10
Attack on the obelisk

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #クラウドオベリスク

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アックス&ウィザーズ
🔒
#群竜大陸
🔒
#クラウドオベリスク


0




 かつてそこには、大岩が存在していた。
 霧覆う岩山の一角でいた筈の場所は今現在抉れたように穴が空いている。
 割れた岩が転がり落ち、土砂が雪崩れ落ち、轟音と共に沈んでいく。
 穴はまだ広がり、崩壊している最中だった。

 咆哮が聞こえる。大きな、耳を掻き毟りたくなるような酷い音が聞こえる。
 響く度に、岩であったものがまるで砂山かの如く崩れていく。
 舞い上がる土煙と霧の中から、大きな翼が微かに見えた。
 音はだんだん近付いてくる。霧から出ようとしていた。
 霧の奥にある、何かから。

●邪悪への進撃
「……予知を、しましたの」
 グリモアを浮かばせ物憂げに告げる。女は、オリオ・イェラキと名乗った。
「未だ、群竜大陸の手がかりは噂程度。それでも、一歩は進みましたわ」
 掴んだ手がかりは、クラウドオベリスクと呼ばれる邪悪な柱。
 世界各地に隠れ在り、群竜大陸の所在を隠している。そう、伝説が記していた。
「わたくしが見たのは人里離れた岩山。険しく凶暴な存在が多いと、誰も近寄らぬ場所」
 アックス&ウィザーズにある、一つの都市。
 都の周辺地図を作れば範囲内に描かれるだろう距離にある、岩山が予知の場所だ。
 伝説で勇者は岩山と霧に阻まれ苦難を乗り越えた末遺跡を発見したとされている。
 遺跡の場所は岩山の中。例えるならマグマのない火山口の底だ。
 そこに建物は無く、平原に複雑な模様を刻んだ巨石が不規則に立ち並ぶ光景が広がる。
 しかし岩山は大きく堅牢な砦のようにそびえ立ち、超えるのは難しい。
「でも。大岩の一つが、崩壊しましたの」
 岩山の一部が突然崩れ落ち、道ができた。
 土砂すら消えただの荒れ地と化したそこを進めば遺跡に辿り着けると女は言う。
 だが大岩を崩壊させた原因が、立ち塞がっている。
「岩を崩壊させたのはオブリビオン。大きな、竜の翼を見ましたわ。彼を先ず狩りましょう。次に遺跡へ、先に在る筈の邪悪へと」
 遺跡にも敵が出るだろう、そしてクラウドオベリスクを守護する存在も。
「薄い霧が漂う遺跡内に……煌めく瞳と牙を持つ獣の姿を複数。オベリスク自体もその奥に、でも守護者が見えませんでしたわ」
 代わりに見たのは、薄霧の中遺跡に落ちた大きな雲の影。
「最後迄、気の抜けぬ戦いとなりますわ。でも、必ず成し遂げて」
 倒さなければクラウドオベリスク破壊は元より、都市に崩壊の牙がかかる。
 この予知には人々の命もかかっていた。阻止しなければならない。

 オリオン座を描いたグリモアが一層輝いた。
 周辺が星流れる軌跡を描き、風景を霧を望む荒れ地へ塗り変えていく。
「猟兵とオブリビオン。何方が狩る者か、示すは結果のみ。ならば」
 戦いましょう。オリオは微笑んだ。


あきか
 あきかと申します、よろしくお願いします。
 第六猟兵一作目はシンプルに全て戦いのみとなります。
 オブリビオンを蹴散らし、クラウドオベリスクを破壊しましょう。

 第1戦:崩竜(荒地。霧は無く視界は良好、戦闘範囲内に障害物ほぼ無し)
 第2戦:集団戦(平地。霧が薄くかかっており少々視界悪い。石の障害物有り)
 第3戦:不明(平地。上空に巨大な雲があるとの予知)

 敵を倒せば猟兵は先に進んだものとします。
 存分に大暴れしてください。

 連携アドリブ、同時参加についてはマスターページをご確認ください。
71




第1章 ボス戦 『崩竜・ヴァッフェントレーガー』

POW   :    ネーベルヴェルファー
【自身の周囲に生じた魔法陣】から【何もかもを“崩壊させる”火球】を放ち、【超遠距離からの面制圧爆撃】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ヴィルベルヴィント
【顎】を向けた対象に、【消失や崩壊を与える速射のブレス】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ   :    ホルニッセ
【自身の“崩壊”すらも省みない状態】に変形し、自身の【射程距離】を代償に、自身の【巨体による攻撃力や機動力】を強化する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠フォルティナ・シエロです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 重低音が響く。
 それは鋭い爪を生やした足が大地を踏み潰す音。
 それは霧から顔を出したオブリビオンの唸り声。
 重圧は巨躯、つまり崩竜自身からも迸っていた。
 己が強き者であるという、確かな自我。

 踏み進む。岩が砕け、壊れていく。
 歪な牙を連ねた口が開く。喉奥が輝くと同時に土砂の山が吹き飛び消えた。
 禍々しさを翼と広げる。竜の周囲に浮かび上がるは冒涜的な魔術の起動文字。
 陣より湧き出た火球が崩壊の範囲を、荒野を広げていく。
 障害等何も要らぬ。まるで、竜が戦場を作り上げるかのようだった。

 やがて崩竜の動きが止まる。
 場は用意された。此処で戦い、何方かが先に進む事ができる。
 それは、己か。それとも……お前達か。
 悍ましさに燃ゆる眼の輝き共は真っ直ぐに前を見据える。

――風が、崩壊の塵を撫でた。
テイク・ミハイヤー
ここがアックス&ウィザーズかぁ。思ってたより殺風景……あぁいや、いい意味でな!

っていきなりドラゴンとの戦闘!?ファンタジーと言えばドラゴン!分かる、分かるぜ!でもまだ心の準備が……。
何て言ってる場合じゃないよな、俺は俺の出来る事をやるぜ!
UC即席爆弾。兎にも角にも、この手の奴に効果的なダメージを与えるにはこれだろ!中世ファンタジーに火薬!これ王道!
ってあららー?逆に怒らせちまったか?それはそれでよし、俺に意識が向いてるって事は隙が出来たって事だ!
ギリギリまで引き付けてやるからいい一撃を食らわしてやってくれ!(切実)



●先陣を切るのは
 崩竜の視線が先に、赤いマフラーが微かな塵を連れた風と共に靡いている。
 青い空の下、照りつける陽に反射するゴーグルよりもテイク・ミハイヤー(セイギノミカタノミカタ・f16862)の瞳が真っ直ぐに敵の輝きを映していた。
「初めて来たんだよな、アックス&ウィザーズ。思ってたより殺風景……あぁいや、いい意味でな!」
 未だ動かぬ竜へ、語りかけるような言葉。
 それは何処か心の準備を整える、己を鼓舞する声にも聞こえる。
 心情が身に響くのか肩に担ぐ大きなモンキーレンチの固定が、やや定まっていない。
(ファンタジーと言えばドラゴン! 分かる、分かるぜ! でもいきなり、もう戦闘かよ!)
 ヒーロー見習い1年生。眼の前の敵は巨大すぎたのかもしれない。
 だがここで、自分は退くのか?
 特殊能力のないモブパンピーは逃げるだけなのか?

(――いいや、違う!)
 手に、足に。力が入る。自分は、ヒーローを守るヒーローになるんだ。
 例えどんな世界でだって、変わらない。信念が己の心を燃やし奮い立たせる。
「足踏みしている場合じゃないよな、俺は俺の出来る事をやるぜ!」
 芯は固まった。ヒーロー見習いの覚悟完了だ。
 テイクの闘志を感じ取った崩竜が、開始の合図とばかりに首をもたげる。
 即時の咆哮。途端に天から響き落ちる重圧がかかる。
 攻撃ではない、だが、重い。それでもテイクの顔は曇らない。
 地が震え、塵が荒れ狂う荒野を赤き未来のヒーローが強く蹴って疾走り出す。
 空を飛べなくても、ビームを出せる特殊能力が無くとも。彼はドラゴンに立ち向かう。
 その手は何かを握っていた……が、先に攻撃を仕掛けたのは崩竜だ。
 既に対峙している時点で顎が向いている、裂かんばかりに開けた口から崩壊を孕む光が瞬時に吐き出される。
 着弾地点は爆音と共に砂煙を巻き上げた。だが、テイクは止まらない!
「っ兎にも角にも、この手の奴に効果的なダメージを与えるにはこれだろ!」
 痛みに僅か咳き込んだ。砂埃を被るくせっ毛が揺れる。多少のダメージは、想定内。
 煙の中から尚もスピードを緩めず進む先は、崩竜よりも少しずれたルート。
 不審に思うも崩竜が再び口を開けそうになるのを横目で確認し、同時にテイクは振りかぶった。
「爆弾を投げる時にお決まりの台詞ってあるよな。……いいよな?いくぜ!」
 渾身の力を込めて作り上げた『作品』を投げつける。
 ブレスを吐こうとしていた崩竜は虚を衝かれ、それが攻撃だと気付く前に即席爆弾は光り輝いた。

――アアアアアアァァアア!!

 咆哮ではない、叫び。中世ファンタジー王道の爆薬を崩竜が食った。ご馳走してやった。
 確実な一撃を与えられた事実を視界に捕え、テイクは拳を強く握りしめる。
「って、あららー?」
 しかしここで止まるわけには行かないようだ。
 次に崩竜は怒りを隠さぬ激高の咆哮を上げた。先程よりも力強い一歩が、テイクに向けられる。
「怒らせちまったか? それはそれでよし、俺に意識が向いてるって事は隙が出来たって事だ!」
 出来ることはやった。結果は望む通りだ。ならば最後まで、自分が出来ることをし続ければいい。
「皆! ギリギリまで引き付けてやるからいい一撃を食らわしてやってくれ!」
 走る、疾走る。もっと、もっとだ。
 赤いマフラーが崩竜を誘う。ひたすら、己に注意を向ける為に。

 それが続く仲間の援護になると信じて。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイ・アイオライト
群竜大陸……そもそもグリモア猟兵たちの予知さえも跳ね返すなんて、クラウドオベリスクって一体何なのかしら。
……まあいいわ、まずは眼前のオブリビオンを葬るだけよ。
火球の面制圧なら、【斬空ノ型・虚断】の旋風で火球を相殺、風だけじゃない、あたしの殺気で崩竜を断つ。(暗殺)
崩壊っていう概念を敵対者に与える竜ね……帝竜はどれほどの力を持つんだか……



●暗躍の刃
 果たして、獲物を追う崩竜は気付けたのだろうか。
 身を捻り牙を剥く。壊してやる、崩してやる。狙い定め口を開ける、悍ましい体が蠢く。
 その周囲に……僅か、雷が走った事に。
 崩竜は気付けない。崩壊の跫音に紛れて、影が回り込んだ事に。

(群竜大陸……そもそもグリモア猟兵たちの予知さえも跳ね返すなんて、クラウドオベリスクって一体何なのかしら)
 思考する夜陰。レイ・アイオライト(潜影の暗殺者・f12771)は影に沈む。
 幾人ものグリモア猟兵が予知するも、未だ僅かな手掛かりを集めるのみ。それでも、道は確実に続いている。
 細い道を何としてでも進まなければならない。だが厚い壁が予知を、猟兵達を拒むように立ち塞がる。
(……まあいいわ、まずは眼前のオブリビオンを葬るだけよ)
 声は無い。暗殺に、音は要らない。
 崩壊の振動が派手に鳴り響く戦場で、彼女の周りだけが無音のようだった。
 赤い目が竜を追う、赤に、閃光が反射する。
 完全に敵の意識が他に集中する。今ぞ、好機。
 影から暗殺者が抜け出した。一蹴りで、跳ぶ。
 魔刀を抜く、鞘から水音を率いて抜かれた刀身は呪いの黒。篠突ク雨の先が、獲物を捉える。

 青空を背に、一つに結いた銀糸が鮮やかに舞った。

 瞬間、膨れ上がる殺気の嵐。竜狩りの意志を背に感じ崩竜が動きを止め振り向く。だが、遅い!
「これは刀で斬る訳じゃないわ。アンタを殺す『覚悟』で斬るのよ……!」
 咆哮と音の無い斬撃は同時だった。
 研ぎ澄まされた刃の技と、迷いの無い殺意が神聖とはかけ離れた禍々しい巨体を切り裂く。
 手応えを感じながらもレイは着地と同時に再度地を蹴った。
 竜頭より高い場所で尾による反撃を身を捻り回転、紙一重で避ける。
 乗り越えた感情を刹那胸に抱くも、レイは地に頭を向けた視界に冒涜的な陣が浮かぶのを見た。
 何もかもを『崩壊させる』火球による面制圧爆撃が襲いかかる、だが彼女の殺気は未だ衰えていない。
 空中で、轟音と共に大爆発が起きる。膨らむ砂煙の大きさが威力の激しさを示している。

 未だ空が晴れぬ中、崩竜の認識外で一筋の煙が地へと着地した。
 粉塵を引き連れた旋風が消え、レイが立ち上がる。少しだけ、視界が揺れた。
「これが崩壊っていう概念を敵対者に与える竜ね……」
 迅風で相殺しきれなかったダメージが言葉に零れ落ちる。
 一筋縄では行かない。更にこの先、群竜大陸で待つだろう帝竜はどれほどの力を持つのか。
 一瞬支配された考えを、すぐ首を振って追い出す。それでも、確実に相手に攻撃は通った。
「あたしは前を見る、ここで立ち止まる訳にはいかないのよ」
 呪いの刀から濁りが滴り落ちる。柄を、強く握りしめた。
 見据える先は、崩壊していく砂煙から現れる崩竜。

 攻撃は未だ、続く。繋がっていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

オーガスト・メルト
崩竜か!いいね、武器素材としては充分だ。
その身体、全てウチの工房で貰い受けるぞ。(山分けには応じます)

【SPD】連携・アドリブ歓迎
ドラゴンランスのデイズを構え、万能バイクのナイツに【騎乗】して戦う。
飛行モードで敵の周囲を大きく旋回。
攻撃を【見切り】、【空中戦】の要領で回避。
攻撃が至近距離をかすめるなら【オーラ防御】で弾く。とにかく触れるのはマズい!
隙が出来たらUC【突撃飛翔モード】で一気に距離を詰めて【鎧無視攻撃】で【串刺し】にして炎の【属性攻撃】も乗せる!

ちゃんと無限収納系のUCも用意してある。
お前を全部貰っても後の戦闘に支障はないさ。
だから、とっとと倒れて俺たちに道を譲ってくれ。



●8月のドリフト・ダンス
「あれが崩竜か! いいね、武器素材としては充分だ」
 魔法陣から溢れる火球を散らし、再び周囲に崩壊が広がる。
 暴れ狂う竜をオーガスト・メルト(竜喰らいの末裔・f03147)はエンジンを吹かしながら品定め。
 彼にとっては捻じくれた角も禍々しい皮膚や鱗も、恐怖を覚えそうな牙すら素材に見えた。
 崩れる岩を粉々に薙ぎ払う尾を見るだけだってテンションが上がる。無意識に、バイクの回転数を上げていく。
 騎乗するは宇宙バイクのナイツ。普段は可愛らしい大福型の竜も、今は黒いボディのクールな相棒だ。
 もっとパワーを、エンジンを止めない為に。クラッチはまだ、握り続ける。
 まっすぐ前を見つめたまま、空いている手を真横に翳す。
 言葉はなくとも通じる仕草。もう一匹の相棒、肩に居た白饅頭の竜デイズがオーガストの手へ転がっていく。
 手に到達する迄に白い輝きを放ったかと思えば、騎士の末裔の手には白い槍が握られていた。
 2~3振り回し、構える。相棒達も準備万端だ。
「行こう。あの身体、全てウチの工房で貰い受けるぞ」

 クラッチレバーの抑えを緩める。エンジン音が彼の声に応え、疾走りだす。
 崩竜は聞き慣れない音色に彼等をすぐに発見した。
 顎を震わせ、喰らい尽くさんばかりに開ける。散々地形を崩壊させたブレスがもうすぐ飛んで来る。
 このまま突っ込めば確実に命中する。だが、スピードは緩めない。
 赤髪が向かい風に散る。金の瞳はただ時を見定めていた。
 竜の喉奥が光る、今だ。即座に身体を倒しバイクを横滑りさせる。崩竜のものではない砂煙が上がる。
 急なカーブに一瞬崩竜の挙動がブレる。その時を待って、相棒への絶大な信頼を持って、オーガストはクラッチレバーを離した。
「飛ぶぞ、ナイツ!」
 ドリフトを終えたナイツがスピードを上げ走り抜け、車体を完全に戻した瞬間飛び立つ。
 ワンテンポ遅れてブレスが着弾した。崩壊の砂煙が舞い上がるが、二輪の竜に跨る騎士は止められない。
 およそこの世界では見慣れない竜が飛ぶ。驚く崩竜は身体を起こし翼を大きく広げた。
 空中でドリフトを重ね、ブレスを吐く崩竜の周りを旋回する。
 竜の攻撃を見切り続け、逃れきれない分の防御に使ったオーラの残骸が突き進む軌道の尾を描く。
 兎に角触れるのはマズい。勝機は未だ。ナイツの走りか崩竜の顎が疲れるのが先か。
 だが負けるなんて想定していない。ちゃんと無限収納系のユーベルコードも用意してある。
「お前を全部貰っても後の戦闘に支障はないさ。だから」
 流れるような視界の中、ブレスを放ち終え息を飲み込む瞬間の竜を見た。
 今しかない。僅かでも喰らい続け崩壊に蝕まれた痛みなど、構ってられない。

「ナイツ、変形だ! デイズ、行くぞ!」

 ギアを上げる。一際鋭いカーブで崩竜へと向けられた竜体には翼があった。
 突撃飛翔モードチェンジで更にスピードが上がった。同時に、白い槍に炎が上がる。
「とっとと倒れて俺たちに道を譲ってくれ!」
 本能的に崩竜は翼で己を隠した。だが、黒と共に突っ込む赤が放った白い流星は防御ごとかの身を貫く。
 翼と、肩に穴が空いた崩竜の鼓膜に攻撃を仕掛けんばかりの号叫を受けオーガストは顔をしかめるも、再度ナイツを操りデイズを回収する。
「しぶとい奴だな……元々、山分けには応じるつもりだったから良いんだが」

 徐々に、崩竜自身の崩壊が進んでいく。

成功 🔵​🔵​🔴​

テオ・イェラキ
竜、か……随分と凶悪そうなオブリビオンだな
だが、竜であればこそ、狩りの得物としては上等だ
愛する妻の為にも人肌脱ぐとしようか
部族に伝わる斧を握る手にも力が籠るな

敵を眼前にし、大地に捧ぐ情熱の舞を使用するぞ
火球であれ、ブレスであれ、直接攻撃であれ
驚異的な仰け反りによって見事回避してみせよう
一見無駄に見えるこの動きだが、深く反れば反るほど、より強力な攻撃へとつなげることが出来るのだ
敵の攻撃を回避しながら足元へ潜りこんだなら、こちらのものだ
大地のエネルギーを吸収した全力の一撃をお見舞してやろう

うぉぉおおおおおおお!リンボゥッ!

アドリブ・連携歓迎



●雄々しき狩りを
 ひらり、男の肩に夜薔薇の花弁がひとひら。無骨な指先が繊細に一枚を摘む。
 テオ・イェラキ(雄々しき蛮族・f00426)は雄叫び響く戦場の中、芯の強さを示すが如く揺るがぬ仁王立ちで竜と対峙する。
「竜、か……随分と凶悪なオブリビオンだな」
 鼓膜が千切れそうになる程の号叫にも、羽根を生やした男の耳へはそよ風を受けているかのように響かない。
 羽根が示す鳥は鷹。男は、雄々しき鷹の一族と呼ばれる蛮族の者。
(だが、竜であればこそ。狩りの得物としては上等だ)
 そこに弱い感情等は無い。在るのは唯、沸々と湧き上がる狩りへの情熱。戦士の闘志のみ。
 一時、男が視線を落とす。銀の輪を薬指に嵌めた大きな掌に寄り添う一枚の黒。ゆっくりと、握り込んだ。
――愛する妻の為にも人肌脱ぐとしようか。

 利き手で無造作に持っていた巨斧を、ゆっくりと前に突き出す。
 もうひとつも、斧に添える。これからの戦いを思えば、自然と握る手に力が入った。
 戦場の空気を肺一杯に吸い込む。逞しい胸板が膨らみ、男は目を見開く。
「崩竜よ! 俺はテオ・イェラキ、お前と戦う者だ!」
 今は都会暮らしに落ち着いていようと、戦場ではバーバリアンである事に変わりはない。
 堂々と、相まみえる。それが部族の誇りだ。
 崩壊の音に負けぬ、キマイラの咆哮とも聞こえる口上を述べる。確かに声は、崩竜に届いた。
 身に穴を開け痛みを怒りに変えたオブリビオンの首が折れんばかりの勢いで前を向き、猟奇的な目の全てで睨みつける。
 憤怒に震えるまま竜が口を開ける。既に何度も他の猟兵に放ったブレス、だがテオはその場を動かない。
「来るが良い! 我が部族に伝わる舞を見よ!」
 ならば喰らえと言わんばかりに速射の崩壊が放たれる。瞬間、消失を撒き散らす衝撃に砂煙が巻き上がった。
 間を置かず煙は消失していく。直撃を食らったと思われた現場には、精悍なる身を仰け反らせ直接の一撃を免れた蛮族の姿。
 余波を受けても尚、逞しい曲線美を魅せるテオに感動さえ出来ぬ狂怒の竜は激情にかられるまま追撃を行おうと身を乗り出す。だが。

「うぉぉおおおおおおおおお! リンボゥッ!」

 まるで大地が噴火するような大呼。刹那、場を支配していると信じ切っていた竜が揺らぐ。
 それは己より小さい者達に爆発を喰わされ一太刀を浴び、身を貫かれたからか。
 戦場に置いて一瞬の迷いはどうなるか、竜が理解するには『速さ』が足りなかった。
「くらぇぇええい!」
 極限まで深く反り返った身を絶叫と共に戻す。大地に捧ぐ情熱の舞、そのフィナーレがテオの肉体を加速させる。
 眼光鋭い赤の瞳とかちあった、そう認識した次にはバーバリアンアックスを手に足元へ潜り込むテオを視界の端に見た。
 大地の加護を受けた蛮族の男が、身の丈程の重厚な金属の刃を振り抜く。
 重々しい一撃は竜の片脚を圧し潰し、凶悪なるドラゴンに激痛の叫びを上げさせた。

 半狂乱になった崩竜が暴れ回る。だが動きは猟兵達の攻撃で確実に、鈍くなっている。
 竜の崩壊は近い。確信したテオは斧を両の手に、再び構えを取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

火土金水・明
「いきなり、ドラゴンと戦闘ですか。居るところには居るんですね。」
【WIZ】で攻撃です。他の方の攻撃に【援護射撃】をする形で【高速詠唱】した【属性攻撃】の【全力魔法】の【コキュートス・ブリザード】を『崩竜・ヴァッフェントレーガー』に【フェイント】を掛けつつ【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「今の私ができることは、全力で戦うだけです。」「的が大きいので外す訳にはいきませんね。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


フォンミィ・ナカムラ
わ、いきなり強そうなドラゴン!
でもここで立ち止まってたら、クラウドオベリスクを壊すこともできないんだよね
負けてられないよね!

【オーラ防御】で攻撃を防御しながら
敵が「崩壊すらも省みない状態」になったら攻撃開始
尻尾や爪の直撃を避けるように間合いを取りながら【高速詠唱】で【エレメンタルファンタジア】使用
属性は氷、自然現象は大雨
崩壊する体に氷のつぶてを当てて崩壊を促進させるように【全力魔法】

避けきれなそうなら【オーラ防御】【火炎耐性】で耐えきりながら【時間稼ぎ】して攻撃のタイミングを図るよ
形勢不利になっても、絶対に諦めないんだからね!



●双氷のロンド、
「わ、本当に強いんだねあのドラゴン!」
 戦地から少し離れた所、幼い声が明るく響く。
 柔らかそうな金糸に、一房だけぴんと跳ねる愛らしい髪を揺らしてフォンミィ・ナカムラ(スーパー小学生・f04428)は声を上げた。
 齢10の少女とて、立派な猟兵。眼前で暴れる幼い者でなくとも恐怖に泣き叫ぶであろう異物にも怯えはしない。
 あるのは猟兵としての確りとした意志。それに、いま少女は独りではなかった。
「いきなり、ドラゴンと戦闘ですか。居るところには居るんですね」
 女性の声に、フォンミィは振り返る。視線の先でふわりと黒布が風に揺れて広がった。
 ロングブーツの踵を鳴らし、火土金水・明(人間のウィザード・f01561)は少女の隣で歩みを止める。
 ウィザードの在り方を示すような目深に被る黒いハット、プリムを細い指で挟みそっと持ち上げた。
 そう遠くない景色は、未だ荒れ狂っている。禍々しい力を撒き散らして。
「でもここで立ち止まってたら、クラウドオベリスクを壊すこともできないんだよね。負けてられないよね!」
 無邪気な魔法少女も前を向き、決意を口にする。まだ初戦。そうでなくとも、戦い抜く覚悟が無意識に喉から溢れ出す。
「今の私達ができることは、全力で戦うだけです」
 明の言葉は今この場で戦う者達の総意だった。
 オブリビオンを倒し、クラウドオベリスクを壊す迄猟兵達の進撃は止まらない。

 二人の初手は、明からだった。
 黒のウィザードがゆっくりと、七色に輝く杖を眼前に向ける。
 虹色の煌めきは暗き背景に良く映えた。否、極彩色こそ暗色の彼女を鮮やかに引き立たせる。
 同じ色で染まる瞳に七色が映り込んだ時、その眼を僅かに細めた。

「我、求めるは、冷たき力」

 冷たく凍るような声色だった。
 詠唱と同時に、魔力が杖に集まっていく。自然のものではない風が巻き起こり、一つ纏めの髪を緩やかに巻き込んだ。
 周囲の温度が急速に下がっていく。術者の言の葉に応え、魔力が一つの力と成る。
 まだ集中する。生半可な魔法では竜を倒すことはできないだろう。ならば全力だ。
 やがて明の周りに小さな氷の粒が発生した。間も無く粒は塊と化し、数本の矢を形成していく。
「……行きますよ」
 落ち着いた発動から穏やかに動き出した氷魔の矢は、彩る杖に誘導され敵へと速さを増して飛んでいった。
 着弾音は5つ。冥府の底から招かれた極寒が背に突き刺さり、ドラゴンが新たな痛みに苦しみもがく。
 先制攻撃は成された。崩竜は傷付いた箇所から体液を、同じものを口端からも飛び散らせながら二人を視界に入れる。
 確実に猟兵達を見ていながらも、眼で有るべき物は異様に蠢いていた。
 身を震わせる。際限なく湧き上がる激しい怒りが崩竜にとっての一つの限界を超える。
――グ、ゴ、ガアアアアアアア!!
 最早、それは生物の叫びと認識したくもない騒音。骸の海から蘇った過去の咆哮が響き渡る。
 敵の纏う空気が少し、変わった。オブリビオンの体が徐々に形を変えていく。否、形が崩れていく。
 唯の崩壊でない事を明は感じ取る、すぐにそれは正しいと確信した時にはもう崩竜が眼前に迫っていた。
 早い。その巨体からは想像出来ない動きで距離を詰め、見るだけで恐怖を招きそうな爪を振り上げ、そして。

「精霊さん、お願い! あたしに力を貸して!」

 幼くも狙いすました声が割り込んだ。音は、氷の大雨を引き連れ竜にぶつかっていく。
 攻撃の時を待ち続けていたフォンミィが、間合いを取りながら高速詠唱で合成魔法を発動させた。
 正に横殴りの雨が、大量の氷の礫がドラゴンを襲う。不意打ちを喰らいバランスが崩れ、明は前足の直撃を免れた。
「やった! 今あたし、ヒーローだったかな?」
 明と同じく冷気の魔力を周囲に張り巡らせ、魔法少女は年相応の笑顔を見せる。
 今は可愛らしいステッキになっている、お供のマジカルペットを無意識に抱きしめた。しかしすぐさま構え直す。
 この力は強力だが制御が難しい。それに、まだ崩竜は生きている。
「もう一度行くよ!」
 全てを消失させ崩壊し、荒廃させた地に華々しい少女の衣装は希望の光に見えた。
 キラキラ輝く魔法の花が可憐にひらめく。フォンミィの魔力が、再び氷結の豪雨を喚ぶ糧となる。
「私も、負けられませんね」
 一撃を逃れ、明もまた間合いを取り体制を立て直していた。
 フォンミィの冷えゆく魔力へ、合わせるように七色の杖から同属性の魔術を創り上げていく。
 ウィザードと魔法少女、二人の異なる魔力の氷は呼応するように重なり交じる。
 だがその魔力の共鳴にすら、崩竜は干渉してきた。全てを、何もかもを崩壊させる概念が牙を剥く。
 場は氷魔の力と消失の衝撃が押し合い、暴風雨の中にいるかのようだった。一瞬たりとも気は抜けない。
 かと思えば崩竜自体も動き、容赦のない直接の攻撃もやってくる。が。
「的が大きいので外す訳にはいきませんね」
 フォンミィへ撓る尾が薙払いを仕掛けるのであれば、明の氷矢が死角から放たれ回避を援護する。
 逆も然り。捨て身とも言えるドラゴンの猛攻を完全とは言えないが防ぎ、お互いを助け合った。
 太陽が照りつける戦地で、極寒の魔力がドラゴンを中心に渦を巻く。
 それはまるで、二人の猟兵が織り成す魔術のロンド。徐々に、崩壊の力を押し込んでいった。
「あっ、ドラゴンが!」
 上がる息が白む。全力を続け、肩を大きく揺らしながらもフォンミィは敵の変化を見逃さない。
 矢で貫き、礫の雨を振らせ続け。結果、竜自身の崩壊はより深刻になっていた。
「後もう少しですね。……私達の魔力が続く限りは」
 戦おう。そう、決めてここに来たのだから。
 後は言葉すら惜しい。冷え切った空気に明も白い息を短くはいた。
 互いにフォローし、オーラで防ぐも限界は有る。だが同じ時間、攻撃を続けている。
 もう少し、後少し。ここまで繋げて来た事は、確実にドラゴンを追い詰めている筈だから。

 ばきり、ぱき。
 まるで邪悪な炎を描いたようなオブリビオンの身体に、氷が張り付く。
 氷にヒビが入ると同時に、竜の肉体も一部が割れて落ちていった。
 崩壊していく。それでも尚抗うのは、彼がオブリビオンである事に他ならない。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

シュテルン・ガーランド
アックス&ウィザードか、魔法とファンタジーといえばドラゴン、なんとも心踊ってしまうね
シュテルン、気をつけて向かうとしよう、奴は僕らよりだいぶ大きな敵だから。逆に翻弄してやろうか

トリニティ・エンハンスを使って、風の魔力と共に攻撃力を上げていこう
無事に戦えるよう祈りを込めて
シュテルン、大丈夫、前だけを見て進むんだ
どんな炎にも屈しないで。僕と一緒なんだから
大きなナイフで切り抜いて差し上げよう
テーブルマナーなんて気にしなくていい。すこしやんちゃな大振りだって構わない
素早く動いて美味しそうなとこ目掛けてね
さあさ、ドラゴンのお味はどんなものかな?


リュカ・エンキアンサス
竜殺し…になるのかな
なるほど。なかなかの迫力だな
こういう敵も、嫌いじゃない

淡々と銃を構える
後は撃つだけ……とはいえ
そう簡単に行かないことはわかってる。

基本は援護射撃と攻撃妨害が得意なんだけれども、
今回はなるべく目とか口とか、とにかく銃弾がききそうな場所も狙って弾丸を叩き込んでいくよ
弾を惜しんだりなんかしない。切れ目のないように、撃って撃って撃ちまくる
敵も強敵みたいだし、あんまり長引かせたら、よくないだろうから

攻撃は絶望の福音を使いながら、なるべく余裕を持って避けたいところ
ブレスも魔方陣も、その直前の動作に注意して直撃は避けるように動きます
基本恐れも躊躇いもなく戦うけれども、生存優先、無理しない



●蒼炎とステラグラス
 転送された先。初夏の荒野に、僅かながらの雪が降る。
 ともすれば小さな星のような、魔力で作られた氷の結晶を。そっと細やかな掌が受け止めた。
 歯車のモノクルを付けた、小さなレディ。シュテルン・ガーランド(歯車の冠・f17840)は一見すれば赤い衣装が凛々しい廿日鼠の少女。
「綺麗な魔法だね、シュテルン。そしてファンタジーと言えばドラゴン……なんとも心躍る光景だ」
 ゆっくりと手を胸に当て優しい眼差しで語りかける、その声を出したのは彼女ではない。
 彼女に宿る、片目に確りと装着した金装飾の綺麗な彼。名前はラート、ヒーローマスクだ。
「気をつけて向かうとしよう。隣の、君も」
 通い合う心の底で、少女の同意を感じた。次に顔を上げる。見上げた先には、真昼の更夜。
 夜空を首に巻いて、大切に繕ったジャケットを着込んだ旅人が一人。リュカ・エンキアンサス(蒼炎の・f02586)は静かに戦場を見ていた。
 消失してゆく、氷華の舞台。氷が解けても尚崩壊竜は吠えていた。己の崩壊を識っていても。
 冷気が落ち着く迄首元を隠していたマフラーを緩める。殆ど残らない白い息を最後に一つはいて。
「なるほど。なかなかの迫力だな。……でも」
――こういう敵も、嫌いじゃない。
 戦い続ける少年の心に、灯るは闘争心。それからゆっくりと視線を足元へ。かち合う視線は、何方もあおい。
「気遣いありがとう、お兄さん。それと」
「彼女はシュテルンだ。さぁ、皆に遅れてはならない。行こう」
 こうして二人の視線は真っ直ぐに、共通の敵を見据える。
 雪の星は消え去った。竜は、その狂気は。まだ消えていない。

「シュテルン、奴は僕らよりだいぶ大きな敵だから。逆に翻弄してやろうか」
 廿日鼠の少女が動き出す。正確にはラートが、彼女の身体を借りて崩竜へと突き進む。
 彼等にとって大きなナイフを、金の剣をその手に。軽めのステップから崩壊するダンス・ホールへと躍り出る。
 途中に彼女へ彼が纏わせたのは風のドレス。ラートが祈りを込めて仕立てた魔力の衣はシュテルンの身体能力も上げていく。
 巨竜が足を踏み鳴らし、振動する大地だって軽々と乗り越えて。小さな星は聖者の導きのまま大きな凶星へと挑む。
 だが息を荒げる崩竜も強い闘志を保っている。相手が例えとても小さな廿日鼠だろうと、崩壊を与える為の不気味な魔法陣を展開する。
 創り出すは崩壊の火球。その組み上がる陣の完成直前、シュテルンの頭上を超え一筋の閃光が竜の片目を貫いた。
 衝撃に脳髄が揺らぎ、結果中途半端な魔術で陣の作成が終わる。それでも、炎が渦を巻く。
「大丈夫、前だけを見て進むんだ」
 頼もしい援護もあるからね。そう付け足して、彼等は流星を味方につけて接敵する。
「どんな炎にも屈しないで。僕と一緒なんだから」
 激しい戦場の中でも、ラートは穏やかに声をかけ続ける。純粋な彼女に、不安は似合わないから。
 やがて放たれたのは他の猟兵が受けたのものよりも小さな火球。それを跳ねた廿日鼠がくるりとターンしながら金色のナイフで切り裂いた。
 残り火が荒野に着弾し何度目かの粉塵が舞い上がる。派手なエフェクトすら余興に変えて、今度は竜へ向ける金の刃。
 魔力の風を纏い、放つ。見習い魔法剣士の一撃は崩れかけの身体へ身の丈よりも大きな切り傷をプレゼントした。
 更に竜の眼や口、崩壊しかけている箇所へ。追い打ちの星が流れていく。

 狙い放たれた光の正体は、リュカが灯り木と呼ぶアサルトライフルからの銃撃。
 少女の後方。少々雑に補強されたスコープから顔を上げ、彼は淡々と弾倉を装填し照準を合わせる為に再びスコープを覗き込む。
 ループする動作。得意とする射程距離も、愛銃の扱いも手慣れていた。そう、簡単な話ではない。
 彼が生きる空はまだ夏の星夜を14度しか巡らせていない。その時間の中で、慣れる程戦場を渡り歩いた。
 経験と教えの言葉が旅人を強くする。少しも揺るがぬ視線。ただ何処か、見極めるような意志を宿して再度引き金を引く。
 眼前で敵の周囲を飛び跳ね駆け抜け、翻弄する猟兵を援護し敵の攻撃を妨害する為に。
 消炎器から漏れ出る発射の炎は、蒼い色を交えた気がした。
「……!」
 撃って、撃って。切れ目なく撃ち続け、敵が自分に気がついた。怒りに燃え盛る瞳が遠くの狙撃手を睨みつける。
 間髪入れず口を開けた。喉奥が光る。崩れかけの頭を僅かに引き、戻す刹那。
 リュカは10秒先の未来が視えた。否、そうだと確信していた。
 攻撃に気を取られた崩竜の、脇から大振りの一撃が放たれる。リュカの読み通り、仲間が今度は自分を援護してくれた。
 ほんの一時湧き出た暖かな気持ちを、今は胸に留めた。ありがとうは、終わってから。
 バランスを崩したドラゴンブレスの軌道がズレる。直撃を避ける為に動く傭兵は、苦しむ竜の尻尾に乗る一匹の剣士を視線の先に認めた。
 本能が今だと告げる。走り抜けながら、もう一度弾倉を装填し直す。
 躊躇い無く、銃口を向けた。

 崩壊が進みより動きが鈍くなっていく竜の身体を、シュテルンとラートは尾から背へと駆け抜ける。
「背後から? テーブルマナーなんて気にしなくていいんだ」
 爆風で傾いた帽子を指先で直し、少女へ話しかける声はどこまでも穏やかで。
 すこしやんちゃな足取りだって構いはしない。目指すは一直線、美味しいところをこのナイフで切り分ける為に。
「さあさ、ドラゴンのお味はどんなものかな?」
 リュカもそれに合わせて狙いを定めていた。言葉は無く、ただ集中してトリガーに指をかける。

 金の斬撃が、蒼の狙撃が。ヴァッフェントレーガーの頭で交差した。

 叫び声は、あげられなかった。一瞬にしてオブリビオンが出し続けていた全ての音が、狂った動きが止まる。
 それは消失の力が失われた証。シュテルンが竜から離れ、地に降り立った瞬間竜は頭から静かに崩れ落ちていく。
 まるで先程の氷のように。雪のように。少しずつ剥がれては骸の海へと消えていった。
「竜殺し……になるのかな」
 張り詰めていた集中の糸を、ゆっくり解して言葉が零れる。
 被害は決してゼロではない。でも。皆と協力し戦い抜いた成果は集まる仲間の顔を見れば理解できた。
 成し遂げた。最初の、一歩を。
「ごちそうさま……はまだ早いね、シュテルン。次はどんな敵に会えるのだろうね」
 ラートが顔をあげ呟いた。安堵は束の間。気を、引き締め直さねば。

 崩竜が消え去った跡。作られた道の先、未だ戦い続けなければならない理由が待っている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ナーガクーガ』

POW   :    飛びかかる影
【不意打ちの飛びかかり】が命中した対象に対し、高威力高命中の【輝く牙による食い千切り攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    激昂
【怒りの咆哮を上げて威嚇する】事で【興奮状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    集団防衛
【強敵の出現を知らせる警戒の咆哮】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 崩竜が消失し、開かれた荒野の道が先。
 覚悟はとうに。進めば薄霧がゆっくりと傭兵達を迎え入れた。

 不思議な光景が見られる。
 外の荒れた光景とは変わり、大岩に囲まれた中は穏やかな草原と呼ぶべき広場だった。
 薄霧が視界を少々悪くするも、すぐ近くが視えない程の濃さではない。
 少し離れた場所に、幾つか縦長の形をした岩が不規則に存在している事も認識できた。
 それらは大きさもばらばらで、立つというより適当に地面へ刺さっている印象を受ける。
 一つの岩に近づいてみた。3~4メートルほどだろうか。
 一面にびっしりと、理解不能な文字が刻まれていた。
 この場所が伝説に伝えられた『遺跡』である事は間違いない。
 ならばこの奥へ。白く濁った遠くの果てに目的であるクラウドオベリスクがある筈だ。
 猟兵達は遺跡の中心へと歩んで行く。

 ふと。足を止める。
 視線を感じる、どこかしらから。
 文字を刻む岩の影、或いは濁った薄霧の奥から。
 遭遇に時間はかからなかった。ゆっくり現れたのは、獣のようなオブリビオン。
 角有る豹のような。しかし、鱗のような体表。印象的なのは宝石を思わせる眼光。
 だがそれは富をもたらす輝きなどではない。獲物を狙う敵意の眼差しだ。
 気付けば、霧の中で同じ輝きが複数、此方を向いている。

 それが何であれ、戦う以外の選択肢はない。
 奴らは猟兵の敵なのだから。
テオ・イェラキ
ほう、霧の中の遺跡とは、随分と面白い場所に出たものだ
男ならやはり冒険心がくすぐられるな

興味深げに眺めるが、どうやら我々は招かれざる客らしい
随分と固そうな獣が出てきたものだ
まぁ、その程度の鱗では俺の攻撃は止められないがな

とはいえ、相手は獣
無用な戦いは避けられるよう、『動物と話す』を使用して話しかけてみよう
我々は奥へと通りたいだけだ……下がっていれば命は取らん
……うむ、思い切り囲まれて、背後から攻撃されてしまったな
えぇい、やかましいわ!

『風纏う激情の舞(ブレイクダンス)』を使用して戦うぞ
敵の集団に囲まれ次々と飛び掛かられようと、我が舞によって蹴り飛ばしてやろう

くらぇぇええええい!ブレイクぅ!



●激情の風
「ほう、霧の中の遺跡とは。随分と面白い場所に出たものだ」
 力強い歩みを止め、テオは周囲を見渡した。
 岩山に護られ、緑の大地に白く濁る景色。冒険譚で語られそうな、心擽られる舞台。
 だが堪能している時間はなさそうだ。目前に猟兵達を招かざる客と認識している者共がいる。
 現れた鱗のような身体の、獣と呼ぶのか疑われる個体。否、集団。
 己が誇りを示す牛骨の兜。その影から浮かび上がる赤い目は鋭く、宝石の輝きを真っ向から見返していた。
「随分と固そうな獣が出てきたものだ」
 得体の知れない敵が出ても、この程度では蛮族の男は揺るがない。
 あの程度の鱗で、自身が持つ大斧が一撃を止めるなど微塵にも思わない。
 男の自信は、歴戦の証だ。

 とはいえ。一つ、テオの思考に案が浮かぶ。
(相手は獣であるならば。無用な戦いは避けられるよう、話してみようか)
 善は急げと構えかけていた斧を下げ、口を開く。
「獣よ。我々は奥へと通りたいだけだ……下がっていれば命は取らん」
 威風堂々と告げる姿に獣であれば瞬時に伏せ、平伏する者達の間を悠々と通るテオが見られたのだろう。
 だが、相手は骸の海から蘇った存在。過去より這い出る猟兵の敵だ。
 気付けば数体に囲まれていた。更に、テオの背後に一体が忍び寄り間合いに入った瞬間、地を蹴った。
 瞳と同じ輝きを持つ爪が、雄々しき鷹の背に襲いかかる!
「――!」
 鈍く硬い音が響いた。肉を裂く音ではない。
 鋭い爪を受け止めたのは下ろしていた筈の大斧。振り向かぬまま、片手で斧を防御に使った。
「……うむ、案の定。思い切り囲まれて、背後から攻撃されてしまったな」
 ギリギリと力を込めるオブリビオンと受ける斧が拮抗する。
 ゆっくりともう片手を柄に添える。押し切ろうとする敵の、咆哮が響いた。
「えぇい、やかましいわ!」
 それを超え張り上げる声。同時に、振り向きざま斧を振り抜く。その一撃が開戦の合図だった。

 屈強なバーバリアンが獣のような存在を吹き飛ばす。霧向こうで岩にぶち当たり沈んでいくのを辛うじて理解する。
 周りの敵も同じ光景を目にし、次々と咆哮を上げる。静かであった場が一気に戦場へと変わっていく。
 間髪入れず、興奮した一体が飛びかかってきた。
 再び今度は正面から斧で迎え受け止めるも、容赦なく横からも素早い動きで追撃が来る。
 しかし牙がテオの皮膚に食い込む前にその首を締め上げたものがあった。
 テオの尻尾、立派な大蛇が素早く絡まり窒息させる、そして。
「ふんっっっ!」
 蛇をしならせ、締め上げた個体を斧で受け止めている敵へ激しく叩きつけた!
 力ある者の正に荒業。だがこれしきで終わる筈もない。
 先程岩に叩きつけられた一体が怒りで興奮状態のまま突撃してくる。
 瞬時にテオは蛇の拘束を解き、飛び上がる。逞しき鷹は突進を避け宙返り、地に手をつく。
 だがそれを不利と見たか、体制を立て直した2体共々逆立つテオへと襲いかかった。
 残り一体も一呼吸置いて飛びかかる。だが攻撃する迄の刹那、宝石と見紛う目は違和感を覚える。
 逆立ちで窮地に陥っている筈の男がまるで訓練されたような動きで地に確りと手を付き、身体をしならせた。次の瞬間。
「くらぇぇええええい! ブレイクぅ!」
 強靭な肉体から繰り出されたのは蹴りの嵐。巻き起こる突然の嵐に薄霧ごとオブリビオンは巻き込まれた。

 蛮族の荘厳なる舞いに蹴り飛ばされ、一体は完全に沈黙した。
 残りがふらつきながらも体制を立て直し、激昂に叫ぶ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オーガスト・メルト
ああ、竜の素材は入手できなかったか…崩壊してしまったのでは仕方ないな。
まぁ、あくまで素材収集はオマケだ。本題に戻るとしようか。

【SPD】連携・アドリブ歓迎
デイズとナイツは武器形態を維持したまま交戦する。
視界はイマイチ、敵は群れ…となれば、UC【トライリンクモード】でこちらの感覚を高めるとしよう。
竜の五感なら霧や遮蔽物の向こうまで丸見えだ。
敵の攻撃を【見切り】つつ、ランスによる【なぎ払い】と【吹き飛ばし】で戦う。
囲まれそうになったら飛行モードで空に逃げ、急降下で包囲の背後を突こう。
生憎とこちらは竜なんでな。【空中戦】も得意なんだ。

説明は聞いたし、想定はしていたが…本当に面倒な敵ばかりだな。



●竜騎士は疾走する
 二体が前足に力を込め、飛びかかる寸前。突如エンジン音が高らかに鳴り響いた。
 竜の咆哮も思わせる爆音にオブリビオン達が何事かと意識を周囲に散らせようとしたその時。薄霧の気流が変わる。
 近付いてくる激走のサウンド。白の幕をブチ破って姿を見せたのはオーガスト、そして彼の相棒達だ。
「次はあいつらか。説明は聞いたし、想定はしていたが……本当に面倒な敵ばかりだな」
 恐らく宇宙バイク等、山奥の草原に生息していたモンスター達は初めて見るものだろう。
 明らかに驚愕している反応、現状理解の為に動きも止まっている。それを見逃す筈もない。
 減速しかけていた二輪形態のナイツを再び加速させる。黒竜の機体はすぐさまオーガストの狙いに応えスピードを上げていく。
 対応する時間等与えない、彼の意志を次に応えるのは白い槍のデイズ。
 オーガストが構え薄霧を切り裂きながら突き進み、横一線。薙ぎ払った。

――グ、ギャ、ガアアア!

(……?)
 攻撃を与え、すれ違う瞬間鼓膜を叩いた音に既視感を覚える。
 つい先程、似たような悲鳴を上げたオブリビオンが居たような。いや、居た。奴は消えて無くなった。
(竜の素材は崩壊してしまったので入手できなかった、仕方ないと思っていたが……)
 今対峙している敵は形状こそ獣に似ているが、鱗もある。もしかしたら。
(ドラゴンかは解らないが、似た性質があるのかな……まぁ、あくまで素材収集はオマケだ)
 本題は奴等を倒す事。思い直し、グリップを握り直す。
 新たな咆哮も聞こえてきた。いよいよ、遺跡に蔓延る過去の残骸共が群れをなして向かってくる。
 ならば、己がやるべき事は何か。オーガストが視線を向けた先は敵を背にした、前方。
「デイズ……ナイツ……お前たちの目と耳を借りるぞ」
 エンジンから吹き上がる風が3体の竜を包んだ。薄霧の旋風は彼等が使うユーベルコードの合図。白と黒の竜が、赤き竜騎士とリンクする。
 霧で視界が悪い道ならば、感覚を研ぎ澄ませばいい。問題ない、自分達は走れる。
 茜が交じる金の輝きは場を見据える。風の流れで解る周囲の状態、遮蔽物の位置、自分達に向かってくるオブリビオン達の足音、息遣い。
 全てが敏感になる。敵共が咆え飛びかかると同時にタイヤが白い煙を巻き込み吹き上げ、一気に走り出した!

「俺はこっちだ、追いついてみろ!」
 その声はエンジン音にかき消されなかった。煽られ更に激高した者共が数を増やして追い上げる。。
 さながら草原を駆け抜けるバイクレース。やがて、眼前に巨大な岩が立ち塞がる。それでも曲がる仕草は一切無い。
 衝突する直前、ナイツは翼を広げ飛行モードに変形。トップスピードのまま飛び上がった。
 想定外の動きについていけないオブリビオン達が岩に激突していく。
 しかし最後尾の一体が、足止めされた同類達を足場に駆け上がる。岩を飛び越え爪を振り上げるも、そこに竜騎士の姿は無かった。
「生憎とこちらは竜なんでな。空中戦は、得意なんだ」
 声は敵の背後から聞こえた。翼在る者達は空高く飛ぶと同時に空中旋回、急降下で無防備な背中へと突き進む。
 天から降り注ぐ、白き槍の一撃。貫かれたオブリビオンは地面に激突しそのまま動かなくなった。
 オーガスト達は草原に舞い戻り、倒した個体を確認する。

「今度は、消えないんだな」
 艶消しの鱗に反し、宝石のように目立つ目と牙を見下ろして竜喰らいの末裔は呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シュテルン・ガーランド
リュカ君(f02586)の傍で
先程の狙撃に惚れ惚れしてね、ご一緒させていただくよ!
数の多い敵だ、僕らだけでは不安だったんだ
ちょっと失礼!と肩に登って辺り見回して
さぁて、かき乱してやろうか、素早さなら自信はあるよ!
トリニティ・エンハンスで水の魔力を呼び出して飛び出そう
水は僕らの壁にもなるし…敵の動きを鈍らせることが出来るだろう?
僕らより大きい敵だ、足元を駆け巡り転ばせてから、美味しくいただいてしまおうね
これなら少しは狙いやすくなったかな、なんて、心配しなくても大丈夫だろうけど!
だって、竜をも倒す腕前を、この目で見てしまったのだから
頼もしい君に、心の中で感謝を。終わったらしっかりお礼をしなきゃね!


リュカ・エンキアンサス
シュテルン(f17840)お兄さんと
…さっきは、助かったから
一緒に戦ったほうが、効率いいだろうってことで一緒に行動することに
肩に乗る?うん、どうぞ

基本は援護射撃
お兄さんが戦ってる敵狙って連携して着実に潰していく
けど、同時に周囲にも警戒しておくよ
側面、背後にも気を配って
忍び寄ってくる敵がいたら、近付かれる前にそちらへの処理に当たる
勿論そのまま倒してしまえればいいけれど、
最悪お兄さんの手が空くまで牽制を続けられたら

この手の数が多い敵は好きじゃないけれど、
お兄さんがいてくれるなら、格段に楽になると思う
水の壁…便利だね。助かる
お兄さん、あっちの、トドメをお願い
あんまり口には出さないけれど、ありがたいね



●Re:蒼炎とステラグラス
「先程の狙撃に惚れ惚れしてね、ご一緒できて嬉しいよ!」
「……さっきは、助かったから」
 2つの影が、薄霧の中を歩み進む。
 先程の竜退治からまだ興奮冷めやらない様子のシュテルン、もとい彼女のモノクルに宿るラートは宿主の身体を借りて同行者を見上げた。
 返事を返すのは、星空を首に巻いた少年。一度口を開けて、少ししてからリュカは言葉を落とした。
 戸惑いではない、落ち着いた声。廿日鼠の顔は満足げに緩む。
「数の多い敵だ、僕らだけでは不安で……おや」
 そう遠くない所から、幾つもの咆哮が聞こえてくる。全て同じ方角だ。
 音を辿ると前方に、より一層濃い霧の渦を見つける。
「何かが居るようだね……ちょっと失礼!」
 警戒に越した事はないとばかりに、シュテルンが跳ねリュカの肩へと軽々登っていく。
 うん、どうぞ。そう短く返したリュカも同じ方向を見ていた。その瞳に、警戒の色を深めながら。

 複数の異形が衝突した岩は、最早原型を留めてはいなかった。
 薄霧に崩れた岩の塵が混ざって視界をより悪くする。中から咆哮が次々と上がり、重なっていく。
 憤怒の合唱を前方に認め、モノクルのガラスがきらりと反射した。気がした。
「居るようだね。さぁて、かき乱してやろうか、素早さなら自信はあるよ!」
 戦意を高めていくヒーローマスクの言葉に、リュカは灯り木の弾倉を視界に入れた後顔を上げる。
 数が多いのは明白だ。少年は静かに指先でセーフティを外す。それもまた、手慣れていた。
「お兄さんたち、存分にどうぞ」
 一緒に戦ったほうが、効率いいだろう。自分は援護を、彼等は撹乱を。
 切って、撃ち倒すのはお互いで。
「シュテルン、今度は水の魔力で君を護ろう」
 呼び声に出現する、水の膜。彼女の心のように澄んだ水流が周囲を流れ薄霧を巻き込んでいく。
 準備はできた。さぁ始めよう。
 リュカがアサルトライフルを構えるのとシュテルンが飛び出すのは同時だった。

 集団へ最初のアプローチに、真横殴りの雨が降る。
 塵煙が荒れ狂い、突然の攻撃にオブリビオンが戸惑う。何処だ何処だと出処を探す。
 いち早く集団から抜け出した一匹が宝石の輝きを持つ瞳で目的を見つけた。
 牙を剥き爪を地面にめり込ませる。勢いをつけようとしたその足へ、先に仕掛けるのは小さな猟兵。
 軽やかな俊足で辿り着いたスピードのまま、金色ナイフを水平に持つ。踏み出そうとする前足へ、上品に噛み付いてみせる。
 上等な作りの刃は鱗の隙間から脚を切り裂いた。途端に、敵の悲鳴が響く。
「驚いたかい? まだまだ、これからだよ!」
 眼下のマジックナイトから出された挑発の言葉に、益々募らせた怒りを隠す事無く爪を振り上げる。
 だが凶牙は少女どころか赤く洗練された衣装を汚す事はない。援護の弾丸がいち早く敵の攻撃を阻害した。
 勿論、銃撃だってシュテルンには掠りもしない。経験を積んだスナイプは先の戦闘で既に見ている。
 次への動作の合間、少しだけ振り返ると仲間が視界に入った。
 淡々と新たな弾を装填し、落ち着いた様子で銃口を向ける少年傭兵。戦場の風が更夜を乱しても、敵を狙う視線に揺れはない。
「少しは狙いやすくなったかな、なんて」
 何も心配することはない。頼もしい連携がついている。あとは思う存分、踊るだけだ。
 牽制を込めた銃撃が後続達をも纏めて掃射してく。乱れる銃弾乱舞の中を、更には獣に似た者共の足の間を廿日鼠が駆け回る。
 再び大混乱が起こった。ちっぽけな敵を狩ろうにも己の下を通られる。足が縺れて転び、隣りにいた同類を巻き込んでしまう。
 何とか追い詰めようにも、銃弾が身を貫きあろう事か足元の小人を狙った同類の攻撃も喰らってしまった。
 草原に転がり、痛みに呻く個体へシュテルンが優雅に飛び乗る。
「やぁ。起き上がれないのかな、鼠の手も借りたいかい? ……嗚呼残念だ、僕には手足が無かった」
 彼女の手は貸せないし、ごめんねと聖者が戯けてみせる。
 そのまま大きく飛んで宙返り。元の場所には飛びかかってきた別の個体の爪が降り注いだ。
 彼等の意図せぬ同士討ちを見届ける間も無く、少女は再び混乱の中を跳ね回る。

 一方、絶え間なく降らせ続ける雨の製造主は手を止めずに独りごちる。
「……うん、やっぱりこの手の数が多い敵は好きじゃない」
 けれど、常よりかは。独り対処していた時とは格段に楽だと、リュカは呟いた。
 的が多い。でも、此方にまだ向かってこない。
 自分が撃ち続けてる事もあるが、仲間が前線でずっと敵の足並みを乱してくれている。
 確かに効率がいい。着実に、自分は狙って撃てばいい。一匹一体ずつ、確実に潰さねばならないから。
 ネックはリロード。でもその僅かな時間は頼もしい魔法剣士が請け負ってくれる。
 スコープの狭い世界でも、元気な姿が時折映った。大丈夫、ちゃんと狙いやすくなっているよ。
 言葉を出さない代わりの感謝は、成果で出す。少女へ不意打ちで襲いかかる不届き者は即座に撃ち落とした。
 輝く牙も、宝石のような瞳も迷わず狙撃し破壊する。
 戦場は殺るか否か。戦って、戦って、戦い続ける。意志より先に、指がトリガーを握り続けた。
「――?」
 ふと、違和感を覚える。狙撃に集中していて気付かなかったが、前方で混乱している獲物共の数が減っている。
 急に青い眼が見開かれた。リュカが驚愕したのは今ではなく、10秒先の未来への悪い予感を感じたから。
 福音は側面から。忍び寄ってくるも草を踏みしめる僅かな音と、五感を超えた勘。それらがとっさに少年を動かした。
 身体の向きを変え即座に銃撃。放った先に居た一体を撃ち抜き間合いを取る。
(危なかった……)
 ひとえに、戦場で養われた感覚が身を守ったのだろう。距離は在るがそれでも接近を許してしまった。
 対峙する。それだけなら幾らでも経験した事だ。
 倒せるかなんて戦場に確実はない。何方が強いか、強かったか。結果だけが知っている。
 待つ気等無い敵に牽制し続ける。勿論仕留めるなら越したことはないが、興奮状態の獲物は早すぎた。
 もうすぐリロードしなければ。そう思いながら見た視界に、飛びかかるオブリビオンの姿。
 それとリュカの眼前いっぱいに水のカーテンを引く、小さな姿。
 水の幕に飛び込む音が聞こえる。中を通り、オブリビオンの動きが鈍った。無意識に、少年は走り出す。
 即座に腰を落としスライディング。構える銃と視線は真上へ、頭上ですれ違う鱗の怪物へ残る弾丸を全て撃ち込んだ。

「美味しくいただけたかい?」
 ゆっくりと起き上がるリュカの肩に、シュテルンがふわりと着地する。あおい色が間近で向き合った。
「水の壁……便利だね。助かった」
 お互い様だよとラートが応える。短い会話で、二人はお礼を確かに伝えあう。
 倒した一体を確認したリュカはリロードを済ませ、未だ終わらない戦場へ向き直った。
「お兄さん、今度はトドメをお願い」

 再び、二人は同時に武器を構える。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「次の相手の見た目は獣のようなオブリビオンですか。彼らも遺跡を守っている存在でしょうか?。」
【WIZ】で攻撃です。攻撃は【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【破魔】を付けた【属性攻撃】の【全力魔法】の【サンダーボルト】を【範囲攻撃】にして、『ナーガクーガ』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「それでは邪魔なオブリビオン達には退散してもらいましょう。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


レイ・アイオライト
また妙なオブリビオンが現れたわね……。まさに獣、こっちが隙を晒せば襲いかかってくるってわけ?

……いいわ、それならわざと隙をつくる。
不意打ちの飛びかかりを誘発させて、こっちは【交錯ノ魔絲】を周囲に張り巡らせてその攻撃を防御する。
見えない鋼糸、『雷竜真銀鋼糸』に絡め取られたナーガクーガに対して、強烈な電撃を浴びせる。どんなに強靭な鱗があろうとも、体の内側から灼かれたらひとたまりもないはず。(暗殺・範囲攻撃)

……怖気づいた?敵対してる相手が自分よりも格上だって今更気付いても、もう遅いわよ。(殺気・恐怖を与える)

(アドリブ等歓迎です)


テイク・ミハイヤー
ドラゴンのお次は!犬……いや、猫か?
この遺跡を守る番人ってヤツだな!

数の多い相手にこそ即席爆弾が有効!なんだけど、さっきのドラゴン戦で結構使っちまったからな。
こういう時に本物のヒーローならすんげぇ必殺技とかでズババーン!と……って無い物ねだりはカッコ悪いぞ俺!

UC加速迎撃。素早い相手には素早い反応で対応だ、数は多いけど攻撃を弾いた隙は必ずあるはずだぜ。
その自慢の牙を片っ端からへし折ってやる!いや、それはちょっと言い過ぎた。片っ端からは無理だから誰かヘルプ頼む!!



●Take Me Thunder!
 残り数体。既に何人かの猟兵達によりダメージを受けた個体ばかりが、一塊になって警戒している。
 敵は強いと認めたのだろうか、咆哮は仲間内への鼓舞にも聞こえた。
 その姿はどこまでも異様で、思わず感想が言葉に落ちる。
「次の相手の見た目は獣のようなオブリビオンですか」
「また妙なオブリビオンが現れたわね……」
 ふと、二種類の似た疑問形を耳にした。一方は己で、もう一方は……意外と近くに仲間が居たようだ。
 薄霧と岩で気付かなかったとは言え、明とレイは顔を見合わせる。
 挨拶は手短に、戦闘はもう始まっているから。共に慣れた猟兵同士、確認するのは己の手の内のみ。
「彼らも遺跡を守っている存在でしょうか?」
 視線を前方に戻し、明が七色に煌めく杖を前に構える。竜と戦った時とは違う光が杖に新たな彩りを与えていく。
 発生したのは静電気か。魔殺の帯で纏めている長い黒髪が風ではない力で浮き上がり、直後短い電流が周囲で発生する。
「恐らくね。……まさに獣、こっちが隙を晒せば襲いかかってくるってわけ?」
「そうかもしれませんね」
 返事もそこそこ、レイはオブリビオン達とその周囲を確認していた。
 暗殺は素早く、的確な判断が必要とされる。迷うこと無く手段を決め、一歩踏み出す。
 握り込んだ手を覆う手甲にも、魔法とは違う類の雷が走っていた。バチリと一つ大きな電流が生まれた後に、レイの姿はもうなかった。
 暗殺者は潜影し、残ったのは黒のウィザード。魔力を練り上げた明が口を開こうとして――。
「……おや?」
 帯電の光を宿したまま、一旦魔術の流れが止まる。敵集団の近く、視線の先に誰かがいる。

「ドラゴンのお次は! 犬……いや、猫か?」
 薄霧の澱んだ天気にも、真っ赤なマフラーが太陽のように眩しくて。
 さながらその光景は白煙の中から現れた真打ちヒーローの如く。
 正体は本人曰くヒーロー見習い・テイク。彼の姿は白濁した戦場でも実によく目立っていた。
 彼は先ず、まじまじとオブリビオンを眺める。腕を組んでうんうん、少し唸って。
「……この遺跡を守る番人ってヤツだな!」
 結論がでたようだ。数の多さに気付くと己の懐を探り、それからため息ひとつ。
(数の多い相手にこそ即席爆弾が有効! なんだけど、さっきのドラゴン戦で結構使っちまったからな)
 敵はテイクが見るからにも、弱ってきている。確実に、狙い時だ。
 少しだけ、思考が脳を占領する。こんな時、本物のヒーローならどうするのだろう。
 満を持して登場し、自信たっぷりにヴィランを倒す。奇跡のような技を使って。
「すんげぇ必殺技とかでズババーン! と……って」
 我に返り、首を何度も横に振る。それから、両手で己の頬を同時に叩いた。
「無い物ねだりはカッコ悪いぞ俺! やれる事はあるはずだ!」
 気を取り直し、蒸気の猿……ではない相棒のレンチを握りしめる。すると。
「そうですね。それでは邪魔なオブリビオン達には退散してもらいましょう」
 独り言に返事があった。同時に、テイクの視界前方に閃光が走る。
 電流だと気付いた時には、初手が動いていた。オブリビオン達の周囲に流れ始めた雷は囮の輝き。
 フェイントに威嚇する者共へ。先制攻撃は、遥か頭上。
「受けよ、天からの贈り物!」
 黒衣のウィザードが、虹の杖を天へ掲げた。明が高らかと呪文を告げ、魔力を開放する。
 一瞬にして敵上空の霧が晴れ、雷光が降り注いだ。
 持てる魔力に破魔の加護も取り付けて、雷の魔法は等しく全てのオブリビオンに命中する。
 更に、一度だけで終わらなかった。明の魔力を体内に取り込んだ者共の身体が光り、2度めの電撃が直に発生した。
 高度な魔法操作も荒廃の魔王、アゼル=イヴリスの落とし子を称する彼女には容易いこと。
 少し乱れた髪を手で整える所は、普通の17歳な女子ではあるけれども。
 高めのヒールを付けたブーツで歩き、少女は少年へと近付いて。
「『すんげぇ必殺技』とは、こんな感じでしょうか」
 光の暴力に眼をチカチカさせるテイクへ、明はにこりと微笑んだ。

 そして雷撃を受けふらつく敵一体の後ろでは女が独り、影より躍り出る。
 刹那の薄蒼い電光を身に反射させ、菫青石の女は舞う。異形共の真っ只中で。
 突然の出現に驚くも即座に取り囲む獣のような者共、その爪を紙一重でするりと抜け女は再び影に沈む。
 次に姿を見せたのは近くの岩陰。また姿を消したかと思えば、宙を飛びやはり影へと消えていく。
 影に紛れて敵を討つ、レイの信条そのものが示されているようだった。しかし未だ、攻撃には至らない。
 これ迄に他の猟兵達から何度も攻撃を喰らっているオブリビオン達は、一層の警戒を持って挑んでいた。
 無策で下手に手を出せば数の暴力をまともに受ける。隙でも見せようものなら、尚更。でも。
(……いいわ、それならわざと隙をつくる)
 既に『策』は張り巡らせた。開始の合図にと、姿を十分に見せた後大げさな動作でよろけてみせる。
 隙だらけの背中、牙を持つ者が見逃す筈はなかった。
 食い殺そうと飛びかかるも、目標に食い込めず異形の一体は空中で動きが止まる。
 状態を理解できないのか藻掻いている。すぐに、己は何かに絡め取られている事に気がついたようだった。
「奥の手ってのはね、誰にも知られないから奥の手っていうのよ」
 仕掛けたのは視えない蜘蛛の巣、交錯ノ魔絲。レイのみが、毒塗り鋼糸の位置を認識できる。
 捕えたのは哀れな蝶ではない。容赦は要らないとばかりに手甲を嵌めた手をあげた。
 もう一種類、編み込んだ糸がある。雷竜の髭とオリハルコンで造る真銀の鋼糸。
 火がつくように、燻っていた電流が活性化する。糸を伝う雷竜の力が艶消し鱗の隙間から流れ内側を灼いていく。
 悲鳴をあげる個体を見て、逃げ出そうとする同類共。だが、レイの包囲網からは逃げられない。

 魔電と竜の雷二連を間近で見たテイクがはっと我に返る。
「いけねぇまたカッコ悪くなる所だった!」
 もう遅れを取るわけにはいかない。見ているだけなんて、御免だから。
「ってこっち来た!」
 運よく糸の罠から抜け出た一体が向かってくる。綺麗に反射するも鋭い凶器の牙と爪を持って。
 逃げるのは簡単だ。だが、今は隣に仲間がいる。ヒーローがすべき事はひとつだ。
 テイクは武器を構え走り出す。その足をどんどん加速させながら人間のヴィジランテは敵を見る。
(集中しろ、俺!)
 繰り出された爪の一撃をこちらも素早くスチームモンキーで弾き返す。
 一旦互いの距離は開くも、オブリビオンは直ぐに後ろ足で跳ね飛びかかる。
 今度は大きく口を開けると敵の鋭い牙が輝いた気がした。おそらく牙が奴等の一番の武器だろう。
(だったら! 落ち着け俺、相手の動きを……見えた!)
 戦いの中、集中して見つけた敵への攻略ルート。噛みつかれる瞬間、思いっきり動力機付きレンチの一部を口へ突っ込ませた。
 人間の底力を見せつけるかのように力いっぱい引き抜けば、宝石の輝きを放つ牙は折れて砕け散る。
 名の通り武器である牙を、落としてみせた。確実に敵へダメージを与える事に成功し、ぐっと力強い握り拳を作ってみせる。
「よっし、自慢の牙を片っ端からへし折ってやる!」
 啖呵を切るも、敵は牙を喪っても襲いかかってきた。しかも、脱出に成功したのかもう一頭増えてる。
「いや、ちょっと言い過ぎた。片っ端からは無理だから誰かヘルプ頼む!!」
 叫び声と同時に、天から豪雷が敵一体に落ちた。更に、別の一体には鋼糸が絡まり感電している。
「安心して下さい。ちゃんとフォローしますよ」
 テイクの後ろから雷のオーラを纏う明が、大きな黒い帽子の鍔を上げ笑ってみせれば。
「アンタの攻撃、無駄にしないわ。存分に暴れなさいよ」
 少しだけツンとした口調でも、涼し気な顔の口端がつり上がるレイも居た。
「……! ありがとな!」
 魔法使いと暗殺者。二人を交互に見て、気合を入れ直す見習いヒーロー。
 敵は後もう少し。後少し、全力で挑む。

 心強い仲間がいれば、気持ちは落ち着き集中力が増加する。
 気分はヴィランと戦う時のように高揚してくる。確実に、一体ずつ。横は捨て、前だけを見てテイクは走った。
 正面から敵の牙を受け止め、そのままレンチで破壊する。
 死角から攻撃してくる別の個体がいようものなら、レイが鋼糸で捕え動きを封じた。
 仲間同士で支え合い、確実にオブリビオンを追い詰める。
 ラスト一匹の牙をへし折り、渾身の力を込めてテイクがスチームモンキーを振り抜く。
 吹っ飛ばした先は再度仕掛けられた雷竜真銀鋼糸の巣。これで、全てを捕えた。
 身動きが取れず呻くだけの異形達をレイが冷ややかに見つめる。
「……怖気づいた? 敵対してる相手が自分よりも格上だって今更気付いても、もう遅いわよ」
 その言葉通り。もう、抗う術は奴等にない。死刑執行を待つ、罪人達のように。
「それじゃ雷、頼んだぜ!!」
 あらん限りの声でテイクが叫ぶ。呼び声に応え、全ての糸に電流が流れる。そして。
「再び受けよ、天からの雷光を!」
 二人の活躍中に十分練り直した魔力を使い、明が再度雷の魔力を解き放つ。
 轟く雷鳴、落ちた魔力の電撃は張り巡らせた鋼糸も伝いオブリビオン達へ直撃した。
 二色の異なる雷光が激しく輝き、轟音が耳を攻撃し、やがてゆっくりと嵐は去っていく。
 全てが終わった後に、起き上がるナーガクーガは一匹も居なかった。

「……ぃやったー!」
 倒し終えた。その達成感から力が抜けたテイクが草原に倒れ込む。
「お疲れ様です。でも、まだ先がありますよ?」
 僅かに残った魔力の静電気を払いながら、明が見下ろし笑いかけた。
 緊張から一時開放された二人をこっそり和やかに眺めたレイが、視線を変える。
 薄霧の向こう、遺跡の最奥へ。
「いよいよね。二人共、行くわよ」

 邪悪なる柱が、この先で待っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『災厄の浮島』

POW   :    竜の巣穴
【「炎」「氷」「雷」属性のドラゴンの群れ】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    空を照らす光
【触覚から放たれる閃光】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体当たり】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    雲隠れ
【口】から【雲状の吐息】を放ち、【視界を遮ること】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・由です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 獣とも、ドラゴンとも言えるような異形達を討ち倒した猟兵達は更に進む。
 心なしか、霧が濃くなっていく。誰もがこの先にある存在を確信していた。
 最後の方は前後不覚に成る程。まるで、雲の中にいるような。
 それでも迷わず進めたのは、真っ白の向こうに大きくて長い影が見えるから。

 一瞬、強い向かい風を受けた。
 思わず目を閉じる。すぐに顔を上げると、視界が一気に開けた。
 青空のもと、遺跡の中心に一際大きくそびえ立つ建造物。
 どの猟兵も瞬時に感じ取る、邪悪なる気配。
 確信する。あれこそがクラウドオベリスクだと。

 近寄ろうと足を踏み出すが、ひとつ違和感を覚える。
 目標が見られたからと意識が遅れたが、霧が消えていた。
 見渡せば囲う岩山まではっきりと見えるほどの絶景が広がる。
 だが、何故か自分の居る所はとても暗い。
 それどころか、自分達を中心に地面が黒く染まっていた。
 
 誰かが上と叫んだ。見上げた、何かが太陽を遮っている。
 大きい雲に似たそれは、ゆっくりとクラウドオベリスクの方へ流れていく。
 猟兵達の頭上に太陽が戻った時、雲だと思っていたものの正体が理解できた。
 巨大な、浮島を思わせる形状のオブリビオン。それだけではない。
 今日何度か聞いた、竜の咆哮がいくつも響き渡る。

 魚類のような、浮島が此方を見下ろした。
 邪悪を護る守護者は正しく侵入者を排除しようとしている。
火土金水・明
「この姿を見ると、昔読んだ小説を思い出しますね。あちらは日本列島を背中に乗せた巨大な一匹のナマズのような怪物でしたが。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は【フェイント】を掛けつつ【先制攻撃】で【高速詠唱】した【破魔】を付けた【属性攻撃】の【全力魔法】の【フレイムランス】を【範囲攻撃】にして、『災厄の浮島』と『竜の巣穴のドラゴン達』を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「ここまで大きいと範囲攻撃にしないと収まりませんね。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


オーガスト・メルト
へぇ…竜の巣穴があるのか(ニヤリと笑う)
素材が狩り放題というのは嬉しいな。
あの竜どもの相手は俺たちに任せてもらおうか。

【POW】連携・アドリブ歓迎
さあ、デイズ、ナイツ、UC【真竜顕現】だ!
【竜焔石】の魔力も充分ある。思う存分戦うぞ。

ナイツに【騎乗】してデイズと共に【空中戦】を挑む。
敵の攻撃を【見切り】、他の【敵を盾にする】ように立ち回る。
こちらの攻撃は竜の【怪力】による【鎧無視攻撃】に、【なぎ払い】【吹き飛ばし】【踏みつけ】を全て駆使する。
更に炎と雷の【属性攻撃】ブレスもオマケしよう。

デイズもナイツも攻撃に仲間は巻き込むなよ?
『うきゅるるる!』『うにゃららら!』
ああ、油断なく狩るぞ!



●晴れ時々火の槍、のち双竜の息吹
 初夏の清々しさが、青々と輝く戦場上空に広がっていた。
 霧晴れに少しだけ眩しかった陽の光も、今は広いブリムのおかげかあまり気にならない。
 黒のウィザードはゆっくりと指先で帽子を掴み、顔を上げた。
「あの姿を見ると、昔読んだ小説を思い出しますね」
 僅かに黒い瞳を細くして呟く。脳内で浮かぶ物語の怪物に、少しだけ似ている気がする。
 暫し漂うオブリビオンと背負う龍の巣を眺め、緩く笑うと明は意識を切り替えた。
 目を閉じ少しずつ意識を集中させる。魔を練り力へと構築していく。
 激しい連戦が続いた。何度も全力で放ってきた術を、もう一度。今一度。
「ここまで大きいと範囲攻撃にしないと収まりませんね」
 ユーベルコードは決まっていた。晴天の陽気よりもぐんと、周囲の温度が上がっていく。
 高速で紡がれる詠唱と共に、七色の杖を一振りする。
 出現したのは、烈々と燃える焔。虹に灯る火が、振り回す度に威力を増していく。
 やがて炎は分裂し、いくつかの槍の形を成していく。全ての槍先が上空の敵へと向けられた。
 準備は出来た。灼熱と思われる魔炎の中涼し気な顔をした魔術士は七色の杖先を目標に向け、息を吸い込む。
「我、炎により敵を焼き尽くす」
 眼を開け、最後の一声。発動の言葉を解き放つ。
 黒の瞳に映り込む、赤い槍が狙いを定め発射された。

 一方で、竜を見上げて目を輝かせている者も居る。
「へぇ……竜の巣穴があるのか」
 竜型バイク、ナイツに跨るオーガストは心底この状況を喜んでいた。
 口端を上げ好戦的に笑う。嬉しくなるのは仕方ない。眼前に広がるのは、素材の宝庫だ。
 巣穴を暴けば、一体どれ程の材料を手に入れる事ができるのだろう。
「素材が狩り放題というのは嬉しいな」
 高鳴る胸の内を隠さないまま、竜騎士は一度騎乗をやめ地に足をつける。
 これまでバイク形態と槍形態で戦ってきた相棒達を、一度彼は元の饅頭に似た姿へ戻した。
 すかさず肩に乗る小さい竜達を一匹ずつ指先で撫でる。一つの魔石を手にしながら。
「さあ、デイズ、ナイツ。行くぞ『真竜顕現』だ!」
 火の魔力を込めた竜の石を胸の前で握りしめ、騎士は高らかに宣言する。
 真夏の陽炎が手の内に包んだ石を中心に発生し、すぐさま灼熱の赤を呼び覚ます。
 宝石の魔力が溢れ出し、ナイツとデイズごとオーガストを巻き込み膨れ上がる。
 大きな赤き魔導の流れが解けていけば、若き竜騎士の後ろに顕現されたのは二匹の大きな竜。
 封印を解いた陽白竜王と月黒竜帝が神々しき翼を広げ、存在を示した。
 益々深まる笑みのまま、オーガストはナイツに飛び乗る。目標は言わずもがな。
 双竜は浮島に巣食う竜共へ、宣戦布告の咆哮を上げると力強く飛び立った。

 魔炎の槍が速度を上げオブリビオンへと飛んでいく。
 巨大な守護者は元より大きな口を更に開け飲み込もうとするも、直前で焔が複雑に揺らめき軌道が変わった。
 驚く巨躯はフェイントに反応しきれない。着弾は側面、爆炎の音と身体が傾く。
 確実な手応えを感じ、明は次なる一手を練り上げる。極彩色の媒介が更なる力を創り出した魔火に焼べる、が。
「……! あれは」
 爆煙と浮島自身が生み出す雲の合間、オブリビオンの青く大きな目が明を捕えている。
 開けていた口を一気に窄め強い風の流れと共に吐き出したのは……雲状の吐息。
 とっさに魔法を中断し杖で身を護るも視界が一瞬にして白くなる。
 直接の攻撃ではないから痛みはないものの、この状態では身動きがとれない。
 悪くなった状況に考えあぐねて、答えがでないまま突然雲が吹き飛び視界が開けた。
 眼前に現れたのは、白と黒の立派なドラゴン達。
「大丈夫か? あの竜どもの相手は俺たちに任せてもらおうか」
 黒い方の竜から声がする。視線の先には赤い髪の猟兵が見下ろしていた。
 思考する迄もない。仲間が居るならば、共闘して倒すべき。
「感謝します。竜はお願いします」
 オーガスト越しの背景では既に何匹かの竜が巣穴から姿を見せてきた所だった。
 長話は不要。途中だった魔法を再度練り直すため集中する。
「……っ」
 少しだけ視界が歪む。全力で戦い続けた反動を感じる、でも。
 黒を着るウィザードは笑みを浮かべた。これしきで、止まる訳はない。
 再び形成されていく炎の槍を見届けて、竜騎士達は大物へ向き直る。
「出てきたな、宝の山。ナイツ、終わったら全部収納するぞ」
 呑み込ませた後が楽しみだ。それが戦闘の合図に、二匹が上空の軍勢へ挑む。
 稲妻の属性を持つ竜が電光石火の速さで突っ込んでくるのを、ナイツが冷静に見切り回避する。
『うきゅるるる!』
 当てが外れた雷竜は横からデイズが怪力を以て掴みかかり、次に飛んできた氷のブレスを防ぐ傘にした。
『うにゃららら!』
 同士討ちにたじろぐ氷竜へ間髪入れず今度はナイツが体当たりを繰り出し吹き飛ばす。
 狙いは前方奥で火炎を吐こうとしていた竜へ。その間にデイズが竜達の上へと勢いよく飛んでいく。
 炎と氷の竜が衝突した瞬間、頭上から急降下したデイズが纏めて二匹を踏みつけ叩き落とした。
 しかし蹴散らしても尚、後続が来る。いつの間にか別の竜がナイツの背後から司令塔を狙っている。
 凶暴な牙が届く寸前、天上から炎の槍が降り注いだ。
「焼き尽くせ!」
 マントを翻し詠唱を叫び、明は練り尽くした火炎の槍雨を竜達に降らせ続ける。
 破魔の輝きを込めた焔が違わず敵のみを貫いていく。
 撃ち込まれる灼熱の杭は竜に留まらず、手薄になった浮島本体にも突き刺さった。
 範囲を広げて、多くを巻き込み纏めて焼き尽くすイメージ。絶えず思考に、倒すための力を注いでいく。
 刺し込むだけでは留まらず更に術を重ね合わせ、フレイムランスはその場で大きく燃え盛った。
 二度の熱さに悶える隙を見逃さず、竜騎士達も追い打ちをかける。

 押してはいた、それでも巣穴からは援軍が飛び出してくる。
 次に襲いかかるは三属性を含んだ巨大なブレスの渦。
 怯むこと無く、白と黒の真竜が口を開ける。対抗する炎と雷の息吹が激しく衝突した。
「……! 大丈夫か?!」
 数に押され余波は受けたものの、ダメージを最小限に抑えたオーガストが振り返る。
 眼下では防御のオーラを展開した明が視線で無事を伝えてみせた。彼女も被害は同程度のようだ。
 まだ戦える、油断なく狩り続ければ果ては在る。元より倒し尽くしてからもするべき事が沢山ある、負ける気はない。
「デイズもナイツも攻撃に仲間は巻き込むなよ?」
 頼もしき咆哮を耳に再び彼等は浮島を、竜の巣穴を目指す。
 少々汚れたローブを払い、塵を落とした明も帽子を被り直して杖も構え直した。
「5本で足りないのなら、幾らでも。101本でも、撃ち込みましょうか」
 
 倒すまで、戦うまで。
 猟兵達は全力を尽くし続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オクタ・ゴート
今回において侵入者は他でもない我々だ。ですが、討たねばなるまい。

【影に潜む汚泥の鞭】によって飛び回る龍を掴み、足掛かりにしながら本体へと「空中戦」を仕掛けましょう。龍が他の方に危害を及ぼす恐れがあるのなら、範囲攻撃で薙ぎ払いつつ。
本体へと辿り着いたのならば、『断』を手に【捨て身の一撃】を。
「骸の海へと還りなさい、ここは守る価値などないのだから」



●眼窩に浮かぶ赫
 竜と炎の猛攻を少し遠目に、転送を終えた猟兵が一人地に脚を置き足を下ろした。
 仕立ての良い黒いスーツ、皺のないスラックス……の周辺に。しなやかな黒い蔓のようなものがある。
 特筆すべきはきっちりとしたネクタイの先、その上。人の首が置かれていない。
 代わりに在ったのは、オクタ・ゴート(八本足の黒山羊・f05708)の名を示すネジリ角と白骨山羊。
 ゆっくりと、骸骨が動いた。眼球を置くべき位置に潜む深淵から赤が2つ浮かび上がる。
 それらは確実に上空の守護者と挑む猟兵達を視ていた。
 激しい戦いの中、違わず敵が何に当たるかを認識する。
「……今回において侵入者は他でもない我々だ」
 業の奥から声がした。草原を踏みしめ二本の脚と、八本の足が戦地を進む。
 洗練された動きの正体は黒き液状の不定形。しかし不気味さを感じさせぬ程、彼は紳士だった。
「ですが、討たねばなるまい」
 それでも。どのようであれ、猟兵ならばオブリビオンは討ち滅ぼすべきと理解している。

 見上げる先、激しいぶつかり合いと爆音も響く浮島周辺を観察する。
 一匹の氷竜が低空飛行で味方めがけて飛んでいくのを視界に入れたオクタの脚回りが不意にざわつき始めた。
 蠢く8本の足が自らの影へと沈んでいく。それ以外は動かない。ただ、骸骨頭は獲物を見ている。
 視線の先で翼を広げていた竜が、不意にかくんと何かに引っ張られ身体を大きく強張らせた。
 何が起こったか、氷竜自身は理解できない。身体が急に拘束されたようなのだが……何も視えない。
 それどころか後方へ引っ張られる。慌てて抵抗するも不可視の戒めに抗う術が無かった。
「失礼。良い足場が在りましたので」
 暴れる竜へ、落ち着いた声が頭上から振ってくる。踏みつける靴の重さと共に。
 混乱する氷の瞳に、赤く滲み出る山羊の眼がかち合った。
 何が起きたと問いかけてくるような竜へ、そっと白手袋に包まれた人差し指を山羊は凡そ己の口許に近づける。

「種も仕掛けもお教えしません」

 告げて、オクタは次の拘束した竜へと飛び移る。確りと足場にした敵を汚泥の鞭で弾き落としながら。
 炎の竜も、雷の竜も、影を移動する不可視の束縛から逃れられない。
 オクタは冷静に他の猟兵達との戦闘で弱っているものを狙い足場にしていった。
 途中、彼自身もさり気なく仲間への援護を忘れない。
 不届きな輩共は猟兵達へ攻撃を仕掛けようとした瞬間、何かをぶつけられ吹っ飛んでいく。
 浮島周辺以外は眩しい程の晴天。彼等を攻撃する道となる『影』はいくらでもあった。

 やがて目標の高度に辿り着く。竜など前座、目的は眼前の泳ぐ巨体。
 徐にオクタは影に沈む足の一本を引き抜くと、迷いなく引き千切った。
 分離した不定形の一部はその姿を巨大なギロチンの刃へと変貌させていく。
「骸の海へと還りなさい、ここは守る価値などないのだから」
 断頭台の凶器を手に、最後の足場を蹴り飛ばして浮島の上へ。
 重い鈍らが降下速度を上げ、攻撃ただ一点に集中した一撃を振り下ろす。
 聴覚を壊すような、オブリビオンの絶叫が手応えの証だった。

 何とか黒い足を駆使して地面の激突は免れたオクトが、ふらりと立ち上がる。
 最初と同じように見上げた先、浮島は大きな傷を受け動きに支障が出る程傾いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

シュテルン・ガーランド
リュカ君(f02586)と
大集団をお見事お見事!
さあて、メインディッシュのご登場だね!
この先もご一緒いただけると頼もしいんだけど!
小さな僕らだからこそ、やって魅せよう!

トリニティ・エンハンスで炎の魔力を宿して向かおう
こんがり美味しく焼き上げてしまうために
大きな敵の体の上を飛び跳ねて、急所を探しながらの小さな攻撃をいくつも
彼の狙いやすい的を作るように、じわじわと美味しいところを突き止めて
かっこよくキメてごちそうさまを言わなくちゃ
僕達なら、できるだろう?

ナイス!美しい狙いだ!
頼もしい彼にお礼をしなきゃね
素敵な戦いをありがとう少年。君の、名前は?
ふふ、僕はラートって言うんだ
また何処かで会えるといいね


リュカ・エンキアンサス
シュテルン(f17840)お兄さんと
勿論、最後まで一緒に行こう
それにしても……大きいね

お兄さんにならって
自分最初は探りながら撃っていく
大きい相手だからね
焦らず無理せず。着実に攻めていければいい
触角に光がともったら、閃光が放たれる前に遮蔽を取るなりして回避できたら
…これ、食べられるの
食べられる気がしないんだけれど、明るいお兄さんがそんな風に言うなら、なんだか食べられる気がしてきた
…え、そういう意味じゃない?

一緒に探して、そこっていうのを見つけたら、
間髪おかずにUCを使って一気に畳み掛けて倒したい
…届け

こちらこそ、お疲れさま
お兄さんのおかげで、今日は色々助かったよ
ありがとう
俺はリュカ
お兄さんは…?



●小さな星でも、彼方へ貫けるなら
 巨大な浮遊物が傾けば、当然飛行能力にも影響が出る。
 高度が落ちていると確信するのは移動する浮島を追いかけていた二人の猟兵。
「さあて、メインディッシュのご登場だね! もう既に料理は始まっているようだけれども!」
 正確にはシュテルンに宿るラートも含めて三人のうちの二人、ヒーローマスクの方が興奮した様子で声を上げた。
 軽やかに草原を駆け抜け目標へと接近する小さき星の隣を、ここまで共に戦ってきた少年傭兵がついていく。
「それにしても……大きいね」
 何度見上げても、体積は変わらない。あの巨躯に、これから自分達は挑まねばならない。
 けれども、退く意志はひとつもなかった。この戦場にいる全ての猟兵達と同じように。
「なぁに、あの大集団をお見事見事に蹴散らせた僕たちだ。この先もご一緒いただけるんだろう?」
「勿論、最後まで一緒に行こう」
 改めて、共闘の意志を確認し合う。
 嬉しくて加速するシュテルンの身体に、三度目の加護をラートが授ける。風、水、そして今顕現するのは火の力。
 赤い衣装に、紅蓮の煌めきがよく映える。此度はより攻撃に力を注いだ。あのオブリビオンを美味しく焼き上げる為に。
 彼等の心を映しきらきらする火の粉を横目に、リュカが涼しい顔のまま同じく速度を上げた。
 少年は風を受けて、夜空を靡かせる。

 猟兵達は戦場を把握しながら、場所を探していた。一緒に戦う為に、最適な位置を確認する。
「お兄さんたち、あそこ」
 見つけたのは、もう少し走った先にある小高い場所。
 丁度、高度を落としたまま傾きを直そうとする浮島がそこへ差し掛かろうとしていた。
「良い所を見つけたね! 上手く行けばあそこから飛び乗れそうだ!」
 果たして読み通り、浮島が小高い所すれすれの所でようやっと体制を立て直しゆっくり浮上していく。
 その間に銃を構えたリュカの肩へ廿日鼠が飛び乗り、勢いよく巨大な浮島へと跳んで上陸する。
 不安定な足場を物ともせず、魔法剣士のたまごは島を登って行った。
 だが侵入者に気付いた巣穴の竜が、例え小さな存在でも許す筈もなく牙を剥く。
 シュテルンは小さな躰だ。雲を生む浮島で身を隠す場所等幾らでもありそうだが、あえて彼等は派手に立ち回る。
 青を染めた羽帽子を揺らし、兎の如く飛び跳ねる。時折金のナイフ片手に剣舞を踊っても魅せた。
 火花すら凛々しい姿の彩りにして、小さな星が跳ねて飛ぶ。ここだよと、主張しながら。
 狙い通り竜は良く見える獲物を凝視した。ひとのみだと言わんばかりに口を開ける。
 ただし入ってきたのは赤い少女ではなく、無慈悲な弾丸。それも大量に、正確に口へ突っ込まれた。
 彼等の演舞は、下で援護するリュカにだってよく視えた。
 巨大浮島のすぐ近く。まるで嵐のように風が吹き荒れる中、青い目は黄色い空の星を追いかける。
 不意打ちの銃撃は竜を貫通ついでに大きなオブリビオンへもダメージを与えた。
 焦らず無理せず集中して少年は撃ち続ける、討ち倒す道筋を探りながら。
 それは浮島で戦い続けるシュテルンとて同じこと。じわじわと、美味しい所を突き止めていく。

「うん? ……あれは!」
 浮島の頭から生え伸びる触覚の先、緑の星が突然淡く輝いた。
 嫌な予感を感じ見下ろすと、リュカも同じことを感じ取ったのかスコープから顔をあげる。
 自分達と同じ、あおい敵の眼は確実に少年を見ていた。光は強まり、触覚は撓って眼下に向けられた。
 何かが来る。戦場の直感を信じ少年が近くの岩に身を隠す為走り、そして。
「させるものか!」
 小さな廿日鼠が天辺へと駆け上がる。走る、走る、名も知らぬ戦友を助ける為に。
 止まらぬ勢いのまま、一気に跳ぶ。熱した金のナイフが触覚の根本を切り裂いた。
 切断迄は行かなかったが、閃光のタイミングが大幅にずれる。放たれた光は、リュカが隠れた岩を照らし出す。
 外れはしたが、巨大な敵はそれでも体当たりをすべく岩めがけて突進を始めた。
 急加速する圧に慌ててシュテルンは切りつけた触覚にしがみつく。
 流れ行く視界の中、尾を引く更夜の夜明ける先端が衝突地点から逃れていくのを辛うじて見た。

 激しい轟音と共に、地面が振動する。
 収まってもなおリュカは視界が揺れているような気がした。
 衝撃の余波は受けたが動けぬ程度ではない。立ち上がり振り返る。
 自分が元いた場所は浮島に潰され、歴史的価値のありそうな岩達が粉々になっていた。
 それよりも今は。警戒をしながらも、砂煙と雲の合間、小さな仲間を少年は探す。
「かっこよくキメてごちそうさまを言わなくちゃ。その前に倒れるわけにはいかないからね!」
 多少のダメージを受けながらも、元気な声が足元で聞こえた。
「……これ、食べられるの。食べられる気がしないんだけれど」
 心配の言葉よりも、するりと返事が抜け落ちた。まだ戦場の中だから、緩める雰囲気はほんの少し。
 仲間が居るから、軽口なんて戦いの空気の中でだせるのだろうか。
 明るいお兄さんがあまりにも楽しそうに言うから、なんだか食べられる気がしてきた。けど。
「え……そういう意味じゃない?」
 そんな心の声が、顔に出たのだろうか。
 見下ろし見上げた顔がかち合った後、僅かに笑いあった。

 折角の大物。極上の調理をしなければ。
 僕らならできるだろう?その声を鼓舞と受け、一人の傭兵が前に出る。
 浮島は衝突の衝撃で未だ動けていない。二人で作り出した、今この時、好機を逃す手は無い。
「――星よ」
 告げた声を受け、灯り木を動かす魔術と蒸気の力がより活性化する。
 装填するのは、少年の意志を宿したような星の弾。力を、祈りを砕けと想いを込めて。
 照準を合わせる。魔の力が木に最も明るい恒星の光を灯した。
「……、届け」
 願いの先へ、シリウスの光が撃ち放たれる。
 それは浮島を真横から、分厚い身体を真っ直ぐに……貫いた。

「ナイス! 美しい狙いだ!」
 仕留めるには至らなかったが、確実に猟兵達は浮島を追い詰めている。
 称賛の声はどこまでも嬉しそうに弾んでいた。
「こちらこそ。……お兄さんのおかげで、色々助かったよ」
 ありがとう。その声は、二人から交わされる。
「だけど素敵な戦いはまだ続きそうだね。そうだ、少年。君の名前は?」
「俺はリュカ。お兄さんは……?」
 ようやく名前を聞けた。喜ぶ顔のまま、シュテルンは得意げに小さな指先でモノクルを撫でた。
「ふふ、僕はラートって言うんだ」

 戦場で出会える縁は、この先も続いていくだろう。
 何処かでまた会うために。さぁもう一度と、浮島へ挑んでいく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイ・アイオライト
【POW】
ちょっ……でかすぎるでしょ……!
並大抵の攻撃じゃ通用しなさそうね。……それなら。

【影ノ傷跡・纏:転身万化】で変身する。姿は……そうね、キマイラフューチャーでアイツが呼び出してた……あの黒竜なんてどうかしら。
炎も氷も雷も、黒竜となりながらも自身の影で『オーラ防御』、応戦するわよ。

黒竜のブレスと圧倒的な膂力で、流星のごとく突き刺すように一撃。揺らいだら変身を解いて『浸蕀のソードブレイカー』で内側から影で蝕むわよ。

帝竜が棲む大陸を発見するためにも……ここで立ち止まる訳にはいかないわ。
(アドリブ等歓迎です)



●影竜再臨
 巨大なオブリビオンが痛みに暴れる度、地面は揺れ強い風も巻き起こる。
 草地を薙ぎ払う突風に岩影へ潜んで回避したレイが姿を現し、乱れた髪をかきあげた。
「ちょっ……でかすぎるでしょ……!」
 見た目は言わずもがなだが、規模が一々でかい。最初は途方もない戦いにみえた。
 しかし、猟兵達の攻撃は確実に敵を追い詰めている。
 現に眼前の動く島は己より小さい者達の猛攻を受け弱ってきていた。それでも。
「並大抵の攻撃じゃ通用しなさそうね。……それなら」
 上げていた手を下ろす。ゆっくりと。どこか、寒気のするような仕草で。
 明るい陽の光の下、彼女の影が草原に色濃く存在している。
 レイが一つ瞬きした後、影は女の体以上に範囲を広げ、不気味に蠢いた。
「――自在転身。見破れるかしら?」
 呟いた途端、漆黒が起き上がる。それは暗殺者に被さり姿を覆い隠した。
 人を包んだ程度の黒い球がぐにゃりとひしゃげたかと思いきや、質量を増していく。
 やがて大きな黒の奔流となり、転身する者の意思に従い形を変えていった。
(姿は……そうね、キマイラフューチャーでアイツが呼び出してた……あの黒竜なんてどうかしら)
 まだ終結して間もない戦争の記憶を呼び起こす。
 意識したのは、花舞う戦場で最後迄残っていた強者が喚んでいた者共。
 真っ黒なうねりはやがて大きな竜を模る。
 影の翼が広がり、いつか見た黒竜へと変貌した。
 まるで骸の海に還った筈の一匹が、世界を超えて降臨したかのように。

 僅かな浮力を取り戻した浮島が、己が飼っているものではない竜を視界に認めて凝視する。
 禍々しい。そう表現してしまえる存在が更に影を纏いながら対峙した。
――ルァアアアアア……!
 咆哮したのは何方か。どの竜か。
 連戦でも生き残り未だ周囲を飛んでいた数匹が、住処を護ろうと黒い同種目掛けて襲いかかる。
 変貌したレイも、恐れる事無く地を踏みしめ飛び立った。
 先ずは眼前の赤へ。一蹴りで距離を詰めた黒の腕が伸び、流れ星の速さで殴りつける一撃を与える。
 圧倒的な腕力で吹っ飛ぶ火竜を見向きもせず、次に顎を震わすと深淵から吐き出されるようなブレスを青に吹き付けた。
 墜ちていく氷竜。その影から、雷を纏った黄色い竜が飛び出し黒竜へ掴みかかる。
 勿論応戦し電撃は影のオーラが防ぐも、しつこく雷竜が食らいつく。
 幾ら相手は手負いとて、竜の一匹。死力を尽くして行く手を阻む。
 本体はもう少し。あと少し。少しずつ、押しているが届かない。
(帝竜が棲む大陸を発見するためにも……)
 強い意志を以って、片腕少し引く。
 いつの間にか、雷竜を浮島と自分で挟む程追い込んでいた。
「ここで立ち止まる訳には、いかないわ!」
 全力で叫び、零距離から刺すように拳を突き出す。
 衝撃は雷竜を貫通し、浮島をも揺らがせた。
 間髪入れず、黒竜の姿が日に当てられた影のように溶けて消えていく。
 力尽きた雷竜が崩れ落ち残った攻撃の跡に、変身を解いたレイが着地していた。
 その手に、一振りのソードブレイカーを握りしめて。

「蕀に浸食されて朽ちなさい!」
 一息で突き刺した。影の刃がオブリビオンを内側から切り刻む。
 身を刻まれる苦痛に暴走する浮島。
 巻き込まれる前にと、暗殺者は影の中に消えていった。

 後もう一手。もう一歩。
 死を与える者の経験が、そう告げている。

成功 🔵​🔵​🔴​

テイク・ミハイヤー
なるほどなー、なるほどー。
いやいや!でかくねぇか!?

UC逆境粉砕。俺がスーパーヒーローみたいに飛べればよかったんだけど、現実はそうもいかねぇや!
氷のドラゴンには[属性攻撃]で蒸気をお見舞いしてやれるけど、それだけじゃねぇもんな。
[視力]で俺の倒すべき敵を見極めて、オブリビオンに強烈な一撃をお見舞いしてやるぜ!

とは言っても、火力不足は否めねぇか……。そこはそれ、そういうのが得意な猟兵に任せるぜ!
俺に出来る事って言ったらこうやって地道にダメージを蓄積させる事だからな!


テオ・イェラキ
真の姿を解放
ほう、これがクラウドオベリスクか……中々に禍々しい雰囲気をしているな

恐らく破壊した方が良いのだろうが、まずはあのデカデカとしたヤツを処分してから、ゆっくりと破壊することにしよう
ということで、『祖霊鎮魂す奉納の舞』を使用
飛び交うドラゴンと巨大な魚を狩り、祖霊へと供えてやろう

飛び交いながら巨大な魚と空中戦と空中戦を繰り広げる猟兵たちを尻目に舞が終われば、俺も『スカイステッパー』で『空中戦』に参戦しよう
待たせたなっ!

ジャンプ回数には限りがあるからな、巨大な魚の周囲を飛び交うドラゴンを足蹴にしながら巨大な魚へと向かおう

うざったく集ってくるドラゴンも、巨大な魚もまとめて竜巻で叩き落としてやる



●見習いヒーローと蛮族のバディ・フィニッシュ!
「なるほどなー、なるほどー」
 眼前で巨大な敵がのたうち回る。
 激戦が続く中、テイクは思考処理速度の遅延をひたすらに回復させていた。
「……いやいや! でかくねぇか!?」
 ようやく認識処理が完了する。現実に戻って来ると思いの丈を叫んだ。
 そう。未だかつて、こんなに大きな敵と戦っただろうか。
 しかもドラゴンがあんなに沢山。すげーやしか出てこない。
 けれども。現実はここにある。自分が戦う敵は、紛れも無くあれだ。
 己の武器は身の丈に届くだろう大きさのモンキーレンチ。
 しかし、倒すべき存在は見上げても尚先が見えない。
 深いダメージにより地にほぼ腹を付けている状態でもだ。
(俺がスーパーヒーローみたいに飛べればよかったんだけど)
 マントを翻し、人々の声援を受けて空を飛ぶ英雄は正に理想の姿だ。けれど。
「現実はそうもいかねぇや!」
 気合一発、声を張り上げる。一貫して彼の信念は変わらない。
 駆け出しヒーローとして、猟兵として。出来ることをやるだけだ。

(ほう、あれがクラウドオベリスクか……中々に禍々しい雰囲気をしているな)
 戦地の少し先。浮島に護られ邪悪なる柱は未だその姿を綺麗に保っている。
 漸く遠目でも視界に収めたテオは、確りとかの姿を赤い目に焼き付けた。
 最終目的は柱の破壊。だがその前にすべき事だって、猟兵の使命だ。
(まずはあのデカデカとしたヤツを処分してから、ゆっくりと破壊することにしよう)
 そう遠くない未来に、首を洗って待ってろと言わんばかりに。
 テオは守護者へと一歩踏み出した。心なしか、先程よりも一歩が大きい。
 否。大きいのは、踏みしめたその足。
 常でさえ平均より遥かに大きな体躯をしている彼が、更にその体積を増している。
 脚や腕もより太くなり、褐色の肌がより濃くなっていく。
 両手で持つ大斧が片手で担げる程に変貌し、男の顔も人から牛の頭を思わせる異形へと変わっていった。
 雄々しき鷹、その真の姿が開放される。
 こちらも二倍の太さに成った尻尾の蛇がうねり、眼前の獲物を睨みつけた。
「奴等を狩り、祖霊へと供えてやろう」
 足を止め、重低音の声を響かせる。重量ある身体が、不意にふわりと浮き上がった。
 すぐにそれはいつもより激しく、逞しい爪先と踵で踊る舞へと切り替わる。
「タップ、タァップ、タァァァァッップッ!」
 牛頭が吼える度、重厚な見た目からは想像も出来ない素早い動きが繰り出された。
 その威力、大地をドラムにするかの如く。祖霊の加護を受け、力強いステップを踏み。
――風を切る音と共に、精悍な姿は舞台から消えた。

「行くぜっ、俺、参上!」
 草原を駆け抜け、テイクは今自分が出来る最高速度から勢いよくジャンプした。
 スチームモンキーも振り上げて黄色い身体に叩きつける。
「まだまだ! っと」
 着地と同時に後方に跳んで退避。辛うじて動いていた竜からのアイスブレスを回避した。
 すぐさまレンチを握り直し、息吹が止んだ瞬間走り出す。
 灼熱の蒸気を吹き出した鋼鉄の猿で思いっきりフルスイング、分厚い氷竜の身体をへし折った。
「よっし! ……でも、それだけじゃねぇもんな」
 竜はほぼ倒し尽くした。ここからもう一撃、更に一撃、浮島へ攻撃を仕掛けたい。
 地道でもダメージを蓄積させる事は今の自分がやれること。
 上からの方が更に効果的だろうけど、無い物ねだりは出来ないから。
 冷静に、周囲を見回す。見極めなければ、勝利への道を。
 ふと、顔を上げた。それは突破口を探す一環の仕草であったが、視界に緑の星が映る。
「……! まずい!」
 まだ生きていた触角から、閃光が放たれた。とっさに腕で眼を隠すもまともに光を浴びてしまった。
 戻した視界で見たのは、こちらへと身体を傾かせる巨大魚の姿。
 もう殆ど飛べない浮島ができる、体当たりだと言わんばかりに。徐々に眼前一杯に黄色が広がって――。
「待たせたなっ!」
 聞こえた声と同時にオブリビオンが爆音を鳴らしテイクが居た所を巻き込んで一回転、転がった。
 しかし圧し潰した筈の残骸は……存在していない。

「ちょ……俺、空飛んでる!?」
 テイクが状況を再び理解し終えた時、彼の身体は大空の中にあった。
 正確に言えば、自身の倍以上ありそうな大牛男に俵担ぎされ一緒に空中ジャンプをしている。
「間に合ったな! ……待て、俺は猟兵だ」
 一歩間違えたらこの世界に居そうな敵の風貌に、テイクの状況理解に三度目の遅延が発生しそうになるのを強引に引き止めるテオ。
 ただ会話をする余裕はあまりなさそうだ。浮島が再度、触角をこちらに向けている。
 先の動きで危険の合図だと理解しているテオは、テイクを担いだまま急降下。
 最後に残っていた火竜を天上から思いっきり踏みつけると、その反動でもう一度高く飛び上がる。
 素早い動きて狙いを定められていない触角を、大斧で斬りつけた!
「くらぇぇええええい!」
 雄々しき力で既に付いていた傷跡が更に裂け、最早浮島は緑の星に光を灯す事ができなくなる。
 その勢いのまま、浮島へ二人は上陸した。動く島は動きこそ鈍くなって来たものの、暴れて足場は不安定だ。
 急な体験の連続に素が出そうな様子の青年を下ろし、蛮族の男が向き合う。
「青年、トドメは任せた」
 驚くテイクだが、力強い牛頭の目と視線を交わすうちに冷静になる。
 時間はかからず頷いた。後はもう、やるべき事を成すのみ。
 二人は背を向け、走り出した。
「うぉぉぉぉおお!!」
 テオが勇猛なダンスステップを行えば、その爪先から竜巻を発生させ浮島周辺を暴風で取り囲む。
 真の姿だから出来る大掛かりな嵐の檻。逃さぬように、暴れないように。
 満身創痍の浮島に、抗う術は無かった。身体を浮かせようにも、抑え込まれ地面に叩き落とされる。
 その中を、脳天目指して赤いマフラーの尾を引いた青年が走り抜けていった。

 両手で確りと構えるレンチに蒸気が加速を付けていく。
 ここまで戦い抜いてきた猟兵達の意志も乗せて。
 最高加速に達した瞬間、振りかぶって強烈な一撃を叩きつける!
「決めるぜ、一発逆転! ピンチ・クラーッシュぅ!!」
 レンチの先が、災厄の浮島の頭に深々とめり込む。
 雲を吹き飛ばす程の号叫が響き渡った後……遂に、オブリビオン達は沈黙したのだった。

「終わっ……てない! オベリスク!」
 風も落ち着き、気を抜きかけてたテイクが叫ぶ。
 慌てて行けば既にオベリスク前には蛮族の男が立っていた。
「もう、こいつを壊すほどの火力は残ってねぇや……任せるぜ!」
 気が抜けた笑顔でぐっと親指を立てた見習いヒーローに、テオが力強く頷く。
 邪悪なる柱の前に立ち、息を吸う。全身の筋肉を膨らませ、両手持ちした斧を豪快に振り下ろした。
「ふんっ!」
 鈍い音が聞こえた。間を置かず、オベリスクに沢山の亀裂が生じる。
 粉々になった瞬間、邪悪なる気配も消え去った気がした。


 邪悪との戦いは、猟兵達の勝利に終わった。
 群竜大陸へ、また一歩。彼等は進撃していく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年06月24日


挿絵イラスト