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亡国の羅刹姫

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 呼吸の度に胸が軋む。肋骨が折れているのだろう。
 身体中が熱い。流れ出る血故に。
 意志に反して脚が前に出ない。もはやそれだけの力も残っていない。
 けれど。
 それでも息を吸い、痛みを抑え込み、脚を引き摺ってでも前に進もう。
 まだここに、命は残っているのだから。

「予兆を見たから集まってくれるかい?」
 そう言って猟兵たちは集められた。指定された場所に行ってみると呼び集めた張本人がうとうとしている。彼女は一瞬で眠れるタイプらしい。好奇と呆れの目線を集めて、彼女は目を覚ました。透音・アリア(逢魔刻の独唱曲・f00078)が彼女の名だ。
「……あー。テレポート先で悪そうなやつを倒してくれ、以上」
 非難の視線。それに気圧されたわけでもないようだが、言い直す。
「場所はサムライエンパイアのとある国。いや、まあもうその国は滅びてるんだけど」
 さらりと言うが重い言葉だ。
「残念ながら間に合うのは、滅ぼしたオブリビオンが次へ向かうタイミングだ。その軍団と戦うことになる。」
 しかし、と区切って続ける。
「ただちょっと面倒なのは、その頭領が不死だってことだ。死なないヤツは倒せないよね」
 愉しそうに笑うが、猟兵たちにとっては笑い事ではない。
「勿論、死地に無駄死にさせるために送り込むわけじゃないよ。まずやってもらうことは、その不死を打ち破る方法を知る唯一の生き残り。羅刹のお姫様を探し出して確保することだ。彼女はその部下たちから逃げている最中だ。護衛や取り巻きはもういない。彼女自身も傷ついて、おそらくは長くは逃げていられないだろう。先に見つけられずに彼女が死んだ場合は、さっさと逃げてきてくれ。君たちを無駄死にさせるのは私も本意ではない。首尾よく確保できたとして、次は追手との戦闘になるだろう。その間に意識を取り戻させて打倒方法を聞き出さないといけない。最後はいよいよ決戦……と、まあそこまで上手くいけばいいのだけど」
 声色からは感情は読み取れない。笑っているようにも悲しそうにも見える表情で彼女は言う。
「どうか、御武運を」


豊葦原中津国
 はじめまして、豊葦原中津国(とよあしはらなかつのくに)と申します。この度初のシナリオを出させて頂きました。御用とお急ぎでない方、よろしければ参加してみて下さいませ。

 第一章は探索、第二章は足手まといを守りながらの戦い、第三章は決戦となる予定です。
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第1章 冒険 『落ち延びて』

POW   :    逃げている辺りを片っ端から走り回って探す

SPD   :    追手を撃退して時間を稼ぐ

WIZ   :    地図と地形を見合わせて逃げ込みそうな場所を割り出す

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リンタロウ・ホネハミ
お姫様を助けて悪い奴を倒せっすか、まるで騎士道物語っすねぇ
ま、任せてくださいっす!
オレっち、これでも負け戦で逃げることは慣れっこっすからね!
……や、やめるっすよ、騎士っぽくねぇとか!

さて、まずはこの国の地図を見るっすね
まあ順当に敵が攻めてきたのと逆の方向にまずは逃げるっすよね
んで傷が深い上に歩きってんなら急な斜面……山を行くのは避けるはずっす
さらに敵に見つかりやすい見晴らしの良い平野も避けそうっすね
そんでお姫様も助かる為に動いてるんすから、隣国のお偉いさんに助けを求めるってのが自然じゃねぇっすか?
つまり、お姫様が逃げる方向にある隣国までの森や林を張ってりゃいいってことっすね!

アドリブ大歓迎


紬雁・紅葉
事は急を要します。力も技も惜しみなく…

平たい場所、見晴らしの良い場所、監視の行き届いている場所は避ける筈…
また手負いなれば、行脚に消耗する起伏の激しい地形も避ける…
谷川沿い、平地森林、建物の陰…人目を忍び易く、また行くに易い場所を重点的に

ある程度見当をつけて御先神を放ち、姫の痕跡を探す

(落ち着け…浮足立てばそれこそ業邪の思うつぼ)
焦りを自覚しつつ、だからこそ粘り強くあれ…と自分を戒めながら
場所を絞り込み丁寧に捜索する

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


祝聖嬢・ティファーナ
お友達の紅葉(f03588)からお呼ばれしたので『治癒』と『支援』の為に来ました☆
参加して『お姫様』の治療と施術を試みます♪ フェアリーなので飛んで治療できる範囲は精一杯頑張ります☆

単独や乱戦になったら、お姫様に触れて『クリスタライズ』で攻撃を避けてみます♪
「大丈夫ですか?今、治療しますからね☆どこか特に痛い場所はありますか?」と聞いてみますが状況によっては小声で耳元で聞いてみます☆

あとは周りの皆様と紅葉さんと話しながらできる限り対応してみます☆


天花・雪兎
WIZ
怪我をしてるんだね!大変だ!
早く羅刹のお姫様を探さなくちゃ!

地図と地形をにらめっこ
お姫様は追っ手を撒く為に、あえて人が通るような道じゃないところを通っていないかな?
でも、そういう場所なら痕跡が残るはずだし、逆に避けるかなぁ…?

こういう人探しに経験のある仲間の猟兵がいれば、意見をすり合わせよう
その知識と経験を、ぼくは頼りにしてるよ!
ぼくも素人なりに気付いた点があれば積極的に意見するからね!

隠れるのに適した洞穴や建物とか、意見の中に気になる情報があれば地図にどんどん印をつける
お姫様の性格や怪我の状態も考慮にいれて、範囲を絞っていこう
早く見つけてあげられるといいな…



もはや声の代わりに出るのは血塊のみ。
 あれほど熱かった身体も冷たくなっていく。
 目を閉じて倒れこんでしまえば楽になれるのだろう。
 ただ、それを選ぶには彼女の心に託された灯火は熱を持ち過ぎていた。
 その火を絶やさぬだけの強さがあった。あってしまった。

●三人寄れば文殊の知恵
 凡人でも三人集まって相談すれば、すばらしい知恵が出るものだということ。

 今回の場合はこの例えは正確ではないだろう。集っているのは凡夫ならぬ猟兵たちなのだから。とはいえ、協力すれば力は増すものだ。
「ま、任せてくださいっす! オレっち、これでも負け戦で逃げることは慣れっこっすからね! 」
 と、少々騎士っぽくないと気にしながらもリンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)が言う。応えるのは天花・雪兎(雪の子供・f02304)だ。
「ぼくは素人だから、経験者の言葉は頼りにするよ! 」
 純真な紫の瞳で見つめられれば、やる気も出るというもの。この場合、純真な子供の期待を込めた視線なのが重要なので、実は雪兎が男の子なのは問題ではない……はずだ。
「まず、順当に敵が攻めてきたのと逆の方向に逃げるっすよね」
 と、リンタロウが地図の上に矢印を引けば。
「また手負いなれば、行脚に消耗する起伏の激しい地形も避ける……」
「それに、見晴らしのいい平原も行かないよね☆」
 言いながら紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)と、その紅葉が支援要員として呼んだ祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)が、地図に×マークを書き込む。羅刹とフェアリーのちょっと人目を惹く容姿のコンビだ。ティファ―ナが小柄ながら器用に抱く様にしてペンを使う様は、何となく目で追ってしまう可愛らしさがある。
「お姫様は追っ手を撒く為に、あえて人が通るような道じゃないところを通っていないかな? でも、そういう場所なら痕跡が残るはずだし、逆に避けるかなぁ……? 」
 雪兎が自信なさげにだが、意見を出すと
「確かに街道は避けて有利な土地勘を生かして抜けそうっす」
 リンタロウがそれを補強する。やはり17で初陣を迎えて6年、経験を積んでいたのは伊達ではない。
「そんでお姫様も助かる為に動いてるんすから、隣国のお偉いさんに助けを求めるってのが自然じゃねぇっすか? つまり、お姫様が逃げる方向にある隣国までの森や林を張ってりゃいいってことっすね! 」
 やがて書き込まれた矢印や×印が地図の上にひとつのルートを浮かび上がらせた。
 
『声探す御方、先導く御方、道嗅ぎ分ける御方、いざいざ来たり賜え』

 紅葉がユーベルコード『御先神・ナキメ、ヤタ、スブホラ』で雉や鴉や鼠の姿をした御先神様を召喚した。何度も繰り返した祝詞を唱えることで落ち着きを取り戻す意味もある。彼女は救出対象である羅刹の姫の身を案じ、焦っていた。
(「落ち着け……浮足立てばそれこそ業邪の思うつぼ」)
 自分に言い聞かせながら御先神を飛ばす。
「お姫様を助けて悪い奴を倒せっすか、まるで騎士道物語っすねぇ」
 リンタロウがふんわりと、憧れを含んだ優しく軽い声色で言う。
「じゃあボクたちはその騎士様のオトモかなっ? 騎士物語には、そういう役割の妖精いたりするよね」
「んっ、それならぼくもオトモ? 」
 ティファリーナが軽口に乗り、雪兎はきょとんと首を傾げた。
「そりゃいいっす、両手に花っすね! 」
 リンタロウが言うと笑い声が漏れる。一気に弛緩した空気を感じて思わず紅葉も頬を緩めた。にっこりと笑顔を見せるティファリーナに、自分が気遣われていたことを感じた。雪兎は天然かもしれないが、リンタロウもきっと。
 「それじゃ、手分けして先行した人たちにこの分析を伝えつつ、ボクらも出発だー! 」
 雪兎が腕を突き上げて宣言をした。ここからはスピード勝負、それぞれの手段で森へと急ぐ猟兵たち。
 
 命の灯はまだ燃えている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

久遠・翔
ともかくお姫様を探さない事には話が進まないので【影の追跡者の召喚】を使って周囲を探索してきてもらうっす

で、俺自身も探すっすけど…追手がいた場合『目立たない5』『地形の利用1』『2回攻撃8』なんかを使って着実に追手を潰していくっす
倒した相手の懐なんかを漁り情報になるようなものがあるか探し、なければそのまま探索&襲撃を繰り返しお姫様を探します


テラ・グゥスター
今、まだ生きてる命があるなら…どうあっても間に合わせなきゃあならねぇな。
それにそいつら、これ以上命を奪わせてたまるかよ。命を軽んじるような輩、この場で残らず滅ぼさなきゃよ…!

【SPD】
まずは生き残ってるって姫さんの捜索・確保か。
後々軍勢とやり合う事も考えて、数減らしを兼ねて追手を潰しての時間稼ぎが一番貢献できそうかねぇ。
大勢の相手は流石に厳しい、姫さんを探して本体から離れてる少数単位を狙っていくか。
遠距離から「スナイパー」で釘で狙ってユーベルコード発動させるってのを繰り返していくとしよう。
他に足止めに回る猟兵がいれば連携できれば効率も上がりそうだ。


シラ・クロア
心身共に傷付いたお姫様、ね。いいわ、探し出しましょう。
彼女自身、傷を負っているのだから、馬にでも乗っていない限りそう速く移動はできないわね。その代わり、見つかりにくい道を選んだり、一時的にどこかに身を隠しているかも。
動物達に手伝ってもらおうかしら。フルートを奏でて、周囲にいる動物達に、見慣れない羅刹のお姫様――怪我人が近くにいないか、血の匂いがしないか、探索の協力をお願いするわ。
周辺の地図はある? 愛読書の世界知識と照らし合わせたり、第六感で見当を付けたりもしつつ、ある程度近くまで辿り着けたら、【ノクターン】で癒しの歌を。姫が聴いていれば傷も癒えるし……歌声に惹かれて姿を見せてくれないかしら。


アララギ・イチイ
勘に従って逃げていそうな場所を片っ端から走り回って探すわぁ
でも、私の勘ってあまり当てにならにのよねぇ
だから(偶然)に追手の居そうな場所に姫を探そうと近寄って(偶然)追手と戦闘になっても仕方ないわよねぇ、不可抗力だものぉ

なので(偶然)戦闘になった場合の対処方法よぉ
(ダッシュ)で加速しつつ移動、(迷彩)を展開して移動だわぁ
召喚・薮蛇を呼んで一緒に行動、追手を捕捉したら見えない薮蛇ちゃんに突っ込んで敵を攻撃、その後に即座に私がサムライブレイドを抜刀して切り込むわぁ(マヒ攻撃、気絶攻撃付与)
殺すつもりは無いわぁ、追手を負傷させて行動を制限させれば十分ぅ
相手が混乱から回復して反撃して来る前に離脱よぉ


幻武・極
不死のオブリビオン、厄介そうな相手だね。
でも、不死を打ち破る方法はあるようだね。
その方法を知っているお姫様の救出を頑張らないとね。

ボクはバトルキャラクターズと追っ手の足止めを引き受けるよ。
ボクは一騎当千
そして、バトルキャラクターも一騎当千。
簡単な計算だね。
二千の兵がここにいると思って、闘いに挑んできなよ。

さぁ、ここから先は一歩も通さないよ。


影宮・近衛
SPD
追手の相手をしよう。
この身は戦う為にある。

手始めに『エレクトロレギオン』で機械兵器を呼び出し、防衛線を展開する。
もちろん私も霊符を放って戦うぞ。
『時間稼ぎ』なら得意だ。
これで敵が引けばそれで良い。
しかし敵も数を増やしてくれば、機械兵器もそう長くは持たないだろう。
そうなれば周りは敵ばかりだ。
そこで『人狼咆哮』を放ち、周囲に集まった敵を薙ぎ払う。
「我が一族に伝わる力、汝等の身に刻め!」

……姫は無事逃げおおせたのであろうな。
為すべき事があるのならば、背負う物があるのならば生き延びよ。
生きる意志を捨てぬ限り、我が汝の力となろう。
我が一族の誇りにかけて、ここから先へは進ませぬ!


ツーユウ・ナン
【POW】
 一刻も早くその羅刹姫を助け出さねばオブリビオンを倒す鍵を失い、より多くの命を失うことになる……か。
 姫について下調べ(性格や技能、教養などから逃げ方を推理)できればいいのじゃが、できないとなると場当たりの中で判断するしかない。知恵が出た(追跡に有利そうな技能を持つ)仲間がいれば手伝い、それを元にアタリを付けて探し回ろう。

見つけた姫が手傷を負っていたら応急手当せねばのう。(癒し手がいれば任せる)
⇒切り傷に酒を吹付けさらし布を巻く、骨折や捻挫に副木を当てる等
⇒移動が必要なら姫を負ぶる

もう大丈夫じゃ、後はわしらに任せよ。


ミアズマ・フォルテ
SPD重視で行動

陽動で騒ぎを起こして時間を稼ぐ
他の参加者で場所を割り出している人がいるなら協力して
お姫様がいると見当をつけた場所と逆の方向でわざと追っ手に見つかり
交戦して敵の意識をこちらに引き付ける
「見つかった!?姫様ここは私にお任せください!」
とでも叫んでおこうか、まあ近くにそのお姫様はいないんだが。

戦闘は敵との距離を保ちつつロングボウの千里眼射ちで射撃戦
倒せるなら倒したいところだが数が多いなら
足を狙って機動力を落とす、怪我人を増やして動きを鈍らせる等
なるべく痛手を与えた上で逃げに徹して引っ掻き回そう
お姫様の探索は他の人に任せる、うまくやってくれよ。


風切・櫻
追手を探し、その撃退に専念しよう
「おれは刀だからな、此方の方が向いている」
ああいや、殺しはしないぞ。多分な

追手を見つけたらその前に立ちはだかる
「か弱き女子を寄ってたかって、とは。見下げ果てたものよな」
いや、彼奴等に何を言っても無駄だろうか

錬成カミヤドリによって、刀を複製し追手たちへ放つ
刀は我が身。自在に操れるは道理だからな
「そら、手ずから振るうまでも無いか?」
尤もこの手で振るえばその身、両断してしまうかもしれないが、と脅すような事も言いつつ

長く戦うつもりはない
適当にあしらい時間を稼いだら身を引く

「まあ――その命、いつまでもあると思わぬ方が良いぞ」


神酒坂・恭二郎
・POW使用
行き先の国はもう亡い、相手は死なない、そして情報も碌に無い。
無い無い尽くしが気に入った。
これはもう受けるしかないだろう。

・現地に着いたら高い丘の上で瞑想して【力を溜める】。入手出来た羅刹姫の情報を心象に映して【失せ物探し】。目を閉ざした闇の中で微かに光を感じ……。
風桜子の導きのまま刀を抜いて地面に刺せば、念動力の【衝撃波】が青い輝きを帯びた【誘導弾】になってゆるやかに動き始めた。

「神酒坂風桜子一刀流・鴉矢(からすや)……ってなもんか」

青光の矢を追って小走りする。
広いエリアに加えて目標との縁も薄い。精度は三割あれば良い方だが、闇雲に走るよりは大分増しだ。
後は羅刹の姫様の運次第だろう。



ついに膝が崩れた。
 木に縋り付いて、倒れることは防ぐ。
 おそらくは倒れたら終わり。立ち上がることは不可能だ。。
 だから、倒れることは出来ない。
 双肩に託された、父の、家臣の、友の想いが潰えていいはずがないから。
 
●適材適所
 能力・特性などを正しく評価して、ふさわしい地位・仕事につけること。
 
 地図を読んだ者たちが結論を出した時より少し時間は遡る。
 予兆によれば、敵側の有利は二つ。
 ひとつは数の利。少なくない数の猟兵が同時に動いてはいるが、軍団と呼べる程の数はいない。。戦闘能力はともかく、人探しとなるとこの数の差は大きい。
 ふたつめは時間の利。先に動き出して散開しているのだ、数の利と合わせれば特に策はなくともやがては救出対象へと辿り着くだろう。
 となれば、敵の有利を潰すためにすることは一つに集約される。即ち、追手の殲滅。
「おれは刀だからな、此方の方が向いている」
「俺も、こっちの方が貢献できそうかねえ」
「俺は探しながらっすけど」
 風切・櫻(ヤドリガミの剣豪・f01441)、テラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)、久遠・翔(性別迷子・f00042)たち三人は三者三様の理由の元、そう動く。
「か弱き女子を寄ってたかって、とは。見下げ果てたものよな」
 桜吹雪が追手の前に立ち塞がる。舞うは花弁ではなく刃、櫻の生み出した【錬成カミヤドリの刃】だ。銀光が閃く度、追手たちが数を減らしていく。
 予想外だったのは、追手が恐れを知らぬ、茶釜のヤドリガミであったことだろうか。
「彼奴等に何を言っても無駄か……? 」
「自意識はなさそうっすね」
 櫻の言葉に、ヤドリガミを死角からの連撃で仕留めた翔が答える。足を止めた二人に隙を見たか、迫る敵たち。しかし、黒、灰色、深紅の3色の釘が攻撃に転じようとしていたヤドリガミに突き刺さる。
「勝手に連携、させてもらったぜ? 」
「助かったっす。でも、これくらいの相手なら一か所に固まって対応しなくてもいけそうっすね」
 敵の戦闘力を見切った三人は、周囲に敵がいないこともあり、散開することにした。
 
 己の勘に従って、駆け抜けるのはアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)。
 彼女は、救出対象の姫を探していた。
「でも、私の勘ってあまり当てにならないのよねぇ」
 茶釜のヤドリガミの集団に囲まれているのは、その当てにならない勘故に。
 しかし、当てにならない勘とも長い付き合いである。偶発的な戦闘でも慌てず騒がず、むしろ待ち構えていたかのように。にぃっと不敵な肉食獸の笑みを浮かべた。そこからは疾風迅雷。見えない大蛇が開けた道を滑るように進み、閃く剣は達人の域。もともと統率はないようなものの烏合の衆だ。速さで迫れば混乱させるのは簡単であった。
「さぁて、時間も稼げたし次次。……次も偶然敵と出会っちゃうかしらぁ? 」
 敵が体勢を立て直す前に、アララギは再び敵を求めて……否、姫を探して駆けだした。
 
 リンタロウや雪兎、紅葉、ティファリーナたち地図を解析した者の情報が浸透すると、追手との戦いを選んだ者たちの動きも変わって行く。代表的なのは、森の前で陣形を整えて迎え撃つ形をとった影宮・近衛(電脳陰陽師・f08723)と幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)だ。
(「この身は、戦う為にある」)
 その強い決意を表すかのように、極の【バトルキャラクター】とともに防衛線を展開する。追手は既に森に入ったものもあり、他の面から侵入する者もあるだろう。しかし、この『面』からの侵入は許さない。
「ボクは一騎当千。そして、バトルキャラクターも一騎当千。簡単な計算だね。二千の兵がここにいると思って、闘いに挑んできなよ」
 やがて想定通りにやってきた大部隊を前に、極が見栄を切った。
 
「見つかった!? 姫様ここは私にお任せください! 」
 ミアズマ・フォルテ(求める者・f00215)が焦った声をあげる。逆に森から距離を取って囮作戦をとっているのだ。敵の動きを計算する者がいてこその連携であり、彼女の仕事への真面目さが現われている、が。
「……言葉わかってるのかな」
 茶釜に顔がついたかのようなヤドリガミ相手に演技をすることにちょっと疑問を持ってしまうのだった。
 それでも仕事に手は抜かない。ヒット&アウェイで引っ掻き回す。問題は、姫がいるであろう場所が森であり、そこと距離を置くということは自然とゲリラ戦には不向きな場所になっていくということだ。
「ちょっと逃げに徹してみるかな……」
「じゃあ俺が引き付けるっすね」
 目立たない能力を生かして戦っていた翔が援護を買って出る。
「ところでなんか情報を握ってそうな敵はいませんでしたかね? 」
 と、ダメ元で聞いてみるが
「ダメだね。情報どころか会話や意思疎通すら出来るか怪しいと思うよ」
 一応、声や牽制には反応し、囮作戦も効果をあげているが、どこか機械的だ。威嚇や挑発、色仕掛けなどは効きそうにはない。情報が無ければ探索と襲撃を繰り返すのみだ。
 「それじゃ、お姫様の探索は任せる、うまくやってくれよ」
 陽動のためではなく、想いを託して、ミアズマと翔は別れた。
 
「はぁ。流石にちょぉっと疲れたわね」
 何度目かの偶然の遭遇を終え、アララギが息を吐く。まだ限界というにはほど遠いが、確実に疲労が蓄積されてきていた。速さを主眼とした戦闘スタイル故、無理は禁物である。
「あら、近づくのはだぁれ? 」
 誰何の声をあげられて、バツが悪そうに姿を見せるのは桜の羽織の男。
「すまない、別に警戒をさせるつもりはなかったんだが……」
「ああ、お仲間さんねぇ、こちらこそごめんなさぁい。確かグリモアベースでみたことがあるわぁ」
「グリモア猟兵だからかな? こちらは同じように殺さずに戦っている者がいるようだったので、なんとなくな」
 言葉の通り、何となくでしかないのだろうが、それも縁。
「少し、協力するぅ? 」
「試してみようか」
 丁度運悪く姿を見せた敵の集団は、二人の剣雄の前に無力化されるのだった。
 
 戦いの規模という意味で最大となったのは、森へ侵入するのを防ぐ防衛戦だった。
「さぁ、ここから先は一歩も通さないよ」
 自分に言い聞かせるよう宣言し、極が構える。事実、今のところ一体たりとも先へ進ませてはいない。むろん、彼女だけの力で成したことではないが、彼女の力無しで成せることでもなかった。
「ああ、これ以上命を奪わせてたまるかよ……ここで食い止める」
 テラもまた決意を口にする。罪を憎み命を尊ぶ彼の主義からすれば、一国を丸々滅ぼすというのは許されざる大罪だ。否、一国丸々になるかはこれからの猟兵たちの戦いで決まる。遠距離攻撃を得意とする彼は、多くの前衛を有する防衛線で連携することによってその本領を発揮していた。
(「今、まだ生きてる命があるなら……どうあっても間に合わせなきゃあならねぇからな」)
 しかし、だんだんと密度を増す敵の軍勢の前にゲームキャラクターたちも数を減らして行く。他所に引き付けられている戦力が合流していれば、ここまでは持たなかっただろう。
「防衛ラインを下げて立て直そう。先に下がってくれ」
 機を判断したのは近衛。テラと極もその声に即席チームとは思えないほどの見事な連携を見せて後退をはじめる。一人残った近衛は敵の群れの中に消える……かのように見えた。しかし、それこそは彼女の狙い。
「我が一族に伝わる力、汝等の身に刻め!」
 【人狼咆哮】が大きく敵の波を切り開いた。
「我が一族の誇りにかけて、生きる意志を捨てぬ者の力になろう……!」
咆哮が戦場に響き渡る。

 いつからか、すでに意識は朦朧としている。
 目は霞み、もはや自分の血の匂いしか感じない。
 音は……音が、聞こえた。
 
●夜想曲

 行き先の国はもう亡い、相手は死なない、そして情報も碌に無い。無い無い尽くしが気に入った。そんな豪気な感想を以って参戦したのは神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)である。姫が逃げ込んだと思われる森のを見下ろす小高い丘。恭二郎はそこで目を閉じて瞑想していた。アリアから聞いた羅刹姫の情報から人物を思い浮かべる。
(「少し心許ないが……仕方ないな」)
 目を閉ざした闇の中にほんの微かな光が灯る。風桜子(ふぉーす)の導きのまま刀を抜いて地面に刺せば、心の光が刀を伝い……ふわり、と緩やかな青い光が浮かび上がった。
 
 地図を解析した者たちの情報を頼りに、シラ・クロア(夜を纏う黒羽のフェアリー・f05958)は森を歩いていた。戦いの舞台になってしまった森からはかなりの数の動物たちが逃げ出してしまっていたが、それでも逃げ遅れたものや、隠れているものなどはいた。それらに聞き込みをしながらの探索だ。動物たちはヒトを個別認識しておらず、時間や距離の概念もヒトのそれとは違う。その面で多少意思疎通に苦労したものの、動物ならではの感覚と単純に情報の数の多さは大変役に立った。
「そろそろこの辺りかしら」
 下手をすると敵を集めてしまう可能性もある、がこの世界に転移してからの時間を考えると、救出対象の体力は限界に近いだろう。幸いこのユーベルコード【ノクターン】は歌を耳にして共感した対象になら無差別に効く。動けるのなら歌声に惹かれて姿を見せてくれる可能性にも期待できる。シラは意を決して歌い始めた……。
 
 結果から言えばその判断は正解だったと言えるだろう。しかし、最初に姿を見せたのは、すでに見飽きた感もある追手。茶釜のヤドリガミたちであった。失敗かと顔をしかめて戦いに備えようとするシラ。だが、追跡者であるはずのそれらは今は追われる側であった。現われたヤドリガミの一体が拳に打ち据えられ、吹き飛んだ。
「何やら声がするから来てみたが……丁度良かったか? 」
 拳の主はツーユウ・ナン(粋酔たる龍女・f04066)。女侠客といった風情の彼女は、瞬く間にヤドリガミたちを打ちのめしていく。「敵はわしに任せい。おぬしは歌に集中せよ」
 心強い言葉に応えるように歌声は熱意を増していった。
 
 どこからか歌声が聞こえる。初めて耳にする旋律、だがどこか懐かしい。
 萎えていた脚に力が入る。歩け、進め。
 全身が痛みで軋む。痛みを感じれるだけの感覚が戻ってきている。
 顔を上げた先に見えるのは、自分に襲い掛かろうとするヤドリガミの姿――。
「無い無い尽くしではあったが、運にまで見放されたわけではなかったようだな」
 そして、そのヤドリガミが叩き切られる姿と恭二郎の不敵な笑み。
 
 肩を貸すという恭二郎の申し出を固辞して歩いて少し。歌声のする方へ向かうとシラ、ユーツウと合流する。武人二人も応急手当くらいの心得はあったが、本職がいるならとシラに治療を任せ、周囲の安全を確保した。ぐったりとした姫をユーツウが強引に抱え上げて背負った。
「もう大丈夫じゃ、後はわしらに任せよ」
「……あり……がとう……」
 心折れぬ姫君は、ユーツウの背で意識を手放した。
 
 そして、戦いは次の幕へ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『黄泉の本坪鈴』

POW   :    黄泉の門
【黄泉の門が開き飛び出してくる炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【地獄の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    人魂の炎
レベル×1個の【人魂 】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
WIZ   :    後悔の念
【本坪鈴本体 】から【後悔の念を強制的に呼び起こす念】を放ち、【自身が一番後悔している過去の幻を見せる事】により対象の動きを一時的に封じる。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


茶釜のヤドリガミの追跡から羅刹の姫を助けた猟兵たちは移動を開始した。目標は追手の首魁がいる方面だ。確証があるわけではないが、追跡してきていることは予兆でわかっている。姫は回復のユーベルコードを持つシラやティファーナたちによって一命をとりとめ、今は少し眠っているようだ。一刻も早く不死の対応策は知りたいところだが、少しの休息くらいあってもいいだろう。その間くらい、持ち応えてみせよう。
「茶釜の次は……何だアレ、鈴?」
 と、身構えている時に見えたのがソレであった。焼けたような真っ赤な鈴に黒い狐が張り付いたような姿のヤドリガミ。見た目だけなら可愛らしいということも出来ようが、纏った邪悪な気配と、鈴から立ち昇る黒い炎が禍々しい。それに
「こんだけの数いたら、なんだろうと不気味だわなぁ……」
 その数は、平原を埋め尽くすほどであった。
アララギ・イチイ
あの数の敵を美味しく頂けるなんて、食べ放題の時間みたいねぇ

羅刹紋の効果で空を飛んで攻撃だわぁ
対空攻撃して来るだろうから(ダッシュ)で加減速しつつ、(残像)を出して攪乱するわぁ、(迷彩)も付与して補正を入れておきましょう

攻撃は速射砲2門を引っ張り出して(2回攻撃)で撃ち込むわぁ
榴弾を装填して(範囲攻撃)かしらぁ

敵が密集している場所を狙えるなら射術・全力射撃を使用するわぁ
全射撃武装(攻撃回数重視)を引っ張り出して、多数目標に向けて上空から合計8門の全力射撃よぉ
射撃武装が弾切れ(弾切れ判断はMS判断でどうぞ)したら、巨大剣装備ぃ
巨大剣の一撃を叩き込んだ後に、離脱する近接一撃離脱戦法に変更するわぁ


リンタロウ・ホネハミ
こういう集団戦こそオレっちの魅せ場っす!
さぁて、さっくりやれそうな奴から順にドンドンいただいちまうっすよ!
つーわけで、獲物横取りされても恨まないでくださいっすね?
傭兵ってのは名を売んなきゃ食ってけないんで

今回の敵は炎が実に厄介っすねぇ
つーわけで、そもそも炎を撃たせねぇ方針でいくっすよ
豹の骨を食って【〇八三番の韋駄天】を発動!
スピードに緩急付けて敵の狙いから外れると同時に敵を攻撃するっす!
まずは倒すことより炎を撃たせねぇことを目標に
相手の嫌がることを素早く進んでやってやるっすよ

余裕があれば他の味方を狙ってる敵も同じようにして邪魔するっす
アシストでも優秀に働けるオレっちすごくないっすか?


天花・雪兎
わぁ、可愛い
でも、悪い奴なら倒さなくちゃ!
薙刀片手にぼくも戦うよ!

【フォックスファイア】を操作して、複数の敵を牽制して戦うのに充分な距離を確保

『フェイント』を交ぜて『二回攻撃』
その時出来たら『傷口をえぐる』ことも忘れずに

複数の敵に囲まれたら『なぎ払い』
包囲が薄くなったところを突破して、体勢を整えるよ

敵から飛ばされてきた炎は、ぼくの【フォックスファイア】で相殺できないかな?
難しいようなら、攻撃を避けつつ、狙ってきた本体を討ちにいくよ!

敵が沢山いて危ないから、なるべく仲間の猟兵の傍で戦おう

お姫様を安心させてあげる為にも早く終わらせないといけないね
よし!ぼくも気合いを入れて皆と一緒に頑張るぞ!


テラ・グゥスター
一国を落とすってぇのも頷ける規模だなこりゃあ。逃がせばそれだけ被害が増える可能性もある…全滅、とまでいかんでも1匹でも多く減らしたい所だ。

【SPD】
俺は武装もUCも範囲攻撃はできねぇからな、確実に1匹ずつ消していくしかない。「暗殺」「スナイパー」で迅速に確実に急所(狐部分の頭、もしくは鈴が本体かもしれんなぁ)を撃ち抜く。
囲まれたらUC発動し突破、味方猟兵との合流を図ろう。
警戒すべきは精神攻撃(後悔なら…一般人を殺めた、組織の最後の指令、かねぇ)。華奢な見た目なら搦手に秀でてる可能性は充分あるからな…いざという時カバーし合えるよう味方の位置は常に把握しときてぇな。
さぁ来い、命は奪わせねぇよ…。


幻武・極
今度は追手は鈴のヤドリガミなんだね。
今度もボクの武術で蹴散らしてあげるよ。

へえ、これが地獄の炎なんだね。
じゃあ、ボクはトリニティ・エンハンスで状態異常力を強化して
ボクに燃え移った地獄の炎を強化して炎の武術といこうかな。

地獄の炎はキミたちの意思で消せるかもしれないけど、ボクには属性攻撃1があるからね。
この炎の武術は消せやしないよ。



●先陣

 サムライエンパイアの一国。今は滅びたその国に美しい平原があった。平時であれば心地よい風が吹き流れ、のんびりと歩く家族があったかもしれない。国と国を繋ぐ行商人たちも急ぐ足を止め一息つく、そんな場所だった。
 しかし、今やその場所は、おぞましい黒い炎に埋め尽くされていた。炎を生むのは鈴、本坪鈴と呼ばれる神社の賽銭箱の上に吊るしてあるものと言えばわかるだろうか。だが、本来は魔を清め神を招くものとされるそれには、かつての面影などは微塵もない。ヒトの営みを穢し、全てを焼き尽くさんとする邪悪なヤドリガミとなっているのだ。地獄から這い出た妖魅の群れたちは次なる悲劇を生むべく進軍を開始しようとしている。果たして、この悲劇の連鎖を止めることはできないのだろうか?
 
 否! 黒い炎を切り裂き、空を舞う紅がある。アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)だ。
「ふふ、この数の敵を美味しく頂けるなんて、食べ放題の時間みたいねぇ」
 戦いを愉しむ彼女だが、いや、だからこそ油断も慢心もない。羅刹紋で飛翔し、速射砲から榴弾を放つ。密集している今こそこの攻撃のチャンスだ。反撃に放たれる黄泉からの炎は、加減速を繰り返し、残像と迷彩を併用することで避けるというより’狙わせない’敵の数が多過ぎる為、一撃一撃回避するよりこの方が無理がない。
「全射撃武装での8門の全力掃射! 派手にいくわよぉ? 」
 邪悪な鈴たちが吹き飛び、開戦の狼煙が上がった。
 
「今度の追手は……へぇ、茶釜の次は鈴のヤドリガミなんだね。ま、ボクの武術で蹴散らしてあげるよ」
「可愛いけど、悪い奴なら倒さなくちゃね! 」
 集まった猟兵たちの中でも幼く可愛らしいともいえる容姿の二人、天花・雪兎(雪の子供・f02304)と幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)もアララギに続いて戦闘に入った。幼くとも実力は他の者にも引けを取らぬ猛者である。極がユーベルコード【トリニティ・エンハンス】で地獄の炎をねじ伏せ、炎の魔力として纏えば、雪兎も【フォックスファイア】で相殺する。
「炎使いとしての格はこっちが上かな? 」
 とはいえ数が多い。多過ぎる。じわじわと黄泉の本坪鈴たちが二人を取り囲んでいく。敵が多いだけならまだしも、彼らが生み出す人魂もまた個別に動いて襲い掛かって来るとならば、流石に対応し切るのは至難の技である。捌き切れない炎増えていく。その時、ヒュウ! と風を切る音がして、二人を狙おうとしていた炎が掻き消えた。
「お二人とも大丈夫っすか? こういう集団戦こそオレっちの魅せ場っす! 活躍するっすよ! 」
 豹の骨を噛んで瞬発力を上げたリンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)による援護だ。【〇八三番の韋駄天】による素早い一撃は雪兎と極の目をもってしても容易く捉えられるものではなかった。
「アシストでも優秀に働けるオレっちすごくな……」
 言い終わる前に銃声がして、リンタロウの背後に迫っていた黄泉の本坪鈴が落ちる。
「確かにすごいが、他人を助けてる間に自分がやられたら、よくないぜ? 自分も生きなきゃな」
 合流してきたテラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)の銃弾だ。
「気を取り直して、カバーし合うっすよ! 」
 雪兎とリンタロウが地獄の炎と人魂を相殺、または発動を封じ、極が本体を打ち倒していく。連撃や面攻撃を得意としないテラは無駄撃ちはせず、三人の隙を狙う敵を正確に撃ち落とす。敵が集まってきたら雪兎が薙刀で道を切り開き、体勢を立て直す時間を作った。咄嗟ながら息の合ったコンビネーション。傭兵としての経験の長いリンタロウと集団戦の心得のあるテラが上手く合わせる形だ。やがて
「はぁい♪ 」
 と、射撃武器を撃ち尽くしたアララギが2つの巨大剣と共に降ってきて
「空から女の子が!っす!!」
 と、浮足立つ場面もあったが、多勢に無勢のこの戦い、前衛の手数が増えて悪いことはない。すぐさまアララギの得意な動きを取り入れた戦法にシフトしていく。
「意外とあなたもぉ、欲張りみたい? 」
 戦いを食事に例えて尋ねるアララギ。問い掛けられたリンタロウは
「こういう集団戦こそオレっちの魅せ場っすからね。傭兵ってのは名を売んなきゃ食ってけないんすよ」
 と、応じる。
「さぁて、さっくりやれそうな奴から順にドンドンいただいちまうっすよ! つーわけで、獲物横取りされても恨まないでくださいっすね? 」
「ふふっ、じゃあこっちも負けずに食べちゃうわよぉ」
「地獄の炎は消せても、ボクの炎は消せやしない……いくよ」
「よし!ぼくも気合いを入れて頑張るぞ! 」
「ありゃ、皆さんにもやる気出させちゃったっすか? しまったっすね」
「……言葉ほど困ってないな? 」
 赤、白、青の色が黒に侵食された平原に生まれ、黒を削り取っていく。徐々にだが、確実に。希望の灯は勢いを増しつつあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

紬雁・紅葉
さぁここが正念場!見事守って見せましょう!!

ティファ―ナと一緒に行動。迫る大軍を可能な限り迎撃する
攻勢には出ず、突出せず防陣にて待ち構える
ティファ―ナ?姫様から離れてはだめよ!!


【水の魔力】を防御力に付与。同時に薙刀とルーンソードの二刀流で水の【属性攻撃】を宿した【なぎ払い】を以て近寄る敵をなるべく多く斬り払う

いかが?海神(わだつみ)の水は?五臓六腑に塩が染み渡るでしょう!?
姫やティファ―ナに攻撃が行った場合、他にかばう者が居ない時には自らかばう(かばう者が居るなら任せる)

これを越せば大将の御出座し…祓い退けて見せようぞ!

※アドリブ、緊急連携、とっさの絡み、大歓迎です※


神酒坂・恭二郎
数で押されるのもここまでされると気分が良い。
思わず楽しくなってきたが、姫さんの事を忘れちゃいけない。
地形を見やり目立たない場所に刀を突き立て、青の光(フォース)を炸裂させて3~4人位入れる穴を掘る。上に布を広げて土を被せれば簡易の迷彩位にはなる。

「ちょっと片付けてくるから良い子でな」

■行動方針
・姫様から離れた場所で目立つように力を高め、鈴共のおびき寄せる。
・遠くの鈴は刺突で念動力を上空に放ち、誘導弾で曲射狙撃。着弾の衝撃波でまとめて吹き飛ばし狙い。
・近くの鈴は居合い抜きでカウンターの念動波を叩き込み、二の太刀の捨て身突きで数匹の串刺しを狙う。
・陽動目的のためかなり消耗の激しいムーヴです。


シラ・クロア
お姫様はとりあえず落ち着いたかしら。まずは心身ともに少しでも回復を。
そして、私達はその間に……って、また随分と数の多い敵ね……。ため息吐いていても仕方ないから、いきましょうか。
「――いざや邪なるを封じ浄めん、花の嵐」
【嵐花】で桜吹雪を起こして本坪鈴の視界を遮りながら攻撃を。あれだけ数がいたら花の嵐に翻弄されて鈴同士がぶつかり合って割れたりしないかしら。数があるからこその不自由。
桜吹雪は時に盾にもなってくれる。こちらへ飛んで来た攻撃を遮って相殺するわ。代わりに炎を受けて燃えたりね。一緒に戦う皆の盾にもなれるといい。姫様にも無事でいていただかないと。
時に第六感を信じて回避や攻撃方向を見定めるわ。


祝聖嬢・ティファーナ
助けれた羅刹姫の生命(いのち)の灯火(ひ)を消させる訳にはいかないから、続けて必要なら限り『生まれながらの光』で羅刹姫の『生命の灯火』を消させ無い!と全力を越えました☆
ティファーナは自分よりも他者の生命を優先しがちだから、紅葉さん(f02580)が心配するから頑張ります!☆

羅刹姫を護る為に敵の火や焔に『エレメンタルファンタジア』で氷の竜巻で相殺します!☆
一方で羅刹姫の容体を【最優先】で『生まれながらの光』で癒やし続けて必要なら『クリスタライズ』で透明化して護ります☆


ツーユウ・ナン
未だ状況は厳しい、まずはここを切り抜けねばのう。
あれだけの数のヤドリガミじゃ、主力は飛び道具や範囲攻撃の得意な味方に任せて、わしは姫君の護衛に回ろう。

・味方の弾幕から漏れた敵を仕留める
突き、頂肘[カウンター]、靠撃[吹き飛ばし][範囲攻撃]
・姫を守りきる
[見切り]、鉄箸(装備4)による[武器受け]や敵の武器や体の一部を箸で挟んで捌く[敵を盾にする][グラップル][怪力]

●姫が直接狙われたら[かばう][拠点防御]UC『龍氣金剛功』
やらせはせん……!



●本陣

 アララギたちが派手に交戦を開始していた頃。戦場から離れるように動く一団があった。意識のない姫を護衛する猟兵たちである。個々の戦闘力では勝るものの、数の差は圧倒的だ。守るにしても地形を利用して、まずは隠れるという神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)の提案に異を挟む者は無かった。逆境に反骨心を刺激されながらも、冷静な判断と言えよう。青い光として発現した風桜子を炸裂させ、塹壕のような穴を掘る。
「ここに布を広げて土を被せれば……簡易の迷彩位にはなる」
「すっごーい! 」
「いい手際ですね、助かります」
「ふぅむ、大したもんじゃ」
「便利なのね、ありがとう」
 口々に手際を褒め、感謝を述べるのは、護衛に残ることが決まっている面子。即ち、紬雁・紅葉(剣樹の貴女・f03588)、祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)、ツーユウ・ナン(粋酔たる龍女・f04066)、シラ・クロア(夜を纏う黒羽のフェアリー・f05958)たち四人。勿論、彼らもただ見ていたわけではなく、場所を整えたりその間の警戒を担当したりはしていたのだが。ちなみにフェアリーの二人が警戒、紅葉が恭二郎の手伝いでツーユウが姫について護衛をする形になっていた。
「さてそれでは、ちょっと片付けてくるから良い子でな」
 疲労からか未だ意識が戻らぬ姫君に、そう声を掛けて恭二郎は本陣ともいえる場所を去ろうとする。
「あら、護衛に残らないの?」
 呼び止めるシラに
「ああ。俺はちょっと派手に暴れてくるさ。その方が性に合ってるからな」
 と、だけ言い残す。シラはしばらく思案気に首を傾げていたが、本陣の三人と見比べてから、やがてそっと後を追った。

 ツーユウが背負っていた姫を本陣に寝かせ、自らもその横に身を屈める。紅葉も後に続いて身を隠した。最後にティファーナが姫の側に降り立って、治療を再開する。
「助けれた羅刹姫の生命(いのち)の灯火(ひ)を消させる訳にはいかないから! 」
 ティファーナのユーベルコード【生まれながらの光】は自分の消耗と引き換えの回復効果を持つ。死の寸前であったら姫の治療はまさに命懸けだった。今は持ち直しているものの、発見時の状況では、シラと共同での治療でなければ彼女が命を落としていたかもしれない。紅葉が、そんな自分より他人を優先する性質を持つ友人を心配そうに見つめていた。しかし、彼女は友を止めない。それがティファーナにとっての戦い方であることを十分承知しているからだ。
「……ん………ん、あ。私……は? 」
 そして、永遠にも感じられる時の後、姫君は目を覚ました。
 
 その頃、本陣を離れた者たちは。
「はっ、楽しくなってきた! 」
 と、ひとりは声をあげ、
「私はあんまり楽しくはないわね……」
 もうひとりはため息をついていた。
「――いざや邪なるを封じ浄めん、花の嵐」
 シラがそう静かに唱えると、ユーベルコード【嵐花(ランカ)】が発動する。彼女のフルートが、チョーカーが、次々に美しい桜の花びらへと姿を変えて、黄泉の本坪鈴たちを包んでいく。恭二郎も負けじと、運よく花の嵐を逃れた鈴を切り裂いた。要は、囮となっているのだ。最初は自分ひとりでと思っていた恭二郎だったが、
「バレバレよ。悪人顔で、ちょっといいこと言って囮とかしたらフラグたちすぎかも? 」
 ふふっと笑うシラに、あっさりと白旗をあげた。無論、彼とて自己犠牲の果てに死ぬつもりだったわけではない。癒し手でもあり集団戦に向いたユーベルコードを使うシラの協力は願ってもない。シラも、恭二郎が覚悟を決めて囮になろうとしていることに気付いてしまっては仕方がない。ミステリアスで真意を悟られることがあまりない彼女だが、根は意外にお人よしなのだ。
「貧乏クジもすすんで引けば大当たり、ってな! 」
 鈴が砕ける音に彩られ、花と刃の共演が幕を開けた。
 
「わしらは猟兵。おぬしも知っておろう? 幕府から天下自在符を与えられたものじゃ」
 目を覚ました姫君は、一瞬警戒をしたものの、ツーユウのから自己紹介を受けて力を抜いた。もっとも、警戒しても何ができるというわけでもないが。
「私は、助かってしま……いえ、助かったのですね……」
 取り乱すこともなく、ぎゅっと瞳を閉じてしみじみと噛み締めるように呟く。そしてゆっくりと目を開けると、一国の姫君にふさわしい風格を纏っていた。
「まずは、有難うございます。感謝の言葉は幾ら尽しても足りないところですが、この度は形式に拘ることができない理由が御座います。ご容赦下さい」
「国に現われたオブリビオンのことですね? 」
「そこまでわかっているのですね、話が早くて助かります。そう、私の国を滅ぼした妖狐は限定的ではありますが不死となる力を持っております。いかな歴戦の猟兵様方でも、真っ向から挑めば敗北は必定。その不死の呪いの鍵は……その手の巻物にあります。かの妖狐『小町』はその巻物に自らの真名と共に自分の魂を分け入れ、身体を不死としているのです」
「……っと、いいところで邪魔が入るのはお約束じゃなあ」
「ティファーナは姫様を頼むわね」
「う、うん。二人とも気を付けて! 」
 ツーユウと紅葉が、敵の気配に言葉を遮り立ち上がる。ティファーナも身構えて姫君の前に庇うように回り込んだ。
「これを越せば大将の御出座し……祓い退けて見せようぞ! 」
 見るからに逞しく、戦士であることがわかるツーユウはともかく、紅葉の変化に目を丸くしつつも、姫君は奥に下がる。自分が守られる者であることを、自分の無力を知る者の動きだ。対して紅葉は守る者の動き。水の魔力を防御力へと変換し迫りくる黄泉の本坪鈴を迎え撃つ。
「いかが?海神(わだつみ)の水は?五臓六腑に塩が染み渡るでしょう!? 」
 黒い炎を薙刀とルーンソードの二刀流から迸る水の力が打ち消し、真っ赤に灼熱した鈴がじゅう、と水蒸気をあげてひび割れた。運よく浄化の双閃を逃れたものも、無事ではない。いや、ダメージの度合いで言えばこちらの方が大きいと言えるだろう。カウンター気味に突き出される頂肘が鈴を粉々に粉砕し、全身を広く使った靠撃が吹き飛ばす。その衝撃は何体もの鈴を巻き込んではさらに被害を広げた。
「敵が来たとなると、状況は厳しいやもしれん、まずはここを切り抜けねばのう」
「はい、ここが正念場!見事守って見せましょう!! 」
 覚悟を決めた女傑がふたり、邪悪な炎を打ち払わんと気合の声をあげた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

影宮・近衛
WIZ
まずは姫を救えて一安心だ。
引き続き戦い、もうしばらく時を稼ごう。

茶釜に鈴……?
不思議な手下を使うオブリビオンだな。
器物を使う術に長けているか、もしくはオブリビオン自身もヤドリガミなのか……
いや、敵の推測も必要だが、今は目の前の脅威を払わなくてはな。
確かに凄い数だ。
こちらも『エレクトロレギオン』で機械兵器を呼び出し、鈴のヤドリガミと戦わせよう。
電撃を放ち飛行する絡繰の軍勢だ。
数には数を。これで敵の数を少しでも減らす。
機械兵器を突破してきた敵を、私達で撃ち落としていくぞ。
敵がどう動くかも観察し、皆に伝えて効率良く迎撃出来る様に連携したい。
仲間が策を考えるまで、ここを通す訳にはいかない!


風切・櫻
「ほう、これは中々壮観だ。いや、なに、怯んだ訳ではないが」
常の如く泰然として振る舞い、刀をゆるりと抜き放つ
「我が銘、その力の一端をお見せしよう」

【櫻花剣嵐】を発動し、敵陣へと切り込む
高速移動を以て攪乱し、風の刃で人魂の炎を断ち切り掻き消していく

本体――鈴と狐は【なぎ払い】【2回攻撃】で叩き斬って行く
愛らしい姿をしていようとあやかしはあやかし
害為すならば斬るのみだ

――しかし
「先の茶釜と言い此度の鈴狐と言い。首魁はヤドリガミに縁があると見得る」
同じヤドリガミとして些か思う処もある。が
「おれは刀。何であれ斬ってみせよう。なあ、姫君よ?」
道具は使い手次第
姫よ、おれを振るって【頼って】見せるがいい


久遠・翔
あー…この数はさすがに捌くのは難しいっすね。ならば今回俺は姫の護衛に徹しますっすかね?

【シーブズ・ギャンビット】の加速によるヒット&ウェイで姫の傍を離れないように防衛につくっす
周囲の仲間には戦闘前に、敵が姫を襲い掛かりそうになったら緊急離脱することの許可ももらっておきます

もし、本当に群れで一気にこの場所を襲ってきたら迷わずに服を脱ぎ去りインナー姿となって超加速。姫をお姫様抱っこしつつその場を一旦離脱、その後は姫を抱えたまま加速で敵の攻撃を避け続けます
目立たない6、地形の利用1、第六感1、見切り1、聞き耳1、残像1、逃げ足1、クライミング2、ロープワーク2の全てを使い姫を守り続けます


ミアズマ・フォルテ
壮観だが、この戦いも控える首魁の前座に過ぎない。
気を引き締めて油断なく挑もう。

SPD重視で行動

おそらく猟兵は前に出て積極的に敵を殲滅する集団と
姫の周囲を固めて守りを重視する集団が出来るはずだ
私は状況を見て手の足りていない方に加勢する。

ロングボウをしまってアサルトウェポンを取り出し【全力射撃】を発動
手近な敵を片っ端からロックオンして銃撃でハチの巣にする
対集団戦用に新しいUCを習得しておいてよかった。
一応敵だけでなく放った炎も気にかけておいて
燃え広がった火に追い込まれないよう立ち位置を調整しておこう。



●乱舞乱打

「ほう、これは中々壮観だ」
「怖気づいたのか? 」
「いや、怯んだ訳ではないが」
「だろうね」
 草原を埋め尽くす黒い炎を前にして、会話をする影みっつ。風切・櫻(ヤドリガミの剣豪・f01441)、ミアズマ・フォルテ(求める者・f00215)、影宮・近衛(電脳陰陽師・f08723)の三人だ。
「しかし、茶釜に鈴とは不思議な手下を使うオブリビオンだな」
「先の茶釜と言い此度の鈴狐といい。首魁はヤドリガミに縁があるとみえる」
「器物を使う術に長けているか、もしくはオブリビオン自身もヤドリガミなのか……」
「まあ、前座のこいつらを倒せば嫌でもわかるだろう? 気を引き締めていこう」
「そうだった。今は目の前の脅威を払わなくてはな」
 同じヤドリガミとして思うところはある、が。
(「道具は使い手次第。おれは刀。何であれ斬ってみせよう」)
 櫻が黒の群れに飛び込んだ。取り囲む無数の影を前にして、常の如く泰然と、刀をゆるりと抜き放つ。
「我が銘、その力の一端をお見せしよう」
 ユーベルコード【櫻花剣嵐】を発動し、高速で斬り込んでいく。桜舞う風の衣が黒一色の中を駆け抜けた。まるで纏った羽織から浮かび上がったか如く、幻想的な光景。……残念ながら観客はないが。
『AIサポート起動、ロックオン、攻撃開始。』
 観客は無くとも見ている者はいる。ミアズマだ。彼女のユーベルコード【全力射撃】が発動し、およそ250メートル内を視界に捕らえ銃弾が雨あられと降り注ぐ。
「対集団戦用に新しいユーベルコードを習得しておいてよかったね。早速大活躍だ」
 桜の乱舞に銃弾の雨が混ざり、さらにひとつ。近衛の機械兵器が現われて、宙を舞い始めた。放つ電撃は威力こそ程々だが数が違う。その数75体。一気に手数が25倍である。
「……大丈夫だとは思うが! 」
 突然櫻が大声をあげ、ミアズマと近衛が目線を寄越す。
「誤射はしないでくれよ! 」
「「善処しよう」」
 多分、冗談だ。

●駆け抜けて

 久遠・翔(性別迷子・f00042)が駆ける。本陣に姫の護衛として合流していた翔だったが、今は単身、姫を抱えて逃走していた。敵の数は確実に減らせてはいたが、じわりじわりと包囲をされていることにティファーナたちが気付いた為、一足先に突破してきたのだった。
「皆様は大丈夫でしょうか……」
「大丈夫っす、戦力的には負けることはないっす」
 それは決して希望的観測というわけではない。このままの調子ならば、時間はかかるだろうが、猟兵側に負傷はあれど犠牲は出さずに乗り着れるだろう。問題は姫の存在だ。彼女を無傷で守るのは、いかに歴戦の猟兵でも難しい。事実、彼女を庇って紅葉とツーユウが浅くない傷を受けていた。そこに軍団の一角を崩した恭二郎とシラが合流したため、あとを任せて翔が姫を連れて一旦離れたのだ。優秀な癒やし手もいるグループ故、紅葉たちを癒して立て直せば持ち応えることはできるだろう。それでも不安げにする姫を安心させるように、翔は抱える手に力を込めた。彼女の不安は、猟兵の力を信用していない故のことではない。自分を守る者を置いて逃げることが、つい先ほどのことと重なるのだろう。
「あそこで戦っている人がいるっす。合流して後退するっす」
 翔はそんな内心を感じ、努めて明るく声をかけた。
 
 風の刃と電撃が黒い炎と拮抗し打ち消す。間を縫って邪悪な鈴を切り払う桜を、銃弾と霊札が支援し、敵の数を減らしていく。櫻とミアズマの二人が主となり戦う間に、機械兵器で援護しつつ近衛が見出したコンビネーションだ。実際、集団戦では俯瞰して指示が出せる者がいるといないでは戦いやすさは天と地ほどの差がある。そんな中に姫を抱いた翔が駆け込んで来た。
「っと、そちらは……姫君かい」
「他の護衛は? まさか全滅というわけではないでしょうが」
 櫻と近衛が翔に尋ねる。
「本陣の皆さんはこっちに後退してくるっす。俺は姫さんをつれて先に来たっすよ。皆さんはまだ戦えるっすか? 」
 目を見れば、どう答えるかは判っている。ただ、言葉にすることも力となるのだ。無力に打ちひしがれる者を励ます力に。
「まだまだ、ハチの巣は作り足りないな」
「敵の動きもわかってきたところだ、他で活用できるなら嬉しいよ」
「と、いうことだ。どうすればいい?」
 力強く、ミアズマと近衛が答え、櫻が尋ね返す。
「じゃあ下がって来る本陣の皆さんと合流頼むっす! 」

●そして、現われるもの

 ちりん。

 四人が本陣と合流し、これで安心と一息ついたとき。それは現われた。
 
 ちりん。
 
 これまで戦っていた鈴たちがあげなかった、美しく澄み透った音色。……確かに美しいはずの音色は背筋を凍らせるような気配をまとっていた。
「本当はそちらのお姫様だけ、消すつもりだったのですが」
 銀の髪と青い瞳。静かに、余裕の笑みさえ浮かべて。
「『秘密』を知ったからには、皆殺しにするしかないですね? 」
 妖狐『小町』は立っていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『妖狐』小町』

POW   :    妖狐の蒼炎
【青白い狐火】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    クイックフォックスファイア
レベル分の1秒で【狐火】を発射できる。
WIZ   :    コード転写
対象のユーベルコードを防御すると、それを【巻物に転写し】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠暁・碧です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

シラ・クロア
不死の呪いの鍵は手にした巻物にあり、だったわね。
確かに巻物を持っているけど、こちらが「秘密」を知ったことは妖狐も分かっているようだから、そう簡単には狙えないかしら。
とは言え、まあ――戦う中で隙を引き出すしかないわよね。
【光の穿ち】で四方八方から妖狐と巻物を稲妻攻撃。
ユーベルコードを巻物に転写? そう、じゃあそのときが狙い目かしら。広げられた巻物にこめられた真名と魂を閃光の刃で切り裂けたらいいのだけど。私じゃなくても、どなたかそのタイミングを狙って攻撃できそうだったらお願い。
皆の負傷が蓄積するようなら【ノクターン】で治癒を。姫様はご無事?
妖狐からの攻撃は第六感や見切りによる回避か、オーラ防御。


ツーユウ・ナン
件の妖狐自らやってきたか、どうやら姫君とは浅からぬ因縁があるようじゃな。そして話によると彼奴を討滅するには、まずはその手の『巻物』を奪い、記された『真の名』を明らかにせねばならぬ。皆と連携して成し遂げねばのう。
 わしの拳法は接近戦が専門。機を見て懐に飛び込み、攻撃をしながら隙を作れば『巻物』を奪えるかも知れん。
・同じく近接勢がいれば息を合わせて立ち回り、敵を翻弄する
・[見切り]、鉄箸(装備4)による[武器受け]
・隙を突いてその手の『巻物』を箸による[早業]で奪取

【優先】姫が狙われたら[かばう][拠点防御]UC『龍氣金剛功』

オブリビオンを倒し、そして姫君も守り通してみせよう。


アララギ・イチイ
あらぁ、可愛い子(美味しそうな子)ねぇ
不死なら幾ら食べても息絶えないから、実質これも食べ放題よねぇ?(諦めて下さい

射撃武装は弾切れ(設定的に)なので近接戦闘を挑むわぁ
装備は巨大剣、相手の攻撃はシールドビットで(盾受け)したり、巨大剣の側面で(武器受け)して対処するわぁ

ドラゴニアン~使用時は盛大に宣言してみようかしらぁ
私の必殺技をUCを喰らえぇ!的な?、たぶん巻物で防御するでしょうから、防御したら(怪力)任せに引っ張り振り回すわぁ
運がよければチェーンで繋がっている巻物だけ奪い取れるかしらぁ?
もちろん他の仲間が良い案が出るなら、そっち優先、相手が積極的にUCを巻物防御している状況なら、だけどぉ


神酒坂・恭二郎
・POW指定
ようやっと親玉のお出ましだ。
こいつを倒せば姫さんの辛苦も少しは浮かばれるだろう。
今までの鈴達とは段違いの威圧を正面に受ける。
さて、どうしたものか。

戦闘は妖狐の正面に立って中距離戦。
突き技で【くし刺し】の【衝撃波】を放ち納刀を繰り返す。【スナイピング】の【誘導弾】で曲射させ、前衛の邪魔にならないように援護。
反撃を【おびき寄せ】、前衛に蒼炎が飛びそうなら【居合/クイックドロー】で【カウンター】のフォースを【捨て身の一撃】で飛ばし、【オーラ防御】として味方ダメージ軽減を図る。
相手の攻撃に切れ間があれば【力を溜め】、サイコキネシスで不可視の念動を飛ばし、巻物を妖狐の手元から離す事に挑もう。


影宮・近衛
真の姿
手足が獣化し、霊符を自身の周囲に浮遊させて操る様になる

自身の魂を器物に移す術とはな。
その秘密をよくぞ伝えてくれた。
後は我等に任せるがいい。
我が真の力、見せてくれよう!

『破魔』の霊符を『念動力』で操り、一挙に敵へと射ち放つぞ。
皆とも協力し手数で圧倒すれば、敵も狐火だけでは対抗出来まい。
やはり鍵はあの巻物、まずはそれを引き出す所からだ。
しかし、あの巻物はやはり強力だな。
特にユーベルコードをコピーされるのは厄介だ。
ならばその能力、封じさせて貰う!
この符は先程までの物とは違うぞ。
受けよ、『七星七縛符』!
くっ、やはり反動が大きい……だが力を解放した今ならば、まだ耐えられる。
さあ、今が好機だ!


風切・櫻
「ほう。これはかの羅刹の姫にも劣らず美しい女子だ」
――とは言え。その隠そうともせぬ殺気が些か刃に響くな
例えるなら、そう。『鞘当て』だ
つまり。斬るしか無いな

真の姿の片鱗……桜の花びらの幻影を纏い、旋風を起こす
刀は鞘に納めたまま

小細工はせぬ
【残像】を残し、狐火を掻い潜り接近し
剣刃一閃――居合の一太刀で叩き斬る

見た目が女子であろうと躊躇いは無い
それは紛う事無いあやかしであり、オブリビオン――我らが敵なのだから

「何より、今この時、おれはあの姫君の刃でな」
それを害すると言うなら、阻む他無かろう


テラ・グゥスター
不死身の能力で悠々と殺戮ってか、いい趣味してやがるなぁこいつは……終わりだよ、ここで。そうやって笑いながら踏みにじってきた報いを受けろ。

【SPD】
まず何をおいてもあの巻物、不死身カラクリをどうにかしねぇとならんワケだな。味方は戦闘に秀でた頼もしい連中が多いし、ひとまず左右の仕込マシンガン「クイックドロウ」「援護射撃」で味方の近接戦闘支援と、ネイルガン「スナイパー」でのUC発動を狙っていくか。特に狐火を量産されると厄介になりそうだ、優先して撃ち落としたい所だなぁ。
万一味方が攻めあぐねる様なら乱戦に乗じて接近、ブースター「吹き飛ばし」でイチかバチか巻物を狙ってみよう。


ミアズマ・フォルテ
ずいぶん好き勝手をしてきたようだがこれで終わりだ。
犠牲になった人々に詫びてもらおう、あの世でな。

SPD重視で行動

なるほど巻物が本体という訳か、それを奪うなり破壊なりすれば
倒せそうだが、まずはある程度弱らせなければそもそも近寄れん。

横か後ろに回り込んで他の猟兵を援護出来るよう
タイミングを合わせて千里眼射ちで攻撃を仕掛ける。
ある程度戦闘したのちに巻物狙いで突っ込む猟兵がいれば
優先的に援護射撃して少しでも敵の動きを阻害しよう。
その巻物、こちらの攻撃を真似る事が出来るようだが
別方向から同時に違う種類の攻撃を受けても対応できるかな?



●序

「どうしたの、猟兵さんたち。命乞いもできないのかしら? 」
 細く高い、美しい声色が猟兵たちの耳を撫でた。ほぅ、と息を吐いたのは誰だったか。
「ほう。これはかの羅刹の姫にも劣らず美しい女子だ」
 いささか緊張感に欠ける感想を口にしたのは、風切・櫻(ヤドリガミの剣豪・f01441)だ。とはいえ別に褒めようとしたわけではないのだろう。不意をうたれて飲まれかけた空気を猟兵側に取り戻す。いや、それでも五分か。
「ずいぶん好き勝手をしてきたようだがこれで終わりだ。犠牲になった人々に詫びてもらおう、あの世でな」
 しかし、それで十分とばかりにミアズマ・フォルテ(求める者・f00215)が啖呵を切ると、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)も
「ふふっ、可愛い子ねぇ。不死なら幾ら食べても息絶えないから、実質これも食べ放題よねぇ?」
 と、余裕の様子で誰にともな問い掛ける。挑発でも比喩でもなさそうなのは、追及してはいけない。
「お話できるようになったみたいね? それじゃあ、自己紹介させてもらいますわ」
 猟兵二人の圧力に対しても、蒼銀の妖狐はふわりと微笑んだ。戦場の中心で、武装した戦士たちを前にして、一国を炎に包んだその後で……全く状況に似つかわしくない優雅な礼と共に。
「わたくしは『妖狐』小町、よろしくお願い致します。……短い、間ですけれど」
 ぎりぃ、と奥歯を噛む音がした。テラ・グゥスター(生存こそ正義・f04573)だ。
「そうやって、笑いながら踏みにじってきたんだな。不死身の能力で悠々と……いい趣味してやがるな」
 喉の奥から振り絞るような声で呟く。その目線は、ちらりと姫の方へと向く。――恐怖に震えながら、それでも小町から目を離さない彼女の代わりに。
「……お前は終わりだよ、ここで。命を踏みにじってきた報いを受けろ」
 しかしその宣言も、妖狐の心には響かない。同じように姫を見ても、吐き出す言葉の色は正反対。
「あら、不死身じゃなくても、人間の国一つ落とすくらいは出来ますのよ。ねぇお姫様、見たでしょう?あなたを守ろうとした人が、無力に、無駄に、死んでいくところを! 」
 昂った声を静めるように自分を抱き、さらに続ける。
「ああ!哀れなお姫様。大丈夫、そんなに怯えなくてもいいのよ。あなたはすぐには殺さない。殺す価値がないもの。『秘密』を伝える前ならいざ知らず。ふふ、最後まで生き残って、あなたから『秘密』を聞いてしまったせいで、このヒトたちが傷つき死んでいくのを見ていなさいな」
 言い終わるより早く、櫻が被せる。
「ああ、酷いな。これは流石に前言撤回させてもらおう。隠そうともせぬ邪気で刃も曇るというもの。幾ら何でもこれでは、美しさで並ぶとは言えぬ……よ! 」
 言いながら踏み出すと、桜の花びらの幻影が櫻を覆い、旋風が巻き起こる。彼の真の姿の片鱗だ。後に映る残像が重なり、まさに桜吹雪の如く。必殺の居合いはしかし……。
(「浅いか……! 」)
 突如現れた青白い炎が邪魔をして、斬り落とすとまではいかない。炎は同時、他の猟兵たちにも襲い掛かっている。櫻の攻撃に呼応して動こうとしたツーユウ・ナン(粋酔たる龍女・f04066)とシラ・クロア(夜を纏う黒羽のフェアリー・f05958)の動きも一瞬遅れる。ツーユウは炎が出現した瞬間姫を庇おうとしたが、先程の宣言通り、小町は彼女を狙わなかったようだ。だが、躊躇はそこまで。青白い狐火をシラの視線が貫いて、雷光が走る。シラのユーベルコード【光の穿ち】。幾条もの光が炎を相殺して、やがて小町へと殺到する。その光と共に、ツーユウも自分の間合い……接近戦へ持ち込もうと飛び込んだ。刹那。
「あら、こわぁい」
 小町を包むように紅い狐火が生まれて放たれる。
(「全体攻撃の炎と、瞬間発動の炎……流石に配下程甘くはないね」)
 咄嗟に身をかわして直撃は免れたものの、速いからといってダメージまで軽いわけではないようだ。
「見るからに格闘家なヒトを簡単に近づけたりはしないですよ? 危ないですから」
「っ!危機感のない喋り方で! 」
 やはり、単純に力比べをしてはオブリビオンに軍配が上がる。だが、そんなことなど猟兵ならば皆知っている。だからこそ
「合わせろっ! 」
 中距離で援護の構えを見せていた神酒坂・恭二郎(スペース剣豪・f09970)が声をあげる。誰かに言ったのか、それとも皆に言ったのか。猟兵たちは強い。だが、オブリビオンはそれより強い。それでも猟兵がオブリビオンに立ち向かい、勝つのは彼らがその場その場で協力し合うことを知っているからだ。今ここにいる猟兵たちも例外ではない。【くし刺し】【衝撃波】【スナイピング】【誘導弾】持てる技能を駆使して援護に特化した動き。切り込む隙さえ与えれば、皆が動くという信頼。
「接近戦を嫌ってるってことは」
「やる価値がある 」
 それぞれタイミングを計っていたミアズマとテラも呼応して援護射撃をはじめる。遅れて……というより、わざと時間差を作り
「哀悼の光のあとに安らぎのあらんことを」
 再び、シラの青い瞳が小町の姿を捕らえた。雷光と銃弾、刺突撃が青い炎の群れを的確に潰していく。生まれるのは間隙。
「それじゃあ、あたしの必殺ユーベルコードを喰らえぇ!」
 アララギが巨大剣を構えつつ小町へと迫る。声をあげたのはわざと気を引く為だが、気を抜くようなら必殺を叩き込むつもりなのは本当だ。【ドラゴニアン・チェイン】を小町の【クイックフォックスファイア】が迎え撃つ。さらに剣の影からツーユウが飛び出した。瞬炎すら間に合わぬタイミング。ついにツーユウの拳が蒼銀の妖狐を捕らえた。
 
●罠

 違和感を覚えたのは影宮・近衛(電脳陰陽師・f08723)。ひとり、手足が獣化し霊符を自身の周囲に浮遊させるという真の姿を見せて力を高めていた彼女は小町の動きに積極性がないことに気付いたのだ。破魔の霊符を念動力で操り、支援しながらのことである。流石の猟兵たちも、真の力の解放までせずに、そこまでの余裕はなかった。彼女が気付いたのは僥倖といえよう。そしてそれが意味することは……?
「ユーベルコードの転写! 」
 広大な範囲をカバーする青い炎、瞬時に生み出される赤い炎、そして小町がつかうとされる3つ目の技。対象のユーベルコードを防御すると、それを【巻物に転写し】、1度だけ借用できるというものだ。
「そいつは『狙っている』ぞ! 」
 近衛の忠告に、皆が意識を新たにする。かの妖狐の弱点でもある『巻物』は狙うべき対象であると同時、強力な防具でもあるのだ。ユーベルコードは多種多用。使い手の数だけ種類があると言ってもいい。そしてそれは猟兵たちがそれぞれ磨いた技術の結晶だ。必殺の気概で生み出した技は初見で防ぐことは難しいだろう。さらに、基本的な能力について、オブリビオンは猟兵を上回る。元の使い手を超える必殺の技が、返されるのだ。その危険性は言うまでもないだろう。使い手本人であれば、防げる可能性は上がるが……。
「んー、バレちゃったか、仕方ないですね。ばーん! 」
 不意に、無造作に。小町は姫に向けて狐火を放つ。
「罠を見破ったときが、一番隙があるんですよね」
 にやりと、邪悪に唇が歪んだ。
 
●決

「戦馬鹿の羅刹のくせに、逃げるとか信じられます? 計算が狂って困りましたよ。ま、あとで殺すつもりでしたから、順番が変わっただけです。あ、怒りました?妖狐は気まぐれなんですから、信用しちゃダメですよ、ふふっ」
「ああ、そうじゃな」
 姫君の居た場所から聞こえるのは『誰か』の為に力を使うべきだと悟った者の声。
「信用しなくてよかったのう」
 かの羅刹姫の安全を優先すると決めていた、ツーユウの姿があった。
「は? 」
「裏をかいたと思った時が、一番隙があるのよねぇ。いっただっきまぁーす! 」
 爆発! アララギのドラゴニアン・チェインが今度こそ小町を束縛する。
「その能力、封じさせて貰う!」
 好機を逃さず、近衛が命を削る大技【七星七縛符】で攻撃に転じた。
「え、なに、これ……? 」
「惚けていると、邪気が消えて少々可愛げもあるか」
 とはいえ、見た目が女子であろうと躊躇いは無い。それは紛う事無いあやかしであり、オブリビオン――我らが敵なのだから。
「何より、今この時、おれは……いや、おれたちはあの姫君の刃でな」
 櫻の居合いが、今度こそ小町の巻物を持つ腕を切断した。
「あああああああああああああああああああっ! 」
 叫びをあげつつも、人外の生命力を持つオブリビオン。無事な腕を伸ばし、自らの生命線たる巻物を取らんとする。しかし
「やっと美味しそうな声あげたわねぇ」
 その身は束縛され、
「くっ、やはり反動が大きい……だが力を解放した今ならば、まだ耐えられる」
 その力は封じられ、
「無様だな……奪った命、その身で贖え」
 炎が攻撃に向かなくなったため、支援していた者たちが攻撃に転じ、防御が精一杯なところまで追い詰められる。
「これが不死の術の源ね」
 恭二郎がサイコキネシスで小町から放した巻物を、シラがそっと捕まえた。
「汝、妖狐『小町』。真名コウヨウキ。そのミタマ、うち滅ぼさん。……とかでいいのかしら」
 閃光の刃が巻物を焼き尽くし、滅国の妖怪はその存在を終えた。
 
●続

「な、誰も欠けなかっただろう? 」
 全てを失った姫君は、大粒の涙と共に、笑顔を見せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月07日


挿絵イラスト