ、火力が足りないと思うけどな。





 ユキウサギウミウシがひょっこりと姿を現した瞬間、驚きのあまりにニルズヘッグ・ニヴルヘイムは片眉を上げてしまう。
「これまた随分と可愛らしい……ま、小手調べには丁度か」
 此度縁を結んだ相棒も即戦力ではあるだろうが、実戦は初めてだ。だからこそこのような機会が設けられているのだろうし、互いの距離感を掴むのも、このコエシステンツァと呼ばれる相棒探しの行事においては肝要なのだろう。
 故にここはまず、新たな相棒である海竜が戦闘に慣れる必要がある。
「さて、蛇竜。ここは海竜に譲ってくれるよな?」
 声を飛ばしたのは先輩にあたる蛇竜だ。
 が、反応が芳しくないためニルズヘッグは首を傾げる。不平をありありと浮かべたその表情を見れば、感情を掬うのは容易い。
「自分以外を使われるのは微妙って顔をしているな」
 蛇竜が尾をぺちりと床に叩きつけたところを見るに、図星だったのだろう。
 ニルズヘッグは困ったように顎を擦る。軽く咳払いを挟んだのち、告げた。
「……そういう催しだぞ、これ。後でケーキを買ってやるから許してくれよ」
 ぴくっ。
 今確かに蛇竜の翼がぴくりと動いた。実はその隣の海竜が、後でケーキ食べられるのかなと心ときめかせていたことは余談である。
 ともあれニルズヘッグは一歩前に進み出る。手の中の海竜が壮麗な槍に姿を変える。青く、鰭と思しき部分が刃となっている斧槍だ。
 強く握る。穂先の形も重さも、やはり蛇竜の槍とは別物だ。しかし手に馴染まぬわけではない。少なくともニルズヘッグの在り方に添おうとする志は十分感じられる。
 なれば、慣れるだけだ。
「これなら支障はないな。殲滅するぞ!」
 不敵に宣う。こちらに気付いたユキウサギウミウシが集ってくる前に敵前に滑り込む。
 低い体勢から一閃。
 一気に薙ぎ払えば敵の丸っこい横っ面が裂かれる。手近な数体が消滅し、様子を窺う周囲の数体へ視線を投げる。
 次手も、勿論抜かりない。
「――お前の呼ぶ竜の姿、見せてくれるな?」
 ニルズヘッグの呼びかけは依頼ではなく確認だ。
 狙いを定める。床を蹴る。青槍で捻り突いた敵が身を捩った瞬間、そこには潮騒の気配があった。
 召喚されたドラゴンは水の属性。青い翼を翻し、鋭い牙でユキウサギウミウシを抉った。また一体、戦場から敵が退場していく。
 確かな手ごたえを得る最中、不意にニルズヘッグが振りむいた。
「え、何だ、蛇竜。お前も戦いたいって? 流石に両手に槍はなァ……」
 自分も役に立つと主張したいのかもしれない。
 余裕はある。問題はなかろう。それでも槍を両手で扱うのは些か難しいか。
「よし。お前も炎は吐けるだろ。あれで一緒に戦ってくれ」
 自分で提案しながらも、それもどうかと眉根を顰めたことに他意はない。
「……いや、まァ、火力が足りないと思うけどな」
 その言葉だって別に相棒を貶める意図は当然なく、二匹とひとりの距離感をまだ掴みかねているだけなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天方・菫子
かわいい敵だなあ
でも、浅葱のほうがずっと可愛いよ
…って親ばかかな(照れる)

妖刀【花散里】を抜き放ち、浅葱には周囲の確認をお願いします
えいや、とUCの【衝撃波】で倒したら
出てくるだろう分身を浅葱に確認してもらって
浅葱、場所の指示をお願い!
【2回攻撃】を織り交ぜながら敵を薙ぎ払っていきます
浅葱の初陣、かっこよく飾ろうね!

あらかた自分の周りが片付いたら
浅葱を労いのぎゅう
ありがとう、あたしの相棒
これからずっとよろしくね

アドリブ歓迎です





 この階層を行き交う敵は、何ともユーモラスな姿をしている。
 明らかな敵意を見せず、増殖と逃げ足の速さだけは特徴的だがごく無害だ。が、こうして集団になるとどうにも邪魔くさい。
「かわいい敵だなあ」
 天方・菫子の蒼穹の瞳が微笑ましげに細められる。
 ふと気付いて傍らの相棒へ視線を向けた。何となくしょんぼりしているように見えたのは、欲目だろうか。
「でも、浅葱のほうがずっと可愛いよ。……って親ばかかな」
 照れを滲ませてそんな本音を声にしたら、淡青のドラゴンは嬉しそうに尾を振った。和やかな空気になるところ、菫子がはたと気付いて気を取り直す。
 そう、どんなに可愛い見た目であろうとオブリビオンだ。倒さねばならないし、そのために浅葱にも一緒に戦ってもらわなければならない。
 すらり抜き払ったのは天方家に伝わる妖刀。花散らす一振り。周囲の確認をお願いね、と短く頼めば、浅葱は快く頷いてみせた。やや後方へ退き、広い視野で見渡そうとしてくれている。
 だから菫子も己の仕事をすべきだろう。疾く馳せる。ユキウサギウミウシの懐に滑り込む。
 眼前に刀先を突き付け、僅かに上方へ逸らす。
「えいやっ」
 薙ぎ払う。迸るは衝撃波。瞬く間に敵を斬り裂き、呪詛で蝕むことで二度と塞がらぬ傷と成す。一体の消滅を見届けるも、その間に別のユキウサギウミウシが分身を生み出しているのを視界の隅で捉えた。
「浅葱、場所の指示をお願い! 浅葱の初陣、かっこよく飾ろうね!」
 端的な指示にはキュイと鳴き声が返った。菫子は適切な間合いを確保し立ち回る。
 断ち、抉る。浅葱が淡水色の尾で指し示す方向へ、斬撃を的確に見舞っては数を減らしていく。一度袈裟懸けに斬り落とした後、逆手に持ち替え横一文字に刀を振るう。敵が攻撃直後の菫子の隙を狙おうとしても、浅葱が適宜警告してくれるから即座に反応することが出来た。
 そうしてどれだけ戦い続けただろう。分身含め、見渡す限りでは敵の気配はなくなっている。
 その時になってようやく菫子は安堵の息を零した。肩から力が抜ける。表情も緩やかなものになっていく様を、どうやら浅葱も見届けていたよう。
 まるで頑張ったねって視線が伝えてくれるようだったから、菫子は微笑みを綻ばせる。
 おいでと促せば浅葱は手の上に乗ってきた。そのまま柔らかく抱きしめる。心からの労いと、感謝を籠めて。
「ありがとう、あたしの相棒」
 菫子の真直ぐな髪が触れてくすぐったいらしくぱちぱちと瞬きをしている浅葱は、心なしか照れているようにも見える。
 迷宮にありながら、確かにあたたかいものがそこには存在している。
「これからずっとよろしくね」
 浅葱のキュイという鳴き声は――こちらこそ、と言っているような気がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御剣・誉
あ、なんか出てきた
おーい、エリンギ!…と、それからオマエの友達も
なんか小さいぷにぷに、もちもち、つるつるがいっぱい出てきたなぁ
ちょうどいいや、遊んでもらえば?

エリンギがウサギガジェットと一緒に
ユキウサギウミウシと遊ぶように戦っているのを見守ってる
これはオレの出番ないなぁー

そういえば、エリンギ
ソイツの名前決めた?(MSお任せ)
どうする?オレの一押し名前はトリュフかな
いいじゃん、高級そうで
まぁ、ウサギ本人に選んでもらえばいいかなぁ
ん?心配?
へーきへーき、きっとオマエのつけた名前を気に入るさ

オマエらすっかり仲良くなったな…
え?オレは寂しくなんてないってば
はいはい、またみんなで遊びに行こうな





「あ、なんか出てきた」
 御剣・誉がエリンギ、そしてウサギガジェットと闊歩する階層にて、それはごく自然な流れで登場した。
 まんまるなボディ、黄色い耳、つぶらな瞳。
 ユキウサギウミウシ。それはわらわらと増殖していく。無害だが、正直なところ邪魔ではある。
「なんか小さいぷにぷに、もちもち、つるつるがいっぱい出てきたなぁ」
 集団行動をとるとは聞いていたがこれでは突破も難しかろう。では、排除しなければならぬ。
 誉はふと相棒たちに視線を走らせた。
「おーい、エリンギ! ……と、それからオマエの友達も。ちょうどいいや、遊んでもらえば?」
 紅い仔竜とウサギが顔を見合わせる。それから二匹はユキウサギウミウシの群れに突貫していった。先程までトロトロノロノロと動いていたウサギも、どうやらそれなりの速さで走れてはいるらしい。
 戦ってはいるのだと思う。が、どちらかというとじゃれ合うというほうが正しいか。
 追いかけっこをしてみたり、ミニたちと一緒に取っ組み合いをしてみたり。それでも着実に数は減っていくのだから侮れない。
 それを見守っていた誉の口からは、感心するようなため息がまろび出る。
「これはオレの出番ないなぁー」
 そうしてどれだけ待っていたか、一通り片付けたらしき相棒たちが戻ってきた。
「あ」
 そこで不意に思い出したことがある。誉が問いを向けたのはエリンギのほうだ。
「そういえば、ソイツの名前決めた?」
 そう。さっきエリンギが決めたいと申し出てはきていたが、さあどうなることやら。
 単純に興味の色を青の双眸に湛え、ちなみにと続けてみせる。 
「どうする? オレの一押し名前はトリュフかな」
 率直に言えばエリンギはエッという顔をした。やれやれと肩を竦める。器用な仔竜である。
「いいじゃん、高級そうで」
 基準がいまいち不明なのだが、それを突っ込んでくれる相手はあいにくエリンギ以外にはいないわけで。一方当のウサギは片耳の炎が?マークになっている。これまた器用だ。
 そしてエリンギが告げた名前は。
 ――そういえば先のユキウサギウミウシ及びミニたちを見て得た印象は何だったか。
 ぷにぷに、もちもち、つるつる。
「……タピオカ……?」
 今UDCアースで再ブーム中と噂のアレ。今日の記念に、とのことだが、果たしてひとりだけまともな名前をつけてたまるかと思っていたかどうかは――エリンギのみぞ知る。
 まぁ、本人に選んでもらえばいいだろう。
 そう思った誉とエリンギの視線がウサギへ向かう。
 しばらく首を傾げたウサギ曰く、どうやらトリュフよりはタピオカがいいらしい。響き的に。
 自分で言いだしておいて何だが、やはりそれもそれでとうかとばかりに躊躇うエリンギに、誉は口の端を上げてみせた。
「ん? 心配? へーきへーき、きっとオマエのつけた名前を気に入るさ」
 そうだろ?
 ウサギ、もといタピオカは、こくりと頷いてみせた。そしてこれからよろしくとばかりにエリンギに肩をぶつける。
「オマエらすっかり仲良くなったな……」
 その様子を微笑ましく眺めつつ、何気なく視線が足元に落ちた。
 それを見たエリンギとタピオカが誉に寄って、くっつこうとする。
「え? オレは寂しくなんてないってば」
 笑い飛ばして、それから。
 賑やかになった今を噛み締めるように、囁いた。
「はいはい、またみんなで遊びに行こうな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉月・零
新しい友人と出会えたのはすごく嬉しいことだよね。

新入生さんにも十分に倒せる、って言ってもオブリビオンだしねー、流石に放ってはおけないかな。できることは手伝っていこう。

え、リーフ、君もはしゃぎたくなったの?
先輩風ふかしたくなったのか、エレメンタルロッドに宿る氷の精霊が、えへんとはりきっている姿に思わず笑んで。
ぶんしんして、合体されちゃったら厄介だから、リーフの氷の矢で数を減らしていこっかー

これで敵の数が増えることは防げたかな?

リーフ、いつも力貸してくれてありがとう。

あ、そうだ、君の名前も考えなきゃ……
どんなのが良いだろうねぇ、名前って大事なものだからね、キチンと考えなきゃ。

アドリブ歓迎





 新しい友人と出逢えたのは、単純にすごく嬉しいことだと葉月・零は思う。
 傍らの藍色の猫はしなやかに歩く。その適度な距離感が心地よく、零の眦も自然と綻んでいった。
 さて、見遣るはなにやらユーモラスな姿で行き交うユキウサギウミウシ。確かに見る限り敵意に満ちているわけでもないし、さして害があるようにも見えないが。
「新入生さんにも十分に倒せる、って言ってもオブリビオンだしねー、流石に放ってはおけないかな。できることは手伝っていこう」
 後顧の憂いを絶つことは肝要であろう。そう思案する零に視線を向けたのは、猫ではなく氷の精霊のほう。
 氷のきらめきが、淡く光る。
 その意図するところを察してぱちりと紫苑が瞬いた。
「え、リーフ、君もはしゃぎたくなったの?」
 もしかしたら零の相棒の先達として、ちょっと先輩風をふかしたくなったのかもしれない。えへんと胸を張り、やる気に満ち満ちている様子に思わず噴き出した。
 悪い意味じゃないよと掌を見せたのは降参の合図のようなもの。
「ぶんしんして、合体されちゃったら厄介だから、リーフの氷の矢で数を減らしていこっかー」
 指先を、敵へと向ける。
 それに応えるようにリーフがきりっと前を見据える。短く鳴いた。そうすれば目の前に顕現したのは百六十を優に超える氷の矢。
「よろしく頼むね」
 零があえかに笑んだなら、リーフが翼を翻す。氷の矢が一斉に迷宮を奔走する。
 ユキウサギウミウシは逃げ足が速いとはいえ入り組んだ迷宮内では避けることもままならぬ。一体、一体とぷるぷると震えた後、消滅した。
 見渡せば大方片付けることが叶ったようで、零は満足げに頷いた。
「これで敵の数が増えることは防げたかな?」
 膝を折り、零はリーフの頭、氷の結晶の周りをそっと撫でる。
「リーフ、いつも力貸してくれてありがとう」
 空気を満たす和やかな空気は、培われた絆によるものだと素直に感じられる。
 猫も目を真ん丸にして感心している様子だ。その姿を見遣って、そういえばと首を捻った。
「あ、そうだ、君の名前も考えなきゃ……」
 そう、リーフがその名を呼ばれる時に誇らしげにしているのを、猫は傍らで少し羨ましそうに見つめていたのだ。
「どんなのが良いだろうねぇ、名前って大事なものだからね、キチンと考えなきゃ」
 顎に手を当て思案顔。ずっと呼び続ける名前だ。いいものをつけてあげたいと、そう思う。
 どうせなら、リーフと揃いのものがいいかもしれない。
 なれば植物に関するものだろうか。いや、花とか。そんなことをつらつらと考えながら、
 果たしてどんな名前がついたか――きっと迷宮を踏破する頃には、結論は出ているだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トトリ・トートリド
ユキウサギ、ウミウシ…
まっしろで、ふわふわしてる
かわいい、と思うけど…ん、だいじょうぶ
きいろさんたちにつつかれなくても、わかる
あれはオブリビオンで…いつかは、人を傷つけるかもしれない、もの
…ちゃんと、倒そう。しろさん、よろしく、ね

青白いしろさんの翼、ばさっと広がった、ら
ひかりの羽矢が、たくさん…宙に浮かんで
すごい、と見上げてたら…肩にとまるしろさんの
蹴爪にぎゅっ、とこもる力
いたた、…そっか、制御するのは、トトリ
しろさんの目と、トトリの目
四つの目で見る感覚は…ふしぎ、だ
狙いが澄んで…ね、しろさん
トトリ、きっと外さない

しろさん、強いね
…いろんな世界、見せるから
これからも、トトリに力、貸してください





 この階層を行き交うオブリビオンは、アルダワ迷宮の中でも飛び切りユニークな存在であることは間違いないだろう。
 まっしろで、ふわふわしたそれ。トトリ・トートリドの琥珀の瞳が興味の色できらめいた。
「ユキウサギ、ウミウシ……」
 反芻するように名を諳んじる。きいろさんたちが様子を窺っているのがわかるものの、トトリも情を移しているわけではないと知れるから、漂う空気はむしろ凪いでいただろう。
「かわいい、と思うけど……ん、だいじょうぶ」
 きいろさんたちにつつかれなくても、わかるのだ。
 あれはオブリビオンだ。過去から生まれしもの。今は良くともいつかは人に害成すもの。躯の海に還すべきもの。
 だからトトリの決意も揺らぎはしない。真直ぐに前を見据えて、呟いた。
「……ちゃんと、倒そう。しろさん、よろしく、ね」
 意識を向けたのは、新たな友となった白梟だ。青白い翼が音を立てて広げられる。
 白き疾風が迸る。光の羽根となる。その鏃は鋭く、眩い羽矢が宙を埋め尽くす。その数およそ百五十を超えている。
 圧倒するほどの輝きの矢。それはいっそ神々しくすらある、透き通る燦然だった。
 トトリは呆然とその光景を見上げてしまう。
「すごい」
 呆けるような声が落ちたその時、肩に強い痛みが迸る。慌てて視線を向ければ、肩にとまるしろさんの蹴爪が食い込んでいたのだ。
 いたた、と呻きながらも、気落ちしないのは。
 ――自然と理解が胸裏に降ってきたからだ。
 そう、しろさんの爪に籠るは、必要な反動のようなもの。力を扱うために覚悟を促すために。
「……そっか、制御するのは、トトリ」
 なれば、どちらかだけが頑張ればいいというものではない。そう理解したからトトリも一歩前に進み出た。
 しろさんの目と、トトリの目。
 同じ方向を見据える四つの目。
同じ標的を見定めれば狙いが澄まされる。
 冴えた思考はぶれることなく意識を集中させる。
 狙いが外れることなど。
 万に一つもない。
「……ね、しろさん」
 だからトトリはしろさんに言う。
 目標ではなく、理想でもなく、ただの事実の提示として。
「トトリ、きっと外さない」
 彩に染まるペイントローラーを大きくぐるりと頭上で振り回せば、敵陣の中心点を寸分違わず指し示す。
 しろさんはそれを合図に光の羽矢を一斉に敵軍に疾駆させる。微かな虹色帯びた光は馳せる。虹のようなオーロラのような、人があたたかさと共に仰ぐ優しい光に似ていた。
 曲がりなりにもユキウサギウミウシはオブリビオンだ。しかし実のところ単純にすべて倒せばいいのだからさして脅威はない。
 例えば、そう。
 今降り注ぐ光の羽矢を連射してしまえば、形無しである。
 ユキウサギウミウシがぷるぷるしながら消滅した様子を見届けて、トトリは感嘆交じりの吐息を零さずにはいられない。
「しろさん、強いね」
 勿論しろさんは奥ゆかしく、胸を張ったりはしないのだけれど。その姿にきいろさんたちもしろさんはすごい、という気持ちを育みつつあるようだ。
 世の中にはいろんな世界が存在している。
 しろさんは賢いしいろんなことを知っているだろうし、けれど見たことのない世界が、物語が、この世にはたくさん存在しているから。
「……いろんな世界、見せるから。これからも、トトリに力、貸してください」
 目を合わせて訊いたなら、大丈夫だと言わんばかりに目を細めてくれた。
 物語は今日、新たな章のページを開いたのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

海月・びいどろ
さあ、うみいろ
海に棲むともだちが、いるみたい
ボクたちも、遊ぼう

……もちろん、お仕事も
しっかりと、しよう、ね

キミがいてくれるから
水の魔法も、力が強くなるみたい
うみいろと声を合わせて
きらきらひかる、波を喚ぶよ

泳いで、踊って、跳ねるもの
うさぎみたいなのに、ウミウシ…
かわいいけれど、ふしぎ

あの子たちが、増えたら
もっと、ぷるぷる?
それとも、もちもち?
はたまた、つるつる…?
…うみいろは、ぽよん。

たくさん、あそんだら
そろそろ、疲れてきた、かな
お別れの歌を、いっしょに歌おう
海にかえることが、できるように

イルカのような、遠くに届くあまい声
クジラのような、おなかの中に響く声
波間のゆりかごに揺られたら、おやすみ





 一緒に迷宮を揺蕩えば、海の底を散歩しているみたいに思える。
 この階層に忙しなさはない。戦いの音もどこか遠い。通路を行き交うユキウサギウミウシも凶暴ではなくのんびりとしていて、それはあたかも、海に棲むともだちのようだ。
「さあ、うみいろ。ボクたちも、遊ぼう」
 海月・びいどろが月虹の眼差しを向ければ、うみいろと呼ばれた水の精霊は藍白の尾びれを靡かせる。
 どことなく似たフォルムを持つオブリビオンと一緒に戯れて、けれど当然のことながら。
「……もちろん、お仕事も。しっかりと、しよう、ね」
 びいどろの声は控えめで、けれど真直ぐに響いた。うみいろは諾意を滲ませて、もう一度尾びれをひらめかせる。
 指先で爪弾く、みずいろの調べ。以前よりも肌に吸い付くような感覚が強い。水が高いところから低いところへと流れ落ちるように、自然と呼び寄せることが叶う青の気配に、びいどろは緩やかに瞳を細めた。
「キミがいてくれるから、水の魔法も、力が強くなるみたい」
 唇から紡がれる旋律は柔らかで、澄み渡っている。それに合わせてうみいろが唄う。きらきらひかる、波を喚ぼう。
 魔法の淵が波打ち、ユキウサギウミウシに及びそうになる。けれど向こうも楽しそう。水の狭間で泳いで、踊って、跳ねるもの。ぴるる、と動く黄色い耳に、びいどろはつい注意を向けてしまう。
「うさぎみたいなのに、ウミウシ……」
 思えば不思議な生き物だ。どんな経緯で生まれたのかはわからないが、あからさまに害成す存在ではなさそうだ。姿形も随分ユーモラスで、つい和やかな空気すら漂ってしまう。
 かわいいけれど、ふしぎ。
 そんな感慨がひとしずく波紋を齎したら、あらかじめ耳にしていたユーベルコードについても考えが及んだ。
「あの子たちが、増えたら、もっと、ぷるぷる? それとも、もちもち? はたまた、つるつる……?」
 いずれもミニサイズということだが、それがわらわらと現れたならどうなってしまうのだろう。
 首を傾げたびいどろに、柔らかな感触。視線を落としたならうみいろが体当たりをしたらしい。勿論、じゃれ合いの範疇ともいえるかわいらしいもの。
 まるで、じゃあ自分は? と訊かれているみたいだったから。
「……うみいろは、ぽよん」
 うみいろの瞳がきらりと煌く。歓びが瞬く。そうして水飛沫を手繰りながらうみいろと、ユキウサギウミウシと遊んでいた。迷宮探索というより、今この時間をこそ満喫するように。
 けれど、それもあまり長くは続けられない。疲れ故か掠れた目を指先で擦る。
 大丈夫。
 お別れの歌を、いっしょに歌おう。
 びいどろはうみいろを流し見て、それだけでうみいろは理解したようだ。送ってあげよう。海にかえることが、できるように。
「――――♪」
 それは此度の出逢いを思わせる、彩。
 イルカのような、遠くに届くあまい声。
 クジラのような、おなかの中に響く声。
 導こう。安らかで静かな眠りへ。痛くはない。躯と名付けられてはいても、海に還ることには変わりない。音律は只管なだらかで、うみいろが漣にも似た響きを添わせてくれる。
 波間のゆりかごに揺られたら。
「おやすみ」
 水面が鎮まる頃には、どうか優しい夢が見られますように。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴木・志乃
……かわいいなあ(むぎゅ)

ん、ウミウシか
さして脅威ではないけれど
これが初めての戦いだし
よろしくね、ユミト(なでなでもふもふ)

まだまだ君のこと知らないから
ちょっとずつ、知っていこう

【第六感】で敵の動きを予知しつつ【見切り】
テレパシーでユミトと連携しよう
そこ、まだいるよ
私の背後は取られてないかな?

後で光を活かした特性や魔法は調べるとして
単純に蹄や突進も武器になりそうだね

せっかくだから、UCはこれにしようか
千羽鶴を取り出す
これが私の秘密兵器
大切な大切なプレゼント

皆には内緒ね!

想いを力に変える技、君にも綺麗に見えると良いな
UC発動
無数の想いよ嵐となれ
失せ物探し、祈り、衝撃波、なぎ払いで一気に行くよ!





 迷宮探索。肩を並べるのもいいけれど、あんまり可愛いものだから。
 鈴木・志乃はふと思い立って、光のペガサス――ユミトを腕に抱きながら歩いていた。腕の中でユミトはおとなしくしていて、時折身を捩るものだから鬣が頬にあたってくすぐったい。
「……かわいいなあ」
 むぎゅっともう一度腕の力を強めれば、甘えるようにぴたりとくっついてくる。やっぱりかわいい。
 そんな感じで散歩気分で歩を進めていたところ、何やらうごめく影がある。
 ユキウサギウミウシだ。その姿を視線で捉えた瞬間、志乃の面差しに真剣なものが宿る。抜かりなく現況を把握する。
「ん、ウミウシか。さして脅威ではないけれど」
 苦戦はしないだろう。が、ユミトにとっては初陣だ。なれば戦闘の距離感や感覚を掴めるように努めるべきだ。
 だから志乃は慈しみを籠めて囁いた。
「よろしくね、ユミト」
 なでなでもふもふ。ぎゅっ。
 離れがたいけれど今はぐっと我慢。これもユミトとの絆を深めるための通過点だと思えばやる気が満ちてくる。
「まだまだ君のこと知らないから、ちょっとずつ、知っていこう」
 そう告げて足元にユミトを下ろす。あの敵を倒すんだよ、そう指先で示せばユミトもこくりと頷いた。
 ユキウサギウミウシはぽこぽこと分身を生み出している。さして害はないが、とにかく邪魔だ。碌に通路も通れやしない。
「すぐに攻撃を仕掛けてくるってわけでもなさそうかな」
 ならばこちらから行こう。
 志乃は視線を流す。それを受け止めユミトも応えるように翼を翻す。そこ、まだいるよ。相棒に意識を飛ばし、周囲の気配を注意深く探る。
「私の背後は取られてないかな?」
 大丈夫。そんな声が聞こえた気がした。
 成程戦闘に関する勘は悪くなさそうだ。後で光を活かした特性や魔法で何が役立つかは調べるとして、単純に蹄や突進も武器になりそうだ。何とも頼もしい。そう思えば志乃に微笑みが浮かぶ。
 一歩、踏み出す。
 指先をひらり、前へと伸べる。
「せっかくだから、これにしようか」
 志乃が取り出したのは紙の鶴。千羽鶴。数多の願いと祈りが籠められた羽搏き。
「これが私の秘密兵器。大切な大切なプレゼント」
 諳んじるように呟けば、真直ぐな視線が敵を射抜く。
 自信に満ちたかんばせが、ユミトに向けて屈託なく綻んだ。
「皆には内緒ね!」
 想いを力に変える技が、君にも綺麗に見えると良いな。
 失くした光を探しに行こう。指先を横薙ぎに振るえば、一斉に鶴が群れを成し飛ぶ。
 無数の想いよ嵐となれ。
 千羽鶴が淡く明滅し、光の鳥へと変化する。心を乗せれば失った輝きもきっと見つかるから。そんな志乃の心意気に添うように、ユミトも光の螺旋を嵐に乗せた。
「一気に行くよ!」
 光がユキウサギウミウシの集団を覆い、埋める。そして衝撃音が響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリエ・ルーミエンス
さあ、初陣ですよ
張り切っていきましょうか、レノア
あ、レノアっていうのはあなた(ガジェット)の名前です♪
可愛い名前でしょう?

ふむ……イルカを召喚してきましたね
レノア、敵を引き付けてきてください
その間に私が【千里眼射ち】で仕留めます

あれ? これだと囮役を押し付けてるだけですね……
さすがに悪いですね、別の作戦を考えないと
――って、当のレノアがノリノリじゃないですか
ふふ、好戦的な子は嫌いじゃないですよ?
私とあなたの抜群のコンビネーション、見せつけてやりましょう

※アドリブ歓迎





 その階層に降り立ったエリエ・ルーミエンスの薄桃の双眸は、これからを進む気概に満ちている。
 それは傍らにいる鴉のガジェットも同様だ。同じ方向を見て、同じ速さで進んでいく。それは慣れずとも、快いものだ。素直にそう思う。
「さあ、初陣ですよ。張り切っていきましょうか、レノア」
 ふと落ちた、間。
 首を傾げる鴉に、エリエはようやく思い至ったようで瞬いた。
「あ、レノアっていうのはあなた」
 と、鴉に指先を突き付ける。
「の名前です♪ 可愛い名前でしょう?」
 エリエがはっきりと言い切るものだから、鴉――も少し照れたようで身じろぐ。けれど実感が遅れてやってきたのだろう。短く鳴いて、諾意を示す。
 名前も受け入れられたところで、さて。そこらに闊歩するユキウサギウミウシをどうにか蹴散らさなければ。
 目の前では白波が展開されている。そこから出現したのはシロイルカだ。ユキウサギウミウシを背に乗せた姿はなかなかどうしてユーモラスだが、動きが機敏なのでこれはこれで侮れない。
 エリエが首を傾げて思案する。
「ふむ……イルカを召喚してきましたね」
 なれば力押しでは倒せまい。そう冷静に判断を下したエリエは、レノアへと視線を向けた。
「レノア、敵を引き付けてきてください。その間に私が仕留めます」
 エリエの手にはクロスボウがある。しなやかなそれを構え短く端的に述べれば、レノアもひらりと上空に舞い上がった。臨戦態勢だ、とその面持ちを見るだけでわかる。
 その時になって初めて気付いて、エリエが口許に手を当てる。
「あれ? これだと囮役を押し付けてるだけですね……」
 つまりレノアに先に突貫させるということになるのだ。
 それはどうにも気が咎めて、唸るように眉根を寄せた。流石に悪い。別の作戦を考えないと、そこまで考えたところでレノアがもう一度鳴いた。
 鋭い眼差し。それはユキウサギウミウシを確かに捉えている。エリエの指示さえあればすぐにでも行ける、そんな風情だ。
「――って、当のレノアがノリノリじゃないですか」
 直感的に悟って、思わず笑みが綻んだ。
 不敵に口の端を上げて、今一度クロスボウを構えよう。
「ふふ、好戦的な子は嫌いじゃないですよ?」
 たとえユキウサギウミウシがシロイルカとタッグを組んでも、こちらに敵うわけがない。
 そんな自信が、自負が、エリエの胸裏に確かに息衝く。
「私とあなたの抜群のコンビネーション、見せつけてやりましょう」
 ミルクティーさながらの髪を靡かせて高らかに宣言した。
 さあ、我らの戦いぶりをとくとご覧あれ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミュー・オルビス
ラムダと共闘

何と言いますか
戦意を燃やし難い相手ですね
(水晶の針に頬を突かれ)
あ、痛、何か怒ってます?
―承知しています
共に頑張ると約束しましたから

とはいえ銃器を用いるのは忍びなく
ミレナリオ・リフレクションにて応戦を
君も戦うんですか?
ですが一体どうやって…
首を傾げる主の前に躍り出て
水晶の棘を鋭く伸ばしたラムダが
ウミウシへと突進する様に瞬きひとつ
一見じゃれている様にしか見えませんが
確実にダメージは与えている…のですよ、ね?
いえ、頼もしい限りです
相殺するばかりでは決定打に欠きましたので
ラムダと息を合わせた2回攻撃や
カウンターで着実に削っていきましょう

踏破のご褒美は何が良いですか
また考えておいて下さいね




 
 目の前にはユキウサギウミウシ。アルダワ迷宮の魔力を吸って、どんどん増殖していく不思議なオブリビオン。
 ただ見た目は随分と可愛らしい。悪意も敵意も感じない。周囲に漂う空気も穏やかだから、成程相棒たちの初陣にもってこいなのだろう。
 物珍しさゆえに、ミュー・オルビスの硝子の瞳に、ふわふわと不思議そうな色が宿る。
「何と言いますか、戦意を燃やし難い相手ですね」
 それは率直な感想でしかなかった。が、呟いた瞬間、頬にちくちくという感触があった。
「あ、痛、」
 それが水晶の針によるものだと認識すれば、ミューは瞬く。
「何か怒ってます?」
 ラムダの様子に眉を下げるも、その胸裏に気付くのもさほど時間はかからない。
 別に手心を加えるつもりも、見過ごすつもりもないですよ。そう示すようにラムダの柔いところを指先で撫でる。
「――承知しています。共に頑張ると約束しましたから」
 だから眼差しはただただ真摯にひたむきに。ただ僅かに、銃器を用いるのは忍びないという感情があったのも本当で、正確に全く同じユーベルコードを放ち相殺させる技で応戦しようと身構えた。こちらも分身を生じさせる。さてどう対抗したものか。
 そんな時。
 ラムダが当然のように前に進み出る。やる気に満ちているのだと自然と知れよう。ただぱっと見た限り戦闘向きの何かを持ち合わせているようには思えなかったから、純粋な疑問が首をもたげる。
「君も戦うんですか? ですが一体どうやって……」
 その声に応えるように、ラムダはミューの前に躍り出た。それと同時に水晶の針を鋭く伸ばす。その身ひとつを刃と成して、ユキウサギウミウシの横っ腹に突進した。
 敵がバランスを崩しているあたり、確かに衝撃は与えているだろう。多分。恐らく。きっと。
「一見じゃれている様にしか見えませんが、確実にダメージは与えている……のですよ、ね?」
 疑問符を投げかけたなら、ラムダは振り返りながら憤然としている。ちゃんとやってます、そう言いたげに。
 その様子がやはりどうしても微笑ましく、ミューは頬を緩めるしかない。
「いえ、頼もしい限りです」
 傍から聞いていてもその声音には本音が滲んでいただろう。だから水晶の針鼠は少し満足げ。同じ標的を狙おう、とラムダがミューの視線を追っているのがわかる。
 ミューも思考を巡らせる。分身を生じさせるだけでは、純粋に単純な攻撃を重ねるしかない。つまり決定打には欠ける。
「でも地道にやるしかなさそうですね」
 武器を構え、真直ぐに前を見据える。ラムダが再びユキウサギウミウシへ突貫する。水晶の針の鋭さに怯む相手の隙を見過ごさず、懐に滑り込んではしたたかに衝撃を与えた。
 数を着実に減らしていこう。そう考えたミューとラムダのコンビネーションはなかなかいい感じだ。徐々にユキウサギウミウシもぷるぷるしながら消滅していく。
 さて、次だ。
 そんな時ふと閃きが降ってきたから、何気ないような顔でミューが問う。
「踏破のご褒美は何が良いですか」
 ラムダがぱちり、と目を瞬いた。
 何がいいだろう。この迷宮をクリアしたら、一緒に何かを味わうのもいいかもしれない。
 これからのもしもに思い馳せれば、柔らかくてくすぐったい何かが胸裏に萌す。
「また考えておいて下さいね」
 その言葉に、ラムダは水晶のきらめきを増したようであった。素直な反応だ。だからこそミューも頑張ろうと思えるのだ。
 さあ行こう。
 一緒なら越えていける。未来へ進める。
 そのはじまりを確かに予感して、ミューはラムダと共に床を蹴る。


 長い年月を一緒に、あなたとこうして生きていく。
 そんな始まりの日から大切に絆を紡いで織り成していこう、
 そうすれば、きっと。
 ――後で幸せだったねと語り合える思い出も作れるだろうなって、思えるから。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年07月04日


挿絵イラスト