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貪血館の主、その最後の晩餐

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ダークセイヴァー、その何処かに建てられた、古びた屋敷。他より少し小高い丘に建てられた荘厳な豪邸には、その大きさに反し、何者の生気も感じられなかった。
「主サマ。不肖シルヴィア、此処二参リマシタ。」
 否。そこには確かに、人の姿を模した「何か」が存在していた。現世の理から外れ、現世を食らわんとする、彼岸からの亡霊――オブリビオンである。かつては勇伝を誇ったであろう堕ちた天使は、屋敷のエントランスで膝をつき、姿の見えぬ主に頭を垂れていた。
『我は……飢えている……これまでになく、強く飢えを感じている……。』
 するとどこからともなく、威圧感を感じさせる、唸るように低い声がフロア全体に響き渡る。この館――別名、『貪血館』の主の声である。
「デハ主サマ、此度ハ、ドノヨウナ供物ヲ御用意イタシマショウ?」
 力強い歯ごたえが魅力的な、筋肉質の大男だろうか。柔らかくもしっかりした弾力が心地良い、うら若き女性であろうか。時には、瑞々しい舌触りが特徴的な子供も良いだろう。久々に、人間では味わえないような珍味を味わえる、オブリビオンというのも乙だろう。
『猟兵だ……我は、此度は猟兵を所望する……彼らが如何なる美味をもたらすのか、我は強い好奇を抱く……。』
「畏マリマシタ。デハ主サマ、暫シノ間、御待チ下サイマセ。必ズ、御所望ノ品々ヲ用意シテ見セマショウ。」
 そう告げるが否や、堕天使はその翼を大きく翻し、いつ明けるとも知らぬ夜空へと飛び立つ。
 それからしばらくの後、彼女は近郊の村々に襲撃をかけては、人々を次々に攫っていく。そしてその度、どこにいるかも分からぬ者に向かい、彼女は大きく声を上げるのだった。
「猟兵達ヨ! コノ者達を救イタケレバ、我ガ主ノ屋敷二赴クガヨイ! サモナクバ、コイツラハ我ガ主ノ前菜トナロウゾ!」

「皆、集まってくれてありがとう。今回は、ダークセイヴァー世界での事件を予知したわ。」
 所は変わり、グリモアベース。その一角で、アイリーンはいつもより少し険しい顔を浮かべながら、集った猟兵達に事件の説明を始める。
「今回皆に向かってもらうのは、ダークセイヴァーの辺境にある大きな屋敷。そこに、現地の住民が多数誘拐されているらしいの。」
 近隣の住民から、『貪血館』と呼ばれるその屋敷。そこに足を踏み入れたが最後、肉の一片、血の一滴まで残らず貪り喰らわれるという、おぞましい逸話のある屋敷である。
 どうやら、とあるオブリビオンが根城としている『貪血館』の近くにある村を見つけては、無差別に捕獲、『貪血館』に閉じ込めているらしい。
「だから皆には、今回の事件で誘拐された人達の救出、及び首謀者の撃破をお願いするわ。」
 だが今回の事件、真の問題は別にある。なぜなら件のオブリビオンは、人々を誘拐する際、猟兵達へのメッセージを残しているのだ。基本、ダークセイヴァー世界のオブリビオンにとって、猟兵など眼中にない。それなのに、この猟兵を強く意識した発言。
「どう見ても、罠よね。」
 十中八九、首謀者の撃破だけでは、今回の件は終わらないだろう。万が一の事態、ということも考えられる。だがそれでも、と、アイリーンは言葉を続ける。
「……自分の碌でもない欲のために、罪のない人達を利用し、弄ぶような奴らを、放っておいていい義理はないわ。 だから無事に帰ってくる上で、絶対に打ち倒してきて、ね。」
 アイリーンは密かに拳を強く握りしめ、強い眼差しで猟兵達を見送るのだった。


橘田華佗雄
 十度目まして。橘田華佗雄です。ずいぶん間が空いてしまいましたが、ついに二桁台にまでシナリオを出すことが出来ました。これまで参加いただいた皆様、そしてこれから参加いただく皆様、今後とも、どうか宜しくお願い致します。
 以下、ちょっとした補足になります。

●戦場について
 少なくとも第1章は、オブリビオンが拠点としている広大な屋敷の中が舞台となります。戦闘に支障が出ることはない広さではありますが、屋敷内の設備などを利用するような戦術を取ることはできません。
 また、シナリオの進行状況によっては、戦場が変わることがあります。

●人質について
 屋敷の中には、猟兵達をおびき寄せるために誘拐された人々がエントランスに集められています。極論、彼らを無視してもシナリオの成否には関係ありません。が、救出を狙う場合、玄関の扉までの動線さえ作っていただければ、自発的に逃げ出し、救出成功となります。

●敵及び第2章以降について
 現時点では、第1章に登場する敵のみの公開となります。以降の敵の公開はシナリオの進行に準じますが、特に他のシナリオの個体との戦闘能力の差はありません。油断せず、存分に戦ってください。

 今回はこれまでと比べ、純戦色の強いシナリオとなっております。全力でオブリビオンとガチンコでぶつかり合って下さい。
 それでは、皆さんの参加を、心よりお待ちしてます!
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第1章 ボス戦 『勇士シルヴィアの亡霊』

POW   :    魂を穢し甚振り、隷属させるおぞましき呪い
【凄まじき苦痛を伴う呪いを流し込まれ狂戦士】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    不撓不屈の義手刃
【激闘の末失った両腕代わりの義手に取付た刃】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    気高き女戦士を灼き蝕む魔焔
自身に【全身の傷から噴き、主すら焼き苦痛を齎す焔】をまとい、高速移動と【汚染された光と魔焔とを練り合わせた火焔弾】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はナタリア・ノエルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 オブリビオンの誘いにあえて乗り、『貪血館』へと足を踏み入れる猟兵達。そこで彼らの視界に飛び込んできたのは、実行犯たる堕天使、今回の一件で攫われた者達――そして、今回以前に連れてこられたのであろう、十字架に張り付けられた、既に息絶えた者達。
「猟兵達ヨ……ヤハリ、コノ者達ヲ見捨テラレズ、ノコノコト供物ニナリニ来タカ。」
 突如の来訪者に動じる素振りもなく、実行犯――勇士シルヴィアの亡霊は、淡々とした態度で猟兵達を出迎える。そしてその奥には、未だ恐怖に怯える者、救い主の登場に希望を見出す者……老若男女、三者三様の顔を見せる人々がいた。幸い、どの者も五体は満足、目は冴えている状態のようだ。
「然ラバ、オ前達ノソノ身、我ガ主二捧ゲヨウ。ダガ、ソノ前二……。」
 すると、シルヴィアはその義手に取り付けられた刃を煌めかせ。
「我ガ刃ニテ、丹念ナ下ゴシラエヲ施シテクレヨウゾ!」
 猟兵達の動きを封じるべく、その凶刃を彼らへと向ける。
 まずは、この堕天使を討滅し、人質を救い出さねばなるまい。覚悟を決めた猟兵達は、眼前の目的を成すべく、行動を開始するのだった。
シャルロット・クリスティア
なるほど、狙いは私達ですか……。
……良いでしょう、誘いに乗って差し上げます。

奴をこちらに釘付けにして注意を逸らせば、捕らえられた皆さんも逃げやすい筈。
牽制に徹するのが得策ですね。
直接の護衛やダメージソースは他の猟兵に任せ、双方から離れた位置にポジショニング。
地形や位置関係を最大限に利用し、遠距離攻撃は柱等を盾にしつつ援護射撃。
他から注意を逸らします。
高速移動しようと、私の腕なら足止めによる時間稼ぎは十分可能です。

……さて。
お望み通り参上しましたが、どのようなご用でしょうね。
どのような要件にせよ、支払いは貴方の命となるでしょうが。


薬師神・悟郎
可能であれば、屋敷への侵入前に攻撃力強化、武器改造、毒使い、防具改造、呪詛耐性、激痛耐性と準備を整える

誘拐された人々の救出もしておきたい
他の猟兵がいれば先に進んでもらい、玄関の扉までの動線として俺が人々の誘導をしておこう
彼らの無事を見届ければすぐに追いかけるつもりだ

早業、マヒ攻撃、毒使い、先制攻撃で戦闘に乱入
他の猟兵がいれば連携を求め、戦闘知識、援護射撃で敵を迎え撃つ
第六感、野生の勘で敵の攻撃を見切り、カウンター、部位破壊、目潰し
仲間もしくは俺を対象にした攻撃の回避が間に合わなければ、かばう、見切り、カウンター、咄嗟の一撃

此処の主には後悔する程たっぷりと、猟兵の味を喰らわせてやろう


アベル・スカイウインド
人質を取るとは勇士などと言っても所詮はオブリビオンか。フッ、救い出してやるとするか。

UC【竜槍】で【先制攻撃】する。【串刺し】にして壁か柱にでも磔にしてやろう。フッ、お前にはその姿が似合いだぞ。
だがこの程度でくたばるほど敵もやわではないだろう。【時間稼ぎ】している間に人質を逃す。これから派手にやり合うなら人質はいない方が色々と都合がいいからな。

敵が拘束から逃れたら槍を【念動力】で回収して接近戦を挑む。奴の攻撃を【見切り】【ジャンプ】で回避しながら槍を突き入れてやる。
望みとあらば何度でも刺し貫いてやるぞ。遠慮する必要はない。好きなだけ体に穴をあけてやろう。



「人質を取るとは、勇士などと言っても所詮はオブリビオンか。フッ、救い出してやるとするか。」
 シルヴィアがその刃を構え、猟兵達との間に緊張が走る中、いの一番に飛び出した者がいた。気高き猫妖精の竜騎士、アベル・スカイウインドだ。本来は竜狩りを生業としている彼ではあるが、一介の騎士として、この様な事態をみすみす見過ごす事など出来るはずもない。
「ナルホド……マズハ貴様カラ餌食二ナリタイヨウダナ。デハ望ミ通リ、猫ノ開キ二シテクレヨウカ!」
 最初の生贄を見定めたシルヴィアは、漆黒の翼を翻し、凶刃を閃かせながら突撃をかける。オラトリオの翼に由来する、その機動力で一気に距離を詰めるシルヴィア。
「ほぅ、かつての異名に恥じぬ速さだな。だが……フッ。」
 だが、その鬼気迫る突進にも動じず、アベルは愛槍を構える。
「天翔ける稲妻たる俺には及ばぬようだな……誓いの槍よ!」
 彼が叫ぶとその刹那、愛槍はアベルの手を離れ、迅雷を思わせる速さでシルヴィアへと放たれる。自身をも上回るその速度に対応する間もなく、堕天使は左の黒翼を打ち貫かれ、手近の柱に勢いそのまま打ち付けられてしまう。
「ガハァ! コノォ……小動物風情ガァ!」
 己の拘束を解こうと、必死に槍を引き抜こうとするシルヴィア。だが、深々と突き立てられたその槍は、容易く抜けるようなものでもない。その上。
「ッ! 何ダ、何処カラ攻撃シテキテイル!?」
 気付けば、彼女は見えぬ狙撃で四方八方からチマチマと撃たれ続けられている事により、注意が散漫としてしまい、戒めから逃れるのに集中できないでいた。苛立ち故か、傷口から噴き出る炎をやたらめったらに放つも、手応えがある気配を感じられないシルヴィア。
「……さて。 お望み通り参上しましたが、どのようなご用でしょうね。」
 それは、先程から物陰に隠れつつ、正確無比な狙撃で的確に打ち抜いていた、シャルロット・クリスティアの仕業であった。シルヴィアがその手に力を込める度にその手元を狙い撃ち、牽制する事で注意を逸らし、時間を稼ぐためである。自身の位置を悟られぬよう適度に移動を繰り返しながら、妨害に徹するシャルロット。その中で、彼女は流れるように長い金髪を揺らしながら、一つの思いを巡らせる。
「それにしても……なるほど、狙いは私達ですか……。」
 この世界のオブリビオンとしては本来ありえない、猟兵達への興味、いや、執着だろうか。果たして、黒幕の意図は一体何なのか。
「……良いでしょう、誘いに乗って差し上げます。 どのような要件にせよ、支払いは貴方達の命となるでしょうが。」
 虎穴に入らずんば虎児を得ず。そして、無辜の人々を巻き込んだ者には相応の報いを。そうひとまずの答えを出したシャルロットは、なおも黙々と己の役割を遂行し続けるのだった。
「フッ、お前にはその姿が似合いだぞ……さぁ皆さん、今のうちに脱出を!」
 一方、アベルは堕天使を一瞬見遣ると、こうして稼いだ時間の隙に人々の救出に掛かる。その柔らかな肉球で手を取り、玄関までの道を示すアベル。
「皆、出口はコッチだ! 慌てず騒がず、落ち着いて向かってくれ!」
 その先では、整った顔をフードで目深に隠しながら、薬師神・悟郎が人々の誘導のために声を出していた。玄関の扉までの動線となり、潤滑に避難を進めるためだ。彼に促され、口々に感謝の言葉を述べながらも、当初の予定よりもスムーズに出口へと向かう人質達。次々に外へと送り出された末、目に見える範囲に誰もいなくなったと同時、カラン、とかわいた金属音が鳴り渡る。
「ヨクモ……ヨクモ、コノヨウナ無様ナ格好ニシテクレナァ! 貴様ラ全員、細切レ二シテヤロウゾ!」
 遂に槍を引き抜いたシルヴィアは、湧き止まぬ怒りに身を任せるまま、全身の隅々まで呪いを行き渡らせる。本来ならば圧倒的な身体能力の強化と引き替えに、堪えがたき苦痛を味わうはずの呪い。だが憤怒が鎮痛剤となっているのか、痛みをものともせず、半狂乱のまま猟兵達を睨みつける。
「なぁ、良ければで良いが……」
「フッ。 当然だ、共に戦おう。」
 悟郎の呼びかけに応じ、即席のタッグを組むことになった二人。そして承認を得るが否や、早速悟郎は手元の苦無を目にも止まらぬ速さでシルヴィアへと投げつける。
「――ッ!」
 思わぬ不意打ちに、モロに右翼へと深々と刺されるシルヴィア。突入する直前、悟郎が自身に施した強化が功を奏したようだ。そしてその隙、念動力で密かに愛槍を回収していたアベルは、今一度その切っ先を叩き込むべく、再びの接近戦に臨む。
「――アァ!!」
 衝動のまま、シルヴィアは強化されたその剛腕を見舞うも、アベルのしなやかな動きに躱されてしまう。そして攻撃直後の硬直を見過ごす事なく。
「此処の主、そしてお前には、後悔する程たっぷりと、猟兵の味を喰らわせてやろう!」
 悟郎は先程打ち抜いた右翼を機能不全に追い込むべく、なおも苦無を投げつけていく。また、勢いのこもった剛腕でアベルに襲い掛かろうとするも。
「私の事、忘れてませんよね?」
 その一撃を遮るように、シャルロットの弾丸が、シルヴィアの拳へと打ち込まれる。そうした攻防の中、少しずつ、だが確実に、堕天使の動きは鈍り出していく。最初に悟郎が投げ込んだ苦無に仕込まれた麻痺毒が、効能を現し出したのだ。堅実な彼の一撃が、実を結んだのだ。
「望みとあらば何度でも刺し貫いてやるぞ。 遠慮する必要はない。 好きなだけ体に穴をあけてやろう。」
 そして当然の如く、最早木偶となりつつある堕ちた勇士に、アベルは容赦なく、その身に幾度となく愛槍を突きたてるのだった。
 狂乱の堕天使との攻防から数刻後。そこには、全身に刺し傷を喰らい片膝をつく堕天使と、五体満足でひとまずのを成し遂げた猟兵達の姿があった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ガーネット・グレイローズ
あの姿は、オラトリオ……。かつてはヴァンパイアに立ち向かった
勇敢な戦士だったのだろう。だが、今は……。身も心も闇に染まり、
主に盲目的に従う奴隷か。下賤な吸血鬼の小間使いなど、本意ではあるまい……。

【妖刀の導き】で武器を強化しての真っ向勝負だ。
館に満ちた邪気を十分に吸った「アカツキ」と「躯丸」の二刀を振るって
<二回攻撃>で斬り合う。
相手の攻撃は<第六感>が導くままに先読みするが、人質に当たるおそれがあるならば<なぎ払い><武器受け>を駆使してガードしたり、切り払って流れ弾にならないように注意。
可能ならばエントランスの扉を<念動力>で開けて、人質が逃げられるように対処したい。


リグ・アシュリーズ
敵の死角から村人たちを逃がしつつ戦います。
まだ見ぬ配下が群れでない事を祈って。

最初のやりとりは味方に任せ、柱の影に潜伏します。
敵が気を取られた瞬間を見計らって、村人の足元に小石を投げる。
こちらへ、と手招きして避難を促すわ。

大多数が抜けるのと入れ替わりで前へ出て、
生命力吸収の力を宿した黒剣で斬りかかります。
小回りの利く敵みたいだから大振りは控えて、
一振りずつ確実に剣先を突き入れて体力を削ぐわ。

狂戦士モードに突入されたら、素早い動きで応戦。
万一逃げ遅れがいてもいいよう、注意を惹きつけたいところ。
どうしても分が悪いようなら、黒風鎧装で体力を強化して対抗するわ。
まだまだ、打ち負けるもんですかっ……!



 先の三人が人質の解放を終え、シルヴィアと交戦しているその頃。先程の集団がいた所から少し離れた物陰に、子供を中心とした一団が息を潜めていた。オブリビオンへの恐怖のあまり、思わず身を伏してしまったのだろう。だがそのせいで避難に出遅れてしまい、取り残されてしまった者達はこうして身を隠す羽目になってしまったようだ。千載一遇の好機を逃し、絶望が全身を覆いつつある子供達。もうこれまでなのか。家族に一生会えないまま、喰われてしまうのか……そうした思考がよぎる中、ふと、足元に小さな乾いた音が聞こえた。見ればそこには、柱の影らしき所から投げ入れられた小石一つ。
(皆、こっちへおいで! 敵の注意が逸れている今がチャンスだよ!)
 その先には、にっとした笑顔を向ける人狼の少女、リグ・アシュリーズの姿があった。戦闘のどさくさに紛れ、逃げ遅れがいないか潜伏しながら探索していれば、案の定である。こっそりと手招きをし、避難を促すリグ。彼女の笑顔に多少は恐怖がほぐれた子供達は、一人また一人と彼女の元に集まり、その誘導に従って自由への活路を行く。だが。
「マダ他ニモイタノカ。 コレ以上、我ラニ泥ヲ擦リツケタ貴様ラノ思イ通リニナドサセヌ!」
 それに感付いたシルヴィアは、全身を穿つ傷の数々から火炎弾を出口に向かい放射し、その行く手を阻まんとする。
「! 皆、伏せて!」
 リグの咄嗟の指示でで直撃は避けられたものの、扉の直前に着弾した炎は勢いを上げ、彼らの逃避を確実に塞いでしまう。最早これまでか。皆が暗い感情に飲み込まれつつあった、その時。
「だが、こうされてはそれも無駄だろ?」
 目には見えぬ力場が何処かからか放たれ、その勢いのままに開け放たれた扉から、炎が丸ごと外へと追い出される。ガーネット・グレイローズによる念動力だ。その名の通りの紅榴の髪を揺らしながら、ガーネットは毅然とした態度で言い放つ。そして遂に開けられた道を見逃さず、リグは子供達へと指示を飛ばす。彼女の言葉に従い、次から次へと、自由な外へと飛び出す子供達。そして全員を見送ると、リグは、そしてガーネットはシルヴィアへと身を向ける。もうこれで、後顧の憂いは無くなった。後はこの堕天使を仕留めるだけだ。
「貴様ラ……ドコマデモ我ラニ抗オウトイウノカァ! コノ痴レ者共ガァ!」
 そしてシルヴィアもまた、咆哮と共に呪いを再度全身に展開。狂乱に身を堕としながら、二人へと襲い掛かる。
「このままじゃ分が悪そうだね……だったら!」
 シルヴィアの強化された躯体を見抜いたリグは即座に、ユーベルコードを発動。黒狼の姿をした朧に身を包むと、懐に収めていた黒剣を取り出し、同様に強化された肉体で敢然と立ち向かう。
「あの姿は、オラトリオ……。 かつてはヴァンパイアに立ち向かった勇敢な戦士だったのだろう。 だが、今は……。」
 一方、ガーネットは自らを高めるべく、彼らから一旦距離を置いていた。シルヴィアの姿に何か思う所があるのだろうか、ガーネットは彼女を見遣るも。
「身も心も闇に染まり、主に盲目的に従う奴隷、か。 下賤な主の小間使いなど、本意ではあるまい……。」
 最早かつての誇りを捨て、憎んでいたはずの敵の身をお堕としまったかつての勇士など、見るに堪えられないものである。赤と白、二振りの刀を鞘から抜き出し、ガーネットは精神を集中させると。
「今宵のアカツキは、躯丸は、血に飢えているぞ」
 その刀身に満ち満ちてゆく、この地で淀み続けていた邪気。一体、どれだけの人間を貪り食ってきたのか。どれだけの人間の命と尊厳を踏みにじってきたのか。その抜き身に、重さすら感じさせるほどの禍々しい感情が乗せられていく。
「まだだ……まだまだ、打ち負けるもんですかっ……!」
 そして小回りの利く敵が故、大振りな攻撃は控え一振りずつ確実に剣先を突き入れて体力を削り続けていたリグの元へと、ガーネットは一直線に駆け寄って距離を詰める。
「ソンナ単調ナ動キ、避ケラレヌトデ、モ……!」
 当然、その攻撃を見極めていたシルヴィアは身をよじろうとするも、一瞬、力が入らずに体勢を大きく崩してしまう。相手の生命力を吸い取るリグの黒剣に、じわりじわりと体力を抜かれていたためだ。
「さぁ、今のうちに!」
「あぁ! かつての勇士よ、再び地に還る時だ!」
 瞬間、紅白の光が閃いたかと思うと、堕天使の胴に二閃の剣筋が刻まれる。そして一拍遅れ、そこから大量に吹き出すおびただしい量の血飛沫。
「ア? ……ア、アァ、アアァァ!!」
 自身の状態が即座に理解できず、遅れて絶叫するシルヴィア。身を捩り、悶絶するその姿は、最早惨めとしか言いようのない様を表していた。
 そう、堕天使がその身を崩すのは、もう時間の問題であった。

 そして、猟兵達は気付いていなかった。まだ見ぬ数多の配下は、既に彼らの側に、目の前に潜んでいる事を。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

落浜・語
もうこれ以上、逃げ遅れとかもなさそうかな。
一応、【存在感】消し【第六感】使いつつ【聞き耳】立てて猟兵と敵以外の音とか気配がないか探る。
もしあれば外へ誘導。

この世界も色々ヤだけど、それに釣りあう悪趣味な方法と領主サマで。
そろそろ前座の出番は終わりじゃないか?悪趣味なやり方には悪趣味な方法で幕引きを。
『人形行列』を使用。
どうせいることは領主にバレてんだ。多少派手にやったところで問題はないな。
相手を囲えるなら囲う。無理ならば、進路上に人形を配置。
一応言っておくが壊すなよ?

何となくだが人形の一部を、犠牲者が張り付けられている十字架の側にも。
いや、遺体を傷つけるつもりはないが、嫌な感じがする。



「……ふむ。 もうこれ以上、逃げ遅れとかもなさそうかな。」
 猟兵達とシルヴィアの戦いが佳境へと迫る中、落浜・語は、柱の影から安堵の声を出す。彼は続く激戦の中、密かに物陰に潜伏しつつその聴覚を鋭敏にさせ、先のように未だ出遅れた者がいないか探っていたのだ。だが幸い、今この屋敷で聞こえる物音の主は、猟兵達、シルヴィア、そして――。少なくとも、人質となっている一般人から発せられるような音は、屋敷の中からは聞き取られなかった。
「さて……そろそろ、前座の出番は終わりじゃないか?」
 となれば、やる事はただ一つ。目の前で未だ舞台から降りようとしない、哀れな役者の出番に終止符を打つだけ。
(……この世界も色々ヤだけど、それに釣りあう悪趣味な方法と領主サマで。)
 語は内心、この一連の騒動に少なくない憤りを感じていた。己の矮小な欲望を満たすため、関係のない一般人を巻き込もうとするそのやり口。何とも面白くもないマクラである。彼は一歩、また一歩と、シルヴィアの元へと近づくと。
「悪趣味なやり方には、悪趣味な方法で幕引きを。」
 そう言うが否や、語は何処からか取出だした絡繰人形を、糸を介して巧みに操ると、その身頃から一体、また一体と、小型の人形が生み出されていく。絡繰人形にそっくりなもの、頭の大きいもの、腕の長いもの。多少の差異はあれど、二百を優に超える数の中で見れば、そのようなものは些末事に過ぎない。最早ここまで派手に戦いが起これば、いかな愚鈍な主でも否が応にも感付くだろう。ならば、多少大手を振って全力で戦った所で、何の問題もあるまい。
「一応言っておこう。 派手に壊さないでくれよ? 派手に壊されたら、泣く。 痛い思いしたくなければ、壊さないことだな。」
 それは、所謂前振りというものか。気付けば、堕天使の辺り一帯は、似たような造形の大量の日本人形に囲まれていた。
「許サン……貴様ラ、殺ス……跡形モナク、消シテヤル……!」
 だが、度重なる呪いの付与、戦闘によるダメージの蓄積、なにより猟兵達に嬲られた事への怒り。もう主からの命令すら頭から抜け落ちるほど、シルヴィアの理性は吹き飛び、猛り狂っていた。当然、目の前にずらっと並ぶ小細工など、目障りでしかない。彼女が全身のあらゆる傷口から焔を煌めかせ、手ごろな一体に投げつける。
「失セロ! 消エ失セ……ァァアァ!!」
 すると、攻撃を受けた人形は受けた焔の何倍もの爆炎を伴って破裂、堕天使へと雪崩込む。しかも、それでは終わらない。一体の爆発が呼び水となり、隣の人形、向かいの人形、適当な位置の人形……次々と爆発は連鎖していき、やがて彼女を火焔の奔流に飲み込んでいく。そしてその中、シルヴィアの体は次第に炭化、端から崩れ落ち始める。
「主サマ……申シ訳、アリ、マ……。」
 焔の海の中、シルヴィアが断末魔の声をあげてから数刻後。そこには、炭化の果てに塵に、骸の海へと還っていく、シルヴィアだったものがあった。
「これにて、前座はお終い、といった所だな。」
 だが、前座があるのならば、二ツ目、真打もあるという事。一体、この寄席は何処へ向かおうというのか。
(それに……あれは一体、何だったのだろうか?)
 それは、先程の聞き耳で聞いた、第三の音。館全体から聞こえる、規則正しい一つの重低音。それが意味するのは、果たして何なのだろうか……。


 その頃、戦場の奥で十字架に括りつけられた遺体を見つめるものがあった。先程、語に作られた人形の内の数体である。彼はこの遺体に何かを感じ、念のためにと側に向かわせていたのである。そして幸いな事に、語は人形達に視覚共有や録画機能を付与していなかった。もししていれば、彼は後に大きな後悔をしていただろう。
 シルヴィアが敗れると同時、遺体は振動を始める。そして、人体としてありえない方向に捻じれ、皮膚の下で何かがウゾウゾと蠢き、腕が、腹が、頭が一瞬、大きく膨張したかと思うと。
「――!!」
 肉を突き破り、辺りを血の紅に染めながら、触手が蠢く新たな眷属が産声を上げるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『スレイヴ・スクイーザー』

POW   :    テンタクル・スクイーズ
【美味なる極上 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【おぞましくのたうつ肉色の触手】から、高命中力の【感情を吸収する数十本の触腕】を飛ばす。
SPD   :    スラッジ・スキャッター
【全方位に汚濁した粘毒液 】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    ブレインウォッシュ・ジャグリング
【幹触手の先端 】から【暗示誘導波】を放ち、【洗脳】により対象の動きを一時的に封じる。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『ぬう……シルヴィアは敗れたか。 あれは中々に優秀であったが、所詮はこの程度か。 やはり、使い捨ての駒に感情など、邪魔でしかないという訳だ。』
 どうにかシルヴィアを退けた猟兵達。だがその時、屋敷の全体から、威圧感ある重低声が響き渡る。
『歓迎しよう、猟兵の諸君よ。 我はこの館の主、今宵の晩餐の主賓だ。 そしてお前達は、賓客ですらない。』
 すると、ぬるり、ずるりといった不快音と共に、先程まで戦場の奥にあった遺体――否、新たな眷属が、ぐるりと猟兵達を取り囲む。その上、床下からも触手が生え出し、猟兵達の脚を捕えようと蠢き出す。
『さぁ猟兵達よ! その身を我に差し出し、我の舌を唸らせる最高の食材となるがよい!』
 やはりこれは、猟兵達を貶める罠であったという事か。このままこの場に留っていては命に関わる。彼らは、眼前と足元の妨害を掻い潜り、館からの脱出を図るのだった。
シャルロット・クリスティア
(舌打ち)
乗り込んでおいてすごすご引き返すのは少々癪ですが……気分の問題で自分を窮地に晒していては間抜けですね。

纏めて焼き払います。巻き込まれないでくださいよ……!
注意喚起をしつつ、進路上の敵を炎爆弾で狙撃。爆炎で一掃させていきます。
素となった犠牲者の方を思うと少々心苦しいですが、四の五の言っている場合ではなさそうですしね。

声の主が追ってくるなら追ってくるで、戦いやすいフィールドに誘い込むのは戦略的にも重要です。
撤退ではなく戦略的後退……と言いたいところですね。

どちらにせよ……この人たちの敵討ちは、そう遠くない後にさせていただきますよ。


落浜・語
いや……死体が動く程度の事だったら、予測していたんだが……これは、さすがに予想外だな……
本当にまぁ……悪趣味過ぎてヤだね。

再度『人形行列』を使用。
今度はなるべく広範囲に人形を散らす。床の触手ごとまとめて吹っ飛ばし(【範囲攻撃】)て外に出る道を作りたいとこだが、どこまで通用するか……

手の届く範囲は、【第六感】にも頼りつつ奏剣で対応。
にしても、気持ち悪いな。
誰も好き好んでこんな場所、居たかねぇよ。

アドリブ、連携歓迎


アベル・スカイウインド
フッ、猫を食べようとは、とんだ悪食だな。既に人質の脱出は完了しているのだから長居する理由もない。捕まらぬうちに俺たちもとっとと脱出するぞ。

いたるところから触手が生えているな。床下からも生えているんじゃ徒歩は危険だな……。まあ、こんな下等生物如きに竜騎士たる俺を捕らえることなどできはしないがな。UC【竜翔】で宙を跳んでいくとしよう。
捕らえようと触手をのばしたり攻撃してきても【見切って】空中で軌道を変えれば問題ない。出入り口にたどり着いたら、他の猟兵の脱出がスムーズにいくように付近の触手を始末して安全を確保しておこう。なによりこんな気持ちの悪い生き物を外に出すわけにもいかないからな。



 前後左右上下、四方八方をおぞましき触手に取り囲まれた猟兵達。想定外の脅威を前に、彼らは一旦の退却を強いられていた。
「既に人質の脱出は完了しているのだから、長居する理由もない。 捕まらぬうちに、俺たちもとっとと脱出するぞ。」
 そう言って、他の猟兵達に脱出を促すのは、アベル・スカイウインドだ。彼の一言に端を発し、各々の手段による脱出の手はずを整え始める。そんな中。
「乗り込んでおいて、すごすご引き返すのは少々癪ですが……気分の問題で自分を窮地に晒していては間抜けですね。」
 軽い舌打ちを交えながら、シャルロット・クリスティアが忌々しげに呟く。両親が反ヴァンパイアの抵抗運動の一員だった彼女にとって、ここで憎き宿敵の類縁をみすみす見逃すなど、さぞ屈辱かも知れない。だが、それは無事に生還できるならの話。命あっての物種と割り切り、シャルロットは此度の戦略的撤退へと考えを切り替える。
 脱出を試みる猟兵達の第一陣、更にその先陣を切るのは、やはりアベルであった。取り囲む眷属達は勿論、床下からも触手が生え並ぶこの状況において、地上は危険だと判断した彼は。
「まあ、こんな下等生物如きに竜騎士たる俺を捕らえることなど、できはしないがな……飛翔する!」
 それは本来、竜狩りを生業とするアベルが、竜と同じく空を翔けることを目指した結果習得した技術。だが今回、彼が地上に蔓延る触手を避けながら、最速で出入り口へと向かうには最もおあつらえ向きな選択だった。まるで小飛竜のように、中空を軽やかに駆けるアベル。時に床からの触手が、時に眷属から放たれる粘液が彼を捕えようとするも、寸での所でその軌道を変え、紙一重で躱していく。
「さぁ皆、俺に続くんだ!」
 遂に出入り口である玄関の扉に到達すると、アベルは愛槍を構え、周囲の眷属をその矛先で薙ぎ払い始める。他の猟兵達が辿り着いた時に落ち着けるようにするため、何より、万が一にも、この穢らわしい者共が外に流出しないようにするためだ。そして彼に続くように、シャルロットが、落浜・語が進み出る。
「それじゃあ、まずは俺が舞台を整えておくな。」
 語は再び絡繰人形を構え、新たに呼び出した小型人形、そして先程呼び出した時に未だ残っていたものを含め、床の触手の隙間を縫うよう、ころりころりと散り転がっていく。
(それにしても……いや、死体が動く程度の事だったら、予測していたんだが……これは、さすがに予想外だな……)
 その最中、語は磔の遺体を見張らせていた個体をチラリと見遣る。直接は見ていないものの、目の前の眷属の無残な姿、そして人形に付着していた血糊から、何が彼らに起こったのかは大体の推察は出来る。人質を取る戦法と言い、死者を愚弄するような行為といい、全くもって、ここの主という者は。
(本当にまぁ……悪趣味過ぎてヤだね。)
「――さん! 語さん! 巻き込まれないよう、気をつけて下さいね!」
 シャルロットの喚起の声に、語は、はっと一瞬の思慮から現実に引き戻される。見れば、触手達のほぼ中心に転がり出た人形の足元には、シャルロットの魔術によって転写された術式陣。そして彼女は、そこに狙いを定め、特殊な触媒を仕込まれた弾丸を撃ち込む。
「この一発……当たれば痛いじゃ済みませんよ!」
 針に糸を通すかのように、触手達の間を正確無比に、術式目掛け真っ直ぐすり抜けていく弾丸。そして両者が遂に接触したその時、魔術的反応により、破裂するかのような爆炎が、周囲の触手へと襲い掛かる。それは、当然ながらそこに設置された小型人形をも巻き込んでいく。そしてそれを引き金に、連鎖的な爆発を始める人形達。シャルロットの魔術炎を巻き込み、その爆発の威力をさらに高めていく語の小型人形達。やがて、中央のみならず、一帯の触手は爆炎の海へと沈んでいく。
「素となった犠牲者の方を思うと少々心苦しいですが……四の五の言っている場合ではなさそうですしね。」
 炎に飲まれ、苦しんでいるかのような様を見せる眷属に、シャルロットの心は少なくない痛みを感じる。彼らとて元は戦いとは無縁の、唯の人間。それを、このように使い捨ての道具のように利用するなどという非道は、決して許せるものではない。
「この人たちの敵討ちは……そう遠くない後にさせていただきますよ。」
 決意を胸に、シャルロットと語は、炎が舞う中を一気に突っ走る。途中、悶えながらもその触手の先端を向けられる事があるも、それに感付いた語の奏剣の刃が切り裂いていく。
「どこまで通用するか不安はあったけど、力を合わせられれば、何てことは無かったな。 にしても……ホント、気持ち悪いな。 誰も好き好んでこんな場所、居たかねぇよ。」
 一刻も早い脱出という彼の願いは果たして、すぐに新鮮な空気の抱擁とともに叶えられた。走り抜ける勢いのまま、外へと飛び出すシャルロットと語。最後まで脱出口の確保に努めていたアベルもまた、眷属や触手はおろか、館の主すら追いかけてこない事を確認すると、一旦その矛を収め、その場を離れることにするのだった。それにしても。
「フッ、猫を食べようとは、とんだ悪食だな……一体、館の主とは、何者なのだろうな?」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ガーネット・グレイローズ
うう、気持ち悪い敵だな。あの触手はなんとかならんのか。そのうえ数が多い……。ここは手早く片付けるか。
【念動武闘法】でクロスグレイブを複製、〈念動力〉で操りながら、死角からの射撃で仕留める! また、念動力で自身の体を身軽にして、〈残像〉と〈ジャンプ〉で動き回って相手を翻弄し、的を絞らせないようにも工夫するぞ。
触手による攻撃は、〈第六感〉で見切ってかわし、そのうえで鋼糸を伸ばし〈クイックドロウ〉による〈カウンター〉で素早く迎撃だ。
『館の主とやら、勿体ぶらずに早く出てきたらどうだ? こちらは任務でわざわざ出向いてきたのだ。退屈な晩餐に付き合う気も、ましてや食材になるつもりもさらさら無いぞ!』


リグ・アシュリーズ
悟郎(f19225)さんと共闘

前方の敵と戦い、撤退を支援します。
ここじゃスペース不十分、もっと広い場所で迎え撃つわよ!

「後ろは任せた!」
悟郎さんに背中を預けて出口方向の敵と戦い、退路を作ります。
倒しきる事には固執せず、黒剣で触手を斬り飛ばしたりして
逃げる間の無力化を図るわ。
道を塞ぐ敵は十字架部分に剣をあてて吹き飛ばしたり、
押し倒して時間稼ぐなど柔軟に対応。

床下の敵も含め、あまりに妨害が多いなら奥の手。
無数に潜んでるなら、いっそ隠れられなくしてあげる!
床板に黒剣を叩きつけ、宙に打ち上げた板を
回転斬りで更に砕いて鋭い木片を飛ばすわ。
『砂礫の雨』あらため棘の雨(スプリンター・レイン)、食らいなさい!


薬師神・悟郎
リグ(f10093)と共闘

俺は運が良かった
彼女と一緒に戦えるのは心強い

リグを信頼し任せると、俺は後方からの追撃を防ぐ
互いの邪魔にならない立ち回りを心掛け、速やかに行動

UCで自己強化、弓で攻撃可能な範囲に敵が侵入すれば先制攻撃、マヒ攻撃、範囲攻撃
胴体等命中率の高い部位を狙い、吹き飛ばしで退ける
倒し損ねても、撤退時の逃走経路を確保できていれば館からの脱出を優先

奇襲には聞き耳、第六感、野生の勘で備え、先制攻撃、早業で迎え撃つ
妨害が多く対処しきれない場合、他猟兵の脱出の邪魔にならない程度に壁や家具、天井の破壊(地形の利用、破壊工作)で敵の足止め狙い
但し周辺物を壊して足止めする場合は事前に一声かけてから



「あれ……もしかして、悟郎さん?」
 第一陣が脱出を完了させ、いよいよ第二陣の番という時、リグ・アシュリーズは共に行く者の中に、薬師神・悟郎の姿を見る。
「リグ、お前も来ていたのか……どうやら、俺は運が良いみたいだな。」
 実は知己の仲であったこの二人。先程は同じ場で戦う事はなかったが、今度は共に並び立つ事が出来る。このような危機的状況に置いて、それは、実に心強いだろう。
「それじゃあ悟郎さん、前衛は私に任されてもらおうかな? その代わり……。」
「あぁ、後ろは任された。」
 そうして互いの役割を分担していく中、声を掛ける者がいた。
「では、私は遊撃に回ろうか。」
 第二陣の一人、ガーネット・グレイローズが、緋色の髪を揺らしながら歩み寄る。異を唱えるでもなく、彼女の提案を快く受ける二人。そして三人は、触手の包囲網を突破するべく、触手の群れの中へと突撃をかける。
「さぁ、そこをどいてもらうよ!」
 宣告通り、先陣を切るのはリグだ。武骨だが巨大な黒剣を振りかざし、前に立ち塞がる触手を叩き飛ばすかのように斬り飛ばしていくも、決して深追いはしない。目的はあくまで脱出。必要もなく倒し切るのに拘らず、無力化さえできればそれで充分なのである。時には、触手の波を掻い潜って、眷属が汚らわしい触腕を飛ばそうとするも。
「ここ……だぁ!」
 磔にされている十字架の中心部分――重心のど真ん中に切っ先を的確に狙い当て、押し倒すようにそのバランスを崩すなどあくまで時間を稼ぐことに努めていた。
「さて……この矢の餌食になりたい奴はいるか?」
 一方、後方を担当していた悟郎は、その血に眠る力を解放した証である瞳を煌々と紅く輝かせながら、夜の黒に染まった弓――【影縫】を構えていた。前進を続ける彼らに追いすがるよう触手が襲い掛かれば、麻痺矢の雨で押し留め、稀に触手の影から眷属が汚腕を差し向ければ、研ぎ澄まされた感覚に取る先読みから狙いやすい胴体を撃ち抜き、その躰を遥か後方に吹き飛ばしていく。
「それにしても……うぅ、気持ち悪い敵だな。 あの触手はなんとかならんのか。 そのうえ数が多い……ここは手早く片付けるか。」
 そして遊撃を担当していたガーネットは、目の前でウゴウゴと蠢く触手達への嫌悪感を隠しきれない中、彼女は自身が生み出した秘術を展開する。
「さぁ……神殺しの力の一端をお見せしよう。」
 十字架型の携行ビーム砲塔――クロスグレイブが一瞬光に包まれたかと思うと、そこには、40を超える程の分身が、ガーネットの念動力に支えられながら宙に浮いていた。瞬間、十字架達は戦場を飛び交い、側面や背後から襲いかかろうとする敵達の死角へと回り込み、その先端から放たれる紅線で次々と撃ち落していく。
時に、十字架の包囲網を突破した触手が襲い掛かるも。
「残念だが、そんな攻撃では私には当たらないよ。」
 自らも念動力で浮かす事による、予測不可能な立体的機動ですれ違いざまに躱したかと思うと、突如、触手達は不意に細切れの肉片へと変貌を遂げる。スラッシュストリング――糸のように細く、刃のように鋭い、ガーネットのブレードワイヤーによるものだ。三者のコンビネーションにより、確実にその歩みを進めていた三人。だが、最後の供物だけは絶対に逃さないという気迫の表れか、その追撃はなおも切れる気配がないほど執拗極まりない。
「仕方ない……二人とも、頭上に気をつけろ!」
 そう悟郎が声を上げると、その強弓を天井に向け、渾身の一矢を放つ。すると、砕かれた天井の一部が瓦礫の雨となり、彼らを取り囲む者達に降り注ぐ。無数の質量弾に、怯まざるを得ない触手と眷属達。そしてその隙を、リグは見逃さなかった。
「無数に潜んでるなら、いっそ隠れられなくしてあげる!」
 床板に渾身の力を込めて黒剣を振るうリグ。その反動で宙に浮いた材木を、即座に今度は独楽の如く黒剣を振り回す事で、木の礫へと細かく磨り潰し、その勢いのまま、周囲へと振りまいていく。
「『砂礫の雨』改め、棘の雨(スプリンター・レイン)、食らいなさい!」
 瓦礫、棘の雨、そして追い打ちで放たれる紅線。絶え間なく打たれる数々に、さしもの触手や眷属も、その動きを大きく抑えられてしまう。そしてその気を逃さず、三人は一気に大扉を潜り抜け、遂に脱出を成し遂げるのだった。
 唐突な脱出劇の果て、息を上げる猟兵達。そんな中、ガーネットはおぞましきものしかいなくなった『貪血館』に向かい、思いの丈をぶつける。
「館の主とやら、勿体ぶらずに早く出てきたらどうだ?  こちらは任務でわざわざ出向いてきたのだ。 退屈な晩餐に付き合う気も、ましてや食材になるつもりもさらさら無いぞ!」
 一拍の静寂の後、響き渡るくぐもった低音。いや、これは。
『……ハハ、ハハハ、フゥハァハハハハァーー!!』
 笑い声だ。屋敷の奥底から、主と思しき笑い声が響いていたのだ。
「何だ!? 一体どこが可笑しいっていうんだ!」
『ハハハ……ハァ……フゥ、これは失敬。 だが、そうか。 やはり貴様らは、まだ気づいていなかったのだな。』
 呼吸を整え、改めて威厳を感じさせる声を出す『貪血館』の主。
『姿を見せろだと? 笑わせてくれる――我は、最初から、貴様らの前にいたというのに。』
 瞬間、屋敷の建つ小高い丘が鳴動を始める。大地が大きく揺れ、大きな地響きが辺りを襲う中、猟兵達の目の前で、信じられない光景が広がっていた。
 『貪血館』が、そびえる程巨大な屋敷が、その巨体を大地から浮かせ始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『悪食の断片』

POW   :    闇の帳
全身を【猟兵の視覚と嗅覚を遮る特殊な濃霧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を回復させ、自身の食欲】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    膨張する体躯
【底なき食欲と飢え】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    刻喰らい
予め【周囲の者の年齢を一時的に半減し、吸収する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:クロジ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・龍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 遂に『貪血館』の魔の手から逃れ、脱出に成功した猟兵達。だが、そんな彼らは、信じられない出来事が繰り広げられていた。
 大地が、大気が震え揺れる中、『貪血館』がその礎を大地から引き剥がし、宙に浮いていたのだ。
 それだけではない。底からは甲殻類を思わせる節足が屋敷を支え、壁面からは巨大な鋏が、猟兵達を捕えようとするが如く突き出されていた。
 そう、『貪血館』には主など最初から存在しない――『貪血館』そのものが、主たるオブリビオンだったのだ。
 そしてその玄関口から、亡者から作られた眷属が溢れだそうとするも、扉は勢いよく閉じられ。
 ――ブチッ。ブチチィ。 ――ゴキッ。ゴリッ。 ――ズルッ。ジュルッ。
 肉の裂ける音。骨が砕かれる音。滴る血が啜られる音。扉の奥で奏でられる、咀嚼音の合奏。そして一際大きな嚥下音の後、もう聞き慣れてしまった、低く唸るような声が周囲に響く。
『フム……やはり、腐りかけの肉は美味からはほど遠いな。 何より食感が悪い。 あぁ、やはり肉は新鮮なものに限る。』
 そして、猟兵達にその巨鋏を向け。
『さぁ猟兵達よ! 未知なる美味、極上の美味を、我に味あわわせよ!』
 彼らを捕えようと、遂に『貪血館』の主が直接襲いかかろうとしていた。自らを護る為、何より、このような卑劣な外道を倒す為、猟兵達は、この巨大な敵に敢然と立ち向かうのだった。
リグ・アシュリーズ
悟郎さん(f19225)や近くの方と共闘。
正直予想外だけど、これで正面から心置きなく殴れるわね!

絡め手がない分、私の役目は斬って斬って機動力を削ぐこと!
黒剣に眠る【生命力吸収】の力を呼び覚まして足元へ駆け寄り、
剣を大胆に振り回して脚へ【部位破壊】を見舞うわ。
硬い箇所は悟郎さんとせーので合わせ、連携攻撃。
姿勢が落ちてきたら「足場をどうも!」とジャンプ、
【部位破壊】狙いで鋏の根元へ剣を振り下ろします。

感覚を封じる闇の帳には【聞き耳】の聴覚補助に加え、切り札を。
さっきと桁違いの強さで黒風を纏い、霧を吹き飛ばして斬りかかるわ。
癒えたそばから傷だらけにしてあげる。
骸の海に帰っても、しばらくご飯抜きよ!


薬師神・悟郎
リグ(f10093)と共闘

弓での援護射撃、2回攻撃、範囲攻撃で援護射撃、リグに向かう敵の攻撃を散らし、出来るだけ彼女と同じ部位を狙っていこう
毒使い、マヒ攻撃、破魔、呪殺弾、属性攻撃…さて、こいつにはどれが効くやら

脚や鋏等、剥き出しになった部位に状態異常を狙った攻撃を行う
視力、暗視、第六感、野生の勘で状態異常の効果の有無を判断
有効なものがあれば積極的にそれを使い攻撃

リグから声での合図があれば、同じ部位を狙い連携、同時攻撃
見切り、怪力、傷口をえぐる、スナイパーで強力な一撃を叩き込み部位破壊

戦闘中、UCの成功率が高い状況を見切り
最適なタイミングを見極め、早業、UC発動
最低でも2つの拘束は狙っていく



「正直、予想外だったよ……。」
 目の前にそびえる巨大な屋敷を前に、リグ・アシュリーズは驚嘆を隠せなかった。否、それは屋敷ではない。その姿を偽装していた、巨大なオブリビオンだったのだ。複数の甲殻脚を蠢かせ、巨鋏を鳴らすその威容に一時圧倒されるも。
「だけど、これで正面から心置きなく殴れるわね!」
 ようやくご対面できた今件の首魁。それもこれ程の巨体ともあれば、彼女の大振りでパワフルな戦い方が十分に発揮できるとくる。リグは、意気揚々と黒鉄の巨剣を構える。
「リグ、タイミングは任せるぞ。」
「えぇ、悟郎さん。 それじゃあそれまで、援護を頼むね!」
 リグは此度の相棒である薬師神・悟郎に背中を預け、脇目を振らずに『貪血館』の足元目掛け駆け寄る。当然、敵もみすみす見過ごすような真似はしない。
『ほう、これは中々に肉が引き締まっていそうである。 だが、そのような単調な動きで我に向かおうなど!』
「させるか!」
 軌道を読み、『貪血館』はその行き先目掛け巨鋏を振り下そうとするも、悟郎の矢の雨により矛先が僅かに逸れ、リグを捕え損ねる。そして援護の甲斐あり、リグは『貪血館』を支える長大な足の一本へと辿り着く。太さといい高さといい、並みの家であれば大黒柱と言われてもおかしくない程の巨躯であるが、それに臆することなく、リグは果敢に黒剣を振り下ろす。一撃、二撃と、大きく振りかぶった渾身の打撃を見舞うリグ。強固な装甲の前に、当初は幾度も跳ね返されてしまうも、同じ個所を的確狙う繊細かつ大胆なその連撃の前に、最初は傷一つなかったその表皮に、次第に亀裂が奔っていく。
「悟郎さん、今だよ!」
「あぁ、任せろ!」
 そして遂に、リグの回転を加えた重撃と、悟郎の強弓から放たれる狙いすました一射がドンピシャなタイミングで重なり、『貪血館』は己が巨体を支える一柱が砕け、『貪血館』はそこから次第に崩れ落ちていく。
『ぬわぅ!? おのれ、たかが畜生風情がぁ! 大人しく我に喰われればよいものを!』
 湧き上がる憤怒を食欲へと昇華させ、さらに力へと変換させようと目論む『貪血館』。だが、気付けばいつの間にか残った足の数々に、多種多様な拘束具が現れ、彼を縛り付けようと絡み付いていく。『貪血館』は拘束から逃れようと、複脚を揺らそうとするも。
『な!? 力が、入らぬ、だと……!?』
「ふむ……どれが効いたかは分からないが、ともかく、ようやく効いてきたようだな。」
 思うように体が動かせず、困惑する『貪血館』。それは、悟郎の先の一斉射に紛れこませた、関節を狙った複数の矢によるものだった。毒、麻痺、破魔、呪い、各種属性……さまざまな要素を織り込んだ、弱体のための魔矢。そこへ、先程のリグの連撃によって、じわりじわりと生命力が吸収されていたとあっては、到底耐えられるものではないだろう。それらが相互に絡み合い、巨脚を鈍らせることで、遂に拘束具が足全体に行き渡り、『貪血館』は自己強化のための一手が封じられてしまう。
「これで届きやすくなったよ! 足場をどうも!」
 拘束具によって無理矢理に地に伏せられる『貪血館』。巨鋏の位置が下がり、戒められた殻脚によって道が出来たこの好機を逃すまいと、リグは健脚を駆り、遥か上空へと跳ね上がっていく。
『ぬがぁ! これ以上、貴様らに勝手などさせてなるものかぁ!』
 逆転の一手に、『貪血館』は窓という窓から、もうもうと黒い濃霧を噴出する。やがて濃霧は『貪血館』を、リグをも巻き込み、包み込んでいく。これで僅かながら、己の傷を癒せる。感覚を封じられ、満足に動けないヤツを捕えた暁には、どう調理してくれようか……だが、その妄想は早々に打ち切られる事になる。
「まだまだ、こんなものじゃないんだから!」
 リグの咆哮と共に、彼女を覆っていた黒い霧が吹き飛ぶ。そしてそこに残るのは、より暗き風によって作られた、漆黒の鎧。周囲を真空の刃が舞うその姿は、まさに刃の嵐を纏っていると言っていい程の威容であった。そしてリグは落下の勢いそのまま、巨鋏の根元目掛け、渾身の一撃を振り下ろす。
『アァアァアァァァ! 止めぬか、止めろと命じているのだぁ!』
 巨塊剣の重い一撃に加え、風の刃がそこへ追い討ちをかけるかのように、同じ箇所へと切り刻んでいく。それは、濃霧の癒しを超える程の威力。やがて嵐が過ぎ去ったその跡には、各部を執拗に攻められ、満足に動く事も能わなくなった巨大な屋敷が残る事となった。
「骸の海に帰っても、しばらくご飯抜きよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アベル・スカイウインド
フッ、なるほどな……危うく食われるところだったわけだ。だが同時にお前は千載一遇の勝機を逃した。

しかしさすがにデカいな。ヤドカリ相手には使いたくなかったがやるしかないか。
UC【竜眼】を使う。代償はあるが強大な敵に立ち向かうに十分な力を授けてくれる。

狙うのはギラリと光るあの眼だ。やつがどんなに巨大で堅固であろうとも、眼が弱点なのは生き物であれば例外はない。
【力を溜め】た【ジャンプ】でやつの眼に放たれた矢の如くひとっ飛びし、【鎧無視攻撃】の特性を乗せた槍の一撃を見舞ってやる。
この距離まで接近すれば、その無駄にデカい図体が逆に仇となるだろう。小さな俺を捕まえるのは苦労するぞ?フッ、穴だらけにしてやる。


落浜・語
あーなるほど?こう言う……
まぁ、なんだっていいんだが。やることは変わらないわけだし。

意識向けさせるのは簡単だろうし、『白雪姫の贈り物』を使用。
「そんなに食いたきゃ、捕まえてみろよ。できるならな」【挑発】
反応したならこっちのもの。焼けた靴履いて踊ってもらいましょ。
足の数が多いから、大変そうだな。踏み潰されないように気を付ける。周りにも注意喚起を。
最悪俺はヤドリガミなんで?多少食われてもなんとかならぁな。食われたかないけど。

こちらへ来る攻撃は、奏剣でもって対応。



「あー……なるほど? こう言う……。」
 猟兵達と『貪血館』の戦いが続く中、落浜・語は未だ、言葉に詰まる状況が続いていた。無理もない。巨大な館そのものが、意志を持ったオブリビオンであるなど、誰が想像できるだろうか。個々人で差はあるだろうが、少なくない衝撃を受けるのも当然である。
「……まぁ、なんだっていいんだが。 やることは変わらないわけだし。」
 自身は猟兵である。目の前にオブリビオンがいる。ならば、後はそれを打ち倒すだけだ。敵が等身大か、巨大であるかしか、そこに違いはない。ならば、己がやる事はただ一つ。語はその手に奏剣を携え、なおも健在な巨躯へと向き直る。
「それにしても……フッ、なるほどな。 危うく食われるところだったわけだ。」
 一方で、アベル・スカイウインドは少なからず安堵を感じていた。皆と共に無事脱出できたからよいものの、もし万が一、あの場に残って戦い続けるという選択をしていたら、或いは脱出に失敗していたら……全身の猫毛が逆立つような思いである。
「だが……同時にお前は千載一遇の勝機を逃した。 お前のその命、貰い受ける!」
 そう高らかに宣誓すると、アベルは懐から、手のひらに収まるほどの何かを取り出す。それは、彼の一族に代々受け継がれてきた秘宝、『竜の眼』。まるで竜の目玉を思わせるようなそれは、見た物を惹き付ける美しさと共に、何処か禍々しい魔性を感じさせていた。
(しかし……さすがにデカいな。 ヤドカリ相手なんぞにはこれを使いたくはなかったが……使わざるを得ない、か。)
 宝玉を握りしめる肉球に力を込めるアベル。すると、『竜の眼』から禍々しい魔力が彼の体内へと流れ込み始める。呪いの縛りを受け、僅かながら苦痛の声を上げるアベル。僅かでも気を抜けば呑まれかねない魔の力を、強じんな精神力で制する中、彼はなおもその力を取り込み続けていた。
「まだだ……アレを倒す為には、少しでも多く、魔力を溜めなければ……。」
「なるほど……なら、時間稼ぎは任せてもらおうかな。」
 そう言うと、アベルを庇うかのような立ち位置に、語が進み出る。敵は存外、思慮が浅い所がある。ならば、意識をこちらに向け、目を惹き付けるのは簡単だ。
「おい、図体だけのデカブツ! そんなに俺を食いたきゃ、捕まえてみろよ! ただし、お前見たなウスノロに出来るならな!」
 冷静な判断が出来るものならば、到底今の様な挑発には乗らないだろう。だが、生来の浅はかさに加え、既に手足をズタボロにされ、満たされぬ食欲に苛立ちを覚えつつある状態の敵にとって、それは無視できるものではなかった。
『! 食べ応えのなさそうな、人形が何を言うかぁ!』
(食われたかないし、多少食われてもなんとかならぁとは思うが……お気に召さない様で何より。それよりも。)
 そう、彼は思わず答えてしまった。語の思惑通りに。
「こっちを見たか? 答えたな? じゃあ、そのまま炎上して、上手に踊ってくれ。 死ぬまで、な。」
 瞬間、『貪血館』の節足の先端に、それに合わせた歪で巨大な鉄の靴がはめられ、赤くなるほどまでに一斉に発熱し始める。
『ガァアァアァ! 熱い、何だこれは、熱いィィィ!!!』
 それはまるで、無恰好なタップダンスのように。『貪血館』は、僅かながら動ける範囲の中、もがき苦しみ、ジタバタと足を揺らす。一応こちらとの距離はあるが、語は念のための注意をアベルに呼びかけようとするも。
「フッ……心配には及ばない。 こちらの準備は既に完了している。」
 見れば、そこには魔力に満ち溢れ、愛槍を構えるアベルの姿があった。未だ冷や汗が止まらぬ中、彼はただ一点だけを見据えていた。玄関屋根の直上でギラリと小さく光る、『貪血館』の眼だ。例え巨大な屋敷だろうと、そこに生物的要素があるならば、大抵の生物の弱点である目を狙うのは自明の理である。
「さぁ……翔けるぞ!」
 気付けば、彼が立っていた所には土埃しか残っていなかった。貯めた力を解き放ち、跳躍する事で一気に距離を詰めるアベル。それはまるで、天翔ける閃矢の如く。『貪血館』が感付く頃には、既にその右目にはアベルの槍が深々と突き立てられていた。
『グァ、ガ、アァ、アァァァァ……!』
 手早く槍を引き抜き、舞い跳ねるアベルを叩き落そうと、懸命に巨鋏を振るう『貪血館』。だが、体高50cmにも満たない小さな体躯など、その巨躯ではそう容易く捕えられはしない。
「フッ、穴だらけにしてやる。」
 そして最後の仕上げとばかり、『貪血館』はアベルの愛槍により所々を穿たれ、その見た目を更にみすぼらしく変貌させるのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ガーネット・グレイローズ
これは……驚いたな。まさか、館自体が巨大なオブリビオンだったとは!
どおりで、主人が姿を見せないわけだ。そんなに喰らいたいならば、
存分に味わわせてやろうじゃないか。わが神殺しの力、ユーベルコードを!

【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動させ、小型の戦闘用
スペースシップ45機をもって『貪血館』を包囲。<操縦><戦闘知識>で
それらに指示を与えて、全方位から一斉に砲撃開始!
複数機でコンビネーションをかけて、タイミングをずらしながら
時間差攻撃をかけたり、特攻と見せかけての反転でフェイントを
かけるなどしてガードを揺さぶり、隙をついてドッキングさせて
パワーアップした機体からミサイルを撃ち込んでやる!


緋縅・善蔵
ヤドカリかよ。
まぁ 真っ先に8機を〔支援要請〕。
【迷彩】を使いつつ、僚機と共に武器の有効射程距離に入ったら【スナイパー】【全力魔法】【鎧無視攻撃】を付けたリニアガンやプラズマライフルと〔ミサイルカーニバル〕の【一斉発射】で敵の脚部を狙い、破壊する。
狙撃時が常に場所を移動。
効果を疑問視したり敵の範囲攻撃が届く場合は【オーラ防御】と【力溜め】で守りを底上げ。
【盾受け】や【第六感】や【カウンター】で敵攻撃を往なしつつ、屠龍を使った〔斬鐡〕や〔破壊絢〕で攻撃。
【属性攻撃】【マヒ攻撃】を使って生きた家を破壊する。
【戦闘知識】に含まれるか微妙だが、建造物は梁や柱を断てば致命的な筈。
アドリブOK。



『何故だ……何故、お前達は我の晩餐とならぬ! 何故、我は未だ空腹に満ち満ちている!』
 猟兵達との激戦を幾度となく繰り広げ、廃墟一歩手前とも言える惨状になりつつある『貪血館』。これまで、彼はありとあらゆるもの、食したいと思うものはすべて平らげてきた。なのに、なぜ今回はこうも上手くいかないのか。極限までに高まりつつある空腹と苛立ちの中、彼は焦燥感を隠しきれなかった。そんな彼の耳に、一つの微かな声が聞こえる。ガーネット・グレイローズが、密やかに笑っていた。
『貴様、一体どこが可笑しい!』
「いや、これは失敬。 だけど、そうか。 やっぱりお前、まだ気づいていないんだろ。」
 先程とは打って変わり、まるで立場が逆の会話。巨大な館への余裕ある笑みを保ちながら、だが、ガーネットの胸中は未だ驚愕が冷めなかった。まさか、館自体が巨大なオブリビオンだったとは、流石に考えてもみなかった。想像したような主人が姿を見せないのも、道理である。穏やかなようで、緊張に満ちた両者の間。それを破ったのは、このダークセイヴァー世界に似つかわしくないような、近代兵器群の嵐だった。何処からともなく撃ち放たれる、超電磁砲、荷電粒子砲、そしてミサイルの雨あられ。姿なき砲手達によって放たれた光線と火線は、高熱に侵され辛うじて立ち上がるだけの力しか残っていなかった『貪血館』の脚へと降り注ぎ、一切を粉々に粉砕していく。突然の損脚に声ならぬ絶叫を『貪血館』が上げる中、ガーネットの耳に、背後からの声が伝わる。
「こちらカラミティ! この戦いの支援に来た!」
 コードネーム=カラミティこと、緋縅・善蔵だ。彼は勝利まであと一押しというこの戦場に、救援に来てくれたのだ。龍鱗から作られた機械鎧に身を包み、迷彩を施された同型の無人機が牽制に回る中、彼は律儀に声を掛けてきた。そんな彼の突然の声掛けに驚く間もなく、ガーネットは咄嗟の提案を善蔵に告げる。
「一つ、作戦がある。 頼めるか?」
「あぁ、構わないとも!」
 しばしの会話の末、ついに動き出す二人。先に大きな動きを見せるのは、ガーネットだ。
「館の主よ! そんなに喰らいたいならば、存分に味わわせてやろうじゃないか。 わが神殺しの力、ユーベルコードを!」
 そう彼女が宣誓を述べると、背後に『貪血館』と同等か、それ以上に巨大な転移ゲートが開かれる。
「勇敢なる騎士たちよ、今ここに集え!」
 その門をくぐり現れるのは、小型の戦闘用スペースシップ、その数45機。そしてガーネットは呼び出した戦闘機達に遠隔で指示を飛ばし、館を全方角から包囲する。無人歩兵達をようやく蹴散らし、一時の憂さを晴らす『貪血館』。だが気付けば、周りを新たなる脅威が取り囲んでいた。
「全砲門、一斉射! 撃てぇ!」
 そしてガーネットが腕を振り下すと同時、戦闘機に搭載されていた全火器が同時に火を噴く。ビーム、ミサイル、機関銃。これまた近代的な兵器による攻撃が、古洋式の館へと打ち込まれる。当然、それをみすみす受けっぱなしになるようなオブリビオンではない。極限にまで高まった食欲と飢餓。それらを糧に肥大化した巨鋏で戦闘機を叩き落とそうとするも、ある時は複数機の連携の間に合わせられず時間差をつけられた攻撃に翻弄され、またある時は捨て身の体当たりかと思われた攻撃を防ごうとするも急反転で戻るという一芝居ゆえに無駄に終わるなど、ガーネットの巧みな指揮に良いように踊らされていた。そして巨館が空回りする中、その間を縫うように、善蔵が地を滑っていた。
(……ていうかこれ、どう見ても……やっぱり、ヤドカリだよなぁ……。)
 破壊された巨脚や巨鋏を見遣りながらそのような思いが胸中を奔るも、善蔵は防御障壁を張りながら、偶に流れてくる攻撃に巻き込まれぬよういなしつつ、距離を詰めていく。やがてその巨体をも駆け上り、割られた窓から侵入した彼の目の前にあるのは、この館の主要な柱や梁達。一般的な家屋ならば、これらを断てば致命的なはず。その推察の元、彼は鉄塊剣と拳を構え。
「千技一刀の下に斬り捨て、打ち破る! 破ッ!」
 万感の思いを込め、打ち込まれる斬撃と炎拳。その絶え間ない近接攻撃のラッシュに、支材達にひびが走り、やがて砕け散っていく。すると、にわかに天井や壁が轟音を上げ、崩落を始める。やはり善蔵の読み通り、あれらはこの館の要たる存在だったのだ。作戦の成功を確認し、静かな喜びに満ちながら、善蔵は急ぎ、脆くなった壁を打ち砕きながらその場から緊急離脱をする。
「さぁ、俺の仕事は終わった。 後は頼んだ!」
 一方、訳も分からず、気付けば己の体が崩れ落ちている事に、いや、これまでの諸々全てに対し、『貪血館』は怨嗟の咆哮をする。
『何故だ……何故だ何故だ何故だ、何故ダァ! 我こそは悪食の断片! 全てを喰らい尽くす、圧倒的強者のはずなのだァ!』
「そういえば……まだ、さっきの質問に答えてなかったな。」
 かつての荘厳さは失せ、無様な姿を晒す『貪血館』を、ガーネットは冷めた目で見ながら、上空で戦闘機達を、一つの姿へと結合させていく。
「答えは簡単だ……お前は、私達猟兵を、舐めすぎたんだよ。」
 やがて、戦闘機達は一体の巨大戦闘要塞へと変貌を遂げると、その下部に巨大なミサイルを生成する。
「それじゃあな。 これがお前の、最後の晩餐だ。」
 そして放たれる、最後の一撃。ミサイルの命中と共に、『貪血館』は天まで届くほどの火柱と、大地を覆う爆炎に飲まれ、その意識を骸の海へと還していく。
『まだ、だ。 我は……まだ、喰い、足り、ぬ……』
 塵一つ残さず、この世界に存在した痕跡すら消し去られた『貪血館』。こうして、悪逆な主賓によって開かれた最後の晩餐は、遂に幕を閉じた。今や館も、その主も失ったその小高い丘では以後、残虐な逸話は語られなくなったそうだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年07月22日
宿敵 『悪食の断片』 を撃破!


挿絵イラスト