トゥイ・トゥエ・トゥアイア
●此れは死地へ向かう参列者の言葉である
集まった猟兵に鋭い視線が向けられる。しん、と黙った長身の男はある絵を差し出した。描かれていたのはアックス&ウィザーズ世界のどこかとも見える美しい緑広がる場所だった。
「……『群竜大陸』。アックス&ウィザーズの、要処。……それの、痕跡を調べること」
要件を手短に語り出した男、柊・泰平は先程の絵を自身の顔の近くに持っていき指を差す。
「……大陸に向かった者。勇者と言われる者の痕跡。それは『群竜大陸』に繋がる。……ここは、森と丘陵地帯。……勇者も通ったらしい」
短い言葉から分かったことは二つ。『群竜大陸』へ繋がる『勇者一行』に関する情報を収集すること。森と丘で構成された土地にそれがあるということ。
「……ここは、恵多い土地。そして、広い。……まず、着いたら、食料の確保を最推奨する。……あとは、森と、丘陵を調べてほしい……」
具体的にどういったものがあるのかは泰平にも分からないそうだ。しかし、うんと長い沈黙の後、彼の導き出した答えが開かれる。
「……石碑。あるかもしれない。丘は、岩もある。……森も。……あと、ここには不思議な唄がある、ようだ。多分、刻まれている」
詳しくは分からないらしく、ほんの少しだけ眉を下げた泰平。だが、猟兵達の指針として、石碑探しをすればいいという情報は大きい。
「……『怪しいところは戸棚と石碑』。……誰かが言っていた。気になる大きな石や岩、多分、石碑かもしれない」
それがどこにどういう形状で存在しているのかは実際に行ってみて探すしかない。
「…………勇者は沢山。誰が残したかは分からない。……でも、残った理由はあるかもしれない。……よろしく」
ぽそり、呟いた声に合わせて猟兵達は小さく頷いた。
楪カジ光
うおお楪カジ光ですうおお。
今回は『群竜大陸』という今後に繋がる重要ポイント……に繋がる『勇者一行の痕跡』を探してもらいます。
泰平が説明した通り、森と丘陵広がる場所での捜索です。
第一章は食料確保の調理パート。見晴らしのいい丘陵寄りの地点に皆さんをお連れしますので、今後の為に食糧になる料理や飲料の確保に励んでください。採った食材は生では食べられないものばかりなので、必然的に調理が必要になります。丸焼き等の豪快な料理や少し手の込んだ料理でも割かし何でもできます。勿論、その場で味見の食べ専でも大丈夫です。この章が成功すれば食料を確保できたと見なされますのでご安心を。勿論、道中で痕跡を探しつつ行動しても構いません。
ある程度の準備が整ったら第二章……森の奥地へ捜索範囲を広げます。
石碑については泰平の言葉通り、どこにどのようにあるかは謎です。丘陵や森には所々に大きめの石や岩があったりしますので、全部が石碑というわけではないですが、探せばかなり見つかるかもしれません。
今回行う皆さんの捜索が未来に繋がることを願って。それではよろしくお願いします。
第1章 日常
『幻想的な食材でレッツクッキング!』
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POW : 私は食べ専です。豪快に食べる!
SPD : 幻想的な食材も、私の技量にかかればたちまち美味しい料理に!
WIZ : まさにファンタジーな料理を生み出してしまう。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アマータ・プリムス
【師匠と弟子】で連携
まずは食料の確保ですか
人手が必要そうですね、頼みましたよネロ、アリス
UCを発動してネロとアリウスを呼び出します
ネロには動物のお肉を
アリウスには食べられそうな野草や果物を集めて来ていただきましょう
「それではアリス、屋外での調理についてのレッスンです」
アリスたちが集めてきた食材と当機が集めた食材を合わせて【料理】開始です
屋外ではあまり手の込んだものはできません
素材の味を活かすのが一番です
集めた素材を切り分けダッチオーブンで煮てしまいましょう
「手を切らないように気をつけて、ですよ?アリス」
そこに赤ワインを投入して自然素材のお手軽ワイン煮込みです
栄養もこれでばっちりですね
アリス・レヴェリー
【師匠と弟子】で連携
食料の確保ね!アマータさん。任せてちょうだい!
こうなると探すメンバーは多いほどよさそうね。【選択UC】で黄金の獅子の幻獣、ダイナを召喚するわ。
この子は目も鼻もいいから、見つけづらい果物や、香り高い野草を見つけられるし……タイミングよく遭遇できれば食用に向いた動物を狩ってきてくれるかも
充分な食材を集めたら次は【料理】ね!
「はぁい、アマータさん!頑張るわ!」
わたし達で集めた食材を、アマータさんの教えてくれる手順に従って料理していくわ。
慎重に食材を切ってアマータさんに渡しましょう。
「こんな感じ?……結構綺麗に切れたわ!」
この後は煮込み終わるまで待つだけね!見てるだけでも楽しいわ!
遠くで鳥が鳴いている青空。その景色を一望しながらアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は【Date et dabitur vobis(ダテ・エト・ダビトゥル・ウォービース)】を発動し、『ネロ・フラーテル』と『アリウス・プーパ』を起こす。触れた者に姿を変える『アリウス・プーパ』はアマータと同じ姿を取った。
「ネロは周辺にいる動物のお肉を。アリウスは果物や木の実を取ってきて頂戴」
指示された言葉を理解した二体は頷きを返し丘陵へと散っていく。それとすれ違うようにアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)が【友なる金獅子、勇猛の調べ(ブレイヴ・オブ・ダイナ)】で召喚した【黄金の獅子(ダイナ)】が戻ってくる。
「アマータさん! 香草と木の実を沢山取ってきたわ!」
「まぁ。こんなに。これだったら美味しくできそうです」
アリスの調達した品を受け取ったアマータの顔は動きはしないものの嬉しそうだ。さて、【人形(弟)】達が戻ってくる前に下準備をしなければ。
「それではアリス、屋外での調理についてのレッスンです」
野外で採った物は火入れをするのが基本だ。生のままで食せるのは果実ぐらいだろう。比較的森に近い場所で拾った枯れ枝を組み、手早く火を起こす。
「枝は水分のないものでないと上手く燃えません。なるべく乾いた枝を探すこと」
「はい!」
「それと、今回は鍋の一種として区分されているものを使います。重たい物ですので運搬方法を確立しないと自由に使えませんが、万遍なく火を通すのに適しています。これを火に掛ける台も設置すること」
手際よく焚火と台の設置がされていく。アマータが持ち込んだ鍋は別世界でダッチオーブンと言われているものだ。鉄製のものが主流で、重さもそれに比髄する。気を付けないと体を負傷しかねない。
「おや。お肉と果実が着きましたか」
蓋を取り外している最中に『ネロ・フラーテル』と『アリウス・プーパ』が帰還する。手にはそれぞれ血抜きされた鶏肉と赤い果実がある。
「果実は……リンゴに近いもののようですね。それでは始めましょう」
まず果実と木の実の皮を剥ぐ。木の実の硬い殻はナイフを一周入れて割る。果実は薄皮を桂剥きに。それぞれ剥き終わったら木の実はナイフの面で潰し、木の実は薄く切る。
教えられた手順通りに下拵えをするアリスの手元は少々覚束ないが、それでも何とか指を切らずに木の実と果実を処理していく。
「こんな感じ? ……結構綺麗に切れたわ!」
「ええ。上手です。では、私は鶏肉の処理を」
血抜きされた鶏肉はそれぞれの部位を大きめに分ける。鍋に敷き詰められる大きさで良い。下味に前もって用意していた塩コショウを振り、臭み消しに採取した香草を添えよく揉み込む。
「手の体温が伝わるのは良くありません。この作業は手早く、です」
「分かったわ」
「さて、では火を入れていきましょう」
鍋に鶏肉を敷き詰め、その上に果実の薄切りを重ならないように広げる。最後にいくつかの香草も入れ、準備は整った。『ネロ・フラーテル』にも手伝ってもらい、鍋は無事焚火の上に設置された。
「最後にこれです」
そう言ってアマータが取り出したのは細長いビンに入った赤色の液体、ワインである。
「えっ、お酒!?」
「アルコールは熱で蒸発します。……ですが、今回は少なめにしておきましょうか」
水で希釈したワインを回し入れ、重い蓋をする。本来であればワインの比率が高いものを今回は水を多めに入れ込んだのは後味に広がるワイン独特の味の刺激性を考慮してのことだ。
十五分後。熱くなっている蓋を『ネロ・フラーテル』に取ってもらうと湯気と共に甘い香りが立ち込めた。
「わぁ……!」
「ワイン煮の完成です。最後に潰した木の実を鍋の底に出来たソースと和えて……」
アリスが切り、潰した食材がキラキラと眼前に甘い香りを漂わせる。肉は火の通った薄白にワインの赤みがかったソースが色を付けている。一緒に煮込まれた果実の薄切りは熟したように蜜と水分を出し、小さい木の実と重なっている。
「味見をどうぞ」
「はい! いただきます!」
携帯用のナイフとフォークを渡され、一口大に切った料理がアリスの口へ運ばれていく。
果実の甘酸っぱさとワインの辛さ、木の実の渋さと肉の淡泊さ。それら全てが舌に乗り、同時に旨味へと変わっていく。ワインの辛さが強ければ果実と一緒に頬張る。果実の甘さがくどければ木の実と一緒に噛めばいい。
「……すごい。こんな手の込んだ料理が野外で作れるのね」
「いえ、手は込んでませんよ。食材が新鮮で、この調理法と相性が良かったからです。場所、物、方法。この三点を意識すれば料理はどこまでも可能性を広げます」
そう言ったアマータは既にワイン煮を一口大に切って保存容器に詰めている。密閉は荒熱が取れてからだ。
「楽しいですね!」
「ええ。楽しいですよ。……そして、美味しいのです」
容器を閉めるまで、アマータも残ったワイン煮を口にする。ソースを多めに絡めた彼女はその味に少しばかり頬を緩めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『迷いの森』
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POW : 直感を信じて進む など
SPD : 法則性を導き出して進む など
WIZ : 森の秘術に直接干渉する など
イラスト:シロタマゴ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
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| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
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●私は歌います。あなたの為に
食料の確保が出来た猟兵達は遂に森の領域に足を踏み入れる。日の明るい内の森は木々の隙間から漏れる光を反射し、幻想的な世界を作り上げていた。ふと、一人の猟兵が足元を見る。
それは石の置物だった。森でこの大きさの石はあまり見たことがない。首を傾げていると苔生した表面に凹凸が見受けられた。触ってみると、確かに表面に人為的傷が感じられる。苔を剥がしていくと何と文字が刻まれていた。
『に、そのお礼を述べましてこの歌を』
文章の途中だ。更に苔を剥がし表面全部を露わになるようしてみたが、所々途切れている。
『……様の勇敢なる……は、私…………も有………な……でした。……歌……しか出……けれど、そ……もこの歌……げ……』
風化が激しかったのだろう。しかし、最後の一文だけは綺麗に残っていた。
『勇者様に御加護があるよう、ここに記します』
成程、これが石碑というものか。猟兵達は森に石碑があることを知った。また別の猟兵が声を上げる。どうやら別の石碑を見つけたようだ。
『子孫達へ。森の奥、あの静かなる場所に。私のすべてを記します』
たったそれだけが書かれた石碑であったが今の猟兵達には貴重な情報源だ。記された森の奥。そこに探すべきものが存在しているだろう。そして、その道中に石碑も幾つかあるはずだ。
猟兵達は各々のやり方で森を進む。刻まれた言葉に思いを感じながら。
アマータ・プリムス
【師匠と弟子】で連携
さて、次は森の探索ですか
複雑な森の様ですが問題はないでしょう
迷わぬよう携帯秘書装置で【学習力】を用いてマッピングをしながら森を進む
UCで呼びだしたネロには周囲の状況を探ってもらい石碑や危険な個所があれば報告させます
「アリスも気になったことは言ってくださいね」
障害物があり進みづらい様な場所は近場の木に右手のフィールムを巻きつけワイヤーアクションといきましょう
「ほら、アリスちゃんと捕まりなさい」
アリスを抱っこしながら飛びまわります
静かな場所らしき所に辿り着いたらネロも加えてアリスたちと【情報収集】です
「すべてが記された石碑とやらはどこでしょう……」
ここでなければ諦めずに次ですね
アリス・レヴェリー
【師匠と弟子】で連携
とりあえずこの手がかりに従って森の奥まで進みましょうか。
食料確保の時に【友なる金獅子、勇猛の調べ】で召喚したダイナをそのまま連れ立って、アマータさん共に森を進むわ。
「任せて!わたしも頑張るわ!」
道程に存在する石碑は、森の大地に馴染んでいないようだし、大地の力を御せるダイナならきっと見逃さないはずよ
悪路はアマータさんに頼ってしがみつくわ
「うん、ありがとう!しっかり掴まってるから!」
ダイナは身軽だし、障害物なんかぴょんぴょん越えて着いてこれるでしょう
目的地らしき所に着いたら、アマータさんと一緒に石碑探しね。それらしきものが無いか周囲の【動物に話し】かけて聞き出せないかしら?
『畏敬なる竜の鱗。来る風車の鐘は鳴り、運命の女神は信託を告げる。遠く鳴るあの鐘の名はヴ■ン■■シェ■。運命の女神の拠り所』
かすれた箇所を撫でながらアマータは音読する。『携帯秘書装置』に詳細を記入しながら同時に地図を開いて位置情報も追加しておく。
「どうやら森の入口付近にはこのように一部だけ読めなくなった石碑が多いようですね」
アマータの真似をして【ダイナ】の毛並みを撫でていたアリスもコクリ、と頷いた。
「ええ、さっきもダイナが見つけた石碑は読めるところの方が多くて、あまり壊れていなかったわ」
ちなみにアリスが見つけた石碑には『謳えよ、シ■リ■ーナ。月の瞳とお前の心。讃えよイ■リ■ー■。太陽の微笑みとお前の声よ』と書かれていた。アマータの端末には勿論記入済みである。
「ここの立地が保存状態を良好に保っていたのか、それとも作られた時期自体が新しかったのか……。謎は尽きませんね」
「でも、書いてあることはよく分からないわ。何かのお話かしら?」
「どうでしょう。最初の石碑には歌という文字がありました。童謡、民話、抽象譚、どれが該当でもおかしくありません。逆にどれでもない可能性すら高いのが今分かることですね」
誰が何の為にこの石碑群を建てたのか。今のところそれを証明してくれる石碑の言葉はない。先に進みもう少し情報がなければ仮説も組み立てられないのが現状だ。
「他の石碑を確認するしかなさそうですね」
そうとなれば、奥に見える巨木の足場を伝っていかねばならない。アマータは『マギア・フィールム』を上空に放ち、木の枝に引っ掛けた。そのまま二、三度引いて落ちてこないことを確認すると、アリスへ手招きする。
「先に進みます。こちらへ」
素直に近付いてきたアリスへ自分の腰をしっかり掴んで離さないよう注意してアマータの細い脚は足場を蹴り上げる。
「振り落とされないようにして下さいね」
「うん、ありがとう! しっかり掴まってるから!」
風を切り、木々の間を振り子が如く進む二人を追うように【ダイナ】も根の足場を飛び移りながら付いていく。森はまだまだ続いているようだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ナザール・ウフラムル
とりあえず、色々と石碑を探しながら森の奥に進めばいいんだよな?
「カーマル」を鷹の姿のまま飛ばして、石碑っぽいものを探してもらう。(【野生の勘】)何か見つけてきたら、そこへ案内してもらおう。足場が悪そうな所は木の枝を足場にしたりして移動する。(【ジャンプ】併用)
後は、石碑みたいなものを見たことがないか、森の動物たち、特に小動物なんかに訊いてみるか。(【動物と話す】、小動物を釣るためのナッツ類は持参)
『鐘が鳴る時、■■が動き出す。■■■■■シ■ドは告げるだろう。彼の■を、彼■を、そして、■■を』
ナザール・ウフラムル(草原を渡る風・f20047)は『カーマル』が指した石碑を指の腹でなぞる。ただの彫刻である文章は何も反応しない。鎮座している場所も澄んだ空気に溶け込む音が何処までも静かで美しいだけの森の中。
「……石碑の文章に何かあるかもしれないと思ったんだけどなぁ、精霊の力とか特殊なのはないみたいだ」
森の中に巡る【風】は精霊が好みそうな純度を持つが、石碑にそういった何かしらの力が働いているようには思えない。実際、ナザールが問いかけてみてもただの石碑だったのだ。
「物も点在していて、文章は風化して穴だらけ。でも石碑一つの文章はそれ自体で完結している。はぁ……彫った奴は何を考えていたのやら」
何かを讃えるような難しい戯曲調の文章ばかりで構築されているように思える石碑群をナザールは溜息を以て見つめる。と、そこにまた『カーマル』が何かを知らせるように飛んできた。
「もう一つ見つけたのか。どれどれ?」
覗き込んだ石碑は風化よりも苔の繁殖が激しい。緑の原を手で毟り取ってやっと文面が現れた。
『■■■■様に、私は何も残せません。きっと我が■■達にも。この手にあったものは全て零れてしまったのです。それでも、■■ン■■■ェ■の信ずるままに、私は、ただ歌います。満ち溢れた歌の合間に、ひっそりと咲く花を植えましょう。これが、我が■■達の導きとなりますよう。この森の奥、私が記した真実を求め来る者へ』
今までとは全く違う文章にナザールは唸った。これはまるで手紙のようではないか。
「成程? 石碑の中にはこういうのが交じってるのか。とりあえずは奥に進むので間違いなさそうだな?」
良い仕事をした『カーマル』が褒めろとばかりに肩に乗ったのを、ナザールは満足げに撫でてやった。
成功
🔵🔵🔴
リチュエル・チュレル(サポート)
『どんな些細な事だって、運命のひとかけらってやつだ』
ミレナリィドールのマジックナイト × サイキッカー
年齢 100歳 女
外見 143.6cm 藍色の瞳 紫の髪 色白の肌
特徴 魅力的な瞳 長髪 絵画が好き さばさばした性格 実は家庭的
口調 古風な占い人形(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)
仲間には 学習能力の成果(オレ、あんた、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )
『鐘を■■せ。■ェ■■■■ドはそれに全■を■■■■た』
リチュエル・チュレル(星詠み人形・f04270)の細い指が撫でたのは概ねそのような言葉の羅列だった。
「ふむ。……短い。あまりに短い」
石碑の言葉は全て似たり寄ったり同じ言葉で出来ている。共通の単語もあまりに使われすぎて陳腐だ。
「こうも同じ結果ばかりだと疑問が湧いてくるなぁ。まるで同じ占い結果を延々と出し続けているような……」
ふと、リチュエルは石碑の確認し始めた。どれもこれもが適当に置かれているだけ。たった一つを除いては。
『■■■■様は、花が好きでした。揺蕩う水に■る美しき■■の色の花が。あの花の下に、■■■■様は■せば、喜んでくれるでしょうか?』
それは幾つか発見されている手紙のような石碑だ。その場所と今までの石碑の場所を確認する。
「やっぱり。この文面の石碑は地続きに配置されている。……成程。こいつは【道端に並べて在った】んだな」
もう存在しない道にひっそりと、息をひそめて立ち尽くしていたのか。他の石碑はそれを真似たか、或いは。
「カモフラージュ、にしては多すぎると思うんだけどなぁ」
存在意義の不明な石達を横目にリチュエルは進む。それらの理由は、ここにはないだろうから。
成功
🔵🔵🔴
フランチェスカ・ヴァレンタイン(サポート)
『世は全て事もなし、とは残念ながら参りませんようで?』
キマイラの鎧装騎兵 × 戦巫女
年齢 23歳 女
外見 163.3cm 緑色の瞳 金髪 色白の肌
特徴 ウェーブヘア 胸が大きい スタイルが良い アンニュイ 面倒見がいい
口調 慇懃淑女セメント風味(わたし、~さん、まし、ませ、ましょう、ますわね?)
時々 仕草がやたらと艶めかしい(わたし、あなた、~さん、まし、ませ、ましょう、ますわね?)
『■■■は、その■心の、ままに。貴方の、■は、■■が、守■』
奥に進むにつれて、劣化が激しい文が目立つ。それと同時に石碑の数も少なくなっていった。フランチェスカ・ヴァレンタイン(九天華めき舞い穿つもの・f04189)が見つけた石碑はほとんどが木の根に押しやられ砕け散っている。辛うじて読めた文章がこれだ。
「あらあら。ここまで来るともう読める物自体がなくなるのですか」
試しに石碑の下を軽く払ってみる。本来ならば石碑の石材が見えるはずの部分は固い木の根が走っていた。
「自然の中に埋もれた遺物、という言葉がぴったりですわ。幻想的かつ、悲壮的ですわね」
フランチェスカの足が向く先、淡く死んだ石碑の欠片が散らばるそこにまた読める石碑が一つ。
『■■■は■■■■様の■■です。■来、■■、永■に。■■■■へ■■貴■様へ、■■■の■の■を、■■っ■くれ■■■■この■■』
もう字の山が大分薄く目を凝らさなければ見れない。この先、まだ読める石碑は存在するのだろうか。
成功
🔵🔵🔴
中村・裕美(サポート)
副人格・シルヴァーナ
『貴方はどんな血を流すのかしら』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
特徴 長髪 のんびり 社交的 惨殺ナイフを愛用 実は胸が大きい
口調 シルヴァーナ(わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で社交性と近接戦闘特化。柔らかな物腰や【優雅なるご令嬢】で情報収集や対人系は得意な方。
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【部位破壊】で急所や腱を狙い、更に【傷口をえぐる】。その容赦の無さで敵に【恐怖を与える】、ちょっぴり猟奇的かもしれないが、そこはご愛嬌
槍を使うことがあれば、相手を【串刺し】にします
『■■■、■■■■、■■■■』
中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)は赤い瞳でそれを見た。普段とは違う容姿に顔つき。彼女の裏に潜む面が今、それを見ているのだ。『彼女』の名前はシルヴァーナ。裏であることを知りながら裕美に寄り添う影の令嬢である。
「あら。あらあら。もう読めませんわ。ここまで来たらもう壊れてしまったものばかり」
一つ進めば石屑だらけの苔道に読める石碑は見つからない。どれもこれも文字自体が壊れてしまっている。
「なんて憐れなのかしら。でも、これらは役目を果たしたのね」
シルヴァーナはそう言って、ある一つの石碑を覗き込む。幾多の石に埋もれたそれは、ここに存在する石碑の内唯一。読める文字が書かれていたものだった。
『■■■■様。ああ、私の、私達の希望。竜の住まう彼の地■■■■決めた■■に■■は■■■■へ■の■■を■■ます。この■■の跡にも、先■も』
竜の住まう、の言葉にシルヴァーナは笑みを深くする。ああ、手掛かりがここにある。これは楽しまずにはいられないだろう、と。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『パストール』
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POW : ディス・イリュージョン
自身からレベルm半径内の無機物を【昆虫や爬虫類の幻影】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD : ドラゴニック・リボン
【召喚した伸縮自在のリボン】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : ジャッジメント・パヴィリオン
【杖】を向けた対象に、【巻き付く炎のカーテン】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●私は刻みます。彼等の為に
森の奥に進んだ猟兵達は遂に石碑の群を抜けた。そこは小さな池と小さな花弁を付けた木が一本ある開けた場所。一見、景色が良いだけの何もない所だ。しかし、猟兵達は見逃さなかった。枝垂れている木の根元。苔に覆われた石碑が一つあることを。
近付いて状態を確認してみれば、しっかりと読める字ばかり彫られている。
『竜の住まう地に行く彼等は、ただの歌を歌うだけしかできない私に大きな勇気と希望をくださった。彼等の愛したこの木の下と、この場所への道標に、私の想いを捧げます。竜を制する騎士達よ。どうか魂が永遠とありますように』
成程、と誰かが言った。導になる石碑がはじめに存在し、その後他の石碑が作られていったようだ。その理由は書かれていなかったものの、文章の最後に筆者の名前と思われる人名らしき文字があった。それを見ようと一人の手が石碑に伸びた瞬間、木の陰から大量の昆虫が吹き現れた。咄嗟に距離を取る猟兵の前に、それは瞬く間と膨れ上がったかと思えば次にはバラバラと地に落ちる。よく見てみればただの石ころだ。驚く猟兵達は石波の静まった先に二足歩行の竜を見る。杖を持ったそれはその矛先で止める間もなく石碑を砕いてしまった。見るな、見れば殺す、といった意思表示だろうか。
ここで死ぬわけにはいかない。今見た文章だけでも持ち帰らなければ。殺気高らかな竜はその感情を察したのか大きく咆哮を上げたのだった。
鬼切・雪火(サポート)
『何もかも、ぜぇんぶ!俺は、初めてだ!』
ヤドリガミの剣豪 × 陰陽師
年齢 13歳 男
外見 150.4cm 赤い瞳 黒髪 色白の肌
特徴 露出度が高い 髪を纏めている 果物が好き
口調 朗らかな少年(俺、呼び捨て、だ、だぜ、だな、だよな?)
敵には 炎を宿す刀(俺、アンタ、だ、だぜ、だな、だよな?)
鬼切・雪火(ヤドリガミの剣豪・f04419)は目の前に佇む白い蜥蜴を睨みつける。一体かと思っていたそれは木々の間から次々と姿を現し、猟兵と違わぬ数になった。
「こんなにいたのか。墓荒らし」
石碑の下には何もない。誰かの名前が刻まれているわけでもないそれを、雪火は墓と言った。誰かの想いが込められている、その小さな破片を。
「どこかの誰かの置いてけぼりだったのにな。……ま、別に関係ねえけど」
そう言って握った柄の大柄な太刀にぽつりぽつりと火が灯る。妖し火、鬼火が周りに漂えば白の鱗が逆立った。
「照らせ照らせ、明るく照らせ」
【鬼火乱舞(オニビランブ)】に寄せられた赤い炎が敵へと次々放たれる。勿論、彼奴等もただ燃えようとはしてくれず、自身の持つ杖から同じく【炎のカーテン】を呼び出し相殺していく。炎と炎、どちらがどちらと言うまでもなく互いが互いを燃やし尽くす。後に残ったのは、その炎から飛び出してくる雪火だけ。
「一閃だ!」
炎にあれど、攻め手はそれに在らず。雪火の踏み込みで一体の首が落ちた。
「さぁ、来な! ここからは真剣の勝負だ!!」
木漏れ日に反射する鋭い反りが雪火の不敵な顔に重なって今、揺れている。
成功
🔵🔵🔴
須藤・莉亜(サポート)
「君の血はどんな味かな?」
「良いね、もっと楽しく殺し合おうか。」
敵さんの血を奪う事が最優先。幽霊や無機物などの血の流れていない敵さんは苦手。というか嫌い。
武器は大鎌の血飲み子、悪魔の見えざる手を使用。
UCはSPDとWIZのものを適当に。
敵さんの攻撃は【見切り】や【武器受け】で防御。
血は好きか? いや、それは時と場合と自分自身による。だが、基本的には血の通っている生物は総じて好ましいと思っている。
「うん。蜥蜴でも血の色は赤いみたいだ。なるほどなるほど?」
須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)はたった今、白鱗に突き刺して噴き出した体液を見てそう感想を漏らした。地面に滴る赤は散々見慣れているようで化け物相手には結構珍しい。
「味は、うーん……パサついている? 美味とは言えないね」
出血死した肉から『血飲み子』を抜き取る。繊維の断ち切れる音と最後の空気音が情けなく地に落ちた。勿論、周りの同族は煩く吼え続けている。
「個体差があるとは考えられないけど……試してみようか」
クルリ、手の平で躍らせた細く美しい得物が主人の目利きで別の蜥蜴を刺す。今度も赤く、味は雑味だ。
「駄目だね。罪も罰も何もない。美味しくないよ」
そうなれば只の肉塊に興味は特にない。襲ってくる個体を軽くいなして、一体首を刎ねてからもう一体は腕を落とした。今の莉亜は明らかな殺意だけを楽しみにしている。
「それじゃあ、簡単に楽しく殺し合おうか」
成功
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藤原・紫苑(サポート)
『おはようございます。今日も1日頑張りましょうね』
サイボーグのUDCエージェント × 陰陽師
年齢 14歳 女
外見 152.6cm 紫の瞳 緑髪 普通の肌
特徴 眼光鋭い 髪を纏めている 女性に好かれる とんでもない甘党 特訓好き
口調 事務的で相手は苗字呼び(自分、~君、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
兄弟姉妹には お姉ちゃん(私、相手の名前、ね、わ、~よ、~の?)
「限定神話(システム)30%限定解除」
藤原・紫苑(鋼の符術師・f10097)の体に内蔵された【魔導書】が言の葉に反応する。
「空間干渉、電圧制御、絶縁処理成功」
詠唱の間、迫りくる蜥蜴は『Exterminator』の光線が薙ぎ払いを見せた。この一撃を邪魔されるわけにはいくまい。【魔術書から生えた背中の触手】の先、眩い光が収束する。その正体は圧縮された雷。かつて人に扱えぬとすら言われた神の武器。
「限定神話:電雷顕現(システム:ニコラテスラ)発射ッ!!」
【触手】から放たれた電圧光線はその反動に任せて大きく暴れ回る。貫通する雷霆に穿たれた白い鱗は焦げ落ち、蜥蜴たちの身を痺れさせた。大きく動きの止まる大衆を紫苑は己の愛銃を撫でながら見据える。
「拘束完了。それではこれから、残滅を始めます」
そう、今は動きを止めただけ。彼奴等の息の根を絶つにはまだ一手必要だ。動こうとしない筋肉を震わせる白蜥蜴らへ、静かに照準が当てられた。
成功
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シャスタ・カスケード(サポート)
『さぁ、楽しい夜の始まりだよ?』
時計ウサギの殺人鬼 × UDCエージェント
年齢 27歳 男
外見 184.1cm 赤い瞳 銀髪 色白の肌
特徴 一房の髪色が違う 自分を抑えている 綺麗なものが好き 実は快楽主義者 実は面倒見がいい
口調 苦い甘露(私、君、呼び捨て、だ、だね、だろう、だよね?)
嘘をつく時は 甘い蜜毒(私、君、呼び捨て、だね、だよ、~かい?)
大きな蜥蜴はみたことがある。二足で歩くのも挨拶済みだ。赤い瞳も、魔導の杖も、全部全部見たことがある。でも、でもでもでも。
「白い鱗は初めて見るなぁ」
冷たい冷たい雪のように、甘い甘い砂糖のように、白くて白い、その表面だけは。
「雪に穴を掘っているのかい? それとも砂糖が好きなのかい? それともそれとも、君は絵具を塗るのを忘れたのかい?」
その問いはシャスタ・カスケード(月夜ノ孤独・f20860)のもの。蜥蜴は答えない。答えようもないのかもしれない。それは誰もが知らぬ領域の話であり、真理に近い答えなのだから。
「いいね、そういうの、好きだよ。……綺麗な鱗を剥ぎ取るのって、楽しいし」
逆立てないと綺麗に剥がせない。一度刃を突き立てると弱いものは忽ち砕けてしまう。その力加減は慣れで覚えなければいけない。
まるで一種の匠のような語りと恍惚の光を宿したシャスタは、手に持ったナイフで綺麗に半月を描く。その動きに合わせて白い鱗が飛び散り、光に反射して輝いた。それはまるで陽に照らされた粉雪のようだった。
成功
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アマータ・プリムス
アリスと連携
誰かの残したモノを踏みにじるのは許せません
あなた方を倒し持ち帰らせていただきます
まずはイーリスを取り出しチューニング
アルジェントムをアンプに変形させ歌声とイーリスの音を増大してこの森に響かせましょう
相手の振るう杖に合わせこちらも歌い始めましょう
炎のカーテンがこちらに巻きつく前に歌で炎を掻き消します
「これが歌の力というものですよ、甘く見ましたね」
迫る攻撃は歌で全て無効化
ここまですればお膳立ては十分
あとは頼みましたよ、アリス
戦いが終わったら記されていた言葉に従い石碑を探してみましょうか
見つかればよし見つからなければ言葉だけでも持ち帰ります
「名も知らぬ貴女の想いはちゃんと残りましたよ」
アリス・レヴェリー
アマータと連携
もー!今読んでるところだったでしょう!
今まで拾ったものもあるし、邪魔をするなら容赦はしないわ。
まずここまで召喚したまま一緒に来た金獅子の幻獣、ダイナに騎乗。
そのまま縦横無尽に動き回って、狙いを定めさせずに撹乱するわ。
数に任せて群がってくるようなら、爆ぜる属性の結晶【世界の雫】を投げつけることで牽制。
後は隙を窺って、彼らが放った攻撃をアマータさんが防いでくれたタイミングに、ダイナの力で地面から無数の岩槍を突き出して一網打尽にしちゃいましょう。
やっつけた後はわたしも一緒に石碑を探すわ。
そういえばあの石碑……杖で叩かれて砕けただけなら、ダイナの力で読めるようにくっつけられないかしら?
粉々になった誰かの想いが白い鱗に踏み潰されていく。破片が石になり、それが【昆虫や爬虫類の幻影】とされていく様をアマータは悲しく睨みつけた。
「……誰かの残したモノを踏みにじるのは許せません。それを手駒とするのも尚のこと。詩の意志はあなた方を倒し持ち帰らせていただきます」
その言葉に同意をするやる気に満ちたアリスの声も上がる。
「そうよ! せっかく読んでるところだったのに! 今まで見つけたものも全部持って帰るんだから、邪魔をするなら容赦はしないわ!」
宣戦布告は白蜥蜴の視線を一手に集めた。複数の杖が持ち上がり、【巻き付く炎のカーテン】を召喚する。迫りくる壁は逃げ道を塞ぎ、二人の退路を失くした。
「アリス、ここは突破します。あなたは攻撃の準備を」
「うん! ……猛る金獅子、気高き王よ、勇みて謳う、わたしの友よ!」
アリスの口上に応えた【ダイナ】が再びその姿を現す。その間、アマータは自身自慢のシンフォニックデバイス『イーリス・カントゥス』を軽く調整する。トランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』に接続すれば音量高の機材が完成した。しかし炎はあと少しで彼女達に触れそうだ。
「これで良し。……聴きなさい、この歌を。味わいなさい、歌の力を」
―――Mens agitat molem.
言葉だけ取り残された森に、音の乗った【歌】が大きく響き渡った。音色は炎と正面からぶつかり、それぞれに舞い上がって相殺されていく。複数のカーテンは言の葉の暴風に呑み込まれ、一枚一枚と消えていった。
「カーテンが開いたわ! ダイナ、お願い!!」
アリスの願いに呼応した金色の獅子は自分の前足で地面を撃つ。それが合図となり、白蜥蜴の群れが踏む大地から岩の槍が穿たれた。何体もの白い鱗が飛び散り爆ぜる。獅子の前足はまだまだ地を踏み続け、やがて蜥蜴の群れはたった一体のみとなった。それは最初に石碑を砕いた個体だ。
「えいっ!」
ゴツン、と鈍い音を立てて生き残りが崩れ落ちる。アリスの手にある【世界の雫】の重みは彼奴にとって十分だったようだ。
「終わりましたか。……さて、石碑は」
何もなくなってしまった場所を見回すも、破片は全て文字の形をしていない。
「……なくなっちゃったのね」
「形は。しかし、文章はしっかり保存しました。製作者の名前は残念ながら確認不可能になってしまいましたが……」
勇者の為に誰かが募る想いを残していた。その事実だけでも持ち帰ることができる。
「名も知らぬ貴女。その思いは未来でちゃんと受け取りましたよ」
寂しそうに石碑跡を見つめるアリスの背を、アマータは優しく支えてやった。
成功
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